運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-07-27 第52回国会 衆議院 文教委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十一年七月十一日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 八田 貞義君    理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君    理事 谷川 和穗君 理事 南  好雄君    理事 八木 徹雄君 理事 川崎 寛治君    理事 二宮 武夫君 理事 長谷川正三君       安藤  覺君    大石 八治君       久野 忠治君    熊谷 義雄君       坂田 道太君    篠田 弘作君       床次 徳二君    中村庸一郎君       原田  憲君    船田  中君       松田竹千代君    松山千惠子君       落合 寛茂君    栗林 三郎君       河野  密君    高橋 重信君       松原喜之次君    横路 節雄君       和田 博雄君    鈴木  一君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十一年七月二十七日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君    理事 八木 徹雄君 理事 川崎 寛治君    理事 二宮 武夫君 理事 長谷川正三君       久野 忠治君    坂田 道太君       重政 誠之君    床次 徳二君       中村庸一郎君    松山千惠子君       高橋 重信君    野原  覺君       横路 節雄君    鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  津田  實君         文部事務官         (大臣官房長) 岩間英太郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      天城  勲君         文部事務官         (管理局長)  宮地  茂君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第一課長) 関根 広文君         大蔵事務官         (主計官)   小田村四郎君         文部事務官         (初等中等教育         局審議官)   佐藤  薫君         文部事務官         (文化局長)  蒲生 芳郎君         文部事務官         (文化局審議         官)      安達 健二君         文部事務官         (文化局著作権         課長)     佐野文一郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 村山 松雄君         建 設 技 官         (道路局日本道         路公団監理官) 長尾  満君         建設事務官         (住宅局日本住         宅公団首席監理         官)      永井  陽君         建設事務官         (住宅局住宅総         務課長)    角田 正経君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     横手  正君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     林  敬三君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     宮内 潤一君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)  篠原 武司君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 七月十一日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として重政  誠之君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員松山千惠子辞任につき、その補欠として  佐伯宗義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐伯宗義辞任につき、その補欠として松  山千恵子君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員久野忠治君及び松山千惠子辞任につき、  その補欠として川崎秀二君及び江崎真澄君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十一日  委員落合寛茂辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  落合寛茂君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員大石八治君及び熊谷義雄辞任につき、そ  の補欠として前尾繁三郎君及び馬場元治君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員馬場元治君及び前尾繁三郎辞任につき、  その補欠として熊谷義雄君及び大石八治君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十六日  委員江崎真澄君、大石八治君及び川崎秀二君辞  任につき、その補欠として松山千惠子君、馬場  元治君及び久野忠治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員馬場元治辞任につき、その補欠として大  石八治君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員和田博雄辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野原覺辞任につき、その補欠として和田  博雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十一日  学校給食法の一部を改正する法律案二宮武夫  君外二十一名提出、第五十一回国会衆法第三一  号) 同月二十二日  大学情報処理研究施設設置に関する請願(前  田正男君外一名紹介)(第二九号)  義務教育における毛筆習字必修に関する請願(  中曽根康弘紹介)(第六七号)  なぎなた中学校以上の女子正課として採用  に関する請願池田清志紹介)(第七九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月二十五日  在日朝鮮公民民族教育保障に関する陳情書外  七件(第二  七号)  同(第七六号)  義務教育施設整備促進に関する陳情書  (第二八号)  義務教育管理下における児童生徒学業災害補  償に関する陳情書  (第二九号)  学校警備員設置に関する陳情書  (第三〇号)  留守家庭児童会育成事業に対する国庫補助金増  額に関する陳情書  (第七七号)  国立山梨大学経済学部新設に関する陳情書  (第九四号)  中学校設置基準法制化等に関する陳情書  (第九五号)  公立文教施設整備等に関する陳情書  (第一二六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  文教行政基本施策に関する件  請 願   一 大学情報処理研究施設設置に関する請    願(前田正男君外一名紹介)(第二九号)   二 義務教育における毛筆習字必修に関する    請願中曽根康弘紹介)(第六七号)   三 なぎなた中学校以上の女子正課とし    て採用に関する請願池田清志紹介)(    第七九号)      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  一、文教行政基本施策に関する事項  二、学校教育に関する事項  三、社会教育に関する事項  四、学術研究及び宗教に関する事項  五、国際文化交流に関する事項  六、文化財保護に関する事項 以上各事項について、その実情を調査し、対策を樹立するため、小委員会設置関係各方面からの説明聴取及び資料要求等の方法により、本会期中に国政に関する調査を行ないたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により議長承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 八田貞義

    八田委員長 本日の請願日程全部を議題とし、審査に入ります。  本日の請願日程に掲載されております請願は三件であります。これらの請願につきましては、先刻の理事会において御検討願いましたので、紹介説明質疑政府所見聴取等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、採決いたします。  本日の請願日程の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  8. 八田貞義

    八田委員長 なお、本委員会参考のため送付されました陳情書は全部で九件でございます。念のために御報告申し上げます。      ————◇—————
  9. 八田貞義

    八田委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、おはかりいたします。  文化財保護に関する問題について、本日、日本住宅公団総裁林敬三君、日本道路公団理事宮内潤一君、日本鉄道建設公団総裁篠原武司君、以上三君を参考人としてその意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  参考人方々には、本日御多忙中御出席をいただき、ありがとうございました。  本日は、議事の都合上、御意見委員からの質疑に対するお答えでお述べいただくよういたしたいと存じます。さよう御了承願います。  それでは、質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  11. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま委員長からもごあいさつがありましたが、本日は、たいへんお暑いところを、日本住宅公団林総裁日本道路公団宮内理事日本鉄道建設公団篠原総裁はじめ関係の皆さんにおいでいただきまして、また大臣はじめ文部省関係大蔵省建設省、自治省等関係係官の方をわずらわしまして御質問を申し上けるわけですが、御出席いただきましたことを心から感謝いたしております。  この暑いのに特においでをいただき、これから御質問申し上げようと思いますのは、私が本委員会におきまして何回か御質問を申し上げ、いろいろ御要望申し上げてまいりました文化財保護に関しまして、やはりまだまだ政府として総合的な対策をこの際樹立し、これに応ずる十分な予算措置をとり、かつまた、各省間の緊密な連携あるいは省と公団との関係が最も合理的に確立をされていませんと、どうもこのままの状態では、文化財保護というきわめて重要な国の仕事が非常に粗漏なうちに破壊をされていって、取り返しのつかないことになる心配がないかということを心から憂うるからでございます。それぞれ関係各省係官あるいは公団関係者は、現在のシステムの中では最大限の御努力をいただいておると思いますし、また、その成果も着々あがっている部分も十分私も認めておるのでございますけれども、なおこのままの状態では非常に不安であるという幾多の事例を直接見聞することもできましたので、この際少しまとめて御質問を申し上げ、それぞれの関係者の御努力、並びに、文部大臣が先頭になりまして、政府自体としてこの際ひとつ、さらに四十二年度の予算編成の、各省がいま原案を討議し、練り上げる貴重な時期でもございますので、この際、抜本策の樹立を御要望申し上げたいと思いまして、これから質問申し上げるわけでございます。  そこで、この文化財保護には、もちろん保護法に示されておりますように非常に広い部面がございますが、私は主として、きょうこの三つ公団関係方々おいでをいただいておりますように、いま全国的に鉄道建設あるいは高速道路その他道路建設、さらに大きな集団住宅団地建設、その他また、民間におきましても地方自治体におきましても宅地造成等がしきりに行なわれ、まさに全国的に国土の開発が進んでおる際であります。したがいまして、もちろん地上におきます重要な文化財やあるいは風致等保存等についても十分な配慮が必要でありますが、特に本日、私は、埋蔵文化遺跡保存あるいは発掘調査、手術的な資料の散逸がされないように、そういう点について御質問をしていきたいと思うわけであります。そこで最初に、貴重な時間でありまして、なかなか意を尽くすには、これは一日かかっても終わらないと思いますが、ごく簡潔に質問を申し上げ、端的に御答弁をいただきたいと思います。  まず、せっかくおいでの各公団の方のほうに御質問をいたしますが、日本道路公団宮内理事にまず御質問いたしたいと思います。  公団が発足以来今日までの主要な事業、特にその中におきまして文化財保護問題に当面した事案が幾つあり、それがいつの時期で、どういう処理をされ、それにどの程度費用支出されたか、現状がどうなっておるかということにつきまして、公団の立場でおわかりの範囲をお話しいただきたいと思います。
  12. 宮内潤一

    宮内参考人 お答え申し上げます。  道路公団仕事といたしましては、名神高速道路東名高速道路中央高速道路、この三つ高速道路が御承知のとおり一番大きいわけです。そのほか数十カ所の一般道路もやっております。  そこで文化財、特に埋蔵文化財関係で問題に相なっておりますのは、東名高速道路中央道が多いようでございます。特に東名高速道路におきましては、すでに五十三件ほど問題が起きております。それから中央道も約二十件ほどございます。そこで、こういうものにつきましては、私のほうも大蔵省と連絡をいたしまして、この発掘調査費というものを計上いたしておりまして、昭和四十年末までに二千五百六十一万円を支出しております。四十一年を入れますと四千二百五十六万円程度に相なろう、こういう現況でございます。
  13. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまきわめて概略の御説明がございましたが、五十件というのは非常に多いですから、これは後に資料等で出していただくとありがたいと思うのですが、そのうち、特に主要な部分で幾つか御報告願える件はありませんか。
  14. 宮内潤一

    宮内参考人 ただいまの御質問でございますが、東名高速道路におきましては、先ほど申しましたとおり五十数件ございます。そのうち、半分程度はすでに調査その他が完了いたしております。引き続き四十一年において残りの半分程度をやる。  このうち一番大きな問題に相なりましたのは、新聞等で御承知登呂の問題でございます。当初は盛り土でいく予定でございましたけれども、文化財保護委員会その他県のほうとも御連絡申し上げまして、これは設計変更いたしまして、そしてこれを高架で渡る。そういたしまして、この登呂遺跡保存することにお役に立ちたい。問題は残地の処分で、つまり盛り土ですと幅が広うございますが、それが高架になったので土地がよけい余ることになりまして、いかがかということでいろいろ心配いたしておりましたが、これも先日、静岡市のほうで、残地のほうを買い切ってくださるということで話がまとまりましたので、一番大きな問題でございました登呂の問題も片づきました。そういう状況でございます。
  15. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私も心配しておりました学問上非常に貴重な遺跡であります登呂遺跡が、途中で設計変更といいますか、計画変更までしていただきまして、一応ある程度保存の道が講じられ、また、発掘調査においてかなり貴重な事実が明らかにされたということは非常によかったという気持ちでございます。すべてこういう調子でいくとよろしいと思うのですが、なかなか現在の進行状態ではそうばかりもいっていないようにも思いますが、その二、三の事例については後ほど伺うといたしまして、今後の道路公団としての建設計画の、大体何年ごろまでにどこの道路をどういうふうにやっていきたいのか、こういうようなことの構想を、これはあまり詳しくお伺いしますと、差しさわりの出るような時期にまだある問題もあるいはその中に含まれているかと思いますが、お差しつかえのない範囲で、道路計画の全貌がわかりますように、公団としていま考えられている計画についてひとつお伺いしたいと思います。
  16. 宮内潤一

    宮内参考人 お答え申し上げます。  道路公団といたしまして一番大きな仕事は、実は一昨日建設大臣から、東北、中央、北陸、中国、九州の五縦貫道の六路線千十キロの施行命令を受けております。これが今後五年といわず、あるいは六、七年かかるかもしれませんが、いずれにいたしましても、昭和四十五、六年ごろまでの最大の事業ということに相なります。  それから、御承知のとおり、いま一般道路につきまして、政府のほうでこの予算を編成するにあたりまして五カ年計画の改定をいたしたい、こういう御要望がありまして、私どもは、その高速道路のほかにどれだけの仕事をやっていくかということにつきましては目下いろいろ検討中でございますので、機会を得ましたらまたお答え申し上げたいと思いますが、高速道路の千十キロだけは一番大きな仕事だということは申し上げれると思います。継続事業といたしましては、東名高速道路昭和四十三年度に終わり、中央道は四十二年度に終わる、そういうことは先刻御承知と思いますが、つけ加えておきます。
  17. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 公団のお持ちの一応の構想はよくわかりました。具体的な問題については後ほど二、三質問したいと思います。  次に、日本住宅公団林総裁にお尋ねいたしますが、今日まで公団が扱いました主要な建設は何件あって、その間に文化財保護問題についてお扱いになったものはどの程度あり、それにどういう支出をされておりますか、この点をお伺いいたします。
  18. 林敬三

    林参考人 日本住宅公団は、昭和三十年にできましてからちょうど満十一年でございます。その事業といたしましては、やはり住宅をつくることが一番おもな事業でありまして、建設中のものも含めまして約三十七万戸すでにつくっております。それから原野を切り開きまして住宅用宅地造成する、これが文化財で一番問題になる点でありますが、この宅地造成事業並びに工業用土地をつくる事業、こういう土地造成事業というものを建築事業のほかにあわせていたしておるわけでございます。そうして現在まで十一カ年の間に、場所といたしますと九十六カ所いたしております。そのうち三十四カ所が完了しておるという状態でございます。面積にいたしますと一万七百六十ヘクタール、坪にして三千二百三十万坪、いまずっと造成をいたしておりまして、そのうちで完成いたしましたものは四千百四十ヘクタール、すなわち千二百五十三万坪でございます。  これらの地区のうちで埋蔵文化財との関連のあるところについては、御承知のように、文化財保護委員会と協議をいたしまして対策をそれぞれ立ててまいったわけでございますが、この埋蔵文化財との関係のある個所は、東京付近大阪付近北九州付近、それらを全部合わせまして十四地区面積にいたしますと二千二百二十七ヘクタール、坪にいたしますと六百七十一万坪であります。すなわち十四地区関係ございまして、なおちょっとつけ加えて申しますと、その中で、いわゆる文化財に関してこちらが発掘についてのいろいろな費用を出しましたのが九地区、こういうことになっております。
  19. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ちょっと最後のところ、費用はどうなっておるのですか。
  20. 林敬三

    林参考人 十四地区関係ございまして、その中で九地区につきまして、すでに発掘調査費というものを支出いたすことを約束し、実行しているということでございます。
  21. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その費用概略おわかりでしょうか。
  22. 林敬三

    林参考人 千五百九十四万円でございます。
  23. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それはすでに調査完了し、支出をした分でございますか。
  24. 林敬三

    林参考人 これはすでに支出したもの、あるいはその中に少し、約束してまだ支払いが済んでないものもあるかもしれませんが、確実にやるものでございます。
  25. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それではさらにお伺いしますが、日本住宅公団としての今後見通される主要な建設計画なりその年次計画なりのごく概略でいいのですが、おわかりになっている範囲でけっこうですから、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 林敬三

    林参考人 先ほど申し上げましたように、住宅を建てるのが非常に大きなウエートを占めている事業でございますが、これはもう文化財とは全然問題のない平地になったところ、あるいは工場のあと地に建てましたり、そういうところは別でございますが、問題になります、いわゆる原野の形のようなところをブルドーザーをかけまして宅地造成して、そこへ家を建てる、こういう宅地造成事業のほう、いわゆる開発事業、これについての見通しでございますが、これは年々やってまいるわけでございまして、確実な見通しは何とも確実に申し上げかねるのでありますが、今後五年ないし十年の間は、大体年平均——これは坪で申してちょっといけませんが、お許しをいただきますと、五百万坪ないし一千万坪程度新規事業というものを私のほうはやっていくことになると存じておりますし、そのほかに、いわゆる工業用団地というものの造成が約百万坪程度、大体そのようなペースでやっていくことになると存じます。  それから、やります区域は、大体首都圏区域近畿圏区域というものが主たるところでありますが、そのほかに、いわゆる新産都市であるとかいわゆる工業開発特別区域であるとか、そういうようなところにも、次第にこの間には及んでいくということになると存ぜられます。
  27. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ありがとうございました。  では次に、日本鉄道建設公団篠原総裁にお尋ねいたしますが、公団としまして、今日まですでに事業を完了、ないし取りかかっておられるのにはどういう御計画があるか、また、それの過程において文化財保護問題とぶつかった案件がどういう状況になっており、どういう処理あるいはどういう費用をこれについてお出しになっておられるか、それをお尋ねしたいと思います。
  28. 篠原武司

    篠原参考人 新線建設の概況を申し上げますと、公団法によりまして、運輸大臣から基本計画といたしまして指示されておりますものが、工業線で六十二線、調査線で三線ございまして、合計六十五線でございます。そのうち工事実施計画認可を受けた路線は三十七線、未認可路線は二十八線でございます。その三十七線の認可路線のうちにすでに部分開業した路線が五線ございまして、未開業の線は、したがって残りの三十二線でございます。  それから次に、新線建設のうちで、現時点におきまして文化財保護法による文化財等関係すると思われるものは、先ほど申し上げました認可路線三十七線のうちの一線、武蔵野東線につきまして——これは浦和から松戸へ行く線でございますが、四十一年の九月ごろ、埋蔵文化財包蔵地発掘調査する予定でございます。それからなお、認可路線のうち二線が関係するわけでございますが、一線は伊勢線、これは三重県の津から四日市へ参る鉄道でございますが、これは発掘調査を完了いたしまして、出土品などを整理中でございます。それから他の一線、井原線は岡山県でございますが、目下調査中でございます。  それから、未認可線二十八線中に文化財等関係すると思われるものが四線ございまして、武蔵野西線−武蔵野線のうちの浦和から国分寺に至る鉄道でございます。それから小金線、これは松戸から船橋に至る鉄道、それから智頭線と申しまして、兵庫県の上郡から鳥取県の智頭に至る鉄道でございます。それから呼子線、これは佐賀県の唐津から伊万里へ行く鉄道でございますが、これは目下調査中でございます。  それから、先ほど申し上げました伊勢線でございますが、これで調査委託費として委託しております金が二百六十六万七千円ということになっております。
  29. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの最後のほうですが、調査費として支出したものとして伊勢線の御報告だけございましたが、その他についてはまだやっておらないのですか。
  30. 篠原武司

    篠原参考人 目下これは調査中でございまして、予算がまだ確定いたしておりません。
  31. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいまの御答弁で、今後の御計画についてさらにいろいろあるかどうか、それについて触れていらっしゃらなかったように思いますが、あらためてお聞きしますが、ありましたらひとつ——これは非常に微妙な問題もあろうかと思いますが、鉄道建設公団として、今後、こういう路線、こういう路線が一応考えられておるということを、全国的な視野の中で御計画がありましたらお知らせをいただきたい。
  32. 篠原武司

    篠原参考人 ただいまの御質問は、先ほど御答弁申し上げました未認可路線二十八線中で四線と申し上げましたが、その程度でございます。
  33. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま三つ公団のそれぞれの方から、今日までの建設あるいは今後の建設予定のごく概略を承りまして、これはそれぞれたいへんな事業である、こういうことをあらためて痛感するわけでございます。私は、この際、一応いま具体的な個所を明示しての御答弁までは、この席で要求しますとたいへん長くなりますから、これは遠慮をいたしますが、差しつかえない範囲で、文書等でぜひ資料としてお出しをいただくようにお願いをいたしておきます。  それから次に、これから本論に入るわけでございますが、それぞれ公団関係者は、必要な調査費等を支出して、文化財があるというところについては御調査をなさり、登呂遺跡のように、計画変更までされまして、また県側の協力も得てこの保存に最大限の努力をされておる、こういうたいへん大きい成果もあがっておるわけですが、その反面、私が幾つか、これもほんの九牛の一毛ではないかと思いますが、承知しておる範囲だけでも、実は貴重な遺跡がこわされるのではないか、あるいはすでにこわされたというようなことも伺っているわけで、その二、三の点について伺いたいと思います。この御答弁につきましては、公団側に必ずしも伺うというよりも、直接の責任は、これは文化財保護委員会の事務局にあると思いますから、この点は文化財の事務局長のほうからお答えをいただいてもいいと思います。  まず、道路公団関係のほうでほんの一、二。さっきの話で、道路公団がつくっている特に名神、東名、中央道が非常に進んでおるわけですが、このうちの東名高速道路につきまして、先般資料もいただいて、学者の協力も得まして一部検討してみたのですが、一つの事例といたしまして神奈川県に関する部分を調べますと、これは文化財保護委員会のほうに先にお尋ねするのですが、この東名高速道路予定地の中で、神奈川県の部分だけでいわゆる先般来文化財保護委員会が鋭意地方の協力を得て作成をしました遺跡台帳、その台帳に載っており、しかもこの東名高速道路関係する個所というのはどの程度おありと把握されていらっしゃいますか。
  34. 村山松雄

    ○村山説明員 神奈川県下における東名高速道路路線中、埋蔵物包蔵地域として周知されている地域は五カ所でございます。
  35. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ちょっとその五カ所を具体的におっしゃっていただけませんか。
  36. 村山松雄

    ○村山説明員 川崎市の下原遺跡、それから平遺跡、それから伊勢原町の北高森遺跡、三宮古墳それから三宮遺跡、五カ所でございます。
  37. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 このうち、具体的に調査費を出して調査ができたところは何カ所ですか。
  38. 村山松雄

