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小西参考人 小西でございます。ただいまから、
農業法人の農地取得に関しまして、
農地法の問題につきましてただいままでに農林省がいろいろ御
見解を発表いたしておりますが、この現行の
農地法と対比いたしまして私は多少疑念がございますので、その点について申し上げたいと思います。
〔
委員長退席、
吉川(久)
委員長代理着席〕
実は、私は昨日の筑紫で東京へ参ったわけでございますが、車中で青森のリンゴを作る方と同席をいたしたわけであります。その方に、私は、三浦一雄先生という方を知っておるかということを聞きましたのです。そうすると、そのリンゴ作りのお
百姓さんは、私は三浦さんを知らないと言うのです。そこで、私は、直ちに第二の質問をいたしました。三橋美智也という人を知っておるかと言うと、それは日本一の歌手であるから、私はよく知っておる、こう言うわけでございます。これは、単に
農民が三橋美智也の名前を知っておって農林大臣三浦さんの名前を知らないというだけの問題ではございません。一国の農林大臣の名前を知らずして流行歌手を知っておる。ここに私は重大な問題があると思うのです。なぜそのリンゴを作っておるお
百姓さんが三橋美知也の名前を知っておるかということを私はこちらへ来ましてから聞いたところが、三橋美智也という方はリンゴの気持がよくわかったから知っておる。どうぞ、農林大臣も、
徳島県の果樹
農家の
ミカンの気持、それから
鳥取県の二十世紀の気持、それから山梨県の甲州ブドウの気持、酪農の気持、鶏の気持、こういう気持を農政に反映していただければ、私はそういうことはないと思うのでございます。
これから本論に入るわけでございますが、私どもの今まで承知いたしております農林省の
農地法に対する
見解につきましては、三十二年でございますか、岡山県の農地事務局の管理部長名によりまして、
徳島県農務部長に、この
農業法人の問題につきます通達が一本出ております。それに基きまして、
徳島県の農務部長が、
勝浦町
農業委員会に対しまして、やはり同様の通達を出しております。それから、近くは二月五日であったと思いますが、自民党の
農業法人小
委員会に、農林省から、
農業法人の農地取得に対する
農地局管理部の
意見というものを提出されております。従いまして、この三つ、二つの通達と
一つの
見解をもとにいたしまして、これから申し上げたいと思うわけでございます。
まず、農林省の基本的なこの
農業法へに対する
考え方でございますが、
農地法の目的は自作農主義であるから、その建前をとっておりますから、
農地法の目的、趣旨全体の規定から律しまして、この
農業法人というものは
農地法の趣旨に反するのでないか、こういうことを言われておるわけでございますが、本問題を論ずるに当りまして、まず根本的な問題でございますが、これは、農地改革というものがどういう目的をもって、どういう経過で行われたかということを深く考察してみなければならぬと思うわけでございます。御承知のように、農地改革というものは、農村の民主化と、それから第二点は
農業生産力の増進、この二つを遂行される
ために実施されたわけでございまして、その
ために自作農創設特別措置法とか農地調整法とかいうようなものが施行されておるというふうに承知いたしておるわけでございます。そういうことでございますならば、農林省の
考え方に問題がある。
農地法の目的は自作農主義であるからということを言っておりますが、私は
農地法の目的は自作農主義でないということを断言いたしたいのでございます。どういうことを目的にいたしておるかと申しますと、この
農地法の第一条に、
農業生産力の発展を期することが
農地法の目的であるということをはっきりうたっております。そうすれば、この
農業生産力の発展を期するということが目的でございまして、自作農主義というものは手段であると思うのでございます。この手段と目的とを混同いたしまして
農地法を運用し解釈しておるというところに、農林省が今日
農業法人に対する
態度が混迷をいたしておる。これが重大な
一つの問題であろうかと思うのでございます。この点は農林水産
委員会の先生方におきましては十分御検討を願わなければならぬと思うわけでございます。
