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1969-07-23 第61回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二十三日(水曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 内海  清君   理事 稻村佐近四郎君 理事 大竹 太郎君    理事 斎藤 寿夫君 理事 田中 榮一君    理事 板川 正吾君 理事 山田 耻目君    理事 河村  勝君       小渕 恵三君    大野  明君       加藤 六月君    鴨田 宗一君       川野 芳滿君    小峯 柳多君       進藤 一馬君    丹羽 久章君       井上  泉君    小川 三男君       太田 一夫君    久保 三郎君       後藤 俊男君    松本 忠助君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 原田  憲君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         警察庁交通局長 久保 卓也君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         海上保安庁次長 林  陽一君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     安田  寛君         防衛庁経理局監         査課長     松藤  淳君         厚生省医務局次         長       北川 力夫君         通商産業省重工         業局次長    山下 英明君         運輸省船員局労         働基準課長   大塚 正名君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         運輸省航空局監         理部長     川上 親人君         労働省労働基準         局監督課長   細野  正君     ————————————— 七月二十三日  委員河野洋平君、濱野清吾君及び古川喜一君辞  任につき、その補欠として小渕恵三君、進藤一  馬君及び後藤俊男君が議長指名委員選任  された。 同日  委員小渕恵三君、進藤一馬君及び後藤俊男君辞  任につき、その補欠として河野洋平君、濱野清  吾君及び古川喜一君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策基本法案内閣提出第一〇七号)  交通安全基本法案久保三郎君外十三名提出衆法第二九号)      ————◇—————
  2. 内海清

    内海委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる交通安全対策基本法案及び久保三郎君外十三名提出にかかる交通安全基本法案の両案を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 床次長官がおいでになっておりますので、まず第一に、この法案の審議もだんだん大詰めにまいったわけで、政府の出しております交通安全対策基本法案がよいのか、社会党が出しておる交通安全基本法案がよいのか、この二つを選択をせねばならない時期にあるわけですが、長官としては、久保さん外の提出をしておりまする交通安全基本法というものをごらんになったことはありますか。
  4. 床次徳二

    床次国務大臣 久保委員その他の提案されました基本法並びに私ども政府の提案いたしました基本法を比較をいたしておりまするが、私は趣旨におきましてはほとんど同じところをねらっておると考えております。若干、機構等におきまして異なったところがありますが、政府といたしましては、やはり実際の運用上から申しますと政府原案で十分であると考えております。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 それでこの交通安全対策基本法そのものずばりが交通安全のいろいろな施策というもの、対策というものが中心になにされておるわけですけれども、たとえば自動車排気ガスの問題、これだけ交通量が多くなって、自動車から出てくる排気ガスで、たとえば甲州街道大原交差点なんかでは大原ぜんそくといわれるほど亜硫酸ガス許容量がいつもこえておるというような状態で、自動車公害に悩まされておるわけですが、これは交通安全というものを広い意味に解釈すれば、やはり亜硫酸ガスによる公害というものもこの基本法の中で取り締まるなりなんなりの対策を講ずべきでないかと思うのですが、その点については政府案に非常に不備な点があるように思うのですが、この点どうですか。
  6. 床次徳二

    床次国務大臣 自動車排気ガスの問題につきましては、今日大気汚染という立場に立って、いわゆる公害対策の対象になっておるのであります。したがいまして、メーカという立場におきましては十分考えなければならないわけでありまして、この点につきましてはやはり公害対策立場ではありまするが、しかし同時に交通安全から申しましても関連いたしてまいりますので、十分連絡はとってまいりたいと思います。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは通産省山下さんにお伺いをいたしますが、何か排気ガス規制については通産省のほうではメーカーのごきげんをおもんぱかってか運輸省なんかが申し入れる、あるいほ警察庁から申し入れる、排気ガス規制するような装置についての指導というか、そういうようなことを非常に遠慮しておるように、新聞紙上では報道されるわけですが、排気ガス規制について通産省ではどういう対策をとられておるのか。
  8. 山下英明

    山下説明員 通産省は、排気ガス規制について、自動車工業会等を通じ、きわめて積極的に指導してまいったつもりでございますが、この九月一日から実施する前から、自主的に業界の申し合わせで、できる限り含有率を下げるように努力しておる次第でございます。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 含有率を下げるようにできる限りということは、これはいつの場合でもやっておることであって、排気ガス規制をこのくらいの程度にというような申し入れをしても、なかなか通産省のほうでは、自動車メーカーのことを考えて、そこら辺の対策というものは非常に不十分であるという巷間のうわさというか、話ですけれども、けさの、たしかサンケイ新聞にも、排気ガス公害の問題の中でも、通産省排気ガス規制については、いわばメーカーのごきげんとりのようなかっこうで、なかなか思うような規制措置を講じない、こういうようなことが載っておったんですが、そういう事実はないのですか。
  10. 山下英明

    山下説明員 CO排出比率を二・五%以下にするということで、実施は九月一日でごさいますが、それ以前から、新型車につきましては強力な指導をしております。現在私どもの入手した資料によりますと、新型乗用車の場合には全機種について八割以上その自主規制目標が達成できるのじゃないか、またトラックその他の機種については七五%以上実施できるのではないかという実情でございます。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 欠陥車の問題が非常に大きく取り上げられて、当委員会でも参考人を招致する等で、ずいぶん究明したわけですけれども、そのときの欠陥車対策というようなものがもう一段落終わったというような感じがするわけですが事実これくらいの期間欠陥車の処理ができたというわけではないのだろうと思うのです。  そこで警察庁にお尋ねしますが、いままで起こった事故の中で、欠陥車による事故というものを全国的に調査されるというようなことがいわれておったのですが、いままで交通事故として、いわゆる運転者の不注意による事故ということによって処罰をされ、あるいは処理されたもので、欠陥車にその原因があったというものがどれくらいあったのか、その辺、調査の経過を御報告願いたいと思うのです。
  12. 久保卓也

    久保政府委員 私どもで全国に調査を命じましたのは、六月下旬でごさいます。そして、六月までの整備不良車両として送検されたもの、検挙したもの、もしくはそれ以外でありましても、車に原因があると疑わしい事件について調査をするように、特に構造上の欠陥に基づいて事故が生じたものがあれば、その具体的な内容について出すようにということを命じておりますが、期間は七月一ぱいであります。したがいまして、昨日現在で私どもの手元に参っておりますものは四件でありますが、四件のうち三件は該当項目なしであります。一件、京都につきましては、一つだけことしの三月にニッサンエコーのマイクロバスの事故がありまして、これはいわゆる欠陥車に該当する事故でごさいまして、構造上の欠陥によって事故が起こっておるのかもわからないという疑問があります。したがいましてこの件につきましては、実は欠陥車問題が起こります以前の事件でありましたが、すでに科学警察研究所で鑑定を行なっておりますが、まだ結論は出ておりません。したがって、この四つの府県以外にはまだ該当事項についての調査がまとまっておりません。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 実際問題としていままで警察交通事故取り締まりを受けたものがおって、それでその欠陥車責任があっても、そのことは欠陥車責任があったという究明まではなかなかなされずに処理されたものが多いと思いますし、実際上いままでの事故を総点検しても、欠陥車事故によるものかどうかということについては、いまお話しのようにほんとうに出てこないと思うのです。そこでこれは今後においても、欠陥車というものについては、あくまでも欠陥車を売り出さないような処置ということ。そこがそうなりますと、運輸省のほうで非常にきびしい検査というものが行なわれなくてはならないと思うわけです。今後も欠陥車を出さないように検査基準をきびしくするとかいうようなことが、もろもろ断片的に報道されてきたわけです。たとえば新しい車を売り出す場合には三万キロ程度のものを一つ検査基準にする、三万キロ走らしてみて、そこに事故がなければというようなこともいっておったんですが、そういうことにきまったのかどうか。いわゆる欠陥車を出さないような自動車製造基準というか、整備基準というようなものをどういうふうに定めてメーカーに指示してあるのか。その点ひとつ自動車局のほうで説明願いたいと思います。
  14. 堀山健

    堀山説明員 欠陥車未然に防止するということが一番大事なことであろうかと思います。したがいまして、このたびのことから考えまして、いかにして未然にこれを発見するかということを現在検討しておるわけでございます。  それでいま御指摘がありましたように、欠陥車をいろいろ分析しますと、いわゆる初期故障といいますか、車をつくってわりに年齢の早い時期に相当な欠陥部分が出ておるということが立証されましたので、従来と変えまして、ある一定の距離を走行した後にいろいろなトラブルが発生する、それを踏まえて検査をする、こういうことを現在検討しておるところでございます。これは具体的にどういう条件でどのように走らせるかということにつきましてはいろいろな角度から検討しなければなりませんので、具体的な数値その他についてはなお慎重に検討したいと思います。  それから検査の実務にあたりましては、従来私ども検査要員が不足しておりますので、この際自動車審査センターというものをつくって、そこへ集中的に技術官を集めて審査をする、このような形を考えております。  それからもう一つ現実事故が起こって、これが車両欠陥であるかどうかという認定の問題につきましては、従来警察のほうでもそれぞれ私どものほうに通告があったこともございます。しかし今後連係いたしまして、疑問の点については、私ども協力して、欠陥であるかどうかということの認定について積極的に発見につとめていきたい、かように考えております。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 大体欠陥車ということで大きく騒がれるとメーカーも一生懸命になるしあるいは運輸省も一生懸命になる、警察庁も一生懸命になるというようなことになるわけですけれども、これが一応世論が落ちつくというと検討検討で時をかせぐということになるわけで、毎日何百台もの車が製造され、何百万台の車が走っておるわけなんですから、そういうことについては、いままで出されてきた欠陥車内容から考えて、検査基準あるいは車両構造基準とかいうようなものについては、明確な指示を早くなすべきだと思うわけです。  そこで欠陥車の出ておったいろいろな欠陥部分は、大体下請企業で製造する部品にあったんではないかということがいわれておるんですが、この点は通産省のほうではどう把握されておるのですか。
  16. 山下英明

    山下説明員 欠陥原因につきましても全資料を点検中でございますが、大きく分けまして設計上の不備、そのほか材質、部品の不完全というぐあいに分かれておるようでございます。全体から見ますと部品そのもの不備というのは比較的少ない率になっております。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 それじゃ一体どういう点が一番欠陥の率が多かったのか、説明していただきたい。
  18. 山下英明

    山下説明員 自動車メーカーのほうでそれぞれ設計いたしましたときに、構造上このほうがいいだろうと思ったのが、予想外の点で不備な点が出てきた。いわゆる設計構造上のミスというのが、私ども調査では過半、約六〇%になっております。つまり設計のとき、当初からここはビニールでいいだろうと思ったがための不備が約五、六%、組みつけ上の不備が一割弱、加工上の不備が一割弱、ごくわずか品質管理上のミスがございます。  いま申し上げたのは大体メーカー側不備と私どもが見るものでございますが、これと別に、先ほど先生指摘のいわゆる下請部品メーカーのほうで注意すべきだったでないかというものは一五%ぐらいあったという調査でございます。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 一台の自動車にどれだけの製造原価がかかるかというようなことは、当委員会で確かに久保さんか板川さんかだれか資料として要求したと思うんですが、それは出さなかったでしょうか、出したでしょうか。ぼくはいただいていないわけですが、大体自動車メーカーはあまりもうけ過ぎておるということと、それから下請業者に対して非常にきびしい規制をやるというようなことがこの欠陥車を生み出す大きな原因であるというようにいわれておるのでありますけれども、その点についてはいまの通産省説明では、下請業者でなしに直接メーカーのほうの責任に基因するのが非常に多い。こういうことでありますが、それじゃその大手メーカーについて、その辺の規制というものを今後において十分責任を持ってやっていけるのかどうか。あるいは通産省としては、下請メーカーをあまりにも締めつけておる、こういうふうな状態というものを考えてないのかどうか。自動車下請業者に対する締めつけ状態というものについては、下請業者をそれほど締めつけておると思っていないのか、おるのか。そういう点についての説明を願いたいと思います。
  20. 山下英明

    山下説明員 自動車メーカーの競争が激しいという点は先生指摘のとおりでございまして、そのために過去三年、四年の間は、生産量の増大に伴う合理化コスト切り下げを進めてきたわけでございます。ただ半面、何といっても自動車という大衆消費商品でありますだけに、この車は安全だという使用者の認識が販売そのものにも大きな要素であり、むしろ第一の要素となっておりますので、生産メーカー自分販売のためにも自動車安全性注意してきたわけでございます。  御指摘の第二点の下請関係につきましては、十数社のメーカーに対して第一次部品業者と称するものが三百五十ないし六十社ばかりございましたほかに、さらにその下請になりますと私ども調査では八千社に及ぶわけでございます。そういう膨大な下請業者から部品あるいは鋳造、鍛造をしてきた品物をメーカーが受け入れますときには、きわめて厳密な品質検査をしておる現状でございます。  値段につきましては、これは私どもも非常に関心を払っておる点でございまして、自動車業界だけが特に下請業者に対して値をたたくという実情があるかどうか、去年もまたことしも調査をしております。  そのほか御案内のとおり下請代金支払遅延等防止法に基づいて、その支払い手形が不当に長くなっているかどうか。そういう点も私どものほうで定期検査をしておるわけでございます。もちろん個々の場合で注意、勧告する場合がございますが、現在自動車業界が、他業種と違って特に下請に対して不当な圧迫を加えているという全般的な実情ではないと判断しております。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 自動車下請は、いまあなたが説明されたのでも三百数十社、さらにまた約八千社、こういうふうな数字が出ておるわけですが、原価を安うせよとか、それらに対するメーカー締めつけというようなものがずいぶんきびしいように承知をするわけです。  そこで、そういうことをここで論議しておっても時間をとりますし、その時間もありませんので、その辺の論議はさておくわけですけれども、一応一台の自動車を、つまりトヨタ日産ですから、トヨタ日産二つの車なんかをつくるのに、一体メーカーが直接つくっておるのがどの部分で、どういうふうにしておるのか、それから下請にはどういうものを出しておるのか、そういう一台自動車ができ上がるまでの部品下請に出しておるもの、メーカーがやっておるもの、そういうものをひとつ図標に示すなりあるいは資料として示すなりしてお示しを願いたいと思います。ずいぶん下請業者というものが大手メーカーに苦しめられておるということは私ども承知をしておる。その点についての問題点をまた何らかの機会に追及をしていきたいと思います。そしてメーカー自身欠陥車というものについての自己反省というものが非常に少ないということはずいぶん指摘をされたと思うので、なお通産省のほうでは十分メーカーのほうの監督というものをきつくしないと、やはり公害一つ必要悪というようなことばまで飛び出すような結果になると思います。自動車排気ガスがこんなに出るのも、これを一つ公害として認める前に、これはやむを得ぬ必要悪だ、こういうふうなことば政府当局者の間からも出るようなことであってはならないと思います。やはりこの自動車排気ガス規制のできるものは規制をして、一般の国民に公害を与えないように指導していくのが行政官庁としての任務だと私は思うのです。  そこで最後に一つ。最近警察庁子供の学校の暑中休暇をなにして、道路一つ子供遊び場に提供をするというようなことがずいぶん報道されておるわけですが、これは思いつきとしては私は非常にけっこうなことだと思うわけです。ところが現実にそういうふうなことが別段法律によっては——交通のひんぱんなところでは遊んではいけないと書いてあるけれども、ひんぱんでないところは遊んでもかまわぬ、こういうことにはなっていないわけですね。しかし道路というものは人の通るところだから、警察庁道路一つ遊び場のような形に設けて、そこで子供が遊んでおって、もし事故でも起こるというようなことがあればたいへんなことになると思うのですが、その辺どういうふうなお考えのもとに道路子供遊び場としてつくろうとお考えになっておるのか。その点警察庁のほうから御説明を願いたいと思います。
  22. 久保卓也

    久保政府委員 実質は子供の、特に今回は夏休み期間中における遊び場を確保しようというねらいでありますが、ただ法律の上ではそういうことを意図するわけにはまいりませんで、結局子供のよく出てくるようなところについては、交通の安全上支障があるということで、車の通行禁止ないし制限をしようということであります。ただもちろん交通ひんぱんな道路についてそれをやろうというわけじゃありませんが、裏通りあたり迂回路があり、しかも交通がそれほど多くはない、しかも、あまり長距離でありますとどうしても車の交通にも支障があろうと考えますので、比較的短路で短い距離であるといったようなところを、各警察署において地域住民、車の関係者などとよく相談をして、警察庁がこれを押しつけるということではなくて、地域住民などからの要望があるようなところをくんで、そういうところを指定をして車を制限していきたい、こういうことであります。私の本心といたしましては、こういったような施策というものが評判がよければ、その結果を待って逐次拡大もしくは期間を年間延長してみるというようなことも考えてみたい。いずれは道路交通法の改正の際にはそういう趣旨もくんだ法の性格にしていきたい、こういう感じを持っております。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 表通りは交通規制がきびしいからといって裏町通りなんかへどんどん車が入ってくる。そういうところでは子供の非常に危険性というものがあるわけなんで、そういった点を警察庁のほうで、全国的に子供の多い裏町地域交通規制をするというようなことは、これはぜひやっていただきたいと思うわけです。  そこでそういうふうな規制をするのと同時に、交通取り締まりというものが、交通警察官だけではなしに、やはりもっと前の、昨年あたり交通安全の委員会でも私言ったのですけれども、普通の一般警察官は、明らかに違反の場所に駐車をしておる車を見つけても、ほとんど知らぬ顔をして通る、あるいはあれはどうも違反車であるというようなことがしろうと目で見ても歴然とするような車でも、警察官としては往々にして見過ごしておる、いや自分交通警察官でないから——たとえばこの間も国会の前で工事をしておるダンプカーを見ると、ほんとうにおんぼろなダンプカーで、ああいうものは整備基準なんか全く通っていないと思う。ああいうふうな車でも、これは車検のほうは運輸省関係だから、別に警察官がどうこうすることはないという気持ちで見てないのか、ああいう場合でも、車を停止でもして見てみれば、私はあんなぼろの車が堂々と国会前で土砂の積みおろしをするとかいうようなことは考えられぬ、こういうように思ったわけですけれども、やはり交通取り締まりというものは交通警察官だけでやるのではなしに、もっと警察官としてその辺を能率的に仕事をするような配慮ができぬものかどうか、その点交通局長に御答弁願って、質問を終わります。
  24. 久保卓也

    久保政府委員 東京などは交通係警察官相当数おりますから、まだよろしいと思うのでありますが、その他の府県にありましては、交通係が非常に少ないので、外勤人たちにやらせるわけです。ところが、外勤人たち駐車違反取り締まりをやります場合には、本来警察官地域住民協力関係を非常によくするというような一つ要請があって、そういうところから、警察の活動に対する協力、捜査の効率をあげるというようなことに寄与するわけでありますが、半面駐車違反でも、たとえば地域住民の人の駐車違反あるいは商店主駐車違反などになりますと、それを取り締まることは、結局その人の反感を買うということになって、受け持ち区を持っている外勤駐車違反取り締まりを厳密にやらせるということは案外困難な面があるのではなかろうか。つまり警察官心理外勤警察官に対する要請の面から言うと矛盾する面もあるというような感じも実は私もし始めたわけであります。そこで従来駐車違反取り締まりにつきましては年間六十万件やっておりますので、相当数にはなっておりますけれども心理面から申すと、外勤に十分やらせることに期待を持つことは必ずしも万全ではないという気持ちを持つに至りました。そこで考え方といたしましては、むしろ警察署に直轄の外勤つまり受け持ち区を持たない外勤をつくって、その人たちに組をつくって定期的に管内を回らせて駐車違反取り締まりをやるということになりますと、地域住民とのつながりが必ずしも関係がありませんので、駐車違反取り締まりが現在よりよりよくできるのではなかろうかという気持ちでおります。そういう方向を考えたい。  それからいま一つ、来年の問題になりますけれども警察官でない一般職員交通巡視員制度を設けまして、これによって駐車違反取り締まりであるとか交通整理であるとかそういうことをやらせる。これは駐車違反専門でありますから、常時回って駐車違反取り締まりができるという、この両々相まってやることによって、駐車違反取り締まりがより効率的にできるのではなかろうかという感じがいたします。  それから整備不良車の問題でありますが、この点は常時警察官がやるのについては必ずしも十分な能力を持っていない者もおりますので、現在普通にやっておりますのは陸運事務所と連携を保ちながら計画的にやっておる。期間を何日か日を定めてやるというような形でやっておりますので、往々見過ごされておる面があるのかもしれませんが、警察官がやります場合にはハンドル回りとかブレーキ関係とかあるいは外見上ライトの破損があるとかいう点に着目しておりますので、十全でないかもわかりません。この点はいま申し上げました制度の活用と陸運事務所の連携とによって効率をあげてまいりたい、かように考えております。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 終わります。
  26. 内海清

    内海委員長 小川三男君。
  27. 小川三男

    ○小川(三)委員 最初に、この交通安全対策基本法案にも、それから社会党の提出している交通安全基本法案の中にも陸海空にわたっておるわけですが、私は主として空の交通安全についてお尋ねしたいと思います。  ここに都道府県交通安全計画として、都道府県交通安全対策会議は主として陸上交通の安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱等について定める、こういうぐあいに規定してございますが、そうすると、この都道府県交通安全対策会議は空の問題あるいは海の問題については全然触れないということになりますか。
  28. 床次徳二

    床次国務大臣 いまの都道府県交通安全対策会議におきましては一応陸のことが中心になりますが、空及び海の問題につきましては協議会というものを別個に組織しておりまして、そうして専門に安全対策を協議するように考えております。
  29. 小川三男

    ○小川(三)委員 では、運輸省の航空局の方に伺いますが、航空規制については、防衛庁は防衛庁、米軍は米軍、民間航空は民間航空、三者かってな航空管制をやっているのか、あるいは総合した計画のもとにやっているのか、その点を伺いたい。
  30. 川上親人

    ○川上説明員 航空管制につきましては、いま一元的に運輸大臣の所掌ということになっておりまして、運輸省が一括して航空管制を行なっております。ただし航空法の規定に基づきまして、自衛隊の使用いたします飛行場におきましての管制は一部運輸大臣の権限を防衛庁長官に委任をいたしまして、その委任の中で防衛庁が行なっているという形でございます。また米軍に提供いたしました飛行場につきましては、地位協定第三条に基づきます合同委員会を通じての両国政府間の協議によりまして、米軍自体がみずから飛行場並びにその周辺におきます管制を行なっておるわけでございます。これが現在の航空管制についての姿でございますが、防衛庁に委任しております内容につきましては、別途航空法及び航空法施行令に基づきます運輸省及び防衛庁との間の覚え書きによりまして飛行場周辺の管制を委任いたしますけれども、委任いたしましたその管制について運輸大臣が統括する責任を依然として有しております。米軍との関係につきましては、航空交通管制権が国の主権の発動であるという立場から、委任をいたしておりません。ただ、米軍自体の航空機に対するいわば自家管制と申しましょうか、いわゆる航空法上の管制でない管制に類似する行為としてやることを認めておる、こういう姿でございます。
  31. 小川三男

    ○小川(三)委員 いまの答弁の中に、自衛隊は自衛隊の飛行場の周辺の管制は運輸大臣から委任された形で行なっている。そうすると、演習やその他でやっていることも、運輸省のほうとしては何回飛んで、どういう高度で、どういう演習をやっているかということを掌握しておるわけですか。
  32. 川上親人

    ○川上説明員 ただいまの御質問は、飛行場及びその周辺区域におけるものは委任してある、ただしその飛行場から飛んで他の演習区域に行くような場合の航空機の運航について運輸省で把握しておるかというお尋ねかと存じます。そのことでございますと、運輸省としては十分把握をいたしております。
  33. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、あなたのほうで委任してある自衛隊の飛行場の管制空域、高度はどの程度になりますか。
  34. 川上親人

    ○川上説明員 自衛隊に委任いたしておりますその内容につきましては、飛行場の管制、それから飛行場によって少しずつ違ってまいりますけれども、進入管制あるいは飛行機の誘導管制、さらに場合によりましてはターミナルレーダー管制というようなところまでを委任している場合がございます。そういった委任いたしております空港は現在二十九港あるわけでございますが、その空港の中におきましては防衛庁自身が行ないますけれども、その航空管制委任をいたしております空域から他の空域に出ます場合、これは一般の運輸大臣の行ないます航空管制の直接の管轄下に入ってまいりますので、そういった場合については運輸省としてはフライトプランその他を受けまして十分に把握しているわけでございます。
  35. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、具体的に言ってたとえば百里基地あるいは立川なら立川の空域はどういうことになりますか。立川の飛行場の標点を中心にしてですね。
  36. 川上親人

    ○川上説明員 一番広く委任されておりますものが、ターミナルレーダー管制を防衛庁に委任している場合の例かと思いますが、そういった場合、おおむね空港周辺六十マイル以内という空域が委任されている範囲でございます。  先生お尋ねの立川につきましては、これは米軍提供の飛行場でございまして、自衛隊の飛行場ではございません。
  37. 小川三男

    ○小川(三)委員 だったら、たとえば百里基地なら百里基地の標点があるでしょう。これを中心にして空域はどれだけあるのか、それから高度……。
  38. 川上親人

    ○川上説明員 百里基地につきましては、大体空域は六十マイル半径の中が委任されております。高度につきましては、現在のところ特別な定めをされておりません。ただし、将来新空港ができますと、今度はその空域の高さにつきまして別途防衛庁との間に協定が必要になろうかと考えております。
  39. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、六十マイルの空域外に自衛隊の飛行機が出た場合に、あなたのほうでそれはどういう処置をされているのですか。一一それを掌握できますか、自衛隊の飛行機が演習している場合。
  40. 川上親人

    ○川上説明員 先ほど私、ちょっとことばが足りなかったのでございますが、計器飛行状態で飛びます場合と有視界飛行状態で飛びます場合と、飛び方に二通りあるかと思います。有視界飛行状態で飛びます場合には特に管制の対象になりませんので、これは特別に把握されることないと存じます。気象状態が非常に悪いというようなそういう計器飛行状態におきましては、これは必ず運輸省の行なう管制の中に入ってくるわけでございまして、運輸省の管制に服するという形で運航してまいります。
  41. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、計器飛行の場合には運輸省の管制の中に把握されるから、それはあなたのほうで指示しているのであって、有視界飛行の場合にはそれじゃあなたのほうでは全然管掌してないのですか。
  42. 川上親人

    ○川上説明員 有視界飛行状態におきます航空機の飛び方につきましては、民間航空機、米軍機、それから防衛庁機、いずれを問わず特別な管制はいたしません。航空法上管制をする場合といいますのは、計器飛行状態において管制をするわけでございまして、そういった場合以外においては管制は原則としてしない、こういう形になっております。
  43. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、実際問題としてはアメリカ空軍のものは向こうの自家管制でやっている。それから防衛庁の場合は、実態としてあなたのほうで完全に掌握できているのですか。たとえばきょうの日ならきょうの日にどこの自衛隊の航空機が何機どういうような高度でどういう演習をやったかということについての報告なり管制は掌握できておりますか。
  44. 川上親人

    ○川上説明員 どういう訓練をやったかというところはわかりませんけれども、どういう高度で何時にどういう飛行機が飛び立ってどの飛行場からどの飛行場まで飛んでいったとか、あるいは行き先をどこにして飛んでいったかということにつきましてはあらかじめフライトプランを受理いたしまして、それによってチェックしておりますので、その限りにおいては把握できております。
  45. 小川三男

    ○小川(三)委員 その期間はどうなるのですか。たとえばきょう飛行する場合に、それはいつあなたのほうに飛行計画なり何なりを提出するようになっておりますか。
  46. 川上親人

    ○川上説明員 フライトプランは大体即時的なものでありまして、飛ぶ前にフライトプランを出しまして、実際に飛行する直前に承認を受けて、そうして飛び立つ。その間に時間的なズレというものはそんなにないはずでございます、大体フライトプランを出しまして承認を受けて飛び立つ、こういう形になりますので。
  47. 小川三男

    ○小川(三)委員 航空法の第二条には「この法律において「航空機」とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう。」という規定がありますが、無人機はどういう範囲内でこれを押えていますか。
  48. 川上親人

    ○川上説明員 現在航空法のたてまえにおきましては、航空機というのは、いま先生おっしゃられますように、人が乗って航空の用に供することができる航空機、その他のものをいうことになっております。それを対象とした航空法でございますために、無人機についての規定は、航空法においては航空機としての取り扱いはなされておりません。したがって、それにつきましては、航空機として必要ないろいろな規定は、無人機についてはかぶってこないということになろうかと存じます。
  49. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、米軍が無人機を飛ばしていることについては、あなたのほうでは最初米軍は自家管制をやっているということであったのですが、そうすると、米軍が無人機を飛ばしていることは米軍のかってであって、あなたのほう、日本の政府としてはそれは掌握していないということですか。飛行機として扱うしかないでしょう、無人機であっても。
  50. 川上親人

    ○川上説明員 無人機を飛ばしているケースがあるかどうかについても、実は存じませんのですけれども、航空機としての管制の対象として無人機はなっていないわけでございます。ただ無人機を飛ばすことがあるかどうかについては、遺憾ながら私存じません。
  51. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、この国際民間航空条約の第八条には「無操縦者航空機」という規定があるのですが、この無操縦者航空機というのは、無人機をさしていうのじゃないですか。
  52. 川上親人

    ○川上説明員 まことに失礼いたしました。私さっき申し上げたこと少しことばが足りなかったといいますか、間違っていたかと存じます。航空法の第二条の第一項に「人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機」その他というふうになっておりまして、これは人が乗って航空の用に供することができるということでございます。現に人が乗っている飛行機だけというふうには限定されておりません。したがって、無人であるという場合におきましても、その飛行機に人が乗って航空の用に供することができる場合においては航空機ということになります。その辺につきまして、ちょっと私誤解をいたしておりましたので、訂正を申し上げたいと存じます。
  53. 小川三男

    ○小川(三)委員 「人が乗って」という意味は、操縦するかしないかではなくて、ただ人が乗っておればいいということですか。航空法の第二条の規定は当然操縦する人が乗って操縦し、飛行することをさしていうのじゃないのですか。
  54. 川上親人

    ○川上説明員 航空法の八十七条に「無操縦者航空機」という規定が実はございます。これを読みますと、「第六十五条及び第六十六条の規定にかかわらず、操縦者が乗り組まないで飛行することができる装置を有する航空機は、」云々とございまして、航空機乗り組み員を乗り込ませないで飛行させることができるという規定がございます。この場合には操縦者なしの航空機ということになるわけでございます。したがいまして、先生いま御指摘のような無操縦者の航空機ということがあり得るわけでございます。
  55. 小川三男

    ○小川(三)委員 この無操縦者の飛行機が飛んでおる事実をあなたのほうでは全然掌握してないのですか。アメリカ空軍が無人機を飛ばして偵察飛行をやっていることをあなたのほうは全然掌握してないのですか。
  56. 川上親人

    ○川上説明員 米軍の航空機につきましても運輸省の行ないます管制には服しているわけでございます。いわゆるフライトプランというものは出してくるわけでございます。いままでフライトプランを受理した例の中に無操縦者による航空機の運航ということはなかったように承知いたしております。
  57. 小川三男

    ○小川(三)委員 厚木から飛び立って中国大陸で撃墜されている飛行機があるでしょう、無人機が。あれは明らかに厚木から飛んでいるのですよ。こういう場合、これは無人機が飛ぶということについてアメリカ空軍はあなたのほうへ一々出しているのですか、いないのですか、その点。
  58. 川上親人

    ○川上説明員 従前私どものほうに提出されますフライトプランにおきましては、そういう例をいまだ承知しておりません。
  59. 小川三男

    ○小川(三)委員 どうもおかしいですよ。  それから国際民間航空条約の第八条には、「操縦者なしで飛行することができる航空機は、締約国の特別の許可を受け、且つ、その許可の条件に従うのでなければ、その締約国の領域の上空を操縦者なしで飛行してはならない。各締約国は、民間航空機に開放されている地域におけるそのような無操縦者航空機の飛行が、民間航空機に及ぼす危険を予防するように管制されることを確保することを約束する。」こういう条項があるでしょう。そうすると、無操縦者の飛行機が厚木から飛び立てば日本の領土内、日本の領空を飛んでいるのです。この場合に、「締約国の特別の許可」のこの「締約国」というのは、一体どういう形で米軍を掌握していますか。
  60. 川上親人

    ○川上説明員 私どものほうに提出されておりますフライトプランでは、いまだそういう例を承知いたしておりませんので、そのようなことはないのではないかと存じます。
  61. 小川三男

    ○小川(三)委員 しかし無人機が日本の領土から飛んでいるということをあなたのほうが全然知らないなんということはあり得ないですよ。それはおかしいですよ。  それじゃあなたのほうでなく、防衛庁の方に伺いますが、防衛庁としてアメリカの無人機が日本の領土、日本の領空の中を飛んでないというふうにあなたのほうで否定できますか。
  62. 安田寛