    ○村山説明員 平遺跡を除きまして、残り四カ所は調査費支出いたしまして調査をいたしております。
  39. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 伊勢原町の北高森もしてありますか。
  40. 村山松雄

    ○村山説明員 約五十九万円で国学院大学に委嘱いたしまして、調査をやっております。
  41. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 あと伊勢原の三宮が二カ所、それから川崎の下原、それから川崎の平、この平だけはしてないという御答弁ではありませんでしたか。平はしてありますか。
  42. 村山松雄

    ○村山説明員 平はまだやってないと思います。
  43. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それは今後、予定はどうなっておりますか。やることになっておるのですか。やることになっておるけれどもやってないのか、もうやらないつもりなのか。
  44. 村山松雄

    ○村山説明員 平につきましては、周知の度合いが実は薄うございまして、工事中に判明した関係もありまして、現在まだ検討中でございます。
  45. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私が考古学者に、この部分を区切ってごく概略調査していただいただけでも、大体ここは遺跡が非常にたくさんある場所なんでしょう。二十五カ所もある、こう指摘されております。台帳も非常に御努力しておつくりになったのでしょうけれども、何としても今日の調査機構なり行政の機構なりの現状の中では、なかなか短日月に相当詳細な台帳をつくるということは困難がある。今後十分調査を進めながらこれを増補、拡充をしていくことが必要なんだと思いますが、おそらく事務局長も、現在の一応つくった台帳でもう完全であり、これ以外には遺跡はないんだ、こういうような御断定などする気は毛頭持っておらないと思いますが、一応台帳についての認識といいますか、考え方についてどうお考えになっておるか、ちょっとお尋ねします。
  46. 村山松雄

    ○村山説明員 埋蔵文化財の包蔵地区の台帳は、これは主として聞き込み調査によりまして、つまり書面調査ないしヒヤリングによる調査でありますが、そういうものによってつくりまして、現在出版中でございます。したがいまして、そのものにつきましての価値その他について十分な解明がなされておるとは思いません。そこで、さらに文化財保護委員会の専門審議会において小委員会を設けまして、遺跡につきましてさらに重要なものを選抜調査をいたしております。ある程度のものにつきましては、これをさらに都道府県の教育委員会の協力を求めまして、実地にも調べて、重要なものを拾い上げて保存に万全を期するという態勢で、目下調査研究ないし若干の措置を講じつつあるのが実情でございます。
  47. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 事務局長のそういう認識なりお考えを伺って一応安心をするわけですが、これは非常にたいへんな仕事でございまして、いまできたものが唯一だなどということになったらたいへんだと思ったのですが、そういうお考えではないので安心したのです。いま申し上げたとおり、この地帯だけでも、ちょっと専門家が歩いてみますと、ここには遺跡が確実にあると指摘されるものが二十五カ所ある。もちろんそれを全部保存するなどということを申し上げるわけではないのですが、しかし、この事例でわかりますように、これは一ぺんこわしてしまいますとあと取り返しがつかない。こわす際に多少日時と予算をかけて一ぺんよく調査をすれば、学問上非常に貴重な事実が十分つかめますし、それから発掘物も出てきましょうし、あるいはこれは非常にユニークな、また代表的なものだから何としても残さなければならないというものが、当初の予想とは違って新たに発見されるという事態もありますし、そういう場合には、先ほどの登呂遺跡ではありませんけれども、計画についてその部分は十分検討をしていただくということも起こってくるので、そういう態勢をやはりしがなければならないと思うわけですが、現在のところたいへん不備じゃないか。  私はそこで一つ伺いますが、この下原遺跡につきましては、行ってその発掘の現状を見てまいりました。たいへんみごとに昔の住居あとが掘り出されておって、これをブルドーザーで、ざあっとやったらみんなめちゃめちゃになっちゃうところを、よくあれだけ丁寧に掘れたと思って感心して帰ってきたのです。私は学者ではありませんから、その学問的な価値を十分理解できませんけれども、われわれしろうとの目で見ましても、なかなかこういうふうにみごとに残っているものだなと思うほど、りっぱなものがきれいに掘り出されておった現状を見たわけです。しかし、これは記録にとどめたあとこわしてしまって、道路にしてしまうのだと思いますけれども、貴重な発掘事業でありましたが、ただ問題は、あの場合も予算公団に一つの調査費が組まれ、それを件数によって案分したような形で支出する。それ以上かかっても予算がないということになると、あとは全く直接発掘に当たった学者あるいは学生たちの熱意、手弁当でやるか、それももう続かなくなって打ち切られるか、いろいろありますが、この件については、発掘に当たった学者が一時私費をもって——予算が尽きたけれども、どうしても途中で打ち切ってしまうわけにいかないので、なお発掘事業を続けた。幸いその現場に当たっておった請負会社も非常な理解を示して、いろいろとプレハブ住宅をつくって調査団が泊まり込めるようにしたり、何かと協力したといううるわしい話も聞いております。結局予算はそういうことになったというように聞いておるのですが、詳しい金額のほどはよく存じませんが、それはどう処理されましたか、もしわかりましたら、ちょっとお答え願いたい。
  48. 村山松雄

    ○村山説明員 下原遺跡につきましては、四十年、四十一年と二回にわたって調査をいたしまして、調査費といたしましては約六十八万円程度が出たようでありますが、それでは足らないということで、特に第二次、昭和四十一年の調査においては、調査を担当された方が、自己の負担において調査費をつぎ込んで調査を継続されたと聞いております。その件の処理につきましては、目下話し合い中でありまして、最終的な処理はついていないようでございます。
  49. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 きょうは大蔵省の方も来ていただいておると思いますが、文化財保護委員会、あるいはそういう場合調査費を直接支出する各公団、それから大蔵省、それぞれこういう事例が起こっていることをよく御理解を願い、これはいまほんの一例を指摘したのですが、こういうようなことは枚挙にいとまない事態だと思います。学者が金をどこから借りてきたか知りませんが、大体金持ちの学者などはいないわけで、これが最終的に学者の負担になるということは、一国の文化政策としてもまことに恥ずべきことじゃないかと思いますし、そうかといって、当初の予算にないものを支出はできないという役所としてのたてまえということも一応は理解できますけれども、最初から、組むときにこういう点の配慮を十分ひとつ今後はしていただくように、強く御要望申し上げておきたいと思います。いま二十五カ所指摘されている。しかし、そのうち台帳には五カ所載っている。そのうち、一応この間調査したのは四カ所である。そのうちの一つの事例をあげて——その調査も、予算では足りなくて、学者がかなりの額の自己負担をもってこの調査を一応やり遂げておる、こういうことを指摘いたしまして、今後の全体施策の上にこういうことのないように、ひとつぜひお願いしたいと思うわけであります。ですから、この二十五カ所という点につきましても、必要があれば今後具体的に私のほうでお示しをしてもいいと思いますし、あるいはすでに担当官は御承知かと思いますから、今後間に合うところはまだできるだけの調査をするように、この際、この点についても強く要望をいたしておきます。  これは東名高速道路のうちのほんの神奈川県側の部分だけとって、こういう状態であります。ですから、あとは推して知るべし——ということばはちょっと適当でないかもしれませんが、想像に余りあるものがあると思うんです。しかもこの台帳に載っておる件数ですね、これはいまのように、二十五カ所あると学者に指摘されましたところを、五カ所しか台帳に載っていない。その台帳でも、全国では、印刷、出版されたものは別として、もうすでに全体は一応完了しておるわけでしょう。その個所は一体何カ所になっていますか。
  50. 村山松雄

    ○村山説明員 埋蔵文化財の包蔵地区の台帳につきましては、現在出版中でありまして完成しておりませんけれども、載せる予定のものは約十四万カ所にのぼっております。
  51. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまお聞きのとおり、ごく概略の聞き込みその他で急遽つくった台帳にして全国で十四万カ所であります。そして、先ほどお話がありましたように、道路にせよ、鉄道にせよ、あるいは住宅にせよ、いま建設が大きく進もうとしておるのであります。本日は三つ公団でありますけれども、これが地方自治体のやっております公社の住宅とか、あるいはまた建設省自体がやっている道路、こういう問題を含めますと、今後の建設事業というものは、まだまだいかに膨大なものが、今後ここ数年間に行なわれるかということは明らかであります。したがいまして、この際政府は、この建設事業に先立って、文化財保護について、特にここ数年が大事なわけですが、抜本的な対策中村文部大臣がひとつリーダーとなりまして、文化財保護委員会にただまかすということでなしに、文化財保護委員会公団あるいは地方自治体との単なる事務連絡程度でこれがやれる仕事ではないということを十分御認識をいただきまして、抜本的な埋蔵文化対策といいますか、もちろん、あわせて地上の問題も含めて計画いただければなおけっこうだと思いますが、やる必要があるということを、いままでの質問の過程でも私はひしひしと感ずるのですが、文相の御見解を伺いたいと思います。
  52. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 御承知のとおり、昭和四十一年度の埋蔵文化財に関する調査費は、文部省関係としては二千九百何十万円、約三千万円でございます。これを配分するのには文化財の事務局としても非常に苦労してやっておるわけで、とうてい期待に沿うことができないのが現状であります。したがって、何としても基礎的な調査だけは充実しておいて、いざ、これが団地ができる、あるいは鉄道が敷かれる、道路ができる、こういう場合に、もちろん全部を保存するわけにはいきませんから、ごく重点的で代表的なものを何とかして保存する。その他のものについてはやはり発掘調査をいたしまして、そして記録を十分にとどめる。その発掘されたものは、しばらくの間地元の県庁あたりにお預かりを願って、その集積を待って、国と県とでそれらを保存する保存館か記念館のようなものを方面方面につくっていくのが埋蔵文化財についての方向ではないか、こう私どもは思っております。したがって、予算編成になりますと大蔵省は非常に幅広い、全体の均衡のとれた予算を組むわけでありますから、なかなか困難性はありますが、そういう理想に立って今後ひとつ予算の確保について万全を期してまいりたい、こう思っております。
  53. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 次に、住宅公団関係について、これもまたほんの一、二の事例にすぎませんが、お聞きをしたいと思います。  これは、日本住宅公団の問題というよりも、公社の問題にかかわる地帯だと思いますが、一つは、福井県の福井市の道守荘、ここは奈良の東大寺の寺領であったところで、その当時の実にこまかい荘園の田図、たんぼの図面、これだけがその寺領であるという、それが正倉院に保存されておりまして、これが日本最古の非常に詳しいこういう田図である。ところが、たまたまこの道守荘、これは福井県ですか福井市ですか、そこに運動場をつくり、さらに住宅公社によって団地をつくる。それで工事を始めたところが、その遺構が発見されまして、これが実に精密な、正倉院に残っておる東大寺領の田図と現地とがきわめて的確に照合されるような貴重な遺跡ということが明らかになったというふうに聞いておりますが、そこがもう県営で埋め立てられようとしておる。一体こういう事態が平気で起こるということは、これは文化財保護委員会の責任なのか、あるいは建設省の責任なのか、あるいは自治省あるいは県の責任なのか、これは私どもこういうことを聞きまして非常に疑問を持つわけでありますけれども、一体こういうことが起こってくる問題の原因はどこにあると考えるか、また、いま具体的にあげました道守荘についてはどういう御処置をとられ、今後どうするつもりであるのか、これはもし関係の皆さんからそれぞれの立場で御答弁いただければありがたいと思いますが、さしあたって、当面の責任者と申しますか、担当は文化財保護委員会事務局であろうと思いますから、村山さんのほうからお答えを願いたいと思います。
  54. 村山松雄

    ○村山説明員 御指摘の東大寺の荘園道守荘は、現在福井市の東南方一帯の地域でございまして、その遺跡としての価値は御指摘のとおりでございます。ただ、文化財保護法の上で史跡としての指定をまだしていない関係がございまして、これの現状変更について、権限を持ってどうということにはまだ至っていない問題でございます。そうなりますと、やはり埋蔵文化財包蔵地区の発掘調査という形で現在の事態がとらえられるわけでありますが、これに関しましては、御承知のように届け出をもって足りるという法律上のとらえ方になっておりまして、文化財保護委員会は、必要に応じまして、遺跡の著しく破壊されたりすることのないように指導するというかっこうになっております。  そういう関係がございますので、この道守荘の地域に福井県の住宅公社が団地造成計画いたしましたので、福井県の教育委員会の御連絡もありましたので昭和三十九年度に国庫補助金を交付いたしまして、緊急の調査をいたしました。それから、その後引き続き建設計画が進められておりまして、これは調査並びに一部には保存の要望も出ております。そこで、これが調査保存の問題をいかに扱うかにつきまして、現在福井県の教育委員会と連絡し、指導し、あるいは協議をしておる段階であります。
  55. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これは後ほどさらにまとめて、私は意見も含めて質問したいと思いますが、いま保存の方向も出ておるということでありますけれども、これは非常に貴重な、一方には文書をもって残った貴重な文献と現地のそれとが照合するというような、非常に今後学問上も、あるいは歴史の上からも大事なものであろうと思いますので、ぜひひとつ、こういう貴重なものが残されるように御努力を願いたいということを要望いたしておきます。  もう一つ、住宅関係でございますが、同じくこれは千葉県の公社が取りかかっておるところで、坂月ニュータウンというのが千葉市にありますが、ここにも非常に重要な貝づかですか、あるのですが、すでに半分はもうこわされてしまっておるというように伺っておりますが、事情はどうなっておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  56. 角田正経

    ○角田説明員 ただいま御質問のございました坂月のニュータウンでございますが、これは県と市と、それから民間の会社が共同に出資いたしまして、約二百万平方米ぐらいの団地造成をいまやっておるわけでございます。御指摘のとおり、造成工事の最中におきまして、環状集落の貝づかの話でございますが、その文化財があることが判明いたしました。その内容につきましては、県の文化財保護室のほうに連絡をいたしまして、その指示に従っております。大部分が、先生のおっしゃるように何か整地されました関係で、一部発掘できなかった部分もあるようでございますが、協会のほうから発掘調査費として三十四万円を支出いたしまして、それで一部発掘いたしました。なお、残り部分につきましては、一部を緑地帯として残そうかということで、県の文化財保護室と県当局、それから協会のほうと目下相談中でございます。
  57. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そこで、ちょっと問題の性質が違うのですが、これも全体の機構の問題になって、関連して、私は個々の責任を追及しようとかいう気持ちはないのですが、この場合も一応三十四万円で調査をしたというのですね。ところが、実際に調査に当たった学者が受け取れたのは、十五万円しか受け取れなくて、十九万円というものが、これがどういうことになっているのか、それは事務費ということなのか、こういうような執行上のいろいろな不備な問題がやっぱりいろいろあるようであります・この点、私は一例として板舟ニュータウンの場合を申し上げたのですが、この点はいかがですか。
  58. 角田正経

    ○角田説明員 御指摘の点は、私どもちょっと調査不十分でございまして、協会のほうとして、ただいま申し上げましたように、発掘調査費として三十四万円を提供したということでございまして、その使用の方法につきましては、私のほうではちょっと詳細に承知いたしておりません。
  59. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの協会のほうは三十四万円出されたのですが、実際に発掘調査に当たられた調査員のほうには十五万円しかなかったので、非常に無理をした調査をして、その上から鳥瞰図の写真をとるために、はしごか何かをしろうと組みに組んで写真をとろうというので、とうとうその一番中心になった先生は落っこって、そうして大けがをしたという事実も聞いておるのです。これもさっきの自費負担と同じように、まことにこれは悲惨な事実ですな。しかもそんな零細な——三十四万でも私はとても十分ではないと思うが、実際は十五万しか渡されていないというようなことは一体どういうことなのか、その監督の責任はどこにあるのか、どこに不備があってそういうことが起こるのか、ちょっとそういう点でわからないのですが……。
  60. 村山松雄

    ○村山説明員 ただいまの件でございますが、千葉県の教育委員会を通じて調べましたところが、調査費は三十四万円だったそうでありますが、そのうち十五万円を調査担当者に手交した段階で、調査担当者がわかったそうであります。それで、残余の分は引き継いだ者に渡したいということで、いま関係者の間で話し合いを詰めて、調査担当区分によって精算払いをするということで、ほぼ話がついておるそうでございます。
  61. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 一応いまのお話で数字のつじつまは合うように思いますが、なぜかわったかというと、私は、けがをしてできなくなったからかわったのだろうと思うのですね。そうじゃないですか。それだったら、無理をさせずに、その予算を最初から十分使えば、そういうことが起こらずに、しかも調査も、途中でかわるということは一つも望ましいことではないのですね、一貫した調査でしょう。もちろん、さらに増強してスタッフを加えるということはあり得ても、人をかえるというのは、よほど悪いことでもしたとか、あるいは最初から不適当な人を選んだら別ですけれども、私はいまのお話を伺って、おそらくこれは、調査の主任の先生が大けがをしてしまった、いまコルセットをはめておるというような状態で、とてもできないということでかわったのではないかと思います。これは想像の域を出ませんが、そういうことであれば、こういう執行上にも非常に問題があるのではないかと思いますが、何かそれについて、私の申し上げたことが誤解であるということで御説明を願うことがありましたら、伺っておきます。
  62. 村山松雄

    ○村山説明員 調査の実態についての詳細は承知しておりませんので、調べた上で明らかにしたいと思います。
  63. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 こういう事例を、もう一件だけ念のために指摘しておきますと、先ほど道路公団のほうのことを申し上げたのですが、これも道路公団関係です。東名高速道だと思いますが、これは吉原市の一角を通りますね。そこに平安時代の竪穴住居が百カ所も見つかった、こういうことですが、これに対して道路公団は百万円の調査費を出した。ところが、どうもこれまた実際には学校の先生や生徒がかかって、いろいろ調査をされたようですが、調査費としては六十八万円しか支出されていない、こういうことなのです。もちろん、その間に若干の事務費とか、いろいろそういうことはあろうと思いますが、それにしてもちょっと幅があり過ぎるのではないかと思いますが、こういう点について、おわかりになっていましたらちょっと説明を願います。
  64. 宮内潤一

    宮内参考人 お答え申し上げます。  お尋ねのは、吉原の伝法古墳の問題だと思います。これは、私のほうとしては大体予定として百万円ぐらいと見積もっておったわけでございます。その後、県教育委員会その他と綿密な積算をいたしましたところ、九十万四千円ということに相なりましたので、私のほうといたしましては、そちらのほうに九十万四千円を支出いたしました。そして、その調査は四十一年二月二十日完了という報告を受けております。
  65. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この件について、保護委員会のほうでは何か承知されておりますか。
  66. 村山松雄

    ○村山説明員 道路公団から九十万円の調査費が出たというのは、そのとおりに聞いております。調査を担当した県のほうが、さらに静岡県の文化財協会という外部団体があるようでありますが、そこにやらせたところが、九十万円の一部を事務費に充当して、調査の直接費が若干減ったというふうに聞いております。
  67. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私も、この問題をほじくり返してその責任をどうこうということで、いま申し上げようと思って言っているのではないのです。全体にこういうことがいろいろあるということを、いま事例として出して言って、最終的には、大きな国の施策として抜本的に考えてもらいたいというところに持っていきたいわけなんです。  もう一つ、これは人命に関することが起こっているのです。これは建設省の監督あるいは自治省の監督にかかわることではないかと思いますが、加古川市で用水のダムをつくったところが、そのダム予定地にカンスづかという遺跡がありまして、これを急邊調査することになった。古墳ですね。ところが、この調査の委託を受けて担当したのは竜谷大学のようですが、その学生がこの調査の最中に、まだ調査が完了しないのに一方では水を入れ始めてしまったというので、これはたいへんだというので急遽箱船で学生が、非常にその学問を愛すというか、責任感からだと思いますが、重い測量機なんか持って行きましたところが、ついに途中で船が沈みまして、泳げないほうの人は泳げるほうの者が押しやって助けたんですが、肝心の泳げるほうの者が重い荷物を背負って、とうとう底へ沈んでなくなったという事件が本年五月四日に起こっておる。一体こういうことはどこの責任なんですか。文化財保護委員会の行政指導といいますか、そういうものの不徹底のためなのか、それとも建設省の監督の不行き届きなのか、それとも地方自治体として加古川市のそれぞれの担当部門の者が怠ったためにこういう事件が起こったのか、はなはだとらえどころがないような気がするのですが、こういうことが起こったことは御存じですか。これについてどういうお考えを持っていますか。これは関係係官から御答弁を願います。
  68. 村山松雄

    ○村山説明員 兵庫県加古川市のダム工事中の埋蔵文化財調査中に事故が起こった事件につきましては、兵庫県の教育委員会のほうから聞いております。本件の調査は、御指摘のように、県が工業用水をつくるということで、加古川市の教育委員会大学の教官、学生に委託して調査を実施したわけでありまして、文化財保護委員会は、その調査を始める段階では承知していなかったのでございますが、事後において報告を受けて承知しておりますが、その死亡事故の責任関係あるいは原因の解明につきましては、御指摘のように必ずしも明確でない点がございまして、現在関係者の間で善処すべく協議中というぐあいに聞いております。
  69. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 善処というお話がございましたが、どうですか、これはどなたからでもいいんですが、事務局長はもちろんですけれども、どういうところの欠陥でこういうことが起こってくるとお考えですか。
  70. 村山松雄