そこで、農地改革でおおむね二百五十万
町歩の小作地を
解放いたしまして、農村の民主化、つまり、地主制度を改廃いたしまして、高額物納の小作料、地主の支配から耕作
農民が
解放されたわけでございます。こういう点につきましては、一応農村の民主化は達成されたのではないか、こういうように考える。そうすれば、
あと一つの目的でありますところの
農業生産力を増進させるということが今後の農地行政の課題でなければならぬというふうに考える。ところが、
現状はどうであるかということを申し上げますと、
香川県におきましては、四万五千
町歩の耕地面積に対しまして、九万三千戸の
農家、平均大体五反二畝と承知いたしておりますが、こういう零細
経営の者がひしめいておるわけであります。この零細
経営を打開し克服していくということが農地行政の最大の目標でなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。そこで、この
農業法人というものは、
農業生産力の増進を遂行する手段といたしまして、今
鳥取の
大久保君が言われましたように、現在の段階では適当なものではなかろうかというふうに私どもは承知をいたしておるわけでございます。
そこで、問題は、よく自作農主義ということを農林省が言われますけれども、自作農主義というものは一体それでは何ぞやということが問題になるわけであります。
農地法では、自作農とは所有権に基いて耕作する
個人をいうと第二条に書いております。これは自作農という法律用語の定義を第二条に書いてあるわけでございます。従って、
農地法上におきまして権利を取得する場合に自作農という言葉が使われておる場合におきましては、これは
個人であろう、こういうふうに考えるわけでございます。次に、第二条におきまして
個人であるという定義がございますが、第二条の五項におきまして、その世帯員
個人の有する農地上の権利というものはその事業を行う者の所有する権利とみなすという規定がございます。そういうことになるならば、実際問題といたしまして、自作農というものは
個人でなくして
一つの生産の共同体である
農家全体、
経営主を含めた世帯員全体をさしておると思うのであります。そうすれば、現在全国的に発生を見ておりますところの
農業法人、一
農家一
法人というものはこの自作農主義のワク内にあるというふうに私どもは解釈をいたして間違いないのではなかろうかというふうに思っているわけでございます。
次は、農地改革の際に現存する
法人に対しまする農地所有であるとか、農地取得であるとか、こういうふうなものをどういうふうに認めて参ったか、処理して参ったかということについて若干申し上げますと、自作農創設特別措置法におきましては、御承知のように、耕作者の農地取得を急速にやろう、こういう目的をもってやったものでございますから、
法人の農地所有に対しましてはいかなる場合に認めて参ったかという点を申しますと、その
法人が農地を分割して耕作することによって生産が減退される、こういう場合、それから、
農業法人の営む耕作の業務というものが適正な場合、それは、その所有と、その取得した場合におきます取得も認めて参ってきておるというように、承知をいたしております。このことは二十七年に制定されました
農地法におきましてもそのまま踏襲されて参っておるわけであります。
そこで、
農地法がなぜ既設
法人の農地取得を認めて、新設の
農業法人というものを認めないか、ここに私は問題があると思うのでございます。
農地法上にいう耕作者というものは、これは法律上の定義は第二条に示してございませんけれども、京都地裁の判例その他から推測いたしまするに、耕作の事業を行う者という「者」は、農耕の行為を継続的に実施する者をいうのだ、こういうふうにあれの解釈はいたしております。従って、この中には
法人、
個人を含めておる、こういうことになっておるのでございます。そうするならば、既設
法人の農地の所有であるとか農地取得というものにつきましては、耕作者の農地取得を促進するという
農地法第一条の目的からいたしまして、これは背馳しない、こういうふうに私どもは解釈をいたしておるわけでございます。従いまして、既設
法人が農地を所有いたしまして
