運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-12-04 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月四日(土曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————    委員異動  十二月四日     辞任         補欠選任      佐多 忠隆君     北村  暢君      羽生 三七君     森  勝治君      岡田 宗司君     木村美智男君      黒柳  明君     渋谷 邦彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 梶原 茂嘉君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 近藤英一郎君                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 中村喜四郎君                 日高 広為君                 廣瀬 久忠君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 木村美智男君                 北村  暢君                 小林  武君                 中村 英男君                 森  勝治君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 渋谷 邦彦君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        法務政務次官   山本 利壽君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省人権擁護        局長       鈴木信次郎君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        文部省初等中等        教育局長     齋藤  正君        文化財保護委員        会事務局長    村山 松雄君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君        常任委員会専門        員        結城司郎次君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出衆議院送  付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから、日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日佐多忠隆君、羽生三七君、岡田宗司君が委員を辞任され、その補欠として北村暢君、森勝治君、木村美智男君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案  以上四案件を一括して議題とし、質疑を行ないます。小林武君。
  4. 小林武

    小林武君 総理大臣に、質問に入る前にお尋ねをいたしたいわけでありますが、昨日、わが党は自民党に対しまして、あなたの党の自民党に対しまして、お手元に上げましたような三項目について申し入れを行ないました。   一、日韓特別委員会における審議はいまだ不  十分であるので、慎重審議をするため強行採決  など行なうべきではない。  このことにつきましては、いままでの審議段階におきましても、この条約重要性から考えまして特別委員会における審議は十分に尽くすということ、強行採決は行なわないということを、あなたは党の総裁としてあるいは総理としてお約束をいただいた。それに対して、どうも打ち切りをするというような気配が濃厚であるというところから、わが党はこの申し入れをなした。   二、条約協定交換公文は、本院における  自然成立を待たず、十二月十日に討論採決に  応ずる。   三、その成立を待って必要となる国内三法案  については、残余の会期もあるので、引き続き  審議すべきものとする。という申し入れをなしたわけであります。このことについて、総理の、あるいは党の最高責任者としての総裁から、先ほども申し上げましたように、この法案重要性をお考えの上、どのような所信をお持ちなのか。すでにわが党に対し、あるいは野党に対してお約束をした強行採決は行なわないということは、よもや破られまいと私は考えるわけでありますが、この点についてまず最初お答えを聞きたいわけであります。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの小林君の、ただいまの申し入れでございますが、これは当委員会において理事諸君と十分御審議あってしかるべきものだと、私はただいま政府代表いたしまして、当委員会政府承認を求むる案件について提案し、皆さま方承認を求めておるその立場でございます。御承知のように、国会運営委員長、また各委員等それぞれ理事を選任されて、理事等において段取り——いかに審議するかという段取りについては十分打ち合わせがある、かように伺っております。審議そのものにつきましては、政府はもちろん答弁が親切でなければならない、またこれは詳細を尽くさなければならない、これはもちろんでございます。どうか、ただいま申し上げるような意味におきまして、審議段取り等について十分に当委員会でお打ち合わせを願いたい、かように思います。
  6. 藤田進

    藤田進君 関連。いま総理総裁小林委員から提示いたしましたものは、社会党としては党内の真剣な討議を経て、党首である佐々木委員長をはじめ、機関にもかけ、これを自由民主党の党に申し入れをいたしまして、今日いまだ正式な回答に接しておりません。  冒頭、私より、議会のあり方について総理総裁との間に質疑をかわし、総理総裁としても政党内閣という日本現状から見て、自分にすべての責任があることはこれは認めるし、再び衆議院における遺憾なああいうことのないようにということであるので、一片の当委員会理事間でというそういう問題にとどめないで、真剣に、自由民主党としても、社会党が、参議院の場における審議を実らせ国民期待に沿うべくここに踏み切っているという実情は十分御了察いただいて、まだ正式回答にも接していない段階ですから、このことは真剣に、総裁とされても党機関にはかられ、その意に沿うように、要するに、混乱の中にこの参議院事態が経過するということのないように、特別のはからいをされるべき時期に来ていると思います。この点については、先ほどの御答弁で、何か問題の責任を回避されようとするようなふうにもうかがえるわけで、まことにその点遺憾と思いますので、再度いま申し上げた趣旨について、そのような善処のお取りはからいがいただけるのか、いや問答無用、わがぺースでいくと——報ずるところによれば、齋藤幹事長並び塩見国会対策委員長は、昨日総理と会って、本日四日に強行採決をいたします、おそらく総理はちょっと待てと言ったに違いないと思うけれども、(笑声)このような実情がかりに真実だとすれば、なおさら私どもは非常に重大な——日本議会制民主主義の重大な関頭に立っているように私は思います。一議員としても、党人であるわれわれ社会党委員並びに他の会派についても、大きなこれについては野党は異論はないようにも思われます。これは真剣にひとつお考えの上で御答弁をいただきたいと思うのであります。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま小林君にお答えしたとおりでありますが、重ねてお尋ねでございますので、私の考え方を申し上げたいと思います。私はただいま政府代表いたしまして、そうして皆さま方承認を求むる案件、同時に成立を求める法律案等々を一括御審議を願っているのでございます。これらの審議段取り等につきましては、ただいま申し上げますように、委員会において十分お打ち合わせを願って、そうしてその段取りをおきめください、かように私は申しておるのであります。ただ、私が総理であると同時に自民党総裁である、こういう立場から、総理というよりも総裁としての立場からその考え方をはっきりしろと、こういうお尋ねのように伺いますが、ここのところは実はたいへんむずかしいところであります。しばしばお話しであるように、私がいわゆる政府としての立場、これは立法府に対して干渉がましいことを一切やってはならないことでございます。これはもうははっきりしている。立法府行政府、この三権分立の関係からもその点ははっきりしている。これを混淆するようなことが、あっては相ならない、かように思います。したがいまして、私は自民党総裁でもありますが、私自身内閣総理大臣である、行政府代表しておる、かような立場におりますので、国会運営と党の運営につきましては副総裁並びに幹事長、これにまかしておる、かような状態でございますから、その点はひとつ御了承いただきたい。で、私はただいま申し上げますように、皆さま方の御審議について、早く御審議をしてください、こういうことは気持ちとしては抱いておりますが、それは率直にそういう話をいたしましても、皆さん方から、何だ、よけいなおせっかいだと、必ずおしかりを受けることだと、かように考えておりますので、この委員会段取り等については、十分委員会において自主的におきめいただきたい。
  8. 藤田進

    藤田進君 私は十分真剣な検討いただけるものと思いましたが……。党首会談申し入れ、現実には佐藤佐々木会談ということもしばしば申し入れられているが、現状においてはまだそれが実現していない。党のことは幹事長、副総裁にまかして、おれは知らんとおっしゃいますが、それならば、党首会談ということをもくろまれること自体がおかしいじゃありませんか。私は多くを申し上げません。いま小林委員並びに私が関連して申し上げたこと、この申し入れについては一切検討する余地もないし、検討はしない、おれは関知しないという、そういう態度でしょうか。将来に問題を残すかもしれない時期でありますから、私は政府並びに特に今回は党首であられる佐藤総裁にぜひお伺いしなければなりません。私は真剣にこれを受けてどうすべきかという検討がなされて、申し入れました社会党に対しましても、自由民主党代表したしかるべき回答がなされるのがこれは当然だと思っております。これを無視して、もし伝えられるような強行採決になり、事態国民の好まざる方向に行くということは、これはもう佐藤さんを含めわれわれが、お互いが考えなければならないところじゃないですか。私はそれを憂えて、検討すべきだ、そうしてすみやかにこれに対する正式な回答をすべきだと思うのです。それをしもあなたは回避されようとするのですか、どうですか。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 党首会談をするということをしばしば言っているじゃないか、こういう事柄ももちろん私どもが計画をした。しかし、私どもどこまでも民主的にこういうことを進めたいのでありまして、いわゆる総裁だからあるいは党首だから、こういうことで何でも全権まかされているのだ、こういうわけではない。それぞれの機関がありまして、それぞれ積み重ねの上と言いますか、あるいは一つの道を開いて、そうして党首会談をやっていく、そういうことをいたすわけであります。そう論理飛躍いたしまして、党首会談だ、こういうのでは実はない。私が先ほど来申し上げました、委員会審議段取り等は十分御審議を、御協議を願いたい、かように申しましたのも、これはすべてが民主的な運営ということでそれぞれがきまっていると思います。したがいまして、ただいまのようなお話が出て、これは私に直接申し入れがございましたが、私はそういうことは理事諸公において十分相談され、また当のこの委員会運営等においては、これは一体どうするのかというようなことは皆さん方がおきめになる、一々私がそういう相談を受けて、また総裁だからというので一々指図はしない。問題はやはりどこまでも民主的にやる、また民主政治を守り抜くのだ、議会政治を守り抜くのだ、この立場に立っての民主的な御相談ができれば必ず解決されると私は確信いたします。
  10. 小林武

    小林武君 こういう問題であまり時間をとるのもどうかと思いますけれども総理はこの点について、もっとやはり具体的な答弁をするべきだと思うのです。二項をお読みくださればわかるように、この第二項は、「条約協定交換公文は、本院における自然成立を待たず、十二月十日に討論採決に応ずる。」と、こう言っているのは社会党のこれに対する一つの譲歩の形だと思う。いわゆる議会政治に対するさまざまな批判に対するこれは社会党の建設的な意見であると思っている。その条件を一つ出して、あなたの党に対してこれは慎重審議するべきだということを申し入れている。あなたはそれをやっぱり理解してもらわなければ困る。先ほどのお答えの中に、審議は詳細にやってもらいたいと思っているというそういうお考え、しかしいつまでもやられても困るから、なるべく早くというようなその二つ意味はありましても、問題はやはり詳細に審議するというところに問題点はある。当然だと思う。そうすれば、これは時間もかかるし、あるいは、たくさんの質問者があれば、その質問者がそれぞれ出てやらなければならないと思います。特に私は、この本委員会が始まって以来繰り返された質疑は、最も重大な総論的な問題についてはかなり論議がかわされたと思う。しかし、各論とも言うべき最も国民に直接つながるような具体的な問題については、必ずしも私は明確になっておらないと思う。そういう段階で、きのう、おとといあたりから、すでに今晩はどうなるとか、あしたの朝はどうなるとかということを言われるのは、少なくとも私は審議を中心にした国会運び方でないと考えるのです。だから、そういうようなあいまいなことではなくて、この段階に来たら、あなたが、本心は、いや、きょう一発やるのだというようなことなら、そういうようなひとつ御答弁を願いたい。そうでなくて慎重審議本心なら、やはり総裁総理とは複雑な立場にあるといったところで、一人の人間がやっているのですから、これはそう御答弁を願いたい。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申し上げておりますように、どうか皆さん方はそれぞれの理事諸公もいらっしゃることですから、当委員会運営等については、そちらのほうで十分御相談をいただきたいと思います。   〔「委員長」と呼ぶ者あり〕
  12. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 小林君よろしゅうございますか。(「関連」と呼ぶ者あり)これは関連とおっしゃっても、やはり審議を急いでいるときなんだから、もう私は小林君……
  13. 藤田進

    藤田進君 総理も御承知のように、私どもが多年尊敬しておりました河上委員長がなくなりました。本日は衆議院議員も頭をたれて焼香に行っております、いま現在。私ども参議院焼香に一刻も早く参りたいと思っておりますが、日韓のこの委員会を開会されるということで、断腸の思いはしながら審議に参加しているのです。審議を深めようと思っているのです。そうして、私どもの展望では、衆議院にやや似たような、ああいったようなことが与党において行なわれるということになれば、これは全く国民期待を裏切ることになる。私はことばだけではありません。うちの党はそれだけをいろいろな機関にかけて相談もしたのです。おっしゃる日韓特別委員会における休憩はいつする、だれが何時ごろまで質問を続ける。これも当然理事間で、あるいは理事会相談をしております。これよりも高次元の、もっとトップ・レベルで相談をされ、その結果を見なければならない。いまの問題について残念ながら党首会談、といったようなことも実現していないという時期ですから、非常に私は重要な時期に来ているし、そのために、そのようなことがない合法の一つとして、間違いがあってはならぬから、文書で申し入れをしているのです。これを端的に聞きますが、もう回答もしない。ネグレクトしてものを進めようという、そういうことなのか。自由民主党として、総裁としても機関に命じて、これはすみやかに検討した上でその結果を申し入れのあった社会党回答すべきだという態度をとられるのか、せめてこれくらいのことは聞かしてもらいたい。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいま前委員長河上さんがなくなられたことに触れられました。私も今早朝お別れに行ってまいりました。私も時間は見つけて今朝参ったわけでございます。そうしてこちらに出てまいりました、ということをただいま申し上げております。皆さんが時間があるとかないとか申しておるわけじゃございません。ただいま私自身もお別れに行ってきたということを申し上げた。それはそれといたしまして、ただいまこの申し入れを受けました。私は、しばしば申し上げておりますように、私は政府代表として、この委員会に御審議を願い、そして承認を求めるということを提案いたした当の責任者であります。どうかそういう意味から、審議が早く終了すること、これは別に当委員会参議院に私が干渉するわけじゃございません。できるだけ審議を急いでいただきたいというのは私の率直な気持ちであります。このことは私は申し上げても、これは差しつかえないのじゃないかと、かように思います。そこで、ただいまこの申し入れを受け取りますが、私は、こういう事柄は、運営民主化と申しますか、十分相談されるという、参議院には議運もあるし、そういうところ、あるいは当委員会そのものに関するなら、理事諸公もいらっしゃる。こういうところで十分御審議をいただいたらいかがなものか、これはよけいなことのようでありますが、私はそのほうが本筋じゃないだろうか、いきなり政府代表である総理をつかまえて、この委員会でこの申し入れをされることは、やや私はその筋が違う。(「きのうしている」 「党にしている」と呼ぶ者あり)それなら党のほうで、いずれ議運のほうでそういうものについて十分相談されるだろう、かように私は思います。ただいまおまえに申し入れをしたのだ、それに返事をしろと、そういうお話ですが、これは少しやや違う。(「イエス、ノーを言えと言っているのじゃない」 「理事会でやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)それはもちろん慎重にしていると……(議場騒然
  15. 藤田進

    藤田進君 私の質問について受け取りにくい点もあったかと思いますが、あらためてお伺いしたいポイントは、こういう重大な時期でもありますし、そういった間違いのないように書いてお渡ししているので、これについてぜひ党とされては、与党とされて、そしてまたその総裁でもあるので、検討して何らかの回答をいただきたい、これについてぜひその総裁としても労をとっていただきたい、いかがなものでしょうか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総理としては先ほど来お答えしたとおりでございますが、総裁としてこの席をかりることはいかがかと思いますけれども、たって私の意見を述べろとおっしゃるのですが、私は昨日来すでに議運等で十分に審議している、かように思いますので、さらに、全然審議しておらないというようなことでは、これは申しわけないことで、検討すべきことは検討する、かようにあってほしい、かように思います。
  17. 藤田進

