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1958-03-31 第28回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月三十一日(月曜日)     午前八時十三分開議  出席委員    委員長 福永 健司君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       池田 清志君    大坪 保雄君       大村 清一君    北 れい吉君       小金 義照君    小島 徹三君       纐纈 彌三君    辻  政信君       林  唯義君    原 健三郎君       眞崎 勝次君    宮澤 胤勇君       粟山  博君    山本 粂吉君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       木原津與志君    小平  忠君       佐々木良作君    中村 高一君       渡辺 惣蔵君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小山 長規君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長心         得)      小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月三十一日  委員中馬辰猪君、永山忠則君、中川俊思君、田  村元君、薄田美朝君、船田中君、茜ケ久保重光  君、稻村隆一君、阿部五郎君及び西村力弥君辞  任につき、その補欠として粟山博君、纐纈彌三  君、原健三郎君、宮澤胤勇君、小島徹三君、池  田清志君、渡辺惣蔵君、柳田秀一君、佐々木良  作君及び小平忠君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員纐纈彌三君、原健三郎君、宮澤胤勇君、小  島徹三君、池田清志君、渡辺惣蔵君、柳田秀一  君、佐々木良作君及び小平忠君辞任につき、そ  の補欠として永山忠則君、中川俊思君田村元  君、薄田美朝君、船田中君、茜ケ久保重光君、  稻村隆一君、阿部五郎君及び西村力弥君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十八日  元満鉄社員恩給法等適用に関する請願足立  篤郎紹介)(第二三六八号)  同(井原岸高紹介)(第二三六九号)  同(米田吉盛紹介)(第二三七〇号)  恩給法等の一部を改正する法律案中一部修正に  関する請願足立篤郎紹介)(第二三七一  号)  同(神田博紹介)(第二三七二号)  建国記念日制定に関する請願外三件(薄田美朝  君紹介)(第二三七三号)  同(青木正紹介)(第二三七四号)  同外二件(大橋武夫紹介)(第二四二五号)  同(辻政信紹介)(第二四二六号)  建国記念日制定反対に関する請願稻村隆一君  紹介)(第二四二七号)  同(日野吉夫紹介)(第二四二八号)  建設省仙台機械整備事務所臨時職員身分保障  に関する請願保科善四郎紹介)(第二四二  九号)  暫定手当の不均衡是正等に関する請願辻原弘  市君紹介)(第二四三〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十六回国会閣法第一五五号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)  国防会議構成等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第四二号)      ————◇—————     午前八時十三分開議
  2. 福永健司

    福永委員長 これより会議を開きます。  異例の早朝開会にもかかわらず、各位の御熱心なる御協力をいただき深く感謝いたします。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正しする法律案国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案、及び第二十六国会より継続審査となっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を続行いたします。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 先日石橋君の質問を行なったわけでありますが、この中で総理は、日本に駐留する米軍、この米軍安全保障条約によって極東国際的平和の維持、安全、こういうことのために活動する権利を持っておるし、さらに日本区域防衛に当る義務を持っておる。もし米軍極東国際平和を維持するために、日本基地から出発をして、外国基地攻撃する。そうした場合に、報復的に日本基地爆撃をせられる、あるいは日本基地に対して武力行為が行われたような場合には、これは日本に対する侵略とみなす、こういう御答弁があったわけであります。この問題について、さらに総理は説明を述べられて、そうした場合の防衛方法については、主として在日米軍あるいは極東にある米軍敵基地をたたく仕事をする。しかし一方どうしても他に手段のない場合には、日本自衛隊出動ということもあり得る、こう述べられたように思うのであります。この場合に非常に不明確な点が幾つか残っておりますので、さらに続けて伺いたいと思いますが、日本にあるあるいは日本区域にある米軍基地、これに対する攻撃侵略とみなすというお話でありましたが、それなれば沖縄にある米軍基地が、外国によって侵略を受けた場合、たたかれた場合は、一体日本に対する侵略とみなされるのかどうか。今までの総理の御発言その他を拝見しておりますと、沖縄はあくまでも日本潜在主権のある場所である、こういうふうに述べられておったように思いますが、沖縄がこうした問題として一番具体的に現われてくる問題だろう、こう思います。かりに米軍日本から飛び立って、よその国の基地をたたくといたしましても、その主たる根拠地は沖縄だろう、こう私たちは思われます。そうした場合に、沖縄に対する攻撃が加えられる確率というものは非常に強い。一番この場合を想定しなければならないだろう、こう思います。こうした場合に、沖縄に対する攻撃が、すなわち日本に対する侵略であるかどうか、この点を伺わしていただきたい。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄に対しては、御承知通り日本潜在主権を持っております。この意味においては、観念的に申しまして日本領土の一部と見るべきであろうと思います。ここに対して攻撃か加えられるということは、そういう意味においては日本に対するやはり侵略攻撃が加えられたと見るべきだろうと思います。ただその場合にどういう手段を選ぶかといえば、言うまでもなくこれは米軍があそこで一切の施政権を持っておりますから、その侵略に対してはもっぱら米軍がこれに当って、その攻撃侵略を排除するということになると思います。観念から言えば、今申したようにやはり日本潜在主権を持っておりますから、日本領土の一部に侵略があったと見るべきであろうと思います。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 観念からというようなことで現実の具体的な措置というものは決定できるものではない、こう私は思います。現に自衛隊法を見ましても、武力侵略が行われた場合、武力行為ですか、「外部からの武力攻撃外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」この命ずることはあなたの権限であるわけです。具体的に防衛出動を命ずるか命じないかという場合に当って、観念としてはというようなことで問題が割り切れるはずがない。もし侵略だとあなたがみなされるならば、当然あなたは防衛出動を命ずべき権利を有するわけです。当然また行政協定二十四条等に基いて、日本区域敵対行為が起った場合、こういう場合に直ちに共同の措置日米の間でとり、さらには協議をしなければならない、こうきめられておるわけでありますから、もし、観念的でなく、具体的の侵略であるとあなたが御認定になるならば、それらの行為は当然とられなければならぬことになるわけです。あなたは一体そういう行為をとらなければならぬとお考えになっているのがどうか、この点を伺いたいと思う。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄につきましては、先ほど私は理論の問題を申しましたが、実際の問題としては沖縄米国施政権を持っておりまして、一切の施政権を持っております限りにおいて、この侵略に対してはもっぱらアメリカがこれに当ることは当然であり、私は日本がこれに対して出動するということはあり得ないと思います。ただ仮説の問題でありますが、かりにアメリカが全部そこを放棄して逃げた、これに対して全然防衛をしないという場合には、私は日本領土であるからこれに対する侵略に対しては、日本祖国防衛意味から出ていくのは当然であろうと考えます。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お話はよくわかりました。沖縄に対しては米国施政権を持っているから、沖縄に対する攻撃によっては日本自衛隊出動しない、こういうお話であります。そういうお話としてはよくわかりますが、それでは一体日本沖縄に対して潜在主権を持っている、こうおっしゃるが、それはあなたは領土的な、土地的な問題だけさされるのであろう、こう思います。少くとも沖縄に住んでいる人民は、米国国民ではありません。日本国民のはずです。そして日本政府もいろいろな点で、米国施政法規と抵触をしない限りにおいては、日本人たる特権を与えている。現に外国を旅行するような場合でも、沖縄旅券日本旅券と二通持って出かけていって問題の起きた事例もあります。少くとも日本人としての旅券を発行している、こういう事実はあるわけです。一体沖縄爆撃をせられる、攻撃をせられる、そういう場合に八十万の沖縄人民はどうなるんです。今あなたは出動しないと明言された。しかし国家の責任というものは土地についてだけあるものではありません。人についてもあるはずです。沖縄人民か人間であり、同時に日本国民であるという事実をあなたが否定なさらない限り、それではその防衛関係は全部アメリカにまかせておいて、日本は全然何もしない。あなたのおっしゃるようにアメリカ人が全滅をする——アメリカ人だけが全滅するはずはありませんよ。あの土地の上にいる八十万の人も同時に全滅してしまうはずです。これは前の原水爆を持たない時代の沖縄戦争を見ても明らかであります。またひめゆりの塔も出てくるであろうし、いろいろな事態が出てくるであろう、それをあなたは拱手傍観せられるのか。ずいぶんおかしな話だと思うのです。お話としての筋は通っております。だがしかし筋が通っておりながらも結局日本国民に対する愛情というものは、それでは全然ないじゃないですか。一体どうなんですか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄におけるわれわれの持っている滞在主権というものは、それはお話通り土地だけの問題じゃないと思います。しかし沖縄について一切の施政権アメリカが持っておる現状におきましては、防衛意味においては米軍によって土地及び沖縄住民の安全というものは保障さるべきものであり、これは当然日本としてアメリカにそれを要求し、アメリカをしてそうせしめることは、日本政府としてはすべきことである。日本施政権の一部でも持つというような事態になりますと、その事態はまた変ってくるでありましょうけれども、現在のところにおきましては、一切の施政権アメリカが持っている以上は、土地及び人民の一切の安全を、アメリカ義務として、これが防衛を行わしめるという以外に方法はないと思います。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますと、アメリカ施政権を一切ゆだねてあるから、沖縄人民の安全についてはアメリカにまかせる、日本見殺しだ、見放しだ、こういう結論になるわけですか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 今私が申し上げましたように、見殺しとか、見放しという意味ではありませんで、これは日本政府としてもアメリカに、そういうような場合にアメリカが万全を尽して土地及び人民を保護し、その安全を保障するように要求することができるし、事実問題としてそうせしめる、決して見殺しにするという意味ではありません。法律の建前からいきますと、先ほど来申し上げているようなことであります。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますと、今のお話ではっきりしてきましたのは、沖縄に対する攻撃に際しては、日本自衛隊出動をしない、こういうことが結論のように思われます。そして沖縄人民の安全については一切アメリカにゆだね、日本ではどうすることもできない、こういうことだと思いますが、もしそうだとすれば、行政協定の二十四条のいわゆる日本区域あるいは安全保障条約の四条における日本区域というものの中には沖縄は含まない、こう解釈せざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 米軍沖縄に駐在しているのは安保条約によって駐在しているわけではないのであります。従ってそこに言う日本区域ということは、結局沖縄を含まないと解釈するのが適当じゃないか。もちろん先ほど申しているように、沖縄に対して潜在主権を持っておりますから、そういう意味において、日本区域とかあるいは日本領土とかいうものには入りますけれども、そこに言う日本区域という考え方は、やはり安保条約によってアメリカが駐在する権利を持ち、また防衛する区域としては沖縄を含まないと解釈すべきものであろうと思います。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、続いて小笠原基地について同様な問題が私は発生するだろう、こう思います。小笠原の場合はどうでしょうか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 同じに解釈すべきであろうと思います。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 小笠原基地の場合にも同様に解釈すべきものだとおっしゃるのでありますが、しかし小笠原基地というものは、もうすぐそこから東京にやってくる入口であります。玄関であります。この場合にもあなたは同様な態度で傍観される、こういうことになるのでしょうか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 私か先ほど来申し上げていることは、一つの法律的な解釈の問題でございまして、現実事態が起ってどうするかというような問題については、これは現実事態を見なければならぬと思います。しかし筋道としては、先ほど来申し上げているところのことが私は筋だと思うのであります。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 筋道現実の問題とが違ってくるというのは、どうしても私には納得できないのですが、さっきからお話のように、沖縄基地小笠原基地、この基地に対する外国攻撃については、日本自衛隊出動しないというのは現実の問題としても同様だろうと思うのですが、何か違ったところが出てくるのですか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 現在の小笠原における防衛施設とか、いろいろなアメリカ軍のそこに対する施設等は、実は沖縄小笠原とは現実において御承知通り違っております。この小笠原攻撃されたからというて、直ちに自衛隊出動すべきものでないことは、私が言うを待ちませんが、先ほど申し上げたように、もしも米軍が全然それを防衛しないというような場合においては、これは日本領土でありますから当然考えなければならぬ。またそこにいる者は日本住民でありますから保護しなければならぬということは申し上げております。そういうように多少沖縄現実事態小笠原現実事態というものが違っておりますから、現在そういうことがあった場合における様相というものが違い得る。先ほども私申し上げましたが、もしもアメリカが全然捨ててこれを防衛しないという場合においては、日本防衛するということを申し上げております。そういうことから両方に加えられる侵略攻撃、またこれに対する米軍防衛その他の事態というものにあるいは違ったような様相現実においては起ってくることもあり得るということを頭に置いて実はお答えをしたのでありますが、筋から申しまして小笠原攻撃が加えられたら直ちに自衛隊出動するというようなことは考えておりません。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 自衛隊法を見ますと、武力攻撃の起った場合、そのおそれある場合を含むと書いてあるわけであります。沖縄に対する攻撃あるいは小笠原に対する攻撃、こういうものは一体日本本土に対する武力攻撃のおそれある場合に入らないのでしょうか。さっきから伺っておりますと出動はしないとおっしゃっておられるのですが、おそれある場合という認定をあなたがなさる危険はありませんか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 それは事態によると思います。現実攻撃が加えられたところの事態によると思いますが、それでもって常に攻撃が加えられるおそれありと断定するわけにもいかないと思いますし、またいかなる場合においても全然おそれありということが否定されることはできないのであって、やっぱりそのときにおける事態に即して考えなければならぬと思っております。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ついでですからそのおそれということについて伺っておきますが、自衛隊法の七十六条を見ますと、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、」こうなっております。ところが国連憲章五十一条を見ますと、現に武力攻撃が発生した場合にだけしか自衛権はないというふうに規定せられておる。特に武力攻撃のおそれありということに藉口して侵略行為が行われることをおそれて、国連憲章の中では特に具体的に武力攻撃か起った場合にのみ自衛権を限定するというふうにいたしましたところに国連憲章の特徴があると思うわけです。日本国連に加盟し非常任理事国になっているのだから、当然この規定を尊重しなければならぬだろうと私は思います。ところがこの自衛隊法の七十六条を見ますと、明確に外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」と書いてあって、国連憲章に禁止してあることを、堂々とここに規定してあるわけです。こう申し上げると、きっとあなたの方では八十八条の防衛出動時の武力行使、これについて二項に「前項の武力行使に際しては、国際法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、且つ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」こう規定してあるからいいじゃないかとお答えになるだろうと思います。しかしこう書いてありましても精神として国連憲章五十一条の規定を破っている。ただ、ただし書きでこれを救済して結局はこれに一致するようにしてあるというにすぎないわけであります。むしろこの際は七十六条を改正して、すなわちカッコ内の「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」というのは削られてしまうことの方が国連憲章精神に合致をする。そして、またそれが国際的に見てもこの自衛隊法を見られた場合に、日本国連憲章精神に合致した法律をとっているということになるだろうと思うわけです。そういうふうに七十六条のカッコ内を削除してしまわれるような御意思はないのかどうか。そして国連憲章に合致するような方法をとられる気持はないのかどうか。せっかく国連憲章で現に武力攻撃が起った場合というふうに明確にして、自衛権が乱用せられないようにしておる精神は尊重せらるべきであると思うのですがどうですか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん国連憲章を順守すべきことは当然であります。また日本自衛隊の本質から申しましても、現実武力行使ということはそういう現実武力侵略に対してやるべきことは当然であります。ただ七十六条のおそれある場合の出動ということは、それは準備のものであって、現実にこの武力を行使するという意味ではないと私は思います。従って、別段国連憲章とも相いれないものではないし、特にこれを修正しなければならぬものではないと思います。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは準備のための出動とおっしゃいますが、しかし、準備のための出動というものが、いつでも現地においてのりを越えて、中央において考えているより以上のことが行われる場合が多いことは、過去の歴史に照らして御存じの通りだと思うのです。かつて関東軍が、中央の指令を守らずしてどんどん現地において事を起していった事例もある。こういう事例現実には阻止できないのじゃないか。過去の歴史に私たちが学ぶならば、そういう危険な行為をとるべきでないだろう、しかも、そういう危険をとらないためにこそ国連憲章があるわけです。従って、ただ国連憲章を尊重しなければならない、国際法規及び慣例によるべき場合はこれを順守しなければならないというだけでは、現に出ていった兵隊さんたち、そういう人たちの中に野心家があればどうにもならないわけです。むしろこの際そういう危険を除去する意味で、しかも国連憲章のほんとうの精神に立ち戻るという意味で、「おそれのある場合」というのを削除してしまうことのほうがこの際正しいのじゃないか。あなたの気持にも合致するものだと思う。そういう意味で一思いにこの部分だけを削除せられる意思がないものか、もう一度伺いたいと思います。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん侵略のおそれある場合というものに対しましては、これが乱用されてはいかぬことは言うを待ちませんが、同時に防衛を全うすを意味から申しますと、そういうおそれが非常に現実に出ておるのに、実際の侵略が加えられるまでは何ら準備ができないということでは、私は自衛の目的を達することはできないと思うのであります。従いまして、準備のことはおそれある場合にはやはりしなければならぬ、こう思います。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国連憲章の五十一条の述べておる趣旨をもう一度ぜひ読み直していただくことを私はお願いしておきます。  そこで本論に戻りまして、沖縄の場合には出動をしない、小笠原の場合にも出動をしない、こういうお話ですが、それでは問題を少しかえまして、米海軍なり米陸軍なりいわゆる米軍作戦行動をいたします場合には、当然海洋においては商船を必要といたします。そうした場合に、日本商船が雇い上げられる場合も当然想定をしなければなりません。米軍作戦に従って協力しつつある商船、こういう商船に対して攻撃が加えられた場合、あなたはこれをどう認定なさるのか、これを伺いたいと思います。それは攻撃であるのか侵略であるのか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 その場合に船がアメリカで買い上げられまして、アメリカ国旗のもとに運営されておる場合と、日本国旗を掲げておるという場合においては、私は法律関係は違うと思います。アメリカの旗を何しておる場合には、日本に対するあれはないと思いますが、日本国旗を掲げておる場合に、それに攻撃を加えられれば侵略であると考えなければならないと思います。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本国旗を掲げておる場合に、それに対して攻撃が加えられるとすれば侵略あり、こういうお話でありますが、そうした場合に日本自衛隊行動を起されるのですか、どうですか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん日本のそういうものが何された場合におきまして、これを保護し、これを防衛するということを考えなければならぬと思います。ただどういう手段をとるかというような問題につきましては、これはおのずから事態に即して考えなければならぬと思います。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どういう行動をとるかという問題になりますが、そうした場合に、自衛隊法の八十二条を見ますと「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安維持のため特別の必要かある場合には、内閣総理大臣承認を得て、自衛隊の部隊の海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」こう書いてありますが、この条文でいかれるのですか、違う条文でいかれるのですか。
  30. 津島壽一

