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1961-06-02 第38回国会 参議院 農林水産委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月二日(金曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員武内五郎君辞任につき、その 補欠として小林孝平君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            秋山俊一郎君            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            河野 謙三君            重政 庸徳君            田中 啓一君            高橋  衛君            仲原 善一君            堀本 宜実君            大河原一次君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            安田 敏雄君            戸叶  武君            棚橋 小虎君            北條 雋八君   衆議院議員            丹羽 兵助君   国務大臣    農林大臣    周東 英雄君   政府委員    農林政務次官  井原 岸高君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房審    議官      大沢  融君    農林省農地局長 伊東 正義君    農林省振興局長 斎藤  誠君    水産庁長官   西村健次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    通商産業省通商    局次長     山本 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○愛知用水公団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の  一部を改正する法律案衆議院提  出) ○農業基本法案内閣提出、衆議院送  付) ○農業基本法案天田勝正君外二名発  議) ○農業基本法案衆議院送付予備審  査) ○魚価安定基金法案内閣提出、衆議  院送付) ○漁業生産調整組合法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会開会いたします。  愛知用水公団法の一部を改正する法律案閣法第一四〇号、衆議院送付)を議題といたします。本案に対する質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言をお願いします。
  3. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題になっておりまする愛知用水公団法改正案でありますが、すでに相当質疑も行なわれましたので、ごく簡単に一、二の点をお伺いいたしたいと思います。  その第一は、今度の改正によって、豊川水域愛知用水公団事業として新しく加わって参るわけでありますが、このことは昨年、一昨年あたりから当委員会でもしばしば問題になりました愛知用水公団のために、終始御精励をいただきました多数の役職員諸君が、愛知用水事業完成に伴いまして、形式的には職を離れるということになるわけであります。その努力に対しましても、将来の安定をはかってやらなければならぬということで、その措置をどうするかということがしばしば論議され、政府当局におきましても十分考慮しなければならぬ重要な問題であるから、その問題については最善の措置を講じたいという御答弁の結果が、こういう措置に相なったと私は了承いたすのであります。そこで、愛知用水公団事業が大部分終了いたしますれば、職員の転換の実態が一体どうなるのか、この点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  4. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 職員の問題でございますが、三十六年度当初には大体七百七十人くらいが愛知用水公団の現在員でございます。三十五年末とお考え願ってけっこうでございます。豊川事業をやることによりまして、豊川、それからまだ残っておりまする東郷調整池の問題、あるいはできます愛知用水公団施設管理等の要員を全部考えてみますと、三十六年度の年度末では、七百七十人が五百三十人ぐらいの実は定員になります。そういたしますと、三百四十人ぐらい定員が余ってくるわけでございます。そのほかにも実は豊川にいて、農林省の今直轄でやっている人々がおりますので、この中からも若干愛知用水に移るのではないかということを予想しまして、大体二百八十人くらいの人について再就職の世話をしまして、五百三十人残り、二百八十人ぐらいの世語をしようというような計画を立てまして、実は三十六年度に入りましてから、国に採る人もあり、県に帰る人もあり、民間就職する人もありというようなことで、五十人足らずの者が現在再就職あっせんを国、公団でしたわけでございます。まだ二百数十名の人が残っているわけでありますが、この人々につきましても、職に困るということのないように、国、県、それから民間の会社というようなところへお世話したいというふうに考えております。大部分の五百三十人という人は、豊川公団仕事をし、将来は水資源公団がもしできますればそこに転換されて、愛知用水公団は五年たてば仕事がなくなってしまうということで、身分上の不安があったのでありますが、今度はそういうことのないように公団の方に入りますれば何年ということもございませんで、十分身分が安定していくのではなかろうか。それからただいま申し上げました二百八十人の中でも、また公団の将来水資源公団ができまして、そこへ入りたいというような人もできれば、これは私どもも優先的に考えたいと思っております。
  5. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、三十五年度末に愛知用水公団定員実在者が約七百七十人、今度の法律改正によりまして、愛知用水事業それ自体は相当整理しまするが、豊川水系その他が入りますので、公団としては五百五十名くらいの陣容を要する、差し引き二百数十名の者が余る。その余る者につきましては、県庁なりその他の方面に就職あっせんしておる、まだ相当数が残っておるということでありますが、その残っておりまする諸君に対しましては、それぞれ身分の安定するような方向にあっせんをする、結論的には失職等の生活不安定を招来するようなことはないというような措置をするというふうに了解してよろしゅうございますか。
  6. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今、先生おっしゃいましたように、二百数十名まだ残っております。これは予算的には大体本年末くらいまでの予算は確保してございますので、その間に森先生おっしゃいましたように、国と公団におきまして引き取る、あるいは県にお世話するなり、また民間にお世話するというようなことを極力やりまして、心配をかけたくないということで、この点は総裁も特に心配しておられます。私の方も責任を持ってこれに対処したいというふうに思っております。
  7. 森八三一

    ○森八三一君 これはきわめて形式的なことでありますが、愛知用水公団の場合には、役員の構成と申しますか、役員名称と申しますか、総裁という形あるいは副総裁というような形をとっておられましたが、今度は理事長、副理事長というような言葉に変わる、これは他の例によるというのですが、国のこういうような機構につきましては、その陣容なりあるいは事業分量なりというものでこういう場合には総裁、こういう場合には理事長と、こういう何か名称を使う規則内規でもございますのか、どういうわけでこう変えるのか、その辺がきわめてあいまいでありますが、きわめて形式的な問題ではありますけれども、これはどういうことなんですか。
  8. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) それほどはっきりした内規がありまして、たとえば全国的なものであれば総裁、全国的でないある特定のものをやる場合には理事長と実ははっきりしておりません。しておりませんが、農林省でやっております公団森林公団とか、機械開発公団理事長という形でやっております。今度法律改正いたしまして、豊川仕事をやるわけでありますが、何と申しますか、仕事の量の問題その他考えますとかなり人員の点、工事量点等、前よりも縮小されて参りましたので、どうも総裁という名前が適当かどうかということをいろいろ考えたのでございますが、現在やっております農林省のほかの公団規模等も考えまして、合わせて人員も縮小し、理事長、副理事長という名前をとったのでありますが、内規といたしましてこれ以上は総裁と、全国的にははっきりきまっておりません。
  9. 森八三一

    ○森八三一君 今まで愛知用水公団では総裁という字を使っておったのに、理事長と変えますると、一枚格下げになったような、豊川用水の方はあまりそう大切な仕事ではないというように気分的な感じが出てきて、事業の遂行上にどうも軽く扱われるというような心配が持たれはせぬかと思うのです。別に総裁としたから報酬が多くなるわけでもないと思うので、気持よくやっていただき、人を使っていくという感覚から申しますれば、この名称なんかはそういじらぬ方がいいと思うのですが、その辺が別に内規もなし、感じの上で動いていらっしゃる、感じの上なら人を使いやすい、よく働いていただけるという、名刺に堂々と書けるようにしてあげる方がいいと思うのですが、なぜこんなことをおやりになるのか、何かもう少し理由があるのじゃないですか。
  10. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 特に他意はございません。豊川事業を軽視するというような意味でもございませんで、実はこれをやりましたときに、笑い話でございますが、総裁理事長待遇が違うのか、報酬等違うのかというふうなことを議論したことがございますが、特に理事長になりましたから報酬が下がるというものではございません。ただ、理事の数等もかなり減らし、監事の数も減らしたというようなことからしまして、名称等も若干ここで変えまして、新しく出直した方がいいのじゃないかというふうなことでやりましたので、待遇その他について、どうということは全然ございません。また、豊川を軽視するというふうな問題もございませんので、この点は、なっていただく方につきましては、感じの問題だけかもしれませんが、私どもは実質的な問題としては、前と同じということで考えております。
  11. 森八三一

    ○森八三一君 どうもその辺が、浜口さんが今公団総裁なんですから、この法律改正になるというと、今度は浜口さんが理事長ということになる、これは形式的にはなっていくと思うのですね。それじゃ困るということになると、浜口さんはこの法律改正と同時に、首になるということが約束されておるようにも思うのです。その辺がどうも、人を使っていく上において、人を遇する道じゃないと思う。この点は形式的な問題ですから、私は深く追及しようと思いませんけれども法律改正によって、人に気持よく働いていただくということに、多少でも瑕瑾が入ってくるということについては、将来とも一つ十分考えていただいてしかるべきだと思います。別に規定がありましたら別でございますよ、何もない、感じだけ、感じの上で動くということならば、むしろもうちょっと気持よく働けるようにしたらどうかと思います。  それから豊川用水の問題が入って参りまして、愛知用水の今後の仕事予定年限はどのくらいになりますか。
  12. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 豊川が入りまして、従来の愛知用水公団施設管理はずっと続くわけでございます。それから豊川事業は、一応現在のところは第一期工事といいますのは、厚見の方へ水路を持ってくる工事でございますが、これだけが一応七年完成ということになっております。第二期工事は、全然まだ見当がついておりません。というのは、大蔵省とまだ話し合いがついていないということが、三十五年度中の話でございます。三十六年度、公団でやっていきます事業については、第二期事業も入れまして、七年くらいを目標にしてやったらどうかということを、今の時点では考えておりますので、もしもこれが新しくできます水資源公団合併をするというふうなことになりますれば、またそれはそちらで、いろいろな事業を何年くらいでやるかということも、全国的な問題として討議されると思いますので、合併後はまだわかりませんが、豊川は現在の時点では、大体第二期工事も入れて七年くらいでどうだろうかというふうに考えております。
  13. 北村暢

    北村暢君 私はいろいろ御質問したいことはあるのですが、水資源開発公団連合審査もございますから、そちらの方へ質問を大部分譲ります。従って、本日はごく簡単に、愛知用水豊川への引き継ぎの場合、それから水資源公団への移行の場合のことについて、簡単にお伺いいたしたいと思います。  森委員も触れられておりましたのですが、愛知用水がいわゆるこの当初臨時的な事業ということで、職員は将来に不安というものを持っておったのですが、それが豊川事業を引き継ぐことになり、いろいろ苦労をされて一応の解消の見込みがついたようでございます。これは私ども非常にその点においては御同慶にたえないのでございますが、その場合に、この豊川事業を引き継いだのはいいのでありますけれども、この豊川事業を引き継いだ愛知用水公団が遠からず水資源公団合併移行をする、こういうことになるだろうと思うのですが、その場合世銀借款関係からいって、愛知用水管理業務だけは、これを切り離して水資源公団移行するのではないか、こういう心配があるわけです。というのは、世銀との借款契約は、あくまでも愛知用水契約をしておるのでありますから、これが解散か何かしまして、新たな水資源公団ということになりますというと、世銀との間の借款関係からいって、これがスムーズに話がつくのかどうなのか、こういうことの心配があるわけでございますが、これは世銀了解を得なければどうしても一緒にいけない、これが非常に大きな要素になっておるというふうに伺うのでありますが、そうするならば、このまた愛知用水というものが二つに分かれるというようなことも起こり得るわけでございますが、この点世銀との交渉はどのようになっておるか、またこの見通しはどのようになっておるか、この点お伺いいたしたいと思います。
  14. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 世銀との交渉でございますが、交渉いたしましたのは、豊川事業を含んで愛知用水がやっていく。その場合に木曽川豊川の勘定を分けますというところまで実は交渉いたしておりまして、その了解を取っておりますが、そのあと水資源公団ができたらどうだということの交渉は、実はまだいたしておりません。水資源公団法ができましたのはつい最近でございますし、今後話をすることにいたしておりまして、現在まだでございます。見通しでございますが、私どもといたしましては、やはりこれは二分するのではなくて、どうしても日本政府の意思としては、これは一本でやっていくべきだ、またやってほしいということを最後まで話しまして了解を求めて、一本になっていきたいというふうに思っておりますし、そういうことが可能になりますように努力いたしたいと思っております。
  15. 北村暢

