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1975-12-10 第76回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 小林 正巳君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 正森 成二君       坂本三十次君    正示啓次郎君       竹内 黎一君    細田 吉藏君       土井たか子君    三宅 正一君       金子 満広君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         法務省入国管理         局入国審査課長 小林 俊二君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   綱島  衞君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   永末 英一君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     永末 英一君     ————————————— 十二月九日  日中平和友好条約即時締結等に関する請願(  加藤清政紹介)(第三三八六号)  同(八百板正紹介)(第三四四一号)  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(竹下登紹介)(第三三八七号)  同(粕谷茂紹介)(第三四八二号)  核兵器全面禁止国際協定締結促進等に関する  請願(林百郎君紹介)(第三四四二号)  同(正森成二君紹介)(第三四四三号)  同(青柳盛雄紹介)(第三四八五号)  同(荒木宏紹介)(第三四八六号)  同(諫山博紹介)(第三四八七号)  同(石母田達紹介)(第三四八八号)  同(浦井洋紹介)(第三四八九号)  同(金子満広紹介)(第三四九〇号)  同(神崎敏雄紹介)(第三四九一号)  同(紺野与次郎紹介)(第三四九二号)  同(栗田翠紹介)(第三四九三号)  同(小林政子紹介)(第三四九四号)  同(柴田睦夫紹介)(第三四九五号)  同(庄司幸助紹介)(第三四九六号)  同(瀬崎博義紹介)(第三四九七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三四九八号)  同(田代文久紹介)(第三四九九号)  同(田中美智子紹介)(第三五〇〇号)  同(多田光雄紹介)(第三五〇一号)  同(津金佑近君紹介)(第三五〇二号)  同(津川武一紹介)(第三五〇三号)  同(土橋一吉紹介)(第三五〇四号)  同(中川利三郎紹介)(第三五〇五号)  同(中路雅弘紹介)(第三五〇六号)  同(中島武敏紹介)(第三五〇七号)  同(東中光雄紹介)(第三五〇八号)  同(平田藤吉紹介)(第三五〇九号)  同(不破哲三紹介)(第三五一〇号)  同(増本一彦紹介)(第三五一一号)  同(松本善明紹介)(第三五一二号)  同(三浦久紹介)(第三五一三号)  同(村上弘紹介)(第三五一四号)  同(三谷秀治紹介)(第三五一五号)  同(山原健二郎紹介)(第三五一六号)  同(米原昶紹介)(第三五一七号)  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願大橋敏雄紹介)(  第三四六五号)  同(沖本泰幸紹介)(第三四六六号)  ILO条約第百二号の即時批准に関する請願(  松本忠助紹介)(第三四六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する件、北朝鮮における日本人妻問題調査のため、本日、日本赤十字社外事部長綱島衛君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形式でお聞きすることといたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣宮澤喜一君。
  5. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一昨日、フォード大統領とともに中国及びインドネシアフィリピン訪問されました米国キッシンジャー国務長官わが国に立ち寄られまして、このたびの訪問についての問題を中心に私と二時間ほど会談をいたしました。  このたびのフォード大統領中国訪問につきまして、私がその会談から受けた印象最初に申し上げますと、このたびのフォード訪中に先立ちまして、キッシンジャー国務長官が単独で中国訪問をいたして準備に当たったわけでございますが、いろいろな意味での論点はそのときにかなり出尽くしておるようでありまして、したがいまして、このたびのフォード大統領訪中そのものは、いわば中国側としては米国大統領がわざわざ訪問をされるということについて、その友情をそのままさらっと受け入れよう、なるべく余り議論にわたるようなことは、これは国務長官とすでにやったことでありますし、お互いによくわかっていることなので、ことにそう深く立ち入るというよりは、まあ気持ちよく訪問を終わらせて差し上げるのがいいのではないかといったような、いわばそういったような雰囲気が支配をしておったようでございます。したがいまして、たとえばソ連に対する考え方米国ソ連デタント相手方として従来交渉を進めてきており、またさらにできるならばSALTの第二段階交渉も終結したいと考えておることは御承知のとおりでございますが、そのようなことについても、中国は、ソ連がそのようなデタント相手方として真に信頼し得る国であるかどうかというような物の見方については、恐らく見方に違いがあるわけでございますけれども、そのようなことは当然触れられてはおるようでございますけれども、であるからといって、米ソデタントが進むことそれ自身が、米中関係に悪い影響を与えるわけのものではないといったような点についていろいろ話はあったようでございます。しかしながら、それがいわゆる激しい論争になるというようなことではなかったように私としては会談の内容を了解いたしております。  また台湾の問題につきましても、上海コミュニケに述べられた以上に大きな進展は今日までいわばないわけでございますから、これにつきましても中国主張は当然主張としてあるわけでございましょうけれども、これも現在の段階で激しい論争をして詰め合うというような雰囲気会談ではなかったようでございます。  朝鮮半島の問題につきましても米国立場中国立場おのおの同一ではないわけでございますが、しかし、これについても非常に激しい議論があったというようではない模様でありまして、お互いおのおの立場からできるだけレストレイントと申しますか、抑制をきかせて、事態を悪くしないようにするというような立場についてのいわば暗黙の了解と申しますか、激しい議論というものはなかったように承知をいたしております。  その後、フォード大統領インドネシア及びフィリピン訪問されたわけでございますが、このことは、現在のこの時点のアジア情勢の中で、この二国を訪問をして友情を確認し合ったということは、米国にとってもあるいは恐らく訪問しました両国にとっても意義のあることであったというふうに米国当局考えておるようでございます。できればそれ以外のASEANの国々訪問をしたかったというような感じ米国大統領は持っておられるようでありましたが、時間の関係でそれは果たすことができなかったということであったようでございます。  これらの訪問の後、フォード大統領ホノルル演説をしておるわけでございますが、これについてはキッシンジャー国務長官からは事前に詳しい説明があったわけではございません。しかし、フォード大統領演説をするということ、その中で現在のアジア太平洋地域におけるアメリカの政策の考えを述べる、そしてその中心になるのはやはり日米友好であるといったようなことについて、ほぼ考え方キッシンジャー国務長官も述べておったわけでございます。したがいまして、そういうことから考えまして、あのフォード大統領演説というものは、いわゆるサイゴン撤退直後に言われました米国離れというようなアジア国々のあわただしい動きからかなりの時間がたちまして、いわば振り子がもう一つ正常な方へ戻ってきつつあるいまの段階、すなわちアジア各国中国ソ連米国という三つの大きな国の影響力の中で、そのバランスの上に立って、おのおのの独立と繁栄を求めていきたいというそのような現在の情勢の中で、アメリカもまた同じような志向をしておる。そういう立場から言えば、もともと米国立場は、世界の平和、安定というのは、遺憾ながら力の上に成り立つしかないと現段階考えておることには変わりはありませんけれども、かつてのグアムドクトリンというようなものに比べますと、このたびのフォード大統領演説は、いわば平和の姿勢というものを打ち出しておるというふうにも申すことができるのではないか。そのようなことについて、中国訪問によって対ソ観というものについては米国中国との間で同一ではないけれども、しかしデタントを推進するということ自身は、何も米中間を悪くするものではないということについて、言いっ放しではあるけれども中国側もそれはそれとして理解をしてくれるものというふうな考え方米国側にありまして、そういうことがあの宣言一つの背景になっておるのであろうと私は思います。  そうしてあの宣言の中で、いわばアジア地域におきましては、インドシナ半島の問題というのがアメリカにとりましては現在正常な姿、正常な国交というものを持つ形になっていないわけでございますけれども、それについてもインドシナ諸国の出方によって、アメリカはかたくなに従来からの姿勢をとり続けるということでもない。いわばその辺は待ちの姿勢といいますか、そういうものを示したように思うわけでございます。  したがって、全体としてあのホノルルにおきます演説は、かつてのグアムドクトリン等と比べますと、争いを求めない、しかし安定勢力としてアジア太平洋には深い関心を持つというアメリカ姿勢をあらわしたものと存じますが、そのようなことにつきまして、キッシンジャー国務長官との一昨日の会談の中から、自然にそういうふうに読み取るべきであろうというような印象を私としては持った次第でございます。  以上、一昨日の会談につきまして大筋を御報告申し上げました。
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  7. 石井一

    石井委員 まず最初領海十二海里の問題について、たとえばきょうの新聞にも政府の新しい見解と申しますか、見通しが相当明快に報道されておりますが、昨日外務大臣漁連の会長にも会見をされて、その強い要望などを受けられて、今後の方針などについてかなり突っ込んだ意見の表明をされた、こういうふうに伺っておりますが、まずこの点について政府見解をお伺いしたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今朝の報道につきまして、私はあるいは全部は見ておらないかと思いますけれども、これは私の見ました限りでは、自民党首脳意見という形で紹介されておったものを私も読んでおります。これは実は昨日でございますか、全国の漁業たち大会がありまして、その席上で、自民党首脳が党としての考え方を述べられたものというふうに承知しております。私自身は昨日漁業者の方々の代表の方とお会いをいたしまして、現段階における政府考えておりますことをお伝えをいたしました。そのこと自身は別段ニュースバリューがあるようなことではなかったと思うのでございますけれども、私が申しましたことはこのようなことでございます。また、それが今日の政府立場でもございます。  この問題についてはもともと、当委員会でも申し上げましたように、今年の海洋法会議結論が得られるのをひとつ待とうではないかというのが閣議で申し合わせた立場であったわけでございます。しかし、今年の海洋法会議結論を得られませんでした。したがって、この問題は明年に持ち越されたわけでございますので、本来であれば、わが国の総合的な国益考えますと、明年の海洋法会議の終結を待ちたいというのが問題の本来でございますけれども、たまたま、ただいま北海道中心にしてソ連漁船操業が行われて、いろいろな紛議を巻き起こしつつある。しかもそれは季節とともに南下をするというようなのが今年春の経験でもあったわけでございまして、それについて漁業者たち関心が非常に高く、大会もそのようなことで催されたということでございますから、従来どおり、この十二海里の問題を、明年の海洋法会議終了までは政府としては一切再検討はいたしませんという立場をとることが果たして適当であろうかどうかという考え問題意識を私自身も持つに至りました。所管であります農林大臣は、もとより前からかなりそういうことを言っておられたわけでございます。したがいまして、私としまして、先月の十日過ぎでございましたが、問題は非常に複雑である、各省庁関係が多うございますから、内閣官房においてひとつ各省庁意見総合調整をしてもらいたいということを、官房長官農林大臣と御一緒に私から依頼をいたしまして、実はただいまその調整過程にあるわけでございます。  それで、問題を漁業に限りましても、私が心配いたしておりますことは、たとえば海洋法会議というものがまとまってしまえば、世界各国のいろんな主張がとにかく調整されて一つ法典ができるということになるので、それが一番わが国の総合的な国益にはなるし、漁業の問題一つとりましても、たとえばインドネシア群島理論というようなものを独自の立場で振りかざしますと、昨今インドネシアで接収をされておる漁船が相当出てきておるというようなことでもわかりますように、実はわが国にとって、総合的にも漁業に限りましても、必ずしも海洋の無協約状態というのが有利とは言えないという心配を私自身が持っておるわけでございますので、できるならばという気持ちはございますけれども、他方でソ連操業というものが相当逼迫した問題をわが国沿岸漁業者に提起をしておるということでございますので、ともかく内閣官房において問題をもう一遍レビューをしてもらって、各省庁意見調整ができるならやってもらおうではないか、こういうことで作業が進んでおります。  ほかにこの調整関連のある問題といたしましては、よく御承知のことではございますけれども、たとえばわが国船舶世界各地における、ことに領海が仮に十二海里になりましたときに、いわゆる国際海峡と言われておりますものにどのような権利義務わが国船舶が負うか、あるいはわが国で生ずるであろうそのような国際海峡に対して、それを通過するところの船舶あるいは艦船に対して、わが国がどのような権利義務を有するかといったようなこと等々にも関係がございますし、かたがた先ども申し上げましたが、世界的な法典ができないうちに、それを待たずに各国がいろいろな立場をとってしまうということによって、せっかくの努力が水泡に帰して海洋無秩序になった場合に、果たしてそれでよろしいかという問題がやはりございます。  それからまた、別途、わが国米国とかつて結びましたこれは非常に古い条約でございまして、米国禁酒法時代条約の中に、密輸を取り締まることとの関連で、領海というものは三海里であるというふうにお互いが確認し合っておる条約がございます。これはアメリカ禁酒法時代条約でございますから、今日実体的な意味を持っておるとは思いませんけれども、そのような過去の歴史もある等々といったようなことを昨日漁業者の方にお話をいたしました。  そして、政府がしたがって検討をなお続けておりますが、仮にその検討の結果が漁業者のお望みのような答えになるとしても、恐らくはこれは新しい立法を必要とするというふうに考えられる、この点も検討が最終的には詰まっていないけれども、かつて三海里というものが受け入れられた国際法であった時代には、わが国もそのようにするという宣言をすれば国際法上位ということで済んだわけでございますけれども、今日は十二海里というものが国際法になり切っているとは言いにくい状態でございますから、恐らくは立法しなければならないのではないだろうか、仮に立法をするということになりますと、ただいま申し上げましたいろいろな問題をその立法の中にどのようにして織り込むかということになれば、これは立法技術上かなりむずかしい問題であろうし、また当然に両院の御審議も経なければならない、その間に、両院におかれていろいろな御意見が出ることは当然考えられることである。したがいまして、その筋を追っていきますと、仮に漁業者諸君の言われるような結論が最終的に実行されるということは、立法が成立するという時期まで待たなければならない、そういうのが現状であろうと思う。ただその場合に、これはお尋ねがあって申したことですけれども、それでは今年の漁期というものは済んでしまうではないかというようなお尋ねもありましたから、仮に政府がそういう最終的な方針を決めたということになれば、立法を待たずともこれは関係国に通報することも技術的には可能かもしれない、大体そういうことを申し上げました。それが今日の政府立場であるわけでございます。  したがいまして、内閣官房中心に話を詰めてまいりますといろいろな問題が実は出てまいるだろうことは予想されますので、結論として、領海十二海里を政府がやることを決心したのだというようなことにはこれは相ならないのでありまして、その検討を待たなければ、何ともそのことは申し上げられないということが正確に申しましてただいまの政府立場でございます。  自民党首脳意見として報道されましたものは恐らく、いろいろな観点から、ただいまのことをある部分を多少強調し、ある部分を多少弱めるというような形で幾らか、どう申しますか、いわゆる国会で申し上げるような意味での正確さというものとは多少違ったカラーが出ておりますけれども、ただいまの政府考えておりますことは以上のことでございます。
  9. 石井一

