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1961-10-26 第39回国会 参議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十六日(木曜日)    午前十時二十四分開会    ———————————   委員の異動 本日委員小山邦太郎君辞任につき、そ の補欠として安井謙君を議長において 指名した。    ———————————  出席者は左の通り。    委員長     後藤 義隆君    理事            田中 清一君            武藤 常介君            村上 春藏君            内村 清次君    委員            稲浦 鹿藏君            岩沢 忠恭君            小沢久太郎君            紅露 みつ君            西川甚五郎君            田中  一君            藤田  進君            田上 松衞君            小平 芳平君            村上 義一君   国務大臣    建 設 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    建設省河川局長 山内 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   説明員    建設省河川局次    長       鮎川 幸雄君   参考人    滋賀県知事   谷口久次郎君    茨城県知事   岩上 二郎君    日本大学教授  鈴木 雅次君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○水資源開発促進法案内閣提出、衆  議院送付) ○水資源開発公団法案内閣提出、衆  議院送付)    ————・————
  2. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  水資源開発促進法案水資源開発公団法案、両案を議題といたます。  両案につきましてまず参考人方々から御意見を聴取することにいたします。御出席いただきました参考人の方は、滋賀県知事谷口久次郎君、茨城県知事岩上二郎君、日本大学教授鈴木雅次君、以上の三君であります。参考人方々におかれましては御多忙中のところ御出席いただきましてありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見を聞かして下さるようお願いいたします。それではこれから御意見を伺いたいと存じます。時間の関係上お一人十五分程度にお願いいたしたいと思います。委員会の運びはまず参考人の方からの御意見の御開陳が全部終わりましてから、委員各位よりの質疑にお答えをしていただきたく存じます。それでは初めに谷口参考人にお願いいたします。
  3. 谷口久次郎

    参考人谷口久次郎君) 私は滋賀県知事谷口久次郎でございますが、われわれ水資源法案は初め衆議院提出をされました当時、上流流域府県のわれわれとしましては非常にまあ不満と申しますればはなはだ失礼でございまするけれども、幾多の不満な点を持っていたということであります。それにつきましては、われわれはこれに対してぜひとももっと実情に合うような修正をしていただきたいということを常に強調いたしましたところが、まあ衆議院において相当修正をしていただきまして、われわれも幾多希望の点が入れられたということは非常にわれわれとしても喜ばしいことなんでありまするが、しかし、まだわれわれの要望しておりました点が完全にいれられたということは申されません。今後参議院において十分ひとつ御審議の上、われわれの要望を少しでもいれていただくようにお願いしたいと切に希望してやまぬ次第であります。  私は、御承知のとおり水資源と申しましても、これは琵琶湖が主体でございまして、他の水資源の県とはおのずから利害関係も異なるものがあろうと思いますので、それで私がきょう申し上げることは主として琵琶湖についての関係を申し上げたいと思うのであります。あるいはこの関係から申しますと、茨城県とあるいは似通ったような利害関係を持っておるのではなかろうかと思われまするけれども、しかし琵琶湖は何と申しましても大きい水資源関係がありまするので、非常に異なったものがあるということを御了承を願いたい、かように存じておる次第であります。  まあ琵琶湖は御承知のとおり、滋賀県の六分の一という面積を持っておるのであります。それで琵琶湖下流には一千万という住民がおる、そしてそこには日本で四大拠点と申しまするが、四大拠点でなしに私としては二大拠点一つとしての工業を持っておるというようなことから、非常に近ごろ水を要する、この水が足らぬため地下水を揚げていくというような関係から、大阪あたりでも地盤が年々沈下をして将来非常に心配の多い事態が生じておりまするので、それでわれわれ滋賀県としましては、そのときにこの水をたたいえておる琵琶湖というものが上流にあるという以上は、われわれは同じ近畿に繁栄をともにする地帯に住んでおる者としては、どうしてもこの際にこの水を開放をして下流ために利用していただいて、そして今後この繁栄がこれによって行き詰まることのないようにという考えを持っておりますので、この水資源開放するということについてはいささかもやぶさかでない考えを持っておる次第でありまするが、しかしそれだけに非常にこの関係が広範にわたりまするので、単にダムをこしらえてそこから水を流すというようなことから考えましても、たいへんその関係が深刻でありかつ広範であるというような関係がありまするので、われわれは水はあくまでも流すけれども、これは県民被害が生じた場合には、あくまでもこれは補償してもらいたいということを建前としておる次第なんであります。  私は、最初この水資源の二法案を拝見いたしましたときには、これはどうもこの法案は法の建前からすれば、こういうことでなければならぬのかと思いまするけれども、いかにも上流県の犠牲において下流県に据え膳を食わせるという感じがしたのであります。これではおさまらぬぞということで、いろいろ県の関係も研究して参った次第でありまするが、御承知のとおり琶琵湖は年間五十四億トンと言っておりまするけれども、大体六十億トンぐらいの水を下流に流しておるということなんであります。ところがこれは明治時代におきましては、上流の山林が非常に繁茂しておったというような関係から、水は年間大体通じて平均化されて流れておったのであります。ところが近ごろ上流の山が荒廃いたしましたので、これが洪水時には非常に大きな水が出てきてそして滋賀県内を荒らすばかりでなしに、下流も非常に被害をこうむるというような関係がありまするので、今度の琵琶湖水資源の問題と申しますれば、この水を平均化してそしてすべてを有効放流するということが今度の水資源問題の目的であろうと思いますので、そういうことになりますと降雨期でないときには琵琶湖の水がどんどんと減ってしまって、ときによっても二メートル、三メートル、四メートルというように水位を低くしなければならぬというような関係にあるらしいのでありまするが、これが降雨期になって元に復元するというようなことによって、日々の流れていく水量というものを平均化し、これを有効化するということに帰着するのでありまするが、そういうことになりますと、今の琵琶湖のいわゆる平均水位、平常水位と申しまするのは、大阪湾の干潮時における八十五メートル六十五センチというものがいわゆるゼロ点となって、そこに水位を置いておるということであります。その水位からもしも一メートルあるいは二メートル、三メートル場合によっては四メートルというような水を下げるということになりますと、滋賀県のこうむる被害は非常に大きいということになってくるのであります。しかしながらわれわれはそうしなければ下流繁栄を維持することができない、こういうことであればやはりこの琵琶湖を利用して、そうして下流に流す水を皆有効化して流すということはこれはどうしても避けることのできない問題であり、またわれわれとしてもこれにはきん然として琵琶湖開放をしなければならぬ、こういう観点に立っておる次第なんであります。  しかしながらこの琵琶湖は御承知のとおり、私は衆議院では、この琵琶潮のできたということは三十万年ほど前にできたということを学者から聞いておるが——こう申し上げたのでありますが、近ごろ京大あたりでよく研究してもらった結果が、琵琶湖はちょうどできてからはっきりと四百万年はたっておる、こう言われております。これは世界で一、二を争うほどの古い湖である。しかしこの古い湖がいまだに非常な若さを持っている、ということは、その陥没する状態あたりはいまだに年々陥没している、非常な若さを持っていると言われているのであります。そんな関係で四百万年もたっているという関係から、滋賀県民はこの琵琶湖というものと生活は全く一体になっているということであります。山の奥に住んでおっても琵琶湖との関係は、生活的にもあるいは経済的にも、これと関係なしには滋賀県には住むことができぬと言われるほど、非常に県民生活というものとの関係は深いということであります。そんな関係から、もしこれが今度のこの水資源との関係において、そして単に下流ために利用するのじゃということで何らの補償もなく、何ら滋賀県民生活ということに考慮を払われぬというようなことになりましたら、それこそたいへんな事態が起こってくるということであります。私は衆議院でも申し上げたのでありまするが、単にこの上流においてダム一つこしらえるということだけでも、あの蜂の巣城というようなああした事態が生じてくるのであって、琵琶湖はやはり県民全体に影響を持つということであるから、これをいわゆる水位を上下して、そして利用しようというようなことになってぐると、これに対して何らかの措置を講じてもらうということでなかったら、おそらく県民から猛然たる反対が起こってきて、遂には収拾することのできぬような事態が起こるのじゃなかろうか。こう申し上げておったのであります。私はそのときにもこれに不用意にさわるということになってきたら、おそらく滋賀県民、まあ昔で申しますれば十個師団くらいの人間琵琶湖の周囲にスクラムを組むというぐらいのことは一時間も待たずにできると、こう言うておるのであります。そういう関係で他の水資源関係よりは非常に深いということなのであります。  そういう次第でありまするので、私はあくまでもこの補償ということ、これは完全にやっていかねばならぬということがわれわれの主張なんであります。ところがこの補償をしてもらうと申しましても琵琶湖の今度の水資源の指定された関係ができて参りますと、第一番にあらゆる点に影響を及ぼすのでありまするが、そのうちで最も大きいものはやはり漁業の問題である。漁業に及ぼす影響というもの、それから湖上交通の問題、これは近ごろ陸上交通が発達いたしまして昔のような状態ではありませんけれども、以前この陸上交通の発達せぬ時代でありましたら、それこそ指一本さすことのできぬような状態でありまするか、この湖上交通の問題、それから港湾の問題、港湾が水が単に低下したということであれば港湾の仕方もありましょうが、それがまた復元してきて元のものになるというようなことになって参りますと、もう滋賀県には港湾というものは用をなすものがないというようなことになって参るわけであります。それからもう一つ大きな問題は何と申しましても滋賀県は琵琶湖あることによって観光県として生きていけるということであります。近ごろこれが国際観光的な関係も生じて参りまして非常に将来を期待されるような関係が生じておりまするので、この点についてもわれわれは十分なるひとつ補償をしていただきたいということを申し上げておるのでありまするが、これについてはいろいろ構想を練り、またいよいよこれが水資源として指定される場合にはその点についての構想も十分にしていただけるものと、かように存じておるのでありまするが、今申し上げましたようにわれわれの補償と申しましても、金をもらえば済むというものは漁業だけであります。漁業関係は金で済ませる問題も多々あるのでありまするけれども、その他の関係はすべて施設でやってもらうということでありまして、この施設がわれわれの要望に副わぬということになってくると非常に問題が多いということであります。かりにまた現在はそういうようなことは直接見えて参らぬにしましても、やはり水位低下するということになれば、当然この地下水低下をしてくるということであります。そうなりますと、やはりこの飲料水の問題にしましても、あるいはまた灌漑水の問題にしましても非常な影響を受けて、これがどうなっていくのかということは、われわれも実際現在においても関心の中心をなすものなんであります。で、そういうことは、幸いにして地下水低下はわれわれの心配するほどのものでなかったということであれば大へんけっこうだと思いまするけれども、私はいろいろこの一つ工事を行のうても地下水低下するような現象が起こって、これに対する補償というようなことに現在でも苦心しておる問題があるのでありまするから、これを三メーター以上も水位低下するということになりましたら大へんな事態が起こってくるであろう、これらに対してはどういう対策を講じていくかということ、むろんこれは琵琶湖の水を逆流して、そしてそこに簡易水道を作り、上水道を作っていくというようなことも必要でありましょうし、また灌漑水につきましては、河川上流ダムを作って、そして必要のときにはそれを流してそして灌漑用水に使うとか、いろいろそういうことをしなければならぬのでありまするが、それが前の法案でありますと、いわゆる水源の涵養とか保全とかいう文字はどこを探してもなかったので、われわれは非常な不満を持って、これはぜひとも入れていただきたいということを申し上げておったのでありまするが、幸いに衆議院においてはそのことが修正されました。どうかひとつ参議院におかれましても、そうした点について十分ひとつ御研究をいただきまして、われわれの不満のないようにひとつやっていただきたい、かように存じておる次第なんであります。  そんな関係から、琵琶湖の問題は他の水源県というものとは非常に異なったものがあり、またそれが県民生活というものに深刻な関係を持っておるということ、もしこれをおろそかにするということになりましたら、それこそ県民生活の上には救うことのできぬような事態が起こってくるのじゃなかろうか、その点を私は非常に心配をしておるということでありまするが、ところが今申し上げましたようにわれわれは現に現有の琵琶湖でも非常な苦い経験をなめておるということであります。昔は琵琶湖は結局最後は瀬田川へ流れるということで、あそこの一本へ水が流れていくということでありまして、あそこで水を操作をするということで、南郷というところに洗せきができておりまして、その南郷洗せきによって水位の上下をはかって、そしてこの洪水時であるとかあるいは渇水時であるとかというようなときに、あそこで操作をしておるのであります。ところがこれをも滋賀県のため操作されるかと申しますると、洪水時になると全く下流ため操作をされるということでありまして、あの淀川水系のちょうど淀川沿岸において水位が四メーター五十とか四メーター八十というところへ達しますと、これは危険水位であるということで、あの南郷洗せきの閘門はどんな洪水でもぴんと締め切ってしまう、そして滋賀県に水のたまるということ、あるいは家屋へ浸水するとか、あるいは田畑に冠水するということはおかまいなしにそれをやっておるというような状態で、これあたり滋賀県民は非常に不満を持っておるのでありまするけれども、昔の時代にそういうことができて、県民はそのことに対して何らの発言もせず、何らのことも申し上げずにこれができてしもうたというようなことで、それがためにあの伊勢湾台風のときには稲に対してだけでも六億円という被害を農民は受けておるのであります。ことしあたりのこの六月の出水のときあたりでも、農家の受けた被害というものはもう計算上のものがあると思われますので、植えつけた稲はすっかり腐ってしもうて、あるいは岡山県へ行って苗をもろうてくるとか、滋賀県内の他のところから株分けをして供給するとかいうようなことで、それを埋め合わせをしたのでありますが、それが全く下流利害ためにそうやられておるということで、あの南郷洗せき開放されて、そしてこれがどんどん水は思う存分はかすということであれば、滋賀県はほとんど被害というものはないのであります。ところがこの下流においては、そうなって淀川沿岸というものが危険に瀕し、またそれが決壊を生ずるということになりましたら、この前大洪水を超こして淀川沿岸が決壊いたしましたが、そのときは局部的にでも一千億というような被害があったということで、いわゆる大の虫を生かして小の虫を殺すということ、そういうことのため滋賀県民はそのことを宿命のごとく思って忍んでおるということなんであります。  しかしながら今度は、ここで申し上げても事態はおわかりにならぬとは思いますけれども、琵琶湖に一番狭いところがあるのであります。その狭いところに今度堰堤をこしらえて、これを南と北との琵琶湖と分けて、北の琵琶湖操作をしてそして水位の調節をはかっていくと、こういうことになっておりまするが、ここにそうした施設が生じたときには、これの管理ということに対して、われわれはやはり一つの強い発言を持つということでなしに、公団等でそれが思う存分に操作されるということになったら、今度はもう壊滅にひとしいような事態が起こるのではなかろうか、この点あたりは私は特に心配をしておるのであります。むろんこれの管理規程というものはできるのでありますが、時によると、こうしたことに対してやはり議会においてよく御審議を願うて、そしていろいろ御発言の中に、地方は非常に不満を持ち越し、また被害を甘受しなければならぬということのないように御配慮をいただきたい、かように存じておる次第なんであります。  私はこの法案についてはまだまだいろいろ七カ条ほどの修正要望というものを持っておるのでありますが、そのうちの幾つかは満たされたということではありますけれども、まだ幾つ修正をしてもらいたい点は多いのでありますけれども、しかしながらいろいろな事態を御考慮をお願いしなければならぬ点において、われわれ満足をするということは、これは時によるとむずかしいのではなかろうかという心配を持っておるのでありまするが、しかしながらこの審議の御過程におきまして、十分われわれのこうした事態を御了察をいただきまして、そして十分御審議をいただいて、そして被害を少しでも少なくするということに御高配をいただきたい、切にこのことをお願い申し上げる次第であります。  なおこれは申し上げておりますると際限がございませんので、以上申し上げまして、またあとからお尋ねでもございましたらお答えを申し上げることにして、以上をもって私の陳述を終わりたいと思います。
  4. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ありがとうございました。  次に岩上参考人にお願いいたします。
  5. 岩上二郎

    参考人岩上二郎君) 私茨城県知事岩上二郎でございます。水資源法案につきまして茨城県知事として、また水源県の知事として意見を述べさしていただきたいと思います。  私は、水は人間の歴史とともにあるものであって、したがって治水利水というものは同時に計画され実施さるべきものであるという基本的な観念を従来持っておる一人であります。その観点からいたしまして、水そのものに対する従来国の政策は、どちらかといいますれば治水に重点が置かれまして、利水面がむしろないがしろにされてまたうらみがあると思うのであります。今日その反動といいますか、そういう要求が非常に強く表面に出て参りまして、このたび提案されました二法案という問題も、当面の緊急対策として過度集中地帯へのある程度の水の供給はやむを得ないことと考えられるのでございますが、たまたまやはり未開発水源県におきましても用水確保し、今後の開発計画を充実させていく必要があることを痛感せざるを得ないのであります。  ここで利根川あるいは霞ケ浦について若干申し述べさせていただきたいと思いますが御承知のように利根川は江戸川を洪水から守るために、徳川幕府の手によって遠く銚子につけかえられた河川でございまして、このときから本県は毎年のように洪水の危険にさらされて、その犠牲を負って参ったわけでございます。明治の末期から改修工事が進められて参っておりますが、最近における特に治水関係利根川水系直轄工事本県分担金等を御披露申し上げますと、昭和二十八年から三十四年までが実に二十四億二千余万円、三十五年次降は推定でございますが約五十三億、これを本県分担金として背負う、こういうふうなことになると思うのでありまして、これが本県の財政を従来あるいは今後とも非常に大きく圧迫する要因となっておるわけであります。また一方利水面におきましては利根川農業用水としてわずかに毎秒十トン程度の水を季節的に使用して、おるにすぎないのでありまして、しかも現況ではこれ以上の利用の拡大は困難であると思われるのであります。しかし、霞ケ浦面積二百十八平方キロの琵琶湖に次ぐ本邦第二の湖沼でありまして、毎秒四十トンの水が流れておりまして、国家的見地からいたしましても今後の大きな開発が期待されると思うのであります。本県といたしまして、この水資源を利用して、たまたま逆水門がずっと建設費の手によって着々工事が進捗されておるわけでありまして、湛水して利用される。こういうことになりますので、この水資源を活用する意味におきまして、太平洋に面した鹿島地帯に湊を中心とした臨海工業地帯を造成いたしまして、地方開発あるいは国民経済発展に寄与させたいと思いまして、目下計画調査を進めておる段階でございます。その他霞ケ浦周辺、土浦、石岡方面におきましても目ざましい工業群の進出を見ております。これらの工業用水あるいは生活用水あるいは周辺農業用水の需要の増大に対しましても、ぜひとも必要な水量確保しなければならないと存じておる次第でございます。これは本県の例を申し上げるまでもなく、他の水源県といたしましても、おそらく同様の事情にあるだろうと思うのであります。要は、その地域開発ために必要な水はあらかじめこれを確保し、府県総合開発計画に対しまして十分な考慮と合理的な調整をはかっていただきたいと思うのであります。  こういう観点に立ちましてこの二法案を眺めた場合に、水に対する総体的な配慮というものがどうも乏しいように感ぜられるのでありまして、緊急やむを得ざるもののみが表に出ておるうらみなしとしないのであります。これがためにまず第一に水源県の均衡ある開発発展と、用水確保につきまして十分御配慮を願いたいと思うのであります。  で、促進法第一条、これは衆議院修正されておりますが、原案では既成工業地帯あるいは大都市への水の供給が主たる目的でありまして、水源県に対する配慮が乏しいばかりでなしに、このことは国民所得倍増計画にうたわれておりまする地域格差の是正とか、あるいは工業及人口地方分散の問題あるいは過度集中の弊害を除去する、こういうねらいを持ったとえば首都圏整備法その他の一連の法令に示されておりまする国策と基本的に矛盾するものではないだろうか。こういうふうな考え方も生まれてくるわけでありまして、私はあくまでもこのような大きな国策に沿うて政府工業及人口過度集中を大いに抑制して、地方開発ために必要な用水確保をはかるとともに、地方開発計画に対しまして、より以上の積極的な協力をなすべきものであろうと思うのであります。  第二でございますが、この法律によって指定された水系河川の直轄工事、これは従来から主張し続けて参ったのでございますけれども、全額国庫負担によって施行されるべきが至当であろうと存ずるのでございまして、この点につきましては、河川法の改正というものが必要でございましょうが、少なくとも指定水系等につきましてかくあるべきものと思うのであります。  それから第三でございますが、都道府県知事の意見を聞くということを協議に改められないであろうか、こういうひとつの法律上の解釈の問題でございます。今まで国会の御答弁その他の御説明で、意見を聞くということは意見を聞き十分に尊重していくという意味であるといわれております。しかしまた協議するということも十分に話し合いをし、万一協議が整わないときは事を進めない、こういう意味であると御説明されておられるようであります。その限りでは、その法案の文面に格別拘泥することはないかのように考えられるのでありますが、今の大臣、局長がこのお気持でありましても、いつまでも今の地位におられるものではなくて五年、十年の先に問題が起きたときには、結局法文がものをいうことになると思うのでありまして、時と場合によっては協議が整わないときでも事を進める場合が、法文の文理解釈上生まれてくるのではないだろうか、こういうふうに思うのであります。協議がととのわない場合はやらないということならば、簡単に通常の同意というようなことに直してもいいのではないだろうか。今の姿では永久にこの問題をめぐって疑問が残ってくるのではないだろうかと思うのでありますが、しかし協議という用語が法令上あるいは慣習上といいますか、同意までを要求されている協議ということであるとするならば、それも百歩譲りまして、そういう協議は同意まで要求されている内容を持っている協議なのだ、こういうふうに解釈せよというならば、その意味で解釈をしていきたいと思うのであります。そういう立場に立った場合に、基本計画あるいは事業実施方針あるいは施設管理方針等を進めるにあたっては、関係都道府県知事に協議しなければならない、こういうふうに修正をされてはどうであろうか、こういうふうに思うのであります。何となれば従来の立法例等によりまして、監督官庁あるいは政府機関と地方機関との関係においては、協議するという用語を用いないで意見を聞くという形をとっているというお話を、たびたび衆議院などで政府委員のほうから答弁がなされているようでございますが、河川法上の知事としてならば機関委任の事務の取扱いでございますので、これは上下の関係という考え方に立ちますれば意見を聞く、こういうふうなことでもいいと思うのでありますが、少なくとも住民を代表し別の観点に立って、地方自治本来の義務いわゆる地方住民の利益福祉を増進していく、あるいはまた総合開発をさらに進めていく、こういうふうな地方行政庁の長としての知事に対しては、協議というものがやはり必要ではないだろううか。公団法によりますれば、公団と知事との間においては協議という言葉が使われているならば、やはり大臣が知事に協議しても何ら差しつかえないものではなかろうか。なぜその内閣総理大臣と知事との間においては意見を聞くということになっておるのかということがちょっと問題ではないだろうか、やはり協議という名称にされてもいいのではなかろうか。公団と知事との間において協議という字句に修正されておりますが、大臣が知事に協議しても何ら差しつかえないものではなかろうかと、こういうふうに思うのであります。私はまあ全国民の要望にこたえてこの水を十分に活用されまして、だれにも喜ばれるようなりっぱな法案ができますることを心から祈っておる次第でございまして、以上私の陳述を終わりたいと存じます。
  6. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ありがとうございました。  次に鈴木参考人にお願いいたします。
  7. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) まず水資源開発促進法案についてでありますが、わが国におきまして特に近年相次ぐ水害の激甚と急速なる産業発展に伴い、用水需要の増大に対応して治水利水の総合的解決が強く迎えられておりまするこの際、水資源開発を合理的に促進することを主眼とするこの水資源開発促進法の制定は、最も時宜に適したものと思うのであります。むしろその制定のおそかったというような感がいたすのであります。また水の開発が自来ややもすれば官庁間の権限の関係から総合性を欠くうらみがあったのにかんがみまして、制度的にも一歩前進したものだと思いまして、この法案に賛意を表するものであります。  次にこの公団法案についてでありますが、これは開発のやりようによりましては、わが国に恵まれた非常な大切な資源であります水の開発事業を国家的見地から推進する事業主体の必要性、及び利水関係施設の建設と管理とを一元的に行ない得る等、その適切な運営の見地から公団の設置も時宜に即したものであると考え、本法案にも賛意を表するものであります。  しかし以上のように私はこの両法案の成立を期待する一人でありまするが、次の三点につきまして意見を述べさしていただきたいと思います。その第一点は、開発法の第一条の、これはちょうだいした説明資料によりますれば、その法律の対象地域が大都市等とありますが、もし大都市のみの用水確保を主として考えているというならば、大都市における工業人口及び所得は、他の地方に比してますます増大することになりまして、現在一般に最も望まれておりまする過大都市の防止、低開発地の振興、あるいは地域格差の是正などはむしろ逆行の結果を招致するのおそれがあります。今日既成の大工業地帯以外の地方を求めて工場を分散して立地せんとするものの大きな理由の一つといたしまして、既成大工業地帯の水不足のため、水の潤沢にして低廉なる他の地方へ移動しようとする実例がすでに多く現われてきております。すなわち工場の集中から生ずる大きな弊害を修正し得るものは用水であるとさえいうことができると思うのであります。しかるにもし大都市だけの水の開発が優先的に促進されて用水確保が約束されることになりますれば、他の一般的の工業立地因子の劣る地方などへ工場を立地するものがだんだん少なくなるであろうと思うのであります。よって開発水系の指定の地域を大都市だけに限らず、もっと全国的に広い視野に立って数多く考えてもらいたいと思います。目下、国土総合開発法によって全国開発計画の策定作業が進んでおりまするから、それとの調整をはかるべきであると思うのであります。この第十一条で国土総合開発計画との調整がうたわれておりまするが、それは水系指定以後の基本計画としての調整でありまして、指定水系地域内の計画調整はあるいはこれでできるかもしれませんが、もっと大きな問題は、他の水系地域における計画との調整であります。でありまするから、当初の水系指定の場合にも、国土総合開発法との調整のできるようにしてもらいたいのであります。それによりまして、過大都市の防止、低開発地方の振興あるいは地域格差の是正などが相当に考慮されることに相なるだろうと思うのであります。  それから第二点は、一般に水に関する国民感情は、一方におきましては水は公水である、したがって国のものであるという考え方があると同時に、また一方におきましては古来川と苦楽をともにしてきた地先民がこれを自分のものであるとする、この二つの感情のもつれる中に川が流れておる。したがって水資源開発計画はその双方の調整がなければ実際の行政の指針とはならないわけであります。すなわち公水としては国全体から見て最も付加価値の高い開発方式が望まれまするが、それとともに地元関係方面の希望もよく考慮しなければならないのであります。ところがいわゆる合理的、科学的開発と称するもののうらには、単にこの付加価値の高い開発方式のみに焦点を合わせる傾向がないとはいえないのであります。また一方におきましては地先の水、地先民の、福祉だけを考えて、全国的の効果を無視するという傾向もなくはないのであります。この双方の調整理解が、非常に大事であります。この意味におきまして関係都道府県知事の意見が十分尊重されるべきことは当然であると思うのであります。  それから第三点は、公団法の第五十五条におきまして主務大臣の定めがありますが、むずかしい問題が政令の定むるものというところにゆだねられている感がいたします。現在の各省間の権限争いの熾烈な実情にかんがみまして、はたしてそれが円滑にまとまるかどうかにつきましては大きな疑問を持つのであります。おそらくこれらの事業関係の行政庁が打って一団となり、すなわち国土の機能を増進し整備するための手段に関する行政が、統一されたものでもできないとこれらの運営がうまくいかないだろうと思うのであります。しかしそういうものがまだできない今日の場合におきましては、幸いに本法の成立することができますならば、それによって各省協議の場が新たにここで生まれるのでありますから、それを契機としまして各省当事者間の協調が十分に行なわれ、国民の期待に沿うように、お願いするものであります。  以上のように本法案の運営について多少の疑念を持つものでありますが、わが国における複雑多岐にわたる各省間の権限意識あるいはそれにまつわる政治力などの現在の環境と背景を考えるとき、この程度にまとまったことは一応の成功と思うのでありまして、すなわち完全ではありませんがますますというところであります。よって両案の制定に私は賛意を表するものであります。
  8. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ありがとうございました。以上をもちまして参考人の方の御意見陳述は一応全部終わりました。  これより質疑を行ないます。なお政府側から曽田総合開発局長、鮎川河川局次長が出席いたしております。それでは御質疑の方は順次御発言を願いますす。
  9. 田上松衞