    藤田進君 回答させますね。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 検討させます。
  19. 藤田進

    藤田進君 検討して何らかの回答をいただけますか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十分検討させます。
  21. 藤田進

    藤田進君 その結果を待とう。
  22. 小林武

    小林武君 私の質問は二点ございます。二つ項目にわたって質問をいたしたいと思います。  一つは、日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定第四条の「日本国政府は、次に掲げる事項について、妥当な考慮を払うものとする。」、その「妥当な考慮」、(a)項の教育について「妥当な考慮を払うものとする。」、この「妥当な考慮を払うものとする。」という問題と、これに関連して当然あらわれてまいりますところの教育問題、これが一つであります。  第二点は、文化財及び文化協力に関する問題でございます。以下順序に従いまして御質問をいたしたいと思います。  最初教育の問題から入りますけれども、この点は総理お尋ねをいたしたいわけでございますが、大韓民国とわが国との教育に関する問題を論ずる場合には、当然これはこれに付随して朝鮮人民共和国の問題も関連して行なわれなければならないことは、ひとり教育の問題だけではなくて、いままでのさまざまな討論の中から出てきたことは申し上げるまでもないことだと思います。そこで私は、教育の問題ばかりでなく、一切の問題を考える場合に、植民地支配から解放された朝鮮であるということ、これをやはりわれわれは考えなければならないと思うわけであります。先ほど申し上げました法的地位の第四条(a)項にある問題は、日本教育を受けさせるということに関する問題であります。しかしながら、これだけでよろしいのかどらかという問題が一つあるわけであります。新しい国づくりをしようとするこれらの人に対して、三十六年間植民地支配をやってきた、その植民地支配のもとにおいて一体失なわれたのは何であるか、教育という部面において失なわれたものは何であるか、こういうことを考えますとき、総理が日ごろ御発言なさっているように、善隣友好というような問題、あるいは長い歴史的な関係というような問題をさらにこれを含めてみました場合に、これらの問題については単に四条の(a)項に盛られた問題だけで足れりとするわけには私はいかないと思うわけであります。このことについては、韓国側の出されましたいろいろな文書、たとえば韓日白書とかその中にたくさん盛られておりますけれども、その中に書かれておりますことは、いずれも屈辱の何年間である、このわれわれの恥辱を洗滌して新たな立場に立っていかなければならないということ、そういう屈辱の何年間というものは、日本の過酷な植民地支配によるものだということが書かれておるわけであります。このことは外務大臣がいつも背後にどういうことがあろうとも、文章化された条約を見てくれればいいというようなことを話されましたけれども、ほんとうに生きた国と国との交わりという問題を考え将来の友好を深めるという立場になった場合には、そういう血の通わない話はほんとうの国交ではないと思うわけであります。そういう立場から第四条の(a)項に示されただけで私は足らないと思うのでありますが、積極的に佐藤総理はこの点について何かお考えがあったらここにお示しを願いたいと思うわけであります。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお話、私がもし取り違えたのでなければいいのですが、やや小林君のお尋ねについては私はつかみかねているのです。と申しますのは、三十六年の過去の歴史があるのだと、また植民地から解放されたのだと、そういう意味で自主的な教育をしたいと、こういうことを十分考えなきゃだめじゃないかと、こういうお話であったんだろうかと、かように思いますが、さような意味でございますか。
  24. 小林武

    小林武君 まあ、ひとつ答弁してみてくださいませんか。大体そういうことも含めております。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それで大体私どもは在日の外国人——あるいは韓国人、朝鮮人、またその他のイギリス人だろうが、ドイツ人だろうが、在日の外国人の教育等につきまして、それぞれわが国の施設等についてこれをいかに利用するかということについてはそれぞれきめておるわけであります。で今回も、いわゆる朝鮮人——在日韓国人並びに朝鮮人、こういわれておるところの諸君は、いわゆるかつて日本国籍をもっていた、こういう意味で特別な便宜をはかろろじゃないかと、こういうわけなんでございます。いわゆる永住権を与えられるところの者については、これはもう法律的にはっきりした条件でこれを明文化された、しからざる者については、在来から日本において待遇していた、処遇していた、その処遇が悪くなるようなことはしないのだ、こういう話で今日まできておるのでございます。ただいま言われるような、もしもそれが、植民地を解放して独立したのだ、独立した教育をしたいのだ、こういうことであれば、それはその国においてなされることはいい。ここは日本の国でございますから、日本にまでそれを要求されることはいかがかと、かように私は思うのであります。はっきり申し上げておきます。
  26. 小林武

    小林武君 考え方はかなり開きがあるようであります。がしかし、もう一度だけ総理にこの問題については確かめておきまして、あとはひとつ文部大臣に御答弁を願うわけでありますが、私は過去のこの不幸な関係、こういうものに対して日本責任を感ずるからこそいろいろな面で協定条約が結ばれたと思うわけであります。私は、いま独立した二つの国が朝鮮半島にある、それは不幸なことではございますけれども、実在する。この二つの国に対してわれわれはやはり過去において植民地的支配を行なってきたということをやはり考えなければならないと思うのであります。彼ら自身も、先ほども申し上げました、過去の累積された恥辱というようなものは日本の支配によって出ているということを言っているわけであります。でありますから、国民一人一人に、はかり知れないほどの大きな影響を与えたあの日本の支配というものに対して、私はやはり教育をするという問題で考えたならば、単に日本教育日本人としての教育を受けきせる便宜を与えるだけだということでは私は済まないと考えているわけであります。この点について総理のもう一度はっきりした見解を承っておきたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小林君はそのほうの経験者でもあるから私は敬意を表してお話しを伺うつもりでおりましたが、ただいまの教育の問題につきましては、日本では日本教育といいますか、そういう意味、この日本教育、これは私が申し上げておりますように、いずれの国とも仲よくしていく、かような考え方でございます。過去の不幸な歴史はもう払拭して、そうして新しい善隣友好を樹立する、こういう考え方ですべての教育が行なわれておる、かように信じておりますが、この観点に立って見ましたときに、一番大事なことは、それぞれの国がお互いに平等の立場において独立を尊重していくということじゃないだろうか、内政に干渉をしないということではないだろうか、かように思います。そうして、そのもとを明記しておるものはそれぞれの国の憲法ではないだろうかと思います。ただいま私が非常に心配しておりますのは、北鮮の憲法、これは憲法がたびたび改正されると聞いておりますから、あるいはいまの状態ではないかもわからない。私が理解しておるようではなくって、もう改正されておるかわかりませんけれども、昨日椎名外務大臣が指摘いたしましたように、親日分子は政治にも関与できないと、こういうような憲法、その憲法のもとにおいて教育をされると、それでその教育の自由を日本国内で許せと、かように言われましても、それは無理じゃないかと、私はかように思う。とにかく親善友好関係を樹立して仲よくしようとこういう場合に、親日分子だけは別なんだと、精神病者と同じようにこれは政治にも関与できないんだと、こういう憲法をつくっておられる。そういうような教育をされては、ここは日本だからそれは困る。それは、お帰りになりまして、そうして向こうで教育をなさると、それはそれぞれの国の自由、いわゆる内政干渉はいたさない。しかしながら、日本国内において反日教育をされても困る。親日分子はだめなんですよ、帰ったって、それはだめなんですよ。こういうような教育日本でやられちゃ困ると、こういうことを先ほどから申し上げておるのでございます。その点に誤解がなければというので、実はお尋ねをいたしました。大体私はさように考え、さような答弁をいたしました。
  28. 小林武

    小林武君 やっぱり総理のお考えになっていることは、私の予想したとおりであります。このことはいずれ、しかし、だんだん質問を進めていく段階で明らかにしていきたいと思いますが、その前に一言だけ申し上げておきますというと、どうもやっぱり使い分けをやっちゃいかぬと思うんですよ。椎名さんに聞けば、一体、韓国の憲法を承認したわけでもないから、韓国の憲法を持ち出されても困るということを言う。今度、北の話をすると、あそこの憲法はどうだからどうだというような……、それから出発して、一体、そこにいる者は、どうも日本の国内の政治にまで干渉するというような——これはちょっと、そこらここらにいるような口うるさい連中が言うならば別ですけれども総理大臣のおことばとしては、はなはだもって受け取れないという私感じがするわけですよ。こういうことはまあひとつおっしゃらないようにしていただきたいと思いますけれども、しかし、それは、ひとつだんだんこれはいきますから……。  それでは、文部大臣にお尋ねをいたしたいわけです。  第四条に、教育に関する「妥当な考慮」というのがある。この「妥当な考慮」ということについては、明らかにこの条約協定の中にされているようでございますけれども、これを理解するに必要な条件としては、協定も読んでみなければならない、合意された議事録も読まなければならない、あるいは、討議の記録としてさまざまな問題もあるということになればね。さらに、これがあっても、具体的にこれが効力を及ぼした場合には、あなたのほうでは実際にこれを教育的な行政として移す場合に、さらにもっと問題点があるということをあなたたちのほうでも言われている。だから、この第四条の教育に対する「妥当な考慮」ということは、内容的にどういうことなのか、これを詳細にひとつお話をいただきたいわけです。とにかく、この協定の中に「教育」という文字は二字しか使われていない。たった二字の問題でございますけれども、これは両国の間の教育の問題——先ほど申し上げました教育の問題からさらに発展して、一体、外国人の教育はどうするのかという問題にも発展するさまざまな要素を持っておるわけでありますから、おいおいそれについてはお尋ねもいたしますが、とりあえずこの第四条をどうお考えになっているか、この点、ひとつお尋ねをいたします。
  29. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私の考えでは、第四条に「妥当な考慮を払う」という表現だけされておりますが、これは外交文書としての関係であんまりこまごましたことをそこに書くことは適当でないだろうということで、「妥当な考慮」という表現になったと思います。そこで、合意議事録に御承知のとおり具体的なことが記載されておりまして、具体的にはこの合意議事録が「妥当な考慮」の内容である。こう考えております。
  30. 小林武

    小林武君 それでは私の質問と同じ、もっとそれよりか分量が少ない、内容的にないような話のような気がするのですけれども、そういうあれじゃなくて、結局第四条の「妥当な考慮」というのはかくかくのことだということを話していただきたいのです、そういうあいまいなことでなしに。
  31. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) それは私から申し上げるまでもなく、御承知のとおり、合意議事録によりまして、韓国人で永住権を認められた韓国人の子弟が、日本の公立学校に入学したいという希望のある場合には、完全に受け入れて日本人と同じように公立学校の教育をする。あるいは進学の資格も同様に認める。こういう趣旨でございます。
  32. 小林武

    小林武君 それでは同じことをおっしゃるようでありますから、ひとつお尋ねいたします。  この場合、希望しない場合というのもあるのだが、希望するときはと、こうある。希望しない場合もある。これは親としては教育に対する責任がある。親が子供にこういう教育をしたいということは、これはわれわれの持っている権利であります。およそ人類の共通の権利でありますから、そういうたてまえで日本人としての教育は希望しないと、こういうことはあり得るわけです。なぜならば六十万いるのです。六十万のうちの十五万、これは学齢期の大体青少年と見てよろしい。これらの人間の中には、これは確かに日本人になり切ろうという者もあるだろう。日本人になり切ろう、そういう人たちにとっては確かにこれは日本教育を受けてもらうという第四条のあなたのおっしゃるような内容は、これはうれしい話だということになるかもしれない。しかしながら、いまや祖国は——どちらの場合を考えても、祖国は重大な時期にあるから、はせ参じて自分は新しい国づくりにひとつ参画しなきゃならぬ、わが民族の将来の発展を期さなければならぬという場合に、必ずしもこれは適当じゃないわけです。そうですね。希望しない場合のことについてどういう話し合いが続けられたか、どういう話し合いがあったのか、この点を承りたい。
  33. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 日本人である場合には日本の法律で義務教育として就学の義務がありますが、韓国人の場合には外国人でありますから、日本が制度上義務を課するわけにはまいりません。したがって、あくまでこれは在日韓国人の自由意思でありまして、希望する場合に、こちらとしては善意ある合意議事録に成立いたしましたような方途を講ずると、こういうことでございまして、希望しない場合は、これは別個に、その国の外国人としての立場考慮されるべきことであって、わが国が干渉すべきことじゃないと、かように考えます。
  34. 小林武

    小林武君 これがちょっとぼくはおかしいと思うのですね。話あったでしょう。向こう側から、こりや話あったと、私がこれを言うと、また皆さんは、韓国何言おうと知ったことじゃないとおっしゃるから困りますけれども、韓国側としては、このことについてやっぱりはっきり自分の意思表示をして、要求しているのじゃないですか。協力を求めているのじゃないですか。一九六五年六月二十四日付ですか、の共同声明の、好意的検討を約すというようなことが書いてあります。また、「韓国政府の「大韓民国日本国間の条約及び協定の解説」」というところを見るというと、この問題に触れているわけです。だから、この問題について私が韓国の立場になろうが、朝鮮の立場になろうが、これは当然そうやることについて、その場合にはこうしてもらいたいというあれが出るはずですよ。何も日本の学校へ入れてもらはなくとも、こういうことのあれはしてもらえないだろうか。これはアメリカだって日本に子供をよこしておればそういうことの要求はあるでしょう。ありませんか。
  35. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) そのほかに、御承知のとおり、韓国人の設立した私立学校が現在四校ほどございます。これらは講和条約発効前に許可しておる学校で歴史もありますから、これはこのまま認めていくつもりでございます。
  36. 小林武

    小林武君 そのお答えは、何だかお答えのようで私のあれに答えてないのですね。私が聞いているのは、「一九六五年六月二十四日付の共同声明の末尾に、「李外務部長官は在日韓国人子弟の学校教育関連する諸問題について説明した。これに対し椎名外務大臣は、現行法令を参照していかなることをすることができるか引き続き好意的に検討すると述べた」」と書いてある。さらにこの問題については、内容はどういうことかということになるというと、彼らのいわゆる学校というものが一体認可してもらえるのかどらかということです。私のところに来ている陳情書、あなたのところへもおそらく行ったと思う、在日韓国人の。日本の学校並みの一体扱いをしてくれるように、これはなかなか手続上めんどうだと思うけれども、そういうようなとにかく認可もしてもらいたいというような陳情が来ている。学校教育法の中に入れろと、こういうようなことを言ってきている。そういうことについて何ら触れておりませんか。話し合いはなかったわけですか。これはあなたが一体あれに参加するのか。これは外務大臣がやるのかだれがやるのか、法的地位だから法務大臣がやるのかどっちか知りませんけれども、少なくともそのことに関係した方々から私は明らかにしてもらいたいと思うのですよ。こういう問題は、いろいろな問題がございますけれども教育の問題ですね、大体十五万もいる人間の将来がどうなるかという問題。これは後ほどにも多少触れますけれども、こういうことですからね。そういうことに関する問題をうやむやにしておくということはできない。そういう話がなかったかどうか。私は話があって、椎名外務大臣はそのことについて、学校の設立認可ということに関する内容を持ったものについては好意的にとにかく考慮するというような返答をしたと、とにかく向こう側が言っておる。その事実がなかったのかどうか。希望しない場合は、おまえらかってにしなさいと、こういうことなのかどうか。
  37. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 日韓関係は、御承知のとおり、かつて韓国人は日本人であったわけで、日本人と何ら変わらない教育を長年続けてきたわけでございます。これが韓国と日本とは切り離されまして今日の段階を迎えておるわけでございますから、両国間に教育について合意されたものは合意議事録にあるとおりでございます。その他の点については、御承知のとおり、先ほど申し上げたように、学校教育法一条に該当するものが四校あります。そのほかに私立各種学校——各種学校に該当するものが三十四校ほどございます。これらを今後どうするか、あるいは今後こうした種類の学校の申請等が韓国人の学校として求められた場合、申請があった場合に、どう処理するかということは、ほかの外国人の場合と違いまして、わが国としては慎重に検討すべきものであると心得ておりますが、両国間に今回の基本条約及び諸協定が結ばれるに際しての合意されたものは合意議事録に明記されているとおりでございます。
  38. 小林武