    ○村山説明員 川の上流のダムを放水することによって下流の、たとえば釣りをやっている人などに事故が起こるということは間々ある事故でありまして、これがたまたま文化財調査中に起こったというケースになろうかと思います。したがいまして、文化財調査事業に直接基因する事故というよりは、一般的原因のほうが比較的多いのではないか、私としてはかように思っております。
  71. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 このことは、ダムをつくって水をためるんです。これは四十二年に水をためればいいというように聞いているんです。それをなぜ急いで水を切って落としたのかというと、これは一般的な観念でいう放流ではないと思うのです。ダム建設計画文化財のいま調査しているということの間に緊密な連携を欠いておったり、あるいは片方の要請があるのに、片方は強引にその方針を押し切ったから、そういうことが起こったのではないか。これは私はそういうふうに受け取れるんです。
  72. 村山松雄

    ○村山説明員 原因の詳細につきましては、現在検討中というぐあいに聞いておるわけでありますが、私の感じを申し上げますと、直接にはやはり関係者の連絡不十分ということになろうかと思いますが、連絡不十分がいかなるところから起こったか、そういうこまかい点につきましては現在調査中でありまして、それを待つよりほかないと思います。
  73. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 事人命にかかわることですから、この問題だけでも深く検討すればいろいろな問題が出てくると思いますが、本日は、残念ながら時間がありませんからこの程度にとどめまして、善処ということばがお役所ことばの善処でないように、しかも今後についても万全を期せられますように、また、この犠牲になられた方に対しても十分なる処置が講ぜられますように、万全の御指導をひとつ強く要請しておきます。  それからもう一つ、また千葉県に戻りますが、千葉市の台門貝づかというところで、これは土地を所有している地主組合が何かそこを掘りくずして、宅地造成地に土を売るというために、これまた国、県に無断でどんどんこわしてしまったという事実が起こっていると聞いておりますが、この件は御承知ですか。どうなっていますか。どう処置されましたか。
  74. 村山松雄

    ○村山説明員 台門貝づかの性格は、先ほど来問題になっております指定に至らざる周知の遺跡というものでありまして、これの現状変更は発掘の届け出で足りるわけでありますが、届け出もなされないで工事を施行しました東千葉土地区画整理組合においては、そういう遺跡であるということを知らなかったということでありますが、土をとる採土の作業を始めて、その結果かなりの部分が破壊されたようであります。破壊が起こった段階で千葉県の教育委員会が気がつきまして、直ちに指示をいたしまして工事を中止させ、残り部分の取り扱いにつきまして協議をし、とにかく、とりあえず調査が先決であるということで、千葉県の教育委員会が国の補助を受けまして、八月に発掘調査を実施しようということになっております。
  75. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 具体的な例、まだたくさんございますけれども、時間の関係で以上私はほんの数点申し上げたのですが、これらを考え合わせますと、ますますこの辺で抜本的な対策が必要だ。先ほど文部大臣からも力強い御決意の御表明もいただいたわけでありますけれども、この際、この点についてもう少し私は考えを述べながら、御質問してみたいと思います。  まず第一に、先ほどの文部大臣の御答弁にもありましたけれども、これだけ全国的に、中央の大きな公団はもとより、地方の自治体のやる公社、あるいはさらにこれとは別の道路建設、さらには業者の宅地造成、これもいまのお話のように、正式に史跡に指定されておる、あるいは天然記念物として指定されておるというもの以外は、現状変更は届け出をもって足りる、こういうことでは手がつけられぬ。こういう状態の中では、これはたいへんなことになってしまうのじゃないかということをますます感ずるわけです。  そこで、一つは、これだけ大きな全国的な国土開発といいますか、が行なわれるのですから、ここ数年間は臨時措置としてでもいいから、これは抜本的に、聞き込み調査というようなことにとどまらないで、もっとしっかりした調査費を組み、そのスタッフを中央において強力に編成をして、もちろん地方地方別に人を置く必要のある個所もありましょうが、とにかく事前調査というものを、せっかく台帳もできたことですから、これの拡充も含めて、一ぺんこわしてしまってからでは取り返しがつかない問題ですから、そして永久に残すものもあり、記録を保存すればそれで現状変更をしていいものも多々あることですから、少なくともここ数年の間は、これは抜本的な調査で、しかもこれは文化財保護委員会が直接ちゃんと所管をして調査をする。全調査費が、さっき文部大臣もおっしゃったけれども、三千万円ですか、こういうものでは全くどうにもならぬと思うので、この点については各省でも考えていただく、特に大蔵省としては十分ひとつこの点を認識されて、今後文部省の予算、特に来年度の編成においては、この文化財の基礎的な事前調査費用については抜本的な処置をとっていただきたい。私は大蔵大臣にぜひ出ていただいて——この長い歴史を持ち、美しい自然と、しかもきわめてすぐれた英知と豊かな芸術性のある文化を残してきた日本民族の過去の文化遺産というものを科学的に明らかにしていくというそのことが、私はほんとうに国を愛するというようなことに通じていくと思うのです。そういうことをいいかげんにしておいて、幾ら国を大事にしろなんと言っても、私はいかぬと思うのです。そういう意味からも、これはもう思い切った予算措置をし、また、それに応じたスタッフの整備をする必要があると考えるのですが、ひとつ大蔵省のほうの文部省関係予算を扱っておる方がおいでになっておると思いますが、御意見を伺います。
  76. 小田村四郎

    ○小田村説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、各種の文化財保護は非常に重要な問題でございまして、特に最近のように国土開発が進んでまいりますと、埋蔵文化財保存あるいは記録の保持ということが非常に重要なことになってまいります。そういう意味におきまして、先ほど文部大臣からもお答えがございましたように、国の予算といたしましては、埋蔵文化財の緊急調査予算を計上いたしております。まあ財政状況が本年度からいよいよ国債発行のやむなきに至ったという状況でございますので、これを大幅に増額するということは一般的に相当の困難を伴うと思いますけれども、私どももできるだけの努力をいたしたい、かように思う次第でございます。
  77. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 小田村主計官にもひとつぜひ御努力を願わなければならないと思いますが、これはもっと最高の政治的判断の問題にかかわってくると思いますから、少なくとも大蔵大臣なら大臣がいろいろ意見を聞くような際に、小田村主計官はひとつ本日の御討議を十分御参考にしていただいて、これは思い切った措置をしなければいかぬという御主張をぜひやっていただきたいということを要望したいと思います。  それから、これは単なる予算だけではだめなんであって、この際もう一つお聞きしておきたいのは、いわゆるこういう文化財があって、いまの事前調査の話ですが、具体的に今度調査から発掘調査をしたり、保存をしたりするという段階になりました場合に、一応原因者負担という原則が閣議了解か何かで立てられているそうで、先ほど来お話がありましたように、それぞれの公団あるいは公社とか協会とか、地方自治体の場合にはいろいろな名称を使っておりますが、そういうところが出す、民間の場合であれば、その建設会社が出すということになろうかと思いますが、このたてまえが一番合理的なのかどうかということにもやはりかなり検討を要する面があると思います。私はいまのやり方がいけないと必ずしも断じないのですが、文部省のほうも、文化財保護委員会のほうも、予算を持って事前調査等は直接できるように、さらにその上具体的な発掘調査について公団側が持つ、こういう二本立てでいくのがよろしいのか、もっとこれを統一したほうがいいのか、こういう点はさらにこの際検討をしておく必要があると私は思いますが、これについてもし御見解があれば、大臣からでも、公団側からでも、事務局側からでも、ひとつお考えを伺いたいと思います。
  78. 村山松雄

    ○村山説明員 私から最初に概要と従来の経過を申し上げますと、文化財保護につきまして関係各省庁が協力するようにという閣議了解が昭和三十二年にできまして、それ以来、文化財保護委員会事務局におきまして、関係各省庁並びに最近は開発建設を担当される公社、公団がふえてまいりましたので、それらのところと文化財調査保存等に関しまして、これがいたずらに破壊されることのないよう協議をやってまいっております。一部の公団とは事前調査に関する覚え書きなどを交換しております。そこでの考え方で御指摘のような分担が現在一応なされておるわけでございまして、文化財保護委員会事務局といたしましては、遺跡に関する一般的な調査、それから個々の遺跡あるいは史跡等に関する埋蔵物はどんなものがあるかという分布調査、それから保存を主体とする場合の調査、それから記録作成のための調査、ここら辺のところは、文化財保護委員会において緊急調査費を計上して、都道府県と連携を保ってやろう。それからいよいよ開発のほうがかなり具体性を帯びて、開発をする前に発掘調査をやる場合には、原因者と申しますか、事業者のほうの負担でこれを行なうという大体の申し合わせができましてやっておるわけでありまして、私どもとしては、両者協力することによりましてそれぞれ特色のある調査ができるのじゃないか、かように思っておる次第でございます。
  79. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これについてはまた私も今後十分研究してみたいと思いますので、一応いまお考えを開陳されましたから伺っておくことにいたします。  そこで、これは私が文化財問題に取り組んだ最初のきっかけになった事件——都下国分寺の史跡指定地区に知らないうちに業者が家を建てたというところからこの話が始まったのですが、その際、それぞれその建築業者あるいはそこに住んだ人から言わせますと、何ら違法なことをやっていないんですね。いまの法のシステムでちゃんと認可をとり、建築許可を得て建てた。建ててみたところが、実はそこは史跡だった。これは具体的には監督を委任されておる市町村の責任ということになって、たしか国分寺市の担当官は軽いけれども処分を受けた、こういうことになったと思います。私はそのとき、処分するしないの問題ではなくて、こういうことが起こらないように、そういう貴重な文化財に触れるようなことがあれば、どこかで必ずかちっとひっかかるような行政的な仕組みというものがぜひ立てられる必要があるということを指摘したわけですが、その後台帳等ができてPR等をやっておられると思いますが、現在もこういうようなことがないような方途が講じられておるのかどうか。結局台帳によるPR程度しか、これを防ぐ道はいまだに講じられていないのか、その点をちょっとお聞かせ願いたい。
  80. 村山松雄

    ○村山説明員 御指摘のように、文化財の破壊は、それが文化財であることを知らないために行なわれる事例がございますので、少なくともそれは防止しなければいけないということで、指定物件に関する台帳はもちろん、埋蔵文化財につきましては、周知の遺跡につきましても年次計画で台帳をつくりまして、関係省庁、公社、公団、都道府県、市町村というような直接事業を担当するところ、それから関係の行政を担当するところにはこれを配付いたしまして、知らないために破壊が起こるということを防止するようにつとめておるわけでありますが、私どもといたしましては、関係行政機関としては、末端の段階で都道府県、市町村につきましては教育委員会文化財保護行政を担当しておりますので、ここを中心といたしまして台帳などを整備させ、連絡させるわけであります。残る問題は、文化財保護を担当する部局と、建設開発等を担当する地方公共団体レベルの部局との連絡を、より一そう強める必要があるのではないかというようなことを考えております。  それから建設開発事業に関しましても、公共団体や公社、公団等におきましては私どもの連絡を緊密に受け入れてくださいまして、個々のケースにつきましても協議、協力をいたしまして進めた結果、いたずらなる破壊は防止できるような状態になっておりますけれども、先ほど来の御質問にありましたように、民間レベルの建設機関による開発につきましては間々遺憾な事例があとを断たないというのが現状でありまして、一そう関係省庁、行政機関等と連絡を緊密にいたしまして、遺憾な事例の防止をはかっていきたいというのが私どもの基本的な態度であり、またやっておる実情でございます。
  81. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 お考えはよくわかりますし、ぜひそうなくてはならないと思いますし、これが連絡を緊密にして遺憾なきを期すということが、さらに具体的には、事務的にどうしてもひっかかるようなシステムにするくふうが私は必要だと思うのです。そういう点の御研究をもっと願いたいと思うことと、何よりも私は、やはり予算の裏づけとそれに基づく人の配置の問題だと思う。これはいまお話しのように大きな公団、公社等については専門担当官も置かれるでしょうし、その担任者が置かれるでしょうから、連絡はある程度いくと思いますが、末端の民間等にはこれは非常に不十分でございます。その場合には、やはり行政機構としての県、市町村の文化財保護を担当する部門が整備されているかいないかによって、たいへんな違いが出ると思うのです。学者の意見などを聞きますと、県の教育委員会文化財保護の部面に考古学を専攻した人が一人なり二人なりいるところは、その県内における調査というようなものが、その県内におけるいろいろな民間の学者や、あるいは学校の先生方や何かで考古学に趣味を持っている人たちの組織をかなりよくつかんで、それを十分に生かしながら協力を求めて、かなりいい調査ができている。ところが、そういう点に弱いところはなかなかこれが不十分である。末端の市町村にいきますと、これはもう一人の係官で、文化財保護の担当の係というのが十も二十も仕事をしょっておって片手間にやっておる、こういうところが一ばいあるわけですね。そこで私は、先ほど来申し上げたとおり、いまのきわめて大ざっぱな——まだまだ重要なものがたくさん漏れているかもしれない。台帳だけでも全国に十四万個所ある。これを整備拡充したら、おそらく一けた上がるのじゃないかと思われます。そういうところに、いま大建設事業が、あるいはまた小さい事業もあわせてどんどん進んでおる。したがって、これについては、もっともっと県及び市町村にこれを担当するかなり専門的知識を持った方が配置されるということが必要であり、そういうことに対する人件費なりあるいはPRの問題なり、その他文化財保護に関しての諸活動に対して、地方自治体の活動も十分確保されるような体制、たとえば財政需要額の算定などにも十分予算的にも配慮されますし、また、専門家の配置というようなことについて、自治省が文部省なり文化財保護委員会との緊密な連携のもとに、十分各地方自治体を指導する必要が私はあろうと思うのであります。そういう点につきまして、自治省からもきょうは横手交付税課長がお見えになっておりますが、今日まできわめて不十分だったのじゃないか。国分寺の事例を私は直接行って見まして、とうていその担当官を責めるような気持ちはわいてこなかったのであります。ですから、そういうことを含めて、これは自治省にも十分御配慮を願う面があるのじゃないかと思いますが、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  82. 横手正

    ○横手説明員 ただいまいろいろのお話をお伺いしたわけでございますが、各市町村段階まで専門家を置くということは、実質的に非常に困難な面があろうかとも存じます。県段階で、文化財の専門委員会といったものは各県置かれておるようであります。そうしたところで十分指導監督体制ができれば、こういう感じがいたすわけであります。  それから、文化財保護の部局は教育委員会が所管でございまして、文部省の指導によりましてその行政を進めておられると考えております。  なお、財政需要の面でございますが、都道府県分につきまして、文化財の専門委員会関係経費というのは、わずかではございますが、めんどうを見ておるわけでございます。
  83. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いままではそうでしょうが、私は今後は、必ずしも市町村全部に機械的にとは言わないにしても、少なくとも市あたりの規模には、やはり考古学を直接専攻しないというまでも、それらのある程度の知識を持った方が配置されることが今後ぜひ必要じゃないか。それから特に文化財の多い地帯などは、市町村までやはり配置を考慮する必要があるのじゃないかということで、今後この点は十分御検討を願いたいと思います。  そこで、それにいたしましても、しからばいまそういう人が得られるのか、こういうところになりますと、これはまた文部省の問題に帰ってまいるわけですが、天城大学学術局長に特にきょうおいでを願っておりますけれども、こういう点で考古学の今日の研究体制というものは、現在の状況ではまだ不備ではないか。年々文部省も力を入れられまして、講座等も昨年、一昨年あたりから逐次拡充の方向をとっておられると思いますが、現状及び将来についてどうお考えであるか、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  84. 天城勲

    ○天城政府委員 いま課題になっております埋蔵文化財関係の専門家の養成の問題でございますが、大学の講座で申しますと、主として考古学が中心であろうかと思います。なお、関連いたしまして、民俗学とかあるいは文化人類学等の講座も関係があろうかと思っております。  現在考古学の講座の置かれております大学でございますが、具体的に申し上げますと、国立大学では東北大学、東京大学、東京教育大学、静岡大学、名古屋大学、京都大学、それから岡山大学、広島大学、それに九州大学の九大学でございまして、国立大学で申しますと、大体北から南にほぼ分布している形に講座ができております。なお、私立大学では、講座の関係が名称その他で必ずしもはっきりいたしませんので十分把握できておりませんが、明治大学とか国学院、この両大学では非常に活発にこの研究をやっておられますし、学生も研究にいそしんでおるわけでございます。  従来の考古学の講座でございますけれども、社会的な需要と申しますか、研究者の活動範囲からいって必ずしもたくさん置かれておりませんでしたけれども、最近は内外の情勢から考古学の講座を置くという機運がだいぶ出てまいりまして、ただいま申し上げました国立大学の例で見ましても、東京教育大学あるいは岡山、広島等は四十年度に設置された講座でございますし、静岡は本年度、四十一年度から開議したような状況でございまして、最近各大学におけるこういう認識も非常に高まってまいりまして、従来に比して、近年こういう講座の増設が起こってきているというふうにわれわれも感じておるわけでございます。  なお、大学の講座だけではございませんで、積極的な研究部門もございますので、東京大学の東洋文化研究所、これは必ずしも日本の問題だけじゃありませんが、人類学、考古学に関する研究を進めております。京都の人文科学研究所もこういう講座を持っております。北海道等では考古学という講座はございませんが、主としてアイヌの文化を中心とした研究所も持っておるような状況でございます。私たちもこういう機運にできるだけ力を入れてまいりたいと思っておりまして、本年度の研究費の面につきましてもいささか改善を加えたわけでございまして、従来考古学というものは、現在もそうでございますけれども、文学部の史学科に置かれておるのが普通でございますので、いわゆる講座当たりの研究費の考え方も、自然科学と違って非実験、実験系統でない系統に入っておったわけでございます。最近フィールドワークが非常に多くなってまいりますし、また、科学的な手段もかなり導入されておりますので、四十一年度から実験系にこれを直したわけでございます。そういう点、あるいは学生教育上実地指導ということも必要になってきておりまして、教官の学生実地指導費も計上するというような形で逐次改善してまいっておるわけでございますが、今後とも大学側あるいは各研究所側の要望を十分聞きまして、必要なところに充実をはかっていきたいという考えでございます。
  85. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま局長のお話しのように、ここ二、三年非常に考古学についても機運が高まってきて、事実必ずしも考古学者になるのでなくて、また考古学専攻でなくて、たとえば高校や中学の先生などで、たまたまそこにいる大学の考古学の先生や民間の研究家を中心にグループをつくって、全く献身的にその調査、研究に当たっておるというのが全国的にありまして、これがわずかに今日の危殆を救っていっておるのではないか。中央文化財保護委員会のなかなか及ばないところを、幸いこういうものがある程度補っておるような形になっておりますが、特にいまのお話の中で年々拡充され、実験講座として格づけしたと申しますか、これは非常に適切な御処置だと敬意を表します。これによって人員につきましても、あるいは研究費等についても格段の拡充を見たと思いますが、ただ、実験講座でありますから教授、助教授、助手とそろうのがたてまえだと思いますが、実情は、まだ大学によって特に助手を欠いておるとか、あるいは助教授が欠けておるところがあるとか聞いておりますけれども、これは定数の問題にもいろいろ関連があると思います。あるいは学長の配慮で、別なほうから助手を流用しておるようなことでまかなっておるところも運用面であるようでありますが、そういうこそくなことでなくて、少なくともいま置かれておるところで完全な配置を来年は確実に期していただきたい、これを第一に御要望申し上げます。  それとともに、北から南までという話がありましたけれども、いまのではまだまだ足りない。私が先ほど申しますように十四万カ所、これは拡充すれば一けたくらい多くなるかもしれない。こういう状態の中で、しかもここ数年に需要が増加されてくるのでありますから、これは三、四年かかるかもしれませんけれども、こういう方の養成はまだまだ今後長く必要なわけでございますし、文化国家としての日本の建設の上には欠くべからざるものでありますから、思い切った今後の拡充をお願いしたいと思うわけです。ことに現在、お話がありましたように、東北からずっと置いてありますけれども、北海道が、あの広い地区で今後いろいろまたあそこの開発も進むと思いますが、北海道の大学にないのです。これはぜひ必要ではないか。ただ、幸い北海道で、医学部の先生で解剖学の教授で趣味として考古学をやっておる方があるので、その方を中心に北海道の研究なり調査をされるグループができておる。こういうことではいかぬと思うのですね。いかぬといって、これは感謝しなければなりませんが、これで満足しちゃいけないのであって、解剖学の先生が趣味でやっておられ、かろうじてささえているというのは、これは日本の大学のあり方として、大学行政としても、学問文化を担当する文部行政としても適切でない。あるいは北陸、山陰——四国もないですね。四国のどこかの大学に考古学講座が置かれている。四国もあれは一つの単位になっておりますから、最小限度北海道、北陸、山陰、四国、ここにも、最も適切な人が得られるところに講座を設ける方向で、一挙にそこまでいかないにしても、どの地方にもこうした文化財保護の研究の中枢になるような研究のセンターの大学ができるように——文化財保護ということでなく、もちろん考古学という学問のでしょうけれども、あるいは民族学にせよ、とにかく大学の基礎的な学問の振興という面からも、ひとつ万全の態勢をとる必要があると思うのです。そして、需要がないというお話がありましたけれども、今後、たとえば地方のそうした部署に多少の素養のある方を配置するという大きな自治省の人事方針、指導方針というのが出てくる、また、政府の方針がそうなってくれば、これはなかなか足りないわけでありますから、いまでも非常に場違いの趣味の人の力でもって補っているというのがうんとありますから、こういう研究体制あるいは専門家養成の体制について、さらに一そうの思い切った御努力を要望する次第であります。  これに関しまして、さっそく来年度の予算にも、ひとつ大学局長が先頭になりまして、そういう方面の拡充にも——先ほど助手を欠いているという、すでに置かれているところの拡充はもちろんでございますけれども、さらに一つでも二つでも、いま申し上げたようなところが新設される方向で御努力願いたいし、大蔵省当局にも、そういう点についても十分御理解を願いたいと思うわけです。  時間がまいりましたので、ごく大ざっぱな、なでたような御質疑に終わってしまいましたけれども、以上、非常に重要な時期に差しかかっておりますので、先ほど申し上げました日本民族の過去の貴重な文化遺産や英知、あるいはまた、科学的に見ましても各時代の生産力の発展とその文化の形成、社会の形成というような関係が、埋蔵文化を大切に扱い、科学的にその調査を進めるということを除いては永久に失われるわけでありまして、これは祖国のためにも、あるいは世界の学界のためにもきわめて重要な責任のある仕事でございますので、この際ひとつ文部大臣は、ぜひ来年度予算にあたりまして、政府に抜本的な——これは佐藤総理に申し上げることかもしれませんけれども、まあひとつ、有力なる閣僚である中村文部大臣に切に御期待と御希望を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思いますが、最後にひとつ大臣の御所見、御決意を承りたいと思います。
  86. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 近年この文化財についての関心が一般的に非常に高まってきまして、先ほど大学局長からもお答えを申し上げましたように、考古学に関する学科増も逐次四十年、四十一年とふえてきておるわけです。それから学生の状況を見ますと、やはり世論の動向に準じまして、学生の応募数もふえてきておる、そういう方面に関心を持ち、研究をしようという人もふえつつありますから、こういう点につきましては、今年の予算で初めて実験講座に変えまして、従来とは、そういう経費の面では相当飛躍的な変化をしたわけですが、今後なおこういう点をはじめ、とにかく文化財というものは、きょうも長谷川さんからそれについての問題点を数々御指摘をいただきました、こういうふうに文化財に関する関心が高まるということが必要で、文部省が幾らやっきになりましても現地のことはよくわかりませんから、全国の都道府県教育委員会の傘下にある県段階の文化財委員会でも関心を持っていただき、これと十分連携をとって——なお現在非常にわれわれ残念に思っておりますのは、それらの連携をとり、事前の調査を十分に行なう経費が実にどうも乏しいのでありますから、そういう経費を何とか充実をいたしまして、万全を期するようにつとめなければ、実際文化遺産というものは破壊してしまったらもう取り返しのつかないものでありますから、大いに文教行政の上でも重点を置いて努力をすべき事項である、かように心得ておる次第でございます。大いに文部省としても努力を続けてまいりたいと思います。
  87. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 終わります。
  88. 八田貞義

