運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-04-25 第101回国会 衆議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十五日(水曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 大塚 雄司君 理事 白川 勝彦君    理事 船田  元君 理事 佐藤  誼君    理事 馬場  昇君 理専 有島 重武君    理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    河野 洋平君       坂田 道太君    二階 俊博君       葉梨 信行君    吹田  愰君       町村 信孝君    渡辺 栄一君       木島喜兵衞君    佐藤 徳雄君       田中 克彦君    中西 績介君       湯山  勇君    池田 克也君       大久保直彦君    伏屋 修治君       滝沢 幸助君    藤木 洋子君       山原健二郎君    江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁次長   加戸 守行君  委員外出席者         通商産業大臣官         房企画調査官  河野 博文君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     吹田  愰君   佐藤 徳雄君     湯山  勇君   伏屋 修治君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   吹田  愰君     石橋 一弥君   湯山  勇君     佐藤 徳雄君   大久保直彦君     伏屋 修治惹     ――――――――――――― 四月二十日 高校新増設費国庫補助増額等に関する請願(佐 藤祐弘紹介)(第三〇七六号) 同月二十四日 身体障害児者に対する学校教育改善に関する請 願(愛知和男紹介)(第三三七七号) 同(田邉國男紹介)(第三三七八号) 同(高橋辰夫紹介)(第三三七九号) 同(野呂田芳成君紹介)(第三三八〇号) 同(葉梨信行紹介)(第三三八一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第 六二号) 昭和四十四年度以後における私立学校教職員共 済組合からの年金の額の改定に関する法律等の 一部を改正する法律案内閣提出第五九号)      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 著作権法の一部改正についてお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、現在生きております商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等権利に関する暫定措置法、これがいよいよ施行されることになって、後始末の意味ですか政令も出ましたので、これから発動されるという段階暫定措置法関係質問をまず申し上げたいと思います。  この暫定措置法の第四条一項によって、貸しレコード業者著作者演奏家レコード製作者許諾を得なければならない期間が、政令によれば一年ということになっております。これは経緯から申しますと、提案されたときの原案は一年になっておりまして、小委員会でいろいろ審議した過程において、一年というのは長過ぎるのではないか、レコードが発売されて貸しレコード業者がこれを使う期間は初めの方に集中してくる、その中で文化庁の方からも三カ月といった話もありまして、一年というのは長過ぎるのではないかという含みのもとに、「一年」を「政令で定める期間」というように修正した経緯がございます。  ところが、今回の政令もまた修正した前の原案に返って一年となっている。これはどうして一年としたのか、その理由をまずお尋ねいたしたいと思います。
  4. 森喜朗

    森国務大臣 湯山先生お尋ね暫定措置法をいろいろ検討いたしました際、私も党で著作権問題に対します取りまとめの役をいたしておりまして、今先生が御指摘をされましたところは一番頭を悩ましたところでございます。  当時としては、権利者団体から見れば、レンタルレコードなんというのはまさに不法であって、こんなものを認めること自体がおかしいんだ、こうした意見も強い時期でもございました。しかし一方においては、社会は変化しますし、文明がどんどん進んでまいりますと、いろいろな薬種がふえてまいります。これがもし本当に秩序正しく運営ができ、あるいはまた業を営むことがあるならば、国の立場から見れば、両方が本当に理解をし、そして法を守り、一番大事な著作権というものを大事にしてくださるということであるならば、円満にお話しをしていただきたい、そういう意味で、まさに業界全体が本当に円満に推移をしていってほしいな、そして一番大事な著作権者に対する権利はみんなで大事にしてあげてほしい、こういう趣旨で、その調整を私も党の立場で進めてきた一人でございます。  お尋ねのように、許諾を得なければならない期間政令にゆだねることにいたしましたのは、関係者意見を十分に聞いてそして適切に定め得るようにという趣旨である、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。  文化庁におきましてもその後、暫定法が成立をいたしましてから、関係者間の意見調整を随分進めてまいりました。期間につきましては、権利者団体であります日本音楽著作権協会日本芸能実演家団体協議会日本レコード協会は、少なくとも一年以上とすることを希望いたしておりましたし、使用者団体でございます日本レコードレンタル商業組合も、許諾による使用前提とされるならば一年でも異論はない、そういう意見が出ておったわけでございまして、このような関係から、今お尋ねのような形で一年というふうに定めさせていただいたわけですが、今後とも公正な権利行使が行われて、円満に秩序形成が図られるということが一番大事でございますので、文化庁におきましても、今後ともその点に一番留意をしながら努力をして調整していきたい、こういうふうに考えておるところであります。
  5. 湯山勇

    湯山委員 あの審議のときにも、両者の意見を十分聞いた上で決定するようにという強い意見がございまして、それを受けでそのような措置をとられての御決定ということですから、その点はよくわかりました。  ついては、念を押すようでございますけれども、権利者の方では許諾に応ずるということについての確認はあったわけでございますか、その点。
  6. 森喜朗

    森国務大臣 この件につきましては、直接指導いたしておりました次長から答弁させたいと思います。
  7. 加戸守行

    加戸政府委員 現在までの過程におきまして、権利者、三団体ございますが、日本音楽著作権協会、これは作詩、作曲家権利を預かっている団体でございますが、いわゆる仲介業務団体といたしまして文化庁長官の許可を受けて仲介業務を行っているわけでございまして、基本的には、いわゆる違法な高速ダビング等を行っている業者を除きまして、つまり正当な利用契約に応ずるものにつきましては全部許諾を与えるという方針でございます。それから、歌手、演奏家等が所属いたしております日本芸能実演家団体協議会におきましても、基本的に許諾を与える方向でございます。ただ、三つ目団体でございますレコード製作者の集まりでございます日本レコード協会におきましては、原則として許諾を与える方向でございますが、レコード会社にとって死活問題とかかわる、あるいはいろいろな投資が回収できないおそれがある限定されたレコードについては、ごく短期間ではございますが、その投資資本回収期間については何とか貸し出しを待ってほしいという意向がございまして、現在、レコードレンタル商業組合、いわゆる利用者サイドの方からは、その場合には少し料率を上げでもいいから全部使わしてほしいという感じがございまして、この問題は今後の調整にゆだねられるという感じでございますけれども、基本的には原則として貸し出し許諾する、しかし、レコード協会サイドにとりましては、一部分許諾が不可能な種類あるいは期間がまだ存在し得るというのが今後の話し合いに持ち越されている問題でございます。
  8. 湯山勇

    湯山委員 非常に重要な問題点だと思います。  そこで、大臣あるいは加戸次長貸しレコードの店へいらっしゃったことがございますか。
  9. 森喜朗

    森国務大臣 直接入ってみたことはないのですが、当時いろいろと問題の調整に、私が党の担当をさせられたものですから、軒先などを見ておりましたし、もう一つ非常に困ったのは、私の選挙区の事務所の同じビルの二階にレンタルレコード展さんがありまして、私の事務所看板は小さくて、レンタルレコード看板が大きいものですから、レンタルレコードの中に私が入っていくような格好になりまして、一時レコード屋さんから大分怒られたのですけれども、これは後から来たことでどうしようもなかったのです。そういう意味で、私、ちょっと中をのぞいてみました。
  10. 湯山勇

    湯山委員 実は、私も今度初めて見ました。行ってみて驚いたのは、出入りしておるのはほとんどが中学生か高校生です。しかも制服制帽のままで来ている、女子も制服のままで来ているというので、入った感じは非常に健全だという感じを受けました。しかし、そうでないのもあるかと思います。それからダビングの店、これは全然様子が違いますから、見てすぐわかると思います。  そこで、施行になる六月二日までに今懸案になっている点は解決する、しなければならないと思いますけれども、これについて次長、どういうお考えでしょう。
  11. 加戸守行

    加戸政府委員 音楽著作権協会の方の話し合いは既に使用料額等も妥結いたしまして、使用料規程に関します認可申請文化庁に提出されている段階でございますが、隣接権者関係の二団体につきましてはこれからの折衝になるわけでございます。特にレコード協会側といたしましては各種の問題もございまして、これから紆余曲折は経ることと思いますけれども、両当事者とも、いろいろな話し合い過程の中で、折り合いがつきにくい問題につきましては文化庁指導助言を頼みたいというような意向でもございますので、途中の適切な段階には文化庁もいろいろサゼスチョンを与えながら、六月二日までの間には円満妥当な解決が得られるように努力していきたいと考えている次第でございます。
  12. 湯山勇

    湯山委員 念のために、今もちょっと御答弁にありましたけれども、この際は使用料を払うということですか、あるいは報酬を払うということなんですか、いずれでしょう。
  13. 加戸守行

    加戸政府委員 現在議論になっておりますのは、貸しレコード暫定措置法に基づきます許諾を得た場合におきます使用料の問題でございます。ただ、今回提案を申し上げております著作権法一部改正案におきましては、政令で定める期間を経過した後におきましては報酬請求権規定を設けておりますので、この法律が成立施行されました後におきましては、使用料報酬請求権の込みの話になるわけでございます。ただ、現時点での話し合いは、暫定措置法に基づきます使用料だけの話し合いでございます。
  14. 湯山勇

    湯山委員 これは本法との関連で後で問題になりますから留保しておいて、次に、同じく暫定法関連で。  現在提案されておる法律がいよいよ通過して、そして施行されるのは六十年一月一日となっております。そうすると、これは通ることを前提にしないと論議にならないと思うのですが、この政令の一年というのは半年ばかりむだな期間が入っておる、こういうことになりますね。
  15. 加戸守行

    加戸政府委員 率直に申し上げますと、暫定措置法に基づきます政令は、いかなる期間許諾権を行使できるかという期間を定めるわけでございまして、実際問題として申し上げますれば、今回の著作権法一部改正案政府から提案しております。その施行期日が来年の一月でございますから、物理的には六カ月の期間しかないわけでございます。そういう意味におきましては、ただ政府提案をしたから必ず一〇〇%通るという保証があるわけでもないということもございますし、もう一つは、本来、暫定措置法におきましてどの程度期間許諾権を及ぼして、その期間使用料を払っていただく期間として妥当であるかという考え方に立ちました場合、現在貸しレコード実態におきまして、発売後一年以内のものが利用されるケースが約九割を超えておりますので、そういう意味で一年という期間を定めますことによりまして現実貸しレコード利用実態の大部分をカバーできる、理論的には正しい期間である。そういう意味で一年という期間を定めさせていただいたということでございます。
  16. 湯山勇

    湯山委員 やはり説明として納得できないと思うのです。というのは、暫定措置法と今度の著作権改正法とは、審議過程あるいは法律においてもちゃんとつながっておるわけです。一方ができれば一方が失効するというのですから、今の一般論ではこれは律しられない。こういう点については、やはり通らなければならないし、出すという約束でもあるし、一年サバを読んでおりますと混乱する部分が出てくると思うのです、今考えた場合にですよ、現在では。今おっしゃったように使用料の問題、報酬の問題も、どこからどうなのかということもありますので、これはひとつ指摘だけにとどめておきます。  さてその次、政令関係は一応それで終わりまして、今回の改正案についてでありますけれども、これは非常に複雑になっておりまして理解しにくい面が多々ありますから、私なりに整理をしてお尋ねいたしたいと思います。  まず、著作者についてどのように権利が守られるかという、その著作者についてですけれども、この著作所は、二十六条の二によって、「複製物貸与により公衆に提供する権利専有する。」こうなっております。この権利著作権法、従来の規定によれば、当然本人が亡くなって五十年間は有効である、こう理解してよろしゅうございますか。
  17. 加戸守行

    加戸政府委員 先生指摘のとおり、我が同著作権法におきます著作権保護期間は、ベルヌ条約基準に従いまして、著作者生存間及び死後五十年間となっているわけでございまして、したがいまして、今回御提案申し上げました貸与権につきましても、著作者生存間及びその死後五十年間有効に機能するということでございます。
  18. 湯山勇

    湯山委員 その対象外国人も含むということですが、貸しレコード業者が一々外国人まで許諾を得るというのは容易なことではないと思います。それについて一体どうなのか。  それからもう一点。楽譜以外の書籍雑誌を除くとあります、対象から外すのに。ただ雑誌でも、音楽関係雑誌というのは中に譜があります。それから書籍も、昔楽に関する書籍では中にちゃんと譜があります。これらはどうなるのか。その二点、いかがでしょう。
  19. 加戸守行

    加戸政府委員 現在、音楽著作権に関しましては、日本国内日本音楽著作権協会というのがございまして、この機関におきまして、国内人つまり日本人作詞作曲家等権利を預からせていただいている。と同時に、外国音楽著作権団体との間に相互協定を締結いたしておりまして、外国におきます外国作詞作曲家権利を預けた外国著作権団体からの委託を受けまして、日本国内におきます外国人作詞作曲家権利の代行を行っているわけでございます。したがいまして、著作権条約加盟国相当数権利者につきましては、日本音楽著作権協会でほとんどカバーできていると考えているわけでございまして、利用実態が起きました際に一括して日本音楽著作権協会契約なり権利処理をしていただければ、トラブルが起こる可能性というのはほとんどないと考えているわけでございます。  それから、第二点の御質問でございますが、楽譜書籍の中にあるという御指摘でございますが、附則の方で外しておりますのは、「主として楽譜により構成されているものを除く。」ということでございまして、雑誌一部分に、あるいは書籍の一ページに楽譜等が入っているというものにつきまして貸与権を及ぼす趣旨ではございませんで、当分の間は、いわゆる楽譜を中心として構成されている楽曲集あるいは歌集、そういったようなものについてのみ貸与権が動くという立て方をしているわけでございます。
  20. 湯山勇

    湯山委員 三十八条の四項によりまして、映画フィルム等料金を取らないで貸与する場合には許諾を必要としない、それから六十八条の二項によって、著作物有線放送使用する場合、これも許諾の必要はない。しかしながら、三十八条の四項によれば、映画フィルム等の場合は「相当な額の補償金を支払わなければならない。」こうなっております。「相当な額の補償金」、それから同じようなことを決めておる六十八条の二項では、同じような表現ですけれども、「使用料の額に相当する額の補償金」を支払わなければならないと使い分けがしてあるわけです。一方では、映画フィルム等については「相当な額の補償金」、それから有線放送等については「使用料の額に相当する額の補償金」、こう区別がしてあります。これはどう違うのですか。
  21. 加戸守行

    加戸政府委員 先生指摘の、第六十八条第二項におきます著作物放送する場合の裁定に関しますケースとして、「通常使用料の額に相当する額の補償金」という書き方をいたしておりますのは、利用者側権利者のライセンスを得まして、許諾を得て放送する場合に、通常払われる額、つまり一般取引関係の中で成立しております金額に見合う額というのが「通常使用料の額に相当する額の補償金」という考え方でございます。  一方、今回御提案申し上げております第三十八条に第四項の創設でございますが、その第四項の規定において「相当な額の補償金」という言葉を使っておりますのは、通常使用料の額よりは安い額である。しかしながら、補償金の性質といたしましても、使用料にある程度近い額の、ある程度相当な額という考え方規定をいたしたわけでございまして、このことは著作権規定の中、現行法の中におきましても、「通常使用料の額に相当する額の補償金」とかあるいは「相当な額の補償金」とか、いろいろな書き分け方をしております趣旨といいますのは、通常使用料金よりは安いけれども、余り不当に安くなってはいけない、ある程度使用料に近づける形の補償金であるという意味を込めまして、「相当な額の補償金」という書き方をしている、従来の考え方規定の仕方を踏襲したという次第でございます。
  22. 湯山勇

    湯山委員 私は、これは法律が不備だと思うのです。「相当する」というのは、何に相当するかというのがなければ、「相当」というのはただ一般的に、まあいいかげんなことをやっておけということにしかならない。したがって、普通の「使用料の額に相当する額の補償金」というのは、これはわかります。しかし、ただ漠然と「相当な額の補償金」で使用料より安いのだ、こんな説明は、法律説明としては甚だ不適当で、この著作権に随分こんなのがあるのです。ほかでも申しますけれども、非常にあいまいでわかりにくい。説明を聞いても、はて、そういうふうに読めるか、「相当な額」とあるのですから、使用料の額に相当するのをやったって別に違法ではありません。不都合じゃありません。これで通常使用料より安いという読みようはできないと私は思う。いかがですか。
  23. 加戸守行

    加戸政府委員 日本語と申しますのはいろいろ微妙な使い方があるわけでございますが、法律用語として今使っております「相当な額の補償金」といいます場合の「相当な」と申しますのは、ある程度の、かなり程度のというニュアンスでございます。一方、「通常使用料の額に相当する額の補償金」といった場合の「相当する」と申しますのは動詞形として使っておりまして、相見合う、つまり「通常使用料の額」と相見合う額の補償金という趣旨で使われているわけでございまして、したがって「相当」という字句だけでは共通部分でございますが、「相当する」というのは相見合うという意味でございまして、「相当な」というのはかなり程度のというニュアンスでございます。  そこで、補償金といいますのは、要するに一種の著作権を制限した上で、ただ使用料を払わなくてもいいけれども、著作権制限規定によって、使う以上はある程度補償はしなさいという趣旨でございますので、例えば教科書補償金につきましては三十三条で規定がございますけれども、この場合はかなり低い額の、つまり通常使用料額に比べますと、学校教育の目的に使う教科書に掲載するという意味で、通常使用料額に比べれば相当程度低い料金になっております。  それから第三十四条で、学校教育番組放送使用します場合の補償金が「相当な額の補償金」でございまして、この場合は、どちらかと申しますと、通常使用料額と、例えば教科書補償金の中間的な感じで「相当な額の補償金」が定められている、そういう考え方で対応している次第でございます。
  24. 湯山勇

    湯山委員 今のように何々に相当するというのと、前に対象とするものがない場合はそれよりも低くて、まあいいかげん、これはやはり了解しかねます。そういう解釈は出てこないと思いますので、今後ひとつ御検討を願いたいと思います。  それから次は、演奏家レコード製作者、つまり隣接権者の問題ですけれども、この隣接権者も、九十五条、九十七条によりまして著作権者と同じように「貸与により公衆に提供する権利を班有する。」こうなっております。この「専有」というのは、著作者も今の隣接権者も同じように持っている権利だと思いますが、この隣接権者専有する権利は何年間でしょうか。
  25. 加戸守行

    加戸政府委員 隣接権につきましては、パイロット条約でございます一九六一年のローマ条約の二十年という基準を国内的にも採用いたしまして、実演家につきますればその実演が行われたときから二十年間、レコードにつきますればレコードが発行されたときから二十年間、放送につきましては放送が行われたときから二十年間というのを権利保護期間として定めておりますので、ただいまの九十五条の一あるいは九十七条の二の規定におきます権利専有期間は、それぞれ二十年間という考え方でございます。
  26. 湯山勇

    湯山委員 それはよくわかりました。  ただし、その二十年間の専有権がありながら許諾を取らなければ貸しレコードとして貸与できない期間、これは政令で決められることになっております。その政令で決められる期間というのは、一カ月以上十二カ月以内とする、こうなっておりますが、一カ月以上十二カ月以内というこの表現は、一カ月でもいい、十二カ月でもいい、あるいは六カ月でもいい、これは一つを決めるのですか、複数で決めるわけですか。
  27. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいまの御質問にございました単数複数がという意味のお答えでございますれば、単数でございまして、一番短い期間が一カ月、一番長くても十二カ月、その一カ月から十二カ月の範囲の中でいずれかの月数政令で単一に定める、そういう趣旨でございます。
  28. 湯山勇

    湯山委員 それだけ幅があれば、この変更はどれぐらいの期間たてば変える、例えばことし六カ月と決めて来年一年にする、その次の年は一カ月にする、これじゃやれませんよね。一体どれくらいの期間、その単一で決めたものは存続させる予定ですか。
  29. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもの考え方といたしましては、この提案を申し上げました幅はいろいろございますが、とりあえずの気持ちといたしましては、暫定措置法下政令が一年となっておりますこの期間のもとにおいて円滑な利用関係が形成され、そういう形で実務上のトラブルもなく済むというような見通してございますれば、この政令期間は十二カ月という考え方で進めたらどうかという今の気持ちでございます。そういたしまして、この幅はございますけれども、この月数を変更するというのは、現実に変更するだけの何らかの実務上の支障が起きるあるいは権利が強過ぎるあるいは権利が弱過ぎる、そういった相関関係のもとにおきまして考える問題でございまして、軽軽に動かせるというぐあいには考えておりません。ただ、基本的にはある程度の線で一応試行錯誤的なものもございます。それで世の中本当にうまくいくんだろうかということは、一〇〇%の自信が持てません。そういう意味で、いずれ何年かの間にぶれはございましょうが、いつかは落ちつくところに落ちつく、ただ基本的には固定するものでもないし、かつ短期間にぐるぐる変えるわけでもない。諸般の情勢を見ながら、一番あるべき姿の方向というのが落ちつくところへ落ちつくだろうという期待を持っているということでございます。
  30. 湯山勇

    湯山委員 現在、十二カ月くらいを頭に置いているというのはわかりました。  一カ月というのを頭へ置くのはどんな場合でしょう。
  31. 加戸守行

    加戸政府委員 これは権利者側におきまして、例えばその許諾権の期間すべてについてすべてのレコードのレンタルを禁止する、極端なケースでございますが、そういうような事態があり得るとすれば許諾権の期間は極めて短くせざるを得ない、そういう相関関係にあるわけでございまして、基本的には、先生もおっしゃいましたように、一応十二カ月からスタートしてみたらどうかという今の気持ちの中には、現在の話し合いのプロセスにおきまして円滑な、円満な利用関係が形成されるということを期待しているからでもございます。
  32. 湯山勇

    湯山委員 今のお話で、一カ月の場合はこういう場合というのがありましたけれども、その場合がありますか。現実に想定できますか。
  33. 加戸守行

    加戸政府委員 基本的に、実情としては私どもも想定しないわけでございまして、そういうことがあってもならないわけでございます。ただ、法律上の規定としましては、一種の抑止力的な効果として、もし権利の乱用にわたるような行為があれば期間が短縮される可能性があるよということによりまして、権利者側の権利行使も当然自制機能が働くであろう、そういう意味合いも含めまして抑止的な効果を期待したい、こういうことでございます。
  34. 湯山勇

    湯山委員 まだ、ちょっとこれは納得できかねますのは、その期間が終わったら野放しになるのなら別です。そうじゃないので、期間が終わってもなおかつ今度は報酬を受けて、しかもその報酬というのは恐らく文化庁長官がタッチする報酬ですから、そうむやみなことはどちらもできないのじゃないんですか。
  35. 加戸守行

    加戸政府委員 この問題には二つの意味合いがございまして、一つは、先生おっしゃるとおり、団体としてのまとまりの中で考える場合にそう極端に走ることはないだろうということはある程度期待できます。ただ、団体の中にもアウトサイダーがいるという場合もございます。それから、団体がまとまらなくて、ばらばらに権利行使がされる可能性も理論上はあり得る。そういった点を想定いたしますれば、法律の制度としては、いかなる事態が起きましても対応できるような考え方のもとに整備しておくというのが適当ではなかろうか、そういう趣旨でございます。
  36. 湯山勇

    湯山委員 まだ納得できないんですけれども、一応お聞きしておきます。そういうことがないように法律はできておるはずなんです、後の方の仕組みから見ましても。  そこで、今の期間が過ぎて、いよいよ今度は許諾は得なくてもいいということになります。その場合において、隣接権者は今度報酬を受ける権利を持つことになります。それで、政令で定める期間許諾権を持っていて許諾によって使用料を取る。許諾を要しない報酬を受けるこの期間は、今の期間が過ぎた後、その両方足して二十年ですか、許諾期間が終わってそれから二十年ですか、その関係はどうなります。
  37. 加戸守行

    加戸政府委員 実演に関しまして、その実演が最初に行われた、それでその実演レコードに入って発売された、そういうようなケースでございますれば、政令で定める期間経過後の報酬請求権期間は、二十年からその政令で定める期間を差し引いた期間、いわゆる許諾期間報酬請求権とが合算した期間が二十年という意味でございます。  なお、実演がかつて以前に行われたものが例えば十年たって、ある特定の商業用レコードの中に入れられて発売されたというケースでございますれば、残りの十年間のうち政令で定める期間許諾権と残りの報酬請求権が合算して十年間という形で動く、そういう形になります。
  38. 湯山勇

