運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-05-14 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十四日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 田村 良平君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤波 孝生君 理事 古川 丈吉君    理事 河上 民雄君 理事 島本 虎三君    理事 本島百合子君       久保田円次君    塩川正十郎君       加藤 万吉君    中井徳次郎君       浜田 光人君    岡本 富夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         防衛政務次官  坂村 吉正君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤き一郎君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         参議院議員   小平 芳平君         経済企画庁総合         開発局参事官  塙阪 力郎君         農林省農地局建         設部長     梶木 又三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提  出、衆法第二〇号)  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予)  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第九四号)      ————◇—————
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案予備審査のため本委員会に付託されました小平芳平君外一名提出公害に係る健康上の被害救済に関する法律案公害に係る紛争等処理に関する法律案、及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案並びに内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。橋本龍太郎君。
  3. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 本日は、日ごろ御尊敬を申し上げ、いろいろお教えを受けております角屋先生に対して、社会党を代表して提出されております紛争処理並びに被害救済に関する二案件について、幾つかの点でお教えを請いたいと思います。  一番最初に、基本的な問題点としてお尋ねをいたしたいのは、この紛争処理の問題に関しての点でありますが、社会党提出されたこの案について、基本的に司法権行政権との接点を一体那辺に求められているか、これをお教えを願いたいと思います。すなわち司法権行政権、はっきり申し上げれば民事訴訟法紛争処理制度、この二つの関係をどのように把握したらよろしいか、これをまずお教えを願いたいと思います。
  4. 角屋堅次郎

    角屋議員 いま若手のリーダーであります橋本委員のほうから、公害紛争処理法案基本的な問題についてお尋ねがございました。これに、時間もございますから答弁としては簡単に答弁をして、さらにお尋ねをいただきたいと思うのであります。  司法権行政権接点紛争処理法案においてどう考えたかという問額であります。これはいずれわが党の案と政府案との後ほどの対比で、御質疑の中でもさらに議論が出るかと思いますが、私ども議員立法として公害紛争処理法案をまとめる、あるいは救済立法を取りまとめるという段階において、ずいぶんいろいろな議論をいたしまして、最終的に紛争処理法案としてはこういう形にまとまったわけでございます。申し上げるまでもなく、立法司法行政三権分立という考え方は、この種法案をつくるにあたりましても、当然基本にしなければならないことはわれわれも考えておったところでございます。ただ、橋本委員も御承知のように、公害紛争というものの日本における実態を見てまいりますと、たとえば新潟の水俣病、あるいは富山のイタイイタイ病、あるいは四日市の公害ぜんそくというものが、いずれも今日裁判訴訟段階に行っておりますし、また数日来、私、別の会合で、熊本水俣病患者が、全体ではありませんけれども相当数の人が裁判訴訟訴えるというふうな動きも聞いておるわけでございます。しかし裁判の場合は、百年裁判というふうなことがいわれるように、なかなかか三審制の中で時間をとるというのも実態でございます。しかも今日の日本裁判は、弁論主義がたてまえになっておりまして、証拠調べをするとか、あるいは職権探知をするとかいうふうな形は、これはたてまえとしては、証拠等については訴を起こした者が双方でこれを準備し、そうして弁論を通じて争う、こういうたてまえになっておるわけでございます。しかし公害実態は、申し上げるまでもなく、大気汚染の場合を考えましても、この被害を受けるのは、あるいは老人であったり、あるいは子供であったりというふうな実態もございますし、また因果関係の非常に究明しがたい性格公害は一面基本的に持っておる実態が多いわけでございまして、訴訟における証拠を、すべて訴を起こした者が整備をするという点にもなかなか困難があるわけでございます。そういう実態もございまして、行政的に紛争処理するという段階でどういうシステム方法をとるべきかということをいろいろ議論しました際に、先ほど来簡単に申し上げましたような公害紛争実態あるいは裁判に行った場合の相当長期にわたる実態等も考えて、本来行政的に処理する場合は、何といっても迅速かつ公平に、しかも妥当な結論を得るということが望ましいわけでありまして、そういう意味からどういうシステムをとるべきかということで、政府案とわが党案で違うのは、和解の仲介あるいは調停まではそう大きく内容に違いがあると、私、思っておりませんけれども政府案仲裁に対して、わが党案裁定制度をとったというところが違いになるわけでございます。この裁定制度は、橋本委員も御承知のように、いわば準司法的な性格を帯びておるわけでありまして、それはやはり公害が、直接被害者加害者関係がわかる場合と、因果関係を相当科学的に究明をして、結論としてわかってまいる場合と予想されるわけでありまして、われわれの裁定の場合においては、そういう証拠調べとかあるいは職権探知とかあるいは証拠保全とかいろいろなものについては、自然科学方面権威者を網羅した公害専門調査会というふうなものまで設けて公平な結論を得るようにいたしたい、こういう趣旨を考えましたので、裁定制度を最終的にはとることにしたわけでございます。  したがいまして、基本的には、司法権行政権との双方独立性を認めながら、公害実態特殊性というものに即応して、行政範囲内でどういうふうにすべきかという場合の一番適切な方法はこれであろうという判断で、社会党立法ができておるわけでございます。
  5. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま角屋先生から御答弁をいただきましたわけですが、その中にすでに実は二、三の問題が提起されておるように思います。裁定につきましては次にお尋ねをしたいと思いますが、社会党案政府案と比較いたしまして、非常に基本的な違いとして出てきておりますのは、いわゆる政府案行政祖織法第八条の機関として設置をされておるのに対し、社会党から提出されましたこの紛争処理に関します法律案では、この委員会をいわゆる三条機関として設けておるわけです。この点がやはり一つの大きな基本的な問題点だろうと思います。ところがいま角屋議員の御答弁を伺いましても、行政権司法権との抵触については、非常にこまかい配慮を働かしておられる。そのために、実はむしろ私は三条機関としての特殊性がこの場合消えておるような気がするわけであります。社会党案においてのいわゆる公害審査委員会というものが、中央国家行政組織法第三条の機関として設立され、そしてこの委員会には公害にかかわる紛争裁定権限を与えられる。委員会裁定を行なった場合には、第一次的には「裁定内容について当事者間に合意が成立したものとみなす。」、八十一条の規定からいけばそういうふうになる。そしてその裁定内容に不服がある場合には、訴えを提起し得るということになっています。ところが、むしろ実はこの点が一番の問題点でありまして、公正取引委員会あるいは土地調整委員会などの三条機関の例をとって考えてみました場合に——三条機関にもいろいろの種類がございますから、この中でやはり一番性格的に相似たものを選ぶとすると、公正取引委員会あるいは土地調整委員会等が出てくると思いますが、その場合に委員会の行なう審決あるいは裁定というものに対しては、むしろこれは裁判所の第一審的な性格をはっきり持たしておるわけでありまして、これに対する不服の訴えというものは、もう高裁専属管轄とされておる。そして委員会認定した事実が、これを立証する実質的な証拠がある場合には、裁判所自体をこれは拘束するたてまえになっております。いわゆる実質的な証拠の保持といいますか、そこまでの拘束力を働かしておるわけであります。  ところが今回提案されております社会党案公害審査委員会について、ここまで強い権能を与えておられないのは、やはり公害紛争というものが司法行政の分野のいずれにもわたる非常に限定のしにくいむずかしい問題であり、また事実関係も非常に複難である点を考慮されたものと思うのでありますが、そのために、一定の行為法律に抵触しているかどうかといったような比較的単純な問題と、これは同一に論じられないという公害特有特殊性があるわけであります。そういう点を配慮して八十一条の規定が設けられたとすれば、むしろこのようなむずかしい公害紛争というものを解決されるためには、社会党案よりむしろもっと強力な、完全に第一審的な性格を持たし、そこで下された裁定というものはいわゆる裁判所の第一審を省略して高裁専属管轄に移るぐらいの強いものにしていくか、あるいは政府案のように、当事者間の合意基礎として簡易な制度をつくり上げる。この合意ができない場合には直ちに裁判に移行し得る方法を取り出す。実はこのいずれかに変えられるべきだと思うわけであります。  私どもとしては、裁判所類似の強い機関としていくことは、現段階ではまだ未検討の点も多いわけでございますし、また法制審議会等でもいわゆる公害罪等審議が現に進められている最中でありますし、こういう時点から考えますと、いまの時点でいわゆる第一審的性格をこれに持たせることにはまだ問題が多い。むしろ現状においては、政府案のように、当事者間の合意というものを基礎に置いた簡易、迅速な処理を行ない得る制度のほうが適当ではないかと考えておるわけであります。この場合には、合理の成り立たない場合には直ちに裁判に移行し得る、非常に早い機会に移行し得る措置も講じられる。社会党案の場合には、むしろ政府行政組織法第三条の機関というものをとられましたために、かえって性格があいまいになり、むしろ迅速、かつ適確処理という点にかかっては、逆に問題があるのではないかという感じが私はするわけであります。  この場合に、はたして三条機関を採用されることが好ましいかどうか。これについては、従来この委員会において角屋議員、すでに何回か答弁をされておるわけでありますが、この点についてもう一度、ここで御答弁を願いたいと思います。
  6. 角屋堅次郎

    角屋議員 紛争処理法案を考えます場合に、中央国家行政組織法三条機関をとるか、あるいは八条機関をとるかということについては、これは議論の存するところだと私は思います。ただ、私従来も答弁しておりましたように、この公害対策基本法議論をします段階においても、各方面から、公害行政というのは十数省の多岐にわたっておる公害行政の一元化というのが強く望まれておる。そういう点から、やはり公害対策を立てる場合にも、国家行政組織法三条に基づく独立機関をつくるべきだという意見が対外的には非常に強かったと承知しておりますし、私どももその必要性を認めて、公害対策基本法の中でも、そういう処理のしかたを提起したわけでございます。  本来、この国家行政組織法三条機関をとるか、あるいは八条機関をとるかという場合に、紛争処理制度については、総理府総務長官からも御答弁がありましたように、社会党案のような裁定制度をとるという場合には、国家行政組織法三条機関をとらざるを得ないだろう。しかし、政府案のような仲裁制度をとるという場合には、八条機関でも、いろいろ配慮をしたのでこれでいけると私は思っておる、こういう答弁もございました。やはり第一問のときにお答えいたしましたように、準司法的な権限というものを与えるということにわが党案でいたしておりますので、そういう点から三条機関に踏み切る。また従来の経緯から見ても、やはり独立権限を持った三条機関にして、事務局専属設置をする。あるいはわが党案の中では、やはり自然科学的な因果関係究明というものはなかなかむずかしい問題でありますので、公害専門調査会というので、自然科学関係日本権威者を五十名、日本学術会議の御推薦をいただいて、ここで権威ある判断をしてもらう、こういう措置等も考えてまいりますと、やはり八条機関というよりは、三条機関ということが当然議論の筋道として出てこようかと思うのでございます。  で、いま橋本委員のほうから八十一条の問題について触れられたわけでございまして、これも当然議論の提起されるところだと思います。私ども裁定の場合に期待をいたしますのは、条文の中身をごらんになられてもわかりますように、日本の望まれるいわば行政判断として最高の形をとりたい。そのために公害専門調査会もつくって、自然科学的な因果関係の問題についてはそこで十分究明してもらう。またそういう関係からいえば当然必要が起こってまいりますので、証拠調べの問題あるいは証拠保全の問題あるいは職権探知の問題、必要のための立ち入り検査の問題という権限等については、立法的にそれを裏づける。そして裁定については口頭審査をもって、いわゆる公開を通じて結論を出していく。科学的、合理的しかも公正な結論を出していく。  そこで問題は、そういう裁定が下った場合の八十一条の裁定の効力という問題でありますが、私ども期待をいたしますのは、日本の場合に求められる十分な科学的基礎に基づいて裁定を下すということに相なりますれば、加害者もそれに承服せざるを得ないだろう。また公害社会的責任という点から見て、世論がどんどん醸成され、公害に対して真剣に取り組むという企業の側の姿勢の転換というものが今後進展するに伴いまして、これは訴訟に今後訴えた場合においてもこの結論は変わらないというふうな権威あるものになりますれば、八十一条で双方合意が成立するということも十分期待ができる。もしかりにこの合意が成立せずに訴が行なわれるということになりましても、いわゆる裁定というものが、裁判過程においても十分裁判の判決に基本的判断の条件として生かされてくるということを期待しておりまして、したがって訴に参ります場合に、最高裁に持っていく、一審、二審のところを省く、ということもわれわれ議論過程でも考えたわけでありますが、問題の基本は、裁定制度というものを、行政範囲内において最高望まれることをとることによって、加害者被害者もこの裁定には従うという、そういう形をできる限りとりたい。それが合意が成立しない場合においても、訴に移された場合に、この裁定十分裁判の中でも生かされてくる。社会的にもそれが大きなバックアップとして生かされてくるということを期待いたしておるわけでございます。
  7. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いまの角屋議員の御説明は、実は中身としてはよくわかるのであります。ただやはり私は最初に申し上げましたように、むしろ三条機関をとられるのであれば、いま立案の過程においても議論があったのでありますという御発言がありましたように、やはり高裁専属管轄に移すまでの強い権能を当委員会にお与えになるべきではなかろうかという感じが強くいたすのであります。むしろせっかく三条機関をとられ、しかもこれは社会党案の非常な特徴として、わざわざ仲裁を省かれて、裁定という強い態度を打ち出されながら、これが途中で終わってしまうがために、むしろ迅速な処理をおくらせる可能性がないか。これは私はいまだにいまの御説明に対しては実は必ずしも納得はいたしません。むしろその場合に裁判に早く移行し得るという点を考えた場合は、政府原案の程度のものになる。また三条機関として裁定を強く主張せられ、その権能を重視せられるとすれば、心理的にそれは裁判を拘束することはあり得るでありましょう。実効上の問題とは別に、たてまえからいくならば、やはりこれは高裁専轄まで踏み切られるべきではなかったのか。その意味で、社会党案は非常に私は中途はんぱだという感じがいたすのであります。しかしその点はそれでおくことにしまして、この裁定制度について、いまの御答弁があったわけであります。これについても実はやはり幾つかの問題点があるように思います。  すなわち、現下の諸制度において、ある行為が法の定める要件を持っているかどうかについて判断を下したり、あるいはある処分に対する審査請求について判断する場合、こういう場合に裁定等制度を設けている例はございますけれども、これらはいずれも実は比較的単純な問題ばかりであります。ところが公害紛争というものについては、一つ非常にこれらの問題と異なるのは、これはそれこそ私人問の私的な紛争、しかもきわめて複雑な因果関係究明を必要とする、そういう非常に複雑な判断を下す必要のある問題であり、しかも現行裁判実態を見ましても、きわめて立証困難な状況等も見られる。こうした問題についてのこういう性格上、はたして行政機関が一方的に判断を下し、当事者を拘束するということはいかがなものであろうか。これがまず私の感じる第一の問題点であります。  また、裁定等強制的な手段、処分を行なうとした場合に、これをもし行なうとしても、裁判所の第一審的な性格を持たせないにしましても、手続としては、これは訴訟に準じた慎重な手続をやはりとらなければならない。ところがこの公害紛争処理制度というものが生まれてくる、いわゆる簡易迅速に訴訟を補完する役割りを持たせていくという意味からいきますと、訴訟に準じた慎重な手続を要する裁定という制度をとることによって、逆にいわゆる訴訟を補完する簡易迅速な制度を創設するというメリットがなくなりはしないか、これが第二の疑問点であります。  また、これは最初三条機関、八条機関の論議にも触れるわけでありますが、裁定制度を設けたにいたしましても、現行法制下においては、行政機関は終審としての裁判はし得ない。究極的には司法的な判断を仰ぐ制度としなければならない。特に公害紛争のようなきわめてむずかしい問題については、社会党案においてさえ、裁判所にかわって事実認定を行なうというような強い権限を持たせておられない点から考えましても、裁定に不服のある者は、結局司法裁判所に対しあらかじめ事実認定を含めて提訴し得る道をそのまま開かせざるを得ないわけであります。むしろこれは屋上屋を重ねるきらいはありはしないか。むしろ最終的な解決までにかえって長時間を要するということになりはしないだろうか。私は裁定という制度の持つ効果を決して否定するものではございません。ただいわゆる公害紛争というものの実態から考えた場合に、当事者間、特に被害者側の一番希望される簡易迅速な解決、簡易迅速な処理という点から考えました場合に、この公害紛争処理の中に裁定という制度を設けることによって、かえって問題が生じはしないだろうか、こういう懸念を持つのであります。この点はいかがでしょう。
  8. 角屋堅次郎

    角屋議員 私は橋本委員質問に対して、ときに答弁の中で、議論の存するところだということばをよく使うのでありますが、国家行政組織法三条機関をとるか八条機関をとるかということに、わが党の場合は議論が終始したわけではございません。そういうことを御認識の上で御質問だと思います。  先ほど来出ております裁定の問題でありますが、これは後ほど御質問になると思います救済立法とも関係するのでありますが、この公害対策基本法の二十一条に基づいて、紛争処理制度をつくるあるいは救済処理制度をつくるということが要請されておりまして、それを受けて、政府案もわが党案もできておるわけであります。この場合に、わが党案救済考え方というのは、やはり公害にかかわる被害を受けた者について最大限のことをこれでやろうというのではなしに、必要最小限のことは少なくとも整備する。そして行政的な紛争処理制度を通じてなりあるいは裁判を通じての訴訟なり、そういう場合に、十分相手側と争うべきものは争って、公正な判断を仰ぐという基盤救済処理制度の中で最小限考えなければならぬ。そうでないと、やはり被害を受けた人たちというのは非常に経済的にも弱い立場にあって、本来はもう少しがんばりたいところだけれども、実際の生活の窮状からして、途中で挫折せざるを得ない。これは熊本水俣病経緯がそれであったと一がいに言えないかもしれませんけれども、やはり行政的に紛争処理制度処理をいたすにいたしましても、あるいは裁判訴訟を通じて争うにいたしましても、いわゆる被害者加害者と正々堂々と争い、そして決着をつけていくというための生活基盤というものは最小限確立をしていくということが前提になければならぬと思います。それが政府案紛争処理制度を考えます場合にも、わが党案紛争処理制度を考えます場合にも、これは車の両輪のごとく関連をしておる、こう思います。そのことを抜きにして議論をすることもまた片手落ちである、こう思います。  問題は、裁定制度屋上屋を架するのかどうかという問題でありますが、やはり立法司法行政三権分立のたてまえからいって、われわれはやはり裁判の道というものをあけておかなければならぬ、閉ざすわけにはいかない。しかも、そうは言いながらも、せっかく紛争処理制度というのを設ける以上は、行政処理の中でできるだけ被害者にこたえるような形を整備いたしたい、これもまた当然のことだと思うのであります。十分行政的に尽くして、なおかつその結論に対し自分としては不服であるということで訴訟に行くという道は開かなければなりませんが、いわゆる行政権限の中で望まれる理想案といいますか、できるだけのことはむしろ被害者立場に立ってやってやるということになりますれば、われわれのほうでは、裁定は一方もしくは双方の申し立てでできる、政府案でいきますれば、仲裁双方合意ですべり出す。したがって、政府案の場合には、仲裁があらゆる機会に働くというわけではない、合意が前提になる。和解の仲介もしくは調停と、あとの仲裁の問題については合意が前提になる。しかしわれわれの場合には、一方または双方の申し立てでそれが発動されて開始される。しかもそこではわが党案からいくならば、行政的に一番望まれる理想的なものをできるだけ整備したい。ただその場合に、立法司法行政基本的に大きな議論の出てくるようなことについては、これは行政権限範囲内の最高度のものを求めるということをメリットにしなければならない、こう思うわけであります。したがって、私どもの党の第一条の目的にも書いてありますように、和解の仲介及び調停の制度については「迅速かつ妥当な解決を図る」という趣旨でこの二つの制度はつくっておりますけれども裁定制度については、第一条の目的にも書いてありますように、「これらの制度によっては解決が困難な事案について裁定制度を設けてその公正な解決を図ること等を目的とする。」、つまり橋本委員も御承知の、先ほど来十分御認識のとおり、公害問題については、加害者被害者が明確であるという場合ももちろんございますけれども、多くの場合、因果関係がなかなか明らかにならない。これは行政的に処理する場合でも、裁判になりました場合でも、なかなか最後までこれが争われるという性格のものが、いわゆるここで言う「これらの制度によっては解決が困難な事案」、裁定制度に持ち込まれるであろうというふうに思われる事案について書いてあるわけでございます。そうなりますと、やはりこの第一条の目的の後半で書いたものを処理していくためには、双方合意というのじゃなしに、双方合意で持ち込まれる場合もありますけれども、一方の申し立てでやるということになります場合には、やはりこういう行政的に処理する場合でも、被害者立場に立つといいましても、やはり裁定は、加害者被害者全体を通じて公正に行なわれるということが基本でありまして、そのためには、双方とも納得し得る科学的な判断というものを下してやる。なるほどそういう結論であるか、それには従わざるを得ないという形に、やはり裁定としては持っていきたいということを望んでおりますがゆえに、そういう意味の必要な諸制度についての整備を考えたわけでございます。  したがいまして、二番目の質問の際にも申し上げましたように、裁定制度に持ち込まれて、これに不服があって裁判に行きました場合にも、これほど日本自然科学関係権威者を網羅して、そしてその点の科学的な判断をして裁定が行なわれるということになりました場合には、弁論主義で争われる裁判の場合においても、その裁定というものは十分権威あるものとして尊重せられるということが望まれるし、またそういう事態で裁定制度が出るということにわれわれは期待しておるわけでございますから、そうなりますれば、あとの裁判の問題については、この政府案のような形で裁判に行っても、相当長期に及んでおりますけれども、われわれの場合には、裁定である程度の時間はかかりましても、裁判にもし持ち込まれました場合でも、それが十分権威あるものとして裁判で生かされるということになれば、それだけその面の迅速性というものは返ってくる、こう思うわけでありまして、私ども期待としては、やはり権威ある裁定制度を設けたこの制度が十分生かされて、そしてこの時点加害者被害者裁定に従っていくということを期待しておりますが、それが裁判に行きました場合でも、十分権威あるものとして裁定が生かされていくということが、われわれの考えておる期待であります。
  9. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 先ほど申し上げましたとおり、実は角屋議員のお話しのお気持ちは私はよくわかるのであります。率直に申し上げまして、今日まで水俣あるいはその他の場所において、ほぼ被疑者、公害加害者として認定される状態になりました企業が、現実にその解決に対してどのような態度をとってまいったかということは、角屋議員もよく御承知のとおりに、きわめて企業利益追求に忠実な空気が濃厚であります。被害を受けた人々に対する配慮というものに欠ける面があったのは、角屋議員承知のとおりであろうと思うのであります。ところがそういう空気の中で、いまのお話を伺いましても、いわゆる加害者側と目される者の良識に期待される面が実は非常に多いような感じがいたします。そしてまた、その裁定の中においてなされた、積み上げられた議論等が、裁判に移行しました場合にも、第一審に相当程度以上の影響を与えることが想定される、想定というよりも、むしろ非常に強く予測されておるわけです。ところが、はたしてこれがそういうふうに行くかどうかという点に、私はきわめて疑問に思うのであります。またイロハのイから議論が始まるのではないか、なおさら長い時間が重なるのではないか、そのために、いわゆる最小限度の被害救済は受けられても、ほんとうにその公害によって被害を受けた方々の被害をつぐなうだけの態勢がとられるまでに長い時間がかかりはしないか、むしろそういう点からいけば、私は簡易迅速に裁判に移行できる政府案のほうを了とするわけであります。これはその実効の問題でありますから、卓上で議論いたしましても、いずれが正しいとも決着のつく問題ではございません。ですから、これはいまの角屋委員の御答弁に対し、私はそのお気持ちはよくわかる。しかしまた、先ほどの三条機関、八条機関のところで申し上げましたように、むしろなお強いものであるならば、それだけの実効が当然考えられるにしても、このままではむしろ中途はんぱなものではないかという感じがどうしても抜けません。  それはそれといたしまして、もうあと二点ほど、この点でお尋したいのは、中央紛争処理機関と都道府県の紛争処理機関関係についてでございます。  社会党案においては、「公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じたときは、当事者の一方又は双方」が、都道府県紛争調停仲介委員会に、和解の仲介または調停の申し立て、または中央公害審査委員会裁定を申し立てることができるというふうになっております。したがって、地方の紛争処理機関に申し立てを行なうか、中央紛争処理機関裁定を申し立てるかは、当事者の一方の任意的な判断にゆだねられておるわけであります。当該紛争が、あるいは工場騒音等のように、被害範囲、程度の比較的小さい、またあるいは大気汚染等につきましても、当該地域に特有の地形、現象等によって起こりましたような場合、いわゆる当該地方の実態をよく知っている地方の紛争処理機関において解決するほうが適当なようなものであっても、中央に申し立てがあれば中央裁定をしなければならなくなるのではないか。大体一般において公害は、騒音に限らず、地域的な性格が非常に強いものであります。むしろ第一次的には、これらの地域の実態に通じた都道府県段階において処理されることのほうが現実的であり、かつ効果的ではないかと私は考えるのであります。むしろ二県以上にまたがる広域的紛争でありますとか、あるいは水俣における水銀中毒あるいは阿賀野川における水銀中毒、その他いわゆる人間の健康にかかわる重大な被害が起こるような紛争等、非常に特殊なものについては、中央処理をされるのが当然であります。むしろ社会党案のような制度では、被害の大小あるいは被害の態様等にかかわらず、当事者の一方の申し立てによっても行なうことができるために、本来ならば都道府県段階処理することが適当であるものまで、中央処理をしなければならなくなるのではないか。その場合にむしろ都道府県の紛争処理機関というものが有効に機能し得なくなるのではないかという感じを持つのであります。これでは、国及び地方を通じて有効かつ円滑な紛争処理制度を設けるという点では問題ではないか。むしろ地方における紛争処理機関中央における紛争処理機関それぞれの機能をもう少し明確にされて、地域的な問題が中央まで第一次から飛び上がってくることのないような配慮をされたほうがよろしくはないかと考えるのでありますが、その点いかがですか。
  10. 角屋堅次郎

    角屋議員 私ども紛争処理の法案を考えます場合に、和解の仲介、調停、裁定、この三つの制度をとろう、その場合に、地方に設けます公害紛争調停仲介委員会中央に設けます公害審査委員会というものの三つの制度に対する取り扱いについては、公害、審査委員会裁定一本に割り切りまして、地方の公害紛争調停仲介委員会においては、和解の仲介と調停を行なう、こういう整理のしかたに踏み切ったのであります。これは橋本委員も御承知の和解の仲介、調停という性格は、政府の責任者からも御答弁がありましたように、本来話し合いで問題を処理しようという互譲の精神が基調にございます。和解の仲介の場合には、特にそういう色彩を持っている。調停の場合には、調停案というものがもちろん出されて、受諾勧告を迫るわけでありますけれども、それにしても互譲の精神を基調にしている。  ところが、わが党で最終的にとります裁定制度という場合は、もちろん互譲の精神が全くないというわけではない、そういうものがなければならぬわけでありますが、しかし基本的には、やはり双方の問題について、中央公害審査委員会自身が科学的な究明等をやりながら公正な裁定を下す。そうして、それには加害者被害者も、なるほど客観公正のものであるということで従うことが望まれるという形を期待しておるわけであります。したがって、そういう点、先ほど申し上げました第一条の点からいっても、本来因果関係のそう複雑でない、双方紛争にはなっておるけれども、話し合いを煮詰めれば話し合いがつく可能性もあるというものは、地方に求められる機関の中で、和解の仲介あるいはは調停という段階処理されることをわれわれとしても期待しているわけであります。裁定が本来望んでいるものは、非常に因果関係が複雑であって、究明に科学的な判断を要する、その種問題については、迅速とはいいましても、ある程度の時間がかかるということも想定される事案については、裁定制度というものを設けておるのでありますから、そのものが簡単に一足飛びに裁定に来るというのは、本来の和解の仲介、調停、裁定の三つの制度をとっておるたてまえからいたしますれば、これは予想していることではございません。しかし、そういうものが来た場合にどうするかという運営上の問題はもちろんございます。しかし、それは内容がきわめて簡単なものであって、裁定に科学者まで動員してやるということまで必要ないわけでありますから、それは迅速に処理することもできるわけであります。  本来は、中央地方を通じて、国家行政組織法の第三条機関でありますから、規則制定権というものを持っております。したがって何も中央と地方は上部下部の関係にあるというふうにわれわれは望んでおるわけではありませんけれども、しかし、統一的に紛争処理をやっていくというたてまえというものは貫いていかなければならぬ。わが党案の場合には——政府案では、条文を見ましても非常にぼかされていますが——県あるいは政令市ないしは必要に応じてそれぞれの市町村にまで苦情相談員を設けられる。公害紛争の場合、苦情が持ち込まれれば、それは県の段階に行ってこういう方法でやればよろしい、あるいはこれはなかなかむずかしい問題であるから、裁定まで行かなければならぬけれども、とりあえず県の段階から始めたらどうだろうというふうに、親切に公害紛争の問題について相談に応ずる、あるいは必要によって関係行政機関に対して勧告権まで持たせよう、いわばこういう中央段階、県段階紛争処理制度とタイアップする姿で、第一線の国民からしますならば、一番末端の接触点に苦情相談員を置いておるということも踏まえた上で御判断願いたい。そう非常識に、一挙に裁定機関まで相当数のものが来るということは、われわれも望んでおりませんし、またそういうふうなことについては、運営指導を通じて、やはりしかるべきところで適正に処理されるというふうに指導してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  11. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いまの御答弁で、この点は大体納得ができます。ところが、社会党案の中で、これは私もすぐれた点だと評価いたしますのは、確かに、都道府県及び政令で定める市に、公害苦情相談員——苦情相談員という名前は、あまりかっこうのいい名前ではありませんけれども、こういうものを置かれる。しかし、この人たちに対して、立ち入り検査あるいは改善命令等の措置を講ずるよう勧告する権限を与えておるわけであります。これは非常に特色があると思います。これは率直に評価をいたしております。ただ、いまお話にもありましたように、何もかも中央に上がってくることを期待するものではないと言われたその辺が、必ずしもこの条文では明確になっておらぬ。そこでこれは確認さしていただいたわけでありますから、御了承を願います。  また、大気汚染とかあるいは水質汚濁によって生じた人の生命あるいは身体にかかわる被害に対して一これはまた裁定の話に戻るわけでありますが、社会党案では裁定前置主義をとっておられる。これは、一番最初お尋ねいたしました司法権行政権の抵触の問題にもからみの出てくる点でありますけれども社会党案においては、こういう問題については、裁定を経なければ訴訟を提起し得ない形になっています。ところが、一時的にせよ、これでは裁判の道をとざすわけです。裁定制度の利用を強制される形になるわけでありますが、これは、憲法上保障されておる裁判を受ける権利の制限という点で、憲法に抵触する可能性はないか。私は専門家ではございませんから、この点明らかに自分でどうこうとは申せませんが、一時的に裁判を受ける権利を封殺して裁定を強制されることは、これは憲法上の問題にならないであろうか。また百歩譲って、そういう問題点はない、裁定前置主義は憲法上の問題にならないということになりましても、結局その裁定に不服がある人たち訴訟によって争う。これが先ほどの質問にもからむわけでありますが、裁定の強制ということが、むしろ問題の解決をおくらせはしないかという疑問を払拭することができないのです。この裁定前置主義についての御答弁を、再度願いたいと思います。苦情処理に関しての大体の御意見は、これで伺い終わったものと解したいと思います。
  12. 角屋堅次郎

