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1956-05-23 第24回国会 衆議院 建設委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十三日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 大島 秀一君 理事 荻野 豊平君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    大高  康君       大橋 武夫君    久野 忠治君       高木 松吉君    仲川房次郎君       中村 寅太君    二階堂 進君       廣瀬 正雄君    松澤 雄藏君       山口 好一君    今村  等君       小松  幹君    竹谷源太郎君       楯 兼次郎君    中島  巖君       前田榮之助君    山田 長司君       渡辺 惣蔵君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  龜岡 康夫君         総理府事務官         (経済企画庁         開発部長)   植田 俊雄君         運輸事務官         (自動車局長) 山内 公猷君         建設政務次官  堀川 恭平君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         参議院議員   小沢久太郎君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      仰木 重蔵君         農 林 技 官         (林野庁指導部         計画課長)   山崎  斉君         専  門  員 西畑 正倫君     ――――――――――――― 五月十一日  委員前田榮之助君辞任につき、その補欠として  堂森芳夫君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員岡本隆一辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員荒舩清十郎君、南條徳男君、堂森芳夫君、  山下榮二君及び島上善五郎辞任につき、その  補欠として久野忠治君、大橋武夫君、前田榮之  助君、竹谷源太郎君及び小松幹君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十二日  県道坂元都城線改修工事促進に関する請願(  伊東岩男紹介)(第二一七〇号)  汐入豊岡線街路計画促進に関する請願外二件(  米田吉盛紹介)(第二一九二号)  一級国道八号線の改修工事促進に関する請願(  田中彰治君外二名紹介)(第二二〇〇号)  府県道宮津八鹿線改修工事促進に関する請願  (有田喜一紹介)(第二二二六号) 同月十五日  須玉川及び塩川の改修工事促進に関する請願(  荻野豊平紹介)(第二二六〇号)  浅川の改修工事促進に関する請願荻野豊平君  紹介)(第二二六一号)  国土開発縦貫自動車道建設法案に基く審議会委  員選任に関する請願原茂紹介)(第二二六  二号)  同(井出一太郎紹介)(第二三一八号)  一級国道二十号線の改修工事施行に関する請願  (西村彰一紹介)(第二二七三号)  積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関  する特別措置法制定促進に関する請願西村彰  一君紹介)(第二二七四号)  一級国道三号線中久留米、八女間の舗装工事施  行に関する請願楢橋渡紹介)(第二三一七  号)  安曇川を中小河川に指定の請願草野一郎平君  外二名紹介)(第二三一九号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関  する特別措置法制定促進に関する陳情書外一件  (第六八六  号)  戦災復興土地区画整理事業費補助に関する陳情  書(第六八九  号) 同月十五日  防災対策工事促進に関する陳情書  (第七四五号)  芦原町の災害復旧対策確立に関する陳情書  (第七八三号)  国道十一号線の改修促進に関する陳情書  (第八〇七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国土開発縦貫自動車道建設法案(第二十二回国  会衆法第二六号、参議院継続審査)  河川に関する件     ―――――――――――――
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  国土開発縦貫自動車道建設法案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がございますから、順次これをお許しいたします。中島巖君。
  3. 中島巖

    中島委員 本法案修正理由説明内容について小澤先生にお伺いいたすのでありますが、その前に、当委員会運営の件について委員長に一言お伺いをいたしたいと思います。  本法案は、先月の十九日に参議院建設委員会修正で通過して、二十日に参議院の本会議を通過いたしまして、即日衆議院回付されておるわけであります。本日まですでに三十数日を経過いたしておる、かような状況であります。そして先月二十七日に小澤さんの説明を聞いただけで審議しておらぬ。しかも会期はあと余すところわずかしかない、かような重大な関頭に立っておる。そうして先週は一回も委員会が開催されなかったというような実情でおるのでございますけれども、これは何か委員長においてお考えがあってのことなのかどうか。ことに当委員会は一ヵ月ほど前にすべての法案が上って、他に審議するところの案件法律案としてはないという状態におるのであります。にもかかわらず一カ月以上の建白をここに置いておる、かような状態でありますので、委員長はどういうお考えでこの審議を渋滞させておるのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  4. 徳安實藏

    徳安委員長 中島君にお答えいたします。御承知のように、本委員会では本件一つになっておりまするし、大体本件につきましては従来からしばしぱ質疑されておる問題でありまして、各党の態度その他がきまりますれば、そうめんどうなしに最後結論が出る問題であります。ただその間に修正された部分に対しまして多少疑義の点もございますので、これは正式の理事会あるいは非公式の理事諸君との御相談も得まして審議が多少延びておるわけでありますが、決して引き延ばしというような意味でやっておるのではありませんから御了承願いたいと思います。
  5. 中島巖

    中島委員 私の心配することは、またこの法案に対して衆議院側において修正案でも出ますと、参議院に回るようなことになって、本国会中に成立せずに、継続審議とか、審議未了になるおそれがあるということです。委員長はただいま確信あるように、心配するなというようなお言葉でありましたけれども、この点を非常に心配いたしておるわけであります。従いまして現在におきましては他に審議すべき法律案もなし、特別の案件もありませんので、続いて隔日くらいに委員会を開いてこの審議を進めて、当通常国会にその結末を見られるように一つ御配慮をお願いいたしたい、かようにお願いするわけであります。それで、委員長は前の二十二特別国会にこの法案が当委員会審議された状況を、当時委員会においでにならなかったので御存じないと思いますけれども、これはたしか六月二十日に国会に提出されまして、そうしてその後におきましてこの建設委員会へ付託すべきか、運輸委員会へ付託すべきかということで非常にもめまして、もめ抜いたあげくに昨年七月七日に、国会に提出されてから約二十日近くもみ抜いて建設委員会へ付託されたわけであります。その後建設委員会といたしましては慎重な審議をいたしまして、ことに公聴会ともいうべきところの参考人を招致いたしまして、参考人意見を聞くだけで三日を費しておるのであります。これらの参考人はいずれもこの高速度自動車道路について造詣の深い、日本縦貫高速自動車道協会会長八田嘉明さん、あるいは国土開発中央道調査審議会委員金子源一郎さんであるとか、平山復二郎さんであるとか、それから国土総合開発審議会会長の飯沼一省さんであるとか、全国道路利用者会議会長本多市郎さんであるとか、道路調査会会長鮎川義介さんであるとか、あるいは大和運輸の社長である小倉さんであるとか、あるいは財政方面においては、日本財政経済研究所会長青木一男さんであるとか、これらの諸君参考人に招致をいたして、三日間参考人意見を聞くだけにかけておるのであります。その他運輸委員会との連合審査もいたしまして、そうして附帯決議もつけまして参議院へ送り込んだのでありまして、十分審議は尽されておるわけなのであります。こういうような事情でありますので、よく一つこれらの状況もお聞き取り願いまして、すみやかにこの法案審議をお進めあらんことを私お願いしておくわけであります。先ほど運輸委員会の關谷さんが、運輸委員会といたしましても、参議院修正案通り通すように一つお願いしたいというようなごあいさつがあったようでありますが、われわれとしますれば、会期が非常に迫って参りましたので、あるいはこの法案審議未了になりはしないかというような非常な危惧の念を抱いておるのでありますので、どうか委員長におかれましては審議促進をお願いいたしたい、かように考えるわけであります。  そこで修正案提出者であるところの小澤先生にお伺いいたすのでありますけれども、この修正案の第二条の道路運送法によるということを削除された点、それから第三条の、衆議院を通過した法律におきましては、別表予定路線を決定いたしておりましたけれども別表を基準といたして新しく予定路線審議会において決定して国会へかける。この二点がこの修正のおもなる点と考えるのでありますけれども修正案説明によって大体はわかりますけれども、いま少し詳しく、その裏に、長年官僚生活をされていろいろなことに御苦心なさいまして、この修正案もそういうような点から出たのではないかと臆測するものでありますので、御忌憚のないところのお話を承わりたい、かように考えるわけであります。
  6. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 この二条の問題でございますけれども、今度の縦貫自動車道は国の幹線をなす一番大事な道路でございまして、この三条にもうたってありますように、国で建設するというふうな建前になっております。私はその国で建設するということは、非常に重要な路線であるから国で建設するというふうになっておるわけだと了承しておるわけでございますが、自動車運送法自動車道路といいますのは、これはこれまでそういうような大スケールなことは考えておりませんし、それから自動車道路事業の対象としてそういう道路を作るということになっておりますので、性質が全面的に違いますので、そういうような定義を引用しませんで、この自動車のみの通る道路というふうに規定したわけであります。  それから第三条でございますが、これは経過地点がずっと羅列してございまして、私も参議院におきまして審議いたしましたときに、経過地点いろいろ意味を伺ったのでございますが、相当大幅に考えてよろしいというようなお考えがあったのでございますが、いろいろ審議いたしますと、まだまだはっきりと調査できていない点もございます。いろいろな問題の点がございますので、これを予定路線としてきめてしまいますと、あとからまた変更するとか、あるいは適当でないというような点ができるのじゃないかということを考えまして、十分に調査いたしまして、それから法律によってきめるというふうにした方が一番適当じゃないか、そういうふうに思って修正したわけでございます。
  7. 中島巖

    中島委員 実は先ほど委員長に対する要請にも申し上げたのですが、この法案特別国会にかかった際も、運輸委員会へ付託すべきか建設委員会へ付託すべきかという問題で相当もめまして、約十八日ほどもみ抜いて委員会の付託がなかなか決定しなかったというような状況であります。いわば官庁のなわ張り争いが原因しておったのじゃないかと思うのであります。従ってこの修正の第二条の道路運送法によるということをお削りになっておることは、そういうようなことを考慮されて削られたのじゃないか、こういうように私憶測するわけであります。これは根本的な問題といたしまして、道路法のできるときには、もしくは道路運送法のできるときには、こういうような大規模自動車専用道路、つまり第三陸上輸送路ともいろべきこういう大規模なものを予想していなかった、従って道路法道路運送法もこれに対して適確ではなかったということが言えるのじゃないかと思うのです。従って附帯決議の中にも——これは小澤さんではなくして村上義一氏が出されたのでありますけれども附帯決議の第二におきましても「政府国土開発縦貫自動車道を含む高速幹線自動車道に関する立法措置を速かに講ずること。」つまり自動車道に関するところの立法措置を講ぜよ、こういうようになっておる。それからまた衆議院においてもこれと同じような附帯決議がつけられて決定いたしておるわけであります。これは当委員会瀬戸山三男君の発議によりまして「政府は、道路行政の一元化をはかるよう速に立法措置を講ずること。」こういうようになっております。結局衆議院附帯決議参議院附帯決議も、この国土開発縦貫自動車道法案の成立については新しい法律をこしらえよ、こういうようになっておりまして、この点は一致しておるところでありますけれども、この点に対する小澤さんの御意見はいかがでありますか、お伺いしたい。
  8. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 先ほども申し上げましたように、国土縦貫自動車道路も、これは高速幹線自動車道の一種でありますが、ただいまの道路運送法にいたしましても、あるいは道路法にいたしましても、これが規定しているところと今度の高速幹線自動車道とは全然性質を異にするものでございます。でありますから、そういうような新しい法律を制定することが必要じゃないかという考えから、私は村上さんの提案賛成したわけでございます。
  9. 中島巖

    中島委員 だいぶ御意思がわかったわけでありますが、そこで先ほど私委員長にも要語したのですが、これは先月二十日に参議院を通って衆議院回付されております。しかも衆議院は四百三十名が提案者になって全会一致で通過しておるわけであります。またこの小澤さんがお出しになった修正案につきましては、青木一男さんなんかから、非公式ではありますけれども、いろいろお話もありまして、われわれも参議院を通過するためにやむを得ないということで同意をいたしておるようなわけであります。しかしこちらへ回付になりましてから一ヵ月以上たつにもかかわらずまだ決定せぬというその裏には、自民党の一部にこれに対して異議のある方があって決定せぬという、こういうような実際の状況なのです。そこで、あなたの提案理由説明では、冒頭こういうことを言われておるのです。「私は国土開発縦貫自動車道建設法案趣旨には全面的に賛成するものであります。ただし、この法案趣旨達成を完璧ならしむるために、私は自由民主党を代表して、次のように修正案を提出するものであります。」こうして修正案を提出されておるのでありますが、自由民主党の方の内部の意見が食い違っておるとすると、「自由民主党を代表して」ということがちょっとおかしくなるのですが、党議で御決定になっておったのかどうか、その点ちょっとお伺いしたいのです。
  10. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 実は「自由民主党を代表して」という私の言葉は、私参議院委員会でそう申し上げたので、参議院自由民主党といたしましては一致しておるということを申し上げたつもりでございます。
  11. 中島巖

    中島委員 小澤先生のあれを追及するわけではないのですが、あなたは自民党建設部長だということも聞いておりますし、そうしてあなたが修正案をお出しになるについては、青木一男氏からわれわれの方にものめという話があって、それをのんだような形に裏面はなっておるわけです。従いまして、会期が非常に切迫してわれわれも心配しておるわけでございまして、けさもあなたの方の党から宮澤胤勇氏とかその他三、四人こちらへ見えまして、早くこの修正案で通してくれといって委員長などにも要請をしていったわけであります。従って一段と党内調整をはかられて、一日もすみやかに通るように御努力願いたいと思うわけであります。  以上私の質問を終ります。
  12. 徳安實藏

  13. 二階堂進

    二階堂委員 私はただいま問題になっております国土開発縦貫自動車道建設法案につきまして、簡単に若干の質問をいたしてみたいと考えております。申し上げるまでもなくこの法案は、二十二国会の末期におきまして衆議院を通過して参議院に送付されたものでございますが、当時衆議院を通過いたします際におきまして、私どももこの法案内容につきましていろんな疑義を持っておったわけでございますが、ちょうど会期も切迫しておりまするし、また当時のいろんな国会運営上事情等もございまして、衆議院委員会におきましては、一応私ども原案賛成をいたしまして、参議院に送ったわけであります。私はそのとき参議院において適切なる修正がなされるものと考えておったわけでございますが、二十二国会におきましては、参議院においても継続審議になって、本国会においてさらに参議院におかれまして慎重に審議されて、ここに修正された法案回付になったわけであります。  率直に私は修正された法案につきまして意見を申し上げますならば、私といたしましては、もう少し修正された内容につきましても、法案そのものも具体的にもっとはっきりさせなければならない点も数ヵ所あるのではないか、かように考えるわけであります。この修正されました法案も見てみますと、全くこれは具体的にこの自動車道というものが示されていない。と申しますのは、法的に考えてみましても、この特別自動車道路というのが、道路法適用を受けない道路である。なおまた自動車運送法ですか、車両法と申しますか、その法律にも乗っかることのできないような道路であるように私は考えるのであります。そうしますと、これはただ法律上の文句のみによって表現される道路であって、実体的には一体どういう道路であるかというようなことがはっきり私はつかめないのであります。のみならず、またこの道路一体国のだれが、どういう機関がこれを実施するのかということについても、きわめて不明確な文句で表現されておるように私は見受けるのであります。従いまして、私個人といたしましては、この修正された法律をもっと具体化いたしまして、明確な内容を持った法律として、この衆議院委員会を通過させることが適切ではないか、かように考えるわけであります。参議院委員会におかれまして、いろいろ慎重に審議されて、こういう内容修正された法律案衆議院にお回しになったその御苦労と御苦心に対しましては、私は十分察知で香るのであります。しかしながら、衆議院がほとんど全員最初原案におきましては署名もいたしたような法案であります。そうであればあるほど、私はほんとう最後の仕上げをいたしまする場合には、やはり名実ともにだれが見てもこれはりっぱな法案だというふうに納得を受けるような形においてこの法案を通すことが、われわれの責任ではなかろうか、かように考えるわけであります。  この法案取扱いにつきましては、社会党議員の方々も非常に積極的に、早くこれを通過せしむべく、私に対しましてもいろいろ御忠告があるのであります。昨日は私はさらにまた議院運営委員会にも引き出されまして、社会党池田委員等より、一体どういうふうにこの法案を取り扱うつもりか、衆議院において全員署名をした法案であるではないか、さらにまた参議院において小澤議員より自由党を代表して賛成をしておられる法案であるではないか、聞くところによると、私一人が非常に反対をしておるように、きのうおしかりを受けた。(「そうではない」と呼ぶ者あり)そうではないと言われても、きのう私はそういうことをしかられたのです。そこで私は今申し上げましたようなことを、きのうは率直にお話し申し上げておいたのであります。私どもはこの法案自体につきましては、これは国土開発考えておる法案でありますので、何もその理想とするところに対して反対の意を表するものではありません。しかし先ほど申し上げましたように、それであればあるほど、ほんとうに本腰になって、そうして具体的にこの法案を実施するという内容を持った法律を作ることが、国民の期待にこたえるゆえんであると私ども考えまして、先ほど来申し上げましたような意見を申し上げたのであります。  この法案取扱いにつきましては、いろいろ委員長におかれても苦慮されておるところであると考えますので、できるだけ私ども委員長の意のあるところを考えまして、本国会中において何らかの結論を出すように御協力を申し上げたいと考えております。いろいろ申し上げればたくさん問題があるわけでございますが、私はあとまだたくさんの方の質問があるように伺っておりますので、簡単に二、三の点について質問をいたしてみたいと思っております。中島委員からいろいろ質問があって、あるいは重複する点があるかとも思いますけれども、その点は御了承いただきたいと思います。  この修正されました法案の第二条、でございますが、第二条によりますと、「この法律で「自動車道」とは、自動車道路運送車両法昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車をいう。)のみの一般交通の用に供することを目的として設けられた道をいう。」こういうふうに書いてあるのであります。私はこの点がやや不明確であるように考えます。この道路、すなわち自動車のみを通す、しかもそれが一般交通の用に供する目的をもって使われる道路、こういうふうに書いてあるわけでございますが、これは道路法の第二条及び第四条に定義されておりまする道路とは一体どういう関係にあるのか。道路法の第二条と第四条によりますと、道路法の第二条には、「この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で第四条各号に掲げるものをいい、」云々と、こう書いてあります。そこで先ほど申し上げました通り、この道路は端一的に申しますと、道路、であることには間違いありませんが、自動車のみを通す道路であって、しかも一般交通の用に供する道路である、こういうふうに私は解釈いたすのであります。そういうふうに解釈いたしますとこの道路は厳格に言うと、道路法適用を受けるような一級国道、二級国道あるいは府県道市町村道というような道路にもならないわけであります。しかしまたこの道路法定義を広く解釈いたしますと、一般交通の用に供する道路だ、その道路一級国道、二級国道府県道市町村道、こういうふうに道路法では規定されております。この一般交通の用に供するということを道路法定義を拡大いたしますと、道路法道路適用も受け得るのではないかというふうに考えるわけでございますが、この点について、修正をされた小澤議員の御説明をお願いいたします。
  14. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 ここに富樫局長がおられますから、こまかいことは富樫局長の方がよく存じ上げておると思いますが、私の修正したときの考えを申し上げますと、道路法における一般交通の用というものは、つまり自動車も通る、それから人間も通る、何でも通るという意味でございます。それがこれまでの道路概念でございましたが、そういう道路がだんだん発達して参りまして、今度考えます高速幹線自動車道というものは自動車だけ通すというわけでございます。自動車一般ということを言っておりますのは、特殊の自動車が通るのではなくて、自動車であればどれでもよろしいというわけでありまして、人だとか、まあそういうものは通れないわけでございます。そういう点におきまして道路法とは全然別個の概念だというふうに私ども考えておるものであります。
  15. 二階堂進

