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1971-07-19 第66回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月十九日(月曜日)     —————————————  議事日程 第四号   昭和四十六年七月十九日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑    午後一時四分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 船田中

    議長船田中君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。北山愛郎君。   〔北山愛郎登壇
  4. 北山愛郎

    北山愛郎君 私は、日本社会党を代表して、総理所信表明に関連し、特に重要な事項につきまして質問をいたしたいと存じます。  所信表明演説を聞いて、いつものことではございますが、清新な気魂と情熱を欠き、具体性に乏しい官僚の作文に幻滅を感じたのは、私一人ではなかったと思います。(拍手)  この演説で述べられておる政策の大部分は、すでに総理公約をしてきたものであり、しかも六年半余の施政のもとでも実現できなかったものであります。なぜそれが実行できなかったのであるか。残る任期の中でこれだけは必ず実行するというような具体性のある考え方を私どもは期待しておりましたが、残念ながら、総理はそのような誠実さを持っておらなかったということは、ほんとうに遺憾に思うのでございます。(拍手)  いま、保険医の総辞退によって混乱を続けておる医療保険の問題も、昭和四十二年以来、健康保険の抜本的な改革公約しながら、びほう策を続けてまいりました政府の怠慢の結果であります。厚生大臣医師会長のやりとりがかわされておりますけれども事態は一向に改善を見ておりません。国民生活に及ぼす影響はますます深刻化いたしております。  わが党は、この事態をすみやかに収拾するために、一昨日新聞に発表したとおり、現状を六月三十日の状態に戻して、二カ月間の凍結期間というものを置いて、その間に、政府次期通常国会提案をすべき抜本的改革案を取りまとめて発表するということ、同時に、その改革案には、政管健保への二割の国庫補助、老人、乳幼児などの医療費無料化公的医療機関の拡充、公平な保険料、適正な診療報酬体系などを含むことを提案しておるのであります。  総理は、われわれの提案を受け入れて、みずから先頭に立ってこの困難な事態収拾に乗り出す決意があるかどうか、この点をまずもってお尋ねをいたしたいのであります。(拍手)  次に、農業の問題でありますが、この問題もまた、いまの日本農業経済高度成長の完全な犠牲となって、農村は荒廃しております。これは佐藤内閣悪政最大のものといわなければなりません。事態はまことに最悪の事態であり、昭和四十三年をピークとして農業生産は停滞をしております。農家の大部分兼業農家になっております。しかも農産物の輸入がふえておる。自給度は下がっておる。こういう事態改善するためには、十年前に私はこの壇上から社会党農業基本法趣旨説明を行なったことを思い出しますが、あの当時に返って、社会党は、次の通常国会農業再建に関する根本的な政策を準備いたしておりますが、政府もまたこれに応ずる考えはないか、そして、農業再建のために政策の対決をすべきではないか。そのために、いま政府計画しておりますような農産物自由化政策、牛肉、乳製品、果汁、そういうものの自由化は、その時点まで少なくとも保留すべきでないかと思いますが、総理の御見解を承りたいのであります。  次に、所信表明の最も注目される部分は、言うまでもなく、世界を衝動させましたニクソン大統領中国訪問ニュースに対して、総理がどのような対応をされるだろうかという点でありましたが、率直に言って、失望の一語に尽きるのであります。(拍手)  ニクソン大統領訪中は、世界の意表をついた劇的なニュースでございましたが、内容的に見ましても、世界、特にアジア政治構造に画期的な変化を及ぼすものであり、ベトナム戦争収拾、あるいは台湾問題の処理、中国国連加盟につながり、戦後二十年続いた中国封じ込め政策転換の重要な意味を持つものであります。  したがって、一昨年ニクソンとの会談で、アメリカ極東戦略の片棒をかつぐことを約束し、自衛隊増強し、中国国連代表権回復を妨害し続けてまいりました佐藤総理としては、このニュースに対してどのような考え方を持っておられるか、これを明らかにしていただきたいのであります。  総理は、新聞記者に対して、あわてないよ、来年のことだからね、鬼が笑うよ、と言ったそうでありますが、これでは漫画にしかなりません。笑う者がだれであるか知りませんけれども、少なくとも、笑われるのは総理自身ではないでしょうか。(拍手)  ちょうどキッシンジャー補佐官北京を訪れているそのころに、佐藤総理は、アメリカレアード国防長官を迎え、自衛隊の素質、訓練のすぐれていることにおほめのことばをちょうだいし、防衛力整備近代化日本周辺防衛肩がわりインドシナヘの経済援助について話し合いをやっておるということは、これはきわめて皮肉な対照といわなければなりません。  米国は、一方ではわが国に軍備の増強極東防衛肩がわりを押しつけながら、片方の手では中国接近をして、そして日本中国関係はいつまでも対立をさせる、アジア人同士をけんかさせる、これがいわゆるニクソン・ドクトリンというものではないでしょうか。総理はこの点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか、承りたいのであります。(拍手)  今回の電撃ニュースが、日本政府事前の示唆も相談もない、これは、アメリカと親密な関係にある、ニクソン盟友である佐藤総理を完全に無視したやり方でございまして、私どもも、まことにけしからないと思います。しかしまた、政府外交当局もずいぶんうかつだったといわなければなりません。  五月十四日号の朝日ジャーナルに、山極晃という人が、「ニクソン大統領盟友佐藤首相頭越し中国を相手にしてカードを切り始めた。」こういう書き出しで、「急展開する米中関係」という論文を書いております。また、六月九日の日経新聞にも、武山論説委員長が、「米中の急展開」と題して、「日本は再び“笑い物”か」という、今日の事態を予測する記事を書いておるのであります。  一体、外務省は、何を勉強し、何を調査しておるのでしょうか。想像力判断力を欠いた官僚独善外交の立ちおくれを痛感せざるを得ないのであります。(拍手)  総理は、所信表明の中で、ニクソン中国訪問アジア緊張緩和に役立つものとして歓迎すると言っておりますが、もしそれがほんとうなら、第四次防衛力整備計画を中止し、自衛隊増強をやめるべきではないでしょうか。防衛力を増大させ、アジア安保体制を強化すれば、中国その他のアジア各国日本軍国主義復活への警戒心を刺激して、対立緊張を高めることは当然であります。政府は、帝国主義軍国主義汚名すらまでアメリカから肩がわりすることになるでしょうが、この点についての総理の御感想を承りたいのであります。(拍手)  この事態の中で政府のなすべきことは、まず第一に、中華人民共和国政府国連における地位回復を妨害する一切の工作をやめることであります。わが国台湾に亡命した蒋介石の国民政府との間に結んだ日華平和条約は、周知のとおり、二十年前、アメリカの故ダレス特使圧力によったものであり、今日アメリカそのもの北京政府接近する以上は、われわれもまたこの台湾との虚構の関係を清算し、中国との正常な関係を回復することは、むしろ当然というべきであります。(拍手)  ことしの秋の国連総会において中国国連における代表権を回復することは、ほとんど必至であると考えます。中国はこれによって国際政治の舞台に乗り出し、世界の大小の国々中国との国交を開くでございましょう。わが国はその情勢に便乗していくならばそれでいい、というものではございません。日本は、アメリカやカナダ、イタリアその他の国々とは違って、満州事変以来十四年間中国を侵略した戦争あと始末がついていないのであります。それだけに、日本はどの国よりもおくれてはならないのであります。もしもこのままぐずぐずして、世界じゅうの国々中国国交を開いたときに、そのあとからしぶしぶとついていくとするならば、そのときの条件はきわめてきびしいものであることを予想されるのであります。  詳しくは申し上げませんけれども、何としても、いまこそ中国との国交回復に正式に踏み出すべきときであると信じます。(拍手佐藤総理北京に行くべきときであると思います。(拍手)  もちろん、その際は、中国一つであり、台湾中国の一部であり、中華人民共和国政府中国を代表するただ一つ正統政府であるという大原則だけは確認をしておく必要があるのであります。もし佐藤総理にこれができないとするならば、すみやかに退陣をして、この事業をなし得る新しい政府をつくるべきであります。(拍手総理はいかがお考えでございましょう。  日本社会党は、長い間一貫して日中友好国交回復運動を続け、きびしい批判と攻撃を受けながら、五回にわたる代表団中国に送りました。当初の団長として訪中をした故淺沼稻次郎委員長は、この運動のためにとうとい犠牲となったのであります。この話し合いの過程の中で、国交回復後におけるアジア安全保障につきましても、個別的な不可侵条約あるいは集団的な平和保障体制可能性についても話し合われたのであります。われわれは、この重大な情勢の中で、ことしこそは日中国交回復の達成のために社会党全力をあげる年である、こういう決意であります。  また同時に、私は、昭和三十一年、故鳩山総理が、与党内一部の反対を押し切ってモスクワにおもむき、宿望の日ソ国交回復を進めたとき、当時の社会党が、鈴木茂三郎委員長の指導のもとに、鳩山さんに協力をしてこれを成功に導き、やがて日本国連加盟が実現するに至ったことを思い起こすのであります。(拍手)  平和と民主主義を守るため、また、国家国民の真の利益のために必要であるならば、日本社会党は、保守党政権であろうとも、きん然としてこれに協力を惜しまないことをここに明らかにしておく次第であります。(拍手)  総理所信表明には、沖繩核抜き本土並み公約が実現されたと称しております。われわれも、第二次大戦においてはかり知れない戦禍の犠牲をこうむった上に、二十六年間本土から切り離され、異民族の圧制のもとに忍従をしいられてきた沖繩同胞祖国復帰をあたたかく迎え、経済生活に不安のないようにあらゆる努力を尽くす決心であります。そのため、わが党は、国会閉会後直ちに十数名の国会議員を中心とする調査団沖繩に送り、復帰に伴う諸般の問題を徹底的に調査、研究する予定となっております。  しかしながら、沖繩の真の返還とは、核も基地もない、毒ガスもない沖繩に返すことであり、沖繩県民軍事基地から解放することでなければなりません。沖繩の琉球新報の世論調査を見ましても、今度の政府返還協定に対する沖繩人たちの評価というものは非常にきびしいのであります。この世論調査に示すとおり、政府核抜き本土並み公約は、協定には全く生かされておらないのであります。アメリカ核兵器所在を発表できないとするならば、そのあるなしを検証することを約束することはできないでありましょう。核の再持ち込みにつきましても、核兵器所在を明らかにできなければ、事前協議の申し入れをするはずがないのであります。事前協議がなければ、ノーと言うこともできないでありましょう。  また、返還協定の第七条にきめておる、いわゆる資産移転などのためのアメリカ側に支払う三億二千万ドルの中には、核兵器撤去の費用が含まれておるといっております。一体その金額は幾らになるでございましょうか、また、これに見合う核兵器の量は幾らでございましょうか、この際、これを明らかにしていただきたいと思います。  政府は、日米共同声明の第八項で核兵器についての日本政府政策に背馳しないようにするということをアメリカ大統領が約束しておるのであるから、これ以上の保証はない、これを信頼しろというのが政府の従来の説明でございました。しかし、日本政府核兵器に対する政策とは何でありましょう。これは非核三原則そのものではなくて、アメリカの核の抑止力にたよるということがその前提となっておるのであります。アメリカ核抑止力を認めることが政府政策である以上は、日本を守るという理由でアメリカ側核兵器を持ち込んできても、政府政策に違反することにはならないのではないかと思いますが、総理見解を承りたいと存じます。  最近日本に来たレアード国防長官の側近が、米国核抑止力にたよるならば核兵器のあるなしについてとやかく文句を言うべきではないと言われたそうでございますが、これを裏書きするものではないかと思うのであります。この際、核抜き公約に対するこれらの疑問に明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)  さらに一つの問題は、六月二十九日日米安保協議委員会の交渉を経て防衛庁アメリカ側との間に調印をされた合意書沖繩の直接防衛責任日本国による引き受けに関する取りきめであります。その内容は、沖繩復帰配置される六千八百名の自衛隊の編成、配置計画とその任務の取りきめでありますが、沖繩はまだ日米安保条約が適用されておらないのでありますから、この問題を安保協議委員会で取り上げるということは、一体どういうものでありましょう。正式に合意取りきめに調印する法律、条約上の根拠がないではないかと思うのであります。これが第一点の疑問であります。  次に、このような重要な政府間の取りきめを、一体防衛当局調印の当事者になるということは間違っておるのではないか、これが第二点であります。  第三の問題は、一体自衛隊配置というものはだれがやるのであるか。日本政府の、日本主権の中で日本自衛隊配置が行なわれるのではないでしょうか。自衛隊法によって日本政府が自主的に配置すべきであって、アメリカ配置計画を合意しなければならないという筋合いではないと思うのであります。日本国内における自衛隊配置計画一体アメリカと相談してやっておりますか。また、米軍配置アメリカと相談してやっておる、そういう筋合いではないと思うのであります。したがって、このような取りきめの根拠安保条約一体どこにあるのか。この取りきめをやった防衛当局及び安保協議委員会に出席をしておった愛知外務大臣中曽根防衛庁長官越権行為といわなければなりませんが、総理納得のできる御答弁を願いたいのであります。(拍手)  また、この取りきめは、内容的に見ましても、非常に危険な内容を含んでおります。米軍沖繩防衛の権限の一部を日本自衛隊に割り当てて、そしてその責任を負わせるというような計画になっておる。こういう一点を見ましても、本土並みとはほど遠いものであり、日本自衛隊アメリカ基地を守るために使われて、そして台湾や韓国あるいはベトナム戦争日本参加するという、そういう危険なこの沖繩返還協定に対しまして、日本社会党は断じてこれを承認することはできません。この点をはっきりと申し上げておきます。  今度の事件を見ましても、やはり外交というものが、国民参加なしでは正しい外交ができない。官僚と政党の独善外交の無力さというものが暴露されたわけでありますから、国民理解と支持、参加を広げて、積極的な、生き生きとした国民外交展開しなければならぬと思います。そのためには、まず安保体制あるいは沖繩問題などの真相を伝えて、防衛外交問題の真実の姿を国民に明らかにしていくということが最大条件であります。去る六月、アメリカニューヨークタイムズその他の新聞に発表されましたアメリカ国防総省秘密報告書によって、あの不正な、きたないアメリカベトナム戦争真相が暴露されたわけであります。私は、むしろこのことによってアメリカは救われたと思うのであります。あのベトナム戦争に敗北しましたけれども、やはりみずからの国の不正を、みずからの国民の手で明らかにしていく、この健康な良心と民主主義というものがある限り、私は、アメリカの敗北というものは救われ、アメリカの尊厳というものは守られておると思うのでございます。  そういう意味でも、私どもは、今後の日本外交というものは、従来の秘密主義安保外交、これを改めて、国民参加とともに進むところの国民外交に転換しなければならないと思いますが、ここで私は政府に尋ねたいことは、いままでアメリカベトナム戦争政府は弁護してまいりました。アメリカ北爆はやむを得ない措置である、爆撃されるほうにも責任がある、米国南ベトナム防衛立場から軍事行動を起こしているだけであると弁明をして、アメリカベトナム政策を支持してきました。この秘密報告書によってその実態が知らされた今日、政府はあらためてその見解を明らかにされたいと思うのであります。(拍手)  国内社会人間相互関係と同じように、国際社会においても、外交は、力だけのもの、損得だけのものであってはなりません。堂々たる社会正義人間道理に基づくものにしなければならないと信じます。わが国の今後の外交の基調におきましても、武力に依存する安全保障から、世界の人民が共有する社会正義人間道理に基づく平和共存平和保障に転換すべきであると信じます。このことは、日本社会党平和中立、非武装主義基礎であると同時に、平和憲法の精神でもあります。世界の現実もまた、この大きな理想の可能性を否定してはおりません。東西の融和、ベトナム戦争の経過、今回の米中接近方向に示されたように、一歩一歩着実にその目標に進んでいることを私は確信いたすものであります。(拍手)  われわれは、今日、まず、対米追従安保外交から、自主、平和中立外交に転換しなければなりません。そのためには、まず、日中の国交を正常化し、沖繩全面返還、第四次防衛力整備計画の中止、日本軍国主義化の阻止、そのためにわれわれは全力をあげて奮闘する決心であります。  同時に、われわれは、日本明治開国以来の既成の偏見から解放されて、アジアとの新しい関係を創造しなければならないと信じます。過去におけるアジア民族に対する侵略の歴史、その反省の上に立って、欧米の帝国主義模倣の路線と絶縁をして、ほんとうアジアの一員として、平和五原則——領土主権の尊重、相互不可侵内政不干渉平等互恵平和共存の五原則基礎とし、アジアの諸国家、諸民族との友好と連帯を強化し、平和と進歩のために積極的な協力を惜しんではならないと信じます。  まして、外国番犬となって、下請帝国主義日本となってはならないのであります。