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1955-05-27 第22回国会 衆議院 大蔵委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十七日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君    理事 大平 正芳君 理事 横路 節雄君    理事 春日 一幸君       宇都宮徳馬君    杉浦 武雄君       中山 榮一君    坊  秀男君       森下 國雄君    山村新治郎君       山本 勝市君    淺香 忠雄君       黒金 泰美君    小西 寅松君       小山 長規君    古川 丈吉君       石村 英雄君    石山 權作君       木原津與志君    横山 利秋君       井上 良二君    田万 廣文君       町村 金五君  出席公述人         茨城県知事   友末 洋治君         日本トラツク協         会常務理事   小野 盛次君         石炭協会会長 万仲余所治君         石油精製懇話会         理事長     寺尾  進君         日本鉄鋼連盟専         務理事     岡村  武君         大日本水産会副         会長      伊東 猪六君         興国人絹パルプ         株式会社社長  金井 滋直君         日本証券業協会         連合会会長   小池厚之助君         東京銀行協会会         長         (富士銀行頭         取)      迫  静二君         東京法人会連合         会税制委員長  中村 重喜君         君  述  業 高橋 亀吉君         税  理  士 桂田  斐君         日本官公庁労働         組合協議会税制         部会副委員長  笹川 運平君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の  一部を改正する法律案租税特別措置法等の一  部を改正する法律案地方道路税法案及び関税  定率法等の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより大蔵委員会公聴会を開会いたします。  議事の進め方について、委員諸君にあらかじめ御了承願っておきたいと存じます。本日出席を求めております公述人は、お手元に配付してある公述人名簿にあります十三名なのでございますが、時間の都合上、午前中は地方道路税法案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の両法案に関する六名の方々より意見を聞くこととし、午後は所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案の三法律案に関する七名の方々より意見を聞くよう、委員長において取り計らっておりますので、さよう御了承願っておきます。  それではこれより地方道路税法案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の両法案について、御意見を承わることといたします。  その前に御出席公述人各位一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、当委員会のために時間をおさきいただき、御出席下さいましたことは、まことに感謝にたえません。申すまでもなく、この公聴会を開きますのは、目下当委員会において審議中の地方道路税法案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の両法律案につきましては、院の内外を問わず、広く活発な論議が展開されており、当委員会におきましても、地方道路税創設揮発油税等との関係並びに石油関税復活等につきまして、種々論議を重ねて参りましたが、特に重要な歳入法案でありまするから、ここに公聴会を開き、広く各界の学識経験者並びに利害関係者の御意見を承わり、両法律案審査の慎重を期するとともに、その審査を一そう権威あらしめんがためのものでございます。何とぞ各位におかれましては、十分忌憚のない御意見をお述べ下さいますよう、委員長よりお願い申し上げる次第でございます。  なお議事順序について申し上げますが、公述人各位の御発言順序は、特に必要ある場合は、適宜委員長において取り計らいますが、大体公述人名簿にあります通り順序によって御発言願うこととし、御一人の発言時間は、大体十五分以内でお願いいたしたいと存じます。また公述人各位に対して委員諸君より御質疑があると存じますが、これは、公述人各位の御発言が一通り終りましたあとで一括してお願いいたすことといたします。  なお念のために申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところにより、御発言の際は委員長にお声をかけていただき、許可を得た上で御起立して御発言を願います。また御発言内容は、意見を求められた範囲を越えないようにし、委員質疑の際に、公述人側より委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、御了承願っておきます。  それではこれより順次公述人の御意見を承わることといたします。まず茨城県知事友末洋治君にお願いいたします。
  3. 友末洋治

    友末公述人 今回政府国会に提出され、目下御審議に相なっております地方道路税法案につきまして、道路管理者といたしましての立場から若干意見を申し上げたいと存じます。  まず第一に、地方道路税創設することにつきましては、理論の上からも、また実際の上から考えましても適当であると考えまして、これに賛意を表するものでございます。すなわち現行制度におきますところの道路行政というものは、国が直接に、あるいはまた国が地方と協力し、あるいはまた地方限りにおきまして、それぞれ担当してこれを行なっているのでございますが、これら道路整備に要します経費を国の方で揮発油税に求められます以上は、地方においても国と同様に、揮発油に対する課税によることが理論上当然のことと考えます。  次に実際の上からいたしましても、国の所管にかかる五ヵ年計画全国的視野におけるものであり、またその延長は全体の一割程度にすぎないのでありまして、その計画に織り込まれていない国道府県道の改築、舗装等は、地方団体みずからが施行しなければならないのであります。従って道路整備五ヵ年計画実施のみをもっていたしましては、自動車交通に対する需要を満たし得ないのでありまして、国の五ヵ年計画密接不可分関係に立つ地方独自の道路整備たとえば、五ヵ年計画国道と直結しておる重要支線改良待避所の設置、あるいは橋梁のかけかえなど、これらは現実に深刻な必要性を持っておるのでありますから、この道路整備五ヵ年計画の施行とあわされて、よく歩調をとって行われることによって、全般的な効果を発揮せしめなければならないのであります。  また国道を初め、すべての道路維持修繕は、地方公共団体管理者の重要な責任でありますので、これらは国の五ヵ年計画不離一体関係に立ってこれを行わねばならぬこと左考えますとき、道路に関しまする経費は、中央地方を通じ均等に配分され、またこれを適当に確保されなければならぬものであろう。通路網の性質からさように考えざるを得ないのであります。  もし地方財源が国の財源に比し、はなはだしく均衡を失するときは、五ヵ年計画効果は著しく減殺され、租税負担者の受くべきはね返りの利益はきわめて薄弱なものとならざるを得ないのであります。かかる意味において、地方道路税創設されますことは実際的にも当を得たものと考えます。  第二に、国の揮発油税とは別個の税としての地方道路税は、昨年度における揮発油譲与税に比較いたしまして、地方団体にとっては道路整備に充てるべき財源独立性安定性を強めることになりまして、ひいては道路整備に対する責任感を一層深めることになるのではなかろうか、かように実は考えるものでございます。特に御承知のように、地方財政というものが非常に窮乏して参っておるのでありますが、その根本の原因は、給与費あるいは公債費等消費的経費というものがだんだん膨脹して参るのでありますが、それに伴うところの一般財源の付与が非常に窮屈であります関係から、勢い投資的な事業、特に単独事業に必要なところの財源というものがますます窮屈になって少くなって参る、かような全般的な傾向に相なっておるわけでございます。さような関係から考えますれは、国の重要な国策でございます道路整備五ヵ年計画、またこれと密接不可分関係に立ちますところの地方道路事業というものが、総合的に均衝がとれて実施されます場合におきましては、やはり一つのひものついた財源をここに確保されますことが、中央地方を通じて行われますところの道路行政財源一つ安定性を与えてくることに相なりますので、これらの点から考えましても、この地方道路税創設というものは当を得たものと考えておるものでございます。  第三には、地方道路税の今回計画されておるところの税率が適当であるかどうかの問題であります。昨年度は、地方道路整備財源のため、揮発油税が一キロリットル二千円増税され、これが財源になって、譲与税になって地方地方に譲与されたのであります、本年度もさらに地方道路税創設に伴って、重ねて二千円の増税を負荷されることになるのでありますから、租税負担者の側に立って考えますと、ある程度酷なような気持もいたし、これらの負担者の心情に対しては、まことに察するに余りあるものがあるのであります。翻って道路の現状を見ますと自動車大型化輸送の長距離化等急激なる自動車交通の発達につれて、道路橋梁等損傷がきわめて大きく、その補修改良等にできるだけの努力を払っても、なおはるかに損傷程度にはほど遠く、随所で中小橋梁は荷重の制限を行なっておりますし、砂利道は少しの長雨でも泥濘と化し、交通を遮断せざるを得ない状況にあります。道路管理者といたしまして、たくさんの交通関係者に日々おかけしておる御迷惑に対しては、まことに相済まぬことと存じております。  かかる深刻化傾向を緩和するため、一部においては、車輌の大きさや積載量を制限して、道路損傷を防止すべきであるとの主張をなすものがありますが、かような消極的態度はとるべきでなく、むしろ進んでもっと道路整備して交通円滑化を期し、産業文化発展の促進をはかっていくという積極的な態度をあくまでも堅持すべきではなかろうか、かように考えておるものでございます。  またこの道路密接不可分関係に立ちまする地方財政状況も、御承知のよべに近年悪化悪化を重ねて参り、二十九年度の決算見込みにおきまして、約五百六十億円の赤字が予想される実情にあります。  このような帯しい財政状況のもとにおきましても、道路行政重要性にかんがみまして、各府県とも最大努力を払い、道路整備に当っているのが偽らざる現況であります。試みに茨城県の昭和二十九年度における道路整備のために投入した経費を申し上げますと国の計画からする通路整備五ヵ年計画通路に、三億三千六百万円をつぎ込んでおります。これは純粋な章県費財源も約三分の一程度含まれておるものであります。それからその他の単独事業に二億二千万円投じ、合計五億五千六百万円に上るのであります。また単独道路事業に充当した経費の内訳は、一般財源として一億一千二百万円、起債八千万円、地元負担金二十八百万円と相なり、この一億一千百万円の一般財源の中には、昨年設けられましたところの揮発油譲与税のうち、三十一億円分に相当いたしますものが、七千八百万円これに含んでおるのでございます。  なお本県の単独道路事業に要しますところの通常経費を一応算定してみますと、五億八千万円程度を充当とするのでございますが、これに対して、現在苦しい財源の中から許される最大限度実施額は、先ほど申し上げましたような二億二千万円でございまして、その通常行うべき姿に対しまして現実に行なっておりますその率は、わずか三八%程度にすぎないような哀れな姿であります。さらに三十年度以降についての地方財政は、今回政府国会に提案されております地方財政計画案によって見ますと、ますます悪化傾向をたどらんといたしておるのでございまして、すでに約五百億円以上の財源不足が見込まれざるを得ないだろうというような状況でございます。その中でも、単独事業におきましては、昨年度に比しまして、約百二十六億円の節約を見込まれようとしておるのでありまして、政府計画通り事業を行うといたしますれば、道路費につきましても、昨年度に比し、約二〇%の事業た縮小せざるを得ないというような数字的な計算に相なるのでございます。しかしながら道路に関しまする費用の節約は、まず今日が最高の限度でありますことは、言うまでもないのでございます。これ以上道路単独事業経費節約いたしますることは、実際不可能でございます。おそらく各府県とも、最小限度交通状況を確保いたしまするがためには、赤字覚悟事業を執行せざるを得ないというような結果に相なるのではなかろうか、かように実は憂慮いたしておるものでございます  このような財政窮之のときに当り、地方道路税創設され、地方道一般財源に優先的に充当される方向をとることは、まことに意義深いことでありまして、この制度実施されたといたしますならば、地方団体は、たとい財政は苦しくとも、おそらく既定経費の削減を極力避けまして、道路整備の方面にさらに一層の努力を払う結果に相なるだろう、かように考えておるものでございます。  なお従来道路損傷負担金として関係業者の方の番付金を得て、その整備費に充てたのでありますが、今日では道路法によって各県ともこれを廃止し、かような負担金制度を実行することもできかねるような状況に相なっております。かかる状況下におきまして、この悪道整備し、産業発展基礎を固める必要からは、自動車関係者にはまことにお気の毒ではありますが、何とか一つ、この際忍びがたきを忍んでいただいて、二千円の増税に御協力いただきたい。また地方団体としては、その業者の誠意にこたえる意味において、財政窮乏を押し切って、極力最優先的に財源の捻出に努め、通路整備方向に突き進み、少しでも関係業者の不便と不自由を緩和し、車両損耗を極力防止し、輸送能力の向上をはかるという方向をとらざるを得ないのではなかろうか。またこれもやむを得ないのではなかろうかというふうに存ぜられるのでございます。  かような悪道を少しずつでも改良いたしまして、産業経済基礎の確立を、国も府県業者も三者一体となって努力をいたし、そうして自動車交通発展の趨勢に一つの明るい希望をこの際見出したいものというふうに、地方道路管理者といたしましては期待を申し上げておりますような次第でございます。  以上をもちまして、管理者としての意見を申し述べた次第でございます。
  4. 松原喜之次