    二階堂委員 道路局長に、この点について一つ意見を承わりたいと思います。
  16. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 道路法では、一般交通の用に供することを目的とした道ということになっております。この解釈には二様ございまして、この一般交通の用ということは、特定のものだけを通すという意味ではないのでありますから、自動車一般の交通の用に供するものもまたこの道路法にいう道路であるという解釈もあります。私どもはその解釈をとっておったわけでございますが、しかし自動車だけ通すというのは一般交通の用とは言えないという解釈もあるわけであります。二様ございまして、あいまいでございますが、このような道路が出て参りますれば、道路法の一部を改正する必要があろうと考えております。
  17. 二階堂進

    二階堂委員 運輸省の自動車局長が見えておりますが、私はこの道路運送車両法という法律内容については勉強いたしておりませんのでかいもくわからないのでありますが、この中で自動車とかいうことについてのいろいろな定義もあるように考えますが、あなたの方の自動車運送事業法の見地からここに定義されておりますこの道路についてどういうふうにお考えになっておるのか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  18. 山内公猷

    ○山内政府委員 運輸省におきましては、現在道路というものは一般交通の用に供しておるものを道路考えておりまして、自動車だけを通します道路に対しましては、これは別に道路運送法自動車道というものの概念が明らかになっております。それで自動車だけを通します道路というものは、自動車道という法律上の概念がはっきりいたしておるというふうに解釈いたしております。ただいまの問題は、御質問が二つあったと思いますが、道路運送車両法にいう自動車とは、という点が一つあったと思います。これは道路運送車両法の第二条に「この法律で「道路運送車両」とは、自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう。」とありまして、現在二輪車でも相当の気筒容積を持っておるものはやはり自動車の範疇として規定されております。その目的は、保安上の見地から車両検査を受けなければならない車両はこれであるということで規定されておりまして、その点は道路運送車両法にいう車両というものは明らかになっておるわけであります。
  19. 二階堂進

    二階堂委員 今の自動車局長説明でも私はまだよくのみ込めないのでありますが、自動車のみが通る道路だ、こういうようなお話もあったのでありますが、これはやはり自動車には運転する運転手も乗っておれば、人も乗せておる。車だけ通るということはなくて、私はやはり人も通ることになるのだと考えております。道路局長の話では、これは車だけ通るといったような規定のようになるわけでありますが、人をたくさん乗っけて、消防団員を乗っけて通るときもあるし、車だけ走るという自動車はいまだかつてない。これは無線操縦のできるような車でもできれば別でありますが、そういうような自動車だけが通るという、これは自動車定義がありますが、そういうことはないと思う。やはりいかなる道も、バスも通れば、自転車も通れば、犬も通る。そういうふうに厳格に規定されるのはおかしいではないかというふうに考えますが、これは別な話であります。そういうな厳格にいうと道路法定義にははまらないような特別の道路というものは一体考えられていいものかどうか。これは近代交通の見地から崩しますと、非常に自動車が多くなってくれば、あるいは自動車だけを通す、車だけを通すというような道も当然将来は考えられなければならぬとは思いますけれども、しかしながら現在の日本の現実の道路行政の画におきまして、そういう車のみを通すというような特別の国道とか、そういうものを今日考えていいものかどうかということにつきましては、私はまだ疑念を持っておるわけであります。  いろいろありますが、簡単に次にお尋ねをいたしたいと思います。第三条に「国土を縦貫する高速幹線自動車道として国において建設すべき自動車道」と書いてありますが、この国において建設するというふうにきわめて抽象的に書いてあります。この修正された法案全体を見てみますと、一体この特別な道路というものはどこがやるのかということが私には明らかに受け取れないのであります。これは修正された小澤さんの方、あるいは参議院建設委員会の方では、「国において」というのは一体具体的にどこの機関をさすのか、どういうふうにお考えになっているのかということを一つはっきり教えていただきたいと思います。
  20. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 ここに国において建設するということが書いてありますのは、結局国でやるか、あるいは府県でやるか、あるいは私企業でやるか、こういうふうな観点から国でやるのだというふうな規定の仕方がしてあるわけでございます。  それからもう一つ、それではどこの機関でやるかというようなお話になるわけでございますが、そういたしますと、結局二条におきまして、この道路をどこが主管するかという問題があるわけであります。たとえば道路法を一部改正してやるのか、別個に自動車法というものを作ってやるのかという問題が残るわけであります。その関係から申しますと、二階堂さんがおっしゃったように、これを実施法案とするときはこれは不備でございます。ところがわれわれがこれをあくまで完全なものにしようといたしますには、二条を二階堂さんのおっしゃったようにちゃんとする、それと四条の国以外において行うというようなことも、法律でやるというふうにするとなかなか時間がかかります。そして実施法案とするにはそこまで私はやるべきだと思いますが、自動車道というものは、最近の自動車の発展から考えまして、国の幹線道路として非常に重要な段階になったと思いますので、これを早く調査しなければならぬわけであります。そういう早く調査するという意味から、実施法案としては不備でございますけれども、そういうことはあとから整備するといたしまして、この法案が通りますれば、さっそくその路線について調査研究ができ、つまり自動車を早く進めるという意味でこの法案の意義があるじゃないか、私はそういうふうに考えているわけであります。
  21. 二階堂進

    二階堂委員 私も全く小澤さんの御意見通りだと思っております。これは実施する法律の建前からいいますときわめて不明確であるわけでありますが、しかしこの法律はやはり道を作るということを建前とした法律であるわけでありまして、参議院修正された内容は、どこが作って、たれが管理するのかといったようなこともきわめてこれは不明確になっているわけであります。この点につきましても、私はもっと明確にすべきものじゃないかと考えているわけであります。この点についてはいろいろ議論もあるかと考えますが、こういう点も私どもはできるならばこの委員会におきましてはっきりすべきが当然じゃないかと思う。はっきりすると申しますと、この自動車特別国道というようなものもやはり道路法適用を受けるような道路にして、そのためには道路法修正もしなくちゃなりますまい。道路法の中に自動車道路も入れるような措置を法的にやっておく方が妥当ではないか、私はこういうふうに考えるわけであります。これらについての議論はまたいずれいたす機会があろうかと考えますが、さらにまたこの第四条を見ますと、「政府は、別に法律で定めるところにより、国土開発縦貫自動車道予定路線の一部について、国以外の者に高速幹線自動車道の建設を行わせることができる。」こう書いてございます。これを見ますと、別に法律で定める「国以外の者」と書いてございますが、「国以外の者」というのはどういう機関をさすのか。どういうようなお考えで「国以外の者」という言葉を入れたのか、明確に御答弁が願えれば幸いだと思っております。あるいは何かお含みがあってこういうような言葉を使われたのか、この点についても、私はもっと明確にすべきものであると考えますが、はっきり御答弁が願えなければ、お考えだけでも一つ承わっておきたいと思います。
  22. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 この「国以外」でやるということは、これは将来法律できめるべき問題でございまして、私個人としてはいろいろ考えがございますが、この際、私は申し上げるのを遠慮した方がいいのじゃないかと考えます。     〔「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  23. 二階堂進

    二階堂委員 おかしいじゃないかという言葉がありますが、私もおかしいじゃないかと思うから、こういうことをいろいろお聞きしたいと思うのであります。先ほど申し上げましたように国において建設するということになりますと、やはりこれは宙に浮いた幽霊みたいな定義を持つ道路でありますので、この正体をはっきりすべきだ、そうしてやるところはどこにすべきか、いよいよこのままでやるといたしますればやはり道路法の改正をするなりあるいは別個の法律を作って別個の機関、すなわち建設省でもない、あるいは今度道路公団ができましたが、その道路公団でもない別な機関を作って、そしてこういうような別個な道路をやるんだというように規定をするのが当然だと考えております。「国以外」ということについては明確に御答弁がないようでございますが、私は、あるいはまた別個な機関を作って、そうしてこの道路を作るんだというようにあるいはお考えになっているかもわからぬ、かように推察を申し上げるわけであります。そうしますと、御承知の通り現在道路法に基く道路は建設省がやっている。あるいは道路公団ができまして有料道路道路公団でやっている。そうするとこういうような別個な機関を作ってこの道路をやるということになりますと、私は道路行政というものが二元にも三元にもされていくようになことを非常におそれるものであります。道路建設の重要性につきましては、私はここでるる申し上げません。一日も早く、現在の一級国道、二級国道、その他また地方道——私どもの地方におきましても地方道の荒廃はひどいものであります。従って現在日本の経済の力をもって一日も早くこうした国道の整備を急がなければならぬのであります。それにはやはり道路行政というものをあくまでも一元化する。そうしてこの道路の整備に主力を注ぐべきが、国としての、政府としての責任じゃないかと考えております。こういうような、日本の道路整備が急を要する段階にあります今日、道路行政を二分化する、三分化するというようなお考えをもって、こういう修正をなされたものとするならば、私はこれは容易ならぬことになろうかと思います。従って私は個人の意見を端的に申し上げますならば、やはりこの道路行政というものは一元化されて、そうして国道あるいはここに規定されておりますような特別道路も一本の姿において建設されるのが、力の弱い国の経済力をもってして道路の整備を急ぐということから考えまして、一本にやることをお考えになるということが私は当然じゃなかろうかと考えるのであります。そういう見地に立ちまして、この第四条の文句を見てみますと、別に法律で定めるとか、あるいは国以外の機関でやるとかいうふうなお言葉が出ております。これは私の推察でありまするが、よもやまた別個の機関を作って道路行政を二元化しようとか、三元化しようという意図のもとにこの修正がなされたものではあるまいと私は考えて、自分なりの納得をいたしてこれ以上私はこの点につきましてはお尋ねをいたしません。  さらにまたお尋ねをいたします。予定線の問題でありますが、これは二十二国会の末期におきまして非常に問題になったところの別表であります。これは選挙法の区割りみたようなもので——あれほどひどい議論はないかと思いますけれども、みななるたけ自分のところを道が通るということは非常にその地方の発展にもなりますので、この別表が出ましたときにはわれもわれもおれのところを通っているかといって、その当時には衆議院でもこの別表を見たのであります。ところがこれは日本の中心を通って北海道から鹿児島まで行く背骨に匹敵するような道路だということで、各選挙区を通るわけにも参りますまい。そういうような二とでいろいろ議論をされたわけであります。これは選挙法と同じで、別表が私は問題だと思うのであります。これは選挙法の調査会案みたようなもので、ここに一つのひな型ができております。これを基準にして法律で通過路線をきめるということが書いてあります。私はなかなか問題があると思っております。ここに出ております別表のひな型でありますが、大体こういうところを基準にして作れ、こうなっておる。衆議院の私どもの中でもこの法案をよく検討された方が何人いるか、あるいはこの別表をよく見られた方が何人いるか私は存じません。しかしながらこの縦貫道路がこういうところを通るんだということを一たびみなが知りますと、なぜおれのところを通らぬかといったような議論も出てくると思います。この予定線を法律でかりに定めるといたしましても、この予定線を法律で定める前には、十分な調査ということが必要であろうと私は考えます。この根幹をなす縦貫自動車道というものは、日本の産業経済、文化の上に非常に大きな利益をもたらすものであります。従ってこれを実施する場合には、あらゆる角度からどこを通った方が一番国家、国民経済のためになるかということを慎重に検討をいたしまして、そうして法律なりできめるべきものであると思っております。私はこの道路がどこを通るということは何も法律できめる必要がないものじゃないかと考えております。しかしながら通る個所になりますといろいろな問題が出て参りますので、思い切って仕事をやる場合には法律で規定していくことも必要であろうかと考えます。しかしながら問題はこの法律をきめる場合において、ほんとうに国が十分の調査をしてそうして経済的な効果、全般的な総合的な立場から検討をしてそうしてここを通るならこれはこの趣旨に沿う道路であるんだ、国家経済、国民経済発展のために、ほんとうになるんだという結論出した上でなければ、こういう予定線をきめるべきものではない、私はそういうふうに考えます。ところがこれによりますと、実施はいつになるかわかりません。しかしながら政府は例の法律の定めるところによって、このひな型を基本にして予定線をきめると書いてあります。ところがここに出ておりまする予定通過地点というものは各地区に分れております。こういう地点については、私は部分的には建設省あるいはその他の民間団体によって調査をされたところもあるかとも考えますが、しかしながらこの全体にわたって綿密なる調査が行われておるとは考えておりません。従ってこういうような場所をきめる場合には、法律で先にこういうような路線をきめるということをすることよりも、まず調査を先にすべき問題じゃないか。私は率直に言うと、この法案自体は、この縦貫道路を通すことになりますと、莫大な国家の金がいるということは、これは御承知の通りであります。従いまして、ほんとうにこの仕事に着手いたしまするには、国が十分な腹をきめて予算をつけなければだめだと思います。それにはやはり、先ほどから繰り返して申し上げますように、調査というものが何よりも第一に肝要である。その調査をすることが大事じゃないか。私はこの法案は、むしろ国土開発縦貫自動車道建設の調査に関する法律案というくらいに名前を変えてもらいたい。相当な金をつぎ込んで調査をすることが主体である法律案であってもいいのじゃないか、これくらいに考えております。私は道路のいろいろなことにつきましてはまだしろうとでございますけれども、しかしながら欧米等の道路の建設等をいろいろ聞いたり見たりいたしてみますと、私もアメリカに長年おりましたが、道路を通す場合には、何年もかかって綿密な調査というものが行われておる。十分な調査が数年ないし十年かかってなされたあと、いよいよ建設にかかるというと、莫大な機械力と予算をつけまして、そうして一挙に二、三年の間でその道路を作り上げてしまう、こういうようなことが行われておるのであります。日本の場合は、どっちかというと、みんな政治家やいろいろの人から、あそこを作ってくれ、ここも作ってくれ、こういうような陳情攻めに会いまして、大がいのところで、建設省の方でもいいかげんな調査をしたり、あるいはまた綿密な調査をしないうちに道路を作ってしまう。その道路が災害によってこわれたりして、また補修、維持に莫大な金がかかってくるというようなことが、今日まで往々あったのじゃないかと考えておるのであります。そういうようなことからいたしましても、私は、この道路経過地点をきめる場合には、まずこの調査をすべきものだと考えておりますが、ここに出ておりまするこの経過地点につきましては、ある程度の調査がすでになされておるものかどうか。その点について、私が今申し上げました点についての御意見がありますならば、小澤委員長の方から伺いたい。
  24. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 ただいま二階堂さんから言われました御意見に対しまして、私は全く賛成であります。実は衆議院の方から送付されました案につきまして、私ども参議院で検討したのでございますが、やはり一番問題になりましたのは経過地点でございます。いろいろ伺いますと、中にはもっともっと研究をしなければならぬところがあるのじゃないかというふうな点がありますので、ただいま二階堂さんの言われましたように、十分調査して予定線をきめる、そうしてきめた以上はりっぱな予定線であるというようなことをするがために、法案を変えたというふうなわけでございます。
  25. 二階堂進

