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1967-05-13 第55回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十三日(土曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      市川 房枝君     山高しげり君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 小山邦太郎君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        郵 政 大 臣  小林 武治君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  松平 勇雄君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣総理大臣官        房広報室長    三井 芳文君        総理府賞勲局長  岩倉 規夫君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        法務省民事局長  新谷 正夫君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        文部省体育局長  赤石 清悦君        文部省管理局長  宮地  茂君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省国立公園        局長       大崎  康君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林大臣官房予        算課長     大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        通商産業省通商        局長事務代理   原田  明君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        郵政大臣官房長  竹下 一記君        電気通信監理官  畠山 一郎君        郵政省監察局長  鶴岡  寛君        郵政省郵務局長  曾山 克巳君        郵政省貯金局長  稲増 久義君        郵政省経理局長  上原 一郎君        建設政務次官   澁谷 直藏君        自治省選挙局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        日本電信電話公        社総裁      米沢  滋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、市川房枝君が辞任され、その補欠として山高しげり君が選任されました。     —————————————
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  本日から一般質疑を行ないます。鈴木強君。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 最初に、自治大臣にお尋ねいたしますが、政治資金規制の問題は、どうも雲行きが怪しくなってきたようなんですが、成案というものは、もうできているのですか。
  5. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 先般もお答え申し上げましたが、成案をまかされている部分、すなわち「準ずる」とか、そういう部面につきまして、なお検討の余地がありまして、検討をいたしております。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、いま自民党がやっております地域別議員懇談会というのがございますね。そこでこの問題が論議をされているようですが、自治省としては、ここにどういう説明をしているんですか。
  7. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 自由民主党でやっておられるブロック会議と申しますか、これには私のほうから説明に参っておりません。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 各新聞に報道されておるんですが、自治省側から具体的に改正作業内容を出されて地域別議員懇談会で聞いて検討をしておると、こういう記事がある。これば間違いですか。
  9. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 御承知のように、自民党の中に選挙調査会というのがございますが、これには自治省から参りまして説明をいたしております。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 地域別議員懇談会の第一回、第二回の経過は聞いておりますか。
  11. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 詳細は聞いておりませんけれども、伝えられるようた議論があったということは承っております。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 第一回のとき、根本組織調査会長という人がおたくにおりますね、この人が、私は答申に反対だというような発言をしたことが報道されておりますがね、それは聞いておりますか。
  13. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 具体的に、どなたがどういう発言をしたかということは、詳細承っておりません。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、幹事長は、その後いろいろ考えた結果、どうも区割りというものをきめると同時に、これをやったほうがよろしいというので、考え方が変わってきていると、そういう影響があなたのところにはないですか。
  15. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 全然ございません。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、あなたとしては、今後どういうふうな党のほうの情勢があろうとも、総理がここで言明をし、あなたが答申を尊重するという、こういうことを国会言明しているわけですから、あなたとしては、どういう党の方針があろうと、答申を尊重した成案を得て国会に出すと、こういうことをはっきりと自信を持ってここで言えますか。
  17. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) もちろん、議院内閣制と申しますか、与党のことでございますから、与党に御相談申し上げますけれども答申を尊重した成案を得るように私としては努力をいたし、また、それを国会で御審議をいただきたいと考えております。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 当初、今月の中旬ぐらい、しかも閣議においては十二日に今国会提案する法案については最終的に結論を出すと、こうきめておるわけですね。いまのところ、かいもく見当つかないんでしょう。いつごろから出せるんですか。
  19. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 先般もお答え申しまして、ただいまも申しましたが、準ずる分でございますね。労働組合とかその他の団体、これに準ずる、あるいは公職選挙法のほうの例の総括主宰者、ある相当範囲について選挙活動について主宰した者を連座の中に入れる、これらについての法文化をするのに難渋はいたしておりますが、私といたしましては、たびたび申し上げましたようなことを目途といたしまして、成案を得るべく努力いたしておる最中でございます。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 だから、いつ出すんですか。
  21. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) したがいまして、一両日後のズレはお許しをいただきたいんでございますが、中旬を目途として、いませっかく努力をいたしておる最中でございます。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 これは、総理がおりませんからね。これ以上ちょっと論議が進まぬと思うんですが、どうも、各論説も掲げておりますように、尊重するという言明をあれだけやっておきながら、いまになって非常にぐらついてきている、こういうことはどうも筋が通らぬですね。だから、うがって見れば、地方選挙を戦う際に、答申を尊重せぬということになると、問題ですからね、尊重するという態度を表明しておいて、そのうちに、今度は党内からいろんな意見が出てくる、したがってできなくなったということで提案を延ばしていく、あるいは出てきたものを修正する、そういうような一つの計略になっておったのですか、そういうふうな見方もあるわけです。だから、その担当の大臣としては、少なくとも、非常に問題になっている資金規制の問題、これは選挙の浄化と政治腐敗堕落を少なくするための基本だということで、これだけはどうしてもやってくれというのが、これは国民の願いだと思いますからね。そういう決意でひとつ大臣は、いま二、三日ぐらいおくれるかもしれぬと言うのですから、その程度のことであれば、これまたやむを得ないですが、いずれにしても、この国会で必ず成立できるような態度で早急にやってもらいたい。もう一回私はお聞きしておきます。
  23. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 私としては、ただいまお話のような決意をもちましてやっているわけでございます。
  24. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと関連。  自治大臣の御答弁ですと、いま成案ができないおもな原因は、「その他の団体」というようなところ、そういうところにひっかかりがあるのだと、こういうような御説明がありました。そうなれば、問題はもうある程度見きわめはついているのであって、したがって、中旬というと、きょうはもう十三日ですから、少なくとも二十日以前には私は出るものだと思うのですよ。もし、新聞で書かれているような自民党党内事情から問題が延引しているということになると、これはもうなかなか、きょうのテレビを見ても、月末までかかるのじゃないか、こういうような話があるわけでしょう。そこで、重ねて私は申し上げますが、自民党党内事情は別にして、いわゆる自治省として大臣言明されたような形でいくと、少なくとも十五、六日、あるいはおそくも二十日前にはこれは出るのだと、かような言明ができると私は思うのですけれども大臣、その点はいかがですか。
  25. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 先ほども鈴木さんにお答え申しましたように、政府与党でございますから、与党に御相談はいたします。いろいろ御意見もあろうかと思います。しかし、私といたしましては、あの答申を尊重した成文をつくり上げる、それが私の責任だと考えているわけでございます。また、国民一般もそれを注視しておられることと思うのでございまして、そういう意味でございますが、いついつということを申し上げて、それがずれたりなにかいたしますと、私食言することはいやでございますので、それで目途というようなことばを使っておりますが、私自身といたしましては、できるだけ急ぎたいという気持ちに変わりはございません。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 郵政大臣、最近最高幹部の人事の異動をやるというようなことはないのですか。
  27. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 最近には予定ありません。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 この懸案の電波放送両法の改正ですね。これは、何か新聞を見ると、この国会に出さぬということにしたとかいうのですが、それはどうなんですか。
  29. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題は、もう昨年、御承知のようにいろいろな経緯を経て審議未了になっている。そういうことで、その後これらの問題の再調整につきましても十分な見通しがまだ困難である、こういうことで、この際率直に申し上げれば、おそらく、昨年のような放送法電波法等改正案提案することは困難ではないかと、かようにいま考えております。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 私は、別の委員会でも、かなり私の意見は申し上げました。時間の関係がありますから、ここでは言いませんけれども、少なくとも、いまUV混在を考えているようですし、FM放送の問題もあるでしょう。したがって、どうしてこの国会に、臨時放送関係法制調査会答申が出てから、この国会……。この前の国会に出したわけですからね。なぜ出せないのですか。その点をもう少し詳しく言ってくれませんか、理由を。
  31. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、その後事情の変化により、御承知のような宇宙通信衛星、こういうふうな問題、これらの問題について新しく追加すべき事項がいろいろある。それからまた、昨年問題になったことにつきましてもなかなか調整見通しがつかない、こういうことでございまするし、また、当面の問題処理につきましては、必ずしも放送法改正がなくてもやり得るというふうな解釈もいたしておりますし、かたがたいまから見れば多少の時間を置いたほうがよかろうと、こういうふうな考え方を私は持っております。
  32. 鈴木強

    鈴木強君 そういう理屈にはならぬですよ。要するに、前からのいきさつもありまして、これはこの国会に出すとあなたも言ったわけでしょう、そうでしょう。ですからそういうことがいまになってできないということは、これは私たちにわからないので、それは率直に言って自民党、あなたの党の内部における意見がまとまらなくて出せないんでしょう。遺憾なことじゃないですか。
  33. 小林武治

    国務大臣小林武治君) こちらの準備の都合もありますし、党との調整もまだつかない、こういうことでございます。
  34. 鈴木強

    鈴木強君 あなたが大臣として提案を予定しておった法案が、そういうことで出せないということに正式になったんですね。
  35. 小林武治

    国務大臣小林武治君) まだ私は断定をしておるわけではございませんが、困難ではないかと、かようなことを申し上げたわけであります。
  36. 鈴木強

    鈴木強君 これは非常に問題です。私はそうなりますと、NHKの徳島のUが一応試験をしておりますが、そうすると、Uは新しく開放するということになるのですね。FMの免許なんかは出ないことになると、あなたは自分の権限で現行法でやろうと、そういう腹をきめておるのですか。
  37. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いままだ断定的なことは申し上げられませんが、そういうこともあり得ると、かように考えております。
  38. 鈴木強

    鈴木強君 これは非常に問題ですけれども、時間がありませんので、まことに遺憾である、これは怠慢もはなはだしい、こう私はあなたに申し上げてまた別の機会に意見を出します。  それから郵政の場合は非常に犯罪事件が多いのですが、特に部内犯罪についてひとつお尋ねいたします。三月五日の新聞にも載っておりましたが、京都島原郵便局長山内冨夫というのが貯金横領事件をやっておりますね、これの概要をひとつ初めに御説明願いたい。
  39. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題は、鈴木委員が御指摘するまでもなく、最高責任者として私が最もこれは遺憾と思っておるのでありまして、部内犯罪が相変らず出てくるということは、やはりわれわれの省内における指揮の問題あるいは綱紀の問題等とも関連いたしまして非常に国民に対して申しわけないことだと私は深く反省して、この問題につきましては、私が陣頭に立ちまして強く従業員の反省を求めると同時に、従業員待遇等についても十分な措置をしたい。特に大型の犯罪というのは、特定局局長においてこれが多い、こういうことでありまして、代表的なものがただいまお話京都島原局長犯罪でありまして、この犯罪におきましては、約一年間に及びまして小切手をごまかしあるいは定額預金預入をそのまま預入の手続をしないでおく、こういうようなことで小切手問題だけでも総額一億二千三百六十二万円、こういうものが一応横領の形になっておりますが、これはいわゆる自転車操業みたいにしてどんどん振りかえていったからして、小切手関係においては実損額はなかったと、こういうことに相なっております。ただ、定額貯金におきましては、総額で千二百七十六万円、こういうふうな横領をいたしまして、この問題の実損におきましては現在六百六十四万円が実損の形になっておる、こういうことでございます。これは私としましても部内者内において、監察その他においてある程度手抜かりがあった、こういうふうに断ぜざるを得ないのでありまして、この局長自身がたいした資金もないのに相当な局舎としてビルを建てた、その資金繰りに困ってかような横領等をいたしたのでございます。この問題につきましては、私どもとしましても、非常に遺憾に存じておる。ことにこの局については家族の局員が非常に多かった、他人は一人しかいなかったというようなことがありまして、こういうことにつきましても、今後われわれは特定局運営上相当考慮しなければならぬと、こういうふうに思っておるのであります。この問題は、現在、昭和四十二年の二月と四月に起訴になって業務上横領、こういうことで起訴しておりますが、まだ公判開始に至っておりません。行政措置としましては懲戒免職をいたしております。  概要の御説明を申し上げます。
  40. 鈴木強

    鈴木強君 大臣も率直に反省されておりますが、確かに特定郵便局ですね、こういうところに犯罪が多いようです。これはやはり内部編成組織というのが不十分だと私思います。いまのように家族がほとんどで、他人は一人しかおらないというような、そういうところにやはり問題があると思うんですね。ですから私はいまここで具体的に制度の問題について触れませんが、これは郵政事業の信用にかかわることでありますし、ことに管理者の立場にある局長がこのような事件を起こすということは断じて許すことができないことであります。ですから監察といえども、強化も一面行なわなければならないと思いますが、何か聞くところによると、いまの各通信局所在地にある監察局を整理して統合するようなことも言われているんですけれども、そういう問題の体制についても今後どうしようというのか、お伺いしたい。
  41. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは特定局の運営上いろいろ反省すべきことがあるということを私申し上げております。それにつきましても、監察というものが非常に大事であるということでございますが、実は地方監察局というものは直接監察しないで、御承知のように、県庁所在地にそれぞれ監察支局というものを置いて、その支局が直接管内の局に対する監察をしておる、考査その他をしておるということでありますから、監察局所在そのものが必ずしも大きな影響を与えるとは思っておりません。それも、何も影響ないとは申し上げられませんが、支局活動が非常にいま充実してきておる、こういうことで従前とはこの形は非常に違ってきておる、かように申し上げられると思います。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 大臣、いままで郵政職員不正行為をして横領したり何かして国に損をかけたのがたくさんあると思うんですよね。その中で、いままでまだ実損として残っておるのはどのくらいありますか。
  43. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは事務当局から詳細お答え申し上げますが、債権管理法というものができてから債権管理をしておる、いままでまだ数億円——十億円近く残っておるかと思います。いまの京都島原事件につきましても、いまの実損六百数十万円のうちで百六十八万円は回収をしましたが、まだ残額四百九十六万円、こういうものが残っておりまして、これは債権管理法に基ついて徴収の努力をしておると、こういうことで、いままでのたまっておる数字につきましては事務当局からお答えいたさせます。
  44. 鶴岡寛

    政府委員鶴岡寛君) お答え申し上げます。  四十一年三月末現在の未回収金額の総計は五億五千八百九万円でございます。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 これは回収の見込みはあるんですかね。いままで、どういう努力をしたんですか。
  46. 鶴岡寛

    政府委員鶴岡寛君) その前に、各年度における国損金額回収額を申し上げますと、大体損失金に対しまして回収額はそのほぼ三分の一程度であるわけでございます。これはただいま大臣おっしゃっておりますように、債権管理法によりまして私どもは鋭意この回収努力をしておるわけでございます。ただ犯罪によります国損の場合には検挙時にほとんど着服等をいたしました金も消費してしまっておる、そしてまた大体資産のない者が多い、そしてまた服役中あるいは受刑後の生活難で、弁済能力がきわめて乏しいというようなことで、その回収は非常に困難であるのが実情でございます。しかし、債権確保措置、その後の回収措置は、法律によりまして厳重に行なっておるということでございます。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 いままでに国損として処理したのはどのくらいありますか。
  48. 鶴岡寛

    政府委員鶴岡寛君) お尋ねは、処理と申しますと……。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 回収できなくて、どうにもならなくなって……。
  50. 鶴岡寛

    政府委員鶴岡寛君) それは、債権が発生後二十年経過いたしますと、時効消滅という形になって、いわゆる先生のおっしゃるように、消滅の形をとるわけでございますが、ただいま金額につきましては資料をちょっと持っておりません。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 じゃあとで資料で出してください。まあいずれにしても犯罪事件というのは、非常に遺憾なことですし、根絶をしなければならぬことですから、さらにひとつ最善の努力をしてもらいたいと思います。  それからその次に、ガン征圧切手を昨年発行いたしましたが、これの売りさばき状況、その結果はどうなっておりますか。最近のところを教えてください。
  52. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お答えします。ガンの切手は、三円寄付内容を持った額面十円のものが三千五百万枚、それから五円の寄付を含んだいわゆる額面二十円のものが二千五百万枚、こういうのを昨年十月二十一日から十二月二十日までの二カ月間を予定してやったのでありますが、売れ行きが十分でない、こういうことで、さらに一カ月の延長をしまして、これの売りさばきをいたしたのでありますが、結局におきまして、十円のものが三千二百三十七万枚、二十円のものが二千四百五十四万枚売れて、若干の売れ残りができた、この結果として寄付金として交付できる金が、総計で二億一千九百八十万円余出たのであります。これは結局事務費等を差し引きまして、二億二十四万五千円と、こういうものを配分をすることになり、先般これらは配分を済ませました。この内容も、もし必要ならば申し上げますが、内容は日本ガン協会約一億四千万円、慶応ガンセンター二千二百万円、兵庫県ガンセンター千三百万円、川崎病院九百九十八万円、佐々木研究所というところに千三百万円、こういうような配分をいたしました。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 これは約五%程度売れ残ったということは、非常に遺憾だと思います。特にその間五百万枚も七円のほうは追加を発行しておる。追加発行をしておきながら残ったということは、ずいぶん不都合だと思うのですね。それから根本的にはガン征圧ということは、たびたび国会でも問題になっておるのですが、基本的には国の予算においてまかなうべきであって、どうも寄付に仰ぐなんということは、本末転倒だと思うのですね。現段階においてやむを得ないといえばやむを得ないかもしれませんが、本来の姿ではないと思います。こういう点はやはり大蔵大臣ガン問題に対してもっと予算を出すようにしてもらって、切手七円に三円やったり、十五円に五円寄付金をつけて売りさばくということは、これは私はあまりいい方法ではないと思うのですがね。これは両大臣から今後の問題がありますから、ひとつ意見を承っておきたいと思います。
  54. 小林武治

    国務大臣小林武治君) このガンの切手は、意匠の問題についても若干つまづきがあった。それからその後実際出た意匠においても、必ずしもよくなかった。それから、これの宣伝が行き届かなかったということで、売れ行きがよくない。まあ多少あとで追加したということも、見通しを誤ったと、こういうふうに私は思っております。このこと自体につきましては、私はあまり賛成ではありません。おっしゃるように、ガンの対策などは国がすべきもので、郵便の切手にこういうものをくっつけるなんていうことはいたすべきでは私はない、今後の問題についてはさような考えで私はやりたいと、かように考えております。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もまあ郵政大臣と大体同じことでございます。
  56. 鈴木強

