○門司亮君 私は、一昨日の
総理の
所信表明に対しまして、民社党を代表して、きわめて率直に御
質問いたしますので、
総理からもぜい言にわたらないように、率直に真実を披瀝していただきたいと思います。
最初に私がお聞きをいたしますのは、未確定情報では私はないと思いまするが、ただいまの情報によりますると、南
ベトナム政府が
戦争の停止と、さらに南北
ベトナムの統一を提唱したという
ニュースがいまあったのであります。このことは、
ニクソン大統領の中共訪問と関連がないとはわれわれ
考えられないのでございますが、これらの問題に対して、
政府は、その情報を確実に手に入れられておるかどうか。
ニクソン大統領が
中国に行くという、
アジアにおける、あるいは
世界における
外交問題に対する画期的な情報すら十分に入手することのできなかった
日本の
政府の当局に対しまして、私は、おそらく入手されていないであろうとは
考えますが。しかし、かりに不確定の情報であるといたしましても、
ニュースによって流された以上は、
国民の全体はこれを認めるでございましょう。
私はこういう問題と関連して、
中国の問題をひとつ率直にお聞きをいたしたいと思いますが、いままでの
質疑、さらに答弁をいろいろ聞いてみますると、
政府は、
台湾問題に対しては、何か
台湾の帰属に対しての問題がまだ十分でないかのようなことを言われておりまするが、
日本が講和
条約をいたすに至りました経緯は、御承知のように、ポツダム宣言を受諾しておるのであります。ポツダム宣言はカイロ宣言を受けておるということは明確に書いてあるのである。その中で
台湾、澎湖島というのは
中国から盗み取ったとここは書いてあり、釈してありまするが、盗み取った領土は当然
中国に返すべきであるということが明確に書かれておるはずである。
こういうふうに
考えてまいりますと、どうもいまの佐藤さんの答弁は少し間違っていやしないかと
考える。したがって、たまたま
中国の内戦によって蒋介石政権が
台湾に引き揚げてきたというか、のがれてきたというか、逃げてきたというか、ここに、従来
わが国が
戦争関係を結んでおった
一つの
政府ができたということにとどまるのであって、私は、これらの問題については、その当時におけるいろいろな
立場はあったかとも思いますが、今日の現状においては、
政府は、そういう過去の歴然とした事実の上に立って、
台湾問題を
考える必要がありはしないかということを
考えるのであります。したがって、いまの
中国問題に対する
台湾の処置について、
佐藤総理がお述べになりましたような、いかにも
台湾政府が完全な
中国政府であるかのごときことを
考え、その反面に
台湾問題は
中国の内政であるというような、全く思想の統一のない、支離滅裂な
考え方でなくして、私は、この際、そういうことを一切抜きにして、
台湾問題はそれにこだわらないで、勇敢に佐藤
政府が
中国問題を
解決するということが、あなたにかけられた——
アジアの平和のためにも、
わが国の
国益のためにも、将来の繁栄のためにも、とるべき時期が来ておると申し上げても、ちょっとも差しつかえはないと
考えるのでありまするが、この点に対する
総理の答弁を重ねてお願いを申し上げる次第でございます。
さらに、私は、内政の問題の
一つとして、いま非常に大きな問題になっておりまするものは、何といってもお医者さんの
保険医総
辞退の問題であろうかと思います。
医療というのは、だれのために、何のためにあるのか。私は、
医療のために患者があるのでなくして、患者のために
医療があるということを申し上げなければならないと
考えておる。そうだといたしますならば、その患者は
国民でございます。
佐藤総理は、この壇上からしばしば、きょうも言われたと思いまするが、口を開けば
人間尊重、
人間尊重と言われるのでありまするが、
ほんとうに
人間を尊重されるというならば、
政府はこの際、他人まかせというような、当事者同士の複雑な問題があるからなかなか
解決をしない、そっちのほうから片づけてくれば
政府もお手伝いをしようというような消極的な態度でなくして、
国民の生命と財産を預かる
政府が、進んでこの
問題解決のために対処するということが、
日本国民の
総理大臣としての当然の帰結だと私は
考えるが、この点に対する
総理の
