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1970-10-09 第63回国会 衆議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月九日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 佐々木義武君    理事 増岡 博之君 理事 粟山 ひで君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君      小此木彦三郎君    大石 武一君       梶山 静六君    唐沢俊二郎君       小金 義照君    斉藤滋与史君       田川 誠一君    中島源太郎君       別川悠紀夫君    松山千惠子君       箕輪  登君    向山 一人君       山下 徳夫君    渡部 恒三君       川俣健二郎君    小林  進君       後藤 俊男君    島本 虎三君       西宮  弘君    藤田 高敏君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         労 働 大 臣 野原 正勝君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      植松 守雄君         大蔵省主計局給         与課長     谷口  昇君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         農林省農地局建         設部かんがい排         水課長     茶谷 一男君         林野庁長官   松本 守雄君         林野庁指導部長 海法 正昌君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      斎藤  顕君         中小企業庁計画         部長      斎藤 太一君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 秋富 公正君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         建設省道路局国         道第一課長   菊池 三男君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         日本国有鉄道副         総裁      山田 明吉君         日本国有鉄道常         務理事     山口 茂夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 十月九日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     西宮  弘君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     藤田 高敏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 先月の十六日の新聞をはじめとして、その後連日新聞等をにぎわしておる汚職事件埼玉県の職安から東京都内職安にまで波及をしております。   〔委員長退席佐々木(義)委員長代理着席〕  私は、二、三年前に群馬県内職業安定所で起こった求人汚職について、当時の労働省幹部諸君に対して綱紀粛正を求める発言をした記憶があります。にもかかわらず、今日の求人難に籍口してこの種の汚職事件が起こるということは、これはまことにゆゆしい問題であると考えざるを得ないのであります。  事件の経緯は、まだ司直の手で取り調べ中でありますから、いまだその全貌が明らかになったとはいえないと思いますが、しかし、今日まで判明したところでも、これはまさに底の知れない汚職事件である、こういうふうに実はいわれておるわけです。  一説によりますと、一人労働者を集めてくればその職安職員に対して五千円のいわばわいろを使うことは相場であるといわれておる。職安局長、この汚職事件に関連して「五せる」ということばがはやっているのをあなた御存じですか。五つの「せる」、これは何ですか。
  4. 住榮作

    住説明員 その内容は大体承知いたしております。
  5. 田邊誠

    田邊委員 あなたの口からその中身を言ってもらおうとは私は思わない。しかし、そんなことばがいま公然として流行しておるようなそういう立場というものは、私は断じて許せない。この汚職事件というのは、労働省出先職業安定所がいわば職務としてやっておる仕事について、これが日常茶飯事として行なわれておるというところに大きな根があると私は思う。一体この原因はどこからきておりますか。中身は私は大体新聞等で承知しておりますので、時間がありませんから事件の概要についてお話しいただかなくてもけっこうです。一体このよって来たる原因はどこからきておるのですか。あなたどうお考えですか。
  6. 住榮作

    住説明員 いまも御指摘がございましたように、埼玉県下で三名、東京で五名、神奈川で一名、職業紹介に関しまして求人者から現金を受けたり、あるいは夕食の供応を受けたり、こういうことで司直の手をわずらわしておる事件が発生いたしております。職業安定行政の本来の使命から著しく逸脱することでございまして、弁明の余地がないような事態でございます。  そこで、この原因といたしまして私ども考えておりますことは、まず求人、求職の条件とか、あるいは労働市場の変化に対応する職業紹介業務というものが適切であるかどうか、私ども日ごろその点について努力いたしておるのでございますけれども、そういう体制欠陥があるのではないかというような点。さらに第二点といたしまして、職員業務処理体制あるいは服務の管理の問題、こういう点にやはり十分でない点があったのではないか。さらには職員教養訓練あるいはモラル、こういうところにも不十分な点があったのではないか。非常に大きく申し上げましてそういうような点につきましてはかねていろいろと努力をしてまいっておるのでございますが、まだまだ十分徹底してない、こういうことがやはり原因になっておるのではないだろうか、こういうように現在のところ考えておる次第でございます。
  7. 田邊誠

    田邊委員 いま職安局長が話をしたことはあなた方労働行政の全部ですよ。いま言った職業紹介業務処理について欠陥があった、管理体制に誤りがあった、教養の面、モラル、言うなればこれら全部が労働行政、人を相手にする行政のいわば根幹をなすものである。それが欠けておったというのでは、私は労働行政なり職安行政はなきにひとしいと思う。ゼロであるといっても私は言い過ぎでないと思うのです。そういった原因は、私は今日初めて発見されたことじゃないと思うのです。当然労働行政なり職安行政が始まった当初から貫かれているべき問題であったと思う。それがないがしろにされておったところに、二度、三度にわたるこういう汚職事件が発生をする根源があったと私は思うのです。  今回の事件について特徴的なことは、いままでは東北地帯、たとえば前回起こった群馬県については、中之条地帯というのは山村僻地でもって、いわば都会に対して就職をしたいというそういう若い人たち相手にした汚職事件が主であったと思うのです。今回の所沢から始まったところ汚職事件というのは、いわば首都圏の範囲内である。しかもそれが東京の足立なり渋谷なり池袋なり上野なり、そういう職安に飛び火しているという状態を見ますと、いままでのそういう東北山村地帯と違った形というものが今回の特徴じゃないかと思うのです。言うなれば若年労働力不足からくる求人難というだけではなくて、中小零細企業に対して求人難はもはや中高年齢層にまでも及んだ深刻な状態じゃないかと思うのです。いわばこれにつけ入った今回の汚職事件であるというところに、また新しい様相を呈したものがあるのではないかと私は思うのです。より事態は深刻じゃないかと思うのです。この首都圏東京都に起こっているところの今回の事件、この特徴についてあなたはどういうふうにお考えですか。
  8. 住榮作

    住説明員 御指摘のように、労働市場としては非常に過密地帯における労働市場に起きた汚職事件でございまして、やはり学卒労働力が逐次減少をしてまいるわけでございまして、中高年労働力あるいは婦人労働力、こういう労働力の活用が今後ますます必要となってくるわけでございます。そういう意味で、特に人手確保の困難な中小企業が、人手確保という観点から非常に苦労、努力されておる、そういうようなことに関連いたしまして、安定所職員が、正しくない、公正でない職業紹介ということでこの事件が起きておるわけでございますが、まさしく御指摘のように、単に学卒の問題ばかりでなくて、職業紹介全般について、つまり新規労働力以外の労働力についても、背景としての全体の人手不足というものが、さらに特にその影響を受けております中小企業等人手確保に関連して生じてきておる。非常に大きな背景としてはそういうようなことがあるというように考えておるわけであります。
  9. 田邊誠

    田邊委員 住さんにしては、いわばあなたはわりあいにざっくばらん、正直にものを言って、しかも理路整然たる答弁をするので有名な人だけれども、あなたのいまの答弁は全くなっていない。何を言っているかさっぱりわからぬ。いまや中小零細企業人たちは、まず人を求めるのじゃない。労働者を集めるということがいわば最終目標であるけれども、その前に職安職員の身も心も買わなければ人は集まらないようになっているのですよ。そうでしょう。そこに私は重大な問題があると思うのです。  いま私が質問したとおり、まさに若い労働力不足から、一部の中小零細企業にとっては、女子や中高年齢層や、いわば再就職を必要とするような人たちにまで問題は波及している。しかも都会にある職安職員にまで手を伸ばして、いわばその人たちの心と身を買わなければ人が求められない。こういうことになってくれば——私はあとで大臣にお伺いしますけれども、いま労働行政一つの大きな柱は、この労働力不足に対してどう対処するかということでしょう。これは労働行政中心そのものでしょう。その根幹がこういう汚職事件でもっていわばゆらいでいるとすれば、これは私は、一出先職員が金をもらった、飲ましてもらった、ゴルフに行った——平日でもゴルフに行っているというのです。もう言語道断でしょうが。高級職員ばかりと思ったらそうじゃない。職安出先職員が平日大っぴらにゴルフに行っている、こういう状態です。言うなれば、労働行政はもうなきにひとしいですよ。私はそんなことなら職安行政はやめたほうがいいと思うのだ。職業安定所の中に私設職安なんというのが別に設けられている、その手を通じなければ人を求められないというのでは、労働省職安行政はやめたほうがいいと思うのだ。そうじゃありませんか。私の言い分が言い過ぎですか。私はかさにかかってものを言おうなんて思っていませんよ。しかし、あまりにもひどい状態である。そうなってくれば、住さん、これはおそらくいま捜査当局が言っているように、もう追及すればするほど底なしだ、いまあらわれているのは氷山の一角だということは、私は本音じゃないかと思うのですよ。  この事件が起こってから約一月、あなたのほうでもって現場の職業安定所等についていろいろと調べられた結果について、捜査当局でもってまだ取り調べにならないけれども、それに類するようなことは全然ないですか。私はおそらく、たとえばこの種の職業安定所に対して、一人五千円でもって職安職員に対して働きかけをしているのだから、他の職安に行って、同じく職安職員に対して、わいろを使おうという手を、当該深井醤油とか富士見製作所とか酒悦とか、そういう人たちが用いなかったとは考えられないと思うのですよ。その際に、そのほかのいわば司直の手にかかっていない職安職員が、それはわれわれとしてはお断わりします、そんなことはできません、そういういわば魔の手に対して拒否をしたとすれば、その時点でもって事件はあなた方でもって発見できると私は思うのです。いまそうなってないでしょう。おそらく同じようなことを、他の職安職員がやっていないという保証はないと私は思う。しかも、お互いにかばい合ってそれを隠すという、こういう立場をとっているのじゃないかと私は思うのですよ。あなたのほうでもってこの一月間出先に対していわゆる厳重な査察運動等、それに類するようなことがないか、調査されましたか。
  10. 住榮作

    住説明員 とりあえず事件の起こりました埼玉はじめ東京神奈川につきまして緊急の所長会議を開催いたしております。と同時に、中央の職業安定監察官あるいは県の監察官を通じまして、単に事件の起きた安定所ばかりではなくて、その他の安定所につきましても総点検運動をいたしております。そういうことで類似の事件がないかどうか、あるいは今後どうして——たとえば所沢安定所に起こったような事件を防止するか、こういうような観点からあらゆる努力を続けてまいっておるのでございます。私ども現在のところ、いま司直の手にかかっております一部の職員に限られる、他の職員はまじめに仕事をやっておるというように感じておるわけでございますが、いずれ結果をまとめまして、今後の対策基礎資料にしたいというように考えておる次第でございます。
  11. 田邊誠

    田邊委員 今後の成り行きを見なくてはわかりませんけれども、私自身も、大多数の職員はまじめにやっておるというように思いたいのです。思いたいけれども、こういう事態になってまいりますと、そういうように考えられないのですよ。やはり同じようなことをやっているのじゃないか、相場があるとすれば、他の職員もその相場に応じているのじゃないかという気持ちを抱かざるを得ないのです。国民はそう思っていますよ。おそらく二、三の業種だけでもって問題が限られているというふうには私どもは思えない。この際徹底した調査をあなた方自身もおやりになって、部下をかばうというような形だけでなくて、その種の問題があるとすればこの際ひとつ根を絶やすという意味合いから、私は労働省自身が、所管局自身徹底した調査をやるべきである、こういうふうに思いますが、どうですか。
  12. 住榮作

    住説明員 ほんとうに、たびたびこのような不祥事件を起こしておると同時に、その背景となっている労働力事情の将来のことを考えますときに、私は御指摘のとおりそういう方向での努力徹底的にやるべきと考えております。そういうような趣旨から、関係県においてもそういうことをやっておるわけでございますが、その他の府県においても同様な措置をとりまして、近々緊急の職業安定課長会議を開きまして、そういう点私ども現在考えておる対策も含めまして、徹底的に努力を傾ける所存でおるわけでございます。  ちょうどこの事件は、今後の職業安定行政に対する国民の信頼を傷つけるということにおきまして非常にゆゆしきことでございますので、われわれ職業安定行政に携わる職員に対しまして、これは労働省始まって以来のことでございますけれども、私ども大臣の異例の訓示もいただいておるわけでございます。安定局、県あるいは安定所をあげてその努力を傾けてまいりたいと考えておるわけでございます。
  13. 田邊誠

    田邊委員 さっき局長答弁もありましたが、これはモラルの問題がもちろん第一です。それは仕事に携わる姿勢自身問題がありますよ。これはやはり大臣が当然これに対して徹底をはかってもらわなければならない、こういうように思います。それと同時に、人というのは弱いのですから、すきがあれば誘いに乗るのですよ。それを防ぐにはやはり何といっても機構だろうと思うのです。組織だろうと思うのです。そういう汚職が起きないような機構づくりをしなければならぬと私は思うのですよ。したがってこれに対する具体的な対策というのは、一つには出先職業安定所というものがほんとう労働省出先として、あなた方の意図するような職安行政というものが、いわば上と下とが緊密な連携のもとに一本の仕事としてやっているかどうか、こういうところに私は問題があると思うのですよ。したがってこの点は、機構改革にもいわば波及するような問題に私は言及することはこの際避けますけれども、しかし現在の機構の上からいっても、たとえば査察制度なり監査制度なり監督制度なりについても、何らかの機構について考えなければいけないのじゃないかというように私は思うのですけれども、そういった面についてのお考えはお持ちですか。
  14. 住榮作

    住説明員 いまも申し上げましたように、こういったことの絶滅を期するための方策はいろいろあるわけでございますが、先生御指摘のように、ほんとうにその業務処理のあり方、したがってそれからくる機構の問題あるいは管理監督徹底のしかたの問題そういうことに関連してまいりますので、局内でそういうことに対する検討を行なうために現在検討委員会を設けまして至急結論を出したい、大きな意味での機構改革ではなくて、あるいは現在のワクの中で変え得る点、あるいは是正し得る問題そういうことを至急結論を出しまして体制づくり考えてきたいというように思っておるわけでございます。
  15. 田邊誠

    田邊委員 とりあえず県の職安課長なりが、安定所についてかなりひんぱんにめぐってその指揮をする、監督をするということはやはりやってもらいたいと思うのです。  それから休日のゴルフなんというのは直ちにやめなさいよ。そんなことはやめられるはずなんだから。業者となれ合いでもって休日にゴルフに行くという、そんな出先職員がおって何で汚職事件がとまりますか。これは具体的な問題としてそういうことをやめなさい。そういった具体的な一つの手だてを、できるものからやってください。そうでなければ、何か大ぶろしきを広げて抜本改正をやるようなことを言ったって何もできぬものです。ですから私は、そういう形をやってもらいたいということをまずお願いするのです。  大臣お見えですからひとつ大臣に……。この問題はいま職安局長からいろいろお聞きをしました。これは今度初めて起こった問題ではないのです。私は再三にわたって当委員会でもってこの種のいわば求人汚職について問いただしているわけです。同じような問題をやることは、私自身非常に残念ですよ。私はやはり下がたるんでいるというだけじゃないと思う。これは労働行政全体についてこの際活を入れなければならない時代が来ていると思うのですよ。そこで、まことに皮肉な質問で恐縮だけれども大臣、あなた、いま何か労働省高級人事は大体あなたの構想はお済みですか。
  16. 野原正勝

    野原国務大臣 まず、職安汚職の問題につきましては、まことに遺憾千万でございます。これは綱紀粛正というか、労働行政全体の問題として厳重に注意を喚起いたしまして、今後こうした事件が再び発生しないように、部下職員にはこの際特に厳重に注意をしたいということで、先般来注意をしたわけでございます。  労働省人事の問題はおおむね首尾のとおり進んでおりますが、まだ一、二未決定のものがございます。そのうちに遠からずこれは考えられるものと思います。
  17. 田邊誠

    田邊委員 大体労働省幹部クラスの腰が落ちついていないのではないかと私は思うのです。私はいま労働省の名簿をもう一度取り寄せてあらためて見たいと思っているんだけれども、一体この人はどこの局長なんだか——新聞の辞令では違うほうに移るようになっているけれども、まだ発令されていない。こんなことじゃ身を入れて仕事はできませんよ。住局長というのは一体何局長だ。いまの労働行政というのは、もうじっくり腰を落ちつけてやらなければならぬ時代です。労働行政そのものがいま問われている。週刊誌じゃないけれども労働行政なんというのはあってなきがごときだなんていわれている。しかし、いまこそ労働行政というものが、日本の七〇年代における労働力の問題にしても、あるいは賃金の問題にしても、あるいは労働省の今後の問題にしても、じっくり腰を落ちつけてやらなければならない時代なんです。そういう際に、労働省幹部が腰が落ちつかない。汚職事件が起こるはずでしょうが、この状態では。情熱を傾けて労働行政に、職安行政に携わろうという意欲をかき立たせるようなそういう人員配置と、やっぱり落ちついた人事面というものが必要じゃないかと思うのです。  私は、大臣にあえて皮肉に質問しているんじゃない。そういう落ちつかないような状態でもっていまの労働省行政がやられている限りは、労働行政はなくしたほうがいいんじゃないか、そういう声があがってくるんだと思う。この際、ひとつ野原大臣、あなたは土性骨のすわったわれわれの大先輩じゃないかと思っているわけです。あなたの在任している間にこの種の問題が起こったことは、私はあなたも非常に不本意だろうと思う。したがって、この際ひとつ、この根幹ほんとうにえぐり出して、将来の日本労働行政基礎をつくるという、そういう柱をつくるという意味から、この問題に対して対処してもらいたい。したがって、いま私が申し上げたような人事面、それから職安のこういった汚職事件が起きて、下の者は確かに司直の手によって具体的に処分されている。懲戒処分をされる。しかし、それから上の者はもう涼しい顔をしているじゃありませんか。どうですか。私が以前に取り上げた職安汚職事態の中でも、県の職安課長なりあるいは当該職安所長なりは、とんとん拍子でもって出世しているじゃありませんか。部下は確かに痛い目にあっている。しかし、監督に当たる者については何らの痛痒を感じない、こういうことであっては、ほんとうにこの問題に対して、将来再び起こさないような、そういう決意にならないと思う。私は、何も労働省職員を痛めつけようというんじゃありませんけれども、やはりそういった面についての実情は明らかにすべきであるという点から、この監督面に対する行き届かなかった監督者に対しても、私はこの際、ひとつ信賞必罰態度をもって臨んでもらいたいというように思いまするけれども大臣のこれに対するところ決意のほどをぜひ承りたい、このように思います。
  18. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘の点は十分今後厳正な態度で臨みたい。信賞必罰、当然であります。したがって、この事件が解決しました後においては、必ずそうした厳正な措置を講ずるということでいきたいと考えております。
  19. 田邊誠

    田邊委員 時間がありませんから……。  いま職安局長も大多数の職員はまじめにやっているということを言われた。したがってこれ以上波及しないことを期待していると思うのですけれども、しかし私は断わっておきますが、もしこの種の問題がさらに大きく波及するような事態が起これば、この次の委員会で、残念だけれどももう一度これに対するところ大臣以下の対処のしかた、今後のいわば対応策に対してお伺いしなければならぬと思うのです。したがって、司直の手でいま取り調べを受けていることはそれとして、私は、厳重な態度とこれに対するところ対応策大臣なり局長はとって、これが波及のない、今後に再びそういったことが起こらないような、そういう具体的な対策をひとつぜひわれわれにお示しをいただきたいというように思いまするけれども、そういう具体策について、さっそく実行にかかるという御用意があるかどうか。最後に大臣決意考え方を明らかにしていただきたい。
  20. 野原正勝

    野原国務大臣 職安汚職の問題に限らず、すべて綱紀粛正については厳重に措置してまいるつもりであります。したがって、あとう限り調査を進め、あるいは今後これらの事件が絶対起きないように適切な対策を講じてまいりたいと考えます。
  21. 田邊誠

    田邊委員 職安汚職ばかりではなくて、あなたのほうで監督をしておる雇用促進事業団においても汚職事件が起こっている。労働省がやっていると思えば負けず劣らず、あなたのほうでもって監督をしておるところの雇用促進事業団も、貸し付け業務について汚職事件を起こしている、こういう事態であります。これについては私は質問をしません。この雇用促進事業団でもってやっている貸し付けの申し込みと貸し付けの決定額は一体どんなぐあいになっているか。過去一年間の実績についてひとつお答えをいただきたい。  それから雇用促進事業団の内部監査というものは一体どういう制度をとっているかということについてもひとつお伺いいたしたい。  それから、かなり中小企業でいろいろと申し込みをしているようですけれども、これがなかなか決定にならないというのが一般的な様相のようです。にもかかわず、中には何かのつてを頼み、いま言った職員に対してわいろを使うならば、高額のものがかなり早い時期に満額貸し付けがきまる、こういうことがあるそうでありますけれども、一体内部監査は、これらの申し込んでもなかなか満額借りられないそういう一般的な例と比べて、高額のものが早く満額借りられるという、こういうことに対してどういう監査をしておるのか。それから、労働省はこの雇用促進事業団の事業に対してどういう監督をしているのか。これらに対して、私時間がありませんから、この際ひとつ委員会を通じて私の手元に御報告をいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  22. 住榮作

    住説明員 ただいまの件につきましては、資料の提出については準備いたしまして早急に提出いたしたいと思います。
  23. 田邊誠

    田邊委員 ちょうど私半までで時間がありませんから、あえてお答えをいただかなかったのですけれども、これは大臣職安汚職が起きていると同様に、どこかやはり綱紀がたるんでいる証拠ですよ。中小企業に対してあたたかい手当てを講じなければならないこの雇用促進事業団すらもが、いわばこういうことをやっているということに対しては、われわれとしても非常に嘆かわしいと思うのです。ぜひひとつ、あなたの勇断をもって、これらの外郭団体についても、さらに徹底した業務の正常な運行をはかられるように指揮監督をしてもらうことを私は心からお願いしておきます。  以上申し上げて、あとの方に譲りたいと思います。
  24. 佐々木義武

    佐々木(義)委員長代理 田畑君。
  25. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの質問に関連するわけですが、私の聞きたいと思っていたことは、ほとんど田邊委員の質問で尽きておりますけれども、今回の職安における汚職問題というのは、労働行政の権威を著しく傷つけたものだと見るわけです。私は、先ほどの局長答弁を聞いておりますと、埼玉職安あるいは東京職安あるいは神奈川職安等等で汚職問題が起きたといわれておりますが、また現に捜査当局の手はこれらの地域の安定所に伸びておるわけでありまして、決してこれはここだけに限られた問題ではなく、厳正な捜査を進めていけば、私は、この種問題は各地域にあるのではなかろうか、このように判断するわけです。  申すまでもなく、このことは、今日の労働需給事情の逼迫、こういうことが原因であることは当然でございまするが、だからといって、この種問題がこのような形であらわれておるということは、労働行政の怠慢あるいは堕落を端的に意味しておると思うのです。  ところが、先ほどこの問題について、大臣並びに局長が、どういう角度からこれらの原因を探求し、排除するかという点になってきますると、われわれに納得できる具体的な案というものが提示されていないわけです。私は、その意味においていま一度、大臣並びに局長から、今後この種問題について、どうして国民の信頼の持てる労働行政を、あるいは職業安定行政確保するか、この点について承りたいと思います。  先ほど来、モラルの問題が取り上げられておりますが、幾らモラルの問題を口にしても、単にモラルの問題だけで処理できる性格の問題でないと思います。今回起きた事件は、言うならば大府県の安定所で起きているわけです。申すまでもなく、職安職員は国家公務員でございまするが、概して大府県における安定所職員というのは、その府県の地方公務員よりも給与が低いのが実情だと思います。あるいは地方の中小府県においてはそうでないかもしれませんが、特に大都会における安定所職員の給与というものはその地域の地方公務員よりも低い、こういうところにこの問題が起きておることも事実であります。こういう点等についての反省というものはどうなのか。この点はひとつ局長から承りたいと思うのです。  さらに私は、われわれが見ておりますると、職安人事というものが非常に停滞しておる。これはいなめない事実だと思います。どういう行政上のポストであっても、特に誘惑の多いと申しますか、あるいは誘惑にひっかかりやすい、あるいはともすれば公正を欠きやすいポストというものは、常に人事の刷新をはかりながら——同じポストに同じ人が何年もすわるというようなことは、私は行政のあり方としては正しくないと思うのです。妥当を欠くと見ております。ところが、地方に行ってみますると、職業安定所というものは、所長以下職員人事の固定化というものがはなはだしい。われわれはいろいろな点を見ておりまするが、そういうようなことは控えますけれども人事の停滞ということについて、こういう問題のもっと刷新がなければ、私はこの種問題の解決はできない、このように見ておるわけでございますが、こういうような点について大臣並びに局長はどのようにお考えであるかということです。   〔佐々木(義)委員長代理退席、伊東委員長代理着席〕  第三点として私が承りたいことは、これはしばしば局長からも大臣からもこの委員会等で答弁がございましたように、学卒者の就職先における定着率が非常に悪いということです。定着率が悪いというところはどこに原因があるかというこの問題です。だんだん承りますると、あるいは職業安定法によりまするならば、学卒者の就職先のあっせんというものは、職業安定所なのか、あるいは学校自体が世話して、学校の世話する先を安定所は単に追認するという形、確認するという形だけにとどまっておるのかどうか、こういう問題等も掘り下げて検討してみる必要があろうと思うのです。われわれの知る限りにおいても、ともすれば安定所の世話した就職先というものは、まことにどうかなという感じのところに、今日金の卵といわれておる逼迫しておるその若い人方を世話して、そうして一年足らずでやめていく、あるいは募集のときのいろいろな条件に反しておるので一年足らずでやめていく、二年たてば学卒者の三割以上がやめていくというような今日の状況というものは、いまのところ、職業安定法によれば、学卒者の就職あっせんというものはほとんど学校にまかしておるというのが実情じゃないかと思うのです。こういうような点等についても、これまたいろいろ問題があると私は見ておるわけです。そういうような職安行政についてはいろいろな問題があるわけでございまするが、私はこの際、学校の先生がどうのこうの、そういうようなことまで言うつもりはございませんが、いまの若手労働力、特に学卒者の就職あっせんというのは職安が事実上やっているのか、それとも学校の推薦をそのまま追認している形なのかどうか、この点をこの際明らかにしてもらいたいと思います。今回の職安汚職事件の問題は、追及していきまするといろいろ問題点が出てくるわけで、こういうような問題を考えて、今回のこの汚職問題をきっかけに、大臣として、労働行政に当然えりを正してもらわねばならぬと考えまするが、今後具体的にどのように取り組んでいかれるのか、このことをここでもう一度明らかにしていただきたいと思います。
  26. 野原正勝

    野原国務大臣 職安汚職という問題、まことに遺憾な問題でございます。この背景をなすものにつきましては、労働力不足という問題もありましょうし、あるいはまた、職安行政人事の刷新も、御指摘のとおりあるいは十分でなかった点もあろうかと思います。また、そうした誘惑に負けるという点については、はたして適正な待遇が与えられておったかどうか、地方の公務員等と比べて待遇が非常に低いというふうな事実があるならば、やはりこの際職業安定所職員の待遇の改善も考えなければならぬ問題であろう。しかし、何としても、この汚職問題が起きまして、そのことが職安行政に対する信頼を著しく害したという点については、この際綱紀粛正をはかり、関係職員全体がえりを正して、この問題について厳正に行なっていくという必要があろうと思います。  そういう面で、今後の対策としましては、いろいろと局長のほうからお考えもあろうと思いますが、できるだけ、御指摘のような問題について、今後改善をすべきものは改善をし、そうして誇りを持って重大な労働力問題を進めていく、職安行政を信頼を高めていくということにいたしたいと考えております。
  27. 住榮作

    住説明員 不祥事件の生じないようにどういう対策をとっていくか。私ども、いろいろわれわれの行政内部で考え得る汚職原因不祥事件原因というものをあらためて徹底的に再検討いたしまして、それに対する対処のしかたを考え、総合的に措置を進めていきたいというように考えておるわけでございますが、安定所職員は、御承知のように人を扱う業務でございまして、毎日毎日、あるいは求人者あるいは求職者ということで、心理的にもまた精神的にも非常に困難な業務をやっておるわけでございます。そういうような業務がどのようにうまく生かせるかということにつきましては、一つ安定所の環境の問題等もございます。そういう意味で、現在でも非常に老朽した庁舎等があるのでございますが、そういう庁舎の改築、新築を進めまして、庁舎全体を改善していきますとともに、職場の中身につきましてもこまかい配慮を加えまして、いい環境で業務ができるようにしていく。と同時に、職員の待遇問題でございますが、いま申し上げました業務の特殊性から、一般の職員と比べまして約四%程度の調整号俸をつけておるのでございますが、この点につきましては、御指摘のように、一般地方公務員との問題になりますと給与の面で劣るというような点もなきにしもあらずでございます。そういうような、全体としての作業環境を含めまして業務が進めていかれるような努力を続けていきたいというように考えております。  それから人事の面でございますが、いろいろ居住地の関係その他で、御指摘のように停滞していたきらいがあるのでございますが、いずれにいたしましても、求人者と接触するとかという意味で、同じポストにあまり長くいるということになりますととかくいろいろの問題が生じますので——といってあまりひんぱんにかえるということになりますと、これまた求人者、求職者に対するサービスということでどうだろうかというようなことも考えまして、いずれにいたしましても、長く置くということは非常に問題を生ずる可能性が大きくなりますので、そういう意味での人事配置について全般的な再検討なり配慮を加えてまいりたいと思います。  それから第三点の学卒者の取り扱いの問題でございますが、これは先導御承知のように、中学につきましては、紹介は安定所ということで学校との連携におきまして、安定所紹介で中卒の就職希望者の職業紹介を行なう、こういう体制になっております。高卒につきましては、学校が大体職業紹介をするというのが現在のところ三五%、これは学校が安定所と同じような体制で生徒の職業紹介を行なう。それから安定所と学校と連携をして、つまり生徒に対する個別的相談は学校、あるいは職業指導なり求人内容の点検等は安定所、こういうような関係で、連携をとって生徒の職業紹介を行なっておるというのが大体六〇%、したがいまして、中学と同じような意味安定所が高卒の就職希望者の紹介を行なうという割合が五%、こういうような現状で紹介が行なわれておるのでございますが、必ずしも現在の制度で十分であるかどうか、こういう点につきましては、今後の需給の情勢等も考慮しながら、文部省とも連携をとって適切な対策をとっていきたいというように考えておる次第でございます。
  28. 田畑金光

    ○田畑委員 いろいろ今後努力される、その決意のほどは承りましたが、われわれとしては、今後この実行のほどを見守っていきたいと思うのです。  ただ申し上げたいことは、局長も御存じのように、福島県のいわき市のある小さな新聞社が、私設職安と同じようなことをやって、これはいま刊事問題に発展していることは御承知かと思うのです。この問題について私はいつか取り上げようと思っておりましたけれども、地元であり身近な問題であるだけにかえってこの問題を保留しておいておるわけでありますが、私設職安の問題があんな形ではびこっておるというような姿を見たとき、りっぱな職安機関があって、職安機関は一体何をしておるのか、こういう感じを強くするわけです。ことに私は、職安人事の問題については、いま局長お話しのとおり、それはほどほどにということだろうと思いますが、まさにそうでなければならぬと思います、サービスの面、その他求人、求職のあっせんの面から見て。しかしながら、あまりにも人事が固定化し過ぎておる。そこにいろいろな問題が出てくる危険性があると私は見ておるわけです。居住地を中心としてそれぞれの職員の利便を考えることは、これは当然のことであり、私はそういう問題まであえて排除してということは申しませんが、しかしそれもほどほどに勘案されてしかるべき問題だと思うのです。まあ私こういうことを申してはどうかと思いますが、ことに最近は労働省からよく政界に乗り出される人が多いわけです。これも国の政治を憂慮されて労働省の優秀な諸公が政界に乗り出されるなど、これは大いに歓迎すべきことでありますけれども、私は今日の末端における職安のあり方などを見たときに、こういうような問題等も——職安というのは選挙のときの選挙のための機関ではない、私はこう思うのです。あくまでもそれが本来の労働行政の最も大事な末端の職安行政に携わっておる機関であろうとするならば、機関は機関本来の任務に取り組むべきであって、それが、選挙になれば先輩諸公の選挙のための機関に堕落するようなことがあっては、これはそこに腐敗と堕落が生まれてくるまた一つ原因でもあると私は思うのです。こういう点については、私は最近高級官僚が来年の参議院選挙立候補にあたって、いろいろな問題を各機関が出先において起こして、そしてすでに関係筋から警告を受けていることも新聞の報道のとおりでございますが、この種の問題等も労働行政のあり方から見てまことに遺憾だと私は思うのです。この点について、こういう点もあるということもひとつ大臣は頭に置かれてこの問題に取り組んでいただきたい、こう思うのです。  私は、いずれまたあらためてもっと資料を持って、この種問題については質問する機会もあろうかと思いますが、局長いろいろお話ございましたけれども、私が指摘した人事の停滞等についても十分ひとつ実行してもらいたい、このことを強く申し上げて、きょうは関連質問でありますからこの程度にとどめておきたいと思います。
  29. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 後藤俊男君。
  30. 後藤俊男

    ○後藤委員 私の質問は政労協の闘争関係についてお尋ねいたしたいと思うわけですが、ことしの春から大蔵省なり労働省、さらには内閣官房長官、組合側としましては総評なり政労協あるいは各組合との間で何回となく話し合いが持たれておることは御承知のとおり、だと思います。さらには中央労働委員会の提訴の問題も出てまいりましたけれども、これも使用者側のほうで背中を向けたかっこうになりまして成功はいたしませんでした。それからことしの六月四日でございますが、わが党の江田書記長から木村官房副長官にも政労協の問題につきまして強く申し入れが行なわれておることも御存じだろうと思います。  それから、振り返ってみますと、この社会労働委員会におきましても、かなりの回数にわたって政労協の問題を論議をいたしました。五月六日、さらには六月十日というようなことで、この政労協の問題を続いていろいろと社会労働委員会においても論議を願い、さらには労働大臣なり労政局長あたりにも御尽力をお願いいたすというような結論になっておるようなわけでございます。  しかしながら、これらの一連の経過を振り返ってみますと、ことしの四月の春闘以来、一般民間の労働組合のベースアップにつきましては早く解決をいたしております。さらに公務員関係につきましては、人事院勧告が八月十四日に出まして、大体大筋のところは解決しておると思うわけです。ところが、四月からこれだけ騒いでおる、というと語弊がございますけれども、この院内においても問題を取り上げまして、昨年のようなかっこうにならないように、できるだけ自主的に解決する方向へ努力をいたしましょう、これは再三再四にわたって——いたしませんと言う人は一人もないわけなんです、政府側の責任者といたしましても。  参考までに申し上げますと、去年の政労協関係の闘争につきまして、総評の責任者の間において労働大臣のメモが出ておるわけなんです。この中にどういうことが書いてあるかといえば、「政労協の賃金紛争が例年長期化の状態にあることは好ましいものではない。本来、政府機関特殊法人の労使関係は、事業の特殊性、公共性を踏まえながら、労組法の立場に立って、自主交渉で解決されるべきである。労働大臣としては、以上の立場に立って、今次賃金紛争についても、自主交渉で円満に解決されるよう期待するとともに、明年以降の賃金問題についても、前記の趣旨に沿って自主的解決のできるよう政府部内関係当局と協議、努力したい。」これは一九六九年五月十三日ですから、大臣はおかわりになっておるけれども、十分このことは御了承のことだと思います。さらに最近になって木村官房副長官と総評の蛯谷さんとの会談等によりましても、自主的に解決ということで、昨年よりかは一歩前進をさせたい、こういうふうな会談も持たれておるわけでございますけれども、これら一連のいろいろないままでの経過を考えてみますと、いまも読みましたところの去年の五月のこの労働大臣のお答えといい、さらにことしになりまして、四月以降この社会労働委員会におきましても数回この問題を論議しました。労働大臣としても、労政局長としましても、そのとおりだと思う、そういう方向でひとつ努力をする、去年の五月以来そういう返答になっておるわけなんです。ところが、もう一般民間の春闘も解決し、公務員も解決したけれども、政労協関係の組合は、現在のところまだまだ解決どころか、中身の団体交渉にも入っておらぬ、これが現実の姿なんです。一体、労働大臣あるいは労働省といたしまして、いま申しましたところの政労協関係の賃金問題について、去年からのたびたびの約束に対しましてどういうふうに御努力いただいたんだろうか、いまだに解決せぬのは一体どういうわけなんだろうか、ここで言うだけで全然行なわれておらぬのだろうか。これでは相変わらずことしも年末になってしまうわけですけれども、それらの経過を踏まえて、現在この政労協関係の賃金問題、紛争問題がどういうことになっておるか、さらには今日まで労働省としてどういう行政指導なり努力をされたか、この点を第一番にお尋ねいたします。
  31. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 政労協の賃金紛争につきましては、昨年の当委員会におきまして、原労働大臣から御指摘のごとき発言があったということも承知いたしております。そのほか、ただいま御指摘のございましたような経過も承知いたしてございます。私、労政局長になりまして、御承知のごとくきわめて日が浅うございますが、前任者からも、政労協問題はきわめて重要である、しかしながら、また非常にむずかしいということで引き継ぎを受けておる次第でございます。  この春の国会以来、労働省といたしましては、労使双方、並びに特に関係官庁にたびたび接触をいたしまして、少しでも事態が進展するようにというふうな努力を重ねてまいってきたと承知いたしております。しかしながら、前任者からもたびたび申し上げましたように、この問題は、政労協自体の労使関係は、労働組合法の立場に立つものでございますけれども、同時に事業の特殊性、公共性ということで、非常に特殊な制約がある。特に法律上、予算上いろいろな制約がございまして、にわかに著しい前進をするということは本来はなはだ困難なものでございまして、本年度におきましても何とか前進をさせるべく種々努力をいたしました。八月二十六日、人事院勧告の取り扱いについての閣議決定が行なわれました翌日に、大蔵省は直ちに政府関係機関の本年度の給与改定の意見の提出を求めることもいたしました。その間私どもともしばしば協議をいたしたわけでございますが、結局、いわゆる内示というものをこの段階におきましてはできるだけ早くする、内容につきましても、昨年若干の弾力性を持たせましたが、ことしもそのようにする、その方向で進めるということで努力をいたしまして、十月九日、すなわち本日には各公庫、公団、事業団の当局に、給与改定要求についての具体的な回答ができるだけのいわゆる内示ということをする段階に至っておるというのがいきさつでございます。
  32. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いまの説明で、内示はきょう出されるということが一つと、それから、時間が十分ないですから具体的に率直に話を進めていくのですが、先ほど申し上げましたような経過に基づいて、去年はある程度一歩前進した、その前進した内容というのは、昨年は初任給の幅の問題ですね。このことにつきましては、政労協関係の組合としましては非常に高く評価をしておってくれるわけなんです。これとあわせて、先ほど申し上げましたように、木村副長官が最近言っておられるように、去年は十分なことはできなかったけれども、あそこまでやった、ことしもさらに一歩前進させるのだ、一歩一歩と前進させて、最後にはもう内示というものはなしにしで、自主的団体交渉に持っていこうというような方向を言っておられるわけなんです。そうなりますと、きょう示される内示というものは、いま私が含めたこともその内示の中に含んでおるかどうか、そのことをちょっとお尋ねいたします。
  33. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 いわゆる内示の内容につきましては、こういう席で労働省から直接申し上げる立場ではないわけでございますが、私どもの承知しているところにおきましては、初任給の弾力性というものは、昨年を下らないものであるというふうに承知をいたしております。  それから特に内示に至りますまでにおきましては、公庫、公団、事業団の当局者から、大蔵省はしばしば非常に詳細にいろいろ実情を聞いて、そしてその上で大蔵省の方針をきめたように承知しております。また、時期的には昨年よりも若干早く行なわれたと承知いたしております。
  34. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、いまの話、ちょっとあれですが、去年は初任給の幅の点で前進した、きょう出る内示というものはそれ以外にも——具体的なこまかいことはけっこうです、方向、方針だけ——御存じないとは言われないと思いますが、その点いかがでしょう。
  35. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 私どもの承知しておりますところでは、初任給の弾力性については昨年を下らない程度のものと承知しております。
  36. 後藤俊男