    鈴木強君 じゃあ、ガン征圧の問題について、今年は予算がきまっておるのですけれども、来年はもっと本格的にやったらどうですか。二億や三億のことじゃなくて、もっと本格的な対策を考えておりますか、ガン問題に対して。
  57. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ガン対策は政府でも非常に力を入れておる問題でございまして、本年度の予算は昨年度に比べたら非常に強化いたしましたし、さらに来年度もこのガン対策については私ども思い切って出したいと思っております。
  58. 鈴木強

    鈴木強君 それから厚生大臣ね、記念切手というものは毎年発行するのですが、これもいろいろ問題があるんですよ。これはどんな計画を持っておりますか。
  59. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 記念切手の発行はそれぞれの向きから非常な希望が殺到しておる、こういうことでありますが、私はやはりこういうものもある程度制限すべきだと、こういうことで、今年度におきましては、大体月一回ないし二回、こういうふうな非常な制限をいたしております。そういうわけでありまして、記念切手の権威と申しますか、ある程度品位を保つ必要もある、こういうことについてはもう少しひとつきびしく考えていきたい。それから先ほどの寄付の問題につきまして、お年玉はがきというものが始まったのでありますが、その後どうも各方面が安易に郵便切手に寄付を求める、こういうふうな傾向があることは、私は非常によろしくない、郵便切手というものは、かようなことにあまり使わるべきことではない、かように考えております。ガン切手につきましては、いまお話のとおりでありますが、今後厚生省関係の小児麻痺の関係においても、そういうことの希望があるというようなことも聞きますが、私はそういうことはやはり国費でやるべきもので、零細な寄付をこうして集めるということは、むしろ邪道ではないかと、かように考えておりますので、御趣旨のようにはからいたいと、かように考えております。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 それから電電関係のほうで、前回お伺いできませんでしたから、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、電電公社がいま決定をいたしております長期拡充計画の大綱というものを拝見いたしますと、昭和四十二年度から四十七年度までに千七十万という需要を見込んでおるわけですが、これはあれでしょうか、現行料金のもとに経済成長をはじいて、それに伴って出てきた需要数だと思うのですが、その点はどうなんですかね。
  61. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) お答え申し上げます。電電公社といたしましては、一昨年佐藤喜一郎氏を会長といたします電信電話調査会から答申を受けまして、その答申によりまして長期拡充計画の大綱というものを昨年経営委員会で決定いたしましておるわけであります。これは六カ年計画でありまして、昭和四十七年度末にまいりましたならば、申し込んだらすぐつく、全国即時化するということを目標にいたしまして、千七十万の加入電話をつけるという計画であります。その初年度が四十二年度で、百四十万個をつけることにいたしておりますが、それは今回この予算案の中に盛られておると思います。その場合の成長率でございますが、これは七・二%という数字をもとにして計算をしておりまして、その調査会の答申を受けておりますので、料金修正ということを前提にしてつくってある次第であります。
  62. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、四十二年から四十六年の経済社会発展計画に合わしていくと、総体の数は八百五十万、これは間違いないですね。
  63. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 経済社会発展計画は四十二年から四十六年の五カ年間でありますし、それからまた電電公社でつくりました長期拡充計画の大綱は四十二年度から四十七年度の計画でありまして、一年間のズレを生じております。それで、この需要につきましては、総需要という考え方をとっておりまして、経済企画庁の事務関係と電電公社の計画関係の間で、この需要の数というものにつきましては打ち合わせができておる次第であります。総需要というものは、現在ある加入者に今後発生するであろうという加入者の数を足した数字でありまして、これは成長率七・二%といたしますと二千二十万という数字になっております。
  64. 鈴木強

    鈴木強君 具体的に、昭和四十二年から四十六年の間に幾らの需要があるか。これは既設の加入者に需要を足したものがここに出ておりますが、そうでなくて実際にこの五年間に幾らの需要があると見ているのですか。
  65. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 先ほど申し上げました総需要から現在の加入者と積滞数を引けばいいんでございますが、約八百五十万でございます。
  66. 鈴木強

    鈴木強君 そうでしょう。ですから八百五十万。したがって、この前も問題になりました経済企画庁のほうの部門別投資によると、電電が二兆六千六百億になっておりますから、この二兆六千六百億ですと幾ら電話が引けることになるのですか。
  67. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 二兆六千六百億でまいりますと約七百四十万、また積滞が、七・二%の成長率でまいりますと、約二百万くらい残る計画になっております。
  68. 鈴木強

    鈴木強君 七・二%という成長率が、まあ所得倍増計画、これは中期、今度の経済社会計画ですね、これとの関連で、七・三%ですか、二%ですか——二%ですね、よくわからないのですけれども、いずれにしても八・二%という新しい経済政策の中からまいりますと、需要はもっと伸びると予測しなきゃならぬ。その予測は幾らになりますか。
  69. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 先ほど申し上げましたように……。
  70. 鈴木強

    鈴木強君 伸びて八百五十万ですか。
  71. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 公社といたしましては、いわゆる四十七年度末を目標に考えております。それから経済発展計画では四十六年度末になっております。したがって、四十七年度における経済成長が幾らであるかという一つの問題があるわけでございます。公社の計画では、四十七年度において二百二十万の加入電話をつけるという計画になっております。したがって、四十七年度におきます需要が二百二十万以上になれば——新規需要が二百二十万以上でありますと、結局積滞がふえるということになるわけであります。結局、七・二%で計算いたしまして、二兆六千六百億ですと、約二百万の積滞が昭和四十六年度末において発生する。四十七年度末ではどうかということにつきましては、われわれといたしまして経済成長率を幾らであるかという仮定をいたしませんと出てまいりませんが、もしもこれが大体八%程度であるといたしますと、二百二十万以上の新規需要が発生いたしますので、二百万のいまの四十六年度末の積滞が、さらに四十七年度末においてはふえるんではないかというふうに思っております。
  72. 鈴木強

    鈴木強君 総裁、そうじゃないですよ。八百五十万とにかく実際に需要があるわけですね。そうでしょう。ところがこれは七・二%と見ておるから、今度の八・二%に引き直せば、この八百五十万というのは当然この五年間の間にふえてくるであろう。そのふえるのは幾らに見ておりますか。
  73. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 約百万ぐらいふえると思っております。
  74. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、実際に三百万残るということになるわけですね。これは資金計画のほうを見ましても、電電公社の場合ですね、四兆六百億というものをこの四十七年、いわゆる六カ年間で見ておるわけですね。ですから、そうすると、四兆六百億というものが、一年分余分になっておるんですけれども、一年分を引くと、これは五年間では幾らになるのですか、この四兆六百億というのは幾らになるのですか、三兆何ぼですか。
  75. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 四十七年度末を引きますと、これは四十六年度限りにいたしまして三兆四百二十億、こういうことになります。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 この資金調達について、佐藤調査会の答申を見ると、三二%の料金値上げをするということを前提にして資金調達を考えているのですね、公社は。したがって、この四十一年七月に出しました長期拡充計画というものは、料金値上げということを当然見込んでおる。それによって多少需要が減ってくると、そういうことも計算しておるのですか。
  77. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) ただいま申し上げましたように、佐藤喜一郎氏を会長といたしまする調査会の答申を受けたんでありますが、その調査会の答申は、いま言われました三二じゃございませんで、二二%でございます。設備料一万円を三万円にするということと、それから電話の料金を二二%上げると、この二つの内容を持っておりまして、その内容を受けて、そうして長期拡充計画の大綱というものをつくってある次第でございます。
  78. 鈴木強

    鈴木強君 この調査会の一九ページに書いております「前記不足資金を全額料金収入によりまかなうものとして試算すれば、約三二%の増収をはかる必要があるものと算定される。」、これはどういう意味なのですか。
  79. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) ただいまの数字は、その結論を出す過程におきます議論といたしまして出てまいりました。最終の結論といたしましては、新規加入者の方にもやはり設備料を持っていただく必要があるんじゃないかという結論になりました。調査会は、一万円の設備料を三万円にする。
  80. 鈴木強

    鈴木強君 料金のほうはどうです。
  81. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 料金のほうは二二%上げる、こういうふうになっておる次第でございます。ですから、ただいまの三二というのは、もしも全部料金でまかなえば三二%になる。しかし、答申はそういうふうになっておりません。二二%になっております。
  82. 鈴木強

    鈴木強君 公社は、この答申を受けて、いまいろいろ考えておられると思うのですが、いまの見通しとして、財政確保の点から言うならば、どうしても料金の引き上げに依存しなければならない、こういう気持ちでいま総裁はおられるのですか。ほかに何か考えないのですか。
  83. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) 公社といたしましては、一昨日この席で経営内容を申し上げましたように、電報につきましては、数次の合理化をいたしまして、全国の手動の中継局を自動化するということで、いろいろ年経費の節減をつとめてまいりました。しかし、電報の赤字が、四十年度で約三百五十億の赤字をかかえております。これは一年間の赤字が四十年度において三百五十億である。それからまた、電話が農村あるいは住宅等に普及する——電話がガス、水道、電気等と同じように生活の必需品に化しておるということから生じたと思っておりますが、従来一カ月五千円の収入であったものが、二千円しかないという、そういう収入がふえてきた。しかも、これはなぜかといいますと、結局電話を利用する回数が少ないので収入が少ない、こういうことになってくるのであります。  それで問題は、これをどうするかということでありますが、四十二年度におきましては料金の値上げを考えておりません。四十一年度におきまして収支差額は二百二十六億でございましたが、四十二年度の予算案におきましては収支差額が七十一億であります。その際の四十二年度におきます利子負担は全部で八百億円になりまして、債務償還が三百五十億、ですから資本費用そのものが千百五十億円であるという状態になります。四十三年度以降につきましては、この予算が国会で議決された後におきまして、公社としては慎重に検討していく次第でございますが、前回申し上げましたように、料金の修正という問題について考えなければならない時期が来ているんじゃないかというように考えます。
  84. 鈴木強

    鈴木強君 それは財政的な点についてはわかりましたが、しかし、それを料金値上げでやるか、あるいは政府の資本投資をふやしてやっていくか、あるいは財政投融資の面で一応借金でカバーしていくか、方法はあると思うのです。われわれは料金値上げは絶対反対。したがって、国鉄もそうでありますが、政府のやはり思い切った財政投融資の面の援助をやっていくべきじゃないかと思うのですが、総裁としては、この答申にもあるように、何とか料金値上げをしてもらいたいという気持ちなんですか。そういう財政投融資の面とのからみ合わせばどうなんですか。
  85. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) これも一昨日数字を申し上げたのであります。現在公社が持っております借金が、一兆三千四百億円、本年度の末で持っておるわけであります。したがって、利子負担を考え、それからまたこの佐藤調査会の答申によりまして二二%の値上げをかりにやったといたしましても、なお借金は四十七年度末におきまして二兆円の借金になる次第であります。したがって、これだけ大きな借金をかかえ、利子負担を考えた場合には、なかなか実際問題といたしまして財政投融資をふやすということでは困難でありまして、したがって料金修正問題を考えなければならない。電電公社といたしまして、これまで十四年間料金値上げをやっていないのであります。これはいままで、日本の電信電話技術といいますか、あるいはエレクトロニクスというものが非常に世界的になった、この技術によっていままで補われていたと思います。しかし、いわゆる企業収益率といいますか、収支差額に対する全体の資本との比率を見ておりますと、最初二〇%近いものが、五%になり、三%になる、さらに四十三年度におきましては赤字になるんじゃないかというふうに思われておりますので、私は四十三年度において料金修正を考えなければならないんではないかというふうに考えております。なお、これはこの予算が国会で議決されたあとで検討いたしたいと思っております。
  86. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣もちょっとこの際、経済企画庁長官を代理しておりますから、あわせて財政面からお尋ねしたいんですが、私が前にも指摘しましたように、この経済社会発展計画からいきますと、電電公社に関する限りは、少なくとも三百万近い当初計画から見ると電話の需要というものがありましても、残っておる電話が出てくる。ですから、多少ここには資金の弾力的な運営ということを考えておると思いますから、今後その面においてのお考えはあると思いますが、しかし、いずれにしても、全体的な面から言いますと、そう期待できない。したがって、電信三百五十億ですか——電報は三百五十億赤字を出しているわけですね。公共性というものと採算性というものを一体どうとらえていくのか、これは何回も国会で言われておりますが、そういう観点に立っていきますと、少なくとも私はいま電信電話というものは一国の政治、経済、文化すべての先駆としての役割りがあると思うのですね。そういうものが当初計画よりも後退するということは、社会経済発展計画ではなくて、社会経済後退計画だと、こう私は言ったわけです。したがって、これはどうしても、他の部門との投資の比率もあるでしょうけれども、やはり政府が思い切って財政投融資のめんどうを見てやる。一兆何千億かの借金があるようですけれども、しかしこれは料金値上げにたよることは無理だ。したがって、この際、こういう後退計画でなくて、ほんとうに文字どおり発展計画になるようにするために、財政措置をどうするか、大蔵大臣としても、あるいは経済企画庁長官としても、お考えがあると思うので、その点ひとつお伺いしたい。
  87. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 電電公社の長期拡充計画を実施していくための資金確保をどうするかという問題でございますが、総裁からも前回、また今回御説明がありましたように、電電公社の最近の収支状況は、住宅用の電話等利用度の少ない電話がどんどん増加してきますために、一加入当たりの収入金額は低下して、三十九年あたりから見てもすでにもう一加入当たり二千円程度は低下するということになっておりますし、それから発行済みの債券の利子負担が年々多くなっていますために、いまお話がありましたように、昭和三十九年あたりは五百億、六百億という収支の差益があったのが、もう本年は七十億円になるというようなことで、年々これは悪化してきますので、この状態をもってこの長期計画の実施ができるかどうかということは非常に問題だと思います。結局いまの点は、料金は今日のように電話が普及されなかったときの料金体系であって、需要増の変化がこういうふうに出てきた以上は、それに対応したやはり料金体系の整備ということから出発しないと、この計画の遂行が困難になるおそれがありはしないかというふうに私は考えますので、来年度以降この計画期間内にはやはり料金の合理化という問題が考慮されなければならない、考慮を必要とすることに私はなるのじゃないか。そうなりますというと、その問題とあわせて国の財政投融資との関係、そういうものを勘案して、この実施が完全にいくように私どもしたいと考えておりますが、やはり企業体の基礎をなす料金体系の合理化ということは、私は来年度必要に迫られる問題じゃないかというふうに考えております。
  88. 鈴木強

    鈴木強君 これは非常に抽象的ですけれどもね、簡単に言うと、今年はまあやらぬ、こういうことですね。しかし、来年度はもうやらなければならぬというふうに、これはニュアンスがとれますがね。これはやはりはっきりしてもらいたいですね。それは政府の方針ですから。われわれは反対。
  89. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 来年もしくはおそくとも再来年、この一、二年の間には、この電電公社においては料金検討というものは必要になるというふうに考えます。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 私はですね、需要予測のつかみ方、あるいは完全充足になったときの収入ですね、利益というものとの関連があると思いますが、かなりかせぎが出てくるように思うんです、これが完全充足になった場合。借金をしておったって、利子でもひとつ政府がみてくれるというような措置をしてもらっておけばいけるというような気もする。ですから、ただ単に料金値上げということじゃなくして、そういう国の資本を投資するとか、そういうふうな面においてもやはり考慮すべきだと思うんですね——財政投融資と資本投下、そういう問題等考えて。ですから、これは大臣の御所見ですから、私はそういうふうに意見を持っているので、私たちの議論も十分ひとつ今後参考にしてもらいたいと思うんですね。  それから私は、したがって、非常に電電公社の経営がそういう状態にありますので、これからさらに合理化、技術の導入ということを盛んにやると思うんですが、そういった新らしい技術の導入等についていま考えられている点がありましたら、総裁からお伺いしたい。
  91. 米沢滋

    説明員(米沢滋君) ただいま新らしい技術のお話がございましたが、まず技術的な問題といたしまして、電子交換機の導入ということを考えております。これは世界的な傾向でありまして、アメリカあたりでも現に商用試験をやっておりますが、われわれ電電公社といたしましては、通信研究所を中心にいたしまして、電子交換方式をどのようにして導入するかということを中心にいろいろ研究しております。  それから、その次は情報革新とのいいますか、今後産業経済の効率化をはかるためにデータ通信関係というものが非常に発達してくる。これは電話線とコンピューター、電子計算機を組み入れまして、いろいろ企業の計算をやるとか、いろいろやるわけでございまして、現在のアメリカなりあるいは西欧諸国の状態を見ておりますと、今後この情報革新というものは相当の分野を占めてくるというふうに考えております。  それからあと、新サービスといたしましていろいろございますが、時間があまり長くなったらいけませんが、たとえば大都市におきまして、従来電話をかける場合に中からうちへは自動で出たのでございますけれども、外からダイアルでじかに入るようにする。いわゆるダイアル・インといっておりますが、そういうようなことを計画する。これは非常に電話の接続を速めるという意味におきまして効果があります。それからまた、ダイアルをやる場合にぐるぐる回しておりまずけれども、その回すかわりにボタンでぼんぼんと押す。いわゆるタッチトーン・テレフォンといって、ボタンを押してやりますと、通話の接続時間が半分くらいになりまして能率が非常によくなる。  そのほかに、さらにもっと先の問題といたしましては、いわゆる通信網というものを非常に整備し、また安固にしなければならない。先般来よく台風が参りましたときにも、昔はよく市外線が切れたのでありますが、最近はテレビ等をごらんになりましても非常に障害がない。これはマイクロ技術が非常に進歩したためでありますけれども、今後、たとえば人工衛星等を使いまして、そういう補助的な意味におけるさらに国内通信網を安固にするとか、あるいはまたいろいろ新しい半導体の研究とか、そういうものが出てまいりますので、そういうものを入れて通信の全体の設備を安く建設するということにつきまして努力をいたしたいと思います。
  92. 鈴木強

