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1964-04-23 第46回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十三日(木曜日)    午前十時二十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            佐多 忠隆君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            羽生 三七君            森 元治郎君            曾祢  益君            佐藤 尚武君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    通商産業大臣  福田  一君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    通商産業省通商    局長      山本 重信君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    通商産業省企業    局産業資金課長 新田 庚一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済協力開発機構条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  先刻の理事会におきまして、OECD条約審議予定について協議いたしましたので、議事に入る前に、その結果について御報告申し上げます。  本日午前、総理大臣外務大臣大蔵大臣経済企画庁長官に対する質疑。なお、総理出席時間は一時間でございますので、質疑の順序及び時間は、社会党四十分、民社党十五分といたしました。  なお、質疑の内容は、OECD条約に関する質疑に限定いたします。  次に、本日午後は、経済企画庁長官文部大臣運輸大臣通商産業大臣に対する質疑を行ないます。  明二十四日は、農林大臣労働大臣に対する質疑を行ないます。     —————————————
  3. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては、すでに提案理由説明補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。  速記をとめて。   〔速記中止
  4. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記を始めて。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、OECD加盟の問題につきまして、総理に概括的な問題についてお伺いをいたします。  総理は一昨年ヨーロッパに参りました後にOECD加盟することを決意されまして、その準備を整えられ、いよいよ本年加盟するための手続を議会に対してとられたわけでございますが、私は過日の本会議におきまして質問いたしましたが、きわめて一般的な概括的なお答えしかいただけなかったので、本日の委員会で多少詳しくお答えをいただきたいと思うのであります。  その第一点は、総理OECD加盟をするということを決意されましたが、そのOECD加盟日本にとってどういう意義があるか、特にこの加盟によりまして日本がどういう利益を得るのであるかという点について総理見解を承りたいのであります。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知のとおり、敗戦によりましてほとんど全部というほどの産業上の被害を受け、日本はどうやって立っていくかということを考えさせられ、そうして、国内インフレ防止のためにも思い切ったいわゆる政策をとり、ようやく国内的には当時予想した以上の発展を遂げまして、国内は自由な経済になった。しかし、国際的にはやはり為替貿易を管理いたしまして、統制であるとか、そうして、一億近い人口と高度の経済成長を遂げつつある日本としては、どうしても国内経済から国際経済に向かっていかなければならぬという、好むと好まざるとにかかわらず、日本の進むべき道がそういう状態に相なってきたわけであります。私はそれを考えまして、昭和三十二年通産大臣になりましたときに、これはどうしてもこれからの日本としては貿易為替自由化に進まなければならない、世界相手市場を開拓し、世界相手貿易拡大しなければならぬという考えのもとに、まずみずからの制限撤廃をするというので進んでまいりました。おかげさまで、外国から見ましても、またわれわれといたしましても、一人当たりの所得は少のうございますが、国全体としては非常な高度成長をし、そうして、生産世界五位、六位という状況に相なってまいりました時分には、これは世界経済からいったら、これは一つの大国でございます。大きい力でございます。そうして、この力をもっと伸ばしていくためには、どうしても先ほど申しましたような為替貿易自由化——IMFの八条国になったということだけではまだ十分ではございません。何と申しましても、世界経済は国連のほうでいろいろ話をされますが、先進国クラブと申しますか、グループであるOECDへ入るということが、これが一番日本のいわゆる世界貿易政策からいってもいいことである。話し合いによってやっていこう。そこで、私が昭和三十六年にアメリカに参りましてケネディ大統領との会談のときの主題はこれでございます。日本アメリカとの関係は非常に密接だ、そうして、日本と東南アジアの関係は相当のいわゆる歴史的、地理的条件があるからこれを伸ばしていくべきだ、しかし、日本としてはそれだけじゃだめなんで、やはりイギリス、ドイツ、フランス中心としたヨーロッパ市場と結びつく必要がある、自分はこれでいきたいと思うと言ったら、ケネディ大統領も、そうですと、それで私はずっとその方向へ経済を進めていったのであります。たまたま昭和三十七年に参りましたときに、私は日英通商航海条約の改定と、そうして、フランスあるいはベネルックス三国に対してのいわゆるガット三十五条の援用撤廃と、こういうことを主にして行ったのでございます。それで大体三十五条の撤廃フランスがし、そうして日英通商航海条約に調印いたしました。そのときも、初めて会ったときには、イギリスモードリング大蔵大臣は必ずしも日本OECD加盟に初めの日はあんまり賛成のようじゃなかった、やっぱり豪州、ニュージーランドということをお考えになる一つのあれでございました。そのときに私は、モードリング大蔵大臣IMFのもっと拡大、そうしてクロマー英蘭銀行の総裁がIMF国際通貨基金の問題、あるいはイギリス金融市場中心の問題を討議された。モードリング大蔵大臣国際金融についての一家言を持っておられた。そういうことを中心に私は自分自身の抱負を述べたのであります。その翌々日ですか、今度会ったときには、日本OECD加盟がなかなか有望のようなことを言う。これは私は予想外のことで、私はまだ時間がかかると思っておりましたが、そういうことになりまして、急速にOECD加盟が実現するようになったのであります。これは私は、世界貿易拡大のためにOECD加盟先進国が一致してこれを望んでおるのでありまして、またわれわれとしても、日本が広く世界の人とともにわが国の経済政策をいかに持っていくべきかということは、そこはやっぱり先進国経済政策話し合いでいくべき筋合いのものと思います。また、それだけの状況日本がなってきた、これは自他ともに認めている、こういうことに相なったのであります。もちろん、OECDの主たる目的は、お互いに高度の経済成長をしよう、そしてまた、そのためには貿易事由化拡大をはかっていく、そして、われわればかりではだめなんで、やはり低開発国援助お互い考えていかなければならぬ、これが世界の平和であり繁栄であるということでございます。もちろん、日本は三つの目的のうちのDACには入っておりましたけれども、そのもとをなす高度経済成長とか貿易拡大とかいうことにつきましての話し合い、また日本の所信を主張する場がなかった。私は、いまの場合に、日本がこういうようになったということは、日本に対する世界信用、そして、日本のこれから拡大していくわれわれの責務を感じながら、お互いにひとつOECD目的を達するようにしようと、こういうのがいままでの経過と私の心境であるのであります。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話を大体概括してみますというと、結局、日本が高度の経済成長を遂げた、そして日本はいわゆる開放経済体制をとらなければならない、そして、IMF八条国へ移行しただけでは足りないのでOECD加盟をして、世界のいわゆる先進国の仲間入りをして、そこで話し合いをして、日本開放経済体制を完成していく、こういうことでございましょうか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことです。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、問題になりますのは、日本開放経済体制をとって、今後日本が他の先進国話し合いをして、OECD目的とするところを実現するという面において、この加盟したことが日本にとって利益をもたらすものでなければならぬと思うのでございます。おそらく総理加盟さされる際にもそのことは考慮されておると思いますが、日本開放経済体制に入る、しかも、OECD加盟をいたしまして、そこから日本開放経済体制を完成していく上にどういう具体的な直接的な利益があるか。総理のその点についての御見解を承りたいと思います。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど触れたように、やはり日本財政経済政策貿易政策は、やはり先進国との協調、そしてまた、先進国に対するわれわれの主張を申し述べる機会を得るということが一つ日本利益でございます。ことにヨーロッパ諸国におきましては三十五条の援用撤廃いたしましたものの、なおかつ相当の制限をしております。こういうことを徐々にできるだけ早くやめてもらう。そうして、お互いの自由な姿に立ち得るよう、いわゆる対等の場で話し合うということが、日本としてOECDに入る一つ理由であるのであります。そうしてまた、通貨政策、あるいは国際金融の問題につきましても、あるいはガット一括引き下げの問題等々につきましても、IMFその他の問題につきまして話すよりも特に重要なものだけは先行して話し合いをするということは、いまの世界貿易開発会議の議をまとめる上におきましても、そういう問題で高いレベルでまずもって話し合うということは、全体の施策に非常にいいことじゃないか、こういうことであるのであります。ただ問題は、IMF八条国になり、またOECDに入って特別の義務を、いわゆる資本の移動その他につきまして、海運その他においていろいろな制約を受けますが、その制約によって受ける害と利益とでは、入ることによって得る利益の分を考えなければならない。したがって、入ります場合におきましては、資本の流動なんかにつきましても、日本の実情に沿ったような留保をしていく。そうして、その害が日本に及ぶことが全然なしとは申しませんけれども、十分に日本が耐え得るだけの制約ならば、これを受けて、そうして、それを克服していくところに日本世界的な地位ができ上がる、こういうことを考えまして、これを決意したわけでございます。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECD先進国の一種のクラブだ、こういうふうに言われておるわけでございますけれども、しかし、貿易外取引自由化、並びに資本取引自由化という二つのコードを受諾いたしまして加盟したのでございますが、これが私はやはり一つ義務であると思うのです。拘束力の点についていろいろ問題がありますけれども、入った以上はこの義務をやはり履行しなければならぬということになるわけであります。ところで、この義務を履行いたしますことについて、日本経済影響なしとしないのか。もし日本が、他のヨーロッパ諸国あるいはアメリカ、カナダのように、すでにOECDに入る前にそれらの問題について十分に準備ができておりましたならば、その影響というものは比較的少なかったでありましょう。あるいは、留保条項、多少の留保条項をつけることによりましてそれを阻止することができたでありましょう。しかしながら、日本が今日OECDに入ります場合に、そういうような規約を受諾して、その義務を遂行する、その規約によっていろいろ行なっていくということになるというと、これは日本経済にも相当大きな支障が来るのではないかというふうに思う。いま総理は、その点について、留保条項を付して、それによって、その全体とは言えないまでも、大部分のそういう悪い影響は避けることができる、こういうふうに言われておるのです。しかしながら、一昨年総理ヨーロッパに行かれまして、OECD加盟を決意されたときと今日と、日本経済状態はかなり違っておるのではないかと思う。なるほどいわゆる経済成長の率は大きい。そうして、それによって確かに生産面等につきましては世界五、六番目になっておるということも事実でございましょう。しかしながら、はたして日本経済は、いまOECDに入って、そうしてたとい留保がついておりましても、これらの規約を受諾するということによって大きな影響を受けないかどうか、こういうことになりますと、不安なきを得ないのであります。第一に、貿易外取引自由化の問題につきましても、いずれ詳しいことは後に各大臣からお伺いしたいと思いますが、全体的に見ましても、これは赤字が増大していくと思います。日本高度経済成長を遂げていけばいくほど、輸入も増大していく。なかなか輸出でもって輸入をカバーできない事態になっておるのであります。そのほかに、貿易外取引のほうはというと、これは赤字がだんだんにふえていっている。しかも、その原因は偶然的なものでない、どっちかというと構造的な赤字がふえていっておるのであります。そういうような事態、しかも、それが去年の後半から本年にかけましてかなり顕著にあらわれております時期にこれに入るということは、総理が一昨年の秋OECD加盟をされようとしておったときと状況は違っておるのじゃないか。そうして、そのときにあなたが考えたよりも影響が大きいのではないかと私は思うのでありますが、その点に対する総理見解をお伺いしたい。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな経済政策をとります場合には議論が多いのでございます。だいぶ昔のことでございますが、先ほど申し上げました昭和三十四年の通産大臣になったときに、私が貿易為替自由化をやると言ったら、通産省には十三局ございますが、十二局長までが反対いたしました。そういうようなものなんでございます。そういうものなのをあえて私はやった。自由化をだんだん進めていくと、中小企業が困る、日本経済はたいへんだと言っておりますが、まあ何とかやっていけた。OECDに入るときもいろいろ皆さん御心配なさるでしょう。しかし、一番心配しているのは責任者の私でございます。しかし、あのときといまの状態が、日本経済が基本的に非常に変わったとは考えておりません。いろいろな波は打ちます。国際収支の波、国内経済の波も打ちますが、日本の伸びていく経済の基調は全然変わっておりません。私は、どちらかというと、あのときよりも、いまのときのほうが、経済がそれだけ太くなっている、そうして耐え得る力もある、こう考えておるのであります。まず御心配になるのは国際収支の問題でしょうが、八条国になりました関係上、日本の円というものは国際通貨になった。これは非常に国際収支の上において非常な特典。とにかく日本の円というものはドルと同じでございます。IMF支払い準備になります。アメリカでもどこの国でもいわゆる通貨準備になり得る非常な特典でございます。こういうことがあるからこそ、初めてOECDへ入ってもその力が十分発揮できる。私はIMF八条国と同町にOECDに入るのは理想の型だと考えておるのであります。で、今度資本取引が自由になりまして、直接投資につきましては自由というたてまえをとっておりますが、附則で、国内経済影響のある場合はこれを制限し得るという規定を置いておりますので、そう心配は要りません。しかもまた、そういうことを話し合いできる場をこしらえていくということになっておるのでございますから、これはやはり発展途上日本としてはいまが一番いい機会だというふうに考えておるのであります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 国際収支の面についてまあ心配はない、こういうことでございますけれども、最近の数字あるいは本年度あたり数字から見ますというと、とにかく貿易のほうの六十二億ドルの輸出あるいは輸入という点はあるいは達せられるかもしれない、輸入のほうはもっと多くなるかもしれない見込みであります。貿易外収入のほうは非常によくない。しかも、それがいわゆる構造的な赤字でございます。これは海運収支にいたしましてもその他の収支にいたしましても、その点でかなり今後もずっと続くのじゃないかということが見通されるわけであります。この面について、このOECDへ入りましたために一つ義務を負うというか、自由化義務を受諾していくといたしますならば、この貿易外収支赤字の解消といいますか、これを少なくしていくということがなかなかむずかしくなっていくのじゃないか。その点についての根本的対策というものについて、総理見解をお示し願いたいと思います。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この国際収支の問題、外貨保有の問題につきましての御心配でございますが、これはOECDへ入ったから国際収支に非常な影響があるという筋合いのものじゃないと思います。それは海外旅行等につきましての制限については、いろいろの制限を受けることもございます。これは一部分でございまして、たいしたことはない。いまの状態から申しますと、私は日本国際収支につきまして外国人はどう見ているかといったら、外国の人は非常に安心しております。先般の東京都債の二千二百五十万ドルも非常な応募超過でございます。で、私は何も手放しに楽観しておりません。常に毎日国際収支を見ております。今月のたとえば輸入輸出信用状はどうか、毎日見ております。いまのところ、おとといまでは輸入信用状が一億九千万ドル、輸出信用状が二億九千万ドル、本月はもうすでに一億ドルの輸出入の信用状の黒。毎日見ておりますが、しかし、それだけ手放しで安心してはおりませんが、注意深く見ております。一般にいわれるほど、私は日本国際収支というものは不安じゃない、気をつけなければならぬけれども、不安じゃないという確信を持っております。それで去年の十一月、十二月の思惑輸入影響がございますが、最近は輸入は一応頭打ち、輸出予想以上に伸びております。六十二億ドルを相当突破すると思います。しかし、お話しのいわゆる貿易外収支というものの赤字、これの原因は、やはり主として日本経済発展によってバルキーの輸入がふえておるということ、これはいなめません。これをどうやってやっていくかということは、いままでの日本海運政策が十分でなかった、ことに群小の弱体の船会社ではいかぬというので整理いたしました。再出発することになりました。そうしていまの状況で六百万トンないし七百万トン、いまの船ではとても日本貿易海運におきましては赤字になる。そこで、本会議で四十三年ころまでに何とかしたい。これは五年もかかってちょっと笑われるようでありますが、まあ十年かかる。これは、何といいますか、第三国間の貿易並びに輸送をやれば相当あれしますが、船をふやせばふやすほどまた油代がかかりますから、そういう関係で、私は十年くらいの予定海運のほうの収支をとんとんにする。そのためには、やはりこれから毎年百五十万トンくらいの船をつくらなければならない。こういう計画で進んでいきたいと思う。それからまた、特許料その他の支払いあるいは金利の支払い、株の配当の問題、いろいろありますが、これは日本が伸びていく場合におきまして、戦争中おくれた技術を取り返す。日本人のりっぱな頭と労働力によってこの技術を生かしていくために、これはどうしても日本としてやらなければいかぬ。これによって日本輸出が伸びていく。国内生産の品質も向上する。こういうことでございますから、これはいたし方がない。それからまた、資本が非常に不足でございますから、日本発展のために一時借り入れ金でまかなう。そうして、それによってもうけた分でだんだん削っていく。このやり方は、日本として置かれた、いわゆる後進国から先進国になる場合におきましての、これは踏み越えなければならぬ関所だと思います。だから、これはむちゃくちゃに入れるというわけではございません。必要なものにつきましては私はやむを得ない。だから、長い目で見て日本経済をずっとやっていく。日本の置かれた経済というものは、明治、大正、昭和を通じていつもこういう悩みがある。戦前におきましては海運収入によって埋めておったといいますが、これは計算のしかたが違っておりまして、やはり日本は昔はこういう立場だった。だから、拡大していけばいくほど、ある程度借金はふえる。しかし借金はふえるけれども、それが物になる、設備になる、在庫になる。こういう関係で、私はこの問題はOECDに入ったからこれが大きくなるということではなくて、OECDに入って日本がほんとうに一人前になって、先進国としての日本立場世界的に確保せられたということが、今後の日本発展に非常に役立つ。小さい問題につきましては、これはネグレクトできるとは申しませんが、ネグリジブルだ。こういう考えでおるのであります。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま、海運の問題が貿易外収支の問題について最大の問題のように言われましたが、昭和四十二年まで外航船をどのくらい持つようにふやそうとするか、年々百五十万トンふやしたいと言われておりますけれども、これは百五十万トンふやすということは、現在の海運会社、あるいはいままでの政府のいろいろな援助状況から見ますと、容易なことではないと思いますが、その四十三年ころの日本が保有すべき外航船の目標、それから、それに達するまでの政府の基本的な政策、こまかいことは運輸大臣に伺いますが、その点についての総理のお考えをまず伺いたい。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増計画昭和四十五年には大体千三百五十万トンですか、その程度のことを予想しております。いま外航船が七百万トンくらいございましょう。そうすると、三十九年度では百五十万トンはちょっと無理でございます。資金上、また船台関係もございます。しかし、御承知のとおり、船台は、四、五年前に比べますと、建造期間というものがほとんど半分くらいになるほど進んでおる。船台の能力は、二百万トン程度輸出船をやりましても、百五十万トンくらいはつくれる。また、技術と、今度大型造船所をこしらえていくならば、私はできる、百五十万トン。四年間——三十九、四十、四十一、四十二やりましても、まだ千二百万トンぐらい。だから、百五十万トンというと非常に大きいようでございますが、力がある、技術もある。問題は金の問題でございます。そこで、外航船をやるよりもまず内地船をやらなければいけない。昔は外航船輸出船をやればもう国際収支はいいと、こう言っておりましたが、これは一つ見方で、全体のいい見方ではなかった。だから、これは輸出船もやりますが、国内船もこれからどんどんやっていく。そして、そのための資金につきましては、私は大蔵大臣計画を命じております。で、民間におきましても、やはりそれに協力、ことに船会社の整備ができまして、いままでのような考え方でなしに、最も積極的な方法をとっていかなければならぬと考えております。それでもなおかつ四十二年、四十三年では、いま申し上げますように、貿易外収支海運収支というものは、まだ油代な入れますと赤になります。三億近くのまだ赤になる。それも四十七、八年ごろには何とか持っていかなければならぬという考え方であります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、日本への資本の導入の問題で、最近外国からの日本への資本の導入はいろいろの形で相当急速にふえてきております。私たちは何も全体としてこの資本の導入を排斥するつもりもないし、また、必要な物を入れることもいいと、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、どうも日本の財界の人々の外資に対する考え方、この入れ方というものにもずいぶん問題があるのではないか。たとえば外資を入れる、あるいは外国技術を入れるについての過当競争が行なわれる。そのために他の諸国に比して高い利息を払う、あるいは高いロイアルティーを払うということもあります。それからまた、特にアメリカ資本の場合ですけれども、かなり経営権の問題にからんできておるものが多い。あるいは外国から技術を、特にアメリカから技術を導入した場合に、日本でそれに基づいて生産された品物が今度東南アジアへ売られるのはよろしいけれども、共産圏に売られては困る、あるいはどこそこへ売られては困るというような制限をつけられている問題も多いと思います。私は、外資が入ってきたから、それですぐに外国資本によって日本が支配されるとは思いませんが、しかしながら、アメリカとカナダの例を見ておりますというと、カナダは、御承知のように、アメリカ資本が非常に入ってきております。そして、カナダの産業というものは、かなりアメリカ資本に支配をされている。そして、カナダはそのために多額の配当あるいは利子、ロイアルティーというものをアメリカに支払っておるのであります。そういうようなことで、われわれは、日本がいまのように外資をかなり手放し輸入するということになってまいりますというと、これはやはり日本がカナダのような事態になるのじゃないかということも心配されるのでございます。私は日本が、アメリカ資本が中南米を支配しておるように支配されるものとも考えません。しかしながら、アメリカ資本ヨーロッパフランスやあるいはイギリスやドイツや、そこでいろいろの問題も起こしておりますが、特にカナダ、いわゆる先進国においても問題を起こしておる点から見まして、そういう点で、こちら側の資本家の諸君も、この外資を入れる問題について少し考え方が甘過ぎたり、あるいはまあ何と申しますか、全体を考えないという点もあるのじゃないかと思うのでありますが、先ほど総理の言われましたような、日本産業を危うくするようなものは入れないようにする留保条項をつけられてあるからといっても、なかなかそう簡単に手放しで外資を導入するのを思い切ってやるというわけには今後いかない状態になる。特に最近の配当、利子、あるいはロイアルティーの支払いの増加の状況を見ておりますというと、そういう点について、もう少し政府は厳重な態度をとるべきじゃないかと思うのですが、その点に対する首相の考え方を承りたい。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは制度の問題でなしに、心がまえの問題ではございますまいか。その点につきましては、外資法その他で従来からもやっております。いまOECDに入ったからといって、心がまえを変えるというあれではございません。十分その性質を検討していくことは当然のことです。ただ、配当やあるいはロイアルティー支払いが多くなるということは、やはり技術導入をやっておりますから、当分の間ふえていくことは私はやむを得ぬのではないかと思います。しかし、それが日本の将来の技術発展に役立つというものならば、過渡的な問題として容認すべき筋合いだと思います。ただ、心がまえとしてのお話の点は、従来もそうでございますが、今後は十分考えていかなければならぬ問題だと思います。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 その資本導入の問題について、いま心がまえと言われたのでありますが、しかし、こういうことは政府としての指導という問題とも関連してくるわけです。したがって、政府がその点についての指導あるいは促進法、方向の示唆というようなことで、相当そういう点に対するコントロールができるのではないかと思うのですけれども、まあ私に言わせれば、どうも総理の外資に対する考え方は甘いのではないか。ロイアルティーの支払いがふえようが、あるいは配当や利子がふえようが、それによっていま日本経済発展すればいいのだということは、将来に問題をかなり残すように思うのですが、その点について、もう一度政府のお考え方を承りたい。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 考え方が二つあるのであります。いまの配当の問題につきましても、外資はほしいのだが、日本の株を持ったら五年間売れないとかなんとかいうようなことでは、外資が入ることにならない。私は五年間の分を二年間に制限し、またそれを取っ払おうとしたところが、なかなか撤廃できなかった。しかし、今度撤廃したときには、利子平衡税ができた。やはり世界の動向を見ながら、前向きでいろいろのことを考えて、いろいろな具体的な問題で、こうだああだということで進むべき道、大道を間違ってはいかぬと思います。私は、先ほど申し上げましたように、日本のために悪い外資は入れるべきでない。いい外資は私は入れていく。技術においてもそのとおり。この審査につきましては、従来と同じような気持ちで、そうしてまた、それは日本経済の進歩によって、五年前はこの技術はよかったけれども、いまは要らない、こういうような判断を、常に細心の注意を持ってやっていくべき筋合いのものだと思います。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後に一点伺いたいのですが、それは、OECDに入りまして、他の先進国といろいろ協議をする。相談をする。また、アメリカにいたしましても、ヨーロッパ諸国にいたしましても、日本に対していろいろな輸入等の規制をやっている。その規制をはずしていくということについて、OECDの場というものがかなり役に立つように言われておるのでありますが、たとえば最近伝えられるところによると、EEC諸国は日本に対して共同の輸入規制のことを考えているようでございます。もし共同の輸入規制ということになりますというと、たとえばイタリアのような、EECのうちで一番日本に対してきついところが基礎になる可能性が出てくる。そういう点、はたしてOECDの場において、これらの対日輸入規制等が強められる問題に対処できるものであるか。あるいはまた、アメリカ日本品に対する規制その他についても、あるいはまたシップ・アメリカンの問題からこうむる日本の不利益等についても、このOECDの場で解決できるものかどうか、それらの点について首相の見解を承りたいと思います。
  22. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連してついでにお答えいただきたいと思いますが、そのOECDの問題とそれからガット関係ですが、まあOECDのほかにEECもできたり、それから最近二、三日の新聞報道だというと、関係各国で農産物だけの協定を結ぶ動きが盛んに起こっておると言われておるんですが、中に極端なことを言う人は、ガットの崩壊なんということを言う人もあるけれども、それはまあ極端にしても、ガットとの関係は将来どういう関係になるのか。まあ、実質上指導的な役割をOECDが果たしたり、それからEECその他EFTAもありますが、そういうブロック的な経済結合が中心になってきた場合、ガットとはどういう関係に立つのか。その間に調整上問題はないのか。その辺もあわせてお答え願いたい。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) EECが共同して日本との通商関係をやろうということは新聞で見ておりますし、また、そういうあれもございます。しかし、これは、EEC六カ国のうちで、セーフガードを持たない西ドイツとイタリアと、セーフガードを持っておる国とのいろんな関係がございます。私はいまここでその申し出について日本政府がどういう態度をとるかということは申し上げないほうがいい。そういう機運のあることはお話しのとおりでございますが、しかし、その機運をEECと日本だけで話をするか、あるいはそういう問題をOECDの場に持っていって日本の主張をはっきり言って、そうして、相手の六カ国でなしに、二十一カ国で論議するという問題は、私は日本にとっては非常に有利なことだと思います。立場が非常に強くなる。シップ・アメリカンの問題にいたしましても、OECDの場でやれば、イギリス、ノルウェー等が日本と同じ立場にある。私は、OECDの中でこれをやることは、非常にこちらの主張も力強くなるんじゃないか、こういう気持ちを持っておる。そういう意味において、私は、OECDへ入るということは日本の主張を強くする意味において、そうして公正な判断を下す上において非常に役立つということを考えておるのでございます。お話しの点から申しましても、OECD加盟はけっこう。  それからいまのガットとの別の関係でございますが、ガットに入っている人の有力なものがOECDに入っている。そうして、いまのガットというのはむろん世界的なものであるし、今度の世界貿易開発会議の問題もやはりガットとの関係、そうして、その別の先進国OECD立場、こういう点で、すぐ全体会議でやるよりも、何と申しますか、別のいろいろな機関で討議し合って、そうして、公正な判断のできる機会を多くつくるということが、私は非常にいいことだと思います。OECDに入らずに、ガットだけで日本がやったって、なかなかむずかしいことだ。だから、ガットの関税一律引き下げ等におきましても、私はOECDの中で十分論議したほうが効果的だと思っております。  それから、農産物の問題につきましていろいろ議論がございますが、これはいま世界貿易における一番の問題です。EECの間でも相当やっかいな問題——一番やっかいな問題。低開発国の問題につきましても、これは一番やっかいな問題。日本先進国と申しましても、個々の産業中小企業、農業につきましては、これは中進国かそれ以下。そういう点がございますので、やはり私はこういう農産物の問題なんかにつきましても、OECDの中で十分議論したほうがいいんじゃないか。いまの傾向としてはむずかしい問題だということは言えます。しかし、これによってガットの崩壊とかなんとかいうところまでは行っておりません。また、崩壊さすべき筋合いのものじゃございません。何とか妥結の道を見出さなきゃいかぬと思っております。
  24. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今度のOECD加盟を契機にして、日本経済政策が大きな政策転換をしなければならないのじゃないか、こういうふうに考えるのです。というのは、OECD目的は、申し上げるまでもなく、財政金融上の安定を保持しつつ経済成長を達成する、こういうことにあるのです。安定ということが非常に重要な問題になっていると思います。そこで、過去の池田内閣の経済政策高度成長政策、しかも超高度成長政策で、その点においては池田内閣は、高度成長政策で超高度成長政策になってしまって失敗をして、ここでそれを転換をして、安定を期しつつ成長しなければならないという、いわゆる安定成長に切りかえなければならないと思う。で、今度の予算その他では、ほぼそういう方向に切りかえられつつあると思いますが、そこのところは、ごまかさないで、はっきりと安定成長に政策を転換するのだと、そういう意味で今後の国内施策、特に経済措置には、強力ないろいろな措置がこれを契機にして行なわれなければならないということを、はっきりと明示されなければならないと思うのですが、その点について総理はどうお考えになりますか。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前から言われている議論でございますが、私はそういう見方をしていないのであります。超高度成長政策というのは結果でございます。池田内閣の政策は、十年間あるいはそれ以内の所得倍増でございます。それで当初の三年間九%、こう言っているわけであります。この九%というのは、あなた方もおっしゃった数字なんです、あとから。しかしそれが、自由経済のたてまえから、国民の盛り上がる非常なエネルギーによってこれは予想以上の——倍近くの成長を遂げた。これは池田内閣の政策じゃない。もちろん、低金利をやったからこうだとおっしゃるけれども、低金利というものは常に日本はやっていかなければならない。それがたまたま昭和三十四、三十五、三十六と、こう非常にいった。だから、三十七、三十八年度におきましてはこれを押えた。そうして、六%あるいは八%程度。これを政策転換だと言うならば、予算をずっとお沈みくださったらおわかりだと思います。予算のあれをずっとごらんになったら、政策転換ではない。これは長い目で見た行き過ぎの分をいま押えている。そうして七、八%の成長のというものは、日本では超高度じゃない。あるいは普通の状態だ。イギリスは六%の経済成長になりそうだというので、四%にいま押えようとしております。しかし、イギリスでは四%でも高度経済成長だ。六%は超高度経済成長でございましょう。過去の状態から申しますと、一、二%かあるいは二%半が一番上だ。だから、国によって違いますが、私ははっきり申し上げます。所得倍増計画十年以内という政策は、何ら変わっておりません。財政経済政策の見通しをごらんになっても、初めから実質一六、七%とか二〇%だとか言ってない。ただ、自由経済のたてまえからいってそういうことができましたから、これをいま押えて調整をしている。政策の転換ではない。私はこれをはっきり続けていこうと思っております。で、安定成長——私は長い目で見たならば、安定成長と言ってもいい。その年々の自由主役経済のもとにおける行き過ぎた分を安定するとかなんとかいう問題じゃない。だから、日本としては三%近い成長では不承気になり、いかないのです。三十二年、三十三年をごらんくださいまし。消費者物価が下がり、失業者がふえ、これじゃ日本経済はもたない。二、三%程度じゃそういうことになってきますから、私は日本経済は六、七%というのが、あるいは七、八%というのが安定な成長である。これを続けていこうとしているのであります。当初の目的と変わっておりません。ただ盛り上がる力で一時そういう現象が起こったということは、私は事実ですから否定しませんが、政府政策としては、十年間所得倍増、そうして当初の三年は九%、あとは七%ぐらいでいって、七・二%平均——初めは九%で、スタートが早かったために十年以内で。私の政策に変わりないと思います。
  26. 曾禰益