    ○安田説明員 私も、運輸省がお答え申し上げましたように、そのような事実を承知いたしておりません。
  63. 小川三男

    ○小川(三)委員 これは、米軍が無人機を飛ばして北朝鮮やそれから中国大陸の領空で現に撃墜されているでしょう。あの飛行機は一体どこから飛んでいるかといったら厚木から飛んでいるということは明らかでしょう。それを全くわかってないとほんとうに否定するのか、それともここで発表できないからそう言うのか、その点どうなんです。
  64. 川上親人

    ○川上説明員 およそ米軍機でございましても、先ほど申し上げました自家管制をやっている限定された空域以外におきまして計器飛行状態で飛ぶ場合、あるいは計器飛行状態でなくてもその他の空域に飛ぶ場合には必ずフライトプランの提出があるわけでございます。その限りで私ども承知しているところにおきましては、そのような例を承知していないと申し上げているわけでございます。これにつきましてはフライトプランは必ず出されているはずでございます。また出されなければ航空の安全というものが期待できませんし、そのようなことについてフライトプランの提出がないとは考えないわけでございます。
  65. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、あなたのほうへ米軍が出してきたフライトプランの中には、無人機を飛ばしているという報告は何にもないわけなのですね。
  66. 川上親人

    ○川上説明員 御説のとおりでございます。
  67. 小川三男

    ○小川(三)委員 では、この民間航空条約の第八条の解釈について、運輸省としてはどういうぐあいに掌握されていますか。
  68. 川上親人

    ○川上説明員 先生御引例になられました民間航空条約は、民間航空についてのみ適用のある条約でございます。国の航空機については元来適用がございません。したがいまして、八条の関係につきましては、国の航空機についてこれは全然無関係でございます。
  69. 小川三男

    ○小川(三)委員 現在民間航空機の中で無操縦者の飛行機はありますか。
  70. 川上親人

    ○川上説明員 現在の段階におきましては、民間航空機におきましていわゆる無人機というものはございません。
  71. 小川三男

    ○小川(三)委員 これは委員長資料として出してもらいたい。米軍が出しているフライトプランの中には全然ないと言って運輸省のほうでは否定されている。これは調査の結果日本の領土内から飛行しておったらどうします。これについての資料を日本政府として出してもらいたい。無人機のですよ。日本にある米軍の飛行場から飛び立っているのかいないのか、その点について資料を出してもらいたい。
  72. 内海清

    内海委員長 承知いたしました。
  73. 川上親人

    ○川上説明員 米軍の行動の内容について個々的に資料として提出できるかどうか、これにつきましては外務省その他米軍とも相談をいたしまして、差しつかえなしとなったときには提出させていただきたいと存じますけれども、軍機に属するものでございますと、私これは提出できないのではないかと存じます。
  74. 小川三男

    ○小川(三)委員 さっきからあなたのほうでは、アメリカも自家管制はやっているけれども、フライトプランは全部私のほうへ提出している、こう言っているのでしょう。ですから提出以外のものがあるかどうかという点ですよ。これをあなたのほうで掌握していなければ、無人機は明らかにフライトプラン外として、彼らが秘密にかってに飛ばしているということですよ。日本の領空をあなたのほうで管制できないということです。これは重大な問題ですよ。
  75. 川上親人

    ○川上説明員 ただいまの先生の御質問につきましては十分に検討させていただきたいと存じます。
  76. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 関連して。あなたには検討する資格もないのかもしれませんよ。フライトプランを見ると航行していないというのがあなたの答弁ですね。ところがいろいろと国際的な情報、それから日本における新聞の掲載、こういうものから見ますと、日本の基地を飛び立った無人飛行機が撃墜をされておるということが記事に出ておるのですからね。やはりそういう客観的な一つの事実行為があるのですから、少なくとも、米軍のほうからあなた方のほうにうそをついたのか、軍機に属することでそういう資料提供はできないという立場なのか、そのことを明確にしてほしい。しかしあなたのいまの認識ではそのことも明確にできないのだから、これはひとつ外務省でもけっこうです、自衛隊も含めて一ペん米軍のほうに、こういう事実行為が国会指摘されたが、一体この真偽についてはどうなのかという問い合わせをして、その結果を報告してほしい、こういう資料提供を求めておりますから、そのようにひとつお願いします。委員長よろしいですね。
  77. 内海清

    内海委員長 承知しました。
  78. 小川三男

    ○小川(三)委員 では、海域については領海がありますね。空域についてはどういう形になっていますか。日本の国土と日本の空域ですよ。
  79. 川上親人

    ○川上説明員 領空の範囲いかんという御質問かれと存じますけれども、これは領土及び領海のそぞれの上空、これが領空の範囲だと存じます。
  80. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、海域と空域との点はどういうことになりますか。
  81. 川上親人

    ○川上説明員 いまも申し上げましたように、領海の上空が領空だというふうに存じます。
  82. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、高度はどこまで……。
  83. 川上親人

    ○川上説明員 高度につきましては無制限であると思います。
  84. 小川三男

    ○小川(三)委員 無制限というと、国際的な通念でのものもないのですか。全くの無制限、大気圏を越えてはるかなまで制限がないということですか。
  85. 川上親人

    ○川上説明員 一般に所有権というのは地上、地下無限に及ぶというように解釈されているわけでございます。そういうふうに、領空の問題につきましても制限がなくて、どこまで実際に技術的にそれを活用することが可能かという問題は別といたしまして、所有権としてならば無制限であるというふうにお答え申し上げるのが筋ではないかと思います。
  86. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、たとえば外国機が日本の領空を侵犯したという場合には、領空侵犯によって撃墜されている例があるでしょう。ついこの間、現に北朝鮮でアメリカの空軍機が撃墜されているでしょう。ああいうような場合に、上空について全く制限ないということですか。おかしいですよ、それは。
  87. 川上親人

    ○川上説明員 非常にきつい御質問なんでございますけれども、いま物理的に考えられる通念的な空域というものは、現実にはあるだろうと思います。ただ所有権——領空の範囲というのはどこからどこまでか、法律的に上空の範囲というのはどこまでかといわれますと、それは一応無限大といわざるを得ないと思うのでございます。ただその中を人工衛星が通っていったからといいましても、実際には領空侵犯としての扱いにはならないだろう。まずその辺は常識的に判断される問題ではなかろうかと思うのであります。
  88. 小川三男

    ○小川(三)委員 この間、ソ連の飛行機が接近してきたでしょう。銚子沖で東へ旋回していった。あの場合に自衛隊の飛行機が二機緊急発進しているでしょう。それは日本の領空を侵されたら、何か対策を立てるために緊急発進をしているのでしょう。したがって、領海と同じような領空の空域外を飛んでいたのだから問題ないとして、あれが上空というものは無制限である、それじゃ一万キロであったら差しつかえて、一万五千キロであったら差しつかえないのか。無制限であるということであったら、あのソ連の飛行機が日本の領土を横断していったら一体どういうことになりますか。その制限がなかったら領空侵犯ということはあり得る。どこまでも無制限であるということなら、どんな高度を飛ぼうと日本の領土を侵したということになって、日本の政府は抗議しなければならない。そういう点、どうなんですか。
  89. 安田寛

    ○安田説明員 私ども自衛隊法に基づきまして領空侵犯に対する処置を行ないますときは、まあ領空の観念については国際法上いろいろ議論もあるようでございますが、おおむね大気圏、航空機が通常飛び得る高さにおいて領空の侵犯という観念が発生する、こういうぐあいにいわれておりますので、私どもも非常に高空の、大気圏外の人工衛星のようなものについては考えておらないわけでございます。  先般のソ連機が太平洋岸、日本の近海に参りましたような事例につきましては、それ自身は領空の侵犯ではございませんが、領空の侵犯になり得る可能性があるということで、一応私ども警戒のために緊急発進をしたという次第でございます。
  90. 小川三男

    ○小川(三)委員 ですから私の聞いているのは、上空が無制限であったら、どんな高度であろうと日本の領空ということになるのか。学説なり国際的な通念なりというものがないのですか。その点について……。
  91. 安田寛

    ○安田説明員 国際法学者の間で、どこら辺までが領空として、またその領空の侵犯ということはどの辺の高さまでそういう観念が生ずるのか、いろいろ議論があるようでございますけれども、一応いずれの学説によりましても、非常に高空の、人工衛星の飛ぶような高さについては領空の侵犯という観念はないということに一致しているようでございます。
  92. 小川三男

    ○小川(三)委員 いや、私の聞いているのはルナやアポロの高度を言っているのじゃないのです。かりにソ連の飛行機が何万メートルの上空を飛んだ場合でも、領空の侵犯になるのか。その高度が問題でしょう。領空に入ってきたら警告もするだろうし、退去することを言うだろうが、高度の場合に一体どういうことになるのか。何もないのか。
  93. 安田寛

    ○安田説明員 私ども有効に対処し得るかいなかは別といたしまして、大気圏の中を通常の航空機が飛行いたしまして、日本の領土、領海の上空を通るときには領空の侵犯になると考えます。
  94. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、大気圏を飛んだ場合は日本の領空の侵犯になるというように理解してよろしいのですか。
  95. 安田寛

    ○安田説明員 大体そのように承知いたしております。ただ大気圏の高さということにつきましてはいろいろ学説もございますけれども先生のおっしゃるように、ほぼ大気のある空域について領空の侵犯ということが問題になると申し上げてよろしいかと思います。
  96. 小川三男

    ○小川(三)委員 それでは議題に返りましょう。  飛行機の事故は漸減しているというような報告もあるのですが、一たび起こればこういう航空機事故というものは非常に大きな損害を与えることになるわけです。それで航空機の事故によって地上に被害を与えた場合に、これは日本の領土内で日本の民間機の場合には当事者で問題を解決するとして、外国機が日本の国土内に損害を与えた場合にはどういうような対策が立てられますか。
  97. 川上親人

    ○川上説明員 航空機が墜落する、あるいは航空機から物件を投下して地上の人並びに財産に損害を与える場合の国際条約といたしましては、ローマ条約というものがございます。ただこのローマ条約に加入しているといいますか、批准をいたしまして、その国について効力を発生しているという国は、国際的にもまだきわめて少のうございます。ローマ条約に入っている国の航空機がわが国に参りまして、その航空機による事故が発生し、地上に落下した、あるいは物件を投下して地上の人または物に損害を与えたという場合におきましては、ローマ条約の規定による損害賠償は行なわれることになろうと存じますけれども、ローマ条約の非加盟国の航空機が参りまして、わが国の領土内において落ちたという場合に、人にあるいは財産に損害を与えた場合におきましては、わが国の民法の損害賠償の規定が働くものというふうに了解いたしております。
  98. 小川三男

    ○小川(三)委員 その場合、日本はローマ条約に入っていないのですが、かりに日本の個々の被害者が、たとえば相手国の飛行機会社に対して個々に交渉しなければならないことになるのか。それとも、いまはそういう状態になっておるそういう問題を、政府として処理する機関というものは持ってないのか。持とうともしないのか。その点どうですか。
  99. 川上親人

    ○川上説明員 ローマ条約におきましても、政府として相手国の航空機の運航者を提訴するというふうなシステムにはなっていないのでございます。被害者が提訴するというかっこうでございます。民法におきましても、被害者が行なうという原則であるわけでございます。まだ、国際的にも、国内的にも政府が制度的にその問題についてみずから提訴するというか、そういうふうな関係では考えられていないと思います。
  100. 小川三男

    ○小川(三)委員 そのために、ボーイングが富士山で墜落した場合も、乗客の損害について外国人のほうがはるかに有利な条件で解決がついておる。日本人のほうが非常に不利であったという例がある。こういう場合に、民間の個々の被害を、民間人が個々に外国の飛行機会社を相手に民事訴訟を起こさなければ解決つかない。なぜ日本政府がそういう場合に交渉すべき機関を持たないのか。ローマ条約に加入する加入しないは別として、そういうものを政府機関として処理する機関が必要でないのかどうか。
  101. 川上親人

    ○川上説明員 現在、民法の制度では、航空機の事故に限らず、たとえば汽車なり船なりの非常に大きな事故があったとした場合におきましても、被害者は個々的に裁判所に提訴するか、あるいは相互間の話し合いで解決をしていくか、こういうルールになっていると存じます。この件についてだけ、政府が入るということについて、妥当であるかどうか、それについても全般の制度の上からいろいろの検討をしなければならない問題ではなかろうかと思うのでございます。現在のところにおきましては、そのような制度はございません。ただ、実際にそういう航空機による事例が発生いたしました場合、航空担当のわれわれといたしましては、十分その被害者の立場というものを考えまして行政指導的な立場からいろいろのあっせんをするというようなことは十分あり得ることだと存じます。
  102. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると外国の民間機が、これは軍用機は別として民間機が日本の上空を飛ぶ場合に、あなたのほうの、日本の政府の管制圏に入るわけでしょう。管制圏に入る条件が付与されるはずでしょう。その中には地上に墜落した場合の発生した事故あるいは物件を投下させたような事故、地上に与えた被害については何らの制限もないわけですか。飛ぶことだけについての問題があって、地上に与えた被害については何らの制限も、何の条件もつけられていないのかどうか。
  103. 川上親人

    ○川上説明員 いまの先生のお話は、外国の航空機が参ります場合、管制に服しながら飛行してくるはずだ。地上に落ちた場合にまで管制というのは責任を持つのではないかというふうな御質問かと存じますけれども、管制は込んでいる状態につきましてそれが安全に飛ぶように、また他の航空機と衝突を起こさないようにしていくという目的で行なわれるのでございまして、地上における損害その他につきましては、管制行為というのは行なわれておりません。
  104. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、地上に何らか被害を与えた場合は、与えた時点で起こった被害について個々の被害者が、外国の飛行機会社なりを相手に解決つけなければならない。日本の政府はそれについては全く無関与である。関与しないというたてまえですか。
  105. 川上親人

    ○川上説明員 なかなか御質問のポイントが私も理解できないのでございますけれども先生の御質問は落ちた場合にその被害について、政府として何らか求償する道はないのかという御質問として承ってよろしいかと思うのでございますが……。
  106. 小川三男

    ○小川(三)委員 いやそうじゃないのです。政府が補償するのでなく、アメリカならアメリカの飛行機の会社でいいんですよ。飛行機会社に対して交渉すべき機関を日本政府は持たないのか、今後も持とうともしないのか。いまは持っていない。今後も持たないということなのか。
  107. 川上親人

    ○川上説明員 いまの問題は私法的な問題でございまして、公法的な問題ではございませんので、政府間におきますそういう協議というのは制度的にはございません。
  108. 小川三男

    ○小川(三)委員 これはあなたのほうから提出されたものですが、四十年度でヘリコプターをも含めて民間航空機が四十五機、それから防衛庁が十五機、六十機の墜落事故があった。四十一年度では民間機が三十六機、防衛庁が十三機、計四十九機、四十二年度で民間機が五十機、防衛庁が十四機、計六十四機、四十三年度で民間機が五十五機、防衛庁が十二機、計六十七機、こういう墜落事故があった。こういう場合に墜落事故がこれだけ起こっている。これはもう事実ですから。起こった経過は、——あなたのほうから出された資料ですから、こういうような飛行機事故があるのですよ。防衛庁は防衛庁として損害の補償を、これを見るとやっています。これは何か基準があってやっているのか、家屋の焼失に対してはどういう損害を支払いせよ、農地に対してはどうとか、何か支払いの基準があるのか、それとも個々のケースの交渉によって、そのときの時点時点で解決つけているのか、その点伺いたい。
  109. 松藤淳

    ○松藤説明員 自衛隊の民間に対する航空機墜落事故による損害につきましては、部内に損害賠償査定基準というものがございます。この査定基準は内訓として三十九年以来定められておりますもので、その具体的内容政府が定めております自動車損害賠償査定基準にほぼ準じたものでございます。
  110. 小川三男

    ○小川(三)委員 運輸省としては民間の航空会社や、たとえばヘリコプターを飛ばしている会社に対して、損害に対する基準というようなものは全然作成していないのか、かってにその点は解決をつけているのか。
  111. 川上親人

    ○川上説明員 その点につきましては確定いたしておりません。と言いますのは、墜落の場合の個個のケースによって非常に態様が違ってくると存じます。したがって、ケース、ケースによって判断されるべきものでございますので、私どもとしては、そういった場合についての統一的な基準というのは、現在設けておりません。
  112. 小川三男

    ○小川(三)委員 そうすると、それは各会社のかってな判断によってやっている。運輸省としては、落ちてしまった問題に対しては、もう何ら関与しないということですか。
  113. 川上親人

    ○川上説明員 問題が二つあるかと思います。先生の御質問は、墜落によって地上の第三者に損害を与えた場合のケースだと存じますが、そういったことにつきましては、いまも申し上げましたように、一つ基準というものは定めてございません。ただ、航空会社の約款におきまして、航空機の旅客あるいは貨物に損害を与えた場合におきましては、これにつきましては約款の中にはっきり損害賠償の限度額というものを定めていまして、それについては、運輸省におきましても、運輸大臣の認可という行為を通じまして、十分にチェックしているわけでございますが、地上の第三者に与えたものにつきましては、その及ぼす影響の度合いというのがケース・バイ・ケースによって著しく異なるかと存じますので、そういった場合についての統一基準というのはないと申し上げたわけでございます。
  114. 小川三男

    ○小川(三)委員 最後に伺っておきますが、そうすると、あなたのほうで、管制については、運輸省が米軍をも含めて総括的に管制されているということですね。その場合に、きょうの時点で飛んでいる飛行機の総括的な管制を、あなたのほうで掌握するのは一体、いつの時点なんですか。飛行計画というものを出すでしょう。それはあなたのほうでいつ受けるわけですか。
  115. 川上親人

    ○川上説明員 飛行計画につきましては、個々具体的な飛行機が飛びたいという場合に、飛行計画を当該空港に提出をいたします。それから、管制部と言いまして、東京管制部というのが、この関東エリアでございますとあるわけでございます。これがこの周辺——日本を半分に分けまして、東側の区域の管制を行なっているわけでございますが、その管制部にフライトプランが流されてまいります。それによって空域の全体の飛行状況その他を判断して、出発差しつかえなしという判断をいたしました場合にはアプルーブするわけでございます。それに基づきまして、今度は各具体的な空港におります管制官がタワーからクリアランスを出すという形で、飛行機の出発進行というのは行なわれるわけでございます。一つの関連した行為でございます。したがって、現時点において何機飛んでいるか、あるいはこれから飛びたいものが何機あるかというのは、いまのフライトプラン並びに管制ということを通じまして、十分に把握されているわけでございます。
  116. 小川三男

    ○小川(三)委員 日本の飛行機、たとえば日本の民間機が飛び立つ場合、整備については、何かあなたのほうで整備基準というものがあるでしょう、あるはずですね。それはいいとして、外国の民間機に対して、あなたのほうで、たとえば羽田へ着いた場合にこれだけの整備をしなさいとか、これだけの整備をすべきであるという点についての指示やその他はやり得るのかどうか。
  117. 川上親人

    ○川上説明員 民間航空機の場合におきましては、わが国におきましては、整備規定というものを各会社が定めまして、運輸大臣の認可を受けて、その整備規定に従って整備を行なうわけでございます。各外国の航空会社につきましては、それぞれの国におきまして同様な整備規定がそれぞれ航空行政担当の機関のところに提出されまして、承認を受けるというシステムを一般的にとっております。これによりまして同様なシステムがとられているわけでございます。
  118. 小川三男

    ○小川(三)委員 ボーイングの富士山ろくでの墜落事故を見ると、着陸が、これはあなたのほうの守屋さんの報告によると十二時四十三分、離陸が十三時五十八分、わずか一時間十五分です。一時間十五分の間に機体の整備やその他ができるのか、やったのか、そういう点……。
  119. 川上親人

    ○川上説明員 いま先生がおっしゃられました整備という段階につきましても、実は種々ございます。根本的に長期間、いわゆる整備工場に持ってまいりましてオーバーホールするという一番基本的な整備をいたしますほか、一定の時間が来ますと、時間ごとにチェックをいたしてまいります。これが通常、航空機を最上の状態に保つための整備として行なわれるわけでございます。離着陸の前後に行ないます整備、通常ラインメーンテナンスといっておりますけれども、これはいわば点検というふうな種類の整備でございます。そういうものは出発前必ず行なうようになっているわけでございます。
  120. 小川三男

    ○小川(三)委員 それと、もう一つ重大なのは、航空官制の中で市街地の上空の通過については、あなたのほうで制限されているのかどうか、その点ひとつ。
  121. 川上親人

    ○川上説明員 いま先生おっしゃるとおりに、特定のものにつきましては、市街地の上空でたとえばビラをまくとか、そういったことを制限いたしておりますが、これは管制という形で行なっているのでなくて、航空法上の別途の規定に基づきまして制限をしているものでございます。
  122. 小川三男

    ○小川(三)委員 それから航空気象については、これはあなたのほうでは気象庁からの気象通報を受けて管制上に使っているのか、あなたのほう独自でやるのか、その点はどうです。
  123. 川上親人

    ○川上説明員 気象につきましては気象庁が行なっております。
  124. 小川三男

    ○小川(三)委員 最後に、ボーイングの墜落事故原因についても、推定原因として「航空機が御殿場上空付近で、突然異常に激しい乱気流に遭遇して設計制限荷重を著しくこえる突風荷重が加えられたことによるものと推定される。」という報告であって、この辺の気象条件の中にはこういう条件があるということについては不明である、こういう状態の気流があったのではないだろうかと想像するだけである。気象庁なり何かでは、この日のこの条件について何か気象条件を掌握していないのかどうか、その点どうなんです。全く突然起こったことで何もわからないのだ、あとで推定すればそのようなことではないのか。気流の状況やその他についての資料というものは残っていないのかどうか。
  125. 川上親人

    ○川上説明員 いまの問題は相当技術的な問題でごさいます。担当は気象庁でごさいますので、私からは直接御返事申し上げられませんが、一般的に飛行場から飛び立つ場合におきましては、当該空港における気象状態、それにつきましては、その空港にごさいます気象機関がいろいろと観測、測定をいたしまして、これを飛び立つ直前に各航空機のパイロットが、航空情報として航空局がまとめたものの中にその気象情報が入っておりますが、これをそれぞれチェックいたしまして、出発の時間あるいは高度、そういったものを機長が判断をいたしまして飛び立つわけでごさいます。そういうことで航空気象というのは航空機の安全ということのためには非常に大事である、これははっきり言えるわけでごさいます。また中間におきますエンルートの問題につきましても、気象関係で種々測定いたしました結果をわれわれも十分ノータムの形でわかっておる限りにおきまして各航空機のパイロットに提供いたしますほか、各企業体に運航管理者というのがごさいまして、このディスパッチャーが事前にそういったルートの気象状態というものを克明にチェックをいたしまして、それでいろいろ判断をいたしまして安全ということになった場合に飛び立つ、これが通常の航空機が飛ぶ場合の気象というものに関連する姿であるわけでごさいます。  富士山の問題につきましては推定がされているわけでごさいますが、それがどうであったかということにつきましては、私からはにわかに御返事できませんので、御了解をいただきたいと思います。
  126. 小川三男

    ○小川(三)委員 終わります。     —————————————
  127. 内海清

    内海委員長 この際、おはかりいたします。  去る十一日の交通安全対策特別委員会の打合会の記録につきましては、本日の会議録に参照として掲載することといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 内海清

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  129. 内海清

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河村勝君。
  130. 河村勝

    ○河村委員 道路を中心とする公共投資の問題を先に聞こうと思ったのですけれども関係者が来ておりませんので、総務長官お困りになると困りますから、ほかの問題から先に入ります。  最初に、具体的な条文についてお尋ねをいたします。この基本法案を見ますと、どうも作成の過程でいろいろな方々の圧力その他があって、必ずしもすっきりした法案になっていないように思われるわけです。その中で二、三どうも不可解な条文がありますので、それについて先にお伺いをいたします。  第一番に、法第三十七条「国は、前八条に規定する措置を講ずるに当たつては、国民の生活を不当に侵害することとならないように配慮するものとする。」というのがございます。各種の規制あるいは取り締まりをやる場合に、国民生活を不当に侵害してはならないことは、これはあたりまえのことでありますけれどもあたりまえのことがなぜここに書かれなければならないか。こういうことを書くとすれば、あらゆるこの種の法律について残らずこういう条文を書かなければならないことになると思いますけれども、どういう理由でこのような条文を入れなければならないのか、その点について総務長官の見解をお伺いいたします。
  131. 床次徳二

    床次国務大臣 本法のいまの三十七条に対してのお尋ねでありますが、三十七条には、国は「国民の生活を不当に侵害することとならないように配慮するものとする。」と規定してありますが、これは、交通安全に対する政策は、国民の生命、身体及び財産を保護するために不可欠なものである反面におきまして、これを具体的に実施する場合におきましては、国民の生活に少なからぬ影響を与えるおそれがありますので、国は交通安全に対する施策を講ずるにあたりまして、国民の生活を不当に侵害することのないようにという配慮をいたしたのでございまして、その意味におきましては仰せのごとく当然のことを規定したわけでありますが、この場合「国民の生活を不当に侵害することとならない」というのは、国民の生活の基盤をなすところの財産権等の私権は、もとより広い意味におきまして国民の権利でありますし、営業の自由等につきましてこれを不当に侵害することとならないように十分配慮すべきであるということを意味したものでありまして、たとえば道路交通におきます場合や、あるいは海上交通の規則を実施する場合におきまして、国及び地方公共団体は当該区域における住民の財産権、営業の自由等が不当に侵害されることのないように配意すべきことを注意的にこれは規定したものでございます。
  132. 河村勝

    ○河村委員 財産権について言うならば、憲法二十九条に「財産権は、これを侵してはならない。」という条文がちゃんとございます。同時に「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という条文があるはずですね。これで完全にカバーできるはずであるし、そのため一般的な自由の問題であるならば、基本的人権についての規定がありますね。憲法十一条の規定に当然規定があるわけで、憲法にちゃんと書いてあるものを、特に交通安全についての対策のように、他のいろいろな取り締まり、あるいは規制法案について、特別に極端にそうしたおそれのないものについてなぜ入れなければならないか、これはわれわれにはどう考えてもわからない。何か特別に対象として考えているものがあるのかどうか、それを伺いたいと思います。
  133. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、道路交通の場合の取り扱い等におきまして、他に影響を及ぼす場合、あるいは漁業権等の漁民に対する影響等広い関係がありますので、そういうことに対しましても配意をせねばならないという注意的な規定と解釈しております。それを書きましたのは、やはりさような問題に対しまして関心を持つという意味において明らかにしておる次第でございます。
  134. 河村勝

    ○河村委員 それでは伺いますが、もしこの三十七条がなかったら、この法律の適用にあたって国民生活を不当に侵害してよろしいのですか。
  135. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま申し上げましたように、三十七条の規定は、これは注意的な規定でございます。本来の規定におきまして、個人の身体、生命、財産という規定がございますので、もちろん読めるわけでありまするが、これは注意的な規定としてごらんいただきたいと思います。
  136. 河村勝

    ○河村委員 憲法に明文があって、ちゃんと保障されているものを、何でここに書かなければならないか。要するにあってもなくてもよろしい条文だ、そういうことになりますね。いかがですか。
  137. 床次徳二

    床次国務大臣 実際に、交通安全の対策をいろいろ講じます場合におきましては、国民生活に影響があることは、先ほど申し上げたわけであります。したがって、さような場合に対する注意的な規定として特に書いたのでありまして、全然意味がないわけではなしに、やはり書いただけのことは意味はあると私は考えております。
  138. 河村勝

    ○河村委員 どうも御返事になっておらないので、それなら、もしこの条文がなかったら、この法律に基づいて不当に国民生活を侵害してよろしいのかどうか、それをお答えいただきたい。
  139. 床次徳二

    床次国務大臣 先ほども申し上げましたように、身体、生命、財産というものを守らなければならないという規定が当然他に原則としてあるわけでありまして、したがって侵害してよろしいということになるわけではございません。やはり十分尊重しなければならない。その一環として本条に規定をしてあるわけであります。
  140. 河村勝

    ○河村委員 この条文で、「前八条に規定する措置を講ずるに当たっては、」として、その前にある八条の条文に基づく措置についての保障ということになっておりますけれども、一体その八条の中で、たとえば三十六条「交通の安全に関する科学技術の振興を図るため、」その他について研究開発の推進、その成果の普及、それからあと交通事故原因の科学的究明をはかるための調査、それに必要な事項、一体こういうものをやるのに、何が国民生活を侵害する可能性が少しでもあるんですか。
  141. 床次徳二

    床次国務大臣 前八条は、二十九条以下を指しておるわけでありますが、一番関係の深いのは、やはり交通環境の整備としての二十九条関係が多いと思います。なお、個々の具体的な例につきましては、政府委員からお答えいたします。
  142. 河村勝

    ○河村委員 前八条とわざわざ引用しているからには、それぞれについて、何らかの国民生活を侵害する可能性があればこそ書いてあるはずでしょう。一体、三十六条、三十五条、三十四条、——三十三条だけは幾らかあるかもしれぬけれども、三十二条、これも関係ないですね。三十一条も同様、三十条も同様、あるとしても二十九条と、しいていえば三十三条しか、この程度のものしか関係ないはずですね。一体何でこれにわざわざ八条を引用しなければならないんですか。
  143. 床次徳二

    床次国務大臣 具体的の例につきましては、先ほど申し上げました交通環境の整備というのが一番大きな例だと思うのです。なお、もう一条具体的な例があるかと思いますが、その他の問題につきましても、一般的な注意規定として考えていただきたい。具体的の事例を何かにと御説明申し上げることはなかなか困難かと思いますが、しかし、国の施策の実施にあたりましては、さようなことを注意すべきであるという、注意規定であるという気持ちをおわかりいただきたいと思います。
  144. 河村勝

    ○河村委員 かりに注意規定であるということを了解をしましても、一体科学技術の普及やそれから研究調査の実施というようなことについてまで国民生活を不当に侵害するおそれがありはしないかなんといって、足を引っぱるような規定を入れるということになれば、一体交通安全基本法をつくるにあたって、政府は本気にやる気があるのかないのか、そういう根本姿勢に触れるわけですね。ですから私は特にお聞きをしておるのですが、実際長官もお考えになればおわかりでしょう。ここに並んでいることが、多少でも可能性があればいいけれども、一体科学技術の普及が何で国民生活の侵害に関係があるのですか。ちょっとでもあるとお考えでしょうか。それをちょっと伺いたい。
  145. 床次徳二

    床次国務大臣 個々の条文を見まして具体的にどういうケースにおいていまの三十七条を考えなければならぬかという具体的な事例につきましては、なかなか困難で、いまの研究そのものにつきましては、これがいい例といって御説明申し上げることが困難だと思いまするが、国の施策全般を受けまして不当に侵害することのないようにという意味の規定、さような趣旨でもって規定いたした次第でございます。
  146. 河村勝

    ○河村委員 どうも少しも答弁にならないので、わざわざこの前八条として限定してあるわけでしょう。一体研究、開発の普及や三十四条にいう「交通事故による負傷者に対する応急手当及び医療の充実を図るため、救急業務に関する体制の整備、救急医療施設の充実等」それから「海難救助の充実を図るため、海難発生情報の収集体制及び海難救助体制の整備等」これが一体どんなことによって国民生活を不当に侵害する可能性があるのですか。全然ないものについてまで、こういうものを入れる理由がどこにあるのか、それを私は伺いたい。
  147. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 具体的な条文の案をつくりました責任者から答弁さしていただきたいと思います。  先ほど長官がるる御答弁いたしましたように、この条文は一般的に交通安全施策を個々に実施いたします場合に、その実施の過程においてあるいは国民の生活を不当に侵害するようなことが現実にときとして見受けられる場合がございますので、今後はそういうことがないようにという意味の訓示規定を置いたわけでございます。  実際どういう場合に適用されるかという問題でございますが、これは御指摘のように主としては二十九条に規定してございます交通安全施設を整備いたす場合、あるいは交通規制をいたす場合あるいは先ほど御指摘がございましたように三十三条で交通取り締まりをいたしますような場合に働くことが大部分かと存じます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、交通安全施策と申しますものは、もちろん国民の生命、身体、財産を保護するために行なうわけでございますが、半面国民の日常生活に非常に密接な関係がございます。したがいまして、こういうことはあってはならないわけでございますが、やり方を多少間違いますと、それが先ほど申し上げました国民の生活を不当に侵害するおそれが絶無と言えない、こういうところから特に注意規定として一条設けてあるわけでございまして、多少立法技術的な問題にもなろうかと存じますが、この章の最後に一括いたしまして規定をいたしたのが立案の過程におきます実情でございます。
  148. 河村勝