    角屋議員 わが党案の第六十四条「訴訟との関係」の最初の取り扱いの問題について御質問がございました。これはいまも御指摘のように、「大気の汚染又は水質の汚濁によって生じた人の生命又は身体に係る被害についての損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ、訴訟を提起することができない。」、こういう第一項の点についての御質問でございます。逆にいえば、政府案のたとえば救済制度を見ますと、大気汚染水質汚濁というものは、人間の生命、健康では、いま一番爼上にのぼっておるということを御指摘になって、したがって、救済はとりあえず、その二つの健康にかかわる問題に限定をしてすべり出そうということを、政府自身が言っているし、現実の姿も、やはりそこに一番社会的問題が提起されておる、こう思うのです。社会党案で、裁定という準司法的な権限のものを行政的に設け、それに必要なあらゆるものをできるだけ整備しようという形をとって、行政的な点で被害者の権利を守るということを念頭に置きながら整備する以上は、特に今日問題の一番表面化しております大気汚染水質汚濁の、人の生命にかかわる問題についてやはり裁定が活用されるということは、当然こういう法を立てる場合に考えられる。問題は、そういうことで裁定前置主義をとったことが、いわばその道をそれだけ閉ざす、将来に行く時間というものをずらすということの御指摘から、憲法問題まで言われましたけれども、いわゆる客観、公正的に見て、その裁定前置主義をとることが、一体社会的正義から見て許されることであるのか、あるいは批判されることであるのかということなのであります。  言うまでもなく、公害は多くの場合、加害者があり、発生源があり、そうして被害を受ける者がある。そこで紛争が起こる。したがって通常の場合、私ども判断いたしますところでは、被害を受けた者というものは当然、社会党案のような裁定制度が設けられ、そして自然科学的なものについての権威者を整備して、公平、客観的な裁定を下そうという制度ができます場合には——裁判に参りますれば、やはり弁論で争わざるを得ない。しかし社会党案のような裁定制度の場合には、いわゆる職権探知主義あるいは証拠調べ、いろいろなものを審査委員会みずからも努力してくれる。もちろん口頭審査を通じて議論もいたしますけれども、そういう口頭弁論といいますか口頭審査といいますか、それは判断の重要な中身ではありましょうけれども、根底は、いわゆる自然科学的な判断というものを権威あるものから求めて、裁定をやろうというところに基調があるわけでありますから、こういうものが設けられたときに、被害者加害者のいずれが望むかといえば、多くの場合被害者であろう。だとしますならば、私は訴訟との関係において、第六十四条について、特に今日の日本公害実態から見て、大きく問題になり、また現に、それがゆえにこそ裁判にまで持ち込まれております実態からしますれば、裁定前置主義というものをしぼって、大気汚染または水質汚濁によって生じた身体に関する被害について裁定前置主義をとるというのは、被害者として期待をするであろうし、むしろ公正にさばかるべき加害者としても、裁定の道を歩むことによって、憲法上の論議というものが社会正義の立場からも許される、こう私は思います。
  13. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いまの御答弁を伺ったわけでありますけれども、結局、最終的に私の疑問として残りますのは、社会党案——確かに政府案に比べていろいろな特徴を持っておられる案ではありますが、やはり行政権司法権との抵触に対して考慮を払っておられるその努力が逆になって、むしろ中途はんぱな形になったのではないかという面を払拭するわけにまいりません。これはいずれまたゆっくりお教えを請うことにしまして、たまたまいま救済のほうに話が入りましたので、続いて、社会党提出救済法案について御質問を申し上げたいと思います。  今度社会党提出されました被害救済に関する法律案についてまずお尋ねをしたい点は、第一条及び第三条に関連した問題です。  騒音、悪臭、振動、地盤沈下等を対象としておられますけれども、これらの公害が健康に害を及ぼすということが医学的に証明できるかどうかということについて、私は一つの疑問を禁じ得ません。また、この中に指定疾病ということばがございますが、指定疾病というものはどういうものをさしておられるのか、これをお尋ねしたいのであります。たしかに、騒音によって、たとえば赤ん坊の寝つきが悪い、夜泣きをするという事態が世間に出ていることは、私もよく承知しております。しかし、これが医学的に、その騒音によるものであるかどうか、的確な診断というものがいまだ権威ある医学の専門家から下された例を私は実は存じません。また、はたして悪臭、においによってこれが健康に被害を及ぼすというようなことが医学的に証明できるのかどうか、これにも実は疑問があるのです。現実に水質保全の問題にも関係があるわけでありますが、あるいは養豚場、養鶏場等のにおい、排水の処理に関しても非常な問題があり、今回政府から出されている水質保全法案の中でも、これについては、実効的な手段が見つかった時点でこれを対象にするという考え方をとっておるわけであります。はたして効果的な、医学的な証明ができるのかどうかということが疑問なんです。また、振動というものについて、これも健康上害がある、いわゆる公害として害があるという認定ができるかどうか、やはり非常に疑問がある。いわゆる振動による人間の健康破壊ということで一番大きなものを拾うとすれば、林業労働者の中に動力のこぎりによるいわゆる白ろう病がある。これは、はたして公害病として扱うのがいいのかどうか、むしろ労働災害として考えるべき対象のものではないか。これは、私は公害として認定することが実態として正しいものとは思いません。むしろ労働災害として考えなければいけないものだろうと思う。また、地盤沈下によって、はたして健康被害というものが起こり得るかどうかということを見ますと、現在日本列島自体の地形が、次第次第に南側に張り出して、北側が地盤沈下を起こしているということは周知の事実でありまして、新潟周辺等非常に大きな地盤沈下を来たしておりますけれども、私は寡聞にして、地盤沈下によって人間の健康に被害があったという実例を存じません。  第一条、第三条の関係で、これらの点について、社会党としてこれを対象と定められたのはどういう趣旨なのか、また医学的に証明でき得るものなのか、具体例があれば、その具体例を添えてお教えを願いたい。
  14. 角屋堅次郎

    角屋議員 私はこの点については逆に問題を提起したいという気持ちもあるのですけれども、本来、現行の公害対策基本法が制定されるときに、たとえば救済なら救済について、政府案のように大気汚染水質汚濁による健康に対する被害に限定をするということは、おそらく想定していなかったと思う。これは過般の質問の中でも、厚生政務次官みずからが答弁をある意味では間違えたということからも判断されるように、母法である公害対策基本法は、公害にかかわる被害については、救済についてもあるいは紛争についても万全を期すべきだというのが、この制度を考える前提だということについては、橋本委員も御異論がないと思うのであります。現実にそういう問題がどことどこにあるか、あるいはそういうことが立証できるかというふうな議論よりも、本来立法をする場合に、母法である公害対策基本法を受けて、どういう紛争処理制度にすべきか、あるいはどういう救済立法にすべきかというのが、むしろ基本であるというふうに私は思います。  そういう前提に立って考えます場合に、いま橋本さんは、人間の生命、健康にかかわる分だけについて言われましたが、公害対策基本法は、もちろん物に対する被害ということも想定をしていろわけであります。そういう点では、地盤沈下その他の問題によって、物に対する被害が起こるということも常識上想定されるわけです。問題は、そういう場合にどういう救済の処置をするかということは別個の問題であって、そういうふうに考えてまいりますと、ただいまいわゆる人間の健康、生命ということだけに限定を置いて御質疑されたのですが、もう一つの物に対する被害その他の救済をどうするかということも含めて御理解をいただきたいと思います。同時に、いわゆる公害にかかわる被害救済を考えます場合には、さっきの裁定ではありませんが、科学的な判断を十分加え、だれしもが客観的に納得できるという——紛争当事者双方の問題があって、その問題をさばかなければならぬということではなくて、いわゆる公害にかかわる被害が一定の指定地域に出てきたというふうに判断をする。そうしてそういうものについての指定疾病について救済していこうという精神に、健康、生命の場合立っておるわけであります。  この考え方は、政府案でもそういう考えをとってもらいたいと思うし、社会党案でも考えていますのは、そう一から十まで医学的に証明されなければならぬ、科学的に究明されなければならぬ、それでなければ救済の手はさし伸べられないというかたくなな態度で救済立法は考えるべきではないと思うのです。そういう点については、あたたかく公害にかかわる被害を受けたであろうという対象を包んでいくという考えが、救済立法の根底になければならない。しかし、そうかといって、無制限に発動していくということでなく、それはけじめをつけなければならぬ。しかし、根底はそうであるという基調を置いて考えておるわけであります。したがいまして、大気汚染あるいは水質汚濁については、政府案救済考え方を、限定をした幾つかの問題はありますけれども、とっておる。われわれは、騒音の場合も、基地公害をはずそうというようなことが議論になっておるわけでありますけれども、いわゆる基地公害による騒音が、その基地のある周辺の住民——老人、子供あるいは一般の市民にどういう被害を日常ふだんに与えているかというふうなことを考えてまいりました。あるいはそれが農業サイドの酪農だとか養鶏だとかいろいろなものにどういう被害を与えているかというようなことをいろいろ考えてまいりますと、これは救済制度を考える場合に、大気汚染あるいは水質汚濁だけに限定してよろしいとは言えない。政府案といえども、将来の発展は当然考えなければならぬ問題を含んでおると思うわけであります。  したがって、この立法考え方は、母法である公害対策基本法を受けながら、救済については、科学的根拠とか医学的、専門的裏づけとかということも全然ネグレクトするわけにはいきませんけれども公害が非常に被害を及ぼしている地域について総合的に判断して、市町村からの申し立てあるいは県からの申し立て、あるいはその裏づけとしての健康診断というふうなものが結びつけられまして、これが中央に要請されてくるという場合には、中央といたしましては、あたたかい気持ちを根底に持ちながら、なるほどこれは救済の手を当面さし伸べなければならぬということで、この法律が働いていく、こうわれわれは考えておるわけであります。したがって、この問題の基本の立て方は、紛争処理を考える場合と救済を考える場合では、根底において少しく考え方の違いが存するということを御理解の上で、御判断を願いたい、こう思います。
  15. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま角屋議員に、私が第一条と第三条を特にお尋ねしましたのは、物に関する被害のほうは、第十二条のほうに詳しく書かれている。私は実はわざわざ第三条と申し上げました。また、指定疾病とはいかなるものかということも加えてお尋ねをいたしました。特に角屋議員のいま御答弁になりましたような基本的な考え方というものを知った上でお尋ねしているのでありますから、もう一度指定疾病というものはいかなるものをお考えになっておるかということについての御答弁を願いたいと思います。同時に、なるべく答弁は簡単にお願いいたしたい。
  16. 角屋堅次郎

    角屋議員 これはむしろ橋本委員のほうが、社労で厚生問題をやっておられるから、その点では専門的に御承知だと思います。立法提案者は、別に厚生省から各省にまたがって、全部手持ちの説明資料を持っておるわけではありませんから、ここで私が指定疾病について、政府が考えておる内容あるいはわれわれがこれから想定していく内容というものについて、詳細説明できる資料を持って答弁をするという段階にはないわけであります。これは大気汚染でいえば、四日市を想定し、あるいは尼崎、川崎を想定すれば、どういうものが指定疾病に入るだろうかということは判断として出てくるわけであります。大気汚染水質汚濁についても、いままですでに事例もございますし、そうしてまた今後未知の被害が出てくる。それがやはり公害にかかわるものだということになれば、そういうものも含まれていくだろうという将来展望の問題もありますし、限定して指定疾病というものをこの点で想定することはできない。なおまた、私どもの場合には、単に指定疾病ばかりでなく、指定疾病によってさらに含まれてくるであろう障害というものまで考えていこうという構想でありますから、むしろそういう具体的な問題については、法律案ができますまでに当然指定されるもの、あるいは今後の公害の進展いかんによって新しく含まってくるものも想定しておるという段階で、御答弁にかえさせていただきたいと思います。
  17. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 この第三条についてもう一点お尋ねいたしますが、認定の要件として、「一日のうち相当時間を当該指定地域内において過ごし、その期間が指定地域ごとに、かつ、当該時間数に応じて厚生大臣が定める期間をこえる者に限り、」ということを実はわざわざ明記しておられます。これは突拍子もないことをお尋ねして恐縮なんですが、これをこのまま読みますと、むしろ指定地域内に住んでおる人で、指定地域外に通勤して一日の大半を過ごし、夜帰ってきて朝出勤するまでの問だけが指定地域に住んでおるというような人たちは、これは除外されると考えてよろしいのですか。これは第三条の第二項についてのお尋ねであります。
  18. 角屋堅次郎

    角屋議員 むしろこの点は、政府案と対比してごらんになれば問題がはっきりするわけですけれども政府案の場合は、「指定地域の区域内に住所を有しており、かつ、その時まで引き続き当該指定地域内に住所を有する期間が厚生大臣の定める期間以上である者に限って行なう」ということで、指定地域内からはずされる、あるいは指定地域外に行くということは、一定の期間によって打ち切りをやっていくというのが政府案考え方であります。問題は、そういう政府案と対比して、わが党案の中にはね返ってくるわけでありますが、御承知のように、今日の勤労者の実態を考えてみますと、四日市なら四日市という場合に、鈴鹿に住居を持っておって、そうして勤務の関係で四日市で大半を過ごす。鈴鹿というのはベッドタウンであって、実態の仕事をする場合は四日市であるというのが、相当数実態としてできてくるわけですね。これは橋本委員の選挙区の関係でも、そういう実態があろうと思います。そういう場合に、逆に政府案の場合はそういう点をどうするのかという疑問が出る。われわれといたしましては、やはり冒頭に申し上げましたように、公害にかかわる被害判断をされるようなものについては、できるだけあたたかく包んでいく。そうかといって、指定地域を設けて、指定地域内の指定疾病については救済をやるわけでありますが、指定地域に本来住居を持っていない者について、公害にかかわる被害と同じような病気が出ておる、それを公害病と認定するかどうかという問題については、これはやはり指定地域内においてこの被害を受けておるだろうという、むずかしく言えば因果関係といいますか、そういうものは相当蓋然性を持たなければならないということがやはり望まれるわけでありますが、あまり無制限というわけにはいかない。そこで指定地域内に一定の期間内ずっとおるというようなことを考えたわけであります。これは郵便局の配達員であるとか、あるいは工場につとめる労働者であるとか、いろんなものが想定されると思います。この点は、行政的には、そうは言ってもやはりきちっとしたけじめをつけるべきところはっけなければならないというふうには考えております。したがって、いま、この指定地域内におってよそにつとめる場合はどうか。指定地域内におるというのは、指定地域を設けた場合の、公害にかかわる被害、指定疾病の救済を受けるという本来の前提条件でありますから、これは何も除外して考えるものではございません。
  19. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 そうだろうと思ったのですが、この条文は、忠実に読みますと、いまの御回答のようにならないわけです。これは社会党としても、ちょっと御修正を願わなければいかぬ点だろうと思う。これを正確に読みます限りは、指定地域内に住居して、指定地域外に通勤する住民というものは抜ける、そういうふうに読めてしまう。(角屋議員「理屈だ」と呼ぶ)ですから、最初から妙なことをお尋ねいたしますといってお断わりをしたとおりなんです。私は実は、それを社会党はお考えにならずにこれをお書きになったかと思って、びっくりしたわけでありますが、いまの御答弁を伺いまして、抜けておらないということがわかりましたから、安心いたしました。  それから、第七条についてでありますが、これもちょっと同じような、多少へ理屈に近い問題があるのであります。というのは、認定患者が保険医療機関で医療を受けた場合の医療費、これは当該保険医療機関が都道府県知事に対して請求するものとされておるわけでありますけれども、たとえば先ほど質屋議員が例にとられた四日市の問題、最近四日市ぜんそくの患者で、四日市自体の医療機関に行かずに、あるいは東京でありますとか大阪でありますとか、そうした方面の他の都道府県の保険医療機関において医療を受けておる例が多々あります。その場合には、たとえば四日市ぜんそくの患者が東京で医療を受けた場合は、東京都知事が支払うと解釈してよろしいのかどうか。と申しますのは、いまの体系上からいきますと、たとえば国保等の場合を考えてみましても、実はそういう特殊な問題についての支払うべき基金と申しますのは、他の都道府県にはないわけであります。この文章を読んでまいります限りは、その所在する都道府県知事に請求するものとするということになっておりますが、この点はどうなるのですか。
  20. 角屋堅次郎

    角屋議員 社会保険関係の実際の運営の実態というのは、私、つまびらかにしておるわけではありません。また法規上どういう運営を、この公害救済立法でなくて、社会保険の立場でやっておるかという点も、私、必ずしもつまびらかにしておるわけではございません。運営上どういうふうにやっておるかということは、たとえば四日市の事例をあげられましたが、四日市の場合は、塩浜病院で、認定患者については医療を受けさせる、そのための入院をさせる、そのための治療をするということでやっておるわけでございます。ただ、しかし、いまも御指摘のように、被害を受けた指定地域といいますか、あるいはその周辺地域の医療機関というのでなくて、他に医療を求めるというケースは当然起こってこようかと思いますが、その点はむしろ、私の判断といたしましては、被害者に御迷惑をかけない、あるいは被害者の便宜ということを前提にして、運営上の問題で配慮していけばいい、こういうふうに思っております。
  21. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 私もそう思います。ただ、この社会党案を読みますと、第七条の第一項において、「当該保険医療機関等の所在場所がその区域内にある都道府県」と、実はわざわざ限定をしておるわけです。この点は、むしろいま角屋議員からお話しのありましたように、今後、被害発生地域とは全然異なった地域において医療を受けるケースもふえるだろうと思います。むしろこういう点は取り除かれて、その原因発生の都道府県に対しての請求あるいはその他の便法をお考えになるべきじゃないかと感じますので、これは念のためにつけ加えさしていただきます。  それから第十二条でありますが、先ほどちょっとお触れになりましたように、いわゆる「厚生大臣の指定する物」すなわち「指定物」というものについて、どのようなものを具体的にお考えになっておられるのか、これをお教え願いたいと思います。  それと同時に、指定物の被害、この被害による収入の減というものをどういう方法で客観的に見積もりをなさるつもりなのか。これは、こういう物について、先ほど角屋議員の御指摘になりましたように、できるだけあたたかく包んでやるというお気持ちは理解いたしますけれども、現実にこれを客観的に見積もる方法というものは一体どういうものか。たとえば農産物等の例を考えてみました場合に、これは角屋議員の御専門の分野でありますけれども、たとえば天候不順とかその他の要因、いわゆる公害による収入の減、こういうものの中で、天候不順等の影響というものを除外してはたして計算が可能なのかどうか。またそういうものを行なう場合に、審査機関というようなものは考えなくてよろしいのかどうか。そういう点についてお教えを願いたいと思います。
  22. 角屋堅次郎

    角屋議員 社会党案は、政府案あるいは他の党と違って、第三章「物に係る被害についての救済」として、第十二条を設けておる。そこを御質問になったかと思います。いわば「物に係る被害についての救済」をどうするか。私どももこの法律をつくるときにいろいろ議論をしたのでありますが、物そのものの被害というものをずばりやるのか、あるいは「物に係る被害」といっても、物そのものの被害についての損害賠償というのは、これは紛争処理制度なりあるいは行政的にそれをやられる場合、あるいはそれが訴訟にまで行く場合、そういうことで物そのものに対する被害ということについてこの救済立法を働かすというのはやめよう。ただ、「農産物その他の物についての公害に係る被害が著しく、」云々ということで、第一項にもありますように、指定地域、指定物の指定が行なわれるわけでありますが、この点については厚生大臣はすべてのことについて御専門というわけにいきませんので、後ほど書いてありますように、「厚生大臣が、その物に係る主務大臣と協議して、」指定地域の問題とかあるいは指定する物とかいうものについてきめるという形をとるわけですが、たとえば私どもの三重県の伊勢湾なら伊勢湾というふうなものを考えます場合に、たとえば廃液を海上にたれ流した。それによって現実に被害がノリなりあるいは漁船、漁業の関係で生じたというふうなことが起こったといたします。私の郷里の場合でも、それで約一カ月近く操業停止せざるを得ぬ事態もございました。かりにそういう事態が起こった場合に、物そのものについては紛争処理制度なりその他の方法でいくにいたしましても、一月でも操業に出られなければたちまち困るという事態をどうするか。それは最低限の生活について一定期間めんどうを見てやろう。そこにもありますように、めんどうを見る期間というのは、これは「政令の定めるところにより政令で定める期間」ということで、ずっとめんどうを見るというのではなしに、「物に係る被害」が出た場合、必要最小限やはりこの程度は見てやらぬと、再建のためにも、あるいは相手側と問題を処理するためにそのことに時間をとられるということを排除するためにも、考えてやる必要がある。  最初の健康の場合に生活援護手当を考えたのも、ここで物に対して特別手当を考えたのも、みなものごとの紛争あるいはそれにいく場合の最低限のことをどの程度まで考えていくのかという基調に立っているわけですね。たとえばこの収入の問題についても、その人の収入というものをどう見るか。あるいは天候不順その他の関係をどう判断するか。むずかしく考えれば、議論はいろいろ実際運営上出ると思うのですけれども、しかし天災融資法の発動なら発動という運営を考えてみる場合も、農林水産関係の、平常状態における作柄はどうであるかあるいは収量はどうであるかというふうな判断に基づいて、天災融資法を発動するかどうかという運営をやるように、ここでも一銭一厘収入について間違いございませんということじゃなしに、おおむねその地帯の水産なら水産、農業の状態ならばこういうものであるということが常識的に判断される基準がございます。そういうものが一定期間被害を受けたことによって収入がダウンする、その場合に、生計基準額とここにいうておりますものと比較をして、それよりも落ちる場合に、その生計基準額との差額については一定期間見てやろうということでございます。しかも、橋本委員も御承知のように、こういう問題について、問題が行政的にも紛争処理制度でも処理された場合には、そういう問題を出した分については返ってくるということも想定をしておるわけであります。一銭一厘たりともぴちっとやらなければならぬという気持ちではございません。常識上だれしもが認められる基準に基づいて処理をする、こういうふうな考え方でございます。
  23. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 どうも必ずしもあまり明確ではないのでありますが、これはこの程度にしておきます。  それともう一つ、これはある意味では、社会党案として政府原案に比べて非常に大きな後退ではないかと思われる部分がございます。それは第十四条と第十五条とからむ問題なんであります。第十五条の一項で、国は公害救済に要した額の限度において、救済を受けた者が事業者その他の第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することとして、いわゆる代位取得をここでうたわれておるわけであります。この代位取得した損害賠償請求権が一〇〇%近く実現するから、この制度に要する費用の財源というものは実質的に産業側が負担すると理解しても差しつかえないことになる。しかし現実問題として、公害問題において故意過失の問題あるいは因果関係の立証等の困難性を考えてみました場合に、損害賠償請求権の実現率というものはあまり高くないということがいえるのではないだろうか。今日までの公害紛争の傾向あるいは現に起こって係争中のもの、こうしたものを考え、あるいは産業界等の主張をいままで私どもが聞いておる範囲においても、そういう点、実は非常に実現率について疑問があるわけであります。そしてまたこの代位賠償請求権が確実に行なえるような状況でありますならば、むしろ公害紛争というものの中で、いわゆる被害救済というものは、加害者及び被害者の両当事者にある程度ゆだねていってもよいはずで、本制度を設ける必要がきわめて薄くなってくるわけであります。  ところが逆に第十四条において、これは第十五条とのからみでお尋ねをするわけでありますが、社会党案においては、被害救済に要する費用というものを都道府県または政令市が支弁し、その支弁する費用については、国が都道府県または政令市に交付することとしておる。これは産業側の社会的責任に基づく費用負担というものを前提として、政府案に対して実は著しい後退ではないのかという感じがいたすのでございます。と申しますのは、いまの代位賠償ともからむわけでありますが、たとえば岡山県の水島地区を考えてみました場合に、この企業公害を発生させておると特に断定できるものはございません。現行法における基準は各企業ともに守っておるわけであります。しかし地形的、気象的条件によって、何十社か集まって大気汚染が起こるあるいは水質の汚濁が起こる、これは加害者を限定することができないわけであります。またこれは必ずしもこの地域ばかりではなくて、各地域に同じような問題が見えるわけであります。はたしてそういう場合に、賠償請求権の代位取得というものが国は可能であるかと申しますと、私はこれを成立させることにはきわめて困難であると思います。その場合には現実に、産業界の不作為の積み重ねによる公害に対し、産業界の費用支弁というものは一切なくなる。むしろその点では産業界の二分の一企業負担というものを前提としておる政府案に比べて、社会党案というものは、これは後退ではないかという感じが私はするのでありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  24. 角屋堅次郎

    角屋議員 救済立法のわが党の十四条、十五条に関係する問題について御質問がございましたが、これは政府案よりも社会党案は実にすっきりしておるというふうに私どもは確信を持っておるわけでございます。もちろん救済立法を考える場合に、率直に申して、われわれのほうでも、厚生省が当初考えたような基金制度——国、地方自治体、それから企業——いわば政府の場合には都道府県とか指定市というのがありますから、四者構成みたいになりますけれども、実際は国、地方自治体、それから企業、三者分担方式、こういう考え方をとっておるわけでけれども企業の場合に、拠出金と政府が出す——あるいはわれわれが基金なら基金の当初議論をしてみた段階では、公害努力をしておる企業公害対策をサボタージュしておる企業というものに対して、いわば拠出金を出すときにウエートの差をつけるのかどうか。あるいは地域によって、東京都とか、大阪とか、四日市というようなところで、同じ火力発電所といっても、やはり相当被害を与える危険性を持っておるものと、あるいはいわば過疎地帯とは言わぬまでも、同じ火力発電所といっても、地域住民に大きな被害を与えておるということが想定され得ない、そういう施設という場合と、地点によっても拠出金に差をつけるのかどうかという技術的な問題を考えてくると、なかなか問題である。また対象業種についても、実際の救済金の支払い実績とタイアップして、対象業種の拠出金にウエートをつけるかどうかということになると、これも議論が出てくる。何かそれらの点をずばり割り切って、拠出金制度を設けて、公害防止事業団にそれを出してくれというと、いかにも何か企業が責任の一つを背負っておるかのごとく考えますけれども、実際に合理的に拠出方法いかんということになりますと、いま申しましたような対象業種をどうするのか、あるいは救済の頻度と見合って対象の拠出金というものを考えるのかどうか、あるいは公害努力とか、あるいは施設のできておる地点というふうなものをどう考えていくのだという技術的な問題になりますと、これはなかなかやはり運営上問題がむずかしくなるということもございまして、立法過程でも、あるいは要綱をつくる過程でも、ずいぶん議論がされております。それで、やはりそういう点に、具体的な例としては、だれしもがこれだけのものを出せるということに納得できるというようにこぎつけるということはなかなかむずかしい。したがって、最終的には本法の第十五条でいっておりますように、第十四条で、地方自治体の支払う分については国がこの経費を交付していくということで、国で支弁をするが、ただしかしこれは全額国庫負担という考え方でないことは、第十五条で、その支払った分については国が損害賠償請求権を取得する、そして加害者に対して求償を求めていくという道でもって、問題の最終的な処理を実質上明らかにしておるわけです。私は本会議の提案理由の説明その他でも申し上げましたように、公害救済といい、あるいは公害紛争処理といい、これは因果関係にしろ、公害の発生源にしろ、これはやはり徹底的に究明されていかなければならぬ。そういう場合に、国、地方自治体、企業が三者負担方式で、企業も拠出金を出すことによって、公害紛争救済について企業社会的責任を果たしておるのだと、公害問題について免罪符的な役割りを印象として抱かしてはいけない、こういうふうに思うのです。  ただ、橋本委員の御指摘の中で、いわゆる公害といっても、パブリックニューサンスもあれば、プライベートニューサンスもある。加害者のはっきりしているもの、あるいは加害者の想定はできるけれども、明定はできないもの、そういう場合に、社会党案のような取り方をしていると、いわゆる明定できないものは費用負担というものから免れることになるのではないかというふうな御指摘でもあったと思うのでありますが、要は、そういう点は、政府案の道をとるにしろ、あるいは社会党案の道をとるにしろ、完全にすべて割り切れたというふうには言い切れないと思うのであります。問題は、いずれの道をとることが公害対策全体を日本において前進させる場合の筋道であろうかということを前提に、われわれは考えておるというふうに理解してもらいたいと思うのであります。そういう面では、政府案よりも社会党案のほうが、筋道としては、公害対策上実にはっきりしている、こういうふうに思うのであります。
  25. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 私は、逆に、政府案のほうがはるかにすっきりしていると解釈するのであります。最初に申し上げましたとおり、損害賠償請求権の代位取得というものが必ずしも確定しない公害紛争というものの特質を考えますときに、いわゆる産業界負担というものをはっきりと明確に打ち出した政府案のほうがはるかにすっきりしている。これは大先輩に対してことばを返して失礼でありますけれども、逆にそのことばをお返しをさせていただきたいと思います。これは幾ら議論をしても、どちらが正しい、正しくないということではございませんから、それでよろしいと思いますが、先ほどの御答弁にもありましたところの、いわゆる第十条に定めておる生計保障の関係。生計保障といいますか、生活援護手当の支給でありますが、これはいわゆる一般の社会保障制度とは別個の一つの社会保障体系であるというお考えだろうと思うのであります。その場合に、第十条第二項に定められておりますところの、いわゆる生計基本額といいますか、生計基準額、これは生活保護基準と比較して、どのような額にするのが妥当であるとお考えになっているのか、この点であります。この生計基準額というものは、傷病手当金あるいは失業保険等を含めた収入と比較をされる、あるいは農業従事者と自営業者の収入減の場合にも適用されるものでありますから、これは自動的に生活保護基準よりは高くなるだろうということが想定されますし、また、法案提出者としても当然そうしたものをお考えだろうと思うのであります。この場合になりますと、働きたい意思はありながら働き得ない、いろいろな状況のために生活保護を受けておられるような人々との間に、これは均衡上一つ問題が起きはしないかという感じがいたします。別個の社会保障という考え方をとりますにせよ、やはり社会保障体系の一環として考えた場合に、これは生活保護基準との問の平衡を失するのではないかという疑問を持ちますが、この点はどうでありますか。  もう一つあわせて最後にまとめてお尋ねをしたいわけでありますが、第八条から第十一条にかけて、これらの制度がいわゆる全額国費による社会保障制度という考え方をとりますならば、所得制限はなぜお考えにならなかったのであろうか。いわゆる一般の社会保障制度の中においては、自分の望む程度の生活がみずから十分できるような方々にまで対象を広げることはせずに、その金額の限界はありますけれども、その限界点の上下の問題はありますけれども、いわゆる所得制限ということを設けて今日まで実施をされておる。その所得制限自体についての可否についての御議論というものは、私はいままで伺ったことがありません。松下幸之助さんのような方にまではたして社会保障を行なう必要があるのかどうかというようなことは、おそらくその必要はないとお答えがくるであろうと思います。そういう意味で、いわゆる  一般の社会保障制度とは別個のたてまえではあるが、やはり社会保障制度の一つとして考える場合に、なぜこの所得制限というものをお考えにならなかったのか。  最後に、社会党案に対してこの二点をお尋ねして、社会党案に対する質疑を終わります。
  26. 角屋堅次郎