    津島国務大臣 便宜私からお答えいたします。ただいま御指摘になりましたそれは、直接侵略の場合という場合でなくて、八十二条は治安出動の場合であります。従ってこの規定適用は、こういった今の御質問の点には触れない規定でございます。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると八十二条は、今の設例の場合には当らない場合だということになりますね。そうしますと、原則に戻って防衛出動なり何なりの規定適用せられるわけですが、その場合に当然商船に対する攻撃としては、海上からのいわゆる空中からの攻撃と水中からの攻撃があるだろう、こう考えられるわけです。そうした場合に敵の基地の問題、航空基地の問題については、先般来石橋君や私の質問についてお答えをいただきました。それでは港の場合はどうでしょう。敵の港を封鎖するとか、あるいは敵の港を攻撃して潜水艦を出られなくするというような行動を当然必要な措置としてお考えになっているかどうか。そういうことをやりますかやりませんか。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことは私は考えておりません。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、敵の根拠地をそのままにしておいて、そして海上においてこれを防ぐ操作だけする、こういうことですか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 大体そういうことになると思います。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 大体日本基地に対する攻撃、これについては侵略と考える、同時にそれに対する防禦の方法として、主として米軍に依存する、他に手段がない場合言は自衛隊出動ということもあり得るという御説明でしたが、その場合には当然米軍日本の軍隊との共同作戦という形になるわけですか。それとも米軍だけの作戦行動になるわけですか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 行政協定二十四条によって協議してやることになります。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではやはり共同作戦ということになるものと伺いますが、そこで少し問題を変えまして、ことしの二月の十九日ですか、自民党の国防部会から、総理に対して意見書が出されたと私は思うのです。これは新聞等で報道をせられましたが、「敵機が高空超音速で大量、集団的に侵入した場合、また敵が核攻撃を加えてきた時、特に敵が弾道弾や誘導ミサイルなどで相当の距離を直接攻撃してきた時は防禦用ミサイルでは防禦困難であり、アンチ・ミサイル・ミサイルが相当進歩するまで敵ミサイル基地をたたく以外に効果なく、以上のような状態に対しては日米安全保障などによる米軍の協力と善処に期待する以外にない。」こういうふうに述べられておる。この述べられた意見について総理はどうお考えですか。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 自民党の国防部会からそういう今おあげになりましたような意見書の提出はございません。私全然見ておりませんし、そういう事実はないと承知しております。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしないとすれば、今私が読み上げましたような意見についてはどうでしょうか。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 大体今お読みになりましたことについては、私の理解する限りにおいては、要するに従来日本に加えられたところの侵略に対して、日本自身が基地をどうするとかいうことは、これは米軍の力によって侵略をなくするような手段を講ずるほかはない。どうしても一切方法がない場合に限ってただ座してこれを待つわけにいかないから、これに対する防禦の適当の手段を考えるということを従来お答えをしておりますが、それ以上に私は考えておりません。従ってその範囲内において考えておる、こう申し上げておるのであります。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしそうした場合に、米軍と共同防衛、共同作戦をする、こういうことになりますと、米軍がいかなる作戦をとるか、そして米軍がいかなる武器を用いるか、こういうことについてまで作戦会議なり協議の中で、こちらから注文をつけられるのですか。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 これは二十四条で協議し、共同の作戦を立てるという場合におきましては、一切全面にわたって両国において話し合うという性質のものであろうと思います。従いまして、そのあらゆる面について、日本が意見を述べられることは当然であります。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 米軍日本を守るために、あるいは極東国際平和を守るために兵力を使用する、こういう場合には米軍の使うべき武器というものについて、日本国の側からの注文は私はつけられないだろうと思うのです。たとえば沖縄を見ましても、もうすでにソアーですか、ジュピターですかわかりませんが、少くとも原子弾頭をつけられるIRBMが、二個中隊くらい到着しているだろう。さらには台湾を見ましても、台湾にはマタドールがある。朝鮮を見ましても、原子砲が相当数到着している。また日本の周辺を遊よくしているところの第七艦隊も、すでにレギュラス二型、こういった核兵器を装備しつつある。そしてさらに日本周辺を遊よくしているであろうと想像される潜水艦の中にも、原子潜水艦などが相当あるのではなからうか、こう考えられるわけです。もしそうだとすれば、米軍日本との共同作戦の中において核兵器を用いるであろうことは、必至だと思う。共同作戦をし——日本自衛隊は核兵器は持たない、また日本の国内には米軍に核兵器を持ってきてもらいたくない、これを持ってくるという相談があれば、お断わりをする、こうあなたは言ってらっしゃる。だが、しかし、現実に共同作戦をする場合に、米軍が、なるほど日本国内には持っていないかもしれないけれども、その周辺にある核基地を総動員して、核兵器をどしどし使用していくということになれば、あなたのおっしゃることは、ほとんどナンセンスになってしまうのではなかろうか。組んでやっている。この片一方が核兵器をどんどん使用していく、使用するだろう、そのことを私たちはちゃんと知っている、認識している。そのことを知りつつ共同作戦をやる。こういう場合に、日本だけが核兵器を持ちませんなどというきれいごとを言ってみたところで、だれも信ずる人もないだろうし、またそのことはほとんど意味のないものに変ってしまうおそれがある。あなたが日本国内では持ちませんと言うことと、非常な矛盾をそこに来たしてくるのではなかろうか。理論としては、あるいは筋としてはというお話があるかもしれませんが、筋だの理論などということでは片づかない問題だ、こう私は思うのです。現実日本日米共同作戦という形において、すでに核兵器を採用しつつあるといわざるを得ないんじゃないでしょうか、どうでしょう。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 それは私の言っていることとおのずから別の問題である。私は日本自衛隊を核兵器をもって武装しない、また日本に核兵器の持ち込みを認めないということを申しておるのであります。またもう一つ、世界のいかなる戦争におきましても、核兵器が用いられることを禁止するように、私は日本国民のこれに対する念願を到達すべく、別個の努力をいたしております。そういうことと、現実アメリカが核兵器を持っており、もしくはそれで装備していることとは、おのずから別個の問題であって、私自身の従来の考えは、ちっともそのために変らないということを申し上げておきます。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 核兵器を持ってもらいたくない、そして核兵器による戦争はやめてもらいたい、片一方でこう言いながら、現実には、核兵器を持っている人と具体的に組んだ共同作戦を、やろう、(「しようがないじゃないか」と呼ぶ者あり)こういうことは、しようがある、ないとは関係なしに、非常に矛盾した立場じゃないか。私はやはりそういう点で、もしあなたが現実にそういうことを強く主張したいというならば、あなたは米軍に対して、日本との共同作戦に関する限り、核兵器を用いてもらいたくない、こういうことを強く主張せらるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 それは現実侵略の問題、現実に起ってきたところの問題で、私は考えなければならぬと思います。私は今飛鳥田君のお話のように、日本防衛のためにそういうことが用いられるということは、たとい米軍によって用いられる場合におきましても、それは望ましい状態ではないと思います。しかし、もしも敵の攻撃が、やはりそういうものを用いて攻撃が加えられるというような場合で、これに対してはどうしてもそういう兵器をもって侵略を防ぐほかはないというような事態の場合において、アメリカ軍がそれを用いるということについては、これはやむを得ない措置じゃないかと思います。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局、やむを得ないということで、主張だけはする、しかし最終的にはやむを得ないという形でこれを肯定されるとするならば、結局自分の主張だけ、すなわち自分だけよい子になっていく、こういう結果にしか世界は受け取らないだろう、こう思うわけです。少くともあなたが核兵器使用を禁止するという態度をはっきり宜明せられる限り、終始一貫、その行動においても矛盾のない立場をとらるべきものだ、こう私は思うわけですが、しかし現実には、口では言う、しかし最終的には、核兵器を持つ人々と共同作戦をし、その核兵器を使用することを暗黙に了解して日本防衛をやる、こういうことになれば、言うことと行うこととは実に違ってくる、こう言わざるを得ないと思うのです。それならば、自分だけいい子になるような主張をなさらない方がいいんじゃないか、こう私は思います。世界もまた、一国の主張がそういうふうに矛盾をしているという事実について、やはり相当な評価をするだろう。むしろ日本国の信用のために、もしそれならば、そういう主張はなさらぬ方がいいんじゃないか、こうとすら思われるわけですが、どうでしょう。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 そのことは、先ほど私がお答え申し上げましたように、日本自身がどういう装備をするかということについては、日本が独自にきめていいことであり、またそういうものを日本領土内に持ち込まさないということも、独自にきめていいことであって、それはきわめて明確に申しております。また核兵器の問題については、これはアメリカだけじゃなしに、全世界がそういう武装、そういう兵器を用いることを禁止するように、われわれはあらゆる機会に努力をいたしておるということも、御承知通りであります。しかし、現実の問題として、アメリカ軍がそういうもので装備されておる。それとの共同作戦によって日本が安全保障されておる、これも現実の問題としてあるわけであります。