○島本虎三君 ただいま議題になりました
公衆電気通信法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
日本社会党を代表して、これに反対の意を表するものでございます。(
拍手)
わが党がこの
法案に反対する
理由の第一は、この
法案が料金調整に名をかりた電話料値上げ
法案であるからであります。(
拍手)
電電公社は、新料金体系では増収にも
減収にもならない、いわば実質的料金の引き下げになるということを強調しておるのでございますが、しさいに
検討すれば、これは、国鉄運賃、郵便料金と、相次ぐ公共料金引き上げと全く同じ意図を持った
法案であります。(
拍手)値上げ反対の世論の攻撃におそれをなして、料金調整という美名のもとにかくれて、あたかも値上げのよろいの上に値下げの衣を着て堂々まかり出た平清盛のごとき
法案であるといっても過言ではございません。(
拍手)電電公社は、年間三十数億円の
減収になることを唯一のよりどころにして、値上げではないと宣伝しておりますが、これこそ、巧妙にして知能的なからくりであります。何となれば、
昭和三十四年度の料金体系による収入と、新料金体系による単なる
制度上の収入との差額にすぎないのでございます。この比較は、電話利用状況の変化という重要な要件を全く無視して、旧料金体系における資料をそのままに用いるという大きな過誤を犯しているのであります。
電話の利用状況は、御
承知のように、増加の一途をたどっております。利用状況の増加は、電電公社の増収がさらにふえていくことを意味し、三十億の
減収ということは、事実問題として、何ら意味がないのであります。さらに、見のがすことのできないのは、電話設備拡充のため
減収にならないような調整をしておき、手動市外通話の場合、全体を一割一分値上げしてあり、自動車外通話の場合には、下がる分として二割五分よけい見て秒数を定めておるのであります。課金距離の算定でも、二十六区間を二十区間に、自動の場合は十四区間に縮小するが、距離が短くなっても
現行と同じ料金がとれるよう調整されており、割高になるような区間の調整はあえて行なわないのであります。従って、新料金体系では、利用状況の変化があろうとなかろうと、すでに値上げになる十分なる公算を含んでおるものであって、これを値下げ
法案であると言い張るのは、公社の一方的な独断にすぎないことは明瞭であります。(
拍手)
また、電話の級別段階の
改正にいたしましても、電話がふえていけば自然と基本料金が上がるような仕組みになっており、基本料金は、
現行の
最高一千円を千三百円まで引き上げ、収入の増大をはかる意図に出たことは、疑いのないところでございます。現に、東京では、基本料の千円が千百円に引き上げられるのも間近でございます。将来は千三百円を予定されているのでございます。この
法案は、ここにも料金引き上げの
性格を露呈しておるのでございます。
すでに御
承知のように、本
改正案を
国会提出にきめた四月三日朝の閣議で、小金郵政大臣から、この
法案は市外電話料金等を
合理化するもので、これが実現すればかなり値下げになるケースもあるとの
説明に気をよくした大卒官房長官は、記者会見で、池田
内閣唯一の値下げ
法案であるとして得々と語り、東京−大阪間を例にして解説を試みたところ、逆に値上がりになっているため、いずれじっくり勉強し直して皆さんに知らせますと、頭をかいて引き下がったそうでありますが、まさに、天網かいかい疎にして漏らさざる値上げ
法案の正体暴露というべきでございます。(
拍手)大衆の
生活に脅威を及ぼす公共料金の値上げに反対を表明しているわが党として、かくのごとき料金調整に籍口する値上げ
法案に賛成できないのは当然でございます。
反対
理由の第二といたしましては、電話料金は、値上げどころか、むしろ値下げを行なうべき時期に達していると考えるからでございます。
電話料金は、
昭和二十八年に約二割引き上げを行ないました。これと同時に、長期拡充計画が実行に移され、
事業内容も年々著しく好転いたしまして、現に、本年度の
予算においては、五百億円をこえる膨大な額を益金から建設勘定に繰り入れているのであります。本来ならば、このような巨額の
利益を上げておれば、従業員に公正な待遇を与え、必要な要員を充足し、料金の引き下げを行なうのが妥当であります。(
