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1975-12-10 第76回国会 衆議院 外務委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和五十年十二月十日(水曜日) 午前十時三十七分
開議
出席委員
委員長
栗原
祐幸君
理事
石井
一君
理事
小林
正巳君
理事
水野 清君
理事
毛利 松平君
理事
河上 民雄君
理事
堂森
芳夫君
理事
正森 成二君 坂本三十次君 正
示啓次郎
君 竹内 黎一君 細田 吉藏君
土井たか子
君 三宅 正一君
金子
満広
君 渡部 一郎君
永末
英一
君
出席国務大臣
外 務 大 臣
宮澤
喜一
君
出席政府委員
内閣法制局
第一
部長
角田礼次郎
君
外務省アジア局
長 中江 要介君
外務省アメリカ
局長
山崎 敏夫君
外務省中近東ア
フリカ局長
中村 輝彦君
外務省条約局長
松永 信雄君
外務省国際連合
局長
大川 美雄君
委員外
の
出席者
法務省入国管理
局入国審査課長
小林
俊二君 参 考 人 (
日本赤十字社
外事部長
)
綱島
衞君
外務委員会調査
室長
中川
進君
—————————————
委員
の異動 十二月九日
辞任
補欠選任
永末
英一
君
受田
新吉
君 同日
辞任
補欠選任
受田
新吉
君
永末
英一
君
—————————————
十二月九日
日中平和友好条約
の
即時締結等
に関する
請願
(
加藤清政
君
紹介
)(第三三八六号) 同(
八百板正
君
紹介
)(第三四四一号)
北朝鮮帰還
の
日本人妻
の
安否調査等
に関する請 願(
竹下登
君
紹介
)(第三三八七号) 同(
粕谷茂
君
紹介
)(第三四八二号)
核兵器全面禁止国際協定
の
締結促進等
に関する
請願
(林百郎君
紹介
)(第三四四二号) 同(
正森成
二君
紹介
)(第三四四三号) 同(
青柳盛雄
君
紹介
)(第三四八五号) 同(
荒木宏
君
紹介
)(第三四八六号) 同(
諫山博
君
紹介
)(第三四八七号) 同(
石母田達
君
紹介
)(第三四八八号) 同(
浦井洋
君
紹介
)(第三四八九号) 同(
金子満広
君
紹介
)(第三四九〇号) 同(
神崎敏雄
君
紹介
)(第三四九一号) 同(
紺野与次郎
君
紹介
)(第三四九二号) 同(
栗田翠
君
紹介
)(第三四九三号) 同(
小林政子
君
紹介
)(第三四九四号) 同(
柴田睦夫
君
紹介
)(第三四九五号) 同(
庄司幸助
君
紹介
)(第三四九六号) 同(
瀬崎博義
君
紹介
)(第三四九七号) 同(
瀬長亀次郎
君
紹介
)(第三四九八号) 同(
田代文久
君
紹介
)(第三四九九号) 同(
田中美智子
君
紹介
)(第三五〇〇号) 同(
多田光雄
君
紹介
)(第三五〇一号) 同(
津金佑
近君
紹介
)(第三五〇二号) 同(
津川武一
君
紹介
)(第三五〇三号) 同(
土橋一吉
君
紹介
)(第三五〇四号) 同(
中川利三郎
君
紹介
)(第三五〇五号) 同(
中路雅弘
君
紹介
)(第三五〇六号) 同(
中島武敏
君
紹介
)(第三五〇七号) 同(
東中光雄
君
紹介
)(第三五〇八号) 同(
平田藤吉
君
紹介
)(第三五〇九号) 同(
不破哲三
君
紹介
)(第三五一〇号) 同(
増本一彦
君
紹介
)(第三五一一号) 同(
松本善明
君
紹介
)(第三五一二号) 同(
三浦久
君
紹介
)(第三五一三号) 同(
村上弘
君
紹介
)(第三五一四号) 同(
三谷秀治
君
紹介
)(第三五一五号) 同(
山原健二郎
君
紹介
)(第三五一六号) 同(
米原昶
君
紹介
)(第三五一七号)
ILO条約
第百十一号、第百三号及び第八十九 号の
批准等
に関する
請願
(
大橋敏雄
君
紹介
)( 第三四六五号) 同(
沖本泰幸
君
紹介
)(第三四六六号)
ILO条約
第百二号の
即時批准
に関する
請願
(
松本忠助
君
紹介
)(第三四六七号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
国際情勢
に関する件 ————◇—————
栗原祐幸
1
○
栗原委員長
これより
会議
を開きます。 この際、
参考人出頭要求
に関する件についてお諮りいたします。
国際情勢
に関する件、
北朝鮮
における
日本人妻問題調査
のため、本日、
日本赤十字社外事部長綱島衛
君に
参考人
として御
出席
を願い、御
意見
を聴取することといたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
栗原祐幸
2
○
栗原委員長
御
異議
なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、
参考人
からの御
意見
は
質疑応答
の形式でお聞きすることといたしたいと存じますので、さよう御了承願います。 ————◇—————
栗原祐幸
3
○
栗原委員長
国際情勢
に関する件について
調査
を進めます。 この際、
外務大臣
から
発言
を求められておりますので、これを許します。
外務大臣宮澤喜一
君。
宮澤喜一
4
○
宮澤国務大臣
一昨日、
フォード大統領
とともに
中国
及び
インドネシア
、
フィリピン
を
訪問
されました
米国
の
キッシンジャー国務長官
が
わが国
に立ち寄られまして、このたびの
訪問
についての問題を
中心
に私と二時間ほど
会談
をいたしました。 このたびの
フォード大統領
の
中国訪問
につきまして、私がその
会談
から受けた
印象
を
最初
に申し上げますと、このたびの
フォード訪中
に先立ちまして、
キッシンジャー国務長官
が単独で
中国
を
訪問
をいたして準備に当たったわけでございますが、いろいろな
意味
での論点はそのときにかなり出尽くしておるようでありまして、したがいまして、このたびの
フォード大統領
の
訪中そのもの
は、いわば
中国側
としては
米国大統領
がわざわざ
訪問
をされるということについて、その
友情
をそのままさらっと受け入れよう、なるべく
余り議論
にわたるようなことは、これは
国務長官
とすでにやったことでありますし、
お互い
によくわかっていることなので、ことにそう深く立ち入るというよりは、まあ
気持ち
よく
訪問
を終わらせて差し上げるのがいいのではないかといったような、いわばそういったような
雰囲気
が支配をしておったようでございます。したがいまして、たとえば
ソ連
に対する
考え方
、
米国
は
ソ連
を
デタント
の
相手方
として従来
交渉
を進めてきており、またさらにできるならばSALTの第二
段階
の
交渉
も終結したいと
考え
ておることは御
承知
のとおりでございますが、そのようなことについても、
中国
は、
ソ連
がそのような
デタント
の
相手方
として真に信頼し得る国であるかどうかというような物の
見方
については、恐らく
見方
に違いがあるわけでございますけれ
ども
、そのようなことは当然触れられてはおるようでございますけれ
ども
、であるからといって、
米ソ
の
デタント
が進むことそれ
自身
が、
米中関係
に悪い
影響
を与えるわけのものではないといったような点について
いろいろ話
はあったようでございます。しかしながら、それがいわゆる激しい
論争
になるというようなことではなかったように私としては
会談
の内容を
了解
いたしております。 また台湾の問題につきましても、
上海コミュニケ
に述べられた以上に大きな進展は今日までいわばないわけでございますから、これにつきましても
中国
の
主張
は当然
主張
としてあるわけでございましょうけれ
ども
、これも現在の
段階
で激しい
論争
をして詰め合うというような
雰囲気
の
会談
ではなかったようでございます。 朝鮮半島の問題につきましても
米国
の
立場
、
中国
の
立場
は
おのおの
同一
ではないわけでございますが、しかし、これについても非常に激しい
議論
があったというようではない模様でありまして、
お互い
に
おのおの
の
立場
からできるだけレストレイントと申しますか、抑制をきかせて、事態を悪くしないようにするというような
立場
についてのいわば暗黙の
了解
と申しますか、激しい
議論
というものはなかったように
承知
をいたしております。 その後、
フォード大統領
は
インドネシア
及び
フィリピン
を
訪問
されたわけでございますが、このことは、現在のこの時点の
アジア情勢
の中で、この二国を
訪問
をして
友情
を確認し合ったということは、
米国
にとってもあるいは恐らく
訪問
しました両国にとっても意義のあることであったというふうに
米国当局
は
考え
ておるようでございます。できればそれ以外のASEANの
国々
も
訪問
をしたかったというような
感じ
を
米国大統領
は持っておられるようでありましたが、時間の
関係
でそれは果たすことができなかったということであったようでございます。 これらの
訪問
の後、
フォード大統領
が
ホノルル
で
演説
をしておるわけでございますが、これについては
キッシンジャー国務長官
からは事前に詳しい説明があったわけではございません。しかし、
フォード大統領
が
演説
をするということ、その中で現在の
アジア太平洋地域
における
アメリカ
の政策の
考え
を述べる、そしてその
中心
になるのはやはり
日米
の
友好
であるといったようなことについて、ほぼ
考え方
は
キッシンジャー国務長官
も述べておったわけでございます。したがいまして、そういうことから
考え
まして、あの
フォード大統領
の
演説
というものは、いわゆる
サイゴン撤退
直後に言われました
米国離れ
というような
アジア
の
国々
のあわただしい動きからかなりの時間が
たち
まして、いわば振り子がもう
一つ
正常な方へ戻ってきつつあるいまの
段階
、すなわち
アジア
の
各国
が
中国
、
ソ連
、
米国
という三つの大きな国の
影響力
の中で、そのバランスの上に立って、
おのおの
の独立と繁栄を求めていきたいというそのような現在の
情勢
の中で、
アメリカ
もまた同じような志向をしておる。そういう
立場
から言えば、もともと
米国
の
立場
は、
世界
の平和、安定というのは、遺憾ながら力の上に成り立つしかないと現
段階
で
考え
ておることには変わりはありませんけれ
ども
、かつての
グアムドクトリン
というようなものに比べますと、このたびの
フォード大統領
の
演説
は、いわば平和の
姿勢
というものを打ち出しておるというふうにも申すことができるのではないか。そのようなことについて、
中国訪問
によって
対ソ観
というものについては
米国
と
中国
との間で
同一
ではないけれ
ども
、しかし
デタント
を推進するということ
自身
は、何も
米中間
を悪くするものではないということについて、言いっ放しではあるけれ
ども
、
中国側
もそれはそれとして
理解
をしてくれるものというふうな
考え方
が
米国側
にありまして、そういうことがあの
宣言
の
一つ
の背景になっておるのであろうと私は思います。 そうしてあの
宣言
の中で、いわば
アジア
の
地域
におきましては、インドシナ半島の問題というのが
アメリカ
にとりましては現在正常な姿、正常な国交というものを持つ形になっていないわけでございますけれ
ども
、それについても
インドシナ諸国
の出方によって、
アメリカ
はかたくなに従来からの
姿勢
をとり続けるということでもない。いわばその辺は待ちの
姿勢
といいますか、そういうものを示したように思うわけでございます。 したがって、全体としてあの
ホノルル
におきます
演説
は、かつての
グアムドクトリン等
と比べますと、争いを求めない、しかし
安定勢力
として
アジア太平洋
には深い
関心
を持つという
アメリカ
の
姿勢
をあらわしたものと存じますが、そのようなことにつきまして、
キッシンジャー国務長官
との一昨日の
会談
の中から、自然にそういうふうに読み取るべきであろうというような
印象
を私としては持った次第でございます。 以上、一昨日の
会談
につきまして大筋を御報告申し上げました。
栗原祐幸
5
○
栗原委員長
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
石井一
君。
石井一
6
○
石井委員
まず
最初
に
領海
十二海里の問題について、たとえばきょうの新聞にも
政府
の新しい
見解
と申しますか、
見通し
が相当明快に報道されておりますが、昨日
外務大臣
は
漁連
の会長にも会見をされて、その強い要望などを受けられて、今後の
方針
などについてかなり突っ込んだ
意見
の表明をされた、こういうふうに伺っておりますが、まずこの点について
政府
の
見解
をお伺いしたいと思います。
宮澤喜一
7
○
宮澤国務大臣
今朝の報道につきまして、私はあるいは全部は見ておらないかと思いますけれ
ども
、これは私の見ました限りでは、
自民党
の
首脳
の
意見
という形で
紹介
されておったものを私も読んでおります。これは実は昨日でございますか、全国の
漁業
君
たち
の
大会
がありまして、その席上で、
自民党
の
首脳
が党としての
考え方
を述べられたものというふうに
承知
しております。私
自身
は昨日
漁業者
の方々の
代表
の方とお会いをいたしまして、現
段階
における
政府
の
考え
ておりますことをお伝えをいたしました。そのこと
自身
は別段ニュースバリューがあるようなことではなかったと思うのでございますけれ
ども
、私が申しましたことはこのようなことでございます。また、それが今日の
政府
の
立場
でもございます。 この問題についてはもともと、当
委員会
でも申し上げましたように、今年の
海洋法会議
で
結論
が得られるのをひとつ待とうではないかというのが
閣議
で申し合わせた
立場
であったわけでございます。しかし、今年の
海洋法会議
が
結論
を得られませんでした。したがって、この問題は明年に持ち越されたわけでございますので、本来であれば、
わが国
の総合的な
国益
を
考え
ますと、明年の
海洋法会議
の終結を待ちたいというのが問題の本来でございますけれ
ども
、たまたま、ただいま
北海道
を
中心
にして
ソ連漁船
の
操業
が行われて、いろいろな紛議を巻き起こしつつある。しかもそれは季節とともに南下をするというようなのが今年春の
経験
でもあったわけでございまして、それについて
漁業者たち
の
関心
が非常に高く、
大会
もそのようなことで催されたということでございますから、従来どおり、この十二海里の問題を、明年の
海洋法会議終了
までは
政府
としては一切再
検討
はいたしませんという
立場
をとることが果たして適当であろうかどうかという
考え
、
問題意識
を私
自身
も持つに至りました。所管であります
農林大臣
は、もとより前からかなりそういうことを言っておられたわけでございます。したがいまして、私としまして、先月の十日過ぎでございましたが、問題は非常に複雑である、各
省庁
の
関係
が多うございますから、
内閣官房
においてひとつ各
省庁
の
意見
の
総合調整
をしてもらいたいということを、
官房
副
長官
に
農林大臣
と御一緒に私から依頼をいたしまして、実はただいまその
調整過程
にあるわけでございます。 それで、問題を
漁業
に限りましても、私が心配いたしておりますことは、たとえば
海洋法会議
というものがまとまってしまえば、
世界各国
のいろんな
主張
がとにかく
調整
されて
一つ
の
法典
ができるということになるので、それが一番
わが国
の総合的な
国益
にはなるし、
漁業
の問題
一つ
とりましても、たとえば
インドネシア
が
群島理論
というようなものを独自の
立場
で振りかざしますと、昨今
インドネシア
で接収をされておる
漁船
が相当出てきておるというようなことでもわかりますように、実は
わが国
にとって、総合的にも
漁業
に限りましても、必ずしも
海洋
の無
協約状態
というのが有利とは言えないという心配を私
自身
が持っておるわけでございますので、できるならばという
気持ち
はございますけれ
ども
、他方で
ソ連
の
操業
というものが相当逼迫した問題を
わが国
の
沿岸漁業者
に提起をしておるということでございますので、ともかく
内閣官房
において問題をもう一遍レビューをしてもらって、各
省庁
の
意見
の
調整
ができるならやってもらおうではないか、こういうことで作業が進んでおります。 ほかにこの
調整
に
関連
のある問題といたしましては、よく御
承知
のことではございますけれ
ども
、たとえば
わが国
の
船舶
の
世界各地
における、ことに
領海
が仮に十二海里になりましたときに、いわゆる
国際海峡
と言われておりますものにどのような
権利
と
義務
を
わが国
の
船舶
が負うか、あるいは
わが国
で生ずるであろうそのような
国際海峡
に対して、それを通過するところの
船舶
あるいは艦船に対して、