    北村暢君 もう一点だけお伺いいたしますが、今度の水資源が発足いたしますと、水系別開発計画に基づいて利根川、淀川、遠賀川、木曽川吉野川等、今こう出ておるだけでもこういうようなところがあげられておるようでございますが、この前の答弁ですと、八郎潟干拓あと地の何といいますか、干拓後における整備、農耕地の造成、こういうものにまで公団業務というものはやっていいのだとこういうような答弁もあったのでありますが、一体そういうことになれば、この豊川事業とこれから起こりますところの幾つかの水系別開発、こういうことに関連をする従来の国営土地改良事業、こういうものとの今後愛知用水水資源公団移行した場合に、そういうところまで手広く各地域にわたってやるのかどうなのか、この点を一つお伺いをいたしたいと思います。
  16. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 水資源公団がもしもできますれば、特定水系をやると、その場合の農林省国営事業との関係でございますが、多目的事業公団でやるということになろうと思います。ただ今考えております木曽川が指定になりましても、あすこで多目的なものは今やっておりません。濃尾第一は農業だけでございますので、そういうものを併合してやろうとは考えておりませんので、特定水系の多目的なものだけということになりますと、つまり現在農林省がやっておりますものを承継するということは、ほとんどないのじゃなかろうかというふうに考えております。八郎潟水資源公団では、これはおそらくやることはないと思います。これは全然別な角度から検討する必要があるかと思っております。
  17. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 以上をもって質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終局いたしました。   —————————————
  19. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の一部を改正する法律案(衆第四六号、衆議院提出)を議題といたします。  本案については、昨日質疑は終局されております。これより本案討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見もなければ、討論は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案を原案通り可決することに賛成お方挙手を願います。   〔賛成者挙手
  21. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 全会一致でございます。よって本案全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よってさよう決しました。   —————————————
  23. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 次に、愛知用水公団法の一部を改正する法律案閣法第一四〇号、衆議院送付)を議題とします。  討論に入ります。別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  愛知用水公団法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成お方挙手を願います。   〔賛成者挙手
  25. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  暫時休憩します。    午前十時四十九分休憩    ————————    午後一時四十一分開会
  27. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  委員異動について報告いたします。  武内五郎君が辞任され、その補欠として小林孝平君が選任されました。   —————————————
  28. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 農業基本法案閣法第四四号、衆議院送付)を議題といたします。  本案については、去る五月三十一日質疑は終局されております。  これより、本案討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  29. 北村暢

