運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-11-27 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月二十七日(土曜日)    午前十一時七分開会     —————————————    委員異動  十一月二十七日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     船田  譲君      西村 尚治君     宮崎 正雄君      大森 久司君     藤田 正明君      植木 光教君     山内 一郎君      八田 一朗君     梶原 茂嘉君      平泉  渉君     中村喜四郎君      楠  正俊君     園田 清充君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 梶原 茂嘉君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 笹森 順造君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 中村喜四郎君                 日高 広為君                 廣瀬 久忠君                 藤田 正明君                 船田  譲君                 宮崎 正雄君                 柳田桃太郎君                 山内 一郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        農 林 大 臣  坂田 英一君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君        常任委員会専門        員        結城司郎次君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告申し上げます。  本日、内藤誉三郎君、西村尚治君、大森久司君、植木光教君、八田一朗君、平泉渉君、楠正俊君が委員を辞任され、その補欠として船田譲君、宮崎正雄君、藤田正明君、山内一郎君、梶原茂嘉君、中村喜四郎君、園田清充君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案  以上四案件を一括して議題といたします。  この際、佐藤内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤内閣総理大臣
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨日の私の発言中誤解を与えたような点があったことは、私の本意ではございませんので、どらかよろしくお願いをいたします。御了承願います。
  5. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより質疑を行ないます。岡田宗司君。
  6. 岡田宗司

    岡田宗司君 今回のこの日韓の諸条約、これは十四年間かかったと、こういうことで、条約締結されるまでに至る期間としてはレコードかもしれません。しかし、この条約を見ておりますというと、私どもは、非常にまずい条約だ、至るところに欠点がある、解釈の食い違いが両者にある、こういうことで内容を検討すればするほど私どもとしては賛成し得ないことになっているわけであります。それは、それらの各条項等につきましては後に質疑いたすことといたしまして、まずこの条約が結ばれるに至りましたいきさつについて若干質問をしたいと思うのであります。  この条約が結ばれるにあたりまして、まずそれに先立つ交渉が始められた、これに十四年間かかっておる。この日韓交渉は、最初アメリカが仲介の労をとって、それによって始められた、こういうことになっておるわけでございますが、その間アメリカがやはり何べんか立ち入っておるというふうに私どもは見ておるわけであります。朴政権になりましてからも非常にむずかしい場面もあったようでありますが、その際にやはり、公式ではないかもしれませんが、しかしアメリカ側のほうから両者に対して、圧力というか、あるいはまあ圧力ということば承認しにくいならば、これは強い要請と、そういうものがあったように思うのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも私に関する限り、アメリカ側から日韓交渉の問題について何らの注文がましいことは何一つ聞いておりません。さような事実はございません。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題は、あなたに関する限りの場合のことを言っているのじゃないんで、全体としての経過においてそういうことがあったんじゃないかということをお伺いしているわけです。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私自身のことはいま申し上げたとおりでありますが、従来、十四年間の日韓交渉経過において、さようなアメリカのほうから圧力とか、あるいは介入、あるいは特別の要請というようなものがあったということは全然聞いておりませんし、そういう事実は私は確信を持ってないと申し上げることができると思います。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 たいへん確信を持った御返事のようです。しかし、この八月二十五日にアメリカ上院でもって、いまこちらへ来ておられる上院外務委員のモース氏が、「私は今日合衆国がおよそ四十カ国への干渉計画に加わっておることを教えられた」、こういう発言を行なって、そしてこの軍部をスポンサーにして行なわれておる各国別の、四十カ国から五十カ国にわたる研究計画というものがあることを指摘されたのであります。で、まあ当時日本新聞では、アメリカ三矢研究であるとか何とかということでだいぶ問題にされたのでありますが、これはこのうちに日本関係するものがあるわけであります。これは「日本特殊戦争ハンドブック」、こういうもので、実に八百二十ページに及ぶ膨大なものです。この中に日韓会談についての項があるのであります。どういうことが書いてあるかというと、いろいろ書いてありますが、「日韓交渉は、アメリカの強い圧力のもとに、一九六〇年早々に再開され、同年三月、両国政府は、双方抑留中の漁民釈放し、通商関係再開することに同意した。」、はっきりと「アメリカの強い圧力のもとに」と書いてある。これがジャーナリストが書いたとか、あるいは新聞報道であるとか、こういうことならば、私はあなたにお聞きしょうとは思わない。しかしながら、アメリカ政府刊行物、つまりアメリカ陸軍省がつくったハンドブックのうちにそういうことが書かれてあるということは、アメリカ自身がやはり圧力をかけたということをみずから認めたものにほかならない。これについて朝日新聞は、そのころワシントンのほうからの電報で、「この点について国務省が非常に当惑をしておる」、こういうことが言われておる。このハンドブックについては、すでに外務省も、あるいは防衛庁も、御存じだろうと思います。あるいは翻訳ができておるかもしれません。このハンドブックの中にこういうことが書かれてあるということは、椎名外務大臣は御承知ですか。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そのことは存じませんが、漁民釈放を迫ったということでありますが、これは漁民釈放勧告したという趣旨なんだろうと思います。それは日韓の今回の一連の条約交渉とは何ら私は関係がないと思います。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 当時久保田発言以来中絶をしておりました日韓交渉再開についての話なんです。で、アメリカから強い圧力をかけたということは、アメリカ陸軍省の発行したそのハンドブックの中に書かれてある。このハンドブックは、アジア局長御存じでしょうか。
  13. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 承知しております。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまアジア局長お話だと、「承知しております」と、こういうことなんです。大臣は御承知ないとみえる。この点は、外国圧力がかかったかかからないかということは、日本外交にとって重大な問題です。その点もう一度お伺いしますが、この事実ですね、つまり会談がとぎれておった、それの再開についてアメリカ側で心配をして圧力をかけた、こういうことを向こう側政府刊行物で出しておるということは、これは私は重大なことだと思う。どうでしょう、それでも圧力はなかったと、こう断言できるのですか。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓の間がお互いの自由陣営関係でございますから、そういうことのないようにということは、これはもう通常の外交上においてしばしば行なわれることでございまして、戦争が苛烈になると、いいかげんにしてやめたらどうだといったようなこともあれば、そう両方むきになって他国の国民抑留するというようなことは、これはやっぱりほんとうに平和を守るゆえんではない。でありますから、そういうことは適当に緩和したらどうかというぐらいのことは、これはもう決して、通常行なわれることでございまして、これぐらいの勧告は、私は友好国の間では当然のことだと考えております。それが日韓条約締結というものに特別の圧力をかけたとか、勧奨したとか勧誘したとかというようなことには全然ならないわけでございます。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま椎名外務大臣の言われたこと、これは一般的なことなんです。そういうことはあるでしょう。しかし向こう側資料で、しかも国会でもって、アメリカ国会で問題にされたもののうちに、政府側資料で、圧力をかけた、こういうことが書いてあるのです。しかもそれは後宮アジア局長は、このハンドブックを知っていると、こう言う。椎名外務大臣が知らないとすれば、私はやはりこの点については資料として提供していただきたいと思うんです。この部分でよろしゅうございますが、これは外務省にある資料のうちから、その分に関しての抄訳をして、各員にまず配付していただきたい。
  17. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 大臣、いまの岡田君の資料要求の点、どうです。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) できるだけ御期待に沿いたいと思います。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま申し上げた一点だけ見ましても、これはかなりアメリカ圧力がかけられておったということは、明らかであろうと思います、これはアメリカ自身が言っていることでありますから。私どもは、他の面においてもいろいろとそういう事態があったと思うんでありまして、韓国側においても、圧力あるいは強い要請を受けたということも言っておる面もあるのでありまして、これらの面から見ますというと、どうも今回の日韓会談は、そういう第三者の力が強く働いて行なわれ、そうして、それによってこの条約が急速に結ばれた、こういうふうに見ざるを得ない点もあると思います。もちろんいま私のあげましたはっきりした証拠は、一九六〇年でございます。しかしながら、本年になりましてから、私どもは、急転直下この条約が結ばれるに至ったということは、これはやはり国際情勢と関連してアメリカ側の強い圧力、もしくは要請があったのではないかと思うのであります。佐藤総理大臣が一月に、ジョンソン大統領に会われましたときに、やはり日韓条約の問題、日韓会談を終結させる問題についてお話があったろうし、また朴大統領が五月にジョンソン大統領に会われた際にも、朴大統領日韓会談の促進について勧告を受けておる。こういうような事態から見ますならば、これがその後すみやかに締結されたということは、明らかにアメリカ側圧力という、ことばはどうかわかりませんが、少なくとも強い勧奨があった、要求があった、こういうふうに解せざるを得ないんですが、その点、総理大臣はどうお考えになりますか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この十四年の長い交渉過程におきましては、いろいろ諸外国——ひとり米国だけではありません、諸外国がこの日韓国交正常化について、各方面から関心を示したと——干渉ではなくって関心を示したと、こういう事柄はあっただろうと思います。しかしながら、この両国間の条約なりあるいは協定等につきましては、いわゆる外国がこれに圧力を加える、こういうものでないことは御承知のとおりであります。私はもしも外国から圧力が加わったと、こういうことであるならば、日韓両国とも必ずそれを排撃しているに違いないと、かように思います。  ことしの一月に、私がアメリカを訪問いたしました際に、ジョンソン大統領との間に話し合いがあったと、かようなお話をしていらっしゃいますが、さような事実はございません。  朴大統領ジョンソン大統領に会いましたときに、どういう話をされたか、これは私は知りません。  ただいまのように、いろいろのお話が出ておりますけれども、ただいまの日韓交渉が、最初GHQ時代に、吉田内閣の当初に、当時私は官房長官をしておった、その際に李承晩大統領が訪日された。そういう際に話がされた。たしかこのときの話は、占領軍司令官があっせんをいたしたようにも思います。しかし、このことは実を結ばなかった。その後、自発的にいろいろの交渉を持たれた。しかしその片言隻句が問題をぶちこわして、交渉をぶちこわしたという事態も起きている。しかし片一方でそれをぶちこわされているために、李承晩ラインというものが効力を発揮している。そうして拿捕、臨検、あるいは漁夫抑留と、こういうふうな事実が次々に起こっている。私どもはとにかく日韓交渉を妥結して、この種の事柄をぜひともないようにしよう——ただいま言われた漁夫釈放あるいは日本抑留韓国人の送還、こういうような事柄が、両国間の問題だったことも事実でありますが、日本政府とすれば不法な処置である、この漁夫抑留と、こういうふうなことをぜひ釈放してもらいたいということで、しばしば抗議もし、交渉も持った、こういうことは岡田さんも御承知のとおりでございます。ここでこの双方の間をあっせんしたと、こういうことは、私はそのまますなおにとっていいことじゃないだろうか。ただハンドブックにどういう書き方がしてあるか、私は存じませんけれども、もしも圧力を加えた、かような表現があったにいたしましても、その圧力を加えたという以上、条件その他について何か出してきているというならわかりますが、再開——圧力を加えて再開さしたと、これだけではいわゆる圧力ということにならないように私は思うのでありまして、あるいは日韓交渉の妥結に圧力が加わったと、こういうことではないように思いますから、やや私はその書き方について疑問を持つというか、まあ、どちらかといえば不満を持つと——非常に圧力を加えてこれはできたのだと、こういう言い方には不満でございます。しかし、少なくとも漁師抑留されていた、こういう事実があり、日韓交渉がされておらない、そういう結果が漁師抑留というようなことを招来したと、かように考えますだけに、各国がこのことに関心を示した、かようなことは私は当然じゃないだろうか、そういう意味で、その関心を私どもが受け入れたということじゃないだろうか、かように思います。ただいまのお話は、あるいは見方によりまして圧力が加わったと、こういうような表現もあったのかもわかりませんけれども、問題は日韓交渉内容について、特別に圧力が加わった、こういうものであるかどうか、問題はそこじゃないだろうか、かように私は思います。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 幾ら日本アメリカの与国だからといって、おそらく内容にまで圧力を加えることはない。しかしながら、外交的に、政治的に私は中断されておりました会談が行なわれるように圧力が加えられた、こういうことはやはりあり得ることだと思うのであります。とにかく陸軍省刊行物戦略ハンドブックのうちにそういうことが書かれておるということは、これはどうも第三者をして見ても、圧力が加わったなということを思わしめるに足る理由である。もちろん、圧力を受けたほうが圧力だと感じなければ、あるいは圧力ではございませんでしたということで、椎名外務大臣のような御答弁にもなるかもしれませんけれども、少なくとも圧力をかけたほうが圧力をかけたのだと、こう言っている以上圧力があったと、こう見ざるを得ないのでありまして、私どもはもしそういう事実があったとするならば、これはまことに日本外交にとりましてゆゆしき事態である、そうして今後もそういうようなことが起こり得るとするならば、これはたいへんなことじゃないか、こういうふうに考えるのですが、総理はその点どういうふうにお考えになりますか。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その圧力の効果が日韓交渉を促進するためには、全然効力がなかったならば、その圧力はむだであったということにもなると思います。向こうはどう言おうと、そのために促進された事実はありません。  なお、これに関連して私がこれはきわめて確かな情報でありますが、アメリカ以外のさる先進国からの情報としてきわめて信頼すべきものであります。韓国の相当の首脳者借款のためにそこを訪れていろいろ折衝した際に、なぜ一体もっと緊密な関係を有すべきはずの日本との間に早くこの協定を成立させて、そうして経済的な建設のためにこれを役立てないのか、それを差しおいて、そうして遠くのわれわれのところまで来て、そうしていろいろな申し入れをするということは、大体順序、軽重を誤っているんじゃないかというような、かなりきびしい勧告を受けたという事実を私は入手しております。どこの国でどういう人からそういう話を聞いたということは言えませんけれども、きわめて信頼すべきこれは情報でございまして、私が直接これを聴取いたしたのでございます。これなんかは、いまあなたの言う圧力といえばこれは重大な圧力、かなり重要な借款申し入れに関連してそういうことが行なわれたのでありますから、それらも圧力といえば圧力、ところがいまハンドブックにあるのは、全然きかない圧力ききめのない圧力、こんなのは私は圧力とは考えないのであります。まあ御参考までにある先進国との間にさようなことがあったということを、御参考までに申し上げておきます。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 痛くもかゆくもないものは圧力にならぬ、こう言われましたし、きかない圧力圧力じゃないと言うけれども、かけたほうは、圧力をかけたと言っているのじゃありませんか。しかも会談は、中絶されておった会談が開かれ、そうしてさらにその後話が進んでおる、あるいはまた本年になりましてからもそうでありますが、バンディ国務次官補韓国に行きまして、かなり圧力をかけた。同時にこちらに参りましても、あなた方のほうにお話があった、こう思うのです。これらはどうもきかなかったどころじゃない。やはりあなた方のほうでもそれは十分にお聞き入れになって、貴意に沿いますというようなことで進められたのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) バンディ次官補が昨年でございましたか、韓国に訪れる途次に日本に立ち寄りました。私はその行きがけにたしか時事通信の主宰している全国の経済人会合がありまして、そこでバンディ氏が演説をするということでありまして、たしかその会合だったと思いますが、ちょっといま日米協会だったか少し記憶が確かでございませんが、そのときにバンディ氏に会っただけで、韓国の帰りには私は全然お目にかかっておらない。したがって、日韓交渉に関してバンディ氏とは一言のことばもかわしておらないのであります。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ圧力の問題については、かけたほうがかけたと言っているのだからあった、かからなかったのだ、圧力は感じなかったと言うならば、それはそれといたしまして、先に話を進めてまいります。  次に私どもはこの条約の結ばれた過程において、はたしてこの条約対等立場でもって話し合いが行なわれてきたかどうか、こういうことを疑わざるを得ないのであります。李承晩時代には、李承晩大統領日本に対して臨む態度戦勝国態度で臨む、戦勝国対戦敗国関係のような態度で臨む、こういう方針でおったようであります。これはもう明らかに対等立場でありません。韓国との間に戦争をして、日本韓国に負けたということではないわけであります。したがって、当然対等立場でいかなければならぬ。それがどうも対等立場でなかったように思う。それが尾を引きまして、ずっと後までの交渉過程も、何か対等とは言えないのじゃないかと思うのでありまして、たとえば代表部の問題がございます。占領時代韓国は占領軍司令部に対して代表部を派遣しております。講和条約効力が発生するようになりまして日本が独立国になった。日本はそのまま韓国代表部を、日本における代表部として認め、そして同時に韓国は大公使を任命し、外交官を日本へ派遣しているわけです。そして日本側はこれを外交官として待遇している。この際に日本側は向こうと覚え書きを取りかわして、韓国にも日本代表部を置くという約束をしてある。ところがその後いつかな代表部を置かれておらない。ようやく今回の条約の批准が行なわれて、初めて代表部の設置が認められた。こういうことは対等立場における会談の進め方ではなかったんじゃないか、李承晩時代戦勝国が戦敗国に対する態度、それがそのまま続いたんではないかと思われるのですが、その点はどうお考えになりますか。まずその点についての事実関係を、アジア局長なり条約局長から明らかにしていただいて、そのあとで外務大臣の御答弁を願いたい。
  26. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。御指摘のとおり在外事務所の問題、韓国代表部日本代表部の問題につきましては、講和条約の発効いたしました一九五二年の四月二十八日の交換公文でとりきめられておりまして、当時司令部に派遣されておりました韓国代表部日本政府に対する代表部として認めると同時に、日本側も相互主義の原則に従いまして、韓国にその政府代表部を置く権利を原則として認められたわけでございますが、御指摘のとおりその後朝鮮動乱等が起こりましたりいろいろな原因がございまして、当方累次こちらの代表部を置くことを折衝したのでございますが、先方はなかなか承知いたしませず、結局御指摘のとおり、今般条約を六月二十二日調印しましたのを契機として当方の代表部も設置することができる、そういう状況でございます。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 外務大臣、これは対等立場交渉ではなかったように思うのですがいかがですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ形はおっしゃるとおりでございます。こちらには堂々たる代表部ができておる、向こうにはわがほうとしてはホテル住まいというようなことでありまして、形の上では確かに対等ではございません。しかし、今回の条約内容はそういう非対等立場に立って、そして向こうから強制されて不利な条件をあえてのんだというような点は一つもございません。全く互恵平等の立場において今回の条約締結されておるということは、はっきり申し上げることができると思います。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく主権国家二つの間で対等立場条約を結ぶということは、これは条約があとあと施行される際にも重要なことだと思う。ところが最初からこの条約はいまアジア局長の説明されましたとおり、また椎名外務大臣が認められましたとおり、形の上では対等でない形で話が進められてきた、これはもう明らかなんです。じゃ内容のほうはどうか、内容についても私はそういう点があらわれておることは、もう幾多も指摘することができると思うのであります。たとえば漁夫の送還の問題について、向こう交渉する際に、当然不法な李ラインを越えて行った漁夫は、こちらの要求釈放されなければならんはずです。それが長い間置かれておる。そうして船は没収されるというような事態も起こった、これを解決するためには、先ほど言われましたアメリカのいう圧力も加わりましたが、同時に日本側はあの際に、いわゆる文化財の返還ということで、韓国側要求に応じて、そうしてそれとの交換でようやく漁夫釈放が日の目を見るようになった。これなどはやはり対等立場でということではないじゃないですか。椎名外務大臣いかがですか。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別に文化財の提供と、漁夫釈放と取引きしたというような、そういう問題ではないのでありまして、結局大局的立場に立って、やはり日本韓国の国力の実勢というものは、どう見てもこれは相当格差があると思うのであります。それにもかかわらず、向うが従来の占領政策下にある日本、引き続いての状況、いきさつからいいまして、いろいろ無法な李承晩ライン等を設定して、漁船の拿捕、抑留というような、非常な不法不当な行為をあえてやるというようなことでございまして、これらは確かに日本としては紛争を、武力によって解決するという道をみずからふさいだのでありますから、これをどうするわけにもいかぬ、ただ平和的な交渉、こういうものにたよる以外はなかったのであります。そういうふうに外面からいうと、いかにも向こうはいばりくさって、そうして日本をへこまして、そうしてとうとう日韓条約にこぎつけたというようなふうに見えるかもしれませんけれども、それはごく皮相的な観察でございまして、今回の条約協定はもっと長い目で、大局的な見地に立って、そうして日本の利益も十分に考え日韓双方の共栄共存の境地を開くという趣旨において条約ができたのでございまして、決して条約内容から見て、日本が非常に締結にあたって、卑屈な弱者の立場でこれを締結させられたというようなことは絶対にございません。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 内容の点についてまだ幾多あるのですが、もう一点伺いますが、竹島の問題でございます。これは領土問題としてたいへん重要であるということで、一括解決ということが日本側でも主張されておったわけなんですけれども、これは歴代の内閣総理大臣及び外務大臣は常に国会に約束をしておったのであります。ところが今回見ますというと、竹島は向こうに不法に占拠されたままこの条約締結せざるを得なかった。こういうことを考えますというと、やはりこれは対等立場で結ばれた条約であったとは言いがたいのであります。こう思うのですが、外務大臣いかがですか。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題の核心は決してこれを譲っておりません。ただ向こうは警備兵を派遣して、そうして近寄る者に発砲するというような非常手段をもって一時占拠をしている。これはこちらはこれに実力を持って抵抗するという考えはございません。ただあくまで抗議を出して、そうして不法占拠はすみやかにやめるべきである。そうして穏やかに話し合って、その所属をきめるべきであるという趣旨を繰り返し繰り返し申しているのでありまして、現在の形にとらわれて、そうして竹島問題もほとんどこっちに歩がないようなかっこうに取り扱われ、進行しているというふうにお考えになることはいかがかと存じます。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 私がいまどうも会談のかっこうが対等立場が貫かれてなかった。と申し上げるのは、この条約効力を発生するようになりましてから、はたしてこの対等立場が維持されていくかどうか。常に言いがかりをつけられたり、あるいはまた、向こう側条約のかってな解釈をして押しつけてきたり、そういうことがしばしば行なわれるのではないかということを懸念するからであります。新聞の伝えるところによりますというと、伊関佑二郎氏が初代の韓国大使に任命されるやに伝えられております。ところが、韓国側では、これに対していろいろと難くせをつけておるということも伝えられております。こういうことなどは、私どもが聞くと、まことに不愉快。さらにまた、本日の読売新聞でしたかの伝えるところによりますというと、日本がいよいよ向こうに在外公館を持つことになっておりますが、ホテル住まいである。いまだに向こうに公館を建てる土地を求め、建物を入手できないような事態である。あるいは韓国国民の感情をおもんぱかって、むしろ、ホテルにひっそり引きごもっておる、こういうようなこと、こういうように、常に日本側は対等立場を維持できないのじゃないか。私は、過去日本韓国を占領しておったという事実については、これはもう日本の非があったことは、これは認めざるを得ないと思うのでありますが、しかしながら、すでに韓国は、独立して二十年たっております。しかも、いま対等立場でこの条約が結ばれたとするならば、そして、両国対等立場交渉を続けたとするならば、当然今後も私はこういうような事態は起こってはならないことだと思っておりますが、その点について、外務大臣の所見はいかがですか。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大使の任命につきましては、初代大使でもございますし、新しく国交が開かれるのでございまして、それにまた、従来の関係からも考えまして、慎重にただいま考究中でございます。特定の人を仮定していろいろ言っておるかに私も伝承するのでありますけれども、これはいわばまあ、巷間の何といいますか、俗説と申しますか、そういう程度のものではないかと考えております。十分に慎重を期して、独自の立場において適当な人を選ぶようにいたしたいと、こう考えております。  それから、ただいまのところホテル住まいでございますが、もちろん大使を交換するということになりますれば、それにふさわしい体面を保つだけの陣容を整備しなければならぬ、こう考えておりまして、これは韓国政府も十二分に協力するというたてまえをただいまとっているような次第であります。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば日韓条約交渉の最中に、両国でもって反対運動が起こっておる。日本国内における反対運動の場合には、これは政府に向けられる反対運動であります。そして、韓国国旗を侮辱したり破いたり、あるいは韓国品に対する排斥運動、そういうものは何ら行なわれなかった。しかるにもかかわらず、韓国における反対運動の場合には、私ども自身、テレビでもって、日本国旗が焼かれているのを、あるいは引き裂かれるのを何回か見ている。さらにまた、日本品の排斥、政府としても日本の商社員に対する課税問題、あるいは、その他日本商社員に対する圧迫、国外退去を命ぜられた者もあるやに聞いております。こういうような過程を見ておりまして、私は将来はたして対等立場における関係が続けられ得るやいなや、非常に疑問に思うのですが、その点はどうお考えですか。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御心配の点はごもっともの節もございます。しかし、韓国の世論の調査に照らしましても、この反対——日韓条約締結反対というものは、ごく一部分である。しかも、その反対論の主張は、非常に日本に譲り過ぎた、再び日本経済的な侵略を行なわせることになるのじゃないかというような、いわゆる対日警戒心、恐怖心と申しますか、不信感、そういうことが基調になっているようでございます。したがって、そういうような状況から、反政府的な行動がすなわち対日侮辱的な行為となってあらわれる、こういうような反日的な行為になってあらわれるということも、これは考えられることでございますが、これはいま申し上げたとおり、きわめて少数の人に限られている。まあ問題は、韓国人一般にまだまだやはり対日警戒心、そういう不信頼感というものがあることを十分にわれわれは念頭に置いて、条約発効の際は、そういう感情を払拭するように大いに努力しなければならぬ、こう考えております。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま私が聞いたこと、多少、的はずれなお答えなんですが、私は、そういうふうに日本の国旋が侮辱をされたり、あるいは日本商品の排斥、あるいは、それを焼却するようなことが行なわれた、こういうことに対して、一体、韓国政府はこれを押えたかどうか。押えてないのです。デモの鎮圧はやっております。しかしながら、日章旗を焼いたり何かする者に対して、処罰は行なわれておりません。こういうようなことが今後起こるということになれば、私は日韓関係というものは、これは決していい関係が生まれるとは思わない。やはり対等立場でありますならば、当然韓国政府はそういうことが起こったことに対して責任を負い、処罰すべきものは処罰しなければならぬ、日本側としても、こういう事態が起こりましたときには、抗議もし、また、陳謝、処罰も要求すべきだと思うのですが、そういうことがされてないじゃありませんか。これがはたして対等立場での交渉であったと言えるかどうか、今後そういうような点について、対等立場が維持できるのかどうか、それらの点についてお伺いしたい。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国交正常化後においては、もちろんのことでありますが、今日の段階におきましても、これに対して厳重な抗議を申し入れてあります。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 その厳重な抗議の結果、韓国政府はいかなる処置をとりましたか。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 詳細はアジア局長からお答えいたします。
  41. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 問題の事件が起こりました当時、まだ、いわゆる日韓予備交渉が行なわれておりました最中でございまして、そのつど、高杉代表より厳重に抗議を申し込んだわけです。先方におきましては、向こうの刑法によりますと、いわゆる国旗損壊罪というのは、公の用に供してある国旗を損壊した場合にしか、向こうの刑法上の罪にならない。彼ら学生がやった場合は、全部自分でつくってきましたいわゆる私製国旗の場合でございましたので、非常に遺憾ではあるけれども、刑法にかけることはできないということでございましたので、日本側といたしましては、この普通の一般の民衆、学生という知識階級が、たとえ私製国旗であっても日本の国旗に侮辱を加えることは、非常に日韓間にも悪い影響を及ぼすので、そういう政治的な意味で十分取り締まってもらうように申し入れまして、こちらの代表部もそれを承知いたしまして、本国に伝えてくれた次第でございます。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 私自身テレビで何べんも見ている。つまり、こちら側からの抗議が何ら聞き入れられなかった、こういうことであります。もし、いま後宮局長が説明されましたように、国旗損壊罪が公的に掲げられたものだけである、たとえば日本大使館に掲げられたものであるというんなら処罰されるけれども、私的につくったものについては処罰されないということであれば、今後もそういうことがしばしば起こる可能性がある。こういうことは許せないことではないかと思うんですが、その点について、何らかの保障が今後得られるかどうか、これは非常に重大な問題でありますので、外務大臣から十分なるお答えをいただきたい。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) だんだん情勢が進むに従って、そういったような問題に対しては、やはり相当きびしくこれを取り上げていく必要がございますので、大体御趣旨の点は十分に考慮いたしまして善処いたしたいと思います。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、基本条約についてお伺いをしたいと思うのでありますが、この日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約、こういう一体、基本条約というものが、両国の国交が始まるのに対して必要であったかどうか、必要欠くべからざる形式であったかどうか、これからまずお伺いをしたいと思います。たとえばインドがイギリスから独立をした、あるいはアルジェリアがフランスから独立した、そういうときにこういうような形式の、内容の基本条約というようなものが結ばれたのかどうか、これは一つの国際的な慣行であるかどうか、お伺いをしたい。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長からお答えいたします。
  46. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ある国の領域の一部が独立します場合に、宗主国と新独立国との間に、ある種の協定が結ばれるということは通例だと思います。しかし、今回の条約はその例によったわけじゃないのでございまして、大韓民国の独立ということはすでに一九四八年に行なわれておるわけでございます。今度の一連の条約は、すでに独立しておる大韓民国日本国との間の国交を正常化するための条約でございます。この条約は絶対にこういう形のものが必要であったかというお尋ねに対しましては、純粋の法律論といたしましては、絶対に必要なものとは言えない、かように考えます。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま条約局長の専門的な見解によりますというと、国際的な慣行でもないし、絶対に必要なものでもない、こういうわけです。そんならば、なぜこういうような形をとったのか、これはひとつ、この条約に調印された外務大臣からお伺いしたい。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、韓国との間はきわめて複雑多岐な問題がたくさん存在しておるのでございますので、まず、その土台をなす問題を取り上げて、そして、その上にそれぞれ諸協定を、請求権の問題であるとか、あるいは漁業法的地位、いろいろな問題を具体的に締結するという必要があったのでありまして、いわば総論的な条約である、こういうことが言えると思います。  なお、条約論の問題でございますので、条約局長から詳しく申し上げます。
  49. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 先ほど申し上げましたのは、絶対に必要であったかという点についての直接のお答えでございますが、しかし、岡田先生もよく御存じのように、条約協定では、絶対に必要であるとは言えないような協定も、そのほうが適当であるとか、ぐあいがいいとかいうことで結ばれることは非常に多いわけでございまして、文化協定などはすべてそうだと言ってよろしいかと思います。今度の基本関係に関する条約につきましては、いろいろ過去のいきさつもございますし、将来の関係をはっきりした、しっかりした基礎の上に置くために締結したほうが適当であるということは、間違いなく言えることだろうと思います。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 韓国側国会の議事録によりますというと、日本は共同宣言でいいということを非常に主張しておった。韓国側は基本条約を主張して相対峙しておった、非常にこの問題を韓国側が固執して、そうして基本条約の形をとるに至った、こういうことが記されているのですが、そのとおりでしょうか。
  51. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 交渉の経緯に関することでございますが、その点、私あえて否定いたしませんけれども、いずれにいたしましても、条約と言いましょうが、共同宣言と言いましょうが、別に実質的に影響のある問題ではないのでございまして、共同宣言だからといって、こういうような重要な内容を持ったものであれば、やはり憲法上の条約として国会承認をお願いしなければなりませんし、要するに、これは名称だけの問題であったわけでございます。
  52. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連して。いま条約局長の答弁を聞くと、条約でも共同宣言でもたいして変わりはない。それなら、何で、この交渉が始まってから、この条約の形式論について、最後のとことんまで共同宣言でねばったのですか。そんなにあっさりと共同宣言でもいいし、覚え書きでもかまわないくらいのものならば、何でとことんまでがんばったのですか。やはりその点がすべての問題にそうなんですよ。いま岡田さんの関連だから言わないが、何でとことんまでやったか。
  53. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この問題はそんなに十四年間言い合っておった問題ではございません。ほとんど議論をいたしませんで、ただ日本側といたしましては、向こう条約ということを希望するのに対して、すぐさまそれにオーケーしなかった。まあ、内容が固まってから条約でもよかろうというふうに言った。ほとんど議論はいたしておりません。別にこれが実質的な問題じゃないのでございまして、われわれとしても、交渉技術上、そう何でも言うことをすぐ聞くよりは、ある程度譲歩する材料にためておくということもあるのでございまして、その点、別に特別の意味はなかったのでございます。
  54. 森元治郎

