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1958-03-31 第28回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月三十一日(月曜日)    午後一時五十四分開会   —————————————   委員異動 三月二十五日委員斎藤昇辞任につ き、その補欠として、松野鶴平君を議 長において指名した。 三月二十七日委員大谷瑩潤君辞任につ き、その補欠として林田正治君を議長 において指名した。 三月二十八日委員林田正治辞任につ き、その補欠として大谷瑩潤君議長 において指名した。 本日委員最上英子辞任につき、その 補欠として安井謙君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            辻  武壽君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君         —————    最高裁判所長官    代理者    (総務局長)  關根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (総務局総務課    長)      海部 安昌君    最高裁判所長官    代理者    (人事局給与課    長)      西山  要君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査)   —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  最初に委員異動について報告いたします。三月三十一日付最上英子辞任安井謙君選任。以上であります。   —————————————
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日は下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案裁判所職員定員法の一部を改正する法律案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上、四案を一括して議題といたします。  四案はいずれもすでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行います。御質疑の方は御質問を願います。  なお、政府から横川法務政務次官位野木調査課長、最高裁から闘根総務局長海部総務課長西山人事局給与課長がお見えになっております。
  4. 大川光三

    大川光三君 ただいま議題となりました法律案のうちで、まず下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、二、三の質問をいたしたいと存じます。  本法案は、最近における市町村廃置分合等に伴い、簡易裁判所名称及び管轄区域を変更しようとする事務的なものでございますが、従って、本案そのものに対する疑義はきわめて少いのでございます。しかし、これに関連いたしまして、たださねばならぬ数個の問題が従前からあると存じますので、その点を伺いたいのであります。  その第一は、本法案簡易裁判所名称の変更でありますが、簡易裁判所の中には、その名称所在地名が一致いたしておらないものが他にも相当ございまして、現にその一例をあげてみますると、大阪都島簡易裁判所は現に東区に置かれておる。一体これはこのままでいいのかどうかという疑問がありますので、まずその点を伺いたいのであります。
  5. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) この簡易裁判所名称所在地と一致していないものは御指摘通り例外的にございます。これはしかし、特殊の事情に基くものでありますが、たとえば市町村合併になって、新しい町なり市なりが置かれたあとにも、従前のこの土地地元民の執着といいますか、愛着心なんかから、元の名前をそのまま簡易裁判所にかぶせて、これはまあ変えてもらいたくないというふうな希望があるときもございまして、まあそういうふうな場合には、なるべく地元民の意向を尊重いたしまして、しばらくはそのままにしてある。そういうふうなこともございます。そういうふうな例外もございますが、従来郡の名前を取っておる、あるいはまた、島の名前を取っておったものもございますが、大体において所在地の市の名前と一致させておるのが実情でございます。今御指摘都島でございますが、これは今私の記憶のところでは、おそらく未開庁の部分ではなかろうかと考えておりますが、その所在地都島とありますればおそらく都島の中に置かなければならないというふうに法律上はなっておりますが、そのほかに置かれているということでありますれば、これはちょっとおかしいのじゃないかと思います。
  6. 大川光三

    大川光三君 それでさらに伺いたいのは、この下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の第四号表によりますと、ただいま申しました都島簡易裁判所は、その所在地大阪都島区と相なっておるのであります。ところが、現実都島簡易裁判所は、この別表のように都島区にはないのでありまして、現在東区のたしか大阪区検察庁の中に同居しているというような状況であって、別表では大阪都島区になっているのですが、現実にはそこにない、東区にあるんです。これはどうも従前私は疑問に思っておりますので、伺いたいのであります。
  7. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 私その事情を今まで勉強をいたしておりませんでございましたが、今伺いますと、やはり法律上の所在地都島となっております。ですから、もし東区に事実上あるということでありますれば、これは法律的には問題があるのではないか。法律的にいってそれをどういうふうに解釈をいたしますか、事務移転という制度がございますから、事務移転になっているというふうにあるいは解釈——現実にそこでやっているとすれば解釈すべきではないかというふうな気もいたしますが、なお、調査いたしましてお答えをいたします。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 それは事務移転というような、そういう事務的な解釈はできないと思うのですが、それは間違いなら間違いで訂正するとか、国会中ですから、そういう機会もあるわけだし、ちょっと事務移転というような簡単なことで納得できないのですが、どうなんです。
  9. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 事務移転と申しますのは、特別の事情によって簡易裁判所事務を取り扱えないという場合に、その隣りの簡易裁判所事務を扱うという制度がございまして、たとえば大阪の市内でも、東淀川でしたか、一、二そういう例もございます。あるいはそういう例かと思ったのでございますが、この場合では、それが当るかどうかこれは調査いたさないと、今ここで確答申し上げかねますが、これは御承知のように、各地方裁判所でそういう決定はできる、決定をするということになっておりますので、あるいはどういうふうなことになっておりますか、調査いたしたいと思います。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 初めから全然ないはずですね、都島には。初めからあちらへいっているのじゃないですか、東区に。だからたとえば大水が出たとか火事があったとかして、一時こちらへ事務を移しておく、そういうことはあり得ても、初めから全然いかんものを、これは私も実際はどうしてこういうことになっているのかなといつも疑問に思っていることなんです。だからおそらくこれは間違いないのでしょうから、訂正された方が私はいいと思いますが、部分的な事務移転という概念ではとても、ちょっと非常識だと思うのです。
  11. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) あるいはそういう違法状態があるのかもしれません。ただ、初めから置かなかった場合も、やはりそこで建物なんかも手に入らないということから、しかし、法律上置くということになっておりますが、その隣でやっているということになっているのもございますから、初めから開かれなかったからといってそれが事務移転でないかどうかということは、そういう事例もございますので。
  12. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今位野木調査課長からお話がありましたように、敷地庁舎等のどうしてもやむを得ない事情から、やむを得ざる事情未開庁のものがあるのです、事実上。そういうところは法律設置されております関係から、すぐ付近の裁判所事務を取り扱うということになっておりまして、これはやはり裁判所法条文を申し上げますと、三十八条にございまして、この規定によりまして事務移転をやっております。これは全国的に申しますと十庁に満ちませんで、大体八庁かと思いますが、ございます。これもできますれば、庁舎敷地等が完備いたしますれば、そこに置いて、事務移転の方法をとらずして、その場所でやりたいことはやまやまでございますが今の事情からやむを得ざる措置として現在ございます。
  13. 大川光三

    大川光三君 先ほどの御説明ですと、簡易裁判所は指定された地域に置かねばならぬということでありますが、そうすると、それ以外に簡易裁判所を置いた——まあ事務移転の場合は別でありますが、そうでなしに別表所在地以外に置かれた裁判所裁判をするということは、これは憲法違反になるのじゃないかという疑いをわれわれは多年持っておるのでありますが、それはいかがでございましょうか。
  14. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) もし法律上のあるべき土地以外に簡易裁判所が事実上置かれておるといたしますれば、これは明らかに違法状態でございます。これが憲法に触れるかどうかということでありますと、どの条項に触れますからょっと今考え当りませんのでございますが、いずれにいたしましても、これは違法状態でございますから、こういう状態はよろしくないと思っております。
  15. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今の問題につきまして、これは私ども考えといたしましては、やはり裁判所法三十八条の事務移転にほかならないと思いますが、なお、検討いたしまして善処したいと思います。
  16. 大川光三

    大川光三君 私も検討された結果を他日適当な機会に承わりたいと思います。たとえば憲法によりますと、最高裁判所東京に置く、こうはっきり出ている。おそらくこれに準じていって、おそらく簡易裁判所はどこどこに置くということはやはり憲法の精神からきているのだから、従って、適当な所在地にその簡易裁判所がないという裁判所裁判すれば、憲法違反だという一応の私ども解釈を下しておるのでありまするけれども、なお、この点は検討の結果を参考としてわれわれ一同が承わりたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 それに関連してですが、私は三十八条の事務移転という説明を受けたわけですが、この三十八条を見ても、今まで簡易裁判所があっで、特別な事情が発生してそこで仕事ができないという場合に、もよりの簡易裁判所なり適当なところで仕事をさせる。これはやはり本体だと思うのですね。従って、厳密に言えば、どうも都島の場合には名目と実態が違う、率直に言って、そういうふうに批判されても仕方がないのじゃないか。そうなると、憲法七十六条ですね、これは「法律の定めるところにより設置する下級裁判所」と、こうなっているんですから、設置場所法律の定める一つの要件ですから、私はこの都島簡易裁判所というものはやみ裁判所だ、こういうことになるんじゃないかと思うのですが、もしそういうことになると、これは今までやったあそこの裁判所の判決の効力自体もこれは問題になってくるし、だれかがそういうことを言って争った場合に非常に問題になるのじゃないかと思うのです。だからこういう疑わしい状態は一刻も早く私は当然これは訂正すべきだと思う。だから理屈をつければ、まあ皆さんの方が理屈を言うのが専門ですから、まあ適当な理屈はつけるでしょうが、これは納得いかぬですよ、ちょっとこの事態は。だからもしこれが事務移転という概念をこえておるということになれば、憲法七十六条違反ということで、この裁判所やみだと、こういうことに私はなると思うのですが、その点は確かでしょうか、事務移転でないということになれば。關根さんかだれか、お答え願いたいと思います。
  18. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今亀田委員お話事務移転でないといたしますれば、これは裁判所法に根拠がないということになるかと思います。これも検討いたしたいと思いますが、われわれの考えといたしましては、事務移転でこの条文にございますように、特別の事情により、その事務をその場所で取り扱うことができないという場合に入るという考えでおりますが、なお、検討いたしまして、いずれ御報告いたしたいと思います。
  19. 大川光三

    大川光三君 この機会に、先ほどちょっと御発言がありました未開庁のものが今日何カ所ほどあるだろうかという疑問がございまして、簡易裁判所制度設置されるようになりましてから、もうすでに十年間を経過いたしておる。しかるに未開庁のものがなおあるということにつきましては、これは疑問たらざるを得ないのでありまして、一体、今日未開庁のものがどことどこに何カ所あるのか、また、開庁に至らない理由、今後の見通し等を伺っておきたいと存じます。
  20. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今大川委員のお問いの点ですが、先ほどちょっと大体のところを申し上げましたが、御承知のように、裁判所法が施行されまして、全国で五百をこえます簡易裁判所設置ということになりました関係上、敷地庁舎等が間に合いません関係から、未開庁のものが現実に出て参りました。これが現在八カ所ございます。これを名前を一々申し上げるのもいかがかと思いますが、よろしゅうございますか。
  21. 大川光三

    大川光三君 名前はけっこうですが、八カ所ですね。
  22. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 八カ所でございまして、このやむを得ない事由と申しますのは、ただいま申し上げましたように、敷地庁舎がない。それからかりにそこに庁舎が設けられましたにしても、かなり事件数が参りますのが少いという見通しが立つ場所でございまして、従いまして、一般民衆の方から申しましても、その割にぜひ開けという要望が熾烈ではございません。そういった関係から、事実上このままの状態が続いだわけでございまして、結局ただいまのところとなりましては、この未開庁簡易裁判所法律上抹殺してしまったらどうか、むしろ廃止してはどうかという議論が出てきております。で、この議論に対しましては、相当検討を要します関係から、法務省と一緒になりまして、むしろこれは法案を出さなくてはならぬという関係もございますので、法務省にお願いすることになるかと思いますが、いずれは、この未開庁簡易裁判所も、結局は廃止するということも考えられる時期がくるのじゃないかと思います。これにつきましては、非常にその土地方々のことも考えなければなりません関係から、相当慎重な調査をさらに加えなくてはなりませんので、現在検討中でございます。
  23. 大川光三

    大川光三君 それに関連いたしまして、現在簡易裁判所の中で、民事訴訟事件の取扱いを停止いたしておるのがたしか五十三カ所あると聞き及んでおりますが、しかも当時の、昭和二十九年法律第百二十六号でございましたか、これによりますと、当分の間民事事件を停止するということになっておって、いまだ三以上を経過した今日そのままの状態であるんですが、これは一体どういう理由だろうか、また、あわせてもし未開庁の分と同じように、民事事件をあえて取り扱わなくてもいいんだということでありますれば、この際、私は町村合併とかあるいは交通機関発達などの社会情勢の変化ということ等をも勘案いたしまして、簡易裁判所全般について再検討をして、廃止するものは廃止する、整備統合するものは整備統合するというように、実情に即した大幅の改訂をする必要はなかろうか。ただいま議題となっていまするこの法案は、これはごく一部のものでありますが、適当な時期に全面的に廃止または整備統合の処置をとるべきだと考えておりますが、意見を伺いたいと思います。
  24. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 民事訴訟を取り扱わない簡易裁判所は、御指摘のように、今四十あまりございます。これは昭和二十九年の法律によりまして、簡易裁判所民事訴訟に関する訴額最高限が引き上げられまして、三万円から十万円になった場合の経過的な措置として、民事訴訟を行わない簡易裁判所を置くことができるということになったのであります。これは御承知のように、簡易裁判所の判事の中で特任方々もございますししますので、あまり民事事件訴額の高いものについて、津々浦々までの簡易裁判所でやらせるよりも、ある程度集中的にやった方がいいというふうなこともございまして、そういうふうになったわけでございますが、その後これについては、特に裁判所からも伺いますと、苦情といいますか、そういうものはあまりないように聞いております。で、むしろ御指摘のような、普通の今やっておるような手続でやる民事訴訟でございますれば、むしろ戦前のようにある程度、あまり分散的でなくて、たとえば支部程度のところでやるというような方向の方があるいはいいんじゃないかというふうなことも考えられますので、かりに地方のところへ置いておくといたしましても、たとえば調停とか、そういうふうなことをおもにやってもらうというふうなことにした方がいいということも十分考えられますので、そういうようなことについてあるいは簡裁の制度をどういうふうにするか、あるいは二階級といいますか、ある程度大きいものと小さいものと考えるというふうなこともございましょうと思います。そういうようなことについて今検討いたしております。
  25. 大川光三

    大川光三君 私ども実務をやります者から申しましても、むしろ簡易裁判所訴訟手続というものはもっと簡素化して、たとえば交通違反即決裁判形式裁判所という程度にしておいて、そして複雑なものは地方裁判所に上げていくということにすれば、私は簡易裁判所という名称にもふさわしいだろうという考えを持っておりますので、せっかくこの面についての御検討と、できれば改正の法律を出されることを希望いたします。  それからもう一つ関連して伺いたいのでありますが、最近の交通機関発達に伴いまして、少年交通事件というものが非常にふえてきた。現に三十二年度の全少年犯罪の約六七%までがこの種事案によって占められておるのだということを聞くのでありますが、それがために少年犯罪を取り扱うておる全国家庭裁判所の中には、この交通事件に追われて一般事件の審理に支障を来たしておるという実情であるやに聞きますが、果してそういうような現状でありますかどうか。また、これに対しての具体的な打開策について、御意見を伺いたいのであります。先ほど統計を申しますのに、昭和三十二年度の全少年犯罪というふうに訂正して伺います。
  26. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、大川委員お話通り、昨年度におきまして全国家庭裁判所で受理いたしました少年保護事件が約四十六万件ございまして、そのうち交通事件が三十一万件、おっしゃる通り全体の六七%を占めているわけでございますが、ただこの交通事件は、御承知のように、事犯としては非常に簡単でございまして、数は多くございますけれども、その割に処理にそう困難をきわめるということは割合に少いのでございますが、何分にも数が多い関係から申しまして、何と申しますか、この事件を起しました少年を集めまして、特に特別の科学的な調査、それから指導を行う必要があるという関係から、特別に大きな都市におきましては、それぞれ専門調査官を設けまして、その調査官交通法規の解説なり、あるいはスライド等によりまする説明訓戒等を加えまして、そして事件処理をいたしております。ただこれが年々増加する傾向にございますので、東京大阪等におきましては、さらに一そうの検討を加えてその処理の万全をはかるということを検討しておりますが、ただ、これが普通の刑事事犯と比べまして、やはり検察官の方に送る割合割合に多いのでございます。なお、今後とも家庭裁判所の問題として検討を加えて参りたいと思います。
  27. 大川光三

