運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-14 第34回国会 衆議院 農林水産委員会水産に関する調査小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和三十五年二月十八日(木曜 日)委員会において設置することに決した。 二月十八日  本小委員委員長指名で次の通り選任された。       安倍晋太郎君    金子 岩三君       倉成  正君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    松岡嘉兵衛君       松田 鐵藏君    保岡 武久君       赤路 友藏君    角屋堅次郎君       芳賀  貢君    日野 吉夫君       中村 時雄君 同日  田口長治郎君が委員長指名で小委員長に選任  された。 ————————————————————— 昭和三十五年三月十四日(月曜日)     午前十一時六分開議  出席小委員    小委員長 田口長治郎君       金子 岩三君    倉成  正君       笹山茂太郎君    松田 鐵藏君       赤路 友藏君    芳賀  貢君  出席政府委員         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君         水産庁次長   高橋 泰彦君  小委員外出席者         農林水産委員  中馬 辰猪君         農林水産委員  丹羽 兵助君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局水質調査課         長)      森  一衛君         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  中川 豊吉君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁政課長)   近藤 武夫君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         漁業振興課長) 山中 義一君         通商産業事務官 左近友三郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口小委員長 これより水産に関する調査小委員会を開会いたします。  水産業振興に関して質疑の通告があります。これを許します。赤路友藏君。
  3. 赤路友藏

    赤路委員 水産庁の方へお尋ねいたします。三十五年度の予算概要説明書の中で国際漁業対策に必要な経費という項目があります。これを見てみますと、三月の十七日から開催されるといわれておる国連海洋法会議への委員派遣分が全然予算として計上されていないが、どういうふうになっていますか。
  4. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 国連主催海洋法典に関する条約に関しまする経費につきましては、外務省の方に計上していただいております。
  5. 赤路友藏

    赤路委員 では外務省の方へお尋ねしますが、何名分予算を組んでおるか。
  6. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 第二次海洋法会議代表団の旅費につきましては、六名分予算を要求しておりますが、そのほかに現地におりまする、つまりジュネーブにおります総領事、それからジュネーブにおりますやはり外交官補、それから、これは随員としてでありますが、海上保安庁——今のジュネーブの件は土地でありますから入っておりませんし、そのほかに運輸省から一名派遣されておりますが、これは運輸省の方の予算になっておりまして、外務省の今申し上げました六名の中には入っておりません。
  7. 赤路友藏

    赤路委員 水産関係委員は何名派遣されるのですか。
  8. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 水産関係西村水産庁長官一名でございます。
  9. 赤路友藏

    赤路委員 私が今さら申し上げるまでもないと思いますが、私どもはこの海洋法典会議を非常に重大視しておるわけです。今まで国連の方でもこの問題を非常に重大なものとして取り上げて、戦後約八カ年間にわたって特別委員会を持って検討をしてきた。それで、その結果が国連へかけられる。この前は、大陸だなに関する条約漁業及び公海生物資源保存に関する条約公海に関する条約、こうしたものが大体決定をされた。一番問題の領海に対する点が残されておる。今度の会議でこの残された点が解決つきますと、現在批准はされておりませんが、全公海法典に関する条約はおそらく批准されるだろう、こういうふうに考えざるを得ない。これからの日本漁業あり方にとりましては、私は非常に重大な会議だと思う。それだけに、水産関係のある権威のある者が行ってこの会議で十分な検討をするという配慮がなされなければならないと私は考える。もちろん、外交上の問題でありますから外務省中心になっておやりになることはけっこうである。ただ、これからの日本漁業というものは戦前のような状態の姿であってはならないし、また、戦後今日まで日本漁業というものは確かに国際漁場において伸びてきております。しかしながら、条件は非常に変わってくるわけです。それだけに、私たちは重大だと思う。何といってもこの会議で決定されることは日本漁業あり方を左右する。こういうふうに考えておるだけに、これではあまりにも外務省として事の重大さを軽視したと言ったら言い過ぎになるかもしれませんが軽く見ておられるのではないかという懸念を私は持つわけです。もちろん、新聞で報道されるところによりますと、国際法権威である横田先生おいで願うそうでありますが、私はやはり、水産関係のある、特に国際関係について研究をされておる方をせめて顧問としてでもこれにつけていくくらいの配慮があってよかったのじゃないか、こう思うわけです。こういう面ではもちろん外務省水産庁の方で予算編成の場合事前に十分御検討下さったことと思います。だから、水産庁はそういう漁業に与える影響の重大さということをもっと強く外務省主張すべきでなかったのか。私に率直に言わせるならば、むしろ水産庁予算の中で当然これが出ていなければならない。単に外務省に一切を一任するという形で、水参庁予算の中に全然出ていないということは、水産庁自体がこれの重大さを認識していないということになりはせぬかと思いますが、次長はどうお考えになりますか。
  10. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 この国際関係漁業につきましては、あとあと漁業のいろんな政策及び行政的な実行の上に非常に大きな影響を及ぼすという御指摘につきましては、赤路先生のおっしゃる通りと私ども考えております。ただ、予算編成につきまして、私ども国際関係で組んでおるのは、主として国内的な費用、たとえば北太平洋漁業条約でございましても、向こうからいろいろな方が来られる場合の国内的な費用予算ないしは国際委員会を開催する場合の国内的な打ち合わせの費用といったような、主として国内的な費用の点を計上しているわけでありまして、海外に派遣されていって向こうで必要な経費というものは、外務省十分連絡の上、外務省予算として計上していただいている、こういう形式に相なっておる次第であります。
  11. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 御指摘漁業を重視するということにつきましては、高橋次長が言われましたように、外務省におきましても全く同感であって、その感じのもとに、その判断のもとに政策を遂行させていただいておると思っております。ただ、今度の会議は、従来の会議、たとえば一九五五年のローマにおける海洋生物資源保存技術会議、あるいは一九五八年の二月十七日から行なわれました第一次の海洋法会議と若干違うところがあったわけでございます。と申しますのは、ローマにおきましてはその名前の示します通り非常に技術的な問題でございまして、それには、水産庁から藤永調査部長、それから相川その当時九州大学の教授をしておられましたこういう方においでをいただきましたわけです。それから、この前の一九五八年のジュネーブにおける第一次海洋法会議の場合におきましても、これは日ソ漁業交渉などの関係藤永さんは初めから終わりまではおられませんでしたが、途中からお見えになりましたし、相川先生は初めからずっとおられたような次第でございます。なぜかと申しますと、この第一次のときには、単に領海公海という問題ばかりでなくて、公海漁業の問題、また大陸だなに関しましても、その水域をどうするか、また、大陸だなの海底に密着している生物資源の取り扱いをどうするか、そういうような技術面が大きくございましたので、代表団構成にもそれを反映さして作ったわけでございます。ところが、今度の第二次海洋法会議は、若干趣を異にしております。と申しますのは、第一次の海洋法会議で、領海公海、それから公海における海洋生物資源保存条約、それから大陸だなの条約、こういうような四つの条約がすでにできてしまいまして、あとに残りました二つの問題、一つ領海の幅、それから、もう一つは、領海にすぐくっついたところの一種の接続水域、今度はそれがどうなりますかわかりませんが、そういったものにおける沿岸国漁業規制をどうするか、その二つの問題にしぼられまして、従って、第二次の場合におきましては、総会委員会がたった一つで、総会委員会は同時に開催されませんことは御承知通りでございますので、従って、これに出席する人数もだいぶ倹約になる。それから、ローマの場合やこの前の第一次の場合と違いまして、技術的の問題が非常に少なくなって、大体は行政問題が多くなってくる。こういうようなことで、私ども構成もだいぶ変えまして、もちろん水産庁と十分御連絡いただきました上できめたわけでありますが、水産庁からは西村長官がお見えになればいいのではないか、こういうことになりました。また、相川先生などの名前ももちろん出たわけでございますけれども相川先生は、日ソ漁業交渉の方に行って、どうしても行かれないというお話がありましたし、西村長官さえも出席をちょっと待ってくれということであったわけです。ちょっと待ってくれというのは、日ソ交渉関係もございましたわけですし、それから、会議の進展といたしましても、私もローマ会議にも出ましたし、第一次の海洋会議にも出席させていただいたわけでありまして、その間の議事の進め方については若干の経験を持っておりますが、初めのうちは各国代表施政演説みたいなのをいたしまして、技術の問題や何かになかなか入らないものですから、その間は水産庁長官としてもっと大事な仕事があるというので、しばらく待つということで、間もなくその仕事が終わりそうなので、大事なときにはもちろん水産庁長官がみずから代表団の中に入る、こういうような仕組みになっているわけでございます。
  12. 赤路友藏