    ○森元治郎君 それは請求権の問題だって、初めからわがほうには個人の財産権はないんだと了解したが、しかし、交渉技術上、三十二年ごろまであるあると言ってやったわけですね。こういう外交交渉に対する態度がふまじめなのか、本気なのか、これはもうわからないと思うんです。財産請求権だってそうでしょう。国民にああいうふうに個人請求権があるかのように教えといて、アメリカの口上書が発表された機会に、作戦上やったんだから引っこめて、それからはないことにして話を進めていった。こういうことがもうすべてにあるんですね。「無効」の問題だって、「もはや」というのをくっつけた。「もはや無効である」。この条約交渉日本の主張が通ったらしく見えるのは、「もはや」一つですよ。これでくっつけるのに椎名さんが赤い顔して泣きそうな顔したなんて書いてあるけれども向こうの議事録では、この態度が決して二十年間の過去の日韓関係を正常化するためになんていう熱意あふれた態度じゃないんだよ。追い込まれてきたからそこで——前に関連しようと思って伺ったんですが、その理由は、そもそも韓国日本代表部ができたのは、向こうが独立をしたその翌年ですか、総司令部に向かって韓国代表部を派遣してきたわけですね。それがずるずると、朝鮮人の本国帰還の問題にからんで国籍の問題が出る、そして事実上の関係が出てきた、こういうことでもうルールがきまったんですね。きまってやむを得ず韓国——政府の説明によれば、黙示的承認から今度は明示的承認をするんだと理論づけをしておるわけなんです。日本の意思はないんですよ。それをいかにも昔から韓国でやりたかったようなことを言うのがおかしいことだ。  そこで事実関係で伺うんですが、北朝鮮からあの当時、日本の総司令部に向かって代表部を置きたいと言ってきた事実があるのか。あったんだけれども、総司令部はこれを拒否したのか、これは事実関係だけ伺います。
  55. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 私の承知する限りでは、その北鮮からの申し入れの事実はございません。
  56. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく、私どもは、韓国側に押しまくられてこの基本条約という形をとった、こういうふうに見るわけでありまして、これは韓国側の議事録に明らかにされておるところであります。そして、こういうような形をとった基本条約内容を見ますというと、これまた、どうも私どもの納得し得ないものが多いのでありまして、これらの点について、まずこれから質問をしていきたいと思っております。  前文でありますが、前文はまあすらっと読めば何でもないように思われる。しかし、この前文のうちに、「両国の相互の福祉及び共通の利益の増進のため並びに国際の平和及び安全の維持のために、両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であることを認め、」と、こうあるわけであります。これも普通の条約、たとえば平和条約等に引用されるところでありまして、一見すると、私どもは別に不都合はない、まあ、きまり文句のように思われるのですが、この中における「両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力する」、この点がですね、このままでは私どもとしては認められ得ないものも含まれておるのであります。たとえば日ソの国交回復の宣言、共同宣言、このうちにはちゃんと国連・憲章の第何条ということを引用してあるのであります。で、なぜ私がこのままではいけないかと申しますというと、韓国には国連軍がおるわけであります。そうして韓国軍も国連軍の傘下に置かれる、指揮下に置かれることになっておる。そうして韓国におきましては、北鮮との関係というものは非常に緊迫をしておる状態にあるわけであります。ことにベトナム戦争が起こりましてから、アジアにおける緊張が高まるにつれて、この韓国と北鮮との問の緊張も高まってまいりました。いま休戦ラインのところでもって、ときどき小ぜり合いがあるようなことが伝えられておる。もし再びですね、韓国と北鮮との間に事が起こって国連軍が動くということになってまいりますれば、どうなるか。私どもはですね、いまの韓国におる国連軍が国連軍だとは思っておりません。しかしながら、形式の上では、これは朝鮮戦争のとき以来、国連軍として存在しておるわけであります。そうすると、韓国に関する諸決議が生きておるということになりますということですね、あるいは吉田・アチソン交換公文というものが存在しております限り、国連と全面的に、この国連憲章の原則に適合して緊密に協力すると、こういうことになりますというと、それらも含めていかなければならない。こういうことから、やはりここに前文句としてですね、両国が国連憲章の原則に適合して緊密に協力する云々は、日ソ共同宣言に書かれたように、はっきりと平和目的に限定されたものを載せるべきではなかったかと思うのですが、その点に関する外務大臣の御見解を承りたい。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連憲章第二条と指定してなくとも、とにかく、国連憲章の大原則は二条に表明されておるということが、これはもう常識になっております。でありますから、特殊の、つまり、国連軍がほんとうに国際警察力というものを備えるまでの間、やはり不法なこの侵害行為に対しては、個別に、あるいは集団的にこれに対処し得るのであるということが、例の五十一条に書かれておりますが、これは国連憲章の大原則ではない。むしろ、ことばは適当かどうかわかりませんけれども、もう特殊の場合の例外措置を規定しておるものでございますから、こういうことを包括するという解釈は、これは非常に、きわめて無理な、不可能な解釈である、こう考えております。
  58. 岡田宗司

    岡田宗司君 やはり国連憲章の中にですね、そういうことは記載されているのです。そういたしますとですね、どうしても国連憲章の原則に適合して緊密に協力するということになりますれば、その条項についてもですね、やはり協力することを約束することになるじゃありませんか。あれは例外的だからと言ったって、国連憲章の中にちゃんと書いてある以上は、そういうようなことにならざるを得ない。ソ連との場合には、はっきり二条はあげられて書いてあるのに、特にいろいろ問題があるこの基本条約韓国との基本条約の上において、この二条ということが指定されないということは、私どもにやはり危惧の念を与えるわけであります。特に在韓国連軍、つまり米軍であります。これは日本の在日米軍とも緊密な関係があり、一体であります。そうしてまた吉田・アチソン交換公文によって、日本は国連軍の活動に対してある種の協力の義務が負わされておる。こうなってまいりますというと、私は、この前文において「国際連合憲章の原則に適合して」云々も、やはり国際連合憲章第二条ということを入れなければならなかった。これが省かれたということは、私はこれはうかつだったとは思わないのであります。やはりいま私が申し上げましたようなことが意識されておって、そして、ソ連との共同宣言の場合と違って除かれたものではないかと思う。他の国の場合におきましては、そういう事態がございません。したがいまして、こういう一般的なことを記載してありましても問題はないけれども韓国の場合には、そういう特殊な事態があるがために、この二条ということが除かれておることは、きわめて私どもには了解できないところがあるのでありますが、もう一度その点についての御答弁を願いたい。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 二条という明記があるから、ないからといって、国連憲章の原則というものはそう表現のしかたによって大原則が変わるわけはないのでありまして、その点は間違いないところでありますが、後刻条約局長から条約解説の立場から申し上げたいと思います。  それから国連軍が朝鮮事変以来まだ存在しておる。これはアメリカ軍を除いてはもうきわめて命脈をただ保つにすぎない。そして米軍は、日米安保条約等の条章によりまして、特殊の地位を持つことになっておりますが、日本の施設区域の利用については、他の国の国連軍に対しては、なるほど吉田・アチソン交換公文によって、日本がこれに対して協力するということになっておりますけれども、非常にその幅が限定されて、補給程度のものであるという、軍事的には、その程度のものでございます。でありますから、それにもう一つ、日本の憲法のたてまえからいって、拡張解釈がかりにできたにいたしましても、日本は、海外派兵あるいは国際紛争処理のために軍事力を動かすということは絶対に禁止されておるという立場から、全然御心配の点はないと思うのでありますが、なお、条約局長から条約の解説に関して申し上げたいと思います。
  60. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国際連合憲章の原則と申します場合には、憲章第二条の原則であるということは、これは疑問の余地のないところであると思います。日本条約先例といたしましても、今度初めて第二条を入れないというようなことじゃないのでありまして、インド、ビルマ、インドネシア等の平和条約には、第二条ということは特に断わっておりません。
  61. 森元治郎