    ○田上松衞君 参考人方々にはいろいろ時間の御都合等もおありだと思うのですから、きわめて簡単に要点だけを御質問しておきたいと考えます。  まず鈴木参考人にお伺いしたいのですが、水資源開発促進ないしは事業を実施いたします公団法の設置と、いずれもそのこと自体についてはお話を待たずして、これは国民全部が待望しておると、それには間違いないと考えておるのであります。その点については意見の相違がございません。ただし鈴木さんのお考えは概念的にこれを言われたのでございまして、もちろんお言葉の中には運営の面については多少の疑念があるけれども、しかしむずかしい問題をここまでまとめ上げたことはまあまあだという表現をされたわけですけれども、私不思議に考えますことは、この中の内容ですね、これについてまことに失礼な言葉でありまするけれども、十分には御検討なされていないのではないかというように看取するわけであります。と申し上げますことは、先刻滋賀県知事谷口参考人あるいは茨城県知事岩上参考人も言われたとおりに、前段に申し上げたことについては異論がないのだと、しかしこの内容については不満があるのだと、多く指摘された点は促進法案におきましても、あるいは公団法案におきましても、都道府県の意思というものが尊重されない、そこに不安があるということを言われておるのですが、私どもその点について全く同感なのです。なるほど意思を尊重するんだ、意見をできるだけこれを尊重するんだとは言うけれども、説明は政府側でもされておりますけれども岩上参考人が指摘されましたように今の人々が三十年も五十年も将来ずっこの地位にある人だけではないのでありまして、やはりこのことが法文の中に明示されていくのでなければ、関係都道府県心配は言うまでもなく、あとに幾多のこれは紛争を来たすおそれがないでもない。しかも公団法に至っては、いろいろ不満があったときに、これを不服の申し立てをする訴願ができるということは言うまでもないのですけれども、これをわずかに三十日でとめてしまっておるというようなことであっては、少し危険じゃないのか。具体的に申し上げますならば、少なくとも、六十日以上こういうものを置くことが必要でないか。しりっぽのほうから先にお話し申し上げましたけれども、そういうようなことを考えるわけなんです。さらには上流県の人々に対しまする損失補償の規定というものが、これが法文の中でも何も出てこない。こういうような点等は大きな問題だろうと考えておるんですが、これらに対してはどういうふうにお考えになっておるでしょうか。その点をお聞きしたいと思います。
  10. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) ただいまお話の点は第三条の関係都道府県知事の意見を聞くと、こういう点が第一のお話のようであります。この点について私は先ほどまあまあと言ったのは、こういう内容についてももちろん考えての上であります。すなわち条文としてはこれはやむを得ないのではないかと思うのであります。またもう一歩進むようなことになってきますと、結局まとまらないのではないか、決定しないのじゃないかということが起こり得るのであります。また地元関係当局者にとっても困ることも起こるのであります。まあ一応こういうことにしまして、十分内容において双方納得のいくような運営が行なわれることによって十分ではないかと、私はその点は思うのであります。  それから期間におきましては、これはお話のように延ばしたほうがいいかと思いまするが、これはなかなか私どもこういうようなことにかつて関係いたしてきたのでありまするが、延ばしてもまとまりがつかないこともあります。まあできるだけ早く解決し、しかもそれは上長年の懸案でありまするから、今さら新しく内容について研究するというようなことも必要でもないのでありますから、三十日なら三十日でもいいとこういうふうに思うのであります。  それから補償の問題はこれは当然であります。御承知のように新しい開発方式が打ち出されまする場合におきましては、一方においては利害の反する者もあります。さような場合におきまして十分の補償確保されることは、いかなる場合においても当然のことと存ずるのであります。
  11. 田上松衞

    ○田上松衞君 最初の三条に関することですが、鈴木参考人のお話ではまあ納得と了解でやっていけば、それでおお聞きいたしまする私の立場といたしても、納得と了解を得ることのため関係都道府県知事の意見を十分ここで尊重すると。しかし尊重するということでは不十分であるから、ここで同意という言葉がきつければせめて協議というところまでいかなければ、いつまでいったってできないんだという建前で、お互いの協議がととのわなければどうするかということを懸念されるから今のようなお言葉になったんだろうと思うのですけれども、問題は出発点、ここから規定すればいいんだろうと思うのです。さっき谷口参考人も言われましたように、一つの例として熊本県の下筌ダムの例をお引きになったのですが、私ども常にああいうような問題を心配をしておるのです。あのこと自体だっても初めから高圧的に出なければ、あるいは出先機関がもっと政治的な手腕を持ちまして、努力したといたしましたならばあれほどまでにならなかっただろうと、こう考える時分にやはり頭から意見を聞きさえずればいいんだということでありますならば、そのこと自体納得と了解を求むることに大きな支障を来たすのではないか。もとを持っておりまする上流府県におきましても、これを広く開放し利用のため供給しなければならぬと、これは国土開発の上からもあるいは産業の高度成長の上からも当然必要だという点については、もう十分了解されておるというこの立場に立ってのことなんですから、ただ初めのことを何か対立的な関係にあるんだと、こう考えないで、わかった同士があとに災いを残さぬように、あるいは事業の進行中にごたごたを起こさぬようにという懸念の上からいきますならば、やはり関係都道府県知事と協議していくという形をとることがいいのじゃないのか、まあこういう意味で申し上げておったわけなんです。繰り返すようですけれども、もう少しその点について突っ込んだお考えをお聞きしたいと思います。いやそれでもいいんだと、このことをむしろ実現さすことのためにはかえって協議とか同意とかというような文字はじゃまになるんだとお考えになりますか、どうですか。
  12. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) これは私の意見でありますが、かってこういうような具体的の問題に長年関係した経験からいたしますれば、むしろこの程度で差しつかえないというように考えております。そのほかのことは御意見の違いでありまするから、遺憾ながら十分御説明を申し上げることができないと存じております。
  13. 田中一

    田中一君 私あとから来て今御発言の内容を伺ったのですが、鈴木さんに伺いますが、これは衆議院修正した案を御承知ですね。特定水系のみでなく広範にやれという御意見のように伺いましたが、そうするとだれがやるのです。公団がやれという御意見なんですか。国がやれという御意見なんですか。
  14. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) この点は私は先ほど申しましたように水系の指定以後ではいけない。つまり指定以前において調整すべきものである。そうでないと全国的の産業の配分、また人口の配分、地域格差の是正というような問題との調整が困難であると、こういう意味を申し上げたのであります。
  15. 田中一

    田中一君 どうも、今鈴木先生のおっしゃっているニュアンスを私じかに聞かないものですから、間違ったら失礼します。私どもこういう考え方を持っておるのです。今回のこの二つの法律案というものは必要悪として認めなければならぬのじゃないかという気持なんです。必要悪ですね。こういう促進法なり公団法という形式でなくていいんだと、国がじかにやればいいんじゃないかという考え方に立っておるのです。しかし先ほども御発言になったように、今まで各省、水の管理権と申しますか、利用権と申しますか、そういうものを持っている各省がセクトがあって一本にならないから、一歩前進じゃないかというお説も認めてもよろしいと思うのですよ。しかしそれは元になるのは何かというと、なぜ水の利用についての意見が一致しないかという点にあると思うんです。そうするとその責任の所在というものはやっぱり政府にあるんじゃないかと思うんです。総理大臣の下に各閣僚がおってその下に事務次官並びに各関係の技術家なり国家公務員がおって、民族のため一つの大目的がわかっておりながらそれが調整できないというところに問題があるんじゃないかというふうに思う。当然国がすべきである。あえて公団方式をとらぬでも、やれるではないか。あえて水資源開発促進法という銘を打たなくてもやれるではないか。お説のように国土総合開発計画という根本の全国的な視野から来るところの計画があるわけなんです。これが実施されないところに問題があるだろう。むろんこの中に茨城県の利害滋賀県の利害が相反する場合があるということもあり得ると思います。したがってこの方式が一歩前進だという見方ができると同時に、この一歩前進とは何かというと、政府の政治力の足りなさがこれで補えるのじゃないかということです、消極的なことを言いますと。それから水なんというものは空気や太陽の熱と同じように、これはもう民族の生存上必要なものであって、もはやこの問題はこういう形式で論じなくても当然のものであるという見方を私はしているわけなんですよ。それで「特定」というこの文字を衆議院が取って、特定というものと違った、形をすり変えた内容の修正がなされてありますけれども、私は今回のこの法律の提案というものはですよ、利根川水系、宇治川水系が主としてこの公団によってなされるのだという特定中の特定として縮めたい気持があるのです、私の気持というのは。それで先生が、特定というものをまた大幅に各水系利水の面にこれを求めたらどうかという御意見に対しては、ちょっと僕は疑義があるんですが、その点はどういうところが公団方式……じゃ、先に付いたいのは国がすべきであるという私の主張に対して、先生、国よりも公団方式がいいんだというお考えでございますか。
  16. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) 田中先生のお尋ねでありますが、これはあるいは国がやるべきであるという御意見も立つかと思います。しかし今日の政治の、これは僕ら門外漢でよくわかりませんが、一般国民の感情、感覚から来た政治の実態といいますか、行政の実態というものは一応国民は承知しております。そういうような感覚からして、やはり今の環境あるいは背景からすれば、この公団でやることが水に対する開発のウエトが一段とついて促進されるだろう、これは実情からの一番効果のある方策であると、こういう意味であります。根本論に至りまして、これは私ども門外漢でお答えする範囲ではないと存じます。  それから、特定の地域ということについては、遺憾ながら先生とこれは意見が違うのであります。特定の地域があんまり限られますと、その地域内におけるかなり膨大な工業開発計画等を持っておりましてそれらの水が先に確保されるということになりますると、他の地域が期待しておりまする開発、その工業開発に伴う人口の分散とかあるいは所得の増大というようなことがこれは実現しないんじゃないか、という意味でむしろ大きく国家的な見地に立って考えるべきだ。幸いに御承知ののように全国計画なども策定され、研究されて、これでかなりそういう点が研究されておりますから、それとの連絡をとってやればいいんじゃないかと、そういう意味であります。もっともこれは特定の地域におきましても水の不足で深刻に困っている問題があります。それは、たとえば生活用水であるとか、あるいは地盤沈下のため地下水をとることをとめるといたしますれば代替水を考えなければいかぬ、こういうような問題は、これは何をおいても考えなければいかぬ。これはつまり災害防止になりまするから、よほど政治的にはウエートをおいてお考えを願いたい。こういうような問題がありますから、まずこれは第一にやらなければいかぬ。しかし、新規の開発地域に対する水が、そこが優先されて確保されるということになると、このほかの地域はたいへんなことになるんじゃないかと、こういう意味を申し上げたわけであります。
  17. 田中一

    田中一君 まことに同感なんです。  私は、各河川の流域変更等も当然しなければならぬという国家的立場を持っておるわけです。ましてや水の利用の面については、これはもう何人もどの水でも使えるんだというようにならなければならぬと思うのです。ところが前段の御指摘の政治の貧困と申しますか、今日の政治的背景の中の社会においてはこれは不十分だということは御指摘の通りだと思うのですよ。したがって、高度の水利用というものは当然必要であるのですよ。今まで宿命的に維新革命前から各地の水争い、あるいは水利権の問題等で争っております。こういうものを一切なくして、だれもがどの水でも使えるんだということにならなければ地域格差等、まあ表現されている最近の言葉ですけれども、これらの問題が解決されない、それはもう先生のおっしゃる通りです。しかしながら今回のこの提案された法律の内容によっては私はこれはいけないと見ているのです。純粋な議論としてはもう先生のおっしゃるとおりであります。かつまたもっと発展してどこでも利用するためには、各河川水源というものをあるいは合流して、あるいは流域変更して十分に民族のための資源として使うべきである、この形式においてはいけないという気持を私は持っているわけなんです、それは。まあこういう言葉が妥当か妥当でないかわかりませんが、水の所有権という問題なんですよ。国民が水を使うのに一々だれに断わるかというと断わる必要はないのです。川にすれば、川の流れているところの、自分のたんぼを流れる水は流れる水として利用していいわけです自分の土地から出てしまった水はもはや自分が利用する水じゃないわけなんです。全体からいって水は各国民全部が共有すべきものであるという原則に立って、国民全部がどの水でも自分の生活ために自分の生存のために自由に使えるという環境が望ましいということを申し上げたいと思うのですよ。したがってこの現行法によるところの河川法なり、あるいはその他水だけの専門の法律はないように私は感じておりますけれども、滋賀県にしても京都にしても大阪にしても兵庫にしても、利用する面、涵養する面というおのおのの主管がございますがね、それらのセクトと申しますか、なわ張り的なおれのものだという誤認をする傾きがあるのが、今までの長い間の伝統的な水に対する争いのもとだと思うのですよ。だから国が当然すべきであるという考え方に立ってそうして水資源の涵養もし、水利用のため施設もことごとく国が直接やったらいいではないか、国がじかにやったらいいではないか。そうしてこれは大体アロケーションによって施設を建設していくのだという考え方に立っておりますけれども、これも私は疑義があるのですよ。そういう必要はないのじゃないか。国が求める必要な産業のためには、民族が求める必要のためには優先してやってもいいのじゃないか。むろんそれには人間が生きるための、生活するための水というものはもう先行する。この形式では私は非常に局限された地域だけに限りたいという気持がしているわけなんですよ。  もう一つ伺いますけれども、愛知用水が完成いたしましたあの地域に東海製鉄という冨士製鉄の子会社がきて、あれを工業用水に持っていきたいという考え等を持っております。そうしてむろん愛知県知事も工場を誘致してそうして着々工場を建設しようとしております。愛知用水目的は何かというと農業用水なんです。そうして計算の上からいって水が余るから他の産業、工業用水に使おうというような考え方に立っておるわけなんですね。この水が余るという余り方の問題ですけれども、私は余らないと見るのも正しいけれども、余ると見るのも正しい場合があるのではないかという見方をしているんです。その特定なる産業に用いるための水、これは特定なるものだけであっちゃならぬからだれも使っていいということを申し上げるわけですけれども、ああしてかりに東海製鉄がきて常時三百六十五日一定の水を消費していく。早魃のときなどは工場を止めても農業用水に水を回してくるかどうかという問題になりますと、私ははなはだ疑問があると思うのですよ。こうい点について愛知用水の問題一つとらえまして——これは先生の分野じゃございません、政治的な利用の面ですから。どうお考えになっておりますか。農業用水に作ったものが余るという計算が立ったから、それを工業用水に使ってもいいのだというお考えに立つか。そのために農業が相当なしわ寄せを食ってもこれはもう一それは力の問題ですからね、どうしても工業用水が優先される点があるのじゃないかという不安はお感じになりませんか。
  18. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) 愛知用水の特別な例につきましては、はっきり数字で私から説明することはできないわけでありますが、そういうような場合におきましてこれは田中先生のおっしゃいましたように、水は民族の福祉のため、利益のために最も効率のある高い利用方法をすべきである。これがやはり水の処理、制度すべてを考えるときに一番大事な点である。しかしこれは関係知事さんからお話のように、やはり水に対しては地元のものであるという一つの伝統的の感覚もありますから、実際の政治としては、行政としてはその調整が必要である。だから上流の利益あるいは下流の利益あるいは他の地域の利益とかいったようなことも当然ウエートを置いて考えると、こういうわけになりますが、やはりもし民族全体の利益というものが、ある地域において生じたものがうまく全体に配分されるということになれば、これはだんだんそういう点が変わってくるわけでありますが、現状におきましては、やはり関係地方の感情といいますか、それの協力を得なくては一歩も進みませんから、現実の問題としては必要である、こういうことになるわけであります。  そこで、愛知用水の問題、愛知用水は例でありますが、さような場合にたとえば工業用水に使うことがいいか悪いか、余るということについての御質問で、これは科学的にも非常に重大な問題でありまして、私ども研究所ではそういう問題は余るか余らぬかということを掘り下げて研究いたしておりますが、大体水の問題は確率の感覚で考えなければならないものである。ある期間におきましては余る、ある期間の確率を考える場合には余らぬということになりますから、おっしゃるように余るとも余らぬとも言えるのであります。そこで確率の負担をどこの産業に置くか、こういうことになる、学問的になるのであります。さような場合に、かりに工業用水のほうにある程度、確率の観念を入れて転換するということが、先ほどおっしゃいましたように民族の利益、福祉に大きなプラスになるならこれは当然そうやるべきである。しかし、もってきた利益をどういうふうに国民全体に配分するか、均霑させるかということはひとり水の問題だけでは解決できない問題である、いろいろの政府の施策等によって解決すべきものである、水だけで解決しろということは無理ではないか、こういうふうに思っております。
  19. 田中一

