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1972-10-11 第69回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月十一日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 小沢 辰男君    理事 伊東 正義君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 向山 一人君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君       井出一太郎君    大橋 武夫君       小金 義照君    斉藤滋与史君       中村 拓道君    別川悠紀夫君       松山千惠子君    粟山 ひで君       大原  亨君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       浦井  洋君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 塩見 俊二君         労 働 大 臣 田村  元君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      本名  武君  委員外出席者         内閣官房長官 山下 元利君         経済企画庁長官         官房参事官   喜多村治雄君         法務省入国管理         局資格審査課長 吉田  茂君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アジア局         外務参事官   前田 利一君         外務省アメリカ         局北米第一課長 深田  宏君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局環境衛生課長 加地 夏雄君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省社会局庶         務課長     藤森 昭一君         厚生省社会局老         人福祉課長   山崎  卓君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         農林省農政局就         業改善課長   江上 幸夫君         通商産業省繊維         雑貨局紙業課長 村田 文男君         運輸政務次官  加藤 六月君         郵政大臣官房資         材部長     田所 文雄君         郵政省貯金局次         長       滝本 哲郎君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君         建設省計画局建         設業課長    井上 孝夫君         消防庁予防課長 永瀬  章君         日本国有鉄道常         務理事     加賀谷徳治君         参  考  人         (日本赤十字社         副社長)    田邊 繁雄君         参  考  人         (日本赤十字社         人事部長)   宮島 久義君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     寺前  巖君     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 小沢辰男

    小沢委員長 これより会議を開きます。  この際、派遣委員報告を聴取いたします。橋本龍太郎君。
  3. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 去る九月二十七日より三日間、鹿児島宮崎の両県における厚生及び労働行政実情調査いたしましたので、その概況等を御報告申し上げます。  派遣委員は、向山一人君、田邊誠君、川俣健二郎君、古川雅司君、西田八郎君及び私の六名で、このほか地元選出有馬元治君の御協力を得ました。  まず、鹿児島県において、副知事民生労働部長衛生部次長労働基準局長及び婦人少年室長等から、それぞれ所管事項について説明を聴取し、次いで社会福祉法人特別養護老人ホーム三船園」及び雇用促進事業団鹿児島中小企業レクリエーションセンター霧島ハイツ」を視察いたしました。  次に、宮崎県においては、知事県議会議長環境保健部長労働基準局長及び婦人少年室長等から、それぞれ所管事項について説明を聴取するとともに、県立小林専修職業訓練校県立宮崎病院身体障害者総合福祉センター県立精神薄弱者総合福祉施設「向陽の里」を視察いたしました。  調査の詳細につきましては、後刻委員長報告書を提出いたしますので、本日の会議録に掲載されるようお取り計らい願います。  以上、御報告申し上げます。     —————————————
  4. 小沢辰男

    小沢委員長 おはかりいたします。  ただいまの橋本君の御提案のとおり、調査報告書を本日の会議録に参照掲載するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小沢辰男

    小沢委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書本号末尾に掲載〕      ————◇—————
  6. 小沢辰男

    小沢委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。後藤俊男君。
  7. 後藤俊男

    後藤委員 第一番に、国保組合に対する国庫負担増額についてお尋ねいたしたいと思うのです。  第五十一通常国会におきまして附帯決議が行なわれております。これは一々申し上げませんが、十分御承知のことと存じます。そこで国庫負担増額問題につきまして、現在、予算関係もあろうと思うのですが、どういうふうに進行をしておるのか。さらに二つ目の問題としまして、いままでどのような作業を行なわれてきたか。三つ目の問題としまして、これからどういうふうにこれを進めていくつもりなのか。この三つに分けまして、国庫負担増額問題についての御説明をいただきたいと思います。
  8. 北川力夫

    北川説明員 ただいま御質問国民健康保険組合に対する国庫補助につきましては、仰せのとおり五十一国会国庫補助増額について検討するようにという附帯決議をいただいております。国保給付率につきましては五割から七割に引き上げますとともに、市町村の場合にはすでに国庫補助率を、従来の百分の二十五から百分の四十に上げまして、その増額をはかったところでございます。  国民健康保険組合に対します補助につきましても、ただいまのような御趣旨がございましたので、その後その趣旨を十分に尊重いたしまして、御承知のとおり、四十二年度におきましては、財政力の脆弱な組合に対しましては臨時調整補助金として一億円、それから四十五年度には五億円、四十六年度には九億円、さらに本年度には二十五億円というふうに非常に急テンポに増額をされておるような状況でございます。  現在のところ、確かに先生仰せのとおり国保組合全体の運営につきましては、それぞれの組合によって相当事情も異なりますけれども、かなり財政力の逼迫をしております組合もございますので、明年度予算概算要求にあたりましては、そういうところを十分に考慮をいたしまして、ただいま申し上げました本年度二十五億円という臨時調整補助金について相当大幅な増額要求ということで、約七十一億円の増額要求を、現在概算要求として行なっているような状況でございます。
  9. 後藤俊男

    後藤委員 いま説明されましたのは臨時調整補助金だと思うのです。私が聞いておりますのは国庫負担先ほど言われました国民健康保険でございますと四〇%、これが現行二五%なんですね。これを四〇%に持っていくようにすべきである、これが大体五十一通常国会附帯決議内容だと私は信じておるわけなんです。   〔委員長退席竹内委員長代理着席〕 ですから、四十八年度予算要求に対しまして、いままでの二五%を四〇%に引き上げる、こういう方向作業をし、さらに予算編成にも努力をしておられるのだというふうに私は考えておるわけなんですが、いま説明されましたのは臨時調整補助金と申しますか、この問題だと思うのですが、いま言いました四〇%に匹敵するところの二五%については一体どういうふうにするのだ、この点をお尋ねしたいわけなんです。
  10. 北川力夫

    北川説明員 ただいまお話しのとおり、関係団体等からは二五%に一五%を上のせをして市町村並みの四〇%にすべきである、こういうふうな要望をいただいております。ただ現在の国保組合の全体的な事情を見てみますと、先ほども申し上げましたとおり、国保組合によりまして相当財政的な違いがございます。相当裕福なと申しますか、かなりゆとりのある組合から、それからまた逆に相当経営のむずかしい組合もございますので、そういったところを考えますると、御要求趣旨はよく理解できるわけでございますけれども、当面やはり臨時調整補助金というものが組合ごとアンバランス是正というようなことを目的としておりますことから考えまして、当面は一挙に補助率として四〇%まで持っていくというふうなことよりも、やはり現在の二五%の定率国庫補助に大幅な臨時調整補助金を上乗せして、そういう中で最も実情に合った配分をしていく、こういうことがより適切ではなかろうかというのが、私どもの現在考えております考え方でございます。  ただ先ほども申し上げましたが、本年度補助金が二十五億でございますので、明年度七十一億円という概算要求の中には定率ということではございませんけれども、できるだけそういうふうな趣旨考慮に入れながら、   〔竹内委員長代理退席委員長着席〕 なるべく多くの組合に、なるべく多くの補助金が公平に配分されるようなことを考えながら概算要求をしているわけでございまして、まあ将来定率補助増額というふうな問題があるいは起こってくるかもしれませんが、当面のところは臨時調整補助金の大幅な増額、これによってやっていくことがより適切ではないか、これが私どもの現在の考え方でございます。
  11. 後藤俊男

    後藤委員 先ほど局長がちょっと言われましたように、医療費大幅値上げ、さらに自然増というふうな関係国保組合運営が非常に困難になってきておる組合もある。これは御承知のとおりだと思うのですね。各組合のほうから出ております要求としては定率四〇%、臨時調整分として五%、いわゆる市町村並みにしてもらいたい、こういう要求がこぞって出てきておると私は見ておるわけなんですが、そうなりますと、いま説明がございました、いままでの二五%はそのまま二五%である。ただし、臨時調整分として毎年毎年ふえてきて、一億が五億になり、九億になり、二十五億になり、ことしは七十一億どれだけになるというようなことだから、臨時調整分のほうを増額することによって二五%はそのまま捨てておくのだ、従来どおりだ、こういうように私はいまの説明を聞いたわけなんです。  五十一通常国会のこの附帯決議というのはそういうことではなしに、なぜ一体市町村と比較した場合にこういう扱いをするのだ、市町村国保の場合には四〇%あるじゃないか、臨時調整分が五%あるじゃないか。それなら、それと同じような方向に持っていくべきじゃないかということを私は聞いておるわけなんです。二五%従来どおり年度もそのまま持っていく、臨時調整分のほうをふやして、それによって妥当な分配のしかたをしたほうがよかろう、こう言われますけれども、それよりかは本来の多くの組合の希望というのは、四〇%、さらに臨時調整分として五%、いわゆる市町村並みにしてくれ、これを強く要望しておるわけなんですが、なぜ一体すなおにそれにこたえるようなかっこうで来年の予算要求その他についての仕事を進められないのか、そこがもうちょっとわからぬわけなんです。そこをわかるようにしてもらいたいわけなんです。  なぜ二五%そのままに置いておかなければいけないのか。なぜ臨時調整分のほうを増加して、それによって補っていくような形をとるのだ。それよりかはすっきりしたほうがいい。各組合もそのほうを望んでおるのだ、こういうことだと思いますので、えらい執念深いような質問ですけれども、もう一ぺんよくわかるように、簡潔でけっこうでございますから、御説明いただきたいと思います。
  12. 北川力夫

    北川説明員 私が申し上げましたのは率直に申し上げたわけでございまして、まあ私としては、すなおに申し上げたつもりでございます。現在の国保組合実情は、先ほどから申し上げておりますとおり、やはりまだまだ区々ばらばらでございまして、現に臨時調整補助金というものを交付されていない組合が、百九十四の組合の中で百三十近くあるわけでございます。そういうところは自前でやっているわけでございます。問題は、そのほかの組合、たとえば先生承知擬制適用から移行いたしまして、新たに国保組合をつくりましたものとか、あるいはそれ以外の既存の若干の組合とか、そういったところに非常に財政的に問題が多い現状のところがあるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、現在のそういった段階では、やはり行政的な取り扱いとしては、国会附帯決議も、国保組合に対する増額について検討するということが出ておりますが、そういうことを考えますと、現段階においては臨時調整補助金というものを相当思い切って大幅に増額をして、そうしてほんとうに財政的に脆弱な状態になっている組合に対する補助を強化していく。そうして全体として国民健康保険組合に対する公平な補助助成というものを期していく、これが現在の実情として適切な方法じゃなかろうかと思っております。  もちろん今後医療保険の動向というものは、医療費の面におきましても、あるいは負担の面におきましても、まだまだ相当にむずかしい場面が予測されまするので、私どもは決してこの補助率増額ということについてやらないとは言っておりません。しかし現段階では、そういう方法がより適切ではなかろうか、近い将来の問題として十分検討はしたい、このような考え方でございます。
  13. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いまの説明というのは、国庫補助率につきましては相変わらず二五%でいくのだ、ただし臨時調整分の金額を大幅にとって、それに基づいて実情に応じてうまく配分をしていきたい。しかし将来の問題としてこの二五%の問題についても検討をしたい。そういう御説明だったと思うのです。  そこで、私もうちょっとわからぬのは、局長、いまあなたはいろいろ説明されましたけれども国民健康保険のほうですか、各市町村には四〇%の国庫補助が出ておるわけなんですね。そこへさらに臨時調整分として五%出て、四五%出ておるのでしょう。それだったら、いま言っておるどころの国保組合に対しても、四〇%の五%ということに、この辺ですっきり切りかえたほうがいいのじゃないですか。それをできない理由というのは一体どこにあるのか、それを私は聞きたいわけなんです。  なぜそういうふうに持っていけないのか。やろうと思えばこれはやれると思うのです。これは田中内閣の言っておられる福祉の充実をはかることにりっぱになるのでしょう。厚生省自体がそういう考え方でおられるとするならば、二五%はもうふえないわけなんです。これはそういうふうにコンクリート化してしまっておるのかもわかりませんけれども、なぜ同じようなかっこうに持っていけないかというその理由なんです。その理由がすっきりせぬわけなんです。何べんもあなたの説明を聞きまして、二五%は二五%にしておいて、臨時調整分のほうを七十一億からとって、その金を適当に分配してうまく運営していきたい、その説明説明として一応わかるわけなんですが、しかし、市町村国保については国から四〇%補助が出ておる。臨時調整分として五%出ておる。それならば、いまわれわれが言っておる国保組合に対しても同じようなところに持っていくように努力をするのが、五十一通常国会附帯決議内容だと私は思っておるわけなんです。それを、局長説明によりますと、頭から二五%でよろしい、不足分については臨時調整分のほうでうんと金をとって、これをうまく分配してというふうに説明されること自体が、私はその理由がわからぬわけなんです。  しかも、先ほども言いましたように、医療費大幅値上げとか自然増関係で、多いところは三〇%から三五%ぐらい増になるわけなんですね。非常に組合運営に困るところもたくさんあるわけなんです。それだとするなら、よけいに国庫補助を四〇%に引き上げる必要があると思うのです。さらにまた、いまあなたが言われました、来年度、四十八年度要求として臨時調整分七十一億円ですか、この七十一億円の中の三十四億というのは一定率配分だというふうに私は聞いておるわけなんです。そうなると、これは法律改正が必要になるのじゃないかと私は思うのです。  その関連も含めて、もう一ぺん、二五%に据え置きしなければいけないという理由と、いま言った三十四億円を一定率配分するということになるのなら法改正が必要ではないか、この問題も含めて御説明いただきたいと思うのです。
  14. 北川力夫

    北川説明員 この二五%につきましては、いろいろ御議論もあろうかと思います。私はおことばを返す気持ちはさらさらございませんし、また、国会附帯決議もあることでございますから、十分にそういう趣旨を尊重して現在までもやってまいったつもりでございますし、今後もやってまいるつもりでございます。  ただ、国保市町村公営国保組合という二つのものがあって、市町村のほうは、これは全国いわば当然に維持しなければならないというものでございます。国保組合のほうは、もともとが同種同業の方々が相集まって、どちらかと申しますと、発生的には、財政的にはわりと安定した形ででき上がったものが国保組合であろうかと思います。私は別にその差が四〇%と二五%である、こういうふうに断定的には申し上げておりませんけれども、そういう実情もございまして、理屈から申しますと、そこには若干の差があるというふうに言えないことはないであろうと思うわけであります。さらに、現実を考えてみますと、現実にも、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、組合実情というものはいろいろでこばこがある。そういうことを考えますと、最も実情に合った、助成の公平な配分も考えた方法というのは、やはり臨時調整補助金というものを増額することがこの際における一番適切な方法じゃないか、このように考えておる次第でございます。  もちろん私も二五%を四〇%に、さらに五%を一〇%にということは聞いておりますけれども、そういったことも考えに入れながら、当面の措置として、現在としてはいま申し上げた措置が好ましいのではなかろうか、こういうことでございます。  さらに七十一億円の要求の内訳について、定率配分する分と、それからそうでない臨時調整補助的なものがあるというふうなお話でございますけれども、私どもはこの予算概算要求にあたりまして、七十一億円という今年度の三倍近い額でございますので、これを積算するにあたりまして、各国保組合実情も十分見ながら、いま先生が御指摘になりましたような、ある程度は定率的な配分というふうなものも考えなくてはいけないかもしれぬ、またしかし、そうはいっても、相当財政が安定している組合に対しまして定率配分ということは、総体的にはやはり不公平を招きまするので、実際上の予算執行はどうするかは予算獲得の上の問題でございますけれども、七十一億円を積み上げます場合に、確かにそういうようなことも念頭に置きながら考えたことは事実でございます。  しかしながら、法律改正ということになりますると、もともと御要求そのものが四〇%というふうなことでもございまするし、どういうようなかっこう予算ができ上がるかわかりませんけれども、いわば中途はんぱな姿で法律改正をするというふうなことはあまり好ましいことではございませんから、そういう意味でわれわれはまず予算獲得努力をいたしまして、その上で先生のいまおっしゃいましたような趣旨も含めて適正、公平な配分をする、こういうことを考えながらの今度の予算要求でございますので、その点は御了解をいただきたいと思います。
  15. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、先ほどからのあなたの説明ですと、二五%というのは、別に固執するわけではないけれども、当面臨時調整分をたくさんとって、そしてこれを妥当な配分によって運営をしていったがよかろうという当面の考え方である、こういう説明でしたね。それならその臨時調整分、来年度四十八年度が七十一億ですね、七十一億のうちの三十四億というのは一定率配分する、こう聞いておるわけなんです。一定率配分するものなら、二五%をふやしたって同じことになるんじゃないですか。三十四億というのは何%に該当するか私はわかりませんけれども、たとえばこれが一〇%に該当するということになるなら、これは三五%になるわけです。それとも七十一億というのは、一定率配分は抜きにして全部が実情に応じて配分するという説明なら、わからぬことはないわけなんですけれども、たくさんとるけれども、とったうちの約半分は一定率配分します、残りの分は実情に沿って、こういうことになると思うのですね。そういう考え方があるとするのなら、何も二五%に固執する必要はないと思うのです。  三十四億というのは大体何%くらいに該当するのですか。これが一つと、一定率配分するものならば、二五%のほうを増加すればいいと思うのです、計算上からいくと。ところが、先ほどからあなたの説明しておられるのは、二五%はそのままにしておいて七十一億とよけいとって、これを実情に沿うような方向で分配していきたい、まだできたばかりでいろいろ問題があるから、という説明だったのですね。ところが要求される七十一億のうちの三十四億は一定率配分しましょう、残りの分は実情に沿って、というのなら、いままであなたが説明された半分くらいは理屈として通らなくなるわけなんです。この点、いかがですか。
  16. 北川力夫

    北川説明員 三十四億がどれくらいのパーセンテージに相当するかというお話は、大ざっぱに申しまして約五%相当額でございます。  それから、そうであるとするならば、定率でやるわけだから、これを法律改正としてやればいいのじゃなかろうかというお話でございますが、私どもといたしましては、この七十一億は現在の段階では概算要求段階でございまして、当面は、まあこれをとにかく要求の額にできるだけ近くとるということが当面の非常に大きな仕事でございます。  したがいまして、これを予算として仕上げました段階で、それをどういうふうに配分するかということをあらためて検討しなければならぬと思うのでございますが、とにかく全体的な公平という見地から考えた、このでこぼこ調整臨時調整補助金というものを考えますると、法律改正ということとは関係なしに、結果的には同じような効果をおさめると思うわけでございまして、法律改正をするかしないかという問題は、予算獲得状況ともにらみ合わせて今後検討したいと思いますけれども、実質的には同じ効果をおさめる、また実態上は公平的な見地から配分をするというふうな、予算成立後のことを考えますると、私どもはこういうことについていま直ちに法律改正をしなければならないということまでは考えてないわけでございます。
  17. 後藤俊男

    後藤委員 それで、そういう説明ですから、その予算要求が第一番だ、それはまあごもっともで、第一番なんです。とれもせぬ金の心配をする、これは取り越し苦労になりますけれども、いまのところ厚生省としては、七十一億の臨時調整分をとるということで要求しておられるわけなんです。ところが、その中の三十四億というのは一定率配分する、大体五%に該当するんだ、こうあなたがおっしゃるのですから、それなら二五%を三〇%にするのも一緒じゃないですかということを私は言うておるわけなんです。そうすると残りの三十七億が、実情に沿ってでこぼこのあるところもあろうからということで、実情に応じて配分していくんだ、そのほうがすっきりするのじゃないですか、これは。しかも、各組合が二五%をもっと市町村並みの四〇%に近づけてくれという強い要求があるわけなんですから、その要求を無視してかかるんなら別問題ですけれども、その要求に沿うような方向に進めるとするのなら、七十一億とって三十四億というのを一定率配分するんだったら、二五%を五%ふやして三〇%にする、残りの三十七億が実情に合うところの臨時調整分として配分するんだと、そういうふうに法律改正をするということも、これはできるわけなんです、いまのあなたの考えておられるこの中身だけ考えてみましても。  何も私は三〇%でよろしいということを言っておるわけじゃないのですよ。あなたが先ほどから説明しておられるのは、でこぼことか非常にやりにくい組合もいろいろあるから、二五%はそのままにしておいて、それ以外の臨時調整分をたくさんとって、それを実情に合うように分配したいという説明をずっとされておるわけなんです。ところが検討してみると、七十一億のうちの三十四億というのは一定率配分するんでしょう。それがどれだけに該当するかというと、五%に該当すると言われるんでしょう。   〔委員長退席橋本(龍)委員長代理着席〕 それだったら、二五%を三〇%に引き上げることはできるわけなんです。さらにその次には三五%に引き上げる、四〇%に持っていくという方法もこれはあると思うのですよ。それをなぜ二五%はそのままにしておいて、七十一億予算要求して、その中の三十四億は一定率配分をして、残り実情に合うというような、ややこしいことをやらなければならない理由は一体どこにあるんだ、それを私ははっきり聞きたいということを言うておるわけなんです。  さらにまた、この事務費につきましても、市町村関係は六百五十四円ですね、いま要求しておられるのが。それでいまわれわれが言っておる国保組合に対しては四百二十五円と、これは差別扱いされておるわけなんです。片方は六百五十四円で、片方は四百二十五円だ。この事務費の問題につきましても、これは五十一通常国会附帯決議ではっきり要求しておるわけなんです。なぜ一体二百円余りの差をつけなければいけないか。約二百三十円減らしてあるわけですね、国保関係は。市町村関係は六百何ぼ、片方は四百二十何ぼ、これは一体どういうわけでしょう。  さらにまた、もう一つ聞きたいのは、あなたも御承知のように、擬制適用廃止になりまして特殊な事情のもとに新設された経過というのが国保組合にあるわけなんですね。これらに対して何か特別の配慮をしておるのかどうか、この点もあわせてお尋ねいたしたいと思うのです。
  18. 北川力夫

    北川説明員 三十四億と三十七億の問題についてお尋ねでございますので申し上げますが、確かに概算要求の姿といたしましては、先ほどからもお尋ねのとおり、またお答え申し上げましたとおり、定率分と、それからそうでない分とに分けての要求でございます。  私が先ほどから繰り返し申し上げておりますことの一つは、やはり国保組合は非常に組合ごとのアンバラが多い。したがって、それを是正していって公平な助成をするということが根っこに一つある。そういうことを考えますと、確かに予算概算要求の積算の基礎といたしましては、そういうかっこう要求をいたしておりますけれども、いま先生御指摘の配分という面になりますと、はたしてこれを医療費についての定率的なもので配分をしたほうがいいのか、あるいはまた被保険者割り等に従って配分をしたほうがいいのか、あるいはある意味での定率的な配分をしたほうがいいのか、そういう面は今後検討を要する問題があるのではないかと思うのです。  そういうことで、私は先ほどから、まず当面は、積算の基礎はいろいろございますけれども、七十一億の概算要求についてできるだけ多額のものを実現することに全力をあげたい。配分については、いま申し上げましたように配分方法にもいろいろ方法がある。そのことによって組合のアンバラ是正をしていく、こういうことを申し上げたような次第でございますので、御了承を願いたいと思います。  それから事務費でございますが、確かに仰せのとおり、事務費については市町村公営の場合と組合の場合とで差がございます。毎年これも増額要求をいたしておりますので、逐年改善はされておりますけれども、やはり若干の差がございますので、来年度もできるだけその差を埋めるようにできるだけの努力をいたしたいと思っております。  それから擬制適用から移ってまいりました方々による国保組合に対して、どのような配慮をしておるかという御質問でございますので、私は十分に理解をしていない面があるかもしれませんけれども、あるいはどういうことでございましょうか、今年度予算助成の執行の面において特別な配慮を加えることができないか、こういう意味でございましょうか、そういうことでございますれば、私どもは、従来のような臨時調整補助金のやり方というものについて、この交付を少し早めるとか、そういった方法で部分的にできるだけ運営が円滑になるような方向を考えたい、そういうことは考えております。  以上でございます。
  19. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、七十一億の先ほど言った内容につきましては、予算要求段階でそういう形でいま要求をしておる。しかし実際に分配する段になりますと、もう一ぺん十分考えて、一定率であるとか何であるとか、予算要求段階ではそういう要求をしておるけれども、実際の場合にはもう一ぺん十分考え直す必要があるのだ、こういうふうに理解してよろしいですね。
  20. 北川力夫

    北川説明員 私が申し上げましたのは定率ということもございましょうし、それから国保組合それぞれの実情相当程度違っているということを考えますと、先ほども申し上げました一つの例でございますけれども、被保険者割りということで、ある意味では定率、そういう配分方法もあるのではなかろうか。要は、最終的に非常に財政基盤の脆弱な組合とそうでない組合とが、それぞれ公平な運営ができるような形のものを考えたい、こういうようなことを申し上げたわけでございます。
  21. 後藤俊男

    後藤委員 いま言われた分配の方法においては、一定率とか何とか、中身としてはあるかもわかりませんが、たとえば七十一億取れた場合も三十四億ばっと引き抜いて、これを一定率で分けますというようなことにはならぬのだ、これは予算要求段階でこういう形で要求するけれども、さてこれを分配する段階になりますと実情に沿うように十分考えてやるのです、そういうふうな説明だったと私は思うのですよ。それでいいわけですね。  それから事務費の差ですが、来年度は差を近づけるようにするといわれますけれども、四十八年度要求が六百何ぼと四百何ぼの要求が出ておるのじゃないですか。今年度から差をつけて要求しておるのじゃないですか。一体なぜ事務費までこんな差をつけなければいけないかということですね。  それからもう一つは、擬制適用でこれが廃止になって新しい組合ができまして二、三年になるのですけれども、そういうところにつきましては、何か特別の配慮をされるかどうかということなんですよ。これは先ほどあなたも説明されましたように、やはり何らか考える必要があると思うのです。それはたとえば臨時調整補助金の分配のときに考えるとかいろいろな考え方があると思うのです。それからもう一つ、四十七年度の二十五億と先ほど説明されましたね、これにつきましては、交付の基準であるとか分配の方法ということが一体どういうことになるのか、しかも、交付される時期というのは一体いつなのか、この問題もあわせてひとつ御返答いただきたいと思うのです。
  22. 北川力夫

    北川説明員 最初の点でございますが、予算要求配分とは違うというようなお話でございますけれども、私どもその辺は予算要求として現在やっておるわけでございますから、そういう趣旨でやっておるわけでございますけれども国保組合そのものの本質から見れば、予算の執行というものはかなり配慮を加えてやらなければいけないだろうということでもって弾力的な点を含んでお答えを申し上げたわけでございますので、御了承いただきたいと思います。  それから事務費の点につきまして、来年度につきましても要求の差があるということでございますが、これは差があり過ぎるのではないかということになりますと、あるいはそういうことになるかもしれませんけれども市町村の場合には、やはり組合の場合と違いまして、実際面において所得の調査とかいろいろと組合よりは手数のかかる面があるわけでございますので、そういう面を考慮いたしまして、従前から市町村組合との間には事務費の点において差がつけられておるわけでございますが、できるだけ増額をしたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから二十五億の今年度臨時調整補助金の分配の問題でございますけれども、これも先生がおっしゃいましたとおり、現在一部の組合等からは、運営上非常に困難を来たしておるので、できるだけ早く交付をしてくれ、こういう要求がございます。そういう要求がございますので、私どもは従前臨時調整補助金年度末に一括交付したわけでございますけれども、そういうことでいいかどうか、年度途中でその一部を交付できるようなことができないか、現在この点については慎重に検討中でございまして、なるべく早目に結論を出すようにいたしたいと思っております。
  23. 後藤俊男

    後藤委員 事務費の問題ですが、市町村のほうが手数がかかるという御説明でしたけれども、私ども考えてみますと、全国組織というのがあるのですね。そういうところは、かえって市町村よりよけい手数がかかるのじゃないですか。全国にまたがって組合をつくっておれば、それなりにかなり経費もかかるし、事務費関係仕事が多くなると思うのです。市町村ですと、その市町村ごとにかたまっておりますから、案外やりやすいわけなんです。そういう点を考えるならば、かえって逆にしたほうがいいと思う。逆にできなければ同じように事務費を六百五十四円だったら六百五十四円両方とも要求すればいいと思うのです。全国組織ということを考えた場合には、事務費というのは市町村国保よりかはかなり膨大に私はかかると思うのです。それであるのに予算要求は二百何ぼ少なく要求する。しかも四十八年度、来年度要求ですからね。この点は一ぺん考え直してもらう必要が私はあると思うのです。考え直せるか直せぬか、いかがですか。
  24. 北川力夫

    北川説明員 確かに全国組織の新しいタイプの組合もあらわれてまいりまして、今後の問題として十分考えていかなければならぬ問題だと思っております。ただ、現状といたしましては、従来から申し上げましたような、そういった市町村組合との事務的な差というふうなことを考えておりましたわけでございまして、現在までは助成の面ではやや事柄が別な面からの助成かもしれませんけれども、そういった面も考慮をいたしまして、臨時調整補助金のほうで相当程度そういう面はカバーできるような措置をとってまいりましたし、また今後もとってまいりたいと思っております。しかし、先生おっしゃいました点は今後の検討すべき点でございますので、十分に検討させていただきたい、このように考えております。   〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席
  25. 後藤俊男

    後藤委員 いま局長も言われましたように、全国組織というのは、いまおっしゃったとおりなんです。その点はひとつ来年度から十分考えていただく。さらにまた、それがこういうふうに差がつくような場合におきましては、臨時調整金の分配のときにはそういうことも十分考えながら分配をしていただく、そういうことでひとつお願いしたいと思うのです。  これで終わりますけれども、一番最初から私、執念深いほど話をいたしておりますように、各組合とも四〇%、五%の要求というのは、これは出ておるわけですから、この線に一刻も早く近づける方向でひとつ厚生省としてもやってもらいたいわけなんです。これはいいですね、第一番は。局長いいですか、いま言うたことわかったですか。  それから擬制適用廃止に伴うこの分については、十分配慮をすること、いいですね。  それから二十五億の配分につきましては、できるだけ早く配分をしてもらう。配分方法につきましては、いままで毎年毎年問題を起こしておりますから、問題を起こさないように配分を一刻も早く内容をきめて交付をしていただく。  それから五つ目の問題としましては、もうこれ以上言いませんけれども予算要求はこういう形だけれども、分配はこうだというようなことは、この席では言えまいと思いますから、いままでの局長説明を十分われわれも聞きましたから、その線に沿ってやってもらう。  最後の事務費の問題につきましては差をつけるというのは私はおかしいと思いますから、万一この差がなくならない場合には臨時調整補助金の分配のときに全国組織その他を考えて、ひとつ実情に沿うように行なうという考え方でやっていただく、そういうふうにお願いしたいわけなんです。  最終的にひとつ、いま申し上げました問題に対して厚生大臣のほうからお答えをいただきたいと思います。
  26. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいままで後藤委員局長の質疑応答、十分私拝聴しておった次第でありまして、御意見の存在するところ、また厚生省として申し上げましたところ、承知をいたしておる次第でございまして、その線に沿って努力をいたしたいと思います。
  27. 後藤俊男

    後藤委員 終わります。
  28. 小沢辰男

    小沢委員長 次に、大原亨君。
  29. 大原亨

    ○大原委員 きょうは具体的な問題と、それから時間のある限り社会保障全体の政策の問題について逐次質問いたしますが、最初具体的な問題からひとつ入っていきたいと思います。  それは最近出ておるいろいろな問題について質問いたすわけでありますが、この委員会あるいは他の委員会でも議論になりましたが、外国人の原爆被爆者の救済の問題で、しばしばニュースにもなっておるわけでありますが、またこの委員会でも議論をされたことがあるわけでありますけれども、この問題については、先般大平外務大臣がやや注目すべき発言をいたしております。これは外国人被爆者の救済の問題で、特別立法を考慮したい、こういうことであります。この中にはもちろん朝鮮の南半分の韓国の問題、あるいは当然朝鮮民主主義人民共和国、北の問題、それからアメリカの被爆者の問題、あるいはその他の国の被爆者の問題——広島、長崎等には留学生等がかなりおりましたし、そういう問題等があるわけであります。  大体から言うなれば、国際法上はこれは原爆を投下したアメリカがやるべきであります。これはいままで私も議論いたしましたが、国際法の精神に違反をする無差別大量殺戮兵器ですから、これは国際法上の、陸戦法規やヘーグの国際法規にずばりではありませんが、精神から言うならばアメリカがやるべきであります。これは戦勝国民であっても、戦争に負けた国民であっても当然であります。これは要求する権利があるわけであります。しかし、日本に在留をして、そうしてそれぞれ国の権力によって動員をされた、そういう問題があることと、それから被爆者の救済やあるいは医療等については、日本においてかなりこれはたくさんの経験を持っておる、こういう観点で、人道的な観点から日本がこの問題を取り上げていこうということであります。この趣旨については、私どもは日本がやるということについては異議はないわけでありますが、これについては厚生大臣は、どういうふうにお考えになっておるかという点をひとつ端的にお聞きいたします。
  30. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまお話のございました大平外務大臣の発言の新聞記事を私は見たのでございまするが、その真意につきまして一ぺんただしたいと思っておりましたが、外相の日程その他によりまして、いまだ面会の機会を得ていないわけであります。あの新聞記事は非常にぼうばくとしておりまして、特別の立法ということでございまするが、しかしながら、いまの法律的な考え方からいたしますると、日本で立法して直ちにこれが朝鮮その他の各国に効果を及ぼすような、そういう法律というものは事実上できないではないかと思うわけでございます。  ただいまお話のとおりでございまして、われわれ心情的には日本で原爆の被害を受けて、それがそれぞれ外国でそのあとでいろいろ苦しんでおられるというような実情につきましては、心からお見舞いを申し上げたいと思うのでございます、そういったようなことで、直接外国に向かって外国に居住しておる外国人について、どういうふうな施策を日本でやるかということは、むしろこれは外交上の問題でもあろうかと思うわけでありまして、われわれは直接にいま外国人に対して、どういうふうな手を差し伸べていくかということを厚生省の立場から模索するのに、なかなか困難な実情ではないかというふうに思っております。
  31. 大原亨

