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1983-05-11 第98回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十一日(水曜日)委員会におい て、次のとおり小委員及び小委員長選任した。  商業用レコード公衆への貸与に関する著作者  等の権利に関する法律案審査小委員       青木 正久君    石橋 一弥君       浦野 烋興君    奥田 敬和君       狩野 明男君    坂田 道太君       西岡 武夫君    野上  徹君       三塚  博君    中西 績介君       馬場  昇君    湯山  勇君       有島 重武君    三浦  隆君       山原健二郎君    河野 洋平君  商業用レコード公衆への貸与に関する著作者  等の権利に関する法律案審査小委員長                 青木 正久君     ───────────── 昭和五十八年五月十一日(水曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 石橋 一弥君 理事 狩野 明男君    理事 中村  靖君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 鍛冶  清君 理事 三浦  隆君       青木 正久君    臼井日出男君       浦野 烋興君    奥田 敬和君       久保田円次君    高村 正彦君       坂田 道太君    坂本三十次君       西岡 武夫君    野上  徹君       渡辺 栄一君    伊賀 定盛君       小川 国彦君    中西 績介君       湯山  勇君    吉浦 忠治君       栗田  翠君    山原健二郎君       河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君  委員外出席者         厚生省公衆衛生         局地域保健課長 古市 圭治君         厚生省保険局保         険課長     伊藤 卓雄君         農林水産省経済         局保険業務課長 原  昭夫君         水産庁研究部研         究課長     田邊 隆一君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ───────────── 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任   長谷川正三君     小川 国彦君   有島 重武君     吉浦 忠治君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     長谷川正三君   吉浦 忠治君     有島 重武君     ───────────── 四月二十八日  私学助成に関する陳情書(第一九七号)  日本育英奨学金制度充実に関する陳情書(第一九八号)  国立山梨医科大学への腎臓移植組織設備充実に関する陳情書(第一九九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)  学校教育に関する件  医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案起草の件      ────◇─────
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等権利に関する法律案を審査するため小委員十六名からなる商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等権利に関する法律案審査小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、小委員に       青木 正久君    石橋 一弥君       浦野 烋興君    奥田 敬和君       狩野 明男君    坂田 道太君       西岡 武夫君    野上  徹君       三塚  博君    中西 績介君       馬場  昇君    湯山  勇君       有島 重武君    三浦  隆君       山原健二郎君    河野 洋平君 以上十六名の方々を指名いたします。  なお、小委員長には青木正久君を指名いたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及び補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  6. 葉梨信行

    葉梨委員長 内閣提出学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  7. 馬場昇

    馬場委員 私は、まず農林省にお尋ねいたしたいと思います。  今日のわが国畜産現状拡大進行しつつあるのか、あるいは縮小後退しておるのか、畜産行政のあり方、今後の振興策等も含めながら、現状について簡単に御説明いただきたいと思います。
  8. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御質問のございました畜産の全体の姿でございますが、御承知のように需要面で申しますと、日本の食生活、二千五百キロカロリーというような栄養水準でほぼいっぱいのところまできておりますけれども、私ども扱っております畜産物につきましては、かつてほど大きな伸び率ではございませんが安定的に拡大をいたしております。特に、肉類あるいは乳製品等につきましては順調な拡大をいたしております。したがいまして、そういう需要に支えられまして畜産生産そのもの総額で三兆円、農業総生産の約三分の一ぐらいにまで達しているわけでございます。大変大ざっぱな申し方になりますが、その中でどちらかと申しますと豚とか鶏肉鶏卵といった中小家畜につきましては、御承知のようにすでに相当な生産の規模なり体質を備えておりまして、対外的にも自由化をされて海外の商品とも競争力をつけながら、体質強化、特にえさ価格安定等を主力にやっております。何と申しましても土地広がりが問題となります大家畜、これは牛肉生産なり牛乳、乳製品生産酪農でございますが、この種のものにつきましてはやはり土地広がりという絶対的な制約がございます。したがいまして、御承知のように対外的にもIQというような制度なりあるいは一元輸入というような制度を使いまして、外国との間では一つの障壁を設けながら、しかし、国内的に申しますとこの二つ国内需要が最も安定的に伸びている部分でございますので、国内生産性を上げながら極力安定的に消費者方々供給するということが現在の使命かと思っております。  そういうこともございまして、実は今国会に、酪農振興法という法律を一部改正をいたしまして酪農及び肉用牛生産振興に関する法律ということにいたしまして、大家畜生産部門体質強化と申しますか、生産性を高めるための法改正をお願いしておるわけでございます。その中では、限られた土地ではございますが、やはり極力国内草資源等を有効に活用いたしまして、また経済的な肥育に努めながら、土地条件が圧倒的に違いますオーストラリアとかあるいはアメリカ並みということはなかなか困難でございますが、ほぼ土地条件において似た、それでも日本よりは恵まれているのですが、EC並み水準十分達成ができるということを一つ目標にいたしまして、基盤の整備なりあるいは経営体質強化といったものを中心畜産振興を図ってまいりたい。そういうようなことが現在われわれに与えられた責務かと思っております。
  9. 馬場昇

    馬場委員 次に、畜産物輸入状況、これを大家畜、小家畜含めまして、牛はどれだけとか豚はどれだけとかというぐあいに、ちょっと説明してください。
  10. 石川弘

    石川(弘)政府委員 畜産物につきましては、合理的に国内生産が可能なものにつきましては極力国内生産をするということを基本といたしておりますが、国内資源状況等から見ましてすべてを自給するということは困難でございます。  畜種で申し上げますと、まず牛肉でございますが、牛肉は極力国内生産を伸ばしておりますが、大ざっぱに申しまして需要の総量に対して約七割が自給が可能でありまして、あとの三割につきましてはオーストラリアアメリカ等からの輸入に頼っておるわけでございます。金額にいたしますとほぼ一千億ぐらいになろうかと思います。もちろんこれは向こうの市況なりあるいは為替相場等で一千億を割る場合もございますが、ほぼそれぐらいのオーダーでございます。  それからその次に豚肉でございます。これは完全に自由化をしておりまして、差額関税だけで対応するわけでございますが、これも国内生産かなり合理的に伸びておりますので、総体の約一割前後のものが海外から入っております。一割が入ります場合でもほとんどが加工原料用でございまして、テーブルミートにつきましてはほぼ自給をしているという形でございます。輸出国は主としてデンマークカナダ等でございますが、最近デンマーク等口蹄疫が発現しておりますので、輸入量は減っております。金額的に申しますとこれも一千億を若干超える水準でございます。  その他のものといたしましては鶏肉鶏卵等がございます。鶏肉かなり多いときもございましたが、現在は総生産の中の一割弱ぐらいのものでございます。鶏卵輸入量がどんどん減っておりまして、現在若干の液卵等が入るが大半のものは国内自給し得るという状況でございます。  それから酪農製品につきましては、御承知のように主要酪農製品については畜産振興事業団一元輸入制度管理をいたしております。学給用の脱粉とか若干のものはございますけれどもバター等につきましては現在大半自給可能でございまして、実は昨年若干の緊急輸入をいたしましたが、ここ数年ほぼ大半のものは国内供給が可能でございます。チーズは、特に原料となりますナチュラルチーズにつきましては御承知のようにすでに自由化をいたしておりまして、総供給量の八五%程度輸入に頼っておりますが、これも関税割当制度を併用いたしまして国内生産の増強に努めているわけでございます。  大ざっぱに申しますと、畜産物主要製品での輸入総額は約五千億円程度でございますが、総農産物輸入額の中に占めます割合といたしましては約一二、三%というのが現状でございます。
  11. 馬場昇

    馬場委員 牛肉自給率目標農林水産省はどの辺に置いておられるのかということと、それから、ついでと言ってはなにですけれどもえさ自給率がいまどうなっているのか、この二つについて。
  12. 石川弘

    石川(弘)政府委員 農林水産省におきましては昭和六十五年度における需給見通しというものを作成いたしておりますが、その中の見通しの線で申し上げますと、国内供給量が約七割ぐらい、輸入が約三割という現在の比率はほぼ変わらないだろうという想定でおります。ただし、この想定をいたしました際には所得の伸びかなり高い推定をいたしておりますので、現在の水準はそれより若干低い水準になろうかと思いますが、輸入と国産という関係から言いますと大して大きな差はないと私ども思っております。  それからえさでございますが、飼料穀物は御承知のとおり大半のものが輸入に頼っておりまして、国内生産されますものは、飼料用麦類だとかあるいは雑穀類ということで数%にすぎませんので、飼料穀物に関する限りはほぼ海外に頼っているというのが現状でございます。  そのほかの粗飼料につきましては、これは基盤整備等進めておりますので、畜種によって違いますが、たとえば大家畜酪農とかいうものにつきましてはかなり高い自給率を持っているわけでございます。
  13. 馬場昇

    馬場委員 日本畜産を考えた場合に、年々拡大発展をしておるということですけれども、いま最後にお伺いいたしました飼料穀物等はほとんど全部海外輸入でございまして、飼料穀物輸入がとまったというような万一の場合には日本畜産壊滅的打撃を受けることは当然でございますし、よその国の畑を借りて肉をつくっているようなものですから、この飼料穀物日本でつくるという方向でやっていかなければいけないのじゃないかと思うのですが、それに対する御見解と、もう一つは、当面の農畜産物自由化アメリカとの交渉の問題、つい最近もやられたわけで、物すごい自由化の圧力があったわけです。日本政府は枠の拡大というところで応戦したが、話はついていないようです。この農畜産物自由化交渉現状、特にその中でここに関係いたします牛肉の枠の拡大自由化の問題のアメリカとの交渉現状について報告をしていただきたい。
  14. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に御質問でございました飼料穀物問題でございますが、御指摘のように、極力わが方といたしましても穀物類に当たるようなものが国内供給されることが望ましいわけでございますが、御承知のように単収その他を考えました場合に、外国から入ります穀物類トンで申しましても約三万円から四万円というオーダーでございますのに対して、たとえば日本で米で申しますればトン三十万というような大変な格差がございます。したがいまして、尋常一様な方法ではとても広大な土地を持った諸外国穀物価格に対応するような穀物生産をすることは不可能でございますが、われわれのいろんな努力の中で、たとえばいまやっております穀物を完全な飼料穀物まですることには問題がございますが、御承知のホールクロップサイレージのような、穀物とそれから葉や茎類一緒にしてサイレージで使うという手法、これは表と裏とつくります場合には年にかなりの収穫を上げられる、そういうようなことにも努力をする一方、これは量的には大変少のうございますが、私どもの予算の補助事業といたしましても、麦をつくられてそれをえさに回します場合に海外穀物と非常に価格差がございますので、それを補てんする制度をある程度やるとか、そういう努力もいたしながら、極力飼料穀物についても国内でつくり得る素地をつくっていきたい。  その場合に一番問題となりますのは、どちらかというと大家畜でございまして、大家畜につきましては基本的には草をもっと使える可能性がある。特に日本肉用牛生産は草の使い方が非常に少ないわけでございますので、今回の法改正の中でも、国が基本方針を定めて経営を誘導します場合に、極力自給飼料を使うという方に政策の重点を置いていきたいと思っております。  それからもう一点の、当面行っております日米、あるいは当然これも並行的に行う必要がございます日豪牛肉交渉でございますが、私ども基本的立場といたしましては、先ほど申しましたように、現在あります畜産物価格安定法の中で畜産物価格安定帯の中におさまるように牛肉を安定的に供給をする、そのためには主として国内供給生産を増強すると一緒に、どうしても足らない部分については畜産振興事業団中心といたします輸入制度によりまして一定の量を放出をしているわけでございます。幸いにしまして、ここ数年の間は比較的安定的な価格供給もしておりまして、そのことが牛肉消費拡大にもつながっているわけでございますが、私ども双方との交渉をいたします基本的立場は、やはり現在、私が申し上げましたような、どうしても不足する部分を安定的に供給をしてもらう。極端に言いますと、要らないものまで買わされるということは制度の崩壊につながるわけでございますし、そういう意味で、最近の牛肉自給事情なり国内生産事情を諸外国に説明をいたしながら、そういう中で一体どの程度のものが相手からも供給され、こちらも安定的に輸入できるかということを極力事務的に詰め合っているわけでございます。アメリカとの交渉におきましては先月二十六、七日、経済局長向こうと事務的に折衝いたしておりますし、豪州との間にも近々事務的な折衝をするわけでございますが、そのいずれの場合でも、いま申しました立場を貫いて、粘り強く話し合いをしていきたいと考えております。
  15. 馬場昇

    馬場委員 この議論が本題でないわけですので深くはいきませんけれどもえさ等につきましても、いまえさ米なんかについても非常に研究されておるわけでございますし、そういう点についてもやはり十分研究してもらいたいわけですが、最後に一言、この部分について、いまの自由化の問題ですけれども、当然のことでしょうけれども、いまの答弁でわかるのですけれども後ろの方から言いまして、日米の特に牛肉交渉等について、自由化は絶対すべきじゃないと私は思うのですけれども、この辺についての局長の御見解をひとつ最後に聞いておきたい。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども牛肉自給に関しましては、世界全体の姿を見ました場合に、決してどこにでも牛肉があり、また、かつ将来とも自由に安定的に買えるという保証はございませんし、それから牛肉貿易関係を申しますと、先生もよく御承知のように、輸出を望んでおりますアメリカ自身豪州との間に食肉輸入法という法律をもちまして、豪州からの牛肉輸入を抑えているのが現実でございますから、これは専門家同士でよく話し合えば、自由化という手法を使わなくても双方が満足いく結果は十分できるということで、自由化という、要するにIQをやめるという手法は全く考えておりません。
  17. 馬場昇

    馬場委員 次に、畜産物疾病及び衛生対策についてお伺いしたいのですが、畜産物疾病概要衛生対策概要について、まず簡単に御説明いただきたいと思います。
  18. 石川弘

    石川(弘)政府委員 二つ大きな対策があると思いますが、一つは、家畜伝染病予防法というようなシステムの中にございますものでございまして、これは御承知のように、国内はもちろん海外からも悪性伝染病が侵入するおそれがございますので、これにつきましては全国二十三カ所にあります防疫のための動物検疫所等を通じまして、そういう悪性伝染病が侵入したりあるいは国内に蔓延しないようにということをやっているわけでございます。特に、最近のように非常に海外との往来というものが自由になっておりますし、たとえばデンマーク発生しました口蹄疫のようになかなか原因がつかめない病気もございますので、これに関してはわれわれといたしまして全力を挙げて取り組むのが一つ方向かと思います。  それからもう一つは、これは家畜衛生全般に関しまして、たとえば畜産経営の基礎となりますような動物健康管理、特に多頭羽飼育というのが進んでまいっておりますので、万が一疾病等発生しますと、大変経済的に大きい打撃生産者に与えるわけでございます。これにつきましては、御承知家畜保健衛生所システムなりあるいは各種診療施設あるいは共済組合等のいろいろな診療施設等と、これに携わる獣医がこの部分を担当しているわけでございますが、そういういわば制度として行いますもののほか、最近は御承知のように、自主的に生産者みずからが家畜衛生をもっと、それも予防的な観点でやるという必要性に迫られておりまして、これらのものにつきまして、各県あるいは全国協会等を設けまして、そういう組織の活動を通じまして疾病蔓延防止ということあるいはその予防というようなこともやっております。  それからもう一つ観点は、やはり安全な食品消費者に提供するということでございまして、これもよく御承知のように、えさの問題なりあるいは薬品の問題というものを通じまして、そういう危険な食品が出回ることのないように、このことはいろいろな法的規制もございますが、それだけではなかなか実行問題という面でも相当問題がございますので、各生産段階ごと指導体制をしきまして、そういう食品安全性というようなことも、いわば公衆衛生と申しますか、そういうことも業務の中の非常に重要な部分として位置づけて推進をいたしております。
  19. 馬場昇

    馬場委員 けさ新聞でちょっと見たのですけれども、島根で鶏が貧血を起こして産卵が低下する、そういう病気だというので、家畜衛生研究所で調べたら、これは外国にも余り例のない病気のようだというようなことがけさ新聞に書いてあったわけでございます。これは一つの例ですけれども、最近特に家畜がたとえば多頭飼育をやっているわけですけれども病気が起きて、それに対して診療所とか研究所とか、どういう病気が多いのか、それにどう対応したのか、そういう点について、家畜疾病対策というので、具体例、最近あった例がありますならば、ちょっと説明してもらいたい。
  20. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私も専門でございませんので、余り詳しくございませんが、近時点で比較的問題になりましたのは、豚のオーエスキー病というのがございまして、これは胃腸疾患等を起こす病気でございますが、この病気が比較的新しい病気で、かつまた、かなりの頻度で各県に起こることがあるということで、先ほど申しました自衛防疫組織の中の一つ病気対策としまして、このオーエスキー病対策をやったというのが一つございます。  それから、いま御指摘のありました鶏等につきましても、どちらかといいますと国内にはまだ発生はしていないけれども、諸外国発生をしているようなものにつきましては入ってくるおそれも多分にあるということで、各種の新しいものに対するいわば対策といいますか、これは起こりましてからいろいろやろうといたしましても、かなり手間暇かかりますので、そういうことの準備みたいなことにつきましては、各研究機関なりあるいは私ども出先等を通じましていろいろと検討しているところでございます。
  21. 馬場昇

    馬場委員 余り時間がないわけですけれども石川さん、いまの畜産物疾病並びに衛生対策とか、先ほど答弁されましたが、海外からの悪性伝染病が入ってくるのを防ぐとか、あるいは食品の安全の確保の問題だとか、さらに先ほども答弁があったのですけれどもえさ安全確認の問題だとかそういう体制わが国においてよくいっているのか、いやいや、まだまだこういう点が不十分だ、現在の体制に対する畜産局としての評価、どう考えておられますか。
  22. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初家畜防疫、特に海外からの疾病防止ということにつきましては、私どもも非常に心がけておりますし、それから海外からのいろんな評価といたしましても、かなり厳格であり、かつ適切に行っておる、そういう意味では、実は昨日もその衛生主任者会議というのがございまして、全国衛生担当者の集まりもございましたけれども、そういう場でも担当者といたしましてもかなりの誇りを持ってやっているのではなかろうかと思っております。  それから、新しい分野としてのいろんな添加物問題あるいは食品衛生上の問題に近づくような問題につきましては、制度的に完備されたものが比較的新しゅうございますので、そういう意味で、万全を期しているかということにつきましてはまださらに努力を要するものがあろうかと思います。  ただ、非常に新しい分野であると同時に重要な分野でもございますので、実はここ数年来、その種のことにつきましても、県等も含めました指導助成事業かなり組み込んでおりますので、相当な水準にはいくのではなかろうかと思っております。
  23. 馬場昇

    馬場委員 水産庁の方にお伺いしたいのですが、魚の病気状況はなかなかむずかしいでしょうけれども後ろの方から言いますと、その病気による被害の状況、こういうことになるわけでございますが、その点について、最近はどうなっていますか。
  24. 田邊隆一

    ○田邊説明員 近年、ブリとかウナギとかいった魚類の養殖が急速に発展してまいりまして、ここ十年くらいの間に約三倍の生産増となっております。五十六年度の生産が二十七万トンでございます。その反面、魚病の被害も増大してまいりまして、魚病対策が重要な問題となっておるわけでございます。  しかしながら最近では、養殖の生産も横ばい状態でございますし、魚病対策が進められた結果、魚病被害の方もやや鎮静ぎみという傾向にございます。  魚病被害の大きな魚種はブリ、一般にハマチと言われておりますが、ブリ、ウナギ、ニジマス、タイ、アユ、食用ゴイといったような魚種でございます。  魚病の種類といたしましては、ブリの連鎖球菌症、同じく類結節症、ウナギのえら病、ニジマス、タイ、アユのビブリオ病といったような細菌性の病気、これは非常に死亡率の高い病気でございます。それから、食用ゴイの場合にはえら病とか寄生虫病といったようなものがございます。  魚病被害でございますが、五十五年度の被害額が約二百二十億円でございます。これは魚類養殖生産額約三千億円の七・五%に相当しております。このうち被害の大きなものはブリの連鎖球菌症及び類結節症、これが百十七億円、それからウナギのえら病が三十一億円、それから各魚種のビブリオ病が十八億円というふうになっております。
  25. 馬場昇

