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1956-02-08 第24回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    ――――――――――――― 昭和三十一年二月八日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 小平  忠君 理事 柳田 秀一君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       今井  耕君    植木庚子郎君       小川 半次君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    纐纈 彌三君       河野 金昇君    河本 敏夫君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       三田村武夫君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    足鹿  覺君       井手 以誠君    今澄  勇君       川俣 清音君    久保田鶴松君       小松  幹君    田原 春次君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       矢尾喜三郎君    八百板 正君       山花 秀雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         通商産業大臣  石橋 湛山君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   安田  清君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ―――――――――――――二月八日  委員眞崎勝次辞任につき、その補欠として楢  橋渡君が議長指名委員に選任された。同日  委員楢橋渡辞任につき、その補欠として、眞  崎勝次君が議長指名委員に選任された。     ―――――――――――――本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。古井喜實君。
  3. 古井喜實

    古井委員 昨年の臨時国会以来の懸案になっております地方財政の問題について、大蔵大臣自治庁長官お尋ねをいたしたいと思います。  まず最初自治庁長官お尋ねをいたしますが、三十一年度地方財政全体の規模でありますが、そろそろどの程度規模になるかという規模具体的数字も確定する時期ではないかと思います。そこで、この機会に三十一年度地方財政規模がどれほどになるかということの御説明をお願いいたします。
  4. 太田正孝

    太田国務大臣 古井委員にお答え申し上げます。昭和三十一年度地方財政規模は一昨日まとまりまして、大蔵省とも突き合せをすませ、きょうあすにも発表できる手取りになっております。その総額は一兆四百五十六億円でございます。国の一般会計数字より少し高くなっております。前年度に対しまして五百三十億円ばかり多くなっております。
  5. 古井喜實

    古井委員 次に地方債計画の点であります。予算説明をいただいた当時には、財政投融資資金計画の中に載っております地方債の額でありますが、この額は必要に応じてなお調整を加えることがあるということになっておって、ここに載っておる数字を、その後あるいは若干調整されたかもしれぬと思いますが、そこで地方債の三十一年度におけるワクであります。これがここに載っております通りでありますればよろしいのでありますが、さもなくてその後調整を加えられたとしますれば、一般会計地方債金額は何ほどであるか。公営事業関係の分が何ほどであるか。また再建整備債関係は何ほどであるか。この三つの区分けによっ七、地方債ワク金額をお示し願いたいと思います。なおできましたら総括してでけっこうでありますから、政府資金公募債振り分け一つ説明願いたいと思います。
  6. 太田正孝

    太田国務大臣 昭和三十一年度地方債計画につきまして、数字からお話し申し上げます。一般会計分が七百十五億円となっております。その中で普通事業債が五百七十五億円、退職手当債が六十億円、借りかえ債が八十億円となっております。この一般会計の七百十五億円に続いて、財政再建債ののために二百億円計上しております。それから公営企業債、これは前年度に九十一億円を増しまして三百六十五億円になっております。一般会計財政再建債公営企業総計して千一百八十億円になっておるのでございます。別ワクにあります再建債及び借りかえの関係百五十億円を抜いてみますと千百三十億円であります。  なおこの資金区分についてのお尋ねでございますが、政府資金運用部関係から四百五十億円、簡易化命保険関係から三百九十億円、つまり政府債といたしましては八百四十億円となります。公募は四百四十億円でございます。資金区分は八百四十億円が政府資金公募債が四百四十億円となっております。
  7. 古井喜實

    古井委員 そこで次に大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。大蔵大臣は三十一年度において地方財政の根本的な改革立て直しをするのだということを、臨時国会当時にもしばしば繰り返して言明されておったと思います。そこで今回の三十一年度に対する措置によって、これで地方財政の根本的な刷新確立ができたものとお考えになっておるでありましょうか。私はいろいろ問題が残ってしまったように思っております。臨時国会当時にああいうふうにおっしゃったのは、まさかその場のがれの逃げ口上でおっしゃっておったのでもなかろうと思うのです。今度三十一年度に対する措置内容から見ますと、どうもたくさん問題が残ってしまった、根本的な解決はできなかったように思いますが、この点について大蔵大臣はどうごらんになっておりますか、お考えを伺いたいと思います。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 地方財政立て直しを根本的にやりたい、こういうふうに考えて、あらゆる努力を払ったのでありますが、ただいま仰せのように、必ずしもこれでいいのだ、何も残っていないというところには、私ども遺憾ながらいっていないように思います。これはいろいろ検討した結果、しょせんやはり行政改革、さらにまた税制根本改革、ここにどうしても待たなくてはならぬ点が少くないことを発見したわけであります。しかしながらできるだけのことをいたしましたので、一応こういうことをしたということを申し上げておきたいと思います。  それは第一にやはり地方財政を立て直すために、まず地方歳出節減を――これは地方議会制度あるいは行政機構合理化を通じまして、まず地方歳出節減をはかることを予定しております。それから公共事業については国庫補助率引き上げる。さらに受益者負担制度の拡充をはかる。なおこの補助金については整理統合もいたす。ことにこの国庫補助単価適正化ということをやりまして、地方団体財政負担の軽減をはかります。さらに地方財源を強化するために、多年の懸案でありました三公社に対しまして固定資産から、これは玄あどういうふうにきまりますか、税になりますか、交付金になりますか、ともかく三公社からの固定資産からして収入をはかることにいたしております。それから軽油引取税を予定しております。大体この三公社から初年度で四十六億、平年度で九十億くらい出ようかと思っております。軽油引取税から約三十億くらい出ようかと思っております。都市計画税、これも約二十億くらいになろうかと思っております。それから国及び地方公共団体所有資産、この所在市町村交付金を創設する、それが十三億くらいになると思います。こういうふうにして地方財源充実をはかっておるわけでございます。  なお、先ほどお話がありました公債累増ということにつきましては、できるだけ普通事業債発行を抑制する。先ほど自治庁長官からお話がありましたが、三十年度において普通事業債が七百六十億ありましたのを三十一年度では五百七十五億にこれを軽減しております。そのかわり公営企業の方を三十年度で二百七十四億でありましたのを三百六十五億、こういうふうにしまして普通債を抑制して公営企業債をふやす。大体において貧しい府県に対しましてできるだけ財源を与える。そうして借り入れでまかなっていくという従来のあり方をためて、全体として先ほど長官から話がありましたように、地方債発行もごく軽微ではありますが、方針といたしましては起債額を減少させることができたように考えておるわけであります。むろんこれで十分というのではありませんが、しかしこれによりまして相当なと申しますか、四百二、三十億くらいの財源ができておると思います。これで三十一年度地方財政運営を十分によくやれば、私は赤字もむろん出ない、かように考えておるわけでございます。
  9. 太田正孝

    太田国務大臣 ちょっと私からもつけ加えておきます。ただいま古井さんからの御質問は、大蔵大臣からお答え申した点に私も大体同じでございますが、考え方として自治庁の立場から根本的対策ができておるかということにつきまして申し上げたいと思います。また大蔵大臣の言い落した点もありますから、つけ加えさしていただきたいと思います。  本年度の国の予算編成方針の中にも、地方財政再建中心課題とするということが掲げられております。もう一つ地方財政につきまして、今回の予算を作るに柱として建てられたものは赤字の出ないようにということで、この二つの原則が今回の国の予算との関係においても出ているところでございます。私の考えました根本的対策は、地方財政自体に直接する問題、直接すると申しましてもむろん関係はございますが、そういう面から見た根本対策と、国の財政から地方財政へ回すと申しますか、からみ合う関係国家財政の面から見た根本的対策と、二つに分けてみたいと思うのでございます。  その第一の地方財政そのものについての面から見たところの根本対策といたしましては、先ほど大蔵大臣の言われた通り、かりに地方財政における収入面から見ますと、自主財源として固定資産に関する課税なり交付金問題あるいは都市計画税あるいは軽油引取税などの新たなる財源をもちまして、地方財政が堅固になるように考えました。同時に地方負担になる方面においては、大蔵大臣の言われました通り国庫負担する部分を多くいたしまして軽減しておる。たとえば河川、砂防工事に対する国の負担金を多くした、こういうようなことも取り上げられます。また長年唱えられまして行わなかった停年制を断行することにいたしましたのも、将来の大きな根本的改革に属するものであると私は信じます。また今まで手を触れなかった三公社に対する問題も、これは長年の問題でありましたが、今回初めて関係各省の御了解を得てこれが実行に移されたことも大きい問題の一つであろうと存じます。なお大蔵大臣の言われました通り地方行政組織を変える、あるいは委員会制度でございますとか、行政委員制度改革その他相当なものを今度やるつもりでございまして、その方面からも支出面で軽減されていくではないか、かように考えております。  地方財政面から見ては、私は相当な根本的な策が入っておると信ずるのでございますが、しからば国財政から地方財政へどういうようにして根本的対策として金がつぎ込まれておるか。申し上げるまでもなく公共事業費等いろいろな金が国の財政から地方へ流れて参りますが、こういう問題を別にいたしまして、また投融資の問題を別にいたしまして、大きな問題を考えますと、国の財政地方財政のつながりの一番大きく目につく問題は交付税の問題でございます。もう一つ文部省所管にある義務教育費国庫負担の額、これが大きな二つのものかと存じます。千六百二十七億円という交付税の額並びに義務教育費の七百七十億円を加えますと二千四百億円になるのであります。一兆財政と大まかにいいますと、四分の一に近いところまで参ったのであります。さらにその交付税も三大税、酒の税と法人税所得税の二割五分に当る。国の財政から地方財政に対する関係としては、三大税において四分の一、また国家財政におきまして他の費用を別にしても、この二つだけで四分の一近くになっておる。ここに、これ以上出せるかという問題が国家財政地方財政とのからみ合いでございますが、一兆三百五十億円の国家財政の中で前年度より増すべき額は五百数十億円でございますが、最初に百五十億円の減税を引きますと、残りは三、四百億円になります。この中で国家財政の要求する、あるいは建設関係もあり、農林関係もございましょう。また当然増加する恩給の関係等もございます中で、地方財政がどれだけ割り込み得るかというと、二割五分にした、今までの交付税を三分増したのでございますが、これとてもしさいに見れば、臨時国会においてふやした額が入っておるのでございますけれども、前年度予算と比較する場合におきましては、二百五十四億、相当の額になると思うのでございます。言葉をかえて申しますれば、三十年度予算を作るときには、実は百四十億円の地方財政としては危ない金がありました。つまりそれだけしわ寄せされておりました。この百四十億円の金を節約で地方財政が生み出そうとしたがうまくいかない。結局臨時国会におきまして皆様方の御審議を仰いだ結果、交付税で百六十億円、その他合せて百八十億円の規模における始末をしたわけでございますが、三十年度において赤字が発生すべきにかかわらず、百四十億円のしわ寄せをされたのを臨時国会で埋めたことを考えますと、昨年は当然赤字が出たかもしれぬと考えられるにかかわらず、三十一年度においてはかような関係がないという意味におきまして、国家財政地方財政とは相当な点まで行っておる、私はこう思います。しかしお言葉通り完全でない、大蔵大臣も言われておる通りでございます。問題は、地方債に関する問題もございます、あるいは一般的の関係から申しましても、税の問題にいたしましても残された問題があります。しかし根本的解決として、地方財政に直接する面においては相当のものがなされ、国家財政健全財政を支持する意味において、相当一ぱい金額を見積ってくれた、現在の国家財政地方財政とのからみ合い関係においては、相当なところまでだっておると私は思います。残されたる地方債の問題あるいは税制問題等につきましては、さらにこの問題を掘り下げていきまして、具体化に進みたい、こう考えておる次第でざいます。
  10. 三浦一雄

    三浦委員長 大蔵大臣より補足説明があるそうですから……。
  11. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど答弁でちょっと言い落したのがありますから、一貫させるために補足をいたします。それは税のことについてでありますが、財源調整の問題であります。地方団体間の財源調整につきまして、これはなかなかむずかしい事情にあったのでありますが、結局入場譲与税につきましてその配分方法を改訂することになりまして、約十八億程度のものが富裕県からいわゆる富裕でない県に回ることになりました。それから先ほど申しましたように、地方公共団体において歳出の削減、いろいろなあらゆる手段を講じまして、その結果なお不足もありますので、国といたしましても交付税を三%引き上げまして二五%にする、かようなあらゆる措置を講じております。今長官から詳しく話がありましたが、私も全く同じ考えであります。根本的問題についてはいろいろ意見もありましょうが、できるだけ相当思い切って地方財政再建に力をいたしたということは申し得ると思います。
  12. 古井喜實

    古井委員 両大臣から御説明のごとく、まことにあれこれ、それもこれも、いろいろな策が講ぜられたようでありますが、反面から見ると、どの策も中途半端なような点が残っておると思います。しかしその中で補助金制度の改正の問題はある程度改善が加えられたように思います。ただ補助金整理をやたらにやりさえすればいいとは私は思っておりません。全く独立的な自治体である府県を、国の第一線機関として使おうという場合には、ある程度補助金ということも実際問題で必要であります。さもなければ府県から離れた独立出先機関各省が作るという傾向にもなってくるのでありまして、一概に整理がいいとは思いませんが、しかし補助金引き上げ等努力あとは十分認めます。ただ補助対象のとり方、補助単価等の点はまだ問題が残っております。要するにしかし補助金制度の問題は確かに改善だと私は率直に認めます。  それからある程度自主財源充実されたという点も、十分ではありませんけれども、一歩か数歩か進んだ策であったと思います。問題が残っておらぬというのじゃありません。しかしどうも大きく残っておる問題は、地方の経費を縮減するために、国がこれに対して制度的な改革を相当やって縮減ができるようにしなければできないのでございますが、その点の制度的の改革が果してできるのやらできないのやら、まことにこれがまだあやふやな点があり、また今回は大したことができないのじゃないかと心配されるのであります。ここに一つの大きな問題がまだ残っておるのであります。  それから交付税の率の引き上げ三%ということは、これもそれだけ合理的な根拠があるか、私は疑問だと思うのであります。国庫財政の都合でこれだけしか財源がないというので、あるいは三%の引き上げをされたかもしれぬ。しかし地方財源充実の点から見て、交付税は二五%ならばこれが適当な交付税である、こういうふうに言い得る根拠は私はどこにもないという気がするのであります。交付税の率を二五%ということにされたことについて、合理的な根拠があるのかないのか、あるといわれるならば一つこれを伺っておきたいのであります。
  13. 太田正孝