    ○大原委員 大平外務大臣は、田中内閣ではかなり発言力があるらしい、こういう印象を与えておりますから——もちろんあなたも伴食大臣ではないだろうけれども厚生大臣は重視するというようなことを角さんは言っておりましたから。それは佐藤総理も、最初のときは社会開発を言ったときは同じことを言っておりましたから、同じことでありますが、それはともかくといたしまして、つまり朝鮮人に対しましては、当時権力で日本へ持ってきたわけですから、強制労働ですから、国際法上にも大きな問題がありますが、あるいは日本の国民として徴兵、徴用、二つしたわけです。ですから、これは人道上の問題だろうということを私どもは言い得ると思うのです。  これは国際法上の問題はアメリカですよ。アメリカの被爆者の問題、あるいはミクロネシアその他委任統治領の問題等あるわけです。そういう人々に対しては、日本においては、たとえば原水禁日本協議会の調査の大体の概算によっても、朝鮮人で死没者は二万人以上いるだろう、傷害者もかなり多いということは間違いない。日本に在留しておる人はその措置をとっておる、しかしそうでない人についてはどうだ、こういう議論の問題であります。ですから、そういう問題については、日本に来て治療ができる、あるいは死没者に見舞い金を出すということを大平外務大臣は言っておられると思うのです。  この問題は前向きに検討するのかどうか。言いっぱなしにしておくのか。最近田中内閣は言いっぱなしをどんどんしておる。総選挙前だから、年金でも何でもぼんぼんやっておる、こういうふうなかっこうでありますが、できてもできないでも、そのつどやっておるという調子であります。いずれ国会が開かれれば明らかになりますが、あなたも前向きに取り上げるのかどうか、いかがですか。
  32. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 韓国人その他の外国人につきまして、お話の一部にもございましたように、合法的に日本に居住しておるというような場合におきましては、もちろん日本人と同様に従来から取り扱ってまいっておるわけであります。あるいはまた、日本の原爆の医療技術等もほかの国に比べては、御承知のとおり、相当進歩しておるわけでございまして、したがって、韓国からそういったような技術者の養成のために来日をするというような場合には、私どもも従来からこれをお迎えをして、これに御協力するというふうな、できる処置を今日までとってまいったのでございます。  今後そういった問題を前向きに検討するかどうか、こういうお話がございましたが、私も、帰国したら外務大臣にも話をしたり、あるいは外交上のルートを通して何らかの手が打たれれば、これもけっこうだと思うわけでございまするが、ただ国内法の規定の中におきまして尽くすことのできる限界というものもおのずからあるわけでございまして、その辺も十分に検討いたしたいと思います。
  33. 大原亨

    ○大原委員 この問題は前向きにやる、こういうふうに私も理解しておきます。  それから、これに関連いたしまして、韓国から某君が日本に密入国いたしまして、日本で治療を受けたい、こういうことでありますが、いまたしか下関の強制収容所に入っておるわけです。この問題もここで議論されたことがあるわけです。韓国においてはそういう方法がない、こういうことであります。これはやはり日本に滞留を許可をして、治療については便宜を与えるべきである、こういう議論が圧倒的に起きておると思うのでありますが、しかし、政府はその後これについてはいろいろな見解を示したことがありますが、現在の段階ではどう考えておるか、これをひとつお伺いをいたします。
  34. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 お答え申し上げます。  ただいま、その問題につきましては、いろいろ諸般の事情を注視いたしまして、検討中でございます。
  35. 大原亨

    ○大原委員 これは直ちに強制送還ということでなしに、一般の不法入国の問題とはやはり別個の立場で、治療ができる方法はあるかないか、こういう点を検討しておる、こういうふうに考えてよろしいかどうか。
  36. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 そのとおりでございます。
  37. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣、簡単でよろしいわけですが、その際に、南北の朝鮮問題を差別扱いすることはいけない、朝鮮と日本との関係から考えてみて、当然北についても、その点を考える場合には、同じように考える、こういうふうに考えてよろしいか。これは大平発言に関連してです。
  38. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 いまの問題は、御指摘になりました特定の問題と別ですね。
  39. 大原亨

    ○大原委員 あれとは別に、大平発言の問題です。
  40. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 大平発言につきましては、まだ私もその内容を確かめることができなかったことは、先ほど申し上げましたが、この原爆被爆者の問題をどうするかということは、私はこれは人道上の問題だと思うわけでありまして、したがって、人道的な立場から、この問題は処理していくべきものだと考えております。
  41. 大原亨

    ○大原委員 南北差別しない、そういうことであるように理解いたします。これは日韓会談では、韓国は日本に対する請求権を放棄したのですよ。日本がアメリカに対して損害賠償の請求権を放棄しておるのと、同じ関係になっておるわけです。しかし、その法律は法律として、実際上の措置をとる、こういうふうに私は理解しておきます。   〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席〕  第二は、しばしば外務委員会や、あるいは科学技術特別委員会や、本委員会で議論いたしましたが、ABCCの問題です。ABCCの問題については、これは国会でも議論をし、地元でもかなりこれは議論の分かれた点でありますが、かなりコンセンサスを得るような方向にあるわけです。原爆傷害調査委員会が広島の比治山という公園のてっぺんに、あるいは長崎にある、こういうことであります。  これは私は議論いたしませんが、占領の継続である、単なる外交上の口上書に基づいておる、こういうことで、私も問題提起をいたしましたが、「ABCCの在り方を検討する会」というのが広島で持たれて、広島大学の学長、これはお医者ですが、県の医師会長、広大の原医研の前、現所長、広大医学部長、原爆病院院長、市の医師会長、その他全部関係者、公的な職にある人々が集まりまして、そして議論をいたしましたが、広島原対協副会長の松坂先生も参加されております。それが四つの原則を決定をいたしまして、要請をしておるはずであります。  第一は、占領行政の残渣を払拭すること、口上書問題等、外交関係が中心であります。それから協力のあり方の問題が出ておると思います。  それから、研究の主体性を日本側が持たなければ、唯一の被爆国ということはできぬじゃないか、アメリカが日本に来て——加害国が被害国に来て調査をするという形はおかしいではないか。  第三は、他機関との交流、データの公開性、大学とか科学技術庁とか厚生省その他関係の研究機関や医療法人との連絡がうまくいかないではないか。  第四は、被爆者主体の原則、こういうことで、被爆者の立場に立った調査がなされなければいけないではないか。これは日本の主体性の問題とうらはらであります。こういうことをはっきり言っておるわけであります。  そこで、私は、いままでの議論を踏まえて、三つ質問があると思うのです。その第一は、日本とアメリカの外交関係を洗い直すということです。単なる口上書で外交特権を与えて、自分は上のほうにおって、まあ言うなれば権力を背景に呼びつけるということで調査をするということはいけないじゃないか。研究自体については、私どもは議論を通じまして、このことは価値を認めているわけです。これはアメリカは、遺憾ながら日本の研究方式のような小さな規模ではなしに、五十年規模の非常に大きな研究規模を持っている。しかし問題は、いろいろな点があるけれども、外交問題が一つある。  第二の問題は、アメリカ側は十四億円ぐらい負担をしておるが、日本は約七千万円未満でやっている、七千万円前後である。日本の対応する機関は、厚生省の予防衛生研究所等はまるでアメリカのABCC、原爆傷害調査委員会にぶら下がっているというようなかっこうで、研究員も職員もまるでふぬけである。当事者能力がない。対等研究の当事者能力がない。財政問題も関係しておる。  第三は、いま申し上げたように、人事の問題、日本側が主体性を持ってアメリカの協力を得ることは当然としても、その点は明確にすべきではないか。それは日本側が主体性を持って被爆者の立場に立つ、そういうことと密接な関係があるのではないか。  これはいままでに議論を通じまして、いろいろな決議をいたしておりますが、ここでの決議もありますが、この三点について厚生省はどう考えて、これからどうしようとしているのか。これは先般の外務委員会でも厚生省が中心となってまとめるということを答弁いたしておりますから、厚生大臣はこれは初めてでありますが、しかしながら従来から懸案の問題であって、問題はきわめて小さいようだが、しかし、日本とアメリカとのほんとうの意味における対等な友情ということから言うなれば、この問題は、被爆国日本としては、これは無視できない問題ではないか。この評価について過小評価をして、おざなりで逃げていくということは許されないのではないか。一たびこういう場所で議論になった以上はそうではないか。  私は、財政上の問題、外交上の問題あるいは人事やその他日本の主体の問題、被爆者としての対策の関係の問題、こういう問題三点について問題を指摘いたしましたが、これについて厚生大臣はどのようにお考えか、ひとつ御答弁いただきたい。
  42. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 第一点の外交上の問題につきましては、御指摘のとおりいろいろ問題がございまして、ただいまいかに今後ABCCがあるべきかということと関連いたしまして十分検討いたしまして、その性格も明確にいたしたいということで、関係各省とともに協議をいたしておる段階でございます。  それから二番目の財政上の問題につきましては、これははなはだ私ども非力でございまして、御指摘のとおりアメリカの財政規模に対比いたしまして、残念ながらわが国のこの原爆被爆者に対する研究費はきわめて少額でございます。できるだけこれの増額等について努力をいたしたい、かように考えておりますけれども、現在の段階におきましては、御指摘のとおり七千万円程度の財政支出にとどまっております。しかしながら、この問題につきましては、今後私どもこのABCCの運営につきまして、管理、運営等日本側が主体性を持った研究ができるだけ達成できるように、御指摘のような関係各省、たとえば科学技術庁あるいは文部省と協議をいたしまして、今後ABCCのあり方について十分内容検討いたし、できるだけ誤解のないような対策を早急にとりたい、かように検討いたしております。近くその結論を持ちまして、誤解を受けないような運営をすみやかにとりたい、かように考えておりますので、御了承をいただきたいと思います。  ただABCCと、私ども現在予防衛生研究所の支所がございますので、その支所とABCCとの人事交流というような関係につきましては、やはり外交上の問題もこれあるかと存じまして、その交流等につきましては、やはり種々検討すべき事項が残されておるのではないか、かように考えておりますので、その他のそういう面も含めまして十分今後検討を続けたい、かように考えております。
  43. 大原亨

    ○大原委員 あなたはまだ十分このことを承知になっていない点があると思うのでありますが、滝沢局長に答弁させるのであれば、まだ声が大きくてわかると思いますが、これは別です、医務局長ですから。それは別にしまして、いまの問題は、つまり国内における態度をきめておいてアメリカとの交渉を早急にやる、こういうふうに考えてよろしいか。
  44. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 そのとおりでございます。
  45. 大原亨

    ○大原委員 その中で財政負担が、大体日本が七千万円で、私はまあそういう点は前向きに議論しておるから、行ったことはないけれども、予防研究所の研究活動というものはないですよ、ゼロに近いのです。対応する研究機関じゃないです。アメリカに全く従属した機関であって、財政的にもごっぽりABCCにおぶさっておるのですよ。向こう側の学士院、学術会議あるいは原子力委員会の財政措置におぶさっておるわけです。そんなところで被害の実態の調査をすることを被爆者ががまんできるかと、こういうわけです。被爆二世の問題もありますよ、最近ちょっと違った議論も出ておりますが、そういうようなことです。  日本は、もしほんとうに大切である——これは議論を私どもいたしますとかなり問題はあるけれども、大切な調査であるということは、国内的にも国際的にもかなりコンセンサスを得られている、この議論を通じて。私どもは出て行けとは言わない。言わないけれども、いる以上は、やはり日本側の研究費等の問題についても思い切って負担をする。それから対応できるような研究機関を得ておく。たとえば予研の所長は当事者能力がない。伝染病を研究する機関であって、放射能の研究をやるような機関ではない。科学技術庁の稲毛の放医研がある。これはかなりの予算を取っている。厚生省では予算は取れない。科学技術庁はそれだけの対応研究機関を持っているから、あとの関係をどうするのだという議論をしたい、私は繰り返してはやらなかったけれども。広大と長崎大がおくればせながらつくった研究機関をそういう研究機関と対応しながら、疫学的な、統計的な、ユニークな、ABCCの研究をやるならば、それはこちら側のデータを検証できるだろうという議論ですね。  それから財政上の問題と日本側の人事の主体性の問題については、これははっきりした結論を持ってやるということが一つと、一体いつごろまでにこのめどをつけるのか、日本側の態度を決定するめどをつけてアメリカと交渉するのか、この二点についてお答えいただきたい。
  46. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 御指摘のとおり予防衛生研究所の支所という形でございますと、きわめて財政規模も小さいものでございます。しかしながら私どもといたしましては、いまお話がございましたような科学技術庁の放医研あるいは広島、長崎両大学の原医研、これらと有機的に結合いたしまして、今後それらの三者が十分ABCCの研究体制に協力できるような体制を早急につくりたい、かように考えております。したがいまして、そういう問題も含めまして、近日中に関係各省の担当官が集まりまして、日本側の体制といたしまして最終結論を出したい。今月中に一応の検討事項に入りまして来月半ばごろまでに最終結論をできれば出したい、かように考えております。
  47. 大原亨

    ○大原委員 その際に、先般社会労働委員会の被爆者特別措置法のときの附帯決議もあるのですが、「原爆傷害調査委員会(ABCC)と国立予防衛生研究所の協力関係について再検討するとともに、各省にまたがる研究機関及び民間医療機関が放射能の影響や治療についての研究を一元的に行ないうるよう促進を図ること。」公衆衛生局が伝統的に被爆者の特別措置法その他についてやったということは事実ですから、これを主管省にするのはよろしいだろう。しかし予防衛生研究所だけではだめだ。大体やっておる規模の状況だって全く向こうが主であって、旅費から研究費から全部出し、報酬についてはプラスアルファをもらって、そして事務的な処理だってごまかしてということをやっておって、それで対等に日本側は協力しております、研究しておりますということを文書で書いたってだめだ。  そこで問題は科学技術庁がやるべきだ。中曽根長官はそういうことを科学技術庁長官のときに私に言ったんですよ。これは平和利用だけでなくて原爆の影響についてもやるのだ、ときどきほらを吹くことに特色があるけれども、とにかくそういうことで、いままで科学技術庁は逃げ腰です。だからその問題について科学技術庁、厚生省、大学関係も一緒になって、予算厚生省に計上してもよろしいから、予算をしっかり計上して、そして十分発言ができる物的な背景をつくっておきなさい、こういう議論です。  これについて私は形にこだわる気持ちはない。でき得べくんば増岡厚生次官がどこかで記者会見で言ったように五年くらい日本に持って帰って、どういう方法で持ってくるかということは言っていないけれども、これは公社、公団みたいなものをつくる以外にないわけだ。そういうことを直ちにやるかどうかは別にして、人的にも運営上も財政上もきちっとこちらが主体性を持てるようなことをやりながらアメリカとの交渉をやるということが必要であるというふうに私は思うけれども、いままでの議論を聞いて厚生大臣、あなたの率直な所信をひとつ聞かしていただきたい。
  48. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 いまの最後の大原委員のお考え方につきましては、私も賛成でございます。
  49. 大原亨

    ○大原委員 予算要求については、私はもう済んでいるかと思うのですけれども、しかし所管は現在厚生省だから、厚生省がやはり責任を持ってそれだけの研究機関の協議会を運営するような予算措置をしていく。あるいはそれらをつくっていく調査費を計上するとかそういう具体的な措置をとって、それを背景にして態度を決定して話をすべきであると思いますが、いかがですか。   〔山下(徳)委員長代理退席、竹内委員長代理   着席〕
  50. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 そのとおりだと思います。
  51. 大原亨

    ○大原委員 外務省、アメリカとの交渉、これらを踏まえてどのようにしているか、あるいはどのようにする意思があるか。
  52. 深田宏

    ○深田説明員 お答え申し上げます。  大原先生御指摘のとおり、基本的なわがほうの考え方を踏まえた上でアメリカ側と包括的に話をしたいと存じておりますが、それと並行いたしまして先般から問題になっております関税上の特恵の問題につきましては、すでにアメリカ側と技術的に話をしておりまして、ごく最近におきましても、在京米国大使館の担当官が現地までおもむきまして関係者と今後の問題について非常に詳しく相談をし、かつ本国政府とも十分の連絡をとっております。したがいまして、関係省におきます基本的な御検討が進むと並行いたしまして、この点につきましても十分アメリカ側と話ができるような体制が整っておる次第でございます。
  53. 大原亨

    ○大原委員 広島の原爆で比治山の片面が焼け残った、その山の一番上にABCCがあって、まるで特権的に君臨しているようだ、こういういろいろな議論がある。私は一々のことについて神経過敏にどうこう言うわけではないが、ほんとうに日本がこれに対して取り組むのであれば、それは下に下に折れてやるべきだ。市長なんかもそういうことを言っているわけです。それから口上書というかっこうだけで、占領期間中のそういう権力関係だけで命令的なものに対してよろしゅうございます、こういうことではいけない。しかもこれに対しては外交官特権を与えているということはいけない。それらを洗い直して研究なら研究に取り組むような姿勢をとるべきである。こういう点については外務省は十分考えて交渉すべきだ。さわらぬ神にたたりなしということでなしに、厚生大臣もこの点を踏まえてやってもらいたい。国務大臣としての厚生大臣、最後に御答弁いただきたい。
  54. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 歴史的なABCCの研究の成果等につきましては、われわれもこれを評価しなければならぬと思うわけでございますが、終戦以来すでに二十七年を経過しておりますし、ただいまお話しのとおり、わが国としても各種の研究機関がこれに対応して積極的な役割りを果たしていかなくてはなりません。また終戦当時のいろいろな経過から生まれたゆがみと申しますか、そういったものにつきましては、これは是正してまいらなければならぬ、そういう方向努力をいたしたいと思います。
  55. 大原亨

    ○大原委員 第三の問題は、先般判決が出ておりまして問題となっておりました身体障害者の福祉年金を受給している親権者の子供の児童扶養手当の問題であります。併給の問題です。  これは判決が出ておりますが、私は簡単に集約的に質問いたしたいのですが、児童扶養手当法四条三項三号によって、児童扶養手当は「公的年金給付を受けることができるとき。」には支給しない。これはこの委員会でもいつも議論になる問題であります。附帯決議等はまた別になっておるはずです。  第一は、厚生省としては控訴するのかどうか、あるいは併給の問題についてはどういうふうに措置するのか。控訴するとするならば、その法律の根拠は一体どこにあるのか。これはやはり戦後の、いまからうんと前のときの立法であって、情勢は変わっていると思うのです。この二つの点についてひとつお答えいただきたい。
  56. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 訴訟の問題につきましては、厚生省といたしましては控訴をいたしたいというように考えております。(大原委員「その理由」と呼ぶ)これはやはり国会で制定されました法律につきまして、それに違憲性があるということは非常に重大な問題でございまして、したがって、その違憲性の有無についてさらに慎重に考えていくということが必要ではないかと思うわけでございます。したがって厚生省としては、控訴をいたしたいというように考えております。  それから第二点の、併給のこれからの考え方の問題につきましては、児童扶養手当法の改善という、いわゆる福祉のサイドから考えまして、障害福祉年金との併給というような問題につきましては、前向きに検討いたしたいというように考えております。
  57. 大原亨

    ○大原委員 これは非常に小さい問題のようですけれども、年金制度とか社会保障の本質にかかわる問題なんです。社会保障についてどう考えているかという本質にかかわる問題なんですね、これは。ですから、私は議論はあらためてやりたいと思いますが、判決が憲法違反であるという観点でいうならば、法律よりも憲法が優位ですから——憲法を具体化したものが法律であるという見解もあるわけですから。しかし裁判所が、法律と憲法との関係から争いになった場合に、憲法が優位するという観点に立って法律についての一定の見解を示した以上は、第二に答弁いたしました将来変えるということを踏まえて控訴しないということがほんとうじゃないか、控訴は一応やめて、そして法律を変える、こういうふうにいたしたいと思いますというのがほんとうではないか、私はこう思いますが、いかがですか。
  58. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 控訴の問題につきましては、これは違憲性があるかないかという面からの問題でございまして、この点につきましては、私どももさらに慎重な態度をとりたい、とらなければいけないというように考えております。ただし、制度の改善の問題につきましては、そういったような問題とは別に、児童扶養手当法の改善という福祉の立場から検討をいたしたいというように思います。
  59. 大原亨

    ○大原委員 ちょっとついでに局長、児童扶養手当は幾らで、身体障害者福祉年金は幾らか。この場合合計して幾らだ。
  60. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 この十月から障害福祉年金のほうは五千円、それから児童扶養手当のほうは四千三百円になります。
  61. 大原亨

    ○大原委員 児童扶養手当が四千三百円で身体障害者福祉年金のほうは五千円。いまはそうじゃないが、この十月に上がってからですね。しかし上がってからでも合計いたしまして九千三百円です。つまりそういういびつな社会保障、救貧的な年金制度が一ぱいあるわけだ。日本にはちょびりちょびりある、制度としてはばっとなっているんだけれども。身体障害者の生活保障というふうなものでもないし、児童扶養手当についても充足できるようなものでもない。だから、憲法二十五条の精神からいって、こういう問題は最初はともかくとして、だんだんと法律は改定をしてやるべきであるというのが判決の精神だと私は思うのですよ。  つまり生活保護というのは、生活保障の中心ではないが、生活保障がないから、年金その他の諸制度がないから、生活保護法があって生活扶助、住宅、教育扶助、医療扶助等があるわけです。これは財産制限をするのですから、カラーテレビを持っていてはいかぬというようなことをいうわけですから、いままでいっているのは、ほんとうの人間尊重ではないわけです。逆に言うと、生活保護は日本の社会保障がいびつであるから非常に大切であるということになる。しかしそれでも、合計して生活保護の基準はそれ以上になるじゃないですか。それであるのに、こういう問題について、併給をしないというふうなことについて一定の判定ができたのに、これを簡単に、法律手続上、法律上間違いじゃないから控訴する——政策についてはこういうようなことはとらないほうがいい。とることは間違いである。そうして積極的に、社会保障とは何か、人間尊重とは何かということを基本的に考えなければいけない。ことばだけではいけない、私はこう思っている。  厚生大臣はいかがですか。この点はいままでの説明員の答弁も踏まえて、ひとつあなたの見識のあるところを答弁してください。
  62. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 いまの判決の問題でございますが、御承知のとおり判決の理由が憲法違反であるということでございます。私ども行政機関としては、国会で合法的に成立をした法律を執行する責任を持っておるわけでございまして、この問題のみならず、各種の似たような、そういったような制度等もあるわけであります。またそういうふうなことでございますので、波及するところも一面おそれなければならぬと思っておるわけでございます。  それでいまそういう判決が出ましたが、しかしそういったように法律そのものが憲法違反であるということでございますので、これはさらに私どもとしては上級の裁断を仰ぐに足る重大問題だと考えておるわけでございまして、厚生省といたしましては、これを控訴するというようなことで法務省と協議をいたしておるような次第でございます。  なお現在の併給が、具体的に社会保障という立場から見て政策的にこれが妥当であるかどうかといったような問題につきましては、この児童手当と年金の併給の問題のみならず、各種の年金の併給の問題についても、私どもはいろいろの御意見を承っておるのでございます。  また、この場合のごときは相当に顕著な例でございまするが、こういった問題につきましてはいまの社会福祉、さらに今後社会福祉を増進させていかなければならない、そういうふうな事態を踏まえまして、そうしてこれの改善等につきまして検討を加えてまいりたいと思っておるのでありまして、改善の方法を講ずるつもりでございます。
  63. 大原亨

    ○大原委員 時間もあまりないから議論はできませんが、来年は年金の年であるということで、ことしの春の国会以来議論いたしまして、かなりこれは政治的な問題になっておりますが、たとえば五万円年金が実現できる、平均六万円、七万円の年金が実現できる、こういうことになっておって、厚生年金ももらうし、共済の年金ももらうし、ある場合には国民年金も、二十五年間かけたらもらえるというかっこうがおかしいのですよ。しかしながら健康で文化的な生活とは何かという問題について、一定の生活の基準があるはずなんです。それが遺憾ながら、いまは生活保護の基準の財産制限があるから、これは人間尊重ではない、権利としての社会保障ではないというわけです。生活の実態から見て一定の限度まで、あるいは経済情勢が変わってきたというときに、その限度までに達するまでは併給するということは、それぞれの法律の精神からいって当然ではないか、こういうのが判決の精神であるし、私どもが議論した精神なんです。それを法律だけにこだわっておる。もし改正するのであるならば、それにこだわらないで、この問題については虚心たんかいに判決を聞きながら、併給の問題についても議論すべきだ。  私は無差別に、無原則に全部併給せよという、そんなばかなことは言っていない。私が言っておるのはそういう意味であります。二つを合わしても九千三百円じゃありませんか。それぞれの法律の目的を達成するために最小限度、これは非常に救貧的なものである、恩恵的なものであるけれども、これをそれぞれに給付するのは、その精神からいっても逆ではないか。当初の段階等において、全体がずっとそういう制度がないときにいまの児童扶養手当法の法律の条文があったということについては議論があったけれども、それは現実である。ですから、そういうことを踏まえて法律よりも憲法が優位をするのであるから、他に波及すること云々は、一定の解釈基準をもって控訴しないで、法律の改正の手続をとりながら、併給の問題については一定の基準で処置をすべきことが、これからの年金とかいろいろな生活保護の問題を議論する際の一つの足固めになるのではないか、いままでと同じようないびつな考え方をもってこの問題を処理するというのは、私は間違いであると思うが、厚生大臣、あらためて法務省と協議をするというが、何を一体協議するのか。どういうつもりであるか。考えを変える意思はないか。私が問題を提起いたしました議論について、どう考えておるか、これは、言うなれば人間尊重とか福祉優先という考え方の踏み絵みたいなものですよ。ほんとうに考えているのかどうかという踏み絵みたいなものですよ。いかがですか。
  64. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、実質的にいまの時代に応じてこれを改正すべきかどうかといったような問題につきましては、今後福祉向上をさせなければならない、こういうふうな時代を踏まえまして前向きに検討をいたしたいと思うのでございます。  繰り返して申しわけございませんが、これは憲法違反であるという判決に対しましては、こういうふうな法律改正の手続をとらずに憲法違反であるということで、控訴をしないというようなことにつきましては、これは非常に重大なことでございまして、私どもはやはり法律を執行するという行政機関のたてまえもございますし、さらに上級審の判決を求めたい、こういうふうな気持ちでおるわけでございます。
  65. 大原亨

    ○大原委員 それは、あなたは最高裁までずっと行くのですか。つまりぼくが言うのは、法律論からいっても憲法二十五条があり、これに関連して他の法律があるわけです。ですから憲法を、天皇、摂政、国務大臣、国会議員は率先して守るのだ、こういうことになっておる。これを一定の基準として、法律について、行政措置について判断を下したわけですから、だからそれを直すということが、私はいまの人間尊重とか福祉優先からいっても正しいと思うわけです。私はこの点は一応議論といたしましてはここで切っておきますが、あなたの議論は、厚生省はほんとうに人間尊重、福祉優先ではないということだけを指摘しておきます。  私は最後に、一問ですが、ことしの春の佐藤内閣のとき、田中角さんは通産大臣で同じような閣僚でありましたが、予算委員会、本会議等でも議論したのですが、やはり福祉優先という議論をする際に、経済企画庁でつくっている新長期計画——経済企画庁来ておりますが、これは大体いつできるのか、その中で、NNW問題を取り上げる。GNP中心ではないNNW、国民総福祉というか、国民福祉というか、その指標を設けてこれを計画の基準にする、政治の最高の指標にしていこう、こういう議論は初めて経済企画庁長官もこの問題については施政方針演説で触れている。国会でも答弁しておる。この問題はどういうふうに取り入れられておるのか、これが一つ。  二つ目ですが、その際に、新長期計画では国民所得、あるいはGNPでもよろしい、国民所得に対して、あるいはGNPに対して社会保障給付費あるいは振替所得費でもいいが、社会保障給付費をどの程度の比率にしようとするのか、やはり福祉優先ということを盛んに言っているけれどもインチキかどうか、これはバロメーターなんですよ。この点については主管大臣である厚生大臣はどう考えるか。経済企画庁長官関係しておる範囲内で作業はどれだけ進んでいるかという事実だけを御答弁いただきたい。これが私の最後の質問です。
  66. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 三つ質問がございまして、一つ一つお答え申し上げます。  まず最初に、新しい経済計画はいつできるかというお話でありますが、かねがね申し上げておりますように、本年内に政府の決定ができるように努力をいたしておりまして、目下経済審議会に諮問をいたしまして、その作業が進んでおりますので、ほかの事情が変わらない限り年内に作成するように考えております。  それから第二点のNNWでございますが、当初、先生仰せのように、GNPにとってかわるような指標を作成して、これを経済計画の中で相当大きく考えていきたいということを考えておりました。いまもまたやはり考えておりますが、NNWという概念が実は非常にむずかしい概念でございまして、GNPのような体系を持っておるような指標ではございませんので、使い方等々について、あるいは試算のしかた等々について幾つかの問題がございます。現在経済審議会の中にありますNNW開発委員会、篠原三代平氏が委員長でございますが、その先生が中心になられて、専門の先生方にお集まり願って、そしていまようやくその理論的な構成を詰めておる状況でございます。まだ試算の段階に入っておりません。しかし、これがうまくまいりますれば、GNPと並んで、決してGNPにかえてとは申しませんが、GNPと並んでそれが活用できるように希望いたしております。それはNNWの、いま申しました試算がどの程度できてくるかというような段階でございますので、その辺で御了承いただきたいと思います。  それから第三番目の、国民所得に対してどの程度考えていくかということでございますが、目下、これも生活関係の分科会を経済審議会の中に設けておりますし、あるいは財政金融関係の分科会を設けておりまして、そこで幾つかの試算をいたしまして、目下作業中でございます。したがいまして最終的にどう考えているかを申し上げる段階ではございませんが、少なくとも現行の新経済社会発展計画におきまして、四十四年度に比べて五十年度は二ポイント上げるんだという、そういう単純なことではなくて、むしろもっと積極的に、この際大幅に上げていきたいという意向でございます。何ポイント上げるかというようなことについてはまだ申し上げる段階ではございません。
  67. 大原亨

    ○大原委員 これについての議論は山ほどあるわけですが、いたしません。いたしませんが、一つだけ言っておきたいことは、いままでの、ことしの春からの議論から言うなれば、第四次防の問題が議論になったときもそうですが、第四次防はこれから五カ年間のことをやるというのですから、新長期計画がどうかということを踏まえてやるべきであるという議論を踏まえて、政府側は一定の答弁をしておるわけですが、私は、いまの答弁は、これはかなり一言一句精選した答弁になってきておりますが、しかしかなり重要な問題です。これは全く中身ができてない。新長期計画をつくっても、大体一年もったことないんだからね、経済企画庁の計画というものは。だから、それはそこに問題があるわけだけれども、そういう政治の体質に問題があるんだが、しかしこれはほとんど中身がないところで、こういう問題の議論がなされているということを私は指摘をして、これはまた後の機会にひとつ徹底的に議論をする、こういうことにいたしたいと思います。  以上をもって、私の質問を終わります。
  68. 竹内黎一