    田中一君 この二十九年十二月十五日に報告された国土総合開発審議会の水制度部会、これは先生もいるのですね。こういう答申の形で出たということは、どうしてこういう答申といいますか、これは報告書ですが、報告が出されたということについて先生自身のお考えはどうですか。たとえばある一つの問題につきましては、これは委員は三十五人くらいですが、その中のある問題に対しては二十名の賛成者があって、小数意見者が一名のものもあれば十二名のものもある、あるいは場合によっては二名の場合もあるし、二十名、十五名というふうにばらばらなんです。七、八年もやっておってそういう報告しかできなかった、こういう原因はどこにあったかということを先生からひとつ御意見を向いたいのですが、私としてはこういう見方をしておるのです。この構成されておる委員は各省からも出ております、通産省から出ておる委員並びに通産省出身の委員工業用水なり発電なりの面からものを考える、農林省並びに農林省出身の委員はやはり農業用水中心考え方を持つ、建設省の場合には国土保全とかあるいは建設の面、河川行政の面から水を考えるというような、これでは官僚的なセクトではなかろうかと思うのですが、先生もずいぶん長い間御苦労なさったのですが、水制度の問題は水そのものではないのですが、どういうお考えを持ってどこに賛成なさいましたか。
  20. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) お答え申します。先ほど水に関係した制度あるいは行政というものが各省にいろいろ権限が分かれている。しかも現在の御当局の方は相当に権限意識も旺盛である、またそれの背景といいますか政治力というようなことを感じましたが、これはひいては学界にも及んでいるわけであります。いわゆる学識経験者にもそういうような背景なり環境というものが、これは好む好まざるにかかわらずくっついて回っておるのが日本の実情であります。その結果というものがあの報告書にそのまま反映したものと見て差しつかえないと思いますが、当時多くの人が考えたのは、窓口を建設省に限らず企画庁というようなニュートラルなところにやってもらいたいというのが大きな山であったように思います。その意味から申しますと、今度のは建設省がよくここまで譲ったというような感がございまして、むしろあのときの多数の意見でありました思想といいますかニュアンスといいますか、それに近づいた案である。それでこの案は非常な進歩である、かなり各省の協調が今日の段階において最も行なわれたと、あの水制度部会に関係した当時の状況からいたしましてむしろこれについては敬意を表するような次第であります。
  21. 田中一

    田中一君 先生から学識経験者の中にもそうした意味の総一がないのだ、水利用に対する総一した意見がないということになると、もう都道府県の各知事の立場からおのおの利害がこれは分かれると思います。先生からそれであってはならないという御指摘があったと思いますが、先生はどの学界の派閥に属するのですか。
  22. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) どうもえらいお尋ねでありますが、私は十五、六年前は役人をいたしておりましたが、ただいまは日本大学の半園に関係しております一学究でありますので、やはり学問の真理の命ずるままに動かなければならないということを建前にしなければならない筋になっております。そうして各省の委員会に私は関係いたしておりますので、各省の主張というようなものにも謙虚なまた弾力のある気持で聞いております。しかしそのうちでもこの水の問題は最もむずかしい問題であったという感じをいたしております。  それからやはりそういう中にありましても、比較的、学園に関係ある者は、やはり田中先生のおっしゃったように、結局は民族の福祉というものに大きなねらいをおいていった、日本全体から見ての水の利用の効率の高いほうのものをとるべきだ、こういうふうに考えております。しかし、その福祉なり幸福というものの分析というものについては、これはかなり広い目で広い範囲にわたってくる問題でありまして必ずしも一面だけを見てはいけない、かなり多岐にわたる問題であろうとこういうふうに思っておりますが、やはり大きなねらいはそこにある。そうしてそれによって関係の地元の方の従来の感情も妥協してもらったり、あるいはあるところに生じた利益を公平に配分するような施策を政府や政治家の方々に御考慮願う。単に水の行政だけでなくて他の面においてこれは解決してもらうということを御期待して、できるだけやはり国としての最も効率のある方向に進むべきであるとこうふうに思っております。
  23. 田中一

    田中一君 どうも尊敬している鈴木先生から、やはりどうも結論的には同じ力でもどうにもならぬということに究極なったと思うのです。これには結局現代のこんとんたる政治的背景といいますか、このためにこうしたほんとうに民族のものであるところの水というものの制度すら確定しない、統一した意見がまとまらないという点ですね。  そこで、まあ今度岩上さんと、谷口さんがお見えになったのは、災害を受ける側と水を取られる側との両方の立場からおいでを願ったわけでありますけれども、こういう法律案がでてきてそうして公団という一つの窓口ができた。これは今までの官僚の各省のセクトというものがここに集約されて、今まで各省で集まってやっておるわけですが、それが窓口が一つになって、一応それも政府の手から離れて、自主的に実施段階においては行なう、だから一歩前進ではないかという感じが私もいたします。しかしその背景に大きな力のボス的な各省というものがあり、また学界があり、そうして糸を引けばますます混乱するというような見方も感じられるわけなんです。  で、谷口知事に伺いますが、琶琵湖の水を取られるということに対しては、直接的な利益というものがなくちゃ谷口さんおいやでしょう。私はことしの四月ごろでしたか、谷口さんが社会党のパーティのときにもおいでになって、今度これができたならば、滋賀県は非常に裕福になるのではないかというような御発言を私は聞いたことがあるのですが、今この法律案をごらんになって、どういう感じ——滋賀県としては、これによってむろん琵琶湖の水はおれのものだというばかりではないと思います、流れて参りますから。今まで琵琶湖にあった水は京都を通り大阪を通って兵庫まで流れて行っておりますから、だからおれのものだというばかりではないと思いますが、滋賀県としてはこの法律案ができた上でどういう形でもって滋賀県の利益が得られるか。またこれだけでは足りないんだというようなお考えを持っていらっしゃるのか。二点、三点ぐらい、問題点だけは御発言があったように聞いておりますけれども、それをひとつ御意見伺いたいと思うのですけれども。
  24. 谷口久次郎

    参考人谷口久次郎君) 今、田中さんからのお尋ねでありますが、滋賀県の場合は先ほど申し上げましたように、大阪湾の干潮時の標高が八十五メートル六十五センチというところを平常水位と、こう言っております。この水位滋賀県に一番よい水位だ。ここから三十センチ上がるまではこれはしんぼうができます。五十センチ上がってくると水田に浸水をしてくるというような状況になります。これがマイナスの場合でも同じような傾向を持っておるということであります。滋賀県はこの水はあくまでもゼロ点に置きたいということは希望でありますが、しかしこれは洪水になりますと水が出てきて、そうして水田を荒らすとか家屋に浸水をするとかということが出てくる。これはそれをなくしようということになりますと、下流に対する影響というものは非常に大きい。この先のあれは何号台風でしたかちょっと忘れましたが、あのときにいわゆる淀川沿岸水位は四メートル五十とかいう危険水位を越えてくると非常に下流に不安を持たせるということで、このときには南郷の洗いせきをぴんと締めていってしもうて、琵琶湖に何ぼ水がたまろうとこれは締め切られてしまうということなんです。これによってちょうど一昨年の台風のときでも滋賀県の農民だけでも六億円という被害をこうむっております。この被害補償されるかといいますと、これは農業災害補償法において農民が掛金をしたから当然の保険料を受けておるということでどこからも補償というものは二厘ももろうておらぬということである。で、そういう今まではこれは下流の大きな損害を防ぐため上流が隠忍しなければならぬのであるというような宿命的な考えで、昔きめられたことをいまだにそのまま強行されていつも、滋賀県民は仕方がない、こういう考えに立っておるが、今度の場合はそうはいかんぞ、新たな水位の上下をはかるために、琵琶湖の一番狭いところに堰堤を設けて、そうして水の調整をはかって常に有効放流ばかりにしよう、こういう考えである。そういうことになりますと、場合によって水位の低くなったときには三メートル、四メートルというように低くなる。実に滋賀県としては耐えられぬ被害を受けるということである。しかしわれわれはそれをもってもやはり下流繁栄が行き詰まってしまって、そうしていわゆる大阪の大きな工業地帯がそれがため繁栄がもう行き詰まってしまうということは、これは滋賀県の損害に比べてみるともっともっと大きなことになってくる。これは忍ばにゃならぬ。そしてこれを拒否しようということが可能であるならば私は拒否しますけれども、これは拒否することのできぬものだと思って、今はこれはやはり琵琶湖開放していこう、あくまでも下流ため琵琶湖の水をすっかり有効放流していこうという考えを持っておるということであります。しかしながらそれにはあくまでも県民の一人々々、先ほども申し上げましたように滋賀県民というものは長い長い間琵琶湖と一緒に暮らしておる。これがため滋賀県人の生活の中には琵琶湖水位というものは常に影響をしておるということであります。これが変わってくるということになったら滋賀県人の生活に大きな脅威を受けるということである。これには補償をしてもらわにゃいかんぞ、で、この補償もわれわれは金をもらうて済む補償ならばこれはごく簡単なんであります。ところが金をもろうても何にもならぬということ、これにはできる限りの一つの方策を講じてやってもらわなければならぬ。たとえば観光の問題一つ取り上げてみましても、滋賀県の観光というものは、山の中にある観光でも琵琶湖あっての観光であるということ、琵琶湖なくしてはもう観光も何もあったものでないということになるわけであります。  そんな関係から、われわれは、そんならこの水位が三メートルも下がったときにどうするのかということで、われわれの今のしろうと考えでは、これはどうしても琵琶湖の周囲にコンクリートの障壁を設けて、そうして琶琵湖の水位が減退することによって、ときによると今の沿岸から一メートルもかわいてしまうということが出てくる。それをそのままにほうっておいて、水位低下しただけで済むなら、また一年にこれが一回、二回というなら、また水をためるということでその利用の方途も考えることができる。これにはやはりコンクリの障壁を設けてそうして格好をつけていく、そうして観光を保持するというようなことよりほかにしょうがないではないか。これは研究の余地はあろうと思いますけれども、一つ考えてみてもそういうことをやっていかなければならぬ。それはやはり補償の一環としてやってもらわねばいかぬ。またこれでときによると水位低下地下水位の低下ということをある程度防げるのでないかというようなことにもこういうことが関係をしてくるので、これからいよいよ問題になってきたときには、一つの大きな問題として取り上げねばならぬと、こう思っておるのでありますけれども、滋賀県はもしも下流ためにこうした大きな工業権を守るという使命がなかったら、私は現在のままで置いておくということ、これ以外にはもう滋賀県を守る道はないと思います。しかし、今のこうした問題が取り上げられた以上は、やはりその間に県民の理解を深めていって、そうして被害被害として納得をさせて、そうしてこの問題に着手しなければならぬと、こう思うております。で、今の水の問題をどうするといいのかというと、現状のままが一番いいと、こういうことになるわけであります。
  25. 田中一

    田中一君 この法律ができて、この公団との間にそういう問題が解決されるというお見通しになっておるのか。公団じゃだめだから国にそれらの施策をさせるのだという気持になって、大体この法律案に対する理解といいますか、承認とまではいかぬでしょうけれども、やむを得ぬということで了解したのか。やはり政府との間に何か約束、があるのでしょう。
  26. 谷口久次郎

    参考人谷口久次郎君) これは今、水資源公団法が出されまして、いよいよこの工事をやろうということになると公団が対象になってくる。これはほんとうをいえばやはりお話のように政府がやられて、ほんとうに最高の責任のある政府と折衝をして、こうしてもらわねば滋賀県は承知ができぬのであるこういうことがほんとうであろうと思いまするけれども、そういうことは行政的にわずらわしいといいますか、公団によってやらせるということでありますので、われわれもあるいは公団のほうがいいのではないか。われわれ実際に知事としてやっておりますと、政府と折衝するということになると非常に困難な問題がある。関連するところの問題も非常に多いということ。何かといえばやはり政府にやってもらわんならぬような問題も非常に多いというような関係から、われわれはむしろ公団との折衝のほうが知事の立場からいえば楽である、こういう感じもあるわけです。まあ今の公団法このほうが知事としてはいいなあと、こうておるわけであります。
  27. 田中一

    田中一君 それはこういう方式をとってきたのはとてもたまらぬ、ということはかなわぬという気持ですね、今、陳情政治だもんですからね。そういうときには、こういうものに預けちゃって知らぬ顔するという行き方ですね。そのかわり、じゃ公団の自主性はどうかというと、公団の自主性はないのですよ。おそらく何人かの管理官で来てそれが各省の圧力を加えるということになると、当たりはやわらかくなると思いますが、実質的には思いどおりにいかないのじゃないかと思っておりますが、滋賀県としては納得されたらしいので、これ以上は申しません。ひとついい運営ができるように、われわれもこの法律案を審議して通すのですから、参議院建設委員会としても、各委員とも十分に公団を監視しますから、ひとつもう少し見ていて下さい。  それから茨城県知事に今と同じような質問をするわけですけれども、まあ茨城県の豊穣なる農業地帯というものは、大体において利根川のはんらんによってもたらされたという利益がありましたけれども、農業災害と申しますか、こういうものを、上流のある操作によっていつも受けるのではないかという危険が、十分にあると思うのです、上流における水の操作ですね。この間十八号台風でしたか、その前の集中豪雨でしたか、下に連絡なしに放水しちやって、非常に農地が冠水したというような例もありますが、ところがわが国には個々の契約は若干あると思いますが、ダムサイトの管理規定はあるのです。しかしこれが下流における国民との間の理解し合ったところの協定が今日では何もないわけなんです。茨城県は災害を受ける側に立っていますから、へたに水を流されちゃたまりませんからね。これはあぶないというので、あなた方の中小河川でも、一生懸命水防をやっているうちに、どかどかと向こうからあっちもこっちも、ダムがあぶないといって放水されたのじゃ、人間も流されちゃいますから、そういう例が今まであるのです。そういう点については、今まで何か御注文があったわけですか。今までこの法律ができるまでの間に河川あたり——河川局というか経済企画庁との間にあなたの方の言い分がずいぶんあって、それが通っておりますか。
  28. 岩上二郎

    参考人岩上二郎君) 茨城は先ほど申し上げましたように直轄河川が大体六千でございますが、その中で特に利根川影響というものは非常に大きいわけであります。利根川上流ダムを最近作っておりますが、それの治水に対する分担金といいますかそういうものが非常に大きく重なっておりまして、これは財政的に非常に大きな支障を来たしておるというのが現状であります。それと同時にやはりこの水のはけ口が非常に問題になるわけでありまするが、直轄河川の間に中小河川幾つもございましてそれがはんらんいたしますと、直轄河川の方に流れていく場合に相当ポンプアップをしなければ流れなくなる。こういうふうな事態も生まれておりまして、ちょうど新潟とは逆に、地盤が沈下するのではなしに地盤が上昇するというか、いわゆる地殻運動といいますか、そういう連動が利根川上流地帯においてなされておるわけであります。そういうふうな一つの地殻連動の形態の中で地盤が上昇する、さらに中小河川がポンプアップするのに従来は百五十馬力を要したのが三百馬力あるいは、五百馬力を要する。こういうような問題との関連性において、農業用水との関連性と、それから河川法上における、建設省で取り扱っております河川工事との関連性、こういうふうな問題についていつも非常な災害を極度に受ける、こういうことについての相関関連性についてできるだけ御研究を願いたい。特に湛水量がはなはだしく、そういう問題はつい最近政府におきましても御考慮をなさっていただいておるようでございますので、そういう水の災害県という面につきましていろいろと問題がございますが、これと関連いたしましてでき得る限り直轄河川等で行なうところの工事費等につきしては、国の負担で行なうべきであるという原則をお願いしたい。あわせてこの湛水地帯に対して十分な御配慮を願おう、こういうふうな点がわれわれとしましてはぜひ御要望申し上げたい次第でございます。  あと内容等の問題につきまして先ほど触れたようなものもございまして、字句の問題に多少なり抱泥いたしておるわけでありますが、従来河川法上にいわれております関係行政機関の長というのに知事が含められておるように解釈されておりますが、ここでは関係行政機関の長がもし含められるとするならば、何も関係都道府県知事の意見を聞く必要もないのであります、が、個々の条例の中では関係行政機関の長と関係都道府県の知事というものは、別々になられているところに多少問題がある。こういうふうに思うのでありまして、この点は公団法で協議をするというならば、内閣総理大臣と知事との間で協議をするということをやられたって何ら差しつかえないのじゃないか。なぜここのところを離されておるのかということに疑いを持つのでありまして、水源県だから必ずしも水をやるとかやらないとかそういうような時代は過ぎて大いに水は全体のために役立たせる、こういうふうな考え方は持っておるわけでありますので、これを特に切り離したり何かするとろにやはり相手は水源県だからやらないのだと、こういうふうな気持がかえってあるのじゃないだろうか。そういう意味にもとれますし、これはもっとフェアに大きく考えて疑いのあるところは直していただくことが筋であろうかと、こういうふうに思うのであります。
  29. 田中一

    田中一君 いや全く知事の習う通りなんですよ。どうも知事は民選知事だから、地元の利害を代表しなきゃならぬ、とても仕事はできやせぬというのが曽田君や鮎川君なんかの考え方なんですよ。だからもう自分が直接やらないからこういうもので縛っていこうとするのです。  そこで開発局長、今、谷口さん、岩上さんからお話があったこうしてほしい、ああしてほしいという要望の事項などは事前に話し合いがなかったか、話し合いをして一応了解するところがあってこういうものができたのでしょうか。また原案を作ったという河川局なども、やはりそんなような配慮は各知事——直接関係の深い知事ですね、というのは初めの構想が、鈴木先生は「特定の」をとれというふうな——これは原則的にはそうならなくちやならぬけれども、公団にやらすにはまず利根川と宇治川だけ、この二つだけやりたいの、だということを僕なんかも長い間伺っておるわけなんですが、今両知事のいろいろな御要望に対してはこたえようというつもりで立っておるのですか。これはしめくくりに聞いておきたいのだが、局長と河川局次長なりに聞いておきたい。今の経緯を話して下さい。
  30. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 今、田中先生の御質問に対しましてお答えいたします。この法案を作ります場合におきましては、いろいろ関係各省と御承知のような各種の問題につきまして折衝を重ねて参ってきたわけでございます。特に地方公共団体との関連におきましては、御承知のように、一応自治省というものがございまして、われわれといたしましては、直接には自治省と都道府県知事との関係事項につきましていろいろ折衝して参ったわけでございます。結論といたしましては自治省との意見の一致を見まして法案を出したわけでございますが、法案を出す以前におきましても、実は知事会といいますか、上流県の知事さん方の集まりのときにもこちらから進んで積極的に二法案の内容について御説明申し上げたこともあったわけでございます。ただそのときもいろいろ議論がございましたが、また衆議院審議の過程におきましても、いろいろ先ほど述べられましたような御意見があったわけでございまして、それにつきましてわれわれといたしましては、この法案の精神につきましていろいろ御説明を申し上げて参ったわけであります。個々の問題についてお答えするのはちょっと時間もあれでございますが、特に一、二点申し上げますと、われわれの率直な感じは、要するに水源地の協力がなければこの二法案の運用は円滑にいかないということは、われわれといたしましては当然のことであるというふうに信じております。また特に補償の問題につきまして滋賀県の知事さんからいろいろ御発言がありましたが、これもまことに当然の御要望だとわれわれは考えております。促進法案におきましては十四条に一応簡単な規定をうたってあります。これは法制局におきましても損失の補償を公平適正にやれという字句でございまするけれども、こういう字句は入れなくても当然のことじやないかという御意見もあったわけでございますけれども、われわれといたしましては、こういう重要法案であります関係上、当然のことだから一条をもって規定したというような状況でありまして、補償につきまして十分に公平かつ適正にやるべきだと心得ております。  それから特に茨城の知事さんからいろいろ都道府県の知事の意見を聞くかあるいは協議するかという御発言があったと思いますが、これは私どもといたしましては、この広域にわたります緊急な用水対策といいまするものは、これは非常に重要な問題でありまして、国の立場におきまして積極的に計画を作るべきであるという考えで出発したわけであります。その場合におきまして、当然都道府県知事の意見を反映すべきじゃないかというような考えにおきまして、また過去の法令等も参酌いたしまして意見を聞くというふうな規定を設けたわけであります。もちろんこの意見は十分に尊重しなければならないというふうに考えております。
  31. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) 法案の作成に至ります今日までの状況につきましては、ただいま曽田局長から述べられた通りでございまして、あえてつけ加える点もないわけでございますが、なお補足的に申し上げますと、ただいままで法案の作成の過程におきまして、また衆議院におきます論議の際におきまして、知事会及び各水源関係の県から御意見があったわけでございます。そのおもな点を申し上げますと、第一は後進地域開発も十分に考えたらどうかといり点でございます。それから第二点は、水源の保全涵養という点を考慮すべきである、こういう点でございます。それから字句等の問題がございますが、この法案のいろいろな手続この法案によって仕事を進めます場合に手続がございますが、そういう際には、各都道府県意見を十分に尊重するような字句にしたらどうか、こういう点、それから補償の問題等であったと思います。この点につきましては、私どもも各関係の方方からも十分に御意見を承っておるわけでございまするし、また原案におきましても、不十分ながら、その点も考えておったつもりでございますが、なお不十分な点もあったわけでございまして、それらの点につきまして、衆議院におきましては修正が行なわれたわけでございます。その修正水源の保全涵養の問題、後進地域開発についても十分に考慮する、それから知事の意見の尊重の点につきましては、原案におきましても、公団法におきまして、事業の実施計画を作り、またそれを実施する場合に公団が知事と協議をするというだけになっておったわけでございますけれども、施設管理をし、管理するため施設法人というものを主務大臣がきめます。それから管理規程を公団が作るようになっておりますが、その際にはそれぞれ原案になかった点に追加されまして、施設管理の際にも十分に知事の意見を聞き、また協議をして行なうという趣旨で修正が行なわれたわけでございます。したがいまして、私ども原案におきまして、不十分な点は、衆議院修正におきまして、私どもといたしましては、その主要な点は一応解決されておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なおさらに附帯決議等におきましても、今まで申し上げた結果がさらに十分静電されて施行されるようにというような附帯決議もございまして、私どももそういう点を十分にもちろん尊重して考えていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  32. 田中一