    大川光三君 違反少年を集めて教育をするとか、訓練をするとかいうのもけっこうでありますが、私はこの少年交通事件が頻発するというのにはまあ二つの原因があると考えます。その一つは、少年自身がまあスリルを楽しむといいますか、スピードを楽しむといいますか、また、少年の若さから無謀にスピードを出したりして交通違反をやるというのも一つあります。で、いま一つは、自転車等に乗って店の用事で使いに行くのだというところへ雇い主少年を酷使して、短時間に早くどこどこに行ってこいというような、雇い主の面から少年を酷使しておるということも、少年交通事件頻発の私は理由だと思いますが、その雇い主側に対して、どういう対策を持っておられるか、伺いたいのであります。
  28. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今大川委員お話通り、やはり問題は少年を雇っておりまする雇い主側のまあ強制的な命令による場合がかなりあるわけでございまして、先ほど申し落しましたが、この少年保護者雇い主等関係者にやはり家庭裁判所に来てもらいまして、そうして今後の善後措置について十分のまあ訓戒と申しますと口幅ったいのですが、そういう注意を与えまして、今後のことを確約してその見通しを得た上で、事件処理をしていくというわけでございますが、なお、今後ともその方面になお一そうの努力を加えたいという考えでおります。
  29. 青山正一

    委員長青山正一君) どなたか下級裁判所の件について、御質疑なさる方おいでになりますか。
  30. 小林英三

    小林英三君 下級裁判所の数ですね、全国地方裁判所がどれくらいあって、高等裁判所がどれくらいあって、それから簡易裁判所がどれくらいあるという数を一つ
  31. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 高等裁判所は八つあります。それから高等裁判所支部というのがございますが、これも申し上げますと、これは六つございます。それから地方裁判所が四十九ございます。それから地方裁判所支部というのは二百三十七ございます。これには甲号乙号というふうに分れておりますが、甲号が八十一、乙号が百五十六、それから簡易裁判所が五百七十でございます。
  32. 青山正一

    委員長青山正一君) 小林さん、御質疑ありますか。
  33. 小林英三

    小林英三君 けっこうです。
  34. 赤松常子

    赤松常子君 今この大川委員の御質問の中にございましたように、まだ未開庁が八つございますということですけれども、この簡易裁判所を作る基準というのは、人口の比例、あるいは地域的な交通関係、そういうものを考慮されていると思うのでございますけれども、大体のその基準というものはどういうところに置いていらっしゃるのでございましょうか。
  35. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御承知のように、交通事情とか、地元事情が全部違っておりますので、画一的な標準は必ずしも立てにくいのでございますが、初め簡易裁判所設立することになった場合の大まかな標準といたしましては、二つ警察署一つというふうな大体の標準はあったようであります。しかし、これを個々の具体的な場合に適用するにつきましては、地元事情によって増減があったようでございますが、そういうふうな事情であります。で、大体今件数から申しますと、簡易裁判所は、大体全国の平均を昭和三十年度で見ますと、件数から見ますと、民事事件が八百五十七件、刑事事件が三千五百七十一件、合計四千四百二十八件というのが一簡易裁判所当りの新受件数でございます。
  36. 赤松常子

    赤松常子君 年間一二件くらいしか取り扱わない簡易裁判所もあるように聞いているのですけれども、もちろん民衆の利便ということも考慮に入れなくちゃならないということが第一だと思うのでございますけれども、そういうこの一、二件くらいしかないというところなどは、そのままにしておいて、お置きになるつもりでございましょうか。その辺のところをもっと統合なれるようなお考えはございませんでしょうか。
  37. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 年間に一、二件というのがございましたかどうですか、非常に少いところがございます。これはたとえば離れ島、ごく特殊のところ以外は、それほど少くて今存続しておるというのはあまりないと思います。しかし、便利であって、件数は比較的少い、こういうところがあるかと思いますが、これは先ほど裁判所の側から答えられましたように、全国的に地元調査してもらっております。しかし、これはなかなかいろいろの事情がございまして、どの程度地元の住民に御迷惑をかけずに、結局この国家の財政事情、その他のにらみ合せということになると思いますが、どの程度に整理した方が妥当か、あるいは可能かという点については、なお慎重に研究したいと思います。
  38. 大川光三

    大川光三君 次に、私は裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、一括して質問をいたしたいと存じます。  申すまでもなく、この改正案は、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に関連して提案されたと存じますが、ただいま申しまする特別職の職員等の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の審議状況はどうなっておるのであるかということを伺いたいのであります。
  39. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これは衆議院の内閣委員会ですか、衆議院の内閣委員会にかかっておりまして、もちろん提案理由は済んだのでありますが、その後の審議はあまり進んでおらないように思います。
  40. 大川光三

    大川光三君 私ども法務委員会といたしましては、その責任において本法案の審議を促進して、なるべく採決にまで持っていきたいという考えでございますが、折柄解散風とからんで、一方の内閣委員会からの法律案の成立を待たなければならぬというような状況になるかもわかりませんから、当局の方といたされましては、内閣委員会にかかっている別の法律についての審議促進に努力をされたいという希望をまず申し上げておきます。  そこで、今回のこの両法案の内容を見てみますると、その給与改訂の理由となりまするものは、最高裁判所の判事、高等裁判所長官、検事総長、検事長等の給与は、他の裁判官検察官及び一般職に比して劣位にあるということに基因すると思われますが、なぜこれらの裁判官に比べて、上級の裁判官検察官等が劣位にあるのかということを、少し具体的に数字をあげて御説明をわずらわしたいと思います。
  41. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) この提案理由でも述べられておりますが、この裁判官検察官のうちでも、いわゆる認証官以上に当る職にあるものの給与が、その他の裁判官検察官の給与に比しまして劣位に置かれた均衡がとれていないという状態になりましたのは、結局それらの裁判官検察官の給与が、他の特別職、たとえば内閣総理大臣等の他の特別職の給与に準じて定められている。そうしてその給与の改訂もそちらの方が改訂されなければ、こちらだけで改訂があるということは今まではなかったわけであります。そういうふうな関係で、しかもこの特別職の給与はいろいろな理由——主として政治上の理由ではないかと思いますが、理由から、一般の政府職員及び一般の裁判官検察官の給与が改訂された際にも、しばしば据置きになっておったのであります。その関係でだんだん下の方が上って、上はそのままということで均衡がとれなくなったのであります。  それからもう一つは、裁判官検察官の一般のものにつきましては、一般行政職員のいわゆる管理者、課長級以上の者について管理職手当というものがつけられることになったのでございますが、それに準じまして、一般の裁判官検察官につきましても管理職手当が昨年でございましたかつけられることになりまして、これも給与の一二%程度でございまして、ほかの行政官吏よりは割合が低いのでございますが、しかし、そういうふうな管理職手当の給与ということもございましたので、そういうことも原因いたしまして、均衡がとれなくなったというのであります。数字的に申し上げますと、現行の給与について申し上げますと、最高裁判所の長官、これが今十一万円が俸給月額でございますが、昭和二十三年の一月一日現在、すなわち、いわゆる二千九百二十円ベースという時代でございますが、そのときを基準として考えますと、これが四・四倍ということになってきております。それから最高裁判所判事及び検事総長が、同じく二千九百二十円ベースから考えますと、四・四倍ということになっております。それから東京高裁長官、これも四・三倍、それからその他の高裁長官も四・三倍、それから東京高等検察庁検事長も同様でございます。それから次長検事、その他の検事長、これは四・四一倍ということになっておりまして、これに対して、判事の一号及び検事の特号というものがございますが、これの増加の割合は、二千九百二十円ベースの当時に比較いたしまして、今は七万五千円ということになっておりますから、五・三六倍ということになっております。それからこれに管理職手当がつく場合、これは全部でございませんが、ごく一部分人のでございますが、これに管理職手当がつきますと八万四千円ということで六倍ということになっております。今のは判事の特号と検事の特二号でございます。ちょっと今間違えましたが、判事の特号と検事の特二号の場合は五・三六倍と六倍ということになっております。それから判事の一号と検事の特号の場合には五・一四倍、管理職手当がつく場合が五・七六倍ということになりまして、結局、認証官以上の方の倍数が四倍余りでございますが、判事の特号とか一号の以下の場合は五・五倍以上ということになりまして、そういう倍数から申しましても均衡を失っているというふうに認められるのであります。
  42. 大川光三

    大川光三君 その点はよくわかりましたが、今回のこの給与改訂に伴う増加率というものを資料によって見てみますると、増加率の最低は東京高等裁判所長官を除くその他の高等裁判所長官並びに東京高等検察庁検事長の現在の報酬または俸給月額七万八千円が九万五千円に引き上げられて、増加率はまさに二一・八%になっております。また、増加率の最高は最高裁判所長官の現在報酬月額十一万円が十五万円に引き上げられて、増加率は三六・四%であります。そこで、昭和二十七年以来の一般の裁判官検察官の増加率は、過去二回の給与改訂を通じましても、果して今回改正されまする上位の裁判官、検事長等の増加率をはるかに下回っておるのではないかというように思われるのでありますが、果してどういう実情になっておりますか。今回の増加率を算定された合理的な基礎を、この二千九百二十円ベースを基準にせずして一般司法官の過去二回の給与改訂との合計と今回の増加率との比較についての御説明をいただきたいのであります。
  43. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 今回の改正案によりまして、二千九百二十円ベースの当時との比較をいたしますと、最高裁長官が六倍になります。それから最高裁判事と検事総長が五・五倍であります。それから東京高裁長官が五・二六倍であります。それから、その他の高裁長官と東京高等検察庁検事長が五・二八倍、次長検事その他の検事長が五・二九倍ということになりまして、大体五倍余りになりますか。最高裁長官の部分を除きまして、昭和二十三年の二千九百二十円ベース当時と比較いたしますと、倍率はそれほど変らないわけでございます。ただ、今回の政正では、単に前の倍率だけを考えるだけじゃなくて、本来これらの職に対してどういう給与を支給すれば適当かという見地からも検討がなされたのでありまして、大体、今までの認証官以上の裁判官検察官相互の差というものが必ずしも合理的ではなくて、と申しますよりも、むしろ裁判官検祭官の認証官に相当するものの給与は総理大臣、それから国務大臣、それから内閣官房長官、そういうふうな他の特別職に合せて作られておったのですが、そのむしろ行政官の方の特別職の給与の差額が合理的じゃなかったというふうなことから、そちらの方を今度大蔵省の方でいろいろ検討されました結果、数額がきまったわけです。それによりますと、大体政務次官のクラスが、事務次官の今までの上り工合が大体二%程度になっているということから、その政務次官の増加率を二〇%にいたしまして、それから上、国務大臣級は今度は二五%上へ上げる、それから総理大臣級は三五%上げるというふうな考え方にいたしまして、あとは数字をまるめたということで案ができたようでございます。まあ、それにそれぞれ合せまして、今回の数額が出たわけでございまして、大体そういたしましても、倍率としてはそう変っておりません。少し上の方がよくなったという程度であります。
  44. 大川光三

    大川光三君 一口に申しますと、今度の改訂が上に厚く下に薄くという結果になったのではないかと考えるのでありますが、これは大いに心しなければならぬことでございまして、理想から言えば、上も下もその地位に準じて増加率は公平でなければならぬ、もしそれができぬとならば、なしろ下に厚く上に薄いということが司法行政を円滑に運営いたしまするためにも、また、検察庁の上命下従の実をあげまするためにも私は必要だと考えるのでございまして、多少とも上に厚く、下に薄いというこの改訂案については、検討の余地は私は残されておると思うのでありますが、その点に関する御意見を伺いたいのであります。
  45. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 今申し上げましたのは、報酬の月額について申し上げたのでございますが、御承知のように、給与総額から申しますと、認証官以上のものには扶養手当とか、あるいは勤勉手当とか、それからそういうふうないろんな手当、それから先ほど申しました管理職手当、そういうふうなものが支給されませんので、そういうふうな給与を全部入れまして考えますと、上に厚くて、下に薄いというふうなことは言えないじゃないか。トータルから申しますと、これはむしろ差額がごく僅少、たとえば東京以外の検事長の方と、それから検事の特号の二号の方との差額なんかはごくわずかということになりまして、それほど下に薄くて、上に厚いということは、必ずしも申せないと思います。
  46. 大川光三

    大川光三君 最後にもう一点伺いたいのですが、多年問題である法曹一元化ということと、今度の給与改訂ということについて、一連のつながりをもってこの改訂がなされたかどうかという点であります。申すまでもなく、法曹一元化の理想を達成いたしまするためには、裁判官の給与を相当引き上げるということが必要であるのでございますが、果してそういう考慮をなして、この改訂が行われておるかどうか。先ほどの御説明にもございました通りに、裁判官の給与は特別職、一般職にならって定められることになっておりますが、こういうことでは、いつまでたっても法曹一元化の見地からする給与面の隘路を打開することはむずかしいと考えるのでございまして、法曹一元化必ずしも在野法曹からのみ供給源を求めるということではなしに、在野法曹はもちろんでありますが、その他の学界からも人を求めなければならぬ。しかるに、在野法曹といたしましても、他の学界の人たちといたしましても、今日の司法官の給与程度では容易に人を得られないということを憂えるのでありますが、その点に関する御意見を伺っておきたいと存ずるのであります。
  47. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘通り、法曹一元化という理想を実現いたしますためには、今のこの程度の給与の改訂では、とても思いもつかないというような気がいたすのであります。御承知のように、この法曹一元につきましては、理想はこれは非常にけっこうなことかと思いますが、実現につきましては、これはなお相当の検討を要する問題があろうかと思うのであります。そういうふうな点をなお十分研究し、具体的な方策の見通しが立った上で、これは法曹一元についてのいろいろの手当をしなければならないというふうに考えるのでありまして、今給与のことだけを直ちに切り離してやるということは、非常に困難であります。ほかの官吏との関係、今までそれに準じてきめられておったそういうやり方を飛び離れまして、今急にほかのやり方でいくということは非常に問題もございますので、今度の場合につきましては、これは一応離しまして、今までのやり方で考えた次第でございますが、この法曹一元ということにつきましては、おそらく給与の問題がポイントの一つであると思いますので、十分検討いたしまして遺憾のないようにしたいと思います。
  48. 大川光三

    大川光三君 私の法曹一元化に関する私見を申し上げますと、給与面からする法曹元化の実現もその一つでありますが、私は一面恩給法の改正ということにも持っていかなければならぬと思うのであります。たとえば、在野法曹から司法官に任官いたしましても、恩給というものは任官の日から出発する。それでは結局将来の希望を持てない、たとえば、在野法曹で二十年生活しておった者は、二十年全部を恩給年数に入れろというのではありませんが、在野法曹期間の半分とか、あるいは三分の一を恩給年数の期間に算入できるのだということも、一つの方法かと考えておりますが、いかがでございましょうか。
  49. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘通り、そういうふうな恩給等の措置ができますと、在野法曹から来ていただくということが、今までより数等たやすくなるということも十分考えられるのであります。法曹一元の実現の場合には、そういうことも十分考えなければいけないというふうに考えておりますが、これにつきましても、やはり一般官吏等の均衡なんかが現在では相当強く要求されるという事情もございますので、なお研究いたしたいと思います。
  50. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 法曹一元の問題につきまして、今大川委員の御質問に対して位野木調査課長からお話がございましたが、われわれといたしましても同じような考えを持っておりまして、できる限り給与を上げていただくことが、法曹一元をなめらかにする一つの大きなポイントだと思います。外国の例で申しましても、ジャッジのサラリーは、プリンスサラリー、王侯貴族のサラリーと言っている国もあるそうであります。まさに王様のようになるということはいかがかと思いますが、在野法曹比較いたしまして、少くとも報酬が下るということではいい在野法曹の方がおいでにならぬのじゃないか、そういったところから、何と申しましても給与体系の問題もございますけれども、特に国会の側におかれましても御同情あるお考えをいただけば幸いだと思います。今後ともわれわれは、できる限り努力をいたしたいと思いますが、あわせまして特にお願いいたしたいわけでございます。
  51. 大川光三