    太田国務大臣 申し上ぐるまでもなく、交付税は国の財政地方財政とのつながり合いであり、その意味補正的性質を持っておると思います。また地方財政相互間の財政補正という意味も持っておると思います。地方財政計画あとごらんをお願いいたしたいと思うのでございますが、財源の面におきまして先ほど大蔵大臣も私も申しました通り、今回自主財源の強化をはかるというようなことをとり、他面におきまして、支出方面におきましても収縮を加えていって、いろいろな手を加えて最後に考えらるべき国からの負担といたしまして二五%になったので、合理的と申しますというと、地方財政赤字が出ないという意味での埋め合せ、補正という意味におきまして二五%が出たので、理論上二五%というものをはじき出してのことではないのでございます。その点は大へん濁っておるのでございます。国家財政関係も、もちろん地方に渡す金の限界もございますけれども、今回としては二五%が精一ぱいのところである、かように私は解しているのでございます。私自身も実は地方行政あるいは地方財政には実に未熟でありまして、いろいろ悩まされ、あるいは問題を残しておるように思うのです。自治というのは財政上からいえば独立性を持つということでございますが、それには自主財源があるか、あるいは独立財源があるかという問題もからんでおります。国の方で日ぼしい税金をとっておりまして、地方に残されたものが少いということも考えられるのでございますが、三大税の二割五分ということは、国としても相当大きな問題ではないか、こういう点につきまして実は古井さんも同様にお考えになるのではないかと思いますが、理論的に交付税額はかくあるべしという額につきましては、まだはっきりと踏み切っておりませんが、本年度に関する限りは地方財政需要関係及び支出関係考えまして、足らざるところを補う、こういう意味において国家財政の許す限りにおいての二五%が出た、かように私は思っておるのでございます。
  14. 古井喜實

    古井委員 交付税の二五%という点につきましては、これが適当であるかどうかというのは、いろいろな点から検討をさるべきものだと思います。それは煩を省ぎましてここでは省略いたしまして、ただ二五%が適切でないということは、さっき御説明通り、ひっくるめて千二百八十億という地方債を今年度発行するのだ、発行しなければ地方財政が立っていかないのだという、この事実を見ても、二五%が適切でないということは簡単明瞭だと思うのです。この一般会計の七百十五億という地方債、これは昨年に比べて七十五億減っておるのでありまして、けっこうでありますけれども、減っても七百十五億の一般会計起債というものを認めなければ成り立たぬ地方財政は健全だとは私は思いません。この一点だけでも交付税自主財源かどっちかが足らないことがわかる。あるいは財源を強化する余地がなかったら交付税にまわるのはわかっておるのでありまして、地方債がふくれる一方であります。私は二五%が根拠がないのは、この一点だけからでも明らかだと思っております。今後この点については十分検討を加えられて、改善の策を講ぜられるように私は希望いたす次第であります。  そこで地方債の問題でございますが、これは毎々申し上げる通り、また皆さんからも御発言がたびたびありました通り国庫財政は非募債主義健全財政であるということで、この点は大いばりをなさっておる点であります。ところが公けの行政の半分を受け持っておる地方団体財政は、今も申すように起債にたよって運営をしておるのであります。来年度計画におきましても今のような大きな起債を読み込んで初めて成り立つ、非募債主義どころではない、まことに不健全財政であるわけであります。従来がこういうことでありましたので、地方債がだんだん累積してきたことは御承知の通りであります。二十九年度地方債が四千七百七十三億になっておるはずであります。一般会計の方で三千七百五十億という金額になっております。膨大な地方債であります。それにまたこうして新しい地方債がだんだん加わっていこうとするのであります。従ってまた一方元利償還金、いわゆる公債費累増ということが、地方財政のガンになってきておるのであります。私が申し上げるまでもありませんが、三十年度における元利償還金は五百十億であります。三十一年度は八百三十二億、百二十億、この元利償還金がふえておる。将来の地方債規模にもよりましょうけれども、今の程度地方債を続けていけば、三十二年度には七百五十億の公債費になる、三十六年度に至れば元利償還で一千億を突破する、こういうふうになってくるのであります。これが大問題であると私は思います。今回三十年度よりも一般会計公債を減らしたということは確かに改善でありますけれども、まだ足らぬと思います。ただいまのような公債費累増傾向はこれではとうてい是正できないと思います。この点について問題が大きく残ったと私は思いますし、ぜひ一つ今後改善を加えてもらいたいと思うのでございます。ことに三十一年度地方債政府資金公募債振り分けを見ましても、政府資金は八百四十億ということであります。公募債が四百四十億、政府資金の八百四十億は昨年の政府資金金額よりもむしろ減っておって、公募債がふえておる。だから、内容からいえば公募債の方にまた追いやられておるのであります。これはやはりまた元利償還金がかさむもとであるのであります。ここにもまた金額の点のみならず、内容の点にも私は問題が残ってしまったと思います。この点は改善どころではない、改悪になっておると思います。要するに、地方債縮減の問題は遺憾ながら未解決である。この点について、将来どうしても改善をやっていこうという御熱意をお持ちになるのかならないのか。一つ簡単でけっこうでございますから、両大臣の御所信だけ承わっておきたいと思います。
  15. 太田正孝

    太田国務大臣 国の方が非募債主義をとって、地方がかような地方債にたよっているという点については、御指摘のような考え方は私も同じように感じております。先ほどもお話のうちにありました四千七百億円以上の公債が重なっている、また公債費累増していくということも御指摘の通りでありますが、国家財政の範囲において地方財政とのにらみ合いを考えつつ、なお地方債について私ども自治庁としてどういう考えを持ってこれからいこうか。本年度につきましてのことを申し上げますと、先ほど申し上げました通り一般会計起債額は七十五億円減じております。三十二年度以降毎年起債額を減らしていきまして、六百億円程度にとどめるというめどのもとに進めておる次第でございます。起債額を漸減して、一般財源の方を充実する方策のもとに六百億円以上に増さない、こういう建前を堅持していきたいと思っております。  第二に公募債につきましてはだいぶ条件などが改訂されました。昨年の末に利子につきまして五厘引き下げになり、また償還期限において二年の延長を見たのでございますが、政府資金引き受けの利子の引き下げ、及び償還期限の延長につきましても、関係各省との間に協力を得て実施いたしたいと思っております。  また問題をあとへ送ったようにも見えますが、第三点といたしまして、三十一年度に八十億程度の借りかえ債を発行いたしまして、財政再建団体等における公債費負担の急増を軽減していきたい、こう考えております。はなはだ十分ではございません。なお利子補給等の問題も残っておりますが、先ほど申しました根本的対策の残されたる問題も大きな問題として今後これが解決をはかりたいと考えております。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 地方債につきましては、私も全く同じ考えでございます。実は三十一年度起債額をもう少し減額したいという考えでおったのでありますが、思うようにいきませんでした。今後仰せのようにぜひしていきたい、かように考えております。
  17. 古井喜實

    古井委員 ぜひこの点は将来の問題として一つ御研究を願いたいと思います。しかしそれにしても、結局自主財源交付税かを与えなければ、地方債を減らすことはできないのでありますから、問題はなかなか困難な点もありますが、にらみ合せで御検討をお願いいたしたいと思います。  そこで次に、さっきちょっと大蔵大臣からお触れになりましたが、財源偏在是正の問題であります。大蔵大臣財源の偏在是正ということを三十一年度においてやりたいということをしきりに強調されておったようであります。しかし最後の結論は、先ほども仰せになりました通りに、入場譲与税の頭切り十八億だけになってしまって、いわば偏在是正の問題はそのままになってしまったという結果であったと思います。名目だけでやらなかったも同然だったと思います。そこで、大藏大臣はこれは御不満であったかもしれませんが、私はこの点については大蔵大臣にももう一ぺんよく御検討をお願いしたいと思う点があるのであります。いわゆる富裕団体なるものの実態はどういうものであるかということについてであります。東京にいたしましてもあるいは大阪にいたしましても、年々の人口の増加というものは御承知のように大へんなことであります。東京は毎年三十万ないし四十万、大阪で十五万程度毎年ふえる、大都市が一つずつできるくらいな人口がふえていくのでありますから、それだけでももう施設が追っつかぬにきまっておるのであります例を東京にとってみますれば、東京には住宅が四十万戸足らないといっておる、また児童生徒を収容すべき学校が二千教室現在足らないのであります。また道路にいたしましても、コンクリートの舗装道路で補修ができない、これがやっと一%程度しか補修ができないでおる。下水はどうかといえば、都市計画できまっておる下水をやるべき地区のたった二割しかできていない。区画整理はどうかといえば、首都建設委員会で区画整理区域としてきめておる区域が御承知のように千五十二万坪、これに対して三十年度やって三百十二万坪しかできない。こういう程度で、やるべき事業施設はもう山ほど残っておるのであります。これが富裕団体なのであります。富裕団体となぜ言われるかといえば、要するに、交付税の計算上基準財政需要よりも収入が多い、こういうことであります。ところがこの基準財政需要というものが大体不合理な点が多いのであります。一例をとって申せば、東京でも大阪でも道路費をごらんになれば、砂利道で木橋というのがこれが地方財政需要の見方であります。東京で砂利道で木橋を作るなんということは、考え得ることじゃないのであります。これはコンクリートで永久橋を作るにきまっておるのであります。しかし財政需要はそういう見方になっておるのであります。そういう財政需要を積み上げたものを、それよりも収入が多いからといって、これが不交付団体になり、不交付団体だから富裕団体だ、こういってしまうのであります。これはとんでもない誤まりの点があると私は思うのであります。そこで、これだけ施設も残っておってできないでおる富裕団体と称するものに対する問題は、これから財源を奪って、貧弱団体、赤字団体にけ落すことではないと私は思う。そうではなくて、富裕団体と称するものの財源の効率的な活用を求めるということ。たと思うのであります。財源を奪って貧乏団体にしてしまうことではないと思います。貧弱団体の問題は、富裕団体の犠牲においてすべきではなくて、貧弱団体に対しては国が財源充実して、これをレベル・アップすべきことだと私は思うのであります。ところが毎々の財源偏在是正の御論は、富裕団体から財源を奪ってこれを貧弱団体に回せ。そうすれば公平にはなろうけれども、全国の自治体はみんな赤字団体、貧弱団体になってしまうのである。どこも仕事ができなくなってしまう。レベル・ダウンになるのである。ここに私はさらに御検討を願うべき点があると思うのであります。今後もこの偏在是正問題について御研究でありましょうけれども、ただこの富裕団体だと一口にお考えになって、内容、実態もお考えにならないで、この問題に取り組まれることは、これは慎重になさっていただきたいと私は思います。御意見を伺いたいと思います。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましても、私は別に異論があるわけではありません。特にまたいわゆる富裕県からの余剰があります場合に、これを全部そうでない府県に回す、さようにも考えているわけでもないのであります。これは要するに、程度の問題でもあろうかと思うのでありますが、なお御意見の点は、私どもも十分注意しておるところでありまして、今後地方税の根本的な改革も三十二年度考えておるわけでありますが、国、地方を通じての税制改革の場合に、とくと考慮いたしたい、かように考えております。
  19. 古井喜實

