○正森
分科員 総理府長官、いま自治省の方から答弁ございましたように、現在、この問題は裁判になっておるということが
一つと、もう
一つは、裁判は裁判として現実的に解決するという方向が進行中であるという
意味の二つの答弁をされたと思うのです。
そこで私は、念のためにその判決を、たくさんの判決が出ておりますけれども、そのうちの
一つを持ってまいりました。
長官に、今後この問題を処理していただくために、裁判ではこういうような見解を法的に下しているということを知っていただくために、そのうちの一部だけを御
説明申し上げたいと思います。こういう膨大なものでございますから、そのうちの一部だけです。これは、こういう就学の特別の奨励費などを支給してほしいということを言いましても、これは御承知であろうかと思いますけれども、大阪市の同和対策
事業促進協議会というのがあり、このいま私が問題にしている浪速地区には浪速地区協議会というのがありまして、ここへ申請書を出して、ここで了承を得なければ支給されないというようになっているわけです。ここでは、自分たちが認定する立場の人であるかどうかということを確認して、副申といいますか添え書きのようなものですが、それを出して、初めて大阪市が
支給等について応答するということになっているわけであります。
ところが、この
考え方のたてまえとしては、たとえば就学の特別奨励費については、それを支給してもらおうと思いますと、どうしても部落解放浪速地区教育向上会というのに入らなければならないわけであります。ところが、この教育向上会に入った人にだけ支給しますよということを、学校がこういう公の資料で父兄の皆さんに出しているわけですが、この教育向上会の規約を見ますと、第三条で「本会は、前条の目的を達成するために、部落解放同盟浪速支部の指導を受け、同和
事業浪速地区協議会の
協力を得て次の活動を行なう。」つまり、ある特定団体である部落解放同盟浪速支部の指導を受けなければ、つまり、その指導に完全に服するということを言わなければ、たとえ同じ地区住民であっても副申を書かない、したがって大阪市は措置をしない、こういう関係になっているわけなんですね。そして部落解放同盟というのが、政治的にもある特定の立場をとり、ある特定の政党は完全に排除するというような立場をとっていることは、きわめて明瞭な事実なんですね。したがって、自分の政治的信条や立場や良心を売ることなしにはこういう会に入ることはできない。それがわかっているのに、その会へ入らなければ地域住民がひとしく受けることができるべき措置をしてやらないというのが、いままでの大阪市のやり方であります。それが不当であるということで争われたのがこの裁判なんですね。それに対して裁判所は、初め大阪市はこれは法律上の権利ではないというようなことを言っていたのですが、それは法律上の権利である、そして事実上、部落解放同盟に全部任せるのではなしに、地方
自治体が
責任を持って自分で措置すべきことであるということを判示したわけであります。
その部分だけを、記録に残すために読んでみます。判決のとおりであります。
そしてそのことは、被控訴人の判断権の行使の面からも言えることである。すなわち、被控訴人が右実質的受給資格の存否を
審査するうえにおいて、副申の有無が被控訴人の判断を法律的に拘束すべきいわれは存せず(若し拘束するとすれば、実質的には本件給付
行政を
民間機関に委ねるだけでなく、被控訴人固有の判断権を放棄するに等しく、ひいて住民が
行政主体そのものによる
行政判断を受け得る権利を侵害するもので、違法、無効と断ぜざるを得ない。地方自治法第一〇条二項、一三八条の二参照)、被控訴人にとっても、右副申のないことは、それのみを以てしては、該申請を却下すべき明白な事由とはなり得ないからである。
というように判示をしているわけであります。これは地方自治法のそれぞれの規定を見ていただければ、当然のことを判示したものにすぎないわけであります。そしてさらに続いて、