わが国
がどのような
権利
と
義務
を有するかといったようなこと等々にも
関係
がございますし、
かたがた先
ほ
ども
申し上げましたが、
世界
的な
法典
ができないうちに、それを待たずに
各国
がいろいろな
立場
をとってしまうということによって、せっかくの
努力
が水泡に帰して
海洋
無秩序になった場合に、果たしてそれでよろしいかという問題がやはりございます。 それからまた、別途、
わが国
が
米国
とかつて結びましたこれは非常に古い
条約
でございまして、
米国
の
禁酒法時代
の
条約
の中に、密輸を取り締まることとの
関連
で、
領海
というものは三海里であるというふうに
お互い
が確認し合っておる
条約
がございます。これは
アメリカ
の
禁酒法時代
の
条約
でございますから、今日実体的な
意味
を持っておるとは思いませんけれ
ども
、そのような過去の歴史もある等々といったようなことを昨日
漁業者
の方にお話をいたしました。 そして、
政府
がしたがって
検討
をなお続けておりますが、仮にその
検討
の結果が
漁業者
のお望みのような答えになるとしても、恐らくはこれは新しい
立法
を必要とするというふうに
考え
られる、この点も
検討
が最終的には詰まっていないけれ
ども
、かつて三海里というものが受け入れられた
国際法
であった
時代
には、
わが国
もそのようにするという
宣言
をすれば
国際法上位
ということで済んだわけでございますけれ
ども
、今日は十二海里というものが
国際法
になり切っているとは言いにくい
状態
でございますから、恐らくは
立法
しなければならないのではないだろうか、仮に
立法
をするということになりますと、ただいま申し上げましたいろいろな問題をその
立法
の中にどのようにして織り込むかということになれば、これは
立法技術
上かなりむずかしい問題であろうし、また当然に
両院
の御
審議
も経なければならない、その間に、
両院
におかれていろいろな御
意見
が出ることは当然
考え
られることである。したがいまして、その筋を追っていきますと、仮に
漁業者諸君
の言われるような
結論
が最終的に実行されるということは、
立法
が成立するという時期まで待たなければならない、そういうのが
現状
であろうと思う。ただその場合に、これは
お尋ね
があって申したことですけれ
ども
、それでは今年の
漁期
というものは済んでしまうではないかというような
お尋ね
もありましたから、仮に
政府
がそういう最終的な
方針
を決めたということになれば、
立法
を待たずともこれは
関係国
に通報することも技術的には可能かもしれない、大体そういうことを申し上げました。それが今日の
政府
の
立場
であるわけでございます。 したがいまして、
内閣官房
を
中心
に話を詰めてまいりますといろいろな問題が実は出てまいるだろうことは予想されますので、
結論
として、
領海
十二海里を
政府
がやることを決心したのだというようなことにはこれは相ならないのでありまして、その
検討
を待たなければ、何ともそのことは申し上げられないということが正確に申しましてただいまの
政府
の
立場
でございます。
自民党首脳
の
意見
として報道されましたものは恐らく、いろいろな観点から、ただいまのことをある
部分
を多少強調し、ある
部分
を多少弱めるというような形で幾らか、どう申しますか、いわゆる
国会
で申し上げるような
意味
での正確さというものとは多少違ったカラーが出ておりますけれ
ども
、ただいまの
政府
の
考え
ておりますことは以上のことでございます。
石井一
8
○
石井委員
それぞれ一言一句非常に味のある
政府見解
で、よく
意味
はわかりましたが、ただ恐らく
漁連
の
代表たち
はいまの話を聞くと少し失望もするだろうし、また、そういうふうに
理解
をしておるかどうか多少疑問の点もあると思うのでありますが、政党の
代表
が
政治的発言
をし、
政府
としてはもう少し正確に
発言
をされたということにしましても、三海里という
政府
の
公式見解
から現在の事情を
考え
ると、相当前向きに
政府
は
検討
を始めたということは確かだろうと思いますし、現実に
内閣官房
でそういう手続が行われておる、こういうことでございましょうが、いまお言葉の中にもありましたけれ
ども
、
内閣官房
の
各省
の
調整
というものが終われば、まず
閣議決定
といたしますか、
閣議了解
としますか、そういう形で
閣議
に通報するという、それがまず
最初
のステップになるわけで、正式にはそういうことになるのですか。
宮澤喜一
9
○
宮澤国務大臣
実はその辺も十分まだ打ち合わせをいたしておりませんけれ
ども
、一応
内閣官房
を
中心
に
各省
の
調整
ができましたら、それを
内閣官房
かあるいは私
ども
ですか、しかるべき方法でやはり
閣議
にその結末を報告しまして、そして
閣議
として大体よしということであればそれからこの
立法
にかかる、こういうふうにでもいたしたらいいのではないかと私は思っているのでございますけれ
ども
、まだその辺を相談をいたしておりません。
石井一
10
○
石井委員
ここには五月を
めど
に
立法化
するというふうに報道されておるわけですが、いまもうそういうふうに
調整
が進んでおるわけですし、防衛庁の
考え方
も、
国会
の各
委員会
で特別に異存はないという
見解
も出ておる。農林省はもともとそういうことに関しては非常に積極的であるというふうなことを
考え
ますと、比較的早くそういう
調整
が可能なんではなかろうかというふうな
気持ち
も私はするわけです。だから機は徐々に熟してきておる、こういう
感じ
がするわけですが、そうするとやはり一応常識的に
海洋法会議
その他はありますけれ
ども
、それはさておきますと、
漁期
その他の問題もあるので非常にアージェントな問題になってきております
関係
で、大体次の
通常国会
の終わりごろには
立法化
を
めど
に
努力
したい、こういうのが今日の
政府
の一応
方針
だ、こういうふうに
考え
ていいのでしょうか。
宮澤喜一
11
○
宮澤国務大臣
仮に
立法
をいたしますとしますと、かなりむずかしい法律であろうと存じますので、
通常国会
に御
提案
をして御
審議
を願うということになりますと、通例の
国会
の御
審議
の従来の
経験
から申しますと、まず予算御
審議
というようなことからお入りになるのが普通でございますし、
かたがた
この
立法
には、場合によってかなりむずかしい
部分
が含まれるということも、やってみないとわかりませんが排除もできません。仮に
立法
をいたすという方向に動きますと、時期としてはそう簡単にはすぐに
国会
で御承認、御賛成を非常に短時日にいただけないかもしれないということは
考え
ておかなければならないと思うのでございますが、実は、
立法
をすることになるかどうかということについて、まだ
内閣
の議がまとまっていないということの方が今日の
現状
でございます。
石井一
12
○
石井委員
これ以上突っ込んで申し上げるのもあれですけれ
ども
、一応これから
検討
されることですから、はっきり時期を明示するわけにはいかないかもわかりませんが、来年の一月に
政府
ができればこれに関する
宣言
をしたいし、次
国会
において
立法化
を
めど
に
努力
をしたいというそういう
努力目標
で今後進まれるのか、それとも、やはりそれは非常に
大臣
の
見解
としてはむずかしいというふうにお
考え
になっておるのか、ここは一番ポイントだと思いますので、
見通し
で結構ですからひとつ最後にお伺いしたいと思います。
宮澤喜一
13
○
宮澤国務大臣
少なくとも、ただいま
北海道
ですが、だんだん南下してくる
地域
における
漁業者
の、毎日のかなり差し迫った問題の
意識
というものを私
ども
はよく存じておりますので、したがって、従来のように、来年の
海洋法会議
が終わりましてから
検討
を始めましょうということでは、ちょっと時間的にあるいは問題の緊要さから言って、行政として親切な態度ではないという
感じ
がいたしましたので、再
検討
を先月の中ごろから始めたわけでございますが、さりとて、それならもうすぐそういくかということになりますといろいろ問題があるので、私
ども
、とつおいつ
考え
ておった種類のことでございますから、何ともそこを明確に申し上げかねるというのが
現状
でございます。
石井一
14
○
石井委員
大臣
が来週パリの
国際経済協力会議
に御
出席
になります。これが開催されますまでにいろいろの経緯があったわけでございますが、今回具体的な構想なり機構なり
提案
を、この
会議
に
出席
される
わが国
として出されようとしておるのかどうか、この時点で、この
会議
に対してどういうふうな期待なり目標を持って御
出席
をされようとしておるのか、ひとつここを明らかにしていただきたいと思います。
宮澤喜一
15
○
宮澤国務大臣
この
会議
は、昨年の二月に石油の消費国がワシントンに集まりまして以来の御
承知
のように長い長い経緯の結果でございますから、このたびの閣僚の
会議
がとにかく無事に開かれて、そして無事に終わったということが私は一番大切なことだというふうに
考え
ておるわけでございます。 少なくとも、このたびの
会議
で最小限やらなければならない問題といたしましては、
会議
というものが正式に発足をして、議長も決まり、そして四つの
委員会
もつくられ、その
委員会
に対して今後一定の期間の間に
審議
をしてほしいという事項、そのような問題についてのマンデートと申しますか、指針と申しますか、それを具体的に与え得て、そして四つの
委員会
が作業に入る体制を整え得たというところまでは、何とか今度の
会議
でやっていきたいと
考え
ておるわけでございます。そのための準備もいろいろいたしておりますけれ
ども
、まだ最終的に
会議
の構成国を幾つにすべきか、その具体的な国の選択をどうすべきかというような問題から準備が完了いたしておりませんし、いわんや、その後の各
委員会
の構成、マンデーテッドなことも話が進んでおりませんので、ともかく前回、前々回の準備
会議
で失敗をしておる
経験
もございまして、そういう失敗なしに
会議
が発足をした、具体的な
委員会
の活動もできるようになったというところまでは何とか持っていきたい。
わが国
が何かを用意しておるかというお話でございますが、そのような今回の
会議
でございますから、非常に具体的に
わが国
が何かを
主張
するというようなことはもう少し後の
段階
になろうと思いますが、四つの
委員会
に与える指針、マンデートの中には、
わが国
の従来から
考え
ておりますような事柄は何とか入るようにしたいということは思っております。
石井一
16
○
石井委員
先日キッシンジャー
長官
と会見されましたときに、この
会議
のことについて話し合われたのかどうか、また、この
会議
に対処する
日米
両国の間で何か共同
提案
をするとかあるいは歩調をともにするべき事項、そういうふうなものなり、そういう可能性があるのかどうか、この点はいかがでしょう。
宮澤喜一
17
○
宮澤国務大臣
せんだっての
キッシンジャー国務長官
との話し合いは実はごく簡単にこれに触れました。と申しますのは、キッシンジャーが長く留守でございまして、この問題は直接には最近のところタッチしていないということで、むしろ私
ども
の方が最近の
情勢
を知っておりましたので、
会議
の議長国をどのようにすべきか、それから先進国側で参加すべき国をどのように
考え
たらいいかというふうなことにつきましてはごく簡単に話をいたしましたが、
日米
間の
意見
の相違はその点ではございませんので、話はごく簡単でございました。
石井一
18
○
石井委員
それじゃ、今度の
会議
に関しての
日米
間の問題は触れられたけれ
ども
余り突っ込んだ話はしておらぬというようなことですが、先ほど当
委員会
に対する御表明もございましたけれ
ども
、キッシンジャー氏との会見のときに、特に新太平洋ドクトリンに
関連
をいたしまして、
アジア
における経済協力の新機構の設立とか具体的方策というふうなことについて、まあこれは日本が一番
中心
に進めていかなければいけない問題だと思うのですけれ
ども
、こういうことについてキッシンジャー
長官
からの具体的な説明があったのかどうか、あるいはまた日本側としての意向の表明がなされたのかどうか、この点はいかがですか。
宮澤喜一
19
○
宮澤国務大臣
これは、実は
キッシンジャー国務長官
とはその点の話をいたしておりません。と申しますのは、
フォード大統領
のあの
部分
が、実は何と申しますか、一番熟度の低い
部分
だというふうに私は思っておりまして、すなわち大西洋に呼びかけて、大西洋の
一つ
のパートナーシップということを申します場合に、御
承知
のようにECがすでにあれだけの連帯性をつくりつつございますから、その上に築くものが築きやすいのでございますけれ
ども
、
アジア
には残念ながら、ことに経済面の連帯性というものは欠けております。欠けておる
段階
でああいう
一つ
のドクトリンというようなものを出すということになりますと、やはりその下になるべき機構、仕組みというものを育てなければ本当のものはできない。論理的にどうしてもそうでございますから、そこであの
部分
がやはり大事だということを、これは論理的にも言わざるを得ない。しかし、それは実はまだ十分には存在していないという
部分
だと私は思いますので、
問題意識
はあれでよろしいのであると思いますが、一番あの
部分
は熟度の低い
部分
だと思います。したがって、
キッシンジャー国務長官
からも具体的な話はございませんでした。
石井一
20
○
石井委員
新太平洋ドクトリンの中に
米中間
の
関係
の改善ということがございます。先ほどいろいろの御説明もこの点についてございましたけれ
ども
、
日中平和友好条約
の締結などにもいわゆる覇権条項の問題などが非常にむずかしい微妙な問題として横たわってきておるわけですけれ
ども
、この新太平洋ドクトリンの表明ということによって、今後
米ソ
関係
に何らかの
影響
があるのではなかろうか。あるいはまた、
日中平和友好条約
なり日ソ平和
条約
交渉
への展望というふうな
意味
で、この条項というふうなものがやはり何らかの形での
影響
があり得るのではないかと思いますが、
外務大臣
はそういう点をどのように見られますか。
宮澤喜一
21
○
宮澤国務大臣
このいわゆる
ホノルル
演説
でございますが、この中でも述べられておりますように、
米国
として平和を維持しているものは、やはり現在の
世界
においては力であるという
考え
は基本にございます。したがいまして、
米ソ
の
デタント
の進行というものがやはり
米国
の基本の外交政策の太い柱であることには変わりがないと私は
考え
ますので、このような構想
自身
が
米ソ
の
デタント
を妨げるはずのものではなく、むしろ逆に
デタント
そのものは
アメリカ
としては推進していかなければならない、こういうことでございましょうから、そしてそのことは、恐らくSALTの
交渉
の推進に
米ソ
ともなお熱意を持っているということでもはっきりしておるわけでございますから、この構想
自身
が
ソ連
の
立場
を悪くする、あるいは
米ソ
の
デタント
に障害を生むというようなことではないであろうと私は思います。 他方でいわゆる覇権条項でございますが、これは
国会
でも申し上げておることでございますが、特定の第三国を私
ども
は
意味
して物を
考え
ておるわけではございませんので、そのこと
自身
が日ソの
関係
に悪い
影響
があるというふうには私は
考え
ませんし、また、そのように解釈されるようなものであってはならないというふうに思っております。
石井一
22
○
石井委員
時間が参りましたので、最後に、日ソ平和
条約
の
交渉
が、グロムイコ
外務大臣
の来日という予定もありましたけれ
ども
、今年は実現しないというような
情勢
になっております。そうすると、閣僚レベルでの話し合いがここしばらくとまっておるというふうなことにも相なろうかと思いますが、今後これについての
見通し
なり、
外務大臣
としてのお
考え
をお伺いいたしまして質問を終わりたいと思います。
宮澤喜一
23
○
宮澤国務大臣
グロムイコ
外務大臣
とは今年一月にモスクワで会いました後、今年の九月の末にニューヨークで会っておりますので、今年二回
会談
をいたしております。しかし、実は年内に訪日をするということが一月に出されました共同新聞発表でも述べられておりますので、せんだって
わが国
としては、年末でも、お忙しいときではあるけれ
ども
お待ちをしておるということは実は伝えてございますが、それについて今日現在、いずれとも返事が参っておりません。したがって、場合によりまして来年当初にずれ込むことはあるかもしれないと思いますが、恐らく
ソ連
としては、明年の二月の共産党
大会
というようなものが大きな行事でございますから、そういうこととの