    八田委員長 午後一時半まで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  89. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件の調査を続行いたします。高橋重信君。
  90. 高橋重信

    高橋(重)委員 私は、当委員会でかつて五回にわたって御質問をいたしました公立学校共済組合の運営についてであります。  五回にわたって、二月十六日から質問して今日に至ったわけでありますが、その間におきまして、特に岐山荘、岐阜県支部のいわゆる不祥事件でありますが、この問題について今日まで検察当局に捜査がゆだねられておりますが、結論が出ておらない。そういう関係から、地元におきましても、あるいは八十五万の組合員からもこれに対して疑惑の目で見られ、あるいはその取り扱いについての不信感というものが出てまいっておるわけであります。特に検察当局が、岐阜県警察本部が三月の七日に地検へ送付いたしておるわけであります。大体五カ月たっておるわけでありますが、いまなお、これまた結論が出ておらない。そういう事情である上に、当時問題になっておりました水野教育委員が、もはやこの問題は不起訴になるのだ、だから岐山荘の土地購入として、借りた地主に対して土地の仮登記をせよ、こういうようなことも言われておるわけであります。したがって、私は本日ぜひこの問題を解明していただいて、御当局の誠意ある御答弁をいただきたいと思うのであります。  まず最初に、文部大臣にお尋ねするわけでありますが、五回にわたって委員会で私が質問し、それに対して文部大臣から御答弁をいただいておるわけです。そのいただいた後の経過はどうなっておるかという点に焦点をしぼりまして、お尋ねいたしたいと思います。これは速記録によりますと、二月二十三日の委員会で、「こういうふうな事件になりました以上は、十分実態を究明して、そうして適切な処置を講ずるようにつとめるのが私どもの立場だと思いますから、その点は十分に事務当局にも命じまして、事態を明らかにしたい」、こういうふうに文部大臣は明確に御答弁なさってみえるわけでありますが、この事態を究明されまして、その後事務当局に命じて事態を明らかにされたのだが、どういうふうに現在なっておるか、あるいはどんな処置をとられたか、そういう点を的確にひとつ御答弁願いたいと思います。
  91. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 まず、事務当局から公立共済のほうに十分に実態の調査、疑問の点を解明しておくようにということを連絡いたしまして、その努力はしたわけでありますが、はたして公立共済のほうで調べたとおりであるかどうかについては、警察及び検察庁の捜査完了を待って、そういう資料と突き合わせてみませんと、はたしてこちらの調べた事実が確かであるかどうかの確認が実は困難なわけであります。したがって、そういう時期を待ちまして最後の突き合わせをするように報告を聞いておるわけであります。その上でわれわれとしましては、ただ御承知のとおり、教育長その他教育委員等の人事権が文部省にはありませんし、それから先をどうするか、あるいは公立共済の本部で責任があるのかないのか、こういうことも究明をいたしましてその上で考えたい、こう思っておる次第でございます。
  92. 高橋重信

    高橋(重)委員 大臣並びに局長にお尋ねするわけですが、なるほどいま検察当局へ問題は移譲されておるわけですが、文部省が共済組合の理事長を任命する任命権を持ち、あるいは監督権を持ってみえる立場からいって、実際調べられたその内容なりその実情はどんなふうであるか。これは検察当局は別問題として、文部省としてはどういうふうにこの問題を把握していらっしゃるか、重ねてお尋ねいたします。
  93. 宮地茂

    ○宮地政府委員 先ほど大臣から答弁いたしましたような趣旨で、私ども共済組合本部のほうに御指摘の点の調査を依頼いたしまして、ある程度判明いたしました点を申し上げます。ただ、これは先ほど大臣が申しましたように検察当局の手にゆだねられておる現段階でございますので、十分な調査でもございませんし、また、書類等完ぺきなものもないといったような前提のものでございますので、そういう点は御了承いただきたいと思います。  大体、私実は七月から管理局長になりましたので、いままでの引き継ぎを受けましたり、あるいはいままでの速記録等を読みまして、その結果一応いま先生のおっしゃいます趣旨の点は、例の三百二十万円の内訳の点が中心になろうかと思いますので、その点につきまして共済組合本部で調査をして私のほうに報告がありました点を申し上げます。  これは支払い金利といたしまして百五十一万円余り、それから、その他諸経費といたしまして七十五万九千円余、その内訳は謝礼金が二十八万円、登記手数料等が九万円余り——これは千円以下は切り捨てさせていただきますが、それから打ち合わせ会が二十二万九千円余、それから分筆による端数補償金九万八千円、その他雑費が六万円余、他に預金が百三万七千円余というふうになっております。そして、前回、前々回にいろいろこの内訳の中で、高橋先生なり横路先生のほうで特に御指摘がありました点、一、二の例を申しますと、打ち合わせ会費二十二万九千円の中に一回で十八万三千円余の打ち合わせ会費がある、こういう点についての御指摘もございましたが、これをその事のよしあしは別といたしまして、一回にこれだけのものが支出されたのではなくて、実は九回の打ち合わせ会がなされた。それをまとめて支払った金額が十八万三千円である。打ち合わせ会費一度に十八万円払っておるようなのは、実は九回分を一括して支払ったものであるという報告でございます。それから謝礼金二十八万円の中で、いろいろ御指摘がございました中の水野氏渡しの十六万円、これはいろいろ現地でのこの土地の売買についての打ち合わせ会、それに関連して車代とか数回の会合費、こういったようなものの水野氏立てかえ分が、謝礼金という名義で一括して支払われている、こういったような報告がございました。その他雑費六万円余りというのは、ちょっと帳簿も正確なものがございませんし、この六万円余の雑費についてはいまだはっきりしないといったような報告がございましたので、お答え申し上げます。
  94. 高橋重信

    高橋(重)委員 そういう内容はこの前御説明があったのだが、そういう内容をあなた方は再確認されたわけですか。再確認した上で文部省としてはどういう処置をしようとするか、検察庁当局から結論が出なければ、それまで黙って見ておるのか。あなたのほう独自で調査し、結論を出すのだ、具体的に処理するのだ、こういう御答弁をいただいておるわけです。そうでしたね。ここにも書いてありますごとくに、いただいておるわけですが、どうするのです。
  95. 宮地茂

    ○宮地政府委員 いま申しました点も、これは検察のほうに回っておる問題でございますが、前回いろいろ高橋先生、横路先生等から二、三例をお出しになられましておっしゃいました。なるほど、文部省といたしましても、聞いておりまして不審な点もございます。そういった意味で大臣も御答弁になったと思いますが、そういったような点について、私どもも釈然としないので、本部のほうにその内訳を確めるように調査をお願いしたわけでございます。それは先ほど御返事したとおりでございます。しかしながら、この問題につきまして、それでは文部省独自で処置すべきである、これは一つのお考えと思いますが、検察当局のほうも鋭意この問題については事柄を進めておられるようにも聞いておりますし、おそからずその結論が出ることと思いますので、私のほうといたしましては、一応その決着を待ちまして処置したほうが適切であろう、こういうように考えておる次第でございます。   〔上村委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 高橋重信

    高橋(重)委員 そういうことはこの前と同じぐらいな話で、ちっとも進展しておらぬと思うのですよ。これは二月二十五日に、天城局長は、「文部省といたしましても、今後の共済組合の運営についてここでもう一ぺん組織的にも、事務の体制においても考え直す点がいろいろ反省させられたと思っております。御指摘のように、抽象的に反省するというのではございませんで、これを機会に具体的な事務執行体制について、これも本部も含めまして検討するつもりでおりまして、」——どういう検討をされたかということをお尋ねしておるのであって、そこら辺は、何カ月も前と同じことを答弁されておっては困るですよ。
  97. 宮地茂

    ○宮地政府委員 この岐山荘の問題につきましては、検察当局のほうで捜査も進められておりますので、一応この問題は、事の決着はついておりませんが、ともかくまことに遺憾なでき、ことであったというふうには反省いたしております。しかしながら、さらばといって、この問題は捜査当局でおやりになっていただいておりますから、その決着をひとまず待つ。しかしながら、他の方面においてこれに類似したようなことが起こるということは、これは厳に戒めなければいけない。そういうことで、共済組合本部のほうといたしましては、この問題のようなことが今後絶対に起こらないようにといったようなことで、組合のほうから各支部長等にも連絡をいたし、こういったことのないように厳に戒めております。ただ、そのために組織をどうするかとか、規則をどのようにするといった形式的な改革は、まだ私のほうへ組合本部としては持ってまいっておりません。ただ、そのことは、こういうことが今後起こらないようにどうすればよいか、いろいろ改善策は十分研究して持ってきてもらいたいということはお願いしてあります。
  98. 高橋重信

    高橋(重)委員 そういうやり方をいつまでもしておってもらっては、ぼくは、誠意あるとは言えぬと思うのですよ。二月二十五日に天城局長が——とにかくあなたのほうは次から次にかわられてしまうものですから、話が続いていかないわけですが、二月二十五日の会議録からとってみますと、天城局長は、「文部省といたしましても、共済組合のラインと同時に、行政上のラインを通じまして、必要な指導助言の規定がございますので、教育委員会、教育長に対して、支部の仕事の執行あるいは職員の福利厚生の業務の執行について十分な指導を行なっていく必要があるということをあらためて確認いたしたようなわけでございます。——どういう指導をしたか、どういうふうに善導されたかということをお尋ねしておるのであって、お話を聞いておると、検察庁当局でいま捜査しておるのだ、だからその結論が出るまでは何ともできないのだというふうに、これはこの前も同じような話であったのです。だから、私が質問して、文部大臣も、確かに制度上の違法をしておるのだ、こういうことは許されぬのだから、文部省からも派遣いたしまして調査して、そうしてこれを処理したいのだ、こういう御答弁もいただいておるわけですよ。そういう上に立って、五カ月たった今日、どうされたかということを私はお尋ねしておるのですよ。
  99. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 この速記録にもありますように、公立共済としては、共済自体に監事もおり、監査機構がございますから、このときの私のお答えとしましては、ずっと前段がありまして、共済の監査機構でまだ解明されてはいない点については、調査をできるだけすみやかにやって明らかにしたいという趣旨のことを述べておると思うのであります。  そこで、岐阜の問題については、いま局長からもお答えを申し上げたように、共済本部に対してできるだけ詰めた調査をこまかくやっておくようにということを命じまして、そういう調査は一応できておるわけであります。はたしてこの調査報告を信頼していいのかどうかということはまだこちらも確信がないわけで、捜査当局の捜査が、途中では捜査の内容を外部に漏らしてくれませんしいたしますが、捜査が結了いたしましたら、そういう捜査の段階で出た資料とも突き合わせをして、そこではたしてなるほどこちらの調査したのが正しかった、あるいはこちらの調査の中でこういう部分はどうも食い違いがあって違っておるようだ、もう一ぺんよく確信を持てるまで調査しなければいかぬというような結論が出てくるわけでございますから、実はそういう段階を待っておる次第でございます。  それから、一般的の問題としましては、先般国会で議論がありました直後に私からも公立共済の理事長及び監事の諸君に、とにかく全国の都道府県にこうした支部があって、それぞれの支部は福利施設がほしい、あるいはあるものを改善したいということで、各県の支部の傘下におる数多くの教職員が組合費を納めてメンバーになっておるんだから、すでにそういうことは、各県で分相応のいろいろな福利施設がほしいということになってくる。福利施設をやるとなれば土地の購入をやる、建物を建てるということになるから、これはよほど公立共済の本部が十分に細心の注意を払っていかないと、岐阜のような問題が起こりかねないと思う。だから、二度と岐阜のような問題が起こらないように、全国の都道府県支部に対して本部として万全の措置をとり、また本部自体も、今後、こうしたような福利施設の建設等の際には十分に支部にも注意を与える。また、自分たちも目を通して、二度と間違いの起こらぬようにしていくべきであるということを、実は重々申しておるわけで、この点はもっともである、今後大いに万全の監督と注意をいたしてまいりますということを言っておりますから、今後目を離さず、十分になお注意いたしますが、そういう措置を講じておるわけであります。  なお、文部省としては教育長会議等もありますから、そういう際に、こういうことについては、この事態が明瞭になればなおその機会においてもそうですか、ふだんからも、大体教育長が支部長を兼ねておる公立共済の制度でありますから、公立共済の支部長としては直接の指示はできないにしても、教育長としての立場では、こちらとしては指導助言の権能がありますから、そういう点は十分に今後遺憾のないようにしてまいるつもりでございます。
  100. 高橋重信

    高橋(重)委員 文部大臣の御答弁も、この前と同じような答弁だと思うのですよ。きょうここで最終的に御質問するのは、この前御答弁いただいたことがどれだけ具体的に実行されたか。たとえば監査報告につきましても、文部大臣は三月十六日の当委員会でこういう御答弁をされておるわけです。「この段階でわからないところはわからないでよろしいが、わかった部分だけを土台にして、そして中間的な監査意見をつける」、「最終的なものが延びそうならば中間意見でも付してもらうことが、本部としてもあるいは監督官庁である文部省としても好都合」と言っておられる。監査意見もいまなお出てこない。そのかわりに管理局長はかわってしまう。福利課長の荒木君もかわってしまう。みんなかわってしまって、新人でわからぬわからぬというような、そこに役所機構の欠陥があると思うんですよ。そういうものが出てきはせぬですよ。せっかく文部大臣から良心的に御答弁いただいておるけれども実がない、実っていかぬということですよ。私はそういうところに不満があるんですよ。
  101. 宮地茂

    ○宮地政府委員 私が引き継ぎましたところでは、いまの先生のおっしゃいました監査報告に関連しての所見というもの、これがないというような御指摘で、御要望もございまして、それは先生のほうへお渡ししてあるように聞きましたが、もう一度それではここで申し述べさせていただきます。
  102. 高橋重信

    高橋(重)委員 そんなことは聞いておらぬ。監査意見がついておらぬでしょう。
  103. 宮地茂

    ○宮地政府委員 監査所見でございます。これは先生にお渡ししたというふうに私は聞いておるのですが……。  それでは、監査をしました三名の者が理事長に口頭をもって通知した所見でございますが、それを私のほうに本部から出させまして、それには、「下記の趣旨のことを理事長に口頭をもって通知した。」という所見になっております。その一つは「本部に関する事項」、それから次に「支部に関する事項」で、一つは「借り入れの事実は、公私何れの資格であっても、その手続は適正でなかった。」「予定地の買収が正式に決定するまでに、支部においてとった一連の措置は、適当でなかった。」「土地譲渡人の諒解を得たとはいえ、前報告書で明らかにしたように、買収価格内でいろいろの操作をしたことは妥当を欠く措置であった。」なお、「本件は目下捜査当局で取調中でもあるので、上記以外の所見については、この際これを差し控えた。」なお付記がございまして、三人の監事さんのうち西川監事さんは、以上のことはそれでいいのですが、それに付加しまして、「別に下記のような所見があった。」というのがついております。それは、「今回岐阜支部長以下のとった措置は、手続上常軌を逸したものであり、譲渡人等に対しての取扱いは妥当を欠いている。したがって坪当り二、〇〇〇円は不正支出であり、精算書の内容は事実と喰い違っている。」ということを西川監事だけが付記された所見になっております。以上でございます。
  104. 高橋重信

    高橋(重)委員 その監査報告書意見書というものは、私いま初めて聞くわけですが、そういうものがありましたらわれわれの手元へそれを配付していただきたいということをこの機会にお願いします。  そこで、とにかく監査報告書によりましても意見書によりましても、不穏当であり、不法である。総括的に言えばそうだと思うのです。そうじゃないですか。適切じゃない、そういうことになっておるのです。九千三百円で買った、そういう精算報告書が出ておる。しかもこれは、虚偽の公文書をつくったんだということは本人も認めておるわけです。不当行使をしたということも本人は認めておるわけです。それは文部省としてもはっきり握ってみえると思うのですが、その点どうですか。
  105. 宮地茂

    ○宮地政府委員 その点につきまして、私どもとして、個人的と申しますか、いろいろ考えもございますが、まことに恐縮でございますけれども、一応捜査当局で捜査が進んでおりますので、私どもの見解、これは差し控えるのが筋だと思いますので、差し控えさせていただきます。
  106. 高橋重信

    高橋(重)委員 そういうことはないんじゃないですか。何となれば、精算書報告書が去年の十月二十三日に出ておるでしょう。それと違っておるでしょう。それと本人も、記者会見なりあるいは岐阜県警察本部が調査の段階では、公文書が偽造だったということは本人も認めておるのだから、あなたのほうも認めておるのでしょう。精算報告書と違っておるということは、あなたのほうも認めておるのでしょう。そんなものは検察当局にばかりもたれておる必要はないですよ。そういう点はどうですか。
  107. 宮地茂

    ○宮地政府委員 それは坪当たり七千円、それにプラスされた税関係の三百円があるようですが、七千三百円と九千三百円と二千円の差がある。これにつきましてはその差額があるようでございますが、ただ、その土地を売った人が九千三百円ということに判こを押しておられますので、その点が、一応これは事実問題、形式問題、いろいろございましょうが、そういった点もあわせて、これは捜査当局でおやりいただけるものというふうに私ども考えておりますので、いろんな行政当局としての意見もこの際漏らさないほうがいいんじゃないかと思います。  それから、これは速記録で私は読んでみましたが、一応捜査当局のほうへ送られておるのは、虚偽公文書作成不当行使ということであるようでございます。  なお、先ほど私が監事の所見を読みましたことに対しまして、不法、不当というふうに書いてあるではないかというお話でありましたが、不当とは書いてございますが、不法というような所見は出ておりませんので、一応……。
  108. 高橋重信

    高橋(重)委員 これはいつまでやりとりしておっても発展せぬと思うのです。特に前からの流れがあるわけですが、管理局長もかわってしまい、課長もかわってしまって、このときのやりとりの零囲気等もわからないわけです。あなたのほうは、とにかく擁護するという立場で逃げるからですが、なかなか結論が出ぬと思うのです。  そこで、文部大臣にお聞きしておきたいのですが、検察当局で結論が出たらば早急に結論を出す、こういうことですか。
  109. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 さようにいたしたいと思います。
  110. 高橋重信

