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1964-05-22 第46回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十二日(金曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 愛知 揆一君 理事 安藤  覺君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 森山 欽司君 理事 河野  密君    理事 多賀谷真稔君 理事 野原  覺君       稻葉  修君    小笠 公韶君       亀山 孝一君    渡海元三郎君       長谷川 峻君    濱田 幸雄君       有馬 輝武君    大出  俊君       小林  進君    田口 誠治君       安井 吉典君    山田 耻目君       栗山 礼行君    吉川 兼光君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  吉國 一郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (管理局長)  小林  巖君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         林野庁長官   田中 重五君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働事務官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁職員部         長)      森   博君         通商産業事務官         (軽工業局アル         コール事業部         長)      今村  曻君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君     ――――――――――――― 五月十九日  ILO条約第八十七号の批准並びにこれに伴う  国内関係法早期改正に関する請願(唐澤俊樹  君紹介)(第三七六九号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八二四号)  同(松平忠久紹介)(第三八二五号)  同(小川平二紹介)(第三九四〇号)  同(下平正一紹介)(第三九四一号)  同(中澤茂一紹介)(第三九四二号)  同(原茂紹介)(第三九七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)      ――――◇―――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案、及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件一括議題として審議を続行いたします。有馬輝武君。  このままちょっと休憩いたします。    午前十時四十一分休憩      ――――◇―――――    午前十時五十八分開議
  3. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  有馬輝武君。
  4. 有馬輝武

    有馬委員 最初に官房長官にお伺いをいたしたいと存じます。  その内容は、四・一七の解決一つの緒になりました池田太田会談経緯についてであります。公労委仲裁委員会が十九日提示しました裁定に関連いたしましてお伺いをいたします。少なくとも仲裁裁定内容は、池田太田会談の確約を官房長官よく御承知のとおりでありますが、検討してまいりますと、その会談経緯を全然考慮しなかった、内容を無視したというふうにしか受け取れないのであります。生産性上昇物価上昇にも追いつけないような、ああいった結論が出たという点について、私たちはこれは仲裁委員会にまかせられた問題であるということで簡単に片づけられない問題を含んでおると思うのであります。  仲裁委員会は、その裁定主文の中で「本年の民間産業における賃金引上げ状況については、最近までの傾向をみると、定期昇給を含めておおむね基準内賃金の二%ないし一三%程度が大勢となっていると認められる。」このようにしるしておりますが、しかしそのあとですぐ引き続いて、「当委員会としては、定期昇給を含めれば本企業体の今回の賃金改定民間賃金引上げ状況におおむね見合うように考慮した。」これは国鉄の一例でありまするけれども、前の民間給与を参照したと言いながらもこのような結論が引き出されてくる、ここに問題があろうと思うのであります。少なくとも池田太田会談公企体職員賃金民間の水準に積極的に接近させるという了解があったあとの案としてはきわめて不当ではないかと思うのであります。この点についてまず官房長官の御見解伺いたいと思うのであります。少なくとも池田太田会談経緯については十二分に御承知のはずでありますので、この点については明確にしていただきたいと思います。  次に、公企体労働者は現在スト権がないのでありまするから、少なくとも物価上昇の六・六%と経済成長率八・二%を加えました一四・八%を賃上げ最低とすべきではないか、私はこのように考えておるのであります。官房長官は本委員会におきまして、しばしば仲裁委員会が妥当な結論を出せるように十分な資料を提出してある、政府考え方も述べてある、このような言明をされたのであります。そうして仲裁委員会はそれらを受けまして「公共企業体等職員賃金決定するに当って重要な条件である消費者物価民間賃金及び国家公務員給与動向等について以下のような慎重な検討を行なった結果、今回の賃金改定は、主文第一項のとおり行なうことが適当であると判断した。」ここにもまた一つの飛躍があると思うのであります。そういたしますと、この経緯を見てまいりますと、政府が出しました資料の中に作為的なものがあったんではないかという疑問さえ免じてまいるのであります。ですから、全電通をはじめといたしまして、専売その他すべての組合が今回の裁定に対して大きな不満を表明しておることは御承知のとおりであります。四・一七におきまして、各公企体組合総評がほんとうに真摯な態度で、しかも整然たる態度でおとなの解決を見出そうとし、その前提に、やはり池田太田会談結論が期待されるその大きな前提があったと思うのであります。にもかかわらず、このような事態を引き起こすといたしますと、やはり八十七号条約をはじめとしまして、各種の条約、勧告、こういったものに即応する労使間の関係というものを日本において確立するそのためには、やはりそういった今回のような結論が出てくるということになれば、本線に帰らざるを得ないんじゃないか、これが当然の結論だろうと思うのであります。こういう点についてまず官房長官の御見解伺いたいと思います。要点は、池田太田会談結論というものがどのように反映されておるか、作為的なものがあったんじゃないか、こういう結論が出てくるとするならば、やはり基本的に問題を考え直す必要があるんじゃないか、このことであります。
  5. 黒金泰美

    黒金政府委員 四月の十六日に池田総理太田議長とお目にかかりました。そのときにお話し合いがありましたことは、しばしば申し上げておりますように、公共企業民間賃金格差公労委賃金問題を処理するにあたって当然に考慮すべき法律上の義務であります。そこで公労委における調停等の場を通じまして労使ともにこの是正に努力いたしたいと、私ども関係の各大臣を通じ各理事者側から調停の場におきまして、おのおの使用者側考えております点を数字等について克明にお話し申し上げたのであります。ただ残念なことに調停が成立しませんで、仲裁裁定に回りまして、このほど仲裁裁定が出たような次第でございます。この仲裁裁定におきましても、全消費者物価上昇関係、あるいは民間企業との賃金の問題、あるいはことしの民間におきます賃上げ状況経済状況の見通し等々を見て、そうして妥当な結論をお出しになったことと考えておりますので、やはり総理太田さんとの間で話し合いがありましたように、公労委決定はこれを尊重する、私どもは今回の仲裁裁定を尊重いたしましてこれを実施してまいる考えでおります。
  6. 有馬輝武

    有馬委員 私がお尋ねいたしておりますのは、四・一七のあの事態解決するために池田太田会談というものが持たれた。ただ仲裁委員会にまかせるということであるならばああいった会談の必要もなかったろうし、また意義もなかったろうと思うのであります。やはりそこにそれを乗り越えた一つのニュアンスというものが生まれてくる。お互い責任があったと思うのであります。  ところが、ただいまも申し上げましたように、各公企体においては大きな不満を表明している。当然そこら辺については、消費者物価なり何なりの上昇、あるいは民間給与との格差、そういったものについてすべての配慮が行なわれて、自後の事態についても予測すべきことは予測して、一つ話し合いが持たれなければならなかったはずですし、当然そういった形で持たれたと思うのであります。ところが、出た結論に対して、それは仲裁委員会が出したものでありますからというようなことでは片づけられない責任があったと思うのでありますが、この点についていま一度お聞かせいただきたいと思います。
  7. 黒金泰美

    黒金政府委員 公労委決定につきましては尊重いたしたい。したがいまして、その決定に対する批判がましいことは避けたいと思いますが、私どもといたしましては、総理太田議長とのお話し合いのとおりに、調停の揚におきまして終始一生懸命にいろいろな資料を持ち寄りまして、お約束をいたしておった民間給与との間の権衡、そういう問題を論議するために努力を続けておった次第であります。
  8. 有馬輝武

    有馬委員 そういたしますと、いまみたいな公企体動向に対して責任はないとおっしゃるのですか。
  9. 黒金泰美

    黒金政府委員 御趣旨がちょっとわかりませんけれども……。
  10. 有馬輝武

    有馬委員 私が先ほどから申し上げておりますのは、当然四・一七のあの事態解決するためには、労働組合の要求というものについても、またそれをめぐる諸般の情勢についても十分な検討が加えられ、そうしてそれをおさめるための条件といいますか、最低条件というものが整えられるような配慮というものが政府としては必要であったし、その裏打ちがあって池田太田会談というものが行なわれたんじゃないか。具体的な額の問題については、もとより官房長官が言われるように、仲裁委員会にゆだねられた問題でありますけれども、その大きな配慮というものが必要だったんじゃないか、それに欠けるところがあったんじゃないか、このことを申し上げておるわけです。
  11. 黒金泰美

    黒金政府委員 先ほども申し上げましたように、民間給与との格差等の問題、これは公労委でもって十分に御審議願うべきものでありますから、われわれも使用者側である国鉄総裁以下の方々にその点を十分に御努力願ったつもりでございます。ただ残念なことには調停ができませんで、仲裁裁定になったような次第で、これはやはりこのほどの池田総理太田議長との話し合いにも、公労委決定は尊重する。これはお互いに尊重するという意味だと存じます。私どもはそういう趣旨でこれを尊重いたしまして、完全に実施していく覚悟でございます。
  12. 有馬輝武

    有馬委員 いまの経緯を見ましても、私は、公労委が公平な第三者機関としての機能を十二分に発揮し得ない状態があるのではないか。こういったことを繰り返しておりますと、むしろ健全な意味での労使関係を樹立する、こういうことに障害になっていく。そういった立場から私は、公労委性格というものを抜本的に改めて中労委的な機構に持っていくことが必要ではないか、このように考えるのでありますが、この点については官房長官労働大臣のほうから御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の賃金紛争を通じまして、三公社現業賃金問題に対して、労働組合との間で団体交渉を行ないまするこの団体交渉のやり方なり、またその限界というものが非常に問題になりまして、幸いにいたしまして、従来からいわゆる団体交渉当事者能力が三公社現業については欠けておるじゃないかといわれておりました問題が一般の注意を喚起いたしまして、したがいまして、これにつきましては今後政府といたしましても根本的に検討いたしまして、団体交渉の実態に即応するような制度考えていきたいということに相なっておるわけでございます。つきましては、この改善に関連いたしまして公労委のあり方につきましても、将来あるいは検討を要する点が付随的に出てくる場合もあるかと存じますが、これら全面にわたりまして政府といたしましてはこの機会十分検討をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  14. 有馬輝武

    有馬委員 いま大橋労働大臣から御答弁がありましたように、この仲裁委性格なり、また各企業体当事者能力、こういう問題が根本的に一つの方向が見出されて初めて私は八十七号条約批准に伴うところの国内法改正、そういう手続になってくるのがオーソドックスな姿ではないかと思うのでありますが、この点についてあと先になっておるのではないか、私はこう考えるのでありますが、いま一度労働大臣の御答弁を願いたいと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 八十七号条約はいわゆる結社の自由に関する問題でございまして、団体交渉の問題とは必ずしも同じに考えるべきものではないと思うのでございます。このたびのILO八十七号条約批准に伴いましては、特に公労法におきましては結社の自由に直接関係ありまする公労法第四条三項の改正、並びに労使相互不介入の趣旨をもっていたしまする在籍専従の廃止の問題、これらの点を取り上げて、この機会にこれはILO八十七号条約と不可分の問題として政府としては考えておるわけでございまして、公企体当事者能力の問題なりそれに関連しての公労委の今後の検討という問題は一応切り離して考えてまいりたいと思っております。
  16. 有馬輝武

    有馬委員 これはあとで、午後になるかと思いますが、お伺いしたいと思っていたところであります。と言いますのは、八十七号条約とたとえば九十八号条約との関連等について、私は政府条約の受け取り方という点に問題があるのじゃないか、このように考えておるわけでございます。この点についてあとでまた詳しくお伺いしたいと思うのであります。  引き続いて官房長官にお伺いしたいと存じますことは、今度の仲裁裁定に関連いたしまして私は当然予算的な措置が必要であろうと存じます。昨日の自社両党の国会対策委員長会談で、来週予算委員会を持つというような話し合いが行なわれておると伝、えられておりまするが、この予算委員会政府としては、どのような態度で臨もうとしておられるか、この点についてお聞かせいただきたいと存じます。
  17. 黒金泰美

    黒金政府委員 このほど仲裁裁定が出ましてから、これを尊重し完全実施するについてどれくらいの財源が要るかということを検討しておりましたところ、おおむね総額で五百十五億程度、一番大口の国鉄で二百六十億台、これくらいと大体推算ができます。そこで国鉄当局なりあるいは電電当局なり、各当局と大蔵省でいろいろ折衝いたしました結果、移用、流用等によりまして、補正予算を伴わずに現在の資金また予算の範囲でこれが実施できる、こういう結論を得まして、政府としましては今回の完全実施にあたりましては公労法第十六条の規定による御承認も仰がず、また同時に補正予算も提出いたさない、こういう考えであります。
  18. 有馬輝武

    有馬委員 これは非常に重要な御発言でありまして、補正予算を提出しない、大体の試算で五百十五億にのぼると思われるものを補正予算も組まないで措置できると考えていらっしゃるのですか。本年度の予算というものはそのようにずざんなものだったのですか。
  19. 黒金泰美

    黒金政府委員 どうもそのずさん論になりますと、私がお答えするより大蔵大臣をお呼びになっていただいたほうが正確を期せるかと思うのでありますが、何とかやりくりがつきましょうということでもって、今回は補正予算を組まずにやりくりをしてまいる考えでおります。
  20. 有馬輝武

    有馬委員 この問題については、大蔵大臣もいまお見えでありませんから深く立ち入りませんけれども官房長官のいまの御発言は非常に重大でありますので、予算委員会なりあるいはその他の機会を通じまして党としての考え方も明瞭にしてまいりたい、このように存じます。  次に、毛利外務政務次官にお伺いをしたいと存じます。  ILOの対日調査調停二人委員会がずっと会合を開きまして、今度の十一日から開かれました第一回会合で、総評、日教組、国際自由労連などからILOに出されております日本結社の自由が侵されておるとするその訴え、これに対する政府側意見表明、これまでの理事会における審議の経過と決定など膨大な資料に取っ組んで検討を進めておるということが伝えられております。そして三人委員会は九月の上旬に証人喚問をする意図のようでありますが、その節、政府代表としては当然閣僚級の人物を喚問する、送るということになっておりますけれども、八十七号条約批准がおくれた経緯をどのように説明されようとしておるのか。これが第一点。  それから、証人喚問には政府労組側とも責任ある高い地位の人、政府側でいいますと運輸、文部自治郵政労働などの各閣僚もしくはその代理がつとまる者というふうに言っておるようでありますが、だれを派遣して、またどのような準備をしようとしておられるのか。この点についてお聞かせいただきたいと存じます。
  21. 毛利松平