私は別に、それによって日本の態度が矛盾しておるとは思いません。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これはどうも議論に終りそうですから、一応私たちの言い分を出し述べておきます。  そこで、次の問題として、日本は、最近のICBM、IRBMの登場いたしました中で、新しい基地としての価値をアメリカに持ってきた、こう思われるわけです。すなわちIRBMというものの基地を、米英IRBM協定によって、ヨーロッパにおいて作り上げた。アメリカとして、突然日本において問題になってくることは必定だろう、こう思われるわけです。もう現に、あなたのおっしゃる施政権を向うに渡してしまった沖縄の中では、ソアーかジュピターかは知りませんが、すでに装備されつつある。あるいは済州島においても、あるいは台湾にもそういう形で出てくるだろう、こう思います。なかんずく、もしIRBMの距離が少し延びて、千八百マイル近くまでいきますならば、日本の本土というものは、その格好なIRBM基地になって参ることも。これは明らかだろうと思います。そうした場合に、アメリカは、米英IRBM協定のように、日本に対しても日米IRBMあるいはそれに類似するものを申し込んでくる危険、あるいは可能性というものは相当強いだろう、こう思われるわけです。さらに、こうしてイギリスあるいは日本と、あるいは中近東等にIRBMの基地化が完成をいたしますと、ソ連としては、あるいは中国としては、これを打ち破って参りますためのICBM、こういうものが急速に実用されていくならば別でありますが、もしそうでないとすれば、その対抗主力を潜水艦に置かざるを得ないだろう、こういうふうにさえいわれております。この潜水艦を事前に捕捉することはなかなか困難である。シュノーケルもつき逆探装置もつき、原子力潜水艦等によって航行距離も、スピードも非常に早まってきた。こういった潜水艦を抑えるには、IRBMを潜艦上から発射する寸前にとらえるなどということはほとんど不可能に近い。どうしてもこれを港を出ていくところで押えなければならぬ。こうなって参りますと、中国あるいはソ連に対して抑えている日本、宗谷海峡で押える、あるいは対馬海峡で押える、あるいは朝鮮海峡で押える、日本のいわゆる対潜基地としての価値は非常に強まってくるんじゃないか、そうなって参りますと、日本に今までと違った意味の対潜基地としての要求をアメリカはいろいろしてくるんじゃなかろうか、こういうことを考えるわけです。そうした場合にあなたの側としてどう対処をせられるのか。すなわち第一には米英協定のようなものを日本アメリカが要求してきた場合に、これに応ずる意思があるかどうか。さらには日本の軍事基地を対潜基地として価値づけていくためのいろいうな諸要求か出てきた場合に、これに応ずる意思かあるかどうか、こういうことを伺いたいと思う。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 私は従来も明確に申し上げておりますように、本日もそれを申し上げておりますが、日本自身が核武装をしない、また核兵器の持ち込みはこれを認めないということを申しておりますから、そういうIRBMの基地としての協定に応ずる意思はございません。また、それから対潜基地として、対潜的な、いろいろ作戦的な大きな意義があるというお話でありますが、これらにつきましてはやはり日本自身自衛意味におきまして、日本自身でいろいろと情勢を判断し、また防衛のいわゆる強化、こういうことも十分日本側において将来考えていくべきことである、かように考えております。
  51. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 IRBM協定、そういうものには応ずる意思もないし、対潜基地としての価値を増す方法についても応ずる意思はない。むしろ日本自身の手でそのことをやりあげていきたい、こういうお話でありました。そういったお話の具体的な現われはP2V7の、いわゆるネプチューンの国産化、こういうことにも現われておると私は思いますが、しかし、こうしたあなたのいわゆる防衛努力というものか実は日本の外貨事情に対して相当な影響を及ぼしてくるおそれがあるのではないか、こういうことを私たちは考えるのであります。御承知でもありましょうが、今までの自衛隊については重火器、弾薬、こういった種類のものは無償供与でありました。さらに艦艇、こういう問題についてもMDAPで無償供与を受けるか、あるいは艦船貸与協定等によって借り受けをする、飛行機についてもMDAPあるいはその他による供与が多かったわけであります。従って自衛隊というものの存在が国内的には相当大きな予算的な比率は占めながらも、いわゆる日本の保有する外貨、こういうものに影響を及ぼすことは少かったわけです。今までは従ってこの点については比較的国民も無関心でおりましたが、しかしだんだんその後の事情を見ておりますと、無関心でいられないものを感ずるわけです。たとえばF86Fあるいは、T33、こういうものの国産化、こういう問題についても設備は見返り資金、部分品の大部分は供与をせられる、こういう形で進んで参りましたが、しかしだんだん供与を受けられない部分が生じてきた。そのためになどF86については百七十万ドルの外貨を使用する、こういう結果が出ております。さらには進んで今度はネプチューン、P2V7を国産化するということでありますが、この国産化についても国産化の協定が発表をせられておりますが、これによりますと、国産化の段階は幾種類かに分けられております。フェイズ一、二、三、四、くらいまでは、少くとも最初の二十機あるいは十五機くらいまではほとんどアメリカから物を持ってきてこれを組み立てるにすぎませんので、外貨というものはそう出ていきません。ところがその国産化の段階が進んで参りますと、当然部品を日本の生産に切りかえていく。ところが現在の日本の兵器生産あるいは航空機生産の技術段階においては国産化にも限度が出て参ります。そういたしますと、国産化できないものについては相当なものを買い入れていかなければならない。こうして防衛庁の方のお考えによってもP2V7に対する外貨支出というものは大体千四百七十万ドルくらいになるだろう、こういわれておりますが、しかし防衛庁の千四百七十万ドルというものは正直に申し上げて甘いというのが業界の通説であります。もっと部品の国産化は行き詰まるだろう。そうした場合に相当な外貨を使って部品を購入しなければP2V7は生産していくことはできない、こういわれておるわけであります。従って千四百七十万ドルというものはおそらく二千万ドルくらいにまで上るだろう、こういわれます。さらに今度は、防衛庁でもその機種決定を急いでおられるようでありますが、F104をとるか、F100をとるか、あるいはタイガーをとるか、こういう問題が出ております。しかしいずれにきまりましても、やはり相当のドル支出というものを認めていかざるを得ない。ドル支出をしなければ国産化できないわけです。これからも相当なドル支出が出てくるだろう。また、小さい問題ですが、サイドワインダーを購入される。これなんかについても見返り資金とかあるいは無償供与とかいうものではなしに、現実にドルを支払っていくんです。一発四千ドルとして十四発買い入れる。こういうことになりますと、ここからも相当出ていきます。またエリコン、スタッキーニ、フェアリー社、こういうところにも無線誘導弾を買い入れるについて外貨を支払う。こんなところからも相当外貨支出は増して参ります。こういうふうに考えて参りますと、今まではただでもらって、あるいは貸してもらってやってきたから、自衛隊は外貨をあまり必要としなかった。ところが今後はそういう事情にありませんために、かなり重要な外貨支出をしていかなければならないだろう、こういうふうに考えられる。  一体どのくらい外貨が出ていくだろうかということを考えてますと、財団法人電力経済研究所あるいは日本産業構造研究会等が日本産業構造の課題というような研究をしておりますが、これは経営者たちの研究であります。この研究によりましても、おそらく自衛隊のために必要とするドル支出は年間三億ドルを上回るだろうと述べられております。かなり部品を国産化するために国内投資を急激にふやして軍需産業を育成するという態度をとってみたところで、これを最小限度に理想的に切り詰めてみても、最低半分以下にはならないだろうと書いてあります。もしそうだといたしますと、年間三億ドルもの外貨を出す、こういうことになりますと、たとえば経済六カ年計画の最終年次、昭和三十五年度の国際収支バランスの受け払い、それぞれ年間二十六億六千万ドルということに、経済六カ年計画によりますとなっておりますが、年間二十六億六千万ドルに対して三億ドル、もしそうなりますとこれは非常に大きな比率を示すのではなかろうか、御存じのように防衛支出というもの、これは生産的な支出ではありません、いわゆる経済循環の中からそれっきりで落ちていく支出であり、次のものを生まないのであります。そういう意味では浪費的だといって差しつかえがないと思う。そういう浪費的な防衛問題に対して、年間二十六億六千万ドル程度の日本の規模に対して、三億ドル以上のものを割り当てるということになりますと、当然民間企業をこれによって圧迫する、こう言わざるを得ないと思うわけです。今までは、先ほど来申し上げておりますように、もらう、借りる、こういうことで非常にイージーな道を通って参りました。ところがそういう道は非常に減ってきた。アメリカはどんどん有償供与に切りかえつつあるわけです。そうなりますと、今申し上げたような形で民間企業あるいは民間貿易に非常な圧力になってくる。どこの国でも、そこの国の年間国際収支の一割以上にも当る防衛器具買い入れ金を計上している国はないはずです。一体先ほど冒頭に申し上げましたように、対潜基地としての日本の役割、こういうものを日本でやる、ネプチューンも自分で作る、こういうお話で、非常に勢いはいいのであります。しかし勢いだけよくても、それが結局は日本の民間産業、いわゆる平和産業を非常な勢いで圧迫していく可能性かあること、このことについて当然お考えになっているはずでありますが、どうでしょうか、あなたの所見をここで聞かしていただきたいと思います。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 日本自衛力を独自の独立国として強化していく上から申し上げますと、やはり防衛に関連する産業をなるべく国内において樹立していくということは、当然私は必要であると思います。しかしそれにはいろいろな技術の面であるとか、あるいは外貨事情とかいろいろなものを十分考えて、いわゆる国情及び国力に応じてこれを増強するという一般国防方針の趣旨にのっとっていかなければならぬことは言うを待ちません。ただ防衛産業そのものを日本国内になるべくこれを育てていくということは、今言ったような意味から私は必要であると思います。数字等の点、それから見込み等の点につきましては、防衛長官からお答えいたします。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう抽象的なお話でなしに、昭和三十五年度の年間規模が二十六億六千万ドルであり、おそらく予想される今のままの防衛の体制を整えていかれれば三億ドルをこえるだろうということ、これも事実だと思うのです。そうすると一割以上のものを防衛関係に割り当ててしまうことが国情に合っているのか、日本の経済の規模に即応しているのか、こういうことを伺っているわけで、抽象的な問題を伺っているわけじゃありません。
  54. 津島壽一