    ○曾祢益君 最初にOECDに入る目的と申しましょうか、あらためて伺いたいのは、つまり、われわれはまあ開放体制に向かう、こういうことば必然であるし、いつまでも孤立的な経済ではいけない。こういう意味でOECDも含めてこういう国際的な経済協力的な体制に加わることに原則として賛成ですが、ただ問題は、IMFあるいはガット、あるいは世銀、それからエカフェ等、そういうようないろいろの既存の完全な国連的といいますか、全世界的な機構がある。また、国連の中でも現在やっておりますような世界貿易開発会議のように、まあそのつどの会議とはいえ、そういうものがある。ところが、OECDは何といってもそのおい立ちからいっても、主としてヨーロッパ的、あるいは西欧陣営的です。まだその性格が抜けていない。特にこのOECDに入るという目的ですね。この正当づけといいますか、その点を特にどういうふうに見ておられるのか。まあ、単に先進国クラブに入って、それでまあ自己満足という、そんな軽いむろん意味ではないだろうが、また、そういう意味で特にOECDに入るということの意義をどう見ておられるか。われわれの同僚委員からの御質問にも触れたところですけれども、もう一ぺんひとつ総理からお答えを願いたいと思います。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 欧州の、何と申しますか、OEECの時代は、やはり国際金融あるいは国際通貨の問題と、そうして貿易拡大と、こういうところからできたのは御承知のとおりでございます。それから、まあそれだけでは——やっぱり世界経済がだんだんグローバルになってきて、アメリカとカナダが入りまして、そうしていま一番の問題である低開発国の問題、DACのほうにも入れていこうというので、いわゆるお互い高度経済成長をはかろう、貿易拡大をしよう。そうして第三には、それに関連した、そして大問題である低開発国の開発をはかっていこう。こういう目的ヨーロッパとそしてアメリカOECDに入った。しかし、そのときにおきましても、低開発国の問題につきましては、日本が相当の役割りをしているからという意味で、第三のDAC委員会会議ではあったわけです。これは、何といいますか、かたわ的の会議であったわけです。これでは、やはりいまの世界貿易その他から申しまして、ことに重要なDACの委員会におきましても、これはやはりお互い高度経済成長とまた貿易拡大ということを頭に置いてやったほうが……。相当の役割りをしている日本は、私は当然入るべきだ、こういうことでございまして、お互い経済高度成長お互いにはかりながら、そうして、その間に出てくる貿易の障害——国際金融につきましての円滑を相談し、そうしてあわせて低開発国をやる。これでございますから、日本としてこれから進む上において、これに入っていることが、先ほど来申し上げておるように、日本立場からいっても、そうして、世界における日本の発言のウエートから申しましても、ぜひ必要であるということを自他ともに認めた結果だと私は思います。  私は、曾祢さんのように国際的に非常に進んだ考えをお持ちの方は御賛成いただけるものだと考えております。
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 別のことばで言いますと、このOECD目的が三つあると言われておるわけで、第一は、まあいわば先進国同士で高度経済成長を持続的にやっていこう。第二は、結局おくれた国を援助しよう。第三が、まあ世界貿易自由化しながら拡大しよう。だから、特に日本としてこのOECDに入るおもなる目的ですね、その三つの目的に賛成だから入るのだといえばそれまでだけれども、その他の国際的な、もっとグローバルな機関に入っていて、なおOECDに入るのか。いまの三つの目的の主として何に重点を置いているのか。つまり、自由陣営の経済高度成長国の仲間に入って、まず団結というか、それが主なのか、また、つまり南北問題における日本の役割りをフルに働かすというのが主なのか、あるいは日本がいままでいろいろな向こうから受けているハンディキャップ、セーフガードの問題、その他EEC諸国、あるいはアメリカその他に対しても貿易上の制限撤廃させる、つまり、そういう場としてOECDに特に重点を置いているのか。一がいにこれは分けることはできないと思いますが、特に何に重点を置いているのか、お考えを伺いたい。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 順番から申し上げますと、三つの目的で、高度経済成長お互いにはかろう、世界貿易をこれ以上拡大してお互いに繁栄しよう。その二が、DAC委員会の低開発国援助——高度経済成長なら日本は専売特許でございますから、たいしたことはない。(笑声)
  30. 曾禰益

    ○曾祢益君 いささか自画自賛だ。(笑声)
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) だから、その次の貿易拡大、そうして国際通貨の安定、こういうことと、それから、日本のこれから伸びていく場合におきましては、どうしても低開発国、ことに東南アジアのほうには、えてしてヨーロッパの人は向きにくい。だんだん向いてきておりますが、こういうためにもやはりわれわれ大いに働く。だから、二の貿易拡大と三のDAC、これはいままでもちょっと入っておりましたけれども、しいて言えば、そうでございます。
  32. 曾禰益

    ○曾祢益君 第二に、OECDに入るにあたっての国内的な体制準備が十分であるかどうか伺いたいのですが、これは時間がございませんので、こういう問題についてはむしろ関係大臣にあとで詳しく伺うことにしてこれを省略して、もう一つの問題として、加盟にあたっての心がまえといいますか、岡田委員の質問に対する答えにもありましたが、これを伺いたいのです。というのは、この目的をいまどういうふうに考えているかということに関連するのですが、やはりどうしてもまだOECDの中にヨーロッパ、特にEEC的な閉鎖的性格が残っていると思うのですね。そういうものに対しては強く開放性を主張して要求していく。それから一方においては、特に海運問題であらわれているように、アメリカなりフランスなりが非常にある意味ではわがままな横車を自国船主義——シップ・アメリカンとかいろいろ自国中心主義が、存外OECDの場合においても実は暗黙に承認されている。場合によっては明白に承認する。そういう点を、それこそOECDの場におけるコンフロンテーションといいますか、いわゆる大衆討議、集団討議の形でどんどんそういう点を直させるところは直していく。こういうような心がまえがまず必要だと思うのですが、その点についての総理のお考えを伺いたい。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどの他の委員の御質問にお答えをいたしたとおり、そういうことをする場にわれわれが入っていることがぜひ必要であります。何と申しましても、まだEEC諸国またほかのヨーロッパOECDに入っている国も差別待遇をしているということは御承知のとおり。こういうことを十分主張し、こういうことはやっぱりコンフロンテーションのほうが私はいいのじゃないか。いまのシップ・アメリカンの場合もそうです。と同時に、そういうようないろいろな外国政策を集団討議をしながらよく見てきて、わが国においてもどういう政策をとるべきか。たとえばシップ・アメリカンというなら、シップ・ジャパンをやったらどうか。現に食管で輸入しているカナダの小麦なんかみんな外国の船でやっている。これは日本の船に切りかえられぬか。いわゆる日本の主張する場を設けると同時に、いろんな討議の間に、われわれの政策に取り入れたほうがいいというものをやっぱり見てくるということでなければならぬと思います。
  34. 曾禰益

    ○曾祢益君 第二に、心がまえといいますか、基本的な政策として順位的にどれになるか別として、何といっても、日本の将来を考えて、後進国、特にアジア後進国に対する先進国の低開発国援助の問題と取り組んでいく。この点については、日本の気持ちとしては、むしろこれは先進国クラブに入ってもアジア側のメンバーだというような気持ちで、その南北のかけ橋をやるという、むしろアジア側の代表者という気持ちで入っていくことが正しいし、また、向こうが正しい意味で日本をそういうふうに考えるべきじゃないか。その場合に一番問題になると思うのは、こまかい数字になるけれども、やはりDAG時代からの日本みずからの貢献の度合いということが非常に根本問題になる。したがって、国民総生産の一%くらいはこれは当然に向こうからも期待されているのだし、国内体制をよそに置いてそれをやれとはむろんわれわれは言えない。同時に、OECDに入って、アジア側の立場を述べながら、後進国の開発問題で相当な日本が役割りをしようというところに、いまのところではむしろ日本の国民総生産の一%に及ばないところの、最近の数字では〇・六六%というふうな数字が出ておりまするが、約五百億ドルにのぼると言われている日本のGNPの中でとてもお話にならない程度の貢献、しかも、それが相当部分が実際は賠償という形で特定の国にのみ行なわれている。こういう点について、OECDに加わって日本の要求も通すし、もっと大きな仕事をするための基本的な一つ日本側の、何といいますか、腰だめの財産としてのそういう点をどういうふうに考えていくのか。これをひとつ伺いたい。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の低開発国援助は一九六二年に二億八千万ドル、その前は三億七千万ドルくらい、その前が二億五千万ドルくらい。
  36. 曾禰益

