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1964-06-04 第46回国会 参議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月四日(木曜日)    午前十時十三分開会   ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            栗原 祐幸君            鈴木 一司君            鈴木 万平君            田中 啓一君            坪山 徳弥君            日高 広為君            丸茂 重貞君            亀田 得治君            中村 順造君            大和 与一君            米田  勲君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    国 務 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    警察庁刑事局長 日原 正雄君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○暴力行為等処罰に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)   ―――――――――――――
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。稲葉君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 暴力行為等処罰法改正についての質問を始めます。  この法案は非常に重要な意義を持っておる法案ですから、各方面から慎重に審議を進めていきたいと、こう思うわけです。  そこで、最初に、一番重要な点は、この改正案審議するに関連をして、暴力行為等処罰法というものがどういうふうな経過で成立をしたかという点、その本質的な問題、これらが私は一番大きな重要点であり、出発点であるとこう考えるわけです。  これはことしの五月号の「法律時報」ですが、この六十八ページと六十九ページに、法務省刑事局刑事課長羽山忠弘氏が「暴力行為等処罰法改正について」というので、これは「実務研究室刑事篇」というかっこうで、小論文といいますか、それを書いておられます。私は、法務省の当事者がこういうふうなものを遠慮なく各方面に書けるというふうな一つの空気があることはもう絶対に必要だと、こう思うので、これについて、こういうふうなものを書いていけないとかなんとかということを決して言うのではありません。こういうふうなものがどんどん出ていくことが必要だ、こう思うのです。そこで、この六十九ページの上から二段目ですが、いろいろなことを述べてこられましたあとで、「そこで、改めて改正案が――この改正案というのは、いま出ておる暴力行為等処罰法改正案ですが――何故にこれほど理解されないのかということを考えると、どうやらこれは同案が暴力行為等処罰に関する法律改正案という形で提出されたためのようである。すなわち、反対論者の中には暴力行為等処罰法改正ときいただけで弾圧強化という疑惑をもつ者が少なくないようである。これらの論者によれば、同法律大正一五年ストライキ弾圧規定していた治安警察法第一七条が廃止されるに際しその「すりかえ」として制定された悪法であり、爾来今日に至るまで労働運動等を弾圧してきたものであるが故に、改正案もまた弾圧強化を意図するものであること明らかというのである。」、これはどなたの質問かわかりませんが、どなたかの質問を引用されているわけです。「しかしながら、私は、――私というのは、これは質問をしている私ではなくて、羽山課長ですが――まず果して同法が「すりかえ」的弾圧法であったかどうかというようなことは厳正公平な歴史的考証を要する事実問題であり、しかく簡単に論断すべき限りではないと思う。」、こういうふうに言われているわけです。私も、この考え方、「厳正公平な歴史的考証を要する事実問題であり、」ということについては、賛成であります。「しかく簡単に論断すべき限りではないと思う。」と言われていることにも賛成です。これは、法案の中身ということではなくて、この問題について、特に治安警察法との関連において、暴力行為等処罰法の本質的なものというか、それがどこにあるかということをしっかり「歴史的考証を要する事実問題」として解明しなきゃならないんだ、「簡単に論断」しちゃいけないんだということを言われているのに私は力を得たと言うと語弊がありますが、こういう御支持をいただいたものでありまするから、これに関連をして「歴史的考証」ということを中心としてこれから質問をしていきたい、こう思うわけです。  そこで、質問は、法務大臣お尋ねするのは、大臣の知っておられる範囲で私はけっこうだと、こう思うのですが、その知っておられる範囲においての治安警察法というのは一体どういう法律だったのか、そこら辺のところから出発をしてお聞きをしたいと思うんです。大臣の知っておられる範囲でけっこうです。
  4. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 政府委員をしてお答えをいたさせます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと待ってください。お答えをさせますじゃなくて、大臣の知っておられる範囲でけっこうだと私は聞いているので、大臣が知らなければ知らないんだと、私は知りませんと、だから政府委員答弁させますということでもそれは一つ答弁だと思いますが、いきなり政府委員答弁させますでは、これは答弁にならぬと思うんです。私は、この事実はどうか、この事実はどうかということをお尋ねしているのじゃなくて、あなたの、大臣の知っておられる範囲でのことをお聞きしているのですから、知っておられる範囲というのはどういう点か、それをひとつお聞かせ願いたい。
  6. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) お答え政府委員にいたさせたほうが適当だと思いますから、いたさせます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、大臣の認識しておられる限りの限度において、知っておられる限度においてのことをお聞きしているのであって、知らなければ知らないでけっこうですよ。知らないものを知ろといっても無理なんですから。あなたの知っておられる限度においてお答え願いたいというのですから、それの限度お答え願って、補充的なものがあれば政府委員からのお答えも私はそれはそれでいいと思いますけれども、いきなり政府委員から答えるではぼくはいかんと思います。有能な、いまの内閣の事実上の総理大臣クラスといわれる賀屋さんがこういうのをやられたのでは、ぼくはちょっと心外と言うと語弊がありますけれども、ちょっともの足りないような印象を受けるので、ぜひお答えを願いたい。
  8. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私の個人の知識のテストなら別ですが、いまは政府の所見を申し上げる際です。私はよく知りません。政府委員お答え申し上げたほうが政府考え方ははっきりいたします。
  9. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 実は、歴史的考証を経るべきであるということにつきましては、私も全く同感でございまするが、今日残っております資料としましては、当時の大正十五年当時にこの法律国会審議されました会議録と、その法律立案に当たりましたたとえば池田克最高裁判事などの著書などが当時のものとしては私ども一つ資料として考えるべきだと思いますが、しかしながら、当時の資料だけですべてが実証的にできるというのではなくて、戦後にまたいろいろな角度からこの問題を論じた著書もたくさんございます。まあそういうものからいろいろ議論をいたしますれば、いろいろな議論ができると思うのでございますけれども、私どもは、よってもって当時の政府考え方というものは、やはり国会審議の場で公にされました意見、これを基礎にいたしまして論ずるのが相当だと考えておるのでございます。  それによりますると、暴力処罰法というものは、法律自身、この条文の規定から、構成要件からも明らかなように、治安警察法十七条のような争議そのものを取り締まるというような規定はさらにないのでありまして、その中に規定してあります構成要件に該当する暴力的な行為だけを処罰対象にしておるということからしまして、労働運動等を直接弾圧しようという目的に出たものでないことは明らかでございます。したがって、治安警察法廃止されまして、その直後に時間的にはそれに続いてこの法律ができたのでございますけれども治安警察法にかわってこの法律をつくったという性質のものではありません。治安警察法暴力行為だけを罰しておるのではなくて、労働争議と今日見られるそのもの自体を罰しておりますことは、十七条の規定を見ますと明らかでございます。こういう法律廃止してしまった。しかしながら、当時の社会情勢々見ますると、池田克さんの本をしばらく援用さしていただきますが、これは古い法律学全集でございますが……。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「現代法学全集」じゃないですか。
  11. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 「現代法学全集」です。これによりますと、当時たくさんの暴力事犯があるようでありまして、そういうものを対象にしてつくったということが明らかに書いてございます。白木屋にヘビを持っていってどうしたとかというような事件もあったようでございまして、そういうことから考えますると、やはりその当時の暴力的な風潮に対処しようという法律であったことがうかがわれると思うのでございます。その後に、戦前におきまして、しばしば各方面から御指摘を受けておりますが、この法律農民運動等適用を見たと。しかし、これはそういわれておりますけれども、なるほど農民運動の際に発生した暴力行為適用を見たのでございまして、その事実をもって農民運動適用したと、こういうふうな言い方をされるということになりますと、これは用語の問題かもしれませんが、私は農民運動そのものを罰する規定はさらに当時の法律を全部見ましてもないと思うのでございます。それに、暴力行為に出た場合にはこれに適用があるということは判例もしばしば指摘しておるのでございます。そういう状態から見まして、私は、治安警察法身がわりとしてこの法律が制定されたというふうな見方をすることは、実証的に見て必ずしも当を得たものでないという考え方をいたしております。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私がお聞きしているのは、治安警察法全体がどういう法律だったかということを聞いているわけで、その十七条がどうだったとかすりかえだったとかいうことは、これは私はまだ聞いていないわけですよ。それは聞き方によってというか受け取り方によってはそう受け取ったかもわかりませんけれども、そういうことを聞いているわけじゃなくて、すりかえということ自身も、それは内容的にもそのことば自身が持っている概念を明確にしなければ論議は進展しないわけですが、治安警察法という法律自体がどういう法律だったかということを聞いているんです。十七条や三十条はそのあとで聞きますから、先へ先へと行っちゃって自分のほうのペースへ巻き込もうという努力はけっこうですけれども、そういうのにはなかなかこっちはひっかかりません。ゆっくり行ってくれませんか。治安警察法というのはどういうときに一体できたのか、どういう背景のもとにできたのか、そこから始まらなければ考証にならないわけですよ。「歴史的考証を要する」というのだから、歴史的考証というのは、まず治安警察法ができたときはどういう背景で、どういう日本状態で、どうしてこの法律ができたのかということから始まらなければ、いきなり十七条へすっ飛んで行ったのでは、これは質問にもならぬし、答えにもならぬわけでしょう。そこら辺からひとつお願いします。
  13. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まことにどうも出過ぎたことを申し上げて恐縮でございました。私は、羽山課長論文をお読み上げになりましたので、その部分の御質問かと思いましたので、決してペースに巻き込もうという考えではございません。  もうすでに廃止になりました法律でございますし、私どももその当時は検察官としてこの法律を使ったことの経験がございませんので、その性格等をここで明らかにすることは私にはできないのでございますが、ただ過去の文献等によって私の理解する範囲でございますが、この法律大正二年でございますか、はっきりいたしませんが、そのころできたと思うのでございますが、まあ治安警察法政治に関する結社でございますね、いや、集会の届け出を規定しておりますし、警察官は安寧秩序を維持するために必要な場合には集会運動を制限、禁止または解散することもできますし、集会に臨席をいたしまして言論を中止することができることになっておりましたのでございまして、これを何も左翼革新陣営運動ばかりでなく、保守陣営運動にも、政治運動にもこの法律が使われたようでございますが、革新陣営農民組合の行なう演説会だとか集会の取り締まりあるいは大衆運動の解散というようなものにも使われた実績があるようでございまして、当時のまだ団結権とか、今日憲法二十八条に保障されておりますようなものも一つ黎明期にあって、そういう方向に日本の国情が大きく動いておったことは私も認められるのでございますけれども法律制度としてはそういうものに対してはむしろこれを押えるという形の法律制度下にあったように思うのでございます。そういう時代の一つ法律であって、これは先ほど申しましたように、大正の末期には廃止の運命になったのでございまして、そういう背景のもとにつくられておった、言うなればやはりこれは一種の弾圧法であるというようにこれは私認めざるを得ないのでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのいまの局長の言われた中で、二つの点が違うのだと思うのですがね。一つは、この法律ができたときの日時とかなんとかはっきりしませんわね。これは調べればわかることですし、調べてくれませんか。  それから大正十五年廃止された廃止されたと言うけれども廃止されていないでしょう。これは改正されたのじゃないですか。その点は違うのじゃないですか。だから、質問意味が、はっきり私のほうの意味がとれなかったのかもわかりませんけれども、あなたのほうじゃとにかく十七条へ持っていこう持っていこうと、そればかり考えておられるから、だから廃止された廃止されたと言うんだけれども大正十五年には治安警察法そのもの廃止されていないでしょう。その点は違うんじゃないですか。
  15. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 治安警察法性格を申し上げました観点から、その性格の主流をなしております十七条が廃止になりましたので、そういうふうに申し上げたんで、まことにそういう意味では申しわけないと思います。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそれはこまかいことですから……。  治安警察法がいつどのような形でできたかということを、法律番号や何かもう少しはっきりさせてくれませんか。これはわかっているんじゃないですか。
  17. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この法律は、明治三十三年法律第三十六号で制定をされたものでございます。それでよろしゅうございますか。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなたは大正二年にできたような話でしたね。それも違うのですか。
  19. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは、私、ちょっと表を見ておりまして、それが大正二年から表ができておりましたので、そのときからと思ったんですが、間違いでございました。明治三十三年が正解でございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ歴史的考証で、それは明治三十三年か大正二年かということと、廃止になったか廃止にならなかったかという点で食い違っていると言えば食い違っていますけれども、それはまあ基本的な問題じゃありませんから、この程度にしておきますが、そういう点も歴史的考証が必要だとわざわざ書いてあるんですから、考証というのはやっぱりそういうところから始まらないとちょっと考証にならないように考えるんですね。これはあげ足とりみたいになりますから、この程度にいたしまして、これが同じ国会に、十七条と三十条ですね――三十条は罰則ですが、これの廃止暴力行為処罰法が同じ国会提案されたということは、これは間違いないですわね。
  21. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは間違いないようでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 またことばじりをとらえて恐縮ですけれども、間違いないようだというんですか。間違いないんじゃないですか。これは五十一国会でしょう。帝国議会というのか……。ことばじりをとらえるようで非常に恐縮なんですが、よく聞こえなかったんですがね。どうなんですか。
  23. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私は間違いないようだと答えましたが、間違いないとお答え申し上げます。私はその当時関係をしておりませんので、あなたのように正確に御質問を受けるのに答えるには、私は資料によってお答えするんです、いまの部分は。でございますので、間違いないと思います。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうむきにならんでもいいじゃないですか。だけど、これは前から問題になっているところじゃないですか。一緒国会提案されたんだということは、四月二十四日でしたかの衆議院法務委員会坂本泰良さんが質問したでしょう。あれをぼくは傍聴していたんですけれども、あれは一緒国会提案されたんだけれども、これはすりかえではないんだ、関係はないんだと、こう竹内さんに言われているわけですね。いまになってくると、一緒国会提案されたようだ、こうなってくると、ぼくはことばじりをつかまえるのはほんとうにいやなんです。竹内さんはほんとうのところぼくの大先輩ですし、そういう個人的なことは抜きにしていやなんですけれども、もう少し自信を持ってお答え願いたいと、こう思いますね。  同じ国会提案されたわけですね。そうすると、法律番号はどうなっているんですか。
  25. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 六法全書の一四〇四ページのところにもございますが、「大正十五年四月十日法律第六十号」として公布されております。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは六十号がこの法律であることは間違いないんですが、治安警察法改正でしょう。十七条と三十条を削除するんだから、改正ですわね。それは何号ですか。五十八号でしょう。法律には五十八号で出ているんじゃないですか。
  27. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 羽山課長論文から私に非常にお尋ねでございます。羽山課長もおりますが、政府委員じゃございませんのでお答えを控えておりますけれども、その点は、そういう点をお尋ねになるのだったら、私も精密に調べまして正確にお答えを申し上げたいと思いますが、突然羽山課長論文からお入りになりましたので、私はまことにそういうところは十分調べておりませんので、いまの治安警察法改正法律番号等も、これは調べればすぐわかりますから、後刻調べまして、ある機会にお答えをさしていただきたいと思います。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、調べましてと言ったって、私のほうから――これはあなた局長池田克さんの本を読まれたんじゃないですか。「現代法学全集」にも出ている。この中にはっきり書いてあるじゃないですか。池田克さんは立案者の一人だと言われているんですから、そんなのわかるんじゃないですか。法律五十八号でしょう。五十七号が労働関係調整法ですね。そんなことは本に書いてあるんじゃないですか。決してあなた方を変なふうにいじくり回すというふうに言っているんじゃなくて、こういうふうにちゃんと歴史的考証を要する事実だと書いてあるんですし、そのことは前々から問題になっているんですよ。すりかえかすりかえじゃないかということが一つの論点になるところなんですから、そのくらいのことは調べていただかないとあれだと思うんですが、常識的なことじゃないですか。
  29. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいま調べましてお答えをしますが、法律は読んでおりますけれども法律番号まで私はまことに不敏でございまして、覚えておりません。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは書いてありますよ。
  31. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  32. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こしてください。