    ○森元治郎君 いま岡田委員の御質問は、第二条に目的を、ほかの条約、ソビエトとの条約なんかにあるように、一つ、一つ、一つと、三つくらい、七項目あるうちの三つくらいを、要点だけを列挙するのがこれはあたりまえなんですよ。国連憲章といえば、もうそんなことは全部わかっているんだといったような、いまの条約局長の答弁はおかしい。これまた、日本が一体韓国に、五十一条の関係はまあないからいいとして、要求したのかどうか。国連憲章第二条目的、3、4、5か、この3、4、5だけでも入れよと要求して、また、交渉技術上引っ込んだのか、引っ込まないのか、どっちなんですか。そこでもって、たいへん変わってくる。
  62. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) これは特に重要な点でもないと思いますけれども、(「重要だ」と呼ぶ者あり)交渉経緯につきましては、申し上げることを控えたいと思いますが、これは第二条と書いてございましてもございませんでも、原則であることには絶対に疑問の余地はないと思います。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま交渉経過について話されませんでしたけれども、しかし、これが何らそういうようなことが論点にならないできまったというならば、あるいはまだ了解しいいのであります。しかしながら、国連憲章第二条の中の項目を列挙するということをこちらから提案して、韓国が反対をしてこういうふうにきまったとなったならば、これは重大な問題だと思うのです。もう一度そこの点をはっきりさしていただきたい。これは外務大臣から御答弁願いたい、あなたが責任者なんだ。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうも遺憾ながら、その交渉立場に私は立ち会っておりませんので、いいかげんなでたらめを言うこともなりません。そのことにつきましては、私は何も存じておりません。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 じゃ、条約局長にもう少しはっきりさしてもらいましょう。これは重大な問題だ。
  66. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 交渉の経緯につきましては一々申し上げかねますが、この第二条の第何項と第何項というような、ソ連方式みたいなことを提案したりいたしたことはございません。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 この点について韓国側から何かの案を示され、こちら側からも案を示して、そうして、その間にデベートが行われたのかどうか、それをひとつお聞きしたい。
  68. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) すべての条項について、そういうふうにいたして交渉いたしたわけでございます。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうするというと、この点についても議論があったと、こういうことになりますというと、私どもは重大な関心を持たざるを得ない。なぜこの二条に限定できなかったのか。それらの点について、あなた方のほうは譲ったのかどうか。これは韓国に国連軍がおり、しかも、情勢が緊迫しておるという事情からして、私どもは、この条項は重大な問題だと思う。たとえばビルマやインドの場合には、国連軍はおりません。あるいはチェコスロバキアとの条約の間にも国連軍はおりません。したがって、これはすらっとこの問題がこういう書き方をしたところで問題はないけれども、問題があるから私は聞いておる。どうですか、その点。
  70. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国連憲章の原則と申す場合には、先ほど申し上げたように、第二条の原則であるということは、これはもう一点の疑いをいれないところでございますが、なお、この前文を置いたとか、あるいは本文中に、国連憲章の原則に適合して云々というような字句を入れたことによりまして、日本が吉田・アチソン交換公文なり、国連軍協定なりによって、朝鮮動乱の関係で負っておる義務以上の法律上の義務を負ったことには全然ならないのでございまして、これは国際連合加盟国が、すべて朝鮮動乱に出兵しなくちゃならないという義務を負っていないと全く同様でございます。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、この点は、いま藤崎条約局長が言われましたように、何ら日本側に対して、在韓国連軍との協力を義務づけるものではないと、こう解釈してよろしゅうございますか。その点、外務大臣から明白にひとつ言明を願いたいと思います。
  72. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その前文からは、特別の義務を負担するということにはならないのであります。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 では次に進みたいと思います。  第一条でございますが、「両締約国間に外交及び領事関係が開設される。」と、これは普通のことですが、この領事関係でございますが、大体、領事館はどこに置くと、何カ所ぐらい置くかということの話し合いがついているのか。
  74. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  日本側からは、現在のところ、設置法で認められておりますものは釜山だけでございまして、さしあたり釜山以外には、領事館を考えておりません。現在、設置法上、領事館となっておりますが、通常国会でこれを御審議願いまして、総領事館にする予定でございます。  それから、韓国につきましては、まだ具体的にどこにするという場所がきまっておりません。目下、向こう側と打ち合わせ中、交渉中と、そういう段階でございます。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 これについて、釜山一カ所以外にふやすつもりはないのかどうか。それからまた、領事条約を新たにつくる、そういうことになるのかどうか。
  76. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 現在のところ、韓国側に対しましては、少なくともここ一年は、釜山以外には置く予定はございません。先方との話し合いの段階で、もし貿易量その他の様子を見た上で、この次、もし考えられるなら仁川だろうということを言っておりますが、これはまだ、こちらのほう、設置法の法案にも載せておりませんし、貿易その他居留民の居住状況と将来の状況によってきめると、そういう方針でおります。  なお、領事条約につきましては、現在のところは、特に結ぶ予定はございません。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 領事条約は結ばないでも済む、——あるいは、韓国側では結ぶことを要求しておるかどうか。日本側では結ばないでも済むと言っているが、向こう要求しているかどうか、その点はいかがです。
  78. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) われわれのほうといたしましては、特に領事条約を必要とするとは思っておりません。なお、韓国のほうからは、領事条約締結についての希望は、全然まだ表明しておりません。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 では次に、第二条に移ります。  第二条もだいぶもめた問題でございまして、例のオールレディ・ナル・アンド・ボイドの問題ですが、これが一九一〇年八月二十二日以前のすべての条約が無効であると、それそのものが無効である、それから、日本側の解釈のほうでは、これは一九四五年八月十五日以降無効である、こういう解釈だと思うのですが、この点の食い違いについて、これは条約局長から、まず御説明を願いたい。
  80. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 第二条の意味は、併合条約及びそれ以前のすべてのいわゆる旧条約が、現時点において無効であるということを確認したわけでございます。その点に関する限り、何らの食い違いもないわけでございます。ただ、それにいろいろ説明的に、初めから無効だったとか、いつまで有効だったとか、その条約の本文に書いてないことについての、いわば法律論みたいなことで、何か説明のしかたが違っておるというのが実情だと思います。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは現在無効であることは、これはもう問題ないのでありますが、最初から無効だったということは、韓国側にとっては、日本韓国を併合した、あるいは、その前に不平等条約をいろいろ結んで、ついには韓国を併合した、こういうことを日本側がみずから悪いことだったというふうに表明することを求めて、この点を固執したのではないのか、どうですか、その点は。
  82. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いまの先生の御指摘の点は、どうも法律論じゃないように思いますが、一応、法律論として申し上げますというと、日本は平和条約で朝鮮の独立を承認したわけでございますが、そういう条項を、このサンフランシスコの条項を「想起し」というのが、すでに基本条約の前文にもうたわれておるわけでございます。そうしますと、この併合という事実が、法律上もうあったということを前提にしておるわけでございます。したがいまして、法律論としては、初めから無効だったというのは、一体、どういう法律の理論構成になるのか、私も全然想像がつかないようなわけでございます。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますというと、第二条は、韓国側が特にこれを強調した、あるいはまた固執したということは、韓国側の政治的理由に基づくと、こう解釈してよろしゅうございますか。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ結局、そういうことになるとわれわれは考えております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり、韓国はですね、これによって、日本側が非を認めた、そういうふうに政治的解釈をとっておる、それをあらわすために、この条項を設け、そうして、この条項について固執した、そういうことでございますか。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、初めからなかったことにすれば、非を認めたことになるのか、ならぬのか、どうも私は、三十六年間領有しておったからこそ、非を認めるということになると思うので、初めから何もなかったのだということになると、何も非を認める必要はないと思います。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもいまの説明ではよくわからないのですが、いずれにいたしましても、このことは、実際にこの条約効力が発生しましても、特に差しつかえが起こるようなことではないと思うのですが、この第二条が実際に効力を発生いたしますと、何か、これからいろいろな障害の起こること、あるいは新たなる事態の発生するようなことがありますかどうか。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私どもは何もないと考えております。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 この「もはや」という字を入れたのは、日本側でもって主張して入れられた一番大きなことだということなんでけれども、このオールレディ一字で、日本側のほうは、大いに韓国側を譲歩さしたんだと言われますが、何にもどうも効果のないことで向こう側に譲歩さしたというようなことでは、どうもこの条約に対して、私どもはあまりりっぱな条約だと思えないのですけれども、このオールレディという字を入れるか入れないかの論争は、かなり激しかったと思うのですが、そのいきさつについて、ひとつお聞かせ願いたい。大臣向こうに行ったときにやったのじゃないですか。
  90. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。ナル・アンド・ボイドという字を使うこと、先方がそれは初めから無効であったというような印象を与えようとすることについて、何ら具体的に権利義務の関係を変動させる意向はないということは、先ほど大臣申されましたとおり、先方の交渉当事者も確言したことでございます。そこで向こうでも言っておりますように、いわゆる向こうことばをそのまま使いますと、国民の正気の、正しい気、正気の象徴として単に入れるんだという、いわゆる政治的、国内政治的、感情的な意味だったわけでございます。ただ、わがほうといたしましては、いかに先方の国内政治上の要請によるとは言え、法理論上あまりにも合理的でない規定になることは、これは条約作成として避けなくてはいけませんので、要するにかつては、一時は有効であった時代があるんだということが、はっきりわからなくてはいけないという意味で、オールレディという字句を入れることによって、少なくとも一時有効であった時期があるというわがほうの立場を表明した次第でございます。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすれば、もう一度これは外務大臣に確認願いたいが、これによって新たなる何ら権利義務の問題は起こらない、こういうことですな。
  92. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことは起こらないと承知しております。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは先方でも認めた、こう解釈してよろしゅうございますか。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうは、そういう意図をもって主張したものではない、ということが交渉経過によって、はっきりしておるわけでございます。
  95. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。どうも先ほど外務大臣の答弁を聞きまして、ふに落ちない点がありますのは、オールレディが入っても入らんでも、ともかく実害とか、実効とか、そういったような面では別に関係がないんだ。むしろこういう条約、条文があってもなくても事実は同じなんだというような何か意味のことをおっしゃったように聞いたんですが、そうなんでしょうか。もう一ぺんちょっとおっしゃっていただきたいですが。大臣がさっきちょっと何かお答えになった意味ですね。
  96. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 占領時代の権利義務というようなものにつきましても、もうすべて両国の間で請求権解決をみた今日からいいますと、実体的には影響がない。ただオールレディがないと、初めからそういうものがなかったのだということは、いかにも事実あるいは歴史を無視するものでありまして、条約の良心的な起草者としては、これは絶対に譲れないという主張をとったわけであります。
  97. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうもそういう理解は、はなはだ間違いじゃないかと思う。なるほど請求権に関しては別個な協定によってその処理がついておりますが、いわゆる韓国が言うように、当初から無効だという理解になれば、これは私は非常な違いが出てくると思うのです。請求権以外においても、ともかくあそこの三十六年間の占有というものは、一切これは不法な行為になってくるわけなんです、根本的に。根本的に請求権を越える一切の問題について不当な、何といいますか、ことをやっていたということでありまして、これは拾い出してひとつ亀田さん考えてみいといえば、これはいろいろ出てくると思う。だから、それはどうでも大して実体的には関係がないんだというふうな理解は私はおかしいと思うのですが、どうなんでしょうか。
  98. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかく現在無効であるということについては両方とも変わりはございません。かつて有効であったかどうかということになるのでありますが、それは歴史的な事実を否定するわけにはまいりませんので、あくまでわれわれはオールレディを主張して、これを通したわけです。
  99. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと私の質問にひとつそのまま答えてほしいんですが、日本政府のほうはオールレディを入れたことによって、その中間の段階というものは有効性というものをきちんと認めさした。こういう理解ですかね。そういう理解ですね。私の聞いておるのは、先ほど大臣なり条約局長がお答えになったのは、事実は事実として過去においてちゃんとあるんだから、韓国側の理解に立っても、あるいは日本政府の側の理解に立っても、結果は変わらぬのだ。こういうふうな意味の答弁をされておるわけで、両方ともそういう意味の答弁をしておりますよ。私はそうはならぬだろう。やはり韓国側のような理解に立てば、これはもう正真正銘三十六年間全く無権原においてあそこに蟠踞していた。そりゃ蟠という字つけてもいいことに当然これはなりますよ。当然そうなる。だから、それは単に一請求なんかの問題じゃなしに、そういうことになれば、請求権を越える諸般のいろんな問題というものが予想されるわけであります。そういうことは予想されぬのですか。軽くどっちでも一緒だというようなことをおっしゃるのなら、先ほど岡田さんから質問があったように、オールレディなんて何でそんなにやっきになってとったとったと言っていばっているのかということも出てくるわけですが、はっきり答えてほしい。
  100. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現在もう無効になっておるということは、オールレディがあってもなくても同じ、これは御了解願えます。  それで、オールレディがもしとられたとすると、初めから無効であるということになって、いま御指摘のような問題があるいは出てくるかもしれない。現実的にはもう請求権やなんかみな解決いたしましたが。しかし、われわれはとにかくそういう歴史的事実を抹殺するということは、これはとうていできないことであるとあくまで主張したわけであります。ですから、あなたの御心配のようなことはないわけであります。
  101. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 午前の質疑はこの程度とし、午後は一時三十分に再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後一時五十六分開会
  102. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求める案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。岡田宗司君。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 基本条約の第三条についてお伺いいたします。  基本条約の第三条には、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」、こうなっておる。そこで、問題になるのは国際連合総会決議でございます。一体、決議に何と書いてあるかと、こう申しますというと、この決議には、「臨時委員会が観察し、且つ、協議することができたところの、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府大韓民国政府)が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明」であり、かつ、「臨時委員会が観察した選挙に基くものであること」、並びに「この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言し、」云々と書いてあります。これを見てみますというと、「朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、」とある。また、その有効な支配と管轄権を及ぼす合法的な政府が樹立されたとある。さらに、「この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明」でありと、こう書いてある。そういたしますというと、この臨時委員会が観察をして、そうしてその合法政府と認めたものがこの有効な支配と管轄権がその朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に限られている、こうとしか読めないのであります。したがって、ここにある「朝鮮にある唯一の合法的な政府」というのとは非常に意味が違うのです。ところが、この点について韓国政府の説明によりますれば、これは朝鮮における唯一の合法政府と、こうなっておる。この朝鮮の部分と朝鮮における唯一の合法的な政府と、こういうことは非常な違いがあると思う。この点についての食い違いについて政府はどうお考えになっておるか。これは外務大臣から御答弁を願いたい。
  104. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 文言は省略されてありますけれども、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府」、こう言っているのでありまして、あくまであなたがいまお読みになったところの内容を受けて、そしてそれに示されておるとおりの「朝鮮にある唯一の合法的な政府である」、こういうことを書いてあるのでありますから、両者の間に食い違いはございません。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、日本政府の見解は、この国連総会の決議の朝鮮における一部分と、これをとっておると、こういうことでございますか。
  106. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 ところで、韓国側のほうはそうは解釈しておらないのであります。ここに書いてある「朝鮮にある唯一の合法的な政府」ということからいたしまして、韓半島における唯一の合法政府韓国政府だけである、他はかいらい政権である、こういうことで、韓国の憲法に従って韓半島全域にその管轄権が及ぶ、こういう解釈をとっておるわけであります。しかも、この点については韓国国会の議事録を見ますというと、単に管轄権の及ぶ範囲の問題だけではなくて、その上に立って日本外交に対しましての一つの制限を加えよう、あるいは妨害を加えよう、こういうようなことがここから生まれてきておるのであります。これが私は非常に重大な問題だと思うので、韓国側の議事録について私どもが入手しましたものを読んで、そしてこれらの意見の食い違いについて問いただしてまいりたいと思うのであります。  これは八月の十三日における韓国の第五十二回国会会議録に出ておるのでありますが、李東元外務部長官は、「大韓民国政府が韓半島における唯一の合法政府であることを日本に明白に確認させることによってわれわれの国際的な地位を今一段と宣揚したばかりでなく、日本外交において両面政策の可能性を封鎖するようにしました。」、こう書いてある。「日本に明白に確認させることによって」とある。さらに、「日本外交において両面政策の可能性を封鎖するようにしました。」、これは重大なことであります。  次に、さらに八月十四日の会議におきまして、丁一権国務総理がこういう答弁をしておるのであります。「韓日国交が正常化されたことによってわが政府や国家全体が力を合わせ、北韓と外交関係を結ぶのを積極的に防ぐべきであり、また通商が増加するのをわれわれが優先権を握ってこれを妨害するのに最善を尽すべきであり、また文化的に交流するのをわれわれが最善を尽して防ぐべきであり、さらにわが僑胞の地位をいっそう強化する努力がひきつづき行れるべきであると思います。一方、米国と日本関係をわれわれが注意深く見つめているこの時期に、国交が正常化されればされるほどわれわれは、ベトナムヘの国軍派遣という現実に米国の朝野がどれほど感謝しているかということを考えるべきであります。」、非常に重要な発言をしておるのであります。さらに、特別委員会の議事録を見ておりますというと、八月五日に、李東元外務部長官はここでもまた繰り返して、「大韓民国が韓半島における唯一の合法政府であります。したがってこれによりこれから日本国が、北傀と正常的な外交関係または領事関係を結ぶという可能性を封じてしまいました。」、こういうふうに言っております。また同日、外務部長官は、「われわれが憲法によりわれわれの領域を確保している大韓民国政府を相手とする日本に対して日本の両面政策、再言するならば日本が将来以北といかなる外交関係も結ぶことはできないという予防措置を考究するためにわれわれがこれを要求したものであり、これを日本が確認したものが第三条の精神です、目的です。また交渉経過から明らかにされたすべての問題の内容です。」、こういうふうにも言っております。さらに、丁一権国務総理が、「第三に韓日国交正常化が反共体制にいかなる役割りを果たすのか、特に北韓かいらいが再び南進をした場合、日本がどのように出てくると見ているのか、また、アジアにおける政治、経済、軍事上にいかなる影響を与えるのか、」云々という質問に対しまして、「われわれは日本が北韓かいらいや中共とこれ以上積極的な政治的、経済的、文化的関係を結べないよう、われわれの力のある限りを出して米国との協調を堅持していくのがわれわれの孤立を免れるとともに唯一の道ではないだろうか、万一、日本が将来わが国と外交関係を結ばないために北韓かいらいと一そう近接するようになり、中共と一そう近接するようになれば、わが国の背水の陣、われわれの主防禦線と直結したアジアにおけるところの自由陣営との関係考え合わせるとき、とてもむずかしい問題が出てくるのではないかと考えざるを得ません。」云々と言っております。さらに、幾多の点で同じような発言がなされておるのであります。この発言のうちで、「韓半島におけるあるいはここにある朝鮮にある唯一の合法的な政府ということを日本政府が確認した。」、こういうことを明言しておりますが、はたして外務大臣はこの条約締結した際に、韓国の側の言うように唯一の韓半島におけるあるいは朝鮮における唯一の合法政府であるということを確認されたのかどうかをお伺いしたい。
  108. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) きのうからたびたび申し上げておるように、折衝の当事者が一たん慎重に協議を遂げて、そうして合意した条約の正文を書きおろした以上は、それがもう唯一のよりどころになるわけなのでございまして、その後にどういう場所でどういう説明をしようと、とにかく両国当事者の合意した正文というものを度外視するわけにはいかない、そういう意味におきまして、いまのお尋ねに対しまして私は向こうの当事者とどんな話をして、どこでどういうような交渉をしたかというようなことは、これはいわば技葉のことでございまして、何といってもこの第三条を正確に解釈するということによってお答えすることが一番正しい方法であると考えます。そこで、先ほど申し上げましたように、この大韓民国が国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかにせられているとおりのと、この上の部分だけちょん切って、そして朝鮮にある唯一の合法的な政府と、こういうふうに読んでしまうと非常なこれは間違いを生ずるのでありまして、百九十五号に明らかに示されているとおりのということが非常に重要な問題である。それは、すなわち、いまあなたがお読み上げになりました韓半島の一部に人民の大多数が住んでおるところにきわめて有効な管轄権と支配力を及ぼす合法的な政府ができて、この政府が自由意思によって選挙を行ない、その上に築かれたものである。こういうものがすなわち朝鮮においても唯一のこれは政府である、この種の政府という政府である、こういうふうに書かれておるのでございまして、その全体を受けて、そうして朝鮮にある唯一の合法的な政府である、こういうふうに書いてあるのでありまして、その全体の意味が途中から切れてしまうと、いまのようなことになるのでありまして、それは決して正文を正当に解釈するゆえんではない。あくまでわれわれの相手方である、少なくとも日韓条約の相手方である韓国とは南鮮部分に有効な支配、管轄権を及ぼす政府である、こう解釈するのが正当であると、こう考えております。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 ところが、この韓国政府の「韓日会談白書」の中にこういうことが書いてあるんです。「日本側としては、大韓民国政府の唯一合法性に何らかの制約、特に国際連合の決議内容の範囲内におこうとする意図だったが、韓国は、管轄権が南鮮に局限されるという表現が入らなければならないという日本側の主張は、到底受け入れることのできないもので、国交正常化が計れないことがあっても受け入れることができないことを明らかにした。」と、非常に強い決意を表明したようであります。で、こういうような過程があって、そして向こう国会でもって日本側が確認したという答弁をしておるのであります。いま椎名外務大臣は、それは枝葉のことであると言っておる。この条約を、相手方の国が承認する国会において当の責任者が言ったことがはたして枝葉のことかどうか、それを枝葉のことと言うなら、何をもってその枝葉のことであるということが立証できるのですか。
  110. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題は日韓の間にいかなる条約締結したかということになるのであります。その唯一のよりどころは条約の正文によるべきものである、こう考えております。その他の関係当事者がいろいろな場合に、場所に臨んでどういうことを言ったかということは、これは枝葉というよりも、むしろそういうものにとらわれるべきじゃない、条約の正文に対する正当な解釈はあくまで客観的に書きおろされたこの正文によって解釈をしなければならぬ、こういうことを申し上げたのであります。なお、それについてさらに申し上げますならば、請求権の処理という問題がある。これは南鮮の部分、それから日本のほうは日本全体の領域、その間のお互いの請求権というものを処理したのであります。日本の対韓請求権は、御承知のとおり、軍令第三十三条からその後軍部が韓国にこれを引き渡した。さらに平和条約において日本がその有効性を承認した。こういったようないきさつによりまして請求権を放棄した。その放棄した請求権の範囲は南鮮の部分だけでございます。それから韓国の対日請求権は、読んで字のごとく、韓国政府及び韓国国民の対日請求権だけを処理した。こういうわけで請求権の処理という立場から言うと、もう北の部分については何ら触れられておらない。それはもう残されたままでございます。それから漁業問題につきましても、北の部分については、十二海里の専管水域というものは、これはもちろん設定されておらない。お互いに承認しておらない。しかし、公海においては、いわゆる共同規制水域というものを想定している。その共同規制水域の領域は、北の部分については沿岸から三海里、つまり領海、それの外側を共同規制水域と、こういうふうにきめている。漁業の問題についても、いまの韓国の実態というものに即して取り扱われる、これはもう両方で合意された問題であります。向こうもそのつもりで合意した。それから在日韓国人の法的地位につきましても、韓国人とそのしからざる朝鮮人と書いてあるのは、これは符合だというようなことになっておりますが、符合と国籍というふうに、明瞭に韓国というものは南鮮であるというたてまえのもとに処理されている。それから文化財につきましても、その出土で北の部分から出土されたものであるというものは、これはもう向こうももらおうとは思っていないようでありますが、こっちも渡していない。それで了承している。どの部分をつかまえてみても、全半島に及ぶというような実態を、われわれは条約のどの部分についても認めておらないのであります。また、向こうはそれに満足して、合意してイニシアルをしている、調印をしている。こういう状況でございまして、その部分だけを特にそういうふうに強調するということは、何を一体根拠にしているのか、私は了解に苦しむのでございまして、この基本条約のどこを探してもそういうものはない。  それからもう一つ、向こうの言うのは、いわゆる百九十五号に明らかに示されているとおりのと、すらすら読んでしまうと何のことかわからない。そうして朝鮮にある唯一の合法政府、こうなりますから、あるいはその点を非常に省略してお述べになったのではないか。しかしながら、朝鮮における唯一の合法政府というのではなくて、この決議に示されておるとおりの意味の唯一の合法政府、こういう意味でありますから、それを省いてお述べになったのではないかと思うのでございます。こういうふうに考えてみますというと、われわれの考え方は、いわゆる条約の正文を正当に解釈するものであるというふうに、私は確信をもって申し上げることができると思います。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま椎名外務大臣は、この条約締結した相手方の当の責任者である李東元外務部長官あるいは丁一権総理なりが、この条約を批准するために韓国国会に提出した場合に言ったことが枝葉で、あるいはそういうことばにとらわれてはならない、こう言っておる。そうすると、向こう側でも、あなたの言ったことはこれは枝葉だ、無効だ、別にあんなものは意義ないのだ、こういうふうに言われて、向こう側の主張を通そうとされるでしょう。一体そうなったら、この条約の解釈というものはどうしてできるのです。幾らこれはいまあなたが解釈されたように言ったところで、向こうでは向こうのさっき私が読み上げたような解釈をしてくる。それじゃ今後、たとえば日本と北鮮との間に何らかの交渉が生じた、これは外交関係を結ぶとかなんとかいう問題じゃございませんよ。たとえば文化的な交流の問題とかあるいは貿易の問題とか、そういう問題が起こったときにも、向こうはこれをたてにとって日本に抗議をしてくる。全力をあげて妨害をすると言っているんですよ。しかも、日本外交をこれによって手を縛ったと、こう言っておる。そうすると、この管轄権の問題は、単にあなたと韓国側との意見の食い違いというだけじゃなくて、直ちに実際の効果というか、実際のいろいろの事態がこれから生まれてくる。そこを考えてみますと、これを単に枝葉のことだとか、あんなものは当てにならないとか、どこを根拠にして言っているのだかわからないというのじゃ済まない問題じゃありませんか。  その点について、なぜ意見の一致を見なかったか。ことにこの韓日白書によると、この問題を日本が認めなければ日韓会談は決裂してもやむを得ないというような意味のことを韓日白書でうたっているじゃありませんか。総理、その点はいかがお考えになりますか。この食い違いは単なる枝葉末節のものかどうか、これは将来の日本外交の問題にも重大な関係を持ってくる問題です。さっき私は、一体対等の国としてこの条約交渉をしたかどうかということをお伺いしたのは、この点に関連がある。これは総理から明確なお答えを聞きたい。
  112. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 便宜、私が最初にお答えいたします。  当局者が一たん両国の間で条約が成立した以上は、あくまでその合意されたものがすべての解釈の基本にならなければならないというのは、条約解釈及び運用上の大原則だと思います。ただ、自分はあれに関係しておったと、あれができるときにおれはこういう高い地位におったというような人が、かってにいろんなことを言ったからといって、さかのぼってその両国が調印した条約内容というものはそう変わるものではない。そこで、私は、あくまでこの条約について御審議願う以上は、どうぞ条約の正文をまず基本にして、だれがどう言った、かれがこう言ったということでなくて、第三条の正当な解釈によって、それから入っていくのがほんとうではないかと、こう考えるのでございますから、私は、百九十五号の決議の趣旨はかくかくの趣旨であって、それをそのまま受けて、そして韓国における唯一の合法政府であると、こうあとを受けておるのであって、結局百九十五号の趣旨をそのままこれは受けて、そして韓国政府というものの性格を明らかにしたものである、こう私は申し上げておるのでございまして、両当局のいろいろな場合におけるいろいろな発言を引き合いに出して、そして勝った負けたの御判定を願うというのがこの委員会の趣旨ではないと私は考えております。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、そんな何も勝った負けたの判定をしようなどと思っていない。この解釈の問題は、日本外交に、事外交に関する限り重大な問題だと思う。たとえば、日本が何らかの形で今後北鮮との間に事実的にいろんな関係が出てくる、その際に、向こうではこれをたてにとって日本側に抗議もし、また、いま向こうの言っているところでは、日本の手を縛ったと、日本はこれを確認することによって手を縛ったと、はっきり言っている。私はこの点について総理にはっきりお伺いしたい。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、ただいま外務大臣から詳細にお話をし、説明しておりますが、なかなか御理解をいただけないようでございます。私はそばで聞いておりまして、この条約の正文、その書いてあるとおりだと、かようにお答えするのが一番間違いないのだ。おそらく岡田君もこの第三条の読み方では私どもの説に御賛成だと、かように思いますので、もう何をか言わん、こういう感じがするのであります。第三条の正文、これで判断するよりほかに方法はないのであります。これでそう書いてあっても、韓国の説をとるのだとおっしゃるならば、これはやはり両国間で解釈が相違すると、こういうことで、その解釈の相違する場合は英文によると、こういうことになっていると思いますので、その方法で解決すると、かように思います。問題は、どんな説明をしておろうと、とにかく正文にはっきりしておるとおりのものによって私たちは判断すればいいと、かように思っております。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理にお伺いしますが、単に管轄権の解釈の問題だけじゃない、解釈の問題があとあとに影響を持つから私どもは聞いている。法理論だけの問題じゃないんです。これは日本外交に及ぼす影響というととを考えると、重大は問題です。というのは、韓国のほうでは明らかに、丁一権総理なり李東元外務部長官は、他国の外交に対して干渉をするわけです。一体こういうことは許されますか。他国の外交に対してこういうことを言うということは、私は、友好的ではないし、この条約を結ぶ過程において、もしこれを聞かなければこの条約は調印しないなどということを白書に堂々と盛るような態度を認めて、なぜ一体こういうことを、確認と言われておるけれども、確認はされなかったんだろうとは思うけれども、確認をしたと向こうに思わしめるような態度をとったのか。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この条約案文とは、条約とは別にいたしまして、抽象的に一般的に、いわゆる管轄権というのはこれはたいへんな問題だと、これは御指摘のとおりだと思います。しかし、この三条できめておることは、先ほど来説明し、また明示しておるとおりに、国連決議の示すとおりのものでございますから、これはどこから見ましても韓国側の説明は無理だと、こういうように私どもはとります。しかして、丁総理や李東元外務部長官が説明しているそのことは、当時どういうような事情でこれを説明いたしましたか、しいて私ども考えまして、対内的な議論ではないだろうか、かように思うのであります。そう考えると、いわゆる内政干渉だとか、私ども外交を縛っただとか、こういってむきになることでは実はないのではないか。(「むきになる」と呼ぶ者あり)ただいまおしかりを受けておるようですが、御承知のように、南鮮、大韓民国の憲法、また北鮮の憲法にいたしましても、ソウルを首都にすると、こう書いておるようでございますね。だから、その辺は両者のいろいろの憲法の制定のしかたもあるのでしょうから、どうも当方でその説明にむきになることは私はとらない、かように思っております。
  117. 森元治郎

