○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、
田中総理に対し、内政、外交の重要点のみにしぼって質問をいたしたく思います。
長年の全
国民的念願でありました日
中国交正常化が実現され、日中永遠の平和への道が開かれましたことは、
わが国の歴史に大いなる一ページを画するものであり、
アジアと世界の緊張緩和に大きな
役割りを果たすものであります。私は、この交渉での
田中総理はじめ
政府関係各位の御労苦に対し、率直に敬意を表するものであります。(
拍手)
しかし、
日中国交回復の実現は、
総理の決断がその直接の要因ではありますが、これをなし遂げた真の原因は、
国民世論がこれを早期に実現することに結集したことによる大きな成果であり、また、これまで
日中国交回復の実現を妨げる歴代保守政権のもとで、この実現のためにじみちな努力を重ねてきた野党や保守党の一部先覚者並びに各民間団体の努力の積み重ねの結果であると思うのであります。(
拍手)
そこで伺いますが、まず、きわめて遺憾なことは、
日中共同声明を国会の承認事項としなかったことであります。本来、
日中共同声明は、単なる
共同声明という扱いではなく、日華平和条約の否定、戦争状態の終結、賠償請求の放棄等を含めて、国交正常化を成立させる、事実上平和条約の効力を有するものであります。したがって、これは当然国会に承認を求めるべき性質のものであり、これは
共同声明に対する賛否の問題とは別の次元に属する国会の審議権を守るか侵すかの問題であります。私は、今回の
政府の態度は、行政権の乱用による悪例を残す結果となることをおそれるものであります。
政府は、
日中共同声明を国会承認案件としなかった理由を明確にすることを要求いたします。
また、
日中共同声明において、
わが国は、
中国を代表する唯一の合法
政府は中華人民共和国
政府であり、台湾は
中国領土の一部であることを完全に認めたものと理解しておりますが、それを認めながら、日米安保でいう極東の範囲に台湾が含まれるとするならば、明らかに
中国に対する内政干渉であります。
政府は、この際、安保の極東の範囲から台湾地域を除き、さらに佐藤・
ニクソン共同声明の
台湾条項の取り消しを明示的に行なうべきであると思いますが、
政府の明確なる見解を承りたいのであります。(
拍手)
また、先ほどの
総理の答弁の中におきまして、確かに日中復交によって緊張は緩和の方向に向かっておるが、
アジアの安全についてはなお不安定な要素ありとの先ほどの
総理の答弁がありましたけれども、その不安定な情勢、不安定な要素はいかなるものかを、あわせて明確にお答えをいただきたいと思うのであります。(
拍手)
今後の台湾との関係については、かりにも二つの
中国論に立脚すると解される態度は断じてとるべきではないと思います。したがって今後、
経済、文化等の交流については、いかなる態度をもって臨もうとするのか。また、日華条約第三条の
日本国及び
国民の財産請求権の処理はどうなるのか、台湾に対する
政府のこれまでの借款はどうなるのか、それぞれ明確な見解を承りたいのであります。
さて、現在の国際情勢の大きな変動は、冷戦時代の終えんを示し、新しい平和共存の秩序を目ざしていると見るべきであります。いまこそ
わが国がサンフランシスコ体制による
冷戦構造に基づく対外
政策を改め、自主、
平和外交を確立すべきであると思います。
しかしながら、
政治の流れを変えることを公約として生まれた
田中内閣の対外
政策は、冷戦外交を強力に推進し続けた佐藤前内閣と本質的に何ら変わるものではなく、日米安保の堅持、四次防など、軍備増強
政策の強行決定、
ベトナム戦争への積極的な協力など、相次ぐ反平和的姿勢をとり続けているのであります。決断と実行をスローガンとする
田中内閣の本質は、まさに独断と暴走の危険きわまりないものといわざるを得ないのであります。(
拍手)
日
中国交正常化は一体いかなる意味を持つものと
政府は理解しているでありましょうか。また、
アジアの緊張緩和とその展望、さらに
わが国の果たすべき方向をどのように理解しておられるのか、疑わざるを得ないのであります。
安保という
軍事同盟体制の生まれた根拠は、言うまでもなく
アメリカの共産圏諸国敵視
政策にあったことは明らかであります。米中、米ソ首脳会談が行なわれ、平和共存体制への基盤が生まれ、さらに
日中国交回復が実現をした現在、いままで
自民党政権が主張してきた日米安保の存在意義は大幅に薄れたと見るべきであります。