    赤路委員 今までの御説明を聞くと、国内で、水産庁中心に、あるいはまた外務省がこれに参画をし、あるいはそれぞれ業界その他この道の権威者経験者、そういう人たち意見を十分聞いて討議された上でこの代表団が派遣されるものと、こういうふうに理解いたします。  そこで、先般来の新聞等を見ておりますと、アメリカ側では、今度は、領海を六海里、そうして接続水域に対しますところの漁業規制区域と申しますか、それを六海里、こういう形でかなり各国に対して働きかけをやっておる、こういうふうに聞いておる。すべて諸外国がこういうような国際会議に出る以前には今までかなりの活動を、裏面的なものになりますかどうなるかわかりませんが、他国に対しても働きかけをやっておるわけです。今までの日本の少なくとも漁業中心にした国際会議を見てみますと、そういうような気配は全然ない。これはやることがプラスになるかマイナスになるかわかりません。しかし、ほとんどそういうことがない。常に会議へ行くのはぎりぎりですね。これがかりに三月の十七日からあるとしますと、十四日と申しますときょうですが、きょう立つような話でございましたが、向こうへ行ったら一日くらいおればすぐ会議にかかるというようなことで、各国との中における意見交換も何もほとんどできないというのが実態じゃないかと思うのです。もちろん、これらのことはいろいろ予算にくくられることだと思いますけれども、そういうことが私はどうも国際会議においてはマイナスの面が出てくるような気がしてならぬわけです。わずかな経費を惜しむことによって、将来大きく後退しなければならない。少しでも日本意見というものを、日本の特殊な立場各国の者に理解せしめるという働きというものがあっていいのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。今さら言っても追っつかぬことではありますが、これは御答弁願えなければそれはけっこうです。が、一体日本としては今度はどう主張をするおつもりなのか。水産界の方の意見としては、やはり従来の通り領海は三海里であることが望ましい、しかしながら、全体としての情勢がそうでなくして、一本にまとまって六海里なら六海里という形になるならば、それはそれでいいというのが、新聞承知するところでは水産界意見のようであります。そうすると、政府の方でも今度の会議にお出かけになる場合はそういうような考え方おいでになるのかどうか、その点……。
  13. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 第一点の、事前日本のPRを十分行なうべしという御趣旨、全くその通りであろうと私は存じます。しかし、日本もそれを全然やらなかったわけじゃございませんので、ちょっと申し上げたいと思うのでございますが、たとえば、一九五五年に、これは私自身小者でございますけれども、一応私が行けということになりましたときに、私はローマにすでにおりましたわけで、イタリアやフランス、それからイギリス、スペイン、スイスというようなところを回りまして、それぞれの権威者に会って日本海洋生物資源保存に関する考え方につきまして、いただきました資料などに基づいて相当意見交換をいたしたわけでございまして、手前みそでございますが、割合に同じ立場をとるもの同士の関係が緊密になるために幾らか役立った、こういうようなことを考えております。第一次のときは、私も、そのときは、日本からでなく、向うに任命されておりまして、バチカンにおりましたのですが、私はやはりローマのときに会いました代表たちに手紙を出したりいろいろいたしまして、そういう連中との緊密な連絡をとることをいたしましたわけでございます。御承知のように、ローマにおきましても、ジュネーブの第一次会議におきましても、この会議は、沿岸国、いわば小国、後進国というものと、遠洋漁業をやったり大きな海運を持ったりしておるところとの対立でございましたが、比較的先進国グループといたしましてはかなり緊密な関係ができた、こう思っております。今度の場合、なるほど御指摘通りでございます。大体十一日ころに立ちましたわけで、余すところ二、三日というときに着くわけでございますか、アメリカなどがその首席代表を方々回しておるということに比べましては非常に径庭があるようでございます。ただ、それにいたしましても、私ともの方でも、至るところ、関係諸国に電報などを打ちまして、それぞれの大使館あるいは公使館を通じて先方との協議をさせ、その報告をとったようなわけでございます。しかし、今後御指摘のような方法でもっと会議というものは十分の準備を尽くして臨むということは、私どもの切に希望するところでございます。  それから、今度の海洋法会議日本政府としてはどういう態度で臨むかという問題でございます。この点につきましては、藤山外務大臣から千田先生の御質問に対してお答えがあったようでございます。私どもといたしましては、三海里の線をなるべく守るように懸命の努力をいたすべきでありますし、いたすつもりでございます。ただ、しかし、世界の一般的な情勢といたしましては、第一次会議経験から申しましても、また、第一次会議の始まるその前から戦後今日に至る情勢を見ましても、いろいろの国々におきまして三海里以上と主張するものがずいぶんある。この前の会議経験から申しますると、大体領海六海里というところくらいはおりなければならぬじゃないか。なぜかと申しますれば、この国際会議一つの案を成立せしめるためには三分の二の多数を要するわけでございます。おそらく、今度の会議出席いたしますのは、この前八十六でございましたが、その後若干の国々国際連合加盟国として新しく加盟しておりますので、八十六以上、八十九くらいになるのじゃないか。この数字は調べておりませんのでよくわかりませんが。従って、その三分の二と申しますと、五十五とか六、こういう数字になるわけでございます。ひょっとすると六十近いものになるわけでございます。そこで、問題は、大いに三海里を主張して、それを固執して会議の決裂をも賭するのがいいかどうか。それよりも、やはりこのままほうっておきますれば海洋法が無秩序になってしまうおそれがある。その原因は現在の国際法を守らないで勝手な広範な領海主張するものがあるのだから、違法から法律が生れるというのがけしからぬというそういう正しい議論もございますけれども、いずれにいたしましても、実際面ではこの状態を放置いたしておきますと海洋法そのものが無秩序になるおそれが非常にあるわけでございます。そこで、やはり、私どもといたしましては、三海里の線をなるべく守るのでありまするけれども、なるべく三海里に近い線で諸国の権利、利益、そういったものの調和の上にもし三分の二をとることのできるような可能性のある案が出ました場合には、その案に賛成して海洋法の安定をはかった方が将来の日本海運水産、海の活動一般に対してより以上の利益もたらすことになるのではないか、こういうような考えに基づきまして対処するつもりでございます。
  14. 赤路友藏