    ○後藤委員 それなら去年とは、全然前進しておらぬのですか、去年と一緒じゃないですか。
  37. 谷口昇

    ○谷口説明員 ただいま労政局長からお話がございましたけれども、いわゆる内示問題については、労働省が直接の所管でないというお話がございましたので、私ども直接公団、公庫等の理事者側あるいは政労協の組合の皆さんとお話をしてきて、先ほど労政局長のお話のように、最終的に本日から実質的に組合交渉といいますか、労使交渉ができる状態に入るような作業を進めてまいりました関係上、私がかわりましてお答えをさせていただきます。  実は、御案内のとおりに、先ほど先生がお話しなされましたように、昨年は初任給につきまして、ちょうど国家公務員の上級職の甲理科、こういうものを基準にいたしまして、一応三千八百円という金額を初任給の増加幅ということでもって公団、公庫の理事の皆さんとよく意見を交換しながら、そういう形で最終的にきまっておりますが、ちょうど先生お話しのように、昨年はこの三千八百円を中心にいたしましてといいますか、むしろ上に対して若干のアローアンスを認めていく、こういう状況で、それはあくまでも組合と理事者との話し合いの問題であろう、こういうふうに考えまして、そのように処置させていただいておりまして、本年の問題につきましては、先ほど労政局長がお答えのように、その部分につきましては、私ども大体その方向での回答になろうか、このように考えております。  そのほかに何かないか、こういうお話でございますが、実は昨年四十四年の場合には、御案内のとおりに、十一月の十一日に閣議決定がなされまして、十二月の二日にいわゆる内示というものをいたしました。それまでの間に、先ほど申しましたように、理事の方々あるいは組合の皆さん、こういう方からいろいろお話を承り、同時に、先ほど申しました意見も調整しながら、そういう段取りを進めてまいりました。本年は、八月十四日に人事院勧告が出されまして、十一日間、八月の二十五日に、いわば公務員の本年の給与勧告の実施について閣議決定がなされております。そういたしまして、その日の翌日、八月二十六日でございますけれども、その日に、さっそくに私ども、公団、公庫の理事の方々、それから各省人事当局、要するに公団、公庫を主管をしていらっしゃる人事当局、そういう方々の御参集を得まして、本年の人事院勧告はそのような状況にある、昨年の政府関係特殊法人の職員給与の決定の事情はこういう状況にある、その後いろいろな問題の提起があったことをあわせて披露いたしまして、その上で、公団、公庫の職員の給与等については、ことしについていかがいたしましょうかという問題の提起をいたしました。自来、九月の二日あるいは四日、それからさらには九月の中旬以降は数回にわたりまして議論を重ねてまいりまして、先ほど労政局長からお話しのように、十月の九日から大体そういう実質的交渉ができますように議論をし終わった、こういう段階でございます。  その議論の段階で実は非常に問題になりましたのは、本年は御案内のとおりに、人事院勧告で調整手当という問題が出てまいりました。調整手当は、御案内のとおりに、六%地域が一部八%地域になったということも関連をいたしまして、この問題についていかがいたすか、あるいは特殊法人の職員構成その他、あるいは事業目的、若干態様がそれぞれにおいて異なっておりますが、そういうものを踏まえて、先ほど申しました調整手当も含めまして給与改善率をいかがするかということについて議論を重ねてまいったわけです。最終のところは、一応一律という形ではございますが、調整手当については、調整手当を必要とする部分について、その調整手当相当分を手当として新設される場合には考えてまいりましょう、こういうように理事の皆さんとのお話できまってまいった次第でございます。昨年来の前進ということになりますと、そういう議論を踏まえてやったということと、それから、先ほど申しましたように、去年はできるだけ年内に妥結したいという要望がありまして、十二月二日に最終的にいわゆる内示をいたしましたが、本年は、十月九日からそういう状況に入り得る状態に持っていったということは、私どもできるだけの努力をしてまいった、このように考えております。
  38. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま御説明がありましたように、労働省としても種々御努力をいただいておる。このことは別にわれわれも否定はいたしておりませんし、御努力願ったということについてはよくわかるわけなんです。  そこで、話を一歩進めますと、なるほど去年につきましては初任給プラス二百円という幅を持たして自主的に団体交渉できまった。前の労政局長——いま事務次官になられたのですか、これは一歩前進だ、一歩前進だとよく言われました。さらにことしについては、これは先ほども言うておりますように、政労協の議長さんと、それからさらには木村官房副長官との交渉と申しましょうか、話し合いの中で、これははっきり木村副長官が言っておられるわけなんです。どういうことを言っておられるかというと、「いわゆる「内示」については、一挙に廃止するということは難しい事情にあるので、昨年一つ、今年一つというように一つづつ解決していくようにしていきたい。」これは労働大臣もいままでの経過から考えてみると同じ気持ちだと思うのです。「以上の点については、私の方から大蔵当局にもよく伝えておく。」というようなことで、この木村官房副長官との交渉は打ち切られておるわけなんです。  これはことしになって八月五日なんです。ごく最近なんですね。そうなりますと、いまの答弁でいくと、去年と同じように初任給の幅だけはひとつ認めていこう。それがことしになったら一体どうなんだ、一歩前進とは中身の具体的問題について何だろうか。調整手当というようなものは人事院勧告の中にあるわけなんでしょう。それは人事院勧告に右へならえしたにすぎぬ話なんです。一歩一歩前進させていくということは、一歩一歩自主的に解決できるところの幅を広げていきましょう、こういうことを私は意味しておると思うのです。そうなりますと去年と一緒で、ことしも全然一歩も前進がない。前進がないことを、前進させます、これからひとつだんだんよくなっていきますというふうに木村官房副長官が言っておること自体がおかしいじゃないですか。それも去年言われたことならこれはまたということもありますけれども、ことしの八月五日に政労協の議長とそういうことを言っておられるわけなんです。これは大臣、どうですか。
  39. 野原正勝

    野原国務大臣 この政府関係特殊法人の給与の問題につきましては、自主的に円満な解決ができることを期待しておったのでありますが、どうもなかなか事情が困難でございまして、ついに本年はそうした公団、事業団等の給与の面に対する意見を事前にまとめることができませんで、遺憾でございます。しかし、これはできるだけ早い時期にこうした内示ができるように、そしてまた回答を与え得るようにしなければならぬと考えておりますが、そうした点で今後一そうの努力を払いまして、ひとつ公団、事業団等にある程度の自主性を持たせるという点で努力の積み重ねが必要である。ただ、いままでのところは、どうも政府関係の財政事情にある程度縛られておる結果非常に制約を受けておるので、実質的になかなか困難である。しかし、そうは言っても、いつまでも財源がないでは済まされませんので、できるだけすみやかにこういう自主的にある程度事をきめるという幅を持たせていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  40. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと大臣、抽象的な話は、これはいろいろと日本語でものの言い方があると思うのですが、そうではなしに、これは長い間の論争であり、しかも何回となく同じ問題を、この席でもああでもない、こうでもないとやりとりをやっておるわけなんです。そうしますと、最終的には、はい、わかりました、努力いたしましょう、しっかりやりましょう、という返事になるわけなんですよ。それも官房副長官から、おととしから去年、ことしにわたって三年間ですよ。まあ労働大臣はかわりましたけれども、前の原労働大臣もやはり木村副長官と同じことを言っておられるわけなんです。去年の選挙が終わって、ことしあなたが大臣になられたのだけれども、それからもやはり同じことを言っておられるわけなんです。さてといって、どたんばにくると何も前進がないわけなんです。できぬならできぬと最初から言われたらどうですか。政労協関係のベースアップについては簡単にはそういうことはできませんと言われますれば、それならそれでこっちもようやれぬということに対する態勢がやはりあるわけなんです。やりましょう、やりましょうと、馬の鼻先にニンジンをぶら下げたようなことをやるものだから、それじゃ労働組合の人間だってしまいにおこってしまいます。  その間どうかというと、一年間ストライキでしょう。あなた方いいこと言いながらちっとも実行してくれぬものだから、逆に労働組合をあおっているような形になっているわけなんです。できることはできる、できぬことはできぬと、できることは、責任もって私やりますと、そのことが木村官房副長官の言明でもあり、さらに、ことしになってからの大臣の言明でもあり、八月五日の木村副長官の言明だと私は思っておるわけなんです。それはやはりおっしゃったことについてはそうか、そこまで真剣にやってくれるのかという気持ちになるわけなんです。  ところが、そういうことの中身行政指導し骨を折らなければいけない労働省の皆さんに聞いてみると、去年と同じことで、初任給の幅だけはもたせますと、あとは何にもございませんと、労働大臣に聞けば、できるだけひとつ今後努力いたしましょうと、いつのことやらわからぬ演説になるでしょう。それじゃ私は納得できぬわけです。きょうならきょう内示が出ます、その内示の中では去年よりか一歩前進した自主的解決のできる中身も含めるように労働省としてはひとつやりますということ、これさえはっきり言っていただければはっきりするわけなんです。いかがです。
  41. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 本年の内示につきまして、時期が昨年より早くなったという点以外には、内容的には昨年に比べ見るべき前進と評価していただくものがなかったことはたいへん遺憾でございます。しかしながら、この過程におきましては、私ども並びに大蔵当局が、特に各公社、公庫、公団、事業団の実情をできるだけ取り入れようということで、何回も何回もいろいろな打ち合わせをし、話を聞いて、そしてその結果としてこうなったわけでございまして、結果につきましてはもちろんおほめいただくようなことでなかったことはまことに残念でございますけれども、今回のこの政府部内における努力というのは今後の前進の基礎にはなったのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。私どもこれ以上一歩の前進も将来ともあり得ないというふうに投げ出すつもりはございません。ただしかしながら、歴代大臣あるいは私の前任者もたびたび申し上げておりますように、この問題は非常にいろいろな制約があってむずかしいもので、急にはいかない問題である。一年でもって飛躍的に前進するというのはなかなかむずかしい。しかしながら、一歩でも半歩でも前進させるべく私どもとしてはさらに努力をいたしたいと考えております。
  42. 後藤俊男

    ○後藤委員 そこで、いまのお話は——まだまだ問題はあるんですがね、内示というのは一体どういう性格のものであるかを御説明いただきたいと思います。
  43. 谷口昇

    ○谷口説明員 私どもは内示ということばはあまり使っておらないのでございますが、実は、いわゆる内示と申しますものは、現在公団、公庫、事業団、そういうものの職員給与につきましては、御案内のとおりに主務大臣の承認を受けるということが必要であります。それによりまして給与の基準というものが定まります。その承認を要します場合に、大蔵省に協議に相なるわけでございますが、その大蔵省に協議に相なりまする場合に、私どもといたしましては、大体こういう考えでもって本年の給与改定については考えてまいる、こういう一つの基準と申しますか、そういう考え方をお示しをいたしております。これがいわゆる内示ということに相なっておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、事前にそういう話をいたしまして、まあ労使交渉が非常に円満にいくような形でものごとを考えていきたい、このように考えておるわけでございます。
  44. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 後藤委員に申し上げますが、労働大臣には所用でどうしても零時半までになっておりますので、お含み置きを願います。
  45. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでいまの内示ですがね、内示が示されて、それに基づいて労使で団体交渉をやるわけですね。その内示というのは団体交渉の中身における大体の基準だ、大体この辺の線で交渉をやって話をきめなさいよと、そういうふうに解釈していいわけですか。
  46. 谷口昇

    ○谷口説明員 私どもは、実は先ほど申しましたように、給与規程のいわば協議に際します……。
  47. 後藤俊男

    ○後藤委員 なるべく簡単にやってくれ。
  48. 谷口昇

    ○谷口説明員 はい。承認基準ということで考えておりますので、それを越えます場合には若干問題はあろうかと思いますけれども、それの以外であればもちろんいかようにいたされましてもそれはけっこうだと思います。
  49. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、いま言われたいかようにでもけっこうです、これだけはあかぬけれども、それ以外はいいという、これだけはというのは何ですか。
  50. 谷口昇

    ○谷口説明員 この基準を越えます部分については、これはそういうことで承認いたさない場合がもちろんあるわけですが、しかしながらその範囲内であれば、いわば先ほど申しました初任給でいえば三千八百円ということを増加幅として考えたと申し上げましたが、三千八百円の以内であれば、あるいはプラス幾ら、プラスアルファというその部分の範囲内ということであれば、そういうことではもちろんけっこうでございますし、現にそういう事業団、公団もたくさんあります。
  51. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま言われた内示というのは一番最高であって、それ以内ならどういうふうにきめてもよろしい、そういうことですね。これは返答は要りませんが、そういうことだと思うのですね。そんなことはあたりまえな話じゃないですか。たとえば労働組合と使用者と団体交渉をやって、賃金ベースを、これは例ですけれども、四万円以内ならきめてもよろしいけれども、四万円以上は一銭もあきませんぞということになりますと、使用者に対してきちっとした制限を与えてしまうわけなんです。内示によって縛ってしまうわけなんですよ、団体交渉を。そうしますと、なるほどさっきの労働大臣の話じゃないけれども、予算その他の関係でむずかしい面はあろうと思いますけれども、そんなら労組法の適用をされる政労協の組合としては団体交渉の権威も何もないじゃないですか。内示で以内として最高を縛って、それ以下なら——それ以上はいけませんと、こう縛ってしまうわけです。そうなると、一体労働組合法を適用される政労協の関係の団体交渉権、賃金の決定は、政府がかってに一方的にやってしまうといってもこれは過言じゃない。その点いかがです。
  52. 谷口昇

    ○谷口説明員 先ほど労政局長からもお答えになりましたように、実は特殊法人の職員給与が非常にむずかしいのは、まことにその辺の事情をさしていらっしゃるのだろうと思います。御案内のとおりに、政府関係機関職員につきましては労働三法が適用になっております。御案内のように、一方で自主交渉という問題が出てきますが、一方においてさっき労政局長からお話しございましたように、公共性、公益性という立場がございます。一方に政府の出資であるそういう原資が国から出てまいりまして、その中においてそれの業務の運営をしておるという性格をあわせ持っております。したがいまして、先ほど申しましたように労働三法の適用のもとにあるということと、予算上の制約と申しますか、そういう規制というものが一方において働きます。この二つの調和をどうやって求めるか、これがいわば非常にむずかしい問題だと思いますけれども、私ども実は予算という立場からは、先ほど申しましたように、   〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 給与規程の承認に際しました協議の基準については、そのような考えでもって一応アップ率と、それから実施時期と、場合によっては初任給、そういったものを一応話を申し上げておるということでございます。
  53. 後藤俊男

    ○後藤委員 労働大臣、時間ですから行かれると思うのですが、約束は約束としてこれは守らなければいけませんので……。ぜひひとつ、いまいろいろ話をいたしましたように、この政労協の闘争というのは、これはもう春から一年間です。毎年毎年ですね。芸のない話で、同じことを繰り返しておるわけなんです。去年は、先ほど言いましたように、昇給の幅がちいと自主性を尊重する。ところがことしは、労政局長の話を聞かれても、それは具体的な面で何があるのか知らぬけれども、ここで堂々とことしもこういうふうに一歩前進させようという説明はないわけなんです。ところが、きょう告示をされてこれから団体交渉が始まると思いますが、中身の問題についてはまだこれからだと思うわけなんです。ですから、もう口がすっぱいほど私も言っておりますけれども、去年からことしにわたって何べんもあなたはいいことを言っているのだから、その方向でことしの内示に基づく労使間の決定についても一歩前進させる、そういうことで労働大臣も全力を尽くしてやらすようにひとつやってもらいたいと思うのです。そのことだけお答えいただいて、約束の時間ですから……。
  54. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のありました点は十分尊重いたしまして、今後も努力いたしたいと考えております。
  55. 後藤俊男

    ○後藤委員 それから先ほどの続きの話ですが、内示の問題なんです。これはことしの六月ですか、中央労働委員会へ提訴されましたことは御承知ですね。そのとき、会長さんもこの内示というものについていろいろと言っておられたわけなんです。中央労働委員会の会長あたりがこの内示についてどういう考え方をしておるかといえば、内示は運用上、事実上の制約で制度上の制限ではない。使用者には管理運営の権限上かくあるべしとの判断を持つべき責任がある。慣行としての事実から非常に困難であるとしても、いままでの状態を前進させるため努力が必要であろう、これは中央労働委員会の会長もはっきり言っておるわけなんです。ですから、いま内示以下のものならよろしい、内示以上のものはあかぬ——それはそうでしょう。四万円ベースを三万五千円にきめればあなた方は喜ぶかもわからぬけれども、そんなものじゃないと思うのです。だから、先ほど言っておられるように、去年は十二月でしたが、ことしは早かった。閣議決定も八月二十六日だった。去年に比較すれば早かったことは全くそのとおりで、いろいろ御尽力いただいたと思うのです。ところが、中身についてはあなた方が言ってきたことと違うものだから、たいへん気に入らぬわけです。  それともう一つ問題があるのは、この内示の問題なんです。内示が出たら内示一本で、その内示というのは何かといえば、イコール人事院勧告なんです。公務員に対する人事院勧告が出ると、それに基づいて内示を出して、その内示を使用者側はきっちり握って労働組合と団体交渉をやる。それ以上一歩前進も何もさせぬ。そういうようなことでがんじがらめに縛ったような中で団体交渉が行なわれるわけなんです。これなら労働組合法の認めるところの団体交渉権どころか、それを否定したのと一緒じゃないですか。政労協関係の賃金の決定というのは労使の間できめるというかっこうにならぬじゃないですか。その辺のところをこの中労委の会長は、こういうことではいかぬ。労働者を使っておる以上は、使用者は使用者としての権限があるはずだ。使用者はそんな内示に縛られるのではなしに、それは内示も参考にはなりましょうけれども、そのことを参考にして労使間できめていく、そういうふうに前進させるべきであるということを、これはことしの六月か八月にはっきり言っておるわけなんです。全くそのとおりだと思うわけなんです。ですから、きょう内示が出るそうですけれども、この内示の中身の第一番としては、昨年よりは一歩前進させる。それと同時に、内示そのものは、これはもう決定したワクではない。これは一応団体交渉の基準である。標準である。これを大体中心にして労使の間で賃金決定をするのだ、そういうような方向へことしから強く行政指導をしていただきたい。いかがですか。
  56. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 内示の性格につきましては、実は私十分に勉強はいたしておりませんけれども、内示制度というものは、これは前任者からも申し上げておりますように、にわかにこれを廃止するということは非常に困難であると考えますけれども、その同じ内示制度のもとにおきましても、いろいろの運用はあろうかと思います。しかしながら、これまた財政の面あるいは公共性といったような点から、いかなるものが適当であるかということもなかなかむずかしい問題でございます。私どもといたしましては、昨年五月十四日の労働大臣発言の要旨というものを基礎といたしまして、今後とも何とか前進の方法はないかということで、さらによく勉強努力いたしたいと思います。
  57. 後藤俊男

    ○後藤委員 もう時間ですからやめますけれども局長さん、あなたの話を聞いていると、まことにやっていただけるような話に聞こえるのですが、これはもう数十回私どもも聞いてきたわけなんです。ですから、きょう出る内示について、労働大臣に話をしましたように、これでがんじがらめにするのではなしに、これが大体基準である、この基準に基づいて労使の間で団体交渉できめなさい、そして、きまったものは大臣の承認を得て実行する、今回の内示からそういう方向でひとつ労働省としては行政指導をしていただく。これは大蔵省も関係があろうと思いますけれども、大蔵省もやはり一緒なんです。これだけはぜひひとつお願いしたいわけなんです。これがあかぬというならば、労組法適用の政労協組合の団体交渉権、賃金決定は一体どういうことになっておるのだ、そういうことに話が発展してきますよ。交渉権をあなた方は剥奪するのか、こうなりますよ。論議を進めていくと、法律を守れ、法律を守れと言っておる政府がみずから剥奪するのかということになってくると思うのです。ですから、いま言ったことだけはあなたのほうではっきりしていただかぬと、これは組合法を無視することになると思うのです。いかがですか。
  58. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 先ほど申し上げましたように、私、たいへん申しわけございませんが、いまだ不勉強で内示の性格等につきまして十分知悉いたしておらない点がございますが、内示の性格を一ぺんに今回すぐに変えるということはなかなかむずかしいのではなかろうかと存じますが、さらに勉強いたしまして、できる限りの努力はいたしたいと思います。
  59. 後藤俊男

    ○後藤委員 大蔵省どうですか。
  60. 谷口昇

    ○谷口説明員 私ども先ほど答弁申し上げましたように、労働三法の適用の問題と、それから同じく法律上そういう承認をする場合に大蔵省に協議をするという形になっております。この二つの調節の問題だというふうに実は心得ておるわけでございますが、内示につきましては、私ども立場といたしましては、今回はこのような考え方のもとにいろいろなことを理事の皆さんあるいは組合の皆さんと協議をいたしましたが、最終的には先ほどのようなことをさせていただいた次第でございます。
  61. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま何を言われたか、私はわからぬのだけれども……。先ほどのように話をしたらこのようになりました、これではわからぬわけだけれども、あなたの言われる立場というのは、予算の面では国のほうで縛られておる、さらにいろいろな関係で非常にむずかしい、その点は何べんも聞かなくてもようわかるのです。それなら労働組合法を適用されておる政労協関係の組合の団体交渉権というのは一体どうなるのだ、それを解明しなさいよ。それを説明せぬ以上は、あなたがいま言ったことは通らぬわけなんですよ。賃金の決定については労使の団体交渉ということが労働組合法できまっておるでしょう。それにワクをはめてしまって、これ以上はだめです、これ以下のところをやりなさいというならば、何かワクにはまった団体交渉で、これが自主的の交渉ですか。その点はどう考えるのです。労組法との関係についてはこういうふうに考えて、われわれはこういうふうに今日政労協関係の組合については考えております、そこを明快に答弁してくれれば、私もそう何べんも何べんもそんなことは聞こうと思わぬわけなんです。片方の言いにくいことだけは捨てておいて、自分の言いたいことだけは言っておるわけだから、毎年毎年同じことが続くと思うわけなんです。いかがですか。
  62. 谷口昇

    ○谷口説明員 先ほど申し上げましたように、本問題は、労組法その他いわゆる労働三法の適用になっている法人と、それから自主交渉の問題等につきましては私ども十分承知をいたしておりますが、ただ先ほど申し上げましたように、一方において同じといいますか承認を求めます法律がございまして、あるいは予算上そういう規制をいたしておりますので、その二つの競合点が非常にむずかしい問題を生んでおる、こういうことだろうと考えております。
  63. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまあなたが言うたところまでは私が言うたのです。それから前進させるのに大蔵省は一体どういうふうに考えておるのですか。あなたが言われるように労組法の適用の組合でしょう。そうすれば、団体交渉で自主的に賃金を決定する権限を組合のほうは持っておるわけなんです。使用者のほうも自主的にやっていいわけなんです。これをあなたのほうできちっとワクにはめてしまうというのは一体どういう考え方か、労組法を否定するのか、ということを私は言うておるわけです。否定するなら否定するとあなたはっきり言えばいいわけです。その辺のことをきちっと解明せぬ以上は、毎年毎年政労協の闘争は続く一方ですよ、いつまでたったって。上の人がおっしゃるから、予算の面からしかたがないから私らワクにはめておるのです、それじゃ通らぬのです。その点労組法との関係をどう考えて、大蔵省としてはこうやっていきたい、こういうきちっとした説明があればこれはまた聞けると思うのです。いかがです。
  64. 谷口昇

    ○谷口説明員 繰り返して恐縮でございますけれども、私どもは要するに労働三法の適用になっておる法人の問題につきましては、当然その範囲においてといいますか自主交渉が行なわれることを期待はしておりますが、ただ先ほど申しましたように、予算の問題に関係あります部分につきましては、これは一方において大蔵大臣にやはり協議を求めておるということになっておりますので、そういう立場からこの調整をはかっていきたいということで先ほどのようなことになっておると考えております。
  65. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま同じようなことをまた言われたわけだけれども、結局私はこういうことが言えると思うのです。政労協関係の組合は労組法適用の組合でしょう。労使で団体交渉をやってきまる。きまったのをかってに実行するんじゃないですよ。大臣の承認を得て実行することになっているのでしょう。それをかってにやるということなら、かってに実行に移すということなら、これは大きな問題になるかもわかりませんが、労組法の適用の組合であって、労使で自主的に団体交渉をやる。その団体交渉の基準としてこの内示というやつを出す。予算の面から見るとこの辺が標準だから、この辺を中心に団体交渉をやりなさい、これは労組法に基づいてやりなさい、きまったものを大臣のほうに持ってきなさい、そこで大臣は承認いたします、あるいは問題があればそこで問題にします、そういうことなら話はわかるわけなんだ。団体交渉もやらぬうちからワクをぽんと出してしまって、これ以上のことはあきまへんが、これ以下のことならよろしい、それなら労組法との関係は一体どう考えるんだということです。そうなるでしょう。労組法では団体交渉権は認めておるのです。自主的に団体交渉をやって賃金をきめなさい、これはそうなっています。あなたの言われるようなワク内における団体交渉、こんなものは全然権限も何もないですよ。働く者は一銭でもよけい要求して一銭でもよけい取ろうという立場に立つし、使用者のほうは押えようという立場に立つ、それは両方ともけっこうだと思う。その中で話し合いで幾らというふうにきまるのが自主的団体交渉じゃないですか。このワク以内ならよろしい、このワク以上はあきまへんよ、こんなものは自主的団体交渉でも何でもない。だから、ことしも大蔵省は相変わらず労組法の立場を無視してそういうことをやるのかどうかということを私は聞いておるわけです。  あなたの立場として、上のほうからそう言われてきて、労組法の関係があろうけれども、無視してこういうふうにやるのです、あるいはそうでないとするのなら、内示そのものは団体交渉の大体の基準ですから、あの基準を中心に労使の間で交渉をやってもらって、そこで話がきまったら大臣の承認を得て実行に移す、大蔵省としてはそういうふうに考えてもらってけっこうなんですよ。そういう話があればそういう話をしてもらえばいいわけなんです。その辺のところをどっちつかずのことをあなたは言うもんだから話がはっきりせぬのですよ。いかがですか。
  66. 谷口昇

    ○谷口説明員 先ほど申し上げましたけれども、私ども立場といたしましては、御案内のとおり、その原資が税金であるとか、あるいは国家の資金から出ておるとか、いろいろな問題がございまして、これは一方において、法律でもそういうことが明記してありますが、要するに先ほど来申しておりますように、大蔵省には協議を求めてくるということになっておるわけでございます。したがいまして、労働三法の問題は確かに一方の立場でこれはおっしゃるとおり自主交渉の問題として考える部面があり、私どもこれを承知してますけれど、しかしながら昇任基準の面において前に述べたような問題がありますので、私どもは事前に、先ほど来申し上げておりますように、八月二十六日以来数回にわたりまして理事の皆さん、あるいは理事の皆さんを通じて各組合の皆さんともいろいろ話をしてきて、先ほどのように本日からといいますか、要するに自主的に交渉ができるような段取りに運んできたと、このように申し上げておる次第でございます。
  67. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いまあなたが言われたが、内示を示す事前の行動として政労協関係の使用者の意見も十分聞きました、労働組合の意見も十分聞きました、その上に立って内示を出したのですと、こういうことですか。いまの説明はそういうことですよ。
  68. 谷口昇

    ○谷口説明員 先ほど申し上げましたように公団、公庫の理事の皆さんと回数を重ねてこういう運びになりました。公団、公庫の理事は政労協の皆さんともちろん交渉を持っていらっしゃると聞いておりますし、現にそうだと思っておりますが、同時に私ども組合の皆さんとも回数を重ねて会っております。したがいまして、いろいろな問題が——もちろんこれは本質的にむずかしい問題でございますので、いろいろな問題があろうかと思いますけれども、私どもはできるだけの努力をしてまいった、このように考えております。
  69. 後藤俊男

    ○後藤委員 いや、あなたは話をぼかすけれども、さっきあなたが説明されましたのは、内示を示すにあたっては、これは労組法とかいろいろな関係がある、非常にむずかしい問題だ、これは何べんも何べんもあなたは言うたけれども、そのとおりなんです。ところが、その内示を示す以前に使用者の理事者側の意見も十分聞いてあるし、さらには労働組合関係の意見も十分聞いてあるといま言われました、数回となく労働組合とも会っておりますと。そうしますと、労働組合の意見も十分聞き、使用者側の意見も十分聞いた上の内示が出ておるのなら、これはたいして問題ないと私は思うんです。私がここでわあわあ言う必要はないと思うんです。ところが、いままでだって政労協関係の労働組合は、去年にしてもおととしにしても、内示が出たら内示以上のものは一歩も前進せぬ、その内示イコール人事院勧告。それなら公務員の一般の労働条件と政労協につとめておられる労働者の労働条件の関係はどうかというと、かなり大きな格差があると思うんですよ、いろいろな面で。福祉関係厚生関係にしてもですよ。それを人事院勧告が出ると右へならえでそれに基づいて内示を出す、この内示に基づいて団体交渉をやりなさい、これ以上のものはあきまへんで、これ以下のものをやりなさい、こういうふうにやられておると私は見ておるわけなんです。ところが、あなたの説明だと、そうではなしに、ことしは非常に大事を踏んで、この内示を示す前には理事者側の意見も十分聞いた、労働組合側の意見も十分聞いて内示を示してまいりました、ですから労組法にはいろいろ差しさわりがあろうけれども、そこまでやっておるのですからぜひその辺で御了承をということなら、私は全部わかるわけじゃないけれどもある程度話はわかると思うんです。事実その内示の事前にそのことをやっておられるというなら——あなたもそう言ったのですから、そうすると、その内示の中には労働組合の意向も理事者側の意向も十分入っておるわけですか、もう一ぺんお尋ねしますけれども……。
  70. 谷口昇

    ○谷口説明員 全部が全部とはもちろん申し上げませんけれども、労働組合の皆さんの意見も先ほど申しましたようにいろいろ聞きました。あるいは理事者の皆さんの意見ももちろん先ほど申しておりますようにいろいろ聞いておりますが、その意見の調整をはかりながら、先ほど申しましたように、最終的に本日から交渉ができるような状態に段取りを進めてまいった、こういうことでございます。
  71. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、その辺非常に問題が大事な点だから、内示については、労働組合の意見も十分に入っております——十分じゃないにしても、入っております、理事者側のほうの意見も入っております。大体われわれが見ますならば、労働者側の意見も五分、理事者側の意見も五分五分に内示にちゃんと入っておるのですが、内示の出る基準というのは人事院勧告に右へならえというかっこうになっております。ですから、その内示に基づいてきょうからひとつ団体交渉をやってください、そういうことですね。その内示を大体基準にして労使の間で団体交渉をやってください、そこできまったものについては、大臣の承認を得て実行に移します、そういうことでよろしいですか。それとも、労働三法の関係をきちっとあなたのほうで解明されようとするのなら、内示を示す前に、労働組合の意見が十分にそれに入っておる、それならまた一つの方法だと私は思うわけなんです。私は政労協の議長さんにも一ぺん聞いてみますけれども……。内示の中に、そういう関係の意見が全部入っておるのか——全部じゃなくて入っておるのかどうか、あなたが言うたから聞いてみますよ。だから、労政局長はどうですか。いつまで問答をやっておっても話を繰り返す形になりますが、何べんも言いますけれども、去年からことしにわたって同じ問題を何回となく繰り返しておる。ですから、去年につきましては、初任給のある程度の幅を認めてもらって一歩前進をした。ことしも、官房副長官の話じゃございませんけれども、去年も一歩前進、ことしも一歩前進、来年も一歩前進、しまいには内示がなくなる、こういうことが八月五日にちゃんと議長さんと話が進んでおるわけでございますから、第一番の問題としては、ひとつ去年よりかは一歩前進させてもらう、これはよろしいですね。——それから、さらにはこの内示の問題につきましては、中央労働委員会の会長あたりもそういうものの言い方をしておりますし、さらに、労働省としても、また大蔵省としましては、お金の問題がつきまといますから、これは非常に重要だと思うのです。しかし、どうこう冷静に判断してみても、団体交渉をやる前からワクをはめてしまって、これ以下ならよろしいというような不当なやり方はしない、賃金は内示を基準として労使間で自主的にきめてもらう、それでけっこうだ、最後にきまったものを大蔵省へ持っていきなさい、大臣がそれを見て承認します、そういうことをここで明確にしていただければ、これはある程度去年よりかは前進になると私は思うのです。そこまで言わない以上は、労組法との関係でいつまで論議をやっておりましても、あなたのほうはりっぱな回答は出ぬと思うのです。いかがですか。
  72. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 政労協が、労組法の適用を受けながら、また他の法律によって制約を受けておる。また、財政上、予算上の制約もある。この制約の程度があまりきつ過ぎるじゃないかという御議論も多々ありまして、しかも長い間あるということも十分承知しております。内示制度がなくなるのが理想であるというような御議論もあるわけでございますけれども、これはたびたび政府側から申し上げましたように、にわかにそうはいかないということで、それでは、内示制度の運用面でも逐次少しずつでも改善したらいいじゃないかというような考えもあるわけでございます。本年度におきましても、大蔵省当局といたしましては、以前に比べますと、ずいぶんいろいろ苦心をされたあとはあるわけでございます。したがいまして、こういう事実を踏まえますならば、将来はさらに何らかの形で前進が期待できるのじゃなかろうか。私どもといたしましては、そういう方向でできるだけ努力をいたしたいと考えております。しかしながら、今年度すぐにこれからどうするということをお約束するまでにはまだ至っておりませんので、さらに将来の問題として努力をするということを申し上げるにとどまるというわけでございます。
  73. 後藤俊男

    ○後藤委員 大体いまあなたが言われたことでただ一つ気になることがあるわけです。いま直ちにどうこうと言われたところでやれぬ、こう言われましたけれども、これはいま始めた問題じゃないのですよ。政労協の問題はおととしから始めておるわけなんですよ。あなたが労政局長になられたのはいまかもわかりませんけれども、政労協問題ですったもんだ貴重な時間を費しておるのは一昨年からです。もう時間がだいぶ超過して、すまぬことだからもうやめますけれども大臣もああ言って帰られましたし、ぜひひとつ今度の内示から先ほど私が言いましたような方向で努力してもらう。これは大臣はそういうことで約束をして帰ったのですから、ぜひその方向で強く行政指導をしていただく。大蔵省もそれをはき違えぬようにひとつ頼みますよ。いかがですか。
  74. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 後藤先生の御指摘は、私ども将来前進を考えます場合に非常に貴重なる御示唆であるというふうに考えております。じゃ、直ちに何ができるかということにつきましては、おそれ入りますがもう少し勉強させていただきたいと思います。
  75. 後藤俊男