    小林武君 いや、その前に、そうすると、このことについては韓国側からは何も話がなかったということですか。申し入れがあってどういう返事をしたかは別として、いわゆる希望しないものですね、私に言わせれば。二つに分ければ、希望しないものですよ。別な教育というものを求めるそういう人があった場合のことについて何ら話し合いがなかったのかどうか。そういうことはどうなんですか。それはあったのかなかったのか。あったとしたら、返事をしたのかしないのか。したら、一体どんな返事をしたのか。こういうことを、それだけでいいのですよ。それだけ言ってください。
  39. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私はこの合意議事録成立に至るまでに、直接タッチいたしておりませんから、たぶんいろいろ込み合った話し合いはあったことと思いますが、その点は必要でございましたら外務省か文部省の関係事務当局から答えさせることにいたします。
  40. 小林武

    小林武君 委員長、そうすると、だれか、ぼくもわからぬから、適当な人に答えさしてください。
  41. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答えいたします。技術的な詳細の面につきましては、いずれ文部省の事務当局のほうから御説明を追加していただくといたしまして、交渉の経緯といたしましては、韓国側、特に居留民団のほうでは、いまお話のありました民団経営の学校を卒業した者がそのまま日本の高等学校、大学等へ進めるようなその資格を認めてくれ、すなわち日本教育体系の中へ韓国人の学校を組み入れてほしいという要求がずっと交渉中にあったわけでございます。しかし、それは文部省のほうとも協議いたしまして、なかなか法的に言いましても、教育体系の統一性の維持という点から見ましてもむずかしいということで、ずっとこれは認めないできたわけでございますが、最後に李東元外務部長官がこの調印のあとで外務大臣のところへあいさつに来ましたときに、何かこの点おみやげとしてこれを認めてもらえるようなことは言えないものかというような話があったわけでございますが、これはなかなかこの法的にむずかしい問題で、即座にその場で外務大臣からオーケーと言うわけにいかない問題でございまして、そこでこのコミュニケに、さっきお読みになりましたように、現行法に照らしてどういうことができるか引き続き検討するという、そういう言い方で話をおさめた、そういう経緯だったわけでございます。  その後、現行法に照らして、はたして前向きでどれだけのことができるかということを文部当局とも事務的に打ち合わせておったわけでございますが、この詳しいことは文部当局からお話があると思いますが、教員の国籍の問題とか、それから教科の問題とかで、なかなか韓国の学校をそのまま日本教育体系に組み入れてそこを出た人が日本の高校、大学へ進めるというふうにはできないし、ほかの、たとえばアメリカン・スクール等についてもそういうことは認められないということで、現在はその検討がそういうところで一応とまっている、そういう状況でございます。
  42. 小林武

    小林武君 それで明らかになりました。そこで文部大臣にお尋ねいたしますが、これはしかしあれですか、あなたのほうの石川二郎さんという人が「文部時報」の中に書かれているのですが、一〇五六号ですか、八月号ですね、その一九六五年八月号、この「文部時報」の中に書かれておりますが、こういう問題についてあれですか、韓国のことはもちろんあるいは朝鮮人民共和国の人もあるだろうし、それから「わが国に滞在する外国人も増加して来ているおりから、文部省としては上述のような状況を考えて、わが国在留の外国人のための学校は本来どのような形態で存続を認るのがよいのか、その正しい在り方はどうかについて、検討」しているというのだが、この検討は一体どのくらい進んでおりますか。
  43. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) それは担当の齋藤初中局長からお答えいたさせます。
  44. 齋藤正

    政府委員齋藤正君) 学校教育法によりまして、第一条とそれから各種学校と大きく分けるわけでございますが、第一条の学校は、申すまでもなく、わが国の国民の資質を養うということの目的からいたしまして、外国人による外国人の国民のための教育に該当しないことは、これは法律の精神から明らかであろうと思います。先ほどお話のありましたように、韓国人のための学校というものを第一条の学校にしてもらいたいという話がございましたけれども、その点につきましては、文部省といたしましては、先ほど申しましたような理由でできないということでございます。  第二の各種学校の問題につきましても、これは学校教育に類する教育を行なうというようなことで、本来外国人が外国人の国民のための教育というものをどういうふうに扱うかということは予定されておりませんので、現在は文部省といたしましては、これは朝鮮関係のみならず、外国人が一般にそういう目的のために設立しようとする学校につきましては、これは認可しないというような指導をいたしておるわけでございまして、その点につきましては、今後問題として、いかなる形でいかなる制度がいいかということを検討してまいらなければならない、かように存じております。
  45. 小林武

    小林武君 文部大臣にここでお尋ねいたしますが、いまの答弁でございますというと、従来の態度というのは明らかになりました。これはわれわれも承知いたしております。いささか少しがんこ過ぎるようなところがありますが、態度はわかっております。  そこでお尋ねいたしますが、これは現在進行中の問題だということになりますと、検討が進行しつつあるということになりますというと、現在認可しておるものがありますね、各種学校の場合、その他の場合。これはどういう扱いをするつもりですか。
  46. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 現在各種学校として認可されております朝鮮——韓国及び北鮮系の学校が三十四校ほどございますが、これはさしあたり私どもこの認可を取り消すとか、その他さような具体的なことは考えておりません。ただ一つ考えられますことは、日本の国も独立国で日本国憲法があるのでありますから、憲法を誹謗したり、憲法を否定するような教育を盛んにするような学校があれば、これに対しては今後適切な処置を講じていかなければならない、かように考えております。
  47. 小林武

    小林武君 たびたびあなたは憲法を否定するとかなんとかいうことを言われますが、憲法否定とはどういうことですか、具体的に言ってみてください。学校の中で憲法を否定するというのはどういうことなんですか、明らかでないですね。何か憲法を否定する、憲法を否定するというのは、どういうことなんですか。外国人の学校で自分の国のことをやってる場合に、自分の国の憲法を勉強したり、あるいは自分の国の国語をやったり、これが主である。日本の国にいるから、日本語も覚えなければならぬが、これは従である。自分の国のことばをこれを国語とする、こういうような教育というのは憲法に違反するというようなことをわれわれは考えないわけですけれども、憲法に違反するというようなことはどういうことですか、内容的に。私は、あなた、少しいろいろなところから妙な宣伝を聞き過ぎちゃって、とんでもないことを考えているんじゃないかという心配をしているのですが、どうですか。
  48. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 外国人でありますから、外国人がその国の、自国の国語を教育するとか、あるいは自国の歴史を教育するとかいうことは、日本の国として否定すべきことではないと思います。それは当然なことであり、けっこうだと思いますが、それと同時に、日本国の性格といいますか、まあ一口に言えば、日本国憲法は自由主義の憲法だと思いますが、こういうことを否定し、反日的な教育をするような者がもしあるとすれば、そういう者に対しては今後どうするかは検討していく必要がある、かように申し上げたわけでございます。
  49. 小林武

    小林武君 そこなんですね。肝心なところにいくとどうもはっきりしないのですが、たとえば反日教育というものは何をさすのか、反日教育というのは。憲法否定というのはどういうことなのか。かくかくのことがあるから反日教育と言い、かくかくのことがあるから憲法否定だということを言わないと、これはもう単なる弾圧になるんですよ。しかも、これはもうわが国がとにかく日本人としてかつて扱ってきたというような、いわゆる植民地の半島の人間として扱ってきたんでしょう。結局、平等ではなかったですよ。平等に扱ったなんということは私は言われないと思う。私も、短い、ほんのわずかの期間ですけれども、若干教えたことがある。数も少ない。しかし、その教育を受けた者が一歩外へ出たらどういう扱いを受けるか。就職の上でもはっきりこれは警察のほうからも差別をつけてくる。こういうところに就職さしていけない、あるいは就職先もそれを断わるとかということがある。そういうような過去のいろいろな問題があるわけですよ。そういういじめ抜いてきた人間なものだから、それにおびえてそのいろいろなことを言うのじゃないですか。具体的に、やはり文部大臣としての発言をなさる場合には、いいかげんなことをおっしゃるというと、私はこれは国と国との問題になると思うのです。具体的に、一体反日とは何か、憲法を否定するような教育ということはこういうことをやっているからそうなんだ、こう言わなければ、権威ある国会の中での、反日教育とかなんとかというような、そういう外国を誹謗するようなものの言い方というものは言うべきじゃないと思うのです。事実をあげてやってください。
  50. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私は具体的に申し上げたわけではございませんので、抽象的にそういうものがもし今後あれば十分に検討しなければならないということを申し上げた次第でございます。  私の申し上げた反日とは何かということでございますが、これは要するに、日本の国は憲法上明らかに自由主義国家でありますから、自由主義国家をまあ破壊するといいますか、革命思想をあおるようなことは、日本の国内でやる以上は、控えてもらわなければならない。私ども実はこの機会に各国のほかの国の居留外国人に対する措置等の実例をいま調べ始めておるのでございますが、おそらく他の国でも自分の国内でその国に反抗するような教育は認めないだろうと思うのです。   〔委員長退席、理事松野孝一君着席〕  それから、もちろん自国の教育を教えるだけで、その国に反対するような教育をしないまでも、私立学校は外国人には認めない国も相当あるようでございます。こういう実例を諸外国の例等も調べまして、わが国の今後の対策はこうわれわれは検討していきたいという目下段階でございます。(「明快」と呼ぶ者あり)
  51. 小林武

    小林武君 さっぱり明快でないですな。こういうことをわれわれが国会の中で議員とそれから政府との間で討論したというようなことは恥ずかしいことですよ。そうではありませんか。事実、反日教育をやったというような具体的な事例がある、日本の憲法を破壊しようというような行動をしたというようなことになれば、事実あるならばわれわれといえどもそれは許さない。しかしながら、ないものを、起こったら困るなどというようなことでいろいろ考えるのは、これはどういうものですか。たとえば、アメリカのアメリカ人の教育をやっておる学校がありますね。あれにもそういう警戒心を持っているわけですか。アメリカの憲法と日本の憲法は違うわけです。これは自由主義圏と見られるから安心だと、こういうばく然としたそういうあれをしておるわけですか。そんな一体あいまいなことでどうしますか。たとえば、世界の国にいま社会主義国というのは一体幾つあるのですか。そういう社会主義の国の憲法というようなものをその国民にその国の人間が教えるというような場合に、それは日本の憲法を破壊するということに一体受け取られますか。私はそういうものの言い方は間違いだと思うのですが、どうですか。そういう事実があるのかどうか。それとも日本の場合は、ソ連の学校があったとか中国の学校があったとか、そういう社会主義の国があったら、その国民の学校があって、そこでもってわが国の憲法はかくかくの憲法ですということをやれば、わが国の憲法を破壊し、反日教育をしたということになるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  52. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 外国人が自分の国の国語を教えあるいは歴史を教えあるいは自分の国の憲法、その他諸制度を教えるだけならば、私はかどを立てるべき筋合いではないと思っております。問題は、話がほかにそれたわけでございますが、今後学校教育法による一条の学校として認める場合があるかどうか、あるいは各種学校として認可するかどうかという問題に関してまいりますと、日本の法律で保護する以上は、日本の社会に何らか裨益するところがあるというものでなければ、一体日本の法律で保護すべき値打ちがないのじゃないか、それは随意にかってにやっておるならば別でありますが、日本の社会に何らかの積極的な価値があるということで初めて日本の法律で保護する価値が出てくるわけでありますから、したがって、今後韓国人の場合におきましても、いずれの国の場合におきましても、日本で外国人が私立の各種学校等を申請いたしました場合に、それをどう処理するかということは、諸外国のいろいろな扱い方もございます。例をあげて申しますというと、タイ国という日本との親善関係の深い国もありますが、タイ国には日本の在留民が非常に多い。その子弟をどうしておるかというと、一種の日本人小学校、中学校等の学校つくって教育しておりますが、タイ国ではタイ国の学校としては認可を与えないわけであります。こういう例は諸外国にもありますので、諸外国の立法例、扱い方等もわれわれは検討して、最も妥当な方向をきめていきたいというのが現段階であることを申し上げておるわけでございます。
  53. 小林武

    小林武君 だいぶわからない話をよく理解される方もありますけれども、私には理解されない。  そこでいまちょうど、先ほどの話をお互いに理解し合えるような手だてを一つとりましょう。それにはいまあなたがおっしゃったタイの話、タイの日本人学校、私はタイ、インド、台湾にもあるように聞いております。それから海外移住者私立日本学校というのがある。これはパラグアイかどっかとの間に協定が結ばれておることも事実でしょう。こういうところでは、パラグアイの移住の問題については、どういうことをやるのか、これはもうそこの土になる人です。いわばパラグアイの人になる。それでもなおかつ日本人学校という学校を必要とする、それを政府同士がそういう協定を結ぶということですね、その理由は一体どういうことですか。  それから、もう一つは、先ほど言ったタイとか、台湾とか、インドとかいった日本人学校はどういう教育内容をやっているのか。また、設立に際しては、これをやみでやっているのか、その国の法律ではっきり認めておるのか、そういう点について詳細にひとつお伺いしたい。
  54. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 先にタイのバンコクの日本人学校の話を申し上げましたから申し上げますが、これはタイ国の制度上認められた学校ではありません。まあ、やみと申しますか、ただ、そういう学校をやっておることは了解されてやっておると思いますが、制度上認められた学校ではございません。まあそのほかパラグアイの話等も出ましたが、要するに、日本人が永住をしてそこに定着する場合とそうでない場合とは、やはり問題点は違ってくると思います。  韓国人の場合、今後どういうふうに対処するか、これはなかなかむずかしい歴史もあり、むずかしい問題であります。韓国人の場合には、日本教育を受けて日本に永住をする人もありましょうし、本国へ引き揚げる人もありましよう。そういうような   〔理事松野孝一君退席、委員長着席〕 具体的なことはよほどよく慎重に検討いたしませんと、一がいにここで申し上げることは困難かと思います。こういう点において御理解をいただきたいと思います。
  55. 小林武