  33. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法律番号がわかりました。「大正十五年四月九日法律第五十八号」でございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、そうすると、五十八号と六十号とその間に五十九号というのがあるわけですよね。一つあるわけだ、間がね。これは何なんですか。
  35. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのように五十九号があるわけでございますが、いまこれもちょっと調べましてすぐお答えをします。
  36. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  37. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして。
  38. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お答え申し上げます。「大正十五年四月九日法律第五十九号」は、東濃鉄道株式会社所属鉄道買収ノ為公債発行ニ関スル法律という法律でございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、まあ五十九号はこれには関係ないということがわかったわけですが、そうすると、法律五十八号の治安警察法改正案として出ているわけですが、それと暴力行為処罰法と同じ国会提案されたことは間違いないんですが、同じ日ですか、提案日は。これはどうなっているんですか。議決の日はこれは一日違うわけですか。一緒審議されていることはどうですか。
  40. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 四十年前のことをお尋ねでございますので、資料を整えましてお答えいたしたいと思います。そういう点からお尋ねいただくことがあらかじめわかっておりますれば、もちろん法規を用意してまいったのでございますが、まことに申しわけない貴重な時間をむだにしますが、しばらくお待ちを願いましてお答えさしていただきたいと思います。
  41. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をとめて、   〔速記中止
  42. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を始めて。
  43. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 中間的にお答えを申し上げたいと思いますが。治安警察法改正法律案でございますが、これは第五十一帝国議会政府提案として出されましたのでございまして、これは、記録によりますると、大正十五年一月二十日に衆議院提案されておるようでございます。それから衆議院におきましては、同年三月二十二日可決されまして、貴族院に回付され、貴族院においては三月二十五日に可決されておりまして、四月九日に公布法律番号は第五十八号でございます。  暴力行為等処罰に関する法律案は、大正十五年三月九日政府提出法律案として衆議院提案されまして、三月二十三日衆議院で可決され、次いで三月二十五日貴族院において可決され、四月十日法律第六十号として公布されております。  この間、法律審議がどういうふうになされたかということはちょっとわかりかねるのでございますが、暴力行為処罰法に関しましては、速記録の片鱗からうかがわれるのでございますが、同法律案特別委員会のようなものができておったようでございまして、その委員会審議されたのが衆議院速記録に出ております。その際治安警察法一緒審議されたかどうかという点につきましては記録上明らかになし得ませんが、提案の日が違っておりますので、おそらく別の委員会審議されたのではないかと思われます。ただ、貴族院におきましては同じ日に可決されておることは事実でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのことである程度わかってきたのは、衆議院で可決されたのが治安警察法改正が三月二十二日、暴力のほうは三月二十三日と一日違い貴族院のほうは同じ日、公布の日は一日違い、こういう事実がわかってきましたが、あと審議内容等については、これはあなたのほうでも調べておいていただきたいと思います。私のほうでもこれは調べたいと思います。  そこで、ちょっとここで別な質問をしたいと思うんです。それは、いま暴力法がこういうふうな形で審議されたと言われましたが、それは修正されたんですか。
  45. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 一部修正がございました。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その修正のことについてはそれはあとで聞きますので……。  そこで、治安警察法の十七条の内容になるわけですが、治安警察法の十七条の内容は、「左ノ各号ノ目的ヲ以テ他人ニ対シテ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀シ又ハ」云々というのですが、これが一号、二号、三号とあるわけですね。そうすると、一号、二号、三号はどういうふうな構成要件というか犯罪態様というのでしょうかになるんでしょうか。具体的に条文に即して一つ一つ御説明を願いたいわけです。それは、たとえば、一号、二号、三号の中にもいろいろなものが入っておりますから、それに一つ一つに基づいて説明を願いたいと、こういうふうに考えます。なぜこういうことを聞くかというと、あとでわかってくるわけですが――そこまで申し上げたのではちょっと質問が行き過ぎになりますから、そこは言わないでおいて、その内容を一つ一つ詳細にお聞きしたい、こういうふうに考えます。
  47. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 治安警察法第十七条は、いま一部分お読みいただきましたが、これの条文はこういうことになっております。「左ノ各号ノ目的ヲ以テ他人ニ対シテ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀シ」というのが一つと、それから「第二号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス」、こうなっておりまして、三つの号に分かれております。それで、一号は、「労働ノ条件又ハ報酬ニ関シ」……
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「労務」でしょう。
  49. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 「労働ノ条件又ハ報酬ニ関シ」、こういうふうに承知しておるのですが……。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「労務」ですよ。だめだな、違ったところを読んでいちゃ……。
  51. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 申しわけありません。私の記録が「労働」とありますが、「労務ノ条件」でございます。「労務ノ条件又ハ報酬ニ関シ協同ノ行動ヲ為スヘキ団結ニ加入セシメ又ハ其ノ加入ヲ妨クルコト」、これが一号であります。二号は、「同盟解雇若ハ同盟罷業ヲ遂行スルカ為使用者ヲシテ労務者ヲ解雇セシメ若ハ労務ニ従事スルノ申込ヲ拒絶セシメ又ハ労務者ヲシテ労務ヲ停廃セシメ若ハ労務者トシテ雇傭スルノ申込ヲ拒絶セシムルコト」。第三号が、「労務ノ条件又ハ報酬ニ関シ相手方ノ承諾ヲ強ユルコト」、「耕作ノ目的ニ出ツル土地賃貸借ノ条件ニ関シ承諾ヲ強ユルカ為相手方ニ対シ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀スルコトヲ得ス」。そして、この違反に対しましては、第三十条で処罰規定がございます。  そこで、この十七条の前段の部分は、一、二、三号の行為にいずることを目的として暴行、脅迫、公然誹毀をしてはいかぬというのが構成要件になっておりますし、後段のほうは、第二号の目的をもって誘惑、煽動することを得ず、こうなっておるのでございます。  詳しく御説明するようにということでございますが、前段のほうにつきましては、いま読みましたところである程度御理解いただけると思いますが、問題は後段の部分でございまして、私ども労働争議、同盟罷業、こういうものを直接この法律が取り締まっておると見ておりますのは後段の部分でございまして、同盟罷業を遂行するために、使用者をして労務者を解雇さす、労務に従事する申し込みを拒絶せしめるということ、逆に、労務者のほうをして労務を停廃――サポタージュさせる、あるいは労務者として雇い入れする申し込みを拒絶させる、こういうことを誘惑したり煽動したりする行為が罰せられるのでございますので、この後段の部分がいわゆる労働運動を直接――弾圧ということばが適当かどうかわかりませんが、取り締まっておる、規制しておる法律であった、かように考えておる次第でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまあなたの言われたのは、条文を読めばわかるわけです、書いてあることですから。そうではなくて、一号、二号、三号を具体的にどういうことなのか、例を用いて説明をしていただきたいということを言うわけです。それでないとわからないんですよ。それがあとになって非常に大きな問題になってくるわけです。いままでの論議の中ではその点が全然と言っていいくらい解明されていないわけです。これでは私は国会審議にならぬと思うんです。だから、いま言った治安警察法の十七条の一号なら一号の「労務の条件」とかいろいろありますけれども、それに対して暴行、脅迫したのは具体的にどういうことなのか、二号なり三号なりについて一つ一つ説明を願いたいわけです。これがないと審議が進まないんですよ。これが大事なんですから。条文を読めというなら、何も局長にわざわざ読んでもらう必要はないわけです。そこのところのどういう具体的な例なんですか、ひとつ例を考えて説明してもらいたいんです。
  53. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは法律解釈をしろという……。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 解釈ではない、例を示してです。
  55. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 例だけを示せばよろしいのでございますか。とにかく廃止された法律でございまして、どうも責任をもって法律解釈をし、例を示してするということになりますと、多少の時間をいただきませんと、行政事務のようにすぐ右から左に、現在やっていることでございましたら、即座にお答えもできるかと思いますが、先生は何か著書を非常によくごらんになって、一々私どものったない法律解釈に御質疑がございますので、私どもも慎重にお答えさしていただきたいと思うのでございますが、多少時間をお許しを願いたいと思うのでございます。勉強いたしまして、政府委員として責任のあるお答えをさしていただきたいと思います。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 検討するというんですから、午後にしていただきたいと思います。進まないですよ。
  57. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をやめて。   〔速記中止
  58. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして下さい。  それでは、一応この程度に午前中の質疑をとどめまして、休憩いたします。    午前十一時十九分休憩    ――――・――――    午後零時四十一分開会
  59. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。
  60. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 治安警察法第十七条の解釈につきまして所見を申し述べたいと思います。  この条文には、現行法に使われておりません法律用語等もございまして、全く適正であるかどうかということにつきましては、短時間の研究でございますので、確信を持って申し上げかねるわけでございますが、一応申し上げてみたいと思います。  まず、この十七条の規定は、労使双方に平等に取り扱うというたてまえの規定になっております。  それから犯罪行為でございますが、犯罪行為は、暴行、脅迫、公然誹毀でございまして、この暴行、脅迫、公然誹毀につきましては、一号と三号の目的をもって暴行、脅迫、公然誹毀をした場合が処罰対象になる。それから二号の目的をもってする場合には、暴行、脅迫、公然誹毀のほかに、誘惑もしくは煽動も処罰対象になっておるというふうに読めるのでございます。  そこで、中身でございます。しからばここに「他人ニ対シ」の「他人」とは何であるかという点につきましては、被害者でございますけれども、この被害者は何人たるを問わず制限がないという解釈も字句の上からはできるのでございますけれども、なお、この犯罪行然の内容をよく見てみますると、加入の申し込みを受けた者または加入しようとしておるような者に対して暴行、脅迫という行為があった場合、そういう限定された者に限られるというふうに理解できるのでございまして、もちろん何人たるを問わずという制限なしという解釈をいたしますと、かなり広い解釈になるのでございます。もしこれが現行法にこういう規定がかりにあるといたしますれば、私は狭いほうの解釈をとるのが相当だというふうに考えるのでございます。  「暴行、脅迫」につきましては、現行刑法にもあるのでございまして、おそらく全く同一の内容概念だと思います。  次に、「公然誹謗」ということばがございますが、これは現行法にはないことばでありますが、要するに、名誉に対する罪のところには名誉毀損と侮辱という二つの罪がございますが、これを学問上は誹毀罪と一般に申しております。ここで公然誹毀とこうありますのは、おそらくは誹毀ということばは、名誉毀損、侮辱、現行法の両方を含むのではあるまいか、かように考えます。もちろん公然でございますので、公然という意味は、現行法にもありますように、不特定または特定の多数人の認知し得べき状態において名誉毀損あるいは侮辱的な行為に出る。これが公然誹毀であると思います。  次に、「誘惑若ハ煽動」、この「誘惑」というのも現行刑法にはちょっとないのでございますが、営利誘拐の規定の中で誘拐ということばは、誘惑をして人の事実上の支配を確立すとるいうふうに一般に説明されておるのでございますが、この誘惑ということばは、学問的に申しますならば、煽動と対比してみますると、誘惑のほうは、理性に訴えて自由な意思決定を失わせる。そういう行為でございますし、煽動のほうは、これは破防法等にも規定がございますように、それからまた廃止になりましたが治安維持法の煽動につきましての判決もございまして、そういうものによって明らかであろうかと思います。それと同じ内容のものと考えておるのでございます。  次に、こまかく中へ入りまして、一号でございますが、「労務ノ条件」、この「労務」というのは、これは肉体的な労務も精神的な労務も両方含むものと解します。ただ、ここに「行動ヲ為スヘキ団結」ということばがございます。「団結」というのは団体とは違うのでございますが、「団結ニ加入セシメ」という意味が、いまのことばでいうならば団体に加入せしめというふうに読むのが相当なのかもしれませんが、なお団結ということばはもう少し広い意味を持っているのじゃないか。すでに団体ができておらないでも、これから団結しようとするそういう場合に、加入せしめ、加入を妨げる、こういうことの場合にはやはりこの団結の中へ入れて読むべきではなかろうか、かように思うわけでございます。「加入」という意味は、いま申しましたように、それに加わるわけでございますが、これも、労働者の団結、使用者の団結、双方を含むものと解されます。  次に、二号でございますが、「同盟解雇」、このことばはちょっとただいまの現行法には見当たらない用語でございますが、思うに、労使平等の立場で規定しております趣旨から申しまして、この同盟解雇というのは、多数の使用者が協同の意思に基づいて労働者を解雇する、こういう意味だと思うのでございます。そこで、この多数の使用者ということから当然理解されるのでございますけれども一つの企業の中で社長と重役とが協同の意思でというのではいけないので、別の企業の使用者の二人以上が協同の意思でやる場合、こういうものがこれに当たるのだと、かように思うのでございます。「同盟罷業」につきましては、これは現行法にもございますので、現行法と同じように解して差しつかえないと思います。この二号が意味が非常にわかりにくいのでございますが、同盟解雇と同盟罷業、同盟解雇のほうは使用者のほうの要件でありますし、同盟罷業のほうは労働者のほうの要件でございますので、そのあとで続きます「使用者ヲシテ労務者ヲ解雇セシメ若ハ労務ニ従事スルノ申込ヲ拒絶セシメ」というのは同盟解雇のほうに結びつく用語のように思いますし、それから次の「又ハ」以後の「労務者ヲシテ労務ヲ停廃セシメ」――これもサボでございまして、これは現行法にも文字がございます。「若ハ労務者トシテ雇傭スル入申込ヲ拒絶セシムルコト」、これはあとのほうにかかる内容のように思うのでございますが、そういうふうに分けて書いてなくてここに混然と書いてあるところに一つ意味があるのではないか。たとえば、今日のような状況から考えてみますと、第一組合、第二組合があって、第一組合の人が第二組合の人に対してやるというようなものも入ってくると、いまの使用者のほうの側に書いてあるようなことも労働者のほうの側に書いてあると同じような条文で処罰されることもあり得るというふうにも読めるのでございまして、この辺が実は私も明確に申し上げかねる点でございます。  第三号の「労務ノ条件又ハ報酬ニ関シ相手方ノ承諾ヲ強ユルコト」、この点でございますが、これは先ほど申しました「労務ノ条件」、これはまあたいしてむずかしい用語はないかと思います。  第二項といたしまして、「耕作ノ目的ニ出ツル土地賃貸借ノ条件ニ関シ承諾ヲ強ユルカ為相手方ニ対シ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀スルコトヲ得ス」とございますが、この「土地賃貸借ノ条件」という点でございますが、これは「耕作ノ目的ニ出ツル」というふうに上に目的がくっついておりますことから、おのずから「土地賃貸借ノ条件」といういうものには限定が出てくるのでございまして、一般的に申しますならば、山林、原野、家屋その他建物の賃貸借には関係のないことでございますから、ここの「土地賃貸借」といいますのは、やはり耕作地の土地の賃貸借でございますから、所有権の移転とか永小作権とか地上権とかいったような物権はこれに含まれないというふうに理解されるのでございます。「条件ニ関シ」のこの「条件」は、そういうことから自然に出てまいりまして、借地料の一金額とか、その支払いの時期、支払う物、金額――金であるとか物であるとかいったもの、それから支払いの方法とかといったようなものがこの条件だと思うのでございます。  大体この規定に関しましてはさように理解をいたすのでございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま説明をいろいろ願ったわけですけれども、まあ抽象的であると言えば抽象的であると言えるし、具体的であると言えば具体的であるとも言えるし、どっちともとれるような答弁なんですけれども、そこでたとえばいま説明がなかった一つは、「各号ノ目的ヲ以テ」というのがありますね。その「目的」というのは、あとのほうの「耕作ノ目的」というのじゃなくて、「各号ノ目的ヲ以テ」という「目的」は、故意との関係はどういうふうになるというふうに判断しているわけですか。
  62. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 第一号につきましては、団結に加入させ、加入を妨げるということを目的としての暴行、脅迫でございます。第三号につきましては、条件、報酬に関しまして相手方の承諾を強ゆるということを目的としての暴行脅迫でございます。それから第二号につきましては、ここに幾つかございますように、申し込みを拒絶させ、労務を停廃させ、雇用するの申し込みを拒絶させるということを目途として暴行、脅迫、公然誹毀、誘惑、煽動する、これがこの罪の構成要件だと思います。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問は、「目的」というのは、いわゆる故意だけではなくて、故意以上のものを要求する目的がありますね、背任のような場合。ああいうふうな意味の目的という意味なのか、故意との関係はどうなっているかを聞いておるんですがね。
  64. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この「目的」は、現行法のいろいろな目的罪とやはり同じように解しまして、そういう事実行為についての認識、犯罪行為は暴行、脅迫等の行為でございますけれども、そういう認識を持っていれば、そういうそれは目的があると、こう申していいと思います。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現行法でそういう目的というのはどこにあるんですか。
