○
政府委員(
土屋佳照君) 私
ども制度を
考えます場合は、全国的にいろいろなレアケースその他も含めて、その
法律が全体としてカバーできるといったような的確なものでなければならないという
考えをまず持っておるわけでございます。
そういった意味で、先ほどからお話のございました過去のいろいろな例に照らして、公正を確保するという方向で
考えていけば、確かにただいま御
指摘がございましたような巡回投票制度というものも
一つの
考え方であろうと、その点は認識をいたしておるわけでございます。しかしながら、たとえば世田谷区の例でいまお話があったわけでございますけれ
ども、私
ども、この点は世田谷の実際に事務担当をしておる方々ともいろいろ話もしてみたわけでございます。世田谷のように七十万以上の
人口を持っておるところ、たとえば大田区あたりでもそうでございますが、ここでも身障者が約八百人をこえておるのじゃなかろうかと思いますけれ
ども、そういったところで
考えます場合に、たとえば
衆議院の場合、参議院の場合、いろいろございますけれ
ども、区会議員の場合についてもこれはやらぬわけにはまいらない。
そうなってまいりますと、たとえば十日間の運動期間があるわけでございますけれ
ども、投票日あるいはその前日というものは、これはもちろんそういうことはなかなか手をさきにくい。それから
告示日とその翌日の受付の間も、これはなかなか回れない。だんだんそういうことを
考えてみますと、実際上あれこれと
選挙事務の忙しい中で実際に巡回できるということになりますと、非常に日数も限られてくるであろう。そういったケースも
考えなければならない。
そうなってまいりますと、いまのような都会の中で、実際に車で回るにいたしましても相当混雑もございますし、なかなか一日にたくさんこなすというわけにもまいらないということでございまして、かなりな人数を必要とするということになってくるわけでございます。しかも、なおかつ、そういう回ります場合は一応管理人と立会人といったようなものも
準備しなければならない。最低三人以上でなければいけないということになってまいりましょうし、そうなってまいりますと、そういうことに従事する方はある程度専門的な知識がなければなかなかやりにくい、実際に仕事をこなしにくいということになってくるのじゃなかろうかと思っておるわけでございます。
たとえばいまの世田谷区について申しますと、私はこれも気になって聞いてみたわけでございますけれ
ども、実際の
選挙の際の専従が二十三人ぐらいだ、うち七人は支所のほうへ出て、不在者投票その他のことをやっておる。そうなってまいりますと非常に実際の専従者というのは少なくなるし、併任して各部局から加勢をしてもらうものも十人程度だといったような話でございます。そうなってくると、なかなか専門的にそういうことで回っていただくという方を得るということがむずかしい。民間の方でも頼むということにいたしましても、一体どういう人なのか、専門的知識もない方でも困るし、またどういった立場の人であるか、これも心配でございます。それからなお、さらに
考えてまいりますと、回る途中でたとえば事故があったというようなことで
選挙人の家に行けなかったというようなこと等、一体どうなってくるのだろうかというような心配等をあるわけでございます。
そういった点が大都市にはございますし、さらにまた離島あたりが日本の場合非常にたくさんございます。多くの部落をかかえ、あるいは船で往復何時間というようなところもございますし、そういうところにも実際上身体障害者等歩行困難な方がおられる、そういうこともございます。あるいは山間僻地等でもそういうことが起こるわけでございますが、そういう人の扱いということも
考えなければならない。そういう離島あたりで荒天のために船が動かない、あるいは豪雪のためになかなか回り切れないといったようなときの免責規定なんていうものは一体どう
考えたらいいのだろうかと、いろいろなことを私
ども考えまして、なかなか画一的な制度として巡回制度というものはとりにくいのじゃなかろうかというような
感じがするわけでございます。
先ほどお話がございましたが、私
どもが調べた点では、外国でも巡回投票制度というものはないようでございます。やはり他人の居宅へ入り込むといったようなこと等も、いろいろ外国としては個人主義的な国でございますから、問題があるのではなかろうかということも
考えたりしておるわけでございます。もちろん郵便による投票制度というものは外国にもいろいろあるわけでございます。
そういうことで、私
どもとしてはあれこれ
考えた末に、なかなか巡回制度では十分ではないのじゃないかということを
考えまして、そうなるとやはり郵便投票制度だということになってくるわけでございます。
しかしながら、これとても絶対に他人が関与しないとはどうも言い切れないという面は、御
指摘のとおりあるだろうという気がいたします。しかしながら、先ほど申しましたように、範囲を非常な公正な
基準によって認定されるところに限定をするということにいたしまして、事前にそういった在宅投票ができる人であるという在投証明を交付をする、あるいは従来失敗いたしましたような代理人請求は認めないというようなことにいたしまして、本人に直接郵送をして投票用紙も交付し、本人が自書によって
投票所に送るといったようなことを
考え、それからその際に、本人の意思に基づいてみずからその投票をした旨の宣誓をさせるとかいったようなこと等
考えまして、問題が起こった場合の証拠もはっきり残しておく。そういうようなことも
考え、さらには自宅でやるわけでございますから、公正を確保する意味でいろいろ問題があるかもしれません。そういった意味で投票干渉罪といったようなこと等もあるいは
考えていいのじゃなかろうかといったようなことも
考えておるわけでございまして、いろいろこういうことを
考えて、必ずしも完全ではあるとは言いにくいと思いますけれ
ども、一歩前進して確実なところから進んでみたらどうであろうかというような
考えを持っておるわけでございます。