    毛利政府委員 お答えいたします。  ILO当局は、国会を含めて日本の政治に関与しないというたてまえをとっております。この件についてはときおり言明をしておりますが、ただし、国会審議等々の問題について非常な関心を持っておりますので、詳細にわたって青木大使を通じて報告をし連絡をとっておりますので、十分状況は存じておると思います。したがって、そういう詳細な間断なき報告によって了解を得ていると解釈しております。  次に、代表の問題でありますが、すでに御存じのように、労働大臣またはその代理、あるいは法務大臣検事総長またはその代理郵政大臣またはその代理文部大臣またはその代理、愛媛県教育委員長またはその代理国鉄総裁またはその代理公労委会長またはその代理政府責任者と書いて要望されておりますが、その代理という意味は、大臣にかわって責任ある答弁のできる者というように解釈しております。したがって、代理者局長でも差しつかえないものと考えております。八月一日までに委員長をきめて報告をしなければならないのでありますが、その委員長によってその代理者決定されることになっております。
  22. 有馬輝武

    有馬委員 次に、外務政務次官にお伺いしたいと思います。  OECDに正式に加盟したことによりましてわが国の政府はこれに大きな義務を負うことになりますし、また、経済自体大きな影響を受けてくることになるのでありますが、特に労働面でもやはりかなりの意義を持ってくると存じます。それで、このOECD加盟するにあたりまして、関係委員会への参加、また関係国際文書の受諾、それからTUACへの参加、このような問題が起ってくると思うのであります。特に私は、OECD加盟するにあたりまして労働条件というもの、国際規範に即応する労働条件の整備というものが必要ではなかったかと思うのであります。ここら辺について、加盟にあたって外務省として日本国内情勢の把握をどのようにしておられるか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  23. 毛利松平

    毛利政府委員 開放経済にあたって、諸問題に日本参加して義務を負い、あるいは発言の場を持つというこの際、このILOに対しても、国内情勢その他困難な問題もありますけれども十分慎重審議の上すみやかにこれを通してもらいたい、こういう外務省としては見解を持っております。
  24. 有馬輝武

    有馬委員 私がお尋ねしているのは、そういった条件が整えられることがOECD加盟前提条件ではなかったか、このようにお尋ねしているわけであります。
  25. 毛利松平

    毛利政府委員 前提条件というよりも、可能な限り国際社会信用を増すというたてまえで、整備すべきものは整備すべきだという見解であります。
  26. 有馬輝武

    有馬委員 これは外務委員会でもわが党の平岡委員が指摘しておったのでありますが、切符なしで汽車に乗ったり、あるいは劇場へ入ったりする態度がいまの毛利次官答弁の中からちかがえるのでありまして、すべてものごとをあとさきにするところから日本国際信用を失う、こういう点が出てくるではないかと思うのであります。この点についてはまた外務大臣がお見えになりましたときに詳しくお尋ねをいたしたいと思います。  次に、労働大臣にお伺いしたいと存じますことは、労働省の統計調査部で最近「一九六二-六三年度の海外労働情勢」というものをまとめておられるようであります。その結論としまして、各国所得政策に強い関心を注いで、労働長期経済計画の柱としてかなり大きな比重役割りを与えていることが報じられております。特に現在各国考えられている所得政策の型として、オランダで見られるような賛金政策的な色彩の強いもの、米国、ドイツに代表されるガイダンスによる説得を中心とするもの、英国のようにガイダンスを実効あるものにする多角的な措置をしているもの、この三つに大別されるようであります。現在のところでは所得政策完全雇用とインフレなき経済の拡大にとって望ましいものとされながらも、各国ともそれにどの程度比重役割りを与えるべきかというようなこと、あるいはその進め方などについてとまどっておるというようなこともこの「労働情勢」の中で取り上げられているようであります。この中で、特に私どもは、所得政策と並んで労働経済の諸問題が経済成長の大きなかぎとなった。これらの諸問題は独立しては解決できない。この認識の上に立ちまして、長期経済計画は、単なる予測的なものから政策プログラム的なもの、すでに実施中のものまで幾つかの段階がありますが、共通して見られる特徴として、この「労働情勢」の中でも、その性格経済成長政策と密着した長期的労働力需給予測、こういうものを前提に努力されておる。さらにその計画の達成のためには、労使、国民の理解と協力を得ることが先決であって、そういう反省が高まってきておることも伝えられておるのであります。  こういう前提に立ちまして私が労働大臣にお伺いしたいと存じますことは、この各国の意欲的な取り組みというものが池田内閣経済成長政策高度成長政策の中でどのようにとらえられておるか、こういうことであります。少なくとも労使の納得を得る一つ最低規範というもの、そういったものが前提とならなければならぬと思うのでありますが、この点について、閣僚の一人として、高度成長政策の中でこの問題がどのように把握されておったか、この点をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 西欧の主要諸国におきましては、御承知のとおり、労働力の不足が続いております。EEC諸国を中心といたしまして、賃金及び物価の上昇が見られておるのであります。そこで各国といたしましては、御指摘のように、完全雇用とインフレなき経済拡大ということをはかりますことをねらいといたしまして、長期経済計画を積極的にとりつつあり、イギリス、オランダ等におきましてはいわゆる所得政策実施されておるのでございますが、しかしこの点は成り行き必ずしも順調とは申しがたいようでございます。日本労働経済も、経済成長の過程におきまして雇用が大幅に増大を示しつつあり、若年齢層、技能労働者の不足が目立ってきておるのでございますが、他方、地域別、年齢別等において労働力需給のアンバランスが見られておるのでございまして、ヨーロッパ諸国の絶対的不足とは、日本のいわゆる労働力不足はやや性格を異にいたしておるように見受けられるのであります。  また、賃金につきましても、三十六年以降毎年一〇%をこえる上昇を示しておるのでございまして、その過程におきまして、これまで比較的賃金の低かった中小企業などの労働賃金が顕著に改善され、これらの賃金格差は縮小を示しておる状況でございます。しかしこれらの賃金格差は、西欧に比べますると、まだかなり大きく残っておりまして、わが国では賃金構造の改善を今後さらに進めていかなければならないという点におきまして、西欧諸国とは事情を根本的に異にいたしておる点を認めなければならぬのであります。  なお、生産性賃金関係につきましても、これを製造業について見ますると、昨年すなわち三十八年の後半期から生産性上昇が高まっておるのでございまして、それまでのような賃金上昇率が出産性の上昇率を上回るというような状況が変化いたしてまいっており、また消費者物価も昨年末以降、比較的落ちつきを取り戻しておるような状況でございます。  わが国の雇用、賃金等の労働経済の問題は、今後の経済成長の過程におきまして労働力の有効な活用をはかりまするため、流動化対策を進めますると同時に、全体の賃金水準上昇の中におきまして、規模別の賃金格差の改善をはかるなど、構造的な面に考慮を払っていく必要があると思っておるのであります。もとより、これらの施策を進めるにあたりましては、いろいろ労働省としても考えるべき施策があるわけでございますが、これらの実行にあたりましては、事柄の性質上、労使の十分なる理解と協力を得、その納得のもとに進めていくということは、根本的態度としてぜひとも考えるべき事柄である、かように存じておる次第であります。
  28. 有馬輝武

    有馬委員 いまお触れになりました外国の労働状況日本状況との間にニュアンスの差があることは事実でありますが、私は、高度成長政策の中でたとえば若年労働者と中高年齢層の問題、あるいは賃金の問題、こういったものについて、その労働政策のプログラムというものが明らかにされないところにも、一つの問題点があるのではないか、基本構想というものがその中で打ち立てられてないじゃないか、このように考えるのでありますが、いま一度御答弁をいただきたいと思います。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来そうした点は、確かに御指摘のとおりの面があったと思うのでございます。そこで労働省といたしましては、昨年、雇用に関する法律改正をお願いいたしまして、今年度からは地域別、産業別の労務需給計画というものを策定いたし、これに基づきまして合理的な計画を立てて、そして進めていく。いわゆる高度の計画性を持たせていきたいという考えで、いませっかく努力をいたしておるところでございます。
  30. 有馬輝武

    有馬委員 次にお尋ねいたしたいと存じますことは、総理が本委員会におきまして答弁されたことと関連して、いわゆる前向きの姿勢ということと、国情に沿ってという問題であります。  私は、澁谷さんなりあるいは稻葉さんなり永山さんの質疑と、これに対する政府側答弁を静かに伺っておったのでありますが、その中で非常に奇異な感じがいたすのであります。と申しますのは、これは個々の問題についてはあとでお伺いをしたいと存じまするけれども、少なくとも総理言明された前向きの姿勢というものは、大橋労働大臣もしょっちゅう言われるように、ILO八十七号条約なり何なりというものは各国間では最低規範として認識されておる。この八十七号条約批准案件関係法律案政府から提案されるということであるならば、少なくともそれが最低規範だという前提の上に立っての論議がかわされなければならぬと思うのであります。もちろん条約の個々の問題、条章については、これは各党においてもそれぞれの意見があることは当然でありまするし、またそれを審議の過程で明らかにすることは当然なされなければならないと思うのでありまするけれども、しかしその前提条件となるものは、あくまでこれを最低規範だとして認識するところにあるのではないか。政府としても与党との連絡の過程で、やはりそういった条件を整えることが必要だったのではないかと思うのでありますが、この点についての大橋労働大臣の御見解伺いたいと思います。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILO条約につきましては、特に八十七号というものは基本的な条約でございまして、これが国際規範としての最低を示すものではないかという点につきましては、私どももそのとおりであると存ずるのでございます。したがいまして、今回の国内法改正案についても、先般御説明申し上げましたるごとく、この条約に直接抵触することによって条約批准に際しては必ず当然に修正しなければならぬ、これが最低の部分だと思うのであります。  さらに第二の考え方といたしまして、条約に直接抵触するというわけではないけれども、しかし条約趣旨、精神を達成する意味からいって、この際改正を必要とするというものもつけ加えてあるわけでございまして、これらの点から考えまして、わが国の実情に即して最善の案を提案いたしてまいりたいという考えで提出をいたした次第でございます。
  32. 有馬輝武

    有馬委員 いま大橋労働大臣がお答えになりましたように、四月二十八日の本委員会におきますわが党の河野さんの質問に対しまして総理は、関係国内法改正案の扱いについては条約の精神を生かし前向きで国情に沿うように改正したいと、積極的な意向を表明されたのでありますが、この国情に沿うようにというようなところに一つの問題点があるのじゃないか。そういったことで、先ほどもお尋ねしましたように、こういったあいまいな表現をされることが、よそさまの党のことにくちばしをいれることはどうかと思いますけれども、たとえば与党の小金義照氏が、今月の七日ですか、自民党の労働問題調査会の意向というものを総理に対して伝える云々というような空気が生まれてくる一つの原因になるのじゃないか。私たちははたから見ておりまして、そういった感じを抱かざるを得ないのであります。やはり前向きでというからには、先ほども申し上げましたように、これが最低規範だという線が一本貫かれていないところに問題があるのじゃないか、このように考えるのであります。この点について、特に国情に沿うということばが使われておりまするけれども、私は、国家公務員に団交権なり罷業権なりというものが与えられておりまするイギリスなりベルギーとの間には、国情の差というものじゃなくて、さっきも申し上げました、これらの八十七号条約なり九十八号条約なり、あるいは百五号条約なり、こういった条約の受け取り方に差があるので、決して国情の差があるのじゃない、このように考えておるのでありますが、この点についての大橋労働大臣のお考え伺いたいと思います。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 別に有馬委員の御見解にあえて反対するわけではございません。そういう御見解一つの御見識として十分傾聴に値すると思いまするが、ただ政府といたしましては、今回のILO八十七号条約批准に際しましては、条約の要求しておる最低線はもとより確保しなければならない。しかし、さらに進んで条約趣旨、目的をよりよく達成するための改正も、この際できるだけ進めてまいりたい。しこうして、それについては、やはり国内の労働法規の問題でございまするので、国内労働界の現状というものを頭に置いて立案をいたした、こういう次第でございます。
  34. 有馬輝武

    有馬委員 いまの点については、あとで具体的な問題について個々にお伺いをいたしたいと存じます。  次にお伺いしたいと思いますことは、これは労働大臣外務政務次官にお伺いしたいと存じますが、それは九十八号条約と八十七号条約の関連についてであります。  一九五三年に九十八号条約日本批准しておるのでありますけれども、九十八号条約は、八十七号条約の第十一条に盛られた原則の具体的な運用について定めた条約であり、これは八十七号条約と不可分の条約であることは、もうだれしもが知っておるところであります。そこで問題は、日本政府が九十八号条約だけを批准して、八十七号条約批准する手続がおくれた。もとよりその国会に提案された経緯についてはわかるのでありますが、いまも触れましたように、この条約の認識のしかたというものにあと先があるのじゃないか。九十八号条約それ自体よりも、むしろこの原則的な八十七号条約批准というものが、どんなことがあっても先に立たなければならない問題ではなかったか、このように考えるのでありますが、これに対して、その経緯とおくれた理由について、これはしばしばここでも論議されてきたところでありますけれども、この際政府のまとまった見解をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  35. 三治重信

    ○三治政府委員 経緯のことにつきましてお答え申し上げます。  九十八号条約団結権実施の問題につきましては、公務員の関係につきまする労使関係については適用除外がなされた。それについては、日本国内法といたしまして労働組合法ができておりまして、それは国内法を特別整備しなくても批准ができるということで、先生のおっしゃるように、八十七号、九十八号ともに密接に関連しておりますけれども、両方とも重要な条約であるわけでございますが、現行法の特別な整備を待たずしても批准ができるということにおいて、先に批准の手続をとったわけでございます。  八十七号条約は、御承知のように、国家公務員や地方公務員関係においても、結社の自由という部面において適用がある。そうすると、国内法の整備を必要とするという関係におきまして批准の手続がおくれておる、こういう実情でございます。
  36. 有馬輝武