    馬場委員 病気になった魚が間違って食卓に上がるというようなことはないのでしょうね。その辺が一つと、もう一つは、魚の病気の研究体制がどうなっておるのかということと、もう一つは、これは大学局かどうか知りませんけれども、学校関係か知りませんが、魚の病気をどういうようなところで教えるのか、教育内容の中でどこでこんなのを教えておるのかというようなこと、それから魚病のお医者さんというのですか技術者というのかよく知りませんけれども、魚の病気を取り扱う技術者の養成はどうなっているのか、こういう点についてちょっとお知らせいただきたいと思います。
  26. 田邊隆一

    ○田邊説明員 病気で死にました魚はほっておきますとまた伝染するというようなことがありますので、取り上げて焼却するように指導しておりますので、それが食卓に上ることはないというふうに考えております。  それから研究体制でございますが、従来魚病の研究というのは、純研究的な観点から、大学の水産学部あるいは水産学科、それから国とか県の水産関係の試験研究機関で一部行われていたという程度でございますが、最近の養殖の発展に伴いまして魚病被害が増大してまいりましたために、魚病の研究が非常に重要な問題になってきているわけでございます。このために水産庁におきましては、所属の研究所におきます魚病の研究をさらに充実させるとともに、県が行います試験研究に助成をいたしまして、魚病研究の推進を図っているところでございます。  それから研究体制の面では、水産庁で養殖研究所というものを設置いたしましたけれども、その養殖研究所の中に病理部というものを設けまして、ここで魚病研究を一元的に行うというような体制を整えております。  さらに、昭和五十四年度からは魚病対策技術開発研究事業というものを予算化いたしまして、大学とか県の試験研究機関とかあるいは関係団体等に委託しまして、魚病対策の技術関発の研究を推進しているところでございます。一部の分野では成果がすでに上がっております。しかしながら、魚病の研究というのは非常に歴史の新しい分野でございまして、まだ技術的にも未知なところが多々ございますので、今後さらに、ただいま申し上げましたような諸機関と連絡を密にいたしまして、一層の研究を図ってまいりたいというふうに考えております。  それから魚病の教育でございますが、これはむしろ文部省マターでございますので、私がお答えするのも若干筋違いかと思いますけれども、私の方で聞いております範囲で簡単にお答えしたいと思います。  先ほど申しましたように、魚病の研究は大学の水産学部等で行われておるわけですが、魚病の教育もそういう大学の水産学部、水産学科で行われてきておるわけでございます。最近、魚病被害が非常に大きくなったということを受けまして、これらの大学におきまして魚病学の専門講座を新しくつくったり、あるいは講義とか実習の時間を増強したりということで魚病教育充実強化を図っておりまして、その内容といたしましては、魚病学あるいは水族病理学、水族診療学、薬理学等であるというふうに承っております。  それから、魚病技術者の養成でございますが、魚病対策を円滑に推進するためには防疫とかあるいは魚病の診断、治療あるいは薬理、薬に関する十分な知識を持っているだけではなくて、魚の生理、生態に関する知識を持っておりまして、魚病を起こさせないような養殖管理の技術を持つようなそういう指導者がおりまして、養殖の現場で対応することが必要であるというふうに考えております。  そこで、水産庁におきましては、昭和四十八年度から都道府県の技術職員を対象といたしまして魚病指導者育成のための研修を行ってきております。さらに、五十四年度におきましては、このための予算を強化いたしまして、事業運営の強化とか研修内容の充実を図ってきております。この研修の内容は、魚病対策に必要な魚病学一般、細菌学、ウイルス学、寄生虫学、化学療法及び公衆衛生学といったような問題につきましての講義と実習でございます。昭和五十八年度現在におきましてこの研修を修了した者が約二百名おります。これらの専門家は都道府県の魚病指導総合センターあるいは試験場あるいは水産業の改良普及所といったようなところに所属いたしまして、養殖現場における魚病対策指導に当たっております。
  27. 馬場昇

    馬場委員 魚の病気という点につきましては、死んだものは食卓に上がらないのは当然でしょうけれども、全然それを見過ごして食卓に上がるということもありましょうし、これはもう公害関係でしょうけれども、たとえば私の県の水俣でも水銀食っちゃって体が変形している魚とかいっぱいおるわけです。そういうのを食っちゃって水俣病になっているのですから、そういう点についても、常日ごろ魚をよく観察しておるとどうもおかしいということが事前にわかるかもしれませんし、そうしたら水俣病も起こらなかったかもしれませんし、そういう点に、やはり魚病の専門の医者というわけではないでしょうけれども、技術者とかあるいは観察をする人とかをたくさん養成する必要があろう。いま聞きますと、講習会なんかやって二百名だと言われますけれども、これはまだ非常に不十分だと思いますし、私はそういう点において魚の病気対策というのは非常に重要な問題だろうと思いますので、さらに力を入れていただきたいと思います。  さらに、今度はいよいよ本題へ入るわけですけれども、獣医師の問題にかかわって質問いたします。  第一点として、獣医師の需給状況が現在どうなっておるのかということをお尋ねしたいわけですが、それにかかわって家畜の頭数を畜種ごとにひとつ教えていただきたい。それから、現在の獣医師の数も教えていただくし、そういう獣医師がどういうところにいま働いておるのかということを含めまして、状況を説明していただきたい。
  28. 石川弘

    石川(弘)政府委員 家畜の頭数につきましては、大家畜から申し上げますと、牛が現在約四百五十万頭でございます。要するに、酪農に使っております乳用牛と言われるものが約二百十万頭、それから肉用牛が約二百四十万頭ぐらいでございますが、これは肉用牛と申しますけれども、肉専用種と乳用種の雄とがほぼ半々でございます。それから同じ大家畜の馬でございますが、現在九万頭程度でございまして、これは農耕用が二万頭ぐらいと、あと軽種馬が七万頭ぐらいでございます。  中小家畜に移りまして、豚は約一千万頭でございます。それから鶏は非常に大ざっぱに言いますと三億羽、二億九千万羽ぐらいの数でございますが、その中で採卵鶏が一億六千万羽くらいと、それから肉用鶏のブロイラーが一億三千万羽くらいでございます。それから獣医師が狂犬病等で診察しております犬、これは登録しております犬の数でございますが、約三百二十万頭ぐらいと言われております。  それから獣医師さんの数でございますが、現在約二万五千五百人ぐらいの方が登録獣医でございますが、勤務しております態様で申し上げますと、国あるいは都道府県、市町村といったような公務員として勤務なさっている獣医師さんが約一万五百名でございます。それから農業団体あるいは畜産関連企業といった民間の団体に勤務していらっしゃる獣医師さんが約五千二百名ぐらいでございます。それから個人の開業をなさっております獣医師さん、そのうち産業動物を主としていらっしゃると思われます者が約二千三百名でございます。それから、どちらかと言うと都市におりまして愛玩動物等をおやりになっております開業の獣医師さんが約四千名と言われております。
  29. 馬場昇

    馬場委員 いま家畜の頭数を聞いたわけですが、ものすごい頭数がおるわけです。獣医師の数は二万五千五百人ということで、この需給関係、獣医師の数はこれで足りているのかどうか。また将来畜産が発展していくという中で、この獣医師の将来の需給関係現状、将来の展望はどう判断されておりますか。
  30. 石川弘

    石川(弘)政府委員 現在の約二万五千五百という数でございますが、これはいま申し上げましたように畜産が相当発展してくるプロセスで徐々にふえてまいったわけでございます。私ども今後、将来どの程度の数が必要かというようなことも含めまして、ある程度の将来見通しをやっておるわけでありますが.一つは勤務の形態といたしまして、国家公務員なりあるいは地方公務員といった形で勤務をされております獣医師さんにつきましては、ほぼ現在程度の数で今後のいろいろな行政需要にも賄えるのではないか。いろいろと御努力願わなければいかぬこととか、あるいは部分的には補助的な方々に仕事をやっていただくということも含めて考えますけれども、余り多く見積もる必要はないのではなかろうか。  それから産業動物に関します獣医師さんでございますが、これは先生も御指摘のように、いろいろと頭数の増加等もございまして実はかなり少なかったわけでございますが、その後のいろいろな努力もございまして現在ある程度伸びてきておりますが、これはやはり若干は伸びていくだろうという見通しをしております。  それに対しまして都市部で行われております愛玩動物を担当しておられますような獣医師さんでございますが、これは一種のペットブームの中でかなりの数がふえてまいっておりまして、地域によっては若干調整を要するというような事案もないわけではありませんので、ほぼ現状程度の数で推移して十分ではなかろうかなというようなことが全体としての姿かと思います。  新規に卒業なさっていく獣医師さんの数をわれわれのいままでの推算でいたしますと約千百名弱、千名から千百名の間ということを想定いたしまして、高齢になりますことによってリタイアなさいます獣医師さんの減少等いろいろ数を合わせてみますと、いま行われておりますような数でほぼ何とかバランスがとれるのではないか。もちろん、たとえば獣医師さんの需要の中には新しい分野、特にいろいろと企業的な分野でも獣医師さんの需要がある程度ふえる分野がございますけれども、全体として、たとえばこれ以上大きく伸ばすとかあるいは縮小しなければいかぬということではございませんで、いずれにしましても、現在の数字を中心に微調整をすれば足りるような数ではなかろうかと思っております。
  31. 馬場昇

    馬場委員 産業動物の頭数がふえることによって、その部分については少し伸ばさなければならぬ、あとの部分についてはいまの需給関係は大体うまくいっているというようなお話でございますが、地域的に果たしてうまくいっているのかという点、特に農山村部についてうまくいっているのかどうかという点、ちょっと私は疑問を持っておるのです。  もう一つは、いろいろ発展途上国等について原料その他をたくさんわが国は買っていかなければできないわけですから、そういうところの食糧事情というものにわが国が果たす役割り、援助すべき、協力すべき役割りというのは非常に重要だと思うのですが、そういう中で、特にそういう国に獣医師等を派遣して畜産指導に当たるとか、疾病とかそういうものの指導に当たるとか、非常に重要なことじゃないか。たくさんのそういう獣医師などを送り込むべきだというようなことを私は思うのですけれども、現在どの程度発展途上国に対してそういう指導要員というのが送られておるのか、これはふやす気持ちはないのかどうか。そういう点について、そこをふやすことになりますと、まだまだ足らないと私は思うのですけれども、その点はどうなりますか。
  32. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に御指摘のございました地域の偏在の問題でございますが、御指摘のとおり私どもも、医者で言えば無医村に当たるような、獣医師さんが必ずしも十分いらっしゃらないということでの御不便をかけてはいかぬということがございますので、これは五十年代の初めのころからそういうことの対策をいたしておりまして、わずかな予算ではございますが、無獣医地区の地域獣医定着モデル事業というようなことを五十年代の初めに五年間ばかりやりました。それからその後は、住んでまでやっていただくというのがむずかしいということがございまして、これは現在もやっております事業ですが、無獣医地区のパトロール事業ということで、拠点的なところからその無獣医地区へいわばパトロール車を回しまして診療の便宜を図るという、そういう助成事業も現在なお実施中でございます。  それからもう一つは、これもお医者さんでなかなか田舎へ住みついていただけないということと似たような話でございますが、まず学校に就学をなさっておりますときに産業動物の獣医師になるということを一応お約束願って、その方々に奨学金をお出しをして、奨学金をもらいました期間の一・五倍ぐらいの期間はそこで必ず勤めてくださいという、現在やっておりますが、これによりましてすでに何人かの方がそういう無獣医地区に行っていただいておるというようなことをやっております。いろいろ努力をいたしました結果、かつて無獣医の地域が二百数十地区あると言われておりましたのが、現在百七十市町村ぐらいまでに数は減っておりますが、必ずしもこれで十分だとは思っておりません。したがいまして、特に畜産の場合はどちらかと申しますと広大な地域を使いながらやりまして、地域にいる頭数としては必ずしも多くないわけでございますので、こういうところにもいままでやっておりましたものをさらに拡充しまして、御不便をかけないようにというつもりでございます。  それからもう一つの御指摘のございました発展途上国等への獣医師さんの派遣でございますが、これは大変早い段階から、昭和三十年代の初めからこういう発展途上国等につきまして派遣をいたしております。粗っぽく申し上げますと、この三十年代から現在まで約三十数カ国につきまして約四百名の獣医師さんを派遣をいたしております。ですから数全体とすればそう大きいことはございませんが、大変その地域地域では喜ばれておりますし、そういうことがもとになりまして現在でもそういう個別に人を派遣しますほかに国際協力事業団のプロジェクト協力という形でタイの家畜衛生改善計画とかインドネシアの家畜衛生改善計画、それからメキシコの家畜衛生センターの技術協力といったような、かなりまとまりのあります仕事にも技術者を派遣しております。私ども、こういう仕事が大変その国だけではなく日本にとりましても有効なことでございますので、今後もこういうものに行っていただく獣医師さんは十分確保していきたいと思っております。
  33. 馬場昇

    馬場委員 農林省で獣医師の国家試験をやっておられるわけですけれども、試験期日が三月になっておるわけです。今日、修士課程を出て試験を受けるわけですが、ちょうどその三月の時期は修士の卒論を書く時期で、何としても三月に国家試験があるのは学生の負担が重過ぎるという声をよく聞くのですけれども、この国家試験の期日を変更するような気はないかどうかということをお聞かせいただきたいのです。
  34. 石川弘

    石川(弘)政府委員 獣医師さんの場合は、実は学校を出られまして就職いたされますときに大半が獣医師さんであることの資格を持って就職をなさるというのが通例でございます。そうなりますと、いまの考え方でまいりますと、学校を卒業し、なおかつ試験に合格なさっているということが就職の重要な要件でございますので、通常考えられます就職なさいます時期までには試験をして差し上げておく方がむしろいいのではないかなというのが私どもの考えでございます。いまのところ私どもといたしまして、特に試験期日をさらにそれを延ばすということになりますと、就職というようなことにも絡んでなかなか問題ではなかろうかなと思っております。
  35. 馬場昇

    馬場委員 農林省に最後にお聞きしておきたいのですが、五十二年に獣医師法を改正するときに学部六年制をやるべきだという附帯決議がついて、その前も六年というのがあっているのですけれども、検討なさっておるわけですが、今度のこの法律は学科六年であって学部六年にはなっていないのですね。これについて農林省としては、やはり学部で六年という附帯決議は農林水産委員会でもついているわけですから、農林省としては学部六年が御希望じゃなかったろうか、あるいは獣医師会等の意向もそうじゃなかったろうかと私は思うのですが、この学科六年の法律に対する、いま私が言ったような意味での農林省のお考えを聞かせてください。
  36. 石川弘

    石川(弘)政府委員 五十二年の獣医師法の改正のときにいま御指摘のような附帯決議がありましたこと、十分承知をいたしております。その後のいろいろの関係者との協議等の中でも学部六年制という主張も相当あるわけでございますけれども、やはり何と申しましても、そうなりますと統合その他相当の学部をつくるだけの数をまとめ上げられなければそれに移行ができないという状況でございまして、むしろ現段階で申しますれば、学科という形でございましても、これが認められることによって六年間の一貫的な教育ができるということは関係者としても大変期待をしているわけでございますので、こういう形でもぜひひとつお願いをしたいというのが私ども立場でございます。
  37. 馬場昇

    馬場委員 なかなか、一挙に学部にしてもらいたいという気もあるのでしょうけれどもね、こういう話し合いをしていた法律ですからそういう答えだろうと思うのですけれども。  文部省にお聞きしたいわけでございますが、ただいまの農林省に対する質問と同じなんですけれども、附帯決議なりその他あらゆる審議会とか検討機関からも学部六年というのが出ているわけです。そういう中で学部六年とせずに学科六年としてこの法律を出した、こういう点についての意味を、なぜこうしたのかということについてお答えいただきたい。
  38. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように、獣医学教育の内容の充実について修士課程を積み上げてやるという形を五十三年度から実施することになったわけでございますが、ただいまも御指摘のありましたような附帯決議等を受けまして、文部省といたしましては五十三年一月に獣医学教育の改善に関する調査研究会議を発足させまして、学部六年制について検討を行ってきたわけでございます。そして、その調査研究会議での結論というのが、五十四年六月に検討結果をいただきましたわけですが、その結論は、基本的には獣医学の学部六年制教育については独立の学部として実施することが望ましくて、そのためには、国立大学は現在獣医学関係の学部、学科合わせて十大学にあるわけでございますけれども、国立大学にあって獣医学科——獣医学科は大体三十名程度の入学定員でございます。それらを三十名定員のままで学部にするというわけには具体的にはまいらぬものでございますから、その統廃合を行う必要があるということが言われたわけでございます。そして、この結論を受けまして、私ども関係の国立大学に対して慎重に御検討いただいたわけでございますが、五十五年十一月にその関係国立大学の意見が取りまとめられまして、獣医学科の統廃合という問題は、各大学の学内事情や地域社会との関係で統合ということについては具体的な合意が得られない、統合の実施はきわめて困難だというような意向が示されまして、先ほどの調査研究会議での報告に沿った統合という形で学部を実現していく形は現実問題としてはきわめて困難というような状況関係国立大学の学長会議の結論であったわけでございます。  そういう状況を踏まえまして、私どもといたしましては、それではいわゆる学部六年制の問題の具体的な解決としてどうするかということにつきまして、さらに五十六年十二月に再度学識経験者の御協力を得まして獣医学教育の改善に関する調査研究会議を設けまして、具体的にどのような改善方向を図ればいいかということについてさらに御検討をいただきまして、その結論を、五十八年二月に報告を得たわけでございます。その報告の要旨は、獣医学教育が大部分が農学関係の学部の一学科において現在行われておりまして、こらの学科を独立の学部として早期に移行することが現実問題として現状は困難であるということ、そこで片や学部と修士の積み上げの教育について現実問題としていろいろ問題点も指摘もされているわけでございまして、そういう現状を踏まえまして、現行の農学関係学部の中の獣医学科においても学部六年制教育が実現できるように措置する必要があるという結論をいただきました。その結論を受けまして、私どもとしてはさらに制度を取り扱っております大学設置審議会に諮問をいたしまして、大学設置審議会からも同趣旨の答申をいただいて、これらについて獣医学教育関係者や獣医師関係団体の意向も得まして、農学部関係学部の中の学科であってもやはり六年制の教育を実施することをぜひ進めてもらいたいということを関係者からもいただいたわけでございます。もちろん関係の国立大学の農学部長の方々にも、農学部の中の一学科の獣医学科について六年制にすることについての関係の国立大学の意見もすべて聴しておりまして、いずれもその点については農学部として異存がないという結論をいただいておりますので、今回改正に踏み切ったわけでございます。  なおちなみに、現在の医学部におきましても、六年制の医学科が置かれているわけでございますが、四年制の保健学科とか栄養学科あるいは総合薬学科——医学科は六年でございますが、医学部の中にそういう学科が置かれている例もあるわけでございまして、学科を単位とした修士積み上げの六年教育ということについては、ただいま申し上げましたような慎重な検討を経まして私どもとしては今回の改正に踏み切ったというのが従来の経緯でございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 いま医学部のお話をなさったのですけれども、少なくとも国立大学で学科が六年というのはいまはどこにもないですね。かつては商船学科なんかあったようですが、それはなくなっていますから、学科を六年にするというのは、現状では今度が初めてですね。その事情はよくわかるのです。いろいろ手順を踏まれたということもよくわかるのです。だから、いまこれをどうということは言わないけれども、入学定員等につきましては後でまた質問いたしますけれども、今後、学科六年のいまの法改正を将来は学部六年というような法改正の方に持っていこうという気があるのかないのか、いい悪いは別としてあるのかないのかということ、それから、今度のこの法改正で大学の設置基準というものの改正はなさるのかなさらないのか、この二点をまずお伺いします。
  40. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 将来の考え方をどう考えているかという第一のお尋ねの点でございますが、これは先ほど申しましたこの二月三日にいただきました調査研究会議の報告の中におきましても、「今後国立大学にあっては、昭和五十四年六月の獣医学教育の改善に関する会議の報告にもあるように、現在の十大学に設置されている獣医学科を対象として再編整備をする必要がある。」という点は、なお指摘をされているわけでございます。  そこで問題は、獣医学科を統合いたしまして獣医学部を設置することなどが考えられるわけでございますが、そのことによって適正規模の学生定員とすることが可能となり講座の整備が図られて全体の獣医学教育充実ということはできるわけでございます。問題は、現時点の段階ではその点については、先ほども申し上げましたような経緯で現実問題としてはなかなか困難なわけでございます。しかしながら、私どもとしては、その点についてはやはり適正な学生定員を確保するというような形で関係大学の合意が得られることになれば、それぞれ獣医学部というような形で、将来の姿としてはそっちを目指すべきものではないかというぐあいに考えております。  それから、第二点の大学設置基準の改正をどうするのかというお尋ねでございますが、設置基準につきましては、先ほども答弁しましたように、審議会から御答申はいただいておるわけでございまして、この改正法案が成立を見ますれば、それを受けまして私どもとしては省令の改正に具体的に取り組むつもりでございます。
  41. 馬場昇