    津島国務大臣 数字の関係でございますから私の方からお答えいたします。ただいまの防衛経費について外貨を必要とする金額は、将来三億ドルにも上るだろうというお話であります。その計数の根拠が十分わかっておりませんから、お答えする点においても不十分な点があるかと思います。しかしながらもし三億ドルというのがある年度の一年間に三億ドルという外貨を必要とするような防衛計画になるということでありましたら、これは絶対になりません。現在の防衛庁経費は全体で三十三度予算千二百億円余でございます。これが一ドル三百六十円として三億三千万ドルでございます。三億ドルの防衛庁全体の経費の中で、これがいかに増加いたしましても外貨払いが三億ドルあるということは、私は将来の防衛予算というものはとうてい組めぬだろうと思うわけであります。  なお実際問題といたしまして、最近国産化をはかっておりますP2Vの問題、これは五年度にわたるものでございます。大体必要な資材はみなアメリカの供与になっております。無償でございます。ただロイアリティを払う必要があるのでございます。一年度に大体三十万ドルでございまして、五年間で百五十万ドルの外貨支出を必要とする、こういう計算でございます。もっともこの金額が将来どうなるかということについては、先ほどお話のように、アメリカ側の物資の供与がドルを増加するというようなことも想像できないことはございません。しかし今はアメリカの負担でございまして、今後の協定によることと思っております。  なおF86、T33の飛行機の関係、これもアメリカが大体半額を、ドルを必要とする分は供与を受けております。従って当方といたしましては、円貨でもってこの生産が今進行しておるわけであります。もっとも民間業者がロイアリティを払う部分があります。これは全体を通じて大体二百万ルと見込んでおります。  なお将来の新機種につきましては、F86が生産が進んで、その次に来たるものでございますから、一方のF86の外貨がこれは落ちます。そのあとに新機種が今度は生産に着手する、これが五年度にわたってやるとかりにいたしましても、大体その規模はわかりませんが、著しく増加はしない見込みでございます。  そういった意味におきまして、ただいまの防衛生産その他において外貨所要が三億ドルに一年度間になるというのは、どうも計算の根拠が十分わからないために、それが間違っておるとは申し上げませんが、大体の観念において防衛庁費が三億三千万ドルであるのに、また将来の増加を考えましても、外貨払いが三億ドルになるということは、私どもは想像しておりません。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まずP2Vは日本はロイアリティを払うだけだというお話ですが、これは私ちょっとうなずけないと思うわけです。P2Vの国産化について、日本五〇%、アメリカ十五〇%の負担をすることにきまっているはずです。しかも国産化が進むにつれて、日本の負担は増していき、アメリカの負担が少くなっていくというような取りきめになっているはずだと思います。これは一々その協定の細目について議論をしておるとよろしいのですが、受田さんの時間もありますので、それがなかなかできませんのを残念だと思います。日本における部品の国産化は当然兵器の生産化は当然兵器の生産技術と関連していきますので、コストが高くなっていく、こういうふうにして部品の値上りが出ていくだろう、もし部品の値上りが出て参りますと、協定の中に定められているものに従って、当然その部分はアメリカから買わなければならないような形になっているはずです。決してロイアリティを払うだけでなしに、現実に進んでいくうちには日本のドル負担というものがどんどん上っていくような協定になっているはずだと思いますが、その協定をもう一度お読み直しをいただきたいと思います。  それから三億ドルというお話は、私自身の言っていることではないのです。これは先ほど読み上げました日本産業構造研究会の日本産業構造の課題というところにかなり精密にその計算が出ておりますので、一ぺんこれも読み上げる時間がありませんのを残念といたしますが、あなた自身が一つごらんをいただきたいと思います。これによりますと、おそらく三億ドル程度の外貨支出を招来するであろうことが想像される、これを経済六カ年計画の最終年次昭和三十五年度の国際収支バランスの受け払い、それぞれ年間二十六億六千万ドルに対比すれば、一割以上の負担を別途に付加することになる、国際収支面に以上のような負担を招来することは国民経済にとって容易ならない重圧であることは言を待たない、こういうふうに述べられておりますので、決してこれは私たちだけの考え方ではなしに、大勢の人の研究の結果であることをお考えいただいて、今後防衛支出が民間経済を圧迫しないようにお心がけをいただきたいし、もしこれが事実とすれば年間の一割以上に当るものを防衛支出に充てることがその国の経済にとって最も適当したものであるか、あるいはその経済の実情に応じてやるというあなた方のお言葉に当るかどうかということを、私は伺っているわけです。これは一つ総理お答えをいただきたいと思います。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 今の数字的のなににつきましては、防衛長官が御説明した通りであります。もちろん私どもがこの国情及び経済の事情に応じてということを申しておることは、この防衛力の増強が一般の民生やあるいは平和産業その他を非常に圧迫していくようなことのないようにということを頭に置いて考えておるわけであります。ただ私はどうも先ほど来数字的の説明なり御質問の応答を聞いておりますと、私自身が数字的にまだ検討いたしておりませんからわかりませんが、常識的に考えてみて、今の年間三億ドルの外貨支出がこのために要るということは、どうも私にも理解できませんから、よくその点は研究いたしますが、今申しているように、決して二十六億ドルの外貨に対して三億ドルを防衛に使うというようなことは、国情に合わぬと思いますが、先ほど来言っているような趣旨で、その数字は検討いたしておりますが、私どもの考えているのは、決してこれがために平和産業や一般の民生をひどく圧迫すというようなことのないことを頭に置いて考えているわけであります。
  57. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それから最後に、もう時間がありませんので、では大体何%程度にとどめられることがあなたの理想ですか。
  58. 津島壽一