    竹内委員長代理 次に、古川雅司君。
  69. 古川雅司

    古川(雅)委員 きわめて短時間でございますが、保健所の問題につきまして若干お伺いをしてまいりたいと思います。  八月の当委員会で少し厚生省の見解をお伺いしてありますが、さらにそれに関連づけまして、その後、四十八年度厚生予算概算要求も出ている時点でございますので、さらに具体的に見解をお伺いしてまいりたいと思います。  昨十月十日は体育の日でございまして、各方面から国民の皆さんの健康の問題、体力の問題等について数々の指摘がありました。確かに生活環境の悪化と数々の健康の増進を阻害する要素が増大していることが深刻に指摘をされておりまして、私も全く同感でございました。  そこで、お伺いを進めていくわけでございますが、環境の悪化また疾病構造の変化等によりまして、いわゆる半健康人の増加が非常に顕著になっているわけでございます。こうした中で国民は特に健康の保持、増進を期待しているのは当然のことでありますが、国民の健康管理体制として、ことに地域の保健体制を強調しております厚生省として、四十八年度以降この保健所機構をどのように位置づけていくのか、八月にお伺いをいたしましたことにも関連をいたしますが、このときには厚生省当局の基本的なお考えをお聞きできなかったわけでございまして、本日はその点、ひとつまずお示しをいただきたいと思います。  さらに第二点に及びますが、四十八年度厚生予算概算要求をしております。その施策を見ますと、いわゆる保健センターを地区、地域、広域という三つのレベルにおいてとらえておりますとともに、==増進センターをつけ加えるとしてございます。全国にこれを網羅するためには、非常に具体的な計画と事業内容というものが明らかにされなければならないと思うわけでございますが、この実現の方途等について若干御見解を御披瀝いただければ幸いだと思います。よろしくお願いいたします。
  70. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 第一点の保健所の位置づけの問題でございますが、これは保健所問題懇談会の基調報告にございますように、地域あるいは地区の各種の健康の問題の処理のために各方面の関係機関との連携を緊密にいたしまして、特に学校あるいは市町村、事業所その他の医療機関、こういうものとその分担すべき機能を十分に明確にいたしまして、それの活動を十分に行なうことができるような、いわゆる保健計画の策定のためのオルガナイザー的な機能を与えるべきではないかというふうに現在検討をいたしております。したがいまして、そのためには生活環境に対するいろいろの情報の収集あるいはそれの管理、そういうものと同時に、それらから得られましたいろいろな計画等につきまして関係機関との連絡調整、そういう役割りを果たすような機能を付与すべきが妥当ではないかということでございまして、一応先ほど申し上げました保健所問題懇談会の基調報告をもとにいたしまして、さらに私どもといたしましては、具体的に保健所の機能につきましていろいろ試案を作成いたしまして、今後十分に地域の実情に応じました保健所の機能が発揮できるような体制につきまして検討を加えてまいりたい、かように考えております。  それから第二の健康増進の問題でございますが、今後私どもといたしましては全国民を対象といたしまして、よりすぐれた健康の問題を策定いたしますために、県あるいは人口十万を単位といたしました市に健康増進センターを設置いたしまして、各種の検査を土台にいたしました上に、さらにその個人個人に適合いたしました体力増進の処方を出すことによりまして、よりすぐれた健康を策定するような計画を持っております。したがいまして、県あるいは人口十万を中心といたしました健康増進センターその他企業体でいろいろ御計画もあるやに聞いております。それらを含めまして、十年計画をもちまして全国六百カ所程度の健康増進センターをつくってまいりたい、かように考えております。
  71. 古川雅司

    古川(雅)委員 保健センターや健康増進センター、この設置はともかくといたしまして、地域の住民の健康の維持や増進をはかるために、何といっても現在の保健所の業務の機構を強化していくということも、これは一つの大きな課題ではないかと思います。保健所の近代化を促進すべきだということは、もう議論としては言い尽くされていることでありますし、いまさらここで云々するつもりもありませんけれども、ただいまの局長の御答弁のとおり、今後の保健所のあり方についての方向検討している検討段階であるということを踏まえて考えますならば、従来、現在に至るまでの保健所の業務の強化について課題とされてきた、たとえば施設の近代化であるとか、あるいは医師や技術職員の確保であるとか、あるいは保健婦活動の機動化の推進であるとか、またさらに最近大きな問題になっております過疎地帯、過疎地域等での保健衛生サービスの充実とか、こういう大きな課題が全く解決されないで——もっと端的に御指摘申し上げれば、放置されたまま今日に至っているわけでございまして、将来どうしていくかという検討を繰り返しているだけでは、これは全く非常に心もとないことであります。  先ほど第一点に、保健所のあり方、保健所の機構については今後の厚生行政の中でどう位置づけていくのか、そしてまた、さしあたっての昭和四十八年度厚生予算の中において、それをどうあらわしていくのかということを最初にお伺いをしたわけでございますが、大臣にこの点重ねてお尋ねをいたしますけれども、今日のこうした国民の——私、あえてさっき「半健康人」ということばをここにまた引用いたしましてお尋ねをいたしましたが、こうした国民の健康が次第に阻害されている、阻害要因が非常に大きくなっている現在、この保健所のあり方をどう位置づけられるか、大臣としての御見解を重ねてお伺いしたいと思います。
  72. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 地域の保健の中心として、この保健所というものが非常に重大な使命を帯びていることは、私も御意見のとおり承知いたしておるわけであります。先般も懇談会から貴重な答申をいただきまして、保健所の活動を積極化する、また健康増進のためにその役割りを十分に果たせるようにというようなことで、いま検討を進めておるわけでございます。  保健所の場合におきましては、いろいろのむずかしい問題もございます。ただいま御指摘のとおり、医師やあるいは技術者やあるいは保健婦の確保の問題、あるいはこれに関連をいたしまして処遇の改善の問題等もございますし、また若干は実現をするように努力をし、明年も強化したいと思っておりますが、保健活動の機動化あるいはまた過疎地帯の健康の保持増進、こういったようなものを含めまして、やはり地域医療の、地域の健康増進の中心として保健所の活動をますます積極化していかなければならない。これは当面きわめて重要な厚生行政の一分野であると考えておるわけでありまして、いろいろの問題点がございますが、懇談会の答申の趣旨にも沿いまして、地域の中心として保健所の活動の強化というものにつきまして、各方面からの手段を尽くして努力をしてまいりたいと思います。
  73. 古川雅司

    古川(雅)委員 特に地域の住民の皆さんの健康維持管理ということを考えますと、保健所の現実態から浮かび上がってきております数々の問題点の解決は、まことに一刻の猶予も許せない非常に深刻なものがあると思います。数え上げていくと切りがございませんが、時間の許す限り二、三具体的に厚生省としてはどう対処していかれるのか、基本的な方向をお伺いしてまいりたいと思います。  まず衛生行政全般にわたって事務の合理化、処理能力の増進が非常に要請されているところでございますが、保健所におきましては、ことに最近事務量が非常に過多になっている、非常に多くなっている。したがいまして、その地域の保健所におきましては、その特性から、これに対応できなくなっているのが現状である。その上に住民のいわゆる保健所に対する期待と申しますか要請の中には、最近環境問題もかなり多く含まれておりまして、環境衛生の中枢としての機能をこの保健所が推進する上でも、これまたまず問題になるのがそうした形式的な事務的な業務が非常に多いということ、これを厚生省としては今後どのように指導し、対処していかれるのか、それがまず第一点でございます。  次に、住民側から見まして、保健所に対する要望として、私はことしの年頭の予算委員会以来ずっと指摘し続けてきている問題でございますが、いわゆる成人病対策等の対人保健サービスを住民は多く期待しているわけでございます。これは一般診療所等で相談をすればいいじゃないかということになりますが、しかし、これには相当高額な医療費、住民の負担が及んでまいりますので、保健所に対するそうした期待がここに集まってくるわけでございまして、一部ではこの対人保健サービスを市町村に委譲するという考え方が最近また出てきておりますので、この点若干御見解を伺っておきたいのでありますが、対人保健サービスの市町村委譲を一つの口実にして、保健所としての対人保健事業の弱体化をそのまま認めるということになりはしないか、そういう危険性を含んでいないか、そういう感じが一つございますので、その点御見解を承りたいと思います。まずこの二点についてお伺いいたします。
  74. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 第一点の事務の合理化につきましては、御指摘のように最近保健所におきます事務の繁雑さが非常に目立っておりますので、このことにつきましては十分御指摘のように、私ども合理化を従来とも進めておるつもりではございますが、さらに詰めてまいりたいと思います。  そして、お話のございましたような環境問題につきましては、やはり重点的に保健所等におきまして実施せざるを得ない状況でございまして、今後は環境に対します各種の検査機能等につきまして、十分その能力を付与すべく四十八年度予算等におきましても要求をいたしております。これは、なおやはり地方衛生研究所との関連におきまして、その問題も対処しなければならないという点も考慮いたしまして、保健所並びに地方衛生研究所との連携も十分とれるような体制をとりたい、かように考えております。  それから第二点の成人病対策でございますが、私どもただいま検討しております段階におきましては、やはり住民の健康の問題、特に成人病に対します住民に対する健康的な責任は市町村にあるのではないかということも検討いたしておりまして、はたして従来の人員、予算その他におきましてたくさんの市町村をかかえております保健所がそれに十分対応できるかどうかというような問題もございます。しかしながら、やはり住民の健康に対します最終責任というのは市町村にあるのではないかというふうに考えられますので、その考えをもとにいたしまして、今後の成人病対策における保健所の役割りというものをどう処理すべきかということも、先ほど申し上げました今後の保健所のあり方の検討事項の一つになっておることを申し上げておきたいと思っております。  したがいまして、この成人病対策につきましては、やはり保健所が置かれております地域の実情に応じまして、それぞれ異なったあり方をしなければならないかというふうにも考えられておりますので、そういう点も含めまして、やはり幾つかの段階があるというふうにも考えております。
  75. 古川雅司

    古川(雅)委員 時間の関係で最後に二点だけお伺いをいたしますが、この八百三十二でございますか、保健所の業務の中心的な役割りを果たしているのは、これはやはり専門の医師だと思います。これがまた最近年々減少の傾向を示しておりますし、保健婦その他技術職員の充足率の低下とあわせて、これまた非常に深刻な問題になっておりますが、厚生省としても、これはおりに触れてその原因についての分析や認識はお示しになっているわけでございますが、どうもその点については、ただお考えになるだけで、何らこれが充足させるための具体策あるいは予算的な措置といったものについて納得できる方向が示されないわけでございます。  たとえば医師の確保をはかる問題にいたしましても、これは現状を打ち破るために思い切った改善策を打ち出さない限り、全くしりつぼみになっていくわけでございまして、たとえば保健所に働く公衆衛生医の収入の問題一つをとりましても、勤務医とは非常に大きな格差があるわけでございます。御承知のとおり一般医よりははるかに低くて、初任給で七、八万円、勤務医の大体三分の一程度に当たるわけでございまして、公衆衛生医として保健所等につとめ、地域の住民の皆さんの健康に奉仕しよう、またその勤務の中にあって勉強したいと思いましても、図書の購入費一つにしても、これは非常に困難を生じているようなことでございます。保健所では大体年間二万五千円程度の図書購入費を計上いたしておりますけれども、これはもうほとんど文字どおりスズメの涙程度にしかならないわけでございまして、こういった具体的な点でも改善策を示さない限り、公衆衛生医等の専門医の充足ということは今後とも不可能であるというふうに考えるわけでございますが、これは大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたいのですけれども、考える考えるだけではなくて、一体具体的にどうやってこの充足率の低下を押えていくのか、方策をお示しいただきたいと思います。  もう一点は、保健所の医師のいない地域では、特に保健婦さん等がたいへんなお働きをしているわけでございます。特に先ほど申し上げました充足率の関係から、十分な人員もおりませんので、広範な地域を受け持ちまして、文字どおり東奔西走のたいへんな御苦労をしながら御活躍をしていらっしゃるわけでございます。私の身近の広島県の福山の近くにも、たいへんたくさんの過疎地帯や僻地がございます。こういったところの保健婦さんに至りましては、それこそ家庭訪問をするために数少ないバスを利用しながら回っているわけでございますが、ほとんど機動力もございません。こうした地域の保健婦さん等にせめて機動力だけでも確保してあげる、こういうことも保健婦の定員の充足率の低下を、これは非常に消極的でありますけれども、何とか補っていく一つの方策ではないか。そういう方法もなかなかとられていない。僻地の過疎地帯における健康管理の問題は全く深刻であります。  そういうことにからみまして、来年度予算を見る限りにおいては、その辺への期待も私は持てなかったわけでございます。保健所機構の充実を今後真剣に考えていくんだ、たいへんな問題だという御認識を先ほど大臣もお示しになったわけでございまして、ひとつそういう点を口先だけではなくて、具体的に今後お示しをいただきたいと思います。その点御見解を伺いまして、私の質問を終わります。
  76. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 第一点の医師の充足の問題でございますが、これは全般的にやはり医師の不足ということが反映しておるかと存じます。しかしながら、そうかといって保健所に医師が来ないことを手をこまねいて待っているわけにはいかないわけでございまして、その点につきまして、最近の地方公共団体におきましては、行政に携わる医師の給与につきましては医療職の俸給を充当いたしております。したがいまして、一般の民間医療機関に比べましたら、まだ十分に俸給が高額に達したとはいえないわけでございますけれども、地方公共団体の医療機関、一般医療機関との俸給の差は、それほどではなくなったのではないかというふうに考えております。しかしながら、それで十分であるというわけにはいかないわけでございまして、今後とも私どもできるだけ保健所に医師が充足するように努力をしてまいりたいと思います。  そのためには、やはり先ほどいろいろ御指摘がございましたように、保健所におきます業務について、情熱を傾けることのできるような業務に変革をすることがまず第一であるというふうに考えておりまして、その点も含めまして、今後の保健所のあり方につきましては十分検討してまいりたい、かように思っております。  それから保健婦の機動力につきましては、毎年若干ずつ予算要求はいたしてまいっておるわけでございますが、明年度につきましても、四十八年度予算におきまして、保健婦のためにやはり機動力をつけなければならぬということで軽四輪等の自動車の補助費等につきまして、若干の予算要求をいたしてございます。
  77. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 古川委員の御指摘の点は、私ども全く重大な問題点であり、むずかしい問題だとして考えておるところでございます。同じ憂いを持っている次第でございますが、特に医者の問題につきましても、確かに充当率が非常に悪いという状況でございまして、若干の学資の援助等をやっておりましても、なかなかこれがきめ手にならないという問題でございまして、やはり医者の総体の数の問題あるいは開業医その他との収入のバランスの問題、いろいろの根深い、むずかしい問題がございますが、私どもといたしましては、この間に対処いたしまして、何といっても地域医療の保健の中枢機関でございますし、誠意と努力をもってこれが打開の道を今後進んでまいりたいと思っております。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  78. 竹内黎一

    竹内委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  79. 竹内黎一

    竹内委員長代理 速記を起こして。  次に、大橋敏雄君。
  80. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は限られた短い時間の中で、大体四つにまたがる問題を聞きたいと思いますので、答弁のほうは簡潔に要領よくお願いしたいと思います。  まず最初に、先月の社労委員会、たしか九月十二日だったと思いますが、そのときにブラジル移民のお年寄りの問題、あるいはサンパウロ日伯援護協会の招聘で厚生省の森専門官が参るというようなことを取り上げたわけでございますが、その質問に対しまして、塩見厚生大臣あるいは外務省の方のきわめて前向きな御答弁がありまして、そのことがすでに現地に伝わりまして大きな反響を呼んでいるわけであります。  実は私の手元に現地から新聞のリコピーが次々と送られてきております。そういうことでその続きで多少お尋ねしてみたいわけでございますが、ブラジルにいらっしゃる、言うならば、絶望的な状態にあった、たとえて言うならば、やみ夜の中にさまよっているお年寄りの皆さまが、まさに一閃の光明を得たという大きな喜びにわき上がっているわけでございます。  そこで森専門官も近く帰ってくると思いますけれども、その実情報告がなされるものと思いますが、政府は思い切って救済措置を講じてほしいということです。  そこでもう一つ、厚生大臣ないしは外務省の方に大英断をふるっていただきたいことがあるわけでございます。端的に申し上げますと、向こうのお年寄り、困っている方に対して内地と同じように老齢福祉年金を支給してもらいたいということなんです。国際的な問題もありますので、名目はそういう名目がつけられるかどうかわかりませんけれども、それはどうであれ、いずれにしましても、内地で支給されておるような老人福祉年金にひとしいようなものは与えてもらいたいということでございます。  海外に居住しているということだけで、同じ日本国籍の日本人がその老人保護政策の恩恵に浴しないということは、私はかわいそうでならないと思います。ましてや、こうした昭和初期に移住なさった皆さんは国策に乗って行かれた方でありますので、いま非常に困窮していらっしゃる実情がございます。これを踏まえて、こういうことを考えてほしいということでございます。どうでしょうか。
  81. 横田陽吉

    ○横田説明員 ただいまの問題でございますが、先生お話の中におっしゃっておられましたように、現在の法律で老齢福祉年金を差し上げることはできないことになっておるわけでございます。したがいまして、お帰りになりました際は、従来から日本にお住まいになっておられたと同じような条件で支給をして差し上げる、こういうたてまえでございます。年金に関しては、そのようなたてまえになっております。
  82. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それはわかっているのです。国民年金法を見ますと、その対象は日本国内に居住する日本人である、それはわかるわけです。私がいま言いたいことは、同じ日本人でありながら、日本国籍でありながら、その恩恵に浴し得ないかわいそうな皆さん、向こうの法律にも拾われない、こちらの法律にも拾われない、いわゆる谷間にいる皆さんを何とか救われませんかと言っているわけです。と申しますのは、いま外貨は黒字で、再び円の切り上げ問題云々ということで騒がれているときでもあります。こういう際に、いま申し上げましたような福祉年金に相当する何らかの援護措置を講じてもらいたい、これは私の強い要望でございます。大臣、いかがでしょうか。
  83. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 在外邦人の保護につきましては、これは外務省の所管だと思うわけでありまして、また外務省と外国政府との間の了解も必要な事項であろうと思うのでございまするが、外交処理の過程においてそういったような処置がとられるというようなことになれば、技術的な、あるいはその他のことにつきましては厚生省もお手伝いをいたしたいと思います。
  84. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 実は九月の十四日に、NETの「アフタヌーンショー」に山下官房副長官も出ていらっしゃったのですよ。ちょうどそのときに、民間の社会福祉関係を担当している代表者の方が期せずしてこういうことを質問していらっしゃいました。そのときに官房副長官は、余った外貨百万ドル程度を海外移民の皆さまの救済に投げ出したらどうかという質問に対して、それを全面的に肯定するようなあれはありませんでしたけれども、自分一人では返事ができませんということでしたけれども、それは非常に重要な問題だ、何とか考えたいというようなニュアンスの答弁といいますか、話をやっておりました。そういうことも踏まえまして、外務省の方もこの点よく考慮していただきたいと思うのです。  また外務省の方と厚生省の方にもう一つお尋ねしたいことは、現地に二百ないし二百五十名収容できる老人ホーム、それも日本的な老人ホームの施設を建築してもらいたい。これも先ほど言いますように国際法上直接にはできないと思いますので、政府が直接できるわけでないから財団法人か何かをつくって、それを通してそういうことを実現してもらいたい。時間があれば数字などをずっとあげてお願いしたいところですけれども、時間の関係でこれは省きます。結論だけでけっこうですが、いかがでしょうか。   〔竹内委員長代理退席向山委員長代理着席〕
  85. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 お答えいたします。  御質問が非常に急でございましたので、十分検討する余地もございませんし、それからいまおっしゃいました財団法人という意味が、日本国内に財団法人を新しくつくるのか、あるいは現地にそういうものをつくるのか、ちょっとその意味がわかりませんので、もし国内におつくりになるのでしたら、これは私ども現地の様子をよく調べておりませんけれども、あるいは現地の法制がどういうふうになっておるかわかりませんが、目的は非常にいい目的であり、趣旨としては非常にけっこうなことだと存じますけれども、国の予算的な制約、それから現地の法制でそういうものがどういうふうに、できるのかできないのか、あるいは現地の日本の人がどの程度それに協力するか、いろいろな条件がございますので、そういうものを全部まとめて検討してみないと直ちに結論は出ない、そのようにいま考えております。
  86. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 おっしゃるとおりだと思いますが、現地の要請、必要性は私が申し上げるまでもなくはっきりしているわけですから、形はどうであれ、先ほど申し上げましたように外貨も非常に余り過ぎているくらい余っているわけですから、そういうのをそういう方面に有効に活用してもらいたい。これを強く要望しておきます。  実は先ほど申し上げました年金問題にしましても、これはパウリスタ新聞の九月二十九日の記事ですけれども、「年金受給、可能性を打診 コロニアの運動として 県連、まず森専門官かこむせめて困窮者に 海外在住でも日本人 条項の解釈も微妙」という見出しで出ているわけですね。というのは、決して海外にいるから全然だめだというものではないと皆さんは確信していらっしゃるわけです。そういう状況をよく勘案されました上で、何とかこういう方向で配慮していただきたい。  もう一回厚生大臣に見解をお尋ねいたします。
  87. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お話しのお気持ち、私も十分理解、同情できるわけでございますが、何ぶん海外の問題でございますし、またアメリカ等におきましても、相当そういった老人等もおられるかと思いまするが、こういったような問題につきましての外貨の使用を含めるというようなことになりますと、相当広範な検討を要すると思いますし、またやはり在外邦人の保護は一応たてまえ上外務省の所管ということになっておりますので、そういった方面とも打ち合わせをしてみたいと思います。
  88. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これはブラジルだけではなくて、国策に乗って過去に移住なさいました皆さまが、現状では棄民であるというくらいに逆境におちいっていらっしゃるわけですから、そういうのをよく配慮していただいて、今後あたたかい手を打っていただきたい。再度要望しておきます。  それでは時間の関係で次に移りますけれども厚生省は四十八年度から老人等に対する給食サービスを行なおうとなさっているわけでございますが、これは老人にとりましては非常に朗報だということになっております。しかし、まだ中身がはっきりしておりませんけれども、うすうす見た内容では、あけてびっくり玉手箱というような、内容は煙みたいなものだといわれる批判もあります。  実は「厚生週報」というのが出ておりますね。私はそれを見たわけですけれども、それによりますと、給食サービスの希望者は、老人の健康な方でも全体の四〇%が望んでいらっしゃる。あるいは病床給食といいますか、ぐあいが悪くて寝ていらっしゃる皆さんに対する給食、これは六六・三%である。そういうことからまいりますと、この発想は非常によろしいということですね。ところが中身が問題だ。先ほどからいろいろと調べてみましたところが、何だか六十円程度の中身であって、しかもそれは本人負担である。つまり概算要求には一千四十二万円が計上されているようでございますけれども、これはあくまでも設備費と人件費であって、いわゆる給食弁当費そのものは老人から徴収するんだということで、うれしいようなうれしくないような中身になっているわけですね。そういう点について、まず確認しておきたいのですけれども、いかがでしょうか。
  89. 山崎卓

    ○山崎説明員 お答え申し上げます。  私どもの来年度予算要求先生いま一千四十万とおっしゃいましたけれども、その考え方の中身は、老人ホームを使いまして、御老人の方に給食をまず始めたい。一施設八十食を考えておりますけれども、そのうち半分の方につきましては老人ホームに来ていただいて食事を上がっていただきたい。残りの四十食につきましては、車といいますか、そういうホーム側からの配食によって食事をお届けいたしたい。つきましては、その費用でありますけれども、それを行ないますための設備費が当然必要でございますし、それからそれを配食いたしますための運営費が必要になってまいりますので、これにつきまして三分の一の補助を行なってまいりたい、こういう考え方でございますが、御質問にございました給食材料費、これは実費程度は御老人の方からそのホームがちょうだいして、そしてやってまいりたい、こういう予算の立て方にしてございます。
  90. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 その実費程度というのは、結局計算しますと一人頭六十円程度のものだということですけれども、そうですか。
  91. 山崎卓

    ○山崎説明員 老人福祉施設であります老人ホームの給食施設、調理施設を使いますので、ホームの御老人の方々と同じものを食べていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、そうなりますと、材料費は大体いまの計算からまいりまして、平均的に見まして六十円程度ということでございます。
  92. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣にお尋ねします。  いまの説明のとおりですが、ひとり暮らしのお年寄りに対して家庭サービスといいますか、給食サービスをなさろうとする厚生省に対してお年寄りは非常に一時は喜んでいるわけですよ。ところが、いま言うように、中身自身は六十円程度だというんですね、材料費というのは。それはしかもお年寄りから徴収するんだというのですよ。  実はこれはある新聞の記事でございますけれども、都内の老人ホームの食事でも最低七十五円、普通百円から百五十円程度かけているというふうに出ております。ですから、せっかくお年寄りを喜ばせながら中身はたいしたことはない。実際そういう六十円程度のものを皆さんがほしがるだろうかというのが一つ。それから、もっとりっぱなものにしてみたところで、やっぱりお年寄りから実費をとにかく徴収するというようなことだけでは、まだもの足りないような気がします。もっとあたたかくそこは包んでもらいたい、こういう気がするのですが、いかがですか。大臣に……。
  93. 加藤威二

    加藤(威)説明員 確かに六十円の実費でございますが、これは材料費でございまして、したがって、それをつくるための人件費とか、あるいは燃料費とかそういうもの一切は別でございますので、したがって六十円のものを町で食べるとすれば百五十円ぐらいのものに相当するということでございまして、六十円というのは、ただ実費だけであるということでございます。  それからそれを無料でやったらどうかという御指摘でございますが、確かにそういうお考えもあると思いますけれども、やはり老人の気持ちというものからすれば、全部ただでもらうということがいいのかどうか。六十円程度でございましたら、これは生活保護でも払えるわけでございますので、そういうものはとにかく食費の実費でございますので、一応徴収する、こういう方針でやっておるわけでございます。
  94. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 六十円程度だから、それを無料で差し上げるよりも、むしろ徴収したほうがお年寄りの人権尊重になるのじゃないかというふうに聞こえたのですけれども、ぼくは無料のほうがいいと思いますよ。喜ばれます。これははっきりしております。再度検討していただきたいと思います。  もう一つ、やはり「厚生週報」を見たのですけれども、小口買いサービスの希望が六一・三%、こうありました。この小口買いというのはよく中身を見ましたら、お年寄りが物を買いに行きますね。たとえばとうふ一丁買いましても、実際にお食べになるのは、その三分の一ないし四分の一程度、あとは捨てる。ゴボウ一本買っても、その三分の一しか召し上がらない。あるいは大根だって一寸もあればいいんだ、食べたいけれども、全体はもったいないから買えないというようなことで、お年寄りの買いもの指定店みたいなものをつくって、そこではどんどん希望どおりに切り売り、いわゆる小口売りをやるというようなこと、これを希望しているのが六一・三%である。それに対して厚生省もかなり具体的な案を持って進んでいるということだそうですが、これはどんなものでしょう。
  95. 加藤威二

    加藤(威)説明員 確かにひとり暮らしの老人とか、あるいは夫婦だけで住んでいる老人という方方のお気持ちとしては、いま先生の御指摘のようなそういう店があれば、非常に便利だということは十分わかるわけでございますが、これはさらに私どもとしても十分検討させていただきたいと思います。
  96. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 こまかいことで大臣の出る幕じゃないのでしょうけれども、大臣は非常にゆっくりしていらしゃいますけれども、よく聞いて最後にまとめて答えてくださいよ。  では次に参ります。  最近、老人家庭の火災がひんぱんに起こっております。特にひとり暮らし老人家庭のおうちにそういう火災等が起こっているわけでございますが、これをぜひ防止せねばならぬと思うわけです。火災そのものは消防署関係の所管になりますけれども、老人保護の立場からいくと、これは厚生省の問題であります。  実は北九州の若松消防署で先般、老人の日をはさんで前後一週間かかって、若松区内に住むひとり暮らし老人五十三人を対象に戸別診断といういわゆる調査をなさったわけですね。もちろんこれには西部瓦斯、九電、プロパンガス等の業者も協力なさっておりますけれども、非常に効果をあげております。きょうは自治省の方もいらっしゃっていると思うのですけれども、これはたとえば診断項目は、「1、炊事、暖房器具の管理 2、避難口の有無 3、電気配線についてなど」ということで、ずっと調べて回りたのですね。非常に効果をあげております。私は、この若松の消防署を表彰してもらいたいと思うぐらいです。  それをやった結果は、炊事、暖房器具の管理については、こんろにこぼれた煮物がひっかかったまま炭化していたり、あるいは穴が詰まって不完全燃焼のもとになっているものなどがいろいろあって、九件ほどの問題点が出たそうです。あるいは板などの可燃物をこんろの台にしていたというんですね。燃えるものを台にしていた、これが十五件あった。ホースが古くて、ひび割れしているのが十八件あった。中には練炭火ばちの下に座ぶとんを敷いていたところもあった。何度も焦がしたことがあるというようなことまで明らかになっております。二番の「避難口の有無」については、出入り口が一カ所しかないという家が十件あった。三番の「電気配線について」は、タコ足配線などが六件あったというようなことで、いろいろと問題が出てきているわけですけれども、これらについては各業者がその場で手入れをしたり、応急修理をした。また同消防署は、特にからだの不自由な十二世帯に対しては、無料で火災感知器といいますか、それを取りつけしてくれたそうです。  これは北九州の一若松区内だけの問題ではなく、火災予防の上からも、また老人保護の立場からも、これは全国的に実施すべきだと思うわけですが、まず自治省の方と、それから大臣の見解を聞いてみたいと思います。
  97. 永瀬章

    ○永瀬説明員 先生ただいまお話になりました北九州市の若松区の、老人のひとり暮らしで寝たきりの方の火災予防関係の査察、指導の関係でございますが、その後、さらに九月にもやっておりまして、北九州市は八幡地区もこの運動を広げていっておりまして、八幡の場合は、ホームヘルパーの方と同道していくような形をとっております。逐次、他の区にも広げるべく、現在、準備中でございます。  ほかの都市におきましても、私ども消防の立場からいたしまして、老人の方、特に六十一歳以上の方を対象にして考えますと、火災でなくなられます方の約三分の一が六十一歳以上の方になっております。これの焼死事故の減少をはかるべく、現在、全国的には次第次第に広がっておりますが、いまお話ございました火災感知器、これを各地でつけさして、火事が起きましたときに近所の人が知って避難あるいは消火にかけつけるというような施設を取りつける方法は、社会福祉協議会とも連絡したりなどいたしまして、和歌山とかその他の方々の都市で次第に広がりつつございます。  いま御指摘のように、非常に火災危険が多い状態で寝たきりの生活をしていらっしゃるということがございまして、消防職員が特にこれらの方々のお宅を御訪問しまして、われわれのことばでは査察になるわけでございますが、不良個所の改善、これを進めさしておりますが、今後これをさらに全国的に広げるように努力いたしたいと考えております。
  98. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、自治省は火災の予防の立場からの行動でございますけれども厚生省はむしろ老人福祉の立場から、これをもっと積極的に具体的に協力申し上げていくべきだと思うのです。あるいは音頭をとるべきだと思うのですが、大臣の見解を承りたいと思います。
  99. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま若松の消防署はじめ消防署が火災から老人を守るということにつきまして、積極的な御答弁がございまして、私も非常に心強く思っているわけでございまして、さらに消防署は消防署の立場において今後とも施策を充実することをお願いを申し上げてまいりたいと思います。  また、厚生省といたしましては、当然今日までもいろいろ注意をしてまいりましたが、老人ホームの管理者等に対しまして、さらに消防署とも連絡をとり、またそれ自体で管理を強化していくというふうに注意をしてまいりたいと思います。  私も最近、老人ホームへ参りまして聞いた話でございますが、火災につきましては、その管理者もだんだん注意を払ってまいるようになりまして、私の聞いた場合は、いまのような事例のほかに、寝たきり老人のたばこの火の不始末とかいうような問題につきましても、非常な配慮を払っておるようでございまして、火災から老人を守るということは、消防署とも連絡をとりながら積極的に進めてまいりたいと思います。
  100. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 もう時間が来ましたので、最後に一点お尋ねします。  日本住血吸虫病というものがございますが、これはミヤイリガイというのが媒体になっております。実は九州の筑後川の豆津下流には筑後大ぜきというものができるわけでありますが、これは上流の小森野から取水し、福岡市、北九州市の上水用水を配水計画するということなんです。ところが筑後川の支流の宝満川地域に大量のミヤイリガイが発見されたわけです。このままほうっておきますと、いま言った筑後大ぜきが完成しますと、今度は福岡市あるいは北九州市に、そのミヤイリガイのあれが広がっていくということです。この発見者は久留米大学医学部の寄生虫学教室の岡部教授でございます。  問題点をその教授が指摘しておりますけれども、現在すでにその近くで建設省の工事として作業が進められているわけでございますが、その作業員に感染のおそれが十分あるということです。六年前、久留米市の長門石の筑後川で建設省が工事をした際にも、八名の労務者が感染している事実がございます。そういうことで非常に心配しているわけです。  二つ目としては、この筑後大ぜきが完成するまでにミヤイリガイの絶滅をする必要がある。これは大いに厚生省が指導の立場に立って自治省等を動かし、地方自治体の動きを活発にしていただきたいと思いますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  101. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 ただいま御指摘の支流につきまして、さっそく実情調査いたしまして、日本住血吸虫の感染予防に全力をあげたい、かように考えております。  なお、本流の改修は建設省によって行なわれておりますが、中州の状況、それから築堤のコンクリート化等が進められておりますので、その方面につきましては十分予防施策はなされると思いますが、御指摘の点につきましては十分早急に対策が立てられるよう措置をいたしたい、かように考えております。
  102. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは最後にもう一言。  大臣、この筑後大ぜきが完成するまでにミヤイリガイの絶滅をなさるだけの手を打っていただけるかどうか、大臣の御見解を承りたいと思います。
  103. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 私も実はきょう初めてその事実を承知したわけでありますが、かつてそういう例もございますし、また当然この危険は予防をしなければならぬと思いますので、いまの御意見のとおり実現をするように努力をしてまいりたいと思います。
  104. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  105. 向山一人