    ○後藤委員 大蔵省はどうですか。
  76. 谷口昇

    ○谷口説明員 私どもとしては、先ほど御説明申し上げましたように、かなりにいろいろな人の意見を聞いてそれでやってまいったわけですが、もちろんいろいろな調整の問題がございますので、全部が全部もちろんやっておらないということではございますが、その努力そのものは非常にしてまいったというふうに考えております。  それから、今後の問題についても、私どもはもちろん、前向きへの方向については、いろいろ勉強してまいりたいと思いますが、当面、まずこれからの交渉その他について円満なる自主交渉が行なわれるように期待をしておるわけでございます。
  77. 後藤俊男

    ○後藤委員 大蔵省としては、円満なる自主交渉をしてもらうように努力する——これは非常にけっこうだと思うのです、自主交渉ですからね。これはもう最後の大蔵省の見解として私聞いておきますわ。円満なる自主交渉をしていただく——これでけっこうです。そういう方向でひとつお願いしたいと思うのです。  それから、労政局長のほうも、いま直ちに今度の内示でどうこうとか、あくとかあかぬとかいう意味じゃなしに、きょう幸いに内示が出るんですから、大臣も言われておりますし、木村官房副長官も言われておるのですから、そういう方向で、今度の内示はどういうふうになるかわからぬけれども、とにかく今度の内示を通じてでも、将来の問題としてひとつやっていく、こういう腹がまえだけはしっかり持っていただきたいと思うのです。それで、いかにあなたが努力されてもならぬ場合もあるでしょう。それはいろいろあります。だけれども、これだけ長い間やっておる問題ですから、もう国会で政労協の問題は出さなくとも円満に解決していくというぐらいなところへ前進させるべきだと思うのです。あなた方、いいことばっかり並べられましても、実行が伴わぬもんだから、努力した努力したと言われるけれども努力した結果が出ぬものですから、失礼な言い方ですけれども、何らやらなんだことになってしまうのです。だから、去年も一歩前進、ことしも一歩前進、内示の考え方についてもさらに一歩前進、ここで腹をきめてかかっていただく、もうそういう潮どきにきておるし、段階にきておるのです。大臣もいまそういう腹をきめて出ていったのです。ですから、そういう方向でぜひひとつお願いいたします。もう回答は要りません。
  78. 倉成正

    倉成委員長 島本虎三君。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 これ一つだけ注意しておきたいと思います。押したり押されたり一時間も二時間もかかるような、千日手になるような答弁だけはやめてもらいたい。ひとつこれだけは私から厳重に御注意申し上げる。私は十分間で終わりたい、模範質問をしたいんだから、労政局長もそこを考えてがっしり腹を据えて答弁してもらいたい。  労組法ができてから二十一年たっています。基準法ができてから二十三年たっているんだけれども、しかしまだ幼稚な労働争議というか労使慣行がほんとうに平気で行なわれている。たとえば善良なる労使慣行をかってに破棄してやるとか、それから、もう使用者が暴圧的な態度に出て、それをもとに首を切るとか、こういうようなことがまだ平気で行なわれているところがあるわけです。これはもう私はまことに遺憾だと思います。企業内組合とこう言われながらも、いまの人命尊重の立場からも公害に取っ組むような高度な労使関係さえも樹立されている現在です。ところがまだ、前時代的な、徳川幕府が行なったような、こういうような労使慣行がいまだに行なわれている。これはほんとうにいけないことです。岩手県の信用保証協会で委員長解雇、停職四名の処分を出した、こういう事件がありました。この内容等について御存じでしょうか。
  80. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 岩手県信用保証協会につきましての職員の解雇その他の処分ということにつきましては、岩手県庁から状況を聞いております。非常に詳細にわたりましての具体的事実はまだつかんでおりませんが、大まかなところは存じておるつもりでございます。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 ビラをかざして事務所内でいわゆる暴言を吐いたという行為、その暴言とは何だ。エレベーターまで追いついて行って、ばかじゃないか、こういうようなことを言ったのが一つの暴言だ。そうして即日解雇を言い渡している。こういうようなことのために平気で行なわれるような解雇、これは労働委員会でも当然問題があると見ているようです。現地の基準局でも、これはもう該当しないのじゃないかと思うけれども調査しなければならないという見解があるようであります。そうして、そういうようなことをして、なおかつ翌日おわびをしに行って、おわびを認めているのです。認めていながらそれをまたもとに戻してきて、解雇の理由または処分の理由にしておる。むしろおかしいのは使用者側じゃありませんか。こういうような事実は御存じですか。
  82. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 私どものほうでは、ただいま先生御指摘の、おわび云々ということにつきましては存じておりません。ただ平生から非常にここは労使関係が意思疎通を欠いて、がたがた、がたがたしておる。地労委のごやっかいにもたびたびなっているけれども、片づいたり片づかなかったりという、労使関係の風土は悪いところであるというふうに承知いたしております。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 中小企業庁ではこういうような労使関係が悪いことについても調べておられると思うのです。成績の点は抜群にいいところですか。
  84. 斎藤太一

    斎藤(太)説明員 岩手信用保証協会の成績と申しますか、業務の状況は、年間の信用保証の実績が昭和四十四年度で百三十七億でございまして、全国の一・三%の割合を占めております。まあ中ぐらいの協会でございます。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 そこに労働協約があるのですか、ないのですか。
  86. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 これも詳細具体的には存じないわけでございますが、労働協約に書いてあるとかないとかということ自体に紛争があるという、私どもとしてはやや解せないのでございますが、そういう紛争さえあるそうでございます。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 そのとおりなのです。ちゃんと就業規則もある。労働協約もある。いつ改定したのかわからないままに、それが首切りの理由にされている。その時期は昭和四十四年十一月二十九日から四十五年三月三十一日までだ。その間、団体交渉その他には必ずマイクを置き、使用者側、職制は全部やって、挑発も言う。そのときに何か言って、そのことばが二回、三回と重なって、それが解雇の理由の一つになり、一つの停職の理由にされている。こういうふうなことがいい慣行なんですか。昭和四十四年十一月二十九日から翌年の三月三十一日まで何回もやったことが、全部積み重ねてあります。何か全逓争議にもそういうことがちょっとあったようですけれども、そういうことはもう非現行かと思ったら、まだ行なわれている。そういうことはいい慣行ですか。
  88. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 私どもの承知しておりますところでも、非常に長い間にわたりましていろいろなことが積み重なった。それを全部トータルしまして、それが解職ないし徴戒処分の理由であるというふうに申しておるわけでございまして、こう長い間、いろいろごたごた、ばかやろうと言ったとか言わないとかという問題が長く続いておるという労使関係というものは、私ども具体的に存じませんから批判はいたしたくありませんが、たいへんいい労使関係が確立している労使関係とはちょっと考えられないわけであります。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 この件について、中小企業庁のほうにも調査してもらってあるのですが、中小企業庁のほうでは、遺憾ながら、ただいま斎藤部長答弁されたように、成績のほうばかり見て、そこに働く人のことを全然見ておらない。ですからやはりこれは、双方一致してこういうような体制を、いままでやっていたような慣行、もしそれが善良なる慣行として平気で行なわれているんだったら是正しなくちゃいけませんし、またそれ以前にいい慣行があって、それを無視するようなことによって発生したならば、もとへ戻さなければならない。きわめてあたりまえのことなんです。きわめてあたりまえのことが行なわれておらないで、地労委に一方は提訴する、一方は裁判所へ提訴する、その間に、賃金を不当に払った、不当ではない、こういうことなんです。それは何できめた、就業規則できめた——こういうようなことは、どうもわれわれ解しかねる。悪代官がかってなことをやるような所作に似ているのです。こういうようなことはちょっと私どもは理解しかねるので、この事情を十分調べてあるのかと思って聞いたんですが、県庁の調べでもはっきりしないようです。しかしこのままにしておかれませんので、十分今後の指導の点においては——中小企業庁あたりだってそうじゃありませんか。これでもって業務がうまくいくなんて思っていたら大間違いです。中くらいだというけれども、むしろそれ以下かもしれない。もう一回よく調べてごらんなさい。それから労働省のほうでも、もう少しこんな点は見ないといけないと思う。こういう前時代的な紛争が起こっているということは、労働省の恥じゃありませんか。今後の所信をお伺いしたいと思う。
  90. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 わが国の労使関係は、戦後から今日まで見ますと、大観いたしますとたいへん落ちついてきておるように思うのでございますが、中小企業等におきましては、いまだに非常におもしろくない労使関係あるいは労働争議があるということは、御指摘のとおりでございます。私ども労働教育あるいは指導等におきまして、ずいぶん努力はいたしておるわけでございますが、なかなか全部をカバーはいたしかねておるわけでございます。この問題につきましても、こういうふうに問題が表に出ましたのは、私ども努力が至らない点もあったかと思いまして、今後とも一そう努力をいたしたいと思います。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、その中には、団体交渉を二十数回やった。やったけれども、終末はどうなんだ。一方的に打ち切りを宣言してそれで終わっている。それだけじゃない。年次休暇の制限、こういうようなものも一方的に有給休暇だけでやっておる。それだけじゃない。組合活動の制限によって、かってに賃金カットもしておる。こんな事態もあるのです。こういうような点はどうもわれわれ解しかねる。それから、労使でちゃんときめておった約束事項も、ある特定の人が重役になって来たら、すぐそれも破棄しておる。かってにこんなことをやっているということも、どうもわからない。いろいろこういうようなことの積み上げもあるようです。今後十分これを調査し、指導し、この次の委員会までにはその指導を、こういうふうになりましたということを、ひとつ私の手元までお届け願いたい。そして解雇が即日解雇になっていますが、こういうむちゃくちゃなこと、これをどうせいっと言ったって、地労委にもかかっておりますから、裁判にもかかっておるようですから、これはすぐできないだろうけれども、間接にアドバイスはできるわけです。いろいろな高次元で解決はできるはずです。こんな点についても、あなたは労政局長の初手柄として、こういうことをやってみる意思がありませんか。やるならば、私はこれで質問を終わりたい。
  92. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 私ども十分事態を把握してない点がございまして、まことに恐縮でございますが、御指摘のごとく地労委にもかかっており、私ども調査したり何かするというのは、やはり地労委のじゃまにならないように気をつけながらやらなくちゃいかぬと思っておりますが、こういうのは何もこの企業だけに限らぬで、中小企業一般、いろいろ問題があると存じます。別に手柄を立てようとも毛頭思っておりませんけれども、今後一そう努力をいたす所存でございます。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 立てたって決して悪くはないのです。別にどうとも言わない。この一カ月後の社労の委員会で、どうなっているか、またその措置はどうなったか、これは中小企業庁と力を合わせて、この措置を高い次元からどのようにしてやったか、私は刮目し、次の社労委員会にあなたの発言を期待して、きょうはこれで終わります。
  94. 倉成正

    倉成委員長 西宮弘君。
  95. 西宮弘

    西宮委員 労働大臣がいないのは残念でありますが、労政局長、しかも新たに局長になりましたから、ひとつ抱負をお聞きしたいと思うのです。  労働行政、労働政策、きわめて抽象的な質問ではありますが、労働行政、特に官公労あるいは公共企業体の労使の関係等について、基本的にどういう姿勢なりあるいは方針なりを持っているか、そういう基本的な問題についてまずお聞きします。
  96. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 たいへん包括的な御指摘でございますが、基本的には私ども、労使双方が自主性を持ちまして正常なる労使関係を運行することを期待しておりますが、特に国鉄の場合におきましては、三公社の中でも非常に公共性の高いものであります。したがいまして、労使双方がこの公共性ということを十分に認識されるということ、それからまた企業としてはもちろんでございますが、組合としても全国有数の大組合でございますので、むしろ全国の労使関係の模範になるような姿において運用されることを切望いたしております。
  97. 西宮弘

    西宮委員 いわゆる模範的な労使関係をこの国鉄において期待をしたい、こういう局長の話でありますが、私は特に注意しなければならぬ問題として、この公共企業体としての経営者の立場が政治的に非常に片寄っているのではないかという点が非常に目につくわけです。そういう点について、公共企業体に求められている政治的な中立性、そういう問題についてどうお考えでございますか。
  98. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 公共企業体職員につきましては国家公務員のような厳格なる政治的中立と申しますか、政治活動の自制ということは法律上定められておりませんけれども、全国的な組織でございまして影響力も非常に大きゅうございますので、これの政治的言動につきましては十分慎重を要するものと考えております。
  99. 西宮弘

    西宮委員 私が質問をしたのは、いわゆる経営者側、管理者側ということを言ったのです。管理者の立場に求められている政治的な中立性というのは、どの程度ですか。
  100. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 管理者につきましては、法律的に申しますと、若干の兼職禁止等の制限がございます。それは別として、国鉄の管理者といえども市民としての政治的な自由はあるわけでございますけれども、しかしながら労使関係その他という面におきましては、その点については十分に慎重なる配慮が必要であると思います。
  101. 西宮弘

    西宮委員 局長答弁のように、もちろんその一人の市民としての自由を持っている、政治的な見解についてそういう一つ考え方を市民として、個人として持っておる、これはもとより自由だと思うのであります。私の質問はあくまでも管理者として、要するに国鉄の経営を管理している、そういう立場で求められる政治の中立、こういうものはどういう程度のものであるかということです。
  102. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 管理者といたしまして、自分は何党が好きである、今度は何党に投票するという程度のことは、これは特段の制限を受けておらない。しかしながら他人にそういう働きかけをするということにつきましては、御承知のごとく国家公務員は非常に制約を受ける。公社の職員というものはそれほどではございませんけれども、労使関係におきまして、たとえば職制を利用して圧迫を加えるということは、国鉄に限らず一般に妥当を欠くものである。国鉄の場合は公共性も強うございますから、特にその辺は慎重にやったらよろしいと思います。
  103. 西宮弘

    西宮委員 国鉄からはだれか来ていますか——まだ来ていない……
  104. 倉成正

    倉成委員長 いま途中だそうです。
  105. 西宮弘

    西宮委員 いま局長答弁のように、公共企業体の管理者について、もちろん自分で何党に一票を投ずるか、こういうことはあくまでも全く自由であると思います。しかし経営者、管理者の立場で、自分の指揮下にある職員に対して、ある特定の政治的な立場を強要する、あるいは強要とまでいかないまでも慫慂する、そういうことは差しつかえないのかどうかということであります。いかがでありますか。
  106. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 強要したら、これはいかぬと思います。慫慂という程度ですと、内容にもよりけりじゃなかろうかという感じもするわけでございます。特に、こういうことばを使ってよろしいかどうかわかりませんが、国鉄一家というようなこともありまして、これは労使関係を離れて国鉄職員というのはお互いに非常に親密な行き来をしておるようでございまして、その間で何か政治問題のことについて、おまえもこうやれやという程度のものについて全部が全部いけないとは言えない。しかしいずれにしても、先ほど来申しておりますように、国鉄という立場を十分考えて慎重な言動が望ましいと考えております。
  107. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  108. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  109. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、委員長より、国鉄山口常務理事に御注意申し上げます。  貴官の出席がおくれたため本委員会の運営にたいへん支障を来たしました。まことに遺憾であります。今後かかることがないよう厳重に注意いたします。  質疑を続行いたします。西宮弘君。
  110. 西宮弘

    西宮委員 それでは、午前中若干質問をしたので、その点を要約して、それを確認しながら質問を続行したいと思います。  私は、公共企業体の経営者、理事者、管理者の立場で政治的な中立性ということについてはどういう点が要求されておるか、こういう点について労働省の所管局長答弁を求めたわけですが、要約をして言うならば、それぞれ一人の市民として政治的な見解を持つことは自由である。したがって、その見解に基づいて一票を行使することももとより自由である。ただし理事者、管理者の立場においては、これは当然に政治的な中立が確保されなければならぬ、こういうふうに私は答弁を了解したわけですが、そのとおりで間違いないのかどうか、あらためてお尋ねします。
  111. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 政治的中立という意味につきましてはいろいろな解釈もあり得ると思いますが、政治的な見解等を特に管理者が、上司が部下に対するという関係におきましてものを言います場合には、非常に慎重でなければならないという趣旨を申し上げました。
  112. 西宮弘

    西宮委員 私の要約をして再確認を求めた点と大体において同じだと思うのでありますが、要するに経営者、管理者の立場部下に対して影響を与えるような、そういうおそれのある機会においてはあくまでも慎重でなければならぬ、こういう答弁であったと存じます。  そこで、それでは国鉄の代表にお尋ねをいたしますが、いまの労政局長答弁について間違いないかどうか。
  113. 山口茂夫

    ○山口説明員 そのとおりだと思います。
  114. 西宮弘

    西宮委員 そのとおりだというならば、あえてそれ以上私のほうから説明する必要はないと思うのですが、第一、日本国有鉄道法の第二十条には役員任命の際の欠格条項が定められておって、それには政党の役員である者は任命できない、そういうように欠格条項としてきまっておるわけです。さらに二十二条においては、もし途中でそういう立場になった際にはこれを罷免をしなければならない、総裁については内閣が罷免をしなければならぬ、あるいは副総裁以下においては総裁が罷免をしなければならぬ、こういうきわめて厳重な規定があるわけであります。これはもちろん総裁なり副総裁なりに要求されておることは、完全にいわゆる管理者一体の原則に基づいて、管理者の立場に立つ者は全部その立場を貫徹しなければならぬ。いわゆる政治的な自由、さっきの労政局長答弁をもってするならば、部下に対して影響を行使する、こういう際にはあくまでも政治的な中立を全うしなければならぬ、二十条なり、ないしは二十二条なりがそういう原則を明らかにしているのだ、こういうふうに考えるわけですが、山口常務はその点について間違いありませんか。
  115. 山口茂夫

    ○山口説明員 非常にむずかしい御質問でございますが、原則的にはお説のとおりだと思います。
  116. 西宮弘

    西宮委員 むずかしい質問だと言うが、私は少しもむずかしくないと思う。先ほど来言っておることのその精神を貫徹するならば、何にもむずかしいことは一つもないと思う。ところが、まことに奇異に思うのは、いまの点についてその大原則から大きく踏みはずれておるとわれわれが指摘をしたいのは、仙台鉄道局の労働課の態度なんですが、その点について私は実は若干資料を持っていますけれども、これはわれわれが入手した資料ですからきわめて一部分でしかないわけです。  それは「一九七〇年問題」ということでシリーズが出ておるわけです。ただ私が手元に持っておるのは残念ながらその一部で、第二集、第四集、第五集しかない。そういうほんとうに限られた資料しかないのですが、全体を通して、常務理事などはこの点について十分調査をしておると思うけれども、その点について仙鉄労働課のとった態度は何ら間違いでない、こういうことでしょうか。
  117. 山口茂夫

    ○山口説明員 ただいま御指摘のございました資料は、仙鉄の労働課でガリ版で刷りました「一九七〇年」という資料だと思います。これはシリーズで出ておりまして、第十集まで出ております。この中には各新聞の論説その他を抜き書きしたもの、それから労働課の職員が各種のセミナー等で勉強してきたこと、こういうことが書いてございます。ただ、御指摘のございましたように、かなり主観的な主張も入っているようであります。これは現在不当労働行為の問題と関連いたしまして、第三者機関で実は一昨日来、本日まで審問が行なわれております。その結果は大体十一月の中旬ごろに結論が出ると思いますが、その公正な第三者の御意見を拝聴した上でお答えをいたしたいと思います。
  118. 西宮弘

    西宮委員 不当労働行為に該当するかどうかというような問題ならば——いま私はそういう問題は全然言っていないわけですよ。そういう問題ならば第三者機関の判定が要ります。これは当然だと思います。しかし、私がいまここに取り上げている問題は、そういう筋合いの問題ではない。それとは全く関係のない問題なんです。  要するに、政治的な中立ということを貫徹しなければならぬ国鉄の管理者がこういう態度でものを考えている、したがって仙鉄管内にその影響力を行使しようとしている、こういうことが正しいかどうかということを聞いているのです。その点どうですか。
  119. 山口茂夫

    ○山口説明員 この印刷物は特別秘扱いというものではございませんで、ガリ版で書き流したものでございます。仙鉄労働課という名前をつけたこと自体が多少問題があるかと思いますが、先日来われわれも取り寄せまして中をよく読んでみました。必ずしも穏当でない個所がかなりあるように見受けられます。
  120. 西宮弘

    西宮委員 内容を精査して穏当でない部分があるというならば、それに対してどのような是正の措置をとっていますか。
  121. 山口茂夫

    ○山口説明員 配付の経過その他を調べまして、穏当でない個所につきましては、書いた責任者に対して厳重に注意を与えております。
  122. 西宮弘

    西宮委員 単に厳重なる注意を与えるというだけで済ませられないと思う。つまりこういう印刷物が出て相当程度に影響力を及ぼしているわけですよ。そういうことになれば、その本人に呼び出して注意をしたという程度では、その与えた影響を抹消するということはできない。それについてはどういう態度をとっていますか。
  123. 山口茂夫

    ○山口説明員 これは配付のルートその他を調べておりますが、そう大きな影響力は残念ながらなかったと考えております。
  124. 西宮弘

    西宮委員 それは、影響力は残念ながらなかったというわけですか。そう言うわけですか。
  125. 山口茂夫

    ○山口説明員 残念ながらと申し上げましたのは、当局側の労働課が編さんしました参考資料がそれほど読まれていなかったということでございます。
  126. 西宮弘

    西宮委員 私はいまちょっとよく聞き取れなかったもんだから再度お尋ねしたんだけれども、残念ながらその影響力が少なかったというのはまことに重大だと思う。つまりあなたは、それじゃここに掲げたようなこういうことがもっともっと徹底すればよかった、それを望んでおったのだ、ところがさっぱりその影響がなかった、それはまことに残念だというならば、これはまことに重大だと思うのです。
  127. 山口茂夫

    ○山口説明員 ことばが足りませんでしたが。残念ながらと申し上げましたのは、当局側がつくりました資料が読まれていないという事実だけを申し上げたのでありまして、内容につきましては、先ほど申し上げましたように、不穏当な個所があると思います。
  128. 西宮弘

    西宮委員 私はあなたが言うように、若干不穏当な個所があるという程度のものではないと思う。これはいままで参議院でもずいぶん議論をされたことですから、同じことをそう繰り返すつもりはありませんが、政党に対してもいろいろな批判を加えている。たとえば社会党に対しては、「運動方針が共産党の考えの焼直しであり、」あるいはその運動形態というか、それは共産党、公明党のマネをした日常活動であるというようなことをいって、党を誹謗している。こういうことは私はとうてい許せないと思うのです。さらに、至るところでアカ攻撃をやっている。そういうことで、「今にしてこの真実を見究わめ、対策を講じ自らの国を自らの手で護らなければ、我々は、これ等分子のじゅうりんするところとなり、労使共々死へと追いやられる」であろう。「労働運動のかげにかくれ、それが当然の組合要求、組合活動としてのあおりそそのかしは正に労働組合運動の敵であり、労働者をも亡ぼすものとなることを銘記しなければならない。」「そのために我々は労働組合をアカの手から守ろうのスローガンをあげ真の労働者の幸せをつかむために努力しようではないか。アカ、それは社会党と日共である。」こういうきめつけ方は、これは単に若干不穏当であるという程度のものではないと思う。しかもさらに、冒頭に指摘をしたように、これは明らかに政治の中立を侵しているということは明々白々だと思う。こういうふうに徹底的にアカの攻撃をして、アカ、それは社会党と日共だ、こういうことで、政党に対しても特定の見解を持たせようとしてそういうPRをしているということは、まことに重大だと思う。その点どうですか。
  129. 山口茂夫

    ○山口説明員 御指摘のございましたように、不穏当な個所が相当あったと反省をいたしております。
  130. 西宮弘

    西宮委員 それじゃもう少し続けて読んでみましょう。たとえば、要するに現在の自民党の政策を強く謳歌をして、「アメリカは一回でも日本を裏切ったことがあるであろうか。」「サンフランシスコ条約に反対して、日本からアメリカを追いださなければソ連も中共もその野望即ち日本侵略ができないからである。それが安保条約の完全破棄なのである。」これがつまり、社会党その他が主張しておるいわゆる安保条約の廃棄なるものだ。これはソ連、中共をして日本を侵略させるためなんだ、こういうような言い方をして、あくまでもアメリカ追随外交が正しいんだ、こういう点で指摘をしているというような点なども、これは全く先ほどの考えと共通した言語道断な考えだと思う。こういう考え方を、常務は単に若干逸脱をしているという程度に解釈をしておるわけですか。
  131. 山口茂夫

    ○山口説明員 こういう資料ができました背景でございますが、本年の安保問題を前にいたしまして、組合側、特に総評系の組合側ではかなり気負った姿勢が見えました。安保闘争ということばでかなり前広に組織の強化、戦術の展開等をいたしております。したがいまして現場の輸送の責任者といたしましては、そういう闘争、ちょうど十年前の安保の時点では、相当列車のダイヤが乱れました。そういう被害をできるだけ少なくするという心情が働いておったものと思います。そういうことで、鉄道の中で輸送の仕事ばかりやっております者は、とかく世の中のことがわかりませんので、現場長あたりから管理部門にはいろいろ質問がくるというようなことで、労働課員の中の一部の者が各種セミナーその他で勉強してまいりましたことをガリ版にして紹介したということでございます。したがいまして、平時にそういうような教育なり指導をしているということではなくて、背景にあったそういう異常な状態を前提に書かれた、かように存じます。
  132. 西宮弘

    西宮委員 国鉄を経営する経営者の側では、いま常務の言った列車の乱れがあった六〇年時代にはそれを極力避けたい、これは経営者の頭では当然な考えだ、だからそのためのいろいろな措置を講ずるということはけっこうだと思うのですよ。しかしそれと安保そのものの解釈なり態度なりそういうものを完全に混同しているということは、これは絶対に私は許すことができないと思うのだ。  この問題だけであまり時間をとってしまうわけにはいかないので先へ進みたいと思うけれども、このPR誌はたとえば自民党に対しても不満なわけです。「自民党の安全保障構想として、自衛隊の評価という点に欠けているのはもの足りないだけでなく、すくなくとも建設的ではない。まづ自主防衛力の強化という見地から、自衛隊の整備についてももっと積極的に取り組むべきであろう。」こういうことなどは全くの軍国主義的な——これは新聞論調でも何でもないのですよ。つまり自分の影響下にある職員たちにこういう考えを持たせよう、こういうことで主張しているわけですよ。あるいは、別な場所を読み上げてみましょう。「問題は社会党の非武装中立論である。」「我々は空論といわざるを得ない。」「責任ある政党の現実政策としては全く評価に値しない。」あるいはまた「安保条約はわが国の平和と繁栄に高く寄与し」云々というようなこと、あるいは自衛隊の問題を強調するとか、そういうことが、いまの常務の言うところの列車の乱れをできるだけ少なくしようというのと何のかかわり合いがあるのだろうか。
  133. 山口茂夫

    ○山口説明員 お説のとおり、直接の関係はございません。ただ安保問題の時期に大きな争議行為が行なわれるという計画は、むしろ労働組合側で立てたスケジュールでございます。それに対しまして自衛上いろいろな教育を現場長にするのはやはり当局側の責任かと思います。ただ、配りました資料は全職員に配ったものではございませんで、こういうむずかしい問題を組合の末端の役員等から議論をしかけられますと現場長等は当惑をいたしますので、そういう者に対していろいろな方の御意見を紹介するという、現場長用の資料でございます。
  134. 西宮弘

    西宮委員 私は、確かにストライキとかそういうものは組合で立てたスケジュールだと思う。だからできるだけそれに対応する、そういうストが起こらないようにそういう措置を講じようというのは経営者としては当然ですよ。しかし、いまここで言っていることは、たとえば安保条約の問題の解釈であるとか、あるいはさらに、もっと自衛隊を強化しろとか、そういうことは列車の乱れをなくそう、つまり言いかえればストを回避させようというようなこととは何の関係もないことですよ。これは明らかにいま、これは関係はありませんということを常務が言ったから、その点はさらに追及する必要はないと思う。関係がないならば、そういうやり方をしてきたところの仙鉄の労働課に対して、単にだれか呼んで注意をしたという程度では私はこの問題は済まないと思う。一体、労働課の分掌事務というのはどういうことになっておりますか。
  135. 山口茂夫

    ○山口説明員 主として労働組合の対応機関として団体交渉その他を行なうのが主たる役でございます。そのほかに、職員の生計調査でございますとか、あるいは労働関係法規の指導等をやっております。
  136. 西宮弘

    西宮委員 国鉄本社の職員局の所管事項として、次の五項目が掲げられておる。これと全く同じ性格のものだと思う。つまり職員局の下部機構としておそらく同じことを言っているのだろうと思う。職員の労働条件及び労働組合に関すること、職員の需給及び定員に関すること、職員の職制、職階及び職務に関すること、職員の給与制度に関すること、職員の能力開発に関すること、以上が本社の職員局の所管事項なんですよ。おそらく末端の労働課も同じ任務を持っているのだろうと思う。こういう点から見ても、さっきのように安保問題を論じたりあるいは自衛隊の強化を指導したり、そういうことはどこにも一つも該当しないと思うのだね。だからそういう逸脱行為をやって、しかもそれは政治の中立を侵している、こういう場合にとるべき態度として、若干逸脱をしているという点について単に注意をしたという程度で済まされる問題かどうか。私はこの点はさらに別な機会に、総裁等に厳重にこの問題についての考え方をお聞きしたいと思う。したがって常務理事としては、単に代表者を呼んで話をしたというようなことでこの問題はケリがついたんだというふうに考えられてはまことに困る。これは部内で十分検討してもらいたいと思います。私は冒頭労働省の所見も聞いたわけですが、経営者、管理者の立場としては、あくまでも政治的には中立でなければならぬ。職員に影響力を及ぼすというそういう面については、それを厳重に守らなければならぬという大方針を、これは山口常務もその点を承認をしたわけですから、認めたわけですから、ぜひそのことを堅持をして、したがって過去に行なわれたこういう問題について厳重な処分をしてもらいたい。その結果について、あとで別な機会にお尋ねをします。  次は、公労委等でも問題になっている点でありますが、戸別訪問、家庭訪問が非常に多いという点です。これは私がほんの一部だけ紹介しても、たとえばこれは公労委に対して国鉄総裁から出した答弁書です。長町機関区佐藤正治助役が佐々木良春宅を訪問した事実は認め、その次、会津若松運転区の管理者が職員の自宅を訪問した事実は認め、次、長町機関区渡辺助役が昭和四十四年五月中旬ごろ職員の自宅を訪問した事実は認め、次、陸羽東石巻線管理所の管理者が、昭和四十四年五月ごろ同所職員の自宅を訪問した事実は認め、次、陸石管理所の管理者が、昭和四十四年十月以降職員の自宅を訪問した事実は認め、次、福島機関区管理者が職員の自宅を訪問した事実は認め、次、会津若松運転区池田指導機関士が、高木俊広の自宅を訪問した事実は認め、次、会津若松運転区清水助役が、昭和四十四年七月ごろ、川又喜一の自宅を訪問した事実は認め、次、長町機関区遠藤首席助役、高橋、針生、中目各助役が昭和四十四年五月中旬ごろ職員の自宅を訪問した事実は認め、次、長町機関区針生助役が昭和四十四年十月下旬、鹿又明の自宅を訪問した事実は認め、次、長町機関区中目指導助役及び鈴木管理助役が、高橋嘉の自宅を訪問した事実は認め、——こういうのを一々読んでいると夜が明けてしまうのでこの程度にしますけれども、これは公労委に国鉄総裁から出した答弁書ですよ。だから自宅を訪問したという事実そのものは全部認めているわけです。なぜこのように労働者の自宅を訪問しなければならないのか、まずお聞きします。
  137. 山口茂夫

    ○山口説明員 自宅訪問、これもいろいろ見方はあると思いますが、いま御指摘のありましたものは、仙台の局で三ない運動というのをやっておりました。一つは傷害事故を起こさぬ、二つは運転事故を起こさぬ、三番目は違法な闘争には参加しない、これを自宅訪問等によって徹底さしていくということでございます。
  138. 西宮弘

    西宮委員 そういう三ない運動をやるためには、家庭へ行かなければ、傷害事故を減らしたり運転事故を減らしたり、違法な闘争に参加しないということも話ができないのですか。
  139. 山口茂夫

    ○山口説明員 これが唯一の手段とは思いませんが、実は仙台の局の隣に盛岡鉄道管理局というのがございます。雪国でございますので、屋外の労働等はかなり危険を伴いまして、傷害事故が非常に多かった経歴がございます。そこで、傷害事故を起こさないという運動を始めまして、非常な実績をあげたわけでございます。すでに安全関係で労働大臣の表彰もいただくほど成績をあげた。その成績があがりました手段の一つに、家族ぐるみで安全に注意をしようという運動が非常に効果があったという事実がございます。したがいまして、この三ない運動と称しております運動を始めるにあたりまして、一つの手段として家庭訪問を取り上げたということでございます。
  140. 西宮弘

    西宮委員 家族ぐるみ運動ということを言われたけれども、そうすると、訪問する場合の相手は家族なんですか。
  141. 山口茂夫

    ○山口説明員 職員も含めて家族の協力を求めるということでございます。
  142. 西宮弘

    西宮委員 家族は、別に国鉄から給料をもらっているわけでもないし、そういう管理者が来るのを迎えてつき合いをしなければならぬということがわれわれにはわからないんだ。もしかりに家族の協力を求めるというのであれば、家族を招待して、家族会のようなものでも開いて、その席上でいわゆる三ない運動の趣旨を徹底するというようなこともあり得ると思う。なぜ一軒一軒たずねて歩かなければならぬのか。これは家族にとってはまことに迷惑千万な話だと思う。なぜそうせざるを得ないのですか。
  143. 山口茂夫

    ○山口説明員 管内の職員の家族、家庭全部訪問するということではございません。もちろん何らかの個人的なつながりあるいは家族的なつき合い、そういうものを前提にいたしましての家庭訪問が主でございます。ただ職制上同じ立場にいるということでついでに寄るというような場合もあろうかと思いますが、本来大部分はそういう個人的なつき合いがあるところを訪問するということでございます。
  144. 西宮弘

    西宮委員 家族全部ではないということは、なるほど私も承認します。なぜならば、その点は公労委で証言をしていますから。これは福島機関区長が公労委で証言をしています。訪問する先は、行かないのは鉄労それから動労の役員、活動家、これはほとんど行かないということを言っているわけですね。なるほどそれを見ると全部に行っていないということは明らかなんだけれども、この機関区長がくしくも言っているように、鉄労やそれから動労の役員、活動家、こういう人には行かないのだ、これはどういうわけなんですか。
  145. 山口茂夫

    ○山口説明員 先ほど申し上げましたように、三ない運動の三番目に違法な闘争には参加しないという項目がございます。同盟系の鉄道労働組合はスト計画を立てておりませんので、三番目の項目で家庭訪問をする必要はないということでございます。
  146. 西宮弘

    西宮委員 しかし少なくとも三ない運動というならば、傷害事故と運転事故、この点については家族の協力も必要だろうと思う。なぜ鉄労は行かなくても、あるいはその二点については要求しなくてもいいわけですか。
  147. 山口茂夫

    ○山口説明員 三つの項目がございますが、その時期によりましてウエートは違うと思います。一昨年から昨年、ことしの春にかけまして動力車労働組合とは特に乗務員の員数、一人乗務、二人乗務というような問題をめぐりまして中央で大きな労使間の対立がございました。これが地方にも広がりまして、非常に労働関係が不安定な状態、これが続きました。したがいまして三番目の項目に重点が置かれて動力車労働組合の家族宅を訪問する機会が多かったということかと思います。
  148. 西宮弘

    西宮委員 私はそんなことではないと思う。もしそういうことならば、いわゆる三ない運動の三つはどれに重点があるかということになったらば、私は三つともみんな大事だということは言えると思うのだけれども、第一、第二の、傷害事故を起こさない、これは人身傷害ですからね。そういう事故を起こさない。これは国鉄の最大の願いだと思うのですね。あるいは最大の任務だと思うのですね。運転事故を起こさない。これだっていやしくも国鉄としてはまさに重大事項中の重大な問題だと思うのですね。単に三つ並べたけれども、実はその三番目だけが問題なんだということで特定な労働者だけを訪問する、こういうことは私は実に問題だと思うのだね。その三ない運動と称し、盛岡ではそれをやったためにたいへん効果があがって表彰まで受けたということをさっき強調されたのだけれども、第一、第二は第三に比べてたいした問題ではない、こういうわけですか。
  149. 山口茂夫

    ○山口説明員 三つ申し上げましたが、その時期によってウエートは違うと思います。第一、第二はこれは常にある問題でございます。第三の違法な闘争に参加しないというのは、違法な闘争が計画された時点だけの問題でございます。
  150. 西宮弘

    西宮委員 私は先ほど福島の機関区長の証言を引き合いに出したのだけれども、この人は何も特定な場合にはこういうところだけしか行かないということを言っているわけじゃないのですよ。全体を通じて、今日まで家庭訪問を行なっているのは、いわゆる動労の組合員だということを裏返しにして言っている。だから何もそういうストを目前に控えて、そういうときだけこういう態度をとっているということを言っているわけではない。全体を通じてこういうことだ。  それじゃ常務にお願いをしておきますが、この家庭訪問の行なわれた事実について一覧表を出してもらいたいと思います。これは日本じゅう全部というわけにもいかぬでしょうから、この間われわれ社会党が調査をしてきたのは郡山、福島、それから長町、仙台、小牛田、こういうところでしたから、ここだけでもいいと思う。それから時点は昭和四十三年の九月から今日までのちょうど過去二年間、家庭訪問の行なわれた事実。これはあれでしょうな、常務、当然管理者としてこういうことをやっているわけですから、これはちゃんと出張命令をもらって出るわけでしょうね。
  151. 山口茂夫