    田中一君 岩上さん、あなた先ほど都道府県知事の意見を聞かなければならないとあるのを協議をするというふうにしてほしい、ということを言ったようなメモをもらったわけなんですが、そうですが、何条をそうしろというのですか。
  33. 岩上二郎

    参考人岩上二郎君) これは水資源開発促進法案の内容の中に特に出て参っておりまする用語でございます。公団法関係では確かに知事と協議すると、こういうことになっておりまするから、その協議内容が同意の性格を持っているんだ、こういうふうに通常言われておるというならば、その性格を生かした形での協議で進められる場合には私としては異議がないわけであります。そういう考え方が協議という用語の中に性格的にあるとするならば公団と知事との間において協議という内容の字句が入るならば、第三条においても入っていいのではなかろうか、こういう考え方が出ておるわけであります。第四条もしたがって同様でございます。しかし河川法の内容を見ますと、関係行政機関の長というものは知事が含まれると、こういうふうなことが自治省あたりの解釈をお伺いすると言われております。関係行政機関の長というのが河川法の第六条か何かに出ております際に知事を含むと、こういうふうになっておりますが、その際には協議ということがあるわけであります。したがいまして関係行政機関の長というものが知事を含まないならば、これが非常にややこしいとするならば、特に入れないでもいいのではなかろうかと思うのであります。もし入れるとするならば、関係機関の長に協議しかつ都道府県知事の意見を聞いてということになりますると、関係都道府県知事の、特に水に関する権限の問題等におきまして直接、国が機関委任を知事にしている場合には意見ということでいいであろうが、この水を総合的に全体の開発ために使う、あるいは需要県に使うとか、そういうような問題との調整において地方自治体の長という立場に立った場合には、機関委任の形における地位というものから離れて、やはり独立した機関として知事としての発言がなされてしかるべきである。したがってそういう関係においては、ただ上下の関係における意見という意味に解釈すべきではなくて、やはり対等の立場に立って協議というものにすべきではなかろうかこういうふうな考え方が自然に生まれてくるべきではなかろうか。こういうふうな意味で協議ということに、どちらかといいますと昇格といいますか、そういう形にすべきではなかろうか。こういうふうな感じを持っておるわけでございまして、非常にこの字句があいまいでございますので、このあいまいのまま残しておくということは一体どういうものであろうか。こういうふうな気持から公団法で協議という字句が使われているならば、内閣総理大臣と知事との間にも協議という言葉を使って何ら差しつかえないのじゃないか。しかも使われた用語がないということではなくて、使われている用語もすでにあるということであるならば、これは何ら使って差しつかえないと。それにもかかわらず意見というものだけに押さえてしまうということは一体どういうことなのか、全然使われていない。あるいはまあ意見を聞くということだけで、もうすでに十分に意見を尊重してやるということなんだということならば、これはやむを得ないかもしれないのですけれども、すでに協議という内容が、たとえば河川法の第六条あるいは特定多目的ダム法の第四条第三項の中にもやはり協議、こういうふうに書いてあります。こういう字句がすでに使われているのになぜこの問題に対してだけ意見ということだけで、協議のところに持っていかないのかということについて若干の疑いがある、こういうことでございます。
  34. 田中一

    田中一君 鮎川君、今の茨城県知事の疑問に対して答弁できるだろう。衆議院でもやっていたのだろう、言えなければあやしいぞ。
  35. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) ただいま関係都道府県知事の意見を聞いてとあるのを協議としたらどうか、この点について促進法案三条、四条がございます。まあそういうお尋ねでございますが、まずこの考え方の基本的な問題について申し上げますが、促進法案において水系を指定する際に二回、それから公団法案におきまして事業の実施計画、及び実施をします場合に、意見を三回聞いて最終的に公団が協議をいたしまして事業を実施する。さらに先ほど申し上げましたような衆議院におきます修正によって施設管理規理におきましても意見を聞き協議をする、六回ほど地方公共団体と十分御相談をして仕事を始める、こういう手続になっているわけでございます。したがいまして私どもといたしましては一つの仕事を始めます場合に、こういう手続で十分その間に地元関係の機関におきまして御相談をしてやれば、その事業実施は地元との関係の十分な意見調整のもとに行なわれるものであるというふうに考えておりまして、したがいましてその間におきましては意見を聞く場合もございますし、協議をする場合もございますが、それによって十分目的を果たし得るのじゃないかということでこういう建前になっておるわけでございます。  なおこれを協議にしたらどうか、各ほかの例をお引きになりましたが、それぞれこういう場合におきまして、私どもも多目的ダム法あるいはその他愛知用水公団法その他いろいろの規定がございまして、それぞれの規定を参考にいたしたわけでございますが、それそれの内容と目的に落手の差もございまして、それぞれの法律にお春ましては若干の相違がございます。そういう相違がございますので、この法案におきましては先ほど申しましたような手続で意見を聞くということを十分にいたしまして、その意見を聞きまして非常にその意見の中に尊重されるべき点があれば十分に尊重をいたし、また御納得のいかない場合があればそれをさらに十分に御理解をしていただくように努める、というようなことで私どもとしては十分ではないか。こういうふうに考えまして、こういうふうに意見を聞くということとし、あとは最終的には協議ということの手続によって仕事を進めたらどうかというふうに考えておるわけでございます。
  36. 田中一

    田中一君 促進法案の三条、四条の「関係行政機関の長」というものの中には、長の関係行政機関の権限を委任されているところの都道府県知事が入るかどうかということは、関係都道府県知事と分けたところに問題がある、疑問があるといっているのですから、それはどうなの、そいつは。ほかの言葉は要らないからそいつだけはっきりして下さいよ。
  37. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) 三条、四条には「関係行政機関の長」とそれから、「関係都道府県知事」と分けて書いてあるわけでございますが、この「関係行政機関の長」は関係各省の長というふうに私どもは考えているわけでございます。
  38. 田中一

    田中一君 そうすると「関係行政機関の長」とは各省大臣なり長官なりを指しているのだね。それから都道府県知事はこの関係行政機関の代行、地方的に代行を委任されている知事というものではなくて、地方行政の長としての知事を指しているのだね、そうすると。
  39. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) 御承知のように、河川法に基づきまして地方行政庁という言葉を使っておりますが、その場合の地方行政庁の長は河川管理者としての知事というふうに考えておるわけでございますが、この場合の関係都道府県知事という場合には、河川管理者でありますとともに、また地元の地方公共団体の長としての性格を持っておるもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  40. 田中一

    田中一君 それでいいの。それでは茨城県知事は今の御答弁をどういう受け取り方をしたのですか。せっかく参考人に見えているのだから疑問点はここで解明して帰っていただきたいと思うのです。
  41. 岩上二郎

    参考人岩上二郎君) 機関委任の関係におきまして、確かに関係行政機関の長という場合には知事が含まれておるものであろうと思うのであります。その場合にこれは河川法の第六条、あるいは特定多目的ダムの場合に関係行政機関の長というものは、ほとんど全部知事は入っておる。これはおそらく機関委任事務の範囲における知事の考え方があるのではないだろうかと思わますが、この場合に関係行政機関の長というものは、各省関係の大臣あるいは長官、こういうことで区別されております。この区別がどうして区別されておるのか、おそらく間違いやすいのじゃなかろうか。協議の内容を見ても、あるいは意見を聞いてという内容から見ましても、何かこのところが少し字句的にひっかかるので、その次長さんなり局長さんなりがお答えになっておることが、本質的に私どもの考えておることとちっとも違わないようなんですけれども、その字句が何かこれでいいものなのだろうか。最後のよりどころは法文になってくるので、ここらあたりはあとで争いが起きたのでは困るのじゃないかと思いますので、ここらあたりは十分に御検討をしていただきたいということでございます。関係行政機関の長というものは知事が入る。ただいま御意見のように機関委任事務の範囲内における知事と、それから地方行政法上における知事と、こういうことが入っておるとするならば、これはどういうものだろうかとも思われますし、もし入らないとするならば、関係都道府県知事というものとの関連性においてその意見を聞くというのは、やはり協議でもいいんじゃなかろうかと思うのであります。
  42. 田中一

    田中一君 それじゃ、岩上君、その問題はひとつ、やはり鮎川君もなかなか言いにくい点もあるだろうから各大臣に聞いてみます。  私の質問はこれで終わります。
  43. 田上松衞

    ○田上松衞君 起案者側に御答弁をちょっとお聞きしたいのです。今までいろいろな質疑を通じましてお聞きになったとおりに、たとえば岩上参考人は、少なくとも促進法案の中において知事の発言ないしは権限というものが非常に軽視されている。少なくともこういうことでいっては運営の面において地方自治を侵害されるという危惧を多分に持っておられるためと、私はこう受け取ったわけなんです。谷口参考人のお話の中でも、場面は変わったがとにかくいろいろな折衝の面において、政府側を相手にするよりか公団のほうを、これは公団に関することですけれども、公団を相手にするということが知事の立場としてはやりやすいという表現を用いられたわけですけれども、そこに言わずとしてわかっている問題は、やはりひとつの官僚式な行き方、これであっては、とてもじゃないが、地方知事としてはちょっと歯が立たないというところをおっしゃっているのだろう。言いかえるならば、やはり岩上参考人と同じように、やがてこういう問題が、そのときどきの問題にあらずして、こういうことを通じまして地方自治が侵害されるという危惧がどこかにひそんでいるのだ。私はこう受け取ったわけなんです。このことは私どもも常に考えていることなんですが、そこでお伺いしたいことは、どうも公団法案は別にしておきまして、促進法案の中に見るあれでは、特に官僚政治のにおいを濃くいたしましてどうも民意が無視されていると、これはいなめないと思うのです。いろいろ字句の使い方、意見を聞くということが協議であったらどうだ、あるいは同意であったらどうだという疑問が起こるのだけれども、このことすらも促進法案に限っては、衆議院審議過程においても意見は出たとしても、この点が修正されていない。やはり依然として意見を開く。だが附帯決議等の中においても、意見を十分尊重するというようなことをつけられて、それをただ尊示していくだけとただこういうことに終わってしまっているわけです。こうして見ますならば結局は関係都道府果の意思というものがどうも尊重されていかないという心配を多分に持つわけだし、ことにまた、せめてそうであるとするならば、やむを得ないというのであるならば、少なくとも国民全点の民意を代表するといいますか、この立場における国会の審議というものをやはり尊重する建前がなされなければならぬわけだと。したがって、結論的に申し上げますならば、基本計画が策定されたときにはこれを国会に提出いたしまして、国会の承認を得るような規定をされたならば、こういうようないろいろな危惧あるいは弊害というものがとれるのじゃないかと。こう考えるわけですが、一体これについて考慮を払わなかったのかどうかお聞きしたいと思うのです。くどいようですけれども基本法の中でいっておりますることは、これはただ内閣総理大臣が水系を決定しようとする場合には、閣議の決定を経てそしてその決定されたものを公示すればそれでいいんだと、それでおしまいになってしまっておる。今初めて法案を作るときにこそわれわれはこうやって、ああだこうだというような意見を述べたり議論もしたりしておりまするけれども、これが発足をしてしまったあとでは、極端に言うならば、これはもう国会も文句を言うな、こまで法ができちゃっているのじゃないか、つべこべ言うようだったら、なぜ前に発足当時に言わなかったのか、こういうようなことまで心配されるわけなんで特に申し上げておるわけなんです。そういう点について思いをいたされなかったかどうか。思いをいたしたにしても、なおかつそれを挿入しなかったということは、どういうふうな考え方であったか、この点だけをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  44. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えします。水資源水系の指定あるいは基本評価の策定といいますものは、国の行政事務といたしまして非常に重要な問題でございます。また特にこれは当然内閣総理大臣のもとに国の本来の重要な行政事務といたしまして、行政機関が責任を持って行なうべき事業であるのでございます。というような関係で国会等の御関係を規定していなかったのであります。  それから先ほどお話の地方自治との関係でございますが、これも先ほど申し上げましたように、都道府県知事の御意見は重分尊重いたしまして万遺漏のないように措置して参りたいというふうに考えております。
  45. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記をつけて。
  47. 田上松衞

    ○田上松衞君 そこで谷口さん、岩上さん御両方に今の問題、政府側の答弁あるいは考え方、こういうものに対してどういうふうにお考えになるかをお二人からきわめて端的に率直にお聞かせ願いまして、何か私ども参考にしたいと思いますから。
  48. 谷口久次郎

    参考人谷口久次郎君) 私はあまりそういうことを学究的に考えるということをせぬ男でございますので、はっきりしたことは申されませんけれども、今茨城県知事が指摘されましたような問題は、将来やはり相当大きな関係があるかと思われますが、これはやはりでき得ることならば、それはそこにも関係都道府県知事と協議をするというような文字が掲げられておれば、非常に後になってみると有効でなかろうかというような感じはいたしますが、しかし、私はそうなければならぬというようなことも、あるいはないのではないかと……こういうものは実際協議の途上においてむろんこの条文に保障されておるということも重要でありまするけれども、しかし、われわれはやはりこんな問題はその条文によって話をしていく話が進められるということもさることながら、もっといろいろの実情を尽くして話をするということのほうが実際問題になってくるとそういうことがほんとうに重要になってくるのじゃなかろうかという感じがしますので、どちらでもいいということではありませんが、しかしまあ今のままでも私は話を進めるということになれば大なる支障なくして話が進められるのじゃないかという感じがするわけでありますけれども、こういう問題は微に入り細を尽くして修正等に持っていってもらうということであれば非常に望ましいことだと、かように存じております。
  49. 田上松衞

    ○田上松衞君 私の申し上げようが、時間を急いでおります関係でなるべくよけいな言葉を用いまいと存じておりましたから要点がおつかみできなかったかと思います。端的に申し上げますと、いろいろな茨城県知事の御意見もよく頭に入っておるのでありますが、にもかかわらず、今の場合はすでに衆議院では御承知のとおりの修正及び附帯決議等で通ってきてしまっておる、こういう現時点に立って考える場合に、当初谷口さんがおっしゃったとおりに、まだしかしこの程度なら不満足のことであるが、参議院において何とか十分一つ修正を加えてほしいという御意見を前提として考え、その一番要点をいろいろしぼって考えますると、こうした都道府県知事の意見というものがただ尊重されるとかなんとかという言葉でなしに、協議ないし同意という言葉に変えてもらわなければ、というような岩上参考人の御意見はもっともだと思います。しかしさっき申し上げましたように、この段階にきてそれが不可能であるという場合においてはせめて、気ばったようですけれども国会議員の立場において広く民意を代表するということであって、ただ作られたそのままを仕方がないとながめておるだけじゃなくして、水系の指定とか基本計画の策定であるとかをなした時分には、これを国会に出してそこでこの承認を得るという形式にしておくならば、いろいろそういう点等が幾らかでも緩和といいますか、除去されるというようなことになるのではないかと、かかる配慮をいたしましたので、まあつづめていいますと国会の承認を得ると、基本計画の策定及び水系の指定、これが一番もとですから、これはぜひ国会の承認を得る必要があると痛感いたしておるのですが、どんなものだろうとこういうことを申し上げておるわけなんですよ。このことについては今お二人方と私申し上げましたけれども、鈴木先生の御意向もこれは一口だけ簡単にその考え方をひとつ披瀝していただきたいと思います。
  50. 岩上二郎

    参考人岩上二郎君) けっこうな御意見であろうと思うのであります。ただそのことだけ申し上げておきます。
  51. 鈴木雅次

    参考人鈴木雅次君) この点はよく研究はいたしておりませんけれども、行政の責任になって参りますれば、これは総理大臣が全責任を負うべきものだと私は思います。
  52. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 他に参考人の方に対する御質疑はございませんか。——他に御発言もないようでごさいますから、これにて参考人の方の御意見に対する質疑は終了することにいたします。  参考人各位におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。  それでは委員会は午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩    ————・————    午後二時三十七分開会
  53. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  水資源開発促進法案水資源開発公団法案、両案につきまして質疑を行ないます。  御質疑の方は順次御発言を願います
  54. 村上義一

    村上義一君 現内閣は所得倍増ということを基本にして、同時に後進地域開発とかあるいは地域格差の是正という政策を掲げ、国民に約束をしておられる。しかるにこの水資源関係法案はマンモス都市の水不足の行き詰まりを打開して、同時に今後もここに工場を集中し、人口吸収を誘する、そうしてその結果は過大都市の異常なる膨張をさらに助長する、という施策を実行せんとするものであると思われるのであります。これは根本問題でありますが、これは明らかに現内閣の基本的の政策と矛盾しておるように考えられるのでありますが、大臣の、また長官の卒直な御見解をまずもって承りたいと存ずるのであります。
  55. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 都市の過大集中を排除して参りますことは、今後の政策の上で必要でございますが、しかし現状におきます特定都市の水の十分な供給、またそれは飲料水であろうと工業用水であろうと現状の状態において決して十分だと言えないわけでございますし、そういう面から見ましてもこの法案が成立いたしましてそれらに対して十分な供給確保していくということは、公衆衛生の上からいいましても、あるいは工業の今後の体質改善に伴います発展からいいましても必要だと思います。ただその他いわゆる低開発地域その他に対しての問題等につきましては、別個政府といたしましても法案を同意し、あるいはその他の機関においても、それぞれ過大都市防止の方法を講じておるのでありまして、特段にこの二法案の通過によりまして、既設都市の過大ということを助長することはないと私どもは考えております。
  56. 村上義一

    村上義一君 しかし今長官のお説ではありまするが、とにかくこの水資源開発するということになっていけば、ますます大都市に人口も集中し工場も集中するということになることは、これは明瞭だと思うのであります。ただいま、その分はとにかくとしまして、いわゆる後進地域に対しては別途に考えるというお話がありましたが、衆議院における審議の段階におきましても、その点に触れてかなり各種の論議が行なわれたように承知しております。そしてその結果若干の法案に対する修正衆議院で行なわれておる。しかしこの法案の内容は根本におきまして下流の水利用、つまり下流の水利用の府県の利益充足ということにのみ重点が置かれておって、これによって生ずる水源地域被害また不安というものを除去することについては、一向考慮が払われてないというふうに見られるのでありまして、特に水源開発に関する基本計画におきまして、第五条によりまして、水の供給目標とかあるいは水資源開発及び利用の合理化に関する重要事項というようなものを、この基本計画に明記することになっておるのでありますが、水源地域すなわち後進地域開発なり、被害者に対する補償ないし生活再建等については何ら触れておらないのであります。すなわち、下流地域ため水資源開発事業実施上重大な影響を、これは消極的にも積極的にも受けると思うのでありますが、これらの事項につきましては、本法は全然これを無視してしまっておるというふうに考えるのでありまして、これが上流県民が深刻な不安を抱いておる、また不満を抱いておるというゆえんであると思うのでありまして、この不安なり不満が解消せられない限りは、この事業の円滑な遂行はしょせん不可能であると私は思うのであります。衆議院における促進法案第四条の修正に関連しまして、この五条に水源地域開発及び事業実施に伴なう損失補償措置の基本的事項という一項目を記入することが当然だと私は考えるのでありまするが、ひとつ御所見を伺いたいと思うのであります。
  57. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) この計画は、第三条にもございますように、広域的な用水対策を緊急に必要と認められる河川についてこれを指定するのでありまして、その河川というものの水資源を活用すること自体は、水系全体を指定されるわけでありまして、そして水系全体に対する基本計画を立てることでございますから、上流におきまして過去の用水の問題も当然問題として基本計画の中に取り上げられて参りますし、もし他の低開発地域開発計画による都市構成とかそういうような問題がこの水系に伴って同じように問題になって参りますれば、当然そういう状態についても基本計画においては考慮するわけであります。単に下流だけで上流地域には全く犠牲をしいるのだという趣旨のものではございません。緊急にただ必要としまする現在の状況に応じて、あるいはそういう緊急に必要とするような地帯に対する何といいますか読み方が多いものですから、あるいはそういう誤解をされることになろうかと思いますが、水系の水全体を完全に合理的に利用してそうしてその水系に伴います各地の十分なる開発計画に即応するこういうことであると御了承いただきたいと思います。
  58. 村上義一