  5. 小野盛次

    小野公述人 私は日本トラック協会小野盛次でございます。地方道路税並びにこれに関連いたします揮発油税につきまして、一言意見を申し述べさせていただきます。  政府がこのたび地方道路税を新設いたしまして、地方道路税として揮発油一キロリットルにつき四千円、それから付則におきまして、揮発油税一万三千円を一万一千円に下げると法律内容に明示されたのであります。鳩山内閣国民に対して、低額所得者に対する減税、あるいは中小企業者に対しての税負担軽減というようなことを看板に掲げられておりながら、われわれ揮発油を消費する業者にとっては耐えられない重税が課せられるということになったのであります。現在課せられておる揮発油税一万一千円の経過について一応申し述べますと揮発油税創設されたのは、昭和十二年に初めて揮発油税が課せられまして、これはわずかに、ガロン五十一銭に対して一割の課税でありましたが、これは石油専売法の制定と同時に廃止になりまして、その後昭和二十四年に法律四四号で揮発油税法が制定されまして、当時従価税で一〇〇%の税が課せられたのであります。こういう高率課税に対して、私たちは当時自動車用燃料代用燃料を使っておりまして、石油統制時代でもあり、きわめて少量の配給であったから、高率課税に対してもそのままのんだようなわけであります。しかし二十五年の末から代用燃料石油燃料に切りかえられて、液体燃料需要がますますふえるに従って、不当な課税に対して、われわれは国会その他に陳情、軽減方を要請いたしまして、昭和二十六年の一月から一万一千円という課税になったのであります。しかしこの一万一千円に対しても、われわれは非常に高い、何とかもう少し低率にしていただきたいということを要請しておりましたが、いろいろの事情でわれわれの要求が入れられず、昭和二十九年の一月になりまして、道路整備五ヵ年計画財源に関する臨時措置法が制定されると同時に、これの財源として一万一千円の揮発油税が一万三千円に、二千円増税されることになったのでありまして、この件につきましても、昨年三月十二日、衆議院大蔵委員会で私たちは非常に苦しい事情を虚し述べて、増税反対を唱えたのであります。しかしながら、道路整備ということは国の重要な施策でもあるために、やむを得ずこの案に賛同せざるを得ないという立場になって今日に至ったのであります。  今回、減税をするという大蔵当局の一枚看板の中に、揮発油税だけを上げるということは、われわれどうしても納得できない。なぜならば、酒の醸造量をふやして税収を上げる、あるいは砂糖の輸入外貨をふやして、輸入量によって税収を上げる、しかし揮発油だけは税率を上げて、そうして増収しようということは、われわれ石油を消費する一部のものの負担にこれが課せられてくることになり、税負担均衡を欠いてくる、われわれはこういう点を反対するのであります。  このたびの揮発油税につきましても、大蔵当局方針というものが、果して一貫した方針があったかどうかという点に疑問を持つのであります。最初揮発油は、一万三千円を一万七千円にして、三百七十億の税収計画する、その後二方五千円にして揮発油税は一万円、地方道路税は五千円、そして三百五十億の税収をはかる、四月になりましてから、揮発油税は一万一千円、そして地方道路税を四千円、結局二万五千円、そして三百三十三億ということになりまして、四月十九日の閣議においてこれが決定されて、本案が国会に提案されたのであります。  これらの大蔵当局のお考えになる揮発油税につきまして、私は大体六つの理由をあげてここに反対を述べさしていただきたいと思うのであります。  第一の理由は、揮発油は、その九五%が自動車用燃料として使用されておりますのに、この税率が、現在で約七割程度の税がかかっております。同じ動力源である電気ガス石炭等税率というものを考えてみたときに、電気ガスの一〇%に対しては非常に高い。反面最も奢侈品といわれる金、白金、ダイヤモンド等が二割であります。あるいはゴルフ用具その他の奢侈品でも五〇%程度の税であるのに、われわれの唯一の動力源である揮発油に、現在の七〇%にさらに課税をしようということは、はなはだわれわれにとっては矛盾を感じます。大蔵当局のお考えが何であるか、どこにねらいがあるかと申しますと、徴税が容易であり、しかも確実であるというような点から、とれるだけとる、そういう今日までの態度をわれわれから見るならば、大蔵当局は高利貸し的の手段を講じておられるのではないか、かようにまで私たち大蔵当局に申し上げたいのであります。  第二の理由としましては、アメリカを除く諸外国揮発油税は非常に商いんだ、だから日本はもっと上げてもいいんだ、こういうことを口にされるのであります。これははなはだしい錯覚であって、また詭弁であると思うのであります。お手元に配付しました資料の第一をごらん願いましても、日本揮発油税各国から見て高く、安いということは言えないではないか。大体において高いところはイタリアフランス、イギリス、ベルギー、ドイツ等でありますが、日本統計によりますと、高い順序からいったならば七番目で、しかもこの資料におきましては七番目になっておりますが、昨日夕刻入手した資料によりますと、これはあと先生方に追加でお届けしたいと思いますが、世界で高い順からいったら五番目であります。一番高いのはインド、これは昨年国連統計が出した資料に基いておりますが、国民所得税率ということで一応比較しております。高い順から申しますならば、インド、ポルトガル、イタリア、ブラジル、その次が日本でございます。六番目かフランス、七番目がドイツ、八番目がオランダ、九番目がべルギー、こういうふうにして、十八ヵ国ばかりの順位を示した一覧表がございますので、後刻これはプリントにしてお届けいたしたいと思うのであります。それと、いわれる税の負担力があるかないかという問題でありますが、これも御承知のように、国民所得の上から見て、日本がどんな状態にあるかと申しますと、非常にわれわれ心細いのであります。国民所得については資料二にございますが、日本人所得というものは、大体老人子供を入れて一人当り五万八千円程度でありますが、この国民所得順位におきましても、資料二に示したように各国から見ればはるかに低い。これをわれわれの生活水準から見ましても、御承知のように欧米人自動車を持つということは、一家族で二台、三台などはざらである。日本人が自転車を持つよりも容易であるということは御承知通りであります。かように生活水準が低い日本が、諸外国揮発油税率だけを同じようにしようということは、矛盾もはなはだしいと思うのであります。  第三の理由といたしまして、先ほど申し上げましたように、揮発油税というものが年々上っていく。かようなことで、トラック事業、あるいは自動車事業というものがどういうふうなあり方になるかというようなことも、私たち考えなければならない。道路整備のために金を使うということ、目的税にするということはわれわれ賛成であります。この点は、友末知事からもお話がありました通り国道地方道ともに十分に建設、補修をしていただきたいことは、われわれの多年の要望でありますが、これを全部揮発油消費者負担のみにおいてやることについて、いささかわれわれ不満があるのであります。揮発油税の今日までの大蔵当局のお考え、あるいは予算の上に出された数学等を見ましても、最初ははなはだ過小に見て、そうして自然増でこれが増収をはかっておるということは、二十九年度の一つの例を見ましても、事初二百三十七億六千七百万円の予算であった。それが現在では、今日の新聞あたりを見ても、二百九十億というような数字が出ておりますが、われわれは、三百億を越すと思うのであります。かりに二百三十七億六千万円といたしますと、需要量は百八十万キロリットルに当るのであります。ところが実際の二十九年度の需要量というものは、二百三十五万ないし二百四十万で、従って五十万程度自然増が出てくる。その自然増の額が約七十億になる。この七十億の自然増を一体どうするか。昨年の十二月四日の補正予算を組むときに、大蔵省はこれを国会に提示をしておらない。適当にこれを使うということではなかったではないか。昨年十二月六日、通産委員会において、私は、石油関税問題にからんでこの点について発言したのであります。七十億からの自然増があって、国会にも諮らないで勝手に使うなんということは、国会を軽視したやり方だ、百万、二百万の少額ならともかくも、何十億という金を勝手に使うということは、国民として納得ができない。しかも昨年度の揮発油税のいわゆる地方譲与税というものは、七十九億は分配されたのでありますが、その七十九億の使途についてもわれわれは非常に不安がある。一例をあげますならば、長崎県において、約九千万円のうち六千万円が警察費に使われたということで、県会議長から知事あてに抗議文が出ております。また地方新聞にも詳細にその内容が発表されておるので、それは先般国会の某議員に私は資料を提供して調べていただきたいということもお願いしておるのであります。そういうような過去の体験から昼ましても、揮発油税の使途については、十分この大蔵委員会で御審議を願い、ことに地方道路税についても慎重に御審議をしていただきたいことをお願いしたいのであります。  五月の九日の全国道路利用者大会において決議をいたしまして、そうして同日衆議院議長に請願書を出しておりますが、その請願書の一節を引用いたしますと、次の通りであります。   この際ガソリン課税の増額は行うべきでない。   政府予算案には道路整備を促進して国民の輿論に応えようとする誠意のあとが窺われないことは前項に指摘した通りである。就中、道路費に繰入れるべき既収ガソリン税額を他に流用すると云う不当を敗てしながら尚飽き足らず、ガソリン課税率の引上げを計るのは、実に言語道断である、かかる措置は、仮りに法律違反の咎を逃れ得ようとも、総国民の指弾から免れる事は到底出来るものでない。  かように強く請願いたしております。これは衆参両院議員の方々に全部配付になっておりますから、本委員会委員方々もごらんを願ったと思うのであります。さらに昨日、やはり全国道路利用者会議は、各府県から二百余名の代表者を集めて大会を開きまして、国会に請願をいたしておるのであります。で、われわれはこのたびの地方道路税法並びに揮発油税法の一部改正法律案に対して反対をいたします。その影響が自動車業界、あるいは石油業界にいかに大きな影響をするかという点について、私たち自動車関連団体二十五団体で結成いたしました揮発油増税反対同盟、あるいは石油関係におきましては石油精製懇話会石油元売懇話会、全国石油協会等からもそれぞれ請願書が出ておるのであります。一方……。
  6. 松原喜之次

