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1975-06-06 第75回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月六日(金曜日)     午前十時四十五分開議    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       加藤 紘一君    坂本三十次君       正示啓次郎君    住  栄作君       田中  覚君    谷垣 專一君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       福永 一臣君    山田 久就君       江田 三郎君    勝間田清一君       川崎 寛治君    土井たか子君       三宅 正一君    松本 善明君       大久保直彦君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (原子力委員会         委員長)         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         科学技術庁原子         力局次長    半澤 治雄君         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   金子 満広君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     金子 満広君     ――――――――――――― 六月六日  千九百七十四年七月五日にローザンヌで作成さ  れた万国郵便連合憲章の第二追加議定書万国  郵便連合一般規則万国郵便条約及び関係諸約  定の締結について承認を求めるの件(条約第一  四号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(条約第一二号)      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 核拡散防止条約につきまして、外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず、お尋ねをいたします前に、この核防条約というものがどういう仕組みであるか、性格であるかということについて、論議をする上で一応の確認をしておかなければならないと思いますので、大臣お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、核拡散防止条約性格として、少なくとも次の四点が挙げられると思うのであります。問題はすべてそこから出てくる、こういうふうに私は思っております。  第一点は、この条約は、第一条、第二条から見てもわかりますように、核兵器国拡散防止するということをうたっておりますけれども、核兵器そのもの拡散禁止していない、また、その拡散防止するような努力は必ずしも約束されておらない、これが第一点だと思います。したがって、核兵器国がみずからの核兵器を増大することも、また、核兵器国が自国以外に核兵器を持ち込むことも禁じていない。これは核防条約の基本的な性格として、外務大臣確認をされますかどうか。  第二点として、核兵器国と非核兵器国との間に、軍事利用はもとより平和利用の面でも、義務、権利において違いがある、平等ではない。このことは外務当局も認められると思うのでありますけれども、その点が第二点。  それから第三点として、非核兵器国への核兵器国からの攻撃または威嚇がなされないという保障、言いかえますと、非核兵器国への安全保障が、この条約に関する限り、必ずしも確実でない。この点も認められるでしょうか。恐らく認めざるを得ないと思うのであります。そこからいわゆる安全保障問題というのが起きてくるのではないかと思うのであります。  それから第四点として、この条約は普遍的な加入をうたってはおりまするけれども、現実にその出発点から、核兵器国と定義されました五つの国が全部この条約には入っていない、つまり中国フランスがこの条約加盟していない。  そのほかいろいろ挙げられると思いまするけれども、少なくともこの四つが、この核拡散防止条約における一つの骨組みではないかと思うので航りますが、この四つの点につきまして、まず外務大臣、この条約一つの基本的な性格としてこの点について、まあイデオロギー的な解釈、政治的な立場、いろいろありますけれども、条約それ自体からこういう四つの点ははっきりとお認めにたりますか。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初に事務当局から御説明を申し上げます。
  5. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答え申し上げます。  いまお話のありました四つの点をその順序でお答えいたします。  この条約は、核兵器そのもの拡散禁止していないのではないかという御質問が第一点であろうかと思います。この条約は、その元来の目的としまして核兵器国がふえることを防止する。その意味は、核兵器を実際に作動させる、つまり引き金を引く国の数をこれ以上ふやさない、それによって核戦争の危険を防止して国際関係の安定を図るというのが条約目的でございます。  この条文に沿っていまの考え方を御説明いたしますと、第一条及び第二条を通じまして考えておりますことは、核兵器国は非核兵器国核兵器その他の核爆発装置といいますか、その管理を移譲しない。それから非核兵器国核兵器国からそういう管理の移譲を受けないし、また自分でもつくらない、持たないということがこの第一条、第二条まとめて言えることでございます。つまり、核兵器が移動することがあっても、それは管理権を持ったままである、つまり、その引き金を引く国の数はふえないのであるということがこの条約趣旨であります。したがいまして、いま御質問核兵器そのもの拡散禁止していないのではないかという御質問に対しましては、この条約のたてまえから言いますと、やはりその拡散防止されておるということが言えるかと思います。  それから第二に、核兵器国と非核兵器国との間の不平等性、特に平和利用の面についてもあるのではないかという点でございますが、確かにそれは事実として認めざるを得ないと思います。  その一番大きな点は、核兵器国の中で平和的な、つまり原子力平和利用についてのいろいろな活動なり施設がございますが、それについての査察を受けてないではないか、非核兵器国原子力平和利用について原則として査察を受けるわけですが、その点についての不平等性があるのではないかという御指摘かと思います。これにつきましては、現在アメリカ及びイギリスが自発的に平和利用活動については査察を受けるという申し出IAEAにいたしておりまして、現にIAEAとの間にそのための保障措置協定締結交渉が進んでいると聞いております。ただ、この米英だけがそういう交渉を開始しておるというだけで、ほかの核兵器国が必ずしもこれに続いておらないという点は若干われわれとしては不満は持っておりますけれども、ただ米英の先例が他の核兵器国にもいい影響を及ぼすのじゃないかということを期待しているわけです。  これはちょっと飛びますけれども、最近ジュネーブで行われました核防条約の再検討会議最終宣言の中に、表現は若干間接的ではございますけれども、保障措置協定を従来締結していない国は、早急にこの協定締結するようにという強い期待なり希望の表明がこの宣言の中にうたわれております。これはやはりソ連を特に頭に置いて書かれたものとわれわれは了解いたしております。  それから第三の点でございますが、非核兵器国に対する核兵器国による攻撃あるいは核の威嚇、つまり安全保障の問題について、必ずしも十分な保障がないではないかという御質問かと思います。  この点は、核防条約そのもの成立する過程におきまして、多くの非核兵器国からその懸念が表明されたわけでございます。特に非同盟の国からは、この条約の中にこの安全保障条文を入れるべしとまで強い議論があったわけですが、いろいろな経緯の後、条文そのものには入りませんでしたが、この条約成立する直前に米英ソの三カ国、つまり核兵器国であり、安全保障理事会常任理事国でありますこの三カ国が宣言をいたしました。その宣言によりますと、核兵器国による攻撃あるいはそういうような脅威があった場合には、これらの三つの国は国連憲章に従ってこれらの国に対して援助を与えるという意図を表明いたしたわけでございます。一九六八年の三国宣言でございます。その二日後に、それを受けまして安全保障理事会がこれをウエルカムするという決議を採択いたしておるわけでございます。確かにこれで十全な保障であるとは言い得ないかもわかりませんけれども、非核兵器国安全保障についての懸念配慮しました米英ソの三国がこのような三国宣言を行ったということ、及びこれを受けて安全保障理事会がこれを歓迎する決議を行ったということは、やはりこの核防条約に関連しまして、核兵器国安全保障の面でも相当な配慮をしたということが言えるかと思います。  それから最後に、第四の点でございますけれども、出発点から核兵器国である五つの国が入っておらない、特に中仏が入っておらないという点がはなはだ不完全ではないかという御指摘でございますが、これは、中国あるいはフランスともそれぞれの特別の事情があるいはあると思います。当初からこの条約に入っておらないわけでございますけれども、ただ、この条約目的が、先ほど申しましたように核戦争防止を通じて国際関係の安定を図るという観点から申しますと、特に核兵器国の数をふやさないという観点から申しますと、中仏が入らないことによってこの条約そのものの存立の基礎が失われるということは必ずしも言えないかと思います。ただ、この条約加盟国、あるいは日本はまだ加盟はいたしておりませんけれども、やはり中仏が入ることによって、この条約が持つ重みというものが加わるであろうし、また、この条約の中で言われております軍縮の促進ということは、特に核兵器国すべてが入ることによって非常に意味のあるものとなるという観点から申しまして、中仏つまり加盟核兵器国に対しましては、あらゆる機会にこれに入るような呼びかけといいますか、それをいろいろな国際会議の場、それから特に今回の再検討会議の場におきまして、日本のみならず、幾つかの国から強い要望が出されたわけでございます。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員から御説明申し上げたわけでございますが、つまり河上委員の御指摘は、この条約及びそれを中心とした体制というものが必ずしも十全ではないではないかという趣旨お尋ねであるわけで、それは現実的な問題としてもっともっと望ましい改善というものがあり得たであろう、実際問題として、この条約はそれを全部は含め得なかったということは、私は御指摘は真理の一部をついておられると思うわけであります。ですが、その範囲ではできるだけのことを考えてあるということもまた申し上げることができると思いますので、つまり第一点の核兵器そのもの拡散を防いでいないではないかという点について言えば、それは核兵器保有国のおのおのにおける問題であるとすれば、一般的に核軍縮の問題として軍縮委員会であるとか国連とかで取り上げられつつございますし、また米ソのように個別の折衝をしておる国もあるわけでございます。それから拡散を、保有国以外の地域へ拡散するということについても禁止規定はないではないかとおっしゃる意味であれば、それは先ほど政府委員が申し上げましたように、管理権そのものは必ず核兵器国が持たなければならない、他の国に移譲してはならないということで、それは私は一つ歯どめがかかっておると思います。  それから第二の平和利用につきまして、査察保有国と非保有国との間に差等があるではないかと言われる点は、そのとおりでありますけれども、米英がいわゆるボランタリーサブ、ミッションに同意しておる――ソ連はまだ同意しておりませんけれども、というようなことで、これは条約そのものからくる強制措置ではありませんで、文字どおりボランタリーでありますけれども、そういうことを核兵器国の中にも米英のように受諾しておる国もあるというふうに申し上げることができると思います。  それから、第三のいわゆる非保有国の安全の問題でございますけれども、これはいま政府委員が申し上げましたように、米英ソ共同宣言とかあるいは安保理事会における決議とかいうものが背景でこの条約成立しておりますが、軍縮委員会あるいは国連等におけるいわゆる議論を通じて、非保有国の安全というものがつくられつつあるわけであって、確かに共同宣言にしても安保理事会決議にしても、それは全くウォータータイトであるというふうには申し上げられませんけれども、核保有国側の非保有国に対する安全についての配慮というものはある程度出ておりますし、また、今回の最終決議案にも盛られておるわけでございます。  それから、最後中仏の問題は、現実の問題としてこれらの国は加盟をしておらないわけでありますから、どのように御説明しましょうとも、この二つの国が加盟していないという事実は、これは事実として認めざるを得ない。ただ、今度の最終宣言でも加盟を呼びかけておるというのが事実であろうと思います。
  7. 河上民雄

    河上委員 いろいろ御説明ありましたけれども、私がお尋ねしたかったのは、要するに先ほど申し上げましたことですね。政治的な立場、イデオロギー的な立場を抜きにして、この条約を素直に読んだ場合に、さっきの四点は外務省も認められますかということなんでございますが、その点は認められますか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような観点からは十全ではないということは、これは事実であろうと思います。
  9. 河上民雄

    河上委員 非核原則というのはわが国において国の方針として内外に宣言をしておるわけでありますけれども、それとこの核防条約とを比較いたしました場合に、この核防条約では、少なくとも非核兵器国におきましては持たず、つくらずという点がここで義務づけられておって、非核原則の第三の持ち込ませずについては、この条約では必ずしも義務づけられていないというふうに理解して間違いありませんか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 核兵器国管理権を持ったままの状態であれば、持ち込むということはこの条約そのもの禁止をしていない、こういうことだと思います。
  11. 河上民雄

    河上委員 その辺が実は、先ほど申し上げました第三の、非核兵器国への安全保障が必ずしも明確でないということと、そしていまのお答えのありました大臣も認められた点との関係で、少なくともわが国でこの条約を審議する場合に非常に重要なポイントになると私は思うのであります。私は、これからぼちぼちいろいろなことを伺っていくつもりでありますけれども、まずその議論の前提として、以上のことを確認さしていただいた上で順次質問を進めてまいりたいと思うのであります。  まず第一に、この条約を見ますると、発効後二十五年間ということでありますが、すでに五年たちましたので、向こう二十年間わが国は核を持たぬことを、非核兵器国である限りそういうことをここに選択するという一つ意味があると思います。しかし、これから二十年間の国際情勢長期展望というものをどのように理解しておるか、またいままでの五年間の核軍縮の成果というか、そういうようなものをどういうように理解しておるかということをまず伺いたいと思うのであります。  先ほどの国連局長お答えによりますると、私が指摘いたしました第一点ですね、核兵器拡散そのもの禁止しておらない、しかしこの条約は、核兵器拡散ないしは増大の防止に役立っているというようなお答えでございましたけれども、この五年間の米ソ中心とした核軍縮の実態を一体政府はどのように理解しておるか。量的にも質的にも実際にはどんどん進んでおって、いわば拡大均衡という形になっておることは否定できないと思うのでありますけれども、その点、外務省はどのようにお考えになりますか。
  12. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この核防条約成立しましてから今日までの、特に米ソ中心とする核軍縮がどのように進展したか、またそれをどのように見るかという御質問かと思いますが、この条約ができる前とできた後の軍縮関係する事態の進展ぶりを比較いたしますと、非常にはっきりしたことは、この条約成立した以後に、特に米ソ中心としました核戦争防止協定あるいは核の軍備管理、これは特に核兵器中心とするそういう条約が相次いでできたということ、それから特にSALTⅠ、Ⅱを通じまして、米ソ間に核兵器の、これは必ずしもすぐに縮小には通じませんけれども、一応の軍備管理目的とした話し合いをもとに、その枠内で漸次削減していくという話し合いがいま進みつつあるわけでございます。これは確かに、この条約成立後にあらわれた顕著な現象でございます。これはやはり核防条約の持つ意味というものが、間接的ながらそこにあらわれているんではないかと思います。  御参考のために、再検討会議の場におきまして核軍縮の問題が議論されましたときに、特に米ソ間で行われている核軍縮についてのいろいろな評価についての議論が行われたわけです。特に非同盟諸国は、いままでの軍縮進展ぶりが不十分であるということで、ある程度時間的な制限をつけたプログラムを決めるべきであるという相当急進的な主張をいたしたわけでございますが、これに対する米ソの反論と言いますか考え方は、一つはこの核防条約の持つ意味を間接的ながらあらわしているのではないかと思います。どういうふうに言ったかということを御参考までにちょっと引用させていただきますと、アメリカ代表はこう言っております。SALT交渉以前においては米ソ間の意思の疎通は存在しなかった。双方が疑心暗鬼のまま無制限核軍拡を行わざるを得なかったけれども、SALT以降は戦略核兵器削減基礎がつくられ、特にABMの制限条約成立によって、核攻撃兵器開発競争の歯どめが設けられた意義は大きい。米ソ最高首脳ともSALTの成功にみずからをかけているのみならず、米ソ国家的利益核兵器拡散条約強化に結びついており、またこの条約強化核軍縮進展にかかっていることを十分承知しているということをアメリカ代表が述べまして、その後ソ連代表が米国と同様に、米ソ間の軍縮協定進展ぶり評価しまして、冷戦時代には核兵器拡散条約がそもそも不可能であったということを指摘しまして、この条約なしには米ソ間の軍縮取り決め成立は容易でなかったというふうに述べておるわけでございます。  これは米ソの見方でございますけれども、この核兵器拡散条約ができた以後の軍縮進展がどのような背景のもとに行われたか、それからまた、それがどういうような意味を持つかということは、この条約成立以前の米ソ間のただの対立状態に比較しまして、われわれとしては評価すべきところがあるのではないかというふうに考えております。
  13. 河上民雄

    河上委員 いろいろ御説明いただいておるのであれですが、いまのお話では核防条約成立米ソ間の、核軍縮じゃなく核軍拡だと思うのですけれども、核軍拡に一種の秩序をもたらしたという意味評価をしておられるようであります。外務大臣は、米ソ関係というものは今後の国際情勢長期展望の中でどのように発展していくというふうにお考えになっておられますか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり核兵器中心とした米ソのいわゆる支配力というものは、今後見通し得る将来において一種のバランスのとれた状態で継続していくのではないであろうか、その間、あるいは中国核保有が一定の限度に達しまして、現在の二極的な構造から幾らか多少変化があるかと思いますけれども、しかし相対的に米ソの優位というものは変わらないであろう。そういう姿の中で、先ほどもこれは米ソ軍拡ではないかという御指摘があったわけですが、やはりこの両者の間のバランスがとれておるということは、そうでなければならぬと両者考えておること自身は、ある意味で勝手と言えば勝手でございますけれども、認めざるを得ないので、したがって、バランスをとったところでお互い競争をやめようではないかという動きは、これはベストの方法ではありませんけれども、次善のやり方として認めてもいいのではないだろうか。つまり、そうでありませんともう青天井競争になるわけでございますから、多少天井は高過ぎる、われわれの希望から言えばもっと低いところの天井で始めればいいではないかという気持ちはありましても、しかし青天井よりはそれでもまだましで、そこからだんだんに削減をしていくというそのようなアプローチは、ベストではないが次善アプローチとして認めてもいいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  15. 河上民雄

    河上委員 七五年のアメリカ国防報告によりますると、ソ連新型ICBMが最近実戦配備に入ったということを大変重視しておりまして、その脅威を強調しております。もしソ連がその戦略計画において自制を示さなければ、アメリカウラジオストク合意で取り決められた限度まで戦略兵器水準を高める計画である、こういうことをはっきり言明しているのであります。いま外務大臣青天井よりはましだという議論でございますけれども、実際には、いままでの核兵器ではなく一般的な軍縮は、常にバランスのとれたエスカレーションということで来ておる。そのために結局破波に行くわけです。そういう様相がすでにここで出ておるように思うのでありますが、外務大臣はこういうような状況を好ましいとお考えになっておられますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、それ自体好ましいことかとおっしゃられれば決して好ましいことではないと申し上げるよりほかはないと思いますが、ただ、米ソとも実は持ち過ぎるほどの核兵器をもう持っておって、相手さえなければこれはもう十分過ぎるほど持っておるということで、そのことはお互いが認識をし始めておりますから、これ以上の拡大というものは無意味ではないか、お互い合意さえあればというところまでは話がわかってきている。これは国内情勢もあろうと思うのでございます。国内情勢もあろうと思いますけれども、どう考えてもお互いさえ自粛すれば抑え得るものであるということははっきりしておるわけでございますから、いまおっしゃったようなことそれ自身は決して好ましいとは申し上げられませんけれども、まあベストではなくても、ベターなところへ落ちつきつつあるとは申し上げてもいいんではないかと思います。
  17. 河上民雄

    河上委員 国際情勢の中で、いま中国について言及されましたけれども、私は核防条約中国が入ってないということは、よしあしは別として、やはり大変大きな問題であろうと思うのであります。核防条約ヨーロッパ諸国にとって、もしソ連が入っていない核防条約というものがどういう意味を持っているかということを考えてみましたら、アジアにおいて中国が入ってない核防条約というものの日本にとっての意味というものが、どれほど重大なことであるかということが想像がつくと思うのであります。そういう意味で私はやはりここで、中ソ関係それから米中関係が今後どういうふうに発展するかということについて、外務大臣がいま長期展望としてどのようにお考えになっているかを伺っておきたいと思うのであります。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどもちょっと触れたところでございましたが、中国の現在の立場から判断いたしますと、ある程度核兵器の蓄積を行っていくであろうというふうに想像されます。しかしそれであっても、相対的には米ソの圧倒的な優位ということは恐らく変わらないであろう、したがって、現在に比べますと、仮に十年あるいは十五年という期間の中で、中国が相対的にいまよりは核兵器の蓄積を行っていくということはありましても、それ自身は、いま中国の置かれている立場から見まして、非常に攻撃的な性格を持ったものであるとは考えにくいし、また米ソバランスを崩すというところに至ることはなかろう、そのような判断をいたします。
  19. 河上民雄

    河上委員 米中関係が今後どういうふうになるとお考えになりますか。ことしフォード・アメリカ大統領の訪中が予定されているわけでございますけれども、これは一九七二年のニクソン大統領の訪中以来のことでございます。長期展望として、米中関係は今後どういうふうになっていくというふうに大臣はお考えですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当面、中国としては隣国からの脅威を相当感じ、またそれを公に強調しておるような立場でございますから、米国との間はなるべく円滑な形で推移させたいと考えておると思いますし、米国といたしましても、中ソというものを考えますと、そのいずれとも関係を悪くしたくない、そういう立場であろうと考えております。
  21. 河上民雄

    河上委員 そういうふうに重要な中国の地位を考えますときに、核防条約中国が入っていないという意味は、少なくとも日本にとっては、フランスがこれに入っていないということは格段の違いがあると思うのでございます。先ほども申しましたように、ヨーロッパ諸国にとって、ソ連が入っていない条約というものを想定した場合に、やや近いぐらいの意味があるのではないか、私はそう思うのでございますが、外務大臣は、中国核防条約に入っていないという事実についてどのような認識を持っておられますか。また、中国に対して日本政府としてこの問題についてどういうような話し合いをしたことがございますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らく中国は、核保有国であるところの隣国との関連で、相対的な安全を確保できるまでは核の蓄積を続けていくであろう、そういうためのフリーハンドを縛られたくないという考えであろうと思われますが、しかしそのことは、わが国を指向しているものとはきわめて考えにくいばかりでなく、実はわが国自身は日米安保体制のもとにございますので、そういうこととの関連で考えますと、確かに中国がこの条約加盟することは望ましゅうございますけれども、それが加盟していないからといって、わが国自身加盟をするか否かの判断をそれによって左右されるというほどのことではないというふうに考えます。
  23. 河上民雄

    河上委員 国際情勢長期展望という中で、一つはベトナム以後のアジアにおけるアメリカの防衛戦略がどうなるかという問題があろうと思いますが、外務大臣はこういう問題についてどのように理解をしておられますか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ベトナム、インドシナの紛争に介入をしたということについて、アメリカとしてはいろいろな意味で事態の回顧、あるいは反省と申してもよろしいのかもしれませんが、いたしておることは確かであろうと思います。しかし、今後の問題として、アメリカは現在現実に幾つかの安全保障についての同盟関係をこのアジアの国々と結びつつございますけれども、その相手国が十分にみずからを助けていくだけの体制と決意を持っておるということである限りは、そのような同盟関係を廃棄する、あるいは事実上空洞化するということは、アメリカとしては一般論といたしまして考えてない。しかし、ベトナム、インドシナ半島でございましたように、多くの陸上兵力を投入して、そして非常に多年にわたった戦争に巻き込まれたということは、今後の問題として反省をしておるであろうと考えております。
  25. 河上民雄

    河上委員 その場合に、アメリカの方から聞こえてくる声としまして、韓国とそしてまたその後方における日本の地位というものが非常に重視されておるわけでございますけれども、日本としてはそういうようなアメリカの新しい防衛戦略というものについて、これに対応していくつもりなのか、やはりベトナム以後の新しい情勢の中で、日本独自の道を見出さなければならないと考えておられますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 対応という意味でございますけれども、さしずめいまの時点における問題は、これは短期の問題とも申し上げられるかもしれませんが、インドシナの例にかんがみて、朝鮮半島でも同じようなことが起こるのではないかというような危惧を関係者が持ちますと、それはそのこと自身が不安の要因になりますから、そのような誤算あるいは誤解が生じないようにアメリカがしたいと考えておる、そのこと自身は、私は戦争の危険を防ぐのに役立っておると思いますので、それはそういう事態として、わが国はそれに肯定的に対処をしていくべきだと思っております。  少し長期のことになりますと、ただいまの点がはっきりしさえいたしますれば、従来からわれわれが考えておったようなこの地域における安全保障といったようなものの構想あるいは考え方に、さしたる変化を生むような事態はないのではないかというふうに思っております。
  27. 河上民雄

    河上委員 長期展望につきましてはまた後ほど伺うことにいたしますが、前段が少し長くなりましたのですけれども、この条約それ自体について少し入らせていただきます。  まず再検討会議につきまして、外務省は大変満足すべき内容だというように言っておりますけれども、その点については外務省はどういうように考えておられますか。これは外務大臣から伺いたいのです。外務省は非常に満足すべき内容だということをすでに文書でいただいておりますけれども、外務大臣としても安全保障に関する部分は非常に満足すべきものだとお考えでいらっしゃいますか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 再検討会議全体を通じまして、保有国と非保有国との間の義務と責任が均衡したものでなければならないといったような指摘、それから保有国に対して軍縮を呼びかけたような点、それから保有国が非保有国に対して、あるいはいかなる国もでございますが、通常兵器または核兵器による武力または武力の脅威を与えてはならないことを勧告するといったような点、それから保有国の一部に対していわゆるボランタリーサブミッションを受けるべきであると申しております点、保有国であって加盟国でないものについて加盟を呼びかけた点、あるいは平和利用について積極的な提言をしておる点等々、まず各要素につきまして満足すべきものというふうに判断しております。
  29. 河上民雄

    河上委員 私もこの再検討会議最終宣言の仮訳とそしてまた外務省の見解をいただいておりますけれども、この内容と関係がありますので、最終宣言の仮訳の点についてまず二、三伺いたいのであります。  これは急いで訳されたという点もあろうと思いますが、余り適切な訳とも思われないところがたくさんございます。たとえば、仮訳の最終宣言の前文に「前文の目的の実現及びこの条約の規定の遵守を確保するように」云々となっております。これは「前文」としてありまして、その次に「前文の目的」云々とありまして、日本語だけ読みますと何を指しているのかよくわかりません。これはもし訳すとすれば、「この条約」というのにすべてかかるわけでして、この条約の前文の目的並びにこの条約の規定の遵守、というより規定の実現を確保するべくこの条約の運用を検討するために集まった云々と、こうなるはずだと思うのでありますが、これは翻訳がそういう意味で非常に不正確といいますか、日本語として意味が通じないところが非常に多いのであります。大臣もそうお思いになると思うのであります。  ところがこの部分が、実は今度はわれわれの討議の資料として配付されております核兵器の不拡散に関する条約――これは確定訳だと思うのでありますけれども、その中にそのまま引用されておるんです。たとえば第八条の3というところにこういうふうになっております。訳文だけの問題じゃありませんので、私はちょっと御注意申し上げたいのでありますが、「前文の目的の実現及びこの条約の規定の遵守を確保するように」というふうにしてありますが、これは日本語として余り適切な訳ではないということと、それから「遵守」というのは英語ではリアライズになっておりますが、ほかの文章をずっと読んでいきますと、遵守というのはオブザーブという言葉の訳としてあちこち使っておりまして、ここは本来なら実現というふうにすべきではないかと思いますので、非常にささいなことのようでありますけれどもちょっと訂正していただきたいと思うのです。
  30. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  この条約の第八条三項でございますが、原文で御指摘のように「パーパ スィズ オブ ザ プリーアンブル アンド ザ プロビジョンズ オブ ザ トリーティー アー ビーイング リアライズド」というふうになっておるわけでございます。これは翻訳と申しますか定訳をつくります上で、やはり通りのよい日本語にしようという考慮がございまして、いろいろと慎重に検討いたしました結果、どうも目的の遵守というよりは目的の実現であろうが、規定の実現というのはいかにも日本語としておかしい、したがってやはり規定は遵守であろう、英語としては確かにリアライズという言葉であるが、わかりやすい日本語とするためには、やはりこう訳した方がいいだろうという結論に達しまして、この部分をこのように訳しているわけでございまして、決して誤りと申すようなものではないと存じます。
  31. 河上民雄

    河上委員 特に誤りというわけじゃありませんけれども、語感の問題として私はちょっと指摘をさしていただいたのであります。  なおもう一つ最終宣言の「第七条の再検討及び非核兵器国安全保障」の中に、仮訳の二十三ページでありますが、三行目に、「変りない決意に注目する。」とあるのでありますけれども、これは原文を見ますと、テークノートというのが書いてあります。テークノートというのは一体どういう意味なのかと言いますと、例のカナダが中国承認する場合に、中国側の言い分に対してこれをテークノートするという有名な使い方があるわけですけれども、このテークノートというのは、外務省のお役人の感覚から言いまして、一体どういうような受け取り方をすべきものなのか。つまり、義務を負うことを迫られる方から言いますと、聞きおく程度になるし、義務を迫る方から言えば、あなたの言うことを忘れていませんよという程度のことではないかと思うのでありますが、そのように解釈してよろしいでしょうか。テークノートという表現を特に使っておりますので、その点を伺いたいと思うのです。
  32. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  英語の問題でございますが、二国間におきまして、いま御指摘のようにカナダと中国との間の交渉の結果選ばれた表現というような場合は、テークノートというのは先生のおっしゃったような意味、つまり何と申しますか、聞きおくとかいう場合に使われることが多い、またそのような意味合いのためにこの言葉が選ばれる場合があると存じますけれども、このコンファランスというものは、多くの国が集まっている会議自体がテークノートするわけでございまして、その意味におきましては、この用法ではノートという意味と同じような意味に解釈して差しつかえないものだと思います。したがいまして、特にその点をノートするわけでございますので、ここもその意味合いから、これを注目すると訳してもよろしいのではないか、かように考えます。
  33. 河上民雄

    河上委員 えらい訳のつまらぬことを言うようでございますけれども、ここは非常に重要な点なんでございまして、つまり先ほど来問題になっております非核兵器国に対する安全保障の約束という点について、国連局長もしばしば言及いたしました米英ソ三国のいわゆる宣言といいますかステートメントについて言及した部分でございます。したがって、ここをテークノートという表現を使ったのは、強制力がないという――米英ソ三国が言ったことを私たちは忘れていませんよというような意味合いをこれに込めておるわけでございまして、そこに、先ほど来伺っております今回の再検討会議に対する非核兵器国安全保障に関する部分について、政府はいま非常にこれを高く評価しておられますけれども、このテークノートという表現を使ったというあたりに私はむしろ非常に意味があるのじゃないか――意味があるというか、そこに苦しさがあるのじゃないか、こういうように思うのでありまして、政府が言うように手放しに歓迎できない一つの感触というものがここに出ているように思うのであります。  そういう意味で、この翻訳が仮訳で、急いで訳されたことはよくわかりますけれども、少ししさいに見ますると、この点多少ごまかしとまでは言いませんけれども、非常にうまくいったという印象を与えるためにこういうような形になっているのじゃないかとさえ私は思わざるを得ないのであります。特に、ここで訳のついでに言いますと、何とかの「宣言(同宣言は、」と書いてありまして、あたかも何か一つの特定の宣言があるようですけれども、原文を見ますと、単に彼らが述べたことというような意味でしかないのでありまして、「ゼア ステートメンツ」としか書いてないのでありまして、これはちょっと非常に、何か外交文書が、こういうものがあるかのごとく受け取られるおそれもあります。そういう意味で、この翻訳に基づいてわれわれが何か核防条約について審議をいたしますことは、非常な誤解を招くおそれがあるというふうに思いますので、これは技術的なことかもしれませんけれども、ぜひ訂正していただく必要があると私は思います。  いずれにせよ、先ほど来外務省安全保障に関する部分について非常に見るべき前進があったと言いますけれども、今度の再検討会議で、果たして五年の間に見るべき前進があったかどうかという非常に肝心な点について、この最終宣言はテークノートという表現でまとめているということをわれわれはもう少し注目しなければならない、こんなふうに思うのでありますが、大臣、いかがでございますか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる米、英、ソのかつての宣言、ステートメントということを宣言としたことはそれでよろしいのだと私は思います。それが国連決議二百五十五号で歓迎された、これもそのとおりだと思います。つまり問題は、核保有国がもう少しはっきりしたことを言ってくれてもいいではないか、あるいは国連安保理決議そのものがもう一つ踏み込んでくれてもいいではないかということは、河上委員の言われますように、非保有国から言えばそういう希望は確かにあるであろうと思うのです。もっとやってくれなかったかなということはございますが、しかし、現実の問題として、これが核保有国のいき得るぎりぎりであったということも事実であったと思います。テークノートと言ったことは、日本文の仮訳はこれで間違っていないと思いますが、むしろ問題は、もしそのステートメントなり、安保理事会決議がもう一歩さらに進んだものであったならば、会議はそれをウエルカムできたかもしれない。しかし、その点に何がしかの不満はある。非保有国といたしますと不満はあるが、そこまでぎりぎりいくのはいったということでありますから、恐らくそういう意味がテークノートということに、ウエルカムでないところに入っているだろうということは想像できます。しかし、それは保有国側の宣言なり安保理事会決議なりの実体の問題なんでございまして、この仮訳そのものが間違っているというようなことではないんだと私は思うのでございます。
  35. 河上民雄

    河上委員 私も翻訳が決定的に間違っているというふうに申し上げているわけではないのでありますが、テークノートという表現が使われているということの中に、今回の会議の不満足さという感覚がにじみ出ている、こういうことを残念ながらこの訳からは見出せないということを御指摘申し上げておるわけでございまして、政府が言うように、そんなに万々歳であったということは今回の再検討会議でも言えないんじゃないか、そう私は思うのであります。  第七条の非核兵器国安全保障につきまして、メキシコなど非同盟の十九カ国から提案があったことはこの前もちょっと御報告がございましたが、これに対する日本政府の態度を伺いたいと思うのであります。  これは一つの非常に意義ある提案だと私は思うのであります。第一は、百カ国に達したとき地下実験十年間停止。五カ国ふえるたびに三年間停止期間を延長すること。第二は、百カ国に達するとき、ウラジオストクの合意の半分にすること。第三は、米、英、ソ三国は、核兵器を置いていない国に対し核兵器攻撃威嚇などをしないこと。また他の非核兵器国に対して最初の攻撃を加えないこと。こういうA、B、C三つの内容を含んでいるようでありますが、これに対する米ソの対応はどういうものであったか、それを伺いたいと思います。  その前に、日本政府のこの提案に対する態度を伺いたいと思います。
  36. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答え申し上げます。  いまのような提案に対するわが方の考え方は、非核兵器国安全保障のために一層有効な措置をとる必要があることはわれわれとしても十分認め、またそれを強調しておったわけですが、そのための具体的な措置については、この会議参加国の間にあるいはグループ国の間に見解が対立しておらない状況におきましてコンセンサスを得るに至っていない。したがって、この点についてわれわれとしてははっきりした態度をとることはできない。  ただ、申し上げておきたい点は、わが方はこの会議には正式のメンバーとして参加しておりません。投票権もございません。つまり、会議の決定に参加する権利あるいは決定につながるような文書、たとえば決議案のようなものを提出する権限がございませんので、日本側の考え方の表明はいわば非公式に間接的に行われたということでございます。
  37. 河上民雄

    河上委員 それでは、非公式、間接的に行われた日本政府の態度というものはどういうものでございましたか。
  38. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 核実験の禁止あるいは核戦略攻撃兵器の削減に関して出されましたいまのような提案、つまり、加盟国の数がふえるに従って削減率をふやしていくということが、特に米ソ中心とした軍縮交渉に対しまして果たして適当な方法であるかどうかについてわれわれとしては疑問を持ったわけでございます。つまり、米ソの核バランスとの関係から申しまして、単に核兵器だけを取り上げて話し合いを行う、あるいはそういう算術的な方法を適用することが適当であるかどうか、この点は特に同盟関係にある国にとっては相当真剣な配慮を払わなければいけない問題であるということで、われわれとしてはこれに対して非常に消極的な態度をとったわけでございます。
  39. 河上民雄