    ○曾祢益君 少し減ってきたのですね。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) おととしが三億七千万ドル。ちょっと多かった。去年は減ってまいりました。大体賠償がそれの四分の一程度——七千万ドル程度。五分の一、四分の一程度。これもわれわれは低開発国援助の力から申しますと、最近は政府援助が非常にふえてきた。三、四年前は民間の援助政府援助がフィフティー・フィフティー、三十億ドルくらい。最近は政府援助が六十億ドル、民間が三十億ドル、九十億ドル。そのうち半分近くはアメリカが、大体GNPの一%近く行っておりますから、六千億の四十四、五億ドルですから、一%近い。その他の国はそう行っておりません。案外行っているのがフランス。これはアフリカへ。そこで、私は日本の今度は海外援助というのは東南アジアが七〇%、中南米が三〇%、ミナスその他が。それで、非常に期待しておるアフリカのほうへは、まだ行っておりません。先般経済視察団が参りまして、おととい帰ってきて報告を聞きましても、アフリカへの日本経済援助というのは私はイギリスが非常に望んでいると思う。だから、これからやはり東南アジアを日本としては中心としながら、やはり向こう——イギリスその他の国の意見も聞きながら、アフリカのほうにも出ていかなければならぬ。そこで申し上げたいのは、この海外援助というものは、やはり政府資金ということにのみたよらずに、やはり民間で大いにやっていただかなきゃならぬ。政府資金ということになりますと、延べ払いでも輸出入銀行に限られておる。これは限度がある。だから、私はこの点を何とか考えなきゃいかぬ。えてして民間の人は、政府資金でやってもらおうと、こうしておりますが、私は、これはやはり政府資金中心となって、民間資金も入れていかなきゃならぬ、こういう考えを持っております。これは大蔵大臣はどう言うかわかりませんが、私は輸出入銀行なんかというものは、やはり輸出入銀行が民間の資金を吸い上げる制度を設けて、そうして資金量をふやしていくことが、いわゆる海外貿易拡大と低開発国援助になる。政府の金だけで——郵便貯金と簡易保険だけで海外援助やろうという制度では、日本の使命からいっても少し弱過ぎる。私は、適当な機会輸出入銀行の原資増大についての抜本的措置をとらなければ、低開発国援助日本の民族の使命といっても、なかなか容易でないと思う。したがいまして、政府もその心がまえでいくと同時に、民間におかれましても、将来のいわゆる経済基盤強化のためにもつと積極的にやはりやっていただきたいと、こうこう気を持っておるのでございますが、まあ日本のいままでの実績から申しまして、他の国々も、日本は東南アジアを中心に南米、中南米、そうしてアフリカというふうな期待を持っておられるようでございます。われわれとしては、その外国人の期待に沿うべく努力いたしたいと思います。
  38. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に、いまの問題で、それじゃ、政府、民間いろいろございましょうが、ある種のものは、やはり政府的な、公的な性格の資金でないと向こうの需要に応じないような、必ずしも経済的でないような援助もあると思います。これはいろいろ取りまぜなきゃいけないと思います。やはり大体における総額として国民総生産の一%ぐらいを目標にやってやるのだというくらいな基本的なかまえというのがあるべきではないか。これは数字のことになりますけれども、そのようなお考えが伺われるかどうかということをお答え願いたいというのが一点と、第二は、これが最後ですが、最近のいろいろなマシナリー、いろんな機構に日本が入って、あるいはフランス外務大臣、今度イギリス外務大臣、一年一回にもせよ、コンサルテーション——協議をやる。たいへんけっこうだと思うのです。十分にそういったような新しい機構なりを使いこなしているかどうか。こういう点についてわれわれいささかあきたらない点がある。時間がございませんから、詳しく申し上げませんが、フランスとのコンサルテーションの際に、十分に国連における中国問題等をお話しになっているかどうか、やや疑いもあるわけです。バトラー・イギリス外相が来る等の機会に、むろんこれは外務大臣が窓口でしょうけれども、十分に、いまお話しになっておるセーフガードの問題もあるでしょうし、いろいろな、向こうのセンシティブ・リストを減らすとか経済問題もあるでしょう。政治問題等も、日本が西欧と非常に近づいていくことが私は必要だと思うのです。日本アメリカ影響が多過ぎて、西欧が何かこう一つの真空になっておる。西欧と提携しながら正しい日本の外交路線を確立していくのはいいと思う。しかし、いろいろ機構ができて新しい制度に移っておるけれども、まだ十分に活用しておらないのではないか。OECDへの加盟も、ただ加盟して、持てるもののクラブに入ったという満足だけに終わらぬように、これに入った以上は、それを十分に活用する態勢と心がまえでやはりやっていただきたいと思うわけです。  二点について総理のお考えを伺いたい。私の質問を終わります。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 低開発国援助は多々ますます弁ずでございます。アメリカのように一%近く出せるかどうかという問題もありましょうし、心がまえとしては、多々ますます弁ず、これはやはり大正、昭和の初めにかけまして、日本の海外投資というものは相当なものであった。いまよりも、私は割合にしたら、多いのじゃないか。それが日本の伸びる道だと。ただ、悪いことは、大砲といろいろな軍艦がついていったということが悪いのであります。今度はもうそういうことのないように、しかもまた、日本援助を要求する声も戦前以上であります。だから私は、多々ますます弁ず。一%とここで申しますと、総理大臣が一%と言ったから出せと言って国際会議義務を負うちゃいけませんから、多々ますます弁ずと申しておきます。  それから、いまのヨーロッパと近づくということは、私は組閣以来の念願でございます。そこで、たまたま国民の努力によって非常に信用を増し、いまだかつてない、五大国と言っておったあの昔よりも一、ヨーロッパにおきましては非常な信用が加わったと思います。したがいまして、話も非常に身が入ってきております。私は、ボンピドゥ首相との私の会談についてとやこう言いませんが、これはフランスの新聞、ことに閣議におけるドゴール大統領の話でもおわかりいただけると思います。私が申しますのは、また自画自賛と言われますから、それはやめておきますけれども、今後も、お話しのような点を頭に入れながら、日本のいわゆるグローバルなりっぱな外交を続けていきたい、こういう考えでおります。
  40. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 総理大臣に対する質疑はこの程度といたしまして、田中大蔵大臣質疑をお願いします。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま総理大臣から概括的ないろいろな御方針を伺ったわけですが、これから大蔵大臣から少し詳しくいろいろお話を伺いたいと思います。  まず第一にお伺いをしたいのは、国際収支の今後の見通し、これはやはりOECDに入りまして二つのコードを受諾いたしますというと、この問題がやはり大きな問題として浮かんでまいりますので、国際収支の見通しからお伺いしたいと思います。
  42. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、三月三十一日の外貨準備高は十九億九千六百万ドルでございます。そのほかに、為替銀行等に貸し出しておるものが約三億七、八千万ドルございます。なお、オープン勘定が八千万ドルばかりございます。これらを合わせまして二十四、五億ドルというところでございます。  国際収支日本の特徴といいますものは、御承知のとおり、貿易外の赤字が非常に多いということでございます。いま中期経済見通しを諮問いたしておりますが、これの策定に合わせまして、政府部内におきましても経常収支をバランスせしむるように各般の施策を行なっておるわけでございます。三十八年度は、政府が当初見通しましたよりも経常収支赤字でございましたが、資本収支の面に、当初所期いたしましたものよりも黒字幅が大きくありましたので、総合じりにおいては、当初見込みよりも若干黒字で越年をいたしたわけでございます。三十九年度は、総合におきまして一億五千万ドルの赤字ということを、当初政府は発表いたしておるわけでございます。この中で、輸出入とも六十二億ドルでバランスをすることになっておりますし、貿易外を入れまして経常で五億五千万ドルの赤字ということでございます。が、しかし、資本収支の面において若干当初よりも状況が安定的によくなっておりますので、いまの引き締め態勢もございますし、経済成長率も多少落ちてくるという見通しでありますので、三十九年度を通じましては、総合収支じりで、政府が所期いたしましたものよりも多少よくしたいという考えでございます。四十年度以降で一番問題になって残りますものは貿易外収支の問題でございます。貿易外支収の中で特に大きな問題は、輸出入の規模が大きくなりますために、港湾使用料その他海運関係の経費が増大をいたすということが一つございます。もう一つIMF八条国に移行いたしましたために、四月から渡航の自由化が行なわれておるわけでございます。この問題、今年度はオリンピックやIMFの年次総会が行なわれておりますので、われわれが考えておりましたものよりも多少よくなるとは思いますが、四十年度以降は、相当の施策を行なわないと、海外旅行で相当な外貨が出るということでございます。それから第三点目には、資本収支の上で借り入れ金がありますために、これの利払い、元本払い、また技術導入等によります支払いがございますので、これらがだんだんと大きくなるという面がございます。第四に、特需収入が減りつつあるということでございます。でありますから、この貿易外の四点の要件に対しまして、政府は鋭意施策を行なうことによって、できるだけ早い機会に経常収支のバランスをはかろうということが焦眉の急として考えられておるわけでございます。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、昨年も輸入の増大ということで政府はいささかろうばいをして、そうして、本年になりましてから、その輸入の増大を押えるために、つまり、経済の成長率を押えていくために、金利の引き上げをやる、あるいは輸入担保率の引き上げをやったわけであります。なるほど、それによりまして輸入は多少おさまったようでありますけれども、私はどうも政府の見通しほど輸入を押える力がないのじゃないかと思うのであります。特に、政府経済成長率を押えていくということが必ずしも、最近の状況から見ると、思うようにいっておらぬ。したがいまして、また輸入がふえてくるという事態になってまいりまして、輸出六十二億ドル、輸入六十二億ドル、貿易はとんとんという本年度の見通しというものがやはりくずれるのじゃないか。それだけつまり国際収支の面に日本は過重な負担を負うことになりやせぬかというふうに思われるのですが、この輸入の抑制という点について、はたして現在とられつつある政策でもってその計画どおりにいくものであるかどうか、その点についての見通しをまずお伺いしたいと思います。
  44. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 輸出の六十二億ドルは、輸出会議でもまた輸出入業者の会議でもおおむね完成ができるという見通しをとっておりますので、六十二億ドルは確保できると思います。まあ、もう一つの面から考えまして、物価の抑制その他によりまして、輸出は六十二億ドルを上回るということも考え得るわけでございます。輸入が昨年度は約十億ドルに近い輸入超過があったわけでございますが、これは御承知のとおり、国際的な問題もございます。また国内的な問題もあったわけです。国際的な問題には、キューバ問題を契機にしまして、砂糖の値段が非常に高くなった。ソ連が大量に三百万トン買い入れた。これを市場に放出すると言いながら放出しなかったというような問題もありますし、もう一つは、御承知国内的に麦が大きく不作でございまして、この麦の買い入れが当初よりも非常に大きくなったということがございます。昨年の半ばころからバナナの自由化その他をやりましたために、バナナが六千万ドルも入る。こういう特殊な状況があったわけでございます。でありますが、これもバナナだけ食っておって金をつかうということも、日本国民はさとい国民でございますから、そういつまでもバナナばかり食っておるわけではありませんから、こういう面もだんだん落ちつきを取り戻してまいっておるわけでございます。在庫率は御承知のとおり低いということでありますから、経済成長率が、けさの新聞にも出ておりますとおり、一三%をこえて一五%というような状態でありますので、三月末の実情からまいりますと、輸入は減らないのじゃないかということもございます。しかし、もう企業間信用も、御承知のとおり、大体限度一ぱいに来ておりますし、なお、製品在庫も多少ふえておるという傾向にございます。でありますから、私はいまの消費の状態、また引き締めの状態等を考えますと、まあ輸入が昨年の十一月、十二月、一月、二月のような状態でどんどんとふえていくというような状態ではない、また、そうあってはならないというふうに考えておるわけでございます。しかし、自由化でもって、まあ外国のものを非常に高価なものと考えやすい国民性がございますので、自由化になったものは何でも入ってくるという懸念もございます。懸念もございますが、六十二億ドルをはるかにこすような状態であってはこれはどうにもなりませんので、御承知のとおり、公定歩合の引き上げとか輸入担保率の引き上げを行なったわけでございます。私は、国民各位の協力も願いながら、政府も各般の施策を強力に行なうということで、正常な経済成長——国会に御報告申し上げておるとおり、三十九年九・七%、実質七%でございますので、この成長が維持される限り、六十二億ドル程度輸入量で押え得る、また押えなければならない、こういう考えに立っておるわけでございます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも、輸出は六十二億ドルよりやや上回るといたしましても、どうも諭入のほうは、私ども考えましたところ、大蔵大臣の楽観よりももう少し悪いようです。つまり、三億ドルあるいは四億ドルくらいよけいになるのじゃないかというふうに考えられるのです。そういたしますと、来年度の国際収支がマイナス一億五千万ドルというのがくずれるのじゃないか。と申しますのは、輸出も少し増大する、輸入も増大するということは、これはやはり海上運賃の支払いのほうにも響いてくる。このほうも大体マイナスが予想よりも多くなるのじゃないかというふうに考えられてまいります。あるいはまた、観光の問題は、本年はオリンピック、IMF総会があってだいじょうぶだということでございますが、それらの要素を除いて、また本年から来年以降にかけまして、特に航空機の支払いの問題なんか見ましても、どうも政府予想よりもマイナスが上回るような気がするのです。そうなってくると、本年度の一億五千万ドルマイナスというのが、もっともっと大きなことになっていく。それらに対して政府は少し甘い見通しを持っているのじゃないか。もう少し、これらの点について政府としては、きびしいといいますか、あるいはこの計画に従うような強い政策をとる必要があるのじゃないかと思いますが、それらの点についての大蔵大臣のお考えを伺っておきたい。
  46. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) たいへん御鞭撻をいただいておるわけでございまして、政府も感謝をいたします。そういう意味で、一厘引き上げればいいのだといったときに二厘引き上げたわけでございます。それでなお御承知のとおり、輸入担保率の引き上げにつきましても、鉄鋼の原材料等三五%とか、また一%を五%に引き上げるというようなことは、非常に荒っぽいといいますけれども、とにかくぐずぐずしておるよりも、ひとつ機に応じてやろうということで、三十六年度までに戻しまして、どうしても日本経済発展のために、輸出振興のために必要なものに限っては、この間手直しをいたしたわけでございます。でありますから、政府もその意味では相当手きびしい考え方を持ちまして、八条国移行はあと戻りができないということでございますので、政府が憎まれたり批判されることによって国民の経済が安定すれば、そのほうが重大であるという観点に立ってやったわけであります。まあしかし、これからも、政府だけでこの問題が片づくものでございませんので、こういう国会の審議を通じ、また皆さんの御協力も得ながら、やはり国民各位も、真に八条国移行をまじめな立場で、思惑等をやらないで、将来のために堅実な経済成長を続けるべきだということに対して協力を得てまいりたいという考え方でございます。いままでは為替管理がございましたから、輸入さえすればもうかるということでございましたが、今度は自由でございますから、やはり国際経済の波動も十分見ながら、入れるときにはこれが売れるという見通しをつけて入れなければならないわけでありますので、私は、日本人はそういう意味では、一時的には、自由化になったという、いままでの不自由の状態のうっせきが爆発したということで、バナナの例をとればよくわかるのですが、こういうことにはなりますけれども、私はやはり経済ベースでものを考えるときには、そう長いことかからないで、国民的な気持ちも経済的な伸び方も正常なものに戻るであろう、また、戻るような施策を政府としても積極的にとってまいりたいという考え方でございます。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの岡田委員の質問に関連してですが、国際収支の具体的な数字の問題は別として、先日の日銀支店長会議の報告なんか聞いておるというと、なかなか企業界の意欲旺盛のようで、そういう場合、この前、予算委員会でちょっとお尋ねしましたが、大蔵大臣、それから日銀総裁、それぞれお話がありましたけれども、公定歩合の引き上げ以後、こういう条件が相当まだ続くのかどうか。簡単に即効薬的な効果がすぐあると思いませんが、どうもあの日銀支店長会議の報告を見ておるというと、相当長期にわたっていまの引き締め基調が続くと思われるのですが、国際収支の関連と無関係ではないけれども、それとの関連は重要でありましょうが、金額の具体的なことなんかは別として、一般的にいって、そういう引き締め基調はなおかつ相当長期に続く見通しにあるのかどうか、その辺の見通しをひとつ聞かしていただきたい。
  48. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 昨年の十二月から引き締め基調に入っておるわけでありますし、三月に入ってから、御承知の公定歩合二厘引き上げを行なっておるわけでございます。いま言われたのは、きいているか、こういうことでございますが、ただ、見ておりますと、いろんな情勢がございます。大体そういう大きな企業で、昨年じゅうに手当てをしてしまった、非常に債務者預金が多かった、こういうような状況の企業面においては、金詰まりというようなことにはなっておらないようであります。これらの企業が下請に対してどういう支払いをやっておるか。一部において十五日間ぐらい延びておるところがございます。中には二十日ぐらい延びておるところもございますが、私たちが考えたよりも、いろいろな施策を行ないました結果と思いますが、手形のサイトが非常に延びておるというような事実はございません。ただ、系列外の中小企業というものに対しては、私は系列内にあるものよりもやっぱりきびしくあるのだろうということで、いまその面を個別に調査をするために、けさ財務局長会議を召集いたしておるわけでございます。いま一時間ばかりやってまいったわけでございますが、各種の状況を聞きまして、けさの新聞にもありますとおり、一四、五%も伸びるということが三月までの状態でございますから、比較的にきいておらぬという見方もあるわけでございます。しかし、私はこういう事態が長く続くものではないのであって、やはり四月に入ってから、また五月、六月に入れば、相当この状態はきいてくるのだというふうな見通しを持っておるわけでございます。いつごろ一体公定歩合の引き下げをやるのか、もっと上げるのかという御質問になれば、機を見てということでございますから、なかなか申し上げられませんが、そう長期にどこまでもこれを引き締めていくという考え方に立っておるわけではございませんし、角をためて牛を殺してはならないという考え方もございます。同時に、じき引き下げてじきまたもとに戻すのだ、その間だけやっておれば、高度成長は続けられるというようなことであってはなりませんので、やはりオーバー・ローンの解消、オーバー・ボローイングの解消、自己資金の充実面に対しては十分施策を行ないまして、正常な財政金融状態をつくっていきたいという考えでございます。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま羽生君へのお答えにもありましたように、これは引き締めは大体続けていくのだ、永久じゃないけれども、とにかく相当引き締めていくのだというふうなことでございますが、もし輸出入のバランス合わせてマイナスのほうが多い、あるいは貿易外収支の面についても予想以上にマイナスのほうが多いという見通しが立ったならば、もう少しきびしい措置というものをとるというおつもりを持っておられるのかどうか。
  50. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これも機を見て、機に応じてうまくやると、こういうことでございますから、なかなか手のうちを申し上げるわけにはいきませんが、ただ金融を引き締めたり、財政をたな上げしたり、繰り延べをしたりということだけが調節手段ではないわけでございます。輸出が伸びなければ輸出を伸ばすような方法もございます。それから、港湾使用料が外国に比較して受け取りが少ないので、これを多くということになれば、日本国内における港湾使用料の引き上げということも考えられるわけでございますし、また、食管等は外国船を使っておるということをいま総理が申されましたが、こういうものに対しては、少なくとも政府管掌のものに対しては、内国船を使うということもあるわけでございます。また、オリンピックを契機に、いま国際航空の路線の整備をはかっておりますが、こういうものによって外貨獲得の道をより講じようということでございます。この間などは地方税法の改正で、外国の旅行者に対しては当分の間宿泊、飲食に対しては免税にしようということもそういうことでございました。遺憾ながらこれは修正を受けまして、はなはだ遺憾でございますが、こういうことをやっぱりまじめに積極的に考えてまいりますし、三十九年はまだ四月に入ったばかりでございますので、いまからかかる基本的態度をもってどんどんと積極的にこれらの仕事をやっていくということでございますから、少なくとも四十年の三月になってどうにもならないというような状態は絶対につくらないと、つくってはいかぬ、こういうことで考えておるけわでございます。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 貿易外収支がずっとどうもよくない。私どもはこれは偶発的な問題じゃなくて、いわゆる構造的なものだと、こう思っておるのです。特に、海運収支のうち運賃の問題は、これは日本の持っておる船、その量、それからさらに積み取り率というものとの関連でそうなっていったわけであります。ことに、これから輸出入が増大していけばいくほどそれに追いつけない状況になれば、ますますそのマイナスは大きくなるということで、政府のほうでも造船を急ぐ、あるいは積み取り率の拡大をはかるということをやられるわけですが、これにはやはり資金が要るということです。総理もその点先ほどお触れになっておりましたけれども、総理の言われる四十五年ぐらいまでの間に年間百五十万トンぐらいつくらして、それに対して大蔵省側の財政金融支出、そういうものはどういう計画になっておるのか。
  52. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 開発銀行によります外航船の建造は、この間通過をせしめていただきました予算によりますと、六十四万二千グロストンの建造計画を立てておるわけでございます。この六十四万二千トンのほかに、御承知の自家船が約二十万トン。自己資本によってつくろうというものがございます。でありますから、いま申し上げられるものは八十四万二千グロストンということになります。しかも、この六十四万二千トンのうち、一部は三十九年の第三四半期から着工するものもございます。また第四四半期から着工するベースのものもございます。そういう計算で、開発銀行に対して財政資金を入れておるわけでございますが、まずさしあたり、四月から六十四万二千グロストンのものは全部三十九年度中に完工するようにということをまずひとつ考えましょうということで、開発銀行をして作業を進めさしているわけでございます。それからなお、二十万トンの自家船を入れて百万トンにするのか、二十万トンの自家船は別にして百万トンにするのかという問題は、いま経済企画庁、大蔵省その他で、関係省集まっていま相談をいたしておるわけでございます。さっきも申しましたとおり、経常収支を四十二年までとか、四十三年までとか、四十五年までかかるのか、いずれにしましても、経常収支をバランスするには、中期経済見通しが十分きまりまして、成長率が幾らである、輸出入は幾らであるということが計算をされませんと、なかなか正確な数字は出ないわけでございます。これを待っておってはどうにもなりませんので、さしあたり、三十九年度は六十四万二千グロストンにプラスアルファを考えてひとつやろうという考えでございます。それを百万トンにしまして、これを三十九年度に全部完工せしむると、こう仮定をいたしますと、財政資金をもう三百億ばかりつぎ込まなければいかぬという計算になるわけであります。しかし、これはまだ百万トンになるのか、自家船を入れて百万トンになるのか、また竣工をどう見るのか、まだ工程はきまっておりませんので、作業中でありますので申し上げられませんが、いずれにしましても、百万トンは三十九年度一ぱいに完工せしむるとしておおむね三百億の資金を必要とする考えでおります。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。いまの問題ですが、運輸省は造船業界自体の計画と同じ立場をとっておられるようですが、大蔵省や企画庁は何か鉄鋼会社あるいは石油会社等、会社自身も自家用船をつくったらどうかという計画のほうを指示されておるといわれるのですが、その辺のところはどうですか。
  54. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 運輸省は、三十九年度の予算要求は六十四万二千トンつくってくれという要求をそのまま認めたわけであります。一つも削らなかったのです。しかし、その後は四ブロックにブロック編成もできましたし、当時とは状況も違うし、国際収支の改善ということに本腰を入れてひとつやらなければならぬという状態にもありますし、そういう意味で、ひとつ百二十万トンくらいつくってもらえないかということをいま申してきておるわけでございます。私どものほうでは、いま経済企画庁と十分に相談をしながら、自家船を入れて百万トンでいいのか、自家船を除いて百万トンでいいのかという問題をいま検討中でありますので、運輸省も入れましていま政府部内で調整をしておるということでございます。ただ、自家船をつくるということはどういうことかというと、原油を運ぶのに外国船を使っているわけです。これは非常に困る。これを国内船に積み取り比率を切りかえていく、こういうことを言っても、リベートの問題とかいろいろな商慣習がございまして、なかなかそういかない。自分の船を持たせれば、自分の船を遊ばしておってリベートかせぎもせぬだろう、こういうのがざっくばらんな考え方でございます。でありますから、自家用船をつくらして、それでこれは自家用船をつくることによって自家用船がそのまま最後まで何十年間もやれるわけではないのでして、そのときは海運会社とのつながりをつけまして、ある時期には自家用船を使うけれども、場合によっては、それをそのまま海運会社に委託をするとか売り払うとかいうことを事前にお互いに連絡をしておけば、ロスが非常に少なくなるということで自家用船をつくらせる。しかし、これを開発銀行のワクに入れるかどうか、また、入れて八割ということにするのか。六割でもって押えるのか。八割にした場合、海運会社とどういう関連がつくか。また、六割にした場合はどういう関連がつくかというような問題を、前向きで話を進めさせておるわけでございます。なかなか盛り上がってくるものだけを待っておったんでは話になりませんから、少し政府も前向きで積極的に案を幾らか呈上しましてこういうものをまとめていきたいという考えでございます。いま船を百二十万トンないし百二十五万トンを運輸省の言うとおり海運会社だけにつくらせるとしますと、海運会社収支というものは非常に悪化する。ようやくここまできましたのが悪化するわけです。ですから、そのままの状態ではいけないので、まあ自家用船と海運会社とのつながりを十分考えながらバランスをとろうということでいま検討いたしておるわけでございます。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ本年度その自家用船を含めて百万トンにするかあるいは百二十万トンにするか、いずれにしてもふやさなければならぬわけですけれども、そういうような年平均百二十万トンふやすということになると、来年度以降は相当多額の資金を要するわけですけれども、それらの点について、政府は、まあ大蔵省は、来年度以降の造船の年次計画等について、まだはっきりはきまってないけれども、これに対応してかなりの額を支出できるという見通しでしょうか。
  56. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、いま財源ということは、来年の財源のことはなかなか申し上げられませんが、必要なものには最前点的に財源を配分する、こういうことでございます。必要と認められたものに対して金を出さなかったということはございませんから、何とかくめんして出したいと、こういう考えでございまして、まあ、ことしは百万総トンくらいのことを考えておりまして、来年が百三十万トンになるか百二十万トンになるか百五十万トンになるのか、これは中期経済見通しが立たなければできない問題でございますので、いま即座には申し上げられませんが、まあ、少なくとも百万トン平均以上はやっぱりつくっていかなければならないだろうという考え方は、おおむね了解しておるわけでございます。これが財政資金でいくのか、また民間資金をどれくらい入れられるのか。また、それに対して財政資金だけじゃございません。開発銀行の資金ワクだけではできないのかという問題は、またいろいろ問題がございます。先ほど総理が申したとおり、輸出入銀行も民間資金を入れることを考えると言われましたから、開発銀行、輸出入銀行等の資金の問題もございますので、すべて財政資金でまかなうということだけではないわけでございまして、まあ、必要な船腹増強の金は出してまいりたいという意味でございます。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 ある程度、まあ、大幅に船腹増強をやるということになるわけですが、いま日本の造船は世界一で、外国の注文も非常に多くて、かなり好況を呈しておるということで、その造船設備の拡張を大幅にやらなければ、今度国内のそういう必要をまかない切れなくなると思いますが、これらもまた設備拡張の問題になってくるわけですが、それは、それらとの関連においてやはり造船設備の拡張にも政府は力を入れる、そのためにも財政投融資の面で大いに積極的に進める、こういうお考えですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 造船設備も、必要があれば拡張をしてまいりたいという考えでございます。しかし、いま造船能力は、大体余力として百三、四十万トンあるわけであります。ですから、今年度まあ百万トンくらいつくろうということであれば、船台は十分確保できるということでございます。輸出船はいま四百万トンばかり契約がございますが、いままではまあ至れり尽くせりでございました。鉄板も安くやる、また金利も安い、十年間も仕事をつけてやると、こういうことであったわけでございますが、まあ、はっきり言うと、外貨がほしいために敵に塩を送るどころじゃなく、大砲をつけてやったということでございます。こういうことをひとつ八条国移行と同時に考えなければいかぬということで、御承知のとおり、輸出船の融資割合と同じように市中二割を入れまして、開銀八割の融資割合でございますから、全部で利子補給後の業者負担金利は、四分五厘程度となるようにしたわけでございます。また材料に対しましても輸出船と同じようにし、ある場合には引き下げなければいかぬということもいたしておるわけでございます。輸出船に対しましては、あまり荷物をつけてやるということまでしてもらいたくない。同時に、十年間も荷物の契約がなければ国内業者の船は許さぬと言っていたものはもっと弾力的にやろう、こういうように逆に拡大してやっていこう。ですから、現在の状態船台を増強しなければならぬということはありません。ただ、十万トンとか十四、五万トンとか非常に大きなタンカーになってまいりますと、特にタンカーは大きくなりますので、大きなものを相当つくろう。これからは大きなものでなければペイしないというようなことになりますから、大きなものの数がきまると、船台をある程度増強しなければならぬということも出てくるわけであります。こういう場合には、船台増強に対しても、政府は財政的にも金融的にも考えていかなければならぬということを考えております。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまあなたの言われたような方針をとられますというと、これからの国内船の国外船に対する競争力は強まるかどうか。輸出船はいま言われましたように、いろいろ便宜を与えて、そうしてそのためにかなり向こうに有利な条件を与えてしまった。しかし、国内船も今後そういうふうにしていくことになるというと、相当船価の引き下げに役立ち、競争力をつける点において有利になるかどうか、その点はどうお考えですか。
  60. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いままではなぜ輸出船に対してそんなふうに優遇しておったか。それは外貨獲得のためです、こういうことでございますが、よく考えてみると、外貨獲得にはなりましたが、巨大な敵をつくったということになります。でありますから、今度は、国内船業者の外航船に対して条件をよくしようということでございます。先ほどもちょっと申し上げましたが、日本の港湾使用料等は非常に安いわけでありまして、今度一部是正していただきましたが、まだまだうんと安い。これが外国並みに引き上げられると仮定いたしますと、外国の船はそれだけ負担をするわけであります。同時に、日本の船主も負担をしますから、そこで困ったということでありますが、これは地方税の改正等によりまして、今度も、とん税、特別とん税法で御説明申し上げましたが、国内的に、知恵を出せば、二重価格等をとって、ガットの場合、OECDの場で文句にならないような方法が、考えればあるわけでありますから、そういうことに着目して、去年から着々とやっておるわけであります。ですから、輸出船も断わることはない。いままで協力してやってまいったわけでありますから、輸出船も断わることはないし、世界一の造船技術を持っている国でありますから、輸出船も受けるが、少なくともそれよりも有利な状態日本の船をひとつつくろう、こういう考え方であることは事実であります。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 時間がないのでもう一点だけ伺いますが、OECDに入りますというと、低開発国援助ということが、いわば先進国の間でこれが進められる。日本もその仲間入りをするわけであります。国民総生産の一%くらいという話もありますけれども、いまの日本経済状況からいいまして、なかなか一%というのはちょっと無理だろうと思うのですけれども、しかし、いずれにいたしましても、OECDに入っても入らないでも、今後いわゆる低開発国に対する経済援助はやっていかなければならないわけでございます。その点について、今後ふえていくのに対する財政措置、民間の場合は別でございますけれども、政府が今後行なわなければならぬものをふやさなければならないのに、なかなかふえていないし、また効果的に見ても、政府のやりますものがかなり効果を発揮するだろうと思うのですが、その点に対して大蔵大臣は今後長期の見通しを立てて、そうして、たとえば海外基金ですか、ああいうものにもっと政府のほうから金を出して、そして政府の金がもっと低開発国経済援助になる、そういうふうにやるお考えでしょうか、どうなんでしょうか。
  62. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 低開発国の問題につきましては、総理も先ほど申されましたとおり、DACの会議のメンバーでございますので、そういう意味で国際的な立場から経済協力を進めなければならないということが一つございます。また、今度国連の貿易開発会議もございまして、ここで相当政治的な問題として取り上げられておるわけでありますので、こういう国際的な視野に立って協力をしていかなければならないことが一つ。  もう一つは、日本が現在ほかの国と違いますのは、低開発国に向けて六〇%近くも輸出をしておる、こういう特性がございます。そういう意味で、このような状態ではいかぬということで、ヨーロッパ市場の開拓とか、主要工業国同士の輸出をもっと伸ばさなければいかぬということもさることながら、事実は低開発国に対してそのような面があるわけでありますから、低開発国に対してひとつ大いに協力をしていかないと、日本輸出というものが頭打ちになるということもありますので、シェア確保という意味からも長期の投資を行なわなければならないということでございます。  もう一つは、賠償をやっておりますので、賠償にはいろんな制限、賠償に伴う経済協力にもいろいろな制限があります。制限がありますから、電柱は立って、発電機もダムもできたけれども、電線はわしのほうじゃないというような面がたくさんあったわけであります。ダムはつくってやったし、水路もつくってやったけれども、揚水ポンプは私のほうからやりませんから、どうぞ水は川の水を飲んでくれ、こういうことがあったわけです。そういうところにビエンチャンの水道とか、いろいろな新しいケースのものをやっているわけであります。でありますから、賠償及び経済協力というものをもう一歩進めることによって、よりその国の経済発展にもなり、また、こういう日本とのつながりも、より大きなものになる。こういう面から見まして、経済協力を進めたいという面を二つの面から考えておるわけであります。でありますから、海外経済協力基金も改組になりましたので、必要があれば、いつでも資金は追加をいたします。こういう経済企画庁長官との話し合いによって三十九年度の予算を組んだわけでございます。でありますから、バイ・ケースで十分内容を見まして、必要であるというものに対しては資金的な手当ては政府の間においてはやってまいりたいと思います。  ただ、一つお願いをしておきたいのは、民間の問題でございますが、どうも外国がうんと条件をよくするので、日本もよくしなければいかぬ、こういうことをよく言ってきまして、これは大蔵省だけが反対しておるために、仕事がまとまるのがまとまらぬというようなことが世間に流布されておりますが、それは大蔵省が悪いのじゃないのです。これははっきり申し上げておきますと、これは国民さんのほうが幾らか悪いところがある。これは一度十五年を許すと、すべてが十五年にしてしまう。商売というものは、相手が五年にするから、こっちは五年半、六年にするから七年、これがあるのです。もう一つを十五年にすると、全部十五年。一つ五分七厘五毛にすれば、全部が五分七厘五毛になるというようなことで、これでしりは政府が全部持て、これは政府の金は国民の金でありますから、そういう考え方でやはり海外経済協力というものは国民自体もよほど考えて、業者自体が考えてもらわないと、やはりそう伸びないという問題があるわけであります。でありますから、経済協力基金の改組に伴いまして、私たちも、民間と国との間で十分意思の疎通をはかりながら、機を失せず、必要なものは出そうという考え方に変わっておりますので、まあ、国民総生産の一%というわけにはいかないにしても、世界の五、六番目ぐらいにランクされるような状態で海外経済協力は続けていきたいというのが、基本的な考え方であります。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、今後は政府が積極的に海外経済協力には力を入れる、そうして、政府資金を相当額回すようにする、そういう方針をとる。こういうことでございますか。
  64. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 方向は、そのとおりでございます。
  65. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど総理が、輸出入銀行の原資の拡大をやらぬとできないと言われたが、大蔵大臣はどう考えるか。これが一点。  もう一つは、OECDは、日本の海外協力政府機関でやる場合が多い、だから、それを民間にやらせるように、日本政府自身があまり海外援助——政府自身がですよ——やる場合を、何か規制するようなことを考えておるといわれておるが、その点はどうか。この二点だけ。
  66. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三十九年度の予算編成の時期に総理から、輸出入銀行で債券を発行しろと、こういうことがありました。それは、輸出入銀行の問題と同じく、中小企業でも債券発行をしなさい、こういうことでありました。中小企業だけ取り上げまして、輸出入銀行の問題はなかなかペイしないということで、輸出入銀行でもって債券を出すということになりますと、一体利息をどうするのか、利子補給の道を開くのかという問題がありまして、まあ、輸出入銀行はやめよう、そうして、中小企業だけ百億やったわけであります。この中小企業の百億も、初めは五百億もやれということでありましたが、商工中金の反対でだめになったんです、はっきり申し上げておきますが。いいことをやろうとしてもなかなかそうばかりいかない。それでようやく百億で折り合ったわけであります。同じ問題がございます。でありますが、輸出入銀行というものが財政資金だけでやるものでまかなえるものじゃありませんから、やはり総理の言われる民間からの資金を吸い上げますために、また、民間資金を動員するために必要な施策はとられていいじゃないかという考え方は、やはり検討しなきゃならぬと、こういう考え方でございます。まあ、財政資金だけでやり得るというものではないという考え方でございますので、いろいろ考えております。  OECDの問題でございますが、これは民間がやってくれれば非常にいいのですが、いままで外貨というものに対しては政府はMOF勘定で統一しておるというのが一つの障害でございます。もう一つは、先ほど申し上げたとおり、日本の業者は円貨でもって計算してもらったらば、あとは政府が責任を負ってくれ、こういう風潮がこのごろとみに高いので、やはり国民の、業者自身の自覚や、投資に対する積極性というものもあわせて考えていかないと、なかなかそのようにはならないということでございます。
  67. 羽生三七