経営を拡大しようというような場合におきましては、三
町歩を限度といたしまして、
農地法第三条二項三号の制限面積の
範囲内におきまして
許可しておるというように承知をいたしておるわけであります。このことは、現行の
農地法というものが必ずしも
法人の農地所有であるとか農地取得というものを否認していないことの証拠に相なるかというふうに思うのでございます。
次は、問題の
農地法の第三条に移るわけでございます。
農地法の第三条は、御承知のように、農地の譲渡であるとか賃貸の場合等の制限規定でございまして、その第一項におきまして、いかなる場合が統制の対象になるか、また、これを
許可する場合、何と何とについては県知事、賃借権とか使用貸借につきましては
農業委員会、こういうふうに行政庁の権限の分野を定めておりますし、さらに、
許可を要しない場合、譲渡する場合とか、貸付する場合とか、こういう場合
許可を要しないというのを八つ定めております。第二項におきましては
許可ができない場合を、これも八つ規定しておるわけでございます。どういう規定をしておるかと申しますと、このことは、移動統制の目的といたしますることを明確にいたしまして、
許可の基準を明らかにして、行政庁の権力の乱用を制限いたしまして、その運用を適正にしよう、こういうものであろうと思うのでございます。
そこで、第二項につきまして逐次御説明を申し上げます。お
手元に配付申し上げておりまする
農地法を御参考にしていただきたいと思います。まず、三項の一号でございますが、これは小作地の場合でございまして、小作地は小作農及びその世帯員以外が取得することはできないという規定でございます。この場合は小作農ということに法律上なっておりまして、小作農というものは、
農地法の第二条におきまして、所有権以外の権原に基いて耕作する
個人をいうということになっておりまするから、これは明らかに
個人を意味いたしておると思うのでございます。それから、第二号は、農地を取得しようとする者が耕作の業務を行わないと認められる場合でございまして、この場合は「者」でございまするから、これは
法人、
個人の区別はないというふうに解釈することが適当ではなかろうかというふうに思うわけでございます。次は第三号でございますが、これは、農地取得の場合、別表で定める面積、全国平均は三
町歩、わが
香川県におきましては一町八反、これをこえての取得は許されないという規定でございます。この場合にも「権利を取得しようとする者」というように、「者」ということが書いてございますので、これは
法人、
個人の区別はない、こういうふうに解釈いたすことが適当であろうと思っております。四号につきましては時間の
関係上省略させていただきまして、次に五号に移ります。五号は、農地を取得する場合、取得の際に最低の面積が全国平均で三反歩あることを必要とするというのでございます。従いまして、新設の
法人におきましては、面積がゼロでございますから、
許可できないということになるわけで、
農民が
農業経営を目的といたしまして
法人を設立する、こういう場合にはこの第五号に該当するわけでございます。しかし、
農地法の第三条二項にはただし書きがございまして、「政令で定める相当なる事由があるときは、この限りでない」ということになっておるわけでございます。これは不
許可の例外規定でございまして、この例外理由というものが、「政令で定める相当なる事由」ということになっておるわけでございます。それでは、政令でどういうふうに定めてあるかと申しますと、施行令の第一条の二項に定めてあるわけでございますが、大体三つございまして、まず第一は、これが問題でございますが、耕作の事業に供する農地の面積の合計が、その権利を取得した結果、法第三条第二項第五号に規定する面積をこえること、つまり全国平均で三反歩をこえること、かつ、その権利を取得しようとする者が
農業に精進する見込みがあると認められる、そういう場合でございます。従って、この施行令第一条二項一号という場合の相当の事由というものは、二つの点が構成されておるというふうに判断されるのでございます。すなわち、三反歩をこえる面積があるということと、
農業に精進する見込みかある、こういう場合を事由といたしておるわけでございます。施行令の第一条二項の二号、三号につきましては、現在の