見解をもう一応はっきり示していただきたいと存じます。(
拍手)
さらに、もう
一つの
国内問題として大きな問題と
考えられますのは、過般の参議院の選挙における例の高級
官僚諸君の違反の問題でございます。(
拍手)私は、高級
官僚の諸君が、官にあった時代の権力と因果
関係によって選挙を行なおうとするということはもってのほかであって、言語道断といわなければならない。(
拍手)いわゆるみずからの地位とみずからの職権を乱用して、そうして選挙に臨むということは、そもそも選挙法の違反でありましょう。選挙法には何と書いてある。職権を利用し地位を利用して選挙を有利に導くことはできないということが明確に書いてあるはずである。にもかかわらず、今日暴露されておりまする高級
官僚のあの醜態は
一体何を物語るか。これこそ
政府の
官僚に対しまする綱紀の弛緩のはなはだしいものである。(
拍手)いろいろな収賄の問題があり、いろいろな問題があるでございましょうが、これらの問題は個人の問題である。しかし、選挙を冒涜するということは、
日本の民主政治を根底からくつがえすものである。(
拍手)それを
国家の高級
官僚が行なおうとするこの事件に対し、
総理はこれに対していかなる
見解をお持ちになっているか、この点をこの機会に明確にしておいていただきたい。(
拍手)
同時に、これに関連した問題として、御承知のように、政治資金規正法の問題がしばしばこの壇上でも議論され、また、私
ども野党はこれを
提案いたしてまいりましたが、しかしこれが一向に取り上げられない。ここに
一つの大きな原因がありはしないか。
同時に、今日の各議員の選出母体でありまする選挙区と選挙民とのいわゆる定数のアンバランス、選挙民との問のアンバランスを
一体どうするつもりか。
一つの地域において——はっきり言うならば、千葉県の状態を見てごらんなさい。一区においては十万でも落選をするが、その隣の区では三万で当選をするというような、現実に住民のばかばかしい今日のこのアンバランスの状態を、
一体どうして直されないのか。こういう政治姿勢こそが、
ほんとうに
日本の政治の今後の大きな課題でなければなりません。戦後二十五年、
日本は真に
民主主義に徹したというが、どこが
一体民主主義に徹しておるというのか。
民主主義の根底でなければならない選挙がゆがめられて、どうして
民主主義が成立したと言い得るでありましょうか。(
拍手)私はこの問題はただ単に
政府を攻撃するだけではございません。今日の脱政党、政治に対してきわめて関心が薄く、年々選挙のたびにその投票率が減少していくという現実の姿を見のがすわけにはまいらないのであります。
これらの点に対し、真に
日本の政治姿勢を正し、真に
日本の行くべき
方向を
国民とともに相談をし、
国民とともに
国家があるという状態を来たしますためには、どうしてもこの選挙法のそれらの問題の抜本的の
改革をする必要があるのである。これに対して
政府はいかなる御見識をお持ちになっているか、この点をお伺いいたしておきたいと思うのでございます。(
拍手)
私
どもがさらに
総理の一昨日の
演説の中で最も奇怪に感じ、ふしぎに感じておりまするものは、
沖繩の
返還に対する態度であります。きょうもこの演壇で、いま竹入委員長の
質問に対して首相は何と答弁をしたか。言いかえるならば、血で占領された地域が平和のうちに返ってくるということは世紀の大偉業であるかのごとき言辞を弄せられたことは、御承知のとおりであります。いま申されたのである。
しかし、このことは、はたしてそうでございましょうか。
沖繩が
米軍によって占領されたことは事実である。しかし、
日本が講和
条件をのむ、いわゆる降伏をいたしましたその条文は何によるのであるか。ポツダム宣言でございましょう。ポツダム宣言の受諾であるポツダム宣言は、先ほ
ども申し上げましたように、カイロ宣言を受けておる。カイロ宣言の六項には何と書いてある。連合国は領土の拡大を欲しないと書いてありましょう。(
拍手)これを受けたのである。同時に、したがって、今日の
沖繩の地位というものは、その潜在
主権が
日本にあるということは、何人もこれを否定するわけにはまいりません。サンフランシスコ
条約、あの講和
条約の場合におきましても、
アメリカの全権であったダレスは何と言っておる。
沖繩の
主権は
日本にある、