    鈴木強君 私は、宇宙通信の開発に伴って国内電信電話事業がどうなっていくか。それからさらに要員はどうなっていくのか。職員の待遇はどうなっていくのか。あるいは膨大な建設工事というものをおやりになるわけですが、これらに対する工事態勢、能力の点はどうか、こういう点も伺いたいんですが、時間がありませんから、これは分科会のほうに譲ります。  次に、先般から病源菌豚肉事件だとか、あるいは睡眠薬を飲んだらサリドマイドの子供が産まれたとか、アンプルに入っているかぜ薬を飲んだらショックで死んだとか、あるいは目を美しくする目薬が実は目のためにならない悪い働きをするとか、こういうふうないろいろな問題か出ております。したがって、私は消費者を保護するという立場に立って関係大臣の皆さんの御所見を承りたいと思いますが、まず行政管理庁として先般、各関係のお役所は業者に押されがちで消費者の保護についての役割りを十分果たしていない、こういう勧告をやられておるようでございますが、具体的にどういう面がまずいのか、ひとつこれを総括的に報告願いたい。
  93. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) お答えいたします。先月消費者保護に関する行政監察の結果勧告いたしました内容は、大体項目に分けまして四件ございます。その一つは、「消費生活物資の品質、量目等の適正表示について」、第二は、「宅地建物取引業法による規制について」、第三が、「不当景品類及び不当表示防止法による規制について」、第四が、これに対する「消費者教育の推進について」という四項目になっております。少し長くなりまするけれども、なるべく簡単にその内容を御説明いたしますと、第一の、消費生活物資の品質、量目の適正表示について、その勧告の内容を申し上げますと、まず第一に規格の改訂、新設でございますが、生産技術の向上、商品の多様化などに即応いたしまして、その規格の改訂をする必要がございます。これはもちろん消費者保護に役立たしめるためでございまするが、現在の日本の農林規格、すなわちJAS、あるいはまた日本工業規格のJISの規格にいたしましても、新しく規格を設ける必要のあるものもございますし、またそのほかに、現在ありまする規格を改訂する必要があるというものがあるので、これを指摘いたしました。  その次は、日本農林規格の規制方式の合理化でございます。これは一定基準以上の高度の品質管理施設、組織等を備えた製造業者では、日本農林規格について、すなわちJASについては自主的に表示ができる制度を設ける必要があるということを勧告いたしております。それから、適切なJASを確保するための措置といたしまして、定期的に現在ある規格を再検討する、そういう制度を設けることに関しまして検討する必要があるということを勧告いたしております。  それから第三には、表示対象品目の範囲の拡大でございます。消費生活物資のうち、その購入にあたって品質の識別が困難であり、また利用、取り扱い上注意を要するもので、いまだ表示対象品目に指定されてないものがございます。これはまあ大体ジャム、つけもの、つくだ煮あるいは水産加工物で、かんとかびん入り、あるいはまた合成樹脂製の容器、包装に入れたものでございますが、これに対しては表示を義務づけるようにするというような内容のものでございます。  それから第四は、電気用品の規制範囲の拡大でございます。これは最近盛んに電気用品の新製品が出てまいりますが、この新製品による危害を予防するための適切な規制措置検討する必要があるわけでございますが、電気用品については、現在、電気用品取締法施行令で個別的に指定されておるものだけが対象になっておりますが、この指定をされてないものに対しましても、電気用品の安全性等についての適切な規制措置検討する必要があるということを勧告いたしております。  第五は、表示事項の追加でございます。表示対象品目の規格、品質等について現に表示を義務づけている事項のほかにも、消費者保護の見地から表示させる必要のあるものがあるのでございまして、これらに対しまして勧告をいたしております。  それから表示の明確化でございます。これは、たとえば食品衛生法に基づく食品の表示の中には、品名などの文字が小さかったり、あるいは色彩がはっきりした色彩を使っていなかったり、あるいは表示した個所が非常に不適当なところにあるといったような事例が見られるわけでございます。また、JISの表示にいたしましても、表示の方法が非常に専門的な、たとえば略語とか、そういったものを使ってやっているものがございますので、消費者には直接わからないものがあるわけでございます。そういったものを改正する必要がある。  第七は、監督、指導の強化でございます。これは日本農林規格の格づけについていろいろ改正する点を言っておりますが、この内容に関しましては、たとえば家庭用品の問題に関しましては立ち入り検査等をもうちょっと強化したらどうかというような内容がございます。さらにまた、食品衛生法に基づく表示についてこまかく勧告をいたしております。さらにまた、量目表示については、都道府県あるいは特定市の指導は全く消極的であるから、もう少しこれを強化する必要がある。それから、電気用品取締法に基づく表示について、いろいろマークの表示がありながら、安全上の技術基準に合格しない不良電気製品などが出ておりますので、これに対する立ち入り検査等を強化する必要があるのじゃないかということを勧告いたしております。  それから次に、宅地建物取引業法による規制でございますが、これは都道府県において関係機関との連携が十分でない、不当広告に対する取り締まり、指導に徹底を欠くものが多いというので、これに対して勧告いたしております。  さらにまた、都道府県においては、誇大広告その他の不当行為を発見しても直ちに指示指導ができないというようないまの仕組みになっております。それを改正する必要がある。  それから、正しい広告を励行せしめるために宅地建物取引業法に基づき国が積極的に広告基準を明示する必要があるということを申しております。  それから第四は、業界組織の育成について指導を強化し、また無免許業者の取り締まりの徹底を期する必要があるということを認め、それを勧告いたしております。  〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕  それから第三の、不当景品類及び不当表示防止法による規制については、不当景品類及び不当表示防止法による不当な表示、広告等の規制に関しては、従来、都道府県との協力体制がないため、公正取引委員会の監督、指導が不徹底であるという点を指摘をいたしております。  それから表示、広告等に関する規制の運用基準が明確でない。  その他、ございますが、第四の消費者教育の推進につきましては、表示、広告等に関する関係法令、制度について消費者に対する啓蒙普及活動は、国、地方公共団体ともに低調であるということを指摘してございますが、あまりに長くなりますので、この辺で省略さしていただきます。
  94. 鈴木強

    鈴木強君 御苦労さんでした。問題は、私の聞きたいのは、通歴、農林というお役所は、どうかすると、生産者の立場を擁護する立場にあると思うのですね。厚生省は言うならば、消費者のほうを全面的に向いているというふうに思うのですが、一体、監査した結果、そういう行政上の仕組みの中でお互いにもう少し協調したらいいのじゃないかというような、そういうような面に対する行管の監査結果はどうなっておりますか。
  95. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 今度の監察でも、ところどころにそういった問題を指摘いたしております。現在の行政の仕組みというのは、私から申し上げるまでもなく、今日まで日本は非常に生産面においては諸外国に比べておくれておりましたので、生産というものに対して重点を置いたために、各省がむしろ生産に重点を置いた行政をやっておったわけでございます。しかし、近年は非常に様相が変わってまいりまして、消費者に重点を置く必要があるということで、そういった面について非常に各省においても力を入れられておりまするが、やはりこれは各省間において連絡を密にしてやらなければならないというふうに考えております。この点に関しましては臨調でもその点を指摘しておりまして、ただしかし、一省に、たとえば消費者行政に対する省を設けてやったらどうかというような説もあるのでございますが、これはやはり生産面と消費面とが一体になってやらなければならないのでございまして、それは現在のように各省においてやられると同時に、どこかの省におきましてそれを総合調整するものを置いたらいいんじゃないかというような臨調の答申もございますし、私どももそういった方針によって指導勧告をいたしておるわけでございます。そういった点におきまして、現在におきましては経済企画庁に国民生活局というのを設けまして、そしてそこでこういった総合調整の仕事をやるようにいたしております。しかし、これは四十年の七月にできたのでございまして、まだ十分な機能を発揮しているとは認められませんが、これが私は強化されまして総合調整が完全に行なわれることを期待いたしておるのでございます。
  96. 鈴木強

    鈴木強君 それから、たとえばお話しのように、量目の面でごまかしがあるとかいうようなこともございますが、そのためにごまかし表示を取り締まる監視員というものが通産省におると思うのですが、そこで、そういった人とかあるいは食品衛生の監視員、計量監視員、こういったものがそれぞれの役所にございますね。そういう陣容その他について、非常に複雑化してくる取り締まりといいますか監視というものが十分やり得る体制にあるのかどうなのか、この辺はどうでしょう。
  97. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 局長から答弁いたさせます。
  98. 稲木進

    政府委員(稲木進君) 監視の体制の問題でございますが、食品衛生の問題につきましては、御承知のとおり、食品衛生監視員というのが都道府県の職員として存在しておるわけでございます。それから、通産省関係の問題につきましては、地方の通産局のほうが中心になって監視をやっておるというふうに思います。  この体制が十分であるかどうかということにつきましては、常に問題になっておるところでございますが、これは地方自治体の職員でございますので、いろいろと府県によって非常に充実しているところと必ずしも十分でないというところがございます。私どもが今度監察しました結果によりましても、実際に監視するという、動く、活動が十分でないというふうなことが調査の結果、出ております。
  99. 鈴木強

    鈴木強君 いまの、要員が十分に活動してないということですか。
  100. 稲木進

    政府委員(稲木進君) 要員が十分に働いていないということよりも、むしろ監視の体制が弱体であるというふうに感じております。
  101. 鈴木強

    鈴木強君 そこで、非常に消費生活に関する行政というのは複雑でございまして、たとえば公取、厚生、それから経済企画庁、農林、通産、さらに運輸、労働、建設と、いろいろ分かれているんですけれどもね。一体、こういう各省においていま行管から指摘をされたような問題について過去どういうふうな方針でやられておったのか。それからまた、具体的にこれからどういうふうなことをひとつ消費者の立場に立ってやっていこうとするのか、公取委員長、厚生、農林、通産、順序はどうでもいいですから、ひとつそれぞれの方から所見を承りたいのですが……。
  102. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 独占禁止法の指向するものは、究極において、一般消費者の利益の保護につながるわけでございますが、ことに独占禁止法から派生いたしました不当景品類及び不当表示防止法、これはもっぱら直接一般消費者の保護を目的とするものでございまして、私どもにおきましても、最近、不当な景品あるいは誇大な広告によって一般消費者の選択眼をまどわすという事例が非常に多い、ことに不動産関係におきましてそういう例が非常に多いので、もっぱらそのことに重点を置いておりますとともに、最近は、それ以外の不当表示も相当出ておりますので、こういうものにつきまして十分配慮いたしておるわけでございます。  定員といたしましては、公取全体といたしまして昭和四十二年度三百三十六人というわずかな定員でございました。そのうち地方が、今度高松に地方事務所ができますが、七つの地方事務所で、一カ所平均十人程度の人しかいない、こういうことでございますので、地方に行なわれておりますところの不当な景品あるいは不当表示の取り締まりということも十分に手が回りかねる状況でございますが、できるだけただいまの行政管理庁長官の御勧告の趣旨を体しまして、ことに地方団体との連絡が私どもいままであまりとれておりません。こういう点は地方公共団体と十分本年度においては連絡会をひんぱんに開催いたしまして、地方団体と密着した公取の仕事をいたしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  103. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 行政管理庁からの勧告につきましては、ただいま、まことに詳細に長官からお話がありまして、農林物資規格の問題を中心といたしまして規格の改善、表示の明確化、格づけ方法の合理化等について御指摘があったわけであります。当方といたしましては、こういうことにつきましてただいま事務当局をして検討いたさせまして、将来とも消費者保護のために政策を進めてまいりたい、こういうことで鋭意研究中でございます。
  104. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 消費者行政のことについてお尋ねがありましたが、御承知のとおり、通産省としては物をつくるところでありますが、しかし、物をつくるその商品は、結局は消費者に供せられるものでありますからして、したがって、通産省としては質のいい、安い、また必要な量をつくるということが根本の指導方針であります。しかし結局、質のいいとか、あるいは安いとか、あるいは必要な量ということは消費者のためをはかるということになっておりますので、したがって、質のいいということについては、規格をつくっていい品をつくる、量の問題につきましては、必要な量を生産設備よくするとか、それから低廉ということは、要するに生産量を高めて低廉にする、こういうようなことが根本の方針でありまして、先ほどの勧告に従いまして、みんなそれぞれ、われわれといたしましても、それが大体、大筋は現在われわれがやっておる事柄でありますが、しかし、これを今後とも強化する必要があるということで、勧告の方針に従って強化していきたいというふうに考えております。  先ほど、量目の適正や何かでそれだけの人員あるいは職員では足らぬのではないかというお尋ねがあったようでありますが、量目の適正化の実施を確保するために、三十九年度から国の予算で、全国に千三百名のモニターによる計量モニター制度を発足いたしまして、四十二年度におきましても地方庁自身の予算によるものと合わせまして約二千名増加することとしております。が、しかし、これだけでも決して私のほうでは満足しておりません。もっと人数をふやしたいと考えております。なお、計量取り締まりの職員、これは地方公務員でありますが、これは四十一年度末で約千二百五十名でありますが、四十二年度には百二、三十名を増員する見込みであります。そういうようにして職員の数を増して、計量の取り締まりあるいは消費者側の意見を聴取するとかいうようなことをやっていきたいと、こう考えております。
  105. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 厚生省でございますが、厚生省は、何と申しましても消費者保護行政という立場からの仕事でございまして、そこでそういった面から鋭意努力をしておるのでございますが、最近におきまして食生活が非常に複雑化しましたので、いろいろな食品が出回っております。それらの中で、公衆衛生上の危害を生ずるおそれがあるもので虚偽の表示をしておるようなものにつきましては、これは食品衛生法によって取り締まりを行なうのでございますが、最近の病菌汚染ブタ肉等にかんがみまして、食肉関係者、乳肉関係者、そういったような者の食品——乳肉、食肉、そういったようなものの表示を非常に厳重に規制していくというような方向でいきたいと思っております。そのために食品衛生の監視に当たる職員につきましては、技術研修をさらによく行なう等の体制を強化してまいりたいと思います。  それから、厚生省はもう一つ別の面でございますが、医薬品というものを、医薬行政を扱っておるのであります。そこで、その医薬の品質の確保については、十分これは今後ともさらに配慮をはかってまいらなければならない。そこで、小売り価格の表示を励行せしめるようにして、消費者の利便に資するほか、医薬品の正しい使い方——過度に使ったりしないように正しい使い方の普及をはかり、   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕 さらに、虚偽表示あるいは誇大な広告、行き過ぎたそういったような行為というものにつきましては取り締まりをやっていく。それで、薬品についての監視ということは常時やっておりますけれども、一定の期限をきめまして、さらにこれは、その期間中は非常に厳重な抜き取り検査等をやって、そして遺憾のないようにやっていく。  それから、先ほどちょっとお触れになりました食品衛生の監視員でございますが、これは全国に五千九十七名ということになっておりますが、この人数ははなはだ私は十分でないと思っております。そこで、これはそれぞれ各都道府県におるわけでございますが、昭和四十二年度の予算におきましても若干それをふやしてもらう、こういうようなことを考えております。なお、そういったような監視員が、専従者よりも兼務者が多いといったようなことになっておりますので、今後はこういうふうに食品等が複雑になってまいりますと、この制度の整備拡充ということが非常に私は必要なことであろうと思いまして、鋭意その方向に向かって努力をしてまいるつもりでございます。
  106. 鈴木強

    鈴木強君 経済企画庁は。
  107. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先に各省からいろいろの対策、お話があったようでございますが、私のほうは国民生活局を中心に、各省との連絡の上の対策を立てておる役所でございまして、昨年、国民生活審議会からいろいろ答申を受けておりますので、その線に沿って、本年度はまず地方公共団体の消費者行政組織の拡充、整備を推進するということ、これは、都道府県に消費行政の係り以上のものを設置するということで、二十二設置されますし、また、県段階におけるいろいろな審議会というようなものも二十三設置される予定でございますが、本年度からそういう消費者行政組織の整備の推進をはかるということをいたしております。それから、先ほどお話がございましたような全国都道府県に消費生活モニターを設置する。それから、日本消費者協会の行なう消費生活指導者の育成費用というものに対して補助金を出す。それから、消費者教育の内容の体系化をはかるために、文部省、国民生活研究所を中心とする検討をいま始めておりますが、そういう学校教育に消費者教育をどういうふうに入れるかというような問題などをとりあえず本年度は推進するということで、各省との相談のもとに、昨年度の答申の実行に入っておるという次第でございます。
  108. 鈴木強

    鈴木強君 いろいろやってこられたことについて、さらにこれからの施策についてお聞きしましたが、これは文字に書き、口で言うことだけではなかなか実感がわかないので、私はもう少し具体的に幾つかの問題についてお伺いします。  これはまずこれは公取と厚生省に関係あると思いますが、最近レモン業が、非常に不良品がありまして、天然レモンの表示をしておきながら、実際はレモンの汁もビタミンCもほとんど入っていない、こういうような飲料が大量に出回っておる。公取委員会のほうではこれらのメーカーについて具体的に内容について報告書を出さして取り調べたと、これは各紙、朝日にしても毎日にしても読売にしても、どの新聞も書いておりますが、不当表示の防止法第四条違反、こういうことになると思うのでありますが、大手業者に対して排除の命令を出す。この中には、新聞で見ますと、ポッカレモン、森永製菓、東食、明治屋、それからヤンズ通商、サントリーと、合わせて五つですかね、こういうものが具体的な名前も出ておりますが、このことについてもう少し公取委員長の経過をひとつ聞かしてもらいたい。
  109. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) だいぶ前からあたかも生レモンを主たる原料とするかのごとき印象を消費者に与えるような広告でもってレモンが相当大幅に出回ってまいりました。ことに昨年中は非常に誇大な広告でもって大きく伸びた会社もあるわけでございます。私どもでもそういうものに対して着目いたしまして、この春から調査いたしまして、現に一社につきましては聴聞手続をいたしまして、目下排除命令を出さんとしておる寸前でございます。なお、これに追っかけまして、このほかに他の数社におきましても多かれ少なかれ同様な傾向が見られますので、これにつきましてはごく近日中に聴聞手続をとりまして、まあ需要者側のほうの不当景品類及び不当表示防止法に従いまして意見を述べる機会を与えなければならぬということになっておりますので、意見を述べる機会を与え、証拠を出す機会を与えまして、その上で排除命令を出さざるを得ないのじゃないか、こう考えておるわけでございます。具体的に聴聞手続をしませんと、最後の決は下せないわけでございますけれども、ただいまのところではお話のような排除命令を出す方向に進んでいるわけではございます。
  110. 鈴木強

    鈴木強君 これはですね、消費者の気持ちをうまくつかんで、その方向に行くような一つの宣伝をし、いろんな動きをしているわけですが、一体いままで調べられた中で、まあもうけるためには手段を選ばぬというようなことじゃないかとやはり思うんですがね、その辺の業者の考え方というのはどうなんですかね。
  111. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) いろいろ調べてまいりますと、まあ業者によって申し立てがだいぶ違います。違いますが、いままで業者から調べただけでも、これはすでに不当表示になるという印象でございます。ことに中でひどいのは、たとえば——これはまあ特定の会社の名前をただいまのところちょっと遠慮いたしますけれども、全体の中に果汁——くだものの汁が六%しか入っていない。しかも、レモンの汁はきわめて微量であるというようなものも中にはある。その他はクエン酸とか、まあビタミンCは入っておりますが、そういったもので全体をあたかも生レモンのしぼり汁であるかのような印象を消費者に与えている、そうして大きな宣伝をしましてぐんぐん伸びておる、こういう業者もある。これにつきましては、まさしく不当景品類及び不者表示防止法に反するわけでございますので、法律に従いまして措置をいたすつもりでございます。
  112. 亀田得治