    松原委員長 ちょっと小野公述人に申し上げますが、時間が経過いたしておりますので、なるべく簡潔にお願いいたします。
  7. 小野盛次

    小野公述人 全国の道路関係者、自動車関係業者の大会を東京に開かれまして、そうしてわれわれ自動車関係——自動車の生産、販売、部品、石油等の関係者約三千万人がここに立ち上って、この案の反対をいたしておるのであります。  委員長の御注意もありまして、時間が切れましたので、私の説明は省略させていただきますが、お手元に配付しました資料にありますように、いかにこの二千円の増税というものが業界に大きな影響を与えるか。むしろ自動車業界はこれがためにことごとく壊滅に帰する。ことにトラック事業においても、公述書の内容にある数字の通りでありましてバスにおいても、タクシーにおいても、車は月賦で、しかも長期月賦で芳しい中から入手して、そうして外面的には芸者のようにはなやかには見られますが、経営の内容については、実に悲惨な状態にあることを議員の方々に御了承願いたいのであります。また一面運賃の引き上げをすれば、それにおいてカバーできるだろうという御意見もありますが、運賃の引き上げなんということは、この際低物価政策の原則にもとるので、われわれとしては断乎として運賃の値上げはできない。現にタクシーを運賃の値下げをやって、苦しい中にも経営を持続しておる。かような点をおくみ取り下さいまして、今回出された法案に対してはわれわれ絶対反対でありますので、少くとも現状において揮発油税の値上げを阻止していただきたい、かようにお願いする次第であります。  時間がございませんので、ここで一応打ち切りまして、後刻御質問等がございましたらお答え申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  8. 松原喜之次

    松原委員長 次に、石炭協会会長仲余所治君にお願いします。万仲君。
  9. 万仲余所治

    ○万仲公述人 日本石炭協会会長をいたしております万仲余所治と申します。  私は税制、ことに関税法のごときものにつきましては、きわめてしろうとでございまして、専門的な知識は何も持ち合せておらないのでございますが、私に公述人として意見を述べろとお求めになりましたのは重油と石炭との開通ということにあると心得まして、その点に限局いたしまして、私から二、三申し上げたいと存じます。  私の申し上げますことはきわめて簡単でございまして、御承知通り重油に関税を課するということは三十六年にきまりまして、一割かけるということになっておりましたが、当時起りました朝鮮事変の影響で、船運賃が非常に上ったということで、これに伴って売り値も非常に上っておるというので、当分課税することを待たなければいかぬじゃないかということで、毎年延びて今日に至っておる実情と心得ております。その点から申しまして、すでに二十七年の初めを境といたしまして、船運賃はどんどん下って参りました。アメリカの海事委員会の基準であります点を約六、七割上っておりました二十六年、二十七年当時に比べますと、今日はその基準から五割も下っております。高いところに比べますと三分の一に下っております。金額で表わしますれば、基準が十ドル二十セントでありますか、それが十七、八ドルに上っておりましたのが、五ドル程度に下っておるというような実情であります。今日において、もしも重油に関税を課するという根本理念に間違いがないとするならば、もとに返るのが当りまえであって、今まで返らないのがむしろ不思議であると思うのであります。  次に、重油に課税するということの問題に一番引き合いに出ますのが石炭であります。石炭が困っておる。石炭の窮状を救うために重油に課税するのだというようなこともいわれておりますが、私はそんなことは枝葉末節と心得ております。根本は、先刻も申しました通り、二十六年にきめました関税定率法によって、 割課税するということが根本的に間違いでなければ、一時的な事情によって延期されたものは、その事情がなくなれば取るのが当りまえである、もとに戻らないのが不思議である、こう考えます。  なお、今お話申しました石炭の事情でありますが、石炭は御承知通り、ただいま非常な苦境にあります。ただいまだけではなくて、ここ数年来非常な苦境にあえいでおります。これは御承知通り、終戦前からありました特殊事情、終戦後におきましても、特に石炭が非常増産上要するという特殊事情が原因いたしまして、いろいろな原因から増産に増産を重ねて参りました。増産のために無理な投資がされた。それらのことから、二十七年に国家の要望によって増産体制がある程度できまして、五千万トンの生産ができる状態になった。それを境にしまして、どんどん要らなくなって、ただいまは五千万トンの設備を擁して四千百万トンしか掘れない、売れないという実情にあります。かくのごとき実情にありますために、非常な苦境に陥っております。苦境に陥りました原因は、業者責任に属すべきものもありましょう。しかし業者責任だけではなくて、国次的にこれを考えねばならぬ内容が相当部分——私どもから申しますれば大部分ございますが、これはここで申し上げることではございませんので、省略いたします。結果的に申しますと、またそれを数字的に申しますと、五千万トンの生産能力で四千百万トン程度しか掘れない、売れない状態になりました。ちょうどギャップの七、八百万トンというものが重油に置きかわった結果になっております。これはわれわれのまずさもございます。二十七年の終りに長い争議をやりまして、あるいは石炭が非常に困るのじゃないかというような御懸念を抱かせたというような点もありましょう。それらのことから、あるいは一時高いという声が出たこともありましょう。それらの事柄がいろいろ錯綜いたしまして、重油が勧奨された時代がございます。しかし間なく、それはいけないということになりまして、昨年の春から重油が抑制される事態になってきておるのであります。そういうような事態で、石炭は非常に困った状態になっております。石炭の困った状態を正常化する道として重油に課税するということでは、私はできないと思います。ほかに根本的に、石炭自体に対して大きなメスも加えられねばならぬでありましょう。またいろいろな助成策も講ぜられねばならぬでしょうが、関税というものは、われわれの乏しい常識からいいましても、ある国の産業を正常な行き方にする、発達させ維持させるために、これにじゃまになるであろうかもしれない他国の同種の製品が入ってくるのに対して障壁を設けて、これを調節するということにあると思います。二十六年にきめられました関税の今の根本理念が間違いでないならば、それだけで、特殊の事情がなくなったら、もとのように一割に戻るのが当りまえだとは思いますが、相手方になっております石炭の事情がかくのごとき状態になっておる。この石炭は、日本の国として戦前から戦後にかけ、石炭鉱業を壊滅させては日本の産業が壊滅するのだといわれ、まだ成案にはなっていないかもしれませんが、経済六ヵ年計画の中でも、石炭を基調としていかねばならぬということがいわれております。石炭を全国的に何とかしなければならぬという声のあることは、石炭業界の責任を批判する声とは別に、皆さんも御存じの通りでございます。そういう面からいたしまして、石炭が今日のような窮状になっておる際に、いろいろの意味はありましょうが、これの相手方であり、これを圧迫しておる重油が二十六年に関税法が設けられ、一割課税しかるべしということになって、タンカー・フレートが高いという特殊の事情で延ばされたのかもしれませんが、今日に至ってその事情がなくなったにもかかわらず、なおもとの姿に返し得ないというようなことはないと思います。しかも相手方の石炭がかくのごとき状態にある際には、なおさらそれがもとに戻ってしかるべきだと思います。よく石炭の救済のためにやる必要はないといわれますが、私は救済とは思っておりません。しかし石炭鉱業がより正常化するためのプラス.アルファになるとは思っておりますが、関税を課することによって石炭がもとのように戻るとは、決して思っておりません。根本的に申しますと、先刻申しましたようなわけで、もとに返るのが当りまえだ。私はB、C重油の六・五%というようなことでは、まだなまぬるいとは思いますけれども、しかしながら、今日いろいろな事情もございましょうから、最低、原案には賛成するものであります。
  10. 松原喜之次