    向山委員長代理 次に、浦井洋君。
  106. 浦井洋

    浦井委員 時間が二十分なので、一点にしぼってお尋ねをしたいわけなんですが、すでに問答があったように、障害福祉年金を受給しておるところの盲人の母が、次男の児童扶養手当を受けたいということで申請したところ、それが却下された。   〔向山委員長代理退席、委員長着席〕 これで裁判を起こしたところ、神戸地裁はこれは憲法第十四条第一項に違反するという判決を九月二十日に下した。この問題について、私は主として大臣にお尋ねをしたいのです。  私は、この判決というのは全く当然のものだと思う。すでに六十五国会でわが党の寺前議員もこの問題を取り上げたわけでございますけれども、大臣に端的にお聞きしたいのですが、政府としては、直ちにこの判決に従って、具体的に原告である堀木さんに対して児童扶養手当を支給すべきである、こういうこと。それと同時に、先ほど大臣も言われておったように、法改正そのほかの必要な措置をとるべきであるというふうに私は思うわけなんですが、この点についての大臣のお答えを願いたいと思います。
  107. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、この併給の問題が憲法違反であるということが判決の理由になっておるわけでありまして、これは波及するところ等も考えまして非常に重大な問題であると考えますので、さらに上級審の判決を求めたいということで控訴いたしたいと考えております。
  108. 浦井洋

    浦井委員 私はその点を尋ねておるわけではないわけで、堀木さんに対して具体的に禁止をいままでされておった児童扶養手当を支払うべきである。それとともに法改正そのほかの措置をとるべきである、こういうことをお尋ねしておるわけなんです。どうですか、大臣。
  109. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 行政府である私どもといたしましては、いまの法律を執行するという責任を持っておりますので、いまの段階においては、いま御指摘の併給を事実上行なうということは、これはたてまえ上できないと考えます。ただ、こういったような併給制度を立法論的に、福祉行政の前進の過程において、こういうふうな併給を禁止しているいまの規定を改善する必要があるかどうかということは、これはまた別個の問題として私どもはぜひとも前進的な前向きの姿で、こういった問題を検討をいたしたいということでございます。
  110. 浦井洋

    浦井委員 原告の堀木さんに対して児童扶養手当は支給しないという点は、これは私非常にけしからぬと思うわけなんです。また先ほどの答えにありましたように、控訴をするということなんでございますが、これも非常にけしからぬと私は思うわけなんです。  というのは私、実は堀木さんのからだを以前に数度診察したことがございます。ついこの九月二十日に判決があった直後にも堀木さんを見舞ったわけでございますけれども、大臣、御承知のように全盲である、外へあまり出たがらない、出られないということで、最近貧血もある、血圧も低い、非常に弱っておられるわけです。まして裁判で非常に精神的にも気を使われた、肉体的、精神的に現在非常に弱っておられる堀木さん、さらに控訴を被告の政府のほうがするということは、私は人道上許されぬというふうに思うわけですが、この点について大臣に、一体それでよいのかどうかという点をお聞きしたい。それが第一点。  それから第二点では、この二十二日に、判決があったその直後に、大臣もいろいろと発言をされておる。二十五日に私、厚生省で大臣に堀木さんの代理の方と一緒に会見をした際にも、大臣は併給禁止、それから所得制限の再検討をしたいというようなことを言明をされておるわけなんです。ということになってくると、大臣の考え方というのは、少なくとも地裁の判決の趣旨に沿った方向であるというふうに私はあえて善意に解釈をしたいわけなんです。とするならば、やはり大臣もいまの現行の法令というものにいろいろ不備があるということを認めておられるわけなんです。そういう状態であるのに控訴をして、さらに争いを続けるというようなことは、一体実質的に意味のあることなのかどうか、私は全く意味がないというふうに思うわけで、こういう点で大臣も御承知のように、きょうの午後の十二時が控訴の期限切れだというふうに私聞いておるわけでございますけれども、こういうぎりぎりの段階で、もう一度控訴をしないということに考え方を変えるべきであるというふうに私は思うわけなんですが、その三点について大臣の答えを求めたいと思います。
  111. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 今回の問題につきまして、その実情につきましては、この間もるるお話は承りました。私も心情的には非常に御同情申し上げておる次第でございます。しかし、そういった御同情申し上げるという気持ちと、またこの問題についての公式な考え方というものは一応別個の問題として、私も心苦しいながらも割り切らざるを得ないのでございます。  そういうふうなことでございまして、私どもといたしましては、繰り返すようでございまするが、現在の法律自体もやはり憲法の規定に従って合法的に成立した法律を私どもは執行しておるわけでございますし、そういったようなことでございますので、さらに上級の判決を求めたいということで、これは法務省の所管であるかもしれませんが、私どもの立場としてはそういうことで、そういう気持ちを法務省にも申し入れをしておるわけでございまして、きょうの段階でこれを変更するというような考えは持ち合わせていない次第でございます。
  112. 浦井洋

    浦井委員 私は重ねて政府としては控訴すべきでないということを厳重に申し入れをして、この具体的な問題を終えたいと思うわけなんです。  次に、この堀木さんの判決を機会にしていろいろ問題が出てきておるわけなんです。  さしあたって、最近数年間の児童扶養手当の給付が公的年金を受けておるために禁止をされた、取り消されたという件数を調べてみますと、昭和四十四年には七百七十四件、四十五年には八百二十六件、四十六年には八百十六件、こういうふうになっておるわけで、実質的には、たとえばおかあさんが労災事故にあって労災年金を受けるようになったとか、あるいはおかあさんが障害者になって障害年金を受けるようになった、あるいは母親のかわりに、おじいさんやおばあさんが老齢になって老齢年金あるいは老齢福祉年金を受けるようになった、こういう例がほとんどだというふうに思うわけなんですが、そういう経過から見てもわかるように、母子世帯というのはもともと非常に苦しい生活をしておられる。そこへ他の公的年金を受けるようになったからといって、現在の生活水準が著しく向上したというふうには私は考えられないと思うわけなんです。  まして——ましてというよりも、むしろ逆にそういう他の年金を受給する資格を得られるようになったということは、その母子世帯がいままでよりも一そう深刻に生活に困られるようになったというケースが多いわけなんで、このように考えてみると、先ほどあげましたように、毎年八百世帯の方々がわずかながらも児童扶養手当を受けておる。これを停止されるというようなことは非常に非情な措置であるというふうに私は言わざるを得ないわけなんです。  そこで、大臣は先ほども堀木さんに対して児童扶養手当を支給しないということを言明されたわけでございますけれども、こういう年間八百世帯の方々が非常に無情な処置を受けておられるということについてどう思われるか。だから、即刻過去にさかのぼって、こういう取り消しをされた方に対して児童扶養手当の支給を開始すべきであるというふうに私は思うわけなんですけれども、ひとつ大臣の所信をお伺いをしたいわけでございます。
  113. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 先ほども御答弁を申し上げましたとおり、御承知のとおり、各種の年金制度はそれぞれの時代に応じてだんだん強化されてまいったわけでございます。そういったような、創設当時におきましては、それぞれの目的を持ち、また効果をあげ、あるいはまたそういうふうな前の時代におきましては、公的年金は一種類で併給を許さないというたてまえもとられてまいっておるわけでございます。そういうふうな一連の制度が現在法律として生きているわけでございまして、われわれは、この法律を行政府としては執行せざるを得ない、また執行すべき責任を負って行政に当たっておるわけでございます。  ただ、この間も申し上げましたとおり、こういったような福祉行政を、福祉を充実し、福祉を大事に考えていかなければならない。またそういうことのできるような経済的な発展を遂げてきた、こういうふうな状況でございますので、私どもはやはり国民の福祉をさらに一そう充実するというたてまえから、各種の年金の併給の問題、いろいろ問題も残っておりますので、今後これを検討してまいりたいということでございまして、いま直ちに現行のままで、これを過去にさかのぼってということは、まあいまの時点においてなかなかできにくい、やれないことではないかと思うわけであります。将来の方向として、新しい福祉行政充実の姿の中でこういった問題を検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  114. 浦井洋

    浦井委員 児童扶養手当以外にもいろいろ問題があるという大臣のお答えなので、私具体的な例を申し上げてみたいと思うのですが、特別児童扶養手当、これは重度の心身障害を持っておる児童を対象にした手当なんですけれども、手当の性格から見ても、患者の介護料的な意味が非常に強いと思うのです。ところが、この法律でも非常にわずかな例外を除いて、他の公的年金との併給禁止が行なわれているわけです。  これについては、この法律が昭和三十九年にできたそうなんでございますけれども、その法律ができたときにも議員提案によって一部修正されておる。さらに、その後の国会審議でも、この特別児童扶養手当と公的年金とを併給するということが国会附帯決議となっておる。こういう事情があるにもかかわらず相変わらず現実には併給禁止が行なわれておるわけなんです。ここにもやはり堀木裁判の趣旨と全く同じような不当な状態が残りておるわけなんですけれども、これについて大臣一体どういうように考えておられるか、ひとつ決意をお聞かせ願いたい。
  115. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 特別児童扶養手当のほうは、いま御指摘のように児童扶養手当とはちょっと違ったニュアンスも含んでおりまして、おっしゃるように介護料的な性格も含んだものでございます。したがいまして、現在併給につきましても、特別児童扶養手当のほうは福祉年金との併給は認めておるわけでございますが、この特別児童扶養手当の制度と他の制度との併給問題につきましては、児童扶養手当と同じような趣旨福祉のサイドに立ちまして、さらに前向きに検討してまいりたいというように思います。
  116. 浦井洋

    浦井委員 その特別児童扶養手当の具体的な例を申し上げたいのですが、ことしの六月五日の朝日新聞によりますと、神戸市立あけぼの学園、これは重度心身障害児の施設なんですけれども、この中に在籍しておる児童のうち三十一名の方が昨年、四十六年の十月にこの手当の支給を申請した。ところが、そのうち十六名はその申請が却下をされて支給されないことになった。その内訳を見てみますと、十六名のうち所得制限額をこえる者が八名。日本人でない者が四名。他の公的年金を受けておる者、これが問題のところですが四名。そこで私ども現地に行きまして、その四名についていろいろ調べてみました。  そうすると、三例わかったわけなんですが、まず第一例は父親が交通事故によって死亡した。そこで母子年金をもらうようになった。年間九万六千円。だから特別児童扶養手当がもらえない、こういうことになっておる。それから第二例も同じく父親が労災で事故死をした。そこで遺族年金を受給するようになった。年間十一万円余り。これでだめになった。第三例は恩給をもらっておる。年間八万円余り。これでだめになった。残念ながら第四例は事情がわからなかったわけなんでございます。こういう実情なんです。だから、こういう実情でもらえなくなったというのは非常に私は遺憾だというふうに思うわけなんです。重度の心身障害児をかかえておる世帯でこういうような年金をもし受けたとしても、当然特別児童扶養手当も支給さるべきだと思うわけなんでございます。  厚生省はこういう具体的な例を即刻調査をして、この場合でいいますならば、神戸の市立のあけばの学園の児童の申請に対して併給を認めるという方向で即刻措置すべきではないかというふうに私は思うわけでございますけれども、ひとつ厚生省の御意見をお聞きしたいと思う。
  117. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 ただいまのあけぼの学園の問題は、新聞にも出ましたので拝見をいたしております。それでいま先生がおっしゃいましたように、私どももさらにこれについて調査をいたしたいと思います。  それから現在の法律では、いわゆる福祉年金以外の年金の併給は禁止になっておりますので、いまの法律を前提といたしましての支給はできませんけれども、将来この特別児童扶養手当の制度について併給の問題をどう考えるかということは、ひとつ前向きに検討さしていただきたいと思います。
  118. 浦井洋

    浦井委員 時間が迫ってまいりましたので、最後に一つお尋ねをしたい。  これはやはり堀木さんに関係のある問題ですが、神戸地裁の判決があった次の日に堀木さんあてに一通の手紙が届いておるわけなんです。それを私、堀木さんに見せていただいたわけなんですが、その内容が非常に問題を含んでおるわけなんです。その手紙を送りつけた人は同じ視力障害の、あんまを営んでおられる婦人で、御主人は戦争で戦死をされた。その後四人の子供さんをあんま業を営むことによって育ててきたというケースでございますが、こういうことが書いてある。  「貴女がこんな事件を起して、違憲だといわれると全国二十万人のあんまさんの収入再調査があり、年金もストップされることになります。貴女はその責任がとれますか。」こういう非常に脅迫じみた手紙を同じ苦しい立場におられる方が堀木さんに送ってきておるわけなんです。ここでいう年金というのは、もちろん障害福祉年金をさしておるわけなんです。  大臣も御存じのように、ことしの障害福祉年金の受給要件としての所得制限額というのは、単身の世帯の場合で年所得三十八万円ですか、こういうことなんです。身体障害者がいろいろと悪条件を克服して、そしてやっと得た所得が年間三十八万円を上回ると障害福祉年金がもらえない、こういうことを私はいまの制度では意味しておると思うわけでございますけれども、問題は、堀木さんと同じように視力障害で、そして同じように苦しみながら子供を育ててきて、しかもなおこの喜ばなければならぬはずの堀木裁判の判決の結果に対して、反対に堀木さんに対して脅迫じみた手紙を出さざるを得ない、こういう心境に一体だれが追い込んでおるのか、追い込んでおる者たちの責任というのは非常に重大だというように私思うわけでございます。  そこで、このいまのような低い所得制限額では、身体障害者はもう働かずに生活保護を受けておれ、こういうことと同じだというふうに私は思いますので、いろいろな福祉年金、老齢福祉年金であるとか障害福祉年金、あるいは手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、こういうもの全般にわたって速急に所得制限額の大幅な引き上げを厚生省としては責任をもって実施すべきではないか、こういうふうに私思うわけなんで、この点について、ひとつ大臣の所感と、それから関係当局の具体的な展望についてお答えを願いたいと思う。
  119. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 所得制限の問題につきましては、各種の制度にわたりまして本人の所得はもちろん、家族の所得につきましても、扶養者の所得につきましても、その制限撤廃をすべきではないかというような議論が相当に行なわれておるわけでありまして、私どももこの所得制限の撤廃問題については、よほど考えていかなければならぬということで、明年度予算にも若干のものについて、所得制限の撤廃ということを大蔵省側にも要求をしておるわけでございまするが、先ほどから申し上げましたとおり、こういった現在の状況から考えましても、いまの年金併給の問題あるいは所得制限の撤廃の問題、それらについて検討して、この改善につとめたいと存じます。
  120. 小沢辰男

    小沢委員長 次に、古寺宏君。
  121. 古寺宏

    ○古寺委員 日中国交回復が一応できたわけでございますが、これに伴いまして、東北各地方におきましては台湾籍の医師の問題についていろいろと不安が起きております。この問題について、まず厚生省の御見解を承りたいと思います。
  122. 滝沢正

    ○滝沢説明員 日本在住の台湾本籍の医師の数につきましては、四十六年十二月三十一日現在の届け出制度に基づきました資料からの把握では、三百三十五人ということになっておりまして、これらの方々はそれぞれ研究なり、あるいは診療所なり、個人的な立場なりで医療に従事しておられますが、基本的には、特に僻地医療等における台湾の医師の活躍というものが非常に重要でございますので、法務省の見解等もございますが、われわれといたしましては、従来どおり国内において日本の医師免許証を有する医師として活動願いたいというふうに考えております。
  123. 古寺宏

    ○古寺委員 現在国府の旅券でもって在留していらっしゃるわけでございますが、法務省は今後台湾医師に対する見通しについては、どういうふうにお考えでしょうか。
  124. 吉田茂

    ○吉田説明員 台湾政府発給にかかる旅券は出入国管理令上わが国において有効な旅券と認められなくなりましたが、これを補う措置考慮しておりまして、在留期間の更新、あるいは再入国の許可をするにあたりましては、在留資格証明書とか出入国のための身分証明書を発給する等によりまして、不便をかけないようにしたいと考えております。
  125. 古寺宏

    ○古寺委員 在留期間を延長する場合と、それから今後引き続いて台湾から医師を招聘する場合の手続等はどういうふうになりますか。
  126. 吉田茂

    ○吉田説明員 在留期間更新の手続は、日中国交正常化前と基本的には変わらない措置を講じたいと思っております。従来とも、これらのケースにつきましては個別に審査いたしまして、ケース・バイ・ケースに許可しております。台湾と国交関係がなくなったという理由だけでは、一斉に何らかの措置をとるということは考えておりません。
  127. 古寺宏

    ○古寺委員 もう一度お尋ねしますが、台湾から帰国命令が出た場合にはどういうふうになりますか。これは法務省と外務省にお尋ねしたいと思います。
  128. 吉田茂

    ○吉田説明員 帰国命令が出たからといって、本人の意思に関係なく送還するというようなことはいたしません。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 帰国命令に従うというような場合には当然いろいろまた手続が出ると思いますが、その場合はどうなりますか。
  130. 吉田茂

    ○吉田説明員 従来とも帰国命令が出されまして、それに日本政府が応じたという例はございません。
  131. 古寺宏

    ○古寺委員 この台湾医師の問題について、外務省はどういう見解をお持ちになっておるか、承りたいと思います。
  132. 前田利一

    ○前田説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問につきましては、先ほど法務省入国管理局のほうから御答弁がございましたと同様に、外務省といたしましても、この在留資格の問題にかかわるわけでございまして、有効な在留資格を持って在留しております期間は引き続き日本に在留できるもの、このように外務省といたしましても考えております。
  133. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで今度厚生省にお尋ねしますが、帰国命令が出て、そして台湾のお医者さんが引き揚げるというような事態が発生した場合には、無医地区は非常に困るわけでございますね。そういう不安が現実に起きているわけでございます。こういう点について厚生省としては何らかの対策をお考えでございますか。
  134. 滝沢正

    ○滝沢説明員 ただいま法務省、外務省等からお答えございましたように、現状の解釈としては特段心配のないように承っておりますが、ただいま御質問のように仮定に立って、そういう事態が発生した場合につきましては、青森県等の御見解も含めまして、われわれはやはり従来の確保された僻地の医療について県並びに国としての対策上、僻地医療の観点から医師をその場所に導入することにつとめるとともに、またどうしてもその現地に確保できない場合については親元病院との関連等、いわゆる僻地対策を講じまして医療の確保につとめたい。その事態になりまして、個々のケースに応じて対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  135. 古寺宏

    ○古寺委員 昨日でございますか、青森県から三十八人の関係市町村市町村長さんが台湾政府のほうにお願いに行っているわけでございますが、そういうことについて厚生省は知っておられますか。
  136. 滝沢正

    ○滝沢説明員 県のほうからの情報としては承知いたしておりますけれども、ただいま法務省、外務省等からの現状の見解では不安がないということで、われわれは現状のまま悪い事態が起こらないことを期待しておるわけでございます。
  137. 古寺宏

    ○古寺委員 現実にこういう問題が起きてくるということは、やはり僻地の医師確保対策というものが十二分に行なわれていないために、こういう事態が発生しているというふうに考えられるわけでございます。現在市町村長さん方は、旅費が大体二十万くらいかかるらしいのですが、そのほかの経費等もかかると思います。そういうふうに市町村が医師確保に奔走しなければいかぬというところに大きな問題があると思うわけでございますが、今後もこの僻地の医師確保については市町村におまかせをして、台湾等の医師にお願いする、こういう考え方でいくわけでございますか。
  138. 滝沢正

    ○滝沢説明員 市町村の自治体において医療の確保をすることは、市町村の行政の基本でございましょうけれども、確かにおっしゃるように、医師の養成というような問題が、やはり結果が不足ということによって医療の確保が十分できないという面が多分にございますので、この点につきましては、すでに御承知のように医師確保のための養成計画というものを文部省に申し入れ、文部省からも具体的な計画が次々出されてまいりまして、大体昭和六十年をもって所期の目的の十万対百五十以上の医師の確保の見通しは、現状の医師養成計画では立ったわけでございます。そのように政府としては、基本的な全国的観点からの対策をいたしたわけでございますが、今後僻地の医療の確保について、予算の上につきましても、できるだけ親元病院の充実あるいは僻地医師の確保のための、たとえば医師の研究費の補助というような、あらゆる手段を通じまして市町村を援助して、そして確保につとめてまいりたい、こういうことでございまして、国の対策、市町村の対策、これがやはり相通じて医師の確保ができるようにつとめてまいりたい、こういうふうに考えております。
  139. 古寺宏

    ○古寺委員 時間の関係で詳しいことは申し上げませんが、現実に青森県の例をとりましても、だんだん医師の不足というものが深刻になっているわけです。勤務医の数を調べましても、あるいは国保の診療所の関係の医師の数を調べましても、だんだん不足になっている。台湾から町村長がお医者さんを頼んできても、なお不足になっているわけです。これはやはり政府の責任であるというふうにしか考えられない。  ですから、予算をふやしてどうとかこうとかというお話がございましたが、たとえば先ほどの広域医療体制の中の親元病院の強化の問題にいたしましても、ことしからモデル地区として全国二カ所発足をしているわけですね。こういう問題について、実際に国からの予算というものは年間一千万円そこそこでございます。こういうことで、この医師不足というものが解消できるのかどうかという問題があるわけですね。その点について、もう少し詳しく御答弁願いたいと思います。
  140. 北川力夫

    北川説明員 お答え申し上げます。  ただいまお話のございました親元病院に対する本年度予算二千万円の問題は、これは国民健康保険のいわゆる地域医療振興対策としての親元病院に対する助成費でございます。その中に下北半島総合医療センターについての整備に関する部分が一千万円とその他一千万円ということになっておりまして、国保のサイドはそのとおりでございますけれども先ほど医務局長からも申し上げましたように、地域医療確保という意味での親元病院の整備は、これは医務行政一般として全国的にネットワークをつくって広く整備をいたしておりますので、ここのところ連年親元病院整備ということは、予算的には相当増額をし、また対策としても充実をしているところであると考えております。
  141. 小沢辰男

    小沢委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  142. 小沢辰男

    小沢委員長 速記を始めてください。      ————◇—————
  143. 小沢辰男

    小沢委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を行ないます。田邊誠君。
  144. 田邊誠

    田邊委員 労使間の正常な状態をつくり上げることは、国民生活の上からいっても、労働者の権利を守る立場からいってもたいへん重要なことでありますが、日本の労働関係法は時代の進展に即応し得ない状態がかなり見受けられます。そういった点で実は実例をあげていろいろと御質問をいたしたいのでありますけれども、総務長官の時間が限られているそうでありますから、話は前後いたしますが、総務長官に限ってまずお伺いをいたしたいと思います。  労働三権が基本的に付与さるべきであることはもう言わずもがなでありますけれども、しかし、公務員労働者あるいは公企体労働者は、その持つ公共的な性格からその一部が制限されております。しかし、これも公務員なりあるいは公企体職員に対して一律一体に制限をすることが好ましくないことは、現状の中でも明らかなとおりであります。したがって、そういう立場から最近、公務員労働者ないしは公共企業体の労働者に対しても労働三権を付与すべきである、特にいわゆるストライキ権を与うべきである、こういう見解が多くなってきたこともまた当然なことだろうと思うわけであります。そういう現状の中で、国鉄に見られる運輸大臣の発言あるいはまた官房長官の発言、労働大臣の発言等がございますが、しかし、一応政府としては、現在第三次公務員制度審議会がこの労働基本権の問題について審議中であるから、この審議を待って実は検討したいということがいわれておるわけであります。  あとでまた労働大臣にお聞きいたしますけれども、そういった観点でこの問題、所管をするところの総務長官としては一体この労働基本権の問題に対してどういう御見解であるか、そしてまた、現在進められておるところのいわゆる公制審の審議に対して、あなたはこれに対するところの促進をどういうようにはからんとしているのか、そしてまた、いつごろまでにこの結論が出て、政府はこれに対応する施策を講じようとするのか、まとめてでたいへん恐縮ですけれども、ひとつお答えいただきたいと思います。
  145. 本名武

    ○本名国務大臣 御指摘の問題は、われわれも非常に重要な問題であるというふうに考えまして、慎重にただいま公制審において御審議をいただいているところでございます。  いろいろ、ただいまのお話にもございましたが、運輸大臣、労働大臣、官房長官等々の御発言につきましては、御本人もいらっしゃることですから後ほどお話があろうと思いますが、きょうお見えにならない運輸大臣につきましても私はその真意を実は直接確かめてみました。それによりますと、伝えられるごとき発言はしておらない、特に公労法に関しては、これは労働省の所管であるから労働大臣とも一応相談してみる必要はあるけれども、自分としてはここで右左を論議し、申し上げるものではないということを言われたというふうに聞いております。また、私ども公制審に対しましてもその経過を御報告申し上げておきました。  なお、公制審につきましては、やはり労働基本に関する重要な問題でございますので、私のほうはこういう時期に、たとえば国鉄におきますように処分とストの繰り返しを重ねるということは決して国鉄の使命から申しましてもいいことではないという点からも、ぜひ早い機会にひとつ御審議をいただいて御結論をお出しいただきたいということをお願いいたしております。  なお、時期につきましては、希望は早い時期にとお願いはいたしましたが、いつ幾日までというようなことや、あるいは審議会の運営等については、私どもからどうこうというお指図めいたことあるいは意見めいたことは申し上げるつもりは毛頭ございませんで、あとは審議会の御運営において早急に御結論をいただきたいということを念願いたしているのみでございます。
  146. 田邊誠

    田邊委員 各大臣の発言の食い違い等は、歴代の内閣で珍しくないことですからへ私はそういったこともあろうと思いまするけれども、一番うしろ向きの発言をしている労働大臣にあとでお伺いしたいと思いますけれども、しかし問題は、その所管の総務長官は一体どうこれは考えるのか。そしてまた閣内の統一をはかっておかなければならない立場であると思いまするけれども、そういった点から見れば、総務長官がこの問題については一つのかなめになってもいいのじゃないか、公務員給与担当でもありますし、という考え方に私は立つわけですね。したがって、そういった立場であなたはやはり現在のこの進展をしている時代の中で、そしてまた現実に起こっているいろいろな闘争の中で、当然考える一つの所見があるだろうと私は思うのですね。したがって、言うなれば私は、所管であるところの、公制審も所管をしておるあなたは、これに対してやはり明確な所見を発表することもこれまた必要ではないかと思う意味で質問をしたわけでありまして、重ねてひとつあなたの御所見があれば承りたいと思います。それでまた、公制審は確かに三者構成であります、なかなか議論の多いところであることは承知をいたしておるのであります。したがって慎重な検討という発言は、私はそれはまたそのとおりだと思うのです。しかし問題は、この問題に対するところの政府の考え方、そしてまた政府の将来に対するところの一つの展望、こういったものがやはり公制審を動かす大きな原動力であることも、これも疑いない事実でありまして、政府がいわゆるすべての労働者に対して労働基本権は回復をすべきであるという、こういう考え方に立って対処されることがまず私は大前提じゃないかというように思うので、実はお伺いしているわけでありまするから、ひとつ簡明でけっこうです、お答えいただきたい。
  147. 本名武

    ○本名国務大臣 先ほど公制審に対する大まかな私どもの考えを申し上げました。今日におきましても、まあここに労働大臣も副官房長官もいらっしゃいますけれども、政府内においては統一した考え方をもって公制審に臨んでいるわけでございます。したがいまして、重要な、しかも慎重を要する大問題であるだけに、私どもはあげて公制審の御意見、公制審の御答申を尊重いたしたいというたてまえからも、私どもがとやかく意見を申し上げたり、あるいは内容に触れて示唆するようなことはいたすべきではないと考えておりますし、いまのところは全く白紙で、公制審の御審議及び御答申をお待ちしているという状況でございます。  なお先般の審議会におきましても私呼ばれまして御意見として承った中にも、この時点において政府は何かひとつ少し具体的な意見でも述べたらどうかという御意見もございましたけれども、同様に私はお答え申し上げて、委員先生方のひとつ真剣な御審議をお願いいたしてきたわけでございます。
  148. 田邊誠

    田邊委員 本名さん、あなた時間がないそうですから、あらためてもうちょっと具体的な問題を背景にしながらお聞きをする機会をひとつつくりたいと思います。きょうは打ちとめておきますけれども、やはり私が強調したように政府のこれに対するところの決断、考え方、この種のことはやはり決断と実行がなくちゃいけませんよ。田中内閣の表看板でありますから。そういった点で私はただ単に公制審の審議にまつというだけではなくて、政府自身のこれに対する考え方をまとめられまして、ひとつ時代に即応した対策を講じてもらいたいというふうに私は強く要望しておきたいと思うのです。ではけっこうですから、本名長官どうぞ。
  149. 小沢辰男

    小沢委員長 大臣の都合で、たいへん恐縮でございますが、それでは質問を他の大臣に……。ひとつよろしくお願いします。
  150. 田邊誠

    田邊委員 そこで労働大臣、いまいろいろとお考え方があると思うのですけれども、総務長官も言いましたが、この問題は確かに大問題でありまするし、長い懸案でもあります。ですからそう即断をしていろいろやるべきことではないと思うのですけれども——運輸政務次官はおられますね。
  151. 小沢辰男

    小沢委員長 おります。
  152. 田邊誠

    田邊委員 では運輸政務次官がせっかくおいでですから、大臣にかわってあなたにお答えいただきたいのですけれども、この佐々木発言というのは私は一つの考えられる要素があると思うのです。いま総務長官は、そういったことは運輸大臣も言っていないという話ですけれども、こういうことは何も隠すことはないんで、言ったら言ったでいいんであります。確かにこの当時、春闘の処分の問題とそれから順法闘争という問題が非常に大きな問題になっておって、国民が非常に注目しておったことは事実であります。そういった点からこの悪循環を断とうという意味合いから、公労法の改正を含んで、来年の春闘までにはめどをつけたいという、こういう考え方を披瀝したことは私は一つの見識だろうと思うのですね。その真意があるいは順法闘争を回避したいというような、そういった意味だけであるとすれば、これはきわめて考え方は狭いんでありまするけれども、しかしそれだけでなくて、やはり現在の公労法というものが検討を要する段階にきているという点に立って、公務員の組合やあるいは公労法の適用組合に対するスト権の問題については根本的に検討したいという考え方というものは当然であるにしても、これはその当時の責任者としての運輸大臣の立場として見た場合に、私はまたこれは一つの注目をすべき発言であるというふうに考えておるわけですが、いま申し上げたいわゆる時点については運輸省はいろいろと頭を悩ましておったんじゃないかと思うのですね、処分の発表、順法闘争。したがってこれを断ちたいという気持ちは、私は当然監督官庁である運輸省は持っていらっしゃると思うのです。したがって、大臣なり政務次官は当然その立場に立って問題の処理をいたしたい、何とかこのことを解決したい、こういう観点であったんではないかと私は思うのです。その観点からする発言として私は大臣の発言を受けとめておるわけですけれども、政務次官、どうでしょう、その点に対してあなたはどういうふうにお聞きをしておられますか。
  153. 加藤六月

    加藤(六)説明員 国鉄労使の間のああいうごたごた、これは国民皆さま方にたいへん御心配をおかけし、御迷惑をおかけしておる。それは労使の間における不信感というものがあるんじゃないだろうか。この不信感を何とかして払拭してもらって、国民皆さんから喜んで乗っていただける国鉄にぜひしなくちゃならない。こういうお気持ちは運輸大臣も私たちもあるいは田邊先生も、これはもうみんな一致する点じゃないかと思います。そういう点で労使の間の順法闘争——処分というこの繰り返しをぜひやめてもらいたいという気持ち、これはみんな同じだろうと思います。  ただこの席をかりて申させていただきますと、ちょうど大臣は豪州のほうへ、日豪経済閣僚会議へ出席いたしておるのでございますが、先月の十四日の記者会見のときに、記者の方からの御質問に対して大臣が申し上げました内容を言いますと、どういうような対応策を考えておるかという御質問があったときに大臣は、いま具体的にどうこうとこまかな指示を運輸大臣が出す筋のものではない。いわゆる順法闘争、ストライキー処分といったことを繰り返していいのかどうか、大局的に全体的に考えなくてはならぬだろうと思う。こういう意見の発表がございました。さらにそれに突っ込んで、全体的、大局的とはどういう意味なんだという御質問がまたあったときに大臣は、三公社五現業の労働組合のあり方、公労法、また組合という、スト権の問題等について全体的に考えたい。しかしこれらは労働大臣所管のものだから、田村労相と一度よく話し合いたい、こういうような内容で発言されておられるわけでございまして、私も大臣がそういう記者会見で御発表になられました、その真意あるいはその考え方をいろいろ承りましたが、要は何とかして国民に信頼していただく国鉄になるための——いまの繰り返し繰り返し同じことをやり、処分者がふえる、こういう問題が何とかおさまって、労使とも国民に信頼される国鉄にならぬだろうかという意味から大臣の御発言があった、こういうように承っておる次第でございます。
  154. 田邊誠