    津島国務大臣 大体何%ということは、国際収支の中の歳出総額に対して何%とか、国民所得に対して何%くらいを目標にするということは、大体の見当を持っておるわけであります。しかし国際収支の輸入分について、これで何%が適当だということは申し上げかねると思います。その意味におきましては、国際収支を悪化しないように財政の事情を十分勘案して民生の安定もはかり、そういった意味の基本方針を、単に再生産のみならず、国際収支の面においても十分考慮していくということが、私は当然なことだと思います。  なおついででありますが、先ほど申しましたロイアリティのほかに、P2Vに関しては国内生産をする上においてどうもできないものがあって、部分品を外貨で買うという分は若干ございます。ほかの部分と違って、P2Vには若干ございます。しかもこれが国産化というものによって国内において生産し得るような段階に、わが国の防衛生産をだんだん育成、助長していきたいとこう考えている次第でありまして、その観点から見ましても、国際収支の悪化をしないような方便は十分とりたいと思う次第でございます。  なおただいま御引用になりました書物につきましては、まだ十分に読んでおりませんから、私も十分研究いたします。
  59. 福永健司

    福永委員長 受田新吉君。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 総理大臣におかれましては、午前八時という早朝にかかわらず、こうして御出席して国会の軍営に御協力を願っていることを、非常に敬服しておる次第であります。しかし私は、きょう総理に、先回石橋委員質問に対して答弁されたお言葉の中に、これに関連してぜひお尋ねしておかなければならぬ重大な問題がありまするので、それを第一にお尋ねしたいと思います。  それは、あなたは先回の委員会で、日米の共同防衛の場合、また米国基地を他国が襲うた場合における協力の場合をお示しになったのでございますが、自衛隊法の第七十六条に、いわゆる防衛出動として掲げられてある事柄の中に、内閣総理大臣が防御出動すべきであるという認定のもとに自衛隊行動せしめた場合に、それが国会承認を得られなかった場合は次に召集された国会においてこれの承認を求めなければならない、もし承認が得られなかったならば、行動した自衛隊は直ちにこれを撤収しなければならないという規定がございます。そうしますと、行政協定の二十四条によって共同措置の講ぜられた自衛隊防衛出動の場合に、総理大臣の中には——あなたはさようなことはあり得ないと思いますが、非常に勇敢な、好戦主義のお方がおられたような場合、軽く日米共同防衛に応ぜられて自衛隊を出出動される場合がある。しかるところ、国会ではそうした軽い防衛出動を戒めるためにも、また国民の総意を代表するためにも、その防衛出動に対して国会承認をしなかったという場合かあり得ると思うのです。その場合に、行政協定による共同防衛措置自衛隊防衛出動というものと、国会の不承認というものと、いずれが重きをなすか、これをお尋ねしたいと思います。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 それはもちろん国会承認しなかった場合におきましては、その国会意思を尊重すべきが当然であると思います。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますると、条約上の義務国会会の承認というものをはかりにかけてみた場合には、国会承認の方が重きをなすと解釈してよろしゅうございますか。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 この二十四条の場合は、私は条約上の義務とは実は考えておらないのでありまして、今お話しのような実例があれば、その場合において国会の不承認意思に従うべきだと思いましす。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 先回の総理の御答弁の中に、米軍基地に対する他国の侵略があった場合に、その基地における米軍が一人もいなくなったという場合には、すぐ日本自衛隊がこれを防衛することがあり得る、これはきわめてまれな例だろうと思うが、そういう場合があり得るというお言葉があったわけです。私はそうした考え方というものははなはだ軽卒ではないかと思うのです。何となれば、少くとも自衛隊防衛出動というものは非常に慎重を期さなければならないのであって、他国の侵略に対してこれを防衛するために軽く自衛隊を動かすというような考え方、これは少くとも自衛隊のあり方というものに対するきわめて軽い安易な考え方であると思います。ことにひとたび防衛出動をやった場合に、たといそれが共同作戦の場合であろうとも、国会承認しないからといってすぐこれを引き揚げるといったって、現に戦いを回避して自衛戦争をやっているのですから、自衛戦争をやっている日本自衛隊を、直ちに戦闘から引き下らしめるということは、現実の問題としてもこれはなかなか困難だと思うのです。従って国会承認を得て初めて自衛隊出動せしめるという原則がくずされるような場合ということは、われわれとしては考えてはならぬと思うのです。その点総理としては自衛隊行動に対して、防衛出動に対して、軽い気持でお考えになっておるのではないかという不安がありまするし、本日新聞の報ずるところによれば、先回のあなたの御答弁に対して米国側は非常に歓迎しておられる。岸総理の発言の米軍基地に対する攻撃の場合に、日本自衛隊出動もあえて辞さないのだというようような意味を大いに歓迎している記事か出ておるのでございますが、そういうところから考えましても、総理みずからのお考えに重大な反省をしていただかなければならない問題があると思うのですが、御答弁願いたいと思います。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 この自衛隊出動またその出動に対して事前に国会承認を得ることのできないような緊急の場合において、あとで不承認というような場合は、もちろん非常な国家の重大事でありますから、これを慎重に考えなければならぬことは言うを待たないと思います。そんな軽いつもりで私が言うているわけでは絶対ないのであります。私が先日お答えを申し上げましたのは、日本領土内にあるところの米軍基地、これは安保条約において設定されておるものでありますが、それから出動した場合に、外国からその基地爆撃を受けるとか、侵略を受ける、攻撃を受けるということになれば、日本領土及び日本人民、その人民の生命、財産というものが危殆に瀕するわけであります。従ってこれは明らかに日本に対する侵略であるということを私は申し上げたわけであります。そうしてそういう場合における防衛は主として米軍が当るべきものであり、また米軍の力によってその攻撃が排除されることを私どもは期待しておるわけであります。しかしそういう場合において他に方法がないという場合においては、われわれは座してそういう攻撃を甘んじて受けるわけにいかないから、ここに自衛隊出動ということも考えられるということを申しておるのであります。そういう事態においてこの自衛隊行動しておる場合に、緊急になにして事前に国会承認を得るひまがなかった場合において、あとでこれか国会の審議になって国会が不承認するというような事態は、私は今受田委員がおあげになりましたように、そう簡単にこれが不承認とかいうことになることもないように慎重に審議されるでありましょうし、また政府が初め出動を命ずる場合においても慎重な態度でやるべきことは当然であります。決して軽い気持であるいは軽卒にそういうことを申しておるわけでは絶対ないのでございます。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 総理のお考えであるならば、先ほど行政協定によるところの日米共同作戦による防衛出動においても国会がその後において不承認をした場合においては、いつでもこれを撤収するという御答弁があったわけですが、これは、この法律規定を尊重される政府といたしましては当然のことだと思います。もう一つは、内閣の性格とかあるいは総理大臣の性格によってこの防衛出動というものが左右される公算が非常に高いという意味から、少くとも国民の総意を代表する国会か常にこれを監視する意味におきましては、かりそめにもこの総理の独断によるところの防衛出動というものは、これは考えてみたくないのです。しかしながら行政協定による共同作戦ということは、これはしばしばあり得ると私は思うのです。そのあり得る場合を例にとって私は今お尋ねしたのでございますが、その行政協定規定によるところの共同措置というものは、これは条約の規制を受けるものではないという御答弁が今あったのであります。そうしますと、もう一つここで突っ込んでお尋ねしたいのは、行政協定の二十四条の規定は、結局安保条約第一条の規定に基いてなされる、いわば条約上のある程度の拘束を受ける規定ではないということをどういう根拠からお示しになられるのか、お答えを願いたいと思います。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん行政協定規定は、安保条約に基いてなされておるものでありますから、今おあげになりましたる規定の趣旨は協議をするということが規定されておりまして、協議の内容は、そのときにおいていろいろなにがあると思いますが、当然日本政府としては、国会承認を、受けるということは、こういう重大な問題について法の命ずるところであり、それが条件になることは、協議の内容をなすことは、私は当然であろう、かように考えております。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 総理の御答弁で国会を第一義に考えられる御意思がはっきりしたので、この問題はこれで一応おきます。  私は、いま一つあなたに特に昨年アイゼンハワー大統領との間で共同声明せられた内容について、これと関連する自衛隊の増強計画についてお尋ねを申し上げておきます。それはあなたとアイクとの共同声明の中にこういう事柄かうたわれております。それは、「合衆国は、日本防衛力整備計画を歓迎し、」云々、と同時に「合衆国は、日本防衛力の増強に伴い、合衆国の兵力を一そう削減することを計画している。」という言葉があるのです。この日本防衛力増強ということと、それから合衆国のその計画ということのつながりはどういうところであるか。すなわちさらに突っ込んでお尋ねするならば、日本防衛力の増強ということは、今政府が基本方針として示されておりまする昭和三十三年から三十五年までの計画よりも、さらに先に及ぶいわゆる第二次長期計画というようなものを考えた増強計画か、あるいは第一次の三十五年までの増強計画にとどまる計画か、そういうものを含んで、これに対してアメリカが計画したその内容がどういうものであるかということをお尋ねをしたいのであります。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 私が昨年アメリカに参ります前に、国防会議におきまして長い期間研究をしておりました日本の国防方針なり、国防計画の防衛増強の目標というものを国防会議にかけまして、政府がこれを決定いたしたのであります。私がアメリカに参りました際に私が説明をし、アメリカが歓迎したというのは、この計画をさしていっておるわけであります。将来のこれについて、第二次あるいは第三次というようなものは別に論議になったわけではございません。そして根本の考え方として、日本自衛力が増強されるに応じて、アメリカとしても、われわれも、アメリカの駐留軍がいつまでもおるということは国民的な気持の上からも望ましい何ではございませんから、従来もこれを撤退することを望んできておるわけでありますが、これは日本の安全、防衛の万全を期する意味から申しますと、日本防衛計画なり日本のその実情がアメリカ軍をして撤退せしめても日本の安全保障に差しつかえないと認めるならば、いつでもアメリカは撤退するという考え方を従来も表示しておるわけでありまして、それらを今申し上げましたように、第一次の計画を示したことに関連して、アメリカ側におきましても、日本防衛力が増進されるならば漸次このアメリカの駐留軍の兵力を撤退しよう、こういうことを申したわけでございます。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 合衆国の兵力を一そう減らすことを計画しているとアメリカが言っておるわけですが、この計画という言葉の中には、単に防衛三カ年計画の反対給付としてそういうものを考えたいという意味のことにとどまっておるのでございましょうか。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 先はど申し上げましたように、私がアメリカで説明いたしましたことは、私どもの今日持っておる防衛計画を説明しただけでありまして、それ以上のことについては何も話し合いはございません。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 三年間の計画の中身は、しばしば言い古された言葉でありますが、陸上が十八万というところにとどまっておるわけです。ところがその陸上の十八万という数字は、今年の改正が成功した場合に、もうあと一万で片つくわけです。それで日本防衛計画の一応の目標が達せられる。また海軍も十二万四千、飛行機も千三百機、そういうものでアメリカが満足しておりましょうか。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通りアメリカの陸上戦闘部隊は日本の陸上自衛隊の増強の現状を見て、これを全部撤退するということを声明し、これが実現されております。その他海空につきましては、日本防衛力の増強を見合せて、そしてこれが兵力を削減し、そういう方向に向かってアメリカもだんだん減らしていくという考え方をもっておるものと私は考えております。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 防衛三カ年計画、今申し上げた数字の実現を見た場合に、今海空もあわせて削減するということを仰せられたのでありますが、海空が削減するということになると、これは陸のみでなくて担当深刻な問題だと思うのでございますが、今考えられている三十五年まで、海空はもちろん三十七年に一部及んでおりますが、その計画を実施しただけでアメリカが海空の兵力を減らすという計画があるという意味に了解してよろしゅうございますか。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 もちろんアメリカが海空の何を、陸上戦闘部隊が全部撤退したようにこれでもって全部撤退するということは、私は予想しておりませんけれども、これによって、これが完成すれば一部兵力を削減してくるような計画になっておると思います。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 海空はこの防衛三カ年計画によって一部が減らされる、しかし大部はまだ残されるということになりますと、次の長期計画というものがこれに関連して登場してくると思います。従って米軍の駐留部隊の中で海空の残りの大部が撤退するためには、さらに次の長期計画が必要であるということに了解してよろしゅうございましょうか。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 これはもちろん各種の客観的情勢なりいろいろなものを検討いたしまして、国防会議その他のそれぞれの機関におきまして、将来の問題はさらに検討をしなければならぬということは言うを待ちません。これでもってすべてか終ったということは言えぬと思いますが、どういうふうになりますか今から私が申し上げることは適当でないと思いますけれども、もちろん将来の問題につきましては、国防会議におきまして十分検討して計画を立てていかなければならぬと思います。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 それははなはだ責任が軽いお言葉だと思うのでございます。何となれば、昨年五月に発表せられた防衛の基本方針の中には明らかに防衛力の漸進的な整備がうたわれておるのです。この漸進的な整備というものは、単に防衛三カ年計画のみならず、その次にくる長期計画においても漸進的に防衛力を増進するという意味を含んでおるのではないかと思うのでございまするが、いかがでございますか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん日本防衛力の増強は国情、国力に応じて増強していくというこの根本原則は私は変らないものと思います。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 根本原則は防衛力の漸進的増強である、従って第一次長期計画の後にくる次の長期計画においても漸進的増強はこれは考えられる問題であるという今お言葉でありまするから、私はさらにお尋ねします。  そうしますると、第一次長期計画で考えられているこの数字というものと、現実日本の国力その他の自衛隊に対する国民的感情とかいうようなものをあわせ考えたときに、第一次長期計画の次にくる長期計画というものが、人的構成の上の方、すなわち人員を増強する問題については限界点に達しておるのではないかということをまず第一に考えてみたいのです。何となれば、現在自衛隊の総数は、今度改正された数字を拝見しまして大体二十二万二千ということになっておる。二十二万をこえる現役の自衛隊員がここに陸海空でできておるわけなんです。この数字は、かつて保安庁長官の木村さんが自衛隊員の募集の限界について、志願兵制度をとる限りにおいては二十二、三万が限度であろう、その次にはどうしても徴兵制というようなものを考えなければならぬであろうという意味の御発言があっておるわけなんです。従ってこれが来年度さらに陸が一万ふえ、海空がさらに増員せられることになると、二十三、四万という数字に現役の自衛隊員がなるわけでございます。そうしますると、もはや保安庁が出発したとき、当時の長官が志願兵制度の限界点に触れた数字を上回る数字になってくるわけです。この実情をどうお考えになりましょうか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 志願制度で徴募できる人員の限界がどこにあるかということは、私は国民防衛に対する考え方や、自衛に対する考え方の、国民一般の考えておることと非常に関連があると思います。かつて保安庁長官時代に、当時の責任者が言いましたことは、私は国内のその当時の情勢と今日の情勢とは非常に変っておると思います。従って、その二十二、三万というのが限度だというふうに言うたということでありますが、内容的にも、多少今承わってみますると、それは陸上部隊としての自衛隊といいますか、保安隊の数字をそういうふうに言うたように、当時は私聞いておるのでありますが、今の陸上、海上あるいは航空のあらゆる面における人員的のこの数字の問題につきましても、もちろんこれはある限度があることは考えなければならぬと思いますけれども、私はやはりそういうものの限度というものが、今申しましたように国民、ことに若い人々の祖国の防衛に対する認識なりあるいは自衛隊そのもののあり方、これに対する国民の信頼の度合いというようなものと関連をいたしておるわけでありまして、絶対的に全人口の何%までが限度だというようなことは、これはなかなか言いにくいことであろう、こう思います。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 私は、総理があまり安易なお気持で御答弁していただいていることを悲しむものでございます。現に、本年度の上半期における募集状況などを拝見しましても、志願者の数が著しく減っておる。また出願をしたけれども、試験を受けないという数字が相当数に達しておる。そういうところを見ますると、この自衛隊の素質というものから見て、現在、出願者と採用者の比率は四・三倍程度であり、また不参加者を除くと二倍とちょっと程度の競争率であるということを考えると、これは特に航空自衛官のごとき新しい兵器を使用する自衛官において、はなはだ危険な状況に立ち至ると思うのです。従って、志願兵制度が二人に一人くらいになって、優秀な自衛官、優秀な装備を使いこなす自衛官というものがとれるかどうかという問題を一つ考えていただきたい。そして、志願者の数は漸減的に比率が下っておる。そして二人に一人とか二人半に一人とかという競争率になったのでは、素質の上において非常に欠陥か生ずるということ、この二つの面から、あなたは今安易な御答弁をなさったのでございまするが、非常な警戒信号の出ていることをもう一度確認された答弁を願いたい。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 私は、決して先ほどの答弁において、この志願兵制度について、非常な楽観的な感じを持っておるわけではございません。もちろんこの素質を向上するという意味から申しますと、一般教育の問題なりあるいは学校教育やその他の問題におきましても、十分に青少年の全体の考え方やあるいは素質というものが向上されていかなければならぬことは、ただこの自衛隊の関係だけじゃなしに、われわれの社会の進歩の上からいって、当然それは考えなければならぬと思います。  それからまた募集の方法なり、国民に、ことに若い人々に、十分に、自衛隊のあり方なりなにについての理解を深めるような方法もとらなければならぬことは言うを待ちません。従って、私は決して現状が安易ななにで大丈夫だというようなことを軽く申し上げておるのでは絶対にございませんで、今お話のようないろいろな点につきましても、十分政府としても考慮していかなければならぬ問題でありますが、ただ絶対数として、二十二、三万こせば、それでもってもはやその志願制度というものが限界に来ておるのだ、こう数字からいきなり断案を下すことは早計であって、あらゆる面において、教育の面あるいは募集における面、また自衛隊のあり方の面等におきまして改善を加え、十分に国民の理解を得るように努力してやっていかなければならぬことは、これは当然であります。それは決して安易な道でもありませんし、大いに努力しなければならぬということは、当然私としても考えておるところであります。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 大体優秀な、たとえば航空自衛官に例をとるならば、優秀な自衛官を募集し——応募者と採用者の比率、その限界というのは、どのくらいのところにあるのか。
  85. 津島壽一