    ○羽生三七君 OECDにその動きがあるかどうか、日本を規制するような。
  68. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) OECDはそんなことありません。OECDは、そういうことは現在まで言っておりませんし、OECDに入りますと、満場一致でございますから、入るまではなかなかむずかしいのですけれども、入ると、日本の発言力というものは非常に増大するわけでございますから、日本に不利になるようなことはきまらないわけでございます。
  69. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  70. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を行ないます。まず、文部大臣に対する質疑を願います。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECDに加入いたしまして、それによって、その際に貿易外取引自由化ということの規約を受諾いたしますと、そのうちに映画の輸入が自由になる、こういうことになるわけであります。多少期間に留保をつけましたけれども、これは間もなくはずれて、そうして映画の輸入自由化される。現在の映画の傾向を見ておりますというと、テレビに押されてだんだん映画を見る人口は少なくなっておりますけれども、一面において、これは戦後の社会の風潮をあらわしている面もございましょう、また、テレビに対抗する面から刺激の強いものがつくられていくという面もありまして、外国から今後日本輸入される映画のうちでエロ的な映画、エロ映画が非常に多くなると予想されるのであります。さらにもう一つは、ギャング等の犯罪を誘発するような、青少年をそれによって引きつけるようなものが非常に多く輸入されるであろう。これはもうすでにその傾向が最近かなりあらわれているのであります。そういたしますと、外国のエロ映画なりギャング映画なりというものが、観客が多い、利益をあげるということになりますと、日本の映画界もやはりその利益をあげなければならぬ。外国映画と競争をして観客を集めなければならぬ。そういう点からいたしまして、やはり非常にどぎつい映画が最近はんらんしております。これは日本の映画政策の面において特に最近顕著にあらわれてきているのであります。これは、総理の言う人づくりの問題と非常に関係のある問題でございます。また同時に、一方において青少年の犯罪を増加させる原因にもなっておるわけでございますが、この点について、文部大臣はどういうふうにお考えになっておるか。さらに、その対策はどうお考えになっておるか。OECD加盟をしてからそういう傾向が顕著にあらわれるということはどうもはっきりしてきておるのでございますから、その点についての文部大臣のお考えを承りたい。
  72. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 映画の輸入の問題、ないしはそれに関連して、また国内映画の製作の問題につきまして、ただいまの岡田さんの御質問の御趣意につきましては、実は私も心配をしておる一人でございます。どうも最近の映画あるいはテレビというようなものを見ておりまして、必ずしも歓迎できないものが少なからずあるように見受けられるのであります。OECD加盟というようなことが実現いたしました上は、またその辺の心配がふえるのじゃないかというふうに実は私も思っておるわけでございます。御無知のように、不良な映画の上映ということを事前に規制をするということは非常に困難でございます。従来は、文部省としましては、御承知の映倫管理委員会におきまして——業界の自主的な努力として、映倫管理委員会におきまして自主的規制を行なうということをいたしておる。その管理委員会の活動を期待いたしておるところであります。また一面におきましては、できるだけ優良な映画というふうなものを地方に向かってもすすめていく、そして、ことに青少年が優良な映画に接する機会を与えるように、こういうことをやってまいっておるのでございます。率直に申しまして、私も現状必ずしも満足できない。このような状況でございます。さて、これをどういうふうにやるかというところが、実はなかなか適切な案が浮かばないので苦慮いたしておるところでございますが、さしあたりの問題といたしましては、やはり従来のわれわれがとっております態度をさらに強く進めていく以外にはないのではなかろうか。特に自主的な映倫管理委員会の活動を一そう充実し、強化してもらうように、業界に対しましても、また委員会に対しましても、要望を強くいたしたいと考えておる次第でございます。これまでも時々そういうこともございましたが、今後もさらに一そう今後の推移を考えまして、十分気をつけまして、不良な映画が日本にはんらんすることのないように努力をいたしたいと考えております。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 映倫が、悪い映画いい映画の区別する機関としてあるのだ、それの活動に待つということでございますが、いままで映倫のやってまいりましたことを見ますというと、必ずしも悪い映画に対して相当きびしい態度をもって臨み、かつ、それが青少年に影響を及ぼさないようにという見地からやっているかどうかということが疑わしいのであります。もちろん、検閲の復活とか表現の自由に対する侵害とかいう問題がありますけれども、しかし、これは社会全体として見て、ああいう映画が映倫で相当認められて、これが一般に公開されておるということは、必ずしも世の中の多くの人々、特に親たちがあれでいいんだとは私は考えないと思う。映倫がもっとはっきりした基準を持って臨む、あるいは映倫が少しきつい態度をとるように権限を拡充するとか、あるいはまた、映倫の人の入れかえをやって効果をあげるようにするとか、何か映倫それ自体について考え直して、そして映倫の組織と機能というものをもっと高めていく必要があるのじゃないか。私は、あまり右顧左べんしないでも、そういうふうに映倫が改組され、映倫がいい方針でもって不良映画をはんらんさせないようにするということでありましたならば、あるいは若干の業者の方やあるいは若干の人々の間からは反対があっても、社会の大部分は支持するんじゃないかと思うのですが、その点についての御見解を伺いたい。
  74. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私も、従来の映倫の仕事の成果ということを考えます場合に、いまお話しになりましたように、決して満足すべき成果が十分にあがっておるとは申し上げにくいと思うのであります。その点につきましては、政府の内部にございます青少年問題協議会等におきましても問題として取り上げまして、いろいろ業者の方方ないしは映倫の方々に向かっても一そうの努力を要望いたしておるところでございます。ほかに変わった仕組みを考えるということは検討を要する問題でございますので、いまお話しになりましたような方向において、われわれも一そう注意いたしまして、努力いたしたいと思います。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば映倫でもってこれは成人向きというふうにして指定して、十八歳未満の者はこれは見ちゃいけないとなると、ところが実はあれは逆にそういうことをきめると、十八歳未満の者までよけい見る。そしてまた十八歳以上の者はこれはたぶんおもしろいのだろうというので、よけい見る、こういうことですね。映倫がそういうふうに判定をしたことを逆用して、観客を多く吸収するように利用しておる業者といいますか館があるわけです。そういう点から考えましても、映倫の今後の運用というものは非常にむずかしいのでありますけれども、一体映倫というものはどういうふうにして構成され、かえていくにはどういうふうにすればいいのか、その点は文部省として指導できるのかどうか、その点はどういうことでございましょうか。
  76. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 文部省からいろいろ要望をしたり注意をしたり、これはできると思うのでありますけれども、法律上の権限に基づいてどうというわけにはまいらないと思います。やはり業界が、単なる営利だけではなくて、国民生活に与える影響の多いもの、そういう点にほんとうに自覚していただいて協力してもらう以外には、ただいまのところは適切な方法というのは政府としては考えられない、こういう状況でございます。十分検討しなければならぬ問題でございます。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも業者の協力ということは、これはなかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。これが私どんどんもうかっておる時代なら、あるいはそういうことを考えて抑制するということもありましょうけれども、全体として映画が斜陽になってまいりますというと、なかなかまじめな映画、青少年の教育になるような映画のほうに力を入れるということはやらないで、もっと手っとり早くもうかればいいということになってくる。これはおそらく外国でもいまそういう傾向が出ているし、それにつれて日本でもそうなっているのです。その業者の協力とかなんとかいうことをもう少し強く、たとえば指導する、あるいはまた、映倫等の今後の活動についてももっと文部省で強く指導するという方法がないものかどうか、その点はどうでしょうか。
  78. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 何か法律でもありまして、それに基づいて文部大臣の権限としてものを言うとかいうことになりますれば、あるいはいま以上の効果があらわれるかと思うのでありまするが、この問題はよほど慎重に考えなければならぬ問題でございますので、強いことを申せば、強く声を出してものを言うということにはなろうと思いますけれども、従来よりももっと熱意を込めて誠意を持ってよく話し合いまして、心持ちよく協力してもらうようにしていただかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。なかなかこの問題は、お話しのとおり、私もそういうふうに感ずる場合がしばしばあるのでございますが、どうも思うにまかせないところはまことに残念でございます。あるいはわれわれの努力が足りないということもあろうかと思いますので、先ほど来申し上げておりますように、御趣旨のような方向においてもっと積極的に強く話し合いもいたしてみたい、私も実はそのような考え方を持っておりますので、適当な機会にそういうふうな話し合い機会も持ちたい、こういうふうに存じております。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECDに入る際に、いろいろ留保条項を付したわけであります。この映画の輸入自由化という問題について文部大臣は何か御相談をお受けになりましたか。そうしてまた、これに対してそういう自由化日本の青少年に与える影響等を考えて、それにもっときつい留保条項を付すように進言されたかどうか、その点はいかがでしょうか。
  80. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 自由化に伴いまして関係各省に関係のあることにつきましては、いろいろ御連絡をいただいておるわけであります。制度的に考えました場合に、私ども格別なことをするというふうな考え方まで至っておりませんので、従来のままというふうに考えている次第であります。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、政府のほうではこのOECD加盟にあたりまして、貿易外取引自由化の受諾に際して、フィルムの問題に対しては若干の期限の留保を付しただけ、こういうことになったのですが、これらの点について政府のほうではそれ以外には考えてなかった、こう解してよろしゅうございますか。
  82. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 文部省に関連する限りにおきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、結局OECD加盟を急ぐあまり、それから起こる日本の青少年に及ぼす影響なんていうものは、政府はてんで頭になかったのだと、こう断定せざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  84. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 全然頭になかったというふうに断定せられましては困るのであります。われわれとしましては、制度的な問題としましては特に言うべきこともないが、今後の行政の運営上十分気をつけてまいりたいというふうな考えのもとに賛成をいたしておるような次第であります。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょうど宮澤さんがおいでになっておるから、その際にこの問題について論議もあったのだろうと思うのですが、どうなんですか。こういうことをお考えにならなかったのですか。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 突然のお尋ねでございまして、経常的貿易外取引自由化に関する規約第三条の中に、御承知と思いますけれども、「公の秩序を維持し、又は公衆の衛生、道徳及び安全を保護すること」云々ということがございますので、包括的にはこれで、もしただいまのような極端な場合には、自由化義務は法規的には免れているものと考えます。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 法規的に免れておるかどうか知りませんけれども、いま入ってきている映画をすべてごらんになったかどうか、外国映画ごらんになるのかどうか知りませんが、もしごらんになったとすれば、相当なものが入ってきているのが現実なんですがね。今後OECD留保条項がなくなってきたならば、そういう傾向が一そう強くなるのですが、入るときにいろんな留保条項をつけておりますね。この留保条項の際に、あなたが折衝にだいぶ当たられたのじゃないかと思うのだけれども、どうなんですか。そういう今後の青少年の問題についてお考えになって、これにそういう厳重な留保条項をつけるということにはお考えが至らなかったのですか。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私もこの問題に断続的に何回かかかり合いはあったのでございますが、率直に申しますと、経済面のことをいろいろ考えておりましたが、現実に最後に受諾するときになりまして留保条項を研究いたしました際には、各省が自分の分担を研究しておりましたもので、率直に申しますと、私はそのことを実は留意いたしておりませんでした。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、結局、何といいますか、青少年の将来の問題について、当然こういう点については相当強い留保条項を付すべきにもかかわらず付さなかったということになるわけでして、私はどうもほんとうにまずかったと思うのですがね。宮澤さんがいま率直に、どうもそういう点は手落ちだったように言われておるのですが、しかし、これの及ぼす影響というものは非常に重大な問題であります。これはひとつ将来の問題でもありますが、大きく考えていただかなければならないと思うのであります。  それから、次に文部大臣にお伺いをしたいのは、やはりこれはOECD目的といたしまして、低開発国援助という問題がございます。低開発国援助につきましては、総理は今後できるだけ予算もふやしてそっちに向けたいというようなことでございましたが、この低開発国援助には、やはりその一つの方法として、低開発国の人を日本に留学生のような形で呼んで、そして、これをいろいろ教育していくということが含まれると思います。で、日本でもいまやっておりますけれども、そして、年々多少はふえておりますけれども、これは諸外国に比べますというと、まことに少ない。それはいろいろ日本語という障害もございましょうけれども、しかし、なお、障害を乗り切ってよりそれを強めていくことが、もし低開発国援助日本が積極的に進めていこうとするならば必要なことじゃないかと思います。その点についての文部大臣見解、並びに今後それをどういうふうにふやしていくか、どういう効果をあげるかという点についての見解をお示し願いたいと思います。
  90. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いわゆる低開発国に対するわれわれの協力あるいは援助という問題の中で、教育の問題を通じての協力援助ということは大事なことだと思うのであります。現に、御指摘にもありましたように、ある程度のことを行なっておりますが、毎年若干ずつでも充実したいという考え方のもとに努力をいたしております。本年度は、昨年度に比べますというと、政府が招致する留学生の数もほとんど倍にいたしたようなわけであります。ただ問題は、実施上かなりの問題もございますが、一面におきまして、ほんとうに日本に来て気持ちよく学生生活を送ってもらうようにしなければならぬと思うのでありますが、そういう面におけるまだ受け入れ態勢も十分ではないと思うのでございます。そういうふうな受け入れ態勢の整備とともに、より多数の人に日本に来てもらうように、われわれとしましては、予算面その他におきまして努力をしてまいりたいと考えておる次第であります。お話しの方向につきましては、全く私ども同感でございます。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 この点は私外国へ行ってみまして痛感するのでありまするが、いわゆる社会主義国ですね、共産圏の国々は非常に積極的であります。これはソ連のような大きい国ばかりでなくて、かなり小さい国でもやっております。いわゆる資本主義国家においては、ヨーロッパの国々はかなり積極的にやっておって、日本は非常に立ちおくれておると思うのです。特に東南アジアの諸国に対してもっと日本が今後経済関係を深めていくということになってまいりますれば、それこそもっと力を注がなければならぬのじゃないかと思うわけですけれども、各国から日本が招致しております留学生は、賠償によるものを除きますというと、そうたくさんではないと思います。あの賠償によるものがあるので、かなりたくさんの数になっておるわけでありますが、実質はあまりたくさんでない。これを倍にふやすといたしましても、なおかつ、私は多いとは思わないのですけれども、将来どれくらいにふやしていくおつもりですか。
  92. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) どのくらいにふやすという的確なものは現在持っておりません。現状は決して多いとは申されません。したがって、これを漸次ふやしていくように努力をしたいと思っておるわけであります。いずれにしましても大事なことでございますので、一そう積極的に考えてまいりたいと思うのであります。同時に、日本における受け入れの態勢をもっともっと充実することを考えてまいりませんと、思うようにまいらぬと思います。それらの点につきましては、あわせて努力をしてまいりたいと思います。
  93. 羽生三七