農業法人と
関係がございませんので、省略させていただきたいと思います。
そこで、施行令第一条二項一号にいう「権利を取得しようとする者」というのが、私は問題になるかと思うのでございますが、農林省の
見解によりますと、この
農地法の第三条二項の各号に該当しない場合であっても
農地法の目的とか全体の規定の趣旨に反する場合には
許可すべきでないとか、また、同条の二項の例外規定でありますところの施行令第一条の第二項一号の規定も、
農地法の目的及び全体の規定の趣旨に沿って解釈、運用すべきである、こういう
見解、従って、
法人が農地を取得することを
許可することは相当でない、こういうふうに言っております。違反であるというふうに言っておるとは私は承知いたしておらないのでございます。二月五日に自民党の
農業法人小
委員会に出した農林省管理部の
意見では、
許可することは相当でないとあって、法律上違反であるということは必ずしも言っていない。ここに問題があろうかと思うのであります。農林省の解釈は、おそらく法律の目的解釈の立場に立ってこういうことを言われておると解釈いたします。これは釈迦に説法でございますが、法律には目的解釈とか論
理解釈とかいろいろあるように聞いておるわけでございますか、たとい目的解釈をとるにいたしましても、前段申し上げましたように、
農地法の一条というものは、
農業生産力の増進をはかるということが目的でございまして、自作農主義が目的でないという点から言うならば、
農業法人というものは、「権利を取得しようとする者」の中にも入るし、それから、
農業に精進する見込みもある、こういうふうに判断をいたすわけでございます。
それから、この
農地法第三条に関連いたしまして、
農業法人の農地取得は許されておるということで、規則第二条におきましては、当事者が申請を出す場合に、
法人の場合におきましてはかくかくのものを記載して出せ、たとえばこれは、名称であるとか、主たる事務所の所在地であるとか、業務内容であるとか、代表者の名称とか、こういうような記載事項を規則第二条では定めておるわけでございます。そうすれば、この
法人の場合の申請書を、今まで農林省が言われるように、
農地法が
法人の農地取得を認めないというようなお考えであるならば、この規則にありますところの
法人の申請の記載事項というものは、何の
ために作られておるかということについて、私は非常に疑問があると思うのでございます。
そこで、この
農業法人に農地取得を許されたということについての最終的な
問題点は、施行令の第一条第二項の一号でございますところの、
農業に精進する
法人の場合に、
農業に精進する見込みがあるかいなかという問題に移ると思うのでございますが、この
農業に精進をする見込みがあるかいなかというものの判定は、これは行政庁の自由裁量であるけれども、
農地法の趣旨目的からして
許可すべきでないと農林省は言っておりますけれども、
徳島県の農務部長が出した通達によりますと、
法人は
農業に精進する見込みがないと断定的なことを言っております。これは一方的な断定でございまして、私は非常に問題があると思うのでございます。何ゆえならば、
法人が
農業に精進するかいなかというものの判断は、これは
法人なるがゆえに
農業に精進する見込みがあるとか、あるいは
個人なるがゆえにないとか、こういうようなことでなくして、これは、
経営の形態、
実態に基きまして、たとえば稼働力があるかないか、資本はどうであるか、機械、農機具は備わっておるか、
農業経営をなし得る装備があるかないか、こういうような全体をもって、しかも客観的に判断をしなければならぬのじゃないかと思うのでございまして、こういう場合には、
法人であろうと
個人であろうと、ケース・バイ・ケースで判断すべきではなかろうか、こういうふうに思うのでございまして、この
農業法人は
農業に精進する見込みがあるかないかということは、これは農林省といたしましては私は
一つの認定基準がなければならぬと思います。
徳島の農務部長が言っている
法人は
農業に精進する見込みがないという一方的な断定の仕方は、ちょうど、西部劇に出てくる保安官が、私の言うのは法律だ、こういうものに近いのではなかろうか、こういうような解釈をする行政庁に法律の運用をまかすということは最も危険で、気違いに刃物を持たすと同じようなものではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