    北村暢君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました農業基本法案閣法第四四号)に対し、反対討論をいたします。  討論に先立って、この際、一昨日の本法案に対する質疑打ち切りにあたり、わが党委員が参加できなかった理由を明らかにしておきたいと思います。  わが党は、衆議院段階において政府案審議に当てられた時間はわずか十数時間にしかすぎず、いまだ総括質問も終了しないままに強行通過し、本院に送付を受けたことにかんがみ、当初より慎重審議を尽くすことを主張し、従来の審議日数を増加することにも応じ、きわめて冷静に議事運営に協力してきたつもりでおります。しかるに、われわれとしては、第五章、第六章については、質疑を終了するに至らず、さらに、一応最後まで逐条審議を終了した後、再び初めに返って審議を繰り返すという理事間の了解もあったので、そのつもりで審議を続けてきておったのでありまするが、十分審議を尽くしたとは考えられないのであります。さらに、本法案重要性にかんがみ、前例からいっても、当然中央公聴会を開催すべきであると主張をいたしました。しかるに、三十日かの午前中に実施するがごとき意見もあったのでありますが、わが党の要請で仕方なしに形式的に公聴会を行なったというような形だけを残そうとするがごときは、大体公述人に対し失礼千万であるばかりでなく、日数も十分あることでありますから、十分時間をかけて実施することを主張いたしたのであります。この当然の要請がいれられない限り、質疑打ち切りのための委員会開会には応ずるわけにはいかなかったのであります。わが党委員出席なくして質疑打ち切りを強行されたことは、まことに遺憾にたえません。  次に、法案の内容について反対理由を申し述べたいと存じます。  その第一は、農業低位生産性、並びに農民と他産業従事者との生活水準格差の拡大の原因が明確でないことであります。すなわち、農業と他産業格差は、経済の著しい発展によって自然に起こったような表現をしているのでありますけれども、今日の日本経済の高度の成長は、農業低位生産性、低所得、過剰労働等、つまり第一次産業の立ちおくれでなされてきたのであります。この日本経済の二重構造をいかに克服し、農政の曲がりかどにどう対処するかが基本法制定の重大な意義であったと思うのであります。しかも、二重構造の根は相当に深いのでありまして、日本農業の立ちおくれは、自然的経済的社会的諸制約の不利を補正すれば解決するようなことを言われているのでありますけれども、その中でも、日本農業の最大の欠点である零細性を克服すること、もちろんそれもありますけれども、今日の日本農業の立ちおくれは、資本の投下の不足、いわゆる金融の二重構造、いわゆる大企業優先の融資、こういうものからして資金的な面においても二重構造がうかがわれるのであります。さらに、今日の技術改革による技術面の二重構造労働内部の大企業中小企業との二重構造、これらの農業外または農業を含めてのこの二重構造の問題がきわめて深刻な問題になっているわけであります。しかも、農業はこの二重構造底辺にありまして、池田首相は、高度成長によって自然に農村の人口は都市に流れていき、六割の首切りではなく、切り上げで解決がするように言われておりますけれども、また、二重構造解消するのではなくして、解消されるのだと、成長政策が唯一の構造政策であるかのように言っておるのでありまするが、しかしながら、成長の頂点と底辺とは表裏一体であって、このような点からすれば、成長は二重構造解消のただ一つ条件ではない。せいぜい必要条件であっても、十分な条件ではない。高度成長は明らかに二重構造解消する作用がありますことは確かでありますけれども、同時にそれを拡大するものでもあるのであります。そして現状は、解消する機能よりも、拡大する機能の方が非常に強いのであります。従って、政府経済成長政策計画通りに進行するかどうかに重大なる疑義を持ちますし、このそごを来たすことが、ひいては農業の二重構造解消のためにも非常に大きな問題を生じてくるのであります。すでに、国際収支ははっきり逆調に転じております。さすがの経済に対しては自信を持っておる池田さん自身が、安定的成長という含みのある発言をするようになっている現状であります。もし、成長政策に狂いが起こる場合は、農業基本法の前提の崩壊を意味するのでありまして、このような経済情勢下におけるこの基本法の考え方、前提がくずれることにおいて、こういう情勢下において農民の不安というものはぬぐい去ることができないと思うのであります。  反対理由の第二は、農業の動向、施策に関する年次報告並びに施策に関する文書の提出等の内容について、報告の作成要領等簡単なる資料提出にとどまりまして、真に農民の要求にこたえる報告の内容の具体的なものを要求しているのでありますが、それらについて何らの具体的な説明を行なわれなかったのでありまするが、これでは農民の不安というものをぬぐい去るわけにはいかないと思うのであります。また、需要及び生産の長期見通しについて、答申並びに倍増計画では、一応の数字を出しているのでありますけれども、これに対し政府は一応参考にする、こういう態度で調査会の答申を十分尊重する態度が見られない。従ってこの長期見通しについても、一切数字的なものは答弁を避けておるのであります。すなわち法律が通ってから検討を加えて出すのだと、こういうことを言っているのでありますけれども、このことはまことに遺憾であると思います。  しかも、その公表にあたっては、農民団体が自主的に選択するように行なわれるのでありまして、政府が責任を持って生産の指導をするというような積極的なものは、どこにも見られなかったのであります。農民は抽象的な基本法をもって満足するものではございません。その裏づけこそ真に求めているところなのであります。それが何ら明らかにされないことは、農民に対して失望を与え、不信を与える結果になると思うのであります。  反対理由の第三は、農業生産の選択的拡大に対し自信を持っていないということであります。自信を持つことができないということであります。まず、今度の基本法の精神が、米麦中心の農業を転換をして畜産、果樹、テンサイ等の成長財に重点を指向し、選択的拡大をしよう、こういうことになっておるのでありますけれども、まず農民の不安の第一は、この選択的拡大によりまして畜産なり、果樹なり、テンサイなり増産をいたした場合に、過剰生産にならないかという不安を持っております。しかも、これにつきましては大資本、大商事会社の進出等が出て参りまして、直接の生産加工部面への著しい進出が見られるのであります。一応農業生産の調整ということはうたっているのでありますけれども質疑の中にも明らかになりましたように、国が責任を持って調整をするのではなくして、自主調整にゆだねる、こういうようなことでは従来の経験からして、農民の過剰生産に対する不安というものはぬぐい去られないと思うのであります。  次には、価格政策に対する不安であります。米は現在、生産費・所得補償方式をとっております。麦はバルク・ラインによる無制限買い入れを食管法によって規定をいたしております。イモ類、菜種、大豆等の農産物価格安定法あるいは天災法、振興法、繭、蚕糸価格安定法、こういうようないろいろな価格安定法がまちまちに制定せられております。また、新たに畜産物の価格安定法というものも出そうとしております。しかしながら、この価格政策について、一体政府は、基本法の精神によるいわゆる拡大生産によるところの、しかも構造政策を重点とするところの価格政策というものに対して、何ら新しい積極的な意欲というものを見せておらない。このままの形で価格政策を推移するならば、政府はいかに指導しようとも、いわゆる構造政策なるものは、自立経営農家なるものは、これははるかに及ばない結果になるのではないかと思うのであります。こういうような点からいきまして、わが党は、生産する者に対する価格は、生産費・所得補償方式というもので明らかに農民に補償をする、こういう立場をとるべきであるということを主張いたしておるのでありますけれども、底に流れるものは、需給均衡価格、いわゆる経済の合理主義を貫くところの需給均衡価格というものを想定しているようでありますが、これを明らかにすることは、農民に対する影響等も考え、今日価格政策に対して全くあいまいもこたる態度でおるということは、これは農民に対して選択的拡大を指導しても、なかなか農民はついていけないというのが現状ではないでしょうか。  さらに貿易自由化に対する不安であります。今日国際農業との比較において、日本の零細農業、こういうものの点からいきまして、どのものをとっても不安のないものは一つもないのであります。選択的拡大を主張しておりますテンサイにしても、畜産にしても、乳製品にいたしましても、不安のないものは一つもないのであります。現実に大豆が自由化され、今日非常な混乱が起きている状態であります。そういう状態からいたしまして、今日日本の農業に対する貿易自由化の不安というものは、この法案の制定によって今、当分は自由化せずという方針を立てておりますけれども、基本的には、近く二、三年のうちには、ほとんど全部のものは自由化されるという段階に来ているのでありまするから、この点に対しても政府措置に対して信頼を持つことができないというのが、農民の偽らざる心境であろうと思うのであります。  反対理由の第四は、自立農家の育成は、実質的な農民の首切り政策につながるからであります。まず、政府の施策を見ますというと、質疑によっても明らかなるがごとく、今後の農業地は、作付面積にいたしましても、実面積にいたしましても、現状の六百万町歩というものは、これは拡大をしないという考え方をとっておるのであります。しかも拡大をしないということで、耕作面における面積は、さらにこれを減らそう、こういう考え方すらあるのであります。一方、自立経営農家というものを想定をし、そうしてその育成のために、所得倍増計画によれば、二町五反の百万戸を育成しよう、こういうことになっておるのでありますから、他に農用地を拡大しないとするならば、必ずこれは自立経営農家の名前のもとに、そこに土地が移動しなければならないはずであります。しかるに、今日の状況からいけば、統計が明らかに示す通り、農村の人口は都市に移動はいたしておりますけれども、戸数は現状においてごくわずかしか減っていないのであります。逆に兼業農家は増大する傾向すらあるのであります。そういう点からいたしまして、今回の基本法に伴います農地法の改正により、農地の移動の制限を緩和しようといたしておりますけれども、ここに問題のあることは、地価の売買価格というものが根本的に問題に触れておらない、こういうような点からいたしまして、政府の企図するがごとき農地の移動というものが簡単に行なわれないということも考えられますし、また、それを政府の指導によって移動したとするならば、これは当然農地を手放さなければならないものが出てくるわけである。そういうような点からいたしましても、さらには農家の所得の問題から考えまして、所得倍増計画によるというと、非自立経過的家族経営農家、これを一町歩二人構成員で二百五十万戸、これが十年後においてこの非自立経過的家族経営農家というものができるわけであります。これは一町歩の保有農家でありますから、現状において最も苦しい農家であります。これよりか保有面積の少ない八反、五反という農家の方は兼業収入によって収入はいいのであります。この非自立経過的家族経営農家二百五十万戸というのは、十年後にこれが存在するという計画になっておるのでありますから、従ってこれは所得倍増計画による所得が倍増するような形には決してならない農家であります。いずれは十年後以降において、自立農家あるいは完全な非自立農家というふうに分解をしていく層と見られるのであります。こういうような面からいたしましても、政府の施策をもってするならば、すなわち自創資金等の通達にも明らかになっておりまするように、創設資金としてこの非自立的な経過的な農家には創設資金は貸さないのでありますから、また兼業農家には、創設資金は貸さないのでありますから、従ってこれは政府の施策によっていびり出されるという結果にならざるを得ないのであります。そういうような点からいたしまして、真に政府のとっております自立家族経営農家というものは、実質的には零細の兼業農家の切り捨てに通ずるのであります。そうでなければ、政府の目的というものは達せられない、こういう結果になっていることは明らかであります。そういうような点からいたしまして、わが党はこれらの問題を勘案いたしまして、三百万町歩の農地造成の拡大を主張をいたしておるのであります。このことは審議の中でも、私も予算委員会でもやりましたけれども、実際に可能な面積があるのであります。しかも適地もあるのであります。しかしながら、今日思い切ってやはり土地制度の改革まで踏み込まなければならない問題ももちろん含んでおります。しかしながら、日本の農業の欠点である零細性を克服するためには、やはり積極的な農用地の拡大ということをとるべきである、こういうような点からいたしまして、政府のとっておりますこのやり方というものは、明らかに農業というものを劣等産業視いたして、衰退産業視いたしておるものといわなければなりません。そういうような点からいたしまして、私ども社会党は、こういう自立経営農家の育成ということは、そのこと自体否定するものではございませんけれども、そのことによってです、そのことによって起こって参りますいわゆる農民の首切りというものにつながる政策、これでは私どどは了解ができないのであります。あくまでも積極的な拡大再生産をとる、そういう方向こそ、真に日本農業の向うべき道であるというふうに確信をいたす次第であります。  なお、自立経営農家の他産業との所得の均衡の問題でありますけれども、私どもが農用地の拡大を踏み切って、しかも農業の近代化に思い切って施策を講ずる、そのために農業生産協同組合法の制定を準備しておるのでございますけれども、現実の問題として、政府の考える二町五反なり一町五反以上の自立経営農家そのものが、他産業との所得の均衡ということを考えますときに、実際これで均衡がとれるかどうかという点からいたしましても、いわゆる都市的要素を除いた町村段階における所得に均衡する、これは農業の生産性の低さからやむを得ない状態にならざるを得ない。これをやはり乗り越えていくためには、わが党の主張をいたしております農業生産協同組合法の制定によって、積極的に農業の近代化に踏み切るべきである。このような観点からいたしまして、私は政府のとっております自立経営農家の育成というものが、農民の首切りにつながる政策でありますがゆえに反対せざるを得ないのであります。  以上私の四点について反対意見を申し述べ、討論にかえる次第でございます。(拍手)
  30. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題になっております内閣提出衆議院送付農業基本法案賛成し、そのすみやかなる成立をこいねがうものであります。  まず、賛成理由の第一は、内閣提出農業基本法案は、広く国民経済全般の中において農政の方向を打ち立てようとしておるところであります。すなわち、農業が食糧その他農産物の供給、資源の利用、国土の保全、国内市場の拡大等、国民経済において果たす役割の重大さは今さら言うまでもないところでありまして、農業の発展なくして国民経済の発展はあり得ないのであります。同時に、第二次、第三次産業の発展に伴って、農業の技術進歩、生産性の向上が可能となってきたことも事実であり、今後における農業の発展と農業従事者の地位の向上も全国民経済成長発展に即応して、ひとり農業政策のみならず、国の各般の施策を総合的に講ずることによって初めて期待できるものでありますが、本案の全体を通じてその趣旨は十分に強調されていると考えるのであります。  第二に、本案は、国の総合的な経済力の発展に即し、可能な範囲において農業の育成に画期的な努力をする趣旨を明瞭にしていることであります。すなわち、第一条において、国の農業に関する政策の目標を明らかに掲げ、第二条では、この目標の達成のため、国は、政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講じなければならない旨を規定するとともに、第四条において、これらの施策を実施するため必要な法制上及び予算上、税制等の財政上の措置を講じなければならないこと、並びに、これらの施策を講ずるにあたっては、必要な資金の融通の適正円滑化をはからなければならないことを規定しておるのでありまして、これにより施策の裏づけを適確に行のうべきことが、政府の義務として明らかにされているのであります。  しかも、第六条、第七条においては、諸施策の成果を毎年検討するための年次報告を国会に提出するとともに、次に講じようとする施策を明らかにすることとなっており、第一条の目標が達成されたかどうか、これに対し政府はいかなる施策を展開すべきかということが、全国民的世論を背景に国会で論議されることとなるのであります。  賛成理由の第三は、本案が自由主義経済の基調に立って農業の向かうべき道に誘導しようとしている考え方であります。前文にも、「農業従事者の自由な意志と創意工夫を尊重しつつ」とうたい、第五条で「農業従事者又は農業に関する団体がする自主的な努力を助長することを旨とする」と規定しておりますように、農業経営の主体たる農業者、あるいはその団体の自主的な意欲ないし努力が、農業の発展や農業従事者の地位の向上の原動力たるべきことは当然でありまして、政府や地方公共団体の施策は、これを援助し、推進し、誘導して、目標の達成に遺憾のないようにするところに本旨があるべきであります。  賛成の第四の理由は、日本農業の過去及び現実を正確に把握し、その向かうべき方向づけのための有効適切な諸施策が考慮されていることであります。たとえば、土地の開発利用に関する考え方でありますが、本案におきましては、第二条で、土地及び水の農業上の有効利用及び開発のため必要な諸施策を総合的に講じなければならない旨を規定するとともに、第九条において、国は、農業生産の選択的拡大、農業の生産性の向上及び農業総生産の増大を図るため、農業生産の基盤の整備及び開発等、必要な施策を講ずる旨を規定し、農用地の改良開発に対する積極的な決意を明らかにしております。  賛成理由の第五は、農業従事者の自由な意思による経営方式の選択の場を提供していることであります。およそ、農業基本法というごとき政策の長期目標を示す法律は、できる限りわが国農業の実情と農民感情に即したものでなければならないことは申すまでもありません。この点について、本案においては、家族農業経営が現在及び将来に占めるべき地位にかんがみ、まずこれを近代化し、その健全な発展をはかるとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずることとしております。  同時に、協業の助長について明確な規定を設け、営農条件や地域の具体的事情等に即して必要な協業はこれを積極的に助長することとし、家族農業経営と相並び、またはこれを補完するものとして協業の意義を十分に生かしているのでありますが、協業をとるかいなかの選択は、農業従業者の自主的かつ自由な判断にまかせているのでありまして、これこそわが国の実情に最も適した態度であると考えるのであります。  以上述べて参りました五つの点が、本案の基調をなしている要点かと思うのでありますが、要約すれば、国民経済成長発展に即応し、劣悪な諸条件に取り巻かれている農業を高度に発展せしめるため最善の努力を尽くすべき国の責任を明確に規定し、あわせて地方公共団体の施策、農業従事者並びにその団体の自主的な努力の方向づけを行なっているのでありまして、きわめて適切妥当なものと思うのであります。  さらに引き続き、本法案の成立にあたり、政府に要望したい点を若干付言したいと存じます。  まず、第一条において農業の生産性の向上を言い、また、農業従事者の生活の均衡を言うのでありますが、この場合、農業のいかなる部分と他産業のいかなる部分とを比較していくかという問題であります。これは本法運用上の重要な問題であると思いますが、その比較にあたっては、統計利用の問題、農業経営の実態の問題などもありましょうから、農政審議会等において十分に検討をわずらわすべきことではありますが、特に政府はこの点に留意して、立法の趣旨が完全に実現され、農業従事者の諸君が、すべて農業基本法の実効を享受できるように運用していく必要があると存じます。  次に、関連諸施策の具体化についてであります。特に自立経営育成の諸施策に関して、経営規模拡大のための農地についての信託、農業生産法人の制度の具体化、土地取得資金の金利、期間、資金ワクの問題のほか、農地価格の推移が農業構造改善にきわめて密接な影響を持つと考えられますので、その検討とともに、適切な施策を機を失することなしに実施さるべきであると考えるのであります。  また、価格政策の運用にあたっては、農業従事者の関心がきわめて強いことにもかんがみ、いささかも農業所得の確保に遺憾のないよう万全を期せられたいのであります。  最後に、農業政策以外の諸施策の強化についてであります。冒頭にも述べたのでありますが、農業基本法の成否は、その目標の達成のために政府の各般の施策が総合的に脈絡を保って実施されるかいなかに大きく依存してくると考えるのであります。その第一には、教育をあげるべきでありましょう。農業に優秀な人材を確保する見地からも、また、農業外に職業を選択し、あるいは転職した人がより安定した生活を営み得るためにも、教育の充実は不可欠の重要問題であります。  第二に、労働雇用に関する政策であります。労働力移動の円滑化と、その移動した先における賃金水準の高位安定のために、他産業内に存在する賃金、労働条件のはなはだしい格差の是正、特に中小企業の一部における、あるいは大企業をも含めて、社外工、臨時工における低賃金等、劣悪労働条件解消の施策が強く推進されねばなりません。  第三に、雇用機会の増大のため、低開発地域工業開発促進法等による地方における工業等の振興を積極的にはかるべきであります。  第四に、他産業に移動した後も老後の生活のために農地を保有し、かつ低位な生産性を脱却し得ない多くの実例を見るのでありますが、社会保障の充実によりこうした不安を解消し、今後における農地の流動を容易ならしめることが必要かと考えます。  第五に、交通、通信施設、その他農村の環境の整備等のため積極的な施策を講ずべきであります。以上の諸点にかんがみ、今後の農政はひとり農林省のみならず、関係各省連絡協調して、本法立法の趣旨達成に十分の決意をしていただきたいと存ずるのであります。  以上、本案に対する賛成理由、並びに運用にあたっての要望を申し上げ、全国の農業従卒者の要望にこたえ、特に、先般本委員会が、農業県であります福島、富山、長野各県におきまして純粋な農業従事者の意見を聞いたのでありますが、その意見の大部分は、基本法の早期成立を要望しております。  以上をもちまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  31. 東隆