日本に残すのである。英国の代表もこれと同じことを申されておりましょう。これを受けた、
日本の全権であった吉田首相は、
沖繩の領土
主権が
日本に残されたことはまことに喜ばしい、一日もすみやかに
沖繩が
日本に
復帰することをこいねがうという
演説をいたしておりましょう。この事実をもってするならば、血によって占領されたものが平和のうち返ってきたということは、すでに
沖繩の領土は
日本の領土であるということが明確になっておる、われわれはこの次元に立たなければならない。したがって、今日の
沖繩の
返還は、明らかに領土権とは別に、施政権の
返還といわれておるのでございましょう。どこに
沖繩の領土権の
返還と書いてありますか。すべての文書には、行政権、いわゆる施政権の
返還としか書いてない事実を見てもらいたい。
沖繩に対する認識をお互いに改めなければならない。
同時に、私はそういう基本に立ってものを
考えてまいりますると、今日の状態では、佐藤さんが言われるように世紀の大偉業でなくして、むしろ、二十六年という長い間
沖繩の諸君が異
民族の支配を受けておったということについて、もう少し深くひとつ
考えようではございませんか。
御承知のように、
沖繩における人権の問題あるいは
国民に与えられた侮辱、これを
一体どう
総理は受け取っておいでになるか。たとえば、二、三の例を申し上げてまいりまするならば、
沖繩の諸君が戦後海外に移住をいたしますときに、民
政府から出してまいりますパスポートには何と書いてあったか。国籍欄に琉球人と書いてあったではございませんか。琉球という国が
世界のどこにあるのか、諸君に聞きたい。これが海外に
沖繩の諸君が行くときのパスポートである。国籍である。全く地球の上にない。国籍不明というよりも、むしろ、地球の上の
人間でないかのごとき印象を与えたこのパスポート。
海外に彼らが船によって出かけようとすれば、いずれの国の旗でもない、黄色いきれを三角に切った旗を立てておった次第である。今日、
国際法は旗国主義をとっておることは、諸君も御承知のとおりであります。いずれの国の国旗でもない旗を立てて歩けば、国籍不明の船であるということは間違いがございますまい。
沖繩百万の同胞は地球上の
人間としての取り扱いを受けていなかったというこの事実の前に、これに
一体日本政府はどう対処しようとするのか。それは単に占領中であり、施政権を
アメリカに渡しておったからやむを得ないものであるというような
考え方は、私は間違いであると
考える。
最近における状態においても、御承知のように、コザ事件の遠因はどこにあるのか。コザ事件の遠因は、御承知のように、
沖繩の婦人が反対側の歩道を歩いておるのに、反対側から猛スピードで来た
米軍の軍人の乗っておる自動車によって轢殺をされた、この事実が無罪になっておりましょう。今日、
世界のどこの国に、人を一人ひき殺して、しかも交通違反を犯してひき殺した者が無罪になるということがどういうことかということである。こういうことが
一体承服されるかどうか。
私は、今日のこの
沖繩の
返還協定については、根底になるものは、こうして
沖繩の諸君が人としての取り扱いを受けなかった彼らの心情を十分にくんで、その上に立って
返還協定をなすべきであるということである。したがって、私は、この際
佐藤総理にお聞きをしたいことは、こういう状態の中にあります
沖繩に対して、今度結ばれた
返還協定の
内容を見てみますると、きわめてあいまいなものがたくさんあると同時に、今月十一日の琉球新報の
沖繩島民諸君の
世論調査を見てみますと、これでよろしいという人はわずかに九・四%、不平であるという人が四七%。この
沖繩の世論を
総理はどうお
考えになるか。私は、こうした
沖繩の心情をお互いが
考えるときに、
総理の
沖繩返還に対する態度としては、世紀の偉業をなし遂げたというような、胸を張ったこの壇上からの
ことばでなくして、
沖繩の諸君には長い聞きわめて大きな
犠牲をしいてきたが、曲がりなりにも今日
日本に
復帰するような状態になった、その
内容については必ずしも
沖繩住民の諸君の
納得するものではないであろうが、やむを得ざる今日の状態であるから、これをがまんしてもらいたいという謙虚な態度によって
沖繩住民に報いられることこそが、
日本国の
総理大臣の当然とるべき態度だと私は