    角屋議員 生活援護手当の支給の第十条の関係でありますが、これはここにも書いてありますように、「当該認定に係る疾病若しくは障害のため、又は当該認定に係る疾病若しくは障害について医療を受けるため、労働することができず、又は事業に従事することができなかったことによりその収入が減少した場合において、」生活援護手当の支給を考え、あとの、物に対する問題については特別手当を考える。これはもう先ほど来の質問の中でも申し上げましたように、救済の場合に、公害にかかわる紛争というものについては、紛争処理制度の道を選ぶにせよ、あるいは訴訟の道を選ぶにせよ、これは基本的に許された道筋を通じて紛争の問題の処理をしていく、これが基本であります。その場合に、いわゆる医療も十分受けられない、あるいは生活が非常に困窮してしまう、それがために紛争の道筋というものが途中で挫折をする、あるいはそういうことによって、公害対策そのものの究明というものがあいまいにされるということを防いでいかなければならぬ。基本は、やはり両法案とも、全体を通じて日本公害対策が前進をしていくという道筋の上に立って、被害者救済についても最小限のことをやってやりたい、こういうことから生活援護手当あるいは特別手当等が出てきておるわけですが、問題は、その場合に、生活保護との関係についての水準はどうかというお尋ねもございましたが、これは第二項でもいっておりますように、「前項の生計基準額は、認定被害者及びその者によって生計を維持する者の生計を維持するのに必要な費用を基準として定める」という条文のたてまえから見て、事実上は生活保護の手当よりは上回ってくるということを想定しておるわけでございます。ただ、具体的な数字として、今日時点で、こういう生計基準額というものは、業態別に、あるいは地域別に、どういう数字になるであろうかということは、立法が成立した場合に、行政の事務当局あるいは全体として、合理的に考える筋道のものだと思うのです。先ほど御指摘の生活保護という金額よりは上回った金額になるということを想定いたしておるわけでございます。問題は、社会保障との関係をどう考えるかという議論でありますが、先ほど来申しておりますような、いわゆる公害紛争処理をする場合の最低限のことをやってやることによって、正しい公害紛争処理ができる、あるいはその紛争処理解決を通じて、今後同種のものについて、日本公害対策が前進をしていく、そのためには、紛争処理機関から行政機関に対する意見の開陳その他、いろいろなことも含めて、前進をしていくということが根底にあるわけであります。したがって、そういう意味の必要な金額というものは支給してやりたい。条文の関係でも、そういう点については、差し押えその他、いろいろな面でもちゃんと保障をしておる、あるいは国税、地方税についての順位ということで、いろいろ取り扱い上の問題は考えておるわけでございます。この生活援護手当あるいは特別手当というのは、本来社会保障制度として考えたわけでないことは、立法の趣旨から見て御理解がいただけると思います。  それから、所得制限の問題でありますが、これは政府が所得制限を設けて、相当批判をされておる。逆質問として、所得制限をしないで、松下幸之助までめんどうを見るかという趣旨の御質問でございますが、公害にかかる被害について指定地域を設け、あるいは公害病の認定をするという対象の人は、いずれにしても入院をしなければならぬ、治療を受けなければならぬ。そういう公害にかかる被害の対象の人たちについて、所得のラインをどこで引くにせよ、ラインを引いたらどうだというのが、一つの意見として、政府案立場から御質問がございましたが、本来公害の対象になっておる実態から見ますと、相当所得のゆとりのある人であれば、いろいろ別荘を持ったりゴルフをしたり、こういうことを一々——だからというのじゃありませんけれども、要するに健康管理上も、そういうケースは、ケースとしては事実上は少ないと思います。弱い立場の人が公害被害者の対象の多くであるというふうに考えますが、いずれにしても、公害の指定地域を設け、あるいは指定疾病を設けて、公害認定患者について所得制限を設けるというのは、公害にかかわる被害についてめんどうを見ていく立法の趣旨から見ていかがかと私ども思いますし、また本来の公害対策全般の中で、救済あるいは紛争というものを考えていく前提から見たならば、そういう考え方はとるべきでないというふうに私ども判断をして、所得制限の方法はとっていない。もし、一歩進めて、公害病の患者ではあるけれども、そういうものについて支給を受けないでよろしいという高額の人があるとするならば、これは別の道を通じて、そういう支払いについては社会的にも拠出をするとか、いろいろなことも考えられるでありましょうが、これは法律権限以外の問題である、こう思います。
  27. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま大体社会党の両案についての角屋議員の御高見を拝聴したわけでありますが、やはりすれ違ったままに終わっておるものが多いようであります。しかし、これによって社会党案の出てきた経緯、またその根底のお考えというものは大体了解させていただきました。角屋議員に対しての質問はこれで終わらせていただきます。  小平先生、お待たせいたしましてたいへん恐縮でございましたが、予備付託をされました公明党から提出されております紛争処理に関する議案、被害者救済制度基本的な問題につき、それぞれ一、二お尋ねをさせていただきたいと思います。  社会党案に対しても同様の質問を一番最初にさせていただきましたが、この公明党案をおつくりになります場合に、司法権行政権接点をどこに求められたか、これについてお教えを願いたいと思います。つまり、具体的に申し上げれば、民事訴訟法紛争処理制度について、公明党としてのお考えをどのように把握しておられるかをお教え願いたいと思います。
  28. 小平芳平

    小平参議院議員 先ほど来質疑応答を伺っておったわけですが、三条委員会はほかにも例のあることであるし、それから、かといって、公明党案において司法権を制限するというような結果にはならないということは、中央労働委員会あるいは地方労働委員会にしましても、あるいはそのほかにもそうした委員会がありますが、これはかりに中央労働委員会で申しますならば、不当労働行為があった場合、それを知ったならば審問を開始し、命令を出すということをやっておるわけです。あるいはまた、その労働委員会裁定をまつまでもなく、たとえば裁判所に対して解雇無効の裁判を起こすこともできるのであって、したがいまして、この三条委員会ができたからといって、公明党の場合、中央公害委員会並びに都道府県公害審査会でありますが、司法権を侵害しているとは全然考えられない、このように考えます。
  29. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま小平議員のほうから、次にお尋ねをしようと思ったことに触れていかれましたので、むしろ三条委員会、八条委員会の問題についてお尋ねをしたい。  実は社会党案に対しまして、私は同じ御質問を申し上げました。というのは、社会党案におきましては、政府案あるいは公明党案に対して非常な特色を持たしておられる。いわゆる裁定制度を導入され、ある意味では第一審の機能にまである程度触れるような強いものまで含み得る体制をおつくりになっておられるわけであります。ただ、それだけに、私は、社会党案の場合には、これは中途はんぱではないのか、むしろ三条委員会として裁定制度を設けるならば、これはむしろ高裁専管まで——第一審を終了して、その裁定に不服の方が訴訟を起こされる場合には、すぐに高裁にあがるところまでの強いものになさらないと、むしろ中途はんぱではないかということを、実は社会党案に対して申し上げました。と申しますのは、いま小平先生が例に引かれました中労委、公労委のようなもの、こういう性格のものと、いわゆる公害紛争というものの性格が異なっております。この場合に、三条委員会の中で例に引くとするならば、むしろ適当なものは公正取引委員会でありますとか、土地調整委員会でありますとか、こういうもののいわゆる審決裁定というものが、この紛争処理制度と見合うものとして妥当かと思うのであります。この場合には、実はこの審決裁定というものに第一審的な性格を持たせておりまして、不服の訴えを起こした場合には、直ちに高等裁判所専属管轄という形に移行するわけであります。それだけに、実は私は、社会党案でもこの点は中途はんぱじゃないか、簡易迅速な処理ということで、被害者の方々の立場を救うために行なうとすれば、むしろ逆効果になりはしないか。むしろ政府原案のようないわゆる和解の仲介、あるいは調停という手段から、直ちに裁判に移行でき得る、どうしても不服である場合には直ちに裁判に移行できる道を開くほうが、むしろ被害者のためにもよくはないだろうか。あるいはさもなければ、公取委あるいは土地調整委員会の審決裁定同様に、直ちに高裁専属管轄に移すほうが好ましいのではないかということを、実は社会党案に対して申し上げたのであります。  ところがその場合に、公明党案を拝見いたしますと、この裁定というような制度は盛っておられず、中央に置かれる公害委員会というものが三条機関でありますが、主たる任務としては、和解の仲介、調停及び仲裁という機能であります。しかも政府案に比しても、公明党案の中で目立ちますのが、いわゆる調停にあたっては、特別な事件についての立ち入り権を公明党案は認めておられない。これはおそらく迅速な公害紛争等の問題解決というものを想定されて、こういう制度をおとりになったと思うのでありますが、むしろそうなった場合には、三条機関のたてまえからいくと、これはおかしいんじゃないか、八条機関のほうが実態に即するのではないかと思うのであります。その点はいかがでしょうか。
  30. 小平芳平

    小平参議院議員 最後の立ち入り権のところから申し上げますと、この公明党案におきましては、仲介、調停、仲裁という、これを考えております。そして地方と中央との関係は、この原因地と被害地が異なる場合は中央、そのほかの場合は原則として地方で行なう。しかし公害の実際申し立てがあった場合に、中央で受けても、地方が妥当と認めたときは地方へ送る。地方で受けた場合も、これは中央でやったほうがよろしいと思った場合は、中央へ送るという道は開かれております。ところで、仲介と調停はほとんど同じことになります。仲介のほうも、双方または一方からの申し入れのあった場合に、申し立てによって行なう。仲介の場合も、双方または一方からの申し立によって行なう。調停の場合にも、双方または一方からの申し立てによって行なう、これは同じであります。ただ仲介の場合は、とにかく話し合いをつけようということを主体にして話し合いを進めていきます。ところが調停の場合は、むしろ調停委員が調停案を作成して、そして受諾を勧告するというような点、中労委のあっせん調停委員会とよく似ているわけですので、ちょっと先ほど例として申し上げたわけですが、ここで、それでは立ち入り権をなぜ調停を行なう場合に認めていないのか。これは私たちも過程において、いままでそういう御意見も承りました。むしろ後退ではないか。しかしこれは迅速という御指摘もありましたが、それもありますが、調停の性格の上からいって、受諾を勧告する、その調停案を受諾しなければまとまらないわけであります。したがいまして、何か調べに行った、しかしその企業は断固それを受け付けてくれないというようなことを、強制立ち入りして調停案をつくったところで、はたして受諾の可能性があるだろうか。したがってそういう強制立ち入りしてまで調停案をつくったところで、受諾の可能性はないと私たちは判断いたします。したがって調停案を作成する場合に、当事者の協力を求める。当事者が協力してくれないというならば、かりに一つの例として、工場なら工場に立ち入って検査をやりたいというのに、工場に立ち入りたいというのに、工場のほうがそれを拒否するということなら、今度は、被害者の言うとおり、まるまる認めて調停案をつくらざるを得ないじゃないか。そういう場合に、今度は調停案を工場のほうが拒否したとなると、実際立ち入りもさせないで、しかもその調停案が事実に反するといって拒否することは、これは公表した場合に、第三者を納得させる力がないんじゃないか。したがって立ち入り権は特に明文化しておりません。
  31. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま中身についての御答弁を承ったわけですが、そういう機能でありますならば、むしろ三条委員会というものの性格にふさわしくないのじゃないか、そういう感じが私はいたします。その場合におとりになるのであれば、実は社会党案に対して、私は中途はんぱだという御批判を申し上げたわけでありますが、公明党案においては、八条委員会としての機能のほうがむしろ正しいのではないか。国家行政組織法の第三条機関をとられるその理由が一体どこにあるのか。これが実は私どもとして知りたい点なのであります。と申しますのは、また繰り返すようでありますけれども、現在、いわゆる公害紛争処理制度というものの確立が急がれるゆえんというものは、現実に起こっておりますいわゆる公害紛争というものが、当事者間の話し合いにおいて、何らかの仲介あるいは調停の手段がないことには、話し合いがなかなかまとまらない。また裁判に移行した場合におきましても、その立証性の困難、因果関係の不明確、そういった点から、なかなか迅速な処理が行なえない。そのために、被害者の方々がなかなか救いの手を差し伸べてもらうこともできない。何とかして迅速な処理をしてあげないと、被害者にとって気の毒ではないかということから、この紛争処理制度というものについての考え方が出てきたように私は記憶をいたしております。その場合に、むしろいまのお話を伺ってまいりますと、本質的な考え方として、あるいは仲介、調停というような方法の点から見ましても、基本的な考え方としては、政府案と同じように、いわゆる迅速な紛争処理というものを対象にしておるように考えるのです。これは、もし異なっておりましたらお教えを願いたいと思いますけれども基本的な考え方は、いま承っている限りでは、私は、三条機関をとる理由がないとしか実は考えられません。むしろ、その意味においては、八条機関としての機能を十分に充足することを考えたほうが、この場合に正しいものではないかと思います。いま、私は、公明党案三条機関として置かれたその理由を実はお尋ねをしたいと思っております。その点についてしぼって御答弁を願います。
  32. 小平芳平

    小平参議院議員 私がちょっと立ち入り権のことで御説明したものですから、いまのようにとられたと思いますが、公明党の場合は、公害三法になっておりまして、公害委員会及び都道府県公害審査会法案というものをもう一つ出しております。  この公害委員会のやる仕事としましては、先ほど説明しました仲介、調停が一面でありますが、そのほかに仲裁があります。それから、そのほかに、指定地域の指定あるいは公害病の認定ということがあります。したがいまして、これは政府案政府案とよくおっしゃるんですが、政府案をきめられる段階でも、これはもう初めから八条委員会でよろしいんだという、当然のようにいまおっしゃるようなきめ方をなさったかどうか、ちょっと私疑問に思うのですが、これは私たちも、八条委員会でいくか、三条委員会でいくかということでは、実はずいぶん検討いたしました。しかし、八条委員会、いかにもほかの行政官庁の付属機関あるいは審議会というようなものが多いように思いまして、こうした公害委員会が、仲介、調停、仲裁を行ない、とともに、またこのようにして地域を指定し、公害病と指定していくものを判断し、決定していくという委員会は、これは当然、行政組織法でいうところの三条委員会、このように判断したわけです。
  33. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いまその仲裁の機能を持たしておるので、そういう実態から考えても三条委員会という御主張に、要約すればなると思いますけれども、実は、仲裁に関しましては、政府案仲裁を定めておるわけであります。しかし、立ち入り検査権その他の問題においても、本質的な点において何ら変わりない仲裁というものを政府案も主張しておる。そうして、しかも政府案においては、八条委員会でこれは足れりと実はしておるわけであります。一番最初行政権司法権の区分、接点をどこに求めるかということをお尋ねいたしましたのも、実はこの点にからむ問題でありまして、当初、それこそ、政府案を検討する際にも、この点が実は一番の問題点として出たわけであります。そうして、むしろ、あるいは公正取引委員会でありますとか、土地調整委員会のごとくに、高裁専轄というところまで持っていく場合、これは行政権司法権に対する介入になる。現行の民事訴訟法のたてまえからいっても、これは許されない。こうなった場合、第一審からこれをもう一度議論し直すということ、これは訴訟になった場合、実際上、第一審から始まるわけであります。社会党案のように裁定を設けることについては、実は私どもも疑問に思っておるわけです。そういう意味からまいりますならば、むしろ八条委員会のほうがふさわしいというのが結論で、政府案というものはなった、私はそのように実は理解しております。この点が一番最初お尋ねをした点の由来でありますが、いまお話を承りまして、公明党が出されました案について、三条委員会というものをお考えになった理由というものは大体わかりました。ただ、私どもとしては、その場合には、必ずしも三条委員会というものはふさわしいと思えないということだけはつけ加えて申し上げておきたいと思います。むしろ、公明党案の中には、たとえば、日照権についての問題を取り入れられておるとか、いろいろな特徴も中にございますし、また、紛争処理制度というものを二つに法案上分けられたという特色もございます。そういう点での特色は、それとして、私どもは認めるにやぶさかではございません。基本的な司法権行政権の区分、その接点についての御意見について、私は必ずしもこれは納得をいたしません。ただ、紛争処理制度についてはここが一番の基本問題でありますから、紛争処理については、いまの御意見をもって、一応予備審査段階お尋ねをすることは終りにいたしたいと思います。  救済関係について、やはり二、三点お尋ねをさせていただきたいと思うわけですが、公明党案被害者救済制度の第一条及び第四条の第二項、これの中で、験音、悪臭、振動、地盤沈下等を対象としておられる点、これについて先ほど社会党にもお尋ねした点でありますが、これらの公害がいわゆる健康に被害を及ぼすという点、医学的な証明、科学的な証明ができるという御認識があるのかどうか。また、その場合にどういうふうな基本的な構想をお持ちなのか、これについてお教え願いたいと思うのであります。
  34. 小平芳平

    小平参議院議員 ただいまの前段の御発言ですが、この公明党案の三条委員会は妥当でない、それは仲介、調停、仲裁ということであるから妥当でない、仲裁政府案にもある……(橋本(龍)委員「そう申し上げておるのではないのです。」と呼ぶ)そうですか。要するに、私が重ねて申し上げたいことは、公明党のいうところの公害委員会及び公害審査会は、健康上の被害救済とそれから紛争処理と両方を扱う委員会でありますので、この点だけ御了解願いたいと思います。  したがいまして、ただいま御質問の振動あるいは悪臭の健康被害というものがどのようなものが考えられるかということでありますが、この点については、第二条で、公害とは、公害対策基本法でいうところの公害をいうといたしまして、それで、先ほどの社会党案の御答弁とダブる点は省略いたしまして、要するに、基本法を受けまして、それで、将来どのような公害病が認定されるかということは、この公害委員会認定していくということになります。したがいまして、私も病気の専門家でありませんので、簡単に四日市ぜんそくという一つの表明の中にも、医学的にはいろいろな病気が入っているんだそうですが、そういうものはこの公害委員会認定をしていく。それからまた、騒音、振動等によってどのような病気が起こるかということは、いま具体的にこれですというものを申し上げることはできませんが、そういう点もひっくるめて、基本法を全部受けて、公害委員会認定していく、このようなたてまえであります。
  35. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いま公害委員会のお話がここで出ましたので、これは実は最後にお尋ねをしようと思った点でありますけれども、前段としてちょっとお尋ねをさせていただきましょう。  公明党案の非常に特色として私も認めております、二つに法案を分けられた、考え方を分けられた点、そこから実はこれは派生してくる問題でありますが、別に法律で定められる公害委員会が、委員六人、しかも常勤は二名、その委員会が、紛争処理を行なうかたわらにおいて、指定地域あるいは指定疾病の指定あるいは健康診断や認定手続等の決定まで行なわれることになっておるのでありますが、これは現実として可能なものであるかどうか、十分にお考えになったかどうかを私は知りたいのであります。というのは、これは最後にお尋ねをしようと思った理由はその点であります。現実の行政機能の上から見て、私は、この委員会にこれだけの機能を持たすことは不可能に近いという感じがいたします。また紛争処理という問題と同時に、指定地域あるいは指定疾病の指定、健康診断、認定手続等の決定、こういうものは異なるものであります。これを同一の委員会で行なうことが適当であるとお考えでしょうか。これは最後に私お尋ねをするつもりでありましたけれども、たまたま小平議員のほうから、これは両方一緒に考えてもらわなければ困るのだ、こういう特徴を持たしておるのだ、というふうに言われましたので、いま特にここで確認をもたせていただきたいと思います。私は行政機能上これは不可能に近い考え方だと思います。
  36. 小平芳平

    小平参議院議員 実際問題、この健康被害及び紛争処理案件としてどのくらいあがってくるかということは、私たち予算を概略出す場合においても、厚生省で予算を概略出されたものを参考にいたしまして——実際はその程度のものじゃないと思います。しかし、さしあたっては、私たちはこの公明党案委員会によって十分やっていかれる。それで、特にいま健康被害紛争処理とは性質が違うじゃないかと言われますが、それを分けるところに、日本公害行政の一番欠陥がある。公害行政は一本化して、そうして一つの窓口でできるようにしてもらいたい。いまのように、各省、各庁みんなばらばらの公害行政をやられたのでは、実際の被害を受けている人が一体どこへ行ったらいいかわからないというような欠陥の上に立って、いまここでできる二つの、健康被害救済また紛争処理というものは当然一つにして運営していくのが大きな進歩である。このように考えます。
  37. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 私は公害行政の一本化ということとこれとはちょっと異なる問題だと思いますけれども、これは公明党のお考えとして承ることにさせていただきます。  あと二点お尋ねをいたしたいのでありますが、公明党案の第八条から第十一条にかけて、この一連の条文を読んでまいります場合に、先ほど社会党にもお尋ねをした点でありますが、これは現在行なわれている社会保障制度とは確かに異なるものでありますけれども、広義の社会保障と解釈してよろしいですか。
  38. 小平芳平

    小平参議院議員 先ほどの質疑応答の中にありました生活費は、公明党の場合は入っていないわけです。したがいまして、広義の社会保障になると思います。
  39. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 広義の社会保障として考える場合には、先ほどと同じように、また所得制限の問題が飛び出すわけでありますが、社会保障制度として考えていく場合には、その上限の金額の高い、低いの問題は別として、当然所得制限という問題が考えられるべきだと思います。いま社会保障の中として考えるという御答弁がありましたにかかわらず、これの中にはそうしたものが盛り込まれておりません。この点は、社会保障であるというお考えと合致しない部分が出てきますが、これは一体どういう意味であるのか。これが一つ。  それと同時に、もう一つお尋ねをいたしたい点は、当制度に関する経費についてでありますが、第十七条に定められておりますものを拝見いたしますと、企業側負担という考え方を全く導入しておられないわけであります。いわゆる産業界負担というものを全く導入しておられない。社会党案においては、いわゆる損害賠償権の代位取得という形でこの点を補っておられますけれども、この点についても、私は現実上実効があるかどうかという疑念を先ほど表明いたしました。ところが、公明党案に関する限りは、その代位取得という点を含めて、産業界負担というものは実は一切うたわれておらない。これはむしろ政府案に対して非常な後退ではないかという感じが私はいたします。しかも政令市のみならず、一般市町村にまで負担をさせるようになっておりますけれども、これは一体どういう理由であるか。これは私は予備審査段階で特に公明党に対してお尋ねをしようと思った点でありますけれども、従来、実は当委員会で公明党の岡本委員からも、この点について、むしろ政府の原案における産業界負担が過小であるという御議論は拝聴した記憶がございますが、産業界負担ゼロという御意見は、寡聞にして伺った覚えはございません。ところが、この公明党案の第十七条の趣旨を拝見いたしますと、私どもとしては考えていない一般市町村にまで救済の費用負担を定めるられておる。国及び地方公共団体にその全責任を負わしておる。これは一体どういうお考えから発したものか。この点は特に明確にお答えを願いたいと思います。
  40. 小平芳平

    小平参議院議員 最初の所得制限と社会保障の問題ですが、この点については、あまり長々と答弁してはと思いまして、広義の社会保障かと聞かれましたので、広義の社会保障ですというふうにお答えいたしました。ということは、社会保障の定義そのものが、広義狭義、あるいは広義といいながらもいろいろ分かれていること、これは御承知のとおりと思います。したがいまして、医療手当、介護手当、弔慰金、これは確かに広義の社会保障といえると思います。しかしながら、医療手当にいたしましても介護手当にいたしましても、多分に原因者があって被害を受けたという結果になります。したがいまして、原因者がはっきりあって産業公害が発生しているという場合に、幾ら所得が多いからといって、医療手当を支給しないというほうがむしろおかしいと思います。したがいまして、交通災害とはちょっと違いますけれども、交通災害の場合なども当然原因者があって被害者がある。被害者は当然損害賠償を受ける。それは社会保障の、少なくともここに掲げてある医療手当等においては、所得によって制限をするということは妥当でない、そのように考えます。  それから次に費用負担の問題ですが、十七条の費用負担は、国八分の六、それから都道府県が八分の一、市が八分の一ということにまず支出をいたしまして——ここが公明党案の最も特徴のあるところですから、よく申し上げたいわけですが、指定地域における指定公害被害認定された場合には、まずこの十七条によって支給をいたします。支給をいたしましたあとから、二十一条において請求権を国が取得する。この損害賠償請求権を取得するということは、原因者が明らかになった場合、企業が全額出すことになります。したがいまして、政府案企業負担が少ないという岡本委員の発言があったのは、まさしくそのとおりでありまして、少なくとも原因者がはっきりする場合には全額企業が負担する。しかも、それじゃ企業が、原因者がはっきりしてから、その企業に出させればいいじゃないかというふうにいわれましても、現実問題、あの四日市ぜんそくの裁判を起こされた方々のお立場を考えてみまして、待っておられないというこの現実、あるいはイタイイタイ病等においても、原因者を究明してもらっていたのではいつのことかわからない。したがいまして、まず十七条によって支出をいたします。支給いたします。そして原因者がはっきりした場合においては全額企業が負担する、そういう趣旨なんですが、法律の専門家によれば、これでそういう趣旨になるということであります。
  41. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 いまのお話を伺ってみましても、実は、これは政府案あるいは社会党案に比して、どうしても私が疑問でありますのは、市町村になぜ負担を命じられたのかということ、これについてはいま御答弁ありません。それと同時に、先ほどお話しになりました、二十一条と言われましたが、これは二十二条の間違いでしょう。公明党案では、二十一条は審査請求となっております。ですから二十二条の損害賠償請求権についての御答弁だったのだろうと思うのですが、先ほど社会党案についても議論が分かれましたとおり、明定のできない、いわゆる不作為の積み重ねによる公害の場合、これはこの二十二条の条文からまいります限り、実は企業責任というものは何ら反映をいたしません。この二十二条の文章でまいります限りは、不作為の積み重ねによる場合の賠償請求権というものは成立をいたしません。産業側の費用負担というものは、実はこれに対して一切反映をしないという結果になります。その点、私は、実は何ゆえにこういう方向をとられたのかきわめて疑問に思うわけです。もう一度そこのところだけは確認をしておきたいと思いますが、損害賠償請求権を定められた第二十二条で明定をされた、加害者の責任が明らかになる費用負担というものは、当然賠償請求権が成立し、国はその費用を受け取るわけでありますけれども、明定をされない不作為の積み重ねによる公害の発生に対して、企業責任というものは何らお考えにならないのでございますか。この条文からまいりますならば、そういうことになります。
  42. 小平芳平

    小平参議院議員 不作為の積み重ねということをおっしゃいますけれども、私は法律の専門家でございませんので、ちょっとその点了解しかねるのですが、それは私たちが——先ほどちょっと間違いました、二十二条です。私たちがこの二十二条を考える場合は、作為、不作為の問題ではなくて、どんなに工場が、被害を及ぼそうというような作為が全くない、もちろんそうであっても、その積み重ねであっても、現実に原因者がこれ、被害者がこれということが認定される場合においては、原因者が全額負担をする。それが、全く原因者のつかみようがない、しかも公害が発生しているというふうな認定があった場合においては、おっしゃるとおりの結果になりますが、私たちの考えとしましては、全く原因者がないという公害はそれほどあるわけではない。大多数は原因者があってこそ現に公害というものが発生しているのだ、このように考えます。
  43. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 反論ではございませんが、実態を一つだけ申し上げまして、本審査の場合の参考に供したいと思います。  実は、新産都市の中で中核といわれております岡山県の水島地区の場合、ここにございます企業数というものは非常に膨大なものがございます。そうしてそれぞれの企業は全部、実は大気汚染防止法にせよ、水資関係にせよ、法の規制を守っております。これは何回かの実態調査の結果でも、そういう数字が明らかにされております。ところがたまたま地形的に、また気象条件の上でこれが積み重ねられまして、個々の企業は完全に法律を守り、しかも努力を続けておりますけれども、現実には、それが積み重なって公害が発生しておるわけであります。この場合には加害者は明定できません。個々の企業はすべて法律上の規制措置を講じておるわけであります。こういう場合の企業責任というものは、この条文からまいります限りは、明定ができないことになります。その場合にはこれらの企業に対する賠償請求権が成立いたしません。私は、この公明党案、本審査までにぜひその点をもう少し詰めて御検討願いたいと思うのであります。  本日は、予備審査段階でありますから、特に重大と思われるこれらの点についての御質問を申し上げて、終わらせていただきたいと思います。  たいへんお待たせをいたしまして恐縮でありましたが、一応これで資疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  44. 赤路友藏

    赤路委員長 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後二時再開することとして、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  45. 赤路友藏

    赤路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 このたび提出されております公共用水域の水資の保全に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆる水質保全法案につきまして、若干の御質問をしたいと思います。  まず初めに、このたびの改正されます意図といいますか、改正案の重点について、簡単に御説明願いたいと思います。
  47. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 御承知のように、公害対策基本法も出されまして、公害問題に対する政府の諸般の体制が次第に整ってまいっておる状況でございまして、私どものほうも、昭和三十三年以来の法律を時勢に対応して運用してまいりましたが、不十分なところが出てまいったわけでございます。  第一点は、現在のような経済情勢あるいは地域の都市化の様相に対応いたしまして、汚濁源が従来考えておりましたものよりも一そう広まっております。そういう意味で、汚濁源の対象を拡大する、汚濁源をたくさん対象にするということが第一点でございます。  それから当初はやはりそういう時代でございましたから、比較的中央でやって一括的な取り扱いでも一応対応できたわけでございます。その後、地域的にきわめて広く水質汚濁の状況が出てまいっておりますので、地方との問題が、まず、さらに一そう協力をしてやらなければならないようになってまいっております。各地方団体におきましては、比較的熱心な府県、あるいはまだそこについては十分関心がいっていないのではないかというような地方もございますが、そういう点については一そう協力をしてやっていくということが、第二点でございます。  それからさらに、水質基準をかけまして保全の万全を期するためには、アフターケアということが必要であります。予算的な措置によりまして、すでに私どものほうもその体制を整えておりますが、そういうことにつきましても、あらためてはっきりさせることがよいだろうというふうに考えております。  しかし、根本の改正の理由は、やはり目的の改正を行ないましたように、従来、もちろん公衆衛生という見地におきまして、人の健康あるいは生活環境ということは十分考えておったつもりでございますけれども、さらに一そうそういう点については、冒頭申し上げましたような汚濁の状況にかんがみまして、改正することが、姿勢をはっきりさせ、行政の今後の基準になるであろうということで、それが根本にあるわけでございます。
  48. 河上民雄