    馬場委員 文部省が国立大学のこの学科の統廃合に慎重な気持ちで対応しておられるし大学の意見等をよく聞いておられるということは、私も賛成でして、やはり統廃合となりますと、大学とかその地域社会とかの意見もいろいろあるわけですから、そういうところの意見は十分に聞いて尊重してもらいたいということはつけ加えておきます。  それから、獣医学に関する博士課程についてちょっとお尋ねしたいのですけれども、この改正が行われますと、現在の大学院の修士課程は廃止になるのではないかと思うのですが、廃止なさるのですかということと、そうなった場合に、博士課程というものはどうなさるのか。現在博士課程というのは余り多くないようですけれども、この改正の後の博士課程はどうなさるのかということをまずお答えいただきたい。
  42. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 獣医学教育の大学院の問題についてのお尋ねでございますが、修士課程については、現在は国公私立合わせて十六大学でございますが、すべてに設けられているわけでございます。博士課程でございますが、現状は国立二大学、公立一大学、私立五大学に博士課程が設けられております。その博士課程の入学定員は五十六人、国立二十四、公立九、私立二十三というのが現状でございます。  そこで入学状況でございますけれども、修士課程については、もちろんただいまのところは修士課程積み上げ六年制ということで、学部の入学定員と同等の入学定員が置かれております。そして従来修士課程については、志願者の倍率が平均で約一・二倍という志願状況でございます。それから博士課程の方でございますけれども、博士課程の志願状況は過去数年ほぼ横ばいで推移しているというのが現状でございまして、全体的には志願は定員に対して〇・五という状況、五割程度ということでございまして、入学定員に対する入学者の状況で見ましても約四割という程度になっております。これはそれぞれ就職の問題でございますとか、いろいろな要因があるわけでございまして、具体的に博士課程については現在の規模でも定員的には相当余っておる、必ずしも入学定員を満たしていないというのが現状でございます。  そこで今後、今回の改正に伴っての大学院問題がどうなるかという問題でございますが、大学院はこれまでの五年の大学院、つまり修士課程と博士課程を含めまして修士二年、博士三年ということであったわけでございますが、学部における学科の六年制教育ということを受けましての獣医学教育についての大学院の考え方でございますが、基本的には医学部の場合と同じような扱いとなるわけでございまして、四年の大学院博士課程のみが置かれることになるわけでございます。したがって、学部段階の六年と大学院四年と合わせて十年ということになるわけでございまして、これは現在の学部四年で修士・博士五年の九年に比べれば一年延びるという形になります。全体的な状況としてはそういうことになるわけでございまして、学部段階において六年一貫の効果的な教育を行うというようなことを受けまして、制度としては修士課程を設けないということで行くことになるわけでございます。  さらに、博士課程の設置の問題については、これは博士課程全体の問題がございまして、ときどき国会でも御議論いただいておるわけでございますが、オーバードクターの問題でございますとか、いろいろな要素がございます。社会的な要請その他、全体的なことを十分判断いたしまして、終了者の進路の問題でございますとか、博士課程を出てから具体的にどういう就職先があるかというような具体の問題も検討せねばならぬわけでございまして、博士課程の新設拡充問題については、獣医学の問題に限らず、全般的に私どもとしては非常に慎重に対応していくというような考え方で対応しております。博士課程の現状は先ほど御説明したとおりでございますが、先ほど入学状況について御説明した点でも御理解いただけますように、現在の状況で博士課程を直ちに拡充、充実するということについては慎重に対応しなければならぬのではないかというぐあいに考えております。
  43. 馬場昇

    馬場委員 ちょっと聞係があるのでお尋ねしますけれども、何か連合大学院構想というものを検討なさっているということをちょっと聞いたのですが、この獣医学科六年の上に連合大学院というふうに直接かかわって検討していられるのか、あるいは別個に、大学院全体の問題として連合大学院構想を考えておられるのか、余り時間がございませんので簡単に説明してください。
  44. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 連合大学院の問題は、具体的には五十三年度以降、農水産系連合大学院の創設準備ということで、所要の経費を計上いたしまして検討を続けてきているというのが従来の経緯でございます。これは基本的には、博士課程を持たない国立大学の学部が特に農水産系について連合して大学院を持つという問題について、具体的な構想等についていろいろと検討をいただいておるものでございます。  ただ、従来から五十三年度以降対応してきておるわけでございますけれども、その設置形態についてどうするかというような問題でございますとか、特に海外からの留学生の問題でございますとか、いろいろな問題点があるわけでございますが、構想を具体的にどういう形でまとめていくかということについて必ずしも関係者の全体的な合意といいますか、そういう方向にまだ向かっておりませんので、私どもとしては、地域的にたとえば四国地区でございますとか九州地区とか、そういう地区なりで具体的なことを試行錯誤というような形ででも少し考えてみたらどうかとか、いろいろなことを御検討いただいておるわけでございますけれども、構想が固まる段階にまではまだ至っていないというのが率直なところの現状でございます。
  45. 馬場昇

    馬場委員 次に国立大学、私立大学を含めてもいいのですけれども、入学定員の増減というのはこの法改正を機会にどう考えておられるのか。先ほども農林省に説明を聞いたのですけれども、全体的にはやはり不足をしておるという面もある。さらに積極的に言えば、開発途上国等に対する獣医師の派遣は国の政策として積極的に進めなければならぬ非常に大切なことだということがありますし、去年ですか、入学定員の三・七倍ぐらいの受験生があっていますね。そういう受験生も多いという点からいって、この機会に獣医学科の入学定員をふやすという気があるのかないのか、いかがですか。
  46. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 獣医学科というのは、農学部の中では志願者の倍率も大変高いという点は先生御指摘のとおりでございます。そこで、現在の国公私立大学の獣医学関係の学部学科の全体の入学定員をふやす考えはないのかというお尋ねでございますが、私どもの調査研究会議の報告でも、これは先ほど農林水産省の方から御答弁もあったわけでございますが、農林水産省の調査結果をもとに考えれば、現時点では少なくとも現在の定員規模の拡大を特に図る必要はないのではないかというような考え方をとっております。獣医師のバランスは現在程度の入学定員で将来ともほぼ確保されていく見通しであるというぐあいにも伺っておるわけでございまして、したがって私どもとしては、現状ではここ当分これらの入学定員を増加するということについては考えていないわけでございます。特に国立大学の場合、農学部の中の一学科ということで三十名程度の規模になっているわけでございまして、獣医師の需給状態その他から見て入学定員を将来とも非常にふやさなければならないというようなことになれば、それは現在置かれている獣医学科を規模をふくらますことになればそこで獣医学部とすることは可能かと思いますけれども、現在のところでは入学定員をふやさなくても対応できるものと判断をいたしておるわけでございます。
  47. 馬場昇

    馬場委員 定員の問題は後で大臣に聞きますから考えておいてください。  その前に教職員の問題。この学科が六年になった場合、内容が違ってくるわけですから、教職員の増は当然考えなければならない、さらにはこの法改正によって施設設備を改善しなければならないと私は思うのですが、教職員の定員増、施設設備の改善、こういう点についてはいかがですか。
  48. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 第一点のお尋ねの教職員の問題でございますが、五十三年度入学者から大学院の修士課程を積み上げました六年の教育が行われるということを受けまして、その実施に必要な教員組織については現在までに私どもとしても相当数増員を図ってきたわけでございます。たとえば教員につきましては、全体で四百三十二人から五百四十九人ということで百十七人の増を行っております。内訳を申し上げますと、国立では二百二十九人から二百七十三人ということで四十四人ふやしているわけでございます。公立については、これは一大学でございますが、四十一人から四十八人と七人、私立については百六十二人から二百二十八人ということで六十六人ふやしてきておるわけでございまして、修士課程の二年積み上げということでの六年間の教育をやるとすればそれだけの教員が必要であるという判断に立って、国立についても、定員状況は大変厳しいものでございますけれども、獣医学科についてそれだけの措置を今日まで私どもとってきておるわけでございます。したがって、考え方としては、教員組織については整備された現在の状況で学部段階での六年教育には十分対応できるものと考えております。  具体的な教育条件の整備としましては、大学設置審議会の答申でも、教員数は「専門教育の増を考慮して増加する」ということが言われているわけでございますが、ただいま御説明したところで御理解いただけますように、ほとんどの大学について専門教員の数については現在の基準の二倍の数がすでに定員上確保されている。国立大学の現状もそうなっておりますし、私立大学についても同様でございます。  なお、具体的な整備充実という問題については、国立大学について言えば、獣医学科の再編整備ということとの関連も考慮しながら私どもも今後ともさらに対応していかなければならない課題ではないかと考えております。  それから、第二のお尋ねの施設設備の点でございますが、施設設備についてもやはり五十三年度以降すでに具体的に整備を進めてまいっておりまして、一部の大学においてなお整備を要する大学もあるわけでございます。具体的には私立の大学で二大学ほど校地の基準が現有が若干不足している、校舎についてはすでにほとんど整備がなされているわけでございますが、そういう状況にあるわけでございまして、その点は修士課程二年積み上げということで実質的には六年間の教育でということが五十三年度以降すでに発足をしているわけでございまして、五十三年度以降国立大学についてはそれぞれの年度で可能な限りの整備を今日までやってきて、教員の定員の数についてもまず対応できるものというぐあいに私どもは考えております。
  49. 馬場昇

    馬場委員 この辺から大臣にも聞きたいのですけれども、いまのお話を聞いていますと、学部四年修士二年、そうしたときに教員組織もふやしたのだ、施設設備も余り問題ないのだ。となりますと、何のために六年にしたのかということにもなる。大臣はこの提案理由を説明されたときに、近年の畜産の発展、公衆衛生の拡充等社会的要請にこたえるため、学部段階において教育内容の充実を図り、かつ効果的な教育を実施し得るように教育年限を延ばしたのだ、こうおっしゃっているのですよ。いまの大学局長の話を聞いていますと、教員もふやさない、施設設備もふやさない。それじゃ大臣がこの提案理由の説明でおっしゃったのに全然沿っていない。とともに、ことしの四月六日かに大学設置審から答申があっていますね。これにはきちんと、「教員を増加する」、施設設備については収容人員がふえるのだから現行基準をもってしても面積を増加しなければならぬと出ているのですよ。ところが、いま、この前五十三年にしたときにふやしているのだから何もする必要はない、こういうような答弁ではこの改正はほとんど意味がない。  大臣にお聞きしますけれども、まとめますと、先ほど入学定員をふやさないとおっしゃったのです。これは政治家たる瀬戸山さんにお聞きしたいのですが、さっき農林省も言いましたように、開発途上国なんか、日本から獣医師が指導に行くのをものすごく喜んでいるということはわれわれも知っているのです。開発途上国と仲よくする、いろいろなギブ・アンド・テークもあるわけですから、そういう中でたくさんの獣医師を日本で養成して——養成する場合、よその国は大体六年なのですよ。日本指導しに行きながら四年というのはおかしいということで六年にするという意味もまたあると思うのですが、せっかく六年にし定員をふやして、そしてそういうところに指導要員としての獣医師を派遣する、そのためには将来定員をふやさなければならぬと私は思うのですが、そういう点が一点。  もう一つは、大学局長の説明を聞いていますと、いま臨調で学部、学科の増設が非常に抑えられておる、だから何とかごまかそうというような気がしてしょうがない。せっかくここで法律改正するのだから、そういう臨調の学科、学部の増設を抑えるというのでなしに、この機会にこうすれば教育効果が上がると思ったら、臨調の圧力をはね返して教員組織もふやし、施設設備も改善しなければならぬと私は思うのですが、これについての大臣の見解を聞いておきたい。
  50. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 馬場さん、どうでしょうか、この定員の問題。これは先ほど農林省からも大学局長からも御説明を申し上げたわけでございますが、畜産が相当主軸になってきているわけですが、どのくらい日本国内で要るかということと、海外の問題、これはもちろんお互い力をかさなければならぬという場合があると思います。でありますから、そういうものがどういう配置になるべきかということを勘案してやらないと、別の話になりますけれども、一般医師が非常に不足しているということで、さあ医科大学だ医科大学だということでずっとつくってきたのですが、現状は御承知のとおり医師の過剰が心配される、特に将来の医療が混乱するおそれがあると医師の仲間では心配されているという状況もありますから、そういう状況を見ながら、必要に応じては定員増もやらなければなりませんけれども現状では先ほど説明したとおりだと私も思います。ですから、それはもう少し模様を見ながらやらないと医師過剰になるという状況になっても、やはりこれはそういうせっかくの獣医師さんが働く場所がなければいけませんし、そういう点を考えてやろうということでございますから、これを固定するという意味でもないと思います。どのくらい需要があるか、また海外の問題もそうでございますけれども、そういうことを勘案しながら将来は考えていかなければならない。  施設であるとかあるいは先生の数であるとかいうことは、これは大学局長からもう一遍説明させます。
  51. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 教官の点について申せば、五十三年度の定員配置に比べて先ほど申しただけの増員を図ってきたわけでございまして、それは五十四年度、五年度、六年度、七年度、八年度を通じまして大変厳しい状況でございましたが、獣医学関係について私どもとしては重点的に整備を図ってきて、国立大学について言えば、先ほどのトータルの数字で四十四名の増を図り、講座数で十三講座ふやしたということがあるわけでございます。五十四年度以降それだけの努力を積み重ねてきておるわけでございまして、そのことが今回こういう改正にも踏み切れることになった、いわば基礎的な条件が整ってきたということが言えるかと思います。  それから、それでは定員が具体的にふえないのに一体どういう点が今回の点で改善されるのかという御趣旨のお尋ねでございましたが、基本的な点は、実際に大学院と学部との関係教育課程を有機的に一貫的にやるということについて、やはり実際問題としては、やってみればその点が言うべくしてなかなかむずかしい問題点があって、たとえば学生の学習の進度に応じて基礎獣医学と臨床獣医学の授業を六年間でやるというようなことについても、それが学部段階と修士課程とに分かれているというような点が具体的な問題点でございます。  それから、さらに言えば、たとえば大学院の進学に当たっては、本来全員を入学させることを予定しておりますけれども、実際には学部から大学院の修士課程ということで入学者選抜が行われて、現実問題としては、五十七年度の場合でございますと、三名が入らなかったという点がございます。そのほか、修士課程に入るに当たっての受験料、入学金等が別途要るというような問題点もあるわけでございます。それらの点をいわば解決することになるわけでございます。
  52. 馬場昇

    馬場委員 何かいまの話を聞いていますと、火事場の焼け跡のくぎを拾うような話だよな。せっかく法律改正するのだったら、そこに新しい家をつくらねば。大学設置審のこの間の四月の答申にも、きちんと教員組織というのを増加とか、施設設備というのは、いまの大学設置基準から言ってもふやさなければならないのじゃないですか、実際の問題として。この辺についてはどうもいまの答弁だと私は納得できない。  それから、大臣も急にそこに来て座られたばかりで質問して、失礼だったのですけれども、いまのお医者さんの過剰の問題と獣医師のこの問題は、ちょっと比べられる問題じゃないのじゃないかと私は思いますし、せっかく政治家の大物大臣だから、臨調が何と言おうと、この機会に国の政策としてふやして、そして国内でも、それから国外に向かっても一歩を踏み出すというようなことをやらなければ、ちょっといまの答弁では、両方とも何か火事が五十三年にあって、いま焼け跡のくぎを拾うような気がしてしようがないのですが、時間がございませんので…。  最後に、もう一つこれにかかわって、教育内容の一貫性というのはわかるんですよ、この獣医師の処遇、待遇の問題についてお伺いしておきたいと思うのです。  まず第一点は、給料表なんかで、たとえば学部四年を出て就職したときの給料表なんかもあっておるわけです、公務員が非常に多いわけですからね。ところが、今度五十二年の法改正で、五十三年から修士課程になって、これは来年卒業するんですよ、この修士課程を出るのは来年ですからね。この修士課程にしたときに、その獣医師さんの待遇改善は行うのかどうか。たとえば給料表は何を適用させるのか。お医者さんの給料表を適用させるのか、あるいは普通の行政職の給料表を適用させるのか、こういう問題があります。そういう点が一つと、そのほか、獣医師の手当とか何か、いろいろございますね。そういうことを含めながら、あるいは修士になった場合には、来年から出てくるのは修士獣医師が出てくるのですが、今度は学部になったら学士獣医師になっちゃうので、この不均衡とか不公平というのも、呼称の問題ですが途中あるのですけれども、いずれにいたしましても、獣医師会の要望なんかも、こういう法改正というのは、やはり獣医師さんの処遇、待遇改善、社会的地位の向上というのは希望にあると思うし、またそういうことも図らなければならぬと私も思う。修士課程を卒業してきたとき、あるいは今度学科が六年になって卒業するときに、たとえば医師との比較においても、この法改正によって、あるいは前の五十二年の法改正によって獣医師の処遇、待遇改善、社会的地位の向上をどう図ろうとしているのか、こういうことだということを説明してください。
  53. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一般論で申し上げますと、前回の改正で、積み上げ修士六年となりましたことによります卒業の方々が来年度から出てくるわけでございますが、私どもの考え方としましては、やはり従来と違いまして二年間よけい必須のものとして勉強なさったという実績がございます。また、そのこと自身は社会的にもそう評価されてしかるべきだと考えております。したがいまして、医療職のような形、これはちょっと違っておりまして、これは御承知のように、公務員の中でも特に医療に現実に従事なさっている方の職種の表でございまして、しかもそのことが民間の処遇の水準とも非常に差があるということから、ああいう特別の医療職があるわけでございますが、あれと同じというわけにはまいらぬと思いますけれども、やはり二年間必須のものとして勉強なさったということは、私ども行政職の形の中あるいは研究職の中で考えておりますけれども、やはり評価されてしかるべきということで、現在その扱いにつきまして関係のところと協議中でございます。今後の新六年制の学士の場合、これもそういう問題が同じようにあろうかと思いますし、その時点において調整すべきものと考えております。
  54. 馬場昇

    馬場委員 時間が来たわけですけれども、大臣、いま農林省からも答弁があったのですが、せっかく修士を文部省でもつくった、今度また学科を六年にする。そこで出てくる獣医師の社会的地位とかあるいは待遇、処遇の改善とかということについて、直接は農林省でしょうけれども、送り出す側の文部省としましても、農林省とか人事院とかと話し合われて、こういう変わった時点における獣医師の待遇改善、社会的地位の向上というものにもぜひ努力をしていただきたいと思うのですが、大臣の見解を聞きたい。
  55. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 その前に、先ほどの学生の定員等について、別に臨調を気にしておるわけじゃないのです。率直に申し上げて、どのくらい需要があるか、やはりそれが前提になりませんといけませんので、たとえば医師の方でも、実際に医師を管轄しておる厚生省とよく打ち合わせをしながら定員等を考えておるわけでございます。この問題は、特に農林水産省とよく打ち合わせながら必要に応じてやるわけですから、臨調云々ということは全然考えておりませんから、それはひとつ御理解いただきたいと思います。  それからいまの問題、これは全然計画の段階が違うわけでございますから、それにふさわしい社会的地位、また経済的待遇をすべきものだ、かような気持ちで進めたいと考えます。
  56. 馬場昇