    湯山委員 そこで、報酬を受ける権利というのは「享有する」こうなっていますね、八十九条ですか。公衆貸与する権利というのは、先ほどお聞きしたように、著作者もそれから隣接権者もともにその権利は「専有する」、それから政令で定めた期間を過ぎた以後の報酬を受ける権利というのは「享有する」、こういう規定になっております。この「専有」と「享有」との区別はどこでどう違うのでしょうか。
  39. 加戸守行

    加戸政府委員 著作権法あるいは工業所有権法、そういうようなところで「専有」という言葉が使われておりますが、「享有する」、「専有する」、いずれも法律用語でございまして一般国民にはなかなかなじみにくい言葉だろうと思います。  まず、「享有する」という言葉でございますが、これはある特権あるいは特定の権利というものをある人が喜んで受けるというような意味で「享有」という言葉を使うわけでございまして、英語ではこれを条約上、エンジョイという言葉を使っておりまして、エンジョイ・ザ・ライト、つまり権利を楽しむ、「権利を享有する」という形でいわゆる権利の塊のようなものにつきましてそういった権利を、例えばある著作者なり実演家が楽しんで持つんですよという趣旨が「権利を享有する」というニュアンスでございます。  一方、「専有する」という言葉でございますが、これは日本独特の用語でございまして、諸外国の立法例あるいは条約等の用語を直訳いたしますと、排他的権利を有するというような感じでございまして、第三者に対抗する権利であり、例えば著作権でございますと、著作者のみが持っている権利でほかの第三者は持っていない権利、そういう意味契約当事者以外にも権利が及びますよ、そういう趣旨で排他的な権利を有するという用語が学問的によく使われますけれども、著作権法におきましては明治三十二年の旧著作権法時代から、著作権専有すというような言葉を使っておりまして、その用語を踏襲いたしまして、つまり物権的な権利としての排他的権利を有する、複製する権利専有する、放送する権利専有する、そういう善き方をしているわけでございます。ちなみに工業所有権法でございます特許法あるいは意匠法におきましても、「権利専有する」という用語を使っております。
  40. 湯山勇

    湯山委員 わからないのですけれども……。そうすると、整理してみます。  報酬を受けるというのはエンジョイすることでしょうか。
  41. 加戸守行

    加戸政府委員 「報酬を受ける権利を享有する」ということは、そういう権利をエンジョイするという趣旨だろうと思います。
  42. 湯山勇

    湯山委員 今度は法律的に整理してみますと、報酬を受ける権利は「享有する」という言葉を使う、それから使用料を取るという権利は「享有」じゃありませんね。
  43. 加戸守行

    加戸政府委員 今度御提案申し上げております法一部改正案の中の八十九条の中には、その報酬を受ける権利のみならず、その前段階の方で「九十五条の二第一項に規定する権利」も含まれておりますので、許諾をする権利、つまり公衆貸与する「権利専有する」と書いております貸与権も享有する中身に含まれておるわけでございます。したがいまして、八十九条の第一項では、許諾権も報酬請求権隣接権者実演家レコード製作者という人たちはこういうものを享有するんです、エンジョイするんですという書き方をしておきまして、かつその具体的な権利のそれぞれにつきましては貸与する権利専有する、複製する権利専有するという形で、専らその人のみが有する物権的な権利である旨を各条文では具体化して「専有する」と書いておりまして、矛盾する用論ではないと考えております。
  44. 湯山勇

    湯山委員 使用料を享有するというのはどこにありますか。
  45. 加戸守行

    加戸政府委員 今度提案申し上げております条文の中では、使用料を受ける権利という書き方はいたしておりませんで、使用料を受けるベースとなります許諾権、貸与権というものについて貸与権を享有するということで、八十九条では「九十五条の二第一項」という条文を、字句を追加させていただいております。
  46. 湯山勇

    湯山委員 貸与権というのは専有とさっき確認しましたね。著作者並びに隣接権者、これははっきり法律の条文に、「貸与により公衆に提供する権利専有する。」これは「専有」です。しかし、「享有」という言葉はないですよ。
  47. 加戸守行

    加戸政府委員 今回御提案申し上げております「第八十九条第一項中「第九十一条及び第九十二条」を「第九十一条第一項、第九十二条第一項及び第九十五条の二第一項」に改めこの「九十五条の二第一項」と申しますのは、貸与権に関する規定でございまして、もし改正されました場合の条文の体裁といたしましては、「実演家は、」「九十五条の二第一項に規定する権利並びに」「第九十五条の二第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。」そういう書き方になりまして、いわゆる報酬を受ける権利貸与権と両方を享有するという形になるわけでございまして、書き方といたしましては、享有する権利対象でもあり、かつ、それはまた別個の九十五条の二第一項だけを見ますと「専有する」という書き方にもなっておるわけでございます。
  48. 湯山勇

    湯山委員 その説明は納得できません。というのは、政令を見てください。政令では、私がさっき後へ留保いたしました中で、政令で決めた期間許諾権。それから次長もこの間は使用料だ、こうおっしゃいました。これは報酬じゃないのですから「享有」というのは当てはまらないで、やはり「専有」ですね。もっと言えば貸与権です。これは「享有」というのを使うのは適当でない、報酬ではないわけですから。ところが政令には「享有」となっておりますね。使用料はエンジョイじゃないですよ。そうでしょう。
  49. 加戸守行

    加戸政府委員 「享有する」ということと「専有する」ということは矛盾する言葉ではないわけでございます。そこで、「専有する」という言葉を使いますときは、この権利通常の債権とかいうものではなくて、物権的な権利として第三者に対抗できる、いわゆる無体財産権の本質である物権的な権利というのを指します場合に、先ほど申し上げましたように、排他的な権利を有するというような意味合いを込めまして複製する権利専有する、あるいは貸与する権利専有するという権利の性質を明らかにした用語でございます。一方、「事有する」というのは、そのようにして定められた権利、例えば物権的な権利であれ、あるいは報酬を受けるという債権的な権利であれ、そういったような権利をエンジョイすることを「享有する」と書いているわけでございまして、「専有する」は権利の性質を明確にする、「享有する」は定められた権利を持つのです、楽しむのです、そういう趣旨で書き分けているわけでございます。
  50. 湯山勇

    湯山委員 ちょっと答弁にならないのですが、著作者に享有する権利がありますか。
  51. 加戸守行

    加戸政府委員 著作権法の上でも、著作者著作者人格権及び著作権を享有することになっております。
  52. 湯山勇

    湯山委員 この場合の貸与権は、法律ではいずれも「専有」ですね。
  53. 加戸守行

    加戸政府委員 現行法の第十七条におきまして、「著作者は、著作者人格権並びに著作権を享有する。」という使い方をいたしておりまして、この場合には、専有するということによって規定されました物権的な権利である著作権並びに著作者人格権、この二つを享有するという書き方をしているわけでございます。
  54. 湯山勇

    湯山委員 政令に「享有」という言葉を使ってある。「享有」というのは、ここでは今のように報酬の場合を指しておる、これは間違いないところです。したがって、政令の使い方というのは正しくない。あなたが今答弁したのをまとめれば、そうなるわけであります。  そこで、さっきも用語の問題で、報酬著作権者が受ける補償についてわかりにくい、これも同じなんです。「享有」とか「専有」とか、そういうことじゃなくて、ただ「持っている」ということで結構わかるんでしょう。補償を受ける権利を持っている。それから、使用料を受ける権利を持っている。このことを明治何年かの法律の用論を訳したのを、今のようなことで大変難しい、使われていないような一「享有」というのは、本来、日本の字引でいえば、生まれながらにして持っている権利です。字引、引いてごらんになりましたか。エンジョイなんということは、これにはないんですよ。
  55. 加戸守行

    加戸政府委員 先生指摘のように、日本誌の辞典におきまして「享有」は、生まれながらに持っているという意味でございます。ただ、この法律用語で使っております法体系自体が、条約あるいは外国の法令といった、制度的には外国からスタートし、国際的にもでき上がった著作権条約をベースとして国内的な法整備が明治三十二年に図られた、そういう経緯もございまして、外国ではエンジョイという言葉を日本の法律用語では「享有」という形で訳す法律的な訳し方でございまして、それは一般的に、先生おっしゃいますように、単に「権利を有する」でも意味は通ずるわけでございます。
  56. 湯山勇

    湯山委員 大臣、今お聞きのとおりなんです。確かに、今言ったような明治の文化の残滓がまだたくさん残っている。しかも、今日これだけ著作権が複雑になってきているときに、日本語の字引を引いてもわけのわからない、出てこないような言葉を残しておくということ自体、私は大変大きな問題だと思うのです。さっきも申し上げましたし、こちらがもう忘れるぐらい今の補償についても同じようなことがある。それから今の「享有」「専有」もそう。これをひとつ、新進気鋭の大臣のときに大整理をやっていただけませんか。今すぐとは申しません。けれども、大臣、検討していただきたいと思うのです。
  57. 森喜朗

    森国務大臣 湯山先生加戸次長の議論を伺っておりましても、正直言って、私も頭が痛くなるのです。先ほど申し上げましたように、二年前にレンタルレコードから出まして、たまたま私がこの仕事のまとめをしろと党で命じられたときにも、正直言って、もう投げ出したくなるほど難しい、そんな気持ちでございましたが、先ほどから加戸次長も申しておりますように、この法案の著作権を守るというこれは、やはり国際的条約がベースになっておるということ、そのことを日本の時代の進展に伴って逐次改善をしたり、そのことを引用したり、その精神をまた受け継いだりというところで、先ほどのような一般的な用論の使い方と法律的な用語をそこに組み合わせていく、あるいは英語の解釈に何とか日本誌のそれに合ったものをすぐ入れる。エンジョイなんというのは、どちらかといえば、我々からいえば喜びということになる。しかし、それが法律用論にはなじまない。そういうところから「享有」という言葉を入れたりしたのだと思いますが、いずれにいたしましても、文則、科学の発達によって、まだまだ我我の予測できないようなことがどんどんどんどん起きているわけでございまして、そういう意味で、著作権審議会も今後ともいろいろな問題で議論をしていかなければならぬ。また答申もちょうだいしながら、法律的にその整備もしていかなければならぬ。こういうこともございますので、文化庁としても、先生の御指摘、御注意をいただきました点も十分留意をいたしておりますけれども、今即座に全部法律を書き直す、どちらかというと、もう少しわかりやすい現代的用語といいましょうか、法律用語に書きあらわしていくということは、国際条約との絡みから見ると非常に難しいところもございますけれども、十分検討していく問題点であるというふうに受けとめさせていただきたい、私はこう思います。
  58. 湯山勇

    湯山委員 今、次長も言われたように、「享有」というのは「有する」で結構通ずるわけです。内容提示が前にあれば、何も「享有」とか「専有」とか、そういったような言葉で使い分けなくていいわけですから。そしてまた、今のように、当時、明治何年かの翻訳というのが適切であったかどうかというものもあります。悪いものまで定着しなければならないものではないわけで、今の大臣の御答弁のように、ひとつ心して御検討を煩わしたいと思います。
  59. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますように、「享有する」は「有する」に直しても、いささかも変わるところはないわけでございます。ただ、著作権条約上、「事有する」という条約の公定訳がございまして、そちらとの絡みがあってこういう使い方を従来からしてきたという、それだけの事情だろうと思います。  ただ、「専有」につきましては、これは極めて般債権的な権利ではなくて、物権的な権利である、排他的な権利であるということをあらわす用語として使われてきておりますので、もし「専有する」という言葉を他に直すとしますならば「排他的な権利を有する」とか、ちょっと一般国民になおわかりにくくなるというような面もございまして、いわゆる権利の性質をあらわすものですから、この問題については慎重を要するだろうと考えております。
  60. 湯山勇

    湯山委員 「事有」という妙なものがあるから「専有」というものがぼやけてくるわけですが、その辺おわかりいただいたようですから、ひとつ御検討を煩わしたい。私もこれに非常にひっかかりまして、今度は随分長い時間かかりました。日本の法律に今こんなのがあって、しかも新しいコンピューターが出てくるときに、こんなものでやられたらかなわぬなという感じを強く持ちましたので、申し上げておきます。  そこで、今の報酬の問題ですけれども、請求がなければ出さなくていいんですか。
  61. 加戸守行

    加戸政府委員 法律の条文におきましては、「報酬を支払わなければならない。」という書き方をいたしておりますので、レンタル行為に使用した場合には当然支払う義務が発生するということでございます。ただ、現実問題といたしましては、実務的には請求があって払うのが通常の形態でございますけれども、おっしゃいますように、法律上はあくまでも、使えば支払う義務がそこで発生する、つまり債務が発生するという書き方でございます。
  62. 湯山勇

    湯山委員 これは権利からいえば、受ける権利を持っておるんですね。だから、受けなくてもいいということにはなりませんか。「受ける権利を享有する。」こう法律はなっていますね、受ける側からいえば。これはいかがですか。
  63. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいまおっしゃいました「報酬を受ける権利を享有する。」というところで書いております権利は、顕在化したものあるいは潜在的なものも含めまして、レコード貸与に供された場合におきましては報酬を受けるという債権を発生させる、あるいはそういった期待権も含めまして、そういうような一般的な、包含的な権利というものを持っておりますという趣旨でございます。ここの問題といたしましては、使われたら債権が発生するということで、八十九条で書いておりますのは、一般的に、そういった債権も含め、あるいは債権が発生する可能性も含め、期待可能性も含め、そういった権利という趣旨で書いておるわけでございます。
  64. 湯山勇

    湯山委員 時間がなくなりましたので、まだ問題残りますけれども、この請求権は、文化庁長官が指定する団体があるときはその団体によってのみ行使できる、こうあります。さっきもちょっとありましたけれども、団体のないものはどうなんですか。
  65. 加戸守行

    加戸政府委員 団体のないものという御質問、ちょっと意味がわかりかねますが、多分、団体が存在しなければという趣旨でございますれば、文化庁長官が指定する団体が存在しないときには個個に権利を行使する、そういう意味でございます。
  66. 湯山勇

    湯山委員 「のみ」とあるものですからね。個々に行使もできるということですね。
  67. 加戸守行

    加戸政府委員 文化庁長官が指定する団体が存在いたしますれば、その「団体によってのみ行使することができる。」ということでございまして、直接的な権利行使はできない、そういう趣旨でございます。
  68. 湯山勇

    湯山委員 さっきとちょっと違ったようですね。個人でもできるということでしたが、それはできない……
  69. 加戸守行

    加戸政府委員 それは、文化庁長官が指定する団体がない場合、つまり、芸能実演家団体協議会は指定していない、レコード協会は指定していない、したがって指定された団体が存在しないときは、個別的に権利を行使するしかない。しかし、文化庁長官が指定する団体があれば権利者はすべてその団体を通じて権利を行使する、そういう仕組みになるわけでございます。
  70. 湯山勇

    湯山委員 では、団体がない場合は個人ということ。  それから、その団体との間の協議が成立しないときは文化庁長官が裁定することになっておりますが、大丈夫、こんな難しいのを裁定できるのでしょうか。それから、その裁定には強制権、つまり必ず従わなければならないものかどうか。この二点、簡単に。
  71. 加戸守行

    加戸政府委員 類似の制度といたしましては、現在、商業用レコード放送使用いたしました場合の二次使用料に関する規定がございまして、これは九十五条、九十七条、現行法規定されておりますが、その場合の二次使用料の額について争いがあるときも、文化庁長官が裁定できるシステムになっております。  ただ、この制度発足以来まだ裁定制度が発動されておりません。と申しますのは、実際上の話し合いのプロセスにおきまして、文化庁長官が裁定権をてことして裁定に入る事前の段階でいろいろなサゼスチョンを与え、あるいは指導助言をする形で円満にまとまっておるわけでございまして、実際問題としてトラブルが生じた場合に最終的な裁定になる。その場合には、権利者側の言い分、使用者側の言い分、双方を聞き、諸般の情勢あるいは利用されているものの価格あるいはそれによって得られている利益、そういったものを総合的に判断して裁定をすることになろうかと思います。
  72. 湯山勇

    湯山委員 それには、強制権、従わなければならない義務があるかどうか。
  73. 加戸守行

    加戸政府委員 両当事者、つまり権利者側、使用者側、双方が合意して裁定を申請いたします。あるいは片一方から裁定の申請があれば、他方に対しまして、裁定に同意するかどうか意見を聞きますので、両方が合意した上で裁定の申請がありました場合には、出ました裁定は法的拘束力を持ちます。ただ、定められた裁定額に不満がある場合には、直接に訴訟を起こすことも可能なように規定いたしております。
  74. 湯山勇

    湯山委員 申請があるなしにかかわらず、当該団体の「協議が成立しないときは、」と法律は書いてあるのですから、申請は関係ないわけです。
  75. 加戸守行

    加戸政府委員 法律上は、両者の協議が調わない、成立しないときには「文化庁長官の裁定を求めることができる。」という規定でございまして、これを受けまして、現在の二次使用料に関しましても、著作権法施行令の中で裁定は申請主義をとっておりまして、調わないときには、申請があった場合にのみ裁定をするというシステムになっております。
  76. 湯山勇

    湯山委員 わかりました。  次は、ダビングの問題ですが、ダビングの場合は当然許諾が要るわけですけれども、これにはどの期間許諾が必要だというような規定はあるのですか、ないのですか。
  77. 加戸守行

    加戸政府委員 ダビング対象となっております著作物であれば、著作者生存間及び死後五十年間、ダビング対象となるのが実演であれば実演が行われてから二十年間、レコードであればレコードが発行されてから二十年間、そういうことでざいます。
  78. 湯山勇

    湯山委員 私的使用の場合、つまり自動複製機械を私的使用、その場合は罰則はない。ただ「民事上の責任を問い得るにとどめ、」とあるのですが、これはどういうことなんですか。民事上の責任を問い得るにとどめるというのはどういうことをするのですか。
  79. 加戸守行

    加戸政府委員 例えば、高速ダビング業者のところへ参りまして個人が自分のためにテープを録音したという場合につきましては、そのことによって著作権者あるいは隣接権者に損害を与えているわけでございますから、理論的には例えば録音使用料相当する額を支払えという関係で債務を負う。そういう関係で、債権債務的な民事上の観点の責任は負います、ただし、その個人に対しては罰則は適用しない、そういう趣旨でございます。
  80. 湯山勇

    湯山委員 じゃ、私的使用の場合も使用料というか補償というか、それは出さなければならない、こういうことですね。
  81. 加戸守行

    加戸政府委員 使用料の前に、本当は権利者団体あるいは権利者に対しまして、自分は自分のためにこういう録音をしたいが許可してほしい、許諾してほしいと言ってお金を払うというのが理論的な立て方でございます。実務的にはそういうことは全く不可能だと思います。
  82. 湯山勇

    湯山委員 それじゃ、後から見つけて取りに行く、こういうことにしかなりませんね。実際問題としてはできないということですか。
  83. 加戸守行

    加戸政府委員 そういう点は先生の御指摘のとおりでございまして、例えば旧著作権法でも手書き以外はだめだという時代もございまして、事実上は野放し状態になっていた。あとはいわゆる国民一人一人の著作権法の認識、法意識の問題だろうという気がいたします。
  84. 湯山勇

    湯山委員 よくわかりました。こうなっておりますと具体的にどうするかというのはまた難しい問題でしたが、実際上はこれが適用になるということは非常に困難だというか、考えられにくいということで、わかりました。  ただ、今回このダビングを使って複製をとる場合に、ゼロックス、コピーを除いております。これは今は非常に難しいと思いますけれども、将来は対象にするという御予定なのか、将来もこれは野放しにしておくということですか、この点いかがでしょう。
  85. 加戸守行

    加戸政府委員 先生指摘のように、いわゆる文献複写機器を附則におきまして適用除外いたしましたのは、現在そのゼロックス等によるコピーの状況というのが相当見受けられるわけでございますけれども、これらの業種に対しまして仮にライセンスを出そうといたしましても権利者がばらばらでございますので、学術関係権利者あるいは文芸関係権利者、そういった方々が総合的にいわゆる集中的な権利処理機構というのをつくっていただいて、そういう集中的権利処理機構と契約をすれば一カ月幾らでそういった複写業が営業できるというようなシステムを整えるまでの間は、これを法律上責任があるといたしましても、違法状態を実質上野放しにするだけのことになりはしないか。そういう懸念もございまして、集中的権利処理機構の体制が整備されるまでの間は「当分の間こという趣旨で附則で外させていただいているという意味でございます。
  86. 湯山勇

    湯山委員 では、この問題は学術書なんかではかなり問題になるので、当分の間対象としない、将来体制が整えばやはり対象としなければならないということで、了解いたしました。  そこで次へ移りまして、今度の法改正で特に隣接権に関するものが大きく取り上げられていることは間違いありません。実質的にはもうこれで隣接権を認めていると見てもいいと思いますし、それの侵害に罰則も適用されるということですし、法律も、旧法もそうですけれども、八十九条の前に「(著作隣接権)」という括弧の見出しもついている。にもかかわらず、日本はまだ隣接権の条約を批准していない。これは私は大変不満なんです。隣接権条約というのはすでに一九六一年ですか、ローマ条約で効力が発生して、かなりの国がこの条約を批准しております。日本はこれだけ国内法は改正して、今日もなおこの法律隣接権を認める範囲を拡大している。にもかかわらず、二十年たった今日、なお隣接権条約を批准していないというのははなはだ不満なんですけれども、なぜ批准しないのですか。
  87. 森喜朗

    森国務大臣 今、湯山さんお尋ね隣接権条約、一九六一年でございまして、大体現在二十六カ国加入いたしておる条約だというふうに承知をいたしておりますし、先ほどから御議論の中に出ておりますように、我が国の著作権法もこの条約を参考にいたしまして隣接権制度を導入いたしておるところです。  先般の昭和五十三年、国会附帯決議にも指摘をされておりまして、文化庁としては同条約への早期加入を実現したい、こういうふうに検討をしてきているところでありますが、まだアメリカとかフランスなどは未加入でございます。そういう国際情勢のこともあって関係者、当事者の一部には、まだ時期尚早という意見かなり強いわけでございます。一部ということでございますが、かなり関係者にとりましては大きな問題にもなってくるわけでございます。文化庁といたしましても、今先生から御指摘のとおり、やはり関係当事者間の意見も少し調整をして、さらにこれを進めるようにして著作権審議会において十分に検討を行いたい、こういうことにいたしておるところでございます。
  88. 湯山勇

    湯山委員 これは、日本の著作物外国で評価されないというようなこととある意味ではつながるおそれがあるのです。日本は文化国家、平和国家という旗印を掲げている以上は、やはりこういうことで率先してこの条約に加盟する、そうすることが私は正しいと思うし、文部省もそういう態度だと思います。そこで、多少の困難はあっても、困難といっても私の聞いておる範囲では多分、払わなければならない金がふえるといったような、まことに低次元の理由でやっておるとしか思えない。それをはね返して、あえて文化国家を願っておる日本としてはこれに加盟していく、そしてそういうことを通じて日本の文化、著作というものが外国へもどんどん出ていく体制をつくるということが、今日の大きな課題でなければならないと思います。  そこで、前もおっしゃるとおり、附帯決議もございましたし、課題になっておりますが、ひとついつごろその批准をするか、見通しはないですか。
  89. 加戸守行

    加戸政府委員 長年の懸案の課題でございまして、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、各般の努力あるいは検討は重ねているわけでございますが、現時点におきましても、既に著作権審議会では再度、第一小委員会におきまして、この問題を御検討いただくように御依頼申し上げておるわけでございます。  ただ、隣接権条約へ加入いたしますとすれば、端的に申し上げますと、例えば商業用レコードの二次使用料といったものについて一つの例を挙げてみますれば、現在テレビ放送等で使われております邦盤と称します国内盤に比べますと、外国権利者の及ぶ洋盤でございますか、そちらの比率の方が同等以上に高いというような状況もございまして、二次使用料だけで申し上げれば倍増するというような急激な変化が来るという、そういった点も一つの事情として使用者側サイドにおきまして強い抵抗が存するところでもございます。  ただ、国会での附帯決議あるいは当委員会での御質問、あるいはそういった形で隣接権条約加入の機運というのが日ごとに高まっていくという客観情勢の中で、利用者側にも十分御理解を願いながら進めたいということで、時期がいつということは申し上げかねる次第でございますけれども、最善の努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  90. 湯山勇