    ○森元治郎君 その政府のほうのよりどころは、国連決議百九十五のIIIに明らかに示されておるとおりと、ここが勘どころなんでございます。椎名さん、そうだね。これが勘どころ。そうして合意されたものが基本でございます。いいですか。ところが、非常にこれは条約局のお役人さんの頭のいいのがつくったのだから、よく考えてみると、百九十五号とは何ぞやということが問題になってくるわけです。百九十五号のIIIというのを、四十八年十二月十二日の第三回国連総会における決議のこの部分を字数を拾ってみますと、二百十字あるのですよ。この性格、合法、唯一といったようなことばが入っている。性格を示すために延々と百七十一字、それを受けた次の安保理事会でやった、またこの性格を規定したものが二百十字あるのです。一九五〇年の六月二十五日、すぐあとの安保理事会では、これだけの字を費して韓国政府の性格を書いているのです。ところが、この三条に示されているとおり、この二行をやりますと、六十二字なんですね。だから、全部書けば示されているとおりになるのですが、全部採用しますと、唯一合法的なとは書いてないのですよ。長い文章を読むのはつらいから、もう長い間国会審議していますから抜きますが、「唯一」という字のある場所と「合法」という場所が違う。ちょっと時間にして五十秒くらいかかりますが、読んでみます。  「臨時委員会が観察し、かつ、協議することができたところの朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府大韓民国政府)が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明であり、かつ、臨時委員会により観察された選挙に基づくものであること、並びにこの政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言し」、その次、その以後の安保理事会でも、総会でも、およそ韓国とは何ぞやというときにはこの全文を引いているのです。ところが、衆議院で藤崎条約局長が、何ぶん長いもんだから、はしょったみたいなことを言うのですね。しかし、あらゆる国連総会、安保理事会というものは、韓国ということの性格を示すためにこれだけのことを全部書いています。すなわち、南ですよということを強調をしている。ですから、合意されたものが基本  「示されているとおり」という、それが改ざんされている。だから、第三条全文、これは私は無効だと思う。こんなものは全文が無効。どうですか。ですから、この点の説明は短くしたんだとか  前にあるところの「合法」とうしろにある「唯一」をくっつけた、決議の精神を改ざんしたのですよ。これを改ざんだというと、いや、決議は先生のおっしゃったとおりですと、こう逃げるでしょう。そのあとがいけないんですよ。「唯一」と「合法」をくっつけた。だから、決議の精神を改ざんしている。これは南北に管轄権が及ぶか及ばないかという論争のために、両国の意見を何とかうまく盛り合わせるには、これがうまい手だということにでもなったんでしょうが、政府のおっしゃる根本原則の合意された基本、書かれたものこそがよるべきところというものが明らかでないという……。紙がないわけじゃないんだから、三条に百七十一字を使って書けば、あるいは安保理事会で採用したように二百十字のものを入れて書けば、はっきりするのです。何もここで時間をかけて論争することはない。なぜそういうことをしたか。これは無効ですよ、第三条は。
  118. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「唯一の」という文字と「合法的な」という文字が並んで使ってはないと、国連決議には。これは御指摘のとおりでございます。しかし、「合法的な」という字は「唯一のこの種の」という字の前にあるのでございまして、「この種の」というところの種ということの中には、「合法的な」というものも含まれておるわけでございます。したがいまして、それだけを見たら誤解のおそれがあるのじゃないかということは御指摘のとおりでございますが、しかし、そのあとにすぐ続けまして、「明らかに示されているとおりの」と、アズ・スペシファイドと英語ではなっているわけでございますが、このスペシファィドという字は、説明を申しますと、日本語でもスペックというのが日本語になっておるようでございますが、そのスペックがここに国連決議に示されておるのだということでございますので、この条全体を見れば、その意味するところはおのずから明らかであると思います。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま藤崎条約局長の御説明でございましたが、私どもは納得できない。で、私どもももちろん、総理が先ほど言われましたように、大韓民国の管轄権が全体であるとは考えておらぬし、南にのみ限られておるものである、こういう立場をとっております。もし政府がはっきりそういう立場をとられるならば、やはりそのことははっきりさしておかなければならぬ。この条約第三条というものは、これは両方の合意の上でできたものであって、これが唯一の正しいものであると、こうおっしゃいますけれども、解釈はもうまちまちにできる。こんなあいまいなものを基礎にして、私どもは管轄権の問題をはっきりさせることはできないじゃありませんか。つまり、この条約の決議、国連の決議の一部を取り出して、そうして字をかってにつなぎ合わしてここへやっただけのことなんです。だから、この条項というものは、全く国連のこの決議をそのまま援用したと言えないのであります。これは条約技術上の問題かなんか知りませんけれども、全く違ったものになっておる。私はこういうような条約のつくり方というものはあいまいなものであり、それから将来に疑義を残し、解釈の相違を生み、そうしてしかも、直ちにこういうふうな日本外交に対してあるいは抗議し、干渉し、あるいは手を縛るというようなことを行なわしめる基礎をつくり出している、そこがぼくは問題だと思う。総理が、この条約の条文が国連憲章決議の改ざんである、あるいはもしくは字をつまみ出して別のものにしてしまった、こういうふうにお考えになるかどうか、その点ははっきりさしていただきたい。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、これよく読んでいただくと、はっきり書いてあるところは、明瞭のようです。「百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの」というのははっきり入っておるのです。これでもう疑問の余地は実はないように私は思いますがね。解釈が私どもの説明と韓国側の説明と食い違っていると、かように思われるのでいろいろお尋ねになると思いますが、先ほど岡田君も言われたように、私も管轄権は北にまでは及んでおらないと思うという、こういうお話でございますので、これがりっぱな文章になっているかなっていないかというようなお尋ねのように私聞いたのです。私は、確かにりっぱな文章になり、また改ざんされていない。「百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの」と、こういうことがでございますので、どうもこれはおわかりをいただかないと、どうも相ならないように思います。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまのお話ですというと、たいへん明らかだと、こういうふうにおっしゃられるのですけれども、実はこの英文を見ると、一番しまいにあるパラグラフの一番おしまいにあるザット・ジス・イズ・ザ・オンリイ・サッチ・ガバメント・イン・コリア、この部分だけしかとっていないのですね。あとの部分は全部省略している。全体の文章で説明してあるものを、その一部をとるだけでもって、その全体の意味を変えてしまうということは往々にしてあるわけです。こういうようなことをやって、これを条約の、基本条約ですよ、基本条約でもって管轄権の問題をきめるのに、こういうあいまいなやり方をするということは将来に禍根を残すので、私はお伺いしているのですが、これは明確な形で、その管轄権の問題を明らかにしておる、何人もこれに違った解釈を許さないほど明らかかどうか、総理はどうお考えになりますか。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ここにも明らかに示されているとおりに、他の解釈は許されないものだと、かように私は考えております。
  123. 岡田宗司

    岡田宗司君 他の解釈が許されないならば、丁一権総理なりあるいは李東元外務部長官なりの言っていることは全部でたらめである、こういうことになるわけですが、これはでたらめである、間違いである、あるいは何というのですか、でたらめである、こういうふうにお考えですか。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来から申しておる、第三条について私どもの所信を表明いたしました。韓国側の説明につきましては、私は何らの批評を加えておりません。ただ先ほど申しましたように、どういう事情でかような説明をされたか、あるいは国内的な放送というようなものではないだろうか、かようなことだけ申しましたが、それ以上にでたらめだとか何とかは言わないほうがいいように思っております。
  125. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは問題だと思うのですが、これはたとえば評論家がこういう解釈をしたと、こういうことならそれは別に条約が施行されてもそうたいした影響はないでしょう。あるいはまた韓国の野党の国会議員なんかが言った場合でもそれほどたいした影響はないと思う。しかしながら、いやしくもこの条約を調印する、そしてもしこの条約効力が発生するならば、この条約に基づいていろいろなことをする相手国の代表である総理なり、あるいは外務部長官の言うことなんですよ。したがって、この問題についてはっきりしておかなければ、今後日本とすれば朝鮮半島全体に対する諸問題についていろいろ事が起こったときに一々問題になるじゃありませんか。したがって、この点は韓国にはっきりさしておかなければならぬ。もし総理が言われるように南に管轄権が限られるのだと、こう言うならば、そのことはやはりこの条約が結ばれるときに認めさせなければならなかった問題ではないかと思うのです。なぜそれを認めさせることができなかったのですか。
  126. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この第三条の解釈は、あくまで管轄権は南の部分に限定されておるものでございまして、北の問題には一切触れていない。そのことは韓国の当局も十分にこの一括した協定等を取りきめる際にわかっておったはずであります。請求権の問題も漁業条約の問題も、あるいは在日韓国人の法的地位の問題につきましても、あるいは文化財の問題につきましても、韓国の実際の支配権の及んでおる範囲というものだけを対象にしておる、つまり韓国の実態というものに即してこの問題を両国の当事者が取りきめておるということは十分に頭に入って、そしてこれを取りきめたということが言えるのでありまして、今日北鮮の問題についてはこの条約は何ら触れていない、ただ日本が北鮮に対して国交とかその他の——公の国交を開くとかその他の点について、北のほうを相手にしないということは、これは今度の条約で始まったのではなくて、平和条約締結の際に韓国承認して以来、日本はさような方針をとっておるのでありまして、それは他の七十二カ国が韓国承認し、それから七十二カ国以外の二十三カ国が北鮮を承認しておる。そうしてこれら七十あるいは二十数カ国が同時に両方を承認しておるということはないということにかんがみましても、これは分裂国家を、こっちを認める、またあっちを認めると、そういう矛盾した行動はとれないのでありまして、これはもう韓国承認して以来の日本の独自の方針である、今度の条約によってそういうふうに縛られるのではないということを、これは繰り返して申し上げたはずでありますが、御了承願いたいと思います。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの御答弁を聞いておりますと、私の聞いてないことに対して一生懸命御答弁になっておる。これはおそらく想定問答集か何かに書いてあることをそのまま答弁されておるんです。私の聞いていることにお答え願いたいんです。だから私は総理にまずお伺いしたいと思うんですが、とにかく、いま外務大臣のおっしゃることによりますというと、韓国の当局者は漁業問題だとか、あるいは文化財の引き渡しの問題とかでは、事実上韓国の管轄権は南だけだという腹を持ってやっておったと、こういうお話であります。そうすると、韓国国会でもって総理大臣だの、それから外務部長官が言っていることは、これは故意にひん曲げて言っておるか、うそか、それでなければでたらめを言っておるにすぎないと、こういうことになるじゃありませんか。で、これはでたらめであるということは、いまもし椎名外務大臣が言われたことがほんとうならでたらめになる。でたらめになるならでたらめになるということをはっきりお認めにならないというと、この条約を今後施行する上に、そうしていろいろな問題が起こってくることでしょうが、そのときに差しつかえます。だからその李東元外務部長官なり、あるいは丁一権総理の言われたことが、いまもし椎名外務大臣の言われたことと違うなら、それは間違いである、でたらめである、はっきりそう言われたらどうですか、総理どうです、その点は。    〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ私は、第三条は先ほど来同じことをお答えしておりますので……。そこで韓国総理や外務部長官がどういうような状況のもとでかような説明をしたことだろうか、その点がどうも不明確でありますが、あるいはひょっとしたら、私は昨日憲法問題でたいへん失礼をしたということで、けさも皆さまの御了承をとりましたが、あるいは韓国の憲法問題からこういうような管轄権の問題に発展したんじゃないか。これも大韓民国の憲法ははっきりそれを書いておりますから、そういう意味じゃないだろうか、それならばやっぱり北も同じような憲法で問題があるはずだ、これはソウルを首都にするとはっきり書いておるじゃないかということを、しばしばお答えしたように思いますが、で、まずそのときにどんな環境のもとで説明されたか、第三条をそのまま説明すると、全然、文理解釈というわけじゃございませんけれども、もうそれは書いてあるとおりである、示されているとおりに解釈するよりこれは手がないように思います。当時のおかれたそのときの態様というものがどういうことだったろうか、それはまず私にはわからないので、ただいま申し上げるようにでたらめだとか、きめてかかるのには私はちょっと材料が不十分だと思います。
  129. 岡田宗司

    岡田宗司君 私先ほど韓国国会の議事録を数カ所読み上げたんです。それはこの数カ所読み上げたということは、単に失言じゃないということの明瞭な証拠じゃないですか。両人が何べんも同じことを繰り返して、しかも韓国の憲法の第二条ですか、これの解釈の問題で言っているんではなくて、この条約案が韓国国会で審議され、この基本条約の第三条が問題になっているときに答えているのです。そうすると、いまあなたの言われたようなあいまいなことではすまなくなる。やはりこれは明瞭にしなければならぬ点で、この解釈の食い違いがあれば、当然たださなければ今後の日本韓国外交においても重大な影響が生じてくる。ことに北鮮との諸般の事実上の交渉が生じたときにもいろいろな問題が起こってくるので、私はこの問題について明らかにし、そうして、この問題についての韓国側の合意をはっきり得られなければならないと思うのです。他の問題については合意議事録などというものができておる。あいまいな問題については合意議事録がない。そうしてその食い違いがそのままにされておるということは、今後の日本外交の上にも重大な支障を生ずると思うのです。その点について、いま総理はどういう状況で言われたかわからないと言う。しかしながら議事録は政府の手元にあるはずなのです。私どもには配付されないけれども政府の手元にもあり、議長のところまで出ているわけです。これをやはり照合してごらんになれば、どういうことで言われたかおわかりになるはずです。総理いかがですか。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私もそこまで議事録を追及しておりません。で、お願いをしておりますのは、この第三条についての私どもの説明、これと韓国側の説明が違っていると言われますが、十分の御判断をいただきまして、この第三条からどういうような結論が出るか、これをひとつ十分御勘考願いたい、かように思います。
  131. 藤田進

    藤田進君 これは衆議院段階でも、そして当委員会でも昨日も問題になり、このまま看過して進めるわけにはまいりません。あまりにも一部の解釈の相違と違って、竹島問題しかり。そこで私は苦言を一点呈したいのは、昨日二宮君の質疑にあたっても、休憩をわざわざとって、外務大臣が読んでいないというのであれば、韓国の速記録はそのままお持ちなんだから、ところが再開いたしますと速記録は読んでいない、読んでもいるでしょうけれども、読んだということになると抜き差しならない、説明がつかなくなるのです。第一、総理以下これだけ重要な国論の分かれている問題を審議するときに、さあ、韓国国会の模様はどうだったのか、その辺のまあ前後の事情がよくわからぬ。きのうおれがつい失投したようなああいうことだったのかもしれない。そんなあやふやなことで国会の答弁に立とうとされる点はまことに遺憾です。そうあるべきではありません。外交専門家においても、あるいは国民全体の中にこれほどまあ大きな食い違いがあるということは、これはどうしたことだろうか。最大とも言うべき、政府が明らかにすべきポイントです。日本政府が国内向けにかような答弁をしているのであって、韓国側の言うのがあるいはほんとうかもしれない。あるいは韓国側が国内向けに何とか言っているので、こっちがほんとうかもしれない。いくら文章を読んでみても、いや実は出さずにいたけれども、合意議事録があるのだとか、何かそこに筋の通ったことでなければ困るのです。そこで、これは今後の審議態度に対する要望、苦言でありますが、そこで、第一点のただしたい点は、参議院の先般の予算委員会では現地ソウルに駐在する、日本外務省から派遣されている前田書記官ですか、外二名を、実情を聞きたいから参議院に、政府委員ではないでしょうが、政府説明員として、ひとつ呼んでもらいたい。いろいろしぶっておられたが、最終的に速記録を調べてみると、椎名外相は御期待に沿うようにこれから検討いたしますという趣旨の答弁もあったわけです。そこで、この際、そう時間のかかるわけではない。総理自身が私が要求するまでもなく現地の事情は十分調べた上で確信を持って答弁すべきです。その意味においてもわれわれも直接聞いてみたいから、この前田君あるいはほか三名でもよろしいが、少なくとも一人は至急に約束どおりこの際呼んでもらいたい。  それを待つ間の審議もありますから、総理は海員組合、労使間の関係で三時半から約一時間の所用がある。いま問題になっている重要な事項ですから、私どもも一時本委員会の審議を中断してぜひ出向き、社会的影響を軽減するようにということで、三時半から約一時間の休憩をとるわけです。その間に、いまのような答弁はだれも納得しません。あれは向こうがかってにやっているのかと言えば、そうとも言わない。国内向けだろう。昨日総理韓国国会も民主的だと言っているでしょう。そういう規定をしている。評価をしている。これはぜひ速記録も読んでもらいたい。そうしてどうしても是が非でもこの問題は明らかにしてもらいたい。同じ条約協定、第三条、百九十五号(III)、具体的な問題でまるきり違う、韓半島全域に及ぶ、いや、北には及ばない、こういう大きな食い違いがあるということは、日本政府として、この文章を読んでそれで納得しろと言われても、納得ができぬじゃありませんか。そんなことで、あいまいなことで乗り切ろうと言われてもそれは困る。証拠をあげてひとつあなた方のが正しい、向こうのが違うと、れっきとした——速記録は前後そんな勇み足とかそういうような雰囲気ではない。全然ない。あるならばあるという証拠を出してもらいたい。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれはあくまでこの締結された条約内容について御審議を願っておるのでございますから、どうぞその締結された内容に関しての御質疑ならばいかようとも御説明を申し上げますが、外国のできごとをもってきて、ああ言ったこう言ったと言われてもいささか困るのであります。そこで、向こうは全半島と、こう言っている。ところが、この百九十五号の決議では、全朝鮮の人民の大多数、全部とは言っていないのです。大多数が居住しておる朝鮮の部分と、こう言ってあるのです。だからこれに基づく第三条である限りにおいては、全半島に及ぶというようなことは、どこからも出てこない。少なくともそういうふうに私は考えるのであります。そうしてこの部分に対して有効な支配——有効な支配というのはただ空想の支配ではない。ほんとうに有効にそれを把握して支配しておる、管轄権を持っておるというこの現実は、何といっても今日においては休戦ライン以南でございます。だからこれの百九十五号の正当な解釈からはどうしても全半島に及ぼしておるところの政権であるということは絶対に言えないのであります。この問題……。
  133. 藤田進