  66. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑法に目的罪の規定がございますが、その目的罪につきましても同様に解しておるわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、どこにあるんですか、刑法のどこにあるんですか。
  68. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 文書偽造罪等に「行使ノ目的ヲ以テ」というのがございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、背任のような場合の目的とは違うと、こういうわけですか。背任の場合は、第三者の利益をはかる目的とかいろいろあるでしょう。あれと違うというわけですか。
  70. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 文書偽造の場合の「行使ノ目的」というのと同じでございまして、いまの背任の場合におきましても、従来の通説と申しますか一般の解釈によりますと、背任の場合におきましては、自己もしくは第三者の利益となりまたは本人の損害となることを認識をしてこれを認容する――認識するだけでいいという説とさらに認容まで要るという説とがございますが、私どもは認識するだけでいいと考えております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは背任の場合の認識説でしょう。それはそれでいいですけれども、そうすると、この場合の目的というのはそういう意味でないというならそれでいいですけれども、こういうふうな目的についての認識は要らないというんですか、要るというですか。
  72. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、先ほどから申し上げておりますが、こういう目的を持っておるというのでありますから、そういうことを認識する必要がある……。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あるんですか。
  74. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。ないというふうには申し上げていないつもりでございます。
  75. 中山福藏

    委員長中山福藏君) この際、申し上げておきます。赤澤国家公安委員長がお見えになっておりますから……。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、それはあとのことにして、そうすると、いま刑事局長の言われた一号、二号、三号の構成要件というか、犯罪の類型というか、いろいろあると思うんですが、たとえば「労務ノ条件」というのは労働条件と解すれば、労働条件に関していろいろ交渉してみて、その組合なら組合にほかの者は入っちゃいけないとかあるいは入れとか、こういうようなことを言って暴行、脅迫をしたというような場合には、治安警察法十七条第百万に当たる。「条件」もあり「報酬」もありますが、わかりいいのは第三号、これが一番わかりいいでしょう。「労務ノ条件」を労働条件と読みかえる。「報酬」を給与と見かえてもいいし賃金と見かえてもいい。そうすると、労働条件なり賃金に関して相手方の承諾を強ゆること、そういうふうなことになった場合に暴行、脅迫を加える、これが治安警察法十七条の犯罪だと、こういうわけですね。そうすると、この治安警察法十七条の場合には、共同してやった場合だとかそれから威力を示してやった場合だとか、こういうふうな場合も当然この中に入るんだということに考えられるんですか、それはどうなんでしょうか。
  77. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 理論的には、それは別の問題だと思うのでございます。一、二、三号の目的をもって他人に対して暴行、脅迫を加えれば、一人の行為でありましても、これに該当するわけでございます。これが多数になりますれば、刑法の共犯の規定がかぶってくると思いますが、この条文自体からは、多数が当然前提になっておるのだというふうには構成要件上は見られないと思うのであります。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、ぼくの質問とあなたの答えとは変わっているんですよ。私の質問は、共同してやった場合でもこの治安警察法十七条に触れるかと、こう聞いているわけです。そうすると、あなたのほうは、いや、共同してやった場合は、この構成要件には入っていないんだと、そういう限定をしていないんだと、明記してないんだというふうなことを答えているわけでしょう。そういう意味にとれるんですね。質問答えとが違うわけですよ。私の聞いているのは、共同してやった場合でも、当然、これと、それから刑法六十条なら六十条とは、別個に適用されるのだから、この中にも共同してやった場合も入るのだと当然考えられるのじゃないかと、こう聞いているわけですよ。入るのじゃないですか。そうならば、共同の場合にはこれに入らないとは、構成要件に当てはまらないんだということは、何もこれは断わってないでしょう。当然入っていいのじゃないですか。刑法の場合には共犯の適用を排除するとは、この条文から何もないのじゃないですか。それも含まれるのじゃないですか、当然。
  79. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ことばのあやでございますので、先生のおっしゃるように申されても、私の申すのとそう違わないと思います。私は、この条文自身には、多数とか団体とかということは当然の構成要件になっていないということを申し上げたわけでございまして、多数でやった場合に、この条文は適用が排除されるかといえば、刑法総則の規定がかぶってきて、排除されないで適用を見る場合があると思います。それは同じことだと思います。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、たとえば労務の条件、労働条件、賃金の問題に対して相手方の承諾を多数で強いる、そこには何が成立するわけですか。脅迫罪が成立する場合もありましょうね。職務強要罪が成立する場合もありましょうし、いろいろなものが成立する場合があるのじゃないですか。私が聞いているところは、いま言ったような一号、二号、三号に考えられている構成要件該当行為、それが共同してやった場合だとか、あるいは多衆の威力を示してやった場合とか、いろいろあると思いますが、そうした場合には、これに該当する行為は、暴力行為等処罰法にも当てはまるのじゃないですか。この法律があったときは別ですよ。この法律があったときは別として、これがなくなってしまえばこの法律適用がないけれども、この法律に当てはまることは、ものによっては暴力行為処罰法にも当てはまることもあるのじゃないですか。全部が当てはまるかどうかは別として、それも含まれることは事実じゃないですか。
  81. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは構成要件からはっきりすることでございまして、そういう場合もあり得ると思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう場合もあり得ると思いますと、こう言われるんですけれども、それでは、この治安警察法十七条の構成要件に該当することで暴力行為処罰法に該当するものはどういうふうなものがあるんですか。治安警察法十七条の各号ごとに説明を願いたいんです。それを私は求めているわけなんですよ。それを聞きたいんだけれども、まっ先に初めからそれを聞くとも言えないから、質問のテクニックで、それも聞けないから、こうちょっと回りくどく言っているんですが、それも午前中から一つの聞きたかった結論といえば結論ですがね。
  83. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 治安警察法十七条は、個々の犯罪を一応構成要件として、それを前提としておるようでございます。それから暴力行為処罰法の第一条一項は、構成要件に書いてありますように、「多衆ノ威力ヲ示シ、」とか、「団体若ハ多衆ヲ仮装シテ」とか、「兇器ヲ示シ」とかいうような、そういう一つの条件を加重要件として、実体は暴行、脅迫、器物損壊でございますが、そういうところで現実の適用面におきましては重複してくるものがあるかと思いますが、法律としましては、いまの労資関係といったような目的の中に書いてありますようなことは全部白紙になっておりまして、ただ、団体行動が暴力行為に及んでくるということだけを構成要件として定めたのが暴力行為でございますし、治安警察法は、労資関係で、ここに先ほど御説明したような内容の目的をもってする暴行、脅迫、こういうことでございまして、暴行、脅迫という罪はもちろん刑法の中にございますが、それの特別加重類型としまして、治安警察法は、労資間のいま申したようなことを目的とした特殊な犯罪、それから暴力行為は、そういう目的を全部アウフヘーベンしまして、全く団体とかなんとかという特殊な事情のもとにおける類型を定めたものでございます。私は、そういうふうに理解をいたすのでございます。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのお答えの中にも私はかなり一つのあやがあると思うのです。たとえば労資関係治安警察法の十七条が適用されたといいますけれども、資本家に関することに適用されたことがあるんですか。池田さんでも何でもそんなのないと言っておりますよ。
  85. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 朝来申し上げておりますように、これは四十年前の私もよく知らない法律でございまして、その運用状況にまで私が責任をもってお答え申し上げることはできないのでございますが、ただ、大正十二年ごろに書いた本がありますが、その本を見ますると、労資間の問題を平等に取り扱った法律ではあるけれども、資本家のほうの、つまり使用者側のほうの同盟解雇といったような問題等をはじめとしまして、使用者側がその処罰対象になった例はないようでございます。でありまするから、この法律は労働者のほうに負担が過重になっておると、であるからこれは廃止すべきだという意見を書いておるものを、大正十二年ごろ書いたものでございますが、そういう記述もあるところを見ますると、いま仰せのように、使用者側にこの法律適用された例というものはないのかもしれません。私は確認をいたしておりません。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この治安警察法の十七条に書いてある目的をアウフヘーベンしたと言われるんですが、アウフヘーベンしたにしろ、しないにしろ、その目的のある犯罪、こういう目的をもって暴行、脅迫したもの、それが共同してやったとか、多衆の威力を示してやったとか、そういうふうなものも、暴力行為処罰法として構成要件に該当して処罰できるわけでしょう。これはぼくは念を押しているわけですからね。だからといって、この暴力行為処罰法が十七条をそのまますりかえたものだ、それだけだと私は言っているのじゃなくて、十七条の該当行為も当然暴力行為処罰法に入ってくることがあるのじゃないですか。そうでしょう、あなたそういうふうに言われているわけだから。だからといって、それが直ちにすりかえだとは私は論断しないと言うんです。それだけですべてがすりかえなんだ、こういうことを言うのじゃない。それは違うんですよ、私が言っているのは。
  87. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いまの点につきましては、先ほどもお答えしたつもりでございますが、われわれの社会現象というものは複雑でございますから、そのうちのある断面をとらえて法律適用します場合に、二つの法律適用される場合があればこそ、刑法に一所為数法の規定を置いたり、手段結果の関係をどう処理するかという規定を置いているわけでございますから、お話のように両方の規定適用される場合があり得ると思うのです。また、あると理解するのが法律解釈上当然だと思うのです。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、両方の規定適用されると言ったって、片方は、治安警察法が四月九日で廃止になったんでしょう。そうして次の日の四月十日から暴力行為処罰法が施行になっているんですから、一緒に数法の適用になることはないわけですから、それは理論的には別ですよ。実際的には一緒になりっこないでしょう。片っ方は大正十五年の四月九日に廃止になっているんじゃないですか。四月十日から暴力行為処罰法が施行になっているから、だから一緒には、観念的にはなっても、実際上はなれないんじゃないですか。
  89. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そのことは初めからわかっておる議論なんで、私の申し上げている一所為数法の規定は、幾つかの法律が同時に一つ行為適用される場合があればこそ刑法に一所為数法の規定があるんだということを申し上げたわけでございまして、この法律はもうすでになくなっておりますから、この法律暴力行為法とが、どんな実例をさがしてみても、数法で適用を見たという例があるはずはないわけでございます。それはもうわかっておるわけでございます。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、あなた、刑法総則の議論をここで述べたって始まりませんが、私の言っているのは、四月九日に廃止になった治安警察法十七条に関連をする罪が四月十日から暴力行為処罰法の中に移ったと言っては語弊があるかもわからぬけれども、同じような暴力処罰法として適用になる場合もあるんじゃないかということを聞いたら、いやそういう場合もありますと言うから――そういうわけでしょう。それをあなたのほうでその目的をアウフヘーベンしたとかなんとかむずかしいドイツ語を使われるから……。しかし、そういうようなことで、治安警察法がなくなっても、そのものは形を変えて暴力行為処罰法適用されることがあり得るんだと、こういうことを私は念を押したわけです。これはまあ堂々めぐりの議論ですけれども、その点ははっきりしたわけですわね。そうでしょう。
  91. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) あんまりはっきりいたさないことを残念に思うのでございますが、しつこく申し上げて恐縮でございますが、両方の規定一つの現象に幾つかの法律適用される場合があるということを前提として、刑法にそういう総則の規定があるのだということを私は申し上げたのでございます。ですから、一つの現象に違った目的の法律が二つ一緒適用される場合があるのでございます。そのことを言っておるのであって、先生のおっしゃるように、だからこうなったでしょうというふうにおっしゃられても、それは目的が違います。法律は違う目的の法律一つ行為適用される場合があるということを私は申し上げておるわけでございます。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、問題を整理しましよう。
  93. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  94. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、こういうふうにお聞きしましょうか。治安警察法の刑罰とそれから刑法の刑罰との関係、これは普通法と特別法になると思いますが、その関係はどういうふうになっておりますか。これは旧刑法と比較しないとわからないですよ。
  96. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 旧刑法をここへ持ってきておりませんのでございますが、一般法と特別法の関係で申し上げますと、三十条を見ますると、「一月以上六月以下ノ「重禁錮」ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス」、こうなっておりますので、これは選択刑ではなくて、附加刑、併合して科せられるという形になっております。したがいまして、現行刑法の暴行、脅迫等の罪に比べますと、はるかに重い刑を置いていると思いますし、それから暴力行為処罰に関する法律の第一条一項を見ましても、短期が定めてないという意味において、やはりこのほうが重い。やはり、こういう目的をもってする暴行、脅迫というものは犯情重しという考え方に立っているように見えるわけでございまして、特別法でございますので、一般法の刑法がおそらくは一番軽くて、その次の暴力行為が特殊な加重類型を定めて刑を重くしていると思いますし、さらに治安警察法の三十条は重い刑を定めている、こういうふうに言えるわけでございます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、あれじゃないですか、刑の重い軽いのきめ方というか比較のしかたは、あなたの場合は、罰金刑が附加されているから、だから重くなるんだという言い方でしょう。そういう言い方じゃないですか。いまの刑法の本法と比べて見ると、じゃ懲役刑のほうはどうなっておりますか。懲役刑は刑法が重いのじゃないですか。
  98. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 脅迫につきましては、「一年以下ノ懲役」でございましたか――となっておりまして、「以下ノ懲役」でございまして、長期で比べるというのが刑法のたてまえでございますから、これは刑としては重いことになると思いますが、他面また、たとえば一年以下で一月までいくわけで、これは旧刑法の当時の刑のシステムだと思いますが、「一月以上六月以下」ということで、その点ではこちらのほうが軽いというふうにも言えるわけでございます。刑の重い軽いは、罰金がついているからというだけじゃございませんで、やはり重い軽いは刑法にちゃんと重い軽いの基準がきめてあるわけです。それによって申し上げているわけですが、一般論として申し上げますと、刑法が普通法でございまして、それに特別な加重類型を定める場合が特別法をつくる目的でございますから、おそらくは特別のほうが刑が重いのでございますが、中には軽い特別法もあるわけで、これはちょっと現行法と比較しにくいのでございますけれども明治三十三年当時の立案法律としてこういうふうに考える――まあこれとよく比較になりますのは、鉄道営業法などが古い法律で、それをよく法体系などが似ているわけでございまして、そのころはこれをもって十分まかない得るという考えがあったのだろうと思います。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、前の話と違いませんか。ぼくの聞き違いかもしれませんけれども、特別の目的を持った犯罪なり、だからこっちのほうが一般法より重いんだという説明をいま聞いたわけです。私はそういうふうに聞いていないから、そう言ったところが、違う答弁だから、それは違いませんかと念を押したんですがね。いまの局長の言うのは違いませんか。
  100. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私の申し上げましたのは正確でございませんので、そういう意味では間違っておったというふうにもなるわけでございますが、暴行罪は親告罪になっておりましたわけで……
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはあとですよ。二十二年でしょう。
  102. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それはのちに改正になって親告罪がはずされているわけですが、そういうような親告罪がはずされるというようなのも一つの特殊類型の場合に考えられている扱い方でございまして、こういうのを重いという評価をするのはいいかどうか、そこのところはまあちょっとどういうふうに説明をするのがいいかわかりませんが、刑だけを比較してみますと、確かに軽いところもあるわけであります。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おかしいですね。このときに暴行罪は非親告罪になっていたんですか。これは昭和二十二年かなんかでしょう。もっとあとかな。治安警察法で暴行は親告罪とするというというふうに書いてありますか、どこかに。私の読み方が悪いかもわからぬけれども……。
  104. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 暴行罪は、たしか二十二年の改正の際に非親告化されて、現行刑法では非親告罪でございますが、それまでは親告罪でございます。ところが、暴力行為処罰法では非親告罪でございます。こういう特殊な類型の暴行につきましては親告罪でないという形をとっております。この当時も刑法の暴行はおそらく親告罪になっておったと思うのですが、治安警察法では親告罪になっていないという取り扱いだと思います。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、ことばじりをとらえてほんとうに恐縮ですけれども、この当時刑法が暴行が親告罪であったと思うとかいうんですが、それは親告罪にきまっているじゃないですか。二十二年にはずされたんでしょう。親告罪であったんでしょう。そうでしょう、この当時は。だから、私の聞くのは――私が違っているのなら、直していただけばいいですよ。私はあなたのいま言われるのを聞くと、刑法と治安警察法と比べて、何か片方が非親告罪で片方が親告罪だ、だからそこでも刑の軽重をきめなければいけないんだと聞こえるわけです、あなたの言うのを聞くと。だから、どうもそれはおかしいじゃないか、こう聞いているわけです。
