○山中日露史君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
水資源開発促進法案及び
水資源開発公団法案について、総理大臣並びに関係閣僚に対し、以下、数点にわたって質問をいたさんとするものであります。(
拍手)
水資源開発促進法は、最近におけるわが国の産業の発展及び都市人口の増加に伴い水の需要の著しい地域に対する用水の供給を確保するとともに、特定の河川の水系における水資源の総合的な開発及び利用の合理化の促進をはかり、もって
国民経済の成長と
国民生活の向上に寄与することを目的としたものであり、また、
水資源開発公団法は、
水資源開発
基本計画に基づく水資源の開発または利用のための事業を実施することにより
国民経済の成長と
国民生活の向上を目的としたものである点において、私は、その立法の趣旨そのものについては、あえて
反対をするものではないのであります。しかしながら、かかる重要な
法案の提出の時期並びに本
法案立案の経緯においてきわめて遺憾の点のあることを指摘せざるを得ないのであります。(
拍手)
まず、第一に、
水資源開発の問題は、
昭和三十六年度
予算編成のときより
池田内閣の重要なる課題として論議されてきたのでありますが、この間、各省間の所管争いの調整に時日を要したとはいえ、かかる重要なる
法案を
会期末に至って突如として提出するがごとき
態度は、
国会軽視もはなはだしいものといわなければならないのであります。(
拍手)
政府は
会期の
延長を企図したのでありまするが、
会期の
延長については、先ほどの
会期延長の
反対討論にもありまするように、軽々にこれをなすべきではなく、十分なる
審議を尽くしつつも、
法案の重大性と緊急性にかんがみ、慎重にも慎重を期し、万やむを得ざる場合においてのみ許さるべきものであって、
政府の怠慢や内部事情により
法案の提出が
遅延し、この提出が
遅延したことを
会期延長によって補わんとするがごとき
態度は、
国会の権威の上からも、また、
国会正常化の上からも、断じて許すべからざるものと思うのでありますが、
会期まぎわに至り、かかる重要なる
法案を提出したことに対して、
政府はいかなる反省と
責任を感じておるかを、まず、総理大臣より承りたいと思うのであります。
第二に指摘せねばならない点は、本
法案提出の
遅延の
原因となった各省間の所管争いの醜い姿であります。そもそも、
水資源開発公団の
設置問題は、建設省と、通産省、農林省、厚生省の利水三省が対立をして調整がつかなかった点に紛争の
原因があったのであります。水
行政の一元化は、つとに叫ばれておった正しい方向であり、
予算編成のときの一本立てであったところの方針が、その後、利水と治水の二本立てとなり、
法案提出の期限に追われ、さらに、三転して、
池田総理の政治的裁断によって一本立てに逆戻りをしたというこの経緯は、全く官庁のなわ張り争いという官僚政治の最も醜い姿を暴露したものでありまして、諸外国にもその例を見ないところであります。このことは、まさに、
民主政治の未熟と
池田総理の指導性の欠如とを露呈したものといわなければならぬと思うのであります。しかも、その結果としてでき上がった公団
法案が、主務大臣が総理大臣、建設大臣、通産大臣、農林大臣、厚生大臣という、頭が五つで、からだが
一つ、という奇形児を生むに至り、重要な諸点はことごとく政令にゆだねられ、この政令をめぐって再び所管争いの種をまく道を残したことは、公団
運営上、まことに遺憾のきわみであります。
池田総理は、この調整をいかに考えられるか、また、かかる官僚政治の弊風をどのように考えられるか、
池田総理の明快なる答弁を求むる次第であります。(
拍手)
次に、本
法案の
内容について、詳細は
委員会の質疑に譲るといたしまして、重要な諸点についてお伺いいたしたいと思います。
私は、まず、
水資源開発促進法において、既開発地域と未開発地域のいずれに重点を置くのか、
政府の
基本的な方針を承りたいと思うのであります。あわせて、どういう水系を指定しようとしておるのか、その予定をも承りたいと思うのであります。
