○佐多忠隆君 ここに上程されました
日ソ共同宣言等四件について、私は
日本社会党を代表して
賛成の意を表します。
第一に、
日ソ間の戦争状態が終結をし、両国の平和を通じて国際緊張の緩和に寄与するからであります。今日まで、
日ソ間は国際法上はいまだ戦争状態に置かれ、両国
政府は、お互いに相手国の軍国主義と侵略の危険を憂える状態でありました。が、この
日ソ共同宣言によって、
日ソ間の戦争状態は終了し、両国の間に平和と友好親善
関係が回復され、外交
関係が成立することになりました。そして国際紛争は、武力を用うることなく、平和的手段によって解決することを
約束しております。従って両国は、相手の国内事項に干渉することなく、平和的に共存をし、それによって国際緊張を大いに緩和することとなります。平和的共存、国際緊張の緩和の必要が強く叫ばれながら、ややもすればそれに逆行する事態が起りがちな昨今、この順調な方向が推し進められましたことの歴史的な意義は、特に大きいと言わなければなりません。(
拍手)
第二に、いまだ
ソ連に抑留されているわが同胞のすべてが、この
共同宣言の効力発生とともに釈放され、木国へ送還をされることとなるからであります。一千名をこえる抑留者たちが、十年以上にわたって、異郷に刑罰を受けつつ呻吟している状態を、これ以上続けさせることは何としても忍べません。彼らにいま一度冬を越させることなく、彼らを年内に釈放し、送還しなければならないことは喫緊の要務であります。この必要を要請した鳩山首相の手紙に対して、
ブルガーニン首相が直ちに返書をよこし、すべての抑留者の年内送還のため必要な準備手続をとっている旨を伝えてきたことは同慶にたえません。両国最高首脳者の間に、かかる
了解が成立した以上、
政府は直ちに、
ソ連において必要な準備手続が具体的にいかに進捗しておるかを詳細に問い合せ、話し合いをし、それをさらに進捗せしめると同時に、わが方においても、それに対応する準備手続を十分に整えなければならないはずであります。しかるに
政府との
質疑応答を通じて、それが十分に整えられていないことが明らかになったことはまことに遺憾であります。私は
政府がすみやかに万全の
措置を講ずべきことを強く要求いたします。
第三に、
わが国の多年にわたる宿願である国連への
加盟が実現し、
わが国の国際的地位を高める契機が与えられるからであります。国際紛争を平和的に解決するための話し合いの場所として国連が存在をし、その国連がその機能をますます有効に発揮し、その重要性を大いに高めつつある昨今、
日本がこれに早急に
加盟しなければならぬことは論を待ちません。世界は一つという考え方、国連の世界性から言えば、各独立国はその政治体制のいかんを問わず、少くとも平和愛好国であるならば、すべて無条件に
加盟を許さるべきであります。それなのに、
日本はこれまで両陣営の抗争にはさまれ、これに災いされて
加盟ができませんでした。特に
日ソの
国交未回復がその障害となっておりました。が、この
共同宣言によって
国交が回復をし、
日本の国連への
加盟を支持することが
約束されたのでありますから、近く
加盟が実現することにはもはや問題はありません。問題は、いつどんな手順によってそれが円滑になされるかであります。そのすみやかな円滑な解決は、世界各国の、特にアジア諸国の積極的な支持を必要といたします。わが
日本社会党は、十一月初めにインドのボンベイで開かれたアジア
社会党会議にこの問題を提議をいたしまして、「
会議は
日本の
国連加盟が他の国の同時
加盟と関連せしめられることなく、また憲章の受諾以外のいかなる条件とも関連せしめられることなく、直ちに
承認されることを勧告する」という決議を参加諸国の
全会一致のもとに採択せしめたのであります。これに応じて、ビルマ、インドネシア、パキスタン、ラオス等の国々の代表が、十一月末の国連総会で、
日本の
国連加盟に対する支持の態度を表明をいたしております。(
拍手)
政府は、現在の国連内の空気、国連における各国の動向を詳細に、しかも正確に探知しつつ、
加盟に必要な準備と手続を進めていなければなりません。現在の状況で、
宣言の
批准後直ちに
日本加盟を討議する情勢であるかどうか、
国連加盟の提案国の
交渉や一国連の
議事日程に載せる打ち合せを、どの程度に進めておるのか等に対して、