    湯山委員 これは多少費用がかかると言うが、倍になったって知れたものです。そういうことで、次元の違う問題をおくらせるというようなことのないようにぜひ強く要望しておきます。  最後の問題ですけれども、複製の関係で問題になっているのはコンピューターソフトウエアの権利保護の問題です。文化庁はこれの小委員会を設けまして、一月にその結論をもとにして今国会に法案を提案するというようなことを発表したようでした、これは新聞で見たのですけれども。ところが、また同じように新聞の伝えるところによれば、四月十九日まで、つい先日までいろいろ通産省と両者協議した結果、通産省の考えているプログラム権法案も文部省の著作権法案もいずれもこの国会には提出をしない、見送ることを決定したと報道されておりますが、事実かどうか、結論だけ簡単に。
  91. 加戸守行

    加戸政府委員 現実にはかなり上程が難しい情勢になったということでございますが、正式に通産省や文化庁、双方とも提出を断念したという段階にまではまだ立ち至っていないということでございます。
  92. 湯山勇

    湯山委員 では、まだ出す場合もあり得るのですか、そういう余地も残っておるのですか、念のために。
  93. 加戸守行

    加戸政府委員 理論的な可能性といたしましては、まだあり得るということでございます。
  94. 湯山勇

    湯山委員 理論的なということですが、私は、この問題はほうっておけないと思うのです。というのは、裁判になっただけでも幾つかあります。例えばビデオゲームのコンピューターのプログラムですか、これが海賊版ですか、海賊版と言うのか言わないのか、海賊会社と言うんですか、とにかくそういうのがこれをやりまして業界を荒らしたということで、東京地裁ではこれは著作権の問題で取り上げて判決が下っておりますし、それから横浜地裁でも同様の判決がありました。それから新潟鉄工のコンピューターによる自動設計システム、これを内部の人が持ち出して、たしか窃盗ですか何かで訴えられている、そういう事件もあります。また国内だけじゃなくて国際的にも、一九八二年にアメリカのIBM、これが産業スパイ事件というので、日立、三菱が訴えられた事件もあります。  とにかく、今日、コンピューター社会と言われるぐらいどんどん伸びていっている、こういう中で特にソフトの方がどんどん伸びていっている、発展している、そういうときですから、これを保護するということは日本にとっても緊急な課題ではないかと考えますが、これはちょっと大きい問題ですので、大臣、いかがお考えでしょうか。
  95. 森喜朗

    森国務大臣 今、先生からお話がございましたように、最近の判例それから特に国際条約、国際的に見ましても、いわゆるプログラムソフトにつきましては著作権法の保護を受けておるというのが大勢でございます。したがいまして、第六小委員会からも、そうしたコンピュータープログラムの特性に見合った措置著作権法上講ずべきだという報告を受けておるわけでございまして、そういう意味で、先ほど次長から申し上げましたように、理論的にはそういう方向文化庁としてもその改正の準備を進めているところでございます。  しかし、御承知のように、先生も先ほど新聞紙上でということでございましたが、通産省におきましても、いわゆる著作権と工業所有権との間にある第三の権利というような考え方で、プログラム権の構想に基づくプログラム権法案というものを準備しておる、そういうことも承知をいたしておるところでありまして、これまで通産、文化庁におきまして今日まで精力的に調整を進めてきたわけでございます。しかし、なお両法案の中には、やはりプログラム保護に関する実質的な内容とそれから法形式、それから、先ほど申し上げましたように国際的保護関係の面におきまして相違がございますので、まだ調整をいたさなければならぬ点もございます。そういう意味で、私どもといたしましては、プログラム保護問題の重要性にかんがみまして、国内的及び国際的によりよき保護が図られますようになお一層通産省との間の調整に努力をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございまして、私どもとしては、できるだけ早くこの問題の調整をしてまいりたいと思っておりますが、なお一層より精力的に通産との間の調整をしていきたい、こういうように考えておるところであります。
  96. 湯山勇

    湯山委員 この問題の関係で、一番関係の深いのはアメリカだと思うのです。通商摩擦の問題とも関連なしとしない、こういうことで、アメリカは一体これについてどういう制度をとっておるか、簡単にひとつこれも御説明願いたいと思います。
  97. 加戸守行

    加戸政府委員 アメリカにおきましては、一九七六年と一九八〇年の二回にわたります著作権法改正によりまして、コンピュータープログラムが著作物として保護される旨を明らかにいたしておりまして、これに基づいて著作権法上の保護を受ける著作物として幾つかの判例がアメリカで積み重ねられているという状況でございまして、アメリカ合衆国におきましては、コンピュータープログラムは著作物として著作権による保護をしているという認識に立っているわけでございます。
  98. 湯山勇

    湯山委員 アメリカとの関係が一番深いし、将来アメリカの、今のソフトですね、相当入ってくる可能性もあると思います。そういうことから考えて、アメリカを参考にしてというか、意識して早くすることも大事だと思います。つきましては、がたがたしておるのは外しゃなくて政府部内なので、通産省と文部省との対立て今日混乱しておるということは間違いございません。  そこで、通産省からも河野企画調査官、お見えいただいておりますね。通産省としてはこの点についてどういうお考えなんでしょう。ここで質問するのは、文教委員会で通産省の方を呼んで聞くというのは大変片手落ちのようで申しわけないのですけれども、しかし機会がございませんし、お互い理解を深める必要もありますので、今の点について通産省のお考えを聞きたいと思います。
  99. 河野博文

    河野説明員 ただいまの御質問にお答えさせていただきます。  私どもも、先ほど文部省の方の御説明がございましたように、あるいは先生の御指摘がございましたように、この問題はいわゆる、私どもの言葉で申します高度情報化社会のための基本的なルールの一つだというふうに認識しておりまして、この重要性については、先生指摘のとおり認識しているわけでございます。また、この重要性を認識するがゆえに、また同時に、この法律自身が私権を設定するという意味合いを持ちますし、国内でも、こういう権利が確認されればこれに関係する方々も多いということもございますし、同時に、先生指摘のような国際的な関係もございますので、そういう意味関係の方々と十分議論を尽くして法制化を図ってまいりたいということで、文部省の方々とも精力的に調整を進めようということで意見を一致しているという現状でございます。  また、先生指摘の中で、現在国際的あるいは国内で、文部省の皆さんとの間の議論の争点あるいは論点は何かという御指摘かと思いますけれども、その点につきましては、私どもが産業構造審議会の答申を受けまして意図しておりますのは、権利の保護と利用の促進といったようなものを一体的に確保するような法制度を念頭に置いて考えておりますし、また権利の内容などについても幾つか、実質的な議論の争点が残されているという状況でございます。  さらに、先生指摘の米国との関係、国際関係という御指摘かと思いますけれども、この点についてはおっしゃるとおりでございまして、私どもも国際的な慣行といいますか、こういったものと大きくかけ離れた制度をつくることは適当だというふうには思っていないわけでございますが、同時に、プログラムの特性に合わせまして私どもがむしろ世界に先駆けて提唱する部分があったとしても、またこれはこれで議論を尽くすべきではなかろうかというふうにも考えておるわけでございます。
  100. 湯山勇

    湯山委員 おっしゃる内容は、幾らか理解できないこともございませんけれども、私が考えますのは、今までのお話の中で通産省の今のお考えは大体経済、これが中心になって考えられているというように、間違っておったら御訂正願いたいのですが、そんな感じを強く持ちます。しかし実際に、コンピューターのソフトウエアというようなものは経済だけではなくて、もっと大きく文化とか、あるいは今日では子供の生活にまで入り込んでおる実情から見て、もっと広い立場で考えて、しかもその中で通産省がお考えになっているようなことを生かしていくというような道は、ねらっているところはそんなに違っておるわけではないわけですから、私は一致点があるような気がしてならないのですが、この点いかがでしょう。
  101. 河野博文

    河野説明員 お答えさせていただきます。  ただいま先生指摘がありましたような点も、実は私どもと文部省の皆さんとの議論の対象になっている点の一つでございます。  ただし、先生おっしゃるように、コンピューターのソフトウエアというものは幅広く使われるのはそのとおりでございまして、文化活動ですとかあるいは家庭生活にも入っているのも事実でございますけれども、私どもでこういった無体財産法として扱っております工業所有権、例えば特許ですとか実用新案ですとか、こういったようなものとも私どもは割と近いような認識を持ちつつ議論をしているわけでございます。こういった特許のようなものを考えてみますと、同じように町の発明家といったような方々もおられますし、個々の特許を生かした製品というのは家庭に幅広く浸透しているということもございますので、そういう意味では、私どもが考えております産業活動、あるいは先生おっしゃった経済活動という側面からこの問題に接近していく考え方も十分あり得るのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  102. 湯山勇

    湯山委員 たまたま特許にお触れになりましたが、特許もこの間予算委員会でヨモギのことが問題になったこと、御存じでしょうか。
  103. 河野博文

    河野説明員 大変申しわけありませんが、私自身は特許庁には属しておりませんものですから、その問題については存じ上げておりません。
  104. 湯山勇

    湯山委員 回虫駆除剤、これに関係のあるヨモギの種まで特許で押さえよう、これは大変無理じゃないかというので、予算委員会で問題になりました。ですから、今おっしゃった特許との関係等もあるでしょうけれども、通産省のお考えになっている分はそれとして、文部省の方で考えている著作権にこれを入れるということで、何か二本立てということを考えられないのか、あるいはまた著作権の中で、通産省のお考えになっておるような点を生かしていくという道は考えられないのか、これは両省からお聞きしたいと思います。
  105. 加戸守行

    加戸政府委員 両省庁ともに、コンピュータープログラムの、国内的にも国際的にもより有効な保護を図りたいという点では、考え方、志向するところは同じでございまして、今後通産省と鋭意調整を続けるわけでございますが、先生指摘のようなサゼスチョンも含めまして、いろんな形で幅広く適切な解決が得られるように努力していきたいと考えておる次第でございます。
  106. 河野博文

    河野説明員 お答えさせていただきます。  先ほど申し上げましたように、精力的にこれから調整を図ろうということでございますので、どういう形に落ちつくかは別にいたしまして、よりよい制度をつくるために一生懸命やれという御指摘だと思いますので、文化庁の方ともよく相談をさせていただきたいと思っております。
  107. 湯山勇

    湯山委員 まだちょっと時間がありますから。一番大きな問題点はどこですか。通産省の方からお聞きしたいと思います。
  108. 河野博文

    河野説明員 先ほど申し上げましたように、何が一番大きいかというのはなかなか評価は難しいわけでございますけれども、主な論点といいますか、これまで文部省の皆さん方と御議論させていただきました点をかいつまんで御紹介をさせていただきます。  例えば、制度として権利の保護と利用の促進といったような観点を一体的に措置する必要があるかどうかという点も一つでございますし、また、権利の内容といたしまして使用段階にまで作成者の権利を及ぼすことがどうであろうかというような点もございましたし、また著作権法に特有の考え方であります人格権といったような問題をどうしていこうかということもあるわけでございます。そのほか、種々立法技術的な、テクニカルな面もありますけれども、要約御紹介をいたしますとそんな点でございます。
  109. 湯山勇

    湯山委員 例えば権利保有期間、これなんかは問題にならないですか。
  110. 河野博文

    河野説明員 確かに御指摘のとおり、産業構造審議会の答申では、一応のめどといたしまして十五年程度という権利保護期間を答申の中に記載してありますので、現在の著作権法考え方でまいりますと五十年という数字がございますので、この辺もある意味では調整対象になろうかと思います。
  111. 湯山勇

    湯山委員 それから、私ども聞いておる中でやはり大きい問題だなと思いますのは、強制許諾の制度ですね。つまり、長期使用しない場合に第三者に使用を認める裁定、これについてはどうなんでしょう。
  112. 河野博文

    河野説明員 お答えさせていただきます。  同じように産業構造審議会の答申におきましては、先生今御指摘の裁定制度というものを提唱しているわけでございまして、先生指摘ケースのような場合のほかに、例えば、公共的な理由で特に第三者に使わせなければならないような場合についても裁定制度というものを設けてはどうかという提案でございます。この辺につきましても、もちろん文部省の皆さんと御相談申し上げなければならない点の一つでございます。
  113. 湯山勇

    湯山委員 まだ、具体的にプログラムを使いやすく変えていくという、バージョンアップというのですか、その問題とか、いろいろお聞きしたい点もありますけれども、時間もございませんので、両省に強く要望したい点は、国内の今のような、悪く言えば縄張りですか、そういうものが障害になってこれの立法がおくれるというのは、日本の文化の上からも、産業経済の上からも非常に大きな損失であるし、このことが諸外国から誤解を受ける一つの要素にも、なっておると言いたいのですが、そこまで申さないで、なりかねない。近代的な国家として、殊にこういう方面で大きく伸びていこうとしておる日本としては、早くすることが何よりも重要だと思います。殊に政府部内の問題ですから、それぞれに審議会とか、これに対しての意見を述べる諮問機関等もありますけれども、結論はやはり政府の決断だと思います。殊にこの国会へ法案を出そうということで進めてきたのが、今のようなことで、理論的にはその余地はあるにしても、実際問題としてはほとんど可能性がないということはまことに残念なことであって、私どもの期待としては、今回の著作権法の一部改正の中には当然今の隣接権に絡む貸与権の問題、もちろんこの問題も出てくると期待しておりましたが、これが裏切られた、実現しなかったことははなはだ残念でございますけれども、ぜひこの機会に、この法律審議する機会に両省で協議を進めて、あるいは臨時国会でも結構でございますし、できるだけ早い機会にこの法律を出していただくように強く要望いたしたいと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  114. 森喜朗

    森国務大臣 文部省といたしましては、コンピューターのプログラム、ソフトはいわゆる学術的表現、思想の表現である、あくまでもこういう考え方でおりまして、先ほども申し上げましたように、判例、国際的な慣行、すべてその方向にと私どもも承知をしているわけでございます。しかし、今通産省の河野さんからも意見の開陳がございましたけれども、国内的に仮にそうした考え方調整が進んだといたしましても、百何カ国の皆さんとそれぞれその考え方の軌を一つにしていただかなければならぬという問題も出てまいりますので、そういう意味ではやはり国際法上の法律著作権法の中に従っていくことが私としては正しい考え方だという考えに立っておるわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、文化という、芸術という問題も国際的に大きな視野でとらえなければならぬということもございますが、一方におきましては、産業育成ということもまた日本にとって大きな問題でございますので、なお一層両省庁間で鋭意話し合いを進めさせておりますし、また、これに関しまして我が党のそれぞれの関係部会、関係調査会等でも鋭意調整をいたしておるところでございます。文化庁といたしましても、なお一層事務当局を督励いたしまして、先生から御指摘がございましたような方向でできる限り努力するようになお一層作業を続けさせていきたいと思っております。
  115. 湯山勇

    湯山委員 通産省の方は、ひとつ大臣によくお伝え願いたいと思います。  機会があれば私も大臣に申し上げたいと思いますけれども、きょうは、著作権法というのが非常に難解であって、その中には用語等について整理しなければならない問題があるということの指摘を申し上げたのが一点、それから隣接権の条約に速やかに加盟し、批准するということ、第三は、コンピューターの問題、この三つの点についてひとつ速やかに善処願いたいということを要望して、質問を終わります。
  116. 愛野興一郎

  117. 大久保直彦

    ○大久保委員 私、初めて文教委員会質問させていただきますけれども、与党席の空席が目立っておりますが、本委員会は成立しておりますか。
  118. 愛野興一郎

    愛野委員長 成立いたしております。どうぞ。
  119. 大久保直彦

    ○大久保委員 本日議題になっております著作権法改正問題につきましては、著作者に新たに貸与権というものが新設されるということでございます。  私も父の著作権の継承者の一人といたしまして、今回の貸与権の新設は著作者立場を有利にしておるのか、さらには、こういう貸与権という道が開かれたことによりまして、今後ますますこの著作権問題の困難さが拡大をしていくのではないか、こういう危惧を持つものでございますが、まず総論的に大臣のお考えを承りたいと思います。
  120. 加戸守行

    加戸政府委員 今回の著作権法一部改正案趣旨といたしますところは、著作者あるいは実演家レコード製作者といった関係権利着の権利をよりよく保護しようという趣旨に基づくものでございまして、権利者サイドの観点からの立法でございます。
  121. 大久保直彦

    ○大久保委員 だんだん世の中が便宜的になってまいりまして、さっき大臣も答弁されておりましたが、昨年でございますか貸しレコード問題に端を発して、この著作権の問題がいろいろな角度から再検討されなければならない時期に来ておる。非常に便宜的にはなりましたけれども、いわゆる本質的な著作権がだんだん薄められていってしまうのではないか、安易に借りる道が開かれますとそのことによって、創作の意欲といいますか、そういったことに対する保護、権利がだんだん違う次元での問題にすりかえられていってしまうのではないか、こういう懸念を抱くものでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  122. 加戸守行

    加戸政府委員 今回の改正自体は、例えば著作者につきましては、著作物複製物についての貸与権規定する、あるいは実演家レコード製作者等につきましては、商業用レコードに関する貸与権報酬請求権というような規定の仕方をしたわけでございます。貸与権自体で申し上げますれば、一応権利として、権利者の了解なしには貸し出せない、そういった原点に立ちまして著作権の保護を図ろうとする趣旨でございます。  ただ、このことに伴いまして現実実務的な運用がどのようになるかというのは、現下の社会情勢、国民のニーズその他を踏まえながらそれぞれの対応が図られるということになるわけでございまして、結果的には、円滑な利用関係によりまして、権利者側の権利あるいは利益が保全され、かつ著作物の利用が円滑に行くという総合的な形で運用されることを期待しておるわけでございます。
  123. 大久保直彦

    ○大久保委員 貸与権というものは非常になじみにくいものでございますので、具体的にこれがどういうふうに運用されていくかということについては、これからもいろいろな議論があるのだと思いますが、外国ではこういう著作権貸与というのはどういう事例になっておりますか。
  124. 加戸守行

    加戸政府委員 諸外国におきましてはいろいろな法制がございますが、著作物につきましては一般的には頒布権というような形で、例えば西ドイツのように、著作物の譲渡、貸与すべてに権利を及ぼすという法制もございます。ただその場合に、著作物が一たん市販されました後、つまり市場に出されました後におきましてその貸与について権利を動かすというケースにつきましては、例えば英国では公貸権という形で規定がございますけれども、数は少のうございます。  今回の貸しレコード関係で申し上げますと、スウェーデンが発売された後のものにつきましても貸与権規定いたしまして、その結果、貸しレコードが規制されたというような状況もございますし、世界各国の趨勢ではございませんが、問題意識を持って取り組んでいる国の法制として貸与権あるいは頒布権、諸般の規定の仕方があろうかと思います。
  125. 大久保直彦

    ○大久保委員 私がお尋ねしたのは、日本の著作者貸与権外国でどういう取り扱いになるかということです。
  126. 加戸守行

    加戸政府委員 日本は、ベルヌ条約並びに万国著作権条約という二つの国際的な著作権条約に加盟しておりまして、両条約を通じまして百一カ国との間に保護関係がございます。したがいまして、それらの国におきましては、それらの国におきます著作権法制によって日本の著作者権利は保護されている。例えば、スウェーデンのように貸与権を認めている国につきましてはもちろん日本の著作物貸与権によって保護される、イギリスのように公貸権制度があれば日本の権利者も公貸権を持つ、あるいは西ドイツ等のような頒布権の国におきましては日本の著作者は頒布権を持つという、相互乗り入れ関係になっておるわけでございます。
  127. 大久保直彦

    ○大久保委員 今回の改正は、特に音楽部門が中心のように拝見いたしておりますけれども、私は本日、その音楽のよい演奏またはよい作品の発表等の必要のためにも、今世上問題になっております第二国立劇場の問題について、若干お尋ねをさせていただきたいと思います。  私は、我が国でバレエやオペラの公演を中心とする第二国立劇場が建設、設立されますことはむしろ遅きに失しておる感を抱いておりまして、この劇場の建設は、我が国の音楽文化の振興に大きな貢献をするとともに、国民的にも大変大きな喜びである、このような認識をいたしておりますが、バレエ、オペラ専門の、俗に言う二国の設立、建設につきまして大臣はどういう所感を持っておられるか、まず伺いたいと思います。
  128. 森喜朗

    森国務大臣 今ございます国立劇場が設立をされました際にも国会で御議論がいろいろございまして、そして今大久保さんがおっしゃった音楽あるいはオペラ、ミュージカル、その他いろいろのそうした新しい分野に対しても適切な措置をするようにという御議論もあり、また国会におきます附帯決議もあったというふうに承知をいたしております。  私も、当選をいたしましてからずっと文教部会に籍を置いておりましたので、何とかして第二国立劇場をつくりたい、世界の中で、日本の文化、芸術というもの、まさに文化国家を標榜している我が国としては、そうした分野におきます国の施設がないということにむしろ恥ずかしい思いをお互いに政治家としてもしていた、そんな考え方からこの設立をぜひ急ぎたい。これまでの間、十何年間だと思いますが、いろいろな角度から検討して、やっと今予算で設計競技というところまでこぎつけてきたわけでございます。したがいまして、それまでの間の経緯は、もちろん必要でございましたら事務的に御説明もまたさせますが、検討委員会、専門委員会等で十分な議論を今日までしてまいりました。そうして、この厳しい財政状況の中でやっとここまでこぎつけてきた。  先般大阪の文楽劇場の竣工にも私はお祝いに行ってまいりましたが、本当に関係者が皆喜んでいらっしゃった。そういうふうに日本の芸術家、音楽家、そうした方々に、国の施設の中で自分の研さんしてこられたものを本当に思い切って表現していただく、そういうものがとても私も大事なものだというふうに考えております。いよいよ設計競技の段階に当たりましていろいろな意見も出てきておりますが、もちろん第二国立劇場を大事に考えていただいている上でのお話であろうとは考えておりますが、これまでの専門機関での検討というものを十分踏まえて今日の段階に至っておりますので、文化庁といたしましては、この計画どおり一日も早い完成を目標にしながらなお一層努力を続けていきたい、そしてぜひことしには設計競技をして具体的なスタートにしたい、こういうふうに考えているところでございます。
  129. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣も御承知だと思いますけれども、私も二十数年前から、ソ連のノボシビルスク・バレエ団の招聘を初め、ベルギーの二十世紀バレエ団、パリのオペラ座、イギリスのロイヤルバレエ等々、またオペラにつきましてはミュンヘンのミュンヘン・オペラ、それからウィーンのシュタツオーパ、一昨年でございますか、ミラノのスカラ座日本公演の実現に、私もある音楽団体関係者としていろいろ手がけた立場で、今大臣も御指摘になったように、これだけの文化国家、国際社会の中で、バレエ、オペラがまともに公演できる劇場が非常に少ない。  このバレエ、オペラ専門の国立劇場の建設はだれしも心から歓迎し、待望しておることであろうと思うのですけれども、であるならば、なぜ最近になって建築家協会や音楽、舞踊有志の方々が文化庁に、この二国建設の再検討の要望書を出されたり、また文化庁長官に直接陳情されて、この見直し問題について御発言をなさっておる、これは一体どういうことなのか。大臣はこのことをどういうふうに認識をされておりますのか、お答えをいただきたいと思います。
  130. 森喜朗