    有馬委員 いまの点が非常に重要だと思うのであります。少なくとも八十七、九十八号両条約の適用対象の差、すなわち国の行政に従事する公務員については九十八号条約で特例を設けられ、八十七号条約では特例を設けていないということを利用したきらいが、これまでの政府態度の中にあったのではないか、こう思うのであります。言いかえますと、九十八号条約の特例を広く解釈して、公企労働法上の団結権制限規定については手を触れないで、九十八号条約だけをまず批准した。それがあとになって、わが国の公労法第四条三項というものが、結社の自由委員会によって、八十七号条約違反であるということを指摘されるような結果をもたらした、こういうことになっておるのじゃないか。意図的なものがその経緯の中に見られるのじゃないかと思うのでありますが、この点についていま一度局長の御答弁を願いたいと思います。
  37. 三治重信

    ○三治政府委員 意図的ということではなくて、八十七号条約、九十八号条約ともに重要でありますし、両方に関連はしておりますけれども、九十八号条約団結権及び団体交渉権の擁護の問題につきましては、公務員が適用除外になっておる関係上、現行国内法でも批准ができるということでその批准を急いだという以外に他意はないわけでございます。  なお、団結権の問題で、団体交渉との関係で四条三号が九十八号との関連でILOで問題になっていることは事実でございますが、政府としては、それは九十八号の条約には違反しないという見解を始終とっているわけでございます。
  38. 有馬輝武

    有馬委員 だから、そこに政府の意図的なものがあるわけなのです。私はさっきもお伺いいたしましたように、八十七号は九十八号と同様に、いま御答弁のように確かに重要であると同時に、いま注意しなければならないことは、八十七号が九十八号の原則的なものをきめておる大綱だという認識が政府において欠けておったのではないか。また、そういう認識があったにしても作為的に、九十八号は批准するけれども、八十七号はあとに残す。国内法との関連の中で、団体行動権の制限をその中において企図していく。そういった動きというものがあったのではないか、このことをお伺いしておるわけです。この点について、局長とそれから外務政務次官から御答弁をいただきたいと思います。
  39. 三治重信

    ○三治政府委員 意図、意図というお話でございますが、別にそう特別に深い理由は何もないわけでございます。ともに重要な条約であるけれども国内法の整備を待たずして批准できるものを先に批准した。国内法の整備をしなければ批准できない八十七号条約のほうが、整備に手間どって現在おくれている、こういう以外に何の理由もないわけでございます。
  40. 毛利松平

    毛利政府委員 九十八号条約並びに八十七号条約ともに一体であって、同時に批准してもらいたいという悲願を持っておりましたが、やはりやさしいほうから批准した。問題点のある、いま労政局長答弁のごとき問題点のあるものは残って現在審議をしてもらっているということと解釈しております。
  41. 有馬輝武

    有馬委員 ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、そういった、やさしいほうからというようなことでこの問題を取り扱ってきたところに、非常に大きな問題があるわけであります。この点については特にこれ以上触れませんけれども、そういった考え方が間違っておるのですから、この点はこの際はっきりさせておきたいと存じます。  次にお伺いしたいと存じますことは、憲法九十八条二項との関連についてであります。八十七号条約批准ということは、団結権保障の国内法における実現ということをILOに対して約束する、このことが主眼だと思うのであります。憲法九十八条の二項は「日本国が締結した条約」は、「これを誠實に遵守することを必要とする。」として、批准した条約――憲法違反の条約は別といたしましても、条約国内法に占める地位というものをこれは明らかにし、確保しておるものだと思うのであります。したがいまして、少なくとも条約というものは法律の上位規範だ、こういった認識、これが先に立たなければならぬと思うのでありますが、条約内容に抵触する法律なり規則というものは、条約違反としてその存在を許されないと思うのです。いま局長は、その国内法改正について手間がかかった、その準備に手間どったというような御答弁でありましたけれども、準備に手間どるとかなんとかという問題ではなくして、条約法律との関連について明確にすればそれに対する手続というものはどうなければならないか、これはおのずから結論は出ておるところであります。少なくとも私は、現在までこの条約違反の法規で無効だったものが存在してきたという、ゆがんだ形を続けてきたのが現在の姿ではないかと思うのでありますが、この点について毛利外務次官と局長からいま一度御答弁をいただきたいと思います。
  42. 三治重信

    ○三治政府委員 国際条約であるILO条約は、加盟各国批准をしなければ、その各国はその順守の義務はないわけでございます。わが国でも批准してない条約はまだたくさんあるわけでございますが、批准すれば、いま先生のおっしゃるような憲法との関連の問題が出てくるわけでございますが、八十七号の条約におきましても、批准しない間はそれが結局国内法としての憲法との関連の問題は起きてきません。ただ問題は、八十七号の問題はILO関係におきまして、結社の自由が確保さるべきだという意味において、具体的な問題について、結社の自由委員会というものがあって、労使関係それぞれについて結社の自由が保障されない場合には、ILOに提訴ができるという特殊な関係からだけでございます。法律関係から申し上げますと、憲法との関係は未批准である間は問題は出てこないわけであります。したがって政府といたしましては、従来ILO条約批准関係につきましては、条約と抵触する場合には事前に国内法を整備してその上で批准する、こういう基本的な態度ILO条約に対しては決定しているわけでございます。
  43. 毛利松平

    毛利政府委員 いまの労働省の労政局長答弁と同じであります。
  44. 有馬輝武

    有馬委員 条約批准ということは労政局長答弁のような、そういったシーソーゲーム的なものではないのですよ。そこら辺に非常に政府の認識というものについて疑問を持たざるを得ないのでありますが、少なくとも八十七号条約批准ということは、わが国で単に一つ条約批准する、それだけの意味に限定されないで、それ以上の意味を持っておるのではないか、そういう観点からお伺いしておるわけです。少なくとも八十七号条約批准は、憲法二十八条による労働基本権保障の具体的な実現の一つの形式としてとらえるべきではないか、私はこういう観点からお伺いしているのです。八十七号条約はこの二十八条にいう団結権最低基準を定めるにすぎない。こういう点について、とにかく条約批准しなければ問題は別なんだというような認識がいまだに残っておる限り、八十七号条約の精神を前向きに解決する、こういうことにつながらないのではないかと思うのでありますが、大橋労働大臣のこの点に対する御見解伺いたいと思います。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働界の実情から見まして現在提案いたしておりまする国内法改正のごときものは、現状から見てわが国の労働界の前進のためにぜひ必要な事柄であると私ども考えておるのであります。しかしてこのことをなし遂げることが、結局ILO条約八十七号批准前提条件をなすものでございますから、そういう意味においてこの批准案件と不可分に取り扱っておるわけでございます。
  46. 有馬輝武

    有馬委員 抽象的な論議になって非常に恐縮でありますけれども、私が申し上げるのは、ILO八十七号の批准ということは結局憲法二十八条の精神を生かす一つの形式にすぎない、こういう認識で出発しないから問題が起こるのではないか、八十七号を批准しなければこれに抵触するいろいろな法令というものが生きていくのだというような考え方があるところに問題をこじらせる原因があるんじゃないか、このことをお伺いしておるわけです。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点は、仰せのとおり、今日の日本の実情から見まして、憲法二十八条の趣旨をよりよく達成いたしまする上からいって、政府といたしましては八十七号条約批准がこの際国内的に必要である。しかもそれは急速に行なわれる必要がある、こう考えておるわけであります。そしてその趣旨に従って、国内法改正をあわせて提案をいたしたわけであります。
  48. 有馬輝武

    有馬委員 次に、人事院総裁国家公務員法成立の経緯についてお伺いをしたいと思うのであります。  総裁は二十一年三月から法制局の次長として、また二十二年六月法制局の長官に任命され、それから二十九年の十二月まで引き続きその任に当たられて、少なくとも、資料によりますると現在の国家公務員法成立の経緯について一番詳しい方であり、また当面の責任者であったし、日本政府考え方、また総司令部の意向等というものについて実際にタッチされてきた方でありますので、そういった立場からお伺いをしたいと思うのであります。  二十二年の十月に公布されました現在の国家公務員法でありますが、その二十二年の七月二十二日に、連合国の最高司令官が内閣総理大臣あての書簡をもって国家公務員法の全面的な改正を要求し、特に公務員の団体交渉権、争議権を否認すべきことを強調いたしたことは御承知のとおりであります。これに基づきましていわゆる政令二百一号の制定並びに国家公務員法の大改正が行なわれたのでありますが、その前に、昭和二十一年の五月三日に、当時の澁澤敬三蔵相が総司令部の経済局長のマーケット少将あてに書簡を発しまして、アメリカ式の職階制に基づく俸給、給与制度の全面的な改革のために、アメリカの専門家たちの協力を要請いたしております。そして二十一年十一月三十日フーバー顧問団が来日して、このころから国家公務員法が生まれる一つのきざしが見えておるのでありますが、フーバー氏を団長とする団員、ヘアー、マッコイ、ドアンジェリス、この四人の中にも、日本の国家公務員に対する労働基本権についての考え方の相違というものが相当にあった。あとでもお伺いいたしますけれども、やはりその際には日本政府としては、国家公務員に対しても一般の民間労働組合と同じように労働三権を与えるべしという主張が強かったわけです。特に総裁などはそういった立場から常に折衝を保たれたやに聞いておるのでありまするが、この間の経緯についてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  49. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 たいへんよくお調べになっておると思いますので、別につけ加えることはないかと思いますけれども、一通りただいまお話しの順序を踏んで申し上げてみたいと思います。  いまお話しのように、昭和二十一年の五月に、当時の吉田内閣の澁澤大蔵大臣からアメリカ側、すなわち総司令部に対して給与関係、職階制の関係で専門家を派遣してもらいたいという要請をしたのでございますが、それに対して先方から、いまお話しのフーバーという公務員制度の専門家をかしらとする一団の顧問団をこちらによこしてまいりました。その顧問団が到着いたしましたのは、いまお話しのとおりに、二十一年の十月ごろだったと思いますが、これがこちらの要請した職階制なり給与なりという問題ばかりでなしに、広く日本の公務員制度全体をひとつ診察するというような気がまえで検討を続けてまいりまして、その結果昭和二十二年の六月ごろに、これは片山内閣の当時でありますが、このフーバー団長がこまかい草案を持って総理大臣のところへ来られまして、ぜひこの趣旨法律を実現してもらいたいということを申し入れてきたのであります。その先方の案の中に、これまたただいまお話しのございました公務員関係の団交権あるいは争議権を否認する条項が入っておった。これは顕著な特色であったと思います。そのころまでは従来わが法制としては、公務員に対する団交権あるいは争議行為というものを否認する、これを禁止するというような法制はなかったわけでございます。そこへそういう積極的な否定の条文を盛り込まれて提案がされてきた。当時の内閣としてはこれは困るというわけで、総力を上げて司令部に折衝いたしまして、そしてたまたまそのときそのフーバーという団長がアメリカに帰っておりました留守であったからかどうか知りませんけれども、夏じゅう折衝いたしまして、第一回の最初の公務員法ができたわけであります。その公務員法におきましては団交権、争議権を否定する条文は削られた形でこれが成立したわけでございます。そこで昭和二十三年になりまして、これもただいまお話しに出ました七月の二十二日にマッカーサーの書簡が出ました。膨大な書簡でございますが、その中で国鉄その他の公共企業体というものを別につくる、それからそれ以外の一般の公務員、中央地方を問わず一般の公務員については、団体協約の締結権及び争議権は認めない、そのかわりに当時ありました臨時人事委員会――これは人事院の前身に当たるわけですが、その臨時人事委員会がそれらの保護に当たるのだということがこのマ書簡の中に出まして、それを受けて七月の末に政令二百一号が、いわゆるポツダム政令として出たわけであります。いま申しましたようなマ書簡の趣旨が、とりあえず政令二百一号で立法化されました。なおそれに引き続きまして、さきに帰国中でありましたフーバーがまた日本に来たというようなこともありまして、アメリカ側から国家公務員法の全面的改正の指示がまいったわけであります。この中にはもちろん、すでにマ書簡が出たあとでございますし、政令二百一号もあったわけでございますので、したがって現在の法律にありますような団交権関係、あるいは争議権の否認関係の条文が、国家公務員法の中に引き継がれておる、かくして現在に至っておる、こういうわけでございます。
  50. 有馬輝武

    有馬委員 私がお伺いしたいのは、少なくも前の国家公務員法にはこれを否定する条文がなくて、また日本政府もそのような立場に立ってこの国家公務員の労働条件というものを取り扱う、この態度が終始一貫していたにもかかわらず、フーバーのいわば押しつけによって現在の改正が行なわれる経緯について、どのようなやりとりがあってこうならざるを得なかったのか、この点についていま少しお伺いをいたしておるわけであります。
  51. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほどちょっと漏らしましたが、マッカーサー書簡が出る昭和二十三年当時、公務員には争議行為を禁止する法制上の規定はなかったと申しましたが、ただし当時の労調法で非現業職員に対して争議行為を禁止する規定はすでにございました。これは申し落としました。  それからただいまのお話の団交権、争議権等に関連しての先方との折衝でございますが、これは片山内閣の当時は、おそらく西尾さんあるいは加藤さんというような上層部の方々が政治的に先方と折衝された、それがおもな一つの動きではなかったかと私は思います。私ども技術的な立場から別にそれに対して深く携わった記憶はございません。  それから先方の顧問団の顔ぶれの中にそういう方面について深い関心を持っておった者もあったのではないかというお話もございましたけれども、私はただいまおあげになりました人々に接触しておりますが、率直に申しましてその中のだれが労働権に関して深い関心を持っておったかということは私自身としては確認しておりません。しかし一つの風評としては、総司令部内部にまたいろいろな考え方の人々がおった、あるいは部局があった、こういうふうに聞いております。
  52. 有馬輝武