    大川光三君 先ほどから裁判官検察官の俸給、報酬というものは他の一般職に準じて上っていくということであるのですが、私はこの点が前から意見を異にするのでありまして、なるほど、一般の職員も国家のために重要な仕事を担当されるのでありますけれども、司法の重要性という点から考えまして、常に司法官は一般公務員よりも優位な立場に置かれなければならぬという多年の主張を持っておりまするので、特にその点を御留意あって、わが国司法のために格別の御配慮をいただきたいということを、この法曹一元化に結びつけまして、私の希望として申し添えておきます。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 私、定員法の関係で若干御質疑いたしたいのですが、結局結論的には、これは予算等に関係してくる問題になるわけですが、最高裁の方で予算を請求するときに、どういうやり方で慣例的におやりになっているのか、その大まかなところを最初にお聞かせ願いたいと思います。
  53. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今亀田委員の問いの点は、予算の請求につきましての手続でございましょうか、それとも予算をより多くするためにどういうことをやっているかということでございましょうか。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 後者の方です。
  55. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) これは御承知のように、特に最高裁判所は、内閣と独立しております関係から、予算の面で閣僚に代表していただいて予算を獲得することができません。そういう関係から大蔵省と折衝いたしまする際にできるだけの努力を重ねておるわけでございまして、あるいは御理解のある議員の方々に打ちあけて申し上げれば働いていただくということもございますが、そういたしまして大蔵省と折衝いたしまして、大蔵省が大体のところの線を引いて、それに納得できますれば、最高裁判所側といたしましても、そのままの予算で予算審議に入るという段階になると思いますが、それに納得できませんければ、やはり最高裁判所の案を予算の案につけて出すということになっております。最後のところといたしましては、そういう手だてがございますけれども、今年の予算等におきましては、そこまで参りませんで済んだわけでございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、結局、今年の案については納得したということになるわけですか。
  57. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) その最高裁判所側の予算に関しまする原案を提出いたさないことによりまして、結局において納得したということになろうかと思います。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 この財政法の第十九条に書かれておるような両者間の意見が合わないために、予算書に詳細な説明書といいますか、そういうものがつけられて国会に送られてきたといったような事例は、最高裁ができてから今日まであるわけでしょう。
  59. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) ちょっと今書類がございませんので、確かなことを申し上げかねますが、ただ一回ございましたと思います。一回ございましたが、その後いろいろの折衝の結果、それをたしか撤回いたしましたか、したことが一回ございます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 その撤回したというのは、予算案が成立するまでに撤回したという意味ですか、一たん出されたのだが、そういう意味ですか。そしてもしそれがこまかいことは別としてどういう問題であったか。御記憶があれば御説明願います。
  61. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) たいぶ前のことで、今書類がございませんので、大体のところでお許しをいただきたいと思いますが、問題はたしか裁判所庁舎の営繕の問題であったと思います。  それから一たん原案をつけましたあとで撤回いたしましたのは、予算成立前でございます。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 大体の模様はそれで推測がつくわけですが、憲法並びに財政法それから裁判所法等で、裁判所の予算というものについては、相当強く支持されておる立場が明確になっておるのです。どうも設備の点についても、あるいは人員等の問題にいたしましても、絶えず裁判所の意向というものは通っておらない。行政官庁はそういうふうに考えても、おれの方は憲法上の使命を達成するにはこうだという、そういう態度が最後まで一度も貫かれておらない。こういうことははなはだ心外だと私は思っておる。これは後ほど定員の問題等でいろいろな紛争等を僕らも聞いておるから、その点についても質問したいわけですが、そういう点の努力を最高裁長官等がみずから先頭に立ってやらないでいて、そしてしわ寄せを末端の方に、金がなければ結局そっちへしわ寄せが行きます。そういうことははなはだおもしろくないと思っておる。で、そんなことを結局は納得したというが、これは納得しておるはずがない。現状からいって、ただ形式上そういうふうにおさめておるだけであって、いたずらに何も問題を紛糾させたり、やかましくする必要はありません。やはりこちらが筋として出したものはいやしくも検察庁、法務省裁判所関係が出すようなものについては、そう簡単に引っ込められちゃ困ると思う。国会議員の理解のある諸君の御支持を求めるといっても、これはいつ引っ込められるかわからないということでは、こっちだけ残されてわあわあ言っておって、肝心の御本尊の方がいつの間にか引き下っておってはこれは何にもならない。そういう点、実は私は最高裁の長官あたりに一度来てもらって、実際こういう状態でいいのかどうか。なかなか官庁の性格の性質上、いろいろな政治的な取引はできないのです。最高裁などはできないだけに、その出されたものについては、これは政治的なそういう含み等もないでしょうし、それだけに最後の結末というものは今の情勢からいったら、意見対立のままで最後まで両者がなかなか退かないということがあるのが当然だと私は思う。どうもそういう点はなはだ私は納得がいかないのですが、総務局長も腹の中ではそう思っておってもなかなか言いにくいでしょうが、ざっくばらんなところを最高裁の判事なり、そういう諸君はどういうふうにこういう点を考えておるのか。あなた一つ真相をお聞かせ願いたいと思うのです。
  63. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 最高裁判所裁判官の腹の中はちょっと私にも簡単にわかりませんけれども、ただ裁判官会議等を通じましての私どもの察するところでは、やはり今亀田委員がおっしゃるように、できる限りやれという気持はもう皆持っていられると思います。それからわれわれといたしましても、できる限りこの司法の維持のためにあらゆる努力を払わなくちゃならぬ、これもおっしゃる通り、それで全部のこの国民、それからその中にはもちろん国会議員の方も含まれるわけでございますが、今亀田委員のおっしゃるような御同情ある方ばかりとしますれば、おそらく割合に司法部の予算というものは高くなってくるのじゃないかと思いますが、何と申しましても、また全体の世論と申しますか、そういったものが、これはわれわれの努力の足りないところもあるかもしれないと思いますし、また、力の足りないところもずいぶんあるかと思いますけれども、何分にもまだ日本国民の全体が司法というものに目ざめるのに、何と申しましてもまだ高いとは言えないのじゃないかというところから、根本的に非常に困難があるわけでございまして、で、われわれといたしましても、できる限りのことを努めておりまするけれども、何分にもこの上にも国会議員の方々の御支援を仰がなくちゃならぬ、その点を御了承願いまして、今後ともわれわれは努力を重ねて参りたいと思います。
  64. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて下さい。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 まあ前提の問題はその程度にして、次に移りますが、今度の定員法改正で、常勤職員の方が四十四人増、こういうことになっていますが、裁判所関係の現在の常勤職員の数と、そして、その残りの者については、今後どうする方針なのか、まず、その点、お尋ねしたいと思います。
  67. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 裁判所の現在の常勤職員の数につきまして、お手元に差し上げました参考資料にございますが、二百十名でございます。そのうちの四十四名でございますが、これを本来の定員に振りかえるということになるわけでございます。それの残りの百六十六名でありますが、これはなお定員化されないままに残るわけでございますが、御承知のように、常勤職員の問題は、裁判所のみならず、政府機関全般に通ずる問題でございまして、これをどういうふうにするか、全部を定員化してしまうかどうか、あるいはそのほかの何らかの新しい制度として認めるかどうかというふうな点につきましては、内閣の公務員制度調査会を中心として今検討中でございます。おそらくそれにならいましてもしその結論が出ますれば、裁判所においてもそれにならった措置がとられることになろうというふうに考えております。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 それは内閣の公務員制度調査会ではおやりになっているでしょうが、最高裁自体としてはどういうふうに考えておるのか。こちらの意見をむしろ積極的に出していかなきゃ私はいかぬものと思いますが、その点お聞きしておきたい。
  69. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今亀田委員のお問いの点は、今位野木課長からお答えがあったと同様に私考えておりますが、この常勤職員約二百名以上のうち、四十四名だけを今度定員内に繰り入れましたのは、いろいろ組織の規模、職務の重要度あるいは勤務年限、いろいろな事情を勘案いたしまして、結局のところば四十四名程度でこの際はやむを得ない。また、あるいはおしかりを受けるかもしれませんけれども、現状としては四十四名程度の定員化で、国家経済からいいましてもやむを得ないのじゃないか。なお、今後ともこれを定員化するにつきましては、この職員の仕事が永続的かどうかという点等を勘案いたしまして、望みといたしましては、できる限り定員化の方向に進みたいと思いまするけれども仕事の量とにらみ合せまして、今後検討いたしたいと思います。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 この四十四名というのは、政府の方からそういうワクを出されてそれで承知した数字なんですか。結局先方から、上の方から割当的に数字を出されたので、裁判所側としてそれを承知した、そういうことじゃないですか。実情はどうですか。
  71. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 大体七等級相当の者をということで、政府と一致いたしまして、そういう点から四十四名ということをこちらから申し出たわけでございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、その前に一つお聞きいたしますが、常勤職員を組み入れるときの問題について、当初からこれは四十四名ということをこちらから言うておりますか。相当折衝をやって、最終段階で四十四名ということをこちらから出したわけですか。今のお話ですと、四十四名というのはこちらから出したような数字のようですが、その点どうなんですか。
  73. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 当初の要求といたしましてはもっと多い数字でございましたが、最終段階においてその点で一致したわけなんです。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 当初はどういう数字を出されましたか。
  75. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 当初の要求といたしましては、一応全員を要求しております。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 そこに私は問題がいつもあると思うのです。当初二百十名というものを出していて、結局ほかの行政官庁などと同じようにこちらから四十四名といったような数字を出すような態度に問題があると私は思う。たとえば、四十四名の内訳を見ると、交通事件関係の職員が五十名のうち十三名、それから法廷警備員の関係が三十名のうち二十六名、それから統計集計員の関係が十三名のうち五名です。これは私はその仕事自体の性格から言って、多少勤務年限が新しかろうと、古かろうと、仕事自体はこれは同一ですよ。法廷警備一つ見たって、新しい職員だからどう、古いからどうという問題じゃこれはない。だからその残された常勤職員ですね、これははなはだ私立場が困ると思うのですね。そういう状態自体は局長もお認めになると思うのですが、どうでしょう。
  77. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 亀田委員のお問いの点は、この常勤労務者自身の立場から考えればそうだと思うのです。ただ役所といたしまして、国民の税金で俸給を払うということになりますると、その常勤労務者の方の立場だけからは考えられない。やはり事務量その他から考えざるを得ないと思います。ただ、できる限り、このたびの常勤労務者のうち四十四名だけ定員化いたしましたならば、その余の分につきましても、仕事が同じように続く限りは、この次の機会にやはり定員化されるように努力したい、こういう考えであります。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 これは大体定員外にこういう職員のおること自体がこれは問題なんでしてね。本来これは働いている人はおかしな存在なんです。だから最高裁としては残りの者についてはどういう計画なのか。先方から予算がきたら認める。そんな程度でしたら、これはだれがやっておっても、予算がきたら当然ほかに使うわけにいかないから、認めることはわかりきっているのですが、来年はこれをどういうふうになさる予定ですか。
  79. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) この二百名余りのうちの四十四名以外の残りの者は従前通り常勤労務者としてできる限り継続していきたい、こういう考えであります。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 いやこれを定員化しなければならないのでしょう。その定員化という問題についてどういうふうにお考えになっているのですか。
  81. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) この定員化の問題につきましては、やはり一般の政府の方針ともにらみ合せまして、この程度でやむを得ない。でありますから、残りの者については、常勤労務者としての予算をいただいて、その上で現在の状態を続けていくという考えでございます。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 だから、これはまた最初の問題に戻るわけですが、司法という仕事の性格などをもっと政府にも説明をして、たとえば、交通事件の職員の問題等にしたって、あすに延ばすとか、そう融通をつけることのできるような仕事じゃないのですね、大体司法関係仕事は。だからそういう仕事の性格というものを、予算の要求自体の中にやはりもっと具体化して主張していく。従って、それが認められない以上はやはり引き下らぬ。そういうことにならなければ、あなたのような御説明では、これはなかなかいつまでたっても、それは残りの人についての定員化ということは、これはやはりできぬですよ。そういう状態をほうっておいて、盛んに仕事をせいせいと言っても、なかなかこれは問題は私はあろうと思う。先ほど大川委員からもおっしゃったが、たとえば俸給の問題ですね。これは法曹一元化といったようなことが大きな問題でしょう。司法の民主化という観点から言ったって大問題だ。だから俸給問題を扱うとき自体に、そういう考え方を強硬にやはり最高裁として主張していく。ところが、そうでなしに、惰性に従って、ほかが上ればこちらも一緒について上る、そういったようなことでは、なかなかこの特殊性とか、そういう点が私は出てこぬと思う。定員の場合だって、そういう弱いことではなく、まあいたずらに強硬なことを言う必要もないのですが、事柄自体をもっと認識させる。まあ国会としては必ずしもそんな経費が上ることばかりを私ども主張するわけじゃないのですが、最高裁の従来の経過等を見たって、どうもその辺の交渉が、はなはだある意味では私は筋が通らぬと思うのですね。そういう主張すべきことをもっと強く主張しないということは、逆の面から言えば、消極的な一種の暴論ですよ、だからもっと強くそういう問題を来年度等について取り上げてもらいたいと思うのです。  それから次に、現在全国の各裁判所等に、個所別に配置された定員というものが一応きまっていますね。これはこの配置された通りになっておらないところが相当ある。その点はどういうふうな状況になっておりますか。これはまあ常勤職員も含めて——まあ常勤職員は、これは定員外だから含めるというのもおかしいわけですが、ともかく配置された定員というものがその通りいっておらない状態ですね。どういう状況になっておるか、御説明願いたいと思います。
  83. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) この定員配置は、一応事件数、その他資料に基きまして、各裁判所に配置するわけでございますが、やはり個人個人の事情その他から申しまして、定員通りに参らない個所が出て参ります。これは定員が足りなかった場合には、定員に満たないことになりますれば、その補充に努めるということはこれは当然でございまして、補充に努めなくちゃなりませんけれども、いろいろなその裁判所、その土地自体についても、なかなか定員を満たすだけの人の給源がないということもありますので、できる限り定員に合うようにいたしたい、こういう努力を重ねております。
  84. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと私関連いたしまして……。  この間私は北海道へ行ったのですが、裁判所の判事さん、それから検事さんが非常に不足しておるように思われるのですが、北海道あたりは行く人はいないのですか。どうなんです、その点。
  85. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 全体の裁判官の数から申しましても、やはり判事といたしましても、五十六名、その他判事補、それから簡易裁判所の判事につきましても、相当数の欠員がございまして、これを補充するにつきましては、もうすでに御承知かと思いますが、判事補になりまする前の司法修習生を終ったものから、毎年約七十名前後を採りますので、それ以外に弁護士、検察官からも、できますればかわっていただくということを考えておりますが、これが先ほど来のお話のように、なかなかうまくいかない。これは報酬等の問題もございますが、そういう全体的に申しまして、欠員があるところへもってきて、特に北海道のような、何と申しますか、寒い地方になりますると、家族の問題、あるいは健康等の問題から、かなり困難がございます。しかし、最近におきましては、かなり交通事情等の関係もございまして、東京から北海道の方へ転任する方もふえて参りまして、北海道へ参った方は、二、三年のところでまた東京に帰ってくるというような人事交流が、相当進まれまして、そういった方向に進んでおりますが、何と申しましても、全体的には比較的に申しますと、不足でございます。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 この定員通り配置されておらぬところは、全国の職場の個所の数から言って何割ぐらいあるのですか。
  87. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) いずれ資料を差し出して正確なところを申し上げたいと思います。ただいまその資料を持っておりません。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 大よそわかりませんか、資料はあとからいただくことにして。
  89. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 非常に大まかに申しますれば、大体欠員は一%程度でございます。全体の一%、百人のうちの一人ということです。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 それは全体を通計した数字でしょう。ところがそうじゃなしに、私の聞いているのは、たとえばひまな裁判所であっても、そこから、ひまだからといって人を抜いていけるかといったら、そういうわけにはいかぬわけです、裁判の性質上。だから総計でというのではなく、一つ一つ裁判所をとっていって、そうして判事並びに書記官について、定員通りいっておらぬところが全体について何カ所あるのか、個所で聞きたいのです。それを大よその大まかな数字でいいですから。
  91. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 恐縮でございますが、資料を差し出しましてお答えしたいと思います。ただいま大まかなところも間違い等があるといけませんから、いずれ資料を早急に出したいと思います。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、それは一つ資料をいただくことにしますが、それらの定員などを全部補充すれば、それで最高裁としては、現在の司法事務は十分とれるという見解なのか。それを補充しても基本的に判事なり、判事補なりあるいは事務官、書記官、こういう層でどの程度不足しておるという考えをお持ちになっておるのでしょうか。これは一審強化等に関連してあなたの方の考えども若干私ども聞いておるわけですが、一審強化とか、そういう部分的な問題じゃなしに、一つの計画として、司法全体の計画としてどの程度の陣容ということをお考えになっているのか、現状に比較して。やはりそういう大まかな一つの目標というものがなければその中の一部として毎年々々これは予算化されていくわけですから、その辺のところを一つ計画がありましたら、お聞かせを願いたい。
  93. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 裁判所に勤めております職員の総数は、相当数に達しておると思いますが、大体におきまして判事、裁判官の数、判事補、簡易裁判所の判事を含めまして二千三百人です。これを標準としまして書記官、事務官、その他の職員の数も大体のところはきまるわけでございますが、われわれといたしましては、今年度の予算におきましても百数十名の増員要求をいたしました。これは裁判官の方でございますが、この百数十名の増員が果して認められたといたしましても、それで満足のいくような司法の運営ができるかどうか、この点についてはかなり疑問がありまするけれども、ただ全体的に申し上げますと、裁判官の数あるいは職員の数をふやすばかりが能ではない。われわれは増員が認められれば一番いいのですけれども、しかし、手続の改善なり、その他いろいろな工夫を加えまして、増員ばかりが能でないということも考えざるを得ないと思います。でありますので、大体のところは戦前と比べますると、全体の裁判所の要員というものはかなり戦後において上回っておりますので、いずれも毎年々々増員要求はいたしておりますけれども、やはりその限界はあると思います。その限界が一体それではどのくらいの数かというお問いがあるといたしますと、これはなかなかむずかしくて、非常に困難でございますが、われわれといたしましては、大体裁判官の数が二千五百人くらいの程度ならば、まずまずというところじゃないか。これは外国の例を申し上げましても、非常に少くやっている国と、かなり多くやっている国と両方ございます。御承知のように、大陸法関係では何千人という裁判官を擁しておりますし、英米系統では本来の裁判官は非常に少い。少い割に俸給が高い。多い国では俸給が低い、従って、法曹一元も実現もできないということになっている。そこらをあわせて考えると、どうも裁判官の数や一般の職員の数ばかりをふやすばかりが能でないという見解もあるのではないかという気もいたします。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 事務官と書記官の方はどうですか。裁判官については今二千五百名で先ほど御説明のあったような前提が入っているわけですが、一応お聞きしたい、事務官と書記官と同じような立場から見て。
  95. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) この裁判所裁判官以外の職員、すなわち書記官、事務官これらの方の数も、戦前よりはかなり上回っております。でありまするから、裁判官の数に限度があると同様に、やはり書記官、事務官の数にも限度があると思います。これも、一体どの程度に、裁判官の数の割に書記官、事務官をふやすべきかという点については、非常にむずかしい点がありますけれども、われわれといたしましては、ある程度戦前に比べましても相当数に達しているという気がいたします。先ほど申しましたように、この常勤職員を定員化することにつきまして、なるべくそういう定員化をして、安定な地位を与えたいと考えておりますが、全体としては、そうこれからふやす必要はないのじゃないか、これは非常に大まかな考え方でございますが、そういった工合でございますので、理想の線をどこに引くかということは非常に困難でございますが、非常に大まかに申しますると、裁判官の増員にも限度があると同様に、一般の職員の増員にも限度があるという考え方でございます。
  96. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと関連してお聞きしたいことは、位野木課長さん、大体裁判官の不足数はわかっておりましょうか。
  97. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 欠員でございますか。
  98. 青山正一