    ○河上委員 いま、改正される目的について、意図についていろいろお話があったわけです。  そこで、ちょっと伺いたいのであります。これは大臣にお伺いしたいのですけれども、目的でございますが、第一条に目的が掲げられております。いま事務当局から説明されましたように、「公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。」という点が、「国民の健康の保護及び生活環境の保全に寄与することを」と置きかえられておるわけでございますが、その前に「産業の相互協和と」ということが入っているわけでございます。一体このいずれを優先するのか、どういうふうにお考えになっておられますか。公害基本法の立場からいいますと、国民の健康保護と生活環境の保全というものは最重点にしなければならないということがうたわれているわけです。いまの事務当局の御説明でも、今回の改正は、昭和三十三年成立、三十四年施行以来約十年の経過の間に、日本の社会の変動に伴って汚染源が、汚濁源が多様化してきた、工場排水だけでなく、むしろ都市生活に伴ういろいろな汚濁が非常に目立ってきたので、それに対応するためであるとともに、公害基本法ができて、公害対策というものが基本的に新しい観点から練り直されておる、それに対応するためであるということを言われたわけでありますけれども、この第一条を拝見しますと、どうも公害基下法に準じてという精神が非常に薄いのじゃないか、中途はんぱではないか、こういうように思うのでありまして、公害基本法以後のわが国の公害対策行政というものの最重点を、国民の健康の保護及び生活環境の保全というところに置くというふうに、新しい思想のもとに打ち立てられておる、こう思うのであります。この点、この改正案の第一条、目的の項は、依然として、むしろ古い観念のもとに、何か尾てい骨のように——この尾てい骨は、たいへん大きい尾てい骨ですけれども——残っておるというふうに受け取れるのですが、大臣、その点少しお考えを改めていただきたいと思うのです。いかがですか。
  49. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 公害ということは、これはもちろんお話しのとおり国民の健康の保護生活環境の保全というのが主眼でありまして、それで公害ということばが出てきておると思うのです。そこでその「産業の相互協和」ということは、この前島本先生からも御質問があったので、まあ私も検討しますという御返事をしておいたのですが、これは大体は加害者被害者との問をいかに規律するかということで公害法律ができておると思います。被害者というのは人間のことでございます。そこで、この「産業の相互協和」というのは、水質汚濁に関しては産業問における争いがあるのですね。鉱山、マイニングの関係と、魚との関係、水産業の関係、その問をやはり協和をはかる必要がある、そこがほかの大気汚染や騒音などとはちょっと違うわけでございます。でありますから、水質保全の場合には、産業の協和ということ、これは私はやはり必要だと思うのです。そこで大体公害対策の本来の目的は、いま仰せられましたように、健康の保護と生活環境の保全ということでありますが、しかしそれを達する前に、まず産業同士でいかに協和さすかということもまたその前提条件において必要なことが、水質汚濁では、ある場合があるから、そこでその文句を入れておるというように私自身は解釈しております。  それから前は「公衆衛生の向上」ということでございますが、私は今度は「健康の保護」ということばに変えたほうが具体化してきておると思うのであって、このほうが意味があると思うのです。「公衆衛生」というと、何か消極的な観念的な意味で、むしろはっきり「健康の保護及び生活環境の保全」というようにうたうほうが目的がはっきりする、こう思っておるのであります。その点はこの改正の文句のほうがいい、こう考えております。
  50. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ちょっと私から法文上の問題についてつけ加えさしていただきます。  実は「国民の健康の保護」というのは、これははっきりいたしておるのでありますが、「生活環境」ということについて、公害対策基本法におきましては、当然通常のと申しますか、常識的な生活環境ということばがあるわけであります。「この法律にいう「生活環境」には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むものとする。」ということで、公害対策基本法あるいはこれに基づきます今回提出されております紛争処理法律では、生活環境という中に、さらに漁業、農業等を含めておるわけでございます。ところがすでに公害対策基本法に基づきまして出されております大気汚染防止法であるとかあるいは騒音規制法でもそうでございますが、この公共用水域水質保全に関する法律案の中での「生活環境」は通常の生活環境というふうに使っておりまして、農業なり水産業なりという、いわゆる、まあ公害対策基本法のほうでは生活環境の中に入っておる産業を、やはり産業ということで取り出して書いてあるわけでございます。したがいまして、確かに一連の法律の中で、生活環境ということばに二通りの広い、狭いの書き方がありますのは若干問題でございますけれども、そういう意味におきましては、公害対策基本法のいわば基本的な考え方に、この水質保全法が特に矛盾しておるというふうには考えていないわけでございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 水質保全法ができた直接の社会的な動機というか、契機は、御承知のとおり、製紙会社と漁民との対立ということで、そこから産業の相互協和という理念が出てきたのではないかと思うのでありますが、いまは、先ほど最初の改正案を出す直接の目的といいますか、そういう点の御説明があったわけですけれども、もっと広く水の汚染が国民の健康の上に非常に支障を与えつつある、またそれがひいては生活環境の保全ということにも影響を与えておる、そういう観点から、法律の体制を練り直すということになっておるのじゃないかと思うのですね。そういう意味から言って、産業問のいろいろな調整ということは、それはもちろん必要であろうと思うのですけれども、しかし現在の公害対策基本は、やはり健康の保護ということをまず第一にし、続いて、それとの関連において、生活環境の保全というものに重点を置く、こういうふうになっているわけでありまして、したがってその産業問の調整ということは、むしろ公害対策というよりも、一種の産業政策として別途処理すべき性質のものではないか。それとの関連において公害対策をいろいろ立てるということは非常に問題があるのじゃないかと思うのであります。非常に具体的なことになりまするけれども、いま言った思想というものが、水質基準をきめる場合のものさしに非常に影響を与えていくということをわれわれおそれるわけであります。たとえば本法の第五条の二項でありますけれども、「指定水域に係る水質基準を定めなければならない。」、第三項に「前項の水質基準は、第一項の指定の要件となった事実を除去し又は防止するため必要な程度をこえないものでなければならない。」というようなことが書いてあるわけです。ここらに何か、「必要な程度をこえないものでなければならない。」というようなところに、水質基準というものをきめる場合の配慮の中に、いま言った産業の相互協和という理念が影を落としているように私どもは思うわけです。第五条の四項によりますると、水質審議会の議を経なければ水質基準はきめられないということになっておりますけれども水質基準というものは、むしろそういった第五条第三項のような一つのファクターというものを考慮しなければならないといたしますと、非常に技術的な作業に見えまして、実は水質基準の数値というものも、結局は政治的な妥協の産物になりかねないじゃないかということをおそれるわけでございます。そういうことから考えまして、やはりこの第一条の目的というもののウエートの置き方というものは、やはりもう少し配慮しないと、過去の条文をそのまま引き写す、部分的にちょっと手直しするということでは、せっかくの改正案を出される目的に沿わないのではないか、こんなふうに思うのでございますが、大臣、いかがでございますか。
  52. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 産業の協和ということが必要であるということについては、これはもう一応大臣も申し上げましたし、先生も、その限りでは必要であろうというふうにおっしゃったわけでございますが、たとえば最近もしばしば問題になります北海道の河川、この場合にはもちろん生活あるいは人の健康もございますが、第一次的には、国際的な問題になっておりますサケ・マスと工業との関係ということでございまして、そういう事例がきわめて多いわけでございます。ところが、その際に、ただいま御指摘になりました、たとえば「なければならない。」と、必要な範囲でとどめておけというふうにお読みいただいたわけでございます。確かに必要な範囲でとどめておけということは、水質基準をかける場合に、とどめておけということはきわめて消極的な響きがあるようでございますけれども、実はこの水質基準をかけますと、それ以上はやってはいかぬという工排法なりその他の法律による義務を生ずる。そういう意味においては、とにかくその義務を守らせるという意味においては、これはごく、消極と積極ということにはかかわらず、義務を守らせる以上はこういう書き方をするというだけのことでございまして、必ずしも、こういうふうに必要な範囲を越えてはいけないということから、消極的に水質基準をかけるということではございませんし、現にそういうふうに運用しておるわけでございます。  それからさらに、そういう水産業等を頭に置いた場合には、経済の問題であるから、比較的、いわば最後は金の問題ということで妥協的になる場合があって、人の健康なり生活環境よりもゆるいところで基準がきめられるのではないかという御指摘でございましたけれども、実は端的に申しますと逆でございまして、人は確かに第一義的に守られなければなりませんけれども、事水質に関します限りは、水中にいる魚のほうが実は非常に強い基準を要求するわけでございます。そういう意味におきましては、魚を頭に置いて基準をかけるということは、決していわばゆるい基準でやっていくということを意味しないので、むしろ相当強い基準でかけておるということでございまして、ごく常識的に、経済よりも人のほうが本来優先すべきであるということから、すぐに、人に対する配慮のほうが技術的な基準としては必ずきつくなるということではなくて、場合によりましては魚に着眼して基準をかけるということは、きわめて強い基準になる。そういう意味におきましても、実質上決して、そういう、いわば経済を頭に置いた場合、特に被害産業である水産業あるいは農業等を頭に置いた場合に、したがってゆるい基準になるということにはなっておらないのでございます。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 関連して。いまの答弁、そのまま私は了解しがたいのです。では、人間よりも魚のほうの基準というものが強い、きびしい、だから人間ばかりではなく、魚に対する、いわゆる物に対する相互の調和をはかったほうがいいんだ。そうならば、具体的な例として、網走川、常呂川、前回から言ったやつは、ああいうふうにして両方農業と漁業とが協和し合って、どうにもできなくて、日ソ漁業協定にも違反せざるを得ないような状態にまで追い込められ、その河川の基準は全部が守っているんだ、そして全部は守るけれども、サケは遡上できないほどまでにもう川の水が濁ってしまう、そういうようなことはないはずです。ないはずなのに、ではどうしてそういうようなものがそのまま放てきされておるのですか。以前から基準が設定されて、そのとおりに施行されて、なおきたなくなった川には常呂川があるのです。それから現在北海道の水産試験場それから衛生研究所で、これはデータの違いで、基準があってもまだ告示されていないのに網走川があります。網走川は、単に川じゃなくて、湖にまで入っていっておりますから、重大なものです。しかし依然として、そういうような基準ができておるのに悪くなるというのは、弱いからそうなるのじゃないですか。それをきびし過ぎてそうなるということは、私は理解しかねるのです。河上委員質問に対する答弁、そのままちょうだいしかねますので、関連して質問を申し上げました。
  54. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 御指摘のように、常呂川についてはすでに基準を設定いたしておりますが、最近その基準よりやや濁っておるということもございます。それから網走川につきましても、やはり御指摘のように、現在サケ・マスを頭に置き、かつ上流の農産加工産業を頭に置いて、ある時期その水質基準の設定に入ったわけでございますが、現在のところは、いまお話がありましたように、その水質基準の技術的なことについて意見が分かれておりますので、北海道庁等に頼みまして、なおその点を詰めておるわけでございます。いずれに付いたしましても、私が申し上げておりますことは、そういう場合に運用よろしきを得なければ、これはまさに先生のおっしゃるような問題が起こり得るわけでございますが、水質基準をかけます際の判断として魚を頭に置いたことが、決して水準としてゆるくなるということではなくして、その水準のいい悪いは別にいたしまして、その水準がきまった際に、運用が、あるいはそれが十分守られないという場合の問題は、これは当然そういうことのないようにしなければならない。私が申し上げましたのは、いつの場合でもということではございませんけれども、産業の一つである水産業というもののために基準をかけるという場合には、場合によっては、その水を直接飲料にするとかあるいはその中で泳ぐというような関係のない人との関係における場合よりも、水産を頭に置いたほうが基準としてはきびしくなる場合がある。でありますから、水産業を頭に置いた場合に、いかにも水質基準がゆるくなるということは必ずしも当たらないということを私は申し上げたわけでございます。運用の面については、島本先生の御指摘のように、十分に戒心をしなければならないということは当然でございます。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 いまの政府の答弁では、魚を頭に置けばきびしくなるんだというようなことでありますけれども、現実にいま水質汚濁問題で問題がたくさん起こっておるわけであります。それはこの産業の相互協和という理念があって、結局工業あるいは農業、水産業、そういうようなもののいろいろな要求の圧力の中に、ある一つのバランスをとって、そうして水質基準をきめていくということになっていくんではないか、こういうように私どもは考えるわけであります。それは結局政治力の強い業界の意見に左右されてしまう、そこに一つの大きな問題があるわけです。現実にどこにおいても、工業の犠牲になるのはむしろ水産業であるという状況が各地に見られているわけですね。そういう際に、魚を基準にすればきびしい基準になるのだという御意見をここで出されるのは、少し例のとり方として、ああいえばこういうという論議になるような気がするのであります。ですから、この産業の相互協和というものは、当然産業政策の中で考えなければならぬことでありましょうけれども公害対策としては、やはり基本に国民の健康保護というもの、生活環境の保全というものを中心に置いて、その上にそういうものを考えるというのが筋ではないかというように私は考えるのであります。
  56. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私の説明が不十分でございますが、一つ先ほど来の説明で落としておりますので……。産業の相互協和、それから国民の健康保護及び生活環境の保全、この三つがございますが、今回の改正案では、二項のほうに「生活環境の保全については、産業の健全な発展との調和が図られる」、これは大気汚染その他の法律と同じことが書いてあるわけでございます。しかし逆に言いますと、国民の健康の保護、これはいわば調和をさせるというような相対的なものではなくて、これは第一義的に押し通るべきものであるということで、そういう点については、私どもも事の緩急については配慮をいたしておるつもりでございます。  それから、魚さえやればいい人はおのずからその範囲で十分だというふうに、私がいささか強調した向きがございますが、決して一般論を言っておるわけではなくて、そういう問題もありますし、それから水というものにつきましては、資源としてきわめて多種多様な使われ方をいたしております。限られた資源を上手に使うという場合には、おのずからそこに、確かにおっしゃいますようなある種の妥協ということもあり得るかと思うのでございます。しかしながらそれがいわば資源の多目的利用ということでございます。ただその妥協なり調和をさせる際に、弱い産業、あるいは相対的なものではなくて、絶対的にこれは当然守らなければならないものというようなものについて、具体的な水質基準をかける場合には、これは考えなければならないことであります。そういうことを十分含んで、この水質保全法の運用をやってまいったつもりでありますが、なお不十分でありますし、この際目的を変えまして、さらにその姿勢をはっきりするということにいたしておるのでございます。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 ここで押し問答してもあれですけれども、この問題は先ほど私が申しましたように、水質基準をきめる場合に、やはりこれは生きてくるわけです。そういう意味で、この目的というものはおろそかにすることはできないのじゃないか。それだからこそ、公害基本法でも、この点についてわれわれ非常に神経質に議論をし、また修正を求めて、幸いに、不十分でありますけれども、若干の修正がなされたということは御承知のとおりであります。いまお話がありましたように、産業問の協和とか言われましても、結局は監督官庁がそれぞれの産業界の立場を代表するようなことがありました場合には、やはりどうも政治的な妥協の産物におちいる可能性が非常に強いと思うのです。そこでひとつ大臣も、いま私が申し上げたこと、また先日島本委員が繰り返し言われたことを、あの際の御答弁のとおり、ひとつもう一度原案にとらわれず御検討いただいて、この案をよりよくしていただきたいと私は思うわけです。あまりこのことで長く時間をとってもと思いますので、ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  58. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 あなた方が御心配になるのは、産業の相互協和ということばによって、国民の健康の保護及び生活環境の保全ということが弱まりはせぬかということを御心配になっておられると思うのです。しかし公害とすれば、やはり健康の保護ということが主眼でありますから、それでその主眼の目的を達成するためには、まずもって産業の相互の協和ということが必要だ、そういうような場合が起こり得るということで、ここはうたったものと思うのであります。経済企画庁というところは、それの調整をはかること、産業間のいろいろな争いの調整をはかることが役目であるのでありますから、やはり工業と水産業——同じ農林省の畑の中でも、農業と水産業との問題というものがありますから、そういう場合には私どものほうで調和をとって、そして適正な解決をしたいという意味を持っておるわけですから、そのことばがあること自体、私は決して不都合ではないと考えておるのであります。ただこの問題は、このことばによって、主眼としておる国民の健康の保護及び生活環境の保全というところに影響を及ぼしやせぬかという御心配がおありかと思いますが、その点についてはもっと考慮、研究してみたいと思っております。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣から御答弁がありましたので、ひとつよろしくお願いしたいと思うのですが、この新しい改正法律案は、規制対象を拡大したというところに特徴があるという事務当局の御答弁であったわけでありますけれども水質汚濁の場合、被害の態様として、農業、水産業などの財産上の損害、それから身体の健康上の損害——水俣病のような有毒物質による中毒症状その他、あるいはし尿の海洋投棄に伴ういろいろな伝染病その他のこととか、それから第三には日常生活に対する被害、たとえば海水浴ができなくなるとか、そういうような問題があると思うのであります。この水質保全法では、これらの被害を大別いたしますと三つの形があると思うのですけれども、これはやはりすべてをカバーするというふうに考えてよいのか、すべてはカバーできないのだというようにお考えになるのか、その点を伺いたいと思います。
  60. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 たとえばメチル水銀等が問題になりまして、これは御承知のように、私どものほうで科学技術庁の判断が出ました直後に基準をかける、これはいわば人の健康に対するきわめて直接的な問題を基準の対象にしたわけであります。それから産業につきましては、先ほど来盛んに御質問をいただいておりますことで、言うまでもなく、産業を頭に置いてもやはり当然のことと思います。それからいわゆる生活環境につきましても、従来、最初の発足のころは比較的産業間の協和と申しますか、産業の問題が頭にあったわけでございますが、ここ数年来いわゆる都市河川方式ということで、都市の河川を頭に置きまして、ということは、逆に言いますと、必ずしも漁業権がなくてもあるいは農業用水がなくても、やはりそれは生活環境という問題で対象にしておるということでございまして、目的がそれぞれございました場合には、それに対応して水質という面から基準をかけるということは当然やるわけでございますし、やってまいったわけでございます。ただ、この全体の手法が、いわば公共用水域のうちで指定水域を指定しまして、そこへ具体的な汚濁源である事業場、工場等からの排水を規制していくというやり方でございますから、そういう手法に——私ちょっといま思い当たりませんが、その手法にうまく合わない場合には、なかなか規制が困難でございますが、目的という点から言います限りは、いまお話しになりましたような目的は、それぞれの指定水域の特質に対応してきめられる、あるいはきめていかなければならないものだということでございます。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 それで、具体的にこの法案ではまず指定水域をきめる、そうしてその中の特定施設ですか、をきめて、そうして特定施設をいわゆる役所で監督する、それで水質保全を実行に移したいということのようでありますけれども、この特定施設というのは、その排出するものによってきめるわけでございますか。現在特定施設というのは種類としてどのくらいあるのか、またその特定施設を所有する工場なり、あるいはその他の企業、あるいは公営企業体でもけっこうでございますけれども、そういうものが一体どのくらいになっておるのか、それをお伺いしたい。
  62. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま特定施設というふうに言われましたのは、従来ございます工場排水等の規制に関する法律の中で、規制をすべて対象として具体的にあげておるものが特定施設というふうになっておるわけでございますが、そのほかに、たとえば鉱山法あるいは水洗炭業法あるいは公共下水道というふうなそれぞれのものもございますが、大部分はお話になりました工場排水法の中の特定施設でございまして、これはきわめてたくさんございますが、たとえば農林大臣所管について例を上げますと、ハム等をつくる工場あるいは牛乳のプラントあるいは水産製品製造業のための施設、野菜、くだもののかん詰めの施設あるいは製粉工場、砂糖工場等々たくさんございます。それから大蔵大臣の所管では、酒の製造。しかし何と申しましても、非常に多いのは通産省所管でございます。これは繊維工業の場合でありますと、洗毛施設あるいは精練機及び精練槽、漂白機その他非常にたくさんございまして、さらにその施設の中に漏れておりましてやはり排出基準の対象にしなければならないという場合には、政令で指定をしていくということになっております。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 数はわからないですか。
  64. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 数はトータルがございませんけれども、工場排水の特定施設につきましては、大きな分類では四十ございます。それぞれその中にイからチまでとか、イからニまでというふうにそれぞれございますから、ちょっとしばらく時間をかしていただけましたら数え上げます。  ただ、しからば、さらに、その種類の対象工場が幾つかということになりますと、ちょっとすぐわかりかねると思います。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、そういう数字をいずれ資料で提出していただけませんでしょうか。つまり、工場排水規制法によって規定されておる特定施設、それからその他の何かの形で排出規制を受けておる施設、その種類と、そういう意味の特定施設を持っておる工場数、この資料を提出していただけますか。
  66. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 種類は、業種にしますと六十四業種ございますが、ただ、野菜なら野菜のびん、かん詰め工場で、原料処理施設を全部で幾つ持っているか、湯で煮る施設が幾つかというのを、工場の数までなかなか拾えないかと思います。しかし、いかに多いかということだけは表にして差し上げたいと思います。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 私が伺いたいのは、工場排水規制法を読みますと、規制の対象になりますのは、指定水域に廃水を放流する特定施設を有するものに限られておるわけです。ところが、指定水域というのは日本全国すべてではないわけでございますし、ことに今回の改正法案におきましては、単なる工場排水だけではなく、もっと都市下水とか、そういう都市生活に伴ういろいろな汚濁、それに対処しようということでございますので、従来の観念による指定水域以外にも水質の汚濁が起こっておるという前提があるのではないかと思うのです。少なくとも現実はそうなっていると思うのです。そうなりますと、この指定水域以外における特定施設に指定されたと同じ施設を持っておる工場なり何なりが散在している場合、それから、工場でなくても、都市下水によって現実に指定水域として指定されたと同じ程度に汚濁しておる状態の水域もあるのではないかと思うのです、都市生活に伴ってですね。そういうものに対する規制というのは一体どういうふうにしてやるのか、それらについて、少し明確にしていただきたいと思うのです。
  68. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 確かにお話しのように、指定水域における特定施設あるいはその他の汚濁源は、指定水域において排出基準をかければ、それなりに規制ができるわけでございます。同じ種類のものが他の水域にある場合には、水質保全法という観点からする限りは、特別の排出基準をかけないその限りにおきましては、その工場はある程度自由に汚水を流しておりますから、よごれておるわけであります。しかし、一方からいいますと、そういう工場があって、よごれそうになるおそれがあるという場合にも、今後そういうことを予防するという点からいって、指定水域にすることもできるわけであります。たとえばメチル水銀等が問題になりました際に、必ずしもメチル水銀が排出しておるということではなかったわけでありますけれども、少なくとも、その工場があるので、そのおそれがあるだろうということで、指定水域にして排出基準をかけたという例がございますから、事が相当ゆゆしくなると申しますか、そういう場合にはやり得るわけであります。そういう意味におきましては、今後そういう必要のあるところ、相当汚染汚濁をして、今後ほうっておけないというところは、やはり指定水域というものをふやしていく、そうしてその形で基準をかける、そして規制していくということになるわけであります。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお話でわかるのでありますが、いまの事務当局の御答弁で、水質基準というか、必ずしも水質の汚濁状況がそこまでいっていなくても、メチル水銀の工場がある場合には、指定水域にかけるというようなお話でございましたが、もしそういうことが全面的に行なわれるならばよろしいわけですけれども、そうでない場合は、汚濁状況がひどくなってある一定の水準になれば、指定水域にかける。何か指定水域にかけるためには、よごれるのを待っているような感じになってしまうのです。そうなりますと、公害基本といいますか、公害対策基本である予防という観点が全く欠けてしまうわけであります。そういう意味で、いませっかくメチル水銀の工場がある場合にはというお話がありましたけれども、これは、たとえばこれだけの大人口がそこに存在していることから、当然都市下水その他が出る、そのために水域ないしは海域がよごれるということが考えられる場合には、従来の法律で指定水域にはなかなかかけられない場合でも、予防的見地からかけるということは可能なんでしょうか。
  70. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 端的に申しますならば、東京とか大阪とかというところは、明らかにいわば事後的にやっておりますから、いまのようなお話があるわけでありますが、現に広島等は、他の大都市に比べましてかなり水はきれいだというふうに考えられるわけであります。県あるいは地元でも、いまのままの水をぜひ維持したいというようなお考えもございまして、他の都市よりもきれいな段階で、先を見越してかけたというようなこともやっております。そういう意味におきまして、私どものほうも、十分いまのようなことのないように、あるいは積極的に水域を指定していきたいというふうに考えております。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 それならばけっこうでございますが、それは具体的に言うと、水質保全法のどこの条項でやれるわけですか。
  72. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 指定水域及び水質基準につきましては、第五条に「公共用水域のうち、当該水域の水質の汚濁が原因となって関係産業に相当の損害が生じ、若しくは公衆衛生上看過し難い影響が生じているもの」、現行法でそういうのがあるわけでございます。今回の改正案では、目的の政正に対応いたしまして、「人の健康を保護し、若しくは生活環境を保全するうえで看過し難い影難が生じているもの又はそれらのおそれのあるもの」というふうになっておりますので、その基準に従って指定水域の対象にしていくということでございます。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 それでは第五条でやれるというわけでございますね。たとえば瀬戸内海は非常に風光明媚なところで、水がきれいなところとされているわけですね。いま御承知のとおり、瀬戸内海を囲む各県で、それぞれ石油産業を中心とした工業化を競い合ってやっているわけでございます。これは数年足らずして、あそこが非常に汚染されるという可能性もあると思うのです。そういうような場合に、非常に大局的見地から、少し早めに全域を指定水域にかけるというようなことは考えられないものですか。
  74. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまの点は、私も実はかつてそのことを考えたことがあるです。瀬戸内海が、将来あの沿岸に製油業者がたくさんできた場合に、瀬戸内海の全体が石油くさくなってしまうというようなこと、私は今後の製油業というものはできるだけ大洋に面してつくったほうがいいのではないか、そういうように今後指導をすべきじゃないかという考えを持っております。     〔委員長退席、本島委員長代理着席〕
  75. 河上民雄

    ○河上委員 それは大臣、ひとつ何らかの形で具体化されるように、工業立地の関係等もあろうと思いますけれども水質保全という観点から取り組んでいただきたいと思うのです。  そこで、ちょっと伺いますが、水質基準というものをきめるのに、いろいろな技術的な基準がございますね。たとえばCODとかBODとか。私どもは試験管を握ったことがないのでどうもあまりよくわからないので、ことばだけ言っても意味がないと思うのでありますけれども、これも大気汚染の環境基準と同じように、かなり明快な幾つかの、四つぐらいのものさしをつくって、それに合致したものは合格、合致せざるものは不合格、一つでも欠けたものは不合格、こういうふうな国民一般にわかりやすい方法をとっておられるのですか、その点、しろうとっぽい質問をしてたいへん恐縮なんですけれども教えていただきたいのであります。  公害基本法のたしか第九条でしたけれども、その中で——公害基本法は全体として一種の倫理規定みたいな、精神規定みたいなものですけれども、その第九条だけはかなり具体的に、水質汚濁の環境基準設定を要求しておるわけです。ところが今回の改正は、ちょっと読みました限りにおいては、何か依然として排出口の規制だけであって、いわゆる点の規制だけであって、面の規制というのは全然出ていないのです。これはもうすでに藤波委員も指摘しておられるようですけれども、この第九条との関係で、こういうことは一体どう考えたらいいのか、大臣いかがでございますか、公害基本法にのっとって今度の改正を出されたと思うのでありますけれども、こういう水質汚濁に関する環境基準というものを、公害基本法の第九条で要求しながら、今回の改正では見送られているということをいかがお考えになりますか。また水質基準というものをつくる場合のものさしないしはものさしを選ぶ場合の考え方について、ちょっと御説明いただきたい。
  76. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 まず最初にものさしでございますが、従来おくれておることをしかられながら六十四水域かやってまいりました。その過程で、当然具体的なものさしが要るわけでございます。たとえばアユとかそういうものであればこれくらいである、あるいはノリであればこれくらいである、あるいはコイとかそういう底魚であればこれくらいであるというふうに、水産物についても生物学的な許容限度、あるいはまた上水道については、もちろん上水道は、金をかければ、ある程度よごれた水を取水いたしましてもきれいになるわけでありますけれども、おのずからこれくらいが上水道の取水源としては最低限であるというふうなものがそれぞれ技術的にございます。それからまた非常にむずかしい重金属等につきましても、漸次、メチル水銀は排出してはならない、いずれも技術的なある種のミニマムと申しますかマキシマムと申しますか、あるわけであります。ただ、御承知のように、川につきましてはそれぞれ特性がございます。つまり利用につきまして特性があるわけでございます。水産の面のウエートが非常に高いところもあれば、それはほとんど何もなくて、むしろ上水道あるいは生活面の問題というふうに、川によって異なりますから、現在までの作業といたしましては、そういう川に基づきます流水の基準と申しますか、いま先生のおっしゃいました面の基準というものがおのずから出てまいるわけでございます。そしてその面の基準を守るために、排出基準としては、つまり汚濁源にさかのぼりまして、排出基準としては、この工場はこれくらい、この工場はこれくらいということでやっておったわけでございます。法律的には、その排出基準のところだけが義務になりまして、いわゆる流水基準というものはいわば隠れておるというかっこうになっておるわけでありますが、流水基準を抜きにした排水基準ということは考えられないわけでございます。その意味においてはつながっておったわけでございます。それがやや技術的な第一の御説明でございます。  それから、環境基準について今回この法律に入れてないのではないかというお話がございますが、実は環境基準につきましては、確かに私どもいままでの仕事のしっぷりは、どちらかというと川ごとに、いわばやや職人的に具体的にやってまいりまして、一般的な環境基準という考え方ではやってまいらなかったわけでございますが、公害対策基本法の九条に基づきまして、やはり環境基準というものをつくっていく、ただこの改正法の中に入っていないのは、大気汚染防止法も騒音規制法もそうでございますが、大気汚染防止法につきましても、いずれも公害基本法を直接受けて、その九条でやるようになっております。私どものほうもやはりこの九条に基づいて環境基準を詰めていくということで、現在、環境基準をきめるべく、関係各省と話し合いをいたしておりまして、あるいは水質審議会等でも御研究をいただこうというふうに考えて、基準を進めておるところでございます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 それでは大臣、環境基準をいつごろつくって発表されるようなお考えですか。いま事務当局では事務を進めておるというふうなお話でしたけれども大気汚染については、その後ことしになりましてから発表されておるわけですが、水質のほうもこれと対応して、やはり発表しなければならぬと思うのです。公害はむずかしいと思いますけれども、その中の横綱としては、まさに大気汚染水質汚濁のわけですから、これは至急あまりおくれないように発表しなければならぬと思うのですが、大臣いかがですか。たとえばことしじゅうに何とかしたいとか、そういうようなお考えはおそらく胸中にすでに秘めておられると思うのです。ひとつお考えを伺っておきたいと思います。
  78. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 これはお話しのとおり、一日でも早くきめたほうがいいと思うのですが、事務当局でいろいろ準備調査もいたしますので、大体本年じゅうにこれを完成したいという意向を持っておるようでございますが、私としては、早くきめてもらいたいという考えを持っております。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 それはたいへんけっこうでございますけれども、ひとつしっかりしたものをつくっていただきたいと思うのです。  なお、国民生活に非常に関係があると思うのでございますが、水質基準といっていいか、その場合の環境基準的なものを含めて願えれば一番よいわけですけれども、その水質基準をきめる場合に、何についてきめるか、先ほど言われましたように、上水道の場合と水産業の場合といろいろあるというふうなお話がございましたが、たとえば海水浴場その他レクリエーションについて、いよいよ夏が近づいてきて、きょうもだいぶ暑いわけですけれども、海水については水質基準がほとんどきめられておらないようでありますが、やはり海水浴場は国民の生活に非常に密接した問題でありますので、海水浴場などの水質基準をいつごろきめられるか、この際伺っておきたいのですが、これは厚生省になりましょうか。  それから、もう一つ。ついでに厚生省に伺いたいのでありますけれども、地方自治体の清掃事業の問題になりますけれども、いまし尿が依然として海上に捨てられておるわけです。海洋投棄というのが、東京都あたりでも平気で行なわれておるわけです。こういう問題は、いつごろまで続いていくものなのか。何かこれは、ことしじゅうでやめてしまうというようなことはできないでしょうけれども、やはりこういう問題についても、各省でそれぞれ目標を設定して、いち早く努力する必要があろうと思うのですが、厚生省のお考えを承りたいと思います。
  80. 武藤き一郎