    有馬委員 片山総理やあるいは西尾さんの知恵袋であった当時の佐藤法制局長官が、その間の事情については一番お詳しいわけです。佐藤さんが立案したことを片山総理やあるいは四尾さんがしゃべっておるにすぎなかったのでありまして、やはりその当時の日本政府の根本的な認識というものがこの際新たに思い起こされなければならぬと思うのでありますが、そういう観点からお聞かせをいただきたいと存じます。
  53. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 別に遠慮しておるわけではございませんけれども、正直なところえらいほうの方々が非常に熱心におやりになったということは知っておりますけれども、何も私ふぜいがそういうおぜん立てをして上の方を動かしたという事実はございません。
  54. 有馬輝武

    有馬委員 それではいま少し具体的にお伺いいたしますが、昭和二十二年の六月十一日、フーバーとヘアーが片山総理法律案の勧告の内容で、ストライキは禁止はされないが、そのストライキは国民全体に対するストライキを意味するものであるからして、ストライキを行なうときは公務員として与えられている特殊の権利を失うこととなる。この考え方の基本になりましたフーバー草案の内容でありますが、職員は団体または職員の組織への参加、不参加は自由である。職員にして雇用者たる政府によって代表される日本の一般公衆に対してストラキイを行なう場合は、職員政府に対して有する本法の定める雇用等のすべての権利をストライキ実施と同時に失う。このようなフーバーの考え方というもの――これはフーバーが向こうへ帰っておるときには、いま先ほど総裁が言われましたようになかったものが、フーバーが帰ってきてさらにこれが盛り込まれる、この経緯が私は問題だと思うのです。そのときに日本政府はフーバーに対してどのような態度をもって臨まれたのか、この点をお伺いしたいのであります。いま少し具体的にお尋ねいたします。  昭和二十二年の六月二十六日、総理とフーバー会談の際の問題点について、同じ六月の二十八日に、当時の齋藤国務大臣、それから佐藤法制局長官が英文の覚え書きをフーバーに手交された。公務員のストライキに関する規定については、内閣としても重大な関心を寄せておるので、わが国の労働法制との関係その他の見地から慎重に考究し、御趣旨の存するところを十分に参酌し、適切なる規定を設けたいと考えている、このように述べておられるのでありますが、この公務員のストライキ権についてこのような覚え書きを手交されるその基本的な考え方について当時どのようであったのか、この点を再度お聞かせいただきたいと思います。
  55. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまお示しになりましたとおりのことは確かにあったと思います。その基本的の考え方ということになりますが、これはどういうことを私から聞き出そうというお気持ちであるのかどうか――大体のところは先ほど申し上げたように、当時はまだ片山内閣ができてしばらくたってから私が法制局長官になりまして、どうもなりたての早々であったということもございまして、そういう深いところまでの記憶は実は私はございません。しかしその当時の政府の根本的な態度というものは、大体有馬先先御推測のとおりじゃないかと思います。
  56. 有馬輝武

    有馬委員 決してペーペーじゃなくて、斎藤国務大臣と佐藤法制局長官が当面の責任者として折衝をされ、またこの覚え書きを手交されたのでありまして、私は、そのときの考え方が、特に占領時代であった、そういった観点の中で今後国家公務員法労働基本権に対する一貫したものの基準になるのではないか、こういう立場からお伺いをいたしておるわけであります。私の推測どおりだという御答弁でありますので、いまの点についてはまたあとで具体的な問題でお聞かせいたきただいと存じます。  次に、当時の和田博雄国務大臣と、大蔵省の給与局の局員から、国家公務員法の立案過程また改正する過程において、政党や組合、一般国民の批判、検討を受けることなく一部の関係者が極秘のうちにこれを進めていることについての批判を含んだ意見書が出されております。この意見書というものはフーバー草案のどのような点についておもに触れておられたのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  57. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これもたいへん記憶があいまいでございますけれども、当時の立案手続が極秘のうちに進められておった、これは確かに事実でございます。これは総司令部等の関係がありましたために、一般の法案の立案についても同様でございましたが、ともあれ当時のそういう秘密立法ということは、要するに事前に内容が新聞にでも出ますと、総司令部に呼びつけられて非常におこられたものです。そういうやむを得ざる環境のもとにおいてこの作業も極秘のうちに進められた、これは事実であります。そうしてまたそれに対して、いまお話しのような方々もそうであったと思いますが、その他の方面からもこういう大事な立案を秘密裏に進めるということはおもしろくないという批判が出てきた、これも覚えております。
  58. 有馬輝武

    有馬委員 私がお尋ねしたいことは、もちろんずっと時間を経過しておりますので、詳細な点じゃなくして、やはり公務員の労働基本権について触れられておったのではないかと思いますが、そういった点についてはどのような点が触れられ、政府としてはこの申し入れに対してどのような態度をとられたのか、そこら辺の経緯についてお聞かせいただきたいのであります。
  59. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 最初の際は先ほど申しましたように、公務員の労働基本権については従来どおりこれを認めていこうというのが政府の基本方針でございましたし、そういう点からいっての心配を他の人たちが持っておったということではなしに、およそそういう大事なことを秘密のうちにやるのがどうだというような批判であったと思います。それから第二回目の昭和二十三年に大改正をやりますときは、これは先方のマッカーサー書簡でもう世間に公表された形で、強い要請の形で出ておりますから、もはやその点をめぐってのそういうような問題はなかった、どうもそういうことではなかったかと考えます。
  60. 有馬輝武

    有馬委員 いまもお話し申し上げますように、ずいぶん前のことでありますので、総裁の御記憶もささいな条文一つ一つについては薄れている点もあろうかと存じますから、冗長になって非常に申しわけないのでありますが、当時の記録を思い起こしながらお伺いをしたいと思います。  昭和二十二年の七月五日に、全国官庁職員労働組合協議会の水口委員長から総理大臣あて――この水口委員長というのは私の労働組合の先輩でありますけれども、当時私たちも記憶いたしておるのでありますが、七月十二日午前十時までの文書回答を求めた要望書を提出いたしました。十二項目にわたるものでありましたが、その第七項に、全官労、政府労働協約の締結をうたってあるが、その回答はどんなものであったか。その意味するものはどういうものであったか。労働協約の締結について、当時の政府としては要望書に対して七月十二日の回答でどのようにされたのか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。  それから昭和二十二年の七月国家公務員法が立案され、七月下旬にはほぼそれが完成して、当時の二十三日付の謄写版刷りで全体を草案の形にまとめたものが出ておりますが、この閣議に提出された草案というものが、その後の閣議の意見によって調整が加えられて、七月三十日にその検討された結果が総司令部に提出された経緯があるのであります。その前の七月二十三日の草案と総司令部に出した七月三十日の草案との間には重大な違いがあって、特にその違いというものは労働条項に関する部分であった。先ほど申し上げましたフーバー草案では公務員のストライキ権について云々とあって、もしストライキを行なった場合には雇用等のすべての権利を失なう、こういう案になっていたものを、その閣議の決定によりまして、職員が同盟罷業を行なうときはその同盟罷業の期間その者がこの法律に基づいて有する給与に関する権利はこれを失なうものとする、このように改めていた。この基本権、罷業権に対する大きなフーバー草案に対して、いわば日本政府としても、労働組合のあり方からして一つの見識を示したものだと思うのでありますが、この経緯についてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  61. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 水口委員長以下の組合からの質問状の七項目は、これはいまおっしゃったとおりであり、そういうことがあったと思います。ただそれに対する答えが七項目に分かれてたしか官房長官から出たと思いますが、これは私はいま覚えておりませんから、場合によっては私の手元の資料をざがして他の適当な機会にお答え申し上げたいと思います。  それから、政府案のある段階において、給与に対する権利を失なうということを一つ条件として定めた条文があった、これも確かにそういう条文があったと思います。これもしかし、当時の占領下における総司令部と日本政府との関係ということをよく考えていただきませんとすっきりと出てこないことなんですが、やはり当時の政府としては、なるべくそういう争議行為の禁止あるいは団交権の否定というものは置きたくない。置きたくないけれども、しかし向こうの案の中にそれが先ほどお触れになったような形ではっきり出ておる。そこでことばはよくありませんが、一種の妥協的なニュアンスも出さなければなるまいというような段階もあってそういう条文ができたこともあったのではないか。しかしこれは結論においては全部そういうことはなしに済まされた、それが結果であります。過程においては、そういうことは確かにあったと思います。
  62. 有馬輝武

    有馬委員 特に先ほども申し上げましたが、総司令部の中にも、フーバーとマーカムとの間あたりでは意見の相違があって、マーカムと佐藤総裁が折衝されたときにも、マーカムはストライキに関して、政府職員には通常行政事務それから専売事業それから政府管理企業のそれぞれに従事する者があって、いま申し上げた二と三に規定する専売事業なり政府管理企業のそれぞれに従事する者については罷業権禁止は異論があるかもしれない、そして原文の一切の権利を失うというこのフーバー草案の意味は免職まで含む強いものであるけれども、しかし米国では恩給権は喪失しないことになっている、この点については日本の恩給法次第だというような意見も述べられまして、特に争議権の問題については、公務員でもやはり考慮すべきではないかという意見があったにもかかわらず、フーバーの意向によって、まあ妥協の産物と言われましたが、押し切られたその経緯についてお伺いしたいのであります。
  63. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 どうも十分の下調べをしてこずに手ぶらで出ておりますので、御期待に沿えないと思いますが、これまで申し上げたところ以上にいまとっさにお答えするような材料を持ち合わせませんので、ひとつ別の機会にお回しいただきたいと思います。よほど正確に調べませんと、ここで発言いたしますことは速記録に残るものですから、いいかげんなことはどうしても申し上げられないということで、これは調べればわかることで、別にひとつ機会をお設けいただきたいと存じます。
  64. 有馬輝武

    有馬委員 国家公務員法の基本的な性格に関する問題でありまするし、また、先ほど申し上げましたように、法制局長官はその当時の責任者として、しかも司令部と直接折衝に当たられたものとして、その間の事情をつまびらかにしておられすまので、ただ単に何月何日どこでどう言ったということについては正確な調査も必要でありましょうけれども、こういった基本的な性格の問題については、当時の日本政府考え方、これはもう佐藤さんの考え方がそのまま日本政府考え方になっておったのですから、それを資料を調べなければわからないということでもなかろうと思いましてお尋ねをいたしたのでありますが、総裁のお話もございますので、これはいつか日をあらためてまた詳細にお伺いをいたしたいと存じます。  なお、十二時半で一応休憩することになっておりますので、あとは午後お伺いいたしたいと存じます。
  65. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは、午後一時三十分に再開することといたしまして、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十八分開議
  66. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。有馬輝武君。
  67. 有馬輝武

    有馬委員 午前中に引き続いて人事院総裁にお伺いをしたいと存じます。  それは、午前中にも触れましたように、政令二百一号の問題であります。当初立案されました、また制定されました国家公務員法が、労働三権についてやはり労働組合法、労調法等に基づいて国家公務員の場合にもこれが保障されておったものが、マックの書簡によりまして、この二百一号に基づいて現在のように改正された。これは先ほど人事院総裁の御答弁の中にも直接はお話しになりませんでしたが、その当時の事情としてそういう経緯をたどらざるを得なかった、占領下の情勢において一応そういった経緯をたどってきたということでありますから、私は当然その占領の状態がなくなった際に本来の姿に立ち返るべきではなかったかと思うのであります。そういった意味合いにおきまして、昭和二十七年の平和条約締結のとき、また今回のILO八十七号条約批准のこの機会に国家公務員あるいは公共企業体の職員に対しても労働者としての基本的な権利を保障する、こういう立場から見直さなければならないと思うのでありますが、この点について人事院総裁の御見解伺いたいと存じます。
  68. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまのお話の論理をたどってまいりますと、確かにそういう結論が出てまいると思います。したがいまして、たとえばこの際往年の姿に労働基本権を戻すべきかどうかということに焦点がまいると思いますけれども、これについては現実に一つ制度ができておるわけでございます。また先ほど私も触れましたように、マ書簡関係そのものにも出ております。二百一号にも出ておりましたと思いますが、現在の国家公務員法においてはこれらの労働基本権に対するいわば代償的な機能というものを人事院にお預けいただいておるということで、また、それはそれで筋は通っておるという見方があるわけです。そこで、これを比べてどちらがいいかという政策としての批判の問題になるであろう、そういうふうに考えます。
  69. 有馬輝武