(拍手)かつて、明治の時代に、わが国日英同盟によって英国の番犬役割りをつとめて、インドその他のアジアの民衆から失望を受けたのであります。いま再びアメリカ帝国主義の先兵となって、イエローヤンキー汚名を受けないようにすべきであります。  立ち上がるアジアとの共存、これは偉大にして、しかも困難な民族の課題であります。そして、特にこれからわれわれのあとを進んでくるところの日本若者たちの大きな事業であると信じ、私ども青少年諸君の奮起を期待するものであります。  時間は限られており、ことばは不十分であったと思いますが、私は、総理が私の真意を正しく理解されて、今日重大な時期にあたって出処進退を誤ることなく、終わりをりっぱにされるように切望して、質問を終わる次第であります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  5. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) いろいろ御意見を述べられて、佐藤内閣を御批判いただきましたが、私に対してはむしろそれが御鞭撻のことばであるように聞きとれたのであります。厚くお礼を申し上げます。  まず、内政問題からお答えをいたします。  医療保険制度抜本改正問題につきましては、政府がかねてから努力を重ねてまいったところであります。しかしながら、北山君も御承知のとおり、この問題は利害関係が錯綜しており、まことに複雑で、関係者の御協力のない限り、その解決は容易ではありません。政府といたしましては、関係者のそれぞれが、自己の主張に固執することなく、医療を受ける国民立場に立って、譲るべきはこれを譲り、進んでその解決努力されることを期待し、抜本改正のため、一そうの努力を続ける所存であります。  また、当面の保険医辞退問題につきましては関係各方面の意見を十分に聞きながら、国民納得の得られる形で、事態のすみやかな収拾をはかる決意であります。  社会党提案された保険医辞退医療改革収拾案についても、貴重な御意見として十分しんしゃくさしていただきたいと思います。  次に、自由化の促進は、自由世界第二の経済力を擁するに至ったわが国国際的責務であります。これを米国圧力に屈したものと考えるのは、全く当たっておりません。(拍手)このことは、基本的な大切なことですので、わが国自由化を促進すべき基盤については、正しく御認識いただきたいと思います。  また、農産物といえども、その例外ではあり得ませんが、農業が現在総合農政展開期にあることを十分考慮して、慎重に対処してまいります。  次に、外交問題についてお答えをいたします。  今回、ニクソン米大統領北京を訪問する運びとなったことは、米中間緊張を緩和するのみならず、国際間の緊張緩和に資するものとして、政府はこれを歓迎するものであります。また、これによってインドシナにおいても急速に平和がもたらされることを期待しております。私は、米中関係改善方向に向かうことは、日中関係改善にもよい影響を与えるものと確信している次第であります。  そこで、北山君の御指摘のあった点、すなわちこれによって日本が孤立化するのではないかという御懸念でありますが、決してそのような御心配はありません。御安心いただきたいと思います。(拍手、発言する者あり)日米間の信頼、友好協力関係には、いささかのゆらぎもありません。この点は、国民各位もしっかりと認識していただきたいと思います。  次に、ニクソン大統領訪中極東情勢等にどのような影響を与えるかとのお尋ねでありますが、これは現在の段階で具体的な予測をすることは時期尚早であると考えます。しかし、一般的な見通しを申し述べれば、米中首脳の接触によって話し合いによる問題解決の道が開け、国際関係全般緊張緩和の機運が生ずるものと見ております。このことは、来年を待たないでも、ことしじゅうにもそういう機会が出てくる、そういうことをも私ども考えておかなければならない、かように思います。  次に、私は、自由を守り平和に徹するわが国外交基本理念はすでに国民的合意に達しているものと確信しております。今後とも国益に基づき、かつ、諸外国との調和に留意しつつ、国際間の平和維持努力するとの方針に変わりはございません。  次に、安保問題に関連してのお尋ねがありました。  わが国安全保障については、自社両党の間に大きな見解の相違があることは私も残念でありますが、国民の選択はすでに明らかであります。わが国にとって、米国との安全保障体制によって、わが国及びわが国を含む極東の平和と安全を確保することが最も賢明な道であることを、重ねて御理解を得たいと思います。(拍手)  日中関係改善は、政府としてもとより望むところであります。このため、北京政府が応ずるならば、日中関係正常化の問題を含め、双方に関心のあるあらゆる問題につき政府間の話し合いを行なう用意があります。  国連中国代表権問題については、流動的な国際情勢を十分に注視しつつ、わが国国益をはかり、また、極東緊張緩和にも資するという観点から、友好国と協議しながら慎重に検討する考えであります。  次に、日華平和条約の締結は米国圧力によるものであるとのお話がありましたが、わが国との戦争の当事者であった国民政府との間に一九五二年に日華平和条約を締結し、戦争状態を終結させたのであります。これはわが国がみずから選択した結果であって、他国の圧力によるものではありません。(拍手)この点を御理解いただきたいと思います。  次に、沖繩返還協定についてお答えをいたします。  政府としては、一昨年十一月の日米共同声明の発表以来、誠意を尽くして沖繩返還協定の作成に当たってまいりました。そして今回、核抜き本土並み原則を完全に貫いた協定を実現し得たものと確信しております。  特に、核抜きの問題は、日米共同声明で明らかでありますが、今回これをさらに明確にするため、協定第七条において、核に関するわが国政策に背馳しない沖繩返還を条文として明記した次第であります。  米軍基地の縮小については、今後とも現地の要望等を念頭に置きつつ、基地の整理統合をはかってまいる方針であります。  またVOA中継局の復帰後の取り扱いについては、米側の事情等を勘案し、五年間に限って暫定的存続を認めることとしたのであります。  沖繩における特殊部隊については、その活動が安保条約のワクをはずれることのないことは申すまでもありません。  さらに、沖繩への自衛隊配備を取りやめる考えはないかとのお尋ねもありましたが、今後沖繩防衛責任を第一義的にわが国が負うことは当然であって、自衛隊沖繩配備をやめる考えはございません。  また、沖繩返還協定に関し、核兵器の撤去費並びに核の撤去される量等についてお尋ねがありましたが、いま沖繩返還協定に関しまして三億二千万ドルの計算の基礎に関するお尋ねがありましたが、同協定の締結につきましては、当然国会の承認を受けるわけでありますから、その際、十分に御説明をし、御審議を仰ぎたいと存じます。(発言する者多し)  核兵器の量を知らせろ、また、撤去費はどれだけかというお尋ねがはっきりありました。お聞きになったのは皆さんのほうです。何を言っているのです。(拍手)  次に、核兵器事前協議についてのお尋ねがありました。そもそも核兵器わが国に対する持ち込みを事前協議の対象とすることとしたのは、核に対する日本国民の特殊な感情と、これを背景とする日本政府政策に基づくものであります。日米共同声明において、米国わが国の非核三原則理解し、これに背馳しないことを明らかにしているのであります。事前協議に対する政府の姿勢は、すでに繰り返し申し述べているとおり、何ら変わりはございません。  レアード長官と私との間では、大局的な見地から、日米関係の現状、なかんずく安保条約に基づく両国の協力関係を中心に話し合いを行ないました。その際、レアード長官から、わが自衛隊の装備の一部が時代おくれになっているとの指摘があったことは、御承知のとおりであります。しかし、このこととニクソン大統領訪中は何ら矛盾するものではなく、ともに平和維持への努力のあらわれと、かように考えるべきものであります。  次に、わが国防衛力は、年々整備、充実されてはおりますが、現在の国際情勢下でわが国の独立と平和を守るためには、なお十分とはいえないのであります。したがって、現在検討中の新防衛力整備計画では、国力、国情に照らしつつ、効率的な防衛体制の整備につとめてまいる所存であります。米国と相談するようなことはございません。皆さんと御相談はいたします。その点は、誤解のないように願います。  次に、インドシナ問題についてお答えをいたします。  わが国は、インドシナ和平実現のために、ジャカルタ会談への参加、ラオス問題に関する関係国への働きかけなど、できる限りの努力を行なってまいりました。最近、パリ会談における共産側七項目提案など、和平の機運がかなり高まってきております。また、米中間の接触も、これに拍車をかけるものと期待しております。  わが国としては、インドシナ地域に一日も早く和平が到来し、北越を含む全インドシナの民生の安定、戦後の復興に対し、積極的に協力し得る状態が生まれることを強く念願するものであります。  また、ベトナムにおける戦闘等、防衛行為についての米軍立場については、いままでの解釈、これに変わりはございません。  以上、北山君に、お尋ねの諸点について基本的な考え方を申し述べましたが、所信表明演説で申し述べたとおり、沖繩返還後のわが国は、国際社会における有数の先進工業国としての責任を主体的に果たしてまいらなければならないのであります。経済的に自由世界第二位の力を持った今日、世界各国は、われわれ日本国民が内心考えている以上に、日本の存在を強く意識していることと思います。この点をはっきりと認識して、流動する国際情勢に対処していかなければならないと考えます。一段の御理解、御協力をお願いするものであります。  以上、お答えをいたします。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇君登壇
  6. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私に対して、特に御質問はございませんでしたが、総理お答えになりましたとおりでございますので、総理の御趣旨を体しまして、早急に問題の解決をはかりたいと存じます。(拍手、発言する者あり)
  7. 船田中

    議長船田中君) 北山君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。北山愛郎君。——残り時間がわずかですから、簡単にお願いいたします。   〔北山愛郎登壇
  8. 北山愛郎

    北山愛郎君 率直に言って、私は総理の答弁に全面的に不満でございます。私の聞いたところには答えないで、つくった原稿を読む。官僚のつくった答弁では、まるですれ違いであります。簡単な常識的なことを私は聞いているのです。(発言する者多し)たとえば、私が総理に聞いたのは、一体ニクソン訪中というものが極東緊張を緩和するために役立っておる、そういう認識をしている、しているならば、なぜ一体日本の自衝隊をどんどんふやして、そうしてアメリカ防衛まで肩がわりするのか、なぜ四次防を進めているのか、緊張が緩和しているなら、自衛隊増強はやめたらいいじゃないか、こういうことを聞いているのです。(拍手)それに答えてないじゃないですか。(発言する者多し)静かにしてください。やかましいと時間がたちますよ。  第二の具体的な問題は、沖繩に対する——VOAなんか私は質問しなかったのですけれども自衛隊配置計画です。自衛隊配置計画沖繩自衛隊を六千八百名やる、その配置計画を、なんで一体アメリカと協議をして合意書調印までしなければならぬのか。(「そうだ、そうだ」と呼び、その他発言する者多し)自衛隊をどういうふうに配備するかは日本政府の権限ではないのか。(拍手、その他発言する者多し)これは、しかもまだ安保条約というものが沖繩に適用になっておらないのでありますから、安保条約安保協議委員会でこれを相談するということはおかしいではないか。(拍手)なんで一体こういうことをやった条約上の根拠、しかも自衛隊配置計画日本だけできめられないという、このおかしな計画について私はお尋ねをしているのです。一体、どういう根拠でもって、どういう条約上、法律上の根拠で、アメリカとの間に日本自衛隊国内における——将来国内になる沖繩のどこに自衛隊をどのように配置するかという計画を、日本と向こうが合意をして、判まで押して計画書の合意をしなければならぬのか。これを聞いているのです。答えてないじゃないですか。  いろいろ問題がありますけれども、私は以上の点について、これは重大でございますから、ひとつ明確な答弁をいただきたい、こういうふうに考えまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  9. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 別に自衛隊増強について、アメリカとは相談をする必要はございません。それは答えたとおりであります。それははっきりいたします。  そこでお尋ねは、いま沖繩米軍基地が今度返還されれば必ず縮小される、またその機能も変わってくる、そういう場合の、日本自衛隊がそれにかわって防衛の任につく、その取りきめの話でございます。だから問題は、一般的な問題としてのお尋ねではなくて、沖繩が現在アメリカの施政権下にあり、米軍配置されておる、その沖繩は祖国に復帰しようとしておる。その復帰した場合に、これから先は沖繩本土防衛は私ども日本がやるのですよ、これが基本の考え方であります。しかして、日米安保条約のあるその間においては、その範囲において、米軍基地を全部排除する、かような考えではない、こういうことを申したつもりでございます。  したがいまして、その点で私は、沖繩日本自衛隊が守る地域にするということと、そして配置自衛隊配置はやめてくれ、こういう一部の御意見はございますが、それはやめない、そういうことをはっきり申し上げておきます。  また、基本的な問題として——沖繩の問題はいま御理解がいただいたと思いますが、基本的な問題として、緊張緩和をしたから自衛隊を強化する必要はないじゃないか、自衛隊をやめてしまえ、かようなお話でございますが、それはそのように簡単なわけにはまいりません。(拍手緊張緩和といいながらも、私どもは、われわれの本土、われわれの祖国を守る、これがわれわれ国民の統一した意見だ、かように私は考えております。(拍手
  10. 船田中

    議長船田中君) 竹入義勝君。   〔竹入義勝君登壇
  11. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 七〇年代の日本方向を決定するといわれた、地方統一、参議院の二大選挙を終えて、まことに重要な意義を持つ本臨時国会にあたり、私は、公明党を代表し、内外に山積する重要な政治課題、特に、当面解決を迫られている問題について、佐藤総理大臣に質問を行なうものであります。私も冷静に質問を申し上げますので、どうか冷静に御答弁をお願い申し上げたいと思うわけであります。(拍手)  いまや、日本アジアにおける地位は、大きく世界情勢影響を与える時代となってまいりました。この責任と使命は、まことに重大といわなければならないと思うのであります。これに対処するために必要なものは、その確固たる理念であり、その先見性であり、実行力であると思うのであります。にもかかわらず、一昨日の佐藤総理所信表明演説は、山積する内外の重要課題に対して、特にニクソン米大統領訪中決定という国際情勢の急変にも対応できぬ、何の意欲も先見性も感じられない、全く精彩を欠いたものでありました。  私は、まことに失礼と思いますが、これでは国民は、佐藤総理に何の期待も持てないのではないかと思うのであります。したがって、佐藤総理はもはや政権担当能力を失ったのではないかというべきであり、この際いさぎよく退陣されることが最も賢明な道ではないかと思うのでありますが、御心境のほどを承りたいと思うのであります。(拍手)それとも、ニクソン米大統領の勇断にならって、日中国交回復に対する原則を踏まえて佐藤総理みずから訪中を決断され、新しい七〇年代の平和が展望を切り開かれる決意がおありかどうか、あわせて御心境を伺いたいのであります。  また、佐藤総理は、参議院選挙前、日本国憲法の改定の必要を説いて、そのため、三分の二以上の議席確保を号令いたされました。この憲法改悪に対する国民の反発はまことに大きく、参議院選挙では、自民党は、三分の二議席どころか、議席減少という結果を招き、憲法改悪は不可能となったのであります。佐藤総理は、このような国民の厳粛な審判のあった今日でも、なお憲法改悪の意図を捨てていないのかどうか、お答えをいただきたいのであります。  まず、私は、内政問題から総理に伺いたいのであります。  物価問題についての総理所信表明は、相も変わらずいままでの繰り返しであり、物価上昇はとどまるところを知らないのであります。国民の期待するものは、空理空論ではなく、現実の国民生活を安定させる物価対策の策定と勇気ある実行であります。  政府は、昨年十二月公共料金の据え置きを決定しながら、すでに郵便料金、電話、電報料金の値上げを決定し、一部地域では、タクシー料金の値上げを認めたのであります。また、今秋から、消費者米価の値上げとなる物価統制令の適用廃止を行なおうといたしております。現在の物価上昇の中で、このような政府の態度に、国民の大きな怒りが集中することは当然であります。  私は、総理に申し上げたいのであります。あなたが真に物価安定に対し誠意を持たれるならば、物価安定政策会議の有意義な提案を実行すべきであり、また、政府主導の物価高騰の原因である公共料金を据え置き、消費者米価の値上げとなる物価統制令適用廃止を取りやめ、また、公明党ほか野党三党で提出した、物価安定の重要な一環である寡占価格規制法をすみやかに立法化するなど、物価安定に誠意ある政策実行を強く求めるものであります。そして、より根本的には、大企業癒着の姿勢をきっぱりと改めるべきであります。(拍手総理の所信をお伺いしたいのであります。  公害対策については、法的措置は、昨年のいわゆる公害国会以来、一応の整備を見たわけでありますが、現実に有害物質による汚染、汚濁が減少したわけではなく、むしろその拡大と被害の増大を見ております。