    ○武藤(き)政府委員 第一点でございますが、海水浴場におきます環境基準的なものを定める必要があるのではないかということでございます。これにつきましては、厚生省といたしまして、現在生活環境審議会の中で、厚生省が所管しておりますいろいろな水の問題についてのいわば環境基準を設定するための一つの基本的な条件、たとえば水道でありますとか、あるいはいまの水泳のための川あるいは海等の環境基準の条件というようなものを、現在専門委員会の中で検討しております。夏が近づきましたので、できるだけ早くこの条件につきまして結論を急いでおりますが、できますれば、この夏までには、中間的なものでもいいからひとつ基準を出すようにということで、専門家にいま検討を依頼中でございますので、中間的なものとして、ことしの夏にはお示しできる、かように考えております。  それから、第二点のし尿の海洋投棄につきましては、現在清掃法で、たとえばし尿を投棄していけない地域をきめますとか、あるいはし尿を投棄する場合のいろいろな条件を、それぞれの地域の実情に応じて規制しているわけでございますが、現在のところ、四十二年度で申し上げますと、いわゆるくみ取りし尿を一〇〇といたしますと、その中で海洋投棄に回っている分が約一七%でございます。この四十二年一七%ありますものを、昭和四十六年にすべてし尿処理施設で解消したいということで、四十二年を初年度とします五カ年計画を、現在閣議で決定いたしまして、これに従いまして、もろもろの施設の整備をはかっておりますので、四十六年には、いわゆる非衛生的な海洋投棄あるいはその他山の中に埋めるとかいう、そういったものについての解消をはかる考えでございます。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 それで、ひとつ、一応基準をきめたら、それを実行に移さなければならぬわけで、それに達しない場合には何らかの措置をとるのだろうと思いますが、大気汚染の場合は、御承知のとおり地方公共団体が測定をして、それに基づいて、勧告をしたり警告をしたりいろいろするわけでありますけれども水質汚濁の場合は、それに当たる措置を、だれが、どういうときに、どういう権限に基づいて、だれに対してやるのか、そういう点はどうなるのですか。
  82. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 水質保全法の体系は、一番大きい部分を占めております工排法との関係で御理解を願うことが一番便利であろうと思います。すなわち、ある一定の指定水域において水質基準をかけたときに、それを受けて、その工場に対して、工排法に基づいて、所管大臣が、多くの場合は通産大臣でございますが、その通産大臣が工場事業者に対して、その基準を守ることを命令されるということになるわけでありますが、逆の場合には、今度はその所管大臣が、工排法に基づいてそれぞれそれを守ることを強制される。しかし、一般的にそういうものをだれが監視するかということでございますが、各所管大臣が、それぞれその排出基準については監視されますが、流水一般がきたなくなるという問題については、これは私どものほうが都道府県知事に委託をいたしまして、そうしてその監視をしてもらう。川が全体としてよごれてきたら、それはどこの工場が比較的よごしておるというふうにやってもらって、そうして、さらにその基準をその工場が守っておるかどうかは、通産大臣に御監督を願うということになると思います。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御説明では、それぞれ責任が明らかなような感じもしますけれども、実際上そういうようにうまくいっておるなら、あのような汚濁した都市河川なり——その上を走る電車に乗っておりますと、とたんにぷんとにおうにおいですね。そこに住んでおる人は、なれてしまってあまり気づかないのかもしれませんが、たいへんなにおいでございます。兵庫県にも神崎川なんというのがございまして、非常に水質汚濁が問題になっているわけですが、もし、いま言われたようなことがそのままであるならば、どうしてああいうことが起こるのかということになると思うのです。やはり何かそういう監視体制なりまたその権限なりというものが、実際十分でないのではないかというような気がするのでありまして、工場排水法などを見ますと、測定はそれをやり得る能力のある事業者にまかせられて、その報告もまかせられておるというようなことでありますが、それを見てもわかるのですけれども、何か大気汚濁の場合よりも、水質汚濁のほうが、そういう測定あるいは監督体制というのはまだ十分いっておらぬのではないかという懸念を非常に強くするわけです。また、河川の汚濁原因として、最近はたとえば東京都では、原因別割合において、家庭汚水が五四%、下水道排水が一三%を占めるというようなことが政府の資料の中にもあるわけですけれども、こういうような状況の中で、下水道の問題そういうようなことに対して、一体経済企画庁ではどういうように考えておられるのか。もう一度、何か非常にうまくいっているような話ではなく、実態を率直に訴えて、もう一度御説明いただきたいと思います。
  84. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私、先ほど仕組みを申し上げましたが、お話のように、いかにも、そのとおりいっているならおかしいではないかというくらいよごれておる川がずいぶんあるわけでございます。実は具体的に申し上げますと、都市河川の場合には、非常に事業場等が多い。それからその他のいわば工場排水以外の汚水、汚濁源が多いということで、従来の方式でございますと、とにかく百あろうと二百あろうと、その工場の、どれくらいきたない水を出すかということをはかり、そうしてその工場が改善する場合にはどれくらいの金が要って、どういう技術的な対応策があるかということをおおむね調べ上げて、あとで水質基準をかけるというやり方を当初はやってまいったわけであります。それではとても大都市の場合には追っつかないということで、とにかく、まあ、大体のところというと語弊がありますが、かけておきまして、そうして、そのかわり、具体的な実情に応じて多少免除と申しますか、先まで延ばすとか、そういう形で、むしろ実効のあがるほうをとっておる。つまり、全部調べ上げるには時間がかかる。調べ上げてからではおそいので、とりあえず、とにかく水質基準をかけておいて、そのかわり、ある期間免除しながら、しかも、追い立て追い立てて水質保全をやっていくという形をやっておりますので、確かに全体としては、隅田川にいたしましても、淀川にいたしましても、水質基準がかかっておりますが、場合によりましては、全部の工場にまだ具体的にはかかってないという場合があるわけであります。  いずれのやり方をとるがいいかということでございますが、実際的には、とにかく、全部調べが終わるまで待つよりは、なおそのほうが次善としてはいいのではないかということでやっておりますから、そういう意味におきましては、前回申し上げましたような、きれいな形できちっと全部が進行しておるわけではございません。そういう意味では、今後もそういうやり方で、とにかく工場、事業場に守っていただくような形に追い込んでいこうというふうに考えておるのであります。そういう意味におきまして、私どもは、応用動作を若干やっておりますけれども水質保全の前進にはなっておるというふうに考えておるわけでございます。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお話でもわかるのですが、水質保全法の効果をあらしめるためには、それとの関連において制定されました工場排水規制法が十分に機能しないといけないんじゃないかと思うのですが、これは今回は改正されないわけですね。まあ、そう言えば、特定施設を政令でふやしていっておるから十分だとかというようなお答えがあるかもしれませんが、この改正の必要を認められなかった理由はどこにあるのか。また、今回の改正で規制対象が拡大したということで、従来の工場排水だけではなく、斃獣処理場、採石場、屠畜場、廃油処理施設及び砂利採取場並びに屎尿処理施設または養豚場、そういうようなところを新たに加えておられるわけですけれども、これらの対象には、それぞれ、工場排水規制法に当たるような法律が全部整っておって、それらもまた改正の必要は全然ないのかです。私は、砂利採取法の改正の際にも少しくかかわり合ったわけなんでありますけれども、やはり一つ一つ当たってみると、新しい現在の公害にかかわる段階という点から見ますと、非常に不備な点が多いわけです。これらの規制対象の拡大に伴いまして、従来の工場排水規制法はもちろんのことでありますけれども、その他の対象に関連のあるいろんな法律についても、一つ一つ検討されたのかどうか、その点を経済企画庁としての御見解を承りたいのです。
  86. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私ども、たとえば水質保全法と公排法等の関係から申し上げましても一実は、現行の法体系でいいのではないかというふうに、体系としては考えておるわけです。その理由は、水質汚濁のいわば態様というのはきわめて多種多岐にわたっておる。したがいまして、どこか一つにまとめてだれか一人がやるというにはあまりに多種多様でございまして、むしろ、それぞれ関係各省が一つの目的に対応してやっていく。そういう意味におきましては、いわばそういう体系としては現行法がいいのではないか。ただ、すでにお話しになりましたように、特定施設等において不十分なものがあれば直していくということは、これは必要であろうかと思います。  それから、今回、汚濁源といたしまして追加を考えております諸種の法令、これは確かにお話しになりますように、水質保全法との関係からいいますと、多少ずつ問題がございます。たとえば現在すでに現行法で対象になっております公共下水道、これはたとえば条例で公共下水道の基準をきめ、除害施設の基準をきめるというような場合に、一定の基準を政令で示しております。その場合も、水質保全法による水質基準との関係で、一般的基準よりもきびしいのがきたら、それに準ずるというふうなことで、下水道の法律水質保全法とは一応うまくつなぎ合っておるわけであります。そういう意味におきます今回の他の法律との関係というのは、もう一ぺん見直す必要があるかと思います。  それから、もう一つの問題は、今回追加をいたしたいと考えております業種を規制いたしておりますそれぞれの、へい獣処理場等の法律に基づきまして、たとえば構造基準であるとか、あるいは一定の公益の保護のための基準であるとか、公害防止のための一定の施設の基準であるとか、それぞれあるわけであります。それぞれの基準が水質汚濁に関連いたしまして十分であるかどうかというのは、これは一つずつ詰めて検討してまいる必要があると思いますが、具体的に、これでは不十分であるとか、ここはもう少しこういうふうに直してもらうとかということは、現在まだ法律が通過いたしておりませんから、関係各省とそう詰めてはおりませんが、事務的には接触をいたして検討に一応入っておるという段階でございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 きょうはあまり時間がございませんので、その一つ一つについては深く入りませんが、ひとつそれは今後の問題として残しておきたいと思うのであります。  それで、残された時間を、幾つかの補足的な問題にとどめて御質問したいと思うのでありますが、その一つは、今度の公共用水域水質保全に関する法律という中で、第一条、目的がございますけれども、この中に「あわせて水質の汚濁に関する紛争解決に資するため、」ということばがあるわけですけれども、今度の改正案では、例の第四章でございますか、和解の仲介の部分です。が、これはすっぽりそのまま紛争処理法のほうへ移るように理解しているわけですが、それに伴って、この第一条、目的のこの部分が変わるのか、そのまま残っておるのか。これは確認のために伺うのでありまして、きょうは時間がございませんので、私の意見はまた後に検討さしていただきたいと思います。
  88. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 御指摘のように、ただいま御審議いただいております公害紛争処理法案の附則の四でございますが、ここで「公共用水域水質保全に関する法律の一部を次のように改正する。」としまして、目次の中で、まず第四章を削り、第一条のいわゆる目的のところでこれを削り、第四章を削るということで、私どものほうでは、公害紛争処理法案が通過いたしましたならば、そちらのほうへ全部移って、目的も変わる、こういうことでございます。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 そうすると、「あわせて水質の汚濁に関する紛争解決に資するため」というところだけを削るわけですね。
  90. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 目的の中では、それが落ちるということになります。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 それではこれについての意見はまたあれでございますが、確認のために伺います。  それから、あるいはこの法案には直接関係ないかもしれませんけれども水質保全立場から、地下水の問題はかなり大きいと思うのでございますけれども、これは経済企画庁長官としての菅野さんも十分関心を持っておられると思うのでありますが、地下水の水位が、使っているうちにだんだん下へ下へおりていくというような問題とか、あるいは地下水がなくなってしまう。工業用あるいは最近ことにビルがたくさんできて、冷房施設の大きなのを音を立ててやっておりますけれども、ああいうので相当地下水がくみ上げられて、地盤沈下という問題が起きていると思うのであります。工業用水として地下水をくみ上げて、それが原因で地盤沈下を起こすという従来の型に加えまして、そういうビルの建築に伴う地下水への影響というのがずいぶんあると思うのです。ところが、自然の力で地下水が補充される量よりも、はるかにこれを上回る水量が、都会あるいは工業地帯では使われておる。そこで、この地下水対策、それ自体非常に大きな問題だと思いますが、地下水を補充するために、使った水を還元するとか、あるいはその他の形で水を地下水に補充するということが考えられているというような記事をよく見たのでありますけれども、こういうことで、また逆に水質の汚濁の原因になりはしないかということを懸念するわけですが、これは単なるしろうとの心配であるか。また、何か還元水というような、圧力で下へ押し込むようなことを聞いておるのですけれども、こういうようなことが実際に行なわれておるのかどうか。その実情などについて伺いたいと思います。
  92. 塙阪力郎

    塙阪説明員 お答えいたします。  ただいま河上先生の御質問のようなことが観念的に心配されるわけですが、例の工業用水法であるとかあるいはビルの水の採取の規制に関する法律を運用いたしまして、そういう事態が生じないようにしているわけでありますけれども、かりにそういうふうなことがあるとした場合にどうするかといったような意味で、還元水を利用したらどうかということなんでしょうけれども、私たち聞いておる範囲内におきますと、通産省等におかれても、工業用水を相当くみ取ったあとで、そういうような還元用水をつくり出すということにつきましては、考えとしてはあり得るかもしれませんけれども、やはり水質汚濁ということが非常にこわいために、そういうことをしないようにという強い行政指導をしておる、こういうふうに聞いております。したがいまして、一般的には、現在そういうことは行なわれていないと思っております。ただ例外といたしまして、新潟地区におきまして、いわゆる水溶性ガスをくみ取ったあとで、一部の井戸におきまして、還元用水を試験的にやっておるということは聞いておりますが、それ以外には聞いておりません。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 そういうことであれば、ひとまず安心ということでございますが、しかし基本的には地下水が欠乏する。水資源というのは、従来、表面に流れている水資源だけが問題だったと思いますけれども、いまでは地下水の水資源というものの計画的な使用ということが、これからの日本にとって大きな問題だと思います。それは当然経済企画庁の大きな仕事だと思うのでありますけれども、そういう点、いま言ったようなことにならないように、ひとつ慎重な配慮と、将来へ向かっての計画を立てていただきたいと思うのであります。  最後に、少し話題が飛んで恐縮ですけれども、二、三伺いたいと思います。  一つは、これはせっかくでございますので、紛争処理法案に関連して、今度は担当は少し違うかもしれませんが、苦情処理について触れた部分があるわけですけれども、私ども承知しております実情から見ますと、保健所あたりで苦情処理を聞くのですけれども、実際は保健所の人たちは、ただ市民から言ってくる文句を電話で聞くだけで、聞いたからといって、工場へかけ込むわけにいかず、非常に困っているわけでして、単にこういう苦情処理ということを、ことばで抽象的に触れただけではあまり意味がないのではないか。保健所にそういう処理権限を与えない以上どうしようもないのではないか。そういう意味で、社会党案にありますような、われわれが主張しているような、苦情相談員というようなものを設けたらどうだろうか、こういうふうに私どもは考えるのですが、これについて総理府のお考えを承りたいと思います。
  94. 橋口收

    ○橋口政府委員 公害紛争処理法案におきまして、公害に関する紛争処理のために、和解の仲介、調停、仲裁の三つの方法を用意いたしております。御質問にございましたように、和解の仲介等に行く前の段階といたしまして、できるだけ住民の身近なところで公害に関する不満を解消するということが、最も望ましいわけであります。現状におきましても、公害苦情相談員的なものを現に設けているところの府県、市町村もあるように承知いたしております。また、地域住民からの公害に関する苦情の相談も相当の件数にのぼっております。ただ、いま先生からお話がございましたように、窓口が必ずしも一定いたしておらないわけでありまして、府県、市町村によっては、公害課あるいは係というところで扱っているところもございますし、また保健所等で取り扱っているところもございます。したがいまして、公害紛争処理法案が成立いたしましたならば、できるだけ行政指導によりまして、窓口の一本化なりあるいは制度の円滑な運営について十分配慮したい。ただ法律規定におきましては、きわめて簡素明快な条文を一つ置いておるだけであります。これは府県、市町村におきまして、公害の件数なりあるいは公害の態様に相当相違がございますので、必ずしも一律にこうすべきだということを法定いたしますよりは、法律規定に基づきまして、現実の行政指導によって対処したい、こういう考え方でございます。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 そうは言っても、実際には、地方公共団体にあまり権限は与えられておらないわけでして、単に苦情を聞いて、さようでございますかと言っているだけの話になってしまうわけです。ですから、単に抽象的な規定を置くだけでは無意味なのではないかというふうに私ども考えるわけでありまして、ひとつ、これはいまのような御説明だけではなく、もしそういうことを言われるなら、それでは一体どこへ苦情を持っていったらいいのか、具体的に実効のある解決を得るような苦情をどこへ持っていったらいいのかということを伺いたいのであります。したがって、そういうものが現実にない以上、紛争処理法案で、上まで行かない前に処理したいというならば、ここにやはりそれにふさわしい制度というものを置くべきではないか、私どもはそう考えるわけであります。その点、いかがですか。もう一度。
  96. 橋口收

    ○橋口政府委員 これは公害に関する苦情の処理でございますから、いまお話がございましたように、権限によって処理するということは必ずしも適当でないのじゃないか、というふうに考えておるわけでございます。ただ四十九条にもございますように、関係行政機関と協力して適切な処理を行なうということでございますから、したがって、単に苦情相談員が、現在におきましても、市町村で取り扱ったものを府県に取り次いだり、あるいはいろいろ相談員的なサービスをやっているように承知いたしておりますが、そういう意味におきまして、できるだけ窓口の一本化なりあるいは制度の整備ということは配慮してまいりたいと思いますが、苦情処理性格から申しまして、特に新たな権限を付与するということは、はたして適当かどうか。その点は四十九条の規定の現実の運用によって対処したい、かように考えております。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 この問題については、水質関係では、苦情というのは非常に多いわけですから、これは、紛争処理法案というものは、やはり水質保全法の中でも、いますっぽり向こうへ移ったからこっちの仕事じゃないということじゃなく、経済企画庁、いままでの因縁もあるのですから、少しそういう点について、過去いままで扱ってきた経験を生かして、今度の紛争処理の中に、そういう経験を反映さしていくようにしていただきたいと思うのです。  最後に一つ、昨日の夕刊でしたか、石油政策の転換を通産省で考えているというようなお話が報道されているのを拝見いたしましたので、これについて伺ってみたいと思うのでございます。  これは経済企画庁でも当然考えられておるところだったと思うのでありますし、また通産省の事務当局も、できたらそういうふうにしたいということを前から言っておられたわけですが、今回こういうふうに報道がなされましたには、何か通産省として一つの動きがあったためじゃないかと思うのですけれども、こういう産地で精製し輸入するという考え方、ことに大気汚染防止のために、こういう観点から、従来のやり方ではどうにもならぬからということで、ここに百尺竿頭一歩を進めるという決意をされたようにうかがえたのですけれども、これについて経済企画庁並びに通産省の御意見を、ここにあらためて委員会において明らかにしていただきたいと思うのです。
  98. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 私もきのうの朝日新聞の夕刊を見まして、先生御指摘のようなことが書いてあったのを見たわけでございますが、結論から申し上げますと、ここで書いてあるような政策の転換といいますか、これは消費地精製方式を産地精製方式に変えるというような政策の転換が、いま現在に行なわれたわけではないのであります。しかしながら、さっき先生がおっしゃったように、何か動きがあったのじゃないかというお話がありましたが、動きというのは、実は亜硫酸ガスの環境基準が二月に閣議決定をされまして、そのためには一番大きい方策というのは、低硫黄化ということです。そしてそれを通産省は全力をあげて低硫黄化をはからなければならないということで、実は先般通産省の諮問機関であるエネルギー調査会、これが石油の問題を昔から研究しているわけですが、そのエネルギー調査会に低硫黄化部会というのを先般設けたわけです。すでに作業を始めつつあるわけでございますが、その低硫黄化部会ではいろいろな方法を研究いたすわけですが、そのいろいろな方法なり方策なりの一つとして、やはりこういう問題も一応研究してみなければならぬ、そういうようなことになっているわけです。そういう意味におきましては、若干の動きがあったということは言えるかと思います。特に産地の問題では、消費地精製方式をやめて産地精製をやるというような、そういう言い方、と申すよりは、むしろ脱硫の問題について、現在は内地における各精製会社でやってもらっているわけですけれども、現地でもって一括して脱硫したらいいという考え方もあるわけです。そういうものもこの低硫黄化部会で研究されることになっておりますが、そういうような関連から、産地でも精製するというような考え方も出てくるのではないかと思います。いずれにしても、動きはありましたけれども、そういう政策の転換はまだ行なわれていない、こういうのが結論でございます。
  99. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまのお話は、大体近ごろ電力会社が発電所を設ける場合に、公害立場からいろいろ反対があるというようなことで、原産地で脱硫をやってもろうたらいいじゃないかというような意見が出ておることは事実です。しかしまだそれは具体化されていないと思います。しかしそれは一応そういうことの考えが一部の人には出ておるということは言えると思います。
  100. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、私の質問は大体終わりたいと思いますけれども、ひとつ経済企画庁長官にお願いがあるわけです。  公害基本法ができましてから、公害対策は飛躍的にとは申しかねますけれども、世論の非常な高まりを背景といたしまして、徐々に前進してきたということは事実だと認めてよいと思うのでありますが、ただその場合、どちらかといえば、大気汚染対策のほうがやや先行して、水質汚濁のほうがどちらかといえば、たてまえというのですか、システムというか、仕組みの上でややおくれておることは事実だと思うのです。その一つの原因は、大気汚染のほうの亜硫酸ガスに対する防除技術とかそういうようなものが、理論的には、また実験的にはかなり進んでおるのに対しまして、水質汚濁をなくす、すでに起こった水質汚濁を解消するという技術が非常に立ちおくれておるということも一因ではないかというように思うのです。そういう意味で、これは大臣に対してお願いでありますけれども、そういう水質汚濁の防除技術、そういう科学的な研究に対して、ひとつ経済企画庁のみならず、あらゆる役所もそうでありましょうけれども、一段と強い関心を持っていただきたいと思うのです。  先般私がいろいろ資料を見ておりましたら、この水質保全法が成立に至ります一つ前の段階において、昭和二十六年の三月ですけれども、当時の経済安定本部資源調査会が「水質汚濁防止に関する勧告」というものを出しておる。その中で四項目が述べられておりました。その第一は水質汚濁防止委員会設置、第二が水質調査事務局設置、第三が公共用水の許容限度の設定、第四が水質科学研究所の設置、こういうことになっているわけです。私は、はたしてこの四つがその後実現したのかどうかですね、水質保全法ができたにもかかわらず、まだできていないものがずいぶんあるのじゃないか、こう思うのでありますが、この水質保全法の改正にあたりまして、昭和二十六年におけるこの勧告をもう一度思い起こしていただきたいと思うのです。ことに重要なのは、この第四の水質科学研究所の設置ということを、当時の委員会は勧告しておるわけですけれども、ちょっと伺ったところ、専門的な水質科学研究所というのはまだないようでございます。ひとつ先ほど申しましたような水質汚濁防除技術の開発という点から見ましても、水質科学研究所というような、名称はともかくとして、そういうようなものを設けたり、あるいはそういう方面に力を入れるということが、水質汚濁に関する公害対策を今後飛躍的に進めていくための重要な布石になるのではないか、こういうふうに思いますので、大臣これは私の要望でございますけれども、ひとつよろしく心にとめていただきたいと思うのです。
  101. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この産業公害の問題は、御承知のとおり、これは大体戦後において起こってきた——昔からありますけれども、やかましくなったのは戦後の問題です。ことにこれが世界では日本が一番やかましい問題になっておると私は思うのです。これは御承知のとおり、国土の狭いところにたくさんの工場ができたりなにかして、いろいろ産業公害という問題が起こってきたと思うのであります。  そこで、この産業公害という事実がいろいろと続々と新しくあらわれてきておりますから、この産業公害ということは、今後における産業政策上においては、私は重要なエレメントになってきたと思うのです。いままでは生産量を増すとか生産性を高めるという点から産業政策をとっておりましたけれども、生産性を高め、生産量を高めるということと同時に、それが人体の健康に悪影響を及ぼさぬという観点から、また産業というものを考えていかなければならぬということで、要するにこれからの産業というものは、経済と社会と両面から見て、産業の発達ということを考えていかなければならぬ。その意味においては、産業公害ということは、これから重要な関心をもってわれわれは臨まなければならぬし、また今後の日本としても、これについて重点を置かなければならぬということを考えております。  したがいまして、そういう点から、まず産業公害をなくするということにおいて、いままで重点を置かれておると思いますが、これも極力やるべきだと思います。まあ脱硫の問題などでも、いま日本の工業技術院でもやっておりますが、この産業公害が発生しないということに重点を置いて今後やっていくべきだということで、いまお話しの水質汚濁の研究所なども当然これは考うべき問題じゃないか、こう思っておるのでありまして、その意味において、産業公害については、今後ことに経済企画庁としては、これはわれわれは加害者被害者の両面の立場に立って調整するところですから、そういう点において、今後産業公害の問題については全力を注いで解決、善処したい、こう考えておるのであります。
  102. 河上民雄

    ○河上委員 以上で私の質問を終わりますが、いま長官から御決意の表明がありましたけれども、ただ一つだけ気になりますのは、経済企画庁が加害者被害者の調停に立つのではなくて、あくまで被害者といいますか、被害者の権利と生命を守るということは当然基本にあって、その上で産業政策を運営していくというのが本来の立場かと思いますので、ひとつそういう点、間違いないようにお願いしたいと思うのであります。  以上をもって私の質問を終わります。
  103. 本島百合子