考えておる。(
拍手)この
考え方に対して、もし私の
考え方が間違っておるとするならば、どこが間違っているか、はっきりひとつ御指摘を願いたい。(
拍手)
私は、同時に、これらの問題の
解決の
内容について申し上げておきたいと思いますが、それは、先ほどから議論されておりますいわゆる
核抜きの問題が
一つの大きな問題でございます。共同声明の問題を援用されて、そうして
アメリカが非核三
原則を了承しておるからよろしいんだ、ただ、七条に核を置かないと書いたからそれでよろしいんだということになっておりますが、これで
沖繩の諸君が
納得をいたしますか。いままで、
沖繩には核がないんだ、ないんだということをこの壇上からもあなたは何回お言いになっておるかということである。今日では核があることがはっきりいたしておりましょう。現に今月十日のワシントン・ポストを見てみますると、何と書いてあるか。国務省と軍の
関係との間に、この
沖繩にある核を
台湾に持っていくがよろしいか、あるいはその他の島に持っていくがよろしいかということで議論をしておるということが、ワシントン・ポストにもはっきり書いてありましょう。あるからこそ、こういう議論が出るのであります。いままであなた方は
沖繩にはほとんど核がないというようなことを言われておりましたが、これはまっかな間違いである。私はうそとは申し上げません、気の毒ですから。しかし、間違いであって、あることには間違いがない。あるから、
アメリカでいま申し上げましたような議論ができておるのである。したがって、今度の
協定に対しましては、核は絶対に置かないということが七条によってよろしいとするならば、それをさらに裏書きする、その核があるかないかということを十分に査察する
条件がなければ、
沖繩の諸君を中心として
日本の
国民は承認しないでございましょう。(
拍手)私は、このことに対して
総理がいかなるお
考えを持っておいでになるか、さらに聞いておきたいと思うのでございます。
さらに、
沖繩の問題として、いま特殊部隊の問題がございました。この中で私は最も大きな問題として
考えなければなりませんのは、いわゆるVOAを五カ年間存続するということが明確になったということでございます。その他の問題については
協定の中に明確になっておりませんが、しかし、この問題ははっきりしておる。このVOAは、御承知のように、発生いたしましたのは
昭和十七年の六月でありまして、このときは
アメリカの戦時情報局として誕生したのであります。こういう前歴を持っておりますこのVOA、その後これが
大統領の指揮下に渡って、そうして
沖繩における
アメリカの声として放送されておるようでございます。
政府は、これは軍事目的のためではない、
沖繩における
アメリカの単なる情報宣伝であると言われておるのでありますが、それについても、
内容は
一体どうなっておるのか。これの電力数は一千キロワットでございましょう。今日、
世界の各国におけるいわゆる放送に使っております電力が、一千キロワットというような大きなものがあるでございましょうか。きわめて少ないのであります。しかもこの強圧なる電力の中で使われておる
ことばは、
中国語と朝鮮語になっておるということは御承知のことと存じます。そう
考えてまいりますと、いかにこれが平和的に
アメリカの声であって、そうして宣伝に使っておるとは申されましても、その
内容あるいはその電波の大きさ、その放送先というものから
考えてまいりますと、
アメリカの戦略機関の一環であるという憶測をすることもまた可能であろうかと存じます。
こういう問題が根底に
一つあるということと、もう
一つの問題は、御承知のように、これは
わが国の電波法に
関係があるのでありますが、
わが国の電波法の五条には、明らかに、
外国のこうした設置は許さないと書いてある。そういたしますと、これを五年間認めるということは、
国内法の電波法を改正するか、あるいは
沖繩に特別法を施行するか以外に方法はないでしょう。これで郵政省も法務当局もお困りになっておることは、私はよくお察しをする。しかし、いずれにいたしましても、
協定の中にこれが五カ年間存続するということになっております。そうすると、いま申し上げましたように、
国内法を改正するということになれば、これこそ明らかに
本土の