    藤田進君 国内向け放送でしょう。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国内ではない。ここに書いある、ちゃんと。
  135. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま椎名さんが説明されたこと、私どもも現実には韓半島の、大韓民国は韓半島の南しか管轄権が及んでいないということを認めているのです。それはあなたに説明を聞かなくてもわかる。問題は食い違いの点なんですよ。しかも、私は今度の諸条約ほど食い違いが多い条約はないと思う。大体条約が結ばれてしばらくたってからいろいろな情勢が変化をする、あるいは結んだ国の政権がかわる、そういうことからして条約の解釈に違いが起こる、紛争が起こるということはある。しかしながら普通、条約が結ばれましたときには、おそらくどの条約においても、初めから、それを結んだ当事者が別々のことを放送しているような条約というものは、いまだかつて聞いたことがない。私は、この点、条約局長に事実をお伺いしたいのだけれども、この一年間に結ばれて国会承認を得た条約、諸協定のうちで——あるいはもう一、二年さかのぼってもよろしい。この二年間か三年間のうちに結ばれた諸条約、諸協定のうちで、初めからこれを調印した諸当事者が意見が食い違って、それを公にしている、そういう条約、諸協定があったかどうか、それをひとつお伺いしたい。それからあとでお伺いするけれども
  136. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この二、三年に、こういうふうにやかましく食い違いが論議された条約締結した記憶はございません。
  137. 岡田宗司

    岡田宗司君 それごらんなさい。だから、私どもはこの条約について問題にするのです。異例ではありませんか、総理、その点は異例と認めますか。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 少し異例と認めるかどうかということですが、ただいま言うように、いままでないと、これが最初から違っているというのですから、そういう意味から見ると異例だと、こういうことでしょうが、私も、議事進行をするわけではありませんが、少し整理してみたいと思います。先ほど来いろいろお話が出ております、が、岡田委員もたびたび言われるように、岡田委員と私ども政府の間には相違はない、これは確認していいことじゃないか。それで、日本政府韓国政府との説明が違っていると、こういうことを一体どういうふうに考えるか、こういうところに話が来ているのだと、かように理解しておりますが、さようでいいだろうか。
  139. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうです。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういう点について、先ほど来私が申し上げますように、韓国がどういうような環境のもとで、かような説明をしたか、私には十分わかりませんから、よく調べてみましょう。いま、条約局長後宮君等から聞くと、とにかく向こうでそのとおりは言っておりますが、この質問に答えた、答弁した、そのなにを見るのに、こんなに厚い、なかなか見れませんというから、それはとんでもないことだ、それをもう少しよく精査して見てくれないか、こういうことをいま申したのであります。私は、先ほど来申しますように、条約に書いてあるところは非常にはっきりしているのだ、だからその文言で御判断をいただきたいということを、たびたび申しました。これは、私はいまだにさように思っております。この点は、お読みになったとおりでありますから、社会党と政府との間にも考え方は食い違っておらないのだ、食い違っておるのは政府韓国との問題だ、こういうふうに言われるように私思いますので、それならまた、ただいま申し上げますように、韓国の問題についてとやかく批判することが、はたして友好親善関係を樹立する上に役立つかどうか。これなどもひとつ勘案され、また、具体的に将来の問題が起きたときに、どういうように解決するのか、その方法もあるようでございますから、それらの点も御勘案いただいて、ただいまのように、政府から、韓国がそれはでたらめな答弁ですと、こういうことを言わされないようにお願いをしておきます。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。外務大臣日本政府のような考え方であれば、大韓民国政府——三条ですよ、「国際連合総会決議百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの政府であることが確認される」、これでいいんでしょう。なぜ、きわめて疑いを残さないように書かなかったかということなんです。国連憲章、国連の決議に示されているとおりのものだというのであれば、そのとおりに書けばいいわけでしょう。途中にそういうものを入れるからこんがらがってくる。「大韓民国政府は、百九十五号に示されているとおりの政府である。」——文章も短くなるし、一点の疑いもないわけです。なぜ、そのように明確な表現をとらなかったのか。いきさつを説明してください。
  142. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「唯一の合法的政府である」と書いても間違いではありません。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうものを入れることによって、韓国政府のような解釈のしかたをとらす道を開いておるのですよ、意識的に。ともかく、「百九十五号の決議のとおりのものであります」、これだったら、何も別個な解釈が出てくる余地がないわけなんです。  そこで、もう一点聞きたいのは、韓国政府が、先ほど来言われておるような解釈、これは韓日白書等を見ましても、ともかく早くから主張されておる解釈であります。条約締結当時はもちろんそういう解釈をとっておる。ところが、日本政府の解釈は、実質的には、こういう「朝鮮にある唯一の合法的な政府」というふうなことばがなしに、百九十五号(III)のとおりのものだという、そういう、先ほどから述べておるような解釈なんです。条約調印のときにそういう二つの解釈がある。これはもう客観的に、文献によって明確なんです。これが一体合意と言えるのですか。私、理屈を言うようですが、重大な問題だから申し上げるわけなんです。調印のときに、すでに両者が違った見解を述べておる。それを一体、条約、合意ということが言えるのでしょうか。ただ、見解が違っていても、一つの文章に両方の人が判こを押せばそれで契約は成立したと……。それは形式的なことなんです。たとえば、これはわかり切ったことですが、普通の契約書でありましても、判こを押すときに両方の考え方が違っていたということが後に明白になれば、形式は契約になっておっても、これは裁判所にいって無効になる。それと同じことがここで行なわれておるじゃありませんか。社会党が、こういう条約は無効だと、不存在だと——何もあなた、わけのわからぬことを言うて、むりやりにそんな主張をしたわけじゃございませんよ。韓国のそういう解釈があることは御存じですね。それは、調印当時でもその解釈があったことは否定できぬでしょう。(「調印前だ」と呼ぶ者あり)だから調印前からある。調印のときにはもちろんある。今日でもある。少なくとも調印のときにはそうなんだ。これがあなた、どうして合意と言えるんです。その点、もっとあなたはっきり言ってみてください。
  144. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは、両国の当局が非常な精力を傾けて、そうして慎重に審議を重ねまして、そうしてこの合意に達したものを、そのまま文字にあらわしたものでありまして、両国の国語の上から、もし疑義がある場合においては、この基本条約に限って英文——日、韓、英と三国語で書かれておりますが、両国の間に、これを解釈する上において懸隔がある場合においては、英文によるということになっており、きわめて慎重な考慮が施されておるのでありまして、調印の場合には完全に合意したものであります。
  145. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま完全に合意したと、こう言われるが、合意してないからこそ、韓国内の当局者が、当事者が、別の見解を述べているのじゃありませんか。もし合意しているならば、はっきりと同じ見解を述べる。あとになって、状況が変わってきてなら別ですけれども、そうでない。だから私は、合意されたと、文字は一つだけれども、合意してない事実が存在しているからこそ、こういう事態になっていると思う。  そこで私は、条約協定その他の形式のことをお伺いするのですが、外務大臣、意見の違いそうなものについて、意見をはっきり食い違いをなからしめるために合意議事録というものができるのでしょう。そうすると、その合意議事録というものは、その本条約その他に付して出される、そして国会承認を得る、あるいは参考資料として出されるのでしょう。こんな食い違いのあるものが、なぜそういう手続がとられなかったのか。たとえば、漁業の問題その他について、解釈の相違の起こりそうな問題、あるいは明確にしておかなければならぬ問題については、はっきり合意議事録が出ているじゃありませんか。交換公文が出ているじゃありませんか。それならば、なぜこういう重大な問題について、合意議事録、交換公文を出さなかったのでしょうか。つくらなかったのでしょうか。それをつくってないから、今日こういうような状況になっておる。もし、合意ができておるというので、その解釈が明確であるというならば、その合意議事録なり、あるいはその交換公文なりというものをお出し願いたいと思う。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 完全な合意に達したから、合意議事録をつくる必要はなかったのであります。
  147. 岡田宗司

    岡田宗司君 合意に達してないから、こんな問題が起こっているのじゃないですか。いまの大臣の言うことは、でたらめですよ。でたらめじゃないですか。
  148. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうも、ふしぎな御批判を受けるものと思いますが、とにかく、正式な調印式を済まして、韓国の全権団は非常に喜び勇んで帰国した。完全に合意に達しましたから、合意議事録をもってあいまいな点を補足説明する必要はなかった。だから合意議事録はないのであります。それほど完全に合意をしたのであります。
  149. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま、でたらめなことを言われておるのですけれども、もし、韓国のほうが、これでもって喜んで帰ったというならば、おそらく、ここにいる日本側は韓半島における唯一の合法政府であるということを確認したと、こういうことだから喜んで帰ったのでしょう、向こうは喜んだのでしょう。何を言っているのですか。
  150. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうでも、憲法には全半島と書いてあるけれども、しかし北の半分は実際に支配権も管轄権も及んでいないということを、みずからも認めております。そして、その認めた実態について、あらゆる協定が取りきめられておるのでありまして、決して日本は、今度の条約韓国の憲法まで承認したわけじゃない。その実際の管轄権の及ぶ範囲、支配権の及ぶ範囲というものを実態といたしまして、そして、すべての取りきめを行なったのであります。
  151. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、たいへんおかしな話だと思うのです。たいへんりっぱな御見解を述べられたのですけれども、私、この日韓交渉に携わったある有力な自民党の党員と、ある有力な雑誌の座談会で会って、これはまあ、そのあとの私的な話のですけれども、いや今度の条約くらいふできな条約はないと、こういうことを言われたのです。この人の名前はあかしませんけれども、あなたのほうの有力な党員で、しかもこの交渉にも当たられた方です。さらに、あなたの党の中で、宇都宮君が佐藤総理に対して意見書を出された。これは、田中幹事長を通じてあなたのお手元まで届けられることになって、ごらんになったかどうか、私は知りません。しかしながら、これは公表されました。それを見ましても、ずいぶんいろいろな点の批判がある。いま椎名外務大臣の言われるように、両国が意見を一致して、たいへんにいい条約だと両方満足して、これなら意見の食い違いがないというような条約でないことは、それらからも明らかだ。一体、いま言われたことは冗談でお言いになったのか、本気で国会の答弁としてお言いになったのか、これは十分に明らかにしてもらわなければならない。
  152. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、冗談は言いません。
  153. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、この食い違いは、単に解釈上の食い違いではなくて、あとにいろいろな問題が起こってくると思うのであります。その問題について今後触れていきたいと思うのですが……。
  154. 森元治郎

    ○森元治郎君 ちょっとその点で……。  私は、前の総理大臣の答弁が非常に気になるのですが、たいへんやわらかい顔をされて、苦衷を察してくれと、条文を読んで賢明な皆さんはおわかりになるだろうと、おわかりになってくれ——何のことかわかりませんが、何か、人情論で話したような感じがする。すなわち、われわれの攻撃はそのとおりだが、そうだとは言えない。そこをひとつ何とかと、もみ手したように見えるのだが、これは笑った顔で受け取っておられない。条約ですから。われわれ国民全体、国に影響がありますから。やはり弱いところがあるということはお認めになりますか。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、何度も同じことを申しますが、条約にはっきり明文化されている、そのとおりを読んでただいまのような御疑問が出てまいりますかと、こういって私は反問をしたくらいです。そうしたら、社会党の方も、書いてあるのはそのとおりだと、ただ、政府と社会党との間には別に食い違いがない、食い違いのあるのは韓国との問題だ、こういうような御指摘がございました。私は、韓国政府につきまして、これはでたらめだとか、これは全然意味がないのだとか、かような批判をすることはいかがかと思う。そういう点、相手の国の批判はしばらく預かろうじゃございませんか、こういうお話を申し上げたのであります。現実に問題が起きたときに、しからばいかに処理するか。これにつきましては、それぞれみんな考え方がきまっておりますから、どうか御安心をいただくようにして——御安心をいただかなくてもけっこうですが、ただいまの段階で相手政府を批判することは差し控えたいと、かように申し上げたのであります。
  156. 藤田進

    藤田進君 ちょっと……。総理、いまの社会党と一致しているという点を少し都合よくとられているのです。韓半島における現実については、それは南と北に分かれている。いま休戦ラインを、これを境として、政府もそう思っている。これは一致している。しかし、条約の編さん、表現については、亀田委員から指摘するように、韓国がそう言うのもむべなるかなというような、この点を亀田委員からついているわけです。ここに仕掛けがあるから、韓国韓国で、そういうなるほどと……。ですから、この条文もそのとおり、まことによくできていて、総理の言われるような、というのじゃなくて、現実の問題としては一致している、北と南に分かれていることは。このあらわし方については、これはまことに問題があるということを亀田委員のほうから申し上げておるのですから、この点はひとつ、あなたののみ込みを、早合点をしないでおいてもらいたい。  そこで、整理いたしますが、半になりましたから、この間に、韓国の審議の客観事情等についても、いま調べるように言っているということ、これはもう時間的に、そう先になっちゃ困るので、この休憩時間に、その点を明確に答えられるように、しっかりとつかんでもらいたい。外務大臣については、韓国の議事録はそのままあなたの手元にあるのだから、全体を読む時間はないだろうし、必要はない。竹島なり、あるいは管轄権なり、重大なこういう食い違い点について、はっきりと、向こう側の審議状態は速記録に出ております。これを把握してもらいたい。そうして再開委員会では、何べんも言いますが、同じことを言ったって前に進みませんよ。これは循環している、同じことが。もうこれ以上どうしても言わないという、想定問答集以上出ないといろのならば、これはいざしらず、参議院ではそうはいきませんよ。大事な点をほおかぶりしていこうといったって、そうはいきません。これは、そうはおっしゃらないでしょう。ほおかぶりしてずらかるなんて。  それから、先ほど提案したように、適当な時期に前田書記官を呼ぶことについて、御期待に沿うようにいたしますということでしたが、もう適当な時期は、いまをはずしてはありません。きょうこの時間にとは申し上げません。この審議中、特にいまのような問題もあるので、約束を果たしてもらいたい。これについての御答弁も休憩後いただきたいと思います。よろしゅうございますね。
  157. 森元治郎

    ○森元治郎君 議事進行。簡単に。  国連の決議の問題がきょうの午後の主題でありましたが、重大な資料要求を、大至急やってもらいたいのは、この百九十五号を引用して——ほかの国も、韓国承認国はこれを引用しているという御答弁でありますから、その国々を早く出してくれということを三日前にやっているんですが、まだ来ない。大至急督促してください。
  158. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) それでは、ただいまの資料を、内閣でよろしくどうぞ。  一時間休憩いたします。    午後三時三十二分休憩      —————・—————    午後四時五十六分開会
  159. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより、特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求めるのは案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、休憩前に引き続き、これより質疑を行ないます。
  160. 藤田進

    藤田進君 休憩前に、総理並びに外相に対しまして、速記録その他を確かめられて御答弁をいただくことが一つ。それから、前田書記官の国会出席についてが一つ。  まず、この御答弁をいただきたいと思います。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  休憩中に議事録を調べた結果、いかなる環境の中でなされた答弁であったかということがわかりました。すなわち、条約そのものの解釈についての質問に答えたものであって、これら韓国首脳者の答弁に関する私の見解は、先ほど述べたとおりで、変わりはございません。なお、これら答弁に対する批判は差し控えたいことも、先ほどお答えしたとおりであります。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 前田参事官の問題でありますが、本来の仕事を持っておりますのでいかがかというお答えは、当初に申し上げたとおりでありますが、なお、ただいま日韓貿易協定を年内に開くために、その準備に忙殺されております。さようなわけで、両国間の条約に関する食い違いの問題に関しましては、前田参事官が参上しなくとも、われわれのほうで、できるだけお答えを申し上げたい、こう存じます。
  163. 藤田進

    藤田進君 お約束いたしました、また予期したただいまの総理の御答弁にまず言及いたしますが、どういう環境で行なわれたか、よく事情がわからない。外務省に命じていま調べさしているということであるので、休憩前にそのことを注文してお答えをいただいたわけですが、その調べた結果、どういう模様の中にということでは、簡単に質問に対して答えたのだ。問題の本質は、私が昨日のように、昨日はこれまた激高されて日本国総理もおやりになったが、あれを引例されて、そんなことはちょっと何か勇み足かなんかで、不用意につい思わぬようなことを言ったかもしれないというニュアンスでお答えになっていたものですから、ですから、そこらの事情を調べさすということだったが、その点には触れられておられないわけで、これはやはりそのことを踏まえての答弁であることを十分胸に置いてお答えをいただきたい。  それから外務大臣に、当時お断わりしておる。それは速記録にはっきり出ております。もめて、結局いよいよこれじゃ前に進めないという段階になって、この間の予算委員会で、あなたがぴょこぴょこと立って、御期待に沿うようにということになっているのですよ。これは事実認識が全然違うのでございます。事務当局から速記をひとつ取り寄せて見てもらいたいと思います、私の言うのがうそだったとすれば。最初はいろいろ言っておられました。あのときの議事進行でまとまったのは、御期待に沿うようにということになっておりますが、これは事実の認識が違う。同時に、いろいろそれは忙しいことは前田参事官についてもありましょう。食い違いについて答弁を求めるというよりも、この韓国国会における模様というものは、速記録だけでは描写できません。これも一つの大きな問題ですが、そういうことは十分腹に入れ、国民とともにふに落ちない点を残したまま進むということは困る。慎重審議の内容として必要があるので、さらに、先回のお約束というものをたてに私がとるのみならず、必要があるから——きょう直ちにとは申し上げませんと言ってある。必要な審議の期間中すみやかにひとつ再度お願いを申し上げておきたいと思います。よろしゅうございますね。全然ほかのことをいま答えている。  それから椎名さんについては前の約束、あのときだめだったというが、そうじゃないのです。即答できなければ、その間ひとつよく考えて……。
  164. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岡田君、御質疑をお始めください。
  165. 岡田宗司

    岡田宗司君 休憩前におきまして、私は基本条約の第三条における両国政府当局者の見解の食い違いを追及いたしました。この食い違いのあることは明瞭である。いかに椎名外務大臣が、合意されたところである、こう言われましても、当初からもう食い違いがある。調印されたときから食い違っている意見があり、それが公に当事者によって暴露されておるわけです。おそらく韓国側におきましても、今日の首相並びに外務大臣国会答弁が向こうに伝えられましたならば、向こう側においても食い違っておるということを言うでありましょう。韓国側新聞等でも食い違いなしと言わないでありましょう。そうすれば、もう食い違いということは、これは客観的な事実として存在することになるわけでありまして、私は先ほど藤崎条約局長に、条約が調印されたときから意見の食い違っているようなものはあるかどうかと聞いたところが、そういうものはございません。全くどうも私どもが長い国会生活において、条約協定等を取り扱っておりまして、最初から意見の食い違いのあるのは初めてだ。こういうような条約は決していい条約とは申せませんし、私どもはこういう食い違いのある条約をそのまま見過ごすわけにはいかないので、この点をあくまでも追及しておるわけであります。一体この食い違いを、あなた方は、食い違いのないようにする、こういう努力をされるかどうか。これは日本韓国関係のみならず、また日本と北鮮の問題も将来いろいろ起こってまいりましょう。それらのときに重大な関係を持つ問題であるから、この食い違いをなくすということは重大な問題だと思う。その努力をされるかどうか、その点をお伺いしたい。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 調印の際に食い違いがないからこの条約ができたのであります。ただ、合意された条約について、その後説明がいろいろなされておるというのでありまして、あくまでこれは責任ある当局の間で十分審議され、そして合意されたものでありまして、これは両者の当局の間に間違いはありません。そしてできた条約が、これに対する解釈が違い、そうしてその解釈の違いによって現実の問題が大きく動揺する、くずされていくというような場合と違いまして、先ほど申し上げたように、この合意された基本条約に合致して、そして請求権の処理も漁業協定も、あるいは在日韓国人の地位等あるいは文化財の問題、みな合意された基本に沿って処理されておるというのでございまして、何らこの条約が発効して、これを実行する上において矛盾を来たさないというようになっております。ただ竹島は、両方の主張が真正面から食い違っておる、であるから紛争があるわけであります。この紛争の処理に関しては、やはりこれまた合意によって通常の外交ルート、もしできなければ調停と、こういうことになっておるのでありますから、基本条約について食い違いが当初からあったというようなことは、全くこれは事実に反するおことばであります。
  167. 岡田宗司