    有馬委員 その問題につきましては、これまたあとで触れさしていただきますけれども、やはり、たとえば昨年も一昨年もそういった立場から人事院が勧告を行なわれても、実施期日の問題等で政府はこれを完全に実施しない。これについてはいろいろ問題がありまするが、私は、やはり現在の事態においても、いま申し上げましたように国家公務員あるいは公共企業体の職員に対して基本権を与えていく、その中で正常な労使関係というものが確立されていくのではないか、うらはらのものが完全に保障されない、ここでゆがみを生じてくるのではないか、このように考えておるわけであります。  次に、具体的な問題につきましてお伺いをいたしたいと思いますが、それは公務員のいわゆる国家公務員法に基づく規定のしかたでありますが、この際総裁にお伺いしたいと思いますことは、現在の国家公務員、あるいは通称公務員といわれる地方公務員、国家公務員等のこの公務員の概念規定それ自体に問題があるのではないか、このように考えております。この前も本委員会におきまして稻葉さんがこの高級公務員と一般公務員との問題等について触れられておりましたけれども、私は、そういった意味合いにおきまして公務員もいわゆるシビル・サーバントとパブリック・サーバント、こういう点で概念規定をはっきりさせていくべきではなかろうか、このように考えておるわけであります。一九五四年の結社の自由委員会におきまして、世界労連と総評の告訴によって官公労働法における団結権の制限とスト規制法に関する日本の事件とが取り上げられました。この事件で結社の自由委員会が幾つかの重要な考え方を示しておりますが、その一つにいま申し上げました国家公務員法地方公務員法の適用を受ける公務員のストライキ禁止に関するものがあったことは御承知のとおりであります。この場合に委員会は、立法による雇用条件を享受するシビル・サーバントは、多くの国々においてその雇用を規律する法制の中で正常な条件として争議権を否認されており、したがってこの問題はさらに審理すべき理由がないと考える、こういうことを結論づけておるのでありますが、問題はシビル・サーバントということばで日本の公務員全体を把握したところに問題があったのではないか。非常にこの意味でも、ことばの使い方、概念規定というものがあいまいで、全体を、現実をとらえていないきらいがあったのではないかと思うのであります。この事件におきまして、日本政府の回答でも、公務員ということばをパブリック・サーバントと英訳して、国家公務員は一般的な行政事務に従事する国家公務の被用者であり、地方公務員は行政に従事するパブリック・オフィシャルだというような説明をいたしておるのであります。一般にパブリック・サーバントということばは国家公務員で非現業部門をさすことばとして用いられておりまして、またパブリック・オフィシャルは右の範囲のもので比較的地位の高い者、たとえば昔では高等文官試験に合格した者、こういったものを言うのではないかと思うのであります。そういう意味で、この際私は総裁にお伺いしたいと思いますことは、結社の自由委員会でも教師、シビル・サーバント、郵便労働者というふうに、先ほど申し上げましたようにきわめてあいまいな使い方をいたしておりますけれども、この際シビル・サーバントとパブリック・サーバントというものをはっきり分けまして、国家公務員法の、あとでお伺いをいたします政治活動の制限なり何なりを受けるものは、この高級公務員、面接国の行政に参画する者に限るべきではないか。公僕という意味はそこら辺で使われるべきで、いわゆるパブリック・サーバントというものは、これはもう単なる事務をやっておるのにすぎないので、国の行政に参画しておる、こういう意味ではとらえられないのではないか。大橋さんなんかも役所におられて十分御承知だろうと思いますが、とにかく現在どこの役所でも実際に国の行政に参画するといわれるような人たちは、各省においてもきわめて限られた人たちに限定されております。そういう意味合いにおきまして、私はこの概念をはっきりさせて、一般の公務員に対しましては、労働三権を与える、これが少なくとも筋の通ったものの考え方ではないかと思うのでありますが、この点についての総裁のお考え伺いたいと思います。
  70. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 この用語の問題はさておきまして、おそらくただいまの御質疑に出ておりますのは、いわゆる行政あるいは執行の仕事に携わる公務員と、それから現業的な、たとえば単純労務に従事ずるような公務員と、その両方をこの公務員法が一律に扱っておるのはどうであろうかという趣旨のお尋ねではないかと思います。これはかねがねそういう点について批判的な意見を述べておる人もおるわけで、一つの重大な問題であると私は思いますが、いずれにいたしましても、その辺の分界をつけ、そうしていわばその一つのグループに対しては完全な労働基本権を与えるというようなことが全体としての公務員に対してそれを考えるべきか、あるいは区分したその特定の単純労務なり、現業の人たちだけに対してこれを与えるべきかという問題もございますし、先ほど述べましたように、これはやはり全体の労働基本権に対する扱いを今後どう持っていくべきかという一番の根本問題に結局つながることでございまして、その中の一部分がどうこうというようなことよりも、もっと深いところにやはり究明されなければならぬものがあるように私としては考えます。したがいまして、先ほど申しましたようなことで、ここで卒然としてどちらがいいとかというようなことはもちろん申し上げるべき自信はございませんし、やはり政治の一つの大きな根本問題として高い角度から、これは御検討されてしかるべき問題であろうというふうに考えておる次第でございます。
  71. 有馬輝武

    有馬委員 私が伺いましたことは、その現業、非現業というようなものと同時に、さっきから繰り返して申し上げておりますように、高級の公務員、ほんとうに国の行政に立案し参画し得る人たちと一般の公務員とは、この際その概念を明確にし、区分けすべきではないか。国家公務員法なり、あるいは憲法でいうところの公務員というもの、この概念をはっきりさせないから、私は、あとでお話し申し上げますような、その拡大解釈でもって、不当に公務員の権利というものが侵されておるのではないか。こういう考え方に立って、先ほどの御質問を申し上げたわけであります。この点についていま一度総裁と、それから労働大臣のほうから御見解をお聞かせ願いたいと存じます。それと同時に、こういった根本的な問題については、高い視野からというようなお話でございましたけれども、このような機会にこそ、そういった根本的な問題にメスを入れるべきではないか、このように私は考えておりますので、そういった立場からお聞かせをいただきたいと思います。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 有馬委員の御意見は、現在一口に公務員と称されておるものを高級な判断を要するような、そういう事務に従事しておる公務員と、単純なる労務に従事する公務員、こういうものの間にはこれは労働権の取り扱いにおいて差別をしてもいいのではないか、こういうような御趣旨のもとに展開されておると思うのでございますが、なるほど、旧憲法時代におきましても、いわゆる官吏として厳重な服務規律のもとに規制されておりました公務員と、それから雇員、用員というような私法上の雇用契約関係に近い法律関係で規律されておりましたものとがあったわけでございます。今日の公務員法におきましては、こうした区別を廃しておりますが、しかしドイツの官吏法などは現在でもそういった区別を重視し、それによって労働権に関する取り扱いについても区別をいたしておるという実例もあるようでございます。これらは相当理由があってされておることだとは思いますが、しかしこの点は現在の日本の公務員法のたてまえとは全く違っておるのでございまして、ただその点だけを指摘して、こういう点からいって公務員の一部に完全なる労働三権を与えることを考えたらどうかというような点になりますと、これは先ほど人事院総裁も申されましたとおり、公務員法全体の根本的な考え方というものに基づきませんと、ただその部分だけを摘出して労働三権を与えたらどうかというような扱い方はむずかしいのではないか、私も総裁と同様にさように思うわけでございます。しかし、とにかくこの問題は重要な問題でございますので、将来何らかの機会政府といたしましても根本的に検討すべき価値のある問題だと考えます。
  73. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 大体大橋労働大臣の答えたところと同じようなことでございますが、さらにつけ加えさしていただければ、今回の提案されております改正案そのものにそういう問題を含んでおると私は思うわけです。したがって根本的な御検討ということは、現在御提案になっておる改正案のようなものも含めて根本的な御検討をいただきたいというような意味で申し上げたのでございますから、つけ加えさせていただきます。
  74. 有馬輝武

    有馬委員 大臣、総裁から御答弁がありましたけれども、私はILO八十七号条約並びに関係条約勧告を検討するということは、さっきから繰り返してお話し申し上げておりますけれども、この条約最低規範であるという認識の上に立つことと、憲法で保障された権利というものをぴちっとさせていくということ、そういった次元から今度の関係法律案についても検討さるべきであって、個々の条章についてこれは八十七号条約にどうだろう、九十八号条約に違反しているではないか、最低限のその抵触するものだけに、あるいは抵触すると考えられるものについて手直しをするということにとどまるべきではなくて、憲法で保障された労働基本権というものを保障する、こういう立場から関係法律案検討も加えられないと、ものの本筋を見失うことになるのじゃないか、そういう意味で私は、公務員という概念規定で全部一からげにされて、実際に国の行政に直接参画しない、ただ単なる事務をやっているものまでもそういうことで規制することは問題が残るのじゃないか、こういうふうにお尋ねをいたしておるわけであります。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 確かにILO条約八十七号の問題を考えるにあたりましても、憲法上の労働三権というものの拡充徹底ということを常に念頭に置いて進むべきであるということは、これは先ほど私も同趣旨のことを申し上げましたとおり、当然そうあるべきことと考えるのでございます。今回の国内法改正につきましても、そうした考えのもとに加えられました一部の条項もあるわけでございますが、しかし、何と申しましても労働三権の拡充強化ということは、これは憲法上の権利の取り扱いでございますから、ILO条約八十七号の批准のいかんにかかわらず、政府といたしましては、常に総理も申しておりまするとおり、前向きの姿勢をもって機会あるごとに検討を加え、改善を心がけるべきだと思うのでございます。そういう意味から申しまして、先ほど来仰せられておりまする公務員、特に単純業務を使命とする一部公務員の団交権の問題などというものは、機会あるごとに十分に検討すべき問題だとは思いますが、しかしこの問題は、先ほど来申し上げましたるごとく、単にこの問題だけを切り離してどうこうという結論を出すべき事柄でなく、公務員制度全体を俎上に乗せ、あらゆる角度から検討して初めて結論が見出し得る問題でございますので、これには相当長い間の研究を必要といたすと思うのでございます。政府はそうした方向に向かって常に検討を進め、前進を心がけてはおりまするが、さしあたって八十七号条約批准は、日本の現状から見まして急を要しますので、とりあえず政府としては、すでに検討済みの問題についてこの機会に改善するということを、この八十七号関係国内法改正として提案をいたしておるわけでございまして、御指摘の点を決して将来ともなおざりにするという考えはございません。
  76. 有馬輝武

    有馬委員 私が申し上げましたのは、いまも大臣から将来検討するということでありましたのでこれ以上続けませんけれども、たとえばきょうここへ来ておられる各省の局長なりあるいは一部の課長、こういった人たちが私の言うそのシビル・サーバントに属する人たちであって、この人たちについてはある程度の制限やむを得ない場合があるかもしれませんけれども、その他の人たちは、労組法上のいわゆる労働者として権利を保障されてもちっとも支障はない、こういうものの考え方の上に立っていまの御質問を申し上げておりますので、そういう意味では国家公務員法改正を取り上げる場合にも、やはりこの公務員の概念規定をまずはっきりさせて、そして出発すべきではないか、個々の条章については第二第三の問題である、このように考えておるわけであります。  次にお伺いいたしたいと存じますことは、組合員の範囲の問題であります。これはもうこの委員会でもしばしば取り上げられておりますので簡明にお伺いをいたしますが、管理、監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者の範囲についてであります。労働組合法では、資格審査の請求があった場合に個々具体的に検討されることになっておりますけれども公労法上は、公労法の第四条二項、地公労法第五条の二項の部分的な改正によりまして、あらかじめ公労委が一般的に定めて告示することになっております。しかも公労委がこれまで行なった認定のうちには、実質的な職務の内容の変更を伴わないのに、単なる職名の変更によりまして非組合員の範囲が一挙に拡大するというような事例がいままでしばしば見受けられてまいりました。本来、非組合員の範囲については組合みずからが決定する、これが筋ではないかと思うのであります。ですからこの点について第三者の感覚的な判断にゆだねる、これは問題ではないかと思うのでありますが、この点について基本的な立場から労働大臣の御見解伺いたいと思います。
  77. 三治重信

    ○三治政府委員 管理、監督者と一般の組合の結成、団結権の自由との関係でございますが、一般的には、結社の自由という関係からいえば、その結社をつくる側のものが自由に自分の結社の所属員となる者をきめる権能があるわけでございます。したがって、それが使用者に対しては団結権の自由、国に対しては結社の自由、こういうふうな原理原則になるわけでございます。しかし実際の具体的になりますと、民間におきましても、国の企業体におきましても、やはり労働組合の行ならその当局にまたは経営者に対する要求、またはそういうことについてこたえる会社側でも単に最高責任者だけがそのことを取り扱うわけではない、それに関連して、いわゆる機密の事務を取り扱う管理、監督の地位にある者が当然経営者側に立つべき立場にある、それがごっちゃになるのは、やはり相互不介入、自主運営ということにもとるではないかということで、慣例上、そういうことはやはり区別されたほうがいい、これがまた各国における一般的な原則であるというのが、結社の自由委員会においても認められておりまして、管理、監督、機密の事務を取り扱う者が一般の組合員から区別されても当然である、こういうふうになっているわけであります。  ことに公共企業体の関係につきまして、その第三者機関たる公労委がきめるという立法の趣旨は、そういう管理、監督の地位にある者または機密の事務を取り扱う者というものの範囲で労使双方がいざござがないように、高度の公共性を持つ企業体の運営がよりスムーズにいくという意味において、第三者がきめたほうがよかろうということで、立法上公労委がきめるようにしたわけでございます。
  78. 有馬輝武

    有馬委員 現在まで管理、監督の地位にある者というそのゆえをもって非組合員の数が拡大されてきた事例は、これは私がここで申し上げなくてもよく御承知のはずであります。その第三者の判断にゆだねるということも私は否定はしてないのです。問題は、不当に非組合員の範囲を拡大されることを見のがしてきた現在までの経緯について、私はいま局長がおっしゃったような善意の立場というものが無視されてきたところに問題があるのじゃないか。これを規制するためにはどうすべきか。また、条文上ではなくして、このような傾向を阻止することのために、労働大臣としてはどのような措置を講じられるつもりなのか、ここら辺についてお伺いをしておきたいと思うのでございます。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のように、公労委労使公益の三者構成になっておるのでございまして、こうした労使双方に関係のある事柄につきましては、これらの委員がそれぞれの立場から見解を述べ、そうして公益委員が間をとって個々に決定いたしていくわけでございます。こうした委員会の構成そのものから中立適正なる結論が保障されるであろうというのが、この制度のたてまえに相なっておるのでございます。したがいまして、政府といたしましては、委員会の構成そのものから当然公正な結論が出るという期待のもとにこの制度をつくっておるのでございまして、私どもはただいまのところ、この制度についてどうこうしようという考えはございません。個々の問題につきまして、労使双方あるいは一方が、これはどうも自分のほうに不利な結論である、適当でないというお考えがありましたならば、さらに再調査を申し立てられるなりいたしまして、公労委の手続を通じて適正な結論を確実にせられるということだと思うのでございます。
  80. 有馬輝武

    有馬委員 私はその恣意的な非組合員の拡大について、公労委自体が明確な結論を出し得なかった現在までの経緯の上に立ってお伺いしておるわけなんです。こういった形は望ましくないものじゃないか。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来からこの問題の取り扱いは、御承知のとおり、労使の協議によってきめる、労使の協議が一致しない場合において、公労委結論をおまかせする、こういうやり方をしてきておるわけでございまして、公労委といたしましては、その申請に基づいて決定をいたしておるわけでございます。もし公労委決定ができないということでありましたならば、それは公労委としては職務怠慢であるという批評を免れないでございましょう。したがって、さような公労委を督励して、そして適正な結論を得られるようにすることは、労使双方の共同の責任でもある、こう私は考えるのであります。
  82. 有馬輝武

