○
国務大臣(
岸信介君)
佐多君の御
質問に
お答えをいたします。
第一に、
アジア諸国との
経済提携について、
アメリカの
資本と
日本の
技術と現地における資源及び労働力というものの三位一体の形でやるという
考えかという御
質問でございます。私は
東南アジア諸国と一口に申しますけれども、国々によっていろいろ事情が違っております。
経済開発の程度も違いますし、先ほどお話になりましたような政治的な
考え方についても違っているところがございます。しこうして私が
所信に申し述べましたように、いずれの国も、この最近かち得た
独立を
完成するために
経済開発計画というものを持っております。私どもは、あくまでもこの
各国の持っておるところの
経済開発計画というものに、このわれわれが謙虚な形において
協力できるものを
協力して行く、そうしてこれを
完成せしめるというのが根本的の
考え方でありまして、従って、今われわれの方で勝手に、三位一体の方式がどこにも適用されるんだ、あるいはわれわれがそういう計画を立てて、これを現地に、
各国に押しつけるような
考え方は、根本において私は誤まっていると思います。あくまでも、これは国々の
国民なり
政府なりが
希望する形において、—最も有効なる
協力をわれわれは惜しまないということが必要であると思うのであります。(
拍手)
日本が、それでは
経済的にどういう具体的の方策を持つかという第二の御
質問の点であります。私は今申し上げました根本の
考え方に基いて、
東南アジア諸国がすでに持っておるいろいろな
経済開発計画に沿うところの計画、具体的の計画がございます。これらにつきましては、その国々の
希望に沿うてこれらを研究しております。そうして、われわれはそのプロジェクトに応じて、具体的に
日本が
協力するところの方式なり、形なり、
内容なりというものを個々に
検討し、これに応ずるように現に施策を進めております。これを進めて行くことが、私は最も適当な方法であると思います。(
拍手)
次に、政治的の見地から、この
アジア諸国に対して、
日米はどういう
立場をとって臨むかという御
質問でございます。しこうして
アジアにおいては、同じ
アジアというけれども、この中においては政治的に
立場を異にするものがあり、いわばこれが分裂を策するような外部的の力も働いておる、こういう際に立って、
日本はどういう政治的の
考えでもって、これに臨むべきかという御
質問であります。御
意見のように、現在の
アジアにおきましては、大きく言うて二つの分れがございます。また、私が今回たずねる六カ国につきましても、大体におきまして大きく分けて二つの傾向があると思います。しこうして、そういうことであることは、私は非常に遺憾なことであると思っております。あくまでもわれわれが
アジアに位し、
アジアの
日本として長い歴史的な深い
関係を持っておるこれらの国々が、いろいろな
関係があるとは言え、共通に、また
協力によってのみ解決されるところの幾多の問題を持っておるにかかわらず、そういう政治的のこの
対立や、分裂的な傾向を持っておられるということは非常に遺憾であると思います。私は
日本の
立場はあくまでも
自由民主主義の
立場を堅持する、これによって
各国の
協力と、そうして平和を
増進するにあります。私は
世界のこの大勢が、東西二つの陣営に
対立しておるとか、その間に緊張があるとか、あるいはまた
アジア諸国の間にも、そういう二つの流れがあって
対立しておるということを、この
自由民主主義の
立場から、この緊張を
緩和することが
日本の使命であると私は信じております。(
拍手)
次に、
中国問題についての御
質問でございますが、
中国問題につきまして、過般、
社会党の諸君が
中国をいわゆる親善使節としてたずねられまして、いろいろな
共同コミュニケも発表になっておること、また私は、お帰りになったときに詳しい御
報告も聞いたのでありますが、この中華人民
政府を直ちに承認し、これと
外交関係を開けという
社会党の御
主張に対しましては、遺憾ながら私は根本的に
考えを異にするものであります。現在の状態においては、私はそういう
段階に達しておるとは思わないのであります。それは、先ほどもお話がありましたが、われわれは国際連合に加盟して、そうしてその
一員として、われわれは
世界の平和を
増進することに
各国と
協力するという態勢をとっておりますが、国際連合の現状は、この中華人民
政府の
代表権を認めない状況であり、また、過去において侵略の決議をいたしておる、それを取り消してもおらないような状況でありまして、こういう状況のもとにおいて、私は直ちに認めろということは、責任ある