狭いわが国土の中におきまして、広い範囲に展開された水田が、限られた海潮
期間ではありますけれども、大量の用水を使用する上に、局地的に工業や人口の集中が著しく、急激な水需要の増大が見られ、これらの地域においては極度に水需給関係の逼迫を生じておるのであります。また、これらの水使用量の増大に伴って、都市下水、各種産業廃水の放流による公共水域の汚濁、沖積地帯の地下水の過度の揚水に伴う地盤沈下、地下水位の異常なる低下等、資源保全上重大な問題が引き起こされておるのであります。
私は、これらの問題を解決するため、まず、第一に、水の供給力の増大をはかることは当然でありますけれども、これがためには、ダムの建設、自然湖沼の調節能力の増大等により必要な水量を確保することが最も必要であると思うのでありまするが、さらに、これと並行いたしまして、限られた開発地点を最も有効に活用するためには、従来のように、開発地点ごとに特定の利水
計画を結びつけた近視眼的な方法ではなく、広域的、総合的な
計画でなければならぬと思うのであります。特に、既成工業地帯では、供給地域付近の水資源はほとんど開発し尽くされ、今後開発する地点は供給地域から遠く離れたところでありまするから、おのずから広域的、総合的なものとなる、さらに、これによって生み出された水を需要に即応して必要な地域に導水する、その水路を並行して建設しなければならぬと思うのであります。しかして、この水路は、必要な地域に、必要な時期に、必要な水を平に供給し得るものでなければなりません。それと同時に、経済的な面より考えても、特定の利用者の専用施設ではなく、多目的な幹線水路として、潜在需要を見越したものでなければならぬと思うのであります。この点に関して、
政府はどのような
基本方針を立てておるかという点をお伺いいたしたいのであります。
次に、重要な点は、開発公団の事業費負担の問題と、水価額の問題であります。
従来の開発方式は、経済的に成り立たなければならないということにこだわり過ぎて、将来の需要に対する危険をおもんばかり、事業
計画が絶対確実な範囲として、ややもすれば過小になる傾向があったのであります。しかし、今後は、技術的に可能な限り最大の規模にすることが、潜在需要を考慮する場合強く
要請されるわけでありまして、昨今の予想以上の水需要の増大にかんがみ、当然のことといわなければなりません。このように、大規模化し、広域化する
水資源開発
計画は、多額の先行投資を必要とするものであります。水の利用者が負担すべき資金は、これを一元的に調達し、また、経済基盤の強化、
国民生活の安定と向上の見地から、その供給価格はできる限り低廉、妥当なものでなければならぬと思うのであります。一般に、水利用の分野によってそれぞれ経済的に耐え得る水価格の限界があります。たとえば、
農業は、工業用水あるいは上水道用水のごとき高い価格では経営が
成立しないであろうし、工業におきましても、業種あるいは目的によってそれぞれ耐え得られる限界がありましょう。従って、水資源公団の事業実施に際しては、水価額の低廉、妥当を維持するためには、国の出資あるいは
政府の低利資金の投入が考慮されなければならぬと考えるのでありますが、本開発公団法には、河川法に基づく治水関係を除いてはその
規定がないのであります。
政府は、これらの点に関し、どのように考えておられるのか。
さらに、また、
水資源開発公団法の附則によりますると、
水資源開発公団は、本
法律公布の日より起算して六ヵ一月以内に政令で定める日より施行する、と
規定されており、少なくとも、本年度中には公団の発足を見ることとなるにかかわらず、その
予算措置は、当初
予算においてはもちろん、今回の補正
予算にも何ら計上されておらないのであります。本
予算案にも盛られず、
予算措置をも講ぜず、
法律だけを出すという
政府の真意はいかなる点にあるかを、あわせてお伺いいたしたいと思うのであります。次にお尋ねいたしたいのは、愛知用水公団との関係であります。
本公団は、全国一円を事業区域として、水系別、複数制の公団の
設置を認めないと思うのでありますが、愛知用水公団はどうするのか。愛知用水公団は、本公団