    赤路委員 非常にやりにくかったことは、当初日本国連加盟前に小委員会をもって検討したその小委員会出席できなかったという点が一つの大きなマイナスだと思う。今お話しのように、あとでいろいろと御努力を願っておるが、ただ、私は、この問題で他国に追随するという形であってはならないのじゃないかと思う。今三海里という御主張がありましたが、水産庁の方ではどう考えておるか。今外務省の方から御答弁になったように、三海里という主張はあくまでもやる、そして、事態が四海里になるか六海里になるかわかりませんが、三分の二でまとまればと言われる。アメリカはほとんど五十何カ国歩いたというようなことを報道されておりますが、おそらく六海里説になるだろう。どちらにいたしましても、国際的に見た場合、今まで長い間かかって結論を得なかったこの問題が結論づけられるということは非常に喜ばしいことだと思う。ただ、私が特に水産庁に言いたいことは、水産庁自体で、一体領海というものはどの程度にきめることが一番将来の日本漁業立場から見ていいのだというはっきりしたものをお持ちになっておるのかどうかということです。私が今追随してはならないと言うのは、国際的にももちろんそうだが、日本行政当局としても、単に業界意見だけにのみ追随するという形でやったのでは、一貫された水産行政というものは成り立たないと私は思うのです。私が非常に心配するのはその点でありまして、これからの日本漁業は今までとは様相が変わってくるということを考えなければいけないと思う。たとえば、一例をとって申しますと、今度の新安保条約の調印によって、ソ連の方は択捉、国後に漁業のコンビナートを設け、向こう漁業基地を持つという。向こう漁業基地を持つということになりますと、これは南へおりてくるということを想定しなければなりません。同時に、一昨年ですか、すでにソ連の船はサンマ漁業に出ておるという。あるいは本年支那海の方に調査船を出しておるという。日本近海漁場日本のもので今まであったような錯覚の上に立って、将来もそうあるという感覚でやったのでは、非常に大きな問題が出てくるのではないかと思う。こういうことをどういうふうに理解されているかわかりません。しかし、今までとは違う。船にいたしましても、また、それ自体の装備にしても、すべてが非常に大きく進歩してきておる。そういう観点の上に立ってやはり領海に対する考え方をきめていかなければならぬ。これが一点です。もう一つは、われわれ、新安保条約というものはあくまでも阻止しなければならぬ、こういうように考えております。しかしながら、この新安保条約との関連においてでもこの問題は考えられてくる。日本施政権の及ぶ領域というもの、これが問題になるのです。一体、将来の日本漁業あり方の上に立ってきぜんとした領海、かくなければならないのだという一本筋の通ったものを水産庁はお持ちになっておるのですか。
  15. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 お答えいたします。  まず第一点の御指摘でございますが、世界漁業が非常に変化してきているし、また非常な進歩をしてきているのだから、従来のような考え方をそのまま踏襲できるかどうか問題ではないかという御趣旨は、全く同感でございます。若干説明をさしていただきますと、最近におきます国際的ないろいろな漁業の変化を拝見いたしますと、日本それ自体は進歩しておりますが、後進国がそれぞれ漁業に相当な熱意をお持ちになりまして、後進国漁業が非常に発展の態勢にあるし、魚の需要もその意味では若干ふえてきているということは避け得ない一つ情勢だというふうに判断しているわけであります。従いまして、今後におきましては、この世界共通水産資源に対しまして、いろいろな意味で国と国との交渉が事実問題として出て参ることは必然の傾向だと思います。その点に触れて申し上げますと、何らかの格好で国と国との間における考え方の根本が一致いたしませんと、紛争が起きまして困ってくる事態が予見されるわけでございます。従いまして、ただいま外務省の方から御答弁がありましたように、私どもとしても何らかの格好国際間の海の資源の取り方についての一致した見解が望ましい、このように考えておるわけでございます。御承知のように、従来は、実際問題として、主として二国間あるいは三国間の協定という格好日本周辺漁業資源の問題に対処して参ったわけですが、やはり、今後のことを考えますと、いろいろ困難な問題がありましょうとも、何らかの格好世界共通漁業秩序の維持についての結論を何とかして得たいというふうに考えるわけでございます。従いまして、ただいま外務省から御発表がありましたように、それぞれの国に若干の意見の差がありますけれども赤路先生のおっしゃったように、将来のことを見通しますると、必ずしも、日本周辺日本近海周辺においても国際的な漁業の問題なしとは断定できないような情勢でございますので、その意味におきましても、単に領海の近傍の漁業のことだけではなくて、全般の問題としての何か国際的に合意に達するような方向に進みたい。現在の時点においては若干不利な点があろうとも、将来のことを見通しますと何らかの形で国際的な一つの規律を設けた方が結局は日本漁業の将来の発展のためにベターであろうというふうに感じておりますので、その点につきましては赤路先生意見と全く同意見でございます。  なお、第二点の問題につきましては、かなり高度な政治的な問題に関連するわけでございまするが、いずれにしても、今度の条約領海の幅がどうなるかということにつきましては、単に問題は漁業の問題だけではありませんので、この点は、各省寄り集まりまして、十分に、漁業だけではなしに広い意味での研究をし、善処いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  16. 赤路友藏

    赤路委員 この問題については、もう目の前へ会議がきております。これからもあることですが、政府が常に一貫されたしっかりしたものを持って、むしろ全般的に他をリードし指導していくというような態度一つ対処してもらいたい、こう思います。  次に、ちょっとお尋ねしますが、五月十七日から海上における人命安全に関する条約国際会議があると聞いております。その通りですか。
  17. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 御指摘のような会議が持たれるということを承知しております。ことに国内法関係では船舶安全法がこの問題になるわけでございまして、従来はあまり漁業は問題に出なかったように拝聴しておりまするが、漁業の問題も若干あるかもわかりませんので、その趣旨で、私ども運輸省十分連絡して、目下具体的に研究を進めておるような段階でございます。
  18. 赤路友藏

    赤路委員 今次長の御答弁によると、漁業の問題も若干あるかもしれないということなのですが、海上における人命の安全に関する条約になれば、むしろ一般の外航船舶の大きなものよりも漁業関係の方がより問題点があるんじゃないか、こういうふうに私は考えております。これも国際会議でありますから、前と同じように水産庁予算の中には全然ない、おそらく外務省にあるんではないかと思いますが、外務省の方では、どの程度の予算が計上され、そうして派遣する代表のメンバーは一体どういうふうにお考えになっておるのか、この点お聞かせ願いたい。
  19. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 詳細私承知しておりませんので、調べましてお答えしたいと思いますが、会議のアジェンダ——議題によりまして、それぞれの専門の各省あるいは場合によっては民間もそういうところに入ることもございますが、それで十分議題をこなせるようなふうにいたしているわけで、今度もそれでやっておるはずでございますが、私数字など持っておりませんものですから……。
  20. 赤路友藏