    ○山口説明員 御要求のございました資料は四十三年の九月からということでございますが、四つの動力車区すべての家庭訪問についての記録はおそらくないと思います。全般的な、どういうことをやったというような抽象的なものでしたらばいまから取り調べることもできると思いますが、二年間の過去すべての家庭訪問をリストアップすることは不可能だと思います。
  152. 西宮弘

    西宮委員 だからお尋ねしたのだけれども、その家庭訪問に行くということは、ちゃんと公務で行くのですか。出張命令はもちろん出ているのでしょう。
  153. 山口茂夫

    ○山口説明員 これは個々のケースによって違うかと思いますが、一般的には出張命令その他は出ておらない。管理職につきましてはオーバータイムがございませんので、これは管理者として手弁当でやっているということになろうかと思います。違う例があるかもしれませんが、一般論としてはそういうたてまえでございます。
  154. 西宮弘

    西宮委員 それじゃ要するに、管理者とはいいながらその方は直属上司がいるわけですよ。そういうところからは何の指示、命令も受けないで、ただみんな自由かってに、でたらめにというと語弊があるかもしれないけれども、ただ思いつきでぶらぶら歩いているわけですか。
  155. 山口茂夫

    ○山口説明員 思いつきでぶらぶら歩いているわけではございませんで、先ほど申し上げましたような三つの柱を中心に、現場長は現場長なりに一生懸命職員と話をしている、あるいは職員の家族と話をしているというぐあいに理解をしております。
  156. 西宮弘

    西宮委員 いや、だからその目的はわかるのだけれども、そういうために行くのは、その現場長の上にさらに上司がいるわけでしょう。だからそういう人の指揮を仰ぐとか、あるいはそういう人の命令によって動くとか、そういうことは全くないわけですか。つまり現場長だけが——現場長というか何というか知らないが、そういう管理者だけがみんなかってに自由に出歩いておるのかということです。
  157. 山口茂夫

    ○山口説明員 これは命令とかそういう組織立ったものではなくて、現場長の自発的な行為といいますか、判断によって行なわれているのが通常でございます。したがいまして、現場によっては家庭訪問にウエートを置かないところもございますし、家庭訪問を非常に有効な手段と信じて、家庭訪問を行なう現場長もある、おのずから濃淡の差はございます。
  158. 西宮弘

    西宮委員 職場によって家庭訪問を重要な方法だと考えているところとしからざるところがあるならば、さっき一番初めに私が読んだ、つまり公労委に対する答弁書の中から拾ったわけだけれども、ああいうところではきわめて組織的に行なわれているわけですよ。だからこれはだれかがそういう判断をして、それに従って命令をしているという人がいると思うんだ。つまりある地方では——どこか私にはわかりませんけれども、たとえば関東なら関東、そっちのほうは家庭訪問はきっぱりやっていない、ところ東北方面では盛んにやっているんだということであるとすれば、それはやはりだれかキャップになっている人がそういう判断をしているんだと思う。それでも上部との関係は全くないですか。
  159. 山口茂夫

    ○山口説明員 家庭的なつき合いといいますか、単に職場上のつながりだけで家庭訪問が行なわれるわけではなくて、やはり基盤には家庭的なつき合いというような背景が必要だと思います。したがいまして、都会におきましてはわりあいに少なくて、地方では多いというのが現実の姿かと思います。  なお家庭訪問につきましては、特に乗務員関係につきましては、昔からこういう管理方式が国鉄の中では定着をいたしております。と申しますのは、乗務員は列車に乗りまして運転をする者あるいは列車乗務車掌として乗る者とございますが、何か都合の悪い場合にはかわりの者が乗らなければならない。その予備員は二つに分かれておりまして、日勤予備というもの、これはつとめ先の機関に出勤をいたしまして待機をする組でございます。それ以外にもう一つ、安全サイドをとりまして在宅予備という制度がございます。これは家庭で待機している時間の一部を指定いたしまして、何時から何時まではあなたは自宅で待機をしてもらいたい、連絡があった場合にはすぐ応援にかけつけてもらいたい。これは昔からある勤務制度でございまして、労働協約も結んでございまして、勤務時間に算入されることになっている、少しの換算はございますが、一種の勤務時間とみなされる時間ということになっております。そういうことから、乗務員関係につきましては家庭訪問ということは昔から定着しておるわけでございます。
  160. 西宮弘

    西宮委員 私はいわゆる家庭的なつき合いで行っているなんというものじゃないと思うんだ。それならばそういう時刻に行くなり——あるいはそれぞれ家庭的なつき合いのある人ももちろんありましょう。ありましょうけれども、いまあんなに大量に行なわれている家庭訪問は、決してそんな筋合いじゃないですよ。たとえば一例だけを申し上げますけれども、これも公労委で証言をしていますから、その点だけ申し上げるんだけれども、小牛田機関区につとめておる人のところだ。この人は実は加美郡の下田賀というところ、そこの中山というところから通っている。したがってこの人は朝六時半に起きなければ小牛田までは出勤できない、そういう人なんですよ。その人のところへ千石という助役が訪ねてきた。八時に訪ねてきて十一時四十五分までいるわけです。ただ、公労委の証言では十一時四十五分とは言っていない。十時過ぎまでいたと言っている。その間に五回ほど本人のほうから帰ってくれ、もう引き揚げてくれということを言っているわけです。ところが帰らないで、この本人のほうから言わせると十一時四十五分まで、それからその助役に言わせると十時過ぎまでおった。本人のほうでは迷惑だから帰ってくれと言ったのを、帰らずがんばっている。そういうことを個人的なつき合いだというようなことで済ませられるでしょうか。私は目的は全然違うと思う。さっきから三ない運動だとかいろいろなていさいのいいことを言っているけれども、目的はこれは完全に違うんですよ。要するに動労から脱退をしろ、こういうことを言っている。実は私の持ち時間が少なくなってきたので、あまり一つ一つ具体的に詰めることができなくなったので私のほうから若干紹介をしますけれども、これは現実は目的はあくまでもそこにあるのだ。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕 だから、それが不当労働行為に該当するかどうかということは公労委の判断ですから、法律的な見解は私はここでは聞きません。しかし、たとえば動力車労働組合から、昇給しないという場合には補償される。そういうことについては、補償はいつまで続くかわからない、動力車がつぶれたら損をするのは本人だと言ったり、あるいは動力車の中の何がし何がしというので五人ばかりの名前をあげて、これも脱退する、そうなったら君もきびしいだろう。あるいは、非常に言い方が巧妙だと思うのだけれども、そろそろ行ったらどうかとか、あるいは、いまがチャンスだとか、あるいは身の振り方を考えろとか、あるいはこの辺でふん切りをつけたらどうだとか、みんなそういうことばで言っているのです。だからなかなかしっぽをつかませないような言い方をしているけれども、要するにここでふん切りをつけろとか、いまがチャンスだとか、あるいはそろそろ行ったらどうだとか、その他等々が、これはいずれも動労をまあやめなさい、そして他の組合に行きなさいと、こういうことを言っているわけですよ。だからねらいはあくまでもそこにあるので、常務はたいへんでいさいのいい、三ない運動の趣旨を徹底させるんだなんということを言っているけれども、そんなこととはおよそ無縁なことだということを常務もぜひ理解してもらいたい。ぜひその点はしてもらいたい。  しかもこの問題は、非常に調査が困難な問題です。なぜならば、たった二人だけで話をしている場合が多い。そしてそういう人の話を聞いてみると、二人だけの話なんだからこれは外部に漏れるはずはない。つまりたとえば動労をやめなさい、そういうことを言っても、これはたった二人だけの話なんだから外に漏れるはずはない、もしこれが外に漏れたとすれば、それはもう君が話したのだ、そういうことになった場合のその結果は十分わかっているだろうなと、こういうようなことでおどかしているわけです。これはほとんどあらゆる場合にといってもいいと思うのだけど、こういうようなおどかしをかけて組合脱退を迫っている。こういうことが事実なんですよ。まあそういうことを言っても、常務はまさにそのとおりですというような答弁はしないと思いますから、私はこれに対する答弁を要求してもむだだと思います。  そこで私は、国鉄管理者の立場でこういうことはぜひとも考えてもらいたいと思うのは、私はそういうようなやり方で脱退を求めていくというようなことが、大きな立場から見て、高い立場から見て、国鉄の経営に非常な危険があるのではないかと思うんです。なぜならば、どうしてもそういうことになると、いろんなことで職員を甘やかすことになるわけです。つまりえてしてそういう際に家庭訪問を受けたりあるいはどこかに呼び出されて交渉を受けたり、一ぱい飲まされたりというような人は、何かこっちに弱点がある人が多いわけですよ。たとえば業務上の問題で何か間違いがあったとか、あるいはたとえば私生活において酒を飲んで失敗したとか、借金が多くなり過ぎたとかいう問題があるとか、あるいはまた、試験を受けてもなかなか試験にパスしないで困っている、したがって昇進もできないで困っている、こういうような人がねらわれるわけですよ。これはいままで家庭訪問を受けたのをあなたのほうで見たらその点はよくわかると思う。そういう人がねらわれる。そして、おれの言うことを聞けばその点は大目に見てやるとか、いろいろそういうことが当然話し合いの中では出てくるわけです。それは常識的に想像したってその点は明瞭だと思う。だから、そういうことになれば、将来長い目で見て国鉄の運営を誤まらせる重大な結果になると思うのですよ。そういう点、あくまでもきびしく追及しなければならぬ問題が見のがされて、そして逆に、そういう人が今度は昇進をしたり昇給をしたりする、こういうことになっていくことは国鉄の経営に重大な問題があると思う。この点は常務の見解を聞いて、さらに運輸省の代表者がいるはずですから運輸省の見解を聞きたいと思います。
  161. 山口茂夫

    ○山口説明員 いまお話のございました労働組合に対する不当労働行為の問題ですが、これは、私どもといたしましては、そういう不当労働行為は行なわれていないというぐあいに考えております。  それからなお、現実には仙台地方では同盟系の組合と総評系の組合はほぼ拮抗した数字になっておりまして、組合員の獲得の組合同士の争いはかなり強いものがございます。ただ、そういうものに当局側、職制側が介入することは厳に戒めております。  また、仕事上の誤り等を何か見のがすというようなことで誘導をするというようなお話がございましたが、これは全くそういうことはございませんで、仕事上の間違いは仕事上の間違い、組合間の所属の問題は所属の問題、全く別のものだと思います。  また、御注意もございましたように、団体的な労働関係は小刀細工的なことは長続きするものではないと信じております。
  162. 西宮弘

    西宮委員 私は、組合同士が争うというのならばそれはいいと思うのですよ。あるいはそれは当然だと思うのですよ。そうじゃなしに、それに管理者が一枚加わっているというところに問題があるわけですよ。だから私は、さっき安全運転という立場からもいろんな問題を指摘をしたけれども、それがために職員立場に立ってみれば、これは実に心理的に苦労するだろうと思うんだね。組合同士が争っているのならば、職員は別に何の動揺も感じないと思う。何の不安も感じないと思う。ところが、職制が一枚加わって、脱退をしなさい、しかもそれは、その点をさっき私も言ったように、脱退をしろというようなことを露骨に言わない場合が多い。ここでふん切りをつけろとかその他等々、さっき私が言ったようなそういう言い方で暗示をするわけですよ。しかし、その暗示を受けた人たちは、それはもう当然に何を意味しているか、ばかでない限りわかるわけです。そうとわかったときに、たとえば組合に対しても義理がある、あるいは自分の上司であるところの職制に対しても義理がある、一体どっちにしたらいいかということでその判断に迷って、そのために苦労するというようなケースがすこぶる多いと思う。だから私は、そのことが安全運転を願うところの国鉄の経営にとって重大なる影響があるということを見のがすわけにはいかないと思う。私はその問題こそが最も重大な問題だと思う。  それと、若干角度が違いますけれども、たとえば私はこの問題をひとつ御紹介しておきたいと思うのです。これはやはり小牛田の事件ですけれども、機関士の鑑練二君という人が乗務をしようとする直前に、彼は当時ワッペンをつけておったわけですよ。助士廃止反対、国鉄の安全確保、こういうワッペンをつけておったわけです。そうしたらば、そういうものをつけておるのは悪いからそれをはずしなさいということを言われたわけです。これもやはり公労委の証言からとったわけです。そのときの鈴木重義という車両課長です。この人がそれをはずしなさいということを言った。そうしたらこの鑑君は、これは安全確保のためだと言ったらば、それは組合から言われてつけているのだろうから、それでは君の組合から給料をもらえということを言われた。それで彼は精神的に非常に苦悩をして、帰ってきて組合にやってきて、非常に精神的な動揺を感じながら一運転つとめてきました、そういうことを言って報告に来たという話なんだけれども、私は、こういうことは、しかも乗務の直前に、発車の直前にそういうことをするということは、かえって大きな危険だと思うのです。安全運転に大きくそむく問題だと思う。あるいはさっき申し上げたように、夜の夜中に、十二時近くまでがんばっているなどということは、これはまさしく勤務に重大なる支障を来たすと思うのです。安全運転に完全に逆行すると思う。  あるいは、もう一つだけ紹介しておきたいと思いますが、この人はもともと少しからだが弱くて、本線乗務から外勤へ担務の分担がえをされたわけですよ。そうしたらば、おまえは動労を抜けないともとの本線乗務に戻すぞと言われたわけです。それで彼は非常に心配をしながらうちへ帰ってきた。四十五年の四月十三日でありますが、朝勤務が終わって帰宅をして休養をして床についたのは午前十時、そうしたら十一時には助役と指導助役と管理助役の三人がたずねてきて、眠っているのを起こして、一枚の紙で中にミシンが入っていて、一枚切ると動労の脱退届け、二枚目には鉄労の入会申し込み、三枚目には管理者に対する通知というようなことを印刷してありますね、あれを持ってきて、これに判を押せということで迫った。それで本人も、非常に疲れておることでもあるしするからそれで押した。ところがあとでそれは悪かった、間違いだったということを感じて、脱退届けを撤回した、こういう事実があるのです。だから、こういうやり方は、いやしくも国鉄の安全運転を願う立場からいうと全く逆行していると思うのだ。私は、もう時間がないからやめますが、言いたいことは、そういうことが職員に心理的な動揺を与えて、それこそが大きく安全を脅かしている最も重大な問題だということを十分に銘記をしてもらわなければならぬと思います。見解だけお聞きします。  その前に、さっきの運輸省の側から……。
  163. 秋富公正

    秋富説明員 運輸省といたしましては、従前から国鉄労使間の具体的な問題には直接は介入しないというたてまえをとっておりますことは、先生も御承知のとおりと存じます。ただ、国鉄が御承知のようにいまきわめて財政的に危機に立ち至っておりまして、来年度予算問題についてもわれわれ真剣に考えておるわけでございますが、国鉄の財政を再建してそのになっておる公共的使命を完遂するために、労使間におきまして正常な慣行が確立しまして、職員が一体となってこの危機を脱し、再建し、国鉄の使命を遂行するように国鉄当局のほうにも指導していっているという状態でございます。
  164. 西宮弘

    西宮委員 もちろん、労使間の個々の問題に運輸省が介入するというようなことは許されないと思う。しかし、いま私が取り上げておった問題は、運輸省のあなたも聞いておったと思うのです。それで私はお聞きをしたいと思うのだけれども、どちらを選ぶか、たとえばさっき安保の問題だとかそういう問題で仙鉄の労働課が盛んにPRをしているのだけれども、安保には賛成だ、政府の政策にはあくまでも賛成だ、しかしいろいろな欠格条項がある——そんなものはないと言われるかもしれないけれども、現実にはそういう人がねらわれているわけですよ。何か業務上のミスがあったとか、あるいは学科試験を受けたけれどもさっぱり合格しないとか、あるいは借金がかさんで困っているとか、そういう人がねらわれているわけですよ。しかもそういう人は、管理者の言うとおりにすれば昇進をしたり見のがされたりしている。安保には賛成だ、しかし勤務成績からいえばそういう人であるというような人がいいのか、あるいは、それとも安保には反対だ、安保には反対だけれども勤務成績はりっぱだ——これもいまの仙鉄の労働課で出した資料に書いてあります。彼らは模範的な労働者で、上司や同僚の信頼も厚い。しかしこれこれだから警戒しろというような意味を書いでおる。しかし私は、そういう、安保には反対かもしれないが、そういう勤務成績で、上司なり同僚なりからも信頼されるという人のほうが実はより必要なのじゃないかと思う。その点について国鉄を監督する立場にある運輸省としては、将来どういう人を養成されるほうが望ましいと考えておるか、お聞きしたいと思います。
  165. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際西宮君に申し上げますけれども、時間がだいぶん超過いたしておりますのでそろそろ……。
  166. 西宮弘

    西宮委員 その答弁を聞いて、あと要求だけで……。
  167. 秋富公正

    秋富説明員 私、先ほどから承っておりましたが、これは本日全く初めて私といたしましては承ったことでございまして、仙鉄の労働課の問題も初めていま伺ったわけでございます。また、いま先生のおっしゃいましたような思想的な批判問題とかあるいはそういった動きということのいずれをとるかという問題、これも実際個々のケースを見ませんと、私ども直接国鉄の個々の職員の問題についてはタッチいたしておりませんので、直接どうこうというあれもございませんが、この点先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、やはり国鉄のになう公共的使命をりっぱに果たしていただくように国鉄の職員の方にお願いするという点で指導していきたい、こう思っております。
  168. 西宮弘

    西宮委員 時間がありませんから、最後に資料の要求だけしておきます。  山口常務にお願いしますが、仙鉄で出している労務管理資料ですね。私はナンバー八四というのをもらっておりますけれども、それ以前のナンバー一から八三まで、あるいはさらにその後継続して出しているのならばそれももらいたい。  それから七〇年の問題集は、私は二、四、五と持っていますけれども、それ以外のものをもらいたい。  それから労務管理必携ですね、これは参議院の松井委員の要求に基づいて参議院のほうに出したのがあります。しかしこれは管内が、所管が違うので、仙鉄局で出したものをもらいたいと思います。ただし、いま私が言ったような各種の資料が、もし余部がないならば貸してもらってもけっこうです。当然だれかが持っているに違いないんだから、それは貸してもらいたいと思います。  それからその次には、さっき私が途中で質問をした家庭訪問の実情ですが、これは私は、いやしくも国鉄の管理者の立場にある者が、みんな自由かってに、ただ思いつきでふらふら歩いているというようなことは想像できないので、さっきも言ったように、仙台の管内において特に多いというならば、それは仙台のだれかがそういう判断をしてそれをやらしているに違いない。したがって、そういうことならば、当然にそれに応ずる記録があるはずだと思う。それをできるだけ詳細に具体的に調べて出してもらいたいと思います。これはさっき途中で要求したとおりです。  以上、お願いします。
  169. 山口茂夫

    ○山口説明員 御要求のございました資料のうち、労務管理必携でございますが、これは昭和四十年ごろつくったもので、その後仙鉄局ではつくっておりません。現場長の数だけつくったものでございますので、提出は——大体大同小異でございますので、最近できましたほかの局ので代用さしていただきたいと思いますが、それでいかがでございましょう。
  170. 西宮弘

    西宮委員 だから、貸してもらってけっこうですから、仙鉄のやつをぜひ。あとで返しますから。
  171. 山口茂夫

    ○山口説明員 それでは確かに調製いたします。  なお、家庭訪問の全体についてというお話でございますが、家庭訪問の実情等は御報告できるかと思いますが、全数をリストアップすることは不可能と思いますので、御容赦を願いたいと思います。
  172. 西宮弘

    西宮委員 あとで、それは見せてもらって、その上で私の意見を言います。
  173. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 大橋敏雄君。
  174. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、新規中学校、高等学校卒業者についての労働力の需給状況はどうなっているかという問題について若干質問をしたいと思っおります。実は先月のことですけれども、たまたま社労の理事の皆さまと一緒に、ジュネーブのILOの国際事務局で、ILOの事務局長代理という人といろいろと懇談する機会を得たわけでございますが、その事務局長代理がお話ししていた中に、日本の経済成長の驚異的な姿には感心している、またいろいろとその問題について研究もしているけれども、問題は、経済成長がそのまま雇用の増大あるいは安定というものに直結していない、むしろ潜在失業者といいますか、そういうものが著しく増大しているところが世界的な課題になっているというようなお話があったわけでございますが、わが国も最近、労働力不足の問題が経済成長の阻害要因として取り上げられ、また求人競争も激化の一途をたどっているわけでございますけれども、金の卵といわれますいわゆる新規中学校あるいは高等学校卒業者の労働力需給状況が今日どのようになっているものなのか、また、今後の見通しをどう立てられているのか、そういう点についてお答え願いたいと思います。
  175. 住榮作

    住説明員 御指摘のとおり中学あるいは高校を卒業して就職をする、こういう方々の数というのが昭和四十一年の百五十万をピークにいたしまして、逐年減少をしてまいっております。特に最近の需給状況について申し上げますと、たとえば中学卒について申し上げますと、一人の求職に対して何人求人があったか、こういうことでございますが、昨年度は中学については四・八倍でございましたが、ことしの三月卒業者につきましては五・七六倍、こういう状況でございます。高校卒につきましても同様な状況でございまして、昨年度は五・七倍の求人、本年度は七・〇六倍の求人、こういうように逐年求人倍率が高まってきております。と同時に、求人の充足率も、たとえば中学卒においては一七・二%、高校につきましては一四%、まあ五分の一も満たしていない、こういうような状況になっております。  そこで、今後の状況でございますが、先ほども申し上げましたように、昭和四十一年をピークにいたしまして毎年毎年下がってきまして、たとえば昭和五十年には、中卒、高卒の就職予定者というのは大体百十四万程度になるのではないだろうか、こういうような推計でございます。この若年労働者をめぐる需給情勢というものは逐年逼迫してくる、こういうように考えております。
  176. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまこまごまと説明がございましたが、私の手元にもその資料があるわけでございますけれども、中学卒求人倍率が四十四年では四・八倍であった。それが今度の四十五年では約五・八倍になった。高卒のほうも五・七から七・一に求人倍率はぐんぐんとふえている。その割りに充足率のほうはといえば、いまおっしゃいましたように、中学卒を見ても四十四年の一九・三が一七・二とまた下がっていっているわけですね。それはこの一、二年を見るだけでなくて、ここ数年間を見通してもものすごい低下になるわけですね。  きょう実は労働大臣がいらっしゃらないので局長のほうからしかと伝えてもらいたいわけですが、日本の経済成長と直結している大事な若年労働力の問題なんですが、それについてどの程度の認識のもとに対策を進めようとなさっているのか。ほんとうにこれは問題だと思うわけです。そういう点を局長のほうから十分具申して、本気になってこの対策に当たってもらいたい。  次にお尋ねしたいことは、求人の倍率がいま言ったようにぐんぐん上昇している。そういうことになれば、卒業する中学生あるいは高校生は、自分の好きな職業を自由に選択できるわけですね。にもかかわらず、最近、就職した人たちが間もなく離職していく、あるいは職を変わっていく。つまり早期に離職あるいは転職をしていく人が多いと聞いているわけでございますが、その状況は一体どういうふうになっているのか、またその理由はどういうわけなのか、説明願いたいと思います。
  177. 住榮作

    住説明員 御指摘のように、中学、高校を卒業して就職しても非常に定着が悪い、こういうような状況になっております。私どものほうで昨年調査をしたものがございます。たとえば四十一年三月、中学、高校をそれぞれ卒業いたしまして就職した者が一年間、あるいは二年間、あるいは三年目にどういうようになっておるかという調査がございますが、それによりますと、たとえば四十一年三月卒の中学卒につきますと、一年たって離職した者が約四分の一弱の二三・四%、二年後に離職していた者が一七・五%、三年後につきましては一二・六%、それで三年間で五三・五%の者が離職をしておる。それから高校につきましても同様でございまして、一年後に二五・七%、二年後に一五・八%、三年後に一一・五%、その離職率は減ってはきておりますが、合わせますとやはり五三%程度の者が離職をしておるという状況でございます。  その原因と申しますか、背景と申しますか、それについて一体何かということを考えてみますと、労働力需給の非常な逼迫に伴いまして雇用機会がふえたということで、職業の選択なりあるいは離職というのが安易に行なわれているんじゃなかろうか。こういうような点。あるいは、たとえばいまの離職率を規模別に見てみますと、やはり大企業に比べて中小零細企業の離職率が非常に高いのでございますが、そういうことから企業側の受け入れ体制が十分であるのかどうか、こういうところに問題点があるんじゃないだろうか。と同時に、こういう学卒者の紹介に当たる安定所あるいは学校において職業指導なり職業相談というものがはたして十分に行なわれていたかどうか、こういうことについても深く反省をする点があるというように考えておるわけでございます。
  178. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、先ほども言いましたように、金の卵といわれるような中卒あるいは高卒の皆さんが、やっと就職しで、いまの御説明では、三年たつうちにはもう半分以上が離職したりあるいは転職したりしている。そのいろいろな事情の説明はありましたけれども、非常に理解に苦しむといいますか、納得いかない心境でございます。もっと労働省としてこうした労働行政に対する的確な指導があれば、このような姿にはならないで、もっと定着し、安定した姿で働くことができるのではないか。そういう点、非常に懸念するわけでございます。  実は前原労働大臣のときにも、私は青田刈りの件についていろいろと質問したわけでございますが、この青田刈り自身が非常に問題をかかえているわけですね。そのときの大臣答弁は、おっしゃるとおりこれは重大な問題でございますので、さっそく内容を検討し、閣議でその問題を取り上げ、そして何とか手を打ちますということであったわけです。さっそくそのように実行なされたようでありますけれども、いまの資料あるいは計数から見ていきますと、効果のほうはあまり出ていないんじゃないか。まだ一年、二年の内容でございますので、顕著な効果というものが資料としてあらわれていないのかもしれませんけれども、こういう点はもう一回真剣に、そして具体的に、先ほど答弁なさっていたような問題点をきめこまかく分析し、推進していってもらいたい、そういうことで私もそれなりに感ずるわけでございますが、一たん就職してもその職に定着できない、あるいは安定できないという一つ原因として、やはり就労するときの精神教育といいますか、そういう面も欠けているんではないか。いまの青田刈りの問題にも通ずるわけですけれども、高校は三年間行くわけでございますけれども、もう二年過ぎると就職問題でざわつきます。そういうことで、進学しない人は、もうあとの一年というものは、ほんとう就職問題で勉学には身が入らない。ということは、結果的には学力程度が不十分でありながら社会に出ていく。そして就職すると、思ったより社会のきびしさに負けて、安易に職をかわったり、いろんなことをやって、またそこからいろんな非行問題等が出てきたりしているんではないか、こういう問題も考えるわけでございますが、この青田刈りについてその後どのような対策を立てられたのか、お伺いしたいと思います。
  179. 住榮作

    住説明員 いわゆる青田刈りの問題でございますが、御承知のように、中学卒につきましては、大体選考期日が、積雪寒冷地におきましては十二月一日、その他の地域においては一月一日、こういうことで中卒の場合には青田刈りの現象は従来見られないのでございますが、高卒につきましては、この点が非常に見られておったのは事実でございます。当初昭和四十三年ごろまでは、いわゆる文部省と相談いたしまして、高卒の選考開始の期日が十一月一日である、こういうことを申し合わせておったのでございますが、御承知のような状況で四月、五月に選考が行なわれ、それが学校教育の上からも非常に問題であるばかりでなくて、十分な職業指導、職業相談の行なわれないままの選考でございますので、えてして就職後に問題を起こす、こういうような事態がございました。  そこで、四十四年卒につきましては、八月一日からできるだけ守るようにしようではないか、こういうようなことで、われわれいろいろ努力したのでございますが、それも十分な成果をあげることができなかった。そこで、来年の三月に卒業する方々について、たとえば文部省とかあるいは高校の校長会あるいは業種別団体、こういうところで中央雇用対策協議会というのをつくっておりますが、そこでこの問題を慎重に検討をいたしたのでございます。  いずれにいたしましても、全部が協力しなければ、このことは厳正に励行されない。こういう観点から関係者が協力して、少なくとも八月一日以前の選考はやめようではないか、こういうことで求人者側の協力あるいは学校側の協力、それから安定所といたしましては、たとえば選考期日について、八月一日以降であるというような確認をした求人表でなければ、学校としてはその求人表に基づいて職業の紹介は行なわない。そしてまた、それに違反するような場合には、たとえばその会社名を公表したりする等の手段も考えるというような対策をいろいろ講じたのでございます。その結果、本年度は一部問題があった点もあるかと思いますが、全般的には所期の目的を達成いたしまして、大体八月一日以降に選考が行なわれておる、こういうような状況でございます。
  180. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの説明では文部省や厚生省の関係者が集まって、いろいろと真剣に検討した結果、特に高卒の皆さんについての就職あっせんというものは八月以降からにしようじゃないかという話し合いができて、その決定をしたところ、まあまあその成果を見た、そういうふうにいま聞いたつもりでございますが、八月一日以降というきめ方、これは夏休みがはきまるからということだろうと思うのですけれども、八月一日、夏休みのことを考えればいい時期であるなという考えも起こりますけれども、やはり全体的な立場から見た場合は、これでもまだ早いのではないか。もう少しおくらせてやっても十分職業のあっせんはできるのではないか。むしろ勉学のほうにもっと力を入れさせるべきではないか、このような私自身考えがあるわけです。八月よりももっとおくらせるべきであるという考えを持っているのですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  181. 住榮作

    住説明員 先ほども申し上げましたように、当初文部省、労働省考え方は、少なくとも十一月一日以降、こういうような線であったわけでございますが、それが守られないで四月、五月に選考が行なわれるということで、私どもはその段階において、ひとつ守られやすい線でまずやれるかどうかやってみようじゃないか、こういうようなことで、八月一日以降という一つの方針を打ち出し、それの実行をはかってきたわけでございます。  先生の御意見のように、八月一日というのはいろいろな意味でやはり問題があるわけでございます。私どもこの八月一日がいいのだ、こういうように考えていないわけでございます。できるだけおくらせて、場合によっては九月といっても、これは学年開始の時期でもございますので、さしあたっては十月というようなところでひとつやれないだろうかということにつきまして、関係者といろいろ検討いたしているわけでございます。できるだけ学校教育の関係からも、あるいは職業指導、職業相談について——最近は求人が非常に多いわけでございますから、正しい選択のできる期間、一カ所に集めて自分の適正に合った選職がどうしてできるか、こういうような態度決定も余裕があったほうがいいのではないかというようなことで、来年度はもう少しおくらせてやりたい、こういうことで現在努力をいたしているような次第でございます。
  182. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その方向でしっかりがんばってもらいたいわけでございます。  話はまた逆戻りするようでございますけれども求人倍率がどんどん上昇していっているということは、就職する側に立てば、職業が好きなものが選べるということになるわけですけれども、離職率あるいは転職の実態を聞きますと、案外自由な職業の選択が、当初の選択の時期においてある程度何かの力でセーブされているんじゃないか、このような危惧もしておるわけです。そういう点実態を調査なさいまして、ほんとう意味でそうした卒業者が自分の適職といいますか、能力に応じた仕事につけるような、自由に職業を選べるような状況といいますか、環境をつくっていってもらいたい、これを強く要望しておきます。  それからもう一つ聞きたいことは、こうした離職の理由といいますか、大体どういうところに問題が集まっておりますか。
  183. 住榮作

    住説明員 これは全数について調査した資料は持っていないのでございますが、私ども、先ほどの離職状況の調査の結果、離職が意外に多いということで、いろいろサンプルで調査したものがあるわけでございます。たとえば中卒の場合どういう理由が一番多いかと申し上げますと、仕事が自分に適していないというような、仕事に不満があると考えられるものが大体三一・四%、あるいは賃金その他の労働条件において、就職してみて不満がある、こういうような原因によると思われるものが三四・四%、あるいは人間関係がどうも自分としてはおもしろくない、こういうような原因によると考えられますのが大体一二・八%、その他、たとえば転職の誘いを受けたというような理由によるものが大体二一・二%程度、こういうようなところでございます。ほかにいろいろございますけれども、おもなものは大体そういうものが原因になっていると思います。
  184. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そこまでの資料をつかまれているわけでございますので、それを広くふえんして、それに対する適切な施策あるいは対策を立ててもらいたいと思います。勤労青少年はあすの社会をになう大事な条件のもとにある人でございます。したがいましで、そういう人たちが、希望と誇りを持ち、意欲を持って安心して働けるような環境づくり、条件づくりというのは、これは私は労働省仕事であろう、こう思うわけでございます。もちろん企業そのものの責任でもあるわけでございますが、そうした企業等を大上段から指導されて、そういう青少年がほんとうに有意義な仕事と、将来に向かって前進していけるような状況をつくり出していっていただきたい。最後に要望しまして私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  185. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。川俣健二郎君。
  186. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私がこれから政府当局の考え方をただしたい素材は、いま非常に大きく問題になっておる、山林に対する薬剤の散布がいかように社会に影響を及ぼすか、人間さまはもちろんのことですが、山菜さらに魚類、獣類、すべて自然破壊にまでも及ぼすのではなかろうかということの問題を取り上げたいわけでございます。  そこで薬剤でございますから、農薬の部類に入りまして農林委員会という考え方もあるかと思います。あるいは被害が公害に通ずるだけに公害対策特別委員会ではないかという考え方もありましょう。しかし、あえて社労委員会に林野庁の長官をわずらわして、厚生大臣にも御臨席いただきまして私がその姿勢をただそうとするのは、別にこれは山形の酒田の付近が国定公園だから厚生大臣の所管ではないか、あるいはまた、一昨日あたりの週刊朝日をにぎわしたこの問題、厚生省に行くと農林省に行きなさい、農林省に行くとそれは厚生省のほうだろう、こういうようなことでらちがあかぬじゃないかということをマスコミからたたかれておる。こういうことだから社労で取り上げたというわけじゃございません。私の真意は、やはりどなたか言われたように、福祉なくして成長なしというスローガンのもとにいまの政府が進んでおるだけに、やはり人間社会であるからどこか人間さまに影響するところが多々あるんだという考え方から、やはり厚生大臣が責任を持ってこれに対処しながら林野庁と連携を密にしてやるべきではないかという考え方から社労委員会にとっていただきました。御一同その点御理解、お許し願いたいと思います。  質問に入る前に私の考え方をちょっと申し上げますと、わが日本の国というのは、千古の昔からといいますか、国を治める基本姿勢というのは、山を治め水を治める、いわゆる治山治水というのが基本姿勢になってきた。これは私が林業白書で質問した際に、総理大臣のお答えがそのとおりであった。まして今日というのは、その姿勢が変わるどころか、むしろ公害問題が非常に大きく取り上げられて、山林、森林というものが風水害などの災害から国民の生命、財産を守り、国民生活にとって欠くことのできないいわゆる緑と水、私たちに与えてくれておる緑がなければ、動物や虫も住めない荒土と化して、空気はよごれきってしまう。したがって人間というのは何のために暮らしておるのだろうか、何のために働いておるのだろうか、何のために林野行政を担当されておるのだろうかというところに究明されなければならない問題があると思います。こういうような観点に立っておるのにもかかわらず、林野当局は昭和三十七年ごろから下刈り事業とかあるいは地ごしらえ事業のいわゆる合理化といいますか、省力化と称しまして大量の林業用の除草剤、たとえばクロレート、クサトール、テゾレート等、いわゆる塩素酸塩系といいますか、さらにはついにアメリカも中止のやむなきに至った二四Dあるいは二四五Tの混合薬剤、いわゆるブラシキラー、こういう商品名でやっておるスルファミン酸塩系を大量に買い込んでわが国にまき散らしているという実績を経てきたわけであります。何とぞの量を面積的に申し上げますと、昨年の四十四年度はわが国の七万六千八百ヘクタールにまき散らした。その量は八千トンに及んでおる、こういうように実績が出ておる。このように林地除草剤大量散布によって、いまの行政府の手によって国土の六八%を占めるということで誇っておるわが国の林野を自然破壊にまでも及ぼす、こういう考え方はどうしても私たちは許されないだろうと思います。これはイデオロギーを超越して、冒頭厚生大臣にまずその姿勢を伺っておきたいと思うわけです。  さてここで問題なのは、この除草剤が散布されて数年たった今日、方々でいろいろな被害が出ておるということです。山村公害、自然破壊の観点から国民の悲願が強まっている。また、これは林野庁のお手のものですが、造林技術の面から見ても、どうやら私たちはしろうといいますか、いわゆる幼齢木を殺してしまうのではないか、あるいは森林土壌を根こそぎ破壊してしまうのではないかということまで心配しているわけです。その生長に甚大な影響を及ぼすであろうということがほぼ明らかになってきたのじゃないかと思います。ただそれは取り扱いさえ注意すればいいのだよというような人もあるようですが、この点についてはあとで具体的に受け答えをさせていただきたいと思います。これでもなお林野庁としては強行しようとするのかということが最後に聞きたいところでございます。この最後の質問までには具体的に質疑応答させていただきたいと思います。  また、特に近年の排気ガスとか産業公害などによる空気の汚染、言わしてもらえば酸素資源が減少するということだと思います。この酸素資源の減少というのは人間生活にとって重大な脅威となっており、その酸素の一番のかせぎがしらというか、いわゆる生産者というのは林野庁が扱っておる山林だと思います。林業だと思います。木材、緑だと思います。こういったものを、人手が足りないとか、あるいは合理化、省力化という観点のみから、電撃作戦のようないわゆる薬剤で一ぺんにやってしまうという考え方は、どうやらいま国会が大きくこれと取り組もうとする公害問題、あるいは福祉なくして成長なしという厚生省が大きくこれから取り上げていかなければならない段階において、どうやら日本行政府というのは右と左と方向がちぐはぐになっておるのではないか、こういうような考え方をしておるわけです。  そこで、まず大臣は時間もかなり制約されておるようでございますので、一応林野庁の具体的な質問に入る前に、こういうような世の趨勢に対して、厚生省としてはどういうようにこれを受けておるか、どういうように感じておるかということを、一応大臣の私見をまず聞かしていただきたいと思います。
  187. 内田常雄