関連
もあり、SALTの
交渉
の
関連
もあるのであろうと思います。ですから、何が何でも今年でなければおかしいではないかとまで私は申すつもりはありませんけれ
ども
、しかし、やはり今年に訪日と言った限りにおいては、それがどこまでもずれ込んでも構わぬという性格のものではないと思いますので、もし年内の訪日が困難であるということであれば、改めてまた、いつの機会に訪日されるつもりであるかということを、もう一遍こちらから日を申して、先方の注意を促すという必要があろうかと存じます。
栗原祐幸
24
○
栗原委員長
堂森
芳夫君。
堂森芳夫
25
○
堂森
委員
外務大臣
に
お尋ね
いたしたいと思うのでありますが、ただいま米中
首脳
会談
の模様等について
キッシンジャー国務長官
から報告を受けられ、まあ
会談
をされまして、その内容についてはわずかな時間でありますが、
外務大臣
から御説明がございました。 〔
委員長
退席、水野
委員長
代理着席〕 私は、
ホノルル
で
フォード大統領
がいたしました
演説
、新太平洋ドクトリンとかいろいろな呼び方があるようでありますが、この思想の基本はやはり力の外交、力というものが
世界
の、
アジア
の平和の基本である、こういう思想には変わりがないということは、いま
外務大臣
も言っておられたように思います。そして、
アジア
の平和のためには
日米
の協力が基本である。それは六つくらいの骨子があって、この
演説
が行われておりますが、私はいま
外務大臣
と
議論
をしようというわけではありませんが、力が
アジア
の平和の基本であるという
考え方
には非常に大きな疑問を持ちますし、納得はできないという
考え方
を持つものであります。したがって、今後の
日米
間の協力が基本であるという
考え方
にも多くの問題がある、こう思います。いま
外務大臣
と
議論
をするわけではありません。 そこで、このたびの米中
首脳
会談
は、キッシンジャー氏からあなたが受けられた
会談
についての御説明では、初めからさしたる成果は望めないが、
友好
的な
雰囲気
で両国の
首脳
が話をし合うというような
意味
であった、何か軽いような
雰囲気
の
会談
であった、こういうふうに
理解
していいのでございましょうか。この点をまず聞いておきたいと思います。
宮澤喜一
26
○
宮澤国務大臣
よくことわざに「便りのないのはいい便り」というのでございましょうか、あるいはもっと「ノー・ニュース・イズ・グッド・ニュース」と申し上げた方がこの際適切かもしれませんが、そういうことわざがございますが、この際の米中
会談
というのはそういうものであったのであろう。すなわち
アメリカ
としては、
ソ連
との
デタント
を推し進めなければならない、これは非常にはっきりした
アメリカ
の外交政策の基本命題であると思うのでございますが、それについて、ともすると
中国側
がいろいろな疑問を持つわけでございますから、そういうことではないのだ、
米ソ
の
デタント
が進むということは、決して米中の
友情
が後退するということではないのだということを
アメリカ
としてははっきり言っておきたい、そういう
友情
をこの
段階
で確認をしておきたいということであったと思います。したがって、そのこと
自身
は耳新しいことではございませんけれ
ども
、しかし大切なことであったというふうに私は
考え
ておるわけでございます。
堂森芳夫
27
○
堂森
委員
大切なことであればこそ、わざわざ大統領が
中国
を
訪問
し、五日間も向こうでいろいろな
会談
をしたと思うのであります。そしてこの
演説
でも、
フォード大統領
の今後の外交の基本の重要な問題の
一つ
は
中国
との
関係
正常化である、こういうことを言っておると思うのであります。 そこで私が
お尋ね
したいことは、キッシンジャー氏とあなたとの
会談
の中で得られた感触あるいは説明、いつごろになると米中の国交の正常化が実現するのであろうか。キッシンジャー氏が明確な説明をしたかどうか、むずかしい問題でありましょうが、あなたは
外務大臣
として、日本と
中国
は密接な
関係
を持たねばならぬ、そうであればこそ平和
友好
条約
を結ぼうとしておるのでありますから、
米中間
の国交の正常化はいつごろ実現するのであろうか、あるいはしようとしておるのか。
米国
には
米国
のスケジュールがあると思うのでありますが、
外務大臣
としてどういう感触を受けられたのでありましょう。少しく詳しく説明をしてもらいたいと思います。
宮澤喜一
28
○
宮澤国務大臣
いわゆる
米中間
の国交の最終的な正常化ということは、台湾問題の処理を含むことになると存じますが、これについては先ほ
ども
冒頭に申し上げましたように、余り深刻な
議論
が今回行われたようではございません。そのようなことをこの際深刻に
議論
をしても、当面成果を得られない、かえって
会談
の
雰囲気
を悪くするというような配慮が両方にあるいはあったのかもしれないと存じます。事実また、この問題についての日程というものはない。いつになったらという話し合いも別に行われていないし、
アメリカ
自身
もそのような日程を持っていないというふうに私は
理解
をいたしております。
堂森芳夫
29
○
堂森
委員
そうしますと、新聞報道では、
アメリカ
と
中国
の
関係
は日中方式のようなものになるのではないか。これは推測の記事かどうか、実際にそうだと思う。少なくとも
米中関係
が正常化するためには、やはり台湾問題が解決しなければ正常化しないのが当然だと私は思うのでありますが、台湾問題についての
アメリカ
側の、キッシンジャー氏の
考え方
ですね。国交正常化を行っていこうとするならば、台湾問題が解決しなければこれは正常化しないと思うのであります。そういうことについて、いまの御答弁では、このたびの米中
会談
は
友好
裏に進んだ、そして
上海コミュニケ
の精神も再確認するというようなことでは、私は
米中間
の国交正常化が何もそこで進展しないのではないかと思うのでありますが、台湾に対する
アメリカ
側の
考え方
あるいはこのたびの
会談
ではそういうことはぼやかされて過ごされたということでございますか。どういうふうに判断しておられるのでございますか、この点もう一遍承っておきたいと思います。
宮澤喜一
30
○
宮澤国務大臣
この問題につきましては、
キッシンジャー国務長官
の新聞会見が当初多少誤って報道されたようでありまして、後に報道そのものが訂正されたようでございます。
キッシンジャー国務長官
が申しましたことは、米中の国交正常化ということになれば、恐らく
中国
が日本方式を望むということは明らかであろうと思うが、しかし、
アメリカ
にはこの問題を推し進める具体的なスケジュールはないというふうな説明であったようでございまして、その
部分
の前の方が多少誤り伝えられて
わが国
にも
最初
報道された、こういう経緯であったようでございます。
堂森芳夫
31
○
堂森
委員
外務大臣
、そうしますと、いまのところ米台間の
関係
はこのまま続くであろうというお
考え
でございますか。そういうふうに
印象
を受けておられるのでございますか。
宮澤喜一
32
○
宮澤国務大臣
現状
を基本的に変えるような
考え方
、そしてそれがいつまでにどうというような具体的なスケジュールはないようであると私は思っております。
堂森芳夫
33
○
堂森
委員
仮定論ですが、米台間の
関係
が
現状
のままで
米中間
の
関係
が正常化できるのでしょうか。私は不可能だと思うのですが、日本の
外務大臣
として、せっかく二時間もキッシンジャー氏とお会いになって、そういうような感触でいいのでありましょうか。私はどうも納得できません。
宮澤喜一
34
○
宮澤国務大臣
おっしゃいますように、それは二つの問題ではなくて
一つ
の問題でございますから、今回の
フォード大統領
訪中によりましても、
米中間
に台湾をめぐっての新しい
関係
の展開が近い将来にあるという
印象
ではなかった、そのような具体的な話し合いが行われたというふうには私は
考え
ておりません、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
堂森芳夫
35
○
堂森
委員
そうしますと、キッシンジャー氏からは、米台
関係
については何も具体的にあなたに話はなかったということでございますか、これも確かめておきたいと思います。
宮澤喜一
36
○
宮澤国務大臣
この問題について、このたびの米中
会談
で非常に深く深刻に
議論
をされたようではないようでございますということを冒頭に私から申し上げておりまして、また事実そのようでございましたから、
キッシンジャー国務長官
からも、今後の米台の
関係
について特別に私に説明はございませんでした。
堂森芳夫
37
○
堂森
委員
説明はなかったとしても、
米中関係
を正常化するためには、米台
関係
を放置してはできないだろうと私は思うのでありますが、
外務大臣
もそのようにお
考え
でございましょうか、仮定論でありますが。
宮澤喜一
38
○
宮澤国務大臣
そのとおりでございまして、それは二つの問題ではなくて、
一つ
の問題と申し上げてもいいぐらいだと思います。
堂森芳夫
39
○
堂森
委員
そうしますと、
最初
お尋ね
しましたように、
米中間
の国交正常化はいつごろになるであろうか、あるいは遠い将来のことであろうか、あるいはわりあい近いのであろうかという推定を、
外務大臣
はこれをどうしておられるのでありましょうか。私は、日中
関係
からいっても、
アジア
のいろいろな安定、平和、そういう
関係
からいきましても、重要な問題だと思うのでありますので、
外務大臣
はどのようにお
考え
でございましょうか。
宮澤喜一
40
○
宮澤国務大臣
米国
国務長官
はそれについて、ただいま
見通し
得るスケジュールはない、日限についての具体的なスケジュールはないと言っておられますし、また、私も問題の困難さから見てそうであろうというふうに
考え
ております。
堂森芳夫
41
○
堂森
委員
そうしますと、私がこれ以上この問題について
お尋ね
しても、
外務大臣
として慎重にお答えになりますから、この点はこれでおきます。 そこで問題を変えまして、
アジア
の平和は主な政治紛争の解決にかかっておるというようなことも
演説
に言われておる柱の
一つ
であります。これはやはり朝鮮半島における緊張緩和ということが実際に実現しなければ、
アジア
における平和、そういうものに本当に進むことはできないということは、これはだれでも
理解
するところだと思うのであります。 そこで、あなたのさっきの説明でも、朝鮮半島の問題についていろいろと話し合ったが、
考え方
の相違はあったが
論争
にはならなかったというような
意味
の説明がキッシンジャー氏からあったというふうな御説明がありました。そこで、
アメリカ
側は朝鮮半島に対して
中国側
とどういう話し合いをして、どういう点が
意見
が違うのか、そういうことについての説明はあなたにはなかったのでありましょうか。この点もう一遍御答弁を願いたい、こう思うのであります。
宮澤喜一
42
○
宮澤国務大臣
この点につきましては、南北両朝鮮の間の一九七二年の七月のいわゆる対話の
宣言
というものが、平和な統一になって実を結ぶということが最も望ましいというふうに
考え
ております点では、
わが国
はもちろんでございますが、恐らく
米国
といえ
ども
さようであろうと
考え
ますが、現実にその対話というものが進まない。そこで、
アメリカ
は去る国連総会におきまして、そのような対話、あるいはそれが少し拡大された形における対話に進んでいくということも
アメリカ
としては望ましいことであると
考え
るとまでは言ったわけでございます。しかし、私
ども
の見るところでは、韓国を除外をしてそのような対話は進み得ないだろうと
考え
ますし、北鮮当局は韓国と直接に対話をするということは回避をするという態度でございますから、この
フォード大統領
の
ホノルル
演説
にも述べられておりますように、そこで話はひとつとんざをしておるというのが
現状
であろうと思います。 今回この問題について米中でどのような話が話し合われたか、私は非常に詳しくは聞いておりません。が、
印象
といたしまして、どうも残念なことではあるが
現状
というものをなかなか改善できない、かといって、米中ともに現在の
状態
に対しては非常に過激な変化を与えるということは慎まなければならない、そういう
意味
では米中とも抑制的な態度をとらなければならないということについて、合意があったわけではないけれ
ども
、
アメリカ
もレストレイントをするし、
中国
も恐らく同様なのではないだろうかというふうにキッシンジャーとしては
考え
る理由がある、こういうようなことでございました。
堂森芳夫
43
○
堂森
委員
あなたの御答弁では、余り詳しい話はなかったということでございますが、しかし、国連における朝鮮半島に関するあの矛盾した決議ですね、ああいう
状態
から見ましても、もちろん韓国を除外して対話はないことは当然です。こんなことはあたりまえだと思うのです。しかし、具体的に朝鮮半島には二つの国があって、そして
中国
の
立場
と
アメリカ
の
立場
は全く違うだろうと思うのでありますが、この朝鮮半島の緊張緩和ということをしなければ
アジア
の本当の平和は来ない、こう言っておるわけでありますから、非常に矛盾があると思うのであります。まあ現実はそうである。 そこで、この朝鮮半島における問題について、キッシンジャー氏がいまもおっしゃったような
意味
の
会談
の話しかなかったということといたしましても、日本の
外務大臣
として、朝鮮半島の緊張緩和はある
意味
では
アメリカ
政府
が
考え
るよりももっと重大な
関心
事でなければならぬことは当然でありますが、
外務大臣
はそういうような重大な責任を持っていらっしゃるのでありますから、キッシンジャー氏との
会談
の際に、あなたとしての、朝鮮半島における事態を緊張緩和へ持っていくためにどういう方法がいいのであるとかいう御
意見
はおっしゃらなかったのでございますか。ただ承られただけでございますか。この点御答弁を願いたいと思います。
宮澤喜一
44
○
宮澤国務大臣
一昨日、
米中間
で朝鮮の問題がどのように話し合われたかということについては、そう深い話はなかったように思うということを申し上げたのでありますけれ
ども
、私とキッシンジャーとの話では、今年何度か会っておりますが、やはり一番しばしば私が申しておりますのは、おっしゃいますように朝鮮半島の問題でございます。 私は、ことしの春ごろから
キッシンジャー国務長官
に対しては、何かのとにかくダイアログを、対話をしなければいかぬではないかということを何度も何度も申してまいりまして、これは国連決議のはるか前でございますけれ
ども
、そして結果として
アメリカ
としてはそのような対話、しかもその対話がさらに少し大きな場に発展することも場合によってはいいではないかというようなことまで、
キッシンジャー国務長官
が国連で
演説
をしたわけでございます。それは、私
ども
のこの問題の解決の道であると
考え
るところのものに沿っておる提言であり
発言
であるわけでございますが、そこまでいきながら、なお北鮮が韓国をまじえた対話は拒否をするという問題にいま突き当たっておるわけでございますから、そこのところを場合によっては、これは以前にも申し上げたことですが、国連事務総長といったような第三者が何か仲介する方法はないだろうかというところまで、私
ども
は実はいろいろに
努力
をいたして今日に及んでおります。及んでおりますが、それがまだ実を結んでいないということでございます。
堂森芳夫
45
○
堂森
委員
きょうは時間もありませんから、これ以上この問題について御質問はできませんが、そうしますと、朝鮮半島の問題について、
北朝鮮
と
アメリカ
側とがわりあい、何か
北朝鮮
が
アメリカ
との
関係
の改善には非常に熱心であるというふうな報道等も従来からなされておりますね。そういうことについて
アメリカ
側は、キッシンジャー氏はあなたといままでのたびたびの会見等においても、何ら進展するような
意見
というようなものはなかったのでございますか。この点も伺っておきたいと思います。
宮澤喜一
46
○
宮澤国務大臣
つまり
米国
の
立場
は、
北朝鮮
と接触をすることにやぶさかではないけれ
ども
、その際、韓国をつんぼさじきに置いて除外した形で行うことは、韓国に対する
アメリカ
の信義を傷つけることになる、したがってそれはできない、こういう
立場
であろうと存じます。
堂森芳夫
47
○
堂森
委員
いや、それはよくわかっておるのですが、
アメリカ
側は、韓国と
北朝鮮
との仲介役といいますか、間に立って、朝鮮半島における対話の端緒をつくろうというような意図は全然ないのでございましょうか。その点いかがでございますか。
宮澤喜一
48
○
宮澤国務大臣
たとえば、いまのお話に端的にお答えをいたしますならば、
米国
と韓国と
北朝鮮