    ○本島委員長代理 島本虎三さん。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 いま公共用水域水質の問題で、いろいろと大臣から貴重な答弁が出たわけでありまして、私もそれを聞いていまして、以前とは違ってきた、こういうような感じだけは率直に受けました。  それで、いままで水の場合には、ことに大臣も知っておられるように、足尾銅山の廃液の問題、いわゆる渡良瀬川のこの問題については百年間も苦労された。いまだに完全にいっておらないわけです。今度ようやくいまの法律案が、今度はいろいろな受け皿を持つこの法律案を従えながらも、ここに出て改正されてきたわけです。しかし、改正されたといっても、今後実効を上げるためには、いままでと同じようなやり方では困る。  それで、大臣もいまちょっと触れましたけれども、この科学性と技術性と、もう一つ専門的な知識を有する、大臣のもとで、事務局を持って、今後やはり監視機関なり調査機関なり研究機関なり、こういうふうなものをぴしっとしておいてやらないと、あたら法律ができても、各省間のなわ張り争いならいいけれども権限委譲争いばっかりやってしまって、おそらくは実効が上がらない結果になってしまうことを一番おそれるわけです。この足尾銅山の廃水の問題等、明治年間から始まって百年間だといいますけれども、まさにそういうようなもののあらわれの象徴ではないか、こういうように思うわけであります。そして、この監視機関や調査機関、研究機関、こういうものを事務局の中でいかようにでも使えるような体制に整備しておかないと、これは有名無実な存在になることを私は一番おそれますが、大臣、この法律事務局は何人で構成して、そして今後、いま言ったような三つの重大な要件を満たすために、どういうような運営を考えておられますか。
  105. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 水質保全に関する事務局員は二十二、三名です。それでやっているわけです。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 二十二、三名ぐらいでやって、法律ができても、いま言ったように十分監視をしなければならないし、それから調査や研究ももちろん必要である。こういうようなことはいま大臣からいろいろおっしゃったことばの中にもはっきりしたわけですね。二十二、三名ぐらいでだいじょうぶですか。これで完全にやっていけますか。
  107. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 第一に、公害であるかどうかという調査研究は科学技術庁のほうでやってもらいます。われわれのほうではそれでもって水質基準をきめるわけです。したがって、そのとおりやっておるかどうか、工場排水などでも、そのとおりやっておるかどうかというような調査は、これはもう地方団体におまかせするより監視の方法はないと思うのです。それで地方団体のほうでやってもらうということになっております。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 したがって法律はできても、監視や何かは地方自治体にやってもらう、いわゆる都道府県の調査にこれは委任する、それから技術的な点や科学的な点は厚生省、通産省、それぞれの機関に委任する。それでは法律をつくるだけであって、窓口で公害に対して強い権限をどのように発揮できますか。これは単なる飾りものの事務局、飾りものというような存在になっちゃう。私はこれではほんとうの実をあげることができないような気がしますが、大臣だいじょうぶですか。
  109. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私ども水質保全の所管をいたしておりますからして、これによって水域の指定なり、水質の基準などを定めれば、それによって各関係省あるいは地方団体は行動するわけです。それでなければ、どういう法律だってみな各省、地方団体は守らなければならぬのですから、そういう法律をきめれば、各官署がそれによって動くというので、政治、行政が動いておるわけですからして、それで各官署の責任でひとつやってもらいたい、こう思います。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、大臣にはこういうような理屈っぽいようなことをあまり言いたくないのだけれども、これは公害の実施法、実体法としていまここに出されましたから。この公害というようなものは、他の法律と同じように律されないような特徴があるのです。特殊性があるのです。これはやっぱりその被害が規模が大きいし、範囲がでかい。どの法律に比してもこれはでかい。それから二番目には加害者らしい者がないのですよ。基準を守っていて、こういうような指導のもとに加害者らしい者が存在するけれども、決定しがたい、特定しがたい、こういうような特殊性もあるでしょう。そのほかに、今度、原因、結果の立証がなかなか困難だ。そうでしょう。やったかやらないかわからぬのだ。被害者はわかっても、原因者が認定困難だ。こういうようなことも一つの特殊性です。そのほかに今度は、加害者だと思われる人でも、法令の規制を順守していて、一応の合理性だけはりっぱに持っている、それでも被害が発生してくる、こういうようなものなんですよ。そのほかに今度は、損害が単に物的なものだけじゃなくて、人体の健康や生活環境にまで影響してくる、しかもこれが不断に継続されてくるというような特殊性があるのです。じわりじわりと知らないうちに、これが人の健康だとか物に対しても影響してくるようなものだ。そういうようなときに、どっかがやるからいいだろう、法律だけつくったからいいだろうというようなのは、公害の場合は別なんです。私は声がかすれてしまっていますけれども、大臣にこれだけは覚えておいてもらいたい。法律は確かにりっぱな体系ができた。一つか二つ修正すると、これはりっぱなものですよ。だけれども、これを実施する段階においてお人まかせだったら、これもまたあやふやになるおそれがある。これは公害の実施法だから、公害の持っている特殊性はいま言った五つの点にはっきりあらわれますから、これを十分踏まえた上でこれを順守させるのでなければ、これはもう有名無実の法律になってしまったらどうなります。これは困るのです。     〔本島委員長代理退席、田村(良)委員長代理着席〕 したがってこれは大臣がいま言ったような、研究機関は厚生省、通産省、監督のほうは都道府県だ、おれのほうは法律だけつくってやって、二十二人の手下がいればいいんだ、事務局があればいいんだ、こういうようなことでは、大臣、とんでもないことになる。私はそれをおそれる。では、もし水の点だったら、大臣、何でも強い権限をどこかで発揮できますか、いまのこの法律で。違反をやっている、結局そこだ、また監視も不十分だ、その場合は、大臣として事務局を通じてどういうふうなことができます。
  111. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 工場の監督は直接通産省でやりますから、そういう事実をこちらが発見し知ったら、通産省に通告して、通産省からそれを厳重に取り締まるということをやってもらわぬといかぬ。私のほうは、全部一々工場の監督だとかやるわけにはいかない。私のほうは基準を定める、そして通産省のことは通産省が守るとか、農林省のことは農林省が守るとかやってもらわなければいかぬ。でありますからして、これをきめた以上は、これは各省に対して、私のほうでは厳重に、これの法律によって活動してもらうということをこちらから指示するよりほかに道はないのであります。その点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 誤解じゃないのです。これは多元的な運営では骨抜きになることをおそれるのです。  それじゃ、お隣の角屋委員にお聞きしますが、こういうような場合には、公害特殊性からして、法律はりっぱにできても、窓口がたくさんある場合に、多元化している場合に、当初の効果は十分発揮できる、こういうように社会党ではお考えでしょうか、立案者としてのひとつ態度をお聞かせ願いたいと思います。紛争処理被害者救済の提案者であり、なおその中には一貫した法理論を持っておりますから、その立場で、角屋委員の御説明を賜わりたいと思います。
  113. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 島本委員のただいまの御質問の趣旨は、私も的確にとらえ得たかどうかわかりませんけれども、私は、紛争処理制度にいたしましても、あるいは救済制度にいたしましても、党は立案いたしましたが、いわゆる国家行政組織法の第三条機関にしよう、あるいは第八条機関にしよう、あるいはその他各行政機関がいろいろな分野でやるにいたしましても、島本委員も御承知の、いわゆる国の行政の分野と地方自治体の行政の分野というものをどう配分したらいいかということも、やはり行政運営全体としては考えていかなければならぬ。国が国家行政組織としてやるべきこと、あるいは憲法に保障された地方自治体の本来のあるべき性格から見て、これは地方自治体にまかしたらいい、こういうことを十分見きわめながら、本来公害行政紛争問題であるとか、あるいは紛争に限らず、公害行政全体としては、三条機関独立権限によるものがよろしいというのが私どもの主張でありますが、先ほど大臣の御答弁とも関連をいたしまして、それにもかかわらず、やはり国と地方自治体との行政分野というものについては、常に適正な配慮をしていくということが根底に必要だろうというふうに考えております。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 やはりこれは三条機関のような、いわゆる強力な組織で、そしていろいろの研究機関も持って、立法権もすべてを持ってやって、この効果があがる、これはもうはっきりしているのです。菅野大臣、そういうふうにしてお人まかせにしておいて、せっかく法律がりっぱにできておっても、今度運用の面において一本欠ける面があったら、何にもならなくなる。このことを私はおそれて、この意味の督励を含めての質問なんです。ゆめゆめこういうようなことがないように、水の点では経済企画庁が窓口である以上、何でも私のほうでは、この問題に対しては全責任を持って、監督が不行き届きならばもう大権を発動して、総理にかわってこれをやってやるとかなんとか、こういうような強い意思、そういうようなものがなければ、人まかせ、あなたまかせでは運用がどうもうまくいかない。したがって三条機関でなければだめなんじゃなかろうかと、角屋議員説明もわるかような気もするわけです。したがって、この点は十分まず今後の運用の中で生かしていってもらいたい、十分考えていってもらいたい、こういうふうに思うわけなんです。大臣、この点は御理解できましたでしょうか。
  115. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この公害という問題は、重大な関心を持ってきたのはごく最近でありまして、したがいまして、公害については厚生省もやるし、通産省もやるし、水の問題は経済企画庁がやるということになっておりますが、実際のところを言うと、公害という問題については、一つの省なり局でまとめてやるのが一番いいと私は思うのです。そこで公害実態を研究し、また公害をやっておればそれに対して監督もやるということが一番いいと思うのであって、まあ先生の言われるのもそういう点だと思うのですが、いまの行政機構のもとにおいて、その点はばらばらになっております。とにかく私どものほうの水質につきましては、基本をつくりまして、基準をつくって、それによって各省がそれを守ってやってもらうということでありますからして、もし各省がそれによって——指定を地方団体が守らぬということであれば、私のほうからまず督促して、こういう点はこうだということを指摘してまたやっていける、こう思うのでありまして、まあいわゆる先生が言われるような理想的な機構ではありません。これは私自身もよく認めておりますが、しかし各省とも協力してやるということでいくより、現時点のもとにおいてはしかたがない、私はこう考えておる次第であります。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 しかたないと言わないで、今後の運用の面でそういうような矛盾した点なんかをはらんでおりますから、そういうような点を克服して万遺憾なきを期したい、こういうようにきぱっと言っておいたほうがいいと思います。その点はひとつ心にとめておいてもらいたいと思います。  それで問題は、いまのようにして公共用水域水質保全に関する法律、これが一部改正法案としてできると仮定して、そのあと今度運用の点が重要だということは、いま言ったとおりです。ことにいまでも一番私どもの胸をついて、今後の運用の一つの大きい批判の対象にしてもらいたいことは、足尾銅山の廃水についてのあのいろいろないままでのいきさつ、それから渡良瀬川の、四十二年に水質の指定をしたその後のいろいろな運営のしかた、こういうような点についても、今後はやはり違った態度でこれを見てやらないといけないと思うのです。私は前回この委員会で、藤尾正行通産政務事官からこのいままでのいきさつを承って、その強い考え方に対して敬服したのです。ただそのときに、時間があまりありませんでしたので、深く聞くことはできなかった。しかしこの機会に、大臣のいる前で一、二参考に私伺わしてもらいたいと思う。というのは、この渡良瀬川、いわゆる足尾銅山事件、田中正造代議士の当時の苦労、これはいつでもわれわれは公害の先駆として、この問題だけは忘れてはならない問題だと思う。それから約一世紀にわたって、これに対するいろいろな闘争が展開されてきたわけです。幸いにして藤尾政務事官は選挙区もそこなんですね。この辺の問題は一番詳しい、こういうふうに承ったわけです。私、いままでのいきさつ、法律があってもこれができ得なかった。しかしついに最近これをカバーする、いわゆる公共用水域水質保全に関する法律、これも一部改正法案ができた。いまこの歴史を振り返って、こういうようなことを再び起こしちゃいけないのだ、こういうことからして、いままでのこの約一世紀に及ぶ変転といったようなもの、これを藤尾政務事官、この際お聞かせを願えませんか。今後の運用上重大な参考になると思うからです。
  117. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 この前も申し上げましたように、これは実はここにおられます坂村先生がその地域の御出身であられるわけであります。したがいまして、私から申し上げることと全く御同感だというふうに思われますので、代表して申し上げますけれども、足尾銅山の鉱害が起こりましたのはいまからもう百年ももっと前の江戸時代でございます。したがいまして、渡良瀬の川を流れてまいります鉱山のズリ、それの渡良瀬沿岸に対しまする影響といいますものは、過去百何十年にわたりまして非常に累積をされたわけであります。したがいまして、今日この渡良瀬の沿岸におられます農業者各位におかれましては、過去百何十年間にわたりまして、他地域との問に少なくとも年間の収穫が二俵も三俵も違うというような実態を経験をしてきておられるわけであります。こういったことが一体だれの責任になるかということにつきましては、これは現在足尾銅山は古河鉱業の傘下にありまするから、当然古河鉱業が負うべきである、こういうたてまえもあると思いますけれども、古河鉱業がこれを引き受けましたときには、すでに足尾銅山の鉱害は着々と進んでおりまして、その全責任を古河鉱業にかけるというようなこともきわめて妥当を欠いておるようにも思われるのであります。したがいまして、こういった沿岸の地域住民の方々の受けておられまする被害、一体だれがこの問題に対して対処できるか、こういうことでありますけれども、現在の土地改良の方式によれば、国が二分の一を持ち、残る二分の一に対しましては、都道府県並びに地元住民の受益者負担ということでこの問題を解決するようにというのが、現在の土地改良の趣旨でございます。したがいまして、この原則をこの場合変えるかどうかということが、この問題に対しまする焦点であろうかと思います。  私は、こういった問題について、この土地改良に対する客土をするというような場合に、この客土をしなければならないような事態を引き起こしたのは一体だれかということを考えて、その従来の損失をカバーをし、これからの農業収益に対する補償をしていくというたてまえから申し上げましたならば、この鉱害を引き起こしました責任者である銅山自体が、その受益者負担の住民負担分を負担するのが当然である、かように考えるのでありますけれども、先ほども申し上げましたように、足尾銅山自体の開設、これは対馬のカドミウムにおきましても同様でございますけれども、鉱業法が施行される以前からの問題でありますから、これを鉱業権者に負担させるということもなかなかむずかしい面がある。したがいまして、この面につきましては、当然国家において何らかの保障を考えるべきではなかろうか、私どもはかように考えておるわけでありまして、過般御指摘をいただきましたので、さっそく私自身といたしましても、正式な機関といたしましては、政務事官会議の席上でこの問題を持ち出しまして、この問題に対しまする各省、特に農林省御当局の御協力をお願い申し上げ、そうしてこういった問題こそ、われわれ政府が政治的に取り上げていかなければならぬことではないかという御提案を申し上げたわけであります。その後も、この問題は政務事官会議からさらに閣僚段階に上げられておる。したがいまして、農林大臣におかれましても、その当面の、群馬の渡良瀬流域出身の大臣であらせられますし、この事実については十二分に御承知のはずでございます。したがいまして、こういった問題については、今日こそ解決をするのに十二分な条件を備えておるときである、かように思いまして、その進行をさらに促進をいたすように、農林御当局、大臣はじめ政務次官あるいは農地局長、関東農政局長といった関係者にも、この問題の所在をよく話をしまして、先生御指摘の御趣旨にわれわれも全く賛同をいたしておる、こういったことこそ、われわれが事務的に扱うのではなく、政治的に扱うべきである、こういうことで、現在問題を取り上げ、現に進行中である、かように申し上げたいと思います。したがいまして、日ならずして、先生のほうに、かく相なりましたということを御報告ができるよう、私も一日も早くそういった努力を完成いたしたい、かように考えておるわけであります。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。坂村防衛庁政務次官も同じ選挙区だというなら、なおさらでありますから、そういうような点なんかもよく考えて、今後陰に陽に支援してやってほしい。これが大いに喜ばれる防衛庁になる一つの行き方だ、こう思いますから、この点はお願いしておきたいと思います。  藤尾政務次官、あなたがかぜっ気なのを無理に出てきてもらったのは、私はいまこれをやっておきませんと——いままでの直轄事業はいわゆる調査費としてやっておった。県の単独事業も四十年からの調査ということでやっておったのです。四十五年度からは、いよいよ今度は事業に入ることになるのだそうであります。そうなりますと、いま水に関するこの法律ができたときにこれをはっきりしておくと、四十五年度からのいわば予算措置をする場合なんかでも大いに刺激されることが多い、こう思うから、きょうはほんとうにあなたに忙しい中を申しわけないけれども、熱を押して来てもらったわけであります。そういうような点で、今後ひとつ事業費は国と県とで十分持って、これが個人負担、受益者負担がもしあるならば、いままで苦しんできた人たちに絶対に負わすべきでものではない。この問題については、もうすでに鉱業法では無過失賠償責任が入っているわけですから、国が考えるというのは私はよくわかる。それと同時に、今度はだれがどうしたかという、少なくとも鉱害という名に値しない原因結果がはっきりしているところですから、これが鉱山だ、銅山だということになっておりました場合には、いろいろと土地改良の分なんかでも、そこを十分考えてやっていただきたい。応分以上の負担は当然原因者がこれを考えるのがいまの世の中の常識ですから、その点等も十分考えて、今後の土地改良事業、客土事業というようなものの完ぺきをひとつ期してもらいたい、こういうように思うわけなんです。農林省のほうから農地局長を呼んでありますが、この問題に対して現在どういうふうになっておるかを、はっきり承っておきたいと思います。
  119. 梶木又三

    ○梶木説明員 ただいま藤尾先生からもお話しございましたが、いまの土地改良法ではなかなかきめ手がございませんので、何らか別の方法で、この鉱害による土地改良事業の対策を目下検討しておる最中でございます。  なお渡良瀬の問題につきましては、そういう制度の問題を検討いたしておりますと同時に、技術的な問題で、現在現地に試験地を設けまして、客土がいいのかあるいは排土するほうがいいのか、また客土する場合にはどのくらいの量を客人すればいいかというようなことを、四十二年度から実施いたしております。四十二年度は施設だけで、実際の試験は四十三年度から始めまして、四十三年度中にやりました範囲の結果は近日中に出ると思いますが、一年だけの試験では確たるものが出ませんので、四十四年度も引き続きまして、大体四十五年度ぐらいまで継続実施いたしまして、早急に結論を出したい。その問に、先ほど申し上げましたように、農民に負担のかからない方法でやる仕組みを検討する、こういうことで進んでおります。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 あなたのほうからの調査書が私のほうにあります。どれほどこれに国が調査費を投入しているか、これもはっきり資料によってわかるところです。私は、いまはっきり藤尾政務次官のほうからも言われたことばに同感を表しながらも、事務的にそれに対応しないことがあっては困るから、特にお願いしたわけですが、事務的にはまだそこまでいっていないようです。したがって、今後これを事務化する中で、いまの藤尾次官の気持ちが少しもそこなわれることがないように、十分やってもらいたいと思うのです。そして、これはまさに鉱害ということもはっきりしているし、四十二年には水質の指定をした場所でもあるし、いままでの歴史は世界的な事実にもなっておりますから、そういうようなことからして、鉱害によると思われるところの土地改良事業というような計画を立てる場合には、農民というか、いわばいままで被害を受けてきた人に、受益者負担の名において少しでも負担をさせることがないように、別な法律をつくるなり改正するなりして、これは今後公害対策の一環として、十分対処しておいてもらいたいというふうに思うわけなんです。事務ベースではまだそこまでいっていないようですが、藤尾次官、これはいかがでしょう。
  121. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 先ほど申し上げましたように、もうすでに当の農林大臣にまで申し上げておるのでございますし、またこの問題につきましては、大蔵大臣にも申し上げておるのでございます。したがいまして、その予算化の方法につきましても、一応の了解はとってあるつもりであります。ただ、それではどのような法律をおつくりになるかといった点につきましては、これは農林省の御当局がお考えになられることであります。私どもといたしましても、できるだけ早急にこれが実現をいたしまして、こういった産業公害対策特別委員会の島本委員の御示唆によって、こういう問題の解決がこのようにできたのだということが明らかになりますように、一日も早くこれを実現いたすということをお約束申し上げます。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 いまのような答弁がございましたが、これはやはり公共用水域水質保全に関する法律の一部改正法案の提案者である大臣もよくこれを聞いておいて、これによって悩んできた、またこれによって現在悩んでいるすべての事件の解決のためにも、今後いろいろと運用の点で善処してもらいたい、こういうように私は思います。いま一つ、渡良瀬川のことはわかりましたが、これだけではございませんし、今後他にたくさんございますから、いまのような決意をもってこれに対処してもらいたい、こういうように思いますが、大臣、よろしゅうございますか。
  123. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまの弁償の問題やその他の問題は、これは直接通産省、厚生省のほうでいろいろ研究されることでありますからして、そのほうで善処するという藤尾政務次官のかたい決意でありますから、私はそれを信じて、その結果を待ちたいと思います。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 では水のほうはけっこうです。今度は紛争処理のほうに入ります。  防衛庁、防衛施設庁のほうに、これは前回の質問に引き続いて、きょうもまたいろいろと伺ってまいりたいと思います。それは、あくまでも私が聞くのは、これは提案理由の説明の中にも、また先般の四月四日の当委員会で古川委員に対する答弁におきましても、これは江藤参事官や大臣がはっきり議事録にとどめておる、こういうような事柄によって、このとおりはたしていっているかどうか、これを国民の前にはっきりさせないといけない、こういうふうに思って、いま次から具体的にお伺いしていきたい、こういうふうに思うわけなのであります。  まず、「一般の産業公害等に比較して相当進んだ手だてを積極的にいたしておる」、これが江藤参事官の答弁で、いわゆる紛争処理は、この法律によらなくとも、基地関係の法によってこれはりっぱにやっている、こういうように証言されておるわけであります。そしてその運用の点についても「相当運用の妙を発揮しておる」、こういうふうに断言なすっておられるのであります。そして最後には、他の法によるよりはるかに手厚い処置を講じております、こういうようなことであります。この三つの要件というのは私は大事だと思っておるわけなのであります。いままでいろいろと水に関しての質疑応答がございましたが、今度の場合は、騒音と水に、自衛隊の場合は当然関係してくるわけであります。先回私も質問いたしましたけれども、いまのような三つの答弁、これはやはり大事だと思うのです。全部これに当てはまらなければならないと思うのです。したがって、これはいわゆる駐留軍といわれておりますけれども、アメリカの軍用機の墜落事故、こういうようなものは、米軍に限らず自衛隊にもありますが、こういうような不法行為と申しますか不当なる行為といったほうがいいと思いまするけれども、この事故補償についての法的救済、これは十分成果をあげて扱われておるのかどうか。それから損害の態様の複雑さ、こういうようなものがあるけれども、その補償法の構造が複雑なために、十分その妙を発揮していないような点がないか。それから、実施過程でさらに複雑な問題が起きて、結局国民が泣き寝入りをしているような点がないか。もしこういうような点があるならば、前に言ったこういうような答弁はうそだということになってしまうわけなのでありますから、私はやはりこの点では重要だと思うわけなのであります。したがって、いま手元にいろいろな資料がございますから、まず資料によって展開してまいりたい、こういうふうに思っております。  その一つは、まず基地の問題の中で、米軍基地と自衛隊基地がございますから、米軍のほうを先に伺わせてもらいたい、こういうように思います。  それは講和条約が発効して以来昭和三十八年まで、この間でさえも、アメリカの軍用機の墜落事故というものが相当多かったようであります。現在もそうですが……。そしてその表によりますと、昭和二十七年は十五件、二十八年二十二件、二十九年二十五件、三十年三十一件、三十一年三十一件、三十二年二十八件、三十三年二十三件、三十四年三十件、三十五年十五件、三十六年二十三件、三十七年十一件、三十八年に十三回、計二百六十七回、これは三十八年までの統計で、ちょっと古いのですが、そういうような計が出ておりますが、三十九年以降についても全然減っておらないわけであります。そしてこのアメリカ軍用機の墜落事故によって死傷者を出したいろいろな町、市、こういうようなところにどういう手当てをなすったか、こういうようなものも今後十分考えてやらないといけないのじゃないか、こういうふうに思っておりますけれども、墜落したり物件を落としたり、こういうことによって被害を与えた場合には、どういうふうにして救済しておりますか。これをまず米軍のほうから先にお伺いしておきたいと思います。
  125. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 航空機事故その他の事故が米軍によっていろいろ違法あるいは不法に行なわれることがございます。そういう事故に対する補償につきましては、現在御承知のように地位協定第十八条に基づきまして、日米間で話をいたし、政府がこれに対しまして、被害者の受けました損害を補償するようにいたしておるのでございます。もっともその補償額は、米軍の公務上の損害につきましては四分の三の返還をいたしてもらう、日本側が四分の一を負担するというような形で、被害者に対しましては、政府が窓口となりまして、これの補償をいたしておるのでございます。  さような措置をいたしておるのでございますが、この補償のいたし方につきましては、人命の場合、それから物的損害の場合——物的損害につきましては物的損害の実額を、また人命の場合につきましては、いわゆるホフマン方式等を採用いたしまして、それに慰謝料を加味したような補償額を見ておるのでございます。そのほかに、当該市町村等に対しては、それぞれの市町村等においてもまた、物的被害等がありますれば、それに応じて補償もいたし、あるいはこれの防止のために、そういう事故が起きないようにするためのいろいろな措置、あるいはその被害を少なくするような措置ということを考えておるのでございます。たとえば航空機等につきましては、夜間の飛行を制限するとか、あるいは飛行方向を制限するとか、いろいろな方法によって制限なり何なりをいたして、そういった予防措置をあわせて講じておる次第でございます。  われわれといたしましては、精一ぱい努力いたしておるつもりでございますが、いろいろ個々につきましてまた問題がありますれば、それらについてさらに十分に今後も適正を期してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 その場合に、前回詳しく、補償の十分でない点や、基礎の基準のとり方いかんによって、これはとんでもない低額になるおそれがあることを具体的にやりましたから、きょうは一切これを省略して、その場合に、特損法でやる場合に、補償対象が農林、漁業に限定される、または政令によって、病院やその他政令できめられてあるような公共の建物、こういうようなものに限定される。そうすると、今後紛争処理のほうから除いても十分やれるとすると、一般の商店の人だとか、サラリーマンであるとか、対象とされなかった人、こういうような人の面も十分考えてやらないと、これは手厚い措置をしたということにはとうていならないわけであります。したがって、一般のサラリーマンでこういう被害を受けた者や、また商店なんかの人、それと同時に、騒音なんかによって被害を受ける場合には、損失額の把握をするのがだいぶ困難な要素がありますし、被害の防止措置、こういうものについては、アメリカ軍による場合には全然行なわれないという欠点があるわけであります。それで、この問題については、個人に対する補償——いかなる個人であっても、騒音、水質汚濁、こういう法にきめられているものから除かれても、個人が米軍によるところの損傷を受けた、こういうような場合には、何にもまして手厚い措置が講じられなければならないはずであります。山上さん、そうなんです。したがって、いま言った特損法によっても、個人個人が、これだけの損害だ、こういうようなことを訴えて、それに対する補償も完全に行なえて、これによって法体系は万全です、こういうようなことでないと、私どもは手厚い措置を講じておりますということにはならない、こういうように思うわけなんですが、この場合はいかがなんでしょうか。
  127. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいま先生のお尋ねの問題は、損失補償の問題であろうと思いますが、これは前回もお答え申し上げましたとおり、法のたてまえといたしましては、御承知のように、農林漁業その他政令で定めているという事業、それが事業経営上の損失ということになっておるのでございます。これらに対しましては、いわゆる損失の補償を当然いたすということになっておるのでございます。それ以外の一般の個人なり、あるいは商店なりというような場合については、現在騒音その他によるところの被害が、たとえば人体その他に具体的にあるかどうかというような点について、必ずしも明確な因果関係がないというのが現在までのところでございますので、かような法的措置としては、農林、漁業その他の事業経営というものについて規定されておるわけでございます。ただ、これ以外の、一般の人命等についての被害があった場合におきましては、それが施設のもたらしたという直接の因果関係がある場合におきましては、前回もお答え申し上げたように、見舞い金というような措置によって処理をいたしておるのでございますから、さような面の運用によりまして、適正を期してまいりたい。なお、今後そういったような問題が非常に大きく出てくるというような場合におきましては、さらにこの法の研究をいたすということもいたさねばならぬかと思いますが、現状においてはさような措置でやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  128. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、前回はこういうような法の改正もあわせて考えるべきである、こういうようなことだったと思うのです。それならばいまの答弁はよろしいと思う。ところが、前回の本会議の佐藤総理の答弁並びにいままでの皆さんの答弁は、現行法を改正しなくても、これは運用の面で十分やれるのだ、こういうようなことであったわけです。そうすると、いま言ったように特損法では個人が対象になるとしても、その個人が、法の対象から全然はずれている人たちもいるわけです。そういうような人の分は、改正しなくてもやれるのだということにならないとだめでしょう。そうなんです。これは総務長官、あなたのほうでもこの問題でやって、基地を分離して提案されたのですが、これはやっぱり大事なところだと思うのです。したがって、法を改正してやるというなら、いま言ったようにして法律改正したらよろしい。ところが農林漁業その他政令に定めているもの、こういうふうにして、それから除かれている部分に対する損失補償、こういうものに対しては、やはり法を改正しなければやれないのじゃなかろうか、こう思って、法改正の必要があるんじゃないか、こう思っていたら、法律改正しなくてもやれる、こういうふうに言うわけです。ほんとうにやれるのでございますか。
  129. 床次徳二

    ○床次国務大臣 現在整備法の運用につきましては、調達庁長官からお答え申し上げたところでありまして、これは、私は運用の分が相当効果をあげているんだと思います。しかし、今後処理法を実施いたしました際におきまして、いまの周辺整備法の実態と差が出てくる、非常な不公平があるということになりましては、これはいけないんじゃないか、御質問の趣旨はそこにあるのではないかと思います。この点は、将来の実施状況をよく見まして、整備を要するものにつきましては検討をしなければならないものと考えております。現在のところにおきましては、運用によりまして整備法が効果をあげているというふうに承知しております。
  130. 田村良平

    ○田村(良)委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  131. 田村良平

    ○田村(良)委員長 速記を始めて。
  132. 島本虎三

    ○島本委員 それで山上長官、そうすると、いま対象外になっている人たちに対する措置は、運用の面でできるとするならば、いままでやらなかったいうのがまたおかしくなってくる。いままでやれないからやらなかったので、法をそのままにしてでもやれるのをいままでやらなかったとしたならば、何かこれでまたおかしくなってくるんじゃないかと思う。そうでしょう。現行法どおりで、特損法を改正しなくてもやれるんだというと、じゃいままでやらなかったのはどういうわけなんだ、サラリーマンや商店や、いわば対象からはずされているような人たち、そういうような人の分はいままで全然見なかったとすると、これは防衛庁としては、やはり不手ぎわじゃありませんか。施設庁としては手厚い措置を講じたということにならぬのじゃありませんか。この点はどうも、どっちにしても改正しなければならないというなら私もわかるのですけれども、改正しなくてもやれるんだということになると、いままでやらなかったのはなおおかしい、どうですか。
  133. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 私が申し上げているのは、法のたてまえがそういった農林、漁業を中心に、水産業者ということで規定されておりますが、この運用によりまして、現実にその他の場合に、施設等が原因で、因果関係の明らかなこういう被害があった場合におきましては、見舞い金等の処理によって処置いたしておりまするし、今後もまた処置いたしたいと存じておりますと、かようにお答え申し上げました。できないというのじゃなくて、そういう場合におきましてはそういった具体的な被害が、施設庁の因果関係が明らかである場合におきましては、運用によって見舞い金等の処理をいたしております、かように申し上げたのであります。
  134. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、いま言ったようなことで、個人のいろいろな個別被害だからといって、できないのではなくて、これは補償はできないが、見舞いでできるので、見舞いでなら何でもできるんだ、こういうようなことになるんじゃないかと思う。見舞でできるということは、はっきりしているんですね。これを確認して、次に移りたいと思うのですが……。
  135. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 さように処理をいたしております。
  136. 島本虎三

    ○島本委員 駐留軍、米軍のほうの関係については、一応私の手元にあるいろいろな情報によると、騒音等による場合には損失額の把握がなかなか困難であって、損害の被害の防止措置については、全然定めがないという欠点がある、これはそのとおりだと思うのです。ただ、それは補償でやるとむずかしい。だからこの際は、すべて米軍関係のものは要求しないとだめでしょう、申請しないとだめでしょう。その申請の手続がめんどうくさいでしょう。またそのために損害の問題をいろいろやって、半紙にしてだいぶ高く積まれるまでもやったというのを議事録によって先般拝見しましたが、それほど手続がめんどうくさかったら、勢いそういうようなことをやらないような向きが出てくる。やはり手続上も簡便にしておかなければだめなんじゃないか。この特損法によるいろいろな被害額の補償という場合には、これは手続は簡単なんですか、具体的に言うと、口頭だけでもいいのですか。
  137. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 詳細にわたりますので、各政府委員から具体的にはお答えいたさせますが、法といたしましては、申請を前提にいたしておりまするので、当然申請していただかなければなりません。その申請する場合に必要な手続は、政令その他において定めておるわけでございまして、私どもといたしましては、なるべく簡素にいたしたいという気持ちは持っておりますが、必要最小限度の手続はとっていただかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  138. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいま先生からお話がありました、特損法による補償の申請の手続が非常に複雑で、中には手続がめんどうなので補償の申請をあきらめるというケースがあるのではないかというお話でございますが、この特損法による補償がスタートしましたころには、確かにいろいろやっかいな資料を要求して、手続もめんどうになっておったようでございます。しかしながらこの問題につきましても、手続を簡素化すべきであるという関係者の御要望もあり、またわが庁内でもそういう声がございまして、いろいろ改善をしまして、現在においては、きわめて簡単な手続でやっております。そこで、こういう損害を受けているという申し出がございますれば、わがほうにおいて、その手続書類の記載方法その他は御指導申し上げ、また被害実態についても、個人ではなかなか調査がむずかしい。損失があるということは言えても、その立証が個人ではなかなか困難だという場合もございます。そういう場合には、役所のほうでしかるべき機関に調査を依頼するといったような方法を講じて、損失補償の申請がございました場合には、あくまでもその実態を十分に調査し、必要なものはこれに対して補償するというふうにやってきておるつもりでございます。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 急いで結論のほうから先にいきます。というのは、私の手元にあるのは、いま言ったことと違う資料があるのです。  それは北海道の千歳周辺に基地がたくさんあります。あの基地の中で、いわゆるC径路——七師団の演習のための通路です。これは市道の根志越という道路から道道の千歳−由仁線に出て、それから市道二十八号線に出て、東七線を南下して演習地へ入る、延長八・六キロにわたる道路です。これは七師団にとっては唯一の演習道路であって、幅五メートル六十の農道で、いまだ未舗装なわけです。それを一台三十五トンの戦車が通過するので、路面の損傷がはなはだしい。そして雪解けには、農家は普通車では通れない。それから夏場にはほこりが立ったりするので、沿道は戸を締め切ってしまう。そのほか、ここは酪農地帯ですけれども、このキャタピラの中から出るオイルなんかでだいぶよごされ、その辺にいる牛なんかでも被害を受けている。それは振動のために今度は牛の乳が出なくなっている。農作物もだいぶ損傷を受けている。子供もその辺ではあぶなくて通れない。その長都地区の開発振興期成会代表湯本宣三という人から、昭和三十九年、四十年、四十一年と三カ年にわたって被害補償要求五百二万円を、千歳市を通じて、これは出しているはずですが、防衛施設局では、この問題には全然取り合っていないというではありませんか。いま言ったのでは、手厚くこれは全部措置をしていると言う、それから現在のところ、相当運用の妙を発揮していると言う、また一般産業公害等に比較して相当進んだ手だてを積極的にやっていると言う。しかし、いまのこのデータは何ですか。三十九年、四十年、四十一年、三カ年間これは千歳市を通じて五百二万円の補償額を要求している。これは一戸じゃない、二十四戸の代表ということでやっている。これはいままでの答弁と全然逆だと思うのです。どうしてこれは消極的でなければならないのでしょうか。いままでの答弁のとおりだとすると、こういうような点は積極的に解決していなければならないはずではございませんか。これはどういうようないきさつなんですか。
  140. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいま先生からお話しのございましたC径路を自衛隊の装甲車等が通行することによる、じんあいによる農作物の被害補償の問題につきましては、確かに市を通じまして札幌の防衛施設局のほうに申し入れがございます。ただ、このじんあいによる補償という問題が、何ぶんにもわが庁としましては、いまだ前例のない新しいケースであるというようなことで、御要求がございましたけれども、まだこれが完全に調査も終わっていないというような状態でございますが、これにつきましては、何とか解決方法を見出したいということで、現在局の段階におきましていろいろと検討をしております。解決方法としましては、補償をするという方法ももちろんございますし、あるいはほこりが立たないように道路を舗装するとか、あるいは装軌車が通るときに散水をするとか、いろいろな方法は考えられますが、こういったいろいろな面につきまして、現在検討しておるということでございまして、市のほうともこういった問題については話し合いをしておるという状況でございます。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 ただこの地区の代表者は補償だけせいと言っているのではないのですね。これはやはり全面舗装もできるならしてくれ、それから沿線を幅五十メートルくらいにわたってちゃんと買収して、きちっとしておいてください、それから演習場の中に施設部隊の格納庫を施設してもらいたい、それから国鉄と立体交差を、金をかければできるのだから、こういうふうにしてちゃんとやってもらいたい。こういうふうな、金の補償だけじゃなくて、事実被害がないような、こういう一つの案も出して、双方検討してもらっているはずです。ところがこういう妥当な案に対しても、皆さんのほうは言を左右にして取り合っていない。すなわち、すぐでもやれる、はるかに手厚い措置を講じている——三十九年、四十年、四十一年——とことし何年ですか。これでやはり住民あたりは何もできないです。できないのに、長官、そのままでいい、手厚い措置だからこれでいいんだ。これは具体的な例ですよ。三十九年からですよ。やっているのは——補償はもちろんだけれども、ほかにこういう施設をすればいいのだというようなことまでも出しているじゃありませんか。どっちもやらない。これは何のためにやらないと思いますか。それの中身は、これは個別被害だからだめだ、こうおっしゃっているじゃありませんか。いま長官は、個別被害でもやれるのだと言う。現地のほうは、個別被害だからだめなんだ、共同利用施設を建ててやるからがまんせよ。共同利用施設なんか、どんなものをつくるのですか。これは個別被害だからもうだめなんだ。個別被害だってやれるといま言ったじゃないですか。現実の問題と、いまここでやる答弁と、全然違っているよ。答弁お願いします。
  142. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 先生御承知のように、道路を走ることによるところの振動等につきましては、これは特殊なものだと思いますが、車両の通行によるところのじんあいというものは、この道路は砂利道であろうと思いますが、この砂利道を車両が通ることによってじんあいが出る。日本全国、砂利道を自動車が通る場合にはそういった被害が出るというようなことから、一般的に言って、さようなものに対する補償というようなことが従来行なわれていなかったという経緯がございます。そこで、この問題が今度具体的に千歳という問題になってきますと、これは装軌車が通るというようなことでございますので、この問題について直ちに補償がむずかしいというのは、そういった砂利道を車が通る場合のごみの被害というものに対する補償ということが、従来一般的にも考えられていない。そういったようなことから、これに対して局といたしてはちゅうちょいたしてきたことでもあり、また当庁としても、これについていろいろ疑問を感ずる向きもあるのでございます。ただ問題が、この装軌車によって、具体的にはっきりとこれだけの被害があるということでございますれば、私どもとしては、これは当然処理するのが適当であろうと考えられまするので、ただいまさような話を伺いまして、ますますこれについての検討、調査を積極的に進めてまいりたい、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  143. 島本虎三