    松原委員長 次に、石油精製懇話会理事長、寺尾進君にお願いいたします。寺尾君。
  11. 寺尾進

    ○寺尾公述人 私は石油精製懇話会理事長の寺尾進でございます。ただいまから石油関税の問題につきまして、私ども石油業界の意見を申し上げる機会を与えられましたことを厚くお礼申し上げます。  すでに御承知通り石油に対する関税は、昭和二十六年に関税定率法が全面的に改正されました際に、原油、重油については一割、揮発油、燈油、及び軽油については二割、潤滑油三割という関税率を定められて、それが暫定的に一割ずつ軽減され、今日に至っておりますことは御承知通りであります。すなわち原油、重油につきましては、今日までこれを免税として参ったのでありますが、関税定率法の全面改正に当りまして、税率について政府が定められました原則は、原材料は無税、半製品は一割、製品は二割、高級品は三割ないし五割という方針にきめられたものと承わっておるのであります。従いまして、石炭、鉄鉱石、原綿、原毛、なまゴム、その他原材料はすべてこれを無税といたされたのであります。しかるに重要原材料であるところの原油及び重油の関税率についてはこれを一割とされたので、これに対してはわれわれ石油業界はもちろんのこと、関係産業団体がこぞってこれに反対の意思を表明したのであります。すなわちかくのごとき原材料は、わが国のような国柄といたしまして当然無税とされるべきであって、しかもほかのかくのごとき種類のものは全部無税になっておるのに、特に石油に限ってこれに一割の関税をかけられるというようなことは間違っておるということを申し上げた結果、国会においてはわれわれの、主張を認められまして、原油、電池はこれを免税とする臨時措置をとられまして、その後毎年この措置を延長して、本年六月三十日まで免税となっておるのであります。そのとき、なるほど海外からの原油のフレート、運賃というものが非常に高くなっていた事実は一面にございましたが、われわれがこの問題について、原材料に税をかけていただくのは間違っておるということを熱心に主張いたしました結果、その主張が認められて、そのような御措置がとられたものと私どもとしては信じておるのであります。昭和二十六年の当時、原油、重油に一割の関税をきめられたときには、しからばどういう趣旨であったかと申しますと、政府理由としては、海外から安い原油が入ってきて、国内の原油がはなはだしく圧迫を受ける場合に、関税によってこれを保護する趣旨と承わっておりますが、これは次の理由によって妥当性を欠くものと考えるのであります。  まず第一に、わが国の国産原油はきわめて生産量が少いのでありまして、石油の全需要量の三、四%であります。国産原油の保護育成はもちろん必要でありますが、それは助成金等の方法によるべきであって、わずか三、四%程度の国産原油を保護するために九〇数%の輸入原油及び重油に関税をかけることは、全く当を得ておらないと考えるのであります。  次に、国産原油の買い取り価格は、昭和二十六年の当時とほとんど変っておりません。国産原油の約七割に当ります中質の原油の価格は、キロ当り九千五百五十円でありまして、輸入原油に比べまして非常に割高なのであります。しかも全量優先的に精製工場がそれを引き取っておるありさまであります。また輸入原油及び重油等の外貨は、石油需要量から国産原油生産量を差し引いた残りに対して割り当てられておるのであります。輸入原油が国産原油を圧迫するという事実は、全く起っていないのであります。そのような理由から、われわれは関税復活反対を主張いたしまして、幸い今日まで関税軽減されて参ったのであります。ところが今回政府当局は、七月以降原油に三%、B、C重油に六・五%の関税を復活する案を決定されたのでありますが、その理由といたされましては、関税賦課額すべてを陸上部門のB、C重油に転嫁して、石炭と重油の価格の差を少くして石炭業を保護するにありとされておるのであります。これにつきましては、われわれは次のような理由によりまして絶対に反対を主張するものであります。  ます第一に、石炭の対策は石油業者並びに石油消費者の犠牲において行わるべきではなくて、石炭産業自体の問題として別途の方策を講ぜらるべきものと考えております。もちろん石炭産業の重要性は、何人もこれを認めるものでありまして、ましてこれが不況打開のためには、積極的政策を確立する必要がありますが、重要原材料である原油、重油に関税をかけるという方法をとるべきではないと考えます。わが国か経済の目立をはかるためには、できるだけ安い原材料によって製品のコストを引き下げて貿易の振興をはかるということが、当面最大の課題であります。しかるに石炭対策とは申しながら、重要エネルギー源である石油関税を引き上げ、製品のコスト高を招くような措置は、日本経済全般の不利を招く以外の何ものでもないと考えるものであます。石油は経済的、能率的のエネルギーといたしまして、わが国経済発展のために重要な役割を果しておるものといえるのでありますが、石油関税を復活して値段を」引き上げて、無理に高い価格のエネルギーの使用をしいようということは、全く経済の原則を無視したというべきであって、その非合理的であることは論外といたしまして、石炭と競合する石油関税をかけて石油の価格にしわ寄せさせるということであれば、今石炭と競合する石油は、全石油需要量から見てはなはだ少いものであるという点を指摘いたしたいのであります。昭和二十九年度における石油消費量は、九百五千四万キロでありますが、重油の消費量はそのうち五百四十万キロであります。このうち九四%に当る五百三万キロというものは鉱工業、水産業、船舶等に使われておるのであります。石炭と競合すると言われる石油は、主として鉱工業で使用されるものの一部でありまして、それはごく僅少であって、鉱工業で使われる重油三百四十三万キロの三四%、すなわち全石油消費量の一二%程度にすぎないと存じます。しかもこれらの重油は、重要な産業の熱源として生産コストの引き下げ及び品質の向上に十分に役立っておるのであります。逆に申しますと、石油でなければならない漁船や船舶、あるいは自動車の燃料、その地帯笠管理上絶対に重油を必要とする方面の需要が大部分を占めておるのであります。重油の一部分が値段の点で石炭に不利な影響を与えるという理由で、石炭と競合関係に立たない重油の価格をも引き上げ、また原油にも関税をかけます結果、石炭と全然無関係揮発油、燈油、軽油、潤滑油等の価格にまで影響を及ぼすということの不合理であることは申し上げるまでもないと存じます。  次に政府の案によりますと、原重油に関税をかけて、鉱工業で使うBC重油の値段を三キロリッター当り約五百円引き上げて、石炭との価格差をトン当り約三百七十円に縮めるということでありますが、重油はその効率においてはるかに石炭をしのいでおり、その有利性、経済性がすでに立証されておるのでありますから、右のような措置がとられたからといって、何ら石炭の需要が増加するという保証にはならないと存じます。すなわち石油関税の増徴は、石炭の合理化には何の寄与もせず、単に石油需要する産業のコスト引き上げだけを招くというような不利な結果に終るのではないかと考えます。また今回の関税率は比較的低率ではありますが、一旦関税がかかりますると、その税率は将来税収等の目的から引き上げられるおそれが多分にあるのでありまして、原材料である原重油関税復活は、この点からしても反対せざるを得ないのであります。今ヨーロッパ各国関税についてみましても、大部分の国は、原油、重油はこれを無税としておりまして、重油について関税をかけておる国は、おおむね国内の重油の生産が需要を上回っており、輸入の必要を認めないために関税を設定しているのでもります。わが国におきましても、原油については必要量の九六%、重油につきましては需要量の三二%を輸入に待たなければならないのでありますから、かくのごとき需要原材料は当然これた無税とすべきものであると考えます。  次に今回の関税賦課額は、行政指導によりましてすべて陸上部門の重油に転嫁させるという政府の案につきまして、二、三意見を申し上げたいと存じます。  戦前におきまして、用遠別の免税措置をとられた実例がございますが、これは販売の混乱を来たしまして、所期の目的をおさめることができなかったように伺っております。今回関係当局は、用途別の戻し税制度を研究されたところが、確信のある成案を得られなかったので、行政指導によって同様の効果を期待しておられるものと察せられるのであります。すなわち行政指導によって、同一の品種の重油を陸上には高い値段で売らせ、海上には低い値段で販売させようとしておるのでありますが、元来石油製品の値段は、その需要と供給の関係によって定まることは申し上げるまでもありません。需給の関係を無視して、行政指導によって人為的に値段を左右することは、行政権の範棚を越えたものと言わざるを得ないと存じます。また現在の石油販売機構は、元売り十数社のもとに一万に近い販売業者がありまして、全国の需要者に販売を行なっておるのであります。これら販売業者の複雑多岐にわたる商取引につきまして、同一品種の重油を、海上と陸上と別に価格差をつけて販売するように指導するということは、現実の問題としてとうてい不可能であろうと考えるのであります。完全なる配給及び価格の統制のもとにおいてもこのような指導は困難でありまして、まして自由経済下の現在においては、実行不能であることは申し上げるまでもございません。  販売上の一つの例をとってみますと、主石油販売業者の間には、それぞれの重油の陸上、海上別販売の比率に著しい相違がありまして、海上向き販売の数量が陸上向き販売数量に比較してその割合が多い場合には、陸上向き重油に対して関税のかかった分を転嫁することは困難であります。さればといって、これを調整するために業者相互の間にプール計算を行うというようなことも事実上不可能でありまして、従ってこの面からも、政府の企図されておるところの行政指導の実効を期待することはできないものと考えるのであります。  以上は本問題について石油業界としての意見を申し述べたのでありますが、関税の復活につきましては、直接その影響を受ける全産業を網羅いたしました五十余の団体が石油関税増徴反対同盟というものを結成いたしまして、現行の免税措置を継続されるよう政府並びに国会にしばしばお願いを申し上げておるのであります。  以上、要するに産業の食糧である石油、基本的のエネルギーである石油関税をかけて、各種産業の生産コストの引き上げを招いて、輸出振興という政府の根本政策に逆行する今回の関税復活は、ぜひともこれをお取りやめいただくよう特別の御配慮をお願いいたしまして、私の説明を終ることにいたしたいと思います。
  12. 松原喜之次