    有馬委員 次に、人事院総裁にお伺いしたいと思うのであります。  今回の政府案の国公法百八条の三、五項後段、地公法五十三条五項は「職員でない者の役員就任を認めている職員団体を、その故をもつて登録の要件に適合しないものと解してはならない。」となっておりますが、その組合員になれる者の範囲は「その意に反して」云々「裁判が確定するに至らないもの」というぐあいになっておりまして、たとえば職員たる地位を持たない組合役員が、組合の役員であるけれども組合員にはなれないという奇妙な現象を呈することになるのでありますが、この点については、人事院総裁はどのような御見解を持っておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  83. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私どもは、大体現行法支持と申しますか、そういうような立場でおりますわけで、そういう点から別にこだわって申し上げるわけではございませんけれども、現行法は現行法としてまた一つ意味がある。すなわち職員団体である以上は、一応職員にこれを限定するということは常識的に当然のことであるという見方も立つとわれわれは思っておりますので、そういう点について改正案のようにしなければならぬというところまでの考え方は持っておりません。
  84. 有馬輝武

    有馬委員 順序不同になりますけれども文部大臣がお見えになっておりますので、この際、この前の大出委員の質問に答えられた点と関連いたしまして、一言だけお伺いしたいと思います。  たとえば現在都道府県教組と話し合いがきめられまして、また各都道府県によりまして給与決定されるわけでありますが、各県におけるアンバランス、これはまぎれもない事実であります。給与の問題だけに限りませんで、その他のいろいろな労働条件に関しましても不均衡な点があるわけであります。この前文部大臣から話し合いをすることについてはというような意味での御答弁があったわけでありますが、こういった一つの例でありますけれども、各県のアンバランスの是正、こういった問題についても話し合いをされる、私たちはこのように受け取っておるのでありますが、ここら辺について文部大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  85. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 たびたびお答えを申し上げましたところでございますが、問題を教職員文部省という関係に限って申し上げますれば、しばしば申し上げておりますように、文部省と教職員の団体との間にいわゆる交渉というふうな関係はないと思うのであります。ただ文部行政を進めてまいります上において、各方面の御意見、御要望等を伺うことは、これは当然のことでありますので、教職員の諸君といえどもあるいは陳情するとか、あるいは意見の表明をするとか、言われることを別に拒もうとも思っておらぬわけでありますが、ただ同時に、この問題は、権利とか義務とかいう問題ではないと思うのでありまして、私のほうといたしましても、絶対に会ってはならないとか、あるいは絶対に会わなくちゃならぬとか、そういうふうな性質の問題とは考えておらぬのであります。意見の表明とかあるいは要望等を聞くことは、何ら妨げるところではございませんが、ただこれは私は一般的に申し上げているのであります。現在の段階におきましては、昨年の秋に私就任後におきまして、日教組の諸君から幾つかの個条を掲げて面会を申し込まれ、話し合いを申し込まれたのでありますが、これにつきましては、ややもすると日教組との話し合いというものは、日教組の諸君にとりましては、文部大臣と何か交渉でもしたようなお取り扱いをなさるのでありまして、私は、こういうふうな行政に属することが交渉とかそういうふうなことで決定するような印象を与えるということは、行政を遂行する上において非常に困る問題であります。行政の筋は乱したくないのであります。そういうことの懸念を私はいたしておるわけでございますが、筋道の問題といたしましては、交渉という問題を離れて、お互いに意見を出されるとか、あるいは要望を承るとかいうふうなことについて、私は、そういうことをしてはならない性質のものと、かようには考えておりません。
  86. 有馬輝武

    有馬委員 次に、労働大臣にお伺いしたいと思います。国家公務員である消防職員については、今度その取り扱いが行なわれることになりましたけれども、地方公務員である消防職員については、今回団結禁止を存続することになっているように見るのでありますが、その根拠はどういうところにあるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。   〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕
  87. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国家公務員であります消防職員というのは、実際は消防業務に従事するというよりは、消防業務に関する事務に従事しておる事務職員というわけでございまして、一般の行政職員と同じように取り扱ってしかるべきものであろう。しかるに、地方自治体におきます消防機関というものは、現実の消防の職務執行に当たりまする職員でございますので、これはむしろ警察の職員と同じような扱いをするのが当然だろう、こういう意味で区別をいたしたものでございます。
  88. 有馬輝武

    有馬委員 その点は、地方消防職員については国家公務員と同じような事務をしておる者も相当おるのでありまして、そこら辺の区別が非常に明確でないのじゃないですか。根拠がどうも希薄なように思うのですが。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 しいて言えば国家の消防職員というのは、消防業務の監督、指導事務の職員でございます。地方機関は、直接消防事務を掌握しておる職員でございまして、この間取り扱いが異なるのは当然だと存じます。
  90. 有馬輝武

    有馬委員 次に、先ほどの管理職と組合員の範囲の問題について、これは具体的にお伺いをしたいと思います。  林野庁に最初にお伺いをいたしますが、昭和三十三年十月十四日の三十三林協四十七号の覚え書き、「労働組合を結成し、またはこれに加入することができる者の範囲に関する覚書」を林野庁当局組合とで結んでおります。この覚え書きがあるにもかかわらず、林野庁は昭和三十九年二月二十九日、全林野に対しまして、話し合いを行なわないで、各営林局の課長補佐を管理者に発令したいというような申し入れをいたしておりますが、どういう根拠からこういう申し入れをされ、覚え書きを破棄されたのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  91. 森博

    ○森説明員 ただいま、営林局の課長補佐を管理者に発令いたしますことにつきまして、覚え書きを破棄して申請したというふうなお話でございましたが、そういうことではございませんので、営林局の課長補佐につきましてこれを管理職に指定の申請をいたしたいということで、たしか三月九日と記憶いたしておりますが、公労委に申請をいたしたわけでございます。それにつきましては前後五回か六回組合のほうと協約に従いましていろいろ話し合いはいたしたわけでございますけれども、不幸にして話し合いがつきませんでしたものですから、その旨を組合に伝えまして、申請書を公労委に出したという経過になっておる次第でございます。
  92. 有馬輝武

    有馬委員 話し合いがつかないから一方的に公労委に持ち込むという筋合いのものではないと思うのであります。少なくとも前の覚え書きで結んでいた課長補佐が、これは公労法の四条一項に該当するものだ。前には該当しないのだ、今度は該当するのだ、こういう移り変わりというもの、しかも覚え書きにまで規定されておったものが、このような経緯を経ていま御説明のあったような形で一方的に公労委に持ち込まれるということは、結局管理運営事項に名をかりて非組合員の範囲を拡大する、そういう手だてに使われておるとしか思えないのでありますが、こういう経緯を林野庁当局としてたどらなければならなかったその具体的理由を、いま少し明らかにしてほしいと思います。
  93. 森博

    ○森説明員 この協約が結ばれましたのは三十三年でございます。その当時は課長補佐の職はなかったわけでございますが、三十五年に課長補佐を設けることにいたしたわけでございます。その際にこれはむしろ話し合いをすべきであったかもしれませんが、その当時におきましては、課長補佐を一斉につくるといたしましても、人員の適任者の関係、住宅の関係というようなことで、これを一律に各局に置くというようなことは考えておりません、また、実行もできませんので、むしろ兼務の形等で、その運用についても試験的な意味を持っていたわけでございますが、最近におきましてその要員の確保もできまして、相当数が専任で任命されるというような事態になってまいっているわけでございます。その覚え書きの趣旨によりまして、われわれのほうとしては、これは十分組合と話をすべきものだと思いまして、管理者の申請をしたいということでいろいろお話し合いをしたわけでございますが、これにつきまして組合と完全な意見の一致を見ることができませんでしたので、残念ながら公平な第三者の機関の判定を仰ぐということで、組合にも通告いたしまして申請をいたした次第でございます。
  94. 有馬輝武

    有馬委員 いまの御説明ごまかしなんですよ。少なくともこの覚え書きが手交されたころは、私は管理官という職制はなかったと思うのですが、いまは各営林署ごとに管理官という職制が置かれていて、あなたのいまの御説明とは逆な状況になっておるのです。いまのあなたの御説明だとすれば非組合員拡大の企図に出たものとしか受け取れないわけです。  私はいま一つの例として大橋労働大臣、このような事例をあげたわけでありますけれども先ほどの御答弁でありますが、こういう形で一方的に使用者側の恣意が許される、これは現在の状況から見てただ単なる第三者にまかせておいてはなかなか防止し得ない状態ではないかと思いますが、再度この問題についての御見解伺いたいと思います。
  95. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公労法上の管理監督職員として非組合員にいたしておりますのは、労務管理の立場から申しまして、使用者の利益の代理者と認めなければならぬ、そういう仕事に従事しておる者をこれに当てはめておるわけでございます。したがいまして、各企業体等におきましていろいろ経営上の必要から、労務管理の職員をふやして労務管理体制を強化していくということは十分あり得ることでございまして、そうした場合においては、その職務に従事せしめられる職員は当然非組合員になるというのは、これはやむを得ないことだと思うのであります。これを故意に非組合員の範囲を拡大するというふうには私は考えないのでございまして、労務管理の仕事を大切に考え、その機構の充実をはかっていくということは、これは企業体の経営上の自由である、こういうふうに思うのでございます。そういう意味で、その自由に基づいて機構がふえればふえたその機構に従事する人は当然に非組合員になる、その結果が非組合員の数がふえる、これはどうもやむを得ないことじゃないかと思います。
  96. 有馬輝武

    有馬委員 いまの労働大臣の言われるような機構の整備という形ではなくて――ですから、いまみたいな御答弁をされると思って一つの例として林野庁のあり方を実際問題としてお伺いしたわけなんです。機構の整備ということじゃなくて、たとえば管理官などというものが置かれて管理職の課長補佐のやっていた仕事はその管理官に移されて、機構は整備された、にもかかわらず課長補佐をあえて非組合員にする、こういう行為が行なわれておるわけです。これは一つの例でありますけれども、各企業体においてこういったことが次々に行なわれていくということは、私は本来の趣旨からいってそれるものじゃないか、このように考えておるわけです。
  97. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の申し上げましたのは原則論を申し上げたわけでございまして、個々のケースにおいてそれがいかに適用されておるか、また御指摘になりました林野の問題について、それがはたして正しい取り扱いであるかどうかという個々の問題については、私の立場からこれ以上申し上げるわけにはまいりません。なぜならば、それは公労委において決定されるべき事柄に相なっておるからでございます。
  98. 有馬輝武

    有馬委員 次に争議行為の禁止の問題について、公労法の第四条第三項との関連でお伺いしたいと思うのでありますが、少なくともこの公労法第四条三項が問題になってきた経緯について私たちは振り返ってみる必要があると思うのであります。その経緯というのが強制仲裁制度組合員の要求を十分に満たさなかった、そこで組合は要求を実現するために何らかの行為に出ざるを得なかった、ところがこれに対して政府公労法第十七条違反を理由に組合役員が十八条によって解雇される、組合役員が解雇されたものであることを理由に、公労法第四条三項によって団体交渉が行なわれなくなった、したがって、労働組合運動の方向がこれに照応して転回されざるを得なかったというのが一つ経緯だと思うのであります。ところが政府原案では、逆に争議行為を禁止されるものの範囲を「職員」から、「職員並びに組合組合員及び役員」と拡張いたしておるのであります。この経緯を振り返ってみた場合に、そのあとの「組合決定又は指令であって、」云々という条章とともに、問題は組合の統制権を弱める、こういう形となって、逆に締めつけの方向へ法案が取り扱われておる。このことは八十七号条約批准する、あるいは九十八号条約批准しておる日本として取り扱いの筋が違うのじゃないか。むしろこの争議権の解放という方向に問題は取り扱わるべきであって、締めつけの方向で問題が取り扱われる、これは逆じゃないか、このように思うのでありますが、労働大臣の御見解伺いたいと思います。
  99. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公労法の今回の改正におきましては、労働組合の争議権につきましては従来どおり絶対禁止という考え方をごうも変えていないわけであります。そうしてこのたび公労法四条三項の改正によりまして、組合にいろいろな方が役員として入ってこられ、ややもすれば従来の争議権絶対禁止という規定の趣旨が、実効が危うくなるおそれがありますので、それは今回の改正趣旨とは違いますから、その点をはっきりいたしまして、争議権の絶対禁止の効果を確保いたしますために改正をいたそうというわけでございます。
  100. 有馬輝武

    有馬委員 それではお伺いいたします。五月十人目の各新聞が、臨時行政調査会の今井案の問題について報じております。この七人委員会の今井一男委員が、「一定の規制のもとに公務員の争議行為を認めるなど、現在公務員の労働基本権に加えられている制約を緩和する方向で草案をまとめていきたい」、こういう基本方針をきめたことを伝えておるのであります。その骨子とするところは、原則として団結権はすべての公務員に与えらるべきであること、陳情と団交の中間的なものとしてイギリスのホイットレー協議会にならった協議会方式をとったらどうか、協議不調の場合には争議権の行使を認めることにすべきだ、このような基本方針をきめ、検討することが報じられておるのであります。この臨時行政調査会がこのような趣旨の答申を行なった場合に、当然その答申については、これは政府は尊重するのがたてまえだと思うのでありますが、その具体化についてはどのような考え方を持っておられるか、この際明らかにしていただきたいと思います。  なお、昭和三十年に公務員制度調査会が同じ構想の協議会を政府部内に設けることを勧告したことがあるのでありますが、これが実現に至らなかった理由についてあわせて明らかにしていただきたいと存じます。
  101. 大橋武夫

    大橋国務大臣 五月十八日の新聞に臨時行政調査会における公務員の争議権についての見解が伝えられておりましたことは私も承知いたしております。この臨時行政調査会の答申につきましては、政府といたしましては、これを尊重いたしまして将来の施策の上にできるだけ生かしてまいりたいという考えを持っておるわけでございますが、しかし現在の段階におきましては、まだ行政調査会の事務を助けておる行政調査会の一部の見解でございまして、正式に調査会の意見として固まっておるわけではございません。政府はこれが行政調査会の確定的な意見として固まった上で、これに対して処置いたしていきたいという考えでございます。  それからもう一つ国会において決議されておりました委員会がどうなったかということでございますが、公務員制度につきましては、御承知のとおり、臨時行政調査会等を通じまして全般的に再検討をいたしておりまするので、しばらくこの機関の活動の結果に待とうという考えでございます。
  102. 有馬輝武