    二階堂委員 もうあまりくどくどしいことは、私も本日は控えますが、建設省の方で今までに縦貫道路と申しますか、弾丸道路と申しますか、そういう道路計画についてどのくらいの費用を投じて調査をされておるか。その調査は実施計画に移る段階になっておるのかどうか。ある一部の方々は、相当な国費を調査に使っておる、にもかかわらず、どうも何に使ったのかわからぬじゃないか、一体どういう面にこの調査費が使われておるかというような意見を、私どもにも申される方があるわけであります。私もよくは存じませんが、相当な金をすでに使って、この調査に当っておられたのではないかと思っておりますが、道路局長の方で、今日まで、昭和二十七、八年ごろから三十一年ごろまでの間に調査が行われたと考えておりますが、その間においてどのくらいの金が使われて、どういうような計画ができておるのか、あるいはその調査されたものは、すでに実行に移し得られるような計画の段階にまでなっておるのかどうか。あるいはもっと詳細に経済的な効果等についても研究される必要があるのかどうかという点が一点。またさらに北海道から南九州に通ずる、かりに根幹をなすべき道路を建設いたしますとしますならば、この調査に要する金というものは一体どのくらいあったらいいものかということについて御意見を伺いたい。
  26. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 建設省では東京から神戸までの高速道路の計画を持っておりまして、調査を進めて参っておりますが、三十一年度までに使います金が九千八百万円でございます。この調査によりましてもまだ実設計を立てる段階にまではいきません。なおこの調査に基きまして実設計を作りますのにはまだ相当の金が要るわけであります。  それから北海道から鹿児島までのこの予定路線による高速道路の調査費がどのくらいかかるかというお尋ねでありますが、これはまだはっきりした数字を持っておりません。三十一年度予算にこの予定路線を調査いたすべく予算の要求をいたしましたが、それで全部ができるわけではありませんが、五億の予算要求をいたしました。これは通っておりませんが、この東京神戸間の高速道路の詳細な調査をいたしますのには、十数億の予算が必要ではないかと考えております。
  27. 二階堂進

    二階堂委員 最後にもう一点お伺いいたしたいと思いますが、現在道路の問題につきましては御承知の通りに道路法に基く道路審議会というものができております。ところがこの修正案によりますと、さらにこの特別な道路を作るために国土開発縦貫自道車道建設審議会というものを設けなければならぬというふうに書いてあります。これは国の大事業でありますので、これの問題につきましては、特別な委員会をお作りになって慎重に御検討なさるのがいいかと私は考えております。が、しかし現在道路に関して道路法に基く道路審議会というものがあるわけであります。この中にはやはり学識経験者とかいろいろな方を相当含めて、委員会が構成されておると私は考えております。そういうような権威のある道路審議会というものがあるにもかかわらず、また特別にこうした審議会を設けなければならぬということはどうかと、私は実は内心考えておるわけであります。先ほどから申し上げますように、道路の行政というものはあくまでも一元化すべきものだと私は考えております。そうでなければ、少い、弱い経済力をもってしては、やはりこの道路の整備ということが経済的に効果的に行われないのではないか。またこういうような委員会を作ることによって、セクショナリズム的な争いというものも自然そこに起ってくるのではないか、かように考えるわけでありますが、こういうような特別な審議会をやはり作らなければならないものであるのかどうか。この法案内容を見てみましても、実際これを実施する段階に至るまでには、先ほどから申し上げますように、調査を十分いたさなければならぬ。また相当な年月もかかるし、金も莫大な金が要るわけであります。こういうように、実施に至るまでの段階には相当な期間も考えなければならぬときに、こういう特別な委員会を、さらに屋上屋を重ねるようなものを作っていくことが果して妥当であるかどうか、この点について小澤委員長の御意見をお伺いしたいと同時に、それからもう一点は御承知の通りアメリカから道路の調査団が日本に参っております。この調査団は、名古屋神戸間でございますか、この有料道路の問題について大いに経済調査をするために来たのではないかと私は考えております。外資導入をはかって一日も早くりっぱな道路を整備するということは私も賛成であるが、しかしこのような調査団が日本に参って、果して神戸名古屋間の道路が経済的にペイする道路であるかどうか、外資を入れてまでも作らなければならぬ道であるかどうか、その外資をこちらに持ってくる上からは、やはり向うの人がほんとうにペイする道路であるかどうかということを慎重に調査に来ることは当然であると思っております。従ってこのように、この道路について調査をするために日本に来ておる際に、日本の国の道路行政が二元化されるとか三元化されるとか、あるいは国内においてそういうような有料道路を作る際にもう一つまた今度は違った形で国が縦貫道路というものを作るのだというようなうわさが起ってくると、アメリカ側から外資をこちらに持ってこようというようなこの人の考えも非常に変ってくるのではないかと私は考えます。結論から申し上げますと、道路が二元化され三元化され、二本も三本もできてくるという形はなるたけおとりにならない方がよいのではないか、こういうような見地から考えてみましても、私は先ほどから何べんも申し上げますが、やはり道路というものは一元化していくことがきわめて妥当であり適切であるというふうに考えるわけであります。幸いアメリカが道路につきまして外資を導入しようという機運に向いておる際でもありますから、このような機運をさくような意見なり動きというものがなるたけないように政府として善処されることが適切ではないかと考えております。最初の一点につきまして小澤さんの御意見を、あとの問題につきましては政務次官が来ておりますから政務次官から御意見を承わりたいと思います。
  28. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 この縦貫自動車道審議会の問題でございますが、これは衆議院から送付されました原案に、その審議会を作るということが載っておるわけでございます。私ども衆議院の方の御意見を尊重しまして、やむを得ざるところは直しますが、なるべくなら衆議院の方の御意見を尊重するという意味で、これは適当じゃないかということで私ども修正しませんでしたが、実はこの問題は最初から衆議院の方の案に載っていたわけであります。
  29. 堀川恭平

    ○堀川政府委員 二階堂委員が御質問になったいろいろの点に対しまして、私もほんとうに同感であるのでありまして、道路行政は一貫的にやらなければならぬ、かように考えることは切実であります。ただいま調査団が十九日に参って、そうしてあの神戸—名古屋間を経済的にもあるいは技術的にも調査しようというような段階になっておる現実の問題があるにもかかわらず、あるいは二階堂委員が言われるようにいろいろな曲折があるというようなことがありますならば非常に遺憾な問題だ、かように考えております。
  30. 徳安實藏

    徳安委員長 松澤雄藏君。
  31. 松澤雄藏

    ○松澤委員 私は自分の考えを述べるよりも、まず端的に修正をなされた参議院説明員の方、それから政府に一言、二言お聞きしてみたいと思います。従ってわからないところを御質問申し上げるわけだから、説明の方は詳しく御説明を願いたいと思います。自分の方の考えなり何かはまた後日申し上げる機会があると思いますから、率直にその点に対してのみ御質問を申し上げますから、その点御了承をいただきたいと思います。ただ基本的にはこういうふうな道路がわが国にできることは何人も大賛成であり、なさねばならないということにおいてはこれは問題ないのです。従いまして前会においてわれわれも賛意を表しまして、全会一致というような立場において議員提出として出したわけでありますから、この点に対しましては何ら疑義をはさむものではありません。ただ修正として出て参りましたこの法案を見てみますと、ただいまも二階堂委員から御質問がありまして、いろいろとお話を聞きましたが、どうも納得がいかない。率直に申し上げますと、手も足もない、はなはだしきは胴もないような法律に見受けられのであります。  そういう点からまず第一に御質問申し上げたいのは、先ほど小澤参議院議員の方からの御説明では、この法案はどうも実施するのじゃないのだというような御説明のようであります。実施しないところの法律案というものは古今東西を通じましてないのでありまして、実施しなければならぬと私は思います。特にわが党のごとく絶対多数というような国民から期待を受けておる党の者があげて本法案に対して賛意を表し、そうして議員提出として出ておる限りは、少くとも国民から後日指をさされることのないようなりっぱな法案にしなければならぬことは言を待たないところでございまして、そういう点からもわれわれは十分に検討いたしまして、そうしてこの法案を通すかどうかということになるだうと思います。そういう点をも考慮されまして御回答を願いたい、かように思いまするが、第一に、この法案は国、国というふうに出ておりますが、実際問題として一体どなたのところにおいて実施されるのか、率直に申し上げまして内閣総理大臣そのものが采配をふるうのか、あるいは建設大臣がやるのか、運輸大臣がやるのか、ともに共管でやるのか、こういう点をはっきりわかりやすく教えていただきたい、まず第一点としてはこれを伺います。
  32. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 今松澤さんから、私が先ほどこの法律は実施するのじゃないというふうに申し上げたような御指摘がありましたが、私は全然そういうことを申し上げたわけではございませんで、つまり実施しなければ意味がないのでありまして、なるべく早い機会にこういうりっぱな自動車道を作りまして国の発展に資したいと思うことは当然であります。  それから次にどこでやるかという問題でございますが、そういう点に関しましては、二条におきまして自動車のみの通る道というふうに規定してございまして、これをやはり法律的に整備しなければなりませんので、附帯決議におきまして「政府国土開発縦貫自動車道を含む高速幹線自動車道に関する立法措置を速かに講ずること。」、そういうふうにすみやかに講じてもらいましてそれで実施していこうということであります。ただ問題はそういうものを待ちますと調査がおくれますので、調査だけでも早くしたいというのがわれわれの念願でございます。
  33. 松澤雄藏

    ○松澤委員 それはもちろん実施する法律でないというわけではないという説明員のお方のお話でありますが、しからばお聞きいたしたいのですが、一番末尾の方から見てみますと、公布の日からこれを施行するのだ、こういうふうに出ております。この問題に対しまして現在政府においてはどういうふうな名のもとにでもけっこうですが、予算措置というものがあるのか、今後どうしてこれをやっていくつもりか、これを簡単に御説明願いたいと思います。
  34. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この法律施行のための予算は、三十一年度予算には計上されておりません。
  35. 松澤雄藏

    ○松澤委員 そうなって参りますと、先ほど小澤さんの方から、一日もすみやかにこの法案を通して調査にでもかかりたいというふうなお話がございましたが、その調査費は一体いずれから捻出される御予定でありますか。それをお聞きしたい。
  36. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 私は、この法律が通りましたら、なるべく早い機会に政府に予算措置をしていただきたい、そういうふうに思っておるのであります。
  37. 松澤雄藏

    ○松澤委員 だんだん格好がわかってきてますますおかしくなってきたような気がするのです。やる人もまだきまらず、予算の措置も、この法案が通りましても何もなし。しかもまことに僕は不可思議に思うのですが、もしもこの法案が通った場合において、現在アメリカより名古屋—神戸間の道路の視察に来ているのでありますが、それらの道路も、この法律が通ることにおいて、道路法というようなあの法律に適合されていくのか、あるいはこの法案によって押えられていくのか、これらによってその調査というものも——アメリカの方々が来ていろいろ調査をしておりますが、一銭一厘といえども全部アメリカ人の方で御負担なさるというふうには思えないわけです。国自体も、おそらく建設省方面の調査費がその方面へ捻出されていくもの かように私は考えますが、一体その関連性はどういうふうになってくるか、一つ小澤さん並びに政府の方にお聞きいたしたい、かように存じます。
  38. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 先ほどこの法律が通っても実施する実体がわからぬというお話がございましたが、これはあとの審議会でこれを調査し検討するわけでございまして、すぐ着工するのはどこだかわかりませんが、調査研究する機関はこの法律にうたってありますので、その点は私は心配ないと思います。それから予算措置につきましては、これはこの法律が通りますのがおくれたわけでございまして、通りましたらなるべく早い機会に政府にしていただく、そういうふうに思っております。
  39. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 今度アメリカから参りました調査団の費用は予算に組まれております。ただ、この調査の目的は、この法律による予定線を調査することにも、この法律が通りますとなるわけでございますが、現在のところは従来立てておりました建設省の案によりましてその調査をいたすわけでございます。
  40. 松澤雄藏

    ○松澤委員 ただいまの政府の御答弁によりますと、この法案が通るまでは従来の建設省で扱っておる道路法とかそういうふうな意味における所管事項の範囲においてそれらの経費を捻出するように持っていくのだ、この法案が通ればこっちの方に移牒されるのだ、こういうふうな御意向であります。ところが残念なことには、今申し上げましたようにこの法案に関連いたしました予算措置は全然ない、三十一年度における予算措置が全然ないのだ、こういうふうになっているわけです。そうしますと、現在来て調査をしつつあるところのものすらも、建設省自体においては捻出ができないという関係になってくる。もちろん予算の総金額というものは一兆何百億というふうになっておりますから、あるいは、われわれの目の届かない範囲においてしかるべく上手にやるだろうとは想像いたしますが、しかしそれではわれわれ国会議員の立場がおかしくなる。議会というものがおかしくなってくる。また政府自体の予算の執行に関する面がおかしくなってくる。こういうふうになってきますと、この調査費が一方においてはなくなり、一方の方も使えなくなるというように今のお話では聞き取れるのですが、もう一度この点を詳しく、わかりやすく御説明を願いたい、かように思います。
  41. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 先ほど申し上げました調査費は、従来建設省の持っておりました案に基きましてこれの調査をいたす予算でございますが、これは三十一年度に組まれておるわけでございます。ただ、この法律案が通りますと、その線が予定線の一部になるということ申し上げたわけでございますが、この法律案が通りますまでは従来の計画に基きまして調査をするということになるわけでございます。
  42. 松澤雄藏

    ○松澤委員 それでは小澤さんにお聞きしてみたい。今そちらの方に調査費があるということを小耳にはさんだのですが、先ほどはこれに対する調査費はないというふうに御回答をいただいたわけです。しかし、今お話のように、この法案が通ればそっちの方はだめになり、やれなくなってしまうでしょう。今の御説明はそういうふうに聞えるのです。そうなった場合に、この法案の方には調査費がついていない。従って、建設省の方として、現在は建設省の従来の方法によって出しておるのだ、また出すべき予定でおるのだというような御意向であった。ところが、法案が通ってもこっちの方は調査費がないというふうに今説明を聞いたのです。そうなってきますとこの法案というものは、現在すでにやりつつあるものをも時によっては一時中止せざるを得ないというふうに聞き取れるのです。この点に対して小澤さんから御説明願いたい。
  43. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 ただいま富樫局長が、建設省で調査しております道路はこの予定路線に該当するといいますか、それに沿っているということを申し上げたようでございますが——神戸—名古屋間の道路はこの縦貫道路予定路線に該当しているというようなことを申し上げたようでございますが、それは建設省の方で調査しているわけでございまして、この縦貫自動車道法律案とは別個のものでございますから、これが通りましても建設省でその予算を使えないということはないわけでございます。
  44. 松澤雄藏

    ○松澤委員 どうも小澤さんの御説明道路局長お話は少し違うように聞き取れるのですが、私の聞き違いかその点を一つよく教えていただきたいと思うのです。そうしますと、今やっている名古屋—神戸間の道路はこの法案予定路線とは関係がない。従って、この法案が通りましてもこっちの方には関係なく、従来建設省がやっている状態のまま進めていけるのだ、こういうのですか。
  45. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 私どもの今度の修正案によりますと、一応別表経過地点を基準にいたしまして、法律できめましたときに予定路線になるわけでございまして、その前までは実は予定路線でないわけでございます。でございますから、ただいま建設省でやっているのはこの予定路線とは無関係だというふうに了承していただきたいと思います。
  46. 松澤雄藏

    ○松澤委員 ただいまのお話でようやく納得できました。委員会ができてそっちの方できまってから初めてこの路線が確定される、それまでの間は確定されていないから、従って、従来から建設省でやっているものはそれまでの期間やっていけるのだ、こういうふうな御意見のように承わったのです。それはそのくらいにしておきますが、そうして参りますと、やる方もきまらず、調査費もない。予備費か何かからでも出せる予定なんですか。この法案が通りましたら、もう議会の閉会も間もない、会期も非常に少くなっておりますが、通ったら予備費からでも出してすぐかかるというようなことになっておるかどうか。
  47. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 そこまではまだ詰めておりませんが、この法案が通れば政府として善処していただきまして、予算化に努力していただきたいと私どもは思っております。
  48. 松澤雄藏