    村上義一君 ただいまの長官の御意見、もとよりそうなくちゃならぬと思うのですが、それが具体化されておらぬ、こういう点に上流地域の不安があると私は思うのであります。  これは一例でありますが、淀川水系に対する琵琶湖関係のごとき、午前中にも谷口知事からの参考意見の開陳があったのであります。この琵琶湖の水をどういう程度に利用せられるかということは、基本計画が立たぬければこれはわからない話でございます。しかしいろいろ巷間伝えられるところによると二メーターあるいは三メーターあるいはそれ以上にも琵琶湖の水を下げなければならない、下げることを予期している、もとより締め切った堅田——守山間の締め切り、その北のほうの意味でありますが、渇水期にはやはり二メーターで足らなければあるいは三メーター、なお不足すれば四メーターまでも下げるということになりますと、そのこうむる損害というものはすこぶる大なるものがあると思うのであります。御承知でしようけれども滋賀県の地下水は非常に高いのでありまして、したがってそういう工合に水位が下がった場合には、琵琶湖周辺の土地も相当奥まで傾斜沈下をする、その傾斜もかなり角度が強い。それでこれは琵琶湖と余呉湖とはよほど趣きを異にしていると私は思いますが、余呉湖周辺に作られた——これは湖北総合開発の一環として作られた揚水ポンプ、このポンプ台が基礎工事もろとも余呉湖のほうに倒れてしまった、これは全急角度の傾斜沈下をしたためであります。そういう例を県民はよく見ているがゆえに非常な不安にかられている、こういうことなんであります。一体そういうことになれば、三メーターでも四メーターでも琶琵湖の水位を低めるということになれば、高い地下水関係上急激に渇水期においては地盤の傾斜沈下を来たす、そうするとその湖辺にある産根、長濱といわすすべての市町村がもうがたがたになってしまいやせぬか、という極端な想定のもとに心配している人が少なくないのであります。この心配が解消せられない限りはどういうふうに相談を知事に持ちかけられても、とうてい協議はまとめられないと私は心配するのであります。それで今のようなことを申し上げたような次第であります。これは非常に重要な事項でありまするから、諸般の事情上促進法案には明記されなかったということであれば、せめて公団法案十九条に関連する他の政令にでも入れてこういう不安を解消する、つまりこの事態を救済することが当然だと思うのであります。政令によって処理するというようなことが必要だと思うのでありますが、ひとつこういうお考えがおありかどうか、合わせて伺っておきたいと思うのであります。
  59. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御指摘のありましたような、かりに淀川水系についてこの基本計画を立てます場合に、琵琶湖水位低下させるかさせないかということは、これは利用の上で問題があろうと思います。しかしかりに低下させたというような場合に、もしそのままで湖畔周辺の状況が、今村上委員の御指摘になるような状況になるとしたならば、基本計画はとうてい立てられないわけでありまして、むろんその周辺犠牲を高く強いて下流における水が豊富であればいいというようなことは、この基本計画を策定するときに政府考えておりませんし、またこの法案提出にあたってもそういう一部の犠牲において他の地方が非常な有利な立場をとるということは考えておらぬのでございます。政府としても所得倍増計画をやって、各地方がそれぞれおのおの繁栄をして、そうして所得格差をなくしていくということが根本のねらいでも全体の大きな政策の上ではございますので、他の方面の犠牲において一部の地方が非常に繁栄を失い、その所得の低下を来たすというような政策はとることはないのでございます。なおそういうような御心配もあろうかと思いますので、われわれとしては十分なそれについての処置をして参らなければなりませんが、政令等にどういうふうに規定するかはただいま大いに検討いたしておりますけれども、そういう点について御指摘のような御意見のようないろいろなことを伺いました上で、十分政令立案にあたっては参考にして参りたいと、こういうふうに考えております。
  60. 村上義一

    村上義一君 ただいま御所見を伺ったのでありますが、とにかくこの基本計画のいかんによって重大なる影響があると思うのであります。もちろん飲料水、田用水等に影響もあることはもちろんですが、この琵琶湖を利用した福祉施設また観光施設というものは御承知のとおりかなり、多いのであります。なお今計画中に属するものがかなり広範にわたっております。のみならず港湾施設というだけから申しましても、長浜港のごときは三十四年度からやっと今仕上がったところでございます。全額は具体的には承知しておりませんが、十億近くかかったと記憶しておりますが、これなんかも二メーター下がったらもう港の用をなさなくなるのです。今現に彦根港も計画に着手いたしました。こういったものは三メーター下げる、さらにもっと進んで三メーター半あるいは四メーター水位を下げるということになれば港の用をなさなくなる。反対に豊水期の場合には平水位あるいはそれにプラス何センチというようなことになるのだと思います。あるいは一メーター以上というようなことになるかもしれませんが、そういうことになれば低水位の場合に適応する港は用をなさなくなる。まめ各般湖水の周辺全面にわたって異常な影響を及ぼすと思うのであります。こういうことを県民は非常に憂慮し、同時に不安におののいているということが事実だと思うのであります。この不安を除去せんければこの工事は私はできないと思う。実はこの点について大阪府知事の佐藤先生ともいろいろ話し合ったんですが、個人的にも、とにかくそういう不安を除去してもらうことが第一だ、それでなければ自分らのほうとしても、結局水が得られぬということで不安だ、こういっておられる。これはよほどこの点については法律立法問題もさることながら、あらゆる観点からあらゆる事項について深甚なる注意を払ってひとつやっていただきたいと思うのです。これについて今長官の御意見は伺いましたが、大臣はどうでございましょうか、何か御意見があったらひとつ伺いたいと思います。
  61. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 水資源の涵養、水源対策、こういうことの重要でありますことは申すまでもございません。特にお話に出ております琵琶湖滋賀県の関係等につきましては、これはもう滋賀県としても琵琶湖というものは唯一の財産、といっては語弊があるかもしれませんが、県にとって最大のこれは資産であろうと思います。したがって、水資源の総合開発によって琵琶湖の水を利用するということになれば、これは水源地に対するいろいろな処置を最大限に考慮して行なうべきであると私どもも考えております。それらの具体的な方策は第四条の規定に基ずきまして、基本計画には治山治水について十分考慮か払われなければならないという項目を初めといたしまして、水源地の諸対策に遺憾のないように考慮を払った基本計画が作られなければならないと思うのであります。また水位の問題についてもお話が出まして、私も現地を視察いたしまして、琵琶湖の事情あるいは知事さんの御意見等も重々拝聴いたしましたが、これらの水位影響するような水の利用方法を講ずるとすれば、それはもう一流の学者等に依頼をいたしまして、徹底的にその及ぼす影響についての基本的な調査が整ってからでなければすべきではないように私も考えております。いずれにいたしましても水源地に被害を及ぼしてはならないということのを前提として、しかる上に立って水の総合的な開発と利用の総合的合理化をはかるということがこの法案目的であると思いますので、考え方としましては今抽象的でございますが、申し上げたような角度に立って本法が運用せらるべきである、私はこう考えております。
  62. 村上義一

    村上義一君 この衆議院の先般審議の段階におきまして解明されました点すなわち、総理大臣が、水資源開発ため水系を指定されるという場合には、これに先だって、関係都道府県知事の意見を聞く、その意見を十分に尊重するということが附帯決議にも書かれてあり、大臣からもそういう御意見の御表明があったように承っておりまするが、この意見を聞いたという場合に不幸にして知事が反対の意見を表示した——理由はもとより付して反対の意見を表示したという場合にはどういうことになりますか。たとえ反対の意見を表示しましても、第三条にいう意見を聞いたとして、あえて水系を正式に指定せられるのであるか。その辺ひとつ承っておきたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) この基本計画を策定いたしますときに、第四条にもございますように、関係都道府県の知事の意見を聞いて、そうして基本計画を定めることでございまして、この本法の目的か水の合理的利用であり、それは水源における水の確保でもあると同時に、上流下流を通じての関係都道府県の水の既設の利用はむろんのこと、将来の発展に必要な水の問題についても計画を立てるわけでございますから、したがって知事の意見としては、当該地方における実情に即した私は意見が出てくるのだと思います。でその意見を十分取り入れて、そうして各関係都道府県の知事の意見を聞いた上で、そうしてそういうふうに何と申しますか、地方岡事情に適合するような基本計画を立案していくということになるわけでありまして、何か絶対的な反対といいますか、水の合理化使用、そうしてしかも上流下流を通じて水資源確保しながらそれを利用していくという問題については、知事も御反対はないことだと思います。その仕方、方法だと思うのでございまして、そういう意味においては、知事の御意見というものを尊重しながら計画を立てる十分な私は余地がある、こう考えております。
  64. 村上義一

    村上義一君 この促進法の三条、四条や、公団法の二十条ですかに記載されております「関係都道府県」という文字なのですが、この関係都道府県というのはもう明瞭だと思いますけれども、本法においては指定された水系の川口から水源地までの土地の管轄する都道府県ということになると信ずるのでありますが、この際ひとつ都道府県の範囲、まあ定義と申しますから、これをはっきりしておいていただきたいと思うのです。かく申すその理由は、実は多目的ダムの四条にあります関係都道府県という文字と同じ文字なのですが、これが天ケ瀬ダムの建設に先立ちまして問題となりまして紛糾を惹起した歴史があるからであります。ダムを作って水没する部落を管轄する県は関係県じゃない、ダムを建設するについての費用を負担する県が関係県というのですか、何かそういったような解釈でありまして、水没する土地、部落、それを管轄しておる県が関係府県でないという、まあ言いかえれば天ケ瀬ダムの場合におきましては、新たに大津市に併合された部落、三部落ほどが水没したのであります。ところが実際はいろいろと御配慮を願いまして、滋賀県の県会議長その他の尽力によってやっと合意点に達したのでありまするが、とにかくダムの建設について、その水没する部落を管轄する県が関係府県でないと言われるのは、どうも私、納得ができなかったのです。今日でも納得がいかないのでありますが、とにかく本法案にも同じ文字が使われておりますので、念のためにこの際伺っておきたいと思うのであります。
  65. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 水系を指定することでありますから、支流と申しますかそういうものは全部含まれますし、また広域的な用水対策ということを考えておりますので、関係都道府県というものが、何か今お話のあるような関係とはわれわれ考えておりません。過去のそういう例について私存じておりませんが、そういうような水没する村、が関係府県でないというのは、私ども常識で考えてもおかしなことだと思うのです。そういう点についてはむろん入っておると御承知いただいて差しつかえございません。
  66. 村上義一

    村上義一君 そうしますと、もちろん川口から水源地に上至るいわゆる水系の全部を管轄する府県関係都道府県なんだ、こう理解してよろしゅうございますね。現行の河川法では国が直轄する大工事施行の場合を除きまして、河川に関する工事の施行、その維持管理地方庁が行なう、原則として。で、愛知用水公団にしましても電源開発会社にしましても、これらの団体が工事を行ないます場合には、管轄する知事の、管理するといいますか、知事の許可を受けてしかる後工事を施行するということが、河川法の七条でしたかになっておると思うのであります。しかもこの河川法の例外はこれを認めないということになっておると記憶しておるのであります。ところが今回のこの公団法案三十三条はこの大原則を無視した、つまり公団が河川工事の施行主体になり得るということを規定しておるように読めるのでありますが、私の解釈が誤りであるなら御教示願いたいと思うのであります。明らかに地方行政庁の河川に関する権能を侵して、この河川管理体系を紊乱するようなことがあってはならないと思うのでありまして、これに関する論議もかなり知事会議その他であったように承知しております。したがってこの原則を維持するために二十三条の一項を削除すべきであるという強い主張があったように承知いたしておるのでありますが、これについてのひとつ御所見を伺いたいと思うのであります。
  67. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) この規定は懸念されておるようなことではございませんので、従来の河川法上の都道府県知事の権能をいささかも侵さないというのが建前でございます。従来河川法におきましては、第七条におきまして、地方行政庁、今日で申しますと都道府県知事と申しますか、「河川ニ関スルエ半ヲ施行シ共ノ維持ヲナス」云々と、こうありますが、次の第八条がこの特例的な規定と申しますか、「河川ニ関スル工事ニシテ利害関係スル所一府県ノ区域ニ止マラサルトキ又ハ其ノ工事至難ナルトキ若ハ其ノ工費至大ナルトキ又ハ河川の全部若ハ一部ニ付キ」云々とありまして「主務大臣ハ自ラ其ノ工事ヲ施行シ又ハ其ノ工事ニ因リ特ニ利益ヲ受クル公共団体の行政庁ニ命シテ之ヲ施行セシムルコト」ができると、こういう第八条があるわけでございまして、従来も多目附ダム等につきましては、建設大臣が主管大臣として直轄事業をやってきたわけでございます。この分の権能を公団が今度は多目的利用のダム建設と河川工作物を実施することになりますので、公団にその権限を移していこうというのでありまして、都道府県知事の持っておりました従来の権能は従来どおりでございます。  それから同時にこれに関連しまして、公団にそういう権能を与えたら政府の、今までは主務大臣であったが、その手から離れるではないかという一つ問題が起こってきますが、この点につきましては、実施にあたりましては、その施行に関して主務大臣が指示することになっておりますので、その指示をいたしまする際に、完全に従来の主務大臣が持っておりました権能に従いまして行ないますから、その点も公団としては主務大臣の指示に反しては施行ができませんので、遺憾の点はないと私どもは実は考えておるわけでございます。
  68. 紅露みつ

    紅露みつ君 関連させていただきます。ただいまの公団法案の二十三条でございますが、これは衆議院審議の過程におきましても問題になったところでございまして削除されればたいへんすっきりすると思うのですが、ただいま御説明がございまして一応わかるのでございますが、ここで一つ確めておきたいと存じますことは、この河川法の七条におきまする知事の権限がここでは全く排除されておることになりますので、しからば河川法の十八条の関係がどうなるか、これがはっきりと生きておるということでなければ、ダムを作りましても、そのダムの水を利用するという場合には、どうしても知事の権限が、ここに水利椛が出てこなければならないと思うのでございますので、この点についてはっきりした御見解を伺っておきたいと思います。
  69. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 今紅露さんから御指摘のございました第十八条の知事の権限でございますが、これも従来どおりでございまして、この河川法十八条はそのまま生きておるわけでございますから、「河川ノ敷地若ハ流水ヲ占用セムトスル者ハ地方行政庁の許可を受クヘシ」こうありますので、従来どおり都道府県知事の許可がなければ、たとえ公団といえどもできないわけでございます。したがってこの点も従来の知事の権限等は全然変更はございません。
  70. 紅露みつ

    紅露みつ君 了解しました。
  71. 田中一

    田中一君 今のもう一ぺん。今のところ三条の関係ですが、促進法案三条ですね。この基本水系の指定をする場合には、工事が伴わないから都道府県知事の認可は要らないと、こういう見方ですか、指定は。河川法の十八条の問題ですが、これは許可を受けることになっていますね、結局指定をして、いよいよ仕事をするときに許可を受ければいいのですか。この促進法案三条、四条の関連ですよ。それなら初めから水資源開発の指定をする場合には知事の許可を受ける、許可ですよ。これはただ指定ということは計画だ、するかしないかわからぬというのじゃないわけだ、それじゃ許可とすればいいじゃないですか。十八条の精神が生きているならば当然先行するのは許可の問題です、指定する場合には。それがここでもって関係行政機関の長、それから関係都道府県知事は、地方行政庁としての知事なのかはっきりとわからないわけですよね。十八条がそのまま生きておるとするならば初めから許可ですよ。第三条、第四条の計画というものがすべて許可を受けなければならぬということですよ、都道府県知事の。そういうように理解していいのですか、十八条がそのまま生きておるというならば。
  72. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 十八条はそのまま生きておりますが、開発水系の指定をいたしまするということは、開発水系として指定をするのでありまして、工事自体を行なうのじゃないわけであります。したがって水系を指定するときにはただ開発区域を定めるだけでございますから、この三条の規定によって運用をしていきまして、さらにそれが第七条、第八条等にもからんできまして、第八条にいうように、河川に関するその工事により利害の関するところが一府県の区域にとどまらないとか、あるいは非常に大きな至難な工事であるとか、あるいは多目的であるとかいうようなものについては、従来から主務大臣が権能を持っておりましたので、それが公団のほうに移るだけで、第七条に規定されておる、河川に関する工事を施行する場合の知事の権能、あるいは十八条でしたか、十八条に関する知事の権能、これは従来どおりでございます。したがって単純開発をする場所があるとすれば、それについては知事の許可を得なければできない、こういうことになるわけでございます。
  73. 田中一

    田中一君 もっとも都市計画でも私がいやだと言ったってかまわずプランを作ってしまうからね、図面引いてしまうから。その程度のものということと理解していいわけですねただ計画だけだと。
  74. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そうです。
  75. 田中一

    田中一君 そうすると今度公団法案の十九条、二十条ですね。これはやはり都道府県知事の意見を聞くとなっているでしょう。たとえば河川法による二県にまたがるという場合ということは建設大臣の権限になっておりますね。しかし一行政区域内におけるところの一河川については、これは知事が持っておるわけです、十八条が生きておるというならば。そうでしょう。
  76. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そうです。
  77. 田中一

    田中一君 そうすると、促進法案三条、四条の問題は、計画だからこれはまあ勝手にプランを作るのだということ、実際実行する場合には一行政区域内の場合には、その知事の許可を求めなければならぬということになるのですか。
  78. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そういうことでございます。そこで工事が至難であるとか、数地域にまたがるとかいうような河川法の第八条に規定した部類のときには知事の許可は要りませんが、そのかわり主務大臣の指示に従ってやらなければいかぬと、こういうこになるわけであります。
  79. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。私はやはり提案者からお聞きをしておきたいので、この法案の誕生その他の経緯から見て各省庁主管者のそれぞれの御答弁はあまり意味がないように私は思う。今の点は河川法一八条は阻却されて、あとでまた私の質問のときにもお伺いしたい点があるのですが、少なくとも二府県ないしそれ以上のものについては、河川法十八条を阻却されて主務大臣の指示によって公団がこれを代行するとこういうまあ御説明です一ね。しかしケース・バイ・ケースであって単純に特定府県にかかるものである際は、これは河川法十八条が生きて、しかも特例は認めないで当該都道府県知事の許可を必要とする。そういうふうにまあ建設大臣のお答えで承るわけですが、御提案になっております経済企画庁長官のほうの御解釈をこの際承っておきたい。
  80. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  81. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記を起こして下さい。
  82. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 河川法に関することですから建設大臣より答弁をお願いいたします。
  83. 藤田進

    ○藤田進君 提案者でしょう、藤山さん。違いますか、私の心得が違うのですか。本委員会政府を代表して提案されているのは、これは藤山企画庁長官でないんでしたか、違いますか、私の心得え違いならば。
  84. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 提案者でございますけれども、河川に関しまして主務大臣である建設大臣が十分な御説明を申し上げると思います。
  85. 藤田進

    ○藤田進君 これは、だけれども、企画庁が大体この法律は運用なさるのじゃありませんか。まあその辺をまず最初にお聞きします。
  86. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) それでは私から一応お答えしまして、それから企画庁長官からお願いいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、河川法第八条による水利権というものは知事にやはりあるわけでございます。したがってかりに公団の事業が進渉いたしまして水利権の許可を要する段階に行きますと、知事の許可を得なければできないということになるわけです。この点でまあいろいろ都道府県知事の方々は、知事が発言権の外に置かれるんじゃないかという御心配が非常に初めから強かったことは、われわれ承知いたしておりますが、建設省としましては河川法の第十八条の現存する限り、将来この河川法の改正でもすれば別でありますが、この河川法第十八条の現存する限り、知事の水利権は依然として従来通りの建前でございますから、知事が心配になるような筋合いではないということを、われわれ私的にも弁明もして参ったわけでありまして、その基本的な筋道には変わりはないと御理解を願ってよろしいと思います。
  87. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま河川法の点について、言われましたので、したがって、この当該の基本計画を立てますときに知事の意見を聞きまして、そうして許可できないような意見がありますれば、それは調整していかなければならぬということになると思います。
  88. 藤田進

    ○藤田進君 あとで。
  89. 田中一

    田中一君 大体筋道がはっきりしたと思うのです。そこで——続けてやっていいでしょう。
  90. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) どうぞ。
  91. 田中一

    田中一君 それじゃ……
  92. 藤田進

    ○藤田進君 僕ははっきりしておると思う。それ別にやればいい。
  93. 田中一

    田中一君 そこで、最初からひとつ腰を据えて質問しますから。  われわれは、この三法案というものの受け取り方は建設法か、計画法か、あるいは利水の面に重点があるのか、どちらに考えたらいいのでしょうか。総合したということになっておるけれども、全部総合しておるのだという答弁ですと、これは問題が別に被及するのですが、どういう工合に卒直に受け取っていいのですか。企画庁長官、建設大臣、両方から伺っておきますが、これは当面何を目的としておるか、促進法案はわかります、これは何を目的としておるかということです。いろいろ番いてあるのですよ。第五条にいろいろ計いてありますけれども、第四条にも書いてあります。国民としてどういう受け取り方をしたらいいのか。
  94. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 促進法案のほうはおわかりいただけますように、水の合理的な水系全体に対する利用をどういうふうに計画したらいいかという計画的なことを基本にいたしておるわけでございます。公団のほうはそれを実施する方法を規定したと、こういうことでございます。
  95. 田中一

    田中一君 建設大臣もそれでいいですね。
  96. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 同様でございます。
  97. 田中一

    田中一君 そこで、この促進法案を出さなければ、今、経済企画庁長官が説明をしておるようなこと、ができなかったという実態ですね、これはひとつ、口で言ってくれればけっこうですが、説明していただきたい。たとえば「水資源の総合的な開発及び利用の合理化の基本となるべき」云々、したがって「基本計画には、次の事項」——第五条ですよ、「次の事項を記載しなければならない。」「水の用途別の需要の兄とおし及び供給の目標」とか三項目ありますね。これはたとえば利根川水系について、もはやプランがおありだと思うのです。それをひとつお示し願いたいと思います。あるいは宇治川でもけっこうです。
  98. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 河川局長からお答えをさせます。
  99. 山内一郎

    政府委員(山内一郎君) 利根川水系につきましての需要の見通しと供給の目標でございますが、これは一応建設省の所管としてただいま多目的ダム等を建設して水資源開発を行なっておりますが、その点につきましていろいろ需要のほうも資料を集めて、一応建設省関係としては見当をつけておるわけでございます。ただそれは建設省だけの考えといいますか、それでは不十分でございまして、なお農業関係とか工業用水、それから上水道の関係考え、なおかつそれぞれおのおのの目的開発する計画というものも織り合わして、初めてその利根川水系水資源開発基本計画はできる、そうしなければならないとこういうふうに考えております。したがって、この促進法案におきましてはそういうことを目標としてこういう内容が織り込まれ、「基本計画には、次の事項を記載しなければならない。」ということでやって参っておるわけでございます。したがって、これから申し上げますのは建設省関係ということになりますが、いろいろ資料等集めまして一応四十五年目標で考えておりますが、利根川河川に依存する四十五年の農業工業水道用水、これの需要量の大体の見込みが一日六百万トン少しと、こういう一応調査をやっておりますが、それにつきまして開発計画としてもそれに合わせるような計画を一応立てているわけでございます。その計画の内容でございますが、それには矢木沢、下久保、神戸というような多目的ダムの建設、それからあわせまして利根川の河口にせきを作りまして水を貯留してそれを利用する、というような利根川の河口せきの問題、それからさきには霞ケ浦開発、こういうような点をいろいろ、これから調査する分もございますが、大体の児当としては、それで開発が間に合うんじゃないか、こういうふうに考えております。なお、それらで開発いたしました水を需要の地点まで持って参ります多目的用水路といいますか、それもあわせて考えたいと、こういう状態でございます。
  100. 田中一

    田中一君 明日連合委員会があるわけですね。そうすると、介の建設省のやつは今伺ったから、建設省のやつを含めて各利水面の各省各庁の計画も一応立っているんでしょうから、これはなわ張り争いだいぶしたんだから、めいめいにみんな作っているん、だろうから、それを取りまとめて資料を出してほしいと思うんです、あした。今ここじゃ無理、だと思いますから。それをひとつ要求しておきます、各省に。委員長後藤義隆君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  101. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記を起こして。
  102. 田中一