  106. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私は一般論を申し上げたのですが、さっきも申しましたように、特別法が必ず重くなっておるとも限らない。軽くなった特別法もあるわけでございますが、これはもうここでごらんいただいて、もし旧刑法のことがどうしてももっと議論をせなければおさまらぬとおっしゃるならば、またさしていただきますが、治安維持法を私ども提案をしておるのじゃございませんし、ひとつ暴力立法について御質問をいただきたいと思います。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、私が聞いていますと、私の質問が言い方が悪いのかもわかりませんよ。言い方が悪くてあなたに十分理解をされていないのかもしれないけれども、とすれば、私の質問のしかたが悪いんですから、これは私としては反省しますが、私は一般刑法と治安警察法の罰条について聞いているんですが、聞いているうちに、最初あなたはそれは一般の刑法のほうが軽くて特別法のほうが重いようなことを言われていたから、これはどうも違うじゃないかと言ってみたら、いや、それは間違いないということになってきている。そうしたら、今度親告罪と非親告罪と比べて何か違うように言われるから、そうすると、いかにも治安警察法の暴行は非親告罪であって、その当時の刑法は、刑法の二百八条が親告罪であった。だから、親告罪と非親告罪と比べると、非親告罪のほうが重いじゃないか、こういうような意味のことにあなたの言うのはとれるわけですね、ぼくに。だからそれはそうなってくると、一般論じゃなくて、どうもおかしいじゃないか、こういうわけですよ。
  108. 米田勲

    ○米田勲君 ちょっと委員長答弁の前に……。
  109. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 関連質問ですか、議事進行ですか。
  110. 米田勲

    ○米田勲君 今の局長答弁について私は疑義があります。議員の質問に対して、旧刑法を論ずるならまた私もあらためてやりますといったような開き直り方をしたり、私は治安維持法を提案しておるのではないから云々といったような、そういう答弁のしかたは、局長答弁としてはまことに当を得ていない。議員が提案をされている法案について、自由な意思で必要と思われる判断に基づいて質問を続けておるのである。したがって、それに対して質問がどうのこうの、旧刑法を論ずるなら私もひとつやりましょうとか、私は治安維持法を提案しておるのではないからそういう聞き方をされては困るといったような、挑戦的なというか、批判的な答弁のような、そういうことでは、この委員会の運営はただではおさまらなくなります。もっとすなおに、議員の質問に対してはすなおに答弁をすべきだ。何もそうからんで議員の質問に対して妙なことを発言することは、委員会の運営上思わしくない。――君、聞いておりたまえ。
  111. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 聞いております。
  112. 米田勲

    ○米田勲君 聞いておるといって話をしておるじゃないか。君のいまの発言について私は意見を述べている。だから、まじめに聞いておりたまえ。そう思われるので、委員長から今後はそういう発言の起こらないように配慮してもらいたい。それが委員会運営上大事なことです。再び繰り返されるときには、私らも多少問題にいたします。
  113. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 政府委員の方も、ただいまお聞きのとおりでございますから、御発言に十分御注意を願いたいと存じます。
  114. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御注意を受けましてまことに申しわけございません。慎重にお答えを申し上げます。  私、先ほど、別に私の答弁にこだわるわけじゃございませんのですが、旧刑法を見ておりませんでしたので、ほんとうは旧刑法と比べていかなければなりませんのですが、現行法と治安警察法との刑を比べてみますと、おっしゃるとおり、現行のほうが重いと思います。これはまさしく私のそれと比べますと明らかに間違いでございまするが、それはそれとして、あわせて親告罪が非親告罪になっておるという点も、それは刑が重いというつもりで申し上げたつもりじゃございませんので、そういうふうになっておるということを申したのでございますが――いま刑法が参りましたので申し上げますと、脅迫について申し上げますと、やはり脅迫罪は、現行法は「二年以下ノ懲役」となっておりますが、旧刑法では「一月以上六月以下ノ重禁錮」となっておりまして、「二円以上二十円以下ノ罰金」となっておりますので、罰金刑の定義が重くなっておるように思われます。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 旧刑法との関係をなぜ私は聞くかというと、これはもう少し質問していくとわかるんですよ。決して私は無意味質問をしておるわけじゃないんですよ。もう少したつとわかりますから、もう少しがまんをしてお聞きを願いたいんですが、そうすると、暴行の場合は旧刑法はどうなっておったんですか。
  116. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 現行法は、暴行は「二年以下ノ懲役」となっておりますが、旧刑法におきましては、「三日以上十日以下ノ拘留ニ処シ又ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス、」こういうふうになっておりまして、この点は非常に重くなっておるように思われます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで問題が私はあると思うんですよ。ということは、旧刑法と比べた場合には、治安警察法は、竹内局長は治安維持法と言われておるけれども、まあそれは治安警察法の間違いだと思いますが、その当時においては特別法のほうが重かったわけです。そうなるわけですね、いま比べてみて。特に暴行のような場合には、この特別のほうが重かった。それはいわゆる特殊の場合におけるものだから重かったんだ、こういう行き方をとっているわけでしょう。ところが、刑法ができてから――いまの刑法、これは明治四十何年でしたか、できたのは。刑法ができてから、刑法と治安警察法を比べると、刑法のほうがむしろ重くて、治安警察法のほうが軽くなったわけです。これは多少のことかもわかりませんが、軽くなったというわけでしょう。ところが、治安警察法廃止になって、治安警察法に該当をするという行為が、すべてではないとしても、暴力行為等処罰法に該当する行為としてやられる場合には、暴力行為のほうは普通刑法よりも重くなっているわけでしょう。そういう事実は認められるわけでしょう。だから、そういうふうな一連の関係があるわけですよね。私はそれをいまお聞きしたかったわけです。だから、治安警察法の十七条に該当する行為が、この法律があるときにはいまの刑法よりも軽かったんだけれども、この法律がなくなって同じことが暴力行為等処罰法処罰されるという場合には重くなっている。普通刑法より重くなって処罰されるわけですから、共同してやる場合とか多衆の威力を示してこういうことでやった場合には、治安警察法処罰されたものが、治安警察法が十七条と三十条がなくなって、そのかわりというかかわりでないというかは争いがあるとして、同じ行為暴力行為等処罰法に該当する構成要件となる場合には、普通刑法より重くなるというんです。これは一つの事実じゃないですか。事実であるということは認めますか、議論は別として。いろいろなそれに対して議論はあるとしても、そのこと自身は客観的な事実として認めざるを得ないんじゃないですか。違いますか。
  118. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほど来その点もお答え申し上げたつもりでございますが、仰せのとおりそれは事実でございますので、私もそのとおりだと思います。ただ、特別法というのと一般法との関係で、特別法が大体において刑が重いという前提に立ちましてさっきお答えして申しわけなかったのですが、ときによりますと軽くなっておる場合もあるわけで、いまの行政法の行政罰則などを見ますると、刑法のほうが重くて、特別法は特別構成要件があるのにかかわらず刑としては軽いという、これは行政目的達成のためにその程度でいいという場合もあるので、一がいに申せませんが、いまお話しの点につきましては、まさしくおっしゃるとおりだと私も思います。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この点は、私はもう少し研究しなくちゃならぬ点があるから、宿題としてまたあとへ残して、これは私自身の宿題でもあると思うので、残しておきます。  そこで、この法律――治安警察法ですね、これを廃止したのは、全部ですね、全部を廃止したのはいつですか。
  120. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、戦後、行政執行法とか治安維持法とかと同じようにこの種の法律が一斉に民主化の網にかかって廃止されたのでありますが、そのときに同時に廃止されたと思っておりますが、いま年月日が正確にわかりませんが、昭和二十年でございましたか、二十一年でございましたか、なお正確にはいま調べましてお答え申し上げます。――昭和二十年十一月二十一日のいわゆるポツ勅六百三十八号によって廃止になったようでございます。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのポツ勅六百三十八号ね、その趣旨はどういう趣旨で、どういうわけで治安警察法廃止になったんですか。そこら辺をこの際もう一ぺん認識していかないと私はいかんと思うんです。
  122. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 戦後アメリカの占領政策としていわゆる初期の対日方針というものがあるのでございますが、それによりますと「司法、法律及び警察について個人の自由及び民権を保護するよう進歩的に指導せらるべきものである。」という方針をもとといたしまして、具体的には十月四日の「政治的、民事的、宗教的自由に対する制限の撤廃に関する覚書」、これによりまして、労働組合の結成に対するあらゆる法的障害という観点から、治安維持法その他の、よくおことばにあります弾圧法令というような法令の除去を日本政府に指令したわけでございまして、この指令に基づいて廃止になったと、かように了解をいたしております。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、治安警察法日本の民主化に対して害があると、こういうふうな意味廃止になったんだと、端的にいえばそう承るわけですが、そうすると、さかのぼりまして大正十五年に暴力行為処罰法が制定される当時――これと離れてもいいんですよ。これとくっつけるとあなたのほうで違うとかなんとか言われるかわからぬから、離してもいいんですが、このときに十七条と三十条を廃止をしたという理由はどこにあるわけですか。
  124. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これも書いたものによって申し上げるわけでございますが、私の理解をいたしておりますところでは、健全な労働運動農民運動、あるいは水平運動というようなことばが使ってございますが、そういういわゆる運動を健全な方向に向かって日本においても育成さるべきであるという考えが当時の政府部内に一部あったようでございまして、そういう観点から、この治安警察法十七条がその障害をなしているというふうに判断をされた結果、廃止政府提案として踏み切られたように承知をいたしております。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その書いたもので申し上げるというのだけれども、何で申し上げるのかよくわかりませんがね。治安警察法十七条が何の障害をなしているんですか、ちょっとよくわからぬのですがね、そう抽象的に言われても。何の障害をどういうふうになしているか、よくわからぬのですが……。
  126. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 健全な労働運動を発達せしめるために、これが障害をなして発達を抑制しているのじゃないだろうか、こういう配慮があったようでございます。これも、私もなぜ書いもので申し上げるかと言いますと、はっきりした有権的な資料というものがなかなか入手できませんので、比較的当時この問題にタッチしておったであろうと思われる人の書いたものによって申し上げているわけでございまして、そういう意味で、はっきりした、これでありますというふうに申し上げかねる点を御了承願いたいと思うのでありますが、さように私はものの本から印象を受けているわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは国会図書館でもどこでも行けば、五十一回の帝国議会の議事録があるわけですから、それを調べればわかるんじゃないですか。実は私も調べたんですが、こんな厚いもので、何かあまりたくさん書いてあったので……。そんなものはわかるんじゃないですか。なぜこの十七条が障害をなしているのか。健全な労働運動ですか、組合をつくることに障害をなしているのか、組合運動に障害をなしているのか。十七条を百ぱ一からげと言うと語弊がありますが、全部を一からげにして、そして、これは労働組合活動か組合運動か組合の団結か何か知らぬけれども、障害をなしておるから排除したというのでは、あまりにも大ざっぱですよ。というのは、そのときの議事録がありますから。ここは大事なところなんですよ。私の見解によれば、これが一つのポイントになると思うんですよ。その点をはっきりさせなければいけない。どういう点が問題になったか、これは国会の議事録を見ればわかりますよ。
  128. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 国会の議事録につきましてもなお勉強させていただくつもりでございますが、私の理解を申し上げますと、先ほども法律解釈のところで申し上げましたように、特にこの二号の規定は、暴行、脅迫、公然誹毀のほかに、誘惑とか煽動とかという罪をきめておりますが、煽動につきましては他の法律にもあるわけでございますが、誘惑というようなことは、とりょうによりましてはかなり広くも解釈される。概念としては不適切な、非常にあいまいと申してもいいくらい、今日ではとうていやりにくい概念を持った罰則でございます。こういうような点が取り扱う人のいかんによりましては不当な弾圧にもなりましょうし、そういう点を考慮いたしまして――そればかりじゃございますまいが、やはり当時の政府考え方としましては、健全な労働運動を希望する、こういう考え、そういうものを考えているのに、こういう規定がございますことは、健全な労働運動を期待するその期待に反するのではないかというような議論が当時政府部内にあったようでございまして、そういう意見を代表してできたのがこの廃止法律、こういうふうに私は思っているわけであります。もちろん、これにはそうじゃないという意見もあったと思いますが、そういう意見もあったように思います。現に、私の承知しております限りでも、日本はILOに当時も入っておりましたし、このような法律がありますことは、やはり日本の立場としても適当でないというような大所高所からの意見もあったと思いますが、いずれにいたしましても、この十七条の条文を見ましても、私どもでもこれはいけないと思われるような条文があるわけでございまして、これは廃止されるのが当然だと思います。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは答弁がですね、私は念を押しているんですよ。十七条全体を、百ぱ一からげということばで私言いましたけれども、それを一束にしてそういうふうに解釈をしたのではいけないのじゃないか、こう言っておるんです。いま局長の話を聞きますと、誘惑、煽動のほうは、これは健全な組合活動を阻害するからいけないんだ、こう言っておるわけですが、これは全体の中のほんの一部分を言っておるわけです。それじゃ、こういう目的でやった暴行、脅迫を処罰しておる、旧刑法より重くね。その当時の普通刑法より軽いかもわからぬけれども。なぜ暴行、脅迫をここで廃止したんですかね。健全な組合活動というものに対して、暴行、脅迫はこれを阻害するものだといういままでの見解でしょう。それならば、ここで暴行、脅迫があるでしょう、ちゃんとここで罰条があるわけですね、十七条で。それでは何で暴行、脅迫のほうもやめたのですか。誘惑、煽動は、あなた説明されたから、それはそれで聞きましょう。そこのところを、ただここでのあれじゃなくて、ちゃんと国会の議事録なら議事録についてあれしてきて、そしてしっかりした答弁をしてください。これは大事なところなんですよ。あなたのほうじゃ大事じゃないと言われるかもしれないけれども、私のほうにとっては、それが一番大事なところなんです。ぼくは、これが一つのポイントになると思うんです。いまの提案されている改正案を論議するためにもこれは一つのポイントなんですよ。なぜじゃあ暴行、脅迫――治安警察法十七条で、こういう目的で暴行、脅迫をした場合にはこういう罪になると書いてある。これは、健全な組合活動を育成するということになれば、暴行、脅迫をやったらいけないわけですから、それを廃止したのはおかしいわけですよ。誘惑、煽動のほうはわかった。まあわかったとしましょう。こちらはなぜ廃止したのか、その理由をやっぱりぼくは有権的な解釈をはっきりさせてもらいたい。
  130. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この特別構成要件、つまり目的をもってする暴行、脅迫というものは廃止をいたしましたけれども、暴行、脅迫をしてよろしいというものじゃなくて、一般刑法の暴行、脅迫という罪は依然として残っておるわけでございます。それによってつまりこの目的を持った暴行、脅迫というものをやれるという趣旨であったと思うのでございまして、これは一般刑法に還元をした、こういうふうに私は理解をいたしております。
  131. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは刑事局長の理解として一応まあ承るとしておきますけれども、それをですね、だから具体的に有権的な解釈としてどこで政府がそういう解釈をしたのか、これはやっぱりぼくは統一的なものをちゃんとしてほしいですよ。それでないと話は進まないんですよ。こういう目的を持ったものをやめて一般刑法で処断するということだったと、これはあれですか、提案理由かなんかではっきり書いてあるんですか。あるいは国会の中で政府側というか、大臣なり何なりの答弁に書いてありますか。書いてあったら書いてあるでいいですけれども
  132. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 膨大な速記録をつまびらかに読んだ上でお答えをしておりませんので、先ほど申しましたように、ものの本で理解をしました意味お答えをしておる点をおわびしながらお答えをしておるわけでございますが、なお勉強しまして十分その速記録につきましてお答えをするようにしたいと思いますが、まあしかし、この法律廃止するということから起こってくる法律効果を考えてみますると、いま申し上げたようなことは決してうそではなくして、やはりそういうふうに理解するのが法律廃止の効果だと、かように考えておるわけでございます。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの言われたものの本というのは、おそらくぼくは池田克さんの、最高裁の判事をやめられたあの人の「現代法学全集」に書いてあったのの引用じゃないかと思いますが、必ずしもこればかりだとは思いませんけれども、じゃこれはお聞きしますが、池田さんは、この当時、この大正十五年の立法当時、何をやっておられたんですか。ぼくが調べたら、刑事局長は立石謙輔という人です。だから、刑事局長ではなかったんです。何をやっておったんですか。
