○
松野鶴平君 このたび、私が
議長を
辞任したことにつき、ただいま
佐藤尚武君から、
議員一同を代表されまして、身に余るお
言葉をいただき、
感謝にたえません。
私は、第二十四回
国会、
昭和三十一年四月、
議長に選任されましてから六年
有余、その間、三たび
諸君の御
推挙を賜わり、栄誉ある本院の
議長の席を汚して参りました。私は、昨年五月ごろから健康を害しまして、養生に努めて参りました。その間、
議長の
職責にいささかなりとも欠くるところがあっては、
参議院のため、また、
諸君に対し相済みませんと存じ、この要職にたえ得るやいなやを疑懼したことが一再ならずございました。幸いに、本院の意義ある慣行に従い、
通常選挙が行なわれ、
半数の新
議員を迎えたこの
機会に
辞任することを得ましたことは、私としましてまことに時期を得たことと存ずるものでございます。
在任中を顧みまするとき、成果の見るべきものが少なかったことに対し、また、
諸君の御希望に沿うことのおそらくは多くなかったことにつき、私は深く恥じ入るものであります。
演壇に立ちましたこの
機会に、所感の一端を述べることをお許し願いたいのでございます。
私が
議長に
就任した当初、本院に非常な騒擾がありましたことは、御
承知のとおりであります。私はこれにかんがみ、本院の
権威を回復し、
使命を達成するためには、何としても院の
運営を
正常化せねばならぬとの決心をしました。幸いに御
同調をいただいた各会派によって、翌三十二年、
正常化の申し合わせがなされ、自来今日まで、はなはだしい混乱はなく推移して参りましたことは、御
同慶の至りでございます。
国会の
正常化が問題になります際には、常に
国会法や
規則の
改正が論ぜられ、
少数意見尊重や
多数決原理の確認が叫ばれます。必要な法規の
改正や重要な
会議原則の
尊重は、もとより大いにけっこうでございますが、私は、
国会運営の根本は、
お互い国会議員の心がまえにあると存じます。
各党各派ないし各
議員が
国民に対する責任を自覚し、みずからを
尊重するとともに、他に対しても寛容と信義をもってすることが、何よりも必要であると信ずるものであります。
お互いに
参議院を辱かしめないようにとの気持をもって
忍耐強く話し合えば、大ていのことは解決するものと信じます。私は、このような信念をもって
議長の
職務を行なって参ったつもりでありますが、これはすべて
諸君の御
同調の結果による
たまものであると
感謝いたしております。
これに関連してきわめて肝要なことは、本院は、良識に従い、常に自主的な態度を持するということであります。
国民の声に耳を傾けることは、
お互いに
国会議員として当然のことでありますが、院内の事の処理にあたっては、みだりに院外の運動に影響せられたり、
利害団体の圧力に屈することのないようにいたさねばなりません。この趣旨に関しましては、対
衆議院の関係においても同様でありまして、両院が協調しながらも、各院がその
自主性を堅持することが、
二院制度の要諦であります。かくして初めて
参議院の
権威は高まり、
使命は達成せられるのであります。
ただいま、
重宗君が新たに
議長に、また、
重政君が副
議長に選任せられました。
諸君御
承知のとおり、
両君ともに
人格円満、
識見高邁の士であります。
参議院は、この新正副
議長のもと、
国政の上にいよいよ重きを加えるでありましょう。
私も健康に留意し、
諸君とともに、
わが国議会政治の完成のために、さらに
微力をささげたいと存じます。
ここに、
議長在任中の御
支援に
感謝し、なお将来の御
厚情を
お願いいたしまして、
議長退任のご
あいさつといたします。(
拍手)
————・
————