    ○内田国務大臣 率直に私が感じておりますことは、従来私どものほうには食品衛生法というのが御承知のとおりございまして、人為的に食品の加工について有害な要素等が用いられることを監視したり制約したりするたてまえになっております。食品添加物等が、これは人為的の添加物でございますが、問題になっておるのはきょうな見地からでございます。ところが、川俣さんが御指摘のように、人為的に食品に加えるのではなしに、間接的に外部から食品の中に入ってくるいろいろな有害物質が最近多くなってまいりました。普通それは農薬でございますとか、また、ただいま御指摘の除草剤でございますとか、あるいは人間の食品ではなしに動物の食品等に供する抗生物質等が、動物の体内を通して、あるいは肉にあるいは乳などに残留して、それが口に入ってくるというような事態に注目し、それの対策をとらなければならないようなことになっておりまして、現在、食品衛生法上では私はやや無理な解釈だと思いますが、食品の成分規格を規制する条文を無理に適用いたしまして、成分規格というのですから、食品を構成する有効な成分はこれだけあるべきだという見地からいろいろの指導規制をすべき条文を、逆に、入ってはならないそういう農薬とか除草剤とか抗生物質等につきまして、成分規格上好ましから、ざるものが入っているという見地から、食品衛生法上は監視しあるいは調査し、分析し、規制をする、こういういき方をいたしておりますが、根本的には、農林省当局とお打ち合わせを十分いたしまして、農薬取り締まり上、農薬としては十分の効果がありましても、いま申すような過程において食品の中に侵入したり残留したりすることが危険をもたらすような農薬については、十分農薬の面において規制をしていただくようなお打ち合わせを進めておりまして、遺憾なきを期さなければならないと私は感じておるわけであります。しかしながら、農薬ばかりでなしに、森林に散布せられる薬品等が、川俣さんの御指摘のような事態が生じておることもまたあるということはまことに残念なことでありますので、さらにこれらにつきましては十分有効な措置をとってまいりたいと思います。
  188. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やっぱりその辺だと思うのですよ。これは国定公園にまくのだから厚生大臣に相談がありましたかという質問はいまはいたしません。あとで各局長さん方に伺いたいと思います。あるいはサリドマイド以上の危険物でありますよ、奇形児が生まれておりますよということになると、これは十分厚生省だ。したがって、農政局か、あるいは薬務局か、あるいは林野庁かということになりますと、いろいろといわゆるお手玉の取り合いっこ、渡しっこみたいなもので、収拾がつかないと思うので、具体的に入っていきたいと思います。  そこで、まず最初に林野庁長官にお伺いしますが、従来この薬剤を山林に散布した実績、これはこまかい数字はけっこうでございます。それから、今後どのような長期計画をお持ちになっておるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  189. 松本守雄

    ○松本説明員 実績でございますが、これは塩素酸塩系、フェノキシ系、スルファミン酸塩系の三種類でございます。合計で申し上げますと、昭和四十二年度では、面積で五万二千九百、それから四十三年度に移りまして六万、四十四年度七万四千三百、四十五年度の見込み六万六千九百でございます。  それから将来の計画でございますが、除草剤は、労働の調達が困難な地域とか、人力作業よりも効率的な場所とか、地ごしらえとか下刈り作業などに必要なものでございます。そこで、今後も自然保護や薬害などに対する安全性を十分考慮しながら、現地の実態に合わして慎重に実施してまいりたい、このように考えます。
  190. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、私どもの秋田営林局管内で、秋田県と山形県の両県にそれぞれ十月の初めにまこうという計画が発表された。それで、それはおかしいではないか、こういう被害が出ておるではないかということで、私たちが局長さんにお会いしまして、一応取りやめるようにお話を申し上げた。そうしたら、まず十月初めのものは中止されたわけです。これは長官のところに報告があるやと思いますが……。  そこで問題は、一体このように騒ぎがある中でやろうというのは、実験を十分にされたのか、研究を全うされて自信を持っておやりになろうとするのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。というのは、林野庁当局が、この際、除草剤を事業化するにあたっては、やはり実験と研究はされただろうということを期待して質問しております。  まず第一点に、人畜に対する被害でありますが、これは急性中毒はもちろんでありますが、慢性中毒あるいは残留毒性の心配がある、こう聞くのです。これはどういうことになっておるのか。特に二四五T、例の枯れ葉作戦に使われたものだと思うのですが、さきにも触れたように、アメリカではこの春の四月十五日、農務、内務、厚生教育、こういう各省から、湖、池、人家の付近、それと農作物用には使用中止、森林については、厳重な規制をするという声明が発表されております。アメリカで問題になった一つの重要な理由というのは、この薬剤の中にダイオキシンという不純物が入っておるのだ、こういうことが理由になっておると聞いております。ところが、林野庁当局の人がたは、二四五丁にはダイオキシンというような不純物は入っていないのだというようなことを言いふらす管内があるのではないかということです。このダイオキシンというのは例の催奇性というんですか、いわゆる奇形児が生まれる遺伝性というか、こういうおそろしいものであり、したがって劇毒物に取り扱っておる理由はここにあるかと思われます。ベトナムでもたいへん問題になって、私も先々月行ってまいりまして、その奇形児というものを見てまいりました。これは枯れ葉作戦に使われたもので、ごうごうたる非難で中止したということを私たちは聞いてまいったわけでございます。  それから第二点は、野獣、野鳥、こん虫、淡水魚等に対する薬害の心配はどうであったかという研究、実験をされたかということです。これは青森営林局大間営林署でございますか、例のにぎわしましたシモキタザルの問題です。これはヤマブドウとかサルナシ、トチ等が枯れ果てて実がなくなった。したがって天然記念物とされておるシモキタザルの越冬が問題だということで騒がれておるわけです。こういった問題は、かなり声としては大きな反響を及ぼしております。こういうものに対してどういうように実験されたか、これが第二点です。  それから第三点は、林野庁が、これは長官のほうの専門でございますが、先ほども申し上げましたように、肝心の造林木には被害がないものだろうか。これから私が質問しようとする目的は、ササを枯らしてブナを生長きせるというねらいの薬についてなんですが、これはササだけが枯れて、ほかの森林木には影響ないものだろうかどうか。さらに、これは林野行政のたよりとする土壌ですが、この土壌を破壊してしまうしろものではないだろうか、こういったところを私は私なりに各学説とかあるいはお医者さんの意見を持っておりまするけれども、当局としてはどういう実験データを持って、自信を持って発表されておるのか、その辺長官あるいは説明員の方でもけっこうでございますから、お答え願いたいと思います。
  191. 松本守雄

    ○松本説明員 林野庁が除草剤を導入いたしまして、それを実験して、さらに事業的にそれを実行していくという場合に、まず薬剤のメーカーから農政局に対して登録申請がございます。一方、農政局は農薬検査所を通じましてその検定、検査をいたします。それからさらに、別には、厚生省のほうへ回しましていろいろな検定をしていただく。それがさらに農政局へ返ってまいります。そこで薬害があるかないかという確実な実験データその他を審査いたしまして農薬として登録をするということで、登録された農薬について林野庁がいま実施に移しておる。一応そういった危険性その他登録されておりますので、その実施基準に従ってやれば危険はないはずでございますが、さらに林野庁は念を入れまして、何年間かの実験段階、調査、実用化試験、そういうものをやりまして、それで昭和三十八年ごろから逐次それを実施に移しておりまして、特にフェノキシ系では昭和四十二年から実行に移しております。幾つかのそういった確実なものでもって実施しておりますので、いまのところまず危険性はない。その注意さえ守ればだいじょうぶだ。ただ、いままでに幾つかそういう失敗の例もございます。それは取り扱い基準どおりやらなかったとか、あるいは霧が出て遠くのほうに飛んでしまったとか、未熟の例もございます。最近ではほとんどそういう失敗の例は聞いておりません。だんだん少なくなっております。  それからベトナムの薬でございます。これのお話もございましたが、国有林で使っております二四五Tという種類は、一応ベトナムの枯れ葉作戦に使われたものと同じでございますが、濃度とか効力の点からいきますと、これは全然問題にならないほど薄いものでございます。しかも南方のほうで使われたものは大きな木まで枯らす、しかも相当広大な面積へ散布しておる、また、それを数回繰り返してやっておるのに対して、国有林でやっておりますのは、せいぜい造林期間が成林するまで一代四十年間、五十年間に一、二回、しかも濃度も薄いということでやっておるわけでございます。  それから野性鳥獣の実験をしたかということでありますが、実験もいたしております。魚は淡水研、鳥は林業試験場、それからけだものは林業試験場とか大学とか、そういうところに実験の委託をして、データも出ております。いままでのところは支障はないというデータばかりでございます。  それから造林木には被害はないかというようなこともございましたが、そのやり方の未熟なために薬害が出た例はないとは申しません。しかし、だんだん熟練するに従ってそういう失敗の例は少なくなっております。  それからササとかブナ、ササを枯らしますのは塩素酸塩系のもので、これは選択性がございまして、ブナにはその基準どおり実施すればブナの木木は枯れないはずでございます。  それから土壌に影響があるかどうかというお話もございましたが、いまのところ幾つかの実験データによりますと、土壌微生物が一時的には減るデータも出ておりますが、ほとんど減らない。しかも減る場合にも何年か後にはすぐ回復するというデータが出ております。  以上であります。
  192. 川俣健二郎

    ○川俣委員 長官のお話ですと、取扱いに注意すればだいじょうぶだ、失敗とか未熟等はあった、こういうお答えです。実験と研究は十分やっておるというお答えはわかりました。問題は、はたしてそんなに心配するほどの被害があったのかという話に移ります。これは私のほうのデータでして、当局のほうでそれはおかしいということであれば、一々否定してもらいたいと思います。  まずその散布に従事する労働者の被害でございます。一番大きな例としては、青森営林局の蟹田営林署、これは労働者が休憩しておるときにたばこでも吸っておったのだと思いますが、それが作業着に引火して三名が火傷、一名が死亡、二名が重傷、これを把握しておるかどうか。  特に問題をもう一つ加えると、引火性というか助燃性というものをこの薬が持っておるのかどうか。だとすれば、林野庁の生命ともいわれる山火事、長官はお若いころから山火事に対する注意、恐怖というもので鍛えられたと思うのです。これが助燃性、引火性のある薬だとすれば、むしろ撃退こそすれ推奨していくという方向はおかしいのではないか、こういう考え方に対してどう思うか。  それから被害の二番目は、昭和三十五、六年から四十三、四年まで火傷、皮膚炎、眼炎、急性中毒約四十人、この四十人が公務災害の認定を受けておる、こういうように私たちは把握しております。公務災害の認定を受けておるとすれば、これは社会党の私がデータをとろうがどなたがとろうが、事実認定でございますから、はっきりお答え願いたいと思います。  それから三番目に、先ほどから申し上げておる二四五丁の製造元、これは三井東圧化学の大牟田工業所だそうですが、労働者の三分の一が中毒症状にかかっていまだになおり切ってないということで、これは週刊誌に出ておりますが、労働者のほっぺたがつぶつぶになっておる写真が出ておる。これは私があえてどこからとったというわけではないのです。週刊誌からとったので、これは事実かどうか、こういうことです。  まず以上、人間、労働者、住民に対する被害を一応明らかにしていきましょう。
  193. 松本守雄

    ○松本説明員 蟹田営林署でたばこの火が作業着に引火をいたしまして、三名がやけど、うち一名が死亡、二名が重傷ということは三十七年でございます。  それから公務災害件数でございますが、三十七年から四十一年度まで四十七件、これは確かにございました。その後四十二年以降急激に減っております。四十一年には五件、四十三年には二件、四十四年には二件、四十五年はいままでまだ出ておりません。  それからいまの週刊誌でございますが、よくわかりません。そういうことは聞いておりません。
  194. 川俣健二郎

    ○川俣委員 長官がつかんでいないやつは、あとで文書でもけっこうですから、事実だったのか、週刊誌のうそだったのか、それをお答え願いたいと思います。これは文書でけっこうでございます。  では家畜への影響を一つ二つ拾ってみます。これは、過去は未熟であった、無知だったということでしたが、四十五年の七月ですからついこの間です。熊本営林局長崎営林署島原担当区の管内ですが、これは長崎の県警が調べたと思います。デゾレートを保管しておったのを牛馬が食べて牛が四頭、馬が一頭中毒死、さらに牛七頭はいまだに行くえ不明、四十五年七月、こうなっております。あと諸外国の例もありますが、一応この一点だけを確認しておきたいと思います。
  195. 松本守雄

    ○松本説明員 四十五年七月に島原の担当区管内で保存中の塩素酸塩系の薬剤が牛に食べられて一頭は死んだということでございますが、これは長崎営林署の雲仙岳放牧国有林内に放牧しておった牛のうち六頭が死亡して、三頭が行くえ不明になった事実がございます。その前に牧場に隣接する林地十三ヘクタールにヘクタール当たり百六十キログラムの塩素酸ソーダを散布したということから、死因が除草剤のためじゃないかという疑いがございましたが、県警本部の鑑識課で死因を鑑定した結果では、この薬剤が死因であるとは断定できないということで、現在までのところまだ原因不明でございます。その薬を多量に牛がなめれば死ぬかもしれませんが、林地にまかれた程度ではこういうことはないはずでございます。
  196. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あえて被害の例を述べていくのは、やはりもう少し科学的に公害問題を扱っていきたいという私の気持ちから時間をとるので、お許し願いたいと思います。  淡水魚の被害をちょっと……。これは道有林なんで恐縮ですが、もし確認しておるとすればお答え願いたいと思います。  北海道の中川郡美深町の養魚場でヤマベが五万匹死亡、それからニジマス二千匹死亡、四十五年七月三十日ですからついこの間です。これは散布したいわゆるデゾレートが原因だということで騒がれております。これをどのように把握しておるかということ。これは秋田の場合もこのヤマベ騒ぎがありましたものですから、ぜひ聞きたいと思います。  それから青森営林局の深浦署管内、イワナがかなり死んで、国有林に散布したいわゆるブラシキラーがなせるわざじゃないかということをいわれておる。これがどうかということです。
  197. 松本守雄

    ○松本説明員 最初のほうの北海道の美深町パンケ養魚場のヤマベ及びニジマスの死亡、これは七月三十日に発見されております。北海道庁の林務署では、この養魚場から十キロないし十二キロ離れたところで上流の三十ヘクタールに塩素酸塩系の薬をまいたという事実もございます。発生後直ちに養魚池と、この取り入れ口の水を道立衛生研究所で分析をいたしました。ところが塩素酸ソーダを検出することができなかったというふうに聞いております。林務署では、パンケ川を調査したところでは死んだ魚は発見できなかったということで、そういった事実も林務署に聞いたところではまだわかっていない、そういうこともないということのようでございます。失礼しました。資料にはこれは発見できないと書いてあるのですが、管理人が発見したとこっちには書いてあります。なお調査をいたしてみます。  それから深浦のほうでございますが、四十ヘクタールに六月にまいておりますが、これはブラシキラーですが、二四五丁の系統です。翌二十三日職員が現地調査したところ、イワナが死亡しているのは認められなかった。なお下流にあってこの川から直接取水している東俣沢養魚場のニジマスにも全く影響がない、同養魚場の所有者も上流で魚が死んだ事実は知らない、このように言っておるようでございます。
  198. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで賠償問題とからめてもう一つ。  山菜と農作物ですが、今度秋田営林局管内でまかれる、ササ竹を根こそぎ枯らしてブナ苗を助けるという線ですが、これはタケノコはとれないということは承認せざるを得ないでしょう。竹を殺すのですから。こういったものに対する補償の姿勢とはどういうことなんだろうか。というのはこういうことがあったわけでしょう。例の小国問題ですが、小国営林署管内で、カボチャ、スイカ、アズキ、これはかなりひどかったわけです。そこでたまりかねて被害者が訴えたのです。訴えた五名に対しては見舞い金を出すというのです。昭和四十四年の何月ですか、見舞い金を出した。ところが、その見舞い金というのは、国ではなくて、薬をつくったメーカーだったというのです。メーカーというのはどこか知りませんし、この席では明らかにしなくてもけっこうだと思います。こういうようにメーカーに負担させるという姿勢なのかということを聞きたいわけです。  それから、やはり去年ですが、熊本営林局管内で桑の葉がかなりやられたというので補償問題が起きております。これはどういうように処理しようとするのか。
  199. 松本守雄

    ○松本説明員 タケノコの点でございますが、東北のブナ林地帯に参りますと、ほとんどが根曲がり竹で密生されております。その間にブナが立っておる。そのブナの天然更新に一番じゃまになるものがその根曲がり竹でございます。でありますので、ブナの更新が大事か、根曲がり竹が大事かということになるわけでありますが、それを全面積一度にやるわけではありませんで、区域を限って、少しずつその伐採更新をやっておるわけでございます。伐採をしたあとの天然更新をはかるためには、根曲がり竹の山にならないようにブナ林にしようということで、この薬剤を使っております。したがって、タケノコの採取と薬剤を使用するというのは競合するわけでございます。こういう場合にはよく地元と話し合いをしまして、地元の納得のいくように、その線で実施をするように指導しております。  それから熊本営林局の桑の葉に薬害が出た。四十三年の七月に串間営林署管内の七ヘクタールの区域にブラシキラーを手動の噴霧器でまいておる。その隣接の桑に被害が出たことがございます。距離が二十二メートルから四十メートルくらい近いところ。今後はそのようなことのないように、そういう畑とか人家のあるところからは少なくとも相当離れたところでやりなさいという実施基準を厳重に守らせるように配慮したい。  それから魚が死んで見舞い金をメーカーが出したこと、それもよく調べておりませんが、いずれも後刻調査をいたしたい。
  200. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そのほかいろいろとありますけれども、時間があれですから……。  こういうように、被害の問題は、私と長官と受け答えをやっておりますと、少なくとも五割はお認めになっておられる。問題は、地元を納得させてまくんだ、こう言うのだが、私が聞くのは、その薬が毒であるのか、害になるのかどうかということを聞いておる。みんな注意せよということで盛んにやって、あるいは賛成する者は働かせるぞというような肩たたきみたいなことをやっていては片づかないと思うのです。私がある営林署に行きましたら、この薬は毒ではない、しかし取り扱いによってはこれはたいへんなことになる、こうおっしゃる。どうも当を得ていないので、それを一貫してとうとうとしゃべるのは——林野庁各営林局にテキストというか、とらの巻というのが回っております。これは長官は御存じだと思うのですが、薬剤の散布のとらの巻パンフレット、どうもこの筋書きが各営林署長のお答えする口調と同じなんです。この林業薬剤協会というのは、これは先輩の各議員は御存じだと思うのですが、片山正英さんといいまして、過去林野庁長官をおやりになって、伺うところによると来年の参議院に打って出るというようなお方だそうでございます。そのテキストがどうやら今回の薬剤散布の唯一のよりどころであり、これによってお答えしておるようで、どうも現長官の考え方が各営林局長、営林署にあまり浸透してないで、むしろこのパンフレットのほうが先行しておるのではないかというように感ずるわけです。これはたいへん参考になりますので、ちょっと読んでみます。  これはパンフレットで、売らなければならぬ本ですから、「まえがき」として、「最近、地ごしらえ、下刈などの造林作業に除草剤がさかんに使われるようになりました。場所によってはヘリコプターによる散布も行なわれています。このように一般化してきた除草剤も、使い方を誤まるとせっかくたんせいして育てた植栽木をいためたりします。これは除草剤本来の作用ですが、また不用意な使い方をしたりしますと、薬剤によっては家畜や魚類に害を与えたり、ときには人間生活にまでその害がおよぶことがあります。“農薬による公害”がこれです。」こういうように、まずこれは毒なんだよということで、おどかしておる。問題は、この本を読んで取り扱いを勉強しなさいということを言っておる。  「塩素酸ソーダは強い酸化力をもっているので、湿気をおびると金属をさびさせる作用があります。また、他のものに付着すると、そのものを燃えやすくするという性質があります。」いわゆるさっき問題になった助燃性です。「火気には十分注意して下さい。」こういうようにだんだん追い込んでいっています。  それからさらに拾い読みをしていきますと、「この除草剤にも乳剤と粒剤とがあり、それぞれ成分や含有量がちがっています。地ごしらえ、下刈、切株処理など用途に応じて使いわけます。粒剤はスギ、ヒノキに付着しても害はありませんが、マツ、カラマツ、トドマツなどは薬害を受けやすいので注意して下さい。」これは何を言っておるかわからない。こっちのほうには全然害にはならないのだが、こういうトドマツには薬害があるのだ、こういうのです。  問題は、私たちが心配しておるのは人間社会にこれがどう害毒を及ぼしておるかということを言っておるのです。それを私はこの社労委員会で取り上げておるわけです。その辺もはっきりここで申し上げておきたいと思います。しかも、これもどうかと思うのですが、私は別に営業妨害をやろう、この著作者にけちをつけようとするわけじゃなく、こういうことを言っておる。主成分の二四五Tも劇物、毒物ではありません、こう言い切っておる。これには私はたいへんおそれ入りました。これは薬事課に行こうがどこに行こうが、二四五Tはもう劇物扱いでございますとお答えになります。そうでしょう。そのとおりなはずであります。ですから普通の人にはこの薬は売りませんよ。こういうようなパンフレットを見てお話ししているせいか、どうも各営林署の署長方のお話というものはこのテキストどおりなんです。  さらに、まあここが落ちだと思いますが、これもやはり社労委員としてどうしても取り上げなければならぬのは、「従来の人中心の造林作業を少ない労働力で実行することが可能です。」この辺が合理化、省力化という問題に入っていくテキストです。もとの林野庁長官がここまでいまの行政に口を入れなければならぬのだろうかどうかということなんです。しかも御自分の写真をつけて全国区に来年出られるというような片山さんがこういうようなパンフレットを書く。全国の営林署長は、これによって薬剤はこうあるべきだというテキストにしておるということは——これは私は何も選挙妨害をするつもりじゃないのですが、問題になると思うのですよ。こういうような態度を私は林野庁長官に申し上げたいのです。林野庁長官は、いま少しこの薬剤はこういうような事実があった、こういうようなあれがある、こういうように注意しなさい、こういう点はやはりやらなければだめなんだからというような指示、指令というものを少し流したらどうかということなんです。全然流れていない、こういうことなんです。したがって、秋田の営林局でなぜ中止したかということを事こまかに報告されてないんじゃないかと私は感じたのだけれども、そういった面なんですよ。長官どう思いますか。
  201. 松本守雄

    ○松本説明員 いまのパンフレットにつきましては、実は私存じておりませんでした。  それから、林野庁からそういう通達とか何も出てないではないかというお話でございますが、これは実施通達が出ております。実施をする場合の注意通達でございます。たとえば散布する場合には、除外すべき地域はこれこれこういうところ、それから河川は避けろとか、隣接地の関係はこれくらい離すことを注意しなさいとか、それから作業員の防護具、火気取り扱い、そういう点に対する注意事項、その他散布したあとの入林の注意、そういう点を事こまかに実施基準を通達をしております。
  202. 川俣健二郎

    ○川俣委員 観点を変えましょう。  このパンフレットにもお聞かせ願っているように、これでやると人手不足というか、人力にたよらぬでも安上がりにできますということを教えておるのだけれども、それでは経済効果はどうかということなんです。長官のところに全林野という非常に大きな組織の唯一の労働組合がございます。そこで、この経済効果というのが、組合、当局を問わず、どういうように確認されておるのかということなんです。私の知っている範囲内ではこういうように数字をとっております。一ヘクタール当たりの経費ですけれども、地ごしらえの場合は、人の力によっては三万四千四百六十一円、それから機械によっては三万一千百九十五円。ところが、除草剤を散布すると、一ヘクタール当たり六万五千八十六円、こういうようにかかると私はつかんでいる。それから下刈りの場合を比較します。これの五、六分の一になろうと思いますが、下刈りの場合は一ヘクタール当たり五千八百二十一円が人の力によったもの、機械によった場合は五千七百四十八円。ところが、除草剤をまくと二万五百六十八円かかるんだ、こういうようになっています。そこで当局のほうではそれをどのように把握しておるのか。なぜこのように造林効果も薄いのに、経済性が低いのに、人手よりも三倍も四倍も金がかかるのに、しかも、おまけの果てには人間生活を脅かし、自然を破壊するということで騒がしているものをやろうとするのか。それとも長官は、いや、経済効果は十分にあるんだという前提でおやりになるのか。あるいは何のために、何が原因で、こういうように反対しておるのにやろうとするのか。ぼつぼつ大詰めがきましたので、そういう点もお話し願いたいと思います。
  203. 松本守雄

    ○松本説明員 経済効果でございますが、薬剤散布によるコストダウンをはかる場合に、やはり一定の面積以上ありませんとその効果は出ておりません。それからまた、非常に不便なところ、人が歩いていくのに容易でないところ、そういうようなところとか、一定面積以上、これは普通空中散布の場合は四十から五十ヘクタール以上といわれております。それ以下の場合には薬剤はかえってコスト高になる。それ以上になりますとコストの引き下げが行なわれるといったいろいろ実験データもとっておりますが、全国地形、地質とか状況が千差万別でありますので、普遍的な数字は出ておりませんが、かりに東北地方あたりのブナ林で考えますと、薬剤を使います場合には、一ヘクタール当たりの地ごしらえが三万四千円、機械刈り、入間の力で機械で刈るという場合には六万六千円、約半分近いコストでできる。  それから次は、今後の除草剤に対する考え方でございますが、いま労働力が特に山間地帯では急速に減っております。これは民有林も含めての話でございます。労働力確保が林業で一つの問題点になっております。そこで一方、外国から半分以上も木材が入ってまいっております。しかもそれは日本の国内で生産をされ、普通市販をされるものに比べて格安である。外国から入るのは自由に入る、関税もかかっておりません。自由競争をしておる状況でございます。そこで外材に対抗して国内林業が、しかも労働力がだんだん減っていく山村地帯で、それをいかにして林業を維持するかということは非常にむずかしい問題になってくるかと思います。そこで当然これは新しい技術の開発が必要でございます。いままでの人力で、人海戦術的に手がまでやる時代を将来とも続けるべきかどうか。空からそういうことができるならばそういう開発をすべきである。外材、外国林業と競争しなければならぬ。それでかりに日本林業がそういうことで外国ととても対抗できないということになりました場合には——山の木は伐採されます、それはなぜかというと材木は不足しておりますので。伐採をされたあと造林されない。造林されるにしても、そのあとの成林が期待できないということになりますと、今度はそれこそ森林はなくなってくる状態で、国土の保全とか水資源の涵養とかという面から重大な問題になる。でありますので、伐採をしたあとには造林をする、造林をしたあとにはそれを成林をさせなければいかぬ、森林をつくらなければいかぬ、こういうことで薬剤に取り組んでおります。これは真剣に取り組んでおる。しかし一方では、公害とかそういう危険があるものの場合には防いでいこうということで、どっちが大事か、しいてお尋ねがあれば、公害を防ぐのをまず第一に考えなければいけない。次に新技術の開発、省力技術というものに取り組んでいく、私はこのような姿勢で今後とも慎重に対処してまいりたいと思っております。
  204. 川俣健二郎

    ○川俣委員 長官の姿勢をお聞かせ願ってありがとうございました。私はそこだと思うのですよ。労働力不足だ、山から人間が流れおりる、これはなぜかということなんです。   〔増岡委員長代理退席、伊東委員長代理着席〕 さっき経済効果性を比べたら、私のデータと長官のデータと逆になっているのですね。私のはヘクタール三万円、こっちは六万円。私のほうは人の力で三万円でできるのを、長官のは六万円かかる。これはさらに、委員会でなくても、もっと煮詰めていく必要があると思います。問題は、林野行政の一環として労働力をどのように確保し、育てるかということだと思うのです。そうでしょう。こんなものは薬をまくのだから入手は借りぬよという態度だったら、人というのは山からおりるんだ。やはり育てていかなければだめなんじゃないかということですよ。だから、仕事を与えるということに必ず結びつくかは別として、林業が育つとともに労働力も育てなければ——今回は薬をまくから要らないのだ、この次要るのだ、こういう態度が、冬は要らない、夏だけ来いという反復雇用につながるんだ。そうでしょう。私の言うのは、やはり年間を通して労働者を押えていくという姿勢が林野行政の中に必要である。なぜ労働問題として取り上げないのかということなんですよ。雇用安定法の提案はここにあると思うのです。  それから、経済効果の問題だってそう思うんです。長官もなるほどお役人として予算生活をされていると思います。これは長官に言うのは筋じゃないと思うのだが、過去の軍部の乱伐とか戦後の過伐をいまの長官が請け負っているわけだ。ブナなんというのは百年後のかてなんですよ。過去のものと百年後のものの間を長官が一時的にいまの特別会計の収支の中でやらされているところに不幸があるのだ。そうでしょう。こんなものは一般会計でやるべきですよ、木材を売った収入の中から百年後のブナを育てるというのは。経済企画庁をきょうは呼んでいませんから、筋違いだと思うのですけれども、その辺は長官どうですか。考え方として私の考え方は間違いだろうか、この辺をお聞かせ願いたいのです。   〔伊東委員長代理退席、増岡委員長代理着席
  205. 松本守雄

    ○松本説明員 雇用の安定のお話が出ましたが、確かに林野庁としても林業労働力、国有林労働力、雇用の安定につきましては真剣に考えております。実績も逐次あがってきております。数字は省略さしていただきます。  そこで、林業で雇用の安定をする場合に、通年一定の仕事があるかどうかということが一番問題になるわけでございます。いまの技術体系はむしろ夏の技術体系が主体で、冬は傾向としてシーズンオフという体系になっている。そこで、やはり林業でも新しい技術を導入いたしまして、適期の拡大とか通年その仕事をしてもいいという技術革新に取り組んでいかなければならぬ。いまの除草剤も、普通下刈りは六月、七月にやるわけですが、除草剤を使うことによってそれがずらされるわけです。労働力が通年化、平均化するのに大きな力がある。そういうことで、まず考えなければいけないのは通年の仕事を一定化させるということ。夏には植えつけ、造林関係仕事が主体で、冬は造林ができません。伐採をすることは、冬の雪の中ではたいへんでございますが、一応実験的にそれをやっておる。そういうことで、造林と伐採を組み合わして一年平均的に仕事に取り組んでもらうということもいま慎重に検討しております。そういうことで、今後優秀な労働力確保するためには雇用の安定を積極的にはかっていくということ。  それから次は過去の乱伐のお話がございまして、一般会計にする考えはないかというお尋ねでございますが、国有林は独占企業でございませんで、民有林という企業もございまして、それがいま補助金が出ております。補助金が出ておりますが、民有林も同じような苦しい段階を迎えることになると思います。ですから、民有林の関係も勘案して、国有林もまず自まかないでやってみようということで各種の検討をいたしておるところでございます。
  206. 川俣健二郎

    ○川俣委員 通年雇用の問題はまた長官のほうにわずらわしたいので、ぜひ御検討願いたいと思います。社会党のほうとしても法案を提出しておりますから、その論争は避けたいと思いますが、ただ私の言うのは、山奥に人の労働力というものを常に確保するのには、今回はヘリコプターでまくのだからおまえら要らないのだという態度では、労働力は山にいないというんだ。そういうことでしょう。今度は仕事があるから登ってこいといっても登らないじゃないか。過疎地域になってしまう。そういう考え方からすれば、この問題はある程度理解ができると思います。  それから、結論に入る前にちょっと厚生省のほうのあれを伺わしてもらいたいのですが、環境衛生の立場で環境衛生局長から、こういうように社会問題になっているものをどう感じられておるのか、これは感想でけっこうですから……。  それから次に、薬務局長もお見えになっておりますから、化学的にこの薬というものはどういうものなのか。やはり劇物であり、取り扱いによってはとんでもないものになるのだというしろものなのか、なめようが食おうが飲もうがだいじょうぶだというようなものなのか、今後林野庁にどういうような注意信号を送ろうとするのか、その辺もお聞かせ願いたいと思います。
  207. 浦田純一

    ○浦田説明員 枯草剤をはじめとしまして、その他農薬全般あるいはその他の微量重金属等に基づきます環境汚染、ことに土壌汚染あるいは水質汚染、大気汚染、こういった問題は、人間の健康を守るという観点から見ました場合に、直接的に人間と空気あるいは水あるいは土壌というものとの関係考えますことはもちろんでございますけれども、さらには自然界におきます輪廻と申しますか、土壌にしみ込んだものが、雨が降りまして流れて水に汚染が移る、あるいは場合によりましては、食物を通じまして人間の食品として摂取される、そういった間接的な汚染の影響ということも考えなくてはならないわけでございます。  近ごろ問題になっておりますのは、急性中毒というよりも、学問の進歩によりまして、むしろいわゆる催奇性とか催奇形性あるいは慢性の中毒といった観点からの十分慎重な検討が必要であると思っております。したがいまして、農薬全般については、農林省関係のほうにこちらのほうからいろいろとそのつどお願い申し上げておるところでございますけれども、これらの慢性毒性、またその他毒性一般の問題につきましては、厚生省の立場としても、それぞれの研究機関を使いまして十分慎重に検討して遺憾のないようにしたいと思います。
  208. 加藤威二

    ○加藤説明員 農薬と薬務局の関係でございますが、農薬には二通りございまして、農薬の中で私どもの所管いたしております毒物劇物に該当するもの、これは私どものほうと農林省とで相談して、そしてその取り扱いとか保管について協議して事故のないようにやっていくというものでございます。これは例をあげますと先生御指摘の塩素酸ソーダ、これは毒劇物の該当になっております。したがいまして、こういうものにつきましては農林省からも御相談がございますし、私どももそれについていろいろ資料も提供して、そしてお互いにそごのないようにやっていく。それからもう一つ先生の御指摘になりました二四五T、これは毒劇物取締法にいう毒劇物には該当しない。毒性がないというわけではございません。しかし急性毒性の面から見てこれは毒劇物法の毒劇物ではない、こういうことになります。これは全く農林省独自の立場でおやりになるわけでございます。私どものほうといたしましては、やはり農薬の今後の使用につきましても、先生御指摘のとおり人命尊重ということを第一にしてやっていただきたい。厚生省もそれにはみずから協力をしていく、そういう方向でやりたいと思います。
  209. 川俣健二郎

    ○川俣委員 こういうように世が騒いでおるのにやろうとするのを私は静かに考えてみますと、公害に対して林野庁はちょっと無神経ではないかという感じがするのです。何か、各省とも公害となればぴくっとする時代に、どうも林野庁だけはあまりこういう舞台に上がる経験がないというか、ちょっと——私らの感覚的に申し上げるので長官お許し願いたいと思う、ちょっと無神経ではないのか。こういうように公害騒ぎでやっているのに、何も好きこのんで公害の原因をつくる方向に行かなくたっていいじゃないか、人手があるのに。あるいは一歩引き下がって、住民が無知で、いままでの被害状況をあげたものは全部それはうそなんだ、無知なんだ、納得させる自信があるんだ、こういうような姿勢に立っているのか。あるいは三つ目を申し上げますと、これは薬をどこかからルートで買い込んでしまって、くされ縁でどうにもならない、予算生活をしておるだけに。こういうことなのか。四つ目は、言いたくはないのですが、さっきのこの大将ですよ。この林野庁長官のテキストの関係が、かなり大きく糸を引っぱっているのか。それからやはり、そんなことを言ったって労働力はどうしても足りなくてかんべんしてくれ、こういう姿勢なのか。その辺、長官聞かしてもらいたいと思います。そしてさらに私も、私の地盤に対する火の粉は命を張って払わなければならぬのです。したがっていまの私のところの地元の反対勢をちょっと申し上げておきますと、山形の場合は酒田営林署内において署名が八千人のうち四千六百人、局に届かっています。それからこれは八幡町といいますけれども、町議会で超党派で反対の決議をしております。それから秋田県側を申し上げますと、生保内の営林署の管内ですが、田沢湖の町議会が超党派で決議をしております。反対の署名運動が、一万人のうち四千五百人署名をとっております。それからさらにつけ加えますと、秋田県知事が営林局長に取りやめるように請願いたしております。これは事実です。副知事をつかわして取りやめるように請願いたしております。こういうような段階において、今回計画されておる十月の薬剤散布をどうしても強行しようとするのかどうか。その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  210. 松本守雄

    ○松本説明員 ただいまの署名なり各町村議会の議決あるいは否決の状況も聞いております。それから秋田県の知事からの、これは実施についての慎重な配慮方の要請、これは伺っております。中止してくれということではございません。  そこで林野庁としましても、そういった公害が出るような場合には、これは実施をいたしません。ただ十分慎重に検討した結果、公害の点についてはもうだいじょうぶであるという場合には、これは実施をさせていただきます。なお地元にそういった反対がある場合には、つとめてそれに対して協力方、理解方を、場合によりましては戸別訪問までして説得と申しますか話し合いをして、そういった対決をするようなことはやりたくないと思います。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ぜひその点お願いをいたします。  ありがとうございました。これでやめます。
  212. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、島本虎三君。
  213. 島本虎三