私は、日米関係の重要性を決して否定するものではありません。むしろ重要であるからこそ日米安保の早期解消をはかり、これにかわる相互不可侵などを内容とする非軍事的な友好条約の締結を目ざすべきであり、新しい日米関係の創造をするべきであると思うのであります。これに対する
田中総理のお考えを明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
私は、今回東南
アジア諸国を訪問し、各国の指導者と会談する機会を得ました。
アジアはいま真剣に平和への道を求めております。これら諸国の間に東南
アジア連合の中立宣言など、きわめて注目すべき動きも生まれてきております。同時に、
わが国の動向に強い関心を持ち、また警戒の眼を向けていることも事実であります。特に第四次防など際限のない攻撃的な軍備拡大
政策と圧倒的な
経済進出は、これら
アジア諸国に大きな脅威を与えておることも事実であります。
政府は、
アジア諸国に対する過酷、独善の
経済協力の条件を改め、相手国の
経済自立への協力原則を明確にするべきであると思うのでありますが、
総理の所見を承りたいのであります。(
拍手)
わが党はこれまで、
わが国が等距離完全中立
政策をとるべきことを強く主張し、
わが国が目ざすべき方向は
平和中立の
日本であると主張してきたのであります。こうした展望のもとに、
アジア諸国との間に中立、平和のための連帯を促進する構想が生まれるべきであると思うのであります。この目標とする
アジア・太平洋の平和と安全のために
アジア・太平洋平和会議を開催するなど、平和な国際環境づくりを積極的に行なうべきであると思うのでありますが、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
さらに、
日ソ平和条約には北方領土返還が前提とならなければなりませんが、これに対する
政府の基本的な方針、特に北方領土返還問題については、少なくとも歯舞、色丹、国後、択捉の四島を要求するべきであると思うのでありますが、その要求する領土の範囲等をここに明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
また、朝鮮の統一への
話し合いが現実に進行している現在、
朝鮮民主主義人民共和国を無視した従来の
政府の朝鮮
政策は転換すべきであると思いますが、その見解を承りたいのであります。
次に、
わが国の
安全保障問題について所信を承りたいのであります。
ベトナムにおける戦争終結は既定の事実になろうとし、南北朝鮮双方の
話し合いの進展など、世界の情勢、
アジアの情勢は大きく緊張緩和に向かい、並行して軍縮の機運に向かいつつあります。
田中内閣は、誕生以来、国会において明確な
わが国の
安全保障に対する構想を論議しないまま、膨大な第四次
防衛力整備計画を閣議決定し、これを既定の方針として
国民に押しつけようといたしております。また、先国会できびしい
国民の指弾を受けて凍結されていた四次防予算の先取りを突如として独断的に解除し、さらに加えて、米軍の
ベトナム戦闘用車両の運行を可能ならしめるために、抜き打ち的に
車両制限令を改悪し、国内法を日米
安保条約に従属させるという暴挙を行なったのであります。(
拍手)このように、
アメリカの圧力に屈した
田中内閣の姿勢が、B52の
沖繩常駐を既定化しようとするたび重なる
大量飛来という、
日本国民の意思を無視した
アメリカの暴挙を許す結果となったのは、きわめて遺憾であります。こうした一連の国家権力によって、
国民の声を黙殺して軍事優先
政策へ独走しようとする
田中内閣に、
日本軍国主義化への危険を抱くことは、むしろ当然のことではないでしょうか。
田中内閣がこの
国民的な批判にこたえようとするならば、これらの施策をすみやかに撤回すべきであります。
田中内閣が行なおうとしている四次防総額は五兆円を上回るものであり、年間予算一兆円をこえ、世界有数の軍事予算を有することになるのであります。
なぜ今日の情勢のもとで、
わが国がこれほど膨大な軍備や軍事予算を持たなければならないのか、
わが国を取り巻く国際情勢をどう認識しておられるのか、脅威の実態は何かなどの基本的な説明すら、何ら
国民にいたしておらないのであります。
国民の望む
日本の平和と安全は、決してミサイルや戦闘機や戦車や護衛艦などによって築かれることではないと思うのであります。(
拍手)また、このような発想こそが、今日まで人類に戦争をもたらしてきたことは、歴史の教訓ではありませんか。
先ほどの
田中総理の答弁をお聞きいたしておりますと、四次防の予算と他国との
軍事費の比較を、
田中総理は長々と述べられました。
田中総理のこの他国との