    松原委員長 次に、日本鉄鋼連盟専務理事岡村武君にお願いいたします。
  13. 岡村武

    ○岡村公述人 本日この席上にお招きをいただきまして、ただいま御審議申の重油関税復活の問題に関しまして、重油の最大消費産業の一つであります鉄鋼業の立場から、あるいはまた鉱工業全体を代表いたしまする立場から、私どもの存念をお耳に達する機会を与えていただきました格別のお計らいに対しまして、衷心より深く御礼を申し上げたいと思います。  結論を先に申し上げまするならば、私ども鉄鋼業者といたしましては、今回の政府の重油関税復活案には賛成いたしかねるものでございます。さらにまたその関税復活分の負担を、もっぱら陸上需要部門にしわ寄せせんとする政府の公正を欠く御措置に対しましては、絶対に不満の意を表するものでございます。  政府御提出の改正法律案によりますと、原油に二%、いわゆるBC重油に六・五%の関税を復活する反面、A重油は引き続き免税せんとするもののようでございます。しかもただいまお話がございましたように、行政指導によって関税復活分を陸上需要部門にのみ負担せしめんとする法案の御趣意であり、また法案成立後における法相運用の御方針のように承わるのでございます。そういたしますると、陸上需要部門ばおしなべて現在輸入重のCIF価格、BC重油がトン当り大体六千三百円と存ぜられますが、その八%に当りまする約五百円程度の値上りを甘受することを余儀なくせられる結果と相なるのでありまして、これはゆゆしい問題と言わざるを得ないのでございます。  重油は、鉄鋼業にとりまして、石炭と並びまして主燃料としての重要性をとみに高めて参った大切な原料でございます。その用途は、消費者の約六〇%が平炉で製鋼する際に用いられ、約三〇鬼が鋼塊や鋼材の加熱熱処理用に当てられ、残り一〇%がトタン板の亜鉛メッキ用の加熱でございまするとか、あるいはボイラーたき等に用いられるものでございます。しかも使用の分野、範囲は逐年拡大いたしまして、また消費量は顕著は増加を示して参っておるのでございます。これは燃料としての重油というものが、石炭に比べますると、はるかに生産コストが安くて済み、かつ燃焼調節が精密、迅速にできまして、燃焼の操作もまたきわめて容易であり、計備費、維持費、人件費を大幅に節し得る等、いろいろの利点があることはもちろんございまするが、何よりも製品の品質を向上、改善せしめる上にすぐれた効果を発揮せしめるからであります。すなわち採算上の有利性にのみ執着しているのではなくて、重油ならではという真価によって日本産業の合理化、輸出増進に大きな役目を果し得るからでございます。決して私ども需要者の立場から、やすきについた勝手なお願いを申し上げている次第ではないのでございます。従って鉄鋼業合理化三ヵ年計画におきましても、燃料の重油化が大きな目標に相なっておりまして、この合理化計画によりまして、新しく建設せられました平炉、加熱炉等は、もちろん能率の高い重油の使用を原則といたしまして、従来の設備を巨大な資金を投じまして重油用に改造せられたのでございます。これは通産省の御指導の方針にもよるのでございまして、政府といたしましても、一貫してかような指導を続けておいでになったのでございます。この第一次合理化計画はただいま大体完成をいたしまして、この燃料切りかえによりまして能率の向上、品質改善の面においても現に大きな成果をあげておる次第でございます。かような次第でございまするので、鉄鍋業における重油の消費量は逐年増加いたしまして、昨二十九年度には八十四万キロリットルに達しておりまして、これはもちろん一般鉱工業部門では一番大きな消費部門に相なっておるのであります。本年度は、その鉄鋼生産計画から見ますると、前年度に比べまして相当大幹の増産を見込み、普通鋼鋼材でおおむね五百八十万トンの予定でございます。従って所要重油量も約百万トンに達する次第でございまして、この場合もし重油関税復活が政府原案の通り実現するといたしますると、七月から植上りとして約三億円、これを平年度に引き直しますると、約五億円というものを新しく鉄鋼業界のみで負担しなければならぬということに相なるのでございます。  さらに陸上重油消費部門に押しつけられる値上りのはね返りといたしまして、運輸部門その他も相当影響を受けなければなりませんので、この負担は相乗的に相なって参るのであります。これは現在なお適正採算点に価格が回復をせず、また輸出の伸張、維持が要望されており、このための低コストが何よりも大切な今日大きな打撃にならざるを得ないのであります。あるいはこれくらいの値上りならば、製品トン当りにいたしますると大した負担にもなるまいからがまんできるのではないか、こういう考え方もないでもないと存じます。しかしこれは、ちょうどわれわれの家計の上で電気代とか電車賃、あるいは新聞代の値上りというものが、それを一つ一つ取り上げますれば数字的には大したことはないからしんぼうしていけるだろうという考え方が許されないと同様に、あたかも宏庭用のガス料金の値上げとひとしい、あるいはそれ以上に影響を持つ問題を、数字の面の影響が微弱であるからといって押しつけられることは迷惑しごくと存ずるのであります。また陸上部門は、船舶、農水産部門と異なり、石炭使用と競合する、すなわち言いかえますると、重油を石炭に置きかえることができるからという理由で、政府におかれましては行政指導によって先ほど寺尾さんからもお話がございましたように、関税増徴の結果をしわ寄せいたしまして、価格差をつける、こういう御方針のようでございまするが、一応重油を相手によって一方は高く、他方は安く売るということが適正円滑に行われることでありましょうか、私は大きな疑問を持つものでございます。重油配給が法的統制のもとに置かれて、切符制度でもとられておりまするならば別でございますが、通産省が当初価格の自主的調整の母体としてその設立を慫慂指導すると弄われました、販売部門の協同組合組織もきわめて不十分な今日、かかる自由主義経済のもとにおいては、むしろ異例に属する二重価格制度を行政指導によってのみ実施せんとするのは至難であり、そこに大きな無理があろうと存ずるのであります。しからばこの重油関税というものは他の諸国ではどうかと申しますると、先はどの御説明のように、大多数の国は無税でございます。ただ米国、西独、オーストリア、カナダ等数カ国にすぎないのであります。その理由は、先ほど、御説明もございましたが、米国について申し上げますると、これはもちろん重油の大生産国でございまするけれども、南米、ベネズエラ等に大きなコンセントレーションを持っております。それらの原油輸入が若干あるのでありますが、その輸入原油に対しまして、国内原油との価格差だけを関税として賦課しておるのであります。西独では、国内人造石油保護の一貫した政策から関税を課するというように伺っておるのであります。  かようにそれぞれの合理的な理由があるのでございまして、これらの国々以外は、重油はことごとく無税でございます。わが国のように石油資源に恵まれず、国内原油から生産される石油製品が僅々三、四%にすぎない程度では、保護関税の対象として取り上げることもいかがかと存ずるのでございまするし、またその意味から、重油関税意味がないと、かように考えるのでございます。今度の関税復活案をせんじ詰めてみますると、いろいろと今までお話もございましたけれども、われわれの認識によりますれば、あるいはその理解するところによりますると、石炭業のはなはだしい窮状を国救するための諸般の御政策の一端と存ずるのでございます。国家の基幹産業でございまする石炭鉱業の現状は、まことに御同情にたえぬ次第でございます。これに対しまして、国会並びに政府におかれまして、種々肝胆をくだかれまして対策を講ぜられておりますことは、まことにごもっともと存ずるのであります。この点につきましては、鉄鋼業のみならず各産業あげてその立て直り、回復を翹望し、一臂の力添えを惜しむものではないと信ずるのであります。しかしこの観点から考えましても、重油関税復活によって石炭の需要を喚起しようとするねらいは、必ずしも的を射ていないと思われるのであります。すなわち実際に石炭と重油との使用関係を検討いたしますると、両者が競合して、重油は高くなり、また供給が制限されれば自然に石炭に転換すると考えられる部分は、石炭総需要の上から見ましてきわめてわずかということがわかるのでございます。大体世界的に申しますと、各産業を通じまして、特に鉄鋼業はそうございまするが、燃料の流体化、すなわち石油あるいは石炭ガス化しつつあるのが世界的現象でございまして、その需要量の膨脹著しいものがございます。これは申すまでもなく、単にコストの軽減と申しまするよりも、品質の向上改善の上に大きな効果をもたらすからでございます。すなわち原重油の一国産業の上に持つ性格なり比重なりというものが、大きく今日変貌いたしておると信ずるのであります。つまり原重油を関税の対象にいたしまするという制度自身、あるいはその考え方自体というものを、この際切りかえるべきものと私は信ずるのでございます。従いまして、私どもはかような性格を持ちまする重油については、製鉄用原料たる鉄鉱石、あるいは原毛、原綿、なまゴムと同様に無税を原則とせられるよう、むしろこの際関税定率の根本的な改正をお願いいたすべき筋合いかと存ずるのであります。本法律案御提出の御意図は、私どもは十分了承できるのでございまするが、その石炭以外の産業をすべて犠牲に供して顧みざるやり方については、いかようにも納得をいたしかねるのでございまして、そこで五十産業団体が、先ほどお話がございましたように同盟をつくりまして、再三再四各方面へお願いをしておるような次第であります。すなわちこの声は、わが国全産業の叫びであり、要望であると存ずるのであります。何とぞ私どものかようなお願いをおくみ取りいただきまして、よろしく御処置をお願い申し上げる次第でございます。
  14. 松原喜之次

    松原委員長 次に、大日本水産会会長伊東猪六君にお願いいたします。
  15. 伊東猪六

    ○伊東公述人 私大日本水産会の伊東でございます。水産の関税に対する事情一つ聞いてやろうということでお招きいだいたことを、厚く御礼申し上げます。今までいろいろ意見が出ておりますので、すこぶる簡単に一つお願いを申し上げてみたいと思っております。  政府は、石油に対するところの関税の現行減免特例を廃止して、昭和三十年度から定率通りに徴収する心組みで研究を続けておられるといううわさを聞きましたので、私ども水産業界では、それは大へんだ、そうなったなら水産だけでも約十億円からの負担になる。ところで魚はいわゆる買手相場のものだから、関税はそのまま漁業者の単独負担となって、他の産業のように他に転嫁することができないものであるということ、漁船は小型だから、石油が高くなったから石炭にしようというようなわけには参らないこと、この特殊の事由があったればこそ、昔は漁業用の石油に限り戻し税の制度があった事情などにもかんがみまして、関税はこれ以上課して下さらないようとお願いをして参った次第であります。しかるに大蔵当局は、戻し税制度は失敗だった。水産だけを免税とするわけにはいかぬ、従ってやめるならみなやめる、とるならみなとるといった態度だったので、私どもは、ひとり水産だけを特別扱いにしてほしいといっておるのではありません。一体動力のもとであり、しかも国内産は需要量の三%ないし四%にすぎない石油関税を課するということが果して当を得たものでありましょうか。さらばといって、現在賦課されているところの関税を廃止してほしいといっておるのではありません。ただ現在以上に増徴をしないようにして下さいと嘆願をして参ったのであります。そうしてこの石油関税に人なる関係のあるところの五十一団体が相はかりまして、石油関税増徴反対同盟を組織し、相結束して国会政府とに対し強くお願いをして回っておるところであります。しかるに最近に至り、政府は、関税率を大幅に低減して、A重油には賦課しない、BとCとには六・五%、原油には二%を課する方針を定めて、これに関する法律案国会に出しておられるとのことでありますが、その上通産省から水産庁への連絡では、水産と海運、すなわち海上用の油には一応課税はするが、その税金に相当する分は、陸上用の重油の販売価格に加算さして、結局海上用の重油には税のかからない値段で買い入れのできるように、行政指導をするということを説明しておられるとのことであります。この話を聞いて私どものうちには、水産用の重油は関税のかからない前、すなわち今まで通りの無税の値段で買い入れができるなら、そうむきになって騒ぐ必要はないじゃないかとすこぶるおとなしくかまえた人たちもありましたが、関係者一同が相集まりまして、一体どういう取扱い方をしてくれるといわるるのであろうか、ああだろう、こうだろうといっていろいろいろと工夫し、研究もし、話し合ってみましたが、結局適当な方法がありそうにも思われない。しょせんは絵に描いたもちだ。もっとも一回目ぐらいはある程度安くしてくれるかもしれないが、二回目、三回目となっては、何やかやと理由をつけて高くされ、漁業用の重油の取引は混乱をするにきまっておる。ためにそんな気安めなことには乗らないで、政府にはもちろんだが、特に国会先生方へよくお願いをして、現在以上には増徴なさらないようにしていただきたいということが水産業者一同の一致した要望でございました。それゆえ私は、石油関税は現在以上増徴されないように処理していただきますことを切にお願いいたしまして、私の意見といたします。どうぞよろしくお願いいたします。
  16. 松原喜之次

    松原委員長 これにて御出席公述人各位の御意見の御開陳が一通り終りましたので、委員各位で御質疑のある方は、これをお許しいたします。横路節雄君。
  17. 横路節雄

    ○横路委員 最初友末さんにお尋ねしますが、地方道路税法案に対する御意見をいろいろ承わったのですが、問題は地方財政が逼迫をしているので、地方財政全般について考えた方が至当だというのか、地方財政全般についてはなかなか政府がめんどうを見てくれないから、とりあえずそのうち、業者の諸君には大へん気の毒だが、この今回出した地方道路税法によってキロリットル当り四千円が至当だというのか、その点は、これはわれわれの地方財政が非常に窮乏している、そこでわれわれの考え方としては、今あなたがここに指摘しているようにあなたの県では、単独道路事業に充当した経費の内訳は、去年は一般財源一億一千二百万円、起債が八千万円、地元負担金二千六百万円、計一億一千二百万円、その一般財源の中に、揮発油譲与税の七千八百万円を含んでいる、こういうわけです。それで、これは地方財政のあらゆる点にこういうことが言えるのではないかと思うのです。われわれとしては、この際できれば増税をしないで、税についてはとにかく各方面とも減税という立場をとっているので、増税をしないで、地方財政の困窮は、私は結局地方交付税そのものに原因があるのではないだろうか、こう思うわけです。そういう点からいけば、あなたとしては、今地方財政の困窮というような点.で、業者の諸君には気の毒だが、この程度負担地方財政立場から負担をしてもらいたいというようなことなんだが、もしも地方財政という点について他に適当な方法があって、この点の増徴がされないで、去年程度でおさめられていいものであるならば、当然あなたとしても、税の過重負担などということについてはできるだけ避けたい意向ではないかと思う。その点、ここにございますところの単独事業について、政府一般財源の出し方が足りないのでないかと思うので、この点もう少し地方財政との関連で、どうしても地方道路税法案というものが、地方財政の建前から必要なのか、それとも去年のようないわゆる揮発油譲与税でもけっこうだが、一般財源について政府が別途考えてくれればそれでもいいのか、その点私はお尋ねしたいと思います。
  18. 友末洋治