次に、岡山農地事務局は、
農地法は
法人の農地取得を認めないというようなことを言われておりますが、この
農地法の中の「者」に
法人が含まれておるとか含まれていないとかいうことの問題は別にいたしまして、はっきりと
法人の固有名称を書いてある条文がございます。これは、施行令の第一条第一項二号に
法人があるということは先ほども申しました
通りでございますが、法三十六条二項に、これは国が農地を買収いたしまして売り渡す場合の
相手方でございますが、地方公共団体とか
農業協同組合という名前をちゃんと三十六条に書いてございます。それから、六十四条でございますが、これは買収いたしました未墾地の売り渡しでございますが、この買い受けの申込書の場合に
農協とか土地改良区とかいうことをこの条文でうたってございます。そうするならば、岡山農地事務局の管理部長さんの出したこの通達には
法人の農地取得は認めていないということを断定的に言っておりますが、そういうことはあり得ないというふうに私は思うわけでございます。次に、
農地法なり、施行令に関しまして、
農業経営の拡大と発展を阻止しておる、これは先ほど
大久保さんが言われましたけれども、この点につきまして若干申し述べたいと思うわけでございます。この施行令の一条二項一号におきまして農地取得を
法人に認めるという解釈が成立をいたしましても、そういう拡大解釈をとったといたしましても、これは三
町歩が限度でございます。わが
香川県におきましては、一町八反歩以上は
経営を拡張してはならぬぞ、こういうことになっております。その場合にも例外規定がございまして、
個人の場合におきましては、これは自家労力によってやる場合は差しつかえない。そうすると、雇用労力はいけないということになる。
法人の場合におきましては、これは
法人の場合とはっきりうたってございますが、
法人の場合につきましては試験研究や
農業指導の場合には許される、こういうふうに例外規定が作られておるわけでございます。この三
町歩ということを定めた理由は、これは、農地改革のときに、いわゆる四つんばい
農業をやっておって、草取りでも何でも手でやるのだ、こういう
農業をやっておったときの面積でございまして、その後十三年を経過いたしまして、トラクターが入り、機械が入った現在におきまして、この第三条の二項三号の三
町歩こえてはならぬということは、
百姓は大きくなったらならぬぞということでございまして、
徳川時代の政策で、
百姓は生かさず殺さず、こういう政策をとったのでございますが、これとちょうどよく似たようなものでなかろうかと思うわけであります。
香川県におきましては、
農家では表札を二つ、おもやと納屋とに掛けてございます。どうして表札を納屋とおもやにかけるかと申しますと、一町八反歩以上
農家は作れないというこの第三条二項三号の規定があるからであります。そこで、表札を二つにいたしまして、世帯を二つに分けておる。偽装をする。こういうことをいたしまして、
農家は
経営を拡張をいたそうという欲望があるわけでございますので、この第三条の二項三号というものは、
農民の
農業経営の拡大と発展を阻止する条文ではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
それから、前段申し上げましたように、第三条二項三号のいわゆる上限の面積をこえる場合に、
法人の場合には試験研究、農事
指導を許される、こういうふうに書いてございますが、実は、私の町におきましては部落共有の農地がございます。そこを試験田にいたしまして、
農業委員とかあるいは改良普及員とかにいろいろ聞きまして、これは、新技術、肥料の
やり方とか品種というものをにわかに本田に取り入れますことは困難でございますので、試験研究で、
一つ法人格を部落が持って作ろう、こういうことで県庁へ行ったのでございますが、三
町歩の上限をこえる場合の試験研究は許されるけれども、下限の三反歩以上の場合は許されない、こういうことだというのでございます。おかしいじゃないかということで、私農林省にも聞きましたところが、これは施行令を作るときに、どさくさにやったときにミスがあったので、これはこらえてくれ、こういうことでございました。この点も私は承服いたしがたい点でなかろうかというふうに思うわけであります。