    田邊委員 いま加藤政務次官の発言は、私は大体そうだと思うのですね。これは当然、労働大臣もおいでですけれども、いわゆる労働者の全体的な労働問題、権利の問題ということをまず取り上げるとすれば、労働省であり労働大臣であろうと思うのですね。ただ運輸大臣の場合は、いま言ったように、いわゆる処分−順法闘争−処分、こういう繰り返しをどこかで断ちたいという気持ち、そういう観点から労使の正常な状態をつくり上げたいということは私は当然だと思う。それをだんだん演繹していきますと、これはやはりいま適用されているところのいわゆる労働関係法、これに及んでくることもまたうなずけることだと思うのですね。したがって、それらを含めて全体的に検討したい、スト権の問題も含めて検討したい、こういったことも私は事実だろうと思うのであります。何かそのあと官房長官等がそれは全然事実なかったような発言をしていることも、これはけしからぬ話でありまして、きょう官房長官がおいででないけれども、中国ばかり行ってきたってだめなんですよ、そんなことでは。実際に国内のこういう問題に対して、運輸大臣が言ったことの真意をやはり官房長官はきちんと受けとめて、しかもそれが前向きの発言であるとすれば——いまはちょっと政務次官に聞くと、まことにあいまいもことした発言に取り変わってきているので、これまたけしからぬ話なんですよ。けしからぬ話だけれども、しかし一応そういう発言をしたとすれば、それは評価をしながら、それに対して一体どういうふうに具体的にこれを実践していくか、実現していくかということが内閣全体の問題としてあるべき姿だろうと私は思うのです。それをまた何か首根っこを押えて引き戻すような、そういう発言をしては、これは官房長官としての役はつとまらぬということで、加藤政務次官がそこまでしか言われぬのは、私は、その後いろいろな方面からチェックが入ったものだからそういうふうにぼやかして発言したような形にとりつくろっているのじゃないかと思うのだけれども、官房長官もきょうは見えないから、ひとつ山下官房副長官、あなたのほうからしかといまの私の発言を言ってもらって、官房長官の真意は一体どこにあったのですか、この問題に対して——運輸大臣の発言をうしろへ引き戻すような、そういう役目をした官房長官の発言というものに対してはわれわれは断じて了承できない、こういうふうに思っているのだけれども、副長官はどういうふうに聞いていますか。どういう発言を官房長官はされたのですか。
  155. 山下元利

    山下説明員 ただいま御指摘の点につきましては、運輸政務次官からお答えになりましたとおりの運輸大臣の御発言であったと了承いたしておるわけでございますが、官房長官といたしましても、いま御指摘のような形での発言はいたしておらないと思うわけでございます。
  156. 田邊誠

    田邊委員 内閣のたばねとしての官房は——あなたは、きょうは長官の代理だからね。あなたはこの労働基本権の問題に対して時代の趨勢に合ったような措置をとろうという、こういうお考えであるかどうか、どうですか。
  157. 山下元利

    山下説明員 御指摘の点につきましては、先ほど本名総務長官からも政府としての見解をお述べになりましたとおりでございまして、ただいま公務員制度審議会において御審議をいただいておるところでございます。
  158. 田邊誠

    田邊委員 政府は一体どう考えるかということが問題なんでして、何も公制審がやっておるからまかしておるわけじゃないですよ、それにすべて。政府は政府としての考え方と施策はあるでしょう。これは加藤さんも自分の考え方を言わなかった。ただ大臣はこう言ったというだけだからね。あなたの意見も聞きたいのだけれども、きょうはいいわ。いいけれども、官房副長官のほうはそういうわけにいかないので、内閣の大番頭としての二階堂さんの代理としては、あなたはこの問題に対しては一体どう考えるのですか。どういう所見ですか、あなたは。山下長官は一体どういう所見ですか。
  159. 山下元利

    山下説明員 公務員及び公共企業体の職員の方方の労働関係の基本に関する問題はきわめて重大でございます。したがいまして、現在、先ほど申しましたように公務員制度審議会において御審議を願っておりますので、政府といたしましてもその御審議の結果を待ちましてということが適当であると考えておる次第でございます。
  160. 田邊誠

    田邊委員 じゃ、どうぞ政務次官と官房副長官、お引き取りください。またそれぞれあとでお聞きしますから。了承して引き取ってもらうのじゃないですからね。話にならぬということで引き取ってもらうのですから……。  そこで、私は労働問題の所管である労働大臣にお聞きをするわけですけれども、しかし、ただ単に公労法なりあるいは公務員関係労働関係法をどう変えるべきかというだけではないのでありまして、具体的に私どもがいままでいろいろな論議をしてきた中で、いまの公労法は内容的にいってももう時代に即さない。これは成立してからたいへんな時間がたっておるわけであります。成立の二十三年、それから大部改正になりました二十七年から見てももう二十年以上たっているという点から、われわれとしては内容的にもこれを変更しなければならないときにきているのじゃないかという考え方に立つわけですね。これは私は大臣も私と同じ考え方じゃないかというふうに思うのですけれども、どうですか。
  161. 田村元

    ○田村国務大臣 二十何年たっておりますから世の中も相当変わっておるということから、公務員等、もちろん公企体の職員も含めて、その労働の基本的なあり方は、はたして今日の実情に即したものはどういうものであるか、即しておるのか、即していないのか、一体どのようにいまの時代にあるべきものなのか、そういうことについて公制審にお伺いをしておるわけでございますから、私どもとしては公制審の御答申を待つ以外にちょっと発言のしょうがない、こういうわけであります。
  162. 田邊誠

    田邊委員 そこで、なぜ公労法をわれわれは改正をしなければならぬか、なぜ労働者に対して労働基本権を与えなければならぬかということについては、これはもうおわかりだろうと思うのですけれども、私は一つだけ例をとってお伺いしたいのですが、国鉄はおいででございますね。
  163. 小沢辰男

    小沢委員長 おります。
  164. 田邊誠

    田邊委員 国鉄あるいは郵政、林野等、いわゆる三公社五現業といわれる公労法適用組合は、これは従前いわゆる争議権がない、ストライキ権がない、こういうことになっておったわけであります。しかしこれも、たびたびの実例、特に全逓中郵事件をはじめとするところのいわゆる刑事罰からの解放、刑事免責等の判例が物語っておるとおり、これを一律一体に律することはきわめて危険がある、これは正しくない、こういう考え方というものが普遍的になりつつあると私は思うのです。特にいま問題になっておるのは、直接的には運輸大臣の発言等のきっかけとなったところのいわゆる春闘をめぐる処分の問題である。国鉄は、春闘を含めて発表いたしました処分は三万八千七百七十二名、史上最高といわれる処分を実は発表いたしたのであります。郵政の場合はほとんど中央の幹部が解雇されておりますから、すでに処分のしようがないという形でありますけれども、二千数百人の処分をいたしておる。つい最近林野庁は、これまた春闘を含めて三万二千百十八人の処分をいたしておる。林野庁のごときは新聞等でもってたたかれたように、黒い霧問題がありましたけれども、これに対する処分はまことに軽微である。それに比べて、このいわゆる労働者に対するところの処分はきわめて過酷な処分をしておる。こういう不均衡を新聞等でも指摘されておるところであります。こういった点から見ても、この処分がもたらすいわゆる労働者に対するところのいろいろな影響というものに対しては、われわれはこれをそのまま看過するわけにはいかないというように思っておるわけですけれども、国鉄の処分は、私はきわめて御都合主義だろうと思うのですね。一体今度処分を発表いたしました二十七人の解雇者の、この解雇の理由は主として何ですか。
  165. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 今度の春闘が中心でございますが、二十七人の解雇をいたしておりますが、公労法に基づいての処分でございまして、組合の違法ストライキ、違法順法闘争に対する組織責任並びに各地区におきまして具体的に指揮その他のいろいろ具体的な行動のあった者についての解雇でございます
  166. 田邊誠

    田邊委員 そうしますると、この処分はいわゆる公労法に基づくところの争議行為をやった、それをあおり、そそのかした、そういう公労法十七条違反である、言うなれば、その組合の役員等の機関責任を追及したものである、こういうことですね。
  167. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 ただいまおっしゃいましたとおりでございます。
  168. 田邊誠

    田邊委員 この機関責任の追及というのは、一体どこの機関まであなた方は当てはめるのですか。
  169. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 機関の責任というのは、その組合の組織の中の役員その他、いろいろやっておる者全部に当てはまると思いますが、実際問題としましては、そのときのやられました違法行為のスケールなり大きさといいますか、そういった具体的な行動も見まして判断いたしております。
  170. 田邊誠

    田邊委員 組合は機関の責任を委任をして、たとえば中央本部なり地方本部にその権限を委任する、こういう形を闘争ではとっておる。そうなってくれば、その範囲が機関責任ですね。実行行為は入っていませんか。
  171. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 それは先ほどもちょっと申し上げましたが、組織責任のほかに具体的な実行行為、そういったものも具体的に見て、加味しております。
  172. 田邊誠

    田邊委員 それならば、一体、免職者の中には暴力行為等が含まれているといいまするけれども、これは暴力行為だけですか。日鉄法の免職者は暴力行為だけですか。
  173. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 今回の場合は、主として暴力行為の伴った者が多うございますが、その他の者もあります。
  174. 田邊誠

    田邊委員 その他の者とは何ですか、具体的に言ってください。
  175. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 まあほとんどが暴力行為なんでございますが、特に活発な——暴力に類するような活発な行動があったとか、そういったような者も具体的に調査の上やっております。
  176. 田邊誠

    田邊委員 暴力行為に類するような活発な行動とは一体何ですか。あなた具体的に言ってみてください。何を言うの。私のほうは調べてあるんだから、でたらめなことを言っちゃ困るよ。
  177. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 ほとんど実際問題は暴力行為ということになりますが、大ぜいの暴力行為を長い間にわたって指揮したというか、そういったような問題も含んでおります。本人の暴力もその中に含まれておるというふうに考えていただきたいと思います。
  178. 田邊誠

    田邊委員 そういうようないいかげんな区分のしかたというのはありませんよ。すべて組合の指揮命令に従って行動する。機関責任を追及するなら追及するでいいです。それならば、それはどこの機関までを一体対象にするのか。またそういった機関責任を追及していく限りにおいて、起こった事象については、当然公労法十八条以外に首を切ることはあなた方はできないでしょう。そういったいわゆる組合員逮捕等の抗議に対するところの闘争時における処分、これも免職の中に含まれておるということは一これは機関責任じゃありませんか。直接的に暴力行為を行なったわけじゃない。これは一体どうなんですか。
  179. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 まあ違法闘争が行なわれました場合に、公労法と、それからその行なわれました事柄の態様によりましていろんな段階があるわけでございまして、日鉄法もあわせて加味して、日鉄法と公労法の両方の趣旨をくみまして、私どもも事実をよく調べた上で、私ども独自の判断によって処分を行なっておる次第でございます。
  180. 田邊誠

    田邊委員 そんないいかげんな処分はありませんよ。労働運動によって起こった処分というのは、原則として公労法十七条違反でないと十八条で解雇じゃないのですよ。機関の責任でもって指令を発し、それに対するところの行為を行なった、少なくともその機関責任は公労法の十七条違反以外にないのですよ。あなた、その選択権がありますか。国鉄にその選択権を与えておるはずないですよ、法のたてまえからいって。一体あなたは、どこに解雇と免職の区別を置いておるの。
  181. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 日鉄法にも懲戒免職から戒告に至るまでの処分、各態様に応じて処分の段階がございますが、実際に行動した状況をよく調べまして、それに応じてそういったものを適用しておるわけでございます。
  182. 田邊誠

    田邊委員 だから私が聞いておるのは、組合の役員が機関の責任者として闘争を指導する、あるいは指令をする、こういうものは、これは機関責任を追及されることになるのじゃないか。現場へ行っていろいろ指揮したということは別ですよ。現場にも行っていないけれども、それは機関の役員として闘争を指導したということになれば、これは公労法のいわゆる争議行為の問題になってくるのじゃないか。したがってこれは公労法でもって十七条違反を問われる、こういう立場をとられざるを得ないのじゃないですか。十八条の解雇という形にならざるを得ないのじゃないですか。現場にも行っていない、組合の機関の役員である、これがなぜ日鉄法の立場をとらなくちゃいけないのですか。
  183. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 その日鉄法によって免職処分を受けた者の中には、特にそういう現場に臨まないとか、単なる組織責任とかいうようなことで処分されておる者はございません。
  184. 田邊誠

    田邊委員 それならば停職を受けた者あるいは減給を受けた者、これは全部現場へ行っていますね。全部現場の指導ですね。——間違っていたら承知しないぞ。
  185. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 この問題は、管理局長の権限でやっておるわけでございまして、管理局長のデータに基づいて私どもやっておるわけでございますが、全部が現場に出て何らかの活動をしておるということは言えると思います。
  186. 田邊誠

    田邊委員 私のほうで調べた状態によっても、その闘争時に現場に出ていない、具体的にその処分の対象になった現場に出ていない、しかし処分を受けている者というのは、数多いですよ。現場に出ないではありませんよ、もちろん出ますけれども、その処分の対象になったような争議行為が起こったところの現場に出ていない、そういう者が処分の対象になっておるということは絶対にありませんか。——あったらどうしますか。
  187. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 今度の違法闘争というのは、まあ春闘ということでまとめて処分を発表しました三万八千幾らの中には、三月から八月の初めまでにかけましていろいろな——春闘がほとんど主体ではございますが、そのほかあるいは合理化反対闘争とか、運賃値上げ反対闘争とか、それから職場における単独の暴力行為とか、暴力行為があったので逮捕事件がありましたが、それに基づいてそれの不当逮捕であるとか、いろいろなものをまとめてあれしておりますので、個々の人のそれらの長い間の活動状況につきましては私はっきり知っておりませんが、いま先生のおっしゃるようなことはないと思います。
  188. 田邊誠

    田邊委員 そんなでたらめなことでもって、あなた——それじゃこの処分は交通違反を犯した点数制と同じみたいだな、あなたのほうの処分は。これは大体訓告くらいだ、これは戒告くらいだ、しかしとっておいてそれが積み重なった場合には解雇したり免職したり、あるいは停職にしたりそういう処分をしているわけだね。問題だぞこれは、あなた。
  189. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 点数制とおっしゃいましたけれども、別にそういうことは考えておりませんので、そのときの具体的な行動に基づいて最も合理的な処分をやっておるわけでございます。
  190. 田邊誠

    田邊委員 そういうふうに前言をひるがえしては困るね。さっきあなたのほうは、長い闘争時の積み重ねの中でもって総合的に合理的に判断をしたというのでしょう。そういうもので処分はやるの、これは。具体的な事例が起こって、あなたのほうは、この行為はいわゆる違法行為である、これを指揮した者については機関責任を問うのだ、現場の主唱をした者に対してもこれは責任を問う、実行行為をした者に対しても、その行為に対してこれの責任を問う、こういうことじゃないの。このことはたいしたことはない、このこともたいしたことはない、このこともたいしたことはないけれども三つ合わせればたいしたことになるから、そういうようなことをあなたさっき言ったけれども、そんな処分を国鉄がやっているとしたら大問題ですよ。だから私どもは、そのようないわばそのつどそのつどの現場の感覚、あるいは本社のいわゆる考え方、そういったことによってこの処分がいわば御都合主義にやられている形であれば、これはまことにいいかげんなものだ、こういうふうに考えざるを得ない。基準がきわめて不明確ですよ。長い間のいわば処分を比較対照してみた場合に、明らかにこれは非常に重い場合と非常に軽い場合と分かれるのですよ。あなたのほうはそのときの状態をいわば総合的に判断する、こういう逃げ口をとりますけれども、しかしわれわれが第三者的に見た場合に、そういったことの中でもって基準が明らかでない。国鉄の処分というものが御都合主義だという事象に対して、私は非常に疑問を持っている一人である。  そこで、この処分は私はきわめて不明確であると実は考えておるわけですけれども、暴力行為というのはどれほどの事実があったか知りませんけれども、相手方の傷害の程度によってこれは変わるわけですか。
  191. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 実際に行なわれた実態に応じてでございまして、傷害の程度もこれは全然関係ないとは申しませんが、そればかりで判断しているわけじゃないということでございます。
  192. 田邊誠

    田邊委員 ですから私は、いわば現場管理者の一つの見方、あるいはその現場管理者の感情もあるのですよ、これは。いわばそれらをうのみにしておるところの国鉄の管理者の感覚、これがきわめて御都合主義の処分になってあらわれる、こういう状態じゃないかと私は思うのですよ、これは。ですからこういったことに対して明確な基準がない以上、この処分はだれが見ても明確なものとは言いがたい。聞くところによりますると、これは今後の弁明、弁護の段階でいろいろと考慮するという話もあるそうですが、それは当然なことでしょうね。当然なことであるというように思いまするけれども、私はこの際、国鉄の処分について、基準等についてもう一度洗い直す必要がある、こういうように思うのです。  さらに最初に申し上げたように、労働運動をやった者に対するところの責任を追及するということになれば、私は原則として公労法の適用以外にない、こういうふうに考えておるわけですけれども、これは労政局長、前からあなたといろいろと論争しておるところである。論争しておるところでありますけれども、私は原則としてそういうことだろうと思うのです。当然公労法十七条違反によって十八条に問われる者は、これは一律一体に解雇されるというものじゃないと私は思うのです。身分保障に関する規定があるけれども、しかしそれにもかかわらず公労法十八条を発動できるという趣旨ではないか、私はこういうように思っておるわけです。したがってみだりに処分はできぬ、実際には身分保障はあるのだから。しかし例外規定として十八条の解雇というのはあり得るという、こういう例外規定であるのです。したがってそういったものを一転して、あるいは解雇の条項を当てはめます、これにはちょっと当てはまらないから日鉄法なりあるいは公社法なりあるいは公務員法によって免職にいたします、あるいは停職以下の処分をいたします、こんないいかげんな形ではこれは断じてないと私は思うのです。したがってあくまでもこの処分というものに対しては、われわれとしてはこれは例外的なものである、例外的なものとして十八条はある、こういう形ではないかと思うのです。いまや刑事罰からの解放あるいは民事罰からの解放が具体的な判例として出てきておる現状の中でもって、いわゆる行政罰からの解放も当然考慮しなければならない段階にきている。これはスト権の問題といわばうらはらの関係にあるという観点から、この公労法十七条、十八条の関係といろんな日鉄法等との、社内法といいましょうかとの関係はより明確にしなければならない、よりまた局限して考えなければならない段階にきている、私はこういうように思いまするけれども、いかがです。
  193. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 公労法十八条はもちろん争議行為に対する解雇の規定でございますが、最高裁の判例では、これは常識的にもそうでございますけれども、争議行為に少しでも参加した者を全部解雇するわけじゃない。それは合理的基準によって合理的な当局の裁量に基づくものであるということがいわれております。また、その争議行為をした者の行為が同時に日鉄法の懲戒規定に当たる場合には、これは懲戒の対象にもなし得るものであるというふうに考えております。最高裁の判決の中でも、解雇その他いかような処分をするかということは当局の公平な裁量に、適正な裁量によるのであるというふうにいっております趣旨から見ましても、私どもは、懲戒規定に当たる限りにおきましては、その処分がなされることもやむを得ないものと考えております。
  194. 田邊誠

    田邊委員 これはあなたが最高裁の判例なりを半分しか読んでないからそういうことを言うのであって、職員の労働基本権を保障した憲法の根本精神に照らして職員の身分を保障する公社法の趣旨にかんがみると、職員に対する不利益処分というのは必要な限度を越えない合理的な範囲にとどめるべきである、こういうことが載っておるわけでございますからして、そういったような点で処分というのはそうみだりにやれるものじゃないぞ、特に労働運動の立場からしたところのいわゆるいろいろな実行行為等についても、これはそんなにみだりな処分はできるものじゃないぞ、こういう規定であることは間違いない事実ですね。そうでしょう、そうじゃないですか。
  195. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 争議行為を行なった者に対する処分はもちろんみだりに行なうべきではなくて、適正合理的な裁量によって行なうべきものと考えております。
  196. 田邊誠

    田邊委員 そういった点から見ても、私は、いまは公労法のいわば処分という形ばかりでなく、いわばもうかってに日鉄法なり公務員法なりこれを併用してやっておるのですね、これは。いまの国鉄の常務理事の話を聞いてみても、明確に暴力行為でない、いわばそれを指導したといわれるその組合の役員、機関責任、これも免職の中に入っておるのですよ。そういった点から見てもわれわれとしては——おい、下向いてうしろで笑っているんじゃない。——そういう立場というのはとるべきではない。国鉄の連中笑っているから、じゃ全部解雇と免職の理由を書いていらっしゃい。常務理事が一々、自分が首切ったのを、対象わからぬでもって下部に聞いているんだから。全部書いて出しなさい。どうだ。人の首を切っている問題をやっているのに、大体説明員がにやにや笑っているのは何だ。質問しない、そんなことでは。
  197. 小沢辰男

    小沢委員長 田邊さん、資料要求ですか。
  198. 田邊誠

    田邊委員 要求です。正規の発言だから。要求ですよ。
  199. 小沢辰男

    小沢委員長 資料要求は、それじゃよく理事会であれしますから……。
  200. 田邊誠

    田邊委員 いやいや、理事会じゃない。当然のことじゃないですか。
  201. 小沢辰男

    小沢委員長 出せますか。出せるなら出せるように答弁しなさい。処分の理由とあれをつけたものを全部出してくれということだから……。ちょっと橋本理事と相談してみてください。
  202. 田邊誠

    田邊委員 この問題は理事会の問題じゃないですよ、委員長。当然のことじゃないか。委員の権利だ。
  203. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 ただいま答弁の途中で、個々の問題について全部私も詳しくはあれしておりませんでしたので、うしろにちょっと話を聞いたわけでございますが、たいへんお気にさわる点があったことにつきましてはおわび申し上げたいと思います。  なお、資料の問題は、これは個々のいわば人事権の問題といいますか、任免行為の問題でございますので、できればこれについては御勘弁願いたいと思う次第でございますが……。
  204. 田邊誠

    田邊委員 それは理由を付して通告するのでしょう。理由もなしにかってに首切るわけじゃないでしょう。したがって弁明、弁護の機会はあるのでしょう。なぜ出せないのです。出せないはずないじゃないですか。こういう理由で首切った、これは公労法の十八条である、これは日鉄法の免職であるという中身を書かなくちゃこれはならぬでしょうがね。ですから、私のほうで聞いているのとあなたのほうの答弁の食い違いについてひとつ資料でもってただしてみたい、こういうのですから。
  205. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 もちろんおっしゃいますとおりに、個々の本人に対しましては理由を付して通告しております。そういうことでございますが、それからまた、公労法解雇以外は弁明、弁護といったような機会も与えてやっておりますが、こういった問題はほんとうに任免権者と個人との問題ということで、きわめて限定的にそれを考えて慎重にやっておるわけでございますから、その点をどうぞ御了承願いたいと思います。
  206. 田邊誠

    田邊委員 委員長の裁断にまかせます。
  207. 小沢辰男

    小沢委員長 追って相談をさしてください。
  208. 田邊誠

    田邊委員 まかせまするけれども、労働者のいわゆる首を切るという重大なことをやっているのですから、あなたのほうの合理的だというだけの名前でもっていいかげんなことをやられては困るのですよ。それが処分撤回闘争、順法闘争になり処分につながる。それが繰り返し行なわれておるところに、さっきから問題にしておるところのスト権の問題、運輸大臣の発言等があるのですから。あなたのほうの責任なのですよ、いま官房副長官なり運輸政務次官なりそれぞれ来てもらったり、大臣に聞こうとしているようなことは。そのことがきちんとしていないでもって、なぜ一体世論に対して納得させることできますか。正常な労使関係を打ち立てることができますか。そういったことから私は言っているので、国鉄を徹底的に責め抜いて言おうなんという考え方に立って質問しているのじゃないですよ。頭からこれは不当処分であるから全部撤回しろなんて、私は一言も言ってないのだ。あなたのほうにも言い分があるでしょうから、百歩譲って、それを聞きながら一体この事態をどう打開するかということを究明しようとしているのだから。それは出しても出さなくてもいいです。しかし、私が言いたいのは、去年の、実はいろいろな国鉄の問題取り上げてきても、私のほうで手に入れた証拠物件は正当のものでないとあなたのほうは言い張るおそれがあるから言っているのですよ。そういう例がいままであるから。そういう事実関係ないようなことをぬけぬけと言いがちだから言っているのですよ。あなたの良心的な判断でもって処置してください。  時間がありませんから、私の質問は別の方向へいきたいと思いますが、大臣、いろいろといま争議行為とそれに関連をする処分の問題等についてお聞きをしたのですが、これは実は長い論争なんです。したがって、やっぱり労働問題であれば、あるいは労働組合の運動であれば、それによって起こったところのいろいろな関係というものは労働関係法でもって処理すべきである、こういうたてまえ論からいえば、公労法はきわめて不備な点がある、私はこういうように思うのです。いまは処分等も併用して行なっておりますけれども、そこに実は非常に大きなすき間があったり、いいかげんなことが起こりがちであるという点から見ても、このいわば十七条の問題、十八条も関連をして考えなければならぬところにきておるだろうというように私は思うのです。ですから、公制審の審議を待つという意見は決して間違いではないけれども、しかし、政府全体としてもこの労働基本権問題について考えなければならぬところにきたことは疑いない事実だと思うのですね。四十八年度の新労働政策の案というものを実は私は拝見いたしました。あなたの構想がいろいろと載っております。週休二日の問題や定年延長の問題等のように、ひとつやってもらわなければならない点も載っております。しかし遺憾ながらこの中に、いま言った労働者の権利の問題について実は触れておらない。この新時代はバラ色の政策を与えればいいというものじゃないと私は思うのです。基本的にはやっぱり労働者の生活と権利の問題を一体どうするか、伸び伸びした職場をつくるには一体どうするか、正しい労使関係をつくるにはどうするかということが私は願いだろうと思うのです。したがって、トップ会談等をやるというのですね。コミュニケーション等をやるというようなお話がありますけれども、そういう中に当然政府のこの権利の問題、労働基本権の問題に対して、ひとつ明確な態度をとることが、これは新労働政策を進める一つの大きな軸じゃないかと私は思うのですよ。そういった点から見ても、私は大臣のこの問題に対するところの——いますぐあなたのほうから、いやスト権は回復しましょうというようなことは言えないかもしれないけれども、しかし、そういったことに対する前向きの対処というものが必要になってきたんじゃないかという観点でもって、一つの処分問題を通じて実は私は論争したわけです。どうでしょう大臣、私のいまの考え方に対してあなたも合意されるとすれば、これらの問題を含めて、権利の問題を含めて前向きに対処するという、こういう政府の考え方を代表して承りたいと思います。
  209. 田村元

    ○田村国務大臣 お気持ちはよくわかりますが、また言わんとしておられるお立場もよくわかりますけれども、現在、現に公制審に御審議を願っておりますときに、公制審であろうと審議会というものに御審議を願っておりますときに、政府がかくあるべきであるとか、かくあるべきでないとかという意思表示をあらかじめして、そして圧力をかけるということは、これは正しいことではないと思いますし、また儀礼にも反することだと思います。かりにかくあるべきであるというふうに圧力をかけるということが是認された場合には、かくあるべきでないという圧力をかけることも是認されることになります。でありますから非常に重要かつ微妙な問題でございまして、やはり政府としては公制審が十二分に自由な立場で御審議を願ってお出しになる答申を尊重するということでなければならぬ、このように思っております。でありますから、もちろん私個人に全然意見がないのかということになれば、それは一個の衆議院議員としての意見はありますけれども、労働大臣という立場で軽々に発言をすべきでない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  210. 田邊誠

    田邊委員 ほかのことは自由濶達にあなたは言うけれども、このことについては、だいぶほかの大臣も言ったものだからよけいにからを閉じ込めているようで、あまりけっこうな話じゃないけれども、しかし私の言うのは、何もスト権を与えるべきだというようなことを言えというのじゃない。これは私は圧力じゃないと思うけれども、圧力だというふうに感じ取られるあなたに対して、私はあえてストライキ権問題をどうこう言えというのじゃない。しかし、少なくとも新労働政策等を打ち上げる場合に、その一つの大きな柱に労働者の権利問題というものは、これは当然掲げなければならない問題じゃないかというふうに思うのですね。労働四団体とのコミュニケーション等も、いわばそういった問題が当然予測される中でもってこれは話がなされると思うのです。これは公制審でございますよというだけでコミュニケーションは推進されるものではないと私は思うのですよ。そういった点から見て、労働者に明るく豊かな生活を与えるような何かいろいろなものをつくる、休養施設をつくったり、いろいろなことをやるというビジョンが載っています。載っていますけれども、私はその一つの重要な前提、柱として、権利問題がある、権利問題の中にいま言った、たとえば公務員労働者、公企体労働者にスト権を与えることはどうかという是非論、それもありましょうけれども、そればかりではないと思うのです。また、基準法の問題やあるいは労働組合法の改正の問題、そういういわば労働者の最低の権利、基準、こういったものに対しても当然考えていかなければならぬところにきているのですね。週休二日だって基準法に関する問題でしょうが。法に触れないで通り過ぎようというわけにはなかなかいかぬのですよ。そういう観点からいわばこの問題に対してもあなたはやはり考えをしていかなければならぬところにきているのじゃないか、前向きに取り組んでもらいたい、こういう私の考え方ですが、それはそうでしょう、どうですか。
  211. 田村元

    ○田村国務大臣 あくまでも国民世論の動向を見きわめながら労働者の権利を守っていく、これが労働省の立場でなければなりませんし、また法を守っていかなければならぬ。でありますから基準法とか公労法とかという、言うなれば労働基本権に関する問題については、やはり主観的、客観的に情勢がそのような方向に定着する見通しがついたときに強力に発言すべきものである、平素、単に主観的な発言だけはすべきでない、このように考えております。とりわけ労働大臣という職責は重いのみならず、非常に微妙でございますから、どうぞそこいらの立場を御理解願いたいと思います。
  212. 田邊誠

    田邊委員 それは労働法は労働者の運動があり、時代の趨勢があり、国民の合意があるということが必要なことは私も承知をしているつもりですが、そういったことでいま時代はかなり動いている、その具体化を迫っている、こういう認識に私は立っているわけですから、そういった点ではあなたが何といっても一番前向きの姿勢をとる閣僚である、こういうように私は思っておるからこそ、あなたのいろんな考え方を実はお述べ願いたいというふうに思ったわけでして、機会をあらためてまたいろいろとお話をします。     —————————————
  213. 小沢辰男

    小沢委員長 この際申し上げます。  日本赤十字社における労使問題については、参考人として日本赤十字社副社長田邊繁雄君、同じく人事部長宮島久義君に御出席をいただいております。  質疑を続行いたします。田邊誠君。
  214. 田邊誠

    田邊委員 日赤の田邊副社長にお伺いをいたしますけれども、今年の春闘といわれる賃金引き上げの問題はほとんど解決をしている。一番おくれておりました公務員についても人事院勧告がなされて、政府がこれの完全実施を決定して四月から実施をする、こういう形になっておるわけでありますが、聞くところによりますと、日赤の場合に限ってはこの賃金引き上げがいまだに未決定であるという話を承っておるわけでありますが、これは一体どういうのでしょう。
  215. 田邊繁雄

    田邊参考人 日本赤十字社における本年度のベースアップにつきましては、その内容について、中央労働委員会の調停及び国家公務員給与に対する人事院の勧告を基準としてすでに決定し、これを組合側に説明しているところでありますが、その実施の時期につきましては種々の原因によっておくれておりますが、その主因であるところの病院側の財政状況及びその意向が最近ようやく調査できましたので、私のほうといたしましてはこれに基づいて本社側の意見をすでに決定しております。まだ発表はしておりませんが、近くこれに基づいて各組合と折衝をいたしまして妥結ができるという見込みでやっております。
  216. 田邊誠