    友末公述人 地方道路税創設という問題は、道路管理者立場から申しますると、道路行政を国と地方がそれぞれの責任において、また協力の関係において行なって参りまする以上は、やはり一つの安定した財源を国の方でも持つ。また地方の方といたしましても、はっきり持って参るということが一番望ましいのじゃないか。特に今日の国内の道路は非常に悪くて、これが産業、経済の一つの大きな障害をなしております現実の事実から考えましても、やはり必要なんじゃないかというように、実は筋として考えておるのでございます。さらにこの現実道路をできるだけよくしなければならぬのでありますが、一面よくするためには、相当の財源が必要である。ところが一方この財源が非常に苦しくて困っておる。もちろんお説のように、地方交付税の税率を思い切って引き上げていく必要はあるのでありますが、これらが達成いたしますれば、この道路税は必要ないかという御質問でありますが、かりに達成いたしましても、やはり国との関連におきまするところの道路をよくするということ以外に、地方々々の特殊な事情によって道路をよくしなければならぬ面が数多いのでありますから、さような意味におきまして、地方財政の強化が思い切ってなされましても、やはりこの地方道路税創設は必要なんじゃなかろうか、実は道路行政の本質からかように思っておるわけであります。  なお二千円の増税の結果の問題でございまするが、これは、ほんとうに業者各位には気の毒だという気持を強く持っております。しかし国家財政におきましても、そう急にこの地方の面に財源を大きく付与するというような方向もとられそうな気持もいたしませんので、非常に道路の悪い状況を一刻も早く救済するために、現実の問題として、かような方向もまずやむを得ないじゃなかろうかというように考えておるような次第でございます。
  19. 横路節雄

    ○横路委員 それからトラック協会の代表の小野さんにお尋ねしますが、あなたの御意見は、別に地方道路税法については反対だというのではなしに、ただ実際には一万一千円と地方道路税関係の方の四千円と計一万五千円になって、昨年よりは二千円が増額になるから反対だ。従って現行通り一万三千円に据え置いて、いわゆる地方道路税関係では幾ら、揮発油税関係では幾ら、それは別にさしつかえないのだ、こういうのですか。それとも地方道路税そのものについて反対だというのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  20. 小野盛次

    小野公述人 私たちは、横路先生の御質問に対して次のように考えておるのであります。道路整備費の財源等に関する臨時措置法、これは法律第七十三号の三条に「政府は、昭和二十九年度以降五箇年間は、毎年度揮発油税法による当該年度の税収入額に相当する金額を、道路整備五箇年計画実施に要する道路法及び道路の修繕に関する法律に基く国の負担金又は補助金の財源に充てなければならない。」かように明示しております。従って二十九年度は、このうちから譲与税を七十九億出しておりましたが、この使途については、先ほど公述いたしましたように、不明瞭な点があるから、これは新しく道路税を起すよりも、建設省、自治庁、大蔵省の三省において、現在の税率を上げないで、政府予算の三百三十二億二千八百万円は現在の需要量においてまかなえるのだから、国の道路地方道路の配分等は、三省間において御協議を願って、適切に、しかもこれが全部道路に使われるようにしていただいたならば一番けっこうではないか。特に地方道路税という法律を設けて、しかもこれには四千円という揮発油税をかけられることは、われわれとしてはどうしても負担に購えられない。本年度の建設省のいわゆる五ヵ年計画道路整備費が三百億でありますから、三百億の財源ということになると、少くとも二百五十万キロリットル以上はこれに食われてしまう。従って地方道路税に相当する額は、どこから出てくるかということに疑問があるのであります。要は政府予算を一応この際需要量によってまかなって、その配分については、政府において適当に按分していただきたい、かように考えるのであります。
  21. 横路節雄

    ○横路委員 ほかの委員の方からもたくさん質問があろうと思うので、次に移ります。  次は、石油関係のことで寺尾さんにお尋ねしたいのですが、原油について二%の関税をかけるという政府の案が通った場合に、製品に対する消費者価格は、どの程度値上りになるとあなたの方ではお考えになっていらっしゃいますか。その点一つお教え願いたい。
  22. 寺尾進

    ○寺尾公述人 これは、何分にもそのときの需給関係によることでありまして、直ちにそれがどれだけ消費者に全体かかってくるかという数字は、ちょっと申し上げかねると思いますが、何分にも原油の数量というものは非常に数字が大きいのであります。その原料に関税をかけたときは、これは製品の値段にも現われてくるということは当然のことであります。ただいまその数字をここに持ち合せておりません。
  23. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど石炭協会の万仲さんの方から船賃についてお話がございましたが、これはどうでしょうか。船賃については、だんだん下ってくる現状ではございませんでしょうか。私どもがそういうことを考えますのは、去年大へん問題になりました海運関係の疑獄問題これは結局世界の海運界等の間で太刀打ちができないというので、一割一分からだんだんしまいには金利を三分五厘にまで下げて、政府において、あるいは開銀においてはあらゆる援助をしておるわけです。そういうわけで、結局船賃はどんどん下ってくるのではないかと思うのであります。昭和二十六年の朝鮮事変以降において、船賃が非常に高いというので、関税がかけられてあったものが、時限立法でこれが当分の間免税するということになって、今回の提案として、これがかかるようになってきたわけなのですが、船賃については、あなたの方で今日はやはり説明なさるのですから、資料をお持ちであろうと思う。大へん恐縮ですが、どういうように船賃が変化しておりますか。先ほど石炭協会の万仲さんの方からも、現に船賃は二分の一、三分の一になっているということです。このことは、単にことしまでのことでなしに、そういう業界の趨勢からいけば、当然これからも下ってくる傾向にあると私たち考えるわけですが、その点具体的数字をお持ちでしたら、ここで一つお話をしていただきたい。
  24. 寺尾進

    ○寺尾公述人 ただいまの将来船賃は下るかどうかというお尋ね、これは実は私正直に白状いたしますが、船の方のことはどうも専門外でございまして、はっきりとここでどうなるという見通しを申し上げかねるのであります。今船賃が非常に上るという見通しも、ちょっと私は持っておりませんと同時に、また非常に下るだろうという見通しも今のところ持っておりません。しかし何分にも船賃というのは、非常に上ったり下ったりするということは、ある程度あると思うのであります。それで昭和二十六年の最初関税定率法が石油について提案になったときと比べて、船賃が下ってきていることは仰せの通りでございます。大体の私どもの考えておる数字を申し上げますと、製品一キロリットルに必要な原油の数量の運賃の値下りは、二十六年に比較いたしまして、最近では大体一キロリットル三千百円くらい下っておると考えております。ただし同時に石油製品の値段も下っております。下った分量が大体三千百円といたしますと、大ざっぱに申しまして、二千五百円程度製品の値段も下っているというふうに考えております。
  25. 横路節雄

    ○横路委員 今の点、実は私の方でもちょっと資料があるわけなのです。あなたの方で具体的な数字があれば、この際私どもにお聞かせいただきたいと思ったわけなのですが、今具体的な数字の持ち合せがなければ、私の方ではこれ以上お聞きしません。  万仲さんにちょっとお尋ねします。この石炭五千万トン増産に関するところの設備計画、これが今日四千百万トンしか売れない。あるいはそれが売れないから、従って生産を押えている。この点についてはあなたからお話もあり、われわれも現在の石炭業界の現状はそうだと思うのです。これはあなたが御指摘のように、なるほど、炭労のストなどの影響等もございましたでしょうが、私どもが考えるところによると、どうも今までの政府の総合燃料対策というものについて欠けているところがあったのではないかと思うわけです。そういう点について、何かあなたは石炭協会責任者としてお考えはないか。今日まで五千万トンの石炭の増産、さらに日本の石炭は日本の産業の基幹商業である。それが今日四千百万トンしか掘れない。また生産をとめざるを得ない。そういう点に対する今までの実際の政府の施策、そういう点について、あなたは実際に石炭の業界の立場にある方としてどういうようにお考えになり、どうしてこれが五千万トンの設備をもって四千百万トンしか掘れなくなったのか、その点についてお考えがあれば、この際お聞かせ願いたい。
  26. 万仲余所治

    ○万仲公述人 ただいまの御指摘、大ヘんごもっともなことと存じますので、ちょっと申し上げたいと思います。昭和二十四年に統制が解除されましたときは、やや過剰状態にまでなったために、それまでのいろいろな条件その他があったのであるが、みな御破算にされてしまったという状態であった。そのときは非常に増産を続けてきたので、石炭界ではちょっと余ったという状態でしたが、二十五年に入りますと、朝鮮事変を契機としてどんどん要るようになりまして、二十六年には朝鮮事変のはかに夏場の日照りが続いて、電気会社が非常に困ったというような事態もありまして、政府だけではなく、当時の、政府とやや似寄ったようなGHQあたりからほとんど毎週——私は当時から石炭協会の副会長をいたしておりますが、毎週ほとんど一回定例の関係者の会合をやりまして、どっか増産する余地はないか、どっか生産施設が生かされないかということで、少くとも四千八百万トンはその年に要るのだ、当時の増産計画としては、これは政府計画ですが、二十九年度、三十年度あたりには五千六百万トンまで要るのだというような計画も出ておったのであります。とりあえずは四千八百万トン、五千万トン要るのだということでどんどん増産をやりますと同時に、その需要を充足して参ったのであります。先刻私が申し上げ、また横路さんもお話の通り、ストライキが六十日間続いたということによって、得べかりし石炭が六百万トンばかり出なかったということで、ほんとうは、大口需要者に対してはきょうから石炭がなくなるという状態にはならなかったのでありますけれども、先行き非常に困るだろうというようなことから、重油の奨励、外国炭の緊急輸入ということが言われ出して参りまして、二十八年が明けますと同時に、労使ともにいかような事由であろうが、二ヵ月間生産を停止したということに対して、実際に恐縮の意思を表わすために、非常増産態勢をとって、どんどん増産いたしました。御心配のようなことは決してございません、われわれはこの増産により得べかりしもの、またマイナスであったものもやがて回復いたすであろうということで、どんどん増産いたし、また重油などもそんなに入れる必要はありません、外国炭も入れる必要はありませんといって申したのでありますが、何しろ信用がない、世間的にも信用がない、それにつれて政府に信用がないというようなことで、われわれの決意、われわれの意図に反してなおそれが継続されたというようなことになって参りまして、従って私どもは、終戦直後のあの状態、さらに二十五年を契機として拍車をかけた状態というようなことを勘案いたしまして、三十八年——初めもっと前から言っておったのでありますが、現実には二十八年初めから総合燃料対策を確立していただきたい。石炭だけががんばり、石炭だけが得手勝手するという意味ではありません。日本のエネルギー、電力もガスも重油も石炭もみな入れたエネルギー資源の総合的な需要量を各年次別に考えると同時に、石炭はこの中のどの分野を占め、重油はどの分野を占めるというように、総合燃料対策を確立してほしいと、口がすっぱくなるくらいに当局にも申しますし、それぞれの方面にも言いましたが、なかなかそれができない。できないうちにデフレの状態というものが加味されまして、われわれがそれとは別に、終戦直後からいろいろのしわを是正してもらいたいという要望もそのままに、デフレもあり、燃料総合対策もないというようなことで、今日の状態にずるずると参りました。昨年から石炭対策というものが特にいろいろと具体的に論議されて、今日その一端として合理化法案の提出ということも考えられておりますやに伺いますし、また同時に、総合燃料対策というものもきょうあたり本式にきまるやに承わっておりますけれども、この総合燃料対策を確立していただきたいということは、少くとも三年前から口をすっぱくして申し上げておるのでありますが、むずかしいことではありましょうけれども、できておらない。またできてこなかった。そのゆえによそから見ますと、まるで重油と石炭がむやみにけんかをしておるように見える。私どもは、私どもの得手勝手を申しておるつもりじゃない。国家的にこれが適正なる分野がきめられ、適正なる年次別総量というものが予定されれば、それに向ってわれわれとしては、基礎産業として邁進していくのだということを申しておりましたが、それができないことが今日の事態を招いたゆえんであろうかと思っております。
  27. 春日一幸