    ○東隆君 私は民主社会党を代表して、政府提案の農業基本法案反対討論を行ないます。  池田首相の言われる心のふるさとは、老人と婦人によってその農業経営が今日は行なわれておるのであります。政府案は、農業基本法案は、このような状態に農村を持ち来たした資本主義の合理主義に立脚して立案されているのであります。理屈から言いましても、事実から見ましても、この傾向を助長するおそれが多分にあるのであります。従って、政府の草案が示されたとき、与党のいうところの農村議員諸君がこの草案に修正を加えたことは周知のことであります。このような自由経済に立って立案された農業基本法案に対して、以下数点不満とするところを警告的に述べます。  第一は、政府農業基本法に対する熱意を疑わざるを得ないことであります。昭和七年の五・一五事件の申し子である農山漁村の経済更生計画運動を巻き起こした当時の政府の決意と農林省の機構の整備による体制、これに即応して当時の産業組合を中心とした運動の展開を知っておる私は、今回の農業基本法にはどこか釘が抜けておるように思われてなりません。なるほど、政府は、農業基本法は選挙のときの公約であるからとPRすることはよろしいのであります。しかし、政府における農業基本法推進の体制は農政審議会の議を経てやるというのではおそいのであります。選挙のときの公約だから、農業基本法を作らねばならぬというだけであって、政府の決意による農業基本法推進の体制ができておるものではございません。農業基本法が自民党の選挙の公約ならば、これに対する体制をまず整備して、基本法は画龍点睛であるという考えに立つべきが至当でないかと、このように私は考えるのであります。  第二に、農業基本法は関連法律が実現しなければ、まさに、から法だということであります。農業基本法は周知のように宣言立法であります。宣言立法であればあるほど、関連立法が並行審議されなければ効果はないのであります。選挙中の公約をまず実現するなどと言い、政府案農業基本法通過に専念されたのは誤りであります。われわれは農業基本法を考える場合に、土地の問題を考えないわけには参りません。また農業生産から流通消費に至るまで、政府が自由主義の立場に立てば立つほど、農民はみずからの組織である農協の自主的活動によってみずからを守らなければなりません。従って、農地法の一部改正法律案、また農協法の一部改正法律案、この二つは、農業基本法と同時に審議すべき筋合いのものであると私は考えます。しかるに、この二つの関連法律案はおくれて提案され、しかも、今日衆参両院において夫審議のままに放置されておるのであります。われわれが農業基本法の審議を慎重にすることを主張いたしたのは、基本法という宣言立法のみが通過したのでは、から証文を農民に与えることになるからであります。これも政府の熱意のない証左であると言わざるを得ません。  第三に述べることは、農基法は次の責任を逃避していることであります。現在の日本を自由主義国家の一員であると言って、ラサールの言うごとく夜警国家であるとは言いません。しかし、政府案農業基本法が、自由主義の立場から経済合理主義を農業に求めていることは明らかであります。従って、その限りにおいては、国の責任において農業の曲がりかどに処するとは言い得ないのであります。農業従事者の諸君生活水準を、他産業従事者のそれと均衡にするようにと、いかに政策目標を掲げても、総理が私の質問に答えているごとく、農業者にも、中小商工業者にも、労働者にも平等の国の責任をもってというのでは、絵にかいたもち以上のものではありません。われわれが国の責任において施策を実行すべきことを主張するのは、現在の工業国日本が生まれるまでに、わが国農業が払った犠牲を思うからであります。戦前のたぐいまれなる高額小作料を形成したものは、これは日本の工業に対する耕作者の大いなる犠牲がしからしめたものであると、このように言っても過言ではないのであります。さらに、このたびの戦争に忠勇な兵士を送ったのも農村であり、戦争がなぜ悪いかということの経済的な根拠を知っているわれわれは、これらの大きな犠牲に対して、国の責任において農業政策は立てられるべきであると確信をするものであります。しかるに政府案は、前文において国民の責務に属するものであると書いて、国の責任を国民に転嫁しているのであります。  第四点は、計画ということを故意に避けていることであります。政府の長期見通し、選択的拡大生産といううたい文句は、基本計画を立て、生産計画を作ることになると、国の責任が大きくなるので、責任回避のために長期見通しの上にという文句を使い、選択的拡大生産という文字を用いているとしか解釈ができません。われわれは、政府並びに与党の政策を十分に知っておりますので、生産から流通、消費の各部面において、農業者の自主的な組織である系統農業協同組合の自主的活動によって無用な混乱を防ぐべきであるということを主張いたしたのであります。しかし、政府案は他の農業団体と一括して中心となるべき農協の自主的活動に水をかける役割をしていると言わざるを得ないのであります。農協による生産の調整なくしては、農民は、自由主義経済のもとでは、流通面において完全にしわ寄せを食う以外にないと思うのであります。  価格の面においても、生産費・所得補償方式をわれわれは主張いたしておりますが、政府の価格安定は、文字通り安い価格に定める方式であって、自由市場に農民をさらけ出す以外の何ものでもございません。われわれは、今の段階において、農協の機能を強化して、みずからを守る以外に道はないのでありますから、これを政府は強力に助長する義務があると考えるのであります。  第五は、低所得農家に対する対策を政府は考えていないということであります。政府案は、自立農家の育成、家族農業経営の近代化等、力こぶを入れておるわけでありますけれども、兼業農家の対策、零細農家の対策、僻地農業をいかにするべきか、このような点については、方針は示されておらないのであります。農家が、他産業に従事する者との格差解消するのには、低所得農家を解消することが最も重要な中身であることは、これは明らかなことであります。しかるに、それらの点について、また、開拓農家等についても、その施策の片りんだに見えないのは、はなはだ遺憾なことであります。私は、農業基本法の焦点がぼけておるのではないか、このように考えるのであります。  次に、農政審議会についてでありますけれども、この農政審議会は、政府案は十五名をもって構成するようになっております。日本の国は南北に長いのでありまして、地域性を非常に重要視しなければなりません。従って、その地帯における農業従事者を、この委員の構成員にすることは、これは当然とするところでありますが、今の十五名をもってしては、この目的を達することはできません。平俗な言葉で言いまするならば、地についた農政は、私は生まれないと思います。そういうような意味で、農政審議会を政府のような考え方で進めて参りまするならば、今日までいろいろ行なわれました委員会審議会等が、政府の責任を逃がれるために作られたという、こういうそしりを受けておるようなことになりはしないかと非常に心配をいたしておるのであります。従って、農政審議会のごとき重要な国の農政の機関に対しては、十分に農業従事者の意思を反映することができる構成員数を持つべきであると、このように考えるのであります。  以上、数点を、私は警告的に申し述べ、政府案に強く反対の意を述べて、討論を終わります。
  32. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は、内閣提案の農業基本法案に賛意を表するものでございます。  しかしながら、今までの熱心なる審議の過程におきまして明らかになりましたように、本法案がいわゆる農業憲章ともいわれ、あるいは宣言法であると称せられるように、内容が抽象的で具体性を欠きまして、肝心な農民の中に、本法が施行されることに非常に不安を抱いたり、あるいは戸惑っている者が相当あることは事実であります。いまだ本法趣旨の解明が末端にまで徹底していないうらみがあるばかりでなく、内容におきましても、経営規模拡大の対策、農地取得のための財政金融措置、金利の問題、特に林業を主とした農家並びに山間僻地の零細農家に対する特別な施策、また、主要農産物並びに成長農産物の価格対策の問題、あるいは協業化を積極的に促進する問題等々、明確を欠き、農民の要求に合致しない点が少なくありません。これらの点については、今後関連法案の制定によりまして適切を期せられるべきであり、そのいかんによって、本法目標の達成が大きく左右されるものと信じます。しかし、本法案の成立によりまして、少なくとも今後農業の進むべき指針が明らかとなり、かつ、本法案によって、今後は単に農林省だけの問題でなく、政府全体の責任において法制的、財政的施策を講じなければならなくなった点は、農政の一歩、いな、数歩前進であると思います。  しかしながら、幾らりっぱな基本法ができたといたしましても、これを生かすも殺すも、一にかかってこれを運用する人によると信じます。この意味におきまして、本法の適切なる運用と、農民の声を十分反映した関連法案のすみやかなる制定とを強く要望いたしまして、この法案賛成いたすものでございます。  これをもって討論といたします。
  33. 森八三一