    委員長青山正一君) そうでございます。わかっていますね。調べたものがありましたらお示しを願いたい。
  99. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これは、きょうお配りしてある表に載っておりますが、現在における定員と現在員の差、それが欠員になっておりますが、参考資料の二というところですが、判事が大体五十六名、それから判事補が十九名、それから簡易裁判所判事が六十六名、これが現在の欠員数でございます。
  100. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと関連してお聞きしておきたいと思いますが、今の位野木課長さんのは、二月一日現在において調査しておる表を見ますると、判事さんは約五%の減、それから判事補は六%の減、それから簡裁の判事は約一〇%の減、こういうことになっておる。あなたのおっしゃる一%とはだいぶ差がありますので、これは二月一日以降に補充したのですか、どうなのですか、その点を。
  101. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) あるいは私の申し上げ方が誤解をお招きになったのかと思いますが、一%と申しますのは、裁判官を除きました一般職員の点でございます。今、位野木課長が言われたのは裁判官でございます。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 この表も結局総数についてのものであって、先ほどお尋ねした点は、わかれば一つ調査して資料として出してほしい。不足しておる個所の数ですね、その点。  それから少し先に進みますが、先ほど局長の答弁の二回のうちで、二回とも戦前の人数に比較して答弁をされているのですが、これは私だいぶ観点が違うと思うのですね、この点。また、違わさなければいかぬと思うのです。ともかく戦後の、私から言うまでもなく、裁判事務はなかなか複雑ですよ。手続自体が民主的になっておる点等もあるわけでしょうが、そういうことからこれは来ておるわけで、非常に性格上違ったものが出ておると思うのです。だから、これは、戦前などの数字にやはり比較するような考え方は、やはりもっと捨ててもらって現在の裁判所で書記官なり事務官、あるいは判事などが仕事をおやりになっておる、それそのものをやはり実態調査をして、これをどの程度高めればどの程度楽になるとか、それ自体を一つやはりつかまえて一つ標準を求めていく、こういうふうにしなければ、ちょっと筋が通らないと思うのですがね。そこの基本的な考え方についてどうお考えでしょうか。
  103. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、亀田委員のおっしゃる通り、われわれといたしましては、現在の実態の調査に基いて予算の要求その他をいたしております。ただ、大まかに申し上げると、戦前は一般の裁判手続というのは、むしろ大陸法に似ていたわけでございますが、戦後はどちらかと申しますると、英米法系になったわけです。それで、英米法系は何と申しましても、大陸系よりも裁判官の数は少い。でありまするから、全般的に申しまして確かに実態的な調査をした上でなるべく司法の面がうまくいくようにすべきではありますけれども、将来の動向といたしまして広く考えたときに、戦前の裁判官の数よりも多くあっていいかどうかという点については、相当考慮を要するということを申し上げたのでありまして、確かに裁判手続などは、一審の手続につきましては非常に丁寧になりましたけれども、しかし、二審以上につきましては、これは英米法系の、覆審と申しますか、さらにやり直すという制度をとらない、そういう点から申しますると、全体としてはやはりそう増員にも限度があるのじゃないかということを申し上げたわけでございまして、現在ではまだ増員の方向に進んでいいんじゃないかということを申し上げた次第でございます。
  104. 赤松常子

    赤松常子君 昨年たしか法務委員会で問題になったと思うのでございますけれども裁判事件で未処理件数がずいぶんたくさんたまっているというお話を伺いまして、非常に心配したわけでございますが、ちょっと今その件数は私記憶にはございませんけれども、そういう未処理件数ども考慮して、この定員というものが増加されているのでございましょうか、そういう問題との関連はどうなっておるのでございましょうか。
  105. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、赤松委員のおっしゃる通り、確かに未済事件が多いということは決して芳ばしいことではございません。未済事件をなるべく少くするように増員をするということも含まれているのでございます。これは非常にむずかしいことでございまして、事件が多くなりますと未済事件がふえますけれども裁判官の数がふえるばかりが能ではなくて、やはりやり方いかんによると思うのです。あるいはまた、一方から申しますると、在野法曹の弁護士の方々の御協力も加わればもっと早くなるのじゃないかということもあり得ると思います。いろいろな事情が加わりますので、まああらゆる方面において事件処理を促進するということの方途を考えておりますけれども、世界的に申しましても、非常に訴訟事件というものは元来が早くいかないという性質を持っているせいでございましょうか、なかなか困難でございます。しかし、一歩でも早くするように心がけている次第でございます。
  106. 赤松常子

    赤松常子君 私先ほどからの御答弁を伺っておりますと、その増員のワクのことを強くおっしゃっているようでございますけれども、実際生きたそういう裁判というものの処理に重点を置いていただくのが大事ではないかと思うのでございますが、それは増員するばかりが能じゃないでございましょう。けれども、この増員が果してそういう問題と関連してなされているのかどうか、これだけ増員すればそういう民衆の困っておる未処理事件がスムースに解決されていく方向に向けるのかどうか、この程度でいいのかどうか、もう一ぺん伺います。
  107. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) おっしゃる通りに、多々ますます便ずと申しますか、現在の状況ではもう少しふえた方がいいかと思います。しかし、申し上げるまでもなく、何分にも国家経済その他から申しまして、やはりこれにも限度があるかと思います。で、今度の予算におきましては、数年来認められませんでした判事補の増員が二十名認められたわけでございまして、これによりまして幾分でも、今おっしゃいましたように未済事件処理というものが促進の方向に進むことは間違いないと思います。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 とても総務局長が政治的でだめですね。もう少し裁判所の立場というものをはっきりしてもらわないと。で、私どもまあ議員になってからあまり裁判にもタッチしませんが、まあどんな角度から考えたって相当数足らないという感じですよ。それとやはり国民が望んでいるのは早く処理してもらうことと、それから間違いをやってもらいたくないということですよ。ところが、誤判という明らかな問題等がやはりたまには出てくるわけですね。これはもう司法の威信を失墜することはなはだしいのですよ。これはやはり裁判官に時間的な余裕——件数の負担等がかかれば、どうしたって人間のやることだから、そういうことにやはりなる。そういうことも手伝ってなる。だから、そういう定員がどれが適当かということは、私は局長の言うようなことではちょっと納得できないのですがね。裁判書の問題等も一方にある。こういう、これはもう判事と書記官との間でけんかになっているのですが、これだって結局は全体の人員の配置というものが楽になってくれば、これは法規はどうあろうと自然に解決する性質もまた一方では持っている。だから、いろいろな点を考えて、とにかく人の紛争の判断をする役所なんですから、よほどこの定員という問題は、定員というか、適正な人員という問題は真剣に考えてほしいと思う。そういう点から言うと、どうも判事の方は若干ふやすが、一般の事務官なり書記官の方はあまりふやす必要もないような感じを与えるようなことをさっきからおっしゃっているのですが、それは実際そういうふうにお考えになっているのですか。そういうことだとすれば、僕らもっと職場の具体的に困っている状況というものをまあお話をして、もう少し質疑しなければ、これはとてもおさまらぬ問題だと思っているのですが、どうでしょう。
  109. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 先ほど政治的とおっしゃいましたけれども、私としては、もうできる限りのお話を申し上げているつもりなんです。で、今お話の一般職員の点につきましても、これは、裁判官をふやせばやはりそれに応じてふやすのが普通なら至当です。ただ、このふやし方につきましても、いろいろな事情があるわけです。今年度は、判事補を二十名認められた形になっておりまして、まだ予算は通っておりませんが、しかし、それに応じまして一般職員の要求も初めはしたわけなんです。しかし、これは最後におきまして、先ほど来申し上げましたような関係もございまして、結局は、今度の判事補の増員は、単独体でやっておりまする審理を合議体に変えようというやり方でございまするので、単独体の職員を合議体に回せばいいじゃないかという考え方で、判事補だけの増員ということで、妥協と申しますか、そういう点で、われわれとしてはやむを得ざるものとして考えたわけでございます。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そういう部分的な手当ではなかなかうまくいかんところがたくさんあるんですよ、これは。  それで、次にもう一つ、私平生から非常に疑問に思っている点が一つあるんですが、それは、裁判官が行政事務に相当タッチしておるわけですね。これは、私、裁判所法からいっても間違っていると思ううんですが、どうでしょうか。たとえば、裁判所法の五十九条等を見ると、高裁なり地裁、家裁の事務局長、これは事務官の中から任命する、こうなっておる。ところが、実際は、たとえば、高裁の事務局長などは、全部判事がやっておるわけですね。それだけでも、七名か八名の優秀な判事というものは取られてしまうわけなんです。そういう点はどういうふうに裁判所としてごらんになっておるのか、御見解を聞きたい。
  111. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 御承知のように、裁判所法では、裁判官自身が裁判官会議を構成いたしまして司法行政をやっておりまして、根本的には、司法行政は裁判官会議にもとを発するわけでございますが、その裁判官会議できまりました司法行政につきましての施行、それから、裁判官会議に出します前提としてのいろいろな案等を作りますにつきましては、やはり事務局で担当せざるを得ない。その担当いたしまする事務局の長としては、一体どういう人が一番いいのか。これはいろいろな御見解もあろうかと思いまするけれども、何と申しましても、裁判の運営につきましては、相当裁判の知識、言葉をかえて申し上げれば裁判官あるいは弁護士となり得る資格の人を当てませんと、なかなかうまくいかない。例をあげて申し上げますと、裁判所の運営のもとになりまする規則を作りますにつきましても、その案は、やはり事務局で一応は考えなくちゃならぬ。そういたしますと、やはり、弁護士なり裁判官になり得る資格のある人をもって当てることがベターであることは間違いない。で、そういうところから、われわれ自身でも同様でございますが、最高裁判所事務総局、それから、高等裁判所事務局には、ある程度裁判官をもって当てざるを得ない。これは、将来、事務官の方あるいは書記官の方から、それだけの裁判官となり得る資格を得るような人が出てくれば、そういった事態はなくなるかと思いまするけれども、現状ではやむを得ないというふうに考えております。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 現状ではやむを得ないと言ったって、法律にはちゃんと、事務局長は、「裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。」——裁判所みずからが法律違反をやっていることになっているじゃないですか。その点の説明はどうなんです。もし、そういうことが必要なら、法律を改めたらいい——法律を改めた方がいいとは私は言わないですが、裁判所みずからが、そういう法律に矛盾するようなことをやっている。
  113. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) これは、規則によりまして、裁判官をもって当てることができるということになっております。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 どの規則です。
  115. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) これは、憲法第七十七条に基きまする規則がございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 規則を読んで下さい。そんな規則を勝手に作ることがよろしなくい。
  117. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今ちょっと手元にございませんが、司法行政に関する事務処理に関するものでございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 これは、昭和二十五年の最高裁規則第三号というやつですね。これには、「司法行政に関する事項の審議立案その他司法行政上の事務を掌る職のうち、最高裁判所において指定するものは、判事又は判事補をもってあてる。」。なるほど書いてあります。書いてあるが、規則というものは、あくまでもこれは法律以下のものですよ。法律事務局長はどういうものから任命すると、こういうことになっておる以上は、この事務局長の部分だけは少くとも規則のところには入っておらない、こう解釈しなければ、それでなきゃ、最高裁の長官が国会と関係なしに実質上法律を変えていくことになるじゃないですが。
  119. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) これは、憲法七十七条に基きまするいわゆるルール・メーキング・パワーに基きます規則と法律との問題に触れるかと思いますけれども、われわれの解釈といたしましては、今お話がございました五十九号自体が必ずしも、事務官から必ずしなくちゃいかぬという排他的な意味を持たない。従って、あわせまして規則で判事の資格ある人から事務局長をあてるということは法律違反じゃないという考え方を持っておるわけでございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁判所がそんな乱暴な解釈をされちゃ困りますよ。五十九条は、何回読んだって、「事務局長を置き、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。」。何も疑いもないですよ。そんなことを言い出したら、法律の規定なんというものは、はなはだいいかげんなものになりますよ。これはちょっと納得いかんですな。大体先ほどの都島簡易裁判所の問題だって、僕ら、とにかく納得いかん。法律の番人をもって任ずる最高裁が、そんな乱暴なことをおっしゃってはよくないと思うですよ。じゃそれは法律違反だからとやったって、結局は最高裁が判断することになるから、はなはだこれは国民として困るわけですよ。他の官庁がこういうことを言うとるのだったら、何か具体的な事件に関連してそれを提訴すれば、これは私は当然裁判所が認める問題だと思っているのです。どうもこれは納得いかんですな。  それから、元来、事務局長は判事の方がいいという説明であったが、この考えもちょっとおかしいと思うのですよ。司法行政事務に関することですから、司法行政をやっておるその立場でずっと長年苦労してきた人の方があるいは適任かもしれない。若干判事の職務のことなんかよくわかっている方があるいはいいという議論も成り立つでしょう。しかし、これは、あなたのおっしゃるように、そんな判事の経験のある者をつけた方がいいんだと断定すべき問題ではないと思います。そういう基本的な点についてもこれは疑いがあるので、法律ではちゃんとこう書いてあるのに、先ほど私が読んだような規則があるからといって、それで法律条文に真正面から衝突するようなことをやって、そうして不足しておる判事さん八名をそこへ持っていく、これははなはだ筋が通らぬ、これはもうちょっと最高裁のえらい人にきてもらって、この点はっきり私もう少し聞きたいと思います。  それから次は、この判事と判事補の数の比率ですね、これはどういうふうになっていますか、それと書記官と書紀官補の数の比率ですね、これは資料に出ておりましたかどうですか、ちょっと記憶しておりませんが。
  121. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 判事と判事補の比率でございますが、判事補の方が判事の約半数にちょっと足りない。それから書記官と書記官補の方は、ちょっと今、手元にございませんが、やはり書記官補の方が書記官の半数程度だそうでございます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 数でいくと、およそどれくらいになるのですか。
  123. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 書記官が三千百九十九名、それから書記官補が二千二百六十三名でございますから、ちょっとその半数ということではないようですが、三対二くらいであります。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、この書記官と書記官補の関係ですが、この書記官補の職務は、裁判所法第六十条の二で規定されておるわけです。「裁判所書記官補は、上司の命を受けて、裁判所書記官の事務を補助する。」と、こうなっております。ところが、昭和二十四年の最高裁の規則第十一号によりますと、書記官補に書記官の職務を行わせることができる、こういう規則が出ておるわけです。で、これも私は六十条の二の規定というものを没却していると思うのです。この点の見解はどうですか。
  125. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今のお話の点は、裁判所法の附則に、書記官補は、当分の間書記官の仕事をつかさどれるという規定があったかと思います。だいぶ前の改正でございますが。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 その附則第三項ですか、なるほど今おっしゃったような規定があります。ところが、これは「当分の間、」となっておるのですね、もうかれこれ十年近くになるのですが、こういうともかく「当分の間云々」ということを見ても、これは臨時の措置だと、こういうわけですね、立法の精神は。その間の解釈はどうなるのでしょうか。書記官補で実際上書記官と同じような仕事をやらされておるのは、先ほどの二千二百六十三名のうちどの程度あるのですか、まずその点を先にお伺いしましょう。
  127. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 正確な数字は今手元にございませんですが、あとで調べてお答えいたします。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 大よそわかりませんか。
  129. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) まだかなりあると思います。これはやはり書記官の地位というものを従前より高めまして、そうしてだれでもかれでも書記官にはしないというふうな建前をとっているのでございますが、ところが、実際はこの待遇の問題とか、そのほかの問題でなかなか現実には補充が十分できないということから、最小限度の必要上こういうふうな措置をとったのでございますが、まだその状態が遺憾ながら解けていないという状態で、なおこれを存続しているということでございます。
  130. 青山正一