拍手)しかしながら、公社当局は、しきりに、
事業収支の益金は新規建設財源に充当する必要があると主張するのであります。かりに一歩譲りまして、ある程度の建設勘定繰り入れを是認するといたしましても、建設財源を、利用料金の取り過ぎ、もうけ過ぎに大部分をたより、それでも足らないで、別に、いわゆる拡充法によって新規
加入者に巨額の債券
引き受けまで強制するに至っては、公社は独占の上にあぐらをかいていると指摘せざるを得ません。(
拍手)弱い立場にある
加入者に過酷の犠牲をしいるものといわれても弁解の余地がないでございましょう。現在の電話の利用者が将来の電話設備拡張分まで
負担しなければならない
理由がどこにございましょうか。(
拍手)建設
資金は、本来、
資金運用部
資金のような財政
資金に依拠すべきが当然でございます。昨年の第三十四回
国会で可決された電信電話設備の拡充のための
暫定措置に関する
法律の附帯決議に明確にうたっているではございませんか。しかるにかかわらず、その方面の
資金源はほんの申しわけ的な額にとどめまして、大部分を企業利潤や
加入者債券に求めようとする安易な
経営方針は、断じて許すことができないのでございます。(
拍手)
反対
理由の第三としては、
技術革新による設備費のコスト・ダウンを料金面に還元した形跡が少しも認められないということでございます。
技術革新というものは、決して公社のみの力でできるものではございません。国全体の
技術水準の向上の結果によるものであって、これが莫大な
利益を生んでいる公社
経営の現状から、直ちに国民に還元すべき性質のものであり、利用する
加入者の料金
負担の軽減となって現われるのが、公共企業体の正しい姿でございます。電信電話のサービスというものは、スピード化するだけではなく、利用者の
負担が軽くなってこそ、初めてサービスの向上と言い得るのであります。しかるにかかわらず、公社の方針は、スピード化だけを強調し、利用者の
負担をますます増加させておりますことは、まことに遺憾でございます。(
拍手)公社は、
技術革新による設備費のコスト・ダウンを料金面に還元させることこそ、料金政策の根本としなければならないことは当然でございます。
以上申し述べました三点のほかにも、この新料金体系には、即時方式と待時方式のサービス格差の問題があり、準市内通話
制度の単位料金区域の
設定と
地方的社会
生活圏、
経済生活圏とが必ずしもマッチしないという問題もあり、東京、大阪等の大都市における料金帯域性の可否等、いろいろ問題を残しておるのでございます。これらの問題を解決しないままに今回電話料金体系を急いで
改正することは、将来禍根を残すことになるのみではなく、われわれの最も注目するところは、この案は、全国即時自動化の名のもとに、七円という単位を料金体系の
基礎としていることであります。電電公社は、将来、この七円の単位を動かすだけで、ほとんど自動的に値上がりが行なわれるという仕組みになったことを、見過ごすことはできないのでございます。ここにも将来の料金引き上げに対する深慮遠謀が含まれているのでございます。
さらに、
昭和二十八年を起点とした膨大な拡張計画は急速な発展を遂げてきているのでございますが、すべて公益性は無視されて、企業
利益中心主義が貫かれ、設備拡張に伴う満足な要員配置はされず、すべて電通労働者の犠牲によって遂行されている現状でございます。
事業の
合理化は労働条件と密接不可分なものであり、
合理化の進展と労働条件の向上は並行するものでなければなりません。
昭和二十八年に比べて十倍を上回る五百二十四億の企業利潤を生じているにかかわらず、労働者の賃金はわずかに〇・四倍しか向上していない、まことに不合理な
状態であるのみならず、これに反対して戦った労働者に対して、かつてない大量の不当処分を行なったことは、皆さん御
承知の
通りでございます。(
拍手)まさに、高い料金の電話で国民が困り、労働強化と低賃金に電通労働者が泣かされているということでございます。
日本社会党は、これ自身に多くの不合理を含む新料金体系を骨子とし、かつ、実質的に値上げであり、さらに、将来にわたって再値上げの素地をなし、国民と電通労働者を苦しめる本
法律案には絶対反対の意を表明し、私の反対討論を終わる次第であります。(
拍手)