    小林武君 日本人の学校を外国へつくっておいて、一体どういうことを教えて、どういうことになっておるかというようなことを聞くのに、よほど慎重にやらなきゃならぬというのは意味がわからない。これは私は文部省から聞かないで、外務省関係案件じゃないですか。詳細にひとつお話し願いたい。
  56. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 在外におきまする日本人学校につきましては、いま御指摘のとおり、アジアにおきましては台北、バンコク、それからニューデリー、それからカラチ、それからラングーンとございまして、来年また若干ふえる予定でございますが、場所によって法的の基礎等については国柄によってまちまちでございまして、しかし、大体全然任国と何らの意味の了解もなしにやるということは、これはできないわけでございまして、私バンコクの大使館におりました関係もございまして、バンコクの例で申しますと、これは先方と話し合いをすでに十年前にいたしまして、大使館の付属の学校ということで、大使館の外交特権のもとにやっているわけでございます。一方アメリカンスクールがやはりバンコクにございますが、これにつきましては、タイとアメリカとの間で特別協定をつくりまして、そうして名目上はインターナショナル・スクール——アメリカだけの学校ではないということにして、実際はこのアメリカ的の教育をやっているわけでございます。日本の学校、日本がやっております学校ならば大体大使館付属あるいは場所によっては民団、そこにあります日本人居留民会の付属になっていたところも、台北なんか一時そうなっておりました。あとで大使館付属に変わったと思いますが、教科目につきましては、これはできるだけ日本の教科書等を使いまして、いま来ておりますのはあの辺の永住者の移民ではございませんので、せいぜい数カ年しか滞在しない人々の子弟でございますから、日本との共通のつながりということを重点に置きまして、教科目等については、できるだけ日本の教科書を使い、日本教育に近いやり方でやっていると了解しております。
  57. 小林武

    小林武君 ちょっともう一ぺんお尋ねいたしますがね、教員はどういうことになっていますか。
  58. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 教員につきましては、最初は大体居留民の中の有資格者に奉仕的にお願いしておったのでございますが、だんだんと生徒の数等もふえてまいりまして、このごろは文部省とお話しいたしまして、文部教官を一年ないし二年の長期出張の形で派遣いたしまして、教員の幹部としてつとめていただく、各学校に一名ないし多いところで二名ということでやっております。あとは大体居留民の有資格者の奉仕でございます。
  59. 小林武

    小林武君 それからもう一つ。パラグアイの日本人の移住者の学校というのはどういう協定なんですか。
  60. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) パラグアイのほう、実は、私所管でございませんので、文部省から……。
  61. 齋藤正

    政府委員齋藤正君) 在外子弟の教育につきましては、ただいま外務省から申し上げました五つの国につきましては事情を聴取いたしておりますが、これはいずれもそれぞれの外国における学校としての地位を得ておるものではなくて、大使館の、いわば外交特権の中の一つの事実上のものとして日本人のために行なわれているものであり、したがいまして、そのための教授能力の強化という意味で、文部省も文部教官等を派遣しているということであります。ただいま御指摘のその他の国については、事情を存じておりません。
  62. 小林武

    小林武君 そのパラグアイはどうした。
  63. 齋藤正

    政府委員齋藤正君) パラグアイの問題については、私、事情をよく存じません。
  64. 小林武

    小林武君 委員長、だれか知っている人を出してください。(「明解に答弁せい」と呼ぶ者あり)どこになるのかね。     —————————————
  65. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) この際、委員異動がございましたので御報告いたします。(「おどかすな」と呼ぶ者あり、笑声)  黒柳明君が委員を辞任され、その補欠として渋谷邦彦君が選任されました。     —————————————
  66. 小林武

    小林武君 パラグアイは。(「どこが責任を持つのだ」 「何しているんだ」と呼ぶ者あり)
  67. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。パラグアイの学校は、アジア地域と異なりまして、あそこに永住する移民のための学校でございますので、移住局が所管となっておりますので、いま係官を呼び寄せましたから、しばらく……。
  68. 小林武

    小林武君 熱心にひとつ質問をやることをお認めいただきたい。  そこで、パラグアイはまだわかりませんけれども、大体ここで私はこういうことを言えると思うのです。日本人の教育をしたいということは、これはもうどこも同じだということですね。海外に出ていると、その人間が、日本の場合は移住者になっても、なおかつ、やはり向こうの希望があれば、日本協定も結んでやろうという熱意を持っている。そうでしょう、それから、海外に出ている事情のある者については、日本人の教育をやらなければいかぬ。日本の教科書を使って、日本の教員をやっている、文部省がそれをちゃんとやっているではないですか。これは、しかし、どこの国もそういう要求があるということはあたりまえではないですか、その場合、ここらひとつ考えてもらいたい。インドに行ったら、インドと日本の国柄は違うでしょう。そこで、日本人の教育をやったら、インドの一体国の教育のあれをこわすとか、あるいはインドの憲法をどうするとか、インドに反抗的の態度をとるとかと言うことは一体できますか。そういう考えは、インド人は起こさないと思う。タイでも起こさないと思う。だから、その国の一体憲法を教えるとか、かりにですよ、国語を教えるとかいうことが、何か反日的であるというようなことや、あるいは日本の憲法がどうかされるということを考えるのは考え過ぎだ、しかも、具体的な事例もないのにそういうことを責任立場にある者が言うというのは、私はきわめて不謹慎だと思う。もしあなたが具体的な事例をつかんでおって、動かしがたい事実があってここで言うならば、ひとつ言ってもらいたい。そうでなかったら、いままでのそういう考え方は誤りだったということをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。(発言する者多し)
  69. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御静粛に、御静粛に。
  70. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 二つの点についてお答えしたいと思います。まず、私が聞いておるところでは、日本人で海外に駐在をします、海外に駐在をしておる者の子弟の教育のために、先ほど後宮局長が御説明申し上げたような施設を海外に持っておるようでありますが、この場合には、その駐在国の要するに批判をしたり悪口を言ったりするような教育は、日本関係の学校ではしていないと思います。これはどこの国でもそういうことをやれば異議が出てくる筋合いではないかと思うんです。日本の場合に、日韓関係はこういうように正常化されて友好関係が進んでまいりますから、日韓関係にはおそらくないと思うんです。しかし、北鮮関係の学校では、私どもの耳には、こういうことをやっておる、けしからんでないかという声は非常に入ってまいります。しかし、私どもまだそこまで検討いたしておりませんから、そういうものについては今後の課題にいたしたい、かように考えておるわけであります。
  71. 小林武

    小林武君 私はやはり文部大臣にお願いをしたいんですがね、もっと慎重にしてもらいたいと思うんですね。かりにも、一体よその国の国民である者に対して、事実がない——あなた、ここで説明できないんですよ、そうでしょう。小林君の質問に対してかくかくの事実があるから私は言ったんだということをあなたはおっしゃらないでしょう。そうでしょう。どうも韓国はやらないらしいが北鮮のほうではやっているということを耳にしていますなんというようなことを、私は、一国の文部大臣が、一体、そういう不正確なことを言っちゃいかん、そういうことでは私は問題だと思うんです。あなた、それを取り消すつもりはありませんか。具体的な事例をつかまないうちにそういうことを言うというのは失敬ではありませんか。取り消しなさいよ。
  72. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私は、小林君が言われるように、取り消すべき具体的なことは申し上げておりません。今後の抽象的な考え方としましては、私は反日的な教育をするような者を日本の法律で保護すべきかどうか、これは私が慎重に検討していかなければならないということを申し上げている次第でざいます。
  73. 小林武

    小林武君 さっき、私も言っている。一般論としては、日本の国に来て日本の憲法を破壊するというようなことは、これはわれわれは日本人でも、日本の憲法を破壊するなんていう者とは断固戦わなければならぬと思っている。ましてや、よその国から来てそういうことをやろうというなら、これはあなた文句言うのあたりまえだ。そういう一般論として、そういう者に対してはだめですというようなことは、これは一般論はよろしい。しかし、あなた名前をあげたのだ、いま。北鮮という名前をあげた。北鮮という国の名前をあげてやったからには、あなたは具体的な問題をつかまえて言わないというと、これは国会の中の議論ですから、あなたは文教のほうの責任者だ。ここへ出ている者は議員なんだ。その間において、そういうやりとりをやったということは、はなはだもって私はけしからんと思う。あなたは、もし事実をはっきり言えないならば、言わない。そういうようなことを言うならば、たいへんなことだと思う。日本に対するいろいろなものの見方だってあるのですよ。何が一体、事実もないのにそういうことを言うのですか。取り消すべきじゃないですか。取り消すべきです。
  74. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私はこういう事実があったと確認をして申し上げたわけではありません。そういうふうにも申し上げておりません。ただ私どもの耳には、こういうことをやっておると、まことにけしからんじゃないか、日本の一体文部省はそのまま放置していいのかというような声はたくさん聞いております。しかし、これらについては、今後慎重に検討してまいりたいと申し上げておる次第で、そういろ意味は、私だけじゃない、ほかの方々の耳にも達しておるのじゃないか。ことに文教の担当者である私どもには、そういう声はしきりと入ります。あなた方には入らないかもしれませんが、私どもには入ってくるわけです。
  75. 小林武

    小林武君 あなた方には耳に入らないかもしれないと言うが、たくさん入っていますな。およそ愚劣だと思う、そんなものは。そういう愚劣なものを出して、そうしてパルチザン教育をどうしたとか——一体その事実があるならばいいのです。事実を指摘できないのに、一体こういうものを世間に流布しているようなこういうものに対しては私は軽蔑を感ずる。そういうものを一体国会の中の答弁として言うことについても、私は不謹慎だから取り消してもらいたいと思っている。私は、そういう立場で少なくともこれから外国人の教育というものをやるということになると、文教政策の一大汚点なんだ。ひいては国際上の交わりの上でも私は大きな問題を引き起こすのではないかと思うのです。そのことについては、またあとで触れますから申し上げませんが、ひとつここであなたにはっきり覚えておいてほしいのは、日本の国で外国に駐在している者に対しても学校をつくっていること、日本人の教育を行なっていること、日本人の教育というものはその国とは別個の教育であるということ、それが許されているということ、しかも、日本の文部教官が行って、文部省がそれをやらしているということ、そのことは、よその国に行ってやっているという限りにおいては、わがほうでもやらせるということが、これは国際上の信義の問題です。そういう点はひとつ銘記しておいてもらいたいのです。  そこで、私は……(「小林君」と呼ぶ者あり)ちょっと待ってもらいたいね、いいところに行っておりますから。総理大臣に私はちょっとひとつ理解をしてもらいたいと思うことがあるわけであります。この点は一体総理大臣がどういうふうに御理解になっているのかお尋ねをしたいのです。この今度の協定教育を行なわれるということになると、これは日本人の教育を受けさせる、だから、日本人と同じ教育を受けさせる。国籍はもう韓国人だ。これは永住権を持とうが、持つまいが韓国人であることは間違いない。だから、やがては韓国に行くという者が出てくることもある。私はかなりの数が韓国にも行くだろうし、朝鮮の半島にも戻っていくだろうと思う。そうすると、これを一体日本の場合において、日本教育だけしか受けてならないというようなことをきめるのはどうかと思うのです。韓国人自体の幸福ということを文部省が言っているのですね。一文部省の関係者が言っている。そういう教育を受けるということは韓国人が幸福になると、こう書いている。そうして、日本人のこれからの安定、それから進歩にも貢献する、こう言っている。まあ、日本人の側のことはこれはさておいて——日本に帰化してくれるというような人があることは、これはいいでしょう。よしあしの問題は抜きにして、韓国人の幸福ということを言うというのはちょっと私はおかしいと思うのです。それはどうですか。そんなことを言うなら読みますか。「文部時報」を読めば書いてあるんですからね。「文部時報」を読めば、これは文部省の役人が言っている、こうなるでしょうと。法的地位を確立して四条の教育の問題を取り上げればこうなりますということを書いている。私は韓国人として幸福になるというようなことは言い過ぎじゃないか。それは総理大臣も御存じのように、韓国人というのは、ものすごくいままで差別待遇を受けてきているのです。文部省も幸福になるとは言ったけれども、さすがに気がひけると見えて、それにはいわれのない差別をするようなことは、学校教育や社会教育の中で払拭しなきゃならぬ、そういうことばだったかどうかしらぬけれども、とにかくやらせないようにしなきゃいかぬ、こう書いている。しかし、差別的な待遇というのは、一体一朝一夕でなくなるかどうか。部落の教育の問題、どうですか、日本の部落の問題、何年かかっても、この部落の問題は解決していますか。あるいは朝鮮のいままでの子供の問題、あるいは今度は北海道では、少数でございますけれども、アイヌの問題、アイヌ人が東京に就職に来てどういう扱いを受けたかというようなことも最近でも問題になっている。こういう差別の問題というのは一朝一夕にはいかないのです。韓国人の幸福がほんとうにそういう教育を受けることだけでいいのかどうかということは、私は日本人の自分の立場になってもっと同情した見方で見なければいかぬと思うのです、韓国人であろうと、朝鮮の人間であろうと、だれであろうと。それであるからこそ、外国に対して日本人の学校をつくり、日本人の教官を派遣するというようなことをやっているじゃないですか。だから、総理大臣はこのことについてどうお考えになりますか。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は先ほど私に対するお尋ねお答えをいたしたと思いますが、それぞれの独立が尊重されなければならない、こういうことを申しました。その独立が尊重される形におきましてそれぞれの国においてそれぞれの教育をすることについては、これは内政干渉にわたらないように私どもは気をつける、これは当然のことだと、かように思います。だから、その点では小林君と私も意見は同一だと思います。ただ問題は、日本にいる在日韓国人の教育の問題について、いろいろ言われておる。先ほど来文部大臣が答えますのは、日本の施設を望むなら、これを使うことはよろしいのだと、こういう意味のことが言われておる。これも強制するというわけじゃございません。強制ではない。これは日本の施設というものが使われるといいますか、そういう場合においては公平に扱うということでありますので、私は別に矛盾しておるとは思いません。ただそのために韓国人のために特別な学校を日本政府がつくれ、こうなるとこれは行き過ぎであろうと私は申すのであります。日本の施設をそのままで使われることについては、もともと雑居もしておったのですから、その辺のことは十分考えましょう、教科書も無償で配付する、そういうこともいたしましょう、そこらで何ら差別的な扱い方はしないように、こういうことで、それは非常に至れり尽くせりというか、そういう親切な処置がとられている、私はかように思います。問題は、その在日韓国人が自分たちだけの学校をつくる、そういう専門の学校をつくる場合に、文部省の教育は一体どうなるのか、これは先ほど来文部大臣からお答えしたということでございますので、これらの点も小林君の言われようとする大筋とそう離れておるとは私は思いません。いろいろそれぞれの学校教育をいたしますが、とにかく自分たちだけでやるのだという、外国人だけのやりますために、その内容等にタッチすることも非常に困難だ、こういうような場合もあるので、制度上の問題から見て、外国人の学校を出た者が、日本の学校の制度に直ちに資格があるとかというようなことは、これは言えないし、その他のことにつきましては非常に自由にやられていいだろう、もしもというようなことは、これはほんとうに抽象的な、一般的な話をしておる。これは文部当局として私は当然のことだと、かように思います。政府自身も文部大臣の考え方を支持しておるつもりでございますし、この点で私は具体的にどこそこを批判した、どれを悪く言った、こういうものでない限りには、私はわが国の教育のあり方から見ましてはこれは当然のことだと、かように思います。
  77. 小林武