    ○亀田得治君 公取委員長、いまのような場合に公取等ではどういう罰則がついているんですか。
  113. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この不当景品類及び不当表示防止法によりまして、排除命令をいたします。この排除命令は、確定いたしますと、独占禁止法の審決と同様な効果になります。で、確定審決に違反した罪ということになりますと、これは独禁法のほうに戻りまして、罰則があるわけでございます。確定審決違反の罪は、たしか二年以下の懲役または三十万円以下の罰金、こういうことになっておったかと存ずるのであります。
  114. 亀田得治

    ○亀田得治君 これ、不当表示というふうな立場で考えておりますと、何か私は間違うんじゃないかと思う、扱い方について。明らかに実質はこれは詐欺ですわね。詐欺なんです。誇大広告だとか、不当表示だとか、そういうきれいなことばを使っておると、少し行き過ぎたというふうなことに考えられて、で、それを直させるのがまず行政の目的とか——、そういうふうな感覚が私はもう間違いだと思うんです。で、ずっといろいろ行政上の措置をとって、なおかつ、それに対して従わないという場合には、審決に従わないものとして懲役二年だというんですね。ところが、刑法の場合には十年なんです、詐欺は。詐欺罪。個人がだまして、たとえばわずかのものでもとれば、はっきりこれは刑法犯としてやられるわけなんです。ところが、これはきわめて計画的にたくさんの金をつぎ込んで、そして計画的に知恵をしぼってやっておる仕事なんです。私は、こういうものを公正取引委員会の段階での処理をしておることは間違いだと思う、これは。公正取引委員会の段階でとめておくのは、まあその詐欺というところまではいかないけれども、行き過ぎて誤解を与えるというふうなところなんです。そうでなければいかぬと思うんです。それをこえて、まるきり違っておることを、あたかもそうあるかのごとく、しかも、大量にこれ、だますわけですからね。それはたいへんな実際は不道徳なことをやっているんですよ。だから、そういう点で一方で刑法では個人間の詐欺であっても十年以下と、こういうものをつけておるのに不均衡じゃないですか、明らかに。しかも二年以下の公取法の罰則というものが一体適用されたことがあるんですか、ないんですか。おそらく私はないんじゃないかと思うし、あっても最高の二年といったような刑が出ておるものはほとんどないんじゃないか、いまの感覚からいうと。私はそこまで突っ込んだ、ほんとうに道徳的な立場に立っての考え方というものを、もっとはっきり出すべきだと思うんです、これは。消費者のほんとうの気持ちは、私はそこにあると思うんです。だまされてくやしくてかなわぬ、あの新聞が出てからずいぶんそういう訴えを聞きますよ。どういうふうに考えております。まず、実例を示してください、その罰則適用の。
  115. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 不当景品類及び不当表示防止法違反が直ちに刑法上の詐欺罪に該当するかどうかという点につきましては、これは事例によって私は問題があろうと考えております。刑法上の詐欺罪は「人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者」、こうなっておりますので、不当景品類及び不当表示防止法のほうは、それよりもはるかに範囲が広いというわけでございまして、公正取引委員会といたしましては、不当景品類及び不当表示防止法に従いまして排除措置を命ずるものが私どものたてまえでございます。ただ、その中でもし詐欺に該当するものがございますれば、これは刑事犯罪としてそれぞれの手によって調べられることであると、こう考えているわけであります。なお、確定審決に従わなかった場合には懲役または三十万円以下の罰金の刑があると申しましたが、確定審決に違反したことはいままで事例がございませんので適用したことはございません。不当景品類及び不当表示防止法に従いまして排除命令をいたしました場合には、いずれもそれに全部従っておりますので、したがって、確定審決違反という例はいままでないわけでございます。
  116. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、そういう問題を取り上げられればやっておるほうだって真相はわかっておるんですから従わざるを得ないんですよ、審決に。しかし、私はものによっては単に公取法の段階にとどめておくんじゃなしに、これは明らかに計画的に、このような間違ったことをやっておるというものは、公取委員会が、あなた告発をすべきじゃないですか。当然そういうものは私は中にあると思うんですよ。財物を騙取したと言ったって、利益だって財物ですから同じことなんです。売買という形態をとって不当に利益を獲得しておるんですから。もしそういうことが現行刑法で処理しにくいというのであれば、刑法の改正をするなり、何とかしなきゃいかぬでしょう。普通の詐欺が罰せられていて、相当強く、そうしてこういう知能犯的な大がかりなことがそのままでいいなんていうことはおかしいですよ。あなたのほうで取り扱ったものの中でそういう刑法的な処理をする必要のものは一件もなかったと、こういう意味なんですか。あっても、いままではそこまではやらないで、大体審決を出してそれに従わせる。それで満足したんだと、こういうことなんですか、どっちなんですか。
  117. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) たとえば不動産の不当表示なんかにつきましても、ときどき警察の方面から話がございます。幾ら研究してもこれはどうも詐欺罪にできないので、公取のほうでもってひとつ排除してくれないかというようなことがございます。公正取引委員会といたしましては、やはり不当景品類及び不当表示防止法の所管庁でございますので、それに従って法的措置をするよりほかにしかたがないのじゃないか、もしそれが刑法上の犯罪を構成するものであれば、私どもは実は刑法については詳しい知識を持ってございませんが、それにつきましては適当な所管庁においてその措置を願わなければならぬのじゃないか、こう考えておりますが、ただいままで私が扱いましたところでは——私か参りましてから扱いましたところでは、刑法の詐欺罪というものには当てはまらぬのじゃないか、こういうような感じのものがいままでは大部分であったと私は記憶しております。
  118. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう解釈は、はなはだそれは業者的な見方でございまして、業者は一切の内部事情を知っているわけですからね、製品の内部事情を。そうして違ったことを言っているわけですから。それがあなた詐欺の概念に入ってこないというのはおかしいんです。こないのは、こない場合もあるでしょう。しかし、原則として詐欺罪の要件というものに当てはまる可能性が強いんですよ、これは。それは出発点をそこに置かなければいかぬですよ。そこに置かなきゃ。いままでのものにそういうものはないというようなことをおっしゃるんですが、それは調べが足らぬですわ。おそらく一つ一つ厳密に私は調べれば必ず要件に該当するものが出てくると思いますよ。まあそういうことになれば、これはあなたのほうでいままでそういう関係でおやりになったのを全部報告願って、そうしてわれわれとしても研究しなきゃならぬのですが、どうもこういう関係についての扱いが、もう一つ私は浅い、考え方が軽い。わずかな金を、物価も上がるし節約しなければならぬというふうな立場にある大衆に対して、そんなあなた、間違ったことを承知の上でやっておるその場合について、どうも憤慨のしかたが足らぬ。公取委員長、なかなかいろいろ活躍されておるんですけれども、私はどうもこの問題に関する限りもの足らぬですね。だから、いずれあなたのほうでおやりになったその関係を、私ども少し研究させてもらって、また意見があれば参考に申し上げたいと思いますから。もう少し私は突っ込んで、大いに公取委員長最近名前をあげているんですから、もう一つ大いにやってほしいと私は思っておる。あなたなら大いにやってくれると期待しておるから言っているんです。出しますから、ひとつやってくれますか。
  119. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) まあ私も刑法のことは実は詳しくないんでありますが、たとえば一番多いのは不動産の不当表示でございますね。駅から歩いて六分というようなことで、実際行ってみたら二時間というのが最近ございます。ただ、そういうのを購入された方は、実際にその土地へ行ってごらんになって、その土地を承知の上で買われているんですから、はたして人を欺罔して財物を騙取したと言えるかどうかという点は、私は個人的な法律の知識しかございませんが、相当問題もありそうな気がいたします。しかし、その行為は実に憎むべきものであるというふうに考えておるわけでございまして……。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 まるっきりだまされておる。不動産の場合は見て買うので、その要素があるけれども、ジュースはまるっきり違いますよ。飲んでしまう。
  121. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) まあ刑法の問題もいろいろございますので、よく勉強いたしたいと存じます。私のほうといたしましては、消費者の保護につきまして、不出景品類及び不当表示防止法の精神に従いまして、あくまでもこれを徹底的に追及いたすつもりであります。
  122. 鈴木強

    鈴木強君 北島委員長、このレモンのこの問題について、あなたのほうでおかしいなと思ったのはいつごろですか、調べに入ったのは。
  123. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) あるいは事務局では前々から調査しておったようでございましたが、委員会で報告がありまして議題になりましたのは先月でございます。
  124. 鈴木強

    鈴木強君 そこで、ちょっと巧妙な手段でやっている実例を見てくれませんか。ちょっとこれはあれですが、これはあとで北島さん、見てくださいよ。これはね、こういう五つの種類があるのですね。それで、やっぱり公取は非常におそいのですよ。私はこの「暮しの手帖」を、花森さんの、これを拝見してみましたら、詳しく載っておりますがね。これはもう二月ごろからおかしいというので品質を調査したらしいですね。自費で。ところが、これとこの小さい四つには入っているのです、ビタミンが。これには入っていないのです、全然。一番大きいこれは七百二十ミリリッターですね。このびんにはビタミンCは全くなく、痕跡も入っていない。それから、ほかは、またいろいろ場所をかえて買ってきて調べてみたけれども、全然ない。よくよく見ると、これは厚生省許可特殊栄養食品と、こう書いてある。いいですか。これにはそこのところはないのだね、これ。この大きいのには確かにない。ですから、こう四つありまして、この値段も調べてみると、このちっちゃいのが百円ですよ。実際売っているのは、九十五円で売っているわけだ。この百五十円のやつが、これ百四十円で売っているわけだな。三番目のやつが二百五十円が二百十円、四十円割引している。それから今度この三百六十円が三百二十円ですから、これはやっぱり四十円の割引です。この一番大きなのは四百二十円が三百六十円で、六十円割引しているのですよ。これじゃちょっとわかりませんよ。この広告を見ると、ビタミンCがなまよりも三倍入っていると書いてある。これが非常に、リッター当たりにしてみますと、一番小さいこれが十ミリリッターで十一円一銭、こっちは五円八十銭ですね。だからね、やっぱり大きいのがお得ですよということになれば、これは買いますよね。こういう非常に巧妙な宣伝によって消費者をごまかしているという事実がある。  しかも、この日本消費者協会なんというのがありますけれどもね、一体これには政府が相当に補助を出している。これJISマーク、JASマークの問題もあるでしょうけれども、あとから聞きますけれども、こういうふうな消費者協会は何しているのですか。一体、その取り締まりの公取は何しているのか。厚生省何しているのか。厚生省認可ですからね、これ。特殊栄養食ですから。一体、こういうものの品質も何も見ないで厚生省認可特殊栄養食品なんというものを出すのが、厚生省の頭おかしいのだね、これ。どうかしているのだ、これは。だから。こういう、実にわれわれがちょっと見ましてもでたらめなものがこうあるわけですよ、これは。民間のこの花森さんのところで詳しくこういう品質調査をして国民に知らしたわけだね。一体厚生省は——先月ですか、公取はね。これじゃちょっとなまぬるいですね。だいぶ名前をあげてきたけれども、北島さん、ちょっと落ちたね、またこれ。もう少し厚生省もこういう問題について真剣にやってもらいたいと思うのだが、どうですかね。これは間違いないでしょう。よく見てください、こういううまいやり方を。
  125. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御指摘のいろいろの品、ことにポッカレモンというものにつきましては、亀田委員先ほどからいろいろ御意見をお出しになっておりますが、刑法についてはほんとうに私もしろうとでございまして、何らここで断定的なことを申し上げる知識も何もございませんけれども、さようなことをやるということは、これは私のいまの厚生省の食品衛生上ということから申しますと、これは人体に、あるいは公衆衛生上非常に危害があるということがありますと、これは食品衛生上これを取り締まる対象になっていろいろな措置を講じることができるということでございますが、人体に別に危害を及ぼすということがはっきりしないで、しかも、うそのことをやっておるということは、なおさらこれは、道徳上もあるいは商業道徳上もきわめてこれは指弾されるべき行為だと、かように私は考えております。  そこで、いま私はポッカレモンにつきましては、ポッカレモンの容量によりまして規格がございまして、ある極の容量のものにつきましては、新聞にも書いてありますとおり、厚生省がむろんこれは人体に公衆衛生上の危害があるというものではないということで私は許可したものだと思いますけれども、そうでない、許可していない、認可していないようなものまでいかにも許可されたように新聞に広告をしておるといったようなことのようでございますが、私もまだつまびらかにいたしておりませんけれども、そういうようなことにつきましては、これは私は厳重に取り締まりをしてまいらなければならないと思っておりますが、実際の事態の実情につきましては、まことに私申しわけございませんが、それほどつまびらかにいたしておりませんので、そこでいま関係局長が参っておりますから、詳細御説明を申し上げさしていただきたいと思っております。
  126. 鈴木強

    鈴木強君 説明してください。厚生省認可だよ、これは。認可特殊栄養食品だからね。
  127. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えいたします。  ビタミン剤を食品に一般に添加する場合におきまして、これは俗称強化食品といっておりますが、これは特殊栄養食品として厚生省で許可を与えているわけです。したがって、その許可を与えているものにつきましては、これが入っているか入っていないかについて厳重——やはり入っていないものについては違反になるわけでございますが、ただいまの件につきましては、ある容量のものにつきましては、これは許可のあれをとってないもの、そのものが新聞の広告におきまして許可をとっているものと同列に並べて書いてある、したがって許可をとっているように思われるように一般にはとってしまう、そこに問題点があるわけでございます。したがいまして、現在までこれに対して厚生省といたしましてとった措置は、この大きな、容量七百二十ミリということが書いてございます、これにつきましては、ビタミンCが強化されていないという包装をするように指導いたしました。それから、四月十四日の毎日新聞の広告から七百二十ミリの字句を削除するようにいたしております。それから、四月十三日以後七百二十ミリ容量のものの製造、出荷を停止するとともに、できる限りの回収を行なうと、こういうふうにいたしました。
  128. 鈴木強

    鈴木強君 私はけさこれ買ってきたのだね。ちゃんと売っているよね、これけさ。あなたがそんなことを言ったって、ちゃんと売っているのだ、店屋で。だから、そういうことがもう少し明らかになったら、積極的に回収させるならさせるようにしたらどうですか。まぎらわしく厚生省認可特殊栄養食品と銘を打ってこう並べておりますからね、これを見たときにだれだって——ただ、消費者のほうに、不注意だと、こういえば、法的にはのがれる道を残しているかもしれません、これは。しかし、こうやって見たときに、どうですか、どれにしますか、こっちは安いですよと、こうなれば、買いますね、これね。こういうものが出てきたら、あなたのほうでもこれおかしいじゃないかと、これを調べなければいかぬのだ、やっぱりな。そうでしょう。認可を与えている以上は、それに類似するようなものについても、そういうことについてやっぱり注意する必要があるでしょう。これが無許可のものであれば、回収の手続をもっとやらなくちゃならない。一体いっそのことをやったのですか、その回収するという。どういう努力をされたのですか。
  129. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 私どもといたしましては、監督の立場から、正規に入っているものが正規に消費者のところに渡る、入っていないものが間違って渡るようなことをできるだけ防止いたしたい、こういうふうに努力いたしておるつもりでございます。
  130. 鈴木強

    鈴木強君 だから、いつそれを知って、具体的にどういうふうな回収措置をしましたかと言っておる。
  131. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 現在までとられておる措置につきましては、一部先ほど申し上げましたとおり、そういうものが七百二十ミリのものに入っていないということを放送をさせて一般に周知をさせる、あるいは新聞の広告から、そういうものはすでに今後広告する場合に削除する。それから、その七百二十ミリ容量のものの製造、出荷を停止するとともに、できるだけ回収を現在行なっております。回収状況につきましては、現在調査中であります。それから、表示許可を行なった同種製剤につきましても、製品の収去検査を現在実施中でございます。
  132. 鈴木強

    鈴木強君 ぼくの質問に答えていない。いつそういうことを知って、具体的に回収のための努力をどうしたかということを聞いているのです。二度繰り返しているがそれを答えていないのです。こういうものがビタミンCが入っていないということを知ったのはいつですか、それを回収したのは。
  133. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御意見非常にごもっともなことと私は思います。それで、いつやったかということについては、実は私はまだ報告を受けておりませんのでお答えできませんけれども、非常にこれは重要な事態でございますので、早急に私はこの善後措置というものを厳重にやってまいりたいと、かように考えております。
  134. 鈴木強