    森国務大臣 今大久保さんから御指摘いただきました点、二点あると認識をしております。  一つは、建築設計をいわゆる国際的な設計コンペにしたらどうかという御意見でございます。これにつきましては、日本は地震とかいろいろございますので、必ずしも世界の建築の設計そのままに採用できないという面もございますが、これは文部省、文化庁が決めたものではございませんので、むしろ建設省の方でそうした建築関係の、いわゆる従来の建築士法の建前、そういう制約をつけているわけでございますが、外国人も我が国の建築家と同様にこれに参加できるように、共同して参加できるような配慮をしたい、こういうふうに文化庁としては考えておるところでございまして、この点につきましては御理解をいただけるのではないか、私はこう思っているところでございます。  もう一点につきましては、今の場所がちょっと狭い、悪い、あるいはまた千六百席ということでどうも狭いのではないかという、確かにその御指摘はございます。しかし、その数字が二千がいいのか、二千五百がいいのか、千五百でいいのか、これはなかなか難しい問題だと思います。先ほどもちょっと触れましたように、財政のいろいろな制約もございましたし、確かに全体的に圧縮を財政当局からも、これは協議の上で命ぜられたことも事実でございますけれども、できる限り実演の中において制約がないように、例えば舞台でありますとかその他、舞台に関する附帯設備でありますとか客席等についてはそんなに大きな圧縮をしないように、むしろ食堂でありますとかその他事務的なものとかいうようなところは少しずつ切り詰めて、全体においてはスムーズに進めるように、こういうふうに考えて千六百席として今の大体の方向を定めたものであります。  したがいまして、これは大久保さんもよくわかっておられて、言いにくいことでございますが、いろいろおっしゃっている方々も、従来この検討委員会の中に入って御議論をしておられたわけでございますので、今ごろになってこうしたことをおっしゃるというのにも、私も政治家の立場としてはいろいろ言いたいこともございますが、何とかこの考えをぜひ具体化していきたい、当初予定どおり進めていきたいと考えております。そういう意味で、いろいろと各種団体の皆さんの、いいものをつくりたいというそのお気持ち、情熱は十分に理解できますけれども、今日的な時点においてこのようなお申し出があるということは私にとっては、私も党の中でこの仕事をしておりまして、お申し出がありました黛先生、芥川先生、團先生とも、何回もこうした問題でも協議してきておるわけでございますから、こうしたお話を今ごろ出してこられるということについては、正直申し上げて、極めて遺憾だと申し上げざるを得ないと思っております。
  131. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣は、極めて遺憾である、こういう御認識のようでございますけれども、私も、この問題がこの期に及んでこういう議論を呼んでおるということはどういうことかということで、ちょっと調べてみたのです。  当初、国立劇場と銘打つからには専属のオーケストラ、バレエ団、合唱団を用意して、いわゆる日本の国立劇場にふさわしい内容の整ったものがここで公演をされるという計画でスタートしたことは事実だと思うのですね。ところが、行政改革ですか、いろいろな風に当てられまして、だんだん、専属のオーケストラもない、専属の合唱団もない、専属のバレエ団もない、そうすると文部省なり文化庁が主催で公演をすることは、たまたま秋や春の芸術祭に参加したどこかの企画、それに乗って補助金を出してみたり、または文化庁、文部省の公演をするということぐらいしかやることはなくなってしまったのじゃないか、第二国立劇場ができましても。  この春、秋に、いわゆる文化庁、文部省主催の演奏会ですね、これは今幾目ぐらい予定しておりますか。
  132. 加戸守行

    加戸政府委員 現在の時点でのお話を申し上げますれば、文化庁の芸術祭等で多分六種日程度の主催公演を行い、共催公演も十数種行っております。  ただ、先生質問の、今回の第二国立劇場の将来の姿につきましては、これからいろいろ検討させていただくところでございますけれども、当面の構想といたしますれば、第二国立劇場の主催公演を年間四、五十日程度は確保したい、そのほかに共催公演も行いたいという考え方で、従来の文化庁の芸術祭だけでやるという意味ではなくて、年間を通じて多種多様な主催公演、共催公演を考えているというところでございます。
  133. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣、先ほど大臣もおっしゃいましたように、各界の皆様がいろいろ意見を申されているのは、僕はここのところだと思うのです。  第二国立劇場はできた、しかし文部省なり文化庁で主催するのは、今次長がおっしゃったように四、五十日である。一年間は三百六十五日でございますから、三百十幾日は国立劇場はいわゆる貸し小屋さんになるわけですね、貸しホールをするわけですね。民間諸団体にこれを貸すわけですね。今の著作権貸与権じゃありませんけれども、貸すわけですね。そこはどうですか。あと何をやっているのですか、この三百幾日間。
  134. 加戸守行

    加戸政府委員 劇場としての稼働は、例えば準備等の関係がございますので、三百六十五日フルにはできない場合がございますけれども、主流といたしましては、先ほど申し上げましたように主催公演並びに共催公演を主体といたしまして、余裕のある分について貸す、そんな考え方でございまして、主体はあくまでも主催公演、共催公演に置きたいということでございます。
  135. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣音楽文化には非常に造詣が深くて篤と御承知だと思うのですけれども、上野の文化会館の申し込みは三十倍ですよ。十日もあいておりません。三年前から日程をとらなければならない。外国からいろいろなものの日本公演を予定しましても、三年前から劇場を押さえるというのは至難のわざです。申し込みは三十倍ですよ。今二国ができて、四、五十日のいわゆる文化庁、文部省絡みの公演がある、あと三百幾日は引く手あまたでなければならないはずですね。ですから、主体はこれは民間の学術団体や財団に貸し出すことになる。今、準備にいろいろかかる、準備は昼間もできるし夜間もできるのです。  ちなみにお尋ねしますが、大体どのくらいの貸出料金を予定されておりますか、大ホールで。
  136. 加戸守行

    加戸政府委員 これからの運営管理形態というのは、設立準備協議会におきます今後の検討課題でございまして、現時点では幾らの料金ということまでは検討に入っておりません。
  137. 大久保直彦

    ○大久保委員 だけれども、これも変な話で、国が住宅をつくる場合に、住宅は建てます、家賃はできてから考えます、こんなことがありますか。この国立劇場というのは幾らかかるのです、五百億以上の金がかかるのですよ。その五百億以上かかるものを行革の風の中で建設をして、幾らで貸すかも決まってない、これからの議論だということでは、関係の皆さんがおかしいなと思わざるを得ないんじゃないか。むしろそのこと自体が非常に摩訶不思議である。ここで一々大臣次長に、NHKホールが幾らで貸しているのか、上野文化会館が幾らで貸し出しているのかと言うことは問題だと思いますけれども、民間に貸し出すということになりますと貸出料金も、本公演の場合とゲネプロとか仕込みとかマチネーの場合、いろいろ格差をつけて苦労されているようでございますけれども、まだ詰まってないなら詰まってないで、篤と御検討いただきたいと思うのです。  しかし、千六百と言われているこのキャパシティーですね。質的云々という御議論もございましたし、諸外国にも、例えばウィーンの国立劇場、またはパリのオペラ座、ロイヤル・バレエシアター等々、世界的に有名な劇場が多々ございますけれども、ほとんど国なり州なり市の補助金で賄われておりますね。また、パリのオペラ座などは現在千八百席ですけれども、年間九百八十億ですか国からの援助が出て、それでほとんど賄われておる。そのパリですら千八百が、いわゆる数が少なくて、今五年後をめどに新しいバレエ・オペラシアターの建設を目指しておる。この座席は、ちなみに申し上げますと二千七百席です。だんだん国の方も援助にも限界がある。これはドイツのケルンですとかシュツットガルトその他の四十万、五十万市民の都市でもほとんど一〇〇%、シュツットガルトなどは八五%ですが、全公演の経費のそれだけの部分を、国なり州なり市がバックアップしておるわけです。  日本は全くないのですよ。貸し小屋で、漏れ聞くところによると大体二百万円ぐらいを予定しているのじゃないか。上野文化会館あたりは貸出料四十五万円です。第二国立劇場は約二百万、オケビットその他の附帯設備を使うと二百二、三十万になるのじゃないか、こういう試算がどこかで行われておるようでございますが、そうなれば、せっかく二国ができても使える人はいないのじゃないか。だれのためにこの二国を建設し、何のために二国をつくるのかということが非常に問題になる、こういうふうに思います。  今ちなみに、私どもが関係しました一九八一年のスカラ座の日本公演の料金表を持参いたしましたので、もしこれを、今伝えられる二国でやりますとどういうことになるかという私が試算をした表がありますので、ちょっと目を通していただきたいと思います。  これはスカラ座が引っ越し公演、四百九十名日本に参りまして、二十回のグランドオペラの公演をやったその一部資料でございます。総経費十八億、そのうちの入場料収入が十一億三千六百七十万、今、上野文化会館の座席表に基づいて当時の料金表を一覧にしてみました。一番高いのがS席二万九千円です。学生向けの一番安い席が七千円でございます。これで入場料収入が十一億三千六百七十八万円。もしこれを今回設立される第二国立劇場に当てはめますと、スカラと全く同規模の公演回数を消化したといたしますと、総売上収入が七億八千九百七十八万円で、三億四千七百万円の減額になります。こうなりますと、スカラ座の公演は実際はNHKホール三千四百席、または大阪のフェスティバルホールを使ってやっておりますから、この上野文化会館を基準にした試算よりも収入はふえておるわけですけれども、ふえておってもなおかつ一億円の赤字である。これは文化庁その他いろいろ御援助いただいて日本で公演をやっても、これだけの赤字になる。ところが、もしこれを第二国立劇場で、日本が世界に誇るバレエ、オペラ専門劇場で公演したとなりますと、この一億円は五億円の赤字に膨れ上がるわけでございます。  こういうことになりますと、この第二国立劇場というのは何のためにつくられようとしているのかという基本的な問題にさかのぼらざるを得ないのではないか、こう思います。キャパシティーについての御意見はこういう問題を内蔵しておることを、ぜひ大臣もお含みおきをいただきたい。もし、いや、そうではない、民間に貸し出す場合には文化庁なり文部省から何らかの予算措置をしてバックアップをするのだ、補助金を出すのだ、こういうことでもあればまた話は別ですが、その辺はどうですか。
  138. 加戸守行

    加戸政府委員 この千六百席につきましては、昭和五十一年の設立準備協議会におきまして基本構想として策定され、その後いろいろな御議論を経ながら千六百という考え方で今日まで参ったわけでございます。  その基本的な考え方といたしますれば、いかなる客席からもよく見える、いかなる客席からもよく聞こえる、かつ出演者と観客との間の一体感を生み出す、そういった、基本的に芸術いかにあるべきかという観点からの考え方で一応積算されたわけでございます。  ただ、千六百席のベースとなります固定席分が千四百平米でございまして、これは例えばドイツのベルリン・オペラハウスについて見ますと、同じような千四百平米でありながら、あちらの方では千九百席をとっているという点で、これは通路の関係、座席のゆとりとかいう形でそういう数値の差、あるいは消防法規との関連等もございまして数値の差は出るわけでございます。そういう意味の、まずその空間というものが、音響効果なり臨場感なりあるいは芸術感覚というものを主体として考えた結果がはじき出されて、千六百席という考え方で進んできているわけでございます。もちろん、このほかに若干のオープンスペース等のゆとりもございますけれども、そういうような主眼であったということはまず申し上げさせていただきたいと思います。  ただ、先生おっしゃいますように、経営的な感覚からいいますれば、もちろん外国から参りましたオペラがここを借りてやった場合に成り立つのかどうかというような問題もあろうかと存じます。そういった点で、芸術のあり方あるいはオペラの本来的な演技の舞台としていかなるものがいいかということと、経営的な感覚というものとの矛盾相克というのは免れないわけでございまして、そういった点も、御意見を踏まえながら今後の対応についてなお検討させていただきたいと思っております。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  139. 大久保直彦

    ○大久保委員 今、質的な問題をとらえて答弁されたと思うのです。  それは私はちょっと承服できないので、もし御希望であれば記録を提出いたしますけれども、一九八〇年にウィーンのシュタツオーバが日本公演を行いましたときに、その国立劇場のゼフェルナー総裁が文化庁をお訪ねして、劇場はできるだけ大きくつくるべきであるという意見を当時の長官並びに次長に申し上げているはずでございます。今、空間の議論もございましたけれども、しかしゼフェルナーさんは、そのときに次長も御同席だったかどうか知りませんけれども、私は体が大きいからヨーロッパの劇場で見るとかなりゆったり座っているけれども、日本に来ると縮こめられて、同じ空間で日本の劇場はかなり席を狭くしているのではないかという苦言まで呈したことがあったように私は記憶しております。また、ミラノ・スカラ座のバジーニ総裁、彼も日本に参りましたときに文化庁を訪問されて、キャパシティーの問題について、芸術的な側面から言うならば千六百の席ではアイーダは公演できませんと明言をされていると思いますよ。千六百ではグランドオペラはできませんという記録が残っております。今、パリのオペラ座も、年間九百八十億の国庫補助をいただきながら、なおかつ新しいオペラ座を二千七百でつくろうとしている。  また、今もお話があったように、この音響効果または舞台のどこがプロセニアムの上限であるか、どこの席からホリゾントのどこまで見えるのかということについては、これはいみじくも今おっしゃったように、私どもにはまだ劇場設計の経験がないわけですね。バレエ、オペラはヨーロッパに根源があって、ヨーロッパの長い伝統と歴史の中で育てられてきたものです。そのバレエ、オペラの劇場の建設をなぜ日本国内に絞っちゃったのですか。なぜ世界の知恵を日本に集めようとしないのですか。どうして国際コンペにしないのですか。  大臣も諸外国音楽事情については非常に詳しいと思いますけれども、過日もボンに日本庭園をつくりましたときは、日本の庭師の皆さんが出かけていって日本庭園をつくっておりましたね。ニューヨークで茶室をつくるときに、日本人が行かないで茶室ができますか。パリで歌舞伎座をつくるときに、日本の設計者が行かないで歌舞伎座ができるのでしょうか。日本でオペラ、バレエの専門劇場をつくるというときに、なぜ外国をシャットアウトして日本だけでやろうとしているのか。  やがて二十一世紀を目前にして、やれイギリスのロイヤル・バレエシアターだ、パリのオペラ座だ、ミラノ・スカラ座だ、ボリショイ劇場だ、メトロポリタンだ、日本の国立劇場だ、こういうことはもう国境を越えて、世界のひのき舞台がクローズアップされる日は近いと思うのです。そのときに、日本のオペラ・バレエ劇場は音響効果の点でも、客席からの視界の意味でも、全く外国の知識が入っていない。歌舞伎座をつくる延長線でオペラ・バレエ劇場がつくれるのだろうか、私は非常にその点は危惧いたしますが、なぜこの設計コンペを国内に限定したのか、お知らせいただきたいと思います。
  140. 加戸守行

    加戸政府委員 設計コンペのあり方につきましては、近々発足いたします予定でございます建築協議審査会において決定されるわけでございますが、現在までの建設省と文化庁との双方の考え方といたしますれば、一応国内コンペで進んでおるわけでございます。  その理由としましては、先ほど大臣もちょっとお触れになりましたが、我が国におきましては建築士法という法律がございまして、五百平米以上の建物、劇場も含みますけれども、その建築物は一級建築士でなければ設計並びに工事監理を行ってはならないという規定がございまして、この考え方の基本は多分に、日本が地震国である、耐震構造の必要性とか、あるいは気候の変化が激しい、冷暖房の設備を整えなければならない、あるいは消防関係等の法規とか条例等がございまして、通路その他のいろいろな規制等もあるというような諸般の状況を踏まえた上で現行法制が成り立っていると思いますが、今回の設計コンペ自体は、実は設計コンペによりまして最優秀作品を選定し、その最優秀作品に選ばれたものがこの劇場の基本設計、実施設計、工事監理に当たっていただくという考え方前提として行われるコンペであります関係上、どうしても日本人の一級建築士でなければならないという与件がかぶってくるわけでございます。  ただ、先生がおっしゃいますように、外国のノーハウを入れるべきであるという点につきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、例えば外国人を日本人の一級建築士とペアで組ませて、一緒にそういう形で応募するという方法もあってしかるべきではないかというようなことを建設省にお願いしているわけでもございますし、また今回、もう一つ別の観点からのことを申し上げさせていただきますと、設計コンペ自体は劇場の本体についての設計コンペでございまして、そのほかにいわゆる舞台機構、舞台設備につきましては、これは設計コンペにはいたしませんで、別途基本設計等の委託をする予定でございますが、その場合には当然、外国の劇場専門家その他の方々にも加わっていただいて、その設計をお願いするというような方向での御努力もこれから建設省にお願いしよう、そう考えているわけでもございます。
  141. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣、この問題については、それぞれの立場でそれぞれの御意見があるのだと思うのです。私が申し上げたいのは、さっきのいすの席で申し上げますと、二万九千円の一番いい席が、もし第二国立劇場ができて、そこを使って日本公演が行われた場合には、今資料もお渡ししてありますように、四万一千円にしなければ採算はとれない、一番安い席でも一万円にしなければ採算はとれない、こういうことになっていくのだと思うのです。  だれしも、この劇場ができることに反対する人はいないと思います。ただ、民間のそういういわゆる劇場をつくる、ハードの部分を担当する方、またはその劇場を使っていくいわゆる音楽、舞踊関係の方々、今のはやりの言葉で言えばソフト部門になるのでしょうか、それを担当される方々、そういう方々の皆さんの意見をよく聞いて、みんなの総意で、みんなが心から賛同できるような劇場づくりの段取りをしていただくことが大事ではないのだろうか。私はたまたま音楽にかかわってはいますけれども、この種の問題で政治家が物を言うことをみずから余り好んでおりません。ぜひ賢明な大臣の今後の取り扱いについて、今後の日程等についで何か腹案があればお示しをいただければと思いますが、いかがですか。
  142. 森喜朗

    森国務大臣 大久保先生のお父さん以来の音楽、芸術に対する御関心と、そして日ごろからいろいろな意味で啓蒙、振興にお力添えをいただいておりますことに、私も大変敬意を表しております。  しかし、私は「第二国立劇場設立に関する経緯」、これは文化庁の、昭和四十一年の文教委員会で現国立劇場法案可決の際に附帯決議が出ましたとき以来ずっと今日まで、三月の二国の設立準備協議会に至るまでの経緯のメモがございます。私も途中でいわゆる党の予算を、言葉はよくありませんけれども、組んでおるといいますかお手伝いをする意味でも随分、特に私は一時的には文化庁の応援を一生懸命しておりましたものですから、当時から團先生初め多くの皆さんの御意見も承りながらここまで進めてまいりました。  確かに、先ほど先生がおっしゃったように、私どももどこかの国に行くと、必ずそこに常打ちといいますか、ウィーンのシンフォニーでありますとか、たしかおっしゃったようにベルリンのオペラとかいろいろあります。そういうことが望ましい方向であるとは思いますが、そういうふうに国立てバレエ団を持ったりシンフォニーを持ったりということは、これはもちろん一つの理想だろうと思いますが、現実の問題として、日本でそれを抱えていく、風で抱えていくということについては、これはまだかなり遠い将来の夢というふうに考えざるを得ないのです、現実的な立場になれば。それじゃ、そういうものができるまでは建物は要らないのかという議論になっても、これはやはり多くの皆さんがぜひ利用して、自分たちの創作、演技、それを発表したい、そういうお気持ちもあるわけでございますから、確かに貸し小屋にするという感じは、これは事実としては認めざるを得ませんけれども、そこは、これから当然、運営に当たりましても専門家の皆さんに、恐らくそうした維持していく委員会等を設けさせていただいて、そこで、これからそうしたことに支障のないように考えていくべきだと考えております。  あるいは、今四万一千円のということになりますと、確かに試算をすればそうかと思いますが、これは先生からおしかりをいただくかもしれませんよ。私は、個人的には先生考え方に大変同調する立場でありますけれども、今の文部大臣という立場から考えれば、パリのオペラあるいはそうした外国の催し物が常時この二国で公演をされていくということ、あるいは毎年それがあるということも考えられないわけでありまして、やはり当然日本にいるそうした人たちができるだけ利用できることも考えていかなければならない。あるいはそうした外国の、いわゆる本当に伝統のあるものを日本にお願いする場合、やはり新聞社でありますとかあるいは放送会社でありますとかいろいろな民間のエネルギーで、ある程度協賛をしながら進めていくという面もございます。頭割りでやっていって、そしてそれでペイできる計算をすれば、確かに一人四万、五万ということになると思いますけれども、今日までそうした催し物がある場合は、やはり何々新聞の何周年記念でありますとか、何かそういう一つのサブタイトルがついて、そういう中で多くの皆さんのエネルギーで実際には公演をしているという例もございます。確かにこの辺は、値段とかそういうことについてはやはり当然検討は要しますが、そこだけをとらえて、だからもうちょっとキャパシティーを広めるべきだということになれば、今度はまたそれを維持していく面でいろいろな弊害も出てくるし、日本のそうした団体の皆さんが利用していく面でもまた問題点も出てくる。  いずれにいたしましても、私どもは、先生がおっしゃるとおり、これは政治家が余り口を出すことじゃない。応援ができるように予算だけはできるだけ取ってあげたいという気持ちで今日まで参りましたし、文化庁といたしましても、専門家の皆さんで協議を今日まで続けてきた。先ほど申し上げましたような、ちょっとお名前を申し上げてよかったかどうかわかりませんが、現実としては新聞にも出ていることでございますから、團先生初めそういう皆さんも当然この機関の中で今日まで議論をしてこられた。なぜ今ごろになってそんなふうにおっしゃるのかなあ、私にとっても大変不快だなあという感じを持っているわけでございます。
  143. 大久保直彦

    ○大久保委員 今大臣の御答弁を伺っていますと、それじゃ何のためにこういうのをつくるのかという新しい疑念も出てくるわけですが、決して外国公演のためのことだけを言っているのではありません。むしろ日本のバレエ団、オペラ団を育成しなければならない。そのためには、大体どのくらいのレンタル料を用意されているのか、まだ詰まっていないようでございますから、よく御検討いただきたいと思います。  もう一つは、長い間議論をしてきたとおっしゃいますけれども、それがこの土壇場でこれだけの論議を呼んでおるということは、最近やっていないんじゃないですか。最近は、昭和五十六年の中ほど以来、ほとんどやっていないのじゃないかと思いますけれども、どうなっていますか。
  144. 加戸守行

    加戸政府委員 この第二国立劇場構想につきましては、昭和四十七年に設立準備協議会を開催いたしまして、それ以来いろいろな審議が、新協議会のみならず、その下部組織でございます専門委員会へまたその一つ下の部会等数十回の会合を重ねているわけでございまして、実人員にして二百名以上の方々の各界各層の御意見を積み上げながら今日に至っているわけでございます。  ただ、先生指摘ございましたように、協議会自体といたしましては、昭和五十六年六月に設置構想と建築規模を決定、御了承いただきまして、その後具体的には専門委員会あるいは各種部会等をたびたび開催しながら、基本的な線についてはもう御決定いただいた形で進めておったわけでございます。  ところが、昭和五十九年度予算におきまして当方が要求いたしました設計コンペのベースとなります設置規模につきまして、六万二千平米の要求に対して大蔵省側の査定がございまして、予算といたしましては現実に五万五千七百平米ということで、当初構想規模よりも九・五%の面積が切り込まれたわけでございます。そういった観点から、この面積でやれるかどうかという点を、三月に新協議会を開催いたしまして、建築規模の変更ということで御了承いただくために会合を開いたわけでございますが、その間に二年半の空白が新協議会としてはございました。ただ、その間に各種専門委員会あるいは部会等はたびたび開催しているわけでございまして、こういう問題が起きたことにつきまして、今までの私ども文化庁としてのPR不足あるいは説明不足の点もあったかという点は重々反省はいたしておりますけれども、会合自体は今のような経緯であることだけは御了承いただきたいと思います。
  145. 大久保直彦