  134. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 当時司法書記官であられたと思うのでありまして、おそらく刑事局でこの立案に参画した――参画したといいますか、事実上参加いたしまして立案に当たった一人であろうと私考えております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、その立案に当たった池田克さんは、「現代法学全集」の「暴力行為等処罰法」の解説を書いているわけですね。この中でいろいろ言っているわけですけれども、たとえばここに引用してありますのは、この法案のときに山口という代議士が、「本案規定暴力行為等ヲ検挙スルニ当リ、当局ハ須ラク其ノ運用ニ戒心シ荷モ人権蹂躙ノ非違ナキコトヲ期スベシ」、こういう附帯決議案を提出して、その理由としていろいろ説明しているわけですね。その山口という代議士は、その附帯決議案でどういうふうなことを言っているんですかね。それに対して立案者である池田さんはどういうふうに考えていたんでしょうか。池田さんの考えておったのがその当時の法務省考え方として一応見ていいのじゃないでしょうか、どうなんでしょうか。私のほうから読めというなら読みますよ。山口という代議士が言っているのは、いろいろありますが、まん中のところは省略して、結局、最後のところは、「要スルニ農民運動ニシテモ労働運動ニシテモ、又水平運動ニシテモ正シイ運動デアルカラ之ハ普通一般ノ刑法が規定シテ居ル所ノ刑罰以上ニ特別保険ニ厳罰ニ処セネバナラヌト云フ理窟ハナイ。一人デアツテモ、多数デアツテモ、正シイ行動ヲシテ居ル最中ニ、或ハ時ニ、情ニ激シテ暴力ニ訴ヘント云フ様ナトキニ普通一般ノ規定ニ従テ処罰スレバ宜シイノデ夫レ以上ニ処罰スル理由ハ少シモナイノデアル」、これはその附帯決議案提出の理由ですね。一番最後のところだけ読んだので、前のほうも読んでもいいんですが、時間がかかるから省略しますが、それに対する立案者の一人であると言ってもいいでしょうが池田克さんは、前の最高裁判所判事は、「此の意見に対し私は打勝ち難いやうな強き誘惑を感ぜざるを得ない。水平運動のことは別論とする。私は暴力行為等処罰に関する法律の制定が議決された其の同一議会に於て、廃止が議決せられた治安警察法第十七条、第三十条の其の廃止理由と刑法の暴行、脅迫の規定暴力行為処罰法との関係を考へてゐるのである。」――ここで、十七条を廃止した、だから暴力行為のほうと普通刑法との関連ということを言って、「惟ふに治安警察法第十七条廃止理由の要旨は」云々ということを言って、省略しますが、こういうようなことを言って「即ち誘惑及煽動に対しては違法性なきものとして之に関する部分廃止し、暴行、脅迫及誹毀に関する部分に付ては一般刑法規定適用を以て足るものとして、之れも亦廃止したのであって、後者の行為に付其の刑罰制裁を加重せむとしたのでは無いのである。」、こうはっつきり言っておるのじゃないですか。だから、「第十七条に規定せられて居た行為は団体員の個々の単独犯のみならず犯罪形態として数人共同の行為及団体乃至多衆の行為をも予定していたのであるから、同条の規定した特殊の場合の特殊の行為に関する限りに於ては、夫れが仮令形式から見て暴力行為処罰法規定する犯罪の構成要件を具備してみても同法の適用が無いのではあるまいか。若しも然らずとせば第十七条廃止の精神は没却されることになるのではあるまいか。」、こういうふうなことを言っているわけですね。これから見ると、第十七条を廃止したのは、一般刑法でそうした十七条に該当する行為はやるべきなんだ、特に十七条に該当するような行為を一般刑法とは別な重いものを設けてそこで処断をするのは十七条を廃止した精神に反するんだ、こういうようなことをここにはっきり言っているんじゃないですか。こうとっていいのじゃないでしょうか。また、そのとり方が違うというなら、違うようにあなたのほうから説明をしていただきたい。私はこうこれを読むととれるわけです。ということはどうでしょう。
  136. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいま御指摘のように、「現代法学全集」に述べられております池田氏の御意見は、そのように私も読みました。しかし、それは一つの解釈でございまして、また、当時の大審院を含む裁判所の法律解釈の態度は、池田さんのお考えとは違う態度をとって終始一貫してきておるということでございまして、一つの意見として私ども大いに参考にはいたしておりますが、立法者の意見だとすぐ申すわけにもいかない。なぜかならば、有権的に国会の場で述べられております政府答弁はさようにはなっておらないのでございまして、池田先生のお考えは池田個人の御意見としてここに書かれておるものと私は了解しております。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 有権的に政府が述べたと言いますけれどもね、国会で。それはいろいろとり方があるような述べ方をしているのじゃないですか、そこはどうですか。
  138. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いろいろのとり方があるということでございますけれども、私の理解では、労働運動とか農民運動とか水平運動とかというそういう運動そのものに適用するなどということは考えていない、そういう目的でつくったものではないのだということを終始言っておられるわけで、これは私は真理だと思うのです。私もいまでもそう思っております。
  139. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、第五十一国会でだれがどのように言っているわけですか。これは司法大臣が言っているのでしょう。司法大臣はどういうふうに言っていますか。江木さんでしょうう。
  140. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 当時の司法大臣江木翼さんがお述べになっておるわけでございますが、第一読会のときでございまして、これはまあ当時の構成はよくわかりませんけれども、本会議で発言をされておるのだと思いますけれども、「労働ナリ、小作ナリ、其他水平運動ナドヲ、此法律ニ依ツテ取締ル意思ガアルカドウカ、是ハ全クサウ云フ意思ヲ持ツテ居ラヌノデアリマス、此法律ハ御覧ノ通リニ威力ヲ示シテ、刑法二百八条、即チ暴行或ハ器物毀棄デアルトカ、或ハ公務ノ執行妨害デアルトカ云フガ如キ行為ヲ為ス者ヲ取締リ、或ハ財産上不正ノ利益ヲ得、若クハ得シムル目的ヲ以テ是等ノ行為ヲ為シ、面会ヲ強要スル、強談威迫ヲ為スト云フガ如キ行為ヲ取締ラントスルモノデアリマスルガ故ニ、此法律ノ目的トシテ、労働運動デアルトカ、或ハ小作運動デアルトカ若クハ水平運動デアルトカ云フガ如キモノヲ取締ルト云フ目的ハ、毛頭持ツテ居ラヌノデアリマス、」、まあその前後はございますが、かようにこの点に関しましてはお述べになっておるわけでございます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 で、私が質問したいのは――法務大臣が退席したのは二、三分ですか、法務大臣にも聞きたいんですがね。いま帰ってこられますか。  そうすると、いま言った暴行、脅迫というのが十七条に入っているわけでしょう。入っているのだけれども、これは廃止したというんですが、その理由がよくわからない。これはよく研究してもらって、次に答えてもらいたいんですが、そうすると、これを廃止しないで、治安警察法の十七条を置いておいて、それから暴力行為処罰法というものをそのまま残しておく。まあつくる。あのときつくったんですから、そういうわけにはいかなかったんですが、変な質問ですがね。形の上ではとにかく治安警察法十七条を廃止して、これは大正十五年四月九日に廃止になっているんですね、十七条、三十条が。そして、暴力行為処罰法が四月十日から、次の日から公布になって、施行は四月三十日になっているわけですけれどもね。治安警察法十七条を置いておいて――置いておくのがいいというわけではないですよ。置いておいて、暴力行為処罰法をつくるというのは、こういう関係法律的には何か問題は起こらないんですか。
  142. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法律的には私は問題は起こらないと思うのでございます。問題のないことを、片方を廃止し、片方をつくったというのは、主として立法政策の問題であると思うのでありまして、理論的にそういう法律が二つあって理論的に不都合であるという問題はないとい思ます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それが二つあった場合にはどういう関係になるんですか、普通法、特別法の関係でいくと。
  144. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これはまあ二つあったと仮定いたしますると、いまの考えからいたしますと、ある場合――先ほど申しましたある場合には、二つの法律ができている場合があると思うのでございまして、そのときは、治安警察法の第十七条の何号かと暴力行為処罰に関する法律の第一条第一項ですか、そういうのが、一つ行為が二つの罪名に、二つの法律にする場合、想像上の競合ということがあり得る場合があると考えるのでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一般刑法との関係においては、一般刑法は普通法、暴力行為処罰法が特別法、それから暴力行為処罰法治安警察法関係においては、暴力行為処罰法は普通法、治安警察法はその特別法というか、こういう関係になるということが考えられるのじゃないですか。暴力行為処罰法治安警察法との関係は、それだけをとってみれば、やはり普通法と特別法の関係になるのじゃないですか。
  146. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その点はまあもう少し詰めて研究してみませんと、はっきり申し上げかねるのでございますが、ただいまの刑法体系から申しますと、いずれも刑法の特別法でございます。それから、つけてあります罰則が形が違っておりますので、これはまあ現行法のもとでその他のそれに類推して考えてみますると、そろいう場合には特別法同士が一所為数法によるというふうになると思うのでございます。で、治安警察法の十七条が暴力行為処罰法の特別法だというふうには普通は理解されないのじゃないかと思います。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、構成要件を比べてみれば、暴力行為処罰法のほうは構成要件としては広いんだ、治安警察法のほうは構成要件としては狭いんだということは一声えるのじゃないですか。あるいは逆に、治安警察法のほうは目的罪なんだから、あるいはこれが限定されているのだからと言えるかもしれませんけれども、片方のほうは、暴力行為のほうは特にそういう目的で限定されているわけではありませんから、だから、競合の場合、多数の威力を示した場合といってもいろいろあるのですからね。それから治安警察法のほうは、そういう場合も一人でやる場合も含めているんですが……、ですから、暴力行為処罰法のほうが構成要件として広いのではないですか、そのことが言えるのじゃないですか。
  148. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これはむずかしい問題ですが、暴行等の刑法の基本の行為で、治安警察法十七条はその目的をつけたものだ。それから暴力行為処罰法は、手段に着目して、目的は全然ないわけです。手段に着目して特別法をつくっておる。でございますから、両者がさらにまた一般法、特別法の関係にあるのじゃなくて、両方ともが同列で特別法の関係にある。したがって、一つ行為で両方に触れる場合がある。そうだとすれば、想像上の競合になる。こういうふうに理解するのが普通ではないかと思います。
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは普通の考え方ですよ。しかし、構成要件そのものから考えると、それは暴力行為処罰法のほうが構成要件としては非常に広いのじゃないですか。そういうことは言えませんか。あるいは、広いとか狭いとかそれを比較すること自身が、法律が違うのだし、規定のしかたが違うのだから、そういうことができないのだという解釈もこれはあるかもわかりませんね。そうでしょう。それは構成要件規定しているそのしかたが違うのだからね。片一方は、目的が書いてあるのだから、それは特定のものなんだ。しかもそれは目的を中心とする。片一方は、行為類型というか、手段を中心とするのだから、それを広いとか狭いとか比較するということはこれは理論上おかしいんだ、こういう見解もあると思うんです。そこら辺のところはむずかしいと思うんですが、しかし、考えてみると、いろいろな形の構成要件が考えられる。その場合に、少なくとも暴力行為処罰法のほうが構成要件としてはいろいろたくさん考えられるのじゃないですか。そのことは一般論として言える。一般論としては暴力行為のほうが構成要件がたくさんある。だけれども、直ちにそれをもって治安警察法暴力行為処罰法との関係構成要件はどっちがたくさんあるのかとかなんとか言うのは無理だというのならば、それは一つ考え方だと思うのですが、そこのところをどういうふうにお考えになりますか。
  150. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 治安警察法におきましては、まあ目的が一つの目的ではなくて幾つか目的が分かれておりまして、そういう目的でしぼっておりますために、暴行、脅迫でも適用範囲というものがかなり制約されてくると思うのでございます。一方、手段を特別な類型として定めております暴力行為処罰法の第一条第一項のごときを見てみましても、これは目的でしぼっておりませんために、そういう手段を弄するものはどんなものであってもひとしく適用を見る。こういう意味で、適用範囲という点から言いましたならば、暴力行為のほうが広いのだろうと思います。しかし、理論的に広いか狭いかということはこれはちょっとなかなか比較がしにくいので、仰せのように、そのどっちが広いというふうに理論的にどうということは私どうもちょっときめかねるのでございますが、適用範囲の面から見れば、確かに暴力行為処罰法のほうが適用範囲が広いのじゃないかというふうに考えます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、治安警察法の十七条とその罰則の三十条、これを廃止したわけですね、大正十五年に。そのときに、なぜ治安警察法全部を廃止しなかったんですか。そこのところはよくわからないですか。
  152. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この法律は、当時の内務省でございますか、内務省の所管法律となっておりましたので、内務省が立案をされたと思うのでございます。法務省のほうの法律としては暴力行為処罰法でありますので、暴力行為処罰法につきましてはいろいろ資料を持っておりますが、治安警察法につきましては、まことに手元不如意でございまして、十分な資料を持っておりませんので、なぜ一部廃止にとどめて全部廃止をしなかったかという事情につきましてはわかりかねるのであります。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、結局、考えられてくるのは、治安警察法の十七条を廃止した。それに該当する場合には軽かったわけですね。普通刑法に比べて軽かった。それで、池田さんも、立案者の池田さんが言うように、こういうような場合には当然一般刑法に返るべきなんだ、こういう意味のことを池田克さんは言っておるわけです。彼は最高裁の判事をやめられましたけれども、そういうことを言っておる。当時の立案者です。ところが、そこへ暴力行為等処罰法が出てきたから、結局、一般刑法へ返るべきものが一般刑法へ返らないで、治安警察法十七条で当然やれたものが暴力行為等処罰法処罰されるというものが――それを意図したかどうかは別として、こういうことを意図したものということになってくると、また議論はあるでしょうけれども、結果としてはそういうふうなものが出てきたと、これは事実として認めざるを得ないのじゃないですか。
  154. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは、仰せのように、その後の裁判例を見ますると、そういうふうになっておるのであります。認めるとか認めぬとかいう問題じゃなくして、やはり暴力行為等処罰法の一条の構成要件を満たす以上は、それによって処断されるのは当然であるという解釈でございます。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなってくると、十七条で暴行、脅迫を廃止した理由というものが問題になってくるわけですよ。これこれこれこれの理由で治安警察法十七条を廃止したとするならば、その理由なら、同じような理由のもとにとにかくその理由を援用したようなかっこうで暴力行為等処罰法で十七条に該当する暴行、脅迫の者を処断するのはおかしいじゃないかということが出てくるわけです。その後の最高裁なり大審院の判例は別としても、立法論としても、あるいは法の精神としても、当然それが出てこなければ私は意味がないと思うんです。それが五十一国会からずっと問題になっておるのだけれども、十分な形で解決をされていないわけです。これは、羽山刑事課長が言うところの歴史的な考証を経てくれという法務省当局の一つの要望と私はとったのですが、そこに問題が私は返ってくると思うんです。だから、なぜ十七条の暴行、脅迫というものをここで廃止したのか。悪くとれば、その行為をそこでやめていて、暴力行為等処罰法ができるんだから、あっちでかぶせれば刑はずっと重くなるんだ、こっちでやめておいて、そしてこっちの重いほうで処罰するんだ、いわゆる網を打つんだというかっこうがそこで結果としては出てくると考えられる。意図は別ですよ。そうなってくると、十七条で暴行、脅迫というものを廃止した理由が一体どこにあったのか、これをはっきりさせなければ、私は暴力行為等処罰法の今度の改正案についても、審議が進展しなくなってくるんですよ。だから、僕は、ここへ来るためにいろいろ回り道みたいなことをしながらそのことを進めてきたわけです。だから、これはどうしたっていまここでなぜ暴行、脅迫というものの十七条のあれを廃止したのか、廃止の理由がどうしても明らかにならないと私はいかんと思うんです。これはしばらく休憩してもいいから、議事録があるんでしょう、見ればわかるのじゃないですか。その当時のいろいろな書物なんかもあるのじゃないですか。そんなむずかしいことじゃないんじゃないですか。……ちょっと待ってください。大臣が来てからにしてください。
  156. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行。
  157. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 何ですか。
  158. 亀田得治

    ○亀田得治君 大臣はどうしたんですか。
  159. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 大臣は、二、三分席をはずさしてくれというので、二、三分ならけっこうだと言ったのですが……。  速記をとめて。   〔速記中止
  160. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こしてください。
  161. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) どうして廃止したかという点につきまして、第五十一回帝国議会貴族院特別委員会政府委員の長岡隆一郎さんから御説明をしている記述がございますが、部分的でございますけれども、「治安警察法ノ十七条ハ永イ懸案デアリマシタガ、此争議調停法ノ提出ト共ニ最早之ヲ削除イタシマシテモ差支ハナカラウト考ヘマシテ、同時ニ之ヲ提出イタシタ次第デゴザイマスカラ、是ハ私カラ申上ゲル迄モナク、濁リ労働運動ニ限ラズ、其他ノ社会運動ニ於キマシテモ、日本ノ固有ノ秩序ヲ破壊シ、或ハ甚シキハ我國ノ國体ニ觸レル、又現在ノ資本制度ノ根本ニ対シテ戦ヲ挑ムト云フ如キ思想ナリ、行動ナリニ封シマシテハ、是ハ刑罰法令ニ依ツテ嚴重ニ取締ル必要ガアルコトハ申ス迄モナク、又思想上ニ於テモ相當之ヲ善導スル必要ガアルコトハ申ス迄モナイコトデアリマスルケレドモ、唯平穏ナル手段ニ依ツテ合法的方法ニ依リマシテ、労働者が團結シテ自己ノ主張ヲ貫徹スルト云フコトニ封シマシテハ、此事が治安ニ害ノナイ限リ、余リ之ヲ抑壓スルト云フコトハ却テ社会秩序上、面白クナイ結果ヲ來シハシナイカト考ヘルノデゴザイマス、」云々と、こうございまして、非常に抽象的ではございますが、平穏な健全な労働運動につきましては、むしろこれを助長するということがこの基本に流れておる考えのようにうかがえるわけでございます。ただそれだけでございまして、それでは十七条の規定を全面的に削除するのはいかなる理由によるかということは、どうもちょっとこの資料には私はまだ見ておりませんのでございますが、なお研究さしていただきたいと思います。
  162. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、くどいようになって、非常に恐縮だとは思うんですよ。できるだけあれしないように質問しているそもりなんですが、どうしてもわからないのは、誘惑、煽動を廃したというのは、前に言われたので大体わかるけれども、暴行、脅迫を廃したというのがわからないんですよ。健全な労働運動を育成するといったって、暴行、脅迫が行なわれれば健全な労働運動ではないわけですから、そこで当然処罰されるのはあたりまえだと、こう常識的にはそのとおりだれだって見ているわけですから、そうなってくると、なぜ暴行、脅迫を廃したのか、これはどうしてもわからんですよ。悪くとれば、こういうふうに廃止していて、そして甘いというか、あめか何か与えておいて、一方で暴力行為処罰法で重く処罰するんだ、結局。そういうねらいがあったとも受けとれるわけですよ。だから、どうしてこれを廃したのか、どうもよくわからないんですよ。だから、それは議事録をよく調べてもらいたいんですが、それがわからなければ、法務省あなたのほうの考えをよく統一して答えていただきたいですよ。
  163. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いまの長岡さんの御説明の他の部分でございますが、もう少しその点につきまして読ましていただきますが、「殊ニ暴行、脅迫等ノコトニ関シマシテハ、是ハ申ス迄モナク如何ナル目的ニ出デマシテモ、事ガ暴行脅迫ニ當ルト云フコトハ不都合ナコトデアリマスカラシテ、是ハ刑法ノ刑罰法令ニ譲リマシテ、又公然誹毀ト云フヤウナコトモ、是モ刑法ノ名誉毀損ノ規定ニ譲リマシテ、単純ナル誘惑煽動ヲ致スト云フコトニ野シマシテハ最早此十七條ノ規定ヲ削除イタシマシテモ、社會ニ害ヲ生ズル虞レガナイト見テ居ル次第デアリマス」と、こうございまして、これから推測いたしますと、誘惑、煽動という点は、これはもう削除して、そういうものによって罰するということは一切やめてしまう。しかし、暴行、脅迫ということは、これはたとえ労働運動でありましても、そのこと自体は不都合なことでありますので、刑法の規定によって処断する、この法律としては刑法に還元するという意味だということがうかがわれるように、先ほど私説明したところと大体一致するように出ておるのでございます。