    古井委員 昨年の臨時村国会の中心問題が、地方財政の問題であったということは、今までの地方自治地方財政にとってはかつてないことであったと私は思っております。それほどに地方財政も行き詰まったのでありましょうし、それほどこの問題が政治問題になってしまったのであります。引き続いて今年度も、従って来年度についてもいろいろ対策を講ぜられたのでありますけれども、私はこれを見て、まだ地方自治というものの重要性ということについて、十分認識が徹底しておらぬような点があるような気がしてならぬのであります。さっきお話のごとくに、地方財政の来年度規模が一兆四百五十六億、国の一般会計規模より大きい。それほど大きな規模を持っておるのであります。これが不健全であったら、それこそ公けの財政の半分は不健全であって、半身不随であります。また国の行政も、大部分は自治体にたよらなければ実行ができない。第一線の実行機関になってしまっておるのですから、何ぼ国でりっぱなことを計画されても、自治体が役に立たなければ、国の施策も効果が上らないということになってしまう。また自治体がだめなくらいなら、とても民主政治などはうまくいくはずはないのであります。山縣公が、憲政を行う前に自治制度を先にしいたというのは当りまえのことであって、別に山縣公の卓見でもない、これは常識だと思います。その辺について、ほんとうにそうだというふうに考えるならば、地方財政の現状を見るにつけても、また自治体の機能の現状を見るにつけても、真剣に考えていただかなければならぬ点がたくさんあるように思うのであります。この辺については、特に自治庁長官は、地方制度調査会など運営もなさっていることでもありますし、御熱意もお持ちになっておると思いますが、この地方制度調査会の方でも、制度機構の根本問題に取り組んで、途中でちょっと休みになっておるようなふうにも聞きますが、真剣に自治体を立て直し、また充実して強化していくように御努力なさるお考えと思いますが、念のために御意向をごく簡潔にお伺いをしておきたいと思います。
  20. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど大蔵大臣が言いました富裕県という問題でございますが、富裕県という言葉も悪いかと思います。お示しの財政需要に対する収入との関係において不交付団体になるというような意味でございますが、実は府県でも東京と大阪と神奈川しかございませんが、大阪は警察費の支弁関係で、もうこれから先は相当に余裕力が減って参ります。神奈川県に至ってはさらに少くて、問題は突き詰められてくると、東京都に重点が置かれるようになります。しかもお言葉通り、首都といたしまして、いろいろな特殊な財政も需要もございます。ただ私は、自治体というものはそれぞれに独立しておりますが、自治体の連帯性でなくて、連鎖するという考えから、大蔵大臣の言われたような偏在是正の問題もあったと思いますが、その程度も非常に狭まってきましたことと、やるにいたしましても、根本的に自主財源をどうするかというような問題もからんでおりますので、税制改革のときにこれをきめたい、こういうように考えております。  それから第二に、地方財政につきまして、前議会以来国民のお心が向いてきたということは、私は当務者として非常にありがたいことだと思います。この前大蔵省が目から見た国の財政というパンフレットを出しましたが、つい数日のうちにできると思いますが、目から見た地方財政というものを、議員各位にごらんを願いたい、また言論界の方々にも御批判を仰ぎたいという意味で、出すことにいたしております。  それから地方自治ということの根本についてどう考えておるか、これはなかなか足踏みしてはいかぬというお言葉でございますが、先ほども申しました通り、私は自治庁行政に入りましてまだ日も浅く、かつ未熟でございますが、私の目に映じました地方自治というものは、相当に筆を入れなければならぬ。目に映るところは、あるいは新自治団体の基礎になる町村合併がどこまで行くのであるか、大都市の問題はどうするのであるか、府県制の問題はどうするのであるか、さらに進んで道州制はどうするのであるか、こういう組織について考えるとともに、その執行機関についても考えなければならず、かつ議会構成についても考えなければならず、その執行機関と議会構成の運営につきましても考えなければならぬ。地方財政においては誤解もあろうかと思いますが、よく世間で地方財政放漫なりというような言葉がありますが、涙の出るほどの整理をしておる府県も少くないのでございますけれども、自治を直すのには、新合併町村というものを基本といたしまして、こればある意味地方自治の革命かと思います。ただなわ張りだけがきまりましたので、まだ八割五分しかいっておりませんから、本年九月までを一区切りといたしまして、新市町村の育成をはかっていきたいと思います。またいわゆる大都市の問題も、今回自治法の改正において手をつけていきたいと思っております。府県制及び道州制につきましては、この基礎の土に進めていきたい考えで、決して腰折れしたり、あるいはここでやめるというような気持は持っておりません。この組織と地方財政の健全化に進むという方向とあわせて、自治体の伸びていくように、――お言葉にありました民主政治の基盤となるものは、自治体であろうと思います。また国民生活の伸張していくというのも、自治体の政治と関係がある。かような意味におきまして、一生懸命努力したい考えであります。
  21. 古井喜實

    古井委員 今お触れになりましたので、最後に大都市制度の問題と府県制度の問題について簡単にお尋ねしておきたいと思います。自治という建前から申しますれば、自主自営の能力のあるものにその力を発揮させるということは、これは当りまえの筋道になると思います。それで住民の方の側からいっても、この住民に直結した自治体を充実してこれが仕事を十分やってくれるようにしますことは、非常に利益であります。そこで大都市制度の問題は、府県と大都市とのなわ張り争いの問題ではないと思うのであります。自治という建前からいって、大都市というものが力を持っておる限りは、できるだけこれに仕事をやらせる、また住民のためでもあるというところから、これは起ってくるのであります。近来知事公選になってからの状況を見ますと、特に大都市と府県との仲が悪いのであります。大阪にいたしましても、あるいは愛知県と名古屋にいたしましても、まことに反目、対立、抗争のような姿に見えるのであります。府県知事が官選時代で、市と全く性格の違ったときには、まだ調和がとれたが、今のように同じ性格のものになってしまったためにか、ますますもってこの間の調和がとりにくいように思います。これはまことに住民にとっても迷惑千万なことであるわけであります。もしこの両者の間に抵触が起る、ぶつかり合いが起るならば、私はさっき申すような自治というものの建前、本義からいうても、住民の利益からいっても、府県の方が道を譲るべきものだと思います。この点は方角としてそうならざるを得ぬと思うのであります。両方が取り合いをすべきものではないと思うのであります。そこで大都市における問題としては、できるだけ力があるならば事務を委譲してやったらいいと思う。窓口を市民に近づけたらいいと思う。これをことさら府県と取り合いをさせたり何だりすべきものではないと思うのであります。そういう取り合いをするようなことであれば、いっそのこと大都市は府県から分けてしまって独立させてしまった方がいいと思う。つまり特別市制の問題になってしまう。そうなればこれは取り合いのしようがなくなるのです。しかしこれは府県制度が将来どうあるべきかという大問題とも触れるのでありますから、特別市制の問題にまで今日行きますことは、まだそれは考慮すべき点がたくさんございましょう。せめてすみやかに事務のできる限りの委譲を大都市に行なって、そうして特別市制の争いをしばらく休戦にでもして、実をおさめるようにすみやかにすることが今日の問題ではないかと思うのであります。この辺につきましてあるいは同じようなお考えかもしらぬと思いますけれども、この機会に自治庁長官の御見解をお伺いいたしておきたいと思います。
  22. 太田正孝

    太田国務大臣 大都市の問題につきましては、同じような考え方でございます。府県と大都市との事務につきましては適正な配分をいたしたい、こう考えております。警察のこととかあるいは教育の問題が県の方に参りますというようなことで考えただけでも、他の国民生活に直接した部面におきましては、市の方に委譲すべきものがあろうと思います。自治法の改正におきましては、その意味において進んで参る考えでございます。特別市につきましては、前年来いろいろ政治的の動きもあったことでございますし、さらにこの問題は府県制の改正という問題とも関連しておりますので、これを実行することなく、見送りたい、府県と大都市との間の事務配分にとどめたい、こう考えております。いずれは地方自治法の改正として御審議を仰ぎたいと思っております。
  23. 古井喜實

    古井委員 これで私の質問は終ります。
  24. 三浦一雄

    三浦委員長 午後は正一時より開会することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時三十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十六分開議
  25. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。山花秀雄君。
  26. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、日本社会党を代表して、おもに政府が行わんとする労働行政を中心として、社会保障政策の若干を加えて、本委員会における一般質問を関係担当大臣諸氏にいたすものであります。  鳩山総理はその施政方針演説において、民生の安定、失業対策のことを第一次鳩山内閣以来の重要政策であると述べられ、その具体策として社会保障の拡充を唱え、社会保障の中心課題とも申すべきものは疾病に対する医療保障の確立であると確言し、将来全国民を包含する総合的な医療保障を達成することを目標として計画を進めていくつもりであると、政府の直接の責任者として申されたのであります。現下の失業問題についても政府の最も重視しているところでありますと、深い関心を寄せられて、その根本的解決は、結局経済の拡大発展による雇用の増大に得たねばならないこととし、経済五カ年計画においてその実現に努めると言われたのであります。そこで私はお尋ねをいたします。当面対策は関係閣僚のそれぞれにお伺いするといたしまして、きょうは総理がお見えになっておりませんので、私は閣僚のどなたでもけっこうでございますからお尋ねをするのでございますが、一方では限られたる予算の範囲内において、防衛関係費と称し、名実ともに再軍備費用を大幅に増加して、半面、全国民を含む総合的な医療保障がいつ達成されるのか、国民は、二兎を追う者は一兎をも得ずと常識的に考えております。私もさよう考えておりますが、この内閣の偉大なる政治力は、二兎を追い、その二つとも得られる確信を持っておられますか、この機会に全国民の前に、その達成時期を一つ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  27. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問の要旨は、防衛予算は非常にふえるが社会保障費はその割合にふえない、こういうような御議論と存じますが、大体統計におきまして、防衛費と国民所得との関係は、昭和二十八年におきましては二・一%、それが二十九年は二・二%になり、三十年は二%、三十一年は二%、こういうことになっております。これに比較いたしまして、社会保障費と国民所得との割合を見ますと、二十八年は一・二四%になっております。それから、昨年は一・五二%、本年、三十一年度は一・六三%、こういう工合に逐次国民所得に比較いたしまして防衛費の方は、大体三十一年度は二%、それに比校いたしまして、社会保障費、これは失業対策も含んでおりますが、一・六一%、こういう工合にふえてきておる状態であります。
  28. 山花秀雄

    ○山花委員 防衛関係費と社会保障の関係のふえる率のパーセントのお答えがございましたが、われわれはその数字お尋ねしておるのではございません。両方をおっかけて、両方とも成功される自信があるかどうかという、その政治的な回答を今要求したのであります。私はこの次にそれを付言して御回答願いたいと思います。  次に失業問題解決は、経済五カ年計画において実現を求められておるのでありますが、現在完全失業者は六十七万人を越し、年々増加する労働力ば約八十八万人を数えておる実情であります。果してせんだっての本会議の演説におきまして、高碕経企長官が言われましたような、この深刻な失業問題の根本的解決に自信がおありになるか、どうかという一点を経企長官から、先の回答とあわせてお願いしたいのであります。
  29. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 増加いたします人口に比較して、労働力人口が非常にふえる。経済五カ年計画におきましても一二%ふえるということは非常に重大な問題であります。それに対する対策といたしましては、生産を拡大して雇用の機会をふやす、これ以外にはないのでありますが、大体から申し上げますと、本年三十年度は六十七万の失業者、こういう考えでおりましたわけなんでありますが、現在の統計によりますと約六十八万、われわれの考えておりましたよりも平均一万多いだろう、こう思っておりますが、しかし現在におきましては比較的好転いたしまして、この十一月から十二月のときには五十七万に減っておるようなわけなんであります。また保険金を受けました方面の人たちを見ても、二十九年の十一月には大体五十万人の人が失業保険金を受けておりますが、本年の十一月には三十八万くらいに減っております。その点から中しますと、幾らか雇用情勢は好転しておるというふうにも思われますが、しかし根本的に考えまして、これはなかなかむずかしい問題でありまして、特に私どもの考えておりましたことと多少違っておりますことは、アメリカのごとき個人の所得の十分あるところでは、景気がよくなれば労働意欲のある人たちが割合に少くなってくるわけであります。現在五六%くらいになっておりますが、日本では六七%入っており非常に高いのであります。これは少しよくなれば比率はもっと減るだろうと思っておりましたところが、これは逆でありまして、幾らか雇用の機会が多くなれば、労働意欲のある人は多くなる、こういう工合になりますから、そういう点からいきまして、なかなか困難性があります。将来を考えますと、これはどうしても生産を拡大することによって、大体は雇用の機会をふやして、失業問題は最初の予定のごとく五カ年を期して、これに持っていけるという確信を持っておるわけであります。
  30. 山花秀雄

    ○山花委員 私は再度二兎を追うて二兎を得る確信があるかどうか、こういうことを答弁に要求したのでありますが、ただいま答弁がございません。そこで私なりの解釈といたしまして、政府はこの問題に自信がないのであろうという解釈をして、次の質問に入っていきたいと思います。  次に国民医療関係の当面の対策について、小林厚生大臣お尋ねいたしますが、その前に小林厚生大臣は、わが党議員多賀谷真稔君の本会議の質問の際の答弁に、現在何ら社会保障制度の適用を受けておらない約三千万人の国民につきましては、今後国民健康保険の普及をはかることはもちろんでございますが、経済五カ年計画の最終年次でありますと、こういうように言われております。昭和三十五年度達成を目標といたしまして、全国民を対象とする医療保護制度の確立を念願しておると申されたのであります。それはそれとして、たいへん望ましいことでありますが、それよりも当面の対策として社会保障の重要案件である健康保険、国民健康保険、社会保障の強化あるいは生活保護の公的扶助の強化、結核対策等、国民医療の充実をはかる予算措置についてでございますが、あなたは厚生関係及び失業対策費の増加等の予算は、昨年度に比べて百二十二億円なりの増加で社会保障の政策に一そうの留意を加えておると言われておるのでありますが、私はさよう考えません。なるほど全金額においては百二十二億の増加したことは、これは数字でございますから明らかであります。しかし私どもはさような抽象的議論をしておるのではございません。たとえばその金額数字を見て参りましても、生活保護費の十五億円、児童保護費の一億円、結核対策費の四億円等と、それらのすべてが対象人員が増加しておる。それによる金額増加であります。予算金額は実際的には著しく低下しておるのであります。実質的に民生安定政策の後退が対象人員と予算数字によって明らかであります。私はここでそういう抽象的議論をしようとは思いません。なお、詳細な数字をあげての議論は予算分科会に譲りたいと思いますが、こういうような実情にあっても、小林厚生大臣は、社会保障の拡充や国民医療について満足なる政策を施行し得るとお思いになっておられるやいなや、偽わらざるところの御信念のほどをお答え願いたいと思うのであります。
  31. 小林英三

    ○小林国務大臣 私はいろいろの御議論はあると思いますけれども、とにかく厚生省予算について申し上げましても、昨年度よりも約六十一億円の増加を見ておる。これはやはり私は社会保障の経費といたしましては、確かに進展をしておるものと確信をいたしております。
  32. 山花秀雄

    ○山花委員 私は先ほど抽象的議論はしたくないと、こう言っております。金額数字的にふえたということも私自身は肯定しておるのであります。しかし金額がふえたことが社会保障の充実に役立っておるかどうかというところに議論の要点を求めておるのでありしなす。対象人員と予算措置関係お尋ねしたのであります。ただいまのように抽象的な御答弁でこの場をのがれようという、私はこの考えは、社会保障について当面の担当大臣である小林さんとしては、責任のない答弁だというふうに考えざるを得ぬのであります。  次に健康保険の赤字対策を被保険者に求めておりますが、これこそ私は鳩山内閣の重要政策である社会保障の著しい後退を意味するものであると思うのであります。この点につきまして小林大臣の御意見を承わりたいのであります。
  33. 小林英三