    ○大久保委員 今、設立準備協議会が五十七年の発足という御答弁でございましたけれども、もっと前じゃないのですか。
  146. 加戸守行

    加戸政府委員 四十七年でございます。失礼いたしました。
  147. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣、私の発想は極めて平均的な日本国民の考え方の域を出てないんだと思います。この国立劇場が本当に大多数の国民の賛同のもとに、輝かしいオープンセレモニーが開かれることを心待ちにしております。しかし、今も次長の御答弁にもありましたように、各界の皆様に対する御連絡なり広報の遅延が今日の混乱に大きく因となっているのではないだろうか。その都度その都度の協議事項なり決定事項を、建築界なりまたは音楽界なり舞踊界なり、そういう関係諸方面にその都度丁寧に広報連絡ができておれば、こういう混乱はなかったのじゃないかと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  148. 加戸守行

    加戸政府委員 五十六年に新協議会として設置構想並びに建築規模を御決定いただきました。その線で予算要求、今後の日程に入ったわけでございますが、当面の財政事情その他もございまして設計コンペに着手する時期が若干延びた、足踏みをしたという経緯がございまして、その間、まず設計コンペに取りかかりたいという点での準備を進めておりましたために、内容的な変更等は全くございませんでした関係上、各方面に特に問い直すということがなかったことは確かに先生指摘のとおりでございます。  ただ、例えば今問題となっております千六百席の構想にいたしましても、実は昭和五十一年の協議会で御決定いただきまして八年間推移しているわけでございまして、途中でいろいろな議論の蒸し返し等もございましたが、私どもは、各層の御了解あるいは御理解を得た形で今日まできたという理解のもとで進めておったわけでございまして、そういった点でなお設置計画その他についての周知あるいは詳細についての御説明等が足りなかった点は、先ほど申し上げたとおり反省をいたしている次第でございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 大久保直彦

    ○大久保委員 もう、およそ時間が参りましたので余り細かくは申し上げませんけれども、大臣も御承知のように、この問題についてはいろいろとかくのうわさが流れております。私はそのことに一々耳を傾ける立場でもございませんし、またそういう心情でもありませんけれども、今もお話がありましたように、民間の芸術団体の総意が反映されまして、だれが見ても本当に心から納得できるようなすばらしい国立劇場が建設されますことを心から念願する者の一人といたしまして、ぜひ拙速を選ばずに、この問題については各界各層の御意見を慎重にお聞き届けの上。事の取り運びに当たっていただきたい、このように大臣に特にお願いをいたしたいと思います。  私は、文化庁や文部省のかつてのOBの方々からいろいろなお話を聞いても、そのことを公の席で申し上げたり何かすることを決して好むものではありません、こういうことについてはいろいろな立場でいろいろな角度から検討されて推進されている方もあるし、そういう御努力が実ってここまで来ているのでしょうから。しかし、いろいろ余計な風評を交えた国立劇場であっては余り好ましいことではない。ぜひとも民間芸術団体、例えば芸団協でありますとか芸術家会議でありますとか、諸団体の皆さんの意見をきちっとくまなく聞いていただいて、本当に国民の国立劇場の名にふさわしいバレエ・オペラ専門劇場が建設されますことをお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  150. 森喜朗

    森国務大臣 私も再三申し上げておりますように、党の立場でこれに関心を持ってきましたが、やはり政治的な決断といいましょうか、判断をどこに置くかだと思うのです。今加戸次長から申し上げたように、設計コンペのベースが財政当局から圧縮をされた、それならやめた方がいいのかなと当時僕も思いました。しかし一方では、何とか早くつくってほしいという芸術団体、芸術家会議、芸団協、それぞれのリーダーの方のそれぞれのお考え、ありますけれども、これまでの予算編成あるいは概算要求時にそういった団体の皆さん、直接やるバレリーナの方とか、あるいはこの間お亡くなりになりました服部智恵子さんとか、あるいはまた若いバレエやオペラなどに参加しておられる方々が悲壮な思いで、日本の国は文化国家と言うのならそうしたものをつくってくださいというお声を聞いていると、どこかである程度、妥協という言葉はよくありませんが、判断はしなきゃならない。私は渋谷のあそこといったって、ちはっと首をかしげました。しかし、周囲の土地についていろいろと文化庁もまた努力をしてくれたようでございますし、そういうことでみんなの意見を聞いて、なかなかそういった意見がまとまらないなら、じゃあやらないのかということになれば、これまたずっと先送りになってしまうということも考えなきゃならぬ、だから、先生から御指摘がありましたように、十分これからも各方面の御意見も当然しんしゃくをしながら進めることは間違いございませんし、現実に国立劇場にいたしましても国立寄席、演芸場ですね、にいたしましても、やはりスタートをしましてからいろいろな問題がございます。いろいろなことも聞きます。それについてはやはりその都度、また専門的な方方でどういうふうに扱っていくかという協議は進めながら運用をしているわけでございますので、これから本当に日本にふさわしい、そうした外国から来た日本の文化、芸術に対して日本の取り組む姿勢ということで、世界に対して宣伝といいますか、むしろ喧伝の場にも当然なるわけでございますので、その点も十分考えながら間違いのないようにしていきたい、こう考えております。  要はこの時点での判断で、私どもも随分今日まで悩んでまいりましたけれども、この時点でこの判断でいかざるを得ない、そういう考え方でここまで持ってきたものでございますが、なお御注意ありました点なども十分事務当局にも注意をさせまして、芸術家の皆さんの総意ででき上がって、みんなから喜んでいただけるようなものにしていきたい、なお一層の努力を重ねたい、こう先生に申し上げておきたいと思います。
  151. 大久保直彦

    ○大久保委員 蛇足でございますけれども、先ほど加戸さんから御答弁ありましたレンタル料の決定は、大体いつごろをめどに御検討されておりますのか。  また、今度新協議会のメンバーの方が大分かわられているようでございますね。それぞれ各会の任期切れに伴って役員が再選されているようでございます。今総員何名で、そのうち何名新規にかわられておるかということの御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 加戸守行

    加戸政府委員 レンタル料につきましては、著作権サイドと著作隣接権サイドの二つございまして、作詩、作曲家関係著作権サイドにつきましては、先般の四月十六月に日本音楽著作権協会の方から使用料規程の申請が提出されております。これは音楽著作権協会レコードレンタル商業組合との間において合意に達した結果に基づくものでございまして、多分申請案に近い形での使用料の認可がされるということになろうかと思います。  一方、著作隣接権関係につきましては、日本芸能実演家団体協議会並びに日本レコード協会と先ほど申し上げました日本レコードレンタル商業組合との間におきまして話し合いがまだ続行中でございまして、私どもは、暫定措置法施行の六月二日までの間には円満なる妥結に向かうという期待をしておるわけでございまして、まだ両者の間に若干の較差といいますか食い違い、言い値の違いがございますので、そういった点を詰めながら、最終段階では文化庁として助言指導を申し上げながら妥当な線でまとめ上げたいと考えておる次第でございます。  それから第二点でございますが、先ほどの第二国立劇場設立準備協議会の新協議会につきましては、代表されますそれぞれベースの団体の会長等の御交代等に伴いまして委員の差しかえ等がございまして、今何名という御指摘でございますが、日本建築家協会の会長あるいは日本民間放送連盟会長等の交代、そのほかに亡くなられた方もございましたし、トータルいたしまして十名が交代いたしております。
  153. 大久保直彦

    ○大久保委員 先ほどの御答弁は、国立劇場の小屋貸しの料金のことをお尋ねしたのに対し、それは今検討中だということでございますから、いつごろまでに御決定になるのか。  もう一つ、今御報告がありましたように三分の一メンバーが入れかわっておるわけでございまして、皆さんがよく納得なされる形で議事を進めていただきたい。決して一人でも反論が出ることのないように、これは森文部大臣の時代にこういう画期的なことができるということは歴史に大きな足跡を残すわけでございますから、決して後世に禍根を残さないように慎重に取り扱っていただきたいと思います。最後にそのことだけ……。
  154. 加戸守行

    加戸政府委員 第一点の、第二国立劇場のレンタル料につきましてはこれから検討に入るわけでございますが、いつと言うことは非常に難しゅうございまして、設計コンペが終わりまして、また基本設計、実施設計あるいは建築という形になりまして、稼働するまでには随分先でございますけれども、先生指摘のように早目におおよその目安といいますか、考え方を出す必要があろうと思いますので、鋭意検討恒努めさせていただきたいと思います。  それから第二点の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、この設立準備協議会で五十一年に基本構想が決まりまして、その後紆余曲折を経ながら五十六年に設置概要並びに建築規模を御決定いただいて今日に来まして、今度の新協議会の目的と申しますのが、当初の六万二千平米を五万五千七百平米に圧縮されたという観点で、その中で例えば楽屋部分、食堂部分あるいは道具製作場部分あるいは管理部門という形で、劇場本体には一応手をつけない形での建築規模でお認めいただいておるわけでございますので、そういった変更についての御了解をいただく会でございました。たまたまその会で、基本に立ち戻った御意見等が三月の末に出てまいったものでございますから、それをまた一カ月延ばして、明日でございますか、この会を開きたいと思っておるわけでございますが、基本的にはそういった面積規模の変更の御了解をいただく会でございます。ただ、今後の運営も含めまして基本に立ち戻ったいろいろな御意見等あるわけでございますから、先ほど大臣申し上げましたように、そういった御意見には十分私ども耳を傾けまして、そういったものが取り入れられ、運用の面でも今後いろいろな配慮を尽くしていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。
  155. 森喜朗

    森国務大臣 先生から御指摘をいただきました点は、日本の文化、芸術に対しまして大変大事な問題の御指摘だと考えております。したがいまして、今次長からも申し上げましたように、今後ともこれが設計コンペに至るまで、あるいはまたそれが完成をいたしますまで、当然その後の運営にいたしましても、十分そうした御意見が踏まえられて進められますように、私も、単に決まったものは動かせないのだという官僚的な発想で物を進めているものでもございませんし、口はばったいようでございますが、私も党の立場でずっと側面から関係者とも話し合って進めてきたという自信も持っているわけでございますので、十分先生の御指摘の点については大事に考えて進めてまいりたいと思います。
  156. 大久保直彦

    ○大久保委員 大変限られた時間で大ざっぱな論議で恐縮しておりますけれども、また出てきてお尋ねすることがないようにぜひお願いいたしたい。  ありがとうございました。
  157. 愛野興一郎

  158. 木島喜兵衞

    ○木島委員 加戸さん、中古のレコードを買うというのには何か制限ありますか。
  159. 加戸守行

    加戸政府委員 現行の著作権法並びに今回の著作権法一部改正案におきましても、レコードの売買につきましては制約はございません。
  160. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ないわけですね。そうすると、最初は売るからしょうがないが、一度売って、それをあした買い戻す、そしてその中古を翌日また売る、そしてまた返す、これはいいですか。
  161. 加戸守行

    加戸政府委員 今回御提案申し上げております一部改正案の中には、第二条に七項の次に八項という規定を追加いたしまして、「この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもってするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。」という規定をいたしまして、先生指摘のように、ある中古レコードを売って翌日また買い戻すというのが、結果的には一日間貸与すると同じような形で、買った人が使用の権原を取得させるという形でございますので、この八項の規定に該当して、一たん売ったものをまた買い戻すという形のものは貸与と実質的に同様と評価して、貸与権が動くという考え方をとっているわけでございます。
  162. 木島喜兵衞

    ○木島委員 中古というのは、一日だか五日だか十日だか一年だかわからない。あえて私がそういうことを言うのは、だからそこもまた権利を保護することに欠けておる。せっかく貸しレコードというものの絡みで著作権者権利を保護しようとしておりながら、実はそういう抜け穴をつくっておってこの法律を出すことは、いささか不備ではないか。だって、やってもいいということでしょう。それは貸与と同じように見ると言ったって、売買ですから。そうなりませんか。
  163. 加戸守行

    加戸政府委員 著作物複製物の売買につきましては、現在、映画については頒布権がございますのでこれによって規制されるわけでございますが、それ以外のものについては著作物複製物の市場流通というもの、特に所有権が移転しました後の問題につきましては転々流通をなるべく阻害しないようにという考え方が基本にあるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、貸与と実質的に同等な効果を生じさせる行為というものを今の二条八項で規制しておかなければ、脱法行為的な形でいろいろな知恵を生み出しては同様の効果を生じさせる行為というか商取引が成立しやすいということで、二条八項の追加をお願いしているわけでございます。  そういう意味で、例えば一たん売りましたレコードが何年かたってまた買い戻された、結果的にそうなったということについては規制はしないし、また、する必要もないことではないかと考えておるわけでございまして、意図的にそのような貸与と同じような結果を生み出す商取引を規制したいというのが二条八項の趣旨でございます。
  164. 木島喜兵衞

    ○木島委員 貸しレコード問題というのは何が問題なんですか。賃貸が問題なんですか、コピーが問題なんですか。
  165. 加戸守行

    加戸政府委員 昨年、当委員会で御審議願いました貸しレコード暫定措置法考え方といたしましては、レコード貸与がイコール複製に結びつくということで、貸与行為について許諾を得なければならない相手方を複製権者といたしまして、そういう理論構成をとっているわけでございます。今回の著作権法一部改正案におきましては、著作物複製物貸与それ自体を一つの独立した有力な経済的利用行為であるという観点に立ちまして、貸与そのものの経済的性質に着目して権利を設定するという考え方をとったわけでございます。  ただ、実際問題といたしましては、この貸しレコードの発端は、暫定措置法考え方にもあらわれておりますように、貸されることによって借りた人が家庭でコピーをとられるという結果を招来し、結果的にはレコードの売り上げ波あるいは著作者実演家等の経済的損失に結びつくという考え方であったわけでございまして、発想としてはそういった趣旨に基づいたものではございますが、理論構成といたしましては、先ほど申し上げましたように、貸与そのものについての経済的な利用行為に着目した法体系としているわけでございます。
  166. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そこが許諾権と貸与権の違いだ、暫定法と新しい法律、この改正法とで変えたところの理由はそういう意味ですか。今おっしゃったような理由ですか。
  167. 加戸守行

    加戸政府委員 法律的な性質といたしますれば、ただいま申し上げたような考え方の相違があるわけでございます。ただ、実態的には、今回の著作権法一部改正案暫定措置法で盛られました内容を実質的に踏襲いたしまして、ほぼそれと同じような仕組みで実態的な効果が生ずるような形での立案をしたわけでございます。理論的には先ほど申し上げたような違いがあるということでございます。
  168. 木島喜兵衞

    ○木島委員 暫定法、コピーと絡むということでしたよね。コピーが絡むということは三十条との関係。これをコピーするのは大体個人ないし家庭内ですよね。とすれば、これは三十条の関係では、暫定法ではこれは関係ないわけでしょう。したがって、貸与権というものを新しい改正案では考えたということじゃないのですか。
  169. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますように、暫定措置法に基づきまして貸与についての許諾を得なければならない規定がございますが、そのことによって借りて帰った人が家庭でコピーすることにつきましては三十条の規定に該当いたしまして、一応著作権法上はセーフになっているわけでございます。その考え方は、今回の著作権法一部改正案におきましても、家庭でコピーすることはセーフでございますが、貸与そのものについての権利を動かす。暫定措置法考え方は、先生おっしゃいますように、家庭へ持って帰ってコピーするのはセーフだけれども、しかし、そのことによって損害を受けるのだから、やはり貸すことについてはコピーすると同様な効果を生じさせているという実質的な理由に基づいた考え方暫定措置法であったと理解しております。
  170. 木島喜兵衞

    ○木島委員 したがって暫定法は三十条と矛盾をする、立法の趣旨は、三十条と矛盾をするという考え方に出発しておるということになりますか。
  171. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもは矛盾するとは考えておりませんのは、著作権制度と申しますのは、いかなる態様の著作物利用行為について権利者権利を及ぼすべきであるかという考え方で、これはありとあらゆる著作物の利用行為に権利を及ぼすのではなくて、ある特定の行為に着目して、これは著作者の経済的利益を害するとかあるいはこれはかなり経済的利用行為の価値としては高いとか、そういうふうな観点から権利が及ぶような形で著作権を設定するわけでございますので、そういう意味におきまして暫定措置法考え方は、確かに原因といいますか、動機というのは家庭でのコピーに結びついたものではございますけれども、やはり貸与そのものについて許諾を得なければならないと規定した法の形式の問題はともかくといたしまして、実質的には貸与そのものについて著作権者あるいは隣接権者権利を動かそうとした点におきましては、それなりの妥当性のある立法であったと理解しております。
  172. 木島喜兵衞

    ○木島委員 これは暫定法は議員立法で、そして満場一致の法律で、それを今私がこんな質問をするのは大変変なんですよね。ただ、こういう難しい法律ですから、これは加戸さん、あなたなんというのは、著作権では日本の最高の権威なんだよね。だから当然暫定法のときに、私はそのとき文教委員じゃなかったのだけれども、あなたが加わっておったのだと思うのだよ。とすればやはり――あなたあのとき、次長でなかったか。ああそうか。まあしかし、いずれにしても著作権課は、あるいは文化庁は実際にはかかわっておったと思うよ。というときに、やはり今おっしゃるように貸与権で、今度の改正法案の貸与権というもので指導していけば、三十条とコピーとの矛盾というものは、今あなた何だかんだおっしゃったけれども、それは言いわけなのであって、それはやはり矛盾なんですよ。これは三十条の侵害ですよ。だから貸与権にしておけばよかったという、これはあなた、いなかったのだけれども、文化庁としての反省はございませんか。
  173. 加戸守行

    加戸政府委員 御承知のように著作権制度というのは極めて難しい制度でございますし、また、法としての整合性あるいは国際条約との関係、諸般の観点から考慮すべき、かなり検討にも時間を要する事柄でもございますし、今回の著作権法一部改正案にいたしましても、約九カ月にわたる審議を経た著作権審議会の報告を受けて立案にかかったわけでございます。  一方におきまして、この貸しレコード問題というのは社会的に非常に深刻な事態になっておりまして、そういった政府側の対応が極めておくれているという観点から議員提案で緊急の措置をされたわけでございまして、そういう意味では、今の成立いたしております暫定措置法はそれなりにといいますか、この法律が成立したおかげで著作権法の一部改正案が後に続くことができたというぐあいに理解しておるわけでございまして、暫定措置法の果たした役割というのは極めて大でございますし、その法律的な厳密な議論までを十分する時間的ゆとりよりも、むしろ先に今の社会的実態についての規制を加えるという必要性があったと私どもは理解しておるわけでございます。
  174. 木島喜兵衞

    ○木島委員 まあ、それは議員立法でありますから、こういう質問をする方が少しおかしいかもしれませんからね。  著作権者とそれから隣接権実演者、それからレコード製作者、これは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」というもので言うならば、元来そういう著作権というもので言うと、まず著作権者、それから隣接権だけれども演奏者、実演者、これは例えば音がいいとか悪いとか、声がいいとか悪いとか、いわゆる思想、感情の創作的なという意味では……。ところがレコード製作者は、そういう意味での元来の著作権じゃないのだな、隣接権ではあるけれども。ちょっとそこに三者で差がある。大きく言うと隣接権著作者とあるいは演奏、実演者とは、元来創作という意味で、著作権としては同じ要素を持つ。ところがレコードの方はそういう意味ではないのだな。ちょっと差がありませんか。どう思いますか。
  175. 加戸守行

    加戸政府委員 先生御承知のように、この隣接権制度と申しますのは、一九六一年にローマでつくられました隣接権条約を一応パイロット的なベースといたしまして、著作権法の中に著作隣接権制度を取り入れたわけでございます。その意味におきまして、隣接権条約で実演家並びにレコード製作者を保護することとしました趣旨といいますのは、著作者に準じた創作的な活動を行っている、準創作的な活動という観点からこの実演あるいはレコードというものを概念したわけでございまして、先生おっしゃいますように、実演家につきますれば、歌手とか演奏家、それぞれの演技というのがございます。それは著作者に準じた準創作的活動というのは容易にだれにでも理解できるわけでございますが、一方におきましてレコードの場合につきましても、やはりその芸術というものを世の中で最高の状態で鑑賞させるために送り出すという準創作的な工夫があるわけでございまして、やはり音質あるいは企画その他いろいろな面におきまして、権利実演家と同様に認めるような価値があると国際的にも評価されたという考え方で、それを受け継いだのが我が著作権法だということでございます。
  176. 木島喜兵衞

    ○木島委員 何もレコード製作者隣接権があるということを悪いと言っているのではないのですよ。だから、本来著作権というものあるいは著作物というものから、すなわち思想または感情の創作的表現をしたものということを前提にすれば、差があるのではないか。むしろ隣接権である実演者あるいは創作者はともにそういうことに該当するが――隣接権は認めているのですよ、私は否定していないのですよ。けれども、その意味ではレコード製作者というのは少し違う要素を持っておらないかということを聞いておるのです。これはどうですか。
  177. 加戸守行

    加戸政府委員 芸術、文化の創造という観点での御指摘ではないかと理解いたしますが、そういう意味で申しますれば、実演家がある作品について果たしている寄与の度合いといいますか、芸術性という観点から見れば、確かにおっしゃるような意味合いはかなり強いと思います。  一方におきまして、レコード製作者側におきましても、音質の問題というのはかなり芸術的な寄与もあると思いますが、と同時に、そのレコードによって経済的な利益というのを一番受けるのはレコード製作者である。そういう意味で、実演家を保護するのと同等以上に、その経済的損失を受けないようにする必要性がバックグラウンドとしてあったろうと思いますし、そういう意味で、隣接権制度の中で、実演家レコード製作者が並べられたのは、先生がおっしゃるような芸術活動、創作的な活動に対する寄与の度合いと同時に、やはりレコード製作者としての経済的な投資とか、あるいは経済的な利益という観点もかなりミックスされてきたような背景があったように私は理解しております。
  178. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、簡単に言えば、著作権者に対して金で補償をするところの集金担当者だな。少し悪いかな。要するに、これは著作権の場合いつでも問題になるのは、著作権の保護と国民全体に文化を提供するというこの調和をどうするかということが一つですね。そういう意味では、レコードをつくるということ、売るということは、文化を広めるという意味そのことによって、逆に金銭的に補償されるという要素をレコードは持つわけですから、そういう意味で考えますと、今あなたもおっしゃるように、そういう芸術的な意味で差があるわけですから、だから今かかっている法律、ここでは隣接者でいうと、演奏者は貸与権及び報酬請求権で、レコード製作者報酬請求権だけでいいのじゃないか、経済が中心なんだから。そういう気がするのですが、レコードは必ず金を取ればいいわけでしょう。そして、それが還元されるわけでしょう。そういう形の方が本来いいのじゃないかしら。これは大変難しい法律ですから、私はよくわからないところもあるのですけれども、そんな感じがするが、どうですか。
  179. 加戸守行

    加戸政府委員 先生の御質問の根底には若干、レコード製作者がイコール、レコード会社という御認識がおありのようにお見受けいたしますけれども、著作権法上のレコード製作者と申しますのは、ある音源をレコードに固定した者をレコード製作者として定義しておりまして、要すれば、レコードの原盤をつくった人がレコード製作者になるわけでございます。そして、原盤を製作するというのはどういう意味かと思しますと、どのような作詩家に詩をつくっていただき、どのような作曲家に曲をつくっていただき、どのような歌手に歌わせ、どのようなアーチストに演奏させるか、そういうような企画あるいはそれを最適の条件の中でよい音質でレコードを作成する、そういうような、言うなれば準創作的な活動というのを行っている者でございまして、ストレートに商業的な利益、経済的な投資をしているからというだけではございませんで、むしろ今の考え方としましては、そういった諸般の活動自体が準創作的な活動ということで、やはり権利の性質上は実演家と並ぶべきものではないかと理解いたしております。
  180. 木島喜兵衞

    ○木島委員 なるたけ進めます。  さっき湯山さんの御質問で、三者と貸しレコードとの話し合いが進んでいるという話ですが、これは暫定法で言うと、三者のうち一者でも許諾を与えなかったら結局どうなるのか。
  181. 加戸守行