    ○春日委員 寺尾さんにお伺いいたしますが、今回の関税の復活によって、重油、原油並びにB、C関係の重油の市販価格にどの程度の影響を及ぼすかということについてお伺いをしたいのであります。私どもは、本日まで石油関係産業をこういう工合に批判をいたしておりました。と申しますのは、この原油の輸入割当が精製設備を対象として割当が行われておる。従ってその輸入原油を数社が独占することによって、大きな独占利潤が確保されておる。販売価格も、いつしか潜在カルテルが存在するに至って、膨大な利潤がこの精製会社によって独占されておるという批判が行われておりまして、あたかも砂糖と同様に、この重油の行政についてはわれわれの重大なる関心がここに寄せられておるのであります。そこで私がこの際お伺いをいたしておきたいことは、とりあえず原油について、一キロリットルについての輸入原価、それからこの原価にプラス精製コスト、そうすると大体の生産原価というものが出ると思いますが、それが実際に売られておる市販価格——キロリットル当りの単価、これを一体どれくらいの開きがあるものか、この際伺っておきたいと思います。
  28. 寺尾進

    ○寺尾公述人 ただいまの御質問でございますが、ただいまカルテルというふうなお言葉もございましたけれども、私どもの見ておりますところでは、別に精製会社が集まって一定の独占的な価格というふうなものを特にこしらえておるわけではありませんで、精製会社としては九つばかりの会社がありますが、それが自由に競争して売っておるというのが実情であります。従って需給の関係によって値段が高くなることもありますが、またお互いに販売競争で下るということもあるのであります。今日本が入れております原油はアラビア原油が大部分でございまして、六割七分もアラビアから入れております。その原油の輸入価格は大体六千五百五十円でありますが、それについて、これをさらに精製する精製会社、元売り会社、販売会社、販売店、それから消費者に渡ります段階は非常に複雑でありまして、今お尋ねの点は、おそらく末端の消費者に渡す値段についての御質問だと思いますが、これば実は今申し上げたような状態でありますので、別に一定した値段というものはないわけでありまして、個々別別に売っておるわけでございます。今ここで、幾らで入れたものを幾らで売っておる、末端価格はこうなるという数字は、資料によって申し上げる準備がございませんので……。
  29. 春日一幸

    ○春日委員 われわれの重大関心事は、やはりエネルギーとして石炭より優位に位する重油、原油が産業に占めております地位も、もとよりわれわれは重視して考えておるわけでありますが、しかしながら問題は、この二%と六・五%の関税がこれに賦課されることによって、どの程度市販価格に影響をもたらすかというこの推算が、重要なキー・ポイントに相なろうと思うのであります。私は委員長にお願い申し上げておきますが、この際政府あるいは適当な機関に御折衝願いまして、現在の精製会社が輸入をいたしております重油、原油の一キロリットル当りの単価並びに精製に要するところのコスト、これが販売に渡ります場合の価格、こういうものを資料として御提出を願いたい。なお現在九つの精製会社がこの事業を独占しておると思うのでありますが、過去二期か三期にわたりますこれら会社の決算書、そういうようなものもあわせて資料として御提出を願いまして、この税率を賦課することによってもたらすところの市販価格に対する影響等を判断してみたいと思いますので、お願いしておきます。  それから、これは万仲さんにお伺いしたいと思いますがいただいまの公述の中に、石炭産業と石油関税の問題は、われわれはおおむね無関係を理解しておる、石炭生産にプラス・アルファ程度のものとしか考えていないこういう公述がございまして、いわばはなはだ軽くこれを見ておられるようでありますが、その場合プラス・アルファというものは、ただいま石油関係からもお話がございましたが、これが二%と六・五%上ることによって、重油方面に蚕食されておりましたものがどの程度石炭にかわってくるかという想定をお出しになっておりますか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  30. 万仲余所治

    ○万仲公述人 プラス・アルファと申しましたことから、おおむね無関係であろうというふうにお考えでありますが、私はそう申したのではないのでありまして、石炭の今日の苦境を打開する道というものは、根本的にはもっとほかの道がたくさんあるのであります。これはその中の一端であるという意味で申し上げたのでありまして、無関係というわけではございませんので、もしそういうふうに響きましたら、私の申し上げ方がまずかったのでありますから、訂正さしていただきたいと思います。  それからこれによってどのくらい重油が石炭にかわるだろうということは、私どもとしてはこまかい数字を持っておりません。ただ、これはお答えにならぬかもしれませんが、先刻から、こういう課税をすることによって重油の値段が上るであろう、それが重油を使う産業の製品の値段にどのくらい響くであろうかということにつきましては、この六・五%ということの前に、八%というような考え方のもとに通産省でお調べになったものがありまして、それによりますと、大体の産業におきましては一%以下におきましては一%以下上るであろう。二、三の例を申し上げますならば、そのときの通産省の調べによりますと、これは原油が二・五%上り、B、C重油が八%上るという仮定のもとの計算のようであります。しかもこれは重油専焼設備でありまして、重油と石炭の混焼設備ではないのであります。そういう初めの仮定のもとのあれでありますが、鉄鋼関係においては、〇・三五%から〇・七一%ぐらい響くであろう、銅関係においては〇・二一%ぐらい響くであろう、窯業関係においては一・二六%から一・五七%ぐらい響くであろう、ボイラー関係では〇・一四%から一%程度響くであろうというようなことは、私どもは承知しておりますが、そういうようなことの結果、どのくらいの数量がわかるであろうというような計算は、私持ち合せておりません。
  31. 春日一幸

    ○春日委員 友末知事さんにお伺いをしたいのでありますが、ただいまこの地方道路税法案道路財源を確保するためにはむしろ必要であるという公述がございました。私もかって地方議員をやっておりまして、地方財政が非常に窮乏をいたしておることを承知いたしておるのであります。そこでそういうような形で、道路財源を得るためにこういう道路税を作るというようなことになりますと、あなたの所管にはいろいろやらねばならないことがたくさんあり、しかもそれに対して財源というものが何ら配付されていないということが多々あろうと思います。たとえば学校校舎の問題もありまするし、あるいは生活困窮者、失業対策等いろいろあります。そうした場合、中央から財源配付がないからというので、そういうような目的税を作ることになりますと、学校校舎のためには教育税というものを新しく創設して、教科書の販売に税金をかけるとか、あるいは社会保障税でも作って、そういう方面の財源に別途の税制を創設するとかいうようなことになって参りましたならば、あなたがおやりになる行財政そのものがはなはだ円滑を欠いて困った形になりはしないかと思うのであります。私どもは、便宜のために本質を曲げてはならぬという考え方を持っておりまして、ただいま横路君からも主張されましたけれども、いずれにしても財源がないならば、その財政措置こそは一般行財政を通じて措置すべきものであって、その本筋を強く押していって、いやしくも便宜に流れて本質を曲げてはならぬという考えを持っております。道路と同じような緊急性を持っております教育問題、あるいは社会保障問題、それに対して、同じく財源がないという立場において、そういうような目的税が次々と作られていくということになった場合、あなたはこういうことについてどういうお考えをお持ちになっておりましょうか。この際一つお伺いいたしたいと思います。
  32. 友末洋治

    友末公述人 地方自治の建前から申しますると、自主的な独立税源というものがますますふえて参るということが必要だと考えております。従いまして、目的税というものがどんどんふえるというふうなことはあまり好ましくはない。ただ現実の問題といたしましては、最も公共性の強い性質のものであって、しかも相当力を入れてやらなければならぬというものにつきましては、やはり目的税を漸次ある程度まで設けて参るということはやむを得ないのじゃないか、私どもはさように考えておるのであります。
  33. 石山權作

    ○石山委員 石炭協会の副会長の方にお聞きしたいのですが、今の基幹産業のうちで、一番お困りになっているのは石炭業界だというふうに私たち見ておるのであります。何と申しましても、基幹産業の興廃というものはその国の産業に非常に影響するものでございますから、私たちは特に心配せざるを得ない。今回の関税の査定に当りまして考えられることは、税収入と国内産業の保護ということが、やはりこの場合非常に大切なのでございまして、帝国石油などは一〇%くらい関税をしてもらえると大へん助かる、こういうふうな意見も出ております。先ほどプラス・アルファというようなお話も承わったのですが、もし一〇%の関税が重油に付与されるとなると、石炭産業に及ぼす影響というものは相当なものだと私たちは見ておるのでございます。しかし今の場合は、一〇%程度というくらいにして石炭の企業が立ち直るというふうな目途が見えれば、これも可能かもしれませんけれども、見てみますと大へん困難を感じておる。今のような自由主義的な考え方で経営を続けられていくとするならば、政府の融資その他今までの石炭業界を見ておるとすれば、ほとんど半統制のような形になってきておるのではないか。考えられるのは、基幹産業でありながら非常に原始的である、近代産業化されておらないというような大きな批評をされておりますが、そのためには、もっと組織上から見ると、独占企業化されることが必要なんじゃないか。逆に申すならば、私たちがかって終戦後考えていたような半国家管理のような形をとらなければ中小企業はもう立ちいかないのではないか、こういうふうな点を私たち考えているのですが、その実態を一つお知らせを願いたいと同時に、石炭産業が将来伸びるためには、火力発電と石炭液化が非常に問題になると思いますが、それらをお聞かせを願います。
  34. 万仲余所治

    ○万仲公述人 ただいまの一割という問題六・五%という問題は、先刻も申しましたように、重油の関税が六・五%あるいは一〇%かかりましても、それだけで石炭産業が更生できるかといえば、できません。またそれだけによって更生をやるということは、私は邪道だと思っております。  それから一人立ちはできぬのじゃなかろうか、ことに基幹産業であるから、国家統制的な面にいかなければならぬのじゃなかろうかというようなお話でございますが、戦前からの続きもあったでありましょうが、終戦直後のああいう状態で、国管というような名前の態勢はできましたけれども、内容が非常に入り組んでおったというようなことで、結果的にはうまくなかった。このことに対しては、皆さんもいろいろの意味の御批判はありましょうけれども、うまくいっておらなかったということでありましょう。従いまして、それが自由的になったのでありますが、基礎産業であって、ある程度の石炭を常に供給せねばならぬということの強い命題のために進んでいかねばならぬという点と、そういうふうにやってきたところが、他の原因によって需要がなくなった。需要がなくなったら、今度は、お前らは自由産業だから、自由にやりなさいといってふっ飛ばされたという矛盾はあると思います。その矛盾をどの線で引くかということは私ども業界においても、将来の大きな問題ではあろうと思いますけれども、今日その点は、私どもはさらに試験済みである。今日の状態では、まだ統制的な面になっていくということはなかろうと思うのでございます。具体的ないろいろな問題になって参りますと、われわれもずいぶん考えておる問題もございますけれども、これは長くなるので申し上げませんが、今のところ私たちは、統制的な色彩が出るべき筋合いのところまで行っておらぬと思っております。
  35. 石山權作