と三者で話し合おうではないかという話であれば、これは恐らく
米国
は喜んで応ずるのではないかというふうに私は想像いたします。
堂森芳夫
49
○
堂森
委員
そこで、私は
外務大臣
に、時間もありませんから、朝鮮半島の問題もそうでありますが、このたびの
フォード大統領
の
ホノルル
における
演説
、新太平洋ドクトリンとかフォード・ドクトリンとかいろいろな呼び方があるようでありますが、
演説
をした。これを大体日本のいずれの商業新聞を見ましても歓迎である、こう書いております。まず大体そうだと思うのであります。それから日本外務省も歓迎する、こういうふうな意思も新聞報道では発表されております。しかし、歓迎する、歓迎すると言うだけでは、私は、
アジア
の先進国としての日本の外交としては、それはきわめて遺憾である、こう思うのです。ということは、それだけではいかぬと思うのであります。この
フォード大統領
が言っておることを歓迎、歓迎と言うだけでなしに、日本の外交は一体東南
アジア
、
アジア
全体に対してどういうような基本的な外交で今後対処していくかというものがなくては、日本の外交としてはわれわれはいかぬと思うのであります。 たとえばこの
演説
の中でも、これは恐らくハノイの政権について言っておると思うのでありますが、向こうの出方次第ではわれわれは協力していくんだというような言い方でないかと思うのです。私の想像ではそう思うのでありますが、日本の最近のハノイ外交というものは、私の目から見ておってかなり積極的なものを持ってきておられるように思うのであります。こういう点についても、
アメリカ
の
アジア
外交に対して日本が先を行って、そして
アジア
の先進国としての日本の外交を先駆けて進めていくという気概といいますか、そういうものを持たなければならぬと私は思うのでありますが、たとえばハノイに対する外交、ベトナムにおける外交というものについてのこれからのあなたの心構え等承っておきたい。 それからもう
一つ
は、新聞等では、一月に東南
アジア
を三木総理が
訪問
するのであろうというようなことを、何か一週間ぐらいですか、一月中旬から、そういうようなことが報道されておりますが、これはこの間のランブイエの
会議
等に行かれて、そういう構想も続いて出てきたのではないかと思うのでありますが、これは行われるのでありましょうか、行われるとすると、
外務大臣
としてのあなたは、どういうようなことを意図して総理が行かれると
考え
ておられるのでありますか、この点も承っておきたいと思います。
宮澤喜一
50
○
宮澤国務大臣
ハノイとの外交について
わが国
が
アメリカ
に先んじて云々ということにつきまして、結果としては確かにそういうことになっております。これは、
わが国
のもともと平和憲法に基づく外交
方針
から自然に出たことでございます。私
ども
としては、ハノイに大使館をすでに開いて外交活動を盛んにいたしております。ただいま、さしずめいたすべきことは、ベトナムとの間の経済協力の昭和五十一年度分、来年度分につきまして最終的な合意に達するという問題が残っております。今年分はすでに履行いたしつつございますので。これは誠実にやってまいらなければならないと思います。他方で、ハノイ側から東京に大使館を開設したいということについて打診が来ておりまして、私
ども
は、それは当然のことながら結構なことであるというふうに
考え
ておりまして、これも日ならずしてそういう方へ進むのではないかと思います。 なお、今後ベトナムと経済協力を進めていきます上で、
わが国
の
関係
各省
の専門家に一度ベトナムを
訪問
して実情も聞き、実情を見せてもらうということが有効ではないか、有用ではないかと私
ども
は
考え
ておりますけれ
ども
、これは先方の御意向いかんにかかわることでございますから、向こうでよく御賛同であれば、そういうことも来年早々にはやってみたいと思うのでございますが、これは向こうの御意向いかんにかかわることでございます。一般的に申して、私
ども
としては北ベトナムとは十分にこのようなことで
友好
を深めてまいりたいと思っております。 それから三木総理
大臣
の東南
アジア
各国
訪問
の問題でございますが、総理
大臣
が東南
アジア
の
国々
との
友好
関係
に非常に大きな重点を置いておられるということは事実でございます。また、それはそうなくてはならぬことであると存じますし、ランブイエの
会議
以後、ことにそのことを強く
意識
しておられまして、さしずめ外務省の吉野
審議
官を派遣をされて、ランブイエ
会議
の結果についてもただいま報告を終わって一昨日帰ってまいったところでございます。ですから、総理
大臣
が非常に大きな
関心
を持っておられることは確かでございますけれ
ども
、東南
アジア
の
国々
、ことにASEANの
国々
がただいまASEANの
首脳
会議
を開く準備に没頭しておりまして、これがいつになりますか、うまくいきましたら二月の末ごろにでもなるのではないかと想像しておりますけれ
ども
、やはりその前に、これらの
国々
がそういうことで忙しいものでございますから、総理
大臣
が
訪問
されるということがちょっとタイミングとしては少し早いのではなかろうかという
感じ
もいたしておるわけでございます。一月に
訪問
されるとしますと、少なくともただいまごろから準備が行わなければならないわけでございますけれ
ども
、私
ども
ただいまそういう具体的な準備をいたしておりませんので、そういう時期に
訪問
が行われるということはないのではなかろうかと存じております。
堂森芳夫
51
○
堂森
委員
終わります。
水野清
52
○水野
委員長
代理
土井たか子
君。
土井たか子
53
○土井
委員
本日の当
委員会
におきまして、
大臣
は、
領海
を十二海里にするということについての
立法化
の用意がある旨を御答弁されました。そのいきさつについては、御答弁の中でおっしゃったとおり、全国の漁民の方々の切迫した要請にこたえるということを
考え
ると、
海洋法会議
の
結論
を待つということはどうも時間がかかりそうだ、したがって、ということでございました。ところが、従来から安倍
農林大臣
は、十二海里の
宣言
が必要であるということをしばしば
委員会
の席でもお述べになっていらっしゃいますし、また五日の当
委員会
におきましては、
外務大臣
みずからがこの問題については
宣言
と法制化の二様があることも述べられております。本日はその
立法化
の用意がある、そういうふうな旨をお述べになっているわけでありますが、全国の漁民の方々の切迫した要請ということを
考え
ますと、これもまた時間がかかるような御趣旨の御答弁もきょうはございましたわけで、まずこれについては十二海里の
宣言
をして、そうして
立法化
をするということも可能ではないかと私は思うわけであります。
宣言
ならば、その気さえあったらこれは早くできるわけでありまして、
立法化
というと、やはり手続、手順ということを
考え
ていくと、
宣言
に比べるとやはり時間がかかる。そういういきさつからしますと、
宣言
をして
立法化
ということもこれは
考え
ればできることではないかと思いますが、
外務大臣
、この点はどのようにお
考え
でいらっしゃいますか。
宮澤喜一
54
○
宮澤国務大臣
この問題は、先ほど
石井委員
にるる申し上げたことを土井
委員
もお聞き取りいただいておったと思うのでありますが、あれはやはり
立法化
の用意ありというようなことになるわけでございましょうか。どうも私はそうまで申し上げたつもりではなかったので、ただ従来、来年の
海洋法会議
を待ちたいと申し上げておったことを、どうもそこまでこの問題を再
検討
せずにおくわけにはいかぬというようなことから、再
検討
を確かに
内閣
中心
にやっておりますと、こういうふうに申し上げておりますので、そのようにひとつ御
理解
をいただきたいと思います。 そこで、仮に
検討
してまいりまして、やはりこの際そういう
結論
になることが適当だということになりましたら、これを法律にいたしまして
国会
の御
審議
を仰ぐということになりますと、相当長い時間を必要とすることは確かでございますから、そのような
方針
を
政府
が決めましたならば、それを何かの形で
関係国
に通報をするということは
考え
られることではなかろうかと私は思っております。ただ、そういうことになるかなりませんかをよほど
内閣
を
中心
に
検討
をいたしませんと、帰趨を申し上げるわけにはまいらないのが
現状
でございます。
土井たか子
55
○土井
委員
宣言
というのにはいろいろな仕方があると思うわけでありますが、いま
外務大臣
のおっしゃった
関係
各国
に通報するというのも、
大臣
がお
考え
になっていらっしゃる
宣言
というふうに
理解
をいたしましてようございますか。
松永信雄
56
○松永(信)
政府
委員
この問題を日本
政府
が一方的に
宣言
すれば
領海
十二海里というのを実施できるのではないかという御質問だと思いますけれ
ども
、この問題については
国際法
の面と国内法の面と両方を
考え
なければならないと思います。
国際法
上の問題といたしましては、これはすでに前に申し上げておりますけれ
ども
、現在
領海
十二海里を実施している国の数がかなり多数に上っております。私
ども
の
調査
しておりますところでは五十四カ国に上っております。そういう
現状
から見まして、日本が仮に十二海里を実施するということに踏み切った場合に、そのこと自体について、恐らく諸外国から日本
政府
に対して抗議を申し入れてくるということはないであろうというふうに
考え
ております。そういう
意味
で、日本が対外的な
関係
において十二海里を実施すること自体については、それほど大きな困難はないというふうに私
ども
考え
ております。 そこで、その対外的な
関係
においては、
宣言
だけをもって実施すればいいじゃないかという
考え方
があり得るわけでございますけれ
ども
、他方、そういうものを仮に
宣言
いたしました場合に、国内法的にその実施ができなければ、なかんずく取り締まりというのが非常に大きな問題になってくるわけでございます。国内法上実施ができないということでありますれば、そういう
宣言
をいたしましても、実はその
宣言
というものは有名無実のものになってしまうということになるわけでございます。したがってこの点は私
ども
は、やはり国内法上の問題点というものを十分詰めて
結論
を出した上でなければ踏み切ることはできないと思います。
大臣
が先ほど申されました、仮に
政府
が十二海里の
立法化
をするという
方針
を決定いたしました場合に、その
方針
について外国
政府
に通報するというのは、そういう日本
政府
の意思を外国に対して表明するということでございますから、それはある
意味
においては
宣言
と同じようなものであると
考え
てもいいと思います。それは解釈のいかんによると思いますけれ
ども
、しかし、通常十二海里を
宣言
するという場合には、十二海里の実施が即日、その
宣言
の施行される日から実施されるということであろうと思いますから、その
意味
では、いま
外務大臣
がおっしゃいました通報というのが
宣言
であるというふうには言えないと思います。
土井たか子
57
○土井
委員
それではこのことについてはひとつ簡明にお伺いしておきたいのですが、法制局、御
出席
いただいていますね。
領海
十二海里とする場合には
宣言
で事足りるのか、また、いま問題になっております
立法化
する必要があるのであるか、いずれか、この
宣言
と
立法
という問題はどのように違うのか、ひとつ簡明にお答えいただきたいと思います。
角田礼次郎
58
○角田
政府
委員
まさにそのことが問題なのでありまして、現在それをいろんな角度から
検討
しているわけであります。ただ、いまの
条約
局長
の答弁で大体尽くされておると思いますけれ
ども
、国内法の面において、これは国民の
権利
義務
に非常に重大なかかわり合いのある問題でありますので、直ちに
内閣
限りの
宣言
でもって事が済むということは断定しがたいという感触は持っております。しかし、まさにそのこと自体をいま
検討
しておる最中でございます。
土井たか子
59
○土井
委員
そうすると、法制局当局とされても、
宣言
と
立法化
ということの違いはどの辺にあるかということは、まだ明確にお
考え
をお持ちになっていらっしゃらないというふうに
理解
してようございますね。
角田礼次郎
60
○角田
政府
委員
実は、お言葉を返すようですが、発想方法は違うわけでございます。もし憲法上あるいは法律上、
領海
十二海里というものについて国内法制化といいますか法律が必要であるという
結論
になれば、それは
宣言
と法律を必要とするという問題は比較化できなくなるわけですね。つまり、どちらでもいいけれ
ども
、少し法律効果が違うからどっちかを選ぶというようなそういう発想にはならないわけでございますから、御
理解
願いたいと思います。
土井たか子
61
○土井
委員
つまり、国際的な分野における問題と国内的な分野における問題で法体系が別であるから、したがって、これはどっちをとるかという問題ではないという御答弁だと思います。それは確認しておきますよ。 さて、それでひとつ気にかかるのは、五日の当
委員会
ですでにこれについては防衛庁の方から、
領海
十二海里を日本がとる場合においても、防衛上の
影響
は余り大きくないというふうな御答弁があったわけであります。これは防衛庁の
見解
でございますけれ
ども
、言葉をかえて言うと、安保体制上支障がないというふうにもこれは
理解
してよいと思うわけであります。外務省当局とされては、これに対してどういう御
見解
をお持ちになっていらっしゃるか、また
アメリカ
側とそれについての協議をなすっているのかどうか、お伺いをしたいと思います。いかがですか。
松永信雄
62
○松永(信)
政府
委員
防衛庁の方から、十二海里の
領海
を実施した場合に別段支障はないと
考え
るという御答弁がありましたのは、私
ども
も
承知
いたしております。この防衛庁の答弁は、私
ども
といたしましては、防衛庁が、自衛隊が日本の防衛体制を実施するに当たって、
領海
が三海里から十二海里になることについて支障はないという
見解
を表明されたものだと
了解
しております。 そこで
アメリカ
との
関係
でございますけれ
ども
、この
領海
の問題は御
承知
のごとく、
海洋法会議
においていろいろほかの
海洋
法上の問題と一緒に論議されております。
アメリカ
との間に、私
ども
は
海洋法会議
に関しまして種々いろいろと連絡、協議をいたしておりまして、その
段階
でこの
領海
問題についても
アメリカ
政府
とは十分に協議をしているというのが
現状
でございます。
土井たか子
63
○土井
委員
この日本の防衛の問題についていま種々協議をしているというふうな御答弁でございましたけれ
ども
、ひとつそこで確認をしておきたいことがございます。 それは
領海
十二海里を
宣言
をするのか、さらに国内的に
立法化
をしていくのか、それが当面やはり問題になっているわけでありますが、このことによって非核三原則の例外は認めないということは確認できますね。これはひとつはっきり御答弁いただきたいと思います。したがって、
宣言
や
立法化
をすることによって津軽海峡は核積載艦は通れなくなる、このことをひとつ確認をさせていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
松永信雄
64
○松永(信)
政府
委員
国際海峡
の問題につきましては、在来からいろいろとこの
委員会
においても御論議がございまして、私
ども
の方から申し上げてまいりましたのは、
海洋法会議
の結果創設されるであろう
国際海峡
に関する制度に従って非核三原則の問題も対処すべきであると
考え
ているということで、実は御答弁申し上げてまいっているわけでございます。 そこで現在の時点においては、その
海洋法会議
の
結論
を待たずに
領海
十二海里を実施する場合にどうするかという問題でございまして、これはまさしく実は新しい問題でございますので、目下私
ども
関係
省庁
を含めまして慎重に
検討
をしているところでございます。 ただ、この際申し上げておきたいと思いますのは、これはまた
海洋
法の問題になりますけれ
ども
、
アメリカ
は、
海洋法会議
の結果、十二海里の
領海
ということが国際的に合意される場合においては、
国際海峡
においては自由通航が保障されるということを非常に重視しております。この
アメリカ
の基本的な
方針
というのは、安全保障のみならず、
アメリカ
の基本的な対外経済政策の問題としても非常に重視しているところでございます。この
アメリカ
の
立場
は
ソ連
も全く
同一
の
立場
をとっておりまして、したがって、
海洋法会議
においては、
米ソ
が共同して
国際海峡
においては自由通航が保障されるべきであるという強い
立場
を表明しているわけでございます。