    河上委員 いまの御答弁で明らかなことは、メキシコなど非同盟十九カ国の提案に対して日本政府は、非公式ではあったけれども、反対である、消極的だということでありますが、その理由はあくまで、核軍縮よりも核バランスといいますか、核抑止力に重点を置いた考え方がその背後にあるのではないかと思うのでありますが、そのとおり理解してよろしゅうございますか。
  40. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 日本軍縮に対する考え方は、軍縮そのものについて、もちろんできるだけ推進すべきであるという考え方は変わりはございませんけれども、現実国際関係、特に米ソ中心としました核戦略バランスあるいは相互戦力バランス考えました場合に、このバランスを崩さないことに配慮をしながら軍縮を進めていく、これは若干むずかしい調整を要するかと思いますけれども、まずそれぞれの関係国の安全保障に基本的な障害を起こさない、そういう影響を受けないということにまず配慮を置きながら、その条件が最小限満たされた上で軍縮を進めていくということがわれわれの基本的な考え方でございます。
  41. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、いまのお話で、いまの政府の態度がある程度うかがわれるのですが、実際核軍縮と核抑止力というものとがそういうように並行して進められるものかどうか。むしろ核軍縮が進めば進むほど核抑止力というのは減退せざるを得ない、核抑止力を高めれば高めるほど核軍縮は困難になる、そういう二律背反的な関係にあるのが実態ではないですか。過去の歴史においてもそうだと思うのです。いまのお話は、核軍縮を核抑止力の存続というものとうまくバランスをとりながら進めていきたいということのようでありますけれども、それは事実上不可能ではないですか。外務大臣、いかがでございますか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもがこの条約を御承認いただきたいと考えておりますのは、とことん申せば、それがわが国の安全、平和につながるからであるということでございます。同じような意味で申しますと、残念ながら今日の世界の現状においてわが国が米国の核抑止力に頼らざるを得ない、これをなくしてしまってはわが国は安全ではないということもまた事実だと私は考えます。これは残念なことでありますがさようでございます。  そういう意味で、わが国はあくまで自分の国の安全、平和ということを中心に今回のレビュー会議でもわが国立場を展開したわけでございまして、そういう認識の中に立ちますと、米ソの核、非核を含めました戦力のバランスというものの上に今日の平和がともかくも保たれておるということは、ベストのことではありませんけれども、現実として認めざるを得ません。したがって、核軍縮というものが、そういうバランスを縮小した形で、バランスを崩さずにだんだんに進んでいくということが望ましいのであって、それが縮小するに従って、確かに抑止力というものは大きくなくてもいいということにはなりましょうけれども、その縮小バランスの上に持っていこうということと、抑止力を必要とするということとはそういう意味では矛盾をいたしません。拡大バランスになれば抑止力そのものはさらに大きなものでなければならない。縮小バランスになっていけば、抑止力そのものは、なくなっては困りますが、より小さいものでいいということに考えていいのではないかと思います。
  43. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、外務大臣は先ほど核軍縮進展につきまして、青天井よりはともかく秩序ある拡大均衡の方がまだましだということを言われたのですが、いまのお話ですと、核抑止力というものはいきなりゼロになっては困るけれども、だんだん核抑止力というものが減退していくことは核軍縮にとってむしろどうしても必要な条件であるというふうな御意見であるように承ったんですが、そういたしますと、先ほどのお話、情勢上の認識と大臣一つの哲学との間にかなり大きな食い違いがあるように思いますけれども、われわれの立場は多少違いますけれども、後者のように理解してよろしいんですか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点、そうではございませんで、米ソの核あるいは非核の軍事力がとめどもなく大きくなればなるほど、ことに核の場合でございますけれども、わが国に与えられる抑止力というのは自然にそれは大きくならざるを得ません。それから、しかし、米ソバランスというものがだんだん縮小バランスになっていけば、わが国が与えられなければならない抑止力というものも、これはゼロになっては困りますが、そういう小さいスケールのもので済む。こういうごく自然の意味であって、全体のバランスの大小によって、わが国が受けなければならない抑止力というものも、それはおのずからバランスに従って大小は変わっていく、小さくなっていく、こういう意味であります。  それで、私が青天井云々と申し上げましたのは、とめどもない競争よりは、ある程度天井を設けるということは意味があるという意味ですが、その天井を設けまして、それがその中で協定ができましたあと、われわれのねらっておりますことは、さらにその天井を将来に向かって下げていくということ、つまり新しい核実験の禁止であるとかあるいは新しい核兵器の開発の中止であるとか、さらには現存の核兵器の減少、廃棄であるとか、そういうことをねらっておるわけでございます。そうなりますと、わが国に与えられるべきいわゆるデターレンスといいますか抑止力も、それに従って小さくなり得るものである、こういうふうに考えるわけであります。
  45. 河上民雄

    河上委員 日本は、アメリカに対して、核兵器を使用しない、非核兵器国に対して核兵器を使用しないという約束を取りつけるつもりは、いまのところないですか。
  46. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 要するに、非核兵器国である日本に対して、核兵器国であるアメリカが、核攻撃を行わないという約束を現在取りつける必要は特にないと考えております。
  47. 河上民雄

    河上委員 それは日本に対してだけでなく、日本以外の非核兵器国に対しても核兵器を使用しないという約束をアメリカに対して求める意思がない、こういうように理解してよろしいか。
  48. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 それは、この条約あるいは再検討会議で問題になりました非核兵器国に対する安全保障は、特に核兵器国アメリカのみならず核兵器国に対して、そのような意味保障を非核兵器国に対してどのような形でできるかということが一つの大きな問題であったと思います。  御承知のように、条約本体にはございませんけれども、条約ができます直前に、先ほど申しましたように米、英、ソ三国の宣言、それからこれを歓迎する安保理決議がございましたが、この再検討会議が始まりました際に、非核兵器国一般、特に非核兵器国であります日本としましては、その米、英、ソの三カ国宣言あるいは安保理決議のほかに、さらに追加的な何らかの意図といいますか約束といいますか、というものを核兵器国からとりたいという強い希望があったわけでございます。  この点に関連しまして、わが国は、先ほど申しましたように、直接これを提案する権限はなかったわけでございますけれども、会議の最終段階におきまして、日本考え方を反映する条項がこの会議の結論として採択されたわけでございます。その趣旨は、核兵器国は――少なくともこの宣言の言い方から言いますと、この条約に入っている核兵器国、つまり米英ソでございますが、米英ソは、国連憲章に従って、すべての国が核兵器あるいは非核兵器を問わず、その使用ないしその使用の威嚇を慎むべしということが最終的にこの宣言案に織り込まれたわけでございます。これは繰り返しになりますけれども、核防条約になかった、ある意味では追加的な核兵器国の意図がこの宣言の中に織り込まれたというふうに言うことができるかと思います。
  49. 河上民雄

    河上委員 先ほどのメキシコほか非同盟十八カ国提案の中の三番目のCに、核兵器を置いていない国というのと他の非核兵器国という二つの概念を使っておるのですね。日本政府は、日本はこの二つの概念のうちどっちのグループ、カテゴリーに入るといま考えておられますか。――大変簡単なことだと思うのですけれども……。恐らく外務省には正確な文章が入っていると思いますけれども、米英ソ三国は、核兵器を置いていない国に対して核兵器攻撃威嚇をしないこと、他の非核国に対しては最初の攻撃を加えないこと、こういうような表現を使い分けておりまして、このどちらの方のグループに日本は入るのか、それを伺っております。
  50. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この二つのカテゴリーのうち、日本は最初のカテゴリーに入るというように考えております。
  51. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、わが国核兵器を置いていない国に入るわけですね。それは後に安保条約との関係で論議をいたしますときに非常に重要なことですので、私はここで伺っているわけですが、外務大臣、そのように承知してよろしいわけですね。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもうきわめて明らかだと思います。つまり日本には――ちょっと恐縮ですが、もとを読ましていただきますが、「フーズ テリトリーズ アー コンプリートリー フリー フロム ニュークリアー ウエポンズ」それに当たると思います。
  53. 河上民雄

    河上委員 それではそのことをよく、それこそテークノートさしていただいて先へまた進みます。  各国の批准状況について若干伺いたいと思うのでありますが、フランス中国がこの条約加盟する見通しはどのように考えられておりますか。この条約の精神からいってユニバーサル アドヘーレンス、普遍的な加盟ということが強調されておるのでありますが、そういう見通しはどのように考えられますか。また、中国と国交が回復してすでに数年になりますけれども、この条約のことで話し合われたことがございますか。
  54. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 中、仏とも加盟しておりませんし、また加盟するであろうというようなインディケーションといいますか、そういう情報はございません。ただ、フランスにつきましては、従来非公式の関係でわれわれが知り得ておりますことは、核拡散防止については非常に深い関心を持っておりまして、特に拡散に通ずるような平和利用の協力関係において、相当程度の慎重な配慮をしているというふうにわれわれは了解いたしております。それから中国との関係では、いま御指摘のような話し合いは行われたことはないと承知いたしております。
  55. 河上民雄

    河上委員 将来お話し合いをする意図はございますか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはやはり今回の最終宣言でも呼びかけをしておるのでございますから、わが国としては、わが国立場から機会を見てそういう希望なり要請なりはいたすことが必要であると考えています。
  57. 河上民雄

    河上委員 イスラエル、エジプト、インド、パキスタン、南アメリカの諸国の加盟の見通しはございますか。
  58. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまお挙げになりました国の大部分は、いわば紛争の当事国みたいな国柄であろうと思います。われわれがいままで承知いたしておりますところでは、インドはこの条約に入る意思はないようでございます。したがいまして、この隣国であるパキスタンは、インドが入らない以上は入らないというふうな考え方を持っているようでございます。それからエジプト、イスラエルにつきましても、インド、パキスタンと同じような関係があるようにわれわれは理解いたしております。それから南アメリカと言われましたが、南アフリカのことかと思いますけれども、南アフリカはどういう考え方を持っているか、われわれとして捕捉いたしておりません。入るというような意向、ないしそういう感触はわれわれいままでのところ得ておりません。
  59. 河上民雄

    河上委員 西ドイツがこの条約を批准いたしましたけれども、西ドイツがこの条約を批准した条件というものはどういうものであったのか、政府はどのように考えておられますか。
  60. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私たちの承知しているところでは、特に署名に当たって条件は付しておりません。
  61. 河上民雄

    河上委員 何の条件もなければ、西ドイツが長く批准をちゅうちょするわけはないと思うのでありまして、まあ文書に載っているかどうかは別として、政治学的な一種の条件というものを考えてみますと、恐らく一つは、非核兵器国に対する安全保障という問題で、西ドイツはアメリカのいわゆる一朝有事の際の安全保障というものを取りつけたのが一つではないかと思うのです。この核防条約の中で、二核の持ち込みを、つまり核を持っている国が核を持っていない国への核の持ち込みを特に禁じていないのは、そういうような配慮もあってだというふうに聞いておるわけですけれども、まず第一に、西ドイツがこの条約を批准した一つの政治的な条件としてはそういうことがあると思うのです。  もう一つは、今度はソ連の方がいわゆる東方外交の一つの展開の過程の中で、西ドイツに対して武力不行使宣言をして、ソ連が、つまり核保有国非核保有国である西ドイツに対して攻撃をしない、威嚇をしないという約束をした。  この二つの条件があって、恐らく核拡散防止条約を西ドイツが批准したのではないかと思うのでありますけれども、これは、そういうふうに特に表明しているわけでございませんから、文書に依拠してそういう結論を出すことは困難かもしれませんけれども、一つの政治学的な条件としてそういうことが挙げられるのではないかと私は思うのでございますけれども、外務大臣も大体そういうふうに理解をしておられますか。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 西ドイツが、最近におきまして、批准をかなり延ばしておりましたのは、ユーラトム、ことにイタリーの国会における審議が長引きまして、そして批准書の寄託は、ユーラトム各国は一緒にしようという了解があったようでございましたので、それを待っておったというのが最近の原因であったと思うのでございます。  しかし、いまおっしゃいましたように、西ドイツがこれを国会の承認を求め、批准をするに至ったのは、基本的には西ドイツ自身の安全というものについて、わが国と同様に最大の関心を持つわけでございますので、したがって、一般的なデタントの進行あるいはベルリン問題等々のある程度のとにかく決着、そのほかに先ほど御指摘がありましたように、NATOの中で在来兵力と核兵力とを合わせまして、アメリカとの安全保障の取り決めがまず十分に西ドイツの安全を確保し得る、こう考えたからであることはもう想像にかたくございません。
  63. 河上民雄

    河上委員 そこで、いまわが国と同様というような外務大臣のお言葉もありましたけれども、日本の場合、批准するに至りました条件について、いろいろ、三条件挙げられておりますけれども、それは西ドイツが最近批准に踏み切った条件とやや似たようなところもあるわけでございますが、西ドイツがそういう二つの条件が満たされたと見て、この核防条約体制に参加を決意したのとパラレルに考えますときに、日本の場合、一体どういう条件が満たされたからこの批准に踏み切ったのか。この前の本会議の質疑応答の中で、形式的なといいますか、技術的な条件については伺いましたけれども、いわば政治学的な条件としてどういうものがあったというように政府はお考えですか。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、つまり軍縮であるとか非保有国安全保障であるとか保障措置協定であるとか、御承知のことを一応前提にいたしまして、やはりわが国の場合、率直に申して日米間に安全保障の取り決めがあるということ、そのことの有効性というものが、この御承認をいま願っております政府の態度の基本にございますことは、もう事実でございます。
  65. 河上民雄

    河上委員 そのことが日米安保条約強化を条件としてという自民党の党議の内容と称するわけでございますか。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 強化という言葉が使われておりまして、これは私、幾らか誤解を招くと考えておりました。つまり確認といいますか再確認といいますか、そういうものを必要とするという議論が自民党の中にかなり行われましたことは事実でございます。
  67. 河上民雄

    河上委員 非核原則の弾力的な運用というのもその中の一つというふうに考えてよろしいわけですか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは全く関係のないことでございまして、先ほども河上委員自身が御指摘になりましたように、いわゆる持ち込ませずということ自身は、管理権を核保有国が持っております限り、これはこの条約の禁じておるところでございませんので、したがって、この条約を批准するしないということとそのこととは連関がないというふうに考えるべきだと思います。
  69. 河上民雄

    河上委員 しかしこの条約の批准について政府・与党のコンセンサスを得るために改めて議論した結果、自民党の党議がああいうふうに出てきたのだと思うのでありますけれども、条約上は関連ないことかもしれませんが、政治学的条件ということを私が申しておるのはその意味なんであります。政治学的条件としてそういうものをここに改めて求める必要があったというふうに理解せざるを得ないと思うのですが、三木総理大臣はしばしばそういうことはないというようなことを言われますけれども、そういたしますと、自民党の党議というのは、三木総理並びに宮澤外務大臣政府全体にとっては吹けば飛ぶようなものであるというような意味に解釈してよろしいのですか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは党議と申しますよりは、自民党の中の一部にそのような点についての要望がございました。要望がございましたけれども、政府としては、たびたび総理大臣が言明されますとおり、この批准との関連で、いわゆる非核原則についての政府の従来の態度を改める必要はない、こういうことでございまして、その点変わったわけではございません。
  71. 河上民雄

    河上委員 この点は、冒頭に私が大臣との間に議論の前提として確認をいたしました核防条約の基本的な性格四つを挙げたわけですけれども、そのうちの第三の点、つまり非核保有国に対する、非核兵器国に対する安全保障というものはこの条約で明確でない。そこで、この条約とは無関係にというか、一応条約条文と離れて、そこに安全保障の問題が、確認が起こってくる、そこからそういうことが起きてくるのではないか、そういう意味では全く別個のものではあるけれども、政治的に見ればこれは全く偶然ではないというふうに言わざるを得ないと思うのですが、外務大臣はいろいろ弁明せられますけれども、これは西ドイツの例から見ても、恐らくこの核防条約の批准を求めるに当たっての重要な一つの条件になっているのではないかと私は考えざるを得ないのでございます。  この問題につきましては、後にまた防衛庁長官もお見えになった中で、もう少し議論を詰めていかなければならぬと思っておりますけれども、外務大臣、もう一つの、西ドイツの場合は、つまりソ連の武力不行使宣言というような、つまり非核兵器国に対する攻撃をしないという明確な約束を、一般的なデタントということだけでなく、明確な約束を保障条件としているわけでございますが、日本の場合、それに当たるようなものがいまあるのかないのか、大臣いかがでございますか。
  72. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまお話のありましたソ連の武力不行使宣言というものがあったかどうか、私承知いたしておりません。
  73. 河上民雄

    河上委員 東方外交の一つの大きなあれは、いろいろむずかしい問題はありますけれども、ソ連との間にそういう全般的な約束というものが取り交わされたという事実も、これはもう疑いのない事実だと思うのでありますが、もし日本の場合、こういうようなことを考えますときに、やはりアジア・太平洋地域における非核地帯の宣言とか設定とか、そういうような具体的な努力を一方においてすべきではないか、私はそのように考えますが、大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非核地帯の設定の宣言ということは、今度の最終決議の中でも述べられておるわけでございますけれども、御承知のように、ラテンアメリカでそのようなものを設定するという一応の合議がまとまったわけでございますが、核保有国としてそれに賛同する、それを保障するということにならなければ意義がない。しかるところ、具体的にはソ連でございますけれども、そのようなプロトコルにソ連が加入することを今日まで同意しておりませんので、結局、地帯としてはでき上がったようなものの、実は核保有国の方が使用しないというプロトコルに加入をしないということから、現実には有効に働いていない、こういうことでございますので、構想としては考えられることでございますが、それには核保有国の側がやはりそれに加盟をして保障をするということでなければ、実際は絵にかいたもちになってしまうということだと思います。それはラテン地域の非核地帯が現在そのような状態にあるということから指摘できることではないかと思います。
  75. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日本がこの条約を批准するためのいわば政治学的な条件とは何かということになりますと、現在のところ、いわゆる日米安保の堅持と核のかさの保障ということに尽きるような気がいたしますけれども、外務大臣、いかがですか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもとより間違いではございませんけれども、より基本的には国際的ないわゆるデタントの進行と、それからわが国自身がこのような憲法を持ち、そうして三十年間それを実践してきたというそういう実績、また今後も実践するという決意、そういうようなものがもっと深いところにあると私は思います。
  77. 河上民雄

    河上委員 この条約とは別に、そういう日本の決意というものを全世界に表明するような方法というもの、またそういう意思、そういうものを表明する方法がないのかどうか。この条約加盟することのみがそういう日本の決意を表明する手段であるのか。必ずしもそうではないと思うのでありますけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国のそのような意図は、何よりもわが国の憲法、それから核を三十年間、それを文字どおり実践してきたということが一番雄弁に世界にそれを物語っているのではないか。で、この条約加盟することももとより一つ確認になるわけでございますが、反対に申しますと、この条約加盟しないということは、今後のわが国の姿勢について何がしかの疑いを抱かせる理由になるであろう、こういうふうに考えます。
  79. 河上民雄

    河上委員 しかし、この核防条約加盟する一つの条件として、核のわが国に対する持ち込みというものを一朝有事の際という条件つきにせよ暗示するようなことは、かえっていま大臣が言われた趣旨に反するのではないかと思うのでありますが、そういうような議論が現にいま横行しているわけですね。それについて外務大臣はどのようにお考えですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに私どもの党の一部にもそういう議論がございましたことは事実でございますけれども、しかし政府は、そのようなことを考えていないということを申しておりますし、また実際問題といたしまして、わが国に核の持ち込みが行われなければわが国の安全が保障できないというようなことはない、幸いにしてそういうわが国の地勢ではないというふうに、これはNATOの国々と違うというふうに私は考えるわけでございます。
  81. 河上民雄

    河上委員 大臣はいま非常に重要なことを暗示的に言われたと思うのでありますけれども、日本は西ドイツとは違うんだということを示唆されたように受け取ってよろしゅうございますね。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなことを申し上げたつもりでございます。
  83. 河上民雄

    河上委員 そこで、核兵器というのは一体何なのか。持ち込み云々ということがあるわけですけれども、核兵器ということにつきまして、この核防条約の中にどのような定義がありますか。
  84. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  この条約の中には核兵器というものについての定義をした条文はございません。
  85. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、われわれはいまこの核防条約の批准の件について審議を求められておるわけでございますけれども、日本国民として一番関心のあります核をつくらず、持たず、持ち込ませずのときに、一体核兵器とは何かということが明確でないのでは大変困ると思うのでありますが、この条約にないといたしますと、何かそれにかわる、依拠するような定義がございますか。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府は、核兵器は一般に核物質の分裂または融合の際生ずる高度のエネルギーを利用して、これを破壊または殺傷のために用いるものを言うという定義をごく概略でございますが持っております。
  87. 河上民雄

    河上委員 その定義と核防条約の中の核兵器並びに核爆発装置という表現とは全く一致するものですか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま破壊的または殺傷の目的と申し上げました点で、核兵器という定義とこの条約の定義と一致すると思いますが、核爆発となりますと、これは平和利用の問題がございますから、別途であろうと思います。
  89. 河上民雄

    河上委員 そうすると、いまの定義は核兵器という部分に当たるわけでございますね。しかし、それは日本政府がそう解釈するのであって、核防条約それ自体でそういうふうに確定しているというわけではないといたしますと、核兵器国日本核兵器を持ち込む場合に、向こう側はこれは核兵器でないというふうに言うかもしれませんし、日本側から言えば、これは核兵器だから持ち込まれては困るというような、そういうボーダーラインのケースというのが起こる危険はないでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる核保有国が持ち込むという場合ですが、管理権を持った状態で持ち込むのであれば、これはこの条約禁止するところでございません。それから、管理権わが国に渡すということでございましたら、わが国は先ほど申し上げたような定義を持っておりますので、それの定義に該当するものは、この条約わが国はもらうことができないというのが政府立場になると思います。
  91. 河上民雄

    河上委員 ただ、解釈が食い違った場合はどうしますか。向こうが管理権を持っているわけですから、その内容をわれわれは知ることができない。向こうは核兵器とみなさないで、日本非核原則を尊重すると言いながらも、向こう側の解釈で、これは核兵器でないということで持ち込んだ場合にどうするか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはこの条約自身の御議論ではなくて、つまり事前協議との関連で、われわれが核兵器考えておりますものの定義は申し上げたわけですが、先方がそういうものを核兵器と思わないという場合のことでございますか――これは非常に厳密にそこのところを申し上げるとすれば、法制局等々の応援をちょっと答弁に得なければならないと思いますが、一般に考えまして、そのような国との関連は当然友好関係にあると考えることができると思いますので、わが国の解釈というものは相手方にもはっきり知らせてあるわけでございますから、疑問のような余地があれば、当然お互いの間の相談が行われると考えて心配はないのではないかと思います。
  93. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、それは確定解釈がなくても信義と友愛で大丈夫だ、こういうような御意見かもしれませんが、アメリカ側の核兵器の解釈というのは、恐らくアメリカ原子力法の定義を最も重要な指針とするのではないかと思うのでありますけれども、その米国の原子力法の中にあります核兵器の定義によりますと、非常に微妙でございまして、原爆、水爆等の核爆弾及びロケットなどの輸送手段から分離され、かつ分割され得る部分である核弾頭が核兵器である、これはもう議論の余地がないのでありますけれども、文面に必ずしもないですけれども、そこから出てくる解釈として、核弾頭を分離し得る輸送または推進のための手段としての原子力推進潜水艦、ICBM等がこれから外れてしまうわけである。そしてもしアメリカが当然この核拡散防止条約条文作成につきましては、米国とソ連の意見というものが事前の段階において出されているはずでありますが、その場合に、アメリカ側は米国の原子力法の核兵器の定義に従ってこの条約案文を作成したと思うのであります。  そういたしますと、核弾頭を分離し得る輸送または推進のための手段としての原子力推進潜水艦、あるいはICBM等などは核兵器とは言えないという、非常に窮屈な解釈かもしれませんが、そういうことになりやせぬかと思うのですが。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 後ほど政府委員から一言補足をいたしますけれども、わが国と米国との事前協議の了解は、核弾頭並びに中長距離ミサイル及びそれらの基地の建設ということになっておりまして、したがって、いま河上委員の御指摘のような場合に、あいまいな状態を生ずるといけませんので、中長距離ミサイルの持ち込みそのものも事前協議の対象にいたしております。純粋の原子力を推進力としました船舶、潜水艦等は、これは核兵器ではないというふうに考えております。
  95. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日米原子力協定というものはアメリカ原子力法のいろいろな用語の定義というものを受け入れてやっておるのかどうか、これは全く別なものであるのかどうか。
  96. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この核兵器の不拡散に関する条約上のものでございますが、条文上は、先ほど私が申し上げましたように、核兵器についての明確な定義はございませんが、しかし、アメリカは先生も御指摘のように、その運搬手段というものは核兵器とは考えていないわけでございまして、条約上の解釈といたしまして、核兵器というのは、核爆弾及び核弾頭を指すものである。これはアメリカ原子力法上の定義も念頭に入れてアメリカがこの条約の起草に有力に参加したわけでございまして、そのような意味で、核の運搬手段というものはこの条約上に言う核兵器というものには含まれていないという解釈でございます。  最後に、日本アメリカとの原子力協定でございますが、そこにも書いてございますように、日本側は、ここに条文がございますが、「「原子兵器」とは原子力を利用する装置で、その主たる目的が兵器、兵器の原型若しくは兵器の試験装置としての使用又はそれらの開発にあるものをいう。」ただし書きがございまして、「ただし、その装置の輸送又は推進のための手段は、それが当該装置の分離及び分割の可能な部分である場合には、含まれない。」ということの定義がございます。
  97. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、大臣の御答弁で、事前協議に言うところの装備の重要な変更という中にある、想定されておる核兵器というものと、この条約の中にある核兵器とは同じものなのか、若干の食い違いがあるというふうに認識しておられるのですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に厳密なお答えが私にできるかどうか、いささか疑問でございますが、同じものと考えております。  したがいまして、事前協議の対象にはいわゆる核兵器、核弾頭に含まれないところの中長距離ミサイル、この持ち込みを事前協議の対象に加えておるわけでございます。
  99. 河上民雄

    河上委員 しかし、この核拡散防止条約の中にある核兵器の定義をもし米国の原子力法に依拠して、それを指針として考えました場合には、どうもICBMも事前協議の対象にならないおそれがあると思うのですけれども、それについては事前協議ではもう少しきちっととらえているというふうな先ほどの御答弁のような気がしたのでありますけれども、いかがでございますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございまして、そこに誤解あるいはあいまいさを生ずるといけませんので、事前協議におきましては中長距離ミサイルも協議の対象となるということを日米間で了解をいたしておるわけでございます。
  101. 河上民雄

    河上委員 要するに、分離され、分割された部分といえども、核弾頭をつけて使用する以外に使用方法がないというようなものは核兵器であるというふうに理解すべきじゃないかと思いますけれども、大臣はいかがでございますか。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでよろしいと思います。
  103. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと補足して説明さしていただきますが、事前協議の対象となります装備における重要な変更という場合は、御承知のとおり、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設ということになっておるわけでございます。  一方、このNPT条約におきましては、ただいま伊達参事官の方から説明がございましたように、核爆弾及び核弾頭を運搬する手段であるミサイルは含まれていないということでございますから、この両者の間では必ずしも一致しておらない、事前協議の対象の方がより広いと私は考えます。
  104. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、より広いというか、より厳密であるというか、いずれにせよ若干の食い違いがあるということだけは認められるおけですね。そうですね。――では、分離され、分割された部分といえども核弾頭をつけて使用する以外に使用方法はないというものは、やはり核兵器というべきである、そういう解釈に立ちまして、MARV、MIRVというような新しい兵器といいますか、は核弾頭ではないが核兵器システムとして考えなければならないと思うのでありますけれども、これらは核兵器と言うのか、言わないのか。
  105. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 いま仰せられましたMARVでございますか、私たちが考えております中長距離ミサイルというものの中に入ります場合は、これは事前協議の対象となります。
  106. 河上民雄

    河上委員 もう一つ、OTHの施設が今度は撤去せられるというようなことでありますが、ああいうものは核兵器システムとして考えるのかどうか、そして事前協議の対象になるのかどうか。
  107. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 従来、この核システムということについていろいろ御質問があるわけでございますが、この核システムという概念はわれわれとしてははっきりいたさないわけでございますけれども、これを一般的な用語として、核兵器の積載とか発射手段とかその貯蔵施設とか管理部隊とか、あるいはそれに関連する訓練等というもの全体を含めて言われるということでございましたならば、われわれの考えております核弾頭といいますのは核弾頭そのものでございまして、全体を、こういう核システムを指すものではない。したがって、われわれはこの事前協議の対象となるものとしては、あくまで核弾頭で押さえていくという考えでございます。したがって、核システム全体を対象としては考えておらないということでございます。
  108. 河上民雄

    河上委員 その辺になりますと、今後いわゆる核兵器の発達に伴いまして非常に微妙な問題が次次出てくると思うのでありますが、核兵器について、いままで御説明のありました日本政府考え方、この条約の解釈ですね、世界に通用する統一解釈と言えるのかどうか。それとはやや違いますけれども、日本政府としてはこういうふうに理解しておるということなのか。少なくともいま求められておりますのは、この条約に対する批准の案件でございますから……。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約核兵器というものの定義をいたしておりませんので、条約考えておるところというものは何かということはこの条約に即しては申し上げにくいわけですが、しかし先ほども申し上げましたように、核物質の分裂あるいは融合によって生ずるエネルギーを破壊または殺傷の目的に利用する、そういう種類の兵器という定義は、かなり概括的な、一般的な定義として私は通用するのではないだろうかと思います。この条約そのものは定義をいたしておりませんけれども、ただいま申し上げたことでほぼ包括的に大抵の人は考えてまず異存はないのではないかと私は思っております。
  110. 河上民雄

    河上委員 この条約の中には、核兵器並びに核爆発装置というように必ずくっついて表現がなされておるのでありますけれども、この「核爆発装置」とはどういうものか、これについて政府の解釈はございますか。
  111. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 「核爆発装置」とはどういうものを考えておるかということを申し上げますと、衝撃波を伴う大量のエネルギーを瞬間的に放出するように設計された装置であるというふうに考えております。したがいまして、この定義規定の、条約の本体の中に「核兵器その他の核爆発装置」とありますが、いま申し上、げました「核爆発装置」の定義の中に核兵器が含まれます。したがって、「その他の核爆発装置」とありますのは、核兵器以外の爆発装置を指すものというふうに解しております。
  112. 河上民雄

    河上委員 その中には平和的な目的といいますか、ダムを掘ったり何かするために使うような核爆発装置なども含まれるわけでございますか。といって当然それが人体を殺傷するかどうかということになりますと、それを目的としないかもしれませんけれども、現実にはそこに長年住めなくなるとか、あるいは人体を殺傷するというケースもあるわけだと思うのです。現実に、この国会の中でも、その問題が非常に大きく話題になったこともあるわけですが、そういうようなものもこの「核爆発装置」の中に含まれるのかどうか。
  113. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど申しました「核爆発装置」、これは広い内容を持っておりまして、いま御指摘の、いわゆる平和目的のための核爆発装置も爆発そのものの科学的な性質は同じでございます。したがいまして、平和目的としても、そういう名目で行うにしても、この核爆発装置そのものは条約禁止されております。したがいまして、平和目的たると軍事目的たるとを問わず禁止されております。ただこれは、条約のほかの条文におきまして、将来科学的に、平和目的のみに使用し得る段階に達した場合には、その利益を非核兵器国のために均てんするための機関の設立、あるいは協議手続というものが規定されております。
  114. 河上民雄

    河上委員 核爆発装置の研究開発は日本では行わせないということになるのですか。
  115. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 条約上は、先ほど申し上げましたように、核爆発装置そのものの製造取得あるいは管理権の移譲は禁止されております。つまり第二条によりまして、この条約に入った場合に、非核兵器国としての義務としてできないわけでございますが、ただ平和目的のためにこの原子力のエネルギーをどのように使うかという研究そのものは禁止されているわけではございません。
  116. 河上民雄

    河上委員 いずれにせよ、核兵器として使用すること、あるいはまた、簡単に核兵器に転換することができるような装置が開発された場合、やはりこの条約で規制されるのですか。
  117. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 将来、科学の進歩によりまして、いわゆる平和目的核爆発の結果、放射能もほとんど生じないし、あるいはそれによって爆発地点あるいはそのコミュニティーに何らの障害も起こらないという保障が行われた場合には、この核爆発を認めてもいいじゃないかという議論は一方にございますけれども、ただ、この条約そのものの立て方は、平和目的にしろその他の目的にしろ、爆発装置そのものについては、一条、二条で禁止されております。  したがいまして、条約ができましたときに、平和目的の核爆発、つまり先ほどのような、いろいろな放射能その他の非常に地域あるいは健康に害のあるような障害が除去された場合にはどうするかということを、実は予定しておらなかったわけでございます。したがいまして、そういうような事態が生じたときにこれをどういうふうに扱うかということは、あるいはその時点で条約当事国が協議する問題になろうかと思います。
  118. 河上民雄

    河上委員 この条約は、いずれにせよ、核兵器というのは一体どういうものかということにつきまして明確な定義がなくして、ともかく核拡散防止するということになっているわけですけれども、非常にはっきりしたことは、この条約では、核兵器国拡散防止する、核兵器国がふえないようにするということが主眼であって、核兵器そのものが縦にせよ横にせよ拡散、増大するということについては必ずしも有効でない、というよりむしろ全然禁じていないということが先ほど指摘されているわけですけれども、そういうようなことと、この核兵器の定義がないということとかなりつながっているような気がいたします。  そこで、この条約の非常に重要なポイントになっております核兵器の移譲も管理禁止するというこの一点であります。この移譲とは何か、管理とは何かということが問題になりますが、この点について政府は明確な見解を持っておられるのかどうか。
  119. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  この第一条にございます管理を移譲しないということでございますが、ここに申します移譲とは、所有権ないしは管理権の移転を指すものと考えます。つまり、核兵器その他の核爆発装置の所有権を移転するとか、ないしはその管理権核兵器国から他の国へ渡すということが禁止されておるものだと考えます。  それから管理と申しますのは、その核兵器の使用を一方的に決定する権能、つまり、みずからの意思による決定によりまして核兵器を発射する権限と申しますか権能、それを管理権というように考えているものでございます。
  120. 河上民雄

    河上委員 この場合に、NATOの理事会でかつてアメリカ側から提案されたような、いわゆる多角的な核戦略にあらわれたような共同管理というものは含まれるのかどうか、非核兵器国に対する一つ管理だけが含まれているのか、この共同管理というような問題はどうなっておるのですか。
  121. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま御指摘のような共同管理の場合には該当するものだと考えます。すなわちここで禁止されている行為であると考えます。
  122. 河上民雄