    津島国務大臣 便宜、私からお答え申し上げます。  ただいま御質問中の募兵の問題でございますが、ちょっとその点について一言申し上げておく必要があると思います。二十万くらいが限界じゃないかという、前というか元長官お答えがあったということですが、あれはおそらく陸に関してだけではないかというふうに想像されるのでございます。現に、もう今日では陸海空入れて二十二年度で二十万をこしておるわけであります。来年度はどうかと申しますと、二十二万になるというので、現実自衛官は二十万をこしております。ですから、二十万ちょうどであろうということは、陸についてそういうことをおっしゃったのじゃないかと想像されます。  それは別にしまして、ただいまの御質問は、海空、ことに空についての募集の状況はどうであるか。志望者、これは非常に多数あるのでございます。すなわち三十一年度を申し上げます。募集が、航空部隊については三千四百人とりたいというのに対して、五万九千人の応募があったわけでございます。でありますから、総計においては五倍でありますが、空だけにとりますと、ほとんど十数倍という応募がございます。本年においても、四千百人の募集計画でございます。それに対して、今日まで応募した者は、空については三万三千ございます。そういった意味において、九倍、十倍の応募者があるわけでございます。大体海についても、これは相当以上と申し上げていいと思いますが、千八百人の募集に対して、海上部隊の志望者は二万七千人でございます。ただ陸については、二万一千の募集に対するに八万四千人の応募者がございました。そのうちで試験に応じた者は、この中から多少減っておりますが、お尋ねの空に対して  は、これは非常に応募者が多いという実情は、今後の防空体制を作る上において、私は非常に力強いことであると思っておる次第でございます。  なお素質の問題でございますが、大体五割以上が高等学校卒業者で、それがこういった自衛隊のいわゆる二十に応募するので、私は素質については、最近の状況はあまり悪くないという考え方を持っております。しかしながら、今後の情勢を考えますと、一層募集の事務に力を入れたい。それには総理がおっしゃったように、募集の方法または試験のやり方、その他防衛意識の高揚、一般の問題について、多々われわれ考慮すべきものがございます。現に三十三年度予算において、募集に関した経費は相当増額をお願いし、衆議院においては御承認を得ておる、こういう状態でございます。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお示しになられた数字は、これは今年度の場合において、空が三十年、三十一年と比べたときに漸減しているという根底をくつがえすものでないと思うのです。つまり自衛隊員の募集というものは、漸次行き詰まりつつある。三十年、三十一年、三十二年と比べた年度的な比率からいって、大幅にこの数が減っておる。そして試験を受けない者の数字をごく軽く考えておられますが、試験を受けない者の数というものが、これは非常に多い。出願したけれども、試験は受けない、この数字をお示しになっておられない。今年上半期の数字を見ても、その試験を受けない者が応募者の中で約四割ある。四割というものが試験を受けていないのです。こういう数字をよくつかんでみたときに、応募状況が漸次苦境に陥りつつあるということは、私は疑うことができないと思うのです。しかも今年度の予算案の内容を拝見してみますると、飛行機のパイロット養成に非常に多くの予算を組み、またその殉職した場合における待遇も考えておるという努力はされておる。しかしながら現実においては、自衛隊に対する総体的な国民の感情というものが、予算上において今年四千九百万円もPR運動に金を出された割合に実績が上らぬという、ここに私は問題があると思う。私は政府がことし大幅の募集関係経費を計上されるという気持はわかりますけれども、現実自衛隊に対する関心が非常に窮屈になっているということだけは争うことができないと思うのです。従って長期防衛計画をお立てになっている岸総理といたされましても、単に人間の数をふやす自衛隊の増強という計画から、この際かつて辻委員が言われたような装備という方面、そういう方面で自衛隊の政策としてもこれは考えていかれるべきものでないかと思うのです。そういう意味で人的にさらに自衛隊を増強するというには限界が来ておるし、世界各国の例を見ても、志願兵制度をとっている国はごくわずかしかない、ほとんどが徴兵制度をとっている。従って総理としてはできればこの際優秀な自衛官を採用するためには、憲法を改正して徴兵制をしくのがこれがわれわれとしては願望であるというお考えはないでしょうか。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 私は徴兵制度を日本でしく意思は今のところ持っておりません。今お話しのように志願兵制度の前途につきましては、十分防衛庁においても考えておりますし、実情としてもこれが一つの限界にきておるという結論にはまだならぬと思いますが、これは十分考えておるつもりであります。しかし徴兵制のことは今別に考えておるわけではありません。  それから自衛隊の増強について、数よりも質といいますか、それに重きを置くということは、防衛の基本方針の中にもはっきりとうたっております。従いまして私どもはただ単に人員を増加するということだけが防衛力増強の主眼ではなしに、むしろ装備の点、質の点にうんと力を入れるべきであるということは、受田委員と同様に考えております。(拍手)
  88. 受田新吉