    加戸政府委員 実務的に申し上げれば、その三つの権利者のうち一つ権利者許諾を与えなければ、これは著作権法違反になりますから、レンタルができないということになるわけでございます。  ただ、先ほど湯山先生の御質問にもお答え申し上げましたように、作詩、作曲家側である日本音楽著作権協会は、高速ダビング等の違法行為を行っていないレンタル店に対しましては、契約によって許諾を与えるという考え方でございますし、それから日本芸能実演家団体協議会の方も同様な方針のように理解いたしております。問題は、日本レコード協会側におきまして、ある種類のレコードはある期間レンタルは差し控えてほしいという意向がございますので、その辺の調整が問題になろうかと思います。  御質問に対しましてはイエスでございます。
  182. 木島喜兵衞

    ○木島委員 すなわち、三者のうち一者でも与えなかったらだめになってしまうわけですね。  そこで、附帯決議は、これは小委員会の小委員長報告と同じ文章なんですね。「公正な使用料によって許諾することとし、」でしょう。だから、公正な使用料を払うということを前提にすれば、許諾せねばならないと読むべきではないのか。したがって、許諾を与えなければ貸しレコードはだめだということになるわけですね。だけれども、附帯決議では「公正な使用料によって許諾することとし、」だから、公正な使用料である限り許諾をせねばならないということですね。そこが私の考えでは、さっき言った報酬請求権だけでいいではないか、新法で言うと、ということとも絡むのですけれども。この附帯決議と暫定法の小委員長報告は同じ文章ですね。ということは、そういうことを前提にしておったのではないか。そこと今の御答弁との関係はどうなんでしょうかね。
  183. 加戸守行

    加戸政府委員 当委員会の小委員長報告あるいは参議院文教委員会におきます附帯決議に書いております「公正な使用料によって許諾することとしこという考え方でございますが、基本的には許諾を与えるという方向である。その場合にもう一つの問題といたしましては、「公正な使用料」と言った場合に、例えばレコードが発売された直後のレンタルということによりまして、今までの投下資本が全く回収できないような形でレンタルが行われる、その結果として音楽創造あるいは音楽文化の創造ということができなくなるというような限られた種類のレコードにつきましてまで、それは「公正な使用料」と言った場合に、では何が公正であるかという問題は出てこようかと思いますし、しかも「公正な使用料によって許諾する」ということは、オールイエスであるべきだということであるならば、それは許諾権ではなくて単なる報酬請求権に転化するわけでございまして、許諾する権利を書きながら「公正な使用料によって許諾することとしこというのは、できる限りの許諾を与えるという方向で対応する、局限された例外的なものについてまで、それはすべて許諾すべきものであるという趣旨には理解できないというぐあいに考えておるわけでございます。
  184. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、さっきから言うように、さっきあなたも、暫定法があったからこの法律があるのだ、今度の改正ができたのだとおっしゃった。その暫定法というのは、小委員長報告でも、そしてこの附帯決議でも、「公正な使用料によって許諾することとしこということは、公正な金額は幾らかということは別として、だからこれは報酬請求権だけでいいのではないかと私が言っているのはそこなんですよ、続くのは。それが暫定法の立法者の趣旨ではないのか。そう理解できないのか。もしこれを前提とするならば報酬請求権だけでいいじゃないかと、さっき申したのはそこなんです。どうですか。
  185. 加戸守行

    加戸政府委員 ここの問題は、実は先生は、当然に良識ある契約によって使われることをすべて想定された御質問だったと思いますが、もちろん許諾をとらないで黙ってやる場合もございますから、そうしますとそういう場合の、つまりある意味契約をしない違法なレコードレンタル店があった場合に、単なる報酬請求権だけの規定では、後から追いかけていってお金を下さいと言うだけの問題になりますし、しかも、払えと言った料金も折り合いがなかなかつかない、この場合には多分文化庁長官の裁定制度というのは機能いたしません、個々の店との間は団体ではございませんから。いや、もう何円で済ますということで、はした金で終わってしまうというようなこともございますし、あくまでも権利の実質的な内容を担保するためには許諾権というものがある程度保証されていなければ、単なる報酬請求権では絵にかいたモチになりかねない、そういう意味合いもあるわけでございます。
  186. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今おっしゃったように、そこで一致しないときに暫定法では法的に裁定もあっせんもできませんね。今あなたは、あっせんしていらっしゃるのだろうけれども、これは法的じゃないですね。とすると、一致しなかったらどうなる。というのは、説明の資料の附則のところ、言うなれば附則の三で、暫定法によって許諾を受けた条件の範囲内において本案制定後も引き続き貸しレコード業を行うことができるというのでしょう。だからここで拒否すれば、今暫定法期間に拒否しておけばできませんね。その条件が合意しなかったら、貸しレコード屋は廃業でしょう。廃業者は引き続きできないでしょう。とすれば、拒否の理由になる。拒否しておけば、今回合意しなければ、あなたがあっせんしたって法的なあっせんじゃないんだから、裁定じゃないんだから、そうしたらこれはできぬじゃないですか。そうならないのか、そういう心配はないだろうか。
  187. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど御指摘のような小委員長報告の中にも、関係者の円満な利用秩序の形成ということを当文化庁に一応義務づけられた形でございまして、私どもとしましては、そういった趣旨に従って事実上のあっせんなり事実上の助言なりをさしていただいているわけでございます。  ただ、この問題につきましては、現在のところ権利者団体としましても、音楽著作権協会、芸能実演家団体協議会、レコード協会、いずれもそれぞれ良識を持った対応で文化庁考え方をいろいろ聞いていただきながら、また御相談をさしていただきながら事柄を運んでおられる状況でございますので、例えば高速ダビングを行っているお店のような場合は別といたしまして、正当に契約を結びたいといった貸しレコード側に対して拒否をするということは、まず起こり得ないと私どもは思っているわけでございます。
  188. 木島喜兵衞

    ○木島委員 希望的観測としてですね。法的にはそうなるでしょうと私は言っているのです。法律の問題です。
  189. 加戸守行

    加戸政府委員 法律的にはおっしゃるとおりでございます。
  190. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、そうならないように実質的なあっせんを、逆に言えばお願いしたいということであります。  それから、暫定法原案は一年間だった。それを「政令で定める期間」に直して、今度の法律はまた一年間なんですね。さっきも、暫定法があってそれが前提となって今回の法律があるんだとおっしゃったのだけれども、何かちょっと変ですね。議会を軽視してないですか。そんな感じしませんか。
  191. 加戸守行

    加戸政府委員 ちょっと、おっしゃった趣旨が十分理解できてないかもしれませんが、暫定措置法に基づきます政令を一年とさせていただいておりまして、今度の著作権法一部改正案におきましては、一カ月以上または十二カ月以内の範囲内で政令で定めるとしておきました。  先ほど湯山先生の御質問にもお答え申し上げましたように、接続性をうまくするという観点からは、暫定措置法の一年の期間を引き継いで著作権法一部改正案でも踏襲するということが、実際の今までの暫定措置法下におきます実務の流れをそのまま受け継ぐことによって変更がないわけでございますから、契約の範囲も、例えば一年間のものを想定した使用料金あるいは契約関係という形で継続できる、そういう趣旨で接続性をうまくしたいということを申し上げたわけでございます。
  192. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この貸しレコードが急成長をしたのには、一つにはレコード製作者やあるいはレコード小売商等に何か反省すべきこととか、急成長をする要因というようなものがそこにあったんではないかというような気もするのですが、その辺はどんなお感じですか。
  193. 加戸守行

    加戸政府委員 貸しレコード対象となっております利用形態の極めて多いものが、御承知のようなLPと言われております十数曲入っておりますものでございまして、そのLP盤が今の市販価格、大体平均いたしまして通常二千八百円でございまして、その価格が高いのではないか。一般の、例えば若い世代には二千八百円のものは手に入らない、レコードが高いからどうしても貸しレコードを借りてコピーをしてしまうというようなことが言われるわけでございますけれども、これも世界的な状況を見てみますと、アメリカの場合にはLP一枚二千円という安いケースもございますが、その他ドイツ、フランス、イギリス等では大体二千八百円前後と、日本とほぼ同様な料金でございまして、国際的にそれほど高いという感じではございません。ただ、そういうような指摘なりあるいは御批判が貸しレコード側から寄せられているということは事実でございます。そういう意味におきまして、一般の若い世代にとって、果たしてLP一枚二千八百円が購入するに妥当な価格であるかどうかという議論はあり得ると思いますけれども、国際的に申し上げれば、今、別に決して高い価格ではないと考えております。
  194. 木島喜兵衞

    ○木島委員 貸しレコードと貸し本と、歴史的なことはあるけれども、権利の保護という点ではまさに同じですよね。いろんな事情はあるかもしれないけれども、権利権利としてきちっと認めるということが必要だと思うのです。これは、そういう意味では認めておると解釈してよろしゅうございますね。
  195. 加戸守行

    加戸政府委員 今回御提案申し上げました著作権法一部改正案の中では、附則の四条の二を設けまして、貸与権規定は、書籍または雑誌貸与については当分の間適用しないといたしておりまして、貸し本業は当分の間許容するという立て方をとっておるわけでございます。先生指摘のように、原理的には著作物複製物貸与でございますから、レコードであろうと古本であろうと同じでございます。  ただ、このような外し方、当分の間除外いたしました理由といたしましては、貸し本業というのがここ百数十年の間延々と伝統的に続いてきた事業であるということが一つ。それから、貸し本自体のレンタル料というのも今それほど高くなくて、かつ貸し本業によって膨大な経済的な利益を得ているという実態にもない。それから、貸し本を借りた人が持って帰ったものをコピーすることによって本の売れ行き、発売が落ちたというような状況ではなくて、貸しレコードの場合には、御承知のように家庭でコピーをいたしますものですから、レコードの発売枚数が当然落ちてまいる、売り上げが落ちてまいるという相関関係もあるわけでございます。そういった諸般の状況を踏まえまして、もう一つには、貸し本について権利を及ぼした場合の権利の処理の仕方について、例えば日本音楽著作権協会のような形で、書籍に関します、あるいは雑誌に関します文芸、学術その他の権利者団体を統括した集中的権利処理機構が存在して、そこと契約すれば月決め幾らで貸し本業が営めるというような契約体制を整えるというのにいたしますには、まだ現状は整備されていない。そういうような状況を踏まえまして、当分の間、貸し本については適用除外するという考え方をとっているわけでございます。
  196. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、当分の間適用しないということは、本来はあるんだという前提でしょう。したがって、逆に言うと、もうちょっと、あるということを明記しながら、今あなたがいろいろ理由をおっしゃったが、その理由等をどう書くかは別として、ということにより当分の間というようなことをすれば片手落ちだと思うのです。  それからもう一つは、コピーの関係でありますが、このごろ「複写機貸します」なんという営業がありますね。貸しレコードも言うなれば貸しレコードによって利益を得ておるんだから、その分は適当なる使用料によって権利者補償するというなら、コピー貸します、これは所得を得ているわけですから、これが入らないというのはどういうことですか。片手落ちじゃないですか。金額の多い少ないではない。権利の問題です。文化財の保護の問題です。
  197. 加戸守行

    加戸政府委員 著作権法におきましては、著作物の利用行為についての権利を定めているわけでございますので、貸しレコードの場合には、例えば作詞、作曲といった著作物が包含されているレコード貸与されるということで著作者権利が動くシステムをとっているわけでございます。一方におきまして、複写機器の場合におきましては、複写機器そのものは著作物は包含されておりませんので、そういった観点の違いがあるということが一つでございます。  それから、先生の御質問趣旨は、多分複写機を貸せば、借りた人はそれで著作物をコピーすることになるだろうということで、言うなれば実質幇助といいますか、複製をする人の手助けになる行為をしているからそれはよくないのではないか、何らかの規制をすべきではないかという御趣旨であるといたしますれば、これはまさにある程度理由のあるところでございまして、私どもは、複写機器等につきまして私的録音、録画の問題を含めましていろいろ今検討いたしております問題というのは、そもそも録音、録画機器あるいは複写機器の存在が著作権そのものを脅かしている、そういった点についての早急な検討を迫られているというぐあいに理解しているわけでございます。
  198. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そういう意味では、画像によって送るのがありますね、データベース・ビジネスとかなんとかというもの。あれをやると、専門書、学術書なんか映像で送るでしょう。さっきお話しございましたコンピューター等もそうですけれども、要するに、すべてこういう機械の進歩ということから起こってきている問題でありますから、こういうものは一体どういうことになりますか。そこで学術書が画像として入ってくれば内容を包含しているわけでしょう。著作物の内容を包含されますね。これはどうなんですか。
  199. 加戸守行

    加戸政府委員 いろいろな著作物利用手段の発達に伴いまして複雑な問題が招来されているわけでございますが、ただいまのような問題を含めまして各般のニューメディアに対応する問題といたしまして、著作権審議会に第七小委員会というのを設置いたしまして、三月三日に発足をいたしまして、これでニューメディア及びデータベース関係著作権問題の御検討のスタートが行われたわけでございますが、現時点での法制上のシステムで申し上げますと、ある画像に学術の著作物が流されてくるという場合でございますが、例えばキャプテンシステムその他の方式だと思いますけれども、一応有線放送権ということでまず対応するという考え方でございます。
  200. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今度は高速ダビング。これはこの間江田さんがちょっと言っておったのかな、仮処分か何かありましたね。  もし、現在の法律で高速ダビングは違法だとして裁判所でそういう判定を下すならば、こんな条文要らぬじゃないですか。今までの法律で裁判所が、この営業はいかぬと言うのですから、そしてまた、機械なんか撤去したですね。そういう法律があるなら、今さらこんなものをつくらなくたっていいじゃないですか。これをどう思いますか。
  201. 加戸守行

    加戸政府委員 高速ダビングに関しましては、仮処分の申請が今全国で五件提起されておりまして、一番古いものが昭和五十七年に提起されたものでございますけれども、裁判所の方ではなかなかそれをお認めいただけない形で今日まで推移してまいりまして、この著作権法改正案が上程されました後におきまして、東京地裁で一件だけ仮処分が行われた状況があるわけでございます。ということは、現行の法のもとにおきましても、高速ダビングにおきます複製行為が著作権法違反であるかどうかについては裁判所としても、例えば一年以上たっても決定が出されていないということは、その自信がないというぐあいにもとれるわけでございまして、必ずしも著作権法上明確とは言えない。そういう意味におきまして、たまたま四月九日に東京地方裁判所が出されました仮処分決定は、私どもの気持ちといたしますれば、今回の法改正考え方相当程度のインパクトを与えたのではないかという感じを持つわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、私どもが立案をしました段階では五件の提訴が行われていながら全くその判断が出なかったという状況でございますし、それほど法律上明確であったというぐあいには考えていないわけでございます。
  202. 木島喜兵衞

    ○木島委員 店頭で高速ダビングの機械を借りてやると三十条で制限しますね。うちで持っておって高速ダビングをやればいいわけです。何となく変ですね、そう思いませんか。店頭で借りればいけないが、うちでやればいいんだ、ちょっと不合理みたいに感じませんか。
  203. 加戸守行

    加戸政府委員 そこの問題は、複製に伴います経済的な利益というのをどこが得ているのであろうかという問題かと思います。  個人が家庭で行います場合には、個人のみがその複製に伴う利益を得ている。高速ダビング店でとって帰るという場合であるならば、個人ももちろんのこと、そのお店の方も経済的な利益を得ているという点での質的な差が一つあろうかと思います。  それから手段の問題でございますが、著作権法三十条におきまして個人が自分のために複製することを認めた趣旨と申しますのは、法律は家庭に入らずというような基本的な考え方でございまして、例えば個人が自分のおふろ場で歌を歌ってもそれは自由だというのと同様に、複製の分野におきましても、個人が家庭で自分のためにする行為については法が手を出すべきではないし、また現実にも出せないという考え方があったわけでございます。  一方におきまして、高速ダビング店で行います行為というのは、形の上では来ましたお客さんがボタンを押してコピーをとるわけでございますけれども、実質的にはそこである特定のレコードを貸し、生テープを売り、そしてレンタル料金を払ってボタンを押せば、そこで海賊版テープが一部安く販売されてそれを購入したと同じような結果を招来する、そこに基本的な問題があろうかと思うわけでございます。
  204. 木島喜兵衞

    ○木島委員 より基本的に言うと、結局、西ドイツ式に録音、録画等の機械に課徴金というようなものをかけるか、オーストリア式にテープにかけるか、あるいはフランス式に目的税的なものをかけてそれを文化施設に使うとかという、むしろ新しいことの方が先に考えなければならないことなんじゃないんですか。文化庁はこのことについては随分と検討を進めてきたことだけれども、なお結論が出ていないようであります。しょせん、これはいろいろ理屈はありますよ。もう時間がありませんからあれですが、この三十条でもって、今回のダビングの問題では一定の制限をしているわけですね。とすれば、それは西ドイツ式であろうとオーストリア式であろうと、それはやはり影響ありますよ。整合性がない場合もありますよ。あるけれども、どこかで割り切らなければならぬし、基本的にはそういうことしかないんじゃないのか。むしろそこは、日本の著作権におけるところの権利意識とか保護憲識というものが薄いところに問題があるのであって、きっとヨーロッパならば、多少の理由があったってむしろ権利を守ることの方が先だ、優先するんだということでもって、他の理由の方が消えていくのではないだろうか。だからこそ、西ドイツでもフランスでもオーストリアでも、そのことを同じ事情でありながらやっておる。そして、先進国はこの方向に行きつつあるような感じもします。とすれば、どこかで割り切らなければならぬ問題なんですね。これは割り切りの問題ですよ。これはどうですか。
  205. 加戸守行

    加戸政府委員 先生今御指摘になりました西ドイツ方式の課徴金制度の考え方は、著作権審議会におきましても昭和五十六年に第五小委員会から報告をちょうだいいたしまして、その問題につきまして関係者間の基本的な合意の形成に向けての努力ということが指摘されているわけでございまして、現在それを受けまして、私的な形ではございますが、著作権懇談会ということで関係者に集まっていただきまして、この問題を鋭意御研究、御検討いただいているわけでございますけれども、外国の例で、今先生指摘になりましたような西ドイツあるいはオーストリアあるいはほかにもハンガリーという国がございますし、フランスは現在まだ草案段階でございますけれども、いずれにしても、そういったヨーロッパ諸国がそういう方向へ向かっているということは、私どもが将来考えるべき一つの大きな材料として有力なものとして考えているわけでございます。  ただ、この事柄自体は、基本的には今のようないろいろな各種複写機器あるいは録音、録画機器の発達というものを考えてみますときに、著作権問題を脅かす大きな存在だということを私、先ほど申し上げましたけれども、そういう意味においての抜本的な解決というのはこれによらなければならないとする観点は、既にこの貸しレコード問題について御審議をいただきました昨年九月の第一小委員会の報告の中でも、この問題はこの問題として抜本的な、制度的な対応を検討するようにという指摘もまたちょうだいしているわけでございます。  そういう意味におきまして、基本的な考え方というのは、著作権者権利者側におきます考え方は一応方向性として共通しているわけでございますけれども、問題は相手のあることでございますし、そういう機器メーカーあるいはテープメーカー側の考え方というものを、十分いろいろ考え方の合意の形成に向けての努力を重ねると同時に、また一面におきまして国民的な関心事といいますか、そういう著作権法尊重の気持ちというものが、精神がなければ制度的な対応を実現するのは極めて難しいと思いますし、今後いろいろな各方面での努力を重ねたいと思っているわけでございます。
  206. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その場合に、例えば録音、録画機というようなものに一五%の物品税がついていますね。西ドイツ方式で機器なら機器にかければ、それはしょせん消費者に回ってくるわけですね。すると、その場合に、それだけ高くなるわけですよ。だから、一五%なら一五%の物品税なら物品税をなくして、そして賦課するということならば、現実的には、具体的に差がなくなるかどうかわからないけれども、あるいはひょっとすれば安くなるかもしれないわけですよ、一五%かけておるのを一〇%なら逆に五%安くなるのだから。そういうことが行われなければならないのだろうと思うのですよ。そういう交渉はどうなんですか。
  207. 加戸守行

    加戸政府委員 今先生から非常に有益な御意見をちょうだいしたわけでございます。ただ、税制の問題は当方が考えることではなくて財政当局の判断があるわけでございますけれども、そういった制度の導入に際してのまさに一つの方法論としては有力な案だと思いますし、十分御意見を参考とさせていただきたいと思います。
  208. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だんだんと機器ができて、コンピューターの話はさっきやりましたからやめますが、ただ、コンピューターで作曲したり、あるいは抽象画もできますね。これは著作権者はだれになるのですか。
  209. 加戸守行

    加戸政府委員 この問題は、国内的にも国際的にもなかなか難しい問題でございまして、一律に申し上げることは困難でございますが、一般的に申し上げますと、あるプログラムによって特定の作曲ができるようなプログラムの場合でございますれば、そのプログラムをつくった方、プログラムの作成者がアウトプットされた曲の作曲者と理解することができるわけでございます。ただ、一つのプログラムによって、その後データの入れ方で多種多様な作曲ができるといった場合に、ではデータを入れた人とプログラマーとの関係はどうなるのかという問題がございまして、そのデータの選択、配列その他によりまして、かなり作曲に寄与したと思われる方は共同の著作者になり得る、単純にアトランダムにデータをほうり込んだためにそのプログラムに基づいて作曲ができたとするならば、そのデータの選択者を著作者というのはどうかというような議論が国内的にも国際的にもあり得るわけでございます。しかし、いかなる場合におきましても、プログラムをつくった方がアウトプットされた作曲の著作者たり得るケースかなり多いということについては、国内的な議論あるいは国際的な議論でも共通しているところでございます。
  210. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いずれにしても、貸しレコードが問題になったのは、機器の急激なる進歩におくれて、先手を打たなかった、後追いだったからだと思うのですよ。コンピューターに象徴されるようなものは一体何かと言えば、まさに高度の情報化社会なんてよく言われるけれども、そういう中で機器がとにかく急激に進歩する、それをなるたけ貸しレコードというような問題が起こらないように先手を打つことがむしろ必要なんであるけれども、そういう意味では、今、コンピューターで作曲あるいは抽象画といった場合に、いろいろありますからということだけでいいんだろうか。貸しレコードの問題から何の教訓を受けて、何を我々が今日考えねばならないかということ、その辺のことを含めて私は今申し上げているつもりでいるのです。そうでなかったら、貸しレコード貸しレコードで終わってしまう。そして、今後機器が出て、それをいつでも後追いして、そして法律を直していく。ところが文化庁はなかなかやらないから、議員立法を先にやりましょう、それで、おかげさまでなんというようなことを繰り返してはつまらない話です。だから、そういう意味で今申し上げたところであります。複写、複製で言いますと、これは私も不勉強なんだと思うのですが、大学の先生が講義しますね。講義も学術的な言葉の著作物ですね。それを学生がノートするのはどうなんですか。これは複製品ですね。先生が許可したかしないかわからないが、大抵ノートをとっている。許可したと言ってないんですね。あのノートは複製だ。それを今度学生同士で、おまえちょっと昼食ごちそうするから貸せなんて言うと、これは営利ですな。これはどうなんだろう。
  211. 加戸守行

    加戸政府委員 学生がノートに書くことは私的使用、私的目的のための複製でございますので、ノートに書くまではいいわけでございます。その後友達に貸す場合でございますが、言うなれば、その二人が結びついた親友とかそういうような場合でございますと、これは公衆ではございませんので、今度の貸与権は動かない。ただし、だれにでも、昼飯をおごってくれる人には貸すよという場合でございますれば貸与権が動くということになろうかと思います。
  212. 木島喜兵衞

    ○木島委員 というのは、私たちが演説しているときに、ちょっと困ること、はてなと思うことがあるのです。例えば大野伴睦さんの、猿は木から落ちても猿だけれども議員は落ちればただの人なんて、これは私、落ちたくないからときどき使うのです。そのときに、大野伴睦さんが言ったんだから私が言うと著作権侵害がなと思ったりするんだけれども、これはどうなんですか。
  213. 加戸守行