    鈴木強君 この品質管理ですね、財団法人日本消費者協会というものがありますが、これは通産、農林両省から補助金が出ていると思います。商品テストというのをやっておりますが、要するに、こういう飲食品類についても、これが厚生省が認可した基準に合っているかどうか、不正品であるかどうかということは、これはちゃんと調べる責任あるわけでしょう、許可した以上は。
  135. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えいたします。  一般に許可食品につきましては収去検査を行ないまして、それを調べるようにいたしております。
  136. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。納得いかぬことが多いので。警察はおりませんな。新聞等でも、このレモンの問題はやかましく報道されておるのですが、当然警察なり検察庁としても、実態はどうか、これが刑法の詐欺罪等の範疇に入ってきやせぬかということを、当然これは関心をもって当たってみるべきだと私は思う。そういうことがされておるのかどうか。公取とか厚生省とか、そういうところだけに行政上の措置をまかしておくということは、私はいまの消費者の憤激のぐあいからみたら納得できないと思う。それを聞きたい。公安委員長がおりませんので、法務大臣ちょうどこられましたから、検察庁は一体どうしておるのか、答えてください。
  137. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 申しわけありませんが、いままでの経過を知りませんから、御質疑の趣旨がわかりかねます。もう一度おそれ入ります。
  138. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、大体新聞をごらんになっていて、質問者がここにこういうものを並べておるということをごらんになったら、これはぴんとこなきゃならぬ。非常に明敏な法務大臣ですから、私はそれくらいのことはおわかりになったと思ってお尋ねしたわけですが、これは、あなた、主婦の皆さんが非常な憤激なんです。ともかく、なまレモンがないものをあるかのごとく買わされた、このだまされて飲まされたほど気分が悪いものはないですよ。これが一体詐欺になるのかならぬのか。まあ公取とか厚生省では別個な行政上の立場でおやりになっておりますが、私はもっと道徳的にこういうことは非難さるべき問題だと思うのです。こんなことを、たとえば外国の商社の諸君でも日本にたくさん来ております。日本の新聞もごらんになるでしょう。私は非常な大きなマイナスだと思うのです。しかし、事実あるんだから、新聞に出るのはしかたがありません。だから、そういう面から見たって、そんななまやさしい扱いに済ますべきじゃないと思う。一罰百戒で、やはりこれだけの問題になっているのだから、しっかり警察なり検察庁としてもやはり取り組む、こういうことがいろんなほかのことについてもやはり警告になっていくのですから、当然私は取り組んでおられると思いますが、犯罪があると思えば、これを調べるというのが、あなた、警察、検察庁の権限じゃないですか。ありと思わぬですか。あれだけの新聞記事が出ているのに思わぬ人は私はないと思うのです、法律家であれば。それは実際調べた結果、いろんな要件が足らないということが出てくるかもしれませんが、その場合はそれはしかたがない。だけれども、放置しておく法は私はなかろうと思うのです。そういう立場でお聞きしているのです。どうですか。
  139. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) よくわかりました。そこで、お答えをいたしますが、これを、物そのものを監督しております厚生省、それから、第一線の捜査機関である警察、この関係方面と慎重なる連絡をいたしまして善処をいたしたいと思います。
  140. 鈴木強

    鈴木強君 さっきも行管から指摘されておったように、価格の表示につきましても非常におかしいと思うのは、箱には全然書いてないのです、表面には。出してみても、これにも何もないのです、この中にも。価格幾らなのか全然書いてない。ただし、こういう青いものが一緒に入っているのです、この中に。この中を見ると、この中の一番最後のところに価格が、「食卓用」なんて書いてある。しかも、買うときには割引をしているわけです。百円を九十五円ですから、まあ最高は六十円、四百二十円を三百六十円、こういうふうにしているのだが、この価格表示ということに対して、まことに私は抜けていると思う。これはまあ名前を言うと差しつかえがありますから言いませんけれども、こういういろいろな、最近は簡単にこう衛生的に管理してあるものがあるのですが、こういうものについても、どこを見てもこれは値段というものはない。小売屋さんが値段を変な紙に書いておいて売っているわけですね。こういうようなことについて何も手をつけていないというのが私はふしぎでしょうがない。しかも、品質管理についてもまるっきり野放しで、ある雑誌社がその真剣な調査をしておりますけれども、その結果わかってきた。それで大あわてをしているというのが日本のこの行政のあり方ですよ。まことに情けない事態だと思うのです。価格表示についてどうなんですか。
  141. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御質疑の価格につきましては、私のほうではこれを何ら指導もしておりませんので、私からお答え申し上げるだけの用意がございません。
  142. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 契約の実態がよくわかりませんので、一般的なことしか申し上げられないのですけれども、たとえば再販制度のもとにあれば末端の価格を明らかにしてやっておるということでもありましょうが、おそらくその事例につきましては自由価格かもわかりません。自由な場合には、末端でどういう価格表示をするかは何らの規制がない、一般の商品と同じであるというふうに解釈いたすわけでございます。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 いろいろ出局のほうの答弁がきわめてあいまい、こういう問題に対する取り組みがきわめて弱いのを非常に遺憾に思います。ことに私は、これは単なる公取とか厚生省とか、そういう段階の問題じゃない、もっと深い問題じゃないかと思うのです。法務大臣も善処するというふうに言われましたが、こういう刑事上の問題ですから、あまり軽率なことも責任者の方が言いにくいということだろうと思いますけれども、しかし、実際は、いま法務大臣もごらんになったように、ここになまのレモンの絵が描いてあるわけですね。したがって、絵が描いてあれば、当然それが入っておると思うのはあたりまえですよ。厚生省の許可を得たとか、そんなことはこれは書いてありません。だから、そんなものは書いてなきゃいいのだというふうには私はいかぬと思うのです。一般の主婦の方は、そういうこまかい字よりも、この絵のほうを私は注目すると思う、ポッカレモンというこの絵と字を。だから、私は、これで十分業者の悪意というものは立証されておると思うのですよ。だから、もう少し法務大臣としての判断をはっきりおっしゃってほしい。
  144. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま初めて現物を手にとって拝見をしたわけであります。そこで、先ほど申し上げますとおり、第一線の捜査機関である警察、そうして環境衛生、飲料水等に関して監督をしております厚生省当局等と緊密なる連絡をとっていかなければなりませんが、いま現物を拝見したところによると、表面の形式的表示と中身が違うということになりますなれば、これは業者は詐欺の加害者としての嫌疑がある、そういう疑いがあるものと推定されることはやむを得ないものと存じます。そういう見地に立って緊密なる連絡をとって、こういうものは捨て置かず、積極的な姿勢で善処をしていきたい、こう考えます。
  145. 鈴木強

    鈴木強君 時間がないんですけれども委員長……。
  146. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめてください。  〔速記中止〕
  147. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。  鈴木委員の御質問の具体的な問題についての政府の調査も十分でないようでありますから、政府の関係機関で十分この問題について調査をされまして、その対策について後刻答弁をまとめてしていただくことにいたしまして、鈴木委員の次の質疑に移っていただきたいと思います。
  148. 鈴木強

    鈴木強君 その委員長のあれでは承服できませんよ。政府の準備じゃないですよ。要するに、十分調査しなければわからないというのじゃなくて、厚生省が特殊な栄養食品として認可をしたものに対して、認可者にすれば、これがどういうふうに価格を掲示しようと、そんなことはかまわないんだ、それについてどこの役所がそれをやるのか、私はそれを聞いているんですよ。そのことがここで答弁できないということはないと思う。あと、いま亀田委員の質問に関連したことに対してのことは、重要なことですから、私もいまの委員長のことでいいんですけれどもね。答弁ができないんですよ。だから、私の価格表示取り締まりをどこでやっているのか答弁ができないから、保留するなら保留すると、私はそれでないと承服できませんよ。
  149. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 鈴木委員に申し上げますが、いま亀田理事、日高理事とも御相談したんですけれども、価格の問題のごとき、自由価格であるかどうかということについても明確な答弁ができないということでありますから、そういった問題を含めまして、もう少し関係機関でこの問題について具体的な調査をし、統一した答弁をしてもらうようにしたいと、それで進行しようということに理事の間で話し合いがきまったわけですから、それで御了承いただきたいと思います。
  150. 鈴木強

    鈴木強君 私ははなはだ不満ですけれども、少なくともこういう消費者行政について、価格表示についてどこが取り締まるのか、そのことすらわれわれの質問に答えられぬようなだらしのない行政組織というものに対して、私は心から怒りを感じます。消費者というものは非常に弱いのです。しかも、法律にも暗い。裁判するということは、それは法律上できるかもしれないが、そんなことはなかなかできない。泣き寝入りしているのが現状ですよ。もっと消費者行政の立場をとって行政というものはあたたかくやってもらわなければならないと、こう思うのです。まあやむを得ません、委員長のあれですから。  最後に、私は、文教関係で質問しますが、剱木文部大臣がおっしゃっている中で、学制の制度の改革ですね。たとえば、具体的に質問しますと、いまの就学年齢を六歳から五歳に引き下げるとか、あるいは、義務教育をそれに伴って変えるとか、さらに、高等教育について、大学入試の非常に問題がありますから、改革をしようとか、いろいろ言われておるんですけれども、その辺は、剱木さんとしては、大学教育のほうに重点を置こうとするのか、義務教育のほうに重点を置こうとするのか、その点をひとつ伺いたい。
  151. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 新学制を終戦後しきましてから、日本の教育は、相当、数的にも世界的に認められるように発展してまいりました。また、六・三制も、わが国の民主教育に対して相当の効果をあげてまいったことは事実だと思います。ただ、戦後二十年でございまして、経済社会情勢が相当な進展をし、また、国民の文化水準も相当に上がってまいりました。そこで、いまの学制についていろいろな論議も行なわれておるのでございますが、私といたしましては、やはり学制の改革の問題はそう思いつきでにわか仕込みでやるわけにはまいりませんから、根本的にこれを再検討する時期が来ておると思います。ただいま、文部省も、幼稚園、幼児教育について相当な力を入れてまいりまして、就学年齢の開始時期を早めたらどうかという意見もございます。なおまた、義務教育の年限延長について、高等学校の面まで延長したらどうかという説もございますし、また、大学のあり方についてもいろいろ論議をされておる点がございますので、一貫いたしまして長期的な見通しで学制全般に対しまして再検討を始めたいと、こういう意味におきまして、今回お願いいたしております昭和四十二年度の予算におきましては、そういう含みを含めた予算も計上してお願いしておるわけでございます。予算が成立いたしましたら、こういう問題に取り組んでサゼスチョンをいたしたいと、そういう心がまえでおります。
  152. 鈴木強

    鈴木強君 いや、だから、制度の改革だから、就学年齢なんかについて聞いているんです、具体的に。引き下げることはしないのですか。
  153. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 就学年齢の引き下げも、下に引き下げるかどうかという問題も含めまして、長期的な視野に立って学制の問題について検討を開始したいと、こう考えております。
  154. 鈴木強