    有馬委員 第二点の、昭和三十三年にこのような協議会を設けるべきだという勧告をした、それが実現に至らなかった経緯について、ひとついま一度お聞かせ願いたいと思います。
  103. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  104. 岡田勝二

    ○岡田政府委員 三十年の秋に公務員制度調査会の答申が出まして、ただいま御指摘のように、イギリスのホイットレー協議会にならった協議会制度日本の公務員制度の中に採用することというのがございます。この問題につきましては、この公務員制度調査会の答申が、そういった労働権だけに限りませず、先ほど御指摘のありましたような公務員の種類、範囲であるとか、任用制度給与制度、服務制度、それから人事行政機構その他いわゆる公務員制度の万般にわたりましての、まことに広範かつ非常に大規模な変革を伴う答申がなされておるわけでございます。したがいまして、この答申が出まして後、政府ではそれを鋭意検討し続けてまいったわけでございますが、まだ十分な成案を得るに現在のところ至ってない、こういうふうな状況でございます。
  105. 有馬輝武

    有馬委員 その基本線は了として検討してこられておるのですか。
  106. 岡田勝二

    ○岡田政府委員 ただいま申しました公務員制度調査会の答申、これはただいま申しましたように非常に万般にわたっておりますので、これを改正法案といたします場合には、おそらく公務員法の全文改正というふうな大規模な作業になるわけでございます。したがいまして、そこらの点になりますと、やはり答申が完全に細部まで網羅しておるわけでもございませんので、そこら辺の検討も実際の法案作成については必要でございますので、そのような点も含めまして検討を続けてまいった、こういう状況でございます。
  107. 有馬輝武

    有馬委員 どうも基本線を了としておるのかどうかという点が不明瞭でありますが、時間の関係もありますので、次に交渉制限の問題についてお伺いいたしたいと存じます。これは人事院総裁労働大臣にお伺いしたいと思うのであります。  今度の改正案でも、交渉事項、交渉当事者、交渉手続、それから平静の保持、打ち切り、そして給与面からの制約、あらゆる周到な制約の措置が設けられて、争議権を否認されておる公務員組合のほとんどただ一つの交渉の場にこれらの大きな制約を設けるということは、少なくとも八十七号あるいは九十八号の精神に沿わないものじゃないか、このように思うのでありますが、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  108. 大橋武夫

    大橋国務大臣 管理及び運営に関する事項が団体交渉の対象とはならないということを今回の改正法案では規定をいたしておるのでありますが、元来管理及び運営に関する事項は現行法のもとにおきましても交渉することはできないことは当然であると解されておるのでございまして、今回の改正はいわばこの点を確認的に規定したものにすぎないのでございます。したがって、公労法第八条、地公労法第七条の規定と同趣旨でございまして、この新しい規定の創設によりまして従来許されておった団交の範囲が縮小されるというようなものではないという点を御理解いただきたいのであります。
  109. 有馬輝武

    有馬委員 国家公務員の場合、この条文に見られますように、さっき私が申し上げましたいろいろな平静の保持だとか何だとかいうような形で大きな制約が設けられておる点はどういうことなのですか。
  110. 岡田勝二

    ○岡田政府委員 交渉の手続の中に、平穏静粛というふうなことが書いてございますが、それを含めまして、あそこの交渉の手続として書いてございますものがいわば交渉におきます当然なことでございます。ただ従来遺憾ながら多少そういう事態がございましたので、これをいわば確認的に書いたまででございまして、特段のそれ以上の意味を持つものではございません。
  111. 有馬輝武

    有馬委員 私のお伺いしておるのは、当然のことをなぜ確認的といったようなことでわざわざ規定しなければならなかったのか、これは労使が常識的に判断すべき問題であって、これらの規定を置く必要がどこにあるのか、このことを伺いたい。
  112. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは確認的でございますから、書かなくても当然のことを、まあはっきりさせるというだけのことでございまして、別段意味はございません。ですから、これは必要がないじゃないかと言えば、法律的には書く必要はないとも言えます。だから、現に現行法には書いてないわけであります。しかし、その後現行法の運用の実情から見ますると、管理運営の問題が往々にして団体交渉の席に取り上げられておる、しかもこれが管理運営事項であるかないかということについていろいろ問題を起こしたりいたしておりまするし、また、管理運営事項である、当然管理運営事項であるから団体交渉で取り上げるべきでないのにもかかわらず一方的に取り上げられるというようなこともありまして、この点を明確にいたしておきますることが無用なる紛争を避けるという意味からいって必要、とは申し上げませんが、賢明である、こういう意味で書いたわけでございます。
  113. 有馬輝武

    有馬委員 その無用なる紛争を起こしたりするのは、使用者側態度にあるわけなのですよ。これは常識的に解決すべき問題で、組合にも、また使用者側にも――組合は、当然でありますし、そんな常識は持っております。問題は、問題を紛争させておるのは、これはもう使用者側にあるのです。  それでは具体的にお伺いします。また林野庁を例にあげて、私の出身の省だから気の毒だけれども、お伺いをします。四十三国会の七月五日の本委員会林野庁長官が、管理運営事項でも労働条件とうらはらの事項は団体交渉をいたします、このような答弁をいたしておるのであります。大橋労働大臣もその際、そのとおりだということでこれを裏づけしておられるのであります。その後も参議院の社会労働委員会でも、これは三月十四日ですが、同じような発言をいたしております。  ところが、このような発言委員会においてはやりながら、昭和三十八年四月二十二日に林野庁が破棄した協約の中には、いわゆる管理運営事項という名をかりて労働条件に関する、勤務条件に関する、あるいは賃金の問題に関する幾多の協約が入っておるのであります。こういうことで管理運営事項に名をかりて交渉を拒否する、あるいは労使の慣行を踏みにじる、こういう事態がまぎれもない事態として出ておるのであります。このような恣意が許されるのかどうか、この点を林野庁からまずその経緯を明らかにして労働大臣見解伺いたいと思います。  あわせてこれは通産省の軽工業局にもお伺いをいたしたいと思うのでありますが、やはり林野庁と同じような事態職員住宅の建設の問題なり、あるいは作業被服の支給の問題等まで管理運営事項だということで、話し合いを、正式な団交を拒否する、こういう事態が出ております。この職員住宅の建設あるいは作業被服の支給、こういうものが管理運営事項だという理由をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  114. 森博

    ○森説明員 御質問ございましたように、昨年の四月に百九十件ほどの協約を破棄いたしているわけでございます。その考え方といたしましては、従来われわれのほうの管理体制も不十分な点もございまして、いろいろ問題のあったところでございますが、その破棄いたしました理由といたしましては、管理運営事項と法令に違反している事項、協約、そのほかに中央におきまして全林野なり日林労なりと団交のルールを協約を結んでいるわけでございますけれども、その協約によりますと、上部の協約に違反する事項、これはその抵触しない限りにおいて有効であるということになっております。また、下部の機関の団交できます範囲につきまして協約がございまして、下部機関の団交の範囲といたしましてはその下部機関の権限に属する事項、下部機関の権限に属しない事項は交渉の範囲外となっております。また、交渉の権限に属する事項におきましても、中央の制度基準に関する事項につきましては下部機関の団交の範囲外であるというふうに取りきめをいたしているわけでございます。そういう法令なり、中央できめております協約なり、そういうものにのっとりましてそういう破棄をいたしたわけでございます。
  115. 今村曻

    ○今村説明員 管理運営事項の範囲についての御質問でございますが、これは公労法第八条で定められておるところを実行しておるものでございますけれども、一般的に申しまして、管理運営事項であるかないかという境目のところは、一々個々の問題に当たって判定する以外に方法はないのであります。ただ、いわゆる管理運営事項と申しますものがしばしば労働条件というものと非常に密接な関係を持っておりますので、そういう場合に管理運営事項そのものは団体交渉の対象とはなり得ませんけれども団体交渉という方法ではなく、組合員の意見を聞いてそれを参考にしていくということは一向差しつかえないのではないかと考えております。  ただいま御指摘の住宅並びに作業衣の問題でございますが、住宅につきましては国家公務員宿舎法というような法律の規定もございまして、私どもは管理運営事項というふうに考えております。しかし、ただいま申し上げましたように非常に労働条件と密接に関係いたしておりますので、部内に宿舎問題についての理事者側組合側の協議会を設けまして、その場を通じまして組合の意見を十分に聞きながら円滑に運営をしてまいっておる次第であります。また、作業衣の問題につきましても同様でありまして、組合の意見を十分に聞きながらいままで円滑に運営してまいっておりまして、ただいま御指摘のありましたように団交を提案したけれども当局が拒否したというような事実はございません。将来団交の提案がありました場合にはその際にまた検討をいたしたいと思います。
  116. 三治重信

    ○三治政府委員 管理運営事項につきましてはこれは団交事項でないというのは一般的な原則でございます。ただ、管理運営事項でも、その管理運営事項が、経営者側が決定したことがその裏返しとして労働条件の変更あるいは勤務条件について変更をしいられるという場合には、そういう労働条件、勤務条件というふうな部面について団体交渉ができる、こういうのが一般的な解釈でございます。この点につきましては、管理運営事項の問題につきましてILOで問題になりまして、この点をさように報告してあるわけでありますが、それは社会的通念ということで別に問題になっておらないところでございます。  公共企業体その他でよく問題になりますのは、やはり公共企業体が行なう合理化の問題、その合理化をする結果、あるいは新技術を採用することによって労働条件の変更が職員にもたらされるというような場合には、公共企業体においても、先ほど二つの現業責任者から申し上げたように、それぞれそういう意味からは話し合いは相当行なわれているというふうに思っております。
  117. 有馬輝武

    有馬委員 たとえば軽工業局から御答弁のありました被服の問題なりあるいは職員住宅の問題、あるいは林野庁が破棄しております協約の大部分というものは、賃金なり、あるいは勤務時間なり、あるいは休日、休暇の問題なんです。これらの形で団交が拒否されておるのは事実です。協約が破棄されておるのは事実です。こういう状態で各企業体の恐意にゆだねられていいものかどうか、この点をお伺いしておるわけです。
  118. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは恣意にゆだねるようなことにはなっておりません。制度といたしましては、そういうことによって労働組合の当然の権益が侵害されたという場合におきましては、公労委に対して仲裁措置を申し出ることができることになっております。
  119. 有馬輝武

    有馬委員 次に、在籍専従の廃止の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この問題につきまして、私は本委員会での論議もずっと伺っておりましたが、その廃止しなければならない根拠として、専従のためには使用者の承認が要る。使用者は承認することも承認しないこともできる。そのため使用者の意見で組合役員の数及び質に影響を受ける可能性が出てくる。そのような可能性のある制度については残すべきではないというような論理の展開があったように記憶するのであります。  私は、使用者の承認が要るということと、使用者は承認することも承認しないこともできる、この二つの間には大きな飛躍があるんじゃないかと思うのであります。少なくとも使用者の承認が必要であるといたしましても、使用者が承認しない自由を持つかどうか、この点はまた別な問題だと思うのであります。それで、使用者が承認を与えなければならないものかどうか、この点について論議が深められなければならないと思うのであります。こういう点について私は、在籍専従を廃止すべきだというような点で、これらの点から深められた意見というものをまだ伺っておりません。ただありますのは、公労法第四条三項町廃止によりまして職員でない者が役員になれることになったので在籍専従制度は必要でない、これは労働大臣答弁の中にも見られるのでありまするが、こういった薄い根拠でこれを廃止するという点について大きな疑問を持つのであります。この点についての大橋労働大臣見解伺いたいと思います。
  120. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この点はたびたび本委員会において申し上げましたとおり、公務員というものは本来の性質上、全体の奉仕者として公務に専念すべき義務を有しておるわけであります。したがって、公務員本来の性格からいうと、在籍専従として労働組合の事務に専念するなどというのは、これは考えられないことなのであります。ただ、現行法のもとにおきましては、職員でない者の職員団体の役員就任が制度的に許されておりませんから、もし在籍専従を許可しなければ職員団体にその業務に専従する役員を置くということができなくなる。そこで職員団体の運営が思うように行なえないことになりますから、特に例外的にこの在籍専従という制度を認めたわけでございまして、公務員本来の性格から申しますと、これはもう特例中の特例扱いである、こういわざるを得ないのでございます。  しこうして、今回八十七号条約批准に伴いまして、本改正法におきましては、制度上役員の選出を自由にいたし、非職員でありましても職員団体の役員に就任できることにいたしたのでございますから、本来職員はその職務とする公務に専念すべきものでありますから、公務に専念すべき人を専従職員にするという例外的措置をこの際廃止する、これだけの理由なのでございます。これはきわめて簡単明瞭でございます。しかしきわめて有力なる理由であると私は考えております。
  121. 有馬輝武

    有馬委員 その点が問題なんでして、特に私はけさパブリック・サーバントとシビル・サーバントというものを明確に分けて考えるべきではないかというようなことも申し上げたのでありますが、仕事に専念しなければならないというのは、何も公務員だけに限ったことじゃないのです。問題は、公務員だけなぜそのような規制を受けなければならないのか、この理由が明らかでありませんからお伺いをいたしておるのであります。  また、外国の例なんかをあげられるのでありますが、フランスでもベルギーでもイタリアでも、類似の制度が法制上残されておることもこれは事実であります。  私がここで申し上げたいのは、少なくとも日本労働組合、これは公企体、並びに国家公務員にいたしましても、地方公務員にいたしましてもそうでありますが、企業別組織というものを法制上余儀なくされておるわけです。余儀なくされておるどころか、地方公務員等におきましては、ここでも論議がかわされましたように、縦断されて非常に小さなワクに閉じ込められておって、いわゆる在籍専従のワクをとろうとしても非常に困難な事態にさえ立ち至っておるというのが現実の姿であります。それと同時に、アメリカ等におきましてもむしろ在籍専従をもっとふやすべきだという傾向があらわれてきておること、これまた事実であります。  たとえば、私さっき農林省出身だとお話しをいたしましたが、私は農林省の中の食糧庁でありますけれども、一石と言った場合、林野庁の諸君の一石といえば木がどれだけかということを概念としてすぐ頭の中に入れてしまう。私は米俵しか頭に浮かばない。とにかくその職場に密着した組合活動というもの、これがなければ労使間の正常な運営というものができないのです。在籍専従という姿は望ましい姿なのです。いま一度お聞かせをいただきたいと思います。   〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それは有馬委員の御解釈でございまして、いままであります国家公務員法上の在籍専従あるいは公労法上の在籍専従の立法趣意というものは、在籍専従制度労使間の関係からいって望ましいからぜひこれを置こうという趣旨で設けられたものではございません。いままでありました在籍専従は、先ほど来私の申し上げましたるごとく、やむを得ぬ例外的措置として認められてまいったものでございまして、そういう点においては同じ在籍専従制度でありましても、現行法で取り上げております在籍専従有馬委員の御指摘になりましたような趣旨で将来考えられる在籍専従とは、全く制度的に趣旨の変わったものであると思うのでございます。そこで政府といたしましては、現行法上やむを得ず認めておるこの在籍専従はその必要な理由が解消したから、この際きれいさっぱりにやめていきたい、こう思うわけでございます。
  123. 有馬輝武