政府としては、とうていできないところであると言わなければならないと思います。(
拍手)
次に、
中国貿易の
増進の問題につきましては、私どもも、この
中国との間の
貿易を
増進しなければならぬ、それを
増進する上において、ココム、
チンコムのこの樹限が非常な支障をなしておるという事実につきましては、お
考えと同様であります。従って、この
制限を将来
緩和しなければならぬ。少くともチャイナ・ディファレンシャルというものをなくしなければいかぬという
主張を、一貫して
米国及びこれに参加しているところの
西欧諸国に提議をいたして参っております。最近
アメリカが、これをある程度
緩和する提案をいたして参っておりますが、私どもの
主張との間には相当まだ大きな開きがございます。従って、私どもは従来とってきた
方針を一貫して、あらゆる
機会に
アメリカの反省を求め、またココムの取りきめに加盟している
西欧諸国と緊密な連絡をとって、
日本の
主張の実現に努めております。決して
西欧諸国のあとをついてというような問題ではなくして、
日本にとってきわめて重要なこの対
中国貿易問題についての
制限につきましては、
日本の
立場から強くわれわれの
主張をいたしており、将来もする
考えでございます。
次に、
アメリカとの
会談において、
安保条約、
行政協定の改正についての御
質問でありますが、これは私がしばしば私の
所信を申し述べました
通り、私は
社会党の諸君とは非常に根本的の
考えを異にするのは、
安保条約体制というものを今廃棄してこれをなくするという
考えは、私は現実に即しないものだと思います。特に
社会党で、これにかわるものとして、日、中、米、ソを
中核とする集団安全保障体制を作り上ぐべきであるというこの御議論は、私はあまりにも現在の
国際情勢の実情とかけ隔たったことである。こういうことができるようであれば、私はおそらく安全保障体制そのものすら要らなくなった時代であろうと思うのであります。こういうことは、きわめて私は国際の実情、実際に合っておらないと言わざるを得ないと思います。
次に、
国防方針及び
長期国防計画について御
質問がございましたが、
国防会議を最近一回開きました。そこにおいて、
国防の
基本方針についての議論をいろいろ
交換いたしましたが、
結論はまだ得ておりません。最近においてさらに第二回を開いて、この
国防に関する
基本方針というものを
一つきめたい、こういう
考えでおります。
長期国防計画についても
準備は進めておりますけれども、まだ
国防会議において審議される
段階になっておりません。私は、しばしば申し上げておりますように、私自身がこの
国防に関する
基本方針や
長期国防計画についての
国防会議においての審議を
促進するように
要求してきておるのは、決して
アメリカ政府にこれを示すために私は急いでいるわけではないのでありまして、従来、こういうものがきまらず、予算の編成やあるいはこの
防衛に関する各種の議論を生ずる原因が生じておるのでありまして、こういうことがはっきりと
国民に示され、
国民がそれを
理解し、これに対して
協力するという態勢が作られなければ、真の自衛の
目的は達せられないと思うからであります。
なお、この
安全保障条約等の改訂につきましては、私は、廃棄はしないが、これが結ばれた当時は、
日本自身の
自衛力というものはゼロであったし、また国際連合にも加盟しておらなかった。しかしその後、この
国防力を、
自衛力を漸増するという、その
方針のもとにやって参りまして、不完全ではあるけれども、ある程度の
日本自身の
自衛力というものはできております。従って、全然ゼロであったときにできた何は、相当な程度において、少くとも
日本の
防衛についてある程度責任を持ち得るような状態になっておる現在においては、これが再
検討されるということは当然であり、また国際連合に加盟し、われわれは将来の理想としては、国際連合による集団安全保障体制というものができなければならぬと、こう
考えておる
考えから申しますと、これを再
検討して、より合理的な
基礎においてこれを改正する必要があると、こういう
意味において、私は再
検討をしたいと思うのであります。なお、この問題に関して、いわゆる双務
条約にして、
外国に派兵するところの
海外派兵の責務を負うのではないかとか、あるいはこの
機会に
軍事同盟を結ぶような意図はないかとか、あるいは
原子力部隊を
日本に駐留することを認めるというようなことがあるのじゃないかというふうな御
質問でございましたが、これらにつきましては、私は明確に申しておりますが、一切そういうことはございません。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