沖繩化であるということを断定いたしましても、ちょっとも差しつかえがないし、抗弁の余地はないでございましょう。(
拍手)
私は、これらの問題があり、さらにわれわれが持っておりまする問題の中で、もう
一つ沖繩協定で見のがすことのできないものは何であるかといえば、いわゆるこの
協定における最後の条項になっております九条——
ニクソンさんとの共同声明の中の四項に書いてある、
ベトナムの
戦争が終結していなければ、その時点においてさらに協議することがあるであろうという条項と、この
協定の九条との
関係であります。
九条には、御承知のように、批准書を取りかわしてから二カ月以内にこれが発効すると書いてありまするが、しかし、取りきめられたこの
協定の
基礎をなしておりまする共同声明には、
ベトナムの
戦争云々ということが書いてある。ということになってまいりますと、九条ははたしてそのままうのみにしてよろしいかどうかということである。
アメリカが
日本に領土を
返還いたしましたものには、御承知のように、
昭和二十八年の十二月二十五日の奄美大島がございます。奄美大島のときには、第一条に明確に期日が書いてある。その次の小笠原のときには、六条に、この批准を取りかわしてから三十日目にこれが発効するということが明確に書いてあった。これと今度の
協定はやや似ておるのであります。似ておるのでありまするが、小笠原の
協定のときには、何も共同声明というような前文はなかったのであります。今回のこの
沖繩に対しまする
返還協定の
内容というものは、そういう問題を含んでおる。したがって、この間には、
国民全体が私は大きな疑惑を持っておると思います。同時に、次の国会では
佐藤総理は何とかこれの審議を願いたいということを
所信表明に言われておりまするが、われわれは次の国会で
佐藤総理の言われるように
沖繩問題を討議するといたしましても、ここの問題が明確でなくて、一応批准はしたが、それは
ベトナムまかせ、あなたまかせで、いつ発効するかわからぬというような不的確のものについて、血道を上げて議論するということは、私はいかがかと
考える。これは
一体どうなんです。佐藤さん。私はこの間の実情というものは
ほんとうにこの機会に明らかにしていただかなければ、次の国会で何とかこれの審議をしようといったところで、いつ返ってくるかわからぬものについて批准の問題を議論するということも、いささかどうかと
考えられるし、もう少し憶測して
考えれば、批准をすること自体があるいは無効になりはしないかというような懸念さえ浮かぶのであります。しかし、先ほど冒頭に申し上げましたように、南
ベトナムにおいて、
ニュースとして伝えられたようなことがかりにあるといたしまするならば、あるいはそういう懸念はないかもしれない。しかし、私
どもが現実の姿の上に立って、いまの佐藤さんの
説明されておりますることを聞いてまいりますると、非常にその点については不安を感ずる。したがって、共同声明の四項とこの
協定の九条との関連性は、この機会に明確にしておいていただかなければ、われわれこれを了承するわけにはまいりません。
さらに、まだ時間が少々あるようでございますので、私はもう少し申し上げておきたいと思いますが、一昨日の
所信表明の中で——先ほど私は、批准問題についてあなたまかせであるというようなことを論じたのでありますが、中共の問題についてあなたまかせなんですね。回りからそういうものを積み上げてきて、そうして
政府間交渉ができるようなことを期待するとおっしゃるのですからね。これはあなたの仕事ですよ。人の仕事じゃないでしょう。あなた御自身が積極的にこれを
解決する、それには回りの諸君も
協力してもらいたい。それを期待するというのなら話はわかるのでありまするが、これが逆であって、皆さんにひとつ積み上げてもらって、それを
政府が
政府間交渉のできるようになることを期待するというのだから、全く私は話は逆だと思う。(
拍手)これは私の
意見が
一体間違っておるのかどうなのか。
ほんとうにあなたがそういうことをお
考えになっておるとすれば、これはどうも
中国問題に対しては全く誠意のないものと、
国民も受け取るでございましょうし、われわれもそう断ぜざるを得ないのであります。
そうなってまいりますると、私は、今日の
沖繩の問題を中心として、いま申し上げましたように、これらの問題が十分に