    ○松澤委員 路線を確定するのにも別個な委員会なりそれらに準じたものを作ってやるというような御意向ですから、現在の段階においては一体どのくらいかかるものであるか、何年かかるものであるか、およそそれすらもわからない、もちろん調査もやらなければならぬということになってくると思うのです。そういうことになりますと、先ほどは私は自分の意見を述べないというふうに前置きをいたしましたが、つい述べざるを得ないような気持になってきたわけですが、これほどの大事業を敢行するのにもう少し慎重にやるべきじゃねいか。先ほどの二階堂委員お話に私は全く同感するものでございまして、われわれは国土開発の縦貫道路ができることは全面的に賛成だ。賛成であるが選挙戦や何かに使われるような迎合的なものにはしたくないというような気持であることをはっきり申し上げたいのです。本年度における予算もきまらず調査費すらもないという現段階においてなぜそんなに急いでやらねばならないか。しかも政府にさっそく云々したいというような御意向でありますが、もしもそうであるならば、大蔵大臣なりあるいは建設大臣なりの実際に予算を握っておるところなりあるいは実施するところの大臣なりの出席を願ってお聞きしてみなければ話がわからぬ。この法案出しても、やるところもきまらず調査費もないというようなものを、ただ単に早く通せばいいというだけでは国民に対してまことに申しわけないというような気持がするのです。しかし本日の私の質問はこの程度に保留して次会においては大蔵大臣あるいは建設大臣の出席を願って政府のはっきりした気持を聞かしていただきたい、かように存じまして私の質問はこの程度にして保留いたしたいと思います。
  49. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今松澤さんの御質問に対して、この法律が通りますと、国としてはこの法律によってこの道路を準備しまた計画を進める権限ができる。そうすると、その権限というものが国の行政官庁のどこかの権限になっていくものである。国のどこの行政官庁の権限にもならないというものは現在の行法上あり得ないわけですが、この点について一体政府はどういうふうに考えておられるかと申しますのは、ただいま小澤さんから建設省はこの法律が出てもやはり従来の道路の調査をどんどんやればよろしいというお話があった。ところが従来の道路というのは、この法律ができるとこの道路と重複することになりますが、結局新しい道路について権限のある官庁がこの法律ができたならば、調査なり準備なりを進めるということが当然ではないかと思っておる。そうすると、このお答えを一貫しますと、この法律ができればさしあたり建設省が権限ある機関として調査、準備を進めるというふうに了解いたしてよろしいでしょうか。
  50. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 その問題につきましては、実は私の方は修正案には触れておりませんので、衆議院の方の提案者の御説明を伺うのが一番いいのじゃないかと思います。
  51. 小松幹

    小松委員 私はこう考えるのです。こういう大道路を建設するのにはこうした問題が起るのは当然だと思いますが、それを克服してやっていかなければ、——今の建設省のセクションにおいて既定方針通りにやっていかなければ日本の背骨を貫くような道路というものはとうていできない。こういうふうに考えればこれに伴う予算があるはずがない。予算は取ってないのですから、全く一銭もない。それでこの法律が今度通れば、八月から九月の来年度予算編成に当って、この法律が前提となって、この法律に基く調査費が昭和三十二年の予算に出てくる、かように考えるが、建設省の道路局長が言われておるところの、現在の既定方針に伴う調査費は調査費で使っても、たまたま偶然重なるところがある。そういうことを技術的に考えれば、特に東海道の辺は建設省の予定線と重なって、技術的に調査済みのところもあると思う。しかしそれは建設省自体の今までの計画コースに伴う調査の結果であって、私はこの法律に基く結論ではないと思う。そういう意味においてこれは二元的に考えざるを得ないと思う。これを通すとすれば、そういうあいまいな答弁でなくして、やはり二元的なものとして、予算もこれに伴う予算をはっきり調査費として来年度予算から取る、そのためには今度これを通過させておかねば来年の予算編成に間に合わないから、これをぜひ通していただきたい、こう言えばはっきりわかる。それからセクションの問題も、ここの法律の総理府設置法の改正案に伴って、総合開発のために総理府に置くと思うのですが、この具体的な設置法が整うまでは、この総合開発を推進するためにはこれを総理府に置こうがどこに置こうがかまわない。とにかく要はこの法律によって調査費が予算で一億でも二億でも来年からはっきり取る、これはセクションの問題だから、いつでも解決できる、かように考えております。調査費の予算が、今の建設省の既定コースとほとんど別個の予算が取れるか取れないかということは、私はこの法律を通過さしてもいいか悪いかのポイントだと思う。セクションの問題あたりは、この法律が通過した後でも、ここに偶然にも総理府設置法の一部改正——総理府に関係があるものであるからできると考えております。この点私の考えと、提案者修正提案者考えが違うかどうか、この点お尋ねします。
  52. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 私はこの法律が通れば、この法律に要する調査費を政府が計上することは当然だと思います。
  53. 小松幹

    小松委員 私は今この法律がで送れば昭和三十二年度予算に調査費を組むのを順序として本国会で通したいというようなことを言ったが、提案者の方ではさらにそれを変えて、ことしの補正予算にでも組みたいというような意向のように聞きましたが、そうでございますか。
  54. 小沢久太郎

    小沢参議院議員 これは先ほどから申し上げておりますように、衆議院から送付になりましたものに対してわれわれが修正したわけでござまして、修正の点につきましてはわれわれが御説明申し上げますが、その根本問題につきましては衆議院提案者の方から御説明願った方がよいと思いますが、私の考えを申し述べますれば、この法律が通りますればなるべく早い機会に予算化するように努力すべきだ、そういうふうに私は思う次第でございます。
  55. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 参議院議員小澤さんを予算化の問題においていろいろ責めるというか質問するのは、見当違いだと思う。衆議院をすでに通過さしておる。そのときにこの法律のもとができて予算化したかせぬかということを衆議院の問題にしなければならぬ。その衆議院参議院の方に修正をした個所を質疑するならよろしいが、そういうことじゃない個所を質疑するのは、衆議院の私は権威にもかかわることであるから、同僚諸君にそれはやめてもらいたいと思います。  それで私はたった一つ当局にお尋ね申し上げておきたい点は、問題はこの法律道路法に基くものか、あるいは自動車運送法に基くかということでの競管の問題や、この法律施行に伴う実施に関する問題が重点であろうと思います。ところが現状の道路についても、今神戸—名古屋間の建設省で行う建設省所管の道路につきましても、おそらく人間が歩くことを中心とした道路ではないと思う。大体は自動車を通すというところに近代的な道路があるのであって、その上から言いますと、厳密に言うと、はたして道路法に基く道路といっていいのかどうかということには、私は疑点があろうと思う。しかしながらこれはいわゆる時代の進運に伴うところの結果から起る問題でありまして、当然建設省が行う道路は、道路にいたしましても、近代的道路というものは、いわゆる自動車を中心としたものになって、人間が歩くということはそう大して念頭に置かない道路になることは当然だと思う。そこでその上に立って今の行政を考えたならば、いわゆる運輸省と建設省の所管争いが起るような問題を、このときこそ解決つけなければならぬ時期にきておると私は思う。日本の交通網を完備する上には、必ずこれを解決しなければならぬ問題が出てきておると思うのであります。すなわち今度この国土開発縦貫自動車道といいましても、この自動車道には人間は一人も歩かせないのか、あるいはまた自転車も通さないのか、こういうことになりますと、自転車も通ったら処罰するということには私はならぬと思う。ただ人間が歩くということは危険だから、人間が歩かぬようになると思う。自動車ばかりたくさん通るから。しかしそこを人間が横切ったり歩いたりしたら処罰するということではないと思う。運輸省が考えておりまするところの自動車運送業法に基くところのいわゆる道というものは、ちょうど鉄道の軌道と同じ建前に立ったものなんだ。従って鉄道の軌道の上を人間が歩いたらこれは処罰されるのです。それと同じように、専用道というようなものになりますと、自動車運送を中心とした道路であるからということで、運輸省の方の所管としたいということになってきたのでありますが、つまり今日の時代の進運の結果いたしましては、当然今の道路という観念が発展するものだと思うのです。その点について建設省は、今までの道路法という狭い観念のままでやっていくという考えか、またそれでよろしいと考えるのか。新しい近代的な道路としての道路の観点からして、主として自動車等を通す道路も建設省は所管して、道路法に基く道路として行おうと考えておるのか。この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  56. 堀川恭平

    ○堀川政府委員 前田委員にお答えいたします。前田委員が言われるように、この道路はいわゆる天下の道路であって、道路行政一つにしてやっていくことが一番いいということは、先ほど二階堂委員が言われた通りであります。だんだんと発達して行きますと、自動車というものが相当ふえてきて、自動車だけ通さなければ危ないというような道路も出てくることは当然であります。そこで道路の早急な整備ということが、日本の国の発展、あるいは経済の振興、こういうものに対しまして必要であることは当然であります。そこでこの道路を一体どうするかということになりますと、道路行政を一貫するということであろうと思います。私が建設省に政務次官として入りまして、道路だけでなしに、あらゆる面に各省のいわゆるセクションというものが大きいのに実は驚いているのであります。こういう道路を作るにいたしましても、いろいろとセクションがあるのでありますが、これは政府が作るのでありますから、関係省には事前にいろいろ協議をし、また道路が完備したならば、その運営に対しても協議していけば、そこにりっぱな道路が早くできるんだと私は考えるのであります。そういう意味からいきまして、道路行政を一貫してやっている建設省がやって、運輸省とその経過地点もよく協議をし、完備したならばその運営も協議していけば、政府一つでありますから、私はそれでいいんだと考えているのであります。しかしながら御承知のように今のところではこういうセクションが相当あるということは、遺憾の限りであります。こういうものをこういう委員会でできるだけはっきりしていただくということが、私は国家のためだ、かように考えております。     —————————————
  57. 徳安實藏

    徳安委員長 本案に対する質疑はこの程度にとどめまして、次に河川及び道路に関する件について調査を進めます。質疑の通告がございますから、これをお許しいたします。大橋武夫君。
  58. 大橋武夫

    大橋委員 私は島根県の江川の発電の水利使用に伴う漁業権の補償に関する問題につきまして、本国会の劈頭に当りまして、昨年の十二月当委員会において建設省に対して質問をいたしたのであります。自来この問題については建設省の非常な御努力にもかかわらず、一向進展を見ておらないことは、まことに遺憾に存ずるところでございます。今日はこの問題につきまして、重ねてお許しを得まして、当局に対して質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に一般的な建設省の御方針を伺い、次に具体的な江川問題について建設省のお考えを伺いたいと思います。かような順序で御質問をいたしたいと思うのであります。  そこで最初にお尋ねいたしたい点は、最近大規模なる電源開発が行われるに伴いまして、従来見なかった非常に大規模な堰堤が河川を横断して築造せられまして、これがために大量の水を蓄溜する。従って下流に対しましては、非常に大きな影響を与えることになったわけなのであります。従来よりこうした水利使用につきましては下流の農業用の水利権あるいは漁業権あるいは立木権等に対する被害につきまして、行政機関としてはこれに対する完全なる補償をなさしめた上で水利使用を許可する、こういう方針をとっておられたように思っております。そしてこれらの点について水利権者に対して補償を命ずるために、河川使用の許可命令書に補償に関する条項というものを必ず設けておられると思うのでございますが、この河川使用に対しまする第三者に対する権利侵害の補償についての許可命令書の条項は、最近どういうふうなお取扱いになっておりますか伺いたいと存じます。
  59. 山本三郎

    ○山本政府委員 お答えいたします。お話の発電のためにダムを作ったり、あるいは取入口の低い取水堰のための設備を作るという認可は、いわゆる水利使用の許可ということになっておりまして、これは手続といたしましては、その事業主体になるものが知事に対しまして水利使用の許可を申請して参るわけであります。そして知事は、お話のありましたいろいろその水系にありまする諸権利の調整につきまして考慮をいたしまして、建設大臣に認可を申請してくるわけであります。建設大臣の認可を待って知事が許可をなす、こういうふうな手続になっております。その水利使用の許可をなすときに、お話の漁業であるとかあるいは灌漑問題につきましては、工事実施の認可をする前に漁業権者あるいは潅漑の問題に対する被害の補償等の方法につきまして関係者と十分協議いたしまして、そのてんまつを工事施行認可の申請書を出すまでに持ってこい、こういうことが通例の処置になっております。
  60. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで許可命令書には、将来起るべき損害に対して起業者に対して補償を命ずるというような条項はございませんですか。
  61. 山本三郎

    ○山本政府委員 そのほかに一般的の条項といたしまして、たとえばこの事業のために灌漑その他水利、漁業、舟筏等に支障を来たし、またはそのおそれがあるようなときには、許可を受けた者は関係者とよく協議いたしまして、それに応ずる処置を講じなければならないというふうな一般的の条件はついておるのが普通でございます。
  62. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこでその条件の性質についてお伺いいたしたいと思うのでございますが、そういう場合におきまして、関係者と協議をしなければならないような事態が当該地点において起っておるか起っていないかということは、これはむろん当事者すなわち損害を受けた者と起業者との間で争いがある場合があろうと思うのでありますが、おそらく許可命令を出された行政庁といたしましてはそういった場合においてここに問題がある、従ってこれについては、起業者は当事者と十分に協議をすべきであるということを認定する権限があるのじゃないかと思うが、この点についてはどうお考えでございましょうか。
  63. 山本三郎

    ○山本政府委員 通常この問題につきましては、河川管理者でありまする知事は、同時にその県内については総合的に行政をやっておるわけでありますから、諸般のそういう問題が起きた点につきましては、河川管理をいたしまする知人がいろいろな問題は当然知るということに相なるわけであります。
  64. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうして知った場合において、それについて何らかの措置が必要であるかどうかということを判断し、必要であると認めた場合においては、許可命令書の条項に従って起業者に対してある措置を命ずるという権限をも持っておるのじゃないか、こう思うのですが、この点はどういう解釈をしていらっしゃいますか。
  65. 山本三郎

    ○山本政府委員 水利使用の許可をなすときに、原則といたしましてはその起業者がたとえば潅漑であるとか漁業についての権利を持っておる者と十分協議をいたしまして、その協議が整った上でこの水利使用が実効を生ずるということでございます。原則といたしましては当事者同士が話し合いをして決定される問題でありまして、もしそれが整わないというような場合につきましては第一線の河川管理者でありまする知事がその間の調整を行なって、事業が全くできるよう、また権利者に対して被害が起らぬように考える、こういうことになっております。
  66. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、河川管理者といたしましては第三者に与えた損害についてはどこまでも起業者に対してその賠償なり、また将来の改善措置なりを命ずる権限がある、こういう御解釈でございますね。
  67. 山本三郎

    ○山本政府委員 たとえば工作物を作ったために非常なる公益上の支障があるというような場合には、もちろんそれに対して状況を判定いたしまして、それに対する措置を講じさせるという権限があるわけであります。
  68. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは水利使用に当りまして許可された工作物の築造の結果第三者に損害を及ぼすような場合が発生したならば、その損害に対しましては完全に補償の道が開かれておるし、また完全なる補償が行われることについて河川管理者として十分に責任を持つ、こういう御趣旨でしょうか。
  69. 山本三郎

    ○山本政府委員 片方の発電というものは公益上の問題でありますし、それからまたいろいろの漁業なり、あるいは灌漑の問題につきましては既得権益の問題でありまするから、その間の調整につきましては河川管理者が十分勘案をいたしまして、損害の程度に応じまして十分なる補償をするように努力しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  70. 大橋武夫

    大橋(武)委員 努力ということはどういうことでございましょうか。すなわち会社に対してぜひ賠償をしてやれということを極力説得することが努力であるのか。もしそうであるとすれば、幾ら説得されても会社が聞かなければそれっきりで、あくまでも会社が完全なる補償をするところまで権力を用いても強制して、そして完全なる補償を現実に行わせるという、そこまで含めて努力すべきものなんでしょうか。
  71. 山本三郎

    ○山本政府委員 その損害の程度とかあるいはそういう問題につきまして、天然現象もありますものですからなかなか判定に苦しむわけでございまして、実際問題といたしましては完全補償に努力しなければいかぬのでありますが、その判定がなかなかむずかしいというのが現実でございます。しかし根本の趣旨はそのために被害を受けた方たちに対しましては厳密に補償をするように努力をする、こういうことが知事の立場であります。
  72. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この損害の認定の問題ということはこれは私も全く同意見です。問題はむずかしいにもかかわらず、とにかく周囲のいろいろな情勢から判断して損害があるという結論が出た場合に行政官庁としてはどこまで努力をすればよいのかということを伺いたいわけなんです。すなわちこれだけの損害があるから会社の方も払ってやれ、こういうふうに勧告をするのであるか、それともこれは許可命令書にある通り、起業者として当然完全な賠償をする責任があるのだからその賠償をしろということを命令するのであるか、すなわち勧告であるか命令であるか。この点を一つはっきり御見解を承わりたいと思うわけであります。むろん命令ということになれば、これは行政法上の命令としてそれだけの法的な執行力を持たせるべきだと思うのです。この点を一つお答え願いたい。
  73. 山本三郎

    ○山本政府委員 今までの行政実例といたしましては、先ほど御説明申し上げましたように当事者間の協議をいたさせまして、それが成り立たぬという場合には知事が間に立ちましてその調整をやって参りまして、大体の問題はそれにおいて解決いたしたわけでございます。しかしどうしてもそれができないというような場合が生じましたならば、知事は十分なる資料を検討いたしましてその間の調整をはかるように努力すべきものである、こういうふうに解釈します。
  74. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると一般的には命令によって処理するようなことはないが、しかしどこまでも話し合いを進めても話し合いが最後まで不成立になったという場合においては、許可をした官庁としては命令する権能がある、こういう御解釈でございますね。
  75. 山本三郎