    岡田宗司君 もし韓国側においても、いま椎名外務大臣と同じような説明なり解釈なりを公表しておるならば、私どもは食い違いがあるとは申しません。しかしながら、韓国側の説明なり解釈なりが違っておる。しかも、単にこれは評論家あるいは野党の議員が主張しているのではなくて、調印の当事者が言っておるから、これは食い違いがあると、こう申しておる。食い違いの事実なしと、こういうことは強弁にすぎないのであります。私どもは、そういう普通常識をもって考えられないような強弁をここでもってお聞きしているのじゃない。ただいまとの食い違いの問題について、竹島の問題については食い違いがあるから、紛争処理の交換公文ができておるのだ、それをつくったのだと、こういうふうにおっしゃいますが、この食い違いは、ひとり第三条だけではなくて、竹島問題にあり、李ライン問題にあり、さらに他にも幾つか私どもは発見することができるのであります。  このあなたが食や違いのあると認めたそれでは竹島の問題について、私どもはさらに食い違いの点を明らかにしていかなければならぬと思うのであります。あなたは、竹島は日本の領土であるということを盛んに主張されております。しかし、この日本の領土は、今日韓国の官憲によって占拠をされておるわけであります。しかし、そういう占拠をされておるという事実だけではなくて、この竹島、つまり韓国のいう独島の領有権について、非常な食い違いがあるのであります。この食い違いがあるから紛争の対象になる、これは私も客観的に紛争があるということを認めますが、一体この処理の方法をきめたこの紛争の解決に関する交換公文、これの解釈まで食い違っておるというところに、また重大な問題があると思うのであります。竹島の領有の問題について食い違いがあるということは、これは客観的の事実である。しかし、この客観的の事実を解決するための交換公文において意見が一致しておるならば、この問題の解決の方法と言えましょう。しかしながら、紛争の解決に関する交換公文の解釈もまた違っておるに至っては、どうして一体解決することができるのか。その点を私は今度お伺いをしたいと思っておるのであります。韓国側はこの紛争の解決に関する交換公文自身が竹島の問題の処理に関係していないということをはっきり言っておるのであります。これは、私またこの韓国国会の議事録を引用して、あなたの御見解を伺いたいのでありますが、この韓国の第五十二回韓国国会の議事録、八月の十三日でございますが、外務部長官は、この問題についてこういう見解を述べておるのであります。「次は、独島問題についてのべます。独島はわが国の厳然たる領土であり、領有権是非の余地がありません。日本は独島が日本の領土であると主張し、国際裁判を通じて領有権に関する是非を明らかにしようと強硬な態度を十余年の間持続してきました。このたびの会談妥結時においてもこの問題を解決しようとの態度を示したが、わが政府は独島がわが国の領土であるので、国交正常化ができなくても日本の主張を受け入れることができないばかりでなく、この問題をもって日本と論議する余地さえないことを明らかにして、われわれの立場を最終的に貫徹したのであります」。これはこの交換公文を調印した外務部長官の説明なんです。国会における正式の説明でございます。これによると、交換公文における紛争処理ということは、対象にならないということを示しておるではありませんか。さらに、もっと詳しくこの問題について、韓国国会において答弁をしておるのであります。少し長いですけれども、そしてこれは総理大臣あるいは外務大臣にとって多少耳の痛いことも書かれておるようでありますけれども、お聞き取りを願いたいと思うのであります。これは李東元外務部長官の答弁です。「独島は、あくまでもわれわれのものであり、独島の領有権はわれわれのものであります。勿論独島が過去韓日間で、韓日問題の懸案の対象にはならなかったが、韓日間で多少のやりとりまた、紛争の対象であったことだけは事実であります。こんど日本にいったときにも、日本の外相が独島問題について、何らかの解決策を見い出そうと私に話したことがあります。私はその席で、韓日会談の懸案問題を解決し、調印するために、日本に来たのであって、韓日会談の懸案でもなく、問題の対象にもならないわが国の領土問題をあなたがたと相談するために日本に来たのではないからもし、あなたがそのような立場を固執するならば、私は風呂敷をたたんで帰ると本人にいった結果、彼がその話を中止し、その後調印……いわゆるその正式調印をするため、日本首相官邸で日本の内閣……わが国の代表、日本の代表また百余名にのぼる外国記者とカメラマンが二階で待機していました。調印する約四十分前までは佐藤首相と私がこの問題について多少のやりとりをしました。佐藤首相がいうには、独島問題、すなわち日本人はこれを独島だといわず、竹島問題といいます。竹島問題については、昨日自分が参議院選挙の演説でこんど解決されない限り韓日会談解決しないと約束したのでこの問題についてどうか少し自分の顔を立ててくれとの話がありました。私はこの事について佐藤首相にはっきりといいました。われわれが韓日会談の妥結をみ、調印をしようとする最も大きな理由は今後、韓日関係が親善の関係にならねばならないという事であったのにもし、独島問題がこの度の韓日問題で言及されたといろ事実を韓国国民が知るようになれば、これはわが国民感情を挑発するダイナマイトの役割りを果す。それならば、何のために韓日会談の調印をするのか、したがってもしこの問題について日本立場を廃棄し、われわれの立場を認めない限り、私としては調印することができないと非常に強い立場を示し、ついにわれわれの立場が認められ、調印するようになったのであります。また、勿論政治というものは時間が経過するにつれて時には変質するのが常であります。ここで紛争の解決に関する交換公文において、もし今後日本が独島問題とこの問題を関連させる可能性も……政権が変ればその可能性もあります。この可能性もある程度考慮して……日本の人達が最初、主張するには「両国政府は、別の合意がある場合を除外しては両国の問の紛争はまず……」、最初には両国間の紛争を独島を含む両国間の紛争としといいましたが、これは椎名外相が取り下げました。」椎名外相が取り下げましたと書いてある。「われわれは外交上の経営を通じて解決することにし、これによって解決しえない場合には両国政府が合意する手続に基づいて、この両国政府が合意する、これは日本人はどのようにしたかといえば、両国政府が合意する第三国または、国際裁判所に提訴してその審議結果に従う、このようになっています。これを直し、合意する手続に従って調停により解決をはかる、即ちいいかえるならば、日本佐藤政権が変り、あるいは政治生理が変質して独島問題を約束に反して交換公文にひっかけ、国際的に解決しようとしても解決しえないように釘をさしたのであります。」と書いてある。「即ち、どうしてそうなるかといえば、われわれが合意しない限り両国政府が合意する……つまり、われわれが合意しない限り如何なる手続もとりえません。また、その最後に解決をはかるとしまして、はかるというこの事は法的な術語ではありません。英語で言うならば、This is very Sentimentalな……」この点はどうもよくわかりませんので抜かしましょうが、「となるので独島については勿論、日本の政治的な必要によって今後も何らかの政治的なやりとりが無いとは断定しえないけれども、われわれとしては条約を通じて、法を通じてわれわれの立場をはっきりさしており、また今後この問題については、動揺しないよう釘をしっかりさしておきました。」たいへん長い引用でございましたけれども韓国国会で李東元外務部長官はかような答弁をしておるのであります。  まず、私はこの外務部長官が詳しく述べた竹島問題に関する交渉経過、ここに書いてあることは事実であるかどうか、それからお伺いしたい。まず外相から。
  168. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ああ言った、こう言ったというようなことを言い合うということは全くむだであると思います。やはり厳とした紛争処理の交換公文を取りかわしておる。これは冗談やしゃれに取りかわしたんじゃないんです。これは、竹島問題というものはもう年来の二国間の重大なる懸案であり紛争事件である。そういう問題がとうとう解決を見るに至らなかった。そうかといって、両国の間でこの問題のために両国国交正常化をじんぜんとしておくらす——その他の点においてはもうりっぱに合意されておるのであります。それにもかかわらず、この問題でじんぜんと日を送るということはもはや両国にとって不得策であるということになりまして、将来この問題を解決すると——将来に残すと、こういうことでその了解で竹島とも書いてなければ独島とも書いてないけれども両国の紛争はと、こういって、あとにはもう紛争はほとんどないのであります、今後起こるかもしらぬけれども。そして非常に大きな紛争でありますが、竹島問題を除くということをどこにも書いてない。まさに竹島問題の紛争はこの交換公文によって処理されるということを両当事者が十分に了解して、そうしてこの交換公文というものができたのであります。どうぞ、だれがこう言った、それに売りことばに買いことばというようなことは、私は避けたいと思います。あくまででき上がった、両国の当事者の間ででき上がった厳然たる交換公文という、この事実、この事実に基づいて私は御疑念があるならば幾らでも御説明申し上げたいと思います。
  169. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理官邸においてのことがかなり詳しく述べられておるんで、総理がはたしてかようなことを言ったのかどうか、私、事実についてお伺いしたいと思います。
  170. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは李東元が調印の前に私の部屋に来たことはそのとおりであります。しかし、ただいま言うように、しばしば私がこの席で申し上げましたように竹島問題について領有権を放棄したことも、また韓国側の主張を承認したことも一切ございませんので、その点は私がはっきり申し上げておきます。このことは国会を通じて申し上げるのでございますから、ただいまその点では御疑念を持たれないと、かように私は思います。
  171. 岡田宗司

    岡田宗司君 まず、いまの答弁について椎名外務大臣にお伺いしたい。ああこう言うということの必要はないと、こうおっしゃられたけれども、私は、お伺いしているのは事実。この李東元外務部長官が韓国国会で言っておること、このことは事実であるかどうか、事実ではないかどうか、それをまずお伺いしたい。これはイエスかノーかでいいんで、説明は要らぬと思うんですけれども、事実か事実でないか。もし事実でないとすれば、それは事実でないということをはっきりと述べていただきたい。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約の審議にあたって、相手国の当局、首脳者の言動について私が批判することは差し控えたいと思います。
  173. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は相手の方の言動の批判を求めておるんじゃないんです。ここに言われたことが事実であるとすれば、この交換公文の審議についても重大な関係があるので、事実か事実でないかということを、イエスかノーか、それだけお答え願えればいいと思うんです。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それが結局批判をするということになるのでございます。私は、われわれが責任をもって交換したこの公文というものについての御質問なら幾らでもお答えいたします。
  175. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、何ですか、否定はされないんですか。外務大臣、否定はされないんですか。
  176. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 否定も肯定もいたしません。
  177. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、暗黙に事実を承認されると、こういうことですか。
  178. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 否定も肯定もいたしませんし、その事実についてはお答えいたしません。
  179. 岡田宗司

    岡田宗司君 いよいよ疑惑を増すばかりじゃないですか。(「国民は何と理解する、その答弁を」と呼ぶ者あり)どうでしょう。これは国民の誤解を解くためにあなたの答弁を求めておる。いまの御答弁では国民の誤解を増すばかりじゃないですか。領土問題という重大な問題について、外務大臣国民の誤解を増すような答弁をされるのでは私どもは納得できない。その点についてもう少し明瞭に御答弁願いたい。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それじゃ、一点だけ申し上げましょう。私が竹島に関する日本側の主張をおりたということは、これは事実と違います。
  181. 岡田宗司

    岡田宗司君 他の点はいかがですか。ほかの点は。それではこの問題についてですね、もしあなたが韓国側の言うことを聞かなければ書類をふろしきに包んで帰ると、こういうことを言ったのか。それは一体事実かどうか。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうも私は忘れっぽいほうでございますが、そんなことを聞いたような覚えはいたしません。まあこれだけ申し上げておきます。それでもポイントは突いていると思いますから。あとはもうお答えできない。一々長い経過に対してあれが違うこれが当たるというようなことを一々覚えておりませんし、とにかく私がおりたということだけは、その点は違うということだけ申し上げておきます。
  183. 岡田宗司

    岡田宗司君 では総理大臣にお伺いいたしますが、先ほど李東元外務部長官に会われて、多少のやりとりのあったことは認められたようでありますが、この「佐藤首相がいうには、独島問題、すなわち日本人はこれを独島だといわず、竹島問題だといいます。竹島問題については、昨日自分が参議院選挙の演説で、こんど解決されない限り韓日会談解決しないと約束したのでこの問題についてどうか少し自分の顔を立ててくれとの話がありました。私はこの事について佐藤首相にはっきりいいました。」云々とありますが、この点はいかがですか。事実についてのお答えを願います。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たしか、忘れておりますが、しかし、これはたいへん具体的に昨日云々等から出ております。しかし、御承知のようにこの竹島問題についてしばしば申し上げますように、竹島も一括解決だと言っておると、しかしながら一括解決のできなかったことは公約違反だといって、しばしば申し上げております。しかし、その解決方法のめどがついたので、まあ国民に対しても一応了解を求めることができるんだということを申しております。ただいまのお話は、調印式の前に私のところで話をした。いわゆる竹島問題がいまさらそういう具体的な話し合いができるような段階でなくて、条文も全部整理されたその際でございます。したがいまして、そのことからもただいま非常に具体的な説明をしておるが、私が覚えておらないということにはおわかりがいくだろう、かように私は思います。
  185. 藤田進

    藤田進君 ちょっと。それは合意議事録とか協定あるいは条約の原文にちゃんと出てきている問題であれば、いまさらその段階でそういうものが出てこようはずがないのですね。ところが、交換公文で竹島問題が何ら触れられていない、そうでしょう。そこで総理としては、善意に解釈すれば、これは何とか参議院選挙でも公約してぶって回ったわけで、これはやはり顔を立ててくれよ、一つのあなたのゼスチュアたっぷりに、李東元さんに、ナショナル・インタレストというか、自国主義でおやりになったんじゃないか、ところがどっこい、そういうことを言うなら、これは全体をぶっこわしても、おれはそういうわけにいかぬということをはっきりと韓国国会でぶっているのでしょう、ぶっておるのですよ、現在。ですから、そういう一幕があったのかどうか。非常に大切な段階で、椎名外相が一部認めたように、そういうことを言ったこともないし、また、そのようなことを韓国で言うのはこれはけしからぬ話だということなのか、覚えていないといったって、こんな大切な問題をいよいよ頂上のですね、総理の会ったときのことを覚えていないで過ごそうというのでは少しずるいですぞ。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまから調印しようと、交換公文もできているのです。……。
  187. 藤田進

    藤田進君 現実に……。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ええ現実に、十分後か二十分後にとにかく調印しようというそのときなんです。そういうときまで私のところでそんな交渉はいたしません。だから李東元が私のところへ参りましたのは、ただいまの調印に来たんだ、こういうことをはっきり申しております。そのときの周囲の環境といいますか、環境の情勢を御判断願えれば、私がそういうことを記憶しておらないというのに御了承がいくだろう、かように申すのです。これから話をして、そうして案文をつくるという、そういうときなら、ただいま藤田君が言われるようなこともあろうかと思いますが、もうちゃんとできていて、調印だけに来るという、そういう事実でございますので、これは私が記憶しておらないということもよくおわかりだろうと、かように申すのでございます。
  189. 岡田宗司

    岡田宗司君 外務大臣総理大臣も記憶をしておらない、これは向こう側でもってあなたの記憶を呼び起こさせるような発言をしておるにもかかわらず、記憶をしておらない、これはどうも逃げの一手としか思えないが、しかし、その点は記憶をしておらないと言うならば、これはどうもこれから責めても、記憶をしておらない記憶をしておらないで逃げられるでしょうから、さらに歩を進めていきたいと思いますが、この委員会でやはり李東元外務部長官が言っておるのですが、これは独島周辺における専管水域の問題、すでに、専管水域をしく問題についていろいろ述べておりますが、そのうちでこういうことがある。通常基線によって専管水域がしかれるということを申し上げまして、したがって、そのような原理によって独島周辺にはそのような専管水域がしかれるのでございます。こうなっておるのです。そうすると、もう単に紛争の処理の段階ではなくて、領有して、その回りに領海をつくる、専管水域をつくる、こういうことになっておるわけです。専管水域の場所についてはちゃんと両国で取りきめがあるわけです。どこそこに専管水域をつくるという取りきめがある。この独島の、あるいは竹島の周辺に専管水域をつくることについてはこれは合意があったのですか、そうして条約上にそれは規定されておるのですか。
  190. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その本体について、紛争のこれは対象になっておるのでありますから、専管水域は単独でこれは設定することはできないはずであります。
  191. 岡田宗司

    岡田宗司君 単独で設定することはできない、そういうことになってまいりますというと、この専管水域をつくる条約にまで関係をしてくるわけじゃございませんか。そうすると、専管水域をつくることになっておりますいろいろな条約協定というものもまた、これですね、こういう欠陥が出てくると、こういうことになりまして、これまた食い違いが生ずるのじゃないですか。外務大臣
  192. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そのとおりです。その竹島そのものが紛争の対象、したがって、これを取り巻く専管水域というものも紛争の対象になる。
  193. 岡田宗司

    岡田宗司君 この交換公文には、「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず外交上の経路を通じて解決するものとし、」とあるのですね。で、別段の合意がないからまあ竹島の問題は紛争になるわけでありますが、この竹島問題をこの紛争の解決の対象として、外交上の経路を通じて解決するということになる場合には、双方が竹島問題をこの紛争であると認めて、そうしてそれを外交上の経路を通じて解決するということのまず合意がなければならぬ。ところが、韓国側では、これはすでに解決されたことであると、たとえ日本のほうがこの問題を今日のみならず将来にわたって、たとえば佐藤政権がかわって、そういう問題が起こってくるかもしれないけれども、断じて竹島問題を紛争解決のための問題としない、そういう点、日本に対してくぎをさしておるとまで言っておるのであります。そうすれば、日本政府が、この問題でもって紛争解決の対象にして処理いたしましょうと言って向こう申し入れても、向こうが応じなければどうやって外交経路でもって話ができますか。それでも話ができるのかどうか、これは外務大臣の手腕いかんかもしれませんけれども、あなたはそういうことができるとお考えですか。
  194. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ紛争問題が深刻であればあるほど、いまおっしゃるようなことになるのであります。この竹島問題はきわめて深刻な紛争問題で、でありますから、いまは実力をもって占拠しておる、近づくと発砲する、こういう物騒な状況でございますので、日本はこれに対等な方法をもって対抗することは考えていない、あくまでこれに対して抗議を申し入れております。ただ、日韓韓国が発効いたしまして、だんだんいろいろな面において友好的な関係がだんだん醸成されてまいる、その醸成されたときを見てこの外交上の交渉を始め、もしそれでいけなければ両国の合意のもとに第三国を入れて、そうしてその調停に上りて問題の解決をはかる、こういう手順を進めたいと考えております。
  195. 岡田宗司

    岡田宗司君 向こうでは、佐藤内閣のもとにおいてもあるいはその後の政権ができてもこの話し合いに応じないと言ってるんです。あなたはこれから日韓関係がよくなればそれでもって話し合いに応じるだろうと、そうして外交上の経路によって解決ができるだろうと、こういうお見通しなんです。向こうのほうじゃそれを応じないと言っているのですね。どうして応じさせることができるのか、それをひとつ、あなた名外務大臣であればその点についてわれわれに納得いくように御説明できると思うのですが、いかがですか。
  196. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島問題は最大の両国の紛争であるということを両当局の間において十分に了解され、それを念頭に置いて、そしてこれの解決のために通常の外交ルート、それが整わなければ、合意する方法によって、調停によって解決をはかろう、こういう合意ができております。これに対してどういう説明を加えておられるか、これはつまびらかにいたしませんし、またする必要もない。そういう合意がちゃんと厳然とできておるのでありますから、少し頭から血が下がって、そして友好関係がもっと増進されて、そして冷静にこれを見る場合においては、これはもう必ずこんな問題は早く解決しようじゃないかというようなことに私はなることを確信しております。
  197. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうあなたが確信していても、韓国側の意向では、どうもそうもなりそうもない。そういう場合に一体あなたはどういう態度をとられるか。あるいはあなたはそのときは外務大臣でないかもしれませんけれども、やはりいま外務大臣である以上、日本国民に納得のいくように、それができるものであるかどうかの説明をしなければならぬ。そうして竹島問題がこの紛争解決交換公文の対象になるということをいま言われましたけれども、これについての合意があるというにかかわらず、韓国側では、この問題はすでに解決して合意がないと言っておるわけなんです。韓国側では、もうすでに解決した問題であってこれを紛争問題としてかけるという合意はいたさない、という態度を明白に打ち出しているのです。それでも合意があると言われるのですか。
  198. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうも岡田さんは向こうの言うことばかり信じていて、少しは私の言うことも信じていただきたいと思うわけであります。大体、国際間のこういう種類の紛争は全くむずかしいのです。現にもうソ連との間に、国後、択捉の問題はその解決のめどすらついていない。そういうようなことでございまして、とにかく終局的な解決は見ませんでしたけれども解決のめどはつけた、そのめどについては両国の間で合意ができておるのだから、少し友好的な雰囲気ができれば、しんぼう強くこの問題に取り組みまして解決し、終点に持ち込むことが私はできる、できなければならぬ——よくこういう国際紛争はあるようでございます。どこにもないようなことをやっているわけじゃないのです。どうぞ御了承願います。
  199. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、いまのよそのことなんか別にお聞きしているわけではないので、竹島問題の処理についてお伺いしておるわけなんです。私は紛争があるということは、これは厳然たる事実だと思う。しかし、紛争処理にあたって、向こうさんが話し合いに応じないという、こう言っているのですね。これは向こうさん側が明らかに言っていることなんです。あなたのほうでは、それじゃこれは向こう側話し合いに応ずるということでもってこの交換公文をつくったのだと、こう言うならば、それを裏づける何ものか示してくれなければ、あなたの言うことを一〇〇%どうも信ずるわけにはいかない。食い違いの場合には、やはりあなたのほうでも韓国側が竹島問題をこの紛争処理交換公文に従って処理するのだということを明白にした、何か合意議事録なりあるいは取りきめなり、口上書きなり、何かそういうものはございますか。そういう裏づけがあれば、私はあなたの言うことを一〇〇%信じましょう。しかし、ない限り、やはり向こうに書いてあることについて、あなたの立場を私は聞くのは当然でありましょうし、国民の疑惑を解くためには、その私の質問に答えていただかなければならぬ。どうでしょう。
  200. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それが交換公文を取りかわしたのであります。
  201. 岡田宗司