    高橋(重)委員 そうすると、これは検察当局に問題が移るわけでありますが、三月七日に県警本部から地検に送られたわけです。約五カ月たつわけです。先ほども申しましたように、これは津田刑事局長にお尋ねするわけですが、私が地検にたびたび出向いて、この問題を一日も早く解決されるようにお願いしたところ、岐阜の地検では人員が不足しておるという話で、いまから二月ほど前にも、大綱は決定しておるけれども碁で言うと寄せだ、こう言うて、しばらく待ってくれ、すぐ出るという話であって、これもかれこれ五カ月になってしまったわけですが、岐阜県の岐阜地方検察当局では、これはだれが主任でおやりになって、何人くらいでこれをおやりになっておるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  111. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの件は、当委員会でもすでに御調査になっておりまするが、いまお話しの、本年三月七日送致されました伊藤一郎ほか数名にかかる虚偽公文書作成、同行使並びに同幇助被疑事件と、それから本年三月三十日に三原大乗ほか四名から告発されました伊藤一郎に対する虚偽公文書作成、同行使、詐欺、業務横領等の事件の二つになっているわけです。そこで、現在、この事件の主任検察官は検事北原外志夫でありますが、あと、検察庁の仕事といたしまして、主任検事に対しましていろいろ応援検事を出すこともありますが、それは終始応援しているということではなしに、ある事柄で手が足りなくなれば、その事柄に関して応援をするというようなことになっておりますので、この事件で何名かかっておるかということは、その時期時期にしたがって違いますので、必ずしも一がいに申すこともできませんし、私どもも、何人かかってどうしておるかということは、詳しく内容は承知いたしておりません。しかしながら、この事件につきましては、すでに直接取り調べた参考人は、告発人、被告発人を含めまして約三十人となっております。さらに東京関係中央関係参考人も取り調べを終わりております。そこで、現段階はどういうふうになっておるかと申しますと、この事件につきまして当委員会で御調査になっていることはすでに連絡して承知しておりますので、本件につきましては大体におきまして捜査を終了したという段階に逃しております。  そこで、数日前から岐阜の検事正その他が名古屋高等検察庁に集まりまして、処理方針について最終的な協議をいたしております。本日も、けさ連絡いたしましたが、なお協議を続行している、こういうことでありますが、大体の処分の予定日は八月の中ごろで、それまでにはできる、こういうような回答にけさ接しております。  なお、最終段階におきましては、いずれ最高検察庁を通じまして私のほうへも連絡はあるはずでございます。
  112. 高橋重信

    高橋(重)委員 いま津田局長から御答弁がありましたように、捜査段階は終わった、八月の中旬ごろには最終段階として発表できる、こういうふうに私確認しているわけでありますが、特に、岐阜県は知事選挙が八月二十四日から始まるものですから、こういう問題が政治的にいろいろ利用されたり、あるいはいろいろなデマが飛ぶということは好ましくないわけですから、そういう岐阜県の実態等も把握されまして八月の中旬だということをおっしゃったわけですが、当局としては何らかの方法で一日も早く促進方を、ぜひ私はお願いいたしたいと思うわけであります。  それからもう一つ、これは文部当局にお願いするわけですが、八月の中旬にこの結論が出るということはいまはっきりしたわけですが、文部当局としての結論が、そういうものが出たらまたその上に検討してというふうで、一カ月も二カ月もかかっておっては困るわけです。特に、最高責任者である教育長で、制度上も教育長なるがゆえに自動的に支部長になるのだ、だから、これを罰するとかあるいは懲戒するということはできない、こういうこともあなたのほうはるる説明があったわけですが、制度的にこの際直すべき方向へいくべきじゃないか。全国にもこういう問題は例が少ないわけでありますが、しかし、ただ一つありましても、岐阜県の教育長に対して、支部長に対して法的に何らの懲戒ができないとか、あるいは処罰ができないということではいかぬと思うのですが、そういう点はどうですか。制度上で直していきたいというような考え方はあるのですか。
  113. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 これは実は私ども考えさせられるわけですが、公立共済というもの自体が、各県が給与の支払いをしている教職員の福利のための団体でありますから、そこで、全国公立共済としては一本でありますが、これはプール計算をするだけの一本で、やはり県内の教職員の福利については、その県の一番教育の責任者が目を配り、施策を考えていくのが妥当である、こういうところから県教育長を支部長に充てるということが出ているのだと思うのです。だから、一つ二つのそういう失敗があったからといって、それではこの制度を根本的に改めることが公立共済の本体からいっていいのか、あるいは、さようなことは二度と起こらないように、他の指導監督の強化をしていくのがいいのか、ここらはよほど研究を要すると思うのです。こういう点につきましては、各府県や公立共済とも十分協議をこらして、この事件解決後研究をいたしたい、さように思っておる次第でございます。
  114. 高橋重信

    高橋(重)委員 雨降って地固まるという前向きの姿勢でぜひこの問題に取り組んでいただきたいということを最後にお願いいたしまして、次に移らせていただきます。  次は著作権の問題ですが、ここに六月六日の週刊サンケイに日本音楽著作権協会の恐喝事件というものが出ておるわけです。私は、もっと早くこの問題を当委員会で取り上げまして、真相を究明いたしたいと考えておったわけですが、いろいろな関係できょうまでおくれてしまったわけです。  この内容を読んでみますと、すでに皆さんも御承知のように、日本音楽著作権協会の内部でごたごたがあって、それにつけ込みまして一千万円を恐喝した、しかもこの恐喝した男というのが、琴の先生で有名な宮城道雄氏の養子である宮城衛氏、また、それに関連しました宮城某という男が一千万円を日本音楽著作権協会から恐喝いたしたわけであります。そして、新聞なりこれらの記事の内容を見てみますと、著作権協会が腐敗堕落をしておって、たたけばたたくほどほこりが出る協会だ、こういうことを言っておるわけであります。しかも、この問題は検察当局で取り上げられまして、たしか起訴にされておるというふうに私は記憶しておるわけでありますが、この事件内容は、ただ単なる恐喝事件ではなくて、文部省が指導なり監督する日本音楽著作権協会といって、日本でただ一つの公益法人であるわけであります。そういう関係におきまして、私は文部省の立場を承り、またこれの真相をお尋ねいたしまして、この問題についての疑惑なりあるいは不明朗な点を解明いたしたいと思うわけであります。  したがって、まず最初に、日本音楽著作権協会というものにおいてこういう事件があったかどうかということについて、文部当局は御存じであるかどうかということをお尋ねしたい。
  115. 安達健二

    ○安達説明員 日本音楽著作権協会と申しますのは、社団法人でございますが、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律によってその事業認可された団体でございまして、昭和十四年につくられまして、会員は国内の作詞作曲家約千百人、それから会員以外で音楽の著作権を信託譲渡しておる者が千八百名程度ございます。それからまた外国の団体とも相互契約を結びまして、内外の音楽著作権の使用の許諾と使用料の徴収、分配の業務を行なっておる団体でございます。  この団体につきまして、一昨年秋会長選挙のことを契機といたしまして、当時会長が西條八十さんでございましたが、それを支持する会員とこれに反対する日本作曲家組合の会員との間で、協会の運営をめぐって対立いたしまして、互いに相手方を名誉棄損、背任等で告訴する等遺憾な事態が出てまいったのでございます。しかしながら、その後両者の間のトラブルを憂慮する人々の説得等もありまして、話し合いによりまして、一昨年の十月には告訴を取り下げて、協会内に刷新委員会を設けまして、自主的に協会運営の改善合理化の方途を検討するということになったのでございまして、その刷新委員会が約六カ月にわたりまして協会の定款、機構、経理等の問題について審議を重ねて、昭和四十年三月に解散をいたしたのでございます。  そこで、協会では、この勧告に基づきまして定款の改正をいたしまして、新しく六十人からなる評議員会を設け、会長や理事長、等役員に関する規定の整備等をおもな内容とするところの改善を行なったのでございまして、その間に旧役員は辞任されまして、昭和四十年の十月には会長に堀内敬三氏、理事長に春日由三氏等、役員の新機構ができ上がりまして、業務運営の正常化ができてまいったのでございます。  文部省といたしましては、この間、問題をやはりこういう協会のことでございますから、自主的に解決しようとする協会の方針を尊重いたしまして、刷新委員会をつくって出てまいりました定款の改正とか、経理の改善、新定款による役員の選出等につきまして、随時指導、要望、監督等を行なってまいったのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、昨年十二月に新役員によって業務の運営が軌道に乗りましたので、この際協会の理事長に対しまして、従来とかくのうわさのあった過去の協会経理における問題点の検討等、協会の業務運営上の諸懸案の処理について善処してもらいたいということを要望いたしたのでございます。協会では、前最高裁の判事である高木常七氏を委員長といたしました過年度経理処理委員会というものを設けまして、過去の経理の内容、経理の処理の当否等について調査、検討をいま急いでやっておるのでございます。  一方、いま御指摘のありましたように、五月中旬に新聞紙上で、先ほど申し上げました刷新委員会に付設されました経理専門委員会として協会の経理を調査いたしました御指摘の宮城何がしという方や、また、刷新委員会委員であった人たちが協会に対して恐喝をして云々というような問題が出まして、検察当局のほうの調べが行なわれたと聞いておるのでございます。  文部省といたしましては、こういうような事態についてはなはだ遺憾なことと考えているのでございますけれども、刑事上の問題につきましては、これはやはり司直の取り調べに待つほかはないのでございますが、過去の経理上の問題につきましては公正な事業処理が行なわれるよう指導監督、特に先ほど申し上げました過年度経理処理委員会というものがせっかく調査検討中のことでございますし、また、協会は新役員によって運営が出発をいたしておるのでございますので、まずはその協会の自主的態度の問題と、そしてまた、一方刑事上の措置等も勘案しながら、協会運営が十分うまく行なわれて協会の信用が回復できますように、今後とも十分指導監督をいたしたい。これが従来の経過並びに現在の態度でございます。
  116. 高橋重信

    高橋(重)委員 端的にお尋ねいたしますが、協会の内部において過年度経理処理委員会とか、いろいろな委員会をつくられていま善処しておるというお話ですが、不正はあったのか、なかったのか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  117. 安達健二

    ○安達説明員 昭和三十四年度から三十八年度間におきまして、いわゆる予算に計上していない支出が行なわれたというようなことが中間報告等で私どものほうに参っておるわけでございます。したがって、予算外の支出であるということにつきましては、はなはだ遺憾な状況だと考えておるわけでございます。
  118. 高橋重信

    高橋(重)委員 いま予算外の支出だというような、ぼけたようなお話でしたが、私はこれは、私の調査する範囲内においては、不正があったのだ、不正をめぐる恐喝事件だ、こういうように了解をしておるわけです。  そこで問題は、著作権に関する仲介業務の法律というものがあるわけですが、この法律は第一条から第二十九条まであって、ほかの公益団体と違いまして文部省の監督権というものは非常に大きくここに書かれておるわけであります。たとえば第六条を見ますと、「主務大臣ハ何時ニテモ仲介人ヲシテ其ノ業務ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ其ノ帳簿書類ヲ提出セシムルコトヲ得」、第七条には「主務大臣ハ何時ニチモ当該官吏ヲシテ仲介人ノ事務所其ノ他ノ場所ニ臨検シ其ノ業務及財産ノ状況ヲ検査セシムルコトヲ得」、こういう臨検するというような権限も与えられておるわけなのです。なお、このやり方が違法である場合は業務の執行を停止させる、そういう権限もうたっておるわけなのです。非常に大臣の権限というものは強いわけであります。普通の公益法人と違って非常に強いわけです。しかるにそういう不正事件が生まれてきた、あるいは不正な金が使われておる。こういうところは、やはり私は文部省の指導なり監督というものが十全でなかったということは率直に認めてもらわなければいかぬと思うのです。その点どうですか。
  119. 安達健二

    ○安達説明員 著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律によりまして、この団体が文部大臣の特別の監督に服しておることは御指摘のとおりでございまして、いま御指摘のような点の強い権限も与えられておるわけでございます。従来はこういう団体の監督につきまして、文部省といたしましてはもちろんそういう権限はございますけれども、自主的な団体でございますので、自主的な運営管理を期待いたしまして、この法律に定めるような臨検とか、立ち入り検査とか、そういうようなものは現在までは行なってまいらず、毎年度業務報告書及び会計報告書を主務大臣に提出いただきまして、これを審査をしておるということでございます。いままでは、会計報告書等につきましてはそれぞれの公認会計士の監査報告等もついておりましたもので、私どもそれを信頼しておったわけでございますけれども、いま御指摘の点のあった件につきましては、これが予算外の支出でございまして、その点について私どもは知らなかったということでございます。その点につきましては、私ども文部省の監督が不行き届きであったということは率直に認めなければならないというように考えておるわけでございます。
  120. 高橋重信

    高橋(重)委員 局長にお尋ねしますが、なぜ立ち入って調査をされなかったか。いま審議官のお話を聞いておると、報告書に基づいて調査をしておるだけであって、立ち入りまではしなかった。ここに、公益を害するような行為をしたときには業務を停止するというまでの強い権限があるにかかわらず、何か特別な理由があったのですか。
  121. 蒲生芳郎

    ○蒲生説明員 ただいま審議官が申しましたように、従来も公認会計士を使って会計の監査も行なわれておりましたので、いままでやってきたことに対しまして私どもは監査が十分に行なわれておるものであるというふうに考えて今日までまいりまして、したがって、立ち入り検査というところまではいかなかったというのが実情でございます。
  122. 高橋重信

    高橋(重)委員 そこで私は、立ち入ってやるのが当然だ。法律にはっきりきめられておって、このうわさが出ておるということは、きょうやきのうじゃなしに、相当以前から内部の紛糾というようなこと、あるいは不正的な面において取りざたされておったということは私は事実だと思うのです。これは後ほど検察当局にお尋ねするわけですが、そろいうことでありますから、当然これは立ち入って調査しなければいかぬと思う。特にこの過年度経理処理委員会の答申案というものがことしの五月二十三日に出ておるわけです。この中を見ましてもはっきりとそういう面をうたっておるわけです。委員会には捜査権もなくて、資料が失われており、過年度経理の全体を確実に把握することは困難であったが、いろいろ検討してみると問題点はあるのだ、こういうふうに言っておるわけでありますので、これは捜査権のある検察当局にお尋ねしようと思うわけですが、私はここにひとつ、文部省が日本音楽著作権をあまりにも信用し過ぎておる、あるいは逆な面からいえば、私は何かくされ縁があるのだ、こういうふうなことを思うわけです。  と申しますのは、こういうことはあまり言いたくないのですが、文部省のお役人が相当の金額を供応を受けていらっしゃる、総額にすると百五十万円くらい受けておるのですが、こういうことはれっきとしたこういう特報かなんかで新聞に出ておるわけですが、文部省もこれは見ておられると思う。過日私は著作権課長にもお会いしまして、こういうことが書かれておって、しかも文部省の名前が出ておる以上は、これが間違っておれば名誉棄損になり、徹底的に究明しなければいかぬ、これが事実というならば、文部省は反省してもらわなければいかぬ、こういうことをお尋ねしたのですが、局長どうですか。
  123. 蒲生芳郎

    ○蒲生説明員 実は、そういううわさもあるということを耳にいたしましたので、協会のほうについて、私どもは、どういう文部省の者が、いつ、どこでどういう供応と申しますか、そういうことを受けたかということを個々にわたって調べたのでございますが、向こうの帳簿に載っておりますもので、文部省の供応だとか、あるいは何か贈ったとかいうものにつきましては、実際には文部省の者がごちそうになったりしていなくて、他のほうに使われているものが文部省の接待というふうなことで帳簿に記載されておるというのがかなり多いということが判明しております。
  124. 高橋重信

    高橋(重)委員 だから、続いてお尋ねするが、間違っておれば間違っておる、一方的に書かれたやつは書かれた、こういうふうで、一ぺん訂正書をこちらのほうに出していただきたいと思う。いいですね。  続いて、検察庁が来ていらっしゃいますので、この問題についてお尋ねするのですが、過年度経理処理委員会の答申案を見ますと、日本著作権協会の書類というものは検察当局へ出してしまっておるから十分な調査ができない、こういうふうに書いておるわけであります。過年度の経理帳簿類のすべてを検察庁に出しておる、だから、検察庁ではこの面について御調査願っておると思いますが、具体的に内容はどういうふうになっておるのですか、その点お尋ねいたしたいと思うのです。
  125. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの関係事件につきましては、先ほど御連絡をいただいたので、とりあえず調査をいたしてみたのですが、先ほど来お話のありました関係の宮城衛、宮城靖男、この両名に対する恐喝あるいは恐喝未遂事件につきましては、すでにこの両名の起訴をいたしております。そこで、かりにその事件に必要であるとして、社団法人日本音楽著作権協会の関係帳簿を押収しておるということは当然あり得ると思うのですが、現実にはまだその内容のこまかいところまで私のほうで調査報告を受けておりませんので、その関係の帳簿書類がどの程度押収されておるものかという点は現在はわかっておりませんが、十分関係書類として差し押えておるということはあり得ることだというふうに考えております。
  126. 高橋重信

    高橋(重)委員 警察庁の関根捜査第一課長さんにお尋ねいたしたいと思います。
  127. 関根広文

    ○関根説明員 警察関係で、ただいま津田刑事局長から申されましたように、本年の五月に宮城氏ほかの恐喝事件につきまして、それぞれ捜索あるいは逮捕、取り調べをいたしました事件を地検に送致いたしまして、現在検察庁で起訴になっておるような状況でございます。したがいまして、書類の件は、ただいま津田局長の申されましたように、警察から全部検察庁に送られておる、そこで見ておられる段階だというふうに了解しております。
  128. 高橋重信

    高橋(重)委員 課長さんにお尋ねするわけですが、たしか五月二十三日の過年度経理委員会の答申について、そこの中で、総会の会計報告を私が聞くところによれば、日本音楽著作権協会では約八千万円の不正の流用があるんだ、こういうことを聞いておるわけですが、そういう点についてはどうですか。
  129. 関根広文

    ○関根説明員 先ほど申し上げました事件は警視庁で処理をしておるわけでございます。その処理をした事件以外に日本音楽著作権協会で不正があったかどうか、これを捜査しておるかどうかという点につきましては、現段階で捜査しておるというふうに申し上げるわけにまいりませんけれども、具体的な容疑があればもちろん捜査をいたすわけでありますが、いろいろな状況は十分に把握しておるというふうに了解しております。
  130. 高橋重信

    高橋(重)委員 それで重ねて課長にお尋ねするわけですが、そういう面はいま調査段階にあるのかないのかということです。
  131. 関根広文

    ○関根説明員 具体的な、ただいま申されました八千万円云々というものを現在どうしておるかということにつきまして、具体的に私のほうは一線でこうしておるという報告は受けておりませんので……。
  132. 高橋重信

    高橋(重)委員 重ねてお尋ねするのですが、ここに、先般新聞にも出ておりました宮本旅人という男が、告訴状ですか、告発状ですか、これを出しておるのですが、こういう問題については調査されたかどうかということ、あなたちょっと。
  133. 関根広文

    ○関根説明員 宮本旅人という人から著作権協会の金川という常務理事ございますかを最初相手取って業務上横領事件ということで警視庁に告訴がございました。ただし、これは去年の十二月ごろ告訴がございましたが、地方検察庁のほうにも告訴がありまして、警視庁に対する分は本年二月二日に宮本氏のほうから現在取り下げになっております。したがいまして、告訴は地検にだけ出されておるというかっこうになっております。
  134. 高橋重信

    高橋(重)委員 地検のほうはどうなっておりますか。
  135. 津田實

    ○津田政府委員 この事件につきましては、ただいま私承知いたしておりませんので……。
  136. 高橋重信

    高橋(重)委員 一ぺん調べておいていただきたいと思います。  続いて文部省のほうにお尋ねするわけですが、著作権問題と言えばいま非常に世人の関心が高い。先般も大学入試の、これは出版権の問題ですが参考書類に某文学士の文章を適用した、だから版権があるのだというようなことで訴えるということが出ておったわけですが、事ほどさように著作権問題というものはここ数年来非常に関心が高まっている。やがて著作権法の改正というものが行なわれるだろう。先般も文部省が、この秋ごろに草案を発表して世人のこれに対する動向を見て、そうしてよりよいものをつくっていこうというようなことが新聞記事に出ておったのですが、この著作権法の改正に対する文部省の考えがありましたらひとつ承りたい。
  137. 安達健二

    ○安達説明員 現在の著作権法は明治三十二年に出たものでございまして、その後一部の改正はございましたが、全面的な改正は現在に至るまでなされていないわけであります。それで昭和三十七年に著作権制度審議会というものが発足いたしまして、この根本的改正を諮問し、先般四月二十日に答申があったわけでございます。  著作権制度の基本的なねらいは、まず何よりも第一に著作権者の権利を擁護する、著作権者の利益を擁護して著作活動を盛んならしめ、それによって文化を進展させるということが第一の眼目でございますが、同時に、著作物は一般の人々が常にそれを利用し、さらに文化の進展に資するものでございますので、これが円滑に使用できるような、そういう形においての著作権制度も適切なる制限を加える必要がある、こういう考え方で、七月二十日に著作権制度審議会の答申が出ておるわけでございます。
  138. 高橋重信