わが国
といたしましても、
わが国
全体の
国益
という観点から見まして、
国際海峡
においては、一般
領海
におけるよりも自由な通航が保障されることが望ましいという
立場
を表明し、その
アメリカ
及び
ソ連
を
中心
とします
国際海峡
における自由通航制度というものについては、原則的にはこれに賛同するという態度で参っておるわけでございます。 先般のジュネーブにおける
海洋法会議
の
結論
は出ておりませんけれ
ども
、最後に
各国
に配付されました単一草案においては一定の条件、すなわち航路帯でありますとか、あるいは分離帯を設置するという構想のもとに、
国際海峡
においては妨げられない航行を保障するというのが単一草案となって
各国
に配付されております。これが来年の
海洋法会議
において再びいろいろ
審議
されるわけでございますが、私
ども
は、現在提出されておりますその単一草案が
中心
になって論議が進められ、
条約
の規定を合意するというところまでいくかどうかわかりませんけれ
ども
、その方向でコンセンサスが成立するような
努力
が恐らくなされるであろうと思っております。 したがって、この
海洋法会議
の
結論
を待たずに
領海
十二海里を実施するという場合におきましては、私
ども
は、
海洋法会議
においてとっております私
ども
の
立場
と矛盾することがあっては困るというのが外務省の現在の
立場
でございます。ただ、それにつきましてはいろいろな問題がございますので、まだいまのところは
検討
中であるということしか申し上げられないと思います。
土井たか子
65
○土井
委員
ただいまの
局長
の御答弁というのは、これは大変重要な御答弁だと思うのです。国際
海洋法会議
の
結論
を待たずして、日本としては独自にこれは
領海
十二海里を
宣言
するに際して、
海洋法会議
においてもうすでにとってきた態度を曲げるわけにはいかない。それはどういうことかということをつづめて言うと、いま私が御質問を申し上げた中身からすれば、非核三原則の例外を認めざるを得ない、こういうことになると思うのですよ。大変なことだと思うのですよ。これはどうなんでしょうね。
海洋法会議
の
結論
を待たずして日本が独自に十二海里の
宣言
をするか、
立法化
をするか、その節いまひっかかっているのは、非核三原則の例外をどういうかっこうでそれでは認めていくかというところが焦点になっているわけですか、いかがなんです。
松永信雄
66
○松永(信)
政府
委員
非核三原則は、現在日本の領域の中において
政府
が実施しております最高施策と申しますか、基本的な施策であろうと思います。今度その領域が広がる、
領海
三海里から十二海里に拡張するという場合には、その領域が広がるという問題が出てくるわけでございまして、その場合に
国際海峡
における
船舶
の通航問題をどういうふうに
考え
て処理するかということについては、先ほど来申し上げておりますように、まだいろいろな問題点がございますので、
検討
中でございます。 したがって、非核三原則の
関係
につきましても、その
検討
の
結論
が出る過程において十分
検討
されなければならないと思っておりますけれ
ども
、まだいまの
段階
では
検討
中であるということしか申し上げられません。
土井たか子
67
○土井
委員
まことに歯切れの悪い御答弁になってきた。つまり、非核三原則の中身がいまや揺らぎつつあるということがこれははっきり確認できるわけでありまして、これは目下
検討
中であるから、ここで確答はできないというふうな御答弁でありますけれ
ども
、いまそういう点から言うと、外務省当局が日本の
政府
が守らなければならない、これは端的に言うと、国是である非核三原則に対して、手をつけて、中身をいま揺さぶりつつあるという、このことをひとつはっきり確認をさせていただきたいと思います。問題は、これをどこまで追及しても、恐らく
検討
中であるからここではっきりお答えはできないということの連続であろうかと思いますが、私
ども
からすれば、十二海里
宣言
あるいは
立法化
に当たって、非核三原則の中身をゆるがせにしてもらっては絶対困る、非核三原則の例外を認めるということがあってはならない、このことをはっきりとこれは申し上げておきたいと思うわけであります。 さて、もう
一つ
、きょうはぜひお伺いしたいことがあるわけでありますが、それは、
日米
防衛構想ということで坂田防衛庁
長官
は最近、特に七、八月ごろからいろいろな
意見
を述べておられますが、むしろ私
たち
から見ておりますと、防衛庁ではなくて、外務省がこのことに対しては所管であるがごとき、中身についてまでも触れておられるような向きがございます。 そこでお伺いしたいのですが、
長官
がこういう問題についてるる
見解
を述べられるに先立って、十分外務省と防衛庁当局の間で話し合われていると思うわけでありますが、この点はいかがでございますか。
山崎敏夫
68
○山崎(敏)
政府
委員
この問題に関しましては、もちろん防衛庁と外務省との間で十分話し合っております。もともとこの問題が正式に取り上げられましたのは、本年八月、三木総理が訪米されて、
フォード大統領
との間で
首脳
会談
が行われ、その際の共同新聞発表の中でこの問題がまず取り上げられたわけでございます。その際に、安保
条約
の効果的かつ円滑な運用を図るという見地から、両国が協力してとるべき措置について、両国の
関係
者が安全保障協議
委員会
の枠内で協議を行うということに合意した次第でございまして、この総理と
フォード大統領
との
一つ
のそういう合意といいますか、
了解
に基づいて行われておる問題でございます。 その後、引き続きまして、八月末に坂田防衛庁
長官
とシュレジンジャー当時の国防
長官
との間の
会談
におきまして、この八月の共同新聞発表の精神に基づいて話し合いが行われまして、この
日米
防衛協力のための諸問題について研究協議するための場を
日米
安保協議
委員会
の枠内に設けるということが
了解
された次第でございます。ただ、この新協議機関につきましては、その構成、目的、また安保協議
委員会
との
関係
、またどういうことを協議するかというふうなことにつきましていろいろと詰めなければならない問題がございますので、現在外務省と防衛庁との間で話し合って
検討
を進めております。したがいまして、まだ
アメリカ
側との話し合いは行っておりません。しかし、いずれ成案を得た上で
アメリカ
側と話し合ってまいりたいと
考え
ております。
土井たか子
69
○土井
委員
いま御答弁になりました
日米
安保協議
委員会
において新協議機関を設置するという問題なんですが、その新協議機関での議題は日本の防衛問題に限るのか、それとも極東におけるところの安全保障も含んで議題としようと当局としてはお
考え
になっていらっしゃるのか、いずれでありますか。
山崎敏夫
70
○山崎(敏)
政府
委員
この防衛協力という問題は、
日米
安保
条約
に基づく研究協議でございますので、
日米
安保
条約
というものは御
承知
のとおり日本の安全並びに極東の平和及び安全にかかわる問題というものを扱っておりますから、したがいまして、
日米
安保
条約
に基づくものである以上、そういう問題について広く協議するのは当然だと思います。 ただ、坂田
長官
もおっしゃっておりますように、まずわれわれとしては、日本の安全に重点が置かるべきは当然でございますけれ
ども
、それに限られるという問題ではない。安保
条約
の前文にも書いてございますが、極東の平和と安全という問題は、
日米
両国の共通の
関心
事項でございます。
土井たか子
71
○土井
委員
といたしますと、朝鮮半島におけるもろもろのこともこれは当然議題となってくると存ずるわけでありますが、朝鮮半島が有事になった場合、それが即日本が有事になることではないということは、いままでの
国会
答弁で明らかなところであります。ところが、先日、
フォード大統領
が新太平洋ドクトリンで述べているところを見ますと、日本の協力が
米国
の太平洋戦略の柱であるというふうなことが述べられているわけであります。それからいたしますと、朝鮮半島が有事になった場合、支援作戦もこの新たな機関で議題とすることに当然なっていくと思うわけでありますが、いかがでございますか。
山崎敏夫
72
○山崎(敏)
政府
委員
坂田
長官
が述べておられます自衛隊と米軍との整合のとれた作戦行動と言っておられます場合には、もちろん日本の自衛隊が動き得る事態、自衛隊法において定められておる事態を
考え
て言っておられるものだと思います。他方、朝鮮半島において非常な事態が起こりました場合に、それが直ちにもちろん日本の自衛隊がいわゆる防衛出動その他をするということにはならないと思います。ただ、朝鮮半島における事態は極東の平和と安全にかかわる事態でございますから、米軍がこれに対して
関心
を持ち、ある程度の行動をとるということは当然予想されるわけでございます。米軍と申しますのは、いま申し上げているのは在
日米
軍の問題でございますが……。その際に、戦闘作戦行動その他に出ていくということになれば、これはもちろん事前協議の対象となります。また、それに至らない補給活動ということであれば、これは安保
条約
の規定からしましても事前協議の対象にはなっていない。そういうことはございます。いずれにしましても、
日米
がそういう問題に関して直ちに共同作戦をとるというふうなことはない次第でございます。
土井たか子
73
○土井
委員
御答弁は必ずしも私の
お尋ね
をしている中身に合致した御答弁とは言いかねるわけでありまして、支援作戦について私はただいま
お尋ね
をしたわけでありますが……。 いずれにしろ、防衛
委員会
は、
国会
のこの
関係
から、いろいろな問題について具体的に外務とかんで、そして中身が外務と一致した
見解
の上で進められているということを、私
たち
見聞をいたしておりまして、十分に討議を積まれた上でこういうふうになってきているというふうに
考え
られないような場合がしばしばあるようであります。
考え
てみますと、防衛問題というのは外交問題の一環でありまして、むしろ外交問題が前面に立って防衛問題というものは
考え
られてしかるべきだと私
たち
は
考え
ているわけであります。そういう点からしますと、この外務
委員会
で防衛問題が論議できるように、外交防衛
委員会
とせよというふうな
意見
もあるやに私
たち
は存じておりますが、
外務大臣
は、こういう問題に対してどういうふうに思っていらっしゃいますか。
宮澤喜一
74
○
宮澤国務大臣
外交をいたしております
立場
から申しますと、やはり何と言っても
世界
に戦争が起こらないようにということが私
ども
の第一の目的でございますし、同時に、その中で
わが国
の
国益
を伸ばしていくということでございますが、戦争が起こらないということが何と言っても
わが国
の最大の
国益
、これは平和憲法のもとに私はそういうふうに
考え
ておりますから、両方の目的が
わが国
の場合には実は
一つ
であって二つではないというふうに心得ております。したがいまして、われわれの外交的
努力
によって兵力が動くというようなことがないようにしなければならないというふうに
考え
ておるわけでございます。
国会
でどのような
委員会
をおつくりになりますかは、これは
国会
の御決定になることでございまして、私
ども
がとやかく申し上げる筋合いではなかろうと思います。
土井たか子
75
○土井
委員
時間ですから終わります。
水野清
76
○水野
委員長
代理
金子満広
君。 〔水野
委員長
代理退席、毛利
委員長
代理着席〕
金子満広
77
○
金子
(満)
委員
パレスチナ解放機構、PLOの東京事務所の設置の問題についてお伺いしたいと思います。 実は、私は八月の上旬にPLOの招待でレバノンを訪れて、アラファト議長やカドミ政治
局長
といろいろ
会談
、懇談もいたしました。その後帰国して、多分八月の十四日だと思いますが、
宮澤
外務大臣
に、PLOをパレスチナ人民の唯一の合法的な機関として認めて、それにふさわしい形で早急に東京事務所の設置を行うように申し入れをいたしました。そのとき
宮澤
外務大臣
は、当時フート氏が来日中でありまして、それに会われる寸前だったと思いますが、フート氏と会った上でいろいろ
検討
したい、こういうお答えがありました。その後、
国会
では本
会議
、
委員会
などでいろいろ
議論
をされました。現在、そうした経過をたどって東京事務所の設置がどういう状況にあるか、まずその点を
最初
にお聞きしたいと思います。
中村輝彦
78
○中村(輝)
政府
委員
いまお話ございましたPLOのアル・フート氏が八月前半に日本に参ったわけでございますけれ
ども
、そのときに私もお会いいたしまして、それでいろいろ説明をいたしたわけでございます。そのときに、もちろん前提といたしまして、PLOとしては、日本にも直接コンタクトのできるようなふうにしたいので事務所を置きたいと思うけれ
ども
という前提で、日本の事情をいろいろ説明してほしいということでございましたので、いろいろ説明をいたしました。その後いろいろ問題にもされておりますけれ
ども
、たとえば言論の自由の問題とか、あるいはセキュリティーの問題であるとか、事務所にどういう表札をかけてもいいのかとか、そういったことがあったわけでございます。 そういうことで、いろいろ疑問点や知りたいということにつきまして私の方で十分御説明をいたしまして、フート氏の方も十分
理解
されたようでございまして、その内容は私、アル・フート氏あてに私信を書きまして、話した内容を確認したものについて差し上げたわけでございますけれ
ども
、そういうことで私
ども
の方は、PLO側で
承知
したいと思うことについてはすべてそのときに御説明をいたしまして、この次はPLO側でもってお
考え
に従って何かステップをおとりになるのであろう、こういうふうに
理解
いたしておりまして、その後はPLO側からも、いまの点に関しましてさらに、こういう点どうだこうだというようなことは、別に私
ども
に質問もございません。私
ども
承知
しているところでは、PLO側としても、いまレバノンの問題とかいろいろございますし、取り込んでおるような事情もあるようでございますけれ
ども
、東京に事務所を開くための準備をいろいろと取り進めているように
承知
いたしております。
金子満広
79
○
金子
(満)
委員
新聞に若干報道されていますが、そういう中で、東京事務所をつくった場合に、正式の掲示の問題とか所員の行動の自由、報道活動の自由、それから面会の自由、安全の保障、この五項目が出ておりますが、まず、新聞に出ている、否とにかかわらず、この正式表示の問題ですが、これは看板をかけることという、それだけの
意味
ですか。こういう点についてどのようにお
考え
になっていますか。
中村輝彦
80
○中村(輝)
政府
委員
先ほどちょっと触れましたけれ
ども
、アル・フート氏が参りましたときにも、事務所の看板と申しますか、表示の問題も聞いておりましたけれ
ども
、アル・フート氏は、自分はいまのPLOの状況というものから見て、これを承認してくれとか外交特権を与えてくれとかというようなことを言うつもりは毛頭ないのだという前提でお話しされておりましたけれ
ども
、表示の問題は私
ども
、そういう大前提があればこれはもう事務所の方の側で適当なものをおかけになって私
ども
には問題ないわけでございまして、こうでなくちゃ困るというようなお話は何もいたしておりませんし、その説明をアル・フート氏の方は十分
理解
されているものと思っております。
金子満広
81
○
金子
(満)
委員
PLO側のことは別として、そうするといま言われた正式表示の掲示という問題で言えば、看板とかあるいはPLOの旗、こういうものも掲げて当然差し支えない、こういう
意味
に解釈してよろしいわけですね。
中村輝彦
82
○中村(輝)
政府
委員
ただいまお答え申し上げましたように、PLO側といたしましては日本に承認とか外交特権云々といったようなことを何も言うあれがないということでございますし、私
ども
も、いまのPLOとの間にはそういう問題というのはそもそもあり得ないことだろうとも思っておりますので、そういう前提の上にできるわけでございますので、その場合には、事実上どういう看板をおかけになろうが、まあどういう旗をおかけになるか、これは事実上の問題ということで、それ以上の問題には私
ども
との
関係
ではないというふうに
了解
いたしております。
金子満広
83
○
金子
(満)
委員
事実上の問題で、差し支えないということですね。
中村輝彦
84
○中村(輝)
政府
委員
そういうことでございます。
金子満広
85
○
金子
(満)
委員
それから二番目の問題ですが、日本における所員の行動の自由の問題です。これは当然日本の国内を旅行することは自由である、あるいはどういう人と面会するかということも自由だ、そういう
意味
で、他の国の日本にある在外公館の人
たち