外務委員会において追及をいたしましたが、
政府は明確な、具体的な
答弁ができず、その怠慢を暴露いたしました。まことに遺憾であります。私は、
政府が国連に対する遅滞なき準備を急ぐべきことをあらためて切望してやみません。
第四に、ここに提案されております
北西太平洋の
公海における
漁業条約と
海難救助協定の発効によって、北洋における
漁業の安全性と合理性が確保されることとなるからであります。この
条約に基いて、この海域における魚類その他の水産動物の資源の状態を科学的に調査し、その保存と増大をはかり、その資源を有効に利用し、ここの
漁業の最大の持続的生産を維持することが緊急に必要であります。これによって初めて合理的基礎に基く
漁業の
発展が期せられます。そして、これによる限り、ここの
漁業の操業の安全性は確保されます。また、この
協定によって、この水域において海難にあった乗組員は、すみやかに
効果的に
救助されるために両国が
協力することとなりますから、操業の安全性はますます大きくなります。しかしこの
条約と
協定にも、いまだかなりな欠陥があることが、
委員会の
質疑を通じて発見をされました。従ってその運用には万全の
措置を講ずべきことを切に望みます。
第五に、この
共同宣言と
貿易の
議定書は、
日ソの
貿易の
発展に資するところが大きいからであります。
共同宣言は、両国の
貿易、海運その他の
通商の
関係を安定し、友好的にするために、
条約や
協定を
締結する
交渉をできるだけすみやかに開くことを
約束をいたしております。さらに
議定書は、
条約か
協定が結ばれる以前にも、両国は
貿易の
発展に
努力をし、
相互に
最恵国待遇を与えることを定めております。
日ソ両国の国父が回復された以上、両国の友好親善
関係をさらに
促進をしなければならぬことは論を待ちません。それには、両国の
貿易を
発展をさせることがそのかなめであることも自明の理であります。この点について
ソ連側は、先の
日ソ交渉の際に、すでに非常な熱意を示しております。そしてシェピーロフ外相は、
国交回復後の五年目には十億ルーブル、約二億五千万ドルの取引ができる
貿易計画を提示してきました。しかるに、わが方はこれに対して何らの熱意も示さず、ほとんどこれを無視し、あまつさえこれが何らかの陰謀を含むものであるかのごとき誹謗さえ放たれたと伝えられます。ここに至っては、
政府の無知愚昧のほどには、はかり知れざるものを感じます。
日ソの
貿易もこれを積極的に推進をするならば、相当に望み多いものとなるでありましょう。ことに、今後大規模に行われるはずのシベリアの開発
計画を考慮に入れるならば、望みはさらに大きくなりましょう。
ソ連は、シベリアの建設に当って
日本から資材が供給されることを希望しております。
ソ連に対して、船舶はもちろん、それ以外に港湾の設備、車両、発電資材、建設資材の輸出が相当大量に望まれる見込みであります。一部日用品の需要すら考えられます。これに対して、
ソ連からの輸入品としては、木材や石炭のほかに、鉄鉱原料、マンガン、クローム鉱、燐鉱石から綿花や穀物に至るまでの物が見込まれます。そして
日ソ貿易会の作った
貿易計画案によりますと、
国交回復後の五年目には、
貿易額が片道一億六千万ドル程度に達すると計算をされております。シェピーロフ外相の十億ルーブル取引案も夢ではありません。この案をいたずらに陰謀呼ばわりせずに、
政府自身が、まじめに取り上げて検討をしなければなりません。まず何よりも、両国の間にすみやかに暫定的な
貿易協定と
貿易計画が取りきめられることが必要でありましょう。その
貿易計画の中には、なるべく多くの取引品目が組み入れらるべきであります。同時に、適正な
貿易方式や支払い方法が
政府間で取りきめられることを必要といたします。また、両国間で商談をすみやかに具体的に進めるために、両国の
貿易代表団を取りかわすこと、特に
ソ連から
貿易代表を呼ぶことが適当と思われます。それまでに指紋の問題を解決しておかなければならぬことももちろんであります。両国
貿易の
発展のために、以上述べましたことを、
政府が直ちに積極的に実行することを、この際特に切望をいたします。
第六は、
領土の問題についてであります。
日ソの
国交回復は、本来ならば、
領土問題を最終的に解決をして