    ○森八三一君 私は、ただいま議題となっております政府提出の農業基本法案に対しまして、参議院同志会を代表して賛成討論を行なうものであります。  私は、本法が衆議院で採決を見るに至るまでの前後の状況から、本法の審議にあたりましては、本委員会におきましても、相当混乱をするのではないかというような危惧を持っておったのでありますが、おおむね円満な状況のもとに審議を尽くしまして、もちろん、立場々々によって、必ずしも十分とは言い得ない不満のものもあるのであろうとは思いますが、とにかく本日ここに採決を見るに至りましたことは、さらに、全会派がそれぞれ賛否について所論を述べつつ、民主主義の原則に基づいて結論をつける運びとなりましたことは、第二院として参議院の面目を発揮したものとして、喜びにたえないところであります。  私は、政府原案に賛意を表するゆえんは、正常かつ合理的な労働によって、農業従事者が他産業従事者に均衡する所得を上げて、健康で文化的な生活を営むことができる家族自立経営を中核として、その自主的な意思によってする共同作業、共同経営をも助長するという営農の基本的な態度が農民の感情に合致するものであり、現下の実情に即応するものであると考えるからであります。しかしながら、立ちおくれている日本農業を近代化し合理化して、その生活が国民各階層と均衡するように所得の増大を達成することは容易ならざる難事といわなければなりません。政府もここに深い認識をされまして、本法の前文には、本法の目的を達成することは、国民の責務であると宣言されております。六百万全農民諸君もこの政府の異常な決意に対して満腔の期待を寄せているのであります。あらゆる障害を克服し、万全の施策をもって農民諸君の期待を裏切ることのないようにしなきゃならぬと思います。  そのため特に留意しなければなりません重要事項は、第一に、価格政策であります。すなわち長期見通しに基づいて成長部門として選択的に拡大が要請される重要農産物については、正常な生産費はもちろん、その労働賃金が他産業従事者に均衡するよう確保されることを目途とした価格支持対策が講ぜられなければならぬことであります。ただ単に、生産、需要、その他の一般的な経済事情を考慮し、重要農産物の価格の安定をはかるというだけでは問題の解決にはなりません。いわゆる生産費及び所得補償方式に準拠した価格政策が強力に実施せられることでありまして、各地における農業従事者異口同音の要請であります。  第二に、農業団体の再編成であります。法律第二十四条には、団体の整備、強化を取り上げておりますが、複雑多岐にわたっておりまする農業団体の多くは、一応農民の自主的な判断に基づいて民主的に組織されておるという形態ではありますが、その実態は必ずしもそうではありません。ややともいたしますると、農業従事者の犠牲の上に組織され、農業の発達をすらはばんでいる場合もないとは申されないと思うのであります。ことに団体と団体とのなわ張り争い的なまことに遺憾な事態をすら発生しておる現状であります。本法の成立後におきまする農業団体の使命の重要性にかんがみ、この際農業団体の抜本的な再編成を講じますることはきわめて喫緊の要事であると思うのであります。整備、強化から一歩前進すべきであると思うのであります。  第三に、農業経営規模を適正化いたしますることは当然であり、これがためには、農地の移動が行なわれることになるのであります。その場合、取得農地の価格が農業収益を基礎としたものでなければなりませんことも必然であります。ところが、最近におきまする農地の多くは、営農の基盤としてのものから、投機的なものとして取り扱われている場合が少なくないと思うのであります。ここに収益を基準としての適正価格による移動が円滑に行なわれ得るような対策が講ぜられなければなりません。  第四に、今や農村の青年婦女子の多くは、農村と農業に希望を失って競って農村を離れていく傾向にあるのであります。農業と農村の前途のため寒心にたえないところであります。これが対策は、もちろん農業所得を増大して他産業従事者と均衡した生活を営むことのできるようにいたしますることが、その基本的なものでありますことは申すまでもありませんが、教育に待つところもきわめて大きなものがあろうと思うのであります。ここに画一的な形式的な教育から、営農の実態に即した有効な農村教育制度が考えられなければならぬと思うのであります。  第五に、日本農業を国際農業に対抗し得る農業にまで発展せしめて参りますることは、本法の持つ目標の一つでありまして、経営の近代化、技術の高度化が要請されるゆえんであります。それがためには、農業技術普及事業の飛躍的な拡充、強化が行なわれなければなりません。なお、統計調査の充実、僻地農業開発に対する特別措置、系統農業協同組合の機能の強化助長、予算の確保等が急速、確実に具現されなければならぬと思うのでありまして、これらの事項に対し政府の誠意ある努力と実行を要望し、私の賛成討論を終わるものであります。(拍手)
  34. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 他に御意見もなければ、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。農業基本法案閣法第四四号、衆議院送付)を問題に供します。本案を原案の通り可決することに賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  36. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
  37. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 私はこの際、本案に対して附帯決議案を提出いたしたいと思います。付帯決議案を朗読さしてもらいます。  以上でございます。
  38. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 別に御発言もなければ、本決議案の採決を行ないます。本決議案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  39. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 多数と認めます。よって、多数をもって決議案は本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書作成その他自余の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  この際、周東農林大臣より発言を求められております。これを許します。
  41. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ただいま当委員会におきまして御決議をいただきました事柄に対しましては、その決議の趣旨を尊重しまして、今後の農業基本法推進に対しまして、十分努力いたすつもりでございます。   —————————————
  42. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 魚価安定基金法案閣法第七四号)及び漁業生産調整組合法案閣法第七五号)を一括議題といたします。  両案は、去る五月三十日、衆議院より送付され、本委員会に付託されております。  両案に対する質疑を行ないます。  質疑のおありの方は、順次御発言をお願いします。
  43. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま提案されました二つの法律に直接関係する問題ではありませんが、今やきわめて重要な問題でありますので、大臣も御出席でありまするから、お尋ねを申し上げたいと思うのであります。で、このことは農業基本法の最終質疑の際にも、私は貿易自由化に関連いたしましてお尋ねいたしまして、大臣からも一応了解のできまするお答えはちょうだいいたしておりまするが、と申し上げまするのは、韓国ノリ輸入の問題であります。このことは、当委員会では昭和二十八年以来、毎年々々問題になりました経過につきましては、大臣もよく御承知のことであります。で、その当時、国内における生産の実態は、年間を通じましてたしか十三億枚か十五億枚程度であったと思うのであります。そういう状況でございまして、まだまだ国内の需要というものを満たすというわけには、非常にほど遠い生産の状況でございましたが、沿岸漁業が終戦後だんだん狭められてきておる。そのために零細な漁民諸君の生活は非常に困難の状況に追い込まれておるということからいたしまして、これが増強に対しまして、政府としても何らかの措置をとるべきである。と同時に、韓国ノリが木邦に入って参りますることに関連をして、さなきだに困難をいたしておりまする零細ノリ業者を圧迫するというようなことがあっては大へんだということからいたしまして、衆議院におきましても、本院におきましても、一応限度を一億枚と押えまして、生産の状況とにらみ合わせて漸次これは減退をしていくべきであるとの決議をいたしましたのであります。で、一億枚というものがコンスタントなものではないのであります。一億枚というのは、最高の限度を押えたのであります。その年の国内生産の国内需要の関連において、これは漸次圧縮していくということは、当時の速記録にも明らかに示されておるところであります。  ところが、だんだん政府の御努力と零細漁民諸君の熱意とが功を奏しまして、本年の生産状況は、御承知を願っておりまするように、おおむね四十億枚程度に達するであろうというような飛躍的な生産を見るに至りました。このことはほんとうに喜ばしいことであろうと思うのであります。ところが、そういうように非常な伸長を見ました結果といたしまして、私の承知いたしておりまするところでは、国内需要をまかないましてなおかつ五億枚程度は処分のできません生産過剰の状態に陥っておると承っておる。そのためでありまするか、昨年の同期における生産者販売価格と本年の同期における生産者販売価格との間には、三0%ないし四0%の下落を示しておるということであります。生産はなるほど伸びましたけれども、販売価格が四割も下がったということになりますると、これは非常に生産漁民諸君にとりましては重大な問題であろうと思う。そういうような関係にありまするから、昭和二十九年に当委員会でも議決をいたしました最高限度一億枚というものをよく考えますると、本年は韓国ノリは輸入すべきじゃないということに当然結論せなければならぬと思うのであります。ところが、外交上の都合だとか、あるいは貿易上の都合だとか、いろいろの他の条件によりまして、最近一億枚の輸入を許可されましたというように承っております。そのことは、非常にこれは問題なので、五億枚も生産が過剰になりストックができて、昨年同期に比べて生産者販売価格は四割も下がっておるというときに、それにもう一ぺん追い打ちをかけるような輸入をやったということについては、どうしても納得ができない。が、しかし、私も外交上の問題、貿易上の問題等から、必ずしも理論的に割り切るということだけではいかぬ場合があることもよく了承いたします。かといたしますれば、それによってこうむる零細漁民の経済的不利益というものは、かくかくの方法によって直すんだ、その穴埋めはするんだということがはっきりしませんと、どうしても納得がいかない問題になろうと思う。先日大臣は、その五億枚と、輸入をした一億枚とを含めて六億枚の滞貨になる分については、何らかの対策を考えようということでございましたので、いずれこれは具体的に対策が立つであろうとは存じておりますけれども、非常な難儀をいたしております零細ノリ業者を考えますると、このことはじんぜんと日を送るわけにいかぬ、急速にその問題を考えて善処をしなければならぬであろうと思うのであります。これにつきまして重ねてお尋ねしますが、どういうことを御考慮になっておりますか、具体的な構想があればお示しをいただきたい、これが第一点。  第二点は、さらに隣邦韓国には、今なお相当の滞貨があるということからいたしまして、近くまた第二次の輸入を要請してくるというような動きもあるやに承知いたしております。今後さらにその上輸入を許可されるような気配がありますかどうか。これは断じてそういう措置をとるべきでないと思うのでありますが、今後に対する取り扱い上の方針等につきましてもお伺いをいたしておきたいと思うのであります。以上、二点についてとりあえずお答えを願います。
  44. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 韓国ノリ輸入に関してのお尋ねは、まことに私はごもっともな御意見だと思います。がしかし、今日国内のノリが値下がりをいたしておりますことは御指摘の通りでありますが、これは最近における急速な内地ノリ増産による影響がかなり多いのであります。御承知の通り、一昨年に比して昨年は七、八億枚増加、さらに本年はその上五、六億増加して、昨年に比べますと約十三億枚というような増加になっております。これに対しまして、生産者価格は約三割、四割下がっておりますが、消費者価格は何らの影響を受けず、相変わらず高いのであります。従って私はそういう事柄については、生産者の生産品たるノリの取引機構においても非常に欠陥があるんではないか、また消費者価格等に関して、今までより三割ないし四割も低いものを買っていながら、相変わらず元の価格で売っておるところにも問題があるんじゃないか。もしこれが、生産者の努力によってノリが増産されたとするならば、需要の増大をはかるためにも消費者価格について、現在よりもある程度消費者価格は下がるということになれば、需要はさらに増大すると思うのであります。そういう点にも欠陥があるんじゃなかろうかという面で、韓国からの輸入のノリはともかくとして、内地の増産されたものに対して、当然取引上あるいは消費拡大における指導、宣伝といいますか、そういう方面の処置、市場関係というようなものを考えて対策をとる必要がある、こういうふうに考えております。同時にそのことがやられる一方におきましては、貯蔵、保管に関して、あるいは必要なる低利融資をするというようなことの必要があるんではなかろうか、今日その対策樹立を当局に命じておる次第であります。従って、それでもやはり多いんだから、一枚も入れるなという御意見もありますが、この点は、現在の値下がりその他の状況については、今申しましたように内地生産が急速に上がったというところにもあるのでありますから、それらの対策をとりつつ、国際上やむを得ざる範囲において従来御決議をいただいておる最高限度一億枚ぐらいは輸入を認めていったらどうかということで処理をいたしたわけでありますが、これらをあわせてただいまのような対策を至急に講ずるつもりであります。  同時に御指摘の第二点は、さらにふやすかということでありますが、これは衆議院におきましても御決議をなさいました。私もその趣旨を体してやると申したのでありますが、今言ったような内地ノリ対策というものができ、消費を増大し、あるいは取引法の改善等によって生産者に対する処置がとれるということを待った後でなければ、それ以上の問題は考えられない、こういう趣旨で、考えでおります。
  45. 森八三一

    ○森八三一君 そうしまするとですね、はっきりしておきたいのですが、第二点につきましては、生産者に経済的な悪影響がないという保証のない限り、さらに追加輸入ということをやらない、こういうように了解してよろしゅうございますか。
  46. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 衆議院の御決議をいただいたのは、そういう御決議でありますので、私どもはその趣旨を尊重して善処すると、こうお答えをいたしておるわけでございます。
  47. 森八三一

    ○森八三一君 第一点のお話しのように、流通機構が整備されておりませんために、生産者段階におきましては三五%ないし四0%の値下がりをしておるのに、最終消費者に到達するときには一向影響がない。このことは大臣お話しの通りでございまして、急速に整備をしなければならぬ問題であろうと思うのです。が、しかしそのことが整備されるからといって、非常にその需要が急激に増大をして、生産者も四0%の値下がりになったということをカバーするような情勢というものは、なかなか困難であろうと思うのです。そこで五億枚の滞貨があるところへ持ってきて一億枚入れた、それが値下がりに拍車をかけておるということでございまするといたしますれば、その手当は何かしてやらなければ、これは気の毒だということになるのですね。もしそういうことで今後貿易の自由化がだんだん進んでいくようになりますると、農業基本法にもやはり関係してくる問題なんで、何とおっしゃっておっても、外交上の必要で入れるのだとなりますると拡大して参ります。選択的な重要農産物につきましても、次から次へと外交上の必要によって入ってくるということになるというと、その影響を受けるのは生産者だ、こういう危険があるのです。でありますから、これはひとり韓国のノリ問題だけではなくて、全農産物に関係する政府の基本的態度というものにつながってくるんですから、私は国内の生産によって国内の需要を満たしておるという限りにおいては、海外からの輸入というものは断じてやってはいかぬ。しかしながら、それが他の条件によってどうしても日本国の立場上やらなければならぬという場合には、それによってこうむる生産者の損害というものは、政府の責任において始末をするということをはっきり約束をしてもらわぬと、これは選択的拡大なんてやっておりましても、いつ何どき他の条件によってばかを見てしまうという事態が発生しないとも保証がされないということですから、その辺の基本的観念についてどうお考えでございましょうか。
  48. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ただいまのお尋ねでありますが、私、先ほど申しましたように、十分輸入品については考えていかなければなりません。が、しかし、今のノリの問題は森さんもあるいは御承知だと思いますけれども、今の三割ないし四割下がったということは、韓国ノリ輸入前においてすでに下がっております。そこでしからばその上に一億つけたらどれだけの、因果関係の上に立ってさらに値が下がるかという問題もありましょうが、私はそれは今申しましたような他の対策を立ててむしろ取引の改善ということを第一にやらなければならぬ。今日、増産されてもやむなく相変わらず非常な強いいろいろな意見があるにかかわらず、個々の問屋と内々取引してたたかれている。むしろ私どもは大きく市場に向かって共同市場でせりにかけるくらいのことを指導していかなければならぬ。そこらに問題がたくさんあるのでありますから、ただ安易な形にはものを考えておりませんが、十分対策をとりたいと思いまするし、ノリの問題に関しましては、これが非常に国際的に問題になっておりますが、実は輸入関税二割を四割に上げる。六月一日から施行されるのでありまして、そうなりますと、今の価格ではとても競争にならぬ関係になります。こういうことはあまり大きく言えませんけれども、問題はちゃんと考慮して考えております。
  49. 森八三一