    田中一君 そこで、こうしなきゃならないこの促進法案、並びに公団を作らなきゃならないということになった一番の今までの欠点ですね、これはどこにあったんですか。今までの欠点というとおかしいけれどもこうしなきゃならなくなったという岬、…。
  103. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、水の需要面については、環境衛生の立場から上水については非常に大きな問題として今後扱われて参らなければなりませんし、また工業におきましても工業の体質改称と化半工業というようなものが主に大きくクローズアップされてくれば、工業用水、特に地下水等の規制もいたして参らなければならない工業地帯もございますので、そういうような面から工業用水確保といいますことは、今後の日本の産業進展のために非常に垂要でございます。同時にそれの需要を満足させるためには、水の確保ということが当然必要になってくるわけでありまして、治山治水等を想定して、そうして水の合理的な利用ということを考えて参らなければならぬと同時に、先ほどお話も出ましたように、たとえばの完全利用のためには河口せきを作るとか、あるいはダムによって貯水を計画するとか、そういうような多目的な意味も含めてそういう水系の整理をして、そうして水の量をわる程度豊富にもし、合理的に使うことに供給面ではなって参らなければ総合的にならないわけであります。そういうことを考えてそうしてできてきたのが、この水系を完全に利用していこうというこの法案目的でございます。
  104. 田中一

    田中一君 そこで今考えているこの二法案が通った暁に水資源開発水系の指定という点はどう考えております。たとえば利根川の場合にはどの地点を考えております。利根川水系全部を考えておりますか。それとも特定の矢木沢とかを考えているんですか。
  105. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 第四条でございますかあるように水系全域にわたってやる。で、水系といえば主流河川というものも含め、その河川に直結しております湖沼等もありますので、そういうものも含めて指定されることになろうと思います。
  106. 田中一

    田中一君 水系全部ということですか。その支川も何も全部ということですか。
  107. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) そうでございます。
  108. 田中一

    田中一君 たとえば江合、鳴瀬のように河口で合流しているという場合、両水系が指定されるというふうに考えていいのですか。
  109. 山内一郎

    政府委員(山内一郎君) 水系の指定のまあ具体的のどういうふうにやるかというのはいろいろやり方あると思いますけれども、必要なのは、やはりその開発施設とかそういう点が含まれる区域、という指定の方法もあるのじやないかというふうに考えます。したがってはっきりいたしませんけれども、計画がございます水系というものについては、あまり支川のこまかいところまで指定をいたしましても、水源開発に直接関係もないようなところもございますから、やはり水資源開発施設をおもに考えまして、それらの川の区域へ入るようなものを考えたらどうか、こういうふうに考えております。
  110. 田中一

    田中一君 ずいぶん規模が説明によっちゃ大きくなってみたり、今河川局長のように局限されたり、一体どこをどうしようというのか。実に私も委員会でなく私的にいろんな説明を聞いているのですが、つかまえにくいのですよ。今河川局長の答弁を聞いておると、まあ資源として価値のない所は指定しない、確保しなければならぬというような施設を指定するのだと、こういうような答弁に思われるのですが、藤山さんの説明ですと一河川全部だということになるのですが、一体、非常にこれは違うのですよ。利根川のようにああいう長い、支川も相当あり、それから今度の法律案を衆議院で改正して水源の保全涵養、保全と涵養というものがこの目的に入っている以上、それを含まなければならぬことになっているのですよ、全部。そうすると膨大なただ水の利用じゃないのです。国土保全というこの根本の国土計画のもとですよ、それまで入ってくるのです。衆議院修正がないときには大体すっきりと一つ施設ということに局限しても考えられるのですけれども、衆議院のこの修正から実に大きな発展をしているのではないかと思うのですよ。ですから、まあ一つ利根川水系としてこれは河川局長、これは建設省的感覚かもしれぬ、君が言う以上は、私はこう考えているのです、利根川水系をこう考えているのですということを言えるはずです。もうわれわれにも私的には説明があったのだから。それから農林省はどう考えているか、農業用水をどう考えているか。電源開発はどう考えているか。工業用水はどう考えているかということはやはり乗ってこないとわれわれが最初言ったとおり捕捉できないのですよ。どういうものであるかということがつかめないのです。そしてもしも一切の問題が入るならばこんな公団なんかにやらすべき問題じゃないのです。公団なんかにやらすべきものじゃないです。経済企画庁が国土総合開発法による実施公団でも、実施公団というか、機関です、みんな機関を作りなさい。これは与党も郷党も自民党も社会党も言っている国土開発的なものを作ってやるべきです。ですから私どもはつかまえられないのですよ。どういう規模のもので、どういう構想で。なるほど文章はいろいろ書いてありますけれども、今河川局長から施設という言葉がふっと飛び出した。われわれはどう考えたらいいのですか。藤山さんが経済企画庁長官として考えているものと建設省の考えているものと違うようですが、どうなんでしょう。
  111. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) もちろんある一つの川、利根川なら利根川、それは水系全体を指定するわけになりますから支流その他も含む。ただ先ほどのお話のようにかりにほとんど河口で同じ所でまあ一本になるというので、全然方向が違う、いわゆる水系が違うという場合に、河口で一緒になったからといってそれを包括的に指定するかどうかということは考えなきゃならぬところだろうと思います。しかし一つ水系としてはやはり水の合理的な利用、それは水系全体にわたって基本計画を立てなければいけないし、その基本計画を立てるときに農業用水の問題としては農林省が問題を出されまして、どの地点でどういう農業用水確保する、あるいは通産省からすれば電源開発の地点はどういうふうにその水系の中で確保する、ということがこれから出てくるわけだと思う。したがって、水系全体として指定されて基本計画そのものは立てられることになるので、何か支流の途中をぽんと切っちゃって指定外に置くとかなろとかいうことは、それは遁世なる措置ではない。ただ先ほどのお話は河口へ何か入ってくるというやつで二つの水系があった場合に、二つの水系を基本計画の中に入れるかどうかということになりますと、これは別個の問題になる。
  112. 田中一

    田中一君 国土保全のための水の調節ということと、そたから利水ということと。これはもう不可分のものなんですよ。そこでこれは河川局長に聞いたほうがいいじゃないかと思うのですが、利根川の一体既設のダムも全部指定して一つのものとしての考え方を持とうとしているのですか、それが利根川水系というものをかりに言うならばですね。
  113. 山内一郎

    政府委員(山内一郎君) 水資源開発公団ができまして実施をいたします水資源開発施設、これを建設のあとは公団が管理をしたらどうかというふうに考えております。したがって現在ございますすでに開発済みの施設は公団の管理には入らない、こういうふう  に考えております。
  114. 田中一

    田中一君 河川局長に聞くと大体わかってきました。そうすると、今考えているのは特定という言葉でいいかな、これから行なおうとする水資源確保という施設の部分を公団に渡すのだということであって、利根川水系の中の既設の有効に使っているものに対しては、それは入らないの、だというように理解していいのですか、藤山長官。
  115. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 水系全体で基本計画を立てますときに、既存のダムというものを無視するわけにいかぬわけですね。既存のダムがあるというこを無視して基本計画を立てるわけにいかない、すでにあるものはあるもので生かしていかなければならぬ、それを殺してしまうわけにいかぬ。ですからそれを無視しないということは基本計画の中には入る。ただ将来そういうようなダムができたときに、たとえば多目的ダムをどこで管理するか、発電のダムをどこで管理するか、は別個の問題である。公団としては工事したものについて管理をしていくということはありますけれども、既存のたとえば発電所の管理そのものを公団が取っていってしまうという形ではない。
  116. 田中一

    田中一君 そうすると、利根川水系の例を取ると、これから公団が行なおうとする水原用水確保施設に対しては公団がそれを用水の分配まで指定するそうすると、利根川水系という形で一本にすぱっとしてしまおうということなんですか。利根川水系のうちの特定な利根川上流のその区域だけを指定するということなんですか。これでは農林省の考え、それから通帳省の考え、建設省の考え等が、まあ経済企画丘を窓口にしてここでこういう形でもっていくのだというような安易な妥協をして、窓口を経済企画庁に持ってきたのであって、実態というものはおのおの計画を持っているはずなんです、その計画の調整というものができてないじゃないですか。そういう調整までも午前中に鈴木雅次参考人も言っているように、経済企画庁の主管となった経緯は閣内で話がつかないからこの法律を作って公団で調整しょうということになったのじゃないですか。どうもその政務次官と長官との間で何かぼそぼそやっているし、河川局長はまた建設大臣にちょっとニュアンスの違うような発言があるし、はなはだ最初言ったように、国民としてどうこれを理解したらいいかということは重要な問題ですよ。ことに利根川水系という一つの大きな坂来太郎というものの水利権というもの、あるいは用水というものを考えた場合に、これは今度水資源公団あたりに預けたのでは重大な問題が起きるのですよ。特定のある一つの量、何十万とか一日に流す、そのダム一つでどれだけ流すかということでもって下流は取る権利があるのですから、それは上流で流してもそれだけの分を下流は取る権利があるのですから、流れているのですから。こういう形でもってこれを水資源公団に取るようにやらすというのか。既設のものまで一元的にここにありますような水利用の面においてこの権限を公団に与えるのだ、いわゆる配水です、水を配るやつ与えるのだということになりますと、これは重大な問題が起きるのです。その点のつかまえ方をはっきり説明して下さい。既設のものは既設のもので認めるの、だ、それぞれ各ダムは自分の持っているところの収容能力でもって、かりに放水する量は、百トン流せば百トン途中でもって取っていいのですよ、流しておるのですから。そういう形でいこうとするのか。全部の新しい計画が立ってそれ、が既設も新設も全部含めたものを利用するための配分を公団に行なわせようとするのか、どの辺までを考えておられるのか。
  117. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 申し上げるまでもありません、今度のような開発促進法案を作りましたのは、従来ばらばらになる懸念のありましたものを総合的に統一してやりたいという考えからきておりますから、何といいますか、開発基本計画それ自体はもちろんこれは一本のものにまとめなければなりません。したがいまして水系の指定も利根川なら利根川というものを一木に指定いたしますが、それについてどう開発していくかということは基本計画におのすから順序段階がありまして、こちらの方からこういうふうにやっていくという計画がおのずから立つと思います。しかもその計画もきわめて広域的、総合的でなければなりませんから、したがいまして水系全般にわたる水の利用、供給、配分、それに設けらるべき施設の大体の配置計画等はきわめて総合的になされるわけであります。ただ御承知のように、この水の開発及び利用の事業主体をだれにやらせるかは、ここにありますように国もやりますし、公団もやりますしまたその他の心業体もやられるようになっておりまして、必ずしも公団が独占するとは書いてないのでございます。したがいまして、従来の既設の施設がありますときにも全体の計画の中にはそのものも取り入れて計画をしなければなりませんこれを除外するわけにはいきません。基本計画の中には当然従来の既設既存のものも取り入れて計画することは当然であります。しこうして既存の計画も従来やったようにその主体が依然として管理するかどうかは、全般を考慮いたしまして公団に引き継ぐことを適当と認めるものは、これを承継をいたすべきものと思うのでございます。しかし依然としてそれは最初に設置した者が別に管理をしたほうがいいと認められるものは別にいたしたほうがいいと思うのであります。既存設備の承継につきましては今後主管官庁と御相談してきめたいと思っております。現に愛知川水公団におきましても同様な問題があるわけであります。そういう既存のものにつきましてはそれぞれの主管官庁と相談をいたしまして、継承するがよろしきやいなやということを考えまして、ことに全体の基本計画の構想の上から承継を公団がやったらよろしいか、従来の主体が依然として運営したらよろしいか考えました上で決定したい、こういうふうに考えております。
  118. 田中一

    田中一君 なぜ公団方式がいいということなんですか。現在各省がやっているでしょう。決定がどこにあったのですか。また公団方式でなければならぬという理由はどこにあるのですか。総合的な開発並びに利水といったって今だってやっているじゃありませんか。
  119. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) お答え申し上げます。本法案の立案の趣旨にありましたように、最近の工業発展及び都市の人口が非常に急激でございますから、水の需要が急速に増しておる。それにこたえるためには、たとえばこういうふうに数府県にまたがりますような、相当の費用を要しますような大工事は、中央の省が官庁の直轄工事としてやりますのに比して、この公団形態の方が何といいますか、弾力性もあり機動性もあり効率も高い、こういうふうに考えますので公団方式をとるわけでございます。官庁でございますと予算、会計規則に拘束をされます。また多年慶にわたる継続費的な支出のやり方も非常にむずかしい。いわんや借入金をしたり水資源開発債券を発行したり、こういう事業体的行動ができにくいので、したがいまして御承知の通りこれを官庁の直轄事業としてやりますよりも、こういう事業体的色彩を持った公団を設けて、しかもこれが数府県にわたり各省にわたることを一元的にやって、しかも機動的に弾力性をもって、あるいは場合によっては相当先行投資的に、アロケーションのきまらぬような部門の経費についても、どんどん借入金その他でもって事業を進めていって、そして負担者がきまればそこに割り当てていく、このように有機的に弾力的にやる、こういうことで公団が出てくる時代がきたというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  120. 田中一

    田中一君 現在六法全書にありますところの現行法がだめだというなら変えたらいいのですよ。法律のため人間が生きているのではないのです、社会があるのではないのです、国家があるのではないのです。国家の必要な要請、民族の必要な要請にこたえて法律は変わるべきなんですよ。なぜ公団方式がいいかということだなると、今言った弾力性云々とか借金云々とか、これはできますよ。そういうことでは私は満足できない。というのは私どもは社会主義経済政策というものをもとに考えておりますから、だからそのままでは納得できないものがあるのですよ。実際に悪い法律があったら変えればいいじゃないですか。
  121. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) お説の通りでございますけれども、官庁の構想としてやりますときは、予算制度なり支出の制度なり、そういうものを全面的に変えてかかると大へんなことでございますから、やはり官庁工事としては一定の規則を受けざるを得ないのでありますから、したがってそういう官庁工事として不適当なものを、今日御承知のごとく各種の公団を作って事業的な色彩を加味して弾力的にやらしておるわけでございまして、したがいましてこれもそういう道路公団とこ住宅公団とかいうような、あるいは官庁がやってもやれぬことはないというようなものをいろいろな公団がやっております。したがってそういう意味でこれも公団でやるわけでございまして、特にここで新しい公団形式を開いたわけではないと存じておるのでございます。
  122. 田中一

    田中一君 開発事業というものは政務次官の言っているような要素がなくてはスムーズに、いかないといりならば、国土開発省というものを作ってそれに特例をひけばいいのです。各公団全部吸収すればいいのです。私は一応今の制度の中ではこういうものも認められております、おりますが、当然こういう重大な問題、大きな問題は国がやりやすいような形においてすべきだという純粋な議論を持っているんですよ。これはねえ、ほかのものと違うんです、うちを建てるとか道路を作るとかいうものと違うんです。アロケーション問題をあなたはおっしゃったけれども、大体一切の施設というものは国が直接やって、ただで国民がそれを使うんだという形が一番望ましいんですよ。たとえば生産工場があるとする、生産工場は民族の要請によって生産するんですから水は無料でやるべきです。そうすると水の分のコストもダウンします。それは国民のためですよ。ほかのものと違って私は、水と空気と太陽熱というものだけは、これはもう当然料金を取らないでやるべきだと思う。よく水道料金といいますけれどもこれはまあ現在では上水道を使えない人もいるものだから、やむを得ず水道料金というものも取っていますけれども全部国がすべきですよ。根本的に利水の面を、一応利根水系なら利根水系として、計画は利根水系という一つ水系をもとにして立てるというお話ですからそれはいいと思います。それは国土総合開発の一環なんですよ。利根川水系には国土総合開発の特定地区としてきめてあるんです。屋上屋を架すようなものなんです。たとえば利根川開発利水等を考える場合には、国土総合開発事業のうちの利根川地区は特定地区としてきめてあるんですよ。ここに仕事を着々と進めつつあるんです。あらゆる要素が入っています。したがって、屋上屋を架すように利根川水系の全部を新しくこの促進法という形で取り上げるという必要はないわけなんですよ。そこで、取り上げるならばこれは経済企画庁が所管している問題ですよ、利根川水系の特定地区としての事業を十カ年計画で行なっております。それは一体建設の面に重点を置いてものを考えているのか、利水の面に重点を置いて考えているのか私はわからないわけなんですよ、実際いうと。あえて利根川というものを指定して今度またやるというならば、従来の閣議決定しているところの利根川総合開発事業というものは一体どうなるんです。
  123. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記やめて。    〔速記中止〕
  124. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記をつけて。
  125. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 全国総合開発計画は御承知のとおり草案でございます。来年三月までにきめますが、これは地域計画の基本法みたいなものでありまして、いろいろな根本的方針を抽象的に示したものでございます。それからそのもとにおきます特定地域開発計画は今おっしゃいましたように、地方によりましてはかなり進んで具体的な計画に入っておられると思いますが、たとえば今の利根水系の特定地域開発にしましても、これはそういう法律がありません形の基礎の上に乗ってのいろいろな計画ができているわけでございまして、そういうすでにある特定地域の計画などと十分これは矛盾しないように、それに合うようにこの計画を立てます。そういう利根川開発、水利等を、こういう促進法のやり方やあるいは公団という事業主体が新たに現われまして、こういう形で有効に促進するということをきめるわけでございます。利根水系の総合開発という今案がだんだん進んでおりますのを受けまして、これによる総合計画としてさらにこれをしっかり確定計画としまして、そしてこれの運営の仕方を促進法やあるいは事業主体に公団などを加えまして、つまりそういうしっかりしたやり方でやろうということで、矛盾はいたさないのでございますが、そういう地域の特定計画に合うように一つさらに固め、さらに強力に推進するやり方として、そういうものを提案しているわけでございます。決して矛盾いたしているわけではないのでございます。
  126. 田中一

    田中一君 利根川水系の特定地区の事業の進行状態を、きょう時間がかかっても全部説明して下さい。書数をお持ちになってきて説明して下さい。
  127. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま資料をとりに行っておりますから暫時待って下さい。
  128. 田中一

    田中一君 そうすると、今度は国土総合開発法というものを発動して何をやろうとしているのですか。国土総合開発法に何が書いてあるか、私読み上げましょうか、促進法案にあることはみな書いてありますよ。促進法でしなければならぬということはみな国土総合開発法にあるのですよ。屋上屋を架すということになるわけです。ですからそこからその先をやるなんということを言ったりするよりも、もっと端的にわれわれ国民の受け取り方を教えていただきたいと言っているのです。
  129. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 先にいくというよりも、全国の総合開発計画はいわば全体の大観的のきわめて複合的、総合的な大きなものでございますから、それの何といいますか、部分的な専門的なものをだんだんきめていっているわけでございまして、これは利根水系における水の開発及び利用という特定の事項でございまして、全国総合開発計画は大きく全部をまとめております。いわば全体と部分と申しますか、総合計画の大きな体系の中で利根水系を取り上げて、その水の開発利用をだんだんこれできめていくという、いわば全体と部分と申しますか、大きな方針を具体化しておると申しますか、そういうふうにお考えをいただいたらいいんではないかと思うのでございます。
  130. 田中一

    田中一君 特定多目的ダム法にもこう習いてあるのですよ。第一条の目的は「多目的ダムの建設及び管理に関し河川法の特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もって多目的ダムの効用をすみやかに、かつ、十分に発揮させる」と書いてあるのですよ。これは今の要素です、全部。いいですか。したがって河川法によるあの方法、この方法という方法の問題はきまっているのです。国土総合開発法にもあるわけです、利用の面も。もし読めというなら読みますが、そこでこの目的が何かということをあなたがたは今この目的にあるようにですよ、原案によると「産業の発展及び都町人口の増加に伴い水の需要の著しい増大がみられる地域に対する用水供給確保するため」と人間が増加しようが、需要が著しくなろうがなるまいが、現にやっているのです。水の確保は、現在行なっているのです。したがって特別この地区にどうしても人口がふえたという場合に、またふえるであろうと予想される場合に、それに対する水を確保する施設を作ろうというのがこの目的なのかあるいは水の配分ということに重点をおいて考えようとするのか、どちらかといっていることが一番最初の質問からいろいろ発展したものなんです。端的にいえばこれは水の使用権というものに対する配分管理ですね、これを行なうことを目的に立てたものなのか、あるいは増大する水の使用最にこたえて、また増大しようとする地区の水の使用最を確保するため施設を行なうために作ったものなのかと、そうするとこれは総合したもんでございますと、総合と言ったらどこにも総合という字が書いてありますよ。一番書いてあるのが国土総合開発法ですよ。これではいけないと言ったって現にやっているのです。効果をあげておりますよ。だからどこにねらいがあって、国民は端的にどういう理解をしたらいいかということを伺っているのです。ということはですね、一体この数々ある水利権というものを公団がこれを掌握すると、衆議院段階においては「特定の河川水系における」云々とあったものを「特定」を取ってしまいました。どこの河川でも全部やれるということなんですよ、やれるんだということなんですよ。各河川の水利権、水の配分云々という問題をこの公団が全部掌握する道が開かれてあるのです、やろうとするならばですね。これは非常に大きな問粗ですよというのです。それがねらいならば私は、いつも言っているように、水の所有権というものはそこでショート・カットしてためた者の権利じゃないですよ。たとえば紀州の二一八年災でしたか、途中で土砂がくずれて湖ができてしまった。その湖は決してかみしものものではないんです、水は国民全部が自由に使っていい水です。下流のほうでもって今まで必要な水、まあ慣行水利権と言っております、が、これがこまかく計算されて、それまで守るんだということになるのはまだまだ先のことです。水利権というものは特定のだれかが握って、上流で流れてくる水、必要な水がもう来ないということがあり得るんです。したがってこの促進法案並びに公団法案はどの事業、どれを目的にしてやっていこうとしておるのかということを最初から伺っているんです。それを全部の総合でございますという答えでは満足できないんです。そんなことは国土総合開発法にもあると言うんです。
  131. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今特定の、水の需要の著しい増大が見られる地方に水を供給するのが目的かどうかということのお話しだと思うのであります。むろん産業の発展及び都市人口の増化に伴って水の利用がふえております特定の地域がございますから、それに水を十分供給するということを考えて参りますことは、これは当然のことだと思います。ただしかしそういう供給をする場合に一水系の水が過去においてもいろいろに利用されておりますし、それを阻害して、増大した地域にだけ水を確保するというわけには参りません。したがって総合的に問題を考えてゆく。総合ということはそういう意味において地域全体の水の合理的利用をいたすためにはそういうことを総合して考えていって、そうしてしかもそれは水のでき得るだけの確保をはかって参らなければ、増大する要求にも応じられないわけでありますから、そういう面もあわせ考えながら総合的にこれを進めてゆくということが、いわゆる今お話のありました総合という点でございまして、そういう意味に御理解下されば、たとえば既設の権利を阻害するとか、あるいはそういう問題を無視して、そうして何か特定地域だけに水を供給すろんじゃなくて、特定地域に水を供給する場合にも既設の権利とあわせて総合的にその調整をしてゆくということにあるわけでございます。
  132. 田中一