    委員長青山正一君) 海部課長何かありますか。
  131. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) ただいま位野木課長からお話しがありましたように、書記官が約三千二百人ございます、それがまだ書記官の資格を得るに十分な人をもって埋められないというような形もありまして、約半数ぐらいが書記官があいているわけでございます。そういう関係がございますので、やはり書記官補の方に事務の代行を命じてやらせているわけであります。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの御答弁だけ聞いておって、書記官という仕事をやっている部面だけ見たって、人数がはなはだ不足しているわけですね。書記官に相当するような資格がない、書記官補は。そういうわけですから、われわれ国民の立場から見ても、仕事をともかく間違いなくスムーズにやってもらうためには、書記官というこのグループを対象に考えてみた場合に、はなはだ不足がある、こう言わなければならぬと思うのですが、その点、局長はどう考えますか。
  133. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 書記官はまだ成長途上にあると申しますか、まだ完全な書記官としての定員に満たないということでございます。書記官補の方はその定員を使っている関係上、書記官と書記官補と合せますれば、その数はほぼ満ちていることになるわけでございます。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことを言い出したのでは、それはもう一つの官庁、上から下まで全部総計して幾らということに突っ込める、そういうことは何も理論的分析にならない。われわれが多いか少いかと言っているのは、たとえばさっきから私若干申し上げたように、どこの裁判所で何名足りないとか、個所別でなければならぬし、また、総計して考える場合には地位別でなければいかぬわけです、仕事が違うわけですから。  それからもう一つ聞きますが、そういう何か寸足らずの人だ、書記官としては寸足らずだということをおっしゃるんですが、その人に書記官としての権限と義務を、二十四年の裁判所規則十一号によれば、書記官と同じ権限を与えておるわけなんです。そんなことは果して正しいことですか。
  135. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これはおっしゃる通り、建前といたしましては、書記官補は書記官の補助というのが本来の職務でありまます。でございますから、そういう状態はなるべく早くなくするということが理想であると考えます。当然であろうと考えるのでありますが、遺憾ながら現実事情はそれに間に合わないということなんで、まあできるだけそういう状態を早くなくしたいという考えでございます。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 それならば書記官と書記官補というものをむしろ一つにして、裁判所法で何か規定を設けておるということなら若干わかる。書記官補と書記官の資格の範囲というものを、そのかわり幅を広げてその中へ全体が含まるようにして、そうして実際上の内輪の扱いは若干違うことがあり得るかもしれないが、法規の建前からいくと、そういう臨時的なことがずっと続き、先ほどの御説明を聞きますと、あの数字ですと、なかなかここしばらく解決しそうにもないわけですね。それから書記官補も人によって違うでしょうが、ある書記官補から言うたら、とにかく書記官と同じ重い責任のある仕事をやらされておるんだ、それでしかも身分上は書記官でない、これは相当な不満を持っておる人もあります。だから全くその点は実態に合わない。やっぱりそういう意味では人員の不足ですよ、その点は一種の。そういうふうなところをもう少し検討してもらわなきゃならぬし、最後に、そこの六十条の二の二項と附則の三項、今私も拝見しましたが、それと二十四年の最高裁規則十一号、これとの関係ですね。これを私もっと最高裁の内部で検討して御説明を願いたいと思うんです。附則の三項では、「書記官の職務を行わせることができる。」、これだけしか書いてない。ところが、規則の方にいきますと、そういうことを命ぜられた書記官補は裁判所書記官の権限を有する、さらにまた、こう一歩先へ進んでおるんですね、地位が。そんなことを果して規則できめていいのかどうか問題があるわけです。法律できめるんならこれはわかるでしょう。しかし、法律でそういうことをきめる場合には、そのかわり書記官補の待遇というものをもっと書記官に近づけなきゃどうしてもこれは筋が通らぬですよ、そこは一つ検討願って、先ほどの五十九条の疑問と一緒にわれわれにわかるように一つ説明願いたいと思うんです。いいですか。
  137. 青山正一