軍事費の比較を聞いておりますと、何か軍国主義下における答弁かと、私は耳を疑いたくなるのであります。(
拍手)
日本は、平和憲法のもと、戦争を放棄いたしております。すなわち、平和憲法の精神を全く忘れた議論ではなかろうかと、私は驚きを持っておるのであります。(
拍手)
総理は、四次防を必要とする根拠を明確にするとともに、自衛力の明確な限界をここに示すべきであります。(
拍手)
田中総理の明確なる所信を伺いたいのであります。
さらに、兵器の国産化がもたらす危険は、軍需産業の本然的に持つ自己増殖作用によって、軍需産業の拡大強化を許し、最も危険な産軍複合体制への道を歩むことはきわめて明らかであります。
総理は、産軍複合化への危険をどのように認識されておられるのか。また、わが党がかねてより提案してまいりました兵器の輸出禁止法案をこの際成立せしめるべきであると思うのでありますけれども、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
私は、
田中総理が決断をもって四次防を白紙に戻して、あらためて
わが国の
安全保障の
あり方について
国民的基盤で検討すべきであると思うのであります。
総理にそのお考えがあるかどうか、所信を伺いたいのであります。
また、文民統制の強化についてどのような施策をお考えになっておられるか、あわせてお伺いをいたしたいのであります。
わが党は、今回、米軍基地の再総点検を実施いたしました。その詳細につきましては、予算委員会などの機会に譲ることといたしますけれども、明らかにされたことは、
国民生活を脅威する米軍基地の実態であります。特に
総理は、昨年の
沖繩国会で成立した非核、基地縮小の決議をどう実行しようとされておられるのか、明確なる所信を承りたいのであります。
次に、内政問題について
総理の所信を伺います。
私は、七〇年代におけるわれわれ
政治家の責務は、
公害を絶滅し、物価を安定し、老後の
生活保障をはじめとする
社会保障を充実して、安心して毎日を送ることができる、青空ときれいな水と緑に包まれた福祉
日本を子孫に伝えることであると確信をいたしております。(
拍手)
しかるに、
日本列島改造論及びそれを基調とした一昨日の
所信表明では、現状の
日本におとしいれた従来の
政策については一片の反省もないばかりか、依然として生産第一主義の
経済政策を踏襲し、福祉社会建設へのビジョンを示していないのは、はなはだ遺憾であるとしか言いようがありません。
田中総理、私は、
自民党政府がとり続けてきた
高度経済成長政策には二つの特徴的な柱があると考えております。それは、生産第一主義と低福祉、低所得であります。昨年の円切り上げも、また現在迫られている円再切り上げも、生産第一主義、低福祉、低所得の
経済成長政策の当然の帰結であります。
さて、
田中総理にお尋ねをしたい。
田中総理は、
改造論の中で、
日本の現状を「許容量を越える東京の大気汚染」「
生活を脅かす大都市の地価、物価」「一人当たり四畳半の住宅」等々、
田中総理は正確にいまの現状を認識をしておられます。この認識はわれわれと全く同じ認識であります。この認識に立って御答弁をいただきたいと思うのであります。
第一は、
社会保障であります。
わが国の
社会保障の実態は、
西欧諸国と比較すると、
社会保障給付費の対GNP比率では、イギリス一一・八%、
フランス一四。六%、西ドイツ一六・五%、スウェーデン一五・二%に対して、
わが国はわずかに五・三%にすぎないのであります。
田中総理が真剣に
日本の将来を考えるならば、対GNP比率五・三%という実態を早急に改めるべきであります。私は、このために、
田中総理に対し、
社会保障給付費のGNPに占める割合を少なくとも今後五年間に西欧並みの一五%に引き上げるべきことを要求いたしますが、
総理の御所見を伺いたいのであります。(
拍手)
さらにこれに関連して申し上げます。
政府は、今回五兆一千億円の第四次
防衛力整備五カ年計画を策定されました。しかしながら、反面、
社会保障に関しては、かねてからわれわれが要求してきたにもかかわらず、
社会保障充実のための五カ年計画ともいうべきものを策定してまいりませんでした。
日本を福祉型に改造するということは、資源配分を変えるということであります。一方では
社会保障費のGNP比率を少なくとも一五%に引き上げ、他方では
社会保障充実のための中・長期の計画を策定することによって初めて可能になるのであります。
田中総理は、
社会保障を充実させるための計画を策定する御意思があるのかどうか。確たる御答弁をいただきたいのでございます。(
拍手)
私は、