    小林武君 それでは時間の関係もございますので先に進みますが、ただこの問題で一つ総理大臣はちょっと私のあれを誤解しているようです。外国人の学校を日本につくれということじゃない。日本がこれをつくってやれということではないのです。ただ、韓国人の場合は——朝鮮の人たちというものは六十万人いる。これは外国人というもののうちの八〇%ぐらいを占めておる。それ以上を占めておると思う。これはきわめて特殊なケースだ。なぜかというと、歴史的な関係がそうなった。いまそのことを繰り返して言う必要もないから言いませんけれども、そういう特殊な事情に置かれているそういう者がやはり日本に結局居残って、ほんとうに日本の土になって、日本人になり切るというような者は全部が全部なるとは言い切れないと思う。これはやはり長い間自分の国が滅びたということで非常に悲しんできた人たちにしてみれば、祖国という大きな支えがあることによって、いままでの差別も吹っ飛ばしたいだろうし、大いな誇りを持ってやっていきたいと考えれば、当然そういう教育というものは要求するだろうと思う。それらの人たちに、日本の学校のうちでも各種学校も認めないというようなやり方は、私はどうかと思う。そのことのために、もうとにかく経済的にたとえば通学の定期券を買うにしても差別を受ける。いろいろな差別を受けて、経済的にもみんな大きな問題が出てくるわけです。そういうことについて日本が一体、一部分やっているのに、あとからの認可をしないようにするという文部省の態度は改めるべきだと私は思う。しかも、あるところにおいては、県にまかしているから、県で思い切ってやったところはちゃんと認可が出る、文部省をおそれたものは認可しないというばかげたことができている。こういうことは少なくとも長い間の親善の関係からいって改むべきことだと、こう考える。  そこで文部大臣、ひとつあなたにお尋ねしておきますが、あなたはさっきその国の国語で教育することは何でもないということをおっしゃった。その国の歴史を教え、その国の国語を教えることは何でもない。ところが、いままでの文部大臣の中には、どういうことを言っておるかというと、母国語による民族教育を行なうということは好ましくないという観点だ、これがあるから各種学校を認可しないんです、こういう答弁をしておる。これは昨年の三月二十五日の衆議院の文教委員会におけるところの答弁、文部大臣の。あなたのやつは一歩前進したということになるね。この理由がなくなればだんだんその面では、今後はあなたが御心配になるような事態が起きない場合には、そういう面については、前向きですね、このごろよくはやる前向きの立場でいろいろお考えになるということになりますか、どうですか。
  78. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 前の大臣がお答えをされたことの引例がございましたが、それと私の考えと差異があるかどうか、直ちには判断いたしかねますが、要するに、先ほど申し上げましたように、日本教育基本法のあるいは各種学校の制度等によって、日本の法律によって学校を許可して保護するに値するかどうかということは、日本の社会に若干でも貢献するというか、積極的な意義があるかどうかというところにかかっていると思うのであります。純然たる外国人が日本の国内でその自国語の教育をするということ自体、あながち排斥すべきものじゃありませんが、それを日本教育制度上の、法律に基づいて政府なり行政機関が認可した学校として積極的に保護するかどうかということは、これは別問題でございます。自国語で教育をするということも、先ほど申し上げたように、反日的なこと、その所在国の制度なり憲法なりの精神に反したようなことをやらない限りにおいては別段害があるわけじゃありませんから、害のないものに対して否定をする必要はありませんが、これを積極的に保護する価値があるかどうかということは、また別個の角度で検討すべきものと私は考えております。
  79. 小林武

    小林武君 だんだん話しているうちにおかしくなるのですが、積極的に保護とかなんとかいう問題ではなくて、認可するということぐらいはしなければならぬと思うのです。これは前向きの姿勢でひとつやっていただきたい。しかも、これは韓国側との間においては、好意的にこの問題の解決に当たるということを言っておる。それは各種学校だけでなくて、その他認可の学校についても私立学校として認めるかどうかということについても、相当何か進んだような両者の話し合いというものがあるように聞いている。韓国側はそう言っておる。だから、文部省もその点ではひとつ前向きに進んでもらいたい。  法務大臣にお尋ねいたしますが、在日朝鮮人の高等学校の生徒あたりがやたらに暴行殺傷事件の被害者になるという事件があるわけでありますが、こういう点については一体どのくらい件数があって、それに対する扱いはいままでどういうことにしているのか、今後、これから一体在日の韓国であろうが、北朝鮮の青年であろうが、日本の国の中において住んでいこうという人たちの命の保障もできないというような、こういう状態ははなはだもって私は問題だと思う。これについて、一体あなたの御見解を承りたい。
  80. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。  暴力を押さえて、これをなくしていこうということは、政府の大きな方針の一つでございまして、その方向に向かって努力を続けております。それはだんだんと実効があがりつつある途中でございますが、この韓国と申しますか、朝鮮の学生と日本の学生の間にときどき問題が起こっておるということでございますが、これは学生間の間のまあちょっとした争いごとが土台となって、それからけんかになるというようなことになるということが多いようでございます。どのくらいの件数があるかは、後ほど関係者から申し上げますが、私どもといたしましては、被害者が日本人でありましょうと、あるいは朝鮮人でありましょうと、その他の外国人でありましょうと、そういうことを問わず、被害者をよく守って、そうしてりっぱに世の中を安穏ならしめるということがわれわれの願いでございまするから、何ら、どこの国人ということによって差別を置いて処理するということなく、いままでもやってまいりましたが、今後といえどもその方針をもって、暴力行為絶滅を期すという方向に向かって努力をいたしていくつもりでございます。  件数については、関係者のほうから申し上げます。
  81. 小林武

    小林武君 渋谷事件、大塚事件、蓼科事件、愛知事件、十条事件、下北沢事件、梅が丘事件、小田急百貨店事件、日暮里事件、神奈川事件と、事件の名前はだれがつけたか知らないけれども、これだけの件数がある。しかも、その行なわれたのは、限って朝鮮中学校とか、高等学校の生徒である。犯罪が集団的、組織的に行なわれておる。白昼公然と行なわれ、凶器を使用し、凶悪かつ執拗な攻撃が行なわれておる。加害者には反省悔悟の気持ちがほとんど見当たらないというような点が、これは日本に来ている外国人の心を非常に痛ましめている。これを、どのくらいあるかわからぬということは、大臣に聞いたらまずいのかもしれませんけれども、この関係政府委員から詳細ないままでのあれを説明して、今後こういうことの起こらないような対策というのはどういうふうに一体立てているのか。
  82. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいま法務大臣が申し上げましたように、暴力事件、特に一般暴力、ささいなものにつきましても、厳重な取り締まりを行ないまして、かつ、適正な処分をいたしているわけであります。ただいま御指摘のようないわゆる事件というものはございましたことを承知いたしておりますが、具体的に加害者何人、被害者何人ということにつきましては、いま資料を持っておりませんので申し上げかねますが、いずれにいたしましても、暴力自体は、ただいま申し上げましたように、絶滅を期する方向で行っておりますし、その暴力にかかわっている者が、日本人でありますると、外国人でありますと、あるいは日本人対外国人でありますとを問わず、これは当該本人たちのみならず、周囲に非常な迷惑をかける問題でありますので、こういうものについては絶滅を期するということで進んでいるわけです。したがいまして、あらゆる事件につきまして、適正な処理をいたしておりまして、特段の相手方によって差別をいたすというようなことは絶対にございません。
  83. 小林武

    小林武君 次の問題に入りますが、時間もありませんので一点だけいたしまして、私の質問をきょうのところ終わりたいと思います。非常に残念なんでありますけれども、私の聞きたいと思う文化協定の問題につきましては、きょうはとても時間をかけられませんが、一つ二つお聞きしたいのです。  一つは、文化協定というのは、非常にいままで結ばれた文化協定に比べて、端的な表現をさしていただければ、お粗末であるというような気がするわけであります。たとえば日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の文化協定というものを見れば、文化協定について詳細な内容を持っているわけです。私は、やはり総理が言われているところの一衣帯水、すなわち隣邦であって、政治的にも歴史的にも非常に関係の深いあの朝鮮半島というものを考えた場合、これとの文化協定というものは、もっと内容があったらいい。これは文化協定ではなくて、文化財引き渡し協定と、こう言うべきだと私は思う。この点について一体、どうお考えになっているのか、それが一つです。  それから私は、あの引き渡された文化財の問題、この文化財の問題につきましては、前から韓国側がどんな文化財の引き渡しを、返還を要求したのかどうかというそのリストの提出を求めているわけでありますが、これは出してもらいたい。これは必らずひとつそれを出してもらうということは——これは委員長のほうですか——出していただきたい。  それからもう一つ、この文化財の問題について、書籍の問題については、これはソウル大学のたしか図書館の関係の人だと思うが、一貫目幾らというような本だというようなことを、極端な表現ですけれども、そういう言い方をしている。この一貫目幾らだというようなこのあれが事実なのかどうか。ほんとうだとしたら、これは私は重大な問題だと思う。  それから日本文化財の問題でひとつ考えてもらわなければならぬのは、これはもう博物館も国のいろいろな美術館もそうですけれども文化財の問題が出てきたところが、急にそれぞれの所持品を隠しだしたとか、倉庫に納めて見せないようにしたとか、展覧もやめたとか、ひどいのはそれの目録も外部に出すことを拒否した、こういうようなことはほんとうの意味においての私は文化交流になるかどうか。私は、韓国の申し分の中にも、王仁の持ってきた千字文がどうだというようなことを言い出すのはこれは私はおかしいと思う。しかしながら、一九〇五年以降の問題については相当言い分があると思う。そういう問題点のあるところに誠意を尽くして一体やるべきなのに、隠したというような事実があるのかどうか。  それから民間の一体コレクション、これは総理の出身の山口県には寺内コレクションがある。千葉県には電力会社の何か社長をやった人の膨大なコレクションがあるというような話です。そういうものも一体どういうことになっておるのか。いま言われているように、国有のものでさえも隠匿するということになれば、そういう種類のものはどういうことになっておるのか、そういう問題もある。まあ、これらについてひとつひっくるめた御答弁をいただいて、後日ゆっくりお聞かせをいただきたいと思うのです。
  84. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私も、隠したというようなことは全然聞いておりません。両国関係のここに至るまでのいきさつにはいろんな経緯があったかと思いますが、直接の関係でございませんから、むしろその経緯については、必要がございましたら事務当局からお答えするようにしたほうが適切だろうと思います。  なお、ここに至りました最終的な考え方としましては、同類のものが韓国にもあるかどうか、同類品がどうなっておるかということが一つの基準であります。もう一つは、学術研究の上から相互にどういうふうな扱いをしたらいいかというようなことが一つの基準になって、さような角度で検討いたしました結果、今回引き渡す品目及び品数が出てまいりまして、最終的には私も文化財を担当しておりますので決裁をいたしましたような次第であります。そういう事情にあるわけでございます。
  85. 小林武

    小林武君 もう一つだけ。  いま詳細な点についてきょうここで質問をやる時間がございませんから、文化財保護委員会のほうに要望いたしますが、引き渡したものについていまのような韓国側の受け取り方があるかどうか知らないけれども日本の少なくとも専門家の間にはそういう意見がある。私はその専門家の意見を直ちに全部そうだというふうには断定いたしません。しかし、これについてはだれもが納得するようなひとつ回答をしなければいかぬと思う。これは両国の国交の問題でもあり、文化協定という意味からいっても、あるいは引き渡しの問題についても重要なことだと思う。その点について文書をもってわれわれに回答するなら回答してもらいたい。  以上をもって私の質問を終わります。
  86. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 午前の質疑はこの程度とし、午後は一時三十分再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会   〔理事草葉隆圓委員長席に着く〕
  87. 草葉隆圓

    理事(草葉隆圓君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求むる案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。横川正市君。
  88. 横川正市