    ○小林国務大臣 健康保険の被保険者一部負担について、社会保険の後退であるというような御意見でございますが、私は決してそうとは考えません。健康保険の赤字という問題は、この前の本委員会におきましても申し上げましたように、二十九年度におきましては四十億の赤字を来たしておる、本年度におきましては六十億の赤字を来たしておるのであります。しかしこの赤字が両年度に百億円出たという問題、あるいは三十一年度におきまして約七十億近くの赤字が出るという問題につきましては、為政者といたしましても相当掘り下げて考える必要があると存ずるのであります。ただ赤字が出たからといってすぐ借金して穴埋めするというわけには参らないのでありまして、このよってきたる原因を十分に探究してみる必要があると思うのであります。私もこの問題につきましては、十分に取り組みまして研究もいたしてみたのであります。しかしたとえば二十九年度から赤字が出たということにつきましては、何かそこに深い原因がなくちゃならない。二十八年度には、御承知のように、点数の一部引き上げをやっておりますし、また二年間の療養給付の年限を三年間に延長いたしておりますし、また健康保険そのものに抗生物質である新薬の採用をしておるのでありまして、やはりこういうふうなものが三十年度赤字の形となって出て参っておりますし、また従来の健康保険の内容と違って今日の健康保険の内容は非常にレベル・アップしておるのであります。またどういう階級でも進んで診察を受けるという形になっておりまして、受診率も非常に増大しております。また一方病院でありますとか、あるいは医療機関でありますとかいうものも、全国的に非常にふえて参っておりますし、また健康保険医の数も毎年六千人以上増しておる。一方また医学は非常に進歩しておりまして、結核の手術にいたしましても、あるいはその他の高級な手術にいたしましても、これを健康保険に取り入れるような状態になっているのであります。それから御承知のように、健康保険というものの政府管掌の問題につきましては、全国で約二十三万事業場くらいあるのであります。これらの従業員の数は一事業場当り約二十人くらいな平均でございまして、これらの事業場の従業員の総収入は、平均いたしますと多少はふえておりますけれども、その収入のふえる率が非常におそいのであります。そのふえる率よりも医療費が非常にアンバランス的にふえて参っております。保険財政への歳入が減って給料が少いといっても、やはり医療費ば普通と同じように待遇しなければならぬのでありまして、医療費はどんどんとふえていく、保険財政への収入はふえて参らないというようないろいろの観点からいたしまして、今日の赤字昭和二十九年あたりから出て参っておるのであります。こういうような立場におかれまして、しからば三十一年度の七十億からの赤字についてどうするか、この赤字を克服いたしまして健全な健康保険の姿に返すには何らかそこに手を打たなければならぬ、それには国も一部は負担する、今日のように健康保険そのものが非常にレベル・アップしておるのでありますから、やはり被保険者にも一部負担していただく、それから事業家にも一部負担していただく、そしてこの赤字の対策をして健全なる健康保険に直すということが私は必要ではないかと思うのであります。その意味におきまして、われわれが考えておりますことは一部負担でございますが、今日私どもが考えておりますことは、今までは健康保険といたしまして初診料を五十円取っておった、その五十円は取らないで、毎日三十円ずつ取る。たとえば二日間かかった方は六十円、三日間かかった方は九十円取る、こういうようにいたしまして、そうして健康保険そのものを軌道に乗せて、健全なる健康保険としてスタートするということでありますから、私は決してこれは社会保険の後退ではないと確信をいたしております。
  34. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまの厚生大臣の御答弁を聞いておりますと、社会保障を中心とする医療制度であるか、それとも営利会社の保険会社の経営方針の建前を述べておられるのであるかという了解に苦しむものであります。私は健康保険の維持は治療措置よりも予防措置、公衆衛生に重点を置くべきものと考えますが、小林大臣はどういうようにお考えになりますか、お伺いしたいのであります。
  35. 小林英三

    ○小林国務大臣 まことに恐縮でありますが、ただいまの御質問をもう少し掘り下げていただきたい。
  36. 山花秀雄

    ○山花委員 国民の健康は、治療措置よりも予防措置、公衆衛生に重点を置いて維持するのが、政治の役割であるというふうに私は考えておりますが、小林厚生大臣はどういう御所見を持っておられますか、それをお伺いしたいのであります。
  37. 小林英三

    ○小林国務大臣 やはり病気になった方を社会保険として取り扱うのでありますから、医療の問題について重点を置くべきものと考えております。
  38. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、一国の厚生大臣として、なってからというような、あとから追いかけるような対策をもって本来の厚生の事業とお考えになっておるという点につきまして、はなはだ不満に感ずるのであります。なる前にならないように万全を期す、これが国家の厚生行政であろうと考えておるのであります。この点は鳩山内閣の厚生問題に対して、私どもと意見の相違点を明らかにしておきたいと思うのであります。小林厚生大臣は、健康保険の赤字について先ほどるる申されておりました。たとえば二年の療養期間が三年になるとか、あるいは抗生物質の新薬の採用がふえたとか、あるいは保険の利用者が増加したとか、医療技術の進歩、点数が大きくなったとかいうように申されておりましたが、私は国民健康の保持、向上のために、そういうような傾向はまことに喜ばしい傾向であると考えておるのであります。もしそのような事情で国民健康が向上するならば、社会保障の精神を生かしていきますならば、それらによって生ずる赤字は、社会保障を一枚看板にしておる鳩山内閣といたしましては、当然これは国庫負担して解決すべきであると考えておりますが、もう一度この点について御所見をお漏らし願いたいと思うのであります。
  39. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま前段にお答えいたしました、健康保険として公衆衛生を主にするか、あるいは医療を主にするかという問題につきまして、私は病気になった方に対して医療を主とするということを申し上げたのでありますが、もちろん厚生行政全般にわたりましては、たとえば結核の問題、そういうふうな問題につきましては、予防ということに関しても十分なる手段を講じておるわけでありまして、ただいま御質問になりました後段の問題につきましては、一方におきましては社会保険の恩典に浴してない人々が今日三千万人いるのであります。これらの諸君は恩典に浴さないでおって税金を国庫に納めておるのであります。私はこういう観点に立ちまして、今日のように健康保険が相当レベル・アップしております際でありますから、国庫負担をするし、健康保険の被保険者にも一部の負担をさすということが、健康保険の赤字の克服と同時に、健康保険そのものを向上さすゆえんであると考えております。
  40. 山花秀雄

    ○山花委員 私は国家負担が多少増額されましても、国民のすべてが健康体を維持して生産活動に従事することができますならば、数字はすぐには現われませんが、大局的には国家全般の利益の増強に役立つというふうに考えておるのであります。私はそれが政治であろうと思うのであります。この際目前の赤字対策で、医療従事者やあるいは被保険者の恨みを買うような下手な政策は改められた方がよろしかろうと思うのであります。  さらにお尋ねしたいと思いますが、今日健康保険の赤字は、長期療養の結核患者が一つの大きな原因をなしておることも、これは事実であります。そこで将来の医療対策として健康保険、国民健康保険、組合健康保険等々これらを統合整理して、別個に結核の全額国庫負担の対策を立てて、国民医療の解決をはかられるのが一番いいというふうに私どもは考えておりますか、そういう意思を政府としてお持ちになっておられるかどうか、担当大臣たる小林厚生大臣にお答えを願いたいと思うのであります。
  41. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねのように、結核の問題が健保の赤字に対しまして相当なウエートを持っておるということは、これは私も認めざるを得ないと思います。しかしこの問題を今どうするかという問題につきましては、将来健康保険をどうするか、あるいは健康保険のうちにおきましても、従業員五人以上の社会保険の恩典に浴していない方々はどうするか、あるいは国保をどうするか、あるいは国保のうちで社会保険の恩典に浴していない方々をどうするか、あるいは結核対策をどうするかという問題につきましては、今ここで直ちにこれを決定するわけにも参りませんので、こういう問題につきまして、総合的に十分に具体的な調査研究をいたし、立案をいたしまして、そうしてやりたいと考えております。いずれにいたしましても昭和三十五年度いわゆる五カ年計画の最終年度までには、少くともこれらの問題を全部解決して、そして国民皆保険に持っていきたいということを念願しておるのであります。
  42. 山花秀雄

    ○山花委員 厚生行政につきましては、後ほど分科会でなお詳細にわたって御質問したいと思います。  次に雇用問題を中心として失業対策についてお尋ねをしたいのであります。高碕経企長官はただいまるるこの問題についてお述べになりました。せんだっての本会議の御所見を承わりましても、日本生産性本部の機能強化をはかり、基幹産業については産業の合理化、再編成を強力に推進することを強調されておるのであります。まことに私はけっこうなことだと思うのであります。しかしその半面産業規模が拡大され、雇用機会が適正なる職業紹介、職業補導、職業教育の整備拡充等と相待って解決されるものと、将来の見込み希望をもって非常に楽観論を述べておられるのであります。また一萬田大蔵大臣もその財政演説において、昨年度より三万人の失業対策人員を増加して、そして憂慮された雇用問題については漸次解決をする、二十五万人の就労を約束する予算を計上した、こういうように言われておるのであります。昨年度より三万人増をもって、失業問題解決の誠意をお示しになったように言われておるのでありますが、しかしながら当面の担当大臣である倉石労働大臣は、予算編成に当り、雇用増関係予算要求は大幅に大蔵当局から削られて、非常に苦境に立ったという、ふうに伝えられておるのであります。そのために社会労働委員会の大臣あいさつにおいても、年々八十万人以上に達する労働力人口の増加と不完全就業者の存在によって、最近わが国の経済の好転にもかかわらず、雇用、失業の問題は本年も引き続いて深刻なることは否定することができないと、こう率直に申し述べられておるのであります。この重大なる失業及び雇用の問題について、大蔵大臣、経企長官と当面の担当大臣である労働大臣との間において、意見の食い違いを私どもは承わるのであります。この際三大臣よりいま一度失業及び雇用についての的確なる御所見をお述べ願いたいと思うのであります。
  43. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お答えいたします。雇用の関係につきましては、私はただいまお話がありましたように、楽観をいたしておりません。雇刑量の増大ということは、政府の策定いたしました経済五ヵ年計画にも一番重要視しておるところでありますが、大蔵大臣及び経企長官が申し上げましたことは、最近の履川状況の御説明があったのでありまして、最近の雇用状況につきましては、ただいま経企長官からもお述べになりましたように、失業保険の受給者はだんだん低減してきております。これは諸般の好景気の影響であろうと喜んでおるのであります。しかしながら雇用量全体のことについて、雇用、失業の問題について楽観を許さないという点においては政府部内は一致しております。そのことはわれわれの策定いたしました経済五カ年計画の中にも、このような方法によってこの五カ年計画計画的に推進するとしても、最終年度である昭和三十五年度においては、そのときになるであろうところの労働力人口を四千五百万人と推定いたしまして、なおかつその一%の完全失業者はやむを得ないであろうというふうに指摘いたしておるのでありまして、政府といたしましては、両大臣が申し上げましたことは、最近の雇用、失業状況が非常によくなったと考えておるという傾向を申し上げたので、終局的にはわれわれ意見が一致いたしておりまして、五カ年計画をそういう意味で策定いたしたということでありまして、食い違いはございません。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま労働大臣から御説明がありましたから、十分であろうかと思うのでありますが、なお私どもが意見が違うようなお説でありますので、ここで見解を申し述べておきます。  先般私が雇用のことについて申し上げたことは、最近たとえば企業整備による失業あるいはただいま話にありました失業保険等の統計を見た場合に、最悪の――これは従来非常に心配しておったのですが、その最悪の状態はあるいは脱したように見える、若干好転のきざしもある、かように申し上げたのでありまして、雇用が重大であり、雇用に政府が深い関心を持っておりますことは申すまでもないのであります。従いまして、この雇用の機会の増大ということに政府としても非常に重点を置いておるわけであります。従いまして、労働大臣等と私どもと意見の相違があるということは絶対にないのであります。特に今回は、先ほどもお示しがありましたが、失業対策につきましては、乏しい財源の中からも、たとえば特別失対に前年度同様の二十五億、さらにまた臨時就労対策として建設省に六十九億、これでそれぞれ二万人ずつ、計四万人を吸収する、その他が二十万八千、全部で二十四万八千、これを昨年の二十二万に比べますと二万八千、さらに川崎線も――特に石炭企業の整備に伴いまして失業者が多かろうというので、川崎線の建設に約二千人は吸収できる、かようにして、私どももできるだけの態勢を立てておるということだけを申し上げておきます。
  45. 山花秀雄