したがって、法律の整備は、単に公害防止のあと追い対策の整備にすぎないのであります。総理が言われた企業優先から国民優先への転換を、実現の政治の理念として実行にあらわすためには、相互に関連する法規の有機的な整備、充実をさらに進め、所管省庁が、企業責任を第一として忠実に法律を運用することが国民福祉の行政であります。また、企業は、公害に対する社会的責任を自覚することが産業、経済の永続的発展をもたらすものであるとの意識に立たなければならないと思うのであります。  そうした意味から、国民優先の基本姿勢を明確にすることを根本として、公害関係法を効果あらしめるためには、監視体制、検査官制度の充実を早期に実現することであります。  また、無過失損害賠償責任制度は、公害裁判における被害者の公正な権利を確保するために必要であることは、何人も否定できないところであります。政府は、すでに何回となく公約した無過失損害賠償責任制度の法案をいつ提出するのか、明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)  さらに、公害対策があと追い対策ではなく、進んで環境整備に向かうためには、環境保全基本法の制定が緊要であり、この基本法によって初めて公害関係法の整備ができたといえるのであります。  以上申し上げた公害防止の基本的な課題の実現について、総理はどのようなお考えを持っておられるか、方針を明確にしていただきたいのであります。  次に、いまや最悪の事態に立ち至った保険医辞退問題についてであります。  総理の先ほどの答弁は、生命にかかわる重大な問題でありながら、まことに生命軽視の、納得できない答弁であるといわざるを得ません。あらためて私は伺いたいのであります。  解決を複雑にいたしておるのは政府みずからではないかと私は思うのであります。(拍手)この保険医辞退という、人命を担保とした非常手段に訴えた日本医師会に対し、私は強い批判を持っておりますけれども、さらに、今回のような最悪の事態に追い込んだ根本原因は、政府の、医療行政の抜本的改正を公約しながら、いまだに実行しない怠慢にあることは明らかであります。したがって、いまや、医療制度の抜本改正が断行されない限り、国民医療に対する不安は除かれないのであります。総理は、所信表明において、この抜本改正について、いずれに責任があるか、きわめてあいまいな表現で述べられましたけれども、これはあくまでも政府責任と勇気において実現されなければならないものであります。いつ、また、どのような方向においてなされるのか、総理決意を伺いたいのであります。  これら物価、公害、医療制度等の例をあげてみても、また住宅、交通、農業問題等を見ても、国民生活国民の生命、健康は、まさに経済高度成長政策の完全な犠牲にされてきたのであります。  総理は、所信表明において、日本経済の将来について多くのことばを費やされましたけれども、真に「福祉なくして成長なし」、この国民本位の経済政策に徹せられるのかどうか。いままでの自民党内閣の行き方では、国民はもはや納得できないのであります。いまこそ、総理は、日本経済の現状と将来が、国際経済の潮流の中で、真に節度ある立場国民の福祉優先の立場に立って立案し運営されなければならないと思うのであります。このためには、大企業、大資本優先の姿勢を一てきしなければなりませんが、総理にその決意がおありかどうか、お答えをいただきたいのであります。  さて、七月十六日、ニクソン米大統領が、中華人民共和国の招請に応じて中国訪問を受諾したことが報道され、世界に大きな衝撃を与えました。特に佐藤内閣に与えた衝撃は、まことに大きかったのではないかと思うのであります。  われわれは、佐藤総理に再三にわたって指摘してまいりました。それは、中国をめぐる国際情勢の推移から見て、佐藤内閣が結果として中国敵視政策をとり続ける限り、おそらく日本は、中国に最も近い隣国でありながら、中華人民共和国の最後の承認国となるであろう、また、中国を孤立させる政策をとり続ける日本こそが孤立化するであろうとの指摘でありました。われわれは、米中接近が急速に進み、ある日突然、米中間の公式的な接触が行なわれる可能性の強いことも、再三にわたり指摘し、佐藤内閣の硬直した対中国政策の転換を、忍耐強く、また強硬に要求してきたのであります。しかしながら、佐藤総理、あなたは、このようなわれわれの要求と日本の平和を願う忠告に対して一顧だに与えず、アメリカ追随に終始してきたのであります。  今回、日本頭越しに行なわれた米中接近ニクソン声明を、佐藤総理はどのように受け取られているか、総理の心境を伺いたいのであります。  いま日本は、台湾条約を結び、資本の投下、借款の供与など、ますます関係を深めているのであります。しかし、台湾中華人民共和国政府と比較するとき、その支配統治する国土の範囲、人口からいっても、その政権成立の合法性並びに中国人民の支持からいっても、また、世界各国の中華人民共和国政府の承認国の数からいっても、さらに、その承認国が国際的地位において有力な国々であり、もはや取り残されたのは日本アメリカであるという実情であり、そのアメリカでさえ、今回、中国関係の大転換を行なったのであります。これら客観的事実をもってしても、台湾中国の全人民を代表する政府とすることは、全く虚構であることは言をまたないところであります。(拍手政府がこのような虚構の上に立って、あくまでも台湾に固執して、客観的、冷静な視点を失なって、歴史の流れと国際情勢の動きに全く背を向けていることは、許されることではないと思うのであります。  しかも、一昨年秋の佐藤・ニクソン共同声明は、中国に対して、台湾の安全は日本の安全にとって重要な要素であるとし、さらに、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるとか、ベトナムの安定に重要な役割りを果たすとして、これら一連の日本の生命線を他国の領土、領海に置くことによって、挑発を一段と強められているのであります。特に、台湾中国と不可分の領土であり、内政問題であるにもかかわらず、これにあえて干渉し、中国主権への公然たる挑戦をしてきたのであります。佐藤総理は、このような挑発的な方針を改める考えはないかどうか、お答えをいただきたいのであります。  第四次防衛力整備計画による軍事力の増強、さらに日米安保体制と相まった日米軍事共同体の強化は、アメリカレアード国防長官の来日によって、さらに変質、強化されたのであります。これは、明らかに中国敵視ないしは中国封じ込めに結びついて、対中国姿勢をますます硬直させていることになるのであります。中国を脅威として、それに対する対立関係をますます深めていく政策が・中国だけを刺激するのみか・他の東南アジア諸国にもいたずらな刺激を与えて、総理がいかに平和国家であることを宣伝しても、それら諸国の信頼を得られず、逆に大きな警戒心を抱かせ、アジア緊張を深めていくことに気づかねばならないと思うのであります。これに対する総理見解を承りたいのであります。  また、日中国交回復政府が熱意をもって指向するというなら、台湾問題の虚構を捨て、中華人民共和国政府中国を代表する唯一の正統政府であることを認めるという出発点に立たない限り、問題解決の糸口さえ見つからないと思うのであります。この明確な政府の姿勢を確立せずして、大使級会談とか民間協定の漸進的積み上げを行なうとか、自民党訪中団を派遣するとか、口先だけの態度では、日中問題の解決など断じてあり得ないのであります。(拍手)  公明党の今回の中国訪問によって、中国が、日本との間に戦争状態を終結させ、日中間に平和条約を締結し、国交を開くために必要な五項目が明確になりました。  この五項目は、われわれ公明党から提示したものを中国が全面的に支持し、中国側が、日本政府に対する日中国交回復の具体的条件を初めて明らかにしたものであります。しかも、この五項目は、ことごとく台湾に関連があり、言いかえれば、日中国交回復の最も煮詰めた問題点は台湾問題の処理であるといっても過言ではありません。  総理は、次の諸点について、明確な見解をお示しいただきたいのであります。  その第一は、政府は明確に一つ中国論に立ち、二つの中国論や、一つ中国一つ台湾論などの画策を退けて、中華人民共和国政府中国を代表する唯一の合法政府であることを認め、すみやかに戦争状態を終結して、日中間に平和条約を締結すべきであるということであります。  その第二は、台湾中国の不可分の領土であることを認め、いわゆる台湾問題を中国の内政問題として、台湾及び台湾海峡から一切の軍事的干渉、経済的、政治的関与を退けるべきであるということであります。  その第三は、虚構の上に置かれた日台間の条約は、本来不法であり、この日台条約の廃棄の態度を明らかにすることであります。  第四は、台湾帰属未定論など、すべて解決済みの台湾中国への領土帰属を否定する言動は厳に慎み、むしろ領土放棄をした当事者であるわが国が、台湾中国に帰属することを明確にすべきであるということであります。  第五は、中華人民共和国政府国連における中国の唯一の代表権を占める政府であるとの立場に立って、安保理事会の常任理事国の地位はもちろん、国連のあらゆる機構にその正当な地位を回復することを明確にすべきであるということであります。  特に国連代表権の問題は、今年の国連総会に、アメリカの態度とともに、わが国のとるべき態度に対して世界の焦点が当てられていることをよくよく承知すべきであります。われわれは、先ほど申し上げた、中華人民共和国政府に正当な地位を回復するための国連における措置をわが国が進んでとることが最も望ましいと思うのでありますが、少なくとも、わが国国連において、みずから先頭に立って中国国連復帰を妨害するあらゆる行動をとるべきでない態度を、この際明確にせらるべきであります。(拍手)  また、ニクソン米大統領訪中によって、ベトナム戦争は急速に終結に向かうと思われますが、佐藤総理は、この際、インドシナ三国における即時停戦、一切の外国軍隊の引き揚げ、さらに民族自決の立場から、インドシナ三国の国民がおのおの自分の国の問題を解決すべきことを、日本政府の意思として発表してはどうかと思いますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)  また、わが党は、他の野党とともに、日中国交回復決議案を国会に提案したいと思っておりますが、佐藤総理は、自民党総裁として、この決議案に賛成するかどうか、伺っておきたいのであります。  次に、このニクソン大統領訪中受諾という新展開を背景とし、私は、去る六月十七日に調印された沖繩返還協定について、佐藤総理質問をいたしたいのであります。  長い間の国民的悲願であった沖繩返還協定調印がなされ、沖繩祖国復帰が具体化したことは、まことに喜ばしいことでありますが、反面、これまで国民の要求してきた重要問題が、何ら協定文や関連取りきめに反映されていないことは、きわめて不満であります。  その第一は、先ほども述べた、日米安保条約が完全に変質し、わが国アジア緊張を激化させる要因を具体的につくり出したことであります。  返還協定前文では、共同声明の基礎の上に返還が成就されることを確認しているのでありますが、これこそ韓国、台湾の安全とわが国の安全を不可分とした軍事的認識に立つもので、返還後も沖繩基地の機能を維持、向上しようとする米側の要求に合意したものであります。  これはサイミントン小委員会でのジョンソン次官証言で、「日本政府が今回初めて公式に明らかにしたことであるが、それは日本の安全が韓国、台湾の安全及びこの地域における米国の責務と密接不可分であり、また在日米軍基地及び施設の問題については、日本は、日本自身の安全保障というよりも地域全体の安全保障の観点から考えるであろうということを認識している点である。」と述べており、否定できぬところであります。  これは、日本アメリカアジア核戦略体制に完全に細み込まれたことであり、軍事的国家への傾斜を考え合わせるとき、わが党は同協定の持つ内容がきわめて危険であることを表明せざるを得ないのであります。(拍手総理は、この点いかがお考えであるか、お答えを願いたいのであります。  次に、核についてお尋ねをしたい。  国民が最も強く要求し期待した核の撤去が協定に明記されていないのは、いかなる理由によるのでありましょうか。政府は、協定第七条の財政条項に核兵器撤去費用を盛り込んだことをもって核抜きの保証としておられますが、いかなる撤去計画によるものかは不明でありまして、国民納得できないところであります。さらに、核の完全撤去の確認を、政府はいかにして行なうつもりなのか、お答えをいただきたいのであります。  かりに核が撤去されたとしても、再持ち込み、再配備など、すでにサイミントン報告では「沖繩核兵器を貯蔵する米国の権利の重要性は、戦略型兵器より戦術型兵器により大きな関連を有している。」「この地域における米国の戦備に関する限り、新たな配備・配置を行なうことにより、抑止力に関する問題点を最小限に止めることができる」と述べ、緊急時の核の再配備をほのめかしているのであります。総理は、この問題の問いについては日米の信頼を口にしておられますけれども、その信頼の押しつけとこの報告とのギャップをどう説明されるのか。  また、共同声明第八項について「日本と協議する米国の権利を非常に注意深く留保していること及びこのことは特に核兵器について適用されるものであることが注目される。」に留意されたいと述べているとおりであります。  ここで総理お尋ねしますが、少なくとも核撤去については、日米両国間の覚書ないし交換公文等で取りきめをすべきであると考えますが、総理の明確な答弁を求めるものであります。  また、かねて野党から要求し続けてきた国会における非核決議は、この際賛成されるかどうか、あわせてお答えをいただきたいのであります。(拍手)  さらに……
  12. 船田中

    議長船田中君) 竹入君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。
  13. 竹入義勝

    ○竹入義勝君(続) こうした危険性を阻止する歯どめとなる事前協議制度が形骸化されていることにより、いよいよ核撤去が不明確であるという国民の危惧を大にするものであります。沖繩における米軍基地の目的は、アジア戦略の一環としての位置を占めてきたものであります。この沖繩日本返還され、日米安保条約本土並みに適用されるとなれば、当然アメリカの戦略の変更が必要である。それが事実上不可能であるとすれば、事前協議制度の厳格かつ適正な運用がなければ、これは基地の自由使用という危険きわまりない状況を生むことは必至であります。  わが党は、このため、事前協議制度に関し、わが国にも発議権、拒否権があることを確認する日米両国間の付属文書による取りきめをなすべきであることを強く要求するものでありますが、総理のお考えをお聞きしたいのであります。  さらに、この場で、総理は、核の再持ち込み、再配備は必ず事前協議でノーと答えることを確約すべきであると思うのでありますが、この点についてもお答えをいただきたいのであります。(拍手)  次に、「基地の中の沖繩」といわれる膨大な米軍基地の整理縮小がきわめて小規模であり、いつまでに本土並みに縮小させるのか国民に確約できるのでありましょうか。さらに、基地撤去のスケジュールについて明らかにされなかったことは、返還後も依然として軍事的価値を維持させ、半永久的に固定化しようとするものと考えますが、この点はいかがでありましょうか。  加えて、第七心理作戦部隊、SR71戦略偵察機などの戦略特殊部隊の存続容認は、本土沖繩化をもたらす以外の何ものでもなく、自衛隊配備が実施されるならば、まさに米国責任分担を意味し、専守防衛の逸脱、日米合同の軍事作戦行動の危険な要素をはらんだものであります。また、VOAの五年間暫定存続は、協定第八条あるいは合意議事録をつぶさに検討して、永久保存の余地を残したものであるといわざるを得ないのであります。したがって、従来よりわが党は、これらの即時撤去を要求してまいりましたが、重ねて総理見解を求めるものであります。  最後に、戦後の米軍占領支配のもとで、沖繩県民がこうむってきた数知れない人的、物的損害に対する補償、滅失地、つぶれ地補償あるいは演習に伴う漁業補償などが要求されてきたところでありますが、これら県民の正当な要求が十分補償されていないのであります。  また、米軍人、軍属の県民に対する犯罪は、今日まで、百万県民の基本的人権の問題として問われてきたところであります。しかるに、返還協定では、この裁判効力の取り扱いを、琉球政府裁判はまだしも、米国民政府裁判の民事、刑事両裁判効力を有効であるとして、復帰後もそのまま引き継ぐことに決定いたしております。異民族支配のもとでの裁判を引き継ぐことが、返還後も真に沖繩県民の人権が回復され、正当な権利要求の立場に置かれるものでありましょうか。この点について総理の率直な見解を求めるものであります。  以上、私は返還協定に基づき、若干の問題点を取り上げ、総理質問をしたわけでありますが、円満なる返還のためには一方的な譲歩もやむを得ないとする政府の従属外交の姿勢は、その交渉結果において、すでに現地沖繩のみならず、国民の間に多大の影を投げかけているのであります。あすの日本の進路に責任を持つわれわれは、今回の返還協定に対して安易に看過することはできないのであります。総理の確固たる所信を承りたいのであります。  以上、内外の問題について、総理の率直かつ明快な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  14. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 竹入君にお答えをいたします。  まず、私の所信表明、あるいはその後の治績等から、どうも先見性もないし、この辺でやめたらどうだ、むしろ退陣すべきである、かように思うという御意見でございますが、これは御意見として承っておきます。  また、ニクソン同様、訪中を決断する考えはないか、これまた御意見でございますので、これは貴重な御意見として承っておきます。  次に、選挙中における私の憲法改正問題についての発言でありますが、わが自由民主党は、その綱領におきまして自主憲法、かようなものを持つと述べております。