  164. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、刑法に還元するということになると、その当時の刑法は明治四十一年にできた刑法ですね。その刑法の暴行、脅迫と、この治安警察法十七条の暴行、脅迫とを比較した場合に、一般刑法のほうが重かったわけですね。旧刑法のころは、旧刑法のほうが軽くて、旧刑法とこの特別法の治安警察法十七条を比べると、旧刑法との関係では治安警察法十七条のほうが重かったのだけれども明治四十一年にできたいまの刑法との対比では、いまの刑法のほうが重かったんだ、だからそれに還元するんだ、こういうことですね、結論は。
  165. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そういうことになると思いますが、なるほど刑の点からいいますと、刑法に還元したほうが重いわけでございますけれども、ただ、目的というような点でしぼりがかかっておらないわけなんで、一般の暴行、脅迫として同じように見るということでございまして、一般の例に戻すというふうに理解をいたすわけでございます。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、一般の例に戻すというのですから、その目的というふうな一つの制限がなくなるわけですから、かえって広くなるわけじゃないですか。そうでしょう。適用は広くなるのじゃないですか。
  167. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その制限を撤廃したという意味においては広くなりますが、この制限しております事柄自身が、先ほども申し上げましたように、非常に不可解な規定でございまして、特に暴行、脅迫も、第二号につきましてもひとしく暴行、脅迫がひっかかってくるわけでございまして、同盟ストライキの場合でも暴行、脅迫は許されないことは、今日の法律でも同じでございますが、いかにも労働争議そのものを罰するように思われる趣旨の規定でございますので、こういう趣旨の規定を撤廃してしまって、法のもとに平等で、だれも同じような条件で、もし暴行、脅迫があるならば罰するという線に戻す、これが廃止の趣旨として長岡さんが説明されておるところだと思います。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも私の聞き方が悪いのかわかりませんけれども、労働争議そのもの処罰するようなふうにとられては悪いというふうにあなたはさっきから言われたのは、「第二号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス」というこれがそれにとられるのだ、こういうふうに前から説明されているのじゃないですか。そうじゃないですか。だから、そのほうが――それでも私はいいと言っているんですよ。それじゃ暴行、脅迫のほうを、これを廃した理由ははっきりしないじゃないかと言ってきたらば、結局、だんだん言ってわかってきたのは、一般刑法に返るんだ、重い一般刑法に返ってくる、適用範囲も広まってくるんだ、こういうことが出てきたのじゃないですか。そうでしょう。それがどうもそこのところが話がくるくる行っちゃうんですよ。それは私の聞き方が悪いのかもしれませんよ。どうもくるくると行っちゃって申しわけないんですが、労働争議そのものを弾圧するような印象を与えることはけしからぬというので、それはいまの「第二号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ扇動」と、こういうふうに説明されているのじゃないですか、あなた前から。そうじゃないですか。
  169. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私の説明が悪いのでございまして、先生の御質問が悪かろうはずはないのでございますが、二号は誘惑、煽動だけじゃございませんで、暴行、脅迫が二号の場合にかぶってくるわけでございます。したがいまして、この二号のような規定は何としても――これはごらんになっておわかりのように、「同盟罷業ヲ遂行スルカ為」云々、あるいは「労務者ヲシテ労務ヲ停廃」させるために「暴行、脅迫」ということでございますので、そういう者を処罰するということは、いかにも労働争議を弾圧するそのものであるという感じを受けるわけでございます。そういうところをなくして、労働者であろうと、使用者であろうと、一般の人であろうと、ひとしく刑法のもとに刑法の規定を受けるということはこれは当然のことでございますので、そういう状態にある、特殊の身分を持っているがゆえにこういうことで罰するという特殊の構成要件のものは削除してしまって、一般にひとしくだれもが、特殊な身分ということで罰せられるのでなくて、ひとしく暴行、脅迫という事実があれば罰せられるという形で、つまり一般の場合に戻すと、こういうことでございますから、適用という点から見ると、規定そのものは適用は広くなりますが、労働争議に従事する人の暴行、脅迫というものは、そういうものに従事したがために罰せられるという気持ちではなくて、ただ刑法の一般の規定に従って、もし罰せられるものがあるとしたならば罰せられる、こういう趣旨に直すことでありますから、適用範囲が広くなるんですねと、こう念を押されますと、私のほうもわかりにくくなっちゃって、お答えがしにくいのでございますが、適用範囲は、一般の刑法でございますから、一般の刑法が広いということならば、刑法が一番広いわけでございます。そういう意味ならば、私も全く同感の意を表するのでございますが、こういう特殊な身分関係によって生ずる犯罪というものをなくするというふうにこれは理解すべきものだと思うのでございます。おことばを返すようでございますが、そういうふうに理解をいたしております。
  170. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは特殊な目的をもってやる暴行、脅迫が特別法で処断されていたわけですね。ところが、それが廃止されれば、そういう特殊な目的がなくても、暴行、脅迫だけが取り上げられて、たとえば刑法の脅迫は百何条でしたっけ、ちょっと忘れましたが、それで行くわけですね。暴行は二百八条でしたか、それで行くわけですよ。脅迫は二百二十二条ですか、忘れましたが、いずれにしても、それで行くわけですね。そうなってくれば、刑法全体が広いというのでなくて、暴行なら暴行の単純暴行の二百八条なら二百八条のそれに入ってくるのじゃないですか。そういう意味で、当然広くなってくるということは考えられる。しかも、そのほうが刑が重くなるんでしょう。そうじゃないですか、これが廃止されて一般刑法に移れば。一般刑法に移ったときに刑が重くなる。それから、全体としての適用範囲も広くなってくるということが言えるんでしょう。そうじゃないですかと、こう言っているわけです。それはそのとおりだと、それだけでいいんじゃないですか。それだけで、そのほかのことは答えなくてもいいんじゃないですか。
  171. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その意味だということを申し上げるだけでいいのでございますが、ただ、ねらいが広くなってくる、刑が重くなる上に広くするというふうにおっしゃいますので、重くなったのは、これは旧刑法のときにできた治安警察法が新刑法のときに廃止されました一般刑法に戻ったので刑が重くなっただけでございまして、旧刑法のときにできた法律が旧刑法のほうで一般法のほうへ戻るならば、先ほど申しましたように、暴行などはすこぶる軽いわけでございます。要するに、一般法に戻ったという趣旨で私は申し上げたいのでございまして、先生のおっしゃるように広くなって刑が重くなったじゃないかということで一般法に戻す、そういう意図はないわけで、結果がそうなったというだけでそういう意味で全く同感でございます。
  172. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、だから、意図と結果としての事実と分けて聞いているつもりですよ。意図はこうじゃないかと言ったって、あなたのほうでそのとおりですなんて答えっこないんですからね。答えっこないのだから、事実はこうじゃないですかと聞いただけで、事実はこうだということだけでけっこうだと言っているわけです。  もう一つ、あなたの言われた中で、何か治安警察法の第二号のことで、いろいろな暴行、脅迫が行なわれたのを処罰すると弾圧になるという話がありましたが、そうですか。治安警察法の第二号関係で、そこで暴行、脅迫が行なわれたのを処罰していたのでは弾圧になるんだ、だからこれをやめたんだ、こういうようなお話ですか。よくわからなかったのですが、どういう趣旨ですか。
  173. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) どうもまことに説明がへたでございまして、先生に御理解いただくのが困難でございまして、申しわけありませんが、一項の二号は、私が暴行、脅迫と申しましたのは、「第二号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス」と書いてございますが、「又ハ」でつないでおりますので、誘惑、煽動だけが二号にかかるのじゃなくて、暴行も脅迫も当然のことでございますがそれに入るという意味で申し上げたのでございますが、二号は、一号も三号もそうでございますが、特に二号は、「同盟罷業ヲ遂行スルカ為」云々と、まさしくその行為自体を、暴行、脅迫という点は別としまして、煽動、誘惑というようなことで押さえておりますので、この点が私は労働運動を弾圧する法律というふうなカテゴリーの中に昭和二十年に入れられたのもそういうところからきておるのだというふうに理解をしておりますので、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  174. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何かあなたあとで言われたのは、昭和二十年何とかというのがよくわからなかったんですが、昭和二十年に何だったんですか。
  175. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほどお答えしましたポツ勅でこの法律が全面的に廃止になりましたですね。これなどは、この法律の持つ一つ性格からきたのだと思いますが、もちろんそれより以前に十七条は廃止されておるのでありますけれども、十七条が廃止されるのはポツ勅をまつまでもなく廃止されたわけでございますが、その廃止されました根拠になっておりますのは、いま申しましたような一般の刑法として適用を受けるというのじゃなくて、特殊な目的をもってやれば、重く罰せられるというか、特別な法律で罰せられる、こういうところに労働運動を弾圧するというふうに見られるわけなんで、その点を考えて私申したのであります。
  176. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特殊の目的をもって暴行、脅迫した場合は重くなるのだ、だから、労働運動を弾圧するというふうに思われるんだ、こういうふうに承っていいんですか。どうもちょっと私の理解のしかたが悪いのか、よくわからないんです。あなたの言われるように昭和二十年に廃止になったというんでしょう、廃止になったといったって、十七条はないんですから、昭和二十年廃止になった云々ということは別なことになってくるんですよ。それを一緒に言うからごちゃごちゃになってわからなくなってしまう。
  177. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まことにどうもいろいろなことを申しまして頭を混乱させて申しわけないのですが、他意はございません。なるべく簡単に御質問お答えをして混乱が起こらぬように注意をいたします。
  178. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなたの言われた、労働争議を弾圧するような印象を与えるとかということを言われましたね。だから廃止したんだというんでしょう。それは私はさっきから言っているように、第一項のところで特に「第二号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス」というのがそれに該当するというふうにあなたは言われますから、だからそれだけのことなんですかと聞いているわけですよ。そういうふうな答えじゃなかったんですか、いままで。
  179. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは、私が特にその点が問題のように思われるということを申し上げましたので、当時の速記録等を見ますると、それだけじゃなくて、十七条全体がそういう無用の誤解を去りたいということを提案理由の中に若槻総理大臣が述べておるようでございますが、そういうふうな趣旨であったと思われます。
  180. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、労働争議のときに、労務者を解雇させたり、いろいろなことですね、サボタージュをやるとかなんとかいうことに関連をして暴行、脅迫が行なわれる、これはありますね。これはいまの暴力行為等処罰法でも処罰できるのじゃないですか。こういう場合は多衆が威力を示し暴行、脅迫をやったことになるわけでしょう。いまでもそうじゃないですか。
  181. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 判例の態度はそういうふうになっております。
  182. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判例の態度はいまそうですね。すると、この行為は、そのまま治安警察法の十七条にも該当しているわけですね。
  183. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そのままではございません。それに該当するものもある、こういうことでございます。
  184. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは目的がありますし、いろいろ構成要件があって、こまかく書いてありますから、あれですけれども、そういうふうなものもある。それで、十七条を廃止して、結果としては一般刑法でやるということをその当時国会では言っていて、重いものによって処罰されることになってきたんだ。それがまた結果として――意図やなんかを私は言うのじゃなくて、結果として暴力行為処罰法処罰されるようになって、普通刑法よりまだ重いもので処罰されるようになってきた、それは事実でしょう。意図がどうであるとかなんとかいうことではなくて、すりかえるとかすりかえないというようなことを言うのではなくして、価値判断の問題ですから、事実そうなんだということは言い得るのじゃないですか。
  185. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 事実としてさようでございます。
  186. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここまで来るのにずいぶん時間を取ってしまったので申しわけないんですが、そこでもう一つそこに関連して出てまいりますのが、あなたがさっき言われた立法政策の問題というのがありましたね。ぼくはいいことばを使われると思うんです。立法政策というのは、片っ方で甘いあめを与えておいて、片っ方はぐっとやるというのが立法政策の場合もあるんですね。そういう聞き方はちょっと皮肉った聞き方ですが、そういう場合もあるわけですが、その当時の立法政策、特に暴行、脅迫というものを廃止した理由がまだまだよくわからない。これはよく議事録で研究してきて、この次にまたあらためてあなたのほうで答えていただきたい。私のほうも質問したいと思います。  そこで、さっき言われた、ILOに入っていたのでこの条文があると適当でないということなんですか。そういうことを言われましたね。そろいうふうなこともあるわけなんですか。
  187. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ある著書はそういうことも書いてございましたので、申し上げたわけでございます。
  188. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 著書のことを聞いているのではないんですよ。この著書にとういうふうに書いてあったということを聞くのではなくて、いまあなたの答弁では、ILOに入っているのだ、ところがこの条文は適当でないので、それでこれを廃止したんだということを言われたわけなんですが、それは著書に書いてあったというのか、それはあなた自身はどういうふうに考えるんですか、このことについて。
  189. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私は前々から申し上げますように……
  190. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ILOとの関係です。
  191. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私もその当時入っておったと思いますからILOは、御承知のように、私から説明するまでもありませんが、労働運動の権利を拡張していこうという国際機構でございます。そこへ日本が入っておるのに、一方においてこういう法律があるということは適当でないという考えがあったであろうことは私も想像にかたくないのでありまして、そういうことも書いてあるのはなるほどというふうに思っております。
  192. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、治安警察法労働争議関連をしての暴行、脅迫で処罰をされた、そういうふうなものの法律はILOの精神から言って適当でないとなれば、同じようなことがいまの暴力行為処罰法の中でも行なわれておるとすれば、これはILOの精神から言ってやっぱり適当でないんだ、こういうことも結論として言えるんですが、私はそういうふうに思いますが、違うんですか。
  193. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは私はもう全然残念ながら意見が違うのでございまして、暴力行為処罰法は普通の刑法の規定の特別法でございますが、治安警察法違いまして、ああいう目的をもっての特別法じゃなくて、ある手段をとらえて、そういう手段をもってする者に刑を重くするという特別法でございますから、特別法とは言いながら、言うなれば一種の刑法の規定と同じなのであります。あれがILOでどうこうという議論がかりにあったとしても、暴力行為処罰法がすぐに同じ列で同じように議論されるのは私は適切でないというふうに、これは私は確信をもって申し上げます。
  194. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 暴力行為処罰法全体をILOとの関連でながめたならば、それはあなたの言われるとおりですよ。大臣も、それは答えられなかったけれども、そういう意味のことを何かしらぬけれども刑事局長に指示されておったようですが、それはそうですよ。ところが、そうじゃなくて、暴力行為処罰法の中のある一つの具体的な適用が、治安警察法処罰されたと同じようなことが暴力行為処罰法の中でも処罰されているとすれば、それはやはりILOの精神から言って反するという結論が出てくるのじゃないですか。一般論じゃないんですよ。暴力行為処罰法の一般論を言うのではなくて、治安警察法十七条により処罰されたと同じようなことが暴力行為処罰法の中で処罰されるとすれば、ILOの精神に反するということは当然出てくるんじゃないですか。これは大臣お答えしたい様子ですから、大臣から、お答えになってもけっこうです。
  195. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは違うと思います。それは多数の威力を頼んだり、多数でしたものを罰するのですから、何も労働運動を罰するのじゃない。それは全く違うと思う。
  196. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、治安警察法の十七条だって、労働運動そのものを罰しているのじゃないですよ。そうでしょう。これだって、労働運動そのものをちっとも罰していない。その際に行なわれた暴行や脅迫を処罰しているんです。
  197. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ある行為はいろいろの角度から見られますから、その見る角度がまるで違っておる。同じ人を殺したって、殺人にもいろいろございましょう。それと同じような動きで、決して労働運動ということじゃないんです。
  198. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもよくわからないですな。私の聞いているのは、治安警察法の十七条がILOに当時入っておったので――当時ILOに入っておったかどうかはあとで調べますが、その精神から言って適当でないんだ、こういうふうに言われるから、そうすれば、前からの質問でわかったことは、治安警察法の十七条で処罰されるものが、それが暴力行為処罰法の中でそのまま同じようなものも処罰される場合もあるんだと。あり得るわけでしょう。これはあり得るわけなんだから、あり得た場合には、治安警察法がILOの精神に反するというならば、そのものの限度においてはILOの精神に反して適用されている――暴力行為処罰法そのものじゃないんですよ。そういうように適用されていることもあるのだということは出てくるのじゃないんですか、結論として。