    馬場委員 終わります。
  57. 葉梨信行

    葉梨委員長 鍛冶清君。
  58. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 学校教育法の一部改正案につきまして、若干質問申し上げます。  質問する予定いろいろと用意いたしておりましたが、いま馬場委員がいろいろ御質問になった中で実は重複をしている部分が多くて、重ねての質問はなるべく避けなければいけませんので避けてまいりますが、したがって、こちらから御質問することで通告をしておりました内容と少し方向の違った形の御質問になる場合もあるかと思いますけれども、いままでのやりとり、お答え等を聞きながらの範囲で御質問をしたい、こういうふうに思っておりますので、最初にその点ひとつ答弁いただく方々に御了解をお願いいたしておきます。  最初に文部省関係でお尋ねをいたしたいと思いますが、今回制度改変するわけでありますが、馬場委員とのやりとりをお聞きしておりまして、確かに、現在の修業年限四年を修士二年重ねた中で六年修業年限ということに延ばすことになるわけですが、どうもお聞きしておりましても、どういうメリットがあるのかというものがもう一つ明確でないような気がいたします。そこで、重ねてにはなるかと思いますが、現在行われております制度で四年、修士二年という課程でこれはやはり好ましくないという理由、これは逆に言えば六年制度にする方がいいという理由にもなりますが、それはどういうところにあるのかということを改めてお聞きをいたしたいと思います。
  59. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほどの御質問でお答えした点と若干重複する点も出てくるかと思いますが、問題点は何かということと、今回の改正によって何が改善されるかというような御趣旨のお尋ねであろうかと思います。  問題点の第一点は、現行方式でもすでに修士積み上げの際にも教育課程については十分一貫教育が行われるようにということで附帯決議もいただいておりまして、現実に私どもとしてもそういう対応をしてきておるわけでございますが、しかしながら形としてはどうしても修士課程と学部との教育課程で一応の区分が設けられているというようなこともございまして、六年間を一貫して有機的に教育課程を編成するという点が、やはり現実問題としてはいろいろと問題点がある、その効果的な教育を実施する上ではやはりその点に支障があるという点が一つあるわけでございます。  先ほどもちよっと申し上げたわけでございますが、たとえば学生の学習の進展に応じて基機獣医学と臨床獣医学の授業科目を六年間を通じて有機的に組み合わせてやる方が効果的であるけれども、実際問題としては学部段階と修士段階とで分かれているというような点が問題点でございます。  それから、もう一つは、確かに修士課程の入学定員は、学部段階と合わせて、国公私立合わせて入学定員では全体九百三十名ということにいたしたわけでございますが、現実問題として修士課程には、やはり形としては修士課程としての入学者選抜が行われるわけでございまして、たとえば五十三年入学の者がその適用の第一年度でございますけれども、五十七年度の大学院進学に当たって、具体的には九百二十三名の受験者がおりまして、九百二十名が合格をした、したがって、三名については学部研究生というような形で残らざるを得なかったというような点がやはり一つの問題点であろうかと思います。なお、その点は五十八年度の入学に当たってはそういう問題は出ておりません。それと、やはり大学院入学に当たって受験料なり入学金等が別途徴収されるという点が一つの問題点でございます。そういう点では基本的に獣医師という専門的な職業人養成については、医学や歯学教育と同様な形で学部段階で六年として行う方が望ましいということが言えるわけでございます。いわばその問題点の反対効果といいますか、そういうような点が改善される点としては言えることになるかと思います。先ほどのような、六年一貫としての教育課程というような問題で、現在四年の学部では専門教育の修了要件の単位は七十六単位でございまして、基礎獣医学や畜産学、関連学科目を中心に組まれておりますけれども、学部六年ではその点が、専門教育の修了要件の単位が百三十四単位ということになるわけでございまして、その点で申しますと、基礎獣医学の授業科目と、修士課程を中心とした臨床獣医学、あるいは応用獣医学の分野の授業科目を組み合わせた教育が行われるということで、一貫した教育課程の編成が可能になるというような点が具体的な点で出てまいります。  それと、先ほどの大学院に入る場合の、たとえば選抜の問題、受験料、入学金等の問題があるわけでございます。したがって具体的にはそういうような点が問題点であり、今後改善されることになるわけでございまして、先ほどの御説明のやや繰り返しになりますけれども、私どもとしては専門教育に必要な教員の確保につきましてはすでに過去、五十三年以降それぞれ国立大学についても、大変厳しい定員状況でございますけれども、それらの定員の充実についてはすでに今日まで取り組んできておりまして、具体的な数字は先ほど申し上げたとおりでございます。
  60. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 再度お答えいただいたわけですが、教育課程といいますかカリキュラムの点は、中に踏み込んでのことは私も専門家でないので、専門的に入っているわけではありませんからわかりませんから、そうかなというふうにお聞きする以外にはないけれども、もう一つ、入学金等の理由も言われました。どうもこれは余りぱっとした理由でもないなというふうな感じがするわけでして、たとえば入学金とか試験料とかも、修士のときに云々ということがありましたが、六年制に修業年限が変わると入学金もひょっとしたら、よくわかりませんけれども、四年が六年になれば少し多く徴収するのではないかなとか、これは何か変な勘ぐりかもわかりませんが、そんなことを考えてみたり、あるいは五十七年度ですか三名が修士課程に行くのにちょっと落っこってしまって外れちゃったという話もありましたけれども、どうも大学に入ると勉強の方は怠けるというような傾向がずいぶんあるみたいですから、案外、考えようによれば、一つそういうものを踏んでおいた方がかえって一生懸命やっていいのじゃないかなというような、これはごく素人考えかもわかりませんが、するわけでもありまして、これはえらい反面的な見方、意地の悪い見方かもわかりませんが、そういうことを考えますと、無理にこうやって変えなくてもよかったのじゃないかなというふうな気もしますが、再度その点についてお尋ねいたします。
  61. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 学部での六年制の問題、基本的には教育組織としてはやはり独立した、たとえば獣医学部というような形で本来行われるのが望ましいことはもとよりでございます。しかしながらその点は先ほどの御質問にもお答えしたとおりでございまして、現実問題としての対応としては私どもとしては農学部の中の獣医学科というような形でもやはり学部段階の六年制教育で一貫して行われるような形に踏み切るという現実問題を踏まえての今回の処理をお願いしたわけでございまして、これらについては関係者の合意は十分いただいた上でそれを進めているわけでございます。望ましい姿としてはやはりそれは本来獣医学部というような形で独立した学部の形で教育組織全体が行われていく方向を将来とも目指すべきものではないかということは、先ほどの調査研究会議の結論でもその点も指摘されているわけでございます。私どもとしては、将来の方向としては、やはりそういう方向を目指して対応をしていかなければならないと考えておりますが、やはり学部段階での六年制を早急実施してほしいという関係者の大変強い御要望もいただいたわけでございまして、いわば来年が修士二年の積み上げの卒業生が出る第一回ということで、いわばそういう形での学年進行と申しますか、それが一巡をするところまで来たわけでございまして、今回こういう改正で踏み切って、学部の中の学科で六年制で対応するということに踏み切らせていただいたものでございます。
  62. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 確かにいまお答えにありましたように、獣医学科の統合といいますか、学部として統廃合をやる中できちんとこういう改正をするときに発足ができるのでしたら、それはそれなりに僕も大変意味があるような気もするのですけれども、いまのような形だけでやっていてどうもうまくないような気もするし、まあ専門的な分野はわかりませんから何とも言えませんが、そこらあたりに一つ疑問が残るということがあります。  それから、こういう大学の関係ですから、いろいろ関係の大学や先生方の御意見を聞きながら、たとえばさっきお答えのあった学部統合等についてもこれは進めていくということは大切なことであろう、基本的にそう思います。しかし、その中でやはり大枠からいけば、大局的に見ると、十ある大学を、国立ですか、大学を何カ所かにまとめて獣医学部というものをつくって発足をさせるような形を何とかやるというようなこと、これはやはり必要だろうなというふうに私たちも思うわけてすね。そうだとするならば、ある程度一つずつ、こういう学科ができているところでは、そういう自分のところにあるものをもし統廃合をされてほかに取られたときには抵抗が出てくるということは当然ですけれども、そういう既得のものを守るという意味だけではなくて、それを乗り越えた大きな日本における獣医学という立場から見たらそちらの方がいいという観点になれば、ある意味で文部省あたりで調査研究会議等にも諮問をされながらやってはおられるようですが、大枠の一つの筋というものはつくる中で、むしろそういう方向にだんだん指向していくようなものをプッシュする形でやる方がよりベターではないかなという気がするのですが、そういった点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  63. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 形として獣医学部というような形でまとまった形で教育が行われるような方向を目指すべきことは先ほども申し上げたとおりでございまして、私どもとしても、関係大学の方々の、これからもなおその点については十分大学側の理解を得ながら進めざるを得ない点が現実問題でございますので、その点については関係者の合意が得られるように今後ともそれは努力をしてまいりたいと思います。  それから、考え方としては、たとえば将来の研究機能を考えれば、いろいろ教官組織等が充実されてまいりますれば、たとえば博士課程の問題等についても具体的に研究機能を充実していくためにどのような整備をしていくかというようなことが恐らく将来の課題としては出てまいろうかと思います。そういうようなものを整備する時期が来れば、やはりそういう博士課程の設置というようなことと関連して、獣医学部の再編整備というようなことも具体的な課題として進めていくことになるのではないかというぐあいに私ども考えております。
  64. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これもまあ素人の考えですから、いいのかどうかわかりませんけれども、いまのままだと現在の大学、学部のところは一つだけあるのですかね。ほかはみんな学部の中の一つの学科として、四年制の中から一つだけ六年という形になっていきますよね。そういうあり方というものの中で、ではほかの学科の人たちは、おれたち同じ学部に入ってみたら四年だけれども、あそこだけ六年というようなことになると、心理的にも大変マイナス効果というものが出てくるのじゃないかなという気がするわけですが、そこらあたりを含めての学部内の農学科、畜産学科などとのコンセンサスというものは十分に行われて踏み込まれたのだろうか、その点一つお尋ねをいたします。
  65. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 確かに御指摘のように、農学部関係学部の中で獣医学科について六年にするということに踏み切ったわけでございまして、先ほども申し上げましたが、その点については、それぞれ関係の国立大学については、農学部長に農学部としてのコンセンサスを十分得ていただきたいということで、それらの点については十分念を押しまして、異存がないということをいただいた上で、私どもとしても今回の作業に踏み切ったということでございます。したがって、農学部の中の獣医学科ということで、獣医学科について六年制にするということについては、獣医学の関係者のみならず関係の農学部において、そのことについては私どもとしても十分説明をし、了承を得た上で進めているものでございます。
  66. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それから単純に考えまして、獣医師法の方が改正になって、五十二年ですか、国家試験というものが、修士課程を積み上げて六年でやるということに変わっちゃったですね。しかしその間に、今日、学校教育法改正として、修業年限六年にするということで提案が文部省サイドから出てきた。しかし、結局回り回ってみると、何か修士課程を積み上げてやったというのは、修士の定員というものを、そのまま持ち上がりのような形で定員をふやしていってやっているわけですからね。そんなことならわざわざ時間をかけずに、あの時点で六年にぽんとしておいて、定員をふやして、いろいろな設備をしておいても同じことじゃなかったかな、要するに、もっと早くこういう改正をするならばするでやっていてもよかったのじゃないかなという気がするのですが、そういう点についてはいかがでしょう。
  67. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 五十二年時点で今日と同じような対応でよかったのではないかという御指摘なわけでございますが、当時もそのことについても検討は行われたわけでございます。しかしながら、当時としては、効果的な獣医学教育という観点からはやはり農学部の中に一学科として位置づけられている獣医関係学科を分離して独立の学部とすることが最も望ましいのだ、いわばそういう姿の方が、本来の理想的な形での学部の六年制ということを期することが必要であるし、そのためにはさらに時間を要することであろうから、当面、しかしやはり獣医師の資質向上という点からはぜひとも六年間の教育ということが必要だ、これは諸外国等から見ましても当然そういうことも言えるわけでございまして、そういうことで五十二年の改正当時では、修士課程の二年の積み上げという形で獣医師の国家試験の受験資格という観点からそういうことに取り組んでいただいたわけでございます。そして、当時から今日までの検討経過は先ほども御説明したとおりでございますが、先ほど御説明したような現実問題として、そういう学部として独立をした形での姿というものが、実際問題としては直ちに行うことは困難ということが言えるわけでございまして、一方また、学部と修士の間での教育課程の編成の面から見れば、やはりこれは修士二年の積み上げということで一貫した形で対応するということではございますが、どうしても、先ほども御説明したことでございますけれども、区切りが出てきて、六年一貫の教育課程という点からはやはり問題点もあるということも言われたわけで、そういうようなもろもろの点が、いわば今日まで検討経過の中に積み重ねられまして、今回のような改正に踏み切ることにしたということでございます。私どもとしても、将来、獣医学部としての理想的な姿の方向に持っていく努力は今後ともなお続けねばならぬことだというぐあいに理解をしております。
  68. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では文部省関係は終わらせていただきまして、最後に大臣に一言お尋ねいたしますが、その前に農水関係でお尋ねをいたします。  学校教育法関係で、四年それから修士二年という形で積み上げ方式でいままでやってきているわけですね。それがいわゆる国家試験が修士課程を経て六年たってなければ受けられないというふうに切りかわった時点で、結局そうなりますと五十七、五十八年度になるのですか、卒業生が出ないという形が出てまいりますね。そうしますと、先ほど需給関係についてはいろいろ御答弁もあっておりましたが、五十七、五十八年度についての獣医師というものは、卒業生が出ないということになるとちょっと不足してくるし、その対応は困る部面があるのではないかなというふうに思うわけでありますが、その点についていかがでしょう。
  69. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、前回の五十二年度の改正をいたしました際にすでにそういう事態が予測されたわけでございます。したがいまして、私どもとすれば、五十七年、五十八年、当然いままでで申しますと千数百人のオーダーから一挙に三百数十人にまで下がってきておりますし、現に五十七年と五十八年に獣医師として社会に出られました方は、五十七年が約三百五十名でございますし、五十八年度が約三百十名ということでございます。こういう事態を前もって予測をいたしておりましたので、五十二年度の法改正をいたしました際に、ある時期に獣医師の卒業生が少なくなる、こういうことを頭に置いていろいろと要員の確保なりそういうことをしていただきたいという趣旨のことを事務次官通達をもちまして関係方々のところに実はお願いをしてございます。そういう意味ではここ数年来の獣医師の確保につきましては、五十七年、五十八年が若干少ない人数が出てくるということを前提にして各関係方々が採用計画なりあるいは要員の計画なりをお立てになっていると理解をいたしております。幸い三百数十人程度の方は出ていただいておりますし、五十九年度からは千百名台の新卒が出られるわけでございます。この間は、いままでもそういう努力をしましたが、そういう採用の関係で大きな断層にならないようにこれからも極力注意してまいりたいと思っております。
  70. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 何かもう獣医さんのいま実際いろいろな立場で働いていらっしゃる方とこれから新しくなる方、やめていく方を総合しましたら、大枠というのは決まっているような気がするので、どうやったら手品のようにぱんと足りないのが足りるようになるのかなという気もするのですが、まあまあそういうことを留意していただいて対処しておられるということですから、その点についてはいろいろな関係のところでひとつ支障が起きないように、なお一層努力を要望を申し上げておきたいと思います。  次に、五十七年の四月十六日の日経新聞によると、「獣医さん過当競争」ということで公取委から獣医師会が独占禁止法に抵触する疑いがあるというようなことでいろいろと事情聴取を受けたり要望等をされたりしているようです。この件についてちょっとお尋ねします。  一つは、この新聞を見ますと、こういうことが起こった原因は、「ペットブームの中で、犬や猫など小動物の治療を専門に行う獣医師が増加し、各地で過当競争気味になっていることが原因とみている。」、こういうようなことでした。これは地域的なアンバランスという問題もあるのかもわかりませんが、先ほど馬場委員に対する需給関係等の御答弁の中では、愛玩関係の獣医はむしろ若干減っているか横ばいぐらいだというような御答弁があったような気がするのですね。そうしますと、こういうところを見ておりますと、どうも多いのじゃないかというような、先ほどの御答弁とちょっとうらはら、逆のような感じの記事になっておりますが、ここらあたりは現実には一体どうなっているのでしょうか。これが一つ。  それから、過当競争ということで公取委から要望されておるこの事情、その後これはどういう形に対処されてきておるのか、ここらあたりも含めてお尋ねをいたします。
  71. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の点につきましては、地域で、ある都道府県におきましてまず獣医師さんの獣医師会にお入りになりますときにかなり高額の入会金を取っているというようなお話なり、あるいは狂犬病の予防注射等につきまして特定の方にやらせて特定の方を差別しているのではないかというような趣旨でのいろいろな御指摘なりがあったわけでございます。  私どもといたしましては、そういう公正取引委員会の御指摘のあるようなことが広く行われるということになりますと、独禁法上の問題になりますと同時に獣医師としても適切な業務の仕方とは考えられませんので、まず事実を調査いたしますために獣医師会に対しまして各県の実情をよく調査するようにということを昨年の四月にいたしました。それに基づきまして、獣医師会では傘下においてどういう事実があるかというようなことを調査いたしましたし、私どもはそういう内容を若干知らせていただきながらそういうことがないように、特に狂犬病の予防注射等につきましては広範な方々にやっていただくのが適切なことでございますので、そういうような指示をいたしたわけでございます。それに基づきまして獣医師会は傘下の各会員に指導通達を流しております。私どもはそれだけにとどめませんで、行政の立場から五月に全国家畜衛生主任会議、これは県庁のこの分野を担当しております方々全国会議を開いておりますので、その場におきましてもそういうことがないようにという指導をいたしました。そういうようなこと等の結果、最近におきましてはそのような事案は聞いてはおりません。  最初に御指摘のありました過当競争、数が多いのではないかというお話でございますが、確かに約十年間に二千五百くらいの愛玩小動物の担当医が四千名程度にふえておりますから、ふえ方が急速であったというようなこともございまして、全国的にということではございませんが、一部の地域においてかなり急速にふえたというふうな事態がございます。私ども、これはいわば自由な診療行為でございますので、何か登録その他によって制限するという筋合いではございませんけれども、片や、先ほどもちょっと申し上げましたように、産業獣医師の方におきまして若干不足ぎみというような地域もございますので、片っ方ではそういう形で産業獣医としてお働きいただくような方々が働きやすいような環境づくり、先ほど申しましたパトロールだとかあるいはまず奨学金制度だとかいろいろございますけれども、そういうこともやりますと同時に、こういう過当な競争から法令に触れるようなことが起こることのないように今後も関係者を指導してまいるつもりでございます。
  72. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この件についてはひとつ厳重に、お聞きしておりますと通達やら会議を開いて話をしたということですが、その後出ておらないということですが、本当に現実に実情も調査されて裏づけをきちっとしながら今後こういうことのないようにきめ細かい指導等をやっていくように御要望を申し上げておきます。  もう時間が参りましたので、いろいろ質問の予定は重複しておりますので全部省きまして、最後に大臣に一言だけお尋ねをいたしますが、先ほどから大学局長とのやりとりの中で、この学校教育法改正して出発するに当たって、学部としてやるのが一番いい形であろうというふうなことも言われております。こういう修業年限四年、それに重ねて修士課程二年、合わせて六年ということ、それを単なる修業年限六年に変えたというだけでは、私ども本当にいい形のものができるのかなというクエスチョンが残るわけでありまして、そういう意味で統廃合を含めた学部ということのあり方を目指す中で、よりよいものをやはりやっていくべきだというふうにも思いますが、そういう点についての御決意なりを最後にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  73. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 その点については、先ほど来大学局長から御説明いたしておりますが、従来から基本的な考え方としてそういうことでやってきておるわけでございまして、前々の改正のときもそういうような基本でやったわけでございますが、なかなか規模の問題から、各大学との調整、話し合いはしなければいけませんから、そういう問題で今日までこうなっておる。そのうちに、いま申し上げましたような必要性を感じて今度改正案を出したということでございまして、基本としては、いま鍛冶さんのお話のような方針で今後とも努力を続けたい、かように考えております。
  74. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では質問を終ります。
  75. 葉梨信行