したがいまして、私はこれについてお話はいたしました。私が憲法改正する、かように申したわけではありません。それらの点については誤解はないと思います。また、そのときに特に重要な点は、憲法改正だと申しますと、いつも憲法第九条の精神を変えるのではないかと、さような誤解を生ずる心配がございますので、この点は、憲法第九条の精神を変える考えはないということをはっきり申し上げたのであります。また、この機会におきましても重ねてこの点を申し上げておきます。(「あたりまえだ」と呼び、その他発言する者多し)あたりまえだというやじが飛んでおりますが、あたりまえのことを言って問題になるのです。(拍手)  また、公共料金について、従来から政府は、十分な合理化努力を行なっても、なおかつ真にやむを得ない場合を除いては、極力これを抑制することといたしております。この方針に変わりはありません。  消費者米価と物統令の問題につきましては、さきの国会におきまして、るるお答えをしたところでありますので、詳しくは申しません。米の需給の実情が販売面に反映されて、消費者価格が安定するよう十分配意してまいります。  次に、物価の問題について、物価安定政策会議のその答申を尊重しろ、かような御意見を述べられました。私も、安定政策会議の答申については、さらに政府は意を用いて、これを取り上げるということに最大努力を払うべきだと思っております。  また、寡占価格規制法の制定についても御意見を述べられました。私は、いわゆる管理価格問題につきましては、現段階におきましてはその実態を解明することが必要であり、現在、公正取引委員会等において鋭意調査を進めているところであります。これと並行して御提案の趣旨も検討を加えてまいりたいと思います。  次に、公害問題に関する質問についてお答えいたします。  まず、公害による健康被害に関する事業者の無過失損害賠償責任についての法案は、さきの通常国会においては、審議時間の関係から提出することができませんでしたが、次の通常国会には提出いたしたいと、かように考えております。明快にお答えをいたします。  次に、公害監視体制の問題についてでありますが、公害防止の実効をあげるためには、公害監視体制の充実をはかる必要があることは御指摘のとおりであります。このため、国、都道府県、市町村が一体となって、測定計画の策定、広域監視網の確立等をはかるとともに、監視測定の機械化、監視担当職員の研修を促進するなど、公害監視体制の充実に積極的に取り組む所存であります。  御承知のとおり、昨年末の臨時国会において、公害対策基本法の一部改正にあたり、政府が他の諸施策と相まって、緑地の保全、その他自然環境の保護につとめることを定めるとともに、その趣旨に沿って、自然公園法の一部改正や海洋汚染防止法の制定を行なったところでありますが、これは、公害対策を環境保全としての広い角度から前進させようとしたものであります。政府といたしましては、今後このような方向に沿って、環境の保全に関する基本的な政策を企画、立案することとしており、今後、御指摘のような環境保全基本法の趣旨も含めて、慎重に検討してまいりたいと思います。  医療保険制度抜本改正の問題につきましては、先ほど社会党北山君にお答えしたとおりで、政府といたしましては、関係者の御努力に期待しながら、その実現に一そうの努力を続けてまいる所存であります。そうして、竹入君は、抜本改正の断行、そのための勇気と決意政府に要望されましたが、私は、御鞭撻を得て、この問題と取り組みたいと、かように思っております。  経済成長が国民福祉優先でなければならないとの竹入君の御意見につきましては、全く同感であります。このため、経済の安定的成長の確保を財政経済運営の最大の眼目としてまいったのでありますが、御承知のように、昨年秋ごろより、むしろ経済活動が停滞し、目下その調整過程を脱し切っておりません。このため、先般、いわゆる八項目を中心とする総合的経済政策を打ち出したのでありますが、今後はその充実につとめ、景気の回復を促進して、国民生活の質的向上に一そうつとめてまいる決意であります。どうぞよろしくお願いをいたします。  日中関係についての政府の基本的態度は、従来からしばしば明らかにしてきたように、日中関係正常化の問題を含め、双方に関心のある諸問題について、政府間の話し合いを行なう用意があり、北京政府がこれにこたえることを期待しておりす。ただ、それだけでは抽象的だとの御批判もありますが、竹入君は最近北京からお帰りになったばかりであります。政府におけるかような考え方も十二分に、また誤解のないようにお伝えを願いたいと思います。  また、今回、ニクソン米大統領訪中が実現する運びとなり、米中首脳がひざを交えて話し合いを行なう結果、米中関係改善方向に向かうこととなれば、極東緊張緩和、ひいては世界の一平和にも寄与するところ大でありますが、政府としても、ニクソン訪中を歓迎するものであります。  次に、一昨年の日米共同声明に対するお尋ねでありますが、これがいかにも挑発的な態度だと、かような御指摘でありますが、さようではございません。極東の安全なくして、わが国の安全を十分に確保し得ないことは明らかであります。日米共同声明は、このような従来からの一貫した政府の認識を一般的に述べたものであります。  また、わが国に対しての東南アジア諸国からの誤解等もあるが、これに政府は対処しろ、かような御注意でございます。私は、自由を守り平和に徹するその立場において、わが国軍国主義化しないこと、また経済開発に対しましても、発展途上国に対して経済開発に協力すること、これなどを通じまして、わが国を誤解されないように、十二分に正確に認識していただくように、この上とも努力する決意でございます。  次に、公明党の日中国交回復の五項目についてのお尋ねでありますが、日中関係改善は、政府としても、もとより望むところであります。しかし、わが国にとっては、中国大陸との関係台湾との関係も、ともに重要であることは申すまでもありません。したがって、日中国交樹立のために、日華平和条約の破棄や国連からの国府の追放が条件となるのであれば、慎重な態度をとらざるを得ないのであります。(拍手)  なお、政府としては、政治信条や社会体制のいかんにかかわらず、すべての国と友好関係を樹立し、国際問題は、すべて平和的な話し合いを通じて解決することを外交の基本方針としているところであります。  そこで、まことに僭越ではございますが、いわゆる公明党の五項目の各点について、私の見るところを率直に披露させていただきます。  政府は、これまで二つの中国という考え方をとったことは一度もありません。この問題は、本来、中国自身の問題でありますから、両当事者が平和的な話し合いによって解決さるべき問題であり、政府として、その結果がいかなるものであろうとこれを尊重する、その考えでございます。(拍手)  第二に、わが国は、サンフランシスコ平和条約台湾及び澎湖諸島を放棄いたしました。これらの諸島の帰属について、国際間で最終的な処理がなされていないことは御承知のとおりであります。  三番目の日華平和条約の問題については、その締結にあたって、国会の同意を得ていることは周知の事実であります。  四番目の米軍台湾地域からの撤退問題は、米国自身が決定すべき問題であります。  五番目の国連代表権問題については、今後、慎重に検討する方針であります。(拍手)これはいままでも変わったことはございません。この機会にはっきり申し上げて、誤解のないようにいたしておきます。  次に、インドシナ問題については、竹入君御指摘のとおり、即時停戦、すべての外国軍隊の撤退及び民族自決による解決こそ、和平への道であると考えます。政府としては、このような見地から、昨年十月の米国の和平提案を積極的に支持した次第であります。  次に、日中問題での国会決議にどういう態度をとるかとのお尋ねでありましたが、中国問題は重要な課題でありますから、国際情勢の動向や国内意見を参考にしながら、慎重に対処する方針であります。  次に、沖繩問題についてお答えをいたします。  これまでも繰り返して申し述べてきたとおり、沖繩にある米軍基地は、復帰後は、本土における米軍の施設、区域と同様に、日米安保条約の目的に従って提供され、そのワク内で使用されるのでありますから、この点十分に御認識いただきたいと思います。  次に、核の撤去の問題については、北山君にお答えしたとおり、返還協定にも明らかになっております。また、核の再持ち込みについても、本土と同じように非核三原則がそのまま適用されます。事前協議については、自主的判断に基づいて諾否を決定する方針であることを重ねて申し添えます。これらの問題について、特に日米間の付属文書が必要であるとは考えません。非核三原則は、政府政策としてすでに明らかであります。国会の決議には賛成をいたしません。  VOAの即時撤去、特殊部隊の撤退を要求すべきであると思うがどうかということでありますが、これまたすでに答えたとおりでありますから御了承いただきます。  次に、沖繩の裁判問題でありますが、沖繩復帰にあたっては、復帰前後の沖繩の社会秩序の安定性を維持しつつ、その円滑な復帰をはかるという観点から、原則として沖繩の裁判権を引き継ぐこととしたものであります。この措置は、これまで本土との一体化を進めてきた現状に沿うばかりでなく、沖繩県民の利益にも合致するものと私は考えます。人権の擁護等の問題につきまして、ただいまのような点で、十分この人権の回復には努力する決意でございます。  最後に、竹入君は、沖繩協定は一方的譲歩ではないか、かように述べられましたが、申すまでもなく、戦争で失った領土が平和裏に、話し合い返還されたのであります。私は、日米間の信頼友好関係がこのことを可能ならしめたことを、国民各位とともにあらためて銘記したいと考えるものであります。(拍手)  以上をもってお答えといたします。     —————————————
  15. 船田中

    議長船田中君) 門司亮君。   〔門司亮君登壇
  16. 門司亮

    ○門司亮君 私は、一昨日の総理所信表明に対しまして、民社党を代表して、きわめて率直に御質問いたしますので、総理からもぜい言にわたらないように、率直に真実を披瀝していただきたいと思います。  最初に私がお聞きをいたしますのは、未確定情報では私はないと思いまするが、ただいまの情報によりますると、南ベトナム政府戦争の停止と、さらに南北ベトナムの統一を提唱したというニュースがいまあったのであります。このことは、ニクソン大統領の中共訪問と関連がないとはわれわれ考えられないのでございますが、これらの問題に対して、政府は、その情報を確実に手に入れられておるかどうか。ニクソン大統領中国に行くという、アジアにおける、あるいは世界における外交問題に対する画期的な情報すら十分に入手することのできなかった日本政府の当局に対しまして、私は、おそらく入手されていないであろうとは考えますが。しかし、かりに不確定の情報であるといたしましても、ニュースによって流された以上は、国民の全体はこれを認めるでございましょう。  私はこういう問題と関連して、中国の問題をひとつ率直にお聞きをいたしたいと思いますが、いままでの質疑、さらに答弁をいろいろ聞いてみますると、政府は、台湾問題に対しては、何か台湾の帰属に対しての問題がまだ十分でないかのようなことを言われておりまするが、日本が講和条約をいたすに至りました経緯は、御承知のように、ポツダム宣言を受諾しておるのであります。ポツダム宣言はカイロ宣言を受けておるということは明確に書いてあるのである。その中で台湾、澎湖島というのは中国から盗み取ったとここは書いてあり、釈してありまするが、盗み取った領土は当然中国に返すべきであるということが明確に書かれておるはずである。  こういうふうに考えてまいりますと、どうもいまの佐藤さんの答弁は少し間違っていやしないかと考える。したがって、たまたま中国の内戦によって蒋介石政権が台湾に引き揚げてきたというか、のがれてきたというか、逃げてきたというか、ここに、従来わが国戦争関係を結んでおった一つ政府ができたということにとどまるのであって、私は、これらの問題については、その当時におけるいろいろな立場はあったかとも思いますが、今日の現状においては、政府は、そういう過去の歴然とした事実の上に立って、台湾問題を考える必要がありはしないかということを考えるのであります。したがって、いまの中国問題に対する台湾の処置について、佐藤総理がお述べになりましたような、いかにも台湾政府が完全な中国政府であるかのごときことを考え、その反面に台湾問題は中国の内政であるというような、全く思想の統一のない、支離滅裂な考え方でなくして、私は、この際、そういうことを一切抜きにして、台湾問題はそれにこだわらないで、勇敢に佐藤政府中国問題を解決するということが、あなたにかけられた——アジアの平和のためにも、わが国国益のためにも、将来の繁栄のためにも、とるべき時期が来ておると申し上げても、ちょっとも差しつかえはないと考えるのでありまするが、この点に対する総理の答弁を重ねてお願いを申し上げる次第でございます。  さらに、私は、内政の問題の一つとして、いま非常に大きな問題になっておりまするものは、何といってもお医者さんの保険医辞退の問題であろうかと思います。  医療というのは、だれのために、何のためにあるのか。私は、医療のために患者があるのでなくして、患者のために医療があるということを申し上げなければならないと考えておる。そうだといたしますならば、その患者は国民でございます。  佐藤総理は、この壇上からしばしば、きょうも言われたと思いまするが、口を開けば人間尊重、人間尊重と言われるのでありまするが、ほんとう人間を尊重されるというならば、政府はこの際、他人まかせというような、当事者同士の複雑な問題があるからなかなか解決をしない、そっちのほうから片づけてくれば政府もお手伝いをしようというような消極的な態度でなくして、国民の生命と財産を預かる政府が、進んでこの問題解決のために対処するということが、日本国民の総理大臣としての当然の帰結だと私は考えるが、この点に対する総理見解をもう一応はっきり示していただきたいと存じます。(拍手)  さらに、もう一つ国内問題として大きな問題と考えられますのは、過般の参議院の選挙における例の高級官僚諸君の違反の問題でございます。(拍手)私は、高級官僚の諸君が、官にあった時代の権力と因果関係によって選挙を行なおうとするということはもってのほかであって、言語道断といわなければならない。(拍手)いわゆるみずからの地位とみずからの職権を乱用して、そうして選挙に臨むということは、そもそも選挙法の違反でありましょう。選挙法には何と書いてある。職権を利用し地位を利用して選挙を有利に導くことはできないということが明確に書いてあるはずである。にもかかわらず、今日暴露されておりまする高級官僚のあの醜態は一体何を物語るか。これこそ政府官僚に対しまする綱紀の弛緩のはなはだしいものである。(拍手)いろいろな収賄の問題があり、いろいろな問題があるでございましょうが、これらの問題は個人の問題である。しかし、選挙を冒涜するということは、日本の民主政治を根底からくつがえすものである。(拍手)それを国家の高級官僚が行なおうとするこの事件に対し、総理はこれに対していかなる見解をお持ちになっているか、この点をこの機会に明確にしておいていただきたい。(拍手)  同時に、これに関連した問題として、御承知のように、政治資金規正法の問題がしばしばこの壇上でも議論され、また、私ども野党はこれを提案いたしてまいりましたが、しかしこれが一向に取り上げられない。ここに一つの大きな原因がありはしないか。  同時に、今日の各議員の選出母体でありまする選挙区と選挙民とのいわゆる定数のアンバランス、選挙民との問のアンバランスを一体どうするつもりか。一つの地域において——はっきり言うならば、千葉県の状態を見てごらんなさい。一区においては十万でも落選をするが、その隣の区では三万で当選をするというような、現実に住民のばかばかしい今日のこのアンバランスの状態を、一体どうして直されないのか。こういう政治姿勢こそが、ほんとう日本の政治の今後の大きな課題でなければなりません。戦後二十五年、日本は真に民主主義に徹したというが、どこが一体民主主義に徹しておるというのか。民主主義の根底でなければならない選挙がゆがめられて、どうして民主主義が成立したと言い得るでありましょうか。(拍手)私はこの問題はただ単に政府を攻撃するだけではございません。今日の脱政党、政治に対してきわめて関心が薄く、年々選挙のたびにその投票率が減少していくという現実の姿を見のがすわけにはまいらないのであります。  これらの点に対し、真に日本の政治姿勢を正し、真に日本の行くべき方向国民とともに相談をし、国民とともに国家があるという状態を来たしますためには、どうしてもこの選挙法のそれらの問題の抜本的の改革をする必要があるのである。これに対して政府はいかなる御見識をお持ちになっているか、この点をお伺いいたしておきたいと思うのでございます。(拍手)  私どもがさらに総理の一昨日の演説の中で最も奇怪に感じ、ふしぎに感じておりまするものは、沖繩返還に対する態度であります。きょうもこの演壇で、いま竹入委員長の質問に対して首相は何と答弁をしたか。言いかえるならば、血で占領された地域が平和のうちに返ってくるということは世紀の大偉業であるかのごとき言辞を弄せられたことは、御承知のとおりであります。いま申されたのである。  しかし、このことは、はたしてそうでございましょうか。沖繩米軍によって占領されたことは事実である。しかし、日本が講和条件をのむ、いわゆる降伏をいたしましたその条文は何によるのであるか。ポツダム宣言でございましょう。ポツダム宣言の受諾であるポツダム宣言は、先ほども申し上げましたように、カイロ宣言を受けておる。カイロ宣言の六項には何と書いてある。連合国は領土の拡大を欲しないと書いてありましょう。(拍手)これを受けたのである。同時に、したがって、今日の沖繩の地位というものは、その潜在主権日本にあるということは、何人もこれを否定するわけにはまいりません。サンフランシスコ条約、あの講和条約の場合におきましても、アメリカの全権であったダレスは何と言っておる。沖繩主権日本にある、日本に残すのである。英国の代表もこれと同じことを申されておりましょう。