    赤路委員 お持ちになっていないとすればこれ以上申し上げません。ただ、海上における人命の安全に関する条約ということで、かなり範囲が広いわけです。しかし、陸上と違いますから、海上における人命のということになると、普通一般の船舶と漁船が主体になる、こういうふうに思う。特に、今までの海上における事故等から見てみますと、漁船関係が非常に大きいと思う。それだけに漁業界と申しますか水産界のこれに対する関心というものはかなり高いとお考え願っていいと思う。で、議題も詳細にこまかい点はわかっておるかわかっていないかわかりません。しかしながら、私はそういうような理解をいたしております。それだけに、やはり代表を選ぶときは十分それらの点を御配慮願って代表を選んでいただきたいと思うわけです。もちろん、海上といったって、全世界なんでしょうから、いろいろと国際的な関係等も出て参りましょうし、それから、今も中国あたりとは非常に問題になっておりますが、やはり緊急避難の問題等も当然出てくることと思います。それだけに人選については十分慎重なる御配慮をお願い申し上げておきます。これ以上は申し上げません。別段この問題については答弁は要求いたしません。私の方の希望だけを申し上げておきます。水産庁としては考えなきゃいけない。水産庁の方はどうも国際会議等については弱腰だね。もっと外務省へどんどん要求するところは要求して、主張すべきところは主張せねばいかないと思う。その点特に次長に対しては注文をつけておきます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 関連して……。  先ほど、赤路委員からの質問に対して、国際海洋会議における日本側の主張として、領海の問題については従来通り三海里を主張するというお話でありましたが、説明を聞いても非常に確信のないような説明なのですが、国際会議出席する場合、あくまでも自国の利益を主張するということが第一の要点だと思います。従って、その三海里領海説については、その根拠として、なぜ日本としては三海里をあくまでも主張しなければならぬか、その点をもう少し明確に願いたいと思う。
  22. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 従来三海里を主張しておりました理由は、この三海里というものが歴史的に十八世紀の半ばごろからだんだんに形成されて参りました海洋法の根本原則であって、それが適用についてさほどの支障を来たしていないのであるから、これを継続維持するのがよろしいというのが第一点でございます。それから、日本といたしまして、たとえば漁業のことを考えますと、公海漁業というものはなるべく自由の方がよろしい。ことに日本は動物プロティーンなど八〇%以上も水産物からとっておるというような特殊な国柄でございますので、海洋自由はなるべく広くそのままに認めるのがよろしい、それは領海が狭い方がいいんだ、こういうのが第二点の問題でございます。  しかしながら、御質問の外に出るかもしれませんけれども、戦後その点が乱れて参りまして、安定を欠いて参りましたものですから、そういう主張はあるけれども、安定を得るために、そして国際的な統一的な規則を確立するために努力するがよろしい、その方が長い目で見て日本のためになる、こういうことで、言葉をかえて言えば、国際協力の精神の面から、三海里が通ればもちろんけっこうでございますけれども、必ずしも、通りそうもない三海里にいつまでも固執するという、そういう態度ではないわけであります。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、一応は三海里を主張するが、会議情勢を見て、これはなかなかむずかしいということになれば、そういう場合には、たとえばアメリカ主張に同調するということですか。
  24. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 アメリカとは限りませんけれども、現在私どもの知らされておる案の中では、アメリカとカナダ、二つの案がございますが、アメリカ案の方が現状を変える程度が少ないのでございまして、その意味で、カナダとアメリカとどっちがいいかといえば、アメリカの方がよろしい、こういう考えでございます。要は、いろいろタクチックスもございますと思いますけれども、なるべく海洋使用を広くしておく、もちろん、自由が広いと申しましても、合理的な生物資源保存につきましては協力していくというようなことをやりながら海洋の自由を広く認めようというのでありますけれども、これは、戦後の経験によりまして、また具体的にはこの前の一九五八年の会議のときの経験によりまして、三分の二をとることはかなりむずかしいのでございますので、あくまでもそれに固執するというのでは、第二の考慮である国際法秩序安定及び確立した統一法規の樹立という、そちらの方の目的から必ずしもよくないことであると思いまして、その間の調整を考えながらやっていく、こういうことでございます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 それにあわせて、第二の点は、今度の会議では、いわゆる領海に接続した漁業の、たとえば専管区域という名前でこれをいかようにきめるかという問題も議題になると思うのです。これに対しては日本立場としてはどういうふうな主張で臨むということをきめておるのですか。
  26. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 この点につきましても、考え方は今申しましたのと同じでございまして、なるべく公海使用自由の一つの形態である、日本にとっては最も大きな形態である海洋漁業自由を確保しようというのが根本目的でございますが、同時に、国際法の安定、国際法秩序の安定をも考慮するということでございますので、その二つの要請のちょうど合ったところ、具体的に申しますれば、三分の二を取りやすいところ。それには作図の問題もございますから、ただ黙っていて三分の二とれそうだというのではなくて、第一の目的である公海漁業自由の範囲はなるべく広く維持しようという努力をいたしました上で、なおかつ日本のそういう水域を認めないといったような主張がうまく成功する見込みのない場合、そういうような場合には、それに最も近い、妥当で成立の見込みの一番公算の大きいそういうものに同調していかなければならない事態も生ずるかと思っております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 非常に幅のあるような態度ですが、どっちかというとこれは非常に自主性に乏しい点もあると思います。ここで考えなければならぬ点は、今までは、歴史的に見ると、日本漁業というものは、国際的に見ても技術水準も非常に高かったし、特に、政策的には、自国の沿岸ということよりも遠洋の漁業あるいは他国の沿岸の漁業資源の豊富なところまでもこちらから進出して、そうして漁業を行なうという、そういうことをずっとやってきたのですが、しかし、最近における世界的な漁業に対する考え方というものは、やはり、それぞれの国が、資源の調査の方法にしても、あるいは自国の沿岸における漁業資源の収獲の問題等についても、かつてと違ったような態度を示しているということは否定できないと思うのです。ですから、あくまでも積極的な漁業政策をとるためには領海の幅が狭い方がいい、あるいは領海に接続する専管区域等がない方が日本としても有利だという旧来からの主張というものは一応わかるとしても、しかし、世界的な情勢の変化というものはどうなっておるかということを十分見きわめてかからなければいけないと思うのです。逆の場合もあると思うのです。それでは、日本は三海里の領海説を主張してその通りになるということになれば、今度は外国が、三海里の外は全部公海だということで、日本の沿岸に来てそこで自由な操業をやるということも排除することは絶対にできないと思います。ですから、そういうような事情の変化というものが今日日本主張としての三海里説あるいは専管区域に対しては賛成できないという態度とうまくマッチできるものかどうかという点に対する判断はどのように持っておるのですか。これは外務省並びに水産庁の見解も聞かしてもらいたいと思うのです。
  28. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 先生のおっしゃること、私が今まで申し上げたことと、どうも全く同じように思われるのでございます。つまり、私が申し上げようと思いましたのは、全部の点ではございませんけれども、やはり世界じゅうから集まって参ります八十数カ国、九十カ国に近い会議で、その三分の二をとり得る案というものは、そのときの国際情勢をかなり忠実に反映した上での妥協の産物であるというような判断をいたしておりますので、日本の従来の主張通りません場合は、その三分の二をとれる成案をなるべく日本主張に近いものにすることを努力する。ですから、若干幅があるのですけれども、場合によってはかなり離れたものができる、——具体的に申しますれば、漁業専管水域というものが六海里のそのまた先の六海里、十二海里のところにできるというようなところまでおりるかもわからぬということでございます。そこで、御説明申し上げましたのが、その専管水域の六海里の中での沿岸国の権利、それからよそから入って参ります外国の漁業者の権利、その国の権利、そういうようなものの調和がどうなるか、そういうようなところに、いろいろな交渉と申しますか、話し合いというか、そういったようなものがあって、何か具体的に案が出て、それが討議せられて、とうとうしまいにショーダウンというようなところまで参るわけであります。だから、一々の段階でどういうふうになるかということは、私若干経験があると申しましてもそう詳しくはわかりませんので、ただ、根本的な態度として日本の従来の主張の堅持に努めながらも、世界の大勢を十分見きわめていく、そうして国際法秩序の安定のために寄与いたしていく、こういう二つのアイデアがわれわれの今度の会議に臨む根本的な考え方である、こう申し上げたわけでございます。
  29. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 先ほど赤路先生からの御質問にお答えをいたしましたような観点から言いましても、将来の日本漁業のためには、ただいま外務省の方からお答えになりましたような方向がよかろうというふうに私ども考えております。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 一つの事例ですが、たとえば北洋漁業に例をとっても、日ソ漁業条約の場合においては、これはソ連は現在においては領海十二海里を主張しておるわけです。日本の場合には、これは漁業条約の場合にも三海里の立場をとっておるわけですね。そうすると、日本ソ連の十二海里を認めてこちらの三海里を向こうに認めさせておるということになっておると思いますが、その点はどうなんですか。
  31. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 日ソ間の漁業協定の前文に書いてありますように、領海の問題にはあの協定は直接触れることを避けております。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 避けておるというが、事実はどうなんですか。たとえばオホーツク海における公海のサケ・マスの漁業は両当事国の約束によって禁止しておるわけですね。ですから、公海における鮭鱒の漁業を禁止するということは、これは当然領海以外が公海なのですから、そういう場合のオホーツク海における公海の範囲は、これは当然ソ連の側の沿岸においては距岸十二海里ということになると思うのです。日本の場合はこれは三海里になると思うのです。そういう解釈が成り立つと思うのですが、どうなんですか。
  33. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 これは、むろん、漁業の協定をいたす場合に、領海が何海里であるかということが実際問題として非常に影響を持つだろうということにつきましては、御指摘通りでございます。しかしながら、両国間における漁業の協定は、大体の場合は公海におきまする漁業協定ということになっておるわけでございまして、従来の日米加の漁業協定にいたしましても、日ソ間の漁業協定にいたしましても、領海公海、特に領海の幅にかかわりなくサケの漁業はこのようにしよう、こういう趣旨の協定でありますので、御指摘のような問題はないというふうに考えております。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 ないことはないでしょう。これは去年からオホーツク海の公海においてはサケ・マスの漁業を行なわないということになっておるわけですからね。その場合の公海なんですよ。オホーツク海という海域における公海ということになれば、これは当然領海を除いた海域が公海でしょう。そうなれば、ソ連側は十二海里だということを主張しておるが、十二海里の以内においては自由にサケ・マスの漁業ができるわけです。日本の場合には、これは三海里を主張しておるからして、三海里以内においてはサケ・マスの漁獲ができるが、そこから出てはいけない。もちろん公海ですから、領海公海と厳密に区分がついているじゃありませんか。だから、その場合には、日ソ漁業条約の中における両国の了解というのは、日本側は三海里、ソ連は十二海里ということをお互いに容認しておるということになると思いますが、そうじゃないですか。
  35. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 御指摘のオホーツクの問題は、サケ・マスについての日本船団の数量が制限されたという約束だけでありまして、事例を申し上げますと、たとえばタラなどにつきましては、私どもはオホーツクに行けないということはないのでございます。従いまして、オホーツク海においてサケ・マスについて出漁することを制限されたからといって、その海域がすぐ公海になるというふうには私どもは解していないのでございます。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 次長答弁は少しおかしいと思うのです。私は具体的なことを聞いているのです。これは、日ソ漁業条約の中において、昨年からは両国の取りきめにおいて、オホーツク海の公海においては両国ともにサケ・マスの漁業はしないということの取りきめが行なわれておるわけなのです。だから、海域全体じゃないのです。これは、公海において漁業をやらないということになれば、領海内でサケ・マスの漁業を行なっても差しつかえないということになるわけですね。その場合の領海ということになれば、日本側は三海里、ソ連側は十二海里ということで、これはやはり両国が認め合った領海ではないかということを指摘して質問しているわけなのです。
  37. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 今の問題に直接関係があるかどうか疑問でございますが、日本といたしましては、現行国際法では三海里が原則であるとして、ソ連の十二海里を認めておりません。しかしながら、今度のような会議がありまして、世界各国が自分自身これが国際法であるというものを画一的に統一的に認めることが君ましいということにつきましては、日本も同調しておるわけでございます。ですから、今度何海里にきまりますかわかりませんが、そういう際には——今の問題はあるかどうか私実はよく知らないのですが、御指摘のような問題はそういうことによって消えていく、そういう考えでおります。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 こういう二国間の条約に基づく漁業のような場合は、今の水産庁のようなあいまいな答弁ではいけないと思うのです。たとえば、北洋の安全操業の場合においても、日本の漁船がソ連の沿岸に接近して十二海里の中へ入れば、向こうは違反船として拿捕するわけなのです。そういうことに現実がなっておるわけです。そのことは事実上やはりソ連の十二海里説というものはこちらは認めておるわけなのです。それを、オホーツク海におけるサケ・マスの漁業についても、領海というものははっきりしておらぬということは、全く政府の当事者としては当を得ない答弁だと思うのです。こういう点については、今度の海洋会議等において、日本だけが三海里ということを主張して守ろうとしても、ほかの国がどんどん十二海里とか大海里とか主張し、あるいは南米諸国等においては二十海里を主張しておる国もあるわけですね。ですから、単に領海の幅を狭めるということが日本漁業発展上有利であるということだけではこれは解決できない問題であると思うので、それで私は日ソの漁業条約等の関係も事例をあげて申し上げたわけです。  最後に、もう一つ。たとえば、李ライン問題にしても、一つは韓国側における漁業資源を確保するためにいわゆる平和ラインを設けてあるというような主張も彼らは行なっておるわけです。これはわれわれとしては絶対容認することのできない点であります。ですから、こういう問題についても、今度の海洋会議等において、領海の幅あるいは漁業の専管水域等の問題が具体的に取り上げられて、そうして、国際的な一つの方向としてかくあるべきである、このようにして国際的な秩序の維持をはからなければならぬということが国際の世論として進められていく、その方向に日本も協力していくということになれば、これはやはり李ライン問題あるいは北洋における安全操業の問題等についても国際世論を背景にいたしましてこれを解決する、その中に日本の権益の擁護というものが期せられるというふうな、そういう確固たる信念的な態度会議に臨んでもらわぬと、日本側の主張というものは通らない。結局ひより見で大きい方に従っていけばいいというようなことに終わるのじゃないかということをわれわれは非常に懸念しておるのです。この点に対する見解を明らかにしてもらいたい。
  39. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 私ども考え方は、今先生のおっしゃったのと全く同じでございまして、ただ大きいものに従うということではないので、多数の世論的なもの、そういうものを尊重しながらやるということでございます。ですから、三分の二が全くとれないのはわかり切っているというようなことは、数字といたしましてはそれは廊下あたりトンビしておりますとだんだんわかることでして、会議前の準備等によりましてもかなりわかることでございます。ですから、タクティックその他の関係で、日本はかなり漁業国といたしましては特殊事情がございますので、その特殊事情を認めさせるというような意味合いにおきましても、すぐに三分の二だからいいのだというところまではいかれないと思いますが、そのあたりまでは日本の特殊事情を十分のませて、世界にこういう国もあるのだ、そういう国の利益も尊重しなければならないのだという印象を十分与えた上で、向こうも歩み寄って参りましょうし、こちらも歩み寄って、目的としては安定した統一した国際秩序、国際規則を作る、こういうことを目的として進むわけでございます。  李承晩ラインの問題につきましては、国際法一般のことをやろうという今度の会議のタームズ・オブ・レファランスといいますか、権限に直接関係はないと思いますけれども、しかし、これが国際法上もそれから国際協調の面からいきましても不当なものであるということにつきましては、直接間接いろいろな形で表明し、世界の認識を深めたい、このように考えております。
  40. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 ただいまの芳賀先生の御所見は、全く同感であります。
  41. 赤路友藏