    ○島本委員 まず私のほうから大臣に、もうすでにわれわれ耳にたこの出るほど知っているのですけれども、世を震憾させたいわゆるカネミぬか油事件というものがいま訴訟中であって、それもだいぶ進んでいるということも聞いておるわけです。しかしそのよってきたるところは、大臣も御承知だと思うのですが、ぬか油の製造過程で熱媒体として毒のある塩化ジフェニールを使ってそれを行なったが、不完全な施設のためについに油に混入してそれが中毒症状を起こした、こういうようなことになったようです。そうなると、これは被害者の怨嗟の声の中で裁判が進められている。そうなっても、この公害の一つ特徴として、因果関係を明らかにしてそれだあれだでぴたっといくには時間がかかる。これが一つ特徴になっているわけですけれども、したがってそういうような中には、究明することはなかなかむずかしいという特徴がある。こういうようなことは二度と起こしてはならない問題です。また起こすべき要因がある場合には、初めからそういうものはちゃんと排除をしておかなければならないものである、こういうように私は思っておるわけです。したがってそれに関連して、製法のその他についてもその後十分検討を進めているのかどうか、これをまず承っておきたいのです。大臣、これはどうでしょう。
  214. 内田常雄

    ○内田国務大臣 カネミ米ぬか油事件はもちろん食品衛生法に関連がある事件でございますが、ただいま島本さんから御発言のように、製造過程において入ってはならない熱交換の媒体薬品か何かが、機械の損傷等を原因として油の中に混入したということが明らかな原因であります。でありますから因果関係はもう明らかでありまして、一般の公害などのある種のもののように因果関係がわからないというものとは全く性質が違うわけでございまして、裁判の対象も故意か過失かという問題にかかっておると私は考えております。ああいう事件がございましたので、食品衛生法上の取り扱いも、ある種の食品製造業等については許可営業にいたしておりますが、他の種のものは許可営業になっておりませんでした。たとえば米ぬか油の製造業というようなものは許可営業ではなかったわけでございますが、あの事件にかんがみまして、米ぬか油の製造事業は政令を改正いたしましてすべてを許可営業の対象にいたしまして、そしてその事業開始の際あるいは途中いつでも食品衛生監視員が入っていって、許可の条件あるいは製造の過程等につきまして実地調査ができるようなことに実はいたしたわけであります。のみならずもう一つは、やはり自主監査のたてまえから食品管理者、その工場における食品管理者の制度が別にございますが、この米ぬか油の製造につきましては、会社みずからが食品管理者というものを定めて安全と、社長、工場長等の責任を問うのみならず、常時みずからも監視する食品管理責任者というものを設けることにいたしましたので、今後におきましては同種の事件は未然に防止できるたてまえにはなっておる次第でございます。
  215. 島本虎三

    ○島本委員 その後そういうような製法も若干変わってきているということも聞いておるわけです。しかしやはりこの際ですから、全油業界の総点検をすべき時期でもなかったのか。また当然、厚生省はこういうような事件を前にしてその総点検も行なって、製法その他についても立ち入り検査を含めて十分調査済みのものである、またそうしなければならない、こう思っているのですが、この総点検は行ないましたか。
  216. 浦田純一

    ○浦田説明員 先生のおっしゃる意味での総点検というものは、実は行なっておりません。しかしながら事件発生直後、二月でございますが、二月に関係の都道府県に通牒を発しまして、そしてこの種の工場についての調査並びにそれに対する報告を把握できるように指導しているところでございます。
  217. 島本虎三

    ○島本委員 農林省来ておりますか。食品油脂課長、来ているのですか来ていないのですか。  じゃ、ちょっと伺います。大臣はJASと書いたマーク、これは御存じですか。
  218. 内田常雄

    ○内田国務大臣 通産省のほうにJISマークがあると同じように、食品についてはJASマークというものが食品規格法の規定によって農林省にある、こういうことだけ承知をいたしております。
  219. 島本虎三

    ○島本委員 これはどういうような商品につけられるものなんですか。
  220. 浦田純一

    ○浦田説明員 私直接の所管ではございませんのであるいは的確なお答えにならないかと思いますが、やはり国民の食糧を確保し、それからその質を改善向上し、それを一定の規格を設けて普及させる、確保させるという趣旨のものかと思っております。
  221. 島本虎三

    ○島本委員 それで、これは局長でもいいのですけれども、食品衛生法で添加物とは認めておらないような品を使っているようなものはどうなりますか。今度はあなたのほうだ。
  222. 浦田純一

    ○浦田説明員 それは食品衛生法上明らかに違反行為でございますので、その事実があり次第厳重に行政上、あるいは場合によりましては刑法上の措置もとっていかなくてはならないと思っております。
  223. 島本虎三

    ○島本委員 メチルエチルケトン、MEK、この添加物は食品衛生法施行令による添加物として認められておりますか、おりませんか。
  224. 浦田純一

    ○浦田説明員 御指摘のメチルエチルケトン、これは現在のところ食品添加物の表には認められておりません。
  225. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、こういうように、いま前提条件としてわかりましたが、メチルエチルケトン、これなんか私も初めての名前なんですけれども、MEK、これを使って現在大っぴらに米ぬか油を製造しているのです。これはいま局長が言ったように、食品衛生法によるところの無認可の品である。中には毒性があると思われる。そしてこれはなお、からだの神経中枢を痛めるほかに、じん臓、肝臓それから心臓にも害があると思われる。メチルアルコール、これよりひどいといわれているわけです。それがもともと、この製造過程で熱を加えれば蒸発する、こういうような純粋なものであっても三%は残留するといわれている。食用油にそんなものが残留することになる。まして純粋なものでない場合には、それ以上残る。しかし油の三倍ほどのMEKを添加しないと全部の蒸発ができない、こういうようなことになっているわけです。このMEKを添加物として使用して米ぬか油をつくっている会社があるということを御存じですか。もしあったら、これはどうしますか。
  226. 浦田純一

    ○浦田説明員 実は先般来二、三度電話によりまして、都下の某会社でもって先生の御指摘のようなメチルエチルケトンを溶媒として米ぬか油を製造しておるという通告があったわけでございます。したがいまして、私どもはこの事実を重視いたしまして、その電話による通告者の方にこの製造会社名あるいは場所等をお聞きしたのでございますけれども、残念ながら御回答は得られなかったわけでございます。したがいまして私どもは、さっそく業界のほうにその旨をお願いいたしまして、また万一このような事実があるということにつきましては、これは明らかに食品衛生法の違反行為でございますので、十分こちらとしても措置する、またこういったことについては通報その他について協力してくれということを申し入れたところでございます。
  227. 島本虎三

    ○島本委員 農林省来ておりますか、まだ来ないですか。——早く呼んでおいてください。  その場合に、これは厚生省と農林省ですが、これは知らないわけはないのです。いま大臣が言ったように、カネミ油以後、今度は立ち入り検査その他十分注意を与えるようにしてこれを指導し、許可権さえも持ってこれを行使している。そうだった場合は、これはかりに知らないといっても、MEKのこの施設は外からわかるような大きなものです。これを知らないということだったら、立ち入りもしてない、業者まかせにしているということになってしまうじゃありませんか。これはすぐわかるのです。もしわからないということになれば怠慢です。これはどうですか。
  228. 浦田純一

    ○浦田説明員 ただいま、違反している会社につきましては、当方としても鋭意調査中でございますので、いましばらくの御猶予を願いたいと思います。
  229. 島本虎三

    ○島本委員 いま調査中であって、それらの会社がいつからつくっておったかというこの事実は御存じありませんか。これは国民の健康上重大な問題なんです。いつからつくっていたか、この監視の過程、これをはっきりさせてもらいたい。
  230. 浦田純一

    ○浦田説明員 先ほどお答えいたしましたように、電話による通告、それに基づいておおよその場所の見当でもつけば非常に幸いとするのでございますけれども、それも得られなかったそうで、たいへんにその場所の発見についておくれていることは遺憾に存じておりますけれども、いましばらくの御猶予をいただきたいと存じます。業界のほうには別途に厳重にその旨を通告してございますし、またこれに応じての監視体制については十分強化をはかってまいりたいと思っております。
  231. 島本虎三

    ○島本委員 この問題について、ちょっとこれは大臣関係がございます。これは工業用の溶剤に使用してもよろしいということになっている薬品です。許可濃度二〇〇PPM、こういうような条件のもとで溶剤として工業用に使用されることになって許可されているものなんです。食品としてこれを使うことに対しては全然許可されていない。これを堂々と使っていま売り出しているのです。これの被害が出たあとどうなりますか、そのことなんです。工業用の溶剤です。ペイントだとかこういうようなものに対して使ってよろしいというような薬剤ではありませんか。これを食品の中に入れて油をつくらせる。それも、純粋なものでも三%は残留するというやつでしょう。まして、この三倍くらいまぜないとだめなんです。それも純度の高いものでないとだめなんです。もし純度の低いものであった場合、もっとこの残留が多いわけです。ましてこれは消防法上から見ても、これは消防法で許可を得てなければこんなことできないはずなんです。食品を製成する過程でこれをやっておるとしたら、二重、三重に違法を犯していることになる。知らないということは、大臣、さっきの答弁とちょっと違います。国民の生命に関する問題であります。これは少し重大ですから……。
  232. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私からお答えしますと同時に、ここにおります関係局長にも私のいま言うことをよく聞いておいて実行してもらいたいと思いますが、食品衛生法には食品添加物に関する規制の規定がありまして、有害、有毒物質は添加物としては使わせないたてまえになっております。   〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕 厚生大臣の許可がない限り添加物は使うべからずということになっている。たまたま厚生大臣の許可したものにおいてさえも、後の科学水準から有害であるというものが出てきて、後に取り消したりしておりますもの、チクロのようなものがあります。そこで私はぜひこういうことをしたいと思います。いまの問題を起こした塩化ジフェニールにしても、また御指摘のメチルエチルケトンというようなものにしても、これは食品の中に入れる添加物ではございませんし、添加物としては許可してないことはもちろんだろうが、食品加工の過程において、政府当局の許可がなければこのようなものは使えないという補完規定、私はそういう規定を当然新しい時代のもとにおいては食品衛生法の法体系の中に入れるべきだと考えますので、これは法律を直さなければならないならば法律の改正法案を提案したいし、あるいは政令等でやれる場合には政令等で政府の責任でやらしていただくというふうに当然すべきであると思いまして、私は島本さんのおっしゃることは正しいと思いますので、私はこの場において、これは関係局長にも私がいま述べたような趣旨においてやらせるようにいたします。  以上で御了承願います。
  233. 島本虎三

    ○島本委員 カネミの米ぬか油の問題で、いまいかに係争中の問題であっても、これは業者を含めて当然えりを正さなければならないし、国民に対して、消費者に対してはそういうふうにしなければならないはずの同業者が、またしても再びそのおそれのあることを公然とやっている。それを厚生省が知らないということは私は言わせない。まして大臣、その油、その製品に、ここに張っているようにJAS、これを張って推奨して出しているじゃありませんか。農林省で推奨して出しているのです、これは。こういうようなことは許されません。政府の姿勢の問題じゃありませんか。何ですか、これは。ほんとうに困るのだ。JASをつけて出してある。証明しているじゃありませんか。国民は安心して使うのです。そのあとどうなりますか。
  234. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私がいま答弁をいたしましたような制度の改正をいたしまして、その改正につきましては農林当局とも打ち合わせいたしまして、そういう危険な過程によってつくられた食品は、たとえその危険物姿が食品の中に入っていない場合においてもJASの対象にはならない。言いかえるとJASの対象になるような食品は、農林省がそれをつけられる場合には、厚生省が食品衛生法等でこれから定める危険な過程を経ないものに限ってJASをつける、こういうようなふうに厚生、農林両省で打ち合わせを遂げるようなことにいたしたいと思います。
  235. 島本虎三

    ○島本委員 それを強く要請しておきます。  なお局長のほうから、使用会社についてはまだわからないという。いつからこれが販売されているか、この数量もまだ答弁がないのです。これは全然わからぬのですか。国民全部に出回っているのです。これがわからぬのですか。某所において、もうすでにこれらに対する指導が行なわれているじゃありませんか。知らないとは言わせないです、これは。いかに大臣が言っても、官僚がそっちのほうで別なことをやっていたらどうします。国民を愚弄することです。だめです、これは。ほんとうに知らないのですか。何ぼ出回ったか、これははっきり答弁できませんか。
  236. 浦田純一

    ○浦田説明員 数量は、いまのところ把握しておりません。また、しかし日本ではこれは許可されていないのでございますけれども……(島本委員「アメリカだって言うのか」と呼ぶ)アメリカでは……。
  237. 島本虎三

    ○島本委員 うそ言いなさい。そんなことを言うから悪いのだ。アメリカで許可しているから日本はそのまま使ってもいいという考えのようだ。そういうのが悪いのだ。アメリカでどんな方法でやっているか知っていますか。厚生省としては、アメリカでやったものは何でも、もう結果がどうであろうと、こっちで使ってもいい、こういうようなことをだれがきめたのですか。これは何かうそらしいというじゃありませんか、アメリカで使っているというのも。それをはっきりさせてあるのですか。出回った数量がわからないという。アメリカがやっているというけれども、逆にそれもうそらしいという。やっていれば何でもかんでも、厚生省、まねしてもいい、こんなことだれがきめたのですか。それから使用会社、これもあなたはわからないという。私は知っていますよ。知らせましょうか。知らないわけ、あなたないでしょう、電話がいくほどですから。講習会さえやっているじゃありませんか。それが知らないのですか。知らないとは言わせない。あなた、言ってください。どこの会社ですか。
  238. 浦田純一

    ○浦田説明員 ほんとうに存じていないわけでございます。ひとつ、おそれ入りますけれども教えていただきたいと思います。
  239. 島本虎三

    ○島本委員 あります。だけれども、私はあなたが知らないわけはないと思います。そうでなければ農林省が知っています。JASをつけているのは農林省、農林省でこれを指導しているのです。農林省まだ来ませんか。——農林省、指導しているのです。それを知らないということがありますか。あなた、その方面の責任者でございましょう。そうして、もうこの問題に関してはもっと大きい問題があるのです。米ぬか油業者、これを育成するためにはある程度やむを得ない、では、業者を育成するために国民を殺しても差しつかえないのですか。そういう考えではだめです。これは厳重に、薬物に関する限り、もうあなたが取り締まらなければならない。なぜあなたが農林省に言ってやれないのです。まして出回った数量がわからないことにおいては、とんでもないじゃありませんか。大手ですよ。大手、中堅二十社ですよ。東京、大阪その他で現在製造中ですよ。わからないわけないんだよ、大臣。わからないというけれども、私がわかって、なぜわからぬ。いま言ったように大手、中堅合わせて二十社、東京と大阪、それがもうすでに現在製造を開始している。こういうようなことが国民の生命と健康を傷つけているのです。農林省を早く呼びなさい。これはだめです。こんなことで。JASをつけてちゃんとやっているのだ。そうして、これは政府に言っておきますけれども、油自体、大豆と米ぬか油、これはともに業者が競争しているのです。正当なる、許可された精製方法によるとコストが高くつく。米ぬか油は年間約六万トンの消費量、これに対してはっきり、精製工程を別な許可されない方法に変えて、中間経費を省いて、それによってもうけているのです。ドラム一つ当たり二万円でできるのです。手を省くことによって一〇%から一五%利潤が浮くのです。それだけ国民の健康が危険にさらされるのです。それを現在やっているんです。知らないのですか。これは農林省がJASをつけて売り出しているんです。あなたのほうで許可してないこの薬品を熱の媒介剤として使ってやっているんです。こういうようなところに厚生行政のミスがあると私は思うのです。えりを正さないといけませんよ。あなたをおこったってしようがないけれども答弁しますか。
  240. 浦田純一

    ○浦田説明員 先ほども申しましたように、メチルエチルケトンの使用については許可されていないわけでございます、日本ではノルマルヘキサンの使用は許可されておりますが。したがいまして、メチルエチルケトンを使っている事実につきましては、まことに相すまぬことですけれども、事実があるということでそれを確認していなかったのでございますが、先生の御指摘もございまして、早速農林省その他関係のほうにこの事実を確かめまして、もしも事実であるとすれば一刻も早くこれらのことが中止されるように、またもしも製品として出回っておるとすれば、これは断じて食品衛生法上の措置をとるようにいたしたいと考えます。
  241. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、この問題はわかりました。しかし、大臣、こういうようにして危険な要素を含んだ問題であるのに大手、中堅の業者もわからないという。しかし、わかっているはずです。わからなければ発表します。すぐこれをやってもらいたい。なお、農林省のほうでJASをつけて売り出して、その業者がわからないわけありません。JASをつけて売り出しているんです。これはもうはっきりした事実ですから、直ちに手続をしておいてもらいたいと思います。三十日にまた委員会があるそうですから、そのときに正式にこの回答を求めたいと思います。出回った数量、それからなぜ不完全なものを使ってやったのか、不許可のものを使ってやったのか。それからつくった会社名、こういうのは十分調べておいてほしい、こういうように思うわけであります。三十日に当然データを期待しておきたいと思います。大臣、それでよろしゅうございますか。
  242. 内田常雄

    ○内田国務大臣 島本委員からの御要望の調査のことは、次回の委員会までに私のほうも調べさせまして御返事を申し上げるようにいたします。
  243. 島本虎三

    ○島本委員 なお違反事実ですから、それを厳重に取り締まっておいてもらいたい。  最後の一点、公害防除上重大な必要のある問題はいまSO2、排気ガスの問題が大きい問題です。それもまた、精製の過程において間接脱硫がいま行なわれております。直接脱硫はまだ未完であります。しかし間接脱硫は直接脱硫と比べて二倍の量が使われます。現在質のいいものを、いわば硫黄分の少ない純粋なる油をつくろうとすると、逆にアスファルトのほうがふえるのであります。アスファルトが用途がないから、まぜて純度二・五か二・六のちょっと硫黄分の高いものにして使わざるを得ないのが日本の宿命なんです。したがって、いまここにアスファルト本来の用途によって今度道路の舗装その他に全面的に使えるようになれば、これは公害行政が進むと同時に、都市がひとつ環境がよくなることにおいて、まさに一石二鳥になるわけです。こういうようなことについていままで全然——これはもう、公害対策の窓口であった、こう言われながら、大臣それに気がつかないはずはないと思っておった。今回はからずもこういうような問題が私どものほうで問題になりました。いまミナスオイルが入る段階もはっきりしているわけですが、十分な量でありません。したがって、いまは排煙脱硫、間接脱硫、こういうようなことによってりっぱな純度の高い油をつくる。そのためにはいろいろな硫黄分をアスファルトの中に含めて、それを取り出して、逆に今度は道路に使ったならばいいことになるわけです。道路の舗装率は日本は残念ながら低いのであります。これはもうどういうようなことになっておりましょうか。建設省から来ておりますか。
  244. 菊池三男

    ○菊池説明員 お答えいたします。  建設省としては従来から舗装に非常に力を入れております。それでただいま舗装率がどのくらいかという御質問でございますけれども、たとえば国道それから都道府県道、これだけを例にとってみますと、ちょうど十年前、昭和三十五年くらいは舗装率が約一一%ちょっとでございます。それが四十四年度末、ことしの三月の舗装率では四六%まで上がっております。こういう現状でございます。
  245. 島本虎三

    ○島本委員 交付税によってやる市町村道、こういうようなものはどういうふうになっておりますか。自治省から来ておりませんか。
  246. 佐々木喜久治

    佐々木説明員 市町村道の道路の改良、舗装率は昭和四十四年三月末現在で改良率で一四・一%、舗装率で七・二%という数字になっております。
  247. 島本虎三

    ○島本委員 農道は舗装されておるところありますか。これは農林省。
  248. 茶谷一男

    ○茶谷説明員 農道の舗装につきましては、沿道農地で飛散砂利の防止あるいは荷いたみの防止の見地から、昭和四十四年度から畑地だけに限定いたしまして舗装を始めました。全く微々たる段階でございますが、今年度からは全地域にわたって舗装を実施するということで、まだパーセンテージもほんとうに微々たる、千何百キロという、パーセンテージにならないものでございます。
  249. 島本虎三

    ○島本委員 林道は舗装した個所ありますか。林野庁。
  250. 海法正昌

    海法説明員 お答えいたします。  民有林道につきましては現在まだ舗装いたしておりませんけれども、先ほど来のお話の公害の問題もございますので、民家等にそういう影響のあります場合につきましては、その防止をするために、防御できるような措置考えているところであります。  それから国有林につきましては、わずかでございますが一部実施をいたしております。
  251. 島本虎三

    ○島本委員 少し急いで申しわけありませんが、私の手元にある資料によると、アメリカでは約八〇%の道路は舗装されてある。これは山も含むのです。それからイギリスでは一〇〇%である。それからヨーロッパ全土では七〇%だ。日本に参りまして、日本の市町村道の現在の舗装は平均五・三%になっておる。この中に農道も入る。そのほかは道路予定地か、そうでなければ地球の表面を歩かしていることになる。これがGNP世界第二位の実態なんです。それも公害、SO2の問題でこれほど国民がいま悩んでいる。それをやる方法はアスファルトを使えばいいんです。そのアスファルトを使わないで地球の表面を歩かしているのが、皆さんの行政である。これで公害対策、なりますか。だめだ。なぜこのままにしておいたのか、通産省の石炭局、来ておりますか。どうしてあなたはこんなことをちゃんとはっきりさしてやらせないのです。責任はあなたにもあるのです。
  252. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 先生御指摘のとおり「SO2の公害問題につきまして、間接脱硫装置から中間的に出てまいりますアスファルトを多量に使うことが大気汚染防止上非常に役に立つという観点から、農林省にお願いいたしまして、従来ございませんでした新しい項目として予算を昨年度つけていただきました。林道につきましてもことし御要求いただくことになっておるように聞いております。そのほか私どもといたしましては、建設省等にもできるだけアスファルト舗装をふやしていただくようにということを、私どもの石油業界から陳情さしております。  これらのことから、徐々にこの問題についての各省の御理解が深まってきたように私ども考えております。何しろ道路というものはその資材に比べまして施工費といいますか、その他の費用が非常にかさむもので、原材料に比較しまして非常に膨大な予算を要するものでございますので、それらのことから、各省でもそれぞれの御理由がございまして、私どもが御要望申し上げている量になかなか達しないというのが実情でございます。
  253. 島本虎三

    ○島本委員 厚生大臣に申し上げます。いま言ったような状態なのであります。これでやはり二百六十万トンは、いままでのアスファルト、これはもうその量だけはぜひ使わなければなりません。それは現在のように、潤滑油その他ガソリン等こういうものからとるアスファルトですから、今度間接脱硫によってもたらされるのは五百万トンほどまたよけいになる。あと五年たったら一千万トンにふえるわけです。そういうことになりますと、空を曇らさないで環境をよくするためには、アスファルトをよけいに使うことがまず先決問題になる。農道もさっぱりだめだ。林道なんかほんのちょぴっとやっておる。あとはほとんど地球の表面を歩かしておるのが実態なんです。ですから、そういうところに少なくともこれらをやったならば、リンゴもイチゴもいたまないで、環境がよくなったほかになお成績があがるじゃありませんか。公害対策はこれをもって、まず、大臣がいまほんとう日本国民の環境を守り、生命と健康を守るためにも、これはやってやれないことはない、やって喜ばれない問題じゃない。やればやるほど文化性が高まる問題ですから、ぜひこれは閣議の中で出して、いま言ったように各省のほうではそれほどあまり十分でないようですから、この問題に対してはぜひやるようにということを大いに発言して、公害対策を推進してもらいたい。この重大な決意を聞いて終わりたいと思うのですが、大臣どうですか。
  254. 内田常雄

    ○内田国務大臣 島本先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも前からそのことは気がついておりまして、地方道あるいは農道等の建設促進をする際にアスファルト舗装のために国が特定の財源等をでき得る限り求めて助成するという方向に持っていって、公害防止とそれから地方道、農道の整備、一石二鳥にしたいという政策をできる限り今後も推進してまいる覚悟でございます。
  255. 島本虎三

    ○島本委員 それではこれで終わります。終わるけれども、きょうついに終わるときまでに農林省は来なかった。どうもこれはまことに残念です。JASをつけた張本人が来ない、こういうようなことはまことに遺憾であります。したがってこれは三十日の日に、このデータとともに、委員長には農林省を呼んでここではっきりさせることを私は心からお願いしておきたいと思います。きょうはこれで終わります。
  256. 倉成正

    倉成委員長 小林進君。
  257. 小林進

    ○小林(進)委員 まず公社に伺いましょう。  国鉄公社にお伺いしますが、昭和四十三年の八月八日にも、国鉄の黄害の問題について——「こうがい」というのは公の害じゃないんだ。黄色い害なんだ。黄色い害について、当衆議院の運輸委員会で相当激しく国鉄公社にこれを排除することの要望が繰り返されて一年たちました。一年もたたぬけれども、今度は四十四年の四月十六日も、同じく六十一回の国会の中で、同じく国鉄の黄害排除の問題について激しい質問が行なわれた。それに対して四十三年のときには運輸省としては、運輸大臣が中曽根康弘運輸大臣。四十四年のときには原田憲運輸大臣が、それぞれ委員会の中でりっぱな答弁をしておられる。その後その大臣答弁に基づいて国鉄公社は実際の面においてどういう行政をおやりになったか、私はそれをお伺いしたいと思います。
  258. 山田明吉

    ○山田説明員 先生御指摘になりましたように、四十三年当時からたいへん黄害の問題がやかましくなりまして、いま御指摘になりましたように、国会でもいろいろな御指摘がございました。それで国鉄といたしましても、この便所の黄害の問題は、それまでなおざりにしていたわけではございませんで、それで急遽恒久的な具体策を立てようというので、ちょうど四十三年の秋から一応の計画を立てたわけでございます。  その考え方といたしましては、これはもうすでに御承知のことだろうと思いますけれども、列車の車にタンクを取りつけまして、そこで汚物をためておきまして、そうして車両基地へ戻ってきたときにその汚物を取り出す、こういうような考え方でやろうということにしたわけでございます。したがいまして、それに対してのやり方としては、まず車にそういう汚物をためるタンクをつくること、それと車両基地で、これは車両基地はたくさんございますけれども、主要基地でその汚物をためる基地の汚物だめ、それからその汚物だめからさらに下水溝にこれを排除しなければなりませんので、それの配管というような手当てが必要になるわけでございます。  それで始めたわけでございまして、結論的に申しまして、ただいままでにやりましたものが、タンク式の車両数では九百十三両の車両の汚物だめを整備いたしました。それから地上設備では、大阪の宮原の操車場車庫に現在工事中でございまして、近く東のほうでは品川に地上の設備をやる計画にいたしております。
  259. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかくこの黄害というのは、人の頭に大小便を振りまいて歩くということなんです。国鉄当局は、北は北海道の果てから九州の果て——琉球まで行ってみたら、琉球には汽車はありませんでしたから、幸い琉球にはその黄害はないが、この間全国を、くそ小便を頭の上にといわず振りまいて歩くというのが、私の言う黄害問題なんだ。その黄害問題について、あなた方は四十三年から、やれタンク式をやります、それから新幹線でタンク式をやります、長距離の急行や特急の列車にはたれ流し消毒方式をやります、あとの一般列車にはたれ流し消毒方式もタンク方式もやらないで、そのままなまのままで地域住民、人の頭にふん尿を花火のごとく振りかけて歩く、こういうことをおやりになっているわけです。そういうことをやっておいて、いま何ですか、へたらへたらと話をしながら、タンク方式で九百十三両、基地といえば大阪の宮原に設けただけでいま品川に整備中だ、二つも満足にできていないじゃないですか。たった一つしかできていない。四十三年からこの国会で声を大にして叫んでいるけれども、言いかえれば何もやらぬということじゃないですか。一体、現在国鉄の中には車両が幾つありますか。私が言うから、数字が間違っていたら間違っていると言ってください。私の数字では大体二万五千二百という車の数があって、その中で一万七千六百車両にみな便所がある。一つの箱に二つという便所のあるのがある。それまで計算いたしますと、大体便所の数は一万九千だ。これは最小限度の数字だ。もっとよけいあるかもしれませんが、一万九千の便所を持っている。これが動く便所です。日本じゅうに、一万九千という便所が瞬時も休みなしに動いている。そして国鉄は、驚くなかれ、この動く便所の中の大小便を振りまきながら九十八年の歳月を経過してきたわけだ。驚くべきことですよ。そういうことをおやりになってきて、何もこれを措置しなかった。ようやく国会でやかましく言い出してきてから、先ほども言われたように言いわけ式をやって、タンク方式で九百十三両をやりました——二万五千二百両の中で九百十三両とは何ですか。パーセンテージの勘定もできないんじゃないですか。そのほかに今度は大小便たれ流し消毒式といって、便所の中にきっと消毒液か何かを流して、流れたやつを粉末にして雨あられのようにちりばめながらやるんだ。粉末で固めたやつを人の頭に投げ飛ばしたのじゃ気の毒だから、これを今度は霧のごとく粉末にしてはなやかにやろうというのが、これがいわゆる大小便の消毒液による粉砕方式というやつだ。こういうことをやっておいて、そうして国鉄が赤字だの青字だのというようなことを言われては、たまったものではありませんよ。あなたたちは四十三年のときに、大体千の車を改造いたしまして、そうしてそういうものを可及的すみやかに持ってきまして、四十五年度には二千車両ぐらいは何とかひとつ改造をいたしたいなどと言っているのでありますけれども、この国会内部における答弁さえもごまかしているじゃないですか。九百十三両、何割しかできていないということは何ですか。かりにいま言われたタンク方式とたれ流し消毒粉砕方式の車両を除いても、今日なお一万七千の動く便所が全国至るところに大小便を振りまいて歩いているという勘定になる。こういうことを一つも処置しようとしないで、あなた、一体どこに公害対策があるのですか。国民の衛生や安全を守るという口幅ったいことが、一体どこで言えるのですか。  そこで、私はあなたに一つお聞きしたいのだ。国鉄が一年間に輸送される人員は一体何十億人ですか。時間がないから簡単でいいです。
  260. 山田明吉

    ○山田説明員 大体七十億人でございます。
  261. 小林進

    ○小林(進)委員 八十億人ぐらいいくだろう。ちょっと十億人ぐらいごまかした。七十億から八十億にしておきます。そうすると、一日に換算いたしますと、三百六十五日で割るから二千万人から二千二百万人だな。そのうちで列車の便所を利用する者は一体何人いますか。
  262. 山田明吉

    ○山田説明員 実はそこまで調べておりませんけれども、七十億人の中には通勤客も入っております。
  263. 小林進

    ○小林(進)委員 通勤客とか長距離客とか、そんなことを言っているのじゃない。君に聞かなくたって大体わかっておる。学者を集めて——ぼくの科学的、数学的な計算に基づけば、大体大便を使用する者は一万人に対して三人です。どうです、この数字は。一万人に対してパーセンテージでいけば〇・〇〇三、一万人に対して三人だ。だから通勤もあれば長距離もある。小便のケースでいけば千人に対して二人です、大体二千万人から二千二百万人の中で。そこで平均一人の排せつ量では、大は三百グラムぐらい、小に至っては三百五十CCだ。これは最小限度だ。そこで、この計算で一日の排せつ量を計算いたしますと、大便で二千トン、一万人のうち三人がトイレを使うとして計算して二千トン、小便に至っては百四十五万リットルだ。二千トンといえば、米俵に直しますと三万俵ですよ。三万俵の俵に入れるこの大便を毎日毎日全国に振りまいているのが国鉄です。大臣、これはたいへんな話ですよ。小便に至っては百四十五万リットルです。この小便を雨あられのごとく日本じゅうに振りまいて歩いている。こういう不潔きわまる国が一体どこにありますか。それをあなた方は、そんなことを計算したことがないからわからぬのか、ごまかしながら何にもやらないでいる。これも学者の研究によりますと、おとなの大便の中には一〇%ないし二〇%の大腸菌が含まれている。ここには医務局長は呼んでなかったか。医務局長どうだ。——便所の中に一〇%、二〇%の大腸菌がいるという。学者の科学的な数字に基づけば、二千トンの大便の中には二百トンないし四百トンの大腸菌が含まれておるという。国鉄当局は一日に二百トンないし四百トンの大腸菌を日本じゅうくまなくばらまいて歩いておる。こういうようなことをしておいて、よくもまあ九十八年も、運賃を上げますの、ローカル線をやめますの、かってほうだいのことをほざきながら今日まで来られたものだと私は思うのです。ずうずうしいにもほどがあると私は思っておるのだ。しかし、これを一体皆さん方はどう処理をせられるのかというそのせつない問題を、四十三年からこの委員会で声を限りにわれわれは叫び続けておるにもかかわらず、あはた方は何もおやりにならない。どうですか。  これは名古屋大学の古川博士が御研究になったのでありますけれども、走る列車の中でいわゆる大小便をいたしますと、大便でも列車の側面から細菌が二十五メートル飛ぶというのです。両脇ですから、こっちも二十五メートル、こっちも二十五メートル、合計五十メートルがいわゆる大小便で全部よごされるわけです。あなた方は全くこういう学者の研究をそのままにされているのですか。私はかりしゃべってもあれですから答弁してください。
  264. 山田明吉

    ○山田説明員 いまの一人当たりの排せつ量、それから七十億人のその数字が、私どもの事務当局でちょっと調べた数字ですと、汽車区間を利用しているお客が統計上年間に二百二十六万人でございます。したがってこの人たちが便所のついている列車を一応利用できる状態にあると考えられますので、二千万人とおっしゃいました数はちょうど一けた多いように思います。  こまかいことは別といたしまして、九十八年間確かにまき散らしていたわけです。これからの問題でございますが、沿線に非常に人家が稠密になっておる現在、やはり放置しておけないと考えまして、全体的に手当てをするならば一体どれくらい金がかかるだろうかということで私どもで推算いたしましたものが、大体八百億円でございます。これが先ほど申しましたように列車の改造費とそれから地上設備の工事費でございまして、これについては私ども正直に申し上げまして、やらないというわけではございませんけれども、現在の財政状態から短時日にやることは非常にむずかしいということで苦慮をいたしております。予算をできるだけ苦面いたしまして早急にやりたいという考えはただいま持っているわけでございます。
  265. 小林進

    ○小林(進)委員 時間が十分しかなくなったからいいですが、しかしあなた、国鉄法の六十三条には、国鉄は国の機関であるということを明らかにしているのですよ。あなた方は営利の民間会社じゃないのです。その国の機関の一部とみなされておるものが先頭になって、憲法第二十五条できめられている公衆衛生の向上、増進と反対に、いわゆる公害問題が叫ばれているその先頭に立って公害も公害、黄色くなった黄害を振りまいているなどというのは言語道断じゃないか。しかもその言いわけは、金がかかるからやらない。金がかかるからやらないというなら、企業もみんなやらなければいい。厚生大臣、いいですか。時間がないから言うんだけれども、あなたは清掃法に基づいてそういう問題を監視する責任があるのですよ。国鉄がそういうものを振りまいているのを一体許可しているのか。清掃法に基づく違反事項があれば、行政命令権というものをあなた持っている。国の機関だから国鉄には行政命令権が及ばないのかもしらぬけれども、こういうようなことを、振りまかれているにもかかわらず、あなた黙って見ているの。清掃法に基づくその命令権ないの、大臣
  266. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは小林さんのほうがよく御承知で、実はあなたをはじめ同憂の士の御提唱もございまして、数年前に清掃法の中に、列車などの車両を運行する者は、環境衛生上支障のないように屎尿の処理はしなければならない、こういう規定を実は入れたわけでございます。これに基づきまして、厚生省は国鉄当局にも、この規定の趣旨に従って有効適切なる措置を講ずべきことを申し入れいたしてきておるわけでございます。私のほうは環境衛生を重んずる役所でございますから、金がかかろうが、いろいろな困難があろうが、国鉄当局にはぜひ、できるだけ一年でも早くこの条文に基づく衛生施設を完備していただきたいということをいままでも申し入れてきておりますが、ここでまたあらためてお願いをいたす次第でございます。
  267. 小林進

    ○小林(進)委員 運輸大臣もいないから運輸省だけれども、運輸省もやはり公社と同じような考え方で、金がなければしようがない、やむを得ないだろう、まあまあ、このままやっぱり人の頭に大小便をばらまいていくというお考えなのかどうか。運輸省としては国鉄の赤字解消が大問題だからふん尿問題はあと回しにする、こうおっしゃるのかどうか。
  268. 秋富公正

    秋富説明員 確かに公衆衛生上また環境衛生上この黄害の問題はゆゆしき問題であるということは、四十三年八月、委員会でも御指摘があり、十分承知をいたしておることでございますが、先ほど国鉄のほうから答弁いたしましたように、十分やりたいという気持ちはあるのでございますが、来年度はいわゆる償却前におきまして約八百六十億の赤字という国鉄財政の状態でございまして、いかにして来年はこの国鉄の経営自体を持っていくかということに非常に苦慮しておるときでございまして、その中におきましてこの黄害問題をいかにさらに前向きにやっていくかということは、今後また十分検討きしていただきたいと思っております。
  269. 小林進