    石井委員 それぞれ一言一句非常に味のある政府見解で、よく意味はわかりましたが、ただ恐らく漁連代表たちはいまの話を聞くと少し失望もするだろうし、また、そういうふうに理解をしておるかどうか多少疑問の点もあると思うのでありますが、政党の代表政治的発言をし、政府としてはもう少し正確に発言をされたということにしましても、三海里という政府公式見解から現在の事情を考えると、相当前向きに政府検討を始めたということは確かだろうと思いますし、現実に内閣官房でそういう手続が行われておる、こういうことでございましょうが、いまお言葉の中にもありましたけれども内閣官房各省調整というものが終われば、まず閣議決定といたしますか、閣議了解としますか、そういう形で閣議に通報するという、それがまず最初のステップになるわけで、正式にはそういうことになるのですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はその辺も十分まだ打ち合わせをいたしておりませんけれども、一応内閣官房中心各省調整ができましたら、それを内閣官房かあるいは私どもですか、しかるべき方法でやはり閣議にその結末を報告しまして、そして閣議として大体よしということであればそれからこの立法にかかる、こういうふうにでもいたしたらいいのではないかと私は思っているのでございますけれども、まだその辺を相談をいたしておりません。
  11. 石井一

    石井委員 ここには五月をめど立法化するというふうに報道されておるわけですが、いまもうそういうふうに調整が進んでおるわけですし、防衛庁の考え方も、国会の各委員会で特別に異存はないという見解も出ておる。農林省はもともとそういうことに関しては非常に積極的であるというふうなことを考えますと、比較的早くそういう調整が可能なんではなかろうかというふうな気持ちも私はするわけです。だから機は徐々に熟してきておる、こういう感じがするわけですが、そうするとやはり一応常識的に海洋法会議その他はありますけれども、それはさておきますと、漁期その他の問題もあるので非常にアージェントな問題になってきております関係で、大体次の通常国会の終わりごろには立法化めど努力したい、こういうのが今日の政府の一応方針だ、こういうふうに考えていいのでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮に立法をいたしますとしますと、かなりむずかしい法律であろうと存じますので、通常国会に御提案をして御審議を願うということになりますと、通例の国会の御審議の従来の経験から申しますと、まず予算御審議というようなことからお入りになるのが普通でございますし、かたがたこの立法には、場合によってかなりむずかしい部分が含まれるということも、やってみないとわかりませんが排除もできません。仮に立法をいたすという方向に動きますと、時期としてはそう簡単にはすぐに国会で御承認、御賛成を非常に短時日にいただけないかもしれないということは考えておかなければならないと思うのでございますが、実は、立法をすることになるかどうかということについて、まだ内閣の議がまとまっていないということの方が今日の現状でございます。
  13. 石井一

    石井委員 これ以上突っ込んで申し上げるのもあれですけれども、一応これから検討されることですから、はっきり時期を明示するわけにはいかないかもわかりませんが、来年の一月に政府ができればこれに関する宣言をしたいし、次国会において立法化めど努力をしたいというそういう努力目標で今後進まれるのか、それとも、やはりそれは非常に大臣見解としてはむずかしいというふうにお考えになっておるのか、ここは一番ポイントだと思いますので、見通しで結構ですからひとつ最後にお伺いしたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくとも、ただいま北海道ですが、だんだん南下してくる地域における漁業者の、毎日のかなり差し迫った問題の意識というものを私どもはよく存じておりますので、したがって、従来のように、来年の海洋法会議が終わりましてから検討を始めましょうということでは、ちょっと時間的にあるいは問題の緊要さから言って、行政として親切な態度ではないという感じがいたしましたので、再検討を先月の中ごろから始めたわけでございますが、さりとて、それならもうすぐそういくかということになりますといろいろ問題があるので、私ども、とつおいつ考えておった種類のことでございますから、何ともそこを明確に申し上げかねるというのが現状でございます。
  15. 石井一

    石井委員 大臣が来週パリの国際経済協力会議に御出席になります。これが開催されますまでにいろいろの経緯があったわけでございますが、今回具体的な構想なり機構なり提案を、この会議出席されるわが国として出されようとしておるのかどうか、この時点で、この会議に対してどういうふうな期待なり目標を持って御出席をされようとしておるのか、ひとつここを明らかにしていただきたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この会議は、昨年の二月に石油の消費国がワシントンに集まりまして以来の御承知のように長い長い経緯の結果でございますから、このたびの閣僚の会議がとにかく無事に開かれて、そして無事に終わったということが私は一番大切なことだというふうに考えておるわけでございます。  少なくとも、このたびの会議で最小限やらなければならない問題といたしましては、会議というものが正式に発足をして、議長も決まり、そして四つの委員会もつくられ、その委員会に対して今後一定の期間の間に審議をしてほしいという事項、そのような問題についてのマンデートと申しますか、指針と申しますか、それを具体的に与え得て、そして四つの委員会が作業に入る体制を整え得たというところまでは、何とか今度の会議でやっていきたいと考えておるわけでございます。そのための準備もいろいろいたしておりますけれども、まだ最終的に会議の構成国を幾つにすべきか、その具体的な国の選択をどうすべきかというような問題から準備が完了いたしておりませんし、いわんや、その後の各委員会の構成、マンデーテッドなことも話が進んでおりませんので、ともかく前回、前々回の準備会議で失敗をしておる経験もございまして、そういう失敗なしに会議が発足をした、具体的な委員会の活動もできるようになったというところまでは何とか持っていきたい。わが国が何かを用意しておるかというお話でございますが、そのような今回の会議でございますから、非常に具体的にわが国が何かを主張するというようなことはもう少し後の段階になろうと思いますが、四つの委員会に与える指針、マンデートの中には、わが国の従来から考えておりますような事柄は何とか入るようにしたいということは思っております。
  17. 石井一

    石井委員 先日キッシンジャー長官と会見されましたときに、この会議のことについて話し合われたのかどうか、また、この会議に対処する日米両国の間で何か共同提案をするとかあるいは歩調をともにするべき事項、そういうふうなものなり、そういう可能性があるのかどうか、この点はいかがでしょう。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだってのキッシンジャー国務長官との話し合いは実はごく簡単にこれに触れました。と申しますのは、キッシンジャーが長く留守でございまして、この問題は直接には最近のところタッチしていないということで、むしろ私どもの方が最近の情勢を知っておりましたので、会議の議長国をどのようにすべきか、それから先進国側で参加すべき国をどのように考えたらいいかというふうなことにつきましてはごく簡単に話をいたしましたが、日米間の意見の相違はその点ではございませんので、話はごく簡単でございました。
  19. 石井一

    石井委員 それじゃ、今度の会議に関しての日米間の問題は触れられたけれども余り突っ込んだ話はしておらぬというようなことですが、先ほど当委員会に対する御表明もございましたけれども、キッシンジャー氏との会見のときに、特に新太平洋ドクトリンに関連をいたしまして、アジアにおける経済協力の新機構の設立とか具体的方策というふうなことについて、まあこれは日本が一番中心に進めていかなければいけない問題だと思うのですけれども、こういうことについてキッシンジャー長官からの具体的な説明があったのかどうか、あるいはまた日本側としての意向の表明がなされたのかどうか、この点はいかがですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、実はキッシンジャー国務長官とはその点の話をいたしておりません。と申しますのは、フォード大統領のあの部分が、実は何と申しますか、一番熟度の低い部分だというふうに私は思っておりまして、すなわち大西洋に呼びかけて、大西洋の一つのパートナーシップということを申します場合に、御承知のようにECがすでにあれだけの連帯性をつくりつつございますから、その上に築くものが築きやすいのでございますけれどもアジアには残念ながら、ことに経済面の連帯性というものは欠けております。欠けておる段階でああいう一つのドクトリンというようなものを出すということになりますと、やはりその下になるべき機構、仕組みというものを育てなければ本当のものはできない。論理的にどうしてもそうでございますから、そこであの部分がやはり大事だということを、これは論理的にも言わざるを得ない。しかし、それは実はまだ十分には存在していないという部分だと私は思いますので、問題意識はあれでよろしいのであると思いますが、一番あの部分は熟度の低い部分だと思います。したがって、キッシンジャー国務長官からも具体的な話はございませんでした。
  21. 石井一

    石井委員 新太平洋ドクトリンの中に米中間関係の改善ということがございます。先ほどいろいろの御説明もこの点についてございましたけれども日中平和友好条約の締結などにもいわゆる覇権条項の問題などが非常にむずかしい微妙な問題として横たわってきておるわけですけれども、この新太平洋ドクトリンの表明ということによって、今後米ソ関係に何らかの影響があるのではなかろうか。あるいはまた、日中平和友好条約なり日ソ平和条約交渉への展望というふうな意味で、この条項というふうなものがやはり何らかの形での影響があり得るのではないかと思いますが、外務大臣はそういう点をどのように見られますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このいわゆるホノルル演説でございますが、この中でも述べられておりますように、米国として平和を維持しているものは、やはり現在の世界においては力であるという考えは基本にございます。したがいまして、米ソデタントの進行というものがやはり米国の基本の外交政策の太い柱であることには変わりがないと私は考えますので、このような構想自身米ソデタントを妨げるはずのものではなく、むしろ逆にデタントそのものはアメリカとしては推進していかなければならない、こういうことでございましょうから、そしてそのことは、恐らくSALTの交渉の推進に米ソともなお熱意を持っているということでもはっきりしておるわけでございますから、この構想自身ソ連立場を悪くする、あるいは米ソデタントに障害を生むというようなことではないであろうと私は思います。  他方でいわゆる覇権条項でございますが、これは国会でも申し上げておることでございますが、特定の第三国を私ども意味して物を考えておるわけではございませんので、そのこと自身が日ソの関係に悪い影響があるというふうには私は考えませんし、また、そのように解釈されるようなものであってはならないというふうに思っております。
  23. 石井一

    石井委員 時間が参りましたので、最後に、日ソ平和条約交渉が、グロムイコ外務大臣の来日という予定もありましたけれども、今年は実現しないというような情勢になっております。そうすると、閣僚レベルでの話し合いがここしばらくとまっておるというふうなことにも相なろうかと思いますが、今後これについての見通しなり、外務大臣としてのお考えをお伺いいたしまして質問を終わりたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 グロムイコ外務大臣とは今年一月にモスクワで会いました後、今年の九月の末にニューヨークで会っておりますので、今年二回会談をいたしております。しかし、実は年内に訪日をするということが一月に出されました共同新聞発表でも述べられておりますので、せんだってわが国としては、年末でも、お忙しいときではあるけれどもお待ちをしておるということは実は伝えてございますが、それについて今日現在、いずれとも返事が参っておりません。したがって、場合によりまして来年当初にずれ込むことはあるかもしれないと思いますが、恐らくソ連としては、明年の二月の共産党大会というようなものが大きな行事でございますから、そういうこととの関連もあり、SALTの交渉関連もあるのであろうと思います。ですから、何が何でも今年でなければおかしいではないかとまで私は申すつもりはありませんけれども、しかし、やはり今年に訪日と言った限りにおいては、それがどこまでもずれ込んでも構わぬという性格のものではないと思いますので、もし年内の訪日が困難であるということであれば、改めてまた、いつの機会に訪日されるつもりであるかということを、もう一遍こちらから日を申して、先方の注意を促すという必要があろうかと存じます。
  25. 栗原祐幸