    赤路委員 もうこれで外務省関係はやめますが、今の芳賀君の質問の要点はこういうことなんです。北洋の問題が出たのは一つの例であって、現実に日本は三海里を主張しておる、ソ連は現実に十二海里を主張しておる、そして、領海内における漁業ですから、事実そこに九海里という差がある。そういう現実の姿、そうしたものを十分考慮の中に入れて検討しつつ、日本の確固不動のぱんとした線を持っておやりなさい、こういうことだと思うのです。今御説明があったように、これはやはり国際協調が必要ですから、国際的にはあくまでも一本化したものでぱっと納まるのが一番いい。そういうふうに努力はしてもらいたい。しかし、少なくとも基本的に持っておるものがぐらつくようでは困る。そういうような事態もあるわけですから、そういうことを考慮の中に入れて十分一つ善処してもらいたい、こういうことです。これで外務省関係のことは終わります。  次に、水質の汚濁防止の調査のことでお尋ねいたします。  今度の予算書を見てみますと、三十五年度二百三十五万円の水質保全のための調査研究費が組まれているんですが、これは、先般成立いたしました二つの法律に準じて、水域の指定とか、あるいは水質の基準の設定というようなことがなされるのでありますが、各省と共同でやるということはもちろんありましょうが、水産庁が独自で調査研究をする、こういう意味をも含まれたものと思うのですが、これはどういうことでありますか。
  42. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 お答いたします。  この水産庁関係予算について御説明いたしますと、水質汚濁の水産生物に対する影響調査研究というのがございますが、これは対象が七水域でございまして、金額は二百六十四万円ということに相なっております。これは独自の調査かどうかというお尋ねでございますが、これはやはり企画庁の方で予定されている水域と合わせまして水産庁独自の水産生物に対する影響調査をする、こういう格好になっております。
  43. 赤路友藏