これを受けた、日本の全権であった吉田首相は、沖繩の領土主権日本に残されたことはまことに喜ばしい、一日もすみやかに沖繩日本復帰することをこいねがうという演説をいたしておりましょう。この事実をもってするならば、血によって占領されたものが平和のうち返ってきたということは、すでに沖繩の領土は日本の領土であるということが明確になっておる、われわれはこの次元に立たなければならない。したがって、今日の沖繩返還は、明らかに領土権とは別に、施政権の返還といわれておるのでございましょう。どこに沖繩の領土権の返還と書いてありますか。すべての文書には、行政権、いわゆる施政権の返還としか書いてない事実を見てもらいたい。沖繩に対する認識をお互いに改めなければならない。  同時に、私はそういう基本に立ってものを考えてまいりますると、今日の状態では、佐藤さんが言われるように世紀の大偉業でなくして、むしろ、二十六年という長い間沖繩の諸君が異民族の支配を受けておったということについて、もう少し深くひとつ考えようではございませんか。  御承知のように、沖繩における人権の問題あるいは国民に与えられた侮辱、これを一体どう総理は受け取っておいでになるか。たとえば、二、三の例を申し上げてまいりまするならば、沖繩の諸君が戦後海外に移住をいたしますときに、民政府から出してまいりますパスポートには何と書いてあったか。国籍欄に琉球人と書いてあったではございませんか。琉球という国が世界のどこにあるのか、諸君に聞きたい。これが海外に沖繩の諸君が行くときのパスポートである。国籍である。全く地球の上にない。国籍不明というよりも、むしろ、地球の上の人間でないかのごとき印象を与えたこのパスポート。  海外に彼らが船によって出かけようとすれば、いずれの国の旗でもない、黄色いきれを三角に切った旗を立てておった次第である。今日、国際法は旗国主義をとっておることは、諸君も御承知のとおりであります。いずれの国の国旗でもない旗を立てて歩けば、国籍不明の船であるということは間違いがございますまい。  沖繩百万の同胞は地球上の人間としての取り扱いを受けていなかったというこの事実の前に、これに一体日本政府はどう対処しようとするのか。それは単に占領中であり、施政権をアメリカに渡しておったからやむを得ないものであるというような考え方は、私は間違いであると考える。  最近における状態においても、御承知のように、コザ事件の遠因はどこにあるのか。コザ事件の遠因は、御承知のように、沖繩の婦人が反対側の歩道を歩いておるのに、反対側から猛スピードで来た米軍の軍人の乗っておる自動車によって轢殺をされた、この事実が無罪になっておりましょう。今日、世界のどこの国に、人を一人ひき殺して、しかも交通違反を犯してひき殺した者が無罪になるということがどういうことかということである。こういうことが一体承服されるかどうか。  私は、今日のこの沖繩返還協定については、根底になるものは、こうして沖繩の諸君が人としての取り扱いを受けなかった彼らの心情を十分にくんで、その上に立って返還協定をなすべきであるということである。したがって、私は、この際佐藤総理にお聞きをしたいことは、こういう状態の中にあります沖繩に対して、今度結ばれた返還協定内容を見てみますると、きわめてあいまいなものがたくさんあると同時に、今月十一日の琉球新報の沖繩島民諸君の世論調査を見てみますと、これでよろしいという人はわずかに九・四%、不平であるという人が四七%。この沖繩の世論を総理はどうお考えになるか。私は、こうした沖繩の心情をお互いが考えるときに、総理沖繩返還に対する態度としては、世紀の偉業をなし遂げたというような、胸を張ったこの壇上からのことばでなくして、沖繩の諸君には長い聞きわめて大きな犠牲をしいてきたが、曲がりなりにも今日日本復帰するような状態になった、その内容については必ずしも沖繩住民の諸君の納得するものではないであろうが、やむを得ざる今日の状態であるから、これをがまんしてもらいたいという謙虚な態度によって沖繩住民に報いられることこそが、日本国総理大臣の当然とるべき態度だと私は考えておる。(拍手)この考え方に対して、もし私の考え方が間違っておるとするならば、どこが間違っているか、はっきりひとつ御指摘を願いたい。(拍手)  私は、同時に、これらの問題の解決内容について申し上げておきたいと思いますが、それは、先ほどから議論されておりますいわゆる核抜きの問題が一つの大きな問題でございます。共同声明の問題を援用されて、そうしてアメリカが非核三原則を了承しておるからよろしいんだ、ただ、七条に核を置かないと書いたからそれでよろしいんだということになっておりますが、これで沖繩の諸君が納得をいたしますか。いままで、沖繩には核がないんだ、ないんだということをこの壇上からもあなたは何回お言いになっておるかということである。今日では核があることがはっきりいたしておりましょう。現に今月十日のワシントン・ポストを見てみますると、何と書いてあるか。国務省と軍の関係との間に、この沖繩にある核を台湾に持っていくがよろしいか、あるいはその他の島に持っていくがよろしいかということで議論をしておるということが、ワシントン・ポストにもはっきり書いてありましょう。あるからこそ、こういう議論が出るのであります。いままであなた方は沖繩にはほとんど核がないというようなことを言われておりましたが、これはまっかな間違いである。私はうそとは申し上げません、気の毒ですから。しかし、間違いであって、あることには間違いがない。あるから、アメリカでいま申し上げましたような議論ができておるのである。したがって、今度の協定に対しましては、核は絶対に置かないということが七条によってよろしいとするならば、それをさらに裏書きする、その核があるかないかということを十分に査察する条件がなければ、沖繩の諸君を中心として日本国民は承認しないでございましょう。(拍手)私は、このことに対して総理がいかなるお考えを持っておいでになるか、さらに聞いておきたいと思うのでございます。  さらに、沖繩の問題として、いま特殊部隊の問題がございました。この中で私は最も大きな問題として考えなければなりませんのは、いわゆるVOAを五カ年間存続するということが明確になったということでございます。その他の問題については協定の中に明確になっておりませんが、しかし、この問題ははっきりしておる。このVOAは、御承知のように、発生いたしましたのは昭和十七年の六月でありまして、このときはアメリカの戦時情報局として誕生したのであります。こういう前歴を持っておりますこのVOA、その後これが大統領の指揮下に渡って、そうして沖繩におけるアメリカの声として放送されておるようでございます。政府は、これは軍事目的のためではない、沖繩におけるアメリカの単なる情報宣伝であると言われておるのでありますが、それについても、内容一体どうなっておるのか。これの電力数は一千キロワットでございましょう。今日、世界の各国におけるいわゆる放送に使っております電力が、一千キロワットというような大きなものがあるでございましょうか。きわめて少ないのであります。しかもこの強圧なる電力の中で使われておることばは、中国語と朝鮮語になっておるということは御承知のことと存じます。そう考えてまいりますと、いかにこれが平和的にアメリカの声であって、そうして宣伝に使っておるとは申されましても、その内容あるいはその電波の大きさ、その放送先というものから考えてまいりますと、アメリカの戦略機関の一環であるという憶測をすることもまた可能であろうかと存じます。  こういう問題が根底に一つあるということと、もう一つの問題は、御承知のように、これはわが国の電波法に関係があるのでありますが、わが国の電波法の五条には、明らかに、外国のこうした設置は許さないと書いてある。そういたしますと、これを五年間認めるということは、国内法の電波法を改正するか、あるいは沖繩に特別法を施行するか以外に方法はないでしょう。これで郵政省も法務当局もお困りになっておることは、私はよくお察しをする。しかし、いずれにいたしましても、協定の中にこれが五カ年間存続するということになっております。そうすると、いま申し上げましたように、国内法を改正するということになれば、これこそ明らかに本土沖繩化であるということを断定いたしましても、ちょっとも差しつかえがないし、抗弁の余地はないでございましょう。(拍手)  私は、これらの問題があり、さらにわれわれが持っておりまする問題の中で、もう一つ沖繩協定で見のがすことのできないものは何であるかといえば、いわゆるこの協定における最後の条項になっております九条——ニクソンさんとの共同声明の中の四項に書いてある、ベトナム戦争が終結していなければ、その時点においてさらに協議することがあるであろうという条項と、この協定の九条との関係であります。  九条には、御承知のように、批准書を取りかわしてから二カ月以内にこれが発効すると書いてありまするが、しかし、取りきめられたこの協定基礎をなしておりまする共同声明には、ベトナム戦争云々ということが書いてある。ということになってまいりますと、九条ははたしてそのままうのみにしてよろしいかどうかということである。アメリカ日本に領土を返還いたしましたものには、御承知のように、昭和二十八年の十二月二十五日の奄美大島がございます。奄美大島のときには、第一条に明確に期日が書いてある。その次の小笠原のときには、六条に、この批准を取りかわしてから三十日目にこれが発効するということが明確に書いてあった。これと今度の協定はやや似ておるのであります。似ておるのでありまするが、小笠原の協定のときには、何も共同声明というような前文はなかったのであります。今回のこの沖繩に対しまする返還協定内容というものは、そういう問題を含んでおる。したがって、この間には、国民全体が私は大きな疑惑を持っておると思います。同時に、次の国会では佐藤総理は何とかこれの審議を願いたいということを所信表明に言われておりまするが、われわれは次の国会で佐藤総理の言われるように沖繩問題を討議するといたしましても、ここの問題が明確でなくて、一応批准はしたが、それはベトナムまかせ、あなたまかせで、いつ発効するかわからぬというような不的確のものについて、血道を上げて議論するということは、私はいかがかと考える。これは一体どうなんです。佐藤さん。私はこの間の実情というものはほんとうにこの機会に明らかにしていただかなければ、次の国会で何とかこれの審議をしようといったところで、いつ返ってくるかわからぬものについて批准の問題を議論するということも、いささかどうかと考えられるし、もう少し憶測して考えれば、批准をすること自体があるいは無効になりはしないかというような懸念さえ浮かぶのであります。しかし、先ほど冒頭に申し上げましたように、南ベトナムにおいて、ニュースとして伝えられたようなことがかりにあるといたしまするならば、あるいはそういう懸念はないかもしれない。しかし、私どもが現実の姿の上に立って、いまの佐藤さんの説明されておりますることを聞いてまいりますると、非常にその点については不安を感ずる。したがって、共同声明の四項とこの協定の九条との関連性は、この機会に明確にしておいていただかなければ、われわれこれを了承するわけにはまいりません。  さらに、まだ時間が少々あるようでございますので、私はもう少し申し上げておきたいと思いますが、一昨日の所信表明の中で——先ほど私は、批准問題についてあなたまかせであるというようなことを論じたのでありますが、中共の問題についてあなたまかせなんですね。回りからそういうものを積み上げてきて、そうして政府間交渉ができるようなことを期待するとおっしゃるのですからね。これはあなたの仕事ですよ。人の仕事じゃないでしょう。あなた御自身が積極的にこれを解決する、それには回りの諸君も協力してもらいたい。それを期待するというのなら話はわかるのでありまするが、これが逆であって、皆さんにひとつ積み上げてもらって、それを政府政府間交渉のできるようになることを期待するというのだから、全く私は話は逆だと思う。(拍手)これは私の意見一体間違っておるのかどうなのか。ほんとうにあなたがそういうことをお考えになっておるとすれば、これはどうも中国問題に対しては全く誠意のないものと、国民も受け取るでございましょうし、われわれもそう断ぜざるを得ないのであります。  そうなってまいりますると、私は、今日の沖繩の問題を中心として、いま申し上げましたように、これらの問題が十分に解決されなければ——ことに問題になるのは自衛隊に対する一つの問題であります。あなたは六千八百の自衛隊沖繩に送るということをきめたといわれておりまするが、これに対して、先ほどから申し上げておりまするように、沖繩住民の気持ちは一体どうであるかということであります。  沖繩住民の諸君が最も憂えておりまするのは、再び沖繩が戦場になることのないようにということであります。ここに戦争に使われる米軍がいるということが、戦争に導く一つの大きな課題であることは、何人も否定することはできません。したがって、沖繩の諸君がこれらの全面撤去を要求するということは当然の帰結であります。しかし、これには今日の国際情勢がございましょう。同時に、ここに日本自衛隊を送るということになりますると、一体どういう結果になるか。いつか、この演壇で佐藤さんは、もし沖繩が他国から侵略されるようなことがあって、沖繩住民がその戦争の惨禍を受けなければならないようなときには自衛隊を派遣する、自衛隊によるということを言われたと私は記憶いたしておりまするが、これと今度の問題を関連いたしてまいりますると、どう考えても、自衛隊の派遣は早過ぎるのではないかということである。かりに、日本の領土であるから日本自衛隊がこれを守るということが論理上成立するといたしましても、いまだ本土よりもはるかに大きな、ばく大な米軍がここには所在しておるのである。その米軍と、同時に、同じように訓練をして、同じような作戦行動に出るということになってまいりますならば、沖繩の諸君は、これに対してはほんとうにこれを拒否するということは、私は当然だろうと考えている。同時に、本土における自衛隊の数と、沖繩のあの狭い領土の中で、しかも米軍がいまだたくさんおりまする中に、六千八百というような、数字の上からいけば本土の約何倍になりますか、二十倍あるいは三十倍になるでしょう、こういう、兵力といいまするか、自衛力をあそこにつぎ込まなければならないという理由は一体どこにあるのか、この点をひとつ明確にしてもらいたいのです。そういたしませんと、沖繩住民の諸君も、私ども日本国民全体も、沖繩返還がかりにスムーズに行なわれるといたしましても、戦争への危惧はぬぐい去ることはできません。今日自衛隊沖繩への六千八百の配置ということは、当然、夢にも私ども考えていなかったのであります。返還が行なわれても、自衛隊がここに派遣されることは、まず沖繩における米軍の大部分というか、全面撤退の後における、当然完全なる日本の領土としての様相のときに、これを自衛するというたてまえからならば話がわかるのでありまするが、米軍が腐るほどいるときに、何も本土の何十倍というような兵力に相当する、この六千八百というような大部隊をここに送る必要は私は毛頭ないと考えております。この点に対して総理一体どうお考えになるか、この点についてもひとつ明確に御答弁をお願い申し上げておきたいと思うのでございます。  以上のことはきわめて簡潔に申し上げましたが、私は、それらの問題がすべて解決されない限りにおいては、遺憾ながら、本土並みのこれが解決であるとは申し上げません。ことに私自身にとって非常に遺憾に考えておりますことは、古い話をするようでございますが、昭和三十一年の六月二日に、私はこの壇上から沖繩の早期返還の要求決議案に対する趣旨説明をしたものであります。それから今日十五年、しかもその間において沖繩返還がどうなってきたか。同時に、われわれは、四十二年に、なくなられた西村委員長を先頭にいたしまして、いずれの政党も抽象的であった沖繩返還に対して、具体的に、沖繩返還核抜き本土並みでなければならないということを声明したものでございます。(拍手)したがって、今度の返還協定は、その責任上、私どもといたしましては、完全に核抜きであり、本土と全く同じ様態でなければこれを承認するわけにはまいらぬのであります。  以上、私が申し上げましたこと等に関連をいたしまして、どうかひとつ総理に率直に御答弁をわずらわしたいことを要求いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  17. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 先ほどのサイゴンAPニュースというのは、これはどの程度真偽があるか、外務省はまだはっきりつかんでおりません。したがいまして、その程度に御了承願っておきます。しかも、この南ベトナム政府提案は、一九五四年のジュネーブ協定の云々というように、南ベトナム側のこれは提案のようですから、ちょっと私もどうかと思います。  そこで、いろいろお尋ねがございましたが、この中国問題、中国の問題は台湾の問題、台湾の問題は、私はもう何度も申し上げましたように、われわれはサンフランシスコ条約でこれは権利、権原を放棄したその地域でございます。先ほど私が申しましたように、その帰属が国際的にはっきりきまったとは私はまだ認めることはできない。日本自身は、放棄したのですから、何にも言うことはございません。これだけはもう間違いのないことです。何かそこに御心配があるようですが、それがポツダム宣言を受諾した、ポツダム宣言はカイロ宣言を受け継いでおる云々等の歴史的事実を言っておられますけれども、とにかくそれは連合国側の議論であって、私ども関係するところではございません。われわれとしては権利、権原を放棄した、それだけでもうこの問題は済んでおると思います。また、この問題に、過去にこだわらないで新しくスタートしろと、これはたいへんけっこうな御意見かと思いますけれども、ただいま申し上げますように、われわれは国会で承認した日華平和条約がありますから、それを簡単に無視するというわけにはいかない。そこの重要性を十分わきまえていただきたい。もちろん、国会におきましても、当時の野党の諸君は反対であったようであります。その事実はございますが、しかし、公明党はそのときはおられなかったと思います。