    栗原委員長 堂森芳夫君。
  26. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣お尋ねいたしたいと思うのでありますが、ただいま米中首脳会談の模様等についてキッシンジャー国務長官から報告を受けられ、まあ会談をされまして、その内容についてはわずかな時間でありますが、外務大臣から御説明がございました。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 私は、ホノルルフォード大統領がいたしました演説、新太平洋ドクトリンとかいろいろな呼び方があるようでありますが、この思想の基本はやはり力の外交、力というものが世界の、アジアの平和の基本である、こういう思想には変わりがないということは、いま外務大臣も言っておられたように思います。そして、アジアの平和のためには日米の協力が基本である。それは六つくらいの骨子があって、この演説が行われておりますが、私はいま外務大臣議論をしようというわけではありませんが、力がアジアの平和の基本であるという考え方には非常に大きな疑問を持ちますし、納得はできないという考え方を持つものであります。したがって、今後の日米間の協力が基本であるという考え方にも多くの問題がある、こう思います。いま外務大臣議論をするわけではありません。  そこで、このたびの米中首脳会談は、キッシンジャー氏からあなたが受けられた会談についての御説明では、初めからさしたる成果は望めないが、友好的な雰囲気で両国の首脳が話をし合うというような意味であった、何か軽いような雰囲気会談であった、こういうふうに理解していいのでございましょうか。この点をまず聞いておきたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よくことわざに「便りのないのはいい便り」というのでございましょうか、あるいはもっと「ノー・ニュース・イズ・グッド・ニュース」と申し上げた方がこの際適切かもしれませんが、そういうことわざがございますが、この際の米中会談というのはそういうものであったのであろう。すなわちアメリカとしては、ソ連とのデタントを推し進めなければならない、これは非常にはっきりしたアメリカの外交政策の基本命題であると思うのでございますが、それについて、ともすると中国側がいろいろな疑問を持つわけでございますから、そういうことではないのだ、米ソデタントが進むということは、決して米中の友情が後退するということではないのだということをアメリカとしてははっきり言っておきたい、そういう友情をこの段階で確認をしておきたいということであったと思います。したがって、そのこと自身は耳新しいことではございませんけれども、しかし大切なことであったというふうに私は考えておるわけでございます。
  28. 堂森芳夫

    堂森委員 大切なことであればこそ、わざわざ大統領が中国訪問し、五日間も向こうでいろいろな会談をしたと思うのであります。そしてこの演説でも、フォード大統領の今後の外交の基本の重要な問題の一つ中国との関係正常化である、こういうことを言っておると思うのであります。  そこで私がお尋ねしたいことは、キッシンジャー氏とあなたとの会談の中で得られた感触あるいは説明、いつごろになると米中の国交の正常化が実現するのであろうか。キッシンジャー氏が明確な説明をしたかどうか、むずかしい問題でありましょうが、あなたは外務大臣として、日本と中国は密接な関係を持たねばならぬ、そうであればこそ平和友好条約を結ぼうとしておるのでありますから、米中間の国交の正常化はいつごろ実現するのであろうか、あるいはしようとしておるのか。米国には米国のスケジュールがあると思うのでありますが、外務大臣としてどういう感触を受けられたのでありましょう。少しく詳しく説明をしてもらいたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる米中間の国交の最終的な正常化ということは、台湾問題の処理を含むことになると存じますが、これについては先ほども冒頭に申し上げましたように、余り深刻な議論が今回行われたようではございません。そのようなことをこの際深刻に議論をしても、当面成果を得られない、かえって会談雰囲気を悪くするというような配慮が両方にあるいはあったのかもしれないと存じます。事実また、この問題についての日程というものはない。いつになったらという話し合いも別に行われていないし、アメリカ自身もそのような日程を持っていないというふうに私は理解をいたしております。
  30. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、新聞報道では、アメリカ中国関係は日中方式のようなものになるのではないか。これは推測の記事かどうか、実際にそうだと思う。少なくとも米中関係が正常化するためには、やはり台湾問題が解決しなければ正常化しないのが当然だと私は思うのでありますが、台湾問題についてのアメリカ側の、キッシンジャー氏の考え方ですね。国交正常化を行っていこうとするならば、台湾問題が解決しなければこれは正常化しないと思うのであります。そういうことについて、いまの御答弁では、このたびの米中会談友好裏に進んだ、そして上海コミュニケの精神も再確認するというようなことでは、私は米中間の国交正常化が何もそこで進展しないのではないかと思うのでありますが、台湾に対するアメリカ側の考え方あるいはこのたびの会談ではそういうことはぼやかされて過ごされたということでございますか。どういうふうに判断しておられるのでございますか、この点もう一遍承っておきたいと思います。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、キッシンジャー国務長官の新聞会見が当初多少誤って報道されたようでありまして、後に報道そのものが訂正されたようでございます。キッシンジャー国務長官が申しましたことは、米中の国交正常化ということになれば、恐らく中国が日本方式を望むということは明らかであろうと思うが、しかし、アメリカにはこの問題を推し進める具体的なスケジュールはないというふうな説明であったようでございまして、その部分の前の方が多少誤り伝えられてわが国にも最初報道された、こういう経緯であったようでございます。
  32. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣、そうしますと、いまのところ米台間の関係はこのまま続くであろうというお考えでございますか。そういうふうに印象を受けておられるのでございますか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現状を基本的に変えるような考え方、そしてそれがいつまでにどうというような具体的なスケジュールはないようであると私は思っております。
  34. 堂森芳夫

    堂森委員 仮定論ですが、米台間の関係現状のままで米中間関係が正常化できるのでしょうか。私は不可能だと思うのですが、日本の外務大臣として、せっかく二時間もキッシンジャー氏とお会いになって、そういうような感触でいいのでありましょうか。私はどうも納得できません。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、それは二つの問題ではなくて一つの問題でございますから、今回のフォード大統領訪中によりましても、米中間に台湾をめぐっての新しい関係の展開が近い将来にあるという印象ではなかった、そのような具体的な話し合いが行われたというふうには私は考えておりません、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  36. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、キッシンジャー氏からは、米台関係については何も具体的にあなたに話はなかったということでございますか、これも確かめておきたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題について、このたびの米中会談で非常に深く深刻に議論をされたようではないようでございますということを冒頭に私から申し上げておりまして、また事実そのようでございましたから、キッシンジャー国務長官からも、今後の米台の関係について特別に私に説明はございませんでした。
  38. 堂森芳夫

    堂森委員 説明はなかったとしても、米中関係を正常化するためには、米台関係を放置してはできないだろうと私は思うのでありますが、外務大臣もそのようにお考えでございましょうか、仮定論でありますが。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございまして、それは二つの問題ではなくて、一つの問題と申し上げてもいいぐらいだと思います。
  40. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、最初お尋ねしましたように、米中間の国交正常化はいつごろになるであろうか、あるいは遠い将来のことであろうか、あるいはわりあい近いのであろうかという推定を、外務大臣はこれをどうしておられるのでありましょうか。私は、日中関係からいっても、アジアのいろいろな安定、平和、そういう関係からいきましても、重要な問題だと思うのでありますので、外務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米国国務長官はそれについて、ただいま見通し得るスケジュールはない、日限についての具体的なスケジュールはないと言っておられますし、また、私も問題の困難さから見てそうであろうというふうに考えております。
  42. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、私がこれ以上この問題についてお尋ねしても、外務大臣として慎重にお答えになりますから、この点はこれでおきます。  そこで問題を変えまして、アジアの平和は主な政治紛争の解決にかかっておるというようなことも演説に言われておる柱の一つであります。これはやはり朝鮮半島における緊張緩和ということが実際に実現しなければ、アジアにおける平和、そういうものに本当に進むことはできないということは、これはだれでも理解するところだと思うのであります。  そこで、あなたのさっきの説明でも、朝鮮半島の問題についていろいろと話し合ったが、考え方の相違はあったが論争にはならなかったというような意味の説明がキッシンジャー氏からあったというふうな御説明がありました。そこで、アメリカ側は朝鮮半島に対して中国側とどういう話し合いをして、どういう点が意見が違うのか、そういうことについての説明はあなたにはなかったのでありましょうか。この点もう一遍御答弁を願いたい、こう思うのであります。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、南北両朝鮮の間の一九七二年の七月のいわゆる対話の宣言というものが、平和な統一になって実を結ぶということが最も望ましいというふうに考えております点では、わが国はもちろんでございますが、恐らく米国といえどもさようであろうと考えますが、現実にその対話というものが進まない。そこで、アメリカは去る国連総会におきまして、そのような対話、あるいはそれが少し拡大された形における対話に進んでいくということもアメリカとしては望ましいことであると考えるとまでは言ったわけでございます。しかし、私どもの見るところでは、韓国を除外をしてそのような対話は進み得ないだろうと考えますし、北鮮当局は韓国と直接に対話をするということは回避をするという態度でございますから、このフォード大統領ホノルル演説にも述べられておりますように、そこで話はひとつとんざをしておるというのが現状であろうと思います。  今回この問題について米中でどのような話が話し合われたか、私は非常に詳しくは聞いておりません。が、印象といたしまして、どうも残念なことではあるが現状というものをなかなか改善できない、かといって、米中ともに現在の状態に対しては非常に過激な変化を与えるということは慎まなければならない、そういう意味では米中とも抑制的な態度をとらなければならないということについて、合意があったわけではないけれどもアメリカもレストレイントをするし、中国も恐らく同様なのではないだろうかというふうにキッシンジャーとしては考える理由がある、こういうようなことでございました。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたの御答弁では、余り詳しい話はなかったということでございますが、しかし、国連における朝鮮半島に関するあの矛盾した決議ですね、ああいう状態から見ましても、もちろん韓国を除外して対話はないことは当然です。こんなことはあたりまえだと思うのです。しかし、具体的に朝鮮半島には二つの国があって、そして中国立場アメリカ立場は全く違うだろうと思うのでありますが、この朝鮮半島の緊張緩和ということをしなければアジアの本当の平和は来ない、こう言っておるわけでありますから、非常に矛盾があると思うのであります。まあ現実はそうである。  そこで、この朝鮮半島における問題について、キッシンジャー氏がいまもおっしゃったような意味会談の話しかなかったということといたしましても、日本の外務大臣として、朝鮮半島の緊張緩和はある意味ではアメリカ政府考えるよりももっと重大な関心事でなければならぬことは当然でありますが、外務大臣はそういうような重大な責任を持っていらっしゃるのでありますから、キッシンジャー氏との会談の際に、あなたとしての、朝鮮半島における事態を緊張緩和へ持っていくためにどういう方法がいいのであるとかいう御意見はおっしゃらなかったのでございますか。ただ承られただけでございますか。この点御答弁を願いたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一昨日、米中間で朝鮮の問題がどのように話し合われたかということについては、そう深い話はなかったように思うということを申し上げたのでありますけれども、私とキッシンジャーとの話では、今年何度か会っておりますが、やはり一番しばしば私が申しておりますのは、おっしゃいますように朝鮮半島の問題でございます。  私は、ことしの春ごろからキッシンジャー国務長官に対しては、何かのとにかくダイアログを、対話をしなければいかぬではないかということを何度も何度も申してまいりまして、これは国連決議のはるか前でございますけれども、そして結果としてアメリカとしてはそのような対話、しかもその対話がさらに少し大きな場に発展することも場合によってはいいではないかというようなことまで、キッシンジャー国務長官が国連で演説をしたわけでございます。それは、私どものこの問題の解決の道であると考えるところのものに沿っておる提言であり発言であるわけでございますが、そこまでいきながら、なお北鮮が韓国をまじえた対話は拒否をするという問題にいま突き当たっておるわけでございますから、そこのところを場合によっては、これは以前にも申し上げたことですが、国連事務総長といったような第三者が何か仲介する方法はないだろうかというところまで、私どもは実はいろいろに努力をいたして今日に及んでおります。及んでおりますが、それがまだ実を結んでいないということでございます。
  46. 堂森芳夫