    委員長青山正一君) 法務省なり最高裁のお方に申し上げます。ただいま亀田君から申し出のあった調査書類は、できる限り早く当委員会に御提出願いたいと思います。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 まあ最後に入っていきますが、例の、先だってから問題になっている裁判書の問題ですね、これは一体最高裁としては、これは私どもは判事がやる仕事である、こう考えるのですが、また法律的にも、第六十条にちゃんと裁判所書記官の仕事というものが明記されておる。そこにはそんな裁判書を書記官が作るなんということはない。これは本来の性質からいっても、裁判書という以上は、これはその他の文書とは相当違う。これは判事自体の法律的な判断なり、人生観がそこに出てくるのが、これが裁判書なんです。どちらが作るのかという争いになれば、これは当然判事である。まあ好意的にお手伝いすることがあるかもしれないと思うのだが、それは別の問題です。争いになってくればこれは当然判事自体が作るべきものだ、こういうふうに考えておるのですが、その点の御見解を一つ承わりたいと思います。
  139. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今亀田委員お話裁判書の問題とおっしゃるのは、新聞に出た問題かと思いますが、裁判書という問題を取り上げまして、一体もっと具体的にどういう点が裁判官がやりどういう点について書記官がやるかあるいは事務官がやるかという分析をせざるを得ないと思うのです。今お話の中に出て参りまする裁判書というものは、おそらく判断を除きました、実際にどういう文句でどういう書面に表わすかということ、言葉をかえて申し上げれば、タイピストを使って裁判書を作る場合、そのタイピストの仕事裁判官自身がやらなくてもいい、こういう考え方でわれわれは進んでおるわけなんです。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 その原稿はどうです。
  141. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) そのタイピストに頼むときの原稿は、書面に書いてある場合と、書かなくていい場合があると思います。たとえば頭の中にはっきりしていることは、タイピストにこういうことを書けということを命じればいい。頭の中にあって、タイピストにわかればいいので、それを常に書面に出さなくちゃいかぬということはないと思います。そういうふうにタイピストに書かせる場合におきまして、判断事項は確かに裁判官自身がやらなくちゃいけませんけれども、単にそれを字句に表わす点については裁判官が全部タッチする必要はないという考え方なんです。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 実際はそういうふうになってない。実際は判決などはそういうことはないでしょうが、各種の決定とか命令とか、そういうものについては、ほとんど書記官まかせですね。裁判所があとから見てぽんと判を押す、こういうことが多いのです。まあ保釈などの場合は、保釈の決定等はもちろん判事がやるでしょうが、事務的に先行しているわけですね、事務的に。判事からの一つの指示があって動くんじゃない。事務的に相当先行している場合が多いわけです。私はそれは普通のことはそれでいいじゃないかという見解もあると思うのですが、そういうことをやっていると、その事務が今度は実態にタッチしてくるようになって、間違いがやはり起る一つの原因になると思うのですね。だから私は判事はちゃんと原稿を作って、そうしてこれでいくのだということで、それをタイプに渡すならタイプに渡す、一々そういうふうにすべきだというのです。それを実際は書記官に相当やらしておりますよ。だから書記官からはその関係仕事はもう抜いてやるべきですよ。しかし、そんなきまり切ったことを一々判事がやらぬでもいい。そこが問題なんですよ。そんなきまり切ったことなら、判事の方で原稿を印刷して持っていた方がいいじゃないですか。一定の様式のものを……。そんなわかり切ったものなら、タイプでも、謄写版にでも刷って、そうして自分がやはり金額なりそういうものを入れて、こういうふうにして出してくれということで書記官の方に渡すならば、それは若干納得しますがね。現実はそうじゃないんですよ。その点、どういうふうにお考えでしょうか。
  143. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) この実際の裁判に当りまして、いろいろ種類がございますが、判断を裁判官がしないで裁判書ができるということは、これは絶対にないわけであります。ただ、今お話しのように、前に書記官なり事務官なりが先に書いて、そのあとに署名する、これはあり得ると思います。なぜと申しますと、先ほど私が申し上げましたように、口頭で大体のことがわかっている場合は、それを書いてもらって、そうしてあとから判断を加えることもあり得る。しかも、判断事項をほとんど要しない事項というものは相当ございます。たとえて申し上げれば、いろいろな決定、命令、これは御承知のように、書面審理いたしまする略式命令、それから、支払い命令等におきましては、これは当事者の名前を書くことだけでも相当な負担になる場合がありますが、こういったものはほとんど判断は要らないのですね。そういったところは、これは判事自身が手を下さずとも、結局はタイピストなりに頼むということが考えられるわけであります。しかも、裁判につきましては、原本だけではなくて、正本なり謄本を作る場合がある。それを一緒に作るということも考えられる。そういうことを考えますると、あらかじめ時間的に申しまして、あとから裁判官が署名する段階になって初めて見ると言われますけれども、これはそういうことがありましても、当事者の氏名とか、物件目録、そういったものは書いてもらっておいてもちっとも差しつかえないと思います。結局のところ、裁判官の判断のできるところがあればいい。  たとえて申し上げますると、これは弁護士の方にいたしましても、一々弁護士が訴状を自分で書くかといえば、そうでないと思います。簡単な事項については、やはり事務員の方をお使いになることがある。これと同じわけであります。それを、裁判所の書記官なり事務官、あるいはタイピストが全部原稿を作ってこいということも、これはあまりに実情に合わない。それから理論にも合わないことだと思います。これは、これに御反対なさる向きがあるとすれば、これはおそらく見解の相違と言わなければならないのじゃないかと思います。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 実情にも合わない、理論にも合わないというようなことをおっしゃいますが、たとえば昭和二十三年、三渕さんが最高裁長官のときだったと思うのですが、そういう裁判書というようなものは、一切判事自身がやるようにした方がいい、こういう通牒を出しているのでしょう。ああいう通牒は、一体どういうふうに皆さんはおとりになるのですか。私はそれが筋だと思います。当事者の名前云々といったって、そんなものは判事が書いたらいいじゃないですか。だから、私の言っているのは、判事としてはそこまで裁判書も書けるように、そういうことも含めて、一体定員というものを考えているのかどうかということを当初から聞いているのです。書くのが当りまえでしょう。自分の裁判ですよ。それは昔からそういうふうにやっているものですから、それが当然のようにお考えになっているのでしょうがね。理論からいっても、実情からいっても、人にものをやらせておいて、それが当然だというのはおかしいと思う。私は裁判というものはそういうものじゃないと思う。判事が全責任をもってやるべきものだと思っている。一字一句といえども間違っていたら、これは大へんな問題でしょう。どこにそういう根拠があるのですか、法的根拠が。裁判所の書記にそういうことを命令して、やらせていい理論的な根拠がどこにあるんですか、法規上説明して下さい。
  145. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) ただいま亀田委員からのお話の中で、三渕最高裁長官からの通達、二十三年当時に通達が出ましたが、あの通達をごらんいただけばおわかりかとも思いますが、裁判官自身で書けということは絶対に書いてございません。これはやはりその当時の事情において、書記官をわずらわさないようにしろというので、雇員なり、事務官なり、あるいはタイピストにやらせて、なるべく書記官にやらせるなということであって、裁判官自身でやれということは一つも言っていないのです。これをよくごらんいただけばわかると思います。  なお、裁判所法上の根拠を示せとおっしゃいましたが、われわれといたしましては、裁判所法の根拠といたしまして、法律の第六十条第二項に、裁判所書記官の仕事が書いてございます。この仕事は結局、訴訟記録と「その他の書類の作成及び保管その他他の法律において定める事務」とございます。この事務の内容は書記官のおもな仕事を書いてあって、こまかいすべてのことまで書いておるのではない。従って、これに付随する事務は当然入るべきだという考え方を持っております。これは亀田委員も御承知かと思いますが、たとえば民事の訴訟におきまして、訴状が裁判所に提出されます。そのときの訴状の受付はだれがやるかということは、法律できめてございません。しかし、これは結局書記官が受け付けてこれを受理する。そういうところは裁判所法自体の字句には現われておりませんけれども、訴訟記録を作るという本来の職務に付随するものとして、当然のこととして考えられてしかるべきだと思います。  それから、法廷におきましては、証拠品を出し、それを受け取るのも書記でございますが、そういったところもこの裁判所法自体にはございませんけれども、おもなる仕事を書いてあった。従って、従たる仕事はそれに当然入る。そういうことで、これは法律解釈としても当然のことだというふうに考えているのであります。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 それはちょっとまた、その説明が納得いきませんが、それは書類を受理する、これは単なる事実行為です。それと裁判書というものと、およそこれは違うのです。裁判書というのは、もう判事自体しかこれは関与できない、ある意味では。そういう意味で非常に神聖なものであり、私ども司法というものを尊重するからこそ、その議論が出るのですよ。だから、そんな書類の受付などとは比較にはならぬのですよ、質的にいって。  それと、二十三年の最高裁長官の通達には、なるほど書記官にやらすなと書いてあって、判事がそれを全部やれとは書いてなかったと、私もちょっと記憶が——そのように記憶します。しかし、お聞きしますが、書記官がやらないのに、まあ人を差別してはなはだ恐縮ですが、書記官がやらないのに、書記官よりももっと裁判上能力の低い、いわゆる雇とか、タイピストとか、そんなものにやらせられるわけじゃないでしょう。そうすれば、書記官がやらぬということになれば、結局、判事がやれという意味になるのじゃないですか。まさかタイピストやそんなものが、こんなことにタッチできるわけがないでしょう。これは当然、裏からいえば、判事が自分でやるべきものだと、裁判書は当然そういう意味になります。ああいう、あなたのような、開き直ったように、判事自身がやれとは書いてないからいいじゃないかと、そういう答弁では、とても納得できません。もう一ぺん答えて下さい。
  147. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) あるいは法律論になりますので、開き直ったようなふうにお聞きとりかと思いますが、実は開き直ったわけじゃございませんので、一つ……。ただ、今、お話がございましたが、受付事務が事実問題だとお話がございましたと同様に、判決の判断をいたしました裁判書を具体的に書くということも、タイピストを使っているという事実問題にすぎない。ですから、これは亀田委員が訴状をお出しになるとしましても、それに事務員をお使いになるのとちっとも変らないと思います。それが結局事実問題だという点については、受付事務、それから証拠品の受理、それから判決の清書をする、それから原稿を作る以外の、判断以外のことを書くということなら、これは事実問題にすぎないわけなんです。ですから、その点はちっとも私の説明は矛盾していないと思うのです。これはおそらく法律の問題ですから、あるいは御見解の相違もあるかと思いますけれども、私どもはその点は確信しておるわけでございます。  それからまた、今お話がございました最高裁長官の三淵さんの時代の通達、このときは私もまだ今のままでおりまして、当時のその相談にもあずかりましたが、結局のところ、あの当時は書記官が非常に少いので、本来の書記官の調書を作る方向に進むべきであって、できる限りそれ以外の雇員、事務員、事務官、あるいはタイピスト等にさせた方がいいということでやったのです。その点はあの通達には出ておりませんけれども裁判官自身作るべきだということは、あの当時は全然考えていなかったわけなんです。この点は通達の表だけごらんになると、あるいは御疑問がわくかとも存じますけれども、真相はそういうわけなんです。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、書記官は、自分が法律上規定されたそれは職務の範囲外だ、それは裁判官が一字一句でもそれをやるべきことだ。ただしそんな理屈っぽいこと言わないで、おれは忙しいのだから、これはこういうふうにしてくれぬかという話なら、これは別の話です。一つの命令的に、お前これやっておけ、こういった場合、そんな裁判に私はタッチできない、こういった場合に、書記官が一体悪いのか、判事が一体むちゃを言っているのか、どっちなんです。具体的に、現実にその点を一つ聞きましょう。
  149. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 裁判官裁判書を作ります場合に、タイピストがいない、あるいは病気でいない、それから事務官がいない、あるいは雇員がいないというときになりますれば、書記官に命ずることができるという解釈をとっているわけなんです。これは、先ほどお話がございました慣習じゃないか、しきたりじゃないか、それはあるいは奉仕にすぎないじゃないかというお話でございましたが、われわれは絶対にそうじゃないと考えておるわけなんです。  それで、六十条の二項に書いてございます事務に付随して、その中に付随事務として入るという考えをとりました以上は、その事務については裁判官の命令に従うということがその次の条項にございます。従って、裁判官の命令に応じなければならない義務を負うという考えを持っておるわけなんです。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 それなら、それの裁判所法を改正してもらわぬと、そういうことにやっぱりなってこんですよ。この六十条の第三項をそういうふうに引用されますが、これは「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。」、こういうことなんです。今問題になっているのは、そういう裁判書というものを作ること自体が裁判所書記官の職務であるかどうか、そこが問題になっている。これが職務だということになれば、それについてああせい、こうせいと言われれば、それに従うのは当りまえです。それの範囲に属するかどうかということが、この第二項から見たってはっきりせぬ。そこが問題になっているわけです。そこの問題になっているのを、当然含まれるような前提を先に作ってしまえば、それは第三項で命令に従えとあるから、あなたのおっしゃるようになるのでしょうが、これはそう簡単に第三項に持っていくわけに私はいかぬと思うのですよ。はなはだ疑問がある。書記官の方はともかく、そういうことは今まで慣習上好意的に手伝ったことはあるかもしれぬが、しかし、こういう公けの問題になってくれば、それは判事さんがやってもらわなければいかない、こういうのは私は判決の性格からいって当然だと思う。この六十条三項では説明にならぬですよ。もう一ぺん説明してもらう。
  151. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) それは見解の相違に帰するかと思いますので、あまり申し上げても重複いたします関係から、省略いたしますが、私ども考えは、六十条の二項の職務の範囲に属するという考え方を持っております。法律で何もかもこまかいことまで規定するのはいかがかと思い、むしろおもな仕事だけ書いておけば、それに付随するものは当然含まれるという考え方を持っているわけであります。タイピストのやるような仕事でも、これは事実問題にすぎない。そういうところまで一々法律に書くとなりますと、法律は非常にこまかくなり過ぎて、かえってわかりにくいので、おもなことだけ書いておけば、それに当然付随するものは含まれているという解釈が出てしかるべきだと思う。そういう考え方を持っております。これは解釈の問題でございますから、あるいは見解の違いがありますれば、これはまたやむを得ないと思います。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 それは、こまかいことを一々法律に書く必要のないことは私もわかります。そういうような常識的の限界というものはあります。しかし、この裁判書というのは、そんな簡単なものではないですよ。皆さんはしょっちゅう裁判書を見たり、裁判のことばかりやっているので、多少惰性になって、簡単に考えておるかもしれない。しかし、これは外部から見たら、大へんな書類ですよ。間違って書かれたりしたら、自殺する人が出るかもしれないくらい重大な問題です。私は、事務的に扱っても大して間違いはないということであっても、開き直って制度上どうだということになれば、これは判事の責任においてそれは一切処理していくべきで、そういうことでなければ決して筋は通らぬと思う。これは今の法規上だって、これは明確でない。あなたのような解釈をするなら、もうちょっと明確にしてもらわなければいかぬですよ。そんな改正をしてくれという意味ではないのですが、結局、こういう問題が書記官と判事の間にあるのは、これは天下周知の事実ですが、結局、両方とも仕事が多過ぎて困っているのでしょう。その点の判断はどうお考えでしょうか。
  153. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) われわれの考えでは、裁判官が幾ら増員されましても、字句の末まで自分で書くという必要はないという考えを持っております。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 私、何べんも言うように、おきまりの文句で印刷したものを判事が持っておれば、同じことを何べんも書く必要はない。そこに原告なり、被告の名前だけ書けばいいものなら、判事がそれを持っておって、少くとも名前や金額は判事がやるべきですよ。裁判書の性格からいって当然じゃないですか。そんな、あなた、神聖な裁判に対して、最高裁の人みずからがそんなことを考えているようじゃ、いかぬですよ。そういう惰性を払拭しないから、いつか埼玉で高井判事ですか、ああいう下の人にまかせたような事務がとられて、そういうことがだんだん高じて、思わぬ失態等も出てくる。そういう考え方は裁判書というものを軽視することになる。もしそういうことまで書記にやらせるなら、むしろ書記の地位というものをもっと高めるということを一方で考える、そういうことならそれもまたわかるが、そこに間違いが起きた場合、一体それはだれの責任になるのですか。予期し得ない間違いかもしれないが、間違いが起きたら、どちらの責任ですか。それは一々具体的に当らなければわからぬとおっしゃるだろうが、外部に対してはそれでは済まない。
  155. 大川光三

    大川光三君 裁判書に多少関連するのでありますが、今日控訴趣意書、上告趣意書というものを、控訴の方は五通ですか、上告の方は七通ですかという多数の副本をつけるということになっておるのですが、これは大体どういう法律の根拠でああされるのだろうかという一つの疑問がある。しかし、在野法曹の立場から申しますと、実際裁判所の書記官も忙しいので、われわれは五通または七通の副本を出すことによって裁判書を簡単に作成できるという一助とするために、法曹としては文句を言わぬであれしてやっておる。一つ在野法曹が裁判に協力しようという精神をわれわれは持っておるのですが、結局、規則においてあれはどうなんですか。
  156. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、大川委員お話の点は、刑事訴訟規則、民事訴訟規則によりまして、ある限度の副本をつけろという規則がございます。これは何ゆえかと申しますと、御承知のように、高等裁判所最高裁判所におきまして判事の数が複数でございますので、記録にとじられました原本だけでは十分にいかないというので、それを出していただく。それからまた、相手方に送達するという必要もある。そういうところから、規則で定めておるわけでございます。
  157. 大川光三

    大川光三君 ところが、複数の裁判官がおられて、その裁判官に相当する副本を出すとか、あるいは刑事事件の場合でありましたならば、訴訟関係人の検察庁に出すというこの数は、これは当然必要であると思いますが、しかし、裁判書をなさるときに、弁護人が出した副本を貼付して、たとえば控訴人は、控訴代理人は別紙のごとき趣意書を出したという、あれをやはり裁判書の中にも、原本に利用されているのじゃないですか。
  158. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) おっしゃる通りでございます。
  159. 大川光三

    大川光三君 そこで、われわれの考えからは、これは在野法曹といわず一般訴訟関係人が、裁判に協力するという精神で、私どもとしては不平なく実はあれを出しておるわけですが、ただ憂うることは、なるほど専門家の在野法曹はいいのです、弁護士は。ところが、当事者があの副本を作ることはなかなか簡単でないのです。複写をする用紙とか、コピーをとる版を持っていない。特に刑事被告人で勾留されている被告人みずからが控訴趣意書を書くとかいうような場合には、非常に困るのでありまして、その点は多少考慮されてしかるべきだと、こう考えておるのですが、その点どうですか。
  160. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君)  今、大川委員お話しの点、当事者本人にとりまして非常に困難な場合がある、これは訓示規定に解釈しておりまして、やむを得ない場合はやむを得ないとして扱わざるを得ないと思うのです。ただ、訴訟をいたします上におきましては、やはり何と申しましても、弁護士の方にお頼みになるのが常道じゃないか。そして弁護士の方にお頼みになれない人には、刑事では国選弁護人、民事では訴訟扶助という方向に進めて、訴訟に出てくる書類などは完備したものでお願いしたいという方向に進みたい、こういう考えでおります。
  161. 亀田得治

    亀田得治君 最後に一つ具体的にお聞きしますが、たとえば窃盗などでわかり切ったような判決、そういう場合に、懲役一年のところを二年と書いてある。これは法廷では言い渡しはするわけだが……。そういう場合の責任はどっちにあるのですか。その判事は、これはもうわかり切ったやつだから、これは懲役一年でやっておいてくれと言った場合に、書記が勘違いして、二年というふうに書いた場合に、それは効力はないですよ、そんなものは宣告しておらないのであるから。ないが、外部から見る裁判所自体に対する批判、その損失というものは非常に大きなわけですね。そういう場合の責任はどっちにあるのですか。
  162. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、亀田委員のお問いの点は、ちょっと私のみ込めないのですが、法廷で言い渡したのが懲役一年で、判決書が二年ということでございましょうか。判決書には、裁判官の署名があるわけでございます。それはもう当然裁判官の責任であって、書記官その他事務官、タイピストの責任では絶対にないわけでございます。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 そうではない。私の聞いたのは、法廷で懲役一年と、こう宣告した。そこで、さらに書記に対して、これは一年と言ったから一年とやっておいてくれと、こう言うわけです。内容はわかり切ったやつであるからといってやらせたところが、書記が間違って刑のところを二年と、こう書いて、そしてそういう裁判書を送ったというようなことがあったとした場合に、この判事は判事で、おれはちゃんと言っておる、法廷でも言っておるし、そんなことを聞き間違えるのはけしからぬと、こう言うでしょう。だけれども、書記からしてみれば、そんなことを一体まかされるのはおかしいので、タイピストに出すのなら、判事自身がちゃんと原稿を作って、そしてタイピストの方へ言ってくれなければならない。そういうことでしょう。他人に仕事をさせておいてそんな責任追及は困る、こうおっしゃった場合に、一体どっちがこれは正しいのですか。
  164. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) ちょっと、先ほどから判決書の作成についていろいろ御議論がございますが、本来裁判書は裁判官が責任を持って作成すべきものである。これは異論のないところであります。ただ、何でもかでも、判決書に関する限りは全部判事がやらなければいけないかということになりますと、そこまでは、むしろ国家的に考えても、やらない方がいいのじゃないかということも考えられるのでありまして、われわれ裁判所に初めおったことがございますが、そのときの経験を考えましても、たとえばそのときは判決書でも全部墨で清書いたしました。これは長い判決でも全部自分で初めから墨で清書したのでありますが、やはりあまり間違ってもどうかというので、一個所間違ってもまた初めからそのページは書き直すというふうなことで、大へんな手間であります。これだけの力を入れてやってもよろしいのでありますが、事件が少しならそれでよろしいのでありますが、しかしながら、事件が相当多いのであります。その場合に、あくまで何でもかでも全部裁判官がやらなければいけないかということになりますと、やはりこれは国家的に考えましても、そういう機械的な仕事はなるべくそれにふさわしい人に委譲して、ただそれをあとで責任を持って十分検討するというふうにした方が合理的ではないか、こういうことが考えられるのです。そういうふうな意味から、裁判書の作成についても、できればタイプを利用するというようなことは、これは十分考えていいのじゃないかという考え方をいたしておるのであります。  ただ、責任においては、もちろん裁判官が全責任を持ってやるわけであります。そういう考え方で処理した方が、全般的にその方が国家的にも合理的な負担で、裁判の内容としては正しいものである、こういうことも十分考えられるし、そういうふうなことを考えた方がいいのではないかという考え方をいたしておりますので、横の方から、十分わかり切ったことかもしれませんが、申し上げて御参考に供したいと思います。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 結局、この問題は、書記官の方が好意的に事務を扱う、こういうことしか私はあり得ない問題だと思う。裁判書の性格からいって、これはタイプに打たれるのはいいですよ、原稿を判事が作って出すわけですから。だから、そういうふうな理解であれば、私は、双方忙しいものだから、こういう問題になっておるわけですが、そういう理解であれば、これはそんなに問題はやかましくならないと思う。それを、何か書記官の方がそれをやらなければ命令違反だとか、いや場合によっては懲戒だとか、何かそういうようなふうなこともおっしゃるものであるから、それで書記官の方だって、おれの責任の持てぬことについてそんなことを言われても困るという、やはり議論に発展してきているわけですね。だから、そこをもう少し、そう一方的な押しつけ的な議論じゃなしに、もう少し納得のいくようなやはり考え方というものを私は持ってもらいたいと思う。必ずしも私の言う通り議論になるかならぬかは別として……。どうも、いろいろ最高裁当局が言われておるのは、少し私は強過ぎるという感じを持って見ているのです。そういう再検討の余地はこれは全然ないものですか、お答え願いたい。
  166. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) この点は、先ほど来關根局長から繰り返し申しておられましたが、現行法の解釈問題でございます。これは御指摘のように、裁判所法の六十条の第二項の字句は、必ずしも明確とは申せないと思います。しかしながら、今までの裁判所法ができた当時の事情、その後の経過等から考えましても、書記官に裁判書の浄書、あるいは簡単なものについての機械的な補助というふうなものが、全然排斥される趣旨かと申しますと、これは今までの経過から申しまして、やはりそういう趣旨ではなかったというふうに解釈せざるを得ないと、われわれも考えております。ただ、書記官といたしましては、これはやはりもっと本来の仕事がございますのですから、そちらの方にできれば力を注がせる。そうして浄書とかそういうようなものは、タイピストとかそういうふうな人にやらせる方が合理的だというふうに考えております。
  167. 赤松常子