    田邊委員 ちょっと田邊さん、あなたのその発言でひっかかりますけれども、賃金というのは、言わずもがな、労使できめることですよね。あなたはいま何か本社の意向は決定しているという話ですけれども、本社の意向だけで賃金がきまるものだという御認識であるとすれば、これははなはだ誤りですね。そういうものじゃございません。これは労使でもって話し合いをいたしましてきめられるものでありまして、その点についてはひとつ念のために申し添えておきます。  そこで、あなたは公務員の給与というものがきめられたらそれに対して実施したいという話ですが、公務員給与は、さっきも申しましたように、すでに閣議決定をされて、四月から実施ということになっている。そのとおりいたしますね。あなたのほうは公務員の給与と相関関係で賃金をきめたいというのですから、当然、公務員の給与の実施の四月からこれはされるという認識でよろしゅうございますね。  それから、公務員の給与との間に差があるというように私どもは聞いておりますけれども、一体どのくらいの差がおありですか。この差は、今度の賃金決定でおおむね埋められる、こういう御用意がありますか。
  217. 田邊繁雄

    田邊参考人 先ほど決定すると申しましたのは、団交にあたる本社側の意向がきまったということです。説明したと申しますのは、団交できめたいと思って説明したという意味でございます。ことばが足りなくて失礼しました。  国家公務員のベースアップの上げ幅とうちの上げ幅とはおおむね一致しておる、こういうことでございます。内容につきましても、でき得る限りそれに準拠してやるという趣旨でございます。ただ、おくれておりますのは、先ほど申し上げましたように、実施の時期について私どもの内部における意見が統一しませんでしたので、今日までおくれたのでございますが、先ほど申し上げたような事情等に、病院側の事情も判明しましたので、これに基づいて本社側の意見を内定したと申し上げたわけです。これによって、近く団交してきめたい、また決定し得るのではないか、かように思っている次第です。
  218. 田邊誠

    田邊委員 どうもあなたにいろいろ賃金の問題でお聞きするのはあるいはちょっと酷なのかもしれませんけれども、いま公務員との間に賃金の差がある。これは今度の賃金引き上げでその差というものを埋められて、公務員賃金に同じレベルに上げられる、こういう御用意があるかどいう質問をしたのです。それから、大体公務員賃金に追っついてやるということですから、公務員賃金は四月から実施ですから、ことしは四月からあなたのほうも実施をされるつもりですねという質問をしたわけです。当然そういうように私どもは認識ををしてよろしゅうございますか。
  219. 宮島久義

    ○宮島参考人 お答えいたします。  賃金の水準につきまして、公務員と差がある、こういう御指摘ないしは御質問かと思いますが、私ども、公務員との差はほとんどないじゃないか、こう考えております。  なお、公務員が実施しております初任給の関係につきましては、これも赤十字——多くの場合病院ですが、病院の場合で、必ずしも一線にそろってはおりませんが、初任給関係では公務員のものよりもほとんどいい、悪いものはなしと言っていいかと思います。それから、そういう意味で水準の関係について公務員と差があるという御指摘については、私どもよくわからないのでございます。私どもは差はほとんどなく、公務員よりむしろ高い、こういうふうに考えております。  それから、実施時期につきまして、公務員並みにしたいという考え方は持っておりますけれども、いま副社長からもお答えしましたように、病院の財政が非常に逼迫している、困難である、そういう中でなかなか公務員並みに実施時期を持っていくことが困難である、そういうことでございます。したがって今回も、これは組合さんといろいろ話し合ってきめられる問題でございますが、公務員並みに持っていくことはとても困難だという中で団交が行なわれることになると思います。
  220. 田邊誠

    田邊委員 具体的なベースの差があるということが一つと、実施時期がもうここ十年ばかりずれていますね。これの積み重ねというものが、いわば基準内賃金の損失という形でとられたとすれば、実は二重の損失ですね。あなたはいま公務員との賃金の差はあまりないじゃないかというお話だけれども、あなたのほうから最低保障として提示されている額は、看護婦については四万八千百円、准看護婦三万九千六百円、ですけれども、実際にはこういう形で初任給は当てはまるものじゃないですね、いまの看護婦さんなりは。現在病院の初任給というのは、看護婦の場合は五万一千円から五万二千百円、准看護婦の場合四万一千円から四万二千四百円ぐらいであるということをいわれているわけですからね。したがって、現状でこのあなたのほうの最低保障として提示されたものが、いわば当てはまらない、こういう実情のあることも御認識をいただかなければならぬと思うのです。  そういった点から、まず一つ、ベースの状態というものが悪い。実施時期がおくれていることは、もらえるのが少ないのだから公務員との賃金の差が生まれることは当然でしょう。十年間に、私のほうで聞きました損失は、大体基準内賃金で十五万九千六百三十三円損失を受けている、こういうのでありますけれども、これだって一つの差でしょう。とすれば、過去の差もさることながら、今年は当然ひとつ公務員の賃金に合わせてやってもいいのじゃないか、こういうようにわれわれは実施時期についても考えざるを得ない。  あなたのほうに血液センターがございますね、この賃金引き上げはいつから行ないますか。
  221. 宮島久義

    ○宮島参考人 看護婦、准看護婦の最低保障給について御指摘があったと思いますが、あれは国家公務員の場合の初任給よりも低くないものでございます。赤十字の各病院の初任給を調べますと、大筋として近畿地区、四国地区は非常に高いものを取っております。これらは国家公務員の初任給に比べて三号ないし四号ぐらい違うものでございます。これは高いのでございます。それから東北地区あるいは九州地区のいなかの病院であっても、国家公務員の初任給より大体高い。それから、それでは一般の病院における看護婦あるいは准看護婦の賃金がどうであるかということは、これはいろいろばらばらでございまして、私どもも調べているのでございますが、はっきりしたところはわかりませんが、いろいろな資料を見ました場合に、それは高いものもございます。たとえば東京地区なんかは、われわれ、号俸できまったもののほかに、国家公務員体系をとっておりますために、調整手当が八%つくというようなことで、初任給自体の号俸が高いと同時に、そういうものがついておりまして、私どもが看護婦、准看護婦についての最低保障給を中労委の調停あるいは組合との話し合いの中できめなければいけないと考えておりますことは、やはり全国的にそういういなかのところで低いところもございますので、それをもう少し底上げしたほうがいい、こういう考え方で話し合いに臨んでいるわけでございまして、決して私どもは、一般の水準が、いま先生が御指摘になったようなそんな高いものでないということを、考えているというより、資料ではそういうふうに拝見しているわけでございます。  それから実施時期がここずっと国家公務員に比較しておくれてまいっていることは事実でございまして、これは職員の所得がそれだけ減ってきているということで、まことに申しわけないと思っておりますが、何といたしましても病院の関係は独立採算制で、その収入のほとんどが保険医療費収入である。その中でまかなっていかなければならぬという状況でございますので、毎年組合にもそのことをお話し、御了解を得て、そういう形でやってきているわけでございます。  それから最後に血液センターの関係につきまして御質問があったと思いますが、赤十字の場合は同じ赤十字のもとで働いているのでございますので、病院のこれら経済の非常に窮迫した状態というものを無視するわけにいかぬであろうということで、できるだけ同じ時期にしたい。しかし、ほんとうに何もかにも一斉に同じ時期にするということについて、これまた問題があると思って苦慮しているところでございますが、センターにつきましてはただいま国庫補助をいただいているような関係もこれあり、赤十字の中では実施時期は一番先に行くといいますか、先に行くといっても病院や支部などと全然別にはできないと思っておりますが、比較的先に行く部類に考えているわけでございます。  以上でございます。
  222. 田邊誠

    田邊委員 簡単でいいですからね。私の意見はあなたのほうでもう答弁しなくてもいいから、質問した点だけ、早いとかおそいとかでなくて、いつと言ってくださいよ。  国庫補助が出ていると言うけれども厚生省は一体、血液センターに対する厚生省の国庫補助の中身として、給与改定はいつからするという中身で国庫補助しているのですか。
  223. 藤森昭一

    ○藤森説明員 お答え申し上げます。  ただいまの血液センターの問題は具体的には薬務局所管でございます。したがいましてたいへん残念でございますが、私からは先生にお答えできません。
  224. 田邊誠

    田邊委員 あとで調べてください。  五月から改定をするという内容を盛った国庫補助を出しているというわけですから、そういった点からいっても、いわば考え方からいえば、日赤は血液センターについては五月実施をすべきだということはあなたも御承知ですね、日赤は。しかしいまの人事部長お話のように、他の均衡もあるから、したがって、昨年、病院は八月だったけれども、血液センターについては七月、本社と支部についても七月実施をした、こういうわけですね。私は本社と支部が七月実施で一カ月早いということについて難くせをつけようというのではありません。しかし現場で働いている諸君についてやはりそのことを最重点に考えなければならないことも御承知のとおりだと思う。そういった点から、去年の八月実施についてもわれわれは当然意見のあるところでございます。あなたはいま、医療費でまかなっていると言いましたね。そうでしょう。また県によって県の補助がいろいろ違うということも、さっきお聞きいたしまして私も理解いたします。しかし医療費の値上げがありまして、それに伴って、賃金引き上げに要する費用というのは私はその何分の一かと思うのです。大体見受けるところ四分の一程度が人件費に充てる費用、こういうことになってくるわけですから、決して実施が不可能でない、こういうふうに私は思っておるわけであります。したがって非常に苦しいことは、病院は日赤に限らずどこでも私は存じております。存じておるけれども、その苦しい中で、人によって運営されているいわゆる病院というものは人を大切にしなければ運営できないということ。現にきょうもストライキに入っているところもあるでしょう。そういう実情の中でひとつ賃金問題をどうやって、いわゆる組合との団交の中の結論を出して、早期に実施するかということは、これは日赤に課せられた任務ですよ。私は田邊さんとこの前の松山日赤の問題のときに話し合ったことがある。日赤はとうとい使命を持っていると田邊さんはおっしゃった。私はそのとおりだと思うのです。そうであればあるほど、そこに働いている労働者、働いている職員、その給与が、身分が一体どう定まるかということは非常に重要な問題だろうと私は思うのです。それがいまだにきまらないということに対するあなたの責任は重大であると私は思う。いま病院に対するいろいろな統計がとれた、何ですか、いまごろになってとれたとは。そんなことはわかっているはずですよ。それ以上、あなたのほうの職場以上に千差万別の職場を持っておるところもある。しかし、それらを克服して賃金引き上げは世間並みに早期に妥結する、こういうのが管理者としての当然のつとめじゃないか。ゆうちょうたる中でもって、今日ただいままできまっておらないというようなことは、これはやはり日赤のいまの使命にかんがみてみましても許されることでないと私は思うのです。あなたと私と松山日赤の問題等についても意見の違うところはあった。しかし私は、そのことをもってして日赤の当事者を全部糾弾しようとは思わない。ただ、いまのお話を聞いてみると、あまりにもスローであり、あまりにも形式主義だ、こういうふうに私は思わざるを得ない。何としても公務員の賃金と合わせて早期に解決する。大体いつごろまでにできそうですか。そしてそのために精力的な団体交渉等を行なう、中身については、いま言ったように、少なくとも公務員並みに早期の実現をはかられるような状態をつくり上げる、こういうことをしなければ追っつかないのですよ。二月からの医療費改定によって、もちろんこれでは不足でしょうけれども、しかし病院の側に対しては、医療費の値上げの中身についてはいままでよりは幾らかでも前進をしたような中身になっておるのじゃないかと思うのですよ。であるとすれば、この際にこそ少し無理をいたしましても賃金改定についてはあなたのほうの全力を投入してもらう、こういう必要があるんじゃないかと私は思っていま質問しておるわけですから、どうでしょう。私はいろいろな問題を取り上げてきて、日赤の問題を私前にも取り上げたことがありまするけれども、しかし、どうかひとつこの問題に対してはあなたのほうの誠意ある回答というものが私はほしい。国会の場所だけで言うのではもちろんございませんでしょうけれども、少なくとも国民が注視をしておる日赤の中でもってあなたが、副社長が、きょう国民の前に、ようしおれのほうもやるぞ、少なくとも公務員並みの賃金を早く決定をする、組合を必ず説得してみせる、こういう確信を持った形というものをとってもらいたいという希望に燃えて質問を展開しているわけですけれども、いかがでございましょうか。日赤の本社の指導性を発揮してもらえますか。
  225. 田邊繁雄

    田邊参考人 お説のとおり、実施時期については国家公務員と同じにしたい、こういう念願においてはあなたと同じです。ただし、遺憾ながら、先ほどお話しましたとおり病院の財政状況は、今年の二月ようやくベースアップになったばかりでありまして、過去における赤字の累積というものを軽視できないものがございます。こういう状況のもとに、本年度におけるベースアップについて中労委の調停がございました。その中でははっきりと七月実施と書いてございます。そこで私のほうでは、血液センターは先に行く、支部も先に行く、病院はあとに残る、こういうことでは、同じ赤十字に働いている職員としてまことに当を得ないので、できる限り同じ待遇にしたい、かようなわけで苦慮しておる次第でございます。おくれた点についてはたいへん遺憾に存じますが、できる限り早く団交をいたしまして時期をきめたい、かように思っております。
  226. 田邊誠

    田邊委員 この中労委の調停等も、作業はせめて六月ぐらいにしたいという意向があったことを私は実はいろいろと聞いておるわけです。また全国の各病院においても、そういったいろいろな世論もありますから、五月か六月くらいにしたいという意向の病院長等かなりあることも聞いておるわけです。したがってわれわれとしては、そういった点をかみ合わせるならば、あなたの言われるような状態というものを一歩前進をはかられることをこいねがっておるわけですね。いまのこの日赤の各地域におけるところの状態を見ると、何としても、私は本社のいわば統括するところの力というもの、これに私はもっと大きなものを期待をしたいと思っておるわけなんです。田邊さんは日赤の仕事に対してはかなりの執念をお持ちの方だろうと思うのです。やはり近代的な経営をするためには、何といっても労使関係が正常でなければならぬ。大体ここには三つ組合があることも非常に不幸なことですけれども、そういった現実を見てひとつこの際勇断をもってそれに対処してもらうということを私は実は心から念願をしておるわけでありまして、できればひとつこの状態を早期に解決していただく。また、その状況をできればひとつ私どもにもお知らせを願いたいというふうに思っておるわけでありまして、そういった点に対してひとつあなたの合意が得られれば、質問を終わりたいと思うのですが、いかがでしょう。
  227. 田邊繁雄

    田邊参考人 先ほども申し上げましたとおり、できるだけ早く組合との合意を遂げて、できるだけ統一的な処遇の実現に努力をしたい、かように思っております。
  228. 田邊誠

    田邊委員 その状況を、これは別に委員会に対する報告、資料とかなんとかじゃなくて、ひとつその状態をお聞きをしたいという私の希望に対してお答えいただけないか、こういうことであります。
  229. 小沢辰男

    小沢委員長 日赤の参考人のお二人につきましては、本日御多用中わざわざ御出席を賜わりましてまことにありがとうございました。  最後に、この賃金問題についての結論等につきまして、田邊先生の熱心な御希望もございますので、ひとつ日赤側から田邊先生に御連絡を、あとで決定の上は御報告願えればたいへんありがたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは次に移ります。次に、山本政弘君。
  230. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十七年の四月十四日に公害対策並びに環境保全特別委員会と科学技術振興対策特別委員会との連合審査会がありましたけれども、その際に通産省の山形栄治政府委員が、私どもの党の島本委員質問に答えて、こうおっしゃっておる。「感圧紙といたしましては従来使われましたのが約五千トンでございまして、これは市中に相当出回っておりますが、……五千トンのうちの現在PCBを含んでおりますノーカーボン紙は回収いたしておりますので、このうちの相当部分はこれが処理できるのじゃないか。」こう述べております。その後、実際にお伺いしたいのは、ノーカーボン紙メーカーの在庫、それから官公庁や企業、商店の在庫と使用済みのPCB含みのノ−カーボン紙をそれぞれ一体どれくらい回収しておられるか、この点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  231. 村田文男

    ○村田説明員 PCBの感圧紙の生産は、三十七年以来四十六年二月まで紙の重量といたしまして約十万トン、PCBの使用量で約五千トンでございますが、そのうち現在なおユーザー段階で残っていると私ども推定いたしておりますのは、紙の重量に直して約六千トン、こういうふうに推定いたしております。   〔委員長退席田邊委員長代理着席〕 それで、回収の問題でございますけれども、感圧紙のような固体に含まれたPCBを完全に処理する技術が現在なお確立いたしておりません。そのため目下鋭意技術開発、その検討を進めておるわけでございますけれども、その間、回収ということではなく、ことしの五月に各省庁及びそれを通じまして地方公共団体等にもお願いいたしておりますが、各事業所において、処理方法がきまるまで、無害な処理技術が確立するまでの間凍結をお願いするということで現状凍結をお願いいたしております。  それで、現在回収をしましたものといたしましては、昨年の二月に生産をやめたわけでございますけれども、流通段階に一部残っておりました、印刷屋とかあるいは卸商等の流通段階にございましたものは回収いたしまして、これは全量で紙のベースで百トン、こういうことになっております。  それからなお民間企業につきましては凍結をお願いすることにしておるわけでございますけれども、若干その処理技術開発までに時間がかかるということから完ぺきを期しがたいということで、本年九月から感圧紙メーカー四社が個別に回収に取りかかっておるところでございまして、その数量はまだ微々たるもの、こういう状況でございます。  以上、簡単でございますが……。
  232. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、通産あるいはその他の役所のほうのお答えは全部速記でお伺いしておるわけですから少しこだわるようですけど、「五千トンのうちの現在PCBを含んでおりますノーカーボン紙は回収いたしておりますので、このうちの相当部分はこれが処理できるのじゃないか。」こう言っているんですよ。そうすると、回収してないということになりますね。
  233. 村田文男

    ○村田説明員 その当時は回収の準備を始めておった段階、正確に申しますとそういうことでごいます。
  234. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃお伺いしますけれども、四十六年の三月からPCB含みのノーカーボン紙を製造禁止いたしましたね。これは間違いございませんか。
  235. 村田文男

    ○村田説明員 四十六年三月以降の感圧紙につきましては、PCBは一切含まれておりません。
  236. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは出荷禁止の命令は出しましたか。その点はいかがです。
  237. 村田文男

    ○村田説明員 感圧紙の場合は先ほど申しました四十六年の段階で切りかえを行なっておりますので、その段階ではまだ命令とかあるいは通達という形をとっておりません。したがって四社が自発的に切りかえたということが事実だと思います。
  238. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、製造は禁止している。害があるから製造は禁止した。製造禁止をしたら当然、害があるのだから出荷を禁止すべきであると私は考えるのです。これが常識でしょう。その点について、なぜ出荷禁止の命令をお出しになっておらないのか、この点はどういうふうになっておるのでしょうか。
  239. 村田文男

    ○村田説明員 四十六年二月の、あるいは三月の段階では、PCBの環境汚染に対する影響というものがこれほどのものという認識がなかったというようなことから、四十六年二月当時におきましては若干在庫がございましたけれども、それの販売禁止という措置までは講じなかったということが事実でございます。
  240. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ製造禁止をなすったときには、たいした害がないとお思いになって製造禁止したわけですか。
  241. 村田文男

    ○村田説明員 当時はまだ諸外国でもPCBの感圧紙というようなものの製造をやめるというふうな情報も入っておりませんでしたし、むしろ新しい溶剤、PCBよりはるかに無害であるという新しい溶剤ができたのを機会に切りかえたということが真相でございます。
  242. 山本政弘

    ○山本(政)委員 たいした害がないのであるのだったらば、私は非常に逆説的な言い方をするけれども、禁止する必要がないじゃないですか。製造をなぜ禁止するんです。当時あなた方が害がないというお考えだったら、禁止するはずはないんです。
  243. 村田文男

    ○村田説明員 たいした害がないという表現が適切じゃなかったと思いますけれども、一年半前といいますか、四十六年の二月現在の意識では、確かにカネミ油症その他PCBに問題があるということは指摘されてはおりましたけれども、その後ことしの四月ごろの時点のような認識が、私どもにもメーカーサイドにも必ずしもそれほど切実な意識がなくて、むしろより無害なものができたのでそれに切りかえるというのが真相でございまして、その関係から通達あるいは命令という形を当時はとっていなかったわけでございます。
  244. 山本政弘

    ○山本(政)委員 少なくともより無害なものが出ておるならば、製造禁止をなすったんであるから出荷の禁止もお出しになるのが私は筋だと思うのですけれども、あなたに言ってもあれですけれども局長おられませんか。
  245. 田邊誠

    田邊委員長代理 局長は出席しておりません。
  246. 村田文男

    ○村田説明員 いまから考えますと、まさに御指摘のとおりでございます。製造をやめると同時に出荷差しどめという措置を講じたほうが汚染の拡大を防止できたであろう、こういうふうに考えております。
  247. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は国民の安全を考えて、ほんとうに全量を回収しようとするのであるならば、メーカーの在庫というものは出荷させずに押えるのがほんとうでしょう。そうでしょう。そうして出荷とか販売されて、その段階で今度は手を打って押えようとしても、回収漏れが出ますよ。私がなぜそんなことをお伺いするかというと、出荷を禁止されておらぬという理由で実はたいへんなものがずっと出ているわけですよ。PCB入りの感圧紙の問題について、これは富士フイルム労働組合が会社に対して実は追及しているのです。組合側から、対労務部の交渉において、一体どうなっているんだ、こういう話をしたところが、四十六年の二月の二十日現在で二千二百万トン、金額にして八億円があった。それが四十六年の七月にずっと減った。金額にして一億九千万円、それから十一月には八千万円に減ってしまって、四十七年の四月二十日の段階では百五十トンに減っているのです。金額にして五千万円、とすると、通産省の指導というものは、製造禁止、できたものはやむを得ないから有害であるけれども目をつぶって売れというふうに——ひどいじゃありませんか。そうじゃありませんか、そういう態度は。つまり危険であるということは、多少そういうものが問題になっておるけれども、しかしかまわぬ、しょうがない、メーカーとしてつくったものはやむを得ないから……。そういうふうに私は勘ぐりたくなるんですよ。あなた方は感圧紙の出荷の禁止をいつなさっておるのですか。
  248. 村田文男

    ○村田説明員 出荷の禁止といいますか——製造の禁止、切りかえの動きというのが四十六年の二月でございます。出荷の禁止はいたしておりません。ただし四十六年の九月ごろの時点で市中の在庫はほとんどなくなっておる、こういうような状況になっております。
  249. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十七年四月でいま申し上げたように百五十トン、金額にして五千万円が残っているわけです。そうすると、これほどやかましくなったんなら、なぜ出荷の禁止の命令を出さないのです。製造禁止の命令はしたけれども、出荷の禁止をいまだにやってないという事実は、一体どういうわけでおやりになっていないのですか。委員長局長おったら、局長にお願いしたいのです。連絡とってもらいたいのです。つまり私が申し上げたいのは、その当時は、あなたのおっしゃることをそのままお伺いすれば、たいして危険でなかった、しかしその後非常に危険なことがわかった、ことしの四月の段階で。しかしここに出ているのは、四月の段階でまだそういう出荷の禁止が出ておらぬわけですよ。そうしてこれによれば、四十七年の四月の段階で百五十トンまだ残っているというわけでしょう。なぜそれではあなた方が出荷禁止の命令を出さないのです。これほど有害になったというんなら、出すべきだと思うのですよ。それとも市中に相当もう出尽くしてしまって、それでメーカーがつくったものは全部なくなっただろう、だからその必要はないとお考えになっているのかどうか。この辺はいかがです。
  250. 村田文男

    ○村田説明員 私ども調査では、昨年の九月の段階で市中、工場の在庫もほとんどなくなりましたので、ことしの四月あるいはことしの九月から開放系の出荷がとめられました。確かに御指摘の開放系の出荷は全部出荷どめという形になっておりますけれども、その時点ではすでに出荷が行なわれておりませんでしたので、出荷の停止の命令、通達というものを出さなかったわけでございます。事実上終了しておった、こういうことでございます。
  251. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それではもう一つ申し上げましょう。いいですか。行政官庁の指示は、四十六年三月以降は、PCBの感圧紙の製造中止の指示があった。しかし出荷についての指示はなかった、こう書いてあります。四十六年十二月以降は感圧紙の再生紙としての使用禁止が出た。四十七年一月以降感圧紙以外の開放系の製品は出荷停止となる。したがってこの中には感圧紙旧タイプについての出荷停止は全然触れられていないじゃありませんか。そうすると、これは富士フィルムの富士宮工場だけの問題でありますが、全国にこういうものがたくさんあるわけでしょう。だからそれは一体どうなっているのか。行政官庁としてはそういうことについて責任をお感じになっておらないのかどうか。私にはどうしてもわからないのは、製造禁止して、要するに出荷を禁止するとなるとかなりの日月があるわけですよ。その間に何のアクションもおとりになっておらぬのです。通産省の考え方がわからぬというのです。なぜおとりになっていないのか。つまり使われてしまうであろうからか、あるいはメーカーがおつくりになったから、これはやむを得ないからというお考えなのか。国民に害があってもかまわないというお考えなのか、三点のうちどれなのか聞かしてもらいたい。
  252. 村田文男

    ○村田説明員 感圧紙以外の開放系のPCB入り製品の出荷が禁止されます時点では、感圧紙につきましては在庫もなく、新しい出荷をするおそれもなかったものですから通達をしなかった、こういうことでございます。
  253. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いいですか。四十六年の三月に、PCB含みのノーカーボン紙の製造を禁止したわけです。四十六年三月。その一カ月前に二千二百万トンあったわけでしょう。金額にして八億円。これは一工場ですよ、一カ月のズレはあるにしろ。その年の七月には、それが八億円から一億九千万円に減っている。十一月には八千万円に減っている。これはかなりの減り方じゃありませんか。市中に出回っていないことじゃないわけで、現実にはちゃんとこういうものがあった。という在庫の状況がある。在庫がそれだけのものがあって、流通過程に入っているものは、それに少なくとも匹敵するか何倍かのものがあったはずでしょう。そのことに関して何も禁止の手続をおとりにならなかったということは、ぼくにはどうにもわからないのですね。使えばなくなってしまう、日にちがたってしまうからというのは、くどいようですけれども、私は率直にいって、そういう態度の通産省の行政指導に対してたいへん割り切れないものを感じるのですよ。そうでなければ山形さんはなぜこんなことを大みえを切るのかというのです。つまり国会においてはきれいなことをおっしゃるかもわからぬけれども現実の指導においてはそうじゃないということを示しているじゃありませんか。要するに、どこに国民の健康というものに対して考えているかということになりますでしょう。私はあなたの御答弁では納得できません。最後は減ってしまってもうないからという御答弁だけでは、少なくとも、一月のズレを考えてもかなりな量というものがまだ残っているはずです。それに対して出荷をなぜ禁止しないのか、私わからないのですよ。
  254. 村田文男

    ○村田説明員 私ども調査では、昨年の九月の段階でほとんど流通在庫はないということで調査結果が出ておるものでございます。それでPCBの製品の出荷が停止されましたのはことしになってからでございますので、そういう関係で出荷停止の指示というものは出さなかった。繰り返しになりますが、そういうことでございます。それでなお完ぺきを期しますために、本年の七月を期しまして流通段階一斉に調査しまして残存物を全部引き揚げたというのが事実でございます。
  255. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そういうことをおっしゃるなら、私は言いたくなってくるのですよ。たとえばあなたはことしの四月ごろになってからそういうことになってきたと言うけれども、たとえば十条製紙あるいは日石のハイゾールSAS、いろいろなものに対してすでにこれは製品と違う、もっと無害なものであります、しかしなおかつそれについてすら四十六年十二月二十五日に安全性について出せという問題が出て、各社がこれについて出しているじゃありませんか。ですからPCBというのはカネミだけではなくて、それ以前にすでにもう大きな問題になってきている。そうでしょう。だけれどもあなたのおっしゃることからいえばそうではない、ことしに入ってからだと、こうおっしゃっているのですよ。ぼくは、あなたの御答弁というのはたいへん詭弁だというふうにしかとれないのですよ。
  256. 村田文男

    ○村田説明員 確かに去年の二月当時も安全性に問題があったからこそ切りかえたわけでございまして、問題がなかったというのは私の発言の不正確なところでございます。ただ出荷まで禁止するというところまでは意識はなかった。これは結果的には非常に汚染を拡大させたということについては遺憾だというように考えているわけでございます。
  257. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、遺憾にお考えになっているんだったら、なぜいまからでも出荷禁止を出さないのです。じゃお出しになるのか出さないのか。局長がお見えになったので、その点だけ保留しておきますから局長に話してください。
  258. 田邊誠

    田邊委員長代理 どうぞお続けください。
  259. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それではお伺いしますけれども、普通の焼却法では大部分のPCBは大気中に放散される。それで雨に入って作物や家畜あるいは魚、そういうものを汚染して人体に蓄積される。これは私よりもあなた方のほうがよく御存じだと思うのですけれども、一部のPCBは酸化されて塩化ダイベンゾフランなどの強い催奇性を持つ猛毒の物質ができるということも聞いております。こういうことは私は政府自身御存じだろうと思うのです。いま処理方法について問題がある、こういうふうなお話もたしかあったと思うのであります。富士フィルム系列の綾瀬紙工と旭紙工というところでは、富士フィルムの富士宮工場のノーカーボン紙をカットして手を加えて製品にしておりますけれども、発生をするくず紙や不良品を、昔は再生紙の原料に売りさばいていた。しかし四十六年十二月ですかの初めに、再生紙としての使用禁止が出た。それを結果的には処分するのにどうすればよいのかということで、一部は三月から七月までの間に高座の清掃施設組合の焼却炉で処分をしておる。その量は綾瀬の町当局の答弁によりますと、およそ七十トン余りであります。残りは三月から九月までの間に、炉がない工場の庭先で焼却しておる。ここに焼却をしておる写真があります。催奇性の猛毒があるということで、人体に回り回って蓄積されるというものを、そういうふうな処分をやっていいものかどうか。通産省は一体どういう指導をメーカーになさっておるのか。
  260. 村田文男

    ○村田説明員 富士フィルムの系列会社の件は、私初めて聞くのでございますけれども、私どもの指導といたしましては、完全なる処理技術が開発されるまでの間は、あくまでもこれは凍結して、いたずらに廃棄物として外に出したりあるいは再生紙に回したり、かってに焼却するということはしないようにというふうに指導しておるわけであります。
  261. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これは全部ここに写真がありますけれども、全部露天でやっておるのです。しかも炉がなくてね。私はきちっと指導してもらいたいのですが、厚生省おられますか——富士フィルムに対しても通産省は御指導なさっておりますね。それじゃ一体厚生省のほうはこの点についてどういうふうにしたらいいのか、お考えがあるかどうか。その辺からまずお伺いしたいと思います。
  262. 加地夏雄

    ○加地説明員 ノーカーボン紙を廃棄物処理施設で焼却するという問題でございますけれども、御承知のように現在の廃棄物処理施設の焼却炉では、熱でいいまして約七百ないし八百度くらいで焼却しておるわけでございます。PCBの性格からいきまして相当高温でございまして、千百度というふうにいわれておりますけれども、七百ないし八百度程度の焼却では相当部分が残るわけでございまして、そういうことがありますゆえに、現在通産省が指導なさっておるような新しい技術の開発を待つまでは保管をしておるという状況でございます。いまの先生の御指摘のケースは、実は私初めてお聞きするわけでありますけれども、私どもも実は通産省の指導によりましてそういった一般の焼却ないし処理施設場で焼却しておるというふうには考えていなかったわけでございます。
  263. 山本政弘

    ○山本(政)委員 富士フィルムの製品に、PCBは使用しておりませんというステッカーを張ったのは五月からでしょう。ですから、焼却したくず紙というものは三月から七月までの間に高座の清掃組合残りは三月から九月まで、今度は工場の庭、こういうようなことになっておるわけです。つまり、これが再生紙であります、ノーカーボン紙ではありませんという理屈にはならぬと思うのです。もしそういう会社あるいは工場のほうでそういう御答弁があるのだったら、再生紙にしてかまわないものだったら何にも焼く必要はないのですからね。その辺が非常にあいまいな点があるということで、ぜひきちんとした指導をしてほしいと思うのです。
  264. 村田文男