    鈴木強君 委員長、時間を残しておかなきゃいかぬわけですね。私は建設政務次官においでいただいているんですが、これがゼロになっちゃうと私できないんですね。だから、まことに申しわけありません、ほかの皆さん、あとまだ関連が通産、農林、経企、全部あるんですよ。厚生と。だけれども、あっ、ゼロになっちゃた。これはどうしてくれますか。どうしたらいいですか。(笑声)
  155. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 鈴木委員に申し上げますが、理事の間で相談をいたしまして、適当に取り計らいますから、一応この機会の質疑は終わるようにしていただきたいと思います。
  156. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。
  157. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で鈴木君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  158. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、内藤誉三郎君の質疑を行ないます。内藤君。
  159. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 戦後のわが国の経済は驚異的な発展を遂げたといわれておりますが、その中心は、敗戦後の復興ということでございまして、主として物の面が中心になったのはやむを得ないと思いますが、英国のトインビーが言っていますように、日本の復興というのは、ほとんど経済面においては立て直ったと、しかし、心の痛手は非常に深くて、これが回復には相当長年月を要するであろうと、こういうようなことを述べておりました。特に戦後の復興が魂なき繁栄ということをいわれておりますが、私は、この際、豊かな心、精神面の復興に一段と努力をしていただきたい、こういう点から、物心両面のバランスのとれた復興が望ましいと思います。こういうような観点から、若干の点について質問を行ないたいと思います。  まず、科学技術の進歩についてお尋ねをいたしたい。  戦後、特に敗戦後の波乱の中から、湯川博士がノーベル賞を受賞され、その後最近におきましては朝永博士がノーベル賞を授与されたことは、わが国のたいへん誇りであるのみならず、わが国の科学水準というものが国際的に認められた証左であると思うのでございます。  私がこれからお伺いしたい問題は燃料の問題でございますが、人類が昔、太陽から火をとった。ここから燃料の問題が始まるのでございますが、御承知のとおり、ワットの蒸気機関の発明によりまして農業革命が行なわれ、水力発電から石炭、重油、原子力発電という経過をたどってまいったのでございます。最近、ウランを原料にした原子力発電の成果が認められまして、特にウランの燃えかすであるところのプルトニウムから引き出しまして、それを原料に新型転換炉あるいは増殖炉開発ということが行なわれ、最近動力炉の開発を試みられているわけでございますが、これはわが国の燃料政策の上で画期的なことでございまして、二階堂長官はたいへん御努力をされたわけでございますが、これの動力炉の計画とかあるいは予算とか、完成した場合に原子力発電がわが国の電力の中で占むる割合等につきまして、御説明を伺いたいと思います。
  160. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) お答えいたします。  いま内藤先生からお話がありましたとおり、今日のわが国の経済発展の基礎をなしておるものは、もちろんこれは国民の労働力の協力によることはもとよりでございますが、やはりその基礎をなしておるのは、私は非常に目ざましく進歩しておりまする技術開発によるものが多いということを私は考えております。したがって、最近国際間におきましても、技術を制するものが経済を制するというような議論が非常に強く叫ばれております。また、ヨーロッパ諸国におきましても、技術格差といわれるこういう問題がヨーロッパあるいはアメリカの首脳部においても非常に議論されております。またOECDにおきましても技術格差の問題を検討するために専門部会ができております。こういうふうに非常に技術の問題がやかましく論議されております世界の現状、わが国におきましても、もとよりこれらの問題が相当これは開発されておるのでございますけれども私は今日までの科学技術に対する国の力の入れ方が十分だったとは今日考えておりません。したがいまして、私はこうしたどんどん進んでまいります世界の技術革新の中にあって、わが国のすぐれた技術をさらに進めていかなければなりませんが、またおくれておりまする部門につきましても、これは国をあげ、官民総力をあげて私は開発に努力いたすべきときがきておると、かように考えております。そういう意味からいたしましても、政府のほうでも経済社会開発発展計画の中には技術という要素は相当重視しておるわけでございますが、特にいまも先生がお話になりました燃料の面から申し上げましても、火力発電、水力、たいへんな電力の供給を行なっておりますが、二十年後の展望を考えてみますと、これは六億トンにものぼるような油を輸入しなければならないというような現状、これがわが国にどれだけ負担をかけてくるかということなどを考えてみますと、アメリカにおいてすら、すでに原子力発電、核エネルギーの平和利用の面につきまして非常な努力をいたしておるわけでございます。わが国におきましても原子力の開発につきましては、原研を中心といたしまして、約十カ年間基礎的な研究をやってまいっておりますが、今日わが国におきましてもこれが実験の段階、実用の段階になってまいっております。そこで、問題になりますのは燃料であります。そこで燃料は濃縮ウランで、ほとんどアメリカに燃料を依存しております。こういうことであってはなりませんので、しかもわが国における原子力燃料の埋蔵量というものは限られております。そこで開発されていく電力は、大体昭和六十年度におきましては約三千万キロから四千万キロワットの開発を行なうということを言っております。そういうことを想定いたしますと、燃料が問題になります。そこで、この燃料を国外の燃料資源に依存しておることだけでは間に合いませんので、わが国はわが国で自主的な燃料開発を行なっていきたい、こういうことで昭和五十年度には大体実用段階に入ると考えられております新型転換炉、これは燃料を非常に効率に使う、こういうことで開発を進めておりますが、さらに燃料が長く使われて、そうして国外の燃料に依存しなくてもいいといういわゆる燃料が燃えながらさらに新しい燃料をつくっていくというこの燃料開発を目的として、高速増殖炉という新しい炉の研究を行なっております。昭和五十年度にこれらを利用して原子力発電が六百万キロワット、昭和六十年度におきましては大体三千万から四千万キロ、こういうようなことを考えておりまして、そういう時代になりますと、大体昭和六十年度におきまして、電力需要の中に占める割合というものが二八%から三〇%、こういう目標を立てて開発をやろう、こういう計画でございます。これらの計画につきましては、原子力の長期計画を四月の三日閣議決定をいたして、その計画に従って進めてまいりたい、こういう考えでございます。
  161. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いまお話を伺いましたが、大体予算はどのくらいで、年限はどのくらいの期間に完成される御予定ですか。
  162. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 二十カ年にわたる相当な基礎研究、あるいは実験の研究等を含めまして、やるんですが、二十カ年で大体二千億程度という考えでございます。
  163. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いまお話のとおり濃縮ウラン、あるいはウランの燃えかすから取られたプルトニウムから取られるわけですから、いずれにしてもこれは原料は外国産だと思う。もちろん日本においても人形峠で若干ございますけれども、大部分は外国に依存せざるを得ないと思う。そう考えますと、石油資源と同じように、これは外国に依存している度合いが多いし、また石油もあるいはウランも掘り尽くせば、なくなるものでございますから、恒久的な今後の燃料対策から見ますと、やはり不安というものが伴うと思う。この点から考えますと、海の水には重水があるわけです。海から取る重水による核融合反応がいま研究されておると聞いておりますが、これをもっと強力に推進されますれば、私は燃料問題は恒久的に解決できると思うんですが、核融合の研究についての科学技術庁長官の計画及び今後の見通しについて承りたいと思います。
  164. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) いまもお話し申し上げたとおり、この燃料の問題ば高速増殖炉に使う燃料——プルトニウムを中心とする燃料、これが相当燃やしながら燃料がつくられるという形になりますので、これを利用しようということでございますが、いまおっしゃいますとおり、重水素の核融合による熱を利用したらどうか、こういうことでございますが、この研究はわが国におきましても名古屋大学、プラズマ研究を専門にやっておる伏見博士のもとでやっておりますが、ここでも基礎的な研究をいろいろやっております。で、これが実用段階になるというのは、米国でも英国でもやっておりますが、これは御承知のとおり非常に高い温度、一億度程度の温度を保たなければ実用段階に入らないという段階でございます。いまアメリカとか、あるいは英国あるいはわが国においても電気試験研究所とか、あるいは理研とか、あるいは原研とかでやっておりますが、いまできておりまする熱の温度は大体百万度から千万度ですか、という程度のものでございますが、いま申し上げるとおり、基礎的な研究——温度をどうして高く出すのか、あるいはそれに必要な容器あるいは測定、湿度、こういったものが非常に深く研究されなければならないのでありまして、いまアメリカとかソ連とか英国でもやっておりますけれども、いま申し上げたとおり、大体最高の温度が一千万度程度、これが一億度というような高い温度になって初めて実用段階になるという、こういうことでございますので、私どもといたしましては、来年度から基礎的な研究をやるそういう部門というものを設けまして、そうして大型の施設をつくって、いま小型の試験はやっております、名古屋大学、京都大学、あるいは先ほど申し上げました理研とか原研とかでやっておりますが、もっと施設が大型にならなければなりません。この大型のプロジェクトをこれから考えて基礎研究をやろう、こういうことで年次別に立てた計画というものは持っておりませんけれども、しかし真剣に将来のエネルギー供給の問題等を考えてみますと、これは世界各国が真剣に研究している問題でもございますので、さしあたりは明年度大型のプロジェクトとか、それもやはり二億円程度かかると言われておりますのですが、たいへんな問題でございますので、そういうことについてひとつ研究を重ねてまいりたい、かように考えております。
  165. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 文部大臣ちょっとお急ぎのようですが、一言だけ。  東大の宇宙開発の問題ですが、東大の科学衛星の計画と、それから先般ラムダ打ち上げを失敗されましたので、失敗された原因、それから本年度中にミューロケット打ち上げが可能かどうか、この三点だけお聞かせいただきたい。
  166. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) ラムダ四号につきましては、一回、二回、三回といままでやったわけでございますが、二回目におきましては、最終段階の制御装置までできまして、第四段目に点火が失敗いたしまして、衛星になることに失敗しました。第三回目では第三段目に点火しなかったのでございまして、これは予想外の失敗でございました。その原因については、十分いま考究中でございます。それで、これが少し計画にそごをいたしまして、大体ならば本年の七月ごろにはこのラムダ四型をもう一回実験する予定でございましたが、しかしこれは相当精密な調査をし、そうして今度やる場合には間違いのないようにいたさなければなりませんので、秋ごろまでにはその打ち上げはできると思います。それに続きましてミュー型につきましては、ただいまも一段とか二段だけの実験はいたしておりますが、最終段階におきまして、大体四十三年度には第一回の打ち上げをやりたい。そうしてミュー型に限るわけでございますが、ミュー型につきましては、なお二、三回これを打ち上げる実験をいたす予定でございます。
  167. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、科学技術庁長官にお尋ねをしたいのですが、文部省のほうで東大を中心に科学衛星が打ち上げられるわけですから、科学技術庁でお考えになる場合には私は実用衛星の面に重点を置かれると思いますが、この実用衛星の一元化ということが必要じゃなかろうかと思うのです。これについての長官の御見解を伺いたいと思います。
  168. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) そのお答えをする前に、ちょっと先ほど数字を間違えておりました。訂正を申し上げておきますが、この新しい原子力発電高速増殖炉等をつくる費用は十カ年間で約二千億程度ということでございます。それからもう一つは、核融合の研究、プラズマ、これは大型化をいろいろ考えているということを申し上げましたが、これは大体二億と申し上げましたが、二十億の誤まりでございまして、そういうことを想定いたしておるということでございます。  それからただいまお尋ねになりました宇宙開発の推進についての一元化の問題でございますが、御承知のとおり、いま文部大臣がお述べになりましたとおり、宇宙物理の科学的な研究開発のために、東京大学が鹿児島あるいは一部能代におきまして研究をやっていることは御承知のとおりでございまして、ここでやっておりまするものは、御承知のとおり宇宙空間の物理学的な研究でございます。空間におけるエックス線とかガンマー線とか磁気線とかあるいは太陽光線等、いろいろそういう科学的な研究を今日までやってきております。で、約十カ年間に施設その他に約百億投じてやってまいっております。これはつい先ほどもロケットの研究で新しいエックス線などが発見されまして、国際的な研究部門に大きな貢献をいたしてきております。それ自体私は、今日まで東京大学でやってまいりました研究の成果というものは高く評価していいだろうと思っております。そうしてこの研究の体制は物理学者と技術者というようなものが一体となって、戦後ほとんど灰じんに帰していたような物理学のこうした研究というものを一体となってやってきたところに、きわめて少ないコストで能率をあげて一とおりの成功をあげてきたという大きな要因があろうと思っております。個々の施設は、ひとつそれなりの、今後もやはり東京大学がそうした深い空間物理学的な科学的な研究、探究をやっていく施設として、私は今後も引き続いてなさるべきものだと思っておりますが、しかし、お説のとおり今日は実用衛星がすでにもう動いております。先進諸国はもう実用段階に入ってきております。しかも、昭和四十五、六年ごろまでに宇宙におけるこうしたものをめぐっての宇宙条約とか協定というものが結ばれていかなければわが国も立ちおくれていく。それにはやはり一つの実績を持っていく必要があると思う。この打ち上げる頭脳も技術もわが国はあるわけであります。また、ロケットの開発につきましても、独自の進んだ研究開発が進められて、それが一つの成功をおさめてきている。でありますから、今後そういう今日までの成果をもとにいたしまして、そうして先進諸国におくれをとらないように早く実用衛星を打ち上げる、こういうここでございまして、そこで郵政省は通信衛星、あるいは民間のNHKその他放送機関が放送衛星を考えておる。あるいはまた運輸省は航行衛星——船を運航するために必要な指示等をする、連絡等をする衛星を打ち上げたい。あるいはまた国土地理院ですか、これは国土の全体の地理的な測定をするために、いまでは地上から平面的に研究をいろいろやっておりますが、これはやはり衛星を通じて、衛星からのいろいろなものを研究、調査をすることが全般的に非常にこれはわかりやすくできるという成果がもう各国に出ておりますので、そういう測地衛星を打ち上げたい。あるいは気象条件をいろいろ研究するために気象関係の衛星を打ち上げたいと、こういうような計画をわが国においても進められていることは御承知のとおりでございます。そこで、先般来から、なるほどそういうような各部署において、役所においてそれぞれまた独自の目的を持った研究が進められていくということは、私はこれはいいことだと思っておりますが、しかし実際これを打ち上げて、その打ち上げた衛星をどういうふうに利用するか、どうして管理するか、これは膨大な打ち上げの施設が要るわけであります。そこまでいろいろな役所が考えてまいりますというと、これは頭脳の面から申しましても、宇宙開発の技術者というものはわずか千数百人にすぎないという現状であります。また、ばく大な国の投資、国民の税金が必要でございます。そういうことから考えてみますというと、この打ち上げる施設、あるいは打ち上げたものをどういうふうに利用するか、管理するかというようなこと等については、やはり業務を担当する一つの機関というものをつくって、効率的に能率的に、しかも少ない頭脳を利用して協力してやっていくことがいいのじゃないかと、こういうことを考えて一元化という話をいたしておるわけでございますが、ともすれば、この一元化の機構の中に、たとえば大学の研究をみなひっくるめるのじゃないかとか、あるいは関係各省がそれぞれの目的のために研究をやっている、そういうものまで一緒にして、そうして国家機関で何でもやるのじゃないかというふうに誤解を受けている面もあるようでございますが、そういう私は基礎的な研究とか、学園における研究の自由というものは私どもそのらち外にあっていいのじゃないか、こういうように考えております。そういう構想でこれから一元化の構想というものを進めてまいりたいと、かように考えております。郵政大臣のほうも決して反対ではございません。これはそういう機構をつくって、管理するようなものは早く一元的な機構をつくってやるということは、私にもしばしば郵政大臣申されておりますので、決して郵政省とどうだとか、けさ新聞にちょっと出ておりましたが、そういうことは全然ございません。文部大臣もそういう一元的な機構をもってやるということは賛成をしておられます。ただ学園における研究の自由、開発というものが一つの国家機関によって、あるいはどういう形になるかわかりませんが、今後研究していきますが、そういうものによって侵されるものということはないと、私もそういうものは自由であるべきだと、こういうように考えておるものでございます。
  169. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 実用衛星の一元化についての御意見承りましたが、いまイギリス、アメリカ、ソ連あるいは英仏等におきましては、マッハ二ないし三の超音速の飛行機の開発が、いわゆるSSTの問題でございますが、行なわれておりますが、日本の場合にはこれはどういう状況にありますか。もしこれがおくれているとなれば、日本が国際航空企業におきましておくれをとる心配はないかどうか、この点もあわせて伺いたいと思います。
  170. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) あまり物理学者でもないのに、あまりいろいろなことをしゃべると、時間が長くなるというわけでありますので、ボロが出ないようにひとつ簡単にお答えいたしますが、このSSTでございますが、これはアメリカ、英国、あるいはソ連、非常に研究をいたしておりまして、すでに一部の軍事用面ではそういうものができておるやに伺っておりますが、実際は実用段階に入ってまいりますのは、あと三年くらいだというふうに聞いております。これは速度にいたしましてマッハ二から三、非常に早いものであります。わが国におきましても、そういう基礎的な研究をやっていないわけでもないようでありますが、いまわが国で考えておりますのは、VTOLとかあるいはSTOLというような形の飛行機になる初歩の研究でございます。これは垂直に上がって、そして方向を変えて飛んでいくというような形の飛行機になる前段階の研究でございます。これは科学技術庁の航空宇宙研究所でも実際実験をやっておりまして、宮城県の角田で実験をやっておりますが、これがあと何年かかるか、二、三年のまた研究を続けていかなければならぬというような状況でございます。
  171. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最近月にロケットが着陸するということも間近いと言われておりますが、月に旅行するのもけっこうですが、私はこれからミサイルの発達と制御装置の進歩によりまして、ロケット輸送が可能になるのではなかろうかと、実は夢を持っているのですが、ひとつ長官がこういう方面に——これはまだ世界でどこも取り組んでいないようですが、日本がこの面において、ひとつ平和利用の面、先鞭をつけてほしいと思うのですが、長官の御意見を伺いたいと思います。
  172. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 御説のとおり、私も気持ちの上では、二十一世紀に挑戦していくような科学行政をやりたい、こういう考えでございまして、その中には夢みたいなものもございますが、しかし過去二十カ年のいろいろなものの発展を考え、今後十年後における科学技術の発展等を考えてみますというと、非常にものすごい勢いでものが進んでまいります。したがって、いまおっしゃるとおり、ロケットによる貨物の輸送をどうするかということについては、いまは各国ともまだ研究の段階に入っていないようでございますが、いま先ほど申し上げましたSSTというようなマッハ二から三というスピードでもって運ぶような、そういう航空輸送機の研究をやっております。確かに十年後、二十年後の科学技術の進歩発達を考えてみますと、わが国においても、そういう二十一世紀に挑戦するような姿勢で、そういうものにひとつ取り組んでいくということが、姿勢としては正しいのじゃないかというふうに考えております。
  173. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 科学技術庁でいろいろ御計画なされるのはたいへんけっこうでございますが、私はひとつ、長官、大きな二十一世紀に対する夢を持っていただいて、まず科学政策を明確に決定して、その方向に力強く前進されるために人的、物的の総力を集中して、これに開発をするというようなひとつ体制を確立していただきたいということをお願い申し上げて、私の長官に対する質問は終わりたいと思います。  次に、僻地の問題をお尋ねしたいのですが、文部大臣がちょっと中座されましたので、あと回しにいたしまして、次の問題を扱いたいと思っております。  家といういわゆる家族制度ではないのですが、家という問題ですね。これは社会機構の根本でありまして、私どもの生活の場であり、いこいの場であり、また教育の場であると同時に、心のささえになっておる場所でもあると思うのです。戦前は、わが国でも家族制度というものがございましたが、この戦前の家族制度にはいわゆる家長権、あるいは戸主権、長子相続、あるいは男子相続というような、こういう新憲法にいう個人の尊厳あるいは両性の本質的平等という点に矛盾した点も私はあろうかと思いますが、しかし、その反面におきまして、家という制度は、これは外国でも、家柄なり家というものを非常に尊重しております。特に日本の場合でも、家訓とか、あるいは家憲なり、あるいは家風というようなものがございまして、これがまあ非常に人間形成の精神的な風土をつちかっておる、私はこの意味で教育的にも非常に重大な影響があったと思うのです。戦後家族制度が崩壊されましてから世の中の荒波にほうり出されたのが、子供と老人、だと思うのです。私はその面で子供と老人が非常に気の毒だと思う。特に昼間は、両親の手から離れてかぎっ子であるとか、あるいは女中しかめんどうをみない女中っ子とか、こういうものが相当出て、青少年不良化の一つの大きな原因になっておると思います。また一方で、いろいろ老人対策が行なわれておりますけれども、寄るべないいわゆる老人というものが非常にふえたと思うのです。この面がまた老人は一つの孤独というもの、あるいは不安というものにおののいているようにも見えるわけであります。一方、老人ホームというものが相当建設されましても、それは私は心の安住の地じゃないと思うのです。私はやはり老人は自分の子供あるいは孫と一緒に生活ができれば、これはたいへんしあわせだと思うのです。この点から、私は何か家というものを、もう少し大切にする必要があるのじゃなかろうか。これが私どもの心のぬくもりと申しますか、心を豊かにする源泉でもあろうと思うのです。そういうことを考えてみますと、外国でもスープのさめない距離にいるというようなことを言っておりますが、このことは、私はやはりスープがさめないというのは、大体同一の敷地内に隠居所を設けるとか、そういうことではなかろうかと思うのです。ところが、新憲法制定以来、民法の改正も行なわれまして、一方においては均分相続の結果、農地が細分化されちゃって、特に私は都会においてはそういう傾向が強いのじゃなかろうかと思いますか、これは農林大臣に、最近の農地の細分化の問題、いまの相続制度で支障がないかどうか、こういう点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  174. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねのことでございますが、農林省では、現行の均分相続制度が農業経営に与えました影響につきまして、特に農地の細分化をもたらしているかどうかということを明らかにいたしたいと存じまして、昭和三十七年と昭和四十年にその実態調査を実施いたしました。それによりますれば、一般に農家の財産分けには、生前に財産を分与する場合と、死後相続による場合とがございますが、生前分与につきましては被相続人、すなわち父親があと継ぎ以外の相続人、共同相続人、つまり子供たちでございますが、に対して生前に財産分与を行なっているのが、普通の形態のようでございます。この場合の財産の分与は、大部分が学資とか結婚資金とかの形で行なわれておりまして、農地を生前分与いたしておるものは少ないようでございます。これに対しまして相続の場合は、あと継ぎが農地を単独で相続いたす傾向が支配的でございます。農地の共同相続は兼業農家、特に都市近郊のそれが中心に見られますけれども、単独相続と比較いたしますれば、非常に少なくて、しかもその場合においても経営の細分化を伴っていない場合が大部分でございます。このように、遺産分割によります農地の細分化は、農家相続全体から見ますると、ただいまのところあまり問題にならない程度でございます。現在のところ現行相続制度が農業経営に対して特に著しい影響を与えているということも、それほど考えられないのでありますが、今後の推移をも見ながら、必要がありますれば、細分化防止のための施策について検討してまいりたいと思います。それで、御参考にその調べましたパーセンテージだけ申し上げますと、昭和四十年に、たとえばあと継ぎ以外の者に生前に農地の分与を行なったものは全体の一三%でございます。あと継ぎの単独相続をいたした戸数が全体の七八%、それからただいまの農地の共同相続を行なった農家は九%でございます。その九%のうちには、分割をいたしましたものが三%含まれております。