    ○河村委員 私はいま抽象論はわかります。それはいいのですけれども、主としてとか大多数は二十九条ということで、ほかにも多少でも関連があるならまあ法律としてはわからぬこともない、事柄の実際のいい悪いは別として。だけれども、大多数はじゃなしに、それに限られちゃうのですね。全く関係のない条文まで引っぱってきて、それで国民生活の不当な侵害ということに結びつけるということになりますと、何かそこにこの交通安全施策というものを足を引っぱるために何でもかんでもあぶないから網をかぶせておけというようなことにしかならぬわけでしょう。そういうような考え方で交通安全基本法をつくったんじゃ、つくる意味はないですね。本来の基本法というのは、もともとそれに基づく政府の姿勢が一番肝心なんであって、基本法そのものはほんとうの骨格をつくるものにすぎないんです。そういう場合に、こういうやり方をするというのはおかしいじゃありませんか。関係のないものは、あなた、考えたってわかるでしょう。全然関係がない。だったら、少なくとも関係あるものだけに限って、もっと限定的に規定すべきである、そう思いますがね、いかがですか。総務長官、そうお考えになりませんか。
  149. 床次徳二

    床次国務大臣 御趣旨はよくわかりましたが、本法の規定から申しますると、三条それから四条でありますか、国及び地方公共団体の責務というところにおきまして、やはり個人のいわゆる身体、生命、財産というものをまず中心に考えておる。なお、規定の第一条におきましても、これらのことが、公共の福祉でこれを守ることが本法の基本的な目的であることは明らかにしてあります。したがって、いまの三十何条ですか、最終的にこういう規定がありましても、そのために本来を誤ることがあるとは私ども考えておりません。しかも、御指摘のごとく、直接該当をいたしまするような事例というものもあまりあり得ないのであります。したがって、全般的に申しまして、今日、人間尊重と申しますか、その基本的立場というものをこれによって非常な制約をする、一方、立法の精神をこれによって傷つけると申しますか、薄くするおそれはないものと考えておるのであります。ただ、法文の、実施等に対する締めくくりと申しますか、最後に書いてありますので、あるいはさような感じを起こすかとも思いますが、これは全く技術的なものと御解釈をいただきたいと思います。
  150. 河村勝

    ○河村委員 どうもお答えになっていない。わざわざあなたは「前八条」と書いてあるんでしょう。それで、何にも関係のない条文を引っぱってきて、それから国民生活を守らなければならない、そういうふうにがんばる理由がどこにあるのですか。総務長官ほんとうは私の言うことはもっともで、それはなくてもいいというふうにお考えになっているんじゃありませんか。これはいかがですか。
  151. 床次徳二

    床次国務大臣 これはいろいろ立法の過程におきまして検討されました結果、結局、こういう注意規定もあったほうがよろしいだろうという御意見でもって加えてあるわけでありまして、さっき申しました本則の考え方から申しますと、必ずしもなくともいいと思いますが、やはり注意的規定といたしましてこの規定を残してあるわけであります。  なお、八条を引っぱっておりますのは、八条は「国の施策」として各種の施策をあげております。しかも、その施策がいずれも国民生活に関係が深いものでありますから、そのことを受けて書いてある。ただ、具体的な事例としては、御指摘のようにあまり多くない。適用されると申しますか、衝突する事例は少ないかと思われます。
  152. 河村勝

    ○河村委員 あまりないぐらいじゃないですよ。まるきり関係ないものばかりなんですよ。だから、私は、文句を言っているのです。もう少し正直にお答えになってしかるべきだと思うのですよ。大体、いま長官も、必ずしもなくともよいとおっしゃいましたね。法律というものは、なくてもいいものは書くべきものじゃないのです。(「違うよ」と呼ぶ者あり)違いません。ですから、これは削除すべきものであります。ここで長官がお答えにならなくとも、まだこれからこの問題は取り上げていきたいと思いますから、長官のほうでも、ひとつそれまでに、政府としてお考えおき願いたいと思います。  それから、法第八条、これはこの間、太田委員もちょっと触れましたけれども車両を運転する者、以下、車については仕業点検、船員については発航前の検査、それから航空機乗り組み員は出発前の確認、それぞれ車両運転者の責務につい発前の確認、それぞれ車両運転者の責務について違った文句を使っておりますね。これは一体何かわけがあるのですか。
  153. 床次徳二

    床次国務大臣 八条におきまして、車両につきましては仕業点検という字を使い、第二項の船員につきましては発航前の検査という字を使い、三項については出発前の確認というふうに書き分けてあるのでありまするが、これは現在、それぞれの各関係法律がかような字を使っておりますので、書き分けただけで、考え方におきましては、ほとんど同じようだと思います。  なお、詳細につきましては各政府委員からお答え申し上げます。
  154. 河村勝

    ○河村委員 自動車の仕業点検というのは、これは運輸省どういうことですか。
  155. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 仕業点検は、道路運送車両法の四十七条に規定をされておりまして「自動車を運行する者は、一日一回、その運行の開始前において、運輸省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。」ということが規定してあります。自動車点検基準という省令でもって約十二項目にわたりまして、特に安全の重要な順序から、運行開始前に一日一回点検するという車両法の規定がございます。
  156. 河村勝

    ○河村委員 船の発航前の検査というのは、これはどういうことですか。
  157. 大塚正名

    ○大塚説明員 船員法の第八条には「船長は、命令の定めるところにより、発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整っているかいないかを検査しなければならない。」という規定がございまして、これをもって発航前の検査と申しております。その具体的な内容につきましては、省令のほうにこまかく規定してございまして、主として般体、機関というような、船体それ自体の安全、設備の安全、それから「気象通報、水路通報その他の航海に必要な情報が収集されており、それらの情報から判断して航海に支障がないこと。」あるいは「乗組員の健康状態が良好であること。」そういったものについての検査を規定しております。
  158. 河村勝

    ○河村委員 航空機の出発前の確認というのはどういうことですか。
  159. 川上親人

    ○川上説明員 航空機の出発前の確認につきましては、航空法七十三条の二の規定に基づきまして、運輸省令で定めるところによって、航空機の航行に支障がないかどうか、それから、出発についての準備が十分整っているかどうかということを確認することになっておりまして、それに基づきます航空法施行規則の第百六十四条の三でございますが、ここにおきまして「航空機及びこれに装備すべきものの整備状況」それから「離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布」というようなものについて点検することになっております。こういう意味での点検あるいは検査という点におきましては、確認ということばを使っておりますけれども、ほかの自動車あるいは船におきます点検なり検査と同一の意味であろうと私は存じますが、そのほかに、百六十四条の三には「航空情報」あるいは「当該航行に必要な気象情報」についても、必要な情報をチェックいたしまして、そうして安全に運航できるということを確認した上でなければ出発しちゃならないということになるわけでありまして、そういう点において、やや確認的な意味が非常に強く出てくるという意味で、確認ということばが使われていると理解いたしております。
  160. 河村勝

    ○河村委員 総務長官、いま聞いてみますと、どれも結局は、よく調べて安全であることを確認しておやりなさい、こういうことですね。そうなれば何で——これは基本法ですからね。それに、交通安全に関する限り親法と子法になるわけですね。そういう子供法律の文句をそれぞれ引っぱってきてここに書かなければならぬという理由はどっかにあるんでしょうかな。
  161. 床次徳二

    床次国務大臣 基本法でありますから、一つことばでもって全部に通用する共通のことばでもって規定したらどうかという御意見だと思うのですが、本法を制定いたします際におきまして、適当なことばが実は見当たらぬと申しますよりも、ただいま各政府委員から申し上げましたように、それぞれの法規におきましてはそれぞれの用語を使いまして多少ずつニュアンスも違っておりますので、それをそのままこの規定に取り入れて書いてある次第でございます。
  162. 河村勝

    ○河村委員 その辺に私は基本法をつくる際にあたっての姿勢がおかしいと思うのですね。これは具体的なそれぞれの専門の用語がいろいろあるでしょうし、それをお使いになるのは自由であるけれども、しかし根本はよく検査をして安全を確認しろということなんですから、ですから基本法ではやはり日本語として一番わかりやすい、だれにも国民全般にわかることばを使って規定をして、そしてそれぞれそれに基づいてそれぞれの法律でどういう用語をお使いになろうと自由である、そういう関係にあるべきものであると思いますが、大臣いかがですか。
  163. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの御議論は立法論だと思うのです。正確に事情を把握いたしますのには、各法律に書いてありますことばが、むしろ各現行法の立場から申しますると、はっきり明示できるのではないかと思うのです。しかし今後基本法が十分なじみました場合におきましては、御意見のように共通のことばでもって最も簡単に表示できるかと思いますが、今日においては、各車、船、飛行機それぞれ違ったものを取り扱っておりますために、取り扱い等におきましても多少ずつ異なっておるのをそのままこの基本法の中に取り入れている。ただ骨子におきましては全般の安全というもの、これを中心にして書いてある、その点におきましては、私は十分基本法たる性格というものを理解していただけると思っております。
  164. 河村勝

    ○河村委員 それは考え違いだと思うのです。それぞれの専門の分野では仕業点検なんということばはまた変わるかもしれません。変わる可能性は私はうんとあると思うのですね。それから飛行機についても同様だと思うのです。だからむしろこれは一種の交通安全についての憲法ですから、憲法はどんな場合にでも精神がわかるような意味を書いて規定して、それでそのときそのときの事情の変化に応じてそれぞれ専門の法律では具体的な用語を使うなりやり方をやったらよろしい。もっと包括的に要するに検査をして安全を確認するという意味のことばを使うべきそういう性質のものだと思いますが、いかがですか。
  165. 床次徳二

    床次国務大臣 御意見としては全くよく理解ができますが、ただいま申し上げましたような経過において立法いたしたわけであります。将来の問題といたしましては御意見は十分検討させていただきたいと思います。
  166. 河村勝

    ○河村委員 どうも提案者でありますから、これは違いましたと言うわけにもいかないでしょうからこれ以上言いませんが、この問題も、前の問題と同じように、これからもう少し私は検討すべきであるし、でき得ればスタートからやはり一番正しい形に持っていくべきものだというふうに考えております。一応その質問はそれで打ち切ります。  さっき道路局長がおくれてきたので、最初に伺おうと思ったことをあと回しにしましたから、総務長官、わが国の交通事故、特に路上の交通事故、これが今日非常に憂慮すべき状態になっておることにつきましてはもうさんざん議論されたことでありますから、そのこと自体はあらためてここで申し上げませんが、特に日本の自動車に関する交通事故については、他の先進国と比べても違う現象があるわけです。日本の自動車交通事故による死者数は世界第二位ですね。アメリカの次です。でありますけれども自動車千台当たりの死者数になりますと、世界第一位、輝かしい記録なんですね。おまけにその事故内容を見ますと、死者の内訳を見ますと、自動車と歩行者、それから自動車と自転車、この衝突によるものが過半を占めておりまして、アメリカのような場合のように、自動車自動車というのはまだ少ない。これは将来ふえるでしょうけれども、そういうところが非常にきわ立って違うところであります。ということは、結局わが国の場合には交通安全施設をはじめとしまして、道路全般の未整備ということが最大の原因になっている、そう考えるべきであると思うのです。これは根本的に公共投資全体に対する政府の姿勢あるいは施策の方向というものにからんでくるわけでありますが、その点についてはいずれ総理大臣出席されるおりにもう少し聞きたいと思っておりますけれども、とりあえず長官にお伺いをしたいのでありますけれども、先ほど申しましたように、基本法自体はほんとうに抽象的な事柄が多いわけでありますから、根本的には基本法をつくるにあたっての政府の姿勢が一番大事であります。従来ともすれば、基本法をつくったらそれで能事終われりというような感じが強くて、実際本気でそこから交通安全なら交通安全についての本格的な施策のスタートということがないことが大多数です。それでは困ると思うのです。そういう意味で非常に懸念されることは、ことし基本法案を提案をされておりながら、ことしの交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法、これが改正になりまして、新しい三カ年計画というものがスタートしたわけです。ところが、その節にも実は質問をしたのでありますけれども、従来の三カ年計画に比べて今度の三カ年計画のほうが予算額が少ないのですね。貨幣価値はどんどん下がっていって、それだけでも当然ふえなければならぬのが、逆に予算額で減ってきているのですね。事故が減っているというのならまたわかりますけれども事故はふえているのですね。その際に基本法を片方で提案をしてこれからやろうという時期に、交通安全施設に関する三カ年計画すら従来の実績を下回るような計画をしているというところに、私は非常に不安を感じるわけであります。その点、総務長官どうお考えになりますか。
  167. 床次徳二

    床次国務大臣 交通安全施設というものが交通事故に非常に影響のありますことは、御指摘のとおりであります。なおわが国の交通事故の状況が、他の国とはかなりわが国なりの特色を持っていることも御指摘のとおりであると思います。根本におきましては、やはり道路環境と交通環境というものの整備ということがわが国はやはり相当注目すべき点があると考えられる。したがって道路交通の安全対策も必要でございますが、しかしその前提をなすところの環境整備そのものも、これは必要なんであります。その意味におきまして、もっともっと環境整備に努力すべきではないかという御指摘だと思うのであります。私も全くそのとおりだと思います。今後、道路そのものにつきましても整備五カ年計画等を樹立いたします際におきましては、やはり交通安全を考えまして道路づくりもしなければならぬ、また都市づくりそのものにおきましても、やはり交通需要を考えて都市づくりをしなければならないと思われるわけであります。  なお地方道におきましても従来の状態と違って、車の多くなりましたときにおける地方道のあり方というものは、過去の基準とはやはりあり方が異ならなければならないと思うのです。そういうことを含んで今後の道路政策というものがあるのじゃないか。これは道路当局からお答え申し上げることだと思いますが、やはり重要な関係があると思うので、この意味におきまして、やはり十分施設の整備等におきましては尽くさなければならないと思うのであります。  なお本年以後の三カ年計画でございますが、数字的に申しますと、前回の計画より数字が十分でないじゃないかというお話でありますが、必要と認めますものにつきましては、応急のものに対しましてはだいぶ実施してまいりました。その残されたものを実施いたします関係がありますので、数字的にはさほど大きくならないと思うのでありますが、根本的には決してそれで足りるというのではなしに、本来の道路計画あるいは都市環境施設そのものの改善と申しますか整備というものも先行しなければならぬわけであります。そういうことを含んで、やはり交通安全対策というものは考えていくべきものだ、やはりその意味においての、本法は基本的なあり方を示すものと私は考えておる次第であります。
  168. 河村勝

    ○河村委員 交通安全施設の整備計画は、いまのお話だと大体応急手当てが終わって残りのものだけやるのだから少なくなったのだ、こういう御説明でしたね。ですけれどもほんとうにそうだろうか。これはおそらく大多数の方は疑問だと思うのです。そんなに応急手当てであらかたできちゃって、残りはあまりないんだという感じじゃないのですね。もしそうであるならば、道路整備計画そのものの中にその分が回っていなければならぬ。その点はどうなんですか。
  169. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 最初に三カ年計画の事業量の問題でございますが、従来行ないました、昭和四十一年度を初年度といたします三カ年計画、これは昭和四十二年に議員立法されました通学路におきます交通安全施設等を含めまして、事業量が約七百八十億程度でございます。これに対しまして、本年度から行なわれる予定でございます新三カ年計画の事業量は、これはまだ予定でございますが、大体七百四十九億でございまして、御指摘のとおり四十億程度減っておるわけでございます。ただその反面、従前におきましては地方の単独事業というものがそれほど十分行なわれていなかったわけでございます。新しい三カ年計画におきましては、これも三カ年計画の中に取り入れまして、先ほど申し上げました七百四十九億以外に約五百二十億程度の単独事業で、交通安全施設の整備をいたす予定になっております。両方合わせますと、ざっと千二百七十億程度になるわけでございます。  なお、地方の単独で行ないます事業につきましては、御承知と思いますが、交通反則金に基づきます特別交付金でございますとか、交付税その他によりまして、その財源は十分に見るつもりでございます。  なおそれ以外に、先ほど長官が申しましたように、道路整備五カ年計画で道路整備いたすわけでございますが、これらの新設の道路につきましては当然安全施設は十分に整備されるもの、かように考えております。
  170. 河村勝

    ○河村委員 地方単独事業で額をふやしてあるからよろしいのだ、こういう説明ですけれども、実際あなたも御承知のように、地方単独事業については国では別段めんどう見ないのですね。ただ国の義務とすれば、財政上の措置を講ずるようにつとめなければならないという、さっきの三十七条じゃありませんけれども注意規定みたいなことが書いてあるだけで、実際は何もめんどう見ない。だから国の予算としては少ないですよ。そういうのが基本法のスタートの年度の問題なんですね。それを私は大臣に特に申し上げたいのです。  そこで、一般道路整備についてですけれども、この間連合審査の際に河上議員もちょっと触れておりましたけれども、歩道が少ないというのがわが国の道路の本質的な欠陥です。これは先進国に比べて問題にも何にもならない。この間道路局長に委員会で聞いたところによれば、国道で街路だけに限って歩道があるのが四五%、県道については市街地でも一八%に満たない。たしかそうでしたね、道路局長。こういう状況であるから、そのかわりそれは公園その他の生活空間が少ないという都市計画上の問題がもちろんありますけれども、やはり歩道というのは一番大きなウエートを占めているのですね。そこで、今後の道路整備計画の中で、市街地における国道あるいは県道の歩道が現在これだけのパーセンテージにしかなっておらぬのを、一体何年計画で解消する予定であるのか、それを道路局長に伺います。
  171. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 私道路をやっております。いままでの道路を反省してみますと、やはり率直にいって歩道が非常に少ないということでございます。いまの道路構造をきめます道路構造令というものでも、この中には市街地については歩道ができるようになっておりまして、私たちいまこの構造令の改正を目ざしまして、市街地以外でもやはり必要なところには歩道のできるように直したいと思っております。  またいまの御質問の、将来何年ぐらいたったら市街地について歩道ができるかということでございますが、これは市街地について歩道が望ましいことは当然でございますので、いまの三カ年計画の中でも当然歩道のとれるようなところについては全部終わりたいと思っています。ただ国道また主要な県道でございましても、いまのままではどうしても歩道のとれないというようなものもございます。やはりそれには道路を拡幅しなければならぬというような問題がございます。こうなりますと、市街地の一例をあげてみますと、東京都内の繁華街あたりでこれを広げるといいましても、これまたばく大な費用がかかります。また都内の道路を見ますと一部広げて済むものじゃなくて、やはり都市計画的な見方で、都内の各地区において道路がどうあるべきか、大きなマスタープランの中から広げていかなければならないと思います。そうなりますと、これは非常に金がかかる。またそういう都市計画には当然土地の利用というようなことも考えまして、どの地区をどういう形で将来の市街化をはかっていくか。こうなりますと、都市の再開発というような事業も進めていかなければならないと思います。私そこまでいくと、これは何年にできるかということは予算の問題もございまして、はっきり言えないわけでございます。いまの街路につきましては、できるところについてはこの三カ年では歩道をつけることはもう終わりたいというふうに考えております。ただ、いま言いましたように、それをするにはやはりいまの繁華街の歩道のない道路につきましては、一方交通にするとか、何かそういう交通規制をしていかないと、道路が対面交通を許しておきますと、ほとんどとにかく車だけで一ぱいになってしまうというようなところもございまして、これも一方交通ができるかできないかということになりますと、大阪あたりは非常に市街が碁盤の目になっておるところは比較的一方通行にしやすいのでございます。東京の一例をあげますと、世田谷区の道路ではどうにも一方交通ができないようなところもございます。そうなりますと、ある程度の地域の道路の改良計画を伴わなければいかぬと思います。いまの交通安全の立場から国が負担する。また地方が単独でやってもらうということをあわせまして、この三カ年の間ではとりあえずできる歩道は全部終わらせたいというふうに考えております。
  172. 床次徳二

    床次国務大臣 基本法をこしらえても安全事業のほうの伸びはどうだろうかという御意見のようでございましたが、今回基本法をつくりました機会におきまして、規定の中にもありまするごとく、交通安全計画等も樹立しなければなりませんので、この際、従来のあり方に対しまして十分検討を加えまして、ひとつ積極的な姿において交通安全対策を進めていきたい。私はそういう意味におきまして基本法の制定は意味があると思うのです。なお、ただいま道路局長からも申しましたごとく、道路そのものの建設あるいは都市そのものの建設にあたりましても、十分交通安全を考えながら織り込んでまいりますし、その際におきましては、この基本法の精神によって当然処理せられるべきものでございます。かような意味において今後の道路交通のあり方につきましては、私は相当の安全政策を推進することができるのじゃないか、ぜひさようにしなければならぬというふうに考えて提案をいたしておる次第でございます。
  173. 河村勝

    ○河村委員 ぜひそうやっていただきたいのです。  ただ歩道の問題は非常に大きくて、いま道路局長も言ったように、都市計画の関連もあれば、また一方交通にしなければ歩道ができないというところもあるわけでありますね。そうした道路関係の当事者だけではもちろんできない問題がたくさんあります。それでこそ今度基本法をつくり、対策会議をつくる意味があると思うのです。ですからぜひ第一回の対策会議で、少なくとも市街地の歩道なしの自動車の通る道なんというものはなくすという目標で、当面は国道、府県道でいいでしょう。そのくらいについてやはり将来の目安をつくって、何年計画でこれを解消するのだ。そのためにはどういうことをしなければならぬというものをぜひお立てをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  174. 床次徳二

    床次国務大臣 いま御意見がありましたが、安全計画を立てます際には、大体五、六年というものを目標といたしまして、御意見のような方向に向かって努力いたしたいと思っております。
  175. 河村勝

    ○河村委員 次に救急医療機関のことでちょっと聞きたいのですが、最近自賠法による賠償保険の赤字に関連をいたしまして、治療費が非常にかさんで、それが大きな赤字の原因になっている。それはなぜかというと、健康保険の点数なり単価なりを適用しない、いわゆる自由診療でやっておるのが大部分だから、それで赤字が出るのだという事実が明らかになっておるようです。なぜ救急医療機関は自由診療をやらなければならないのか、それを先に伺います。
  176. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいまお尋ねの救急医療機関における救急医療でございますが、これにつきましては保険診療ではなくて自由診療でやるべきであるということはございません。この点はずいぶん昔からいろいろと誤解があるわけでございますけれども、現在のような皆保険の時代でございますと、河村先生承知のとおり、すべての国民は何らかの意味で医療保険の被保険者でございますので、またほとんどすべての病院、診療所が保険の医療機関に指定をされております関係上、たとえ救急患者でございましても、被保険者ないしは被扶養者である限りにおきましては保険医療を受けられるわけでございます。したがってその意味におきましては、ただいまおっしゃいましたように、救急医療については自由診療でやるようにやっているではないかというふうなことはないわけでございます。そういった誤解があったために、私どものほうは、これは医療保険の関係でございまして、直接私どもの局の関係ではございませんけれども、昨年の秋に、特に自動車による保険事故については保険給付が行なわれないというふうな誤解が被保険者等の一部にあるようでもありますが、もちろん自動車による保険事故でありましても、一般の保険事故と何ら変わりがなく保険給付の対象となるのである、この点は誤解のないように医療機関等に周知をはかって、保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導してほしいということを保険局の関係課から全国の主管部長に通知をいたしております。したがいまして、私どもは、第一義的にはやはり保険医療として扱うべきものであると考えております。ただ、おっしゃいましたように、保険医療ではなくて、自賠のサイドで診療が行なわれます場合には、これは自由診療でございますから、自由診療である限りは、私どもはそれに対して、直接自由診療についてその内容規制していくということはできないわけであります。ただ、いま申し上げましたように、できるだけ保険医療を受けられるわけでありますから、そういう指導をしていく、こういう関係でございます。
  177. 河村勝

    ○河村委員 お役所は通知を出せばそれで指導したということになるものでありますけれども、実際は、大学病院その他を除けば自由診療ですよ。私はどうも救急医療機関そのものの制度が悪いためにそういうことになるのだというふうに考えておるわけです。それは、いまの救急医療機関の制度というものは、単に相手の希望に応じて——希望というと変ですけれども、ただ救急医療機関に指定してほしいということがあれば、それを省令で登録するというだけですね。登録すれば義務をしょうわけでしょう。いろいろな救急医療、専用のあきベットをつくれ、あるいは専門の当直医を置け——この前、公聴会を開いたときに、参考人の意見の中で、実際救急病院の場合には救急医療を受ける者というのは夜間が過半数——過半数といってもかなり大きい過半数であって、普通の時間にかつぎ込まれるのが少ない、そういう状態でしょう。そうなると義務だけを課して、それはただ相手の意思によって登録を受けたのだから何も国はめんどうを見る必要はないのだ、こういう理屈らしいのでありますけれども、それじゃいやおうなしにどこかに負担のしわ寄せがいくことは当然であります。そういうことから自由診療をやらざるを得ないというところにあるのだろうと思いますが、いかがでしょう。
  178. 北川力夫

    ○北川説明員 救急医療機関の告示の問題は河村先生の御指摘のとおりであります。ただ私どもは、現在約四千百三十八の救急告示施設を持っておりますけれども、いまお説のとおり告示をしっぱなしというわけではございませんで、財政的な面でございますとか、あるいは公の融資の面でございますとか、そういった面でできるだけの助成をしていくつもりでございます。つまり救急病院等を定める省令によって告示をされました都道府県または市町村の経営するいわゆる公的な病院につきましては、四十三年度から特別交付税で、四十三年度は二十万円、四十四年度は四十万円というものが見られておりまするし、また一般の救急医療病院につきましては、昨年の七月から医療金融公庫でそれぞれ融資の対象として機械購入資金等をその対象にしているわけでございます。もちろんそうは申しましても、救急告示施設についてこれだけの措置でもって十分であるかと申しますと、私どもは必ずしもそうであるとは考えておりません。ただ、救急告示施設をどのような形で助成していくかにつきましてはいろいろ議論のあるところでございまして、直接財政的な補助をするという考え方もございましょうし、また、いま申し上げましたような現行のシステムもございましょうし、またさらに、実際上機能的な面に着目をいたしまして、地域における救急告示施設を中心にした連携の円滑な救急活動ということをやる方法もございましょうし、そういった点を十分に考えまして、今後救急医療施設の助成というものをさらに配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  179. 河村勝

    ○河村委員 総務長官お聞きのようなことで、現在の救急医療機関というのは国で何もめんどうを見てないんですね。それは義務だけを課しているというのが実態なんです。ですから救急医療機関の機能も十分ではないし、かつ治療費が非常にかさんで、保険の掛け金も上げなければならぬというようなことに相なっているわけなんで、この点もいろいろ関係するところが多いものでなかなかできないわけです。ですから交通安全対策会議等で取り上げるべき一番大きな問題だと思うのです。ぜひそれをやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  180. 床次徳二

    床次国務大臣 救急医療機関に十分な協力をしていただくことは、被害者に対しましては非常に大切なことであります。したがって御趣旨のように、救急医療機関が十分活動できまするような対策、具体的ないろいろの措置等につきましては、今後ともひとつ十分検討させていただきたいと思います。
  181. 河村勝

    ○河村委員 いま一つ伺います。  いま自動車交通事故関係のいろいろな研究を方方でおやりになっているけれども、その個所が警察庁の科学警察研究所、通産省の機械試験所、運輸省の船舶技術研究所、建設省の土木研究所、工業技術院、専門のものはなくて、片手間のは一ぱいありまして、その研究そのものもばらばらにやっているような感じがするのですが、一体総理府としてはこうした研究についてどのような統制というか指導というか、予算を伴うものですし、そういうものはどういうふうに調整をおやりになっていますか。
  182. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 現在特に陸上交通安全に関します各種研究機関が各省庁に非常に多岐にまたがっておることは御指摘のとおりでございます。各省庁の試験研究機関はそれぞれの目的に従いまして鋭意研究いたしておるわけでございますが、率直に申し上げまして、現在のところ御指摘のように、それが必ずしも完全に総合的に行なわれていない、またそれぞれの研究の成果が必ずしも有機的に利用されないといううらみがございます。したがいまして、今後の問題といたしましては、政府におきまして、たとえばかりにこの法律が通りましたような場合には、交通安全対策会議におきます基本計画の一部として科学的な研究開発という項目を取り上げまして、その交通安全という大きな見地からの大きな目的を設定いたしまして、各関係省庁の研究機関がそれぞれの分野におきまして共同して研究するという体制はぜひとも確立いたしたいと思っております。  なお、現状におきまして、いま予算の問題の御指摘ございましたが、現在におきましては、総理府におきまして交通安全対策関係予算の取りまとめをいたしておるわけでございますが、この取りまとめの過程におきまして各研究機関の研究がなるべくダブらないように有機的に行なわれるようにその調整を行なっておるのが現状でございます。
  183. 河村勝

    ○河村委員 たとえば安全まくら、シートの安全性の研究、これは通産省の機械試験所と運輸省の船舶技術研究所、これは完全にダブっているのです。それから、これは警察庁交通渋滞に即した信号機の制御用プログラムの開発をやって、同時に、完全に同一とは言わないけれども、建設省の土木研究所では交通情報標示板の試作研究、それから通産省の工業技術院で交通管制系のシステムデザインに必要なシミュレーターなんかをやっておりますね。前のは完全に一緒であるけれども、あとの三つも大体一カ所でやったほうが能率的ではないのですか、いかがでしょうか。警察庁交通局長、いかがです。
  184. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 こまかい点は後ほど各省庁からお答え願うことにいたしまして、現在総理府で把握しております限りにおきましては、完全にダブっているものはございません。それぞれ異なっております。ただ、さらに共同して研究したほうがより成果があがるのではないかと思われるところもないわけではないわけでございまして、この点は先ほども申し上げましたように、今後なるべく早い機会にそういう研究の協力体制を何とか確立したいと考えております。
  185. 久保卓也

    久保政府委員 警察でやっておりまする研究は都心部における信号機を含めましたメーン制御の面でございます。これは電子計算機を使って交通渋滞の都心部における緩和に関連をいたしまして交通安全をねらうものでございまして、伺うところによりますと建設省のほうは比較的長距離であり、かつ自然災害等を対象にするように聞いております。  いまお答えがありましたように、総理府で全般的な調整はあるいは必要であろうし、研究の過程でまた相互の協力も必要であろうと考えております。
  186. 河村勝

    ○河村委員 一々こまかく議論してもきりがありませんからやめますが、長官、役所はいかに方々に交通安全の問題がまたがっていてもこれを一緒にするわけにはいきません。  そこで、こうした基本法に基づく一つの総合調整機関の強いものをつくるという意味があるわけですが、研究機関などというものはどれもこれも片手間ではんぱな人間がやってはんぱな予算をつくってやっておるようですが、どこにつけろということは申しませんが、どこかに集中してやらせたほうが人間の使い方としても効率的であり、予算の使い方としても効率的である、そういうふうに考えられますが、どうお考えになりますか。
  187. 床次徳二

    床次国務大臣 御指摘のように、現在交通関係の役所もずいぶん数が多い、同時にそれぞれの研究所を持っております。先ほどもお答え申し上げましたように、ひとつこの点につきましては本法の目的を達し得ますようにできるだけ調整を強くやっていきたい。  なお、この機会におきまして、御指摘のようにある研究所に重点を置くということも考えられるのではないか、この点につきましては、今後の実施上におきまして総理府におきまして連絡調整という機能を十分活用いたしまして、そうして政府の基本的な態度としてその対策をきめていただいて、これを実行しうるように努力いたしたいと思います。
  188. 河村勝

    ○河村委員 単なる調整でなしにもう少しよく調べていただきたいのです。その設備なり人間になりやっておることです。これをちょっと見ただけでも追突防止の設備などというものは運輸省の船舶技術研究所にもあるし、通産省の機械試験所にもあるし、おそらく警察にもあるのではないかと思うのですが、とにかく設備もダブる、人間もみなばらばらにやって統一がとれていない、ほんとうにむだが多いのではないかと思うのです。ですから一ぺん洗い直して人間も設備も金もまとめられるものならまとめるというふうにぜひお願いをいたしたいと思います。
  189. 床次徳二

    床次国務大臣 御意見のことはまことにごもっともだと思います。ただ設備をまとめただけでは、それぞれの研究所の特質があると思いますので、なかなか困難かと思いますが、しかし、研究テーマをそれぞれが分担して重点を置いて取り扱うということにつきましてはこれは可能ではないか、この点につきましては御指摘のごとく単なる調整という意味ではなしに、今度の組織が安全会議という強力な組織になっておりますので、総理の権限というものも活用させて効果的な仕事をさせるように努力いたしたいと思います。
  190. 河村勝

    ○河村委員 私は研究所の設備全体なんて大げさなことを言うわけではない。ちょっと見たところではどこでやっておるのか、ほんとうにちゃちな設備でばらばらにやっておるような感じですから、それこそむだじゃないかという意味で申し上げたのです。時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、よく御検討いただきたい。  時間もないので、最後に海上保安庁に伺いますが、海上交通法がなかなかできないのはどういうわけですか。
  191. 林陽一

    ○林政府委員 海上交通法案につきましては、本国会提出いたしますように、海上保安庁で鋭意準備を進めてまいったのでございますが、漁労の取り扱いにつきまして関係機関との了解が得られず現在に至っておりまして、国会提出できませんような事情でございます。しかしながら、海上保安庁といたしましては海上交通の現況、ことに狭水道の事故対策からいきまして、海上交通安全と災害防止のために交通法案を実現することがぜひ必要であると思われますので、早急にいままで了解が得られませんでした関係機関の御了解が得られるように一段と努力を払いまして御趣旨に沿いたいと思っております。
  192. 河村勝