    ○森八三一君 流通機構の整備については、急速にやってもらわなければなりませんが、それはこうやっておりましても、なかなかむずかしい問題で、よういかぬと思うのです。これは例は違いますが、この間も私ども基本法の問題に関連して地方聴聞会にかけたのです。そのときに車内でも話をしたことでありますけれども、澱粉質の食糧から蛋白質の食糧に移っているということで、畜産の問題が非常に重要に取り上げられております。農家も一生懸命やっている。一生懸命やっているが、国の施設を使ってですね。そうして簡単に言えば、強制商品というような、選択を許さないというふうな立場で売られている。駅売りの牛乳が一つ十七円なんですね。こんなことをほっぽりぱなしにして置いて、流通機構がどうだの、こうだのおっしゃること自体がおかしいと思うのです。それくらいのことはすぐおやりになるということであれば、今のノリの問題についても流通機構を考えていくということはわかるが、わかるけれども、駅売りの物がそういうようなことが行なわれているということをほうって置いて流通機構をどうするこうすると言ったって、どうも受け取れないのですね。ほんとうに真剣に考えてもらわなければ、国民の目の前にはいろいろの問題があるのですわ、真剣に一つやっていただきたい。要望を申し上げます。
  50. 清澤俊英

    清澤俊英君 ただいまの近年非常に増産されていると言われますが、増産の問題はどうなっておりますか。
  51. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ごく最近の数字を申し上げますと、一昨年の秋から昨年の春にかけて総生産数量は二十二億九千万枚、去年の暮れから本年にかけてただいま私のところへ府県から報告のありました数字は三十六億枚。これは二、三億これより増加があるかもしれませんが、ただいまの数字はそういう数字であります。
  52. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきちょっと森君が言いましたが、大体今どれくらいしているのですか、生産者のノリの価格は。
  53. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 十枚四、五十円です。
  54. 清澤俊英

    清澤俊英君 どれくらい今売残りの手持ちがありますか、生産者の手持ちは。
  55. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私ども聞いておりますところでは、先ほど森委員もおっしゃいましたように、五億枚程度というお話でありますが、私どもその正確な把握した数字はございません。ただ御承知のように三月末ぐらいまでずっと生産がありますので、まだ多少は生産者の手元に従来普通の年ならある程度あるはずでございます。われわれの方でそれを軒並み調べておりませんので、はっきり把握しておりません。五億枚というのも、あるいは一カ月ぐらい前かもしれません。その後さばけてきているのじゃないか、こう思っております。御承知のようにもう四月から全然生産がございません。順次それが消費者の方に参ると思います。
  56. 清澤俊英

    清澤俊英君 この五億枚は漁協というようなものが持っているのか、生産者自身が持っているのですか。
  57. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは単位の漁業協同組合、あるいは漁連、それらを通じてというふうに私ども了解しております。
  58. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体今のノリの生産者から市場へ出てくるまでの大体の流通の方式は、どんな形になっておりますか。
  59. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これはノリは昔からの開発された地帯と、新しくこのごろ生産の伸びてきた地帯では、取引の機構がだいぶ違うようであります。たとえば東京湾、千葉管内等はこれは漁業者が生産するわけでありますから、その場合に漁業者が生産したノリは、消費地か近い、あるいは問屋が近い、問屋の手が昔から入っているというせいか、単位漁協を通じないで販売されるという場合が相当あるやに聞いております。相当あるようであります。ところが、愛知県あるいは熊本の方に行きますと、漁協あるいは漁連を通じての出荷が相当多い、こういうことになっております。いろいろ土地々々によって違いますので、私どもとしましては、このノリの問題はやはり生産者の共同販売というのを推進しなければならない。ことにノリの生産、沿岸でこれからノリの生産が伸びてきますので、これはやはり漁協を通じてしないと、漁協自体も経済的な力がつかないというところで、その辺に一つの解明すべき、手を入れなければならない点があるのではないか、こういうふうに考えております。
  60. 清澤俊英

    清澤俊英君 現在そういう欠陥がわかっている場合に、金融措置などはどういうふうになっていますか。
  61. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは単位漁協がそういう融資をする、生産資材の購入等、これはもちろん信連を通じて、あるいは中金を通じてやるわけでございますが、現実にそういう生産者が漁協を通じないことには、問屋に仕込みを受けているという例もありますので、それらの点は単に資金をそこに流してやるということでなしに、やはり漁業者をもっと自覚させるということでございます。そして、共同販売ということの方が妙味があるというふうにだんだん持っていかないといけないのではないか、こういうふうに考えております。
  62. 清澤俊英

    清澤俊英君 昔ですね、繭などが出盛りになりますと、繭資金の貸し出しというものが二十億とか三十億ということを私ら始終聞いておったのですが、やはりそういう方式のものを考えれば、ひとりでに漁協に集まるのではないかと思うのです。結局それは、このノリの特質は、繭から製糸会社が買って糸にするというのとは違うのであります。漁民がすぐ販売されるノリにしてしまっている、製造加工をしてしまっているのです。その上やるとすれば余分な味付ノリを作るとか、焼ノリを作るとかいうのが、第二者の手に入る。そうすると製造までやっているけれども、買い上げられて、ほかのマージンで非常にやられるというのはおかしいのです、何とも。どうです、来年からノリの生産期には大体これぐらいの生産があるのだから、それに対してこれぐらいの資金はノリの連合会を通じて回すと、こういう形はとれないのですか。そして一定価格で集めるとしますならば、今行なわれているような古い形の、千葉県あたりのノリなどは、大体信州の寒天屋さんがほとんど買い占めてきている。その他のものは大体においてノリの大きな問屋さんが買い上げている。こんな形になっていて、漁協の活用が何かほとんどできていないと思うのです。だから資金を手当てしてやるということにすれば、大体一ぺんで解決することではないかと思うのです。昔、大臣が農林省におられた時分、繭の手当時期になりますと、日銀が二十億貸し出す、今年は二十五億貸し出すと言うて、ちゃんと買わしたものです。そういう形をとるならば、私は非常に簡単に片づくのではないかと思いますが、それはどう考えておられますか。
  63. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ただいま清澤さんの御指摘の点なんかも含めて今至急に案を立てさしております。資金面の問題、その資金は運転資金としていく場合、あるいは貯蔵、保管の資金の場合、それから取引に関する古い形態の取引を、何とか改める方法はなかろうかというような面、全面に触れております。ほんとうにこれはうれしいような、その何です、効果でして、増産というものもなかなかむずかしいのですが、ノリは沿岸業者のために非常によい胞子等の発見等によって、人工栽培ができて、やれることになりましたから、当然これに対して御指摘のような各般にわたって対策を立てたいと思って、今研究を命じております。
  64. 清澤俊英

    清澤俊英君 それで西村さん、ノリの生産地である沿岸は、大体埋め立てなどで減っているのが実情です。減っているというのが普通の見方です。それがだんだんふえてきているというのは、非常に高度の養殖技術が進んで、そして沖合の深度の高い所で、深い所でも養殖できるという技術上の成果がこういう増産を来たしていると思うのです。だから考え方によったら、まだずっとふやす余地があると思うのです。増産する余地を残していると思うのですが、大体水産庁で考えておられる考え方では、どれぐらいの水深までこれを養殖していけるかということと、それからいま一つは、大体あなた方が考えてどれぐらいまで生産を伸ばしても大丈夫だと、こういう目安がついておりますか、どうですか。
  65. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ノリは沿岸の浅い海で養殖をしますので、御承知のようにそういう海面は埋め立て、あるいは水質汚濁によってだんだん狭められておることは事実でありますが、他の二面におきましてノリの養殖技術というものが二つの面で進んでおります。一つは先ほど大臣のお話しのようにいい胞子を栽培する、採取するという技術が発見されました。それによって方々に移殖することが可能になり、それから栽培の方も従来は三メートルが限度でありましたが、大体今は五メートル。しかし、もちろんそれにつきましてもあまり広い所で、たとえば技術的に可能でも経済的な問題もございます。私どもとして今手元にどれくらいが可能な面積かという数字をちょっと私、持って参りませんでした。われわれの専門家によりますと、まだまだ片や壊廃地と申しますか、つぶれる漁場がありますけれども、片や開発できる漁場もある。そこでわれわれとしましては、本年から構造改善の施策としまして、ノリ漁場の新漁場の造成ということを進めて参りたい。そのためにまず全国で十一カ所ございます地点を選びまして、そこについては浅海増殖、ことにノリについて増産をして参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。しからば、どれくらい増産したら可能か、こういう問題は片方における国民の食生活の変化というものがありますし、なかなか簡単には申せない問題と思います。しかしながら、ノリそのものに対する所得弾性値は相当高い。従いまして生産を増大し、流通機構を合理化すれば、まだまだ生産は伸びる、こういうふうに私ども考えております。しかし、その施策を推進する上におきましては、そういうことを絶えずつかむ方向に努力して今後考えて参りたい、こういうふうに思っております。
  66. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 大臣は衆議院の方の法律を上げる御用があるそうですから、どうぞよろしくお願いいたします。
  67. 清澤俊英

    清澤俊英君 それはわしらは過去のことを考えると、もうどんないなかに行きましても、ノリというものは使われておったのだが、最近は非常に価格が影響していなかにない。そうして非常に悪いものが回ってきている。こういうような状態で、おそらくはわれわれしろうとで考えてみても、消費が半分に減っているのではないか。本年度大体何年度くらいの経済情勢においてどれくらいのノリが使われた、それから経済成長とか、あるいは人口の増加とかをこう見合っていきますれば、大体これくらいの値段になったならば、これくらいのところまで消費は保てるのじゃないか、こういうようなものが一応の目標が立てられるのじゃないかと思います。そういうことを一つごめんどうでも立てていただく余地はないでしょうか。
  68. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ただいま清澤委員のおっしゃったことは、私どもとしましては、そういう点をぜひ今後は急速に一つ立てたい。そうしないと、今後の増産計画にこれはなかなか問題だろうと思いますので、把握して参りたい。ただ一口言えることは、今日ノリが高く、非常に少ない。消費者価格は下がっていない。その間のマージンが大きいことが問題です。従って今何と申しましても消費大衆は、今のノリは高過ぎる、こういう意見が非常に強いわけです。私どもも率直に耳をかすべきである。従ってそれをどう改善するかということは、マージンを詰める方法を考えていく。そうして生産者の系統団体に融資をしまして、幸いにノリは私は、ほかの水産物と違って貯蔵もききますし、扱いやすい商品であります。割に規格も一定しております。そこで、その系統団体、生産者の団体を利用しまして、小売まで一つやらしてみたらどうか。たとえば消費地と直結する、それから農村につきましては、農業者の団体を通じて一つ手を握るということも寄り寄り考えて、どういうふうにそれを持っていったらいいか、こういうことを考えておるわけです。そういうことをいたしますと、消費者へ渡す価格は現在より低いけれども、生産者の手取りは少なくならない、こういうことは私、可能だと思って、早急に今その点を具体的に検討を進めつつあるところであります。
  69. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちょっとこれは、この間通産省の係の方が来て、何かちょっと割り切れないことを言っていかれましたね。
  70. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 通産省から見えております。
  71. 清澤俊英