    ○羽生三七君 先般宮澤長官は、国連貿易開発会議においでになられたわけでありますが、その際、いわゆる低開発国援助問題、プレビッシュ報告問題等に関連して、日本としてはどういうお考えを打って臨まれたのか。また、会議の中でどういうことをお感じになったのか。それらの点を新聞等では若干の報道を承知いたしておりますが、御帰国以来まだお話を承ったことがありませんので、この機会に一応概略御説明をいただきたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 新聞などで報道されておりますことは、概略正確であると存じております。概括的に申しまして、ちょうどわが国の国内経済発展してまいりますと、所得格差あるいは地域格差の是正の要求が出てまいりまして、これが取り上げなければならない大切な問題になりつつあるというのと同じようなことが、第二次大戦がありまして、その後に独立をいたしました多数の国、しかも第三次大戦がおそらくないであろうといういわば世界の繁栄の中において、それらの国々から地域格差、所得格差是正の声が上がってきて、そうして、彼らの考えでは、その格差是正の要求は、自分たち以外の先進国においても、世界というコミュニティーの中で、先進国も当然にこの解消のために努力をする義務がある、基本的にはそういう声のように受け取ってまいりました。で、それに対しまして私の感じましたことは、それはやはり国内においてヒューマニズムの立場から、そういう問題を取り上げなければならないのと同じ意味で、基本的にはヒューマニズムの立場で真剣に先進国考えなければならない問題である。基本的にはそういう問題として理解をいたしてまいったわけであります。で、さらに具体的に申し上げますならば、プレビッシュ氏は、それらの後進国の要求をかなり強い形でプレビッシュ報告に出しているわけでございますが、しかし、現実には、いわゆるその格差というものは、国内でも世界でも長い歴史の産物でございますから、急速にこれを解消することはできない。やはり、かなり長い年月をかけて段階的にやっていかなければならないということは、プレビッシュ氏自身も認識をいたしておるようであります。ただ、低開発国の中で非常にそういう強い声がございますので、それを、かなりあのようなきつい形で表現をしたのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。で、具体的に各低開発国が共通して申しますことは、いわゆる一次産品等々の交易条件を改善をしてもらいたい。そのためには、これを買い受ける側において一定量の数量について何かの形でコミットメントを与えてもらいたい。そうしてまた、買い上げの価格を相当高いものを約束をしてもらいたいといったような一連の希望、それから、それらの製品並びに低開発国の一部で生産しております軽工業品等につきましては、関税上の特恵を低開発国に対して先進国は与えるべきであるといったような要望、また、一般的に現在のこのような格差是正に対して低開発国は補償というものを要求する権利があって、したがって、先進国側はそれに対して何かの形で償いをする——償いとか補償とかという意味は実は最後まで明確にはなりませんでしたが、思うに、やはりそういう低開発国側に格差解消を要求する権利があるといったようなことの裏側としてそういう表現が出てきているように感得いたしましたが、そういう要求、その補償によって低開発国側の開発をはかっていく。大体このような点が主たる要求であり、そうして、これらの問題を解決する機構としては、在来のガット等では本来不十分であり不適当であるから、新しい機構を設けるべきである。ほぼ、これらのことが低開発国の共通した主張であるように感得をいたしました。ただ、その中で、低開発国の中でも、アフリカのきわめて新しいしかも小さい幾つかの国のように、全く一次産品、限られた一次産品にたよっている国もございますし、インドあるいはパキスタンのように、軽工業品についてはすでにある程度生産輸出の態勢を整えておる。したがって、それらの輸出について先進国が考慮すべきである。むしろ、そちらに重点を置いている国もございまして、その間の利害は必ずしも同一ではないように感得いたしました。私ども日本政府といたしましては、基本的には、このような低開発国側の希望、要求に対して同情を持つということ。次に、したがって、これは特定のグループ対グループの問題ではなく、いわゆる先進国が一致協力してこの低開発国側の要求を満たすために長期的な努力をする必要があるということ。また第三に、低開発国側の要求の中には、あまりに性急であったために、かえってその目的を長期に見ればそこなうと思われるような点がある。それは、たとえば、一次産品をできるだけ高い値で買ってほしいというような要求は、ともすれば、それに対する代替品が工業的に生産が可能になるというようなことになり得ますので、そういったようなことについても、それを低開発国側にもよく考えてもらわなければならないというようなこと。第四に、わが国は幾つかの国に対して開発輸入というようなことを試みておって、これがある程度成功する公算が高いので、こういう方式も考えてもらってはどうかということ、このようなことを申しました。  また、こういうような問題を解決する機構としては、現在のガットがそのまま現在の形でこれに適応するものとは必ずしも考えない。しかしながら、これと対立したような意味で大きな機構を考えるということはいかがなものであろうか。この種の総会を定期的に開き、その間を小ぢんまりとした事務局が作業を先に向かって進めていく、そういう形くらいが適当ではなかろうか、このようなことを申しました。  なお申し落としている点があるかもしれませんが、それは補足させていただきますが、概して、そのようなところでございます。
  95. 羽生三七