    ○河村委員 いま話が出ました狭水道における事故ですね。これはちょうど陸海空とありますけれども、一番陸上の交通事故に似ていて、船が狭いところにひしめき合ってそのために起こる事故ですね。ですから一番近いと思うので、特に例を浦賀水道にとれば非常な船舶ふくそうのところで依然として事故が続く。必ずしも海上交通法ができなくてもやる方法はあるはずだと思うのです。ところが一向になされていない。二年ばかり前にこの問題について質問したところが、あの場合でもちゃんと航路分離はやってあるのだという説明を聞いたのですけれども、しかし依然として事故が絶えない。最近でも五月の末にやはり浦賀水道で外国の船と日本の船とが衝突して日本の船が沈んでおります。このまま放置しておいたらそれこそトリー・キャニヨンの例ではありませんが、たいへんなことになろうと思うのですが、一体分離航路をやっておるのですかやってないのですか。
  193. 林陽一

    ○林政府委員 浦賀水道その他の狭水道におきましても、法的根拠はございませんが、主として行政指導によりまして、航路の規制というまではいきませんが、指導を行なっておるのが現状でございます。浦賀水道におきましては中央に灯浮標を布置いたしまして、実際上はその両方で航路分離のようなものを行なっております。  なおこれを励行していただきますために、常時巡視船艇を少なくとも一隻は浦賀水道に配置してございまして、現場におきまして各船に対して指導を行なっておるような実情でございます。そのほか大型タンカーが災害防止の点では一番重要でございますので、大型タンカーが入港してまいりまするようなときには、事前に海上保安部署に入港予定を通報していただきまして、消火能力を持っております巡視艇を配備いたしまして、先導して、万一事故が起きましたときには早期に消防を行なえるような体制をとっております。  以上、法令の根拠はなしに、行政指導によりまして、狭水道の海難防止対策を行なっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、海上交通法がもしできますと、さらに容易に規制が行ない得る。それから船舶の交通を流れとしてつかんで、より完全な航行分離が行ない得るという点で、先ほど申し上げましたような立場を海上保安庁としてはとっておるわけでございます。
  194. 河村勝

    ○河村委員 この間、門司議員がちょっと触れたところでありますけれども、参考のために伺っておきたいのですが、第三海堡を爆破するのには幾らかかりますか。それから第一海堡と第二海堡の間をしゅんせつするのには概算幾らかかりますか。
  195. 林陽一

    ○林政府委員 これは運輸省の港湾局のほうの所管になりますので、私は……。
  196. 河村勝

    ○河村委員 この問題、実は総務長官に、これも主として政治の問題で、この間何でも東京湾の横断橋をつくるのに必要だから、海堡の除去はなかなかできないのだというようなことを言っておりましたので、非常に重大な問題だと思うのです。あんな東京湾を横断するような橋が一体国民経済的にどれだけ大事なのか。それよりも浦賀水道というものを、これだけ大きな船がむやみに入ってくるわけですから、これを根本的に解決するために金を投じるのがいいのか、その値段を聞いて、その上でもって総務長官にお尋ねしようと思ったのですが、残念ながら呼ぶ人を間違ったものですから、今後の研究課題としてぜひ御研究ください。  これで終わります。
  197. 内海清

  198. 後藤俊男

    後藤委員 最初にちょっと総務長官にお尋ねするわけですが、いま日本に交通関係——陸上交通だけでけっこうですけれども、陸上交通関係のある法律、これが一体どれくらいあるのですか、お尋ねいたします。
  199. 床次徳二

    床次国務大臣 陸上関係だけでどれくらいあるか、ちょっと調べておりませんが、思いつきを申し上げますと、道路交通法道路運送法、道路運送車両法、あるいは軌道法、鉄道営業法ですか、ちょっとそれくらいはあるのじゃないかと思います。まだ詳しいことは政府委員から申し上げます。
  200. 後藤俊男

    後藤委員 かなり数は多くあると思うのです。そうなってまいりますと、いま問題になっておる交通安全基本法との関係ですね、今度制定されようとしておる。これと、現在ある交通関係の、いわばいま言われましたような法律との関係はどういうことになるのでしょうか。たとえば私お尋ねしたいのは、この基本法が制定されますと、それに基づいて、現在かなりの数の法律があろうと思いますけれども、これらも当然積極的と申しますか、交通事故をなくす方向への改正ということが行なわれるのではないかというふうに私想像しておるわけでありますけれども、これからの問題でございますが、自治省として基本法ができたらさらに一体どういうことになってくるのだろうか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  201. 床次徳二

    床次国務大臣 交通安全に関して今日関連した法律はずいぶん数が多いのでありますが、基本法は大体そういう個々の法律の大本を定めたのが基本法であります。今日直ちにそれぞれの専門的な法規が基本法に抵触するものがあるとは考えられません。しかし、今後社会情勢が進展するあるいは技術が進歩いたしますと、基本法の精神に従ってやはり個別的な法律関係法令におきましても改善を要するものがあると思います。なお新しく規定しなければならないものも出てくるのではないかということは予想せられるところであります。考え方といたしましては、御意見のとおりだと思います。
  202. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま言われましたように、現在におきましては、具体的にどうだ、たとえば交通安全基本法が制定されて、さらにそれに関連する、現在十幾つあるか、二十幾つあるかわかりませんが、法律があるわけなんですが、それらもやはり積極的に改正するのだ。現在の法律におきましては、毎年毎年事故が増加するばかりだ。そこで新しく交通安全基本法が制定される。そうなれば、現在ある交通関係法律もその方向で早急に改正すべきではないかと私は考えるわけなんです。この点いかがでしょうか。
  203. 床次徳二

    床次国務大臣 いま直ちに改定する必要を認められるといいまするか、基本法と矛盾した個々の法律があるとはちょっと考えておりませんけれども、先ほど御指摘のように、今後の情勢の変化によりまして、基本法の精神というものをまず第一にいたしまして、その精神にのっとって個々の具体的な適用が出てまいりますので、改正を要するものが出てくることも予想されます。
  204. 後藤俊男

    後藤委員 これからの問題になってくると思いますけれども、そこで、いままでも十分論議されたと思いますが、交通事故が年々増加の方向をたどっておる原因につきましては、いろいろな原因があろうと思います。ただ、私しぼって、いわば交通関係の経営者の立場、さらに交通関係で働く労働者としての立場、この立場から二、三御質問したいと思うわけでございますけれども、この案を見ますと、第三十一条にそういうことが書いてあるのではないかと思います。そこで第三十一条の御説明をいただきたいと思うわけなんです。さらに、三十一条によって現在具体的にこういうようなことも考えておるのだというようなことがあれば、つけ加えて御説明をいただきたいと思います。
  205. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 御指摘のように本法案におきましては、三十一条に「車両等の安全な運転又は運航の確保」という表題で、国の今後とるべき施策について規定いたしております。この規定を大きく分けますと、一つは、車両——これは車両、船舶、航空機のすべてを含むわけでございますが、これらの運転者あるいは乗り組み員の教育の問題がございます。それから次は、現在、これらの車両あるいは船舶、航空機等に乗り組む者につきましては、それぞれ一定の免許資格があるわけでございますが、これも交通事故防止の観点から、これらの免許制度をさらに合理化するという点が第二点でございます。第三点は、一般に、特に業としてこれらの車両等の運転等を行なっておりますものは、その管理が非常に大切でございます。これはただ単に安全運転管理のみならず労務管理等も含めてでございますが、こういう問題が第三点でございます。  これらにつきましてはもうすでに御承知と思いますが、たとえば陸上交通に例をとりますと、自動車運転者のいろいろの再教育の問題、それから自動車運転者に関します免許制度をさらに改善する問題、それから事業所におきます運行管理または安全運転管理の内容の改善の問題、さらには運転者の、特に雇用されております運転者の労働条件の改善の問題、こういう問題がいろいろございまして、現在政府といたしましては、それぞれの点につきまして、交通事故を少しでも少なくするという観点から、その改善に関しましていろいろ施策を講じておるわけでございます。  なお、今後、かりにこの法律が成立いたしますと、先ほどから何回も申し上げておりますが、政府といたしましては、交通安全に関する長期的な基本計画を策定いたすわけでございますが、この長期計画の一つの大きな項目といたしまして、当然安全な運転、運航の確保というものを取り上げまして、長期的にさらにいま申しました事柄の改善をはかっていく、こういうことを考えております。
  206. 後藤俊男

    後藤委員 その三十一条の条文の中で、免許制度の合理化というのがありますね。これは具体的にどういうことを言うのでしょうか。
  207. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 先ほど申し上げましたように、たとえば自動車運転者につきましては、現在運転免許制度というものがございます。また船員につきましては、それぞれの船舶職員法等によりますいろいろの資格要件がございます。航空機乗り組み員につきましても同様でございますが、これらの制度が現在完全なものであるかどうかという点につきましては、いろいろ問題もあろうかと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、交通事故防止の観点から、免許制度をよりよきものにするということをいたすということでございます。なお具体的には関係各省来ておりますので、そちらからお答えをいたしたいと思います。
  208. 久保卓也

    久保政府委員 私ども検討の材料になっておりますものは幾つかございますが、例示して申し上げますと、たとえばモペット、原付自転車のこういったものについては、国際条約によりますと全然免許制をとっておらないわけでございますが、たとえば小学生、中学生は自転車教育をやる、高校生は、まだ四輪車に乗れない場合に、モペットから車の運転に通じていくと将来四輪車に乗る場合に非常に車の感覚がわかり、かつまた交通法規なんかがわかってよろしいという観点で、免許制からはずすという考え方もあります。まだこれは私ども決心したわけではございませんが、そういう問題があります。  それから二輪車につきましては、現在やや規定が厳格でございまして、たとえばそのために、法規などにつきましては二輪車で試験が受かっていれば、四輪車の場合免除してもらえるというようなことでありますが、かえってそのために二輪車の無免許を非常に誘発をしておるというような状況にあります。そこでこの点はむしろ二輪車の運転者の資格を緩和して、それによって無免許をなくしていく、さらにまた教育機関をふやしていく、これは可能でありますが、そういうことができるようだとそういう面がむしろ望ましいということも考えられる。これも検討中の問題であります。  それからマイクロバスにつきましては、当委員いでも再々問題になっておりましたが、この点については現在一種免でありますが、二種免に資格を繰り上げるというような問題があります。  それから、これは私どもの主管ではありませんが、タクシーの運転者についての登録制の問題を運輸省のほうで御研究になっている。  そういうような問題が当面私どもの頭の中にある検討事項であります。
  209. 後藤俊男

    後藤委員 そこで一歩突っ込んでお尋ねするわけですが、現在の交通事故というのは、先ほど言いましたようにいろいろな多くの原因があろうと思うわけです。その中でもとりわけ営利第一主義の交通企業の経営政策、過当競争を理由に安全を無視した合理化の押しつけ、さらにそれによる要員の削減、過重労働、賃上げ抑制、健康破壊あるいは労働条件の悪化というようなこともやはり今日の交通事故原因であるということをも考えられぬことはないと思います。かなりの部分を占めておるのじゃないかと思うのです。そこで現在、運転関係、いわば陸上交通に重点を置いて私は話をするわけですが、こういう交通関係で働いておる労働者の人は、現在労働基準法を適用されてやられておるのか、法的にどういうふうな扱いになっておるのでしょうか、労働問題としてお尋ねいたします。
  210. 細野正

    ○細野説明員 お答えいたします。  自動車運転者の労働条件につきましては労働基準法の適用を受け、かつ労働基準法の適用だけでは不十分の面につきまして、一昨年の労働条件に関する改善基準にのっとって強力な監督指導を現在実施している、こういう状況になっております。
  211. 後藤俊男

    後藤委員 労働基準法だけでは不十分というのはどういうことですか。
  212. 細野正

    ○細野説明員 御承知のように、たとえば労働基準法の労働時間を見ておりますと、たてまえとしては週四十八時間制というたてまえになっておるわけでございますが、同時に労働基準法の三十六条で、時間外に関する協定を締結することによってそれを延長できるということになっております。そういう関係もございまして、基準法の本来望んでいるたてまえから見れば相当長時間の勤務が行なわれておる、そういう実態がございまして、そういう意味で先ほど申しましたように基準法のこの規定だけでは十分な面がある、こういうことを申し上げたわけであります。
  213. 後藤俊男

    後藤委員 そうなりますと、いまあなたが御説明されましたように、労働基準法では、一般に働く労働者としては現在最低の労働条件をあらわしておる。ところが、運転に関係する労働者に対しましては、労働基準法ではいわゆる緩慢過ぎるというのですか、もう少し労働条件をよくする方向へ持っていく必要がある。いまあなたが言われましたように、勤務時間にしてもあるいは運転の継続時間にしても、あるいは休憩、日曜その他につきましても、あるいは深夜作業についてもいろいろな問題があると思うのです。これは例でございますが、国鉄の動力車乗務員につきましては、御承知かもわかりませんが、内達一号ということで別に、これ以上働かしてはいけない、あるいは深夜作業が何回以上続いてはいけないというようないろいろな拘束がきちっときめられておるわけなのです。そこでいままでもこの交通関係の労働者の代表なりあるいは皆さんのほうと、かなり、いま私が申し上げましたような問題につきましても、交渉と申しましょうか、協議が行なわれておると思うわけなんです。確かにあなたが言われましたように、一昨年の二月九日でございますか、あの通達によって、何かいろいろな勤務時間の問題その他のことがきめられておりますけれども、それなら、現在それがはたして実行に移されておるかどうかということなんです。聞くところによると、半分も実行に移されておらない。私、ごく最近のことは知りませんから違っておるかもわかりませんが、そうなれば、当然労働基準法を改正すべきではないか。現在の労働基準法はそのままにしておいて、ただ一片の通達だけで、こういうふうにやれ、こういうふうに交通関係の経営者はやりなさいというようなことでは、冒頭言いましたように運転事故を起こす原因一つと見られる労働条件なりその他の問題につきましても、解決しないと思うわけなんです。その証拠に、あなたが言われましたように、あの通達が出ましたのは四十二年の二月九日でしょう。それ以来事故が減っておるかというと、減っておりません。毎年毎年ふえる一方です。これらの点を一体どう考えておられるか。聞くところによりますと、先ほど言いましたように、交通関係の代表者といろいろと協議したような場合にも、労働基準法の改正等も考えておるというようなことも聞いたような気もするわけなんです。これは間違っておれば間違っておるで、それでけっこうですけれども、当然基準法そのものを根本的に検討し、洗い直して、運転者に対してこうあるべきだ、最低ここまでは守れというように改正すべきだと私は考えるわけでございます。その点総務長官なり、あるいは監督課長はどういうふうにお考えになっておるか。いままでの経過も含めてもう少し詳細に御説明いただきたいと思うわけなんです。
  214. 細野正

    ○細野説明員 お答えいたします。  御指摘ございましたように、昭和四十二年にいわゆる二・九通達というものを実施いたしまして、先ほど先生からほとんど守られていないじゃないかというようなお話がございましたが、実際の監督結果等を見ましても、たとえば労働時間とか休日とか割り増し賃金とかいう非常に重要な事項にかかる違反というのはそれほど多くない状況のところまで現在来ておるように思います。たとえば、比率で申し上げますと、労働時間は若干違反率が高うございますが、これも昨年の秋の監督の際には、一般の事業所の数、比率で四九%、それから休日関係が三割、割り増し賃金が三割というふうな状況でございまして、よく違反事業所が八、九割もあるということをいわれますが、これはちょっと事実に反しているように存ずるわけでございます。その二・九通達の実施につきましては、毎年毎年御承知のように約二万事業所ずつ監督をいたしまして、そのつど違反については是正をさせるという努力を実は積み重ねてきているわけでございます。  一方、先ほど法改正というお話がちょっとございましたが、御存じのように、労働時間の規制のしかたとしましては、法律できちっと押えるやり方をとっておる国もないわけではございませんが、同時に労使の協定で労働時間の延長を認める、こういうやり方をとっておる国もかなりあるわけでございます。日本の基準法の場合には、いま申しましたような労使協定によって延長することを認めるというたてまえをとっておるわけでございます。ただ、先ほど若干不十分な点があるということを申し上げましたのは、本来ならば労使の協定で、当然著しい時間外延長というようなものはないたてまえのはずでございますが、自動車の運転手の関係につきましては、経営的な問題とか、あるいは労働組合の組織状況とか、いろいろな問題がございまして、そういう法の期待している形の時間の制限というものが十分に行なわれていないという実態のほうに実は問題がございます。そこで、先ほど申しましたような基準法の本来のたてまえを十分生かすためには、基準法の規定そのものにプラスして、先ほど申しましたような二・九通達というふうな改善基準を実施するというたてまえをとっておるわけでございます。それについてそれが浸透するように現在努力中というのが現在までの経緯でございます。
  215. 後藤俊男

    後藤委員 この二・九通達の中に賃金のことについてもかなり書いてあるのですがね。特に本俸が非常に少なくて、水揚げをよけいあげればあげるほど歩合制で自分の収入が多くなる、これらにつきましても少なくとも本俸は六割程度に持っていきなさい、こういうふうな通達が出ておると思うわけなんです。ところが、現在そういうふうになっておる会社が日本にどれくらいありますか。私はほとんどそういうふうになっておらぬと思うのです。間違っておったら、あとから説明していただけばけっこうでございます。  さらにもう一つは、いまあなたが言われましたように、ほんとうにそこまで真剣に考えるつもりがあるのなら、ただ陸上交通の労働者関係というふうな十ぱ一からげの言い方ではなしに、トラックを運転する労働者の労働基準、あるいはハイヤー、タクシーの労働基準、あるいはバスの労働基準、かなり労働条件が現在同じ自動車の運転手さんでも違うと思うのですよ。そこまで微に入り細に入り検討をして、そしてそこにいわゆる統一労働基準と申しましょうか、そういうものをつくるのが当然だと私は考えるわけなんです。だから何回も言いますけれども原因はそればかりではございませんが、そこにも大きな問題がある。その大きな問題に対して、今度の交通安全基本法が制定されまして、さて一体どういうふうにあなたのほうで手をつけようとしておられるのか。いま申し上げましたように、二月九日の通達で、これは昭和四十二年ですから、もうまる二年以上たっておるわけなんです。それで中身がそういうふうに改正されたかというと、全然とは言いませんけれども、たいして改正されておらぬと私は思うわけなんです。われわれもときどきハイヤーに乗りますが、乗って聞くと、たいして変わっていないわけなんです。あなたのところへはいい通知が来ておるか知りませんけれども、賃金形態におきましてもやはりまだ不十分であるということはいえると思うのです。  そこで、いま申し上げましたような点を根本的に改めなければ、冒頭申し上げました交通事故一つ原因を排除することはできないと私思うのでございます。そこで、最終的に現在の労働基準法を一体どう考えておられるか、これが制定されれば労働基準法の改正に手をつけようと考えておられるのか、あるいは二・九通達そのままでここれからもさらに二年、三年続けていこうと考えておられるのか、その辺をひとつ明確にお答えいただきたいと思うわけなんです。これはあなたにお尋ねするのもちょっと無理かもわかりません。総務長官、いかがでしょう。
  216. 床次徳二

    床次国務大臣 基本法は先ほど申し上げましたように、いわゆる交通安全という立場で規定しておるのでありまして、労働基準法とその点は立場をある程度まで異にしておりますが、しかし具体的の従業者の立場に立ちますると、これが両者とも非常に複雑な状態にあることは御指摘のとおりだと思います。この点に関しましては今後とも十分検討していきたいと思っております。
  217. 細野正

    ○細野説明員 先ほど来申しておりますように、二・九通達そのものにつきましてある程度成果をあげておりますが、まだ十分浸透してない点は御指摘のとおりでございますので、労働省といたしましては、この二・九通達の中に規定されている労働条件の実現、これに当面全力をあげさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  218. 後藤俊男

    後藤委員 総務長官、先ほど交通安全対策基本法には直接関係がないと言われました。しかし話を聞けばそのとおりだ、こういう説明であったと私いま聞いたわけですが、問題は、先ほども私言いましたように、えらいくどいこと何べんも言いますけれども、先ほど総務長官が言われましたように、陸上交通だけにおきましてもかなりたくさんな法律がある。それならそのたくさんの法律の中に、交通関係で働いておる労働者を擁護する法律は一体幾つあるのですか。これは現在の労働基準法よりないと思うのです。そうじゃないですか。さらに交通関係の経営者、少なくともこういう交通事故の非常に多いときであるからここまでは行なわなければいけないんだというような義務を課した法律は、これからできるかわかりませんが、現在のところ私は聞いておらぬわけなんです。そうなってまいりますと、毎年毎年交通事故はどんどんふえてくる。その原因一つとしてオーバーロードもあれば、人間が少ないから長時間働かせる、中には三日も四日も深徹で長距離運送をやっておるようなトラックもあるわけなんです。こういうのを、そうならないようにやっぱり縛る必要があるんだ。その縛る法律は一体何があるかといえば、二・九通達じゃないですか。非常に次元の低いと言うとこれはしかられるかもわかりませんが、現在の労働基準法ほどがんとしたものじゃないと私思うわけなんです。そうなれば、安全対策基本法が制定されまして、さらに一歩前進して交通事故を防ごうと思うならば、少なくとも交通関係労働者の労働基準と申しますか最低ここまでは守る、最低これ以上労働条件を悪くしてはいかぬのだ、これをつくる必要があると私は思うわけなんです。これを提案されるにあたってはそれぐらいのことを考えて提案されておると私は思うわけなんです。今後さらに検討いたしましょう、こういうことではどうも交通安全対策基本法そのものがまことに抽象的なお経さんのようなことになってしまって、私が言っておることに対しては具体的にならぬような気がするわけなんです。だから、いま私が尋ねておる点について、これは特に労働省にも関係がございますので、これからの考え方についてもう少し詳しく御説明いただきたいと思うわけなんです。
  219. 床次徳二

    床次国務大臣 交通安全が運転者の労働条件等に大いに関係のありますことはすでに第三十一条、先ほど御指摘になりました条文におきまして「適正化等必要な措置を講ずるものとする。」ということが書いてありますので、関連性のありますことにつきましては御指摘のとおりだと思う。したがって、これを労働関係法規においてどうするかということは、先ほど労働省のほうにおいてお答え申し上げましたように、労働基準法の適用を、法規そのものを改正して時間その他を規制するか、あるいは協約その他の措置によってやるか、いろいろ労働省としての立場があるかと思う。この点につきまして私直接所管しておりませんので、実は検討してまいりたいということを申し上げたのでありますが、具体的な点につきましては、労働省が直接関与しておりますので、労働省の答弁をもって御了承いただかなければならないかと思います。
  220. 細野正

    ○細野説明員 先ほど申し上げましたように、労働省といたしましては、当面二・九通達そのものの内容の実現について全力をあげて努力をしてまいりたい。その中でいろいろ具体的な問題が出てまいりましたときにそれを法律の問題として対処するか、あるいは行政措置で対処するか、その辺は十分また研究させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  221. 後藤俊男

    後藤委員 現在のところそれ以上の考え方は出ておらぬのではないか。何べん説明を聞きましてもこれ以上前進せぬわけでございます。これはぜひひとつ——先ほどから言っております交通関係の労働条件その他多くの問題が今日起きておる交通事故原因である、全部が全部じゃございませんけれども。そう思うならば、昭和四十二年の二月九日に出した通達そのままで今後もそれを基礎として強く進めていこう、それだけでは私は全く不十分だと思うのです。もう少し根本的に検討する必要があるのじゃないかと思うのです。そうなれば労働基準法の問題も出てまいると思うんですがね。労働基準法の改正ということも問題になってくるような気がするわけなんです。ぜひひとつ早急に、いままで私が言いましたような問題等についても検討をしていただくことをお願いをいたしたいと思うわけです。  それから、先ほど触れましたところの賃金形態については全国的に現在どういうふうな情勢になっておるのか、わかればどれだけあって、どれだけの会社がこうなっております、そこまで聞かしていただくとありがたいと思うのですが……。
  222. 細野正

    ○細野説明員 お答えいたします。  賃金形態の面につきましては、改善基準の中に二つ規定がございます。一つは、先ほど御指摘ございましたように、保障給が六割以上でなければいかぬ、こういう規定でございます。この点につきましては——ちょっといまその資料を手元に持っておりませんので、もう一つのほうをとりあえずお答えいたします。  もう一つのほうは、累進歩合になっておるのが非常に刺激的でございまして、その結果、無理な労働時間の延長をするという実態がございますので、累進歩合給をやめて、せめて一律歩合給に直す、あるいは時間比例給をふやす、こういうふうなことでございます。その点につきましては、従来累進歩合給をとっているものの中で、改善基準を実施いたしました後に、その異進歩合給をやめて改善をしたというものの割合は、四十三年八月現在の特別調査によりますと七五%、すなわち七五%が累進歩合給を廃止して、改善基準の要求した内容に直しておるというような実態になっております。  先ほどの第一点につきましては、資料を整えましてまたお答え申し上げます。
  223. 後藤俊男

    後藤委員 それからもう一つ資料で御説明いただきたいのですが、三十六条協定の問題ですね。これは一ぺん野間委員が問題にしたかもわかりませんけれども、現在のところそうしっかりやられておるとは私は見ておらぬわけです。適当に通達は通達、おれのところはおれのところだ、失礼な言い方かもしれませんが、そういうふうにやられておるところがかなり多くあるのじゃないかと私は思うわけです。これも数的にひとつ御説明いただきたいと思うわけです。
  224. 細野正

    ○細野説明員 ただいま御指摘のございました労働時間や休日に関する三六協定の届け出状況でございますが、私どものほうで把握しております割合で申し上げますと、全体で四七・七%の事業所について三六協定の届け出が行なわれている。したがいまして、逆に申し上げますと約半分ないし半分以上のものが三六協定の届け出が改善基準にのっとった形で行なわれていないというこういう状態に現在なっておるわけでございます。
  225. 後藤俊男

    後藤委員 いまあなたが説明された四七・七というのは、おっしゃったように二・九通達を半分も守っておらぬわけなんですね。半分も守っておらぬということは、超過勤務いわゆる残業、長時間労働にそれだけ関心がないということを示していると思うのです。超勤の場合には通達によってこういうふうにやるんだぞということで、申告する表まできちっとあなたのほうから出ておるわけなんですね。ところがそれ以来二カ年間やられましてもまだ四七・七%、百人のうち五十人も実行しておらぬわけなんです。ということは、それらに従わずに長時間労働をやっておるんだといっても間違いないと思うのです。これは一体今後どういうふうに取り締まるつもりですか。
  226. 細野正

    ○細野説明員 先ほど申しましたように、監督の結果、労働時間について約五割をちょっと上回るくらいの違反があると申しましたことは、いまの三六協定の届け出の状況と裏表になっておるわけでございまして、監督をいたしますと必ずそれの是正を事業所に命じまして、その結果をフォローしまして、再監督をやるというたてまえをとっておりますので、その都度是正をさせているという状況でございます。ただし先ほど申しましたように、是正をさせてもまたあと戻りがあるという場合が出てまいります。是正をさせたものが全部その次からきれいに違反状況がなくなっているというふうにはとても申し上げられません。しかし先ほど申しました労働時間なり休日なり割り増し賃金なりという使用状況についての違反もわずかではありますけれども、逐年減るような傾向に出ております。監督の効果も逐次侵透してきているというふうに見ている次第でございます。
  227. 後藤俊男

    後藤委員 くどいようなことを私は言っておりますけれども、逐次減っておりますと言うけれども、二年たって四七・七%、まだ半分までいかぬわけですね。しかもいまあなたが言われましたけれども、長時間労働というのは約半分違反がある。半分違反があるということは、いわゆる通達による通告をきちっとやっておらないところは、違反をして長時間やっておるんだということで、どっちも大体五〇%近くでぴちっと合うわけなんです。これはこのまま推移していったら、二年半かかってようやくここまできた、八〇%以上は何とかしようというとまた二、三年かかる、こういうようなかっこうになってくるんじゃないですか。それともほかの方法で、要員をふやしていく、行政指導監督を強化するのだ、こういう変わった方法でやるんですというような具体的な案があれば別問題ですけれども、どうもあなたの説明を聞いていると、一たんよくなりましてもまた逆戻りがありましてと、あなたうれしそうな顔をして言われますけれども、これはやはりたいへん問題だと思うのです。ほんとう交通事故をなくするというなら、この辺から根本的に考え直さぬことには、ただ二・九通達、二・九通達と二年も三年も五年もこのままに推移していくということになれば、たいして私は前進にならぬと思うわけなんです。総務長官、こういう問題はどうでしょうか。
  228. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま御質問もありお答えも申し上げましたが、交通安全の対策立場から申しますると、やはり指導を強化していただいて、そうして条件を改善するということがよいことではないかと思います。
  229. 後藤俊男

    後藤委員 先ほどから言いましたいろいろなことを早急に考えていただいて、施設なりあるいはその他重要な施策もあると思いますけれども、直接交通事故関係のある、働いておる労働者の立場、さらにこれらの人の労働条件——労働条件の中にも多くの問題が含まれておると思いますが、先ほども申し上げましたように、国鉄あたりでは運転士に対する別の協定がありまして、それでハンドル時間は何時間以上だめだ、深夜は何回以上だめだあるいは休息時間がどうであるというところまで固く縛ってやっておりましても、今日のような状態でございますので、ぜひひとつ、労働基準法も問題になろうと思いますし、特に合理化の激しい今日におきましては、ややともすれば長労働がいままで以上に多くなるかもわからぬということもいえないことも私はないと思うわけです。先ほどから言いましたような一連の問題につきまして、非常に範囲の狭い私は話をしたわけでございますけれども、大切なことだからと思って私言ったようなわけでございます。  さらにいまお聞きのように、四七・七%とか、四十二年二月九日の通達すら守られておらない、あとは全部長時間労働をやっておる、これが現実なんです。幸い交通安全基本法が制定されましたら、いま申し上げましたような問題につきましても直ちに着手していただいて、交通事故防止のほうへ、いま申し上げました立場に立っても全力をひとつ尽くしていただくようにぜひお願いをいたしたいと思います。労働省としてもぜひひとつ検討をしていただきたいと思います。  終わります。
  230. 内海清