    清澤俊英君 この間見えましてのお話では、いろいろ外交上の問題もあるし、これからの貿易の問題もあるから、一億五千万枚ぐらいは考えなけりゃならないんじゃないかというようなお話がありましたが、今、大臣の説明を聞きますと、まあ一応内地のノリの価格が安定するまでは、何かの目安がつくまでは、私の耳が悪いから聞き違っているかもしれませんが了解した範囲では、そういう目安のつくまでは輸入は一つ差し控えたいと、こういうお話だったと思うのですが、だいぶあなたのお話と違ったところが出ているんです。そこで、この間はあなたに私はこういう質問をしたら、ちょっと質問の趣旨がわからないと、こう言われましたが、まあ、朝鮮ノリの輸入という問題に対しては、私はある程度まで責任を感じているんです、日本の国民として。日本が作らしたんだから。朝鮮人はこれを使わないんだ、朝鮮では。また、ほかの国では使わないんだ。そこで作らして、今できているからといって一つも買わないじゃ、これはどうもちっとおかしい話じゃないかと、私には始終そういう潜在意識があるんです。だから、第一回のこの朝鮮ノリの輸入問題が出ましたときは、二円六十銭ぐらいで入るんですな。だから、これらのものを一応、労働組合等を通じて一億ぐらいのものはわけない、これはそうめんどうなしに、やり方によっては散布ができる、消化ができるから、それは決して日本のノリの全体の販売に当時の状況としては影響はしまいと、同時にそのことは、ノリを使うという習慣を国民に与えるので、消費増大の一番いい方法だから、こういうことは考えられないかと、こういうことを言うたことがあるんです。これはまあノリの生産者にはずいぶんうらまれ、たたかれましたけれども、そういう考えも私は持っているんだ。そこで、そういう考えについて、何かいい方法があるのかと、こうあなたに聞いたんですよ。そこで、今お伺いするのは、農林大臣が今言われる通り、本年のような生産者の価格状態であれば、これは当然価格が割れるところまできております。これを少し手持ちでもして、金を借りてでも持っておりましたら、もう価格は割れちまいます。こういうところまできているんですから、これがある程度安定するまで輸入ということは考えたくないというのに対して、通産省としてはどうお考えになるか。  それから第二は、大体今取り扱っているのは、さっき申しました、西村さんが言われる通り、海産に関係のある仲買人、こういうものが大体取っております。これは信州の寒天業等を通じて信州資本が相当買い占めていることは、これは自明の事実です。その次は山形屋であるとか山本であるとか、あるいは宮永というような日本におきましては大商人がこれを買い占めている。そのうしろをバックしているのは綿実とかあるいは伊藤忠である、こういうものが買い占めていることは、前回のノリの問題が非常にやかましかったとき明確になった事実であります。これはあなたの方でも考えなければならぬ。ただもうけるだけで、朝鮮ノリまで持ってきたり、密輸入ノリを持ってきて、そして市場だけを混乱させておくということは、これはおかしな話だ。あなたの方でそういうものは取り締まって正当な価格で国内に流させる、そして消費を増大させる。日本で作るだけでももう相当限度があると思います。今西村さんの言われた通りだんだんとノリの適地はつぶれている。ようやくにして技術の進歩によって、三メートルから五メートル、七メートルとなっていった。こういう形で増産を今続けておりまするが、しかし長く続くかどうかわかりません。また消費価格とのつき合わせも出てくるだろうと思います。そういうようなことを考えましたら、まごついたら、日本ノリ産業というものは消滅するかもしれない。一つそれらの点を農林省とよく話し合って価格等を制圧していくお考えがあるのかないのか。
  72. 山本重信

    説明員(山本重信君) 第一の輸入に関する方針につきましては、通産省も先ほど農林大臣がお答え申し上げたことと全く同じ考えでございます。なお、通産省の立場をちょっと敷衍して申し上げさせていただきますと、ノリの輸入ワクを決定いたします場合には、国内の需給問題については十分に考慮を払う必要があることはお説の通りでございまして、そのことにつきましては、水産庁とも十二分によく協議いたしまして、結論を出すようにして参りたい、こう考えております。  もう一つ、韓国との貿易も、これは通産省の直接所管でございますので、これも十分にまた考えなければいけないわけでございまして、実は先般一億枚の輸入をきめます場合にも、外務省、農林省等と十分に御相談をし結論を出したわけでございますが、そのときに貿易関係では、たとえば昨年を例にとりますと、日本から韓国への輸出が六千八百万ドルくらいになっております。それに対しまして韓国からの輸入は千五百万ドルくらいにしかなっておりませんので、従来から通商交渉のありますたびに、韓国側から日本にもっと韓国の物資を買ってくれという強い要望がございまして、そのつどノリ、無煙炭、魚等について要求があるわけでございます。それらの物資につきましては、それぞれ国内の需給関係を十分勘案いたしまして、そのつどワクをきめて参ったわけでございます。国内の需給が許しさえすれば、私どもとしてはできるだけ韓国の物資を余分に買いたい気持は常にあるわけでございます。ただし、それを具体的に決定いたします場合は、今般一億枚のワクをきめましたときもそうでございまするが、十分水産庁とも連絡をとりましてその上できめて参っているわけでございます。  それから第二にお尋ねの流通の問題につきましては、従来韓国ノリ輸入はかなり利益があるような話もございますのですが、私たちが存じております範囲では、輸入業者が輸入しましたものに関税を払い、それから大体四、五%くらいのチャージをかけまして、それを国内の問屋に渡しているというふうに了解いたしているわけであります。先ほどもちょっとお話がございましたように、ノリの価格は戦前等に比べますと、ほかの物資に比べてかなり割高になっている事情もございますので、その点は主としてこれは農林省の方の関係でございますけれども、通産省でもできる範囲で協力いたしまして、価格の安定については努めて参るというふうに考える次第でございます。
  73. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 関連してお尋ねしたいのですが、韓国ノリを輸入する場合に、先ほど二割の関税を四割にしたと言いますけれども、関税抜きの場合の価格は一じょうどのくらいになっておりますか。関税を含めてどのくらいになりますか。
  74. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) お答えいたします。昨年の韓国ノリの価格は百枚四百七十五円でございます。ただ一昨々年は二百八十八円でございます。と申しますのは、やはり日本側で買いたいという、輸入商社の買い進みというものをみて、向こうがつり上げたということがあるのじゃないか。現在はどれくらいか、私の方は承知しておりませんが、国内の生産者のノリの価格は大体百枚で、生産者で、四百五十円くらいと言われております。
  75. 清澤俊英

    清澤俊英君 今年ですか。
  76. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今年、そのくらいといわれております。私の方で完全に集計しておりません。ただ、それと見合うようなものが韓国の方が二割くらい安い、こういうことになりますと、三百五十円か三百六、七十円になります。そうすると、今度は、従量税、一枚二円ということです。そうすると、百枚で二百円につきますので、五百五、六十円になるのじゃないか。だから、国内の産地価格より高くなる、こういうことは一応は言えるわけです。
  77. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 関税を入れましてですね。
  78. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ええ。ただし、そのことで、だから放っておいていいということは別問題だ、こういうふうに考えております。
  79. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうすると、現在の国内価格は、大体、今、四十円から五十円くらいだということで、特に昨年あたりの、今までの論議を聞いておりますと、大体五0%くらい下がっておるわけです。国内のものよりも高いものを仕入れるわけですね。
  80. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ただいま通商局の方からお話のありました一億枚、本年のやつは、先ほど大臣のお話で、六月一日から関税定率法の改正になり、ですから、その部分につきましては関税が一五%かかるわけでございます。
  81. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますというと、大体今までの説明を聞きますというと、国内の生産者価格よりも高いものにつくというわけですね、関税を含めますと。この点、明確に……。
  82. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 一応そういうことも言えますが、ただ、先ほど申し上げましたように、韓国の値段が一昨々年は二百八十円程度であったということから、必ずしも向こうのものが、日本の輸入商社の買い進みというものとの関連がありますから、その値段が絶対的なものだというふうに考えていいかどうか、ちょっと私の方はわかりかねる。一つ言えることは、韓国の方は、おそらく、生産費はずっと安いであろう、こういうことは言えると思います。
  83. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 大体、韓国ノリとその規格が同じくらいのものの日本の国内における小売価格はどのくらいになっておりますか。
  84. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 先ほど申し上げましたように、大体二割くらい相場が低い、こういうことでございますが、韓国ノリは、一般的にいいまして、日本のより少し品質が落ちる。従いまして、加工用、つくだ煮にしたり、あるいは、あられとか、せんべいを巻いて使う、いろいろそういう方面に相当多く使われる。従って、にわかに、これ、同じものを比較するのはなかなかむずかしいのじゃないか、大体二割くらい低い、こういうふうに思います。
  85. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 実は、私はこういうことを聞いたわけなんです。生産者関係の方で、大体、内地で、三百店くらいのノリを取り扱っておる商店を調査しましたところが、百軒について二軒くらいが、正直に、韓国ノリとして銘を打っ売っておる。あとのところは、韓国ノリとして売っていないで、内地のノリだと称して売っておるという、こういう現象が指摘されておるわけなんです。そうしますというと、内地の小売価格の百五十円くらいで韓国のそういう規格の劣ったものを売るということについては、これは十分流通面において相当厳重な態度で取り締まらないというと、これは一般の国民が迷惑するということにもなるわけです。そういう点がどうも、事実だとすれば、私たちとしては納得ができないところなんですけれども、こういう点についてどういうふうにお考えですか。調査したことがあるのですか。
  86. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私の方で特にその目的のために調査したことはございませんが、おそらく大都市におきましては、ノリが非常に相場が高い。特に都会地に引っ張りだこであるというような場合に、韓国ノリというものを、品質の劣るものを、もともと安いものを相当高い値段をつける。この点は、あるいはそこに非常な暴利を取ったというような問題はあるかもしれません。韓国ノリと表示して売らなければいけないという義務はないものですから、これについての取り締まりをするというわけに私はいかないと思います。ただ問題は、それより、先ほど申し上げましたように、ことしのように豊作であっても、小売価格は下らない、多少は下っておりますけれども。そこで、マージンが非常に大き過ぎるから、そこに問題がある、一般的に申しますと。そこで先ほど申し上げましたように、流通の問題、幸いああいう商品でございますので、生産者団体による共販というものが割になじむのじゃないか。その点は小売りにまで、あるいはまた農村の方の農業団体とのタイ・アップによって流通促進、消費促進ということをやってみたい、こういうふうに考えております。
  87. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 この問題については、私は国会内でも、不明朗なお話を耳にする場合もあるわけです。そこで、生産者の方々が、通産省だか、あるいは水産庁か、どこかに行って、この両者のうちだろうと思いますが、韓国ノリをなぜ一億枚輸入しなければならぬかという理由を問いただしましたところが、その政府側の答として、韓国の防共体制を強化するために必要だということが一点、それからもう一つは、韓国への経済援助の必要から輸入するのだという二つの点をあげておるということを聞くわけなんです。その第二の点の、国内の五億枚以上の在庫を持って困っておる生産者の方々が非常に売りさばきに困っておる、そういう情勢の中で、あえて、特に漁民というものは細々とした収入によって生活をしなければならぬ、そういう二重構造底辺の人たちのことを顧みないで、これを売りさばくことを先に考えないで、いきなり防共体制の強化とか、経済援助とかいうことで入れるということについては、少しくどうもあまりに政治的に考え過ぎておるのじゃないか、こういうふうに思うわけなんですが、こういう点は明確にそういうことを、言っておるわけですか、そうだとすると、これは大問題なんです。
  88. 山本重信