    ○羽生三七君 伝えられるところによれば、日本としてはアメリカイギリス先進国と大体考え方を同じくして同一歩調をとっていると伝えられているのですか、その場合、特恵関税制度なるものが創設された場合、日本に与える影響というようなこともあろうかと思いますが、それはそれとして、低開発諸国の要求と先進諸国との考え方とは適当に調整されたのか。たいした不満なしに会議は進められたのか。その辺はどうでしょう。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) わが国の、ただいま申し上げましたような立場の表明が、英米等のいわゆる先進国の側に片寄ったものであるのか、あるいは低開発国側に、冒頭に申し上げましたようなしんからの同情の気持ちを持っておるということがそれとして読み取られましたのか、反響がいずれであったかということは、実は私にもさだかでございません。私自身が受けました反響は、低開発国、ことに東南アジアの国々、あるいはエカフェなどの関係者等からは、わが国としてはかなり問題の本質をとらえておって、多少辛いことも言っておるけれども、これはやはり受けて立つ気がまえがあるので辛いことを言っておるのではないか、このように受け取られたと私は思っております。しかし、これは私にそういう印象を告げる人が何人かいたということでありまして、全然反対の印象を持った人はあえて言わなかったかもしれませんので、さだかではございませんが、私はそう思っております。なお、特恵の問題につきましては、先刻申し上げました、特定のグループ間でなくという意味は、たとえばフランスがアフリカのフランス植民地のめんどうを見る、あるいはイギリスイギリスのコモンウエルスのめんどうを見る、そういう形ではなく、先進国一つになって後進地域に対して差別なく特恵を与える、そういう考え方でなければいけないということを主張いたしたつもりでございます。したがって、結果としてわが国だけが特に不利を受けるような特定のグループ間だけの特恵が、今度の場合、結論として出てくるということはないのではないかと思っております。なお、それらの先進国側の考え後進国はどのように受け取りつつあるかということは、ちょうど四月の七、八日前後から委員会に専門に入ったわけでございまして、その結論らしいものが各委員会で出てまいりますのに、まだしばらく——五月のおそらく半ばごろまでかかるわけでございますので、はたしてどのような受け取られ方をいたしておるかということはさだかではございません。けれども、予測として考えられますことは、おそらくほとんどすべての先進国が、これらの多数の後進国が持っておるところの要望に対して基本的に否定的な態度をとることはできないであろう、そういうことはあり得ないであろうということであります。そうして、それはガットで昨年も問題になりましたアクション・プログラムの中で、先進国側はかなりことばの上ではいろいろ配慮をするように申しながら、いつの時点でどうするということについては、きわめてあいまいなことしか言っておらない。その程度では今回の結論はなかなか進まないであろう。と申しましても、いつの時点から何を具体にどう始めるという約束をいたすという意味ではございませんけれども、ことばは適当でございませんが、まあしかるべきあいさつをして進ませるといったようなことでは相済まない。徐々にではありますけれども、この流れはおそらく逆転することのない歴史の一つの流れであるということは、先進国側も覚悟をしてかからなければなりませんし、また、会議の今回の総会の締めくくりも、おそらくそのような気持ちを何らかの形で宣言いたしますか、あるいは勧告いたしますか、その形態ははっきりいたしませんけれども、何らかの形で公に打ち出すことになるであろうというふうに考えております。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECD加盟にあたりましていろいろ折衝されたのはもちろん外務省でありましょうけれども、実質的な問題については、経済企画庁長官のほうが衝に当たられたわけですね。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは必ずしもそうではございませんでしたので、私が与えられました使命は、一昨々年の十一月に、わが国として何らかの形で加盟あるいはそれに近いことを考えてもらいたいという意思表示をいたしましたことと、昨年の十一月に、再度日本政府として、いまだに批准が得られていないところの事情の説明をいたしましたことと、その間一、二度OECDの事務局と多少事務的な話をいたしました程度でございます。最終的にOECD側が加盟を認めてもいいという気持ちになりまして、先方の事務当局が日本に参りました。そのときの折衝、これは外務省の所管のもとに各省が自分の所管の事項についていたしましたわけで、私はそのときにはあまり具体的に中には入っておりません。したがって、私の関係いたしました範囲での経緯のようなものは、御説明できる立場にあるかと思います。
  99. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますとですね、昨年の秋に向こうへ行って折衝された際に、これはなぜ期限がおくれておるかというような点について説明されたわけですが、その際に、いわゆる留保条項について、あなたは具体的にその留保条項を設ける問題について窓口になって折衝されたんですか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私の立場はきわめて大まかなものでございまして、ひとつ日本としても加盟をさせてもらいたいという政府が希望を持っておるということを申してまいり、昨年の場合には批准手続がおくれておるということを説明いたす立場にございましたから、どちらかと申せば、これこれについてはぜひ留保いたしたいということを表面に出してものを申す立場ではございませんでした。しかし、その間に、外務省の現地における出先の人々は相当詳細に、どの程度留保が可能であるか、どのコードについてはOECDの解釈はどうであるかというようなことは、相当こまかくかつ密接に接触をして研究をいたしておりましたので、昨年の時点において私はそのことをかなり詳しく聞いて知ってはおりました。
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 その留保条項について折衝には当たったわけではない、しかし、その内容についてはまあ十分に知悉されておられた。こういうことですね。そういたしますと、この留保条項の内容なんですけれども、まあ、総理にいたしましても、他の大臣にいたしましてもです、日本経済影響を受けるという点については、留保条項を設けて、そうしてその影響を防いでおる、こういうことを言われておるんです。はたしてこの留保条項が、OECD加盟してあの二つのコードを受諾したことから受けるいろいろな影響ですね。これをあれでかなり遮断できるものかどうか。それについてのあなたの見解をお伺いしたい。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) どうも知悉しておると言っていただくほどのことではございませんので、委託されますと、そのつどこれは委託されましたことはやってまいりましたが、何分にもはっきりした所管でございませんので、記憶なども薄れがちでございますし、あまり体系的ではございません。ただ、概括して申し上げられますことは、やはり船についての留保条項は、これは一番つらいところだという感じは持っております。持っておりますが、本来、OECD加盟をするということの意義を非常に大切に考えますし、また、いずれは時間の問題で、これについてもこういう問題が起こるということはもう否定できませんので、やはり思い切って決心をして、この程度のことならば妥結をしたほうがいいのではないかというふうに私も実は当時考えました。ただいまもそう考えております。その他の条項につきましては、それほど、船舶におけるほどむずかしい問題はおそらくないのではないかというふうに考えております。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは窓口が外務省関係のほうであるので、これはあとで大平外務大臣のほうにお伺いすることにしまして、留保条項の問題についてはその程度にしまして、このOECD加盟いたしましてから、たとえば今後国際収支の上に及ぼす影響というものは相当あろうかと思うのです。それで、先ほどこれについて大蔵大臣等からも御意見を伺いまして、御見解を伺いましたけれども、この経済全体を見て今後の全体の見通しを立てていくという立場にあるあなたのほうから見まして、このOECDの二つのコードを受諾したことから来るいろいろな国際収支の上における今後の見通し、それをお伺いしたい。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 非常に広範なお尋ねでございますので、御質問にきちんとお答えできるかどうか疑いなきを得ませんけれども、やはり基本的にはOECDのメンバーになるということによって、なかんずくヨーロッパ諸国に一種の親近感と安心感を与えることができるという点が一つあると思います。御案内のように、ヨーロッパの各国の中には、わが国に対していわゆる対日差別リストを持っておる国がまだ相当にございます。また、ガットの三十五条を援用しております国もあるわけでございます。これらは、過去何年かのわが国のヨーロッパに対する貿易上の進出について、いろんな意味での疑惑、また不信感を持っておるその反映として、こういうことが少なくとも一つ理由になっておると思いますので、OECD加盟をいたしまして、常時これらの国々と接触をすること、及び基本的にOECD考え方、OECD流のものの見方考え方にわが国が一緒に入っていくということは、これらの国がわが国に対して持っておりますいろいろな疑惑を年とともに解消するに役立つと思います。そういう意味では、これらのいわゆる非関税障壁を是正してもらいまして、わが国の対欧貿易関係を伸ばす上にかなりの好影響があるものと考えます。計数的に申し上げることはできませんが、それが一つの利点であろうと思います。  第二に、OECD加盟の結果、国際金融等の作業部会におそらく入ることができると考えますので、それができますと、国際金融で各国が近く表面化させるであろうといったような動きについては、事前に協議、相談に入ることができますので、国際金融がこれからどういう方向をたどるかということについて、あらかじめ十分な知識を得ることができると思います。これも直接、間接にわが国の国際金融上あるいは貿易上の立場を助けることになろうと思います。なお、御案内のとおり、ガットにいたしましても、IMFにいたしましても、あるいはさらには国連にいたしましても、OECD加盟国が相当な発言権を持っておりますので、これらの国々が基本的な立場をつくります。その段階で、わが国の立場も言える、また、先方の立場も聞けるということから、間接的な利益を得ることも多いと思います。計数的に幾らということはもちろん申し上げ得ないわけでございます。  また、出のほうで申し上げますと、OECD加盟の結果、DAC等を通じて相当の活動をしなければならぬということは当然でございますが、これは加盟前にもわが国はDACには入っておりまして、かなり積極的に低開発国援助活動をいたしておりました。また、これからも、わが国自身の利益のためにもいたさなければならぬことだと思いますので、それらをOECD各国と共同して行なうということは、もちろん支出を伴うことでございますけれども、単独で行なうよりははるかによろしいのではないかと、こんなふうに考えております。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECDにはアメリカも入っていますね。OECDの中におけるアメリカの役割り、それから、アメリカもまたOECDにいろいろな留保条項をつけている。特に、海運の問題なんか、大きな留保条項をつけておる。このOECD内部における今度逆にアメリカに対する主としてヨーロッパ諸国の態度、そういうものはどういうふうにお考えになっていますか。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 十分に観察を申し上げるだけの知識を持っておりません。が、アメリカ立場から申しますと、EECというものといろいろな意味で対立した立場に現実に立っておりますけれども、それをOECDという場を通じまして緩和をするといいますか、お互いにわからせるといったような、これはきわめて当面のことを申し上げるようでありますが、それには大いに役に立っているように思います。OECD側の国がアメリカをどういう目で見ているかということは、中には、本来アメリカ加盟が問題になりましたときに、これは非ヨーロッパ的なものが混入をする。並びに、多少それによって何か国際政治的なものが入ってくるのではないかというようなことを懸念しておった国が当時あったようでございますけれども、最近行って見ておりますと、別段そういうことが表面に出ているようでもございません。これはしかし観察が、きわめて接触面が小そうございますので、自信を持って申し上げることはできません。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえばいわゆるシップ・アメリカン、これの影響を受けるのは単に日本ばかりではない。ノルウェー、その他イギリスあたりも影響を受ける。それから、アメリカが他国品に対しまして輸入の規制をいろいろやっておる。これも日本ばかりではない。ヨーロッパの国でも影響を受ける。たとえば毛織物なんか、そういうような影響を受けておる。そういうものに対して一体OECDの場で解決する。それをアメリカに向かって、そういうOECD加盟国でありながら、そういうOECD目的あるいは精神に反するようなことをやっておるのを、逆にそれをたしなめ、あるいはそれをやめさせるというような働きというものを一体OECDはすることができるのか。また、OECDの場でそれができるのかどうか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) たとえば米国のシップ・アメリカンでありますとか、あるいは運賃同盟コンファレンスに対するところのボナー・アクト等を基本とするもののやり方、政策のやり方については、OECD加盟国が公にその国の立場として批判をしているということは、これは御承知のとおり、現実にあるわけでございます。で、次に、そのような問題がOECDという合議体の中でどのように取り上げられているか、あるいはおらないかということは、この会議が原則として非公開、かつ、記録を残しておりませんので、正確には存じません。加盟をいたしましたらわかることでありますけれども、あるいは何か外務省のほうで情報を持っておられるかと思いますが、私は正確にはわかっておらないのじゃないかと思います。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはもうOECD加盟して、そういうような場合に、中でずいぶん論議ができるというふうに私どもは聞いておったわけですけれども、外務大臣、その点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  110. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカ海運政策、これはアメリカ海運業というものは総体的に弱体な産業でございまして、OECD加盟にあたりましても留保をしなければならなかった。この留保をとめるというわけにはいかぬと思うのであります。これはアメリカの主権に属することでございます。で、OECDに入ろうが入るまいが、そういうアメリカ海運政策はあったわけでございます。これに対しまして、イギリス、ノルウェーをはじめ、日本が従来執拗に反対をしておりましたことも事実でございます。それで、欧州海運国閣僚会議がございまして、これにオブザーバーを日本としても派遣をいたしておりまして、そうしてその場を通じてアメリカに対してユナイテッド・フロントをつくって当たっているわけでございます。せんだっても運輸省から係官が出まして、この会議に出ております。したがいまして、アメリカの行動に対して相当の政治的な圧力を加えていることは事実であろうと思います。今後これがどのような効果をおさめますか、これはOECDの場を通じて行なわれる共同した努力がどれだけの圧力になるか、アメリカがそれに対してどう自省するかということにかかるわけでございまして、将来のことはいまから予言はできませんけれども、相当の制約要素になることは事実でございます。私どもは精力的にやってまいる。で、ヨーロッパ各国も同様でございます。ただ、お断わりしておきたいのは、シップ・アメリカ政策というもの自体でございますが、これはあまり成功していないのです。非常に弱体な産業でありますから、アメリカ政府に対してあれやこれやの保護を求めておりますし、アメリカ政府としてもこれに対して、ちょうど日本の石炭産業がそうであるように、政府としてもいろいろ考えなければならぬ。いろいろなことを言いますけれども、かけ声のようには現実に進んでいない。シップ・アメリカンを遂行しようといたしましても、船腹が足らぬという実際もございまして、なかなかそんなに思うように進んでいない。つまり、言われるほど強力なものでないというように思うわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、海運自由化、自由という旗じるしのもとにヨーロッパ各国と日本とは従来も共同歩調をとってまいりましたが、この問題につきましては、より一そうOECDを場にして共同歩調の度合いを高めてまいって、対アメリカの圧力を誇張してまいるということは当然すみやかにやらなければならぬことだと考えております。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ海運が弱体であって、アメリカがシップ、アメリカンの政策をとった、しかしその効果はあがっていない。けれども、アメリカ自体にとって効果はあがっていないけれども、それの世界に及ぼす影響日本なんかにも相当の影響を及ぼしておると思うのです。この問題はOECDの場で解決の努力をすると言われておりますけれども、私、不思議でたまらないのは、すでにアメリカのそういう政策というものはわかっておる。アメリカOECD加盟する際には、そのアメリカ留保条項を全面的に認めておる。ところが、日本OECDに入ります場合には、海運の問題について日本側の留保条項はさんざんにやられて、そうして削られて、現在のようなものになったのですね。これは私ども、日本のほうでもってOECDに何でもかんでも入りたいというためにこうされたのじゃないかというような勘ぐりもせざるを得ないのですけれども、一体、日本の場合にはどうしてこういうふうに——これはノルウェー等が強い反対をしたのだということでありますけれども、アメリカのほうに対してはあれだけの全面的なものを認めて、日本のほうにはなぜ辛かったのか。その辺の事情を、どちらの大臣でもよろしゅうございますから、ひとつお伺いしたいと思います。
  112. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 本来、日本海運自由でいくべき国なんでございます。海運企業というのは世界的に競争力が強いのでございます。たまたま戦争によって受けた被害、特に外航船舶の被害が甚大がございまして、それに対して戦時補償もなかったということで、いま非常に困難な道を歩んでおりますけれども、本来、日本海運は自由で、七つの海に雄飛するということを本領としていかなければならぬ国だと思うのでございます。したがって、本来ならばOECD海運について留保条項を付さなければならぬなんということは恥だと思うのでございます。そういうことを考えなければならぬいまの立場は、非常に例外的ないまの特殊な事情が、そうさしておるのでございます。でき得るならば、これは海運政策の適切な配置によりましてそういうことのないようにすべきでございます。去年の夏、いよいよ加盟の段階になってまいりまして、この長期用船契約期間の問題だけが残ったわけでございます。したがって、岡田さんがおっしゃるように、日本の主張を貫いて加盟を見送るべきか、それともここでもう一段、海運政策の水位を上げることによりましてこの障害を克服していくか、その選択に迫まられたわけでございます。政府は後者をとったわけでございまして、したがって、三十九年度予算は、御承知のように、かつてない海運予算を編成し、開銀の融資率あるいは開銀融資の据え置き期間の延長等々、一連の政府関係の施策を進めると同時に、海運企業の整備ということを進めてまいりました。運輸当局といたしましても、また業界といたしましても、用船契約期間が不幸にして日本側の主張どおりならなかったが、それだけの障壁は十分これで克服できるという自信を持ったわけでございます。私から、OECD条約を所管しておる立場で身がってなことを申し上げるようでございますけれども、こういうことを契機にして海運政策が一段と前進するということになれば、これは非常に幸いじゃないか、またそれを、当局に対しまして、大蔵省をはじめ政府全体がバック・アップするのだという機運もまたOECD加盟を契機として出てきておるわけでございます。したがって、運輸大臣も私はまんざらではなかろうと、こう思うわけでございます。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも大平さんの話を聞いておると、災いを転じて福となすみたいな話ですけれども、そううまくいってくれればいいと思うのですが、それにはやっぱり今後の国際収支の見通し、特に貿易外収支の見通しの問題がやはり大きな要点になると思うのです。先ほども、総理大臣にもあるいは大蔵大臣にも御質問申し上げたのですけれども、しかし、この貿易外収支ばかなりずっと赤字が続くのじゃないかというふうに私どもは考えております。特に、それは単に偶発的な問題じゃなくて、構造的なものを含んでおる。海運収支のごときは、私はもう構造的なものの尤たるものだと思うのです。とにかく貿易をふやして、たとえば輸出もふやし、輸入もふやす。そうなれば、それを運ぶ船舶の量というものもよけい要る。日本のほうが一体その発展に間に合うだけの船舶を拡張できるかというと、なかなかできない。いまになってどろなわ的に大きな数字をあげてやりだすわけですけれども、しかし、政府の言う今後の貿易の見通しからいいますると、やはり政府が相当に力を注いでも、なおかつ赤字が続くと、こういうふうに私どもは見ておりますが、企画庁長官はこれらの点についてどうお考えになっておるか、また、いま政府がやろうとする日本外航船の船舶の建造計画というものは、一体これから五年間のうちにどのくらいつくる必要があるのか、その点をお伺いします。また、それに対してどのくらいの資金が必要なのか、それらの見通しをお伺いしたい。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 海運収支についてのここしばらくの見通しは、私は岡田委員の御指摘のほぼそのとおりであると思います。政府が相当思い切って財政資金を出し、また建造が行なわれたといたしましても、たとえば今後四年あるいは五年間にいわゆる貿易外の海運収支というものが黒字に転ずるだろうかということを考えますと、何か私ども予想していない要因が出てこない限り、私は黒字に転ずることは困難であるというふうに考えます。それは、一つには、相当の船舶を建造し、かつ、それらの船舶が積み取り比率をかなり上げたといたしましても、船舶用の燃料、これはわが国に産出いたさないわけでありますし、また、これらの船舶が世界各国——第三国貿易をも含めまして、各国のポートでポート・チャージを払うということは当然でございますから、そこまで考えますと、海運収支全体が黒になるという目算は、ただいまのところかなり先を見ましても、立っておりません。せいぜい私どもにできますことは、貿易量が、御指摘のように、毎年一割くらいづつふえていくといたしまして、ある程度海運赤字の累増することを何年たったら食いとめ得るかというところが、当面の私どもの目標——せいぜいの目標ではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、放置しておきますと赤字が累増していくことは間違いございませんので、政府といたしまして、先般第一回の関係閣僚懇談会を開きまして、この問題についての基本策の研究を開始いたしました。で、第一回で概して得られました結論は、可能な限りの船舶を長期にわたって、数年にわたって建造をしていくべきであるということ、それから、それらの船舶の建造が可能であるために、産業界において邦船利用ということに大いにつとめてもらいたい、いわゆる積み取り比率を国全体の努力によって上げていきたいということ、この二つのことでございます。しかし、何年までにどれくらいの船舶を建造する、あるいはし得る、それに対する財政的な手当てをどうするか、あるいはまた、いわゆる石油会社あるいは鉄鋼、石炭会社等々の自社船の建造に対して財政援助を与えるべきであるか、与えるべきでないかといったようなこと、それらの点は、第二回以降の経済閣僚懇談会の議題として残されております。第二回は、最近の機会に行なわれると思います。そして、じんぜんすることを許されませんので、第三回ぐらいではこの問題についての結論を出さなければならないだろうというふうに私は考えておるわけでございます。しかしながら、その問題とこのOECD加盟との問題について考えますと、わが国のシッパーに対して、経済的に不利であるけれども邦船を使えということは、これはしょせん私は出せない道理だと思います。OECD加盟がありましてもありませんでも、経済的に不利なものを無理に使えということはしょせん言い切れない話でございますので、やはりわが国の、そうしてでき上がりました船のフレートが少なくとも外国船に比べて不利でないというところでなければならないと考えます。したがって、その点は留保をとりましても、あるいは全くとらないということは論外でございましょうけれども、何年とるかということは実はあまり関係がなく、むしろ開放体制に入ったわが国自身の立場として、みすみす経済性のないものを使用しろということを企業に向かって言えないという基本の問題がむしろすでにあるのではないか、そういうことが現実に先行しておるのではないかというふうに私は考えますので、したがって、この留保が一年、二年というのはかなりつらいのはつろうございますけれども、その結果として海運の問題が非常に困難になるというのではないのではないか、こんなふうに考えるわけでございます。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの御説明を聞いておりますと、大平さんの言った、災いを転じて福となすとはどうもだいぶほど遠いようなんですがね、いろいろ困難な状況があり、また、それに対してこれから政府としてはいろいろ施策をやっていかなければならぬという苦心もよくわかるわけでありますが、この点はそれにとどめまして、次に、もう一点お伺いしたいのは、貿易収支も必ずしもずっと今後出超が続いていく、そうして貿易収支のほうで黒字が相当見込めるという状況には私ないと思うのです。これは日本の資源がすべてにおいて不足しているという事態から、どうもその点については私はっきりした確信はあなた方もお持ちになっていない、だろうと思います。ですから、いま言った貿易外収支の問題についても、海運等の問題がずっと赤字が続く。じゃ、ほかのアイテムでそれの埋め合わせができるかというと、これもどうも海運の大きな赤字を埋め合わすことができない。そうすると結局、資本収支のほうでもって何とかつじつまを合わせる。こういうことになっていくと思うのですが、このいわゆる資本でつじつまで合わせるという問題は、これはなかなか重大な問題だと思うのですが、経済企画庁長官は、いわゆる外資の導入といいますか、これは短期並びに長期の外資の導入の問題についてどういうお考えをお持ちになっておるのか。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいままでの何年間かは、お説のようなことで歩いてまいったわけでございます。昭和三十八年度について考えますならば、貿易そのものは逆調でございましたから、そこで、まず四億ドルくらいの赤字が、まだ計数を整理しておりませんけれども、あったのではなかろうか。貿易外で四億余りの赤字が同じくあったのではなかろうか。資本収支で長短期がやはりおのおの四億余りずつの黒字がありまして、都合九億程度の黒があったのではなかろうか。それでつじつまはともかく合ったと、一応そういうことでございます。で、お説のように、経常取引のつじつまを資本取引で合わせるということは、これは普通の姿として決してほめた姿ではございませんわけで、わが国が成長し、それに対する信頼のある限り、なお長短期の外資は逐年入ってくるとは思いますけれども、これで国際収支がバランスしておるということは、決して自慢をして申せる姿ではございませんから、だんだんと改めていかなければならないと思います。その際に、貿易外で海運を償うような黒字が今後出るであろうかということになりますと、私はおそらく出ないと思います。軍関係の受け取りというようなものは三億何がしまだございますが、こういうものはあまりこれも自慢をしていい性質のものでございません。したがって、それも漸減いたすと思いますから、貿易外が海運を償って黒になるというようなことはあり得ませんので、おそらくふえてまいるだろうと思います。ただ、貿易外の中で、実は貿易外とは言いながら、貿易に密接に付帯しておるアイテムが幾つかあると思います。それは、たとえば、商社の海外支店の経費でありますとか、本店・支店間の交互計算でありますとか、通信費でありますとか、そういったようなものは、実は貿易に付帯する——貿易そのものの経費であるというふうに考えるべきではないのでありましょうか。海運そのものも、実は、考えようによっては、多くの部分がそうではないかと思われますので、考え方の筋道といたしましては、貿易外の中で、それらのものを含めただけの黒字が輸出入の差で出てこなければならないのだというふうに私は考えるわけでございます。つまり、現在貿易外にあるもののうちから、実はこれは輸出入の経費であると考えられるべきものが相当ございますので、輸出がそれらの費用をカバーしてなお黒字が出る程度に伸びていかなければならないのではないか。考え方としては、私はそういうふうに思うわけでございます。
  117. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。たしか、きのうか、おとといかの新聞だと思うのですが、外務省じゃない、日銀関係かだれか、どなたからか、外電で、最近のフランス、イタリーのインフレ傾向から見て、外債の募集は過度にわたらぬほうがいいのじゃないか、抑制すべきではないか、つまり、輸入されたインフレということも起こり得る、あり得るので、そういうことは十分警戒すべきではないかという報道がありました。だから、いまの外資導入問題に関連してお尋ねをするわけですが、そういうことはお聞きになっていないのですか、いかがですか。どちらでもよろしゅうございます、両大臣のどちらでも。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 直接に聞いたわけではございませんけれども、ただいまの所見は、たしか、日本銀行のロンドンの事務所におりますところの参事官が帰ってきてそういうことを申したのではないかと思います。この点は、そんたくいたしますと、わが国が最近ヨーロッパで発行いたしました各社のポンドが発行後に市場価格が下がっておるということに言及されたものと思います。しかし、私自身が聞いたり、現地で見たりしておりますことは、多少実は違うような感想を持っております。つまり、ヨーロッパに滞留しております外貨がかなりやはりございまして、それらの外貨は相当積極的にわが国に対してヨーロッパで起債をしないかということで、ずいぶんこの引き合いが現在は少なくともある状況でございます。また、そうして起債されましたものの中には、ニューヨークの株式市場に上場されるといったようなことも、今度東京都の起債の場合に先例が開けたわけでございます。そういうことから考えますと、私はヨーロッパ市場における起債というものはなお相当可能である。問題は、それに対処してわが国の中で一番有利な条件で起債をする。ただ金を借りられればいいということじゃなくて、どういう態勢でこれに応じたら一番有利であるかということをやはり政府として考える。これは大事なことだと思いますけれども、新聞で報道されましたようなああいう考え方と、実は私どもが見たり聞いたりしておりますこととは、かなり違っているように思います。事実どういう報告でありましたか、直接には聞いておりませんのですが、私が見ました感想は、そういう感じでございます。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 貿易外の収支赤字を、長期、短期の外資によってカバーしていくということはあまり健全な姿でないということは、宮澤さんもお認めになっているところでございますが、アメリカが金利平衡税をかけましてから、日本に対してアメリカ資本の流入がむずかしくなってしまった面も、政府は非常にろうばいされたと思うのでありますが、それじゃそれだけのものを一体ヨーロッパでまかなえるか。いま宮澤さん、相当引き合いも多いし見込みもあるようなお話でございますけれども、しかし、アメリカヨーロッパと比べますというと、何といったって、ヨーロッパのほうはアメリカほど日本に対するその資本を投下する力はないのじゃないか、そういうふうに思われるのであります。そうすると、一体その差を何によってカバーするか。そうすると、短期のユーロ・ダラーのようなものをたくさん入れるということになるのではないか。この短期のものがどんどん日本に流れてくる。あるいは香港あたりからどんどん日本に流れてくる。そういうことになると、これはやはり日本経済に非常に不安定な要素をこれから持ち込んでくることになるのではないかと思うんですが、それらの点についての御見解お伺いしたい。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 利子平衡税が提案されましたあと、日米間の資本の出入りはどうなっているかと申しますと、御承知のとおり、大体利子平衡税の期間にかからない範囲でインパクト・ローンが、つまり三年未満の形で相当わが国に米国からまっすぐに入っております。これは先ほど資本収支の中で長期のものが四億数千万ドルあったろうと申し上げました。それも、かなり大きな部分がこのような利子平衡税にかからない範囲でのアメリカからのインパクト・ローンによっております。  それから、次にヨーロッパ市場の問題でございますが、たとえばドイツがマルク債の利子に対して二五%の課税をするというような提案を考えておりますように、ドイツそのものの立場アメリカの利子平衡税とは全く逆に、ドイツに資本が入りますことを何とかして防ごうとしております立場でございますから、これはヨーロッパで起債をしようとするわれわれにとっては逆に有利な立場になります。で、英国は国内市場に長期の起債について相当御承知のような制限がございますから、英国自身で発行するということはなかなか困難であると思いますが、ただいま申し上げましたドイツの事情、あるいはもう一つは、これは私の私見でございますので、私見として申し上げておきますけれども、米国からスイスに金が流れますことは自由でございますので、その辺にも一つ何か問題のかぎがあるのではないかといったようにも思われます。したがって、ホット・マネーは歓迎いたしませんけれども、見ておりますと、かなり長期の起債が、思ったよりはヨーロッパという場において、場を利用して可能である、そうして、米国の側はそういう意味で世界の起債市場のセンターをニューヨークから失うということにこれはこれとして相当懸念を持っておるようでございまして、したがって、こうやってヨーロッパで起債されましたものがニューヨークで上場されるというようなことを許したりもいたしております。それでございますから、そのこと自身は、そんなに心配した姿にはないのではなかろうか。しかし、利子平衡税が間違っておるということは、私はもう所信でございますから、どうしてもそれはそう申しますが、現実はそういうことになっておるのではないかと思います。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただ、いままではそうだったかもしれませんけれども、とにかく利子平衡税が現実に行なわれてから今後のアメリカからの資本の流入、これは日本がずいぶんたよっていたわけですけれども、それが少なくなった。ヨーロッパの、いま指摘されましたドイツあるいはスイスにおける資本市場日本に対する供給ですね、これがはたしてアメリカからいままで入っていたものに匹敵するだけのものが期待できるかどうかという点は、私はどうも疑問に思うのですよ。いま言ったホット・マネーのほうにたよらざるを得なくなってくるという危険性があるのじゃないかということをまあ考えるのです。それからもう一つは、日本の場合は、どうしてもヨーロッパ諸国が金を借りる場合よりも金利も高いししますし、また、日本から向こうへ流れていく配当なんかもヨーロッパの場合よりも率が高いのじゃないかというので、まあ、いわば相当そういう面で不利な条件といいますか、日本のほうが、投資家側からすれば日本は政局が比較的安定している、経済発展性も大きい、その上に相当高い利子がかせげるというので来るのであって、そういう点で、日本が今後外資がふえてくればくるほど、そういう負担が大きくなるという面がやはり国際収支に大きく響くのじゃないかと思うのですが、その点に対する御見解を伺いたい。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 英国あるいはヨーロッパ、米国もございますけれども、そういういわゆる証券業者、バンカーがわが国にずいぶん参っておりまして、これらの人々の考えを聞きますと、まことに一様に、ただいま岡田委員のおっしゃいましたように、日本はリスクとしてはグッド・リスクである、利子は相当高いし、こういうことで来ております。かなり熱心に、いわば投資先をさがしておるような感じがいたしております。そうして、結果としては、先般東京都の起債に見られますように、条件は従来ニューヨークでいたしました条件より決して悪くはない。ヨーロッパとしてはかなりいい条件でございましょうが、アメリカで起債いたしましたのに比べて決して悪い条件ではない。そういう結果になっておりますし、現在投資先を見ておりますわが国に来ておるバンカーたちも、大体同じような目で見ておるようでございます。もちろん、これは二千万とか三千万という単位のものでございますから、アメリカで大きく起債をするというのになかなかかわるというわけにはまいらないと思いますが、条件的には決して不利ではない。ですから、わが国の場合、いずれにしても将来返済の義務を負うわけでございますしいたしますから、ただ貸してやろうと言われて飛びつくという態度であってはならない。条件はできるだけしぼっていくということは、これは必要であると思いますが、優良な外資であれば条件さえリーズナブルならば受けるということは、これは続けていってもよろしいのではないか。しかし、冒頭に返りますならば、こういう形で外貨のバランスをはかっていくということは、決して長い目で見れば自慢のできることではないということはそのとおりでございます。
  123. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 通産大臣お見えになっておりますが、通産大臣に対する質問を。
  124. 羽生三七