    ○島本委員 長官、いまあなた言ったのを、またここではっきりしておるのですが、それに対する措置はどうするか。戦車が通るところに水をまいておけばいいじゃないかというので、水をまいておるのです。水をまいて、それで一日じゅうしめっておりますか。すぐ、一台か二台通ったらだめなんです。そうして道路は荒れほうだい。もうすでにキャタピラしか通れない。そして中村茂美という人は酪農です。アメリカのほうから輸入した優秀牛を持っておったわけです。その牛が戦車の騒音にびっくりして有刺鉄さくにひっかけて、乳房を切っているのですよ。そうして泣き寝入りですよ。そうして防衛施設庁のほうでは何と言ったか。共同利用施設を建ててやるからがまんせよと言う。これは個別被害だからどうにもならない。それが現地札幌の施設局の答弁ですよ。いまあなた言ったのと違うじゃありませんか。できるならすぐやるべきですよ。もっともっと現実的に解決すべきですよ。具体的な例です。できるのでしょう。被害だってわかるでしょう。優秀牛の乳房を切って、いまもう使いものにならぬのですよ。
  144. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 装軌車の使用によって、具体的に農家にそういった被害があることが証明されれば、もちろん補償いたすつもりでおります。したがいまして、局でどういうふうに答えたか、私具体的に承知いたしておりませんが、いまおっしゃるようなことが、装軌車の通行によって、具体的にそういった乳牛に被害があったというようなことがあれば、補償するようにいたしたいと思いますので、至急に調査させたいと思います。
  145. 島本虎三

    ○島本委員 これは至急に調査してやるべきです。ただ心配したのは、先ほど私が、こういった特損法によって、この対象外のほうはなかなか困難だ。それは何でもないのだ、周辺整備法もある、これによって準じてやるのだ。そうすると、ここに出てくるのは、個別被害だからだめだといってやられてしまう。共同施設でないとだめだというわけです。それは現実にやられている証拠だ。あなたが幾らここで言っても、下部のほうでは、そのものを十分理解した措置をとっておらない。それで現在それが東七線のほうを通ると国鉄と平面交差になるので、東四線のほうへわざわざ行って立体交差をしたい。農民の人たちはそれに反対している。七線ならすぐその上で立体交差したらいいじゃないか、こう言っておるのですが、これを四線のほうに変更しようとして強行なすっておる。これはいただけません。なぜか。その付近は、これは北海道開発計画に沿うた農業を営んでいるところです。これは優秀な酪農蔬菜地域なんです。そして園芸作物地域でもあるのです。そして農家としてはりっぱにやっているところなんです。そこにいまのようにして補償されないまま道路だけやって、いままでの被害をそのままにして、新たに道路をつくってまき散らす。こういうようなことではどうもやりきれない。もうすでに四十二年の春から、こういうのが問題になったまま、ほったらかして強行しようとしている。住民は反対しているのに、七線を四線に変更しようとしておる。そんなむちゃなことをしないで、いままであるところを、そのまま立体交差にしたらいいじゃありませんか。金がないならまだしも、予算はたっぷり余しているでしょう。そういうようなことではだめです。そういうようなことからしても、なかなか言うこととやっていることとは違うようですね。これはどうなんですか。
  146. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 いまの道路のつけかえの問題につきましては、これは私の承知しておる範囲では、地元市当局の御要望に基づいて、これをつけかえるという計画をいたしておるのだと思います。したがいまして、私のほうでは、地元民の意向を無視して強行するというような考えは特にないのでございます。十分地元の御納得のいくようにやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  147. 島本虎三

    ○島本委員 地元民の納得を得るということですが、私はもうすでにその人たちのところへ行って聞いてきていますよ。あなたより私のほうが的確ですよ。市当局も、そういうようなことを無視してやらないじゃありませんか。私はそう思います。まして、いままでのいろいろな既定路線に対する補償の問題だとか、施設の整備の問題だとか、こういうようなものが満足でないものだから、今度は新しい経路ではなおさらだめだろう、こういうようにして、全然信用されておらないという状態です。やはりこの計画は強行なさるおつもりなのですか。反対があっても強行なさるおつもりなんですか。七線を四線に変えるというのですか。
  148. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、道路のつけかえということは、地元からの御要望に基づいて、当庁がこれに応じて計画しているというものでございます。というのは、現在の進入道路というのが、産業関係の施設の中を通るというような事情があるので、変えてもらったほうがいいというような地元からの御要望に基づく計画なのでございます。したがいまして、千歳市御当局、この地元の御要望に沿うようにわれわれはいたしておるというだけのことでございますから、決してわれわれが地元の意思を無視して強行しようなんという量見は、もともとさらさらございませんので、その点、ひとつ御了承願いたいと思います。
  149. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、強行しないというのはわかりました。しかし地元の意思というのは、市の意思ですか、住民の意思ですか。
  150. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいま私どもが考えておりますのは、市の御要望に基づいて考えておる次第でございます。
  151. 島本虎三

    ○島本委員 もし、そうだとすると、昭和四十三年十二月二十日に、防衛施設局と何か他のほうの団体で、その辺の農村の人たちに対して、農家に対して、三百万円ほどの配分をしたとかしないとかいうようなことが向こうでちょっと問題になったそうですが、それも被害の額に応じての配分ではなくて、関係のない人たちまでも配分にあずかったという問題等もあったりして、何かごたごたしたということを聞いているのですが、この問題と関係なければいいと思いますが、こういう事実は御存じですか。もし御存じでなければ、この次まで留保しますから、これに対しての調べた資料を出してもらいたいと思います。昭和四十三年十二月二十日の……。
  152. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 地元の開拓農業協同組合長の方が、この砂じんによる農業被害に関連しまして、三百万ばかり払ったというようなことは、新聞で報道されております。われわれは千歳市議会における論議を通じて、そういったことがあったということは承知しております。しかしながら、この開拓農業協同組合長が金を払ったということ自体につきましては、わが庁としては全然関知しておりません。
  153. 島本虎三

    ○島本委員 この問題については、やはり不確実な資料によってはいけないと思います。もう市議会で問題になったからといって、こういうようなことをここで問題にしていいという不確実な資料ではだめだと思います。私もこの問題は、いまの経路から調べたいと思いますから、ひとつ十分資料を取り寄せておいていただきたい。昭和四十三年十二月二十日、この前後の札幌防衛施設局、そこの人たちの会合といったようなものを少し見てみたいと思うので、この次の委員会までに、ひとつ資料として出しておいていただきたい、こういうように思います。  長官は、アメリカ大使と会われるために行かれるそうですが、鶴崎施設部長さん、あなたが長官にかわって御答弁なされるということですが、あなたの言うことは、長官並みだそうですから、ひとつ自信のある御答弁を願いたい。  いわゆるC径路で発生した問題による沿線の農家の被害、私は、そのもうもうたる砂じんの中にはまだ入ったことはございません。しかし、その道路はちゃんと見てまいりました。酪農や蔬菜や園芸、こういうような種類の農家に対しては、やはり音を含めて、ほこりを含めて、これは重大な影響があることなんです。また、これをもって公害というならば、公害の発生源になるわけです。ですから、牛はもう飼養はできないだろうし、農業も破壊されるだろうし、そういうような意味で、新たにそこにつくるのに反対だという十戸くらいの農家の人たちがいるじゃありませんか。山本さんという人を先頭にして、十戸くらいおりますよ。そこを強行して移そうとしておりますから、こういう反対の人たちが出てくるのです、それでなければ、現在の場所を移して、それでもってちゃんとやっていってもよろしい、こういうような考えも捨ててはおらないようです。ですから、これはあまり無理をしないでやるべきじゃありませんか。市かどこかわかりませんけれども、その二十四戸なりまた十戸なりのその近辺の人たちが、自分の生業である農業、こういうものに重大な影響があるといって反対をしているのですから、こういうような問題は、現在の道路を整備して、ほこりも立たないように全面舗装をすればいいだろうし、道路を五十メートルくらいにすれば、喜ばれながらこの解決ができるじゃないですか。  それに、これは不信感もありますよ。演習用地として買収したその演習場の中に団地をつくって、そうしてその中に自衛隊の人たちが住んでいる。だから、格納庫くらいつくってもいいじゃないかという農民の声も出てくるのです。住宅をつくるなら格納庫ぐらいつくって、そしてちゃんとして、あまりにも公害をまき散らさないほうがいいじゃありませんか。こういうようなのも一つの不信感として出ているのです。これは、国鉄に対する立体交差、こういうようなものに対しても十分やれないはずはないと思います。やるのに金のかからない、高いところの上を立体交差にする、そのために七線を四線に曲げてしまった、こういうようなことを強行なさるのですか。
  154. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 もともとC経路の一部つけかえの問題は、先ほど長官からもお答えしましたように、市当局の要望によって、わがほうが取り上げ予算化した事案でございます。しかしながら、この実行にあたって、新しく道路をつけかえる部分の関係の農民の方から反対があるということでございますので、われわれとしましては、あくまでもこれは地元のためにやる補助金業務でございますので、関係者が円満に了解した上でやることが望ましい、このように考えておりますので、市当局とはもちろん、つけかえをする部分の関係の農民の方々とも、今後十分お話し合いをしていきたい、こう思っております。したがいまして、わがほうとしましては、この事業の性格上、もちろん強行するというようなことは全然考えておりませんので、その点お含みを願いたいと思います。
  155. 島本虎三

    ○島本委員 では、四十三年度の予算不用額として三千九百万円流れていますね。四十四年度にこれまた四千三百万円組んでいますね。これはもう初めからそれをやるつもりだから、こう組むんじゃないですか。話し合いをしてやりますといったら、話し合いできたときにこれを組むべきじゃありませんか。やり方が、もうどうも、言っていることとやっていることと違うような気がしますね。そういうようなのがはるかに手厚い措置なんですか。住民から反対が出ても強行して、これでもう紛争処理法律の中から除いてしまって、中へ入れたらみんなそれによって解決させられるからだめだ。陳情に来たのにはちょっとだけやっておいて、あと泣き寝入りさせておいて、その中で、紛争処理法によってやらないほうが有利だ、こういうふうに考えて、これを除いてしまったんじゃないですか。こういうふうに、具体的な問題を見れば見るほど、その感が強くなってきます。これは、どうも総理府長官、やってみるとだんだんだんだん中に入れて措置しないとだめなようになってきましたね。長官の御意見をひとつ聞かせていただけませんか。いままでの例は、現に私、行って聞いてきたやつですから……。
  156. 床次徳二

    ○床次国務大臣 その点は、現在におけるところの基地関係紛争処理紛争と申しますか、関係処理方法等も考えてみなければなりませんが、固定したものではないことは、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。私は現在の悪いところは改める余地も——十分改善もできるのじゃないか、かように考えております。なお、基地関係につきましては、公害紛争よりも広い意味紛争もいろいろたくさんありますが、そういう処理から申しましても、現在の周辺整備法もある程度まで利用ができるのではないかと思います。今後の推移を見てまいりたいということを、その意味において申し上げたわけであります。
  157. 島本虎三

    ○島本委員 住民の希望としては、舗装してもらいたいということ、そうするとほこりが出ないし、舗装しても安心して——キャタピラの上にゴムを巻いて歩くんですね。ですからその場合には別に舗装もいたまない。そして沿線を幅五十メートルぐらいにしておいてくれ。キャタピラの間から出てくる油、こういうようなものがその辺にあると、やはり草と一緒に食べて下痢をするような優秀牛もあるそうですから、あまり狭い五メートルぐらいのところで幅一ぱい通っていったとすると、やはりそういうようなおそれもあるから、ここに中間地帯というようなものを設けて、幅五十メートルぐらいの道路にしたらどうだ、こういうようなことを積極的に申し出ているのですから、やはりその点考えてみたら感謝されるんじゃないですか。それから演習場の中に施設部隊の格納庫、こういうようなのをちゃんと置いてやってくれ、そうしたら相当歩かなくてもいいんだから……。こういうようなことはできるのではないか。国鉄の立体交差、こういうようなものも金をやればできるはずですから、この点は国鉄当局と、運賃法を改正した現実でもありますから、よく相談して、そういうのは、せめてあまり人畜に被害のないようにして演習するくらいの気がまえでないといけません。  いま言った四つは全部できることじゃありませんか。なぜこれをおやりにならぬのですか。補償の問題じゃないでしょう。ですから、私はそういうような点で、この問題は取り上げてもらいたい、こういうように思うのです。なおこの点は十分に検討してみてください。ほこり、振動、それから騒音、こういうようなことで酪農地帯にこれをやったら、その音でだめだというくらいは常識だし、いま北海道は米よりも酪農を奨励しているところでしょう。畑作を奨励しているのでしょう。北海道のあの寒地に向くようなものというので、畜産を奨励している。そこなんです。そこへ行ってがらがらがらっとやられたら、とんでもないことになる。まして大砲の音、こういうようなことで、野崎事件もすぐあの近所で起きているんです。あれはもともと自衛隊違憲論から発したんじゃないんです。米軍のときにはちゃんと特損法で補償してくれていた。自衛隊になってから補償しない。補償しないかわりに、ちゃんと措置をとって遠くしてくれたから何でもない。そのうちに今度またやってきて、標的を自分のうちの近所に置いて、どんどんどんどんやるし、牛もびっくりして乳も出なくなった。抗議しても聞かない。何回言っても聞かないので、自分ではさみで切ってしまったんです。線を切れば連絡できなくなるから、大砲もやめるだろう。その裁判なんです。もともと騒音に対して十分配慮しておれば、ああいう野崎事件なんか起こらなかったのです。いまの牛だって、その騒音に驚いて乳房を破ったというような、こういうような問題さえあるでしょう。酪農地帯に行って、道路だといって、やたらにどんどんそれを通らして歩いたりして、こういう被害を与えたらいけません。やはりこの点はもっと慎重に考えるべきだ、こういうように思いますが、関係住民は、市のどなたか特定の人じゃなく、こういうような被害者の意見も十分反映させられる人、こういうような意味だと思いますから、そういうような点で今後善処すべきです。いままでの答弁と、私が先に確認した、これは江藤参事官が四月四日の日に言ったこの答弁実態とは、まあまるっきり違うようですから、これはどうも私としては注意を喚起しておきたいと思う。いまの状態のまま実施するなら、公害紛争処理法の中からこれを除いたというようなことは、今度ますます悪い意味で私どもは理解せざるを得ない、こういうふうに言わざるを得ない。これはほんとうに残念なんですが、いままでの具体的な問題としては、これはなかなか私は納得するところまでいっておりません。  それともう一つ。住民も同じように戦々恐々としておる問題があるのですが、これはどうなんですか。米軍の電波の制限地帯、千歳にあるのですが、これも明らかにしないので、その付近の農民も、このキャタピラの場合には音がするけれども、こっちのほうはいつ強制執行がかかるかわからない、こういうようなことで戦々恐々としておし、こういうようなことですが、電波障害指定地域として、千歳の場合には、十二カ所の中に稚内と一緒に入っていたようです。全国で十二カ所ですか、二十四カ所ですか……。
  158. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 十三カ所です。
  159. 島本虎三

    ○島本委員 その中に入っていたようです。これに対して一切調査したまま、あとは無言の行で黙っている。そういうようなことで、付近の農家も、この問題に対しては戦々恐々としているわけです。この経過について、どうなっているのですか。
  160. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 米軍の通信施設の周辺における電波障害の緩衝地帯設定の要求でございますが、この要求につきましては、それぞれの通信施設の周辺に与える影響が非常に広範囲であるというようなことから、日本政府としましても、慎重に検討しなくちゃならないということで、日米間でこのための特別委員会設置しまして、寄り寄り協議をしてきておるわけでございます。しかしながら、この問題に対するわがほうの基本的な態度としては、米側の要求が必ずしも妥当を欠くというわけではないけれども、あまりにも周辺に対する影響が大きい。要するにその制限の範囲内に入った個所については、建物、工作物の建設が制限されるという事態になるわけです。そこでこの問題については、米側の要求もさることながら、なるべく周辺に与える影響が少なくて済むようにということで、現在まで米側と話をしておるわけであります。米側としましても、最近の日本における都市化現象が非常に顕著であるという事実は、よく認識をしておりますので、一方的に米側の要求を押しつけようということは考えておりません。したがいまして、われわれとしては、この問題はいま申し上げたように、なるべく影響の少ない方向で今後努力していきたい、このように考えております。
  161. 島本虎三

    ○島本委員 それで、この問題について、やはり農民が戦々恐々としておるのは、私ども理解できるのですが、これはどうなんですか。新たな緩衝地帯設定を申し入れてきて、それには稚内、千歳、これが北海道、三沢(青森)、柏(千葉)、大和田(埼玉)、渕野辺、厚木、横須賀(神奈川)、岩国(山口)、雁ノ巣(福岡)、佐世保それから崎辺、これが長崎この十二カ所。このために五百万円の予算を組んで十二カ所の周辺の調査をもうしている。こういうようなことにはっきりなっておるようでありますけれども、問題は、この五百万円ほど組んで調査したとなれば、調査結果が出ておるのじゃないか。あの辺は、たとえば北海道の場合には、稚内と千歳です。千歳も稚内も調査した結果、そういうような心配は全然ないのだ、こういうようなことがはっきりしたのですか。
  162. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 四十三年度におきまして、この問題の調査費として五百万円ばかり予算がついておったことは事実でございます。その予算のうちの一部をもちまして、いろいろ関係の資料等による調査等は、それぞれの局で実施をいたしましたけれども、一番肝心な電波障害の実態に関する技術的な調査、これにつきましては、遺憾ながら現在まだできておらない。したがいまして、この電波障害の緩衝地帯設定問題に関する結論はもちろん出ておりませんし、この技術的な調査が済まなければ、とうていその結論は出ないもの、このように考えております。
  163. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、そのドーナツ型の幅だとか、それに該当するのは何戸か、その内容、そういうようなものは全然現在のところでは出ておらない——もしそういうようなものを出されて、農家ですから、酪農地帯、それがどうもそれに反対だというよりも、その辺の道路は一時間に五台ぐらいしか通れないような規制のある地域もあるし、それからいろいろ建物にも制限があるそうだし、またいろいろテレビや、少しでも電波の発生するようなものは一切使われないというし、それらはだめだ、こういって最後まで反対している場合には、これはどうなるのですか。紛争処理は、どういうふうにしてこういう場合には適用するのですか。
  164. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいまお話のありました自動車の通行台数の制限、こういった制限は、現実に上瀬谷の通信施設におきまして、現在電波障害のための制限区域を設定しておりますけれども、先般の米軍との交渉によって、この制限が緩和された。その際、自動車の通行台数の制限というものは解除された。したがって今後他の地域においても、電波障害の緩衝地帯が設定されましても、自動車についてのこういった規制はないものというふうに理解しております。その他ラジオ、テレビといったようなものにつきましても、制限は、現在上瀬谷についてはございません。  そこで、一般的な考え方としましては、米側に対して、ある一定の範囲の制限区域の設定を認めるといたしましても、これを実施するためには、あくまでも関係の土地所有者の同意がなければできない。現在そういうことを一方的にやる法律的な根拠がございません。したがって、やる場合には、相手方との契約によって、その土地の所有権の一部を制限するという形でしかできない形になっております。したがいまして、強行するということは、いま申し上げた民事契約によってやるのだというやり方からして、とうていできない、このように理解していただいてけっこうだと思います。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 それならば、本人がそれでオーケーを出さない限りにおいては、幾らこの地帯におっても、米軍はそれをもう制限することは何らできないものである。ほんとうにできないのですか、間違いありませんか。
  166. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この電波制限のために特別な法律でもつくってやらない限り、現在の体制のもとにおきましては、あくまでも民事契約で処理するということになっておりますので、一方的に強行することは不可能と思います。
  167. 島本虎三

    ○島本委員 もう一つ、米軍でも自衛隊でも、航空機による騒音がうるさい。その騒音による補償の範囲は、何キロぐらいまでを妥当の線としていまやっておりますか。
  168. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 騒音の補償とおっしゃる意味は、おそらく飛行場の進入表面下において農耕をしておる者が、航空機の離着陸によって農耕の阻害を受ける。これに対する補償を意味されておるんじゃなかろうかと考えますが、これはそれぞれの飛行場によって、立地条件その他が違います。そこである飛行場については、オーバーランの末端から二千メートルの範囲内までを認めておるようなところもございますし、あるところにおいては、千五百メートル程度までしか認めていないというようなことで、これは飛行場のそれぞれの立地条件によって違いますが、基本的には、飛行場の進入表面、転移表面の範囲内におきまして、施設庁長官が認めた範囲、これが補償の範囲となっております。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 それはプロペラ機ですか、ジェット機ですか。
  170. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 これは特定飛行場に対してだけ適用がございまして、ターボジェットエンジンを動力とする航空機が離着陸しておる飛行場についてのみ適用されております。
  171. 島本虎三

    ○島本委員 滑走路を中心にして二キロで九十九ホン、三キロでも九十九ホンです。三・五キロで九十八ホン。いまのジェット機の場合には、二キロなどという範囲ではとうていなくなってしまっておるのです。七十五か七十七、八ホン、このくらいまでならばまだまだ、こういうようにいわれておるのに、ジェット機の場合には三・五キロでも九十八ホンくらい出る。これなのに二千メートルくらいまでの範囲を認めておるということになると、どうも現行犯でもないんじゃないか。これはもっともっと広げてやらないとだめなんじゃないか。ジェット機の場合はことにそれが言えるんじゃないか。プロペラの場合ならばいまの考え方はいいかもしれませんが、ジェット機ですから、もう少しその辺の基準をはっきりしないと、将来のいわば紛争処理の問題の発端はその辺になるかもしれない、私はそう思うのです。  このデータは、昭和四十三年九月二十九日の、基地という読売新聞のデータによるわけです。そういうようなことからして、この補償という問題はもっと基準そのものを考えないといけない段階にもう来ている、こういうふうに思います。いまのホンのとり方あたり考えて、どのように対処されますか。
  172. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この農耕阻害補償の範囲は、当初は現在施行しておるものよりも狭かったわけですが、その後逐次拡大をしてきております。しかしながら、現在のものがそれではもう動かせないものであるというふうなことは考えておりません。騒音その他の実態によって、これを今後必要な範囲まで拡大していくことについては、われわれとしても十分検討したい、このように思っております。
  173. 島本虎三

    ○島本委員 山口県岩国の米軍基地の隣に、繊維メーカー帝人ですね、これも関西財界のリーダーである大屋晋三さんから、今度は基地公害に補償せよということで、昭和四十三年九月に六億の経営上の損害ということで、補償せよという訴えがあった。これに対して政府首脳部では、財界首脳部がと言って絶句した、こういうような報道があるようでありまするけれども、これは周辺農民に補償金が出るならば、どうして企業には出ないのだ、こういうような論拠のようでありまして、経営上の損害面六億、こういうようなことで出された、こういう報道でありまするけれども、いまのいろいろ質疑応答の過程を通じて、農林水産だけではない、農林漁業だけではない、その他の被害にも当然これは適用するのだ、するといまのこの帝人の六億の損害補償、これも当然それに当てはまって処置してやらぬといけないことになる。この基地公害もいよいよもってこういうような芽をはらんでまいりますと、紛争処理が直接適用すると、こんなものはすぐいくのだけれども、それの中でこれをやる。そのための立法は米軍の場合には特損法、自衛隊の場合には周辺整備法その他の法律に準じてこれをやっていく。そうするとこれは当然当てはまることになりますが、この大屋晋三さんの訴え、六億円の損害賠償、これは皆さんはどういうふうに扱ったのですか。経過をお知らせ願いたい。
  174. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 昨年帝人のほうから、岩国工場が、米軍に提供しております岩国飛行場の進入表面下にあるというようなことから、最近のいろいろ新しい製品をつくる場合には、繊維関係の工場としては建物を高層化して、原料を一番高いところに入れて、あとは重力を利用して逐次加工していくというような新しいシステムになってきました。したがって、そういう高層の建物が岩国工場については建てられないというようなことから、これを他の地に分散して新しい工場をつくる、このような実情から、帝人としては、岩国飛行場が存在することによって事業経営上非常に大きな損害を受けておるというようなことで、損失補償の要求があったわけでございますが、このような営業上の損失につきましては、その見方、それから額をどう算定するかとか、いろいろ非常に複雑な問題がございます。そこでわがほうとしましては、こういった問題は直ちにどうこうということは言えないという回答をしたわけでございます。ところが、会社側は、これは損失補償を請求するというよりも、むしろ現在の帝人の工場の敷地をもっと何か有効に利用したいということについて、国の協力を仰ぎたいということに主眼があったようでございます。ところが、この損失補償のほうが非常に新聞等で大きく報道されたということで、これはむしろ会社自体にとっても真意ではなかったというようなことから、後日この申請書を書き改めまして、要するに、岩国工場があることによって帝人の敷地がフルに活用できない、これについて国の側で活用できるような御援助をお願いしたいという趣旨に切りかえてきております。  そういうような経緯で、この補償の問題は、会社側から取り下げをしましたので、それによって一応打ち切られたというような実態でございます。
  175. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、それは説得によって取り下げて、何も補償はしてない、こういうようなことですか。
  176. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 説得によって取り下げたということでなくて、もともとむしろその補償の問題はつけ足しでございまして、土地の利用について十分国の協力をお願いしたいという趣旨であったようでございます。したがって、この申請書を書き改めて提出してきましたので、わがほうとしては、何ら補償をしておりません。
  177. 島本虎三

    ○島本委員 六億の補償をせい、こういうようなのはつけ足しで、うそだった、こういうようなことになるのですか。
  178. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 うそとは申し上げませんが、真意は、むしろ土地の利用について協力をお願いしたい、そのための一つのバックアップとして、補償の問題もありますぞというような意味合いであったようであります。
  179. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、土地の利用はどういうようにして解決しましたか。
  180. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この問題につきましては、わがほうは、岩国市当局にも、何らかの形で現在空閑地になっておる帝人の敷地を有効に利用できるように、市としてもひとつ協力をお願いしたいというようなことで、関係方面にお願いをしておったわけですが、最近聞くところによりますと、呉興業という会社がそこに進出をしまして、一部新しい工場を建てるようになったというふうに伺っております。
  181. 島本虎三

    ○島本委員 六億の損害補償も含めて、それが主文ではないけれども、申請を出された。結局それはもう何にもならないで、やみからやみに葬られたことになるのですか。
  182. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 それは先ほど御説明しましたように、申請書を書き改めて、補償の面については削除したものを、会社側からあらためて出してきたということで、やみからやみに葬ったということではありません。
  183. 島本虎三

    ○島本委員 結局何をしてやったことになるのですか。
  184. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ですから、わがほうとしても市当局に、こういった事情にあるので、何とか土地の利用について協力をお願いしたいというようなことで、いま申し上げたように、呉興業という別の会社が帝人の敷地内に新しい工場をつくるようになったということでございます。
  185. 島本虎三

    ○島本委員 その敷地の中に新しい工場をつくるようになった、その前はどうなんです。なったので、一切これはなくなったのですか。
  186. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 土地の利用について、呉興業が進出したから、これで全部一〇〇%満足であるかどうかということまでは私承知しておりませんけれども、その後帝人のほうからは、私のほうには新しい申し入れ等はございません。
  187. 島本虎三

    ○島本委員 何か初め出たのが、その後ごっちゃごちゃとなって、あとは何もなくなってしまった。あなたの答弁、何回聞いてもわからぬのだ。理事者の人、みんなあなたの答弁わかるだろうか。結局は、私が聞いているのだから、あなたは私を理解させないといけないけれども、土地のほうには弱いかもしれないが、六億の損害賠償を含めてやった。農林や水産漁業、こういうほうはちゃんと補償の対象になるから、正規に、それも手続はどうあってもやれる。今度はそうじゃなく、運用の面でも、新たに商店でも一般のサラリーマンでも、規定されたそれ以外の人でも、自由にその法の運用を受けられるようになる。その前提として、去年すでにその六億円の損害を含めての申し入れがあった。当然やれるのだから、それはやってやってもしかるべきだ、こういうように思うのです。それは法改正しなくてもやれるというのですから。ところがそれが出たのに——それもまた、何回も出したりやったりしておる問になくなってしまった。こうなると、どうもその辺が、やれるのにやらないのか。あなたのほうが無理してあっちこっち回している間に、別な人が来ておじゃんになったのか。どうも私は理解するに至らぬのが残念ですけれども、もう少し私を納得させてみてくれませんか。
  188. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 六億の補償につきましては、わがほうとしてだめだということを言ったわけではございません。ただそれが新聞報道等に大きく出たといようなこと、しかも会社としては、当初からその補償に別に重点を置いておったわけではなくて、土地の利用のほうにむしろ重点を置いておったというような事情から、わがほうがだめだと言ったわけではなくて、会社側が一度出した申請書を取り下げて、その補償の要求に関する部分は削除して出し直した、自発的にやったということで、わがほうは、この補償についてはだめだということは言っておりません。
  189. 島本虎三

    ○島本委員 わからないままにやめてしまうのはどうも残念なんですがね。書き直して、どの点で納得したのですか。
  190. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 書き直して、結局は会社が持っておる土地がまだ有効に利用されておらないということですので、この利用について国の協力をお願いしたいというだけの陳情に変わったということでございます。
  191. 島本虎三

    ○島本委員 騒音の被害六億、農林水産業に対してはやれるのに、自分のほうにはこれはやれないのか、こういうような理由書もついておったと聞くのですが、そうすると、それはうその申請だったということに逆になってしまうのですが、騒音は全然ない個所ですか、それは。
  192. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 帝人のほうが要求しておりました当初の補償要求の内容は、騒音による被害ということでなくて、要するに飛行場の進入表面下にあるために、飛行機の離発着の関係上高い建物が建てられない。したがって、先ほども申し上げましたように、新しい製品をつくるためにはどうしても高い建物が要るけれども、そこでは建てられないためによそに新工場をつくった、このようなことから、現在の岩国工場の敷地が十分に活用されていない。こういう意味合いにおいて申請書が出たわけでございまして、騒音による補償要求という形式ではなかったのであります。
  193. 島本虎三

    ○島本委員 こういうふうにして中で聞いて見れば、これは長官、いまもずっと聞いておられたと思いますけれども、この周辺整備法によりますと、やはり補償額の決定、こういうような審査を含めて、一方的なんですね。どこかで合議してやるのか。それで不満だったりなんかした場合には、一方的にきめられたままそれを受けなければならないという理由もないじゃないか。こういうような基地周辺整備法による場合の異議の申し立て、一方的な決定に対する異議、こういうようなのがあった場合は、これはどういうふうにして解決するのです。
  194. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま仰せになりました異議の申し立てがありますので、十分この道を活用いたしまして、そうして当事者に満足を与えるような解決を得たいと考えておるわけであります。この点につきましては、事が政府の仕事であり、しかも自衛隊等特殊な仕事でありますので、ほかの問題とも違って、やはり円満な解決が望ましいし、また政府もそういう努力をすべきものだと考えております。
  195. 島本虎三

    ○島本委員 やはりこれは異議の申し立ては、基地周辺整備法第十一条、特損法第三条、これによってはっきりしています。それによってはっきりしているけれども、きまっていのは三十日以内だとか、その手続がきまっているので、それより先は、申し立てることだけができる。このあとどうなるのかということは一切保障がないじゃありませんか。一方的じゃありませんか。これでいいんですか。紛争処理のようにうまくいきますか、ここが疑問なんです。
  196. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 特損法、周辺整備法による補償に関連しての異議申し立てにつきましては、異議申し立てがございましたら、これに対して国が最終的な決定をするわけです。それで一切終わりということでなくて、それでもなお不服の場合には、民事訴訟によって争うことができるという別の道が開かれております。
  197. 島本虎三