    田中一君 そうすると、利根川の例をとりますよ、既設のダム群ですね、この水はこの法律には関係ございませんと——ここに第五条の三に「利用の合理化」という言葉が出ておるんですね、利用の合理化というものはどういう工合に考えておられるか、また具体的に利根川水系のものをどう考えておられるか。河川局長は矢木沢の今度作るダムを一応目標にしていると言っています。その貯水量というものに対する合理化をいっているのか、あるいは既設のたくさんのダム群が持っておるところの貯水黄の水までも利用の合理化というものを考えておるのか。既設のダムの水利権というものは、これは決して手を染めませんというならば矢木沢ダムに局限されるということになるんです。あるいは沼田に今度大きなダムを公団が作ればそれに局限されるんです。およそ総合的利用じゃないんです、特定の施設の利用です、施設の利用の合理化です。
  133. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ちょっとお説を返すようですけれども、既設のものも完全に利用される、そうして同時に今後の水を合理的に利用してゆくという総合的な施策をすることでありまして、そのことが基本計画全体を策定する上において十分考慮されなければならぬ。十分利根川についての知識がおありでありますから、各所のダム地点等について御説明がございましたけれども、私どもそういう十分の知識がございませんから、果たして今後一カ所しかダムを作らないか、二カ所作るか、そういう点については今後とも水の十分な利用等について建設省の御意見を伺って、この基本計画の中には織り込まれてゆくことになろうと思いますけれども、そういうものを総括して、そうして水の合理的経営をするということであるわけでして、御趣旨にそう違わないんじゃないかとわれわれ考えておるのでございます。
  134. 田中一

    田中一君 計画としての水の合理化ということは作文ですよ、文字にすぎないんです。実際合理化しているか、していないかの問題なんです。そこで水の合理化という言葉は、もうこの促進法案でうたっている水の合理化というものは既設のものまでを公団に全部やらせるつもりなのですが、そうじゃないのです。利根川水系の水の合理化というこの計画を計画しただけじゃしょうがないのですよ。実際その場合にだれにやらせるのです。既得権は既得権として直轄のダムは国にやらせるのか。まあ先ほど政務次官が言っているように、だれがやってもいいんだということになる。そうなります。そうすれば、公団のやるものは局限されるのじゃないかということです。水の利用という問題ですね、水利用の権限というものは、おのおの既得権として持っているものはおのおのやるのだということなんですね。それだけじゃ足りないのじゃないのですか。足りないからこういう促進法という構想が生まれてくるのじゃないですか。そこにむだありということなんです。もしむだがありという認定をしないならば、何もこういうものを作る必要ないじゃないですか、現にやっているのですから。
  135. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) その点はもう田中さんは重々御承知だと思うんですが、先ほど菅政務次官が言われましたように、多目的ダムを建設省の直轄工事でやりますと、まず第一に年度予算で縛られるということが一つと、それから多目的ダム法によりましてダムの建設をするのに、まず水の利用者の費用負担というものがきまってきませんとできない、それで工事費が幾ら、事業が幾ら、こういうことがきまって、初めて着工してやれることになるわけです。ですからこの公団ができた場合と、できないで多目的ダム法で建設省がやる場合とは、速度によほどの格差が出てくると思う。公団の場合にはそれが財政投融資でやり、あるいは公団債でやり、あるいは費用負担の率や負担者がきまらなくても、大体工業計画とか厚生省の水道計画とか、あらゆるものできまっていって、用水はこのくらい要るという見当がつけば、もう先行投資して計画を立て着工実施できまずから、そこにこの制度を設ける効能が私は多分にあると思うのです。
  136. 田中一

    田中一君 そうすると、建設法ですね、そうするとあなたの説明では建設するためのこと、だけを……。
  137. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 利用ももちろんですね。これだけ水がだんだん逼迫してきますと、水の利用を水道は水道、工業用水工業用水、ばらばらに使われたのじゃこれは水資源にも限度がありますからよろしくないので、できるだけ総合的にそれを配分して使うということが一つ用水路一本作るにいたしましても、水道用水は水道水路を作る、工業用水工業用水路を作るという、別の水路を作るよりは一本の水路できて、適当なところで配分するというような、利用面においても私は非常に関係がある。それから先ほど来利根川水系のことを中心に御議論がありましたので、私ども実は自分の関係しておる仕事の上から、従来の行き方よりもっと発展的な行き方が必要だと痛感しておりますのは、私は、首都圏整委員長も兼務いたしておるわけですが、東京の過度の人口集中をどうしても排除したい、その排除には努力しておりますが、いる人間に水道の水を飲ませなければならない、工業工業用水が要る、地盤沈下防止のため工業用水、が要る、これも当然でありますが、それについて首都圏としては過度の集中を排除するために、衛星都市をほうぼうに指定して、今建設しつつあるわけです。ところが工業団地を各地に指定して作り始めまして団地ができつつありますが新しい団地ができますとまず第一は工業用水で、全然今まで水に関係のなかったところに水が入り用になってくるわけです。その工業用水が見通しがつきませんと水を使う工場というものは誘致できない、非常にその誘致する工場に制約が起こってくる。こういう事情がありますので、私どもこの首都圏整備の衛星都市建設をやっておる者から見ますと、こういった新しい制度で総合的に水の造成及び配分事業ができる機関ができてもらうことが非常に望ましいわけで、利根川水系について首都圏整備事業の衛星都市建設ということと関連して考えますと、そういうことも緊迫した実情にあるというのが現状でございます。
  138. 田中一

    田中一君 ですから、水を確保する施設を作るための法律なんですね。
  139. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 確保して利用する面まで……。
  140. 田中一

    田中一君 利用するのはあたりまえですよ、水を売っているのじゃないですか、費用の負担なり受益者負担というもので。いわゆる言葉を返せば水を売っているわけでしょう、買っている者に売るため施設を作るのでしょうほしいやつに。そうすると、いわゆる水系の利用の合理化というものじゃなくて、特定なる施設の利用の合理化というものにならざるを得ないじゃないかということになるのですね。水がほしい、それじゃダムを作って水を確保してあげましょうということになっているでしょう、そういうことになるのじゃないですか。それを大きく利根水系を全部指定して、水のそれを有効適切にむだなく使うというようなことを言うと、これはとんでもない問題に発展してくるのですよ、一体どうなんです。だいぶ前に河川局長が、一つダムを作ってそのダムの水の利用の合理化ということならわかるのです。水系全部に対する水の合理化というものは、計画としてはむろんあるでしょう。それはそれぞれ水源地を作る、ダム群を作るときにはこの計画があるわけなんだと思うのですが、その点はどうですか。建設し、その建設されたものの水の利用の合理化をはかるのだということなんですか、それとも全部の、これは促進法案と公団法案とをごっちゃにしてものを考えるから非常にややこしくなりますが、私は割り切っているつもりですよ。ですから私のほうで公団の行なうところの事業を言うと、あなたのほうで促進法案で大上段に理想だけを、計画だけを、プランだけを言うから食い違うことになるのじゃないかと思いますが、端的にいってどうなんですか、河川局長、さっきの答弁があったからもう一ぺんちょっと説明して下さいよ。
  141. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 私から結局端的に申し上げますと、高度の水の造成、それと合理的な利用、こういうことがまあ促進法案及び公団法案のねらいだと思うのです。高度の利用、高度の水資源造成をするのには建設がもちろん伴うわけであります。そういった実施面の事業面を公団に使命をになわしてやらせよう、これが多目的ダム法による官庁事業よりは速度が早く弾力的にやれるに違いないというところにあるわけです。
  142. 田中一

    田中一君 建設をする公団ですね、公団というものは。
  143. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そうですね。
  144. 田中一

    田中一君 要求された水を確保して売るために池を建設する公団なんですね。むろんこれは自分の作ったものですから管理はしなければならぬですよ。これは自分の水がむだに漏れちゃ困るから管理しなければならぬ。そうすると、それが特定という言葉で表現されておったのですか、原案では。あるいは利根川水系というものに対するこれも特定の一つだというように特定をきめておったのですか。したがって、もう一ぺん言いますが、公団は水がほしいという者に売ってやるために、水を確保する施設を作るのが公団の役目だと、こういうわけですか。したがってこれはそれに対する管理をして、水はほしい者に売ってやるのだ、売ってやるという言葉はちょっと表現がうらはらになりますが、水を流してやるのだということだけの公団ですね、それでいいのですか。
  145. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そうだと思います。
  146. 田中一

    田中一君 そうならそうと早く言ってくれないと困る。それをいろいろ聞いているわけですよ。少なくとも水の行政というものを公団なんかはまずもってやるということはありようがない。  それともう一つ促進法案にこういういろいろな法文がありますけれども、これは内容というものはちっとも変わっていないのです、特別に変わっているものが一つもない。短い言葉で表現すればデテールは、こまかい行為そのものまでも、ものそのものまでも説明するかという違いにすぎないのですよ。きょうはこのくらいにしておきます。
  147. 藤田進

    ○藤田進君 この公団にしたということについては、これは基本的に公団というものに対する議論は別にあるわけでありますが、たとえば公団というものは、国によっては一つの社会化的なソーシヤリゼイシヨンだという考え方もあるわけで、それは御承知のとおりです。しかし、最近公団あるいは公社、名前は違っても特殊会社といったようなものがかなり保守党政策の中から出てくるわけです。私はいろいろな意味の所産としてここに出てきたんだろうと思うのですが、まず、最初にこれからだんだんと政策を、池田内閣が続くのか、藤山内閣になるのか、いずれにしても保守党内閣の続く限り、だんだんとこのシステムというものじゃないだろうか。本来自由主義でおやりになる政策が根本だろうと思うのですね。ところが、その自由主義にいささか矛盾をする現象がここにやっぱり出てきておると思われる。本来、水だってそうじゃないでしょうか。大きくは、おそらく工業用水が現状足りない、将来も足りないことは明らかだ。ところが、これが特定の工場が必要とするものを、井戸その他伏流水等を取りますと地盤沈下というようなものが出てくる。そうすると不特定多数の者が将来にわたって水というものを工業用水として必要とする。今度の場合もおよそ飲料水、上水というよりも、工業用水がその利用量において多いのじゃないかと思うのです。この法案の意図しておる内容は、そうなるともう自由主義の原則から言えば、製鉄所は製鉄所が必要とするものをどっかから持ってきたらよろしい従来はそうだった。あるいは水の都合のいいところに工場を作ったらよろしい。しかし実情はそういかなくなってきたところに、こういう法律を必要とすることになったのではないか。そうすると、藤山さんの経済企画庁長官の時代にくるかどうかは別として、水資源開発の促進並びにこれに付随する公団という、この公団というものがはからずも出てきたわけですね。そうなると、経済企画庁とされて、次にくるものはどういうものを予定されているのだろうか。やっぱり今は相当出尽くしたとも言えるでしょうが、住宅公団ありあるいはその他の一々あげる時間もございませんが、それくらいたくさんあるわけです。次にはどんなものがくるだろうかということについて私は将来の展望としてみたい。なぜならば、この公団も、およそ自由主義であるからそうなるのが本来自然かもしれません。出たとこ勝負といいますか、およそ計画というものはなさそうに思うので、そのときそのときに不自由でありあるいはまた不都合である、その場合には、そのときの政策として出るのが至当かもしれませんが、もし計画があるとすれば、もっと大きい構想で、国土公団なんといったようなものを作られてもいいじゃないか。電源開発会社というものができてこれは特殊会社、ほとんど水を中心に扱っておる。今度それができる。あるいは各自治体においては、御承知のように、水についてはかなりの公共投資をやっておるといったようなものはそのままにしておいて、ここに公団というものができるのだ、これがもしもっと早い機会ならば姿が変わってきたのじゃないか。国土総合開発審議会というものができたころに、案外こういうものができるべきじゃなかったかと思うので、そういうことから私は考えまして、将来企画庁とされては、公団というカテゴリ——、公社でもよろしい、どういうものが予想されるのだろうか。それは出てきたときに考えるということなのか。私は一つの予想を持っておりますが、まずお伺いしたい。
  148. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、日本の産業が高度に発展して参りますし、あるいは日本の国民生活の水準が上がって、文化的な仕事を政府が相当急速にやらなければならぬというような状況になって参りますと、過去において、政府もしくは公共団体等でやっておりました仕事を円滑にさらに促進していくためには、政府の持っておりますような機能とを合わせたような組織が必要になってくるということで、公団方式というものが戦後とられてきて採用されたと思います。したがって、公団としての一つの活動は政府がやるものあるいは純然たる民間がやるものというものを合わせた一つの特長を持っておるので、これが今後も相当に活動をしていくという場面が出てくることは私はいなめないと思います。が、しかし、それではどういう公団が次にあるかといえば、それは経済の発展なりあるいは今のような生活水準の向上に伴って、政府施設していかなければならぬような問題を取り上げていく場合に問題が起こってくるわけでありまして、ただいますぐにこの次の公団は何だということまで測定することは早計であろうかと思うのでございまして、とにかくこの次何かのためにこういう公団が要りやしないかということを今考えておるわけではございません。
  149. 藤田進

    ○藤田進君 まあ先ほど来の質疑応答の中で、公団のほうがとにかく官業、官営あるいは民営というものよりもいいのだということの裏づけとしては、かなり乏しいものがあったと思うのです。従来尽くされておる論争の中にも若干見られておりますが、しかし、よりパブリックなものだということだけで、今の基本政策の、池田内閣に限定すれば、自由主義経済というものからいうと、案外矛盾というものがあるように、私は思うのです。なぜかというと、上水道などは、これはかなり前から公共投資、公共事業としてやってこられたと思うのですが、工業用水中心として私はこのねらいがあるように思うのです。説明を見ても京葉地区とか京阪神地区とかいったようなことで淀川利根川ということをます考えておられる。これが要するに当該産業においては工業用水に関する限りなかなか所要水量を調達することが困難である、不可能ではないか、コストにおいて相当困難であるというところから、ここに乗り出してきたのが、国の施策の一つとして公団、こうなってきたように思う。したがって中小企業などが間接的利益を受けるとしても、かなり長期低利の資金をもって、おやりになると思うのですが、おいおい聞いて質していきたいと思いますが、いずれにしても大きく国の施策、国の財政資金等に依存をするものだろうと私は思います。減価償却自体は後で聞きたいと思いますけれども、そうなってくるとやっぱりその開発が困難であり、そのもの自体についてはなかなか利益の上がらない、利益率の悪い、俗に言えばもうからないものが公団というところに逃げ込んでいるように思う。ここに批判もあるだろう。進んだ国ではあれじゃないですか、よりもうかるものをやっぱり公団なりそういった方向に持っていくという考え方があるし、実際にやっているところもある。この前砂糖の輸入をして何かちょっと機械を通せば白くなると、そうすると利益が多いから、ひとつこれを国のほうで巻き上げようという法律が何かこの前あったと思うのですが、これは奇形的なものだと思う。こういう場合、もうからないだれも投資しないもの、これにわが国の公団というものはおよそ限定されているように思う。すばらしくもうかるものについては自由主義でおやりになるし、どうももうからないもの、投資困難なものについて国が出てくる。ここに世にいう回り回って大資本の擁護の政策じゃないかということが具体的に出てくるし、これでもそう思う、私は。したがってこの公団をお作りになるにあたって、私はそういう前提を頭の中に描いておりますから次の質疑が出るわけですが、この公団が先行投資を含む投資をなさる場合に、減価償却などはこれは会社ができて総裁、理事が集まってきめるといってしまえばそれまででありますが、一応の構想としてはどういうふうにお考えになっているんだろうか。水関係についても減価償却の年限が、あるものは二十年、同じものでも堰堤などの場合は、あるところは百年とかあるところは五十年とかといったような、減価償却の年限が施行者によってかなり違います。たとえば発電、電源開発といったような場合でも県営の場合、それから民営の場合ではこれは違うんです。したがってそれは電力料金にもむろん関係してきます。短期に償却しよう思えばコスト、が高くなるのはあたりまえですからね。この場合にダムもありましよう、水路もありましょう、あるいはこれをデイストリビユートされるための水路ですね、鉄筋なり鉄管なり必要になってくるでありましょうが、いずれにしてもそういうこの施設等に対する公団の経営というものが、これは受益者負担ということが中心になっておりますけれども、これらの点がどういうふうに運営されるんだろうか。これによってかなり公団の性格というものが変わってくるんじゃない、だろうか。たとえばアロケーションの問題をあげてみても当面百トン必要だ、したがって百トンの計画をし、これが実施をするという場合にはあまり問題は起こらないでしょうが、将来計画を含むと工場の誘致その他含んで当面百トン必要だが、将来は二百トンないし三百トンの施設を作っておく必要があるという場合には、一挙にその水を必要とする——これは工業用水に一応限定して申し上げますが、一挙に計画万ぱいの二百トンという工場はこないんです。おそらく今後将来十年間続くかもしれない。そういう場合に当初の百トンはとりあえず必要とし売れるわけでありますが、あとの百トンについては、二百トンの計画の場合ですね、百トンを将来に備えた場合に、その百トンの減価償却なりといったようなものはどうなるの、だろうか。それは地方に現実の問題もあるのですね。それはとりあえず百トンの水を使っている工場、産業に対して少しコストよりは上回った単価だけれども二百トンの一部をひとつ負担してもらおう。公団も若干負担をしようという考え方になるのか、二百トン割るのコストですね。したがってトン当たりのコストそのままで百トンというものを売るのか。そういったようなところをまあ端的に聞いたほうが性格上わかると思うんで、質問の趣旨がわかりますれば、その点でまずお答えをいただきましょう。
  150. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 水の価格の問題等につきましては、いずれ事務当局から詳細を御説明申し上げますが、前段の問題についてお答えしておきたいと思うんですが、こういう公団の利用が何か大資本に非常に偏重になるんじゃないか。昔ならば大資本は自分で用水をやるんだが、今度はこういうことでもって、大資本にいろいろな利益になるんじゃないかというお話ですが、むしろ藤田さんのお説でございますけれども、私はこれは逆であって、大資本なら自分の工場立地を探す場合に水に適当なところにも行き得ますけれども、都市における中小企業というものは自分の力でもって水を引くことができない。そういうところの集団に対して水を供給するということは、私はこれは産業立地の基盤を造成する上において非常に重要なことでありまして、そういう意味において私はやっぱり公団は中小企業にも非常に重要だと思います。また同時に大資本が水を自分で確保するというようなことの場合に、そのこと自体が全体の水系の利用というものに対して与える影響というもを考えなければならぬわけでありまして、そういう意味においてはやはりこういうような総合的な開発計画を立てて、そうしてその中にその位置をきめていくということがやはり必要なんじゃないかと思いますので、そういう意味において、お説ではございますけれども、必ずしも大資本だけにこれが非常に有利に働くものではないと思います。  水のアロケーションその他につきましては事務当局から申し上げます。
  151. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 今先行投資につきましてお話があったわけでございますが、お話のように公団を作りました一つのゆえんのものは、いわゆる現在水の需要者が確定してない場合におきまして、将来を見越して施設の建設を行なうという、いわゆる先行投資のの関係も公司の設立の一つの理由に承っているわけでございますが、今お尋ねのこの関係の償還といいますが、コストの問題でございますが、こういう問題につきましては実は非常にむずかしい問題だとわれわれ思っております。で、どういう場合にさしあたり問題が起こるかということをわれわれ考えておるわけでございますが、さしあたり現在いろいろ利根川等におきましてダムの建設を予定しておるわけでございますが、これは御承知のように非常に現在水の需要が逼迫しております関係上、現在建設省でお考えになっておる、おおむね確定しておりますダムにつきましては、現在のダムの容量ですべて需要がまかなわれなければならないというような関係になっておると思っております。それからもう一つダムはそういうふうにダムの容量そのものはまあ需要に見合う程度の量でございますけれども、たとえば幹線水路を作るといいます場合におきまして隧道を掘るわけでございますが、そういう場合におきまして、現在のダムの計画におきましてはたとえば十五トンの水路を掘ればよろしい、しかし将来その幹線水路には二十トン程度の水が将来需要として考えられるというような場合におきましては、あるいは幹線水路を十五トンのものよりも二十トンのものを作った方が経費も安くつくというような事情がございまして、まあさしあたりはそういう問題につきまして先行投資をやったらどうかということを検討しておるわけでございます。でこの場合、将来まあ、またこの場合におきましても、そうまあ十年とか二十年とかそういうはるか先の先行投資といいますことは、いろいろ財政上の問題もございますし、そう長い将来の先行投資というのはわれわれは考える必要はないかと思っておりますが、そういうような場合におきまして、いわゆる財源といたしては借入金、あるいは水資源公団債券というものが財源となると思いますけれども、若干長期間にわたりましてその資金が出るという関係考慮いたしまして、できますならば出資金をいただきましてその資金コストを安くして、その将来の水事業が確定しました場合におきましても、まあできるだけ水のいわゆる料金が向くならないようにと、そういうような考えで目下検討しておるのでございます。
  152. 藤田進