そういうような歴史的事実はありますけれども、その歴史的事実ではなくて、日本の国会でどういう扱い方をしたかというそのことが大事ではないかと私は思うのであります。その点は誤解のないようにお願いしておきます。  また、あとの問題に先に答えるようになりますが、この沖繩の問題について私の手柄であるかのような言い方をしているという、さような意味で私は申しておるわけじゃございません。私はさような意味ではございません。ただ私が申し上げたいのは、戦争で失った地域だ、そうして主権日本にある、潜在主権日本にあると言いながらも、この占領状態はいつまで続くのかわからないような状態に置かれておる、それに終止符を打ったということ、ここにわれわれは日本国民、また米国民の英知というものを高く評価しなければならないのではないかと思うのであります。(拍手)われわれは、占領の状態、いつまでもアメリカのかってに使われているその状態は、いりそれでは解消できるのか、その解消の見込みはなかったではないですか。そういうこと私は皆さん方に呼びかけておる。だから、そういうことをも考えられて、そうしていま言われますように、なき西村委員長はたいへん先見性のある方でございました。私も同じような考え方で、沖繩を訪問した際に、沖繩祖国復帰なくしては戦後は終わらないということを言いました。名言であるかのような言い方をする人もありますが、そうではない、ほんとうに私の胸のうちから出たそのことばであります。このことを私どもは忘れることはできないように思うのであります。(拍手)したがいまして、ただいま言われますように、核抜き本土並み、これが最小限度のわれわれの要望であり、そうして早く日本に、祖国に復帰して、それから後に沖繩県民の御労苦をわれわれは慰め、また元気づける、そういうことと取り組もうではないか、これが私どもが皆さん方に御協力を願っておるゆえんであります。(拍手)私はこのことを十分考えていただきたいと思います。  ところで、順を追ってそれではお答えをいたしますが、保険医の問題についても、先ほどお話がありましたように、やはり患者が第一。患者と申すか、国民というか、国民中心に医療制度はあるのだ、医療のために病人がいるわけじゃないのだ、このことをわきまえて取り組んでいこうという、いままでなぜこの問題が、そこに気がついていながらも、各団体がそれぞれかって気ままな議論をしておったか。そのことを考え直して、(「政府がちゃんとしていないからだ」と呼ぶ者あり)そうして政府もちゃんとするが、各種の団体も、医療機関だけではありません、支払い側も組合側も、こういう事柄について主体は国民であるということ、そこに思いをいたしてこれを解決するということでなければならない、かように思います。  あまり長くなりますから、これはこの程度でやめさせていただきます。  次に、最近の選挙を通じまして高級官僚の候補者の選挙違反、これが目立っている、かような御指摘であります。また、政治資金規正法の改正の問題についてもお尋ねがありました。私は、この選挙違反あるいは資金規制の問題、これなど、選挙を浄化したいと願う国民の期待にこたえる上からも、ぜひともこれは取り組んでいかなければならない重要な問題だと思っております。ただいま、選挙区制度との関連もありますから、そういう考え方で選挙制度調査会に答申を求めております。必ず近く答申が出てくるだろうと思います。いろいろ関係するところの問題が深いので、これらは実現可能な、りっぱな成案を得たいと、かように考えておる次第であります。(「規正法をどうする」と呼び、その他発言する者あり)不規則発言には答えません。  ニクソン米大統領中国訪問とこれについての政府考え方は、北山、竹入両君にお答えしたとおりでありますが、政府としては、今後各方面の話し合いを通じて日中間の相互理解を促進し、両国関係改善をはかってまいる所存であります。このため、北京政府が応ずるならば、日中間正常化の問題を含め、双方に関心のあるあらゆる問題につき政府間の話し合いを行なう用意があります。いずれにしても、日中双方が同じ土俵で話し合いを始めることが問題解決の第一歩ではないかと思っております。  次に、沖繩の問題について、先ほどは潜在主権の点から私の感じを率直に申しましたが、まあこの点で、だから一日も早く祖国に復帰していただく、そういうことをすることがわれわれの本土側でできることではないかと思っております。いま議論をするよりも、とにかく早く本土に迎える、そういうことをしなければならないと思います。そうして、門司君からも御指摘になりましたように、いずれこの批准国会が開かれますから、その際にこの問題についてはさらに掘り下げて御審議をいただきたいと思いますので、ただいま申し上げ得ることは、できるだけ一日も早く祖国に迎えたい、祖国に迎えた上で、ただいまの御労苦にこたえるようにわれわれも努力するということ以外にはないように思います。  また、沖繩返還協定の第七条において、日米共同声明第八項の趣旨を明記することによって、核抜き返還の事実をさらに明確にした次第であります。  なお、日米安保条約に基づき米軍の駐留を認める以上、所要の施設、区域を提供しなければならないのは当然でありますが、沖繩における施設、区域の提供については沖繩住民の要望も十分留意し、今後とも基地の整理統合に取り組んでまいる所存であります。米側におきましても、不要不急なものは逐次返還するという意向を表明しておりますから、現実的な処理を行なって、沖繩住民の福祉の向上に一そう努力いたします。  その際に、核の査察の問題を提起をされましたが、査察の問題はもちろん米側の同意がなければできないことは御承知だろうと思います。よく事情は御承知のようですから、それより以上はお答えはいたしません。  高級官僚の選挙違反にお答えくださいというメモが入りましたが、先ほど答えたように、これは私、高級官僚の選挙違反、選挙のたびにこういう事柄があるということ、まことに残念に思います。しかしてこの問題はそれぞれの人々、候補者自身がみずからの処置をきめるべき筋のものだと、かように思いますので、しばらく党としての処置は扱わないようにしたいと思っております。タッチしないつもりでございます。  それからVOA放送の存続の問題でございますが、これは返還協定におきましての継続運用を認めることといたしましたので、電波法第五条の適用は排除されることとなります。  なお、その他の規定の取り扱いに関しては、特別措置について目下検討中であります。しかし、これによって本土沖繩化という御指摘は当たらない。これはどこまでも沖繩本土化でございます。本土に返ってくるのであります。本土沖繩に行くのではございません。  沖繩返還協定には返還時期が明示されていないとの御指摘でありましたが、この協定は、日米双方において立法府の承認を得た上、批准書の交換を行なって効力を生ずることになります。国会の承認が必要であります。政府としては、協定発効の日、すなわち、復帰日についてはいつがいいか等でいろいろ議論しておりますが、なるべく早い時期というのが望ましい、かようにも考えております。  ところで、四月一日が望ましいと考えているのでございますが、私は一日も早く復帰を実現したい、かように考えております。  また、日米共同声明のいわゆるベトナム協議事項なるものは、元来沖繩の一九七二年中核抜き本土並み返還のワク内で行なわれるべきものであることはこれまでも御説明したとおりでありますが、この協議は現実に行なわれる可能性はもはや実際上ないものと考えます。これはたいへんめでたいことでございます。  以上、お答えをいたします。(拍手)     —————————————
  18. 船田中

    議長船田中君) 勝澤芳雄君。   〔勝澤芳雄君登壇
  19. 勝澤芳雄

    ○勝澤芳雄君 私は、日本社会党を代表して、国民の暮らしの問題を中心に、佐藤総理並びに関係大臣にお伺いいたします。  私は、質問に先立って、十七日、歌志内炭鉱で起こった坑内事故並びに十八日、兵庫県南西部の集中豪雨による犠牲者の方々に心から哀悼の意を表します。企業優先、人間軽視の保安対策と気象予報、道路行政のずさんさに憤りを感ぜざるを得ません。政府の徹底した原因究明と抜本的対策はもちろんのこと、犠牲者並びに遺族に対する万全な補償を要求するものであります。  さて、今日われわれは、四月以来、統一地方選挙、参議院選挙を経て、政治の転換を求むる国民の声がたいへん大きなうねりとなっていることを強く感じているのであります。とりわけ、佐藤内閣人間的でない政治のあり方に対し、鋭い批判の声が町のすみずみまで満ち満ちております。統一地方選挙では、東京の美濃部さんが百六十八万票の大差をつけて圧勝しました。さらに大阪の知事、川崎、横浜の市長選挙の勝利をはじめ、ストップ・ザ・サトウの合いことばは僚原の火のように全国に広がりました。しかも、続く参議院選挙で、自民党の全国区の得票率は四四・六%、地方区四四%となり、国民の過半数がはっきりと自民党の政治に不信任の意思をあらわしているのであります。(拍手)とりわけ、この傾向が、いまや大都市だけでなく農村に至るまで全国をおおっているのであります。各新聞世論調査を見ても、佐藤内閣の支持率は急激に減り、五月十五日の共同通信の調査では、佐藤内閣を支持する者三三・二%、支持しないとした者は実に四九・六%に及んでおり、もはや国民の半数が佐藤内閣を支持しないことを明らかにしております。(拍手)  総理は、内閣改造において、一人を除く閣僚の入れかえを行ない、表向きは新しくしたように見えますが、中身の政治のあり方は変わりそうもありません。人心一新とは自民党の中のことで、国民とは関係がありません。だから、午後七時のたそがれ内閣だとか、さよなら内閣だといわれております。(拍手)これが国民の偽らない実感です。このように、国民の皆さんの心を流れている気持ちは、GNP万能に対する痛烈な批判であり、大企業中心、人間軽視の政治に対する反抗を示すものであります。われわれの住む世の中のほんとうの主人公はわれわれ人間であって、決して物でも経済でもないという、わかり切った国民の政治への考えがはっきりしてきたのであります。これがストップ・ザ・サトウということであります。  私は、最初に、国民の皆さんの期待を込めて、物価問題から質問をいたします。  総理は、池田内閣当時、その高度経済成長政策人間不在の政治と批判し、社会開発や人間尊重の政治を行なう、物価の値上がりやひずみの解消が佐藤内閣の使命であると、はっきり言い切っておられました。ところが、佐藤内閣の実際の政治は、池田内閣よりも経済の成長を高め、物価を上昇させ、公害を激発させ、人命無視の間違った政治を行なっております。昭和三十二年から今日まで、物価は二倍になりました。お金の値打ちが半分になったのであります。一方、土地の値段は八倍にもなりました。たいへんな値上がりです。消費者物価は、政府の発表でも、昨年は七・三%上昇したといわれ、生鮮食料品や家賃、医療費、教育費など、国民の暮らしにとって最も重要なものが軒並みに上がっております。家庭の主婦の皆さんは、政府のパーセントはとても信用できない、実際は一五%も上がっていると嘆いています。大きな企業の商品である、たとえば、カラーテレビの原価が四万円、六十万円クラスの自動車の蔵出し価格は三十四万円、ビタミン剤一万円の原価がわずか五百円、化粧品などは百円化粧品でも十分採算がとれるということは、何と考えたらいいでしょうか。不当な利益を得るためには、値下げできるにもかかわらず、値下げをしないでもうけを一人占めし、巨額の宣伝費をかけて安い製造原価の品物を高く売りつけています。  このような間違ったあり方を正すために、この間の国会で社会党は、公明、民社両党と共同して、寡占価格規制法案を提案しました。この法案の考え方は、大企業商品の価格の引き下げ、広告宣伝などのむだな経費の規制、不当な価格の監視を政府に求めることであります。寡占企業のつくる製品の価格に対する規制が、今日の物価問題の最も重要な課題であると思いますが、先ほどの御答弁で総理もようやくお認めになったようでありますが、検討でなくて、実行をいつされるか、お伺いをしたいのであります。  次は、土地問題について質問いたします。  たとえば、道路をつくる事業費のうちで、土地の補償費は全体の二五%にもなり、公共事業をおくらしています。地価の値上がりがインフレの源泉となっております。土地も家賃も上がり、勤労者は都市の近くには家を持つことはとてもできません。土地問題が物価値上がりのきわめて中心的な課題であるにもかかわらず、政府が抜本対策を怠っていたため、国民は住宅をはじめすべての面で大きな困難にさらされております。政府の二年前の土地税制の改正は、土地成金をふやしただけで土地の価格の解決にはならず、土地の値段は毎年二割以上も上がっております。しかも、会社、企業の土地は野放しであります。土地を金もうけの対象にすることは、思い切って改める必要があると思います。土地利用を計画化し、値段を押え、売買は公的機関で一元的に行なうなど、大胆な考え方の転換が必要であります。会社所有の土地は、評価が実際とかけ離れております。これを実情に合わせて再評価税をかけるとともに、会社が土地を譲り渡したときの所得は分離課税にして、高い税率をかけるべきであります。総理のお考えをお伺いいたします。  次に、公共料金について質問いたします。  総理は、さきの国会で、主要な公共料金は少なくとも一年間据え置くと約束されました。だが、参議院選挙が終わったとたん、タクシー、トラック、港湾、航空の陸海空の料金の値上げを一斉に許可しました。これは運輸省出身の選挙違反で問題になっている参議院候補者の公約だったといわれております。運輸省の初代の自動車局長だった佐藤総理が、後輩の十六代の黒住局長のために、国民への公約を踏みにじって料金値上げを許可したといわれてもしかたがないではありませんか。(拍手)この際、今後予想される地下鉄運賃をはじめ国鉄運賃その他の公共料金値上げをどうなさるのか、お伺いいたします。  特に国鉄は、国鉄始まって以来の財政の危機により、明年度予算の最大の課題になっておりますが、政府は、国鉄の根本改革を運賃値上げという国民犠牲によって解決しようとするのではないでしょうか。国鉄財政の立て直しについて基本的な考えを、特に国鉄出身である総理としてどう考えておられるか、お伺いをいたします。  第二に、税のあり方について質問いたします。  悪名高い租税特別措置による減税額は、本年度実質四千四百億円、地方税にはね返るものなどを加えた国、地方の減免措置は実に五千八百億円にもなります。日本経済競争力が世界の非難を受けているとき、輸出振興のための減税だけでも七百三十七億円あります。総理は、昨年、大蔵委員会でこれを廃止することをはっきり約束されましたが、財界の圧力でことしも再び延期をしました。一体いつやめるのか、はっきりしていただきたいと思います。  銀座や赤坂のバーや料亭で使われている会社の交際費は、四十四年度九千百五十五億円にもなっております。このうち七九%は税金を払っておりません。ことしは一兆一千億円をこえると見込まれているこの膨大な交際費から税金を取ることは、社会正義の上からも当然なことだと思います。  次に、現在株式の配当だけの収入の場合は、四人家族で年収二百八十六万六千四百三十四円まで所得税がかかりません。一方、サラリーマンは、同じ二百八十六万円の収入ならば、所得税、住民税合わせて三十九万七千円の税金を取られ、商売をしている方は、六十七万四千円も税金を取られています。まことに不公平です。さらに、政府の税制調査会も法人税の税率の引き上げを主張しております。当然、法人税はさらに引き上げるべきものと思います。どうお考えですか、大蔵大臣にお伺いをいたします。  このように交際費や輸出振興減税、配当優遇、法人税の割り安など、会社や企業は税金でも特別に優遇をされております。  第三に、公害対策について質問をいたします。  総理は、先ほど公明党の竹入君への答弁で、無過失賠償責任法案を次の国会に提出したいと答弁されました。国民の皆さんの要望がようやくおわかりになった御様子ですが、総理ほんとうに提出されますか。複合汚染も当然考えられると思いますけれども、あなたの口癖ではございませんけれども、はっきりともう一度御答弁を願いたいと存じます。  なお、大気汚染や水質汚濁防止法の環境基準や排出基準など、国の基準はすべて甘過ぎて、これではとても国民の健康は守られません。せめて都道府県の実情に即した基準まで引き上げるべきではないかと思いますが、御見解をお伺いいたします。  環境庁発足にあたって、総理の直筆の看板が環境庁にかけられたといわれておりますが、看板倒れにならないように、特に公害行政の一元化と、公害研究所をつくること、公害病患者に対する救済措置などについて、適役だと自認をされておる医学博士の環境庁長官にお考えをお聞かせ願いたいと思います。  第四に、社会保障と防衛費について質問いたします。  GNP世界第二位の経済大国である日本の社会保障の費用は国民所得の六%で、EEC諸国の一八%以上に比べわずか三分の一という、きわめて不十分な状態であります。一方、軍事費は、毎年一七%という世界一の驚くような伸び率で、本年度防衛予算は六千七百億円、国庫債務負担行為や継続費を合わせると、年間一兆円をこえる金額が支出され、来年からの第四次防衛計画によると五兆八千億円と、さらにこれを上回っております。ファントム戦闘機、航空母艦など、攻撃用兵器を含む膨大な戦力、兵器の自主開発、国産化が急速に進められようといたしております。アジア諸国をはじめ、世界国々から、日本軍国主義復活が非難をされています。しかもニクソンアメリカ大統領訪中により、アジア緊張が急激に緩和されることは確実であります。国民の皆さんは、当分の間大きな戦争はないと政府が言いながら、五兆八千億円もの膨大な防衛費を必要とする理由がわからないと言っております。  私は、軍備をふやすよりも、社会保障を充実すべきであると思います。その社会保障の中でも、特におくれている老人問題の重要性を指摘したいと思います。昭和六十年には六十五歳以上のお年寄りは人口の一割、千二百万人となり、六十歳以上では一割四分で、千七百万人になると推計されております。しかも、年々急テンポでお年寄りはふえていきます。しかるに、いまの年金制度は貧弱で、厚生年金が月に平均一万四千円、無拠出の老齢福祉年金は月二千三百円という低さです。これではお年寄りが生きがいのある生活をすることはとうてい望めません。