しかし、今ここで問題となっているのは、副申の無い申請について、そのことだけで直ちに受給資格の欠缺が明白であるとすることに合理性が認められるかどうかなのであって、右回促協・地区協が部落解放同盟そのものではないにも拘らず、前記のように、控訴人らが推せんを受け得る見込のない理由が、部落解放同盟や、その事実上下部組織である各要求組合(要求組織)に属していないためとしか考えられない現実を踏まえて事を判ずれば、左様な特定の団体・組織への加入の有無が、いかに同促協・地区協の立場においては、推せんをすると否との判別上便利な標識であっても、これが、最終の支給権者たる被控訴人との間においても、その申請をして受給資格の存否の判断を受ける機会を与えられるか否かの標識としても働く結果を是認することは、どう考えても不合理なこととして、許されないものとしなければならない。こう言っているのです。そしてさらに続いて、たしかに、折角同促協・地区協の緊密な
協力の下に、本件給付制度が、右副申手続を介して一面円滑に実施されている現状の下に、今、副申を経ずしてする申請についても、その
審査を受け得る途を開くことは、それこそ「寝た子を起こし」(前記被控訴人の主張)、かえって
行政の現場に無用の困難を強いる結果ともなりかねないことを虞れないわけではない。しかし、「寝たくないのに無理に寝かされている子」の救済も放置することはできないのであって、左様な政治的な問題の解決は結局のところ
行政の良識と決断を信頼するほかはなく、司法判断の場において、右政治的困難性の故に、上記法的不合理性に目をつぶるわけにはいかないのである。
こう言っているのです。つまり、部落解放同盟の一部の人々の言い方は、だれが地域住民であるかどうかというような判断は
行政だけでできるものではない、いま部落解放同盟が一定の基準に基づいてやっているのだから、それを変えるというのは、寝た子を起こすようなものである、こういう主張に対して、それはそうかもしれないけれども、部落解放同盟と見解を異にするそういう人の権利を全部抹殺してしまうということは、寝たくない子を寝かせるようなものだ、これは
行政として不合理であるから許されないということを、高裁がはっきりと明言をしたわけであります。これは現在、最高裁に係属中であります。したがって、最高裁の結論が出るまでにはもちろん一定の期間がかかると思いますが、これは最高裁の結論を何年も待つということではなしに、
行政の
責任において一刻も早く解決すべきことであります。私はそう思います。
そしてきょう、ここでは詳細には申しませんが、
総理府の方にも何回か関係
責任者のところに私からお願いにも参り、改善を申し入れてきたところであります。私が承知しておりますところでは、現地の大阪市においても話し合いが行われ、近く三月八日ごろには、具体的にさらに交渉が詰められるというように聞いているわけでありますが、自治省なりあるいは
総理府においても、こういう取りまとめの官庁として、あるいは同和対策
事業には国からの補助金が出ているわけでありますから、こういう問題について施策がひとしく地域住民に享受されるように考慮して、適切な助言なり指導なりあるいはPRなりを行うのは当然であると思うのです。
きょうは、私は、かつてこの問題を質問したこともございますが、大臣が御就任になりましてからあるいは初めてのことかもわかりませんので、少しくどくどと申したわけでございますが、大臣としてぜひこういう問題についての理解を深めていただいて、事務当局とも御相談の上、こういう
状況が一日も早く是正されるように前向きの前進的な指導をしていただきたいというのが、私の非常に切なる願いであります。
私は、この質問の前に関係の父兄に会ってまいりましたが、そのお母さん方は妊産婦の対策費ももらえなかった。そして就学援助について言った子供も、上の子供はもらわずにすでにもう卒業しようとしておる。その下の子供が今度いよいよ入学することになって、その申請をした。四月までにはどうしても解決をして、その施策が受けられるようになりたいというのが、非常に切なる願いなんです。それがもし受けられましたら、ここに「新入学児の保護者殿」と書いてあるのですが、学校から出ているのでは、たとえば入学支度金、ランドセル一万六千五百円とか、こういう施策が受けられるようになっているのです。それについて、公平に施策が受けられるように切に希望したいと思うわけでありますが、その問題について
長官並びに事務当局及び自治省の御見解を承らしていただきたいと思います。