    堂森委員 きょうは時間もありませんから、これ以上この問題について御質問はできませんが、そうしますと、朝鮮半島の問題について、北朝鮮アメリカ側とがわりあい、何か北朝鮮アメリカとの関係の改善には非常に熱心であるというふうな報道等も従来からなされておりますね。そういうことについてアメリカ側は、キッシンジャー氏はあなたといままでのたびたびの会見等においても、何ら進展するような意見というようなものはなかったのでございますか。この点も伺っておきたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり米国立場は、北朝鮮と接触をすることにやぶさかではないけれども、その際、韓国をつんぼさじきに置いて除外した形で行うことは、韓国に対するアメリカの信義を傷つけることになる、したがってそれはできない、こういう立場であろうと存じます。
  48. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、それはよくわかっておるのですが、アメリカ側は、韓国と北朝鮮との仲介役といいますか、間に立って、朝鮮半島における対話の端緒をつくろうというような意図は全然ないのでございましょうか。その点いかがでございますか。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば、いまのお話に端的にお答えをいたしますならば、米国と韓国と北朝鮮と三者で話し合おうではないかという話であれば、これは恐らく米国は喜んで応ずるのではないかというふうに私は想像いたします。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、私は外務大臣に、時間もありませんから、朝鮮半島の問題もそうでありますが、このたびのフォード大統領ホノルルにおける演説、新太平洋ドクトリンとかフォード・ドクトリンとかいろいろな呼び方があるようでありますが、演説をした。これを大体日本のいずれの商業新聞を見ましても歓迎である、こう書いております。まず大体そうだと思うのであります。それから日本外務省も歓迎する、こういうふうな意思も新聞報道では発表されております。しかし、歓迎する、歓迎すると言うだけでは、私は、アジアの先進国としての日本の外交としては、それはきわめて遺憾である、こう思うのです。ということは、それだけではいかぬと思うのであります。このフォード大統領が言っておることを歓迎、歓迎と言うだけでなしに、日本の外交は一体東南アジアアジア全体に対してどういうような基本的な外交で今後対処していくかというものがなくては、日本の外交としてはわれわれはいかぬと思うのであります。  たとえばこの演説の中でも、これは恐らくハノイの政権について言っておると思うのでありますが、向こうの出方次第ではわれわれは協力していくんだというような言い方でないかと思うのです。私の想像ではそう思うのでありますが、日本の最近のハノイ外交というものは、私の目から見ておってかなり積極的なものを持ってきておられるように思うのであります。こういう点についても、アメリカアジア外交に対して日本が先を行って、そしてアジアの先進国としての日本の外交を先駆けて進めていくという気概といいますか、そういうものを持たなければならぬと私は思うのでありますが、たとえばハノイに対する外交、ベトナムにおける外交というものについてのこれからのあなたの心構え等承っておきたい。  それからもう一つは、新聞等では、一月に東南アジアを三木総理が訪問するのであろうというようなことを、何か一週間ぐらいですか、一月中旬から、そういうようなことが報道されておりますが、これはこの間のランブイエの会議等に行かれて、そういう構想も続いて出てきたのではないかと思うのでありますが、これは行われるのでありましょうか、行われるとすると、外務大臣としてのあなたは、どういうようなことを意図して総理が行かれると考えておられるのでありますか、この点も承っておきたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ハノイとの外交についてわが国アメリカに先んじて云々ということにつきまして、結果としては確かにそういうことになっております。これは、わが国のもともと平和憲法に基づく外交方針から自然に出たことでございます。私どもとしては、ハノイに大使館をすでに開いて外交活動を盛んにいたしております。ただいま、さしずめいたすべきことは、ベトナムとの間の経済協力の昭和五十一年度分、来年度分につきまして最終的な合意に達するという問題が残っております。今年分はすでに履行いたしつつございますので。これは誠実にやってまいらなければならないと思います。他方で、ハノイ側から東京に大使館を開設したいということについて打診が来ておりまして、私どもは、それは当然のことながら結構なことであるというふうに考えておりまして、これも日ならずしてそういう方へ進むのではないかと思います。  なお、今後ベトナムと経済協力を進めていきます上で、わが国関係各省の専門家に一度ベトナムを訪問して実情も聞き、実情を見せてもらうということが有効ではないか、有用ではないかと私ども考えておりますけれども、これは先方の御意向いかんにかかわることでございますから、向こうでよく御賛同であれば、そういうことも来年早々にはやってみたいと思うのでございますが、これは向こうの御意向いかんにかかわることでございます。一般的に申して、私どもとしては北ベトナムとは十分にこのようなことで友好を深めてまいりたいと思っております。  それから三木総理大臣の東南アジア各国訪問の問題でございますが、総理大臣が東南アジア国々との友好関係に非常に大きな重点を置いておられるということは事実でございます。また、それはそうなくてはならぬことであると存じますし、ランブイエの会議以後、ことにそのことを強く意識しておられまして、さしずめ外務省の吉野審議官を派遣をされて、ランブイエ会議の結果についてもただいま報告を終わって一昨日帰ってまいったところでございます。ですから、総理大臣が非常に大きな関心を持っておられることは確かでございますけれども、東南アジア国々、ことにASEANの国々がただいまASEANの首脳会議を開く準備に没頭しておりまして、これがいつになりますか、うまくいきましたら二月の末ごろにでもなるのではないかと想像しておりますけれども、やはりその前に、これらの国々がそういうことで忙しいものでございますから、総理大臣訪問されるということがちょっとタイミングとしては少し早いのではなかろうかという感じもいたしておるわけでございます。一月に訪問されるとしますと、少なくともただいまごろから準備が行わなければならないわけでございますけれども、私どもただいまそういう具体的な準備をいたしておりませんので、そういう時期に訪問が行われるということはないのではなかろうかと存じております。
  52. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  53. 水野清

    ○水野委員長代理 土井たか子君。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 本日の当委員会におきまして、大臣は、領海を十二海里にするということについての立法化の用意がある旨を御答弁されました。そのいきさつについては、御答弁の中でおっしゃったとおり、全国の漁民の方々の切迫した要請にこたえるということを考えると、海洋法会議結論を待つということはどうも時間がかかりそうだ、したがって、ということでございました。ところが、従来から安倍農林大臣は、十二海里の宣言が必要であるということをしばしば委員会の席でもお述べになっていらっしゃいますし、また五日の当委員会におきましては、外務大臣みずからがこの問題については宣言と法制化の二様があることも述べられております。本日はその立法化の用意がある、そういうふうな旨をお述べになっているわけでありますが、全国の漁民の方々の切迫した要請ということを考えますと、これもまた時間がかかるような御趣旨の御答弁もきょうはございましたわけで、まずこれについては十二海里の宣言をして、そうして立法化をするということも可能ではないかと私は思うわけであります。宣言ならば、その気さえあったらこれは早くできるわけでありまして、立法化というと、やはり手続、手順ということを考えていくと、宣言に比べるとやはり時間がかかる。そういういきさつからしますと、宣言をして立法化ということもこれは考えればできることではないかと思いますが、外務大臣、この点はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、先ほど石井委員にるる申し上げたことを土井委員もお聞き取りいただいておったと思うのでありますが、あれはやはり立法化の用意ありというようなことになるわけでございましょうか。どうも私はそうまで申し上げたつもりではなかったので、ただ従来、来年の海洋法会議を待ちたいと申し上げておったことを、どうもそこまでこの問題を再検討せずにおくわけにはいかぬというようなことから、再検討を確かに内閣中心にやっておりますと、こういうふうに申し上げておりますので、そのようにひとつ御理解をいただきたいと思います。  そこで、仮に検討してまいりまして、やはりこの際そういう結論になることが適当だということになりましたら、これを法律にいたしまして国会の御審議を仰ぐということになりますと、相当長い時間を必要とすることは確かでございますから、そのような方針政府が決めましたならば、それを何かの形で関係国に通報をするということは考えられることではなかろうかと私は思っております。ただ、そういうことになるかなりませんかをよほど内閣中心検討をいたしませんと、帰趨を申し上げるわけにはまいらないのが現状でございます。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 宣言というのにはいろいろな仕方があると思うわけでありますが、いま外務大臣のおっしゃった関係各国に通報するというのも、大臣がお考えになっていらっしゃる宣言というふうに理解をいたしましてようございますか。
  57. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 この問題を日本政府が一方的に宣言すれば領海十二海里というのを実施できるのではないかという御質問だと思いますけれども、この問題については国際法の面と国内法の面と両方を考えなければならないと思います。国際法上の問題といたしましては、これはすでに前に申し上げておりますけれども、現在領海十二海里を実施している国の数がかなり多数に上っております。私ども調査しておりますところでは五十四カ国に上っております。そういう現状から見まして、日本が仮に十二海里を実施するということに踏み切った場合に、そのこと自体について、恐らく諸外国から日本政府に対して抗議を申し入れてくるということはないであろうというふうに考えております。そういう意味で、日本が対外的な関係において十二海里を実施すること自体については、それほど大きな困難はないというふうに私ども考えております。  そこで、その対外的な関係においては、宣言だけをもって実施すればいいじゃないかという考え方があり得るわけでございますけれども、他方、そういうものを仮に宣言いたしました場合に、国内法的にその実施ができなければ、なかんずく取り締まりというのが非常に大きな問題になってくるわけでございます。国内法上実施ができないということでありますれば、そういう宣言をいたしましても、実はその宣言というものは有名無実のものになってしまうということになるわけでございます。したがってこの点は私どもは、やはり国内法上の問題点というものを十分詰めて結論を出した上でなければ踏み切ることはできないと思います。  大臣が先ほど申されました、仮に政府が十二海里の立法化をするという方針を決定いたしました場合に、その方針について外国政府に通報するというのは、そういう日本政府の意思を外国に対して表明するということでございますから、それはある意味においては宣言と同じようなものであると考えてもいいと思います。それは解釈のいかんによると思いますけれども、しかし、通常十二海里を宣言するという場合には、十二海里の実施が即日、その宣言の施行される日から実施されるということであろうと思いますから、その意味では、いま外務大臣がおっしゃいました通報というのが宣言であるというふうには言えないと思います。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 それではこのことについてはひとつ簡明にお伺いしておきたいのですが、法制局、御出席いただいていますね。  領海十二海里とする場合には宣言で事足りるのか、また、いま問題になっております立法化する必要があるのであるか、いずれか、この宣言立法という問題はどのように違うのか、ひとつ簡明にお答えいただきたいと思います。
  59. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 まさにそのことが問題なのでありまして、現在それをいろんな角度から検討しているわけであります。ただ、いまの条約局長の答弁で大体尽くされておると思いますけれども、国内法の面において、これは国民の権利義務に非常に重大なかかわり合いのある問題でありますので、直ちに内閣限りの宣言でもって事が済むということは断定しがたいという感触は持っております。しかし、まさにそのこと自体をいま検討しておる最中でございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、法制局当局とされても、宣言立法化ということの違いはどの辺にあるかということは、まだ明確にお考えをお持ちになっていらっしゃらないというふうに理解してようございますね。
  61. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 実は、お言葉を返すようですが、発想方法は違うわけでございます。もし憲法上あるいは法律上、領海十二海里というものについて国内法制化といいますか法律が必要であるという結論になれば、それは宣言と法律を必要とするという問題は比較化できなくなるわけですね。つまり、どちらでもいいけれども、少し法律効果が違うからどっちかを選ぶというようなそういう発想にはならないわけでございますから、御理解願いたいと思います。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 つまり、国際的な分野における問題と国内的な分野における問題で法体系が別であるから、したがって、これはどっちをとるかという問題ではないという御答弁だと思います。それは確認しておきますよ。  さて、それでひとつ気にかかるのは、五日の当委員会ですでにこれについては防衛庁の方から、領海十二海里を日本がとる場合においても、防衛上の影響は余り大きくないというふうな御答弁があったわけであります。これは防衛庁の見解でございますけれども、言葉をかえて言うと、安保体制上支障がないというふうにもこれは理解してよいと思うわけであります。外務省当局とされては、これに対してどういう御見解をお持ちになっていらっしゃるか、またアメリカ側とそれについての協議をなすっているのかどうか、お伺いをしたいと思います。いかがですか。
  63. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 防衛庁の方から、十二海里の領海を実施した場合に別段支障はないと考えるという御答弁がありましたのは、私ども承知いたしております。この防衛庁の答弁は、私どもといたしましては、防衛庁が、自衛隊が日本の防衛体制を実施するに当たって、領海が三海里から十二海里になることについて支障はないという見解を表明されたものだと了解しております。  そこでアメリカとの関係でございますけれども、この領海の問題は御承知のごとく、海洋法会議においていろいろほかの海洋法上の問題と一緒に論議されております。アメリカとの間に、私ども海洋法会議に関しまして種々いろいろと連絡、協議をいたしておりまして、その段階でこの領海問題についてもアメリカ政府とは十分に協議をしているというのが現状でございます。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 この日本の防衛の問題についていま種々協議をしているというふうな御答弁でございましたけれども、ひとつそこで確認をしておきたいことがございます。  それは領海十二海里を宣言をするのか、さらに国内的に立法化をしていくのか、それが当面やはり問題になっているわけでありますが、このことによって非核三原則の例外は認めないということは確認できますね。これはひとつはっきり御答弁いただきたいと思います。したがって、宣言立法化をすることによって津軽海峡は核積載艦は通れなくなる、このことをひとつ確認をさせていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  65. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国際海峡の問題につきましては、在来からいろいろとこの委員会においても御論議がございまして、私どもの方から申し上げてまいりましたのは、海洋法会議の結果創設されるであろう国際海峡に関する制度に従って非核三原則の問題も対処すべきであると考えているということで、実は御答弁申し上げてまいっているわけでございます。  そこで現在の時点においては、その海洋法会議結論を待たずに領海十二海里を実施する場合にどうするかという問題でございまして、これはまさしく実は新しい問題でございますので、目下私ども関係省庁を含めまして慎重に検討をしているところでございます。  ただ、この際申し上げておきたいと思いますのは、これはまた海洋法の問題になりますけれどもアメリカは、海洋法会議の結果、十二海里の領海ということが国際的に合意される場合においては、国際海峡においては自由通航が保障されるということを非常に重視しております。このアメリカの基本的な方針というのは、安全保障のみならず、アメリカの基本的な対外経済政策の問題としても非常に重視しているところでございます。このアメリカ立場ソ連も全く同一立場をとっておりまして、したがって、海洋法会議においては、米ソが共同して国際海峡においては自由通航が保障されるべきであるという強い立場を表明しているわけでございます。  わが国といたしましても、わが国全体の国益という観点から見まして、国際海峡においては、一般領海におけるよりも自由な通航が保障されることが望ましいという立場を表明し、そのアメリカ及びソ連中心とします国際海峡における自由通航制度というものについては、原則的にはこれに賛同するという態度で参っておるわけでございます。  先般のジュネーブにおける海洋法会議結論は出ておりませんけれども、最後に各国に配付されました単一草案においては一定の条件、すなわち航路帯でありますとか、あるいは分離帯を設置するという構想のもとに、国際海峡においては妨げられない航行を保障するというのが単一草案となって各国に配付されております。これが来年の海洋法会議において再びいろいろ審議されるわけでございますが、私どもは、現在提出されておりますその単一草案が中心になって論議が進められ、条約の規定を合意するというところまでいくかどうかわかりませんけれども、その方向でコンセンサスが成立するような努力が恐らくなされるであろうと思っております。  したがって、この海洋法会議結論を待たずに領海十二海里を実施するという場合におきましては、私どもは、海洋法会議においてとっております私ども立場と矛盾することがあっては困るというのが外務省の現在の立場でございます。ただ、それにつきましてはいろいろな問題がございますので、まだいまのところは検討中であるということしか申し上げられないと思います。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの局長の御答弁というのは、これは大変重要な御答弁だと思うのです。国際海洋法会議結論を待たずして、日本としては独自にこれは領海十二海里を宣言するに際して、海洋法会議においてもうすでにとってきた態度を曲げるわけにはいかない。それはどういうことかということをつづめて言うと、いま私が御質問を申し上げた中身からすれば、非核三原則の例外を認めざるを得ない、こういうことになると思うのですよ。大変なことだと思うのですよ。これはどうなんでしょうね。海洋法会議結論を待たずして日本が独自に十二海里の宣言をするか、立法化をするか、その節いまひっかかっているのは、非核三原則の例外をどういうかっこうでそれでは認めていくかというところが焦点になっているわけですか、いかがなんです。
  67. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 非核三原則は、現在日本の領域の中において政府が実施しております最高施策と申しますか、基本的な施策であろうと思います。今度その領域が広がる、領海三海里から十二海里に拡張するという場合には、その領域が広がるという問題が出てくるわけでございまして、その場合に国際海峡における船舶の通航問題をどういうふうに考えて処理するかということについては、先ほど来申し上げておりますように、まだいろいろな問題点がございますので、検討中でございます。  したがって、非核三原則の関係につきましても、その検討結論が出る過程において十分検討されなければならないと思っておりますけれども、まだいまの段階では検討中であるということしか申し上げられません。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 まことに歯切れの悪い御答弁になってきた。つまり、非核三原則の中身がいまや揺らぎつつあるということがこれははっきり確認できるわけでありまして、これは目下検討中であるから、ここで確答はできないというふうな御答弁でありますけれども、いまそういう点から言うと、外務省当局が日本の政府が守らなければならない、これは端的に言うと、国是である非核三原則に対して、手をつけて、中身をいま揺さぶりつつあるという、このことをひとつはっきり確認をさせていただきたいと思います。問題は、これをどこまで追及しても、恐らく検討中であるからここではっきりお答えはできないということの連続であろうかと思いますが、私どもからすれば、十二海里宣言あるいは立法化に当たって、非核三原則の中身をゆるがせにしてもらっては絶対困る、非核三原則の例外を認めるということがあってはならない、このことをはっきりとこれは申し上げておきたいと思うわけであります。  さて、もう一つ、きょうはぜひお伺いしたいことがあるわけでありますが、それは、日米防衛構想ということで坂田防衛庁長官は最近、特に七、八月ごろからいろいろな意見を述べておられますが、むしろ私たちから見ておりますと、防衛庁ではなくて、外務省がこのことに対しては所管であるがごとき、中身についてまでも触れておられるような向きがございます。  そこでお伺いしたいのですが、長官がこういう問題についてるる見解を述べられるに先立って、十分外務省と防衛庁当局の間で話し合われていると思うわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  69. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この問題に関しましては、もちろん防衛庁と外務省との間で十分話し合っております。もともとこの問題が正式に取り上げられましたのは、本年八月、三木総理が訪米されて、フォード大統領との間で首脳会談が行われ、その際の共同新聞発表の中でこの問題がまず取り上げられたわけでございます。その際に、安保条約の効果的かつ円滑な運用を図るという見地から、両国が協力してとるべき措置について、両国の関係者が安全保障協議委員会の枠内で協議を行うということに合意した次第でございまして、この総理とフォード大統領との一つのそういう合意といいますか、了解に基づいて行われておる問題でございます。  その後、引き続きまして、八月末に坂田防衛庁長官とシュレジンジャー当時の国防長官との間の会談におきまして、この八月の共同新聞発表の精神に基づいて話し合いが行われまして、この日米防衛協力のための諸問題について研究協議するための場を日米安保協議委員会の枠内に設けるということが了解された次第でございます。ただ、この新協議機関につきましては、その構成、目的、また安保協議委員会との関係、またどういうことを協議するかというふうなことにつきましていろいろと詰めなければならない問題がございますので、現在外務省と防衛庁との間で話し合って検討を進めております。したがいまして、まだアメリカ側との話し合いは行っておりません。しかし、いずれ成案を得た上でアメリカ側と話し合ってまいりたいと考えております。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 いま御答弁になりました日米安保協議委員会において新協議機関を設置するという問題なんですが、その新協議機関での議題は日本の防衛問題に限るのか、それとも極東におけるところの安全保障も含んで議題としようと当局としてはお考えになっていらっしゃるのか、いずれでありますか。
  71. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この防衛協力という問題は、日米安保条約に基づく研究協議でございますので、日米安保条約というものは御承知のとおり日本の安全並びに極東の平和及び安全にかかわる問題というものを扱っておりますから、したがいまして、日米安保条約に基づくものである以上、そういう問題について広く協議するのは当然だと思います。  ただ、坂田長官もおっしゃっておりますように、まずわれわれとしては、日本の安全に重点が置かるべきは当然でございますけれども、それに限られるという問題ではない。安保条約の前文にも書いてございますが、極東の平和と安全という問題は、日米両国の共通の関心事項でございます。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 といたしますと、朝鮮半島におけるもろもろのこともこれは当然議題となってくると存ずるわけでありますが、朝鮮半島が有事になった場合、それが即日本が有事になることではないということは、いままでの国会答弁で明らかなところであります。ところが、先日、フォード大統領が新太平洋ドクトリンで述べているところを見ますと、日本の協力が米国の太平洋戦略の柱であるというふうなことが述べられているわけであります。それからいたしますと、朝鮮半島が有事になった場合、支援作戦もこの新たな機関で議題とすることに当然なっていくと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  73. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 坂田長官が述べておられます自衛隊と米軍との整合のとれた作戦行動と言っておられます場合には、もちろん日本の自衛隊が動き得る事態、自衛隊法において定められておる事態を考えて言っておられるものだと思います。他方、朝鮮半島において非常な事態が起こりました場合に、それが直ちにもちろん日本の自衛隊がいわゆる防衛出動その他をするということにはならないと思います。ただ、朝鮮半島における事態は極東の平和と安全にかかわる事態でございますから、米軍がこれに対して関心を持ち、ある程度の行動をとるということは当然予想されるわけでございます。米軍と申しますのは、いま申し上げているのは在日米軍の問題でございますが……。その際に、戦闘作戦行動その他に出ていくということになれば、これはもちろん事前協議の対象となります。また、それに至らない補給活動ということであれば、これは安保条約の規定からしましても事前協議の対象にはなっていない。そういうことはございます。いずれにしましても、日米がそういう問題に関して直ちに共同作戦をとるというふうなことはない次第でございます。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 御答弁は必ずしも私のお尋ねをしている中身に合致した御答弁とは言いかねるわけでありまして、支援作戦について私はただいまお尋ねをしたわけでありますが……。  いずれにしろ、防衛委員会は、国会のこの関係から、いろいろな問題について具体的に外務とかんで、そして中身が外務と一致した見解の上で進められているということを、私たち見聞をいたしておりまして、十分に討議を積まれた上でこういうふうになってきているというふうに考えられないような場合がしばしばあるようであります。考えてみますと、防衛問題というのは外交問題の一環でありまして、むしろ外交問題が前面に立って防衛問題というものは考えられてしかるべきだと私たち考えているわけであります。そういう点からしますと、この外務委員会で防衛問題が論議できるように、外交防衛委員会とせよというふうな意見もあるやに私たちは存じておりますが、外務大臣は、こういう問題に対してどういうふうに思っていらっしゃいますか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外交をいたしております立場から申しますと、やはり何と言っても世界に戦争が起こらないようにということが私どもの第一の目的でございますし、同時に、その中でわが国国益を伸ばしていくということでございますが、戦争が起こらないということが何と言ってもわが国の最大の国益、これは平和憲法のもとに私はそういうふうに考えておりますから、両方の目的がわが国の場合には実は一つであって二つではないというふうに心得ております。したがいまして、われわれの外交的努力によって兵力が動くというようなことがないようにしなければならないというふうに考えておるわけでございます。国会でどのような委員会をおつくりになりますかは、これは国会の御決定になることでございまして、私どもがとやかく申し上げる筋合いではなかろうと思います。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから終わります。
  77. 水野清

