○大池
政府委員 土地調整委員会は、御承知のように
鉱業と
一般公益または農業、林業その他の
産業との
調整をはかるために設けられたものでありまして、その所掌事務は、一つは鉱区禁止
地域の指定、第二は
鉱業権または採石権の設定等に関する異議の裁定、第三は
鉱業または採石業のための土地の使用、収用その他の
利用に関する異議の裁定、第四は核原料物質の探鉱のための土地の使用または収用に関する裁決に関することの四項目に大別されておりますが、そのうち二と三の裁定事件は比較的少なく、四の事件は今日まで一件も参っておりません。取り扱い事件の最も多いのは、何といっても鉱区禁止
地域の指定であります。
今その大要を御説明申し上げたいと存じます。
昨年中にこの指定請求を受けましたものは、農林、建設、厚生各大臣より一件ずつと各県知事より十件、合わせて十三件であります。そのうちダム
関係のものが最も多く、八件になります。
農林大臣の請求にかかるものは三毛別ダム
関係でありまして、羽幌町三毛別にダムを建造して、下流水田の補水、新規開田の用水を
確保し、穀倉地帯の羽幌地区
開発に資するというもので、これがためダム建設及び貯水池保護のために一定
地域の鉱区禁止をしたいというものであります。
建設大臣の請求にかかるものは鶴田ダム
関係でありまして、鹿児島県の川内川水系の総合
開発の一環として大口市地内に鶴田ダムを作って、洪水調節をなし、民生の安定と土地
利用及び
産業立地条件の
改善に資し、新規発電並びに既設発電
設備の改造をしようとするものであります。しかるに、この地方は地質的に崩壊、埋没、漏水のおそれがあるので、一定
地域の鉱区禁止を求めておるものであります。
厚生大臣の請求は十和田八幡平国立公園内の
地域に関するものでありまして、十和田湖、奥入瀬川、八甲田連峰の絶景を保護するために一定
地域の鉱区禁止をいたしたいというのであります。
県知事から請求されたダム
関係六件は、まず新潟県知事からの笠堀ダム
関係、これは新潟県笠堀及び塩野渕地内に五十嵐川総合
開発のために笠堀ダムを作って、洪水調節をなすとともに、灌漑用水を
確保し、あわせて発電をもしようとするものであります。このために工事の円滑な
推進と、ダム及び貯水池の保全のために、一定
地域の鉱区禁止を求めてきたものであります。
第二は、山口県知事からの菅野ダム
関係でございまして、これは岩国、徳山両
工業地帯の急速な
発展に伴い、
工業用水の不足に対処し、あわせて洪水調節、発電に資するために、菅野ダムを作って錦川の総合
開発をしようとするものでございます。このダム工事の
推進とダム及び貯水池保全のために、一定
地域の鉱区禁止を求めて参りました。
第三は、福岡県知事からの那珂川ダム
関係でございまして、これは福岡県那珂川町地内にダムを作って、洪水調節をなし、灌漑用水、上水道用水を
確保しようというもので、そのダム及び貯水池保全のために、一定
地域の鉱区禁止を要請してきたものであります。
第四は石川県知事からの犀川ダム
関係でございまして、これは犀川総合
開発の主体となる洪水調節を行なうとともに、灌漑用水、上水道用水及び
工業用水を
確保し、あわせて発電に
利用するために、犀川ダムを作り、発電所を新設しようとするもので、この工事の
推進とダム及び貯水池保全のため、一定
地域の鉱区禁止を要請して参りました。
第五は東京都知事及び山梨県知事からの小河内ダム上流集水
地域関係でございまして、御承知のように東京都の給水量の約六割は多摩川水系に仰いでおりますが、小河内ダム周辺を起点とした上流集水
地域は
基盤が風化しやすく、風雨によって貯水池への土砂の流入が多いため、水源涵養保安林や土砂流出防備林等の指定をいたしまして、集水
地域の保護に当たっておるので、地表損傷や土砂流出
防止のために、集水
地域の全域について鉱区禁止をしてもらいたいというものであります。
第六は山梨県知事からの西山ダム及び発電所
関係でございますが、早川水系の総合
開発の手始めに、西山ダムと発電所を作り、県内消費
電力の半分に相当する発電を行ない、あわせて洪水調節をなし、砂防にも備えようとするもので、このためにダム及び発電施設保護のため一定
地域の鉱区禁止を求められたものであります。
以上がダム
関係のものでありますが、それ以外の四件は、山梨県知事からの野呂川発電所
関係、湯島発電所
関係奈良田第一、第二発電所
関係、この三つのものでございますが、野呂川