    赤松常子君 私は大へんしろうとでございまして、先ほどからの御質問を伺ってみまして、裁判所というものが何とも私、権威のないようなものに考えられてしようがないのでございます。それでいいのか。裁判を受ける側の者にとりましては、ほんとうに一生一度のことであるし、それは累犯する人もあるのでございましょうけれども、多くの人にとっては大へん大事な最後の判決なのでございます。それが、今おっしゃるような、ただ機械的に、軽々しく扱われる。ひょっと間違えば、どこに責任の所在があるのかないのかわからないというような、そういうことで扱われておるものなのかと伺いまして、ほんとうに私は驚いた次第でございます。  今いろいろ伺いますと、法律の第六十条第二項でございますか、それの解釈も、われわれの解釈と、それから専門家の解釈を伺ってみますと、一致しない。全然、今おっしゃるように、立場の相違だというようなことになって、平行線のような結論になっておるわけでございますが、私どもほんとうに、こういう点、もし不備なことがあれば、これの改正、これの研究というところに、もっと目を注いでいただきたい、こう思うわけでございます。私どもはほんとうにしろうとでございますけれども、今まで神聖であるその裁判書というものが、こういうふうに軽軽しく書記官の手で書かれていたか。これは最後の責任は裁判官にあるとおっしゃっても、そういう動機というふうなところに非常に私は不安と、それから何か軽々しさというものを感じた次第でございます。こういう点に対して、その裁判所法の第六十条でございますか、それに対して少しお考えになって、もっと明確に、誤解のないようになさるようなお考えはございませんでしょうか。
  168. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 問題は二つに分れると思います。本来裁判書というものは全部、機械的なことまで裁判官がやった方がいいか、それから、もしそういうようなことになりますれば、字句をどういうふうにするか、裁判所法解釈上それをもう少し明らかにする方がいいか、こういうような二つの点になるかと思いますが、むしろお問いは初めの方の点が重点かと思われるのでございます。  その点につきましては、先ほど申し上げましたが、今の状態から申しまして、裁判書については機械的な部分につきましても、裁判官が全部やるということはむしろ合理的じゃないのじゃないか。決してそのために裁判書自体が権威のないものだとか、あるいはいい加減なものであるとかということは、言えないものである。これはむしろ、今の裁判官は全生命を打ち込んで、判決書の一字一句といえどもおろそかにしないように、むしろ判決書にとらわれ過ぎるのじゃないかと思われるくらい、心血を注いでいるのじゃないかというふうに考えます。ですから、機械的にタイプを利用するとかというふうなことが裁判の内容をもおろそかにするということは、今の状態としては私は考えられない、憂える必要はないのじゃないかというふうな気持を持っているのであります。
  169. 赤松常子

    赤松常子君 私の申しますのは、機械的というのは、このタイプを使うというようなそういう意味で言うのではございません。だからといって、先ほどあなたがおっしゃったように、今の時代に毛筆書きで一々お書きになってほしいというのではございません。私どもしろうとが考えますのは、そういう判決なり事件というものが千差万別であろうと思う、そういうしろうと考えがあるものですから、あるいは窃盗にいたしましても、それだけにいろいろ私は個人の生活の背景で違うと思うのでございますね。そういうことが何か十ぱ一からげに、しゃっしゃっと解決されるというようなところに、何か不親切なそういう点を感ずるのであって、機械的というのは、今言ったように、それはタイプをお使いになってけっこうでありますが、問題というのは千差万別であろうというので、その裁判書にやはり裁判官のほんとうに涙と血のあふれた、そういうものがほしいのであります。そういう意味で言うのでございまして、もう少し解釈というものをはっきりさせる必要があるのじゃないか。
  170. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 説明が不十分でございましたと思いますが、普通の判決につきましては、おそらく書記官が書くというようなことはないと思います。今問題にしておるのは、むしろ、たとえば簡単な期日指定の決定とか、それから逮捕状にいたしましても、これはもう要求してきた事実というものがございまして、あと住所とか氏名とかということを書けば、あとでそれを記録と照合して検討いたしましてやる。それから証人の召喚ですね、これなんかも、これはむしろ形式的な記載事項が多い、ほとんど全部でございますから、そういうふうな簡単なものについて、不動文字を用いる、あるいはほかの人の助力を得るというふうなことがございますのですが、普通の判決については、これは書記官が書くというようなことはほとんど例が少いのだと思います。
  171. 大川光三

    大川光三君 ただいま議題になっておりまする裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、先ほど亀田委員から問題点のほとんどについて御質問がございましたので、私は問題点を整理する意味におきまして、四、五点、事務的な質問をいたしたいと思うのであります。  まず、本法案の提案趣旨の一つは、一審充実強化の一環として、判事補の増員によって合議体の活用を拡充しようというところにねらいがあると思われますが、これは率直に言て、私は、きわめて一審充実強化というためには消極的な行き方でないか、かように考えております。いやしくも一審充実強化のために合議制を採用するということでありますれば、その合議体には常に優秀なる裁判官を必要とするということは、これは論を待たないのでございまするが、先ほどの御説明によりましても、本年の二月の一日現在で判事五十六名、判事補十九名、簡易裁判所の判事が六十六名欠員をいたしておる。そこで、定員の増加ということもさることながら、まず欠員の補充が先決問題であって、かくすることが一審充実強化に最も貢献するゆえんだと考えるのでありまするが、一体欠員を補充しただけで一審充実強化の目的が達せられないのかどうかという点が、第一の質問点であります。  また、判事補を二十名増員して、これを判事補二十名の定員をふやして、そうしてこれをどう配置しようとするのか。いわゆる判事補の採用並びに配置計画が、第二の質問点であります。  それと、いま一つは、一般的な裁判官の欠員補充についていかなる対策を持っておられるかというのが、第三点の質問でございますが、この点に関してまず御意見を伺います。
  172. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 一審強化というための方策については、御指摘通り、結局、裁判官を質的、量的に増強する、これは一番根本的な対策じゃないかと思います。質的の点はしばらくおきまして、量的に申し上げましても、今の裁判官の数は決して、戦前の事件数等から申しましても、先ほど来問題になりましたように、十分とは申せないにもかかわらず、欠員がございます。この欠員がどうしてできたかという点が、これはもういろいろ理由考えられるのでありますが、現実の問題といたしましては、ずっと、ほとんど、判事につきましては、もう裁判所法のできまして以来、欠員の十分埋まった時代はなかったのじゃないかと考えておりますが、やはりこれは待遇の問題とか、そのほかで結局適当な人が得られないということで、今日まで至ったのであります。欠員を補充しないで増員をするということは、これは現実の問題としては無理でございますが、まず欠員を補充してから増員を考えようというので今日に至ったというのが、大体の経過と考えております。また、御承知のように、裁判官のうち特に判事につきましては、五十数名の欠員がございますので、今判事を直ちに増員するということは、先ほど申し上げましたように、やや行き過ぎと申しますか、順序として少し早過ぎるかというふうに考えられますので、判事補の方が、これは比較的欠員が少うございますし、補充が比較的容易でございます。修習生の修習を終った人、これの採用を増加いたしますれば、今の欠員を埋め、しかも増員分を埋めて十分余りあるという見込みがございますので、このたびはさしあたり判事補の増員をいたしたいというのが経過でございます。  なお、この裁判官の中の判事の増員につきましては、これは最高裁でもいろいろ考えておられるようでありますが、結局、在野法曹とかそのほかの方面からは、これも極力適当な人材が得られるように働きかけておられるようでありますが、そのほかに、判事補で十年の期間を経過すれば判事に任命し得ることになるのでありますが、そういう人がだんだんふえておるわけであります。今までは、ちょうどこの戦争の前後にわたりまして、法曹の養成が十分でなかった。そういう時代のブランクが今まで影響いたしておったのでありますが、だんだん戦後の状態が落ちつきまして、判事補になる人が数多くなった。その人がだんだん育ってきまして、この十年の期間を経過して判事になり得るという人が、毎年増加してきておりますので、この欠員も遠からず充員できるのではないかという見通しであります。
  173. 大川光三

    大川光三君 判事補の供給源と申しまするか、これは修習生。修習を終えた方から採用するのは容易であります。しかし、適当な裁判官を他に求めるということ、これは実際むずかしい問題と思いまするけれども、承わりますると、本年度の予算請求に当って、判事の増員計画を立ててその予算を請求されたと。しかし、不幸と申しますか、その予算は削除されましたが、もし当初の要求通りの予算が承認された場合に、実際裁判官はどうして補充するというお考えがあったか、伺いたいのです。
  174. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) ただいまの大川委員お話、これはできる限度において増員要求をいたしましたのですが、結局二十名になりました。ただ、最初の要求通りもし認められたといたしました場合の供給源と申しますか、そういうお問いかと思います。これは判事補の採用、今、位野木課長がおっしゃいましたが、判事補の採用以外に、やはり弁護士の方、検察官の方から結局入っていただくという以外にはないわけなのです。できる限りの努力をする以外に、もう道がないわけなのでございます。しかし、少しでも判事補の増員が認められますれば、判事補のうち三年を経ました者は簡易裁判所の判事に任命することができます。でございますから、その簡易裁判所判事の欠員が五十名以上でございますので、そちらの方向に、判事補三年以上の裁判官簡易裁判所判事にかわりますれど、その限度、それだけ判事補の定員があくことになりますから、そういった方策も最初は考えていたわけでございます。
  175. 大川光三

    大川光三君 なるほど、判事補三年以上たった者を簡裁の裁判官にできるという規定もわかりますし、いわゆる特例判事と申すのですか、これによって十年以上経過しなくとも一応裁判官仕事をさせるということはわかるのでありますが、これは結局、われわれがやかましく言っておる一審充実強化のために人を得られないから、やむを得ずこういうことで形だけを整えようという一つのまあ消極的な手段であって、私は、そういうこと自身がすべての裁判官の質的低下と申しますか、お粗末な合議体ができ上っていって、ほんとうの意味の一審充実強化にはならぬのじゃないのかということを憂えるのであります。従いまして、先ほども問題になりました法曹の一文化という点については、今後なお強くその面の努力を払われますように希望をいたしておきます。  次に、予算関係でございますが、今回の判事補の増員に伴いまして、昭和三十三年度裁判所の人件費は、通常経費において千二百五十九万四千円を増額計上されておりまするが、その内訳の内容、並びに経常額で十分のまかないがつくかどうかといことを、事務的に御説明をいただきたいと思います。
  176. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 判事補を二十名増員いたします予算といたしましては、千二百五十九万四千円、これで今のところでは十分ということになろうかと思います。内訳で申し上げますと、職員の俸給、扶養手当、共済組合の費用、それから公務災害補償費、その他、でございまして、一般のほかの判事補の頭割りでいきますと同じ割合の数字でございます。
  177. 大川光三

    大川光三君 先ほどもちょっとお話が出ましたそれに関連いたしまして、昨年判事補の職権特例の一部改正によりまして、判事補も高裁に転補して、その合議体に加わることができるようになりましたが、現在その運用状況はどうなっておるか。また、そうした結果、地裁の裁判の運用に支障を来たしておるようなことはなかろうかという点について疑問がございますので、御説明をわずらわしたいと思います。
  178. 關根小郷

    最高裁判所長官代理者關根小郷君) 今、大川委員のお問いの点は、昨年認められました判事補の職権特例の一部改正で、五年以上の判事補が高等裁判所の陪席判事になり得ることに相なりまして、現在約十八名高等裁判所に入っております。で、この制度自身は、本来は第一審充実という点から、十年判事補を経ました本来の裁判官、判事に、一審の裁判をやってもらうというところから出た問題でございまして、結局、今十八名判事補の方が高等裁判所に入っておりますが、それにかわりまして、高裁からもそれ以上の裁判官が地裁に出て、そして審理に一体に相なっておりますので、一審充実の点では一歩進んだかと思います。
  179. 大川光三

    大川光三君 その点はよくわかりました。  なお、この提案理由によりますと、この中に、地方裁判所が複雑困難な事件をもやむなく一人の裁判官で取り扱っていることに、裁判官の不足以外の原因があるのだということを述べられておりますが、その裁判官の不足以外の原因とは何をさすのか、説明をお願いしたいのであります。
  180. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 提案理由で申し上げましたのは、おそらく建物だとかそういうような施設の点もございますので、裁判官の不足だけではないという程度の趣旨で申し上げたというふうに考えております。
  181. 大川光三

    大川光三君 やはり一審強化に関連いたしまして、二人制合議体の採用ということも考えられなければならぬと存じます。現在の合議体が三名であるということに、必ずしもこだわる必要がないと私ども考えておるのでございまして、現に第一審の強化方策協議会の答申の中にも、二人制合議体の採用ということがうたわれておったやに承わるのでございますが、その点について、その後この二人制合議体というものの検討の結果、どういうようになっておるか、また当局でこれを採用するという御意向があるかどうかという点を伺います。
  182. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 一審強化のために二人制合議体の制度を採用するかどうかという問題につきましては、御指摘通り裁判所の方で開かれました第一審強化方策協議会では、そういうような制度を採用してはどうかという意見であったようでありますが、それに従いまして、法務省でも、十分検討に値する制度だということから、法制審議会の審議にかけまして、いろいろ論議をいたしたのでありますが、何分にも二人制の合議というのは、やはり自然に考えますれば偶数でございますから、合議制の数としては不自然を免れないのみならず、万一二人の意見が相反したという場合には、どういうふうな措置をとるべきか、そういうふうな事実が相当起るということになりますと、かえって手間がかかるのじゃないか。新しい裁判官を入れてやるか、あるいはまた別な合議体に移すかということになりますと、また初めからやり直さなければならないというふうなことも考えられますし、それからまた、現実の問題といたしましては、一方が相当年輩の判事さんであり、一方は若い判事補の人であるということになりまして、実際の運用がどういうふうにあるべきかということになりますと、またいろいろ、本来判事補としては、そういう場合にむしろ調査官的なものにすっきりしてしまった方がよいかどうかというような意見も出てくるのでありまして、いろいろ問題がございますので、なお検討をいたしたいという状態であります。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶ時間もたちましたから、あと二つほど私残っていたのをお聞きしたいのですが、この速記官の制度ですね、これを今採用されて、今回は予算措置では約百名くらいふえるように聞いているのですが、そうでしょうか。
  184. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 本年度の予算でございますか。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 ええ。
  186. 西山要

    最高裁判所長官代理者西山要君) その通りでございます。百名ふえます。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、百名速記官をふやす代償として、書記官を減らすというふうに扱われているようですが、その点どうなっているのですか。
  188. 西山要

    最高裁判所長官代理者西山要君) その通りでございます。
  189. 亀田得治

    亀田得治君 私ども書記官の諸君から聞くのですが、一名速記官をふやしたからといって一名書記官を減らしていくというのは、少し問題があると思う。最高裁と大蔵省の間では何かそういう黙約があるようですが、果してそういう黙約をしているのかどうか、それが一つ。  それからもう一つは、実際の事務上の面等を検討すると三名くらいふえたところで一名書記官を減らすということでなきゃならぬのじゃないかというふうに、私どもは聞いているのですが、この点は当局としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  190. 西山要