    ○水野委員長代理 金子満広君。     〔水野委員長代理退席、毛利委員長代理着席〕
  78. 金子満広

    金子(満)委員 パレスチナ解放機構、PLOの東京事務所の設置の問題についてお伺いしたいと思います。  実は、私は八月の上旬にPLOの招待でレバノンを訪れて、アラファト議長やカドミ政治局長といろいろ会談、懇談もいたしました。その後帰国して、多分八月の十四日だと思いますが、宮澤外務大臣に、PLOをパレスチナ人民の唯一の合法的な機関として認めて、それにふさわしい形で早急に東京事務所の設置を行うように申し入れをいたしました。そのとき宮澤外務大臣は、当時フート氏が来日中でありまして、それに会われる寸前だったと思いますが、フート氏と会った上でいろいろ検討したい、こういうお答えがありました。その後、国会では本会議委員会などでいろいろ議論をされました。現在、そうした経過をたどって東京事務所の設置がどういう状況にあるか、まずその点を最初にお聞きしたいと思います。
  79. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 いまお話ございましたPLOのアル・フート氏が八月前半に日本に参ったわけでございますけれども、そのときに私もお会いいたしまして、それでいろいろ説明をいたしたわけでございます。そのときに、もちろん前提といたしまして、PLOとしては、日本にも直接コンタクトのできるようなふうにしたいので事務所を置きたいと思うけれどもという前提で、日本の事情をいろいろ説明してほしいということでございましたので、いろいろ説明をいたしました。その後いろいろ問題にもされておりますけれども、たとえば言論の自由の問題とか、あるいはセキュリティーの問題であるとか、事務所にどういう表札をかけてもいいのかとか、そういったことがあったわけでございます。  そういうことで、いろいろ疑問点や知りたいということにつきまして私の方で十分御説明をいたしまして、フート氏の方も十分理解されたようでございまして、その内容は私、アル・フート氏あてに私信を書きまして、話した内容を確認したものについて差し上げたわけでございますけれども、そういうことで私どもの方は、PLO側で承知したいと思うことについてはすべてそのときに御説明をいたしまして、この次はPLO側でもってお考えに従って何かステップをおとりになるのであろう、こういうふうに理解いたしておりまして、その後はPLO側からも、いまの点に関しましてさらに、こういう点どうだこうだというようなことは、別に私どもに質問もございません。私ども承知しているところでは、PLO側としても、いまレバノンの問題とかいろいろございますし、取り込んでおるような事情もあるようでございますけれども、東京に事務所を開くための準備をいろいろと取り進めているように承知いたしております。
  80. 金子満広

    金子(満)委員 新聞に若干報道されていますが、そういう中で、東京事務所をつくった場合に、正式の掲示の問題とか所員の行動の自由、報道活動の自由、それから面会の自由、安全の保障、この五項目が出ておりますが、まず、新聞に出ている、否とにかかわらず、この正式表示の問題ですが、これは看板をかけることという、それだけの意味ですか。こういう点についてどのようにお考えになっていますか。
  81. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 先ほどちょっと触れましたけれども、アル・フート氏が参りましたときにも、事務所の看板と申しますか、表示の問題も聞いておりましたけれども、アル・フート氏は、自分はいまのPLOの状況というものから見て、これを承認してくれとか外交特権を与えてくれとかというようなことを言うつもりは毛頭ないのだという前提でお話しされておりましたけれども、表示の問題は私ども、そういう大前提があればこれはもう事務所の方の側で適当なものをおかけになって私どもには問題ないわけでございまして、こうでなくちゃ困るというようなお話は何もいたしておりませんし、その説明をアル・フート氏の方は十分理解されているものと思っております。
  82. 金子満広

    金子(満)委員 PLO側のことは別として、そうするといま言われた正式表示の掲示という問題で言えば、看板とかあるいはPLOの旗、こういうものも掲げて当然差し支えない、こういう意味に解釈してよろしいわけですね。
  83. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、PLO側といたしましては日本に承認とか外交特権云々といったようなことを何も言うあれがないということでございますし、私どもも、いまのPLOとの間にはそういう問題というのはそもそもあり得ないことだろうとも思っておりますので、そういう前提の上にできるわけでございますので、その場合には、事実上どういう看板をおかけになろうが、まあどういう旗をおかけになるか、これは事実上の問題ということで、それ以上の問題には私どもとの関係ではないというふうに了解いたしております。
  84. 金子満広

    金子(満)委員 事実上の問題で、差し支えないということですね。
  85. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 そういうことでございます。
  86. 金子満広

    金子(満)委員 それから二番目の問題ですが、日本における所員の行動の自由の問題です。これは当然日本の国内を旅行することは自由である、あるいはどういう人と面会するかということも自由だ、そういう意味で、他の国の日本にある在外公館の人たちと同じように自由が保障される、こういうことに解釈してよろしいですか。
  87. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 PLOの事務所の方が行動される場合には、これは日本におります普通の外国人と同じように自由であるわけでございまして、言論の点も全く同じでございます。それから面会の点でございますけれども、これも普通におります在日外国人と同じでございまして、もちろん相手方との関連があるのはあたりまえの話でございますけれども、ただ、いまの点で在日外国公館員と同じかと、こういう御質問でございましたけれども、いま申しましたような前提でもって、PLOというのは、ほかの国等が東京に置いております大使館と同じような意味で同等の事務所を置くと、こういうことになるわけではないわけでございますから、その点はほかの外交官と同じだということは観念的にはないわけでございます。一般の在日外国人と同じような自由をお持ちになる、こういうことでございます。
  88. 金子満広