    河上委員 この条約で、核兵器の持ち込みは、管理権を移譲しない限りは禁止されていない、これは確かですね。  そこで、これは日本のような場合非常に大きな問題でございまして、先ほどのメキシコなど十九カ国の提案の中にも、核兵器を置いてない国、非核兵器国と、その他の非核兵器国、こう二つの分類を設けているのを見てもわかりますように、この点は非常に重要だと思うのでありますけれども、従来の国際会議核兵器の持ち込み禁止話し合いがなされたことがいままであるのかないのか。また日本政府は先ほど来の御答弁から見ますと、いろいろむずかしい点もあるようですけれども、これから将来そういう提案をされるお気持ちがあるのかどうか、これを伺いたいと思うのです。
  123. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私の承知している限りでは、核兵器の持ち込み禁止考え方国際会議の場で出たというのは、ラテンアメリカ非核地帯設置条約をつくるときにあったということでございます。つまり非核地帯設置の場合には、当然のことながら、その地域内の国が核兵器をつくらないし、持たない、また他から核兵器を持ち込まないということが、まず基本的な条件になろうかと思います。その関連で核兵器を持ち込まないという議論が、恐らくはかの非核地帯設置について話が行われる場合にも起こるであろうというふうに考えます。
  124. 河上民雄

    河上委員外務大臣 ラテンアメリカでそういう提案がなされた、そういうことから考えますときに、世界の中では核爆弾の洗礼を受けた唯一の民族として――ラテンアメリカで、もうそういう提案をしているのです。そういう点から見まして、日本政府としてむしろ積極的にそういうラテンアメリカ非核地帯宣言に当たるようなものを、このアジア・太平洋地域で目標としてでも提案してみるという気持ちはないかどうか。ぼくは当然あるべきだと思うのであります。単に核防条約に入るならば、日本の誠意が証明されるとかいうような消極的な発想ではいけないんじゃないかと思うのでありますが、このラテンアメリカ条約草案に匹敵するような、核持ち込み禁止を含んだような非核地帯設定を、この際国際会議で提案する気持ちがないかどうか、私は大臣に伺いたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ラテンアメリカ非核地帯構想というのが、一部の核保有国がプロトコルに参加しないために実際上有効に働いていないということは先ほど申し上げたとおりでございますが、さて次に、アジアという地域でございますが、そのアジアにたとえば中国が含まれるのか、ソ連は含まれるのかといったようなことを考えてまいりますと、まずアジアというのをどういうふうに考えるかという非常にむずかしい問題に一つぶつかるのではないかと思います。  次に、ラテンアメリカのプロトコルに加盟しなかった一部の核保有国が、そのような構想に対してどのような反応を示すかということ、ラテンアメリカの例から見ますと否定的であろうかと思われますが、そのような問題がございます。  それからさらに、現実に持ち込まれていないという検証をどのようにするかということは、さらにやっかいな問題であろうかと思われます。  つまり、一般的な構想としては、最終宣言でも言っておりますように、これは確かに一つ考えられることではございますけれども、わが国が、たとえば私がこの場でそういうことを考えると申し上げるにいたしましては、問題はきわめて複雑でありますし、また、ただいま申し上げましたような幾つかの困難を伴うのではないかというふうに考えます。
  126. 河上民雄

    河上委員 ラテンアメリカ非核地帯宣言構想というものが、私は非常に意味があると思いますのは、きょうの新聞でも、ブラジルと西ドイツの原子力協定ができまして、今後ラテンアメリカ非核地帯に大きな影響を与えるであろうというような報道も出ておるわけです。やはりタイミングというものもかなりございますので、日本政府としてはそういう立場をとって、日本が過去核の洗礼を受けて、核兵器の絶滅を決意した日本政府としての誠意というものを人々に訴えるという姿勢がない限り――ただこの問題について、核防条約加盟しなければ、批准しなければ日本はどうも誠意を疑われるというだけの消極的な立場ではなくて、もう少し積極的な立場が私は望ましいと思うのであります。  いま大臣は非常に技術的なことを言われましたけれども、先ほど来議論の中でも明らかなように、この核防条約と日米安保条約関係というものがやはり実は一番大きな問題じゃないかと思うのであります。  したがって、日米安保条約に対する日本政府の態度というか、そういうものをこの際もう少し考え直さない限りは、この核防条約の真の精神を生かす方向で進めることは、もう全く不可能であるというふうに私は思わざるを得ないのであります。そうしてそれは結局、核防条約そのものの、当初申し上げましたような仕組みといいますか、欠陥といいますか、問題点といいますか、その点が必然的に日米安保の強化という一つの方策になったのではないかというふうに私は思わざるを得ないのでございます。したがって、今後この条約の審議を通じまして、もう少し日米安保条約との関係を詰めておかなければわれわれとしては非常に困るというふうに考えざるを得ないのでございます。  もう一時でございますので、私の質問は一応ここで中断させていただきます。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府立場を申し上げますならば、先刻も申し上げましたように、確かに世界の核軍縮が進み、核兵器が消滅することを祈っておりますけれども、他方で、今日の現状において残念ながら事態はそこまで参っておりませんので、わが国としては日米安保体制によってわが国の安全を守るということが緊要であると考えておるわけでございます。  また条約も、そういうたてまえから国会の御承認を得て今日作動しておるわけでございます。そこでこの核拡散防止条約わが国加盟しないということであれば、日米の安保体制が変わるかということになりますと、政府としては、日米安保体制はいずれにしても必要であるというふうに考えておりまして、その上でこの条約加盟することはさらにわが国の平和体制を推進するゆえんである、政府としてはそのように考えておるわけでございます。
  128. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時六分休憩      ――――◇―――――     午後二時六分開議
  129. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 いよいよ懸案のと申し上げてもよい核兵器の不拡散に関する条約についての質問を開始するわけでありますが、まずこの条約政府が署名される際に出されております日本政府の声明がございますね。あの声明の内容と、それからそれとは別に、ことしの四月二十二日に自由民主党の方から政府に対する要望事項として「核防条約の批准に関する件」という、内容は六項目にわたる、本条約提出に先んじての要望事項がございますね。それらの内容はただいますべて現実的には満足されているというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうかをまずお尋ねいたします。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 署名に際しましての政府の述べました点はほぼ満足されておると考えます。自民党の要望事項というのは、これは正式なものではございませんが、一部にありました意見を集約いたしたもので、これらにつきましても、その趣旨とするところはまずまず充足をしておるものと考えております。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 まずまずと、まずという表現をおとりになりましたが、それならばいずれの点がまだ満足を十分にし切れていないというふうにお考えになっていらっしゃるかということをお伺いいたしたいと存じます。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、いずれと言いますとたくさんということになるかもしれませんが、たとえば核軍縮の進行といったようなことは、これはわれわれが期待しておりますよりはどうも速度は遅い、たとえばですよ。それによって象徴されますように、われわれの要望というものは一種の理想的な状態に近づけるということを言っておるわけでございますから、その近づき方がどうもわれわれの思っているほど十分でないというようなことは、これは各点についてございましょうと思います。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 一種の理想的な状態とおっしゃる状態はどういう状態を想定なさっているわけでございますか。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、たとえば核軍縮について言えば、核兵器というようなものは最終的にはなくなってしまえばいいというのが理想的な状態でございます。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうな状態がまだ十分に満足し切れていない、そういう点は残るけれども、締結をするということに対して、日本政府としてはただいま重要な意義を感じていらっしゃるということであるわけなんですね。  さて、一つお伺いしたいことは、この条約日本締結いたしますと、当然のことながら、憲法の九十八条の二項によりまして、締結した条約についてはこれを誠実に遵守するという日本の国家義務が生じます。これは言うまでもないことなんでございますけれども、日本国憲法の九十八条の二項がそれを明らかに規定しているわけなんです。この核防条約締結をして後、日本がこれを誠実に遵守しなければならないという国家義務を考えてまいりますと、これは非核保有国としてこの条約締結するというところに大変大きな意味があるわけなんですね。先日来の外務大臣の御答弁を承っておりましても、やはりこれを締結をして、加盟国となって、国際社会の中で日本が、先ほど申し述べられた理想的な方向に向かって努力をするということが大変大きく考えられなければならない、強くそれが求められなければならないというふうなお考えがあることも私はよく存じているわけであります。そういうことからいたしますと、非核保有国として日本がこの核防条約加盟をし、そうして果たす役割りというものをはっきりとしていかなければならない。いままで日本の憲法上、この核という問題についてどう考えてきたかということを考えますと、非核保有国でございますから、核兵器は一切持たない、つくらない、持ち込ませないという非核原則というものを十分に考えた上で、この中身というものは解釈され適用されてきているはずなんです。ところが、御承知のとおりに、高辻法制局長官の公式の政府解釈によりますと、憲法第九条では、いわゆる戦術核兵器というものは解釈上持てるという立場をおとりになっていらっしゃいます。いままでそういうふうなことで一応政府の有権解釈というものは理解されてきた。今回、この条約締結して後、日本非核保有国としての立場で国際社会で大きな機能を発揮していかなければならないということになりますと、これは憲法から考えまして、いままでの解釈上、戦術核兵器は持ってもよいのだという解釈をそのまま持ち続けてよいかどうかという問題があるのじゃないかと私は思います。政府解釈とされては、この条約締結するに際して、第九条に対して、憲法の解釈上、核兵器に対する従来の政府の解釈を変更なさるおつもりがあるのか、そのままおとり続けになるのであるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府は、この条約加盟することによりまして、条約上の義務を新たに負うわけでございますが、そのこと自身が従来の憲法の解釈に改変を加える必要があるとは考えません。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣は、私の申し上げている趣旨というのをお聞きいただいた上での御答弁だとは思うのですけれども、日本がこの条約加盟する際には、非核保有国としての存在意義が非常に問われる立場加盟するわけですね。先ほどおっしゃった理想的なあり方というのは、核兵器というものがなくなるという状態だ、なくしていかなければならないということを念頭に置いて、今回はこの条約に対して締結をするということだと思うのです。そうしますと、その点は日本として、これは他国に例のない憲法を持っているわけですから、この憲法から考えて、一体どういう立場にこの核という問題に対して立つのかということをはっきり宣明しなければならない。第九条の解釈について、従来どおりというふうになおかつおっしゃるわけでございますね。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 土井委員お尋ねはいつもきわめて鮮明で、よくお尋ね意味がわかるのでありますが、ただいまのおっしゃっている意味は、ちょっと私にはわかりかねます。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣はおわかりになっていておわかりにならないようなことをよくおっしゃるので困るのですけれども、従来の高辻法制局長官の、憲法第九条から核というものはどのように解釈されるかということに対して、政府解釈がどのようなものであったかはもちろん御存じでいらっしゃいますね。どのようなものでございましたか。
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどお述べになりましたとおりと思っております。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 そして、従来どおりその解釈を相変わらず政府としては、第九条に対しての解釈としてお認めになるということなんでございますか。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この条約加盟することによりまして、政府は新たな国際上の義務を負うわけでございますけれども、その結果として、憲法の従来からの解釈を改める必要があるとは思わないというふうに申し上げておるわけです。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 そうなりますと、これは核兵器をなくしていくという理想の状態に持っていくということから考えると、先ほど来申し上げたとおり、政府の声明であるとかあるいは自民党が出された要望事項の中の内容からすると、まだ十分に満足し切れていない点があるということをお認めになりつつ、それに対しての努力を締結後払っていこうというおつもりなんでいらっしゃいますでしょう。そういうことからすると、この憲法第九条に対して、戦術核兵器というものは憲法上保持できるという解釈を持ったままで、果たしていま考えていらっしゃる理想的なありさまに向かって、日本が十分な役割りを発揮し得るかどうか、どういうふうにお考えになりますか。
  145. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 憲法は、あることを禁じあるいはあることを許容しておるわけでございましょうが、その許容する中においても、国民的な合意のもとに、さらにそれを詰めていくというようなことは十分あり得ることでございまして、そのたびに憲法の解釈を変える必要があるという問題ではないと私は思うのでございます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 そのたびに憲法の解釈を変える必要はない、これはおっしゃるとおりだと思うのです。ただ、いま日本に対して問われているのはどういう立場でありましょうか。非核保有国として、先ほど外務大臣がおっしゃるとおり、全世界から核兵器をなくしていくという方向で核防条約締結し、そのための努力を払うということでございましょう。その当事国であるわが日本が持っている憲法の中身にある第九条からすると、他の国の憲法にない戦争放棄の規定があるわけなんです。外国にないというこの憲法第九条に対して、しかるがゆえに、核も含めて日本の戦力というものに対しての論議が、かねてより当外務委員会でも繰り返し繰り返し論議の対象になってきたわけなんですね。その都度憲法の解釈を変える必要はない、これは先ほどおっしゃるとおりでありましょうが、しかし、いまこの核防条約日本締結するという、歴史的に考えまして日本のこれからの安全保障という問題を考えた場合に、この安全保障のかぎを握ると申しますか、日本の今後の安全を保障する上でのかぎをここではっきりつかむと申しますか、そういう問題を内容として抱えたこの条約に対して、締結をするか締結をしないかという、政府としては一日も早く締結すべきであるという立場で国会に承認をお求めになっているわけです。そういう点からしますと、日本の国としてはこの核防条約締結して、こういう立場で今後の日本安全保障というものを十分なものにしていきたいんだという、国際社会に向かってもまた日本の国内に向かっても、国民の目から見てはっきりと納得できる、理解のできるありさまにするということが非常に大事じゃありませんか。したがってそういう点からいたしますと、あらゆる核兵器というものは、戦略であろうと戦術であろうと、この節日本としては持てないんだということを、この核防条約締結する非核保有国としての、また日本国憲法第九条を保有している国として、当然に憲法の第九条に対して認識を持ってしかるべきだと私は考えているんです。だから従来の政府の第九条に対しての解釈がいかようにあろうとも、核防条約というものを締結する際に、締結するがゆえに憲法の解釈を変えるということではなくて、本来憲法についてあるべき姿というもの、憲法の条文に対しての解釈としてこうあるべきだというところをここで鮮明にするということがむしろ大事じゃないか、私はそういうぐあいに思いますけれども、外務大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御提起になっておられますのは法律論であると思いますので、その観点からお答えをしなければならないと思いますが、この条約締結することによって、われわれは核兵器を持つことはできないということになるわけでありますが、そのことは憲法第九条の解釈からくるのではなくて、この条約締結したことによってわれわれが国際的に持つ義務になる、こういうことであると考えます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 その条約の中では、外務大臣おっしゃるとおりなんですね。ところがその条約を一たん締結いたしますと、先ほど申し上げましたとおり憲法九十八条の二項で、日本国としては「これを誠實に遵守する」という義務を負うのです。日本の国家的義務があるのですね。その国家的義務というものを日本国として十分に発揮していくことのためには、核兵器という問題に対して日本としてどう考えるか、どう取り組んでいくかという態度が鮮明でなければならない。それからいたしますと、いままで憲法解釈として、戦術核兵器は持てるという立場をとってきたわけであります。これがどうしてもひっかかってくるんじゃありませんでしょうか。したがって、この点について再度私はお尋ねをしたいんですが、いかがです。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうもやはりちょっと私にわかりにくいところがございまして、純粋に法律論でございますから、純粋に法律論でさしていただくとしますと、この条約が二十年余りたちまして失効したと仮にいたします。そうしますと、わが国はこの条約の義務から解放されることになると思いますが、そのときまた憲法の解釈をもう一ぺん変えるかというような、純粋な法律論を追っていきますとそういうような話になってまいると思いますけれども、私はそう思わないので、憲法の解釈というものはございますけれども、この条約によってわれわれが新しい義務を負った、その義務は当然誠実に履行しなければならない、こういうことで十分だと私は思うのでございます。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 ならば申し上げましょう。解釈というものはそうしばしば変えるものでない、おっしゃるとおりですが、いままで政府の憲法に対する有権解釈が変わってきておるのですよ。これは外務大臣、御存じだと思うのです。  特にいま問題になっている第九条について申し上げますならば、日本が警察予備隊令によって警察予備隊というものを編成をし、昭和二十七年になって保安庁法という法律によって保安隊にこれを改編し、二十九年になって自衛隊法、防衛庁設置法というこの二法によって現在の自衛隊に変わってきた。その間、第九条については、近代戦争を遂行するに至らないような戦力は戦力にあらずという解釈が繰り広げられたり、それ以前はいかがでございましょう、いかなる戦力もこれを持ち得ないという解釈だったのですよ。その都度、解釈というものは変わってきているというのが現実じゃありませんか。解釈というものはそうそう変えるべきでないとおっしゃる大臣の御意見には私は賛成なんです。ところが、現実にいままで政府は憲法解釈に対してそのとおりに変えてこられなかったかというと、そうじゃない。解釈論が変わっているのですよ、有権解釈が。有権解釈が変わってきているというこの事実を見た場合、それは宮澤外務大臣の御意見は御意見として、私はその御意見には賛成ですが、現実はそうはなっていないということをはっきり御認識をいただきたいと思うのです。それをひとつ御認識の上で、いまどうですか、核防条約日本締結するというのは、雌雄を決するこれからの日本安全保障にかかわる大きな問題と申し上げても私は大げさな表現じゃないと思うのですが、このときに当たって、私はもう一度確認したい。第九条に対して高辻法制局長官がとり続けてこられた政府の有権解釈に従って、なおかつこの戦術核兵器というものは憲法解釈上保持することが認められるとお考えになるのでございましょうか。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このように申し上げましたら、あるいは土井委員のおっしゃっていらっしゃることにお答えすることになるのでしょうか、すなわち、従来高辻法制局長官によって述べられました憲法九条の解釈は実体的な意味を持っておった。しかしこの条約加盟することによって、従来そのような解釈は解釈として、この条約によってその問題は規制されるのであるから、そのような解釈は実体的な意味を失うことになるではないか、こういうふうにおっしゃるのであれば、それは私にわからぬことはございません。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうに理解をして、第九条の解釈に対しては、かつて高辻法制局長官が政府の正式な、あるいは有権的なと申し上げてもいいと思いますが、解釈として展開されてきたことに対して、現実の問題としてこれはやはりもう一度ここで変更があるというふうに確認をさせていただいていいわけですね。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは困ると申し上げておるのであります。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、相変わらず憲法解釈上は戦術核兵器というものは保持できるということを確認されているわけでありますね。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点について従来からの政府の公にしております解釈を変える必要はない。しかしそういう解釈がありましょうとも、この条約加盟することによりましてわれわれは核兵器を持つことはできなくなる。したがいまして、憲法の解釈は解釈として、そのことは実体的な意味を有さないということにこの条約加盟した結果なる、こういうふうに私は理解をいたします。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 それはいわば、この核防条約日本に対しての核武装の歯どめという効果を認識しなければならないという御意見だと思うのですが、逆に言いますと、核防条約日本締結いたしまして、そうして正式にこれに加盟している国として世界から核兵器をなくしていく努力を日本が払わなければならない。払うという立場にも、現に核を保有して、そして核保有の中身をだんだん軍縮ということでなくしていくという努力もあろうと思うのです。われわれはいま現に核を保有している国としてではなく、非核保有国としてこれに加盟するわけでありますから、したがって、みずからはもちろんのことながら核は持たない、これはもう言うまでもございません。けれども、現に核保有国に対して核をなくしていくということを呼びかける側に立っているわけですね。それはあくまで非核保有国として核保有国に対して呼びかけるということでありますね。そうすると、その非核保有国ということの中身が、果たしてどの程度誠実に非核保有国たり得るかという問題は非常に大きな問題になってきやしませんか。徹底して非核保有国という態度を貫くというときこそ、やはりこの条約に対して加盟をして、そうして、しかもすでに核保有をしている五国の間でも、特に超大国と言われるそれぞれの核保有国に対して、核をだんだん縮小していくというための呼びかけができるんだと私は思うのです。  そういう点からしますと、これは日本としてはこの核防が実は日本の核抑止力になる、まあ大まかな言葉で言うと、という意味を先ほど宮澤外務大臣はおっしゃっておりますが、逆に、この核防条約を効果あらしめるものとして、加盟をした一国の立場日本が機能性を発揮しようとすれば、日本みずからが非核保有国であるという態度を徹底させるべきじゃないでしょうか。その場合に、外国にない日本国憲法という憲法がわれわれの国日本にはあるのです。それから考えてまいりますと、現実には、この核防条約加盟するからといって憲法の解釈をにわかに変える必要はない。解釈論はそうあっても、現実の問題として、核装備はしないんだから、核軍備はしないということにはならないと思うのですよ。やはりこの核防条約締結した以後は、締結国として果たす役割りということをひとつお考えいただきたいと思うのです。果たす役割りというものを考えるがゆえに、日本安全保障はこれで守られるという確信が出てくるんじゃありませんか。だから最初に私は宮澤外務大臣に対して、この条約を署名する際に日本政府が声明を出した、その中身というものは現実において満足されておりますかとお伺いをすれば、まだ十分に、一部は満足し切れてない点もあるという向きをおっしゃった。その点を十分なものにしていくという態度が、やはり外務大臣のお立場からすれば、これを締結をし、加盟をしてできるんだというお立場でしょう。そうであればこそ、非核保有国だという態度をはっきりさせなければいけないんじゃないでしょうか。解釈論上も有権解釈の上からも私はそういうことが言えます。現実そういうことをする必要がない、またするはずはない、この核防条約締結すればそれで抑えられてできっこないんだからとおっしゃるのなら、じゃどうして解釈もそれに合わせて認めていくことができないんでしょう。解釈は従前のままでいいじゃないかということが、どうしてなおかつ言えるのでしょう。解釈もそういう現実に合わせてはっきり鮮明にするということが好ましいんじゃございませんか、いかがです。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはどうも法律論でございますから、私がお答えするのは適当でないのかもしれない。というのは、私が申し上げますと何か政策の宣明のようなふうに受け取られる心配がございますので、そういう意味でなく、これだけ前提を置いて申し上げますが、法律解釈論といたしまして、もし土井委員のように御主張なさいますと、この条約が将来なくなったとき、あるいはこの条約からわが国が脱退したとき、いずれもありそうもないことでございますが、これは純粋な法律論としてお聞きを願いたいのですが、そのときには今度憲法の解釈というのはどうなるのかというような問題もあるのではないだろうか。つまり、二つのことは別のことなのでありまして、われわれはこの条約によって課される義務を誠実に履行するということにおいて人後に落ちるところではございません。しかし、だからといって憲法をそのように解釈をしなければならないということには別段ならない。と申しますのは、多数の国がこの条約加盟をして、やはり誠実にこの条約を履行しょうとしておる、これは間違いのないところでございますが、そのような国々は、わが国のような憲法を持っておるわけではない。ないにもかかわらず誠実に履行するのはこの条約のゆえである、こういうように法律論としては考えざるを得ない。土井委員のおっしゃっていらっしゃること自身には私は少しも反対ではないんでございますけれども、憲法との関連においてはやはりそう申し上げざるを得ないと思うのでございます。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 どうもはっきりしないのですね。これは実は憲法との関連においてはっきりさせなければいかぬのです。  先ほどちょっとひっかかることをおっしゃいましたから、先にその点から、観点を変えて少し確かめたいと思うのですが、日本が本条約から脱退するときというのは、どういう場合でございますか。
  159. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは純粋の法律論でございますから、それとの関連でいまのお尋ねお答えするのはどうも適当でない。間違って誤解を与えると思います。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、純法律論というのは答えることにどうも抵抗を感ずるとおっしゃりながら、純法律論だからこれに対しては誤解を与えるという向きもあるかもしれないので答えたくないと、さらにおっしゃる。けれども一たん脱退をする場合を想定したときというふうなことを口火を切っておっしゃって、現にわれわれが審議をいたしておりますこの条約の中には、この脱退について第十条という個所があるわけでございます。したがいまして、第十条の中身を吟味するという点から考えましても、日本が本条約を一応締結をし、後に脱退をするという場合はどういう場合であるかというのははっきり確かめておかなければ、これは私たちが審議の場に臨んで質問をしていることに対する御答弁をいただかないということにもなりかねませんので、ひとつその点はお聞かせいただかなければならないと思います。いかがでございましょうか。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは法律十条に書いてございますから、明らかであると思います。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 どういうふうに書いてございますか。
  163. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 第十条の一項でございますが、「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。」というふうに書いてございます。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 「至高の利益を危うくしていると認める場合」というのは、わが国の場合はどういう場合を指すのでしょう。いかがでございますか。
  165. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 一般的に申しますれば、ある国にとりまして安全保障の確保以上に重要な利益はございませんので、たとえばわが国のような非核保有国立場で申しますれば、第二条で核兵器を保有しないというようなことが、これはまた法律論でございますけれども、これがその当該国の安全保障上重大な障害となるというような場合には、これはこの条約の第十条一項に申します「異常な事態」であり、かつまた締約国の至高の利益を危うくするという事態に相当するものだと考えます。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、非核保有国であるということ自身が自国の至高の利益を危うくするというような状態である場合ということになるわけですね。非核保有国であるという状態自身が自国の至高の利益を危うくするという状態だということになるわけですね。いかがですか。
  167. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 非核保有国であるという状態そのものが自国の重大なる安全に影響があるということではございませんので、非核保有国を取り巻いている四囲の情勢というものが変わってきたような場合、その情勢の変化によって自国の安全というものが危うくされるというような事態が、この条約の第十条に規定する脱退の理由として認められるということでございます。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 続けてそれじゃ伊達参事官にお伺いしましょう。  いま非核保有国という一般抽象的表現でおっしゃいましたが、いま審議しているのは、これは日本の場合というのをやはり考えていただかなければ困るわけでありまして、日本はれっきとした非核保有国でございます。したがって、日本を取り巻く情勢として自国の至高の利益を危うくする状態というのはどういう状態なんでございましょうか。
  169. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 私は条約の第十条の御説明として解釈論を申し上げているわけでございまして、日本についてどのような状態が起こるかということは、これはもはや仮定の問題となるわけでございまして、私の御答弁申し上げる限りではない、そのように存じます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 これは万事困ると仮定の問題になってしまうから、審議はできないのですよ。これはやはりそういう点に対してはっきり見通しをつけないと、わが国安全保障という問題は核防条約締結して守れると思っている国民に対してどう答えますか。仮定の問題じゃないですよ。やはり外務省としては、現にれっきとした非核保有国である日本の自国の至高の利益を危うくする状態というのはどういう状態なのかということは考えて、この条約に対しては署名をなさったはずなんです。どういう状態でございましょう。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私がお答えするのが適当かもしれません。このような、十条に規定するような状態が起こってくるとは私は想像しておりません。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 それでは宮澤外務大臣、先ほどからおっしゃったことががらりと崩れるのですよ。だったら、何のために憲法第九条に対して、まだその戦術核兵器というものは解釈上保持してよいのだ、保持しても憲法違反にならないのだ、この問題は保留していく必要があるのだということをお考えなんですか。私は先ほどからの論法からすれば、日本非核保有国である、しかし非核保有国であるというありさまが日本の安全、ここにいうところの自国の至高の利益というものを危うくするという場合があるかもしれない、そういう場合には、この第十条に定めるとおりに脱退をするということが事実可能である、恐らく脱退をするということもあり得るだろう、したがって第九条に対しては、戦術核兵器というものに対して憲法の解釈からしたって認められてしかるべきなんだ、そういう御論法かと思っていたのですよ。そうしたところが、そういう場合というものは恐らくあり得ないだろう、恐らくそういうことはないだろうとおっしゃる。ならば、いまこの条約に対して締結をするに際して、非核保有国であるという日本立場というものを国外に対しても国内に対してもはっきりさせるということが非常に大事じゃありませんか。いかがでございますか。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは恐縮ですが、土井委員の方で問題を混同しておられるように私は思うので、先ほどはわざわざ純粋な法律論として限って私は申し上げております。ですから、それは十条というものもこの条約には規定してあるわけでございますし、私はわが国の場合こういうことは起こると思いませんが、この条約が効力を失効するということは、これも条約が仮定をしております。そういうときの法律論としてと先ほど申し上げたことで、これは政治の問題とは混同されてはならないと私は思います。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 法の解釈というものは、解釈がまずあって運用が始まるわけでしょう。運用がまずあって、それに対して解釈というのを当てはめていくというわけじゃなかろうと私は思うのです。そうしますと、いま私が先ほど来お伺いをしている――純粋解釈論、純粋解釈論とおっしゃいますけれども、解釈それ自身も政治の一環でございますよ、政府の解釈というのは。またこの憲法の解釈、憲法に対する認識というものが、日本非核保有国としてのあり方はどうなのかということを判断する基準になっているわけなんです。そういう点から考えますと、単なる解釈論ということで終わらせてしまうことができるでしょうか、私はそうは思わない。純粋解釈の問題だから現実の問題とは別だとおっしゃるけれども、現実現実とおっしゃるその現実は、政治が動かしている現実でしょう。そういたしますと外務大臣、やはりこの第九条に対して、日本核兵器が一体この核防条約締結をしてどういうふうに考えられるかということは、はっきり確かめておかなければならない問題じゃないでしょうか、いかがでございます。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは同じことを何度も申し上げるようになりますけれども、私どもがこの条約加盟することによってそのような義務を新たに負い、それを誠実に履行するということで十分であって、もしこの条約加盟した結果、土井委員の言われるように憲法の解釈を変えるべきものであるとおっしゃるのならば、この条約が失効しましたときにはまたもう一遍解釈を改めるということになるのでありましょうか、私はそういうことは適当なことでないと思うし、必要のないことであると思うのでございます。つまり、この条約でわれわれは国際的な義務を負うわけでございますから、それを誠実に履行することをもって私は足りるというふうに、どうも法律論としては考えざるを得ない。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 法律論ということをおっしゃるなら申し上げましょう。条約というのは一たん締結すれば国際間において国際責務がございます。国内的には、国内でそのことをどういうふうに取り決めるかという別の、これは法体系のもとに考えられる法基準がございます。日本では御承知のとおり、日本国憲法の九十八条の二項で、一たん締結された条約はこれを誠実に遵守するという国内的責務があるのです。そういうことからいたしまして、いま第九条に対して戦術核兵器というものは解釈上持てるのだというままでこの核防条約というのは誠実に遵守できますかと、こう聞いているのです。いかがでございますか。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 できます。先ほど申しましたとおり、そのような憲法解釈は実体を失うであろうということは申し上げました。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 では具体的な例に従って聞いてまいりましょう。  非核兵器国安全保障について、核攻撃、核脅迫を受けた場合、核兵器国が援助を与えるという旨の六八年の国連安保理決議二百五十五号というのがございますね。そのうち安保理事会の構成が変わっております。中国がこれに入っております。新しいこの構成のもとで、この安保理決議の二百五十五号というのは有効に働くというふうにお考えでいらっしゃいますか、いかがでございますか。
  179. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 安保理決議ができましたのは一九六八年の六月だと思いますが、確かに言われましたとおり、その後安保理の常任理事国の交代のあった国がございます。かつ、この決議自身、表決に当たりましてフランスは棄権いたしております。したがいまして、この決議それ自身が現在の段階において果たして有効であるかどうかは、これは安全保障理事会そのものが決定すべき事項であると思います。したがいまして、一九六八年当時に有効であった決議が当然に今日有効であるとは解しておりません。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 わが国の場合からすれば、その安保理決議というものがどう働くかという関連性も片やありながら、これは二国間で結んでおります安保条約という条約が現にございますね。この安保条約によって日本安全保障というものは確保されるという立場で、政府は外交政策もそれから防衛政策もお進めになる。この安保条約を堅持する日本政府立場からいたしますと、もし日本が核攻撃を他国から受けた場合、そういうふうな場合でもアメリカから核を持ち込ませるということがないのかあるのか。この点は、先ほどの日本独自で核兵器を持てるか持てないかという憲法解釈上の問題もございますけれども、アメリカと結んでいるこの安保条約の上から考えて、日本が核攻撃を受けたときでもアメリカから核を持ち込ませないということになっているかどうか、この辺いかがでございますか。
  181. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 日米安保条約の規定といたしましては、その第六条の実施に関する交換公文によって事前協議を要する事項が定められておりまして、その一つのものとして「装備における重要な変更」ということがございます。そして、これは核兵器の持ち込みが事前協議の対象となるということが書いてございます。日本が核攻撃を受けた場合、米国が日本核兵器を持ち込む場合は事前協議を要するわけでございますが、それは事前協議条項のたてまえ上、わが方がイエスと言うこともあるしノーと言うこともある。日米安保条約のたてまえ上は、日本が核攻撃を受ける場合には持ち込みもあり得るわけでございます。ただ、御承知のとおり、わが国非核原則を堅持しておりますから、その場合にはノーと言うことになっておる、こういうことでございます。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 それはそういうふうにたてまえはなっているわけなんですね。  御承知のとおり、昭和四十四年に日米共同声明によって、その内容で確かめられているところが種々あるわけですが、特に韓国の安全はわが国の安全にとって緊要であるという部分がございますね。そこで、朝鮮半島の緊張というのが高まってまいります。場合によっては、朝鮮半島で戦術核兵器をも使用することが起こり得る。そういうふうな場合、日本が全然知らないうちに使用されることがあっては現実大変でございます。このようなときには日本アメリカ側から相談が当然あると思いますけれども、いかがなんですか。そして、その相談はいまおっしゃった事前協議に当たるのですか、いかがですか。
  183. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 質問の御趣旨は、朝鮮半島で紛争があったときに、アメリカが朝鮮半島において戦術核兵器を使用することがあり得るだろう、その場合には日本に相談があるか、こういう問題だと了解いたしますが、これは米韓の相互防衛条約自体の問題でございまして、このことについては米韓の間で取り決めらるべきであり、また協議さるべき問題であると存じます。ただ、そういう事態は確かに日本の安全にも関係のあることはございます。そういう意味で、日本がそれを必要と考えました場合には、安保条約の第四条に言います随時協議を求めることはできると考えます。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 安保条約の第四条の随時協議ということをお認めになっているわけですが、その随時協議の場合、やはり問題は、協議でございますから、日本といたしましてはイエスと言う場合もノーと言う場合もあるのかないのか、イエスもノーも言うことができるのかどうか、いかがでございますか。
  185. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 念のために第四条を読ませていただきますが、第四条は「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」、そういうわけでございまして、これは要するに両方からいつでも随時協議を申し出ることができるわけでございます。そして、朝鮮において異常事態が起こりましたときに、これは日本の安全にも関係いたしますし、あるいは極東における国際の平和及び安全に対する脅威にも関係いたすような事態になることが多いと思いますので、そういう場合には日本側はアメリカ側と協議して、その事態に対してどう対処するかということについてアメリカ側の意見を求めるとか、あるいはわが方の意見を言うということはあり得るということでございまして、これは別にイエスとかノーとか言う問題ではないと存じます。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、わが国安全保障にそれは重要な影響を及ぼすというような場合、いまおっしゃいましたような随時協議によって戦術核の使用について歯どめをかける役割りというものが果たして果たせるのかどうか、どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  187. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これはあくまで随時協議の問題でございますから、法律的な意味において歯どめをかけるとかいう問題ではなくて、政治的な意味における協議でございます。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、事実上戦術核の使用について、この随時協議に頼るということは実におぼつかないものだということにならざるを得ないような気がするわけでございますが、この随時協議のあり方についてちょっとこの節確かめておきたいのは、いつ日米間でこの随時協議についてのそのような合意がなされてきたか、それは何年何月にいま御説明のような随時協議のあり方について合意がなされてきたかということを確かめておきたいと思います。いつでございましたか。
  189. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは随時協議でございまして、別に形式を要しませんし、また安保条約のもとで日米は密接な協力関係にあるわけでございますから、まさに随時協議しているわけでございまして、随時協議に関する特別の合意というものは必要でございません。また、現にわれわれは日常アメリカ側とこの安保条約の運用に関して協議をしておるわけでございます。また、そのための正式な機関としては、この安保条約をもとに設立されました日米安保協議委員会、その他の機関もございます。しかし、それだけが協議の方法ではございませんで、毎日の問題としてアメリカ側と随時協議しておる次第でございます。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、現に安保条約の第四条で問題にされている随時協議のあり方については合意は何もない、勝手に出たとこ勝負でいろいろと協議をするというかっこうになっているというわけですね。  随時協議はいままでにどのような問題で何回開催されたか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  191. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、この条約締結時に設立されました日米安保協議委員会は大体一年に一回開催されておりまして、当方は外務大臣及び防衛庁長官、先方は駐日米大使及び米太平洋軍司令官を委員といたしまして協議いたしておるわけでございます。そういう意味では、大体そういう最高レベルのといいますか、一年に一回ぐらい集まっておりますけれども、もちろんそれに限る必要はないわけでございまして、いろいろなレベルでわれわれは協議をいたしておるわけでございまして、別に何回ということはございません。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 随時協議というのはまことに不確かな中身だということがいまの御説明でもうかがえるわけでありますが、いままでに日本の国益に重要な影響ありということでアメリカ側の要請を拒否したような、歯どめの役割りを果たしたことがこの随時協議の中であったかどうか、いかがでございましょう。
  193. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 問題がありますときはいつでも随時協議するということでございまして、別にわれわれは歯どめをかけるために話しておるわけではございません。ただ、お互いに問題があるときは、それを解決するために集まるわけでございます。したがいまして、一方が一方に対して歯どめをかけるとか、その行動を制肘するために集まるという性格のものではないわけでございます。ただ、日米の安保条約は両国の信頼関係に立っておるわけでございますから、そういう随時協議を通じて、われわれとしては常にいろいろな問題を解決し、そして円滑に安保条約を運用してまいったと信じております。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 いままでに結局は日本の国益に重要な影響があるような問題について、アメリカ側からの要請を拒否したような、歯どめの役割りを発揮した意味での随時協議というのはなかったというふうなことだと思うのです。そのことに対して別にお答えはございませんから、したがって、そういうふうに推論せざるを得ない、推測せざるを得ない。そうだと思うのですね。  そういたしますと、これはいかがなんですか。わが国の安全について非常に関係のある、これは現に日米共同声明によってもはっきりそのことが確かめられている、朝鮮半島において戦術核兵器というものがアメリカによって使われるというふうな場合にも、いまの事前協議ではなく、随時協議というかっこうで日本は臨むしかない。安保条約の第四条の随時協議、しかもその随時協議の中身というものは、これは現にわが国安全保障に重要な影響を及ぼすような場合だとして、随時協議によって歯どめをかけるという役割りは全く期待ができない、いままでの御答弁じゃ。そういうことにならざるを得ないと思うのです。一体そういう場合にはどういう措置が講じられるのですか。
  195. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 どうも土井委員の御質問は非常に仮定の問題でございまして、われわれとしてもお答え申し上げにくいし、またちょっとそういう事態は想定しにくいわけでございますけれども、いきなり朝鮮半島において戦術核兵器が使われるというふうなことがちょっと想定しがたいわけでございまして、それ以前の段階においていろいろな緊張の高まりというものは当然あるわけであります。それはまさに、この第四条に規定しております「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」ということになってくるでございましょうから、当然、もっともっと前の段階でお互い話し合いが随時協議の形で行われるであろうと思うわけでございまして、そういうことによってわが国の安全は十分確保されると存ずる次第でございます。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 イエス、ノーがありますかと言ったら、そういうふうな形式じゃない、随時協議ということに対しては、随時これは中身に対してどういうあり方で協議を進めるかということに対しての話し合いもないまま、適当に出たとこ勝負で協議をするということが先ほどの御答弁の中で出ているんじゃないでしょうか。そういうことで、これは歯どめがかけられるなんてとても考えられない。したがって、朝鮮半島に対してアメリカ側から戦術核兵器を使用することも、仮定の問題には答えられないとか、そういうことはよもやあるまいというふうな御答弁の趣旨でありますけれども、緊張が高まるにつれて、これは突然やはり核兵器を使用するというところに実は意味があるわけでありますから、したがって、そういうことに対して、一々どうでございましょうなんて持ってくるはずがないのです。したがって、そういう点からすると、それに対しての歯どめは全くないということ、これをひとつ確認をさせていただきたいと思うのです。先ほど来申し述べられたところでは、それに対しては随時協議があるということでありましたが、随時協議の中身に対しては、これが歯どめ的役割りというものをはたして果たしていけるかということを考えた場合に、どうもこれについては心もとないということがはっきりいたしております。したがいまして、これに頼ることはできない、これをひとつ確認をさせていただきたいと思うのです。  さて、この条約について、さらに条約締結することによりまして、わが国の場合は核兵器は保有できないわけですから、核については平和利用しかない。この核の平和利用に対してはどういうふうなメリットがあるというふうに政府はお考えになっていらっしゃいますか。
  197. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この条約の第四条に原子力平和利用に関する規定がございます。特に第一項におきましては、この条約に入ることによって、条約のいかなる規定も、「平和目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならない。」と書いてありますように、原子力平和利用に悪影響を与えないんだということがまず第一に書いてあるわけでございます。それから第二項に、これをもう少し積極的な意味で、つまり平和利用について、この条約に入ることによって、積極的に推進するための国際協力というものをうたっておるわけでございます。したがいまして、この大きな考え方に従いまして、この条約に入った国に対しては、この平和利用についてのいわば先進国といいますか、平和利用技術を供与し得る国との間の協力関係が強まるという仕組みが特にこの第二項において予想されておるわけでございます。したがいまして、この条約に入ることによって、この平和利用についてこの条約上のある意味保障といいますか、これが強まるということは言えるかと思います。
  198. 土井たか子