  175. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いま農林大臣は多少楽観的な御意見をお述べになったようですが、私は都会におきましては、特に都会の周辺の農地というものは、相当細分化されていると思うのです。ただ、いなかの面におきましては、農林大臣御指摘のとおりかもしれませんが、これはむしろ農家がもうからないし、百姓になり手がないから、むしろ都会に出たがりますから、現在においてはそういう状況でございますが、これは私は正しい農家のあり方ではないと思うのです。実はいま農家ではお嫁の来手もないくらいなんです。こういうような農業経営自体に私は問題があろうかと思いますが、将来農業が経営の企業として十分成り立つようになりますと、やはり均分相続ということは、やはりたいへん問題になるのじゃなかろうか。現にドイツあたりでも均分相続はなるべく、形式的には認めておりますが、いろいろくふうされているようでございます。特に売買価格をとらない、収益価格を基礎にするとかいろいろされておりますが、私は将来やはり日本の農業が非常に健全に発達した場合には、現状でいいというふうには考えないのです。この点農林大臣の御所見いかがですか。
  176. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農業基本法で考えておりますことをちょっと申し上げますと、十六条に「国は、自立経営たる又はこれになろうとする家族農業経営等が細分化することを防止するため、遺産の相続にあたって従前の農業経営をなるべく共同相続人の一人が引き継いで担当することができるように必要な施策を講ずるものとする。」と、このことはひとり家という観念を尊重するという精神よりも——それもありましょうけれども、やはり農地が細分化されて、零細化して農業が破壊されてしまうことを心配しておる精神だと思いますが、私どもも、先ほど来お話しのように、農業というものが細分化されて非能率になることは、農政としても困ることでありますけれども、日本民族としてはやはり家という観念、これはもういま外国のお話もございましたようでありますが、よその国ではやはり土地というものは、家庭として家の財産として相続をせしめる。いろいろそういう家という観念を社会秩序の中心に考えておる。それに土地を接続して考える観念を持っている。こういうことは、非常にわが国にとりましても、民族の将来にとって参考にしなければならぬことだと思うのでありますが、農業経営の観点からいたしますというと、相続によって農地が分配されることは、いま申しますように経営規模を小さくするということでありますし、それからまた、農業後継者の地位を不安定にさせますので、そういう点で私どもは好ましくないと考えております。そのような観点に立ちまして、新憲法施行後間もなく、御承知のように再度にわたって農業資産相続特例法案を提出いたしたことがございますけれども、これは憲法その他の関係が問題になって審議未了となったままでございます。その後の調査では、死後の相続による農地の分散は、先ほど私御報告いたしましたとおりでございますが、したがって当面このために立法措置をとる必要というものは、さしあたりそれほど重要性は、いまあるとは申し上げられないのでありますが、今後の推移を見まして、私ども慎重に対処いたしてまいりたいと思っておりますが、生前贈与につきましては、農地の分割を防ぐために、農業経営者が農業後継者に、農地の全部を一括して贈与いたしますような場合には、税制の特例を設けてやっていることも御承知のとおりであります。
  177. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 都会では、家屋敷というものが、父親の死後にいわゆる均分相続の結果、人手に渡っているのが多いわけであります。昔は何代も続いたというような家がございましたが、最近では、家はございますけれども、所有者は変わっているというのが多いように思われます。この結果、家の伝統というものが消えていき、そこに何か精神的な支柱を失っているような状況でございます。そこで現行の民法によりましても、妻子相続は認めているわけであります。私はその妻子相続を認めておりますので、それをどう扱うか、またこの親の扶養ということを、義務を負わせるというようなことで、家屋敷というものは相続の対象にならぬかどうか、あるいは農家の場合には、農地や山林を含むいわゆる家産ですね、こういう制度を考えてみる必要があるのじゃなかろうか。現行民法のあり方そのものに改正を加える必要があるのじゃなかろうかと思いますが、法務大臣のこれに対する御所見を伺いたいと思います。
  178. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 現行憲法下の民法は、御承知のとおり実施をいたしまして今日までに改正をしてみて、二十年間の経験を持っているわけでございます。そこで、二十年間の経験から申しますと、いま内藤先生仰せのような、新しい憲法のもとに、新しく民法を改正いたしました結果が、どうもよい面もたくさんございますが、よくないのではなかろうかと考えられる面もとらえて見るというと、どうも家庭が細分化されてきた、家族が分散されてきた、そうして個人の尊厳という憲法並びに民法の採用しております大精神が曲解されて、個人主義、よい意味の個人主義でなければならぬものが、曲げられた意味の個人主義、しいて言うなれば、それは利己主義というような形に転化をしており、まことに遺憾な点でございます。しかしながら、これは誤解を招いてもいけませんので、政府の一員としての所感を申し上げるわけでございますが、わが国の全国民がそういうふうになっているわけでは決してない。大部分の国民は新しい憲法と新しい民法のもとにおいてまことに健全でございます。しかし一部の国民の中に、先生が御心配をいただいておりますような利己主義的な傾向になります結果、すべてその憲法の大精神が曲解されておる、個人の尊厳、そうして人間の平等ということの二大原則が、憲法が採用いたしまして以後というものは、一般社会に、たいへん一部の人々に悪い影響を持ってきておる。こういうことから、親に孝養をつくすことは封建思想である、また、年のいかない若い者がお年寄りを大切にするという、そういう義務はないのだ、そういう封建思想は間違いだなどというような思潮が、そういう思想の潮がどうもあちこちに蔓延をする傾向なしとしない状況でございます。  そこで、具体的に民法のとっております制度を改正するかどうかの問題でございますが、民法は、内藤先生の仰せのようなふうに民法は改正になっておって、共同かつ均分の相続制度をとっておるわけで、しかしながら、大事なところは、これを原則にするというのが憲法のたてまえでございまして、一から十まで共同均分の相続でやり切るのだとは決して言うていない。それは事情によりましては、いままでの男子の長子の相続でございましたが、そういうふうに準じて、ひとつ長男に何とかさそうというお考えが、全部の御意見でまとまります場合においては、そういうふうにできるようになっておる。たとえば遺言によります贈与という遺贈の形式をとりますと、これができぬこともございません。それから、先ほど倉石大臣からお示しをいただきました数字から見ましても、だいぶ影響が出ておるようでございますけれども、もう一つの場合は、包括的に相続いたします相続財産は一本でいけとは書いてない、場合によっては分割することもよろしい。分割をいたしますと取り分ができるわけでありますが、その取り分は放棄することができる、相続放棄は可能である。こういうことから、ひとつこの子供にこの家を持たして、この農家を相続させよう、この商売を続けてやらそうと思えば、これらの規定を適用するとスムーズにやれるようにはなっておる。原則は共同均分の相続であります。例外は個々の事情に応じてやれるというように、ちゃんと民法はわりあいよくできておるわけでございます。たいへんよくできておるわけであります。  ただ問題は、そういうふうな原則をそこに置いて、例外ではこうできるという、原則、例外の関係でなしに、何とかもっと新しい意味の家庭、新しい意味の家、これを私は家庭ということばで絶えずおしゃべりをしておるので、家というと古い家に戻るというような感じがいたしますので、保守的だというおことばが出てくるのでございますが、そこで、家庭ということばを使うのでございますが、私たちの日本国の社会の構成の基礎となっておる家庭というものを、何か一律に原則をもって守るわけにいくまいか、原則的規定をもって、家はだれが死んで、だれが相続しても家のあとは続くのだ、ちょうど仏壇が変わらないよう、お墓が変わらないよう、家の伝統をあらわします系譜が変わらないように、これは民法が規定しておりますが、それと同様に一貫したものをつくるわけにはまいるまいかということでございますが、しかし、これは各家庭の事情事情が違うものでございますから、どのような形の家庭にも一貫して適用のできる原則的な、家を守る規定、家を保存をしていく規定、末長く家を家として育てていく規定というものは、なかなか民法の規定でむずかしいようでございます。  御質問の趣旨もあらかじめわかりましたので、今朝、法務省の専門家を集めまして、何か名案はなかろうか、目下、法制審議会で審議もいたしておるわけでございますから、何かこれについて生きた材料はないかということを調査したのでございますが、どうもこれは名案がない、やはり現在のように、原則は共同均分の相続、しかし、例外的には好きなように、家情に沿うようにできる規定を設けておく、こういうことよりほか、どうも道がないような感じがいたします。  たよりないお答えになったわけでございますが、そういうことでございます。
  179. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 よくわかりましたけれども、やはりそれは冷ややかに法律を解釈しますと、法務大臣のおっしゃるとおりできます。しかし、均分相続の原則からいきますと、やはり例外というものはなかなか活用しにくいわけでございますので、いま法務大臣仰せのとおり、ひとつ政治家としての御判断、日本の家というものが長く存続し、それが私どもの心のふるさとでもございますので、そういう面からひとつ再検討していただければしあわせと思います。  次に、自然の保護という問題についてお尋ねをしたいと思いますが、何と申しましても、都会生活をしておりますと、物質の面に幻惑されておりますが、大自然というものは、人間の心を浄化して、人間を本然の姿に復帰させるところの偉大な感化力と影響力を持っていると思うのです。この面から見ますと、自然公園法という法律が厚生省にございますが、その第一条には、「すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、もって国民の保健、休養及び教化に資することを目的とする。」、こう第一条には書かれておりますが、まさしく自然の風景を保護すると同時に、これが宝の持ちぐされになってはなりませんので、利用ということがまさに必要でございますが、その利用の限度というものは、あくまでも「国民の保健、休養及び教化に資する」と、ここに限定されるべきでありまして、私は、現在のところ、少し国立公園の管理が適正を欠いているのではなかろうか、娯楽、遊覧というようなところにまで行き過ぎているのではなかろうか。大自然の恵みとか観光資源というものは、これは国民の非常に大切な財産であって、営利企業のために運用しては断じてならないと思うのですが、この面から、国立公園の管理の点について、厚生大臣はどう実情を把握していらっしゃいますか。
  180. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御指摘のように、自然の風土というものは、これは民族にとりましても、われわれ個人にとりましても、非常に大事な環境でございまして、これを保護して育成していくということが私は非常に大事なものだ、さような意味におきまして、自然公園といったような制度が打ち立てられまして、そして、いま御指摘になったように、保護するとともに、宝の持ちぐされにならないようにこれを利用していく、こういうことが国立公園の私はあり方だと思います。さような意味におきまして、ちょっと考えてみますと、自然なり風士なりというものを保護していくということと、それから、これを利用し、利用するというためには、どうしても道をつけたり、あるいは宿泊施設をつくったり、開発をしなければならないということは、極端に申しますと、まさに保護することと開発するということとは、二つ、二律背反と申しますか、そういったことになってくる。そこで、いま内藤委員の御指摘になったように、片方が行き過ぎてしまっては、これはまるで何もならないということになるわけでございますが、今日の社会の発展と申しますか、そういったようなことで、私は大都市近郊といったような一ころの国立公園地域というものは、いささか利用に重きを置くいわゆる開発が過ぎておるのではないかと、これは私の個人の感じでございますが、そういったようなことも見のがしてはならない。そういうことをあまりやっていきますと、せっかくの天然自然の風土というものを害してしまうといったようなことでは、これは国立公園の趣旨にもとるというふうに私は考えます。さような意味におきまして——全部が全部と私は申すわけてはございません。なお若干の、相当の利用のための開発をしなければならない国立公園も私は日本の国にあろうと思いますけれども、これは一に保護と開発と申しますか、利用のための施設と申しますか、それの調和が必要であろうと、かように考えております。とにかく、自然の風土というものは、これはわれわれが自然の風土を守り、あるいは、つくっていくことであり、われわれ人間がまた自然の風土から人間が形成されたり、民族が形成されたり、全く相関的な関係にあるということは、歴史が人間をつくり、人間がまた歴史をつくるといったような、まことに私は重大なものであると考えまして、これは今後の国立公園、日本の自然の保護ということにつきましては、私は今後とも相当力を入れていかなければ、まさに人間、日本民族というものにも影響してくるということを考えまして、これには重大なる関心を持ちつつ、私は国立公園、自然の保護ということについて、あまり保護ばかりしてしまっても何にもなりませんが、一にこれは調和を基調といたしましてその行政を進めてまいりたい、かように思います。
  181. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 調和はけっこうでございますけれども、私は、それは国民の休養とか教化に資するんだと、教育的でないものまで私は持ってくる必要はないんじゃなかろうか、少し行き過ぎじゃなかろうか。というのは、たとえば箱根富士の国立公園にいたしましても、少し乱に流れているんじゃなかろうか。たとえばキャンプのバンガローとかいうようなものがたくさんできたり、あるいはケ−ブルカーやロープウェーとか、極端に申しますと、箱根の山がゴルフ場で埋まってるような——ゴルフ場が箱根の山にたしか七つか八つあるはずですが、ということは、それだけ私は全体の美観を損すると思う。自然というものは天然自然そのままがよろしいんで、なるべく人工を加えないところに価値があるわけなんで、これがあまりハチの巣をつついたようになってしまいますれば、無価値になってしまうわけです。これは二度と得がたい国民の貴重な財産だと思うんで、その意味で、どうも私は国立公園の公園計画に少し無理があるんじゃなかろうかという感じもするのです。と申しますのは、利用のためなら、道路とか宿舎とか旅館というものは、これは必要でございますが、少し行き過ぎじゃないだろうか、遊覧とか娯楽とかいうような面までいってるんじゃなかろうかという感じがしますので、公園計画を策定されるにあたりまして、できるだけ許可しないという方向で——利用はけっこうでございますけれども、そういう方向でひとつ再検討いただきたいと思いますが、厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  182. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) まあ調和ということは、これはまた非常にむずかしいことでございまして、両方からの要請を調和する。そこで御指摘のように、私は非常に娯楽とか観光とか、そういったような要請が少し行き過ぎておるんじゃないかと思われるような地域も、国立公園の中には少なからずあるように私も思います。さような意味におきまして、今後、まあこれは調和でございますので、非常にさじかげんがむずかしゅうございますけれども、できるだけ、いま内藤委員のおっしゃられることにつきましては、私も同感でございますので、そういう方向でひとつまいりたいと考えております。
  183. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、私学振興の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、国家有用の人材を育成するという点については、私は国立も私立も同じだと思うのです。国立はノーコントロールで、フルサポート、私学はノーコントロールの面においては共通でございますが、非常に援助が薄いような感じがするのでございます。この面で、いま私学は非常に経営の面において苦悩しておりますし、父兄の負担も増大している。私は、ある意味で私学の危機だと思う。この危機について、文部省でも私学の審議会を設けられまして、経常費の助成等、根本問題を審議会で審議されておりますから、そのことは結論を待ってお尋ねしたいと思いまするが、当面本日は、私学の融資問題についてお尋ねしたいと思います。  文部大臣おいでになりませんが、これは事務当局でけっこうでございますが、私学がいまどの程度総額で借り入れ金をしているか、そのうち、振興会で融資している分、その分はどのくらいか、それから本年度は振興会の予算が非常に画期的にふやしていただきましたので、この点は大蔵、文部両当局に、たいへん深い感謝をいたしておりますが、その額、それから並びに予算の融資条件について、これは文部当局にお尋ねしたいと思います。
  184. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) お答えいたします。  まず私立学校の借り入れ金でございますが、実は私どものほうといたしましては、毎年五月一日現在で、こうした私学の借り入れ金を調査いたしております。そういう関係で、一番最近の資料といたしましては、四十一年の五月一日現在の調査結果でございますが、借り入れ金総額は約千四百三十三億円でございます。したがいまして、この四十一年五月一日現在の時点での私立学校振興会の貸し付け金は、そのうち三百六十億円でございます。しかし、その後四十二年の三月末、四十一年度末の振興会の融資は、約五百八十億ということになっております。  それから振興会の予算関係でございますが、私学振興会の一応の四十二年度の貸し付けのための資金計画、その金額を申し上げますと、三百十億でございます。そのうち、政府の出資金が十五億、財投からの融資金が二百四十五億、その他自己調達金等でございます。  それから振興会が私立学校に貸し付けます場合の融資の条件でございますが、これは種目によりましていろいろございまして、大体大部分のものが六分五厘、それから償還期限は二年の据え置きがございまして、十八年、四十二年度からそういうふうになる予定でございます。一番条件のいいものは、理工系の新設をいたしました場合の五分五厘というのがございますが、大部分が六分五厘ということになっております。
  185. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 ただいまの御説明によりますと、私学がかかえている負債というのは千四、五百億でございまして、そのうち、振興会の対象になっているのは五百億、残りの一千億というのは、民間の金融に依存していると思うのですが、この民間金融の状況はどういうことでありますか、利率等……。
  186. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 千四百億余りの借り入れ金、これは実は私立学校は新しい年度になりますと新入生が入ってまいります。それから授業料収入等もございまして、経常費に充てた余りはこれを負債の償還にも回しますので、そういったような金額もございますが、民間からどれだけ借りておるかこれはいろいろ種類がございまして、民間と申しましても、いわゆる個人的な高利貸しのようなものもございますし、銀行もございます。それで一応私どものほうといたしまして、昨年から高利債の肩がわりという制度を始めておりますが、その関係で調べましたところでは、約二銭以上の利子で借りているものが三百億ばかりございます。そういったことで、一々民間の銀行、信託、その他いろいろ詳細なデータをちょっと持っておりませんが、大体そういうところです。
  187. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 その振興会以外の大蔵大臣、その分が、相当私学経営を圧迫していると思うのです。経常費の問題はともかくとしても、私はその面の分は、もっと何とか高利債のいわゆる借りかえについて大蔵省のほうで肩がわりする、私学振興会のほうに肩がわりさせていただいたのですが一部、これをもう少し拡大していただきたいと思いますが、大蔵大臣意見いかがですか。
  188. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 肩がわりも貸し付けを認めるという制度をとりましたので、あとは資金量をどれだけ強化するかという問題であろうと思いますが、これは年々とにかく御承知のように、資金量は毎年ふやしてまいりまして、いま文部省の審議会の結論がやがて出ると思いますが、出る結果によっては、こういうものの要望が非常にくるのじゃないかと思っておりますので、これはまたそういう皆さんの御検討の結果に応じてわれわれも善処したいと思っております。
  189. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 これはひとつ理財局長にお尋ねしたいのですが、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫の融資の条件についてお聞かせいただきたいのですが。
  190. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) 順々に申し上げます。中小企業金融公庫は基準金利は年八分二厘、そのほかに近代化促進貸し付けにつきまして七分七厘といったような特利が一部ございます。それから次は農林漁業金融公庫、これは貸し付け種別によりまして三分五厘から年七分五厘、三分五厘と申しますのは農業のごく基幹的な土地等に関する部分でございます。これはごく一部でございます。それから住宅金融公庫あたりになりますと、これは年五分五厘から七分五厘、こういった程度になっております。
  191. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 庶民の住宅の金融条件というのはどうなっておりますか。理財局長、一般庶民。
  192. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) 住宅金融公庫の一般個人住宅のことだと思いますが、これは年五分五厘。
  193. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 年限は。
  194. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) 五十年。