    金子(満)委員 事務所の性格は別として、国内における行動というものは、一般の外国人の中にはもちろん他の外国の公館員も含まれるのですから、そういう意味で、事務所の性格とか資格、これは別として、国内をいろいろ旅行し、いろいろの人々と接触するという問題については制限を受けない、こういうことですね。——その次に、広報活動の自由、これは先ほどおっしゃいましたから、どのような広報活動をしてもこれはもう自由であることは私も確認できます。と同時に、安全の保障という点についてどのように考えているか、この点を伺いたいと思うのです。
  89. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 PLO関係者、事務所の関係者が日本におります間は、日本国民、それから一般外国人の安全のためにいろいろ考慮をする点は、同じようにPLO関係者に対してもすることは当然でございまして、この点はアル・フート氏が来られましたときも御質問ありましたのでお答えしたところでございますけれども、いまのような基本的なことでございます。もちろん、特に何か危険がありそうだというようなことを日本の公安当局でもってそういう情報でもありました場合には、公安当局の判断によって、より適切ないろいろな警備措置をとるということになると思います。アル・フート氏にもそういう御説明をいたしておったわけでございます。
  90. 金子満広

    金子(満)委員 御承知のようにイスラエルの大使館もあるわけだし、そしてまた常に中近東でいろいろな形での紛争があることも御存じのとおりだと思うのです。日本に事務所を持った場合に、安全の保障というのは当然日本の国内法によって保護されるわけですから、そうしたときにいろいろの要望なり意見なりあれば、これは政府としても日本の法律に基づいて対処をすると、こういうことですか。
  91. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 安全の確保の問題は、PLO関係者のみならず、だれにとりましても当然大事な問題であるわけでございますし、国内法でやり得る必要な措置をとることになると当然考えております。PLOの関係者だからと言って特別にその点を閑却するとかなんとかいうことは毛頭考えておりません。必要な措置はそのときの状況に応じて公安当局でおとりいただくと、こういうことに考えております。
  92. 金子満広

    金子(満)委員 大体いま五点にわたって質問しましたが、政府考えている現在での意味はわかりました。そうしますと、東京事務所をつくるということについてPLOから公式に、フート氏が帰った後申し入れがあったというぐあいには先ほどまだ確認していませんが、申し入れがあったんですか、まだないんですか。
  93. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、いまいろいろ準備を取り進めているように私ども印象を持っておりまして、まだそういったことに関して通報を受けているわけではございません。
  94. 金子満広

    金子(満)委員 それでは申し入れがあれば、東京に事務所を設置することが日本としては、政府としてもこれは好ましい事態になるというようには考えますか。事務所ができることはいいことだと、こういうようにお考えになると思いますが、どうですか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本側に障害はありません。
  96. 金子満広

    金子(満)委員 障害がないということは、申し出があればこれは非常にすんなりいくわけですが、政府としても、いま国際情勢の推移から見て、PLOの東京事務所ができるということはいいことである、そして、できるということであれば許せる範囲内においてそれを歓迎すると、こういうような立場であろうかとも思いますが、その点はどうですか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように全く自由なのでございますから、何ら日本政府としては障害を設けておらない、いろいろ御不便なことがあればお手伝いをして差し上げましょうというようなことは申し上げても差し支えないことであります。
  98. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、まあ外交特権その他の問題は別として、申し出があればいろいろの便宜は計らうということに解釈してよろしいわけですね。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり、わが国はこのような自由な体制の国でございますから、原則としてだれでも希望することはできるという国でございますので、その上で何を許すとか何を許さないとか、いい悪いというような判断をもともと政府がしないのがわが国の自由のたてまえでございますから、わが国として何も障害を設けるつもりはございませんし、一般の外人がこういう不案内なことがあって教えてくれぬかというようなことはよくあることでございますから、私どもそういうときは親切にお教えもいたしましょうし御便宜も計らいましょう、御自由でございますと、こういうことでございます。
  100. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、そのPLOの問題についてはいろいろ解釈はあるけれども、すでに国会の中で三木総理がしばしば言明しているように、これはパレスチナ人を代表する機関である、唯一という言葉は使っておらないようですが、他の場合には使っている。たとえば「国連においてもパレスチナ解放団体を代表するオブザーバーとして認められている。」これはもう天下周知の事実であります。同時に、「アラブの首脳会議におきましても唯一の解放団体の機関であると認められましたから、こういう国際的なパレスチナPLOに対する取り扱いというものは、日本もやはりそういう国際的な流れというものは頭に置かなければならぬと考えております。」こういう確認の上に立って、いま外務大臣がお答えになりましたように、日本は全く自由でありますから、そうして申し出があった場合にはどうぞいらっしゃってください、そしていろいろ質問もあればお教えすることもできますし、先ほどのお答えでは、お手伝いすることがあればお手伝いもいたします、こういうように理解してよろしいわけですね。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことでございます。
  102. 金子満広

    金子(満)委員 それでは申し出があり、東京事務所ができるということになれば、いま政府の態度というのは今日的段階では承りましたが、たとえばフランスはこれを政府声明という形で出しました。何らかの形で申し出があった場合に、それに答えなければならぬと思うのです。ただ申し出はあったけれども黙ってそうなってしまいましたということでは、これまでの国会審議の諸経過から見ても、あるいは国際的ないろいろの交渉が公式、非公式を問わずあったわけですから、政府としてあるいは外務省としてどういうような態度をおとりになるか、その形式とか方法とか、これが必要だと思いますが、その点はどうですか。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは、PLOの方でもかつてそういうことをお考えになったことがあったようでしたが、先ほど中村局長が申し上げましたようないろいろの経緯がありまして、なるほど日本というのは自由なんだなということがだんだんわかってこられて、したがって、特に歓迎しますとも申し上げませんけれども、ありがとうと言っていただくこともない、全く御自由だということで私は十分だろうと思います。
  104. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、くどいようですけれども、申し出がありました、政府としては自由でありますからどうぞやってください、しかし質問されればいろいろお答えもいたします、お手伝いすることがあればお手伝いもいたします、これは、いま宮澤外務大臣がこの国会の公式の場で言っているのですから、それはそのとおり伝わると思いますけれども、それ以外に、では事務所ができたというときに、外務省としてはこう言うのだというような談話とかあるいは新聞発表とか記者会見、そういうようなことは特別にするというお気持ちはないわけですか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特別にするという気持ちはございません。もちろん、私を初め役所の者はしょっちゅう記者会見をいたしておりますから、記者会見でお尋ねがあれば、そういう事実そのものをそのとおりだとかいうことは、当然事実関係はお答えいたしますけれども、特別に私どもが機会を設けて何かするということは考えておりません。
  106. 金子満広