    葉梨委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  76. 葉梨信行

    葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。栗田翠君。
  77. 栗田翠

    ○栗田委員 私の持ち時間は大変少ないものですから、お答えはぜひ簡潔にしていただきますように最初にお願い申し上げます。  さて、獣医学教育はすでに獣医師法の改正で学部四年、修士二年の上積みになっておりますから事実上六年制に移行しているわけですけれども、今回の改正が医学や歯学と同じように学部としての履修課程を六年間にしようとするものですから、六年一貫教育に道を開くということで私は前進だというふうに考えております。そこで、今後六年一貫教育にふさわしく医・歯学部と肩を並べられるような教育研究条件を整えることが不可欠になると考えますので、まずその立場から質問いたします。  第一に、教育研究費についてですけれども、獣医学科の教官当校費は現在修士課程がありますから講座制の校費が出ていると思います。今回の法改正では学科目制になりますから、単純にこれが適用されますと現行より大幅に減額することになると思います。大学院のある東大、北大は別ですけれども、単純にやればそういうことになると私は思うわけです。たとえば昭和五十八年度予算では講座制は七百四十四万三千円の単価ですけれども、学科目制は教授、助教授、助手が全部そろっていたとして約三百四十万円、講座制の大体二分の一以下にダウンすることになります。学科目制への移行が、これは五年後の話になりますけれども、こういうことで現行より後退することになれば大変問題なんですけれども、文部省としてはこの点はどういうふうに処理なさるお考えでしょうか。
  78. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 学部段階の六年制教育になれば、先生御指摘のように、形としては修士講座制から学科目制に移行することになるわけでございます。したがってその点では、単価についてはやはり学科目制の単価という考えにならざるを得ないわけでございますが、この修士講座は標準的な場合で申しますと修士課程が廃止されるまでは存続することになるわけでございまして、それまでの間に私どもとしても具体的にこれが実際に研究水準の低下にならないように財政当局ともその点については今後十分協議をして、教育水準の維持については努力をいたしたい、かように考えております。
  79. 栗田翠

    ○栗田委員 いま、財政難を理由に財政当局からの風当たりもかなり強いと思いますので、ぜひその点はしっかりとやっていただきたいというふうに強く要望いたします。  次に、教育研究条件の整備と充実の問題について伺います。  獣医学教育ばかりではなく、これは今日の大学の教育研究にとっての最大の問題なんですけれども教育研究費が非常に貧弱だということがございます。特にいま進められています臨調行政改革に沿って校費が抑えられて、昭和五十八年度では前年度よりもマイナスになっております。たとえば講座制の実験で見ますと、五十七年度は七百六十方六千円だったものが五十八年度は七百四十四万三千円、二・一%減っているわけですが、こういう結果、どういうことが起こっているかということです。  獣医学関係で見ますと、東京農工大のある研究室の例を私調べてみました。ここは教授一人、助教授一人、助手一人、院生八名という構成になっておりますが、ここでは実際に使える研究費は、学校全体で必要なものは引かれてきますために研究室に来るものが百万円程度になってしまうのだそうです。そしてそのうち水光熱費を引きますと、残るものが実質的に年間五十万円ぐらいしかないという実態でございます。この年五十万円で必要な図書を購入したり動物の飼育を行ったりするわけで、まともな研究などとてもできないと悲鳴を上げている声を実際に私も伺いました。  何といいましても、教育の内容の充実ということからいいますと、こういうところに予算が充実されて十分な実験、研究、飼育などができなければいけないと思います。こういう問題が解決できなくて獣医学教育充実、六年一貫教育といっても全くの絵そらごとになるというふうに考えるわけです。大学の研究教育のかなめである校費を大幅に引き上げていくべきだと思いますけれども、その辺はいかがでございますか。
  80. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立大学の教育研究の基本的な経費について、私どもとしても限られた枠の中で最大限その充実努力をいたしておる点でございます。先ほど先生、具体的に講座制の実験の場合、予算単価で五十八年度子算が二・一%の減になっているではないかという御指摘がございました。そのとおりでございます。これは実は五十七年度補正予算を組みます際にこれらの経費について、これは各省共通の問題でございましたが、減額を求められてそういう単価になりました経緯がございます。私どもとしても、もちろん当たり校費の充実が一番基本的な、研究のために必要な金額であるということは十分理解をしまして努力をしている点でございますが、ただ、これらの経費について、五十八年度予算でも残念ながら減額にならざるを得なかった事情がございます。それは各省共通して、たとえば旅費について、これは一般管理的な旅費についてはたとえば一〇%削減というようなことが言われておりまして、教官研究旅費については、教育研究の事情を酌んでいただきまして、一般的な一〇%減ではなくて五%の減にとどめたというような点できめ細かく私ども対応はしておりますが、残念ながら、予算的には各省共通で具体的な予算が伸びていないというのが現実の状況でございます。  そこで、私どもとしては、国立大学の全体の状況を踏まえまして、いわばそれらの経費の補完的な経費というような形で、教育研究のための特別経費を別途計上をして、いわゆる光熱水料等の経費に充てるための経費として、教育研究の特別経費という形で別途の計上をお願いをするというようなできる限りの努力をいたしまして、各省共通の点で減額措置をされましたものをカバーできる範囲内のことはそういうような経費でカバーをするというような対応はいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、大変厳しい状況でございますので、これらの充実については私ども努力は今後とも続けてまいりたいと思っておりますが、具体的な執行の面でも、各大学等についても十分今後配慮をしていただいて、実質的な教育研究の面に十分行き届くような執行面での工夫なりそういうことも各大学にはお願いをしているところでございます。
  81. 栗田翠

    ○栗田委員 これは研究充実の一番抜本的な問題ですので、ぜひとも引き続く御努力をお願いしたいと思います。  次に、学生の教育訓練施設などの条件整備の問題なんですが、諸外国では大学が牧場を持ち、宿泊所も持ち、そういう中で民間まで受け入れて民間の充実のためにも大学が役割りを果たしているという水準だと聞いております。ところが日本の場合には、逆に実習などの場合、民間に依存する場合が非常に多く、私の身近な知っている例を見ましても、学生が実習に北海道とかどこかへ行くわけなんですけれども、受け入れ側は必ずしも教育的な観点で受け入れておりませんから、ただ使うだけで終わったとか、いろいろな例が出ております。こういうことを考えていきますと、そういう教育訓練施設等の充実を諸外国水準に引き上げていく努力がいま必要だと思いますし、一度にいかないまでも、とりあえず計画的な整備充実がどうしても必要だと思いますが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  82. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 牧場等の施設の整備充実についてのお尋ねでございますが、獣医学科を置いております大学は多くは畜産学科とを併設しておりまして、規模の大小はございますけれども、一応各大学牧場は持っているわけでございます。それを利用した実習が行われているわけでございますが、一部の大学では夏季休暇等を利用して民間の牧場等を活用しているという点もございます。  これは具体的に、たとえば低学年では家畜になれるというような基礎的な知識、技能を習得させる、そしてまた高学年では、家畜衛生や患畜の早期発見、その他具体的に民間の特色ある牧場等で実習を行うということも有用な場合ももちろんあるわけでございまして、今後大学の整備充実を図ることはもとよりでございますけれども、やはりそういう教育上効果的な場合については、民間の牧場等も利用するということも必要であろうかと思っております。そのほか牧場実習等の充実のためには、また農林水産省の御協力も得まして、種畜牧場等を活用することについても今後積極的に検討させていただきたい、かように考えております。
  83. 栗田翠

    ○栗田委員 次に農水省に伺います。  獣医師の国家試験のための教育なんですけれども、いま大学、特に私学などに強い傾向がありますが、試験に合格するための予備校的な性格がかなり強まっているということを聞いております。こういう中で試験科目に限定されるような教育となりかねないというような心配があるわけです。さらにこの獣医師の国家試験をしていくのに、いままでは学説試験それから実地試験という二本立てでやっていて、学説試験は論文だったのですね。獣医師の場合もあくまで資格取得試験ですから、競争試験ではないわけで、こういうふうに物を全面的に考えていく論文形式というものは非常に必要なことだと私は思っているのですけれども、今度新たにいわゆるマル・バツ式といいますかマークシート方式に変更するということが検討されているというふうに私聞きました。このマークシート方式にすることをなぜ検討してらっしゃるのでしょうか。
  84. 石川弘

    石川(弘)政府委員 獣医師の国家試験は、御指摘のように、獣医師として一定の必要な知識なり技能を修得しているかどうかをはかる試験でございまして、定数を定めて一定の人間を採るという意味の競争ではございません。そういう意味で、極力広範に獣医師たり得る資格を学んでいるかどうか、非常に多岐の問題点がきちっと修得されているかどうかというようなものを調べます方式といたしまして、出題方法としましていわば多肢の選択方式という方法、それからそれに答える答え方としてはマークシートという方法は広範な知識を試すには一つの適切な方法ではないか、これはもちろん私どもがそう思うというよりも、獣医師の免許審議会において出題の考え方を整理なさって、来年度からそういう方法をとることになっているわけでございますが、そういう観点から、他の医師なりあるいは歯科医師等の出題というような傾向も見ながらこういう諸方式をお考えになっているようでございまして、問題はむしろその多肢選択方式の問題の出し方、そういうものが広範な獣医師の知識なりあるいは能力をはかるのにふさわしい問題が当然必要だと思っておりますので、獣医師免許審議会等ともよく相談しながら、そういう競争的なという観点ではなくて、資格試験として必要な出題がなされるよう指導してまいりたいと思っております。
  85. 栗田翠

    ○栗田委員 獣医師といいますと、とかく動物健康管理病気の問題だけを扱っているように思いがちなんですけれども、実際には獣医師というのは予防医学、公衆衛生の広範囲にわたって活躍をしていますし、また基礎医学の分野ではずいぶん獣医師が活躍をしているというふうに聞いております。ですから、人間の衛生管理に大きな役割りを果たしていて、諸外国で獣医師の地位が日本よりはるかに高いのは、そういうところでの活躍が非常に重視されているということだと私はいろいろ学びまして知りました。  そういうことを考えていきますと、人間と接触し、人間の健康管理をしていくわけですし、保健所などで活躍する分野が非常に広いわけですから、いわゆる全人格的な円満性といいますか条件といいますか、そういうものが必要になってきますし、単なる知識でなく、物の見方、論理の展開、それから研究を深めていくやり方、こういうものが非常に要求されてくると思うのです。  いまでは高等教育でなくても、初等中等教育でもマル・バツ式偏重というのはいろいろ子供たちに悪い影響も与えていって、知識だけで、物を考えないとか欠陥人間をずいぶんつくり出しておりますけれども、そういうことを考えていきますと、なおのことこのマークシート方式に変えていくことが果たしてよいのか、そして幅広くマークシート方式でマル・バツをつけさせていくということになりますと、さらに資格を取るために学校教育がそういう方向に向いていくのではないだろうかという、そういう心配も持っていて私は伺っているわけです。再度のお返事はいただきませんけれども、そういう立場から伺っておりますし、そういう疑問を持っておりますので、よくこのことは今後の検討の中に含めていっていただきたい、そういうふうに考えます。  次の問題に移ります。獣医学科の統廃合問題について伺います。  先ほどから学部昇格の問題は幾度も出ておりまして、実際に学部に学科を昇格させることが教育内容の充実のためには非常に望ましいということは関係首大方の御意見の叫致するところだと思いますけれども、いま学部昇格が困難になっている理由の一番大きいものは何ですか。
  86. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 具体的な問題で申し上げますと、国立大学で十大学ありますが、学部でございます北海道を除きまして、ほかは農学部の中の獣医学科ということで、入学定員としては三十名、三十五名の場合もございますけれども、そういう構成になっているわけでございます。  学部として独立するとするならば、私どもとしては午前の御質問にもお答えしたわけでございますが、現在国立で十大学に分かれております獣医学科について再編統合いたしまして、学部規模としてはやはり六十名ないし八十名というくらいの規模で全国数ブロックというような形で統合することが望ましいというのが従来の検討経過にもあったわけでございます。ところが、実際にそれぞれの十国立大学で学長懇談会等で御検討いただいた結果では、学内事情なりあるいは地域社会との関連で関係大学の同意が得られないということでございますので、現実問題として今日ただいまの状況では、その問題が非常に困難というのが現実でございます。
  87. 栗田翠

    ○栗田委員 つまり、学部にするには現在の学科の人数が足りないけれども、統廃合しようと思うと学校それぞれの事情があってなかなか一致しない、こういうことなんですね。——わかりました。いずれは学部にしていくという方向が望ましいというお答えもさっきから幾度もなさっておられますし、この統廃合問題ではやはり大学の意思、自主的な判断を尊重して進めていかれますように強く要望いたします。それはよろしいですね。一言だけで結構です。
  88. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 もちろん大学の合意をいただかなければ具体的には実現できないものと考えております。
  89. 栗田翠

    ○栗田委員 次に厚生省に伺いますけれども、いま保健所、これは家畜保健所でなく人間の方のですが、保健所ではずいぶん獣医師さんが活躍しておられると思います。公衆衛生予防医学の立場かなりやっていらっしゃると思います。ところが、保健所長は医師でなければいけないというふうに保健所長の施行令第四条で決められておりますね。けれども、今度六年制になって医学、歯学と同等の六年間を学んでいくことになるわけですけれども、実際に現実に保健所で獣医師が大幅に活躍をしており、そして今度六年制になるということになりましたらば、保健所長は獣医師でもなれるようにしていくべきではないかと思いますが、またそのような要望が獣医師界には非常に強いのですけれども、その辺のお考えを伺いたいと思います。
  90. 古市圭治

    ○古市説明員 いま先生お話しのような御要望は私ども承知いたしております。ただ、保健所法におきまして保健所の業務と申しますのは、いわゆる母子保健から予防接種あるいは最近問題になっております循環器検診、がん検診、非常に幅広い対人保健サービスを行う、同時にまた医療機関の監視等医療行為、医療機関との関連が非常に強い。そういうことから、保健所は法律によりまして一応医療機関ともなっているわけでございます。  こういうことから、御指摘食品衛生監視、環境衛生監視という部門で非常に多くの有能な獣医師さんに御活躍を願っているところでございますが、それぞれの衛生課あるいは都道府県の食品衛生課長、環境衛生課長、そういうところでも大いにがんばっていただいている。しかし、保健所のいま申し上げました性格から、総合的に地域全体の住民の健康を守る、医療機関との関係が非常に深いというところから、現在保健所長を医師と定めておることは一応望ましいものだ、このように考えております。
  91. 栗田翠

    ○栗田委員 しかし、医学の分野でもずいぶん獣医師の活躍は幅広いわけで、大学での基礎医学の教官などには獣医師の資格を持った方ずいぶんやっていらっしゃいますね。病理学、生理学、解剖学などで教鞭をとっている方ずいぶんいらっしゃる。実際に学校で学んでいる中身を見ましても、人間の医学を相当に学んでいるという実態があるというふうに思いますし、それからまた公害病だとか伝染病だとか、こういうものについては獣医師の活躍分野というのは広いわけですね、イタイイタイ病、水俣病などの発見にも獣医師はずいぶん関係されたというふうに言われておりますから。そうなっていくと、必ずしもそうではないのじゃないか。  保健所の中で獣医師さんというのはかなりの数いらっしゃるのじゃありませんか。そのことを伺っておきます。
  92. 古市圭治

    ○古市説明員 現在、先ほど申し上げましたような都道府県の食品、環境の幹部職員、課長以上という形で約五十名近い方が活動されておりますし、保健所の中では獣医師という職種だけで数をとっておりませんが、農林水産省の調べでは約三千二百名の方が五十六年度で活躍をいただいているということでございます。先生御指摘のように、今後とも専門分野で大いに御活躍を願いたい、このように思っております。
  93. 栗田翠

    ○栗田委員 このような実態であるということですから、今後検討していっていただきたいものだと思います。  次に、医療法というのがございますが獣医療法というのがございません。医療法は、医師の場合には医療の必要な基準が定められて、開業する場合にも一定の水準が決まっているわけですが、獣医師が開業する場合にはそれに該当するものがないわけです。しかし、今回の六年制と直接関係はありませんけれども、獣医師開業の水準を高めていくという意味からも獣医療法を決めるべきであるということで検討もされているというふうに聞きますが、このことについてはどのような方向でいまお考えになっていらっしゃいますか。
  94. 石川弘

    石川(弘)政府委員 獣医さんの行います医療行為でございますが、人を対象とします医療とちょっと異なっておりますところは御承知のように患畜が大半は農家にあるわけでございまして、どちらかと言うと往診、いわば一般的に言えばそちらへ出向いて診察をする。これに対して人間の医療は、往診もございますけれども承知のように大半は医療施設に患者が来て診療するというところにかなりの違いがございます。  医療法の基本の中で病院とか診療所の開設の基準を設けておりますのは、そういう医療機関自身がそれにふさわしい設備あるいは能力を具備しているかどうかというようなところに医療法の中のかなり分野が割かれておりまして、そういう点から申しますと、家畜診療の場合といささか態様を異にしているのではないかと思っております。  実は何をもって獣医師法とあるいはいま先生御指摘のような医療関係の法、制度と分けるかというところがあるわけでございますが、たとえばこれは大した例ではございませんが診療行為に関する広告の制限なんというのは実は獣医師法の中に入っておりまして、そういうところでは医療法に規定しておりますようなことが獣医師法の中にある分野もあるわけでございます。  これからの検討の課題としましては、そういう獣医療法というような法律の体系を頭にすぐ描くのではございませんけれども、獣医師さんの今後のいわゆる活動のあり方をどのような考え方で整理をしていくかという面で、獣医師法の法域なりその中身なりをいろいろと関係者寄り寄り検討しているのがございます。私ども社会のいろいろな進歩なりあるいは獣医療の進歩の度合いに応じまして、そのようなものとの関連を頭に置きながら今後のあり方を検討していきたいと思っております。
  95. 栗田翠

    ○栗田委員 文部省に伺いますが、従来の四年制の課程を卒業した方、それから修士課程を卒業する方が今後出ていらっしゃいますが、その方たちと六年制を卒業される方、いろいろ差が出てくると思います。特に四年制とその後の方との差があるわけですね。四年制を卒業された方が後六年制の水準を再び身につけるために差を埋めていく、その対策というのはどうしたらいいのかということなんですけれども、たとえば博士課程などまで行きたいという場合に、どういうふうにしていくのか、その差を埋めていく方向についてはお考えになっていらっしゃいますか。
  96. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点あるいは必ずしも十分正確に御質問意味をとらえてないのかもしれませんが、四年制を出まして従来の獣医師の国家試験を受けまして、獣医師の資格を持っている者については、その点は扱いとしては同じ扱いになるのではないかと思います。ただ、それらの人たちに対して資質向上のために具体的なことで講習会でございますとかいろいろなことを計画すべきではないかという点がございますれば、それは獣医師を所管しております農林水産省でしかるべく対応をお考えになることではないかというぐあいに考えます。また、従来の四年制を出ましてたとえば博士課程へ行きたいという場合については、具体的に四年制を出て新しい博士課程へ入る資格があるのかどうかというあるいはお尋ねかと思いますけれども、その場合には六年制の獣医学科の方に再入学をしていただいて、さらに所要の年数を修得した上で博士課程に進むということになろうかと思います。あるいは御質問意味を必ずしも正確に把握していなくて不正確なお答えであるかもしれませんが、そこのところは、あるいは私が質問意味を取り違えておりましたらもう一度お尋ねいただきたい。
  97. 栗田翠

    ○栗田委員 そうしますと、四年間やって一定の単位を修得しているわけですが、それでもまた全部六年制へ再入学しなければいけないのですか。偏入できないのですか。
  98. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 年限的に申せば、四年制の学部を卒業した者が六年制の獣医学科について再入学をして、二年を修得した後博士課程へ進むという筋道になろうかと思います。
  99. 栗田翠

    ○栗田委員 時間がなくなりましたので、まだ給与の問題などを伺いたいと思いましたが、先ほども他の方からも御質問が出ておりましたのでそれは残念ながら省きます。  最後一つ。さっき無医村のお話が出ておりました。産業動物のための獣医がいない町や村、こういうものがあるというお話が出ておりましたけれども、私もいろいろ今度のこの質問について実態も調べてきましたところが、なぜ小動物に行く獣医さんが多いかということは、産業動物だと生活ができないという実態があるといういろいろなお話を伺いました。特に馬、牛、豚などの動物なんかの場合には、農業共済の組合に加入していてその点数で診療報酬などが出ている場合に非常に点数が低いということ、それから広範囲を歩いて体と時間を使って診療しなかったら小動物を見るのと同じくらいの収入は得られないという実態。たとえば点数で言いますと、小動物に注射をする場合一回で千五百円ぐらいもらえるのに、大きいものの場合三百九十円の点数であるとかいろいろな例がありまして、組合に入っていない場合でもそれに準じた診療費になってしまうという問題などがあって、本来でしたら酪農のためにもっと活躍しなければならないのにそういう方が減ってきているということを聞きました。そうなってまいりますと、この診療報酬点数などを引き上げて生活ができるようにしていって、本当に産業動物のためにももっと獣医さんが心置きなく活躍できるようにすべきだと思いますけれども、その辺はいかがでございますか。簡単で結構でございます、もう時間がありませんので。
  100. 原昭夫