それから、ここに出してありますところの岡山の農地局の管理部長の通達によりますと、
法人が農地を所有すると、
農地法の十五条で買収するかもしれぬぞ、こういうことを言っております。私は、法律の適用というものは公平にやらなければならぬと思うわけでございます。それから、二月五日に自民党の
農業法人小
委員会に
農地局管理部として出した
見解の中にも、中国、四国の
農業法人が
農地法に違反しておれば是正措置をとるということを言っております。岡山農地局は、違反だと言い、買収するぞということを言っております。ここで、私は、前段申し上げましたように、法律の運用というものは不公平であってはならないと思うのでございます。どういう点が不公平かと申しますと、全国に電力
会社は九つございますが、この電力
会社が電力を送電、配電する場合に、われわれ
百姓のたんぼのところへ安い補償料で何百万という電柱、鉄塔を立てております。
農地法の第四条、五条におきましては、農地を農地以外の用に供する場合には、知事に申請書を出して、知事の
許可を得なければならぬということをうたってあります。ところが、この
許可を得て立てておる電柱は一本もないのでございます。それを十何年間もほうっておいたという農林省の
態度は、私は重大な責任があると思うのでございます。今日転用問題が相当くずれて参りました。これは、
農地法にそういう原状回復の規定があるとかないとかいう問題もあることながら、
農地法の厳正施行をやっておらないというところに問題があるように私は承知をいたしておるわけでございます。
いろいろ申し上げたいのでございますが、だいぶん時間が経過をいたしておりますので、最後に五分間だけ申し述べたいと思うわけでございます。
私は来るときの汽車の中で毎日新聞を読んだのでございますが、この新聞によりますと、
徳島県
勝浦町の
農業委員会が
法人の賃貸借権設定につきまして
許可した、こういう内容でございます。それに対しまして農林省は
徳島県当局に命じて再議命令を出すとかあるいは取り消し命令を出す、こういうことがこれに書いてあります。農林省のほんとうの御方針はどこにあるのか私は知りませんけれども、これは天下の大新聞である毎日新聞に書いてあるのでございますから、大体そのような御方針であろうかと思うのでございます。この
徳島県
勝浦町の
農業委員会か議決した
ミカン畑の賃貸
許可、これは、前段申し上げましたように、
法人は
農業に精進する見込みがあるということで
許可した、こういうことになっておるわけであります。農林省がこれに対しまして再議を命ずるとかあるいは取り消しの命令をするということでございますが、これは、ちょうど、——昔中国に三蔵法師というものがございました。この三蔵は二人おられました。孫悟空というやつがいろいろ悪いことをしたり、言うことを聞かぬと、頭に輪を入れておいて、その輪をきりきりっと締め上げるという方法を講じたそうでありますが、これと同様なことを農林省が
勝浦町
農業委員会にやろう、こういう魂胆であろうと私は思うのでございます。ところが、元来、法律でもって行政庁に
許可権限を与えているということは、
農地法の目的とするところの政策を実現する
ために、その権利を
徳島県
農業委員会に与え、府県知事に与えておる、こういうことではなかろうかと私は思うのでございます。従いまして、
許可が自由裁量の場合でございましても、これは権利の乱用は許されないと私は思うのでございます。このことが当然の措置だろうと思うのでございますが、
農地法におきまする場合は、行政庁の権限というものは自由裁量ではございません、法規裁量でございます。従いまして、これは、知事といえども、いろいろ農地の譲渡の場合に申請が出てさましたら、お前はおらの選挙運動をしてきたから
許可してやる、お前は
相手方の選挙運動をやってきたから
許可せぬ、こういうようなものでないので、法律を適正に合理的に解釈をいたしまして、
許可をすべきものは
許可、不
許可にすべきものは不
許可、こういう行政処分か妥当ではないだろうかと私は思うのでございます。そういう意味におきまして、この