    ○土井委員 去る五月の十一日から四日間、日本に、ナミビアの理事会の議長初めナミビアの国連理事会の代表団の方々が来られたということを御承知だと思いますが、その訪日の目的はどういうことでございましたか。
  199. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ナミビア理事会は国連の総会の決議に基づいて設立された機関でございます。御承知のように、ナミビア地域は国際連合が責任を持って統治する区域ということになっております。ただ、その地域はまだ南アフリカの実際のコントロール下にありますので、国連決議に従いまして、ナミビア理事会がどういう性格のものであるかということを、主要の各国に回りまして官民の理解を深めるということで、従来まで数回各国を訪問したわけでございますが、今回はアジア地域を回るということで、たしかインドとインドネシアを回りました後、日本を訪れたわけでございます。目的は、先ほど申し上げましたように、ナミビア理事会についての官民の理解を深めるということにあったと了解いたしております。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 それだけではないと思うのですが、外務大臣はこの代表団の方々と、わずかの時間ではありますけれども、お会いになったということでございますから、どういうことで訪日されたかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  201. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま政府委員が申し上げましたことが訪日の主目的でございましたが、なお、その際に、鉱物資源のいわゆる所有権と申しますか、したがって、その所有権の侵害というようなことになるわけでございますけれども、そういうことについて関係各国の注意を喚起しておる、こういうことの説明もございました。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 関係各国の中には日本も当然入っているから日本に来られているわけでありますが、日本に対して具体的にどういう話が持ち込まれていたかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  203. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 今回ナミビアミッションが訪日しましたときに、特に向こう側が関心を持ちまして話しました点は三つあったかと思います。  その一つは、ナミビア問題に関する安全保障理事会がちょうどこの月末から開かれる予定になっておりましたので、その会議において、わが国がアフリカ諸国に対して支持する、そういう立場をできるだけとってほしいという要望が第一点でございます。  それから、第二点は、ただいま大臣お話にありましたように、ナミビア地域の天然資源に関する布告、これはナミビア理事会が出したわけでございますが、その布告を遵守してほしいという点が第二点。  それから第三点は、ナミビアインスティチュートと申しますか、いずれナミビア地域が独立した場合に、このナミビア地域の施政のために必要な行政官の養成とか訓練とかいう意味でインスティチュートをつくりたいと思うのだけれども、それに対する財政的な寄与をしてほしいという要請、この三つの点が訪日の大きな目的ではなかったかと思います。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 ナミビア理事会の法令を遵守して、ナミビアの資源についてこれの保護を誠実に考えてもらいたいと言われる中で、特に具体的に、資源と言いながらこれはいろいろなものがございますが、日本に対して、ある特定の物質を量もはっきり定めて、これに対しての取り扱いに対して喚起を促したということがあると思いますが、いかがでございますか。
  205. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これはナミビア地域で産出しますウラン鉱石についてのお話がありました。ただ、これをどの程度減らすかという話は、政府に対する話にはございませんでした。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 そこまで私はお尋ねをしてないのです。  ただいま三時十五分になりまして、外務大臣が参議院の方に退席をなさるようでありますから、四十分までということでございますので、その間中断をさせていただきたいと思います。というのは、この問題は外務大臣にずっとお聞きいただかなければならないと思いますから、その間質問は中断させていただきます。休憩。
  207. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  208. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 かつてこの問題については昨年の十二月十九日予算委員会で岡田春夫議員の方から質問がございまして、国連決議やナミビア理事会の存在や、ナミビア理事会の法令、さらに国際司法裁判所の内容について日本が拘束を受けるという認識を明らかにされたということは議事録を見てもはっきりするわけです。それからいたしますと、その法令の中身では、ウランを含めてナミビアの鉱物資源に対してどういう取り扱いが問題にされているのですか。いかがでございますか。
  210. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 このナミビア理事会の布告の中に、これはちょっと長いものでございますが、要点を御説明申し上げますと、いかなる個人も団体もナミビアの領域に存在しております天然資源を、それが動物であると鉱物であるとを問わず、ナミビア理事会の同意もしくは許可なしにはこれを探査したり試掘したり云々とありますが、販売、輸出または分配することはできない、これがこの布告の一番のポイントであろうかと思います。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 それだけじゃないと思うのです。そこだけお読みになって、もう全体をここで御答弁なさったつもりでいらっしゃれば間違いだと思うのです。そこだけじゃないと思うのですよ。
  212. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど申し上げました点がポイントであると申しましたのは、資源の性格を基本的に定めたという意味で申し上げたわけでございます。  さらにその考え方に基づきまして、ナミビア領域内で産出します天然資源を運搬するいかなる車両、船舶またはコンテナも、ナミビア理事会によって、または同理事会にかわって行動する権限を与えられたいかなる個人の名において行なわれるところの捕獲または没収手続に服すべきものである。そして同理事会の利益となるように没収、処分される。そして最終的に、その没収されたものはナミビア住民の利益のため信託のもとに置かれるということが書いてございます。
  213. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  214. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  十五分間休憩をいたします。     午後三時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時四十五分開議
  215. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  216. 土井たか子

    ○土井委員 さて、国連局長の方から、表現は布告と言われるのですが、私は法令と言う、この名称は違いましても、中身については同一のものを指しているということで、確認をまずさせていただきたい、と思うのです。  先ほどの御答弁では、ナミビアの理事会またはその理事会にかわって行動する権限を与えられたいかなる個人の同意と書面による許可なくしてナミビアの領域から運び出される同領域内で産出するまたは同領域から発出するいかなる動物も、鉱物も、もしくはその他の天然資源も、理事会の利益となるように没収されたり、または押収されたりするということになっているわけなんですね。まずこれが一つ。  それから、ナミビアの領域内で産出するまたは領域から発出する動物、鉱物もしくはそのほかの天然資源を運搬中のいかなる車両も、船舶も、コンテナも、ナミビア理事会によって、または、理事会もしくは理事会にかわり行動する権限を与えられたいかなる個人の名において行われるところの捕獲、没収手続に服さなければならないということが書いてあるわけなんですね。  さらに三点は、これはおっしゃらなかったわけでありますが、ナミピアに関するこの布告、私が申し上げます法令に違反する個人、団体、法人は、将来ナミビアが独立した際、そのナミビア政府に対して損害を賠償する責任があるということが中身として決められているわけですね。  この点をひとつまず確認をいたしまして、さて問題は、日本とそれから南アとの間に、この法令に対して違反するようなウランをめぐる契約がすでに取り交わされているやに思いますが、具体的にその中身をお聞かせいただきたいと思うのです。
  217. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまこの法令に違反するという角度からお話がございましたけれども、実は、この布告の性格がいかなるものであるかについては若干問題があろうかと思います。したがいまして、これはこの前の予算委員会の際に、外務大臣から御答弁があったかと思いますけれども、たとえば安全保障理事会決議のように国家を拘束する法律的な性格のものであるかどうか、これについては疑問が若干あるけれども、ただ、このアフリカ問題の一環としての総会の決議に基づく機関の出した布告であるという観点から見て、これに対してやはり政治的な考慮を払うべきであるという趣旨の御答弁があったと思いますけれども、いずれにしましても、この法令の性格については若干疑義がございますので、直ちに違反と言うことができるかどうか、疑問に存じております。  それから第二の、これに関連した契約がどういうものであるかということでございますけれども、きょうは通産省から担当官が来ておられると思いますので、その御説明をいただいた方がいいかと思います。
  218. 土井たか子

    ○土井委員 その説明をお伺いする前に、いまおっしゃいました法令それ自身に疑問があるということをおっしゃる。いかなる点でいかなる疑問があるのですか、それをひとつ明確にお聞かせください。
  219. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 一つは、この理事会の制定しました布告というものが、この布告の内容だけでなく、この布告制定に至る経緯をこの総会決議の中から見ますと、ナミビア地域にナミビア理事会が物理的に赴きまして、その中で法律を施行する、この布告を実施するという観点から、この布告ができているわけでございます。その意味から申しますと、この布告は、このナミビア地域内における国内法としての性格を持っているんじゃないかということが、まず第一点として申し上げられるかと思います。  それから第二点は、先ほどちょっと触れましたが、この布告が総会決議に基づきましたものの、その総会決議そのものが加盟国を拘束するような法的な性格を持つかどうかということについて疑義があるというこの二点でございます。
  220. 土井たか子

    ○土井委員 ナミビアから国外に対して搬出するウランについては、この先ほど確認をいたしました法令によっても、明らかに、ナミビア理事会またはその理事会にかわって行動する権限を与えられた個人の同意と書面による許可がなくてはならないとなっているんですね。その許可なくして運び出したウランについては、これをいわば海賊行為というふうに認識しているわけですよ、盗品というふうにみなしているわけですよ。  そういうふうな点からすると、今回のウランの輸入契約についても、この法令から考えると、ナミビア理事会はこの日本が輸入契約をいたしておりますウランについて、盗品というふうにみなしていやしないか、商取引の対象として禁じていることに対して違反しているということになりはせぬか、いかがです。
  221. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 布告の文言から見まして、恐らく、ナミビア理事会の立場から、これは違反であるというふうに解釈しているかもわかりません。  ただ、日本側にとってこれをどういうふうに受けとめるかは、先ほど私が若干申しましたような理由から、必ずしもすぐに違反であるかどうかについては疑義を持っておるということを申し上げたわけでございます。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 すでにこれは、先ほど申し上げた昨年の十二月十九日の予算委員会の席で、岡田春夫委員質問に三木総理は、「いろいろの問題があるんでしょうが、方針として、国連決議に従って今後は処理するということです。」ときっぱり答えられているわけです。  国連決議第二二四八号に従って、ナミビア理事会というのは、法令と行政規則を制定する権限があるわけでありますから、したがって、この国連決議に従って今後は処理するという三木総理の答弁からすれば、ナミビア理事会がどう考えるか、こう考えるかじゃない、国連決議に基づいてナミビア理事会が法令を制定をし、そしてナミビア理事会が制定した法令に照らし合わせて考えてみると、いま契約をされている日本がウランをナミビアから輸入しようとしていること自身が違反だということにならざるを得ないんですよ。ナミビア理事会がそのことをどう考えているかということとはこれは別であります。客観的に言ってこういうことになるんじゃないですか、いかがです。
  223. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいまお話しのありました政府側の答弁の趣旨国連決議に従ってという意味は、その国連決議を尊重してというふうな意味で答弁されたんだろうと私は思います。
  224. 土井たか子

    ○土井委員 尊重するということになれば、このナミビア理事会が制定をしている法令というのも、これは正式な法令として尊重しなければならないわけです。この法令を尊重すれば、いまのウランに対して行う契約というのは、一体認められてしかるべきなんでしょうか、どうでしょうか。
  225. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは通産省の方からお答えいただいた方が適当かと思いますけれども、私の承知いたします限り、まだこの地域から実際にウラン鉱石は日本に入っておりません。
  226. 土井たか子

    ○土井委員 入っていないことは事実ですよ。これはまだ契約ですからね。しかしこのままで置いておくと、やがて契約に従って事は動いていくのです。入っているか入っていないかは、私はいま一言半句も尋ねていないのです。だから、この法令に照らし合わせて、この契約自身はどうなるでしょうねと言っているのです。
  227. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この契約は、たしか七七年から始まる契約であろうかと思います。それで実際に引き取りが開始されます七七年までの間、恐らくアフリカの同地域における情勢も流動的でございますし、それからそれを見きわめつつ、かつ同時に、できるだけ国連決議なり決定は尊重するという日本政府立場から、その時点においてどういうふうに対処するか、慎重に検討することになろうかと思います。
  228. 土井たか子

    ○土井委員 慎重に検討と言われますが、実際契約が七七年からなんですか。いまそのようにおっしゃいましたが、事実七七年からの契約なんですか。
  229. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私の了解しておるところでは、七七年からというふうに承知しております。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 通産の方でこのことに対して御存じの方いらっしゃるならば、一体契約内容がどういうことになっておるかをお聞かせいただきたいと思うのです。
  231. 高橋宏

    ○高橋説明員 御質問の件でございますが、わが国の電力会社がナミビアからの天然ウランについて購入計画を進めているという旨につきましては聞いておりますが、もちろん申請はまだでございますし、具体的な契約の内容につきましては、詳細存じておりません。
  232. 土井たか子

    ○土井委員 それは御存じのはずなんですよ。これは現にナミビアから理事会の代表団が日本に来て、通産大臣にも会って、具体的に話をしている事実があるのですから、そのことに対して存じませんという答弁は、これは答弁としては私は聞けない答弁だと思うのです。どうなんですか。余りにも甘い、うその答弁をやらないでくださいよ、本当に。いいかげんにしてください。
  233. 高橋宏

    ○高橋説明員 少し勘違いしまして失礼いたしました。  数量が約八千トンという内容です。それから七七年、七八年に毎年五百トン、七九年、八〇年に毎年六百トン、八一年から八六年まで約一千トン、合計約八千二百トンの天然ウランの引き渡しを内容とするものであるということと聞いております。
  234. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、契約自身が七七年から始まるように当初から輸入契約がされていたかどうかという点についてはいかがですか。
  235. 高橋宏

    ○高橋説明員 引き渡しの最初の時期が七七年からかという御質問と承りましたが、七七年から七八年まで毎年五百トン、あと先ほど申し上げたような購入内容を盛り込んだ契約と聞いております。
  236. 土井たか子

    ○土井委員 こういうことに対していつまで聞いていても、これはらちが明きませんから、その契約について輸入が始まるのは七七年、これは確認しましょう。  ただ、輸入契約というのが一体いつからかというのは別問題だと思います。したがって、これについて何年から幾らくらいの数量、向こう何年というのをひとつもう一度確認をしたい、明確に答えてくださいませんか。
  237. 高橋宏

    ○高橋説明員 契約されましたのは一九七〇年と聞いております。それから実際に入ってくる引き渡し量でございますが、もう一度申し上げますと、一九七七年、七八年、この二年間は毎年五百トンずつ、七九年、八〇年は毎年六百トン、八一年から一九八六年までは毎年千トン、そういう内容と聞いております。
  238. 土井たか子

    ○土井委員 この契約内容について、もうすでにナミビアの理事会ははっきりと知っているわけでありますから、これが運び出される際には船舶を拿捕することもあるかと思うのです、品物を押収することもあるかと思うのです、そういう権限が与えられておりますから。現にそういう輸入契約を結びまして輸入が始まっても、現物は日本には入ってこないということもあり得るかと思います。  いまお尋ねをしたいのは、ナミビアの理事会の法令からすると、あえてそういう法令に対して違反を犯してまでこのウランを購入するということに対して、従前どおりの契約をそのまま変更しないでこのことにお臨みになるのかどうかという問題です。本来、日本政府外務省は平和外交、国連中心外交という柱をいままで堅持してこられているわけでありますから、この事柄に対して、それでもなおかつウランの購入契約に対しては断固これを遂行するのだということになれば、この平和外交、国連中心外交という柱も一角が崩れることにもならざるを得ない。この問題に対してどういう態度でお臨みになるのかということをひとつお聞かせをいただきたいのです。
  239. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまの御質問お答えする前に、この布告というものが存在するということ、それからそれがどういう内容のものであるかということを関係の向きに周知させる必要がございますので、先月の末に通産省、ジェトロがそれぞれ発行しております通商弘報あるいはそれに類似の文書によって回覧をいたしたことを申し上げておきます。  それから、この問題にどう対処するかでございますけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、一方において国連決議をできるだけ尊重するという考え方、他方わが国の置かれた、特に資源賦存の状況から見まして、非常に弱い立場にある国としまして、ある程度の重要な物資の確保ということもまた国家的な要請でございます。その間の調整といいますか、これをできるだけとりながら対処するということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、要は、実際の引き取りが始まる時点におけるアフリカの情勢の動きを見ながら、慎重に対処していくということになろうかと思います。
  240. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、その引き取りの時点というものは向こうの事情がありまして、七七年ということになっているかもしれませんが、契約時点はそうじゃないのですね。契約が現にあるということは、やはり輸入に対してもうすでに取り決めてしまっているということですよ。その時点になって考えるという問題じゃないのです。現にそういう契約があって、ウランが入ってくるということになっているわけですから。だから、国連決議やナミビアの理事会の法令に違反してまで、また世界の世論に背を向けてまで、いまこのウランを輸入するという契約をあえて固持し続けるのかどうかということをお尋ねしているのです。いかがでございますか。
  241. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど申し上げましたように、ただ日本が必要だからあくまでも買うのだ、国連めいろいろな決定や決議は無視するのだということではございません。これは先ほども申し上げましたように、ナミビア理事会が設立された経緯から見まして、できるだけこれに対する配慮を払う、つまり尊重するということは一つ事実でございます。この趣旨はすでに予算委員会でも総理ほか外務大臣も御答弁になっているところだと思います。  他方、先ほどこれまた申し上げましたように、資源の安定供給という観点からの日本の強い要請もございます。その間をどういうふうに調整するかということが非常にむずかしい問題だと思います。したがいまして、繰り返しになりますけれども、アフリカの動きを見ながら、いまのような調整をできるだけ慎重にやっていきたいというふうに考えるわけでございます。
  242. 土井たか子

    ○土井委員 アフリカの動きを見ながらとおっしゃる。七七年になるまでアフリカの情勢というのはかなり動くであろうということをお考えになっての御答弁だと思うのですね。一体いまのナミビアについて、どういうふうな状態がいま動きつつあるというふうに御認識でいらっしゃいますか。
  243. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ナミビアは、現在南アフリカが事実上コントロールしている地域でございます。これに対しまして国連懸念を表明しまして、御存じのような安保理の決議が出まして、先月の末までにナミビア関係の諸決議を南アフリカがどの程度誠実に遵守したかということをレビューする、そのレビューの段階で南アフリカが決議に従ってないということがわかれば適当な措置をとることを勧告するという趣旨の安保理決議に従いまして、たまたま先月の末がその決議の予定した期間でありますので、現在安全保障理事会がナミビア問題について開かれております。この会議が開かれる直前に南アフリカ政府国連の事務総長に手紙を寄せたわけでございます。その手紙の内容は、細かい点は省略いたしますけれども、要は、従来の諸決議に関連しまして、ナミビア地域の民族自決あるいは将来の独立はこれらの地域住民の自由意思に任せて、あらゆるオプションを彼らにゆだねるのだという趣旨考え方を示したわけでございます。したがいまして、これを南ア政府が従来のナミビア地域に対する態度より一歩前進したものと受け取る向きがございまして、これをもう少し具体的な形で決議案の中に入れ、さらに一歩ずつ南アフリカを国連決議の方向に引っ張っていこうという努力がいまなされつつあるように承知いたしております。恐らく、この会議は一週間程度のうちに何らかの決議案を採択して終わることになろうかと思いますけれども、南アフリカ政府としては若干前向きな意向を示し始めているということではないかと思います。
  244. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、そういういきさつからいたしまして、ナミビアの独立ということも近い将来に考えられるということなんでしょう。ナミビアの独立に対してだんだん南アフリカは動いていっているということなんでしょう。いかがです。
  245. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは事態の進展によってわりに遠くない将来に独立ということも考えられると思います。他方、先般ナミビア、ミッションが参りましたときに三つの点を話し、また要請があったと申しましたが、その最後のナミビアインスティチュートの設立、つまりナミビア地域が独立したときに、その施政に当たる行政官の育成なり訓練のためのインスティチュートに対する財政資金の協力というかっこうで要請があったわけでございますが、そのときのどのくらいの期間を考えているのかという話に対しまして、これは非公式でございますが、向こうの考え方として三年から五年の間を考えているということを言っておりましたので、あるいはこの独立期間に対する向こうの考えを若干ながら非公式に示唆するものではないかという気がいたします。
  246. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、このウランについての輸入の契約もそれからでも遅くないのじゃないですか。ナミビアが独立してから後に契約を結ぶということ、これは何も国際世論に背を向けて、あえて盗賊行為と言われてまでやるようなことにはならないと思うのです。独立を待って契約をやっても遅くはない、そういう兆しが現にあるわけですから。全くないのなら問題は別ですよ。どういうふうにこの問題についてお考えになりますか。
  247. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 見通しの問題はなかなかむずかしいかと思います。しかし、そういう方向にあるということであれば、期間の長短もさることながら、やはりこの情勢を頭に置きながら、どうするかということを主たる当事者が考えるべき問題ではないかと思います。
  248. 土井たか子

    ○土井委員 主たる当事者だというよりも、これはやはり日本政府としてどう考えるかという大きな問題が介在していると思うのですよ。  この平和利用の問題で実はお聞きをしているわけですが、いまのこの状態の中で南アとのウランの輸入契約を解消しても、わが国の核の平和利用については先々支障を来たさないという、核保有国からの何らかの保障がこの核防条約締結することによって取りつけられるかどうか、この点はいかがでございますか。
  249. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 核防条約の規定、特に原子力平和利用の条項を見ますと、これは先ほど申し上げましたように、核防条約に入ることによって原子力平和利用は阻害されないということと、さらに平和利用を積極的に推進する規定と二つから成っているわけでございますが、その積極的に推進する規定が、これは一つ原則といいますか考え方を示したものでありまして、この条項によって直ちに締約国の、つまりウランの供給余力のある締約国が、ない締約国に対して供給する義務を持つ、あるいは逆に持たない国が供給を受ける権利を持つということにはなっておりません。
  250. 土井たか子

    ○土井委員 しかし本来この条約自身については、この点は何度となく質問の中身で確かめられているところですけれども、いわば不平等条約なんですね。非核保有国は核の平和利用についてのみ保障されるけれども、核兵器を保有してはならないというはっきりした限定があるわけです。だから、核兵器を保有している国と核兵器を保有していない国との間では、おのずと条約の中身を見た場合に不平等な取り扱いということにならざるを得ない。核保有国はしたがって非核保有国が核を保有するということに対してはどこまでもこれは好ましくない事柄だというふうに見ておりますし、一方非核保有国の方は、核に対しては平和利用についてのみ保障されているというのにとどまるわけですね。したがって、この平和利用の問題について、非核保有国が支障を来たしたときには核保有国の方から何らかのこれに対しての保障がなければならないのじゃないかと思うのは、これは一応こういう問題について、条約の基本的なあり方を思う場合に考える点でございますが、この点は条約に義務がないから、何らそれに対しての取り決めは具体的に義務化されていないから、そのことを言ってもむただというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  251. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど私の申し上げましたのは、やや法律的な意味での権利義務はないと申し上げたのでありますけれども、この条約の規定の趣旨から申しますと、条約に入らない場合に比べまして、入った場合の方がこの締約国間の協力が積極的に推進されるということになっておりますだけに、入った方が有利である、その点についても有利であるということは申し上げられると思います。  それから特に再検討会議で採択されました最終宣言の中にも、核燃料あるいは原子力平和利用の資材、施設の提供に当たってはこの条約の締約国を優先するという考え方が一般的空気でございまして、それが宣言の中にも勧告として盛り込まれておりますので、そういう意味では一段と締約国であることによって供給を受けやすい状態になったということは申せるかと思います。
  252. 土井たか子

    ○土井委員 日本が予想している向こう十年間くらいのウラン消費量の中で、このナミビアとの間で契約を取り交わしている中身は、消費量については一体どれくらいの分野を占めるのでしょうか。いかがです。
  253. 高橋宏

    ○高橋説明員 十年間で申し上げますと約十万トンに相当いたしますので、八千トンと申しますのは八%に相当するかと思います。
  254. 土井たか子

    ○土井委員 それだけの分を、国連決議に従っていま日本がこのナミビアからの輸入契約を解消しようとすると、何らか核保有国からの保障が支障を来たさないように受けられやしないかという問題がやはり出てくるわけです。先ほどはまた法解釈論上はという前置きでおっしゃいまして、事実そういう努力をすることにやぶさかでない旨の御答弁でございましたが、日本としては、このナミビアから輸入するウラン契約を解消しても支障を来たしていかないことのために、核保有国から何らかの保障を取りつける用意が考えられているかどうか、そういう御用意がおありになるかどうか、この条約締結に当たっていかがでございますか。
  255. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは実際に核兵器国が、平知利用のための核燃料あるいは濃縮ウランなりウラン鉱石にどの程度供給余力があるか、つまりそれぞれ各国とも自国消費及び伝統的な供給関係にある各国に対する長期の約束がございますので、まずその点から、果たして余力があるかどうかという問題があろうかと思います。  それから果たして日本がそういった国にそういう申し出をすることが必要であるかあるいは適当であるかどうかという問題は、これはこの核防条約とは直接関係はございませんけれども、非常にデリケートな問題を含んでいると思いますので、私としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことをおっしゃいますと、万事外交問題というのはデリケートでございます。この核防条約の審議について出てくる問題それぞれデリケートでございます。また核の問題はことさらデリケートでございます。すべてデリケートな問題だから答弁を差し控えたいとおっしゃると、何にも私たちは答弁をお伺いするわけにはいかなくなってまいります。  いま問題は、このナミビアからウランを日本が輸入しようとしているこの行為はいわば海賊行為のようなものであって、国連決議からしたら認められない、ナミビア理事会の法令からすると、法令違反をあえて犯してまでこのウランの輸入をやろうとしている契約だということにならざるを得ない。この契約を解消するということならば、それを見越しての、先ほど通産省側からの御答弁の中では、消費量の中の約八%というものがこれに対して見込まれているわけでありますから、削り取られる部分だけ支障を来たすわけでしょう。それだけ削り取られても大勢に影響ない、大丈夫支障なくやっていけるというふうに通産省さんはお考えですか。まずそこの点を聞かせていただいて、再度お伺いしましょう。
  257. 高橋宏

    ○高橋説明員 八%に相当します八千トンにつきましては、非常に貴重な量でございまして、支障はないとは申せないと考えます。
  258. 土井たか子

    ○土井委員 通産省さんにさらに確認をしておきたいのですが、この契約が取り交わされたのは一体いつだったわけでありますか。ひとつその時期を聞かせていただきたいです。
  259. 高橋宏

    ○高橋説明員 一九七〇年と聞いております。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 これは釈迦に説法でございますけれども、七三年の六月の例のエネルギー計画からすると、八五年までに六千万キロワット、その中でこの原子力に頼る部分というのがずいぶんふえていくわけでありますが、御承知のとおり、七三年六月の当時のエネルギー計画というのは、その後の石油危機がございまして、電力に対しての需要というふうなものがそれ以前と変わってきたということからすると、そのままのエネルギー計画を今日まで持ち込むということ自身が果たして適切であるかどうかという問題を含んでの計画だったわけですね。恐らく、先ほどの御答弁の中身は、そういう当初の計画どおりにいくとウラン消費量の約八%という数値をお挙げになったのじゃなかろうかと思うわけでありますが、あの石油危機以後、電力の需要というふうなものがどういうふうに考えられ、電力の中に、特に火力発電でない、原子力発電によって賄う部分がどの程度に考えられているか、そのうちの手直しというのは全然ないままに、かの八%ということをお答えになったわけでありますか。
  261. 高橋宏

