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小林(進)
委員 先ほどの問題と違いまして、いまの問題はひとつ早期に加入する方向ということで、前向きの御答弁がありました。これは非常に結構だと思います。
参考までに申し上げまするけれども、五十三年四月十八日、参議院の文教
委員会で同じくこの問題でも附帯決議が行われておりまして、「著作隣接権保護の徹底を図るため、「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」にすみやかに加盟すること。」と、ぴたっとやはり
立法府の
意思が明確になっておるんですから、こういう
立法府の
意思というものは尊重するという構えを
行政が示してもらわなければ、昔の
国会のように、天皇の政治に協賛するなんて言って、だんだん
国会の価値が低下してしまう。これはそれこそ民主政治の破壊、破滅にも通ずるのでありますから、
立法府がこういう決議をしたら何をおいてもぴたっとそれに従う、ひとつこういう峻厳な姿勢を示していただいて、早急にこれが
実現されることを要望いたしておきます。
時間がありませんから、次に第三番目に移りますけれども、私は、入場税の撤廃または免税点引き上げの問題についても御
質問いたしたい。
これは大蔵省でございましょうか、入場税の軽減、撤廃の問題の経緯をこれは詳しく書いてある。なかなかいいパンフレットがここにある。こういう入場税が実施されたのは
昭和十三年、一九三八年、その淵源、発端は、いわゆる支那事変特別税法案というのが第七十三帝国議会に
提出されたことから始まっておる。これは戦争中の軍事費調達のためにやられた悪税なんであります。そのときの大蔵大臣は賀屋興宣さん、政務次官が
太田正孝などという歴史的人物が並んでおって、こういう悪税をつくり上げたわけでありまするが、これがだんだん高額の税金になって、もう戦争に負ける
昭和二十年あたりになりますると、この入場税がべらぼうに引き上げられて、いわゆる一円以上は実に二〇〇%なんですね。二〇〇%も入場税をかけて戦費を調達しているという、実に残酷な戦時史がここへあからさまに出ているわけであります。
これが、第二次世界大戦が終了いたしますと同時に、
昭和二十一年には、こういう悪税を撤廃しなければならないといって、入場税撤廃期成同盟というものができ上がって、
国民の文化、
国民の娯楽に障害を与えるようなこういう悪税は撤廃すべきであるという運動が、猛然として起こっておるのであります。その
昭和二十一年から今日まで累々としてこの撤廃運動が盛んに行われている。これを一体どうして廃止しないのか。
ついに、この入場税を廃止するのを目的といたしまして、これは
昭和二十四年、一九四九年にこの
国会の中で
国会音楽議員連盟というものが結成されておる。衆参両議員九十三名が参加をして、そしてその中には、もうりっぱな人が入っています。犬養健、植原悦二郎、松岡駒吉、星島二郎、北村徳
太郎、黒田寿男、末端に至って
小林進というふうになってくるのでありますけれども、こういうようなそうそうたる名士が入って、そしてこれをひとつ撤廃しようという運動が始まっておる。
もう時間がありませんからなんでありまするけれども、それに対して、実に歴代の大蔵大臣が全部撤廃の方向で回答しているんだ。まず、この中で一番りっぱなのは当時の水田大蔵大臣、これは
昭和三十七年です。「水田三喜男大蔵大臣 入場税も実情によって変えるべきで、税としては悪税と私は思う。」これは明確ですよ。「悪税と私は思う。将来は撤廃すべきものと考える……一部は残したが全体の考えとしては次第にこれをとってしまうことが望ましいと思っている。演劇その他の入場税は将来なくすべき方向にいくべきと思う。」これは実にりっぱな回答を寄せている。
こう言っているのでありまするが、これがなかなかなくならないものでありまするから、
昭和四十二年には、ついにもうがまんし切れなくて、衆参両院で入場税撤廃