    金子(満)委員 最後に一問だけ。年内にもPLOからビザ申請があれば、もちろんビザは出しますということで新聞には報道されているのですが、大体政府の感触からして、東京事務所は早い方がいいと私は考えるのですが、政府としてはどうですか。早いことを歓迎しますか、どうですか。
  107. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 時期の点については、向こうはなるべく早く開きたいという意向をかつて持っていたことは私も承っておりますが、同時に、やはりいろいろ事情があるのでというようなことも言っておられまして、向こうさんの御都合なんだろうと思います。私どもの方は、いままでお話ししましたように、そういう状況でおいでになるということに対して何ら障害も設けておるわけでもございませんし、全く向こう側の御事情でもっておいでになる、お開きになるということ以外にないのじゃないかと思うのでございます。
  108. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 渡部一郎君。
  109. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣お尋ねいたします。  日中友好平和条約の進捗がその後とんざをいたしているわけでありますが、この交渉の状況についてどういう御判断でおられるかまず伺いたいと存じます。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の暮れから始めました交渉が、いわゆる覇権問題等をめぐりましてはかばかしく進まないことになりまして、ニューヨークで喬冠華外務大臣と私とが長い話をいたしました。その後、日本政府がこの覇権問題をどう考えるかということにつきましては、参議院の予算委員会におきまして公明党の矢追委員お尋ねがございまして、私からお答えを申し上げました。長くなりますので、そこを省略してよろしければ省略いたしますし、それは何かと再度お尋ねであれば申し上げますが、そういうふうに日本政府としてはこの問題を考えているということを国会で実は申し上げておるわけでございます。その点は恐らく先方も御存じであるに違いない、ニューヨークでも私はそういうことを申しておりますから。ただ、それに賛同されたということにはなっていないわけで、私の申していることを理解はしておられるであろうと思います。  私としては、中国側にもいろいろ忙しい外交日程もここのところおありでありましたから、いろいろにその辺を検討しておられるのであろうと考えております。私自身も、またそのような私の考えというものについて、国内の大方の御賛同を得られるかどうかということで、国内における世論の動きというものも、私なりに観察をしておるつもりでございまして、大体いまそういう段階でございます。
  111. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、今度は矢追議員の質問の後の話でありますが、大臣はその末尾において、覇権問題に関する両者の意見の差というものはきわめて少なくなってきたようなお話に受け取れるわけでありますが、いま日中間で交渉するとすれば、覇権問題については両者の間で平行線をたどることはもうない状況になったとお考えになっておられるかどうかお伺いします。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこがわかりますと、もう大変に事柄は進みがいいのでございますが、どうもそこがちょっとわかりませんで、いろいろ向こうもお考えであろうというふうに思っております。
  113. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題に対する働きかけをこちらからしたいというふうにすでに表明されたようでありますが、その辺の御真意をもう少し詳しくお話しいただけませんか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が国会でこういろいろ申し上げておりますことも、恐らく先方もいろいろな意味で情報としては入手しておられるに違いないのでありますから、これも一つのこちらの意思表示であると申し上げてもさして誤りではないと思います。したがいまして、私にとりましては、一つは国内のこの問題についてのコンセンサス、もう一つ中国側である程度時間をかけ、いろいろ検討をされたであろうと考えられるような時期、それを選んで何かの方法をとらなければならないとは思っておりますものの、まだ時期、方法について申し上げるような段階でございません。
  115. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 お話し合いをするチャンスができるとすれば、覇権問題について合意をすることはできるという見通しでございますか、どうでございますか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう見通しがございますと、何もじんぜん時間を使っておる必要がないのでございますが、私が先ほど申しましたように、賛同はされないにしても、理解はされたであろうというあたりのところが、中国側にも中国側のお考えが私はあるだろうと思うので、二人で向かい合って話をしておれば、なるほどおまえの言っておることはそれなりに理解はできるということと、よし、それに賛成をした、そういうふうにひとつ文章を書いてみるかということとはなかなか一緒でない場合がございますから、その辺のことも注意深く見守っていかなければならないと思っておるわけでございます。
  117. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その辺はこちらから働きかけを何らかの意味でなさるという意思表示に受け取っていいんでしょうか、悪いんでしょうか。非常に巧みにお答えになっているのはわかりますけれども、これから中国側にどういうお考えですかとお聞きになるかどうか。それはもうちょっと見てから言う、向こうの出方待ちである、そういう態度でいくか、そこのところはかなりニュアンスが違いますけれども、どうでしょうか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先方の出方待ちというわけでも実はないんでして、なるべくこういうことはわが国主張が認められる、受け入れられるならば早い方がいいわけでございますから、ただそれをどういう時期にどういう方法でしていいかということを、先ほども申し上げましたように、まだ私が決めていないということでございます。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、ソビエトとの関係において、この平和条約交渉というものに対するソビエト側の反応というものは、もはや考慮する段階ではなくなったとお考えですか。残る問題として詰めなければならないのは、覇権問題だけだとお考えですか。そのほかの問題がありとお考えですか。どういう点が両者の間で衝突といいますか、問題点になるとお考えですか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中国側との問題では、実はこれは文章を書いてみませんと、とことんのところはわからないわけでございますけれども、この問題を除いてそう大きな問題はないのではないかと思っておるわけでございますが、ソ連との関係では、でき上がりましたものが、第三者的に見て、これはソ連に対して友好的なことでないではないかというようなことであってはならないわけでして、そういう誤解を生むようなものができ上がったのでは、わが国の外交方針に反しますので、そうでないものをつくらなければならないと思っているわけでございます。その上で何かソ連から苦情があろうとは私は思っておりませんのですが、要するに第三者的に見て、これならば何人も文句を言う筋合いがないではないかというものをつくり上げたいと思っております。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もちろん第三者的に見て平和的でない、侵略的な意図を持つような条約を結ぶというおつもりは毛頭ないでしょうし、それを明らかにソビエト政府にも説明でき得るものをつくりたいというお考えだろうと私は思っているわけですから、むしろ問題はもう覇権問題に対する理解と、それを文章化したときの問題点ということだけが残っておる、こう理解してよろしいですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最後までこれやってみませんといろいろなことがあるかもしれませんが、大まかに考えて私はそうであろうと思います。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、ますますお話が詰まってくるわけでありますが、いよいよ覇権問題をめぐってお互いで文書を交換する直前まで来ておる、話し合いをするという、多少問題が出るとしてもそういうことになっておる。そうすると、その時期を選んで何らかの働きかけをしたい、その時期というものは大臣としては三木総理ともお話し合いの上お決めになる、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が国会で矢追委員に申し上げまして以来、同じことを国会で申し上げておるわけでございますが、いわばこれは交渉という立場から言えば、言いっぱなしのことでございますので、その間中国は西欧首脳の来訪がありましたり、米国首脳の来訪がありましたりして、結構外交的には忙しい日程であったろうと思いますから、いろいろお考えにはなっておられるのでありましょうけれども、私の方にリアクションらしいものはないわけでございます。そういうこともございますから、もう少し何かその辺がわかってまいりますと、どういう方法で、いま渡部委員が言われましたような時期、方法を私なりに、もちろんこれは総理の御指示を仰ぐつもりでございますけれども、そういうことになろうと思いますが、いまいつの段階でどうということを申し上げるまで私の考えが固まっておりません。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そのお考えはいつごろまでに固まる御予定でございますか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 固めると申しますよりは、何となく固まってくるようなことでございますので、どうもいつということがちょっと申し上げにくい。ただ、この話はできるだけ早くしなければならないということははっきり思っております。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 くどくて恐縮なんですが、言いにくいのは百峯承知で私も伺っているわけですから、その早くしなくちゃという意味は、年内とか来年初頭とかそういうようなレンジをお考えになっておっしゃっているお言葉ですか。その早いという言葉が抽象的な言葉なものですから、ちょっと重ねて伺うわけなんですが……。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと年内と申しますと、いろいろ私自身にも日程がございますし、国会の御審議もあり、また予算編成もありというようなことでございますので、年内というわけにはまいらないのだと思いますが、そうかと申しまして来年一年空費していいとも思っておりません。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 来年一年ではない、年内ではないというから、来年の一月から来年の前半ぐらいの間、恐らく三木内閣の続く間ぐらいのところでしょうね。その辺余りぎゅうぎゅう言うのもどうかと思いますが、大臣御在職中にみごとな御成果を上げられるように私は期待したい、こう思っているわけであります。ひとつ御努力をぜひお願いしたい。  そうしますと、この問題について中国側との接触は、外務省として本省からおやりになるおつもりなのであるか、外交官を派遣していろいろ地域でおやりになるおつもりであるか、あるいは特使等を用いておやりになるおつもりであるか、その辺はどういうお考えでございますか。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 できますれば、またイロハから大議論を展開をするというようなことは、間違えますと今年の繰り返しのようになる心配もございますから、ある程度お互いの意思が暗黙のうちにわかるようなそういう方法があれば一番よろしいと実は思っているわけでございますけれども、これがなかなか簡単にそういう方法は見つかりませんで、それも一つ、とつおいつ考えております理由でございますが、しかし、しかるべく時間がたって先方もいろいろ検討され、私も国内の動きをよく見ておりまして何か考えなければならぬなという程度以上、実は具体的に私の考えがまだ出ておりません。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 中国の場合に、余り下から積み上げていくというよりも、トップレベルの交渉というのは非常に意味がある。その意味では喬外相とのお話し合いというのは非常に意味が大きかったと私は思っているわけです。ただ、その喬外相とのお話し合いのときに、大臣はお話を詰められるというよりも、いろいろな立場を想定されていろいろな立場意見を交換されたと承っておりますから、話を詰めるという段階での話し合いをしたのではない、そこがこれからの引き金になるだろうと私も思っているわけであります。したがって、大臣が意思を決められて、喬外相との間のお話し合いを復活なさるという方法が一番オーソドックスではないか。それがお互いの黙契を復活するいい手ではないかと思うのですけれども、横で見ておりましてそう感じられるのですが、どうお思いでしょうか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点いろいろな可能性を探求してみたいと言うしか、まことにお答えとしては御満足のいくお答えでないと思いますけれども、そうしか申し上げられないのが現状でございます。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少なくともお話し合いの途中で、こちら側は話した、向こう側から反応があってしかるべきだというニュアンスで中国側に受け取られますと、話は逆にこじれてしまうんじゃないか。その点は御配慮していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうでございますね。ですから、私も国内の事情など御意見を聞いたりいろいろしておりますということを申し上げておりますのもそういう意味合いがございます。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それからソ連との関係でございますけれども中国交渉するということは、中国と手を組んで同盟関係をつくってソビエトと対抗する、そういうニュアンスに受け取られないようにする必要がやはりあるんではないかと私は思いますが、どうでしょうか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそのとおりでございまして、九月にグロムイコ外務大臣にもニューヨークで私はそのことをそのとおり申しましたし、また日本としては、中国との友好はますます深めたいわけでありますけれども、その結果、ソ連と非常に悪い関係になるというようなことはできない、日本憲法の考えておるところでもないではないかということは、よくグロムイコ外務大臣にもお話をしてございます。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常にめんどうな問題をきょうは話していただいたわけでありまして、時間があと五分ばかりでございますからこのぐらいにしまして、この次にまた聞かしていただくことにいたしたい。その間、日中関係につきましてはなるべく早いチャンスにひとつお進めをいただきたい。ぜひお願いをする次第でございます。  先ほど条約局長は非常に微妙な問題を十二海里問題についてお答えになりました。微妙過ぎまして非常に怪しい御答弁までちょっとなすったようでありますから、もう一回重ねてお伺いするわけであります。  国際海峡の問題、特に津軽海峡の問題と関連しまして、日本が十二海里に幅を広げますとあそこは日本の領海の中になってしまう。したがって、そういうふうにした場合はそこのところを核兵器を積載する軍艦が通れなくなる。そうした場合に、アメリカ側はそれを結構であるという可能性があるのか、アメリカソ連と両方が困ると言うのか、それからアメリカソ連の両方ともこれを許容する方向でいくのか、日本の交渉の仕方はその三通りがあるだろうと思います。したがって、いま伺いたいことは、まず認識を伺うわけですが、どの方向に向かって進めようとなさっているのか。三つひっくるめて何となく行こうとされておるのか。ある程度方向を決めてやっておられるのか。勘ぐってみますと、ソ連側とはすでに話し合いはだめだ、アメリカ側とは話し合いの必要がある。アメリカの戦略から言うと、日本海にソ連潜水艦を全部抑えておいて出られないようにするということは、太平洋戦略から言って大変有効である、そうやってもらいたい、アメリカ軍としては認めておるというようなうわさが一方である。今度は逆に、津軽海峡の真ん中に細い線を設けて、国際海峡として特別に認めて、そこのところは核艦艇だけ通す。だから、領海宣言は十二海里だけれども、ここだけは幅約一マイルの細い幅をつけて、矢でも鉄砲でも全部通ってください、私は知りませんよというやり方であるというような説明が現地で漁民を相手にして行われておる。まことに壮烈な説明がいろいろ行われており紛糾いたしておるわけでありますが、どういう方向であるか御説明いただきたい。
  138. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議の状況につきまして先ほど申し上げたわけでございますけれども、これはすでに御承知のとおり、海洋法会議におきましてアメリカ及びソ連は、今度十二海里に領海が広がることによって生じてまいります国際海峡においては、船舶の自由な通航が認められるべきである、この船舶の中には当然軍艦も含むという立場で強い主張を行っているわけでございます。  わが国といたしましては、わが国自身の問題といたしまして、わが国は資源の大部分を海外の供給源に仰いでおりますし、また貿易立国としてわが国自身の生存を確保するという基本的な立場がございますので、海運の自由はできる限り広く認められることが望ましいという一般的な立場がございます。この立場から、国際海峡については、一般領海に比してより自由な通航が認められることが望ましい。すなわち沿岸国の恣意的な判断によって——本来国際交通の要衝であります国際海峡については、一般領海よりはより自由な通航が認められることが望ましいという立場をとって海洋法会議に臨んでおります。  具体的には、先般のジュネーブの海洋法会議におきまして、この問題については結論がまとまった合意は得られなかったわけでございますが、会議の最終日に各国に配付されました単一草案におきましては、一定の航路帯を設けて、その航路帯に限っては自由な通航、妨げられない航行を認めるという案が配付されております。この案につきましては、まだ各国は正式の反応を示しておりません。私どもは、非公式な段階各国と折衝しておりますから、まだ正式な各国立場表明というのは行われておりませんけれども、私どもが得ております感触では、アメリカとしましては、この案に沿った方向で、一つの妥協的な案が作成されるということに同調するのではないかと思います。しかし、ソ連は、この案に対してはなお非常に強い反対を示しておりまして、依然として、国際海峡はもっと自由な通航が認められるべきであるという強い態度を表明しております。これは非公式な協議を通じての感触であります。     〔毛利委員長代理退席、石井委員長代理着席〕  そこで、来るべき来年三月の海洋法会議における見通しでございますけれども、これはまだ論議が重ねられなければ、確たる見通しは得られないと思いますけれども、私どもは、会議の最終日に配付されましたような案を中心として、会議のコンセンサスをまとめていくような努力が恐らく強力に展開されるだろうと考えているわけでございます。その場合は、わが国としましても、その考え方に沿った案に同調するということで対処すべきであろうと考えているわけでございます。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 持ち時間は終わりに来ておるのですが、私の質問に対するお答えが一部残されておりますから——。  そうすると、津軽海峡の問題に対しては、そういう町のうわさ、あるいは外務省の御説明として漁民たちに説明されているような話というものは、どういうふうに理解するのが正しいか、お答え願いたい。そして先ほどの怪しげな御答弁の分の修正も含めてお答え願いたい。
  140. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほど土井委員の御質問に私が申し上げましたのは、いま申し上げたような海洋法会議における政府立場方針がございますから、いま仮に海洋法会議の結果を待たずに、領海十二海里を実施するという場合に、その海洋法会議におけるわが国立場を著しく害すると申しますか、悪影響を及ぼすということは避けなければならないと考えているわけでございます。何となれば、わが国世界において最大の海運国の一つでございますから、そのわが国が、先ほど申し上げましたような会議の趨勢と全く違ったことをやるということになりますと、そのこと自体が海洋法会議には至大の影響を与えるであろうということを私どもは心配しているわけでございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 済みません。それではまだよくわかりませんから——。  そうすると、非核三原則の問題と絡めてお答えがあったわけですから、非核三原則についても、あなたはその国際的な海洋法の審議の趨勢とあわせて再検討するテーマだというふうにお答えになったから、問題が大きくなったのです。非核三原則はあくまで厳守するのが日本の外務省員としての使命であり、それはそれである。そして今後は、海洋法全体の趨勢というものをあわせて理解して、その対応の仕方を考えたいというのなら何でもなかった。あなたは、非核三原則のものをひっくるめて全部再検討するんだというニュアンスが出たので、特に海洋法会議の趨勢によってその問題を判断したいとおっしゃったのは、非核三原則の問題をつぶしてしまう意図を露骨に表示された、あなたは非核三原則を破壊する先駆者としての発言をなすったというふうに理解されたから、問題になった。だから、そこの部分はちょっと言い回しを変えられるおつもりなのか、変えないで、断固さっきのとおりお答えになるのか、そこだけちょって伺ったらどうだろうかと思って伺ったわけです。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 というようなむずかしい問題がございますから、先ほど土井委員が、立法化の用意ありとおまえは言ったとおっしゃいましたときに、なかなかそうはまいらないのでございますというふうに申し上げたわけでございます。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 局長にもう一回。
  144. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私どもは、非核三原則は内閣の基本方針、基本政策であると思っております。でございますから、私ども立場から、この基本政策であります非核三原則を変更するとか、修正すべきであるとかいうことを申す立場にはないわけでございます。この問題は内閣の最高方針として、最高レベルにおいて検討されるべき問題であろうと思います。ただ、先ほど御質問がありましたものですから、非核三原則との関連において生ずる問題、これはやはり慎重に検討しなければならないということを申し上げて、現在検討中であるということを申し上げただけでございます。
  145. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります。
  146. 石井一

    石井委員長代理 永末英一君。
  147. 永末英一

    永末委員 八月の三木・フォード会談で、日米安保条約に基づく安全保障協議委員会の枠内で、新しい有事の際における日米の協力を相談し合う機関をつくるような話がございました。現在、それに基づいて作業が行われているようでございますが、昨日の内閣委員会で防衛庁側の意見は聞きました。外務省側の意見をこの際聞いておきたいのですが、この新しい協議機関というのは、第六条における日米権利義務関係もその協議の内容に含めてやるというものと了解していいのでありますか。
  148. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 御承知のとおり、三木・フォード会談におきましては、安保条約の円滑かつ効果的な運用のために一層密接な協議を行うことが望ましいことを認めて「両者は、両国が協力してとるべき措置につき、両国の関係当局者が安全保障協議委員会の枠内で協議を行うことに意見の一致をみた。」というふうに書かれておりまして、要するに、安保条約に基づく日米のいわば防衛協力をやっていくんだということについて意見の一致があったわけでございます。したがいまして、これはあくまで安保条約の問題でありまして、そしてこの防衛協力を行う場合に、もちろん日本の安全というものを中心考えているわけでございます。その意味で、いわゆる五条の問題が中心になるということは当然でございますけれども、安保条約が他方において、その前文にも書いておりますように、日米両国は極東の平和と安全に共通の関心を持っておるわけでございます。そして、その関連においてアメリカ軍は日本に基地を持つことを認められておるわけでございますから、その意味におきまして、この防衛協力の話が安保条約五条の問題だけに限られるわけではないということは明らかであると存じます。
  149. 永末英一

    永末委員 重要な点でありますので、外務大臣見解を伺っておきたいのですが、いまのアメリカ局長の説明によりますと、極東の安全のため、アメリカ軍は日本基地を使用し兵力を配置しておるわけでございまして、そのアメリカの戦略そのものにわが方はコミットをして相談をしていく新機関をつくる、こういうことになりますね。そう解釈していいのですか。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この安保条約わが国の平和、安全、それと関連をした極東の平和と安全というものを目指してつくられておるわけでございますから、その限りにおきまして六条との関連が出てき得るというふうに申し上げるべきだと思います。
  151. 永末英一