    ○山花委員 大蔵大臣は、予算措置で失業解決のために昨年度より若干人員を上国る案を立てた、こう説明をされておるのであります。確かに政府のお考えによりますと、本年度の六十七万が来年度は二万人くらい減るということが一応相必定されるのであります。しかしながらそう楽観してこの失業問題は解決できない。私は私たりの意見を申し述べまして、政府の甘いお考えを、面目にとらわれることなく変更されんことを強く要求するものであります。特に日雇い労働者は、毎月平均六千四百人ずつふえ、現在の登録人員は四十五万三千人といわれておるのであります。また本年度は、駐留軍の撤退と特需の減少による多くの失業者、あるいは石炭合理化法によって出る失業者、総計合せると五万人以上といわれておるのであります。これらの問題――今までの問題はいいとして、当然駐留軍あるいは特需、石炭関係約五万人、この本年新しく出る失業者に対する予算措置をお考えになっておるかどうかという点を、これは労働対策として倉石大臣より、予算の問題に関しては大蔵大臣より承わりたいのであります。
  46. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御指摘のようないわゆる失業者多発地帯、それから特に駐留軍関係、特需関係のものにつきましては、御承知のように、先年来政府部内に特需等対策連絡会議を設けまして、そこで先般世間に発表いたしましたような方策に基いて、特需関係で特に集団的に現われると予想されております失業者多発地帯に対しましては、それぞれの配置転換はもちろんのこと、自家営業などに従事しようとする希望者に対しては、私ども労働省が特にそういう方面に就職あっせんをすることに努めておるような次第でありまして、ただあとの、先ほどお話がありました駐留軍関係でない地域でも、やはり失業者多発地帯がございます。こういうところは、これは諸外国にも例のあるところでありますが、やはり集団的に出てくる失業者に対しましては、私どもとしても特段な努力が必要であると存じまして、それぞれの地域における安定所を督励いたしまして、それに即応した措置をとっております。先ほどどなたかの例にありました川崎線を失業対策事業として新線建設をするといったような計画も、その一端の現われでございます。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどもちょっと触れましたが、石炭企業の整備につきましては、特別失対でそういう方面に三十五億ばかり使われると思います。それから川崎線等、お示しの通り、さらに道を今度はずいぶん作りました。こういう方面にも十分吸収ができる、かように考えておりますが、なお駐留軍の仕事が減るということから生ずる離職関係につきましては、これは、鉱工業の生産は三十一年度には相当上昇を見る、一言いかえれば、一般的な経済の拡大によりまして吸収をはかっていきたい、かように考えております。
  48. 山花秀雄

    ○山花委員 私はこれから出るであろうという、予想される失業問題解決のために、大蔵大臣には予算措置の用意があるかどうか、こういう質問をしたのであります。何か質問の焦点をほかし、はずし、逃げられておるような感じがするのであります。まことに不誠意な態度であろうと思うのであります。  話を転換いたしまして、次にお尋ね申し上げたいのは、目下重大なる社会問題として発展しつつある広範な労働組合の共同闘争による、いわゆる春季闘争といわれておる賃金値上げ要求運動であります。この問題に関しては、どうも政府は、労使間による自主的解決を促すというよりも、一方に偏した、率直に申し上げますと、経営者陣営に味方するような声明を盛んに行なって、かえって労働陣営を無用に刺激している感じを私どもは受けるのであります。長い間不況に苦しみ、低賃金で悩んできた労働者が、企業の繁栄に伴い、利潤分配という労働組合として当然の要求を出し、わが国憲法によって保障されておる、すなわち御存じの二十八条の団結権、団体交渉権、団体行動権の行使を行わんとすることは労働者の当然の権利であります。また一般公務員諸君も、二ヵ年間も賃金ベース・アップが停止になり、民間企業に働く労働者との賃金格差が非常に大きく開いてきておることは、政府の皆さんも十分御承知の通りであります。これを是正する要求は、私は当然のことと思っておりますが、この問題に関する政府の御所見を承わりたいと思うのであります。
  49. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 伝えられます春季闘争につきましての政府の態度は、しばしば申し上げておる通りでございますが、ただいまのお話の中に、政府が初めから何か声明でも出しておるようなお話でございましたが、政府はいまだかつて、一ぺんもそういうことを積極的にいたしたことはありません。私ども通信社その他の諸君から、こういう場合はどうで彫るかという設問があります場合に、そういうときには、違法な行為があれば政府としては取り締らなければならないという返答をいたしておるだけでありまして、積極的な行動をとったことがないことは御承知の通りであります。  そこで、ただいまのベース・アップの要求が正当ではないかということにつきまして、これは、今まで各常任委員会などでもいろいろ論議されておるところでございますが、私どもは二つ考えております。一つは、官公労の問題であって、一つは民間産業の問題であります。官公労につきましては、御承知のように昭和二十九年一月に人事院の勧告がございまして、政府はそれに基いてベース・アップをいたしました。その後昭和三十一年度においてベース・アップをなすべしという人事院の勧告はございませんで、昨年末〇・二五の年末手当を出すべしという勧告がございましたから、政府は、率先してこれを尊重いたしまして、実施したことは御承知の通りであります。従って、その間における賃金べースの問題について検討をいたしましたが、御承知のように、政府の発表いたしております統計によりましても、昭和二十九年一月から三十年十一月までに消費者物価、これは全都市でございますが、一・七%の下落であります。小売物価は三・六%の下落であります。卸売物価は五・六%、こういう実情でございまして、その上に、私どもは施政方針の演説でも発表いたしておりますように、消費者米価は上げない、鉄道運賃も上げないように、しかも非常に苦しい財政の中にもかかわらず、勤労階級に対する所得税の減税を考えるといったような措置をとりまして、物価を引き上げない政策をとってきておるのでありまして、その間において、民間も公務員も、いわゆる給与ベースの引き上げはありませんが、定期昇給というものはやっておることも御承知の通りでございます。そういう立場から、今回は、公務員諸君に対しては政府はできるだけのことをしてあげたいと思いますけれども、三十一年度予算においては、定期昇給の原資は用意いたしておりますが、いわゆるベース・アップはできない、こういう態度をとっておるわけであります。  民間産業につきましては、個々の民間産業についての労働運動に対して、政府は介入する意思は毛頭ございません。そこで民間産業については、ベース・アップの御要求がそれぞれ行われて折衝が始まるでありましょうが、それが違法な行為まで逸脱したような場合には、政府としては、国民の代表として取り締る義務を持っておる、かように確信をいたしておるだけであります。そこで民間のベースは、山花さん御指摘のように、いろいろ利潤率の多い会社もございますし、赤字の会社もございます。そういう産業系列を見ましたときに、赤字に悩んでおる産業と非常に利益率の多い産業とが、時を同じゅうしてベース・アップが要求されるということはいかがかということを、われわれは考えておる次第でありまして、個々の産業のベース・アップ、争議について、私どもはとかくの介入をしようとは思いませんが、いかにたくさん利益のある民間産業でありましても、ただいま御指摘にもありました通り、大産業といわゆる弱体産業との間では、賃金格差がだんだん大きくなって参りますことは、私どもとしてもきわめて遺憾でございます。  そこで、せっかく今日まで――なるほど諸外国の好景気の影響を受けたとは申しながら、輸出貿易ば黒字に改善されて参りました、物価も安定してきました、こういうときでありますから、どうぞ一つもうしばらくしんぼうしていただいて、日本経済の底を深くすることに努めようではないか、その上に国全体の富をふやして、分配をよけい取るという労働運動の方がよいではないかという考えでありまして、私どもは、今度の争議に一々介入しようとする意思は毛頭持っておらないのであります。
  50. 山花秀雄

    ○山花委員 倉石さんのただいまの御答弁は、何かちょっともっともらしく聞えるような御答弁でございましたが、私は、この点を十分政府としてはお考え願いたいと思うのであります。  これは、政府当局ももう多分御存じだろうと思いますが、生産性を向上するということを経企長官もたびたび言われておりますし、また倉石労働大臣も、今利潤分配を要求するよりも、コストを下げるようた運動で国民にサービスをする、あるいは将来の生産性向上のために社内蓄積を行なって産業合理化をやって将来を期した方がいい、こういうような御意見でございます。ところが、対日援助をやっておられるアメリカの国会においてどういう議論があるかということを、この際一つ御紹介を申し上げて、政府もお考えを願いたいと思うのであります。  これは、一月二十日の朝日新聞に紹介されておるものでありますが、米上院外交委員会での報告書で、「米上院外交委員会は十九日、グリーン議員らによってなされたアジア、中近東十一カ国に対する技術援助調査報告書を発表した。報告書は現行の対日技術援助に関して「日本の生産性向上計画が労働賃金の引上げと生産コスト引下げとを伴わずに産業利潤の向上だけに終るなら、結局は失敗となるばかりか、重大な害毒さえもたらすことになろう」と警告し、米国は、その意味で周到な注意のもとに援助実施を行わねばならない」ということを勧告しておるのであります。  米国五六会計年度の対日援助は、御承知のように技術協力費総額百万ドル、三億六千万円で、現在日本にアメリカから来る唯一の現金援助であります。調査団は、この援助資金をもとに実施されておる日本の生産性向上計画を視察いたしまして――みずから金を出しておりますから、誤りのないように視察をしたのだと思いますが、次のように報告をしておるのであります。  日本経済の問題点は、他の未開発諸国のものとは大いに異なっておる。賃金水準が比較的低いところに置かれておるにもかかわらず、日本産業はコスト高という大きなハンディキャップに悩み続けておる。これは旧式な生産設備と行政管理法とから由来すると考える。従ってアメリカ一九五六会計年度の対日援助資金の百万ドルのうち、ほぼ三分の二、六十四万四千ドル、邦貨に直しまして二億三千百八十四万円は、生産性向上計画につぎ込まれている。だが、日本との生産性協力協定は一九五五年四月に調印されたばかりで、この計画の成否を論じ得るほどには進んでいない。そこで今注意をする。こういうことを言っておるのであります。  また、米国が現在抱いておる技術援助計画を実施する対象として、日本は最も適切な国家である。だが、生産性向上は、経済上の信念が伴わない以上はとうてい実行できない。労使、消費者三者一体になってより多くの分け前にあずかることであって、それらのどれかに対する分け前の増加が他の利益を減らしたりというようなことがあってはならないとも言っております。  また、生産性向上計画からくろ利益が公平に分配されることを見届けるよう、周到な注意のとに対日援助は実施されなくてはならぬ。貧者をより貧しくする一方、富者をより富ませる結果に進んではならないということをうたっておるのであります。  私は、これは最も合理的な考え方であると考えております。計画自体が技術的に成功をおさめても、もし労賃の引き上げと消費者に対するコストの引き下げとをもたらさぬような、いたずらに産業の利潤の向上に終るならば、結局失敗すると同時に、一つの害悪をもたらすものであるということを喝破しておるのであります。ただいま労働大臣も言われましたように、産業によっては高利潤に恵まれているものがある、労働組合は御承知のように団結体でございます。団結体というのは、お互いに強力に組織的に団結をして、憲法によって保障されたる団体行動権を実施して目的を達成しようというのが、労働組合本来の姿であります。倉石労働大臣もよく御存じのように、一律に賃上げを要求しておりますが、金額は一率ではございません。金額はそれぞれの産業によって高低のあることは、労働組合がみずからわきまえて、みずから企業の実態を知ってやっているのであります。  特に申し上げたいことは、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、多年の低賃金に悩んで、そして利潤が上ったからといってすぐにそれを社内留保に使われるようなことは、これは耐えられないことであります。企業家でも、賢い企業家はやはり労働組合の要求を率直にいれております。そして労働者を満足させ、労働者に喜んで生産に協力させ、さらに社運の隆盛をはかっておるというのが賢明なる企業家のやることであります。政府は、たびたび労働者に、賃上げ闘争はけしからぬとか、純然たる経済的な闘争を、あたかも政治闘争であるかのごとく喧伝させ、そして逆に申しますと、全国的組織体の分裂を意図するような、国民と労働者の利害関係を裂くような政治的な謀略が、政府のたびたびの――特に倉石労働大臣が大阪あたりでなされた御所見にも、そういうことが十分含まれていると思うのであります。  御承知の通り、政府は、労資関係においては中立性を保たなければなりません。その中立性は、特に弱者に対してパーセンテージが加わるように、あたたかい心がまえでなすべきことではなかろうかと考えておるのであります。この点に関しまして私どもの考え方、今労働組合がやっている、経済のぐっと利潤の上ったときに対する賃金分配の要求が果して政治闘争であろか、政府は、どういう点を政治闘争とけなされているか、私どもは納得がいきません。今労働組合が共同して戦っている春季闘争に対する政府の所見を、もう少し明快に御披瀝を願いたいと思うのであります。
  51. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ベース・アップに対する考えは、先ほど申し上げた通りであります。  ただいま、政府が、いわゆる春季闘争を政治闘争であるとかどうとかいう非難をいたしているようなお話がございましたが、先ほど申し上げましたように、私どもが積極的にそういうことを声明いたしたことはありません。今、大阪における新聞記者会見のお話もございましたが、こういう場合にはどうするかというお尋ねに対してお答えいたしたのでありまして、私が政府として正式に表明いたしているのは、本会議及び国会の委員会における言論が私どもの正しい言論でございまして、その点から申しますと、先ほど申し上げたように、私どもは民間産業の個々の争議に介入しようなどということは考えておりませんし、それから基本的には、この間本会議で多賀谷さんがお尋ねになりましたから、簡単にお答えいたしました。政府の労働政策の基本的観念は何かというお尋ねでありましたから、私どもは、経営者の味方だけをするのではありません、労働組合だけの味方をするわけではありません、八千万国民の利害休戚を土台に置いて考えるものだという、こういうことを申し上げておるのでありまして、その意味から、今お話のような春季闘争を分析してみますと、全労働者とおっしゃいましたけれども、山花さんすでによく御承知のように、今回の争議は総評に限られております。全労会議という八十万近い労働組合の大多数の諸君は、今度のやり方に対しては反対であるという態度をとっておることも、御承知の通りでございますし、中立組合にもさようなものがたくさんあることも御存じの通りであります。そこで私どもは、そういう闘争方針について、今のようなときに、一律に日をそろえて計画闘争、いわゆるスケジュール闘争ということでああいうような行動をされることは、せっかく労働組合運動に対して国民大衆が同情と理解を持ってきておるのに、もし国民に同情を失うようなことがあったならば、健全なる労働運動の発達を阻害することになるから、どうかそういうことは慎しんでいただきたい、こういうことを考えておるわけであります。  それから生産性のことがございましたが、御指摘のように、出産性向上運動は、私どもの考えで一口に申しますならば、生産性向上運動というのは、商品の価値を引き上げて製品のコスト・ダウンをするということだと思いますが、そういうことをやって上げられた利益というものについては、先ほど御指摘のように、たとえば労働科学研究所あたりで、生産性が向上されたならば、こういうようなことをやろうではないかということを発表されておるのであります。あの中には、われわれも非常に参考になることがありますので、労働者の福利増進といったような方面に、もちろん均霑させていくべきではありますが、生産性向上運動が始まって、まだ実効が今日上っておりません。また上るようになりましたときにおいて私どもは考えるのでありまして、今私どもが現在のベース・アップについて賛成ができないというのは、現在の段階のことでありまして、私どもは、ベース・アップの運動が常にいつでもいけないなどということを申しておるわけではありません。
  52. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま倉石労働大臣の御所見を聞いておりますと、今度のは全労働者の運動ではない、八十万の組織を有する全労会議は、今度の闘争に反対をしておる。こうはっきりおっしゃいました。私は、その点は違うということをこの際はっきり申し上げたいと思います。労働組合が利潤分配闘争要求を拒否するというようなことが、もしこれが本来の姿としたならば、それは労働組合ではございません。それは明らかに御用組合であります。御用組合は、われわれは労働組合と認めておりません。また日本の労働法規においても、御用組合は、労働組合としての保護の政策を受けられないということは、これは倉石労働大臣十分御承知の通りであります。ただ戦術の問題として、今一緒にやるかどうかという戦術的見解の相違が、総評を中心とする多くの中立系の労働組合と全労会議との戦術上の相違であります。この点ははき違えないように、一つお心得を願いたいと思うのであります。それは、あたかも一部分の労働者が何か矯激な態度をとって、身分不相応な賃金値上げ闘争をやるがごとく、そう意識されるような宣伝をしておるところに、この闘争を政治闘争と思わせるような一つの資本家擁護のゼスチュアがあるというふうに私は考えておるのであります。そういう点は、もう少し私は公正なる労働行政の直接責任者としてお考えになって、御発言を願いたいと思うのであります。  特に経企長官お尋ねしたいと思いますが、経企長官は、物価の値上げはしない、持に公共的性格の物価は抑制すると本会議の席上で言われておるのでありますが、私もそうなくてはならぬと考えておりますが、事実に反した具体的事実が今日次々と出てきておるのであります。たとえば、私どもは東京都民でございますが、都電は御承知のように値上りになりました。高速度電車も値上りになりました。水道料金も値上りになりました。これらは全部公共的性格を持った一つの物価でございます。これを今日、御承知だろうと思いますが、こういうような形で、果して経企長官が言われる物価横ばいを継続し、さらに物価を値下げするような形が行われるかどうかという点であります。もう一つは、きょうは農林大臣もお見えになっておりませんが、国民の間にはもう言われておるのです。それは、やがて参議院選挙が終ると、国鉄の運賃も上るであろう。そして配給米価も上るのではなかろうか。また農林大臣は、きのうの本委員会の席上において、さようなことはないと言われておりますが、先ほど米と国鉄運賃の関係につきましては、私どもには少し聞き取りにくい、何か言いにくいような形で御答弁をなさっておられましたが、私は遠い将来のことは別に申しません。これは大蔵大臣、経企長官ともに関係がございますが、国鉄運賃あるいは郵便料金、その他とにかく政府が管轄しておる公的物価は、本年じゅうは値上げをしないと確約できる見通しがあるかどうか。もしその見通しがございましたならば、本委員会を通じて、国民の前にはっきりその所信をお示しを願いたいと思うのであります。
  53. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 政府の方針といたしましては、三十一年度の物価は、横ばいにとどめておきたい、こういう考えでありまして、それじゃその自信があるか、こういうお話でありますが、第一に予算関係におきましても、国民の総生産が四・二%ふえておる。それと相待って予算も四・二%ふえておる。こういうところにおきましても、物価は横ばいになり得るだろう。また国際的の物価は、今日鉄及び非鉄金属等を通じて上っておりますが、これは、外貨を政府は持っております関係上、その外貨をもって輸入すればこれを押えることができるだろう、こう思っております。もう一つは、日本銀行の通貨を年度間比較で二百億円程度の増加にとどめたい、この方針でやっております以上は、物価はこれで横ばいになり得るという感じを持っておるわけであります。また政府が統制し得る物価は、先ほど御指摘の鉄道運賃、米の小売値段等は、先般農林大臣及び運輸大臣からお答え申した通り、今年は上げないという方針で進んでおるわけであります。
  54. 山花秀雄