社会保障充実の中で最も大きい柱の一つは老人問題、なかんずく老人年金であると考えております。そして老人問題は、ただ現在の重要問題にとどまるのではなく、人間にとって永遠の課題であります。私は、老後は年金で十分な暮らしができるようにしなければならないと考えております。
ちなみに、
総理の例にならいましてまた他国との比較をいたします。
アメリカは年金額月額五万六千五百円、イギリスは三万四百円、西ドイツは五万七千九百円、スウェーデン五万一千五百円であります。これに対して
わが国は、
厚生年金は新規裁定、既裁定を平均して月額一万六千円にすぎ一ません。
国民年金は現在五千円であり、老齢
福祉年金に至っては、今日現在わずかに三千三百円で一あります。これは大都市の六十歳から六十四歳の一男子の
生活扶助基準一万九千円、同年齢の夫婦二万八千円を大幅に下回る低さであります。年金額の低さは、
政府が年金制度の未成熟を理由にして
積み立て方式に固執し、
西欧諸国がすでに採用している
賦課方式に切りかえようとしないからであります。
総理、
自民党は新
政策大綱で
国民年金夫婦五万円を提唱されました。しかし、
積み立て方式では十四年後の昭和六十一年度から五万円年金が実現することになります。この物価上昇の中で、
生活水準の向上を考えたならば、十四年後の五万円はおそらく現在の一万円程度にすぎなくなるのではないでしょうか。(
拍手)
私は、年金制度を
賦課方式に切りかえ、来年度から
国民年金夫婦四万円、
厚生年金は賃金の六〇%、老齢
福祉年金二万円を支給することを心から要求をいたします。(
拍手)
総理の確たる決意を伺いたいのであります。
次に、
公害対策について
総理の所信をお尋ねいたします。
田中総理は、
改造論の中で、昭和六十年度の
日本経済の規模を三百四兆円と想定し、その結果、粗鋼生産は現在の約二倍の二億トン、石油精製は約四倍の千五百万バーレル、石油化学も約四倍の千七百万トンに達すると思われます。そのために北東と西南地域に複合コンビナートをつくると述べておられます。これでは昭和六十年度には
日本全土がいまよりもひどい
公害に悩まされるだけではないでしょうか。
日本が
公害列島になった一因は、重化学工業最優先の
経済成長政策であります。他の一因は、本来企業が負担すべき
公害防除費用を企業が負担せず、
公害をたれ流しにし、
政府もそれを放任してきたことにあることを、私は認識をしていただきたいと思うのであります。
総理、
公害を撲滅するには、強い決意と勇気が必要です。まず私は、
公害を多発させる基幹資源型産業の新しい立地を今後きびしく規制すべきであると考えますが、
総理の所信を承りたいのであります。
さらに私は、企業の社会的責任を強化するために、無過失損害賠償責任制度の確立を
総理に要求をいたします。第六十八国会では、大気と水質に限って無過失損害賠償責任制度が導入されました。しかし、その中身は環境庁原案にあった
因果関係の
推定規定が、当時通産大臣であった
田中総理の圧力によって削除をされたとうわさをされております。(
拍手)私はこの一事をもってしてもい
田中総理の
公害に臨む態度は明らかだと思うのであります。
確かに
総理も
改造論の中で「これからのコンビナートは
公害調整、環境保全、災害防止など現場で働く人びとや地元で暮す人びとの安全と福祉を最優先に考える」と述べておられます。これを単なるリップサービスにせずに、
田中総理が
公害問題に真剣に取り組むのであれば、当然
因果関係の
推定規定を盛り込み、対象も典型
公害にまで拡大した無過失損害賠償責任制度を確立すべきであると思いますが、
総理の確たる御答弁を伺いたいのでございます。(
拍手)
公害対策について、将来の問題としてもう一点お伺いをいたしたいと思います。それは無
公害自動車の開発であります。光化学スモッグの主因が自動車の排気ガスであることは、もはや明らかであります。
田中総理は、
アメリカのマスキー法に匹敵する法律を制定し、無
公害自動車の開発をメーカーに義務づける意思があるかどうか、この際お聞かせをいただきたいと思うのでございます。
次に、
土地対策について、
田中総理の御所見を承りたい。
私は、
地価対策のないままに行なわれてきました
地域開発、企業の
土地買い占めを野放しにしてきた
土地対策の不在こそ、諸悪の根源であると考えております。(
拍手)今後も地価高騰が続いたならば、住宅建設も、公園をはじめとする
生活環境の整備も、不可能になっていくのではないでしょうか。
建設省の最近の調査によると、東京証券取引所上場会社六百九十六社によって買い占められている
土地は、