  199. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それはあるのです。お話のとおりあるのです。あるが、それは労働運動関係する意図をもってやったから片方は処罰する。それはやめた。その関係あるなしは別にして、ほかの理由で特に加重する刑をきめてやるというのは全く意味が違うのですから、そうでしょう、全く違うじゃありませんか。多数を頼むということは、暴力とは別に、労働運動をやるという意思があろうがなかろうが、多数を頼んだり多数の威力でやればやれるという、そういう状態がいけないという考え方ですから、何も決して矛盾はしない。
  200. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣は私の言うことがよくわからないのかもわからない。もう非常に興奮されているというか、あれだから、あなたも私の言うことがわからぬし、私も大臣の言われることがわからないんですよ、率直に言うと。やけに力んでおられるものですからわからんのですが、これはまたゆっくり、日がありますから、この点に限定してこれは質問します。きょうそこまで質問するつもりじゃなかったわけですが、あなたが何か盛んに言いたそうなふりをされるから、せっかく言いたそうにされているのに質問しなくちゃ礼を失するから、ぼくはしたわけです。  そこで、これは「労働刑法概論」というので、関之という人がおります。これはよく本を書く人でして、ぺらぺらしゃべる人ですが、この人はいま最高検察庁の検事をやっているわけですが、この人がこういうことを言うわけですね。たとえばいまの十七条のことについて、「同条の規定内容を見るに、第一項は労働争議を、第二項は小作争議を、抑圧する事項を規定してみる。第一項により、労働者の団結権及び勧誘宣伝等の運動行為は完全に封ぜられ、更に交渉の場合に於て、使用者側に承諾を強ゆることが、禁止せられてゐる。これでは、労働組合及び労働運動の行はるる地がないと云ふも、過言ではない。第二項に於ては、小作人の集団行為は殆んど不可能に近い。本条及びその刑罰規定である同法第三十条は、実に、この時期を特徴付けるものである。本法制定の眞の目的は、政党の政治運動を取締り、藩閥政府の地位と権力とを強固にすることに在ったことは、否定し得ざるところであったが、又これと共に、労働運動、小作争議を抑圧するに在ったことも、明瞭である。」、これは最高検察庁の検事が治案警察法の十七条について解説している。そうはっきり言っているんですよ。これは検事としては思い切ったことを言っていると思いますが、いずれにしてもこういうふうなことを言っている。  それは別として、その後のこの暴力行為処罰法関連をしてこういうことを言っているわけですよ。「労働刑法概論」の二八ページから二九ページです。これはなぜ私がこれを取り上げるかというと、現職の最高検察庁の検事ですから、この当時司法省の刑事局の参事官か東京高検の検事か何かやっていた人です。この人が言っているのは、こういうことを言っているわけです。「尚大正十五年四月、法律第六十号として公布された暴力行為等処罰に関する法律は、特に説明を要する。時の政府は、一方に於て治安警察法第十七条の廃止法案を議会に提出すると共に、他方に於ては、右暴力行為等処罰に関する法律案も同時に提出した。本法案審議に当り、最も問題になったのは、右の治安警察法第十七条の廃止法案との関係上、暴力行為等処罰に関する法律は、労働運動、小作争議等に適用せらるるや否やの点であった。議員は、治安警察法第十七条の廃止法案が提出され、同時に暴力行為等処罰に関する法律案も提出されたから、後者を以て前者の代替法とすることは出来ない。若し、代替の法なりとすれば、治安警察法第十七条の廃止は、全く無意味となるからである。従って前者の廃止の精神を徹底せしむる為には、後者は合法的なる労働争議、小作争議には適用がないとすべきであると主張し、政府も亦この主張に屈し、本法は、合法的なる労働運動や小作争議を取締るものに非ざる旨を言明した。然るに、その後の本法の運用の実情は、広く労働運動や小作争議の一切に亙りこれを行ってゐる。」――この「然るに」以後が問題だと思いますが、「然るに、その後の本法の運用の実情は、広く労働運動や小作争議の一切に亙りこれを行ってゐる。本法は、一般労働刑法として特に重要なる地位にある。労働運動に伴ふ暴力的犯罪にして、本法の適用なきものは殆んどない。われわれは、本法の制定の経過と、その運用の実情とを比較考察することにより、法秩序の基盤に横はる違法性の本質に付、認識を新にするを覚ゆる。」、こう言っている。実はこれはちょっとわかりにくい点があると思うんですね。わかりにくい点があると思いますけれども、少くとも「本法の運用の実情は、広く労働運動や小作争議も一切に互りこれを行ってみる。本法は、一般労働刑法として特に重要なる地位にある。」と、こういうことを関さんは言っているわけですね、現実に。これは、一般の労働刑法というものの中でこの暴力行為処罰法が特に重要なる地位にあると、こういうんですね。特に重要な地位にあるというふうに考えるわけですか。その点はどうです。
  201. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私はそういうふうに考えませんのでございますが、これは関さんのお書きになったものでございまして、私もいま一緒に見ておりましたが、仰せのように書いてありますが、現実に適用を見ておりますのは、戦後、暴力行為の事件が七、八千件からにのぼっておりますけれども、労働運動と思われるものにあるいは大衆運動と思われるものに適用を見た例は、三百件内外でございまして、とうてい――この「労働刑法」ということばも私にはよくわかりませんが、その中の重要な柱だというふうに見るのは適当でないんじゃないかと思います。
  202. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれども、「一般労働刑法として特に重要なる地位にある。」と、現職の、当時司法省の参事官かなんかじゃないですかね、その人の書いた本ですよ。いまは最高検の検事、この人が、「暴力行為処罰法は、一般労働刑法として特に重要なる地位にある。」と書いているんですね。これは、やはりその後の適用が一般労働刑法として非常に大きなウエートを占めてきておるという現実を検察庁の検事自身が認識しておると、こういうふうに見ていいんじゃないですかね。いま、あなたは、「労働刑法」というのは何だかよくわからないというようなことを言われましたけれども、どうして関さんはこういうふうなことを書かれたのか、これは関さんに聞かなければわからないとしても、一般の労働刑法、いろいろあるんですけれども、その中で、実際にはこの法律が非常に大きな役割りを果たしてきたということを検察庁の検事自身が書物の中であらわして、しっかり認めているのじゃないですか、現実に。そうとれませんか。
  203. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 関さんの著書でございますから、関さんの認識はまさに仰せのとおりだと思いますが、私どもはそうは思わないので、これは関さんの一つの説だというふうに私は思っております。
  204. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、その人の説であるかもわかりませんから、ここでこの説は正しいとか正しくないとかいって押し問答したって始まらないわけですね。けれども、最高検察庁の検事自身がこういう考え方を持っているんですよ、一人にしてもね。  それから、これは「ジュリスト」ですが、ちょっと古いんで、一九五四年の五月十五日号に、谷口正孝という判事が、いまから十年前に「暴力行為等処罰法の運用について」ということで論文を書いているんです。お読みになったかもわかりませんが、「裏切られた立法理由」という題目をつけて、現職の判事が書いているんですね。それを読んでみますと、いろいろ書いてございますが、要するに、「専ら争議行為の取締りに向けられ完全に立法者の意思を裏切ってしまったのである。」と、こういうふうに言っておりますね。「その先駆ともいうべきこの暴力行為等処罰法について同法にいわゆる団体が果していかなる性格の団体を意味するものかについて改めて反省をめぐらすことは、たとえ判例において既にその有権的確定解釈が示されている現在においてであっても、強ち無意味ではなかろう。」、こういうふうないろいろことを言われて、結局、この法律というものが、立法当時は暴力団を取り締まるという形のものであったのが、現実にできてきたところがそうでない形に運用されて、争議行為の取り締まりに向けられて、完全に立法者の意思を裏切ってしまったということを、これは現職の判事自身が  いまとこの判事か知りませんが、この方自身がちゃんとこう書いているわけです。これだけじゃないわけです。こういうふうな形でこの法案が運用されてきたということが私は大きく言えるのじゃないかと、こう思うんです。これはしかしあなたの見解とは違うかもわかりませんね。違うから、その点については、また日を改めて私はあなたにこの運用の実際について聞くつもりです。  そこで、きょうは、もう一つの問題は、暴力行為法案ができたときに、何か修正されましたですね、国会の中で。どの程度修正されたんでしょうか。
  205. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのとおり、審議の過程におきまして修正がございました。修正点は、第一条の中で、「仮装シテ威力ヲ示シ」というところの字の下にポツが一つ入っておるのを削るということと、「又ハ」を加えまして、「兇器ヲ示シ」というのが加えられております。それから、その下の「又ハ」を「若ハ」というふうに改める、こういう修正でございます。
  206. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、政府原案と具体的にどういうふうに違ってくるんですか。
  207. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 政府の原案には「兇器ヲ示シ」というのが入っていなかったようでございますが、これが新たに加えられたということでございます。
  208. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことないですよ。違いませんか。「兇器ヲ示シ」はあったんですよ。
  209. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) どうもたいへん失礼いたしました。ちょっと私勘違いをしておりましたのですが、実体は変わってないようでございまして、ただ読みやすくしたというのでございましょうか、もう少し私読みましてお答え申し上げます。――たいへん失礼いたしました。先ほど申しましたのは私の間違いでございまして、直しましたところをもう一回申し上げます。  第一条の「仮装シテ威力ヲ示シ」の下のポツを削るということ、それから「又ハ」を加えまして、今度は、「兇器ヲ示シ」の下に「又ハ」とありますのを「若ハ」というふうに改める、こういうのでございます。  これだげの改正によりまして、どういうことがわかるかといいますと、実体は変わりませんのですが、そういうことによって法律意味を明白にいたした、こういうことであるようでございます。
  210. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何だかどの点が明白になったのか、はっきりしませんがね。「兇器ヲ示シ」の上に「又ハ」を入れたのじゃないですか。どうして、「数人共同シテ」の上に、「若ハ」を入れたのでしょう。だから、いま言われたのとちょっと違いませんか。あるいは聞き違いかもしらぬけれども……。
  211. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私が申し上げたとおりだと思うのでございます。
  212. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その当時の刑法ではこれはまかなえなかったんですか。当時の刑法ではまかなえなくて、特にこういう立法をしなければならない必要があったわけですか。当時の刑法ですよ。一般刑法の条項でまかなえなかったんですか。まかなえたんだけれども、不備があったと、こういうんですか。
  213. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法定刑が当時の刑法でまかなえたかどうかという御質問でございますが、こういう特別な類型を定めまして若干刑を重くしておりますことはごらんのとおりでございますが、こういう暴力対策としましてこのような類型の犯罪が当時多発しておったようでございまして、これによって一般予防の効果をねらったと思うのでございます。刑がまかなえなかったかどうかという点になりますと、さしあたり考えられます点は、一部親告罪が親告罪でなくなっておったりしておる点などは非常に効果的なことであったというふうに当時はいわれておったようでございます。
  214. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その親告罪が非親告罪になったというようなことは、これは訴追条件の問題として、当時の刑法で刑が重いとか軽いとか、それからいまの親告罪がどうとかということを抜きにして、それを抜きにして、構成要件そのものとして普通刑法ではまかなえ切れなかったんですか。
  215. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 特に暴行罪を見ますると、現在は暴行罪は「二年以下」になっておりますが、当時は「一年以下」でございました。それがこの法律では特殊な類型だというので「三年以下」となっておりますので、やはり暴行の罪というものにつきましては、当時としてはこの法律が相当暴力団対策として意味を持ったというふうに思うのでございます。それを裏返して申しますならば、一年以下の懲役で暴行が親告罪であったという状況では、とうてい暴力団対策として十分な活用はできなかったという事情にあって、そしてこういう規定ができたというふうに思うのでございます。
  216. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その刑が重いか軽いかということは、これは下限の問題、上限の問題があると思いますが、それは一応抜きにして、構成要件は一般刑法でまかなえないようなものがあったんですか。そのものはないんじゃないですか。これは一般刑法で全部やれるんじゃないですか。ただ、刑が重い軽いとか、親告罪、非親告罪の問題はあるけれども、それを抜きにすれば、一般刑法の中にみんな当てはまるのじゃないですか。
  217. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 当時は当時なりに意味を持って説明ができておるわけでございますが、今日になっていろいろ考えてみますると、まあ、常習犯の規定が、これは今日でも同じようなことが言えるわけでございますが、特定の前歴を重ねる者が暴力団の中におりますし、こういう状態から暴力行為の常習犯という考え、そしてこれは刑事政策の問題とつながるわけでございますが、そういったようなことなども新しい局面を開いた法律でございます。  それからあと請託罪等が、こういうものの資金源を直接取り締まるという意味規定等が、やはり町の大小の暴力を一応目標にした法律として意味を持っておったというふうに考えます。
  218. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 刑事政策の問題は、この法律で考えるのは本筋じゃなくて、別個に考えるべきなんであって、刑事政策の問題まで法律の中で考えちゃいかんとは言いませんけれども、それはまた別個の問題であって、私が聞いているのは大正十五年にこの法案ができたときに、刑法の各本条に当てはめて当てはまらないようなものまであったんですか。そういう行為までも処罰しなければならなかったんですか。必ずそれは、刑法の各本条が想像的競合になる場合もあるし、併合罪になる場合もあるし、みんなそういうところに入ってくるのじゃないですか。一般刑法でまかなえるんだ、構成要件そのものはまかなえるんだ。態様そのものはまかなえるんだ、ただ、刑が重い軽いに親告罪、非親告罪の問題はあるんだ、こういうふうなことならば、またそれでもいいし、いや、一般刑法ではまかなえないんだ、特殊なものなんだ、特殊なものを一般刑法の中に還元していくわけにいかないんだ、刑の重い軽い、非親告罪親告罪を抜きにして、そういうことは考えられるんですか。――私の言う意味をおわかりでしょうか。私の言っておるのは、刑の重いとか軽いとか訴追条件の問題を抜きにして、いろいろな構成要件なり犯罪態様があるけれども、一般の刑法で処罰できないのかということを言っておるんですよ。
  219. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑の構成や訴追条件、常習犯等、刑事政策といったような問題をすべて除去してなおまかなえるかどうかという御質問でありますが、私はそういうものも含めましてまかなえるとかまかなえぬとかということを議論してまいっておるわけでございまして、そういうものを除きましてまかなえるとかまかなえぬとかという議論をすることは適当じゃないように思うのでございますが、いかがでございましょうか。私のほうから質問するのはおかしいのですが、私どもはそういうものを含めましてまかなえるかまかなえぬかを議論する。そういう意味から申しますと、私は、当時の状況としてはまかなえない状況にあった。やはり常習犯というものを認めていくべきである、あるいはその資金源についての取り締り規定を置くべきである、あるいは特殊な類型の強談威迫の行為とか兇器を示して暴行脅迫をするといったような事件、こういうものを特別な法律としてきめることによりまして暴力対策を推し進めていくという当時の政府の政策というものはわかるような気がいたすのであります。
  220. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、その当時、一般刑法の、たとえば刑を重くするとか、そこに常習犯の規定を設けるとか、親告罪を非親告罪にするとか、こういうようなことでもやれたのじゃないかと私は言っておるんです。そういう点について当時考えたことがあるのかどうか。それは今度の改正案にも関係してくるわけですよ。今度の改正案関係して今度は羽山さんが論文の中に書いてあるんですよ。だけれども改正案のことをここで聞くわけじゃない。大正十五年のこの法律ができたときはどうか。一般刑法でやろうと思えばできたのじゃないかということを聞いているんです。
  221. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 当時ただいま御質問のようなことを書いたかということを的確な資料に基づいてお答えしにくいのでございますが、先ほど申し上げましたように、当時、池田さんの本にも幾つか例が書かれておりますけれども、特殊な暴力事犯が多数発生したようでございまして、そういうものに対処するには刑法の一般的な規定だけでは不十分であるというところから、それではどういう類型の犯罪が適当であるかということで種々研究した結果、そういうところに落ちついて、お話のような、いま現行法に見られるような改正ができたと思うのでございます。私どもは、ただいま改正案を出します場合の実態調査等によりましていろいろ確実な資料をつくり御説明申し上げておりますが、当時もそうやったのだろうと思いますが、その当時の資料というものは現在あまり残っておりませんので、正確に申し上げることは困難でございます。
  222. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 当時の資料が残っていないというのはおかしいじゃないですか。手元にないというのなら話はわかるけれども、当時の資料が残っていないなんて、そんなことはないでしょう。
  223. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法務省は終戦のときに焼けまして、ほとんど資料を焼失しているわけでございます。
  224. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 焼けたんですか。私の不明を恥じるわけですけれども、焼けたことまでは知らなかった。私もよく覚えていないので。……  まあその話はそれとして、そうすると、私の聞きたいのは、刑法の改正を本来やるべきなのに、刑法の改正は非常に慎重になるし、手続があれだということで、すぐに特別法をつくるわけです。特別法は簡単にできるというので、特別法をどんどんつくってきて、特別法を一般法化してくるという一つの立法計画というか、立法形式が安易にとられることがあるので、私はそこで聞いているわけですが、これは改正案関連して日を改めて聞きます。これは、この法律について羽山さんが書いていますからね。失敗したと言っているんじゃないですか。暴力行為改正案を出したのは失敗だった、これが今日の混乱のもとなので、刑法の改正でやればよかったというようなことを書いていますね。まあ、それは九日にあらためて聞きますがね。こういうふうに先の先まで準備をしていてもらいたいというか、準備をしてくれというような意味のことを私のほうで好意的に言っているんですから――あまり好意的でもないかもしれませんけれども、言っているんですから、十分準備していただきたい。  そこで、大正十五年にこの法律ができて後に、刑法はどういうふうに変わってきたんですか。いろいろ変わってきましたね、何回も。どういうふうに変わったか、ちょっと御説明願いたいんですが。