    内海委員長 松本忠助君。
  231. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 総務長官にお願いいたしたいと思います。  交通安全対策基本法につきまして、閣法について逐条的に若干お伺いいたしたいと思います。  まず最初に第二条の定義の問題でございますが、その中で第三の項目と第六の項目であります。特に第六の項目のほうの「海上交通船舶による交通をいう。」という定義がございます。要するにこの海上という、海の上というふうにこだわらないで、海を水と解し、また海上を、その前にもございますように、「水中の航行」もあるわけですから、海上は海中を含む、すなわち大小の河川、運河いわゆる湾とか洋とか、海につながる場所のみではなく、水の上を走る、または水の中を走ると解釈してよろしいわけでございましょうか。むしろそうであるとするならば、海上交通というよりも船舶交通とすべきではないか、こういうふうに思いますが、この点はどうでしょうか。
  232. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま御指摘になりましたところの船舶は水上という広いことばを使っておりまして、この点は海の上も河川の航行も両方含んでおるわけでありますが、これをまとめて海上といっております点についての御質疑でありますが、ほかにも含めまして海上交通という事例がございますので、その例によった次第でございます。もちろんこれは河川の航行も含んで考えておる次第であります。
  233. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは了解しました。  運輸大臣まだ見えないですか。——それじゃ自動車局長に、運輸大臣見えておりませんから進めます。  第六条に関してでございますが、「車両等の製造業者の責務」というところがございます。そこで第六条に関しまして最近話題になっております例の欠陥車の問題でございますが、この自動車型式指定規則は昭和二十六年の制定でございますが、この自動車の台数、構造と今日とは格段の相違のあった時代の、前時代的だと言っては言い過ぎかもしれませんが、かなり古い時代の制定である。この内容につきまして所要の改正を行なうということを六月の十七日に発表してございますが、もうすでに一カ月にもなるわけでございますが、まだ発表がないわけでございます。これはどのようなわけで遅延しているのか、あまりに怠慢ではないかと思うのでありますが、どうでしょう。
  234. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 型式指定規則の改正やその他の措置がございますので、現在総合的に検討を進めておりまして、なるべく早く成案を得たいと思っております。
  235. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 局長、十八年間もほっぽっておいたわけですよね。中にはぽつぽつ中間で直したとは思いますけれども、今回は抜本的に直す。この型式指定はやはり基本的な問題ですから、これはもういままで十分検討も済んでいるわけですから、これはもう十分に手が打たれてあるのじゃないかと私ども思っておるわけです。しかも御承知のように例の問題、欠陥車の問題が六月五日に当委員会で話題になりました。その晩のうちに運輸省は間髪を入れず手を打った。ああいう事例もあるわけですから、もう一カ月もたつのにまだできないというのはちょっと怠慢過ぎはせぬか、こう思うわけです。もう少し早くこれを根本的に改正して公布する考えはないかどうか、重ねてお伺いします。
  236. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 型式指定の規則につきましては、二十六年に制定をいたしましてその後にも三回ばかり改正をいたしております。現在の規則は相当詳細に規定をいたしておりまして、大体いままでの状況であればこれでもって十分にやれたと思っておりましたのでございますが、今回のことにかんがみましてさらにこれを改正をするということでございます。その場合におきましては現在の型式指定規則によりますと、主要諸元表といたしまして三十項目、それから明細項目といたしまして二百項目がございます。これはいわゆる保安基準に適合しているかどうかという項目でございますが、さらに明細項目を追加をいたしたい。ブレーキパイプのさびを防ぐための処理、それからブレーキパイプの材質等の点等につきまして追加すると同時に、メーカーにおきますいわゆる欠陥車の届け出の点でございますが、従来型式指定に規定しております点につきましてはすみやかに届け出をするとともに、その改善につきましての運輸大臣の承認を受けるということになっておりますが、それ以外のいわゆる欠陥車につきましては届け出義務を課するというふうな点を規定するつもりでございまして、型式指定規則自体につきましてはさらに改善をするということでございまして、根本的に改正をするというよりも現在のものが数次改正してまいっておりますので、さらにこれを補完するという意味の改正を行ないたいということでございます。
  237. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから六月十七日に、運輸省当局では自動車製作者に対して、自動車構造または装置について欠陥があることを知った場合は使用者に対し周知徹底するということになっておりますね。その方法につきまして新聞紙上で見受けるわけでございますが、まことにこまかい、虫めがねでもかけなければ見えないような小さな活字で、単に活字が羅列されてあるにすぎないのじゃなかろうか、こう思うわけです。もっとしろうとのいわゆるオーナードライバーでもわかるような図解するなりくふうをできないかと思うのです。もう少しきめのこまかい行政指導をする必要があるのじゃなかろうかと思うわけです。局長も御存じと思いますけれども、こうして新聞に出ておるものを見ると、まことにこまかい活字でただ単に書いてあるというだけです。もう少ししろうとの方にもわかるように図解をするなりしてそれを新聞に発表する、こういうふうな行政指導はできないかどうか。
  238. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 メーカーのいわゆる販売広告におきましては、相当きれいな絵をかきまして図解等をしておるわけでありますが、この欠陥車のいわゆるリコールの公表につきましては、これを見ても非常にわかりにくいという御批判はおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、メーカーが広告におきましてわかりやすいようなことをやっているということと同じように、こういう問題につきましてもユーザー側にわかりやすいようにさらにしたい。たとえば図解等をやるというようなことにつきまして指導をしたいと思います。
  239. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もう一点、運輸省当局が欠陥車があった場合の届け出という問題と公表するということを道路運送車両法で明確に義務づけすべきである、こう私は思います。それに対して準備をしていることとは思うのでありますが、いつごろ届け出と公表するという面についてはっきり法制化する考えなのかどうか、この点を承っておきたい。
  240. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 とりあえずの処置といたしましては通達をいたしたわけでございますが、法的には先ほど申し上げました型式指定規則を改正いたしまして規定したいと思っております。
  241. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いつごろまでにやるお考えですか、時期は。
  242. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 来月にはこれを施行するようにしたいと思います。
  243. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、大臣がいらっしゃらないので、大臣のお考えが聞けないのは残念ですが、かわって局長にお考えを聞いておきたいわけですが、新しい型式の自動車が出てきた場合、その審査体制を強化するために自動車審査センター、こういうものをつくりたい、この開設の問題であるとかあるいは自動車欠陥事故等を専門的に研究する研究体制の確立のための予算措置、また地方陸運局に事故調査を担当する専門調査官を配置する等の具体案またその予算、こういうものについてどのくらいの規模をもって来年度予算に組み入れようとしておるのか。そしてまた、それに対して大蔵省といずれ折衝する段階になると思いますが、局長としてどこまでねばり強くそれを完遂するか、熱意をもってやっていくかということについての局長の腹の内を聞かせておいていただきたい。
  244. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 御指摘のような点、すなわち型式指定を行ないますためのいわゆる審査センター的なものを設置するということ、これは約二十五名のスケールで、初年度といたしましては一億五千万円くらいのお金を予定いたしております。  それから、現在船舶研究所に交通安全部、公害部がございますが、これに、今回のことにかんがみまして、事故解析部を設置して、自動車関係が現在二十名でございますが、これを倍ぐらいにして、事故の解析、公害等の問題、それから安全というものに対処いたしたい。それから、地方におきましては、各局に事故調査等を専門的に担当する調査官を設置したい。これは車両欠陥、いわゆる欠陥車の問題におきまして、警察方面におきましても事故防止について調査をされるわけでございますけれども、専門的な知識をいろいろ聞かれる場合が今後ふえると思いますので、それらにも対処して、強化いたしたいと思っておる次第でございます。これらの点につきましては、われわれといたしましては、今回の欠陥車の問題にかんがみまして、必要最小限のものだと思っておりますので、十分関係当局にも御説明をすると同時に、大臣からも力強くおっしゃっていただいておりますので、ぜひ実現いたしまして、この問題に対処するようにいたしたいと思っております。
  245. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 局長、審査センターのほうの予算が一億五千万ということはいま承知しましたが、あとの、事故の解析と、公害研究の問題についての予算はどれくらい考えておるのか。また、地方の各局に専門の検査官を置くという問題についてはどのくらいの予算を組み入れる考えであるか。
  246. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 人間の要求の場合におきましては、これは単価的なものでございまして、普通の人件費、人頭経費等をお願いするわけでございます。交通安全公害研究所を設立いたしまして、自動車関係におきましては、現在の予算が一億数千万円でございますが、これを約四億のスケールでもって特別研究をいたしたいというふうに考えております。
  247. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に宮崎交通安全調査室長に伺いたいわけでございますが、第九条の「歩行者の責務」というところであります。先ほどお話も出ていたようでございますが、歩行者の責務の面で、「歩行者は、道路を通行するに当たっては、法令を励行するとともに、陸上交通に危険を生じさせないように努めなければならない。」こう規定されておるわけであります。歩行者は道路を通行するに当たっては、法令を励行しろ、陸上交通に危険を生じさせないようにつとめろ、こういうふうに責務を強調しておりますが、一体、道路のうち、歩行者が安全に歩けると思われる歩道はどれくらいあるのか。完全に歩道が整備された上でこのようなことが言えるのではなかろうかと思う。歩道の整備もないうちに、責務ばかりを強調するというのは少し無理なことではなかろうか、こう思うわけであります。この点について、現在どれくらい歩道があるのか、建設省のほうから聞きたい。また、こういう責務を強調するのは私は無理だと思うわけですが、これに対して宮崎さんはどう考えておるか。
  248. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 現在の歩道の整備率でございますが、これは先ほどからいろいろ御指摘がございましたように、一般国道につきましては大体街路部分について四五%程度、それから府県道につきましては同じく一八%程度でございます。したがいまして、当委員会においてもいろいろ御指摘がありましたとおり、今後政府といたしましては何よりもまず歩道の整備ということに重点を置いて、交通安全施設の整備をはかってまいりたい。新しい三カ年計画におきましても、国の事業といたしましては、歩道の整備に最重点を置く予定でございます。ところで、御指摘のように、歩道が十分できないのになおかつ歩行者にこういう責務を課すというのは少し不当ではないかという御意見でございます。ごもっともでございますが、政府といたしましては、一方におきまして、いま申し上げましたように、歩道の整備を今後推進してまいる決意でございますし、それとあわせて、やはり歩行者は道路交通上、一番の弱者であることは間違いないわけでございまして、それゆえにこそ、ここ数年間政府といたしましては歩行者保護ということを交通安全対策一つの大きな重点に置いているわけでございますが、やはり交通事故をしさいに分析してみますと、中には歩行者の不注意によって生じているものもございますので、政府施策とあわせて歩行者の方々にも十分気をつけていただきたい、こういう意味で規定したわけでございます。
  249. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまのお話の中にもございましたけれども、歩行者に対してあまり過保護過ぎていはせぬか、こういう気もしないではない。実際問題として、横断歩道のところで車をとめて待っておりますと、非常にゆっくりと、ゆうゆうと、漫歩するような形で横断歩道を渡っていく。若い運転手さんなんかですと、頭にくる、こういうことを言うのですね。歩行者の訓練についてもう少し具体的に、横断歩道というものはせっかくそうして安全に通行できるようになっているんだから、そこを渡る場合にのろのろと渡るのでなくて、さっさと渡るように訓練することを考えなければならぬと思うのですよ。そういう点について具体的にどう考えておられるか。
  250. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 ただいまの御指摘の点は、一般的な交通安全教育と申しますか、交通安全思想の普及の問題になろうかと存じます。この点につきましてはなかなかやり方その他でいろいろむずかしい点もありますし、またその効果がどれほどあがったかという測定がたいへんむずかしい問題もございますが、ここ数年、御承知のように政府といたしましては交通安全思想の普及ということを、これまた一つの大きな柱にいたしまして、いろいろと対策を講じているわけでございます。特に私たちいま一番重点を置いておりますのは、何と申しましてもこういうルールは子供のうちにこれを覚え込ませることが一番大切であろう、こういう観点から、先生も十分御承知と思いますが、学校におきます交通安全教育を何とか充実してまいりたい、それとあわせまして全国の交通安全運動を春、秋にやっておりますが、そういう機会その他、あらゆる機会を通じまして、地域社会の住民の方にもでき得る限り交通ルールを守って安全に歩行していただくように、いろいろと呼びかけないし教育をいたしておるわけであります。
  251. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に第十一条でありますが、「国及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として交通の安全に寄与することとなるように配慮しなければならない。」こうあります。そこで、この直接的なもの、あるいは間接的なものと、こうございますが、これは具体的に言うとどういうことをさしているのか、この点を御説明願いたい。
  252. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 直接的なものと申しますと、たとえば、わが国の幹線道路の計画をかりに今後さらに立てます場合には、幹線道路をつくります場合には、交通安全というものを当然考慮の上でつくらなければならない、こういう意味でございます。それから、間接的なものといたしましては、いろいろございますが、たとえば、新たに学校を設置いたします場合に、学校に通学する子供がなるべく安全に通学できるような位置につとめてこれを設置するとか、あるいは河川で砂利の採取許可をいたします場合に、ダンプカーがそこをむやみに通りまして、事故を生じるおそれがないようにするとか、いろいろな問題があるわけです。こういう点を考えてこういう規定を設けたわけでございます。
  253. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、大蔵省の関係の方に伺いたいわけですが、第十二条の「財政措置等」の問題でございます。第十二条には、「政府は、交通の安全に関する施策の実施に必要な財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。」とあります。そこで、財政上、また金融上、こう区別されて書いてあるわけですが、この点についてお答えを願いたい。
  254. 相沢英之

    ○相沢政府委員 「財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。」という規定がございますが、これは他の法律にも同様な規定がございます。この財政上の措置というのは、一般会計、特別会計その他の予算措置を意味しておりますし、それから金融上の措置は、主として財政投融資上の措置というふうに理解しております。
  255. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこでこれは国及び地方の両者にわたっての規定と解してよろしいでしょうか。
  256. 相沢英之

    ○相沢政府委員 さようでございます。
  257. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 「その他の措置」というのは、この点については具体的に何をさすのか、この案文をつくられた宮崎さん、どういう点からこの「その他の措置」ということをいわれておるのですか。
  258. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 たとえば法制上の措置等も含まれます。これは基本法——先生承知と思いますが、基本法二つございまして、法制上財政上を列記したものと財政上だけのものとございまして、これは、法制上は当然のことという頭で、規定してございません。
  259. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、第十五条の問題でございますが、十五条の特に五項のほうの後段に、ただし書きでございますが、「ただし、海上交通及び航空交通の安全に関する事項に係るものについては、内閣総理大臣官房と運輸大臣官房において共同して処理する。」こういうふうなことがございます。  そこで原田運輸大臣に伺いたいわけでございますが、中央交通安全対策会議の庶務のうちに、海上交通と航空交通の安全に関する事項は、内閣総理大臣官房と運輸大臣官房、これで共同処理をするということであります。  このとおり読めば、その共同処理のとおりでありますが、事実は、海空はやはり運輸大臣官房の専管ではないかと私は見ているのですが、やはり露骨ななわ張り根性というものが、ふんわりと共同処理というような形でここにあらわれているのじゃないかというように、邪推をしては悪いかと思いますがそう思うのです。総理府が中心となって関係各省との調整をはかったのだけれども、なかなか実際問題としてできなかった。この調整がつかないために一年間もかかったことが、これは事実でございますし、だれもが承知していることであります。中央の対策会議につきましては問題はなかったのですが、地方の、それは海上交通、航空の出先機関を持つところの原田運輸大臣の麾下の運輸省の方々が一本化に反対した、このために立案がおくれたのだ、これがおくれた一番大きな原因である、こういうふうにいわれています。そのため中央では海、空、陸と三本、地方のほうは陸だけということになりまして、地方の海、空につきましては、第二十一条においては都道府県交通安全連絡協議会という変則的な組織になっている。この点について私どもは、交通行政の一元化あるいは交通行政の簡素化という一番大事なねらいをかねがねいっておりましたが、これをはるかに離れてしまって、まことに残念な機構になってしまったというふうに思うのです。こういう機構になったために、かえって交通渋滞が起こるのじゃないかと思って心配するわけです。運輸大臣は一本化に反対した根拠がどこにあるために反対をされたのか、あるいは総理府総務長官または宮崎さんは、それぞれのお立場からこれをどのように受けとめておったか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  260. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま松本さんのお尋ねは、運輸省が反対したからこれは一年延びた、こういうえらいむき出しのお話でありますが、私も去年政調におって、この基本法の問題をやるべきだという観点から推進した一人として、反対したとは思っておりません。私がいま運輸大臣になったから言うのではございませんで、運輸省の所管のうちの海と空というのは、非常に特殊といいますか、一般の陸上と比べてあなたがいみじくもおっしゃった、専管ではないかと言われるほど、非常に特殊な問題が多い。こういうことから、これを一本にした法律にするのには、なかなか技術的にもむずかしい問題があったからであって、決してこれをじゃましたというようなものでないと私は信じております。したがいまして、この海上交通、航空交通の安全に関する問題も、それぞれの法律の中に一本でございますけれども、特にそういう特殊なものについては、専門的な知識を持ってこの法律趣旨を生かしていくというたてまえをとったほうが、国民に対する政府としてのつとめを果たし得る、こういう見解でそういうことになっておる、このように私は了解をいたしておるのであります。承知をいたしておるのであります。  それから地方の問題でございますが、これは地方のほうでぜひ必要である、こういう場合にはその連絡協議会もつくれるということにいたしております。これもいま申し上げましたように空と海というのは、少し陸の問題と異なった専門的な問題もあるというところでございますから、地方段階でこれは必要だ、こういうときにはその連絡協議会を設けることができますからそれをやりまして、もちろん協力してこの交通安全のために私たちは万全を期するということだけははっきりと申し上げておきたいと思います。
  261. 床次徳二

    床次国務大臣 いまも運輸大臣からお答え申し上げましたように、海と空とは全くこれは専門的なものであります。そのほとんど大部分運輸省の所管であります。したがって、事務処理から申しましても共同して処理することが便利であろうと考えておる次第であります。  なお、地方の機構につきましても、海上並びに航空関係はほとんど中央でもって話がつける関係であります。したがって陸上のような形と違いまして、協議会形式にしますことが最も能率をあげるゆえんだと考えております。
  262. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 宮崎さんお考えはありませんか。
  263. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 中央交通安全対策会議の庶務を共同で処理することにいたしました理由は、いま両大臣の御答弁のとおりでございます。  なお類似の例といたしましては、科学技術会議の庶務を科学技術庁と文部省で共同処理をするという例が、ございます。  それから地方段階でございますが、地方段階におきましては、海と空は陸と違いまして関係すべき機関が比較的少のうございます。また施策も国の段階でこまかい点まできまる場合が非常に多うございますので、陸上のように多くの関係機関が集まりまして会議をつくって、そこでその地方に固有独自の計画を立てるという実益が比較的少ないのじゃないか、こういう考えに立ちまして、先ほど運輸大臣が御答弁なさったとおり必要があれば連絡協議会で十分協議する、必要がなければそれぞれ地方段階の意思にまかせる、こういうたてまえをとったわけでございます。
  264. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 総理府総務長官並びに運輸大臣の御決意のほどを伺いまして私も安心いたしました。また宮崎さんが言われましたような点もありますので、この下部の機構が完全な動きをするようにどうか一そうの御努力を願いたいと思います。  それから次に三十条の問題でございますが、三十条におきまして「交通の安全に関する知識の普及」という点がございます。これは当然のことでございますけれども、もう一歩掘り下げて、特に子供交通安全教育について別に条項を設けてでも規定すべきではないかというふうに私考えるわけであります。最近子供交通事故というものが非常に激増しております。これに対しまして国の施策は全くおくれておると思います。その総合的対策の推進は、いまや一刻を争う状態ではなかろうかと思います。すでにヨーロッパの諸国におきましては、一国はもとより各国に連携して、幼児から成年に至るまでの一貫した交通安全教育というものが実施されておる。こういう点から、この点についてはまた私も今年の五月八日、当委員会において子供交通安全教育について三つの問題点を提起して検討を願っておりますが、きょうは時間の関係上再び申し上げる余裕はございませんが、特に子供交通安全教育について、教育内容の違いまた一貫した総合的な教育の必要性からも一項目別に設けるべきではないか、こういうふうに考えるのでございますが、これに対して宮崎さん、どのようにお考えですか。
  265. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 学校におきます交通安全教育の必要なことは、もう御指摘を待つまでもないと存じます。政府といたしましても、先ほど私も御答弁申し上げましたように、交通安全教育におきましては、特に学校における交通安全教育に重点を置いて今後推進してまいりたいと思います。したがいまして、御指摘のように特別、項を立てることはしなかったわけでございますが、その内容については、御説のとおりでございます。
  266. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 お願いがしてございませんでしたけれども久保局長さん、これに関連する問題でございますから、どう思いますか。
  267. 久保卓也

    久保政府委員 私どもといたしましては、子供の教育ということが一番重要であるということは当然と考えておりますが、なかんずく文部省の、学校の正規の課程にするということについて、常常切望しておるわけでありますが、現在のところは、課外の教程として副読本が渡されておるそうでありますが、願わくば正規の課程として、しかも、学校の教員が、交通安全教育の別の教育を大学校その他の機関で受けるというような法制なり、たてまえがとられれば、非常に望ましい。外国、特にヨーロッパあたりでは、そういうような制度をとっておるところもあるそうでありまして、そうした学校における教育、さらには家庭における教育という問題もあります。これにつきましては、警察署などが中心になって、あるいはそういう家庭の団体といいますか、町内会といいますか、そういうものを通じて、教育を普及してまいりたい、かように考えております。
  268. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、三十五条でございますが、「損害賠償の適正化」という問題があります。この問題につきましては、先ほど運輸委員会で大臣とも、また自動車局長ともお話し合いをいたしましたので次に移りますが、三十七条、これもちょっと問題点があると思います。この点については、この一条は検討を要するのではなかろうかと私は思っております。  まあ、そのほか、いろいろとこの法案に関しまして、具体的な事実をもってお答えを願いたいと思っておりましたけれども、きょうは一応これでとめまして、あと総理が出席されました際に、若干質問をすることにいたしたいと思います。  きょうはこれで終わりにいたしたいと思います。
  269. 内海清

    内海委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会      ————◇—————   〔参照〕 昭和四十四年七月十一日(金曜日)  交通安全対策特別委員打合会    午前十時三十八分開会
  270. 内海清

    内海委員長 これより交通安全対策特別委員打合会を開きます。  交通安全対策基本法案及び交通安全基本法案について、八名の方々の御出席を願っております。  御出席の方々を御紹介申し上げます。  済生会神奈川県病院長大内正夫君、交通評論家角本良平君、日本大学教授近藤武君、全日本海員組合海技部長斎藤吉平君、明治大学教授清水義汎君、日本航空株式会社国際線機長冨田多喜雄君、大和自動車交通株式会社板橋営業所乗務員平野一三君、日本子どもを守る会副会長矢島せい子君、以上八名の方々であります。  この際一言ごあいさつを申し上げます。  本日御出席いただきました各位には、御多用中のところまことにありがとうございます。それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  次に議事の順序について申し上げます。  まず近藤武君、清水義汎君、角本良平君、大内正夫君、平野一三君、矢島せい子君、斎藤吉平君、冨田多喜雄君の順序で、御意見をお一人約十五分以内にお述べいただきたい。次に委員からの質疑がありますので、その際お答えをいただきたいと存じます。  それでは近藤武君からお願いいたします。
  271. 近藤武

    ○近藤武君 機会を得まして、お呼び出しをいただきました近藤武でございます。  この法案のことに入ります前に、多少私事にわたりますが、私の立場をちょっと申さしていただきたいと思います。  私は労働の生理とか心理とか、そういうような立場から人間工学と安全工学を専攻しておる一人でございますが、私が交通問題に足を踏み入れましたのは、実は産業関係の労働の至適度といいますか、最適化と申しますか、そういうようなものを考えておりまして、被験者に現場に働く人たちを選んで実験をいろいろやっておりますと、見られているときの人間というものは非常に緊張したり、それからふだんと違うところの作業をしているわけでございます。疲労測定などをしますと、一見非常に大きな負担のように見えますが、やはりこの緊張を持続していくわけにまいりませんで、どこかで段取りを抜いたり、手段を省いたりするわけでございますが、たまたま自動車の運転手を被験者にいたしてみますと、この人たちはある一定の機能水準を下げこそすれ、大きく脱落しないでいく、それから二時間、あるいは四時間、八時間、一日、二日、こうこの労働を観察しておりますと同時に、いろいろな測定器にかけて実験をしておりますと、この人たちはちょっとでもそのレベルから逸脱をしますと致命的な打撃を受ける、あるいは致命的な打撃を与えるというようなことで、自分一般の労働者ほどコントロールし、自由に弛緩をしたり緊張したりするような自己調節の幅が非常に少ない。それで、われわれの対象者としては最もよい方々である。この協力を得まして、人間の労働あるいは行動、疲れたときの態度、そういうような面を観察しておったのでございます。その対象から結果を引き出してみますと、人間というものは絶えず一定水準を基準にしておるとはいえ、その波動は昼夜の波動あるいは昼間なら昼間の波動、あるいは午前の波動、午後の波動、季節の波動、いろいろな波動を描いておる。それから、自動車のほうでございますが、私は陸上、特に自動車関係をやっておるわけでございます。機械系の機器でございますが、車両とか交通機器を絶えず消耗しておる。そして絶えず点検整備することによってのみ、きのうの水準を確保することができるという部分もあるわけです。その耐用時間、あるいは耐用日数、あるいは月数、年数というようなものも、絶えず同じ基準を確保しているんじゃないんだというようなことが言えるわけです。  それからもう一つは、交通諸条件は、車両の操縦者から見ますと、歩行者や安全施設というようなものが、あるいは歩行者のほうから見ますと、自動車の操縦者やあるいはその技術者たちというようなものが、あるいは施設の設置者、管理者から見ますと、その両者が、いかにも心ない不安全行為や不法行為をあえて行なっておるように、目に余るようなふうに見ておるわけでございます。他人のほうは絶えずそういうふうに他をながめておるというようなもののように考えられるわけです。  それから、いままでの交通諸条件あるいは交通法規あるいは交通環境というようなものが、自動車運転者に影響するところというようなものを見てまいりますと、その周辺というものはかなり広いものがある。たとえば、いままでの教育の中で、自動車なりあるいはその交通機関の基礎工学的なものが、特に自動車の場合などは軽視されているといいますか、それを知らなくても操縦できるようなものになっていたということ、それから交通法規を見ますと、もう御承知のとおり、A5版にしましても一〇〇〇ページぐらいの厚いようなものに収録し切れるかどうかとさえ考えるほどたくさん、多岐にわたって関係法規があるわけでございます。屋上屋を重ね、私たちの家のように縦横に継ぎはぎだらけだというふうに考えているわけです。  今回、この機会を与えられまして、この基本法案を拝読させていただきますと、基本姿勢というものは非常にけっこうなものだ、しかし、これはやはり社会情勢だとかあるいは技術水準だとか、あるいは時代の変遷というようなものをこえたものでなければならないんじゃないか。基本という名にふさわしいためには、すぐ修正されるようなものや、変革されるようなものでは困るのじゃないかというようなことで読んでまいりますと、まあその中には人間尊重といいますか、人間の尊厳を確認したというような点も見られますし、その地文字どおり総合的にかつ長期的な施策の大綱が盛られているように考えます。そうして、ちょっと奇異に存じますのは、私たち法律にうとい者の面から見ますと、何か非常にシステムに重点が置かれているような気がします。国、地方公共団体あるいは市町村、あるいは住民というような点に、何かそのシステムにばかに重点が置かれているようです。これはやはり時の流れや時代の変わりで多少は変わっていくものじゃないか。ここにあまり重点を置くというのはどういうことかなと、多少奇異に思う点があったわけです。しかし、まあほかの項目につきましては非常に網羅されておる。特に自動車関係——陸上と申しましても自動車関係におきましてはかなり網羅されておりますので、これを基礎にしまして膨大な関係法規があるいは統合され、あるいは単純化されて整理されていくということでは、かなり明るみが見られるんじゃないか。しかし、これを読んでまいりますと、方々に必要な体制だとか、必要な措置とか、何々を配慮しなければならないとか、これは法律的な用語かもわかりませんが、あるいは基本法というものはそういうふうな表現よりほかに方法がないのかもわかりませんが、何かそれを具体化するのには今後非常に困難な道が横たわっているような気がします。必要な措置あるいは注意をしておけといういままでのことばがございますが、前方不注意だとかいうようなもので片づけるのと同じような用語がずいぶん中に入っているような気がしますが、これらの点についてはもう少し何か具体的な幅をこしらえる、基準をこしらえていただかなければならないのじゃないか。少なくとも最低レベルはこしらえていただかなければならないのではないかというふうに考えるわけです。  それから従来の交通安全の道は、危険の現象的な認識と法規的な取り締まりというようなものにあるというふうにまでわれわれに錯覚を持たせておるわけなんです。最近でも、今度はこういう項目について厳罰をもって処する。何か罰則を強化すれば強化するほど交通法規は守られていくというふうな錯覚といいますか、これは強制されれば私たちもやむを得ず従うということがあるわけですが、それによって、やはり私たちは耐えがたきを耐えるとか、忍びがたきを忍ぶということは、できることはできるわけなのでございますが、そのあと解放されたときに一体どうなるのかということを、人間工学的な面から考えてみますと、やはり敗戦国はもとより戦勝国といえども、どこの国も戦後は混乱が必ず起こる。道義が衰退するとか、思想が混乱するとか、無秩序になるとかいうようなものがありますから、あまりきびしい法規的な、取り締まり的なもので押えていただきたくない。しかし、また押えなければぐあい悪い点もあるわけで、そこらのところが政治なり行政の何といいますか、味と申しましょうか、よくわかりませんが、そういう点で、そういうものを補っていただいて、あまり罪人をつくるような取り締まりでないようにいっていただきたいというふうに考えるわけです。  そういう意味で、深い人間性の考察の上に、明るい交通安全のための交通秩序の法規であるように、この基本法を育てていっていただきたい。基本法から発生するところのものを育てていただきたい。基本法というのは、ほかにも幾つかあるように、私も読んだり学んだりしておりますが、ともすると、これは昼あんどん的な、つくったら、もうそれでいいんだ、そういう態度や姿勢を示せばいいんだというようなものが多いように考えますが、事生命に関することですし、命に関することですから、そういうふうにこの基本法を、そんなような立場に置かないように、これは今後私たちも御協力を申し上げなければならないことだと考えておりますが、そんなふうなことを思いまして、あと具体的な問題について幾つか、多少項目別にこしらえてみましたのですが、このことにつきましては、御質問でもあれば——もう皆さんは十分にこれを論議し尽くしたものと思いますので、私の常識的なお話で時間をさくことはむだだと思いますので、御質問でもございましたら、あとでお答えさせていただきまして、たいへんお粗末なお話で恐縮でございますが、これで終わらしていただきます。(拍手)
  272. 内海清

    内海委員長 清水義汎君。
  273. 清水義汎

    ○清水義汎君 明治大学の清水でございます。  この法案内容の問題に入ります前に、この法案の提案理由の説明趣旨内容とも関連をいたすわけでございますけれども、この種の法案は、交通事故の現状というものの的確な認識というものが非常に大事な問題になってくるというふうに考えるわけでございます。  最近の交通事故の現状というものをながめておりますと、いろいろな安全対策なり事故防止対策というものがとられているにもかかわらず、エスカレートする一方である。このままでまいりますと、近々年間二百万人の死傷者が発生をするというふうに推定をされているのが現状でございます。この年間二百万人という数字ということになりますと、五十年間で一億でございます。人生五十年ということをよく申しますが、人間一生のうちには、国民すべてが交通事故に遭遇をするという数字になってまいります。しかも最近の事故ケースを見ておりますと、今月の一日から十日までの十日間で——某タクシー会社の営業所を調査したわけでございますが、この十日間の事故発生件数が、その営業所においては、本年度の平均の一月半分にのぼるほどの増加を示しております。また、鉄道事故等につきましても、通学道の踏切の緊急措置法等によって、国会関係でも非常な御努力をいただいているわけでありますが、その実態を見ますと、踏切事故が発生をしておりましても、助成金が出ないということをむしろ理由にして、踏切道の整備がおくれておる。先般、某私鉄におきましては、これは五月二十八日でございますけれども、小学校二年の子供が信号機のついた踏切で死亡した事故がございます。ところが、この踏切におきましては、信号機が故障しておったということが、会社側でもその後確認をされている。しかし死亡者に対しては、何らの処置がとられておりませんけれども、これは現行の法律の中では、企業は責任を負う義務が規定をされていないからでございます。  このように、いろいろな問題が相変わらず交通事故の中で出てきておるということは、現行の安全対策一つの限界がきているということを示しております。たとえば取り締まりの強化にいたしましても、先般新聞紙上で見ておりましても、警視庁におきましてパトカー等がすでに機能が低下をしてきておる。道路交通事情の悪化によって従来のような取り締まりができないということを発表しております。また、行政指導も限界がきておる。昨年来、労働基準監督局の発表を見ておりますと、自動車業界におけるところの労働基準違反というものは相当件数にのぼっておる。地域によりましては、八〇数%の違反率と発表しております。しかも職業ドライバーの事故の背景というものを見ておりますと、労働強化あるいは労働条件が間接的に事故を誘引しておる、あるいは直接的な事故の背景になっているということは、大方の御承知のような形であると思うわけでございます。  そういう中で、政府交通安全国民会議というものを設置されまして、御努力をなさったわけでございますが、このたびこのような法案が出てきたということは、交通安全国民会議のような形では、すでに現在の交通戦争の防止対策はとり得ない、こういう判断に実は基づいているものではないかというふうに想定されるわけでございます。  そこで、それでは交通安全基本法というものを制定するにあたって、あるべき姿はどのような形が必要なのかということでございますが、簡単に申し上げますと、まず第一点は、人命尊重第一主義というものが貫かれていかなければならない。  第二点は、この交通安全基本法というものが、交通安全憲章的なものに終わってはならない。すなわち、実効性を伴うような原則的な法律として、交通安全基本法が機能をしなければならないということを私は感ずるわけでございます。  そこで少しこまかい問題に入ってまいりたいと思いますが、この交通安全基本法が、政府提案のものと、それから社会党提案のものと二つ出ておりまして、一見拝見をいたしますと、非常に類似しておるかのように見えるわけでございますけれども内容的にこまかく当たってまいりますと、幾つかの大きな相違点があるというふうに私は考えるわけでございます。たとえば、政府原案の第七条、第八条でございますけれども、第七条の車両を使用する者というものは一体どの程度の範囲になるか、運転手であるのか、車そのものを使用している者かという問題点もございます。また第八条については、道交法ですでに義務づけられた事項の中を特にここで規定をするということは、乗務員に対してこれ以上一体どの程度の義務づけをするかという問題が出てまいります。また第九条、第十条におきましては、「歩行者の責務」と「住民の責務」ということでありますけれども、歩行者の責務と申しましても、歩道が完備されてないわが国の道路交通事情の中では、歩行者の責務というものをどの程度持たせるかという点につきましてもきわめてむずかしい問題が出てまいります。従来は歩行者優先という一つの方針がとられてまいりましたけれども、これによって歩行者が同じような責務を生じてくるような方向になってまいりますと、きわめていろいろな問題が出てくるのではないかということでございます。  また、社会党案のほうを拝見をいたしますと、この基本法に伴うところの関連法規というものの必要性を内容的にうたっておられるように拝察をするわけでございます。政府案は、その点に関しまして、関連法規をどうするかという点が、受け取りました資料だけを拝見しておりますと、その辺が非常に不安な面を感ずるわけでございます。  また、交通安全対策の一元化の問題等につきまして、政府原案では、交通安全対策会議という形で一元化をはかろうというような形に拝見をするわけでございますが、社会党案のほうは、これに比較をいたしまして、交通安全審議会並びに行政委員会という形で、その執行なり推進をより強力な形で、あるいは広く各層からの意見を盛り上げた形で運営していこうというような点がこの両法案の大きな差ではないかというふうに私は見るわけでございます。  一番私自身がこの問題について希望いたしますのは、交通安全に対して抜本的な対策をとり、それに対して、この安全基本法という法律を制定をして、より前向きに推進しようというお考えについては、これは非常に私も敬意を表するわけでございますが、懸念されますのは実効性の問題でございます。いかにしてこれを実行していくかということになりますと、道交法の一部も改正しなければならないかと思います。あるいは労働基準法の一部の改正も必要になってくるかと思います。あるいは交通事故の審理に対する問題、あるいは航空なりあるいは鉄軌道全般に対する関連法規を相当大幅に改正をいたしませんと、基本法だけではすべてを処理できない。処理いたすといたしますれば、これは行政指導あるいは法外指導の強化という形になってくるのではないか。そうなりますと、従来の法外指導あるいは取り締まりの強化あるいは精神的な緊張度を高めるという点にウエートが置かれるという危険性も出てまいりますので、せっかくのまことにけっこうな御趣旨でありますので、関連法規をも十分整備されました上で、実効性のある法案として一日も早くこの法案が成立をし、同時に交通事故撲滅に積極的な施策をとられることを心からお願いをいたしまして、私の意見を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  274. 内海清