    高橋(重)委員 そこで、きょう問題にしております音楽著作権協会の問題ですが、これは古く、昭和十四年ですかに設立されまして、長年の間、一つの協会として運営されてきたわけですが、根本の法律も古いと思うのです。あるいは仲介業務の法律にしましても古いと思うのです。したがって、著作権制度審議会第六小委員会の審議結果というものの報告書があるわけです。あるいは審議会の答申等を読んでみましても、当然日本音楽著作権協会というものについてもある程度検討を加えていかなければいかぬというふうに思うわけです。特に、年額十五億、十六億という膨大な金を運用するものですから、いままでのようなやり方をやっておれば、先般恐喝問題が出たように、必ず私は腐敗してくると考えるわけです。世界の例を見ましても、日本ぐらいテレビなりラジオがアメリカに次いで普及している国はないと思うのです。そういう点から考えまして、この音楽著作権協会、いわゆるJASRACについては、いろいろ問題点があると思うのです・その問題点について、文化局長として、問題点というのはどういう点があるか、どこにどういう問題があるかということは把握していらっしゃるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  139. 蒲生芳郎

    ○蒲生説明員 音楽著作権協会の機構なり、あるいは経理の方法なり、あるいは監査のやり方自体についてはいろいろあると思います。しかし、音楽著作権協会に関連して、一般的にこうした問題について、一体どういうふうに規制をする方法があるかということで考えますと、いま仲介業務の団体は音楽著作権協会一つでございますが、こうした著作権の仲介機関の意義については先生十分御承知のとおりでございますが、きわめて多数にのぼりますこうした音楽の著作物につきまして、著作者にかわって多様な利用を監視したり、使用料を徴収する一方、使用者には容易にその必要とする著作物の利用の許諾を与えるということができるようにすることになっております。  そこで、こういう趣旨からいたしますと、著作者からゆだねられました権利をできるだけ経済的、効果的に管理するために、また使用者が許諾を得る便宜上からも仲介機関が一つであるということがむしろ便利ではないかという説もございます。しかし、また反面、単一の仲介機関のもとにありましては、独占的に権利を乱用するおそれもある、また利用者の便宜を閑却する傾向も出てくるのじゃないか、むしろ複数の仲介機関があって、それが競争をすることによってそうした独占を排除することが適当だという説もございます。二つの説がございますが、これはそれぞれ利害得失があるわけでございますので、現在こうした仲介機関についてどういう分け方がいいのかということは、審議会におきましても実は研究中でございます。  それで、いま先生がおっしゃいました第六小委員会におきましてもこうした問題を取り上げておりますが、いま言いましたように一利一害のあることでございますので、これはさらに慎重に利用者あるいは著作者、両者の意見を聞きました上でさらに結論を出していきたい、かように考えております。
  140. 高橋重信

    高橋(重)委員 時間がまいりましたので、最後の質問でやめさしていただきますが、いま日本音楽著作権協会というものがいろいろな面で話題になり、注目を浴びておるわけです。先ほど審議官が言われたように、ただ書類の調査報告だけでなくして、法的にも認められておるのですから、むしろこういう問題が起きたのを契機にいたしまして、積極的に入られてこの真相を究明していただきたい・次回までにぜひ私は究明していただきたいということをお願いするわけですが、そういう覚悟があるかどうかということです。
  141. 蒲生芳郎

    ○蒲生説明員 たてまえといたしましては、その団体、つまり協会がみずからの姿勢を正すということがまず第一条件であると思います。主管省である文部省といたしましては、そういうふうにみずから姿勢を正して、不正、不当の経理なり、あるいは運営がなされないように十分指導をしていくということで、幸い新しい役員も選ばれまして、新しい機構のもとにそうした意気込みで進んでおるようでございますから、そういうことをまず第一条件として指導していきたい、なおそれでも不十分であるという事態がもしできてきますれば、いま先生おっしゃったような方法もとらざるを得ない、これは法律にちゃんと規定がございますからできるわけでございます。しかし、まず協会自体が姿勢を正すということを望んでおるところでございます。
  142. 高橋重信

    高橋(重)委員 基本的にはそのとおりです。協会自体が自主的にやっていくんだ、そのとおりですが、そういうやり方でこういう問題が起きてきたのです。一千万円も恐喝されるような弱味がどこにあったか。当然弱味があるからです。なければ一千万円も出す必要はないんだし、また過年度経理処理委員会なりそういうものの報告を見ましても、八千万円というような多額な金額が流用されておる、こういうようなことを聞いておるのです。ですから、ここまで問題がはっきりしていって、あるいは著作権協会の書類等が検察当局、警視庁あたりへ渡っておる、こういう問題からいいましても、当然文部省が積極的にこれに関与していく必要がある。また、法律的にいってもそういう義務があると私は思うのです。これだけ問題になっておるのに、いつまでも自主的な解決に待って、それに対してアドバイスしていくんだ、相談を受けてやっていくんだということでなくて、いまは積極的に乗り出すべきだ、こういう点で乗り出していただいて、過年度経理委員会がどうの、どこがどうのということでなしに、あなた方が監督する、調査権もあるし、またやり方がまずければ——これはただ国内だけの問題じゃないですよ。国際的な信用まで失墜しておるのですよ。こういう点でもっと積極的にやっていただく、次までにやっておいていただきたいということをお願いしておるのですから、それに沿うような御答弁を願いたいと思います。
  143. 蒲生芳郎

    ○蒲生説明員 十分今後積極的にそうした姿勢で文部省も進みたい、かように考えます。
  144. 高橋重信

    高橋(重)委員 以上で終わります。
  145. 八田貞義

    八田委員長 野原覺君。
  146. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、五月の十三日、前の通常国会ですが、この文教委員会で嘉悦学園の問題についてお尋ねをいたしました。  まず第一には、法務省当局に告発されておる件でもございますから、どのような調査が進められておるかということをお聞きいたしました。第二には、文部大臣は、この種の私立学校に対して法令の定むるところによって指導、助言の責務があるわけです。それがどのように履行されておるか、こういう二点をお尋ねいたしたのであります。  ところで、私が五月十三日に質問をいたしましたことが教育新聞に報道されまして、教育新聞を読まれたというので、告発人の五味上という人から六月二日付で私に手紙が参ったのであります。この手紙はもちろん公開して差しつかえないものであろうと考えますし、なお、この嘉悦学園の事件の内容をも明らかにいたしておるようにも思われますから、少しく長いのでございますけれども、読み上げてみたいと思います。特に刑事局長文部大臣はこの中身について、ひとつとっくりお聞きをいただきたい。東京都文京区千駄木二−九−十五、五味上から私あての手紙。   私は、嘉悦学園理事長嘉悦康人とは、十何年来ゴルフ関係の友人であり、その関係で嘉悦氏の紹介昭和三十六年一月二十一日嘉悦学園に就職、以来五年間経理関係仕事を行って来たものであります。学校に奉職して先づおどろいた事に、理事長である嘉悦氏が、学校の小切手帳、銀行印、法人印を常にふところに入れて持ち歩いていた事です。しかも当時会計課長の要職にあった弟の嘉悦正人氏すらがその支払内容が知らされず、またわからないまま入金事務、学校の正規の支払事務を行っていたのであります。毎年度末の決算において、銀行残、現金残の不一致が生じ、理事長嘉悦氏の命ぜられるまま、粉飾決算をし帳簿にも不記載にて、このまま経過するならば、学校は経済的な破綻が生ずることを憂い、弟の嘉悦正人氏とともに、すみやかに小切手帳、銀行印を学校に戻し、勝手に不正流出を行うことは、背任横領となるから、中止するよう再三再四忠告をしたにもかかわらず、中止するどころか、不正流出は益々ひどくなり、二百万円必要だ、短大で九十名増募するから五百万帳簿からはずしてくれなど全く教育機関の責任者としてふさわしくない言動でありまして、これに対し私は、あくまで断りつづけて参りましたところ、たまたま昭和四十年四月六日付にて私に対して、「経理部長の職を解き休職を命ず」という辞令を出したのであります。これが機に、教職員にも知れ渡り、教職員一同の名をもって理事長に反省を求めたのでありますが、一向に反省の色をみせず、これが理事会の取りあげることとなり、昭和四十年七月三日の理事会決議により、理事長の実質上の職務停止、五味上の復職を決定致したのであります。しかしながら七月暑中休暇に入るや、義弟であり、経理責任者であった伊藤哲生氏を経由、一千二百万以上の不正流出を十月までの五ヶ月間に行ったのであります。しかも、四十年四月より学校の帳簿記入を行わず、半年も経過、整理委員として五味上が調査して、このこともはじめて判明した次第です。その後更に調査をしてゆきましたところ、別紙明細の如く五千万にのぼる不正流出があり、とりあえず判明した分について、理事会に対して昭和四十年十一月五日に資料を提出致しました。その後理事会は、嘉悦康人、伊藤哲生の両氏を個々に内容証明をもって呼出し、その説明を求めたのでありますが、一切知らぬという答弁にて、その後理事会として、数回にわたり糾明したが、明らかにならぬまま時が経過し、昭和四十一年三月十一日その理事会が内部崩壊し、理事長一人を残し、全員辞任してしまったのであります。その後理事長嘉悦氏の専横振りは甚しく、遂に本年四月一日に東京地検に対し、嘉悦康人、伊藤哲生両名を告発するに至ったのであります。其の後昭和四十一年五月十六日午後七時頃、嘉悦康人、小野瀬英信、諸岡宗員の三人が学園本部から帳簿類を私の制止を無視して、暴力をもって学外に持ち出し、この際見張りをしていたのが佐藤公重、大庭登の両弁護士であります。前記帳簿類の学外持ち出しの事実を目撃している者私の外に四人おります。更に昭和四十一年五月十七日付内容証明により、解任通告をしてきております。   このような事が教育の場で、しかも教育者の最高責任者自らが法にふれるような行動をとった事について憤りを禁じ得ないものがあります。どうぞよろしく御願い申し上げます。   昭和四十一年六月二日                 右 五味上  衆議院議員野原覺先生こうなっておる。その先にただし書きとして、   尚前記約五千万円にのぼる不正流出金の外に渋谷区宇田川町二三番地土地二九〇坪関係の背任横領があります。この土地は、当初昭和二十八年十二月に六百万円にて学校が購入したものでありますが、登記を嘉悦康人名儀となしたが、早慶ゼミナールという名称で、予備校を個人経営していましたが、学校との資金の交流があり、相当の金が流出している事が理事会にわかり、昭和三十八年一月ごろの理事会決議により、すみやかに売却処分し、その金を学校会計に入れるようにとの決議がなされ、その売却方をまかされたにもかかわらず、その土地にマンションを建築し売却代金を学校に入れず、個人の借入金に返済もしくは、他に流用しております。(金額七千七百万円)この渋谷の土地関係の内容は、今年三月までの各理事者、即ち上塚司、内海幸作、新井啓蔵、嘉悦正人、黒川武雄、また以前の理事長であった立野信之、三十八年三月までの監事西田米蔵弁護士等がよく知っております。これが追書きにあることなんです。  なお、このことは、刑事局長ここにおられますが、これは告発状にもこの中身が盛られておったかと思う。五月十三日といえば、いまから二カ月以前です。私はどのような調査をしておるかということをお尋ねいたしたときに、刑事局長の私に対する答弁は、現在主任検事の手元で検討しておるということでございました。その後もう二カ月以上もたっておりますから、いかに検察事務が繁忙であれ、私は、本日は調査検討しておるというような、そういうことではなかろうと思う。これはひとつ率直に法務当局の見解と、どうなっておるのか、お聞かせ願いたい。
  147. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの嘉悦康人に対する五味上からの告発事件につきまして、その後いろいろ調査をいたしておりますが、特に告発人についてはその取り調べをすでに行なっております。  なお、本件につきましてはいろいろ複雑な関係があるようでありまして、直接必要な参考人の取り調べの前にいろいろな調査をする必要があるというふうに判断されておりまして、その調査を行なっておりますが、遠からず参考人についても取り調べを行ない、できるだけ早く結論を出す見込みであります。すでに、告発人につきましては、先ほど申し上げましたように一応の取り調べをいたしておる段階でございます。
  148. 野原覺

    野原(覺)委員 私も告発状を見たのですが、証人申請をしておるのです。元理事の黒川武雄、同じく元理事内海幸作、元理事長の立野信之、元理事の上塚司、それから元監事の西田米蔵、この方は弁護士のようですが、証人申請をいたしております。いま刑事局長の御答弁によれば、当人同士の言い分は、これはあるいはなかなか調査もしにくいかと思いますが、告発状に証人申請をしておるのでございますから、当然申請された、かつてこの学校経営に参画しておったこれらの方々をすみやかにやはり御出頭願って調べるべきではなかろうかと思う。  これは一体、この証人についてはまだお取り調べにはなっておりませんか。
  149. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの証拠として証人の名前があげられておりますことは、告発自体のうちで承知いたしております。これは捜査のテクニックといいますか、そういうものにかかる問題でありますが、直ちに告発人指摘の証人と申しますか、参考人の取り調べをするほうがいいか、あるいは、その間の事情を内偵して、ある段階に至ったときに取り調べるかということは、これは具体的な事件事件におきましていろいろ違うわけでございまして、そこで、その意味におきまして、ただいまの段階では、告発人について事情を十分聞くということがまず第一義であるというふうに検察官は判断したと思うのであります。  そういうわけでございまして、この証人、参考人以外の事項についての諸般の調査を十分いたしておる段階でございますが、もちろん、ここにあります証人につきましては、当然近いうちに取り調べをすることになると私は考えております。
  150. 野原覺

    野原(覺)委員 なお、この調査についてですが、書証関係として、具体的に私への手紙にもございましたし、告発状にも述べておるようですが、出金伝票、それから銀行口座等の調査をしなければならぬ。こういう調査が百日近い今日までされないというのは一体どういうことなのか。  私は、実はこれは仄聞することですが、何でもこの事件は、これは学校内部に起こったことだから刑事関係としては葬ってしまおう、こういうような腹づもりをされておるやにも聞くのですが、どうもその後の捜査の遅々たる点から考えると、あるいはそうではなかろうかという疑問を実は私どもは持たざるを得ない。一体どういう捜査方針を立てておるのか。告発事実があるのかないのかということは、やはり堂々と名を名乗って五味上が告発をしておるのですから、これが一体うそかほんとうであるかということの捜査はすみやかにされなければならぬと思う。どうも百日近い間何にもしていない。刑事局長の御答弁は五月一三日と変わらぬでしょう。これは一体どういうことですか。
  151. 津田實

    ○津田政府委員 本件は、告発人の五味上が経理事務に従事していたわけであります。  そこで、具体的には少なくとも現実に経理事務をしている間のことはこの告発人によってわかるわけでありますけれども、それだけのことではいけないのでありまして、金銭の出入りの全貌を明らかにする必要がもちろんある。そこで、現在何をいたしておるかということは、これはちょっと申し上げかねるわけでございまして、人を調べていないから、あるいは取り調べが外部的にあらわれていないから何にもしていないというふうに御判断をされることは、必ずしも的確には当たっていないと思うのでございます。そういう意味におきまして、本件におきましても、いま何をしておるかということは具体的には申し上げかねますけれども、もちろん放置していることではないことは当然でございます。
  152. 野原覺

    野原(覺)委員 これは告発をしておるのですから、何かはやっておるのかもしれませんけれども、われわれから見ると、これはあなたがどんなに言われようとも、何にもしていないようにしか思われない。これはやはり告発の事実があるのかないのか。いま刑事局長の御答弁のように、これはひとつすみやかに結論を出してもらいたいと思う。子供の教育に関する学園の問題ですからね。この種の件はすみやかに結論を出すべきだ、私はこういう見解です。  大臣にお聞きしたい。  指導、助言をなさってきたと思うのですが、どういうように指導、助言をなさってきたか。指導、助言をするためには、やはりその基礎となる若干の調査と申しますか、職権調査とまでは法律は権限はないようですが、しかしながら、指導、助言をするためには、やはり本人に出頭さして事情を聞く、あるいは文部省としてできる限り事態を正確に把握するということがなければできないわけですから、そのことが五月十三日から今日まで八十日経過いたしておりますから、これはなされたと思うのです。ひとつ御報告願いたい。
  153. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 実は、この問題につきましては、文部省としても気にいたしております。  ところで、事務当局では、いろいろ学校の関係者、役員あるいは教授、こういう関係者おいでを願いまして事情の聴取をしておるわけであります。しかし、やってみますと、どうも一方の言うことのとおりでもない。いろいろそこに食い違い等があるようで、これらは文部省としては強制捜査権もありませんから、検察庁や何かの捜査のようにどこまで的確であるか、実は把握しにくい状態にあるわけであります。問題は、当面、とにかく教育機関ですから、教育業務が正常に行なわれるように指導、助言することが一番大事な点でありますので、そういう点については留意をいたしまして、まだ十分でないかもしれませんが、教育業務としては正常化されつつあるように承知をいたしております。  詳細の点は担当の局長からお答えをさせることにいたします。
  154. 宮地茂

    ○宮地政府委員 ただいま大臣から答弁いたしましたとおりでございますが、若干補足さしていただきますと、この問題につきまして、私のほうは、告発され、検察のほうでもお調べでございますので、一応そういう金銭上の問題もございますが、いろいろな諸点につきまして、今日まで十名近くの関係者方々おいでいただきました。もちろん、嘉悦康人氏にも来ていただきましたが、先ほど大臣からお話がありましたように、ともかく学園内の経営面でのトラブルでございますので、問題は、それを明らかにすることも必要でございますが、同時に、こういうことが、学生、父兄に動揺を与える、教育が正常に行なわれないということが一番心配な点でございますので、そういったようなことを含めまして、まことに遺憾なことであるから、事情を聴取すると同時に、そういった点について強く反省を求め、指導、助言をいたしてまいっているわけであります。
  155. 野原覺

    野原(覺)委員 法務省のほうは捜査権に基づいて調査中でございますから、やがて事態は明らかになろうかと思いますが、文部省のほうはその権限がないから、片一方が白だと言えば、ああそうかということになろうかとも思いますけれども、私が指摘したいのは、特に文部大臣に指摘したいのは、学園の私物化という問題です。単に嘉悦学園でございません。たくさんの私立学校において、ややともすれば、学園の経営者が、財団法人組織にしておきながら自分の個人財産と学校財産というものをごっちゃにして私物化しておる。ほんとうに法人組織とは表ばかりであって、実際の金のやりくりというものはどんぶり勘定と申しますか、非常に問題が多い。たまたま中に筋を通す理事がおってそういうことでも言えば、その理事はすぐやめさせる、おのれの都合のよい理事ばかり集めて、そうして自分が理事長だといって学校経営を専断する、経理から、人事からかってに専断をする、こういうことが非常に行なわれておる。私は、嘉悦学園というのはたまたまあらわれてきた一つの事象にすぎないのであって、嘉悦学園以外にもこういった私立学園がかなりあるのではないかと思う。そこで私はこの問題を取り上げておる。私は何も理事長の嘉悦康人氏に恨みがあるとか、これを犯罪者に仕立てなければならぬというような気持ちは毛頭ないのでありまして、この際、やはり文部大臣は指導、助言の立場にあるのでございまして、私立学校に財政的な支援こそしておりませんけれども、私立学園といえども国の子供を教育する学園でございますから、私は、やはり綱紀を粛正すると申しますか、しっかりした態度で臨んでいただかなければならぬ、こういう考えで実は取り上げておるわけです。  そこで、お聞きいたしますが、学園を私物化しておるということは、これは管理局長でけっこうですが、そういう事実は毛頭ございませんか、学園を私物化しておるかどうかということが問題だ。
  156. 宮地茂

    ○宮地政府委員 これは告発され、検察当局でお調べ中でもございますので、そういった司法関係の方がおやりになるような厳重な意味ではございませんで、感じといたしましてお答えいたしますが、やはり程度の差はあろうかと思いますが、こういう、特に自分の親とかあるいは親類縁者の者がつくった学校を関係者が引き続いて理事長でやっているような学校で、とかく私情におきましては自分の学校だというような気持ちが一方においては非常に強い。そういったようなことから、経理面でも若干、一般の私ども役人が補助金等を扱うのとは違った、非常に経理に親しみがあると申しますか、そういったような点で、先生のおっしゃいます私物化という定義でございますけれども、これは厳密に言うわけじゃなくて、何となく一般よりは、学校の経理に対しまして普通の人が考えるよりは多少ルーズといえばルーズといったような点が特に嘉悦につきましては見受けられます。そういった意味で私物化といえば私物化になると思いますが、一般の国立学校等とは違った、特に自分がつくった学校等におきましては、いま先生がおっしゃるような傾向が間々あるように感じられます。
  157. 野原覺

