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渡邊(健)
政府委員 労働基準法が労働憲章といわれるものであるという点につきましては、われわれも十分に配慮をいたしておるところでございまして、今回単独法の形をとりましたけれ
ども、基本法の精神はいささかもそこなわれないようにするという配慮につとめたつもりでございます。
しかるに、基本法の一部改正という形をとらず、なぜ単独法としたかという点につきましては、最近の
労働災害の
傾向より見ますときに、基準法のように直接の雇用関係のみを
前提とする規制のしかたでもって
災害を的確に防止することができないいろいろな
状況が出てまいっておるということ、すなわち
機械や材料などにつきましても、製造、流通の段階における規制が必要になってきておる、あるいは直接の雇用関係だけではなしに、重層下請関係だとか建設のジョイントベンチャー等、特殊な雇用関係下における規制も強めていかなければ
災害が防止できない
状況になっておるということ、あるいは特定の有害
業務に従事した者につきましては、雇用関係にある間だけの健康管理ではなしに、離職後にわたってまで健康管理を確保する必要があるというようなこと、あるいは
公害の防止に対する配慮を労働衛生にあわせて行なう必要があるということ等々の事情は、直接の雇用関係を
前提とします基準法のワクよりはみ出しておる部面があるわけでございます。こういう点が基準法と別個に単独立法といたしました第一の点でございます。
さらに第二の理由といたしましては、最近の
災害の
状況からいたしまして、その防止のためには、
最低基準を設定し、それを確保するということは、もとより根本でございますけれ
ども、その施策のみでは有効な
災害の防止に十分でない。すなわち
災害防止の実をあげますためには、
最低基準の順守、確保のほかに、さらにそれとあわせまして、
安全衛生教育の徹底であるとか、あるいは
技術指針や望ましい
産業環境の標準をつくる等によりまして、安全かつ快適な
職場環境を形成する必要があること、さらに
最低基準の順守を容易ならしめるために、
中小企業に対して
技術的な援助、財政的な援助等、幅広い行政を展開する必要があるというようなこと、これらのことからいたしまして、基準法のワクを越えた幅広い総合的な労働
安全衛生行政を展開するためには、やはり別個の
法律にしたほうがいいのではないか、かように
考えて単独法といたしたわけでございます。
なお立法
技術的に申しますと、この関係の条文は全部で百条をこえる
法案になりますので、基準法の中にそれを全部入れるということも、立法
技術的にも非常に困難なことでございますし、また一部基準法に残し、一部指導行政等につきまして外にするという点につきましては、やはり
安全衛生というような人の生命、身体にかかわるものにつきましては、総合性ということが大事ではないかという
観点から、そういう意味で統一的な立法にすることが適当である、かように
考えて、基準法と別個の単独立法にいたしたわけでございますが、最初にも申し上げましたとおり、基準法の精神というものは、いささかもそこなわれてならないという
観点から、本法の第一条におきましては「基準法と相まつて、」ということで、両方の
法律の
考え方の一体性を明確にいたしておるところでございます。