勝浦町の
農業委員会の行政処分は適法であるというふうに私どもは確信をいたしておるわけでございます。かりに
勝浦町の
農業委員会の決定した行政処分に若干の、瑕疵があっても、これは取り消しができない、こういうふうに私は思うわけでございます。この行政庁の
許可処分というものは、学校の先生が卒業式に生徒に卒業免状を間違うて渡したということで取り返すような性質のものではないと私は思うものであります。行政庁がその権限に基きまして
許可を与えれば、これは
法人と
個人との賃借権の設定でありますが、両当事者を拘束するという法律
状態が形成される、こういうふうに私は思うわけでございます。従って、この
許可処分というものに若干の瑕疵がございましても、その処分いたしました行政庁、つまりこの場合は
勝浦町
農業委員会でございますが、この
農業委員会はその行政処分に拘束される、
農業委員会自体が拘束される、こういうふうになるものと、私は最高裁の判例等から判断いたしまして思っておるものでございます。従いまして、農林省がいかに言われようとも、これはおそらく
勝浦町の
農業委員会としては取り消しもできなければ再議に応ずることもできないだろう、こういうふうに思う。もし、先生方が身を置きかえまして
勝浦町の
農業委員会としてこういうことをきめた、法律によってきめた、こういうことを言いまして、アメリカがどこかの国の人から、これはお前取り消しをせよと言われたときに、どういう考えをお持ちになるか。おそらく皆さん方は
農業委員を総辞職するでしょう。そういう事態が
勝浦町にも起ってくるというふうに私は思うわけでございますので、農林省が再議を命ずるとか取り消しを命ずるという場合におきましては、慎重に行動されるように、先生方にはよく監督をしていただきたいというふうに思う次第でございます。もしそれでも農林省か強行する、こういうような場合でありますなら、われわれの方で、その前に農林省当局に
一つぜひともやっていただきたいことがございます。これは、私は
徳島県に行きまして実際に知事の
許可書を見たわけではございません。しかしながら、
徳島県の
農業行政に
関係する人から聞いた話でございます。それはどういうことかと申しますと、
徳島県の学校で実習地がどうしても必要だ、——学校には今
経営農地が全然ございません。そうすれば、これは新設の
農業法人と同じでございます。この実習地を
勝浦で
許可いたしておるのでございます。これは
農地法の第何条によったのですかと言うと、
農地法の施行令の第一条の二項一号でやったのだ、こう言ったという。学校
法人は教育を目的としておる。
農業を目的といたしておりません。そういうものが、
農業に精進する見込みがあると判断されて片方で
許可を受けておる。
農業目的を主目的にいたしております
農業法人に
許可を与えないという
徳島県当局の
やり方というものは、私は、全く疑義が満ち満ちておると言わざるを得ないのでございます。
この
農業法人の問題につきましては、天一坊事件というのが
徳川時代にございましたが、この天一坊というのは、私が承知いたしております
範囲内では、これはほんとうは
徳川将軍吉宗の落胤であったのであります。それを認知するということになりますと幕府中のが分れますので、そこで、時の副将軍水戸中納言が大岡越前守に命じて、品川の八つ山御殿とかいうところで何やらしたというふうに聞いておるのでありますが、農林省も、今回の
農業法人の問題は、農林省がこれを認めるということになると、
個人とか
法人とかいうことに
農民が二つに分れるというようなことで、いろいろ農政上に支障が生ずるので、これはほんとうの
百姓が作った
法人であるけれども、これを押えつけよう、こういうところに私は問題があるというふうに思っておるのでありますが、どうぞ、先生方は、この
農業法人という私生子が認知されるように御努力をお願いいたしたいと思うわけでございます。
大蔵省であるとか農林省の役人の方は、この
農業法人を認めるということになりまして失望をいたしまするか知りませんけれども、最も期待をかけておりまするところの全国の
農民をこの農林水産
委員会が失望させないように、最後にお願いをいたしまして、私の
参考人としての
意見を終りたいと思います。(拍手)