    ○小林(進)委員 もう君たちは、企業家はそうなんだ。経営が第一、黒字が第一である。経営が第一だから、人権問題とか衛生とかそういう問題は第二、第三だという考えだ。それがもう根本的な間違いなんだよ。そういうことならばいつまでも、企業が黒字になるまでは五年でも十年でも住民や大衆はくそをかぶってがまんしろ、そのうちには国鉄が赤字が解消したら直してやるわいという考え方です。君たち、失敬千万な答弁だよ。そんなことでぼくらが引っ込んでいると思うのかい。だから君たち小官僚はきらいだと言うのだよ。大臣を連れてこいと言うのはそれなんだ。小ざかしいような君たちの答弁なんか……。いつもそういうことしかしゃべらない。第一だめなんだよ。おまえたちはものの順序がわからないのだ。赤字でございますの、だから人の迷惑も知らないで、黒字線だけ残しておいて赤字のローカル線をなくしようとか、そっちの鉄道は廃止しようとか、あるいは地方自治体にその赤字の線だけの負担金を持たせようとか、もう時間がないからやめておくけれども、そんなような経営のしかたなら君たちは要らないよ。われわれが行ってみんな経営してやるよ。もっとじょうずに経営してやるよ。まあ君たちにそんなことを言ってもしようがないから、時間がないからやめるけれども。  そこで労働基準局長に言うのだけれども、基準局長は労働基準法に基づいて労働者の安全衛生を守る、あなたは最高の事務官僚だ。その国鉄にあって、国鉄の沿線にもやはり職場もある。トンネルの中にも働いているのです。その国鉄の職場の中を、不遠慮に大小便をたれ流しながら走っているんだ。こういうように国鉄の職員がもろに大小便をかぶっているというその職場の安全と衛生に対して、どういう処置を講ぜられておるのか、私はそれをひとつ聞いておきたいと思っています。
  270. 和田勝美

    ○和田説明員 私どもも、先ほど厚生大臣から御答弁がございましたが、労働者の衛生を守るということにつきましては、ぜひこれの確保をはかりたいという立場の役所でございます。この国鉄のいわゆる黄害問題につきましては、国会でも御論議になっておりますし、私どももそういう点では注目をいたしておりまして、国鉄に一日も早く黄害問題が出ないような設備改善をお願いをしてあります。それからまたそれまでの過渡的な問題としましては、線路上で働く人たちにそういう状態が出るときには、これがすみやかに洗浄されたり清潔にされたりするような、そういう状態をつくってもらうように申し入れております。
  271. 小林進

    ○小林(進)委員 申し入れたってさっぱり効果もあらわれていない。たった一つの効果といえば、トンネルに入ります、町の中に入りますから、乗客の皆さまがまんしてトイレを使わないでくださいというような、人の人権を無視するような車内放送をしているだけの話であって、具体的に何もやっていませんよ。そこで総理府長官も来ていないが、公害対策部長などということになれば、それはヘドロもあるだろうし騒音もあるだろうし、いろいろそれはあるだろうけれども、これは公害中の公害である。これは臭気もありますよ。ないと思うのかね。どういうふうに考えておるのか。
  272. 植松守雄

    ○植松説明員 公害対策本部がいま全力をあげて取り扱っておりますのは、大気汚染とか水質汚濁という問題でございまして、われわれがいま扱っておる問題とは少々異質のものであるような感じがいたします。しかしもちろんこれは沿線の住民の方にとりましては、さらに直接的な被害を受けておるということで、いまお話を伺っていろいろの状況がわかったわけでございます。しかしやはり公害対策本部というのは、役所の事務の話をして恐縮でございますけれども、各省に関連した問題についての調整をやるのがわれわれの第一の仕事でございます。そういたしますと、この問題は何といいましても、やはり国鉄ないしその監督官庁としての運輸省が第一義的に責任を持つ問題でございます。しかしもちろんわれわれ責任のがれをする意味で申し上げるわけではございませんので、やはり先ほど話がありましたような、国鉄なり運輸省の方針に深甚な注意を払って、今後その整備の促進につとめたい、こう申し上げる以外にいまのところお答えができないのであります。
  273. 小林進

    ○小林(進)委員 与えられた時間がまだ三分ぐらいありますが、そういうことでございまして、公害対策本部をつくったところで、その官僚をつかまえて答弁させれば、対策本部をつくったけれども、各省にまたがる調整機関でしかないから私どもはやりません、私は水質汚染の問題しかやりません、そんなことはもう聞かぬでもわかっているんだ。それだから審議官なんかいやだと言ったんだ。君は無理して来たんだが、答弁にならぬ。帰って大臣に言っておきなきい。そういうことで話にならないが、ともかく、いま一回運輸省に聞きますが、あなた方は来年度の予算を組んでいると思うのだ、国鉄の予算も大蔵省にもう請求を出していると思うのだが、この黄害に対する四十六年度の予定予算は一体幾らになっておるか。
  274. 秋富公正

    秋富説明員 実は国鉄の来年度の予算につきましては、まだ提出できていない状態でございます。
  275. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、国鉄は一体幾ら予算を組んでいますか。
  276. 山田明吉

    ○山田説明員 いま運輸省から御答弁がありましたように、来年度は償却前の赤字が国鉄始まって以来で、その赤字の問題が先に出ておりまして、まだ工事予算の内容まで入っておらないのが今日の現状でございます。
  277. 小林進

    ○小林(進)委員 実際君たちは、赤字をいい理由にして、人の頭にくそを振りまいて歩くという話があるかね。一体、人に小便をかけっ放しで日本じゅう歩くという話があるかね。われわれは酔っぱらっていたって、道で小便をすれば、おいこらでつかまるのだ、罰金をとられるのだ。そんなことをやっていて、赤字でございます、赤字でございますなんて、問題の次元がずいぶん違うじゃないか。そんなことではだめだ。この黄害対策のためにどれだけの予算を組んだかということを、帰ってあらためて書面をもって、運輸省なり大蔵省へ請求すると同時に、その複写を委員長を通じてひとつ私どもに提出してください。いいですか。
  278. 山田明吉

    ○山田説明員 承知しました。
  279. 小林進

    ○小林(進)委員 それができなければ、私は国鉄の弾劾のために戦いますよ。あなた方はものの順序を間違っているんだ。  もう時間が来たからやめますけれども、なおかつ一言つけ加えるけれども、国鉄ほど世の中に不親切で人を小ばかにしているものはないぞ、あなた。汽車なんかに乗ったら、一体何です。町を通りますから、やれ密集地になりますから、トンネルに入りますから便所に入るな、人の生理現象を制限しているのは世界じゅうでおまえさんのところしかない。そういう失敬千万なことをやっていて、なおかつ騒音——騒音といえば、汽車に乗ってみたまえ。汽車に乗れば人は眠っているか、あるいは相手と話をしているか、あるいはぼくのごとく勉強をしているか、三つに一つだ。それを君、大きなラッパをつけて、乗客の皆さまに申し上げます、言いたいほうだいだ。車掌さんなんかに一々あれをやられると、その間眠っている者は目をさますし、しゃべっている者はしゃべることもできないよ。本を読んでいる者は頭に入らないからやめてしまう。長々とやっていることは、やれたなの荷物を忘れるな、やれトイレに行って手を洗ったら時計やなんかを置き忘れるな。親切でいいけれども、子供に言うようなことをべらべらしゃべって、長いものは十五分も二十分もしゃべっている。あれこそはほんとうに騒音で、騒音といえばあれほどの大きな公害はないのですよ。ああいうことも全部整理をして、乗客に対するサービス精神をいま少し旺盛にして、親切にして、汽車に乗った者の安全と衛生と静ひつを守るというような考慮があってしかるべきだ。あなたのところの公害はふん尿だけじゃない。騒音の公害もあるのですよ。そんなこと一つやらないで、朝晩の新聞を見れば国鉄の記事ばかり。こっちが赤字だからやめますの、やれ値上げをしなければならぬの、やれこっちのほうの国鉄が何だの、まるで国鉄というのは国民の気持ちを不愉快にさせる、それしかないじゃないか。十分気をつけなさい。  委員長、これをもってやめます。
  280. 倉成正

    倉成委員長 大橋敏雄君。
  281. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、児童手当についてお尋ねをいたします。  九月十六日に児童手当審議会から答申が出たわけです。その答申の内容は、国民が期待していた内容とは相当開きがある、いわゆる不完全なものではありましたけれども、その児童手当の必要性といいますか、早期実現については強く訴えておりました。また方向を明示していることについては私も敬意を表する次第でございます。  ところで、児童手当について、このようにもうすでに答申が出た、厚生省としてみれば審議会の答申というバトン、待ちに待ったバトンですが現実にタッチしたわけでございますけれども、政府といたしましては御承知のとおりずいぶん長い間児童手当の実現についての公約をなさってきましたが、いままでそれが全部公約違反という汚名を着た姿で過ごされてきたわけです。それも答申が出ないためにということが、前回までの重要な事柄になっていたわけですが、いまも言いますように、いよいよ答申は握られたわけでございます。いままでの公約違反のすべての内容を東にして、今度は厚生省としては全力疾走して、来年度実現の目標目ざしてがんばっていらっしゃるもの、こう推察するわけでございますが、現状をまず説明願いたいと思います。
  282. 内田常雄

    ○内田国務大臣 児童手当は、これを実施をいたしますときには、最小規模で出発をいたしましても一年間に数百億、あるいはまたその対象範囲を広げますときには数千億というような、非常に巨額な財源が要るというようなこと、あるいはまた、御承知のように、他に老人、身体障害者等の福祉施策も十分でないというような状況もございまして、これの実現は非常に困難でございました。しかし、国会の皆さま方の非常な御激励、御期待、また政府自身の約束にも従いまして、私は微力でございますが、ぜひひとつ児童手当審議会の答申を早めて、これを明年度から実施に移したいということで、関係各方面とも打ち合わせまして、実施をするという原則と、また大橋さん御承知の、ごく大骨の大綱だけでございますが、その線を明らかにいたしまして、目下その細目につきまして関係方面と調整中でございます。私は、必ず明年度から制度を出発させる決意でやっております。
  283. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 たしか九月十八日だったと思いますけれども、閣議の終わったあとで、佐藤総理が福田大蔵大臣と保利官房長官、それと内田大臣に向かって、児童手当実現のことについていろいろと指示をしたということを、一般新聞等の報道で承知しているわけでございますが、そのときの状況を、聞かれたままの内容を説明願いたいと思います。
  284. 内田常雄

    ○内田国務大臣 別に御報告申し上げるような内容もございませんが、これは、私からも前々から審議会の答申が近くあるべきこと、また答申の大筋は、これは大橋さんも御承知のとおりで、それを内容とすること、かねがねの公約でもあり、また世間各方面におきましてこれの実現を希望しているのであるから、この実現は政府としても大きな責任があると考えるので、総理もこの段階で重大な決意をしてほしいという意味のことをいろいろの機会にお話をしてまいりました。また、児童手当審議会の会長であられる有澤さん自身も、私どもに答申をされた翌日、総理にも会って申されておりますので、総理も、こまかい話はございませんが、これはこの段階で実施をすることにいたしたいという強いお考えを述べられた、これだけでございます。
  285. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、こまかい内容は常々厚生大臣やあるいは審議会の会長等から総理も十分知っていたので、十八日の閣議のあとのお話というものはこまかい内容はないけれども、来年度実現へ全力をあげろというような趣旨のお話があった、こう理解してよろしいですね。——それではお尋ねいたしますが、そのときの佐藤総理の指示に対して、三人伺われたそうでございますが、大蔵大臣あるいは官房長官、内田大臣ですね、この三人の中での意見は一致したわけですね。
  286. 内田常雄

    ○内田国務大臣 総理大臣立ち会いのもとでの話し合いでございますから、そこで児童手当制度の出発については、意向は一致いたしました。
  287. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 たいへん大臣何か重要な用件があってお忙しそうでございますので、要点だけ質問いたします。  要するに早期実施についてということはいわゆる常識的に来年度であると、この意見が一致したというわけでございますので、具体的にお尋ねいたしますが、その実施のいわゆる時期といいますか、来年は来年ということですけれども、その実施の時期についてどう考えられているかということが一つ。それから、実施するからにはお金が必要でございますので、その予算はいかほど考えられているのかということですね。予算額です。そうしてその予算は追加要求なさるわけでございますが、その追加要求なさろうとする時期は、大体めどをどこに持っておられるのか。この三点、まずお答え願いたいと思います。
  288. 内田常雄

    ○内田国務大臣 すでにお話を申し上げましたように、明年度から出発、発足はいたしますが、その実施の細目につきましては現在関係方面と打ち合わせ中でありまして、いまだきまっておりません。したがって、発足はするが現実にお金が渡るのは何月になるかというようなことも、これからの細目検討との関係においてきまってくるわけでございます。関連制度との調整の問題もあり、また全国民層の中に散在する該当児童を対象とするわけでございますから、お金を支給するにいたしましてもその支給の窓口、末端の機構等の整備の問題もございますし、また拠出制等の問題もございますので、それらとの関連をも考えなければ、明年度の実際の必要とする予算額あるいはお金の渡る時期等はまだはっきりいたさないわけでありますので、そういうことも含めまして、とにかく明年発足するという大前提のもとにいろいろの細目を調整中でございます。  なお概算要求の時期は、全体としての予算案ができますのが毎年十二月の終わりでございますので、大蔵省のそれまでの作業に間に合うように概算要求をいたさなければなりません。そうしますと、私はおそくも十一月の中旬ぐらいまでにはおおむねの概算要求を大蔵省に追加で持ち込みたいと考えております。
  289. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく来年度実現というその基本的な考えで全力をあげる、予算額についてはいま検討中であるが、十一月半ばには必ずや追加要求をする、こう述べられたわけでございますが、私が一つこれで不安を感じているのは、これは風のたよりでございますので確たるものでないかもしれませんが、金も相当かかることであるが、初年度はとりあえず第三子、これは答申の中でも一応段階的方法としてうたわれているわけでございますけれども、第三子、中でも三歳児までで一応とどめよう、このような話を耳にはさんだわけでございます。もしこういう方向で予算が組まれるとなれば、これは大問題だと思うわけです。第三子からということだけでもわれわれはほんとうは十分でない、不満の気持ちで一ぱいなんですけれども、制度実現、創設のその意義において一歩譲ってここまで進んできているわけでございます。それが第三子で、しかも三歳児までなんということになると、これはまた話がずいぶん変わってくると思うのですけれども、そういう点について、風のたよりでございますので間違っていれば、そういうことはありませんと答えてもらえばけっこうです。
  290. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まだ全くきまっておりませんです。これはもう最後に来年度予算にのるときの姿において、どういう形でのるかということになりますが、そこに至ります間の細目については現在まだ全くセットしておりませんので、まだそういう風は吹いておらぬはずでございます。
  291. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ゆめゆめそういうことにならないようにひとつここで御注意といいますか、いたしておきます。  そこでいま準備中だ、準備中だとおっしゃいますが、実は日にちもそうないわけでございまして、ほんとうは法案の内容にしろ、またその予算の内容にしろ、具体的に明示ができるほどの作業が進んでいなければならぬことだと実は思うわけですけれども大臣のお話ではまだ検討中である。この前のたしか五月の十二日の委員会でしたか、大臣にお尋ねしたときに、答申が出て立法化する段階においては、まだ党内事情等もあり、一山も二山もあるのだ、その山を越すのがたいへんなんだというお話もあったと思うのですが、大体大山は越されたわけですね。そしてすでに具体的な方向に進んでいるわけでございますが、かりに厚生省から予算の追加要求をやる、そのときに大蔵省としてはすんなりといいますか、まあまあ厚生省の要求を受け入れるだけの根回しといいますか、そういうことはもう終わられたのかどうか。あるいはこれからなさろうとするのかどうかという問題ですね。
  292. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは特別国会の終わりごろにもあるいは申し上げたかもしれませんし、その後また大橋さん等にも私から漏らしたかもしれませんが、概算要求の八月末日までにはこの予算の概算要求はできないが、あとから持ち込むべきことあることを閣議でも私から発言をして保留をして、大蔵大臣にも了承を得ておりますし、また先ほど大橋さんが述べられたような、総理をはじめ関係大臣との話し合いでも山を越しておるわけでございます。いろいろ御意見もございましょうが、五年も十年もなかなかやれなかったことを、皆さんの御激励のおかげで、とにかく私が最大の努力をしてやることになりましたので、ぜひ、細目は細目といたしまして、皆さん方からも一そうの御協力、御鞭撻をいただきたい、もうしばらくひとつこの問題は私どもに預けておいていただきたい、かように存じます。
  293. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの大臣の熱意ある答弁は、これをもし国民が聞いたら、子供さんをかかえて生活に悩んでいるお母さん方が聞いたら、さぞや涙を流して喜ぶであろうと思います。私はその喜ぶ声が耳に聞こえるような気がいたしますが、御承知のとおりに、いま政府は、全国的な公害問題あるいは医療制度の抜本改正、または繊維問題等の波が高く押し寄せてさております。そのほかにも沖繩問題と、やることなさることが山ほどあるわけでございますけれども、ゆめゆめそのような諸問題の陰に隠れて、児童手当の実施の時期がおくれるようなことがあってはならない、私はこう思うわけでございます。その点くどいようでございますけれども、さらに答弁をお願いいたします。
  294. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私も政治家の一人として、腹の中にきめたことはどんな困難がありましても、これは皆さま方の御協力のもとにやっていく決意でございます。
  295. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もうこれで最後です。  大蔵省に予算を要求なさり、そして立法化なさる、それで大臣は自分の責任はまず終わった、このような考えでいらっしゃるのか、それとも実施するまで、そこまでの責任を感じて当たっていらっしゃるのか、これは最後の答弁としてお願いいたします。
  296. 内田常雄

    ○内田国務大臣 絵にかいたもちだけでは食えませんので、私がいつまで大臣をしておるかわかりませんが、皆さま方の口に入る状態にいたすまでは全力を尽くしてまいります。
  297. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その決意のとおりに、ともにがんばっていこうではありませんか。  以上で終わります。
  298. 倉成正

    倉成委員長 古寺宏君。
  299. 古寺宏

    ○古寺委員 先般千葉大学の滝沢名誉教授が、水道水がカシンベック病の原因であるということを発表いたしまして、国民に大きなショックを与えたわけでございます。それに伴いまして、東京都においては一部給水を中止いたしておりますけれども、この水道水とカシンベックの関係について、厚生省はどのようにお考えになっているか、また今後どういう対策をお考えになっていらっしゃるか、まず最初に承りたいと思います。
  300. 浦田純一

    ○浦田説明員 先月二十三日に東京都の発表で、多摩川水系の調布から取水しております水道原水がカシンベックの原因となる疑いがある。これに対する都民の不安を解消するために、その問題が明白になるまで取水を中止する。すでに九月二十八日からその取水を中止していることは先生御案内のとおりでございます。カシンベック病と水との関係につきましては、滝沢先生が昭和十四、五年来、戦前から満州におきまして、先生の御一門によりまして調査研究が続けられたところでございます。その原因は、当初いろいろと申されておりましたが、戦後も引き続き滝沢先生御一門の調査研究が続けられまして、最近発表になりましたように、水の中に含まれているある種の有機酸というものがカシンベック病の発生と関係があるということで、私どもこれに対しまして、従来からカシンベック病と水、ことに水道水との関連についても、滝沢先生のほうの御意見も伺いながら、すでに三十九年来、調査費も若干支出いたしまして、それらの検討をお願いし、私どものほうの立場といたしましても検討してまいったわけでございます。現在のところ、カシンベック病につきましては、滝沢先生の御発言の中にもございましたように、非常に厳密に申しまして、いわば病理学的な段階におきまして骨の末端その他に障害を与える、病変を与えるということでございますが、臨床的にこの病変をどのように考えるかということにつきましては、目下の段階では心配がないという御見解のように承知いたしております。  いずれにいたしましても、近年水道原水の汚濁というものが進んでまいりまして、これらは国民に衛生的でかつ多量の水を確保するという意味から申しましても重大な問題でございますので、特にことしの九月七日には、それらの汚染の進んでおる水系、多摩川水系とそれから堺市の川でございますが大和川の水に対しましては、その点厳重にチェックするように指導しておるところであります。ただ、カシンベック病の本体につきましては残念ながらいまのところ、滝沢先生御一門の研究に対します追試と申しますか追認と申しますか、それらの点につきましてはまだ確たるものがございませんで、なおこれらの問題につきましては学界の研究調査の進展とも相まちまして、私どもでどのように考えていくか、今後慎重に考えてまいりたいと思っております。
  301. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省は二月からこの調査をしたということを承っておりますが、その調査の結果、カシンベック病と思われる患者さんの数は大体どのくらいになっているのでございましょうか。
  302. 浦田純一

    ○浦田説明員 実はカシンベック病の診断につきましては、長年このことを研究し打ち込んでおられます滝沢先生並びに御一門の方々のいわば名人芸と申しますか、非常なる御技量によりまして初めて診断がつくという状況でございますので、私ども、いまのところ厚生省の立場で全国的な調査はいたしておりませんが、滝沢先生の御報告によりますと、二十三都道府県におきまして八万四千百七人の小中学生を検査いたしまして、そのうち一万一千四百五十七名の患者を認めておる、パーセントで申しますと一三・六%というふうに承っております。
  303. 古寺宏

    ○古寺委員 この病気に対する治療法は、一体どういうふうになっておりますか。
  304. 浦田純一

    ○浦田説明員 いまのところカシンベック病の成因、病理そのものについてまだ若干不明の点もございまして、的確な治療法というものは確立されていない段階でごごいますが、その一つといたしまして、唾液腺ホルモンの内分泌異常が大きな原因をなしているのではないか、病変に関与しているのではないかということでございますので、その投与あるいはその他ビタミン剤の投与といったようなことが行なわれている段階でございます。
  305. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、滝沢名誉教授のおっしゃるように、約一万二千人の患者さんが小中学生の中にいらっしゃるとすれば、その患者さんに対する対策というものは当然考えなければいけないと思いますが、そういう点については厚生省はどういうふうにお考えでございますか。
  306. 浦田純一

    ○浦田説明員 カシンベック病の対策行政として取り上げていくという点につきましては、さきに結核対策に見られましたように、まず診断基準というものの確立が第一でなかろうかと思います。ただいま私どもは、その前段階といたしまして、滝沢先生御一門の方、さらには小児科のこの方面に特に御研究されておる造詣の深い方々、その他関連の臨床家の方々あるいは病理学者の方々に御意見をお聞きしまして、まずカシンベック病の病因、カシンベックの本体というもののいまだ解明されていない点を明らかにしてみますとともに、先ほど申しましたように診断基準というものによって行政ベースに乗せていく、それによりまして患者の把握というふうに相なろうかと思います。先日これら専門の方々にもお集まりいただきまして、あらためてまたこのカシンベック病の対策についての御意見を承っておるところでございます。
  307. 古寺宏

    ○古寺委員 その予防対策といたしましては、先ほどお話がございましたように水道の給水を一時中止をしているようなわけでございますが、今後こういう玉川浄水場のような汚濁されている原水の場合には、水道の給水を全部中止をしていくようなお考えを厚生省はお持ちでございますか。
  308. 浦田純一

    ○浦田説明員 現在の水道法に基づきまする省令、水質基準に関する省令には、すでに二十七の水質項目について規制しているところでございます。近年新たに汚染が増大してまいりまして、たとえば昭和四十一年におきましてはABS、中性洗剤でございますが、追加規制する。またカドミウムの問題が起こりましたので、カドミウムにつきましても、四十四年におきましては暫定基準として必要に応じまして基準の改定を行なってきたところでございます。この水質基準は、今後とも生活環境審議会の答申に基づきまして、重金属その他、人の健康に障害を与えるような物質につきましては、あるいはまた単に障害を与えるといった範囲だけではなく、生活利用上に支障を来たすといったような物質につきましても、十分に検討してまいりたい。したがいまして、御指摘のカシンベックの成因、それと水との関係というものが疑われます場合には、これらについても今後の問題として水質基準にどのように取り入れるかということを検討してまいりたいと思います。
  309. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、いまお話がございましたように、今後ある種の有機物質がカシンベックの原因であるということが判明した場合には、新しい水質基準の中にこれを加えていく、そういうお考えのように承ったのですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  310. 浦田純一

    ○浦田説明員 先ほど御説明いたしましたように、カシンベック病の本体並びにそれの臨床上の評価と申しますか、これらについては若干まだ知見の不足しているところもあるわけでございます。しかしながら、水質基準全般の問題として現在ありますものは、専門家の御意見と長い間の経験並びに世界の基準に照らしまして、いわば国際水準あるいはそれ以上にあると承知しているわけでございます。カシンベック病と水との問題で水質基準を改定するかどうかということにつきましては、先ほど申しましたような段階を経た上で考えていくべきものと思います。
  311. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、現在の基準のままで玉川浄水場のように、大阪の淀川水系であるとか、そういうような、非常にカシンベック病と疑われる小中学生の発生している地域の給水については、今後中止するお考えはないのでございますか。
  312. 浦田純一

    ○浦田説明員 カシンベック病の発生要因が明確になりまして、それと水との関連が明確になるという段階では、もちろん水質基準の改定ということを考慮しなくちゃならないと思っております。現在は、これら有機酸につきましてはいわゆる過マンガン酸カリの消費量でもってチェックしているところでございまして、それをさらにきびしくするかどうかというような問題になろうかと思います。
  313. 古寺宏

    ○古寺委員 わが国の河川の実情というものは外国とは非常に違うわけでございまして、当然過マンガン酸の消費量の基準というものはもっときびしくしなければいけない、こういうことがいわれておりますが、こういう点について、カシンベックのみならず、いろいろな河川の汚濁の問題が出ておりますので、当然この基準というものは改定すべき段階にきていると思いますが、その点についてはどうでございますか。
  314. 浦田純一

    ○浦田説明員 わが国の特殊性も考慮いたしまして、諸外国に比べました場合に、この過マンガン酸カリの消費量の基準はむしろきびしい基準と心得ております。しかしながら、いずれにいたしましても、近年の河川の汚濁あるいは水道水源の汚濁という問題は、非常に重要な段階にきていると考えておりますので、それらを考慮した場合に、さらに原水の基準あるいはその浄化方式の強化といったようなものもあわせて考慮していかなくちゃならないことも今後起こり得るかと思っております。
  315. 古寺宏

    ○古寺委員 基準の問題で触れますが、現在BHCであるとか、あるいはDDTであるとか、こういうような有機塩素系の農薬に対してはまだ基準がないわけでございますが、こういう点については厚生省はどのようにお考えですか。
  316. 浦田純一

    ○浦田説明員 ただいまの水質基準全般について、近来の環境汚染の進捗状況にかんがみまして、生活環境審議会のほうに水質基準の検討についての御意見をお伺いしましたところ、去る四月に答申をいただきまして、今後検討を要する項目のうちに、先生御指摘の有機塩素剤等の農薬の基準も設定すべきであるというような御意見をちょうだいしておりますので、この基準の作成の作業を今後早急に進めてまいりたいと考えております。
  317. 古寺宏

    ○古寺委員 それではセレニウムとかあるいはマンガン、あるいは放射能についてはどうでございましょうか。
  318. 浦田純一

    ○浦田説明員 どうも先ほど説明が足りませんで申しわけありませんが、セレニウム、バリウム、あるいは放射性物質等、問題になる物質八種類について基準の作成をするように答申をいただいております。
  319. 古寺宏

    ○古寺委員 現在のこの水質基準というのは、じゃ口の、一般水道の末端の水質基準になっておりますが、各河川によっては、下水道その他によって汚濁が非常に違うわけでございます。そういう原水の水質基準というものをきめるというお考えは厚生省にはございますか。
  320. 浦田純一

    ○浦田説明員 水質基準の全体的な規制の問題につきましては、経済企画庁その他所管の省があるわけでございますが、私ども水道水を供給する、衛生的でしかも多量な水を確保するという意味から、御指摘の水源に対して特に関係の官庁のほうに規制方を強化するように申し入れてございますとともに、私どものほうからも、十分に取水口においての水質の監視をするように、都道府県を通じまして各自治体に指導しているところでございます。
  321. 古寺宏

    ○古寺委員 東京の多摩川の例を見てもわかりますように、年々河川の汚濁というものが進行いたしております。こういう将来の展望に立った原水の問題、水道水の問題について、厚生省はどのような対策をお考えになっておられますか。
  322. 浦田純一

    ○浦田説明員 近来にわかに増加してまいりました環境の汚染全体の問題につきましては、国民の健康並びに福祉を守るという立場から、ことにある種の物質におきましては、いわゆる慢性の毒性といったような形でもって長期間の間に知らず知らずに障害が生ずるといったようなこともございますので、それらの点も込めまして現在の水源あるいは土壌の汚染がこれ以上進まないように、公害関係の諸法につきましてもこれらの整備についてこちらから積極的に意見を申し上げておるところでございます。  なお、監視体制につきましても、あるいは基準の強化につきましても、予算をもってその促進方に努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  323. 古寺宏

    ○古寺委員 現在東京都で使われている水道水は十七億トンであるというふうにいわれておりますが、十五年後には大体その倍になる、こういうふうにいわれているのですが、その将来の、十五年先の、いわゆる水道水の確保の問題、こういう点については厚生省はどういうような御構想をお持ちでございますか。
  324. 浦田純一

    ○浦田説明員 厚生省といたしましては、水道水の将来の需要見通しを立てまして、長期計画——五カ年計画でございますが、それを立てまして、最終的には昭和六十年におきまして給水人口を全人口の九八%まで高めたい。それらに対する水源の確保、あるいはさらには海水等の蒸留によりまする飲料水の確保といったような技術的な面も含めまして、その供給量に不足のないように努力しているところでございます。
  325. 古寺宏

    ○古寺委員 ダムをつくるとかいろいろな問題もございます。その希釈率の問題もあるのでしょうが、特に東京都の場合には下水道の水を利用することを考えなければならないと思うのですが、こういう下水道の還元、そういうものの開発について、厚生省は一体どういうふうに研究を進めているのか、また、そういう開発をどういうふうにお考えになっているのか、その点を承りたいと思います。
  326. 浦田純一

    ○浦田説明員 下水道につきましては、建設省のほうの所管でございますので、あるいは的確なお答えにならないかも存じませんが、現在すでに諸外国では、ことに西ドイツのライン水系におきましては、数回にわたりまして水道水、それがさらに流れまして下水道処理場を通して出ていくといったような循環をしながら利用しているところでございます。   〔委員長退席、栗山委員長代理着席〕  日本におきましても、水資源が無限にあるというわけではございませんので、それらの全般的な配分の問題は、これは別途に技術的に検討する必要があると思いますが、御指摘の下水道水の再使用につきましては、一部すでに東京都あるいはその他のところで実施しているところでございます。これに対してのいろいろな指導その他を建設省のほうからも行なっているように承っております。
  327. 古寺宏

    ○古寺委員 現在東京都では、五百万円の予算でその研究を進めているわけです。しかし厚生省の立場として、今後こういう問題は当然考えてまいらなければならない大きな問題である、そういうふうに考えるわけでございますが、建設省の問題としてではなしに、いわゆる原水の基準を設定し、あるいは原水が水道水として問題のないものを取り入れることができるような、そういう体制をつくるために、どうしても私はこういう下水道水の利用の開発あるいは海水の水道水としての利用の開発、こういうものを厚生省は考えるべき段階に来ているんではないか、そういうふうに考えるわけなんですが、そういう点については厚生省はお考えになってはいないわけでございますか。
  328. 浦田純一

    ○浦田説明員 厚生省といたしましても、衛生的で低廉な水を豊富に供給するということは、私どもの当然努力しなくちゃならない問題でございますので、関係の省あるいは関係の自治体とも相談して、私ども立場を十分に主張して、その辺の研究が促進するように努力してまいりたいと思います。
  329. 古寺宏

    ○古寺委員 現在の河川というのは、何県かにまたがっているケースが非常に多いわけでございますが、これの管理体制と申しますか、その水量並びに水質の確保のための広域的な管理体制、監視体制というものが必要であると思いますが、そういう点について厚生省はどういうふうにお考えですか。
  330. 浦田純一

    ○浦田説明員 まことに御指摘の点、ごもっともでございまして、すでに厚生省といたしましても、限られた水源の効率的な使用ということにつきまして努力しているところでございまして、すでに数県におきましていわゆる広域水道という計画を実施し、あるいは計画しているところでございます。また、これらに対して厚生省といたしましては、補助金をもちまして財政的な援助あるいは技術的な指導ということにもつとめているところでございます。
  331. 古寺宏

    ○古寺委員 私は、大体十年間の東京都の原水の水質、そういうものをいろいろデータによって拝見いたしました。非常に基準を上回るような、あるいは危険な状態のデータが出ているわけでございます。最近は特に河川の汚濁がものすごいスピードで進行いたしておりますので、特に大都市の水道水の原水、あるいは水道水については総点検をする必要があるのではないか、そういうふうに考えるわけでございますが、今後厚生省はそういうことをおやりになるお考えを持っていられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  332. 浦田純一

    ○浦田説明員 すでにそれらの点は、私どもの当然の責務として都道府県のほうに通知しまして、水道水源の衛生的な観点からの監視並びにそれに対しまする報告ということについては指示しているところでございますが、今後ともさらにこれらの点について徹底するようにはかってまいりたいと考えております。
  333. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは次に国立視力障害センターのことについてお伺いしたいと思います。  昭和四十三年から昭和四十六年までの間に六名の職員が削減をされておりますけれども、こういう社会福祉施設の職員を削減するということは、労働過重にもつながりますし、あるいは入所者の福祉の問題にもつながっているわけでございますが、今後こういう福祉施設の職員をあくまでも減らしていく方針であるのか、その点についてまず承りたいと思います。
  334. 伊部英男

    ○伊部説明員 社会福祉関係職員は日夜非常に重要な仕事をされておられるわけでございまして、担当の部局といたしましては、ぜひ現在の定員を確保するという覚悟で臨んでまいりたいと思っております。
  335. 古寺宏

    ○古寺委員 現在入所している人の中にはベーチェット氏病の患者さんもおられるわけでございますが、いろいろ健康の状態が思わしくない、あるいは訓練中にいろいろ事故を起こすようなこともございます。これに対する医療管理体制、あるいはその医療費に対する保障というものはないわけでございますが、こういう点についてはどういうふうにお考えでございましょう。
  336. 伊部英男

    ○伊部説明員 国立の施設でございますので、施設側に故意過失があります場合は、当然国家賠償法によりまして国が責任を負うわけでございますが、訓練中そういう事情でなく障害が起きたという場合でございます。この場合につきまして、一般的な事故補償制度をつくるということは、いろいろ社会福祉施設全般の問題といたしましてなお検討いたしたいと思いますが、個別の問題といたしましては、保健衛生士あるいは嘱託医等を活用いたしまして、心配のないように努力いたしたいと思います。
  337. 古寺宏

    ○古寺委員 医師、看護婦が常駐していないようでございますが、そういう点についてどうでございますか。
  338. 伊部英男

    ○伊部説明員 医師は嘱託医でございますが、看護婦は常駐いたしております。この施設は本来更生訓練を前提といたしておりますので、さような方々の保健衛生につきましてはこれらの看護婦あるいは嘱託医等を活用いたしまして、今後とも遺憾のないように努力いたしたいと思います。
  339. 古寺宏

    ○古寺委員 先日私はまたセンターに行ってまいったのですが、建物が非常に狭隘で、しかも宿舎の畳やなんかもものすごい状態でございました。体育館なんかも雨降りには雨が漏って使えない、洗たく場も非常に狭くて困る、そういういろいろな御要望があったのですが、特に皆さんの願いとしては、何とかして医師を常駐させていただきたい、こういう希望があったわけでございます。暖房もこの前の御答弁によりますとことしから入る、工事中であるというお話でございましたが、なるほど工事はやっておりましたが、来年度でなければその暖房は思うように使えない、こういうようなお話もございました。こういう点については、今後厚生省としてはもっと積極的に、いろいろなそういう設備の不備な点や、いままで非常に冷遇されてきましたあそこの入所者のために積極的に手を打っていくべきである、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう点についてはどうでございますか。
  340. 伊部英男

    ○伊部説明員 国立視力障害センターの建物、施設等につきましては現状をもって満足しておるわけではございません。こういう施設につきましては、最近できましたたとえば福岡、函館等につきましては、新しい時代に即応した水準に到達しておると思いますけれども、昔からある施設につきましては、いわば改築改造がなかなか困難な事情があるわけでございますが、ただ厚生省といたしましては、先般の身体障害者福祉審議会におきまして、これら身障肢体不自由児あるいは視力障害あるいは聴覚等を統合した総合リハビリテーションセンターを設けてはどうかという御提案がありまして、その点につきましてただいま慎重な検討をいたしておる段階でございまして、そのセンター構想との関連におきまして東京視力センターのあり方につきましても基本的な手を打ちたいというふうに考えておる段階でございます。
  341. 古寺宏

    ○古寺委員 現在入所して訓練を受けておる方はその間収入がないわけでございますが、教科書代あるいは食費あるいは通信費いろいろなものを負担をいたしております。これが非常に大きな苦痛になっておるようでございますが、他の身体障害者と変わりがないわけでございますので、こういうものについて教科書を無償配付していただきたい、あるいは更生訓練費の増額をしていただきたい、食費の免除をしてもらいたい、また世帯更生資金貸し付け額の増額等について充実をはかってもらいたい、こういうふうな御要望がございましたが、こういう点については今後どのようになっておりますか。
  342. 伊部英男

    ○伊部説明員 更生訓練費につきましては、明年席予算の問題でございますが、改善をしたいと考えて財政当局と折衝いたしたいと考えております。食費につきましては、社会福祉施設全般の問題でございますが、やはり所得に応じて費用を徴収するというたてまえになっておりまして、現在約八割程度が免除になっておりますが、二割の方につきましては月額約五千円強の食費を徴収しておる状況でございます。この点は福祉施設共通の問題でございますが、費用徴収の問題につきましてはなお今後とも検討いたしたいと思います。  教科書につきましては、盲学校等におきましては支給がされておるのでございますが、社会福祉施設であります視力障害センターにつきましてはそのような措置がとられていないわけでございますが、今後所得に応じ貸与をするといったようなことを研究していきたいと考えております。
  343. 古寺宏