    ○藤田進君 その趣旨はけっこうなんですがね。これは現実に今、公共聖業でおやりになったところでも問題がありましてね。ある造船会社では非常に従来のものよりもトン当たりのコストがもう半分くらいのところがあるのです。しかしあわせて上水道にそれを使ったということで、市民のほうはまあべらぼうに高い水を使うことになったというところがあります。で、これはもっと規模の大きい問題を扱うわけでしょうから、さらにその点の格差が大きくなるかもしれませんが、先行投資は、これはこの法案の趣旨から見ても、急速に増加しつつあるものにも対処するというのですから、その将来見通しについては刑として、五年かまあ二十年かそれは別として、先行投資というのはこれは当然伴うのですね。水路の拡張とかそんなことは、今の用地買収だけ考えてみたってなかなか容易なことじゃないのですから、これはもうやむを得ないと思いますがね。その場合に今申し上げた造船の場合でも出資をしたわけですね。出資をしたのだから、あなたの例を引用すれば、二十トンならば二十トンの計画はしたけれども、その造船所が十トンしか使わないのだから、二十トンに対するコストを割り出して、その十トン分と、そういうことで、なかなか、まあ市の場合を例にとると、その独立採算ということができない。できないからあとを市民の上水道のほうへ割賦しちゃうということで問題があるわけですが、この場合もあるいは上水道を併用すればそういう問題が起きないとも限らない。あるいは工業用水をほとんどのパーセント、八割も九割も工業用水ということになれば、その点の単価問題が当然問題になるし、この法案が出ましてからも、私ども、その点がどうなるのだろうという心配の筋はかなりやっぱり出ております。その点は今の御答弁ではなるべく安くしたいとおっしゃいますが、ただ安くするだけでは、これはまあそろばんのやはり帳じりがなかなかうまく参りますまいから、もっと具体的にどういう措置を講じられるのか。これは一部を据え置かれるのかどうなのか、さらにお答えいただきたいのです。
  153. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のように問題は二つあると思いますが、先行投資をやって、先ほどお話しのように、百トンしか現在要らないのを二百トンの工事をやって将来に備える。その場合の百トンの水の需要家に対する料金の割当はどういうふうにやるべきかということと、もう一つは、同じような水路を利用して工業用水とあるいは上水道に使うというような場合における、その上水道と工業用水との比例、割合でございますか、金額でございますね、使用料の割合というようなものとの、二つの話だと思います。むろん先行投資をやりました場合に、これを全部が全部そのまま需要者にふっかけてしまうというのも常識的にいえばいかがかと思いますし、そうかといって、一文もそれを負担しないでというのも、早急に便益を得るわけでございますから、ある程度負担してもいいのじゃないかと思うのでありまして、その場合における、できるだけ資金コストの関係等を考えまして、公団もある程度負担もしながらそういうものをできるだけ初めから利用している人にも、今後利用していく人にも同じような割合で考え、同じような便益で考えるように特別に考慮を払っていかなければならぬと思います。また農業用水でありますとかあるいはことに都市の水道等につきましては、都市の水道というものは生活必需品とみていいわけでありまして、そういう面についてはやはり特段の考慮を払わなければなりません。でありますから、そういう点についても、料金の決定というような場合には十分そういう点を含みながら工業用水との配分を考えて参らなければならぬと思います。具体的に、まあ工事の金額等によりましてそれらのものを、そういう心持ちあるいはそういう方針のもとに決定していくことが私は必要だと思うのでありまして、将来そういうことでできるだけ運営をいたすようにして参りたいと、こう思っております。
  154. 藤田進

    ○藤田進君 要約すると、先行投資に対するある部分は、とりあえず利用する人たちに負担をしていたたくんだという基本方針と解釈してよろしゅうございますか。
  155. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今申し上げておりますことは、必ず基本方針としてそうするということを申し上げておるのでなくて、実情から見てそういう実情になるだろうからそれを勘案して、そのときどきにやはりきめていく必要があるのであって、何か私がここで一つの割合をきめてそうして申し上げるという意味ではございません。
  156. 藤田進

    ○藤田進君 それはいいです。それから、この水系によって指定をなさるわけですが、これは利根川水系と、利根川の場合は、適当でないかと思いますが、将来これは利根川淀川だけでなくて、漸次その緩急に応じて適用なさるのでございましょう。そこをまずお聞きしておきたい。
  157. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) さしあたり利根川及び淀川のことを考えておるわけでございますけれどもなお水の需要の著しく増大する場合等についての地方が相当想定されます。北九州のような場合もございます。あるいは水を周度に利用することによって、将来の開発に備えることもできる地方もあるわけでありまして、さしあたり利根川及び淀川水系考えておりますけれども、将来は財政、この公団の活動の余裕を見て広がっていく場合が想定されるわけであります。ただ全国のどの河川にも全部適用するというふうな考え方は持っておらないので、そういう意味で広がって参る、こういうことでございます。
  158. 藤田進

    ○藤田進君 そこで実際問題として、そのときは法律改正という手はもちろんありますが、一応まあ改正をしないで将来とも役立つ法律ということになりますれば、一水系だけの指定というのでなくて、隣の水系にも及ぶという場合は当然あると思うのですね。この条文を見ると利根川なら利根川、吉野川なら吉野川というものをその水系を指定なさるので、どうも並列に隣もというふうにならないように思う。これは運営の面の問題ですね。その趣旨はもっと敷衍しなければわからないから、おっしゃるように、公団あるいは既設の発電所なり、多目的ダムなり、大小合わせた河川にはいろいろな施設があるわけですが、これは有機的に、合理的に運営をはかるのだという御答弁ですが、その問題はあと回しにいたしましても、いずれにしても、およそ指定なさるような河川といえば、当面、かなり水資源の豊富なところとも言えると思うのです。必ずそういうところには、既設の諸種の施設がありまして、あるいはまた適当だと思うところは、かなり人家があって立ちのきがむずかしいとか、ダムの場合を考慮いたしまして。そうなると、案外流域変更というよう誉とが——私ども出身の中国筋あたりに参りますと、山口の岩国辺以西の工業用水は、一つ小瀬川というのがありますが、広島県と山口県の間あたりに、今工事をやることになっておりますね、建設省が。このように、いわば流域と変わったところに持っていく。それから全然流域変更して、隣の水系から、こっちの方へ導いてくるといったようなことを考えない限り、なかなか水資源を活用するのはむずかしい状態にある。  そうなると、この法律にいう特定の水域だけでは、なかなか解決はしない。そういう点を、どういう運用になさるのでございますか。
  159. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のようなたとえばごく近接した河川ですねまあ例が適当かどうか知りませんが、思いつきで申し上げれば、たとえば揖斐川と長良川というような非常に隣接したところ、それを合理的にあわせて計画を立てることが必要だ、その中間地帯、あるいはその近傍を含めて。そうすれば、その二つの水系を指定し、一つの基本計画として、水系を指定しても、それは適当であると思います。  ただ、第二のお話のような、水を少くもその水系から、他に水系のないようなところに活用していくという場合には、その水が、そういう量を持っているか。あるいはそのこと自体が、既存の河川の利用者に影響を与えるか与えないかということが、これは非常に重要な問題になってきますので、理論としては、そういうことがむろん考えられないことはございませんけれども、実際の関係府県意見が十分にそういう問題について、お互いに協力し合うという状態になければ、なかなかむずかしい問題だと思うのでありまして、そういうむずかしいのを、何か一つの、無理に強行するということは、政治的にはやはり避くべきだと、こう考えております。
  160. 藤田進

    ○藤田進君 今の問題に関連を持つわけですが、既設の諸施設、これは一般的にお聞きするわけですが、それとの必ずしも合理的な調整というものは、むずかしいのではないだろうか。およそこの水資源開発公団あたりで手をつけるところは、かなりの渇水期におきましても流量のあるところでなければならぬでしょう、この目的上。そういうところが、上流かあるいは公団がねらっておるところの地点よりも下流かに、あるいは発電所があるかもしれないとすると、既設の工業その他用水施設があるかもしれない、それから小さいものは、農業用水などいわゆる水利組合的なものもむろんありましょう。しかしこれを同じ、たとえば現在電力なら電力に立って見ましても、電源開発会社と当該地域に配電をしているところの電力会社の間に、ダムに関する限りは下流増の交渉だとか、なかなかめんどうな問題がやっぱりあるわけです。  今度竣工した御母衣の場合、下流に関西電力の堰堤がある。この下流増をどうするか。できてしまえば売る方と買う方の関係ができまして、なかなか問題ですが、ましてや、公団とそれらの既設のものとの調整ということは言うべくしてなかなか簡単ではないのじゃないか。豊水期なら問題ないでしょうが、わが国のような、かなり渇水期の長い、しかも年に二度くらい、これが季節的に来るというところでは、工業用水は、かなり常時必要です。あるいはお正月くらいは少なくても済むかもしれませんが、必ずしもお正月あたりが豊水期でもないわけで、そうなると、上流に電源用のダムがあるという場合における、放流いたします水量が問題になってくるでしょう。そう自由に電力の負荷とあわせて、そのダム操作をするというわけに参らない、この公団の方が加わることになりますとね。下流の場合においては、なおさらのことでしょう。工業用水その他に、大量に上流においてこの公団が水を取るということになれば、下流施設はおよそ機能を失うわけです。  そのことに対する調整は、法文で見ると、国土総合開発審議会あるいは電源開発調整審議会と、これらと調整をとるのだということが計画自体も含めて、おそらく調整をとられるのでしょう、書いてありますけれども、事実問題として、そういうものでうまくいくものだろうかどうだろうか、この場合における今の電源開発会社と九電力の場合にも、調整機関が必要じゃないかということを言われたくらいでありまして、この場合に、現実の問題が出た場合における調整というのが、はたして現行憲法上、財産権上うまくいくだろうか、どうだろうかという私は疑問を持っておる。これは紳士同志で肩をたたけばわかると言えば、それまででありますが、どういうふうな手順をお考えになっているのだろうか、これが一つであります。
  161. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話の問題については、まず基本計画を策定するときに、十分にその点を留意いたしまして、そうしてその計画自体の中で、お互いの権限といいますか、過去における既得権もございますし、あるいは将来に対する展望もあろうと思います。そこいらのものを十分調整して、基本計画を立てることがまず第一段だと思います。むろん今回の場合に、基本計画を立てる場合に、渇水というようなものを相当予想して、そうしてそのときの場合における、ある程度水量というものを基本的な水量として考えて、そうしてそれからの配分というものは、ある程度考えて参らなければ、非常な豊水期であります水を測定して考えるわけに参らぬと思います。  でありますから、そういうことで基本計画を十分立てまして一しかし立てまして実行に移した場合に、それでは何かトラブルが全然ないかといえばやはり渇水等の起こりました場合に、特に異常渇水というような問題が起こりました場合には、若干の問題がないとは言えないと思います。  そういう場合には、やはり関係者が大局に立ちまして、それぞれの必要のウエイトを、あるいは緊急性というよなものの上に立って、総合的に判断をすることをいたして参らなければ、こういうものが当然円滑に動くわけでもない。各自がそれぞれ一方的な立場だけを固執して参るわけにはいかないと思います。でありますから、そういう精神のもとにこれを運営していくということによって円滑にしていきたい。  そこで、何かそういう場合に、そういうものを解決する機関がなければいけないのではないかというようなお話かと思いますが、現在においては、特に機関を考えておるわけではございませんけれども、将来、何かそういうことを調整する必要がどうしてもあるというような場合には、私どもも考えて参らなければならぬと思いますが、総合開発という今後の大きな見地に立って、基本計画で十分な検討をした上で進めて参りますから、過去にありますような大きなトラブルは、そう起こらないで済むのではないかというふうに考えております。
  162. 藤田進

    ○藤田進君 そういう円満にいく場合はけっこうなことで、そういう行政指導なり何なりなさればけっこうですが、同時に計画が電源開発の場合にも、その他の施設の場合も、この公団が行なう水資源の場合も、同時に計画と施行がなされる場合は、今おっしゃるように、それぞれ国は、その認可権なりその他を持っているわけですから、調整もたやすいと思うのです。しかし、すでにある既設のものと新しく作ろうとするこの公団の場合のケースを考えると、そう簡単じゃないだろう。従来ダムを作りましても、下流に対して放流いたします水量がどうだとか、漁業権がどうだとか、先ほど申し上げたような流域を変更するという場合には、なかなかめんどうなもので、結局解決しているものは何か、それは行政指導とか非常に民主的に低姿勢でいったとかいうことよりも、とどのつまり補償金とか、そういう金が大きな解決のてこ入れになっているのですね。したがって、公共補償を含む一般のこの種事業に対する補償というものは驚くべき状態になってきている。そのことも含めて、前国会で土地収用法等の特別措置というものも出てきたのだろうと思うわけですが、そういう場合に困難な調整の場合に、法的には、どういうものを持ち出して、最終的には政府あるいは公団として話が進められるのか、法的な根拠ですね、単なる話し合いということだけなのか、何か法規的根拠があって調整が……。最終的には、行政訴訟になるのかどうかしりませんが。
  163. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 事務当局から御説明いたします。
  164. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) まず一つの問題といたしまして、公団が水資源開発施設を作ります場合におきまして、あるいはまた、基本計画を内閣総理大臣が決定する場合におきましても、既得の水利権は尊重するということは当然だと考えております。  で、今お尋ねのいろいろダムを作ります場合等におきまして、あるいは漁業補償とか、いろいろの関係が出てくるかと思いますが、そういう場合におきましては、現在もそうでございますが、それぞれ適正な補償を行なうということは当然やるべきだと思っております。特に法律的に既得の権限との調整といいますことは、まあ具体的には、法律的でもないし、要するに、新しく施設を作ります場合におきましては、既得権は尊重するという建前で、当然行なうべきじゃないかというふうに考えているわけでございます。  あと個々の補償の問題その他は、いろいろ補償の基準等もできておりますが、そういうものに従いまして、公正妥当に行なっていかなければならぬと、そういうふうに考えております。
  165. 藤田進

    ○藤田進君 原則としては、既得権を尊重されるでしょう。また尊重する。表現としては、尊重したのだから補償でもって、それを、いわゆる損害補償も、いろいろな補償の類別はありますが、尊重一したから補償でもって済ませるのだという形もあるわけで、そのままそっくり琵琶湖の例をとってみても、漁業権は既得権である、したがって、これは一切手をかけないのだ、水をかき上げもしなければ、またダウンもしないのだというものじゃなかろうと思う。尊重するから損害賠償なのか……。そういったような補償でもって解決しようとなさるのだろうと思うのですね。しかしこういう場合は、あれじゃないのですか、どうしても地元はがえんじないという場合には、先般創設した土地収用法等の臨時特例によって、これは、この公団自体にも適用になるのじゃありませんか、土地も水もですね。
  166. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。お話のように、先般の通常国会で成立いたしました土地収用法の特別法は、大規模な水利事業につきましては、この公団につきましても適用がある、そういうふうに考えております。
  167. 藤田進

    ○藤田進君 ですから、結局その競合なんですが、既得権なりといったようなものは尊重するとは言いながら、まあかりに琵琶湖の場合を考えてみても、知事が同意するかしないということより、別個に問題としては、先般の特別法で収用なさることも、かなり短期間に今度はできるようになったわけです。これがまるまる作用してくる、これは円満に解決することが建前だとおっしゃるでしょうが、どうしても、事業計画が進んでいかないときには、これが出てくるということは容易に考えられるのじゃないですか。そのために、あの法律を先般かなり急いでお作りになったのではないですか、政府として……。
  168. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 今局長が申しましたのは、公共用地の取得の問題でございますから、土地の取得の問題は、あるいはそういう手がございますが、水利権を侵す侵さぬとかいう問題になりますと、かりにそこの管轄の知事さんの同意を得られまして計画ができましても、さて実施になりますと、民法上の問題といたしまして、やっぱりそういう権利の争いというものが残ると思うのでございます。まあなるべくそれを侵さぬように、円満に解決するため補償の問題その他で、そういう権利関係の紛争にならぬようにやっていく処置が必要だと思います。土地の取得の場合は、この公共用地の取得の問題が発動いたし得る場合がございますけれども、水の問題となって参りますと、原則として、少なくも水利権として認められるものは、既得の水利権を侵して認可は、許可はいたしませんとは思いますけれども、具体的な問題になりますと、争いができまして、水利権なりや、いなや、あるいははたして、それが損害があるかどうか、どの程度補償をするとか、いろいろ問題が出ると思いますが、その点も、本法にきめまする審議会で十分審議をし、それから基本計画を立てるときにも、十分考えてみまして、その地方利害を代表される知事さんの意見もよく聞いてそういう権利紛争が起こらぬようにやっていきたいと思いますが、最後の、どうしても紛争が起こったときには、これは民事問題となって残るおそれはあるのでございますが、ひとつ、まあそういうことのないように、できるだけ円満に事を運びたいと考えてそのため審議会、あるいは知事の意見を聞く制度、あるいは基本計画を周密にする関係の行政の長に相談する、いろいろこういう制度が設けられてあります。  また、この審議会の中に、特別の専門委員を設けたりいたしまして、できるだけ周到に手を尽くしていくようにしているのでございます。それをせいぜい活用して、円満に処理したいと思っております。
  169. 藤田進

    ○藤田進君 いや、円満主義はけっこうですが、だけれども、土地については特例法が出てくる、しかし水についても、やっぱりあれが作用してくるのじゃないのですか、民事問題で、民事訴訟なり何なりということでは、非常に長くなるし、いわんやまた、今までの土地収用法でもかなり長くなるので、先般特例法ができたわけで、その特例法に関する限り、この公団の行なう事業については適用になる、作用になる、土地も水も作用するんだ。こういうのですか、水は作用しない、あの法律は関係ない、土地についてはあるとおっしゃるのか。
  170. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) 最初の水の水利権の問題がございましたので、その点からお答え申し上げたいと思いますが、既得の水利権があった場合今度公団が施設を作って、その施設によって、どういうふうな関係になるかというお話だったと思いますが、新しい水利権が付与されます場合には、既得の水利権をもとといたしまして、その水利権を侵害しないように、と申しますのは、新しい水利権は、従来の水量に対して与えられているもののほか新たに水利権として認められる水量等があります場合について、水利権が認められるわけであります。したがいまして、またそれを水利権を許可いたします場合には、渇水期その他によって、ほかに侵害を与えるような場合がございましたら、条件等をつけまして、そういうものが、あとにできたものが、既得の水利を侵さないような条件等をつけてやっておるわけであります。  今度の場合、水資源開発公団は既得の水利権、自然の流量と申しますか、そういうものだけでは足りないので、渇水期等にも備えて、新たに水源対策として、いろいろな施設を作りまして、できるだけ渇水期におきまして既得の水利を満たし、また今後の新たな需要にも対するということになるわけでありまして、計画上は、先ほどからお話がございますように、そういうふうなことがないようにいたしておりますし、水利権につきましても、そういうことが衝突しないような方法でやっておるわけであります。  それから補償の問題についてでございますが、水資源開発公団が事業をいたします場合、用地を取得するということになりますと、大規模な水資源開発施設ということで用地取得については公共用地取得の特別措置法が適用されるようになっておるわけであります。なお、これにつきましては、ただ政令等がございまして、それによって、若干整理しなければならぬのでございますが法律の趣旨としては、そういうふうになっておるのであります。
  171. 藤田進

    ○藤田進君 私の聞いているのは、土地の場合は、政務次官も答えられたように、疑義がないように思う。私も作用すると思う。既得権を侵害しないというのは、そのままそこに水車小屋があれば、水車小屋を残して、絶対につぶしてはならない。これが侵害しないというのではないのじゃないか。これは適当な補償のもとに撤去することもできるでしょう。しかし、その場合に問題は、土地収川法等の特別措置というものが作用して、補償が高いとか安いとか、そんなことを四の五の言っていたんでは、事業が進まないということで、その法律が作用してくるのではないだろうか。従来その法の審議の過程には、そうわれわれは答弁を受けておる。  そこで、それは今の水以外のものに対する補償等で、土地とか——今言うのは水ですね、水というものに対しても、特別措置法が作用してくるのじゃないか。それが作用しないのかどうか。
  172. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) 公共用地取得制度の措置法が、ただいま手元にございませんが、土地収用法では、原則としては土地の収用が原則でございますが、土地収用法の五条で権利の収用という規定がございまして、この中に、地上権や鉱業権のほかに、水利権の消滅の規定等もございます。
  173. 藤田進

    ○藤田進君 そうでしょう。
  174. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) ございます。したがいまして、公共用地につきまして、ただいま手元にございませんので、明確なお答えはできかねますが、このままの、権利の収用等も考えておりますならば、そのことが、公共用地のほうにも承継されているかと思いますが、ただいま法律がございませんので、明確なお答えができかねるような次第でございます。
  175. 藤田進

    ○藤田進君 この点は政務次官言われていたが、水利権の競合という場合に、同時に計画し、実施する場合は、割合これはイージーでしょう。私もそう思う。条文に書いてあるとおり、うまくいく場合が多いでしょう。しかし既設のものとの関係は、そう簡単でない。簡単でないということは、民主的におやりになるとか円満にということになると、なかなか物事がきまらないというわけです。  それをきめるためには、何か法律を必要とするのか。これは一つの権力でしょう。その場合に、今考えられるのは、お答えにはならなかったけれども、土地収用に関する特別措置ですね、先般通常国会で通った。どうもこれが作用してくるように私は思う。それが公共用地という土地だけではなく、水にも及ぶ、私はそのようにほのかに思うので、そういう場合に、既設の発電所、これは大小ございましょう。貯水式もありましょうし、流下式もありましょうが、いずれにしても、発電のほうからいえば、夜間はひとつ水をためておいて、ピークでありませんからためておいて、昼のピークに放水をする。そうして火力の運転をできるだけ押えていくというのが、従来やっている需給調整の根本なんですね。ところが一方水のほうは、なるほど夜は要らない分もあろうけれども、化学関係産業あるいは鉄鋼関係産業といったような、夜間といえども間断なく使っていくという工業用水からすると、かなり競合するでしょう。そういう場合の調整というものは、必ずしも話し合いだけで、うまくいくかどうかは問題があろうと思う。そういう際に、はたして今の特別措置法について、水というものに対して作用があるのか、ないのか。あるいは別途に、話し合いでいかない場合には、どういう方法が法的に裏づけとしてあるのかという点を、ひとつ御検討いただいて、月曜日にお答えいただきたいと思います。
  176. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  177. 後藤義隆

    委員長後藤義隆君) 速記を起こして。  両案についての本日の審査は、この程度にいたしたいと存じます。  明二十七日は、午後一時連合審査会、連合審査会散会後委員会を開会いたします。  それでは、これにて散会いたします。    午後五時二十九分散会    ————・————