○
滝井委員 産炭地に
基盤をつくることはわかるのですが、いま
石炭局長の言うように、まあこれから五、六年先になったら
企業が
筑豊に行くであろうという、その五、六年が待てないのですね。
御存じのとおり、いまでも
筑豊というのは、女と
年寄りだけになって、青年がいなくなってしまう。どこに行くかというと、全部
太平洋ベルト地帯に行ってしまうわけです。そうすると、
太平洋ベルト地帯は、過密で
公害があって、もはや三重県の四日市みたいに、
人間が住めないという
状態が起こりつつあるわけです。だから、何もこれは
石炭局ベースでものを見るのでなくて、
通産省全体として、
日本産業の
構造と配置というものを一体どうするかということがやはり
重点に置かれて、そうして、その上で、やはり
企業が
対外競争をやる上に、いまそんないなかには行けません、
中枢部に集中しなければだめですというものの
考え方を直さなければいかぬじゃないか。そのものの
考え方は、
経済が
中心であって、
人間というものが
経済に従属するものの
考え方なんです。だから、五、六年しておったら、もはや
日本の
新規若年労働力というものが
企業には不足するのです。それは、
昭和四十五年になったら、よう見て百二、三十万しか
新規若年労働力は出てこないですよ。そうして、
病気をしたり
定年退職になって生産の現場から退場していく
労働力というのは百五、六十万になるのだから、その
新規若年労働力は、引退をしあるいは
病気のためにやめていく
労働力をまかなうことができなくなってしまう。そして、それに今度は
日本経済の伸展による
自然増というものを加えてまいりますと、これはおそらく百万をこえる
労働力の不足ですよ。そうなったときに、
筑豊は根こそぎ持っていってしまわれます。残る者は女と
子供とお
年寄りだけです。
子供も一緒に親は連れていきますわ。そうすると、
あと五、六年たって
企業を持ってくるといったって、これはもう
東京の
千代田区と同じようになる。それは、
東京の
千代田区なら昼間は人がおりますけれ
ども、あそこには人がおらなくなる。
堀坂さんが一生懸命つくった
工業用の
団地も、ペンペン草がはえちゃって、また手を入れなくちゃならぬことになってしまう。だから、何ぞ五、六年を待たんやです。
それから、いま
一つは、こういう
筑豊の
政策をやろうとすれば、小手先だけの
産業政策じゃだめなんです。やはり大きな外交上の問題が伴ってくる。たとえば、
八幡製鉄はいまどこから
鉄鉱石を買っているか。はるかかなたの
豪州から買っている。藤井さんのごときは、
日韓の
国交調整については非常に熱心で、みずからも
韓国に乗り込み、国会にも保守党の推薦で
参考人になって出てきた。それほど
お隣の
韓国との
国交調整をやる熱意があるなら、
お隣の
中国との
国交調整をやったらいい。そうすると、
八幡製鉄はすぐ
お隣の
中国から
鉄鉱石を入れることができるから、
豪州よりはもっと安くできますよ。このことは、
筑豊のいわば主柱である
鉄綱の原料が安くなってくる。いま
石炭でも、へますると今度は北海道から
八幡製鉄は持ってこなければならぬようになってしまう。そうすると、
中国から
石炭を持ってくるということになれば、これはどこか突破口をつくっていくとすれば、おのずからやはり
八幡製鉄が先頭に乗り出して、
お隣の
中国との
国交調整をやらなければ、ほかには財界は言ってくれる人はないですよ。
八幡製鉄が一番なんです。もともと官業で発達してきたものだから、それがやっていく。そしてその上で
企業来いという形。同時に、
太平洋ベルト地帯への
労働力の移動というものをここで食いとめる。そういう
政策のきちっとした
方向がないといけない。
中国との
国交調整はやらないで、
お隣の
韓国とやっても、もうそんなものは安い
労働力を
日本に持ってくるより使い道がないのじゃないか。金をぶち込むばかりですよ。
韓国と
国交調整したって、
日本経済全体から言ってもたいして大きな利益はないわけです。こういう点から言っても、むしろあまりものごとをイデオロギー的に党派的に考えずに、ほんとうに
国民経済の立場に立ち、
日本国民の福祉と生活を豊かにするという
考え方に立てば、私はそれをやることが先決だと思う。そのことが
筑豊を起死回生に導く一番大きなポイントですよ。何もこのことは
日米安保条約のもとにおいても不可能ではないわけで、たとえば、松村さんだって主張しているし、今度は
小坂さんだって行くという。
小坂さんや前の
防衛庁長官の江崎君等が行くと言っても、与党は今度許そうということなんです。だから、思い切ってやるということが
筑豊の
地盤沈下を具体的に防ぐ方法じゃないか。そういうことでないと、とうとうとして
太平洋ベルト地帯に人が流れていくのを押えようだって押え切れません。人がいなくなって
企業が来たって、これは話にならぬということなんです。
だから、いまはもう
一つの限界ですよ。あなたのようにこれから四、五年待っておったら、もう
日本の
産業構造はがらり変わっていますよ。
石炭なんというのはあの辺なくなってしまう。
石炭がなくなってしまってから
産炭地の
振興と言ったっておそいです。
石炭のあるうちに
産炭地振興をやれというのが
方向でなければならぬ。予防というのは、
病気が起こる前に
病気にかからないようにすることです。いま
石炭がこういう
運命にある。次は
石油にやってくる。この業界がそういう
運命にある。
原子力の発電その他が行なわれて、
原子力が燃料化してきますと、十年か十五年先、
石油が同じ
運命にあう。そういう
運命に追い詰められたときにやるんでなくて、もう少し前からやはりやってもらわなければいかぬ。だから、四、五年して追い詰められて、もうペンペン草がはえて仙人のような御老人しか住んでいない
筑豊に幾らやろうといったって、今度は
労働力をどこから持ってくるか。働き手がないから全然だめだ。だから、私は相当強引かもしれないけれ
ども、金をつぎ込むという
政府が決心さえすれば、
誘導政策は可能ですよ。それと、いま言ったように、外交
政策というものをもう少し世界の立場から考えてみるということです。いまのこの過密な
太平洋ベルト地帯、それは
北九州も入っています。しかし、いまや
北九州というのは、中期
経済計画をごらんになっても、七%か八%
程度あった生産力というものが、中期
経済計画で四・五ぐらいに下がってしまうということです。
地盤沈下が急速にいく
状態だったんですから。だから、これは
太平洋ベルト地帯でもしりっぽのほうで、たいして力がないという形になっておるわけです。それが
石炭斜陽化で拍車をかけられておるわけですから、私は、そういう点から、いま
井上局長が言うように、これから四、五年したらやるなんという、そんなのんきなことでは話にならぬ。だから、あなたのほうがそういう
考え方では、
産炭地域振興の
法律を五年延ばしたって、五年目になってもう一ぺん延ばしてやりかえなければならぬということになるわけですよ。だから、そうじゃなくて、やはり
基本計画と
実施計画をもう一ぺん再検討してもらって、そうして今度の中期
経済計画の中にやはり
産炭地域振興の
計画というものを最優先的に位置づけしてもらわなければならぬと思うのですよ。それはやれるでしょうね。