と同じように自由が保障される、こういうことに解釈してよろしいですか。
中村輝彦
86
○中村(輝)
政府
委員
PLOの事務所の方が行動される場合には、これは日本におります普通の外国人と同じように自由であるわけでございまして、言論の点も全く同じでございます。それから面会の点でございますけれ
ども
、これも普通におります在日外国人と同じでございまして、もちろん
相手方
との
関連
があるのはあたりまえの話でございますけれ
ども
、ただ、いまの点で在日外国公館員と同じかと、こういう御質問でございましたけれ
ども
、いま申しましたような前提でもって、PLOというのは、ほかの国等が東京に置いております大使館と同じような
意味
で同等の事務所を置くと、こういうことになるわけではないわけでございますから、その点はほかの外交官と同じだということは観念的にはないわけでございます。一般の在日外国人と同じような自由をお持ちになる、こういうことでございます。
金子満広
87
○
金子
(満)
委員
事務所の性格は別として、国内における行動というものは、一般の外国人の中にはもちろん他の外国の公館員も含まれるのですから、そういう
意味
で、事務所の性格とか資格、これは別として、国内をいろいろ旅行し、いろいろの人々と接触するという問題については制限を受けない、こういうことですね。——その次に、広報活動の自由、これは先ほどおっしゃいましたから、どのような広報活動をしてもこれはもう自由であることは私も確認できます。と同時に、安全の保障という点についてどのように
考え
ているか、この点を伺いたいと思うのです。
中村輝彦
88
○中村(輝)
政府
委員
PLO
関係
者、事務所の
関係
者が日本におります間は、日本国民、それから一般外国人の安全のためにいろいろ考慮をする点は、同じようにPLO
関係
者に対してもすることは当然でございまして、この点はアル・フート氏が来られましたときも御質問ありましたのでお答えしたところでございますけれ
ども
、いまのような基本的なことでございます。もちろん、特に何か危険がありそうだというようなことを日本の公安当局でもってそういう情報でもありました場合には、公安当局の判断によって、より適切ないろいろな警備措置をとるということになると思います。アル・フート氏にもそういう御説明をいたしておったわけでございます。
金子満広
89
○
金子
(満)
委員
御
承知
のようにイスラエルの大使館もあるわけだし、そしてまた常に中近東でいろいろな形での紛争があることも御存じのとおりだと思うのです。日本に事務所を持った場合に、安全の保障というのは当然日本の国内法によって保護されるわけですから、そうしたときにいろいろの要望なり
意見
なりあれば、これは
政府
としても日本の法律に基づいて対処をすると、こういうことですか。
中村輝彦
90
○中村(輝)
政府
委員
安全の確保の問題は、PLO
関係
者のみならず、だれにとりましても当然大事な問題であるわけでございますし、国内法でやり得る必要な措置をとることになると当然
考え
ております。PLOの
関係
者だからと言って特別にその点を閑却するとかなんとかいうことは毛頭
考え
ておりません。必要な措置はそのときの状況に応じて公安当局でおとりいただくと、こういうことに
考え
ております。
金子満広
91
○
金子
(満)
委員
大体いま五点にわたって質問しましたが、
政府
の
考え
ている現在での
意味
はわかりました。そうしますと、東京事務所をつくるということについてPLOから公式に、フート氏が帰った後申し入れがあったというぐあいには先ほどまだ確認していませんが、申し入れがあったんですか、まだないんですか。
中村輝彦
92
○中村(輝)
政府
委員
先ほど御説明申し上げましたように、いまいろいろ準備を取り進めているように私
ども
印象
を持っておりまして、まだそういったことに関して通報を受けているわけではございません。
金子満広
93
○
金子
(満)
委員
それでは申し入れがあれば、東京に事務所を設置することが日本としては、
政府
としてもこれは好ましい事態になるというようには
考え
ますか。事務所ができることはいいことだと、こういうようにお
考え
になると思いますが、どうですか。
宮澤喜一
94
○
宮澤国務大臣
日本側に障害はありません。
金子満広
95
○
金子
(満)
委員
障害がないということは、申し出があればこれは非常にすんなりいくわけですが、
政府
としても、いま
国際情勢
の推移から見て、PLOの東京事務所ができるということはいいことである、そして、できるということであれば許せる範囲内においてそれを歓迎すると、こういうような
立場
であろうかとも思いますが、その点はどうですか。
宮澤喜一
96
○
宮澤国務大臣
ただいま
政府
委員
から申し上げましたように全く自由なのでございますから、何ら日本
政府
としては障害を設けておらない、いろいろ御不便なことがあればお手伝いをして差し上げましょうというようなことは申し上げても差し支えないことであります。
金子満広
97
○
金子
(満)
委員
そうしますと、まあ外交特権その他の問題は別として、申し出があればいろいろの便宜は計らうということに解釈してよろしいわけですね。
宮澤喜一
98
○
宮澤国務大臣
つまり、
わが国
はこのような自由な体制の国でございますから、原則としてだれでも希望することはできるという国でございますので、その上で何を許すとか何を許さないとか、いい悪いというような判断をもともと
政府
がしないのが
わが国
の自由のたてまえでございますから、
わが国
として何も障害を設けるつもりはございませんし、一般の外人がこういう不案内なことがあって教えてくれぬかというようなことはよくあることでございますから、私
ども
そういうときは親切にお教えもいたしましょうし御便宜も計らいましょう、御自由でございますと、こういうことでございます。
金子満広
99
○
金子
(満)
委員
そうしますと、そのPLOの問題についてはいろいろ解釈はあるけれ
ども
、すでに
国会
の中で三木総理がしばしば言明しているように、これはパレスチナ人を
代表
する機関である、唯一という言葉は使っておらないようですが、他の場合には使っている。たとえば「国連においてもパレスチナ解放団体を
代表
するオブザーバーとして認められている。」これはもう天下周知の事実であります。同時に、「アラブの
首脳
国
会議
におきましても唯一の解放団体の機関であると認められましたから、こういう国際的なパレスチナPLOに対する取り扱いというものは、日本もやはりそういう国際的な流れというものは頭に置かなければならぬと
考え
ております。」こういう確認の上に立って、いま
外務大臣
がお答えになりましたように、日本は全く自由でありますから、そうして申し出があった場合にはどうぞいらっしゃってください、そしていろいろ質問もあればお教えすることもできますし、先ほどのお答えでは、お手伝いすることがあればお手伝いもいたします、こういうように
理解
してよろしいわけですね。
宮澤喜一
100
○
宮澤国務大臣
そういうことでございます。
金子満広
101
○
金子
(満)
委員
それでは申し出があり、東京事務所ができるということになれば、いま
政府
の態度というのは今日的
段階
では承りましたが、たとえばフランスはこれを
政府
声明という形で出しました。何らかの形で申し出があった場合に、それに答えなければならぬと思うのです。ただ申し出はあったけれ
ども
黙ってそうなってしまいましたということでは、これまでの
国会
審議
の諸経過から見ても、あるいは国際的ないろいろの
交渉
が公式、非公式を問わずあったわけですから、
政府
としてあるいは外務省としてどういうような態度をおとりになるか、その形式とか方法とか、これが必要だと思いますが、その点はどうですか。
宮澤喜一
102
○
宮澤国務大臣
そこは、PLOの方でもかつてそういうことをお
考え
になったことがあったようでしたが、先ほど中村
局長
が申し上げましたようないろいろの経緯がありまして、なるほど日本というのは自由なんだなということがだんだんわかってこられて、したがって、特に歓迎しますとも申し上げませんけれ
ども
、ありがとうと言っていただくこともない、全く御自由だということで私は十分だろうと思います。
金子満広
103
○
金子
(満)
委員
そうしますと、くどいようですけれ
ども
、申し出がありました、
政府
としては自由でありますからどうぞやってください、しかし質問されればいろいろお答えもいたします、お手伝いすることがあればお手伝いもいたします、これは、いま
宮澤
外務大臣
がこの
国会
の公式の場で言っているのですから、それはそのとおり伝わると思いますけれ
ども
、それ以外に、では事務所ができたというときに、外務省としてはこう言うのだというような談話とかあるいは新聞発表とか記者会見、そういうようなことは特別にするというお
気持ち
はないわけですか。
宮澤喜一
104
○
宮澤国務大臣
特別にするという
気持ち
はございません。もちろん、私を初め役所の者はしょっちゅう記者会見をいたしておりますから、記者会見で
お尋ね
があれば、そういう事実そのものをそのとおりだとかいうことは、当然事実
関係
はお答えいたしますけれ
ども
、特別に私
ども
が機会を設けて何かするということは
考え
ておりません。
金子満広
105
○
金子
(満)
委員
最後に一問だけ。年内にもPLOからビザ申請があれば、もちろんビザは出しますということで新聞には報道されているのですが、大体
政府
の感触からして、東京事務所は早い方がいいと私は
考え
るのですが、
政府
としてはどうですか。早いことを歓迎しますか、どうですか。
中村輝彦
106
○中村(輝)
政府
委員
時期の点については、向こうはなるべく早く開きたいという意向をかつて持っていたことは私も承っておりますが、同時に、やはりいろいろ事情があるのでというようなことも言っておられまして、向こうさんの御都合なんだろうと思います。私
ども
の方は、いままでお話ししましたように、そういう状況でおいでになるということに対して何ら障害も設けておるわけでもございませんし、全く向こう側の御事情でもっておいでになる、お開きになるということ以外にないのじゃないかと思うのでございます。
毛利松平
107
○毛利
委員長
代理 渡部一郎君。
渡部一郎
108
○渡部(一)
委員
外務大臣
に
お尋ね
いたします。 日中
友好
平和
条約
の進捗がその後とんざをいたしているわけでありますが、この
交渉
の状況についてどういう御判断でおられるかまず伺いたいと存じます。
宮澤喜一
109
○
宮澤国務大臣
昨年の暮れから始めました
交渉
が、いわゆる覇権問題等をめぐりましてはかばかしく進まないことになりまして、ニューヨークで喬冠華
外務大臣
と私とが長い話をいたしました。その後、日本
政府
がこの覇権問題をどう
考え
るかということにつきましては、参議院の予算
委員会
におきまして公明党の矢追
委員
の
お尋ね
がございまして、私からお答えを申し上げました。長くなりますので、そこを省略してよろしければ省略いたしますし、それは何かと再度
お尋ね
であれば申し上げますが、そういうふうに日本
政府
としてはこの問題を
考え
ているということを
国会
で実は申し上げておるわけでございます。その点は恐らく先方も御存じであるに違いない、ニューヨークでも私はそういうことを申しておりますから。ただ、それに賛同されたということにはなっていないわけで、私の申していることを
理解
はしておられるであろうと思います。 私としては、
中国側
にもいろいろ忙しい外交日程もここのところおありでありましたから、いろいろにその辺を
検討
しておられるのであろうと
考え
ております。私
自身
も、またそのような私の
考え
というものについて、国内の大方の御賛同を得られるかどうかということで、国内における世論の動きというものも、私なりに観察をしておるつもりでございまして、大体いまそういう
段階
でございます。
渡部一郎
110
○渡部(一)
委員
そうしますと、今度は矢追議員の質問の後の話でありますが、
大臣
はその末尾において、覇権問題に関する両者の
意見
の差というものはきわめて少なくなってきたようなお話に受け取れるわけでありますが、いま日中間で
交渉
するとすれば、覇権問題については両者の間で平行線をたどることはもうない状況になったとお
考え
になっておられるかどうかお伺いします。
宮澤喜一
111
○
宮澤国務大臣
そこがわかりますと、もう大変に事柄は進みがいいのでございますが、どうもそこがちょっとわかりませんで、いろいろ向こうもお
考え
であろうというふうに思っております。
渡部一郎
112
○渡部(一)
委員
この問題に対する働きかけをこちらからしたいというふうにすでに表明されたようでありますが、その辺の御真意をもう少し詳しくお話しいただけませんか。
宮澤喜一
113
○
宮澤国務大臣
私が
国会
でこういろいろ申し上げておりますことも、恐らく先方もいろいろな
意味
で情報としては入手しておられるに違いないのでありますから、これも
一つ
のこちらの意思表示であると申し上げてもさして誤りではないと思います。したがいまして、私にとりましては、
一つ
は国内のこの問題についてのコンセンサス、もう
一つ
は
中国側
である程度時間をかけ、いろいろ
検討
をされたであろうと
考え
られるような時期、それを選んで何かの方法をとらなければならないとは思っておりますものの、まだ時期、方法について申し上げるような
段階
でございません。
渡部一郎
114
○渡部(一)
委員
お話し合いをするチャンスができるとすれば、覇権問題について合意をすることはできるという
見通し
でございますか、どうでございますか。
宮澤喜一
115
○
宮澤国務大臣
そういう
見通し
がございますと、何もじんぜん時間を使っておる必要がないのでございますが、私が先ほど申しましたように、賛同はされないにしても、
理解
はされたであろうというあたりのところが、
中国側
にも
中国側
のお
考え
が私はあるだろうと思うので、二人で向かい合って話をしておれば、なるほどおまえの言っておることはそれなりに
理解
はできるということと、よし、それに賛成をした、そういうふうにひとつ文章を書いてみるかということとはなかなか一緒でない場合がございますから、その辺のことも注意深く見守っていかなければならないと思っておるわけでございます。
渡部一郎
116
○渡部(一)
委員
その辺はこちらから働きかけを何らかの
意味
でなさるという意思表示に受け取っていいんでしょうか、悪いんでしょうか。非常に巧みにお答えになっているのはわかりますけれ
ども
、これから
中国側
にどういうお
考え
ですかとお聞きになるかどうか。それはもうちょっと見てから言う、向こうの出方待ちである、そういう態度でいくか、そこのところはかなりニュアンスが違いますけれ
ども
、どうでしょうか。
宮澤喜一
117
○
宮澤国務大臣
先方の出方待ちというわけでも実はないんでして、なるべくこういうことは
わが国
の
主張
が認められる、受け入れられるならば早い方がいいわけでございますから、ただそれをどういう時期にどういう方法でしていいかということを、先ほ
ども
申し上げましたように、まだ私が決めていないということでございます。
渡部一郎
118
○渡部(一)
委員
そうすると、ソビエトとの
関係
において、この平和
条約
交渉
というものに対するソビエト側の反応というものは、もはや考慮する
段階
ではなくなったとお
考え
ですか。残る問題として詰めなければならないのは、覇権問題だけだとお
考え
ですか。そのほかの問題がありとお
考え
ですか。どういう点が両者の間で衝突といいますか、問題点になるとお
考え
ですか。
宮澤喜一
119
○
宮澤国務大臣
中国側
との問題では、実はこれは文章を書いてみませんと、とことんのところはわからないわけでございますけれ
ども
、この問題を除いてそう大きな問題はないのではないかと思っておるわけでございますが、
ソ連
との
関係
では、でき上がりましたものが、第三者的に見て、これは
ソ連
に対して
友好
的なことでないではないかというようなことであってはならないわけでして、そういう誤解を生むようなものができ上がったのでは、
わが国
の外交
方針
に反しますので、そうでないものをつくらなければならないと思っているわけでございます。その上で何か
ソ連
から苦情があろうとは私は思っておりませんのですが、要するに第三者的に見て、これならば何人も文句を言う筋合いがないではないかというものをつくり上げたいと思っております。
渡部一郎
120
○渡部(一)
委員
もちろん第三者的に見て平和的でない、侵略的な意図を持つような
条約
を結ぶというおつもりは毛頭ないでしょうし、それを明らかにソビエト
政府
にも説明でき得るものをつくりたいというお
考え
だろうと私は思っているわけですから、むしろ問題はもう覇権問題に対する
理解
と、それを文章化したときの問題点ということだけが残っておる、こう