    有馬委員 この際ということでありますが、やむを得ない特例措置として認めたというとらえ方をすること自体に問題があると私は言うのですよ。少なくとも私は、在籍専従制度というものが労使にとって大きな障害があるとすれば別でありますけれども、それをことさらに今度の改正案の中で取り上げなければならない理由は、いまの再度の大橋さんの御答弁の中でも、われわれとしてはただ見解の相違だというようなことでは片づけられない問題として受け取らざるを得ないのであります。アメリカなんかではむしろ逆に、在籍専従をやったほうがよろしい、そういう形に持っていかなければならないという空気が生まれてきているのであります。やはりこういった角度からとらえなければいわゆる前向きとは言えないと思うのであります。どうなんでありますか。
  124. 大橋武夫

    大橋国務大臣 あるいはアメリカで、在籍専従がたいへんけっこうなものでこれをぜひふやしていこうという傾向があるかもしれませんが、日本の現行法においてつかまえておりまする在籍専従というのは、そういうけっこうなものであるという趣旨でできたのではございません。これは国家公務員法趣旨からいって、公務に専念しなければならぬ公務員を組合の業務に専従させるということは普通からいえばあり得ないことであります。しかし、制度職員以外の役員を認めておらぬものでございますから、これはやむを得ざる例外的措置として専従制度を認めたわけなのであります。したがって、アメリカでいう専従制度日本の現行法の専従制度とは、形は同じでありますけれども、これを認めるに至った趣旨は全く違うのであります。したがって、政府のいままで考えておりましたような趣旨で認められておりました専従制度は、今度の法律改正によってその必要なる根拠が全く失われましたからこの際廃止するのが当然である。もし将来御指摘のような、専従制度がたいへん必要なものである、けっこうなものであるということでございましたならば、これは政府といたしましても十分研究いたしまして、なるほどそうだということになったらそのときあらためて考えるべき新しい問題だ、こういうふうに思います。
  125. 有馬輝武

    有馬委員 その在籍専従制度のあり方というもの、アメリカと同じような実態はもうすでに日本にできておるのです。だから言っておるのです。むしろ労使にとって好ましい状態なんだから、この際無理してこれを廃止する必要はないじゃないか。新しい問題として検討する段階はもう過ぎておるのです。どうなんですか。
  126. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは政府の不勉強かもしれませんが、政府といたしましてはまだ勉強が済んでおりませんから、新しい問題でございます。
  127. 有馬輝武

    有馬委員 えらいすげない答弁をされるのですけれども、この点は、私は、盛んに前向き前向きということを言うのですけれども、ポーズだけは前向きで、実際に法文上取り扱うときには常にうしろを向いておる、ここに問題があると思うのですよ。  次に、チェックオフの問題についてお伺いをいたしたいと思います。改正案では自主運営ということを根拠として地公法上チェックオフを禁止しようといたしておるのであります。自主運営を根拠といたしまするならば、公務員組合についてだけ禁止するのは私は統一性を欠いておるのではないかと思うのでありますが、この点についてもお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  128. 松浦功

    ○松浦説明員 地方公務員法改正案においては、条例で定めました場合にはチェックオフは法律的に可能でございます。
  129. 有馬輝武

    有馬委員 これはあとであわせて人事院総裁からお伺いしたいと思いますが、次に政治活動の制限についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、八十七号条約批准とは無縁な法改正というものを企図したところに私は問題があると思うのであります。前の岸内閣の当時だったと思いますが、少なくとも公務員の政治活動制限については現在みたいなきびしい態度はなかったと思うのであります。結局安保の問題等を契機といたしまして、いまみたいな形で、国公法の百二条、地公法の三十六条、教育公務員特例法の二十一条等でこれを大きく制約することになっておるのでありますが、私は、憲法第十四条一項の法のもとの平等、この点から見ても政治活動の制限という点は大きな問題ではないかと思うのであります。  具体的にお伺いしたいと思いますが、国家公務員法と人事院規則で、国家公務員のやってはならない政治活動が八項目ずつに分けまして詳細に規定されておるのであります。たとえばある政治団体あるいは政治的意向を含んだバッジさえ勤務の場所においてはっけることはまかりならぬとか、人事院規則を見ますと、国家公務員というものは人であるのか、国民として認められておるのかという疑問さえ持たざるを得ないのでありますが、この点について人事院総裁の御見解伺いたいと思います。
  130. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 現行規則についてはいろいろな批判もございます。それも十分理解しておるわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても、政治行為の規制ということは、憲法第十五条のたて支えから申しましても、これは国家公務員たると地方公務員たるとを問わず一番重要なことであるというので、現行規則についてのいろいろな御批判についてもそういう角度からきわめて慎重な態度で臨まなければならぬものと考えておるわけであります。したがって、いまバッジがどうのというお話もございますけれども、それよりもやはりその根本をしっかりと踏まえた上で、われわれさらにそれらに対する御批判を聞いて検討を進めていきたい、こういう気持ちであります。
  131. 有馬輝武

    有馬委員 根本を踏まえてお伺いしておるのですよ。  それでは伺いますが、一四-七で帆制されている以外のことで何ができるのですか。憲法で保障ざれた国民の権利というものを国家公務員はどのような形で政治治動については表現し得るのですか。   〔「投票権がある」と呼ぶ者あり〕
  132. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 裏のほうからお答えすることは、なかなか適例をとっさに思いつきませんけれども、とにかく公務員としてのあるべきあり方と申します点からいって、現行規則に盛り込まれておることのほとんど大部分はやむを得ない規制であるというふうに考えております。
  133. 有馬輝武

    有馬委員 現在の国家公務員法で、そして人事院規則の一四-七でがんじがらめにされておって何にもできないことになっておるのですよ。いま選挙があるということばも飛び出しましたけれども、その選挙をすることについても、その判断を得る機会さえも、とにかく何かの集会の場所で政治的な発言をすることも、それを聞いて行動にあらわすことさえも制限されておって、何のたれべえに入れたらいいかの判断の基礎さえも奪われておるのです。一四-七をずうっと読んでごらんなさい。何らできないことになっておるのですよ。人事院総裁の御見解伺いたいと思います。
  134. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ともあれ先ほど申し上げましたようなことでございまして、一つ一つについての御答弁は、また具体的にたとえばという例をあげていただきたい。ただいまお話しのような、一切の政治活動が規制されているというふうには私ども考えておりません。一方においてはむしろ甘過ぎるという御批判さえあるわけであります。その辺の中間のところを考えていかなければならぬというふうに考えます。
  135. 有馬輝武

    有馬委員 甘過ぎるというような人たちは、これはうしろ向きの人たちであって、そんなことにあれしてもらっては困るので、甘過ぎるというような根拠、そういうことばさえあると言われるのですが、さっきお尋ねした国家公務員でできる政治活動というものを具体的にお示しください。何ができるのですか。
  136. 大塚基弘

    ○大塚政府委員 御説明いたします。御承知のとおり十四-七の規則は、政治的目的とそれから政治的行為というものを具体的に列挙しておりまして、この二つがかみ合ったときだけが制限されます。したがいまして、制限されないでできる行為というのは、政治的行為というものの概念の範囲、どの程度の行為までをとらえるかということによって違うとは思いますけれども、かなりいろいろな行為が、普通に世間のいう政治的行為として、十四-七にかからぬ、制限を受けない行為があると思います。たとえば、これはしばしば他の方面から御批判があり、あるいは管理者から御注意を受けているわけでございますけれども、立候補届け出前、組合内部において、ある組合役員を将来選挙に立候補させるということを内定しまして、種々御議論があるというような場合は、われわれのほうでは、公職選挙法の点からは別としまして、十四-七に抵触するとは考えておりません。これは十四-七制定当時からずっと一貫しております。その他選挙権の行使あるいは政党に所属するというような問題についても、当然抵触しないということになっております。
  137. 有馬輝武

    有馬委員 十四-七では、たとえば「特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること。」こういうことはここで大きな声で言われる人たちにとっては当然だろうということになりますが、「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。」あるいは「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。」、「政治的目的をもって、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。」あげれば切りがありませんけれども、さっきから申し上げるように、あらゆる面でがんじがらめにされておりまするから、抜け道というものは何にもないのです。私も国家公務員組合の役員をしておりましたが、幾ら知恵をしぼってみましても、この十四-七に抵触しない行為というものは発見できない。たとえば具体的な例でお伺いいたしますが、この十四-七の侵害で、鹿児島地裁で、これは全逓の鹿児島地区の姶良支部の執行委員の、私と同姓の人でありますが、有馬隆志さんという人が、第百二条違反として罰金三千円に処せられております。そこで、その有馬さんというのは簡易保険の外務職員でありまして、この人が魚屋で魚を買いながら投票の話を時間外にした、あるいは酒屋でしょうちゅうを買いながら投票を依頼した、かじ屋で注文してあったかまを受け取りながらある人の話をしたというようなことが、十四-七の違反として取り上げられて罰金刑に処せられておるわけであります。こういう形で運営されて、しかもその判決が、もともと国家公務員は全体のための奉仕者であって一部の奉仕者ではなく、いかなる内閣に対しても常に中立でなければならないというようなことで片づけられておるのであります。このような政治的活動の制限というものと、憲法で保障された基本的な人権の関連において、私は十四-七なんて悪い規則の最たるものだと思いまするが、この点について、いまの具体例をもって人事院総裁の御見解伺いたいと思います。
  138. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 具体的事例はその判決を読みまして事実を確かに把握いたしませんと、軽々しくは申し上げられませんけれども、その判決に一部公務員のあるべき理念を述べておられます。それはまことにそのとおりであろうと思います。そこからいまの政治行為の規制に関する規則ができておるものと確信するわけであります。この規則に対して、一方の目から見ますれば、これはいまお話しのように、きつ過ぎるという御批判もございましょうし、一方の目から見ますればまた甘過ぎるという御批判もある、これは事実であります。そういう面面の御批判があるところに、この規則がきわめて適正なものであるということを証明するものではないか、そこまでさえも考えておる次第であります。
  139. 有馬輝武

    有馬委員 人事院総裁の御答弁とも受け取れない御答弁伺いまして私は非常に驚いた。問題は、私が午前中からお伺いをいたしております基本的なものの考え方というものは、単に公務員というあいまいな概念でもってとらえて、国家の行政に対して直接の責任を持たないような人たちにまで、あらゆる制限をかぶせておる。一般の労働組合と区別すべき根拠というものがないにもかかわらず、いまあげましたような政治活動の制限まで強制され、そしてさっきも申し上げたように、たとえば実施の時期等においても、せっかくの仲裁機関である人事院の機能を阻害する政府態度、そういう状況の中で奪うべきものは全部奪ってしまう。この基本的な点に一番問題があるのではないか。私は、実態のしに即応して法というものは考えられなければならぬと思うのであります。一方的に法が運営されてはならないと思います。そういった意味で、特に今度の国家公務員法改正のときなど、この労働基本権をあまねく与える八十七号条約の精神にのっとって検討していく絶好の機会ではなかったか。特に占領時代に、先ほど答弁があったような経緯をたどって制定された国家公務員法でありますだけに、これらの点について根本的に再検討すべき絶好の機会ではなかったか、こう思いまするが、ただ末梢的な面に終始し、しかも人事院の権限というものは大幅に奪われていく。これでは何のための八十七号条約批准か、私には理解できないのであります。そういった立場から、基本的な面について人事院総裁の御見解を再度お伺いをいたしたいと存じます。
  140. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 全くいまお話しの点は御同感に存じます。先ほど来現行法に非常に固執したようなことをお答え申し上げましたけれども、その真意は、もちろんわれわれとしては現行法は一応筋が通っておるものと考えます。そうしてそれをもっと理想的な形で完全に実施してまいりたい、その意欲に燃えておりますからして、現行法擁護のような立場に立ってしまったわけでありますけれども、要するに、たとえばただいま御指摘のありました給与勧告というようなものについては、この人事院に与えられました現行法上の一つの最も大きな機能であると考えております。いわば団交権の代表的機能というものはほかにもたくさんございますけれども、その中の最も重点をなすものはそれであろうというふうに考えます。最近幸いにして、実体、内容の点においてはこれを尊重していただいてまいっておりますけれども、残念ながらもう一息というところで、いまお話しの実施時期というようなものに対して、どうしてもわれわれの所信が貫き得ない状態にある。せめてそういうようなことからでももう少しわれわれはふんばって、現行法の使命として人事院に与えたところを完全に貫いていきたい。たとえばいまの政治行為の規制の問題などもありますけれども、何もこれはことばの上では現行法は悪いということは私は申しませんでしたけれども、しかしいろいろな御批判があることは十分かみしめながら、少しでもこれを理想的な適正な形に持っていきたい。ことにまたILO条約批准されるということになれば、その条約の本旨ともにらみ合わせて、現行法の運用をそれに適切に合いますように持ってまいりたい、そういう気持ちを持って私どもは現行法の擁護――擁護ということばはよくありませんけれども、しばらくこの現行法で私たちの努力を見守っていただきたい、こういう気持ちで申し上げておるわけであります。
  141. 有馬輝武

    有馬委員 終わります。
  142. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十二分散会