    ○山本政府委員 今までの実例ではそういう実例はないのでございますが、どうしてもいかないというような場合につきましては、河川法の趣旨によりましてそういう措置も講じられると考えております。
  76. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると河川法による命令の権限が河川管理者にあるという御回答を伺ったわけでございます。  そこですでに河川法によりまして河川管理者が起業者に対して損失補償の命令を出し得るということになりますと、その命令の内容については、その命令を出す行政機関でありますところの河川管理者というものが一応その責任の範囲を認定するという権能があるわけだし、またそういう職責があると考えなければならぬと思うのでございます。従って発電用の水利使用について当事者間に争いがある場合においては、知事は十分なる調査をし、確かにこれだけの損失を第三者がこうむっていると認定いたしました場合においては、その損失を認定した限りにおいて補償を命ずるという措置を、今日の行政法規の上においてはとり得るというふうに考えていいわけですね。     〔委員長退席荻野委員長代理着席〕
  77. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまの状況におきましては非常に認定がむずかしい点がありますので、行政の実例といたしましてはやはり話し合いでどこまでもやらなければならぬ、やるべきであるという建前で知事も努力いたしておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように水利使用は当事者間の話し合いがまとまることを前提といたしまして水利使用をいたしておるわけでありまして、どこまでも当事者間において第一次的には協議が成立することを前提といたしておるわけであります。それがまとまらぬときには、知事は十分なる資料を整備の上、さらに協議を進め、しかもなおまとまらぬというような場合にはそういうふうな事態も起ると考えます。
  78. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで行政官庁といたしまして最後的な処置として起業者に対して損失補償の命令を出しました場合、起業者がそれに応じないということもあり得ると思うのであります。そういう場合におきましては、許可命令書の条件として行われたこの損失補償の命令に対して起業者が服従しないのでありますから、許可の条件に違反したものとしてその水利使用の取り消しあるいは停止というようなことは当然法的には考え得るものと思いますがいかがでございますか。
  79. 山本三郎

    ○山本政府委員 それも問題の内容によると思いますが、何といたしましても大きな発電というようなものは公益上非常に重要なものであると考えるわけでありまして、そこに反対の立場といたしまして、漁業なりあるいは灌漑に対して支障を及ぼす程度が非常に大きくなるというような場合には、今のような考えも起るわけでございますが、その点は公益判断によりまして発電所の撤去とかいうような問題は、大体の場合におきましては起きないと考えております。
  80. 大橋武夫

    大橋(武)委員 実はその点は非常に重要な問題ですからもう一度伺いたいと思うのですが、そうすると建設省の御方針としましては、発電による公益の大きさと漁業の公益の大きさを比べて、漁業の方が小さい場合においては漁業者はこれはもうどうも保護の方法はない、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、それでいいのですか。
  81. 山本三郎

    ○山本政府委員 今のお話の漁業者はどうでもいいということではないのでございまして、漁業者については十分なる補償は考えなければいかぬけれども、先ほどお話もありましたように通常の場合におきましては、公益の大きなものについてはそれを撤去するというような場合は考えられぬのが通例でございまして、たとえば漁業者に対する補償を十分やらなくていいというような解釈ではもちろんございません。
  82. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると伺いたいのですが、建設省としては漁業者に対しては完全なる補償は当然あるべきものだ、こういうお考えである。そこでそれを起業者に対して強制する方法といたしましては、許可命令書の条項に従いまして起業者に補償の命令を出す。ところがそれに対して起業者がどうしても従わないという場合においては、当然発電の方が公益上大だから何とも仕方がない、こういうことにならざるを得ないのですが、一体そういう考え方でいいものかどうか。その点はよくお考えをいただきたいと思うのです。と申しますのは漁業者というのはもう何百年来その河川に定着して、その河川に生息する魚類を採取して生計を営んでおったものです。すなわちこれば既得権者であります。そうしていかに公益が大であろうといえども発電の水利使用というものはあとから出てきたものである。あとから出てくるものが既得権を侵害する場合においては、既得権に対して完全なる補償がなければならぬというのは、今日の法律の建前としてどこの国へ行っても当然なことなんです。これはわれわれとして所有権の問題と相並びまして、憲法上の原則ということができる程度の重要な原則だと思う。この既得権に対する完全なる補償を実現する方法がいかなる場合においてもないということは私はあり得ないと思う。むろん既得権は絶対に侵害してはならぬとは言いませんけれども、それは公益が大きければ、既得権を侵害することによって行う河川の水利使用の利益が大きければ、河川の水利使用を許可することは十分あり得ることですが、しかしその場合においても既得権の侵害に対しては完全なる補償というものは絶対になさなければならぬと思う。それに対して政府が命令までしたのに、起業者がそれに対して言うことを聞かないというようなことがありましたならば、これを強制する方法として施設の完全な撤去は行わないにいたしましても、少くとも一ヵ月なり二ヵ月なり水利使用の許可を停止するというくらいの措置は当然あり得ることだと思う。そういう点について重ねてはっきりした御方針を承わりたいと存じます。
  83. 山本三郎

    ○山本政府委員 今大橋先生のお話の場合は、まことに極端な場合でございまして、今まではそういう実例はなくて、当事者間の協議なりあるいは知事がその間に入りまして、時間は多少かかったものもございますけれども、円満に解決しておるのが多くの実例でございます。そういうわけでございまして、極端な場合につきましては今のようなことも考えられると思いますけれども、先ほども申し上げましたように、公益判断の問題と被害との問題の調和の点でございまして、その点を比較勘案して処理しなければならぬ問題だと考えております。
  84. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私はその点もう少し伺ってみたいと思うのですが、第三者の既得権を侵害しても水利使用を許可しなければならぬという、そういう公益上の判断がなされることはもちろんあり得ると思う。その場合においても既得権の完全なる補償がなくてよいという判断はどこからも出てこないだろう。いかに発電が公益上必要な事業であろうとも、その事業を継続させるために第三者に対する損害賠償というものをいいかげんにしていいという原則は、私は今日の行政法規の上においては考えられないところだと思うのです。そうだとすれば、その起業者の責任を果させるために、河川管理者として権力を使う必要があるという場合は、むろんあなたも言われる通りにのべつあるわけでもないし、また今までおそらくそうした場合は現実にはなかったろうと思う。しかしどうしても起業者が管理者の命令に従わないという場合においては、何らか強制措置を講じなければならぬ。その場合今言ったような、一時的に発電を停止するというようなことも、これは許可命令書の条項ないし河川法の法規によればあるのですから、それは現実にはなかなかやれぬが、法律的にはやり得るというところまで考えていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  85. 山本三郎

    ○山本政府委員 先ほども申し上げましたように、むろん公益を判断してやらなければならぬ問題でありますけれども、おっしやる通り法律上におきましては行政的にできないことではないと私も考えます。
  86. 大橋武夫

    大橋(武)委員 また実際そうした場合において、河川管理者として河川の水利使用を一時的に停止するくらいの腹を持って会社に命令を出せば、会社が従わないなんていうことはあり得ないと思う。私はこうした問題が非常に延び延びになり、会社が誠意ある態度を示さないということは、こういう問題についての法律的な見解を明らかに腹に入れて、いざとなれば発電はとめるんだというつもりで行政官庁が当って下さらない、その点がこうした問題を長引かしておるのではないかと心配するのです。幸いに法的にはそれだけの権限が解釈上あるんだということを伺いましたので、今後こうした問題についてはどうしても言うことを聞かなければ、最後には発電をとめるんだというくらいなことで、この補償の問題に対しては弱い人たちの保護のために一つしっかり腹をきめて対処されるように、今後建設省としても格段の御指導をいただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  87. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまお話がありましたように、公益上非常に大きな問題でありましても、個人的に、あるいは局部的に被害をこうむるというようなことがあってはならないわけでありまして、そういう人たちに対しまして、適当な施設を行なって、被害を最小限度に食いとめると同時に、被害に対しましては、それに応ずる補償を当然出すべきものだと考えておるのでありまして、われわれといたしましても、河川管理者を指導する等の方法を講じまして十分考えていきたい、こういうように考えております。
  88. 大橋武夫

    大橋(武)委員 なお河川管理者は普通県知事になっておりますけれども、こうした問題は——むろん第一線が県知事でありますからして、現実の解決に当っては県知事にで送るだけ働いてもらうというお考えをお持ちになることは当然だと存じますが、しかし県の能力にも限界がありますので、県の手に合わないというように認められる場合は、むろん建設省としても問題の解決にお乗り出しになるだけの気持は従来からもお持ちになっておられることと推察をいたすのであります。現実に江川の問題に今すぐ乗り出すべきか、それは別問題といたしまして、そうした問題は一応は県で解決をさせるべきである。しかしどうしても県が解決できないという場合には、政府の責任者として建設省も最終的には解決に乗り出すという御方針をおとりになるお考えであるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  89. 山本三郎

    ○山本政府委員 先ほどからもいろいろ問題がございましたが、具体的には島根県でそういう問題がございまして、昨年の委員会で御質問がございました。その後建設省といたしましては、この問題の従来からの経緯なり、あるいは地元に関する県の調査結果とか、あるいは県の処理方針につきまして詳しく事を聞いたわけでございます。そうして県といたしましても、県内の総合行政を行なっておるのでありますので、自分の管内の問題でありますので、地元の方のいろいろの御要望も聞くし、あるいは県の判断も加えまして努力しておる最中でございます。その点につきましては、建設省も常に県と密接な連絡をいたしまして解決に努力するようにしておるわけでございまして、私は衆がその任に当るのが最も適当である、こういうふうに考えております。
  90. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで具体的な問題といたしまして、江川の明塚の発電所に関連いたしました下流の漁業者のアユ漁に対する莫大なる損害の問題が起っておるわけでございます。この問題につきましては、昨年十二月に質問いたしました当時にも申し上げたのでございますが、すでにこれは一昨年よりの問題でありまして、今日まで約二ヵ年かかっておる。そうしてこの間非常な漁業上の損害が起きておりまして、約千人からの漁業専業者が生活上非常に困窮いたしておる。生活のためにあるいは他から借財をいたしましたり、あるいはまた田畑を売却いたしましたり、あるいは住宅などを売って今日雨露をしのいでおるというような状況であります。ことに最近には生活難のために夫婦心中をした漁民もあるような状況でございまして、これらの現地漁民の生活困窮の状況につきましては、すでにいろいろな方法をもって建設省にも陳情をいたしておりますので、十分おわかりいただいておると思うのでありますが、漁民といたしましては一日も早くこの問題の完全なる補償ができ、この問題の解決のつくことを待っておるわけでございます。まず建設省といたしましては、この関係漁民が非常な損害を受け、そうしてそれがために数百年来の先祖伝来の仕事でありました漁業ができなくなって、そのために非常に生活に困窮を来たしておるという事実についてお聞きになっておるところがあると思いますが、どういうふうに御判断下さいますか。
  91. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまの問題につきましては、私四月に河川局長を拝命いたしましてから、地元のいろいろのお話は二回にわたってお伺いいたしました。そしてその事情につきまして県にもいろいろ問い合せましたところ、各地区からはいろいろの要望が出ておる、そして確かにその後初めに協定ができた後におきまして、考えられないような点もあるというふうな県の連絡も聞いておりますので、私どもといたしましても地元の方々と、それから県の方から聞いたところによりまして、さらに解決しなければならぬ相当の問題があるというふうに承知しております。
  92. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それですでにもう二年から、この問題の解決を待ちくたびれております漁業者といたしましては、もうこれ以上待っていられないというような窮境に追い込まれておるわけでございまして、どうぞ建設省とせられましても、漁民の困窮の実情を十分に御理解の上で、急速な御解決にお乗り出しをいただきたいと思うのでございますが、大体いつごろまで待てば解決が得られるお見通しでありますか、この点を最後に伺いたいと思います。
  93. 山本三郎

    ○山本政府委員 その点につきましては、昨年の末に建設委員会におきまして御質問を受けまして、さっそく県の方に対しましても口頭でいろいろ連絡すると同時に、正式の書類をもって従来の経緯であるとか、県の処理方針等につきまして、具体的に問い合したのでございます。それにつきまして折り返し二月の下旬になりまして、知事からの報告も参っております。それから最近になりまして県から担当の課長も状況説明するなり、あるいは県の考えておること等につきましての連絡もございますし、また今月の半ばに、つい一週間ばかり前でございますが、地元と県との連絡会、協議会も持ったというふうな状況でございまして、昨年あるいは問題の起きたときから非常に時間がかかっているようにも言われているのでありますが、最近におきましては、県といたしましても種々問題の早急の解決に努力しているわけでございますし、また会社等の意向も聞きつつ県は最大の努力を払うというふうに私どもの方に対しましては報告が参っているのであります。従いまして具体的の案をもって、地元なりあるいは会社との折衝が近く始められる、こういうふうに考えております。そういう事情でありますので、この結論が出るのにそう長くかかるというふうには考えておりません。今後におきましても絶えず県と私の方とは連絡をとりまして、問題の早期解決に努力したい、こういうふうに考えております。
  94. 大橋武夫

    大橋(武)委員 近くといいましても、考えようによりましてはあと一、二年のうちには解決するということも近くと言えます。しかしその程度ではもう漁民としても待ち切れない状態だ、少くとも一、二ヵ月うちにはある程度の目鼻をつけるというぐらいのつもりでかかっていただかなければならぬ状況にあると思うのですが、その近くというののお気持はどの程度でございましょうか。
  95. 山本三郎

    ○山本政府委員 県におきましては、来月早々にでも具体案の問題につきまして御相談したい、こういうことを言っておりますので、今お話のような一ヵ月とか二ヵ月とかいうふうな短期間の間に解決するように努力するつもりでいると思います。私どももその線に沿って努力したいと思います。
  96. 大橋武夫

    大橋(武)委員 どうぞその御方針で、この上とも御尽力をいただきたいと思うのでございます。この機会に特にお願いを申し上げておきたい点は、従来からも、すでに二年ばかりこの問題について、県と会社との間でいろいろ交渉が行われているのでございますが、その交渉の経過等を部外で仄聞いたしておりますと、どうも行政機関の側において、この問題についての責任観念と申しますか、あるいは考え方と申しますか、その点にどうも不十分な点炉あるような気がいたしているのでございます。それはどういうことかと申しますと、とかく従来はこの水利使用に伴う補償問題は大体当事者間で話し合いをする、そうして多少日がかかっても当事者間である程度解決ができたというのが今までの実例でありますので、当該管理者といたしましても、この問題は徹頭徹尾当事者間で話し合いをつけるべき問題であって、行政機関がこういう問題にタッチすべきではないのだがというような気持が、多少管理者の側にあるのではないかと思うのです。しかしこの点は先ほど建設省のお考えは、第三者に損害を及ぼした場合においては、この水利使用を許可した管理者が、その完全なる補償を得るに責任を持って努力すべきであるというお考えを承わって、私非常に安心をいたしたのでございます。どうぞ県庁に対しましても、この問題は、民間の民事上の問題にたまたま行政機関が関与するという問題ではなくして、第三者の損失の補償はこれを円満に解決するということが水利使用を許可した河川管理者の当然の責任である、こういう考えを持って対処されるように御指導いただきたいと思うわけであります。そうしてその目的を達するためには、会社が言うことを聞いてくれなければ仕方がないというような考えではなくして、聞かなければ、管理者としてはあらゆる権限を用い本省の援助を得て、力をもってしても正しい補償の実現のためには必ず会社を圧服するという気持で、積極的にこの問題に対処されるように一つ御指導をいただきたい、かように思うわけです。すなわちこの問題は、管理者は当然の仕事として自分が当らなければならないものであるということ、及びこの問題を解決するために、会社が言うことを聞かなければ、水利使用の許可命令書において県知事に留保してあるあらゆる権限を用いても、会社に言うことを聞かせるのが当りまえだ、こういう気持で当っていただきますように、今後とも建設省とされては知事を一つ御指導いただきたい、かようにお願いいたす次第でございます。私の質問はこれで終ります。
  97. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまのお話にありましたように、河川の利用の全きを得ると同時に、その河川によりましていろいろと恩恵を受けておるような面につきまして、あるいは被害を防止する面におきまして、十分調和をとっていくというのが河川管理者の責任でございますので、今後におきましても、その利用を全からしめると同時に、被害が起るというような問題につきましては、第一線の管理者であります知事を十分監督いたしまして全きを期したい、こういうように考えております。
  98. 荻野豊平

    荻野委員長代理 中島巖君。
  99. 中島巖

    中島委員 だいぶ予定の時間も経過したのでありますが、発電所の堰堤の関係につきまして、最初は佐久間ダムの報償道路の関係について質問いたしたいと思います。この質問に対しましては、経済企画庁、林野庁並びに建設省の道路局長に答弁をしていただきたいと思います。     〔荻野委員長代理退席、委員長着席〕 この質問が終りまして、さらに泰阜発電所堰堤に関する災害に対しまして質問いたしたいと思います。この答弁には河川局並びに法制局に答弁していただきたい、かように考えるわけであります。  そこで経済企画庁にお伺いいたしますが、私、二十二特別国会におきまして、経済企画庁の高碕長官に対しまして、かつて昭和二十九年二月十七日に、佐久間ダム開発に伴う水没地対策に関する覚書を、当時の建設大臣の戸塚九一郎、電源開発株式会社副総裁進藤武左衞門、静岡県知事斎藤寿夫、愛知県知事桑原幹根、長野県知事林虎雄の五名がかわしております。それでこれが実現方を要請したのでありますが、その間、経済企画庁が中心になって各省の折衝などをいたし、非常なお骨折りを願った結果、昭和三十年十一月八日に佐久間ダム開発に伴う水没地対策に関する覚書の実施に関する協定に対する了解事項というものができておるわけであります。そこでこれに対しまして、内容を読むのもだいぶ長くなりますので省きますけれども、この了解事項を基本的な問題として現在作業が行われておるのであります。それから昭和二十九年二月十七日に佐久間ダム開発に伴う水没地対策に関する覚書の実施に関する協定案なるものがあるが、実際に協定されたのはこの案と相違しておるのであるか、あるいはこの案のままであるのかということを企画庁にお尋ねいたします。
  100. 植田俊雄