平和条約方式でなすべきことはもちろんであります。しかし
交渉の過程において、
政府の数々の不手ぎわも加わって、それが不可能になったことはまことに遺憾であります。しかし現在の状態において、
日本側の
主張をそのまま
領土条項の
内容として
平和条約を結ぶことは不可能なことが明白になり、それにもかかわらず、
日本側の
主張を固執するならば、決裂以外にないといたしますならば、次善の策として、
領土条項は懸案のまま暫定
協定方式によらざるを得ません。それは決裂によって両国の戦争状態が終了をせず、抑留者は帰れず、
国連加盟は実現せず、北洋
漁業は不安にさらされ、
国交未回復の状態が続くことは、もはや許されないからであります。(
拍手)また、
領土条項が
ソ連の
主張の通りに確定をするくらいならば、むしろこれを懸案として他日に譲る方がましであるからであります。以上の事態は、幸か不幸か、わが
社会党がすでに早くから正確に見通した通りであります。また、
最後の
段階においては、
社会党がみずから強力に推進をいたしたコースであります。この見通しを正確につけることができず、従って、それに基く的確な準備も何らなく、この大事な
日ソ交渉が、ひたすら党内派閥抗争に利用され、
政府と
自民党は不手ぎわの限りを尽しました。これが
わが国の外交史上ぬぐうべからざる汚点を残したことは遺憾しごくであります。
政府と
自民党の責任を断固として糾弾をいたします。(
拍手)鳩山・ブルガーニン交換公文と、
松本・グロムイコ交換書簡に明記されております「
領土を含む」という文句が、
歯舞、
色丹島の
引き渡しをきめる
交渉過程で削られた不手ぎわは、
政府の責任として致命的であります。
外務委員会における同僚
曽祢委員の最終
質問に対して、河野全権は、「
領土問題を含むという文句は落ちたが、
領土問題に関する
双方の
意見は明らかになっており、また、もともと今回の
交渉に入ったのは、鳩山・ブルガーニン交換公文、
松本・グロムイコ交換書簡によって、
平和条約締結の際は、
領土の
継続交渉をすることに合意しての上のことである。また、今や
日ソ間に残された問題は、
領土問題だけであり、
平和条約は、当然に
領土問題の解決を含むものであるから、実体に変りはない」と答えております。また鳩山首相は、
委員会における最終の
答弁で、「
国後、
択捉を含む
領土の
継続審議については、
先方と十分話し合った結果、
双方において
継続審議を
了解をいたしております」と確信をいたしました。
われわれは、鳩山、河野、
松本三全権の、特に、
総理の本
国会における特になされた確言をそのまま信用いたしまして、それを内外に対する確定解釈として受け取ります。(
拍手)従って
政府みずから確言をし、これを内外に宣明した以上、
自民党と
緑風会がつけた
付帯決議の第一項、すなわち「
宣言の第九項に
規定する
平和条約締結に関する
継続交渉には、
国後、
択捉を含む
領土問題に関する
交渉が当然含まれるものと
了解する」という文句は蛇足にすぎません。いな、むしろこれをつけることによって、
政府の解釈、確言を弱める反作用すら考えられます。(
拍手)また、
付帯決議は、従来
原則として
全会一致で、従って他党に対して十分に相談をし、打ち合せ、理解と納得と合意の上でなされて参りました。しかるにこのたびは、わが
社会党を無視して、
付帯決議をつける不信行為に出たことは何としても許せません。しかもこの
付帯決議が、
自民党と
緑風会の党内事情の考慮からだとさえ伝えられております。とすれば、遺憾きわまりないことであります。かかる
付帯決議が無理につけられることは、百害あって一利もありません。参議院の良識にかけて、これがすみやかに撤回をされることを希望いたします。(
拍手)
わが党は、
領土条項を含む
平和条約の
締結が、なるべく早い
機会になされることを望みます。そうしてその
交渉において、わが党は、
サンフランシスコ条約において、保守党とその
政府によって、簡単に千島、南
樺太等が放棄された不合理を糾弾しながら、その
返還を要求いたします。(
拍手)そのためには、しかし南の方、小笠原や沖繩が
返還をされなければなりません。また、日米安保
条約が解消をされ、アメリカ駐留軍が撤退をし、軍事基地が撤去されることを必要といたします。同時に、これに関連して、
日ソ友好同盟の対日