    ○横川正市君 まず私は総理に、日韓条約案件解決が十四年間の長い交渉の結果妥結をして、ただいま当委員会でこれの審議を行なっているのでありますけれども、十四年間の長い交渉という年月は積み重なっておりますけれども、提出されました国会では明確に対立する意見が激しく動いておりまして、長期にわたって難航したという条約の当事者の労をねぎらうことのできないということは、全く残念なことだと考えております。しかし、私は外交問題が与野党の対決の場となると、そういうことが愚行のごとくに考えることは間違いであると思っております。いずれかの一方がよくて一方が悪い、こういうような判決がこれは下されるものではないと思うのです。今日まで与野党間で論議を通じて明らかにされた審議は、これは当面その意思がお互い妥協され一致されて通過するのではないということは、言ってみますと、これは歴史の一こまの中で起こった事件を歴史がこれを証明をするというところにゆだねるということはきわめて私は知恵のないことだと考えております。しかし、私はただいまから社会党代表して日韓案件中の請求権経済協力その他の二、三の問題に触れるわけでありますけれども、この問題の審議の中でまず総理に伺っておきたいのは、政治に対する姿勢の問題であります。数多い同僚議員からの質問に答えて総理は、たびたび「平和に徹する」ということばを表明いたしております。これは総理の政治姿勢の根本だと承知をいたすわけであります。「平和に徹する」と、こう言うことは、総理自身日本とその国民の先頭に立ってそして姿勢を正してその意思を表明されたのだと私どもは受け取りたいわけです。しかし、実際には、そこにいささかお互いの受け取り方に差異を生じております。まあ言ってみますと、総理を目の前にしてたいへん言いづらいことでありますけれども、たとえば総理のイメージといいますか、これは反共保守主義、まあその中にいわば英国のチャーチルがその文献に明らかにしておりますように、保守主義というのは現状に立った現実主義と言っております。社会は進展をするんだから、現状に立った現実主義が保守主義だと理解をするとするならば、私は、国民一般が総理に対して保守主義という名を冠したということは、停滞する保守主義、こういうふうに考えられているところが私はやはり受け取り方の差異ではないかと、こう思うんであります。そういう総理の言動というものが、私は、やはり「平和に徹する」ということばが出されておりますその受け取り方に差異がないように、率直なこの意見の表明というものがあってしかるべきではないか、こういうふうに考えます。この点について総理意見を聞きたいのが一点であります。  もう一つは、今日アジアの諸国の中で、ベトナムをはじめとして韓国、朝鮮、それからマレーシアとかインドネシア、いわばこれは苦悩するアジアの現実を明確に露呈をいたしておることでありまして、これらの諸国家が平和を求めて苦悩をしておるということが今日の私は姿であろうと思うのであります。この現状というものをとらえてですね、一体総理が「平和に徹する」いう意思を表明されたその意思の一つの具体的なあらわし方として、こういう苦悩するアジアの問題の解決にどういう役割りを果たそうとされておるのか、この点についてまず二問目としてお伺いいたします。  もちろん、この総理の「平和に徹する」ということは、無抵抗主義によるところの平和論でないとは私どもも受けとめております。しかし、実際にアジアにおける今日の姿というものを解決する具体的な姿勢というものや具体的な提案というものがなければ、私どもは実は一体「平和に徹する」という姿勢として何をとらえておられるのかについてきわめてとらえにくいわけであります。この点で、ぜひひとつ国民に対する説得力のある総理の真意というものをお伺いいたしたいと思います。これは私はたびたびの論議を通じて感ずることでありますけれども、そのことは総理自身が百万べん「平和に徹する」と言ってみても、これはその相手側にとらえられなければむだなことであります。総理自身のことでもあろうと思います。また、審議に参加をされております与党の方々のための問題でもあろうと思いますので、そういう立場から世論をたびたび私どもは聞くわけでありますけれども総理をはじめ各大臣が、反対の意見を、単に世論の一部の意見というようなとらえ方をするとか、あるいは、まあ多数というものが背後にあるから、どういうようなことでもその場をのがれればいいとかというような、そういう安易な立場ではなくて、この問題についてひとつ総理自身考え方を明確に表明していただきたい、かように思います。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の基本的な政治姿勢についてのお尋ねでございます。私は「平和に徹する」ということを申しましたが、「平和に徹する」これは外交なりあるいは国政運用におきましてその方向だ、これは別に説明を要しない。いま言われるのですが、平和に徹する私が、共産党ぎらいだ、反共だ、あるいは保守主義だと、こういうところに問題があるのだと、こういうように御指摘になったと思います。私、ただいま保守主義の保守哲学をこの席で説明しようとは思いませんが、しかし、保守は、一部でいわれておるような保守反動だとかそういうものでないことだけは理解していただきたいのです。私は実際に保守反動、こういうものでなくして、やはり保守のいいところは、いいものはいいとしてこれを守っていく、悪いものについてはラディカルに勇気を持ってこれを改正していく、これが真の保守主義だと、かように私は思っておりますので、保守だからといって保守反動だと、かようにマークすることはない。また、保守反動あるいは保守逆行——逆行コースを行くものだと、こういう批判は当たらないのであります。ただ、私が共産主義はきらいだと、こういうことを申しておりますが、ただいまの保守と共産主義を対立さすよりも、私はむしろ民主主義、民主政治、これを守り抜くのだ。共産主義と民主主義との間にはずいぶん隔たりがあります。これを国民に理解していただけばはっきりわかると、かように私は思っておるのでありまして、その私が民主主義を守り抜く、民主主義の立場において民主政治を貫く、その立場において私は保守の思想を持っておる、かように御批判をいただければいい。いわゆる共産主義がきらいだといって、それに対する保守反動の思想を持つんだとか、かようにはちょっと言われないように。私はそれは理解ができない。ただいま保守哲学についてこの機会にるる説明する考えは持っておりませんが、ただいま申し上げる「平和に徹する」その基本的においては、政治のあり方として、どこまでも民主政治を守り、これを貫く。先ほど来からもしばしば申しましたように、そういう意味議会制、議会政治に徹するということでもある。このことと同時に、ぜひ御理解をいただきたいのは、多数決の原理というものをやはり尊重してもらわなければならない、こういうところに実は落ちるのでありますが、ただいま、その点まではお聞きにならなかったようでありますから、その点はしばらく預らしていただきます。  次に、東南アジア諸地域の国々は、ベトナム、マレーシアをはじめ、また韓国においてもいろいろのただいま思想的対立もある。こういうような事柄で、そういう国に処して、日本が平和に徹する、そういう場合にどういうことを考えるかというお尋ねでありますが、ただいままで、いわゆる世界は一つだ、あるいはアジアは一つだ、こういうような思想もないことはございませんが、もっと卑近な例で申しますならば、いわゆる国連で採用しておりますように民族自決、同時にまた反植民地政策、植民地から解放されて、それぞれが民族自決でそれぞれ国をなす、こういうところがただいまの段階だと思います。ただいま言うような世界は一つだとか、アジアは一つだとか、こういうような大きな理想に到達するまでの段階としての、ただいま申すような反植民地あるいは民族自決、こういう形でただいまやっておる、かように思います。そこで私どもも、このことについてはその民族あるいはその国を尊重することが、そうしてそこにお互いに平等の立場でつき合っていく、これが最もその必要なことであります。大事なことであります。ただいまの日韓の問題にいたしましても、一部であるいは過去の忌まわしい歴史のことを思い起こす、しかしながら、お互いが平等な立場で相互理解を旨とするならば、必ず善隣友好の関係を樹立することができる。しかしながら、過去の日本の力というものを今日もなお過信してそうして立ち向かうというようなことでは、これはもちろん韓国側で許すわけのものでもない、また、戦後日本が敗れたあの状態において新興独立国の韓国民日本に対する態度で今日もまだ続く、こういうような状態だと、これまた日本国民が納得するものでもない。どこまでも双方がお互いに独立を尊重し合い、相互理解に立って、これがその大事なことだと思います。こういうことで、アジアの諸地域の実情等を勘案いたしました際に、私は大事なことは、相互に独立を尊重すること、相互に内政に干渉しないことだと、このことを強く実は要望しておるのであります。このことはしばしば申し上げておるのでありまして、共産主義の国であろうが、そうでなかろうが、そんなことに私はかまっておるわけじゃないのだ、とにかくお互いが相互に尊重し合う、そういう立場に立てば、私の平和ということは達せられるのだ、遂行できるのだ、かように私は考えております。また、国際紛争に武力を使わないという憲法の、国民約束がございます。この立場に立ち、また国際的にも私どもがその立場でものごとを進めていく、そうすると、いわゆる開発途上にある国々に対しましては、経済開発の面で協力をするとかあるいは技術的な指導もできるだろう、こういうことで、今日アジア諸地域に対しまして日本の果たし得る役割りを果たしておる、これが私の平和に徹した外交であり、国の政治のあり方である、かように私は確信しておるのであります。
  90. 横川正市

    ○横川正市君 いまの総理答弁は、実は私もそのまま受け取れば理解のできる点も多々あるわけであります。ただ、その具体的な問題で実は高踏な理論を私どもが吐くのではなしに、現実に起こった問題を対比してみて、一体それは理屈に合っているのか合っていないのかということで簡明率直な答えを出すというのが、これはやはり一つの批判の声の中にあるわけですね。その批判の中にある一つとして、たとえば北ベトナムに対するアメリカの爆撃がこれはやむを得ないという政府の意思表示がある。片一方では、総理のいわゆる「平和に徹する」といういまの善隣友好のものの考え方があると、これはいわゆるつながらないのですね、実際には。一貫性がない。こういうことで「徹している」ということならば、これは無抵抗主義の平和論ではないということはわかっておっても、それに対処すべき何らかの処置というものがあるのではないか。万人がこの北爆はやめたほうがいいと思っているときにやむを得ないと答えることは、私はこれは徹した一つ政府の姿勢としてはむちゃなお答えではないか、こういうふうに、これは簡単なことで、いろいろ事情というものはあるということを幾ら説明しても国民一般がわからない点だと思う。ここで私は論議を戦わそうと思いませんけれども、そういう幾つかの問題にぶつかって、実は総理の政治の姿勢に対して多くの不信とかあるいは危惧を持っているということは、これは率直に私は言わなければいけない、かように思うわけです。  そこで、先般私は関連質問でちょっと問題を提起しておきましたが、この日韓のあとは日ソだ、こういう一つの外交路線というものが佐藤内閣にあるやに報道されておりました。佐藤総理自身は、実はそれはまだきまったことではない、こういう意思表示でありますから、私はこれが第一に着手すべきものだというふうには判断をいたしません。しかし、伝えるところによると、日韓のこの審議のさなかではありますけれども、現在東南アジア諸地域に対して中国からの影響力が非常に活発に動いてきている。これはもういろいろな点でその実情というものが報道されていることだと思うのでありますが、そういうような中共の勢力を後退せしめなければならぬというような、そういう動きというものがあって、その後退せしめる一つの路線というものを日本がさがしているのではないか、こういう最近の佐藤内閣に対する評価というものを出している筋があるわけです。しかも、それを具体的に裏づけるように、最近川島副総裁がインドネシアを訪問されました。その訪問は、これは当然総理とも十分打ち合わせて行かれたことでありますから、それ自身は何も佐藤・川島ラインということでは私はないと思います。いわば政府一つの政策の一環として、川島、総理が動かれたのだと思いますけれども、その川島副総裁のインドネシア訪問に際して、インドネシアのそれぞれの関係の向きとこれは信用供与に該当するのか、あるいは単なる民間との取引に対しての橋渡しをしようとされるのか、それは実際にははっきりはいたしませんけれども、金額にして約四千三百万ドルの供与を一つの目標にして動いておるのではないかということがいわれております。しかも、それを具体的にする一つのあらわれとしては、最近のインドネシアのいわゆる政情の中で、スバンドリオの存在ということが非常に大きく注目をされている。彼が一体どういう意思表示をするかということは将来のインドネシアの政情というものを方向づけるのではないか、こういうふうなことが判断をされ、その中にたとえばスパンドリオのPKI、いわゆる共産グループに対する最近の批判の演説があらわれた。そのことは直ちにこれは決定的なものではないだろうけれども、スバンドリオのいわゆる軍部右翼に対する屈伏ではないか。そこで、そういう政情の中でアメリカのCIAが直接これに行動を起こすということは、今日のアジアにおけるいわゆるインジネシア等の行なっている諸業績から好ましいとは考えられないので、それにかわって日本一つの足場をつくるために、いわゆる中共の影響力を排除する足場としてインドネシアに拠点を置くのではないか、こういう判断がされておるわけであります。具体的にはスカルノ・川島会談とかあるいはその他の財界筋との会談等を一つの基礎に置き、なおアメリカの要人等の発言等を考慮されながら、こういう判断が働いておるわけでありますけれども、そこで私は第一に、佐藤総理のいわゆる東南アジアにおける一つの外交の姿勢というのはこれからどう向けられるのか。それから、当面インドネシアに対して、ああいう政情の中にあるわけでありますけれども日本としてはこれにどう対処しようとされておるのか、さらに信用供与等で具体的な数字があらわれております四千三百万ドルというようなこういう具体的な供与その他は一体どういう根拠と計画に基づいて出てきたものなのか、そういった点についてこの際ひとつあわせてお聞きをいたしておきます。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまるるお尋ねがございましたが、これには横川君の御意見もだいぶまじっていると、かように思います。大事なことは、私がいま申し上げましたとおり、お互いに独立を尊重するということです。内政に干渉しないということです。これが一番大事なことだと思います。ただいまお尋ねは、この線についての御意見ではなくって、いまやっておることが、何だか中共を封じ込めるようなそういう政策に加担しているんじゃないか、あるいは中共の発展を阻害するような形において展開しておるんじゃないかとか、こういうようなお話のように実は聞いたのであります。私は、ただいま申し上げるように、いずれの国とも仲よくするんだと。したがって、いわゆるお互いにその独立を尊重し、お互いに内政に不干渉、こういうことであれば、りっぱに仲よくやっていけることであります。このことが基本的な態度であります。  ベトナムの問題につきまして、北爆を肯定したと、かように言われますが、その前に、この北爆、同時に南に対する北からの浸透というものがあります。そのことを申しており、北からの浸透が続く限り、この北爆というものも一方的に非難するわけにいかないので、しかしながら、私どもは、平和が招来することが望ましいのだから、一日も早くこういう戦火がおさまって、そうして話し合いをすることが必要だと、かようなことを申しておるのでありまして、ただいまの発言のように、一方的に片一方だけを非難しないというのが私のたてまえでございます。したがって、北からの浸透がなければ、北爆というようなものも当然ないだろうし、また言あって、北爆があるから北から浸透するんだと、こういうお話があるかもわかりませんが、両方ともとにかくなくする、いわゆる相互にただいまのような侵していることがあるから、こういう問題が起きている、こういうことであります。  また、日本とソ連との間がだんだん近づくじゃないか、これは中共路線というものをはばむものだ、中共の膨張をはばむものだ、こういうようなお話のようであります。中共がどういう膨張を計画しているか、私は知りません。しかし、ただいま私どもがソ連と計画をし、いろいろ話し合っておるのは、両国間で長い間の問題であった領事協定をするとか、あるいは日ソ航空協定を結ぶとか、あるいはまた、シベリア開発についてソ連から日本協力を求めておる。それを具体化するという問題でありまして、いわゆる中共の膨張をはばむ、かようなものではない。だから、これは中共をまた敵視しておるものでもないということをひとつ御了承いただきたいと思います。  冒頭に説明した基本的態度であるとか、また、インドネシアに対しまして川島副総裁が出かけていろいろ話をした。これは当時スカルノ、スバンドリオ、これらと話をしたのであります。クーデター前であります。それから後にクーデターが起きたのでありまして、ただいま私どもは、このインドネシアの内政にタッチする、こういうような考え方は全然ありません。これも経済協力は、民族的に生活が向上していく、経済の繁栄をもたらす、そういうことに日本協力ができるかできないか、こういうことで、いろいろ考えておるので、冒頭に申しました経済協力、これが平和維持への道でもある。お互いが繁栄することによって、争いなぞはしない、国民生活が向上する、そういうところが相互の幸福である。それをねらっておる。で、これが経済開発であり、また技術援助であり、あるいは医療等、病苦からこれらの国民を救うとか、こういうようなことについては、人道的見地で私どもが積極的に働くべきである。かように私は思っておるのであります。  ただ、申し上げてたいへんくどくなりまして恐縮ですが、いろいろ外交政策を展開いたしております。そういう際のものが、ある一国に対して特別な処置としてその外交政策を選んだ、こういうものでないことだけ、この機会にはっきりしておきたいと思います。
  92. 横川正市