    加戸政府委員 先生がただいま御引用になりました大野先生の言葉は、著作物というほどのものにはまだちょっと至らないという感じがいたします。言葉というのは、キャッチフレーズとかいろいろなものがございますけれども、私ども、短いもので言えば俳句以上ぐらいが大体著作物でございまして、ちょっとおもしろいアイデアとか奇抜な表現というだけでは、それ自体では著作物たり得ないと思っております。
  214. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そういう意味では、パロディーをどうするかというような問題もあります。それはもう触れませんが、パロディーの限界とか、どこまでが入るとか入らないとか、いろいろ議論があるでしょう。それは演説だって、例えば政策を述べたというときに、大変学術的な立場からの政策の、しかも創作があるわけです、演説の中に。そういう一環で、例えばさっき言ったようなことがあるかもしれませんよ。しかし、それは全部の一環なんだから、一連の中でもってしゃべるのですから。だから、そのことだけじゃなしに、どうなんだろうか。
  215. 加戸守行

    加戸政府委員 多分御質問は、他人のつくられた著作物を自分の演説の中で使えるかというような御趣旨であったと思いますけれども、要するに、著作権法上は引用ということが認められておりまして、自分の説を展開するために、あるいは人の見解を評論するために、他人の考えられた文章、言葉等を利用するということは著作権法上許されるわけでございます。他人の言葉ばかりで自分の言葉がほとんどないというような演説でございますれば極めて問題でございますけれども、先生がみずからの御主張をなさる際に、その補強材料あるいは批評材料として他人の言葉を使われるということは、著作権法上の正当な引用に該当する範囲内でございますれば適法だと思います。
  216. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だからさっき言いましたように、政策等が学術的な政策で創作的なものであれば、それは政治家の演説も著作物ですね。
  217. 加戸守行

    加戸政府委員 政治家の演説も当然に著作物でございます。ただ、著作権法上は、公開して行われました政治上の演説または陳述につきましてはある程度著作権が制限されておりまして、報道その他の関係で利用することができるようになっておりますので、例えば木島先生の演説集という形で出版することは許されませんけれども、木島先生の発言そのものの部分をとって新聞に載せ、あるいは雑誌に載せ、使うことは一応認められるというのが今の著作権法の体系でございます。
  218. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そうすると、例えば入試の問題は、これはいいですね。入試の問題は現在いいですね。入試の問題を集めて編集した場合は、これはどうなるのですか。
  219. 加戸守行

    加戸政府委員 現行著作権法の第三十六条一項におきましては、入試問題には利用できるということを書いておりますので、これは自由でございます。ただし、先生指摘のように入試問題を編集して、それを例えば入試問題集として使う場合には、その入試問題そのものの著作権並びに入試問題で利用されている原作品についての著作権の問題がございまして、この場合には了解をとる必要はないけれども、先ほどちょっと湯山先生から御指摘を受けました相当な額の補償金を支払わなければならないこととされております。
  220. 木島喜兵衞

    ○木島委員 例えば入試で、ある一つの文章を引用しますね。それは古いものだと当用漢字にないとか仮名遣いが違うとか、これはいいと思うのですよ。僕らも古いから、例えば「チョウチョウ」というのを「テフテフ」と書かぬと感じが出ないのです。――だれです、古いななんて笑ったのは。だけれども、文章とはそういうものですよね。今集った人たちはこういうものをわからないのです、五月さんなんか。これを「チョウチョウ」と書いたら作者とすれば嫌ですな、困る。それじゃ、あらかじめ著作者に、原作者に了解を求めたら、それが試験に出るということがわかるから事前には困難である。だが、著作者からすれば直すのは嫌だ、直されたら困る、そういうのがあるでしょう。こういうのは一体どうなんだろうか。
  221. 加戸守行

    加戸政府委員 先生の御質問は、著作者人格権の中の同一性保持権にかかわる問題でございまして、作品は原作のままで利用しなければならぬという建前になっております。ただ、教科書に載せる場合と学校教育番組に利用する場合につきましては、例えば常用漢字、現代仮名遣いという形で、学校教育の目的上必要な場合には改変することができるようになっております。ただ、入試問題につきましてはそのような規定がございませんので、今の問題は、仮に原作が「テフテフ」であるのに「チョウチョウ」という形でもし入試問題を出すとすれば、これは著作者人格権に触れる疑いがあるということでございます。
  222. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間が来ましたからやめます。
  223. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後五時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後五時開議
  224. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。滝沢幸助君。
  225. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それでは、私から質問申し上げますけれども、文部大臣、私はこの著作権というものに対して殊のほか関心があるのです。  と申しますのは、私は実は青年時代に出版業をやろうと思ったのです。その当時、つまり戦中でございますが、日本には双壁と言われる出版王がありまして、一人は講談社の野間清治、一人は主婦の友社の石川武美。この野間さんは、講談社の七大雑誌、九大雑誌というようなことで積極的な財政運用というのですか、そうしてこの人は、出していらっしゃる「キング」という雑誌のあの表題が英語だと軍閥政府がこれを好まぬ、紙の配給も云々というようなことで直ちにこれを「富士」と改題したりで、なかなかいわば臨機応変、時局便乗型でございました。ところが、主婦の友の石川社長というのは、終始一貫「主婦之友」だけ出すということでしたな。そして、実はこの人を私が尊敬申し上げるのは、「主婦之友」に誤植があれば、活字一つにつき一千円でしたかな、百円か知りませんけれども懸賞を出したんですね。そして彼が言うのには、この「主婦之友」の記事の中に仮に過ちがあった、料理のページに大さじ一杯とあるのが小さじ一杯になったり、一杯が三杯になったりしたことによって夫婦げんかができたり大変なことができよう、育児のページに一字の間違いがあったために子供一人を死なせるようなこともある、だから責任のある本を一冊だけ出そう。このことに私は大変引かされまして、私もこのごとくありたいと思いましたが、事志と違いましてこの政治の世界に入り、流浪しますること長く、ようやくここにたどり着いたわけでございます。  ところで大臣著作権法というものが明治の昔からございましたのに、戦後、いわゆる文部省に変わってきました。戦中は内務省でございましたね。殊さらにこれを文部省が所管するということはどのように御理解でございましょう。ちなみにこれを商行為と見るならば、これは通産省でもよろしい。ただ単なる法律契約のことといえば、これは法務省でもいいのではなかろうかと考えるのですが、文部省が著作権法を所管されるということをどのように御理解ですか。
  226. 森喜朗

    森国務大臣 歴史的な経緯等につきましては事務当局からお答えをいただいた方が適切であると思いますが、文部省は固有の事務所掌として文化、教育、芸術、この振興に携わる行政府でございます。著作権はまさに文化、芸術、薫り高いものである、こういうふうに私は考えておるわけでございますが、今御指摘のように、当時の内務省から文部省云々というようなことの歴史的な経緯については、政府委員から答弁させたいと思います。
  227. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それは結構です。歴史的な経緯はいいんですよ。私は、文部大臣が、その著作権法を文部省が所管しているということについての、いわば理解を今承りたかったわけです。  というのは、私に言わしめるならば、これはただ単なる商行為ではない、ただ単なる産業の一面というふうなとらえ方をするのではない。出版にしろ音楽にしろ、教育的視点に立って文化を進めよう、こういうことではないのかな、こういうふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  228. 森喜朗

    森国務大臣 そのとおりだと思います。
  229. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そこで、今度の改正案でありますが、何か大臣は、かつて自民党の著作権問題のプロジェクトチームの責任者をお務めと聞きまして、大変お骨折りのことと敬意を表しますけれども、今度の改正のこの案ですね、これに大臣の多年の御研究、御努力の成果はどのように盛り込まれてありますか。
  230. 加戸守行

    加戸政府委員 今回の著作権法一部改正案は、先般の国会において成立いたしました貸しレコード暫定措置法の内容を実質的に引き継いで、若干法的な整備あるいは他の著作物とのバランスも考慮しながら体系的に整備しようとしたものでございまして、考え方の基本は、森大臣が自民党の著作権プロジェクトチームの座長をなさっておりましたときに構想された考え方を実質的に受けとめて引き継いだものだ、そういうぐあいに理解しておるわけでございます。
  231. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 実は恐縮ながら、大臣に、あなたの考えはどの程度入っていると思っているかと聞いているわけで、あなたが答えても、まあこれはあなたが大臣の考えを入れたと言えばそれまでかもしらぬけれども、どうかな、あなたに注文したときにあなたが答えてちょうだい。  そこで、今その先へ行かれましたから、つまりは今度の改正案というものは、いわゆる暫定法が五十八年の十一月に成立をしまして、十二月二十日に公布、そして来るべき六月二日から施行するところの暫定法を本法にいわば抱き込んだ、それがほとんどのものだというふうに理解してようございますか。今度はどうぞ。
  232. 加戸守行

    加戸政府委員 現在、貸しレコードの問題が社会的にいろいろな影響を持つ形で起きております事象に対します対応といたしましては、この貸しレコード暫定措置法並びに今回の著作権法の一部改正案はほぼ同様の効果を来すものでございますが、そのほかに著作物の他のレンタルあるいは高速ダビング機器業者の規制といったような形で、法体系といたしますれば、貸しレコードに限定しないでその他の範囲に広げる、あるいは規制の範囲も、貸与権のみならず報酬請求権、さらには高速ダビング業者の規制といった形で幅広く法体系の整備をしようとした点では、暫定措置法に比べれば膨らんできているということは言えると思います。
  233. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 私、けちをつける気はございません。ですが、この暫定法から今回の本法に移る過程を見ますると、暫定法がこの六月に施行されるというのでしょう。そして、追いかけるように本法が改正になるわけだけれども、いささか拙速のうらみはないだろうか。暫定法があの経過でできるときにこれをおやりになる決意があったら、あのときに今回の提案があっていいのじゃないか。あるいはまた、暫定法はもう発効するのですから、そうなれば、後からお伺いしまするけれども、今度ソフトウエアというようなものが今議論になっているのでしょう。その議論が実りあってから一緒に出してくる、こういうことでもいいのではないか。どうもそのときそのときの忙しい仕事に追われ過ぎているのじゃないかな、こう思うんですよ。つまり文部省は、ソフトウエアのこと、プログラムのことについて通産省との協議がいわば実りましたならば、追っかけ今年中にも、これはまた仮に文部省が所管するということになれば、さらに提案してくるのですか。そこら辺のところはどうですか。
  234. 加戸守行

    加戸政府委員 ソフトウエア保護の問題に関しましては、ただいま通産省と鋭意調整中でございまして、今後の法形式のあり方、内容のあり方等も含めまして調整をしていくわけでございますが、先生の御質問が、仮にということでございまして、仮に文化庁が所管する形で著作権法改正で行くということで両省庁が合意した場合におきましては、当然速やかな時期に提案申し上げたいとは考えているわけでございまして、今後の折衝、調整いかんによるということでございます。
  235. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 結構なことです。だけれども、私が申し上げているのは、暫定法ができるとき、今のようなことをなさる考えがあったならば、あのときもうなさったらいいじゃなかったか。今、暫定法を追いかけて本法を改正しようとするならば、それも一つのことだけれども、仮に今度議会が二カ月延長されるというような説もありますわな。そして、仮に二カ月も延長されたならば、二カ月もかかったならば、さすが通産省との話し合いもつこうか。そうしたら、これが文部省の所管、こうなったときは、今会期中にも追加提案されますか。つまり、私が申し上げたいのは、余りにもその場その場、忙しく仕事を進め過ぎるのではないのかな、こういう感じがするのですが、これは二カ月延びたら提案しますか。
  236. 加戸守行

    加戸政府委員 要しますれば、ただいまのソフトウエア保護の問題につきましては、両省庁間での今後の調整次第でございまして、調整がつけばという仮定法のもとでございますれば、また会期が延長されればという仮定法、両方の仮定に立った上でのお答えでございますので非常に答えにくいわけでございますが、話が見事に円滑につき、かつ所管の問題も文化庁著作権法でいくということで通産省が合意に達したということであり、かつ審議期間等の余裕があるということであるならば、あり得る話ではございます。
  237. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 きのうの議論を聞いておりますと、文部省では、このソフトウエアのこともいわば著作権の範囲だというふうにお考えのように承りましたが、そうですか。
  238. 加戸守行

    加戸政府委員 この問題の認識につきましては、当方と通産省との間に考え方の相違があるわけでございます。ただ、文化庁といたしましては、現在の著作権法のもとにおきましてコンピュータープログラムも著作物として保護されていると考えているわけでございまして、また具体的には東京地裁、大阪地裁、横浜地裁の三つの地裁の判決も出されているという状況を踏まえた上で対応を考えているという状況でございます。
  239. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そこで、通産省さんおいでのはずでございますが、通産省の方では、これは著作権法にはなじまぬ、いわばこれは商業サイドのこと、つまり通産省がプログラム等の保護に関する法律というようなものを出そう、そのことについて文部省と話し合いをその線でしたい、こういうふうにお考えと理解しておりますが、そうですか。
  240. 河野博文

    河野説明員 おおむね、先生おっしゃったとおりでございまして、通産省では、産業構造審議会の場で約一年かけて検討いたしました結果、独立の立法でこのプログラムに関する権利を保護してはどうかという答申をいただいたわけでございまして、この考え方に沿って文化庁とも意見交換を続けさせていただいておるという状況でございます。
  241. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 通産省さんの方では、この同会が二カ月も延長され、さらに二カ月かかって話し合いがつかぬようでは話になりませんから、話し合いがついたらこの議会中にもあなたのおっしゃる保護法は提案されますか。
  242. 河野博文

    河野説明員 先ほど文化庁加戸次長もお答えになりましたように、いろいろ仮定の御質問でございますので、これまで長く文化庁さんともいろいろ議論させていただいてきておりますけれども、まだ意見の一致を見ていないというのが実態でございまして、私どもは今国会にこだわらないで、とにかく国内的にも国際的にも議論を尽くしたいというのが私たちの考え方でございます。(滝沢委員提案するかしないかということは……」と呼ぶ)  その点につきましては、仮定の御質問でございますけれども、もちろんすべての調整がつけばそういうこともあり得るとは思いますけれども、まだ時間がかかるような気もしているのが現状でございます。
  243. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そこで私は、外国との話し合いすら一つの目標と見通し、そして責任を持ってやるんでしょう。同じ国民から信託された政府、中曽根総理大臣のもとの右の手と左の手が、どうしてそのように見通しのつかぬ話をしているのですか。作業の面で両省がいついつをめどに話を決めよう、こういう一つのプログラムがなくて、同じ中曽根内閣総理大臣のもとの右の手文部大臣、左の手通産省ですか、その間のことはどうです。外国との話し合いですら目標を持っているのですよ。この点は文部大臣、どうです。
  244. 森喜朗

    森国務大臣 文部省といたしましては、先ほど本会議前の御質問の中でも申し上げましたけれども、コンピューターのいわゆるソフトプログラムは、これはいわゆる学術的な思想の表現でございます。したがいまして、これは著作権で保護されるべきである、こういう考え方に文部省は立っております。  私から通産省の立場のことを国務大臣として言うことはいかがかと思いますが、政治的な立場で言えば、通商政策としてはやはりコンピューター等を含めて産業の育成を図っていく、そのことが日本全体の産業の発達にもなる、そういう見地からお考えになっておられることだろうと思います。したがって、著作権法ではだめだとかおかしいという言い方もしているわけではないわけで、工業所有権と私どもが申しております著作権法との間の中での何か新しいプログラム権みたいなものができないだろうかと通産省の方ではお考えになっておるようでございます。  私どもの立場は、あくまでも学術的な思想の表現であるから、しかも、先ほど加戸次長も申し上げたように外国も既に百一カ国、この考え方になっておるわけでありますし、また日本におきます判例も先ほど申し上げたとおり出ています。したがって、五十年云々とかどうとかいうことについて、このお考えはその法律をもとにお考えになるべきであろうなあというふうに、これは私の私見ですけれども持っておりますが、通産省としては、産業育成の面から何か方法がないかということで模索をしておるのだろう、こう思うわけでございます。  したがいまして、今中曽根内閣の右の手の文部大臣、左手の通産大臣、内閣不統一ではないかということにはならない。いずれも私どもは、この著作権という大事な、文化、学術、これの保護を大事にしていきたい、こう考えて、このもとで考えていただきたいという考え方を持っておりますが、通産省としては、別の角度でできないものだろうかということを今模索しているわけでありますから、その模索していることが全くだめだとか、それは内閣としておかしいじゃないかという御指摘には、私はならないのではないかというふうに思っております。  先ほど、もう国会もこういう時期になって云々というようなこともございまして、何をもたもたしているかというようなお話もございましたが、大変大事な問題でもございますので、別に足して二で割って妥協するというような考え方を持っているわけじゃございませんけれども、いずれにいたしましても大事な問題でありますので、政府といたしましても両省間で事務的に十分話し合ってほしいということで、私は事務当局に督励もいたしておるところでありますし、党の方におきましても、文教部会、制度調査会あるいは党の商工部会等でこの問題について今議論をしておられるところでございますので、そうした意見がある程度煮詰まるまでしばらくその様子を私としては見ていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  245. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間もないですから深追いしませんけれども、先ほど申し上げたとおり、同じ内閣のもとの右腕、左腕という立場の両大臣ですから、いついつまでにこのところまでの作業を終わろう、いついつまでにこのことを詰めようという目標は持っていらっしゃるのが当然だし、持っていらっしゃるんだろうと思うのです。それをのんべんだらりんと、話し合いをして話し合いをしてと言っていたんでは、これは話にならぬことであります。  そこで、仮に簡単な例をとりますと、本一冊でも、著作権ということになればこれは著作権法による文部省の所管ですな。しかし、あれが印刷機に付されてそして製本されて売り出されてというような商行為の方になりますと、これは通産省ですかな、そういうようなことですから、このプログラムのことについても、その著作の権利ということと商行為の部分ないしは機械の取り扱い、またその権利という部分を分けていくのが一つの方法ではないのかな、こういうふうにも私は思うのですよ。そこら辺のところは両省、どうですか。
  246. 加戸守行

    加戸政府委員 先生指摘のように、権利の性質をどのようにとらえるかという問題があるわけでございまして、プログラムに関しまして著作権でとらえました場合には、国際的には著作権条約の傘の中で、国内法的には著作権法の中で規制される問題でございまして、殊に権利が行使された結果として生じた産品の流通とかあるいはソフトウエアの開発促進あるいは利用者の保護といったような問題につきまして、著作権法がカバーするわけではございませんから、その意味での可分性というのは当方としては当然截然とあり得るとは考えておりますが、通産省におきましてはまた別のお考え方、利用促進と、権利の保護は一体的にすべきだというお考えもあるようでございますので、通産の方からのお考えをまたお聞きいただくことがよろしいかと思います。
  247. 河野博文

    河野説明員 お答えさせていただきます。  今加戸次長からお答えがございましたように、私どもの考え方自体は、権利の保護と利用の促進の一体性というものを念頭に置いておりますので、先生おっしゃるような考え方もあろうかとは存じますけれども、同時に、権利の中でもどうもうまく利用の促進と切り離せないような部分というものも制度的には、私どものアイデアにはあるわけでございます。ただ、先生指摘でございましていろいろな可能性があると思いますので、これから文化庁とよく御相談を申し上げたいというふうに思っております。
  248. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 とにかく大事なことであり、また急がれることですから、両省縄張り争いなどというような言葉が出ないように精力的に問題を詰めて、そして早く、いずれにしましても両方が争っていたのでは、お父さん、お母さんがけんかしているところの子供と同じで、結局保護されぬことになるわけですから、どうかいずれの道か開いて、これらの権利が保護されるように対処をお願いしたい、こう思います。  ところで、改正案が決まっていきます中で、暫定措置法施行に向けて今各団体調整をされてきたのでありましょうけれども、しかし、六月二日を目指していろいろまだ詰めなければならぬものがございますね。これは関係団体話し合いが多分に残っているのだけれども、どのような立場からこれを指導されていくのか、また指導する権限は文部省にあるのかどうか、この辺はどうでしょうか。
  249. 森喜朗

    森国務大臣 先生にお許しをいただいてちょっとさかのぼって、先ほどの御質問も含めて、これに関連をいたしますので御答弁申し上げたいと思いますが、六月二日から暫定法施行をして、今国会でまたこの法律を出して拙速でおかしいじゃないか、そういう御質問もございました。  これは今の御質問とも関係がございまして、こうした問題が出てまいりましたのは今から三年ほど前ですね。そして、私は党で委員長をしてまとめて、国会に議員立法として提出をさせていただきましたのが五十七年八月でございます。その間、なかなか御議論の調整がとれなかったわけです。私も、ここにいらっしゃいますが木島さんにも、ほとんど各党の皆さんに実は御相談に上がったのです。自民党の中でも大変意見が分かれている。各党の皆さんの中でもさまざまな意見があるのです。大変難しい問題です。特にレンタルレコードというのは、本来いえば通産省の責任なんですね、どういう御商売をおやりになる。それは宅急便でもそうだと思うし、名前を挙げていいかどうか知らぬけれども、化学ぞうきん、ダスキンでもそうだし、ヤクルトでもそうでしょう。みんなアイデアからきた産業がきちっとした産業になっているわけですね。ですから、レコードを貸してそれをお客がコピーするのだから、別にコピーしなさいと言って売っているんじゃないからいいじゃないかという意見が出てくるわけです。本当はこんなものは文部省で、文教の場で規制するというのははなはだおかしいという考え方に私は立っておったのですが、これは通産省に申しわけないのだけれども、当時通産省は、実態は知っているけれども通産省としてはどうにもできませんという当時の事実は事実。レンタルの組合の皆さん自身も、組合といいますか、当時は組合もなくて、通産省の文化用品課に属するけれども文化用品課の直接の指導が全くないという状態でございましたから、当時といたしましては、著作権で商売をさせなくするというような形はできないのであって、何とか秩序正しいものにしてもらいたいというのが私がまとめたいわゆる暫定法でございます。  それにいろいろと肉づけいたしますし、また国会の御論議で、あの暫定法に各党の皆さんから御賛同いただいたということが一つのてこで、いろんな形で本法案の改正案にもまた弾みをつけていったわけでございますので、それはそれなりに大変意義があったと私は思います。しかも、各党のいろいろな議論をすべて集約されて御論議をしていただいたということでございますので、何か拙速でちゃっちゃっとやっているんじゃないかという御疑念は、その点でぜひ御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。  したがいまして、この暫定法にいたしましても今度の改正案にいたしましても、業界が秩序正しく話し合っていただいて、そして大事な音楽をつくり演奏をした人たち、そういう人たちに対して、大事な著作権の法のもとできちっとした代償を払っていただくということなら秩序正しい御商売をしていただいていいのじゃないでしょうか、こういう考え方が基本にあるわけでございまして、そういう意味で各団体が、直接は文化庁の事務当局がやっておるようでございますが、許諾権の行使に当たりましても「公正な使用料によって許諾する」ということで、関係者が円満な秩序形成について今話し合っているところであります。  もし具体的なことが必要でございましたら、事務当局から説明をいたさせます。
  250. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま権利者団体使用者団体の間におきましていろいろな話し合いが続行中でございますが、とりあえず作詞作曲家著作権者側の立場といたしましては、精力的にレコードレンタル商業組合との間の話を詰めまして一応妥結合意に達しました結果、四月十六日に著作権使用料規程改正案が申請をされたということでございます。これは六月二日の施行前に、文化庁長官として著作権審議会に諮問した結果として認可する予定でございます。  それから、著作隣接権者側といたしましては、日本芸能実演家団体協議会並びに日本レコード協会の二つの団体があるわけでございますが、これは著作権ほどはとんとんと進捗しておりませんで、まだ大ざっぱな感触打診の段階でございますので、それほど日数があるわけでございませんが、これから鋭意、お互いの金額の提示、内容等についての話し合いが進んでいくものと思います。その段階におきまして、先ほど先生指摘なさいましたように、暫定措置法下におきましてはこれらの著作隣接権に関して文化庁といたしまして物を言う権限はないわけでございますが、当委員会に置かれました小委係員会の小委員長報告にも、「関係者の間の円満な秩序の形成」ということでの努力方を要請されておりますので、文化庁は事実上の行為といたしまして、指導助言あるいはサゼスチョンを与えるという形で円滑な利用関係が形成されるように、今いろいろな形で接触をしているというのが現状でございます。
  251. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 だんだん具体的なことになりますけれども、今回の改正は、いろいろ聞いておりますと貸しレコードのことがほとんどですね。一般著作物の方には余り入ってない、そういうようなもののようですが、そうですね。
  252. 加戸守行