条項が削らるべきでありましょう。(「中ソ、中ソ」と呼ぶ者あり)……中ソ友好同盟の対日
条項が削らるべきでありましょう。これには
日本の外交方針が大きく転換をし、国際緊張が強く緩和されることが必要であります。
社会党は、世界が逐次ではあるが、確実にそうなることを確信し、その実現のために全力を尽します。(
拍手)
これまで、私は
共同宣言等に基く
日ソの
国交回復に
賛成する一つ一つの
理由について申し述べて参りましたが、
最後に、最も重要な点は、この
国交回復が
わが国の全面講和、
自主独立の確立、国際的地位の向上への転回点となることであります。
わが国は、
サンフランシスコ条約によって講和を結び、独立を達成したと称しましたが、同時に安保
条約や行政
協定によって対米隷属の方向が指示をされました。その後の日米
関係は、それを弱めるどころか、むしろ強化をいたして参っております。
政府が、世界の平和への方向、特にアジア諸国の動向に逆行をし、ひたすら対米追随に努めたからであります。
わが国はこの政策を改めて、二大陣営の他の陣営である
共産圏諸国とも
国交回復をし、友好
関係を増進し、これらとも平和的に共存をしなければなりません。これを通じて
わが国の独立が完成の道を歩くこととなります。
日ソの
国交回復は、この転回点とすべきでありましょう。従って、これに引き続き東欧諸国等の復交が急がれなければなりません。これがまた、最近の東欧諸国が切望をしておりますところの民主化と自由の機運を円滑に進める道の一つともなるでありましょう。が、最も重要なことは、
日ソに引き続き、日中の
国交回復が直ちに積極的に着手されることであります。日中間には、すでに
貿易、
漁業の民間
協定が成立をし、その他、科学、技術、文化の交流が逐次行われ、人的な交流も、
政府がいろいろこれを阻害するにかかわらず、逐次盛んになりつつあります。今こそ、
政府がみずから
国交回復の折衝を引き受けなければならない
段階にきております。この年末に渡米をする予定のインドのネール首相は、中・米間の融和のあっせんすら考えておると伝えられております。
日本も、
政府が直接に
国交回復の予備折衝に着手すべきでありましょう。わが
日本社会党は、
政府の動き離すのを待たずして、周恩来首相の要請にこたえて、来年早々、党代表をかの国に派遣し、それらの話し合いをやることを決定をいたしております。(
拍手)
政府もこれに続くことを望みます。(
拍手)が、それが
自民党の
政府には、もはやできないというのならば、いさぎよく
社会党に政権を譲るべきでしょう。(
拍手)わが党は、わが
社会党政権は、これを慎重な準備のもとに大胆率直に、そして積極的にやり遂げます。(
拍手)
また、東南アジア諸国と提携をし、その中立外交と歩調を合せることが絶対に必要となって参ります。
国連加盟後の
日本の外交方針は、武力を持たない中小国のそれとして、武力拡充政策を否定をいたさなければなりません。無定見に大国のしり馬に乗ってそれに依存をし、その威力をかりて実力以上の力を発揮しようとする愚をやむべきでありましょう。国連を中心として、それに重点を置くならば、必ずそうならなければなりません。アメリカですらアイゼンハワー再選後は、ダレスの戦争せとぎわ政策、武力を表面に押し出す政策から、アイクの武力否定政策、国連重点主義、しかも国連における
AAグループとの提携へ転換をいたしつつあります。われわれは
社会党の年来の
主張である両陣営のいずれにも属せぬ中立平和外交、
自主独立の政策を、今こそ高調せざるを得ません。(
拍手)しかもこの
自主独立は、アジア・アフリカ諸国との同調、両陣営諸国との平和共存、友好親善
関係の増進に
努力する限り、決して孤立ではなく、むしろ世界における強力な輝かしい存在をかちとるゆえんであります。(
拍手)そして東西両陣営のかけ橋となりつつ、両陣営の対立の緩和に、
AAグループ諸国とともに主導的な役割を果すことこそ、
日本の歴史的使命であります。(
拍手)私は今度の
日ソ国交回復が、かかる歴史的転換点になるであろうし、そうしなければならないことを確信をいたします。(
拍手)
この四案件に積極的に
賛成をするゆえんであります。(
拍手)
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