    ○横川正市君 本論ではありませんから、深く触れようとは思いませんけれども、実は今日この自由陣営の強化策ということが、一つの大きな方向というものを持って動いておる時期でもあります。まあ、軍事にいえば、過去におけるところの軍事同盟等はそれほど大きな防衛の力がなくなって、新しいいわゆる態勢が必要なのだということやら、拡散問題等を含めて、防衛についての新しい方式というものが何か考えられなければならないような、そういうことも論議されている段階ですから、私どもはその問題に触れて、これが全部いわゆる自由陣営強化のための役割りを果たしておる、そういうことだと、直接結びつけて考えることは、これはあるいは飛躍かもわかりません。しかし、そういうふうなことが考えられている諸地域が、   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕 これがアジアにおける今日のいってみれば現状ではないか、こういうことを考えますので、この点については、ひとつこれからの佐藤内閣のいわゆるアジアにおける外交の動き方として、私は十分考慮されていいのではないか、かように思います。  そこで、日韓の中で問題になっております請求権の点について質問をいたしたいと思います。  まず第一に、これは事務当局からひとつ明確にしていただきたいと思うのでありますが、四十年十一月五日の衆議院の速記録の中で、高辻法制局長官の石橋委員に対する回答でありますけれども、これはいろいろ論議のやりとりをした結果であって、私も最初から論議をいたそうとは思いません。この内容とするところは、これは外交権の放棄をし、それから在外資産については、その法的な地位というものが、その国の国内法によって処理をされた場合には、個人がたとえば財産権を主張できても、それを取り立てるというようなことはできなくなるのではないか、それは日本の国が当然それにかわって行なうべきではないかというのに、さらにたたんで、それが外交権の放棄だ、こういうふうな説明をされておるわけなんです。  それからもう一点は、藤崎政府委員の説明の段階で、さらに石橋委員が、平和条約の第四条の(b)項が、平和条約発効の時点で解決したという結論がどうして出てきたのか、妙な法律論だということで四条の(b)項について質問をいたしております。これに対して椎名さんは、この現在の折衝の段階では、石橋さんの言うことはそのままそのとおりだけれども、実際にはこの問題の解決の、いわゆる外交権の放棄、それから相手の国のいわゆる国内法、こういうことによってできないことなんだ、こういうことでこれは結んでおるわけでありますけれども、この考え方についてさらにひとつ具体的に説明をしていただきたい、かように思います。
  93. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  いま御指摘の論議は、私の言った部分のほかにもございますようですが、私が申した点については、憲法二十九条の関係の問題でございますので、それに対して考え方をお述べいたします。憲法二十九条、これは御説明申し上げるまでもなく、憲法二十九条の三項が問題になると思います。
  94. 横川正市

    ○横川正市君 憲法二十九条でなく、外交権放棄のところからの質問です。外交保護権です。
  95. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その憲法二十九条の問題に関連して申し上げたと思うのですが、要するに、憲法二十九条では、私有財産を「公共のために用いることができる。」、用いることができるが、その場合には補償が必要であるというふうになっておりまして、憲法二十九条は、日本の憲法のことでございますから、わが国権とか、その他の公権力の行使によって、公共のために私有財産々用いる、その場合には補償するということが規定してあるわけでございます。ところで、これは今回の日韓条約に限る問題ではございませんが、平和条約のときから実は問題でございますが、ひるがえって考えてみますと、日本国民が持っておる在外財産というのは、これはよその国の主権のもとにあるわけでございますから、その財産の運命というものは、よその国の法制のもとにある。すなわち、その法制によってその消長もきまる。またちょうど日本国憲法にありますようなそういうものが、外国の法律のもとで、憲法のもとで措置されるということもあり得る。あり得ますが、その場合に補償の問題を、日本の憲法二十九条第三項の補償の問題としていくのは、日本の憲法はとにかくそこに及んでいるわけでもございませんし、日本の憲法によってこれを律するというのはどうか、結局、その場合に問題になりますのは、通常日本が持っております。国民財産権を、他国がこれをゆえなく収用したりなんかする場合には、国民を保護する立場において、国家がものを言うということはございますが、そういう意味での主張、それをしないということになったにすぎないのではないか。そういう意味で、憲法二十九条の論議としては、これについて補償するとかというような問題は生ずる余地がないではないかということでございます。むろん、これにつきましては、いろいろ法律論があるようでございますが、私どもは、平和条約締結関連する問題の解明として、実はしばしば申しておりますように、ずっとそういう考え方できておるわけでございます。その点を申し上げたわけでございます。
  96. 横川正市

    ○横川正市君 これは石橋質問が、「外交保護権は放棄する。しかし個人の請求権は残る」云々という、こういう質問に対して、椎名外務大臣は、「先方のこれに対する措置として、国内法の問題につきましては、これは外交上の関係でございませんからしばらくこれに触れませんが、とにかく外交上としてはあなたのおっしゃるような結論になるわけです。」と、大体肯定したわけですね。肯定したあとのあなたの説明がいま言ったようなことで、引き続いて石橋君は、だから法律屋は黙っていなさいと、こういうふうなことになっているわけなんであります。  私は法律的に非常に疑問に思うのは、これは総理、ひとつ考えていただきたいと思うのは、確かにこういう問題を処理するときに二つの姿勢があるわけなんです。一つの姿勢は、政府が支出を決定したものに対する解釈、もう一つはこれから支出しようかどうかと思っているものについての解釈、本来はこれは一本でなければならないのに、二本立てになるわけであります。たとえば農地報償法なんかの補償の場合、最高裁の決定なんかを補償と言わずに報償と変えて解釈をする。それから軍人恩給の復活の問題のときにも、憲法の解釈についてどうする、あるいは勲章等の支給についてはこうだというふうに、政府態度を決定したときの法律解釈というのは、きわめて私どもは解せないことであっても正当化されていくわけなんです。ところが、いわばまだ政府態度を決定していない案件と思われるもの、それから、どうなるかわからないというものになりますと、法律解釈はきわめて厳格をきわめる。まあ言ってみますと、非常に第三者を納得させないような、そういう解釈になるという傾向があるわけなんですね。これは私は改めるべきじゃないかというふうに思うわけなんですけれども、この点ひとつ総理はどうお考えですか、お聞きします。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ね、私ちょっとつかみかねておるわけですが、政府が行政措置をとる、どこまでも、憲法はもちろんのこと、その他の法令の命ずるとおりでなければならない。そういうことでございますから、その行政措置をとる場合に、全部検討の上そういうことをやるわけです。これは具体的な処理の問題として当然のことだと思います。したがって、そういうような事例について、あとで解釈した場合に、必ず意思決定をしたときの政府は憲法、法律、こういうものを守った、その根拠に基づいて意思決定をしたのだと、こういう説明をしておるに違いないと思います。ただ抽象的な御議論で、一般的にはなかなか厳格だが、意思決定の場合には非常にルーズだと、こうではなくて、意思決定する前に法律、憲法は十分検討される、かように御理解いただきたいと思います。
  98. 横川正市

    ○横川正市君 この問題を論議いたしますと、前のやつは案件がどうであったか、こうであったかということになるわけで、私どもは決して反対側の意思が通らなかったから、これは多数派がどうした、こうしたということでなしに、率直に第三者が見て、この解釈規定からいきますと、やはり都合がよく解釈されるものだと、きわめてうまく理由づけをするものだと、こう思うことが非常に多いわけですね。その点をこれは今度のこの問題に、私は審議の過程ではもっと率直に、たとえば政府がやらなければならぬことについては、これは財政上の必要があることですから、その有無については、最終決定が延びても、法律上の解釈としてはぴしっと出されるべきが私は至当ではないか、こういうふうに思うわけであります。そこでいろいろ論議をされておりますから、他院でやったことでありますけれども、重複をいたさないようにお聞きをいたしたいと思うのでありますけれども請求権の問題に関して、韓国側は日本に対して財産請求権という、そういう立場に立っていろいろな主張をいたしてまいりましたが、まず最初に韓国側は、日韓間の諸案件解決するのに、その最も大切な項目としての請求権に対する考え方、これをどういうかっこうで表示をされたのか、この点をお聞きをいたしたい。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 請求権の根拠ですか……、結局領土分割によって、分割されたそれぞれの国及び国民の間に請求権が残っておるわけです。それが根拠です。
  100. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっと外務大臣の説明いま聞こえなかったのですが。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来一国として処理されておったものが二つに分かれた、他国になった、こういう場合に、他の一方の国が他の一国に対していろいろな財産上の権利を保有しておる、反対のこともまた言える。その問題を総括して請求権の問題と、こうしておるわけであります。つまり領土の分割によって生じた相互の間の請求権、こう解釈してしかるべきだと思います。
  102. 横川正市

    ○横川正市君 そこで、その当時すでに北には北朝鮮という政権の樹立がされておったわけでありますけれども日本と分割をしたという、そういう時点に立って相手側が請求権があるとしたのは、これは南とか北とかというふうに区別をしてきたのですか、区別をしないできたのですか。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮の一部に大韓民国ができた、その大韓民国の管轄権はその実際上に支配権の及ぶ範囲、こういうことになっておりますから、前には三十八度以南、今日は休戦ライン以南ということになります。この韓国との間の請求権の問題、こういうことになっておりまして、北との問題につきましては何ら触れられておらないというわけであります。
  104. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、だんだん触れていくわけですけれども、外務大臣、請求権を相手側が発動したわけですが、その発動した、いわゆるいろいろな諸条件の根拠としては、これは休戦ライン以南、この休戦ライン以南のいろいろな請求に該当する項目を、これを寄せ集めて請求してきた、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 最初は韓国及び韓国の国民の対日請求権として主張してきたわけでございます。いわゆる八項目というのがそれに該当するわけであります。その中には多少地域的に疑問のものもあったのではないかと思いますが、しかし、それをあくまで韓国の領域を根拠として整理し、その内容の検討に入ったのでありますけれども、何せ請求権を主張するからには、また、これを受諾するからには、十分に法律上の根拠があり、あるいは事実関係がはっきりしていなければならぬ。ところが、そのいずれの点についても非常に疑わしいものがある。で、それをいかにせんさくしても、すでにときが相当にたっておるし、朝鮮動乱というものもありまして、いかにこれを追及してもむだであるということになって、この問題はそのままお流れになった、こういうかっこうになっております。
  106. 横川正市

    ○横川正市君 これは、あとから非常に問題になるのは、向こう側の根拠法に基づいて明確に請求してきたことが、根拠を立証できなくて、お流れになって経済援助に変わった、こういうことになると、言ってみますと、前段と後段というものは非常に関係があるというふうにも見れるし、それから全然関係がない、それならば一体あとからの三億、二億、三億以上というのは、どういうふうにして計算されたかという問題に関連してくるわけですから、この点をひとつはっきりしておいていただきたいのは、相手側が請求権があるとしてこられたものの法的な根拠というものはどういうふうに裏づけしてこられたわけですか。
  107. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事務当局から御説明いたさせます。
  108. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 請求権の根拠といたしました各項目によって先方が提示してきた理由はまちまちでございましたですが、たとえば金、地銀の請求、日本が韓国で、朝鮮半島で発掘いたしまして持ってまいりました金、地銀に対する請求等に対しましては、わがほうは朝鮮銀行法に基づいて、合法的に買い上げたものだという法的根拠に立ちますし、先方は略奪してきたものだという立場に立って、全然法的の解釈が一致しなかった。  それから、先ほどお話のありましたいろいろな請求権について、韓国人と日本人との割り振りがどうなるか。あるいは南北の割り振りがどうなるかというような点についても、全然、事実関係について意見が一致しなかった、そういうようなことでございます。
  109. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、少し具体的にお聞きをいたしますが、いわゆる相手側が請求してきた八項目について、これは正式には——資料の問題でまたやりとりするのはいやですから抜きますが、第一項目の、朝鮮銀行を通じて一九〇九年から一九四五年までの間に韓国から搬出された金銀の返還を請求する。これは、数量はあなたのほうではわかっておりますか。それから、大体換算してどのくらいの金額になっていたものか。これは、明確には金額は明示をされておらなかったようですね。
  110. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 対日八項目項目につきましては、もうおととしでございましたか、国会に資料として提出されているわけでございますが、その具体的の数字につきましては、御承知のとおり、今般の日韓国会におきまして、衆議院段階でこれの提出が問題になりまして、韓国側との話し合いの関係上、秘密会でならば提出できるということになって、そのままこの問題は片づかなかったままになっているような状況でございまして、したがって、事務当局といたしましては、ここですぐにというわけにはいかないことを御了承願います。
  111. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっとはさみますが、郵政大臣にお聞きをいたしますが、郵政の所管をする貯金等、振替貯金、郵便為替、その種目は、それぞれ原簿その他によって明確になると思うのでありますけれども、戦前の朝鮮においては、郵便貯金の総額は幾らあったのですか。
  112. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 二十年の九月末で、朝鮮記号の預金は、大約十二億ございました。
  113. 横川正市

    ○横川正市君 外務大臣、いま郵政大臣が原簿その他の精査によって出された金額と、それから、国会に未提出でありますけれども委員長の手元で、秘密会議といわれております、請求権項目の中の郵便貯金の、いわゆる向こうから提示された金額とは、ほぼ同じような数字なんです。ですから、私のほうから一々取り扱い諸官庁から数字を聞いては、幾らありましたかと言って聞いて合わせていくのは、いかにもこれは非能率的なんで、出された大体概数についてはほぼこれは全部資料があって、その金額その他についても明示されているわけですから、もっと具体的にその内容を説明していただけないですか。そうすればぴたっと数字というのは別にめんどうしないであらわれてくるわけですからね。
  114. 郡祐一

    ○国務大君(郡祐一君) この問題は、いまのお尋ねの点の前に、私がお答えした事柄について申し上げておくことが必要だと思います。これは御承知のとおり、朝鮮記号の預金というものは、終戦後は日表も月表も正確に日本側に参りませんでした。したがいまして、わかり得る限度というものは日本側でわかっております。したがいまして、その数字とたまたま符合するかとおっしゃいましても、それと全く、先ほど外務当局からお話しになりました点とは全く種類を異にするもの、こういうぐあいに御理解願いたいと思います。
  115. 横川正市

    ○横川正市君 郵政大臣出てこなくてもいいわけですがね。私はたまたま郵政大臣に具体的に原簿所管庁ですから幾らあるかという数字を聞いて、その発表された数字と、それから八項目の第二で請求された向こうの数字とがほぼ合致するものですから、資料で出さないとか出すとかというそういうめんどうなことで、私のほうから一々これは幾ら、これが幾らかというふうに聞くのはめんどうだから、資料として数字を出したらどうですかと、いま外務大臣に聞いておるわけですから、たいへん手数を省く方法ですがね。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それを申し上げたいのでございますけれども、向こうの政府の方針としては公開は困る、こういうことでございます。そこで、(「どういう理由で」と呼ぶ者あり)その理由までこまかく聞いておりませんが、とにかく韓国政府としては、それを公開してもらっては困ると、こういうことを言いますから、それでこれは秘密会であればひとつ取り扱い得るけれども、秘密会でない限りにおいては、これは遺憾であるけれどもお求めに応じかねるということで、ただいまストックしているような状況でありますので、それをここで申し上げることは差し控えさせていただきます。
  117. 横川正市

    ○横川正市君 まあ言ってみると、事実上は最終的決定の何といいますか、土台にとか、参考とか、そういったことにならなかったとあなたのほうでは答弁をされておるわけですが、私はそういう意味ではあまり重要な書類だとは思わないわけなんです。ただ、これはひとつ、私のほうにありますこれは市販されておる資料ですから、あなたも十分承知だと思いますけれども、大体この資料の、請求権として向こう側が主張してこられた内容については、ほばこれは向こうからきた書類と合ているのかどうか、その点はどうですか。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかくこれを法的にあるいは事実関係から確定するということはもうとても不可能だというので、いわばほご同様になったものでございますから、向こうとしてはそれほど秘密扱いにしなくてもいいのではないかというふうに一応は考えられますけれども、とにかく韓国政府のかつてやった行動というものが資料になるのでありますから、その点を一応断わってと、こう思ったのでありますけれども、向こうは、やはりそれは公開してもらっては困ると、こういうわけでございます。でありますから、どうもそれを約束を実行する上において、ある資料がその本物に合っているかどうかというようなことを私は言明するわけにはいかない。まことに遺憾でございますが、どうぞよろしく。
  119. 横川正市