  225. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑法は御承知のとおり、明治四十一年から施行されているわけでございますが、この暴力行為処罰法ができましてから後の昭和十六年に法改正がございますが、これは当時刑法仮案というのができましたのですが、仮案はそのままの形で今日まで残っておりますが、この仮案の趣旨をかなり盛り込みまして、臨戦体制の刑法のあり方というような形で改正ができたと思うのでございます。  それから昭和二十二年に……
  226. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どこが変わったんですか、内容を……。
  227. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、昭和十五年に仮案が発表されまして、これの趣旨にのっとりまして改正が行なわれたのでございますが、たとえば賄賂罪の規定だとか、その他幾つかの点がございます。その内容につきましては、後刻もう少し詳しく申し上げたいと思いますが、たとえば安寧秩序二対スル罪の百五条ノ二というのも当時できたものでございます。百五条ノ三、百五条ノ四などが種々入っております。それから賄賂の罪の規定等でございます。  それから昭和二十二年の法律第百二十四号で改正がございます。これは非常な大改正でございまして、新憲法を踏んまえての憲法に抵触するおそれのある幾つかの法律が改廃されております。たとえば天皇ニ対スル罪とか、あるいは姦通罪の廃止等々でございます。  それからその後におきましては、昭和二十八年に一部改正、昭和二十九年にも一部改正がございます。それから昭和三十三年の改正と三十五年の改正がございます。三十三年以降の改正は私も関係をいたしておりますが、たしか三十三年には暴内団対策のやはり一環として、兇器を持って集まる罪、集める罪等の改正、それから斡旋収賄罪の規定を設ける改正等がございました。  二十八年のことを申し上げませんでしたが、二十八年のときには、執行猶予者を保護観察に付するという道を開いたのでございますが、その改正でございます。  それから三十五年は、不動産侵奪罪の規定を設けた、そういうふうな経過をたどっております。
  228. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの改正ですね、七回ですか、それをもう少し詳しく説明願いたいんですがね。何はどういうふうに改正になってどうなって、たとえば暴行罪が改正になって親告罪でなくなった、そういう関係なんかたくさんあるわけですよ。そればかりじゃなくて、何がどういうふうになって刑が重くなったとか軽くなったとかあるでしょう。
  229. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これはかなり大きな改正が入っておりますので、資料を持ってきておりませんので、詳しく申し上げかねるのでございますが、ちょっと時間をいただきたいと思いますが、暴行罪が親告罪でなくなりましたのは、たしか昭和二十二年の改正のときであったと思います。
  230. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのはもう少し詳しくわかりませんか。
  231. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ちょっと時間を御猶予いただきたいのでございますが……。
  232. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をとめて。   〔速記中止
  233. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を始めて。
  234. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの刑法の改正ですね、ちょっとわかりませんか、もう少し詳しく。
  235. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) もう間もなく――向こうを出ておりますから、間もなく参りましたらお答えいたします。
  236. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その一つはこういうことですよ。訴追条件が、暴力行為との関連においては、暴行と脅迫と毀棄とあるわけでしょう。それの訴追条件が、ここでは親告罪、非親告罪の問題がどういうふうに変化してきたかということが一つ聞きたいわけです。それはわかるのじゃないですか。
  237. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 暴力行為といわれております罪名は、暴行、脅迫、器物損壊でございますが、暴行につきましては、先ほど申しましたように、初め現行刑法は一年以下の懲役でしかも親告罪でございましたのが、二年以下の懲役に上がりまして、昭和二十二年の改正で非親告罪となっております。脅迫につきましては初めから非親告罪、それから器物損壊につきましては現在も親告罪でございまして、これはこの前の昭和三十三年の改正の際に非親告罪としていただきたいという改正を出したのでございますが、衆議院の段階でその点が削除になりまして、現在も親告罪でございます。非親告罪じゃなくて、親告罪でございます。
  238. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、暴行、脅迫、器物毀棄、この三つで言うと、刑の変更があったのは暴行だけになるわけですか。それで暴行のほうが非親告罪になったのは昭和二十二年だというんですが、そうすると、そのとき一緒に器物毀棄のほうは非親告罪にするという改正案は提出しなかったわけですか、二十二年に。
  239. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 器物損壊罪につきましては、昭和二十二年の改正のときには非親告化するという改正案は出されておりませんでございました。
  240. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、暴力行為の中の暴行、脅迫、器物毀棄というか、この三つがそれぞれ違うわけですね。それは違ったって、おのおの違う理由があるのでしょうから、いいんだと思いますが、そうすると、なぜ暴行罪だけを非親告罪にしたときに器物毀棄のほうは非親告罪にしなかったんですかね。ここら辺のところがどうもよくわからない。
  241. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 暴行、脅迫――脅迫は別としまして、暴行罪は家庭の中でもあり得るわけでございまするけれども、器物損壊に至っては、これは暴力団だけじゃなくて、一般にもしばしばあることでございますので、やはりこの程度のよくある犯罪につきましては、特に親告罪で相手の告訴を待って論ずるという形にしておいたほうがいいというのが昭和二十二年当時の考えであったと思いますが、その後の実態を見てまいりますと、たとえばおでん屋とかバーとかで暴力団の団員などが乱暴して皿を割り、電気を割るというような事例がしばしば起こってきておることがわかりましたので、もしそういう場合に親告罪でないといたしますれば警察取り締まりもかなり徹底するのじゃないかというようなことから、被害者がそういうものをなかなか訴え出ないで泣き寝入りになるというケースが非常に多かったので、暴力対策としまして、罪そのものとしてはかなり親告性の強い罪ではございますが、なお暴力団対策として非親告罪とするといろ方針をきめまして、たしか昭和三十三年のときだったと思いますが、改正案を出したわけであったのでございます。罪といたしましては暴行以上に親告性の強い犯罪だと考えております。
  242. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 家庭の中にあるというのは、暴行罪が家庭の中にあるという意味ですか。だから非親告罪にしたという意味ですか。私ちょっとわからないんですがね。家庭の中にあるという夫婦げんかか何か知らぬけれども、そんなら親告罪にしていくというのが筋じゃないですか。そのまま残しておくというのが。暴行を非親告罪にしたというのはどういう意味ですか。私の言うのは、そのときに器物毀棄も当然一緒に親告罪にする――通った通らないは別として、改正案としては当然一緒にすべきじゃなかったかと思うんですが、それがばらばらになったのはどういうわけですか。
  243. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 昭和二十二年改正当時には、暴力団の犯罪というような形でこの罪が十分理解されなかったと思うのです。また、犯罪現象としましても、そういうような点はあまり問題になっていなかったようでございます。それで、一方は親告罪としてそのまま残り、他は非親告ということになったと思うのでございますが、その後、器物損壊という罪そのものは親告罪にしておいてもいいような罪でございますが、そういう罪を暴力団の人がやり、しかもそのまま泣き寝入りになっておるという新しい暴力団の現象というものに着目いたしまして、非親告化をはかったわけであります。昭和二十二年のときは、そこまで犯罪が理解されていなかったといいますか、そういったような犯罪現象は必要性をまだ感ずるに至っていなかったというふうに申し上げたほうがいいかと思います。そういう状況であったようでございます。
  244. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、何か家庭の中に何とかかんとか言われましたね。それは親告罪になっていた場合の理由として言われたわけですか。それならよくわかります。そういう意味でしょう。何だか変なふうに聞こえたから。  そこで、昭和三十三年かに器物毀棄を非親告罪にしようとして提案したわけですね。これは、兇器準備集合罪ですか、このときと一緒なんですか。
  245. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。
  246. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、一方だけは通って、通ってというか、まあ通ってですね、こちらのほうは削除されたというのは、これは衆議院で削除されたというんですか。これはどういうような理由から削除されたんですか。そこら辺のところがよくわからないんですが、提案理由はどういう提案理由だったんですか。
  247. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 提案理由は、先ほど申し上げましたように、暴力団がしばしばそういう罪を犯し、それからまた、被害者が泣き寝入りになっておる、警察が入りにくいというようなことから、それは親告罪に由来する場合が多い。あとから親告したときには現行犯でなくなっているというような状態で、取り締まりがしにくいから、これを非親告罪としておいたほうがいい、こういうことが理由でございます。これに対しまして、まあこれはやめておいたほうがいいという議論は、労働運動の際に、器物毀棄というようなものが非親告罪ということになりますと、警察がいま言うように入りやすくなるじゃないかというようなことで、乱用のおそれがあるというような考慮からだったように思いますが、そういうふうに理解しております。
  248. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記やめてください。   〔速記中止
  249. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をつけて。
  250. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑法改正の順序に従いまして改正の内容のあらましを御説明さしていただきます。  まず、昭和十六年の改正でございますが、改正の趣旨は、先ほど申しましたように、昭和十五年に刑法仮案をきめまして、この仮案の趣旨にのっとりまして、全面改正ではありませんでしたが、部分改正をかなり大幅にいたしたのでございます。それと、もう一つは、全面改正に至らなかったのは、戦争――準戦時体制と申しますか、そういうような状態下においての改正でございましたので、仮案の中でもそれに見合うものを選んでやったようでございまして、まず、総則の中では、没収・追徴の規定を整備いたしました。それから各則のほうへ参りましては、強制執行免脱の規定を整備いたしました。それから安寧秩序ニ対スル罪の規定、それから重過失致死の規定、賄賂罪の規定の整備をいたしたのでございます。これがおもなる内容でございます。  昭和二十二年の改正は、これは憲法改正に伴っての、これに抵触する、あるいは適当でないと思われる刑法の中の規定を削除するということが主眼でございまして、この関係におきましても、たとえば皇室ニ対スル罪、外患罪、外国の元首、使節に対する罪、安寧秩序ニ対スル罪等の廃止、それから住居に対する罪の未遂罪、公然猥褻罪、猥褻文書頒布の罪、姦通罪の廃止、公務員職権濫用罪の整備、あるいは特別公務員の陵虐の罪、それから先ほど申しました暴行罪の刑の引き上げと非親告化というような改正、業務上過失致死罪の改正、脅迫罪の刑の引き上げの点、そのほか名誉毀損罪についての言論の自由との関係におきまして事実証明を許すといったような大きな改正が実体的な改正でございまして、おもなものを申し上げますと以上のようなものでございます。  それから昭和二十八年の改正は、執行猶予に保護観察を付するという執行猶予の整備の規定でございます。  それから二十九年の改正も、執行猶予に関してでありまして、二十八年の改正とあわせて、二度目の犯罪につきましてもなお執行猶予ができるということ、それにもちろん保護観察をつけるという規定改正をする等のことがおもなものでございます。  昭和三十三年の改正は、兇器を持って集まる罪、集める罪、それから斡旋収賄の罪を新たに設ける、あるいは姦通罪の中で、姦通罪は、強姦罪は親告罪になっておりますが、輪姦のような形で行なわれる強姦罪につきましては親告罪でなくするといったような規定改正等がおもな内容でございます。  それから昭和三十五年の改正のときは、不動産侵奪罪、不動産の窃盗と同じような形の不法占拠の罪を新たに設けたのでございます。  さらに、ただいま提案しておりますのは、身のしろ金目的の誘拐罪、これがいま御審議をわずらわしておる法律でございます。
  251. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの、ずっと改正になりましたね。これは昭和十六年の戦時刑事特別法のことを言っているんですか、それとは別ですか、どっちなんですか。
  252. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 戦時刑事持別法とは全然別でございまして、いまのは、仮案の答申を基礎にした改正でございます。
  253. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの、ずっと改正があった中で、暴力行為等処罰法関連をするものは何と何なのか、大体わかりましたけれども、それがどういうふうに改正になったのか、これはあと資料か何かで出していただいたほうがわかると思いますから、そのときの立法理由も含めて、ちょっとお話し願いたいと思います。
  254. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 暴力行為等処罰法との関連を申し上げますと、暴行、脅迫の罪が、脅迫罪は親告罪ではございませんが、刑を、昭和二十二年の改正の際に引き上げて……
  255. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どういうふうに上がったんですか。
  256. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 一年が二年になっておるわけです。それから暴行罪が親告罪から非親告化をしましたほかに、刑を一年から二年に引き上げております。
  257. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは上限だけですか、下限なしですか。
  258. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 下限なしに上限だけでございます。  器物損壊につきましては、先ほど申し上げましたように、三十三年度の改正の際に流れておりまして、現行法のままでございます。  さらに、暴力関係改正といたしましては、主として、三十三年以降の改正でございますが、凶器を持って集まる罪、これは一種の予備罪でございますけれども、独立予備としまして、凶器を持って集まる罪は二年以下の懲役、それから集めた罪、集まったほうじゃなくて、集めたほうの罪は三年以下だと思いますが、そういう罪を設けまして、そのときは、刑法の実体法だけでなくて、刑事訴訟法の改正もいたしました。お礼参りをすると認められる事情がありました場合には、権利保釈から除外する、あるいは公判廷において証人を尋問します場合に、被告人の面前でなくてできるというような規定を設けました。なお、その際に、証人に対しまして威迫を加える者があるということで、そういう者のもし被害をこうむった場合の補償をするという法律も同時につくりました。  それから強姦の親告罪につきましては先ほど申しました。  大体、そのようなのが、暴力関係改正でございます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの暴力行為等処罰法関連をする刑法と刑事訴訟法の改正ですね、そのものの一覧表というか、それが具体的にどういうふうに変わったかということは大体わかりましたけれども、もう少し明らかにして、表か何かで出していただきたいと思います。  それから刑法と刑事訴訟法だけでなくて、ほかに特別法にありませんか。銃砲等はまた別に聞きますが。
  260. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法務省所管の法律といたしましては、以上申し上げただけでございます。
  261. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから銃砲等所持ですね。これはどういうふうに変わってきたんですか。これは警察ですか。どういうふうに変わってきたのかわかりますか。いまわからなければ、概要を述べてあとで表か何かで出していただいてもいいんですけれどもね。
  262. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 警察の所管の法律でございますが、私のほうの所管と違いますので、後ほどまた資料で出さしていただきたいと思います。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 保安局ですか。
  264. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 保安局です。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、警察庁関係暴力行為等処罰法関連をする法律で、戦後というか、改正になったもの、暴力行為処罰ができてから改正になったのは、何と何があるのか、これも何か明らかにしていただきたい。これは銃砲刀剣類等所持取締法だけですか。
  266. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いまさしあたり、刑法、刑事訴訟法、それからほかに私ども関係では、銃砲刀剣類所持取締法の関係だけだと思いますが……。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 銃砲刀剣類等所持取締法ですね、これは初めそういう名前じゃなかったですね。これはわかりにくいんですけれども、これがどういうふうに変わったのか、もう時間があれですから、きょうじゃなくていいですから、この次に明らかにしておいてほしいんですがね、聞きますから。これは、初め、銃砲等所持取締令か禁止令か、何かそんな名前じゃなかったですか。
  268. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) そのように記憶しております。
  269. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それで私のほうでちょっと調べましたのがございますので、題名だけお答え申し上げておきますが、昭和二十一年勅令三百号で銃砲等所持禁止令というのが、これはポツ勅といわれている勅令でもって出ております。次いで昭和二十五年十一月十五日政令三百三十四号で銃砲刀剣類等所持取締令というのが出ております。それから今度は昭和三十三年法律第六号で銃砲刀剣類等所持取締法、それが昭和三十七年に法律第七十二号で一部改正が行なわれて今日に至っていると承知いたしております。
  270. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの法律は、令から法になったというのは、内容は変わらないで、法律の名称だけ変わったのか、あるいは改正がどういうふうになっているのか、わからなければ、時間がありませんから、きょうでなくても、これは警察のほうで出していただいたほうがいいんじゃないかと思いますが、この次に出していただきたいと思います。
  271. 中山福藏

    委員長中山福藏君) この法律案に対する質疑は一応この程度にとどめ、本日はこれをもって散会いたします。    午後三時五十九分散会