    ○原説明員 ただいま先生から御指摘がございましたように、農林水産省といたしましては、農業共済団体などの家畜診療所の獣医師さんというものは、一般の職員の者とは勤務条件が若干違います。そういった勤務の特殊条件等を考慮いたしまして従来からも適正な給与が定められるように指導しております。現在のところほとんどの家畜診療所の獣医さんの給与につきましては、一般の職員とは違った別の俸給表を適用するとか、あるいは同じ俸給表を適用しておりましてもすでに格上げをして格づけを決めておるとか、あるいはまたその勤務に応じて必要な手当を別に加算して支給しているというような形でもって、何らかの形でもってほとんどの診療所については一般職員よりも優遇されておるようなかっこうになっておりまして、また毎年毎年診療点数等も改定いたしまして、給与も上げておるところでございます。  それからまた、最近、先ほど御指摘ございましたように、組合等が合併いたしますので診療区域が広くなってまいります。そんなようなことで特に往診が多い家畜、大動物の診療につきましては、往診の車両を整備するとか、あるいは無線施設等がだんだん進んでまいりまして、それらのこと、また一方では人員の適正配置というようなことも考えまして、業務が特に過重にならないようなことで配慮しておるところでございます。  以上のような事情でございますけれども、先生の御指摘もございまして、このような趣旨に従いまして今後とも一層また獣医さんの給与が改善されるように努力してまいりたいと思っております。
  101. 栗田翠

    ○栗田委員 時間がなくなりましたが、時間をはみ出して申しわけないのですが、最後に大臣に一言伺いたいと思います。  獣医師というのは動物はもちろんですけれども公衆衛生予防衛生、ずいぶん広い範囲で活躍をいたしますし、これからもしていかなくてはならないわけですから、そういう意味では、いま六年制に移行してきた意味というのは非常にあると思います。ただ、さっきもいろいろ私も申し上げたように、まだまだ大学の今後の充実ということが必要とされていると思いますけれども、その獣医師の果たす役割りを国際水準並みにしていくためにも大いに文部省としても獣医学を専攻する大学を充実させていくために努力をしていっていただきたいと思います。そういう立場に立たれましてのお考えを伺って、終わりにしたいと思います。
  102. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 普通のお医者さんに、君は馬の医者だろうというような言葉が、これは冗談ですけれどもそのくらいに大動物、小動物にかかわらず動物のお医者さんというと従来何か普通のいわゆる人間に対するお医者さんとは格が下のように見ておったのが日本の習慣といいましょうか世間の動きであったと思います。しかし、いまおっしゃったように、大動物、小動物にかかわらずまさにいまや動物は人間社会の一員になっておる。動物の健康、治療等ばかりではなくて社会環境に大きな関係があるわけでございますから、今度はそれらを重視して一般のお医者さんと同じような学歴といいましょうか研修をしてもらおうというのがねらいでこうなったのでございまして、また獣医師さんの社会的地位と申しましょうか権威を高めようというのがそういう関係者の願いでもあった。そういう点が今度の改正につながっておると思いますが、そういう意味で今後、いまの栗田さんのお話のように、私、外国の獣医師さんの状況知りませんけれども、力を入れていかなければならない、かように考えております。
  103. 栗田翠

    ○栗田委員 終わります。
  104. 葉梨信行

    葉梨委員長 三浦隆君。
  105. 三浦隆

    三浦(隆)委員 本法案は、大学において獣医学を履習する課程の修業年限を六年とする、それに伴い獣医師法に定める獣医師国家試験の受験資格を、大学において獣医学の正規の課程を修めて卒業した者とするということを内容とする改正法案でありまして、この延長については、昭和二十五年十二月の日本獣医師会獣医事審議会が教育刷新審議会に教育年限の延長を要請して以来かなりの年月をかけて十分に検討されたことでもございます。そしてまた、獣医師さんを踏まえて獣医学を勉強される方の勉強の年月が充実されて、それでともどもに地位も向上されていくという趣意において賛成をしたいというふうに思います。  そこで初めの質問は、ちょっと打ち合わせと違って順序不同になるわけですが、実は受精卵の分割等の実験についてお尋ねをしたいと思うのです。  いわゆる獣医学の学部における研究段階の成果としまして、いろいろなことが実験研究されていこうかと思います。たまたま今月の八日の新聞の記事でありますが、かなり大きく報道されているニュースがございます。それは農林省の畜産試験場での研究によるもので、二つに細胞分裂をした受精直後のヤギの卵子を二つに分割、これを別のヤギの子宮に入れて子ヤギを出生させるということで、人工的に一卵性双生児のヤギを同時に生まれさせるというふうな研究のようでございます。まず、新聞に書かれたこの問題についてどういうふうなお考えをお持ちなのか、お尋ねをしたいと思います。
  106. 岸國平

    ○岸政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘新聞の記事でございますが、私もそれを見てまいりまして、大体報道されたとおりでございまして、そのような研究を実施いたしております。その家畜の受精卵の分割の研究につきましては、私ども現在、昭和五十七年度からプロジェクト研究といたしまして「細胞融合・核移植による新生物資源の開発」という題でプロジェクト研究を実施いたしておりまして、その中の畜産部門の研究の一課題でございまして、新聞に報道されておりますように現在実験の対象動物といたしましてはヤギを用いまして、そこにありますように一部成功をしたということでございます。今後できるだけ大動物、特に牛においてもそのような技術を開発してまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  107. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今回の実験は、新聞の報道によりますと、二分割した受精卵の一つを豚の死んだ卵子の中に入れ、さらにそれを外側を寒天で包んでウサギの卵管に入れ、そして五日ほどたって卵割がさらに進んだ段階で別のヤギの子宮に入れて育てた。ヤギ一匹を実験で生むのに、ウサギを使い豚を使い、さらにヤギを使うというか、いろいろと科学というものは進むものだなというふうに私はこれを拝見したわけです。  そこで、細胞分割とか再生とか種間雑種というふうな研究実験というのは大どころどの辺まで進んでいるのか、大ざっぱにまずお尋ねしたいと思います。
  108. 岸國平

    ○岸政府委員 種間雑種の問題も出ておりましたけれども、私どもも、種間雑種ということにつきましては、作物におきましてはそのことをかなり重要な対象といたしまして現在研究を進めつつございますが、動物におきましてはこの問題は大変むずかしい命題でございますので、種間雑種のところにまでは現在研究の手を伸べておりません。ただ、受精卵の移植の問題でございますとかその前段階におきます人工受精の問題でありますとか、精液あるいは受精卵の凍結保存の問題でありますとか、そういった今後の畜産業における能率的な生産を上げるための研究という点につきましてはかなり研究を進めておりまして、受精卵移植によって牛の優良な系統を生産する、あるいはそれの双子の生産を図るような技術でありますとか、そういったことにつきましてはすでに実用の段階に近いところまで技術が確立いたしております。  なお、先ほどの御指摘にございました受精卵分割によって一卵性の双生児をつくるという技術につきましては、これはまだ本当の研究の段階でございまして、これを実際に農家の段階で獣医さんが行うというようなことまでは至っておりません。
  109. 三浦隆

    三浦(隆)委員 主に種間雑種のことでのお話があったわけですが、動物段階では余り研究されておらないという御答弁でありました。しかし一応、たとえば豚とイノシシの間ですでに交配が進んでいると言われておりますし、また、ライオンとトラの間でもライガーというものが生まれたと言われておりますし、また、ヒョウとライオンとの間でレオポンと称されるものが生まれたと言われておりますし、これが種間雑種と言えば、属間雑種と言われている中では、馬とロバとの間のものがやはり出ている。これはやはり相当研究が進んでいなければできないでしょうし、果たしてここまででとまるものかこれ以上進むものかという問題でもあろうと思うし、研究はやってないのじゃなくて相当進んでいたのじゃないでしょうか。もう一度お尋ねしたいと思います。
  110. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げるのが不十分でございまして申しわけございません。  ただいま御指摘にありましたようなイノシシと豚との雑種といったような点につきましては、現に実際にもつくられておりますので当然あるわけでございますが、先ほどお答え申し上げますときに、研究の点で、そういう種間雑種によって新しいものをつくるところに研究が非常に重点的に向いているかというふうな内容のように御質問をとりましたので、そういう点で、現在私どもの試験研究機関におきまして種間雑種を特に大きな命題として取り上げておりませんというような意味でございました。不十分で申しわけございませんでした。
  111. 三浦隆

    三浦(隆)委員 細胞分裂を人工的に行わしめているときに、その中に有糸分裂と無糸分裂とあるそうですが、たとえば無糸分裂になると病気の細胞となるというふうに言われておるようです。そこで、こうした人工的細胞分裂を行うときの弊害というのでしょうか、そういうものをお考えでしょうか。
  112. 岸國平

    ○岸政府委員 ただいまの細胞分裂に関する研究の行き着く先が、たとえば人間の問題と結びついていろいろ問題が起こるのではないか、そういうことを頭に置いて家畜においても研究をしておるかというような御趣旨かと思うのでございますが、私どもは、家畜の研究におきましては家畜生産ということを主目的に置いておりまして、それに必要な技術の開発としての研究を実施いたしております。その際に、ただいまの御指摘の点もそうでございますし、また受精卵分割につきましても同様でございますが、それらの研究の成果が、ある場合には人間の場面に応用され得る可能性は当然出てくるわけでございますが、私ども家畜の研究におきましてはあくまでも家畜生産ということを対象にいたしておりますので、その家畜生産に役立つような研究はできるだけ積極的に進めてまいりたいと考えておりますが、それらが人間の場面にどういうふうに応用されるかというような点につきましては、これはまた人体医学の面におきまして十分に検討され判断されるものというふうに信じておるわけでございます。
  113. 三浦隆

    三浦(隆)委員 いまの質問はまだ人間には及ばなかったのでありますが、いずれお尋ねしたいと思っておりました。ここでは、人間とか動物に限りませんで、一般的に人工的に細胞分裂を起こすときの弊害があらわれるでしょうかという意味であります。  同じことで次に、人工的に卵割、いわゆる細胞分裂に伴っての卵割が仮に行われたというときに、資料によりますと、卵割には等黄卵と中黄卵あるいは端黄卵の三通りあるやに伺っております。いずれにしましても、卵細胞内には発生に必要な養分となる卵黄が粒子になって分布しているというのです。今回のヤギの実験などでは、一つの卵にきりのような穴をあけてこれを二つに分けるということですが、ここにありますように受精卵は約〇・一五ミリの大きさだといいます。これに穴をあけて二つに分ける場合に果たしてこの卵黄というのが、量的な大きさとしては〇・一五が仮にその半分になり得たとしても、その栄養となるべき卵黄と称するものが均等にちゃんと上手に分かれるというふうな見通しはあるのでしょうか。
  114. 岸國平

    ○岸政府委員 大変専門にわたる御質問でございまして、私もこの面の研究を実際に手がけておりませんので十分な御説明ができるかどうかわかりませんが、ただいま先生の御質問にございました私ども畜産試験場で行いましたヤギの研究の範囲についてでございますが、本日ここに参ります前に実際に行いました研究者から聴取をしてまいりましたが、今回の例では、二分割の段階で御指摘のように実験をいたしております。それでその大きさはお話のように非常に小さいものでございまして、その二分割した二つの細胞がすべて分離をされませんと、それが傷ついてしまいますと新しい生命に育つことは不可能だそうでございまして、今回の実験の限りにおいては、片方に吸い出して豚の受精卵の膜の中に入れたそのものも、完全な形で入れ得たというふうに認めているようでございます。
  115. 三浦隆

    三浦(隆)委員 もしこの分割が不十分であって、いわゆる丈夫に育たなければこれはむしろ問題はないのでありまして、健康でもない、死産でもない、いわゆる奇型児的な発想で産まれることがあり得るかという、そういう弊害についてちょっと尋ねたかったわけであります。  次には再生の問題でお尋ねしたいと思うのです。  これは植物でも挿し木とかあるいは取り木、いろいろとやっているところですが、動物においても行っております。もちろん人間でも胃だとか心臓とか、その他の臓器移植もやっているし、あるいは目の見えない人に目を、光をということでも行っております。ただ、動物の場合、たとえば「イモリのあと足を切り、あと足にはいっている神経の先をひっぱリ出して、ほかの場所にうつすと、そこが尾であれば尾が、後足のつけねであれば後足が再生し、二本の尾や三本の足をもつイモリができる。」というふうに出ております。すなわち、再生のあり方ですと、本来二本の足、二本の手というものが三本の足なり三本の手も可能であるようにイモリの場合にはあるようでありますが、再生という学問の進歩によっては、イモリでないもう少し高等な動物家畜類にも可能になるのかどうか、そうした再生という問題についてのお考えをお尋ねしたいと思います。
  116. 岸國平

    ○岸政府委員 私どもが扱っております動物は主として家畜を対象といたしておりますので、牛でありますとか豚でありますとか、そういったものの場合にいまのイモリで観察されるような強い再生力というのはほとんど見られないのではないか。たとえば指を一本とったときに、もう一遍その指が生えてもとのような状態になるという現象をそれらの高等動物では持っておりませんので、今後研究の発展によってどういうふうになるかわかりませんが、私ども現在いろいろな面で研究を進めておりますけれども、いま御指摘のございましたような再生の問題をそういうところにまで発展させるような研究というものは、現在のところ、いろいろな研究テーマの中でも実際には取り上げておらないのが現状でございます。
  117. 三浦隆

    三浦(隆)委員 いまの御答弁ですと、イモリのような場合はともかく、高等的な動物というのでしょうか、そこまでは研究の対象としておらないというお答えでありました。しかしそれはいまの御答弁であって、学者というのは学問探求への意欲が大変に強いものでありまして、可能なことを可能とさせるだけでは満足し得ない人がいっぱいいる。不可能を可能にさせたいと考える人も多いのだと思うし、事実そういう人がいればこそ人間の臓器移植その他も不可能が可能になってきて、人間にもプラスになっているところが少なくないと思うのであります。ただ、だんだんと質問をしたいのですが、問題によると、してはならない分野というのもあるのだろうと私は考えるわけです。  次に、先ほどの新聞に戻りまして、一つの受精卵を二つに細胞分裂させましてそれを二分割する、そしてこの場合はそれを直ちにほかの動物へと移しかえていったわけですね。時間的には直ちにということが入ります。しかし、これをもう少し研究成果すると、その二分割した卵細胞の一方を凍結保存するということも将来可能になってきはしないだろうかというふうな気がするのですね。  その場合に、優良な馬でも競走馬でも何でも結構ですが、大変優秀な馬であり何かであったとします。ところが普通の、順調に受精させ、順調に子供を産ませていくとするとおのずと産まれる数は限定されてくると思うのですが、実際にはそうした優良な品種から受精卵だけ取り出してどんどん細胞を分割させていって、少し時間を置いて次から次へとやると、確かにすぐれた効果というものは人類にプラスする方向でもできるだろうと思うのです。  ただ、実は私のこの質問の主意はもちろんこうした動物のことにあるのではないのでありまして、いま人間に関しても、いわゆる医学の実験段階でもネズミその他いっぱい使っておりますが、そういう点では、獣医学を専攻された人は普通のお医者さんよりもむしろお扱いなれているのかもしれないわけであります。普通のお医者さんの研究団体であっても、動物実験からさらに進んで人体実験へと移行されようとする人が多いということを考えた場合に、獣医学でのこういう研究の方向性もあるいはあり得るのか。すでに御承知のように、前に、人間と猿とで受精させて、それを人間に産ませる場合、さらに猿に産ませる場合を考えた教授が日本にはいるわけです。事実行われようとしたのをその研究室の主任が必死になってとめてやめたという経緯が報道されたことがございます。よいか悪いかは別としまして、学者というものはそういうものだと思います。  全然分野が違いますが、武器弾薬の開発のときにも、人類に貢献できる爆弾なのか人類を破滅させる爆弾なのかというのは、論議としては是非のあるところですが、それを学問の専攻とする人はことさらに人を殺傷できるところにむしろ執念を燃やしてというか、そういう研究をされる人もあり得ると思うのです。同じことで、人間と猿をかけ合わせたものを産まそうというふうなことは言語道断の処置のように私には思えるけれども、学問に熱心な人というのは事実そういうことがあり得るだろう。あるいはそこまでいかなくても、人間の臓器が不足した場合に、人間ではない他の動物の臓器の人間への移植、再生ということをお考えの人もいらっしゃるかもしれない。そうした場合、そういう研究のプラスとマイナスと言うのでしょうか、あるいはもっと進んで言えばいわゆる限界性というのがあるのだろうと私は思う。どこに限界性を設けていいかはちょっとわかりませんけれども、しかし倫理的な面で、あるいは場合によっては進んで法的な面で規制しなければならない問題があり得るのじゃなかろうか。いまはともかく、将来ますますそういう研究が発展してくる。たとえば獣医学の研究も、四年を六年に、さらにまた執念を持ってどんどん研究される人がふえればいろいろな方が出てくるのじゃなかろうかと思っていますときに、こうした研究によるメリットだけでなくデメリットも考えて倫理面あるいは法的面で規制するような措置、方向性あるいは考え方、少なくともそういうことを考えたことはございますか。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  118. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げます。  考えたことがあるかということでございますので、もちろん考えたことはございます。そのように十分配慮をして研究を進めなければいけないというふうに問題意識は持っております。しかしながら、私どもが現在対象といたしております家畜におきましては、生産性の追求のために先ほどから申し上げておりますような研究はある程度のところ今後とも進めなければいけない、しかしその場合に御指摘のような点についても十分配慮をしていくべきであると考えております。  なお、付言いたしますと、先日私ども設置法の改正についての国会の論議でも御指摘をいただきましたが、遺伝子組みかえ等の研究におきましてはしっかりとしたガイドラインが設けられましてそれに従って研究をいたしておりますので、今後の家畜のこういう方面の研究におきましても、そういった必要な措置がとられましたならばそういったものに十分に準拠いたしまして安全性を考えながら研究を進めなければいけない、そんなふうに考えております。
  119. 三浦隆

    三浦(隆)委員 その方向での御検討を十分お願いしたいと思います。固執するようですが、いかに学問の自由、研究の発展とはいえ、人間と猿とを一緒にして考えるというような、もし成功し生まれた暁にどうなるであろうかというふうなことを考えれば当然に許され得ない分野があると思うのです。いわゆるお役人の方だけが好ましくないと答えるだけではなくて、進んで学界の方ともよく打ち合わせして、学問の限界性というものを考慮された方がいいと思うのです。  特に、これは動物でなく人間の場合ですが、昨今夫婦の間でも、子供が欲しいけれども生まれないという場合に他人の奥さんから生ませて自分の子供とするとか、いろいろなことが考えられるようになって、これは人間ですので、親子関係のあり方、離婚原因あるいは相続のあり方など法律的にも大変大きな課題を現在生んでいると思うのですね。成功すればともかくお互いの合意でうまくいくからいいのですが、もしそれが正常な子でなく生まれ合わせた場合には親が引き取らないとかいったような問題など大きな社会問題に発展する可能性があります。  ということで、種間雑種あるいは属間雑種などもいろいろな動物のかけ合わせその他がすでに行われてまいりましたけれども、異常な動物その他が生まれたりして、人類にプラスどころか人類が大変困惑させられるようなものが起こることを大変恐れます。特に生物化学兵器などという言葉もあって、この研究いかんでは人類に大変恐るべき害を残すような細菌というかそういうものの細胞分裂、再生その他、諸事、将来学問研究の一つとしてはあり得るかと思うのですけれども、人類を滅ぼすのは、爆弾や何かの原子力破壊兵器だけではなくて、そういう生物化学兵器と言われるような生物の研究も将来大きな課題をしょっているものだと私は考えますので、獣医学の研究が大変盛んになることには大いに賛成ではありますけれども、人類にプラスする方向での獣医学の発展をよろしくお願いしたいと思います。  最後に、この問題については諸外国ではどういうふうになっていましょうか。倫理あるいは法規制という点でおわかりでしたら……。
  120. 岸國平