    赤路委員 そこで、ちょっとお尋ねしますが、きのうの午後九時のNHKのニュースで水質汚濁による被害のことで水産庁の方が資料を出して放送をやっておったようですが、これをわかっている程度に御説明願いたい。
  44. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 実は、勉強不足で、昨日どういう放送をしたか聞かなかったわけでございますし、また、その際水産庁の資料を使ったかどうかもまだ確認していない点はおわび申し上げまして、私どもの持っておりまする水質汚濁関係の実態に関しまする数字の御要求でございますので、説明さしていただきます。  まず、漁業被害の事例数でございます。これは一進一退の状況でございまするが、三十二年度におきまして八百十件、三十三年度は七百四十九件でございます。それから、被害金額の問題でございますが、これはまだ確認した金額では必ずしもないわけでございますが、一応報告を取りまとめた金額という程度でお聞き取り願いたいと思います。約五十二億ほどの被害金額が報告されておるようなわけでございます。あとはさらにまた御質問によって詳しくお答えいたします。
  45. 赤路友藏

    赤路委員 大体昨晩の放送と同じで、合っておりますが、報告による魚類の被害の総数量が約二万トン、紛争事件が三百四十四件、解決済みのものが百三十件、未解決のものが二百十四件、これの被害のおもなる加害者側といいますか、これは、パルプ工場、澱粉工場、化学工場等の廃液によるものだ、こういうような報告なんです。  そこで、私は最近いささか疑念を持つようになったのですが、この前成立いたしました水質保全に関する法律と工場排水の規制の法律、これが現行法として現在あるわけです。すると、法律が成立いたしまする前に比較いたしてみて、一体法律を作ったことがプラスになったのかマイナスになったのか判断に苦しむような事態があるわけです。申し上げたいことは、これは率直に申し上げますが、水質を保全するということのために水質基準を決定する、これはいうことはやすいが、現実の問題としては非常にむずかしい。企画庁の方でもこれはいろいろ御苦労願っておるのでありますが、おそらく、この水質基準がそれぞれの指定河川の水域によって決定するまではなお相当の時日を要すると解釈していいと思うのですが、その間紛争がやはり起こるわけです。現に、今次長から報告のあった通りであって、三十三年度においても七百四十九件という事態があるわけです。しかも紛争継続中のものが相当あるということ。この紛争というものは、現行法に基づいていきますと、県の段階で仲裁制度を設けて、そこでこれを処理していく、こういうようなことになって、各県ともに仲介員候補者というものを作っておるわけです。ところが、最近起こってくる現象を見てみると、私が当初この法律が制定されたときに心配しておったものがそのまま如実に出てくるように感じる。それはどういうことかというと、それぞれの県の段階における力関係で一方的に解決がつけられていくというケースが出てきておるように思う。そうなっていきますと、答えは当初から出ておる、それをもっともらしい理屈をつけておるということにしかすぎない、こういうふうにも考えられる。力の強いものが勝つということなんですね。これは、被害者の面からも、あるいは加害者の面からも言えましょう。たとえば、漁業被害の場合、漁業団体というものが非常に強い力でこれに対決していく。力がよりまさっていくということになりますと、大きく被害者側の方へ傾いてしまう。加害者側の方が非常に大きな力と政治力と圧力をもってやっていくということになりますと、加害者側の方へ傾いてしまう。どちらにいたしましても、それはその段階で片がつけられるということであって、これをもう一度正しく公平に審判するといいますか、審理するという機構が何らない。先ほど言いますように、水質の基準というものが相当な時日をかけなければできない。その間数多くの紛争事件が出てくるが、それに対する対策というものがこの一点だけしかないということでは救えないのじゃないか。法律そのものが非常に大きな欠陥を露呈しておるということになろうかと思う。その最も露骨に出ているのは、最近の新居浜の住友化学と玉津漁協との紛争事件です。私の手元へ陳情書が来ておりますが、この陳情書を見ると、この中に調査報告がある。東京大学の新崎先生、水産大学の殖田先生、広島大学の松平先生、この三人の先生方が調査員として調査された調査報告、おそらくこれは抜粋だと思うので十分ではないと思います。しかし、どうも、私がこの陳情書の内容を見、従来の情報をいろいろ聞く範囲内では、納得のできない点がある。このことについては、水産庁にしても企画庁にしても、法律に基づいて仲介制度ができて県にまかしている、そうすると、あとは、その間中間報告を受けるか、あるいは最終的な決定があったときに報告を受けるということに現在の段階はとどまっている、こう私は解釈するわけです。それでは私はほんとうの適正なあれはできないと思う。特に、問題は、私は調停というものは採決すべきでないと思う。調停委員会が紛争をあっせんしあれするのに、最終的に採決してきめてしまうという、こんなあっせんの仕方は私はないと思う。あくまでもそれはお互いに納得せしめていくという形における調停のあり方でなければならぬ。もし採決でもってものをきめるというならば、それはそれ相当に今度はそれを上部へ持ってきて上部でやる措置というものがなければ、採決なんてものは私はあり得べきでないと思う。ところが、これは一方的なあれですからわかりませんが、この住友化学と玉津との場合は最終的には採決をやっているようです。そういうことできめるから、現地の被害者側の方では納得ができない、こういう形になって、紛争が依然として続いていくということになるわけです。私は、この点について企画庁、通産省、水産庁、各関係の方で今まで報告を受けている点、わかっている点、概略でけっこうですから、ちょっと御説明を願いたいのです。
  46. 森一衛