関係のものは発電のために野呂川に取水ダムを作り、砂防にも備えようとするものであります。湯島の方は湯川等から、また奈良田の方は野呂川からそれぞれ導水して発電しようとするものですが、これら三者は、いずれも発電施設保護のために一定
地域の鉱区禁止を求められたものであります。
残りの一件、すなわち第四は東京湾北部及び中部に関するもので、千葉県知事からの請求にかかわるものでございます。これは広範囲な京葉臨海
工業地帯を造成して、鉄鋼、
石油、
電力等の基幹
産業並びに
関係諸
産業の育成をはかるとともに、公共用地を
確保し、文教施設や住宅地を
整備しようとするために、千葉県が大規模な埋立
事業を
計画いたしましたため、その
事業の円滑な
推進のために、一定範囲の海面の鉱区禁止を要求してきたものであります。
以上が鉱区禁止指定の請求を受けた諸件でありますが、これらの詳しい処理状況は二、三日中に報告書を作ってお手元にお届けいたす予定でございます。
このほかに取り扱いました事件としては、土地収用法による訴願につき建設大臣より当
委員会の意見を求められましたものが三件ございます。
その一つは立石駅拡張
整備工事についての土地収用法による訴願でありまして、京成電鉄株式会社が東京都周辺の交通緩和のために、近く都の地下鉄乗り入れ等とも関連いたしまして、現在四両
編成の車両の停車駅でございます立石駅を八両
編成の停車可能駅とするために駅の拡張を必要といたしまして、これに伴い特別区道のつけかえ工事の必要に迫られ、土地収用法上の
事業認定を東京都に申請をいたし、その認定を受けましたところ、訴願人は、現在のところではその必要はない、もし必要だとしても駅を他に移した方がさらに便宜だから、都の
事業認定を取り消せと主張したものでございます。当
委員会は慎重審議の結果、訴願は成り立たないものとしてその旨の意見の答申をいたしました。
第二は滝発電所建設工事とこれに伴う付帯工事に関する福島県収用
委員会の裁決に対する訴願でありまして、東北
電力株式会社が
電力需要の増加に応ずるために、只見川にダムを作り、滝発電所を建設するのに、下流の危険
地域の家屋移転を交渉したけれども、不調となりまして、収用裁決を受けましたところ、訴願人は事前の交渉が不十分であり、かつ補償金額も少ないという、この二つの理由で収用裁決の取り消しを求めて参ったものであります。これも訴願人の主張に無理があり、特に補償金額は訴願の対象となりませんので、願意受け入れることができませんで、その旨答申いたしました。
第三は、穴内川発電所新設工事に関する土地収用及び使用裁決に対する訴願でありまして、これは四国
電力株式会社の発電所新設工事とこれに伴う付帯工事のための土地収用並びに使用を高知県収用
委員会が裁決いたしましたところ、訴願人は公共
事業だからといって純然たる四国
電力のような営利会社が収用法に訴えるのはけしからぬ、正当な補償もしておらぬ、また協議も不十分だと主張しております。これは当
委員会で受け取ったばかりでございますので、ただいま慎重に審査中のものでございます。
なお、昨年十二月押し詰まりまして、海岸保全区域内における土砂採取不許可処分に関する裁定申請と送電線移設工事に関する大阪府収用
委員会の裁決に対する訴願について建設大臣より当
委員会の意見を求めて参りました。前者は、香川県土庄町池の浦海岸で、土砂採取の許可を願い出でましたところ、その場所が海岸保全区域に指定されているために国土保全に支障ありとして、土庄町長が不許可といたしましたので、これを取り消して許可をしてもらいたいとの裁定を求めてきたものに集団的に移転しまして、その
研究の
合理化、能率化をはかりたいと考えております。そのために、来
年度におきましてはその
調査費といたしまして一千万円を計上いたしております。
そのほか試験
研究のための特別
研究費あるいは
研究機関の
設備施設の
整備費というものを計上いたしております。
なお、特許の審査能率を
改善いたしますために、特許の
予算も三十六
年度七億四千四百万
程度でありましたが、さらに一億
程度を増額いたしまして、八億五千三百万余りを要求いたしております。
次は
産業基盤の
強化でありますが、特に従来からやっておりますところの
工業用水確保のために、三十六
年度二十四億九千三百万円余りでありましたのを、十二億二千五百万余りを増額いたしまして、三十七億一千九百万円余りを要求いたしております。
以上が、通産省の三十七
年度における要求の概要であります。