    内海委員長 角本良平君。
  275. 角本良平

    ○角本良平君 角本でございます。  忌憚のない意見を言えというお話でございますので、歯にきぬ着せずに申し上げたいと思います。  私が申し上げたい点は六項目でございます。  まず第一は、安全というのはかなりの程度に金を出して買うべきものであるということでございまして、その点今度の法案の中で交通安全施設の整備ということが強調されていると思います。これはたいへんけっこうなことでありますが、ただ、いままで法律がなくても予算の中でこれができることではなかったのか、そういったことを考えますと、法律ができたとしましても、予算の上でこの法律の精神を生かしていくという方向でなければ法文が寝てしまうのではなかろうかということであります。道路予算全体としては非常に大きな額になってまいりましたが、その中で安全施設に入れられているお金がまだ足りないといたしますれば、まず現在の道路予算を極端に言えば全額安全施設に振り向けて、現在の道路について考えられる限りの安全施設を整備する。その次の段階として新しい道路をつくっていくあるいは広げていくときに完全に安全施設をつけたものとして使用させるということであります。その際の安全施設につきましては、たとえば歩道橋というのはかなり人間虐待の施設である。老人にはもちろんでありますが、うば車を引っぱってどうしてあそこを渡るのだということになりますと、とてもあれでは人間が渡れるものではないということも出てまいりますから、ぜひ人間を虐待しない方法の安全対策ということを考えていただきたい。以上が第一の安全はかなりの程度金で買うべきものであるということであります。  第二番目は、職業として運転する人たちの適性の確保と指導訓練という項目があるわけでございますが、第一に申し上げたかなりの程度金でと申し上げたのは、かなりの程度までは安全施設でいけますけれども、施設だけで解決できない面が多いということであります。職業として運転に従事する方々が特に気をつけていただかなければいけない。しかしながら同時に、運転する人すべてがそうであろうと思います。ただ、ここで特に職業として従事する人について適正をまず最初によく認定するということも必要でありましょうし、それ以後定期的に繰り返してその認定を行なうということもやはり必要なのではなかろうかと存じます。指導訓練ももちろんでごさいます。  第三番目の点は、道路について安全管理者というものを明確にすべきではなかろうかということでございます。すべて危険な作業を行なうところでは安全管理者が必要ということでありますが、交通手段として見た場合に、普通交通手段は走行路といいますか、車が走っていく道と、輸送具、あるいは車と言ったほうがいいと思いますが、車と、それから動力装置それから運行管理、この四つの面からなっている。これら四つの要素をうまく管理できる交通手段では事故が少ない、管理できない手段では事故が多い。現在交通事故といいますと、鉄道、航空機、船舶、自動車それぞれに事故がありますけれども、圧倒的に多いのが自動車関係でございまして、それだけ事故が発生するというのは、実はこの四つの要素につきまして、管理がばらばらであるということであります。それが最大の原因でございまして、しかも車あるいは動力装置につきましては、全くのしろうとが毎日それをながめているだけということでありますし、道路のほうは、道路をつくる人たちとその交通規制を行なっている人たちとが別個になっているというようなことでありますので、少なくとも走行路と運行管理を通じまして一貫して安全をとらえる人が必要なのではなかろうかという点であります。  第四番目の点は、この法案の、いずれにも書いてあるのかどうか、私にはちょっとわからなかった事柄でありますが、交通をめぐる——交通には間接の関連を持つかもしれないけれども交通をめぐる諸条件について配慮を払っていただきたい。具体的な例としては、都市計画といったことがあげられると思います。現在の都市計画というのは、今日ほど自動車が普及しない時代につくられたものが多うございます。いまのように、交通事故がこれだけ発生するということになりますと、都市計画のような計画を通じまして、社会をむしろ安全なように構造的に変える。子供の通学路を変えるということもありましょうし、市場が置かれる場所を変えるということもあろうかと存じます。  第五番目は、歩行者の義務づけとか車両使用者の義務づけとかいろいろございます。しかしながら、人間は非常に不完全なものである。そういったことを申し上げると、非常に僣越でございますけれども、過去半世紀間にわたりまして、わが国だけではなくて、世界各国におきまして、事故防止の努力が繰り返されてはおりますけれども、大体似た条件のところでは、同じぐらい事故が発生する。たとえば東京二十三区、ロンドン市、ニューヨーク市、いずれも八百万、九百万の人口がおります。その場所で交通事故としてなくなる人の数が一年間に大体七百人をこえている。そして、そのうち歩行者は四百人をこえている。ほぼ同じ姿で出ておりまして、安全対策というのは、ぜひやらなければいけないけれども、しかしそれでも事故は起こる。ある程度の確率で起こるというふうに考えたほうがいいと思います。  そこで、第六番目でございますが——これで終わりです。補償の体制ということであります。いままでは、事故は防止できるはずだ、個人が不注意であるから事故が起こったというふうに考えまして、この補償の面が、どちらかといえば、おろそかといいますか、あるいは従来の一般の賠償の手続にまかされてきております。しかしながら、国が、事故が起こる確率の非常に高いものを認めるということであるならば、国自体として補償にもっと積極的になってもいいのではなかろうかと思うのです。交通事故の遺児が出まして、その人たちのために、民間のお金で学校へ行けるように奨学金を与えよう、こういった制度は、本来福祉国家、文明国としての恥ずべきことではなかろうかと存じます。したがいまして、このいずれの法案でも、損害賠償の請求に関して国が援助するというような形になっておりますけれども、なぜ国が責任を持つというふうに書いていただけないのか、この点は私、非常に残念に思います。毎年必ず一万何千人の人が死ぬ、これは断言できると思います。そういった事態になっておりますから、国が事故の場合に、損害賠償の請求について一切責任を持つという体制、具体的に言えば、国がたとえば交通災害事務所あるいは公団でもけっこうでございますが、そうした組織をつくっていただきまして、被害者が出た場合に、その人に直ちに必要な賠償額を立てかえ払いをする、そうしてその事務所は、加害者に対して税務署のごとくに追求をするということであれば、世の中のバランスがとれるのではなかろうかと存じます。  以上、六項目を申し上げまして、耳ざわりの点もあったと思いますけれども、よろしくお願いしたいと存じます。(拍手)
  276. 内海清

    内海委員長 大内正夫君。
  277. 大内正夫

    ○大内正夫君 済生会神奈川県病院長の大内でございます。  私、第一線の救護を担当している者としましては、法案を拝見いたしましても、私らの関係しているところは、非常に抽象的で、またそういうふうに言わざるを得ないかと思いまして、これに対してどうという気はございませんが、第一線の救護を担当している者として、ふだん感じていることをお話ししまして、何かの御参考になればと存じます。  厚生省の最近の構想によりますと、全国で四千の第一線の救急医療機関、それから人口百万に対しまして一カ所の相当機能の高度の設備を持ったセンターをつくる、そしてその約半数はできていると言っておられます。このセンターという構想で、私の所属しております神奈川県では、約四年前に交通救急センターを設置いたしまして、私の総合病院であります済生会神奈川県病院に併設いたしまして、いろいろ救護をやっております。大体私どものセンターで取り扱う患者さんというのは、一般救急を含めますと約九千、交通関係では大体年三千でございます。そのうち入院患者は五百か六百くらい、特に最近問題になっております脳神経外科の関係でございますが、脳手術というものは、私のほうに直搬される患者並びにワンクッション置きまして、ほかの病院に入って、あるいは医療機関に入って送られてくる患者を合わせましても百くらしかございません。案外少ないのでございます。むしろ最近、いろいろ大衆に対する教育が行き届いておりまして、頭のすり傷だとかそれから単なる首の捻挫というような軽いのが、われわれのセンターに持ち込まれまして、かえって、そのために困っているくらいでございます。それで、よくいろいろ構想がございますけれども、救急施設をつくる、救急センターをつくる、これは、もちろん整備をしなければならないと思いますけれども、その連携を密にすることがなお大事だと思います。つまり末端の救急医療と、その地区にある、広地域にあるセンターとが事務的並びに人間的なつながりを持って、そしてこれが有機的に連絡し合う救護体制をつくるべきではないかと思っております。特に最近、テレビ並びに無線を使った指令センターというものの構想がございますが、こういうものには、ぜひともこれを行ないまして、有機的に連絡をとっていきたいと感じております。  センターの運営についてでございますけれども、普通の医療機関と違いまして、時間外、時間内ということは逆でございます。時間内においては一くらいで、時間外の、つまり五時からあくる日の九時までという時間外のが二の割合で、かえって時間外に患者が参ります。それで最も理想的なセンターの構想としましては、院長一、脳神経科九、外科、整形科、麻酔科各三、これがチームをつくりまして、三交代でするのが理想的とされております。しかしこの財政的の理由、あるいは医師の不足、これから独立したこういうような救急センターを持つということは、現在では不可能と思います。で、われわれが行なっております救急センター、これから厚生省がそういうのをふやそうという構想でございますが、これに対して一、二の考えを持っております。  第一は、救急診療部門というものは総合病院に併設して、しかも独立した外来、入院の設備を持つべきだと思います。これは、先ほど申しましたように、救急外傷の業務というものは、遊休体制でいなければなりません。そしてこれを、多くの人員をそのために整備するといい、これを待機させるということは無理でございまして、総合病院にこれがつければ、一応応急的の人員をそちらに配給し、そして事故が起こった場合にはその総合病院から多数の専門医をこれに応援さして、救急体制をとる。それからまた、外傷の場合でありましても、非外科的のものを、たとえば耳鼻科とか、歯科とか、あるいはものによっては産婦人科も必要でございます。そういう非外科的のものを応援させるためにも、どうしても総合病院にこれを併置しなければならない、またそのほうが便利かと思っております。それから救急で入る外来が一般と一緒でございますと、一ぺんに多発してくる患者さんに対して、これは混乱になりますので、これはどうしても別に持たなければならないかと思っております。  それから、空ベッドの問題でございますが、われわれは常時十以上の空ベッドをいつも確保しております。このためにも、いわゆる一般総合病院のほかに、救急の専門のベッドを確保しているということでないと、運営に困るかと思っております。  それから、経済的のことでございますが、どうしてもこの遊休体制でおりますことと、それからわれわれが公的医療機関の関係から自賠でありましても、一点単価十円の健康保健でやっております。また、ある程度の高度の設備も要ります。このために、どうしても相当の財政的の援助がなければやっていけません。  それから人の問題がございます。この二十四時間の高度の待機制をとります関係から、相当の、先ほど申しましたような医者とその他の人的の設備が必要でございますけれども、実際問題として、理想的にはいきませんが、私のセンターにおきましては、当直としまして外科一、脳外科一、整形科一、内科二、婦人科一、六名が病院と兼務でもってこのセンターのほうとともに当直をしております。これも、センターだけに人員を配属するということは、現在の体制では不可能でございます。しかし、この六名当直というのでありましても、人数が非常に無理でございますので、どうしてもこの医者の人的支援がある大学その他の医療機関と連携を密にしなければできません。私の病院は親病院が慶応でございますので、この医局から応援を得ております。しかし、このごろの大学問題並びに若い方のパートの値上げというので非常にこの六名の当直員の確保も困難になってきております。  次に、脳外科の問題でございますが、脳外科を一人前にするには大体七年かかります。それで、現在脳神経外科医の認定医というものは、大体全国で三百名ございます。それで、非認定医であっても、大体一人前の脳外科医というものを合わせますと、五百名ぐらいでございます。ですから厚生省の案の百十一カ所にこれを部長として一人ずつ配給しても余るはずなんでございます。ですけれども、実際問題としましては、この脳外科というものは、高度の設備が要るところに偏在いたしまして、大学病院とかあるいは都市に偏住しておるので、この末端のセンターに対しては、まだまだ不足かと思っております。  次にリハビリテーションのことでございます。当院では、県議会を通りまして、いま調査費をいただきまして、いま計画しておりますが、リハビリテーション部を併設する。つまり交通救急に対する、外傷に対するリハビリテーションの部門を併設する計画でございます。これは単に病気をなおし、傷をなおすというだけでは不完全でございまして、進んで治療期間を短縮しまして、そして早く社会に復帰させるためにこの部門がどうしても必要なのでございます。一般的に考えられたように、病気のあとに後療をするというのでは不完全でございまして、むしろ初療とともに積極的にこれを行ないまして、そうしていわゆる早期リハビリテーションということをしなければ、完全な医療体制はできない、こう思っております。たとえば四肢の切断のようなものでも、その傷がなおるまでほうっておくのではなくて、傷があるうちからもう訓練に入り、そうして早くなおすということ、たとえば脳外科におきましても約三〇%はリハビリテーションが必要だといっております。東大の例なんかを見ますと、リハビリテーションを早期にやった者では四五%ぐらいが機能を著明に回復した。しなかった例では一八%ぐらいしか回復しなかったというデータが出ております。それからたとえばいわゆるむち打ち症でございます。むち打ち症は軽い者は首の捻挫から、重い者は首が折れまして即死する重症な例まで非常に幅広いことがございます。その成因その他については非常な議論があるところでございます。ただ、がんこに固定した者のうちには精神神経症的の傾向があるということを最近言っているものがございます。ですからこういうものに対してはなおさら早く脳神経外科医を含めたリハビリテーションのチームをつくりまして、そうしてこれを各個撃破しまして早くなおすように努力しなければならないと思います。  それから、いずれにしましても、資金の問題でございまして、救急医療はお金がかかることでございますが、リハビリテーションはもちろんこの建物におきます減価償却もできません。またふだんの運営費についても相当公的の援助がなければできないかと思っております。  以上簡単でございますが、私らのやっておることの一部をお話ししまして御参考になればと思っております。
  278. 内海清

    内海委員長 平野一三君。
  279. 平野一三

    ○平野一三君 私はタクシー乗務員の平野と申します。  私は昭和二十五年の十一月にタクシーに入りまして、その後現在までタクシーを行なっております。そういった約十八年のタクシーの経験の中で、私の感じたことを率直に申し述べたいと思います。  私の十八年の経験の中で、タクシーの変遷なりあるいは法規あるいは通達、いろいろなものが出されております。若干振り返ってみますと、私らが入った当時には、いわゆる木炭車で走っておりました。当時は基本料金が百円でございまして、一日の走行キロは約二百キロぐらいな状態でした。その後不況の時代に入りましてタクシー料金も八十円に値下げになりました。当然でございますけれども一日の走行キロは延びてまいりました。営収を上げるためにはどうしても走らざるを得ないという状態になってきたわけです。その後御存じだと思いますが、昭和三十三年の神風タクシー問題が発生いたしました。このころは一日の走行キロが約四百キロをこえるというような状態で、事故防止、そういった措置のために一の走行キロを三百六十五キロ、帰庫時間午前二時、ノルマに達しないことを理由に下車勤、そういった制裁措置を禁止するというような措置がとられました。当時は車両台数が東京都内で約三十万台というふうに記憶しております。  その後昭和三十七年当時だと思いますが、運賃が改正されまして、現在の料金になっております。しかしながら、当時経営者は、約一五%の運賃が上がったために、私たちの賃金体系を改正されまして、いままで具体的に一万円あげてとった賃金が一万一千五百円やらなければ払わないという形になりました。いろいろな形で通達もその後出ております。二・九通達では、自動車運転者の労働時間等改善基準についての労働省通達が出されておりますが、これは三十三年当時つくられました措置を実行しろという形で出されたと思いますが、実態は逆に現在の拘束十八時間を十九時間でもいいというような解釈、またハイヤーの待ち時間は、実労働時間じゃないという形の中で、逆の労働時間のオーバーという形がこの中では出ております。  その後反則金制度あるいは点数制度、刑法二百十一条、いろいろな形で私たちに対するものが出ておりますけれども、これが実際に私たちが運転している形の中での事故を防ぐという措置には反映されていないというのが実態じゃないかと思います。私たちはやはり事故をしないで、違反をしないで、それで利用者を安全に目的地に輸送できるという形をとることが一番いいことでありますし、それをやることによって生活も確保できるという形が、現在急務ではないか、そういうふうに感じております。  現在東京都内には約百六十万台の車両があるといわれておりますが、昭和三十三年当時と比べますと、約五倍強になっておるわけです。そういった中にありますけれども道路と申しますと、首都圏の高速あるいは東名高速とか、中央高速とかいろいろできておりますけれども、私たちが実際に走る道路は、昔とほとんど変わっておりません。その中では非常に渋滞も起こっておりますし、一日のブレーキの回数が約二千回、クラッチを踏む回数が二千三百回、これはデータによって明らかになっております。また標識も無数に出されておりますし、交通規制もなされております。交通規制は、つい最近川越街道が全面的な右折禁止になりました。それはスムースに走るためにはけっこうなことなんですけれども、実際には事は一方的にまっすぐ走るだけの問題ではありません。必ず右折なりをしなければなりません。特に私たちはお客さんの指示に従って走りますので、どこかで曲がらなければならない。そういうときには路地、路地に車両が殺倒する形になります。そういう中から事故が発生してくるという形になるのじゃないかと思います。ですから、交通規制をする場合にも、そういった側面的なもの、どこを回ったら必ずどこの方向へ行くという、その間の安全施設をする。そういうふうな付帯的に考えた中で、交通規制はしてくれなくてはならないんじゃないかというふうに思います。そういう点については、実際に現場を走っている私たちの意見も御参考に願ったら幸いじゃないか、こういうふうに存じます。  ことしの一月に交通安全のためのタクシーの実態調査を行ないました。その中では政党の方々あるいは医師の方、学識経験者、新聞記者、あるいは主婦の方、そういった人たち三十五名に助手台に乗っていただきまして、一日私たちと同じように走っていただきました。その中ではそのテスト車が普通に走った状態のときには、一日の走行キロの平均が三百七十一キロになっております。平均営収が一万二千四百五十五円という形になっておりますが、安全運転の結果は走行キロが平均三百三キロ、営収が平均一万二百五十三円という形で相当のダウンになっております。これは正月の比較的に車両の少ないときにこういう結果が出たわけですけれども、現在の通常の日にはもっとダウンするんじゃないか、こういうふうに考えます。御存じのように、昼間はほとんど私たちの事両はスムースには走りません。二キロ以内のところを走るのに小一時間かかるということはしばしばございます。現在パートで働いても一時間百円以上にはなるのじゃないかと思います。しかしながらそうした形でありますけれども、歩合給といういまのハイタクの賃金体系の中では、どうしても営収を上げないと私たちの生活そのものが成り立たないという形の中で、それのしわ寄せが、夜間スピードを出すとか、無理な運転をするという形につながってくるのではないかと思います。私たちがとうとい人命を預かる業務ということについては、十分責任感じておりますけれども、いまの交通事情とか労働条件、そういったものと自分の生活との板ばさみの上に追い込まれておるというのが、いまのハイタクの労働者の実態じゃないか、このように感じます。  私たちがいま不幸にして事故なんか起こしました場合、双方にどういう過失があったかという形で処理が現在なされておりますけれども事故原因がそれだけでほんとうにいいものかどうかということが、自分たちにも疑問に感ずる点があるわけです。一つ例をとりますと、世田谷地区に変則十字路がございます。そこにたまたまお客さまを乗せまして、右折をするために中央線で待っておったわけですが、変則十字路のために、反対側からくる車両が当然自分のほうにぶつかってくる形になる。そのためにその乗務員がお客さんの安全と事故を回避するために、前にちょっと車両を出しました。そのときにたまたま横断をして、一団は横断が過ぎましたが、そのあとから一人で渡ってきた老人の方にぶっつけてしまった。これははね飛ばしたとか、そういった状態ではありません。老人の方もころんだ状態でもないのですが、打ちどころが悪かったと申しましょうか、骨折をいたしまして、約七カ月の重傷になってしまいました。乗務員は現在体刑で服役しております。これも考えてみますと、もしその十字路がそういった安全を考えた中で整備されていたとしたら、こういった事故も起きなかったのではないか、こういうふうに考えます。また第七環状線ができました当時に、死者が約十数名出たという新聞の発表がございました。その後横断歩道橋、そういうものが設置された後に死者はゼロになったということを記憶しております。  また、私の営業所の前に、これは川越街道に面しておりますが、横断歩道がございます。ここは東上線の大山駅に近いために、非常に渡る方が多くて、ここは非常に事故が多発しております。死亡事故あるいは傷害事故、追突事故自分たちが実際職場におりまして目の前でそういった事故を目撃して、非常に危険だという形の中で、何とかここを安全に渡れる方法はないかということで考えて、あそこに横断歩道橋をつくったらどうかということで、板橋の区議会なり、各方面に嘆願をいたしまして、区議会におきましては早期設置という決議を採択していただきました。また国道工事事務所においても設置をしてもいいというところまでまいりましたけれども、残念ながらこれは地元の承諾がないとできないということで、一部の地元の承諾がとうとう得られないままに、これは不成功に終わったわけですけれども、幸い警察における事故多発場所だということで、そこで横断歩道専用の信号ができました。そのために現在私たちの見ている前での事故はほとんどないという状態になっております。これを考えますと、やはり安全施設というものが事故をなくすということに大きなつながりがあるのではないかというふうに感じております。  昨年の交通事故によっての死傷者は約八十三万といわれております。本年はそれを上回るというようなことが新聞等でも報道されておりますが、この悲惨な交通事故、国民的な悲願でありますこの事故の撲滅のために、安全施設、そういったものに対する国の予算を使っていただきたい。また国民はそれについては納得していただけるんじゃないか、こういうふうに考えます。  それと同時に、現在の車両道路とのアンバランスの是正の点を十分お考え願いたい、こういうふうに考えます。車両はどんどんふえる一方で、道路はそのわりにふえないという中では、どこを見ても自動車だらけという形があるんじゃないかと思います。  以上、私の経験の中の発言でございますけれども交通事故を防ぐために、人権を尊重した根拠の法案になりますように皆さま方の御努力をお願いしまして私の発言を終わりたいと思います。(拍手)
  280. 内海清

    内海委員長 矢島せい子君。
  281. 矢島せい子

    ○矢島せい子君 私は日本子どもを守る会の副会長をして十八年間子供を守る仕事をしてきた者でございます。  この数年交通機関は非常に進歩しました。そしてすべての乗りものは大型化されスピードアップされて、国道何号線という車のための道路整備され、その上高速道路や有料道路はどんどんつくられていきます。ところが子どもの命を守る、人間の命を守るための政治の配慮は何一つされていないことを感じます。  交通事故をなくすための施設や設備は少なくて、全国的に見ますと、まだ昔人間が自分の二本の足だけで歩いた時代の状態である道を車が走って、そこを人間がよけて歩くというようなことが非常に多いのでございます。そしてそういう私たちの命が危険にさらされているときに、都会を見ますとラッシュのときに何百台というふうに連なっている自動車の列を見ていると、ほんとうに圧倒されます。でも都会の子供たちはガードレールもないような道を、危険にさらされながら車の渦の中を毎日往復して保育園や幼稚園や小中学校に通っているのがほんとうにあわれなような気がいたします。  私の住んでおります地域では、これは千葉県でございますけれども、競馬場へ行く狭い道を毎日毎日子供が登下校の中で苦労して歩いておりますけれども、私の知っているかわいい小学校の三年の坊ちゃんがいつぞやも、午後の二時ごろでございましたけれども、下校時にランドセルをダンプにひっかけられましてそして死んでしまいましたけれども、そのダンプはいまだにつかまりませんし、そのおかあさんの嘆きを見ますと、ほんとうに何といってお慰めしていいかわからないようなわけでございます。もしもあの狭い、大型が二台やっとすれ違うことができる、それもなかなか、どこどこの商店の前でなければすれ違えないというような状況の町が整備されていて、せめて子供たちの歩ける歩道があったら、あの坊ちゃんが死なないでよかったのじゃないか、あのおかあさんがいまだにダンプの運転手さんがつかまりますようにといって折りヅルを毎日毎日折っているような状態がなくて済むのじゃないかと思って、私たち母親同志でいつも話し合っているわけでございますけれども、そういうような事故はこのごろは都会だけでなくて、私農村にもよく参りますけれども、農村でも交通事故はもう例外なく都市専有のものでなくなったという状態があるわけでございます。むしろこのごろは東京の周辺県は事故の発生率が増加していて、地方の子供たちはほんとうに困っております。いまは主婦農業なんぞといわれる時代で、農村のおかあさんたちはたいへんに忙しくて、いままではうちで見ておりました子供たちを何とかしてお金を出してもと思って保育園へやるのですけれども、これがまた保育園が近くにないし、その保育園も一昨年ころからはおかあさんたちがみんな往復の通学の途中の責任は親にあるのだから送り迎えをしろといわれてほんとうに困っちゃうというような話が語られております。朝夕の送り迎えを親がしなくちゃならないなんて、またそのことで手をとられる、何のために保育園へやるのだろうというような嘆きを聞くわけでございます。  それでは子供が一人一人で歩くのだから危険だというふうに考えると、それだけでもないわけです。ちゃんと保母さんや先生方がついて集団登校などをしております幼稚園や保育園でもずいぶん事故が多いわけです。皆さまが御存じのとおりの愛知県の猿投町の一度に十一人なくなったというようなああいうような事故も、ちゃんと先生が誘導しながら歩いているのだけれどもあのような事故が起こったし、それから横浜のある保育園では尼さんの保母さんがもうほんとう子供のことを心配をして、いろいろ知恵を尽くしてみんなに一本の麻なわを持たせてそれを先生があと先になって引っぱりながら気をつけましょうといって、十分に気をつけながら歩いているのに、集団なればこそなお一人の事故で済まなくて一ぺんに子供が殺されるというようなことは、数え上げれば切りのないほどでございます。子供交通事故では、幼児と小学校低学年では歩行中の死亡や重傷が九割にも及びますし、小学校になりますとそろそろ自転車なんかに乗りますので、小学校の高学年、中学校というのは自転車の率が多いし、交通事故では高校生はバイクとか、いまでは自動車運転というようなことでもあります。  でも厚生省のお役人方はよくおっしゃいます。ことに児童家庭局では子供事故は親の不注意が多いと発表するし、母親の手で子供交通事故から守ろうということをいっておられますけれども、お役所からおっしゃっていただかなくても、日本じゅうのおかあさんは交通事故のおそろしさは身にしみて知っております。未来に生きるはずの子供を突然奪われる交通事故はむごたらしいものでございます。もし命を取りとめても、手足をもがれたり顔に傷が残ったりして就職や進学に差別を受けることもありますし、また女の子の場合結婚がむずかしくなることもございます。ことに幼児や学童時代の発育期に頭部外傷を受けると後遺症がいつまでも続いたり、ときに傷害のために知恵おくれになったりする例もたくさん知っておりますし、失明した子供もおります。事故防止には、それはもちろん子供の母親の注意ということも大事だと思いますけれども、しかし今日の物価高の生活の中で、おかあさんたちは内職もしなければならないし、家事労働もしなければならない家庭が多いし、それからまた医学的にいいましても注意ということには限界がありますし、また瞬間のうかつというような場合もあると思います。すべてを母親の責任だけに転嫁するのは無理な相談でございます。また事故のたびに運転手の取り締まりをきびしくするとか、子供交通訓練ができていないから敏捷に歩けることを訓練するなどといいますけれども、これだけでは解決できないと思います。  もっと人間を大切にするために早くりっぱな交通安全基本法をぜひつくっていただきたいと思います。そして今日このように交通災害がひどくなってからやっと発表した欠陥車の問題などに対しては、十分にきびしく監督をし、また取り締まっていただきたいものだと思っております。  私たち日本子どもを守る会で一昨年も昨年もそしてことしも、いま子供白書を、民間のものとしてのお役所仕事の白書に対するものとして、マスコミでも評価されておりますけれども、民間の人がみな手をつないでいろいろな方面から交通事故のことも研究しながらその白書の一部に発表しておるわけでございますけれども、しみじみ思いますことは、その白書をつくる過程の中でも、たとえば踏切事故死の一つを取り上げてみましても、踏切にたいへん事故が多いと踏切を整理統合するという名目でじき踏切を締めてしまったところが多いわけです。ことに私鉄などにはそういうことがございまして、中には公安委員会が私鉄に押されて交通量の多い踏切に丸太を立てて閉鎖しているところがずいぶんございます。そうしてそういう丸太を立ててあっても、これは車は通れなくなりますけれども、回って見て歩きますと、子供は自由にそういう丸太の間を通って私鉄の線路を越えて学校へ行くわけでございます。先日私も写真をとりましたけれども、元気な子供たちは信号機も何にもない封鎖された踏切の間をいかにうまく通るかということをけいこしているわけです。そうするとそこへおかあさんたちは付き添っていて、ほらこうやれば早く行けるのだ、こういうふうに気をつけろというふうなことで、子供にうまく横切ることを訓練して危険を減らそうなどという努力をしておりますけれども、こういうことはほんとうにおそろしいことだと思います。踏切を通るなということだけでなくて、踏切をどうやったら立体交差にできるのか、政府の力で立体交差にさせていただくこと、また全部一種に格上げをして警手をつける踏切にすること、そういうような具体的な方法をぜひ講じていただきたいと思います。  私たちの住んでおります地区の近くにも、せめて踏切全体にわたるだけの棒があるならば事故が防げるにもかかわらず、その半分を惜しんで半分の竹の棒をたくさん使っている私鉄などは、東京の周辺ならちょっと歩けばすぐ目につくわけでございます。それを、ぜひ踏切番をつけてくれとか、竹を道路幅一ぱいにしてくれとかいうような交渉をおかあさんたちがしても、これを交通基本法のようなところできちんとそういうこまかいところまで関係法案についてもきめてあるならば、会社も話し合いに応じてくれるのですけれども、なかなかむずかしくて、あまり住民の声が大きくなりますればそれをふさいで遠くを回り道をしてくれというようなことになっているのが現在の実情なのでございます。しかも踏切事故などで死んだ当人の子供だけでなくて、あまりの慮外のことに命をかけて調査をし、追跡しているおとうさんが病に倒れて死んでしまうという残酷な例も知っております。  以上のことを考えてみますと、りっぱな基本法案を一日も早く成立させると同時に、やはりものごとは心がけでなくて具体的にすぐ事柄が動いていくような関連法案をつくって、先ほどもどなたかおっしゃっておられましたけれども、具体的な予算措置というものがなければ、どんなりっぱな文章ができ上がりましてもそれが絵にかいたモチになるということは、私たち十八年間子供を守る仕事をしております中で、あのりっぱないま読み返しても世界に対して恥ずかしくない児童憲章というものを持っておりながら、子供がいまだに守られていないということは、あれは憲章であって何らの予算措置がないということに関連するわけでございます。それでぜひそういうような具体的な法案をつくっていただきたいということを、長年の運動の経験に照らして皆さんにお願いしたいと私は考えています。  いろいろな基本法案を読ましていただいてみまして、社会党の法案には地方自治体及び政府責任を明らかにしているところがありますし、またそれに伴う法案で関連法案をつくるということも書いてありますので、私は社会党案を支持するものでございます。  たいへんにつたない経験でございますけれども、具体的な例でございましたら半日申し上げても三日申し上げてもまだ尽きないほどの実例は知っておりますが、ひとつここのところをくみ上げて一日も早くりっぱなよい交通安全の基本法をつくっていただきたいと思います。これで私のことばを終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  282. 内海清