請願の決議というものを行っておる。両院で撤廃しなさいという決議をしている。これほど強いものはありませんよ、
立法府としては。それも行われていない。そこで、永田さんはせつながって、
昭和四十三年にも、こうやって衆参両議院の決議の
請願も採択されたんだから、どうしてもこの点も含めてこれは撤廃するように検討いたします、こう言っている。これもやらない。
しかし、だんだん調べてまいりますと、その後ろにはやはり大蔵官僚がいるのです。大蔵官僚というのはよくない。大臣の方向までも全部官僚が押さえている。その中には高木文雄がいたり、中橋何がしなんといっていまでも生きているが、悪いのがいっぱいいるのです。そういうのがおります。
それからじんぜん日を経てまいりまして、
昭和四十四年には福田赳夫さんが大蔵大臣。彼も初めは入場税はどうも撤廃するのが困難だと言ったんだが、だんだん押されてきて、
昭和四十四年のわが社会党の木村禧八郎さん、これは何といったって財政通ですから、木村禧八郎さんの
質問にはついにやられて、そして福田大臣も、各方面から
意見を承ってきたが、これはやはり積極的に解決しなければならぬ、やります、こういう答弁に変わってくる。これは参議院の大蔵
委員会。木村禧八郎さんはこう言っている。「入場税百億ちょっとぐらいでしょう。文化国家としてこんなものが残っているのがおかしい。四十四年度は一兆二千億もの国税の自然増収があり」、一兆円も自然増収があるんだからこんな百億ぐらいのものはおやめなさい、こういう
質問に答えて、各方面から言われているので、私もこれを廃止する方向に積極的にひとつ考えてみますと大蔵大臣は答えた。
大蔵大臣の福田赳夫にそれをやめなさいと言っているいわゆる超党派の有志議員連盟の懇談会というのが設けられて、どうしてもわれわれは廃止する方向に持っていこうというそのときの自民党代表の中の筆頭に渡辺美智雄がいるのです。いまの大蔵大臣がいるんだ。それから山下元利、八木徹雄、
青木正久なんという、こういう文化人もちゃんとおいでになる。こういう人たちがいる。だから、いまここへ来てもし大蔵大臣が撤廃しないとすれば、一体
昭和四十四年に何の決議をしたという
——野にあれは正義を唱え、与に入れば直ちに前言を覆すなんというのは、大臣の風上にも置けません。渡辺さんにはちゃんと前言がある。
そういうふうに数え挙げれば切りがないけれども、いずれにいたしましても、時間がないから言うけれども、
昭和五十年に初めて税制が
改正になってきて、一般映画は一千五百円、それから演劇は三千円、それ以上は入場税をかけます、こう言っている。これは
昭和五十年に決めた。ところが、五十一年、五十二年、五十三年、五十四年、五十五年、五十六年、この長い間ちっともそれが改革されていない。何ですか、その間は物価はどんどん上がっている。いまはもう演劇なんというのは五千円から六千円、外国のものをちょっと持ってくれば八千円から一万円、こういう入場料が支払われているときに、
昭和五十年並みにしてこれを
改正しないなんというのは
行政の怠慢じゃないですか。時世を知らざるもはなはだしいと言わなければならない。
これは何といっても廃止しなければ文化国家として恥ずべきことですよ。これは先進国にはみんなありませんから。けれども、廃止ができないならば、せめて五十年以来いままで据え置きにしているという
行政の怠慢は改むべきであって、少なくとも六千円とか一万円以上の高級な演劇には入場税をかけるが、いまは五千円や四千円くらいのそんなものはわが日本においては大衆娯楽、大衆演芸だ。しかも、これが地方へ行けば、芝居を見たい。一年に一回も歌舞伎が回ってきたといえばみんな見たい。握り飯をしょっていっても見たいのだけれども、入場税がつくから安く見せられないということで、
国民とわが日本の伝統文化を入場税が全部遮断をしている。こういうことをやめさせなければならぬと思うのでありますが、どうです。この入場税は大蔵省かな。