    ○高橋説明員 原子力発電の六千万キロワットでございますが、最近のエネルギーの消費動向、特に電力の消費動向、さらに今後の経済計画あるいは立地動向等を踏まえまして、六千万キロの原子力発電につきましては鋭意検討をいたしておるところでございますが、先ほど約八%と申しましたのは、昭和六十年度時におきます約六千万キロという数字をもとにしたものでございます。ただ、現在のウラン契約状況は、昭和六十年前後までにつきましては、ほぼ民間ベースで確定しておりますが、その後の増分につきましては非常に追加契約困難な事情にあるということは御承知のとおりでございます。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 お答えになりました八%というのが、それは絶対動かしがたい中身であるというわけにはいかないという要因も、いまお聞かせいただいたところで私はわかります。と同時に、先ほどナミビアについてはだんだん事情が推移して、近い将来に独立するという可能性が非常に強いという国際情勢もございます。この問題、いかがでございますか、外務大臣、これはナミビアが近い将来独立してから、ナミビアとの間で正式にウランについての契約をしても遅くはないと私は思うのですよ。大変な無理をして、世界の非難というものを背に受けながら、これこそまさしく世界の孤児になるということを好んでやる必要はないと私は思うのであります。外務大臣はこういうことについて一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、御所信を承りたいと思います。
  263. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、先日ナミビア理事会の首脳部の方が見えまして、いろいろお話をしたのでございますけれども、日本が海賊行為をやっておると言われるものですから、私が申しましたのは、こっちは悪気でやったわけではないので、契約そのものは、私契約としてはりっぱに成立をしておる。南ア自身が自分のものでないものを売ったというお話なら、それは買った方に罪があるとはちょっと話がきついので、売った方が、これはナミビアのものを自分のものとして売った、こういうお話なのでしょうと言いましたら、まあ、そう言われればそうなんだというお話なのです。また、ナミビア理事会というのが、御承知のようにちょっと前例のないものでありまして、本当は現地に出かけて行っていわゆる国づくりの基礎をつくれというのが国連総会の意思であっただろうと思いますけれども、実際には現地に行けませんで――まあ、無理もないと思います。いわば外で、机の上でいろいろ布告をしたり、また、独立の場合の官吏の養成をインスティテュートをつくってやろうというようなことでございますから、言ってみれば、いまの状態では現地そのものに足がない、そういう状況であるわけでございます。こういうことは前例のないことでございます。しかし、そうではありますけれども、南アの統治というのはいかにも不当であるということをわれわれも思っておりますから、結局、ナミビア理事会の言うことは、やがてナミビア国の財産になるべきであるところの鉱物資源をいま勝手に持って行ってもらっては困る、そういうような考え方になってくるのだということをこの間話して私は思ったわけでございます。でございますから、もう五月三十一日の期限も過ぎましたし、アフリカにおける動きはかなり急でございますから、何かの形で実際この問題は国連の総意の方に進んでいくであろうと期待をしてもそんなに無理ではないという事実が片方でございます。  他方で、先ほどからお話の六千万キロワットというのは、現在、エネルギーの総合計画を再検討しておりまして、その結果は夏ごろには一応暫定的に出るようでございますが、常識的に考えまして、昭和六十年の六千万キロワットというものはなかなか容易でない。それは電力の立地がおくれておることが主たる原因でございます。そういうこともございますので、やはり現状から考えますと、土井委員がおっしゃっていらっしゃいますように、まだ二年先のことでもありますので、少し余裕を持って事態を考えてもいいのではないだろうか。これは、私としましては通産大臣の御意向もよく伺わなければならないことではありますけれども、あれこれ考えますと、その両方の面から、余り性急な処置なり決断なりをしない方がいいのではないだろうか。私もエネルギーの方の主管大臣でございませんので、これ以上具体的にちょっと申し上げにくうございますけれども、私としては大体土井委員のお考えになっていらっしゃるような、多少時間をかしても、しりに火のついたようなことにはならないのじゃないかという気持ちを持っております。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、外務省は直接そういう担当省ではございませんけれども、やはり国連中心主義、国連中心外交、平和外交、特に核防条約なんかを締結するに際しては、国内においては核の平和利用の問題もございます。今回、いま宮澤大臣の御答弁のその線を延長させてまいりますと、担当省ではないけれども、しかし、いま性急にいろいろこういう状況の中でナミビアからのウランの輸入契約を強行するというのは好ましくないという意味での何らかの措置を、外務省外務省なりに講じていただく御用意があるのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  265. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 六千万キロワットが事実上今後十年間で到達できる目標であるとはなかなか考えにくい点がございますので、これはいずれ夏ごろにはそこのところははっきりしてまいると思いますけれども、私どもの立場で通産省あるいは通産大臣にいろいろお話を申し上げてみたいと思っておるところでございます。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 それではこれは、一応ナミビアからのウランの輸入について、通産省に対して、外務大臣の方からそういうふうな向きのお話をしていただくことをひとつ確認させていただきまして、さらに核燃料の問題なんですが、再検討会議平和利用を討議する第二委員会アメリカ代表が、世界の主要地域において核燃料の形成、加工、それから再処理のためのセンターを設けるという構想を披瀝したやに聞いておりますが、これについて、この内容の説明を聞いておられるかどうか、ひとつ御説明賜りたいと思います。
  267. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 再検討会議の場におきまして、アメリカから地域核燃料サイクルセンターのようなものをつくったらどうかという考え方が出されたことは事実でございます。この提案の背景は、保障措置を経済的に効果的に運用する、それからそれによって核拡散防止を図るということ、それから安全面あるいは経済性あるいはフィジカルプロテクションといいますか、いわゆる核ジャック防止観点からこういう一つの地域にわたるセンターをつくる方がいいんじゃないかという提案があったわけでございます。そして、結局一番適当な機関でありますIAEAにおきましてこれが実際に可能であるかどうかという検討が行われることになったわけでございます。そういうような趣旨の一節が最終宣言の中に盛り込まれているわけでございます。
  268. 土井たか子

    ○土井委員 わが国としてはアメリカが提唱している構想に対して共鳴をし得るのかどうか、どういうふうなお考えを持ってこの構想を聴取されたのか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  269. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは構想の段階で、種々検討すべき点がありますので、まだはっきりした日本側の考え方を申す段階にはないと思いますけれども、ただこのアメリカの説明を聞きました段階では、これは非常に大規模な工場になるような話でございましたので、まず大変な資金が要るのではなかろうか。それから核拡散防止のためには非常に興味ある構想でございますけれども、実際にどこにこれを設立するかということについては相当やはり政治的な問題も絡むであろうし、そう簡単ではないのではないかという感じを持ったわけでございます。
  270. 土井たか子

    ○土井委員 特にこの構想の中で東北アジアと中南米あたりに最初の核燃料加工センターの設置というものが考えられている向きを、このアメリカの構想の中で御存じになっていらっしゃるかどうか。いかがでございますか、この点は。
  271. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 会議の場に関する限り、私たちの承知しておりますところは、アメリカがこの構想を取り上げましたときに、アジア諸国では韓国とフィリピンがこの構想に関心を示すような発言を行ったということでございます。
  272. 土井たか子

    ○土井委員 それは、東北アジアと中南米あたりに最初の核燃料加工センターを設置するというアメリカの構想に対して、いまおっしゃったような御答弁になるわけでありますね。
  273. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 アメリカがこの構想を会議の場に取り上げましたときに、特にどの地域というような例示をしてこの話を出したわけではございません。
  274. 土井たか子

    ○土井委員 将来もし、IAEAアメリカが出しております核燃料センターのような構想が討議されて、特にわが国などがそれの候補地になるというふうな場合については、この事柄に対してどういうふうなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
  275. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは、先ほどこの構想に対してどういう考え日本側は持っているかという御質問に対してお答えしましたように、いろいろな問題があると思いますので、やはり慎重に検討する必要があろうかと思います。
  276. 土井たか子

    ○土井委員 特にそれはどういう点に対して慎重に検討をする必要をお感じになっていらっしゃいますか。
  277. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これはまさに申し上げましたとおり、構想という段階をまだ出ないものでございます。したがいまして、これについて会議の場で詳細な討論が行われたわけでもございません。ただ、この会議におきまして表明されたとりあえずの意見から申しましても、その実現可能性についてはいろいろな問題がある。特にこの最終宣言にもうたわれておりますように、実施上及び組織上の困難性があるという点が指摘されております。したがいまして、いま具体的にどういう点に問題があるかということは、わが方としてもこれから検討しなければならない問題であろうかと思います。
  278. 土井たか子

    ○土井委員 実際上組織上の問題点もあろうかと思いますが、その点に対して一応の見通しが立つということになってまいりましたら、納得ができる段階になっているというふうに確認をされますなら、日本としてはこの核燃料センターの候補地として選ばれた場合、これを受けることにやぶさかではないのかどうか。その点のお考え、いかがですか。
  279. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この構想が実際に実現します場合には、おそらく国内的には種々の関係省がございます。それと十分に協議しなければなりませんけれども、同時に先ほど申しましたように、このセンターを日本に置くことに関連する政治的な意味合いといいますか、この辺は非常に慎重に検討する必要があろうかと思います。いずれにしましても、いろいろな問題点が解明された段階でそれを総合的に判断をするということになろうかと思います。
  280. 土井たか子

    ○土井委員 現にある核燃料センターについても、種々の問題に対して検討して詰めをしなければならないという御趣旨の御答弁でございますが、この平和利用という点からしまして常に問題になるのは、核ジャックに対していかに備えるかという問題点が一つあろうかと思います。こういう事柄からいたしますと、核燃料センターというのが将来IAEAで討議の場に上ります場合に、日本としてはそれを受けるか受けないかということに対して全然無関心でいるという態度ではいらっしゃらない。条件が整いさえすればというふうな意欲満々であるというところも大いに読み取れるわけでありますが、この核ジャック等々について、この自衛措置を一体現にどのようにお考えになっていらっしゃるかというのをお聞かせいただきたいと思うのです。
  281. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 特に核盗難防止観点から日本で当面問題になっておりますのは、再処理施設あるいは核燃料物質の加工、使用事業所等でございますが、現実に行っております核盗難防止の措置といたしましては物理的な防護措置、障壁を設ける等の措置と、それから余りこれは内容にわたって詳しく申し上げますと――どういう防護措置を講じているかという具体的な内容はちょっと申し上げかねるわけでございますが、いま申し上げました物理的な防護措置のほかに、二十四時間の警備のシステム、治安当局との連絡方法の確立並びにその際の体制の調整、もちろん出入に関する厳重な管理等を基本といたしまして現在は講じておるわけでございます。ただ、今度の再検討会議でも核盗難防止に関しましての関心が非常に強く宣言においても触れられているところでございますので、これらの措置をさらに整備していくということは必要でございますので、現在いろいろな観点からの検討を進めておるところでございます。
  282. 土井たか子

    ○土井委員 万事検討、検討の連続なのでありますけれども、それはどういうふうな装置が整えられつつあるかという問題や、すでに整えられている装置それ自身に対しては、ある意味ではノーハウに係る部分もあろうかと思いますが、ただ、それがどこまでもノーハウだということで、安全性に対しての確認が決め手になるわけですから、そういうことからしますと、これは知られたらすなわち自衛措置としての意味がなくなるというふうなことになってまいりますと、それに対して、それならばいかに防備するかという人的措置の問題も出てこようと思います。人的措置の問題、御承知のとおりに、西欧各国でも西独の場合などは武装ガードマンなどを常駐させておりますね。いろいろな自衛措置、防護さくを設けて不法侵入しにくいような構造にはなっておるけれども、さらに武装ガードマン等々を常駐させるということが常識化してきておりますね。日本の場合、現在までのところ日本のガードは甘いというふうな趣旨が専門家の中から漏らされてきているということもかいま聞くわけであります。昨年関西電力の美浜の原発で放射性物質が盗まれまして、その盗まれた放射性物質が恐喝材料に使われるという事件などが日本では発生するようなことにもなっているわけですから、その防護の方式について、従来どおりのシステムでは間に合わないということであろうと思います。何とかしなければならぬだろう。ところが、新システムについても中身は一切ノーハウで、これについて聞かれたが最後、自衛措置としての効果がなくなるということであってみれば、それに対して守っていく人的配置というのも必要だと思うのですよ、そういうことをおっしゃるのなら。一体日本の場合にこれについてガードする人的配置というのはどういうことになっているのですか。ガードマンを現に使用しているのですか、どうですか。いかがですか。
  283. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 事業所内の職員による警備のほか、ガードマンの配置等も行っております。ただ先生の御指摘がございましたけれども、日本では自衛のために武装する、武装した人員を配置するということは考えておりませんで、治安当局との連絡体制の緊密化を図って、そのような事態が生ずるおそれがあります場合に、治安当局の応援を求めるという体制を考えておるわけでございます。
  284. 土井たか子

    ○土井委員 これに対しては、別にガードマンを必ず置かなければならないという義務がないわけですね。ですから置いてあるところもあれば置いてないところもある。これは自主的にやっているということだというふうに私はいまの御答弁を聞くわけでありますけれども、しかし治安当局と連絡をとるといったって、これは間に合わない場合だってあるのですよ。そうするといまのままでいいかどうかというのは、当然問題として私は出てこようと思うのです、核ジャックに対していかに措置するかという問題を考えていきますと。将来ガードマンについてこのあり方を考えてみる、あるいは治安当局との連絡についてそのあり方を、いままでどおりではなく、新しく何か再検討してみる、あるいは自衛隊との警備に関しての連絡をとり合うということも考えてみる、いろいろな方法があると思いますが、どういうような方式をいまお考えになっていらっしゃるかというおよそのところを、ありましたらお聞かせいただきたいと思います。なければ結構です。
  285. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 先ほども申し上げましたように、防護措置というのは防護壁を置くとかあるいは出入管理を厳重にいたしまして、立ち入り制限等の措置を講ずるとか、あるいは施錠を完備する。かぎも、余り具体例は申し上げにくうございますけれども、非常に危険なものを置いてありますところでは七重のロックをしているというようなこともございまして、施錠管理を行う、巡視、点検を強化するというようなことを講じておるわけでございますけれども、今後取り扱います核物質量が増加する、あるいは移動の機会がふえるというふうな事情が出てまいりますので、より強い防犯の装置あるいは監視の装置、これはハードな面でございますけれども、そういう装置的な面での開発、それからソフトな面では、そういうシステムをどううまく構成していくかというような点について、現にかなり具体的な面も含めまして検討し、ないしは指導しておるという事情にございます。
  286. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、先ほどからの人的な問題についてはお考えはない。ただ装置について現に指導し検討を重ねているというかっこうだということなんですね。ただ、しかしパリの国際原子炉安全専門委員会等々において討議されるために出席したわが国の専門家から言わせますと、日本のガードは甘いという声も出ていることは御承知だと思うのです。したがいまして、これがいまおっしゃるような検討、検討とずっと検討が続きますと、いつまで検討が引き続いて行われるのかよくわかりませんけれども、どういうふうな具体的な装置で核ジャックに対しての自衛がなされるのかということに対してはつまびらかではない。その点はやはり安全審査をするような委員会制度であるとか、あるいはそのことに対して具体的に保障していくようなことを審議する、そういう委員会制度であるとか、そういうふうなものをお考えになっていらっしゃるのかどうか、その辺はいかがですか。
  287. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 科学技術庁内には実は検討の組織をつくってはございますけれども、先生御指摘のような意味――多分外部の専門家を含めた審議会等を想定しておられるのかもしれませんけれども、それにつきましてはただいまのところ特に予定いたしておりません。
  288. 土井たか子

    ○土井委員 それでいまの核ジャックに対しての自衛措置は十分だというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  289. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 先ほども申し上げましたように、装置、施設等のハードな面でのより強力な装置の開発のほかに、それをどういうふうにシステマティックに担保していくかというソフトな面での検討を含めまして、この中には当然配置すべき人間、巡視点検の態様、先ほどの治安当局との連絡方法等含めまして、ソフトな面とハードな面との両者の構成によって、現在でもやっているつもりでございますけれども、さらにより強力な防護措置が講じられるものというふうに考えておるわけでございます。
  290. 土井たか子

    ○土井委員 そのことのために、何らか新たな構成メンバーによる審議会のようなもの、あるいは監視委員会のようなもの、そういうものを設けるというふうな構想はお持ちになっていらっしゃいませんか、役人の方々ばかりでなしに、外野の専門家やこういうことに対しての学識経験者の方々も加えて。
  291. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 ただいまのところ、そういう審議機関を設ける予定はございませんけれども、一つ申し落としておりましたが、先ほど来申し上げておりますソフトの面と言いますか、どういうシステムでやったらいいか、あるいはどういう装置が適当であるかというようなことにつきましては、関係の試験研究機関、動燃事業団であるとか原子力研究所であるとか、さらに民間のその種の専門的に扱っております団体がございますけれども、そういうところの専門家の方々に研究を委託する、あるいは御意見を伺うというようなことは行っております。
  292. 土井たか子

    ○土井委員 行っておりますという御答弁じゃしょうがないですよ。これから新たに何らか専門家であるとか学識経験者を加えて、監視委員会や安全審議会のようなものを、この核ジャックに対しての自衛措置として講じていくために特設するという構想がおありになるかどうかということをお伺いしているのです。  なぜこういうことを私が言うかというと、いま日本のガードは甘いというふうな声が専門家の間にあり、そして現に昨年の八月ですよ、関西電力の美浜原発で放射性の物質というものが盗まれるという事件があるわけですから、したがってお伺いをしているわけであります。
  293. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 通常核ジャックと言われておりますものは、特殊核物質と呼ばれております濃縮ウランあるいはプルトニウムというものを対象にいたしてございます。ただいま御指摘がございました盗難事件がありましたのはアイソトープ、よく御案内のように非破壊検査あるいは医学利用等で使っていますアイソトープの紛失事件がございまして、言われておりますいわゆる核盗難防止の対象としておるものではございません。しかしそれでいいかということは、これはいいということではございませんで、アイソトープの盗難防止に関しましても、これはアイソトープとして必要な措置を講ずるように、実は関係各省とも連絡協議会等をつくりまして所要の防護措置を講ずるようにいたしてございます。くどいようでございますが、いわゆる核ジャックと呼ばれておりますものは、プルトニウムなり濃縮ウランなり特殊核物質について言われておるわけでございます。
  294. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことに対してのお答えだけであって、別に新たなそういう組織なり審議会の問題については何らお答えがなかったのですが、恐らくは全然お考えがないから、そういうことに対してのお答えがないのだろうと私は思います。そのことを確認しますよ。  さて、いまその物質の問題が出ましたが、実は第一条の「核兵器その他の核爆発装置」ということを見ていった場合に、「その他の核爆発装置」というのは一体どういうものを指すのだろうか。概念はどこにも書いておりません。定義はどこにもないわけですから非常に私は気にかかるのですが、水素爆弾というのは核兵器の中に含まれるのでしょうか。いかがでございますか。
  295. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 水素爆弾は、たしか核融合によって瞬間的にエネルギーを大量に放出するものだと思います。これは外務大臣からお話がありましたように、その性質においていわゆる核分裂性物質による核爆弾と同様な効果を持つものでございますので、やはりこの核防条約の立て方から申しますと禁止されている核兵器に該当すると思います。
  296. 土井たか子

    ○土井委員 同様な効果を持つから核兵器であるという定義はどこに書いてありますか。
  297. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 条約自体核兵器の定義はないことは御存じのとおりだと思います。しからば核兵器、つまりこの条約禁止の対象になっている核兵器、あるいは核爆発装置は何であるかということはございますが、それに対しましてはすでに御答弁申し上げましたように、瞬間的に、要するにコントロールされない形で大量のエネルギーを放出し、主として破壊あるいは人間殺傷用に使われる目的のものということが、われわれが禁止対象となっております核兵器ないしは核爆発装置考えているものでございます。
  298. 土井たか子

    ○土井委員 それは局長はそうお考えになっていらっしゃるかもしれません。しかし核防条約のその核兵器という定義について、国際会議の席上、あるいはこの問題を取り扱ういずれかの席上、討議をされて、いま言われたような定義というのが国際間において確認されているのですか。
  299. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この核防条約成立する過程における会議におきまして、核兵器国とは何であるか、それを定義するための案はございましたけれども、核兵器は何であるかという意味議論はございませんでした。ということは、この核兵器というものが何であるかということについて、少なくとも参加国の間において共通の理解があったと思います。一つは核分裂によるいわゆる普通の爆弾、それから核融合による水素爆弾と申すもの、この二つが核兵器ないしは核爆発装置というふうに観念されておったというふうに考えます。また、その会議の過程において、これと異なる見解の表明はなかったものと承知いたしております。
  300. 土井たか子

    ○土井委員 国際会議の席で、あるいはIAEAでそういうことに対しての確認は、核兵器ということに対してはないということを一つ確認しておいて進みたいと思います。  水素爆弾も核兵器の中に入れて考えなければいけないという先ほどの御答弁は、つまり爆発をするということ、問題は分裂をするというそこのところが重点なんですね。  お伺いしますが、この第三条で保障措置という問題が出てまいります。保障措置の対象になるのは原料物質、特殊核物質ですね。したがいまして、いま私が水素爆弾と言っている場合の重水素とか三重水素、水素そのものは保障措置の対象にはならないはずなんであります。何を起爆剤に使うかというところが実は問題なんでしょう。いかがです。この点まず確認しましょう。
  301. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま言われました水爆の原料となります重水素あるいは三重水素は、確かに核分裂性物質ではございませんので、保障措置の対象にはなりません。しかしながら、水素爆弾が実際に爆発するための起爆剤としてはこれ以外のもの、つまり核分裂性物質が必要であるわけでございます。したがいまして、その意味でこの対象になるわけでございます。
  302. 土井たか子

    ○土井委員 起爆剤としてウラニウム、プルトニウムが使われる場合はおっしゃるとおりだと思うのです。いま水爆についてはそればかりではないはずですよ。そればかりでない部分で開発がずいぶん進んでいるはずであります。レーザーで起爆するという場合は、いかがになりますか。
  303. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 専門家でございませんけれども、レーザーを使います場合には、レーザーそのものは核分裂性物質ではございませんので、この保障措置の適用の対象にはなりません。ただ、この核防条約禁止されております核兵器あるいは核爆発装置と申しますのは、核エネルギーを放出するものを禁止しているわけでございます。したがいまして、起爆剤として核分裂性物質を使わない、あるいはレーザーという対象にならないものを使って爆発を起こした場合にも、つまり水素爆弾は核分裂性物質を原料といたしておりませんけれども、その爆発の結果、核のエネルギーが大量に放出されるものはやはりこの条約の対象として禁止されるわけでございます。
  304. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいましたような、そういうことについての規定はどこにもないのですね。きょうの質問の初めからそうなんでありますけれども、解釈論というものを、解釈をする場合の態度というものを非常に厳密にお考えになっていらっしゃるようでありますから、ひとつこの条約条文に対しても厳密にお考えいただきたいと思うのです。いまのような御答弁のことはどこにもない。いまのレーザーが起爆剤になった場合については、これは取り押さえようがない。現に運河であるとかダムであるとか港湾等々の工事には、レーザーによる水素爆発というのは、生来空気が汚れませんから開発されて将来活用されるという可能性がずんずんふえていっているというのが、これは一般によく知るところでございます。これ取り押さえようがないですよ。だから私は聞いたのです、水素爆弾というのは一条のこれに当てはまるのかと。     〔水野委員長代理退席、石井委員長代理着席〕レーザーで起爆をされた場合には、これはこの核防条約の範疇から外れますね。いかがでございますか。
  305. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは専門的なことなんで、私も余り自信ありませんけれども、レーザーによって水素爆弾の起爆剤とする技術はまだないそうでございます。
  306. 土井たか子

    ○土井委員 あるないの問題じゃないですよ。そういうことがあるというのがわかったら、実際問題意味がないのです。あるないを論議をしているのじゃないのです。あるということがわかって、いずれにあるか、どのように装備されているのかわかれば意味がないじゃないですか。そういう問題はこの核防の条約の範疇から外れてありますねということを、私は確認しておきたいのです。
  307. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 条約に入るか入らないかという「核兵器その他の核爆発装置」という言葉の解釈論でございますので私から申し上げますが、これはただいま御指摘のようなレーザーであれ、ないしはきれいなものである水素であれ、核融合であれ核分裂であれ、いずれにいたしましても制御されないような核爆発というものはすべてこの禁止の対象に含まれる、このように私どもは解しております。
  308. 土井たか子

    ○土井委員 制御されないようなとおっしゃいますが、それならばそういうことに対して、日本政府として国際会議の場においても確認の上でお答えなんでしょうね。
  309. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国際会議におきまして、日本がその点を各国に具体的に質問をして各国の承認を得たということはございませんが、そういう解釈を前提として国際会議というものが行われ、この条約ができたものだと承知しております。
  310. 土井たか子

    ○土井委員 それは伊達参事官の見解でありまして甘いですよ、そういうことでこの核防条約を見たら。大変甘い。こういうことに対して、国際間で定義もないまま勝手にわが国はこう思うということで通用させていこうということ、これくらい甘いことはないのです。非常に恐しい。これが果たして日本安全保障たり得るかどうか、私は大変に危なっかしい気がします。いいかげんなものですよ。水素爆弾というものは、この第一条にいう核兵器核爆発装置の中に入らない場合があるということをはっきり確認をしていただきましょう。これは解釈論上ですよ、解釈論上ということをきょうは厳密に初めから始まっていますから。いかがですか。
  311. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この点で御参考になるかと思いますのは、一九六八年の第二十二回国連総会におきましてこの条約が審議されましたときに、わが日本代表が発言しておりますが、その発言に対していかなる国もこれにチャレンジするといいますか、異論を唱えたことがなかったということが、一つはわれわれの考えているいわば定義といいますか、核爆発装置とは何であるか、核兵器とは何であるかという考え方が国際的に肯定されたものと思います。その発言の中の該当部分を申し上げますと、われわれは、核爆発装置とは、衝撃波を伴う大量のエネルギーを瞬間的に放出するように設計された装置を指すものと理解するというふうに言っております。この定義にはいわゆる原子爆弾、水素爆弾の両方が入るわけでございます。
  312. 土井たか子

    ○土井委員 それは水素爆弾というのは入るというのが、条文全体から考えていって、先ほど私が申し述べたとおりです。起爆剤としてウラニウムとかプルトニウムというのが使われている場合に入るのですよ、問題は。条文のどこに、これはレーザーが起爆剤になった場合、それも入るというふうなことが言えますか。それは外れているのだ。この問題については外れているということをひとつ御確認いただきたいのです。あくまでこれは、起爆剤に対してウラニウム、プルトニウムとかいうものが使われるというふうなことが問題であって……。
  313. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど申し上げましたように、日本代表国連総会におきましてわれわれの理解を申し述べ、それに対して何ら異論が唱えられなかったことから見まして、この核爆発装置には、いわゆる原子爆弾と水素爆弾が入ることは間違いないと思います。  いま御指摘の、起爆剤として核分裂性物質あるいはプルトニウムを使うという点はございますが、そういう起爆剤を使う場合には、さらにこの条約禁止の対象になることがはっきりするわけでございます。
  314. 土井たか子

    ○土井委員 ただその節、起爆剤として使用するのはウラニウムやプルトニウムだというふうな認識しかおありにならないのじゃないですか。それ以外の、きょう私がここで挙げたレーザー等は、使用される場合を恐らく想定されていないだろうと私は思うのでございます。これはむしろそこで考えられている、第三条に言う保障措置の対象に何を考えるかというところが実は問題になってくるわけでありますから、この保障措置の対象からまず重水素や三重水素が外される、つまり保障措置の対象にならない。しかも、水爆を爆発させる場合に引き金としてレーザーを使用するということになってまいりますと、これはどこにも触れないですよ。したがいまして、条文解釈に対して厳密にという態度でいらっしゃるわけでありますから、このことに対しての確認を要求します。
  315. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先ほども申し上げましたとおりでございまして、核兵器その他の核爆発装置と申します中には、核融合による爆発ないしは核分裂による爆発、いずれも含むものでございます。
  316. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことを言っているのじゃないですよ。それは当然なんです。核爆発装置の方ではそれはおっしゃるとおりのことなんです。両方含むのです。ただし第三条で、この保障措置ということをやらなければいかぬということを決めておるわけですけれども、その保障措置の対象になるのは原料物質、特殊核物質であって、その点を考えていった場合に、重水素とか三重水素の方は保障措置の対象にならないということがまず言えるのじゃないですか。だから、私は伊達参事官のおっしゃっているところは考えた上で言っているのですよ。両者ともに入ることはあたりまえなんです。そうでないとすれば、この問題は核分裂も爆発も起こりませんから。
  317. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 三条二項にございます原料物質または特殊核分裂性物質には、保障措置協定の該当条文の中に定義がございますが、この定義の中には三重水素のようなものは入っておりません。しかし、この定義の終わりの方を見ますと、一応列挙した物以外に、理事会が随時決定するその他の物質という項がございます。これは原料物質の項にもございますし、特殊核分裂性物質の項にもございます。したがいまして、随時理事会としてこの対象に含める必要があるというものについては、いつでも決定できるという体制になっております。ちなみに、三重水素を保障措置の対象にするかどうかという点については、まだ技術的にその必要性があるかどうかという検討がなされておらないということだけ申し上げておきます。
  318. 土井たか子

    ○土井委員 いまのはお答えにはならないのですよ。保障措置の対象になる物質については理事会が決定する権限があるとまでは言われたけれども、現にどうなんですか、理事会が重水素であるとか三重水素についてそれを対象とするという決定をなさっていますか。ないのです。だから、私はこういう問題が出てきますよということを言っているのであって、それから考えていきますと、いかがです、一条に言うところの核兵器の中に水素爆弾というのは含まれないという場合が出てきますよ。どうしても出てくる。このことに対してはっきり一回確かめてください。確かめて、そして政府の見解というものをはっきり出してください。そうでないと、核兵器の中でも水爆などというのは大変な威力を発揮するわけです。このことに対しての確かめがなくて、これは核兵器核爆発装置に対しての核防の条約だというふうなことが大きな顔をして言えるはずはないと私は思うのです。ちょっとその辺確かめてください。そして政府のそれに対する見解というものを出してくださいませんか。いまのところはまだ、水素爆弾について核兵器の中に含まれないということに対して確かな反論はいただいていないということを確認します。よろしゅうございますね。
  319. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この核防条約の一条、二条をあわせ読みますと、非常に明らかなことは、原子爆弾も水素爆弾も禁止されておるということでございます。三条以下はそれに使われる、つまり核兵器に転用されるであろう疑いのある物質についての保障措置の規定でございます。したがいまして、将来の科学の進歩によりまして、そういった爆発装置を使うに適当なものが追加されます場合には、先ほど申しましたようなIAEA理事会の決定によってそれが追加される、つまり一条、二条の目的を達成するために必要な措置は理事会においてとるであろうということであろうと思います。
  320. 土井たか子

    ○土井委員 とるであろう、とるであろうといって、他力本願みたいなことをおっしゃっていたらだめなんで、核防条約に対して締結しようと言っているのは、当事国はいまはわが日本なんです。それで、とるであろうということをそら頼みして、そうなるはずだじゃ困るのですよ。日本政府としてのこの問題に対しての認識、しかとしたこの問題に対しての立場というものを出していただきたいと思います。いまのではよくわからないです。
  321. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいまとるであろうと申し上げましたのは非常に不適当でございましたので、それは訂正させていただきます。  その場合には、この条約目的を達成するために、そういう措置をとらなければならないというふうに考えます。
  322. 土井たか子

    ○土井委員 そして、日本がそれに対しては提唱国になるのですか。いかがです。それに対してどういう努力を払うのですか。
  323. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 そういう物質が何らかの核爆発装置に使い得る物質である、またそういう可能性があるとわかりました場合には、積極的にこれを対象となる物質に指定するように日本も努力する  つもりでございます。
  324. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました節はというような頼りないことでこの条約の審議をしてくださいとおっしゃること自身が私は心外ですね。
  325. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは高度に科学的、技術的な知識を要する問題だと思いますので、そういうような言い方をいたしたわけでございます。
  326. 土井たか子

    ○土井委員 これは高度ではありません。やはり核兵器とか核爆発装置というようなものに対して、具体的な中身はどうかということを押さえていないと、何をこの条約によって不拡散させていくのかということに対するめどが立たないじゃないですか。これは私はこの条約のABCにかかわる問題だと思うのだけれども、そのことに対しては高度の技術的、科学的知識を必要とするから、少しそのことに対して吟味をして、そうであるとするならというふうなことでは、これは間に合わない。これは当然、審議を要請なさる以前にここのところは押さえられて、しかる後に国会の承認を必要とするという問題であってしかるべきだと私は思いますよ。このことに対してはっきりさせていただくまで、私は、この条約に対しての審議ということを、これは取り扱うということに対しては無意味とすら思います。いかがです。
  327. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答え申し上げます。  たとえばレーザーを起爆剤にする核爆発という考え方はございますけれども、これはいわば理論的に考えられているところでありまして、その段階を出ておりません。つまり、実際にこれが可能であるという段階になっておりません。そのことだけ申し上げておきます。
  328. 土井たか子

    ○土井委員 可能であるという段階になっているんですね、可能であるという段階に。そのことは確認しておきましょう。
  329. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 レーザーを起爆剤にした水爆はまだ可能の段階になっておりません。もし可能な段階になっておりますれば、これが保障措置の対象になるという措置をとることが必要になるわけでございます。
  330. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、これは解釈からすればそういうことを考えなければならない。当然こういうことに対して考えておかなければならない。可能になっている段階か、段階でないか、これは恐らく局長さんにもおわかりにならないです。いま私は、確信を持ってお答えになっていらっしゃるとは思わないのです。軍事専門家でもこのことに対しては、果たして事実を知っているか知っていないかわかりませんよ。しかし理論の上では開発は可能なのです。そうして、しかもこれは平和利用という点からすると、先ほどももう一回言ったのですけれども、運河であるとかダムであるとか港湾なんかの開発工事にはこのレーザーによって水素爆発を起こすことが、空気を汚さないということを考えた場合にも、これは効用性が非常に高いということでずいぶん開発されていっているといういきさつも私は聞いているのです。だからそういうことからしますと、これは平和利用のみならず、このことが軍事的に使われないという保障はどこにもない。だからそういうことからすれば、現にそういう問題があるかないかということに対して不確かな、局長さんが、それは現にないようでありますとか、それはまだございませんなんというようなことを、自信をもってお答えになれないような答弁でこの場を済ますわけにはいかないのです。一回この事柄についてはひとつ政府政府なりの――やはり防衛庁にはこの道の専門家もおありになるわけですから、見解を一つにまとめて、一体水素爆弾というのは核兵器の中に入るか入らないか、これを出していただきたいと思います。いかがですか。
  331. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この間の再検討会議の場で二つの委員会が開かれました際に、第二委員会平和利用の問題を専門的に取り扱ったわけでございます。平和利用委員会目的は二つございまして、一つは、平和利用を促進するという面、それからもう一つは、平和利用を進めるに当たって、それが核拡散に至るおそれがないような方法を考えるべきであるという、つまり保障措置を頭に置いた平和利用の問題を議論したわけでございます。  この第二委員会には、当然のことながらこれに関する専門家を従えた各国の代表が集まったわけでございますが、いま言われますような可能性のある核爆発なるものがその専門家の頭にもしあったとするならば、当然何らかの形でこの話が出たと思います。つまり核拡散防止のためにそういう技術がもう可能になったということであるならば、その事態に対処して、じゃどうすべきか、どういう物質を理事会として保障措置の対象とすべきかという議論があったのは当然ではないかと思います。しかし、会議そのものにおいてはそういう議論は何も出ませんでした。ということは、やはり現在の、少なくとも会議に参加しました核兵器を含めまして平和利用の先進国の中に、いまだ可能性としてもこの問題が取り上げられていない、そこまでの段階に達していないということを示すものではないかというふうに考えるわけです。
  332. 土井たか子