    ○村田説明員 再生紙でないことは事実でございますが、PCB入りかあるいはその後切りかえた新溶剤によるものかどうか、この辺は調べてみなければならぬと思います。新溶剤によるものであればその辺はかまわないはずでありまして、十分調べまして指導していきたい、こういうふうに考えております。
  265. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そこで、そういうお話がありましたけれども、綾瀬紙工の工場に働いている人は、実はもうPCBがからだの中に取り込まれている。PCBによる症状が顕在化しておるわけです。ここに資料がありますけれども、ノーカーボン紙の断裁に従事する男子が二十六名、包装、選別の女子とフィルム加工の男女三十名、合計五十六名でありますけれども、それから事務所及び食堂の労働者十名、これは最近アンケートをとってみたわけです。それによりますと、現場の労働者五十六名、頭痛を訴える者二十九名、目の疲れを訴える者三十八名、手足の節々の痛みを訴える者三十一名、全身のだるさを訴える者四十名、そして手の皮がむける者が二十三名、それから手足のしびれを訴える者が十三名になっておる。ですからこれらの人々にはかなりの量のPCBが体内に蓄積しているおそれがあるわけです。一体そういうことに対して、私はたいへん心配するのは、もしノーカーボン紙であれば、露天で焼却しているというような無神経な工場ですから、ほったらかしておけば労働者の健康管理とかなんとかというのはこれはどうにもならぬようになってくる。現実にいま数字を申し上げたように、からだにかなりがたがきているといったらおかしいですけれども、むしばまれている人がおる。そこでお伺いをしたいのは、基準局長は一体どういうふうに対策をお考えになっておるか、いまの私の話を聞いてどういうふうに対処されるおつもりなのか、その点聞かしていただきたい。
  266. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 PCBを取り扱っております事業場にPCB中毒のおそれがありますことについては、私どもも非常に心配をいたしておりまして、昨年四月、特定化学物質障害予防規則、いわゆる特化則というものをつくりまして、その中にPCBも特定化学物質第二類として規定し、局所排気装置あるいは健康診断等々の規制をいたしたところでございますが、その後もこの問題については重要な関心を持っておりまして、ことしの四月には、現にPCBを取り扱っております者及びすでに現在は取り扱っていなくても過去に製造等取り扱いをしたところも含めまして、一斉に通達によって健康診断を実施させたわけでございます。一応私どものところにいま来ておりますものについては、その健康診断の結果でPCB中毒であるというものの報告は受けてないわけでございますが、先ほどからの御質疑、答弁を聞いておりまして、問題の富士フィルムの子会社の点につきまして、それが今回の通牒による健康診断を実施した事業所であったかどうかについて早急に調査してみたい、かように存じます。
  267. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっとその前にお伺いしたいのですが、通産省は、お見えになっているのは課長だけですか。私はせんだって局長も来ていただくというようにお話をしたのですけれども、なぜお見えになっていないのだろうか。つまり、そういう態度がたいへん私は疑問に思うのですよ。つまり、こういうものに対して通産省というものはいかにでたらめをやっているかということです。必ずこの次もう一ぺん質問いたします。そのときは大臣と局長呼んでください、局長二人。前もって事前に私は連絡しているにかかわらず、そういうことではまことにけしからぬじゃないか。通産行政がいかにだらしないというか、けじめがないかということが、これだけでもってわかる。しかし、あなたに言ったってしょうがないので、帰ったら局長と大臣にきちんと言っておいてください。  三月九日の予算委員会、これもわが党の島本委員質問しているのですけれども、郵政省が去年の十二月に全面更改したはずの定額貯金預入申込書でさえまだ取りかえられずに、PCB含みのまま使用されておる。こういうふうに質問をしておるわけですけれども、そのときに、郵政省の斎藤説明員は「監査テープ以外は全部取りかえられております。」こうお答えになっておる。六月十六日の公害対策並びに環境保全特別委員会において島本委員が、まだPCB含みの古い定額郵便貯金預入申込書が使われておる、そういう事例を追及しましたところが、同じように斎藤説明員はお答えになっておるんです。そういう事例が一件ございましたと、こう言っておる。これは事実ですか、斎藤説明員という方はおられるかおられないかは別として。
  268. 田所文雄

    ○田所説明員 香川県の一宮郵便局でそういう事例がありましたことは事実であります。
  269. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私が質問いたしましたのは、ただ一件だけでございますかと——そういう事例が一件ございましたとお答えになっておるんですが、一件でほかにございませんかと、こう言っているんです。その点いかがでしょう。
  270. 田所文雄

    ○田所説明員 ただいまの郵便局のほかに、三件あったということがわかっております。
  271. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、新聞に出たところで私の気づいただけ拾ってみたのですよ。これは長野だそうです、新聞に出たのは。それからこれが徳島、それから広島、これだけで三件です。これだけですか。
  272. 滝本哲郎

    ○滝本説明員 お答え申し上げます。郵便局で定額貯金のPCBを含む預入申込書は、四十六年の十二月に使用禁止をいたしたわけでございますが、郵便局になお在庫がございまして、使用をしないように指導をいたしたにもかかわらず、あやまって送られてきたもの、これがその後やはり若干ございます。現在調べておりますところでは、長野地方貯金局の扱いで、九月三十日のものを調べましたところ約九千件のうち七件ばかり、同じく十月二日に調べましたところ、一万二千件中十五件、こういったものがございました。さらに徳島地方貯金局では十月一日から七日まで調べましたところ、四万件中一件といったようなものがございます。なお、できるだけそういうことは避けなければなりませんので、強力に指導をいたしてまいりたいと思っております。
  273. 山本政弘

    ○山本(政)委員 つまりあなた方はそういうことに対して、できるだけ数が少ないことをおっしゃろうとしているのですよ。香川で六月に六枚、七月に十三枚、徳島で六月に六十七枚、七月に十一枚、愛媛で六月に二十六枚、七月に五十九枚、高知で六月に六十一枚、七月には十五枚、たくさん出てるのですよ。それから、PCB含有の定額貯金預入申込書の割合というので、福島の貯金局で、貯金預入申込書の枚数に対してPCB含有の定額貯金預入申込書の割合というのが、四十七年一月が一六・三%、二月が一六・四%、三月一一・六%、四月が一二・七%、五月一四・五%、六月が一四・二%、そして七月がかなり減って六・一%、毎月出てるじゃありませんか。毎月出ておって、そしてあなた方指導が徹底をしておらぬ、こうおっしゃるのですか。労働組合の争議に対してはまことに峻厳な取り扱いをするあなた方が、自身で御指導になったことに対しては、これだけのものが出たって、てんとして何も恥じないと言ったらなんだろうけれども、あなた方は、二件とか、たった一件でございますという答弁でお済ましになるつもりなのか、そしてきょうのように三件か四件かのことでお済ましになるおつもりなのかどうか。断わっておきますけれども、これはあなた方のほうの発表ですよ、組合の発表じゃありません。お断わりしておきます。
  274. 滝本哲郎

    ○滝本説明員 申し上げます。先ほど私の申しましたのは、日にちを特に付して申し上げましたが、その一日の扱いの数の中で幾ら入っておるかということを調べた結果を申し上げたわけでございます。一カ月全部見ましてまとめましてそれで何%というのは、残念ながら私手持ちいたしておりませんので、ちょっとお答え申し上げかねますが、現在郵便局にその式紙を置いておきますと、やはりあやまって使用する向きがどうも絶えないということでございますので、郵便局にございますPCBの感圧紙、定額貯金預入申込書でございますが、これはただいまは通達いたしまして、郵便局から全部郵政局に送付させまして、厳重に保管することにいたしております。したがいまして、今後は郵便局があやまってそれを送るという事例は絶えてなくなろうと考えております。
  275. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それはいつからでございましょう。
  276. 田所文雄

    ○田所説明員 PCB感圧紙の郵政局の回収を通達いたしましたのは七月七日でございます。九月の中旬に回収は全部終了したという報告を得ております。
  277. 山本政弘

    ○山本(政)委員 五月の十二日に通産省の公害保安局長とそれから繊維雑貨局長の名において凍結をしたんですね。課長、そうですね。これはPCB対策推進会議というのがあって、おそらく、これは私よく存じませんけれども、各省の局長クラスの方々のそういう会議だろうと思うのですけれども、そこでまあ徹底をしたはずだと思うのです。それが五月。いま田所さんの話で七月の四日でございますか、とにかく七月ですね、おやりになったのは。ところが、四十七年の八月におけるあなた方の調査ですよ、あなた方の調査によって、四十七年八月におけるPCB含有の定額貯金預入申込書の受け入れ状況の中で、八月四日に、これは福島の管轄です、石川に一枚。五日の日には福島・保原、吾妻、希望ケ丘、金谷川、東尾俣、そういうところで二十枚、七日に五枚、八日に十六枚、九日に四枚、ずっと出ているんですよ。八月の二十九日までで八十二枚出ているじゃありませんか。つまり、私が申し上げたいのは、健康に問題があるんだったら、なぜもう少しきちんとおやりにならぬのだろうかというんです。春闘でたいへん大量な処分をお出しになって峻厳な態度をお示しになっておる郵政省が、このPCBに対して、自分たちの仕事に対しては非常に寛大であるということ、そういうことが私にはわからぬのですよ。一体どうなさるおつもりなのか。  これはまだここにたくさんありますよ、資料が。四国にも四件、東北、関東、中部、すべて私の知り得た範囲ではある。大臣がお見えだったら、私は、何回もこういうふうなことで間違ったことをおやりになっている方々に対する、つまり責任ある立場の方々に対する処分を一体どうなさるおつもりなのか、聞きたいぐらいなんですよ。下部末端の職員に対しては遠慮会釈なく首を切ったり戒告したり訓告したりする人たちが、一片の訓告すら受けてないでしょう、現実には。しかも徳島の貯金局においては、部屋の空気の中で、通常の七百倍ですよ、七百倍のPCBが検出されておる。もしうそだと言うのだったら、あなた方訂正なすったらいいです。新聞に出ているのです。しかも、そこで働いているおかあさんの母乳から〇・五PPM出ているんだ。〇・五PPMという母乳は、カネミの油症患者が発病した、そういう条件にそんなに変わらぬということですよ。指導が悪くて、そして働いている人たちに対する健康というものに対してはあまり御心配をなさらないで、そして処分はたくさんおやりになる。たとえば六月に徳島貯金局の第一貯金課百六名を対象として検診をおやりになったでしょう。これは郵政省の松崎管理医が問診をやった。その結果が、食欲不振、脱力感等の自覚症状を持つ者が六十四名、毛嚢性座瘡、皮膚の異変等の所見が二十三名、これは松崎さんの所見ですよ。それから尿中のウロビリノーゲンというのですか、これの検出が十七名。長野貯金局にもあるじゃないですか。  私は時間が来たからやめようと思うのですが、一体これぐらい大量に使用さしておいて、そしてある意味では、職場の働いている人たちの健康が異常な状態になってから、科学技術庁がやっとこさそういうものを出しておるわけですよ。あとたくさん私は質問したいことがあるのですけれども、一体どうなさるおつもりなんだろうか、どなたか責任のある郵政省の方で御返事を願いたいと思います。  同時に、一体労働省としては、大臣、どういうふうにお考えになっているのか、この点もあわせてひとつ聞かしていただきたい。
  278. 北雄一郎

    ○北説明員 PCB含有の用紙を扱っておる職員の健康の問題でございますが、ただいま先生から御指摘をいただきましたが、本年の六月以降、私どもといたしまして関係の職員に対しまして特定化学物質等障害予防健康診断規定というのに基づきまして検診を実施いたしたわけであります。総勢約二千五百名でございましたが、二千五百名に対しまして規定の示すところによりまして第一次検診を行ないまして、その中から第二次検診を受ける必要があると認められました者二百六名に対しまして、第二次検診を実施いたしました。その結果、五名の要治療者というものが報告されましたけれども、実はこの五名のうち四名は軽度の肝機能障害の既往症を持つ者であったわけであります。あとの一名は慢性湿疹でございましたが、これも過去からその既往症がある者でございました。  それから徳島貯金局の御指摘がございましたが、百六名がその取り扱いの関係者であります。これについて、この局につきましては特に百六名について全員精密検査をやろうということで、徳島大学にお願いをして実施の途中にあるわけであります。非常に複雑な多項目にわたる検診でありますので、特に先ほど仰せられましたような問診等の結果によりまして、五名というものをまず徳島医大で調査をしていただきました。その公式な結果はまだ出ておりませんが、非公式に連絡を受けましたところによりますれば、PCBと関係の有無ということについては、ネガティブな連絡を実は受けておる次第であります。  それから母乳の関係も、全国的に授乳者の中からこの検査をしますということで希望者を募りましたところ、最終的に十一名希望者がございまして、それぞれのところで検診を実施しております。ただ結果について、十一名のうち十名については検診を終了しましたが、必ずしも結果については全部出ておりません。半分くらい出ておりますが、それによりますと、〇・〇幾つという程度の含有でございました。〇・五のがあったじゃないかとおっしゃいましたが、これは長野地方貯金局でそういう職員がある別な病院へ自発的に行って調べたところがそういう数値が出たと言いますので、私のほうで、じゃ、こちらとしても大きな関心があるから、ひとつもう一回調べてくれと言ったわけですが、すでに授乳を終わっておる、ですから必要ないということで当該職員は希望がございませんでしたので、この人については検診をしていない、こういうことであります。  これまで、あるいは現在やりつつあります健康対策としては以上のようなことでございますが、今後ともこういった点につきまして十分関心と努力を傾注していきたいと考えております。
  279. 山本政弘

    ○山本(政)委員 高知や川崎ではたいへん微量な——要するにPCBを一つも含まぬというようなことで、そういう証明書がついておって買ったノーカーボン紙でも、たいへん微量だけれどもPCBが検出されたということで全部これを使わないというふうな処置を行なっているということも私は聞いているし、そういうことから考えれば、〇・〇一PPMだからさしつかえないということはいえないだろうし、蓄積というものを考えればなおさら注意をすべきだろうと思うのですけれども、そのことによって実はあなた方の、ノーカーボン紙が八月に福島の貯金局で出たということに対するネガティブなお答えにはならぬ、そのことによって免罪にはならぬ。全国そういうことがないようにきちんとしてほしいと思います。  最後にお尋ねしますけれども、三菱高松支店から出された一万一千通の色刷りの広告の入った郵便物を取り扱っていた高松局で、九月二十一日に十八名の局員が強く吐きけを催した。そのうちの一人が歩行不能になって病院に行った。これがそうであります。   〔山本(政)委員、印刷物を示す〕 私が見たときはもうかわいておりましたが、その当時はかなり湿気があった。まだかわき切っておらなかったというのですね。これは安全証明つきのインキです、私が調べたところでは。だから企業の——これは通産省にもお聞き取り願いたいと思うのですけれども、企業の安全証明書というのは決して当てにならぬということです。これを扱った人たちだけが頭が痛くなったり、吐きけを催したり、そうして病院に行ったりするということですから、この辺についてもひとつ通産省のほうできちんとお取り調べいただいて、そうして私に報告してほしいと思うのです。  なお、次回にひとつ大臣と、それから二人の局長だけお見えになるようにお願いしたいと思います。  最後に労働大臣、いまお聞き及びのような話でありますけれども、ひとつ労働省として、大臣としてどういうふうに対策を講じていかれるのか、御所見をお伺いをして私の話を終わりたいと思います。
  280. 田邊誠

    田邊委員長代理 通産省では調査の結果を山本委員まで御報告してください。  次回通産大臣と局長の出席については理事会においてその取り扱いを協議いたします。——田村労働大臣。
  281. 田村元

    ○田村国務大臣 PCBを取り扱う労働者の健康管理につきましては、昨年四月公布されました特定化学物質等障害予防規則において、発散源に対する局所排気装置の設置、健康診断の実施等を規定したところでございますが、特に健康診断の実施につきましては、本年四月、過去にPCBを取り扱った労働者に対しても特定化学物質等障害予防規則に基づく健康診断の実施を指導、勧奨するよう通達して、健康管理の徹底をはかっているところでございます。  なお、健康診断の結果、PCBによる障害が業務に起因しておると認められた場合は、当然労災補償を行なわなければなりませんし、それはすみやかに認定をして万遺憾なきを期したい、このように考えておる次第でございます。
  282. 田邊誠

    田邊委員長代理 次に、古川雅司君。
  283. 古川雅司

    古川(雅)委員 私、本日は外国人の労働者の受け入れ問題について若干お尋ねをしてまいりたいと思います。   〔田邊委員長代理退席、向山委員長代理着席〕  昭和四十二年三月の閣議了解事項であったと思いますが、わが国では現在までのところ外国人の労働者を受け入れない、使わないということになっていると思うのでございますが、その理由はどういうことであるか、その辺からまずお伺いをしてまいりたいと思います。
  284. 道正邦彦

    ○道正説明員 先生承知のとおり、最近におきましては、一般的には人手不足でございますれども、その中にありまして、たとえば中高年齢者等につきましては依然として就職難の状態にございます。そのほかいろいろ問題があることは御承知のとおりでございます。したがいまして、いま直ちに外国人労働力を入れるということは日本人労働者を圧迫することにも相なりまするので、原則として外国人労働力を入れないということを政府としてはきめておるわけでございまして、具体的には四十二年にその方針を閣議了承されておりまして、今後ともその原則を従来どおり維持する方針でございます。
  285. 古川雅司

    古川(雅)委員 これは外国人労働者という見方とは若干性格を異にいたしますが、いわゆる発展途上国からの技術研修生という形での受け入れが行なわれておりますが、その趣旨は当然、国際技術協力のためということが主眼ではないかと思います。ここにちょうだいいたしました資料がございます。「民間事業所が行なう外国人研修生受入れ状況」、これを年度別と国別に受け入れ数を分類いたしました表がございます。これを見ますと、韓国、また中華民国、タイ等につきましては、比較的恒常的に年々外国人研修生を受け入れている状態がわかるわけでございますが、その他のシンガポール、インド、インドネシア、パキスタン、マレーシア、チベットあるいは無国籍も含めまして、この辺になりますと非常に散発的に受け入れているわけでございます。これはどうも企業サイドで、企業の都合に従ってそのつど受け入れているのではないかという疑問も生ずるのでございまして、この辺に、いわゆる外国人の研修生の受け入れが国際技術協力のためとだけははっきり言えない何かあいまいなものを感ずるわけでございます。特に外国人研修生を受け入れている法人に対しまして労働省は補助を出しているというふうに私承っておりますが、その辺との関連もございますので、この技術研修生の受け入れについてのはりきりとした趣旨を、この機会にひとつ御披瀝をいただきたいと思います。
  286. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 ただいま先生御指摘のとおり、昨年、四十六年度までに受け入れました各国別の数字を見ますると、確かに韓国、中華民国、現在の台湾でございますが、そういったところが毎年恒常的に入っておりまして、その他の東南アジア各国につきましては散発的に入っている、こういう実情になっております。四十六年度だけをとってみましても合計して二百七十名入っておりまして、韓国、中華民国、それからタイ、この三国がその大半を占めておるような状況でございます。この研修生の受け入れにつきましては、こういった国との技術協力関係にあります企業からの要請でそれぞれの国の希望者が入国を申請してまいります状況、あるいはこういった国に対する技術援助のための財団法人、社団法人というようなものがございまして、そこがあっせん体になりましてこの研修生の受け入れを取り扱っている、こういうことでございまして、こういった関係の団体に対しまして労働省が補助を出しておるというような事実はございません。
  287. 古川雅司

    古川(雅)委員 こうした国際技術協力という名目のためには、今後の方向としては当然外国人研修生の受け入れば拡大していくという方向をとることになるかと思いますが、労働省としてはこの辺の見解どうお持ちでございますか。
  288. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 御指摘のとおり今後ともこういった低開発国、後進国の技術発展のために、労働省といたしましてもできる限り研修生を受け入れて、それぞれの国での中堅技能者、技術者の養成に当たってまいりたい、かように考えておりまして、現在はいわゆるOPECベースで入ってくる研修生と、それから労働省で今年度新しく開発いたしました労働省ベースの技術研修生の受け入れ、そのほかにいま御指摘のような一般的な民間ベースで入ってくるもの、こういう三種類ございますが、今後ともこういう希望者につきましては、適切な研修計画にのっとったものにつきましてはできるだけ充実、拡大していきたいと考えておる次第でございます。
  289. 古川雅司

    古川(雅)委員 具体的な問題に入りますが、その外国人研修生の受け入れの許可は一体どこがしているのか。その点だけお教えをいただきたいのと、外国人研修生を受け入れた後、労働省としてはこれの受け入れ企業や団体に対してどのような指導監督を行なっているか、その実情をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  290. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 技術研修生を外国から受け入れます際には、労働省におきましては——法務省が直接の許可主管庁になっておりまして、法務省からそれぞれの個々のケースにつきまして協議を受けまして、その協議に基づいて労働省が実態を調査し、技術研修生として受け入れることが適切であるかどうか、その研修計画なり研修の内容なりそういったものを審査いたしまして、同時に企業側の受け入れ態勢についても十分な審査をした上で、その入国許可が適切であるかどうかという判断をいたしまして、法務省のほうにその旨を連絡いたします。それに基づいて法務省から入国許可をする、こういうことに相なっております。そこで、もう一つの御指摘の入国後の問題でございますが、労働省といたしましては、そういった審査の結果入国を許可されました研修生につきましては、原則として六カ月ごとにその研修の状況、その他必要に応じてそのつど研修の実施状況報告を提出させまして、自後の指導監督に当たっておる次第でございます。
  291. 古川雅司

    古川(雅)委員 この受け入れの許可にあたっても十分な審査をしてというようなただいまの局長の御答弁がございました。また事後においても、書類で報告をとり、もちろん問題のあった場合には指導をするということでございましょうけれども、すでに御承知のとおり、ここに一つ事件が発生をいたしておりまして、この問題についてひとつ労働省の御見解を伺ってまいりたいと思います。ごらんになったかと思いますが、十月七日の新聞に「酷使に泣く韓国女性」という見出しで「政府受入れの技術研修生たち月給は一万三千円岐阜県の工場間に悪質ブローカー」これが見出しでございます。「技術研修生として、ことし岐阜県下の縫製工場にやってきた韓国の娘さん二十八人が、研修どころか、外出、面会も許されず、契約の半額にも足りない月一万三千円の低賃金で働かされていた——“研修生”からの投書をもとに、韓国の地方紙が最初にこの実態を取上げた。「だまされ、日本へ売飛ばされる」「技術教えるはウソ。ただ酷使」と、大見出しで警告した。名古屋の韓国領事館などの調査では、投書は事実だった。しかも、「研修生」として受入れていた労働省は、この実情を全然知らなかった。「若い者を勝手にさらっていった戦前のあのやり方をまた繰返すのか」と、韓国の人たちは、強い対日不信の思いを捨てていない。」このような書き出しで、以下その実態を報告している記事でございますが、この件に関しまして、逐次具体的にお伺いをしてまいりますと、まずこの岐阜県の工場につきましては、技術研修生を受け入れるときの条件はどのようなものであったのか、労働省としてはすでに報告を聴取していると思いますが、その点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  292. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 新聞に報道されました岐阜県の事案につきましては、昨年の夏の段階で岐阜県のトーホー繊維事業協同組合という協同組合ができまして、韓国に在籍の第一繊維工業と技術提携をやるということで、この第一繊維工業に勤務する従業員の技術研修をやるために約八十数名の労働者を日本へ、トーホー繊維事業協同組合所属の企業に派遣をいたしました。それぞれの職種に従いまして一年ないし二年こちらで研修をした上で韓国に帰りまして、この第一繊維工業に勤務する、こういうたてまえで昨年の六月に法務省に申請がございまして、その結果、私どものほうで審査をいたしまして、八月二十七日付で法務省に回答し、法務省が八十四名の入国許可をしたわけでありますが、そのうち実際に昨年の秋に入国してまいりましたのは二十七名であったかと思いますが、入国してきて今度のような事案になったわけでございます。
  293. 古川雅司

    古川(雅)委員 これも新聞に紹介されておることでありますが、このトーホー繊維事業協同組合の所属の工場主さんの弁によりますと、「悪意はなかった」ということを前置きにしながら、「私たちは本当に「五百時間の一般教養課外学習」などといった約束をした記憶はない。夫婦が朝から夜遅くまで従業員とホコリまみれになって働いている工場で、勉強を教えるなんてどだい無理な話です。知っていたら、韓国での求人など、絶対にしなかったでしょう。私たちに悪意はなかった。」こういう言い方をしております。これはこの方がおっしゃったとおりそのまま活字になったかどうか私は確かめておりませんが、ここにはまたいろいろな誤解や問題点が含まれていると思います。一つには、外国人労働者という認識で受け入れているのではないかという疑問が生じますし、またもう一つは、外国人に技術を教える、技術の習得をするための研修生として現場では受け入れていない、そういう感じが強くするわけでありますが、さらに、労働省の職業訓練局の管理課のお話として紹介されておりますが、「書類上の審査しかできない苦しい現状なのだが、こういう事態に気づかなかったことは、当方の落度だ。さっそく調査する。」というようなことをおっしゃっているわけでございますが、はたして、この事件が本国の韓国でこうして大々的に報道され問題になる以前に、労働省としてはこのトーホー繊維事業協同組合加盟の工場に対して、実際に出かけていって監督をしたことがあるのかどうか。その辺が大きな問題だと思いますが、いかがでございましょうか。
  294. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 問題点が幾つかあると思いますが、その第一点は、いま先生御指摘のように、受け入れの各企業が主として中小零細企業でございますが、こういった企業家は、この研修生を受け入れます際に、研修生としてではなしに労働者として受け入れたのではないか、こういう御疑問でございます。実は先ほど申し上げましたように、トーホー繊維事業協同組合と韓国の第一繊維工業との間で、技術提携という関係で、研修生として受け入れる、その研修の条件といたしましては、先ほど申し上げましたように、職種によって一年のものと二年のもの、それに研修の内容といたしましては、実習のほかに一般教養学科、その他関連学科等がございますが、賃金につきましても、いま一万三千円というお話がございましたが、これは賃金ではございませんで、研修期間中の研修手当、その他の経費は一切企業持ちということで、そういう条件で話し合いができまして、申請が行なわれたわけでございます。その申請の内容、条件等につきましては、当初提起されました条件と現実に行なわれました条件は食い違っておりません。ただ問題は、研修といいながら、そういった学科関係が必ずしも十分に行なわれていなかったようでございます。実はこの問題が朝日新聞に報道されます以前に、韓国等で、向こうのほうでこういった実情が明るみに出ました時点で、私どもも岐阜県の受け入れ側の協同組合等について相当実情を聴取して、内々調査を行なっておったわけでございます。その時点ですでに手当の問題につきましてはいろいろ問題がございまして、ことしの二月の時点にさかのぼって月額二万五千円に引き上げられたという事実も判明いたしております。それから外出禁止云々というような問題もございましたが、これは企業の側の意図ではなくて、関係団体と申しますか、韓国から来た人たちをいろいろ指導しております民団関係の人たちの意向でそういった事態が事実行なわれておったようでございます。学科等につきましては、日曜日にそういった授業を行なっておったというような、当初の許可条件と食い違っておった面もかなりありまして、そういった点は、私どもこの協同組合を通じて指導いたしてまいっておったわけでございます。以上のような実情でございまして、私どもの当時の審査の内容が必ずしも十分でなかったこと、その後の監督指導につきましても、若干私どもの手落ちがあったことも事実でございまして、はなはだ遺憾でございますが、その後本年に入りましてから、こういったたぐいの入国審査につきましては、先ほど申し上げましたような各種の許可基準に照らしまして、実地について企業を指導する等の措置をとることによりまして、こういった食い違いのないよう、十分慎重を期してまいっておるつもりでございます。
  295. 古川雅司

    古川(雅)委員 先ほども伺ったわけでありますが、外国人の研修生の受け入れにつきましては、その手続上、労働省としても十分な審査を行なって、という御答弁があったわけでございますが、これは今後の問題にもなっていくわけでございますが、その研修時間とかあるいは手当あるいは福利厚生等は、これは書類だけでなく、やはり実情というものをきちんと掌握していく必要があるのじゃないか。今度のこの事件は、その点では一つの大きな教訓になると思うわけでございますが、この点、くどいようでございますが、念を押してもう一度伺っておきたいと思います。さらに、今回のこの岐阜県の問題につきましては、一つ特徴的なものとして、悪質なブローカーがその中間に介在をしていたのではないか、そういうことが取り上げられております。特にこれはブローカーのうまい話に乗っかって、ことばもうまく通じないし、そういうことで、そういう混乱の中でこうした外国人の研修生の受け入れが行なわれていたということになるわけでございますが、この間のあっせんに当たる人々に対する政府の認可といいますか、資格の審査等に関してはこれまでどうなっていたのか。こうした悪質ブローカーが介在する余地が残っているということは、これはその辺に何か不備があるのじゃないかという感じがするわけでございます。その二点についてお伺いいたします。
  296. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 今後のこういった技能研修生の受け入れにつきましては、先ほど申しましたような審査基準というものを厳重に、厳正に、適切に運営してまいりたいと思っております。私ども、こういった前車の轍を踏まないためにも、実は先般、インドネシア関係のやはり同じような技術研修生の受け入れ問題がございました。これは、実は三十名の入国申請がございまして、一件一件各受け入れ企業について実地を調査し、企業の指導をいたしました結果、受け入れ可能である、研修の内容にふさわしいと認められるものについてのみ許可をいたすような措置をとりました。結局、三十名の申請に対しまして十名を許可するというような措置をとっております。今後もこういったことでトラブルを起こしたり、あるいは国際間のせっかくの技術協力がかえってマイナスになるような結果を来たすことのないように十分注意してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  297. 古川雅司

    古川(雅)委員 最後に大臣にお伺いいたしますが、この事件は、やはり監督官庁である労働省としての重大な責任問題であると私は思います。その点についての大臣の御見解を承りたいと思いますし、あわせてもう一点、冒頭に伺いました外国人労働者の移入について、局長の御答弁では、四十二年三月の閣議了解が今日に生きている、今後も大体その方向で進んでいくのだ、そういう意味の御答弁があったわけでありますが、大臣としてはこの点、今後ともどうお考えになっていくか。特に、中高年の能力発揮が国内においてもまだ十分に行なわれていないという点については私も全く同感でございますので、労働大臣はかねてより、すべての労働者に優雅な生活をというキャッチフレーズを掲げまして労働行政を担当していらっしゃいますが、少しこじつけかもしれませんけれども、外国人労働者の受け入れを今後とも規制していくというその理由が、日本の雇用情勢に大きく関連を持っておりますだけに、その辺についての今後の御決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  298. 田村元

    ○田村国務大臣 七日付の朝日新聞に出ております記事、さっそく私も読みました。関係局長を呼びまして事情を聴取いたしました。率直に言って、韓国の方々に対してたいへん申しわけないことをしたと思っております。労働省のほうにも手落ちがあったと、私はあえてはっきり申し上げてよいかと思います。そこで、きょうも私は申したのでありましたが、これからこういう種類の認可をするのに際しては、特に国際関係の問題もこれあり、審査の過程において、かりに認可をするとすればというときに、あらかじめその現場の企業の下見に行くとか、あるいは認可をするとすればこういうようなことで認可をするんだよということをはっきりけじめをつける、そういうことをやらなければ、研修生という名のもぐり的な労働者あっせんということになるおそれがあるから十分気をつけるように、こうきびしく申し渡したところであります。いずれにいたしましても、今後思いを新たにして、再びこのような不幸なことが起こらないように努力をしなければならぬと思います。なお、海外の労働者を日本に呼ぶ、呼ばないの問題でございますが、かつて早川労働大臣も当時この点明言しておりますし、佐藤総理も明言しておるところでありますが、いまの日本は確かに労働者不足であることは事実でございます。しかしながら、この程度の労働者不足だからといってはたして雇用関係が完ぺきに行なわれておるかということになりますと、数字や形としてはすばらしい形になっておりましても、まだまだ十分でないというところはたくさんあると思います。でありますから、特に日本は今後中高年の労働者がどんどんふえましょうから、そういうことを考えましても、海外から労働者を日本に入れるということにつきましては、私どもはイエスとは言えない。われわれは日本の労働者を守らなければなりませんから、日本の雇用関係が名実ともにすばらしい関係になってその上でというなら、そのときはまたそのときでございましょうけれども、いまの程度の姿では、なお国内の労働者の労働条件や労働環境の充実をはかる上においても、また労働者の生活を優雅にするためにおきましても、そのようなことは一切考えておりません。
  299. 古川雅司

    古川(雅)委員 終わります。
  300. 向山一人

    向山委員長代理 次に、古寺宏君。
  301. 古寺宏

    ○古寺委員 東北地方におきましては、出かせぎ者のいろいろな事故が発生しております。出かせぎ災害あるいは賃金の不払い、そしてまた残された家族のいろいろな家庭不和やあるいは青少年の非行化等の問題が起きているわけでございますが、出かせぎをしなければならない原因ですね、これはどういう理由によって出かせぎを余儀なくされるのか。それからまた、この出かせぎをなくする対策として、労働省としてはどういう対策をお考えになっているのか、その点から承りたいと思います。
  302. 道正邦彦