    ○岸政府委員 大変申しわけございませんが、確実な情報をいま手元に持っておりませんので確実なことは申し上げられませんが、私ども日本国内でのことから推定いたしまして、先ほど申し上げました遺伝子組みかえ的な部分につきましては大変強い規制を諸外国においても行っておるということでございますが、その他の面においてそういったものの情報は現在のところつかんでおりません。
  121. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、獣医師法十七条によりますと「家畜診療業務の制限」というのがありまして、ここでは家畜は牛、馬、綿羊、ヤギ、豚、犬、猫、鶏と限定されているようでありますが、このごろ家畜と称される、ペットと称されるものも種類がだんだんふえてきていると思います。あるいはこの点は午前中の質問にあったかもしれません。重複していたらお許しいただきたいと思います。  朝の子供の漫画番組、物語で「母をたずねて三千里」というのをやっていますが、その中で小さいマルコという少年がかわいらしい猿を連れております。きょうはそのお別れの場面を偶然見ましたけれども、そうなると家畜と称するものも、かわいがっているのは、ここに書かれた以外にそうした猿もある、人によっては趣味で蛇を飼っている人もいるかもしらぬ、そのほか小鳥のたぐいを飼っている人もいるかもしれないといった場合に、この業務の制限の科目をもっと広げられるような趣意というか拡張的な解釈というのはあり得るのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  122. 石川弘

    石川(弘)政府委員 現在家畜を列挙しております物の考え方は、一つは産業動物といたしまして農家の経済上も非常に大事なものということ、もう一つ公衆衛生的な観点から、単に動物だけでなく人間にも病気の累を及ぼすとか、そういうようなことが一つの概念としてつくられているわけでございます。  御指摘のように、社会のいろいろな動きの中で、いわばペット類みたいなものが従来よりも広範囲になってきているというのが実情かと思います。そのような事態等につきましても十分検討はしてみたいと思っております。ただ、これを直ちに具体的に広げるというようなことは現在考えておりませんが、そういう全体の事態の動きというものには関心を持っております。
  123. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、その中の犬、特に盲導犬の問題についてお尋ねしたいと思います。  といいますのは、四月十三日の交特委の質問の議事録によりますと、盲導犬について自賠責の適用を認めるような方向での大変前向きな答弁が大臣並びに担当の方からあったわけです。旧来、私がよく知らなかったせいもあるのですが、自賠責というのは人間あるいは車などいわゆる保険をかけたものに限られると思っておったのですが、人間にかけた自賠責の保険が盲導犬に適用される方向性、そういう御答弁があったようであります。そこで、とするならば盲導犬に対して、獣医師や何かにかかるような場合に、人間がお医者さんにかかるときの健康保険の適用と同じようなこと、盲導犬にも将来人間にかかわる健康保険というふうなものの適用の可能性があり得るものかどうか、お尋ねしたいと思います。
  124. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  盲導犬の治療につきまして人間と同じように健康保険の保険給付にできないかというお尋ねかと思います。お尋ねの御趣旨は十分理解できるわけでございますけれども、御案内のように、健康保険におきます保険給付といいますのは、人そのものあるいは人体そのものの疾病または負傷につきまして療養の給付を行うというふうに法律でも規定し、またそれを予定した各仕組みになっておりますので、盲導犬につきまして健康保険法の対象にするということは考えられないところでございます。
  125. 三浦隆

    三浦(隆)委員 時間でございますのであと一言意見を述べさせていただいて、一つだけお尋ねしたいと思います。  すでにもう諸先生からも御質問があったことだと思うのですが、獣医師法三条に基づきます国家試験というのは、いま年に一回行われております。これに対して、お医者さんと歯医者さんの場合には年二回行われております。そこで、一回でよろしいのかどうかなという問題と、次に、医学部と歯学部の合格者率はいま低下の傾向にございます。受験者数は多くても合格者は減ってくる形にあります。こうした医学部、歯学部が減っている現象の中で、獣医師の国家試験は減っていない。これは昨年五十七年は大学院移行の特殊事情と考えて、五十六年まで考えると、医学部、歯学部とは違って、獣医学部は減っていない。それだけ獣医学部の学生たちが大変勉強熱心であるというふうに受けとめればそれまででありますが、そうしたようなことの関係があるかと思います。  それから、先ほども質問がありました獣医学部卒業となるか、農学部の卒業となるかは、これはまた一つの問題だと思っております。結局、普通の農学部は四年なのに、こちらは六年だ。それが同じ農学部の卒業となったのでは、六年やった人はそれだけ費用もかかっておりますし、また、六年勉強しておることですから、それならはっきりとやはり獣医学部というふうに名のれる方向性を一日も早く出してほしいと思います。  それから、学問というのは、これまで必要であっても時代とともに余り必要がなくなる分野といろいろとあろうかと思います。そういう意味では、この獣医学部を全国のバランス状況を見ますと、二つの学校にある獣医学科系統のものを一つに統廃合してもいいのではなかろうかなと、地域的には思えるようなところもあるかと思います。すでに御質問もあったかと思いますので、そういう問題点があるかなという指摘だけをさしていただきたいと思います。  それで、最後に一問は、先ほどの盲導犬についてなのです。実は健康保険の適用があるかないかということよりも、基本的な考えとして、先ほど文部大臣も、動物は人間社会の一員であるというふうに、動物に大変親しみを込めたお答えがあったわけであります。この盲導犬の場合には、単に動物はというのではなくて、家畜動物であり、さらにいわゆる目の不自由な方に対して大変な役に立っている犬ということにおいてひとしお、人間社会の一員よりも人間と一体なのではなかろうかという認識だと思うのです。運輸大臣の答弁は、盲導犬を人間の一部とみなしたいという考え方なのです。人間とは別な犬という動物とは考えない、むしろ人間と一体をなしている、人間の一部とみなす考え方を持ちたい、だから自賠責の適用を認める方向で検討したいというわけであります。絶対違うという存在なら、もともと適用があるわけがないのだと私は思うのですね。それを前回の交特委では、運輸省はきわめてというか、われわれよりもはるかに進んだというのでしょうか、そういう見解をお示しになったわけです。  そこで最後に、そういう運輸省の見解基本認識というのは過ちなんだろうかどうかということを厚生省にお尋ねしたい。あるいは、これはもしできれば文部省の方でも、大臣からでもお答えいただければ、どちらでも結構でございます。厚生省からお願いしたい。
  126. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 運輸省の御見解についてでございますけれども、これは自賠責の法律の解釈を運輸省の方でおやりいただいておりまして、恐らく人身事故に伴います損害の範囲についての考え方、これは独自に御判断いただいておると思います。私の方は人の疾病、または負傷を対象とした、これを保険事故とした健康保険法のたてまえ、全体的な制度のことを申し上げておるところでございます。
  127. 三浦隆

    三浦(隆)委員 いま私が質問したのは、そういう部分的な発言ではないのでして、運輸大臣の答えは、そういう盲導犬を人間とは全然別個な動物、犬と考えるか、犬なんだけれども人間の一部とみなしたい、むしろ一体だという考え方をしたところにきわめて特色があったと思うのであります。だから、それと考え方が同じか同じでないだろうかという質問であります。しかし、きょうは時間でございますので……。
  128. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま厚生省からのお話は、健康保険の問題でございますから直接の関係はないという立場でお答えだったと思います。しかし考え方としては、盲導犬の場合は、まさに人間の目であり足であるという組み合わせになっておる、そういう考え方に立って、どういう救済といいますか、手段方法があるかということは検討に値すると私も考えます。
  129. 三浦隆

    三浦(隆)委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  130. 船田元

    ○船田委員長代理 河野洋平君。
  131. 河野洋平

    河野委員 もう同僚議員の質問で大体問題点は出尽くしておると思いますので、私はごく一、二点、補足のような質問をさしていただきたいと思っております。  水産庁おられますか——水産庁に伺いますが、魚病技術士と獣医師との関係について、ちょっと御説明をいただきたい。
  132. 田邊隆一

    ○田邊説明員 現在、水産におきましては、ただいま先生魚病技術士とおっしゃられましたけれども、そういった名称を持った資格者はおりません。それで私どもでは、この魚病の対策に当たるために都道府県の技術者を養成いたしまして魚病の専門家を育てているわけでございます。こういう人たちが現在魚病の対応を行っているというのが現状でございます。
  133. 河野洋平

    河野委員 けさほど来、同僚議員からの質問にも答えておられますように、現在では相当な魚病による被害も出ていますね。漁業関係者に相当な被害がある。それに対する魚病技術者を相当に育成はしておられるというお話ですが、そうするとその対策に当たっている人たちは資格はないのですか。全く資格がない。資格がない人がそれぞれ対応をして料金を取るというケースはありますか、ありませんか。
  134. 田邊隆一

    ○田邊説明員 現在魚病に対応しております技術者は都道府県の職員でございまして、料金は、したがって取っておりません。
  135. 河野洋平

    河野委員 これは水産庁に伺うのはちょっと酷なのかもわかりませんが、鑑賞用の魚類がありますね、たとえばニシキゴイであるとか、こういう鑑賞用の魚類というのは、一匹当たり数十万円なんというのがいる。これらの病気に当たる人は、ではだれですか。これは水産庁に聞くのはちょっと気の毒かもわからぬけれどもね。
  136. 田邊隆一

    ○田邊説明員 現在、水産関係の技術者は主として養殖魚の魚病の対応でございまして、ペットの類につきましては、ちょっと対応していないというふうに考えております。
  137. 河野洋平

    河野委員 まあお尋ねするのは無理でしょう。無理でしょうが、水産技術者といいますかそういうものを育てておられるわけで、そういう人たち以外の人にはこれはもっと無理ですね。畜産局長おられるけれども、獣医師に診ろといっても、これはとても無理でしょう。これは、どっちかと言えば水産庁の縄張りだと思うべきだろうと思うのですね。  この私が持っている本、一九八〇年といいますから、もっと年々進歩しているでしょうから少し古いのかもわかりませんが、この本を見ると、たとえばある製薬会社の広告を見ると、全く同じ名称、同じ形の薬が、ある雑誌、これは雑誌の名前も言っていいのかもしれません、「日本獣医学雑誌」に出ている。よく見ると、二つのうちの一方は動物用要指示薬と書いてある。もう一方は水産用とだけ書いてある。ニワトリや豚、牛、馬などの動物用の医薬品は抗生物質やホルモン剤などの要指示薬であって獣医師の指示なしには使用できない。ところが、魚に使う水産用の医薬品は要指示薬制度がないからだれでも自由に使える。これは事実ですか、事実ではありませんか。
  138. 田邊隆一

    ○田邊説明員 ただいま先生のおっしゃるとおりでございます。
  139. 河野洋平

    河野委員 また、さらに別のページには、ここ数年来大変なペットブームといいますか、ニシキゴイ、熱帯魚、金魚など、こういうものが大変なはやりでございまして、そのために何万円、何十万という魚を飼って、それが病気になる、これは殺すわけにいかぬというので最寄りの獣医さんに駆け込む、獣医さんが手当てをしてくれて助かるものもあれば助からぬものもある。これは本当かどうかわかりませんよ。この本に書いてあることを見ると、普通、ニシキゴイの病気が治れば、その魚の価格の一割くらいが治療費として支払われたケースがある。こんなことが、水産技術者ですか、つまり何にも資格のない人、野放しになっている、そういう人たちによって何となく、需給バランスでしようかね、値段がどんどんついていく。しかし資格もない。これはどんなものでしょう。そういう水産技術者を養成するというか育成をしている方から見て、こういう事実はどうですか。薬の問題にしても、そういうペットの問題にしても、あるいはそういう問題以外でも、養殖漁業については公的機関がおやりになるとさっきおっしゃったけれども、それはなかなか公的機関だけじゃ全部カバーできない部分だってあるでしょう。これについて、もうそろそろ資格問題というのは考えなければだめだ。獣医師が、今度こういう法改正によって六年制度になって獣医師の資格、獣医師の技術研究、そういうものが充実すると一方は言われているさなかに、水産関係だけは、技術者は育成していますよと言っているだけでは済まないでしょう。これだけ養殖漁業というものが重要な役割りを占めるようになってきているいま、やはりこの水産技術者も獣医に匹敵するような機関あるいは資格、そういうものが必要だと思いますが、それはいかがですか。
  140. 田邊隆一

    ○田邊説明員 ペットの問題につきましてはちょっと別でございますので、私ども養殖業ということで中心に考えておりますので、そういう点から御説明いたしたいと思います。  人間の病気の場合は一歩扱いを誤りますと人命にかかわる重大問題ということでございますし、家畜等の陸上動物の場合も、その病気が人間と共通の病原体に起因するというようなケースがいろいろあるわけでございます。したがいましてこの場合も不注意な扱いが公衆衛生上の大きな問題を生ずるおそれがあるというようなことがあるわけでございます。したがいまして、人間の病気とかあるいは家畜病気といったものにつきましては医師とか獣医師とかいった明確な資格を持った人が当たるというのが必要であろうかと思っております。しかしながら魚の場合は変温動物でございまして、陸上の恒温動物と病原体が違うというようなことから魚の病気の場合は公衆衛生上の影響がないというようなこともございまして、資格を有する人がやる必要性というのが医師、獣医師等に比べて薄いのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。  それで、一方この魚病問題というのは歴史が比較的浅い分野でございまして、技術的にもまだ解決しなければならない問題がたくさん残っておりますし、それからこれに当たる技術者も、先ほども申し上げました研修等を行いまして鋭意育成しておるわけでございますが、まだ必要を満たすにはほど遠いといったような現状でございますので、目下のところ一番重要な問題はこういう問題を解決することではないかと考えまして、重点をそこに置いておるわけでございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、資格の問題につきましては、こういった問題を解決する経緯を見ながらさらに検討してまいりたいと考えております。
  141. 河野洋平

    河野委員 ちょっと研究課長さんの御答弁とは思えぬ御答弁だね。水産庁の研究課長さんがそんなことを言っておったのでは実際は話にならぬのじゃないですか。魚の方は公衆衛生上大した問題がないとか、あなた、冗談言ってはいかぬですよ、そんなでたらめを言っちゃ。はるかにこっちの方が公衆衛生上問題があるじゃないですか。あなたそういうでたらめを言っちゃいかぬですよ。そして、しかも獣医師の問題が問題になるたびに魚類の分野についてはどうするかということがいつだって話題になるのだ、なってきたのだいままで。なってきたけれども、何とかかんとか理屈をつけては、こっちは別でございます別でございますと言ってきた。別でもいいです。別でもいいけれども、別なら別なようにやはり資格をきちっと与えて、そして資格を与えるについてはそれだけの背景をちゃんと勉強させるということにしなければおかしい。そうでないなら、どうですか、文部省、流れ弾が当たって気の毒だけれども、文部省は水産関係もありますね。水産大学ですか、いろいろなところでも勉強していらっしゃるでしょうけれども畜産関係で獣医師の免状を与えるときに、水産庁はペットは別だといって逃げちゃったけれども、しかし少なくとも現状は町の獣医さんが小動物のペットを診ているときに金魚の病気診たりコイの病気診たりしていることは事実なんです。獣医さんにそういう能力がありますか。現在の獣医さんに多少でも獣医大学で魚の問題を教えていますか。
  142. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 前回の法改正の際にも御議論があって、附帯決議にも触れられている点は私ども十分に承知をしております。それを受けまして水産関係の学科にはもちろん御指摘の魚病関係の学科が置かれておりますが、獣医学科におきましても現時点ではすでに魚病学に関する授業科目はいずれも開設をいたしております。
  143. 河野洋平

    河野委員 私、これ以上きょうは言いません。これ以上言いませんけれども水産庁さん、もう少し柔軟に対応されたらどうですか。これは水産庁さんのお家芸だけれども、養殖漁業がこれからどんどんさらに進むのでしょう。そうすると、病理学的に言っても何から言っても、もっと人間がめんどう見なければならぬ部分が出てくる。そのためには、こうやって獣医の方は六年までいきますよ、もっとやるのですよと言っているさなかに、魚の方は資格は要りませんとか、公衆衛生上大したことはありませんからなんて言っていてはだめですよ。もう少し柔軟に対応して、そして将来は、これは思いつきなんだから根拠はありませんよ、根拠はないけれども、たとえば獣医師さんの中にそういう水産関係の勉強ももっと入れてもらって、あるいはそういうものの中で、一つの資格の中で、四つ足、哺乳類をやるものと、あるいは海中水中のものをやるものとがその中で色分けされていたっていいじゃないですか。あるいはかなり部分がオーバーラップしていたっていいのですから、多少はそういう歩み寄りというか話し合いをして、あっちはあっちでおれはおれでということを余りこだわらぬようにひとつ研究課長、そこ研究してもらいたい。これはもう答弁要りません。この際、注文だけつけておきます。  それから、もう一点だけ文部省に伺いますが、今度いろいろな理由がついて六年に延ばされました、延ばそうとしていらっしゃる。しかし、この六年に延ばすためについている説明は、もう少しいろいろなことをやりたいから六年に延ばしたい、こう言っているのだけれども、人間の医者もそうだけれども、獣医師の中でもやはり倫理の問題というのはあるのじゃありませんか。それはこの六年間のどこでやりますか。
  144. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども動物に関する実験の問題についていろいろ御質問があったわけでございまして、もちろん人間生活にとって有用な研究が進められていくことは必要なわけでございますけれども、研究について、たとえば医学の場合には医の倫理の問題が非常に強く言われているわけでございます。獣医学についても、やはり研究者としての倫理の問題という事柄は基本的にはあろうかと思います。教育課程の編成に当たりましても、そういう点は十分配慮されていかなければならない課題ではないか、かように考えております。
  145. 河野洋平

    河野委員 六年間みっちり勉強なさることは大変いいことで、ただ技術だけが進んで獣医師としての倫理観というものがどこかへ置き去りにされないように、教育課程をもう一度見直すに当たっては、そうしたこともきちっと手を入れてお考えをいただかなければいけないのじゃないか、そしてりっぱな獣医さんをたくさんおつくりになっていただきたいということをお願いをしたいと思うのです。  質問を終わります。
  146. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  147. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  学校教育法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  148. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  150. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、学校教育に関する件について調査を進めます。  医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、かねてより各党間において御協議願っていたのでありますが、その結果に基づき、石橋一弥君、佐藤誼君、鍛冶清君、三浦隆君、山原健二郎君及び河野洋平君から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の六派共同提案をもって、お手元に配付いたしておりますとおり、医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの提案がなされております。  この際、発議者からその趣旨について説明を求めます。石橋一弥君。
  151. 石橋一弥