    ○森説明員 御説明申し上げます。  水質の紛争につきまして、公共用水域の水質の保全に関する法律の第四章に和解の仲介制度がございます。この制度によりますと、御承知のように、仲介員が都道府県知事により任命されまして、紛争につきまして当事者の一方から、あるいは両方からでもけっこうでありますが、知事に申立があった場合に、その仲介員が紛争の和解につきまして処理をする、こういう制度になってございます。この法律が制定されまして、昨年の四月一日から動き出したわけでございますが、この法律の趣旨が各当事者にまだ徹底を欠いているのではないかと思うのでございますけれども、先ほど来お話のございましたように、水質紛争はその後相当多数発生しているというふうに伺っておるわけでございますけれども、この制度によって紛争事件を処理している県はまだございません。私たち、この法律を実施する者といたしまして、この制度が十分徹底しておらない、まだこの制度が利用されておらないということは、非常に遺憾に思っておるところでございまして、やはり、こういう問題は、第三者的な立場に立ちまして公平に判断をしかつ技術的に十分究明いたしまして、その上で結論を出して、両当事者に納得のいくように紛争が解決されることをこの制度はねらいとしておるわけでございますから、ただいま赤路先生の申されましたように、できる限りこの制度を利用して、そして紛争解決の効果をあげていかれることを念願としておるわけでございます。  以上、大体の経過と、それから趣旨を御説明いたしました。
  47. 赤路友藏

    赤路委員 これは少し専門的になりますが、きょうは水産庁研究関係は来ていませんね。これは、いろいろ見てみて、今度の場合ノリなんですね。住友の廃液によってノリがやられたのだということが一つの焦点になっている。そうして、この三人の学者の方々がそれを調査された、こういうことなんです。ただ、私が一点不審に思うのは、暖冬による損害と申しますか、腐食と申しますか、そういうことがこの言葉の中にある。ノリの場合に暖冬異変によって損害なり腐食が起こるとしますと、私の今までの経験からいきますと、あるいは今までのこうした問題が起こった経緯から見まして、私は学者でないし専門家でないからわかりませんが、暖冬異変で沖から腐ってくるということはノリの場合はあり得ないと思う。暖冬異変の起こる物理的な現象というものから考えた場合、暖冬異変の場合は必ず接岸された岸からくるのがほんとうだと思う。沖から腐りがくるということは暖冬異変の場合にはありません。私は暖冬でやられました東京湾のものも見てみました。ところが、これにはそういう点が書かれている。どうも私はこの点に納得がいきがたい。それから、これは詳細なものでないとわかりませんが、その当時における水温、それから風の方向、そういうような肝心な点が落ちているのですね。これはこんな陳情書ですからわかりませんが、私は、これは、今御答弁になった程度で、それ以上のものはあなたたちも握っていないと思います。そこで、まずこの点で資料を要求いたしたい。特に私は住友化学のこの問題をのみ取り上げてやあやあ言うのではない。先ほども次長からの報告にあったように、三十三年度に七百四十九件という廃液による被害事件が出てきておる。現実に出てきておる。これは住友化学の問題は一つのケースなんですね。一つのケースとして、事例として私はここに出すのだが、こういうことがあちらでもこちらでも行なわれるようではならぬと私は思う。やはりこれに対しては慎重でなければいけない。被害者の立場の上に立っても、加害者の立場の上に立っても、納得のいくようなものでなければならぬと思います。その一つのものとして私はこの際要求したいのですが、この三人の調査なされた学者の方々の調査報告の写しを資料としてお願いしたい。これが一点。それから、この陳情書に書かれておるような、こんなものでは調査したとは言えません。だから、これには何かあるのに相違ない。昨年の四月三十日から五月の一日まで二日間かかってやっておられるのだから、何かもう少しはっきりしたものがあると思うので、この調査書。それから、事態が起こったときに、県の水産試験場は必ずその事態の起こった当初において調査をしておると思います。これは調査していないとするなれば試験場としては大へんな手落ちだと思う。だから、愛媛県の水産試験場の調査報告の写しを一つお願いしたい。それから、もう一つは、この調停委員会は、今御答弁があったように法律二十一条によってできたものじゃないから——そうでしょう。
  48. 森一衛

    ○森説明員 それは、できたものではございません。それは、私ちょっと伺ったわけでございますが、法律が昨年の四月一日から実施になったわけでございますけれども、その事件はその前から発生したわけでございまして、そのときすでにそういう調停委員会ができておるから、この委員会でやらしてもらいたいという話がございましたので、当初でもございましたし、それはけっこうだからということで、一応はお話を伺っておりましたが、この法律の規定に基づく委員会ではございません。
  49. 赤路友藏

    赤路委員 それで、法律に基づいたものでない。それだけに、これは議事録があるかないかわからない。そこで、もしこの委員会の議事録がありましたら、議事録の写しをお願いしたい。もう一つは、住友化学のこの工場は新設工場だと聞いているわけです。そこで、その住友化学の問題を起こした工場の作業の内容と経過、これをお願いしたい。もう一つ資料を要求しておきますが、先ほど高橋さんから御説明のありました三十三年度のこの七百四十九件、これをことこまかにずっと書くということも大へんだろうが、少なくとも廃液を出した企業別、それから地域別あるいは水域別でもけっこうです。地域別にどういうような分布の状態になっておるか、それぞれの報告されておる五十二億の地域別あるいは事件別による分布、できるだけ詳細であることが望ましいのですが、これを一つ御提示願いたい。以上資料を要求しておきます。  この問題の最後の点で一点だけお答えを願いたい。それは、現行法でよろしいと考えておるかどうか。私が今申しますように、現在の現行法というものは百パーセント完全なものではない。これは皆さんもお認めになるだろう。しかしながら、今すでにそれぞれ法律に基づいて作業をおやりになっておる。少なくともこうした紛争を解決していくのに、これを単に県段階だけにまかしておくということが妥当であるかどうか、それでよろしいとお考えになっておるかどうか、もう一つ何か考えなければならぬとお考えになっておるか、それだけ御答弁願いたい。
  50. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 この法律を制定されるときにはいろいろと指摘された問題点があったわけでございますが、ただいまのところ、私どもとしては、忠実にこの法律に従いまして最大限の効果を現わすように努力しておるような次第でございます。しかしながら、実態は、御指摘通り、必ずしも非常に能率的に解決しておるような状況ではございません。特に、ただいまの御意見のように、こういったような問題に対する考え方はどうかということでございますので、その点についての若干の所見を述べさせていただきたいと思います。  第一の点は、水質汚濁の問題でございますが、これは、ただいまの赤路先生指摘した事例でもうかがえるように、被害が起きましてからかなりの時間がたってから問題が起こるというケースがかなり全国的に多いように思われます。従いまして、その段階で初めて試験場その他が調査をいたしましても、なかなか時間的におくれるというような事態であることは御指摘通りでございます。このためには、やはり、水質の問題が起こる前に、一体県におきまする水質が平常な場合にどうなっているかということを通常把握いたしませんと、いざ事件が起こりましても、その事件が平常の場合とどこがどう違っておったのか、御指摘のように、水温の問題なのか薬品の問題なのかという点をはっきりと指摘するためにも、ふだんからその海域におきまする水質全般の問題にはっきりしたデータを持ちませんと、その場限りのことになりまして、具体的に両当事者間を納得させるような答えがなかなか出てこないというのが実態でございます。従いまして、法文の上でも書いてありますように、単なる水質基準だけでは問題の解決ができませんので、第二章の和解の仲介という制度を作りました趣旨もそこにあるわけでございます。従いまして、私どもとしてはその線に沿うて解決するわけでございます。  先生から御指摘を受けましたもう一つの点は、その和解の仲介の制度にいたしましても、県段階だけにまかせないで中央に持ってくるようなシステムを考えたらどうかというような御趣旨の御発言があったわけでございますが、以上のような、科学的に両当事者間を納得させることがなかなかむずかしいというような現在の状況におきましては、和解の仲介に入る場合に、直ちに中央の機関がこれに入り込みましても、なかなか実態的には両当事者間を納得させることがむずかしいのではないかということを私ども非常に懸念するわけでございます。従いまして、私どもとしては、この種の問題は地方的に和解されることが望ましいというふうに考えております。  なお、この制度につきましては、まだ始まったばかりでございまして、十分の効果も見ていない段階でございますので、今後とも地方的な和解の仲介の制度を進めますとともに、もしこれ以上進めましてもなかなか具体的な解決ができないということになった段階でもう一度再検討しても決しておそくはないのでありまして、今直ちにこのような問題を中央で取り上げる方が能率的に仲介できるとは必ずしも考えておらない状況でございますが、なお、現地に即した先生の御意見でございますので、私どもの方で先生の御意見の点につきましてももう一度検討いたしてみたいというふうに考えております。
  51. 田口長治郎