    ○植田政府委員 お答え申し上げます。御承知の通り佐久間ダムの水利権の補償に際しまして、沿岸の道路の問題が解決つかなかったのでございます。二十九年の二月十七日にただいまお読み上げになりましたような方が覚書を作りまして、それで一応解決を見たのでございます。佐久間ダムがだんだんでき上りまして、昨年の十一月と十二月になりまして湛水間近になりました。この条件の充足がなければ県知事としては湛水許可もできないという情勢に立ち至ったのでございます。御承知の通り、当初の覚書におきましては、両側につきまして道路を作ることの約束があったわけでございますが、この道路の中には、含みといたしまして左岸につきましては林道ということに相なっておりましたので、農林省の林野庁とも関係がございます。それから電源開発ということは企画庁も一役買っているわけでございますので、企画庁の開発部が中に立ちまして、この問題の解決に当ったわけでございます。ただいまお話のございましたように、覚書の実施に伴いまして、それに関する各省協定というものをまず作り上げたのでございます。これは先ほど御質問がございましたが、これにつきましては、関係各省がすべて調印いたしておりまして、各省間に交換いたしておりますから、この線につきましては各省も責任をもって実施いたすことに相なっております。  次に、この案は政府内部の交渉でございまして、関係省といたしましては建設省、林野庁、それから企画庁も調整役として一枚加わりますし、大蔵省といたしましても、予算の関係では主計局、資金の関係では理財局、電気の関係では通産省公益事業局という関係の部局が多かったのでございますが、ただいまの協定を政府内部としては決定したのでございます。この協定に基きまして今度は三県知事との折衝に入ったわけでございます。この折衝の相手方といたしましては、三県当局でありますと同時に、天竜東側総合開発審議会というのが別にできておりますので、この審議会の方々にも御審議願ったのでございます。基本線につきましては御了解いただきましたが、なお十分でないところがございまして、いろいろ折衝いたしました結果、この協定に対する了解事項というものを私の方から示しまして、これにつきまして御了解も得た次第でございます。従いまして、これににつきましては地元側の御了解も得ましたし、またこれに関係のあります各省の所管の局部長の了解も得まして、その調印も済んでおります。
  101. 中島巖

    中島委員 昭和三十年十一月の了解事項といたしまして、経済企画庁の開発部長、林野庁の指導部長、通商産業省の公益事業局長、建設省の河川局長、静岡県知事、愛知県知事、長野県知事、電源開発株式会社副総裁が、これに列記して調印されておるわけでございます。そこで別紙によるところの二十九年十二月十七日の佐久間ダム開発に伴う水没地対策に対する覚書の実施に関する協定でありますが、やはり時間が長くなりますので、この内容の朗読は避けますけれども、右岸関係におきましては、右岸建設分といたしまして十一億三千三百万、それから左岸林道分といたしまして一億七千七百万、計十三億一千万円となっております。そして左岸鶯巣・大嵐間については、表記の覚書の第二項によって処理すること、こういうことになっておるのでありますが、この左岸の鶯巣・大風間についてはどういう結論が出ているかお伺いしたい。
  102. 植田俊雄

    ○植田政府委員 二十九年二月十七日の覚書におきましては、左岸の鶯巣・大嵐間につきましても道路を作る、ただしこの道路は国の計画の決定に従って、会社は応分の費用を負担する、こういうことがきめてあることは御承知の通りでございます。第二段といたしまして、各省協定におきましては、この問題も検討いたしたわけでございますが、鶯巣・大嵐間の左岸の道路につきましては鉄道も通っておりまして、工事上も非常にむずかしいような事情もございますので、その鶯巣・大嵐間につきましては、覚書に書いてございます二項の、その他の道路、橋梁の水没するものについては、現在と同程度のつけかえを会社負担において実施する、この方に切りかえたわけでございます。従いましてその問題については、今度は了解事項におきましては、左岸鶯巣・大嵐間の水没道路、橋梁のつけかえについては、県の指導のもとに地方交通上最も有効な措置をとるものとする。こういうことに相なっておりまして、この問題は当初の覚書の会社負担において実施する、水没道路の補償という形で実施するわけでございますが、その実施に当りましては、地方交通上最も有効な方策を講ずるということにいたしまして、この点につきまして電源開発会社と地元側との話し合いがついたというふうに了承しているわけでございます。
  103. 中島巖

    中島委員 そういたしますと、鶯巣・大嵐間につきましては、会社負担においてやるということで、地元との話し合いがついた、こう了承してよろしいのですね。  それからお尋ねしますが、この予算が右岸において約十三億一千万、これに対しまして電源開発会社から四億三千七百万円の負担、こういうことになっているのであります。ところがこれを見ると、この竣工期間は何ヵ年にやるということが明示してない。これに対してどういう御方針でおられるか、お伺いしたいと思います。
  104. 植田俊雄

    ○植田政府委員 企画庁としては実施官庁でございませんので、従って予算も持ちませんので、何年間に竣工するということは決定する権能がないわけでございます。ただ当時この電源開発負担分の四億三千七百万を、御承知の通り三十一年度より三ヵ年で出すということに約束をいたしておりますので、そういう関係から、電源開発会社も、自分の方だけ早く出して、公共事業の方の予算がそれに伴わないのでは困るというふうな話もございましたので、五ヵ年程度を目標にして竣工したいということを申したことはございます。
  105. 中島巖

    中島委員 ただいま企画庁より率直な御意見の開陳があったのでありますけれども、はっきりと何ヵ年間にやるということはこれにうたってないのでありますが、昭和三十年十一月十日に、東京都千代田区丸の内の東京会館において、第七回の天竜東三河地域地方総合開発審議会議事速記録によって見ますれば、あなたが企画庁を代表いたしまして、そうして、はっきりと明言はできないが、三ヵ年で出す以上は、公共事業は少くとも五ヵ年くらいでやらねばなるまいというお話がございます。しかし五ヵ年で竣工するかどうか、ここに書いた通りを五ヵ年間でやるということを、皆さんにはっきりと申し上げるところまでは、まだ各省の話し合いをつけるわけには参りません。こういうようなことを申しておりまして、五ヵ年くらいでできるだろうという口吻をこれに漏らしておるわけです。従って私の方から出ている溝上委員からも、五ヵ年ということは、別に書くわけでも言明するわけでもないから、そういう見込みでというふうには、多分に考えてよいわけですねという質問に対して、あなたはそうでございますと、こういう御答弁をなされているわけでありますから、大体五ヵ年くらいと了承していてよろしいのでございますか。
  106. 植田俊雄

    ○植田政府委員 今お読みになった速記録の内容について、私は少しも否定する気もございません。おそらくそういうことを申したと存じます。しかしこれは区間によりまして、なかなか五ヵ年といっても無理な区間もございます。また当時委員の方々とも、これは非公式にお話をしたときにおきましても、それは五年といっても、五年に確実にできると約束することも国として無理だろう。しかし、やはり五年というくらいの目標は言ってくれないと困る。こういうふうな話もいたしましたが、私道路につきましても林道につきましても所管していない立場でございまして、ただあっせんの建前で話したことでございますが、当時の私の希望としても、五年は希望したところでございます。しかし五年に確実に、企画庁が責任を持って実施できるかどうかとそのとき詰め寄られますならば、あるいはもっと弱い表現を使わなければならなかったかもしれないのであります。私の希望としては、せっかく二十九年に約束された覚書の実行でございますので、私も現在におきましては五年程度の年限をもって完成されることを希望していることにま変りはございません。しかし何分予算に関することでございますので、当時の調停に立ちました私といたしまして、必ず五年間に完成させるし、またその点についてはっきりとこの国会で約束いたすまでには、私といたしましてもちょっと権限が足りないと存ずる次第でございます。
  107. 中島巖

    中島委員 そこで結局地元民とか地元県といたしましては、政府を代表して企画庁が中心になってこの調整をされたのであって、林野庁に対しても、建設省とも、個々に折衝したのではない、従って企画庁からあなたが見えればあなたが政府の代表者である、こういうように考えてこの折衝はしたわけであります。従って地元民はあなたがはっきりと五ヵ年でやると言わなくても、大体そういうような口吻を漏らされておるのだから、政府のすることであるから五ヵ年てやれるだろうというように了解しておるわけなんです。そこでただいま申されたようなことを建設省並びに林野庁へも企画庁の方から申し伝えをしてあったのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  108. 植田俊雄

    ○植田政府委員 先ほど御指摘になりました覚書あるいは協定、了解事項、こういうものをきめます際には、数回にわたりまして各省の係官の御参集を求めて打ち合せをしたわけでございます。最後までもめました問題は、電源開発会社の負担分を三ヵ年に出すのが適当かどうか、この点は電力会社側から申しますと、公共事業と足並みをそろえて出すのが適当じゃないかというような議論でございまして、これも相当根拠のある議論でございます。この三ヵ年に出すということで相当最後までもめました際におきまして、それでは公共事業の方は何年で出すかというような話になってござるを得ないわけでございまして、その際におきましても、公共事業の方としましては五年目安くらいに出すことにしようじゃないかというようなことを係官のところで申しております。従いまして私その審議会等で話しましたことは、まるきり私の希望だけを申し上げて、当時地元の方に納得していただくために申したことではございません。係官が参集しまして話し合いをしたときにおける係官の全般的な空気を伝えたにすぎないのでございます。しかしながら何分にも道路の予算は、この路線は新規な路線でございまして、公共事業費もこの路線に十分に回していただけるということもそう大きく期待はできませんので、五年を目安といたしましても、それがあるいは十年、八年に延びることもなきに上もあらずということは、当初からひそかに考えておったところでございます。
  109. 中島巖

    中島委員 大体企画庁の方の今までの経過などについて報告を聞いたのでありますが、そこで建設省の道路局長にお尋ねいたしますけれども、その了解事項は、建設省としては河川局長が出席をして名前を連ねておるようでありますけれども、ただいま企画庁の開発部長からお話のあったようなことを道路局長としては受け継いでおるかどうか、この点をお伺いしたい。
  110. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 ただいま開発部長から申し上げましたようなことは私どもの方も聞いておりまして、先ほどお話のありましたような計画で進めておるわけでございます。
  111. 中島巖

    中島委員 道路局長にさらにお尋ねいたしますが、ただいま企画庁の開発部長からのお話を聞くと、そのような方針で進んでおられるという話でありますけれども、しからば三十一年度予算ではどんなふうに計上されておりますか、この点をお伺いしたいと思います。
  112. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 御承知のように、道路整備は五ヵ年計画を立てて実施いたしております。この問題の道路は五ヵ年計画になかったわけでございますので、修正いたしまして五ヵ年計画の中に入れました。しかし金としましては、途中から修正して入れましたものですから、先ほどお話にありましたように道路局で持つ分が九億くらいになるわけであります。それをかりに八年といたしますと一億一千万ずつ入れていかなければならぬわけでございますが、すでに立てておりました五ヵ年計画ではなかなかこれだけの金は容易じゃないわけでございます。この五ヵ年計画は昭和三十三年度までかかるわけでございますが、その後につきましては第二次の五ヵ年計画を立てなければならない。その第二次の五ヵ年計画につきましては、この道路について計画通り実施できるように考えたいと思っておるわけであります。三十一年度につきましては、これはきわめてわずかな金しか入れられなかったわけでございますが、それも長野県側の橋梁に使うということで計画いたしております。ただ電源開発の金が三十一年度から来るわけでございますので、その金はまだきまっておらぬようでございますが、これにあわせて公共事業も考えていきたいというふうに考えております。
  113. 中島巖

    中島委員 このわずかの金というのでは、たとえば十億でも千億に対してはわずかであるし、どの程度であるかわからないわけですが、本年度計上した予算はどれだけであるか、金額でお示しを願いたい。
  114. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 長野県側の橋梁につけておりますが、五百万円だったと記憶しております。
  115. 中島巖

    中島委員 その点が重大な点なんです。たとえば九億を五ヵ年間でやるとすれば、年額一億八千万円になる。かりにいろいろな事情で七、八年となっても一億以上の予算を年間投入していただかねばこれが達成はできぬわけであります。そこでこの電源開発から入る四億三千七百万円を三ヵ年間に出すというようなことがここにあるのであります。そうするとこれだけでも一億五千万近い金になるわけです。それで三十一年度にこの三分の一が電源開発から入るとすれば、補正予算でも組んで工事を増額してやるお考えなのか、それとも現在のわずかな五百万円だけの金でとどめておくお考えであるか、その辺を承わりたい。
  116. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 五ヵ年計画にあとから入れたものでございますから、長野県、愛知県につきましてはかねての五ヵ年計画に圧迫を来たしたわけでございます。そこで従来の計画がそのまま実行できないことになってきますので、この点につきましては県当局とも相談いたしましたのですが、急にほかの個所を減らすということもできないというようなことがございましたので、それでは三十一年度はわずかつけておいて、電源開発の金も出ることだし、それで糸口はつけようじゃないかということでそれだけ入れたわけでございます。しかしだんだん工事が進んで参りますれば、それに応じた金を出さなければならぬわけでございますが、それは三十二年度以降において考えようではないかということで話がまとまったわけでございます。
  117. 中島巖

    中島委員 ただいまのお答えでは、他の道路がすでに査定が済んでと申しますか、予算などがきまっておって、いろいろのやりくりがつかぬ、従って本年度はわずかだけれども、三十二年度には大幅にやる、こういうように解釈してよろしいのですか。
  118. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 大幅にという程度でございますけれども、それは電源開発の方の金も出るわけでございますから、それに応じた金を出していくつもりであります。
  119. 中島巖

    中島委員 電源開発から出る金は四億三千七百万を三年というのだから、先ほど申しました通り、一億四、五千万の金だと思うのです。そこで、ただいま局長の答弁は、電源開発から金が出るから、それに応じたところの公共事業をやられる、こういうように言われたのでありますが、かりに電源開発から一億四千万出るとしたら、それに応じた公共事業とすれば、どのくらいの額がそれに応じた額であるというようにお考えになっているか、承わりたい。
  120. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 これは最終的に何年で完成するかということになるわけでございます。それから割り出されてくるわけでございますが、先ほど開発部長も申されましたように、右岸道路につきましては八年くらいでやりたいうふうに考えております。ただ五ヵ年計画との関係があり、初めの五ヵ年計画ではあまり金が出せない。しかし次の五ヵ年計画においてはその計画が既定年度で終了できるようにつけていきたいと考えておるわけでございます。完成目標を八年くらいに私の方は考えておるわけでございますが、そのような予算の組み方をいたしたいと思っております。
  121. 中島巖

    中島委員 そういたしますと、いろいろ話がはっきりしてきたのでありますが、大体八年間にこの工事を完了したい、こういうようにお考えのようであります。しかし、地元といたしましては、大体五ヵ年間にこの道路をこしらえてくれるだろうという期待をいたしておるわけでありますから、これは質問ではなくて、お願いになりますけれども、なるべく地元の希望をいれて、極力御努力願いたい。  次に、林野庁の指導部長にお伺いいたしますが、ただいま大体道路局長への質問で御想像がついておるとは思いますけれども、この関係で覚書に林野庁指導部長として御署名になっておるので、十分御承知だとは思いますが、この点いかがでございますか。
  122. 仰木重蔵

    ○仰木説明員 十分承知いたしております。
  123. 中島巖

    中島委員 それで林野庁といたしましては、これによってどんな計画をお立てになっておるか、そうして本年度はどんな予算を投入されておるか、この点をお伺いしたいと思います。
  124. 仰木重蔵

    ○仰木説明員 先ほどお話のありましたように、林道関係の総工費は一億七千七百万円になっております。そのうち、電源開発から出す分もありますが、国庫補助負担分といたしましては、本年度は大体二千六百万円投じてこの工事に当っております。従ってなるべく早い機会にこの林道の完成を目標に進めたい、かように考えております。
  125. 中島巖