    ○古寺委員 更生訓練費と世帯更生資金についてはお答えがなかったようでございますが……。
  344. 伊部英男

    ○伊部説明員 世帯更生資金につきましては、本度特別の場合の限度額を三十万から四十万に引き上げたのでございますが、今後とも世の中の推移に応じまして、内容の改善には引き続き努力したいと思います。  更生訓練費につきましても、改善をするため財政当局とも折衝をいたしておる段階でございます。
  345. 古寺宏

    ○古寺委員 現在、更生訓練費というのは幾ら出ているわけでございますか。
  346. 伊部英男

    ○伊部説明員 千円でございます。
  347. 古寺宏

    ○古寺委員 食費の問題でございますが、大蔵省からは全部の入所者の分の予算が配賦になっているということを承っております。  それから世帯更生資金の貸し付け額の問題でございますが、新しくはり、きゅう、あんま等の開業をする場合は、四十万円ではとても開業できない、何とか百万円ぐらいまで増額をして、もう少し期間を長くしてもらえぬか、こういう御要望でございますが、この点についてはどうでございますか。
  348. 伊部英男

    ○伊部説明員 世帯更生資金につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、本年十万円引き上げたばかりでございますが、今後とも改善するよう努力をいたしたいと思います。今年は、一般の場合は十五万から二十万、特別の場合を三十万から四十万に増額をしておる状況でございますが、今後とも努力をしたいと考えておる次第でございます。
  349. 古寺宏

    ○古寺委員 食費はどうでございますか。
  350. 伊部英男

    ○伊部説明員 食費は、配賦されました予算をすべて現在の在所者の食事に充てておるわけでございます。
  351. 古寺宏

    ○古寺委員 いままでのセンターの内容を見ますと、この前もお話し申し上げましたが、職種が非常に限定をされております。新しい時代に適応した職種を身につけられるようにセンターの内容も充実していくべきである、こういうふうに考えるわけでございますが、将来のビジョンと申しますか、厚生省の構想について承りたいと思います。
  352. 伊部英男

    ○伊部説明員 わが国は、あんま、はり、きゅうという、盲人にとりまして他国にはない一つの職業分野を持つわけでございまして、その点は一つのメリットでございますが、反面、先生御指摘のように、新しい職種の開発につきまして従来勉強が不足をしておったということは事実であろうと思います。そこで、東京視力におきましても点字印刷科、かなタイプ科を設けておりますし、塩原におきましては農芸科を設けておるのでございますが、基本的にはこの程度ではまだまだ不十分でございまして、広範囲な、新しい職能と申しますか、そういう開発訓練が行なわれるべきであろうと考えるのでございます。しかも、そういうことこそ視力障害センターとして最もふさわしい仕事であろうかと考えるのでございまして、そのため東京視力障害センターに対しまして、昨年以来研究費を交付いたしまして、盲人の職能開発に関する各種の資料収集、研究に当たっていただいておるのでございます。これには外部の先生方も入っていただきまして、社会生活適応訓練の技術的方式に関する研究、あるいはあんま、はり、きゅう以外の職能開発に関する研究、補助用具、作業補助用具等の改良開発に関する研究等の部会に分けまして研究に当たっておるのでございまして、本年が第二年目に当たりますが、今後四十七年度までを目途といたしましてこれらの研究を総合したい。さらにこれらを基礎といたしまして、御指摘のような職能開発に関する新しい方策を打ち出してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  353. 古寺宏

    ○古寺委員 その研究費というのは、お聞きするところによれば会議費でありまして、ほとんど研究も何もできないような実態であるということを承っておりますが、それでは新しい職業としては一体どういうような職業をお考えになっているのでございますか。
  354. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま申し上げましたこれらの研究成果を期待しておるわけでございますし、たとえば大阪のライトハウスにおきましては、電話の交換手等を養成しておることは御承知のとおりでございますが、外国等におきましてはもっと広範囲な各種の技能工を考えておるようで、実際に行なわれておるようでございます。もちろんそれに伴う機械器具等の手直しが要るわけでございますが、そういう点、今後外国で行なわれておるようなことは日本でも行なえるような体制に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  355. 古寺宏

    ○古寺委員 どなたでもあそこへおいでになれば一目りょう然でございますが、今後はもっと積極的に誠意を持った考え方で進めていただきたいと思います。  次は筋ジストロフィーについてお尋ねいたしますが、厚生省では昭和四十五年度までに五カ年計画でもって筋ジストロフィーの収容ベッドを二千床にする、こういう計画があったようでございますが、その計画はその後どういうふうになっているか、お尋ねしたいと思います。
  356. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 筋ジストロフィーの施設整備につきましては、従来から国立療養所のほうにお願いをして整備をしてきているわけでございます。昭和四十一年度から漸進的にまいってきておりますが、国立療養所のほうの施設整備の結果、千三百八十ベッドというようなものを四十一年度から四十五年度末までの間に整備していく、こういう事情に相なっております。
  357. 古寺宏

    ○古寺委員 青森県の岩木療養所あるいは仙台にございます西多賀療養所、下志津の病院、こういうところをいろいろ見ましたけれども、実際に、厚生省が発表しているベッド数と現地の実情というものが合っていないわけですね。こういう点についてはどうなんでございますか。昭和四十四年度分のベッドがまだできていない。そういうものがベッドがあるように発表になっているわけです。現在もう昭和四十五年度に入っているわけです。そういう点については、今後どういうふうにお進めになるのでございましょうか。
  358. 松尾正雄

    ○松尾説明員 国立療養所で筋ジスの病棟を整備いたします場合には、いろいろな実施計画を立てまして、大体その年の秋には着工いたしておりますが、着工いたしましたその年には収容を開始いたしませんで、次の年度から、人員その他を整備いたしまして収容するという関係でございまして、私どもはそういう段階で、たとえば整備をしておる段階が四十五年度までですと千三百八十であるというふうに申し上げております。その実行面におきまして、ただいま御指摘のような点は、やはり建設と実行の間に若干ずれがあるということではないかと思います。
  359. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省の調査でもわかりますが、現在入院して治療を受けたいという人が五百八十一人もいるわけでございます。こういう入所したいという方々に対して、一体いつになったらその願いがかなうわけでございますか。
  360. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいま千三百台の整備になってきているわけでございますが、先ほど児童家庭局長からお答え申し上げましたように、二千二百という程度が国立療養所で担当すべき一応の目標になっております。最近におきましては、一年の整備を二百八十ベッドというふうにいたしておりますが、前よりもスピードをあげておりますので、おおむねその程度のスピードで達成ができるのではないだろうかというふうに思っております。
  361. 古寺宏

    ○古寺委員 今度十月一日の調査でまた判明すると思いますが、相当にこの進行性筋萎縮症の患者さんはふえるのじゃないか。また、最近の医療の進歩によりましてある程度寿命が延びております。したがって、当然この患者さんがふえるわけでございますが、いまのような施設の状態では非常に問題が多いわけでございまして、東京都におきましても現在入所を希望する人が約三十名いらっしゃるそうですが、その中で緊急に入所をしたいという方が七名もいらっしゃる。ところが、ある施設のほうに申し込みをいたしましたところが、非常に重症で寝たきりの患者であるために拒否をされた、こういうような問題も出ているわけでございますが、厚生省では一体そういう点についてはどういうふうに指導していらっしゃるわけですか。
  362. 松尾正雄

    ○松尾説明員 先生御承知のとおり、筋ジスの患者さんはだんだんに進行してまいりまして運動能力を失ってくるわけでございます。したがいまして、現在でもそういうような重症の、非常に悲惨な最後の状態に達しておる患者さんがおられるわけでございます。この収容につきましては、児童相談所といろいろ打ち合わせの上で人を選んでおるわけでございますが、私ども少なくともそういう症状によって拒否するということが絶対にないように指導は常々いたしております。  ただ、場合によりまして、開設当初でございました場合、職員が看護その他について全く習熟していないという段階があろうかと思います。そのときには、しばらくなれるまで待ってほしいということがあるいはあるのではないかというふうに私は考えておりますが、原則としては、こういう子供さんたちは非常に運動能力のない子供さんであるということでございますから、そういうことがないようにということを指導しておるわけでございます。
  363. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうことのないように、重症の人ほど早く施設に入所ができるようにしっかり指導をしていただきたいと思うのです。  次に、東京都には約五百人くらいの患者さんがいらっしゃるそうでございますが、都内にはそういう施設がないわけです。こういう点については厚生大臣にもたびたびお願いをしてあるそうでございますが、厚生省として東京都内に進行性筋萎縮症のそういう施設を今後国立病院なりあるいはどこかにつくるお考えをお持ちであるかどうか、承りたいと思います。
  364. 松尾正雄

    ○松尾説明員 東京の場合には、現在のところ埼玉あるいは千葉にございます施設に一定の人員を割り振るということをやっておるわけでございます。御指摘のように東京自身にもそういう施設がほしいという御希望はかなりございます。また私どもは、できますならば東京都におきましてもそういう障害児の施設の新しい近代的なものをつくるという計画もあるわけでございますので、そういうものでもひとつつくってほしいという希望を持っておるわけでございます。しかしながら、国立でもそれを担当するにふさわしい施設を内々選んでおりますが、先生御承知のとおり、筋ジスの場合にはあわせまして養護学級を持つという、義務教育を並行して行なうという必要性がございまして、今年度もいろいろな話し合いをいたしましたが、やはりそういう教育体制というものを病床とともにそろえてもらうということで、計画をなるべく早く達成したい、こういうふうに話を進めておるところでございます。
  365. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないので急ぎますが、筋ジストロフィーの研究費の予算というものが非常に少ないわけでございますが、今後この原因の究明あるいは治療法の確立のために相当大幅な研究費によって研究を進めなければ、死に至る病のかわいい子供さん方が非常に気の毒でならないと思うのです。そういう点について、厚生省は来年度の研究費は一体どのくらいをお考えになっておられるか、承りたいと思います。
  366. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 ただいまの御意見まことにごもっともでございます。私どもも従来から筋ジストロフィーの研究費につきましては精一ぱいの努力を払ってまいったわけでございます。昭和四十三年度以降現在まで六千七百万円ぐらいのものを充ててきておりますが、確かに筋ジストロフィー症というものの実体なり原因、治療方法、まだ不明な点が非常に多いわけでございます。したがいまして、このような研究体制については、相当腹をくくりまして今後本腰を入れていく必要があることは御指摘のとおりでございます。  そういうような観点からしまして、明年度予算におきましては私どもも大規模の予算要求をいたしたいということで現在財政当局と折衝中でございます。四十六年度以降においてはやはり研究体制というものを根本的に整備いたしまして、本格的な研究を実行できるようにもっていきたいということで現在折衝中の段階でございます。   〔栗山委員長代理退席、委員長着席〕
  367. 古寺宏

    ○古寺委員 現在までの研究費ではとうていこの病気の解明は私はできないと思います。現在国立療養所あるいは国立病院にいらっしゃる先生方も、いろいろ患者さんから、聞かれるたびに、自分たちも研究したい、研究所もつくってほしい、こういうことをみんな切実に考えております。また国立病院や国立療養所の現状を見ますと、三十年間働いて月収が十五万円くらいだそうでございます。これでは現在いらっしゃる先生方が老齢化した場合には医者がいなくなるのではないか、こういうことも心配されているわけでございますが、こういう国立病院あるいは国立療養所におられる先生方が、せっかく一生懸命勉強したい、研究したい、何とかしてかわいい子供らを助けてあげたいというふうに願っているわけでございますので、今後こういう点については真剣にひとつお考えになって、研究費の増額を推進していただきたい、そういうふうに私からも特にお願いするわけでございます。  また、十三の施設のほとんどが看護婦が不足をいたしております。現在ニッパチの問題もございますが、一人夜勤が多いわけでございます。しかしこの筋ジストロフィーの患者さんは、御承知のように二時間おきに一ぺんくらい夜中に寝返りをさせてあげなければいけない。あるいは一週間に一ぺん入浴もさせてあげなければいけない。そのために看護婦さんのほとんどが腰痛症を訴えているような実情でございます。この看護婦の現在の欠員、こういうものを一体いつごろまでに定員を確保できるのか。また、現在は二対一のようでございますが、今後においてはこれをさらに一対一ぐらいまで持っていかなければならないと私は思うのですが、現実の問題としては二・五対一ぐらいの実情でございます。こういう看護婦の充足対策について、いまの研究の問題とあわせてお伺いをしたいと思います。
  368. 松尾正雄

    ○松尾説明員 こういう病棟におきます看護婦さんがきわめて困難な任務を負って働いておりますことは、私どもも一番心にとめておる問題でございます。したがいまして、現在でもこの筋ジス病棟における看護婦さんの人数を、定員の上でもかなり私ども努力をいたしまして、往年に比べますと厚くしたつもりでございます。しかしながら、いろいろな省力化できるような問題、あるいは、たとえばただいま御指摘のような入浴のような場合に、人力をなるべく使わないで軽い力でお湯に入れたり出したりしてあげられるような設備の問題、相当まだ経験の浅い問題ではございますけれども、あわせて解決をいたしまして、できるだけ軽減ができるような形にしたいと考えておるわけでございます。  なお、欠員の問題につきましては、全体的な看護婦不足というようなこともございますけれども、各施設におきましても、それぞれ病棟の充足ということには重点を置いておるわけでございます。鋭意督励をいたしまして、なるべく早く充足できるように努力をしたいと考えております。
  369. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないので、それでは最後に一つお伺いしたいのですが、いまのこの定数の改定に伴いまして、看護婦の数を減らして看護助手の定数をふやしているわけでございます。こういうようにいたしますと、当然この看護助手は夜勤ができないものでございますので、看護婦さんが一人でやらなければならない。こういうように、非常に何か現実の問題から遊離したような、そういう定数の考え方を進めているようでございますが、今後もやはりこういうふうに看護婦を減らして看護助手をふやしていくのかどうか。  それからもう一つは、入所していない在宅の患者さんでございますが、非常に家族の手もかかるし、お気の毒な状態にいらっしゃるわけでございます。この在宅の患者さんに対しては一体厚生省は今後どういうような対策をお考えになっていらっしゃるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  370. 松尾正雄

    ○松尾説明員 筋ジス病棟の看護婦につきましては、看護婦をむしろふやさなければならないという方針にいたしております。その基準も、二人夜勤ができるという体制を基準にいたしまして構成をきめておりますので、御指摘のように助手のほうに振りかえるということは私ども考えておりません。
  371. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 後段のほうの在宅対策につきましてお答えいたします。  在宅対策としまして、従来からいろいろな対策考えてまいっているわけでございます。保健所等の療育相談とか、あるいは補装具等の支給とか、あるいは家庭奉仕員というようなもの、あるいは特別児童扶養手当というような制度をいろいろ考えてまいって、在宅対策の一環としているわけでございますが、確かにいま仰せのように、家庭におりまして看護される方の手間が非常にかかるというような面は事実でございますので、私どもとしましては、今後この家庭奉仕員というようなものをできるだけ整備をし充実をしていくということを第一に考えてまいりたいということが一つでございます。  それからその次は、いわゆる介護の用具等の貸与制度をもっともっと強化してまいりたい。そういうことによって、両親の方々が介護のためにほんとうに御苦労されるという面、いろんな面のお手伝いをしていく、こういうことによりまして、こういう患者の方々の在宅対策を充実してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  372. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、非常におくれているそれらの問題につきまして、二十前後で死の道をとらなければならない筋ジストロフィーの子供さん方のためにも、今後もっと強力な対策を推進していっていただきたいと思います。  さらに、時間の関係で申し上げませんでしたが、最近においてはおとなの患者も相当にふえております。今後このおとなの問題につきましても十二分に配慮をなさった措置というものを進めていただきたい。  以上、お願い申し上げまして終わります。
  373. 倉成正

    倉成委員長 寺前巖君。
  374. 寺前巖

    ○寺前委員 まず議事進行について発言したいと思います。議事進行について、委員長に、質問したい。
  375. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  376. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めて。
  377. 寺前巖

    ○寺前委員 最近、一連の社会労働委員会において大臣が、おそくなってくると審議に参加しないという事態が起こっております。それはそれなりに理由はあろうかと思いますが、国会の審議を尊重するという立場から見たら、こういうあり方であってはたしていいのだろうか。私は委員長がこういうようなことを許しておられるという点について、なぜそういうことになっているのか。あるいは、こういうことを改善させるために今後強く大臣に対して指摘をするという態度をとられるのか。その点について委員長に回答を求めたいと思います。
  378. 倉成正

    倉成委員長 委員長からお答えをいたします。  大臣つとめて出席するように、当委員会としては取り計らっております。大臣の欠席については、そのつど理事会においておはかりをして了承を得ております。
  379. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃお聞きいたしますけれども、きょうの委員会の最終段階に参加できなくなってきているという事情について明らかにしていただきたいと思うのです。国会の審議をのけてまで行かなければならないという事情があるならば、その事情を国民の前に明らかにすべきだと思うのです。事情を明らかにしてください。
  380. 倉成正

    倉成委員長 いま大臣は八時前後に入ってくるということで皆さんの御了承を得て取り計らっておりますから、それで御了承いただきたいと思います。
  381. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、今後委員会の計画については、大臣が責任もって参加できるように、注意をしていただくようにお願いしたいと思います。それで議事進行についての発言を終わりたいと思います。それでは、私は最近沖繩へ行ってまいりました。沖繩で四年ほど前ですか、非常に風しんがはやって親御さんが非常に困っておられる姿を見せつけられました。またハンセン氏病の方々にも会ってきました。その他幾つか向こうの医療の問題あるいは社会生活の問題を見てきましたけれども、そういう沖繩の事情を視察して帰ってきたら、たまたま東京の視力の障害者から、私たちのセンターを見てくれというお話もありましたので、そこにも行ってきました。そこで私は主として二つの点について、障害者の問題についてどうしても皆さん方にお聞きをしておかなければならないということを感じましたので、きょうは障害者の問題について聞きたいと思います。  何といいましても私は、あの沖繩の風しんをかかえている親御さんの姿を見たときに、お互い親として共通の涙にくれるものを持ちます。あの沖繩で風しんの子供を親御さんがやっている姿を少し紹介しておきますると、こうです。八人が一組になって学校を借りて、そこで親御さんが自分も仕事をやめて、小さい赤ん坊をおんぶして、そしてそこの教室へやってきて、一緒になって、いまのうちに耳が退化しないようにということで、補聴器をつけて、一つ、二つと言うて先生と一緒になって子供に一生懸命教えている姿。親御さんに聞いてみたら、ほんとうに自分の家の生活はこの子のためにはもうほかさなければしようがない。だからほかの子供にも迷惑がかかっているし、私たちの家の生活そのものも経済面からも困っている。だけれども、私はこの子供よりも年齢が上である以上は、先に死んでしまうだろう。だからこの子がひとり立ちで生きていけるためにはしかたがない。すべてのことをやっても、徹夜しても経済の生活はささえていかなければならないんだ。私は障害者を持った親の共通した姿はそこにあろうかと思うのです。したがって私どもは、国家は一人一人の障害者に対して、この一軒の家におけるところの親の気持ちになって仕事をするというのが基本的な姿であろうと思うのです。  そこで私は、視力障害センターに行って、最近見せつけられたものは何だったか。どなたに答えていただくのかわかりませんが、社会局長さんですかな、どうでしょうね。あの視力の障害者が主として仕事をしているというのは、はり、あんま、マッサージ、あの系統の仕事だろうと思うのです。ほんとう仕事の面においてほかの一般社会の人よりも差別されるような状態に、障害を持っているのですからあるわけですよ。そうすると、他の人たちを社会の職業に正当につけていこうという努力以上の努力を、国家は障害者に対して施すというのは、私は政府の機構の問題じゃなくして、政府としては責任ある姿だろうと思うのです。また法律の面からいっても、雇用対策法の第十九条を読んでも、そこには中高年齢者と身体障害者の就職の促進のための必要な措置をしなければならないということを指摘しております。また職業安定法の二十六条によっても、「中高年齢の失業者その他就職が特に困難な失業者の就職を容易にするため、」ということばをわざわざ入れております。これは所管は労働省です。それでは労働省がやっているところのこれらの困難な人たち仕事、はたして障害者が対象になるような仕事をしているでしょうか。私は障害者を対象にしている仕事はやられていないと思います。かろうじてやられているのが厚生省の皆さん方がやっておられるところ仕事だろうと思うのですが、私の提起している問題に間違いがあるのだったら間違いがある、そのとおりだったらそのとおりだと答えていただきたいと思うのです。
  382. 伊部英男

    ○伊部説明員 職業訓練、雇用の安定は労働省仕事でございまして、身体障害者につきましてももとよりその対象になっておるのでございますが、現実の問題といたしまして、重度の方々につきましてはいろいろリハビリテーション、生活指導その他非常にむずかしい問題がございまして、ただいまのところ、重度に対しましては厚生省のほうに比重が多くかかっておるという実態であろうと思います。
  383. 寺前巖

    ○寺前委員 重度についてなんということを言わなくても、盲学校とかろう学校という文部省管轄の学校があるでしょう。学校を卒業して社会人として働いていくことができるようにということで、先生も親御さんも一緒になって、ひとり立ちできるように苦労していますよ。しかしそれだけでは、これは普通の学校でも行なわれているわけですよ。普通の学校でも職業訓練はやるんですよ。実際に専門的なものを身につけさして、社会へ出ていって就職さしてやろうということでいろんな職業訓練をやっているわけでしょう。ところが、視力の障害者とかろうあの障害者、聴力の障害者、この人たちには、職業として特定の分野の仕事を開発し、その分野を労働省が積極的にやっているとはいえない。もう一度私ははっきりそこを聞いておきたいのです。やってくれているというのだったら、私は、あなたたちは障害者を一体どう見ているのだと言わなければならないと思う。やっていないのに近いのと違いますか。もう一度聞きたいと思います。
  384. 伊部英男

    ○伊部説明員 先ほど申し上げましたように、盲人の更生、福祉につきましては、視力障害センター等により厚生省が行なっておるわけでございますが、盲人につきましても、たとえば職業安定所等におきましてはやはり仕事をされておると思いますが、職業訓練校におきましては対象となっていないというのが事実でございます。
  385. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、視力や聴力の障害者にとっては、せめても厚生省がやってくれていることが非常に大きなたよりですね。そうでしょう、局長さん。
  386. 伊部英男

    ○伊部説明員 そのようにありたいと思います。
  387. 寺前巖

    ○寺前委員 私はあなたを責めているわけじゃないのですよ。視力や聴力の障害者の側から見れば——一般社会の人が、中高年齢の人が、教育を受けて、社会人として職業人として仕事についていこうという場合、いろんな恩典をつくっているのですよ。その恩典と障害者が与えられているところのいろんな施策との間に非常に大きな違いがあるのですよ。だから、せめても労働省がやっている水準のことをやってくれというのはあたりまえであり、むしろそれ以上にするところに、私は障害者に対するところの特別の問題があろうかと思うのです。  ちょっと一例を拾ってみましょうか。たとえば労働省の雇用促進措置、これは日額七百五十円出ます。皆さんの厚生省のほうのやっておられるところの訓練手当で比較すると、これが月額千円です。今度の予算で倍くらいにするようなことを検討はしておられるにしても、明らかにこの訓練手当においての差が出てきております。あるいは職場適応訓練というのがあります。これは雇い主に月六千八百円、それから今度は訓練生に対しては、これは平均ですが月二万三千三百十円ですか、そういうのが出ます。そういう職場適応訓練というのは厚生省のこのやり方では出てこない。それから雇用奨励金というのがあって、月八千円、十二カ月にわたって労働省のほうは出す。そういうものは厚生省にはない。身元保証制度というのがあって、三年間二十万円まで保証する。厚生省のほうはない。債務保証制度を見ても、自営の仕事についていこうと思うとお金が要る。その場合には百万円までちゃんと保証して金を貸してやるという制度が労働省のほうにはある。ところが、厚生省のほうは世帯更生資金として四十万円までだ。私があげている例だけでも、もう次々にあるのですよ。就職資金の貸し付けも、片一方は三万円まで、片一方はなし。訓練期間内に事故が起こった場合にどうするか。片一方はちゃんと労災並みの補償を行ないましょうとなっておる。ところが、厚生省のほうのやるものにはない。これは局長さんが悪いということで私は言っているのと違う。これは国家の施策として見た場合に、労働省で保障されているところのあの働く者としての生きていくやり方を何で障害者には与えてもらえないのだ。いまあれは厚生省の所管でやっているから、労働省のほうに移しても何でもそれはかまわない。要するに、障害者の働く権利としてそのくらいの保障をしてくれ、私は当然の要求だろうと思うのですが、ここは大臣がおらなんだら発言しにくいとは思いますけれども、あなた、常識的に見て私もそうあるべきだろうと思いますくらいのことを言ったらどうかと思うのですが、どうでしょう。
  388. 伊部英男

    ○伊部説明員 労働省の職業訓練に関連いたしましては、ただいま先生御指摘のようないろいろな措置がとられています。厚生省のほうの視力障害センターは、御承知のとおり失明者の更生と福祉をはかるための失明者更生施設でございます。そこでやっておりますのはリハビリテーション、職能訓練でございまして、その一環としていろいろな、あんまもその一つでございますし、また点字タイプ等もあるのでございまして、制度のたてまえが違いますので、一がいに比較できない点はございますが、しかし実質的にいろいろな差がある点につきましては、そういう制度の相違を念頭に置きつつ、実質的にバランスがとれるように今後とも努力したいと思います。
  389. 寺前巖

    ○寺前委員 制度の違いというのは、それはそのとおりだ。確かに制度の違いはあります。しかし、障害者が職能訓練を受けていくというあり方から見たら、どこの省が所管になろうとも、何で障害者に限ってそういう行く道がないのだということが非常に重大なんですよ。そういうことのないようにやりたいという意見として私は聞きたいと思います。これは即刻——例の身体障害者の基本法もこれでは泣くと思うのですよ。あの法律ができた以上は、私どもはあの法律は拘束力の弱い法律だからあんなものはつまらぬとは簡単には言いませんけれども、しかし、せっかく基本法をつくったんだったら、ひとつこの際に障害者に働く権利を当然のものとして、あれよりも下回るということのないように、腹をくくって厚生省は労働省、総理大臣とも話し合って、はっきりやってもらうということをここでお願いして、その問題は終わりたいと思うのです。  大臣が来られたから、いま局長さんに言うておったのでちょっと繰り返しになるみたいだけれども大臣、視力とか聴力の障害者、こういう方々は——われわれ中高年の者は再就職のための訓練を受けるという保障が、雇用促進法とか職訓法とかあるのですよ。ところが、実際にそれに基づいて障害者は訓練を受けられるようになっていないのですよ。法律で保障するといっても、実質ではそうなっていないのです。結局どこへ行っているかといったら、厚生省のほうのセンターのほうで訓練の機会を与えられているわけですよ。ところが、与えられているというものの、取り扱いに非常に大きな差があるのです。障害者というのはもともとハンデを持っているんだから、またこの訓練のあり方においてもハンデがあるということになったら、大体めくらとかつんぼとかおしとか、こういう差別的な状態の中で生活を送っている者が、政府のやる仕事においても差別があったら、いよいよもって働く権利が実際差別されていく。これでは身体障害者基本法も泣いてしまうではないか。だから、何ぼ何でも労働省のあの水準の訓練方法、あの取り扱い方、ああいうものをやるように——制度の違いの云々ではなくて、政府という立場において障害者を差別するという状態の訓練方法はいけません。すぐに改善しますということを私ははっきりしてほしいということをいま局長さんに言っておったところなんです。大臣どうでしょう。
  390. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ごもっともであります。職業訓練のことになりますと、一応表面に立つのはおそらく労働省でしょうが、しかしお尋ねのありますような身体障害者、視力障害者等につきましては、労働省ベースの職業訓練だけではいかない面がたくさんあると私は思います。そこで、厚生省が職業訓練だけの面でなしに、私どもがやるべきことは、その以前にこれらの身体障害者に対する療養とか保護とかリハビリテーションとか、そういう身体上の条件をできるだけ満たすようなことをやりながら、同時に職業訓練にも及ぶということでなければならないと私は考えます。法律にどう書いてあるか知りませんが、しかし法律にどう書いてありましても、なかなかそれだけで心身にハンディキャップを持っている方々に対する施策というものも文字どおり行き渡っていない点も私は多々あると思います。厚生省というものは人間尊重の役所でありますので、足りない点は十分皆さま方から激励をいただいたり、協力をいただいたり、また私ども自身も反省しながら、身体障害者のリハビリテーション並びに職業訓練、授産というような面にできるだけのことをやるのが私どものつとめだと考えます。
  391. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、前段の話を聞いておられないからそうなったんだけれども、ぜひ視力障害者とか聴力障害者、こういう人たちが、さっき言った職業訓練法とかいろいろあるんですね、その法律にちゃんと書いてあるんだけれども、実際に、はり、あんまというあの分野の仕事を大部分の人が勉強しに来ているわけでしょう。そういう勉強をするのがあの分野では行なわれていないのですよ。労働省では、そういうものは全部厚生省だという取り扱い方なんですよ。だから視力や聴力の障害者の側からいえば、厚生省だろうと労働省だろうと、障害者にも働く権利としてめんどう見てくれてあたりまえじゃないかというのが当然だと思うのです。そこで、閣僚の一人として大臣に、多くの人が受けていくあの職業訓練の方法について、障害者も当然入れさせて、そして発展させていくように取り扱ってほしいということなんですよ。それが、機構問題がいろいろあるからあのセンターでやるのが適当だというんだったらセンターでやるし、いや労働省にセンターをまかすというならまかせたっていい。そこはまかせるが、そんなものは政府の責任だ。要するに障害者も当然一般人の職業訓練と同じ扱いができる、また、あの人たちは特殊の生きる道しかないんだから、そういう道を保障するように考えるということをやってほしいと思うのです。そういうことです。
  392. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、全く異議がありません。労働省というのは、御承知のとおり、これはもともと厚生省の分身です。厚生省から分かれたものだから、身体障害者の方々にとりましては、厚生省も労働省もない、そういう意味から私どもは、労働省の分野にまかせておることで不十分な点がありますれば、これは厚生省の身内と考え労働省に対しましても協力をするし、あるいはまた、それは厚生省でいろんな理学療法とか、作業療法とか、リハビリテーションなどとあわせて職業訓練、授産もやるほうがいいという場合には、労働省が何をやっておるかということにかかわらず、私どものほうでできるだけのめんどうを見るようにいたしたいと思います。ことに国立の視力障害センターというものもあります。しかし私が見るところ、あれはまだ十分だとは思わない。施設も古いし、やっていることも、これは視力障害者から見て十分だと考えられるようなふうではないので、せっかく国立のああいうものがあるんだから、厚生省としては、必要なら労働省も引きずりながら、ほんとうにヒューマニズムの、しかもこれだけ世の中がよくなってのハンディキャップを持たれる人々に対しては、視力障害センターを充実するなり、その他の面においても当然やってまいるのが私どものつとめだと考えます。
  393. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ大臣、現実的には視力障害センターで行なわれているのですから、少なくとも労働省がやっているような水準の職業訓練の取り扱い方に改善するように検討してください。
  394. 内田常雄

    ○内田国務大臣 よろしゅうございます。
  395. 寺前巖

    ○寺前委員 第二番目に、いま大臣がおっしゃった視力障害センターへ行ってみて、緊急にしなければこれはたいへんだなと思った問題があるんですよ。やらなければならない点がたくさんあるのです。これは先ほど大臣のほうに回しておきましたけれども、私たちは見てきましたが、そこへいっていませんか。——いってなかったら、あとでまたひとつ検討してください、あそこへ行きますと、いろいろそこに書いてあるように、点字教育を六カ月以上行なうということが第三章第三の三にあるとか、屋外運動場の設置、眼科医師の配置、教養娯楽のための集会室、図書室を設ける云々と、あえて国の基準との関係でいうならば非常に問題の多い点が幾つかあります。時間がありませんので、ここでは一々申しませんが、これはひとつ積極的に、いまお渡しした文書に基づいて検討して改善をしてもらいたいと思うのです。  ただ、さしあたって緊急にしなければならない問題は、あの視力の障害者が二百五十人でしたかおられるのに、晩の管理が庶務のほうで一人。それから全体二百五十人が寮におられる。しかもあの寮の廊下というのは、六尺なければならぬというのでしたかね。ところが、実際には狭いし、柱が廊下の中側に出ているからあぶないのです。柱といったってコンクリートですよ。それが中側に出ているのです。だから、視力の障害者の廊下にはきわめて不適当。しかもそこで夜間に当直しているケースワーカーというのですか、ケースワーカーの人は男の人が全部で六人です。だから一週間に一回は当たるわけですよ。その人があそこで、それこそ一人で宿直しておるだけです。火事が起こったり、地震が起こったり、異常が起こったときに、視力の障害者はあの人一人にまかせて一体どうするんだろう。視力の障害者ですよ。まともな人じゃないですよ、ハンディキャップがあるんだから。しかも適当でない建物。私はこれは緊急に措置しなければならない問題だと思うのですがね。どうでしょう。これは局長さんに聞きたい。
  396. 伊部英男

    ○伊部説明員 東京視力障害センターの建物につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、あれをもって十分とは考えていないのでございます。先ほども答弁申し上げましたが、身体障害者福祉審議会におきまして、総合リハビリテーションセンターを設置せよという御要望があるのでございまして、これは医療機関、職員養成、各種のリハビリテーション施設を統合したものでございますが、これとの関連におきまして、東京視力のあり方につきましてもさらに基本的に考えてみたいということを事務当局としては考えておるのでございます。当面のいろいろな問題につきましては、ただいま資料をちょうだいいたしましたので、早急に実地につき調査をして、正すべきは正したいというふうに考えております。ただ、廊下につきましては、六尺は、予算の関係上現在ございませんので、これを早急に変えるということはきわめて困難でございますので、総合リハビリテーションセンターその他の総合的な問題を解決する際に解決をしたい。  なお、当直者はただいま二名でございますが、敷地内に八世帯職員が居住をいたしておりますので、これらの方々の御助力も得て、遺憾のないように努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  397. 寺前巖

    ○寺前委員 近所におるからそれはいいといえば、普通の宿舎だったらいいでしょう。視力を失って、しかもあなたも言われるように、いまさら廊下を、あそこをどうこうせいと言ったって無理かもしれない。それならばよけい危険だ。昼間でも非常に危険ですよ。異常な事態が起こったときに、近所におるということではぼくはだめだと思うのですよ、やはり当直者ということでなければ。だから、臨時にでも警備員を置いて保障してあげなければいけない。当然、施設全体に対する警備員も必要なことです。これは火災の面、火災に限らずそういう異常な事態が発生することを考慮に入れ、最悪の事態を考慮に入れるならば、そういうふうにやらなければならぬと思うのです。しかもあそこの非常口というのは曲がった階段ですよ。普通盲学校などにおいては、あっという間に行けるように、ぱあっとすべっておりられるような施設に全部してありますよ。ところが、あそこの二百五十人おるところは、そこへ行くまでがまた非常に長距離なんですよ。これはただごとではない。事件が起こらなかったらやらないというようなことでは済まない問題だとぼくは思うのです。これは現実的に即刻手を打ってもらわなかったらどうもならぬ。これは責任があると私は思うのですよ。どうでしょう、大臣
  398. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は一ぺんぜひあそこへ行ってみたいと思ってきました。しかし、厚生大臣というのはなかなか幅の広い行政を所管しておりまして、私は体当たりでいろいろやっておるつもりですが、まことに残念ながらまだ見ていない。見ていないが、一ぺん私は見ましょう。見まして、そして、これはただ行き当たりばったりでいろんな施設や運営をしているのではなしに、厚生省ではそういう身体障害者の更生施設については、設備基準とか運営基準というものがあるはずなんです。これは国立ばかりではなしに、公立あるいは法人立のものもありますし、基準があるはずです。そして公立や法人立のものはみんな基準によらせているわけでありますので、国立のものがそれよりも見劣りがするような、いわゆる紺屋の白ばかまということになるから、私も見ました上で、これはもうできるだけよそから批判も受けてはならないし、また、そこにいらっしゃる二百五十人の方々から、厚生大臣よく気がついてくれたと言われるようなふうに、できるだけ早く改善するような努力をひとつしてみましょう。
  399. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、こまかい内部の問題についてはお渡ししてありますし、現地へ行って所長さんなわ職員の皆さん、訓練生の皆さんの話をひとつ十分に聞いてやってもらって、そしてめくらとか、おしとか、つんぼという表現に見られるようなほんとうに長い間の社会的な差別があるんですよね。そういう中で障害者として生涯を生きていくということを考えたときに、ほんとうに心から私は権利を保障してやってほしい。人の命は金にはかえられないというものですよ。金で解決できるものだったら解決してくださいよ。そういう意味大臣の積極的なこれに対する取り組みをお願いして発言を終わりたいと思います。     —————————————
  400. 倉成正

    倉成委員長 この際、おはかりいたします。  先般、社会保障制度、医療、公衆衛生及び社会福祉事業等並びに労使関係、労働基準及び雇用・失業対策等の実情調査のため、各地に委員を派遣いたしました。第一班は、青森県、秋田県及び山形県、第二班は、長崎県及び熊本県において調査を行ない、その調査報告が両班よりそれぞれ文書をもって提出されております。これを本日の会議録に参照掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  401. 倉成正

    倉成委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  402. 倉成正

    倉成委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後八時二十三分散会      ————◇—————