○横川正市君 まず私は
総理に、
日韓条約の
案件の
解決が十四年間の長い交渉の結果妥結をして、ただいま当
委員会でこれの
審議を行なっているのでありますけれ
ども、十四年間の長い交渉という年月は積み重なっておりますけれ
ども、提出されました
国会では明確に対立する
意見が激しく動いておりまして、長期にわたって難航したという
条約の当事者の労をねぎらうことのできないということは、全く残念なことだと
考えております。しかし、私は外交問題が与
野党の対決の場となると、そういうことが愚行のごとくに
考えることは間違いであると思っております。いずれかの一方がよくて一方が悪い、こういうような判決がこれは下されるものではないと思うのです。今日まで与
野党間で論議を通じて明らかにされた
審議は、これは当面その意思がお互い妥協され一致されて通過するのではないということは、言ってみますと、これは歴史の一こまの中で起こった事件を歴史がこれを証明をするというところにゆだねるということはきわめて私は知恵のないことだと
考えております。しかし、私はただいまから
社会党を
代表して
日韓案件中の
請求権・
経済協力その他の二、三の問題に触れるわけでありますけれ
ども、この問題の
審議の中でまず
総理に伺っておきたいのは、政治に対する姿勢の問題であります。数多い同僚
議員からの
質問に答えて
総理は、たびたび「平和に徹する」ということばを表明いたしております。これは
総理の政治姿勢の根本だと
承知をいたすわけであります。「平和に徹する」と、こう言うことは、
総理自身が
日本とその
国民の先頭に立ってそして姿勢を正してその意思を表明されたのだと私
どもは受け取りたいわけです。しかし、実際には、そこにいささかお互いの受け取り方に差異を生じております。まあ言ってみますと、
総理を目の前にしてたいへん言いづらいことでありますけれ
ども、たとえば
総理のイメージといいますか、これは反共保守主義、まあその中にいわば英国のチャーチルがその文献に明らかにしておりますように、保守主義というのは
現状に立った現実主義と言っております。社会は進展をするんだから、
現状に立った現実主義が保守主義だと理解をするとするならば、私は、
国民一般が
総理に対して保守主義という名を冠したということは、停滞する保守主義、こういうふうに
考えられているところが私はやはり受け取り方の差異ではないかと、こう思うんであります。そういう
総理の言動というものが、私は、やはり「平和に徹する」ということばが出されておりますその受け取り方に差異がないように、率直なこの
意見の表明というものがあってしかるべきではないか、こういうふうに
考えます。この点について
総理の
意見を聞きたいのが一点であります。
もう
一つは、今日アジアの諸国の中で、ベトナムをはじめとして韓国、朝鮮、それからマレーシアとかインドネシア、いわばこれは苦悩するアジアの現実を明確に露呈をいたしておることでありまして、これらの諸国家が平和を求めて苦悩をしておるということが今日の私は姿であろうと思うのであります。この
現状というものをとらえてですね、一体
総理が「平和に徹する」いう意思を表明されたその意思の
一つの具体的なあらわし方として、こういう苦悩するアジアの問題の
解決にどういう役割りを果たそうとされておるのか、この点についてまず二問目としてお伺いいたします。
もちろん、この
総理の「平和に徹する」ということは、無抵抗主義によるところの平和論でないとは私
どもも受けとめております。しかし、実際にアジアにおける今日の姿というものを
解決する具体的な姿勢というものや具体的な提案というものがなければ、私
どもは実は一体「平和に徹する」という姿勢として何をとらえておられるのかについてきわめてとらえにくいわけであります。この点で、ぜひひとつ
国民に対する説得力のある
総理の真意というものをお伺いいたしたいと思います。これは私はたびたびの論議を通じて感ずることでありますけれ
ども、そのことは
総理自身が百万べん「平和に徹する」と言ってみても、これはその相手側にとらえられなければむだなことであります。
総理自身のことでもあろうと思います。また、
審議に参加をされております
与党の方々のための問題でもあろうと思いますので、そういう
立場から世論をたびたび私
どもは聞くわけでありますけれ
ども、
総理をはじめ各大臣が、反対の
意見を、単に世論の一部の
意見というようなとらえ方をするとか、あるいは、まあ多数というものが背後にあるから、どういうようなことでもその場をのがれればいいとかというような、そういう安易な
立場ではなくて、この問題についてひとつ
総理自身の
考え方を明確に表明していただきたい、かように思います。