成立の上は吸収するということを再三言明しておったにかかわらず、本法には何ら触れておらないのでありますが、この点についての
政府の方針を承りたいと思うのであります。
なお、これに関連して、世界銀行よりの債務の引き継ぎは円満に行なわれる見通しがあるのかどうか、あわせて承っておきたいと思うのであります。
次に、水利用者の建設費負担の方式の問題であります。
建設費の負担は、アロケート方式によりそれぞれの需要者が負担するのでありますが、さきに申し述べましたように、今後の開発は潜在需要者を見越した大規模なものでなければならないのでありまして、この潜在需要者分の負担について、どのようにお考えになっておられるのか。また、アロケート方式によりますと、開発地点ごとに条件が異なり、ある地点では建設費が割高になり、需要者の負担増加となって、事業遂行上支障を来たすおそれがあるのであります。従って、建設費は公団の一括負担として、公団を水の卸売機関とする全国一律の料金制とした方が、開発も促進でき、また、建設資金の一元化という面からもいいのではないかと思うのでありますが、あえてアロケート方式を採用した
理由を承りたいと思うのであります。
次に、開発公団の人事の問題であります。
近年、公団の数が非常にふえて参りまして、
政府は、ややもすれば、
政府みずから行なうべき事業を、公団を乱造してこれに行なわしむる傾向なきにしもあらずであります。公団方式なるものは、理論的には、官庁が直接事業を行なう場合の非能率の欠陥を補う利点と、他面、事業の公共性にかんがみ、民間事業の利潤追求の弊害を除去する利点とをあわせ有するのでありますが、わが国の公団は、それぞれ監督官庁の厳格なる監督のもとに置かれておりまする関係上、公団の
自主性がなく、人事はほとんど天下り的であります。従って、公団は、高級官僚のうば捨て山であるとの批判さえ出ておるのであります。(
拍手)ことに、
水資源開発公団は全国一本であり、将来、その事業量も、
予算も、権限も大きく発展する可能性を持っております。また、利権とのつながりが最も多く出てくる危険性もあるのであります。本
法案には、役員の欠格条項は
規定されておりまするが、役員の採用資格には
規定がなく、自由であります。公団の人事は、最も慎重に、公正でなければならないことは、言を待たないところでありますが、
政府は、公団の人事についてはどのような構想も持って臨まんとしているのかを承りたいと思うのであります。
最後に、私は、本
法案の制定に関連いたしまして、
政府の国土開発に対する熱意と、今日までの国土総合開発
計画の具体的な立案の
状況を承りたいと思うのであります。
最近における
政府の政策、
法律案の
国会提出の
状況を見まするのに、経済の進展、社会情勢の変動が常に先行して、政策や
法律案が後手々々となっておることは、まことに遺憾でありまして、そのために、事に当たっては周章ろうばいし、応急措置によって糊塗せんとするきらいなしとしないのは、はなはだ遺憾に思うところであります。このことは、都市改造
法案、防災街区
法案、
公共用地取得に関する
法律案等において顕著に現われております。このような、
計画性のない、どろなわ式対策が、勢い、官庁のなわ張り争いの混乱を誘発する
原因となっておるのであります。このたびの
水資源開発
法案に限らず、広域都市建設の問題にいたしましても、建設省、通産省、厚生省、自治省、企画庁がそれぞれの
法案を用意して、いまだにその間の調整がつかず、
国会提出の運びになっておらないという事実は、雄弁にこれを物語っておるのであります。かかる情勢を見まするときに、私は、今日ほど、わが党が常に主張し続けてきている、国土総合開発実現のための一元的
行政官庁として国土建設省
設置の必要を痛感せしめられる時期はないと思うのであります。
政府は、この際、思い切って国土建設省
設置に踏み切るべきものであると思うのでありますが、
池田総理の決意と勇断をお伺いいたしますと同時に、強くこれを要望いたしまして、私の質問を終わることといたします。(
拍手)
〔国務大臣
池田勇人君
登壇〕