定年退職者の大部分は退職後も就職を希望しています。健康保険も率の悪い国保にされてしまう、年金も、もらうときは物価値上がりで値打ちが下がってしまう、まことに乏しい老人対策であります。私は二十五年先の二万円年金でなく、いますぐ二万円年金を支給するよう改正すべきであると思います。同時に、スライド制も実施すべきであります。さらに、医療費については、六十歳以上のお年寄りと乳幼児については無料にすべきであります。東京都、京都府をはじめ、政府の怠慢にしびれを切らして、七つの都府県と百七十九の市町村が老人医療無料化部分的に実行しております。地方自治体でやれることを国がやれないはずはありません。せめてこれぐらいはいますぐやるべきだと思います。総理のお考えをお伺いいたします。  第五に、教育問題について質問いたします。  中央教育審議会は、今回、第三の教育改革というふれ込みで答申を出されました。総理はこれを積極的に推進していく決意だといわれております。この答申を読んで第一に感ずることは、なぜこんなにむずかしく、国民にわからないように書かれているかということであります。教育は国民のものであって、特定の学者や官僚のものではありません。教育改革と言われるならば、国民とともに語り合う態度が必要であります。教育を国民から取り上げ、国家による教育統制を強化しようとしていることがはっきりしております。  第二は、教育の多様化ということであります。できる子、できない子、心身障害児など、能力階層別に別々にして、能力に応じた教育をして教育効果を上げるということで、そのねらいは、能力主義、能率主義による人間の差別と選別の教育であります。総理は、この間、美濃部さんと懇談されたときに、小さいときはお互いにわんぱく小僧だったと話し合っておられましたが、総理、あなたは、秀才と鈍才の差別教育というものをお認めになりますか。教育とは、すべての人間人間らしく生きていくための生命力を育てることであるという教育の本義が忘れられております。  第三は、教育改革には国民の皆さんの意見の一致が必要であります。国家権力による押しつけ教育であってはなりません。憲法や教育基本法に守られた民主教育の基礎の上に考えられるべきものであります。そのためには、中教審の答申は国民の対話の中から再検討されるべきものであります。むしろ、当面の教育課題は、中教審の答申を推進するよりも、まず教育費の父母負担をなくすこと、教育施設を完備すること、私立学校に財政援助をすること、幼児教育、心身障害児などの特殊教育をもっとしっかりやることだと思います。総理の教育に対する熱意のほどをお伺いいたします。  最後に、私は、当面の二、三の問題について指摘をしてみたいと思います。  今回の参議院選挙の投票率は五九%で、前回の六九%を一〇%も下回り、十人に四人が棄権をいたしております。ことばだけの政治に対する国民の政治不信のあらわれで、まことに憂うべき状態であります。  私は、この政治不信を正すためにも、総理は、政治資金規正法の改正を行なうべきだと思います。なぜならば、昭和四十四年の政治献金は、財界から自由民主党に五十三億円、派閥に三十七億円、国会議員でわかっている者百二十七名で三十七億円を自治省に届けられております。四十四年中に合計で百十八億円という巨額な政治献金を、自由民主党は受け取っているのであります。総理は、このため政治資金の規制に消極的だといわれておりますし、いまも、民社党の門司君の質問に対しまして、何らの答弁がなされておりません。私は、この際、総理のまじめなお考えをお伺いいたします。  次に、このたびの参議院選挙における大蔵、農林、郵政、建設、運輸などの高級官僚の権力乱用による悪質な選挙違反は、目に余るものがあります。  特に運輸省黒住忠行氏の場合は、高級官僚と業界の癒着による業界ぐるみの悪質な事件として、国民の皆さんから指弾され、繰り上げ当選を辞退せよという声が高まっております。  総理は、参議院選挙にあたって、悪質な選挙違反はやめさせると国民公約されました。自由民主党員である黒住氏は当然辞退させるべきだと思いますが、黒住氏個人の問題だとして責任を転嫁されることなく、総理、総裁として、先輩としての御意見をお伺いいたします。  なお、この際、高級官僚の一定期間立候補制限や民間への天下り就職制限を強化すべきであると思いますが、あわせてお伺いをいたします。  最後に、東亜国内航空「ばんだい号」の惨事は、直接な原因はともかくとして、人命尊重のための保安設備が不十分であったこと、航空行政が安全よりも金もうけ主義になっていたことなどであるから、早急な対策をとるべきであります。  また、静岡県国道百五十号線大崩海岸の土砂くずれは、安全に対する考え方が不十分で、飛騨川事故の繰り返しで、政治の怠慢であります。しかも、全国で国道だけでも四千の危険個所があるといわれておりますが、このたびの兵庫県の集中豪雨に見られるように、国民の皆さんの安全を守るということについて、もっと真剣になって力を入れるべきだと思いますが、お考えをお伺いいたします。  以上、私は、国民の皆さんの暮らしの諸問題について質問をいたしました。幾つかの問題は、今日まで何回となく指摘をされていることであります。総理がやるやると約束しながらやらなかった問題もあります。  総理は、いま憲政史上、一日一日と、総理としての最長の在職記録を更新しております。しかし、長いということだけがいいとはいえません。何をしたかということで評価がきまるのであります。内憂外患ということばがあるように、参議院では、河野議長がわれわれの支持で当選したことといい、ニクソンアメリカ大統領中国訪問の報道といい、いま日本の政治も大きく変わろうとしております。国民の皆さんは、佐藤総理の退陣の時期をじっと見詰めています。せめて、残されている間、総理として真剣に取り組まれる課題を明らかにして、国民の皆さんに納得できる答弁を要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  20. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 初めに、「ばんだい号」あるいは歌志内等における、さらにまた静岡県下、兵庫県下における道路災害等の事故について、犠牲をこうむられた方々に対して、私も心から哀悼の意を表し、勝澤君と同じ気持ちで、事後の処遇並びに事故の再発防止等について最善を尽くしていきたいと、かように考えます。  次に、勝澤君から問題を提起されましたので、それぞれについてお答えをいたします。  まず最初に、寡占規制法についてでありますが、さきに竹入君にお答えしたとおり、寡占価格の弊害については、政府としても十分注意し、これを排除してまいります。大企業中心だとか、あるいは大企業保護だとか、そういうことのないように、真に人間尊重に徹する、こういう立場で取り組んでいくつもりであります。  土地問題について、きわめて具体的な御意見がありました。あるいは民間の土地売買に対する影響から見て、あるいは税のたてまえから見て、御提案を実現に移すことには大きな問題があるように思います。しかしながら、土地問題、地価問題の重要性から見て、土地の利用計画化や公共用地の先行取得が必要であるという趣旨においては勝澤君と全く同意見であります。今後ともその方向において一そう留意してまいります。  次に、公共料金の引き上げは、それが物価に及ぼす直接、間接の影響にかんがみ、基本的には極力抑制の方針を堅持してまいります。  地下鉄運賃及び国鉄運賃でありますが、地下鉄運賃については、昨年九月の物価対策閣僚協議会において、営団地下鉄につき、総合的交通政策の見地からさらに検討を進めることとして、運賃改定を見送ったが、現在引き続き検討中であります。国鉄運賃については、国鉄再建に関する総合的検討の一環として、物価に与える影響も十分考慮しつつ、予算編成の際に慎重に検討いたします。  なお、国鉄財政の再建問題は、赤字の原因がわが国輸送構造の変化によるものであるだけに、根本的な検討を要する問題であります。このため政府としては、総合交通政策の検討を進め、将来の総合交通体系における鉄道の役割りを明確にして、適切な再建計画を樹立すべく鋭意努力中でありまするが、国鉄自体においても、あらゆる手段を講じて増収につとめ、一方においては、赤字路線の整理、近代化、合理化による支出の削減をはかるなど、極力その体質の改善をはかるべき段階であると、かように考えます。  次に、輸出振興税制についてでありますが、今後の基本的方向としては廃止の方向へ進むべきものと考えておりますが、さきの国会で御審議いただいた租税特別措置法の改正も、その第一歩であります。今後、実情に即して一そう改善努力を続けてまいります。  その他の税制に関するお尋ねにつきましては、大蔵大臣からお答えいたします。  次に、公害問題についてでありますが、無過失賠償責任についての法案は、さきに竹入君にもお答えしたとおり、次の通常国会では提案いたします。その成立につきましては、よろしく御協力いただきたいと存じます。  その他の公害関係の御質問は、環境庁長官からお答えをいたします。  次に、防衛費については、国力、国情に即応した適切な規模を考えているものであり、いたずらにその拡充を考えるものではありません。  社会保障については、人間尊重の見地から、今後とも最重点施策の一つとして重視してまいる決意であり、全体としてバランスのとれた予算のもとに国民生活の質的充実をはかってまいります。  また、今後老人対策が、社会保障の中で重視すべき課題であることは、勝澤君御指摘のとおりであります。財政負担の上から、即時二万円年金あるいは全面的物価スライド制とはまいりませんが、二万円年金の基本的体制はすでに確立したことでもあり、今後とも、その充実については十分留意してまいります。  また、老齢者の医療の確保については、医療保険制度抜本改正の一環として、関係審議会に御意見を伺っているところであります。最近、地方公共団体において、老人医療費に対する特別措置を実施しつつあることをも勘案し、政府としても、老後を安心して過ごせるよう、これが対策について前向きに検討してまいります。  また、乳幼児の医療費の援助についても、次代の社会をになう児童が心身ともに健全に成長することは何よりも望ましいことであり、今後とも十分検討してまいります。  次に、教育問題についてお答えをいたします。  中教審の答申は、四年余に及ぶ審議をまとめたもので、教育問題の全般に及ぶ広範なものであります。教育制度の改革が求められている今日、まことに時宜を得た答申であると私は考えます。政府としては、国民的合意を得て、答申の趣旨を具体化するため全力をあげる決意であります。特に、勝澤君御指摘のとおり、父兄負担の軽減、私学の助成、幼児教育、特殊教育などを重視してまいりたいと思います。  さらに、私は、先生の資質の向上について格段の努力をいたしたいと思います。  子供のときの、あるいは秀才教育、あるいは凡才等の区別によって、いろいろの教育のしかたもあろうかと思いますが、子供のときは秀才だが、中年過ぎたら並みの人というわけになっても、これはいかぬと思います。そこで、今回の答申には、生涯教育ということをちゃんと付記してございます。教育の問題は、やはり一生われわれにつきまとうものだ、かように考え、そういう意味で、お互いの能力をそれぞれ発揮する、また、能力の多様性というものが今日要望されておりますから、そういう意味で、全部が秀才にならなければならないとも、私は考えておりません。それらの点は十分、試験勉強がこれでまた始まったといわれることのないようにいたしたいものだ、かように思っております。  それから、政治資金規正法につきましては、さきに民社党の門司君にお答えしたとおりでありますので、省略させていただきます。これは、私が選挙制度調査会にただいま答申を求めておるということを申しまして、その答申が出た上でこれに対する態度をきめる、かように申したと思っておりますので、もしお聞き漏れの方は、速記録を御検討願います。  黒住議員を辞退させよ、こういうお話でありますが、国民の政治に対する信頼を高めるために、選挙が厳正に行なわれなければならないことは申すまでもありません。黒住君の進退問題につきましては、いろいろ勝澤君にも御意見があるようでありますが、私は、本人の意思にまかせるべきことと、かように考えております。  なお、高級公務員の立候補や天下りについて、いろいろ御意見がありましたが、天下りの弊害を生ずることのないよう、政府としても、人事院の厳正な審査と相まって、十分配慮してまいります。  立候補制限につきましては、法的には問題が多いように思いますが、少なくとも公務員がその地位を利用して選挙運動等を行なうことは、公職選挙法に違反する行為であり、いやしくも公務員たる者がこのような違反を行なうことのないよう、一そうの自覚を求めてまいる考えでございます。次に、「ばんだい号」事件の原因につきましては、現在、専門家からなる事故調査委員会が鋭意究明に当たっており、早急に結論が出されることを期待しております。政府といたしましては、その結論がいかなるものであれ、航空交通の安全確保につきましては一そうの努力をいたす所存であり、とりあえずの緊急対策についても遺憾なきを期したいと考えております。  また、道路につきましても、防災工事を一そう強力に推進し、道路災害が発生しないようこの上とも努力してまいりたいと思います。このたびの静岡県あるいは兵庫県下に起きました災害等にもかんがみまして、私どもは、一そう事故の再発防止に万全な対策を立てたいと思います。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  21. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  まず、交際費課税についての御質問でございますが、これは御承知のとおり、交際費につきましては、今年の春の国会におきまして税制改正を行ない、課税の強化をはかったばかりでございまして、改正後における交際費の支出状況を把握できる期間もまだ経過しておりませんので、さらに課税を強化するかどうかということにつきましては、今後の実情調査と並行して考えたいと存じます。  その次の御質問でございますが、株式の配当のみの所得者、それ以外の所得のない所得者につきましては、所得税のかからない限度が、給与所得者や事業所得者の課税最低限度に比べて非常に高過ぎるということは不公平ではないかという御質問でございましたが、この問題は、御承知のように、法人擬制説とかあるいは法人実在説というような議論と関連して、長い間批判され、議論されている問題でございまして、まだ税の専門家の間でも、いま最終の結論が出ておりませんので、さしあたりの処置として、昨四十五年度の税制改正におきまして配当控除率の引き下げを行ないました。本年、すなわち四十六年度から一部実施いたしまして、四十八年度に完全実施となるということになっておりますので、一方、控除率の引き下げをやると同時に、他方、事業所得と給与所得と、この課税最低限のほうを年々引き上げるということをいたしますので、あと一・二年の間に、この両者の間の課税最低限の格差というものは相当狭まっていくだろうというふうに考えております。  最後に、法人税率をさらに引き上げたらどうかという御質問でございましたが、これも、法人税率の基本税率は、四十五年度の税制改革において二年間の臨時措置ということにしまして、一・七五%引き上げられたことは御承知のとおりと存じます。これを引き上げるかどうかという問題でございますが、ただいま、いわゆる経済の不況が問題になっておる最中でございますので、いろいろ御議論も多いことと思いますので、来年度の予算編成までには、特にこの問題は税制調査会の諮問に付すという予定を現在しておるところでございます。(拍手)   〔国務大臣大石武一君登壇
  22. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 最初に、環境基準、排出基準について、政府考えを申し上げます。  環境基準は、公害対策基本法に基づきまして、国民の健康を守り、生活環境を保全するために望ましい目標値として定められるものでございまして、御承知のように、人間の健康に害のある物質につきましては、きわめてきびしい基準にしてございますし、また、水質の汚染等につきましては、きびしい規制から比較的ゆるやかな基準まで類型を設けまして、各県の事情によりまして、県知事にそのきめ方を一任しておるわけでございます。しかし、各県の各地域は、それぞれいろいろな変相を来たしますので、その実態に即応いたしまして、その基準を類型に当てはめさせるように、つまり、よりきびしい基準に持ち上げることができるように、そのような指導、調整を県知事にいたさしておるわけでございます。  このようにして、さらに科学的な判断を常に加えまして、この基準に足りないところがあればさらに改定を加えまして、いつでも国民の健康と生活環境を守り得るような、そのような基準に持ってまいりたいと願っておる次第でございます。(拍手)  また排出基準は、全国一律の基準にきめてあるわけでございますが、これまた各地域の事情が始終変わってまいりますので、これをきびしい基準に上げるような、上乗せをする権限を各知事に与えてございます。このようにして、何にせよ、各地方自治体との緊密な連絡、指導がきわめて大事でございますので、そのような方向に力を注いでまいりたいと考えております。(拍手)  次に、公害行政の一元化でございますが、何と申しましても、行政が一元化されなければ強力な行政を行なうことはできません。その判断からこの環境庁が誕生いたしたのでございますし、また、この環境庁に強力な総合調整の権限も与えられたのでございます。私は、このような見地から、各省庁との間に緊密な調整を行ないまして、りっぱな行政が行なえるように、同時にまた、各地方自治体とも緊密な連絡をとりまして、やはりこの指導、調整が行なわれるようにしてまいりたいと、心から願っておる次第でございます。(拍手)  次に、公害研究所の問題でございますが、これは法律にはっきり規定してございますとおり、昭和四十八年度末にこれをつくり上げることになっております。目下そのような準備を着々と進めておるのでございます。しかしながら、その間手をこまねいて何もしないというわけにまいりません。そこで、何としても基本的な研究は行なわなければならないと思います。たとえば一例をあげますと、光化学スモッグにつきましては、すでに環境庁内におきまして、技術者にチームを編成させまして、その対策に当たらしておるわけでございますが、これだけでは十分ではございませんので、しかるべく権威ある研究機関にその基本的な研究を委嘱いたしまして、その実態を究明いたしたいと願っておる次第でございます。(「まず予算のかからないところから……」と呼ぶ者あり)予算はたくさんかけたいと思います。  なお、公害患者に対する救済措置につきましては、一昨年制定されましたいわゆる健康被害救済法に基づきまして必要な措置を講じてまいっておりますが、必ずしも十分とは思いませんので、さらに努力をいたしまして、りっぱな措置を講じてまいりたいと念願する次第でございます。  以上でお答えを終わります。(拍手