    ○島本委員 それに要する手続というのはだいぶ簡便化された、こういうように言われておりますけれども、依然として損失補償の申請、これは申請によらなければいずれも効力を発しないことになりますから、周辺整備法の十条と特損法の第二条によるところの損失補償の申請、これはなかなか手間がかかって、これはどのように簡単にやれるのかわかりませんけれども、これに要する費用とあれは、たいした困難性があるものだと聞いて、だれしもがこれをやれるというような簡単な申請じゃない、こういうように承っておりますが、先ほどは、これはまことに簡便化した、こういうような答弁がありました。これは以前は半紙で何ぼか書いて、下から何メートルぐらいに積み上げて、四十八万円も半紙を使ったというようなこともありましたけれども、現在そうしなくても簡単にこれは手続できるのだ、こういうように言っていますけれども手続はめんどうではないのですか。簡単だとすればどの程度でできるのですか。
  198. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 この損失補償につきましては、きまった様式がございまして、その申請書を内閣総理大臣に、これは米軍関係でございますが、申請者から出すようになっておりますが、これにはこの事業の種類、一体この申請人がどういう事業をやっているかという事業の種類、それから損失の原因となった駐留軍の行為、それが航空機の騒音であるとかいろいろ原因がございますが、そういった原因、それから損失をこうむった区域とか期間、どの区域についていつからいつまで被告が起こっておったかというようなこと、それから事業経営阻害の状態、実際の実情はどうなっておるかというようなこと、それから損失をこうむった期間に相当する期間における平年の事業経営上の所得額。と申しますのは、要するに米軍の特定の行為等によって損害を受けたわけでございますが、これが損害を受けない普通の場合であればどれくらいの所得があったであろうかということです。それから、損失をこうむった期間中の事業経営上の所得額、これは現実に損失があったときの所得がいかほどであったかということです。それから補償を受けようとする額、一体どれだけ補償をしてもらいたいというのか、その具体的な金額、その他参考となるべき事項、この八項目についての一定の表がございまして、これに所要の事項を記載していただくということになっております。ただし、事案の内容によりましては、この表だけでは十分に説明ができないような複雑な事案がございます。そういう場合には、必要な範囲における付属資料をつけていただくということでございますが、初めての方は、これは一体どう書いていいのかということがなかなかおわかりでないと思います。そこで、実は自分のところはこういうことで損害を受けておるから補償をしてくれという申し出が局にございましたら、局のほうではこの様式をお渡しして、ここにはこういうことを書くのですよということは、具体的に御説明をし指導をして、あまりやっかいをかけないようにしております。それから、先ほども申し上げましたように、被害の種類によりましては、個人の力ではとうてい立証ができない。損失があるであろうということは考えられても、具体的な立証が非常にむずかしいというような場合には、わがほうにおいて調査をし、その金額を計算するというようなこともいたしております。
  199. 島本虎三

    ○島本委員 すべて申請によってやるものですから、これをめんどうくさがってやらない人もだいぶある。そういうような場合に、口頭でやったならばすぐそれをやってやるくらいのサービスをしてもいいじゃありませんか。いままで、口頭でそれを申し出ても、それによってその事案を処理した、こういうような例がございますか。
  200. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 口頭でとおっしゃいますが、口頭で、ここに書かれておるような内容について、正確に伝えることがはたしてできるかどうか。その問に誤りがないかどうかというような問題もございます。もちろん相手方が、書くのがめんどうくさいから役所で書いてくれ、ここに記載してあるような事項について自分が話しするとおっしゃれば、書かないでもないかもしれませんけれども、普通はこれに必要な事項を書いて出していただく。それほどやっかいをかけないように、わがほうでも親切に指導はしておる。こういうことでございます。
  201. 島本虎三

    ○島本委員 事務的にそういう答弁ばかりしておっては、あまり時間がかかり過ぎてだめですから、この防衛庁の場合、この程度で私の質問は終わったんじゃありません。次に締めくくりをつけます。  いままでのいろいろな質問を聞いただけでも、まだ、手続の問題、補償の問題それから現在いろいろ行なわれておる問題が、千歳の場合なんかにもございましたので、現在進行中の問題こういうようなのを見ますと、やはりこれはどう見ても、一般産業等に比較して相当進んだ手だてを積極的にほどこしておるという江藤参事官証言とは遠いものがある。それから、現在のところ相当運用の妙を発揮している、これには若干近いものがある。それと同時に、他の法によるよりも特損法と周辺整備法によるのがはるかに手厚い措置を講じている、これにはまだはるかに遠いものがある、こう思わざるを得ないわけです。したがって、これは紛争処理方法適確でなければ、いままでと同じであって、その一方的な決定に服することになり、めんどうくさかったら裁判に持っていけ——裁判に持っていって、また百年も争うようなことになる、金も続かない、こういうようなことになると、せっかく紛争処理法をつくりながらも、それを適用しないということが、結局、基地温存、基地優先、すべて基地のために犠牲強要、こういうようなことになってしまう。とんでもないことになる。いままでの答弁の中には、この三点に関しては満足を得られるようなものはなかった。私はまことに残念なんです。これはまだ締めくくりませんから、もう一回、今度個条的に一つずつ、もう少し納得するまでやらぬといけません。  それと、最後に長官、そういうような状態で基地の問題に対しても、中には帝人のいろいろの問題もございましたが、ああいうふうにして金額は六億と出た、ところが土地がうるさい、高い建物も建てられない、そこから距離、いろいろなものをはかってみると、やはりどういう騒音を出して、どういうようにうるさいのだ、基地の中に入って一応は確かめなければならない状態になることも予想されるわけです。そういうようにしてみますと、これは独自の命令を出して独自でやれる機関が、そういう場合に一等望ましいが、長官がお出しになっている紛争処理、これによって、いわば八条機関と申しますか、こういうようなものによると、独自の命令を、長官は今度そういうような場合には出せるのですか、出せないのですか。これは一体どういうように解釈したらいいのでしょう。
  202. 床次徳二

    ○床次国務大臣 紛争処理機関において行ないますところの独自のというおことばでありましたが、この点は法律的にもっと表現をしっかりしなければいけないと思うのです。この点は、私ども、審査委員会におきまして必要とするところの権限は行使できるように、中立性をもって——一番大事なことは私は独立性と中立性だと思うのです。この点に関しましては、委員の任命をはじめ、処遇等におきましても十分に考える、なお各所管庁からも公平なように処置していただく。特にお考えおきいただきたいのは、今度の紛争処理法を総理府でもって立案いたしましたということにつきましては、十分その独立性を考えておったのでありまして、実は公害基本法自体は、つくるのは大体厚生省でやっております。しかし被害者だけの立場に偏してもいけないのじゃないか、そうかといって、通産省等いわゆる事業者等の立場を代弁したのではよくないんじゃないかという意味におきまして、総理府でもってこの処理法案を立案したような次第で、このこと自体も、十分な独立性を守るためにできておるわけでございます。  なお、今日まで数回御答弁申し上げましたが、紛争処理の法案において予想しましたところの権限を行使するのには支障のないような権限も与えておる。八条の機関でありまするが、支障のない権限を与えておりますので、予期した職権は行なうことができると私は考えておるわけです。
  203. 島本虎三

    ○島本委員 長官がおっしゃるように、それは独立性が必要だとわれわれもかねて主張してまいりました。それから行政の中立性を確保しなければならない、こういうようなものも、いままでずいぶんやり合いました。せめて長官、その辺まではっきり言い切れるということは、私は討論がもたらした一つの進歩だと思います。そしてそういうようなことになればなるほど、この中立性と独立性、こういうようなものをはっきりさせる担保が必要じゃないかと思う。私はそういう点では、やはり組織として監視機関なり調査機関なり研究機関なり、こういうようなものをはっきり持って、そうしていまの行政に中立性、独立性を確保すること、これが最も公害委員会には重要なんだ。これをなくしてしまえば有名無実になるおそれがある。そうなれば、お隣の角屋議員と同じようなところまで、その点では達しているじゃありませんか。これより一歩行くと、あえて表現をすると、三条機関のほうが望ましい、こういうようなことに当然なるわけであります。そこまでやらないで、三条機関と同じような意味を含めた八条機関でこれをやっていって、結局相互互譲の精神によってやればいいんだ、あとはやれないのは裁判に行けばいいんだ、この辺が少しあいまいになってくるのです。それより先はあいまいになった。その辺まで、やはり長官あなたは、私はいいと思います。そこまでいったならば、じゃ、八条機関でもいいから三条機関と同様にこれを行使できるんだ、こうでなければ、現在の複雑な特質を持つ公害紛争処理の実をあげることはできないんだ、こういうようなことになります。三条機関でない八条機関で、三条機関と同じような意味を含めてこれを実施することができるような、こういうような強力な機関ということはどういうようなことになりましょうか。
  204. 床次徳二

    ○床次国務大臣 私は、先生とはもう少し基本的な話し合いをしなくてはまだ御了解いただけないと思っておるのであります。それは、三条機関か八条機関かということでもって論議をしたって、この問題の解決にはならない。強力な権限とおっしゃるのでありますが、いかなる権限を与えるかということがそもそもの問題、それから究明しなければならないということを繰り返して申し上げておるわけです。  角屋案と一番大きな差は、いわゆる裁定と申しますか、そういう行為をする権限を与えるか与えないかの差だと思う。私どもの案におきましては、そういう裁定行為は与えないという前提に立っておりますので、八条機関でよろしいということを申し上げておるのであります。  なお、もう一つお答え申し上げておきたいと思うのでありまするが、本来の公害紛争の、公害そのものに対する態度の問題でありますが、これにおいて、相当考え方の違いがあるんじゃないか。いまの御質問内容を私ども考えてみますると、紛争処理機関でもって検査なり予防なりをいろいろやらしておいて、そうして効果をあげようというお考えかのようにも、ちょっと見えるのでありますが……(島本委員「何をやって……。」と呼ぶ)検査なり研究なりということを全部機関権能としてやらせるようにお考えになっておるんじゃないかというふうに思うのでありますが、本来の公害対策基本法から申しまして、やはり国といたしましては、調査研究等の問題につきまして、また、予防措置等は、まだまだ本法においてなすべきことがたくさんある。先ほどお話しありました公害の基準等の設定等も、私は本法の精神からいいまして、大いに行なうべきものだ、研究調査の機関におきましても十分りっぱなものをつくるべきものだと思うのです。これが残されておるものと思うのです。そういう残されたものを、今日の紛争処理機関に全部くっつけて、包含してやっていけということに対しましては、これは考え方がやや私と違うんじゃないか。この点もやはり明らかにしておいて考えませんといけないんじゃないかということもあるわけです。先ほどの、裁定という権限を持たせるか持たせないかということとも関連いたしておりますので、この点はあらためて申し上げておきたいと思います。  私どもは、この紛争処理範囲というものが、和解の仲介それから仲裁、調停という範囲にありまして、十分な権能を行なわせたい、効果をあげさせたいという範囲内におきまして、その限度において実は法案をつくっておるわけでございます。したがって、前提となりますることは、御質問の趣旨と、私と、というよりも政府の案と、前提が多少違うんじゃないか。違ったままで論議いたしましても、これはなかなか意見が合致を見ないことは当然であると思っております。したがって、政府案のごとき、限られたと申しますか、範囲内においての目的機関でありまするから、それに合うような権限を与えますと、八条機関でけっこうできる。  なお、別表に、御参考に八条機関三条機関との各機関の表を参考として差し上げてあると思うのです。これによって比較をしてごらんになるとわかりますが、これは、それぞれ八条機関の今日の審査委員会案におきましても、十分所期の目的を達する。また、これよりも権限の少ないものあるいは小さいものでもって三条機関もありますし、いろいろバラエティがあることはおわかりだと思いますが、その本質をなすものは、やはり法律によるところの実体的権限をどう与えるかということによって最後はきまるのだ。八条できまるとか、三条できまるというわけではないのです。しかし、御意見のような、角屋案のような形でもって機関を運営しようとすれば、これは八条機関では入らないんじゃないだろうかということは私も考えております。
  205. 島本虎三

    ○島本委員 あえて、長官は、公害に入って、検討している期間は長いかもしれません。大臣として、いまこの問題を自分で取り扱って、ほんとうにまだ日が浅いかもしれません。しかし、公害基本法の当時から、角屋議員もいろいろ取っ組んでやってまいりましたし、私どももやってまいりましたし、総理をはじめ、まあいろいろな委員会や本会議での答弁や、これからの姿勢、こういうふうなものを踏んまえて、昭和三十三年に初めてこういうような問題に対して自治体で問題になって、名古屋で四日市の問題を取り上げ、いろいろやった以後、ずっとこういうような問題が低迷してきていましたが、公害という名でこれがあらわれてきて、公害基本法ができて、それと取っ組んだ以後の様子や経過をたどってみますと、大臣の答弁は、残念ながら、ことばはいいけれども、責任を回避する、いままでの経過をどこかすらっときれいにバラ色のムードに包んで投げてしまうような、こういうような印象を私は受けて聞きました。不勉強なのかしれません。しかし、私は、あえて、この点ではっきりこの機会に申し上げておきたい。  それは、昭和三十八年ごろから、この公害基本法制定の必要というものがいろいろ論ぜられておりました。そうして四十年には、厚生省の諮問機関としての公害審議会を発足させた。四十一年の十月には公害に関する基本的施策についてという答申を得た。そうしてこれを公害対策基本法基本にした。これは、公害紛争処理について、「専門技術的な判断も加えて公正かつ迅速な解決が図られるよう、必要な処理手続を検討するほか、住民その他からの苦情、相談についても適確処理が行なわれるよう必要な態勢を整備すべきである」こういうように述べております。また、通産省の諮問機関である産業構造審議会の産業公害部会の答申、昭和四十一年十一月でも、「和解の仲介制度の活用を図るとともに、地方公共団体に苦情処理機関を設けるべきである」としております。この点までやってきているのが、これが昭和三十八年から四十一年の十一月ごろまでです。  それから、この答申を受けて、政府は、四十二年の第五十五回国会に公害対策基本法案を提出したが、紛争処理については特に明文がなく、公害にかかわる被害救済の円滑な実施をはかるために必要な制度の整備の施策に含める考えのようであった。なお、この条文に関して、佐藤総理は、七月には、紛争処理機関の整備と無過失責任制度については前向きに検討する、これははっきり答弁しているのであります。  この政府原案は、衆議院においては、二項に分ける修正、がありました。すなわち、第一項において「紛争が生じた場合の和解の仲介、調停等の紛争処理制度を確立するため」、第二項において「被害救済の円滑な実施をはかるための制度を確立するため」、それぞれ必要な措置を講ずることとする修正が行なわれてきた。また、衆議院の産業公害対策特別委員会では、「無過失損害賠償責任についても、逐次その制度が整備されるよう努めること」、参議院の特別委員会では、同様に、「無過失賠償責任に関しその法制の整備に努力するとともに、紛争処理制度及び救済制度の整備に努めること」について、それぞれ附帯決議がなされてきております。  かくして、基本法によって紛争処理制度の確立が規定されたが、その趣旨は、前記のような司法制度のみでは解決しがたい面及び現行公害規制法の不備な面を補って、行政が強力に関与するような公法上の制度を確立すべきだということを政府に義務づけたものと考えられる。これはもうはっきりした書類ですが、こういうような経過があるんです。いま言った、これはいわゆる三条機関でやってもいいじゃないか、強力な行政機関でなければやれないぞ。まして事務局なんかは、いまの八条機関による政府原案のような案では、事務局自身がはたしてどのような権能を持ってどうするのか、私どもこれは十分まだ理解することができない状態である。ここまではっきり進んできておるのに、ここでまた逆戻りする手はございませんから、あえて言うと、強力な行政指導がいままであった、しかし行政指導による解決部門、司法裁判を含む準司法的なこれがなかった。ないがために、いざとなったらみな裁判のほうに行っていた。やれるものは個々の、簡単に言うと、行政的な仲介とでもいうのですか、あっせんとでもいうのですか、こういう中で行政的にこれを処置してきている。都道府県のそれぞれのところでやってきて、その網にも通らないような、こういうような重要な公害事件というのは、いまや日本全国ほうぼうに起きてきてしまった。その点、いまここではっきりやるのは行政的な措置、これでやって、それでも足りないで専門家でやって、それである程度の、これは裁定に対しても自信を持ってやれて、なおかっこれでもって迅速に解決をはかっていく、この必要性がいま痛感されてきている。これを加味したようなやり方でないと、これは有名無実になりますよ、こういうようなことです。したがって、その独立性という機関性格、それから今度はっきりとこの問題に対して処置していかなければならないような制度にするためには、いままでのあなたの考え、あなたの答弁だけでは、まだまだ私のほうで反論が多過ぎるのですよ。かりにいまあえて一言で言うと、いま言ったような調停は、実質的にこれだけで、あとの仲裁でも仲介でも、こういうようなのは何か当て馬的な機関ではないのか、こういうように思われるわけなんです。それで政府案によるところのいろいろな仲介、調停、仲裁、これは判決も同じようなことになって、あとこれ以上司法裁判に持っていけませんけれども裁判所においての民事訴訟では、もう利用件数がほとんどないのが和解の仲介、これは水の場合では三十件程度です。ばい煙の場合は三件程度。それから従前の民事訴訟の仲介、こういうようなものになると、裁判にかかる部分はほとんど少ない数なんです。そしてなぜ裁判に行ったらおそいのか、これは日弁連のほうでいろいろ検討した結果によりますと、司法裁判所公害としてやって、結論の出るのは公害じゃなく、私害的な公害だ。公害らしい公害裁判所では解決できないものである。強力な行政が必要であって、そしてもっとこれは政治的には、国土やベルト地帯や都市計画、こういうようなものの根本的なやり直しを含めて、逆に強力な政治性が必要になってくる。いまや準司法的な機関の必要なのは公害であって、他にある準司法的な機関はいまやこれを論ずるに足らない。真に必要なのは公害、そのほか国家行政組織法にある三条機関といわれるうちの幾つかは必要だけれども、よしんばこれが全部なくても、公害のほうは準司法機関にしなければならないのだ、はっきりこれを明言しております。私だけじゃないです。いい意見を得たと思う。日弁連の決定です。日弁連でさえもそこまで踏み切って、ちゃんと言っている。他の機構はまだしも、これだけははっきりと準司法的な機関にするのが一番適当なんだ、こういうように言っているわけです。いろいろ言ってしまいましたけれども、この辺で大臣の意見を聞いておきたい。
  206. 床次徳二

    ○床次国務大臣 非常に広範にわたる御意見でありますが、根本におきましては、まだ大事なところを島本委員もぼかしておられると思うのです。いままで経過をいろいろお話しになりましたが、その経過の中におきまして、裁定行為をやらせるべきだという意見は、今日まで固まっておらないのであります。無過失賠償責任を検討しろということは附帯決議にも書いてありますが、裁定行為ということにつきましてはいろいろ問題が多いので、この点までは、やはり答申等におきましては踏み切っていない。過去四党等におきまして論議されました際にも話題にはなっておりまするが、これが一致いたしまして、裁定行為まで含むべきだというところまでは出ておりません。この点、政府といたしましても決してむだだと言うのじゃないのでありまするが、今日におきましては、まだまだ裁定行為までは法制化するまで十分な確信を持っておりませんし、またこれが適正であるかということにつきましても問題があるし、また訴訟との関係もありますので、この点は本案に加えなかったのでありまして、今日までの審議会その他の経過から見ましても、そこまでで来ている。島本委員は最後に裁定という字を一言お入れになりましたが、まだ正式の経過から申しますると、裁定的な行為をなすものを加えるべしというところまでは、はっきりきまっていなかったということを申し上げます。これが第一の問題であります。  なお、和解の仲介あるいは調停等につきまして、従来裁判所でもってやっておってたいした効果がないのだから、新しくこしらえたって意味がないじゃないかということにもなるかと思いまするが、私は、行政機関といたしましてこういう行為をなすことによりまして、やはり相当役に立つのではないかと考えております。  なお、各種公共団体が、市町村段階におきましてあるいは府県段階におきまして、大きな紛争処理役割りを果たすこと、これは私も認めるところでありまして、今後とも、公共団体の苦情相談と申しますか、また処理能力というもの、これは最も現地に即したものでありますので、高く評価いたしたいと思うのでありまして、本法におきましても、やはりその点に触れておるのでありまして、自治省とも協議いたしました結果、その財源的裏づけにおきましても考慮をしておるのでありまして、いわゆる紛争処理機関に入ります前に、苦情処理段階といたしまして、十二分にさような機能を営むことを、私ども期待いたしておるのであります。  なお最後に、強力なる行政措置云々というおことばでありますが、強力なる行政措置の中に裁定を含むか含まないかという点がやはり大事なところでありまして、今日裁定を含まないところの政府原案におきましては、その必要とするところの機能は、できるだけのことを八条機関においてなしておるわけであります。  なお、調査等の問題について御懸念があるようでありますが、政府案におきましても、政府の関係機関を十分に活用いたすことができますと同時に、専門委員等、必要な審査等をいたしまするところの機能も備えておるわけであります。  最後になりまするが、結局事務局というものがないじゃないか、これが少し小さいじゃないか——確かに規模は小さいと思います。しかし事務局と称しておりましても、政府が設けようというところの室よりも小さな事務局を持っておるところもあります。これは今年度は最初の計画でございますので、まずその点から出発をしておきまして、今後紛争処理機関をどんどんと非常に大きく活用されますることも予想されますので、そのときにおきましては、人数は予算的措置でありますので、十分これは拡大していきたいと思います。  なお、世間の信用等におきまして、三条機関のほうがいいというなら、あえて三条機関として悪いという理由はないのですが、今日は私、八条機関で間に合うという意味において申し上げておる趣旨でございます。
  207. 島本虎三

    ○島本委員 それは先ほどからいろいろ答弁があったことで、これは公害というものについて、事務局がはっきりした手足を持たないで、他の機関を自由自在に使って、それによって成果をおさめて、そして独自性を自分でとる、こういうようなことはちょっと考えられない。自分の機関事務局を整備して、その整備された事務局、すなわちその機関がちゃんともう調査機関もあり研究機関もあり監視機関もある、それでいて他の機関を十分活用することもできるのであります。まず事務局が小さくて、申しわけ程度のものでは、せっかくの国の機関も利用されずじまいになってしまう。公害に対してはっきり自分自身が手足を持つということが事務局の最大要件なんです。事務局が自分自身の手足を持たないで、他のほうを利用するということは、他のほうに牛耳られるのです。他のほうに牛耳られて、それによってまた間違った判定さえも出てくるのです。ですから、自分ではっきりした調査機関なり研究機関なり監視機関なり、そういうような体制を整えておいて、国の機関をりっぱに利用し、他の機関を利用し、それによってりっぱな調停なりりっぱな結論を出すこともできる。それもやらないでおいて、名前だけ仲介だ、調停だ、仲裁だといったって、これはお人まかせになってしまうおそれがあるのだ。したがって、もっとこの中で自分のほうを強めないと、逆にそのときの強い勢力によって動かされる。まして、いまのこの機関の中には、行政の中立性、こういうようなものはどこをさがしても、私は残念ながら見られない。この行政の中立性がなくて、どうして長官これから運営の完ぺきを期していかれますか。そのときによって何かに動かされる。総理大臣がいやだと言えば、もうやりたくてもやれなくなってしまう。いまの場合は、長官が賢明にして優秀ですから、あるいはそんなことがないかもしれませんが、もしものことがあって、別の人であって、たいしてやりたくない人、たとえば昭電の社長のような方だったら、そんなこと全然問題にもしない、こういうようなことだってあり得るのじゃありませんか。行政機関が中立性がなくなる。それは手足にはっきりした調査機関、研究機関、こういうようなものを持たないから、他に利用されていく。これはもう画竜点睛を欠く。こういうようなことになってしまって、せっかくあなたがいいことをおっしゃっても、この一つでつぶれてしまいますよ。
  208. 床次徳二

    ○床次国務大臣 大体御意見がわかりましたけれども、調査の問題でありまするが、あらゆることを全部この機関でもってやらなければならぬとなると、現在の公害というものが非常に広範でむずかしいということをよくおわかりだと思うので、その意味において、調査機関を全部備えるということは非常に無理なんじゃないか。むしろそういう機関は、今日またおくれておりますところの公害に対する一般の調査研究機関というものをもっともっと充実していくべきであるし、また現在ありますものをこの委員会が利用する。そういう意味におきまして、本委員会におきましても、専門委員を設けまして、専門委員の手によりまして調査する道はもちろんできているわけです。しかし、これが万般のことを全部できるようにするか、自分ですべて一切やらなければならぬかとなると、これはなかなかむずかしいと思いますので、必要な数の専門委員を持ちまして、他の国家機関を利用いたしまして、結論を出すというふうになっております。しかし、あくまで独自の立場に立って結論を出し得るようになっておるわけです。  なお、この独立性を維持するために特に考慮しておりますのは、この委員会規定によってごらんをいただけばわかりまするが、第三条におきましても「総理大臣の所轄の下に、」と書いてある。この点は、総理大臣といえども、かってにこの委員会に対して行政の力を及ぼさないという趣旨において、「所轄」という字を書いておるわけであります。なお委員の任命等におきましては国会の同意を得る。その他その資格等におきましても、非常に権威をつけておるわけであります。また任務の遂行等におきましても規定がありますので、委員としての中立性と申しますか独立性を、身分そのものから十分確保しておるようなわけであります。  あとは権限の問題でありますが、権限につきましては、先ほど申し上げましたように、裁定まではまいりません。和解の仲介、仲裁、調停ということには足りるだけの権限を持っているということであります。島本委員裁定ということをお考えになっていますが、これを入れて論ずるか論じないかは、まず最初において議論しなければならない。これは入れたほうがいいという御意見のようでありますが、私先ほど申し上げましたように、この点につきましては、答申案その他を見ましても、そこまでまだ踏み切っていないし、政府自体といたしましても、裁定行為を加えるかどうかということにつきましてはもっと検討いたしたい、後日を期したいというふうに考えておるわけであります。
  209. 島本虎三

    ○島本委員 これはあなた、いいことばがありましたね。この基本になる考えは相互の、何といいましたか……。(床次国務大臣「互譲の精神」と呼ぶ)ああ、互譲の精神、この互譲の精神を基本にして、公害処理に当たるということは、まさに木によって魚を得るがごときものなんですよ。いまは上に上がる魚もあるそうですけれども、とにかく神武このかた、互譲の精神はうたわれない時代はなかったはずなんですが、つい、あなた来る前にいろいろ言っていましたが、足尾銅山の問題でも、まだごちゃごちゃして、一世紀以上もかかっているのですが、じゃ互譲の精神はなかったか。あってやっても、やはりあのとおりだ。互譲の精神ばかりなら、公害なんか出ないじゃありませんか。半期で七億も利潤をあげて、いまカドミウムの生産で今度は原子力開発と一緒にぐっと伸びている神岡鉱山でも六億の患者の被害に対してだって、白だといって互譲の精神は全然出ないじゃありませんか。それなのに初めからそういうふうにやって、互譲の精神でやってできるんだ、こういうような考えに立ってこの公害に当たるということは、私は大臣の考えは甘いと思う。それじゃやっていけません。まず互譲の精神が双方にあっても、ぎりぎりのところまできたら生命の問題になってくるからなんですよ。生命の問題に互譲の精神なんかないです。緊急退避があるかもしれません。  しかしながら、そういうような重大な公害の問題であって、いままでの事例が幾つでもあって、それに対してあまり長引く。長引くから、長引かないように解決してやらなければならない裁定権を持つところのこういうような機関を置いて、それでだめだったら、最後は裁判にも行くような道さえ設けておいたらいいじゃないか。いまこれが必要だ。これは私だけが言うのではない。公害関係の弁護士の人たちは全部、他の三条委員会がなくても、これは三条委員会でなければだめなんだ、こういう考えなんです。残念ながら、長官は依然として互譲の精神を唱えていらっしゃるけれども、ここに橋口政府委員おりますか。——橋口さん、あなたもいいことを言っているのですけれども、長官がそういうようなことだとすると、この次にもう一回あなたと対決しなければならないようなことになります。それは原理、原則というものがあります。そういう点で申しますと、三条機関のほうがよりりっぱであるということは御指摘のとおりであります。ただ三条機関の中にも、これまた相当の格差がございます。三条機関であって、しかも固有の事務局を持たないようなものもございます。これはいいです。その最後にあなたは何と言っていますか。行政管理庁の御方針としては、三条機関あるいは八条機関を通じて、この種の合議制機関の整理ということを将来問題として検討しておられるというように拝承しておるわけであります。行政管理庁の方針としては、三条機関、こういうようなものの運営を整理していきたいという考えを持っておられる、こういうようにも解釈されますけれども、そういうようなのがやはり長官の気持ちでいまのようなことばも出てくるのですか。これは行政管理庁で廃止していくというような基本的な方針を立てておるのでございますか。それならばまた別なんでございますけれども、いまこれで私は少し気になるのであります。
  210. 床次徳二

    ○床次国務大臣 八条にするか三条機関にするかは、やはりその設置します委員会の機能によるものである。あくまでも与えられた機能をりっぱに行使できるようにしなければならない。この必要がありましたならば、三条機関にするし、八条機関にもする。これはその場合に応じまして判定すべきものだ。国の行政組織法の中から三条機関をやめてしまえということは私は考えておりません。行管はまた行管としての考え方があるかもしれませんけれども規定におきましては、今日必要なものは三条なりあるいは八条なりでそれぞれ適当と認めるところの組織法の位置づけをいたしておるものと思います。本法案の機関は、八条機関でもってその職務を遂行できるという見通しを持っておりますので、八条機関にいたしたということは繰り返し申し上げる次第であります。
  211. 橋口收

    ○橋口政府委員 私の答弁に関連しての御質問でございますから補足して申し上げますと、三条、八条の行政組織上の位づけに関連いたしましてお答えいたしたのでございますが、三条、八条の論議の過程の中で、三条機関と八条機関とを現在ありますものを比べてみますと、おのずからそこに三条機関には三条機関らしい原理原則、ものの考え方というものがあるのではないか。八条機関は、御承知のように非常に多様な内容を持っております。審議会、調査会的なものから、さらに合議制の行政委員会まで、かなり広範、複雑な内容を包含しております。そういう意味から申しまして、三条機関、八条機関を通じて、現在の合議制行政委員会について、行政管理庁で再検討の動きがあるということを申し上げたわけでございます。したがいまして、三条機関を一定の方針のもとに整理するとか、あるいは八条機関を一定の方針のもとに拡充するという確定した方針について申し上げたわけではございません。また当面の中央公害審査委員会性格については、総理府総務長官からお答えしたような内容でございます。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 まあこれで少しいいところへ来ましたが、まだまだ意見の不一致と平行線がありますから、これはどっちかにきめないと、国民に対して重大な責任を持つ法律案でありますから、この次の機会にもう少し深めて、今度は個条的に、この問題について大臣と納得のいくまでやらしてもらいたい。これ以上やると人畜に被害があるからもうやめてはどうだ、こういう仰せもございますので、きょうはこの程度にして、私の質問は留保させてもらいたいと思います。  なおこの際、特に通産省のほうで来ておると思いますから、次回までの間にはっきりとしたデータをお渡し願いたい。それは、三菱化工機がウエルマンロード社から排煙脱硫の技術を導入することによって、四月の末に政府に認可申請をする。これは排煙脱硫から、亜硫酸ガスを原料にして何か優秀なる生産物、硫酸を生産する、こういうような機構だそうであります。これは非常におもしろくて、技術的に高く評価されている、こういうようなことを聞きますが、この具体的内容についてひとつお知らせ願いたい。  それからもう一つは、二月十二日の閣議の決定に基づく亜硫酸ガスの環境基準の基礎データ、これを横浜や川崎市が要求したが、通産省ではねつけたということがあるそうですが、この辺がどうも不分明なので、こんなことはあり得ないと思いますが、このいきさつ等についても、次回までの間に文書によって提出してもらいたい。  これをお願いして、きょうはこれで、中間でやめておきたいと思います。
  213. 田村良平

    ○田村(良)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会