    内海委員長 斎藤吉平君。
  283. 斎藤吉平

    ○斎藤吉平君 私、海員組合に所属しておりまして、海技部長をやっております。海技部長と申しますのは主として海難問題を専門にやっておりますので、その立場から御意見を率直に申し上げさせていただきたいというふうに思っております。  私は基本法案をちょっと読ませていただきまして、どうもやはり陸が中心になっておりまして、海というのは何かこうつけたりのような関係で載せられているということで、たいへん大きな不満があるわけでございます。正直申し上げまして海というものは陸と離れているように見えますけれども、実は現在非常に陸と危険の問題につきまして密接なつながりを持っております。私はことさらにむしろ海上に目を向けなければ非常に大きな災害というものも予想されるのではないかということが心配でございまして、特にこの辺を強調いたしまして、基本法案から具体的な法案ができる場合にこのような点をぜひ考えてお願いしたいということを申し上げたいと思います。  特に私ども非常におそれている点で具体的なことを一つ申し上げますと、現在東京湾に十九万トン、二十万トンという大型タンカーが入っております。もし油が流れたといったようなことを仮定をいたしまして、イギリスの場合にトリー・キャニヨンといった十万トンの船の事故がございましたけれども、いろいろ油の流れるのを計算いたしますと、一ミリの油の厚さで六時間で一千トンの油が三分の一平方マイルに広がるというのが実績であるというように私ども聞いておるわけですが、それを計算をしてまいりますと、ちょうど三十万トンの油が二十四時間かかりますと四百平方マイル——これは海のマイルでございますが、二十四時間で四百平方マイルに広がります。それを東京湾というのに当てはめてみますと、たまたま東京湾の広さが四百平方マイルでございます。そうしますと原油でございますから揮発性の油を持っているということで、もしそれに火がつけば、海面全面が油でおおわれるばかりでなくて、火がついた場合を想定いたしますと、東京湾のまわりに二千万の人が住んでいるということでございまして、現状においては手のつけられないような大災害ということが当然考えられる。しかもタンカーが停泊しております真上には、今度成田飛行場ができるかできないかわかりませんが、羽田にいたしましても成田にいたしましても飛行機があの上を飛び回る。へたをすると飛行機とタンカーとが衝突をするということもなきにしもあらずということが考えられまして、私どもたいへん陸と海との危険というものについては、むしろきびしい点でつながりがあるということを特に強調を申し上げたいと思います。  日本のまわりは、いま海外に比べましても非常に船舶がふくそう化しております。世界全部でいま二億総トンの船舶ができたといわれているわけですが、その二割なり三割が日本にいま集中をしている。特に大型タンカーのマーケットがむしろ東京に中心が置かれている。しかも造船も世界一であるということから世界各国の船が日本を中心に集まってきております。それで世界の二割なり三割が日本のまわりに集中してきている。そのほかに日本の特色といたしまして漁船がまた世界で非常に多い。それからはしけ、小型鋼船、機帆船を中心にしましての内航船もまた非常に数が多いということで、世界で最もと言っていいほど沿岸が船舶でもってふくそうをしている海域でございます。  ところがいままでの考え方は、一般に海というものは広いんだという考え方がございまして、船の運航その他についてのルールというものはございません。現在あるのは海上衝突予防法というものがありまして、一隻対一隻が向かい合ったときに右側を通りなさいといったようなルールだけでございまして、このような狭いまわりにたくさん集結しているようなところに適切なルールがない。いませいぜいあるとしますと港則法、港の中にある場合にきめられてあるだけということでございまして、現在のこのふくそう度といいますのは、私ども考え方からいいますともう完全に行き詰まった姿、もう完全に万歳をした姿といっても私は過言ではないというように考えておるわけでございます。ことさらに、最近は少なくとも三百名、四百名、一番多いところは千五百名の人を、海についての完全なしろうとというのを乗せましたカーフェリーが激増しておりまして、それがふくそう化した一般船舶と直角に交わり合う航路をとっておる。これもまた人命ということから、もしその船に何かありましたら、私どもカーフェリーについての一番心配は、ガソリンというものを燃料にしている自動車がたくさん積まれておりますので、火災ということを非常に心配しておりますが、もしカーフェリー等に火災等がありましたならば、完全に多数の人間が蒸し焼きになるというような悲惨な状況というものも考えられるわけでございます。それに対して一番必要なのは何かといいましたら、この沿岸に対しまして船が通るそのルールの設定ということをまず行なうべきである。これは緊急にルールの設定を行なうべきである。陸上ではすでに左右分離、一方通行、あるいは高架といいますか、上下でもって道路の交錯というのも車等行なわれておりますが、海上につきましては何らのそういうルールがない。海面のふくそう化を秩序立てる意味でまずルール化が必要である。外国ではもうすでに始まっておりまして、このやり方にはいろいろなやり方がございますが、陸上と同じように左右の分離のしかた、右左分離する。船ですから風なり波なりでもって漂う性格がございますので、まん中にバッファーゾーンあるいはセーフティーゾーンといいまして、半マイルなり一マイルなりの間隔の安全地帯を置きましてその回りを左右分離をする、あるいはドーバー海峡等でやっておりますように、一方通行、航路を一方的に指定しまして、北にのぼる船はこの航路を通りなさい、南へ下がる船はこの航路を通りなさいというように航路を分離をする、あるいはサンフランシスコ、ニューヨークあるいはバルチック海等でも行なわれておりますが、ラウンドアバウトという方式、これは陸上でいいますとロータリー方式になると思いますが、アンチクロックワイズ、あの時計の反回り、反対の方向に全部が回りながらしかも航路を左右分離で出ていくというような方法等が現実に海外ではもうどんどん行なわれてきておりまして、日本はすでにもう国際的な立場になっておりますので、日本も早急にまずこれを設定しなければならないというように私ども考えているわけでございます。そういうように航路分離なりラウンドアバウト、ロータリー方式なりやりますと、船舶の危険というのはいわゆるいままでのような多数船舶の行き合い関係がなくなる、一方の流れになりますので、追い抜きだけの危険になるということで、危険度が非常に減少するわけでございます。現在私ども一番心配しているのは衝突でございまして、船と船とが衝突することによってタンカー等が油が漏れる、鉄と鉄とがすり合いますので火が出るということでございますので、まず衝突ということを防ぐという方法からいいまして、しかも最近はスモッグなり霧が非常に多く出始めていることから、視界が非常に悪くなっている状況でございますので、たとえ視界が悪くなっても前のほうに注意をして左右分離のあれを守っていけば、一方の流れになれば一つだけの危険になるんだということで、その辺を早急にやっていただきたいというように考えているわけでございます。  その次は、先ほども申し上げましたような超大型船の処置でございますが、少なくとも、東京湾あるいは瀬戸内海あるいは伊勢湾というように、閉じ込められました海面といいますか、そのような海面の中には、あのような危険な油といったものを含んだ大量の大型船というものを入れるべきではないという原則をぜひ立てるべきである。実際に通産省等が奨励をいたしましたことと思うのですが、鹿児島のところに、CTS構想といいますか、原油基地構想というように、たとえ油が流れましてもそれはすぐ黒潮に乗って太平洋の中に拡散さしてしまう、あるいは火がついた場合でも、まわりにはあまり多くの人というものは住んでいない、人に被害を与えるのが少ないというようなことが行なわれて、実際にもすでに行なわれているわけでございまして、ああいう危険の大型化というものにつきましては、その規制ということをぜひ中に織り込んでいただかなければ大惨事につながるということを特に強調いたしたいと思います。  それから陸上におきましてはハイウエー等非常にモダンな高速道路等がどんどんできているわけでございます。海につきましても同様のことがなぜ考えられないかということでございまして、航路を掘ってつくるという新しい航路の開発ということも積極的にお願いをしたいと思います。といいますのは、たとえば浦賀で東京湾に入ります入り口を見ましても、第一海堡、第二海堡、第三海堡とございます。一般の航路は第二と第三の間に航路があるわけでございますが、ほとんど外国から来る船は、第一海堡、第二海堡の間に海堡を見間違いましてのし上げている。日本のあの浦賀のところはいま世界で一番難所に言われて批判されている場所でございますが、あそこにもし、第一海堡と第二海堡の間に二千メートルなり水深二十メートルなりの航路というものを掘ってつくられるとしましたならば、一方通行になりまして、先ほど申し上げました東京湾全体が一つのラウンドアバウトの形になり、しかも全部が一つの流れになるということで、たいへん安全上もよくなるわけで、まず新しい航路をつくるというようなことも、陸上と同じような考え方で何としてでもやっていただきたいというように感じます。  それから海上保安庁の問題でございますが、陸上では巡査等がたいへん懇切丁寧に指導をすることをやっております。道路でストップをして立ち入り検査等もやっているわけでございますが、いまの海上保安庁の勢力は、私の記憶では、終戦当時残りました船腹量が百七十五万トンだったと思いますが、現在はもう世界で四番目、間もなく世界で二番目の保有トン数になろうということで、現在すでに二千万総トンをこえているというような、こういう現状に対しまして海上保安庁は、二十四年にできてからまだほとんどその規模というものが大きくなっていない。これなんかもいまのような全体の船腹量に相応した形でもっと、革命的にと申し上げてもいいと思いますが、強化をされまして、海上交通指導ということをやはり親切にぜひ行なっていただきたい。先ほど罰則の問題も出ましたけれども、まず第一に指導教育ということでございまして、その辺の力がまだたいへん不十分であるというように私ども考えます。  それから、日本の海運に対する行政につきまして私ども非常に不満とするところは、大きな船につきましては非常に懇切丁寧ないろいろな行政なり措置が行なわれるのですけれども、小さな船に対する措置というのがいろいろな面で怠りがございます。特に漁船でありますとか、内航船でありますとか、機帆船でありますとか、そういう船に対する親切な行政指導がない。しかも数におきましては非常に多い、海難等で喪失する人命も非常に多い、こういうところに対する対処のしかたがない。たとえば交通にいたしましても、瀬戸内海等を考えましても、小型船なり漁船なりの通る小さな航路というものを、もっと小さな船が通りやすいような親切な指導なり、標識を立てるなり、航路の開発なりが行なわれるということが、私は緊急に大事なことではないかと考えております。そのことが逆に言いまして大型船の航路を守るということにもなりますので、政府全体としても小さな船に対するきめこまかい対策ということにもっと力を入れていただきたいということを感ずるわけでございます。  それから、いろいろ申し上げました中で私どもお願いしたいのは、航路というもののルールの設定ということを行なわれますと、必ず沿岸漁民との中の漁業権との問題というのが争いとして出てくるわけでございます。たとえば瀬戸内海にいたしましても東京湾にいたしましても出てくるわけでございます。この点はわれわれ仲間同士が常に争わさせられるという形になるわけでございますが、ルールの設定につきましては、一部についてはすでにもう国際的な航路であるという点をお考えになると同時に、政治的な解決といいますか、行政的にもぜひお願いをしたいのは、たとえば瀬戸内海等を考える場合に、瀬戸内海というのは、あの瀬戸内海全体というのを工業地帯にするのが主なのか、あるいはあそこを観光資源なり、漁業の養殖なら養殖ということを中心とする場所とするのか、その辺の基本的な考え方というのをまず設定をしていただきたい。いつもそのままどちらつかずにいっているものですから、タンカーも入る、工場もできる、そうしてまた漁業もだんだん水が濁ってきて魚がとれなくなるという争いが現場で行なわれておりまして、その辺のもっと総合的な対策ということを、あるいは海面別にといいますか、ぜひ、行政面といいますか、正規にといいますか、はっきり目標というものをきめていただきたいことを私どもお願い申し上げたいと思います。  それから、法案の中に海難救助のことが出ておりましたが、日本の海難救助体制というのは最も幼稚と言っていいと私は思います。たとえば船舶一つの救命のなににいたしましても、何十年前のボート一つがいまだに行なわれている。ようやくこの前、国会の御努力によりまして、ゴムいかだ一つつけましたところ、昨年一年間で一千九名という人命をゴムいかだが救出しております。昭和三十九年から五カ年でもって二千六百七十五名という人命を救出しておる。ことし一月一日からこの六月までの半年間でも、四百四名という人間を救っているわけでございまして、海上におきましては、まず最初の設備ということがいかに大事であるかということを私ども痛切に感ずるわけでございまして、海上におきましては、まず私ども、海上に科学性をということを盛んに言っておりますけれども、飛行機等のいろんなこともありますが、まず海難救助にシステマチックな救助体制といいますか、そういう面の科学的な導入ということを早急にお願いをしたい。一方にただ海洋開発ということを言うだけでなくて、海洋開発を言うならば、それと平行して、安全対策ということもバランスをとって進めなければ、ほんとうの海洋開発にはならないというように感じているわけでございまして、この点もいろんな点でお願いを申し上げたいと思います。  それから、最後に、岸壁のターミナルの問題でございますが、日本の港は地獄であるというように外国船員から特に指摘を受けております。最近新しくたくさん港ができます。行ってごらんになりましたら、岸壁の高さが三メートルないし五メートルございまして、海の中に落ちましたら、どこにもすがって助かる方法がございません、いまの日本の岸壁は。助けに飛び込もうとしても、自分の命を守るということができなくて、飛び込むこともできないわけでございます。外国の例を見ますと、たとえば、アメリカが使っております、横浜にあります北埠頭一つごらんになりましても、三十メートル置きに照明、救命具、繩ばしご、ロープ、そうして百メートルごとに医療具、それから百メートルごとに、何かがあった場合には通信連絡ということが綿密に行なわれております。ノルウェー等のスカンジナビアに行きましても、公園にある池についても救命具といったものがそのふちについているわけでございまして、私ども、その港の中で、落っこちまして、助かるべくして助からない、ために失われている命もまたたいへん多うございまして、水と陸との接点、このターミナルにおける安全という面につきましても、きめこまかな方策というものをぜひ私どもお願いをしたいと思います。  私は、基本法というのができたのはたいへんけっこうなことだと思いますが、問題は、これから先に法案でどういうように具体的に実施をするかにすべてがかかっていると私は思いまして、その点によく注目しているわけでございますが、海上というのはたいへんに情報の入りにくい場所でございますので、その点を御考慮の中に入れられまして、ほんとうにひとつやる気でといいますか、特にこれは行政の人にお願いをしたいと思いますが、前向きに、ほんとうに実施をするということでぜひお願いを申し上げたいというように思います。  これで終わります。(拍手)
  284. 内海清

    内海委員長 冨田多喜雄君。
  285. 冨田多喜雄

    ○冨田多喜雄君 私は、国際線の機長として操縦に当たっている冨田でございます。  私が操縦を始めましたのは昭和十三年でございまして、当時の飛行機は、十人あるいは二十人というくらいのが乗れれば大きい飛行機でございましたけれども、現今非常に大型化、スピード化されまして、今年末あるいは来年には四百人以上のような大型な飛行機が飛び立つということで、これらが事故を起こすというようなことがあれば非常にたいへんなことになる。私ども第一線に飛びまして、人命を尊重して、事故がない、無事故でいこう、安全第一でいこうということは、常日ごろ考えているわけですけれども、航空の事故という点で、統計によりますと、七〇%あるいは七五%というものが、人的に操縦士の判断とかそういうものによるものだというふうにいわれております。  そこで、私は、これらの事故をなくするのに必要な対策としてとらるべきことはどういうことがあればいいかという点で御参考になればと思いまして、少しお話をしたいと思います。  まず、飛行機を飛ばします場合に、航空機の乗務員の指導といいますか、訓練ということがやはり一番大事なことだと思います。現在の段階におきまして、私ども民間航空に従事する者は、航空大学を出、あるいは会社が自衛隊に委託をし、あるいは民間から出てきたというようないろいろ違った者がありますけれども、できますならば、航空大学というようなものを拡充されまして、質の同じ者、優秀な質の者、こういう者を卒業さしていただいて、それが従事していくんだということになりますと、非常に質の問題あるいはそれの指導監督というような面で徹底されるのではないかというふうに考えております。  その場合におきまして、いま最も問題になっておりますのは、訓練に対する飛行場の不足であります。実際訓練、いま航空大学におきましても宮崎で行なわれておりますけれども、これが現在の民間航空における需要度からいいますれば、現在養成しているような人員では非常に不足を来たしておりますので、ますますこれを拡充していかなければならないという場合に、さしあたってくるのは飛行場の問題じゃないかと思います。こういう点から見ましても、訓練の飛行場というようなものが非常に大きなファクターを占めてくると思います。また、私ども第一線を飛ぶ者に対しましても、技量保持あるいは経験の保持、これらの審査というものが相当厳格に行なわれなければならないということで、これらのためにも飛行場を使用するという度数は非常に多いわけでございますけれども、現状のように非常に多数の旅客機が定期的に飛んでいる、その中でそういうことを実施するというのは非常にむずかしい状態になっております。こういう面から見ましても、訓練の専用の飛行場というようなことをお考えいただかないとなかなかそういう実施に問題が多くなってくるということで、ぜひとも訓練に対する飛行場の設置というような面についてはお考えをいただきたいと思います。  なお、その次におきますのは、事故におきましても、いままで、私、前に申し上げましたけれども、操縦士、そういう人的なものといわれる中においても、非常に飛行場周辺において、おりてくるときの事故あるいは上がるときというふうに、飛行場の施設関係、そういうものの不足が私ども操縦士の判断の悪さとかいうふうに評価されるものが多分にあるというふうに私ども感じております。その面で、現在の航空機の発達というものに即応して、飛行場の滑走路の長さ、あるいは並行のランウエーをつくる、あるいは横風に対するようなランウエーの設置を考慮していただくというようなことがありますれば、そういう点では、飛行機が常時風に立って動かされているという点から考えましても、あるいは多量の交通をさばくという点においても、非常に有効になってくるというふうに思います。もちろん、これに対しましては、非常にお金のかかることでありますけれども、ぜひ御考慮の上、実施というような面でお願いをいたしたいというふうに考えております。現在の飛行機はますます機材もよくなり、天候の悪いときにも飛べるというようなかっこうになってまいりますけれども、それに付随して地上の施設というようなものが完備してまいりませんと、思うような運航というものができないというふうになってまいります。たとえば羽田におきましても、滑走路が二本横風用といいますか、もう一本短いのがありますけれども、大型機の発着には二本しか使えない。ところが、一本は目下工事をして、大型機のために駐機する場所をつくるというようなことで、なくなるということでございまして、成田の空港の建設もおくれているというようなことで、私ども国際線を飛ぶ場合にはいろいろな問題が考えられます。  なお、航空機の発達という点では、日進月歩、高速化、大型化というようなことがどんどん続けられておるわけでございまして、これらの整備に当たる整備士の訓練、指導というような面でも大いに力を入れていかなければ、今後の発達した航空機にマッチした手はずがとれていかないというふうに考えております。  なお、非常に多量な航空機をさばいていく航空交通管制の問題につきましても、現在羽田におきましても、天候が悪い場合などには非常なおくれを生ずる。おくれを生じますと、陸上の交通と違いまして、空中において千フィートというような高さで何機も待たしておかなければならない、それをさばいていくというようなこともなかなかたいへんなことだと思いますが、レーダー等の設置その他近代的な機器を設置されまして、そういう点もさばいていくというような方法がとられれば、事故というものがますます少なくなってくる。あるいは気象観測の面でもそうですけれども、私どもが飛んでおります場合には、気象というものが非常に運航を左右するものでございますので、今後の航空機の発達に伴う高々度の気象観測、あるいは現在行なわれております人工衛星からの航空写真をとって、それを電送して、実際に上から見たような、太平洋の半分ぐらいをカバーするような広範囲にわたっての雲の状況などがわかるというようなことがすぐに出てきますれば、これも実際の運航面に非常に役立ってきますし、高々度の風の観測などにいたしましても、これが予報として正確なものであればあるほど私どもの運航というものは安全に行なわれるということになりますので、こういう点も考えていただかなければいけないと思います。  最後に、事故の場合の調査の問題ですけれども事故がありまして、調査のために特別機関というものを設置されて国家として取り上げる、アメリカにおきますNTSBのような機関が設置されまして、そこで事故原因が科学的に究明されて、それが今後の事故対策に活用されるというような形がとられなければいけないのではないかというようなふうに私ども考えております。  以上結論的に申しますれば、事故の防止はやはり乗り組み員の指導であり、その技量をいかに保持させるかというようなことでございますけれども、付随して空港施設あるいは航空保安援助施設というようなものが改善されまして、現在の航空機を動かすに足るものができてこなければ、事故撲滅という線には至らないというようなふうに考えております。  なお本法案以外に、これに関連しまして関連法としていろいろ御検討をされると思いますけれども、やはり私ども関係しております法規といいますと、一番身近なものは国際民間航空機構、私どもICAOと申しておりますけれども、こういうものの標準の線に沿って、現在あるいは近い将来において運航されるであろう航空機にマッチしたような法的措置といいますか、法令等の改正ということが行なわれるようなふうにしていただきたいということをお願いいたしまして、私の話を終わりといたします。(拍手)
  286. 内海清

    内海委員長 以上で八名の方々の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  287. 内海清

    内海委員長 質疑通告がありますので、順次これを許します。稻村佐近四郎君。
  288. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 きょうはたいへんお忙しいときにおいでをいただきまして、たいへん貴重な御意見を拝聴さしていただきまして、たいへん参考になったと思います。  そこで、たいへん質問者も多うございますので、ちょっと私は平野さんにお尋ねをしたいと思うのですが、先ほど清水先生のほうから、某営業所を調査してみたところが、これは悪いところを調査されたのかもしれませんが、たいへん事故が多くて、十日間で過去の一カ月半以上の事故を出しておった、こういうふうに言われておるわけです。そこで、先ほどあなたがおっしゃったわけですが、労働条件、それから賃金体系、これは自動車業界にもたいへん大きな格差があるわけですね。たとえば大手五社であるとかあるいは中小という、たいへんな格差があるわけですけれども、あなたの大和自動車の場合は大手のほうに属するわけですから、その労働条件というものが、わりあいというのじゃなく、たいへん交通事故を起こす一つの大きな原因にもなっておると思います。そういう意味から、その労働条件というものはどういう労働条件になっておるのか。それからまた労働条件ばかりでなく、それに並行しまして賃金体系というふうなものがどういうような形か、先ほどその点について、もちろん安全施設、こういったものにも大きな欠陥があるというお話がありましたけれども、私が先ほど来お伺いしておる中において、労働条件、賃金体系がたいへん交通事故発生の大きな原因のように言われておるわけですが、ひとつ簡単にこの問題をお聞かせ願えればたいへん参考になると思うのです。
  289. 平野一三

    ○平野一三君 私の知っている範囲でお答えしたいと思います。  現在私のつとめている会社の労働条件としましては、朝八時出庫、二時帰庫という形にはなっております。しかし、現実には八時前、また二時過ぎという形が実態としては起きております。というのは、八時から出て二時に帰るということは、八時から三十分間は始業点検という形になっております。また二時に帰るということは、一時半に帰って二時までの間に終業の点検をするというのが本来の労働条件になっておるわけです。そういった労働条件の中では、実際に現在あげている水揚げというものはあがりません。大体、先ほどもちょっと申しましたけれども、約一万円前後、前に自分たちが実際に調査した中では九千円前後という数字も出ております。そうしますと一カ月の営収平均が約十一万何がしになります。そうしますと、賃金としますと約六万円弱という形が出ておるわけです。  賃金体系は、固定部門と申しまして本給、私たちの本給は八千円が基礎になっております。一年間欠勤をしないでおりますと二百円上がります。そのほかに勤務給というのがございます。それから残業というのですが、深夜手当、そういうものをひっくるめまして約四万五千円程度になります。現在の営収の足切りが十万という形になっております。十万以上営収をあげた分について四〇%歩合給がつきます。ですから、十万かせいだ中では四万五千円だけということになります。それ以上にするためにはどうしても十五万、十六万という営収をあげなければなりません。それで歩合給と固定部門を合わして約六万五千、約七万、そういう賃金が出てくるわけです。  大体以上であります。
  290. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員 時間がいろいろありますので、あれですが、朝の八時から夜の二時までだったら、たいへんな勤務時間ですね。これはたいへんなことなんですね。  ただ、いま聞いてみると、固定給はたった八千円しかつかないのですか。(平野一三君「本給」と呼ぶ)だから、本給というものは、それにいろいろなものがつくから、さほど大きなものじゃないのですね。——それじゃよくわかりました。  これで終わります。
  291. 内海清

    内海委員長 斎藤寿夫君。
  292. 斎藤寿夫

    ○斎藤(寿)委員 角本さんですか、たいへん適切な御意見を拝聴したわけですが、その最後に、人間は不完全である、したがって安全対策等あらゆる努力をしても、やはりある程度事故というものは、これは確率としてやむを得ない、諸外国の同じような都市においても同様な現象があるし、また今後も想定されるだろう、こういう仰せであります。私も全くその点は同感であります。ただ、したがって補償の体制というものを確立していかなければならない、これは当然のことであります。その際、国の責任においてこの体制をとる、国が直接その責任をとるというようなお話があったのでありますが、私ちょっとそれを聞き漏らしたので、制度としてどんなふうにそれをお考えになっておるか、またたいへん御勉強なすっておるようでありまして、諸外国で、国が直接その責任の衝に当たる制度というものはどのような制度があるか、私は勉強不足で存じませんので、教えていただきたいと思います。
  293. 角本良平

    ○角本良平君 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと存じます。  私がここで提案といいますか、意見として申し上げましたことは、実は外国の例からというわけではございませんで、むしろ外国では、民事訴訟になれた習慣の国が外いと思いますし、おそらく個々の当事者相互間、それから弁護士を通じ、あるいは保険といった制度で解決しているのじゃないかと思います。その点は、残念ながら、私不勉強で、私がいまここで申し上げたような制度があるかどうかは存じません。  私が申し上げたことを具体的に考えますと、自動車あるいはいろいろな交通業者でもそうでありますが、ある程度事故の確率があるということがわかっていてそれを動かすということでありますから、当然第一次的にはその原因者が責任を負うべきだと思います。ただ、その第一次的に負うべき責任を、被害者と加害者との間で果たさせようといたしますと、たとえば先ほどダンプのひき逃げの例がござました。ひき逃げの場合には加害者が見つからない、あるいはまた見つかったとしても加害者に賠償能力がないというような場合もあると思います。強制保険の金額をかりに引き上げたとしても、たとえば一台のダンプが非常に重大な事故を起こすというような場合に、はたして全額補償ができるかというようなこともあろうかと思います。それから残された家族というのは、もう正常な判断ができない状態になっております。特に一家の柱を失った場合に、とほうにくれるということになろうかと思います。したがいまして、私は、この被害者のかわりに、その被害者が必要な、当然受けるべき全額が受けられるように国が責任を持つということでありますので、国が加害者にかわって支払いますけれども、それは加害者がそれによって免責されるという意味ではございませんで、まず被害者が受けるべきものを立てかえ払いするというような制度にしていただいたらどうかと思います。ですから、その制度を具体的に行なう場合には、基金の制度もありましょうし、また一つの企業体のような形で行なう、あるいは労働基準局がなされておるような、労災保険のような形でお考えになることも、方法としてはいろいろあろうかと思います。ただ確実に被害者に必要なお金が渡るような制度を考えていただければ幸いだと存じます。
  294. 内海清

    内海委員長 板川正吾君。
  295. 板川正吾

    板川委員 御苦労さまです。国会のほが風雲急を告げていますから、簡単に斎藤さんに伺いますが、斎藤さん、東京湾には大型タンカーは非常に危険だから入港させるな、こういう政策をとるべきじゃないか、こうおっしゃられております。まあそれは実はわれわれも望むところですが、いまの日本の経済事情からいいまして、東京湾内に非常に大きな石油基地がたくさんありますから、そこへ大型タンカーを入れるなということになりますと、じゃ小さいもので数多く運べということになると、さらにふくそうする感じもいたします。ですから、これはなかなか大きな問題だと思いますが、しかし入れざるを得ないとすると、次善の対策としてどういうような方法を考えたらいいだろうか、大型タンカーの事故防止のためには、入るとすればどういう対策を講じたらいいだろうかという点について、一点だけお伺いをいたします。  それから角本さんに伺いますが、交通基本法というものは、先ほどのお話しのように、これは事故を絶滅するということは不可能であるという前提に立っておられます。交通基本法というのは、いわばそういう事故が起こるのを防止するという、あとから追っかけていって、なるべく少なくするというものであって、交通事故の前面にはだかって事故を防止するという性質じゃないですね、基本法は。基本法の反対側として、いわば交通政策、全般のバランスのとれた交通政策というのが大事であって、それと両方が併用されないと、私は幾ら交通基本法をつくって何がしかの金を出したところで、事故を少なくするということは不可能ではないだろうか、多少の手当てをすれば、それよりもまた事故のふえる要因ができまして、結局大した効果をあらわさないのじゃないだろうか、交通政策というものが一面大切だというふうに思いますが、この点について御意見を伺いたいと思います。  それから清水さんに伺いますが、一点だけ伺いましょう。政府基本法の中には、住民の責務、歩行者の責務、運転者の責務、使用者の責務、製造業者の責務、道路設置者の責務と、こういう関係者が並行的に同じようなレベルで責務が問われているように思います。それはそれぞれの立場責任が、全くないという意味ではありませんが、先ほど御指摘になりましたように、歩行者の責務というものは道路交通法に書いてあることで、あえて基本法に書かなくてもいいものを、一つのかっこうをつけているのだろうと思いますが、私はこの中に交通運輸業者、事業として交通業をやって車両を運行するものあるいは船を運航するもの、飛行機を運航するもの、こういう事業者の責任というものがはなはだ不明確じゃないかと思うのですが、この点について御意見があれば承っておきたいと思います。
  296. 斎藤吉平

    ○斎藤吉平君 この場でお答え申し上げます。  大型タンカーを東京湾なら東京湾に入るのを防ぐ場合に、小型の船に積みかえてかえって船が多数化するのじゃないかということでございますが、現状はそうでございますが、太平洋岸なら太平洋岸の原油基地というものができましたら、これを現在始まろうとしておりますパイプによってつなぐという方法でございまして、これはもう日本でも漸次どんどんやっておりますし、外国でもどんどん発達しておりますが、パイプに切りかえるべきである。もし現在入ってくる場合にはやはり管制を行なうべきで、管制する方法には航路をまず指定をする。大型船の通るだけの航路を指定する、その場所的な指定と、もう一つは時間によって一番ふくそうする時間を避けて、大型船だけを入る時間をきめましてそこでもって管制して入れるという方法もございます。  それからもう一ついま不足なのは、ああいう原油の危険な船の標識がいまのところ明確でございません。たとえばいま赤い旗を立てているだけということなのですけれども、遠くから見る場合に旗等が見えませんので、船体自身を危険色に塗るとかいうように、どこからでも危険な船であるということが見えるような標識というのをやはり私どもは早急に開発をし、当てはめていくべきだというように考えております。
  297. 角本良平

    ○角本良平君 いまの交通政策の重要性につきましては、御指摘のとおりだと存じます。具体的にたとえば何が出てくるかということになりますと、いますぐに浮かびますのは、自動車の数と道路とのバランスがとれるのかどうかというような点では、これは全国の自動車の数と全国の道路の面積というような対比をいたしますれば、これはとれるかもしれませんけれども、たとえば霞ケ関の付近というような特定の地区におきまして数をバランスさせることができるかということになれば、これはとても不可能であるというような場合に、この中で混雑を生じない限度にどう押さえていくかというような政策、その場合には自動車の所有と使用方法を分離した政策が必要なのではないかというような交通政策が私、当然考えられると思います。あるいはまた、先ほどから航空とか海運とか、まあ鉄道もあると思いますけれども、そうした普通企業として行なわれておる場合には、企業が安全に対して十分な配慮ができるような企業の経営というものを確保してやらなければいけないのではないか。そういったことを考えましても、交通政策は御指摘のように非常に重大だと思います。
  298. 清水義汎

    ○清水義汎君 事業者の責務の問題でございますが、それとも関連をいたしますので、先ほど第七条の「車両等を使用する者」という者が事業者なのか、あるいはオーナードライバーをも一緒くたにしたものか、その辺が不明確だという意見を申し上げたのですが、事業者の保安安全に対する責務というものが現在でも精神的条項としてある。しかしそれは罰則規定もございませんし、具体的なものもないために、たとえば踏切等につきましては、危険な踏切については安全保安施設をしなければならないという規定はございますけれども、義務づけがございません。罰則規定もございません。しかも鉄軌道の場合でございますと、責任賠償の企業側の責任というものがいまだに明確でございませんので、企業上から考えますと、そのような部門に対する投資は利潤追求と逆行をするという性格を持つために、積極的にはなかなか行なおうとしないわけでございます。そういう点では事業者の責務というものを明確にさせ得るような法規の改正整備、こういうものが当然必要ではないか。それについては理想的に望ましいのは、本来監督官庁なり国家権力のほうで法律その他によって規制をどんどん行なっていくというのが理想論としては好ましくないと思う。しかし、現実的に過渡期の条件の中で、法外指導なりあるいは精神条項の中で常識的に自主的にそれが行ない得るような条件設定をしても行なわない場合においてはこれはやむを得ないのではないか。その点については運転者なりあるいは歩行者との関係で比較をいたしますと、過保護になっているのではないかという点が言えるのではないか。  もう一つは、特に運輸関係が免許事業になっておりますけれども、免許事業であるからには運輸事業者として適格な業者について免許を交付しているというふうに私は常識的に考えるわけでございます。ところが一たん免許をおろしますと、あとは譲渡、合併、吸収というような形でむしろ商法上の適用によって自由にされている。この辺についても十分考えていかなければいかぬ問題ではないか、かように考えております。
  299. 内海清