  23. 船田中

    議長船田中君) 松本善明君。   〔松本善明君登壇
  24. 松本善明

    ○松本善明君 私は、日本共産党を代表いたしまして、国の進路に関する若干の問題について質問を行ないます。  佐藤内閣がこれまで進めてまいりました日米軍事同盟を基軸としての外交政策の誤りと破綻は、もはやつくろうべくもなく明白になってきております。  最初に、佐藤内閣ベトナム政策についてただしたいと思います。  佐藤内閣は、一九六四年、アメリカがトンキン湾事件を契機にベトナムへの軍事行動をますます拡大しているときに誕生いたしましたが、それ以来七年間、一貫してこのアメリカ軍事行動を正当化し、これに積極的に協力、加担してまいりました。それは、総理が、アメリカ北爆開始直後の一九六五年二月十六日、北爆はやむを得ない措置だと答弁しておる事実や、何よりも六九年四月八日、私に対する答弁書で、「米国のヴィエトナムにおける軍事行動は、ヴィエトナム政府の要請に基づく集団的自衛権の行使であり、その法的根拠は、国連憲章第五十一条に求められる。」と答えていることで明白であります。  ところが、ベトナム戦争の実態は、わが党が当初から一貫して指摘してきたとおり、アメリカによって引き起こされた計画的な侵略戦争以外の何ものでもありませんでした。(拍手)そしてこのことは、今日、アメリカ国防総省の秘密報告自身がみずから認めているものとして、全世界に明らかになっております。(拍手)  そこで第一に、総理は、事態がこれほど明確になった現在もなお、私への答弁書で述べたとおり・米軍ベトナムでの軍事行動は、国連憲章で認められた正当な行為だという主張を固執するつもりであるかどうか、政府のこれまでとってきたベトナム政策に一片の反省もないのかどうか、厳粛な答弁を求めます。(拍手)  第二に、佐藤内閣は成立以来七年間、アメリカベトナム侵略のために日本基地使用を認め、ベトナム特需に応じたり、サイゴンかいらい政権に経済援助を行ない、アメリカ上盤用舟艇への日本人乗り組み員を供与するなど、自衛隊派遣以外のあらゆる協力を行ない、ベトナム民主共和国とベトナム人民から激しい非難を浴びております。総理は、今後もこのような行為を継続するつもりであるかどうか、お聞きしたいと思います。  第三に、総理は先ほど、ベトナム問題について一日も早く和平が達成されるよう念願している、と答弁をされました。今日、ベトナム問題の正当な現実的解決は、南ベトナム臨時革命政府のビン首席代表が七月一日、パリ会談で明らかにした七項目の提案を、アメリカが受け入れることしかないと考えますが、この七項目の提案についての総理の所見をお伺いいたします。  なお、これと関連する問題でありますが、総理は、先日来日したレアード米国防長官に、サイゴンかいらい政権への新たな経済援助を約束したと伝えられております。これはきわめて重大な問題であります。ビン代表の七項目提案の第二には、今日のサイゴン政権を維持しようとする行動を、南ベトナムの内部問題の干渉としてきびしく非難する主張が明確にされております。このとき、日本アメリカと、サイゴン政権への援助を約束することは、このベトナム和平提案を打ちこわす新しい挑戦を意味しております。それでも総理は、あえてこれを実行しようというのかどうか、明確に答弁を求めます。  わが党は、アメリカベトナム侵略に反対し、ベトナム問題の真の平和的解決を願うすべての人々の願いを代表して、佐藤総理アメリカベトナム侵略への一切の協力を直ちにやめることを強く要求するものであります。(拍手)  次に、中国問題について伺います。  総理は、この一年間、日中関係の打開を求める国民の世論を「慎重検討中」の一句でそらしてまいりましたが、今日の事態がそのような逃げ口上を許さぬものとなっていることは明白であります。  今回のニクソン訪中計画の突然の発表に際して、日本の世論は一致して対米追随外交から自主外交への転換を要求しております。  私は、総理の真意を端的にただしたいと思います。  第一に、総理所信表明は、中国問題について、まず中華民国との友好関係増進を強調した上で、中華人民共和国政府との関係改善の期待を表明して薫りますが、これは問題の核心を全く回避した作文であります。いま、日中関係で最も緊要な問題は、だれが中国人民を代表する正統政府であるかという問題について、日本政府道理にかなった立場を自主的に明確にすることであります。(拍手)  今年一月の通常国会の代表質問で、わが党がこの点をただしましたときに、総理は、中華民国政府、つまり二十年以上も前に中国国民によって追放された蒋介石亡命政権を中国正統政府とみなすという見解を述べました。この見解が今日においてもなお変わっていないのかどうか、また、今後変えるつもりもないのかどうか伺いたいと思います。  第二に、国連での問題であります。  中国代表権問題についての国連での多数決の結論は、すでに昨年の総会で出されております。すなわち、蒋介石政権を追放し、中華人民共和国政府を招請する決議が多数で採択されました。ところが、これに対して、日本アメリカが重要事項指定決議などの妨害手段をとったために、その発効が妨害されているのが実情であります。  今秋の国連総会を前にして、安保理事会の議席を含め、中国国連代表権の完全回復と蒋亡命政権の追放を求める十八カ国決議案が、政府の手元にも送付されているはずでありますが、政府はそれに対してどういう態度をとるつもりであるか。また、かりにこの決議案にどういう態度をとるにせよ、もし政府が、日中関係改善を望むまじめな意思を少しでも持つならば、少なくともこの決議が多数で可決されたとき、その発効を妨げるような妨害手段は絶対にとるべきでないと考えますが、その約束ができるかどうか、お聞きしたいと思います。(拍手)  特に総理は、二十五日に蒋政権の張群総統府秘書長と会談すると報道されておりますが、中国国連復帰妨害策の相談ではないか、伺いたいと思います。  第三に、今日、日中関係最大のガンが、自民党政府が二十年前にアメリカの強要のもとに結んだ日華条約にあることは明確であります。これを廃棄することは、中国側が国交回復条件としているからということではなく、日本自身の外交政策の問題として当然のことといわなければなりません。中国人民から追われ、アメリカの武力で維持されておる亡命政権を中国の正統の代表とする条約を一方で結んだまま、他方で中華人民共和国政府中国人民の代表と認めて国交を結ぶわけにいかないということは、国際的にも自明の理であります。(拍手)  佐藤総理は、国際信義を云々して日華条約廃棄に反対してまいりましたが、日本が多年侵略戦争中国人民に大きな被害をもたらしながら、戦後二十六年たった今日、その中国国民を代表する政府国交を結ぶことさえ拒否し、敵視の政策を続けていることこそが、国際信義に最ももとる道であることは自明であります。(拍手)  総理は、国民的な要求である日中国交回復への道をあえて犠牲にしても、蒋介石亡命政権との不当、不法な条約、しかも、アメリカの占領下に、日本国民が自由な選択をなし得か伍状態のもとに強要されたとの条約を、最後まで固執するつもりなのかどうか、明確な答弁をしていただきたいと思います。(拍手)  第三に、日米沖繩協定についてであります。  わが党は、沖繩協定発表後、直ちにその協定内容を検討し、侵略的、屈辱的なものとして反対の立場を表明いたしました。われわれの指摘の正しさは、協定調印後行なわれました自衛隊沖繩防衛に関する日米軍事取りきめの締結、アメリカ原子力空母エンタープライズの横須賀寄港要求、レアード米国防長官の来日と、日本の一そうの軍事的加担を要求する一連の言明によって、一そう明瞭になっております。  ところで、伺いたい第一の問題は、基地機能についてであります。  総理は、選挙中、返還されることによって、沖繩は軍事的に極東のかなめ石でなくなると言明されました。しかし、沖繩協定によれば、ベトナムをはじめ西太平洋のどの地域にも緊急出撃をする任務を持った海兵隊や、第七心理作戦部隊など、ほとんどがそのまま残ることになるのであります。さらに、沖繩台湾、韓国の軍事的関係は、弱まったどころか、ますます強まっております。また、わが党の調査で明らかになった沖繩台湾を結ぶ海底軍事ケーブルは、沖繩協定作業が進行している中で布設されているのであります。総理は、一体何を根拠として沖繩極東のかなめ石でなくなると主張するのか、所見を伺いたいと思います。  第二に、核撤去の問題について、前の国会で、政府は核撤去の確認は必要だと答えました。ところが、レアード長官が来日をして、総理と話し合ったあと、十三日の記者会見で、総理は、それは政府部内の声だ、無理に検査をすれば信頼関係をそこなうと、これを打ち消す態度をとりました。これはまさにわれわれが指摘をしてきました核隠し、有事核持ち込みの危険を総理みずから裏づけたものであります。総理は、核抜きを言う以上、国民の前に明確な事実をもって証明をする義務と責任があるのではありませんか、お答えを願いたいと思います。(拍手)  これに関連をして、日本政府の核政策についてお聞きしたいと思います。  総理は、一九六八年、政府の核政策の四つの柱の一つに、アメリカ核抑止力への依存をあげ、今月十三日の記者会見でも、アメリカの核のかさのもとにいると言われました。そこで、あらためて伺いたいのは、政府は、アメリカ核抑止力への依存を、今日もなお日本政府の核政策の柱の一つとしているのかどうかということであります。  第三に、協定日米共同声明との関係についてであります。  総理は、一九六九年の日米会談で、韓国、台湾事態わが国の安全にとって重要であり、そこに武力攻撃が発生した場合、事前協議に対し、前向きかつすみやかに態度を決定すると表明をされました。これが中国、朝鮮に対する軍事介入を意味することは明瞭でありますが、総理見解は今日も変わりありませんか、お答え願いたいと思います。  沖繩協定調印によって、日米共同声明条約化が問題になっておりますが、前文で、「共同声明の基礎の上に」ということばが入っております。端的にお聞きしたい。協定が発効した場合、あの日米共同声明は、日本政府を将来にわたって拘束することになるか、明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)  最後に、内政問題について一言述べますと、所信表明では、七年間の基本施政について何らの反省が見られませんでしたが、物価のとめどもない上昇、公害列島と呼ばれる深刻な国土の汚染と国民の健康破壊、胸の痛むような惨事に次ぐ惨事、農業政策の破綻や中小企業の倒産、医療の危機、どの一つをとってみましても人間尊重とはほど遠い深刻な問題が山積をしております。これらは、佐藤内閣、あなたが政権を担当した七年間に集中的に起こったことであります。この責任総理一体何と考えておられるのか、所見をお聞きしたいと思います。  いまや外交、内政にわたって政治の転換が必要なことは、だれの目にも明らかになってきております。また、佐藤内閣にそれを行なう能力のないことは、もう論ずるまでもない状態になっていると私は考えます。私は、佐藤内閣のすみやかな退陣を強く要求して、質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  25. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 松本君にお答えをいたします。そちらへ向いてお話をするのが当然だと思いますが、議場の関係で前向きにいたします。御了承いただきます。  まず、ベトナムにおける米国軍事行動についてでありますが、米国軍事行動は、北越による浸透破壊活動に対抗するため、南ベトナム政府の要請に基づいて行なわれているものであり、国連憲章第五十一条の集団的自衛権の行使であると米国政府説明していること、御承知のとおりであります。わが国もまたそのように理解しております。これは、最初のお尋ねに答えたとおり、ただいまも変わっておりません。(拍手)  次の問題は、インドシナにおける米国軍事行動に加担するとか、南ベトナムに軍事的援助を行なっているというようなことは、これはかような事実は全くございません。もしありましたら、御指摘を願います。ただいまのお話では、私どもが軍事的に支援をしておるということですが、さようなことはございません。レアード長官との会談においても、インドシナ問題について意見を交換はいたしましたが、その機会に、わが国の対南ベトナム軍事援助を約束したというような事実は全然ありません。  政府としては、最近の南ベトナムにおける一般的情勢の進展にかんがみ、同地域住民の民生の安定のため、情勢の安定した地域については、経済基盤の整備や開発に役立つ援助を行なう方針であります。また、多数国間援助にも積極的に参加していく考えであります。  次に、共産側のいわゆる七項目提案についてでありますが、今次提案は、捕虜問題の扱いなど、全体として柔軟なニュアンスがあるようであります。しかしながら、政治問題の解決について、南越現政権の合法性を否認する立場を貫いておりますので、このままの形では、パリ会談の行き詰まりを打開し得るものとはなり得ぬものと思います。しかし、今次提案には、明らかに一歩前進が見られるので、今後話し合いが一そう進展することを期待いたします。  次に、中国問題についての質問お答えをいたします。  わが国は、一九五二年、日華平和条約を締結し、自来、中華民国政府中国正統政府として認めております。この態度は、いまも変わりはありません。また、日華平和条約は、日本中国の平和回復のために、中国正統政府である国民政府との間に締結された条約であることを御認識いただきたいと思います一(拍手)  中国国連代表権問題は、現在の国際社会における重要な問題であります。今秋の国連総会における中国代表権問題については、流動的な国際情勢を注視しつつ、わが国国益をはかり、また、極東緊張緩和にも資するという観点から、友好国と協議しながら慎重に検討する所存であります。  中国国連加盟、このことを妨害しないようにということでありますが、私どもはさような問題にはかかわり合うつもりはございません。どこまでも、先ほども申しましたように、一つ中国、その議論で貫いておりますし、そこで、中国国連への復帰の問題が国際的に喜んで歓迎をされる、かような事態ができることを心から望んでおる、これが現状でございます。誤解のないようにお願いいたします。  日米共同声明の拘束力についてお尋ねがありましたが、この点は、すでに何度も繰り返してお答えしてきたとおり、共同声明は、その中で取り上げられている問題についての両国首脳者の見解及び方針を示すものとして、政治的にきわめて重要な意義を持つものでありますが、条約とか協定のように、国際約束としての法的拘束力を持つものではありません。これは、もうすでにたびたびそのとおりお答えしておりますので、誤解はないと思いますが、重ねて申し上げたわけです。  沖繩にある米国基地は、復帰前における態様と異なり、復帰後は日本本土における米軍の施設、区域と同様に、日米安保条約の目的に従って提供され、右のワク内において使用されることになるので、これまでとは違って、その役割りも大きく変化することとなります。この点をはっきり申し上げておきます。  日米安保体制は、米国の有する広範な抑止力を背景とするものでありますが、これには核抑止力が含まれることは言うまでもありません。  しかしながら、このことばわが国米国核兵器を置くこととは全く無関係であり、政府として非核三原則を堅持していることは御承知のとおりであります。  沖繩核抜きについては、返還協定でも明らかにしたとおりであります。核撤去については、事の性質上、毒ガスの場合のように公にすることは困難と考えますが、いずれにせよ、核抜き返還については、疑念の余地のないところであります。これはいずれ批准国会におきまして、皆さま方から十分御審議をいただきたいと思います。  最後に、日米共同声明で触れた韓国、台湾の安全に対する見解については、先ほども申し述べたとおりでありますが、すなわち極東の安全なくしてわが国の安全を十分に確保し得ないことは、政府の従来から一貫した認識であり、この認識は現在も変わっておりません。国民もまた、極東の安全なくして日本の安全なし、これは当然国民理解してくれるところであります。  最後に、これは二度申しましたが、このほうがほんとうの最後であります。内政問題の御指摘につきましては、所信表明におきましても申し上げましたように、政府は、今後も物価の安定、生活環境の改善、社会開発の推進、国民能力の開発、育成などに全力をあげる所存でありますから、よろしく御協力をお願いいたします。(拍手
  26. 船田中

    議長船田中君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  27. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣 大石 武一君         外務大臣臨時代         理         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 竹下  登君         国 務 大 臣 中村 寅太君         国 務 大 臣 平泉  渉君         国 務 大 臣 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————