    加戸政府委員 著作隣接権に関して申し上げれば商業用レコードのレンタルだけでございますが、著作権につきましては著作物複製物全般について権利を一応及ぼしまして、将来起こり得るレンタルをすべてカバーするという考え方でございます。ただ、そのうち、貸し本業につきましては、長年のこういった実績等もございます関係上、附則で当分の間外しておりますが、基本として、法の立て方としましては、著作物複製物貸与についてはすべて著作権が動くという立て方をとっておるわけでございます。
  253. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そこで、今の一般著作物についての附則四条の二に貸与というようなもの、そして五条の二にはコピー、これらは何か聞くところによりますと、文化庁段階ではこういう特例はなかったのに法制局が入れたとか言われるのだそうでありますけれども、これは「当分の間、」というのですけれども、コピーはどんどん行われていてもう始末にならぬというようなこと、あるいはまた料金の支払い等については、それを一括してやってくれる団体等もなかなかない、いわゆる始末に困るということだと思うのですよ。だけれども、これは、こういうことを始末してくれる団体等ができたらそれまで、それができたらこの特例はなしにして、これも正常な法のものになるというふうに理解していいですか。
  254. 加戸守行

    加戸政府委員 御提案申し上げています中で、附則の四条の二の書籍雑誌のいわゆる貸し本業に関します適用除外につきましては、当初、文化庁試案からあったわけでございますが、附則五条の二の方の、先生今御指摘の文献複写機器に関しましては、当初の文化庁試案では適用除外にはしていなかったわけでございます。  その後、いろいろ内閣法制局での、あるいは法務省等の審議を重ねる中におきまして、諸般の集中的権利処理機構がない今の段階で、権利を及ぼし、かつそれが違法であるといっても、事実上違法状態を野放しにする結果になることが妥当かどうかというような検討を重ねました結果、附則五条の二の提案をさせていただいたわけでございます。  このことにつきましては、今先生おっしゃいましたように、権利者側の集中的権利処理機構が確立された場合におきまして、あるいは確立の見通しが立った段階におきまして、削除の提案をさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  255. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 わかりました。業界でもそれをきちんとし、早く除外できるように、そのことを確認させていただきます。  そこで、先ほど、許諾権のような考え方一般著作物には及ばぬというふうにおっしゃったと思っていいですか。一般著作物についても、いわゆる今度うたわれている許諾権というものは発動しますか。
  256. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいまの御質問は、著作物複製物貸与全般について許諾権が及ぶかという……(滝沢委員「従来の本について」と呼ぶ)御質問、ちょっと意味がつかみかねます。もう一度おっしゃっていただけますか。
  257. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今度の許諾というような考え方は、昔楽に関係ない従来のいわゆる本にもあるものですか。
  258. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますのは、書籍等の貸与についての権利という意味でございますでしょうか、木を貸すことについて許諾権が動くかどうかという御質問でございましょうか。
  259. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いや、権利を――まあいいや。どうも、なかなかうまくかみ合いませんね。それはちょっとおきます。  次に、報酬請求権というのがきちんと書いてあります。これはいつまでこの権原はあるのですか。
  260. 加戸守行

    加戸政府委員 御提案申し上げております九十五条の二並びに九十七条の二の報酬請求権につきましては、著作隣接権存続期間内のものについて報酬の支払い義務を課しております。したがいまして、実演が行われてから二十年間あるいはレコードが発行されてから二十年間、報酬の支払い義務があるということでございます。
  261. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これはどうして二十年なのですか。数字というのは案外決め手のないもので、三十年でも十年でもよさそうな感じもするのだけれども、どうして二十年なんですか。
  262. 加戸守行

    加戸政府委員 我が国著作権法におきます著作隣接権制度は、一九六一年にローマにおいて作成されました隣接権条約をモデルといたしまして、条約そのものには加入いたしておりませんが、条約の考え方を取り入れて国際的に適合する制度としているわけでございます。その関係上、著作隣接権については、実演レコード放送のいずれにつきましても先ほどのローマ条約規定を受けまして、国内的にも二十年という定め方をしているような次第でございます。
  263. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 わかりました。  そこで、一般著作物、木は、執筆者が亡くなって五十年というのですから始末がいいのです。ところが、レコードみたいなものはその行為があって二十年ですね。しかし、仮に十九年十一カ月目に同じ歌を別の時点で歌えば、そこからまた二十年ということになりますね。そうしますと、考え方によりましては、これは非常に長いものということですか。
  264. 加戸守行

    加戸政府委員 今先生、歌の例をお引きになりましたが、実演の保護と申しますのは、実演家が行った個々具体的な実演、例えばある歌をある時点で歌ったときから二十年間の保護があるわけでございまして、同じような曲目を別の日に、あるいは何年かたってまた歌った場合にそこからまた二十年スタートする、一回一回の歌う行為について権利が発生し二十年続く、そういう関係になっておるわけでございます。
  265. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 著作権審議会が新しい組織をつくって権利行使の窓口になってほしい、なるべきだ、これは先ほどもちょっと触れてきましたが、期待されているのはそういうことですね。六月二日までにそれをつくるのでしょう。そうじゃありませんか。
  266. 加戸守行

    加戸政府委員 六月二日から暫定措置法が動くわけでございますが、今の暫定措置法下の立て方といたしますれば、それぞれの権利者、つまり歌手、演奏家あるいはレコード会社、それぞれが権利を個別的に行使するたてまえになっております。今回の著作権法一部改正案では、団体による権利行使を義務づけたりあるいは可能にしておりますけれども、そういう意味では、本来的には個別的な権利行使ということが暫定措置法上は出てくるわけでございます。  しかしながら、実務的に申し上げますと、そういった個別の権利行使ではなくて、六月二日からも芸能実演家団体協議会あるいはレコード協会といった団体を通じて行使するように今指導しておる段階でございますし、また団体側の意向も、団体によって権利を行使しようという方向で動いているように理解いたしております。
  267. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いずれにしましても、民間団体が十分に話し合わなくてはならぬというか、多々残っているみたいに私は読んだのですけれども、これが六月二日までに話し合いがつかなかったらどうなりますか。
  268. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、著作権の方につきましては既に使用料規程の申請が出ておりますので、この部分は問題がないわけでございますが、御心配の点は、実演家関係レコード製作者関係であろうかと思います。  今後、六月二日へ向けて精力的な話し合いを詰めていただき、場合によっては文化庁も中に入って事実上の御相談にあずかりたいと思っておるわけでございまして、仮定の御質問で、六月二日までにもし料金等の話し合いがつかなければどうかという御指摘でございますが、そういう事態を想定していないわけでございますけれども、仮定の問題として話がつかないことがあり得ました場合に、文化庁といたしましては、話し合いがつかないからレコード貸与は禁止するといった措置は絶対にとってもらいたくないということで、これは関係団体に対しそういうようなお願いをしたい、指導したいと考えておるわけでございます。
  269. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今、各団体の作業の進めぐあいはどんなぐあいなんですか。大変円満に期日までに進みそうなぐあいですか。
  270. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、当面、レコードレンタル商業組合といたしましては、著作権使用料の妥結を目指しまして精力的な取り組みが行われまして、四月十六日に申請が音楽著作権協会から出たわけでございますが、その間、隣接権関係団体との話し合いは数回程度でございまして、音楽著作権の場合に比べますと取り組み方というのは、回数あるいは内容的にもそれほど詰まっていない状況でございます。ただ、音楽著作権使用料につきましての話が妥結したわけでございますから、以後は著作隣接権関係の問題についての取り組みになるわけでございます。  そういう意味で、文化庁といたしましては、芸能実演家団体協議会、レコード協会あるいはレコードレンタル商業組合、それぞれとたび重なる会合、相談等を申し上げておりまして、当事者間の接触が、そういう意味では直接的な接触がまだ回数が少なかったということは事実でございます。今後、両当事者間の自主的な話し合いを促進していただきまして、その間に文化庁といたしましてもできる限りの指導助言をして、六月二日の法施行に間に合わせたいと考えておるわけでございます。
  271. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 その指導と助言は、権限はあるのですか、権限はなくて善意な介入ですか。
  272. 加戸守行

    加戸政府委員 法律上の権限はございません。  ただ、権利者団体でございます芸能実演家団体協議会、レコード協会、さらには使用者団体でございますレコードレンタル商業組合、いずれも話し合いで言い値の開きがある、折り合いがなかなかつかないような状況のときにはぜひ文化庁に間に入ってもらいたいという要請を事実上受けておりまして私どももそういう意味での相談に乗っているということでございます。
  273. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そして、今決まったのは五十円でしたね。五十円というのは何か根拠があるのですか。つまり、これから各団体権利間の話し合いをします。それは何か基準があっての話ですか。全く各団体が何の目安もなく話すものですか。
  274. 加戸守行

    加戸政府委員 今御指摘の話は、著作権使用料について折り合いのついたLP一枚の二日間の貸し出しについて五十円というような著作権使用料の申請がございますので、その数字の意味だと思います。当初は、日本音楽著作権協会が、いろいろな状況を勘案しながら七十円の提示をしたわけでございまして、その七十円の主張自体も確たる論拠があるわけではございませんが、著作物の録音使用料、あるいは使用料というものを直接的に主張するわけにはまいりませんけれども、そういった金額の勘案、考慮というのが一つあったと思います。  それから、例えば著作物に限りませんで別のレンタル料金との相関関係で、どの程度ならば支払いが可能であろうかというような相手の懐を探った上での考え方もございまして、そういう一種の、適切な言葉ではございませんが、腰だめ的な感じで七十円でどうであろうかということで話の提示がありまして、その形が詰められて五十円になったという、ある意味では、五十円であれば貸しレコード著作権使用料を払っても成り立つ、あるいは権利者側からいえば、五十円もらうならば著作権者もこれで満足できる、両者の合意の接点が五十円であったというぐあいに理解しております。
  275. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ところで、レコード会社は当然この売った利益によって経営して、そして次の製作にかかる。これがうまく回転することによっていわば音楽文化といいますか、これが発展向上していくわけなんだけれども、何か最近こうした貸しレコードというようなことになりまして、聞くところによりますと、全国で八千店とかいいましたか、それが一割くらいはもう店じまいしてしまった、こういうようなことを開いているわけであります。これはつまり、料金が正規に課せられることになってきますと、レコードの値上げにつながるものか、ないしはレコード会社の経営の伸び悩みというようなことにつながるものか、そこら辺のところはどういうものですか。
  276. 加戸守行

    加戸政府委員 今回御提案申し上げております著作権法一部改正による措置がとられました場合、もちろん内容的には暫定措置法の内容を引き継ぐわけでございますが、六月二日以降の実態でどのような変動があろうかという趣旨お尋ねだと理解いたしますと、いわゆる現在の実態として行われております貸しレコード業というものにつきまして、権利者団体許諾を得て使用契約を結び、それの使用料を払う、そういう関係が成り立つわけでございまして、その使用料著作権者あるいは隣接権者、その中にはもちろんレコード会社も入りますけれども、そういった方々に入っていくわけでございますが、先生の今言及なさいましたレコードの小売店とは、このこと自体は直接かかわりのないことでございまして、ただ貸しレコード業が存在するという実態によってレコード小売店の売り上げが減少し、影響を受けていることは事実でございますけれども、今回の著作権法一部改正案あるいはその前段階としての貸しレコード暫定措置法、いずれも小売店との関係についてはメンションしない事柄でございまして、著作権者、あるいは実演家レコード製作者といった著作隣接権者、これらとの相関関係貸しレコード業について規定したものでございます。
  277. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ちょっと話は違いますが、輸入盤、輸入されるものについてはどういうことになりますか。
  278. 加戸守行

    加戸政府委員 輸入盤でございましても、もちろん外国作詞作曲家の曲が入っているわけでございまして、日本はベルヌ条約、万国著作権条約の両条約を通じまして百一カ国との間に著作権保護関係がございますので、それらの国の著作物でありますれば当然著作権としての貸与権は動くわけでございます。したがって、日本音楽著作権協会外国著作権処理団体から委託を受けている分野につきましては権利を行使するということになろうと思います。  一方、著作隣接権に関しましては、日本はまだ一九六一年のローマ条約に加入いたしておりません関係上、外国実演家あるいは外国レコード製作者は保護いたしておりませんので、今回の貸与権あるいは報酬請求権も及ぼさない立て方をとっておりますので、輸入盤につきましては著作権のみで、実演家レコード製作者にはかかわりなく貸与ができる、こういう仕組みになっているわけでございます。
  279. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そうしてもう一つ、午前中もお話がありましたけれども、訴訟がありまして、これが今和解に入っている。これはどういうぐあいに和解が進んでいくのですか。見通しといいますか、見方がいろいろありましょうけれども。
  280. 加戸守行

    加戸政府委員 貸しレコードをめぐります訴訟につきまして、多分、私どもは暫定措置法が成立した関係だと思いますが、裁判長からの和解勧告が行われておりまして、両当事者ともその和解の方向で動いておりますが、実はこの和解の内容と相関関係がございますのは、今度の暫定措置法によってどのような形での権利行使がされ、どの程度料金を払うのかという、それとの相互関係がございますものですから、和解の内容はまだ今未定でございまして、具体的に申し上げれば、私どもの感じといたしましては、多分六月二日からの状況との相互リンクで過去の問題の解決をすることになろうかと予想しております。
  281. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 話が少し変わりますけれども、最近の出版界の傾向に何か特徴的なものがありますか。
  282. 加戸守行

    加戸政府委員 難しいお尋ねでございますが、文化庁次長といたしまして、著作権サイドから申し上げますと、出版界の問題としましては、特に学術文献、学術雑誌といったもののコピーが非常に行われておりまして、学術雑誌というものがなかなか経済的にペイしないという悩みがあるように私どもは承知しておるわけでございます。  そのほかの問題につきましては、具体的な趣旨の御質問がございますればお答え申し上げたいと思います。
  283. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 私は一番最初、著作権が文部省の所管になっているのはどういうことだろう、こうお伺い申し上げたのでございますけれども、今おっしゃるように確かにコピーが進みまして、例えば大学の先生なんかがお書きになった本というのは大学の生徒の数売れる、楽な商売だというような悪口も昔はあったものです。ところが今は生徒の数ほど売れぬというようなこともありまして、一面からいうと、どこかの一流大学、二万人も生徒のいるところの調査だそうでありますけれども、月々読んでいる刊行物は何かというアンケートに対して、上から十番目まで漫画だったというようなことを言います。低俗と言ったらしかられるかもしらぬが、ああいうものはどんどん売れる。そして、週刊誌に書かれて苦労されているお偉い先生方もおいでのようでありますけれども、これも私はあえて低俗、有害と言わしてもらってもいいと思うのですけれども、あのような本は飛ぶように売れる。こういう傾向が言論、表現、思想の自由というようなことで言われるわけでありますけれども、悪書追放のことも各党間で今議論が進められておりますが、いわゆるこの著作権の所管が文部省であるという立場にかんがみるならば、言論を統制しようというのじゃありませんけれども、より文化の高い作品はあまねく読まれている、質の低い非文化的なものはだんだん後退していくという状況があってこそ初めて文化国家の建設というあの終戦の日の誓いが現実のものになってくるであろう、こういうふうに私は思うのですよ。そういう意味で、大変難しいことだけれども、これらのことについてのお考え、大臣、ございましたらちょっとおっしゃってくれませんか。
  284. 森喜朗

    森国務大臣 著作権法審議をいたしておりますので、著作権立場加戸次長が最近の出版図書についての見解を述べたわけですが、大局的に見て今の出版業界、出版についてどう思うかということで、私の個人的な見解も含めて申し上げるならば、やはりどうも子供たちも含めて人間がよく考えないような、そういう癖といいましょうか、習性を助長していくような傾向がある。これはいろいろな社会の環境にもよるものであろうと思いますけれども、やはりテレビなどで瞬間的に目と耳で判断をしていく、じっくり物を読んでみるという気持ちがなくなってくる、こうしたことも学校教育の面からいえば子供たちに大変悪い影響を与えているのではないか。そういうことが漫画ブームになっている。この漫画は、単に大学生だけじゃなくて社会人まで、大体通勤電車の中でも漫画を読んでいるという、大人でもほとんど漫画を読むという、そういう傾向にあるというのは文化国家としていささか、出版に対して政府が口を入れるなどということはできませんけれども、お金をもうけるためならどんな弊害が出てもこっちの知ったことじゃないんだという考え方があるというのは、やはり残念です。  特に有害図書、子供たちに与える図書としていろいろと各党で今お話し合いをいただいておるわけでありますが、もう少し私は残念だと思うのは、日本的な有名な出版会社、名前は申し上げていいかどうかわかりませんが、講談社にしても小学館にしても、そういうところが意外な出版物を出していらっしゃる、これも一体どういうお考えなんだろうかな。  それからもう一つは、子供の、小さなお子さん用だなと思って表紙なんかを見ていますと、何か松田聖子ちゃんとか中森明菜というのですか、こういう写真が出ているから、これはもうギャルの、小さい子供たちの対象の本かなと思って中を見ると、裸がもういっぱい満載されているというようなことで、どうも出版全体としてもう少しモラルといいまようか、そのことによる子供たちへの弊害、それから、逆にいえば物をよく考えない人間ができ上がっていくという、こういうことに、教育や文化を預かる文部大臣として大変私は心配しておる。これが最近の出版業界に対する私の考え方でございます。
  285. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 文部大臣の高い見識を承って安心したり期待したりするわけですけれども、何か世界で一番古い本というのですか、木にはならぬですな、仏典はビルマか何かにありまして、それはヤシの葉に鉄筆のようなもので書いたのだろう、何か鉄筆を固定しておいてヤシの葉の方を動かしたらしいなんというのですけれども……。  ところが、世界の思想家の中で釈迦もキリストも孔子も全然本は書いていない。孔子が出版記念会をやって、何か魯の国の王様が祝辞をやったなんという話はないのですね。孔子様は公私どもに忙しいということもあったのでしょうけれども。そういうことで、それ以来の本を書く者の精神というものは、これはいずれの木も、論語にしろバイブルにしろ、著者の名前なんて書いてない。本当に孔子なりキリストのおっしゃったことをそのまま忠実に書いているだけ、それこそ著作権も主張していないわけです。私は、そのころの物を書く者の精神、本をつくる者の精神、これが失われるならば、やはり人類、文化、この繁栄の中に大変な事態を招くということだろうと思いまして、この原点に立ち返った著作権の取り扱いが必要じゃないのかな、こう私は思うのですが、最後にいかがでしょうか。
  286. 加戸守行

    加戸政府委員 もともと著作権と申しますのは、いわゆる出版物に関します権利からスタートしたものでございまして、例えば一八八六年に制定されました著作権に関します国際条約であるベルヌ条約、これは御承知かと思いますが、文豪ビクトル・ユーゴーの提唱によって、いわゆる小説の権利を守るべきである、そういうような強いインパクトによってこの条約が制定されたという逸話が残っているわけでございますが、日本におきましても、著作権思想の啓蒙といいますか、普及に努められたのが明治初頭の福沢諭吉先生でございまして、その方が初めて版権という言葉を英語の訳として使われたというのが著作権のはしりであったわけでございます。  そういう意味におきまして、実は冒頭の先生の御質問関連いたしますが、戦前、内務省でこの著作権を所管しておりましたのは、当時のスタートが出版の取り締まりということと同時に版権を保護するということで、明治初頭の版権条例から版権法に受け継がれ、そして明治三十二年の著作権法に推移したという経緯もございまして、出版の取り締まりをする内務省が同時に著作権も所管していたというのが戦前の流れでございます。  戦後、文部省へ移管されました後、もちろん文部省といたしましては出版問題も所管しておるわけでございますから、先生たびたびの御意見にございますように、私ども、著作権立場からいたしましても、悪貨が良貨を駆逐することがあってはよくないので、良貨が悪貨を駆逐するということによりまして立派な著作物権利によって保護されるのだということが、著作権の精神としても、俗悪なものの著作権を保護するのじゃなくて立派な文化遺産として後世に残せるものを著作権として保護していきたい。その意味におきましても、著作権の意識高揚のためにも出版物にあったはいいものがあってほしいなというのが文化庁としての希望でもございます。
  287. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 どうも、よく拝聴しておきます。  そこで、何か具体的なものを二つほど言い落としております。時間もないですから……。  ダビング機が随分と行き渡っておりまして、これはもうどうにもならぬということもあるでしょう。そして不法に複製が行われる可能性は十分なんですが、これはどのようにして取り締まることができるものかどうか、これはどうでしょうね。  もう一つは、今度のものに罰則規定がありまして、あれは何ですか、百万円の罰金ないしは三年の懲役というようなことになっておりますけれども、この二つのなにはいわゆる併科されるというようなこともありますか。  この二つ、追加して……。
  288. 加戸守行

    加戸政府委員 高速ダビング機器につきましては、ある意味では、店頭で海賊版テープを安く売っていると同じような状態であるということで、この貸しレコードの問題が起きましたときから貸しレコード業者の中でも、高速ダビングによる複製というのは極めて悪質だという認識があったわけでございますし、また、現在、先ほど申し上げましたようなユーザー側としてのレコードレンタル商業組合に加盟しておりますものにつきましては、高速ダビング機器は使用しない、仮に組合員の中で高速ダビング機器を設置したものがあれば除名する、そういう精神で臨んでおるわけでございます。ただ、現実には、実態としまして、私ども把握しております限り、レコードレンタルと高速ダビング機器と併用しております店が百四十五と報告されておりますし、そのほかに独立の高速ダビング業者も恐らくは数十店あるいは百を超えているという状況にあろうかと思うわけでございまして、このような問題につきましては、今度の著作権法改正によりまして、明確に著作権の侵害であり、もちろん民事上の責任のみならず、先生今おっしゃいましたような三年以下の懲役または百万円以下の罰金という規定もあるわけでございますから、例えば裁判所に対する仮処分による差しとめ請求あるいは刑事告訴によります措置というようなことで対応されるということになるかと思いますし、また、そういったような法制度ができることによって高速ダビング業者は自然に淘汰されるだろうということも期待しておるわけでございます。
  289. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。いずれにしましてもこれは大変繁栄の中で出版花盛り、音楽日に日に盛んなりというようなことでありますけれども、しかし、一面から言うならば日本民族の危機という状態もあるわけで、どうかひとつ今回の改正を機とされまして、文部省が勇気と良識を持ってこの著作権の作案と運用に当たってちょうだいしまして日本文化の将来に過ちなきを期していただきたい。文部大臣の高い見識に敬意を表し、その勇気ある対策をひとつお願いしたいと思います。
  290. 森喜朗

    森国務大臣 いろいろと御指摘また御注意もいただきましてありがたく思っておりますが、何しろ予測せざることがどんどん起こり得る社会の変化、あるいは学術の発展でございますので、その中でも文章あるいは表現を大事に守らなければならぬ、憲法も大事に守らなければならない、そういう中で、本当に意欲的に文化あるいは芸術を創作できるような環境を整えていくということで、文化庁はこれからも一生懸命努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  291. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  292. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、内閣提出昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る二十日質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  293. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  294. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、船田元君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。馬場昇君。
  295. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案についての御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について検討し、速やかにその実現を図るべきである。  一 長期給付に対する国庫補助については、適切な措置を講じ、その補助率を百分の二十以上に引き上げるよう努めること。   なお、昭和五十七年度から同五十九年度までの間減額されることとなった国庫補助頼については、特例適用期間終了後適正な利子を付して、その減額分の補てんを行うこと。  二 日本私学振興財団及び都道府県からの助成については、私学振興の見地から、その充実について必要な措置を講ずるよう努めること。   右決議する。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  296. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく本案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。森文部大臣
  298. 森喜朗

    森国務大臣 ただいま御決議がございました事項につきましては、御趣旨を尊重し、十分検討いたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  299. 愛野興一郎

    愛野委員長 なお、ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  301. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十七日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会