    中島委員 佐久間ダムの報償道路に対する質問は以上をもって打ち切ります。  次に、門島ダムの災害関係について河川局長質問いたしたいと思います。なおこれが法的関係について法制局にお伺いいたしたい。この問題は、私は本年の二月十四日に前の河川局長の米田さんに質問してあるのであります。そのときに米田局長は、後刻調べて答弁するということで、そのままになっている問題がありますので、これらを中心として質問をしたいと思うのであります。  それでこの天竜川の災害関係につきましては、その節詳しく申し上げてあり、時間の関係もありますので、省略いたしますが、この泰阜発電所の堰堤、すなわち門島ダムの状況について申し上げますと、この門島ダム以下の下流は、河床が平岡発電所の設置以来年々下っている。それから、この上流二十キロ以上先の山吹地積は河床が下って、堤防の根継ぎをしなければならないという状況にある。従いましてこの門島ダムの上流二十キロ以内の地域のみ河床が上昇している。こういうような観点から、この河床の上昇は門島ダムのためであるということはしろうとでも現在ははっきりいたしております。  それで過去十年くらいのうちにどんな災害があったかと申しますと、大ざっぱに申しまして、地方事務所の耕地課の調査におきまして、農地関係の被害だけで十三億数千万円というような数字が上っております。そうして過去十ヵ年間の長野県で行った防災工事でこの地域だけで八十六ヵ所で、九億四千五百万円という金を使っておる、こういう状況であります。  そこで私は、この門島ダムについて果して責任の所在はどこにあるかという点について、いろいろ研究いたしたのでありますが、遺憾ながらどうも建設省側にあるというふうに考えざるを得ないのです。本日は、だいぶ時間も経過いたしましたので、あまり詳しい質問もできませんけれども、その中の、なぜそうであるかという最も重大な点三つについて質問をいたしたいと思うのです。その第一は、泰阜発電所設置の場合の堰堤の許可に対して非常な過失があった。第二に、昭和二十一年に知事が、この河床の上昇によって天竜川のおそるべき災害の伴うことを憂慮いたしまして、知事の伝達命令なるものが出ております。しかるに、二十三年に建設省において関係者を呼び出して、これをあやしげなる代案にかえてしまった。つまりこの治水の根本対策である門島上流の災害を根本的に解決するところの知事の伝達命令を怪しげなる代案に取りかえてしまったために今日の災禍を招いた、それが建設省の失敗の第二点、さらに第三点といたしましては、昭和三十年二月の二十七日に水利利用の許可が切れるのでありますのを、二月の七日におきましてさらに三ヵ年間、地元の諮問もせずに水利利用の延長許可を出した、この三つが建設省として重大なる過失である、かように私は考えまして、これらについて詳細な質問をいたしたいと思ったのでありますけれども、時間の関係もありますので、ごく簡単に要点のみを質問いたしたいと思うのであります。  そこで河川局長にお伺いすることは、あなたの方で発行いたしておる泰阜ダム関係資料の第三であります。昭和三十一年二月にダム上下流縦断河床状況経年変化図というものがありまして、これに計画河床という線がありますけれども、この線は河川堰堤規則の第三条第三項による推定堆砂線と申しますか、堆砂量と申しますか、この線であるかどうかということをお伺いしたいと思うのです。
  126. 山本三郎

    ○山本政府委員 きょうはあいにくその図面を持って参りませんのであるいは御説明があれかと思いますが、第一番目の設置の場合の堰堤の許可について過失があったか、こういう問題だろうと思いますが、これにつきましては当時の技術的の水準であるとかいろいろ調査の結果から考えまして、さらに——当時は内務省だと思いますが、当時におきましては最大の努力を払いましてやった判断でございまして、今日におきましてはいろいろの資料がありますのであるいはもっとりっぱな判断もできると思いますけれども、当時といたしましては最大の努力を払って行なった判断でございまして、ただいま建設省といたしましてはそれを過失であったというふうには考えておらないわけでございます。  それからまた河床の上昇の問題につきましては、天竜川の流域の砂防であるとか、あるいは河川改修の問題につきましていろいろと努力はいたしておるわけでありますが、戦争中あるいは戦後の荒廃のために流域が非常に荒れて参りましたので、そういうふうな天然現象も手伝いまして、当時推定いたしました河床よりも上っておるような部分も見られる、こういうふうに考えております。
  127. 中島巖

    中島委員 それらのことについてはそういう大ざっぱなことでなしに克明に質問いたしますからお答えを願いたいと思います。  それで今お手元に差し上げた泰阜ダム関係資料の第三はあなたの方の建設省河川局でこしらえた資料であります。そこにその図面があるわけなんですが、何計画線とかいう太い線が入っております。今の河川堰堤規則の第三条第三項によって出された推定土砂の堆積線と申しますか、唯積量の線であるように感じるのですが、そうではないのでございますか、いかがでございますか。
  128. 山本三郎

    ○山本政府委員 計画河床というのはダムを作った場合にそこまで河床が上るであろう、こういう線でございます。
  129. 中島巖

    中島委員 そこでその計画河床はその図面でおわかりのように、ダムの設置した場所より七千五百メートルのところでとまって、それ以上は河床が上らぬようになっておるのであります。計画図面はあくまで計画であり推定であり、また建設省としても推定であるのだから、こうなっておったが違うじゃないかと責めるわけじゃないが、七千五百メートルのところでとまっておるにもかかわらず——これは国民経済研究協会の天竜川の治山治水事業という書類で、これの編者佐藤武夫、栗原東洋となっておりますが、ここに河床上昇の昭和二十四年までの図がこまかに出ております。これはどこから出たかと申しますと、天竜川河床整理工事事務所は昭和二十四年天竜川の河床調査をおこない、二十五年三月「天竜川河床上昇による災害調査書」を発表している。(長野県総合開発局刊行「天竜川の洪水について」の第三巻に収録されている)こういうように相当信用のおける資料によりまして、昭和二十四年には七千五百メートルで、それ以上のところは河床が上らぬということになっておりますが、七千五百メートルの飯田線の鉄橋下におきまして十五メートル五十上っている。その地点で上らぬというところで十五メートル五十、十五メートル五十というのは五十一尺一寸五分です。これだけの河床が上っておるのです。それから姑射橋の下においては十二メートル五十、これは昭和二十四年までですよ。そして年平均の河床の上りの度が昭和十年から二十四年までは一メートル四センチ毎年大体上っておる。さらに姑射橋の上流地方において年々八十三センチ、十年から二十四年までは平均して上っている。二十三年から二十四年は年一メ院トル五十平均して上っている。こういうような詳細な資料があるのです。  そこで、あなたは間違いがなかったとおっしゃるけれども、知事の伝達命令においても当初計画したより以上なる河床の上昇によりと言って長野県自体がはっきりこれを証明しておる。そしてこれらの数字も証明しておる。従って昭和三十年の二月までに七千五百メートルまで河床があるけれども、それより上らないというどころが五十尺も四十尺も上っている。これは許可する上において、結果から見て、ここに堰堤を築造する許可をしたことは重大なる過失であって、その当時できるだけのことをしたとあなたはおっしゃるけれども、できるとした線にかかわらず結果においていろいろな条件があったのであろうけれども、この極端な河床の上昇は結局公権力を発動して堰堤築造の許可をする上において重大なる過失であったと私は解釈するのですが、お考えはいかがですか。
  130. 山本三郎

    ○山本政府委員 二十一年に知事が伝達命令を出しまして、それを引っ込めたというお話でございますが、その命令が出たことは事実でございます。それでこの点につきましてはその後いろいろと折衝もありますし、実情も勘案されまして、当時の日本発送電だと思いましたが、日本発送電と知事との間に協定ができまして、ある程度の工事をやりまして、それまでの被害を防止する手段を講ずるということで話し合いがついたわけでございます。  それから堆砂線につきまして非常な違いがあったにもかかわらず水利使用の延長をしたということでございますが、先ほど申し上げましたように、想定した堆砂線は当時といたしましては、いろいろ資料を集めたり、当時の技術水準におきましては考えられる最良の線であったというふうに先ほども答弁いたしたのでございます。先ほどもお話申し上げましたように、最近は河川の流域が非常に荒れて参りまして、この直下流にダムのないようなところの河川におきましても、非常に川底の上昇しておる川が全国に多いのでございます。従いましてこの湛水の及びます終点より上流の問題につきましては、ダムの影響であるか、あるいは天然の作用によるものであるか、なかなか判定のむずかしいような点もあるのでございます。  さて、それではそういうふうに予想と違ったのに水利使用の許可を出したのは過失ではないかということでございますが、これにつきましてはこの発電の重要なることにかんがみまして、公益上の判断に基いて水利使用の延長をしたわけでございます。そのために従来の発電水利使用につきましての条件を緩和したとかいうようなことでは決してございませんし、しかも従来の水利使用の条件によりますると、そのために起った被害については当然発電業者がやらなければならぬということになっておりますので、条件等はさらに付加する必要がもうそれ以上につけられないという状況にあるものですから、そのまま水利使用の延長をした、こういうふうに考えております。
  131. 中島巖

    中島委員 河川局長は私の質問を誤解しておるわけなんです。私が先ほど申し上げたのは、その三つの点について、これから順次質問を展開するということを申し上げた、そうしたら三つの点について一ぺんにあなたは答えてしまうのです。私の質問したことに対してのみお答えを願いたい、かように考えます。  そこでただいま質問いたしておりますところは、すなわち最初のダムの築造を許可した場合、会社側が現在の河川堰堤規則第三条第三項によって出した書類は、七千五百メートルのところで、それ以上は土砂が堆積しない、河床が上昇しないということになっておるのですが、その地点で五十一尺も昭和二十四年までに堆積してしまっておる。従いまして会社で出したところの書類並びに建設省がこれを見て許可したことは、あるいはその当時の状況以後によっていろいろな自然現象によって変化があったかは知らぬけれども、結果から見ればこれは非常な過失であったと思うが、局長のお考えはどうであるか、こういうことを質問しておるのです。
  132. 山本三郎

    ○山本政府委員 今お話のありました堰堤し流の七キロ半、あるいは八キロの地点でございますか、そういう地点では、この資料によりますと推定計画河床から三十年の三月、一番最近の資料によりますと、約五メートルでございますから十五尺ではないかと思うのでございますが、五十何尺というのはどこかほかの地点ではございませんでしょうか。
  133. 中島巖

    中島委員 私もあなたの方から出た資料でみるとそうなっておるのですが、この資料でいくと鉄橋下でそういうことになっておるが、あなたの方の資料は途中から調べてはあるけれども、堰堤築造当時の河床というものはどうもはっきりしておらぬように思うわけです。いずれにしてもこの資料もあなたの方から調べてみて下さい。それにしてもあなたのおっしゃるようにしても、五メートルの河床の上昇ということは重大なことなんです。従ってこれらに対して結果的に見て失敗と申しますか、過失があったというふうに私は考えるのですが、あなたのお考えはどりであるか、こういうことをお聞きしておるわけです。
  134. 山本三郎

    ○山本政府委員 先ほども申し上げました通り、当時の河川状況なりあるいは技術的の水準あるいは当時の経験から申しますと、判断できる最良の線でございました。しかし実情は今申し上げますように、その線より上まで土砂がきておるというのが実情でございます。その点につきましては、当時の技術水準がそこまでいってなかった、あるいは経験もそれまでなかったということでございまして、確かに先ほど申し上げました天然現象もございますけれども、実情は当時想定した河床よりも上っておるということは実情でございまして、ただし、それがために直ちに過失であるとは考えておらない、こういうことでございます。
  135. 中島巖

    中島委員 過失であるないというような議論をここでしておっても仕方がありませんから、その点は触れぬことにしましょう。そこで昭和二十一年七月四日に長野県知事物部薫郎が日本発送電株式会社新井章治あてに、天竜川関係の上流水域の水害予防対策に関する件という厳達命令を出したのです。これは犀川関係と天竜と両方一緒に出しております。犀川関係は省きますけれども、管内天竜川筋下伊那郡川路村並びに竜江村地籍は、いずれも発電施設たる堰堤の影響により河筋の土砂沈積おびただしく、計画当初仮定せる堆積量をもすでに相当超過し、ひいては上流部広範の地域にわたりて極度の河床隆起を生ぜしめたる結果、出水時においてはしばしば異状の高水位を誘発し、かつはなはだしき長期湛水となる傾向あるために、異例の水害を頻発し捨ておきがたい事態に立ち至りたるをもって、河川治水計画確定の重要性にかんがみ、堰堤による堆積土砂の除去をはかる等、右両地籍に対する水害予防の根本対策を樹立し、これが実行方取り計らわれたし。なお、さしあたって左記の応急措置については再び出水期を控えたるこの際それぞれ格別の工夫を集中して急速にその施策の実現に格段の努力をいたされたし、天竜川筋泰阜調整池内埋没土砂の措置、まず阿知川口上流のものより処理し、しかして天竜峡口の疎通能力を旧態に復することに努め、同時に川路、竜江両村地先河床の埋没土砂を二メートル以上浚渫すること、右厳に通達するという厳達命令が出ておるわけです。これはとうてい人力ではできぬ命令を出したわけです。この天竜川の川路、竜江地先の埋没土砂を二メートル以上浚渫せよということは、あの付近は川幅が千メートル以上もあって長さが三、四キロもある。ここの砂を二メートル以上も浚渫するということは、とうていできぬ仕事だ。それからその間上からどんどん土砂が流れてくるし、第一土砂の置場がないわけですが、厳達命令を出して、これが知事の根本対策であるとしたのである。しかるに昭和二十三年にあんたの方の岩澤技官は、地元の川路村長を呼びまして、建設省案なるものを示してこれにかわるところの代案にしてしまったわけです。ここにそのときの会議録がありますけれども昭和二十三年六月十五日に、建設省技監宅において岩澤技監、井土技官、治水課長、それからあんたも見えてるからよく御承知だと思うんです。この天竜川上流地域各村が、災害をこうむっておるにもかかわらず、この会合には川路村一カ村だけ呼んで他を呼んでいない。そしてその結果できた案は、川路村地籍に一千万円で水制工事をし、天竜峡口の岩盤取り除きに三百万円、合計一千三百万円を日発より出さしてその工事をやった。その席に日発より土木補償係長が出席して、こういうことを言っておる。「川路村はこの工事により河心を対岸竜江側へ移さんとするのが念願である。従って工事の結果その期待に反したときは、契約の更改どころか新たなる施設の要求があるかもしれぬ」こういうようにはっきりと、これが根本対策じゃないんだ、この工事はこの水制によって竜江村へ水をやって、それで河心を向うへ変えるのだ、ということを、その会議の席ではっきりと土木補償係長が言っておる。ちゃんと記録に出ておるんだ。にもかかわらずこの知事の厳達命令を取り消して、こうした怪しげなる代案にして、そうして二十四年から工事にかかって、この工事が完了すると同時に、この土木発言のごとく、竜江側七十数町歩の日本三大桑園と言われる肥沃の土地を流してしまっておる。そしてその後河床の低下ということはなくて、むしろ河床は上昇しておる一途にある。従ってこれは第二の重大なる建設省の失敗である。こういうように私は考えておるのですが、御所見はどうか。それからさらに川路村だけを呼んで、対岸の竜江村とかほかの村をなぜ呼ばなんだのか、この点お尋ねいたします。
  136. 山本三郎

    ○山本政府委員 先ほどちょっと早走って御答弁申し上げて申しわけございませんでしたが、二十一年に、多分二十年の災害の直後だと思いましたが、知事が厳達命令を出しまして、お説のようにその内容というものは非常に砂利をたくさんとれというような話でございまして、膨大な内容になるということが予想されたわけでございまして、知事もその命令を出したけれども、膨大な金がかかるので、果して実行できるかどうかということを裏ではやはり心配しておったわけでございます。それで建設省も当時天竜川の上流の改修の問題がありまして、直轄改修に着手してくれという地元の要望ももちろんのこと、県といたしましても早く直轄改修をやってくれというようなお話がありまして、多分二十一年だったと記憶しておりますが、直轄の改修が認められたわけであります。そういうふうな関係もございましたので、この厳達命令につきましても、一つ建設省が直轄改修の計画にも関連があるから一緒にしたいい案を作ろうということで、主として知事さんが河川管理の責任上もありますので、河川計画の問題を建設省におきまして論議したのでございます。その一部といたしまして、さっきお話がありましたように日発が千三百万円の金を出しまして、水制あるいは岩盤の掘さく等を行うということになりますし、その他の工事につきましては建設省が直轄の工事としてやろうということにそのときの話は、まあ表向きは今の日本発送電が千三百万円を出して岩盤の掘さく、水制をやろうということでございましたけれども、その裏には直轄改修でその他の工事をやろうということに、その他は堤防の工事等をやろうということで話がきまりまして、表向きは、長野県知事と日本発送電株式会社との協定書の締結ということになりまして、その工事が進められたわけでございます。そしてその工事をやったために向う側に非常に被害を及ぼしたということを今おっしゃられたのでございますが、あるいは工事の順序とか、そういうものもありますし、天然現象で、ちょうど工事中に非常な水害が起きたというようなこともありまして、多少の手戻りを生じたというようなことはございますけれども、全体の計画といたしましては、今申し上げますように、厳達命令を出した知事さんと日本発送電株式会社におきまして一応の妥結を見て、その線によって工事が進められたということでございますので、決して押しつけたというようなことには私ども考えていないのでございます。
  137. 中島巖