    ○山花委員 時間も迫っておりますので、私は最後に労働大臣一つお尋ねしたい。これは、日本の重大なる独立性という点について、労働問題に関連性のある問題としてお尋ねしたいと思うのであります。政府は、しばしばわが国の真の自主独立の達成を言明されておるのであります。私は、政府のいう真の独立国家への達成の念願については、全く同意見を持っておるのであります。しかしながら、その達成の方法であります。私どもは、平和的に民主的に、すなわち一言にして言いますならば、国際的には平和主義、政治的には民主主義、経済的には社会主義の三大方針のもとに、いかなる国からも支配干渉されることのない自主独立の日本国家を立てることを念願しておるのであります。そのためには、昭和二十七年の四月の講和条約発効後においては、従来の占領支配の残滓をすみやかに払拭しなくてはなりません。私が今ここにお尋ねしたいことは、わが国独立後四年になんなんとするに、いまだに対米関係において、特に駐留軍関係の労務提供の実際上の扱いにおいて、占領支配中と同様のことが各地において行われておることをはなはだ残念に思うのであります。きょうは外務大臣が来ておられませんが、外務省関係の政府委員からも御答弁を願いたいと思いますが、特に労働大臣は、担当の関係に立っておるのでお尋ねしたいと思います。日米労務基本条約で定められておる駐留軍と日本人労務者の関係は、御承知のように、国内労働法の適用が優先して行われることが確約されておるのであります。これが事実上守られていないのをしばしば見受けるのであります。日米行政協定のもとにおける日米合同委員会において、この問題解決のためにどのような努力を、外務当局としては、また担当の労働大臣としてはなされたか。前国会におきましても、社会労働委員会において、わが党委員の石橋君からもいろいろ事例を引いてお尋ねをしておりますので、これはもう労働大臣よくおわかりだろうと思いますが、積極的解決努力をなされたかどうか。もし努力をなされたならば、その成果がどういうように今なっておるかどうか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります、
  55. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 駐留軍労務者の雇用契約関係につきましては、ただいまお話の労務基本契約によって定められておることでございますが、そのことについて、労務基本契約の改訂をわが方から申し入れてございまして、大体の骨子については、話がだいぶ進んでおるのでございます。細目のことについていまだ両者に意見の一致せざるところがございますので、私どもの方といたしましては、外務省を通じて、すみやかにこれの改訂を要求いたしまして、今その要求を続げておる最中でございます。
  56. 山花秀雄

    ○山花委員 外務省の政府委員の方が来ておられましたら、どうなっておるか、一応説明願います。
  57. 千葉皓

    ○千葉政府委員 ただいま労働大臣からお話がございましたように、合同委員会を通じまして交渉を進めております。昨年末に、さらに促進方の申し入れをいたしまして、最近米側の見解が披露されることを待っておるという状態でございます。
  58. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題が解決されないと、山積した問題がたくさんあることは、関係当局十分御承知の通りでございます。時間がございませんので、こまかいことは申しません。またこまかいことは、分科会等でお聞きしたいと思いますが、この問題の解決のために努力しておるが、なかなか向うさんの方からは、すみやかな解決の時期に至っていないというお言葉でございましたが、しかし実際当該被害者の身になってみますと、一日千秋の思いでこの問題の解決を待っておる。しかもわが方は、無理をいっておるのではございません。これは日米行政協定の取りきめによる労務基本契約の、わが党の正当なる主張を、代弁者でおる外務省もしくは調達庁を通じて、当面の責任著たる労働大臣にお願いをしておるのが実情でございます。前国会の社会労働委員会の議論のあった後に新たに発生いたしました板付における不当解雇の問題は、昨日も社会労働委員会で労働大臣に井堀議員の方からお話があったので、私は十分御承知のことだろうと思いますが、この問題の解決がえんえんとしてアメリカ側との折衝がつかない場合に、一体政府当局としてどうお考えになっておるか。たとえば三沢の救済命令の解決の問題、あるいは各地にまだ未解決になっておる問題、これらを政府として責任を持って別途の方策で解決する御所存を持っておられるかどうか、この際一応お聞きをしておきたいと思うのであります。
  59. 安田清

    ○安田(清)政府委員 板付の関係につきましてお答えを申し上げます。御指摘のございました板付の基地の労務者に対しまして、ただいま出勤停止の事案が起っております。それは、先ほどお話のございました労務基本契約に基きます条項に基いてなされておるわけでございます。労務基本契約の改訂という問題が全面的に現在発動いたしておらないということで、先ほど外務省側からもそのことについての御答弁がございましたが、その出勤停止の措置に関しましては、新しい基本契約に盛られました条項を部分的に発動をいたしましてやっておる措置でございます。今後の調査に待ちまして、その結果出勤停止が解けるか、あるいは次の措置になるかということに関しましては、日米双方で十分に検討協議を遂げました結果、合理的な線でこの問題の解決をいたしたい、こういうふうに考えております。
  60. 三浦一雄

    三浦委員長 山花君に申しますが、簡潔に願います。
  61. 山花秀雄

    ○山花委員 よくわかっております。今までもこの種の問題につきましては、たびたび政府当局の御答弁を聞いておりますと、すみやかに解決する、善処の方針に向うというようなことで、この種の問題は労務者側に、言いかえれば日本人の面目を満足するような解決はいまだないのであります。これは何としても、私は外務当局の、独立国家の日本を代表して外交するという毅然たる態度がない結果と思惟せざるを得ぬのであります。たとえば日米行政協定第十二条及び第十五条に、駐留軍労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるというふうに規定しているのであります。また当時のリッジウエー大将の声明初め、歴代の米極東軍司令官も、常にこの協定に基く明るい労働政策を支持する旨を声明して参っているのであります。実際にはこの事件のように、正当な組合活動を行なったものに対して、あるいは保安協定に名をかりて基地から排除しようとしている。しかもこれに対する直接責任者である、彼らを代弁してアメリカ軍当局と当り、アメリカ外交当局と当る日本政府は、みずから締結した屈辱的な日米行政協定の陰に隠れて、正当なる労働者の、日本国民の権利を守ろうとしないのが、私は現地の姿であると思う。私はこの問題につきましては、社会党は政府を鞭撻して、政府と協力して、正当なる国交関係調整のために努力する用意を持っていることを申し上げまして、政府の一段の努力を払われんことをお願いいたしまして、時間が参っておりますから、詳細な点は分科会に譲りまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  62. 三浦一雄