    ○道正説明員 お答えいたします。現在、出かせぎ労働者——季節移動労働者とわれわれ呼んでおりますが、約六十万人おられます。その理由は、農業の機械化が進みまして時間的な余裕ができたこと、あるいは農村での生活環境が変化いたしまして追加所得への希望が強まっていること、にもかかわりませず地元には適当な就業の機会がないというようなことが相まちまして、いわゆる出かせぎという就労形態が依然として減らない、あるいは微増の傾向にすらある、こういうことになっていると考えております。したがいまして、季節移動労働対策の基本といたしましては、何よりも地元に安定した就業機会を確保することが重要だと考えますが、このためにいま労働省といたしましては、関係各庁と密接な連携をとりまして、去る昭和四十六年に制定されました農村地域工業導入促進法に基づきまして、農村地域への工業の積極的な導入をはかりまして、農業従事者がその能力と希望に従って地元で導入企業に就労し得るように、職業紹介なり職業訓練を実施したいというふうに考えております。ただ、遺憾ながらまだ計画からやっと実施の緒についたという段階でございまして、農村への工業の導入は必ずしも多くございません。しかしながら、そういう方向努力するのが基本であろうというふうに考えております。
  303. 古寺宏

    ○古寺委員 まず最初に、出かせぎ労務者は六十万人いらっしゃるというお話がございましたが、この実態調査が全然行なわれていないわけです。これはどういうデータに基づいて、こういう推計をしていらっしゃるのか承りたいと思います。
  304. 道正邦彦

    ○道正説明員 季節移動労働者対策はいろいろほかの行政にも関連いたしますが、労働行政としても非常に重要な問題であるということで、私どもかねてより労働政策の重点として取り上げてきたわけでございます。特に昨年におきましては、いままでと比べますならば、かなり思い切った施策も講じたつもりでございます。その裏づけといたしまして、かなり詳細な調査等も都道府県を通じまして、いたしたわけでございまして、その調査の積み上げの結果といたしまして、先ほど全体として六十万人程度いるということを申し上げた次第でございます。
  305. 古寺宏

    ○古寺委員 これはぜひ一ぺん実態調査を労働省としてやっていただきたいと思うのです。こういうばく然とした数字では、きちんとした対策も立てられませんし、やはりきちっとした実態調査をぜひとも行なう必要がある、こういうふうに考えられますので、これはぜひひとつやっていただきたいと思います。そこで農村地域工業導入法の問題でございますが、昭和五十年までに約百万人の労働力を吸収しよう、こういう考え方に立って、この法律ができているわけでございますが、現実の問題として、これはほとんどもう進行していない。基本計画をつくっている県もだいぶございますが、まだ実施計画までいっておりませんし、実際に今後これを推進するとなりますと、いろいろな問題があるわけでございます。そういう面につきまして昭和五十年までに、いわゆる農村地域工業導入法の目的を達成できる、そういうふうにお考えになっているのかどうか、もう一度お尋ねしたいと思います。
  306. 道正邦彦

    ○道正説明員 全体の計画につきましては、先生ただいま御指摘のとおり、昭和五十年度を目標年次といたしまして、雇用者百万人の規模の工業を農村地域に導入して、そのうちの六十万人は農業従事者をもって充てようというのが計画であります。現在東京、大阪等を除きます四十二道府県で基本計画が定められております。この基本計画に基づきまして百四十一の地域につきまして具体的な工業導入の実施計画が策定されております。四十七年度にはこれが二百四十二の地域について策定される見込みでございます。具体的な工業の導入につきましては、私どものほうで調べました調査によりますと、本年の十月一日現在で三十二の企業が農村地域に導入されております。   〔向山委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その導入された企業に従事している農業の従事者、これはわずかに千三百人程度でございまして、少ないのでございますが、十月一日現在で同じく今後の推計といたしまして、どのくらいの企業が今後入ってくるかというのを調査してみたところ、約百六十の企業が今後確実に導入されるであろうというのが都道府県からあがってきた調査の概要でございます。
  307. 古寺宏

    ○古寺委員 青森県の市町村報告によりますと、出かせぎ者の数が七万五千人といわれております。青森県のただいまの農村地域工業導入法に基づく計画によりますと、二万三千人の方々を吸収しよう、こういう基本計画になっております。ところが、現在土地の取得すらまだ全然できていないわけです。そうしますと、最も出かせぎ者が多い青森県においては、こういう法律ができても何ら救済されない。しかも最近は季節労務者がふえる傾向にあるわけなんです。こういうものを労働省としては一体どういうふうにして解消するか、そのところを聞きたいわけです。
  308. 道正邦彦

    ○道正説明員 先ほど来お答え申し上げておりますように、季節移動労働者対策の基本は、何と申しましても地元に安定した雇用機会を確保する。そのために農村地域工業導入促進も進めているということを申し上げてきたわけでございます。しかし、ただいま先生御指摘のように、かりに計画がそのとおり行なわれたとしても、なおかつ雇用機会が十分でない、こういう御指摘もございまするし、また現状において、先ほど来申し上げましたように農村地域への工業の導入がはかばかしく進んでおりませんから、したがっていろいろ問題があることも御指摘のとおりでございまして、当面いわゆる出かせぎの形で就労される方々が相当数おられるという事実も認めざるを得ないわけでございます。したがいまして、基本的な対策は対策なりに進めると同時に、現実の問題として、いわゆる出かせぎ労働対策につとめることももとより必要でございます。このために労働省といたしましては、関係の全安定機関を動員して、送出地と受け入れ地とのタイアップをはかることはもちろん、都道府県あるいは市町村その他関係団体と連絡を密にいたしまして、くにを出てからくにに帰るまでと申しますか、出かせぎに出かける時点から帰られるまでの各段階を通じまして、対策に万全を期するというつもりで各般の施策を進めている次第でございます。
  309. 古寺宏

    ○古寺委員 まことに抽象的でどうもぴんとこないのですが、次に出かせぎの大きな理由としては、労務賃金の格差ということが非常に大きな問題になっているわけですね。東京へ行きますと三千円以上である、青森県では二千五十円である。実態はもっと低い。こういう賃金格差というものが出かせぎ者をふやしている大きな原因になっているわけでございますが、この点についてはまず建設省から、なぜ同じ労働者でありながら、こういうふうに賃金格差が生じていくのか、この点について承りたいと思います。
  310. 井上孝夫

    ○井上説明員 お答え申し上げます。ただいま建設省では運輸省、建設省、農林省、三省の覚え書きによりまして、設計の労務単価というものをはじいてございます。それについての御質問としてお答え申し上げる次第でございますが、私どものその三省協定に基づきます設計労務単価は、現在それぞれの年度調査時におきます賃金の実態に着目しまして、その賃金台帳から客観的な指標を転記して、その結果によって翌年の補正をいたしまして翌年の設計単価、いわゆる発注のときの労務単価をきめる次第でございます。これは公共事業に使用いたします設計労務単価でございますので、その性格上、賃金のその地域別の実態に基づきまして決定するというような方法をとりまして、その実態をなるべく正直に反映させて公共工事の単価の適正をはかっていくというような意味におきまして、地域の格差の実態、そういうものにつきまして反映しているというのが現状の労務単価のきめ方でございます。こういうように出かせぎその他の労務が広域化してまいるというようなこと、あるいは先ほどから御答弁がありますように、あるいは公共投資等による農村部の雇用機会の増大というような全般の趨勢、それに応じて地域的な格差も縮まってまいるものと考えておりますけれども、私ども公共事業に使用する設計労務単価というものにつきましては、現在のそれぞれ実態を反映して、調査により決定するという仕組みをとっている次第でございます。
  311. 古寺宏

    ○古寺委員 こういうふうにこの賃金の格差が生じているわけでございますが、実態の調査に基づいておる、こういうふうにおっしゃっておりますが、労働省はこういう格差については、どういうふうにお考えでしょうか。
  312. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 労働省で以前から、これらの建設業等の労働者の賃金につきましては、屋外職種別賃金調査というのを毎年実施をいたしております。これによって見ますと、大工とか土工とかいったような職種について申しますと、やはり東京、大阪の地域の賃金と、それから特に東北であるとか、あるいは山陰、南九州といった地域の賃金とは同じ職種ございましても、相当の賃金の開きがございますことは先生御指摘のとおりでございます。私どもこういう地域別の賃金の実態に格差がございますのは、一番基本的には、それぞれの地域における経済水準及びそれぞれの地域の労働力の需給関係等がこういう賃金の格差を生じております経済的な原因である、かように考えておりますけれども、しかし、以前と比較いたしますと、そういう地域間の賃金格差というものも、徐々にではございますが縮小しつつございます。したがいまして、今後それらの低い賃金の地域におきましても、地域開発等が伸展いたしますれば、さらにその賃金の格差の縮小が進んでいくであろう、かように考えておるところでございます。
  313. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは労働大臣にお尋ねしますが、同じ労働者が、青森であるとか東北であるとか、あるいは南九州であるとか、山陰で働いた場合には二千円前後である。それが東京や大阪へ行きますと三千円以上になる、こういうわけで過疎過密が進行するわけでございますね。こういうことを是正するためには、やはり労務賃金の適正化ということが必要になってくると思うわけなのです。こういうことが出かせぎの大きな原因にもなっているわけでございますが、当然こういう問題については労働省がもっと積極的に出かせぎ予防対策として、これは取り組むべき問題である、こういうふうに考えるのですが、労働大臣の御見解を承りたいと思います。
  314. 田村元

    ○田村国務大臣 地域的にある程度の賃金格差があることは、これはやむを得ない場合もありましょうけれども、とりわけ公共事業の労賃等の単価の設定という点なんかで縮めていくことが一番大切じゃないかという感じがします。実は、私は三重県でございますが、先般の大阪の万博の工事が始まりまして、だんだんそれがピーク時になりますと、私どもの三重県に労働者がいなくなりました。労働者といいますことは、大工とか左官とか、とびとかいう人々がいなくなってしまった。それは万博に行けばうんといい賃金になるということでありまして、たいへん大あわてをしたことがございました。私は元来建設行政と公共事業専門でまいりましたが、公共事業の労賃の単価を設定するという点については、なお考える必要があるんじゃないかという感じがいたします。ただ労働省として民間の事業の賃金、それから公共事業の賃金等多種多様でございますから、一がいに幾らが正しいということを統一的に言うということより、やはりその業種業種の格差を論じていかなければならないと思いますけれども、おっしゃることは私自身まことにごもっともな点が多々あると思いますので、そういう点で労働省としても、格差是正のために努力をしていくように私からも指示していきたいと思います。
  315. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで建設省は実態調査に基づいて、こういう賃金をはじき出しているというお話がありましたが、実態調査内容が問題なんです。御承知のように、青森県ではいま世紀の大工事といわれる青函トンネル工事もございます。東北縦貫道路工事もあります。新幹線の工事も始まっています。同じ工事の内容でありながら、地域によっていわゆる格差があるというところに問題があるわけです。せっかくの世紀の大工事があっても、その地域で就労しないで、東京や大阪へ出かせぎに来なければいけない。しかも、その出かせぎのために家族がばらばらになって、いろんな悲劇がいま起きているわけでございます。こういう問題を建設省も労働省ももっと実態に即した調査というものをやりまして、そしてこういうような出かせぎを防止するような、そういう考え方で進みませんと、この問題はいつまでたっても解決がつかぬと思うわけでありますので、建設省のほうには、今後実際に実態調査をする場合に、その内容が実態と一致していない、こういう面が非常に多いわけですが、今後その調査方法を改善する意思があるかどうか。もう一つは、労働省としてもこの実態調査を行なう意思があるかどうか。建設省と労働省からお答えを願いたいと思います。
  316. 井上孝夫

    ○井上説明員 先ほどお答え申し上げました農林、建設、運輸三省の覚え書きによります労務単価の調査につきましては、かねてから実施しているものをより実態に即するように毎年改善の努力を続けてきている次第でございます。先生御指摘のように、より実態に沿って客観的に調査が出るような方向で、さらに調査のくふうは続けてまいりたいというように考えております。
  317. 道正邦彦

    ○道正説明員 先ほど来の先生の御指摘ごもっともでございますので、私ども、出かせぎの季節労働者の実態が十分把握できるような調査には今後十分努力をしてまいりたいと思います。
  318. 古寺宏

    ○古寺委員 これは三省の覚え書きでやっておられるそうですが、当然労働大臣もこれは責任がある問題でございますので、よく関係大臣ともお話し合いをいたしまして、三重県にも現実にそういう問題が大臣の地元で起きているわけでございますので、こういう問題は早急に解決する方向でひとつ検討していただきたい、こう思います。  次に、出かせぎ者の援護対策の問題の中に健康診断の問題がございますが、健康診断を受ける人が非常に少ないわけです。そのためにいろいろな事故が非常に発生しているわけでございますが、この点について、これは労働省が積極的に指導しないためにこういうふうになっているのか、あるいは予算が少ないために、こういう結果になっているのか、その辺について承りたいと思います。
  319. 道正邦彦

    ○道正説明員 出かせぎに出かける前の地元での健康診断につきましては、四十七年度予算におきまして、補助事業といたしまして計上いたしてございまして、特に労働基準法の規定上五十人未満の事業場につきましては、就業時の健康診断の義務がございませんので、五十人未満の事業場に就労する方々を中心に、重点に健康診断を実施したい。予算としては、ほとんど全員の健康診断を実施したいというふうに考えておりまして、措置もいたしてございますが、都道府県あるいは市町村その他関係団体と協力いたしまして、制度の趣旨どおりに一人でも多くの方が、できれば全員が就労前に健康診断をお受けいただくように努力をしたいというふうに考えております。
  320. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ厚生省お見えですから、あとで労働省のほうをやりますから、厚生省のほうに移ります。      ————◇—————
  321. 小沢辰男

    小沢委員長 それでは厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。古寺宏君。
  322. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど厚生大臣もお聞きになっておられたと思うのですが、台湾のお医者さんの問題でございますが、台湾に引き揚げた場合には、僻地では非常に困るわけでございます。そういうことについて、政府としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。あるいは今後新しい中国とのいろいろな政府間交渉において、そういうような問題がどういうふうに交渉が行なわれる予定になっているのか、その点について承りたいと思います。
  323. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 先ほどから台湾人の医師の問題について御意見を承っておったのでございますが、現在日本におる台湾のお医者さんの問題、あるいはまた現に私の承知しておるところでは、いまむしろ招聘することを交渉中のところもあるやに伺っておるのであります。そういうふうな状況で、日本の医師の不足をカバーするために特に各地方団体では非常な努力をしておるような状況でございます。したがって、この台湾の方のお医者さんがここで日本から減少するということになりますれば、医師の確保の点からいっても、私は重大な問題だと考えておったのでありまして、幸いに先ほど外務省なり、あるいは法務省の御見解を承りまして、大体現状でいくのだということで私自身も非常に心強く思った次第でございます。  私は、やはりこの問題は厚生省といたしましてはお医者さんの地位が安定をして日本の医療に従事できるようにというふうな方向で政府としても考えてもらうように、また考えなくちゃならぬじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  324. 古寺宏

    ○古寺委員 聞くところによりますと、台湾のお医者さんも非常に少ない、こういうふうに承っているわけでございますが、これは人道上の問題として、やはりよく検討する必要があるのではないか。台湾としても、将来健康保険制度等の社会保障制度ができた場合には、当然現在日本にいらっしゃるお医者さんが引き揚げるということも考えられるわけでございますが、その際に厚生省としては、その後のいわゆる僻地の医師確保、これについてはどういうような対策を現在お考えになっているか、この二つの面について大臣から承りたいと思います。
  325. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 日本の医療行政といたしましても、やはり、もちろん日本人の医師で充足できる状況を築き上げていくということが、これは本筋ではないかと思います。  したがって、この医師の養成の問題、あるいは偏在の問題、いろいろ問題がございましょうが、これもまた開業医等の関係その他いろいろむずかしい問題もございまして、なかなか一つのきめ手というものがないことにわれわれも当惑をしているのでございますが、基本的には、やはり総体的に医師が不足であるという事実の上に立って医師の増加をはかっていく、また同時にいろんな方法を講じまして、医療の確保、僻地に至るまで医療の確保という、そういったような機動的な、あるいは親元病院の整備とか、いろんなことを講じまして、この総体的な医師の不足をカバーするような施策を極力強化してまいりたいと思っておるのでございます。
  326. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、医療制度につきましては国民のための医療基本法の制定ということが前から叫ばれているわけでございますが、この問題については、厚生大臣としては今後どういうふうに対処するお考えか、承りたいと思います。
  327. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 医療基本法につきましては、すでに御承知のとおり前国会に提案をして、結果的には廃案となった次第でございまして、こういった医療基本法を制定して、そうして医療行政の基幹にするという姿勢はもうすでに政府としてきまっておるわけでございまして、やはりこういった基本法の制定というふうな方向で今後とも努力を続けてまいりたいと思います。
  328. 古寺宏

    ○古寺委員 前国会で提出いたしました医療基本法に対しては、非常に批判が多いわけでございますが、今後改定する御意思はおありですか。
  329. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 医療基本法、あの制度のままで再提案をするのか、あるいは御承知のとおり抜本改正法の問題もございますし、財政対策の問題もございます。こういったようなものを含めて、なお今後検討して、そうしてそれを補正して提案をしたいと思うわけでございます。誤解を招いてはいかがかと思いますので申し上げますが、いま直ちにあれを変えて提案をするというふうなことを考えているわけではございませんが、しかし、そういった一連の問題をあわせて検討はさせていただきたいと存じます。
  330. 古寺宏

    ○古寺委員 これは先ほどからの質問関係のある国保の問題でございますが、広域医療センターの問題につきましては、今年度から二カ所モデル地区として発足をしておりますが、これは単年度だけで終わる計画なのか、今後引き続いてこういう医療振興対策というものをおやりになっていくお考えなのか、その点について承りたいと思います。
  331. 北川力夫

    北川説明員 明年度におきましても、概算要求におきましては六カ所につきまして、今年度の下北医療センターと同様な構想のもとに概算要求をしている状況でございます。
  332. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、ことしやった二カ所については今後もう全く援助はないわけでございますか。もうこれで終わりでございますか。
  333. 北川力夫

    北川説明員 これも先ほどちょっと申し上げましたが、私どものほうは国民健康保険というサイドでの医療センター的なものに対する助成でございます。しかし、医療行政全体といたしましては、単に国民健康保険の側からの親元病院に対する助成だけではなくて、いわば地域医療の確保、充実という見地から、あるいはまた政策医療の推進という見地から、僻地医療につきましては、いろいろな多角的な助成が行なわれておりまして、そういう意味合いでは、私どもは今年度のいわゆる二カ所の医療センターに対する助成、これは国民健康保険サイドから見た助成でございますので、医療行政全体といたしましては、相当広範囲な角度から助成が現在も行なわれ、また今後も行なわれるように考えております。
  334. 古寺宏

    ○古寺委員 国民健康保険の立場からしましても、単年度だけでこれを打ち切るということは、とうてい所期の目的を達成することはできないと思うわけなんです。私どもは、よく言われるわけなんですが、広域医療を推進するために、また医師を確保するためには特別法の制定が必要じゃないか、こういうことをいろいろと要望されておりますが、そういうような特別法を制定して医師の供給を確保する、こういうようなお考えは厚生省ではお持ちですか。
  335. 北川力夫

    北川説明員 お尋ねの趣旨は、あるいは僻地医療の振興のための特別な法制というふうなことであろうかと存じます。  私どもは現在のところ、そこまでのものを法制化するかどうかにつきましては、なお十分検討を要する問題だと思いますけれども、ただ予算面の拡充といたしましては、いまも申し上げましたとおり、単に国民健康保険、あるいは保険のみならず医療全体の立場から、そういう問題について十分これを画期的に充実をしていく、こう考えておるわけでございます。
  336. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうことでは国民の期待にこたえられないと思うわけでございますが、これはあまりやっておりますと、また長くなりますので、次に移ります。  来年の一月から老人の医療費が一応公費負担になってくるわけでございますが、その際に、これが国保会計を相当圧迫するのじゃないか、財政を圧迫するのじゃないか、こういうことをいろいろ心配しているわけでございますが、これに対する対策としては、どういうような方策をお考えでしょうか。
  337. 北川力夫

    北川説明員 仰せのとおり、老人医療が無料化になりますので、老人医療を受ける資格のある方々につきましては、国民健康保険の場合には七割の給付に対して、さらに三割が上のせになるわけでございまして、そういう意味合いでは、勢い受診率も増加をしてまいりますでしょうし、また老人でございますから、医療内容相当多額の経費を要することになると思います。  そういう意味合いで、実は通常のベースで考えますと、老人医療実施の実績がないわけでございますから、来年一月からの分については、なかなかむずかしい問題であろうかと思いますけれども明年度予算におきましては、そういった老人医療の実施に伴う国民健康保険医療費の増高をまかなうための保険料増加をできるだけ抑制するという意味で、特別な補助金として概算要求に五十二億円を盛り込んでおるというふうな現状でございます。
  338. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないので、きょうはあと大事な点を二、三お聞きして終わりたいと思いますが、国民健康保険の場合には、たとえば青森の国民健康保険に加入している人が東京へ来た場合には受診ができない。これは給付の内容あるいは保険料等いろいろ問題があるかと思いますが、こういう点については、やはり政管健保等と同じように、全国どこに行っても受診ができるようにしていただきたい、こういう要望が強いわけでございますが、この点については、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  339. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまの御意見のような方向で、いま検討しておりまして、抜本改定の中でも、そういう方向でこれに対処したいというような案の内容をもっておるような状況でございまして、御意見の方向検討さしてもらいたいと思います。
  340. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、かつて標準保険料の問題が、内田厚生大臣のときでございますか、おやりになるようなことをおっしゃった時点があったのですが、それが引っ込んでしまったわけで、非常に残念なわけでございますが、今後地域格差——ある町村におきましては国民健康保険料が四万円近い、あるところに行くと三千円ぐらいである。しかも非常に高額な保険料を払っている内容を、実態を調べますと、高額の給付を受けている方が七、八人いるためにそういうふうになっている、こういう問題がございます。  そこで、五%の調整交付金だけではこういうような格差の是正もできないし、国民健康保険の今後の財政を健全ならしめるためには、やはりこれを一〇%まで伸ばす必要があるのじゃないか、あるいは高額給付者に対する助成を考える必要があるのじゃないか、こういうふうに考えるわけなんですが、この点について厚生省としては、どういうようなお考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  341. 北川力夫

    北川説明員 標準保険料の問題につきましては、ただいま先生仰せのとおり非常にむずかしい問題でございますので、すぐには実施はできないというふうな結論に達したわけでございます。ただ仰せのとおり、被保険者の保険料負担の公平をはかるというふうなこと、あるいはまた保険者相互間の負担の公平をはかるというふうな見地から、国民健康保険制度の運営について相当な改善を加えなければならぬという点は、まさしく御指摘のとおりでございます。  そういう意味合いで、先般の抜本改正案が問題になりましたときに、国民健康保険に対する助成について、現在の四〇%の交付金と五%の調整交付金というふうなものを改めまして、三五%と一〇%に対する、こういうふうなことが一時議論されたことあるわけでございますけれども、最終的には現行どおりに落ちついたわけでございます。しかし、今後いわゆる抜本改正というものを進めてまいります場合に、国民健康保険のいま申し上げましたような全般的な負担の公平という見地から、こういう問題をどう取り扱うかは十分検討してまいりたいと思っております。  なおまた、高額の医療につきましては、先般の抜本改正案でも、一定額以上の高額部分については償還等によってこれをまかなうというふうな案もございまして、何らかのかっこうで被保険者の負担を軽減をしていく、受診者の負担増を抑制する、こういうことがすでに考えられておりますので、そういう線に沿って、今後十分に妥当な案を考えてまいりたい、このように考えております。
  342. 古寺宏

    ○古寺委員 これは大臣にお尋ねしたいのですが、田中総理は日本列島を改造する、こういう構想をお示しになっているわけでございます。先ほど申し上げましたように、僻地におきましては医師確保ができない。保険あって医療なし、そういう現実の姿になっているわけでございます。それを何とかしたいというわけで、町村長さんがわざわざ台湾まで出かけていって医師を確保する。今回の日中国交回復に基づいて、現在また台湾へお出かけになっていろいろ折衝をしているわけなんですが、こういうことについて政府は拱手傍観をしている、こうしか考えられません。あるいは国民健康保険の問題にいたしましても、同じ県内でもこの格差が非常に大きいわけでございます。  今後こういうような問題をどう日本列島改造論の中で位置づけて、そうして国民の医療の機会均等あるいは負担の公平、こういうものを実現するとお考えになっていらっしゃるのか承って、質問を終わりたいと思います。
  343. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 日本列島改造論につきましては、具体的にいまどういうふうな構想でこれを実現していくかということにつきまして、各省でそれぞれ計画を練っておることは御承知のとおりでございます。やはり日本列島を改造して——私もいつも申し上げておったわけでございますが、日本列島の改造というのは単に橋や道路の問題ではなくて、必ずこれに伴って文化施設なり医療の施設なりというものが平均をした、つり合いのとれた改造論でなくてはならないというようなことで、一般の論議でこういった問題が多く論じられないので、いわばそういったような公共事業的な日本列島改造というふうにあやまって考えられがちであると思うのでございますが、そういうことでは、ほんとうの日本列島の改造はできないのでございまして、私は、この医療なり文化施設なりというものが日本全体に均てんをして健全に発展をしていくという方向で、この審議を進めていかなければならぬと考えております。      ————◇—————
  344. 小沢辰男

    小沢委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を続けます。古寺君。
  345. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどのこの三省間の協定の問題でございますが、労働省も入っているかと思ったら、農林、運輸、建設の三省だということで非常にがっかりしたわけでございますが、今後この三省に労働省もやはり入るべきである、こういうふうに考えるのですが、大臣の御見解はいかがでございますか。
  346. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 以前公共事業の賃金単価につきましては、三省協定の前に五省協定というものがございまして、労働省も入っておりまして、あと大蔵がたしか入っておったと思います。私どもも五省協定の当時その問題に関連したことがございますが、私、ほかの仕事にかわっておる過程でございまして、その後どういう経過であったかは詳しく存じませんが、主として問題は公共事業に関連する問題だということで、三省でその問題を処理されるということになって、労働省が抜けたというふうに聞いておるわけでございます。  したがいまして、また労働省が戻るということは、ただいま考えておりませんけれども先ほど建設省の担当官のほうからも、その改善についてさらに検討したいというお話がございましたので、そういう点につきましていろいろ御相談がございますれば、私どもといたしても、でき得る限り協力をするようにいたしたい、かように考えるわけでございます。
  347. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省がその中に入っていってこそ、こういう出かせぎ問題の解決ができるのであって、入る気がないということはやる気がないということになりますね。ですから、ひとつそういう消極的な考えではなしに、積極的に、あらゆる困難をおかしても中へ入っていって、こういう問題と取っ組んでいただきたいと思うのですが、これはひとつ大臣から御決意を承りたいと思います。
  348. 田村元

    ○田村国務大臣 大蔵省と労働省が抜けたことはいろいろと事情があるようでございます。いま基準局長に聞いてみましたが、ちょっとやそっとでは言えないような長い理由もあるようでございます。ただ言えますことは、いまここで私が必ず入れろとか、労働省を入れなければ困るということを言っていいかどうかは考えなければなりませんが、実態調査その他で十分の御協力を申し上げる、それからまた三省も、労働省に万事ひとつ大切なことは相談かけてもらいたい、そうすればわれわれはうんと御協力申し上げる、こういうわけでございまして、入る気がない、やる気がないというわけではございませんので、どうぞひとつ御理解のほどをお願いいたします。
  349. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも局長さんがじゃましたので、これは大臣も渋ったようでございますが、残念でございます。  そこで、この出かせぎの問題で農林省にお尋ねをしたいのですが、出かせぎをする場合に厚生年金と農業者年金の通算の問題が非常に強く要望されているわけでございますが、この点について農林省はどういうふうにお考えですか。
  350. 江上幸夫

    ○江上説明員 お答えいたします。  御意見のように確かに農業者年金に入るためには国民年金に入っていなければならないということでございまして、一方出かせぎに行きまして厚生年金に入りますと国民年金から抜けるということになりまして、その間農業者年金の加入ができないというような問題がありまして、農業者年金制度につきましての重大な問題というふうに考えております。  農業者年金制度の改善につきましては、今後でさましたら近い将来にこれは検討いたしまして、その問題も取り上げまして検討したいというふうに考えております。
  351. 古寺宏

    ○古寺委員 出かせぎ互助会というものを秋田県や岩手県等がつくってやっているのですが、この中で新聞の問題がございます。郷土の新聞を出かせぎ先に発送する、こういう問題がありまして、これに対しては国の助成が全くないわけでございますが、秋田県の場合ですと、これが約二千万円ぐらい県費を持ち出してやっているようでございますが、こういう点については今後援護対策としてお考えでございますか。
  352. 道正邦彦

    ○道正説明員 出かせぎの皆さんが郷土の新聞を非常に楽しみにされておるということは事実でございまして、四十七年度の援助計画を策定する過程で、私どももその点十分検討したわけでございます。ただ六十万人にのぼりまする方々に全部日刊紙をお配りするというのは、予算の額もかなりになりますので、四十七年度の計画といたしましてはこれを見送りまして、関係団体が編集いたします、ふるさとのたより式のものに限定したわけでございます。  四十七年度の援助計画の実施状況等を見まして、どうしてもそういうものじゃ足りない、やはり日刊紙がいいのだということであれば、今後十分検討しなければならぬというふうに考えております。
  353. 古寺宏

    ○古寺委員 これは十分検討する前に、各県から強い要望が出ておりますので、もう少し前向きにひとつ検討してもらいたいと思います。  それから出かせぎの福祉センターの建設の問題でございますが、予算の大体半分くらいがこのセンターの建設予算になっているわけでございます。一向に進んでいないようでございますが、これの見通しについてひとつ承りたいと思います。  なお、来年度はさらにこれをふやす計画があるのかどうか、お願いいたします。
  354. 道正邦彦

    ○道正説明員 四十七年度予算におきまして、東京、愛知、大阪三カ所にセンターをつくることとなっております。現在愛知につきましては場所もきまりました。それから予算もいま県会に提出をお願いして御審議をいただいていると聞いております。それから大阪も大体場所が内定いたしまして、これも事務上の問題は特にない。あとは実施に移すというふうに承知いたしておりますが、問題は東京でございます。東京につきましてはいろいろの事情がございまして、当初予定いたしておりました晴海地区ではどうもうまくいかないというような事情も出てきまして、現在上野の駅前の、もとの上野の安定所の庁舎あと、ここを一応の候補地として東京都と折衝中でございます。しかし、これもそう時間を待たずに決着を見るものと考えております。なお来年度以降も同じく所要の地にセンターをつくってまいる方針でございます。
  355. 小沢辰男

    小沢委員長 古寺君、時間も大体来ておりますから、結論を急いでください。
  356. 古寺宏

    ○古寺委員 最後に、出かせぎをしまして死亡した場合、非常に補償が少なくて困る。何とか自賠責並みに引き上げることができないか、こういう要望が非常に強いわけでございますが、この点について、労働省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  357. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 出かせぎの方が出かせぎ先において業務上災害にあわれましてなくなられましたような場合には、大部分出かせぎの方は建設業でございますし、それは全部労災の適用を受けておりますので、労災保険に従いまして、所要の補償措置を講じておるところでございます。  ただ労災の給付につきまして、自賠等から見て、その額が必ずしも十分でないのではないかというような御意見につきましては、各方面からそういう御意見が出ておるわけでございますが、労災の場合は死亡された場合につきましても遺族年金を主にいたしておりまして、われわれ調査いたしておりますところでございますと、遺族の平均受給期間等で算定いたしますと、金額の総額は決して自賠の方々に劣るわけではないわけでございますが、年金でございますために、その遺族が受給される期間に長短がございまして、短い方でございますと低い金額になる場合もございます。それから年金該当者がおられませんと一時金でございますが、そういう場合には非常に少なくなる等の問題があるわけでございます。  これにつきましては労災の補償は、基準法の災害補償等との関連もございますので、そういう関連も考えつつ、今後給付の改善について検討してまいることにいたしたい、私どもかように考えておるところでございます。
  358. 古寺宏

    ○古寺委員 一時金の場合は千日分とか、あるいいは年金の場合は四百日分いただく。しかしながら二年間はストップされるとかいろいろ問題がありまして、私どもが実際に過去の労災事故でなくなった御家庭をいろいろ実態調査をいたしてみますと、ほとんどの人が生活保護家庭に落ちたり、あるいは子供の高校進学を断念しなければならぬ、こういう事態になっているわけなんです。こういうものに対してやはりもっとあたたかい補償というものを当然考えてあげなければいけない。自動車事故でなくなった人の場合はその点が非常に有利になる、こういうことを労務者の方々がおっしゃっておりますし、あるいは関係当局の方方も強くそういうことを要望しているわけでございます。  こういう点については、やはりもう少し実態を調査をしまして、実態に合った措置というものが緊急に必要ではないか、こういうふうに考えられますので、この点につきましては、最後に大臣からひとつ御答弁を承りたいと思います。
  359. 田村元

    ○田村国務大臣 給付改善等につきまして、今後真剣に検討いたします。
  360. 小沢辰男

    小沢委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会      ————◇—————