    中島委員 あまりこれを突つ込んでいくとあなたたちの責任究明のようなことになってどうか思うのですが、私は河川局長考えとは全然違うのです。なぜなれば、ただいま河川局長は、日発の総裁と長野県の知事とで協定したと言うけれども、確かに日発の総裁と長野県知事とが当事者になって判こを押しておる。しかしこれは昭和二十三年六月十五日の午後二時に建設省の岩沢技監の宅できめたことを、一応文章に表わして、総裁と知事とで判こを押しておるだけのもので、ことに会議録の冒頭に岩沢技監はこういうことを言っておる。「川路村は、建設省が技術的に最善を考慮した計画に不足がましいことを言わないことにせよ。」と頭からおとしておる、それからこの中にあるのは、長野県からきた穗積という河川課長が、長野県の厳達事項の内容は根本的の対策だと言っておる。それから建設省案を実行してもこれが根本的の対策でないということをはっきり言っておる。そうして先ほど申し上げましたように、十カ町村にまたがる問題を一カ村の安藤村長だけ呼んで決定しておる。日発の土木補償係長は、この工事は河心を対岸に変らせるんだということをはっきり指摘しておる。こういうような点から考えまして、われわれはその内部にいかがわしいことがあるとは思わないけれども、少くとも、川路村の安藤村長がやかましく言うから、安藤だけ黙らしさえすればそれでいい、こういう見解のもとに結ばれたということは、この会議録を読んでみれば、どんな者でも、この裏はどうであるかということが思考できる。知事の厳達命令をそういうような安易なものに取りかえたがために、現在の大きな問題が出ておると思うんです。  そこで法制局の方も、今までの話でこの様子が大体おわかりになったと思いますので、法制局にお伺いしたいと思うのです。この天竜川の水害関係は、昭和十三年から起っておるのです。それで昭和十三年においては川路村が当時ダムの所有者である矢作水力と一札をかわしておる。そうしてその当時は電力会社としては、これはダムのためでないということを主張しておった。これをこまかく読むと長くなりますので読みませんが、昭和十三年の一月十六日には矢作水力の社長の福沢駒吉と川路村長、竜江村長と契約書が結ばれておったのであります。それで竜江村に一千円、川路村に二千円というような金を見舞金として出した。けれどもその内容は、これらの損害に対しては何ともいわないという内容になって、名前は見舞金になっている。それから先ほど河川局長質問いたしました昭和二十五年の竜江の七十余町歩の桑園の流れたときにもこういう差し入れ書をこしらえた。そのときには竜江村に対して百九十万円出した。この差し入れ書は、「別紙記載の金額を貴社より受領の上はさきに貴社へ申出た昭和二十八年七月天竜川筋洪水による当村内水害問題一切を解決したものとし若し本件に関し村民より異議又は要求等を生じた場合は一切村の責任において処理し豪も迷惑を及ぼさない。右後日のため本書を差入れます。」こういうものを取ってあるわけです。そこでこれも最初は見舞金として、この覚書の二項にこういうことがあるのです。「前項の金額は今回の川路村地籍水害に因る諸被害並びに乙の計画に係る浸水家屋移転及び其他の復旧改良事業に対する甲の厚意見舞金とする。」というように厚意見舞金とするのだ。ただしそのうちには、この災害によって生じたものは一切村において解決して、こうも会社に迷惑をかけませんというような覚書ができておる。地元の者は、国家賠償法という法律があるとか、民法七百十七条によって、この土地の工作物の所有者に対して請求することができるとかということを知らないのです。従って他に請求の方法がないから、幾らでももらっただけはありがたいというようなことで、結局見舞金ということで、その内容は、一切あとでこれに対して被害を受けた者の請求さえ村で責任を負うという内容にしてある。そこであなたにお聞きしたいのは、民法の九十五条の「意思表示ハ法律行為ノ要素二錯誤アリタルトキハ無効トス」、この条項に当てはまるかどうかということです。
  138. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 お答えいたします。ただいまのお尋ねの点は、ダムの建設に伴いまして電力会社と被害を受けた人との間の問題をどのように解決すべきかどうかという場合に、見舞金を出して、その問題については以後何らの請求もしないという話し合いが電力会社とその相手方との間にあったとすれば、その結果はどうなるのだというお話だったと承知いたしたのでありますが、その問題はまず第一に考えなければならないことは、ダムの建設であろうと何であろうと……。
  139. 中島巖

    中島委員 ちょっと違いますので……。今私が法制局に質問いたしましたのは、先ほどの河川局長との質疑応答で大体おわかりだと思いますが、過去において何回かの災害があったのです。そこでその一つの例を取り上げますと、昭和二十五年に竜江村の七十余町歩という肥沃な耕地が流されてしまった。そこで竜江村としては、県知事に対しましてダムによる災害だと思うから何とか調停してくれということで、知事が中に入って調停した結果、中部電力から百九十万円出した。ところが七十余町歩という耕地は一反を二十万円としても一億四千万円、それから八百メートル近い堤防をこしらえております。これは村でこしらえたのではないが、メートル四百円としても三千二百万円、つまり二億近いところの損害を受けておったわけだ。ところが村としては、はっ送り発電所の堰堤のためであるかどうかという立証もできない、民法第七百十七条の土地の工作物に対して請求ができるということも全然知らぬ、国家賠償法によって請求できるということも知らぬから、従って請求できぬものと思っている。幾らでももらい得だというように考えている。そこで知事が入って、ここの文句にある通り、会社は損害賠償ではなく厚意見舞金として百九十万円を出すということで妥結したのでありますが、その内容を見ると、村が一切の責任を負って、個人の損害についても会社に請求をさせなということを見舞金の下に持ってきて入れた覚書を会社でこしらえて、はんこを押して取りかわしているというのが実情だ。そこで村では、民法によって請求できるということも知らぬし、国家賠償法によって請求することができるということも知らぬし、堰堤のためだという立証ということもできないし、幾らでももらえばいいんだからこれだけもらって、そして今言ったような覚書をこしらえて——これは一回ばかりじゃないのです。何回も何回も、各村にわたってあることなんです。こういうようなことは民法の第九十五条にあるところの「意思表示ハ法律行為ノ要素二錯誤アリタルトキハ無効トス」これに該当すると思うが、法制局の御意見はどうでありますか。こういうことをお尋ねしたのです。
  140. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 先ほど答弁申し上げて途中で説明を詳細にされましたので、大体御質問の御趣旨はよく了解しておったのですが、御質問の中に国家賠償法の問題であるとか、民法七百十七条の問題が出ておりましたので、一応その関係を御説明したあとで民法九十五条の御説明をいたそうかと、こういうつもりで少し前置きが長くなっていかにも私が問題を了解してないようにおとりになりましたことについて非常に恐縮に存ずる次第であります。  単刀直入にお尋ねの点だけをお答えいたしますと、民法九十五条による、その場合錯誤があったかどうかという点につきましては、その話し合いと申しますか、電力会社と村なりその人たちの間に果していかなる意思の、内容の申し合せがあったかどうかということを具体的に判断いたしませんと、この席で民法九十五条による錯誤による意思表示として無効であるかどうかという判断はいたしかねるような次第であります。
  141. 中島巖

    中島委員 この問題は何も本日ここで直ちに御言及願いたいというわけではありませんから、もっと具体的に、私の方で書面をもって出しますから、一つお調べになってまた書面でもって御返事いただきたいと思います。  そこでだいぶ時間もたちましたので、ほかの方にも大へん恐縮でありますので結論を急がねばなりませんけれども、ただいまの第二の私の失敗として考える知事の厳達命令を政府が中に入って変えたことにつきましては、どうも今河川局長の答弁を聞いても納得できないのであります。私の考えが、答弁を聞けば聞くほど正しいと感ずるのでありますが、これ以上追及すると申しますか、お尋ねすることはやめることにいたします。  そこでこの水利使用許可伸長の問題についてお尋ねしたいと思うのでありますが、これは御承知のように昭和三十年三月二十七日でもって門島堰堤と申しますか、泰阜発電所の水利使用の許可の期限が切れるのでありまして、そこで昨年の三月九日に政府はこれに対しまして昭和六十年三月二十七日かまでの水利使用の伸長許可を与えたわけであります。そこで河川局長にお尋ねすることは、この水利使用の許可は、何と申しますか担当の役人が自分の考え通り勝手に許可ができるものか、あるいは法律的に何か規制があって、その規制によって許可をすべきものであるか。この点をお伺いしたいと思います。
  142. 山本三郎

    ○山本政府委員 河川法には水利使用の許可は行政官庁の裁量ということになっておりまして、その基準は公益の判断が基準になっております。
  143. 中島巖

    中島委員 結局ただいまの答弁から考えますと、裁量ということになっておれば法的には何らの規制がない。けれども参考としては河川法を参考にして許可をする、こういうことに解釈してよろしいですか。
  144. 山本三郎

    ○山本政府委員 今の点は河川法の十七条、十八条に規定されておるわけでありまして、工作物の新築、改築もしくは除去という面につきましては「地方行政庁ノ許可ヲ受クヘシ」ということになっておりますし、それから十八条は「河川ノ敷地若ハ流水ヲ占用セムトスル者ハ地方行政庁ノ許可ヲ受クヘシ」ということでございまして、地方行政庁の裁量ということになるわけでございます。ただ政令の定めるところによりまして建設大臣の認可を受けなければならぬものが規定されております。
  145. 中島巖

    中島委員 それで今の御答弁によると裁量であるから結局何ら法律の規制がない、こういうように解釈してよろしいのですか。
  146. 山本三郎

    ○山本政府委員 法律にはそういう判断でやらなければいかぬということは規定されております。
  147. 中島巖

    中島委員 法律にはこういう判断でやらねばいかぬということは規定されてはおるけれども、許可認可に対する規制すべき法律はない。つまり担当官の考えだけで、極端に言えばその担当官の思うままに決定していい、こういうように解釈してよろしいのですか。
  148. 山本三郎

    ○山本政府委員 その許可につきましては担当官の裁量によるわけでございますが、その基準となるものは公益判断でございます。
  149. 中島巖

    中島委員 同じことを繰り返しておるようですが、結局公益の判断ということであって法的には規制がない、こういうように担当官の判断でもって許可ができる、現在の法律では、私もそろ思うのですが、そういうように解釈してよろしいわけですか。
  150. 山本三郎

    ○山本政府委員 法律上は規制はございません。
  151. 中島巖

    中島委員 そこで法律上で規制はないにいたしましても、河川法の二十条においていろいろな、つまり河川の制限と申しますか警察と申しますか、これは読むと長くなりますので略しますけれども、いろいろな警察制限をしておるわけです。そこであなたは公益上ということを言われましたけれども、この場合においてこの河川法の二十条によれば、「左ノ場合ニ於テ地方行政庁ハ許可ヲ取消シ若ハ其ノ効カヲ停止シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ又ハ既ニ施設シタル工作物ヲ改築若ハ除却セシメ又ハ原形ノ回復ヲ命シ又ハ許可セラレタル事項ニ因リテ生スル危害ヲ予防スル為ニ必要ナル設備ヲナサシムルコトヲ得」ということで、この六号には「公益ノ為必要アルトキ」とあり、さらに二項には「河川状況ノ変更其ノ他許可ノ後ニ起リタル事実ニ因リ必要ヲ生スルトキ」というようにはっきりと明示いたしてあるわけなのです。そこでお尋ねすることは、この河川の水利使用の許可については任意事項と申しますか、といたしましても、かような法律のある限り、これらの法律に少くとも準拠してというか、参考してやらねばならぬ、こういうように考えるのです。お考えいかがですか。
  152. 山本三郎

    ○山本政府委員 今の点につきましては仰せの通りでございまして、その精神をもって運営しているわけでございます。
  153. 中島巖

    中島委員 そこで河川局長にお尋ねするが、門島ダムの水利使用の伸長許可は昨年の二月したわけなんです。その当時あなたは、門島ダムによって何ら上流地方に災害がない、公益を害するおそれがない、こういうように判断をして許可を与えたのかどうか、この点お伺いいたします。
  154. 山本三郎

    ○山本政府委員 今の延長の問題は、実は建設大臣には主管の事項になっておりませんで、河川管理者だけでやった問題でございまして、その辺の判断は知事におきまして、被害ももちろんあるということも考えられたと思いますけれども、公益上の判断によりまして伸長することが公益上必要であるという建前において期限を伸長した、こういうように考えます。
  155. 中島巖

    中島委員 ただいまの判断は知事がした、そうして公益上必要があるから、こういうお話でございましたが、その公益上必要というのはどういうことですか。
  156. 山本三郎

    ○山本政府委員 従来の慣例によりまして、先ほどもお話がございましたけれども、今までありましたものを延長するに際しましては、知事がそのときに考えまして、この発電所の効力を停止するとかあるいは撤去さすとかいうようなことが、その時代におきまして公益に対してどういう影響があるかというようなことを勘案いたしまして、延長するわけでございます。
  157. 中島巖

    中島委員 それで公益上あなたは必要があるということを言われたが、どういう公益上必要があるか。お尋ねしておるのはこの点なんです。
  158. 山本三郎

    ○山本政府委員 この発電所は、継続して運転させることが公益上必要であるという判断であると思います。
  159. 中島巖

    中島委員 そこであなたは、今までの天竜川の門島ダム上流の特定地域における災害の発生ということを十分御存じだと思う。そこでそのころ私が質問した場合においても、電気事業は公益のため必要である、こういうことを言われ、また今もそれと同じような趣旨のことを言われた。そういうような観点から許可したんだ、こういうお考えのようなのです。そこで国の基本法の憲法を引っぱり出すのもどうかと思うけれども、憲法の第二十九条は、「財産権は、これを侵してはならない。」とはっきり言ってあるのです。そこで第二項に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」さらに第三項において、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こうろたってある。従いまして基本的の問題として、個人の財産権は、これは侵してはならないのだ、しかし公共の福祉のためには正当なる補償を前提としてこれを供することができるのです。これは建設省関係の土地収用法なんかも、この建前にのっとるわけなんです。それを過去においてあれだけの大きな被害をこうむり、国としても何十億という、県の工事代だけで九億何千万、こういうような大きな被害をこうむっており、そして先ほども申しましたけれども、無過失なる農民に対して十数億の損害をかけておることがはっきりしておる。この場合に、たとい公益の事業であっても正当の補償を前提とせずして、何ら制限を加えず期限伸長の許可をしたということは、これは河川管理者の県といたしましても、政府としましても、重大な失敗である、私はこういうように思うのです。その時日が迫っておりますれば、一年なり二年なり仮認可を与えておいて、その間に地元とも折衝したりして会社に適当な措置を講ずるような方法を講じて、その結果三十年とかいう長い認可をすべきだ、こういうように私は考えるのでありますが、この点について河川局長のお考えはいかがであるか。
  160. 山本三郎

    ○山本政府委員 仰せの通り発電所の許可に当りましては、公益のために水利使用を許可するわけでございますが、発電所を作ったために個人的にあるいは地方的に被害を特に受けたというような方があるならば、当然その補償なりをすべきものであるというふうに考えているわけでありますし、それからまたそのために起った被害を除去するために工作物を作るというようなことも、当然その水利使用の認可を受けた企業者においてやるべきものであるというふうに考えております。
  161. 中島巖

    中島委員 時間もだいぶ経過したので、ごく簡単に私の意見を述べて終ることといたします。これは局長もよく御存じですが、宮崎県の大淀川の轟ダムですが、これに対してはすでに一年前から水利の更新期にも当らないのであるが、調査委員会というものを設けて、そうしてこの調査委員会では宮崎大学の教授、それから九大の教授、熊本大学の教授、福岡の通産局長であるとか、九州地建の局長であるとか、宮崎の測候所長であるとか、この方面の造詣の深い者が十数名でこの調査をして、どういうふうにしたら被害が少くなるかというような研究をして、結論を一月ごろ得たという話を聞いているわけなのです。地元においてもこのくらい慎重にやっているのです。このダムの土砂の堆積と比べると、天竜川の土砂の堆積というものは比較にならぬ大きなものなのです。そうして水害もたびたび起っている。その水利使用の伸長許可をするに当って、これだけの災害が起っており、かつては知事がとうてい人力ではできないような厳達命令を出しているにもかかわらず、何らの制限も条件も付さずして、そうして三十年もの水利使用の伸長を許可したということは、いかにしても、過失であるとか違法であるとかいうことではなしに、実際河川管理者の政府として、県としてあまりにも情ない処置だ、こういうように私は考えるのであります。現に河川法の二十条を適用いたしましても、あらゆる条項を適用しましても、これらの除去はできるわけなのです。これをしたためにさらに問題が紛糾し、永久に解決のできぬような状態になってきておるわけであります。従ってこれに対して地元は現在訴願をしておるわけで、あるいはすでに河川局へその書類が届いて出るかと思いますけれども、その訴願に対しては、国全体の河川を監督するあなた方は、そうこまかいところまで気がつかないのだから、たとえば知事の厳達命令に関します措置だとか、その他をこまかく究明する意思は持っておらないのでありますけれども、こういう事態がわかったら、もう虚心たんかいに率直に善処してもらいたい。従ってこの訴願に対しては書面審理などによって返さないように、責任のある者が現地へ出てきて十分調査して、公正な政府らしいところの訴願の取扱いをしてもらいたい、こういうことを要望いたしまして、私の質問を打ち切ることにいたします。
  162. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。     午後二時四十一分散会