    岡田宗司君 交換公文の内容について聞いているのですよ。それで交換公文を取りかわしましたじゃ、答弁にならぬ。あなたの答弁は、これはもう私国民の疑惑を増すばかりだと思うのですが、次に、これは総理大臣にお伺いするよりしようがないと思うので、総理大臣にお伺いいたしますが、この外交上の経路を通じて解決するものとして、向こうが出てこない、こういうようなことを言っておるのですが、その場合には、総理として、いかにしてこの外交上の経路、話し合いに応ずるように向こうを説得するなり、あるいはまた、向こう側にある種の圧力をかけるなり、あるいはまた、他の方法をもってこの話し合いの場に引き出すことができるか、それらの点についてあなたはどうお考えになっているか、お伺いしたい。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど外務大臣から懇切丁寧にお答えをいたしたと思います。両国関係が親善関係に向かう、必ずお互いに話し合う機会は、チャンスが来る、必ずまたそのチャンスをつくってお目にかけますと、かように申し上げております。ただいままでいろいろお話がございましたが、私ども日本政府としては、との竹島の領有を主張しておるばかりではございません。ただいまのような点で御心配ならば、私どもが竹島の領有を放棄したり、あるいは韓国の主張を承認したり、こういうことでございますが、承認もしないし、放棄もしておりませんと、こう何度もお答えをいたしておりますし、それではない、われわれは古来の領有を主張しております。古来から日本の領土でありますと、かように申しておるのであります。たいへん岡田君が、これは紛争事件であるということは御了承いただきまして、その点で私はありがたいと思っておりますが、さらに突き進んでその紛争を解決する、これは平和の手段によって私は解決するのだ、両国関係の親善友好関係を樹立するのでありますから、こういう問題でいつまでもあとに残るような、しこりを残すような紛争は続けるべきではないので、早く片づけるべきなんです。だから必ず韓国政府も私ども交渉に応じてくれる、かように私は確信しております。これを椎名君の確信が、そんなただ単なる確信と、こういうことでなしに、これからつくり出される両国間の関係のことを想定いたしますと、明るい希望を持つのは、これは当然であると、かように私は思います。(「きわめて明快である」と呼ぶ者あり)
  203. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも、きわめて明快であるという声がございますけれども、私にはどうもきわめて明快に聞こえない。これは頭が悪いせいかもしれませんが、しからば第二段の問題についてお伺いしたい。  第一段で、「外交上の経路を通じて解決するものとし」とございますが、もしたとえ韓国がこれに応じましても、この話し合いに応じましても、解決ができない場合には、「両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」と、第二段のことまで書いてあるわけであります。ここにも両国政府の合意する手続に従ってとありますが、韓国側はこの点についても合意することはないと。したがって、調停などというものは起こり得ない、こういう立場をとっておるのであります。そういたしますと、合意する手続に従うということがあって、片方が合意しなければ調停というものも成り立たないではありませんか。したがって、第一段の場合に話し合いに出てきても、それが解決できなくて、第二段に移った場合に、もう向こうが合意しないという事態が起これば調停も成立しない。つまり第二段も成立しないと、こういうことになるでありましょう。そうすれば、事実上解決できないということになるではありませんか。
  204. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 調停によって解決をはかると、こう言った以上は、片一方の申し出が他方のほうにおいてどうも気に食わないと、その方法では気に食わないと、それならばその次の方法はどうか、それも気に食わない。第三、第四と、こう提案して言い分を全部調停というのは、それじゃ成り立ちようがないじゃないかというようなことになると、何のためにじゃあ調停によって解決をはかると言ったのか。そこまでくると、もう条約違反ということになるようであります。でありますから、やっぱり条約というもりが誠実に守られるということは、その基本においてお互いの両国の間に相当の信頼関係があるということを前提にするということでなければ条約というものは成り立たないと思うのであります。私は、あらゆる調停に合意しないということを言うはずはない、そういう不見識なことは絶対に韓国首脳部はなさらない、こう信頼しておる次第でございます。
  205. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたは韓国当局者を信頼しておられるかもしれないけれども、いままでの条約交渉過程、成立過程において、先ほど藤崎条約局長が言ったように、調印のときにもう意見の食い違っておるのはほかにはないと。まあ最初から意見が食い違って両方でもってかってな意見を放送しておるのはこの条約が初めてだということになるわけでありまして、そういうような事態にありますというと、この条項ですね、「両国政府が合意する手続に従い、」は、合意しないこともあり得るということが想定されるのではございませんか。信頼関係と言うけれども、信頼のできないようなことを韓国側でもってどんどんと当局者が発表しておって、それでもってどうして信頼ができますか。調停が成り立ちますか。それを調停ができるんだと、こうおっしゃるのは、考え方が甘過ぎるか、それでなければ私どもを一時のがれの答弁でごまかそうとするか、どっちかにすぎないじゃありませんか。
  206. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これからとにかくあらゆる面において国交を正常化して、請求権の問題も、経済協力の問題も、漁業の問題も、いわゆる両国の共存共栄の道を進もうと、こういう包括的な条約関係がここにできたのであります。もう何でもおまえの言うことは反対だというような、そういう関係を想定して問題を論議することはまことにどうも不適当だと思うのであります。何でも反対、そういうような関係ではない。これから一緒になってそうしてお互いに繁栄しようじゃないかというのでありますから、それは方法いかんによっては気にくわないことがあるかもしらぬ。それなら、これならいかがでしょう、これならいかがですと。また、向こうのもし注文があるならば、その注文を申し出さしてそうして適当に話をつける、こういうことができるのであります。何にも言わずに何でも反対というような、そういう関係は私は想定したくない。
  207. 岡田宗司

    岡田宗司君 想定したくないと言っても、韓国側ではそういうことをはっきり言っているじゃないですか。それですから、あなたが幾ら想定したくないと言っても、韓国側はこういう方針をとるということをはっきりしている以上、これはあなたが幾ら規定しても、あなたが幾ら想定しないでも、この調停はどうも成立し得ないということになるとこれは普通の常識があったら考えざるを得ないじゃないですか。あなたの常識が狂っておるのかどうか、あなたの思考方法がわれわれと違うのかどうか、これはどうも私として理解しかねることであります。  そうして、これはまた総理にもお伺いしたいのでありますけれども、この調停に応じない場合も想定できますが、もし「両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図る」と、こういう事態椎名外務大臣の言われるようなことで起こったといたします。昨日羽生君からも質問がございましたが、この調停というものは、これは仲裁と違って、法的拘束力がない。そこで、この調停に従って、日本が、これだけの理由をもって竹島は日本の領土であると言うのにかかわらず、調停が竹島は韓国の領土であるという結果になりましたならば、その際に一体どういうふうにされますか、これは総理にお伺いしたい。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまこの調停は理論的に法律的に拘束力がないという、これはもう一致した意見でございます。そこで、こういうような事態が起きたらどうか、こういうお尋ねでございますが、まだずいぶん先走った事柄でございますので、私どもはどこまでも自分たちの主張が正しいと、かように考えておりますので、それ以外のことはあまり予定もしておりませんが、そういう仮定の問いには答えないほうがいい、また、答えることができない、かように私は思います。
  209. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、ここに書いてある調停というものの解釈を一般的にお伺いしたい。竹島の問題についての特殊の——特殊というか、そういう場合でなくて、一般的にこういう場合の調停というものの効力をお伺いしたい。合意によって調停の手続をとるということになりますれば、調停者も合意によっておるわけであります。それと同時に、この合意に従って調停に対しては従うということに大体なろうかと思うのですが、そうでしょうか。
  210. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 調停によって国際紛争を処理する場合が少なくないように承知しておりますが、その場合に、調停がある場合にはそれに従うという当事国のあらかじめの了解のもとに行なわれるものと私は承知しております。
  211. 岡田宗司

    岡田宗司君 それならば、両者が調停に従うことに合意をするということならば、何も第三国による調停でなくても、たとえば国際司法裁判所にこの問題を付議してもいいわけではございませんか。国際司法裁判所にこの問題をかけるというには両者の合意が必要であるし、同時に、国際司法裁判所に両者が合意して問題をかけるということは、その国際司法裁判所の判決に従うということである。そうすれば、なぜ日本の言うように韓国は国際司法裁判所にかけることに応じなかったのか。日本は国際司法裁判所に提訴するということについて韓国の合意を得る努力をし、それが得られなかったのか、そこらをひとつお伺いしたい。
  212. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すべての調停があらかじめ当事者の事前のこれに従うという了解をとって行なわれるわけではないのでありまして、調停の場合、あらかじめ調停があった場合にはこれに従うという了解をとる場合もある、それからとらないで調停する場合もあるということを補足しておきます。  それから国際司法裁判所にかけるように日本側として考えたのでありますけれども、どうしてそういうことに至らなかったかということは、一口に言うと、韓国が応訴する意思が、気配がなかった、そういうことであります。なぜ一体応訴する気配を見せなかったかということにつきましては、従来の具体的な事情につきまして政府委員から答弁させます。
  213. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  韓国側は一貫して国際司法裁判所に付託することには反対の態度をとっていたのでございますが、その根拠といたしましては、調停の場合ですと、その調停委員の任命、調停国任命等について両者が合意をいたしますので、自分が反対する、自分の気にくわないものが調停委員になるというような可能性はないわけでございますが、国際司法裁判所の場合ですと、その点は必ずしもそういうふうにまいらない。あるいは、韓国側の一番反対している共産圏諸国の判事もおるわけでございますし、そういうようなところから、現段階、ことに国連に韓国がまだ入っていない現段階においては、国際司法裁判所というものに原則問題として付託しないという方針をとっておるように察せられます。
  214. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、まあ調停にかけることを韓国が同意をしたといたしまして、先ほどと逆な結果、つまり竹島は日本領土であるという、そういう判定が下った場合に、いま韓国は不法に占拠しておるわけでありますが、一体、韓国としては、拘束力のない——道義的に従う義務はあるかもしれぬけれども、拘束力のない調停にはたして従うということが予想されますか。総理大臣、その点はいかがですか。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、こういう交換公文ができました経過等を見まして、十分こういう問題について韓国側も誠意をもって応じてくれる、かように私は考えております。たいへんこれから先の問題でございますので、とやかく言われますが、親善関係を樹立しょうという際に疑ってばかりかかってもいけないのじゃないか。また、国際関係が断絶しておるような立場でものごとを考えないで、とにかくこの条約を発効さしてそうして親善友好関係を樹立しよう、そういうやさきでございますので、こういう事柄はむしろ信用する、信頼して進めていくほうが望ましいのではないか、かように私は思っております。
  216. 森元治郎