    ○土井委員 その会議の場面はそうであったから、したがってそういうふうなことを具体的に考えても無意味であるというふうな意味でおっしゃるのなら、私はいただけないと思います。現に私がこういう質問をやっているのは、もう数年前に、日本原子力局国際協力課長が心配をなすっているところなんですよ。日本の国内でこういう問題に対して疑義があるのです。一体、水素爆弾についてレーザーが起爆剤として使われた場合に、引き金として使用された場合に、これはこの核防条約から考えたらどうなるのだろう、それは押さえどころがないというふうな意味で心配をされている向きがあるのです。したがって、ついこの間の再検討委員会の場所で何らこのことに対して専門家も出ておるのに声が出なかったから、このことは全然問題外だというふうなことでお済ませになるということはできなかろうと私は思うのです。数年前からの論議なんですもの。ひとつこのことに対して、いまちょうどこれは締結するかどうかの瀬戸際であります。国会で承認をするかしないかを決めるただいま真っただ中であります。大変遅いけれども、このことに対して第一条の、一体、核兵器核爆発装置等々について中身はこう考えるというところを、特に水素爆弾、レーザーが起爆剤になった場合をひとつ取り上げて、大丈夫、この核防条約で押さえられるのだというところの政府の見解をひとつお聞かせいただくまで、私はこの問題を留保したいと思います。ようございますか。
  333. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この条約趣旨から申し上げまして、この第一条、第二条ともに、いわゆる原子爆弾、水素爆弾は禁止されております。あるいは対象になっております。それから先ほど私が申し上げましたのは、この三条二項でございますか、平和利用に当たってそれが軍事目的に転用されない、核兵器の製造に転用されないことを保障するための必要な措置として対象となる物質、原料物質または特殊核分裂性物質というものを挙げておりますけれども、将来科学の進歩によりまして、起爆剤として新たなものが発見され、それが実際に起爆剤として使用し得る状態になりました場合には、先ほど申しましたように、理事会によってその他の物質、つまりこの保障措置の対象になる物質に加えられることになろうということを申し上げておるわけでございます。
  334. 土井たか子

    ○土井委員 そうなったときに初めて考えるというんじゃ遅いのですよ。そういうことは当然想定されてしかるべきですから、そういうことに対しては前もってこの核防条約ではこういうふうに抑止していくという点を明らかにしていなければならないんじゃないでしょうか。条約の持つ意味というのはその辺にもあると思うのです。そうなってみた段階で改めて考えるというんじゃ遅いんじゃないでしょうか。核開発なんというものは日進月歩、大変な勢いで進んでいるのですよ。大体この条約趣旨というものを生かそうとすると、やはり核軍縮というものを進める、あるいは先日の御発言では、核軍縮よりも核抑止力というものに重点を置いて、日本としては政策上取り組んでいきたいというふうな御発言もあって、私はずいぶん矛盾したことだなと思いながら聞いていたわけでありますが、しかしいずれにしても、こういう問題についてはそのときになって考えるじゃ遅いのです。この条約の中でいかにそういう問題について抑えをきかしていくかということを、いまこの時点で明らかにしておく必要があるということを込めて、私は先ほど来質問を申し上げているわけですから、局長さんは何と言われようと、いままでのところ、水素爆弾というものがレーザーを起爆剤として使用した場合、この条文に言う定義の中には当てはまらないということに対しての確たる反論を聞かせていただいていないわけであります。ひとつそのことについて見解を――これは私は保留にしますからね。幾ら聞いていても同じことしかおっしゃらないだろうと思う。そして失礼ですけれども、私もそういう問題については科学的知識というのは本当にないですが、しかし、局長さんにもそうそうこの問題に対して自信を持ってお答えになるくらい恐らくおありにならないだろうと思う。ひとつ時間をそれに対して設けますから、政府の統一見解というものを出していただきたい。  ただしかし、私がここで言いたいのは、そのことに対して科学的知識を駆使してどうだこうだという理論的な問題を承るのじゃない。あらましそういうことが考えられるということであるなら、一体、署名をして今日国会に対してこの条約承認を求められる政府とされては、どういう努力を払ってこられたかという問題があると思うのです。再検討委員会で意見は何も出なかったから問題ございませんという態度じゃ、これは済まない。数年前から日本の国内でもこの点は論議の一つの問題になっているということはよく勉強して知っていただいて、ひとつこういう事柄についても、いまのようになったときにその時点で考えますということじゃ甘いんだということの再確認をお願いします。
  335. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 前から申し上げておりますように、原子爆弾も水素爆弾もこの条約の対象となる、つまり、禁止の対象となる核兵器ないし核爆発装置でございます。したがいまして、いかなる起爆剤を使おうとも、つまり起爆剤の性質、種類いかんによってこの大原則が変わることはございません。
  336. 土井たか子

    ○土井委員 第三条というのをしっかりと御理解の上でおっしゃっているんでしょうね。ここで問題にされているところを御吟味になった上でいまの御答弁なんでしょうね。それじゃ、ここで言うところの保障措置という問題について、どういうふうに考えていらっしゃるのですか、もう一度。そういうことを言い出すと繰り返しになりますよ。
  337. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 原子爆弾も水素爆弾も一条、二条で禁止の対象になっておる核兵器ないし核爆発装置であることは、先ほど申し上げたとおりでございます。第三条で書いておりますのは、つまり核兵器に転用されるおそれのある核物質ないし核分裂性物質を対象としてこれを保障措置のもとに置くという規定でございますが、たとえばレーザーという起爆剤を用いて三重水素を爆発させる、これは水素爆弾の一つの態様でございますが、理論としては可能でありましても、実際の意味の可能性というものはまだございません。したがいまして、これが実際に可能になる段階に至った場合には、この三条の二項の保障措置の対象たる物質に加える必要が出てまいります。そういう段階になりましたときには、当然のことながら、これを起爆剤として使うことがこの三条の規定を逃れることにならないように、理事会においてこれを保障措置の対象にする決定をする必要があるわけでございます。
  338. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  いまの御答弁で、現に今日ただいま水素爆弾についてレーザーが起爆剤として使用されている場合にはこの第三条から外して考える、したがって、ひいては第一条に言う核兵器の中にも、いまのレーザーを起爆剤として使用する水素爆弾が含まれないということにならざるを得ない。そういうことを確認させていただきたいです、現時点においては。そうでしょう。
  339. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 十分に御質問趣旨を理解しなかったかもわかりませんが、一条、二条で核兵器として原子爆弾と水素爆弾が禁止されております。これは非常に明らかでございます。それから、三条の保障措置の対象物質に該当しないということから、これが核兵器あるいは核爆発装置にならないということにはならないわけでございます。つまり、一条、二条の大原則を担保する方法として第三条があるわけでございます。三条のいかんによって大原則が変わるわけではございません。
  340. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、現に平和利用の方向についても、いかがなんですか、ここに言うところの保障措置の対象になるのは原料物質、特殊核物質であって、いまのようなレーザーというのは含まれないということでありますから、したがいまして平和利用ということからすると、それを十分に駆使して、この条約には全く拘束を受けずにやれるということになるでしょう、いまの水素爆弾の場合。
  341. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 それはそのとおりでございまして、現在すでに日本では核融合の平和利用のために非常に重点を入れて研究を進めておりますが、その一つの方法の中にはレーザーによる核融合方式、ただし、これは先ほど来申し上げておりますように、大学の研究段階にあるものでございまして、平和利用面では現に進めておるわけです。ですから、これはこの条約加盟いたしましても当然に続けられるものというふうに私どもは考えています。
  342. 土井たか子

    ○土井委員 そこで言いたいのです。第三条の条文では「原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するため、」という目的で、先ほど来保障措置の対象になるのはどういうものであるかということが問題になってくるわけですよ。そうでしょう。ですから、この保障措置の対象になるものから外されるということになってくると、そのこと自身は、平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するために規制される範疇から外して考えられているということに第三条からすればなるのじゃないですか。
  343. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 レーザーそのもの自体はいわゆる爆発そのものではございませんですね。爆発装置そのものでもございません。それから、私先ほど申し上げましたけれども、核融合の平和利用というのは、たとえば核融合発電というものを考えましても、二十世紀の終わりか二十一世紀のエネルギーと言われているわけです。つまり、現在の段階は、非常に一生懸命研究開発はしてございますけれども、レーザーの場合には大学の基礎的な段階にとどまっておりますし、先ほど来お話がございますように、それが現実核爆発装置なり核兵器に使用されるということはとても考えられたい段階であるということは言えると思います。
  344. 土井たか子

    ○土井委員 とても考えられないことがよく起こるのですわ。とても考えられないことが起こるがゆえに、この核兵器の不拡散についての条約の存在意義というのがあるのじゃないですか。私はそう思いますね。とても考えられないことだからこういう問題は論議の対象にする必要がないということなら、この条約の存在意義はないですよ。どうなんです。
  345. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 もちろんいま平和利用でやっておりますのは、制御された形での、コントロールされた形でのエネルギーの開発でございますから、核兵器なり核爆発装置とは全く異質のものでございます。
  346. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、大変それは良心的にお考えになっているということになってくると、まあ制御された形でやられているから大丈夫だというふうにお考えでいらっしゃるかもしれませんが、きょうも御承知のとおりに、アメリカはこの核の拡散について大変に懸念していますよ。そういう記事が載っかっているのを御承知だと思います。ブラジルが西ドイツから大規模な発電用原子炉を購入しようとしている。一方、フランスがパキスタンや台湾や韓国やアルゼンチンに核技術を提供しようとしている。これはもう言うまでもなく核拡散じゃないか。発電所にしろ、核技術というものを開発していくと、その問題についてはこの核拡散防止条約に加わっていない国々なんかについては特に核兵器製造に進むのではないか、そういう懸念があるということも披瀝しながら、アメリカは核の拡散を非常に懸念しているし、そういう技術開発というものに対して非常に懸念をしておりますよ。余り甘く考えられると私はこの問題は大変だと思うのです。平和利用というのは制御されている状態でなされるから大丈夫。なるほど日本はそうでしょう。けれども世界の中にそうでない状態があるからこそ、いま政府は真剣にこの条約に対して一日も早く締結をということをおっしゃっているのじゃありませんか。だからそういう点からしてまいりますと、いま私が申し上げているこの第三条について、平和的利用から核兵器に転用されないという保障はないんだということを念頭に常に置きながら考えていただくという必要がどこまでもあります。そういうことを考えますと、私は、現実まだ日本の開発はそこまでいっていないからということで、この問題に対して甘く見過ごしてしまわれるということは許されないと思うのです。ひとつ第三条からして、一体私がいま申し上げているような保障措置の対象にレーザーが入っていないということに対して、日本としては、一体水爆があくまで平和的に利用されるということに対しての抑えをどういう形でおとりになるかということを再度確認したいと思います。いかがですか。
  347. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 起爆剤としてお考えになっているレーザーそれ自身は光線でございますから、保障措置の対象にはなかなかなじまないものだと思います。ただこれを起爆剤にして三重水素を爆発させることによって、いわゆる水素爆弾ということになるわけですから、三重水素をこの三条の保障措置の対象物質に加えるということによって、一条、二条の原爆あるいは水素爆弾を禁止の対象にするということができるわけでございます。
  348. 土井たか子

    ○土井委員 それで現になっておりませんね。三重水素というのは対象になっておりません。それは先ほど確認をさせていただきました。  そうすると、これを対象とするということのための努力はどのようにお払いになりますか。
  349. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私の承知いたしておりますところでは、まだこれは純粋に理論的な段階でございまして、各国ともこれに対してその可能性があるということからの話しは出ておりません。
  350. 土井たか子

    ○土井委員 各国の状況を聞いているんじゃございませんで、いま確認をするところまでしていただいたわけですから、それならばその三重水素について、これを対象とするということに対する日本政府としての御努力はいかようになさるかという問題をお伺いをしているわけです。
  351. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 三重水素をこの対象に含める、つまりこれによって、レーザーを起爆剤に使うことによって爆発を起こすということは、先ほど申し上げましたように、まだ純粋に理論的な段階にとどまっております。したがいましてこれを、つまり三重水素を対象にする必要があるという問題意識はまだ世界的にどこにもございません。したがいまして、そういう段階においては、日本からこれを対象に含めるという主張といいますか、要請をすることは適当でないと思います。
  352. 土井たか子

    ○土井委員 そういう消極的態度で核軍縮の問題について、まだ満足し切れていないという分野が残るけれども、この核防条約締結することが世界の核軍縮に対して、やがては核兵器というものを全世界からなくすことに対して大きな意義を考えるということが果たしておっしゃれるのかどうか、私は大変疑問に思います。そういう消極的態度で臨まれるのなら、そういう資格が日本政府にあるのかどうか、私は非常に疑問に思います。理論的に考えられるのなら、これは架空のことじゃないのです。やがて現実のものになるということは認識の上にあっていいんじゃないですか。どうしてその事柄に対して、これは三重水素という問題は各国ともだれも言わぬのだから、日本もそういう状態の中ではまだまだ言う必要はないので言いませんというふうに言い切られるのか。私はその消極的態度で果たしてこの核防条約というものに日本加盟することが日本安全保障を本当に確保していく道になるのかどうか非常に私は疑問に思います。局長はいま、世界でどこからもそういう声が出ないから、日本としてもそういう声を出すべきでないというそういう御認識なんですね。
  353. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私が申し上げました趣旨は、ほかの国からそういう話が出ないので遠慮すべきであるという意味で申し上げたのではございません。日本の技術水準が高くなってこれが非常に可能性があるという場合には、積極的に日本からそういうことを言うことができると思いますが、まだそこまで残念ながら日本の技術は達していないと思います。
  354. 土井たか子

    ○土井委員 通産省の方いらしていますが、日本の技術というのはまだそこまで行っていないのですか、いかがですか。
  355. 高橋宏

    ○高橋説明員 原子力の研究開発は、科学技術庁でやっていただいておりますので、科学技術庁からお答えいただきたいと思います。
  356. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 科学技術庁の場合には、軍事目的にどういうふうに使われているかということに関しましてはわかりません。平和利用の段階から考えますと、まだまだ長くかかるという段階にあることは事実でございます。
  357. 土井たか子

    ○土井委員 そのことに対して通産省も確認なさいますか。
  358. 高橋宏

    ○高橋説明員 レーザー問題等はそういう段階の技術かと私も思います。
  359. 土井たか子

    ○土井委員 近き将来に、日本においてそういうことが具体的に開発されるということになれば、その節局長は、やはりこの対象として三重水素というものを中に加えるための提唱を日本は必ずやるというお考えでいらっしゃるわけですね。
  360. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私申し上げましたことは、科学的、技術的にそういうことの確信が持てるような段階になったということを前提として申し上げたわけでございます。
  361. 土井たか子

    ○土井委員 いま平和利用の点についてはそのようなお考えですけれども、軍事目的に使用される兵器の点の開発については御存じの方いらっしゃいませんか。
  362. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  363. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記を始めてください。
  364. 土井たか子

    ○土井委員 その点は保留にして、次に第四条の条文を見ますと、先日も当委員会で、「すべての締約国は、原子力の平和的利用のため設備、資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、」という部門について、ソビエトからでも日本はこの情報を交換するということは可能なのかというふうな意味の御質問もあったと思いますが、これはソビエトから情報交換ということを日本が望めばそのことについても可能ですね。
  365. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 平和利用の分野に関しましてソビエトから日本に視察に参りましたり、日本から発電の状況等の視察に行くというようなことは従来からも行われております。
  366. 土井たか子

    ○土井委員 ソビエトからも技術的情報を得るということは可能だということでありますけれども、具体的にそのことを取り決める場合にはどういうふうな形式によって取り決められるということになりましょうか。
  367. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 最も普通の形態は科学技術協定ないしは原子力協力協定という形で行っております。どことやるかということは、これは政策問題かと思います。
  368. 土井たか子

    ○土井委員 協定ということをいまおっしゃいましたが、先日松永局長は、条約でなければならない趣旨の御答弁をなすったように私は理解をしておりますけれども、もう一度その点についての局長の御見解を聞きたいと思います。
  369. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私が先日御説明いたしましたのは、この第四条の規定はいわば原則的な規定であって、これに基づいて具体的な設備、資材あるいは技術情報を提供すべき具体的義務が、たとえばソ連に発生するというわけではないということを申し上げたわけです。当然話し合いが行われました結果、たとえば日本ソ連との間の問題でありますれば、日ソ間に協定なり取り決めなりが結ばれて、それに従ってそういうものの交換なり提供が行われることになるということを申し上げたわけでございます。
  370. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、局長は必ずしも条約を結ぶ必要はその節お認めになっていらっしゃらない。協定であるとか交換公文であるというふうなことで、この問題の中身は賄われていってしかるべき場合もあるというふうにお考えなんですね。
  371. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 それは、そのときに提供されますところの設備、資材あるいは技術情報の提供に関する協定の内容によって決まるわけでございまして、条約でなければいけないあるいは協定でなければいけないという性質のものではないと思います。
  372. 土井たか子

    ○土井委員 これは従来、条約というもので具体的中身を取り決めなければならないという場合、ひいて言うと、国会での承認を必要とする事項等等については外務省の公式見解があるわけでありますが、この第四条の二項に基づくところの種々なる取り決めについても、あの原則に従って、交換公文や書簡公文や、それからさらに協定条約のそれぞれの取り扱いについては交通整理をなさるということ、これははっきりここで言えますね。
  373. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 そのとおりに御了解いただきまして結構でございます。
  374. 土井たか子

    ○土井委員 本来は、これはできれば条約というのがやはり望まれるところではないかと私は思うのです。原子力についての平和利用というふうなことが、この条約に基づいて国内的にも義務づけられるということになってまいりますから、この平和利用というふうなものが及ぼす影響というものは、やはり非常に大きいと思うわけでありまして、できたら国会の承認事項として考えられる条約をそのために締結するということが本来の姿かと思うのですが、もうすでにこういう問題については、四十八年にイタリアとの間で交換公文がございますし、ドイツとの間では書簡公文がございますし、スウェーデンとの間にも交換公文がございますから、この問題について今後どのようにお考えになるかということは、具体的に国内においてこの原子力平和利用のための設備や資材ということをめぐる大きな問題を取り決めていく場合の条件をやはり考えざるを得ない一つのあり方だと思うのですね。だからそういうことからすると、本来条約であることが好ましいということについては、そのとおりお考えになっていらっしゃいますね。
  375. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほど申しましたように、それは交渉の結果作成されます協定の内容を見てみませんと、それを国会に提出いたしまして、その締結について承認をお願いすべき国際約束として締結するか、あるいは政府の責任において取り決められるいわゆる行政取り決めとして締結されるものであるかということについて決定することはできないわけでございます。その内容いかんによりまして、従来から申し上げております基準に従って政府としては処理してまいるつもりでございます。
  376. 土井たか子

    ○土井委員 さてこの条約を見ておりまして、第九条の個所で「「核兵器国ことは千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」を指すわけでありますから、もう言うまでもなく米英ソ仏中ということになるわけでありますが、インドは、インド当事者が好まないところでありますけれども、この条約加盟することができるんでしょうか、いかがでしょうか。
  377. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  インドはこの条約に加入することは可能でございます。
  378. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、インドが可能ならば、現に非核保有国である国がそれぞれ核を保有してこの条約に対して加盟をしていく、つまりいまは非核保有国である国が第七番目、第八番目、第九番目と核保有国となってこの条約に入るということも可能だということになるわけでありますね。
  379. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 インドは、したがいましてこの条約に入ることは妨げられておりませんが、しかしこの条約のたてまえ上、ただいま先生がお読みになりました条約条文によりまして、核兵器国としてこの条約に参加するのではなく、非核兵器国としてこの条約に参加する、それしか道が開かれていないわけでございます。
  380. 土井たか子

    ○土井委員 非常におかしなことになりますね。核保有国であって非核兵器国というのは一体どういう国なんですか。現実にどういう国になるのです、これ。核保有国というのは核兵器に物を言わせる国ですよ、この条約によれば。その核保有国が非核兵器国なんというのはまさに矛盾もはなはだしい、まやかしもはなはだしい。おかしいとお思いになりませんか。
  381. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 まことにおかしい事態になるわけでございます。したがいまして、インドはこの条約に加入することは閉ざされておりませんが、非核兵器国として加入しなければならない。その場合には、インドが持っております核兵器その他は、自分の国の所有ないしは管理権は全部放棄した上で入らなければならない、そういうことになるわけでございます。恐らくしかし、ただいまインドを例にお引きになってインドについてお話ししているわけでございますが、そのようなおかしい状態を現出するような意図はインド側に残念ながらないということでございます。
  382. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃったように、核保有国であるけれども非核兵器国として扱うというふうな条項は、この条約のどこから出てまいりますか。
  383. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 そのような条項はどこにも出てまいりませんが、条約の解釈としてそういうことになってまいるわけでございます。この条約はいかなる国にも開かれた条約でございまして、当該国が望めばこの条約に参加できるという立て方になっているからでございます。
  384. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、そういう論法でいくと、非核保有国が核を保有していくということに対して、この条約は抑えをきかすことができない条約だという意味も片やあるということを言わざるを得ないですね。
  385. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまちょっと御質問意味がよくわからなかったのでございますが、この条約非核保有国が核を保有していくことを妨げられない、そういうお尋ねでございましたでしょうか。――それじゃお答えいたします。  非核保有国が核を保有するというのは、核を保有したならばもうすでに非核保有国ではなくなって核保有国になるわけでございまして、ここでは非核兵器国が核を保有することは妨げられないではないかという御趣旨に受け取りまして御答弁申し上げますと、この条約は確かにそのような事態を防ぐためにつくっているわけでございますけれども、しかし全世界の国が入っておりません関係上、そのような事態を一〇〇%防ぐということには、実効を確保するわけにはいかないということでございます。
  386. 土井たか子

    ○土井委員 たとえば卑近な例を挙げれば、イスラエルなんかの場合を挙げなければならないかと思うのですが、現にこの条約でいうところの核兵器国に対してはやはりこの条約によって、核抑止に重点を置くのか核軍縮に重点を置くのか、いずれかは各国によって認識が違うでありましょうけれども、何としてもいまの核兵器国核兵器を抑えていかなければならないというところに、重要なこの条約の課題があるわけですね。核兵器を抑えていく、軍縮によるのか抑止力によるか、いずれか各国各様にその問題に対しては認識をして取り扱いを決めていくでしょう。ただいずれにしろ、この核兵器国核兵器をなくしていく方向で本来この条約というものの意義を発揮していかなければならないわけなんですね。そうでしょう。いかがですか。
  387. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この条約はその名の示しますとおり、核兵器拡散防止するということが第一義的に目的としてでき上がっている条約でございまして、したがいまして、現在の核兵器国以上に核兵器国がふえないようにする。したがいまして、現在の核兵器国の義務といたしましては、その所有する核兵器その他の核爆発装置の所有ないしは管理の権限を非核兵器国に移譲しないということを第一条に規定し、かつ非核兵器国の義務といたしまして、第二条でそのようなものは受け取らないということを決めているものでございます。もちろん核の数を減らすということもこの条約目的といたしまして第六条に規定されているところでございますが、この保障措置が適用されましたりなどして、この一連の核不拡散条約、本件条約によってまず第一に確保しようとするのは、核兵器についての、ないしは核爆発装置についての管理を持った国の数を少なくしよう、そこに第一の目的がある、そのように私は了解しております。
  388. 土井たか子

    ○土井委員 そこで私は、きょうの新聞の、アメリカの核の拡散懸念というのを出したいわけでありますが、いまあるところのこの条約で、核兵器国という国の中で核技術を非加盟国に対して輸出をして、その国では当面は平和利用にそれを供しながら、やがてはそれを軍事的開発の方向に向けていかないという保障がどこにもない限りは、この核拡散という問題に対して、防止、歯どめをするという効果はどこからも出てこないのですよ。先ほど、本来は非核保有国が核を保有して後も、この条約に対して加盟することはできますねということをお伺いしたのは、そういう意味も含めてであります。したがって、インドはインド独自の事情でこの条約に対しては加盟をしないということでありましょうけれども、七番目、八番目、九番目とそれぞれ核開発をやり、核保有国となっていくということは、要するに核拡散のありさまなんでしょう。この核拡散のありさまについて、防止をするということがこの条約の本来の趣旨であると伊達参事官がおっしゃるのなら、いま本来は非核保有国であった国が核を保有して、しかる後にこの条約に対して加盟をしようとするときに、それも認められるだろう、しかし、その際には非核兵器国として認められるだろうと幾らおっしゃっても、もうすでにそれは核についての開発も進んでしまって、核を保有をしている国に対して歯どめはきかないと私は思うのであります。このことに対して私たちは常に懸念をする。伊達参事官のおっしゃるとおり、この条約趣旨一つは、核拡散に対して防止をする、核拡散に対して歯どめをするというところにあるのでありましょうが、いま非核保有国が核を保有する国になっていくということに対して、この条約からすれば、どういう歯どめをきかしていくことができますか、お伺いをします。
  389. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 三条二項はまさにそれを防止することを目的とした規定でございます。この条文を見ますと、「各締約国は、」云々とありますが、その最後に、「いかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する。」つまり、この条約の当事国であると否とを問わず、非核兵器国一般に対して原子力平和協力をする場合に、必要な物質が核兵器に転用されることを防止する保障措置協定ができない限り、供給してはならない。それは当事国である、つまり条約加盟国であると否とを問わないということであります。
  390. 土井たか子

    ○土井委員 そういう条約が現にないときに、いまおっしゃったような懸念される状態に対してチェックをすることはできますか。
  391. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この点が実は昨年五月インドがいわゆる平和目的と称しまして核爆発を起こしました以後、特にアメリカが核政策の再検討をいたしまして、今後、平和利用、つまり原子炉ないし核燃料その他の資材を供給する場合に、この三条二項に基づく保障措置ということを厳重にせざるを得ないということを考えたわけでございます。御承知のように、前の大統領のニクソンがエジプト、イスラエルを回りましたときに、それぞれ共同コミュニケで、核燃料あるいは原子炉の供給ということを原則的にうたったわけでございますが、それをフォローアップするための二国間の取り決め、つまり先ほど申しました三条二項に基づく保障措置協定をつくる必要があるわけですが、この協定交渉がどうなったかということをその後いろいろと情報を集めたのですが、アメリカは非常に厳重な条件をこの保障措置協定案として二つの国に提示したらしくて、両方の国ともいまだこれに十分応じ得ないというかっこうで、取り決めはできておらないと了解いたしております。したがいまして、共同声明にありました原子炉あるいは核燃料その他の供給はいまだに実施されておりません。
  392. 土井たか子

    ○土井委員 ということで、実際問題、伊達参事官のおっしゃるようなことを具体的例に即応して考えていくと、この条約は、核拡散に対して防止をする、歯どめをきかすという意味についても、いま十分にその役割りを果たし得ないという問題がまだ課題としてあるのです。そういう点が課題としてあるのですよ。  この条約というものは一体何のために存在しているかというところについては、伊達参事官は、核拡散防止すると明快に言われたのです。その問題に対していまインドの例などを引き合いに出して御答弁の中で言われたとおり、必要なこの協定というのが結ばれてないのですね。具体的にされていないのですね。
  393. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 インドが核爆発をしましたもとになりますいわゆる装置と申しますか原子炉、これはカナダから供与を受けたわけでございますが、これはいわゆる核防条約ができる前に二国間の話で供与されたものでございます。つまり、この核防条約に基づく保障措置が義務づけられる前のものでございました。したがいまして、これ以後におきましては、この加盟国である国は、この三条二項の義務によりまして、所要の保障措置がない限り供与できないということになっております。
  394. 土井たか子

    ○土井委員 この条約以前の問題で、条約から外れるということになりながら、現実は足を生やして歩き始めてしまっているわけですからね。これに対してのチェックをきかさない限りは、核拡散に対して防止をする効果を十分に発揮し得ていろとは言えないわけですよ。これから外れているのなら、それならいかなる措置をとることが妥当というふうにお考えになりますか。
  395. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 このいわば例外と申しますか、インドの核実験のみがこの核防条約の三条二項から外れた事態になっておるわけでございますが、この核実験を行った後、カナダあるいはアメリカその他の国が、インドに対してどういう態度をとつたかということが御参考になろうかと思います。  米国は、ウラン濃縮とかあるいは再処理等の、非常に原子力分野では機微な分野でのインドの研修生の受け入れを停止いたしました。  それから、米国がインドの原子炉に供給しました核燃料あるいはその再処理から得られましたプルトニウムは必ずその炉でのみ使用するという約束を取りつけております。それから米国は、インドの核実験後、インドに対する原子力政策の見直しを行いまして、インドの研修生の受け入れを停止し、またその後の、従来行っておりました協力を原子力政策全般のレビューがあるまで停止いたしております。
  396. 土井たか子

    ○土井委員 インドの例についてもそれで十分とはお考えにならないだろうと思うのですね。この問題についてもやはり歯どめをきかすことに対して十分であり得るかというと、実はそうではないはずです。  この問題も私は来る十三日に再度質問を続行しますから、したがいまして、この非核保有国から核保有国になり、しかも条約上は非核兵器国としての取り扱いを受けている国々に対して、果たして核拡散防止という効果をこの条約の中身でもって十分に確保できるかどうかという問題も十三日に持ち込んでさらに問題にしていきたいと思います。  で、あときょうは共産党や公明党や、それからさらに民社の委員の方々の質問が続きますから、これできょうのところはひとまず質問を終えまして、十三日にさらに続行させていただきます。  ありがとうございました。
  397. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  398. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。     午後六時二十二分休憩      ――――◇―――――     午後七時開議
  399. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  400. 正森成二

    ○正森委員 私は核兵器の不拡散に関する条約、以下NPTと言う場合がありますが、この問題についてただいまから質問さしていただきたいと思います。  両大臣には非常に遅くまで御苦労さんでございますが、条件は同じでございますから、元気を出してがんばっていただきたいと思います。  この条約条文をよく見ますと、「締約国である各核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと」云々というふうになっているわけです。  そこで、むずかしく言わずに平たく申しますと、核兵器国は、自分の所有権を譲らなければあるいは管理権を譲らなければ、他の国に核兵器を持ち込むということはこの条約では当然のことながら禁止されておらない、また、いわゆる縦の拡散というか、核兵器国が自国の管轄下にある核兵器をふやすということはこの条約では禁止されておらない、そういうように解釈しますが、そうですね。
  401. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のおっしゃったことが協定第一条の正しい正確な解釈であると思います。
  402. 正森成二

    ○正森委員 そして一方では、核兵器を保有していない国は、自分でもつくれないし、取得しないし、その情報を持ってはいかぬ、こういうことになっておるわけで、これは明らかに差別的な内容を持つ条約である、こういうように言わなければなりませんが、大臣、これは間違いないですね。
  403. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仰せられる限りにおいて間違いはございませんけれども、一定の時点を限って、そのときまでの核兵器国とそうでないものとに分けて、そしてこの六条において、核兵器国に対しては軍縮の義務を、各締約国にでございますが課しておる、そういうことでございますので、いわゆる平等ということを、持たない者が持つ方向においてではなくて、持つ者が縮小していくという形において実現しようと考えているものと考えます。
  404. 正森成二

    ○正森委員 差別であるということは、わが国政府も、一九七〇年の二月三日に核兵器拡散条約署名の際の日本政府の声明の中で明白に認めているところであります。その部分を読みますと、「この条約は現在の核兵器国に対してのみ核兵器の保有を認めるものである。このような差別はすべての核兵器国核兵器を自国の軍備から撤廃することによって窮極的には解消されなければならないものであるが、それまでの間、核兵器国は特別な地位にあると同時に特別の責任を負うものであるとの自覚がなければならない。」云々と書いてあります。これは宮澤外務大臣が言われたことを外交用語的に正確に表現したものであるというように思います。  そこで、政府は当然のことながら、こういう前提の上に立ちまして、この核拡散防止条約について締約国となるためには、批准するためには、軍縮及び安全保障あるいは原子力平和利用について一定の保障がなければならないというように考えてこられたことは周知のことであります。そこで、その点について、以下私の方から質問をさせていただきたいと思います。  防衛庁にまず伺いたいと思いますが、いみじくもいま大臣が第六条というのをお挙げになりました。第六条というのは核兵器保有国の責務を定めたものでありますが、これを見ますと、「核軍備の縮小」あるいは「全面的かつ完全な軍備縮小」という言葉が使われております。防衛庁に、軍人と言うとこれは差しさわりがあるかもしれませんが、戦力でない実力を持っておられる役所として伺うわけですが、軍縮というのは英語で言うとディスアーマメントというのですか、これとアームズコントロールというのとはどういう差があるのか、伺いたいと思います。
  405. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 突然の御質問でございますので、正確なお答えになるかどうかと思いますが、ディスアーマメントといいます場合には、普通、武装を解除するというような趣旨に使われる場合が多いようでございます。したがいまして、武装なり軍備なりというものがあった場合にそれを解消していくという方向に動くものがディスアーマメントではないかと思います。それから、アームズコントロールはいろいろな形で行われるものを言うようでございまして、結局、そのある意思を、武器の使用を決定いたします主体の意思が、十分その使用について統制ができるというような状態下に置かれるものを言うと思います。通常、軍備縮小というような意味合いを持ったアームズコントロールという使い方もあるようでございますけれども、必ずしも縮小の意味に限定されたものではない、広範に軍備についての統轄といいますか、コントロールの力のある状態をアームズコントロールというふうに言うのではないかというふうに思います。
  406. 正森成二

    ○正森委員 いま丸山防衛局長が言われましたが、つまり、アームズコントロールというのは、必ずしも軍備の縮小でなくても、一定の統制下に武装力を何らかの形で置けるという場合もアームズコントロールというのですね。ですから、この条約六条に言うところの軍備の縮小というのは、これはアームズコントロールだけでなしに、むしろディスアーマメントといいますか、それに向けて動き出したと見られる措置というものでなければ、この条約に言うところの「軍備の縮小」とか「完全な軍備縮小に関する」云々というようなことは言えないのじゃないでしょうか。軍事専門家としていかがですか。
  407. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 この第六条は、「核軍備競争の早期の停止」、それから「核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、」「国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」ということでございまして、この条文に関する限りは軍備縮小という意味合いから逆の方向に動く趣旨というのはくみ取れないように思いますが、少なくともこの六条の解釈についてはそういうふうに私ども判断をされます。
  408. 正森成二

    ○正森委員 私の質問を必ずしも正確におとりでなかったのかもしれませんが、私は第六条が軍備縮小から逆の方向に行くとは言うてないので、軍備縮小の方向に向く措置でなければ、これはこの条約に該当しないじゃないか、つまり、アームズコントロールだけのものであれば、この条約にいうところの軍備縮小ということは言えないのではないかと聞いているのです。
  409. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 厳格な意味で言えば、先生のおっしゃるとおりだと思います。しかしながら、無統制な状態軍拡競争、軍備競争が行われるという状態からコントロールされた状態に移行するということは、それ自体少なくとも軍備縮小の方向には向いていることではないかというふうに判断をいたします。
  410. 正森成二

    ○正森委員 非常に苦しい答弁ですけれども、抽象的な論議だけでは進みませんから、これからさらに具体的に伺いたいと思いますが、大臣は御存じかどうかわかりませんが、この核拡散防止条約ができましてから以後も、アメリカでもソ連でも核兵器はふえ続けておる。しかも異常なスピードでふえ続けておるということは御承知でしょうか。つまり、核の拡散は絶え間なく行われているという事実であります。
  411. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約がつくられましてから、しかし米ソの間では実験の一部の停止であるとか、いろいろな両方の間の条約が結ばれてまいりましたし、それにSALT交渉も行われておる。それで、私は正森委員のおっしゃっておることは間違ってないと思いますけれども、しかしお互いにとにかく野放図に相手に相談なしにやろう、やらざるを得ないと考えておったところから、ともかくこれは相談してバランスをとっていかないと、とめどもないことになるぞという意識に達してきたということは、いまちょうど防衛庁の政府委員が言われましたように、確かに十分ではないわけでございます。第六条のもとに照らして結構だと言えるかどうかといえば、それは私は問題があろうと思いますが、最終宣言が言いますように、努力の跡は認める、しかし不十分だというあたりが正当な評価ではなかろうかと思います。
  412. 正森成二