    ○横川正市君 寡聞にして為替換算率を私承知いたしておりませんのでお聞きをいたしますが、この韓国の通貨と日本の通貨との交換率はいまどうなっているのですか。
  120. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。御承知のとおり、いま韓国の通貨は、いわゆるフローティングマーケットと申しますか、実勢相場、浮動レートをとっておりますけれども、そのときの基準のレートといたしましては、米ドルの一ドルが二百五十五ウォンになっております。
  121. 横川正市

    ○横川正市君 外務大臣、この大体この八項目一つ一つをお聞きをいたしていきたいと思うのでありますが、これは、第六次までは、それぞれ交渉のいわば相手側から要求されたものの検討資料といいますか、そういうものになったわけですね。そこで、この第一項目については、これは衆議院段階ででも、成規の手続で日本へ搬入されたというふうに、当時の大蔵大臣は答弁をいたしております。それならこの二項目以下の、交渉の過程でのそれぞれのやりとりといいますか、日本側から主張した内容、それから向こう側から、こういう理由だという主張をした——金額はまあいいですから、どういうやりとりをされたか、おもな点だけお答えいただきたい。  第二項目は、これは逓信関係に該当するので、郵便貯金、振替貯金、郵便為替、それから国債、貯蓄債、それから朝鮮の簡易保険、郵便年金、それから海外為替貯金、債券、それから太平洋米国陸軍総司令部布告第三号によって凍結された韓国の受け取り金というふうに出ているわけですが、これらの、これは項目だけは国会に提示されておりますから、その提示された項目について、六次までのやりとりとしては、どういうやりとりをなされたか、おもな点だけひとつ。
  122. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員からお答えいたさせます。
  123. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 法律論及び事実論のやりとりが、あるいは帳簿の突き合わせとか、そういうような法律論及び事実論上のやりとりが、大体、第六次まで行なわれたわけでございますが、事実論といたしましては、各項目について先ほど申し上げましたとおり、この韓国人と日本人との仕分けとか、あるいは南北の仕分けというようなものが、お互いにお互いの立場を言い合ったということでございます。法律論といたしまして、先ほどの金、地銀の問題のほかに、もう一つ大きな問題となりましたのは、たとえばここにございます第二の、大きな2の中の小さい2、それから小さい4、朝鮮総督府の東京事務所の財産とか、あるいは大きな4の、韓国に本社を持っておりました本店、韓国に本社を持っておりましたような会社の在日財産の問題がどうなるかというような問題でございます。これは軍令三十三号の適用範囲が日本の本土にまで及ぶものかどうかということでやはり一つの大きな争点になります。また、たとえばこの朝鮮の港に在籍しておりました、登録しておりました船なんかの問題につきましても、物理的に朝鮮半島にあった財産のみが軍令の対象になるのか、あるいは単に登録という籍だけでもなるのか、そういうような点が法律論としては一番大きな点でございまして、あとは大体事実の問題、また、それを裏づける資料があるかどうか。これは日本側の資料は、たとえば朝鮮特別会計に関します資料等は全部持ち帰りを禁じられましたので、向こうに残っておりまして、こちらから有効になかなか反駁するような資料が持てなかった。それから朝鮮動乱等で非常に向こうにありました資料も滅失いたしまして、向こうもなかなか有効な材料を出すことができなかったということで、結局俗なことばで言えば、水かけ論的な結果になりまして、金・大平了解の話し合いに入っていくことになったわけです。
  124. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、これは向こうは証拠書に基づいて積算された金額を呈示したのではなくて、何か目の子勘定かなんかで出されてきたようなものなんでしょうか。向こう側の主張としては——金額はいいですが、主張としてはその点どういう主張をされておったわけですか。
  125. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) もちろん先方としましては、先方なりの一応の理論構成及び——結局腰だめ的な数字も相当あったわけでございますが、同時に、したがって、この八項目の中には数字を先方から入れてこなかった項目も相当あるというような状況でございます。
  126. 横川正市

    ○横川正市君 これは数字の入っていないのもあるわけですがね。それじゃこの三項目の振替または送金された金員の返還を請求されておるわけで、八月の九日以降、朝鮮銀行本店から日本の東京支店へ振替または送金された金員、それから、同じく八月の九日以降、在韓金融機関を通じて日本へ送金された金員、そういうのはこれは第一の項目と同じようなかっこうのものなのか、また別な取り扱いをされたものか。
  127. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 記録によりますと、この項目については先方は数字を出すことを留保するといって、出しておりません。
  128. 横川正市

    ○横川正市君 これは私どももう入手のできない数字ですから、数字ということになれば、数字はこれはお互いに確認することはできませんが、向こうはどういう状況であったからこれは請求権項目だと主張されたかですね、その点をお聞きしているわけなんです。金額や何かじゃないのです。
  129. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 要するに先方の論拠といたしましては、八月九日に実際上の何と申しますか、日本の権力下から離れるような状況になってしまったわけでございますが、その後米軍の進駐してくるのがおくれたとか、あるいは軍令三十三号の出るのがもっとあとになったとか、その間のごたごたの間に日本に対する解禁がなされた、そういうものが当然何と申しますか、日本の不当利得だというような論処だったと記憶しております。
  130. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、これは言ってみますと、何こうが要求する根拠としては実際には事務取り扱い者とかなんとかというそういうようなものの証言とかあるいは根拠になるべきものを一切つけないで、状況判断でやられたものだというふうに考えていいですか。
  131. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) それらの項目についての討議、説明は留保しておるところから見ましても、先方としましては、一応ともかく項目だけ腰だめと申しますか、網を張って出しておく、あとだんだん調査が整えばという態度だったと了解しております。
  132. 横川正市

    ○横川正市君 この八項目はまだどこでも触れて、おらない問題ですから少し具体的に説明をしていただきたいと思います。  それから四項目で、   一九四五年八月九日現在韓国に本社、支店または主たる事務所があった法人の在日財産の返還を請求する。  (1) 連合軍最高司令部閉鎖機関令によって閉鎖清算された韓国内金融機関の在日支店財産  (2) SCAPIN一九六五号によって閉鎖された韓国内本店保有法人の在日財産  (3) その他  こういうふうになっておりますが、この項目はどういうふうに……。
  133. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) これが、先ほど法律論で一番問題になったものの一つとして例示いたしました、要するに韓国内にありましたこの会社の在日財産がちょうど何と申しますか、頭が朝鮮の中にあるならば、その足、腕である支店の財産日本にある財産にも及ぶべきだ、返還すべきだ、という韓国側の主張だったと思います。
  134. 横川正市

    ○横川正市君 それじゃあ第五項目に入りますが、第五項は、   韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国  民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴  用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の  弁済を請求する。  これは「日本有価証券」の項に八つ。それから「日本系通貨」としては、それぞれの当時発行されました銀行券、紙幣。それから三つ目としては、「被徴用韓人未収金」徴用軍人、軍属、項目としては俸給、賃金、年金、手当等、金額は二億三千七百万円というふうな要求項目。それから四つとしては、「戦争による被徴用者の被害に対する補償」太平洋戦争前後、それから日本に強制徴用された者、それから各個人が日本人と別視されて日本の戦争遂行のための犠牲となって強制徴用された死亡者、負傷者に対するそれぞれの補償金、それから第五は、「韓国人の対日本政府請求恩給関係その他」恩給では、種類は年金、一時金、それから寄託金、第六は、「韓国人の対日本人または法人請求」で、韓国人の日本生命保険会社に対する請求権で加入者の責任準備金を請求するもの等、ここに金額がありますけれども、金額は明示できないようですから、これらの向こうとのやりとりはどういうことになっておりますか。
  135. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘の項目のうち、通貨あるいは有価証券等につきましては、要するに日本側がこれを返す義務があるという、それだけのことでございます。  被徴用韓国人の未収金、これにつきましては、終戦当時特に供託しているというふうに了解しておりますので、そういうものに対する請求権でございます。  それから戦争による被徴用者の被害に対する補償、これはやはりいわゆる賠償——これはこれだけが領土分割の場合の請求権とちょっとほかのものとは性格が異なりまして、いわば賠償的な性格があるわけでございますが、生存者、死亡者に分けて、被害に対する傷ついたり死んだ者に対する補償金をくれ、そういう要求でございます。  恩給につきましては、これは日本政府につとめておった際の恩給でございまして、これはわかっているものについては恩給局が供託しておるように了解しております。  それから寄託金と申しますのは、これは引き揚げのときに税関に——終戦後大量引き揚げを朝鮮人がいたしましたわけでございますけれども、これが税関に預けていった金でございます。
  136. 横川正市

    ○横川正市君 それは、外務大臣、ちょっと疑問が出てきたわけですが、この八項目の請求はその根拠あるいは裏づけとなるものについてきわめて立証ができなくなったので、それで経済協力に変わった、それでまあ一切終わった、こういうことになるわけですが、いまの供託されたものとか、あるいは恩給局等にある事実上のものについては、たとえば国籍の変更等その他があった場合には、そのものだけは生きてくるわけですか。これは純然たる事務取り扱い上の問題になると思うのですね。たとえば恩給については、中間期間が中断されておっても、継続された場合には、前後を通じてこれを支払うとか、いわゆる戸籍の面で当然恩給受給の資格のある者については、これは、死ぬまで、あるいは死んでからもその相続者について引き継がれるという性格のものなんですが、事実上これは恩給局にあるとか、実際に金が供託されているとかという場合には、その支払いの義務、いわゆる契約の履行が生じてくることになるわけですが、この八項目全部が消滅したということとは少し違う結果になるのじゃないかと思うのですが、その取り扱いはどういう取り扱いをいたしておりますか。
  137. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総合して取り扱うということになったのでありますが、事務当局から詳しく御説明します。
  138. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) たとえば恩給等の領土分離の場合の取り扱いにつきましては、交渉の最中にも各国の先例等調べたわけでございますが、いろいろな先例がございまして、たとえばオーストリアなんかの場合のごとく、分離したあとでも旧統一時代の恩給のあれをそのままオーストリアは認めているというふうな例もあります。全然認めていないという例もありまして、国際慣行としてはまちまちでございます。今般の場合は、先般大臣が申されましたとおり、いわゆる金・大平了解の線で片づきましたので、全然個別の請求ということはないわけなんです。ただ、韓国側のほうでは、情報によりまして、日本側のほうから受けました経済協力一つの基金をつくりまして、この証拠書類を持ってきているという者については、そういうものは弁済する方針でいるように伝えられております。
  139. 横川正市

    ○横川正市君 これは大平・金メモというのは純然たる外交上の一つの取りきめかもわかりませんが、契約上の問題では私はなかったように承知をいたします。そして、その具体的なあらわれが実は今回の三億、二億、三億以上というかっこうで経済援助ということになってきたんだと思うので、いまの後宮さんの説明でいきますと、いわば向こうが道義的に国内法を定めて、それの補償とかあるいは権利義務を生じたものについて支払いの方法をとるということだけではなしに、実はこれは個人の権利であって、請求された場合には、実は私はこれは日本の国籍を持った者に対して支払い義務が生ずる、こういうふうに判断すべきだと思うんですが、日本のいわゆる共済年金その他恩給取り扱い法はたしかそういうふうに法律規定にされておるわけなんで、その点ちょっと疑問があるわけですが、ちょっとはっきりしていただけませんか。
  140. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 財産及び請求権に関する協定の第三項で、「一方の締約国及びその国民財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置」云々「に関しては、いかなる主張もすることができないものとする。」ということになっておるわけでございます。この協定の規定を受けまして、今度一括いま審議されております法律案の一項で「日本国又はその国民に対する債権」は「昭和四十年六月二十二日において消滅したものとする。」ということになっておりますので、恩給債権も大韓民国国民のものは消滅するわけでございます。
  141. 横川正市

    ○横川正市君 それは、私は、法律解釈が少し不備じゃないかと思うのです。これは特殊な事情下にあるわけで、日本人であったという事実と、それからしばらくの間その国籍が明確にならないまま今日を迎えて、今回の条約が結ばれて、そうして日本人であることを明確にした韓国人については、それではこれは支払いの義務が生じますね。
  142. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 大韓民国国民のものだけでございまして、日本に帰化しておるとかいうような者でございましたら、もちろんこれの適用はないわけでございます。
  143. 横川正市

    ○横川正市君 これはやはり重要な問題ですから、そういう場合の取り扱いその他については、いまどうするかということを私は聞きませんけれども、やはり明確にしておくことが必要だと思います。その点、取り扱い、これは恩給局になりますか。その他、これは公務員制度でもなし、恩給局ですかな。恩給局でこの取り扱いについて明確にする、そういうことでいいですか。
  144. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 取り扱いは、御指摘のとおり、総理府恩給局でございますが、法律関係は、私がただいま申し上げたとおりでございます。
  145. 横川正市

    ○横川正市君 いま支払いの義務の生じる者ということがはっきりしたわけでしょう。だから、そういう支払いの義務が生じた者の取り扱いについては、たとえば何月何日韓国人で日本に帰化された者についての恩給についてはこうこう取り扱いますという公示をせにゃいかぬと思う。そのままほっとくわけにいかぬでしょう。支払いの義務の生じた者についての取り扱い規程、あるいは規程解釈というものが出されるべきじゃないですか。
  146. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 日本国民になりましたら、もうこれは一般の日本の法令の適用によってやるわけでございまして、特別の法令なり準則が必要であるというようには私ども聞いておりません。
  147. 横川正市

    ○横川正市君 これは、一時取り扱いについて停止または復活ないしは継承その他についての権利義務が生じた場合の取り扱いは、これは前にやっていて中間が抜けてもとどおりになったのだからいいのだというわけにはいかないのです。やはりその取り扱い規程その他の細目について、政府は明確にする義務があるはずです。その点は、私はひとつあなたのほうで検討していただくようにお願いしたいと思う。  次の六項目の「韓国人(自然人及び法人)の日本政府又は日本人に対する権利の行使に関する原則」、これは「韓国人の日本政府又は日本人に対する権利であって第一項ないし、第五項に包含されないものは韓日会談成立後といえども個別的に行使することができることとし、この場合には、国交が正常化されるときまで時効は進行しないものとする。」、この法人規定については、これは事実上は他の項目で生かされておるわけですか、それとも別途の取りきめによってこの項目は消滅している項目なのですか、どういう取り扱いをされているのですか。
  148. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 交渉経緯のことでございますが、この点については、十分な説明が得られないままに終わったということでございます。
  149. 植木光教

    ○植木光教君 委員長……   〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕   〔委員長退席〕    午後三時二分      —————・—————