    ○羽生三七君 それじゃ、その前に一問だけ宮澤長官に。  このOECD加盟する目的の第一に、最高の持続的経済成長とそれから雇用の拡大とか生活水準の向上ということがあるわけですが、その場合に、経済高度成長は一応日本としてはもう過度なくらい達成したわけですね。そうすると、あとの雇用の増大や生活水準の向上という問題に今後なるわけですが、この場合、先進国型の国民生活、経済条件に移行する場合、社会保障の拡大とかそれから社会資本、公共投資、まあそういう問題にかなりウエートがかかってくるわけですが、そういうことで単に経済の成長率だけでなしに、現実的に国民生活の水準の向上ということが第一の目的にうたわれて、しかも、第一条に明記されておるわけですから、この条約のそういうことを今後日本がやっていくという場合には、先ほども他の委員から総理だか大蔵大臣にちょっと御質問ありましたけれども、その場合、平均七%前後の成長率を維持していくとして、今度は生活の実態の場合、いま企画庁で御検討になっておる中期計画の場合、そういうものを盛り込んだ今後のこの経済計画というふうに移行していくのかどうか。従来の民間設備投資型のあれはまあ一応頭打ちになっておることはほぼ間違いないけれども、それは過度なのを押えるという程度でなしに、実際問題としていまの先進国型の国民生活形態にほぼ近いような形に中期計画を持っていくのかどうか。それは企画庁の中で生活何局といいましたかね、その局で国民生活のビジョンというものをこの前出しましたね。長官のお考えを述べられてアメリカ型の消費経済でなしに、もっと堅実な西欧型の方向を指向するというお考えを出されたと思いますが、それと関連して、そういうものを重点として中期計画を策定されるのかどうか。単なる高度経済成長の手直しという程度のものなのかどうか。超高度経済成長の手直し、そういうものなのかどうか。その点はどういうお考えで作業を進められておるのか。その点だけひとつ承っておきます。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 羽生委員の仰せられましたような方向で作業を進めております。具体的にはどういうふうにいたしておりますかといいますと、ただいまいろいろな国民経済の諸要素を数式でとりまして、そうして、それのいろいろな組み合わせを電子計算機を通じて計算をいたしますための、もとになりますパターンをつくろうとしておるわけでございます。そのパターンがこれはモデルでございますが、モデルをつくりますときに、三つの制約要因をそのモデルに置こうといたしております。一つ国際収支でございます。これは国際収支のアンバランスがこれ以上越えてはいけないという、これを一つ制約の要因を置こうと思っております。  それからもう一つは、消費者物価を、毎年どの程度以上消費者物価が上がるということは福祉国家のためによくないということで、これをもう一つ制約要因に置こうと思っております。第三の制約要因は、労働の需給関係昭和四十一年をピークに急速に悪くなると思われますので、これを一つ制約要因に置こうと思っております。ただし、最後の制約要因は、これは実数がほとんど把握できますので、これを制約要因に置きませんでも、実数として電子計算機に食わせますと、これは現実にそこで制約になりますから、要因としては数えておりませんが、最初の二つは、つまりいかなる成長もこの諸要素の組み合わせで可能でありますが、それが第一に、国際収支赤字がこの額以上に出てはならないというその天井を一つ設けまして、消費者物価の上がりがこれ以上であってはならないというもう一つの天井を設けまして、その二つの制約のもとに、そのモデルにいろいろな要素を食わせまして、そしてその組み合わせいかんでどの程度の成長が可能であるかという、そういう作業をいたすためのモデルのパターンをいまつくりつつあるわけでございます。で、こういうふうにいたしてまいりますと、今度は、成長という要因はそれらの二つの制約のもとにしか出てこないことになりますので、何%成長すればするほどいいという答えではなく、逆に、それだけの制約のもとに可能な成長はどの程度であるか、こういう答えが出るはずでございます。したがって、そういう方式を通じて、ただいま羽生委員の言われましたような目的を達しよう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  126. 岡田宗司

    岡田宗司君 通産大臣にお伺いいたします。  OECDに入りまして、資本の移動が自由化され、その規約を受諾することになりましたが、外国資本日本に自由に入るということになってまいりますというと、これは今後外国資本日本のある種の産業に支配力を持つようになるという問題が必ず起こってくると思うわけです。現在、石油産業なんか完全に支配されておると言ってもいいような状況でございますが、石油ほどでないにいたしても、他の産業外国資本が何らかの形で入ってくる。そういうことになってまいりますというと、これは将来日本経済にとって重大な問題が起きてくると思います。OECDに入るにあたりまして、留保条項はついておりますけれども、はたしてその留保条項が効果あるものかどうか、ぼくらにはどうもよく判定ができないのですが、まず、通産大臣は、その留保条項で、外資が無制限に入ってきて日本産業影響を及ぼすのを阻止できる、そういうお考えであるかどうか。それから、もしそうだとするならば、この留保条項というものはどういう具体的な働きをするのか、その点の御説明をまずお願いいたしたいと思います。
  127. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  お説のように、OECDに入りました場合に、これが日本産業、特に弱小な中小企業や農業をかかえている日本にとってどういう影響があるかということは、われわれのまず第一に非常に心配をいたしたところであります。そこで、いろいろ研究をいたしました結果、すでに御承知だと思いますが、数項目にわたる留保条項をつけたわけであります。これによって、まず一応そういう問題に関してはチェックはできる。留保条項のついたことについては、これは私は入会の条件といいますか、入会してもこういうことはお断わりしますよという条件がついておるのでありますから、これは、それに触れたことについては、日本は強く主張ができると信じております。一方、そういうような留保条項をつけただけで、はたして日本産業に対して悪影響がないように万全の措置がとれるか、こういうことかと存ずるのでありますが、御案内のように、OECDのこの規約のうちにおきましては、資本自由化に関しまして、その国民経済、当該の国の経済等に悪影響を与える、国際収支とか、経済に大きな悪影響を与える場合においてはこの条項は適用しないでもいいのだ、こういう意味の条文がございます。したがいまして、この条文がございますので、われわれといたしましては、外為、外資の両法によって外資の導入をチェックすることができるわけでございます。この点はどこでも、よその国でもやっているところでありまして、日本においても私はこれはできる。したがって、先般外為、外資法の改正をお願いいたしましたときにも実は御説明申し上げたところでありますが、この法律によって、国内法によってチェックしていく、こういうわけであります。しかし、何でもチェックするか、それはその場合場合に、ほんとうに日本の、たとえば中小企業に非常な悪影響があるとか、農業に対して非常な悪影響があるというようなことはもちろん条件になるわけでありますが、何でもかってにチェックいたしますれば、これはOECDから、それは少しおかしいじゃないかという抗議をもらうことになるのでありますから、十分われわれとしては研究をいたしてやらなければなりません。しかし、ちゃんとそういう条文もございますので、われわれとしては、十分日本産業を保護できるのである、こういう観点に立ってOECD加盟をきめているわけでございます。
  128. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの、それぞれの国の国民経済影響を与える、産業影響を与えるような場合にはチェックできる、そういう条項があるので、そうしてまた、日本の法律、国内法によってチェックできるということでございますが、OECD加盟国においてやはり外資が入って——まあ、かなり具体的には、アメリカ資本が入って、だいぶいろいろ問題を起こしているところもあるわけですが、それらに対して、たとえばフランスなんかでは、どういう方法でその悪い影響を阻止しているのか、これは御研究になっていることと思うのですが、まず、その点と、日本でいま行なおうとすることとちょっと比較して、お答え願いたいのであります。
  129. 福田一

    国務大臣(福田一君) フランスその他の国がどういうふうにしているかということにつきましては、まだ調査がしてないようでございますので、後刻調査をしてからお答えをいたしたいと思いますが、われわれがいままで一般的に聞いているところでは、これはよそもやっているということでありまして、リジェクトした場合がかなりあるように聞いているわけであります。
  130. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはいろいろな例があるのでありますけれども、たとえばクライスラーがフランスのシムカの株を買い占めて、シムカを支配したということで、フランスでだいぶ問題になっておる。あるいはまた、アメリカのレイノルズ・メタルがイギリスのブリティッシュ・アルミニウムを乗っ取ったとか、あるいはアメリカのゼネラル・モータースがドイツのオペルを乗っ取ったとか、いろいろ例がある。そのたびに向こうでも騒いでいる。向こうでも、アメリカ資本が入ってきて、中小企業影響を与えるわけではないが、でかいものを乗っ取ってアメリカ資本の支配下に置くというので騒いでいるわけですけれども、特にフランスあたりは、ドゴールの政策もありましょう、ドゴールのアメリカに対する考え方というものもありましょうが、いずれにしても、アメリカ資本がどんどん入ってきてそういう産業を乗っ取ることに対する問題が起こっているわけです。私はあなたがいま言われたようなことが政策として行なわれるならば、こういうような実例もすでにあるのですから、当然比較御研究になっているものだと思っておったのですが、まあ、なければないで、またあとでお伺いするとしまして、たとえば日本の自動車産業でもそういう脅威を感じている面もあるように思うのです。たとえばフォードの問題もちらほら新聞なんかにも報じられております。あるいはまた、この乗用車の自由化ということも近いでありましょう。そうなった場合に、日本の現在ある乗用車の生産会社が、それぞれいまの勢いで続けていかれるかどうか、これは疑問であります。おそらく、中には競争に敗れてそうして苦境に立つものもありましょう。その際に、たとえばアメリカなりどこかの資本がこれに援助する、あるいはまた、外国資本に飛びついてその援助を請うという問題が起こりまして、日本外国の大きな自動車資本が入ってきて、そうして、日本国内で、外国技術、そうして大きな資本というものをバックにして生産を始めていくと、やはり欧州で自動車産業アメリカの自動車産業に押しまくられていったようになっていくおそれなしとしないのでありますが、それに対して通産大臣はどういうふうにお考えになっているか。将来そういうことの起こることが予想される産業に対して、どういうようにお考えになっているか。
  131. 福田一

    国務大臣(福田一君) 自動車その他いろいろございますが、まず自動車について御質問でございますが、自動車についてはわれわれもそういう問題をいろいろ聞いているのでありますが、自由化をいたします場合にノック・ダウン方式をどうするかということが一つの問題であります。それからもう一つは、フォードのように円ベースでこの組み立て工場といいますか、そういうものをつくるという考え方もあります。しかし、御案内のように、自動車というものは相当なやはり自動車産業は金を必要とするのでありまして、たとえばフォードの場合をちょっと考えてみましても、これが千台とかあるいは月五千台という規模において——まあ少なくとも千台以上、普通は五千台といわれている。五千台のそういう工場をつくるにはどれくらい資金が要るかといいますと、資金だけでも二百億くらい要るだろうと思っております。その場合において、どれだけの円がフォードは持てるかといいますと、私の聞いているところでも、横浜にある土地を売って四十億円くらいの金ができるということを聞いております。その四十億円ではとても足りませんし、そうしますと、資本を導入するということが起こる。それから、そういう場合に、技術の導入ということがこれは当然起こります。技術の導入については留保条件を付しておりますから、われわれは必要があればチェックできます。これは、だから具体的な問題になってきた場合にこれを処理すればいいと実は考えておりますが、そう簡単には外資がいわゆる日本の網をくぐって無条件に入るということはできない。やはりわれわれがよく十分調査した上でなければ入ってこられないのではないかと私たちはそう解釈しておりますし、業界でもそのように見ているようでございます。まあ、これは自動車の例を申し上げたのでありますが、その他の問題につきましても、私たちはこういうようなふうに、よく事業事業あるいは業種業種、産業別にきめのこまかい研究や調査を行ないまして、そうして、日本産業に大きな悪影響がある場合には、これをチェックするというくふうをいたしたいと思っているのであります。  なお、油の問題等もございますが、油などは私たちは入ってきたからそれが必ずしも悪かったとは思っておりません。もし日本の石油業において外国資本が入ってこなかったならば、日本のエネルギー資源の活用はこれほどうまくいかなかったと思うのであります。むしろ、これはある意味においては、これは一部には弊害があっても、大きな意味ではむしろ日本のためになっているのではないか。これだけの何千億という資本を投入しなければならなかった石油精製業というものなどは、とてもいまの日本経済力等々ではなかなかできない面が多かったかと思うのであります。それじゃ、入ってきた外国資本がいかにも横暴なことをしておるかというと、それほど横暴なことはできはしません。また、向こうの外資を出している人たちは、よく私たちのところに社長あたりが来ますけれども、決して日本の行政指導とかそういうものにわれわれは反対するようなことはいたしません、できるだけ日本の国民の利益ということを考えながらやるからひとつよろしくということをいつも言っておりますし、これはおせじかもしれない。自分のシェアをふやすためのおせじかもしれませんけれども、こっちも、実を言うとそれほどばかじゃございませんから、どれくらいのことでやっているか、またどれだけの影響があるかということぐらいは承知しながら聞いておりますが、やはり油の事業などというもの、これは御案内のように商売でありますから、日本の国民感情に悪影響を与え、あるいは日本国民に対して悪感情を与えておいて、そして物をよけい売ろうということはできるものじゃないということは、さすがにやっぱり向こうも心得ておる。だから、あんまり無理なことはなかなかできないのであります。まあ、そういうこともございまして、私はいまのところそれほど弊害を認めておりません。こういうわけでございますが、将来の問題といたしましても、日本産業にそういう大きな悪影響を与えるという場合には、先ほど申し上げたような方法によりまして、これをチェックすることは、OECDに入ったからといってできないものではない、できるのである、こういう考え方でOECD加盟に踏み切っておるわけでございます。
  132. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえばですね、自動車産業の例を申し上げると、自由化される、日本国内の幾つかの会社のうちの一つが競争に負けた、たいへんぐあいが悪くなった。それで、たとえば外国の自動車産業資本を導入する、そうして合弁される形式になる。あるいはまたインパクト・ローン形式になる。いずれにしても向こうから入れて、そして経営に参加させるというようなことも起こる可能性があるのですが、そういうような形で入ってくるものは阻止する方法はないのじゃないですか。
  133. 福田一