    ○正森委員 私の問いに必ずしもそのままお答えにはなっておられませんが、しかし大臣の御見解を承りました。  そこで私は、自分の聞きました質問についての一定の見解をラロック提督にかわりに言ってもらいますと、御承知のように、一九七四年九月十日にアメリカの上下両院原子力合同委員会軍事利用委員会でラロック提督の証言が行われました。その中でこれは明白にこう言っているのですね。これは核防条約締結されてからさらに後のことを言っているのですね。大臣が一定の評価をされております条約一つである一九七二年の戦略兵器制限条約、これの「締結いらい二年間に、米国が二一八〇の戦略核兵器を増強したのに対し、ソ連の増強は四〇〇であった。米国は一日約四個の核兵器をふやしたのに対し、ソ連は一日平均一個ふやしたことになる。」こう言っているのですね。これは大変なことであります。核兵器を持っておらない国には非常に厳しく言いながら、核兵器を持っておる国は、この核防条約ができて、しかも大臣が一定の評価をされておる双方のコントロールの条約ができた以後も、これはアメリカの権威あるところで、アメリカは一日に四個、ソ連は一日に一個、こういう核兵器の増強が行われておる、こういうことを明白に証言しておりますし、これはいろいろなところでも認められているわけですね。そうしますと、これは核兵器拡散防止条約ではなしに、少なくも核兵器保有国の縦の関係においては大変な核兵器拡散条約であり、少なくともそれを禁止しないものであるということは非常に明らかだと思うのですね。これでは、第六条のいろいろな言われておりますこと、少なくとも「核軍備の縮小」と、こう書いてあるのですね。幾らコントロールされても縮小でなしにふえている状況を、この条約六条に言うところの「核軍備の縮小」だとか、いわんや「全面的かつ完全な軍備縮小」とか、そういうことが言えないのは明らかじゃないでしょうか。そうすると、一向誠実に交渉を行っていないということにはなりませんか。
  413. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 軍備の縮小あるいは拡大についての一定のエスカレートしないということを考えてみますと、兵器は御承知のように一つの兵器について話をするわけではございませんから、ちょっとたとえが悪うございますが、あたかも片方の国に棒グラフのようなものが長いの短いのたくさんございまして、片方の国にもそういうのがある。それをすうっと一つの線のところでとめようとなれば、線に達しない棒については線まで達するまではこれは権利であるというふうに、当事者はどうしてもこれは恐らく考えますでしょう。そういう面は確かにございます。ございますけれども、全体をここで抑えちゃおうということを考えるに至ったというのは、方向としては進歩であろう、こうは見られないでしょうか。
  414. 正森成二

    ○正森委員 私は宮澤外務大臣の御見解も一つの見解であると思いますが、しかし、少なくともこの条約第六条に言うところの「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小」と言う以上は、現在はこれだけだけれども、それをわずかでも減らすというならそれに該当しますけれども、現在自分の持っておるのよりも高い水準を決めて、そしてここまでにするんだというのは、現在よりもふえるわけですから、条約第六条から言うて「停止」にもならないし、「核軍備の縮小」にもならない。したがって、一向誠実に努力されているとは見受けられないというのが、普通の各国語の解釈ではなかろうかというように思うのです。  そこで、宮澤外務大臣にはさらに政治的な御見解を承るとして、丸山防衛局長に軍事専門家としてあなたの御見解を伺いたいと思うのですが、核防条約ができましてから外務大臣が言われますところの幾つかのアームズコントロールと呼ぶべき条約締結されました。その一つ一つは、私は決して「核軍備競争の早期の停止」とか、「核軍備の縮小」という名に値するものではない、またそういう性質のものだ、こう思うのですが、一つ一つ挙げていきますから、それについてあなたの御意見を承りたい。  まず第一に、海底軍事利用禁止条約というのがございます。これは私の定義の上から言えば、明らかにアームズコントロールとも言うべきものの一種であって、決して「軍備の縮小」とかあるいは「停止」とか言える性質のものではありませんね。
  415. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 厳格な意味で「軍備の縮小」あるいは「停止」という観点からとらえてみた場合に、海底の軍事利用禁止条約に盛られておりますのは、結局核兵器の設置場所を制限するという考え方から来ておるわけでございまして、なくすという意味の停止あるいは結果的に場所を制限するということに伴う縮小、停止ということにはならぬと思いますけれども、いま申し上げましたように場所を制限するということに伴う縮小につながる意味があるのではないかというふうに感じます。
  416. 正森成二

    ○正森委員 これは軍事専門家らしからぬ言葉を伺いますけれども、この条約の第一条、第二条は、これは核兵器並びに大量破壊兵器及びその補助装置の据えつけあるいは置くことを海底に禁止しただけではありませんか。ですから、海底の上部水域を航行し得る運搬手段並びに潜水艦は、海底に鎖でつながれていようと着底していようと偉反にならないし、あるいは通信機械や航行援助機材などは当然のことながら禁止の対象にはならないということであって、現在の核戦争を含む戦争の技術から言えば、全くこんなものは戦争遂行に支障のない、無意味なものじゃないですか。あたかも月に核兵器を据えつけてはいかぬというのと同程度に、現在の軍事水準では米ソ両国とも痛くもかゆくもないじゃないですか。こんなものを置くところを制限したから、その意味では軍備縮小の一つだなんて言うのは、これは丸山防衛局長の戦略的な一つの新傑作じゃないでしょうか。
  417. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 現実の問題として、この適用を受けるような兵器はいまのところないというふうに判断をいたしますが、いずれにいたしましても場所的に、いま海底軍事利用禁止条約でございますが、この前に宇宙の問題がございますし、それから南極についての制約という問題もあるわけでございまして、やはりできるところから制約をしていくということでございまして、このこと自体がすぐ軍備の縮小につながるかどうかという評価は別にいたしまして、先ほど申し上げましたように、方向としては正しい方向に向いているというふうに判断をいたします。
  418. 正森成二

    ○正森委員 私は、方向としてそれがとんでもない方向に向いているかどうかじゃなしに、まさに核防条約第六条の誠実な履行という名に値するかどうかという観点から聞いているのです。ですから、いま申しましたようなものは核軍備競争の早期の停止にも当たらなければ、核軍備の縮小にはもちろん当たらない、ということは、あなた自身そんな深海の底に沈めるとかなんとかいうことは現在のところ考えられぬと言っているから、その点は明らかではありませんか。それはあなたの答弁自体から、結論部分をそうだとおっしゃらないだけであって、あなたの論理から言えば当然そういうことになるというように思うのですね。  そこで次に、偶発戦争防止協定、ホット・ライン改善協定というのがございますね。これもまた軍備の縮小ということが言えるでしょうか。これはやはり一つのコントロールにすぎないんじゃないでしょうか。
  419. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 これも御指摘のように、偶発戦争を防止するという趣旨米ソ間に合意が成り立った結果のものでございますが、いずれにいたしましても、戦争そのものを防止するということは軍備の縮小とやはり同じ目的である、むしろ直接的に戦争そのものの防止についてのコントロ-ルの措置を決めるということの方が望ましいわけでございます。そういう意味では、御指摘のように、縮小という言葉にすぐこれがつながるかどうかということになりますと、間接的な効果ということになるかと思いますけれども、いずれにいたしましても逆の方向の動きではないというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  420. 正森成二

    ○正森委員 核戦争が起こらないようにするということは、いずれにせよいいことだというように言われましたが、しかし繰り返して言いますように、第六条に該当するようなそういう措置ではないということは論外にいたしましても、たとえば偶発戦争防止協定にしても、どういうような点で防止しようとしているのかといえば、これは核兵器非核保有国に対して使用しないとかいうようなことで核戦争の起こる機会を少なくしようというような、そういう性質のものでは全然ないことは防衛局長、よく御存じですね。あえて申しませんけれども簡単に申しますと、これは防衛局長核兵器の偶発的または未許可の使用、つまり核兵器を将校などが未許可で使用するというようなことを防ぐために、機構的、技術的な取り決めの維持改善だとか、あるいは核兵器の爆発を含む偶発的、許可されていない、またはその他未説明の事故が発生した場合に、相手が間違ったらいかぬから相互に通告するとか、あるいはミサイル警戒網が識別不明の物体を探知したり、あるいは警戒網が妨害を受けている徴候が存在する場合に相手方に通告するとかいうようなことであって、核兵器の戦争そのものを、そういう偶発的なこと以外で何かやめようというようなものではないことは、あなたもよく御承知のとおりだと思うのですね。そうしますと、これは核兵器を持っている二つの大国が、自分の好まないときに核戦争に引き込まれてはかなわぬというだけであって、自分がこれは一丁やってやろうというときに、そのやれる範囲を狭くするというようなものではさらさらないことは明らかであります。ですからそういう意味でも、戦争防止という点で本当に人類が望んでいるものには余り役立たないし、いわんや第六条というようなものには該当するしろものではないというように言えると思うのですね。  そこで、ほかにまだ成果だと言われているいわゆるABMの制限条約というのはどうですか。軍備競争の早期の停止だとか、核軍備の縮小だとかいうことが言えますか。
  421. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 そのお答えを申し上げます前に、ちょっと前の問題で、偶発戦争防止協定でございますが、これは御案内のように、実質的に核の能力を持っておりますのはアメリカソ連というこの二大強国ということになるわけでございまして、この協定目的は、二大強国の間において偶発的に核戦争が起きることを防止するための措置を協定によって定めておるということでございまして、そういう意味で、この二大国でもし全面的な核戦争ということに発展をいたしました場合には、これはまさに地球の自滅行為であるということでございまして、それを防止する意味においては大変有効な協定であるというふうに思われるわけでございます。そういう意味で十分、いわゆる縮小とか停止とかいう言葉に直接はつながりませんが、この協定自体は大変重要な意味を持っているというふうに私は判断をいたしております。  それからABMの方でございますけれども、これは御案内のように、当初ABMについては各国とも二カ所、二百基のABMを展開するということで合意をしたわけでございますが、その後七四年に至りましてさらにこれを縮小いたしまして一カ所、両者それぞれ百基配備をするということになったわけでございます。で、技術的に見た場合に、ABMの効果というものについていろいろ至難な問題が横たわっているようでございまして、結論的にはABMを配置するということよりは、第二撃力による抑止力に依存するということの方がより相互に抑止の効果を上げる、実効を上げるという目的に合するという両者の理解が成り立ったように私どもは考えておるわけでございます。そういう意味で、この核兵器の抑止効果の一番大きな一つの要素になっております、アシュアードデストラクションということを言っておりますが、確証破壊、この論理が米ソの間において十分理解されるに至ったということでございまして、そういう意味では、この核戦争防止のための一つの大きな前提が築き上げられているというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。
  422. 正森成二

    ○正森委員 アシュアードデストラクションというような言葉まで引用されて御説明がありましたが、それじゃ伺いますが、このABM制限条約ができましたときに、たとえばソ連は国内にどれだけABMと呼び得るものを装置しておったのですか。またアメリカはそのときに何台装置しておったのですか。
  423. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 アメリカは現在は一カ所になっておりますが、この第一回目の合意が成り立ちました当時においては三ないし四ヵ所の建設を用意しておったというふうに承知をいたしております。  ソ連の場合には、現在モスクワ周辺にガロシュというABMを六十四基配置をいたしておりますが、一カ所に建設をするということで、まだ基数はこれほどに至っていなかったようでございますが、当時と変化はないようでございます。
  424. 正森成二

    ○正森委員 いまお答えになりましたように、ガロシュミサイルというのはABMとして非常に初歩的なものですね。それからアメリカについては、三、四カ所計画をしておったと言われましたが、ABM制限条約ができたときには具体的には一カ所も配備されていなかったのですね。ですから外務大臣、お聞きになりましてもわかりますように、百基とか二百基とかABMというものの上限を設けたといいましても、そのときにはアメリカなどは一つも設置もされていなかったというものを百と決めたから、これが核軍備競争の早期の停止だとか、あるいは核軍備の縮小という意味での軍備の縮小に当たるかというと、これは縮小にはさらさら当たらない。むしろ、いまないものをここまではやるということでありますから、軍備の拡大という名にまさに値する措置であって、とうてい第六条による核軍備の縮小というようなことは言えないものである、これは言葉の正しい意味では残念ながらこういうように言わなければならないと思うのですね。アシュアードデストラクション、ABMが配置のあれが決まればどうだとかこうだとかいうようなことを言われましたが、しかし実質的にはそういうものと見なければならないと私は思います。  あるいは、長くなりますからこれでやめますが、戦略攻撃兵器制限の暫定協定というのを見ましても、そのときの数までは詳しくは申しませんけれども、結局潜水艦積載のSLBMにいたしましても、いま持っているものよりも高い上限を決めたものであるということは、防衛局長、明らかでしょう。
  425. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 第一次のSALTの暫定協定は御案内のとおりでございまして、数字の上ではSLBMを基準にしております。アメリカが当時六百五十六基でございまして、上限が七百十基、原潜四十四隻に搭載するということになっております。またソ連の場合には七百四十基、上限が九百五十基でございまして、原子力潜水艦六十二隻に搭載するということでございます。これはいずれもICBMとSLBMを合わせたものでございまして、条約上はっきり数字は出ておりませんが、その後のアメリカの参謀議長の発表によりますると、アメリカが千七百十基、それからソ連が二千三百五十八基というふうに言われております。この数字はいずれもICBMとSLBMを合わしたものでございますが、ただいま進行中の第二SALTの中身につきましては、先ごろのウラジオストクの米ソ両国の首脳部におきます間において合意されたと伝えられておりますのは、このほかに戦略爆撃機を加えまして二千四百、MIRVにいたしまして千三百二十という数字が合意されておるというふうに承知をいたしております。
  426. 正森成二

    ○正森委員 いまはしょって私は伺いましたが、たとえば暫定協定におきましても、これは六百五十六を七百十にするとか、あるいはそこまではいいとか、七百幾つを九百幾らまでいいとかというように、決して停止でもなければ、いわんや縮小でもないという性質のものであるということは認めざるを得ないのですね。ですからこれはないよりはいい、無限に青天井に行くよりはいいというような言い方で評価することはできるでしょうけれども、これはたとえてみれば、非常に悪い言い方ですけれども、自分の子供が非行を犯したという場合に、非行は非行だけれども、まあ刑務所へ十年もぶち込まれる非行よりはこれはましだ、それに比べればまあまあ努力の、改俊の情はあるというようなものであって、これは決して軍備の縮小だとか、非常に結構なことをやったと言ってほめ上げて、そしてわが国政府がかつて署名したときに、こういう点が足りないのだ、こういう点が努力して前向きになれば日本政府も批准をするのだということを言いましたね、その言ったことが米ソ両国ともよくやったと言えるようなそれほどのものではないということは、普通に公平に考えますと、遺憾ながら認めざるを得ないと思うのですね。しかし、何もない青天井よりはよくやったということを言われるなら、これは評価できるかもしれませんけれども、それなら大抵の人間は相当悪いことをしても、まあまあよくやった、もっと悪いことをやるのに比べればまあこのくらいでよくとまってくれた、親の気持ちがよくわかってくれたということになると思うのですね。そうしてみますと、結局、条約第六条というのは、誠実な交渉というのは行われていないし、仮に行われたと言えるにしても見るべき結果は上げていないということはやはり認めざるを得ないのじゃないか。そうしますと、大臣、三つわが国政府が言っておりますうちの第一というのは余りやられていないのじゃないか。しかも、たとえば核実験の停止というようなことでも地下核実験の停止というのが認められましたね。それについては、この条約に言うところの核兵器国というのは誠実に核実験の停止というようなことを行っているというようにお認めでしょうか。
  427. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、相乗的なエスカレーションというのはいかぬではないかということで両国間に会話ができるようになったと、この間の最終宣言の際に米ソ両方とも言っておるとおりでありまして、確かにおっしゃいますように、すでにあるものを廃棄してまで進もうではないかというところには考え方として行っていないのは確かでございますね。一般的にそれは確かですが、しかし悪いことと申しましても、御当人方にしてみれば、自分の国民の安全を守るというのでございますから、これは大変にまじめで、むしろある意味ではいいことだと思ってやっておるかもしれない、私どもにはそう見えませんにしても。ですから非行少年の話にしては少し気の毒なことであって、まあ廃棄するまでには行きませんけれども、もうとめどもないエスカレーションはいけないなというふうに考え始めておる。それは少し長い目で見てやらなければいかぬのではないかと思うのでございます。
  428. 正森成二

    ○正森委員 長い目で見るということは私も必ずしも反対ではありませんけれども、しかし条約ができましてからすでに五年になる。もう相当長い目で見てきたのじゃないかと思いますし、それから私が初めに断りましたように、こういうことを人間の問題にたとえるわけですから、非行少年とか親の気持ちというのが必ずしも適切な比喩でないということはよくわかっておりますけれども、しかしまじめな意味で申しますと、非行少年の場合はどれほど悪くても一どきに何億という人間を殺すということはできないのです。しかし、核兵器の場合は、これは億という人間を殺してしまうわけですから、ある意味では非行少年とかというような問題よりももっと人類がまじめに考えなければいけない問題である。そういう意味では対比をすることも必ずしも間違っていない、こう思うのです。  私はもう少したちましてわが国安全保障の問題になりましたときに、核兵器というものがいかに危険なものであるかということをいままでの権威ある文献などによって少し申し上げてみたいと思いますが、先ほどの私の設問について直接のお答えがありませんでしたので、私から申しますと、地下核実験の制限条約というのがございます。これはまた防衛局長に伺いましても、私がまたここで申しても多分同じことだろうと思いますから、間違っていたら防衛局長に言うていただくことといたしまして、この実験制限条約は、これは百五十キロトン以上の地下核実験に限って、一九七六年三月三十一日以降行わないことを約束したものにすぎない、そういうように理解しておりますが、それでよろしいか。
  429. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 そのとおりでございます。
  430. 正森成二

    ○正森委員 そこでこれにつきまして、たとえばシュレジンジャーアメリカ国防長官は、「この条約によっても、米国の新型核兵器開発には何の障害もない。」こういうようにニューヨーク・タイムズで公言しておるのですね。もう一度言いますよ。「この条約によっても、米国の新型核兵器開発には何の障害もない。」そして一九七四年中だけでアメリカは五回、ソ連は十二回の地下核実験をそれぞれ行っているが、うち、この条約調印後のものがアメリカは四回、ソ連は八回もあったというようになっております。これは私の持っておる文献から言うことですから、あるいは間違っておればおっしゃっていただきたいと思いますが、しかもわれわれが黙過することができないのは、たとえば、イギリスなどはこの条約が発効すると大変だということで、駆け込み的に、英国はアメリカのネバダの核実験場に駆け込みをいたしまして、そしてポラリスミサイルに装着する水爆弾頭改良のためということで、一九七四年の五月の最後の週、つまり核実験の制限条約がいよいよ効力を発効する前に、自分の国どころかアメリカのネバダまで出かけて、そしてそういう実験をやっておる、こういうことなんですね。それは間違いないでしょう。あなたが黙っておられるところを見ると間違いないと思いますので次に進みますけれども、結局こういうことは核兵器を持っておらない国に対してはこれでもか、これでもかということで制限を加えるけれども、核兵器を持っておる国はまさに傍若無人だ。こんなものはとても核軍備競争の早期の停止だとか、核軍備の縮小に関する効果的な措置について誠実に交渉を行って、実効ある結果を上げているとはとうてい言えないということはきわめて明らかだというように思うのですね。そうではないでしょうか。
  431. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもから見ますと、もう少しそこは考えられないものかというふうに感じますことは、それは確かでございますけれども、しかし仮に、傍若無人とおっしゃいますが、両方がお互いに話をしながらこれはどこかいいかげんでやっぱり線を引かないといかぬなと考えるに至った、これは国際世論の力というようなこともございましょうと思います。  先ほどシュレジンジャー氏のことをおっしゃいましたが、これはやはり軍の当局としてはなかなか思い切って相手とバランスをとって、それ以上はやめようという気持ちにはなりにくいものでございますから、やはり大きな政治の力がそこへかからなければならない。で、内部的にはしかしこれで心配はないのだということを言わなければ、また当局者はおさまらぬわけでございますから、そういうところもやはり考えておかないといかぬのじゃないかと思います。
  432. 正森成二

    ○正森委員 そこで私伺いたいと思いますが、かつて一九六二年にスウェーデンほか八カ国が国連で提案をいたしまして、核兵器の実験の停止とか、いろいろのことを決議しようと、こういうぐあいにしたことがあるのですね。そのときの全部を読むと長くなりますので、主な一部を読ましていただきますと、「それらの国々によって行なわれるそのような行動が、全ての核実験の停止と核保有国の数的増大を阻止することについての核保有国の同意を促進することを確信し、非核保有国が、核兵器を製造もしくは他の方法によって取得することを自制し、かつ将来いかなる他国のためにも自国領土内に核兵器を受けいれることを拒否する特別の約束に進んで参加するための条件について調査すべきであるとの提案に注目しつつ、」云々ということで、この決議を提案しているのですね。  そこでそれに対しまして国連事務総長が、国連第十六回総会で採択された非核クラブに関する決議一六六四号に基づいて、各国政府に照会をして意見を求めたことがあります。それに対して一九六二年の三月十五日にわが国は回答しておりますが、どういう回答をされましたか、それについて伺いたいと思います。
  433. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま手元にございません。
  434. 正森成二

    ○正森委員 私は非常に政府当局の準備が悪いと思うのですね。その内容というのは、この核兵器拡散防止条約のほとんど同じ内容なんですね。それを一九六二年にスウェーデンなどが提案して、それを各国はどう思うかと言うたときに、日本政府は一定の有権的な回答をしておるのですね。その回答と現在の立場がどうかという当然の質問をしようと思うのに、私のような一介の素人でも調べてくることを、専門の国連局長が知らない、それも資料をこなしてくってみれば出てくるというのじゃなしに、あんなもの答えられないというような、そんな不勉強なことでどうしますか。私は、ここにありますから、できたら上げたいなと思うけれども、やっぱりかわいい子には旅をさせろということがあるから、そういうことはいたしません。
  435. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま取り寄せ中でございますので、暫時御猶予をいただきたいと思います。
  436. 正森成二

    ○正森委員 かわいい子には旅をさせよと思いましたが、旅が余り長過ぎるようでございますから、決してかわいくないとは言わないのですけれども、時間が昼間の時間なら、これはとってきなさい、別のことを質問しているからと言ってもよろしいですけれども、余り気の毒でございますから、手元にありますから申し上げますが、こう言うておられるのですね。おまえの資料間違っていると言われないように、後でリコピー差し上げますから。  読みますと、こう言っているのです。「以上の観点から、日本政府は、核非保有国核兵器を製造ないし獲得することを差し控え、かつ将来他国のために自国領土内に核兵器を受け入れることを拒否する特別の約束を取り極めるためには次の条件が必要であると考える。(イ)この問題が有効な国際管理を伴なう軍縮問題全般の一環として、他の軍縮措置と均衡をとりつつ取り上げられること。(ロ)核兵器保有国間に有効な国際管理を伴なう核兵器実験停止協定および核兵器の製造、貯蔵および使用禁止協定締結について実質的前進が遂げられること。(ハ)当該特別の約束が全世界的規模において同時に実施され、かつその実施に当り有効な国際管理が確保される保証が成立すること。」  以上であります。つまり、私は非常にりっぱなことを言っておられると思うのです。全般的な核軍縮核兵器の製造、貯蔵及び使用禁止協定締結について実質的前進がなければだめだ。しかもそれは全世界的規模で、つまり現在の段階で言えば、フランスとか中国とかあるいはインドとかそういう統制に服さないものがあってはだめなんだ。それがないからりっぱな内容であるスウェーデンなどのそういう考え方にも直ちに同調できかねるんだという内容だろうと思うのです。何でしたら、間違っていたらいかぬからお手元にごらんいただいても結構ですけれども、私は、これは一つの見識である、こう思うのです。  そうだとしますと、一九六二年当時にはこういうりっぱな見識を持っておられたわが国政府が、十三年たってなお一層りっぱな見識を持たれたであろうと思うにもかかわらず、私がいまるると挙げました条約第六条についても、軍備の縮小と見られるようなことは実質的には何らなされていないにもかかわらず、一九六二年の見解を突如として変えるに至ったその理由は何なんでしょう。
  437. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも書類の準備がございませんで恐縮でございます。やはり一九六二年当時と比べますと、よかれあしかれ、米ソの核支配というものがはっきりしてまいりまして、その結果デタントというものがかなり定着をする可能性ができてきた。そういう判断が基本にありまして、したがって米ソ両国とも、もう相手を一方的に打ち負かすというような意図は放棄したように思われますしいたしますから、そこからおのずから両方の間のエスカレーションがとどまる可能性が出てきた、総合的にはそういう喜ばしいことと思いますが、ベストではございませんが、そういう世の中の変化というものを反映をしてたくさんの国も加盟をするに至ったわけでございますから、わが国加盟をしたい、これが客観的な情勢の、まあ何がしかの前進というものが基本的な原因ではないかと思います。
  438. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣から一定の御見解を承りましたが、私は、その御論拠はなるほど一つの論拠でありますが、逆に言えば、以後十二、三年もたちまして、MIRVというようなそういう異常な想像つかないような兵器が開発されておりますし、あるいは同僚議員の言明によりますとレーザー水爆というようなとてつもないものまでいこうというような、そういうときにこそ逆に製造、貯蔵というような完全な軍縮という方向についての実質的措置がとられなければ、これは一層わが国の安全というのは保障されないのではないか、あるいはわが国の安全とイコールに結びつけなくても、人類の生存のために、それについて十分な発言をいまこそ主張すべきではないかという論拠は、同じ事実認識からやはり両方発生し得ると思うのです。だからこそ、この核兵器拡散防止条約について野党と自民党の中だけでなくて、自民党の中にもいろいろな意見があり得るんだというように私は思うのです。  そこで、外務大臣のただいまの御説明では、なぜ一九六二年のその見解がこういうぐあいに変わってきたのかという点については、私は十分に納得することはできません。しかしそういうかつての外務省の見解があったというその事実を指摘して、そして次の問題に移っていきたいというように考えます。  次に、いよいよわが国安全保障の問題について質問の論点を移してまいりたいというように思います。  この一九七〇年の二月三日に日本政府が署名に当たって出しました声明を見ましても、政府が非常に現状を、この条約が署名された当時の非核保有国安全保障について満足していなかったということは、この声明からありありと読み取れるのですが、そうでございますね。
  439. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 政府声明の中において、軍縮安全保障という項目がございます。この安全保障の点につきましては、言われますようにこの趣旨は、完全に満足しておらないという観点からこの部分が書かれているというふうに考えて差し支えないかと思います。
  440. 正森成二

    ○正森委員 それはこの「軍縮および安全保障」という項目の三の終わりの方に、「核兵器国が非核兵器国安全保障のための実効ある措置につきさらに検討を続けることを希望する。」というように書かれていることでも明らかだと思うのです。つまり一九七〇年の時点で一定のことが行われておるかもしれないけれども、それではまだ十分に納得できないから、「安全保障のための実効ある措置につきさらに検討を続けることを希望する。」ということを明白に申しておるわけです。そこで私は、一九七五年の現在、批准するかどうかということが国民の前に提出されておるときに、やはり日本政府としては、あのときに直ちに批准をせずに、こういうコメントをつけて推移を見守ったわけですから、あのときよりも非核兵器国安全保障についてこういう前進面があったんだということでなければこれは理屈に合わない。そうでなければじんぜん五年間何をしておったんだ、それなら一九七〇年にさっさとやっておればよかったということになると思うのです。ちょうど五年間落第して一生懸命勉強しておったけれどもちっとも成績がよくならない。しかし五年たったらまあまあ卒業させてやろうかというのと同じことで、五年たった以上は、やはり学徳ともに少しは成長したということが言えるのでなければならぬと思うのです。ところが実際に検討してみますと、それほど学徳ともに成長しただろうか。当時のころとちっとも変わらないのではないかという疑問の念を禁じ得ないのです。  このたびの再検討会議安全保障についての宣言の部分を読みますと、その感を深くせざるを得ない。私はその「第七条の再検討及び非核兵器国安全保障外務省からいただいておる仮訳で見ますと、二十二ページ以下です。その点を読ましていただきましたが、やはりそれは当時と大きく変わっていないのじゃないかと言わざるを得ないと思うのです。  そこで物の順序として、なぜ当時は不満だったんだろうかというように考えますと、その当時非核兵器国安全保障、つまり核兵器はもう持たないのだ、もらわないのだということを言ったその非核保有国安全保障について当時はどういう手だてが行われておりましたか。これは私から言ってもいいのですけれども、念のために国連局長
  441. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 御質問趣旨が必ずしも十分くみ取れませんでしたけれども、この政府声明が出ましてから今日までの間の状況がどうであったかということから申し上げますと、この政府声明の先ほど読まれました三項の次の四項というのに「日本政府は、条約批准までの間、軍縮交渉の推移、安全保障理事会による非核兵器国安全保障のための決議の実施状況に注目するとともに」云々とございます。つまり安全保障理事会決議が予見した事態があったかどうか。つまり、実施状況に注目するというのはそういう意味であったかと思いますけれども、あの決議に予見された事態は今日まで発生しなかった、幸いなことに、非核国の安全保障について安保理が行動を起こす事態はなかったということは言えるかと思います。  それから、最近の再検討会議において、最終宣言に含まれました事項についての評価の点のお話がございましたけれども、政府声明の発せられた時点から今日までの間、特にこの再検討会議最終宣言を見ますと、十全ではございませんけれども、従来になかった安全保障に対する配慮といいますか、少なくとも核兵器国がその点について十分な認識を持ち、これに対してでき得る限りの配慮をしたということは言えるかと思います。
  442. 正森成二

    ○正森委員 国連局長の答えは、私の質問の仕方も多少悪かったかもしれませんが、私の質問に必ずしも答えたものではないと思うのですね。私は、一九七〇年に日本政府が、署名はしたけれども、まだ批准というところまでいかない段階で、声明を発表しましたね。その当時に、非核保有国安全保障については、どういう枠組みというか措置がとられておったか、そういうことをまず伺って、それが現在どうなっていたかということを次に聞こうと思ったのです。だから、御回答としては、私の気持ちとしては、それは一九六八年六月十七日のアメリカ合衆国政府宣言、これは同時にソビエト社会主義共和国連邦とグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国の宣言が行われておりますが、それを受けた一九六八年の六月十九日の非核兵器国安全保障に関する安全保障理事会決議というものがある、そういうようにお答えをいただければ、それで私は百点を差し上げるつもりであったわけであります。その肝心の点は余りお答えがなくて、余分なことはお答えになりましたが、時間が惜しゅうございますから、私は自分で答えてもらったということにして、次の方に進みたいというふうに思うのです。  結局のところ、この三カ国政府宣言があって、それを受けた形で安全保障理事会決議が行われた。これは決議そのものを見るとそういうたてまえになっておるのですね。それは大きく分けて三つあります。こういうことで、非核保有国安全保障を確保するんだということが書かれております。しかし、これが必ずしも非核保有国の満足のいくものではなかった、なかったからこそ、今度メキシコほか十八カ国のああいう問題があって、これは実質上改定ではないかとかいろいろ九ことが言われたと思うのですね。それは果たしてどこに、非核保有国安全保障についてこれでは非常に不満足だ、不十分だ、こういう点があったのだろうか、こう思いますが、それについてはいかが思われますか。
  443. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 三カ国宣言及びこれを受けました安全保障理事会決議にあらわれております安全保障の態様は、非核兵器国核兵器による攻撃あるいはその脅威を受けた場合に、国連憲章に従って救援に赴くという点に重点が置かれているわけでございます。ところが、非核兵器国といたしましては、そういういわば積極的な保障のほかに、消極的保障といいますか、つまり核の使用あるいは使用するという脅威のもとに、核兵器国との関係においてそういう使用ないし使用の脅威を受けるということがあり得るので、その場合にはどうしてくれるのかという点の心配が残っておったわけでございます。その、いわゆる消極的な保障の面についてはっきりした約束を取りつけたいというのが、今度の再検討会議におけるメキシコその他非同盟の提案の背景にあった考え方であろうかと思います。
  444. 正森成二

    ○正森委員 非常に遺憾ながら、国連局長の答弁はその前段において不正確かつ誤りであるというように言わなければならないのですね。これは社会の答案ならさしずめ零点であるというように言わなければならないぐらい実に重大な誤りの答弁をしておるのですね。そんな答弁をされておったのでは、これは議論が進まないです。そんな答弁を真に受けて、それから先に進もうなんていうのはとんでもない話であって、それはまさにこの安全保障理事会決議なるものの一番難点、弱点と思われるところを言わずにすり抜けているじゃないですか。あなたの答弁の前段のようなことだったらメキシコなどの提案ももっと違った形になっておるのです。だからもう一遍よく考えて答弁をし直してください。
  445. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 安全保障理事会決議に三つ項目がございますが、第三項に国連憲章五十一条の場合は別であるというふうに書いてございます。実は同盟関係にある国とそうでない国とにつきましては、自国の安全保障についての考え方に違いがあるのは当然でございます。したがいまして、特にそういう同盟関係にない非同盟の国の関心事として、特に安全保障の面で消極的な保障というものをぜひ取りつけたいという強い関心と懸念があったことは事実であると思います。それが今度の会議における提案の背景であろうかと思います。
  446. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁は、いまの質問のあとで伺おう、こう思っていたことで、先走ってお答えになったのはいいのですけれども、足し算もできないのに九九のお答えをなさっておるというような感じで、本当にまじめに議論を発展させようというときの答弁じゃないのですね。  それで、私が聞いておったのがひょっとして誤りがあったら私の耳の聞き違いであったということで国連局長におわびをいたしますので、恐れ入りますが、速記の方が四人もおられますから、国連局長の最初の答弁の部分だけちょっと休憩して読んでいただきたいと思うのです。
  447. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  448. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。
  449. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私がひょっとして聞き間違っておったら申しわけがないのでそう申したのですが、私がどこが間違っておるかということを言いますので、もし私が間違っておりましたら、それは耳が少し悪いのだというようにおしかりいただいて結構です。  国連局長は最初の答弁のところで、いいですか、決議の一のところよく見てください。一にはこう書いてあるのですね。「非核兵器国に対する核兵器による侵略またはそのような侵略の威嚇は、安全保障理事会、特に核兵器国であるその理事国が、国際連合憲章に基づく義務に従って直ちに行動しなければならない事態を生ぜしめるものであることを認める。」二は「核兵器の使用を伴う侵略行為の犠牲またはそのような侵略の威嚇の対象となった核兵器拡散条約の当事国である非核兵器国に対して、直ちに援助を提供し、またはその援助を支持する旨を表現した幾つかの国の意図を歓迎する。」こうなっておるのですね。  国連局長は、三項言わなかったかなあということで三項をおっしゃったわけですけれども、そうじやなしに、一、二項説明したと思われておる国連局長の説明は、重要な「非核兵器国に対する核兵器による侵略またはそのような侵略の威嚇」という「侵略」という言葉を抜いておるのですね。非核兵器国に対する核兵器の使用、こういうようなことが起こっては困るからというようにたらたらとこう言っておるのです。しかし、この安全保障理事会決議は、決してそうはなってないのです。一項も二項も「核兵器による侵略またはそのような侵略の威嚇」をということで、いずれも「侵略」という言葉が入っているんですね。それが入っておると入っておらないでは、第三項のいま国連局長が言われた点の不安というのはもちろんあります。しかし、それをのけましてもこれは非常に重要な意味を持っておるというように考えて、私は私の解釈が間違っておるかもしれませんけれども、議論を闘わしたいと思っておったのに、その「侵略」のところを頭から抜いておるということになれば、その問題意識もないということになるのですね。しかも、この決議を正確に読んでおらないということになるので、私は申したわけです。恐らく速記を調べていただければ、「侵略」という字が二遍にわたって明白に抜けていたと思うのですね。違いますか。
  450. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私、先ほどこの安全保障理事会決議に言及しましたときに、必ずしも言葉を追って全部申し上げたわけではございません。ただ、この「侵略」という言葉をその意味で意識的に外したということでもございません。趣旨を述べるという意味お話し申し上げているうちにたまたま「侵略」という言葉を不注意に落としたということでございます。
  451. 正森成二