    ○田口小委員長 企画庁からも御答弁願います。
  52. 森一衛

    ○森説明員 お答えいたします。  和解の仲介につきまして、中央にもそういう制度を設けたらどうかというお話であったかと存じますが、この問題につきましては、この法律を御審議いただくときにもすでに問題点を指摘されまして何回か御質問があったのでございますが、私どももこの点につきましては相当検討いたしまして、もし中央でこの紛争の問題を取り上げるとすれば、地方である程度結論の出たものを審査いたしまして、そして裁定をするというような形のものではないかと思ったわけでございますが、この水質紛争の性質からいたしまして、非常に問題の現われ方が複雑でございますから、単純なところは問題はないと思いますけれども、複雑なところにおきましてはなかなか結論が出ないのではないかという懸念をしたわけでございます。それから、もう一つは、この問題は、やはり双方納得のいくところで問題を解決しなければならないであろうが、裁定制度をとった場合におきましては、先ほど赤路先生から御指摘がありましたように、委員会がある結論を出して、それを押しつけるというような形では困るというお話もあったわけでございまして、またそういう懸念も出て参ることも予想されるわけでございます。従いまして、府県段階における紛争解決の制度によってしばらくこれらの紛争を処理いたしまして、そうして経験を重ねてからまたもう一ぺん検討しよう、こういうことで御了解いただいたと思うわけでございますが、現段階におきましては、そういう考え方を私たちとしては変えておらないわけでございまして、経験を積むに従って再検討したい、こういうふうに考えております。
  53. 赤路友藏

    赤路委員 今の高橋さんの答弁も企画庁の方からの答弁も非常に大事をとった御答弁であります。私の言ったことを逆手をとられたような形ですが、法律が施行されてから、いまだ、これが徹底しないために、法律に基づいた仲介というのは全然行なわれていない。やはり今までの慣行によってなされている。この点は、趣旨の徹底といいますか、PRが官庁の方で足らないと思う。これはもっとPRしなければならない。と同時に、今までの慣習から、法律の精神というものがわからないだけに、力関係で押し合いをするのが多いのです。そうすると、力のあるものがぐっと押してものを解決づけていくという形で、これが地方でそのまま泣き寝入りになるというような形であってはならないと私は思うのです。やはりそれに対して配慮しなければいけない。そこで、再審制度を中央で持つべきではないか。再審制度を持てば、今あなたが御答弁になったように、最終的には、これは前の仲介の段階ではないから、やはり裁決しなければならぬので、それに不服があればこれはやむを得ないから裁判をするというよりほかに道はないでしょう。この道は開かれておるのですから。しかし、少なくともその水質の基準というものの決定というものが相当長くなるし、それから今の紛争というものは絶えず行なわれている段階ですから、やはりその程度のものを持ってやらないと、地方においては、そういう力関係があると同時に、全体としての視野が非常に狭いのです。その区域のその問題だけなんです。全体としての全国的なバランスとかなんとかというようなものを大きな目で大所からつかんでということは地方ではむずかしい。そこにやはり再審制度というものの必要性があるのじゃないか。高橋さんが言うように、いろいろ問題の起こる地点における平常の調査というものがなされなければならぬ、これはもちろんそうでしょう。特に水産関係においてはそれが非常に必要だと思う。ところが、それはここで高橋さんがそうおっしゃっても、それだけの機構があるかといえば、ないのです。予算があるかといえば、ないのです。そうすると、結局何にもできませんということになる。ここではそうおっしゃっても、現実では何もできないということになりがちだと思うのです。この予算を見てごらんなさい。水産改良普及事業の予算でもどうです。農業関係の特技普及員は五百三十八人の増、それから生活改良普及員は百三十一人の増、しかるに、水産庁では、沿岸漁業改良普及員は四十八人。けたが違うのです。これで沿岸漁業振興水産改良普及事業とは、およそ口幅ったい言い方だと私は思う。もっと真剣にならなければならぬ。私たちが前々からこれを議員立法ではあるが出しておるのは水産改良助長法。われわれの計算からいって、必要な各地域町村に配置しても平年度八億そこそこで事は済むのです。こういうように全国的に改良普及員があれば、それを中心にしてそれぞれの条件というものがわかってくるはずです。そういうような予算措置をしようとしない。ただ、委員会に出てきて、こうでございます、ああでございますと言うだけでは、事は解決つきません。私はこういう面ではもっと真剣に取っ組んでもらいたい。そうしますと、それぞれの地域のローカルな問題点というものはきちきち握れていく。今は、握れと言っても、こういうような予算の組み方では握れません。これは農業と大へんな相違です。私は、農業と漁業との差というものは認めますが、あまりにもこれはひどい、もっとこういう点については真剣に取っ組んでもらいたい、こういうふうに考えます。  以上、いろいろなことを申し上げましたが、この問題は関係各省では一つ検討を願いたい。と同時に、今起こりつつある紛争事件については、少なくともどういう事態になっておるかということを調査する程度の熱意がないといかぬですよ。全然ほうりっぱなしで、県の方で勝手におやりなさいというような態度では、これは前進しないと思う。やはり皆さんの熱意でこれを前進させていってもらう。そして、その工場側の方も、被害を受ける漁民側の方も、お互いにやはり、法律ができてほんとうによかったという、これに協力する心がまえと申しますか、あるいはそういうようななにをやらしていくような指導を十分やっていただかぬといかぬ。これに対しては、こう言っては失礼だが、法律ができたんだからというのでその上にあぐらをかいておるわけじゃないでしょうが、何かそういうような感じを私は受けるから、もっと熱意を持ってこの問題とお取り組み願いたい。答弁は要求いたしませんが、これだけ希望をいたしておきます。
  54. 田口長治郎

    ○田口小委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十七分散会