    永末委員 その限りにおいてというのは、わが方が自衛隊を持ち自衛力を保有しておりますのは、わが国の安全のためのみであって、極東の安全のためではございません。アメリカわが国に軍事基地を保有しておるのは、日本の安全もございましょうが、大きくは極東の安全という枠組みの方が先に出ておるわけであります。そこで、われわれが日米安保条約に基づいて新しい協議機関をつくるという場合に、われわれの限界というものをはっきりさせておかなければ、相手方考えておることとわれわれの考えておることとは違うわけでございますから……。そこで、いまの答弁のように、その限りにおいてはと言われたけれども、極東の安全というものに対してわが方が直接に触れていく、これにコミットしていく、そういう立場にあるのかどうか、私は疑うわけであります。そこで、この点について明確な御見解をひとつ承っておきたい。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう少し厳格に申しますならば、わが国の平和と安全に密接な関係を有する限りにおいての極東の平和と安全、こういうふうに申し上げるべきであろうと思います。
  153. 永末英一

    永末委員 それはわかるわけです、そういう言い方は。言い方はわかりますが、重要な問題は、自衛隊の兵力使用について、極東の安全ということをアメリカ側はアメリカの抑止力戦略に基づく使用方法を考えているのであって、そういうものに一体われわれの自衛隊の使用というものがコミットしていくものかどうか。いまのような言い方ですと、日本の安全にかかわる限りにおいて極東の安全に触れていくということになりますと、アメリカ側は逆の方の接近の仕方をしてくるわけですね。そこへ巻き込まれてしまった場合には、先ほど申し上げましたように、わが方の憲法上持っている自衛隊の保有の意味というものがその限りにおいて失われてくる、そういう危険なことを一体この協議委員会でやるつもりかどうかということを私は心配しておるので、伺っておるのです。
  154. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 安保条約五条におきましては、武力攻撃がありました場合に、両国が憲法上の規定及び手続に従って、共通の危険に対処するように行動するということを規定しております。したがいまして、そういう共通、共同対処というふうなことは、安保条約五条のような事態だけに限られるわけでございます。自衛隊が米軍と共同に行動し得るというのは、まさに安保条約五条に規定されたような日本の領域における、いずれか一方に対する武力攻撃の場合だけでございます。したがいまして、それ以外の事態について、自衛隊が米軍と共同の作戦行動をとるというようなことはあり得ないことだと思います。ただ、安保条約は、日本の安全というものは、極東の平和と安全なくしては保たれないという認識のもとにつくられておるものでございますし、そのもとにおける両国の防衛協力関係をこれから話し合っていくわけでございますから、先ほど申し上げたような制限のもとで日米が防衛協力についていろいろな問題を話し合っていくということでございます。
  155. 永末英一

    永末委員 いまアメリカ局長の御答弁の前段のところのことをやはりはっきりと厳守をして、これからアメリカはどう考えるかわかりませんから、アメリカとの間でこの機関の内容、目的等につきましても話し合いをして、適当な機会にひとつ本委員会に御報告を願いたいと思います。  先ほど外務大臣は、アメリカ側のキッシンジャー国務長官に対しても、アメリカ側が北朝鮮とのダイアログ、対話をすることをすすめてきた、こういうお話でございました。わが方は北朝鮮とダイアログをしなくていいと思いませんが、どういう努力をしておられますか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国北朝鮮関連は、永末委員がよく御承知のように、人的な行き来あるいは文化的な経済的な行き来がいろいろにございまして、私はやはりこれも一つの接触でありダイアログであろうと思っておりますけれども北朝鮮を国として考えるかどうかということについては、前々申し上げますとおり、朝鮮半島の情勢が非常に微妙でありますので、しかもわが国影響力が何と言っても大きいということから、今日まで慎重な態度を実は持してまいっておるわけでございます。
  157. 永末英一

    永末委員 アメリカ北朝鮮との関係と比較いたしますと、わが国北朝鮮との関係はきわめて濃密でございまして、わが国内にも日韓条約で韓国籍を取らない人々もたくさんおるわけでございますし、過般は松生丸事件なども発生いたしました。私は、本日は昨年の五月の二十四日に本委員会で取り上げました、いわゆる北朝鮮におきます日本人妻の問題について質問をしたいと思います。  それは、昨年いろいろな諸点について検討政府側等でお約束をしていただいておりますので、その検討は一年半たってどれぐらい進行したかということをはっきりさせておきたいからであります。  第一に、法務省の方お見えだと思いますが、昨年、このいわゆる日本人妻と大ざっぱに言われておるけれども、その中には戸籍上の妻と内縁の妻とがある、これを当日明らかにすることができなかったわけでございますが、本日はこれをはっきりさせていただけますか、お伺いしたい。
  158. 小林俊二

    小林説明員 お答え申し上げます。  昨日、北朝鮮籍船万景峰号は百八名の帰還者を乗せて出航いたしたのでありますが、この百八名を含めまして、現在までに出国いたしました帰還者は合計九万二千四百九十四名に上っております。このうち日本人女性、日本国籍を保有する女性は四千百四十一名でございますが、さらにこの中で日本人妻、すなわち、北朝鮮籍の人間の妻として帰った者は、帰還者名簿によって調査いたしましたところ千八百二十二名を数えております。
  159. 永末英一

    永末委員 それは戸籍上であろうと内縁であろうと、要するに妻とみなされる者が千八百二十二名である、こういう意味でございますか。
  160. 小林俊二

    小林説明員 これは結局本人が妻という申請をいたしまして帰った者でございますので、双方を含めてというふうに考えることができると思います。
  161. 永末英一

    永末委員 外務省は、この一年半の間、当該関係者から北朝鮮に行っておりますこれら女性に対する安否調査を依頼をされたと思います。何人依頼をされ、どのように措置されたかお答えを願いたい。
  162. 中江要介

    ○中江政府委員 昨年先生からこの問題の御指摘を受けました後、昨年中に照会をいたしましたのは二件でございましたが、本年に入りましてからは十二月九日の第六回まで含めまして総計八十一名について安否調査の問い合わせをしております。
  163. 永末英一

    永末委員 私が伺ったところでは、約三百人の安否調査の依頼を外務省に持っていったというのでございますが、いまのお答えによりますと、八十一名の安否調査の依頼を今度外務省から外側にした、こういうことでございまして、人数に非常に差があるのはどういう理由でしょうか。
  164. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっと私その三百名という数字についてつまびらかにいたしませんけれども、原則といたしまして、安否調査の依頼を受けました者のうち、これは確かに調査を依頼するに値する者というものについて先方に照会するという方針でございますので、あるいはその数の中からいろいろ日本側でわかる限りの調査をした結果、先方に照会するに値する者としていったものが先ほど私申し上げた件名かと思いますが、ちょっとその御質問の三百名前後というところは、私の現在承知しておらない数字でございます。
  165. 永末英一

    永末委員 外務省が受け付けた数と調査を依頼した数の差というのは後でひとつ御報告をいただきたいと思います。  さて、先方に照会というのはどういう手段で照会をされましたか。
  166. 中江要介

    ○中江政府委員 これは先般も御説明いたしましたように、現在日本側と北朝鮮側との間で最も有効に働き得るコミュニケーションの場というものは、日本の赤十字社と北朝鮮赤十字会との間のパイプでございますので、この経路を用いて照会をしておるわけでございます。
  167. 永末英一

    永末委員 日本赤十字社から参考人がお見えであろうと思いますので御質問いたしたいのでございますが、いまアジア局長申されましたように、外務省が日本赤十字社に依頼をされて、安否調査をお願いになったということでございました。日本赤十字社から先方に対して同様な照会があったと思います。また、昨年は、もし先方の了解があるならば、こちらから救恤品を送る等のことはできると考えております。こういう言葉もございました。これらの件について、この一年半、日本赤十字社がやられましたことについて御報告をお願いしたいと思います。
  168. 綱島衞

    綱島参考人 お答え申し上げます。  日本赤十字社といたしましては、先ほど外務省から御答弁ございましたように、安否調査の依頼を行っております。お尋ねの救恤品の点でございますが、現在文通あるいは小包の発送等々ができることになっておりまして、赤十字社自体といたしまして、特別にそういうものを送ろうあるいは送る、そういうことをしたことはございません。
  169. 永末英一

    永末委員 外務省から依頼されました安否調査を先方に照会された結果はいかがになっておりますか。
  170. 綱島衞

    綱島参考人 お答え申し上げます。  残念ながら、いままで照会いたしました件につきまして、北朝鮮の赤十字会から返答はございません。
  171. 永末英一

    永末委員 外務大臣、お聞き及びのとおりでございまして、一年半の経過はいまのとおりでございます。昨年大平さんが外務大臣でございまして、これらの人々に対してわが国の旅券が発行されている、旅券を持っておる者はわが外務省としましては保護の義務があるということを外務省は承知をせられておるわけでございまして、もし日本のこれらの人々の家族が安否を知りたいということであるならば、いわばその保護義務の中の一環として、外務省としては努力すべき筋合いのものであることは了承されておったようでございました。したがって、そういう安否調査であるとか、あるいはまたもし北朝鮮に行っておられる人々が日本に帰ってきたい、昨年の答弁ではそういう人々が日本に往来した事実は知らない、こういうことでございますので、そういう里帰りができるような努力をしたらどうかという問題について、当時の大平外務大臣は三遍にわたって検討を約束されておるのでございますから、恐らく検討されたと思います。  先ほど、わが国北朝鮮との対話ということは、国交はないけれども人的な交流等々でやっておる、なるほどわが国におきます韓国籍を持たない人々が、北朝鮮と往来をするについての日本政府の処置の仕方は、一時よりはかなり緩和されておるのはいいことだと思います。同時に、しかし、いま申しましたように、外交上の保護権を持っておる、保護の義務を持っておる外務省といたしましては、これらの人々の問題についても、何ほどかやはり手段を考えてやるべき問題ではないかと私は思いますので、ひとつ外務大臣のお答えを願いたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはできるだけ私どもとしてもそうしなければならない務めがあると考えておりまして、それで先ほどから申し上げておりますように、赤十字に御依頼をするというような方法をとっておるわけでございます。恐らく、仮に国交でも開けて、十分な行き来があれば、もう少しその辺がわかるのではなかろうかというようなことは、これはわからぬわけではございませんけれども、しかし、その問題にはまたその問題としての国益上の考慮がございますために、なし得る範囲のことをいたしておるというのが現状でございます。
  173. 永末英一

    永末委員 外務大臣、国交回復がなければとうてい往来ということは見込めないのか、それとも、現状におきましても制限された範囲内ではございますが、従来人事交流があるわけである。したがって何らかの手を尽くして、これらの特殊な人々でございますから、こういう人々の往来というものは実現し得ないものかどうか。この点についてお考えになるお気持ちはございませんか。
  174. 小林俊二

    小林説明員 北朝鮮側との接触の問題は法務省プロパーの問題ではございませんけれども、先日実は事務所におきまして、再入国許可をとって北鮮に参りました朝鮮総連の幹部と話をする機会がございました。この人物に対してこの問題を提起いたしましたところ、先方は、現地においていわゆる日本人妻で北鮮に帰った者の代表と話をしたということを申しておりました。で、その答えはと申しますと、この問題について日本側の事情を説明したところ、先方は、すなわちその代表はきわめて驚いて、私ども北鮮人民にとっては目下の急務は南北の統一問題である、この統一が達成されれば日本へ帰ることも可能になるであろうから、それまでこういう問題は考えたことはございませんという返事をしたという説明をしておったのであります。  こうした回答は私どもの方の目からすればきわめて不自然でございますけれども、ああいう社会、政治体制のもとにおきましてはきわめてあり得ることかと思うのであります。しかし、答えの不自然さはともかくといたしまして、こういった説明の裏に感じ取られますものは、結局北鮮当局が、現在の情勢のもとにおいては、こうした人たちを日本へ帰すということについてきわめて消極的なのではないかといった空気がうかがわれるということを感じたのであります。  接触の問題そのものは私の方からお答えする性質のものではございませんけれども、問題の困難さをしのばせるものではないかと思いまして、御参考までにお答え申し上げた次第でございます。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本政府の基本の方針といたしましては、国交はございませんでも、人の行き来があるということは一向に差し支えない。わが国国益に害になるということでない限り、それは差し支えのないことであるというふうに基本的には考えておるわけでございます。
  176. 永末英一

    永末委員 最後の外務大臣のお言葉をぜひ実際に実現をするしかけをつくっていただきたい。気持ちだけ持っておりましても、やはりそれがしかけにならなければ実現しないのでございまして、北朝鮮とわれわれとは長い歴史上の関係を持っておるわけでございまして、それがいまのような不自然な関係がなお続いていくことは決して双方にとって望ましいものだとは私は思いません。  したがって、その意味合いでわが方で努力をし、そうして努力の結果、いまのような人的な往来ができることがあるならば、できないよりはもっと相互理解を深めるものだと、いま法務省からある事件についての御報告がございましたが、その事件の報告を聞くにつけましても、また過般の松生丸事件に関する一連の処置を見るにつけましても、ぜひこれは宮澤外務大臣努力をされて、いまのお気持ちを生かして、その道をつけるということをやっていただきたいと思います。  質問を終わります。
  177. 石井一

    石井(一)委員長代理 この際、綱島参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次回は明後十二日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時三十六分散会