    ○受田委員 私は自衛隊の立場からあなたのお考えをお聞きしたわけでありますが、私は今度は二大政党の対立の場合における野党である社会会党の立場から、自衛隊に対する考え方をただしたい点がある。それは今日与野党は防衛に関してはまことに対照的な反対意見を持っているわけです。外交方針においてもそうなんです。しかるところ、総選挙の結果、先般茜ケ久保委員が言われたように、野党である社会党に、いつ政権が流れ込むかもわからないという段階において、この政策の接近をはかるということは、一党の党首たるあなたの責任だと私は思います。従って社会党は、この自衛隊に対しては少くとも平和建設の役割を果すものとしてこれを考えておるわけなんでありますから、自衛隊内部における施設工作隊のような部隊、こういうものは社会党政権になってもいつでもこれが平和建設隊に切りかえられて、お役に立てられると思うのです。野党の防衛に関する考え方がどうであるかということも常に考えに入れられて、政権授受の場合に極端な変革が行われないという立場からも、政策の歩み寄りをはかっていくという意味で、工作隊、施設隊のごときものの増強というところに自衛隊の主眼点を置いておかれる方が、政治に対する常識を持ったお方であると思うのでございますが、いかがでありましょう。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 私は二大政党のあり方として、両党がお互いに反省し合って、そして民主的ルールによって政権が移動した場合に、国の姿、国の方向が根本的に変ることがないようにしていくべきであるというこのお考えにつきましては、その考えはかねがね私も持っておるところでございます。しこうして日本の現在の二大政党の様子を見ますと、いろいろな点において意見の相違もありますが、特に外交、防衛の点において根本的に考えを異にしておるということは非常に遺憾でありまして、これにつきまして十分に、われわれの方から申しますと、野党の社会党の猛省を促したい。(拍手)ただわれわれは世界の恒久的平和を望むという点においては、これは社会党もわれわれも同じ考えを持っておると思う。日本を危うくしようとか、日本を危険にさらそうとか、日本に、また世界医の平和を乱そうというようなことを考えておるものが、両方ともないことは言うを待たない。ただそれの方法として、どういうなにをとるかということについては、何といってもこれを現実に——私がこういうことを申し上げるのはどうかと思いますけれども、社会党の諸君が政権を実際に担当する責任をとられたことが過去においてごく短かい期間以外になかったものですから、それも今の時代とは違う。従ってほんとうに責任を持って、九千万の民族の安全を、われわれの責任においてこれを果すという場合におきまして、国際現実というものを十分に——ただ理論的であるとか、あるいは一つの理想でもって分析するのではなしに、現実というものに対して責任を持ってこれの分析をして、これに対する日本のあり方というものを考えていくならば、私は、どうしても社会党の今まで言われておるところの外交方針や防衛に関する方針は、ただわれわれが従来主張してきておったから、あるいは反対党だから意見が違うというのではなしに、ほんとうにこれは特に社会党の諸君が、近く政権を担当する機会もくるであろうということを望んでおられ、またそういう気魄を持って公党として努力をされるならば、この事態だけは十分に考えていただきたいと私は思うのであります。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 適切なお言葉であるとお礼を申し上げたいところではありますが、私はここで総理に申し上げたいことがあるのです。あなたの今お言葉の中に社会党が空理空論に走り過ぎるような印象を与えるようなお言葉かあったわけでございますが、現実国民の中で、二大政党として国民の支持層も、多少の支持層の数に相違こそあれ、はっきりと意見が分れておる。しかもその意見が分れて、一方の社会党を支持する国民の方々というものは、社会党の政策に共鳴をして支持していただいておるわけです。従って二大政党の対立の今日、両党がおのおのの政策をできるだけ首脳部間においても話し合いで、歩み寄りをする、努力をするという雅量が、党首という地位にある方々には必要である、私はそれを申し上げたのであります。従ってそれぞれの支持をいただいて、国民の意見がそれぞれの政党を盛り立てておるのでありますから、あなたはいたずらに社会党に対する対決とか批判とかいうことを乗り越えて、国民のために自民党の右翼的な行動を抑え、外交的にもできるだけの一つ幅の広い平和外交を進めるというような努力、社会党の立場も十分に考えた外交をされる。防衛関係においても今のような——私が申し上げたことに対してお答えがないのですが、そういうところに心を使っていくというような努力をされることで国民の安心感が湧くと思うのでございます。今私が申し上げた自衛隊のあり方の中における、いわゆる平和的建設的な部隊というようなものを中心に考えられ、破壊的な消耗的な部隊の増加を防ぐというような考え方はいかがでありましようか。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊のあり方につきましては、私はやはりこれは言うまでもなく自衛隊の本質、日本の安全を保障し、他からの侵略に対して有効なる防衛手段を講ずる、それにふさわしい内容を持っておる部隊を作るということが、自衛隊の本質だろうと思います。それが本来何か他の目的に使われるという——いろいろな緊急の場合におきまして、あるいは災害の場合において自衛隊がいろいろな協力をしていくということは、これはもちろん考えられなければなりませんが、初めから建設の目的、何かの施設をする自的でもってこの自衛隊を作るというのではなしに、そういうものが必要であれば、あるいは農村建設青年隊とか、いろいろなものがありますが、自衛隊そのものの本質というものは、祖国を防衛するために、他から侵略を受けた場合、直接間接の侵略に対して防衛をする、それに有効な最も適切な内容はどうであるかということを研究して、それに適応するようにこれを作っていくというのは当然であろうと思います。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 大体中共政府の軍隊のごときは、平和建設隊的な性格を持った部隊が非常に多いわけです。そういうような新しい軍隊というものの内容は、その装備においても、精神においても、平和的な建設的な方向へ漸次進ませていくような努力をいたしておかなければならないんじゃないかと思うのです。  しかし私は今あなたのお説でさらにこれを反駁してお尋ねを繰り返すことを避けたいと思いますが、いま一つ、これはおしまいに伺っておきたいことでございまするが、終戦後十三年になっている今日、平和条約第十一条によるところの例の戦争犯罪人というものが、依然としてまだ巣鴨に三十四名苦労しておられます。これは三日前の二十八日に三人ほど出所されて、現在三十四名残っておる。この問題を、平和的な考えを持って、そうして建設的な意見を持って祖国の平和を担当しておられる総理としては、これは軽々しく見ていただいてはならないと思う。あなた御自身も巣鴨で苦労されたお方でありますが、一緒に苦労した同士がまだ三十四人も巣鴨に残っておる。しかもその巣鴨に残っておる人々はBC級の戦犯で、非常に程度の低い戦犯です。その方々がなお今日巣鴨の牢獄で苦労されておるというこの現状は、人間的にも許しがたい、忍びがたいことだと思います。しかもその三十四名がみなアメリカ関係の戦犯です。アメリカと一番好意を持って交際をしておられる、また総理みずからもアメリカに乗り込まれてそして平和外交を推進してこられた、人道外交を推進してこられた総理として、アメリカだけが戦犯を巣鴨に残しているという問題は、私は重大な問題だと思うのです。この問題の解決にあなたの努力が足りないんじゃないかと思うのです。あなたの今までの経歴その他から見られて、どうしても一つこの際あなたみずからが乗り込んでアメリカに対して衷情を訴えるならば、三十四人のわれわれの同胞を巣鴨から救い出すくらいのことは簡単にいくことだと思うのです。ほかの国々はみな釈放している。アメリカだけがこれを残しておる。A級戦犯は、賀屋さんなどもちゃんと出て、近く総選挙に出られるといううわさも出ているくらいです。こういうときにBC級の方が三十四人残されて苦労されておる、この現実をあなたは確認されて、外交上の欠陥があったのではないかという気持とあわせて御答弁願いたい。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 今日なお巣鴨に三十数名のBC級の戦犯の人が拘置されているということに対する受田委員のお気持も、従来私自身が痛切に感じていることでありますが、同じ気持でいるわけでございます。特にアメリカ関係だけが残っているという事態も、御指摘の通りでございます。私昨年アメリカに参りました当時におきましても、この問題は、今おあげになりましたように、私個人の体験からもありますし、日米の恒久的な友好関係を固めていくという立場から申しましても、こういう事態に長く置くことははなはだ好ましくない、これを一日も早く解消したいという意味で、もちろんこの点につきましては、従来日本政府として交渉していることを、さらに私一個として取り上げていろいろと話をいたしたことも、当然やるべきことだったと思うのでございます。たまたま当時ジラード事件が起っておりまして、アメリカの国情におきましても、アメリカ政府におきましても、私の考え、日本国民の考えに対しては十分な理解を持っておりますが、アメリカ国民の中には、そういう時期でありますから、やや刺激された感情も当時新聞等に現われておったのでございます。従ってその際にはっきりとこの話し合いは十分いたしたのでありますけれども、その方針を共同声明等に織り込むことができなかった。それに基きまして、昨年の暮れに日本側だけの三人の委員会ができまして、一切の裁判記録その他を日本の方へ取り上げて、そうして日本のこの三人の委員において審査し、これに基いてアメリカに釈放を要求する、そうしてアメリカ側は大体その委員会審査によってこれを釈放するという根本的の話し合いをいたして、それが昨年の暮れから実現を見ているところでございます。従来は御承知通りアメリカ人だけで委員会がありまして、それがいろいろと裁判の記録を審査して、そうしてアメリカ政府に勧告をし、それに基いて釈放するということになっておったわけでありますが、これを日本側に一切取り上げ、これの進行が相当に進んでおりまして、残っておられる三十四人の人々の釈放も、私はそう長い期間でなしに実現できるものと確信をいたしておりますし、なおこの上とも一日も早く出られるようにあらゆる面を促進をいたしまして実現いたしたいと考えております。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 その努力が今日までもう少し強く続けられてもらいたかった。大体アメリカ関係だけを三十四人残している、そうしてまたこの人々はBC級戦犯であるというようなことを考えたならば、もうこれ以上の御苦労をかけることは忍びないじゃないでしょうか。三人委員会の設置されていることもよく承知しておりますが、外交上の努力の欠陥がそこに至っているという、あなたは責任を感じられませんか。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 この点に関して、もちろん結果がそういうふうに現われておりますから、国民気持からいって、政府の努力が足りないというふうにごらんになるということも、あるいは私はごもっともな点があると思います。しかし従来、私の政府以前から、この問題に関して日本側が努力をいたしていることは、これはなみなみならぬ努力をいたしておりますし、私になりましても、私としてはあらゆる努力をいたしてきているのでありまして、その結果がまだすべて実現していないということははなはだ遺憾でございます。今申しましたように、この上ともできるだけの努力をいたしまして、一日も早くこれが全部自由の身になるようにこの上とも努力をいたします。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 私はその三十四名の方々の運命があまり先に延びては許されないと思います。あなたは見通しをお持ちじゃございませんでしょうか。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 私はっきり、必ずいつ釈放できるということをここで明言することはできませんけれども、私は、そう長い期間でなしに、ごく短かい数カ月の間にはこの目的を実現したい、こういうなんでいろいろ努力をいたしておりますし、またそういうふうに進行をいたしていると存じます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいにいたしますが、数カ月後に解決する見通しである、こういうことでありますか、これはこれでおきまして、いま一つ、せっかくの機会でございますから、国会の運営と総理の解散に対する御意見を伺っておきたいと思います。  内閣委員会は、御承知通り全員そろってここにおられるわけであります。ところが法案がまだ三十幾つ残っておるわけです。それでできるだけ私たちは協力して、委員長のお言葉に従って午前八時から会議をやっておるのです。ところがわれわれがいかに努力しても、期日のある法律案もありますし、大急ぎでやろうとしましても、重要法案がややおくれる見通しというようなこともありまして、われわれとしても政府の御意思に沿うて御協力をして差し上げるようにいたしておりながらも、なかなか骨が折れているのでございますが、私たちとしては、政府に対して単にこの国会の審議の促進をはかるというのみでなくして、国会意思政府意思とができるだけ一致して、円満裏に審議が進められるということがむしろ国民のための幸福ではないかと思うのです。従ってこの法案の審査に当って、重要法案が、特に内閣委員会におけるたくさんの法案がそれぞれ成立することを期待して、総理はその成立をもって解散に導こうとせられるのか、あるいはその成立以前でも、この内閣委員会の審議のいがんにかかわらず、総理意思で解散をせられようとするのか。予告解散とかいうような意味でなくして、この国会の審議と兼ね合せて政府の方針を伺いたいと思うのであります。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 私は国会の審議の状況を見ますと、今受田委員お話のように、野党におきましても、これら国会に提案されておる諸案件に対してきわめて協力的な態度で審議を進められておることに対しましては、非常に感謝をいたしております。政府及び与党も、野党側のこの気持に応ずるように、この上とも十分に一つ努力をいたします。この国会に提案をいたしております案件は、いずれも御承知通り国民にとり、国にとって重要な案件でございますので、その審議にできるだけわれわれも努力をいたしますが、この上とも、従来野党ですめる社党見も、この審議に御協方をなさるお気持をなお一そう続けていただきまして、一日も早く重要案件が成立をするようにいたしたいと思います。  解散の問題に関しまして従来いろいろと論議がされ、また世間でもいろいろの議論が出ておりますから、これに対して関心を持っての御議論も私はごもっともなことであると思います。しかしこの点に関しては、従来しばしば私が申し上げておる通り、私としては内閣の首班とし、そして一方国会にこういう重要な案件を出しておるのであります。それの審議を促進し、それの成立を一日も早く望むということで、実は私の胸も頭も一ぱいでございまして、解散のことをまだ考える時期に至っていないということを従来申し上げておりますが、さように御了承願います。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 国会は五月十八日まであるわけです。五月十八日までに、すべての法案が成立することが好ましい姿と私は思うのです。この五月十八日までに法案の審査がされるという前提をお考えの上での御希望でございましょうか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん国会の会期は五月十八日でありまして、あるいは必要かあればさらに延期するというようなことも従来行われておったところであります。しかし法案の内容、性質によりましては、期限のついておるものもありますし、一日も早く成立させることが必要であるというものもございますし、十八日までやっても差しつかえない問題もございましょうし、いろいろな法案の内容でございますから、私としてはやはり先ほど申しておるように、政府に責任のあることはもちろんのことでありますが、次いでは与党に非常に責任があり、さらに野党が御協力願って、それぞれの内容に従って一日も早く成立するように一つ御協力を願いたいと思います。
  102. 福永健司

    福永委員長 前田正男君。
  103. 前田正男

    ○前田(正)委員 この際私は、時間がありませんので、わが自由民主党の国防都会の出席意向を代表いたしまして、ただ一点だけ総理に御質問いたしたいと思うのであります。  今回提案になっておりますところの陸上の増員初め海空の増強、すなわち防衛力整備計画の件につきましては、過般総理の、現在においてはこの計画自身を今検討する必要はないというふうな御答弁がありましたけれども、この予算編成に当りましては、内容についても多少防衛庁との間に検討いたしまして、技術関係の部隊などをふやしたのでありますが、過般の辻委員質問におきましても、本年はこの程度でございますけれども、来年度の予算編成に当りましての防衛力整備計画の問題につきまして、陸上十八万、その他いろいろの装備の増強という問題については、いろいろな質問が出ておったのでありますが、われわれ与党の立場でこの問題を検討いたしておりますし、これは国防会議におきまして防衛力整備計画を決定いたしましたときにも、内外の情勢に応じてこれは再検討するというふうなことが書いてありました。来年度のこの予算その他の方針を決定されるに当りましては、現在のように防衛方面においても、ミサイルその他非常に科学的に進歩いたしておりますし、またわが国の自衛力という立場から見ましても、防空の問題でありますとか、あるいは海水艦対策であるとか、こういった方面にもまた一段と進んだ体制を整えなければならぬことになっておると思います。また陸上問題につきましても、在隊期間の延長の問題であるとか、こういったような問題は防衛力の総合的効果を期するため、量より質へだんだんと改善をしていかなければならぬ、こういうふうに考えるのであります。そういうような点から、この際私たちは、この防衛力整備計画につきましては、国防会議の決定もあります通りに、内外の情勢に伴いまして、来年度以降にきましては、この際検討して可及的すみやかな成案を得るべきである、こういうふうにわれわれは考えるのでありますけれども、総理の御意向を伺います。
  104. 岸信介

    岸国務大臣 もちろんこの国防の問題は、内外の諸情勢、またいろいろな点を勘案して、これが設定をされなければならぬことは言うを持ちません。一たびこれを作ったら、もうそれがこんりんざい動かないという性質のものじゃございません。特に最近のごとく、国際情勢も非常に変っており、また国内のこれに応じての情勢もあり、ことに軍事科学の非常な急速な発展というような時期でありますから、昨年きめられましたことが、やはりさらに三十四年度の年次計画ということになれば、当然各種の事情を検討してきめられなければならぬことは言うを待ちません。またそういうことを党としてもあるいは政府としても十分に一つ再検討いたしまして、事態に即応した最も適当な成案を得ることにいたしたいと思います。
  105. 福永健司