解決されなければ——ことに問題になるのは
自衛隊に対する
一つの問題であります。あなたは六千八百の
自衛隊を
沖繩に送るということをきめたといわれておりまするが、これに対して、先ほどから申し上げておりまするように、
沖繩住民の気持ちは
一体どうであるかということであります。
沖繩住民の諸君が最も憂えておりまするのは、再び
沖繩が戦場になることのないようにということであります。ここに
戦争に使われる
米軍がいるということが、
戦争に導く
一つの大きな課題であることは、何人も否定することはできません。したがって、
沖繩の諸君がこれらの全面撤去を要求するということは当然の帰結であります。しかし、これには今日の
国際情勢がございましょう。同時に、ここに
日本の
自衛隊を送るということになりますると、
一体どういう結果になるか。いつか、この演壇で佐藤さんは、もし
沖繩が他国から侵略されるようなことがあって、
沖繩住民がその
戦争の惨禍を受けなければならないようなときには
自衛隊を派遣する、
自衛隊によるということを言われたと私は記憶いたしておりまするが、これと今度の問題を関連いたしてまいりますると、どう
考えても、
自衛隊の派遣は早過ぎるのではないかということである。かりに、
日本の領土であるから
日本の
自衛隊がこれを守るということが論理上成立するといたしましても、いまだ
本土よりもはるかに大きな、ばく大な
米軍がここには
所在しておるのである。その
米軍と、同時に、同じように訓練をして、同じような作戦行動に出るということになってまいりますならば、
沖繩の諸君は、これに対しては
ほんとうにこれを拒否するということは、私は当然だろうと
考えている。同時に、
本土における
自衛隊の数と、
沖繩のあの狭い領土の中で、しかも
米軍がいまだたくさんおりまする中に、六千八百というような、数字の上からいけば
本土の約何倍になりますか、二十倍あるいは三十倍になるでしょう、こういう、兵力といいまするか、自衛力をあそこにつぎ込まなければならないという理由は
一体どこにあるのか、この点をひとつ明確にしてもらいたいのです。そういたしませんと、
沖繩住民の諸君も、私
ども日本の
国民全体も、
沖繩の
返還がかりにスムーズに行なわれるといたしましても、
戦争への危惧はぬぐい去ることはできません。今日
自衛隊の
沖繩への六千八百の
配置ということは、当然、夢にも私
どもは
考えていなかったのであります。
返還が行なわれても、
自衛隊がここに派遣されることは、まず
沖繩における
米軍の大
部分というか、全面撤退の後における、当然完全なる
日本の領土としての様相のときに、これを自衛するというたてまえからならば話がわかるのでありまするが、
米軍が腐るほどいるときに、何も
本土の何十倍というような兵力に相当する、この六千八百というような大部隊をここに送る必要は私は毛頭ないと
考えております。この点に対して
総理は
一体どうお
考えになるか、この点についてもひとつ明確に御答弁をお願い申し上げておきたいと思うのでございます。
以上のことはきわめて簡潔に申し上げましたが、私は、それらの問題がすべて
解決されない限りにおいては、遺憾ながら、
本土並みのこれが
解決であるとは申し上げません。ことに私自身にとって非常に遺憾に
考えておりますことは、古い話をするようでございますが、
昭和三十一年の六月二日に、私はこの壇上から
沖繩の早期
返還の要求決議案に対する
趣旨説明をしたものであります。それから今日十五年、しかもその間において
沖繩の
返還がどうなってきたか。同時に、われわれは、四十二年に、なくなられた西村委員長を先頭にいたしまして、いずれの政党も抽象的であった
沖繩返還に対して、具体的に、
沖繩の
返還は
核抜き、
本土並みでなければならないということを声明したものでございます。(
拍手)したがって、今度の
返還協定は、その
責任上、私
どもといたしましては、完全に
核抜きであり、
本土と全く同じ様態でなければこれを承認するわけにはまいらぬのであります。
以上、私が申し上げましたこと等に関連をいたしまして、どうかひとつ
総理に率直に御答弁をわずらわしたいことを要求いたしまして、私の
質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