  195. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 ただいま伺いますと住宅金融公庫、庶民の住宅が償還期限五十年。利率が五分五厘だとしますならば、私は私立学校というのは、もっと公共性の高いものでございますので、少なくとも庶民住宅並みに改善していただきたいと思いますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  196. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私学振興会の金利は大体五分五厘から、さっき申しましたように七分一厘ということでございまして、一般民間資金に比べたら、非常に低利であるし、中小企業金融公庫とか住宅金融公庫、農林漁業金融公庫等、これらの機関に比べても金利は高くないということになっておりますので、私は金利の問題では優遇されていないというふうには考えておりません。先ほどお話がございまして、確かに私学の現状から見ましたならば、多々ますます弁ずで、資金は幾らあっても足りないというような状態だと思いますが、ほかの民間の一般の資金に比べて、たとえば政府関係の中小企業機関の援助のしかたといいますれば、せいぜい需要の一割しか政府は援助できないというようなことで、いろいろな点から見ますと、本来自分の力でやるべき私学が、千五百億円について五百億円がややこういう資金によって助けられるということは比率としては相当多い。しかし、現状を見て、われわれがさらにこれを強化しようと考えておるときでございますので、問題は金利よりも、困っておる借りかえのほうへ手を伸ばすというようなことのほうが重要で、私は特に私学の金利問題を特別に優遇することはどうか、そう簡単に、これはやれるに越したことはありませんが、ほかの機関に比べて金利を特に下げるということは実際上むずかしいのではないか。それよりもやはり当面は量で考えてやるほうが私学にいいのじゃないかというふうに考えております。
  197. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私はちょっとそれは大蔵大臣、納得しかねますが、というのは、いま私学が経営の危機に瀕している。それで授業料、幾らでも取るというわけにいかないのですよ、もう。それでいまおそらく経常費の助成の問題が出てくると思うのですよ。私は国立学校と同じ使命を持っておって、ただ設置者が違うというだけで、あまりに差別が大き過ぎるのじゃなかろうか。受ける国民の側から見たならば非常な差別だと思うのですよ。そこで経常費の負担の問題が当然取り上げられると思いますが、私はその問題はあとにしても、この建築費、そういう臨時費の分だけくらいは国で大幅に援助すべきだと思う。援助ができないなら、せめて金融条件を緩和すべきだと思う。庶民の住宅が五十年の償還期限、しかも年利率五分五厘というような庶民住宅くらいにすべきだと思う。大蔵大臣、ひとつもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  198. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっきのお話で、日歩二銭以上というお話がありましたが、非常に高利な、私学は高利な負債を持っておるということでしたら、やはりこれの借りかえを手伝うことが、私は実質的にはそのほうが急務じゃないかというふうに考えております。五分五厘というのはいまの政府機関の金利として決して高いわけではございませんので、質がいくか量の問題がいくかということで考えたら、私はやはり量のほうが要請されておる問題ではないかと思います。しかし、もちろん金利の問題も今後他の機関の金利と歩調をそろえて私は下げる方向へ努力はしたいと思います。
  199. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 文部大臣お見えになりましたから、ちょっと歴史教育の問題についてお尋ねをしたいと思います。  歴史というものは、私は単なる考古学や事実の羅列ではなくして、民族の魂だと思います。また、そこに民族生命の流れがある。そのどこの横断面を切ってみても、そこから黒々と血潮のしぶきがほとばしり出るものだと、こういうふうに理解しておるわけであります。終戦後の歴史教科書を見ますと、だいぶ偏向した唯物史観に基づいたものがございましたが、昭和三十六年度の指導要領の改定に基づきまして、歴史教科書もたいへん改善されましたけれども、見てみますと、確かに暗い影とか、いやな感じはなくなりましたけれども、私はその反面、読んでみまして、何か事実の羅列であって、さっぱりおもしろくない感じがするのであります。この点から、民族の魂、生命の流れを感じさせるのに乏しいのじゃないかという感じを受けるのであります。そこで、これから歴史教育の改善につきまして、数点について文部大臣にお尋ねをしたいと思います。  まず第一が神話の取り扱い方でございますが、神話は日本でどういうふうになっておるか。これは中学校の場合にはお認めになっていますが、私は小学校にも神話は認めていいんじゃなかろうか。外国でどう扱われておるか、この辺を伺いたいと思います。
  200. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  歴史教育の重要性についての御意見ございましたが、私も全く同感でございます。ただいまお尋ねになりました神話でございますとか、あるいは伝承でございますとか、これらのものの取り扱いについては、お説のとおり、ただいま小学校の指導要領にはないが中学校においてそういうような規定をいたしておるのでございます。それで、やはり神話、伝承は、その民族の成り立ちでございますとか、あるいは民族の考え方といったようなものについての、神話は神話としてこれを学校におきまして正しく教えることによって、その国の成り立ちなり、その民族を愛しその国を愛するという基礎的な養成になると思います。ただいま、神話の取り上げ方につきましては、教科書によりましてはその記述が必ずしも十分にやっていないもの、あるいはまた教科書の中には全くこれを載していない教科書もあるわけでございまして、いま、ただいま文部省におきましては、教科課程の審議会等を開いて、小中学校、次いで高等学校の教科課程の諮問をいたす、ここで十分やはりこの取り扱い方につきまして検討していただいて、正しくこの神話の取り扱いをいたしたい。ただいま諸外国の例もお尋ねでございましたが、文部省におきまして、相当諸外国におきましてこれらの神話等の取り扱い方につきまして調査をいたしたのでございますが、やはり外国におきましても、その国の伝承やら神話というものは相当これを国民のやはり教科書に採用いたしまして、教えて、その国の成り立ちその他につきましてはよほど意を使って記述をいたしておるのが多いようでございます。日本におきましても、終戦後においてこれらのものが一面忌避されてきたような傾向がございます。これはやはり正しい意味におきまして、日本民族の伝統という意味におきまして、私はぜひこれを正しく取り上げていくべき問題であると考えます。
  201. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 特に、私は、神話の中で、私どもが子供のときに習った神武天皇の御東征とか、あるいは素戔鳴尊の八岐大蛇とか、大国主命の白兎とか、日本武尊の草薙剣とか、たいへん心あたたまるような神話がございました。私はそういう意味で神話をぜひ大切にしていただきたい。  それから次に人物の点でございますが、最近まあテレビあたりで太閤記とかあるいは家康とか義経というようなものがたいへん人口に膾炙されていまして、子供たちも喜んで見ておりますが、どうも歴史の中で人物の取り扱いの点が欠けておるように思うのですが、この点、諸外国との比較をされまして大臣はどう判断をされておりますか。
  202. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 歴史上、偉大な人物に対しまして、その業績なりまた国に尽くされました功績その他につきまして正しい認識を与えることはやはりこれらの子供の教育に対しまして相当これは有意義なことであると考えます。外国の例におきましても、その国の相当の偉大なる人物につきましては、学校教育におきまして十分取り上げて事実上やっておるのでございまして、ただいま戦後におきますいわゆる昔の日本の偉人に対します尊敬の念が非常に薄らいでいる。あるいはこれに対しまして、われわれの祖先であるということを忘れているような言辞まで行なわれておる今日におきまして、私どもはやはり正しい意味において日本民族の生みました偉大なる人物を十分子供たちにも認識をさせ、その子供たちに対して、国家なり民族に対しまする誇りと申しますか、こういうものを十分持たしていくような教育的な考慮をやることが正しいと考えておるのでございます。
  203. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 外国では人物のおい立ちとか、それから思想、信条、業績、その評価等が詳細に歴史の書物に出ております。日本でもそういうふうにありたいと思います。特に戦争の取り扱い、ある意味で歴史は戦争の継続でもあると思います。その戦争の歴史というものが戦後の教科書ではたいへんゆがめられておると思いますが、外国の場合には教科書にどういうふうに扱われておるか、大臣からお答えいただきたいと思います。
  204. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 外国の教科書の場合におきましては、ことにその国が関係いたしております戦争等につきましては、その戦争の意義なり、またその国の戦争に対します立場等を非常に詳しく正確に、できるだけ客観的に書こうと教科書に記述している例が多いようでございます。わが国におきましても、やはり日本の戦争の事実につきましては、公正なる客観的な立場で取り扱いまして、これをことさらに歪曲したような歴史の解釈とか、そういうことはできるだけ避けてまいらなければならないと思います。
  205. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 フランスやイギリスあるいはドイツ、イタリア等の教科書を見ますと、やはり戦争の原因、経過、結果というようなものが書かれ、また、勇敢に活動した人々が非常に称賛されております。そこで、これはフランスその他の教科書を見たのですが、日清、日露の戦争、あるいは大東亜戦争をどう評価しておるか、大臣ごらんになったことございますか。
  206. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 過般、文部省がこの問題につきまして作成しました資料によってお答えを申し上げます。  フランスにおきましては、日露戦争の日本の勝因の例としまして、愛国心の高揚及びすぐれた指揮官の名、たとえば大山とか東郷をあげたり、日本の大陸政策を国内の事情に伴う必然の成り行きとするなど、明治以後の日本の歴史について理解のある態度を示しているのでございます。  ドイツの場合を申し上げますと、ドイツにおきましては、日本については、おおむね積極的な評価と同情的な見方をしており、特に太平洋戦争については、日本の開戦回避の努力を詳しく述べ、また、当時の日本に残された選択はきわめて限られたものであったことや、真珠湾攻撃が奇襲でなかったことを力説しています。なお、これに対応して、たとえば日ソ中立条約については、日本は最後までこれを守ったが、ソ連はその有効期間中に対日開戦したという批判的な記述が見られます。  次にソ連でございますが、ソ連は、日露戦争についてはきわめて詳細に記述しています。そしてこの戦争を帝国主義戦争としてとらえ、日露双方にとって侵略的であったとしているが、戦争の経過については、ロシア軍将兵の名をあげつつ、英雄的な行為をたたえている。なお、第二次大戦末期におけるソ連の対日開戦については、日ソ中立条約には全く触れず、さらにその理由として、ソ満国境に日本が大軍を集結させて、常時威嚇を加えていたと強調したりするなど、その正当化のために種々配慮していることがうかがわれます。  第四にイギリスでございますが、イギリスは比較的客観的に見ており、日本に特に好意的でないかわりに、日本を格別に悪者扱いにしてはいません。またイタリアでございますが、イタリアは記述もきわめて簡単で、特に顕著な傾向は見られていないのでございます。  大体、外国におきまする教科書においてとられた、このお尋ねの点につきましては、調査によりますと、さようなふうに記述されております。
  207. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、天皇の地位についての教科書の記述を見ますと、どこの教科書も、大体日本国のまとまりの中心という、きわめてどうもわかったようなわからないような表現が使われています。で、私はある意味で日本の代表者ではないかと、憲法学者の中にはいろいろな説もございますけれども、君臨すれども統治せずというイギリスの女王さんの立場と非常に似通っているのではないかと思うのですが、法制局長官、どういうふうに解釈されていますか。
  208. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  天皇の基本的な地位は、もうすでに御存じのとおりに、憲法第一条にございまして、その内容は、これも申し上げるまでもないと思いますが、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とあるわけでございます。この規定から明らかに申せますことは、天皇はわれわれの国民社会である日本国の姿を、またわれわれ日本国民の統合一体の姿を体現されるものである、これだけは明らかに言えると思います。天皇はこういう地位のほかに、これまた御指摘するまでもないことでございますが、国家機関として、たとえば批准書その他の外交文書を認証することとか、外国の大使及び公使を接受することとか、国家行為を行なう権能を有しておられるわけでございますが、その限りにおいてではございますけれども、やはりいわゆる元首の性格を具有しておりますことも、もとをただせば、やはりただいま申しましたような憲法第一条の幕末的地位からくるということになろうと思っております。
  209. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いま長官もお述べになりましたが、憲法六条によりますれば、天皇は内閣総理大臣及び最高裁判所長官を任命する権限を持ち、内閣の助言と承認に基づくのではありますが、国会を君集し、解散する権限もおありになる。さらに外交使節の接受もあるわけでして、私はその意味で立法、行政、司法の三権の上に君臨しているということが計えるのじゃなかろうか。ですから、外国では信任状は日本国天皇という名前で捧呈しているのですよね。その意味では私は日本国を代表しておると、こう言っていいのじゃなかろうかと思いますが、長官及び文部大臣、その教科書の中でどういうふうに説明したらいいのか。これは文部大臣の御関係ですけれども、お答えいただきたいと思います。
  210. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  ただいまお話がございましたように、また先ほど私が申しましたように、憲法七条の八号でしたか、九号でしたかに、「外国の大使及び公使を接受すること。」というのがございます。実際に私は外務当局ではございませんので、外国からの信任状の捧呈、これ自身の名あてといいますか、そういうものは見たことはございませんが、外国ではやはり、先ほども申しましたような「接受すること。」ということに関連して、私はその限りにおいて元首たる性格を具有すると申し上げましたが、やはりそういう見方であることは事実だろうと思います。
  211. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 天皇の地位につきましては、小学校の六年の社会科におきまして、憲法上の地位について学ぶことになっております。これも、教科書によりましては、御指摘のように、まとまりの中心であるとか、あるいはまとまりのしるしというようなことばを使っておるわけでございますが、これは要するに、子供たちに、憲法一条でございますか、この「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」ということばを子供たちにわかりやすくするという意味において使われておることばだと思います。これが必ずしも正しい理解を与えるようなことばであるかということは多少疑問がございますけれども、しかしこういうことばであらわしたから特別にこれは支障があるとかいうほどの問題ではないと私考えております。
  212. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 外国では大体日本国の天皇に信任状を捧呈するわけですから、まあ日本の代表者というふうに、私はある意味で代表者と言えると思うのです。もう少しわかりいい説明をしていただきたい。  それから、これは社会科の問題だけじゃなくて、私は天皇の地位というものは歴史の中で解明しておくことが必要じゃないかと思う。特に先ほどあげた神話の中にも、「豊葦原瑞穂国、なんじ皇孫ゆいて治めよ、皇祚の栄えまさんこと天地とともにきわまりなかるべし」という神勅があるわけなんです。これは日本書紀や古事記にも出ております。二千年来わが国国民の不動の信念にささえられて、今日の憲法においても日本国及び日本国民統合の象徴という形で存続されておることは、私はまことに驚くべきことだと思うのです。このことは子供たちによく教えなければならぬと思うし、その意味で神話の中に今度神勅というようなものもぜひ私は含めていただきたいと思うのです。これは希望でございます。  それから、日本の歴史をずっと見てみまして、天皇制を抜きにして日本歴史というものを理解することができないと思う。あるときは氏族制度に、あるときは摂政関白制度に、あるときは武家制度になりましたが、これが乱に流れて邪道におちいったときに、国民本位の正道に引き戻すところの原動力は私は皇室にあったと思うのです。この顕著な例は、聖徳太子、中大兄皇子、あるいは建武中興、戦国時代の統一、明治維新、大東亜戦争の終結等に見ることができると思うのであります。こういうように天皇に関する重要なことは、私はぜひ歴史の中で教えていただきたいと思うのです。文部大臣、お考えを伺いたいと思うのです。
  213. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 小学校では社会科六年の学習指導要領の中に、目標におきまして、わが国の政治のしかたや国民生活は、それぞれの時代の特色をとりながら、今日に及んでいることを具体的に理解させることが示されております。教科書におきましても、各時代の政治や文化の特色を述べるにあたりまして、天皇の果たされた役割り等をその歴史的事実に即して記述することが肝要であると考えられます。現行の教科書の記述を、この意味において見ますと、この趣旨から照らしますと、必ずしも十分に満足すべき記述がなされていない点があるのでございます。私どもは、小学校ではわが国の歴史について全体的な把握をするような配慮をすることが大切でありますと同時に、現行制度において、これらの記述におきまして特別に、不十分でありましても、適切でないというまで規定する必要はないかと思いますけれども、しかし、これらの将来の取り扱いにつきましては、なお十分教科書審議会等におきましても論議をされてまいるべき問題だと思います。
  214. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 総務長官にお尋ねしたいと思うのですが、明治百年記念準備会議というものが総理府にできておりますが、そこで決定された事項をお教えいただきたいと思います。
  215. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 学識経験者、それから各界の代表等をもちまして、明治百年記念準備会議というのができましたのが昨年の四月十五日の閣議決定でありまするが、自来この方々にお集まりいただいて、いろいろと御検討を願いました結果、もちろん部会を四つに分けまして、式典のもの、行事のもの、事業のもの、広報のもの、というふうに、そして全体会議を開きまして、結論を得ましたものは次のようなものであります。  まず、記念祝典としては、四十三年の十月二十三日に中央祝典を実施する。都道府県においても同主旨の行事等が挙行されることが望ましい。  記念行事としては、記念講演会、記念美術展覧会、記念資料展示会、農業祭、芸術祭、体育祭等の各種祭典、百歳以上の高齢者に対する慶祝、郷土の先賢・偉人の研究顕彰の推奨及び記念切手の発行を行なう。  なお、記念事業としては、国土の緑化、これは記念森林公園あるいは郊外に明治の森というものをつくるものであります。  次に、歴史の保存顕彰であります。産業、経済、文化等角分野の史料及び民族的生活資料を収集、展示する歴史民族博物館を建設する。次に、宮内庁保管の明治天皇紀を刊行すろ。それから明治百年にふさわしい記録映画を製作する。次に、産業殉職者顕彰碑を建設する。  その次に、青年の船でありますが、青年の船を東南アジアその他世界各地に巡航させ、船内研修、視察見学等を通じて海外事情に対する青少年の視野を広め、国際協力の精神涵養をはかる。  こういうようなことが決定いたしております。
  216. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いまお読みになった中で、歴史博物館というのが出ておりましたが、私は民族の心のふるさとである歴史博物館をぜひ完成していただきたいと思いますが、いま歴史博物館はどうなっておりますか、文部大臣
  217. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  歴史博物館は、これはまあ欧米の例にいたしましても、国でこれを設置している例が非常に多いのでございまして、民族の歴史を展覧いたしまして、国民の歴史的な知識の普及なり、また、国に対しまする考え方を十分学ばせる意味において、非常に必要だと思っております。実はただいま総務長官から申されました明治百年の記念事業の中に、歴史民族博物館の建設ということがございます。ただ、文部省、特に文化財保護委員会といたしましては、歴史博物館の建設につきまして、特別にこれはこの記念事業としてということとは別に、この日本でそういう博物館をつくりたいという意味から、調査研究を始める必要があると存じまして、昭和四十二年度の予算におきまして、特にこの調査研究費を計上していただいておるわけでございます。そこで、この予算が通過いたしますれば、直ちに学識経験者等の力を借りまして、この博物館のあり方、内容その他あるいは位置とか、そういったような問題も含めまして、ここで広く調査研究を始めてまいりたいと、かように考えております。
  218. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 まああまり日本には歴史博物館がございませんので、美術館はございますけれども、その意味で、今度おつくりにる場合には、雄大な構想のもとに二千年の歴史を振り返って、新しい未来を開くところの原動力になるようなりっぱな博物館をつくっていただきたい。  場所でございますが、これはいろいろ検討されていると思いますが、私は一つの希望として奈良を申し上げたい。それは神武天皇の創業から平城京址、建武の中興から非常に日本の歴史には由緒の深い土地だし、歴史の宝庫でもありますので、これは有力な候補地としてひとつ文部大臣お考えをいただきたいと思います。  それから次に、明治百年の歴史ですね。それからその源流にさかのぼって日本史の編さんをしていただきたいと思うのですが、総務長官これはどうなっておりますか。
  219. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 先ほど御説明申し上げましたように、明治百年記念準備会議におきましては、明治天皇紀の刊行ということにとどまっておるのでございますが、ただいまの御質問でありますから、私の考えを申し上げますれば、やはり日本歴史の編さんというものは、まことに時宜を得たけっこうなものであるとは存じますけれども、非常に日子を要する。たとえば、水戸光圀の大日本史も、私の知る範囲においては二百五十年もかかった。これは時代の差もあるかもしれませんけれども、しかし、現在日本史を編さんするといたしましても、やはり数十年は要するのではなかろうか。そうしますると、明治百年記念事業としては、ややどうも少しピントはずれの感もなきにしもあらずというようなこと、さらにまあたくさんりっぱな歴史家がおりますが、この歴史家を一堂に会しまして、いろいろ問題の相談をいたしますときに、史観の統一がやはりなかなか困難ではなかろうかということも、私個人としては考えておるわけであります。なお。最近、内藤委員の御発言のうちにもありましたように、歴史刊行物というのが一つのブームになっており、町の中にはんらんしている。これはまことに興味本位で、国民はこぞって読みまするけれども、さて政府がリーダーシップをとって日本歴史をつくるとなると、はたしてそういう興味あるものができるかどうかというようなことも考えておるような次第でありまして、いまの御質問のようなことは、これはやはり民間においておやりになることがよろしいのではなかろうか。しかし、内藤委員の精神作興の面のお話は、私もよくわかるのであります。
  220. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私はそれは民間でもけっこうでございますが、昔聖徳太子のころには、天皇記、国記が編さんされ、奈良朝時代には有名な古事記、日本書紀、中世では北畠親房の神皇正統記、いまお話の水戸光圀の大日本史、昭和の御代になりますと、国史概説、明治維新の資料、こういうようなやっぱり歴史ものが出ておりますので、民間でやられる場合には私は、ぜひ大幅に国のほうから財政援助をしていただきたいと思いますが、総務長官ひとつ御努力願いたいと思います。
  221. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 内藤委員のたいへん強い御熱意のほども私にはよくわかります。これは大蔵大臣が答弁することかもしれませんが、明治百年記念事業を担当する者といたしまして、ただいまの、民間でやる場合の政府の援助ということについては、これは十分検討いたしたいと考えております。
  222. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で内藤君の質疑は終了いたしました。  次回は、明後十五日午前十時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十分散会