日本列島の国土の一%弱にものぼっております。また、わが党の調査によっても、企業による
土地買い占めの状況は、すさまじいの一言に尽きるほどであります。
たとえば青森県の
むつ小川原開発地域であります。当初の開発計画は一万七千五百ヘクタールという広大なものでありましたが、本年五月に発表された第一次基本計画によれば、六ケ所村七千四百ヘクタール、三沢市五百ヘクタール、計七千九百ヘクタールであります。
青森県は、計画実施のため、四十六年に、
むつ小川原開発公社、
むつ小川原総合開発センター、
むつ小川原開発KKを設立、この三者のいわゆるトロイカ方式によって用地取得から開発までを推進することとし、本年に入って、公社は
土地買収に乗り出しました。公表された買収価格は、十アール当たり、田七十二万円、畑六十三万円、山林原野五十四万円であり、さらに補償額として、十アール当たり、水稲十万円、畑七万五千円、酪農標準一戸当たり四百万円を加算することとしております。計画前のこの地方は、十アール当たり、田二十万円、畑十万円、山林原野五万円が平均的売買価格であったことを考えると、全く異常な地価高騰であります。
ここでわれわれが重視しているのは、公社が買収に乗り出す以前に、民間企業によって
土地の買い占めが行なわれているということであります。われわれの調査によれば、六ケ所村は、四十四年一月から四十七年七月までの三カ年間に、約四千五百七十ヘクタールがすでに民間企業によって買い占められているのであります。さらに、その周辺の東北町、野辺地町、横浜町においても、約二千百ヘクタールが企業によって買い占められております。しかも、民間企業の中には、農地法に違反して買い占めたものもあるのであります。
総理、六ケ所村では、公社等が買収する用地の大半は、企業によってすでに買い占められているのであります。したがって、公社は企業からまた、三倍ないし四倍の高い価格でその
土地を買わなければならないのが現状であります。これによって公共事業の投資効率は大幅に悪化するのは当然であります。これはすなわち、税金のむだづかいであります。
沖繩においても、しかりであります。
沖繩では、昭和五十年に国際海洋博覧会が開催される予定になっております。この海洋博の会場、周辺地及び関連地域に対する本土企業による
土地買い占めの攻勢は、ものすごいものがあります。すでに二百八十七ヘクタールが買い占められているのでありますが、
沖繩企業による
土地買い占め二百二十ヘクタールを加えると、企業によって買い占められた
土地は、すでに五百ヘクタールをこえるのであります。さらに、宮古島では約八百八十ヘクタール、八重山群島では六百六十ヘクタール、
沖繩全島では二千ヘクタール以上も、すでに買い占められているのであります。
こうした例は枚挙にいとまがありません。
土地は、開発計画確定以前に企業によって
土地が買い占められ、それが地価をつり上げ、さらにその周辺地域に波及するのであります。この結果、利益を得るのは大手企業であり、被害を受けるのは
土地を手放した農民と、用地買収に巨額の税金を使われる
国民だけではありませんか。(
拍手)これが
日本列島改造論の欠陥の第一であります。
私は
総理に、企業の
土地買い占めの規制と地価つり上げの排除を早急に行なうことを要求します。
さらに、私は、
田中総理に次のことを要求したい。
その第一は、
土地利用基本法を次期国会に提出することであります。第二は、法人企業の
土地譲渡所得を分離して、高率の課税をすることであります。第三は、千平方メートル以上の
土地、いわゆる三百坪以上の
土地については、公共機関以外の、いわゆる民間による買収並びに売却する場合はすべて公的機関を通ずることにするとともに、地方公共団体の先買い権、買い取り請求権、収用権を認め、国・公有地の拡大をはかることであります。第四は、保有課税の適正化であります。私は、市街化区域内の
土地については、現に耕作している農地、そして一定規模以下の住宅にかかわる
土地を除いて、保有課税を適正にすべきであると考えております。
田中総理は、これらの
土地対策についてどうお考えになるのか。また、開発地域の
土地収用価格について、すでに買い占めが開発計画に先行していることを考え合わせた場合、現行の事業認定時でよいと考えておられるのかどうか、御所見を承りたいのでございます。
次に、
物価対策について伺います。
消費者物価指数は、六月には前年同月比四・四%、七月四・六%、八月五・六%と、依然として高水準が続いております。また、景気は順調な回復軌道を進んでおると見られます。
経済成長は、当初見通し七%を大幅に上回る九・五%が見込まれております。このときに景気刺激の大型補正予算を編成したことは、消費者物価上昇に拍車をかけることは必至でありましょう。