    三浦委員長 山本勝市君。
  63. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 まず最初に文部大臣にお伺いいたします。お伺いいたしますことは歴史教育の理念についてであります。御承知の通り占領直後におきまして、占領軍からのディレクティヴによって、日本における歴史教育が道徳教育並びに地理教育とともに禁止せられたのでありますが、その後この禁止が解除せられてから、ただいまにおきましては社会科の一部として歴史教育が行われておるようであります。この歴史教育を今後さらに力こぶを入れてやるというふうに承わっておるのでありますが、果してそうかということがお伺いしたいのであります。もし歴史教育、ことに日本歴史の教育を進めていかれるという場合に、日本の歴史を通じて日本民族の、日本国民の精神生活の歴史を貫いて参りましたところの忠孝という問題があります。「克ク忠ニ克ク孝二億兆心ヲ一二シテ世々厥ノ美ヲ済セルハ」という教育勅語の言葉がありますが、これが勅語に教育の淵源と規定したことは申すまでもありません。この教育の淵源として参りました日本人の歴史が忠孝というものを中心としておる。これをどういうふうに今後の歴史教育において取り扱っていくかということは、歴史教育における重大な問題となると思うのであります。時間の関係で一応私の申し上げたいことを続けて申しますが、私が聞きたいことは、教育勅語でわれわれが教わってきたように、日本の歴史を貫いてぎた「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ」といったところから、(笑声)これは今こういうふうに社会党から笑われるような問題だけに重大なんです。これをどこの国へ行ってもいつの時代でも、つまり古今に通じて間違いがない、あるいは中外に施してもとらないという信念の上に立って歴史教育を進めていくのか。それとも敗戦という事実によって忠とか孝とかいうふうなことはもはや民主主義に反する、あるいは民主主義でないところの本のとして考えていくのか、どちらでいくかということが大きな問題になるのであります。もしも、この敗戦の結果、日本が主権在民ということになった、従ってわれわれの歴史における精神生活を形作っておったところの忠とかないしは孝というふうなものが、今日においてはもはや理念として価値がないというふうに考えていくといたしましたら、これは歴史教育をすればするほど非常な混迷を来たすおそれがあると私は思うのであります。ポツダム宣言は御承知の通り日本におけるかつての民主主義々復活する、こういうことも述べております。このポツダム宣言で言う民主主義を復活するという民主主義は、日本においてかつて民主主義が行われておったという前提であることは明らかであります。また私は今日社会党の諸君といえども、あるいはまた自民党の鳩山さん初め、みずから、戦前から自分は民主主義者であったんだというような確信を持って今日立っておられる方々といえども、戦前において、主権在民でなければ民主主義でないとは、おそらく考えておられなかったのではなかろうか。主権の所在いかんにかかわらず、憲法の条章によって、この憲法が国民の自由、権利というものを尊重し、そうして国民の民意に従って政治が行われるということであれば、主権の所在がどこにあろうとも、それは民主主義と考え、またそういうふうな意味で自分は民主主義者であったと考えてきたのではなかろうか。そうしてみますと、今日教育思想界を見て非常に紛淆を来たしておるもとが、憲法の条文に主権在民という言葉が現われて参りまして、これが民主主義であるというふうに解釈する方があって、憲法の改正に当りましても、この主権在民ということがすなわち民主主義だ、こう理解してこの点は変えないというふうに考えておられる方がたくさんあるのであります。しかし私は、かつての社会党の諸君もあるいはわれわれの党の中で、みずから、もとから自分は民主主義者であったのだと考えておられる人たちも、主権は国民にあるということでなくても、民主主義はあり得るという考えの上に自分は民主主義者と考えてきておったということを考えますと、私はこの敗戦という事実によって日本の国体が本質的に変ったと考える必要はないのではないか、中世以降の失態という言葉がありますが、なるほど日本歴史の中に平和主義でないような時代もあり、また人権を尊重しないような時代もありましたけれども、しかし日本の歴史の根本にさかのぼって、われわれの国の本来の姿というものはやはり平和主義であった、また国民の人権尊重主義であったんだ、また国民の民意に従って実際の政治が行われるというような意味における民主主義であったというふうに私は考え得る。もしそういうふうに考えれば、この歴史教育をする場合に、教育勅語において示されておるような、われわれの日本歴史の精神生活の歴史というものが、今後においても一つの理念として立っていくことができますけれども、もしかりに、敗戦前は反民主主義であった、あるいは敗戦前は反平和主義ないしは非平和主義であった、あるいはまた人権無視の歴史であったといったように考えたとしたら、私はここに非常な歴史の断絶を来たし、そこに価値判断の転換を来たすために、歴史教育というものが教えれば教えるほど、国民に一つの民族としての自信を与えるよりも、先祖をばかにするか、あるいはきわめて幼稚なる国民と考えるかというふうな、むしろそういう影響を及ぼすのではなかろうか、こういうふうに考えますので、この際一つ清瀬文部大臣の新しい歴史教育に対する理念を伺いたいと思うのであります。
  64. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 山本君より大へん重大な御質問を受けたのであります。(笑声)歴史教育には力を入れようと思っております。しこうして戦後歴史の教育について多少論争があったのであります。独立後歴史教育ができるようになりましてから、ある人々は歴史を一種の主観に当てはめて、実際の事実を自分の考えておる理想に当てはめて歴史を教えようとした時代があるのであります。また戦前においては歴史をむしろ教訓のために、曲げたとは申しませんけれども、都合のよい歴史の書き方をした時代があるのであります。ただいま私どもの考えておりますることは、どちらもそれは歴史としては誤まっておる。一方の理念に偏せず、またみだりに教育的目的に利用することをせずして、公平な具体的史実の系統的理解を学生生徒に与えたい、こういう理念で歴史を持っていきたいと思います。  今御質問の後段の、民主主義のお話でございますが、民主主義は一つの政治上の主義であります。主権がいずこにありやは、各国の憲法または憲法の明文になくても法理学の問題であります。あるいは主権は国家に属するのたといい、あるいは人民に属するのだといい、君主国では君主に属するというが、これはむしろ法律的の問題でありまして、政治的にいえば君主国でも民主主義は行えます。共和国でも民主主義は行えるのでございます。ポツダム宣言に民主主義の復活といったのは、おそらくは――明治末期から大正時代に、政党政治が行われておったのです。原さんが内閣を組織され、加藤さんが内閣を組織された。しかるに大正末期から軍部の台頭があって、とうとうこの民主主義が圧迫されてしまった。それゆえにポツダム宣言を書いた人は、やはり民主主義は復活すべし、こういう心持で書いたのであろうと思います。それゆえに憲法の文字または法理学の解釈がどうでありましても、それとは大した影響を受けずに、民主主義は実行し得られることと思います。戦後は明らかに日本憲法に、主権は国民にあると書いてあります。人民にあると書いてあります。このもとにおいて、やはり民主主義は完全に行い得ることでありまして、われわれは次の時代の日本国民が、わが日本民族の過去において踏みきたった歴史の成績を尊重すると同時に、やはり民主主義精神でこの国家を持っていくこと々希望いたしております。  御説のことについて、おおむねお答えしたつもりであります。
  65. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 具体的に申しまして、歴史を教えていきますと、その中に日本人の皇室に対し、天皇に対する忠誠というような事実が至るところに出て参ります。それからもちろんその他のことも出て参りますけれども、こういつた事実に対して、学校の先生が、これは昔だからこうだったのだ、今から見ればおかしな話だというふうに教えるかもわからない。これは非常に迷うところだろうと思うのであります。しかし私はこういうふうに思う。日本人は今日においても宮城の前でけが人ができるほどたくさんの人が宮城へ押しかけて参る。地方へ参りましても、遠方からおじいさん、おばあさんまで子供を連れてお迎えに上るという、そういういわゆる学問などしない一般の大衆と申しますか、そういう肩書きも何にもないような善良な人々の天皇に対する気持、これは昔においても決して天皇個人に対しての崇敬というものでは私はなかったろうと思う。これはあらひと神の天皇なんということをいう人も一部にはありますけれども、一般の大衆には、陛下が神さんであるから、それでそういうふうな気持を持ったというのではなくて、やはり今日いう――今日は憲法で御承知の通り、日本の国家の象徴であり、民族統合の象徴であるということになっておりますが、象徴という言葉は、今日新しく使われましたけれども、やはりかつての武家時代においてすらも、天皇の位というものが、日本民族の表現であった、全体の表現であったという一つの事実とその地位につく方は、皇統連綿と申しますか、万世一系と申しますか、これはおそらくこういう言葉を聞きますと、今日の人はぴんとこないでしょう。しかしこれは占領ぼけしておるからぴんとこないのであって、そのうちだんだんぴんとくるようになるに違いない。現に今日の憲法においても、言葉はそう使っておりませんけれども、万世一系であり、皇統連綿である。この皇統連綿、万世一系の天皇が、民族の表現者の地位につかれたということ、言いかえてみると、人間の作ったものは人間によってまたこわれますけれども、人間が相談してきめたものでなしに、それ以前から、神話の時代から、人皇の時代から、ずっと断絶なしにつながってきておる。そういう連綿とした皇室がその全体表現の地位についておられるということが、全国民の皇室に対するああいう歴史的なわれわれの祖先に見られたような態度、また今日においても、いわゆる名もなき人々の態度に現われておるのではないか。そうすると平和を望むわれわれの祖先、あるいは国民の幸福を願うわれわれの祖先以来の――これはこういう言葉を使うとみな笑うのですが、皇祖皇宗の遺訓であるとか、(笑声)あるいは祖先の遺風であるとかいうものがそこにあったという事実のほかに、主権在民ということについてすらも、決してそんなに変っていない。つまり皇統連綿ということも変ってないし、全体の象徴という言葉に変っているだけで、表現者たる地位であることにも変りはない。そうすれば日本歴史というものが一貫し、われわれの祖先の正しいとしたこと、たっといとしたことが、やはりわれわれ子孫のたっといとすること、正しいとすることということが大本において貫かれるから、歴史教育というものは、われわれの一つの力となり信念となり得る、こういうように私は考えております。ここで文部大臣大臣としての責任ある答弁を求めることはむずかしいでしょうけれども、これは歴史教育あるいは道徳教育における根本問題であって、この根本問題に必ずぶつかってくる。これは憲法においても、天皇と国民の関係を、学問などしない人が説明を聞かなくても納得するような形で表現することが大切だと思うのでありますが、もう一度文部大臣としてできる限りの範囲でこういうふうにやっていきたいというお考えを承わりたいと思います。
  66. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 皇室がわが民族の大本、宋家であるということは、国民の伝統的信念でございます。理屈ではございません。日本民族の信念でございます。一方また憲法は改正されたりといえども、天皇の地位は国民の象徴であり、国民結合の象徴でございます。それゆえに今日の日本人が皇室に対して崇敬の念を持つことは当然でございます。私はいかなる歴史の先生といえどもそれを誹謗する者はないと存じます。
  67. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 教育審議会を設けられるというお話でありますから、歴史が外国におけるごとくに義務教育においても、社会科の一部でなしに、単独の科目として教えるようにされるのかされないのかというふうな問題から、あるいは教育の理念や歴史の教育の理念についてもいろいろ審議にかけられることと考えるのでありますが、この問題はきわめて重大でありますから、一つ慎重に、しかしはっきりと考えを定めて、教育の指導要綱を作成されるようにお願い申し上げておきます。  次に大蔵大臣にお伺いいたしますが、第一点は、予算の査定のやり方について考え直さねばならぬ点があるのじゃないかという点であります。それは、とかく財政が膨張をして参ります。財政膨張の原則などといわれるくらいにだんだん膨張して参りますが、また予算の金の使い方が総花的であって、どうも非能率的であるという非難もしばしば聞かれるのであります。そういうふうに総花的になり、またいたずらに膨張するという一つの原因は、私は予算のこれまでの否定方法に欠陥があるからではないかと思う。と申しますのは、新規の要求に対する査定と既定経費に対する否定との間でつらさが違うということであります。そういうことはないと当事者は言われるかもしれませんけれども、実際上既定経費でありますと楽に通る。新規の経費は、いかにその当局者が必要だと考えても、なかなか通りにくい。そこでその必要と思う新規のものだけを要求して、あまり必要がないと思う既定経費の分は減らしていくと、新規のものも削られ、既定経費も初めから減らしておるから元も子もなくなるということが、各省の会計責任者が予算を要求するときにぶつかる問題であります。そういうわけでありますから、私は既定経費もそれから新規の要求も、事実上多少困難な点はありましょうけれども、対等の立場で、全体を総合的に、必要か不必要かを検討するように変えていく必要があるのじゃないかと思う。これが第一点であります。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。新規の経費と既定経費とは、別にどちらが重いというようなことの区分をして査定はいたしておりません。どちらにしても、ほんとうにこれがいかに国家目的に緊要であるかどうかということでやっておるわけであります。ただ実際問題として既定経費は、最近の状況によりますと、過去数年非常に圧縮をしておる。できるだけ経費の節減を願っております。そういうふうな関係から、既定経費のうちでは削減が容易でないというふうな実際上のことはあろうと思いますが、考え方としては全くお考え通り考えております。
  69. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 倉石さんがほかに御用があるそうですから、簡単ですから倉石さんにちょっとお伺いしますが、これは労働大臣としてでなしに給与大臣としてお伺いするのです。それは御承知の地域給というもの、これはもう研究に研究を尽されて、研究の時代は過ぎてしまっておるわけでありますが、しかし上げも下げもならぬ問題となっておることも御承知の通りであります。ことに町村合併が行われまして、同じ町村の中に地域給のついておるところとつかぬところとができてきて、いよいよもってこれはむずかしい問題になってきておるのでありますが、これは今後どういうふうにされるつもりかということを、大体の方針でけっこうであります、伺っておきたいと思います。
  70. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 勤務地手当につきましては、昭和二十九年五月に人事院から地域区分の不均衡を是正する趣旨の勧告がございましたが、これを実施するにつきましては相当な予算を要することでございますし、またそういうことをかりに実施いたしましても、御承知のように各地から今度は引き続いての地域給引ぎ上げの陳情が参りまして、なかなか混雑いたすことでございまして、こういうような問題、公務員の給与制度をやはり根本的に考え直すべき段階にきておると存じまして、公務員制度調査会にそういうようなこともあわせて調査検討を願っておりました。その答申が出て参りましたからして、政府はそういうものもあわせてただいま公務員制度の改正について検討をいたしておるわけでございますが、それを実施に移すときに根本的に給与体系も整えたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  71. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 倉石さんに私の希望だけをちょっと申し上げておきますが、実は御承知の通り研究はもう何代も前の大臣からやって参りまして、結局問題は、人事院の勧告のように、だんだん新しいところへこの地域給をつけていくことは、財政上実行不可能だ、そうかといってこのまま置いてはアンバランスでどうにもならない、こういうことであります。ですから私は一つの案として、これは非常な勇気は要しますけれども、全体の地域給の総額はふやさない、これは財政上ふやさたいという決心をして、そのかわりそのふやさない範囲内において、現実に即してアンバランスを直してしまって、それを本俸に繰り込んでしまう。そうすると、上るところができ、下るところができます。下るところができるということが、既得権だ何だというので、むずかしいというので、結局ベース・アップの機会に下のものを上に上げて頭をそろえようという考えでこれまで来ておったけれども、それが幾ら人事院が勧告しても実際上不可能だ、不可能である以上、思い切って――昔官吏の減俸すらやったことがあるのですから、総額はふやさない、その中で、バランスをとる、こういうことの時期に来ておるのではないか、これを一つ頭に置いて御検討願いたいと思います。研究とか調査とか答申とかいうようなことは、、実はもう何べんも答申が出ておりまして、行き詰まっておることも一つ御了承願いたいと思います。  大蔵大臣に第二の問題として伺いたいことは、不動産を担保としての金融機関を作れということが、与党の政調の決定となって、政府の方へも注文が出ておると思います。   〔委員長退席、稻葉委員長代理着席〕 またこれは長年中小企業者の対策の一つとして、不動産を担保として金が借りられるようにしてもらいたいという痛切な要望があってきたのでありますが、これに対して大蔵当局の方でいろいろ研究されてみると、不動産金融機関を作ってみたところで、なかなかそれだけでは解決できないような困難があるという結論になっておるように聞いておるのであります。私はこの際大蔵省の方で調査の結果、今日到達しておる不動産担保金融機関の設置に対する考え方を伺っておきたいと思うのであります。