理解
してよろしいですか。
宮澤喜一
121
○
宮澤国務大臣
最後までこれやってみませんといろいろなことがあるかもしれませんが、大まかに
考え
て私はそうであろうと思います。
渡部一郎
122
○渡部(一)
委員
そうしますと、ますますお話が詰まってくるわけでありますが、いよいよ覇権問題をめぐって
お互い
で文書を交換する直前まで来ておる、話し合いをするという、多少問題が出るとしてもそういうことになっておる。そうすると、その時期を選んで何らかの働きかけをしたい、その時期というものは
大臣
としては三木総理ともお話し合いの上お決めになる、こういうふうに
理解
してよろしゅうございますね。
宮澤喜一
123
○
宮澤国務大臣
私が
国会
で矢追
委員
に申し上げまして以来、同じことを
国会
で申し上げておるわけでございますが、いわばこれは
交渉
という
立場
から言えば、言いっぱなしのことでございますので、その間
中国
は西欧
首脳
の来訪がありましたり、
米国
首脳
の来訪がありましたりして、結構外交的には忙しい日程であったろうと思いますから、いろいろお
考え
にはなっておられるのでありましょうけれ
ども
、私の方にリアクションらしいものはないわけでございます。そういうこともございますから、もう少し何かその辺がわかってまいりますと、どういう方法で、いま渡部
委員
が言われましたような時期、方法を私なりに、もちろんこれは総理の御指示を仰ぐつもりでございますけれ
ども
、そういうことになろうと思いますが、いまいつの
段階
でどうということを申し上げるまで私の
考え
が固まっておりません。
渡部一郎
124
○渡部(一)
委員
そのお
考え
はいつごろまでに固まる御予定でございますか。
宮澤喜一
125
○
宮澤国務大臣
固めると申しますよりは、何となく固まってくるようなことでございますので、どうもいつということがちょっと申し上げにくい。ただ、この話はできるだけ早くしなければならないということははっきり思っております。
渡部一郎
126
○渡部(一)
委員
くどくて恐縮なんですが、言いにくいのは百峯
承知
で私も伺っているわけですから、その早くしなくちゃという
意味
は、年内とか来年初頭とかそういうようなレンジをお
考え
になっておっしゃっているお言葉ですか。その早いという言葉が抽象的な言葉なものですから、ちょっと重ねて伺うわけなんですが……。
宮澤喜一
127
○
宮澤国務大臣
ちょっと年内と申しますと、いろいろ私
自身
にも日程がございますし、
国会
の御
審議
もあり、また予算編成もありというようなことでございますので、年内というわけにはまいらないのだと思いますが、そうかと申しまして来年一年空費していいとも思っておりません。
渡部一郎
128
○渡部(一)
委員
来年一年ではない、年内ではないというから、来年の一月から来年の前半ぐらいの間、恐らく三木
内閣
の続く間ぐらいのところでしょうね。その辺余りぎゅうぎゅう言うのもどうかと思いますが、
大臣
御在職中にみごとな御成果を上げられるように私は期待したい、こう思っているわけであります。ひとつ御
努力
をぜひお願いしたい。 そうしますと、この問題について
中国側
との接触は、外務省として本省からおやりになるおつもりなのであるか、外交官を派遣していろいろ
地域
でおやりになるおつもりであるか、あるいは特使等を用いておやりになるおつもりであるか、その辺はどういうお
考え
でございますか。
宮澤喜一
129
○
宮澤国務大臣
できますれば、またイロハから大
議論
を展開をするというようなことは、間違えますと今年の繰り返しのようになる心配もございますから、ある程度
お互い
の意思が暗黙のうちにわかるようなそういう方法があれば一番よろしいと実は思っているわけでございますけれ
ども
、これがなかなか簡単にそういう方法は見つかりませんで、それも
一つ
、とつおいつ
考え
ております理由でございますが、しかし、しかるべく時間がたって先方もいろいろ
検討
され、私も国内の動きをよく見ておりまして何か
考え
なければならぬなという程度以上、実は具体的に私の
考え
がまだ出ておりません。
渡部一郎
130
○渡部(一)
委員
中国
の場合に、余り下から積み上げていくというよりも、トップレベルの
交渉
というのは非常に
意味
がある。その
意味
では喬外相とのお話し合いというのは非常に
意味
が大きかったと私は思っているわけです。ただ、その喬外相とのお話し合いのときに、
大臣
はお話を詰められるというよりも、いろいろな
立場
を想定されていろいろな
立場
の
意見
を交換されたと承っておりますから、話を詰めるという
段階
での話し合いをしたのではない、そこがこれからの引き金になるだろうと私も思っているわけであります。したがって、
大臣
が意思を決められて、喬外相との間のお話し合いを復活なさるという方法が一番オーソドックスではないか。それが
お互い
の黙契を復活するいい手ではないかと思うのですけれ
ども
、横で見ておりましてそう
感じ
られるのですが、どうお思いでしょうか。
宮澤喜一
131
○
宮澤国務大臣
その点いろいろな可能性を探求してみたいと言うしか、まことにお答えとしては御満足のいくお答えでないと思いますけれ
ども
、そうしか申し上げられないのが
現状
でございます。
渡部一郎
132
○渡部(一)
委員
少なくともお話し合いの途中で、こちら側は話した、向こう側から反応があってしかるべきだというニュアンスで
中国側
に受け取られますと、話は逆にこじれてしまうんじゃないか。その点は御配慮していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
宮澤喜一
133
○
宮澤国務大臣
そうでございますね。ですから、私も国内の事情など御
意見
を聞いたりいろいろしておりますということを申し上げておりますのもそういう
意味
合いがございます。
渡部一郎
134
○渡部(一)
委員
それから
ソ連
との
関係
でございますけれ
ども
、
中国
と
交渉
するということは、
中国
と手を組んで同盟
関係
をつくってソビエトと対抗する、そういうニュアンスに受け取られないようにする必要がやはりあるんではないかと私は思いますが、どうでしょうか。
宮澤喜一
135
○
宮澤国務大臣
それはそのとおりでございまして、九月にグロムイコ
外務大臣
にもニューヨークで私はそのことをそのとおり申しましたし、また日本としては、
中国
との
友好
はますます深めたいわけでありますけれ
ども
、その結果、
ソ連
と非常に悪い
関係
になるというようなことはできない、日本憲法の
考え
ておるところでもないではないかということは、よくグロムイコ
外務大臣
にもお話をしてございます。
渡部一郎
136
○渡部(一)
委員
非常にめんどうな問題をきょうは話していただいたわけでありまして、時間があと五分ばかりでございますからこのぐらいにしまして、この次にまた聞かしていただくことにいたしたい。その間、日中
関係
につきましてはなるべく早いチャンスにひとつお進めをいただきたい。ぜひお願いをする次第でございます。 先ほど
条約
局長
は非常に微妙な問題を十二海里問題についてお答えになりました。微妙過ぎまして非常に怪しい御答弁までちょっとなすったようでありますから、もう一回重ねてお伺いするわけであります。
国際海峡
の問題、特に津軽海峡の問題と
関連
しまして、日本が十二海里に幅を広げますとあそこは日本の
領海
の中になってしまう。したがって、そういうふうにした場合はそこのところを核兵器を積載する軍艦が通れなくなる。そうした場合に、
アメリカ
側はそれを結構であるという可能性があるのか、
アメリカ
と
ソ連
と両方が困ると言うのか、それから
アメリカ
と
ソ連
の両方ともこれを許容する方向でいくのか、日本の
交渉
の仕方はその三通りがあるだろうと思います。したがって、いま伺いたいことは、まず認識を伺うわけですが、どの方向に向かって進めようとなさっているのか。三つひっくるめて何となく行こうとされておるのか。ある程度方向を決めてやっておられるのか。勘ぐってみますと、
ソ連
側とはすでに話し合いはだめだ、
アメリカ
側とは話し合いの必要がある。
アメリカ
の戦略から言うと、日本海に
ソ連
潜水艦を全部抑えておいて出られないようにするということは、太平洋戦略から言って大変有効である、そうやってもらいたい、
アメリカ
軍としては認めておるというようなうわさが一方である。今度は逆に、津軽海峡の真ん中に細い線を設けて、
国際海峡
として特別に認めて、そこのところは核艦艇だけ通す。だから、
領海
宣言
は十二海里だけれ
ども
、ここだけは幅約一マイルの細い幅をつけて、矢でも鉄砲でも全部通ってください、私は知りませんよというやり方であるというような説明が現地で漁民を相手にして行われておる。まことに壮烈な説明がいろいろ行われており紛糾いたしておるわけでありますが、どういう方向であるか御説明いただきたい。
松永信雄
137
○松永(信)
政府
委員
海洋法会議
の状況につきまして先ほど申し上げたわけでございますけれ
ども
、これはすでに御
承知
のとおり、
海洋法会議
におきまして
アメリカ
及び
ソ連
は、今度十二海里に
領海
が広がることによって生じてまいります
国際海峡
においては、
船舶
の自由な通航が認められるべきである、この
船舶
の中には当然軍艦も含むという
立場
で強い
主張
を行っているわけでございます。
わが国
といたしましては、
わが国
自身
の問題といたしまして、
わが国
は資源の大
部分
を海外の供給源に仰いでおりますし、また貿易立国として
わが国
自身
の生存を確保するという基本的な
立場
がございますので、海運の自由はできる限り広く認められることが望ましいという一般的な
立場
がございます。この
立場
から、
国際海峡
については、一般
領海
に比してより自由な通航が認められることが望ましい。すなわち沿岸国の恣意的な判断によって——本来国際交通の要衝であります
国際海峡
については、一般
領海
よりはより自由な通航が認められることが望ましいという
立場
をとって
海洋法会議
に臨んでおります。 具体的には、先般のジュネーブの
海洋法会議
におきまして、この問題については
結論
がまとまった合意は得られなかったわけでございますが、
会議
の最終日に
各国
に配付されました単一草案におきましては、一定の航路帯を設けて、その航路帯に限っては自由な通航、妨げられない航行を認めるという案が配付されております。この案につきましては、まだ
各国
は正式の反応を示しておりません。私
ども
は、非公式な
段階
で
各国
と折衝しておりますから、まだ正式な
各国
の
立場
表明というのは行われておりませんけれ
ども
、私
ども
が得ております感触では、
アメリカ
としましては、この案に沿った方向で、
一つ
の妥協的な案が作成されるということに同調するのではないかと思います。しかし、
ソ連
は、この案に対してはなお非常に強い反対を示しておりまして、依然として、
国際海峡
はもっと自由な通航が認められるべきであるという強い態度を表明しております。これは非公式な協議を通じての感触であります。 〔毛利
委員長
代理退席、
石井委員
長代理着席〕 そこで、来るべき来年三月の
海洋法会議
における
見通し
でございますけれ
ども
、これはまだ論議が重ねられなければ、確たる
見通し
は得られないと思いますけれ
ども
、私
ども
は、
会議
の最終日に配付されましたような案を
中心
として、
会議
のコンセンサスをまとめていくような
努力
が恐らく強力に展開されるだろうと
考え
ているわけでございます。その場合は、
わが国
としましても、その
考え方
に沿った案に同調するということで対処すべきであろうと
考え
ているわけでございます。
渡部一郎
138
○渡部(一)
委員
持ち時間は終わりに来ておるのですが、私の質問に対するお答えが一部残されておりますから——。 そうすると、津軽海峡の問題に対しては、そういう町のうわさ、あるいは外務省の御説明として漁民
たち
に説明されているような話というものは、どういうふうに
理解
するのが正しいか、お答え願いたい。そして先ほどの怪しげな御答弁の分の修正も含めてお答え願いたい。
松永信雄
139
○松永(信)
政府
委員
先ほど土井
委員
の御質問に私が申し上げましたのは、いま申し上げたような
海洋法会議
における
政府
の
立場
、
方針
がございますから、いま仮に
海洋法会議
の結果を待たずに、
領海
十二海里を実施するという場合に、その
海洋法会議
における
わが国
の
立場
を著しく害すると申しますか、悪
影響
を及ぼすということは避けなければならないと
考え
ているわけでございます。何となれば、
わが国
は
世界
において最大の海運国の
一つ
でございますから、その
わが国
が、先ほど申し上げましたような
会議
の趨勢と全く違ったことをやるということになりますと、そのこと自体が
海洋法会議
には至大の
影響
を与えるであろうということを私
ども
は心配しているわけでございます。
渡部一郎
140
○渡部(一)
委員
済みません。それではまだよくわかりませんから——。 そうすると、非核三原則の問題と絡めてお答えがあったわけですから、非核三原則についても、あなたはその国際的な
海洋
法の
審議
の趨勢とあわせて再
検討
するテーマだというふうにお答えになったから、問題が大きくなったのです。非核三原則はあくまで厳守するのが日本の外務省員としての使命であり、それはそれである。そして今後は、
海洋
法全体の趨勢というものをあわせて
理解
して、その対応の仕方を
考え
たいというのなら何でもなかった。あなたは、非核三原則のものをひっくるめて全部再
検討
するんだというニュアンスが出たので、特に
海洋法会議
の趨勢によってその問題を判断したいとおっしゃったのは、非核三原則の問題をつぶしてしまう意図を露骨に表示された、あなたは非核三原則を破壊する先駆者としての
発言
をなすったというふうに
理解
されたから、問題になった。だから、そこの
部分
はちょっと言い回しを変えられるおつもりなのか、変えないで、断固さっきのとおりお答えになるのか、そこだけちょって伺ったらどうだろうかと思って伺ったわけです。
宮澤喜一
141
○
宮澤国務大臣
というようなむずかしい問題がございますから、先ほど土井
委員
が、
立法化
の用意ありとおまえは言ったとおっしゃいましたときに、なかなかそうはまいらないのでございますというふうに申し上げたわけでございます。
渡部一郎
142
○渡部(一)
委員
局長
にもう一回。
松永信雄
143
○松永(信)
政府
委員
私
ども
は、非核三原則は
内閣
の基本
方針
、基本政策であると思っております。でございますから、私
ども
の
立場
から、この基本政策であります非核三原則を変更するとか、修正すべきであるとかいうことを申す
立場
にはないわけでございます。この問題は
内閣
の最高
方針
として、最高レベルにおいて
検討
されるべき問題であろうと思います。ただ、先ほど御質問がありましたものですから、非核三原則との
関連
において生ずる問題、これはやはり慎重に
検討
しなければならないということを申し上げて、現在
検討
中であるということを申し上げただけでございます。
渡部一郎
144
○渡部(一)
委員
終わります。
石井一
145
○
石井委員
長代理
永末
英一
君。
永末英一
146
○
永末
委員
八月の三木・フォード
会談
で、
日米
安保
条約
に基づく安全保障協議
委員会
の枠内で、新しい有事の際における
日米
の協力を相談し合う機関をつくるような話がございました。現在、それに基づいて作業が行われているようでございますが、昨日の
内閣
委員会
で防衛庁側の
意見
は聞きました。外務省側の
意見
をこの際聞いておきたいのですが、この新しい協議機関というのは、第六条における
日米
の
権利
義務
関係
もその協議の内容に含めてやるというものと
了解
していいのでありますか。
山崎敏夫
147
○山崎(敏)
政府
委員
御
承知
のとおり、三木・フォード
会談
におきましては、安保
条約
の円滑かつ効果的な運用のために一層密接な協議を行うことが望ましいことを認めて「両者は、両国が協力してとるべき措置につき、両国の
関係
当局者が安全保障協議
委員会
の枠内で協議を行うことに
意見
の一致をみた。」というふうに書かれておりまして、要するに、安保
条約
に基づく
日米
のいわば防衛協力をやっていくんだということについて
意見
の一致があったわけでございます。したがいまして、これはあくまで安保
条約
の問題でありまして、そしてこの防衛協力を行う場合に、もちろん日本の安全というものを
中心
に
考え
ているわけでございます。その
意味
で、いわゆる五条の問題が
中心
になるということは当然でございますけれ
ども
、安保
条約
が他方において、その前文にも書いておりますように、
日米
両国は極東の平和と安全に共通の
関心
を持っておるわけでございます。そして、その