    説明員(山本重信君) ノリの輸入ワクを決定いたします場合に、考慮いたしました点は、国内の需給関係の点と、それから日韓通商の拡大という点でございまして、特に先ほどもちょっと申し上げましたように、韓国との貿易は、はなはだしい日本側の出超になっております。昨年で六千八百万ドルの輸出に対しまして、輸入はわずか千五百万ドルというわずかな金額でございますので、国内の事情が許しさえすれば、先方がぜひ日本に買ってほしいという物資をできるだけ多く買うということが、日本の通商拡大の要諦でございますので、そういう観点から決定したわけでございまして、ただいまお話にありましたような、ごく政治的な特殊な考慮は特に払ったつもりはございません。
  89. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 一億枚で、一枚五円としても五億円なんです。そういうように、通商関係云々という問題でもなかろうと思うわけなんです。もっとほかに韓国に必要なものはたくさんあるだろうと思うんですよ。また日本で必要なものもあるだろうと思うんです。そういう面からいって、それをあまり、通商関係云々ということを表へ出すにしても、もしそうだとするなら、五億枚の滞貨があるとするならば、これは当然国内の、特にノリは日本国内の、いわゆるまあこれは需要としては日本だけだろうと思うんです。そういう中で、たくさん、このごろいなかへ行っても、どこへ行っても、婦人会だの青年団などがたくさんおむすびを持って一日の旅行をしておるときなんです。だからそういう需要はたくさんあるときなんだから、五億枚の在庫を売りさばきができないというような形を現実に残しておきながら、それを解決しないで輸入するということについては、やはり私は政府の責任が少しぐらい問われるんじゃないかと、こういうように考えられるわけなんですよ。こういう早急に五億枚の、さっき長官もおっしゃったように、農業団体であるとか、労働組合だとか、あるいはそういうその他の民間団体で売りさばくように流通関係を考えたというなら、もうとっくにこういうことは考えなければいかぬだろうと思うんです。韓国ノリの問題が出てから初めてそういう方向で何とか流通関係を考えるんだということでは、これじゃあ政策にならぬと思うわけです。こういう点を私は十分考慮をしていただきたいと思うわけです。  それからもう一つお聞きしたいのは、何か自民党の訪韓議員団が行って、通産大臣から要請されて、一億五千万枚の輸入をきめたというようなお話をまあ国会内で聞いておるわけなんだけれども、こういう点は事実なんですか。
  90. 山本重信

    説明員(山本重信君) 先般決定いたしましたノリの輸入量は一億枚でございまして、実は韓国側からはかねて一億五千万枚の輸入要請があったのでございますけれども関係各省集まりまして検討いたしました結果、一億枚ということに決定いたしております。
  91. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 その一億枚というやつは、最低の限度か、もうこれ以上輸入しないという最高限度か、その点はどうですか。
  92. 山本重信

    説明員(山本重信君) 先般決定いたしましたのは、一億枚分の外貨の割当をするということを決定いたしたわけでありまして、それ以外のことは何もきめておりません。
  93. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 外貨の割当が一億枚だから、また必要に応じて外貨を割当てられればもっと輸入できるということでしょう、今の答弁は裏を返せば……。ですから、枚数で、数量でいってもう一億枚以上は輸入しないということの趣旨かどうかを聞いておるわけです。
  94. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 先ほど農林大臣もお答えしましたように、まあ昭和三十一年の本委員会の決定、決議、さらに最近でありますが、衆議院の農林水産委員会の決議、これは一億枚を限度とするということにはっきりなっております。それを大臣も言われましたように、われわれは十分尊重して参るということははっきりいたしておるわけであります。私どもはそういうふうに了解しております。
  95. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、結論は国内の内地産の五万枚が消化されるという状況の中から考えて、最高一億枚を輸入するのだと、こういうことでいいのですか。
  96. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 衆議院の決議は私今手元を探して見当たりませんが、国内におけるノリの消費対策と申しますか、需要増進対策を確立し、こういうおそれがなくなるまでは年間一億枚を限度とする、こういうことははっきりいたしております。私どもはその線に沿って年間一億枚を限度とする、こういうふうに了解をしております。
  97. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連。さきの大臣ののは、一億枚というものを中心でなく、五億枚は手持ちもあるしするから、ノリの価格が、価格というよりはノリ全体の業態が正常化されることを待って輸入すると、こういうふうに私は解釈しておったが、その一億枚は一応はきまっていても、それができなければ輸入しないのじゃないですか、重ねてあれですか、五億あるところへ……。
  98. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私の趣旨も大臣と同様のことでございまして、何も五億枚というのは、これはデッド・ストックじゃなしに、ランニング・ストックだと思います。五億枚がなくなってからあと輸入するかもしれない、そういう趣旨を大臣は申し上げたのではございません。今後の消費対策、消費の方策がはっきりするまでは一億枚を限度とするという農林水産委員会の決議もあるから、それを尊重して参るということでございます。
  99. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 関連。今ノリの問題が出ておりますが、先ほど来いろいろの質疑応答を聞いておりますと、だんだん日本のノリというのは増産される傾向にある。これは最も農産物と同じように天候に支配されるものが非常に多いので、順調に毎年毎年十億とか五億とかふえていくことも考えられませんが、漸次増産されていくということになりますと、これを一体どう処置していくかということが考えられなければならない。一億枚の韓国ノリの輸入どころじゃなくて、国内でふえていくものがこんなに値下がりをしてくると、いわゆるコスト・ダウンをして引き合うような状態に置かなければ、まあ農業でいうと、選択的拡大と申しましても、拡大すればするほど値が下がってくるということでは、これは奨励もできないかと思います。私は、韓国の人で、私が韓国にいる時分から非常に懇意にして、私が使っていたという人が今水産で向こうで相当の地位の、社長なんかしている人が毎年来ます。そこで、先生方ももう少しノリを買ってくれという話がある。ところが、韓国で一体どれくらいできているかと聞いてみますと、今四億から五億ぐらい生産されている。ところが日本で正式に買っているのは毎年一億ぐらいだと、あと三億四億どうしているのだという話をして聞いてみますと、だいぶ韓国人も食べるようになったけれども、南方の方へ輸出していると、こう言うのですね。はたしてそれがどれくらい輸出をしておるか私にはわかりませんが、とにかく韓国人というのは、私も韓国におったのですが、ノリは食べなかったです、当時は。このごろは多少食べるようになりましても大したことはないと思う。しかしそれが日本で一億ぐらい、年にまあかりにやみがあって一億五千万枚入っても、あと一億五千万か一億ぐらい向こうであるはずなんです。それが一体どうなっておるかということに、私は非常な不審を持っておるわけです。そうすると、かりにこれが東南アジアとか、あるいはその他中国等に輸出をされているのだとすれば、われわれ日本の生産の面においてもその点を考える必要があるのじゃないか。まあハワイなんかに行っている日本人ならば、ノリは相当消費するだろうと思いますし、また加工の方法によっては、外国人がビールを飲んだり、その他ウイスキーでも飲むという場合のつまみとか何とかいうものに向くのじゃないか、向くようにこれは検討しなければならぬじゃないか、こういうように考えております。これは年々こういうように増産々々となってきまして、今ここに法案が出ていまするが、魚価安定基金の中に入れるとか、漁業生産調整組合みたいなものをこしらえて調整せねばならないのじゃないかといった問題にまで発展しておる。そういうふうなことを考えると、やみくもにノリ養殖というものを奨励できなくなるのじゃないか。先ほどからお話しにあるように、養殖技術も研究されて発達しております。と同時に、人工採苗の点について画期的に研究が進んでいるということから、非常に増産されておると思うのです。ですから、一億や二億の問題じゃなくて、もっと大きな日本のノリ、漁業に対する根本の考え方を水産庁、しっかりきめておかなければ困るのじゃないかと思うのですがね。それはどういうふうでございますか。貿易というか、あるいは海外の市場を開拓するという面において多少は意を用いておられますか。
  100. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今秋山委員の仰せられた通りでございまして、われわれとして先ほど申し上げましたように、沿岸漁業振興の一つの柱としてノリの増産、浅海増殖の一番大きな問題を進めておりますが、これはやはり先ほど清澤委員の御指摘にもありましたように、消費の拡大というものを一面に進めていく一方、やはりコスト・ダウンということも一つ考えていかなければならない。いたずらにただ生産する、そして競争力の弱い、何と申しますか、結局、それは消費の行き詰まりを招来することになると思いますので、その点につきましては、私ども今後沿岸漁業の構造改善というものを推進する際におきまして、急速にその点についての目安を立てて、その上に立って物事を進めて参りたい。ただ、現実の問題としまして、韓国ノリの輸入ということは量的にはなるほど少ないかもしれませんけれども、やはり価格的な問題としては相当これが人気的に影響する。従いまして今度の一億枚にしましても、その輸入業者の国内放出につきましては、水産庁がその時期等については指示するという条件を入れておるわけであります。またさらに、秋山委員の御指摘の海外における輸出増進という点につきまして、率直に申しまして、今までのところ何らそういう点について身を入れて考えてみたこともございませんが、いわゆる浅海増殖というものを大きなスケールで発展さすという場合には、そのことを当然考えなくちゃいけないので、その可能性等につきましては、今何とも申し上げかねますけれども、そういう点もあわせまして今後諸般の対策を進めて参りたい。こう思っております。
  101. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今もお話しましたように、韓国のノリが四億も五億もできているやつが、一年ぐらいなら一億やそこら残ってもいいが毎年々々残ってくると大へんなもので、今で言えば十億以上のものが残っていなければならない。そこに残っていないということが不思議なんです。韓国人はまああまり食べませんでしょうが、幾らか食べようと、相当日本にやみが入っておる。これは密輸があるということを聞いております。しかしそれにしても年々二億なり二億五千万枚というものが残っておるはずがない。それがどこかにはけておる。全部日本に来ているとは思いませんが、そういう点も日本も各地に在外公館もあることでありますから、そういう問題の面の調査をすると同時に、私は外国人の嗜好に適するように加工の面で技術面に研究をしてもらいたい。これはそうしなければ、今三十億や四十億で行き詰まるようでは、これは奨励も何もできません。二十億、三十億できた、それだけできたら五億ストックしなければならぬ。そうしてストックして値をつり上げているというのは、これは不都合なことで、私は特にノリが増産されたというから、デパートやノリ屋をのぞいて見ると、やはりいいやつは百七十円もしている十枚で。これはそれにしてもあまりに開きが多き過ぎるので、この点は先ほどしばしば皆様からお話や御要望がありましたが、何かそういう方面を調整すれば大臣が言われたように、もっと消費が伸びるのじゃないか。あまりにも高過ぎるということに注意をして、内外ともに販路について御研究を願いたいと思います。
  102. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 両案については、本日はこの程度にいたします。  散会いたします。    午後三時五十四分散会