  72. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。率直に申しまして、まだ結論が出ておりません。おりませんが、お話のように今日の社会経済の情勢が非常に変化しております。昔のように農工銀行というようなわけにもいきませんので、不動産担保の金融が発足した場合には、その対象あるいは運営等について非常にむずかしい問題がいろいろあるようであります。なお検討を続けさせております。私の考えでは、不動産担保の金融機関というものも、今日ではやはり中小企業金融と非常に関連を持っているのではなかろうかというふうに考えております。中小企業等において持っておる工場とかあるいは家屋、こういうものを担保に入れて営業資金を作る、こういうような道を開く必要がある。これは今日中小企業金融公庫等でもやっており、かつその資金もふやしておるのですが、こういうふうな関連もあわせてなお十分検討いたしまして結論を出したい、かように考えております。
  73. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 大蔵大臣はあまりその問題を御検討になっていないかもしれませんが、あなたの部局ではもっと徹底的に調べておられるようであります。私もその結論と同じようなことを考えるのでありますが、今日の金融機関でもみな不動産を担保にして金は貸しておるのです。貸しておるのですけれども、それが事実上実際の価値の一割とか二割とか、あるいは場合によっては全くそれでは貸さないというのは、金融機関のせいではなくて、担保としての不動産が担保力を持たない。担保力を持たない理由は、地代家賃統制令というもので二十五年以前の建物については家賃が押えられておるということ、そういうふうなことから借地借家法の第一条の第二項でありましたかの規定によって、たとえば借家を持っておる人がそれを担保として借りようとしても、貸したが最後それを処分することができない、金にかえることができないといったような、そういう意味の社会的あるいは法律的な障害があって、この問題は解決するには非常にむずかしい。これは社会的影響が大きいからむずかしい。むずかしいが、しかし実際は障害がそこにあって、不動産そのものが担保力を持たないところにその原因がある。だから、それをどうして解決していくか、社会不安を起さぬように、しかも担保力を持つようにやっていくかというところに解決点を求めるほかはないと思っておるのであります。しかしこれはそれ以上お伺いいたしません。  その次に私が伺いたいのは、今度の予算を見ますと、千三百九十七億という民間資金を活用して、政府の財政計画を遂行していく、こういうことになっております。しかし私は民間資金を使っていくというものを財政の中に入れるということは、よほど考えなければならぬのじゃないかと思う。政府が税金でとった自分の金とか、あるいはぜめて自分の支配しておる郵便貯金とかあるいは簡易保険の金をどういうふうに使うということは、これは財政として当然だと思いますけれども、しかし、民間の銀行の金を使うものを財政の中に入れて、あるいは財政規模の中に勘定してやっていきますと、財政というものは非常に紛淆を来たしはせぬか。従来は、民間ではやれない、どうしても政府の資金でなければやれないというものを財政投融資としてまかなってきておったのでありますが、最近は民間に非常な資本の蓄積がふえてきてその必要はないというから結局財政からはずすというのならわかります。千三百億は、これはどうも民間ではまかなえぬと思う、しかし、必要だから財政に入れておったけれども、これは今度は必要がないからはずしてしまうというのならよいけれども、それをはずしたのではなしに、計画そのものの遂行を自分の金ではない民間の資金をもってやるということは、これは一体どういうことになりますか。もし政府でやる必要がない、民間ならばやれるのだというなら、むしろ財政の中からはずしてしまった方がよいのじゃないか。そうではなくて、やはり民間の金ではあるけれども、話し合いで片づかなければ、何かの方法で、言葉は悪いかもしれませんが、あくまでもこれを徴用するのだ、聞かなければ何らかの方法で、法律でやるか行政でやるか、とにかく無理にとるのだ、無理に社債なら社債を持たしたということになりますと、無理に持たしたのだから、それを場合によっては担保として日本銀行からやはり金を貸さなければならぬ。それを無理に持たしておいて、そうして日本銀行がそれを担保として貸すというようなことがもし起ってきたら、これは一種の赤字公債になる。政府に金がないものですからそれで民間に持たす、しかもそれが自由に公募したのではなくて無理に持たして、そのかわり日本銀行からそれだけの金が出たということになって、赤字公債は出さぬ出さぬと言っておりましたけれども、うっかりするとそこが大きな穴になってきはせぬか。ですから民間でまかなえるから政府でまかなう必要なし、こういう意味ではずされたというならば、財政からはずしてしまうべきだ。あくまで財政計画の中に入れておいて、これはいかなる方法をもってでも必ず実行するのだということになると、ただいま申しましたような赤字公債を出すのと同じ結果を生じはしないか、この点いかがでありましょうか。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 財政資金と民間資金の活用に関しまする基本的な考えは、私も同じように考えております。むしろこれは御承知のように戦争後におきまして資金の蓄積が非常に乏しくて、結局これは税金によって資金を集める、言いかえれば一種の強制貯蓄であります。従いまして財政で産業資金を出していく。これは戦後の復興の上にやむを得ない過程で、これがその後におきまして民間資金の蓄積状況が特に最近非常によくなってきた。そういうことで、先ほどお話のようにむしろ財政でやっておった仕事あるいはそれに所要する資金を民間に返すというふうに考えるのが正しいと私は思っております。従いまして本来あるいは今後におきまして、民間資金の活用の分は、別に財政資金といってワクに入れなくていいと思っております。むしろはずすべきものかもしれません。ただなぜああいうふうになっているかと申せば、経済に計画性を与えております。五カ年計画の初年度でもあるし、大体政府が重要施策をやる場合にこれくらいの資金が要る、そこで財政資金がそれに足らぬところは民間資金でこれだけまかなっていく、こういうふうに一応の姿を示しておる、こういうふうにお考え下さるのがいいと思います。従いまして私の考えでは、問題はそういうふうにした場合に、たとえば三十一年度では千三百億のこの金がきわめて順調に調達し得るやいなや、そこに非常に重点がある。これをお話のように何らか命令融資的に、これは財政投融資の中にいやでもおうでもこうしろ、ああしろというようなことになると、不適当であるだけでなく大へんな弊害がある。そういうことはやるべきでない。ただ来年度においては産業資金として供給し得るのが一兆数千億になると思っております。そのうちで一割くらいに当るもの、こういう点は今お話のように無理をして、その結果また産業資金を圧迫して、さらにそれを日本銀行から資金を借り入れる、赤字になる、なるということでなくて十分やっていける、こういうふうに考えております。
  75. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 私は民間資金を動員する分も、これは企画庁の五カ年計画なんかに入れるのはけっこうだと思います。これは全体としての国民経済の目安というか見通しでありますから、けっこうですけれども、財政の中に民間資金を運用するものを入れる。しかもたとえば電力問題なら電力問題で、電源会社にしましても民間資金はうんと使っておる。政府から行ったのは、今度ここに載っておるのはそのほんの一部分にすぎない。これを財政の中に入れるなら、電力には民間も含めて金をこれくらい使う、あるいは鉄道にはこれくらい使うというふうに全貌がわかるならけっこうですけれども、ほかのところは全部抜いてしまって、政府がこれまで出しておったのを今度は民間で出すという分だけを財政計画の中に入れるということは、これはどうも計画そのものとしても結局はっきりしないことになると思うのです。これは御考慮願いたいのです。  次に物品税についてどういうふうに今後持っていかれるつもりかということを伺っておきたいのであります。従来は自由党内閣の時代から奢侈的な物品についての物品税は残していくが、しかし必要品というか実用品についてははずしていくという方針でだんだんきておったようであります。私は奢侈と実用という分類は反対なのですけれども、一応そういう標準できておりましたが、しかしいわゆる奢侈的なものと思われるものほど、零細な業者がこれを製造して、そうして納税義務者となっておるのは事実であります。たとえば人形なら人形というものは実用品ではないでありましょうけれども、ああいうものは熟練を要するものでありますから、ほんとうに職工から腕でたたき上げた者が作っている小さな業者であって、鉛筆もあまり持ったことのないような連中が納めておるのであります。奢侈品かどうかということの標準よりも、むしろそのものを作っている、納税義務者になっている者が下部の零細業者であるというようなものはだんだんはずしていくという方針一つここに加える必要がないか。これは主税局長の渡辺君にはたびたび話すと、その通りだというので、大賛成をしておられるのですから、おそらく大臣も賛成してもらえるものと思いますが、どうしてもそうしないと物品税というものが非常に国民に苦痛な税となっているのです。いかがでしょう。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結論から申し上げますと私もお説の通り考えております。物品税は御承知のように徐々に少くしております。今日はやはり今お話のように奢侈品について物品税がついている。ところが奢侈品は今お話のようなごく小さい仕事をする方がやっておる、こういう点もありますので、今後の税制改革等につきましては、そういう点を十分考慮いたしまして考えていくつもりにいたしております。
  77. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 通産大臣にお伺いいたします。これは石橋通産大臣にお伺いするのは、私は通産大臣の子分だなんて言われているのですから……。(笑声)自分もそう自認しているのであって、大臣をいじめるつもりでお伺いするのではない。  それは百貨店法の問題でありますが、石橋通産大臣がこういう悪法を作って、そうして大臣の時代にこういう悪法ができたなんていうことにしてもらいたくないという気持から実は切実に申し上げるのであります。時間がありませんから、くどくどと申し上げません。しかしこの立法が御承知の通り国民の基本的人権の制限に関するものであることは申し上げるまでもありません。しかもこの基本的人権に関するものが総括的に通産省に授権され、総動員法に似たような一つの授権立法であることを御考慮願いたいのであります。もちろん公共の福祉のために必要である場合は、基本的人権は必ずしも絶対に侵害してはならないという考えを持つものではありません。公共の福祉に必要な場合には制限しなければならぬと思いますけれども、どうしてもそういう必要がある場合には、やはり法律でこのことはいけないとはっきり書いて国会の承認を得べきものである。   〔稻葉委員長代理退席、委員長着席〕 それをこれこれのおそれあるときにはというふうなことで、総括的に権限を通産省に授権するということは、これは非常に間違った法律である。具体的に申しますと、床の面積をふやすかふやさぬかという裁定をする場合に審議会にかける、審議会は商工会議所に相談をしなければならぬということになっておりますが、一つの町で二つの百貨店があって、床の面積をふやしたいという陳情を同時にされたような場合を考えてみますと、これは石橋通産大臣が裁決できるわけではないのですから、結局審議会とか、あるいは商工会議所へ両方から猛烈な陳情が起ってくる。そうすると、一方中小企業者の方からは絶対やめてもらいたいという陳情が起ってきて、収拾がつかぬことになると思うのです。この間の小川半次君の質問のときに、多分この国会に法案は出ることになりましょうというような御答弁があったのであります。しかしこれは多分というのであって、必ず出すとは言っておりません。党の政調会の方をのぞいてみますと、ぜひとも作らなければいかぬという意見も非常に強い。しかし私は忌憚なく申しますと、ほんとうに深く考えておられる方は強烈に反対しておられる。ですから、もしどうしてもこれが出て参りますと、おそらく党の代議士会において大紛糾を免れぬことになるだろうと思いますが、そういうことになるまでに大臣がこれを一つ御自身で十分御検討され、こういう基本的人権を制限する権限を行政官庁ないしは民間の団体へ授権するような法律は、作らないようにしてもらいたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  78. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お答えいたしますが、少し山本君の誤解もあるように思うのであります。御承知のように百貨店法というものは前からずいぶん長い話であります。小売業者とそれから百貨店との間の常業をどう調節するかということも、これはやはり公共の福祉の上から見て全然これを放任していいかというと、現状においては全然放任することも許されないと思います。そこで最小限に弊害のないように、売場面積等について審議会及び今お話のようにその場合に各地方の事情がありますから、地方の事情に通じているところの商工会議所等に十分意見を徴して、そして必要な範囲においてこれを規制することができる、かようにいたしたいというのが今の法案の考え方であります。しかしこれはまだ最後の仕上げができておりませんから、仕上げができますまでには御意見等も十分伺いまして、しかるべき弊害のないように、また実際公共の福祉に沿うようなものにしていきたいと考えております。
  79. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 公共の福祉の面から今理由が立つという点は、ただ一つある。それは、東京において百貨店の新設、増築計画が非常に多い。これが確かに小売業者に大きな影響が予想されるという点であります。しかし地方においては、仙台におきましても、東北方面においても、あるいは中国地方においても、百貨店と小売商との間はきわめてなめらかにいっておる。しかし東京におけるこういう計画につきまして、なぜこういうことになったかということを考えてみますと、大きな理由は、二、三年来国会において、議員立法で社会党の方から案が出てきた。また民主党から出てきた。そのほかいろいろな、これを立法するという計画が進んで参るものですから、今のうちにやっておかねばいかぬということで、実は不要不急であっても、この際やろうということになってきておる。これは当然であって、一部の人は百貨店の連中がけしからぬと言いますけれども、百貨店でなくとも、統制で品物がなくなるとなれば、買いだめをするということは人情であるし、あるいは原料を設備の規模で配給するということになれば、必要がなくても設備をするということは当然であります。ですから言葉をかえていうと、国会や政府がそういうものを無理に作ろうという空気を作ったことが、そういう現象を引き起してきております。ですからたとえていうと、火をつけておいて燃え上ってきた、このままおいたら類焼するから、そこで近所の家をふちこわしてもいい、一つ法律を作って権限を与えよう、ちょうどこういうふうなことに当るようなことになってきている。しかしいかに自分がつけた火でありましても、国会がつけた火であっても、もしそれが非常な影響を与えるということであれば、これはやむを得ぬと思いますが、しかしそれは非常の措置であって、そのためにこういう全国に対して、一般的な、恒久的な授権立法を行うということは考えてもらいたい。  時間が参りましたから、これをお願い申し上げて私は終りますが、これはぜひとも御考慮願いたいのであります。
  80. 三浦一雄

    三浦委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十三分散会