関連
において
アメリカ
軍は日本に基地を持つことを認められておるわけでございますから、その
意味
におきまして、この防衛協力の話が安保
条約
五条の問題だけに限られるわけではないということは明らかであると存じます。
永末英一
148
○
永末
委員
重要な点でありますので、
外務大臣
の
見解
を伺っておきたいのですが、いまの
アメリカ
局長
の説明によりますと、極東の安全のため、
アメリカ
軍は日本基地を使用し兵力を配置しておるわけでございまして、その
アメリカ
の戦略そのものにわが方はコミットをして相談をしていく新機関をつくる、こういうことになりますね。そう解釈していいのですか。
宮澤喜一
149
○
宮澤国務大臣
この安保
条約
が
わが国
の平和、安全、それと
関連
をした極東の平和と安全というものを目指してつくられておるわけでございますから、その限りにおきまして六条との
関連
が出てき得るというふうに申し上げるべきだと思います。
永末英一
150
○
永末
委員
その限りにおいてというのは、わが方が自衛隊を持ち自衛力を保有しておりますのは、
わが国
の安全のためのみであって、極東の安全のためではございません。
アメリカ
が
わが国
に軍事基地を保有しておるのは、日本の安全もございましょうが、大きくは極東の安全という枠組みの方が先に出ておるわけであります。そこで、われわれが
日米
安保
条約
に基づいて新しい協議機関をつくるという場合に、われわれの限界というものをはっきりさせておかなければ、
相手方
が
考え
ておることとわれわれの
考え
ておることとは違うわけでございますから……。そこで、いまの答弁のように、その限りにおいてはと言われたけれ
ども
、極東の安全というものに対してわが方が直接に触れていく、これにコミットしていく、そういう
立場
にあるのかどうか、私は疑うわけであります。そこで、この点について明確な御
見解
をひとつ承っておきたい。
宮澤喜一
151
○
宮澤国務大臣
もう少し厳格に申しますならば、
わが国
の平和と安全に密接な
関係
を有する限りにおいての極東の平和と安全、こういうふうに申し上げるべきであろうと思います。
永末英一
152
○
永末
委員
それはわかるわけです、そういう言い方は。言い方はわかりますが、重要な問題は、自衛隊の兵力使用について、極東の安全ということを
アメリカ
側は
アメリカ
の抑止力戦略に基づく使用方法を
考え
ているのであって、そういうものに一体われわれの自衛隊の使用というものがコミットしていくものかどうか。いまのような言い方ですと、日本の安全にかかわる限りにおいて極東の安全に触れていくということになりますと、
アメリカ
側は逆の方の接近の仕方をしてくるわけですね。そこへ巻き込まれてしまった場合には、先ほど申し上げましたように、わが方の憲法上持っている自衛隊の保有の
意味
というものがその限りにおいて失われてくる、そういう危険なことを一体この協議
委員会
でやるつもりかどうかということを私は心配しておるので、伺っておるのです。
山崎敏夫
153
○山崎(敏)
政府
委員
安保
条約
五条におきましては、武力攻撃がありました場合に、両国が憲法上の規定及び手続に従って、共通の危険に対処するように行動するということを規定しております。したがいまして、そういう共通、共同対処というふうなことは、安保
条約
五条のような事態だけに限られるわけでございます。自衛隊が米軍と共同に行動し得るというのは、まさに安保
条約
五条に規定されたような日本の領域における、いずれか一方に対する武力攻撃の場合だけでございます。したがいまして、それ以外の事態について、自衛隊が米軍と共同の作戦行動をとるというようなことはあり得ないことだと思います。ただ、安保
条約
は、日本の安全というものは、極東の平和と安全なくしては保たれないという認識のもとにつくられておるものでございますし、そのもとにおける両国の防衛協力
関係
をこれから話し合っていくわけでございますから、先ほど申し上げたような制限のもとで
日米
が防衛協力についていろいろな問題を話し合っていくということでございます。
永末英一
154
○
永末
委員
いま
アメリカ
局長
の御答弁の前段のところのことをやはりはっきりと厳守をして、これから
アメリカ
はどう
考え
るかわかりませんから、
アメリカ
との間でこの機関の内容、目的等につきましても話し合いをして、適当な機会にひとつ本
委員会
に御報告を願いたいと思います。 先ほど
外務大臣
は、
アメリカ
側の
キッシンジャー国務長官
に対しても、
アメリカ
側が
北朝鮮
とのダイアログ、対話をすることをすすめてきた、こういうお話でございました。わが方は
北朝鮮
とダイアログをしなくていいと思いませんが、どういう
努力
をしておられますか。
宮澤喜一
155
○
宮澤国務大臣
わが国
と
北朝鮮
の
関連
は、
永末
委員
がよく御
承知
のように、人的な行き来あるいは文化的な経済的な行き来がいろいろにございまして、私はやはりこれも
一つ
の接触でありダイアログであろうと思っておりますけれ
ども
、
北朝鮮
を国として
考え
るかどうかということについては、前々申し上げますとおり、朝鮮半島の
情勢
が非常に微妙でありますので、しかも
わが国
の
影響力
が何と言っても大きいということから、今日まで慎重な態度を実は持してまいっておるわけでございます。
永末英一
156
○
永末
委員
アメリカ
と
北朝鮮
との
関係
と比較いたしますと、
わが国
と
北朝鮮
との
関係
はきわめて濃密でございまして、
わが国
内にも日韓
条約
で韓国籍を取らない人々もたくさんおるわけでございますし、過般は松生丸事件な
ども
発生いたしました。私は、本日は昨年の五月の二十四日に本
委員会
で取り上げました、いわゆる
北朝鮮
におきます
日本人妻
の問題について質問をしたいと思います。 それは、昨年いろいろな諸点について
検討
を
政府
側等でお約束をしていただいておりますので、その
検討
は一年半たってどれぐらい進行したかということをはっきりさせておきたいからであります。 第一に、法務省の方お見えだと思いますが、昨年、このいわゆる
日本人妻
と大ざっぱに言われておるけれ
ども
、その中には戸籍上の妻と内縁の妻とがある、これを当日明らかにすることができなかったわけでございますが、本日はこれをはっきりさせていただけますか、お伺いしたい。
小林俊二
157
○
小林
説明員 お答え申し上げます。 昨日、
北朝鮮
籍船万景峰号は百八名の帰還者を乗せて出航いたしたのでありますが、この百八名を含めまして、現在までに出国いたしました帰還者は合計九万二千四百九十四名に上っております。このうち日本人女性、日本国籍を保有する女性は四千百四十一名でございますが、さらにこの中で
日本人妻
、すなわち、
北朝鮮
籍の人間の妻として帰った者は、帰還者名簿によって
調査
いたしましたところ千八百二十二名を数えております。
永末英一
158
○
永末
委員
それは戸籍上であろうと内縁であろうと、要するに妻とみなされる者が千八百二十二名である、こういう
意味
でございますか。
小林俊二
159
○
小林
説明員 これは結局本人が妻という申請をいたしまして帰った者でございますので、双方を含めてというふうに
考え
ることができると思います。
永末英一
160
○
永末
委員
外務省は、この一年半の間、当該
関係
者から
北朝鮮
に行っておりますこれら女性に対する安否
調査
を依頼をされたと思います。何人依頼をされ、どのように措置されたかお答えを願いたい。
中江要介
161
○中江
政府
委員
昨年先生からこの問題の御指摘を受けました後、昨年中に照会をいたしましたのは二件でございましたが、本年に入りましてからは十二月九日の第六回まで含めまして総計八十一名について安否
調査
の問い合わせをしております。
永末英一
162
○
永末
委員
私が伺ったところでは、約三百人の安否
調査
の依頼を外務省に持っていったというのでございますが、いまのお答えによりますと、八十一名の安否
調査
の依頼を今度外務省から外側にした、こういうことでございまして、人数に非常に差があるのはどういう理由でしょうか。
中江要介
163
○中江
政府
委員
ちょっと私その三百名という数字についてつまびらかにいたしませんけれ
ども
、原則といたしまして、安否
調査
の依頼を受けました者のうち、これは確かに
調査
を依頼するに値する者というものについて先方に照会するという
方針
でございますので、あるいはその数の中からいろいろ日本側でわかる限りの
調査
をした結果、先方に照会するに値する者としていったものが先ほど私申し上げた件名かと思いますが、ちょっとその御質問の三百名前後というところは、私の現在
承知
しておらない数字でございます。
永末英一
164
○
永末
委員
外務省が受け付けた数と
調査
を依頼した数の差というのは後でひとつ御報告をいただきたいと思います。 さて、先方に照会というのはどういう手段で照会をされましたか。
中江要介
165
○中江
政府
委員
これは先般も御説明いたしましたように、現在日本側と
北朝鮮
側との間で最も有効に働き得るコミュニケーションの場というものは、日本の赤十字社と
北朝鮮
赤十字会との間のパイプでございますので、この経路を用いて照会をしておるわけでございます。
永末英一
166
○
永末
委員
日本赤十字社
から
参考人
がお見えであろうと思いますので御質問いたしたいのでございますが、いま
アジア
局長
申されましたように、外務省が
日本赤十字社
に依頼をされて、安否
調査
をお願いになったということでございました。
日本赤十字社
から先方に対して同様な照会があったと思います。また、昨年は、もし先方の
了解
があるならば、こちらから救恤品を送る等のことはできると
考え
ております。こういう言葉もございました。これらの件について、この一年半、
日本赤十字社
がやられましたことについて御報告をお願いしたいと思います。
綱島衞
167
○
綱島
参考人
お答え申し上げます。
日本赤十字社
といたしましては、先ほど外務省から御答弁ございましたように、安否
調査
の依頼を行っております。
お尋ね
の救恤品の点でございますが、現在文通あるいは小包の発送等々ができることになっておりまして、赤十字社自体といたしまして、特別にそういうものを送ろうあるいは送る、そういうことをしたことはございません。
永末英一
168
○
永末
委員
外務省から依頼されました安否
調査
を先方に照会された結果はいかがになっておりますか。
綱島衞
169
○
綱島
参考人
お答え申し上げます。 残念ながら、いままで照会いたしました件につきまして、
北朝鮮
の赤十字会から返答はございません。
永末英一
170
○
永末
委員
外務大臣
、お聞き及びのとおりでございまして、一年半の経過はいまのとおりでございます。昨年大平さんが
外務大臣
でございまして、これらの人々に対して
わが国
の旅券が発行されている、旅券を持っておる者はわが外務省としましては保護の
義務
があるということを外務省は
承知
をせられておるわけでございまして、もし日本のこれらの人々の家族が安否を知りたいということであるならば、いわばその保護
義務
の中の一環として、外務省としては
努力
すべき筋合いのものであることは了承されておったようでございました。したがって、そういう安否
調査
であるとか、あるいはまたもし
北朝鮮
に行っておられる人々が日本に帰ってきたい、昨年の答弁ではそういう人々が日本に往来した事実は知らない、こういうことでございますので、そういう里帰りができるような
努力
をしたらどうかという問題について、当時の大平
外務大臣
は三遍にわたって
検討
を約束されておるのでございますから、恐らく
検討
されたと思います。 先ほど、
わが国
と
北朝鮮
との対話ということは、国交はないけれ
ども
人的な交流等々でやっておる、なるほど
わが国
におきます韓国籍を持たない人々が、
北朝鮮
と往来をするについての日本
政府
の処置の仕方は、一時よりはかなり緩和されておるのはいいことだと思います。同時に、しかし、いま申しましたように、外交上の保護権を持っておる、保護の
義務
を持っておる外務省といたしましては、これらの人々の問題についても、何ほどかやはり手段を
考え
てやるべき問題ではないかと私は思いますので、ひとつ
外務大臣
のお答えを願いたいと思います。
宮澤喜一
171
○
宮澤国務大臣
それはできるだけ私
ども
としてもそうしなければならない務めがあると
考え
ておりまして、それで先ほどから申し上げておりますように、赤十字に御依頼をするというような方法をとっておるわけでございます。恐らく、仮に国交でも開けて、十分な行き来があれば、もう少しその辺がわかるのではなかろうかというようなことは、これはわからぬわけではございませんけれ
ども
、しかし、その問題にはまたその問題としての
国益
上の考慮がございますために、なし得る範囲のことをいたしておるというのが
現状
でございます。
永末英一
172
○
永末
委員
外務大臣
、国交回復がなければとうてい往来ということは見込めないのか、それとも、
現状
におきましても制限された範囲内ではございますが、従来人事交流があるわけである。したがって何らかの手を尽くして、これらの特殊な人々でございますから、こういう人々の往来というものは実現し得ないものかどうか。この点についてお
考え
になるお
気持ち
はございませんか。
小林俊二
173
○
小林
説明員
北朝鮮
側との接触の問題は法務省プロパーの問題ではございませんけれ
ども
、先日実は事務所におきまして、再入国許可をとって北鮮に参りました朝鮮総連の幹部と話をする機会がございました。この人物に対してこの問題を提起いたしましたところ、先方は、現地においていわゆる
日本人妻
で北鮮に帰った者の
代表
と話をしたということを申しておりました。で、その答えはと申しますと、この問題について日本側の事情を説明したところ、先方は、すなわちその
代表
はきわめて驚いて、私
ども
北鮮人民にとっては目下の急務は南北の統一問題である、この統一が達成されれば日本へ帰ることも可能になるであろうから、それまでこういう問題は
考え
たことはございませんという返事をしたという説明をしておったのであります。 こうした回答は私
ども
の方の目からすればきわめて不自然でございますけれ
ども
、ああいう社会、政治体制のもとにおきましてはきわめてあり得ることかと思うのであります。しかし、答えの不自然さはともかくといたしまして、こういった説明の裏に
感じ
取られますものは、結局北鮮当局が、現在の
情勢
のもとにおいては、こうした人
たち
を日本へ帰すということについてきわめて消極的なのではないかといった空気がうかがわれるということを
感じ
たのであります。 接触の問題そのものは私の方からお答えする性質のものではございませんけれ
ども
、問題の困難さをしのばせるものではないかと思いまして、御参考までにお答え申し上げた次第でございます。
宮澤喜一
174
○
宮澤国務大臣
日本
政府
の基本の
方針
といたしましては、国交はございませんでも、人の行き来があるということは一向に差し支えない。
わが国
の
国益
に害になるということでない限り、それは差し支えのないことであるというふうに基本的には
考え
ておるわけでございます。
永末英一
175
○
永末
委員
最後の
外務大臣
のお言葉をぜひ実際に実現をするしかけをつくっていただきたい。
気持ち
だけ持っておりましても、やはりそれがしかけにならなければ実現しないのでございまして、
北朝鮮
とわれわれとは長い歴史上の
関係
を持っておるわけでございまして、それがいまのような不自然な
関係
がなお続いていくことは決して双方にとって望ましいものだとは私は思いません。 したがって、その
意味
合いでわが方で
努力
をし、そうして
努力
の結果、いまのような人的な往来ができることがあるならば、できないよりはもっと相互
理解
を深めるものだと、いま法務省からある事件についての御報告がございましたが、その事件の報告を聞くにつけましても、また過般の松生丸事件に関する一連の処置を見るにつけましても、ぜひこれは
宮澤
外務大臣
が
努力
をされて、いまのお
気持ち
を生かして、その道をつけるということをやっていただきたいと思います。 質問を終わります。
石井一
176
○
石井
(一)
委員長
代理 この際、
綱島
参考人
に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は御多用中のところ本
委員会
に御
出席
くださいまして、貴重な御
意見
をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
委員会
を
代表
いたしまして厚く御礼申し上げます。 本日はこの程度にとどめ、次回は明後十二日金曜日午前十時
理事
会、十時三十分より
委員会
を開会することとし、これにて散会いたします。 午後一時三十六分散会