    最高裁判所長官代理者西山要君) 先ほどの、百名に対して百名書記を減らすんだ、そういうふうにちょっと軽率に申し上げましたが、事実は官でなくてよろしいのです。補でもよろしければ、また実際上大蔵省とのあれでは、官でも補でもいい。予算の上ではそういうふうに減らすようにいたしております。
  191. 亀田得治

    亀田得治君 現在判事補の定員不足は、先ほどはっきり説明がありましたが、書記官なり書記官補の方も定員に満たぬわけでしょう。そういう状態で、この速記官を百名ふやすというそれに見合って、定員に満ちておらないものを減らすということは、現状においてはふさわしくないと思うのですが、どういう見解です。
  192. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 速記官の裁判事務処理上における全能力と、書記官の事務処理上の能力というものが、現在完全に一対一であるということは申し上げかねるかもしれません。しかし、速記官の能率というものは次第に向上しておりまするので、一対一という予算上の切りかえも、まだ当分の間さほど影響がないのじゃないかというふうに考えております。
  193. 亀田得治

    亀田得治君 そういう約束になっているのですか。
  194. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) そういう約束はございません。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 そういう約束がないのであれば、私は、書記官自体が不足等のためにいろいろな問題が派生的に起きているわけですから、この点は、もう少し裁判所の立場というものを大蔵省に対して主張してもらうようにしてもらわないと困ると思うのですね。それから、もう一点ですが、交通事件が非常にこれはふえておるわけです。これに対する人員の手当などはやっているのでしょうが、実際に実務に差しつかえない程度になっているのかどうか、人員の関係。それからもう一つは、たとえば兵庫県ですと、神戸の交通裁判所ですね、これが兵庫県の県庁の中に置いてあるわけですね。私はああいうことははなはだよくないことだと思うのです。で、やはりいかに交通事件といえども、正規の裁判になる場合、発展する場合もあるわけですし、裁判所自体を県庁の中に置くといったようなことは、はなはだ現在の制度からいって間違いだと思うのです。ほかにもそういう事例があるのかどうか、その辺のところを少し御説明願いたい。
  196. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 速記官を書記官と振りかえにならないようにせよという点、十分努力して、増員になるように努力したいと思います。  それから、県庁で交通裁判をしているという点は、調査してお答えいたしたいと思います。
  197. 亀田得治

    亀田得治君 それはわかっていないのですか。神戸以外にはそういう事例はないのですか。
  198. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) 聞いておりませんのでございます。
  199. 亀田得治

    亀田得治君 これはお調べ願って、そういう事態があれば、速刻場所等を変更してもらいたいと思うのですが、もしそういう状態になっておれば、変更することに異議ないでしょうか、どうでしょう。
  200. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) もし神戸の県庁でやっているというような事態がございますとすれば、それは必要やむを得ざる措置としてそういうふうになっているかと思いますけれども、なおよく実情調査いたしまして、申し上げたいと思います。
  201. 亀田得治

    亀田得治君 それから、交通事件全体に対する人員配置等はうまくいっているのですか。最近激増しているわけですが。
  202. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君) その点は、大体うまくいっていると考えております。
  203. 亀田得治

    亀田得治君 大体、以上で私質問を終りますが、ともかく、まあ今度の定員法の改正では二十名と四十四名の増、こんな程度なら、私どもとしては、むしろ現在の不足しておる定員そのものの充足ということをやってもらった方が、むしろ実際は効果的なんです。だから、そういう意味では、はなはだこの法律案には私ども不満なんです。しかし、まあ結果的には若干でもよくなることだから、これは反対もできないわけですが、大体こういう程度のことで、それを最終的にのまれる——のまれるというよりも、四十四名とか二十名というものを、最終段階ではこちらの案として出した、そういったようないきさつには、はなはだ私ども実は不満なんです。で、裁判所なら裁判所らしく、やはり当初主張された理由、そういうものをやはり最後まで突っ張っていく。そうして、それがどうしても最高裁と内閣で対立のままで国会に来るということであれば、これは法務委員会としても、もっと突っ込んだ裁判の特殊性という立場からの検討ができるわけです。そういう機会を放棄されてこういう提案がされておることに対しては、はなはだ不満足です。で、そういう努力をされておれば、書記官等の側においても、いろいろな問題はあっても、裁判官も忙しいんだろうからということで、またそこにいろいろ一つの融和ということもあるでしょうが、自分の努力は十分しない、そういうことで、結局弱いところにしわ寄せが行くといったようなことのないように、私は一つ今後もっと努力をしてもらいたいことをお願いして、一応本日のところ質問を終ります。  ただ、質問の過程において、裁判所自体が、どうもいろいろな六十条なり五十九条なり、あるいは六十条の二なり、ああいったような問題について、はなはだ法規に沿わぬような点等があるように思うんですが、そういう点については、またあらためて一つ御見解を承わることにして、きょうはこれで一応とめます。
  204. 一松定吉

    ○一松定吉君 あとから来て、皆さんもう質問をしておるかもしれませんが、私は裁判官に判事補なんという名前があるということはよくないということは、この前の法務委員会でもよく言うておいて、皆さんのよく御了解を得ておるんですが、なぜよくないかといいますると、現に裁判に関することを、一人前の判事でなくて、判事補というまだ一人前に達しないような人の裁判を受けるということそれ自体が、人権の擁護をこいねがう関係者にとって、あまりいい気持はせぬと思うんです。これをなぜ一体判事補とか判事とか分けたかというその沿革については、あえてここで議論をいたしませんが、判事補という名前がよくないということであれば、これを一つ法務省としては早くこれを是正して、昔のように判事ということにするがいいと私は思うけれども、それがやはりこの期間が十年経過しない者は判事補という名前がいいと考えておるんでしょうか、どうでしょうか。その辺を一つ、よくわれわれが納得するように説明して下さい。
  205. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘通り、ごもっともな点があると思いますが、やはり判事というものを、たとえば試験に受かって、すぐ判事になって、その人が一人前の判事として判決を独立して下すということは、実際問題として、もう少し世間の経験なんかも十分でないというふうなこともございまして、経験を経た後に判事という独立の資格を与えまして、その人に裁判をさせるというのが好ましいじゃないか、こういうふうな考え方から、裁判所法が判事と判事補とを分けて、判事補につきましては補充的な権限しか与えていないということになったように考えております。  で、名称の点でございますが、やはりそういう制度がまあいいかどうかということは、なお非常に重要な問題でございまして、検討しなければならないと思いますが、この制度の点と離しまして、名称だけを今直ちに変えるということになりますと、なかなか適当な名前もさしあたり考えつきませんし、この制度全体として関連させて、十分検討いたしたいというふうに考えております。
  206. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうことは、しかし、検討なんかいうことは、判事という名前を、十年以下の期間内にあるものは判事補にするということをきめたのはよほど前の話で、今さら研究するなんということは、よほど私はどうかしていると思うんですがね。一体、もしこれが十分に知識経験を具備していない者であれば、判事補として一人で裁判せしむるということそれ自体が矛盾しておるわけなんです。私は、こういうような名前は、一刻もすみやかにこれをやはり昔のように判事ということにして、高等裁判所、昔の控訴院の判事に上げて、事件を取り扱わせるのに、昔の裁判所構成法のように、五年以上たった者でなければできぬというような制限を設ければいいわけなんです。そういうようなことについてのほんとうの考慮はないのですか。ただ、あなたのおっしゃるように、これから考慮するんですか。徹底的にそういうことを一つ明らかにして、御答弁を願いたいんです。  私の趣意は、一人の裁判官が人権の擁護に関する裁判をするのに、一人前でない人間が裁判するということそれ自体が、その訴訟当事者にとっては、いい気持はしない。だから、やはりそれはそういう判事補なんかいう名前を、もとの判事という名前にしておいて、そうして事件を扱わせるという方が、裁判の威信を保つ上においていいと思う。のみならず、裁判官それ自身も、判事補という名前を好みません。その証拠には、判事補の部屋をごらんなさい。判事室ということで、判事補室なんか書いてない。全部裁判官室、裁判官室。これは判事補という名前をきらう結果であることは、これは論ずるまでもないと思います。もう一ぺんその点について考えを承わりたい。
  207. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 結局は、名称の問題もございますが、実質の問題ではないかと思います。実質上、独立の裁判官として、一人で裁判をし得るという資格を与えるには、どの程度の資格をきめたらいいか、こういう問題になると思いますが、先ほど来申し上げましたように、やはり今の裁判所法の建前といたしましては、判事補として一定の年限、一定の期間実務に当った後に、初めてそういう独立した責任を負わせるという方が、やはり裁判の実際上から見て適当ではないかという考え方をいたしておると思うのでありますが、それの建前は、やはり十分尊重しなければならぬというふうに考えておる次第でございます。  で、この実質をそのままにいたしますと、結局、名称の問題ということになりますが、やはりそういう独立の裁判官と、そうでないものとの、二つの区別を置くということになりますと、何らかそこに名称の差異もあった方がいいということになりますので、まあ何らかの名称を付さなければならない。これについて、もし判事補が不適当であるということであれば、もう少し何か適当な名前がありますれば、これは十分御教示を願いまして、研究いたしたいと思います。
  208. 一松定吉

    ○一松定吉君 あなたは、判事補という名前を今用いているから、これをあなた方の立場で維持したいというお考えのように私は思う。私のお尋ねする、人権に十分な関係のある事件をさばく人に、一人前でない人の裁判を受けるということは、裁判を受ける人の感情上よくないじゃないか。それならば、よくないということであるならば、昔のように判事という名前にしておいて、ただし、これは五年たたなければ控訴院の裁判官にはなれないのだという、昔の裁判所構成法のようなものを設けておけばいいわけなんで、あなたは実質上、実質上とおっしゃるけれども、判事補という名前でも、実質上非常に優秀な者もあれば、判事という者でも優秀でない者もありますよ。だから、実質上に必ずしも、判事補は判事補であるゆえに、実質上判事に比べて劣る、判事であるゆえに判事補よりも優秀だということは言えませんよ、実際。だから、問題は、いやしくも一人で裁判をするという職責を持っている以上は、一人前のやはり仕事のできるような感情をその事件関係者に与えるようにするには、判事補という名前は不適当ではありませんかと聞いているのです。それを、あなたは不適当でないとおっしゃるのならば、これはまあ意見の相違だから、これはさらにわれわれも立法府におる関係で考慮しましょうけれどもね。それは不適法ではない、適法だとあなた仰せられるのですか。もう一度そこをお聞きしたい。
  209. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 確かに、御指摘のような不都合な点もございますと思います。ただ、この控訴審、昔のような控訴審だけを経歴何年以上ということでなくて、第一審からやはり相当の実務上の経験をした人を充てるということが適当ではないかというふうに考える次第であります。ただ、質と申しますが、優秀とか優秀でないということでなくて、やはり実務上の経験を積んだ人にやらした方がいい、独立してやる場合はですね。第一審からしてやらした方がいい。昔は第一審ならば、修習が終っていきなりやってもよかったわけであります。そういう建前はむしろ改めた方がいいじゃないかというのが、今の裁判所法考え方だと思いますので、それの建前を尊重しているわけでございます。  で、名称はこれは何か、確かに御指摘のような点もございますと思いますので、適当なものがありますれば、十分研究させていただきたいと思います。
  210. 一松定吉

    ○一松定吉君 名称が適当なものがあればと言うが、適当なものがないから、この判事補と判事と分ける。結局、もし判事補の立場に適当な名前があっても、判事との違いといえば、やはり感情上同じことじゃないですか。判事補に対して適当な名前があるからということで、たとえば裁判官とする。それで十年以上たった者を判事とするということになったら、やはり感情上そこはおもしろくないと思うのです。だから、私は、やはりこれは同じような名前にしておいて、年限において単独、合議、高裁、最高裁というようなふうに、仕事のできるように、昔の裁判所構成法のときのように分けておいた方が、よくはないかと考えるからお尋ねするのですが、もしあなた方が実質上云々と言うならば、判事補を高裁の判事として仕事に補充させるなんということは、よくないじゃありませんか。それはどうなんですか。一人前でない男ですよ。
  211. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) その判事補の職権の範囲でございますが、これは御承知のように、本来は三人の合議体のうちに一人だけは判事補が入ってもよろしいというふうなことにしてあるわけであります。これを、まあ臨時的な措置といたしまして、ある程度拡張いたしております。今申されました高裁にそれを配属するということも、臨時的な措置でございますが、これはやはり本来の建前を維持しつつ、現状においてはこの裁判官の充員が十分でございませんのですが、補充的にやはりこの三人のうちの一人は、それだけは判事補で充ててもいいというふうにいたした次第でございます。
  212. 一松定吉

    ○一松定吉君 あなたの言うのは矛盾しておるじゃございませんか。判事補というものは、知識経験からして一人前じゃないのだとおっしゃるのですがね。それならば、一人前でない者を、高等裁判所の判事の補充に持っていくということは、なおおかしいじゃありませんか。ただこういう、私は今のこの判事補という名前が、これは不適当であるならば、これは法律を、名前を、名称を変えるだけの法律をこしらえさえすればいいだけで、現状のままの現行法で、判事補という名前はいかぬから、これを何々にせよと言うのじゃない。判事補という名前が悪かったら、それを改正して判事ということにして、そして職務の執行については年限でその制限を加えるとかいうようなことにすれば、これは仕事も一人前にできぬ男である、いや一人前にできる男であるというような感情は、関係者は持たぬで、よくはございませんかと聞くのです。その方がいいとあるならば、そういう名称一つ改正するようにしょうじゃございませんか。これが私の質問の趣旨です。どうです。
  213. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これは結局、御意見は、昔の裁判所構成法時代のように、判事補と判事の区別をなくしよう、こういう御見解でございますか。
  214. 一松定吉

    ○一松定吉君 昔というのは例をとっただけで、同じ判事のうちに、一人前と一人前でない者との感情を関係者が持つような名前はよくないじゃありませんかと、こう聞くのですよ。昔の裁判所構成法の例をあげて申し上げただけで、昔の裁判所構成法に復帰しようとかいうのじゃありません。名前が、判事補という名前は不適当であるから、その判事補という名前をやめて、やはり判事ということにして、単独、合議、高等裁判所最高裁判所というように分けていくことは、その判事の就職年限によって、その職務の制限を設けるようにした方がよくはございませんかと聞くのです。それがよろしいということになれば、それならば一つこういう名前を解消して、改むべく立法しよう。いや、それはいいことはない、現行のままでいいというなら、われ何をか言わんです。その点をあなたにお尋ねしている。
  215. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 結局、この判事と、これは……。(「率直に言いなさいよ」と呼ぶ者あり)
  216. 一松定吉

    ○一松定吉君 率直に言いたまえ君みたいに、現行法を維持しなきゃならないと言うじゃない。その方がいい、それならどうしましょうかということになれば、われわれも……。
  217. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) そのような、御趣旨のような制度にするということも一つ考え方かと思います。
  218. 一松定吉

    ○一松定吉君 一つじゃないよ。
  219. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) しかし、その反対に、今のように、やはり判事の地位を相当高からしめるという意味で、一人前の裁判官になるには相当の資格を厳重に要求する、そうしてその裁判の権威を高からしめるという趣旨から、やはりそこに区別を設けるという考え方も、これは十分考えなけりゃならぬ、尊重すべきものであるというふうに考えられますので、それと矛盾しない方法で何かいいお考えがありますれば、御教示いただきたいと思いますが、今のところでは、何らかやはり、この現行の立場を維持する以上は、名前に区別がつくことはやむ得ないのじゃないかというふうに思います。
  220. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  221. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記つけて。  本日の四案についての審査はこの程度にとどめまして、次回は明日午後一時から、刑法の一部を改正する法律案外二件、あっせん贈収賄関係質疑を行います。  これで散会いたします。    午後五時五十分散会