    石橋(一)委員 医学及び歯学の教育のための献体に関する法律の案につきまして、提案者を代表し、起草の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  人体の正常な形態と構造を学び、これを明らかにすることは、医学または歯学の教育基本であります。  このため、人体解剖学の実習が不可欠であることは申すまでもないことでありますが、この解剖実習こそ医の道を志す者にとって、人間の生命及び身体の尊厳を、身をもって心に刻みつける端緒をなすものでありまして、医学教育の根底にある医の倫理の涵養のため貴重な教育の場となっております。  現在、死体の解剖及び保存に関する包括的・統一的な法律として、死体解剖保存法が制定されており、大学における医学、歯学の教育のための解剖及び解剖用遺体の交付等は、この法律に根拠を置いております。しかしながら、同法はすでに死亡した者の死体について規定しているものであり、また、解剖については原則として遺族の承諾が必要とされております。  ところで、解剖学実習用遺体につきましては、医・歯学部設置基準要項により、入学定員について一定数の確保が求められておりますが、近年の医科・歯科大学の新増設や、社会状況の変遷に伴い、その充足状況は必ずしも十分とはいえず、このままに推移すれば医学教育に支障が生ずるおそれもあります。  このような状況にかんがみ、医学教育の発展のために、自己の身体を死後、無報酬で提供しようとする、いわゆる献体運動が篤志家団体や大学関係者によりじみちに進められており、今日ではほとんどの医学及び歯学の大学に献体篤志家団体が置かれ、献体登録者の数は通算四万一千人を教え、解剖学実習用遺体の約三四%はこの献体に依存しております。  自己の死後その身体を医学教育のためにささげようと、生前から献体の意思を表明する行為は、解剖体の確保のみならず、それ自体崇高な行為でありますが、一方、宗教上からくる遺族感情等もあって、献体の意義が必ずしも国民一般の理解を得るに至っていないのが実情であります。  現在、わが国での法制上、献体に関しては何らの規定もなく、せっかくの生前の献体の意思が死後生かされないという事態も生じており、篤志家団体や大学関係者等から、献体に関する法制化についての強い要望が出されております。  これらの事情にかんがみ、医学及び歯学の教育の向上に資するため、献体に関する法制を整え、国民の理解を深める必要があると考えられるのであります。  このような観点から、かねてから各党各派とも相はかり、ここに御提案申し上げましたような法律の案を起草いたした次第であります。  本案においては、献体の意義を法令上明らかにし、本人の献体の意思について定義を定め、これが尊重されるべきこと、遺族感情にも配慮しながら献体に係る解剖の要件の緩和等について規定を設けるとともに、国として行うべき献体篤志家団体への指導助言及び国民一般への献体の精神の啓発普及について規定を設けようとするものであります。  その主な内容は、第一に、この法律の目的を、献体に関して必要な事項を定めることにより、医学及び歯学の教育の向上に資することといたしております。  第二に、この法律において、献体の意思とは、自己の身体を死後医学または歯学の教育として行われる正常解剖の解剖体として提供することを希望することをいうことといたしております。  第三に、献体の意思は、尊重されなければならないことといたしております。  第四は、医学または歯学に関する大学において正常解剖を行おうとする場合に、死亡した者の献体の意思が書面により表示されており、かつ、大学の学長または学部長がその旨を遺族に告知し、遺族がその解剖を拒まない場合には、死体解剖保存法第七条本文の解剖のための遺族の承諾の規定にかかわらず、遺族の承諾を要しないこととしております。  第五は、死亡した者が献体の意思を書面により表示しており、かつ、その者に遺族がない場合には、その死体の引き取り者は、学長等から医学または歯学の教育のため引き渡しの要求があったときは、これを引き渡すことができることとしております。  第六は、学長等は、正常解剖体として死体を受領したときは、その死体に関する必要な記録を作成し保存しなければならないこととしております。  以上のほか、文部大臣は献体篤志家団体の求めに応じて、その活動に関し、指導助言ができること、国は献体の意義について国民の理解を深めるための必要な措置を講ずるよう努めることとしております。  なお、以上のような趣旨からしまして、この案の内容は先に述べました死体解剖保存法には溶け込みにくい面があり、また、献体を推進する上からも新たな法律として制定することが適当であると考え、このような法案の形式をとることとした次第であります。  以上が本案の趣旨及び内容であります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願い申し上げます。  以上です。     ─────────────  医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  152. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本件につき発言の申し出がありますので、これを許します。湯山勇君。
  153. 湯山勇

    湯山委員 私は、ただいま議題となっております医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案につきまして、各党の御了解をいただきまして、この際、文部省に質問を申し上げたいと思います。と申しますのは、今日までの文部省のこの問題に対する対応等を見てまいりまして、今後これの施行に当たって、それ以後の運用をあわせて文部省の対応には若干の懸念なしといたしません。そういう意味質問申し上げますので、御理解をいただきたいと思います。  まず、ただいま委員長から御説明がありましたような形でこの法律が提起されております。しかし、問題が取り上げられましたのは昭和五十四年、学術会議からもその必要が勧告されております。その後国会におきましても五十五年、五十六年と取り上げられてきましたし、マスコミもまたこの問題の重要性、速やかな処理というような観点から取り上げられております。なおその上に、それぞれの質問に対して当時の文部大臣は、きわめて重要な問題である、したがって速やかに措置するように努力するという答弁がなされておりますのに、今日まで放置されたこと、このことについては私といたしましては非常に遺憾な感じがいたします。どうしてこうなったのか、まず簡単に御説明願いたいと思います。
  154. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように、献体に関する法律制定の問題につきましては昭和五十四年に日本学術会議から政府に対して勧告がなされておりまして、また国会におきましては五十五年十月ごろから質疑が何度か重ねられております。そして政府において対応すべしというようなことで、私どもとしましても十分検討させていただきますということで従来御答弁申し上げてきたわけでございます。そしてそういう事柄を受けまして、文部省といたしましては関係団体とも意見の交換をしながら検討を進めてきたというのが今日までの状況でございます。  ただ、この問題については死体解剖保存法を初めといたしまして厚生省所管の関係法律と大変深くかかわる問題があるわけでございまして、文部省としても立案するに当たっては実際上慎重な対応が必要である、厚生省ともその点について協議を進めてまいったわけでございます。  また、関係者の御要望をいただいておる点が法律に規定する事項としては内容を整理をする必要もあるというようなことがございまして、そういう事柄などについて検討を進めてきておったわけでございまして、そういう検討は私どもも積極的な気持ちで検討を進めてまいったわけでございます。しかしながら、ただいま御提案の趣旨にもございますように、大変国民的な要望が強い事柄であり、かつ、関係者の御了解をいただいて単独の立法でするならば議員立法としての検討がいかがであろうかというような議論が進められてまいったわけでございます。議員立法としてこの法律が進められることについては、私どもとしても従来検討してまいってきておった事柄と全く合致する点でもございますので、そういう方向で御処理がなされることについて、できればそういう方向の御処理がいただければということで厚生省ともども、事務的には従来ともその点について御相談を詰めながら対応をしてきたというのが現状でございます。  御指摘の点では、文部省が従来の国会答弁からすれば、文部省として直接法案を提出すべきではなかったかというような御指摘のように伺うわけでございますが、経緯は率直に申しましてただいま申したような点でございます。  私どもとしては、この法律が制定されますれば、もちろんこれを受けまして積極的な対応でこの法律の執行に当たりたい、かように考えております。
  155. 湯山勇

    湯山委員 もう多く申しませんが、五十六年には大臣が、これは放置することは医学上重大な問題である、文部、厚生両省が一日も早くこの問題が解決するように督励したいと考えておりますという御答弁もあったこと等々ありますから、これは最後に締めくくりのときに申し上げます。  それから第二点は、昭和四十五年くらいから急速に医学部あるいは医大が設置されまして、学生数も倍増いたしました。その医学部なり医大なりの設置を認可する設置審議会ですか、それの審査基準要綱にははっきりと、解剖実習用の死体等についての規定がございます。これは先ほど石橋議員の提案説明の中にもありました。それだけのものがなければ認可はできないと言っても過言ではないのであって、そこには法令のほかこの要綱によって設置審査を行う、こうなっておりますから、当然設置認可に当たっては解剖実習用死体等の確保についても見通しが立っていなければならない。しかもそれがどのように重要であるかということは、単に正常な人体の構造の理解だけじゃなくて、生と死の尊厳さを学ぶとか、ここで医の倫理を涵養するというような重要な課題があります。しかし、いま提案理由でも御指摘にありましたように、その確保ができていない、七十何%程度しか確保できていないと言いますけれども、これも新しくできた大学では国立でも大体四人に一人というようなことにしかなっていない。それだとそのことを無視して医大、医学部を設置したということにしかならないので、それではいいお医者さんをつくるというそういう基本を忘れた設置になっている。このことについてはこの際ひとつ十分配慮の必要があるのじゃないか、反省の必要があるのじゃないかというように考えますが、いかがでしょう。  ちょっと申し上げますが、ことに局長は二人に一人と言うけれども模型や標本でという規定もありますから四人に一人でも結構ですというようなふうになると困るので、本来模型をこの基準に入れたというのが私は間違いだと思うのです。模型は模型であって、表皮一枚にしたって本当の人体であれば皆、細胞からできています。模型はそうじゃないのですから、光学的に顕微鏡で見たって全然違うものなので、模型などで補ってというのは私は省くべきだと思うのですが、それにしてもなぜこんなに無視してむちゃくちゃにふやしたのか、その辺の配慮がなかったのか、この点伺いたいと思います。
  156. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 四十五年以来医科大学の新増設ということを進めてまいりまして、御指摘の点は解剖用の死体の確保が必ずしも十分でないのにそういうことを進めてきたのは怠慢ではないかという御指摘かと思います。  解剖学用の実習用死体の不足状況について原因はいろいろあろうかと思います。もちろん社会情勢、経済情勢の変化というようなことが基本的にございまして、従来非常に提供されておりましたような行旅死亡人が減少するというような実態もございまして、そういう点もあるわけでございますが、確かに四十五年以来医科大学、歯科大学の増設ということがありまして、それが不足を来しておるということも御指摘のとおりでございます。  そして、私どもとしては、その確保のために厚生省にお願いをいたしまして、引き取り者のない死体の大学への提供等についても、各市町村長に格段の御協力をいただきたいというようなことで厚生省に依頼をいたしますとか、あるいは献体に関する啓蒙運動の円滑な進展というようなことで、予算の増額等も図ってそれぞれ努力をしてまいったわけでございます。  また、最近は献体者に対して文部大臣の感謝状を贈呈する制度も発足させるというようなことで、具体的な努力も従来から努力はしてきておりますが、確かに不足の状況があるということは事実でございまして、その点はまことに遺憾に存じております。  ただいま基準の点で、学生入学定員の、医学部の場合には半数、歯学部の場合には四分の一以上というのが原則的な基準でございまして、特例として医学部の場合には四分の一以上に緩和することができるという規定はあるわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、それは模型の活用ということでその特例を認めるというような考え方に立っているわけではないわけでございます。基本的にはそういう標本や模型などの開発、活用でございますとか、あるいはグループ学習の導入、臨床教育との連携等教育上の配慮を特に行って、その教育の質が十分確保される場合に初めてその特例が認められるべきものというぐあいに考えております。  いずれにいたしましても、基準に照らせば必ずしも十分でないということは御指摘のとおりでございまして、それの確保については、今後とも関係大学を十分指導いたしまして、私ども努力をいたしたいと思っておりますし、さらに必要な予算上の措置その他についても今後とも努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  157. 湯山勇

    湯山委員 申し上げたのは、それ以後起こった問題ではなくて、認可のときにそういうことももっと検討しておかなければならない。もし厳密にやれば恐らく認可にならなかったのもあると思います。そういうことの指摘ですから。  それからさらに、ここから後は各党で御意見のあるのはここへ集約してお尋ねいたします。その一つは、本来献体というのは無条件、無報酬で行われるというのが関係団体等の方針であるし、そのことは国会の場でも述べられております。ところが、いまのようなことですから、不足してまいりますとどうしてもそこへ経済関係が入って悪用される。具体的には申しません。これも国会でそういう発言があったのですから、思い当たると思います。それから、善意で団体をつくっている人といえども同じ人間でございますから間違いを起こしやすい面もなきにしもあらず、これも国会で指摘されております。  それからまた、死体の入手が困難であるために、あるいは物が動く、権利が動く、こういう事実もなきにしもあらずです。具体的なことはきょうは申し上げません。ことに、これは未遂であったようですけれども、小説の「死体商社」というのがあります。しかし、日本のある企業というのですか何ですか、ベトナムやインドあたりから死体を買い込んできて売り込もうという動きもあったということが、これも国会で指摘されておりまして、このことを言ったのは非常に権威のある人だったということも指摘されております。  なお、具体的にあるいは何らかの代償を求める、入院治療を無料でやってほしいとか、入院の部屋をあけておいてほしいとか、いろいろ代償を求めるような例もなきにしもあらずであって、こういうことについて一体文部省は把握しておるのかどうか、結論だけお聞きしたいと思います。
  158. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 遺体の引き取りに関しまして、国立学校特別会計の予算におきましても、遺族等の関係者に謝礼を支払うということは、ある限度内の額であれば社会通念上容認されるものと私どもは考えております。いわば遺族謝金は遺体を引き取るに当たりまして御遺族に対して御霊前へのお供えとして差し上げるわけでございますし、また、死体提供協力謝金は、遺体の引き取りに関して遺体が安置されております病院、施設等の協力に対して謝礼として支払うというようなものでございます。そのような社会通念上容認される範囲内のものは、私どもも国立学校特別会計に計上いたしております。  ただいま死体の売買云々のような事例については、私ども具体的には承知をしておりません。  なお、それから御指摘のたとえば診療に関して有利な取り扱いの約束等、献体に関する照会において問い合わせがなされるというような事例があることは聞いておるわけでございますが、この点については、大学側でそのような取り扱いとしては具体的にはいたしかねるということは十分御説明をしておるというぐあいに聞いているところでございます。
  159. 湯山勇

    湯山委員 いまのところは非常に潜在状況ですけれども、これが顕在化してくるということは非常に重大な問題であって、そういう意味からも、この際この法律ができるということには大きな意義があると思います。  そこで、いま局長がちょっとおっしゃった国立大学の特別会計の中の研究教育に必要な経費の事項の中に解剖体謝金というのが二億円余り組まれております。これは私の意見ですけれども、いまの入院についての代償を求めるというようなのは局長も聞いておられるそうですが、それはもちろんいまのように防いでいかなければなりませんが、解剖体謝金という呼び名ですね。費用を出すことをとやかく言うのではなくて、もっと要ると思うのです。ですからそれはそれとして、本来献体する人は無報酬、無条件で献体するという精神ですから、それに対して解剖体謝金という、この金が要らないというのではなくて、金は要りますけれども、謝金という項目にするかどうかについてはこの際ひとつぜひ検討していただきたい。これはお答えは要りません。検討をぜひしてもらいたい。費用は要らないというのではないのですよ。要る費用は要るし、場合によれば飛行機でとりに行ったり、いろいろな費用がもっと要るはずです、要らなければうそですから。それはそれとして、謝金というのを入れるというのは、本人の意思にも合わない。これはひとつ御検討を願う。  それからその次は、これも三浦委員の方からその点について指摘しておいてほしいというのですが、こういう形でなってきた場合に医師と患者という関係で献体を申し出るというようなことを、強制とは言わないにしても、本人の意思の決定に医師と患者という立場で介入するというようなことがあってはならない。それから同時に、国や地方公共団体もまた同様に個人の意思の決定に介入しないという保証か必要ではないかと私は思います。この点はどうでしょうか。
  160. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その点は、全く御指摘のとおりだと考えております。基本的に献体をするかどうかはあくまでも個人の自由な意思にゆだねられるべきものでございまして、献体がそういう医学なり歯学の教育充実に有益な理由も、まさに献体が個人の自由な意思に基づいてなされるというところにあろうかと考えております。医師が患者に対する実際上のいわば優越的な地位を利用して患者の意志決定に影響力を及ぼす、そしてまた献体を強要するがごときことは、そのこと自体まことに不適切なことでございまして、決してあってはならないものだというぐあいに理解をいたしております。
  161. 湯山勇

    湯山委員 もし、そういう疑いがある場合にはその申し出、約束を取り消す、それぐらいな厳密さがあっていいと思うのですが、どうでしょう。
  162. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 そういう事態の生じないように私どもとしても十分本法の施行に当たりましてはその趣旨の徹底を図るようにいたしたいと思っておりますし、また仮にそのような事態が判明しました場合にはその献体登録の取り消しを指導するというようなぐあいに、具体的に適切な対応をしてまいりたいと思います。
  163. 湯山勇

    湯山委員 非常にはっきりいたしました。  それから次に、当然だと思うのですが、この文章にはありませんので……。献体者の名前はずっと残す、同時に、いまの献体者に対する感謝状、これは今後も継続されますね。
  164. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 献体者の氏名については、もちろん記録を残すわけでございますし、お尋ねの第二点の文部大臣の感謝状の制度についても、私どもとしては引き続き実施をするという考え方でございます。
  165. 湯山勇

    湯山委員 それからこの法律案には、献体に対する礼意の保持というのが出ていないのですけれども、これは起草者に聞く筋合いでありませんので、私の考えを申し上げて、そうかどうかをお答え願いたいと思います。  それは、遺体に対して礼意を保持すべしというのは、現行法の中にそういう言葉がありますね。したがって、当然、解剖する段階ではその死体解剖の法律がそこで生きておるから、その法律にあるから、ここへは遺体に対する礼意の保持というのがなくても適用されるのだというふうに私は解釈しておりますが、それでよろしいですか。
  166. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その点は、先生御指摘のとおりに私ども理解をしております。
  167. 湯山勇

    湯山委員 次に、団体の活動に対して求めに応じて指導助言というのが文部大臣に任務づけられております。これは文部省としてはあるいは文部大臣としてはどういうことをお考えになられますか。
  168. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 法律案の第七条の規定に基づく指導助言についてのお尋ねでございますが、「文部大臣は、献体の意思を有する者が組織する団体に対し、その求めに応じ、その活動に関し指導又は助言をすることができる。」という規定があるわけでございまして、献体の意思を有する者が組織をしておりますいわゆる献体団体、いわばボランティアの活動でございますので、本来は関与はできるだけ抑制するということが基本的な姿勢であろうかと思っております。したがって規定においても、「求めに応じ、」という規定の趣旨は、いわば団体側から求められた場合には積極的にそういう対応をするという趣旨の規定であろうかと思っております。私どもとしては基本的にはそういう対応でまいりたいというぐあいに考えているわけでございまして、したがって、献体団体についても、求めがないときに指導助言というようなことで介入をするというようなことなどは極力抑制をすべきものだというぐあいに考えております。
  169. 湯山勇

    湯山委員 大ざっぱに、各党の方とお話しして、ぜひこういう点は確かめておいてほしいと言われた点を含めて、大体以上のような点でございました。  ただ、最後に申し上げたいのは、質問で御指摘申し上げましたように、私、率直に感想を述べれば、文部省のこの件に対する対応は、法律が今日まで放置されておった問題といい、それから医学部あるいは医大の設置の認可に当たってそれに対する配慮が足りなかった点といい、あるいはまた個々に入ってくる憂慮すべき情報に対しての適切な対応が必ずしもなされていなかった点——と申しますのは、たとえば国公立については予算に組まれている解剖体謝金二億一千三百四十五万で一遺体当たり、いま何か三万かそこいらの香典でしょうか、そういうものをやっておったというのですけれども、国公立でなくてあるいは国立でなくて、私立で入手しにくいところでは、もう一つけたの違った謝金が出されているというようなことについても、御答弁要りません、文部省もその情報は入っておると思います。そういうことでございまして、今日までの文部省の対応から言えばかなり遺憾な点が多いので、この際法律ができて、そしてそれが施行されるに当たりましては、この正常解剖というものが医学教育、歯学教育の上で占める重要な使命ということをひとつもっと真剣に考えて、もっと積極的な対応をしていただかないとこれはきわめて重大な問題であるということを御指摘申し上げ、いままでの悪かった点をどうこう言う意味じゃなくて、遺憾な点はそれとして、そういう反省に立ってひとつ大いに今後御努力を願いたいということを申し上げたいわけです。その点について大臣から何か……。
  170. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 医学、歯学の研究には、人体の組織、構造、機能、この真理を突きとめなければ本当の医学、歯学の対応はできない、そういう意味で遺体が非常に必要だということは当然のことです。先ほど来湯山さんからいろいろ御指摘ありましたが、実は私もこの案の説明を先般来、数日前から事務当局から聞きまして、文部省としては対応が遅きに失するのじゃないかということを私自身が申し上げておるわけでございます。  しかし考えてみますると、こうやって各党話し合いといいますか、御相談していただいて、全党挙げてこういう処理をしていただいたということは、生命はなくなったとはいいながら事人体の問題でございますから、政府がこういう方針を決めたとか、あるいは文部省が人体についての扱いを決めたというよりも、国民の代表の集まりである国会が全党挙げて、医学の進歩は全部国民の健康、医療に関係のあることでございますから、やはりその方がよかったなと率直にいま考えているわけでございます。そういう意味でわれわれとしては非常に感謝をしておるわけです。  先ほど来各党を代表してという御指摘がありました、また御注意もありました。こういう点は十分踏まえて、啓蒙するところは啓蒙し、注意するところは注意するということで、今後十分そそうのないようにこの実行に当たりたい、かように考えておりますから、どうか御理解をいただきたいと思います。
  171. 湯山勇

    湯山委員 以上で終わります。
  172. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて湯山勇君の発言は終わりました。  お諮りいたします。  医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付の案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  173. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  なお、法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  175. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  文教行政の基本施策に関する件調査のため、来る五月十三日、日本私学振興財団理事別府哲君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  177. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等権利に関する法律案審査小委員各位に申し上げます。  小委員会は、委員会散会後、第十二委員室において開会いたしたいと小委員長より申し出がありますので、さよう御了承願います。  次回は、来る十三日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十四分散会