○島本
委員 あえて、長官は、
公害に入って、検討している期間は長いかもしれません。大臣として、いまこの問題を自分で取り扱って、ほんとうにまだ日が浅いかもしれません。しかし、
公害基本法の当時から、
角屋議員もいろいろ取っ組んでやってまいりましたし、私
どももやってまいりましたし、総理をはじめ、まあいろいろな
委員会や本
会議での
答弁や、これからの姿勢、こういうふうなものを踏んまえて、昭和三十三年に初めてこういうような問題に対して自治体で問題になって、名古屋で四日市の問題を取り上げ、いろいろやった以後、ずっとこういうような問題が低迷してきていましたが、
公害という名でこれがあらわれてきて、
公害基本法ができて、それと取っ組んだ以後の様子や経過をたどってみますと、大臣の
答弁は、残念ながら、ことばはいいけれ
ども、責任を回避する、いままでの経過をどこかすらっときれいにバラ色のムードに包んで投げてしまうような、こういうような印象を私は受けて聞きました。不勉強なのかしれません。しかし、私は、あえて、この点ではっきりこの機会に申し上げておきたい。
それは、昭和三十八年ごろから、この
公害基本法制定の必要というものがいろいろ論ぜられておりました。そうして四十年には、厚生省の諮問
機関としての
公害審議会を発足させた。四十一年の十月には
公害に関する
基本的施策についてという答申を得た。そうしてこれを
公害対策基本法の
基本にした。これは、
公害紛争の
処理について、「専門技術的な
判断も加えて公正かつ迅速な
解決が図られるよう、必要な
処理手続を検討するほか、住民その他からの苦情、相談についても
適確な
処理が行なわれるよう必要な態勢を整備すべきである」こういうように述べております。また、通産省の諮問
機関である産業構造
審議会の産業
公害部会の答申、昭和四十一年十一月でも、「和解の仲介
制度の活用を図るとともに、地方公共団体に苦情
処理機関を設けるべきである」としております。この点までやってきているのが、これが昭和三十八年から四十一年の十一月ごろまでです。
それから、この答申を受けて、政府は、四十二年の第五十五回国会に
公害対策基本法案を
提出したが、
紛争処理については特に明文がなく、
公害にかかわる
被害の
救済の円滑な実施をはかるために必要な
制度の整備の施策に含める考えのようであった。なお、この条文に関して、佐藤総理は、七月には、
紛争処理機関の整備と無過失責任
制度については前向きに検討する、これははっきり
答弁しているのであります。
この
政府原案は、衆議院においては、二項に分ける修正、がありました。すなわち、第一項において「
紛争が生じた場合の和解の仲介、調停等の
紛争処理制度を確立するため」、第二項において「
被害救済の円滑な実施をはかるための
制度を確立するため」、それぞれ必要な
措置を講ずることとする修正が行なわれてきた。また、衆議院の産業
公害対策特別
委員会では、「無過失損害賠償責任についても、逐次その
制度が整備されるよう努めること」、参議院の特別
委員会では、同様に、「無過失賠償責任に関しその法制の整備に努力するとともに、
紛争処理制度及び
救済制度の整備に努めること」について、それぞれ附帯決議がなされてきております。
かくして、
基本法によって
紛争処理制度の確立が
規定されたが、その趣旨は、前記のような
司法制度のみでは
解決しがたい面及び現行
公害規制法の不備な面を補って、
行政が強力に関与するような公法上の
制度を確立すべきだということを政府に義務づけたものと考えられる。これはもうはっきりした書類ですが、こういうような経過があるんです。いま言った、これはいわゆる
三条機関でやってもいいじゃないか、強力な
行政機関でなければやれないぞ。まして
事務局なんかは、いまの八条
機関による
政府原案のような案では、
事務局自身がはたしてどのような
権能を持ってどうするのか、私
どもこれは十分まだ理解することができない状態である。ここまではっきり進んできておるのに、ここでまた逆戻りする手はございませんから、あえて言うと、強力な
行政指導がいままであった、しかし
行政指導による
解決部門、
司法裁判を含む準
司法的なこれがなかった。ないがために、いざとなったらみな
裁判のほうに行っていた。やれるものは個々の、簡単に言うと、
行政的な仲介とでもいうのですか、あっせんとでもいうのですか、こういう中で
行政的にこれを処置してきている。都道府県のそれぞれのところでやってきて、その網にも通らないような、こういうような重要な
公害事件というのは、いまや
日本全国ほうぼうに起きてきてしまった。その点、いまここではっきりやるのは
行政的な
措置、これでやって、それでも足りないで専門家でやって、それである程度の、これは
裁定に対しても自信を持ってやれて、なおかっこれでもって迅速に
解決をはかっていく、この
必要性がいま痛感されてきている。これを加味したようなやり方でないと、これは有名無実になりますよ、こういうようなことです。したがって、その
独立性という
機関の
性格、それから今度はっきりとこの問題に対して処置していかなければならないような
制度にするためには、いままでのあなたの考え、あなたの
答弁だけでは、まだまだ私のほうで反論が多過ぎるのですよ。かりにいまあえて一言で言うと、いま言ったような調停は、実質的にこれだけで、あとの
仲裁でも仲介でも、こういうようなのは何か当て馬的な
機関ではないのか、こういうように思われるわけなんです。それで
政府案によるところのいろいろな仲介、調停、
仲裁、これは判決も同じようなことになって、あとこれ以上
司法裁判に持っていけませんけれ
ども、
裁判所においての民事
訴訟では、もう利用件数がほとんどないのが和解の仲介、これは水の場合では三十件程度です。ばい煙の場合は三件程度。それから従前の民事
訴訟の仲介、こういうようなものになると、
裁判にかかる部分はほとんど少ない数なんです。そしてなぜ
裁判に行ったらおそいのか、これは日弁連のほうでいろいろ検討した結果によりますと、
司法裁判所で
公害としてやって、
結論の出るのは
公害じゃなく、私害的な
公害だ。
公害らしい
公害は
裁判所では
解決できないものである。強力な
行政が必要であって、そしてもっとこれは政治的には、国土やベルト地帯や都市計画、こういうようなものの根本的なやり直しを含めて、逆に強力な政治性が必要になってくる。いまや準
司法的な
機関の必要なのは
公害であって、他にある準
司法的な
機関はいまやこれを論ずるに足らない。真に必要なのは
公害、そのほか
国家行政組織法にある
三条機関といわれるうちの
幾つかは必要だけれ
ども、よしんばこれが全部なくても、
公害のほうは準
司法機関にしなければならないのだ、はっきりこれを明言しております。私だけじゃないです。いい意見を得たと思う。日弁連の決定です。日弁連でさえもそこまで踏み切って、ちゃんと言っている。他の機構はまだしも、これだけははっきりと準
司法的な
機関にするのが一番適当なんだ、こういうように言っているわけです。いろいろ言ってしまいましたけれ
ども、この辺で大臣の意見を聞いておきたい。