    野原(覺)委員 間々ある。  そこで、これは検察庁のほうで事態を正確につかんだ上でしっかりした指導、助言をなさるつもりかもしれませんけれども、現在理事長をあなたのほうでお呼びになられて、どういう注意を与えて、どういう指導をしておられるのか。
  158. 宮地茂

    ○宮地政府委員 私は実は七月から管理局長にかわりましたが、その前から、特に五月、六月にわたりましていろいろな人を招致いたしておりますが、その間嘉悦康人氏も呼んでいろいろ連絡をし、また嘉悦康人氏ともう一度連絡したときは御本人でなくて学長代理という方がおいでになりましたが、こういうことはきわめて遺憾なことであって、もちろん検察当局でお調べですから、いわゆる厳密な意味での白黒ははっきりしないとしても、こういう世の批判を受けるようなことは、これはまことに遺憾なことだ、特に学校といったような点では、私どもとしては、まことに世間に対して申しわけない、こういう点について強く反省を求めますと同時に、また、いろんな人が、立場上、たとえば教職員の中でも、理事長のこうした行為を目に余るということで、学校を思うのあまり、いろいろ関係筋へもこうした内紛を漏らしておる方もあるようでございますが、そういったようなことにつきましても、理事長が感情的にそういう職員に対しての処分をするというようなことはもちろん慎しむべきであるといったような、経営面、学校教育面、両者にわたりまして、指導と申しますか、強く自戒するように申し入れております。
  159. 野原覺

    野原(覺)委員 特に最後の点は、文部省として当然といえば当然でありますけれども、私は重要に考えたいのであります。目に余るといいますか、問題点が多いというので、一年、二年、この学校は非常に動揺と混乱を続けてきておる。たとえば、理事会昭和四十一年の三月末までに嘉悦理事長はやめてもらいたいという決議をしておる。ところが依然としてやめない、そこで、決議をした理事諸君はおこって、もうこの理事長を相手にわれわれは理事としてはつとまらないというのでやめてしまう。つまり理事会の決議というものは、財団法人の寄付行為を見ても、これが最高の決議なんです。これにも従わない。こういったようなところから、法令の上から見ても非常に問題点があるのです。たとえば、理事が定数の五分の一以上欠けた場合には一カ月以内に理事長がその欠けた理事の補充を行なわなければならぬ、これは私立学校法の四十条にあるわけですね。ところが、黒川武雄さんが四十年の五月二十九日に辞表を出した、新井啓蔵さんが四十年の六月二十四日に辞表を出した。ところが四十一年の三月末までこの辞表は出しっぱなしで、何ら任命も何もされていない。辞表を出したけれども理事会は受け付けなかったというような解釈をとっておるかもわからぬが、この御両人は辞表を出してから理事としてはもう活動をしていないわけです。こういうことにこの学校経営の上から見て非常に問題があるからというので、まじめな教師が、もうこれはがまんができない、私立学校だから文部省のごやっかいになることは好ましくないが、長い間彼らは努力してきたけれども、もう事ここに至っては文部大臣から何とかひとつ注意をしてもらう以外にないじゃないかということで、文部省を三名の教職員がたずねていった。その三名の教職員の一人は副校長です。実にまじめな人です。東大を出て、嘉悦孝さんが経営しておったときから四十何年この学校のはえ抜きの、そうして生徒からも慕われておる人格者です。この者たち三名に対して、学校の問題を文部省に行っておまえたちは暴露したんだからけしからぬというので、辞職の勧告をやっておる。本人が文部省に呼ばれますと、私の不徳のいたすところですと言って、反省の色を見せるようなかっこうをしながら、今度は三名が文部省に事件の内容を暴露したというので辞職の勧告をする。どこに一体反省があるのか、非常に問題があるのです。したがって、いま管理局長が言われたそういう点についても、いけないならいけない、ほんとうに反省をして、新規まき直しで学校経営に專念するなら専念するように、この点はやはり管理局の任務として、文部省の設置法に指導、助言ということが規定されておるのですから、どうかひとつこの点は徹底的に指導、助言をしてもらいたい。文部大臣の御見解を承りたいと思います。
  160. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 正常な教育業務が遂行されるように、この点については極力文部省としては指導、助言の役目を果たして、教育機関の正常な運営を期してまいるべきで、この点については十分に努力をいたしたいと思います。  ただ、こういう教育機関について、どこまで一体文部省がタッチするのが妥当であるかというような点は、一般世間の問題としても相当問題があると思うのです。以前どこかの学校の紛糾にかんがみて臨時立法ができたことがあるように思いますが、これも一年か二年の何か時限立法で、ほかの学校が紛糾して、ああいう制度が前にあったはずだがあれを活用しょうといったら、それは時限立法で、すでに法律の効果を失効しておった、こういうわけで、国会等でも、そういうような文部省のあまり深入りをした指導、助言よりも進んだことをやることについては、きわめて短期間の特殊な場合についての時限立法をするようなぐあいで、こういう事情もありますから、私どもとしては、文部省の立場として、何とか世間の良識にも訴え、本人の反省にも訴えて、指導、助言によって教育業務の正常な運行ができるように最善を尽くす、こういうことでまいりたいと思っております。
  161. 野原覺

    野原(覺)委員 嘉悦学園の問題は以上で終わりますが、この機会に文部大臣に二、三お尋ねしたいと思います。  八月になりますと、文部大臣承知のように人事院勧告が出されるようです。文部大臣としては、やはり教育公務員のことが問題でありますが、人事院に対して、今度の給与についての文部大臣としての意見、要望、そういうものをお出しになっておるのかどうか。出しておるとすれば、その御意見の中身はどういうことになっておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  162. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 昨年も人事院に対しまして教育職公務員の給与改善方について要望いたしたわけで、昨年の人事院勧告にも若干の是正が行なわれて、初任給等も、一般職公務員上級職と大学卒業の教職員の初任給とは、従来たぶん五百何十円か、六百円の差でありましたが、昨年の勧告で千二百円教育職のほうが高いことになりまして、若干の改善が行なわれたわけであります。しかし、大学、高校、中学、小学を通じまして、教育界に人材を得るためには、もっと教育職に対する待遇改善をはかってもらう必要がございますので、本年の五月三十日付で文部大臣から人事院総裁にその旨を実は申し入れてある次第でございます。こまかいことは、役所と役所の要望事項でございますから、あるいは説明をしないほうがいいのかもしれませんが、大局としましては、そういうことで五月に人事院総裁に申し入れをし、さらに最近、私が人事院に出かけるのもどうかと思いまして、次官に人事院に出向いてもらって、文書で出しました要望事項説明等をいたしておる次第でございます。
  163. 野原覺

    野原(覺)委員 人事院に対する要望はそれでけっこうだろうと思いますが、実は人事院の見解として、文部大臣承知のように、超過勤務手当について、これはやはり支給されるべきではないか。昨年か一昨年出されまして、ことしの予算にはその調査の分が計上された。調査は来年の三月に完了する。そうすると、来年の四十二年に予算要求、実施は四十三年から、こういうことになるわけですが、超勤手当の調査はいまの段階でどういうことになっておるのですか。いつごろまでに調査が完了するのか、お聞かせ願いたい。
  164. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 予算の実施に入りまして、さっそく調査を開始したわけでございまして、一年間の調査をする予定でございますから、少なくとも来年の三月まで要するわけでございます。ただ、調査がよほど客観性がありませんと、従来から超勤についての一部の議論はありましたが、御承知のとおり、教育職公務員の俸給表をつくるときからこの客観性について問題点がありまして、結局は初任給で若干見、その他待遇の問題で考えていこうということで、教育職公務員は一般職公務員と別建てになっておるわけでありますが、この当時から客観性について議論があったわけですから、これを打開するのにはどうしても今年調査費をとりました調査によって客観性が満たされるということが私は改善の基本であると思います。したがいまして、この調査については文部省の事務当局でいろいろくふうをして調査要綱をつくりましたが、さらにこれについては現場の教職員とも十分協議をして、そして現場の関係者もこの調査ならばよかろうという納得のいく調査方法、さらにまた、客観性をいかに充実するかという点も十分に考慮した調査方法を考えまして、そして調査の実施に入ったわけでありますから、現在調査に当たっております都道府県の教育長関係とあるいは現場の教職員との間には何らの摩擦なく、非常に円滑に調査が進行しておると思います。したがって、いま御指摘のように、どうしてもそういう客観性を充実しないと人事院や財政当局を納得させることが困難な問題点でありますから、正常にいけば、来年の三月までに調査を終わり、そして来年度でこれを十分に準備をしまして予算要求をする、こういう順序になるだろうと思います。まだその調査の結果が出てまいりませんから、現在の段階では先のことにどうも触れるのは困難でございますが、私どもとしましては、予定どおりの調査を完了して十分に適切な資料を得たい、こう思っております。
  165. 野原覺

    野原(覺)委員 その点です。これは文部大臣承知のように、実施は四十三年になるのです。かりに超勤手当を支給しなければならぬとしても、来年の概算要求、予算要求、再来年実施、こうなる。せっかく客観性が出て超勤手当を支給しなければならぬ、こういう結論が出ながら、これを昭和四十三年まで延ばすということは私はいかがなものかと思うのです。ですから、調査を急いでいただいて、すみやかに調査をしてもらった上で、なるほど客観的にもこれは支給すべきだ、こういう調査ならば的確に教員の超過勤務が把握できるじゃないか。この結論が出たならば、私は昭和四十二年から実施しなければならぬと思う。その辺について、特段にひとつ文部大臣には御配慮を願いたい。この点はいかがですか。
  166. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 客観性の問題から言いましても、四季を通じて年間の調査が完了するということが、結論づける上において基本的な問題だと思うのです。  そこで、来年度はどうするかという点につきましては、先ほども申し上げましたように、さしあたり管理職手当の問題には触れないで、教員の待遇改善について人事院に、勧告の際にはぜひ実情を考慮してもらいたいということを要望する、とにかく目下のところはそれでいく以外にしかたはないじゃないか、こう思っているわけであります。
  167. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、私は四十三年度実施でなしに、四十二年度から実施できるような方途を特にひとつ御研究を願いたい。これは要望いたしておきます。  そこで、次にもう一点お伺いしたいのですが、いまグロムイコ外務大臣が日本に来ておる。領土問題、日本の安全操業あるいはベトナム等々の重要な点で外務大臣や総理大臣との会談をされておることは御承知のとおりですが、千島列島について、一体日本は子供の教科書の地図の中にどういう色分けをしておるのか。どこまでが日本の領土ということになっておるのか。なお、ソ連のほうはどこまでを自分の領土として色分けしておるのか。つまり歯舞、色丹までソ連の地図にはソ連の領土としておるのか、日本の地図には国後、択捉はどういうことになっておるのか。この辺をひとつ御説明願いたいと思う。
  168. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 サンフランシスコ平和条約によりまして一応千島は放棄したのでございますが、国後、択捉につきましては純然たる日本国有の領土と考えますので、教科書も地図帳も全部そのようにしております。すなわち赤で示してあります。  第二の問題につきましては、正確な資料を持っておりませんので、この場ではお答えできません。
  169. 野原覺

    野原(覺)委員 もちろんこれは外務省と相談された上の方針だろうと思いますが、いかがです。
  170. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 そのとおりでございます。
  171. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなりますと、国後、択捉までしか日本は領土権を主張しない。千島については国後、択捉まででけっこうでございます——文部大臣、そうですか。
  172. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 歯舞、色丹はもちろん含んでおります。国後、択捉、歯舞、色丹……。
  173. 野原覺

    野原(覺)委員 歯舞、色丹は当然だ。  文部大臣、日本は国後、択捉まででけっこうだ、千島についてはもうそれ以外は要らない、国後、択捉まで認めてくれ、これが日本の最終の態度だ、そう理解していいわけですね。
  174. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 私は所管でありませんから責任のあるお答えはいたしかねるのでありますが、私どもも、国後、択捉までは日本の領土であって、すみやかに返還をしてもらいたいというのが、外交ルートでいまソ連とは話し合っておる問題であろうと思います。さて、それがどう落着するかは外交問題で、この場所でお答えできませんが、私としてもそういうふうに承知をいたしております。
  175. 野原覺

    野原(覺)委員 実は、北千島についての領土権ということは、これは専門的に議論しなければなりませんが、私は問題が残るようにも思うのです。この点は、しかしきょうは文部省が国後、択捉までは日本の赤い色にしておる、こういうことでございますから一応おきますが、韓国について、日本は北のほうは白紙だということになっておる。これは韓国の地図では朝鮮半島をどう見ておるのか、それから日本の地図では三十八度線から北のほうはどのように子供に教育しておるのか、御答弁願いたいと思います。
  176. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 韓国は別にいたしております。
  177. 野原覺

    野原(覺)委員 北は。
  178. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 北は、人民共和国、大韓民国と、このような区分けをいたしております。
  179. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、北のほうもはっきり国の名をあげて子供には教育しておるわけですね。よろしいですね。
  180. 佐藤薫

    ○佐藤説明員 そうしてございます。
  181. 野原覺

    野原(覺)委員 これは椎名外務大臣を呼んでまたやらないといかぬのですが、北は白紙だと言いながら、やはり文部省はなかなか進歩的で、国の名をあげて教科書にもしてあるわけです。  北ベトナムについてもこれは同様でしょうね。外務省と相談をされたと言いながら、外務省のほうは白紙だと言って、こんな国は知らぬと言っている。文部省のほうはきちんとしておる。私は文部省が正しいと思う。これは一体どうなんですか。ここら辺は文部大臣いかがですか。北ベトナムはどうなっておりますか。
  182. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 文部省としては、とにかく現実を子供には教える。その現実のうちで、たとえば北朝鮮は日本と国交が開かれていませんから、外交的に言えば承認してない国ですから、これは国家として認められない、こういうことになるのだろうと思うのです。しかし、文部省で子供に教育上教える場合には、現実がこうなっている。たとえばドイツにしても、これからこっちは西ドイツ、ベルリンはこうなっておる、東ドイツはこうなっておる、こう言わざるを得ないと思うのです。そういう外交上の国家意思と事実の世界の現状を教える教育の面とは、まあそういう基本において差があるだろうと思います。そう私は心得ております。
  183. 野原覺

    野原(覺)委員 まあ、世界の現状といえば、国後、択捉は残念ながらソ連が今日支配しておる、日本は近寄ることもできない。しかし私はそういう理屈はいま申し上げません。この地図に関する限りは、中村文部大臣に満腔の敬意を表します。椎名外務大臣はよろしく文部大臣のまねをしてもらいたい。  そこで文部大臣にもう一点だけ、これは私の要望としてでもよろしゅうございますから、あなたの御意見もちょっとお伺いしたいのですが、これは文部大臣の所管ではない。残念ながらあなたの所管ではないのです。太平洋学術会議、これは総理府の所管になっているようですが、学問のオリンピック——実はけさ朝日新聞の「声」欄を見ておりましたら、三好理学博士が投書をしておるのです。今度学問のオリンピック、太平洋学術会議が八月二十二日から三週間東京の東大で開かれる、予算は九千万円かかる、ところが国は三千万円しか出してくれないから、東大を中心にした主催者の学者が毎日この暑いのに会社、工場を回って寄付金集めをしておる。一体これでよいのですか。オリンピックにはあれだけの力を入れた国が、学問に対してはこれでいいのかという三好さんの投書なんです。短い文章だが、これは私は、国としても、この太平洋学術会議を、三千万円でも出しておるのですから軽視しているとは申されませんけれども、しかし、やはりもっと重点的にこの種の問題は取り上げるべきではないか。これは文部大臣の所管ではない、日本学術会議主催ですから、予算の上では総理府の所管になっておるから強くは申し上げませんけれども、しかし、事、学術に関しては文部大臣もまんざら権限外ともいえないわけでございますから、この際文部大臣の御意見を承りたい。まあ今度は予算上三千万円でやむを得ないとしても、今後はかかることがないように、学問、それから技術についての当面の実質的な責任者である文部大臣としての御所信を承っておきたい。
  184. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 御指摘のように、こういう国際会議は、主催は太平洋学術会議というのが主催をするので、政府の主催じゃないようですが、できるだけ不自由のないように今後配慮をいたすべきだと思います。ただ、今度は会場が東京大学になりますので、せめて会場並びに会議室に使われるところの整備だけは何とかしてあげなければいかぬだろうということで、文部省の予算でこの整備には相当の金を実はかけておりますのと、この学術会議出席するのはそれぞれ自己負担でありますが、国内の学者が集まるこの旅費だけは、やはり学術の目的でありますから文部省で見てあげる必要があろうというような配慮を実はしておるわけであります。会議の助成それ自体は総理府の所管で、総理府でいま御指摘のような三千万円かの助成金が予算に組まれておるようでありますが、どうも様子が、予算と組むころに考えた程度でなしに、非常に日本に対する関心が最近は深いということでしょうか、あるいは東京に対する関心が深いということでしょうか、太平洋をめぐる関係国の学者の出席が非常に多いようです。そういう関係で、主催団体としては予測しない苦労があるようでありますが、まあ文部省に関する限りは、できるだけの措置を配慮してまいりたいと思っております。
  185. 野原覺

    野原(覺)委員 まあこれは太平洋地域に関係のある学術的な問題の研究をするためにたくさんの世界の学者が集まるわけでございまして、私の調査によれば、一九二〇年にホノルルで持たれ、一九二三年、第二回がメルボルン、シドニー。第三回が東京、一九二六年。一九二九年、第四回がバタビア、バンドン。一九三三年はビクトリア、バンクーバー。一九三九年はバークレー、スタンフォード、サンフランシスコ等々で持たれ、参加国は六十カ国になっておるわけです。もちろん文部省も東大で持たれるから若干の経費はということでありますけれども、私が調べたところによると、やはり五、六千万円の金は足らないわけです。お聞きいたしますと、今度は予算でありますから何ですが、今後は学者の皆さんがもう少し学問を十分にしてもらいたい、体育のオリンピックにはあれだけの力を入れる国が、一体この暑いのに学者が研究をほったらかして寄付集めをしなければならぬというのは、私はいかがかと思う。このことを要望して、私の質問を終わります。
  186. 八田貞義

  187. 二宮武夫

    二宮委員 津田刑事局長にお尋ねをいたします。朝からたいへん御迷惑をおかけしているわけですが、私はこれをお尋ねいたしまして、津田局長にはあと質問がございませんので、先に済ませたいと思います。  これは、私は昨年来いろいろと質問をしてまいりまして、さきの国会で、終末のころがああいうかっこうになりましたために、締めくくりの質問もできずにそのままになっておったわけですが、三十九年の十月二日に国士舘の学長が教授をなぐった、こういう事件がございまして、これに刑事問題として送検をされたわけですが、その送検の結果、柴田学長については起訴猶予という処分が決定をしたそうでございます。  そこで、これは法的な内容として局長にお尋ねしますけれども、柴田さんを起訴猶予にしたということの内容は一体どのようなものであるかということを、ひとつこの際はっきりしていただきたいと思うわけです。
  188. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの事件は、去る昭和三十九年十月二日、国士舘大学校庭におきまして、国士舘大学学長である柴田徳次郎が、同大学の校医兼解剖生理学教授佐藤英夫に対し、ステッキで殴打あるいは足げにするなどの暴行を加えて、全治約二カ月を要する胸部打撲傷等の傷害を負わしたという事実でありまして、昨年の四月十九日に東京地方検察庁にこれが世田谷警察署から送付されてまいりました。そこで多数関係人を取り調べました結果、ただいま御指摘のように、本年五月十一日、暴行罪によりまして起訴猶予処分に付したわけでございます。  その理由は、柴田が三十九年の十月二日午後二時ごろ、世田谷区の国士舘大学におきまして、先ほど申し上げました佐藤英夫に対し、診療票並びに同医務室の管理のことから口論の末、憤慨して、携えておりました直径約四センチ、長さ約一メートルの木製のステッキで突きかかったという事実は、これを認めることができるのでありまするけれども、本件は、もともとささいなことから発しました学内における学長と教授間の事犯でありまして、事犯自体は軽微であります上、柴田は年齢七十歳をこえ、今日まで前科、前歴がないという点など考慮いたしまして、その情状に照らしまして、あえて処罰の必要はないものとして起訴を猶予することとしたものであります。  なお、告訴事実中、被告訴人である柴田が佐藤に対しまして、胸部をステッキで殴打したり、足げにして、その結果、全治二カ月を要する外傷性左側膝関節部血腫、右側胸部打撲傷の傷害を与えたということでありますが、この柴田が佐藤の右側胸部を殴打したという点については、全くその証拠がありません。また、血腫の傷害を与えたという点につきましては、積極的な証拠は、全然ないわけではありませんけれども、告訴人の供述は他の諸般の証拠に照らしまして符合しない点が多多ありました。また、逆に多くの消極証拠もあるところから、佐藤が柴田の暴行に基づいて傷害を負ったものであると認定することはとうていできなかった次第であります。  かようにいたしまして、結論的にはステッキで突きかかったという程度の暴行でありますので、事犯自体は軽微であるということが主たる理由でございまして、起訴猶予処分に付されておるわけでございます。
  189. 二宮武夫