一方、卸売り物価にいたしましても、昨年十二月から九月までの上昇率を通算いたしますと、卸売り物価総計で二・六%であります。この卸売り物価の騰勢も消費者物価を押し上げる結果になることは当然であります。
田中総理は、消費者物価安定のために今後どのような具体策を講ずるのか、卸売り
物価対策及び不況カルテルはどうするのか、お示しをいただきたいと思うのであります。
さて、私は、ここで
物価対策について、基本的な点について
総理の御所見を承りたいと思います。
第一は、公共料金であります。私は、公共料金には、独立採算制や受益者負担の原則をいま適用すべきではなく、まして、物価上昇の激しいときには公共料金を引き上げるべきではないと思いますが、
総理の御見解はいかがでありましょうか。
第二は、管理価格の規制であります。私は、
物価対策の一環として管理価格規制法を制定し、寡占企業の管理価格の排除や、公正取引委員会の調査権限を強化する必要があると思うのでありますが、
総理にその御意見があるかどうか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
第三は、調整
インフレであります。先般中曽根通産大臣は、円再切り上げを避けるため多少の
物価高はやむを得ないとの発言をなさっておられます。私は、調整
インフレ政策は絶対にとるべきではないと考えておりますけれども、
田中総理の御見解を承りたいと思います。
次に、円再切り上げ対策に関連してお伺いをいたしたいと思います。
私は、現在ドルが蓄積されている原因として、円切り上げの効果が直ちにあらわれないという過渡的な要因及び不況から完全に立ち直っていなかったという一時的要因のあることを否定するものではありません。しかし、私は、より根本的には、昨年八月、ニクソン米大統領が新
経済政策を発表した時点、あるいはおそくとも多国間調整が行なわれた時点で、
経済政策を輸出第一主義から
国民福祉優先主義に大胆に転換すべきであったものを怠ったところにあると思うのであります。すなわち、一方においては、
社会保障制度を拡充し、所得減税を行ない、週休二日制を積極的に推進するとともに、勤労者の実質所得の向上をはかり、豊かな
生活環境を築くべく資源配分を行なうべきであったのでありました。他方では、戦後二十数年をかけてつくり上げた輸出第一主義の産業構造の転換を円滑に進めるべきであったと思うのであります。
私は、率直にいって、、今回発表された第三次円対策が円再切り上げに、はたしてどれほど有効であるか疑問であります。しかも、おそるべきことは、現在の
経済体質を温存したならば、再々切り上げも迫られる可能性すらあるということであります。
総理、円再切り上げ攻勢に対し、一時しのぎの対症療法に終始するのではなく、
日本経済の体質、産業構造の根本にメスを入れた抜本的対策を早急に講ずるべきであると考えますけれども、
総理の構想をお示しいただきたいと思うのであります。また、国際分業、産業調整についてもどのようにお考えになっておられるか、この際、明らかにしていただきたいと思うのであります。
最後に、
政治資金規正法についてお尋ねをいたします。
われわれが今後
日本を福祉型に転換するためには、
国民の強い支持と協力が必要であります。そのためには、
政治と財界の癒着を断ち切って、
国民の信頼を取り戻さなければならないと思います。われわれは、そのためにも、いまこそ
政治資金規正法を改正し、
政治献金は個人に限るべきである、それが現在の
自民党の実情として不可能であるならば、せめて第五次選挙制度審議会の答申に沿った改正をすべきであると思うのでありますけれども、
総理の御所見を承りたいと思います。
これをもって私の質問を終わりますが、最後に、
田中総理に特に要望を申し上げたい。
いま重要なことは、
政治が
国民のためにあるという原点に戻ることであると思います。現在、
国民の求めている
政治の選択は、われわれのこの
日本を、人間が人間らしく、平和で豊かに生きることができる国としてこれを子孫に伝える道か、かりそめの繁栄はあっても人間が人間として生きていくことができない国として子孫に伝える道か、この二つの選択のうち、前者を求めているのはきわめて明瞭であります。それが現代のわれわれの、後代に対する責任であります。これを確認し、
国民の信を問うために、
田中総理は、今国会において十分審議を尽くした上で本院の解散を行なうことを要求いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣田中角榮君登壇〕