    福永委員長 以上をもって防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案の両案についての質疑は終了いたしました。  これより両案を一括して討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。
  106. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいま提案されました防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党を代表して反対の討論を行うものであります。  防衛は大へん大事なことでございますが、もしこの防衛を、大事なことだけに方向を誤まったり、見通しを誤まったりいたしますると、これは防衛どころかとんでもない事態を招くことは、すでにもう大東亜戦争と称するものによって十分おわかりのことだろうと思うのであります。ただ防衛は国を愛するとか、そういうふうになるだろうとかいった気分や感傷だけでははやれるものではない。もっと冷静に的確に情勢を判断して誤まりなきを期さなければ、全く取り返しのつかないことになると思うのであります。しかるにわが国の防衛方針というものは、まことに根本的な理念において危なっかしいものがある。すでに今日の世界の軍事的な技術の発達、科学の発達というものは、失礼でございまするが、旧軍人的頭脳をもってしてはとうてい解決がつかないような飛躍的な発展を遂げております。防衛庁の立てております防衛三カ年計画、これは昨年岸総理大臣がアイゼンハワー大統領と共同声明をいたしました方針に基いて、六月打ち立てられたものと考えまするが、そのあと人工衛星が飛び出す、ミサイル兵器がどんどん実行の段階に入っておりまするので、こういう段階でわが国の防衛方針も根本的に立てかえをしなければ、再び昔の軍部が陥ったような悔いを残すことになると私は確信いたします。  ときに、この自衛隊の一万人増強に関しましては、自民党の内部でも強い反対がある。少くともこの線だけはやめてほしいというような要求が多分に強く盛り上っておるようであります。この自衛隊を国内にどんどん増強いたしまして、海外出兵もしなければ、また日本外の土地で戦争もさせないというような構想でやっておって、果して日本の国の中で演習地が間に合いますかという問題です。すでに質問がありましたように、岡山県の日本原では、この大砲の射程が一万一千メートルあるのに四千メートルの演習しかできない。演習をするにさえ狭いような日本土地でどんどん実戦が始まったら、一体日本はどうなるのでしょう。まるで狭い長屋の中で棒切れを振り回すようなまねをされたのでは、はたが迷惑です。そのためにたくさんの費用を使い、また農民の土地を奪い、漁民の漁場を奪ってしまって、これでいたずらに昔の軍部の延長にすぎないような自衛隊増強をしようというようなこの古くさい防御三カ年法案に対しては、われわれは絶対反対を表明したい。これは時代逆行の精神であります。日本の憲法で規定されておりますように、日本は戦力を放棄したはずです。それかいつの間にかもう自衛隊が一つの戦力としてでき上って、逆に今度は現在の憲法の中でも戦力の保持ができるとか、あるいは海外出兵はできないが、公務員としての海外出張はあり得るとか、さまざまな文句をつけてこの基本法であるところの憲法の歪曲が行われておる。便宜をはかって、自分たちの都合のいいときにだけ勝手な解釈を憲法に加えるようでは、これはまさに日本の国家を撹乱する第一歩だと私は考える。従ってわが国の防衛方針というものは、あくまでもあの敗戦によって起きました犠牲と、あの体験に基いて新しい方針を打ち出す必要がある。これはおそらくは人工衛星の打ち上げ成功その他の科学兵器の発達によりまして、世界の防衛方法というものは飛躍的に変化すると思うのであります。  それをいたずらに古い軍部の復活をはかるような、古い軍隊の復活をはかるような方向でいくならば、これは要するに一つの惰性軍備であります。惰性に引きずられてずるずるとやっておったのでは、思わざる事態を私は招くと思う。岸総理は核兵器は持ち得ないと言っている。核兵器は持ち得ないが、米国かこれを持っていることは、どうも冷厳なる現実であります。その米国と共同防衛をするというのであれば、人を殺してはいけないと説教をしながら、人殺しと手を握って仕事をするようなことになってしまう。坊主と強盗が一緒に仕事をするというようなことになる。この点私は非常に不徹底であると思う。また日本を戦争に巻き込ませないためにこういうふうな軍備をし、さらにまた米国との共同防衛を下するといっておりますけれども、当委員会の質疑応答の中にも現われました通り米国基地から飛び出した爆撃機が敵の基地を爆破しました際に、報復爆撃を受ける可能性が強い。その報復爆撃を他国の侵略として自衛隊出動し得るということをはっきり言っておられる。そうしますと、日本の国内にある米軍基地というものは、戦争を避け日本防衛するというようなものでなくて、いつでも米国が好きなときに、米国の都合によって、好むと好まざるとにかかわらず日本を戦争に引き込むというような危険性を多分に持っている。むしろ私は日本をほんとうに防衛しようという意思があるならば、日本の安全保障を真にやろうという意思があるならば、この際一切の米国基地をお断わりになった方が、はるかに日本の爆破をのがれる道であると思う。その点がどうも旧軍人諸君の頭脳と新しい防衛観念の行き方とは、私は非常な違いがあると思う。思い切ってこの際古いからを捨てまして、ほんとうに日本が立っていくような道を見出すような防衛方法を立てなければしようがないと思っております。私は岸総理がしはしば言っておりました通り侵略の脅威、国際共産主義の脅威ということを言いふらしまして、それでいたずらに圏内の軍備を増強するということは、まことに危なっかしい古い観念だと思う。共産主義の脅威は説きますけれども、ソ連とは国交親善をはかっていくと言う、中国とも貿易だけはやっていこうと言う。そうして国際共産主義の脅威に備えて自衛隊の増強はするというのであります。「一個の怪物欧州を徘回す」と言ったのはカール・マルクス百年前の言葉でありますが、その百年前の共産主義に対する脅威が、共産主義の亡霊に対するその脅威が、今岸総理を中心とする日本防衛陣の諸君の頭の中に再びさまよい出ている。私はその実体を確めてみた場合に、果してこの共産主義の脅威に対して自衛隊の榴弾砲を差し向けたりジェット機を差し向けたりして、この脅威が失われるものとは思わない。思想がおそろしいならば思想をもって立ち向ったならばよろしいのではないか。思想に対して武器をもって立ち向おうとするところに、私はかつての日本軍部の陥った大きな危険性があると思っております。しかもこういうふうな形において日本の持っております軍備というものは実戦的に役立つかというと、自民党の内部の旧参謀辻政信氏が言うことく、実戦的にはほとんど意味のない軍備である。こういうものに対してたくさんの予算を組んで、そのために日本の社会保障の根幹を脅かし、日本国民生活を脅かすというのならば、これはまことに憂うべき傾向であると思う。ただ一つこの防衛問題につきまして、昔の軍部並みに大きくふくれ上ったものがあります。それは防衛庁の調達関係であります。これだけは旧軍部と少しもひけをとらないくらいに増大しておる。ボロぐつを食ったり、油をなめたり、中古エンジンをかじったりするような段階ではなくて、今ではもう軍艦まで食おうとするような本格的な再軍備体制ができ上ってしまった。こんな調子ではとうていやっていけない。そうして訓練だけはやはりかなり厳重にやりました。それは青竹でぶんなぐってみたり、げん骨を振り上げたり、あるいは旭川の雪の中で自衛隊員が失踪をやってみたり、防衛大学の諸君が二百名集まって、美しき婦人を携えてダンスに巧みになったりしておりますけれども、これだけでは私は安心して日本防衛はまかせ切れない。もしほんとうに日本防衛を考えるならばここでもう一ぺんあの敗戦の体験から、われわれが作り出しましたあの平和憲法というものを読み直してもらいたい。何と書いてあるか。もうお忘れになっておると私は思うのです。あくまでもこの辺に重点を置きまして、この際大胆に日本防衛方針を切りかえる勇気を持っていただきたい。アメリカの作った憲法であるからといって、盛んに非難される与党の諸君もありますけれども憲法はアメリカが作ったから悪くて、軍備と軍備の方針はアメリカが作ったものに盲従しようというのが今の日本防衛方針であります。これはとんでもない話だ。もう大体私どもは知っておりますが、自民党の諸君はお忘れになっていると思いますから、最後にこの憲法の一節を読み上げまして、皆さんの気持をこの辺で変えて、わが党の反対に同調せられんことを希望いたします。「日本国民は、恒久の平和を、念願し、人間相互の関係を支配する嵩高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」となっておるのであります。この決意を、敗戦後わずかに十年にして忘れ去って、もう一ぺん旧軍備に転落しようとして、警察予備隊から保安隊、保安隊から自衛隊と、またしても民族を滅亡させるようなあの旧軍部体制に落ち込む危険を多分に含んでおりますこのたびのこの増強軍備の法案に対しましては、はっきり反対を申し上げまして、私の討論を終ります。
  107. 福永健司

    福永委員長 山本正一君。
  108. 山本正一

    山本(正)委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題になっております防衛二法案に対して賛成の意思を表明するものであります。  世界戦争の発生を否定して、平和を願うことは、人類の理想であることは申すまでもありません。しかし現実の世界の平和は、力のバランスによって維持されておりまして、この国際情勢が各国をして自衛力の整備を余儀なくせしめており、しかも現在の世界いずれの国も単独の力で防衛の目的を果し得る国はありません。欧州諸国においても米国と協定して基地を提供し、その防衛に万全を期しておるのが実情であります。  わが国は、今や国連に加盟し、逐次国力、国情に応じた防衛力を整備し、集団安全保障機構の一員として世界平和の維持に直接貢献するとともに、日米安全保障体制を強化することによって、わが国の防衛も遺憾なきを期しておることは御承知通りであります。もちろん国の防衛について他国に依存しなければならないということは独立国としてまことに遺憾のことでありまして、国民の願うところは、すみやかに外国の軍隊か撤退して自主的な自衛体制が確立されることであると信じます。しかしながら国際共産主義の国家が、その目的のためには手段を選ばない策謀をあえてする現実に思いをいたすならば、防衛体制を整備することなく、単に外国軍隊の撤退のみ求めるようなことは国家としてきわめて軽卒な、またきわめて危険な処置であると申さねばなりません。もしわが国の防衛力に真空状態が生じました場合、その間隙を、襲うものは侵略と混乱であることはまことに明瞭であろうと思うのであります。外国軍隊の早急なる撤退を叫びながら、他面自衛力の増強に反対するという態度は、国際情勢の現実を正視しないのか、あるいはことさらにその認識を避けようとするものと判断せざるを得ません。少くとも国家、国民の将来を、思うものの態度とは思われません。昨年ソ連は人口衛星やICBMの実験に成功したので、世界の戦略体制は急激に変ったから、日本が陸上自衛隊を一万名増員することは意味がないという意見もあります。しかし究極兵器と言われておるICBMは未完成であり、他方アメリカにおける対抗兵器の実験成功や、現に圧倒的に優勢な戦略空軍の確保等を考えますと、むしろ自由諸国側の戦略的地位が優位であると考えられるのであります。かような国際的軍事情勢において世界の戦略情勢が急変したと考えることは、自由諸国の結束をくずさんとするソ連の心理作戦にみずから乗るものであり、まことに危険なる判断であると思います。  要するに、この二法案は、国家財政の許す範囲において必要の自衛力を漸増し、国土の防衛に備えるとともに、世界の平和に寄与せんとするものでありまして、明らかに国民の負託に沿うゆえんであると信じますからここに賛意を表するものであります。
  109. 福永健司

    福永委員長 これにて両案に対する討論は終結いたしました。   これより採決に入ります。まず防衛庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。         〔賛成者起立〕
  110. 福永健司

    福永委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。  次に自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  111. 福永健司

    福永委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま可決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 福永健司

    福永委員長 御異議なしと認めます。よってそのように取り計らいます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、散会後直ちに理事会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後十時五十分散会      ————◇—————