    ○正森委員 国連局長は意識して抜いたわけじゃない、不注意で落としたんだというようにおっしゃいますけれども、しかしそれは単なる不注意では、論戦の中では済まされない問題であるというように思うのですね。なぜなら、メキシコほか十八カ国の今度の提案も、なるほど三つ目の五十一条の問題はあります、非同盟国が多かったですから。しかし、それと同時に、この一、二の中には、「核兵器による侵略またはそのような侵略の威嚇」という、そこにもこだわっておるというのは、私は事実であろうと思うのですね。なぜならば、「侵略」という字が入っておれば、反対解釈として侵略でない場合の核兵器の使用というのについては、この三カ国は必ずしも、当然のこととして自分たちが持っておる核兵器でどうこうするという義務までは引き受けていないというように読めるんですね。また、それは当然そういうように解釈しなければならないというようにこの安全保障理事会決議はなっておる。それに対してメキシコなどは、核兵器を持っていない国に対して核兵器国が核による使用というものはともかくしたらいかぬのだということが言いたかったんですね。もちろん五十一条による集団的もしくは個別的なそういう条約を結んでいない国はどうしてくれるんだというのもあります、ありますが、核兵器国が強大な核兵器を、いや、おれは先にやられた方を助けに行くんだというようなことで、つまり侵略ではないからといって核兵器を使うということが軽々しく行われてはならない、それを、必ずそういうことはしないということが入っておらないというのがメキシコなどの一つの心の中にあるものだったと思うのです。それはまた、私は解釈上十分に理由のあることだと思うのですね。  そこで、外務大臣に伺いますが、私の考え方一つの論理が誤っておりましたら、遠慮なく御指摘いただきたいと思いますが、なぜ安全保障理事会決議が不十分かといえば、まず第一にこの一項でも、「特に核兵器国であるその理事国が国際連合憲章に基づく義務に従って直ちに行動しなければならない事態を生せしめるものであることを認める。」と幾ら言ってみましても、核兵器でそういう攻撃を加える国は、当時はインドは実験しておりませんでしたから、五つしかないのです。アメリカとイギリスとソ連フランスとそして中国だけであります。それらの国の一つ攻撃しなければ、核兵器による攻撃あるいは核兵器による戦争というのは起こり得ないわけですね。しかも、その五つの国は、いずれも安全保障理事会常任理事国であります。ですから、常任理事国は当然のことながら実質的な問題については拒否権を持っておりますから、それらの国々が、おれはこれは侵略ではないと思う、そういうように言って拒否すれば、この規定は全然働かないことになるんですね。ですから、それははなはだ不十分ではないかということからメキシコなどの考え方も出てくるのだと思いますね。  そういうような非同盟国あるいは非核保有国の真剣な考えにもかかわらず、わが国国連局長ははなはだ気楽に、その重大だと思われる一句を除いて、不注意でございましたとか、意識して抜いたものではありませんと言われることは、いかにそういう核兵器を持たない国の微妙な神経というものを御理解なさっていないものであるかというように言わざるを得ないと思うのですね。私は理論の筋としてはそういう議論は十分立て得る考え方である、こう思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  452. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話しの筋からそのことを御指摘になろうとしておられたことはよく実はわかっておりました。しかし「侵略」という言葉を国連局長が意識して落として申し上げたのではないと思います。それは御了承いただきたいと思いますが、つまり国連決議二百五十五号というのは、いわゆる拒否権の問題に絡んで実際に動かないことになるのではないかという議論が当時からございまして、そこでわが国の場合には三項がございますからと申し上げたいのですが、これはこれからおっしゃるところでございますから、申し上げませんが、そういう議論は確かにあるわけでございます。
  453. 正森成二

    ○正森委員 宮澤外務大臣は御賢明に問題の所在を御理解いただきましたので、国連局長にはこれ以上申しません。しかし国連局長申し上げておきますが、言葉というのは大事なもので、特にメキシコなどのああいう提案があったことを意識して、非核保有国安全保障という問題について聞く場合には、やはり安保理事会決議の一項や二項の読み方についても、あるいは答弁の仕方についても、そこまで神経を届かしていただきたいというように思いますね。それは国内の場合にはそれほどでもありませんけれども、国外でそういう軽々しい議論をいたしますと、日本がそういう点についてはいかに鈍感であるかいうように思われて、つまらぬところで国益を損ずるということになりかねない。ですからその点は私から申し上げておきたいというように思います。  そこで私は、外務大臣なりあるいは条約局長に伺いたいのですけれども、いま大臣が言われましたように、後で三項の五十一条の問題にも入りますけれども、まず第一に、一項、二項については侵略であるかないかという点で非常に議論がございますし、したがってまた五つ核兵器国、したがってそれは同時に現在では常任理事国であるという場合に、動きがとれなくなるという場合は十分にあり得るわけですね。これは侵略の定義というものが国際連合で決定をされましたけれども、それの定義がありましてもなおかつ、この問題は避けられないというように思いますが、条約局長、いかがですか。
  454. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先般国連で採択されました侵略の定義も、いま御指摘がありましたように、侵略を認定するに当たっての基準についての考え方を整理したものでございまして、最終的には安保理事会において認定されるということになる。そのときには拒否権の作用があるということは先ほど御指摘になられたとおりでございます。
  455. 正森成二

    ○正森委員 条約局長お答えになりましたから、私は詳しくは申しませんけれども、昭和四十九年の十二月十七日に作成されました侵略の定義でも、第二条で「国家による国際連合憲章に違反した武力の先制行使は、侵略行為の一応十分な証拠を構成するが、安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況(当該行為又はその結果が十分な重大性を有するものではないという事実を含む。)に照らして正当化されないとの結論を下すことができる。」ということで、これまた安全保障理事会が結論を下すということになっておるわけでございますから、侵略の定義は、国連で採択されたから一義的に決まるということは残念ながらできないということは明らかなことなんですね。  そこで、先ほどの一九六八年の安全保障理事会決議というものも、身動きとれない場合が起こってくるということは残念ながら認めざるを得ないと思うのですね。なお第三条でいろいろ侵略の定義がございます。私は、マヤゲス号事件の問題などは果たしてどうであろうかという点については、この問題に照らして考えますと、大臣とこの間少しの間論戦といいますか、御議論を闘わしましたが、そのときは見解が違いましたが、こういうのを基準にいたしますとまたおもしろいのですけれども、きょうは違いますから、その点はまた別の機会の楽しみにさせていただいて次に移ります。  そういうことで、結局五十一条に頼らざるを得ないという三項の点に残念ながらなってくるわけですね。そしてその点については、この一九六八年の三国政府宣言及び安保理事会決議以来、一項、二項についてはまだ見るべき前進は遂げていない、これは認めざるを得ないのですね。そうすると、結局頼るのは三項の国連憲章五十一条だ、こういうことにならざるを得ない、これははなはだ遺憾なことであるが、こう思いますが大臣いかがです。
  456. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の場合、やはりそういうふうに考えるべきであろうと思います。
  457. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、一項、二項については見るべき進展がなく、五十一条だけであるということになりますと、これは五十一条の、安保条約というのは一九七〇年から現在まで内容自体は変わっていないのですね。ただ、強いて言えば、十年の期間がたちましたから、一年の通告でどちらもこの条約の効力をなくすことができるという第十条の規定が働くようになった、当時はまだ働いていなかったという点が違うと思いますが、しかし内容そのものは変わっておらない、こういうことは言えると思うのですね。そうしますと、安保理事会決議、一九六八年六月十九日のそういう非核保有国安全保障について決まっていることのうち、前の二つは変わっていない、三項の五十一条だけだ、日本の場合で言えば安全保障条約だけだということになりますと、五年前に比べて、どういう点が五年前はだめだったけれども、現在はもう批准をしてもわが国の場合は十分安全保障がいいんだと言えるような変化が安全保障条約に関連して起こったのでしょうか。
  458. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それが正森委員の最初からの、そこへお尋ねを持ってきておられるわけなんですから。  私はこう思います。やはり先ほどとちょっと似たようなことを申し上げますけれども、米ソの一種の力のバランスによってデタントというものがかなり現実性、継続性を帯びてきたということ、それから、と同時に核兵器を使うということはやはり理由はともあれ、世論の指弾を一方的に浴びざるを得ないというような世界の世論の、やはりこれも進展があった。そういうことは、確かに条約そのものについてどういう変化があったかとおっしゃいましたら、それは正森委員の言われるように、三項を除いてないではないかということでございましょうが、客観的な情勢の変化というものは私はかなりあったというふうに申してよろしいのではないかと思います。
  459. 正森成二

    ○正森委員 条約そのものはないけれども、客観的な情勢としてあったのではないか。たとえばニクソン大統領が中国へ行かれるとかいろいろなことはあったと思いますが、しかしそれにもかかわらず、やはりいろいろ自民党の中でも不安が残っておられるのではないかというように思わざるを得ないのですね。  そこで、非常に失礼でございますけれども、私の手元に「核防条約の批准に関する件(政府に対する要望事項)」昭和五十年四月二十二日、自由民主党政務調査会。外交調査会、外交部会、安全保障調査会、科学技術部会、資源・エネルギー対策調査会の五連名の要望書がございますね。これを私入手させていただきましたので、その文章をよく読ましていただきましたが、これについては十分御考慮の上、こうして自由民主党が、外見上は少なくとも一致してこの条約を通そうとされているところを見ると、この権威ある四つなり五つなりの自民党の機関が要望されたことは、外務大臣においてりっぱに実現したと思われたからこそ、この批准についていろいろ御努力をなさっている、こう解釈してよろしいか。
  460. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 りっぱにとおっしゃいますと痛み入りますけれども、この要望の基本的な考え方は、まずまずほぼ満たすことができたのではないかと考えております。
  461. 正森成二

    ○正森委員 まずまずほぼ、こうおっしゃいましたが、詳しく申しますと時間がかかりますので二、三点だけ申させていただきますと、この自民党の文書を拝見させていただきますと、二の「日米安保体制の強化」の(ロ)のところに「事前協議の解釈、運用について、両国間で緊密な連絡を保つこと。」というのがあります。(ハ)は「これらの点につき今後日米最高首脳間の会談や共同声名の中で取り上げること。」というのがあります。それから三の「わが国安全保障体制の強化」の(ハ)のところに「米国の核抑止力が有効に発揮されるよう、わが国の体制を確立すること。」とあります。安保体制というのはもうあるわけですから、それより以上に「米国の核抑止力が有効に発揮されるよう、わが国の体制を確立すること。」とかあるいは「事前協議の解釈、運用について」、事前協議がすでにあるわけですから、その「解釈、運用について、両国間で緊密な連絡を保つこと。」というように書いてございますと、現在まで政府がるる申されておること以上にその体制をつくってくれ、解釈、運用について緊密な連絡をとれ、こういうように要望されており、それについてまずまずほぼ満たすことができたということで、いま国会の審議に上っておるというように思わざるを得ないのですけれども、その内容を忌憚なくここでお漏らし願えれば幸せだと思います。
  462. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくとも私どもとして、事前協議の対象になるべき事項はどういうことであるかということにつきましては、比較的最近の機会にアメリカ側と、いわゆる藤山・マッカーサー口頭合意以来ずいぶん時間がたっておりますので、確認をいたしたわけでございますし、またこの後段の方の「米国の核抑止力が有効に発揮されるよう、」云々ということにつきましては、私がワシントンでキッシンジャー長官と話をいたしたりしておりまして、総じて従来とどこが違ってどれだけの変化があったかと申しますよりは、いままでやや一般的に認識されておりましたことをもう少しはっきりした形で再確認をしたというようなことが私どもがいたしたことでございまして、自民党としましても、それ以上どこを具体的にどうあらねばならないということを要望したわけではなかったわけでございますので、それが、私がまずまずと申しておりますゆえんでございます。
  463. 正森成二

    ○正森委員 ただいまの御答弁には私は必ずしも承服いたしかねます。しかしその問題は、私どもは十三日にでも防衛庁長官もおられるところで、私もしくは別の議員がいろいろ詳しくお伺いしたいというような予定になっておりますので、この点はこの程度にさせていただきます。  なお、私は、宮澤外務大臣に対する御質問も、いまこうしてメモを見ておりましたら、やっと半分か六分方済んだぐらいなんですけれども、時間を見ておりますと遅くなってまいりましたし、それから特に佐々木科技庁長官がさっきからお見えになっておりますのに、御質問をしないでお帰りいただくというのははなはだ非礼でございますから、これから科技庁長官に対して若干質問をさせていただきまして、そして切りのいいところで、時間の関係もあって、他の公明党、民社党が一巡お済みになった後、機会があればさせていただくというようにさせていただきたいと思います一宮澤外務大臣、そうさせていただきますので……。  そこで、佐々木科技庁長官に伺いますが、今度の核防条約につきましては、政府が三つ条件を出しました一つに、原子力平和利用という点について支障がないかという点がございましたですね。それは今度の保障措置協定にいたしましても、この核防条約の重要な論点の一つであることは明らかであります。  そこで、その問題について若干伺う前に、科学技術庁長官というのは同時に原子力委員会委員長をお兼ねになっておると承知しておりますが、そうでございますね。
  464. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
  465. 正森成二

    ○正森委員 そこで、原子力基本法というのが原子力行政についての基本的な法律であるというように私は理解しておりますが、その第二条に、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」こういうふうになっております。これは原子力の研究開発利用が平和的でなければならぬということで、自主、民主、公開というこの原則を定めたものであると言われておりますが、これが原子力行政の今後ともの基本である、従来はもちろんであるというように解釈してよろしゅうございますか。
  466. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
  467. 正森成二

    ○正森委員 ところが、最近見ておりますと、必ずしも原子力行政というのがその自主、民主、公開というのに徹しておられないのではないかというように疑われることがやはり起こってきておるというように思わなければならない点があると思うのですね。そこでその総論的な部分をまず伺わしていただきたいというように思います。原子力行政が民主的であるためには、そもそも原子力委員会が民主的に運営されなければならぬというように思いますが、私は、原子力委員会というのは六人の委員で構成されておる、それで科学技術庁長官はもちろんその長でございますが、独断専行なさるのではなしに、六人の委員がよく論議を尽くしてそしてその上でいろいろなことが行われる、こういう慣行になっておった、また現在もそうであろうと承知いたしますが、いかがですか。
  468. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
  469. 正森成二

    ○正森委員 ところが、これは人格高潔な佐々木原子力委員長の時代ではございませんが、以前の森山欽司委員長のときに、森山欽司委員長が人格高潔でないとは言いません。私は佐々木委員長が人格高潔である、こう申し上げただけでありますが、森山欽司委員長が新しい委員を独断で内定して、原子力委員もそれを黙認したので田島英三現立教大学教授が辞任したといういきさつがございましたですね。これは当時新聞にも広く報道されましたが、はなはだ遺憾なことであるというように言われましたが、そういう事実がございましたでしょうか。そして今後の原子力委員の選任等についていかが考えておられますか。
  470. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 去年の何月でございますか、田島委員がおやめになりましたときの経過等は私の前のことでございまして、いまお話しのような事情があったようにも聞いておりますけれども、はっきりしておりません。  後段の方の従来の慣習に従って新しい委員等を任命する際には、現在の委員によく相談をし談合して決めるのかという点に関しましては、もちろんそういうふうにいたしたいと存じます。田島先生の後任の方の任命に際しましても、全部の委員にお諮りいたしまして、その人であれば結構だということで任命した次第でございます。
  471. 正森成二

    ○正森委員 非常に結構なことだと思います。さらに森山長官、前の原子力委員長は、去年の夏、原子力船「むつ」の問題につきましても、原子力船「むつ」の安全性を疑うのは現代科学への挑戦だというようなことを非常に大きな声で申されまして、反対する漁民を抑えて出航させただけでなく、その際も原子力委員会は全くノータッチの態度をとったというのは、天下に隠れもない事実であります。そうだといたしますと、これは原子力委員会の権威というものは全く地に落ちてしまう、全く科学技術庁長官の付属物にすぎないと言われても仕方がないと思いますが、こういう点についてはどう思われますか、今後どう措置しようと思われますか。
  472. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私は、御存じかと存じますが、いまから十数年前、第一回の原子力委員会友法制化した際の局長でございまして、原子力委員会の運営というものはいかにあるべきか肝に銘じてよく知っているつもりでございます。したがいまして、今後の運営に当たりましては原子力基本法の趣旨を体して、その趣旨を守るのが原子力委員会の任務と思いますので、その趣旨に沿うように運用いたしたいというふうに考えております。
  473. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいと思いますが、そういう非常に結構なお立場原子力行政をお進めになるようでございますが、原子力基本法の第二条に、「原子力の研究、開発及び利用」これは「平和の目的に限り、民主的な運営の下に、」云々とこうなっておるのですね。そういたしますと、原子力発電所などの建設等についても、もちろんこの第二条が適用されて、それについては民主的な運営、自主的そして成果は公開するというたてまえが貫かるべきと思いますが、いかがですか。
  474. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 最後の公開の点でございますけれども、これは従来からあるいは基本法をつくりました際からしばしば議論のあるところでございまして、何年前でございますか、これに対する政府の見解を統一いたしまして、自今、その統一した見解に従いまして運用しておるのでございますが、その公開の原則というのは、いかなる場合でも公開するというのではないのでございまして、成果の公開によって研究、開発促進が阻害されるような場合あるいは財産権の保護等に背く場合等は、この公開の原則は除きますよ、こういうのが実は政府の統一見解になってございます。
  475. 正森成二

    ○正森委員 そこでいま伺いました財産権の侵害というのはどういう意味なんでしょう。原子力の行政の点を考える場合に、憲法でも財産権というのはこれを尊重するとなっておりますけれども、その内容は、「公共の福祉に適合するやうに、」これを定めるというように明白に書いてあって、憲法にいろいろある権利の中でも、法律によって公共の福祉のために制限できるというようなことが書かれている基本権というのは少ないのですね。その財産権を侵さないというようなことを、わざわざ原子力基本法をさらに制限するものとしてお持ち出しになるその財産権とは一体何なんですか。
  476. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 特許権とかノーハウとか、その種のものと心得ております。
  477. 正森成二

    ○正森委員 これは私は非常に問題だと思うんですね。大臣は憲法の規定も御存じだろうと思いますけれども、財産権というのはもちろん尊重されますけれども、これは言論の自由とか表現の自由というようなものは、憲法のたてまえ上法律の制限のもとに服さないのですね。したがって基本的人権相互間の対立とか衝突がある場合に、これを調整するという場合にはこれは制限できますけれども、みだりに法律では制限できないということになっていることは明らかなんですね。特許権とかノーハウとかいうようなものは確かに保護しなければなりませんけれども、それは原子力基本法の自主、民主、公開というものを著しく制約するようなあるいは平和利用というものを著しく制約するような、そういう態様で保護されるべき権利ではないということは明らかに言われなければならないと思うのですが、いかがです。
  478. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 原子力基本法における目的を読みますと、「原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的」としておるわけでございます。したがいまして、この目的を踏まえまして、いわゆる民主、自主、公開、その公開の場合にはその「成果を公開し」ということに規定してございますけれども、そのような意味で、先ほど来申し上げておるような解釈をとっておるわけであります。
  479. 正森成二

    ○正森委員 抽象的な憲法論議や法律論議になりましては、これは問題が前進しませんので、具体的に申し上げますが、四国電力が愛媛県西宇和郡伊方町に建設中の四国電力の伊方原子力発電所の一号炉というものの設置許可取り消しを求めて、同町の住民が内閣総理大臣を相手に行政訴訟を起こしているようでございますね。それは御存じのところだと思うのです。それについて、裁判所が文書提出命令というのを出しまして、その住民の間に安全性等について非常な不信や疑問が投げかけられているので、一定の安全性にかかわる文書を出しなさいということを裁判所が申したのに対して、科学技術庁あるいは法務省はこれに対して従わないということで即時抗告を、五月三十一日ですか、なさったというように出ておりますね。これは原子力基本法の二条のたてまえから見まして、これから原子力発電というものが、今度の核防条約にも絡んで、一定の保障措置を伴ってどんどん進んでいくという場合にこういう問題も起こってくると思われますけれども、一方では保障措置をいろいろ受けながら、後で詳しく申しますが、もちろんその機関の査察員にも秘密について一定の何とかというようなことが書いてありますけれども、しかし、わが国の住民が安全の保障について非常に疑問があると言い、そして司法権が提出命令を出しておる場合に、なぜ科学技術庁は一定の限られた範囲の安全性をテストする書類さえお出しになろうとしないのか、それは原子力基本法との関係から見てどうなのか、それをお答え願いたい。
  480. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 ただいまこの問題は、御指摘ございましたように裁判上の問題となっておりますので、担当しています担当官から御説明申し上げます。
  481. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 お話のように、五月二十四日に松山地裁から文書の提出命令に係る決定が行われたわけでございますが、これに対しまして五月三十一日に即時抗告をいたしてございます。これは裁判での争いでございますので、松山地裁の決定について、その当該理由が承服しがたいということをもって即時抗告を行ったわけでございます。従来も、安全審査、安全の確認について、関係のある資料は必要に応じて裁判所に出してございますし、今後その挙証すべき段階に達した場合には、それに応じて提出するつもりでおるわけでございます。ただ、いまは裁判上の争いとしまして、松山地裁の文書提出命令に係る決定の理由には承服しがたい、特に法律の解釈が中心でございますので、法務省の見解にも従いまして即時抗告に及んだ次第でございます。
  482. 正森成二

    ○正森委員 いまの次長さんの御説明では、ちょっとわかったようなわからないところがあるのですが、伺いますと、これはある一定の段階になれば挙証責任を国側が負って出してもいいと考えておるが、あるいは少なくともそういう書類があるが、法務省と一緒にやっているので、裁判所の決定の理由には承服しがたいところがあるから、いまは出さないのだ、こういうように伺っていいのですか。
  483. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 提出命令に係る文書の相当部分については、それを立証する具体的な事実に関して挙証する必要が生じた場合には、その必要に応じて出すつもりでおるわけでございます。ただ、命令に係るものの中でも、先ほど来お話にございましたが、商業機密にかかわるようなケースにつきましては、これはなかなかすぐ出すというわけにはいかぬかもしれないというふうに考えております。
  484. 正森成二

    ○正森委員 私は、そこで、原子力委員長としての佐々木さんに伺いたいわけですけれども、なるほどこれは裁判上のことですから、科学技術庁と法務省が相談して一定の行動をとるというような場合はあるでしょうけれども、これはその地域の住民が安全を非常に不安に思って、原子力行政の一環として――広い意味ではそうですね。それについて疑問を投げかけてアクションを起こしておるというような場合に、原子力委員会としてそういうように出せないのだ、住民の不安があるかもしれないけれども、将来は出すかもしれないけれども、現時点では出せないのだ、少なくともある部分は出せないのだというような判断をする場合に、法務省というところは、裁判のテクニックは知っておるかもしれないけれども、そういう点について門外漢であろうと思うのですね。原子力委員会に何か見解を求めるということはございましたか。それについて原子力委員会としてどういうようにお考えになりますか、あるいはノータッチで結構なんだ、こう思っておられるわけですか。
  485. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 いわゆる実体問題に関しまして法務省から科学技術庁に照会ないしは相談されることは非常に多うございます。しかし、法律手続問題につきましては、むしろ法務省の御見解に従って私どもは措置をしているというところでございます。
  486. 正森成二

    ○正森委員 必ずしも私の質問お答えになっていないと思うのですね。私は、科学技術庁に御相談があるかどうかと聞いているのじゃなしに、原子力行政をつかさどる原子力委員会お尋ねはなかったのか、こういうぐあいに聞いているのです。いまの答弁を聞いておりますと、どうも、科学技術庁が判断すれば、原子力委員会なんか、そんなものは聞かなくてもいいのだというような態度がもう全体にあらわれておって、なるほど、そういうものかなあというように思ったのですが、佐々木原子力委員長、そういうことでよろしいのですか。
  487. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 原子力委員会には、途中、報告をいたしまして、事情を御説明してございます。
  488. 正森成二

    ○正森委員 私は、事情を説明すべきものではなしに、原子力委員会のこういう問題についての一定の見解、判断を仰いで、むしろ科学技術庁や法務省は対処すべきものである、それが筋ではないかということを考えているのですね。佐々木委員長、そうじゃないでしょうか。
  489. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 この発生は、お話しのように、文書提出命令をいただきまして、それに対する回答をどうするかという問題でございまして、いわば文書を出す、出さぬの以前の、その命令が正しいかどうかという裁判上の問題にまずかかってきているものですから、その問題を処理するにはどうしたらよろしいかということで、行政的に法務省と連絡の上、先ほど次長から御説明がありましたように、民事訴訟法三百十二条二号後段でございますか、これは必ずしも服すわけにいかぬということで、まずその前段の問題を片づけてから、具体的な立証をする要があればどういうような資料を出すかというところに入ってくるわけでございまして、まだ原子力委員会自体が、この資料はどうだという段階に入ってないものですから、次長の言われましたような段階で処置したものと私は心得ております。
  490. 正森成二

    ○正森委員 私は、佐々木さんのその御見解というのは非常に注目すべき見解だと思うのですね。しかし、三百十二条の文書提出義務があるかどうかというようないわゆる法務省ペースのところに入るのでなしに、地域住民がこれだけ心配しているんだ、原子力行政としては原子力基本法の二条に基づいて住民の不安というのを、その平和利用について自主、民主、公開で説くのが大事だ、だから、争っておるからこそ法律問題になっておるのであって、争わなければ法律問題としてはとっくに解決しておるんですね。しかも、いま伺うと、立証すべき段階があれば提出していいものがあるというようなお話ですから、裁判所の決定は決定として、争うべきものがあればそれは別にお争いになってもよろしいが、提出してこちら側から立証してもいいという書類があるなら、提出命令にかかわりなくそれは遠慮なく出す。それが住民の不安を除き、それだけ見ればもうほかは結構だということがある場合があるかもしれぬわけですから、それが住民に対しても非常に親切であるし、原子力基本法二条の精神に沿うものであるというように思いますが、いかがですか。そういうお立場に立たれれば住民との紛争ももっと少なくなり得ると思うんですね。この問題についてはこの質問だけでやめます。
  491. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 この訴訟は御承知のように、行政処分の取り消しの問題でございまして、資料提出云々はその手段かと存じます。したがいまして、今後行政処分の取り消しの問題を扱う場合に、これが一つの前例になったりいたしますといろいろ大きい問題に発展する可能性もございますので、まずその提出命令が妥当なりや否や、裁判の問題でございますから、その吟味に入るのは当然かと存じます。その上で決着がつきましたら必要に応じて資料を出します、こういうことでございますから、別に手続上はおかしなことはないと私は考えておりますが……。
  492. 正森成二

    ○正森委員 時計が九時に近づいてまいりましたので、いろいろ限度だろうと思いますので、私はたくさん聞きたいことがあるのですけれども、お二人がおいでになっておりますので、保障措置協定一つだけについて伺って、残りはまた別の機会に聞かしていただきたいというように思います。  宮澤外務大臣保障措置協定がユーラトム並みだというように、外務委員会国際情勢質問のときでございましたかお答えになりましたときに、ユーラトム並みどころかユーラトム以上なんだ、最恵国待遇というものまで言うてみればついているんだという意味のことを言われたと思うんですね、それは間違いございませんか。
  493. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように申し上げて、そう思っております。
  494. 正森成二

    ○正森委員 それは本文の二十六条に「この協定の議定書は、協定の不可分の一部をなす。この文書において「協定」とは協定及び議定書をいう。」とこうなっておりまして、そしてそれに基づいて議定書というのがつくられております。  その第二条を見ますと、「機関は、協定の実施に当たり、保障措置に関し、国内制度が他の国又は一群の国におけるものと同等の機能的独立及び技術的実効性の程度に到達し、かつ、その程度が維持されることを条件として、機関がこのような国又は一群の国に与える待遇よりも不利でない待遇を日本政府に与える。」こういう規定をお指しになって最恵国待遇というものまでつけられるようになったんだというようにおっしゃったと思うのですが、そう理解してよろしいですか。
  495. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  496. 正森成二

    ○正森委員 しかし、これは形式的にはユーラトム並みあるいはその上にさらに最恵国待遇がついたんだというように言えるかもしれませんけれども、実質的にはなかなかそうはならないんじゃないでしょうか。といいますのは、外務省ではお答えしにくいかもしれませんが、佐々木長官に伺いますと、いまお手元にもし議定書をお持ちであれば二条を見ていただきたいのですが、注意深く見ますと、「国内制度が他の国又は一群の国におけるものと同等の機能的独立及び技術的実効性の程度に到達し、かつ、その程度が維持されることを条件として、」とこうなっているんですね。したがって国内制度、つまり査察について必ずしも機関でなくても、それが機能的な独立と技術的実効性を持っておらなければいかぬ。かつそれが維持されなければならぬということでありますから、もしそれがユーラトムあるいは西ドイツのようなそういう国に対して著しく劣るとかあるいは差がある場合には、その差がある程度に応じて国際原子力機関というのは査察の密度を濃くしなければならないということに当然なってくるのですね。ですから、形式的にはユーラトム並みあるいはユーラトム以上の最恵国待遇的なものをとったと言われましても、実質的にはなかなかそうならないという場合が残念ながら現在のわが国ではあるんではないですか。
  497. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 わが国はすでに過去長い間、二国間協定IAEA、国際原子力機関との間の移管協定に基づきまして査察を受け入れてきておるわけでございます。それから日本原子力開発利用の場合には平和目的に限るということがございまして、平和目的に限ることを担保する意味で国内諸法令において相当広範な審査、検査あるいは計量管理といった制度が長い間講ぜられてきておるわけでございます。保障措置制度の中身というのは、大別いたしますとでございますが、計量管理制度と査察であろうかと思うのです。査察につきましては、なるほどいままでの協定では、すべて国際原子力機関が行い、日本の――日本にも実は査察官がおります。科学技術庁におりますが、査察官がこれに同行、立ち合いを行っておるわけでございます。この過程におきまして相当の技能、経験の蓄積がございまして、かつ人員的に見ましても、なるほどいまのままでは足りないかもしれないのでございますが、所要の増強を行うことについて、実はある程度の了解をたとえば行政管理庁当局等からも得ておりまして、この協定に批准いたしました場合には、従来整備されております計量管理制度を一部手直しする必要はあるかもしれません。それから査察を行うための機器等の整備が必要になることもあります。それから人員増等もございますけれども、いま申し上げましたように、長い間の蓄積でユーラトムと同等の機能的な有効性を保ち得るものというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  498. 正森成二

    ○正森委員 しかし、なかなかそうはなっていないんじゃないでしょうか。たとえば毎日新聞の三月十日の記事を見ますと、理学博士で東京工大教授の野沢豊吉先生が「発言」というところで書いおられるのですね。それを見ると、全部読みますと長くなりますので、その一部を読みますと、「西独の核武装を警戒して過去二〇年積み上げられたユーラトムの域内査察のレベルに日本が追い付くには早くて一〇年が必要である。ユーラトムの査察技術研究費支出は二〇〇億円、専門員は一五人、日本の研究費は七億円足らず、専門員は一人。悲しい現実である。」こういうぐあいに書いてあるのですね。いずれ参考人をお呼びするというようなことになれば、野沢先生あるいはこういうことについて詳しいお方から伺わなければならないと思っておりますけれども、やはりこういうような現実というものはあるんじゃないでしょうか。そうすれば、実効性というように言いましても、これは相当差がある。したがって実質的にはユーラトム並みではない。最恵国待遇というのを規定していただいても、実際の国際原子力機関による査察というのは決して実質的平等は確保されない。残念ながら少なくとも十年、あるいはそれを縮めて数年間は確保されない、こういうぐあいに見てもいいんではないですか。
  499. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 野沢教授のその論文は私見ておりませんけれども、いわゆる査察技術の程度に対してどういう認識を持っておるか、野沢教授はどれほど認識を持っておるか知りませんけれども、少なくとも量質両面から見まして、量というのは査察官、査察員の数でございますけれども、これは現在二国間協定に基づきまして、国際機関から常時査察が来ておりまして、大体平均いたしますと二人の査察員が毎月二十日程度滞在いたしましてただいま査察いたしております。これに対してわが方は現在八人おりまして、この査察官の査察に立ち会っております。これがさらにこの条約が通りますと六名増員されまして十四名になりますが、いまの国際機関の対日査察員は十一名でございまして、数から申しますと、いま私どもが予定しておるのは決して数量的に査察員が足らぬということはないと思います。  それから質の問題でございますけれども、これは実際査察に立ち会っておるのみならず、国際機関に私どもの原子力局から何人も実は行っておりますし、あるいは民間の機関からもあの機関に参りまして向こうの職員として勉強しております。そういう点もございまして、質的にもそれが大変劣るというふうには考えておりません。  それから、今度の協定によりますと査察する対象あるいは査察内容等が非常に簡素化されておりまして、それほど、十年もこれから勉強しなければそういうことができないというふうにはとうてい私どもは考えていないのでありますけれども、そういう次第でございまして、決してユーラトムに劣るような査察をし、国際機関から指弾を受けることはなかろうというふうに考えております。
  500. 水野清

    ○水野委員長代理 ちょっと速記をとめてください。
  501. 水野清

    ○水野委員長代理 速記を始めてください。  本日はこの程度にとどめ、次回は、来る十一日水曜日、委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後九時四分散会