○坂口委員 それでは、
大臣がお見えになりましたので、交通遺児の問題につきまして
質問をさせていただきたいと思います。
先日の新聞あるいはテレビ等で交通遺児家庭の
生活の実態
調査が報ぜられまして、その現状に対しまして多くの人が心を痛められたであろうと思うわけであります。私もあの記事を拝見をして、非常に心を痛めた一人でございます。
昭和三十五年後半ぐらいから、いわゆる高度
経済成長下におきまして自動車産業が非常な発達を遂げました。一方におきましては、大気汚染でありますとか、あるいは騒音、振動等の公害問題あるいは交通渋滞等の問題が起こります一方におきまして、連日この交通事故者が出ました。戦後いままでその死亡者は三十万をこえたといわれておりますし、負傷者は一千万をこえたというふうにいわれております。また、親を失ったいわゆる交通遺児は十万以上にものぼったといわれております。しかも、こうして私がこの問題を取り上げさせていただいておりますこの最中におきましても、前の道路におきましては救急車が走っておりますように、あちらこちらで事故が多発をし、一日に平均して三十人もの交通遺児が生まれてくる状態にある現状でございます。おそらくいまも全国のどこかでそういった不幸な方ができているのではないかと思うわけであります。この交通遺児の問題につきまして、先日、交通遺児育英会のほうでおまとめになりましたものは、もう詳しく申し上げるまでもなく、
大臣はじめ
関係委員の方もごらんをいただいたことであろうと思いますが、かいつまんでその結果をここに申し上げまして、これからの
議論の資料にさせていただきたいと思うわけであります。
いわゆる交通遺児家庭は、父親をなくした家庭が九割、そうして母親をなくした場合が一割でございます。しかも、そのなくなった父親の年齢は、三十代が五〇%をこえて五四%を占めているという現状であります。四十代を含めますと、八〇%が三十代、四十代に集中しているという特異的な現象がございます。これは他の疾病等に比べますと、もちろん三十歳、四十歳でも他の疾病でなくなられる方もあるわけでございますけれ
ども、三十ないし四十のところに八〇%もの山がここに
一つできるというのは、これはほかの疾病等では
考えられない特異的な現象ではないかと私は思うわけであります。ここにこの交通遺児問題の大きな問題がひそんでいると思うわけであります。
しかも、そのなくなられた方は
賃金労働者が五〇%近くを占めておりますし、農林漁業者を含め、あるいは自営業者の三〇%を含めますと、これもここに八〇%の
数字を見るわけであります。そのあとに残されました人は母親と二人の子供というのが平均値として出されております。また、残されました母親の収入を見ますと、四万円台というのが最も多いところにありまして、一五・八%が示されております。わが国の常用労働者の平均月収は九万円弱といわれておりますから、ここにも非常な差が出ているわけであります。このあとに残された母親は、したがいまして、からだに非常な無理がきて、からだが弱い、病気がちという人が約三〇%、その三分の一近くを占めているのが現状でございます。また、もう病床についているという方も一%ございます。
また、事故による家族構成の変化を、この
調査の結果から見せていただきますと、子供を連れて実家に帰ったという方が約一〇%を占めておりまして、子供を親戚に預けたとか、あるいは
施設に預けたというような人を含めますと一四%になります。実数で申し上げますと、全国のすべての交通遺児家庭についていえば、一万一千人の子供が母親の実家で暮らし、二千百人から三千人が親戚や
施設に預けられて、五百五十人から八百人が養子として出されている、こういう
数字がここに示されたわけでございます。
そして、この交通遺児の悩みを聞いておりますが、これによりますと、精神的な悩みが約九〇%、
経済的な悩みが約五〇%という
数字が示されております。非常にきびしい
経済状態であるにもかかわらず、
経済的な苦しみもさることながら、精神的な悩みが九〇%ここで示されているというのは、まことに胸の痛む思いがするわけでございます。
そして、高等学校、あるいは大学への進学の変更、退学、休学等が合計二〇%という
数字で示されております。
また、
生活保護を受けておみえになります方を見ますると、七・九%でございまして、全国の保護率の一・三%から比べますと約六倍の高率になっております。
また、あとほしい最小限の金額を聞いておりますが、その答えでは、あと三万円あったらというのが二七・一%、あと二万円あったらというのが二六・八%という
数字が示されているわけであります。非常に苦しい中で、なおかつ大きな
数字を言わずに二万円、三万円ということばを出されているところにも、われわれこの問題にもっと大きな目を開かなければならない点があろうかと思うわけであります。
まずこういうふうな背景の中で
質問をさせていただくわけでありますが、交通遺児に対しまして、いわゆる交通遺児育英会から奨学金が出されておりますけれ
ども、この奨学金が出されます場合に、その家庭が
生活保護を受けておりますと収入認定とはしないという一応の話があったというふうに聞いておりますけれ
ども、全国あちらこちらでこれが収入の
一つに入れられているという事実がこの
調査の中でわかってきているわけであります。この点につきましてどのようなお
考えをお持ちになっているのか、まずお聞きしたいと思います。