    二宮委員 七十幾歳になるまでそういう刑事事犯というものを犯しておらなかったということ、それから非常に良心的に、学園内における学長と教授というものの関係において起こった問題である、そういう点については、検察庁が判断をされたことについて私どもも理解をすることができるわけなんです。ただ、この場合は、学園内の実情というのは、学長と教授、それはまことに気持ちの上でぴったりした、平和なうちにりっぱな教育ができておるというような、そういう学園の実情であったかどうかということについては、私どもは必ずしもそういうように解釈することができない実情にあると考えております。ただしかし、一般的に同じ学園内で顔を合わしておる学長と教授の間であるから、軽微である、そういう傷害事件についてはこれは起訴する必要はないだろう、こういう判断も理解できます。しかし、暴行を行なったというこの事態については、これは検察庁もはっきり認めておると思うのです。  それで、実は私ども、この柴田学長の教育的な行動そのものについては昨年来いろいろと判断をしてまいりました。材料を出してまいりました。学校設立の定款等についても分析をして考えてまいったわけです。ただ、そういう状況の中で、それが暴行一つだけ取り上げるということであれば、私は、ほんの感情的にぱっと出てきた問題であるというように考えられますけれども、これは背景になるべき幾多の行動があり、あるいは背景になるべきずっと柴田氏独自のものの考え方あるいは行動、そういうものが流れておって、そこにあらわれてきたものだという考え方をいたしますと、これは法務委員会大学局長はいなかったけれども、審議官の清水君が表明したところによると、やはり教育者としては必ずしも感心のできない行動である、こういうように答弁をしておるわけなんですが、私はここで昨年来いろいろとこの問題について申してまいりましたが、どうも学校側はそういうことについて感情的になっておるような傾向があるし、新入学生諸君に告ぐという中には、私は共産党になっておるし、国会におけるこういう問題についての審議は、国会における犬の遠ぼえだという批判をしておる。あるいは、朝日新聞がこの問題を取り上げて、学園の民主化という問題を持ち出しますと、天長節のデモ行進には、写真で見ますと、打倒共産朝日新聞と書いて行動をやっておる。私どもの常識では、割り切れないような行動であります。  そこで、話はさかのぼりますけれども、この前の私立学校共済組合の問題の際に、私立学校の実態、給与の実態について、当時の天城管理局長にいろいろお尋ねをいたしましたが、特に湯山先生から詳しく質問をいたしました。その際天城さんの答弁というのは、私ども聞いておってもまことに歯切れの悪い答弁であったので、少し管理局長ぼけたのではないかという、少し極端なことばですけれども、そういうことばもこの辺で出てきた。というのは、天城さんいかに頭が切れましても、それをすっぱり言ってのけようとする材料がない、資料がない。そこで、私がこの前資料要求をいたしまして、もしこの資料要求に対して間違った資料を出した場合には、これは文書偽造という立場に立って追及するくらいのしっかりしたものを出してもらいたいという資料要求をいたしました。しかし、ここに出てまいりました調査資料は、先ほど文部大臣が申しましたように、一方側の意見を聞くと、一方側の意見と食い違う、双方対峙させるわけにいきませんので、両方一々別々に聞きますと、内容が食い違ってなかなか一致した意見が出てこない、こういうことなんですが、私は非常に残念に思いますのは、こういうように全部出てきたものを、そのまま修正もしなければ、あるいは検討もしなければ——一応見るかもしれませんけれども、双方突き合わせて、どちらが正しいのかという判定をして出すという努力が文部省にない。一方から出てきたものをそのまま出す、また一方から出てきたものをそのまま出す、それをどうとるかはあなたたちがかってにとりなさいという、これでは私は、文部省の指導、助言の基礎になるところの調査資料が出るとは考えられない。  そこで、大学局長にお尋ねしますが、管理局長時代に私は資料要求したので十分内容はわかっていると思うのですけれども、この資料を出すときの調査をする根拠になる法律というのは何ですか。何をもとにしてこれを調査されたか。何をもとにして私にこの調査資料というものを出したか。私立学校法の第何条によってこれをやったのか。双方の寄せ木を集めて細工物を持ってくるような、そういう資料を良心的に考えて出せるものかどうなのか。これを調査した際の根拠になるべき法律というものをひとつお示しをいただきたい。それができなければ、私立学校法を全部変えなければならない。
  190. 天城勲

    ○天城政府委員 前任の時代でございますけれども、資料の御要求がございまして、そのときにも法律の根拠に基づいた調査を実施しろということでございました。  現在、私立学校法第六条に根拠がございます。これは前にも申し上げましたけれども「所轄庁は、私立学校に対して、教育の調査、統計その他に関し必要な報告書の提出を求めることができる。」という根拠でございます。私ども、これに基づきまして学校側は調査報告書を求めたわけでございます。この六条は、条文のとおり、これは調査報告を求めることができるということでざごいまして、他の監督規定のように、立ち入り調査、その他強権をもってわれわれが直接調査するという根拠ではないわけでございます。しかし、私立学校との関係につきましては、絶えず法律を根拠に議論をするということでなくして、できるだけ協力関係でいきたいというのがわれわれの考え方でございます。従来も学校側には口頭で報告を求めたり、話し合いを続けてきたわけでございますけれども、国会での強いお話もございまして、この場合にはわれわれは文書をもって報告を求めたわけでございます。これはもちろん私立学校法第六条の根拠に基づきまして、文書をもって調査を求めたところでございます。  現在、私学の紛争におきましては、どうしても当事者が分かれるわけでございますので、私たちが学校側につきまして調査をこの法律の根拠に基づいて求めますと、どうしても、学校当局と申しますか、現在の学校の機関からの報告ということにならざるを得ないわけでございまして、それを、率直のところ、われわれが粉飾したりいろいろなことをしないで、文部省が求めた報告というものをお出しすることが第一だと考えて、国会にも提出しているわけでございます。他のいろいろな資料というものも、国会からも提示されたり、御質問の過程でも出ておりますけれども、これらを、われわれいまの立場で責任を持って、これはこういうソースでとか、あるいはこういう技術でとかいうことを申し上げることができないわけでございまして、したがって、現在の制度では、法律上の学校を通しての調査しか得られないわけでございます。  したがいまして、他の調査との比較ということになりますと、これは非常にむずかしい問題になりますし、特に告訴事件その他の問題になってまいりますと、検察庁側の御判断が進んでいる段階ですと、われわれのところで判断しかねる問題がございますものですから、できるだけ客観的な資料を出したいという努力はやっておるのでございますけれども、いまわれわれの与えられている立場の上で必ずしも御満足のいくような資料ができない点は残念に思っておりますけれども、われわれの態度はそういう考え方の上に立って今日までやってきたわけでございます。
  191. 二宮武夫

    二宮委員 私は、文教委員会で、学校、特に大学ですが、学園の自治というものは尊重をしたい、しかし、いま社会においては、銃砲刀剣類等の取り締まりが非常に厳重になって、わずか五センチの飛び出しナイフを持っておっても刑事事犯になるという段階で、大学などのスポーツをやっている連中の中に相当逸脱をした、リンチにひとしいような強いものがあるということをかつて申し上げたことがあるのです。そういうことを申し上げたすぐ後に、東京農大かどこかに登山部のしごきがあって、人一人が死ぬという問題が起こったことも私は記憶しておる。文教委員会で私どもが申し上げることについては、もう少し文部省自体も本気になって取り上げてもらいたい。  それでは、いまの大学局長の言うような態度であれば、あなたのほうでは集まったものをそのままこっちによこすということなんですが、この前嘉悦学園の問題について大臣が答弁をした文部省設置法の第何条ですかによって指導、助言をするためには、調査が必要である。これは私どもに下さる調査資料ですから、あなた方はそこをトンネルで通ればいいかもしれないけれども、これからそれをもとにして指導、助言をやろうという場合に、一体食い違った調査事項というのはどう調整をして、その上に立ってどのように指導されるというのですか。二つの違ったものが出てまいる、それを調整もしなければ、真相も究明しないで、それをもとにして一体指導、助言というものはできるのですか。私はそのような態度ではよくないと思うのです。ですから、私ども申し上げているのは、やはり私立学校の自主性、大学の自治というものは尊重する。しかし、おのずとそこには幅がありルールがあると思う。たとえば、日本国の憲法を逸脱したり、学校教育法を逸脱したり、あるいは教育基本法から抜け出していくようなことをやっても、それをなお野放しで、それにさわるべきでないという考え方は、とにかく日本の国の教育とは思われない。いま文部省のやっている私立学校に対する指導というのは、そういうかっこうでやられておるのではないかという心配を私はします。いま少し基礎になるべき十分な調査をして——それは学園内に強く入り込んで介入するというのではないのです。しかし、それが刑事事犯として出てこなければ学園内に教育行政の指導もできないというようなかっこうでは、文部省は常にそういう人からだまされても何とも言えない。虚偽の申告をしたとしても、それに対して何らそれを是正する方法もない。そういう姿の上に立って設置法できめられた指導、助言というものはできますか。私はそこに大きな問題があるのじゃないかと思う。  私ども申し上げているのは、一番極端に右になったり、一番極端に左になったりするような、そういうルールの幅からはみ出したものはおのずから指導、助言の対象になるので、そのルールの中に入った中では、それは大学に対して自治を与え、文部省がいたずらに行政的に介入すべきではないとは考えますけれども、一体その判断をするところの資料もとれなくてそこにりっぱな指導、助言があるということは私は考えられない。大学局長の御意見をひとつ承りたい。
  192. 天城勲

    ○天城政府委員 現在の私学と所轄庁である文部省の関係でございますけれども、理念的に申しますと、私学の自主性、あるいは、特に大学につきましては、大学の自治というものを尊重しながら、おっしゃるとおり基本的な憲法、基本法のルールのもとに、もちろんこれを逸脱することは許されない、その上で必要な助言、指導という体制にはなっておりますけれども、現実問題といたしまして、大学問題、特に大学の自治、学問の問題等と関連の深い私学に対しまして、われわれとして、考え方は先生の御指摘のとおりでございますけれども、実際問題として、行政的な指導、助言にも限界がかなりあるということが実態だと私は思っております。  ただ国士館の例でありますけれども、いろいろ御指摘のありました点につきまして、大学からも報告をもらっておりますので、それについて不審な点につきましてわれわれも十分大学と話し合っております。その中には、たとえば施設の問題についての御指摘がございましたが、施設の建設当時あるいは認可当時から今日までの状況につきましても十分資料を出させて、その間のいきさつも検討いたしましたし、問題の点の指摘もいたしております。また、いまお話しのありました学内における暴力問題、体罰の問題等につきましてもいろいろ話が出ておりますので、そういう点についての学校の行動について、われわれの意見も申し述べております。しかし、それにつきましてはおのずから限界もございますし、われわれもただ資料をとって何にもしないというのではございませんで、与えられた範囲内で、逸脱しないようにしながらわれわれのつとめを果たすという、ある意味では非常にむずかしい行政の点に立たされておるのでございますが、その限りにおきまして努力をいたしておるつもりでございますけれども、力及ばず顕著な効果が出ないので、いろいろおしかりも受けるのでございますけれども、決してただ流していこうというつもりでもございません。場合によれば、紛争の両当事者に御出頭願えれば来ていただいて、両者の意見もそれぞれ伺っておる、学校側はこう言うけれども、反対のほうはこう言っておる、ここの点は不明じゃないですか、ここを明らかにしていただきたいという話もしばしばいたしております。  そのような立場で仕事をいたしておりますが、結果的には、現在の学校制度、私学法の考え方が、ことばは何を使っていいかわかりませんが、要するにこういうワク内で私学も十分自覚し、りっぱにやっていけるという前提——行政官庁が必要以上の干渉をしないほうがベターだという前提でこの法律ができているものでございますので、われわれも立法の理念というものは十分尊重しながら、また、私学の反省を求めながらやるというところが行政の限界ではないかと思っております。もちろん、これについて、立法論的にいろんな批判、意見はございますけれども、少なくとも現行法におきましては、われわれはそういう立場で仕事をいたしておるわけでございます。
  193. 二宮武夫

    二宮委員 その努力はわかるのですけれども、いま局長の言われたことは、一つ円周の中心を中心にしてその周囲を回っておるだけで、少しもその中に近寄らないのです。あなたがいかに何万べん繰り返しましても進歩はないのですよ。  そこで大臣にお尋ねしますが、私立学校の理想的な経営形態というのは、大臣としてはどういう形態だとお考えになっておられますか。この前の答弁では、学校法人の理事というのは特別な資格は要らないのだ、こういう話でした。それはわかるのですが、理事長兼学長というのが大体私学法人の中には多いわけですね。したがって、これは非常にワンマンになりがちな傾向になるのではないか。そこで簡単に、気に入らなければおまえ首だということになる。そういうところに先生方が安心をして教育をやろうという実態が生まれてこない。そこで教授会なり理事会というものがいま少しく権威を持つと同時に、文部省が認可をした後に、それに対する指導なり助言なり、そういうものをやる必要があるのではないかと私は機構の面で考えるのです。あまり内容に立ち入ってはどうかと思いますけれども、どこかで締めなければ、いま文部省の大学局長の言っているようなことでは、これは宮地さんが管理局長になりましても、大学から出てきたものをそのままうのみにせざるを得ない。いまの調査では、うそを言われればうそをそのままぼくらに伝えるというトンネル式の文部省の態度しか出てこない。そういうことでは、私どもまじめに、真剣にその大学によかれかしと考えて言いましても、ただいたずらにさか恨みを食うというだけであって、大学そのもの、私学そのものが前向きで進んでいくというかっこうにならないことをたいへん残念に思います。これからいよいよ私学に対する特別の振興方策調査会もできて、だんだん結論を出そうという段階ですから、私は、大学が自主的に自分でやっていく、一つでなくて、あるグループが一緒になってやろうというような、そういう中間機関的なものを持ってもいい、自主機関を持ってもいいし、あるいは、大学の運営の中で、大臣が理想の形として、あるいは理事会、教授会というものに権威を持たして、そこへはかって、民主的に結論が出なければその学校の運営はやらないという進め方をやってもいいと思う。しかし、学長、理事長というものにあまりワンマン的な権力を与えることは、私は私立学校の民主化というものの阻害になっておるのではないかという感じがするのです。あまりに押え過ぎても、平塚学園みたいに暴動が起こって、起こった後には、今度は学生が自由を求めて国鉄の車掌をなぐってみるというような問題が起こったり、行き過ぎから、極端から極端へ走っておるという状況があるので、やはり学生生徒の人間性というものを尊重しながら、あまりに一人で偉ぶって、学長、理事長というものがワンマンでやっていくという姿もよくないのではないか。大臣としては、私立学校あるいは大学もそうですか、特に私学がいま問題になっておるので、私学の学校運営に対する理想的な形態というのはどのようにお考えになっておるか、ひとつ大臣構想を承っておきたいと思います。
  194. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 御指摘の点は非常にむずかしい問題だと私ども思っております。かねがね私も実はある大学の紛争に関係もありましたので、どうも、大学というものは、こういうように規模が大きくなってきたら、経営を担当する理事長と学長とか総長というものは別なほうがいいんじゃないか、たとえば専修大学のように、理事長と学長あるいは総長が別のほうがいいのではないかという感じを持っておった時代があります。実は臨時私学振興方策調査会とは別途に、いろいろ私立学校で問題が起こりますから、先般来私立大学問題懇談会というのをつくりまして、これは各大学の学長それから学識経験者、こういう方々にお集まりいただいて、そういう問題のほんとうに遠慮のない意見交換をしておるわけです。きょうも三時から実はそれをやっておるわけで、私もからだがあき次第行きたいと思っておるのですが、その席上でも、この理事長、学長あるいは総長問題が出まして、いろいろ議論が出ましたが、一、二の人は分離されたほうがいいという説もありますが、大学関係者の大部分の人は、どうも分かれたら大学の運営はやっていけない、やはり理事長と総長は一本のほうがいいんだという説のほうが、その場では大勢を占めているようです。ここらが実際問題なんで、私も、どういう姿が、ことに大学のような規模の大きくなったものの運営としてよろしいのか、非常にその判断に苦しんでおるわけです。  それから、その前の指導、助言の問題でありますが、先ほど二宮さんから、両方から出た資料をそのまま筒抜けにわれわれ委員に配ったって意味なさないじゃないかというおしかりがありましたが、これは役所としては、右から左から出たものはありのまま資料として提出をするということのほうがむしろいいんじゃないか。ただ、指導、助言をするのには、両文の言い分に対して何がしかの判断をしなければ指導、助言はできないじゃないかという御指摘、これもごもっともでございますが、これはやはり指導、助言をする担当官なり部局の担当者の判断でありまして、いろいろ両方の意見も聞き、材料もとり、そしてここらが大体めどで、今度こっちに会ったらこういうことを言おう、こっちに会ったらこういうことを言おうという、大体の腹づもりをきめてやることで、これにはこう判定をするとは、裁判所でないから、外にはどうもなかなか言えないんだろうと思うのです。ですから、大学局長もお答え申し上げたように、私学の指導、助言ということは非常にむずかしい。ことに学校教育法自体が、文部省というものはあまり教育機関に立ち入ってはいけないんだというたてまえからきておる。一体このたてまえが全体としていいのか悪いのかといえば、こういう特殊の、きょういろいろ問題にされました問題を起こす一部の学校については非常にこれでは不十分で、もっと適切な判断をし、あるいは刑事事件について捜査当局がタッチしたものについては、捜査当局の判定等を参考にしながら、もっと強力な指導、助言、立ち入りができれば私は都合がいいと思うのですが、しかし、国全体に非常に数多くある大学や学校のうちで一、二のものがどうもうまくいかないからといって、それじゃ全体にもっと強い指導力を持つことが適切であるかどうか、これはやはり教育全体の面から考えますと問題点があるだろうと思うのです。ですから、遺憾ながら問題を起こした学校に対する文部省の指導、助言という権能それ自体からいうと、この中に携わっておる担当の当局も、もうほんとうに歯がゆい次第で、思うようにまいりませんが、まあできるだけ説得型で努力をする。努力の足らない点をおしかり受けるのはやむを得ませんが、できるだけ関係者に反省を求めるように指導、説得をするということが、現在文部当局のつとめであろうと思います。国士館大学等についても御指摘のようにいろいろ問題がございますので、何とか正常化されて、問題を起こさない学園になるように一そう関係者を督励してつとめてまいりたいと思います。
  195. 二宮武夫

    二宮委員 柴田学長について最終的ならく印を押すというようなことの判断を文部省に求めることは私は遠慮いたしますけれども、少なくともその行動については、私どもとしては正常なものだとは考えられないような行動がたくさんあるわけです。しかも学校に、検察庁のほうでは親子のような教授、学長の間柄だからといって見る目の中に、逆にそうではなくて、朝でも晩でも首を切って職を奪う、生活を奪うということを平気でやるような親らしくないところの態度も見えるし、あるいは学術会議がその行動については反憲法的だという判断をいたしております。それから、東京都の弁護士会も人権の問題について出てまいりました。人権擁護局におきましても、この中における学生諸君の人権については検討をする必要があるというふうに出てまいっております。したがって、私立学校の法律の中に所轄庁という名前がはっきりある。文部省としては所轄庁という名前をいただいている。いまあなたのほうのやっていることは、所轄庁でも何でもない。そのような状況の中で、他の団体がこれに対して非常な心配をしながら具体的に問題を掘り下げていこうとする中に、大臣の言われるように、全部の人を私は言おうというのじゃないのです。やはり病気に応じて療養しなければならない、療法を講じなければならない、まず病人を救わなければいかぬ。その中に何万という生徒がおるのですから、その一人一人が自分の青春をゆがめられたというかっこうで教育されたのではたまったものじゃない。だから私は、いいところはほっておいてもいいのですが、悪いところに対する指導というものはいま少しえぐってやれるように、他の者が出て、所轄庁は一体どこにおるのだというばからしい存在にならないような方向で今後努力をしてもらいたいということを要望いたしておきます。これはまた国会の犬の遠ぼえという批判をするかもしれませんけれども、私はそういう犬の遠ぼえと言われようとどうあろうと、とにかくそのような逸脱した私学というものに対しては、やはり文教委員会としては批判をして、りっぱな方向に立ち直るということを期待しながら申し上げておるので、それをがむしゃらに敵対行動であらわしてきても、それはまことに私どもの意図するところではないのでございますから、文部省においても、そういう点でひとつ十分今後善処してもらいたい。特に大学局長については十分そういう点を、まあ御苦心のほどはわかりますけれども、もう少してきぱきとした方法を何とか講じて、こうやりなさいと私は言えないのが残念ですけれども、そういう点はひとつ努力していただきたいと要望いたしておきます。      ————◇—————
  196. 八田貞義

    八田委員長 次に、閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、二宮武夫君外二十一名提出の学校給食法の一部を改正する法律案並びに文教行政基本施策に関する件、学校教育に関する件、社会教育に関する件、学術研究所及び宗教に関する件、国際文化交流に関する件及び文化財保護に関する件、以上の各件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  198. 八田貞義

    八田委員長 次に、委員派遣承認申請の件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が本委員会に付託され、委員派遣の必要が生じました場合には、派遣委員の人数、氏名、派遣地、期間並びに承認申請の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会