    ○森元治郎君 根本に返って、なぜ領土問題がこういうふうに争われるのか。たいへんな生産物が出てくるような島でもない。しかも、遠いところ。なおかつ、日韓交渉をこわしても竹島を自分のものにしなければ引っ込まないという韓国のがんばり方。総理は、領土問題に、あに竹島のみならず、北方の領土にしても、また、潜在主権ではありまするが沖繩、どういう考えで領土問題に対しているのか、何が原因であくまでやるのか、こういう根本についてひとつ伺っておかぬと、領土問題というのはむずかしいと思う。その根本問題についての総理大臣の所見と、もう一つは、メンツの問題もありましょうし、利害関係の問題もあるでしょうが、竹島の場合は、ほかの領土問題と一般的な傾向がありまして、国と国との関係の気持ちがほんとうの理解に達していない証拠——相互不信の場合もありましょうし、いろいろ——だから、条約関係などにはいれない空気、情勢というものが端的にあらわれているのではないか。だから、条約ができても、この小さい問題すら解決しないようでは条約の前途が心配だと、こういう感じがするのですが、御所見をお伺いいたします。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、領土問題についての一般的な考え方、これは、民族的なはっきりした意欲と申しますか、同時にその認識に立っての民族的な意欲、これが非常にはっきりしておる。したがいまして、領土問題は、民族にとりましての死命とでも申しますか、ほんとうに基本的な主張だと、かように感じております。そういう意味で、生産的な手段の生産的意義云々でなく、また、国防的意義があるとかないとかそういう問題でもなく、経済的あるいは文化的な意義、こういうようなことにとらわれないで、ただいまの民族的な期待というものが非常にこれにかかっておると、かように考えております。したがいまして、政局を担当する者は、民族的なこの意欲、意思、その認定に忠実に沿うのが当然のことだと、かように私は考えております。ただいまの北方領土の問題につきましても、あるいは沖繩の問題にしても、小笠原の問題にしても、これは同様のことが言えるわけであります。ただいまの竹島の問題も、これは古くは徳川時代から両国間の紛争になっていたと、かように繰り返されております。人が住んでいないだけに、そういうような古い関係がありながらもそれがはっきりしておらないと、こういうことで今日まで推移したものだろうと思いますが、そういうような関係でございますので、これを解決することが私どもに課せられた重大なる課題だと、かように思って今日まで取り組んでまいったのであります。これは、しかし、日本でさような考え方に徹しなければならないということもありますが、相手の国韓国も、同様に、韓国民から見てその古来の領土を主張しておる。やっぱり民族的な期待に徹すると、こういう課題の問題だと思います。したがいまして、次々に社会党の方からこの問題をめぐる深刻な御質問が出ておりますのも、これまた国民の輿望にこたえたいというそういう意味だろうと思いますので、私、別にもう少し何か説明の方法というか、皆さま方が心配しておられることにお答えすることはないだろうかとか、いろいろ先ほど来苦心しておるのであります。私は、一方におきまして、竹島問題を含めていわゆる一括解決ということをしばしば申してまいりました。しかし、その一括解決ができなくて、竹島問題をあとに残し、ただ、その解決方法は、外交路線で交渉を持つ、そうしてさらに調停の方法に移行するんだ、こういうようなことまで取りきめましたので、わずかに国民に対しましても了解を求めるような事態になったと、かように思っております。  ただ、この際に気をつけて申し上げたいことは、両国間が初めてこれらの条約協定をめぐって親善友好関係が樹立されるのであります。過去を清算し、今度は希望の明日に備えていくというその立場でございます。したがいまして、こういう際にお互いに不信を買うような事柄はできるだけ注意して避けたいと、かような意味をもちまして、皆さま方に対するあるいは説明等においてもこの点で不十分で申しわけないのではないだろうか。ただ諸君の希望どおりでなくて、私は私なりに両国関係の親善友好を深めたいと、かような立場で物事を判断しておりますので、全部を率直に言えばいいじゃないかと、こういうようなお気持ちもあろうかと思いますが、私は私なりにこの程度の説明が両国の親善友好関係を樹立する上に役立つのだと、かように思っております。両国間の紛争問題等も、両国間が親善関係を樹立し、そのことによって解決するのが最も望ましい方法だ、これは椎名外務大臣もしばしば答えておりますが、そういうような方法をとりたいと、かように思って、いままでの説明を続けてまいったのでございます。一般的な領土問題についての私の感じは、ただいま申し上げたとおりでございます。
  218. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま総理からの御答弁がありましたが、総理に必ずしもこの方法が万全である、またこの方法についての説明について十分意を尽くされないということはお認めになっておるようであります。私ども心配いたしますのも、この領土問題というものが、国民にとりまして重大な関心事であり、民族の問題として、これは与野党ともに十分に検討をし、そうして国民の間における疑惑を一掃し、国民に希望を与えるものでなければならぬと思うのであります。ところが一括解決ということの方針が捨てられまして、そうしてここにあらわれたような交換公文に示された方法によって解決するのだ、こういうことを言われたわけでございますけれども、これをいましさいに検討し、そうして外務大臣のお答えを伺っておりますというと、私どもは、この解決について疑惑を増すばかりなのであります。つまり椎名外務大臣の言われることは、希望的観測ではありますけれども、十分なる根拠を持って、私ども並びに国民を納得せしめることができないのであります。むしろ逆に言えば、疑惑を深めるばかりでございます。一体どうして解決するのかということについての具体的なものは、何も示されておらない。もし韓国外交ルートによる話し合いにも応じない、あるいはまた調停にも応じない、こういうことになったらば、解決の方法がない。つまり竹島は、韓国がいまつくっております既成事実、それを続けていくことになる。そうしてこれがいつまでも続くということになりますれば、事実上日本はこの領土を放棄した、こういうことにならざるを得ないではございませんか。そういたしますと、たとえあなたがいかに希望観測を述べられましても、このことは、逆に国民をごまかすためにこの交換公文をつくった、こういうことにならざるを得ないではありませんか。私どもは、この交換公文をあなた方がつくったということについて、どうもそういうような考えを持たざるを得ない。もし、もう少し答弁においてその方法がはっきりさせられますれば、あるいはわれわれは納得することができるのですけれども椎名外務大臣の答弁では、私どもは、日本国民をごまかすためだと、こう言わざるを得ないわけであります。  なお、他に李ラインの問題あるいは通商条約締結等の問題について、その他法的地位の問題についての、いろいろな食い違い等もございますが、きょうはこの辺にとどめて、次回にそれらの問題について、さらに政府の所信を承りたいと存じます。
  219. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岡田宗司君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  220. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 長谷川仁君。(拍手)
  221. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 私は、日韓問題を御質問いたす前に、最近の総理外交政策についてお伺いいたしたいと思います。  佐藤総理は、組閣以来、日韓から日中まで、これを日本外交の一連のテーマといたしまして、スケジュール的に処理されるということを念願された。そうしてこのアジアの平和への戦略という観点からまず日韓問題を処理し、続いてマレーシア紛争、また現在十七度線をめぐって火を吹いておりますところのベトナム問題の解決には非常に熱意を示しておられたわけであります。ところが、最近の新聞報道によりますと、来年の一月にはまず外務大臣がモスクワを訪問する、さらには六月には総理みずからがソ連に乗り込まれ、そうして日ソ交渉ということをおやりになる、こういうことが伝わっているわけであります。  そこで私がお伺いいたしたいことは、現在一部におきましては、この日韓問題から急に方向転換をされまして日ソの問題に熱意を持たれてこられたということは、日中問題から国民の目をそらせるための一つの手段ではないかというようなことも反対論者の一部にもいわれております。しかし、私はそうは思いませんけれども総理にお伺いいたしたいことは、日ソ——この問題をただ単に平和条約締結を目標とされているのか、それではなくして、平和共存を最近非常に強く打ち出しているところのソ連と接近することによりまして、アジアで最も大きな問題でありますところのベトナム問題を処理されようという熱意を示されているのか、そういう点につきましてまずお伺いいたしたいと思うわけです。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだ私はソ連訪問というものを決意しておりません。おりませんが、この席でもお答えしたと思いますが、わが国の外交の路線を見ますと、国府とは御承知のようにサンフランシスコ条約以来平和条約ができておると、しかし、韓国については何ら条約的なものあるいは協定等を設けておらない、ソ連に対しては鳩山内閣以来何らの進展を見せておらない、こういうことを申し上げております。したがいまして、私の、善隣友好関係を樹立すると、こういうほうから申せば、ソ連は一衣帯水とは申しませんが、日本海を隔てて、さらにまた樺太等におきましても近い関係にございます。そういう意味で、この日ソ間の問題も今日のままでよろしいとは、かようには考えておりません。また、ソ連側から最近提案されておる日ソ航空協定なり、あるいは領事条約なり、あるいはシベリアの開発に対する協力の問題なり等々の問題が提起されておりますので、問題は非常に多いことは事実でございます。しかし、私はただいままだそちらへ出かけるということはきめておりませんので、その点は誤解のないように願いたいと思います。さらに南方の諸地域に対しましては、きょう藤山企画庁長官が出発してマニラに出かけましたが、これなども東南アジア諸地域における開発銀行等の設置なり、その他の経済協力の問題で各国と相談すると、こういうことでございます。また、マレーシアあるいはタイやビルマやインド等々におきましても、すでに御承知のように、私は経済協力あるいは技術提携等々によりまして開発途上にある国々を援助したいと、かように思っております。また、外交の基本としてはいずれの国とも仲よくしていく、しかし、それにはお互いにそれぞれの立場を尊重すると、こういう意味で独立を尊重し内政に干渉しない、こういう原則のもとにそれぞれが平和共存していきたい、かような考え方をしばしば申し述べておるのでございます。これらの点については誤解がないだろうと思います。ただいまお尋ねになりましたソ連の関係は、いまもお答えしたような実情でございます。
  223. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 外交政策につきましてまだ質問も用意しておりましたけれども、時間の都合によりまして日韓に入りたいと思いますけれども、昨日でございますか、後宮アジア局長が、この日韓条約に関しまして、韓国におきましては賛成が六九・八%、反対が九・七%、こうおっしゃつておりましたが、私は、総理にまずお伺いする前に、後宮アジア局長、あなたは、この今回の条約の責任者として、かつまた現地の究気をはだに感じてこられた一人として私はお伺いいたしますが、なぜこの日韓交渉が十四年も長くかかり、かつまた、批准したにもかかわらずいろいろの空気が底流している、この根底に流れるものは一体何なのか、何であったかということをまず私はアジア局長からお伺いいたしたいと思うのでございます。それから総理への質問に移りたいと思っております。
  224. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  初めに、昨日私申し上げました韓国の世論調査の結果についてでございますが、これは、私当時申し落としましたが、政府の官制による世論調査ではございませんで、ソウル新聞が三月の末にやりました世調調査の結果でございます。それで、それだからといいまして、私、決してあれがあれだけの数字が出たから全然楽観しているというわけではございません。いま、事実といたしまして、長谷川先生の御指摘されました韓国人の気持ちにつきまして一番はっきり出ておると思いますのは、調印のときに朴大統領が特別声明を出しておりますので、それを引用することによって、韓国人が現在どういう気持ちでおるかということの御説明にさしていただきたいと思うのでございますが、その中で朴大統領は、「過去数十年間、いや、数百年間われわれは日本に対する根強い怨恨の中で生きて来ました。彼等はわれわれの独立を抹殺し、彼らはわれわれの父母兄弟を殺傷し、彼等はわれわれの財産を搾取しました。」と、こう言っておりまして、そうして続けて、「しかし、国民の皆さん! だからといってわれわれはこのせちがらい国際社会の競争の中で、過去の感情にのみ執着していることは出来ません。いくら昨日の怨讐」——怨のある讐という字を使っております。——。「いくら昨日の怨讐といえども、われわれの今日と明日のために必要とあれば、彼らとも手を握らねばならないことが国利民福を計る賢明な処置ではないでしょうか。」と申しておりますので、われわれは決してこの昔の恨みが消えているのではなく、その恨みにもかかわらず、この国づくりのためにこの日本と手を結ぼうという、何とも開明された利己主義と申しますか、そういう見地からの対日接近であったというふうに判断しております。そうしてこの声明の最後のところで、韓国自身に対して、この日本に対する尖等感を捨てろということを非常に強く言っておりまして、この「日本の再侵略、経済再侵略とおそれている人に反問したい。彼等は、何故それほど自信がなく、被害意識と劣等感にとらわれて、日本といえば無条件に恐れるのかということであります。私はこのような卑屈な考えがすなわち、屈辱的な姿勢であると指摘したいのであります。」と言いまして、新しい韓国人にこの対日劣等感を捨てよということを強調しております。そうして最後に、「私はこの機会に、日本国民に対し、一言明らかにしておきたいことがあります。」と申しまして、日本人に対する訴えをしておるのでございますが、その中で「われわれとあなた方の間にあった不幸な過去を清算し、新しい善隣として再び手を携えるようになったことは、われわれ両国民にとって幸いなことであると思います。」、「しかし、正式調印が行なわれたこの瞬間に於て、沈痛な表情と錯雑な心境で、過去の旧怨を無理に抑えて再び手をにぎる韓国国民の気持を単純に見過ごしたり決してゆるがせに考えてはならないのであります。これから、われわれ両国国民が真の善隣として友邦になりうるや否やは、今後にかかっています。」、こういうふうに述べておるのが韓国人の上下の日本に対する考えをよくあらわしているのじゃないかと思うわけでございまして、調印の日に韓国の全官吏がすべての宴会を廃止してこの日を迎えたというニュースなども、この現在の韓国日本及び対日国交問題について抱いている気持ちをあらわしているように承知しております。
  225. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 ただいまアジア局長がおっしゃられましたように、韓国内におけるところの対日感情というのはきわめて複雑である。そこで私総理に申し上げたいことは、現在日本国内におきましてはこういう意見がございます。それは日韓両国の再出発というものに際してあまり古い過去をお互いに持ち出すのは考えものだ、すべては前向き、前向きで行こうというような意見が強いわけであります。しかし、私は二度にわたりまして韓国へ参りまして、そしてこの日韓条約に反対する野党の方々、あるいは鮮血を流しているあの学生運動の最先端に立つ学生諸君、いろいろの、また与党の議員諸公とも会いまして、そして彼らが言うことは、前向きもけっこうだけれども、われわれの傷あとというものは非常に深いのだということを非常に彼らは痛切に言っている。しかし、この十四年もの長い間かかったところの交渉がまとまったということは、国際情勢が非常に影響したということも、これは客観状況として私どもよくわかりますが、しかし、椎名外務大臣が、私ども意外に思いましたことは、二月にソウルに参りましたときに、たった一つのことば、「長い不幸な両国の歴史関係を反省する、過去を反省する」、こう言った一つのことばが、これがたいへんに韓国民に快い印象を与えまして、そうしてこれがいわゆる妥結ムードづくりに大きな力になったということはいなめない事実なんです。現在この韓国の対日感情をあらわす私は一番いいことばは、一つは韓国の古いことわざにこういうことがある。「一たび弓で射られたことのある小鳥は、曲がった枝を見てもそれが弓に見えておののいてとまれないんだ。」、もう一度申しますと、「一たび弓で射られたことのある小鳥は、曲がった枝を見てもそれが弓に見えてその枝にはとまらない」ということわざ。もう一つは、知識層が何を言っているかと申しますと、「三しい」ということばがいま韓国のインテリの間で言われている。「三しい」というのは、終戦後最初に日本にやってきた韓国の人たちはうらやましいなあという気持ちで帰ってきた。同じ独立国でありながら片方は非常に復興している、われわれは非常にまだ進歩がおくれている、うらやましいという気持ちで帰ってきた。二度目に日本へ参りますると、ねたましいなあという気持ちで帰ってきた。三度目にソウルから日本へやってまいりますると、憎々しいという気持ちになって帰ってくるのだ。これが現在の韓国民の偽らざるところの気持ちなんだ、こう言っておりました。また、過日東京へ参りましたところの新聞界の有力メンバーが私どもと懇談会をやりましたときに、われわれざっくばらんにものを言わしてもらうならば、われわれは三億あるいは五億の請求権経済協力というものの額を言っているんじゃないんだ、日本のその誠意がほしいんだ、真心がほしいんだ、三十六年間われわれは屈辱と搾取というものを受けてきた、その事実を率直に認めていただいて、そして日本及び日本人が、これからお互いに手を握るんだが、過去三十六年間に対するわれわれは非常な反省をしているのだということばがあれば、韓国民はこれから本気になって手を結ぶという気持ちがあるんだ。ところが、現在日本国内におきましては、日本は非常に目ざましい復興をした。また終戦処理、賠償も大体片づいてしまった。しかし、一番足元にあるこのお隣の韓国、この傷あとを全然いやしてない。かつまた、たびたびの世論調査なんかを見ますると、世界で一番きらいな国というと、これは共産党の方におこられるかもしれませんが、ソ連、その次が韓国だというのが日本のいわゆる世論調査にあらわれている。なぜこういうような、お互いに親近感どころじゃない、憎しみの感情というものを積み重ねているのかということを私ども考えた場合に、今回のこの日韓条約を結ぶに際しまして、私は総理から伺いたいことは、この六十一年目のおつき合いを始めようとしている今日でございますから、この際友好関係をほんとうに促進しようという御熱意を、何か私は、ただ外務大臣の過去を反省するということばだけでなく、ここに彼らの心にぐっとくる一ことばが私は必要じゃないかと思うのであります。本日も野党の方々との論戦を私伺っておりまして、李ラインの問題も出ましたけれども、海図の上の李ラインが消えましても心の中の李ラインが消えなければ、これは日韓の要するに友好というものは私はできないと思う。どうか、そういう観点に立ちまして、きのう野党の方々がイデオロギー問答を言っておりましたけれども、私は与野党ともにここにやはり謙虚な気持ちでもって、たとえこれは昭和の年代あるいは大正の年代の政治家が行なった罪悪ではないにしても、明治の元勲が行なったところのいわゆる罪悪であっても、われわれはやはり日本国民として、日本民族として、ある程度の私は反省が必要じゃないかというふうに思うわけでございますが、この点についての総理の御意見を伺いたいと思います。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、日韓間の善隣友好関係を樹立しよう、かように考えまして、条約締結その他の協約等の調印を終えまして、皆さま方の承認を求めておるのでございますが、ただいまほんとうに隣の国同士仲よくしたい、その気持ちで一ぱいでございます。しかし、その両国間には、ただいま長谷川君がいみじくも御指摘になりましたように、不幸な過去の歴史があります。そうして、その傷あとはたいへん大きい。なかなか簡単にはいえないのだ。そのことを、あるいは韓国に出かけられ、あるいはまた韓国の人たちを迎へ、またうわさにも聞く等々してみますると、私どもの想像以上にこのみぞは大きい、かようなことを痛感するのであります。ただいま善隣友好を樹立する、そのことが両国のためにしあわせじゃないかと、かように申しましても、そう簡単にはいかないぞと。過日も、私がテレビ対談をした際に、韓国には、「目がさめて.みたら隣に日本がいた」、こういうことばがあると、こういう話であります。これはいい意味にも悪い意味にもとれるだろうと思いますが、多分に日本というものに対しての過去の不幸な歴史を想起せざるを得ない、こういう韓国民の気持ちだろうと思います。私はこういう過去の歴史につきまして、ほんとうに与野党ともにえりを正して深い反省をし、その反省に基づいて前向きで話をしていく、このことが実は必要なんではないかと、かように痛感をするのであります。椎名君が出かけまして、二月に、率直な外務大臣の気持ちを披瀝したと同時に、そのことが日本国民全体の気持ちだと、こういう意味であっさり受け入れてくれた。これはほんとうに両国民が、苦いまた不幸な歴史もありますが、同時に、近隣の関係で、歴史的に、文化的に、経済的に、あらゆる面で交流を重ねてきた、こういう意味で非常に親しみもあるわけであります。だから、私どもが、今回のこの条約締結やあるいは協定の調印等におきましても、ほんとうに謙虚で、ただいま申し上げるように反省の上に立っての前向きの姿勢で誤解を受けないように、疑惑を生じないように行動することがどうしても要求されるのであると思います。これは経済協力の問題につきましても、特にその点がもうすでに韓国民から要望されておりますが、確かにこういう点につきまして、私どもほんとうに謙虚に反省し、同時に、また疑惑や誤解を受けないように処置をとることがこれはもう当然だと、かように思うのでございまして、善隣友好関係を樹立するためには、一そうの戒心が必要だということを申し上げてお答えといたします。(拍手)
  227. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 今回のこの日韓交渉が十四年、正式に言えば十三年八カ月、外交史上にもまれな長期交渉であったわけでございます。この点については、もうすでに再三再四言われておりますことでございますから、私からさらに言う必要はないわけでございますが、私が言わんとするところは、この第七次交渉に移ってから、具体的に言いますと、本年の二月の十七日に椎名外務大臣韓国を訪問されて以後のスピード、これがたいへんに目まぐるしくスピーディに処理されていったわけです。ことにこの基本条約につきまして、椎名外務大臣韓国に滞在中に、昼夜をついて李外務部長官と折衝いたしまして、そして三日後の二月の二十日には、この基本条約の仮調印を済ましてしまった。そしてさらに三月、車農林部長官、あるいはまた外務部長官が来日しまして、再度交渉をやったわけでございますが、このときの交渉ぶりが、いわゆる「かん詰め会談」というようなことばが出たわけです。この、要するに第七次交渉の最終段階におきまして、いわゆる「かん詰め会談」というようなことが言われ、そしてこの四月三日の仮調印に至る一週間というものは、両国関係者が不眠不休で、そして道理というよりも、もうスタミナの戦いだと、いわゆる正常の外交常識では考えられないような交渉が続けられた。この点が非常に国民から疑惑——何といいますか、疑念を抱かれている点じゃないかと思うのであります。私もソウルへ参りましたときに、野党側の反対党の人たちが言うことには、日韓国交正常化は基本的には絶対反対じゃない、しかし、彼らの同じように言ったことは、この第七次会談の最終段階において、なぜこんなに急がなければならなかったのかということにつきまして、われわれはやはり疑惑を持っているのだ、こういうことを言っているわけであります。私は、この交渉というものは、もちろん常に相手があることであるし、タイミングというものが必要であるということもよくわかりました。また、椎名外務大臣以下この交渉に当たられた方が、非常に苦心されたということも、私了解いたすわけでございますけれども、日華条約——この日華条約交渉というものを見ますると、オアとアンドということばだけでも九十日かかっているし、しかも、第一次会談が始まりましてから日華条約が正式に調印されるまでに、二月の十七日から始まりまして四月の二十八日——七十日もかかっているし、いま申し上げましたような点から申し上げまして、なぜこんなに急がなければならなかったのか。十四年間の経過というものはわかるけれども、最終段階、この点について、非常な疑念があるということは、私はいなめない事実だと思いますので、この点を私ははっきりするということが必要じゃないかと思うわけでございます。この点につきまして、総理大臣あるいは外務大臣にひとつお伺いいたします。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 後ほど外務大臣から詳しくお答えをして、当時の事情をつぶさに報告さしたいと思いますが、私はこの過去十四年間続いていたその間に、それぞれ積み重ねが行なわれて、そうしていわゆる第七次会談というものが最後に仕上げができた、かように思います。その際に、野党の諸君からもしばしば急転直下解決したと、こういうことで疑惑のあるようなお尋ねをいただいておりますけれども、ただいま申し上げるように、総体としてはそれぞれの種み重ねの結果だと、かように申し上げますが、同時に、こういうことに対しては熱意と努力という、これが実はたいへんなのでございます。ただいまお尋ねのありました点は、急いでこれを解決したというよりも、両国関係者の諸君が条約の、並びに協定の調印ということに非常な熱意を示し、また最善の努力を払った、これが人並み以上、人間わざではないような努力がされた、こういうことで、その点を私は高く評価してもいいのではないかと思うのであります。かような熱意なり努力が続けられたゆえんのものは、この両国承認はしているが、しかしながら、しばしば出ておりますように、大使の交換は行なわれておらない。韓国だけから東京に駐在している。あるいは漁業問題では絶えず紛争あるいは日本漁民が困った状況に置かれている。あるいはまた、多数の在日朝鮮人の法的地位の問題もきまらない等々、両国間に取りきめなければならない幾多の日常の問題があるわけでございます。これらの事柄を何としても早く解決しようじゃないかという今日までの積み重ねでようやく経済協力の問題も片づいた、こういうようなことで、漁業の問題もある程度積み重ねででき上がっている。今度はひとつ最後の仕上げをしようじゃないか。また、法的地位の問題も、ただいま申すように、最後の仕上げをするのだ、こういうところで非常な熱意を示され、そして努力が払われた。その結果が、ただいま言うように、両国間がようやく満足のいく条約あるいは協定ができたのでございます。したがいまして、こしらえたことが、あるいは特別な国際的四囲の情勢がこれをせしめたのではないか、こういうようなお話もございますが、これについては、しばしば繰り返して申しますように、さようなことはございません。どっからも圧迫はこうむっておりません。また、軍事的意図ももちろんございません、等の説明をしばしば繰り返しております。要は、過去の積み重ね、さらに最後に示された熱意と努力された成果だと私はかように信じております。したがいまして、なお詳細等については外務大臣から私の答弁についての補足があるだろうと思います。お聞き取りいただきたいと思います。
  229. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理から大局的な立場に立って今日の成果を得た事柄に関しましてお答えがございましたので、もはや私はつけ加える何ものもないのであります。ただ、繰り返された問題でございますが、とにかく日本韓国との間が一衣帯水の間柄にあるにかかわらず、その他の国際間のつき合いは非常に広くかつ深くなっておるのに、日韓両国だけがあたかも深いみぞで隔てられておるようなかっこうになっていることが、これが非常に不自然な状態だ、最近の三十六年の不幸な歴史に対して非常な対日感情がけわしいものがある。あるけれども、やっぱりもとはといえば、両国の民族が非常な緊密な関係を幾世紀の問維持してきたのでございますが、非常な心の奥には親近感を持っている、こういうような複雑な関係にあったのではないかと思うのであります。ことに私は、占領時代の最終段階に大東亜戦争を迎えた、最後には強制労働を朝鮮の青年にかけた、これはまあ青年のころはだれしも夢を持っておるものでありますが、それらがさんざんに打ち砕かれて、そしてあるいは炭鉱に、あるいはその他の土木工事にもう何の抵抗する余地もなくみな振り分けられた。そして非常なきびしい生活に追いやられたというようなことは、これはやっぱり進んでやるのと違って、非常な私は深い怨恨を買ったものではないか。大体、他民族の支配をして、最後に来るのはここなんです。これをやると非常な恨みを深くするというふうに私は承知しておるのであります。何か近しいものであるが、しかしながら非常なそこに割り切れない感情がある、それをほどくのに相当時間がかかったのではないか。いまそれが全部解決されてこの成果を得たということは、これは私は言えないと思います。いまの朴大統領ことばにもあるように、対日警戒心、不信頼感、そういったものがまだまだ消えておりませんけれども、しかし、そんなものにばかりこだわっていられない、何とかしなければならぬという気持ちがやはり韓国の人々の胸にわいてきた。そうして、よし、いよいよここで、じゃ正常化をしようということになってからというものは、これは非常に早いのであります。問題はむしろ感情の調整というものに非常に手間がかかった。これは全部調整されたわけじゃないけれども、まずとにかく手を握るだけの気持ちに向こうがなったということのために、非常な時日を要したのではないかと思うのであります。シナのことばに、「渠成って水到る」ということばがあるそうであります。掘り割りが完全にできる、そうして、それに水を流すとどうっとやってくる、堀ができないうちに水を幾ら流そうとしたって、あっち行ったりこっちへ行ったりして、なかなかうまく流れない。「渠成って水到る」、まさにそういうような感じがいたすのであります。
  230. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 さすが椎名外務大臣は学のあるところを示されたわけでありますが、そうして非常に苦労されておつくりになりましたこの日韓条約につきまして、まあ私ども国民の大多数は、これは賛成しているということは間違いのないところであります。しかし、一部のやはり反対がある。しからば、その反対はどういう点にあるのかというと、だんだんしぼられてきたわけであります。ただ、私どもがやはり基本条約の点において、一体新聞界、あるいは有識層の人々がどの点に疑問を持っておるかといいますと、やはり条約の背後に軍事同盟があるのではないか。社会党の方々がこの点に大いに論戦を戦わされているわけでございましょうけれども、しかし、この点につきましては、佐藤総理からも再三再四全面的に否定されておりますし、もう国民もそうした誤解を持っておらないと思う。ことに韓国の東亜日報、との社説の中に言っていることばに、「わがほうがある程度期待したところの東北軍事同盟は、日本がゆめにも考えていないということが明らかになった」と言っているわけです。韓国がある期待を持った。確かに韓国はある期待を持っておった、新聞に出ている以上は。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕 しかし、「ゆめにも考えていないということがわかった。」、相手の国でさえそう言っているわけでありますから、これは全然私は根拠がないと思う。しかし、なおまだ疑点があるとするならば、その根拠は一体どこなんだろうかということを私どもが分析してみまするというと、こういうところに私は帰結すると思う。皆さんの反対論を私が分析した結果をお話しいたしたいと思いますから、ひとつお聞き願いたい。現在の反対論の根拠というのは、国連決議による体系づけだと思う。どういう点があるか、今度のこの日韓基本条約は百九十五号(III)に基づいて韓国政府承認するという、この行動を選択したということを彼らは非常に重大だ、こう言っているわけです。何が重大か。この百九十五号の決議というものは、これだけで孤立しているんじゃないんだ、完結しているんじゃないんだ、国連におけるところの朝鮮問題の決議の全理論体系の基礎になっているんだというのが反対論の基礎になっている、こういうふうに私どもは分析できるわけです。さらにこれをずっと見てみますると、ではどういうところが基礎になっているかと申しますならば、基本条約の前文と第四条で、両国が「国際の平和及び安全の維持のために、」というところと、相互の関係において「国連憲章の原則に適合して緊密に協力する」、こう言っているのは、両国政府が将来朝鮮問題のこの国連決議の全理論体系の基礎に従って緊密に協力するんだ、こういうふうに反対論の方々は解釈している。これが突き進んでどういうことになるかというと、在日米軍が国連軍として出撃した場合に、いわゆる事前協議の必要がないんだ、あるいは日米安保条約の第六条によるところの米軍出撃のための施設及び区域の供与が発効されるとか、またいわゆる「吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文」によって日本は施設及び役務の提供に協力することになる。これが反対論の基礎になっているように私どもは見受けるわけであります。そこで、私は総理あるいは外務大臣にお願いいたしたいことは、今後こういった軍事同盟論というものを完全に封ずるために、本日は、やはり理論に対しては、ただそんなことはない、そんなことはないということでなくて、理論体系づけてこれを完全に封じてしまう。そうすれば、今後私はこの反対論というものはもう進むことができないのじゃないかというふうに考えますので、たとえばこの前文の読み方が、条約局長の説明によりますと、コンマの読み方がある、このコンマの読み方によって非常に内容が変わってくる、こうおっしゃっておりますから、あるいは外務大臣でなくてもけっこうでございますが、ひとつ専門の条約局長からこのコンマの読み方が、どういうふうに読めばこの前文というものが納得できるのかということを御説明願いたいと思います。
  231. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 基本関係条約の第二項についてのお尋ねと思いますが、御指摘のように、この項では「国際の平和及び安全の維持のために、」というところにぽつがあるわけであります。したがいまして、これは「平和、安全の維持のために……協力する」、こういうふうに読むのじゃございませんで、「両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが国際の平和、安全の維持のために重要である」、こういうふうに読むわけでございます。これはぽつ一つでえらく意味を深く読み込むじゃないかとの疑問があるかもしれませんが、英文ではこの点を非常に明瞭に、日本文よりもっと明瞭になっているわけでございます。
  232. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 この点につきましてもう少し御質問いたしたいのでございますが、時間もございませんので、本日岡田委員がねばりにねばりましたところの竹島問題、これはやはり政府与党の私ども立場からいいましても論じなければならぬ点だと思いますので、ひとつお伺いいたしたいと思うわけであります。  先刻来総理、外務大臣が、これは民族感情なんだ、したがってこの問題は深刻な問題だと、私はそのとおりだと思う。今回のこの日韓条約の中で、やはり竹島の問題というものには国民は非常に大きな関心を持っている。私は紛争か紛争でないかという点につきましては、これはもう明白な事実でありますから言う必要ないと思います。しかし、私がお伺いいたしたい点は、まず最近ヨーロッパ諸国の間においてこういった島嶼をめぐるところの紛争というものがあったかどうか、また、それはどういうふうに解決されたかということをまずお伺いいたしたいと思います。
  233. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 最近一番顕著なものは、英仏間にドーバー海峡の諸島の領有について争いがございました。国際司法裁判所で解決を見ております。
  234. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 このマンキエ・エクルオ事件というものは、何年間かかって解決いたしたことでございますか。
  235. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 正確な年数を記憶しておりませんが、一世紀になんなんとするぐらいの長さにわたって争われたことであったと思います。
  236. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 一世紀、正確に言いますると九十八年。この九十八年間かかって、小さな島嶼をめぐって九十八年間かかったということにつきまして、これはこの竹島にも関連いたしたいのでございますが、歴代の内閣がこの一括解決の希望を国民に与えてきた。こういった領土紛争というものは非常に平和的な解決はむずかしい。いまのこのマンキエ・エクルオ事件においても感ぜられるように、私はこの点でもって総理にお伺いいたしたいことは、島の問題、この竹島の問題も、これは非常にむずかしいんだということ、これを最初に国民に印象づけておけば、この竹島に対する国民関心というものもある程度私は違ったものがあったんじゃないか。いわゆる少し甘過ぎたんじゃないかというような声も聞かれるわけでございます。この点はいいかがでございましょうか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あるいはそういうこともあったかもわかりません。また、竹島自身が無人島であると、こういうような事柄もたいへん問題が簡単に解決されるんじゃないかと、こういうふうな期待を持ったと思います。しかしながら、これは何と申しましても民族の最大の関心事だ、それを人が住もうが住むまいが、また、経済的な価値があろうがなかろうが、たいへんな関心事だということを先ほどもお答えいたしましたが、まさしくそのとおりでありまして、これは、日本がただいま領有を主張していると同時に、韓国側もこれを古来の領土だと、かように申しております。それほど深刻な問題だということがおわかりになったと、かように思います。
  238. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 時間もございませんので、最後にやはりこの竹島のことについてお伺いいたしたいと思うのでございますが、私はソウルに参りましたときに、この竹島の問題につきまして反対の立場をとられる方々にも伺った。そのときに私が伺ったことは、竹島の解決というものは、日本の誠意のバロメーターだと、こう言っているのです、反対をされている方々でさえ。したがって、日本がです、ほんとうに今後この日韓条約締結することによって誠意を示していくならば、この問題は容易に解決できるのだと、こういうふうに言っておられる。また、椎名外務大臣はこうおっしゃっておる。両国の友好的なムードが高まるにつれてこの問題の解決のためにいろいろの手段方法をとることが非常に容易である、こう言っておられる点から私はかんがみまして、この竹島問題の椎名外務大臣のいわば楽観論というものは、私はある程度根拠があるのだというふうに考えるわけでございますが、外務大臣、いかがですか。
  239. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別にその特別の根拠というわけじゃありませんけれども日韓間に新しく非常な利害の緊密性というものが急速に増大すると思うのであります。そうして、いままでにらみ合ったよりもやっぱりこのほうがよかった、仲よくするに限るという、そのことを体験をもって感ずるようになる。そういう場合には、最終的にいずれになるにいたしましても、これを分割するわけにはいかない。どっちになるにしましても、とにかくこの問題については一切相談に応じないとか、合意に同調しないとか、そういうような、そういうつまらぬ感情はもうとうの間に吹っ飛んでしまって、そしてやっぱり熱心であればあるほど、とにかく話し合ってとにかく解決しよう、あるいは合意によって解決の方法を見出そうという熱意が両方から生じてくるのは、これ当然の話だと私は考えて、さように申しておる次第であります。
  240. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 本日の長谷川君の質疑はこの程度といたします。  次回の委員会は、三十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時一分散会      —————・—————