    国務大臣(福田一君) 実はその場合に、やはり先ほど申し上げたようなことができるわけでございます。私たちはできると解釈をいたしておるわけでございまして、その場合に、もう非常に事業が困ってきた、じゃ、向こうから外資を入れる。いま仰せになったようなインパクト・ローンで入れるかどっちで入れるかしれませんが、とにかく入れる。株の形式か貸す形式か、いろいろありましょう。あるいは合弁の会社をつくるという形もございましょう。いろいろの形はありましょう。いずれの形で入れるにしても、私たちとしては、それが入ってきた場合に、日本の自動車産業全体にどういう影響を与えるだろうかということをよく見まして、見きわめた上で措置できるということを考えておるわけでございます。
  134. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、技術の導入の問題なんですが、いままでも日本経済成長を急ぐあまり、国内技術の開発もやっておりますけれども、外国から手っとり早く技術を導入するというのが早道である、こういうことでずいぶん技術を導入しております。その数字も私、見たのでございますけれども、その場合に、国内でずいぶん競争して技術を入れる。そのために、たとえばよくアメリカから技術を入れる場合に、他のヨーロッパ諸国アメリカから入れるよりも悪い条件、つまり日本が自身のほうで過当競争で条件を悪くしている。こういうことがあるわけです。日本のほうでも、最近では国内技術開発にもっと力を入れるように、こういうことも言われておりますけれども、なおその実はあがっておらぬ。単にロイアルティーが高いということでなくて、技術を導入する際に、同時に合弁の形式をとって新しい会社ができた。あるいは技術導入ということが経営権への参加の問題とからんできたりしておるわけです。それが度を過ぎてまいりますというと、やはり日本資本外国資本の傘下に置かれて、そうしてそれから大きな影響を受けるということになるのですが、この技術の導入のしかたというのも、今後いよいよ自由化されてきますというと多くなって、最もコントロールがむずかしくなるのですが、それに対する方針ですね。どういうふうに今後進められてまいりますか。
  135. 福田一

    国務大臣(福田一君) 技術導入につきましては、先ほど申し上げました留保条項の中に、導入については留保をいたしております、技術の場合に。お説のとおりでございまして、実はいままでの日本技術の導入のしかたというのは少しでたらめな面が若干あった。たとえば一つ技術、ポリプロピレンの場合には十二社でやって、大量生産でどうにも動きがとれないという非常にばかげたことがございました。これ自体は業界に反省を与えましたが、いわゆる行政関係——われわれのほうでもこういうことはいかぬということで、実は以来自粛をいたしておりまして、そういうことのないように心がけておるわけであります。したがって、そういう技術導入をいたします場合には、いわゆる過当競争にならないようにするということを今日では一つの大きな要件として考えておるわけでございますが、OECD加盟した後におきましても、留保がつけてあるのでありまして、それについては制限をつけることができるわけでありますから、いま申し上げましたような立場において、過当競争になりあるいは非常にマイナスを起こすような場合においてはこれをチェックするようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  136. 岡田宗司

    岡田宗司君 この技術指導の問題について、いまのような方針でいくといたしましても、なおかつ、いろんな問題が起こるだろうと思うのですが、たとえば、こういう問題もあると思うのです。外国から技術を導入するといろいろな条件がつくのです。たとえば、ある種の技術を導入して日本でそれをつくる。そうすると、そこで生産されたものを中国へ売っちゃいかぬ、あるいはアジアのどこの方面に売っちゃいかぬ、あるいはヨーロッパへ売っちゃいけないとか、いろんな制限のついているのが非常に多いのですが、ああいうことは、どうもヨーロッパアメリカから入れた技術導入の場合にはあまりついていない。日本の場合にはそれがだいぶついているのだろうと思いますが、こういうような制限といいますか、それらに対してはどういうお考えを持っておりますか。私はどうも不当に思うのですが、その点今後どうするのか。
  137. 福田一

    国務大臣(福田一君) 実はそういうような問題でございますが、技術を導入いたしますことによって製品の輸入をチェックできるという場合もございます。ただし、それには制限がついておる。東南アジアに出してはいかぬとか、あるいはよその国に売っちゃいかぬという制限がつく場合もありますが、そういう場合におきましても、製品を輸入するよりはその技術を導入してロイアルティーを払っても、それをつくったほうが日本のためになるというような場合においてはこれを認める例がございます。なお、こういうことは、外国から物が入ってくる場合でなく、日本から出ていく場合においても、実はこっちが制限をつけたりしておるものもございまして、たとえば味の素みたいなものについてはそういうことをいたしております。だから、必ずしも外国だけがそうやっておるわけでございませんが、しかし、われわれといたしましては、いま申し上げたように、あまりロイアルティーが高いということであれば、もう少し考えたらどうかということでもっていろいろ指導いたしまして、二〇%なり三〇%まけさしてから入れさせているという例も多々あるのでありまして、そうでなければチェックしておくというような、しばらくとめておくというようなことをやってみたりいたしまして、とにかく日本にあんまり損にならぬようにという方法でできるだけ指導もいたしてきておりますので、技術導入の問題については、お説のような趣旨を体して、日本経済にふためにならないように、できるだけ措置をいたしてまいりたいと思います。
  138. 岡田宗司

    岡田宗司君 いままで向こうから入れましたもののロイアルティーなんかだいぶ高いのですけれども、これはある期限が来れば、そのロイアルティーの改定なんかも行なわれるわけでしょう。そういう場合に、政府としてはそれを低めていくというように指導していくのかどうか。それからまた、新しい技術の導入の際には、これは届け出制というのですか、でなくて、やはり一々通産省なり何なりの許可を要するのかどうか。許可でないというと、やはりあなたの言われたようなチェックが十分でないと思うのですが、そこいらはどうなっておるのですか。
  139. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 技術導入は外資法によりまして全部認可制度になっております。
  140. 岡田宗司

    岡田宗司君 その認可ということについては、どういうような要件があるのですか。
  141. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 技術の内容が優秀であるかどうか、そして、技術を導入して企業化することが国民経済的に弊害がないかどうか、あるいは積極的に寄与するかどうかというような角度から見ておるわけでございます。また、その契約によりますいろいろな条項が適正であるかどうか。それから、ロイアルティーが妥当なものであるかどうかというような点を審査しております。
  142. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、認可制ですと、いま言ったように、いけないという場合もかなり出てくるわけですが、昨年そういう技術導入の認可を求めた数はどのくらい、それから、許可をしたのはどのくらい——つまり認可をしたのはどのくらいあるのか、断わったのはどのくらいあるのか、それをちょっと。
  143. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 正確な数字はございませんが、認可件数は、昨年四月から十二月までの数字が七百九十件でございます。不認可の件数はございませんが、大体事前に指導いたしまして不適当なものは取り下げるという措置をとっておりまして、その件数は相当ございます、手元に数字はございませんが。
  144. 岡田宗司

    岡田宗司君 とすると、その倍も三倍もあるわけですか。
  145. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) いいえ、そんなにたくさんございません。
  146. 岡田宗司

    岡田宗司君 今後、いま通産大臣の言われたような方針でいくということになりますというと、逆に今度、国内における技術の開発ということを促進しなければならぬということにもなろうと思うのですが、これに対して政府としては、どういう措置をおとりになっておるか。積極的な措置をおとりになるのだと思うのですが、その点についての御説明を伺いたいと思います。
  147. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおりでございまして、この技術開発ということは非常に大事な問題になってくるわけであります。私たちとしては、そのロイアルティーをむやみに払うものであれば、むしろそういう金を事前に投入して技術開発をすることのほうがよほど大きくプラスするわけでありますから、今後そういう面に努力をいたしたいと考えておりますが、私の見るところでは、どうも日本というのはセクショナリズムがございまして、各大学がそういう調査機関を持ったり各研究機関が持って、各会社がそれぞれ自分で金をつかっているというようないささか弊害があるように見受けるのであります。いずれにいたしましても、政府としてこれを大きく強く行政指導をし、あるいは予算措置をとるということは、今後の課題であると思うのでありまして、実は私はこの二年の間やっておりまして、あんまりその問題に十分な施策ができなかったことは心中いささかじくじたるものがあるのでありますが、それにはあまりにもなすべきことが多いものですから、そこまで手がつかなかったという面もありますが、私は、それは今後の一つの大きな日本としての課題ではなかろうかと、かように考えておるわけであります。
  148. 岡田宗司

    岡田宗司君 その点は政府としても積極的にやっていただかなければならぬ問題だと思いますけれども、一面において、これはやはり日本の企業者のほうが非常に安易な考え方を持っておる、全体を考えないということで。私は、いまのままで行くと、やはり政府のほうで幾ら慎重にかまえておっても、だんだん輸入して使う件数が多くなって、ロイアルティーを払う量もふえていくわけですから、これは国際収支のほうにも、だんだんに大きな数字になっていくので、十分に慎重に考えていただいて、全体の経済の今後の発展の上から見てもマイナスにならないように、ひとつそこいらが転機でありましょうから、画期的な方法をとって、日本技術の開発という面にもっと積極的に、そして同時に、日本の、いまあなたの指摘されましたように、個々ばらばらでお互いに競争しながらやっているむだを排除して、集中的にやるという点にひとつ積極的な方策を講じていただきたいと思うわけであります。
  149. 曾禰益

    ○曾祢益君 通産大臣に質問さしていただきたいと思います。  いま岡田委員が触れられた点なんですけれども、OECD加盟によって少なくとも資本の取引が自由になるというたてまえになるので、中小企業もそうですけれども、大企業でも非常に戦略的なあるいはセンシチブな産業においてはかなり問題があると思うのですね。その場合に、自動車の例が出ましたが、ノック・ダウンでやる場合もあるし、いまの通産大臣のお話では、それにしても相当な資金を要する。あるいは円資金でやるといっても、なかなかそれだけの資金が必ずしも日本にないだろうというお話でありましたが、ただ問題は、直接投資の場合、それから、そうでない、市場で株式を買い取る場合、いろいろな場合があると思うので、確かに岡田君の言われたように、ヨーロッパの実例を見ても、かなりその国の超一流のマークはわりあいにアメリカも入り込む余地がないけれども、一流の下くらいのマークの自動車がねらわれて、もうすでにアメリカ資本になっているケースが非常に多いわけです。そういうようなノック・ダウンの場合、それから株式の買い取りの場合、いろいろの場合があると思うのですね。そういうのに対して、いま通産大臣が言われたような、一般的の免責条項だけでは済まないと思うのですね。今度のOECD加盟における現実にもうすでに日本留保している条項から見て、それがそういう心配がないのかどうか。そこら辺の御説明をもう少し願いたいのです。
  150. 福田一

    国務大臣(福田一君) 先ほども岡田委員の御質問にお答えをいたしたのでありますが、そういう場合に、いわゆる株式の取得というようなことになれば、これも一つのチェックの方法がございます。ローンの場合もあります。いずれの場合におきましても、われわれはチェックする方途をちゃんと考えて、考えた上で実は申し上げておるわけで、これは、私はどうもしろうとでありますから、私が申し上げるよりは、うちの政府委員に申し述べさせたほうがいいかと思うのでございますが、われわれとしては、そういうこまかい場合も考慮しつつこれはやっていく、こういうつもりでおるわけであります。
  151. 曾禰益

    ○曾祢益君 その政府委員の説明を聞きますが、たださっきのお話だと、何でも免責条項でいわゆる伝家の宝刀を発揮すればいい。そういうことになれば、これは何のための資本取引自由化かわからないことになる。そうではなくて、ある種の条項についてはだから留保しているんだ。株式直接投資の場合はこうだ。あるいは市場における株の買い占めについてはパーセンテージから、ここまで以下は許可制にするとか、それぞれの何があって、いきなり伝家の宝刀でそのエスケープ・クローズを一々発揮していたのでは、これは今後OECDに入って直ちに被告席にすわらなければならぬ。そうではないと思うんです。その点はどうなんですか。
  152. 福田一

    国務大臣(福田一君) そのやり方の問題は政府委員ですが、その理由は、やはり先ほど申し上げたように、たとえば自動車産業には下請の中小企業もくっついております。その下請にどういう影響を与えるか。また、日本中小企業問題にどれだけの影響を与えるかという根拠がなければ、何でもかんでも条件をつけてチェックするというわけにはいかないと思っております。
  153. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 外資の問題は、外資法と外国為替管理法と二本立てで調整をしております。株式の取得、それから技術の導入、それからローン、そういったものが外資法の対象となっております。直接投資は株式の取得でございますので、外資法の第十一条の二に入るわけでございます。それから、間接投資は、これはやはり十一条の二にございますが、一社当たりの累積の外国人の株式取得の総額が一五%、それから、一人当たり五%ということで、一応現在はそれ以上は規制をする。それ以下は自動的に認可をするという取り扱いをしております。それから、支店あるいは支社等が外国から資金を受領する場合の資金の移動、あるいは技術の移転、そういったものが外国為替管理法の規制の対象になっております。法制的には現在そういうふうになっております。
  154. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは、国内法から見るとむろんそうだと思うんです。その前にOECDのほうから見た——OECDの今度の加盟で、どこでどういうふうに留保しているか。その根拠を示していただきたい。国際的なほうの面からまず説明して、それで日本の法律の根拠を示していただきたいのであります。
  155. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 留保条項の中で、貿易外取引につきましては、円ベースの事業活動から生ずる利潤、これは従来昨年までは外国為替管理法対象外であったので、これを……。
  156. 曾禰益

    ○曾祢益君 円ベースはあまり問題にしていない。これから起こるやつ。かつて日本に集中してきたやつはあまり問題にならぬのですから、これから起こるやつ。外務省でもいいですよ。どういう認識でどういうふうに留保をされているのか。はっきり説明してもらいたい。
  157. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 直接投資は資本移動の自由化のコードにただし書きがございまして、その運用でやるということになっております。
  158. 曾禰益

    ○曾祢益君 文献をはっきり言ってください。附属書Aの何とというようにはっきり言ってくれなければわかりゃしない。
  159. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 附属書Aの資本移動の一覧表の第一表の……。
  160. 曾禰益

    ○曾祢益君 附表のほうですか。
  161. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 百二十九ページでございます。百二十九ページの下の欄の左でございますが、摘要のところに、「当該加盟国が、例外的状況に照らし当該取引を自国の利益に有害なものと認定しない限り、承認される。その認定の主たる基準は、当該取引の財政金融上及び経済上の長期的な影響とする。ただし、短期的な影響についての考慮は、必ずしも排除されない。」、この例外条項の援用で受けるわけでございます。
  162. 曾禰益

    ○曾祢益君 むしろこれは、例外的状況に照らして有害でない限りは承認される、つまり、事由化の原則を出しているわけでしょう。例外というものはそう個々にある日本の自動車産業に直接投資されては困るからというので例外条項だということじゃいかぬでしょう。日本の国益が侵されるというのが相当広範な場合でなければ、そう例外でやったら、これはOECDの精神に反するんじゃないですか。
  163. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいまお尋ねの点でございますが、OECD加盟のための打ち合わせをOECD当局といたしましたときに、現在日本が行なっております資本導入に関する現在のやり方をよく説明をいたしました。それから、OECDのほうでは、OECDの現在の規約から見て、はたして留保を要するかどうかという立場から検討をしてもらいました。その結果、直接投資につきましては、ただいまお読みいたしましたこの「OECDの手引き」の百二十九ページにございます附属書Aの「資本移動の一覧表」、その1の「長期の直接投資のための対内及び対外資本移動」というのの摘要に、いま申し上げましたような摘要が書いてございます。そして、これは抽象的な文章でございますが、言っておりますのは、例外的な場合に自国の利益に有害なものと認定しない限りは承認される。逆に言いますと、有害な場合は承認しなくてよろしい、こういう規定がございます。その基準がまた抽象的でございますが、「当該取引の財政金融上及び経済上の長期的な影響とする。」、しかし、また同時に、短期的な影響についての考慮も排除しない、こういう規定もございまして、この読み方はOECDのほうの規定によりましても非常に抽象的であって、はたしてこれがどういう意味を持っているのか、よくまだわからない、なお今後検討をすべきであるけれども、現在すでにOECD加盟をしております国が、日本よりももっときびしい規制をしておって、しかもなお、何ら留保していないという実績からかんがみまして、日本の現在の態勢を維持する上において特別な留保は必要ない、こういう判定を受けたわけでございます。したがいまして、この直接投資につきましては、留保しないで現在の資本導入の規制を続けてよろしい。こういう判定をされておる次第でございます。  それから、市場経由の株式につきましては、やはり留保が必要でございます。それによりまして九十七ページの上段の中央の辺にございますが、VI/7というのがございまして、「他の加盟国の居住者が行なう国内市場における内国証券の購入」という項目で、こちらの留保いたしましたのは、「留保は、証券の購入のうち次のものをこえる部分についてのみ、適用される。」。(i)は「一の会社の発行済み株式の総数の一〇又は一五%」、これは事業の種類によりまして、いわゆる制限業種はきつく押えるという趣旨でございます。それから(ii)は、「投資家一人当り一の会社の発行済み株式の総数の五%」、こういうことになっております。
  164. 曾禰益

    ○曾祢益君 通産大臣お急ぎのようですから、最後に、まあ、大体わかりますが、直接投資とは何かということもまだ必ずしもはっきりしていないと思うのです。だが、まじめな直接投資をそうこわがったり、あまり排他的でないほうがいいと思うのだが、だから、どれが非常に例外の伝家の宝刀であるかということは、やってみないとわからないけれども、ただ、日本の自動車産業のごときは、確かにヨーロッパにおける例から見て、これは証券市場を経由して来る場合は第二のケースでわりあいに押えやすいわけです。しかし、伝家の宝刀をふるわなければならないような直接投資の場合は、なかなかデリケートな問題があると思うけれども、そういう場合は、日本のこれから伸びいく産業を保護するためには、要すれば、伝家の宝刀をふるえる。それは特別に留保しておかなくても、ここのいまの百二十九ページのこれでいけるというわけですかどうですか、通産大臣
  165. 福田一

    国務大臣(福田一君) さように心得ておるわけであります。
  166. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣、それでいいんですか。
  167. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 同様に心得ております。
  168. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも話がうま過ぎるようで。通産大臣がお急ぎのようですから、あとは外務大臣と。通産大臣はきょうはかんべんしてあげましょう。
  169. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 本日は、これをもって散会いたします。  なお次回は、明二十四日午前十時より開会いたします。    午後四時六分散会