    内海委員長 太田一夫君。
  300. 太田一夫

    ○太田委員 五点についてそれぞれお尋ねしますから、最初問題点とお答えいただく方の名前だけ申し上げておきますから、あと大体簡潔にお答えいただければよろしいと存じます。  第一問は機関車の一人乗務制の問題について角本、清水両氏からお答えいただきたいと思うのです。それは機関車の二人乗務制いわば機関士の助士というものが、今度機関士一人制にして助士を廃止しようという問題が当局側から出されて、それがたいへん天下に議論を巻き起こしておりますが、先ほど来の角本さんの安全性というものは予算、金というものを惜しむべきではないという思想から考えてみても、清水先生のお考えから見ましても、これは安全第一主義ということから考えてみますと、機関車というのは構造上電車とは違うのでありまして、いろいろ注意義務並びにその視野というものが違う。いろいろ学者間にも議論のあるところでありますし、そして宰引する車両が長大であり、夜間というものを相当考えた場合におきましては非常に危険であるし、先ほど来踏切の通学路の問題もありましたとおりでありますから、したがって一人乗務制というものは危険なものだという世論があるならば、その世論がなくなるまでその原因を研究するぐらいの慎重性があってもいいと思うが、それについてどうお考えになりますか。  第二番は、免許証の問題について平野さんにお尋ねをいたしますが、平野さんにお尋ねしたいのは、免許証を持つ者に自賠保険をかけたらどうかという点が最近出ておるわけです。それが安全運転に、安全性の確保に貢献するという意見から自賠保険の制度がいわれておりますけれども、免許証を持つ者に損保をかけなければならない義務づけがなされたときには、その負担というのはおそらく会社側が負担するだろうと思いますが、そういうことについて何か議論されているものがあるでしょうか。  それから先ほどちょっとあなたのおっしゃった御議論の中に不明確な点がありましたから、この際ついでに明確にしていただきたいのは、一時間走った場合に営収水揚げというのは何円が理想であり妥当なものであるというお考えでございましょうか、この点について平野さんにお願いします。  三番には清水先生に人間の注意力の問題につきまして、私はあなたの御意見を、端的に言うならば人間の注意力に限界がある以上、一般世にいうところの歩行者の不注意、いわゆる過失というものは常につきまとっておるものであるから、交通事故において歩行者の注意、不注意というものはあまり強くとがめるべきものではないのではないか、こういうように思うが、先生のお考えはいかがでございますか。  第四問は斎藤さんにお尋ねしますが、海というものから見ますと、フェリーの問題がたいへん大問題のようにいまおっしゃったと思いますが、私もそう思う。その中にしろうとのフェリーいわばフェリーというものに対して非常に未熟、それから無知とか冒険というものがあるように感じられるのでありますが、フェリー事業が非常に最近発展をしておりますから、これはあなたのほうから見ると、まことに海の暴君のごとくおそろしいものであるというふうにお感じになっていらっしゃると思うのですが、フェリーを安全に運航させるためにはどうしたらいいか、この点でございます。  それから五番目は冨田さんにお尋ねしますが、飛行機の問題について、あなたは先ほど、飛行場というのは不足しておるという点と、乗務員の養成という点が大体の御重点のようであったと思いますが、実は日本の空の問題がちょっと抜けておるような気がしますので、かりに飛行場というものは、日本のいかなる位置にも自由につくることができるようになっておるのか。パイロットの立場からお考えになりまして、どこにでもできるんでありましょうか。空が自由に飛べなくなっておる現状では、飛行場はたくさん不足しておるからつくれといっても、これはまた何か地理的に制限されるのではなかろうか。空の上は自由になっていないのではないかと思うが、そういう点について何かお考えになった点はございませんか。  以上でございます。
  301. 角本良平

    ○角本良平君 いまの機関車の一人乗務の問題でございますが、これは非常に高度の技術的、専門的な知識が必要な問題だと思います。私自身はそのほうのそれほどの専門ではございませんし、まあ専門家の方々の御意見に従って判断すべき事柄だと思います。
  302. 清水義汎

    ○清水義汎君 この一人乗務、二人乗務、いわゆる機関助士廃止の問題でございますけれども、これは例の大島報告書に基づいて、いま現実の問題として労使で問題になっておるわけでございますが、あの報告書の内容につきましては、自然科学者が中心でつくっておりますので、私の専門外でございます。交通労働を専攻しておる者としての立場から、この問題について若干の意見を申し述べたいと思います。  現行の二人乗務の中でも非常に問題がある。二人乗務の中でもいろいろな事故が起きております。しかも、現在の国鉄乗務員の中にはいまだに二徹作業というものが仕業形態の中に置かれておる。それから、労働条件というものを考えますと、この一人乗務、二人乗務というのは、私は労働条件の問題でございますので、必ずしも生理学的な、医学的な、心理学的な限界でやり得る範囲ならよろしいという筋合いのものではないと思う。そこには社会的な水準、国際的な水準の中で、わが国に最も妥当性のある合理的な条件の中で問題を処理していかなければならない。そうなりますと、現在の国鉄乗務員の労働時間が御承知のように七時間、閑散時間、実質的拘束時間というような形の中で、どれが一体拘束時間なのかという点については、いろいろ議論のある点でございます。そういう点を考えますと、労働条件については、現行の労働条件の中でもう少し深く究明をしていかなければならない問題点がまず第一点にある。  それから第二点の問題は、外国等の一人乗務の移行の経過の処置、それから移行のしかた、こういうものを見ておりますと、各路線別に相当期間、長期に調査をした上で、その路線、路線で結論を下しておるところもございます。そういうような見地から考えますと、今回の一人乗務の移行の結論というのが、本格的な調査をしないうちに出てしまったという点では、若干の問題が残るんではないか。  それから第三点の問題といたしましては、この一人乗務、二人乗務の安全性、いわば二人乗務は不必要なんだという見地から出たのか、それとも国鉄の中期計画、いわゆる合理化計画の中の要員不足の必要性という理由が中心になって行なわれたのか、この辺が非常に大きな問題だと思います。もし合理化の必要性からということになりますと、企業としては必要になってくるかもわかりませんが、現場の労働者なり利用者のほうから見ると、全く利害関係が対立した一つの問題が出てくる、かように考えております。  それから、人間の注意力の問題と歩行者の問題でございますけれども事故原因を調べておりますと、両方注意をしていたにもかかわらず、狭い道路でもって歩行者と自動車が接触をして人身事故を起こすという例もございます。いわゆる注意力の限界を越えた道路条件というものをまず問題にしていかなければならない。それからもう一つは、注意力と申しましても、道交法の中に非常に抽象的な条項がございます。いわゆる安全運転義務違反という形であります。ちょうどこれも歩行者が安全歩行義務違反というような抽象的な解釈で、もし歩行者にもこの責任が転嫁をされてくるとなりますと、非常に問題が多いのではないか。むしろ歩行者なり運転者が常識的に考えられる注意力の中で処理できるような物理的条件の設定、このほうがむしろ先行すべきではないか。かように考えます。
  303. 平野一三

    ○平野一三君 自賠法の問題につきましては、実は私どもその内容、そういったものがまだわかりませんので、残念ながらお答えできませんので、御了承を願いたいと思います。  それから営収の問題ですけれども、現在のタクシーメーターは、キロによって料金が出されております。二キロで百円になっております。自後が四百五十メートルごとに二十円という形で、キロを単位にした料金になっております。しかしながら、私たちの賃金体系は、営収を単位にした賃金体系になっております。そういう形の中で、先ほども一時間百円という形が出ましたけれども自分たちの生活を確保する上におきましては、少なくとも平均七百円ないし八百円程度は確保していかないと、自分たちの生活ができる賃金にはならないということなんであります。
  304. 斎藤吉平

    ○斎藤吉平君 フェリーの問題でございますが、私がいましろうとというふうに申し上げましたのは、フェリーに乗ってくる方というのが、海ということの危険なら危険ということを認識されないで、気軽に乗ってきて気軽におりていかれる一般客のことをしろうと、むしろ海については何も知らないんだという考え方で、安全対策というものをわれわれとしてはとらなければ非常に危険であるという意味で、あのしろうとという言い方をしておるわけでございます。実際問題、外国の旅客船等に乗る場合には、これから船に乗るんだという意識がありますし、乗りますと、すぐライフジャケットをつけたり、救命訓練等に参加するわけでございますけれども、短時間でもって渡るフェリーについては、とてもそういうことができませんし、乗ってくる人はほんとうに簡単に道路の延長と思って乗ってきている状態でございますので、それだけに私どもは危険であるというように考えているわけでございます。  対策のほうとしましては、この前飛び越えて海に自動車が飛び込まれたという例があるわけであります。接岸の問題点——現在、内海に約七割ほどありますが、そのうちの四割が港湾設備が悪いためにホーサー——ホーサーといいますと、船をつないでおくロープでございますが、ロープをとりたくてもとるだけの設備がない、しかたがないので、エンジンをかけっばなしでもって、回しながらうしろから押しながら、しかも前にありますランゾドア——ランプゲートといいますが、ランプゲートの岸壁とのフリクションといいますか、あれを使ってとめておるという、非常に危険な状態がありますが、それはやはり港湾の設備を改良することがまず第一であろうかと思います。  それからこの前のように、やはり不注意でもって飛び出すということが、陸のほうからも、船のほうからもございますので、端的に、私どもは船内に踏切のようなチェーンを張るべきであるということを、現在主張しております。  それから陸と海との接点の場合に、やはり管理体制が必要でございまして、責任者というものをはっきりとやはり明確にきめるべきである。その責任者というのは、最も情報が入る事業者側、陸上側に、たとえば天候が悪くなったからやめる、やめないというような情報もすべて陸上側の事業所に入ってまいりますので、事業所の責任者に責任体制がはっきりあるのだ、情報を提供する義務があるのだという、その辺を明確にしておくことだというように考えます。  それから航海中の安全につきましては、まず、やはり先ほど申しました航路の分離が第一、それからもう一つは、大量の人を、火災があった場合あるいは衝突をした場合にどうやって離脱させるかということ、これはたいへんむずかしい問題でございまして、たとえば最低でも三百名なり四百名、多いところは千五百名もおりますし、乗っております場所が車両甲板より上になっておりますから、非常に高い場所にございます。その高い場所から海に飛び込むということはとても簡単にはできません。女子供どころか男でもなかなか簡単にできない高い場所でございますので、そういうところからどうやって確実に救出をするか。救命具等、いろいろございますが、救命具がありましても、どうやって、しかも水につけないで救命具に乗り移すかということは非常に大きな問題でございまして、その点は緊急に開発を要する問題であるというように私どもいま考えております。いまやり得ることは、ネットを上陸用舟艇の船側に張る程度のことしか現在はできないのじゃないかというように考えておりますが、これは早急に開発する必要がある。  それからもう一つは、火災がたいへんガソリン等を含んで、おそろしいものでございますので、船内に有効な消防、消火設備というものを緊急に行なう必要がある。いまある種のスプリンクラーを縦に回しまして、水膜を張ることによって船内の区画をつくり、しかもそれでもって温度を下げるというようなものがだんだん考えられつつあるようでございますので、そういうものの早急な開発をやらしていくべきではないか。  それからもう一つは、乗り組み員が船客に対する誘導方法というものを訓練を受けておりませんので、船客の誘導というものに対する訓練というものがこれから必要であるということを考えております。  以上でございます。
  305. 冨田多喜雄

    ○冨田多喜雄君 お答えいたします。  私が先ほど申し上げました訓練の飛行場がぜひほしいという願望を持っておりますことにつきまして、ただいま先生から御質問のように、そういうものをつくる場合に地理的な条件あるいは空の上は自由だといってどこでもできるのかという御質問の内容と了解してお答えいたしますけれども、私ども考えております中におきましても、もちろん地理的条件があるということはおっしゃられるとおりであります。なお、航空機の交通のふくそうする地域あるいは住宅の密集するような地域、こういうものは当然避けなければなりませんし、あるいは練習をいたします場合には、定期航空の路線に近いところで常時交通があるというような場所ももちろん避けなければならないと思いますので、いろいろな条件はあると思います。ただ、私は願望として訓練というものに専念できるような飛行場がぜひほしいという意味で申し上げております。
  306. 内海清

    内海委員長 河村勝君。
  307. 河村勝

    ○河村委員 角本さんと大内さんと斎藤さんに一、二点ずつ御質問申し上げます。まとめて最初に申し上げます。  角本さん、さっき歩道橋について人間虐待の傾向がある、確かにそのとおりだろうと思いますが、しからば虐待ならざるようなかわりのものをどういうふうに考えるか。いま一つ道路の安全管理者というものをつくったらどうだという提案がありまして、特に走行路と運行管理の一元化をやったらどうだということでありましたが、高速道路のような場合にはこれはできるだろうと思いますが、一般道路についてどういうようなことをお考えになっておるか。その二点。  それから大内さんにお伺いいたしますが、先ほど脳外科の手術が年間百ぐらいで非常に少ないということで、それに関連をして、各末端の救急医療機関とセンターとの連携が密でなければならないというお話がありましたが、そういうことは、実際脳外科手術を要する患者は一ぱいあるけれども、連携が悪いもので手当てを受けられない者があるという意味であるかどうか、その辺をちょっとお伺いしたい。  それから斎藤さんにお伺いいたしますが、船舶運航のルールを確立せよということで航路分離の話がありましたが、航路分離は、海上交通法が流れていまできておりませんけれども、現行法のもとで可能なのかどうか。全然ないわけでもないようですから不可能ではないように思いますが、現在なかなかできておらないのは、現行法でやった場合には法的拘束力が乏しくて実際有効でないのか、それともその他に何かの障害があってなかなかできないのか、その点をお伺いしたい。  以上です。
  308. 角本良平

    ○角本良平君 まず第一番目の、歩道橋を私が望ましくない、しからばかわりはどんなものを考えるかということであります。  現在つけられている歩道橋すべてについていきなりかわりのものがあるかと言われれば、これはない。しかしながら、道路を全体としてつくりかえていく過程で、だんだんに歩道橋のように階段をのぼりおりしなければいけないものを整理していく、どうしても歩道橋になるならば、少なくとも階段ではなくて坂道でのぼっていくというようなことが一つあると思います。  それからもう一つは、現在の歩道橋という逃げ方は、信号をつけた場合に車の流れが渋滞するということから歩道橋になっておるわけでありますが、車の流れが渋滞いたしましても、信号をもっとつけるべきではなかろうかと私は思います。と申しますことは、歩道橋を上がることがめんどうでございますし、また上がれない人もおりまして、そういう人たちは歩道橋がありましても、自動車の合い間を抜けて道の上を通っているというのが現実であります。これは幾ら法律で禁止いたしましても防げないことだと思います。それからまた、雨風のときにあの歩道橋の上に上がるということはとてもできないことでありますから、そういうときにそういう人たちが出る。したがいまして、もっと信号で置きかえるということを考えていただいたらどうかと思います。  それから、地下道のほうがいいではないかという代案も出ると思いますけれども、地下道はとてもこわくて入れません。これは大都会の中の地下道でありましても、昼間はまだよろしゅうございますが、夜になるととても大の男でも一人ではこわくて入れない。したがって、私は地下道も特殊な場所以外は望ましくないと思います。  特にこの点、歩道橋の問題を取り上げましたのは、たとえば新宿の西口にいたしましても、あるいは東京駅前の八重州の側にいたしましても、地下に人間を追い込んで、そして自動車を地平に通すというような構造物を積極的におつくりになる、こういった場合にはぜひとも人間は階段を通らずに、自動車のほうが、地下か高架か知りませんけれども、人間を避けて坂道を通って立体分離していくという形で考えていただきたいと思います。  第二点の、一般道路の安全管理者についてどうするかということでありますが、現在は道路を建設される建設省と警察とが非常によく協力してやっておられます。しかしながら、法律体系として見た場合に、やはり責任が二分されているように思います。その点をはっきりさせるという意味で申し上げたわけでありまして、具体的には、道路を開通させるときには、私が申し上げます安全管理者が、この道路は現在予想される交通量に対して信号その他安全施設を十分に持っているという認定を下す。そういった目で見た場合に、いま都市計画で計画されている道路のほとんどが落第すると思います。と申しますのは、昭和三十年ごろまでは、歩道もつけないでかなりの道幅の道をまっすぐにつくるというような計画がほとんどでございます。その計画がいまごろになってやっとでき上がる。でき上がりますと、先ほどどなたかからお話がありました環七の例のように、安全設備がなくて道路だけが、しかも車を通す道だけができる。あのときは車を通す道だけができて歩道さえも十分にできなかった、とにかくしゃにむに車のためにという考え方をされたわけであります。こうしたことは、安全管理者がおりまして道路整備する側に対して絶対的な発言力を持つという制度になっておれば防げたのではなかろうかと思います。  その次に、道路を開通させましたあと必ず条件の変化が起こります。バイパスとして予定していたところに、沿道に商店ができる、あるいはまた交通量が非常にふえてくる、そうなりますと、必要な安全施設を当然に追加していかなければいけません。その場合に道路整備者がそうしたことを考え、あるいは警察当局だけで信号機を考えるというようなことではどうも予算も十分につかないし、やはり絶対的な権限を持つ安全管理者を定めて、そうして道路予算の中から優先してそのための金額を充当するといった制度にしていただいたならばいいのではなかろうかということで申し上げた次第であります。
  309. 大内正夫

    ○大内正夫君 先ほど、一年間に私たちのセンターにおける手術例が百例くらいだと申し上げましたのは、一般考えられているよりも案外少ないのだということです。  しかし、この際ちょっとつけ加えておきたいと思いますのは、脳外科みたいな高等の専門技術が必要でありかつ設備が必要な手術を、一般の救急病院で、輸送ができないからという理由で外科医が、認定医ないしそれなりの腕がない方がやられる場合があります。これはなるべく脳外科のいろいろの処置が必要なものはできるだけセンターのほうに送っていただきたいと思っております。というのは、もしか輸送に耐えられないような重傷な患者であるならば、われわれのセンターの前で倒れた者もわれわれは救うことができないと思います。ですからそういう体制をみんなでよく人間的に話し合って、どうしたらいいかという、そういう機構をよくつくっていただきたいと思います。
  310. 斎藤吉平

    ○斎藤吉平君 いまのルールの問題でございますが、現在ありますのが港則法、それから特水令といいますか特定水域航行令で、来島海峡なり備讃瀬戸なりきめられてありますが、そのきめられてあります地域を除く沿岸につきましては、いわゆる法律としての裏づけは現在ないというように私考えております。ですから沿岸関係を押えます場合には、やはり何らかの、法的にいえばルールというものはあらためて必要であろうということを考えるのですが、外国の例を調べてみますと、たとえばイギリス、フランス、あの辺では、あのまわりの国でもって協力をしました航海学会というのが案をつくり上げまして、その案を、法規ではなくてまず海図の上に書き込む、それをお互い同志がみんな使い合っているうちに慣習化していこうという形で、外国の例は始まっているようでございます。しかもそれは非常に成功しているようでございます。日本の場合は法律ということなんですが、法律といいますとすぐ罰則ということを裏づけにつけてまいりまして、私どもは罰則ということは必ずしも効果がないので、ほんとうに効果をあげるのはむしろ指導なんだということで、その点については海上交通法に対して、内部に対する改正でまあ異論があるわけでございますが、しかし根本的にいえば、海上交通法のようなものは早く出なければいけないというように考えております。その一番引きとめている理由が、先ほどちょっと触れました沿岸漁民の漁業権との問題でございまして、やはり沿岸漁民には漁民の生活の権利がございますから、その辺はまた別の意味で何らかの補償なり何なりを考えて、やはりいまはまずとにかくルールの設定をしなければ、一度事故が起こってしまいますと、両者ともに倒れてしまう。たとえば船と漁船がぶつかりますと、まず死ぬのは漁船船員のほうが先に死んでしまうという実態から考えまして、そのルールの設定というものがまず先であるというように私自身は考えております。
  311. 内海清

    内海委員長 松本忠助君。
  312. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 角本さん、清水さん、近藤さんにお伺いしたいと思います。  今回の交通安全対策基本法の、内閣提出の三十五条、また社会党提出の第十九条に、いずれも損害賠償補償制度の充実の問題、損害賠償の適正化、こういったものが出ております。お伺いしたい点は、これに関しまして現行の自賠責にいろいろ不備な点がありますので、これを改善したいと私ども考えております。その中で自動復元方式、それから自家保障、適用除外、こういった問題についてどのようにお考えになられるかお聞かせを願いたい。それから今回保険審議会にかけまして五百万にしようということについての審議が近々開始されると思います。これにつきまして、現在はいわゆる損保協会で千七百億の推定赤字があるということをいっております。これを織り込みまして三・二倍くらいの値上げをしたい、こうなりますと相当量の保険金が高くなってまいりますし、そしてまたこれが物価に影響するところが多いと思いますので、この点について三・二倍の値上げがいいかどうかということについてお答えを願いたい。もう一点、公明党では四十二年ごろから運転者に保険をかけろという問題について再々国会でもこの問題を質問いたしまして、当局の見解を伺っております。最近その問題もドライバー保険可否ということで出ておりますが、具体的に私どももその問題を日刊自動車新聞等にも発表いたしまして、大かたの御批判をいただいておるわけですが、あるいはお読みになっておるかどうかわかりませんが、運転者に保険をかけるということは現在の自賠責の足らない点を補って十分余りあると思います。この方法についてどのようにお三方はお考えになられるか、具体的にもっとこまかく申し上げればいいのですけれども、時間がございませんので簡単に私のほうでお聞きするわけですが、どうぞお答えを願いたい。  それから平野さんにお伺いしたい点がございます。ただいま角本さんからもお話がございました信号機をもっとたくさんつけなさいというお話、直接運転に携わっておられる平野さんとして、現在の信号機に対してどのようにお考えになるか、また右折禁止等についてはどのようなお考えを持っているかお聞かせを願いたい。  最後に冨田さんに伺いたい点は、羽田の離着陸が限界に達しているということでございます。そのために新島の上空が待合所になっておりまして、一時間もあるいは一時間半も上空で滞空して着陸の指令待ちをする、新しく新国際空港ができましたらもっともっとこれが度を加えていくんじゃなかろうか、いま待合所に隣合って滞空の待合所をつくるというような話も聞いておりますが、こういう状態から考えまして、この点については事故防止はどのようにしたらできるのか、この点を伺わせていただきたい。  以上であります。
  313. 角本良平

    ○角本良平君 いまお尋ねの賠償の問題でございますが、私は金額の上では裁判所が判決を出します金額を絶えず参考としながら強制保険の金額を引き上げていくべきだと思います。これは当然に時代とともに変わっていくわけでありますが、現在の段階で私はどうして五百万でとどめておられるのか、非常にふしぎに思っおりまてして、少なくとも一千万円にすべきだと思います。  それから、その場合に赤字の処理の問題とからんで物価の問題が出てくるというようなお話もありますけれども自動車を動かすというこは当然それだけの責任を持つべきことでありますから、それを他人がカバーする必要は毛頭ないと思います。自動車を動かす人がすべて自分責任でそれだけのお金を用意すべきものだと存じます。物価の値上がりというようなことは、いまの自動車の主体が自家用車に変わってきておりますし、しかも乗用車に変わりつつあるという現在の状況におきまして、私はそういったことは何も考える必要はないと思います。  それからその次に運転者に保険というようなお話だと思いますが、免許証に強制保険をつけたらということは、私自身も数年前から考え、主張してきたことでございまして、やっと任意保険ができるようになったと思いますけれども、ペーパードライバーが非常に多い、あるいは将来レンタカーがふえてくるということを考えますと、レンタカー自身にも保険はあると思いますが、やはり運転者にも保険を強制するということが必要かと思います。  それからそのほか自家保険とかいろいろお話がございましたけれども、そういった点につきまして、もし自家保険で賠償責任が十分果たされていないという事例がたくさん出ておるようでございましたら、その制度は当然改めなければいけないし、また現在まで支障がないということであれば、現在の制度でいいのではなかろうかと存じます。
  314. 清水義汎

    ○清水義汎君 私のわかります範囲の中でお答えをしたいと思います。  まず自賠責の金額の問題でございますけれども、これは私は角本さんとほぼ同じ意見でございまして、現在の社会的な水準、あるいはほとんどから判決になっているものが多うございますけれども、民事訴訟におけるところの損害賠償の判決の金額、こういう点を考慮に入れますと、最低限一千万円の金額というものは必要ではないか、かように考えるわけでございます。  それから保険金の負担の問題でございますけれども、これは原則的には当然自動車所有者が負担をすべき筋合いのものでございます。しかし現実に現在の交通事故の現状というものを見ておりますと、必ずしも所有者だけに責任を帰せられない政治的責任、社会的責任というものがございます。これをどこで分担をするかとなりますと、一つは国が若干補助をしていく必要がある。もう一つ自動車の生産者、これが保険の一部分の財源を負担をしていくという考え方があると思います。御承知のように、交通遺児に対するところの救済というものが、民間の財団がございますけれども、そこにはメーカーは相当金額のお金を寄付をしておる。私はこれらのものもやはり一つの公的なものに一元化をいたしまして、いわゆるあわれみを請うような形での救済をすべきではない。そういう点で、過渡期においては国と自動車生産者、それから自動車所有者というものとの適正な分担が必要になってくるのではないかと思います。  それから運転者に対する保険は、私は必要だと思います。といいますのは、免許人口とそれから自動車保有人口、この差を考えますと、いわゆるペーパードライバーあるいは貸し車を利用して運転をする、あるいは他人の車を借りる者、こういうこと等を考えますと、やはり運転者は免許証の交付と同時に強制保険に入れて、そして何らかの場合に対しては被害者に対して十分な処置がとり得るような対策が必要ではないかと思います。  それから保険の資金の赤字というものに関連して出てまいりました保険料値上げの問題でございますけれども、これは交通事故対策ときわめて密接な関係を持つものでございます。現状のまま交通事故数がエスカレートしていくという前提に立ちますと、当然何らかの値上げその他の処置が必要になってくる。しかし交通事故というものを減少さす抜本的な対策、本日ここで議論になっておりますところの交通安全基本法というものが特効薬的な実効性のあるものになってまいりますと、当然事故車が減ってまいりますので、事故車の減少というものによって保険料金というものが、また料率が変わってくるのではないかということになりますので、社会資本の充実というものを含めた交通事故防止対策との関連の中でこの問題は考えていかなければならないのではないかと思います。
  315. 近藤武

    ○近藤武君 ほとんど先生方と同じ意見でございますが、ただ一つ、賠償保険の制度でございますが、現在の金額を一千万円程度と、こう申します点について、私は人間のいろいろな機関、からだの内部環境、いろいろなことから考えまして、やはりこれは調和というものが非常に大事じゃないか。その場合に一体航空機の事故はどうなっているのだ。それから産業災害での死亡は一体どうなっているのだ。裁判所その他のいろいろな判例が出るかと存じますが、それは多いに越したことはないとは存じますが、そういう全体のバランスというものを考えなくちゃいけない。ただ、交通の死亡者に関するあるいは負傷者に関する損害賠償が全体のパイオニア的役割りを果たしておればいざ知らず、やはり調和というものが非常に大事ではないかというふうに考えます。  それから運転者に保険をかけろということは、私も十年ぐらい前から盛んに言っておりまして、これは先ほどから御指摘がありましたように、ペーパードライバーというものがこれによってなくなってくるのじゃないかという考え方もありますし、いや国民全体がもう自動車の運転ぐらいはできるようなものだというようなことになりますと、この考え方をやはり拡大して考えていったほうがいいんじゃないかというふうに考えます。  それからちょっと問題がそれますが、先ほどDL、ELの問題が出ましたが、これは単に列車だけの問題ではなくて、自動車の問題にも同様の問題があるわけでございまして、国鉄さんのほうはEL、DLで非常にもめましたが、これは実は反対側も調査側もみんな私の仲間でございまして、同じ学会にも属しておりますものでございますので、私も多少関心を持っておるわけなんですが、その問題の結論は別問題としまして、これは自動車関係にもあるわけでございます。御承知のように一人乗務が盛んにバスその他行なわれておるわけでございまして、私はそのために運輸省その他から多少の委託を受けまして二、三年来いろいろ調査をしておるのでございますが、負担の点から考えましても、神経感覚的な負担あるいは肉体的な負担あるいは人間の能力の限界というようなことから考えまして、普通のバスをそのまま一人乗務の運転にするというふうにはしておりませんので、問題はかなり解消はされておりますが、それにしてもあの運転台の環境、運転席の環境条件がはたして適切かどうかという点についてはずいぶん問題があるわけです。たとえばバスの場合には、運行の時間がございますので、あのメーターの位置があれでいいかどうかとか、あるいは朝出発前に窓ガラスを全部曇りどめを雨降りの日にしておいたとしても、その曇りどめの効果はじきなくなってくる。その場合に、運転しながらふくわけにまいりません。あるいはブレーキの関係、クラッチの関係その他、これはツーペダルにすべきだとかあるいは自動車のブレーキ、サイドがブレーキを踏んだら全部落ちるというものまで現在あるわけでございますが、そういうものを入れてやはり運転者の負担を少なくする。労働力を非常に軽減させた上で、そのゆとりをやはり安全のほうに向けていかなければならない。余裕ある運転のほうに向けていってもらわなければならない。国鉄もおそらくDL、ELを将来一人乗務にあるいはするかもしれませんが、その場合にやはり運転台の環境というものを考えなくちゃならない。その環境と交通の諸条件とをにらみ合わせてひとつ十分に御検討をいただきたいというふうに私は考えておるわけでございます。  その他たくさんいままでのお話の中で気がついたこともございますが、時間がございませんので割愛さしていただきます。
  316. 平野一三

    ○平野一三君 先ほど信号機によって道路事故が減ったというお話をしたわけなんですけれども事故をなくすために信号が唯一のものだという考え方でお話ししたわけではございません。少なくとも信号機をつけることによってそれだけの事故が減ったという一つの実例をお話ししたわけなんです。本来事故というものは道路上においては平面交差をすることによって起きるということがほとんどなわけです。そういう形では、やはり立体交差をするということが事故をなくす大きな要素じゃないか、こういうふうに考えておるわけです。先ほどもお話に出ましたように、立体交差をする場合におきましても、歩行者をいまのように高く上げるのではなくて、道路を下げて、歩橋を下げる、歩く人が普通の状態でそこを疲れるというふうにするのが理想じゃないか、こういうふうに考えます。  それと信号機の問題ですけれども、現在の信号機が車をとめるために信号がついておるというのが実態じゃないかと思うのです。本来信号機は車も人もスムーズに進行させるというのが信号機の本来の目的じゃないかと思うのですが、そういう面では現在その役割りが果たされていないということが言えるんじゃないかと思うのです。いい例が、一つの信号を青で渡った場合に、次の信号にいくとまた赤になってしまう。本来でしたら、前後左右一つの見通しの中で青の場合にはスムーズに進行できるという状態に関連した信号機の設置というものが望ましいのじゃないか、こういうふうに考えます。  それから右折禁止の問題ですけれども、現在の車両数から考えまして、規制するということは、反面これはやむを得ないことだと思います。ただ、その規制をする場合に、単にその道路そのものだけを規制して放置するといういまの方法は、やはりまだ不備があるのではないか、こういうふうに思うのです。というのは、どうしても道路は、やはり右折は私たちはしなくてはならないわけです、目的地に行くのには。その場合には左折左折という形で目的地に入る、その場合の左折する道路はやはり狭い道路に入る可能性が非常に多いわけです。規制をする場合に、そういう左折をする道路を設定して、その道路上に安全施設をつくって、そこを通れば安全に目的の方向に進めるというものを併用した中で規制をしていただければ、私たちの運転も、事故を防ぐ形の中での運転ができるのではないか、こういうふうに考えております。
  317. 冨田多喜雄

    ○冨田多喜雄君 ただいまの、新島それから成田ができた場合に、また横に待機場所ができて、その面での事故防止という点でということでございますけれども、これらができて航空路を変える、あるいは管制をどうするかという点につきましては、これは管制は運輸省のほうでやっておりまして、私ども深く管制の標準とかいうものについてはわかりませんので、お答えできませんけれども、現在の羽田の状況で問題になっておりますのは、天気が悪くて南向きに上がりおりをするという場合に、木更津のほうから入ってくる飛行機と上がっていく飛行機が交錯をしなければならないというようなことで時間を食うという問題が非常に大きいようでございますので、私ども現状としまして、羽田を使う場合においては、木更津だけでなしに、もう少し千葉寄りにある定点を設けまして、そしてランウエーの南向きの方向に容易に入れるような方法をとっていただきたいということを申し上げております。そういうことによって羽田での事故、これから大きくなってきます飛行機があれを回り込むというような場合にも非常に役に立ち、事故の防止にもなるのだ、こういうふうに考えております。
  318. 内海清

    内海委員長 これにて質疑は終わりました。  本日御出席をいただきました各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、両案審査の参考に資することが多かったと存じます。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  これにて交通安全対策特別委員打ち合わせ会を終了いたします。    午後一時三十五分散会