    ○石山委員 おそくなりましたから、あとは質問を保留します。何か石炭協会の方で私の方へ提出していただけるような資料がありましたら、委員会へお出し願えれば大へんよろしいと思います。
  36. 横山利秋

    ○横山委員 友末さんに、時間がございませんから簡単に伺いますから、簡単に御答弁を願います。ガソリンを使う車は、主として大都市に多いのですが、石油を使うトラック、バス、これらについては、今度の法案でいくとかからないのですね。そうすると、少し不均衡になりはしないかということが考えられるのですが、ガソリン税を上げれば、石油を使うトラック、バス、こういう方面も税金を上げなければならぬという議論が出てくると思うのですが、その点をどうお考えになっておりますか。
  37. 友末洋治

    友末公述人 確かにその点に不均衡が出るように思っております。しかしその調整は、相当むずかしい問題ではなかろうか、石油を使うという面はある程度あるのでありますが、石油を使っているバス、トラックのみにこれを限定するということは、他の水産その他の関係も出て参って、なかなか調整がむずかしい関係から、むしろ調整するといたしますれば、自動車税の方で調整することが技術上容易にできるのではなかろうか、かように実は考えております。
  38. 横山利秋

    ○横山委員 どうもはっきりしないようなお話でございますが、先ほども小野さんからお話が出ましたが、私の手元にあります資料にもあるのですが、幾つかの府県でこのガソリン税が他に流用された。あなたの方ではないと思いますが、こういう点は、この法案の趣旨とだいぶ違うような点がございますが、こういう点については、御存じよりの府県なり、これらの問題についてどういうふうにお考えになっておられるか。
  39. 友末洋治

    友末公述人 昨年ガソリン譲与税の総額は、御承知のように七十九億でございまして、そのうちの四十八億は道路整備五カ年計画関係でございますので、建設省の方で厳重な監督をいたしておりまする関係から、それをどこに使うということはもう絶対にあり得ないことでございます。ただそれ以外の三十一億は、一般の道路財源といたしまして各府県に譲与されまする関係から、おそらくこれについての問題ではなかろうかと思います。そこで御承知のように、県が予算を組みまする場合におきまして、何はさておいても道路の維持、修繕、改良、あるいは橋梁のかけかえというようなものは、大体毎年毎年きまっておる関係から、当初予算に相当程度実は組むのであります。その財源といたしましては、やはり一般財源基礎にいたしまして組んでおるわけでございます。そこでこのガソリン譲与税というものが、年度の中途におきまして中央から交付されます。それが後になりまして、県の予算に追加予算として出されるわけでありますが、その際に、道路財源の方の特定財源として予算を構成すべきところをしないで、他の事業費の計上の場合に、これらの特定財源というものがぶち込みになりまして組まれるということが、行われる場合があるのでございます。さようなことは、形式上からいいますれば好ましいことではないのでありますが、うっかりいたしまして、技術的にさようなことをいたす場合もあろうかと思うのであります。それだからと申しまして、すでにガソリン譲与税以上の一般財源道路関係に投入いたしまして、予算を組み、実行いたしておるわけでございますから、ガソリン譲与税を他の財源に自主的に流用したというようなことは、私としましては考え得られないことで、それ以上の大きな財源道路におそらく使っておるというふうに思っておるのでございます。さように一つ御了承願いたいと思います。
  40. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ。今度の増税で七十三億地方道路税に回る。これを合算しまして三百三十二億、この三百三十二億というのは、お話ですと少い、こうおっしゃっておられるのでございますけれども、少くともこの法案によって三百三十二億が確保されて、そうして地方の指定されているものに回る、こういう点が確保されればよろしい、値上げをする必要がなければそれでよろしい、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  41. 友末洋治

    友末公述人 やはり私どもといたしましては、地方道路税というせっかく安定性の強い税の新設を企画されておりますので、その線に沿うて一つ考えを願う。ガソリン譲与税の行き方もございまするが、それよりも地方道路税という方式で、七十二億はぜひ確保願いたい、かように考えておるわけであります。
  42. 横路節雄

    ○横路委員 寺尾さんにお尋ねしたいのですが、実はこの原油、重油について関税をかけた方がいいという意見の方のお考えは、これはこのままに原油、重油をどんどん入れておけば、あなたも御承知のように、中東の原油はキロリッター九百円、セリアの原油は四百五十円、それが実際に積み込みの場所で四千三百七十円もして、莫大な利潤を外国商社に供給している。そういう意味では、どうしても国内の石油資源を確保しなければならぬ。これはどこの国でもやっているのだから、そういう意味で、この際やはり関税を復活して、原油、重油については六・五%などというのは政府の方はまだぬるい。これは一〇%かけて、そうして、その分はあげて国内のいわゆる石油資源開発に使うべきである。同時に石炭との競合部面については、やはり日本の石炭産業というものは基幹産業なのだから、従ってそれを伸ばしていかなければならぬ。当然今日の石油界自体が外国資本の支配下にまかされているのである。だからどうしてもこの際最低限一〇%は関税をやらなければならないのだ、こういう意見が相当強く行われておる。これはやはり今のままの石油界の現状であるならば、実際に中東のキロリッター九百円、セリアの四百五十円が、とにかくそういうように四千三百七十円でいかれておる。このままどんどん行けば、無制限に入ってくる。それは外貨の割当もありましょうけれども……。そういう意味で、資源を開発しなければならぬ。こういうことに対して、そういう考え方があることは、あなたも御承知だと思います。これがやはり関税をかけるべきだという相当強い意見のささえ柱になっておると私は思う。これに対するあなたのお考えはどうですか。
  43. 寺尾進

    ○寺尾公述人 今お話のありましたように、国内資源を大いに開発しなければならぬということは、もう私どもも全然同感でありまして、これはぜひそういうふうにやっていただきたいと思うのでございます。ただその方法といたしまして、原油、重油等の原材料に課税して、そうしてこれを保護すべきではないということを従来申し上げておるので、もちろんそれは、もう石油資源の開発そのものはけっこうでございまして、ぜひそうしなければならぬと思っておるのですが、なぜそれでは石油の開発のためとはいいながら、石油関税をかけてはいかぬかと申しますと、それは先ほども実は私の陳述の中で申し上げましたように、何分にもわが国の石油資源というものはきわめて乏しいので、全体の需要量の三%とか、それくらいのものなんです。それを開発するからといって、全体の九割何分もよそから入れてこなければならない原油に関税をかけ、また重油等の原料に関税をかけるということは、これはよろしくない。いわんや目的税でも何でもない。政府関税の提案におきましては、たとい関税がかかったって、国内石油資源の開発になるとの保証は一つもないのでありまして、その意味において、私は石油資源の開発のために、日本としては外国から入って来る原油とか重油に関税をかけるべきものではないと、かたく考えておるのであります。
  44. 松原喜之次

    松原委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑もないようでありますから、午前中の会議はこの程度にとどめます。  この際一言公述人各位に御礼を申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず公聴会に御出席をいただきまして、長時間にわたり貴重、かつ忌憚ない御意見をお述べいただきましたことは、当委員会の法難案審査のため非常に参考になりましたことを、ここに委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後一時半まで休憩をいたします。    午後一時一分体感      —————・—————    午後一時五十九分開議
  45. 松原喜之次

    松原委員長 休憩前に引き続き公聴会を再開いたします。  午後は所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案の三法律案について、公述人方々より御意見を承わることといたします。  この際、公述人各位一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中のところ貴重なるお時間をおさきいただき、当委員会に御出席を下さいましたことは、まことに感謝にたえません。この公聴会を開きますのは、目下当委員会において審査中の所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び和税特別措置法等の一部を改正する法律案につきましては、申すまでもなく院の内外を問わず広く論議が展開せられておるところでありまして、当委員会におきましても所得税、法人税の税率の引き下げ、及び課税方法並びに預貯金利子、配当所得の減免税等の措置等につきまして、種々論議を重ねて参りましたが、特に重要な歳入法案でありまするから、ここに公聴会を開き、広く各界の学識経験者並びに利害関係者の御意見を承わり、これら法律案審査の慎重を期するとともに、その審査を一そう権威あらしめんがためのものでございます。何とぞ各位におかれましては、十分忌憚ない御意見をお述べ下さいまするよう、委員長よりお願い申し上げる次第でございます。  なお議事順序につきまして申し上げますが、公述人各位の御発言順序は、必要の場合は委員長において適宜処理いたしますが、原則として公述へ名節にあります通り順序によって御発言を願うこととし、発言の時間はお一人大体十五分以内でお願いいたしたいと存じます。また公述人各位に対して委員諸君より御質疑があると存じますが、これは公述人各位の御発言が一通り終りました後に、一括してお願いすることといたします。  なお念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところにより、御発言の際は、委員長にお声をかけていただき、許可を得た上で御起立して御発言を願います。また御発言内容は、意見を求められた範囲を越えないようにし、委員からの質疑の際に、公述人側より委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、御了承願っておきます。  それではこれより順次公述人の御意見を承わることといたします。興国人絹パルプ株式会社社長金井滋直君にお願いいたします。
  46. 金井滋直

    ○金井公述人 公述人順序につきましては、私は一番最後がいいと思います。小池君、迫さん、お二人を先にしていただきたいと思います。
  47. 松原喜之次

    松原委員長 お申し出通りにお取り扱いいたすことにいたします。  それでは日本証券業協会連合会会長小池厚之助君にお願いいたします。小池君。
  48. 小池厚之助

    ○小池公述人 今回資本蓄積のために、臨時措置といたしまして預貯金及び公債、社債の利子に対して、二年間の租税全免をするという原案に対しましては、私は資本蓄積ということが現下の日本経済界におきまして緊急の重要事と思いますので、賛成の意を表するものであります。し外し同じ資本のうらでも、資本蓄積に貢献いたしますところの株式の配当金に対しましては、これに対応する優遇措置がとられてないのでありまして、これに対しましては、私どもははなはだ遺憾に存じて、政府原案に対して御修正を願いたい、こう思っておるのであります。  政府原案によりますると、現行の総合課税制はそのまま続けられまして、単に源泉徴収税率を一側五分から一割に引き下げるだけの措置がとられております。しかしこれは、総合課税がそのまま続けられるのでありますから、結局配当を受ける者にとりましては、何らの優遇措置にはならないのでありまして、減税負担軽減にはならないのであります。それで現在の日本の企業は、御承知通りオーバー・ボローイングになっております。自己資本よりも借り入れに依存するところが非常に多いのでございます。これを解消するにはいろいろの方法がございますが、増資によりまして自己資本を充実していく、これが有力なる手段と思うのであります。そのためには、どうしても株主を優遇し、株主配当を優遇しなければならない、こう思うのであります。今回の政府原案においては、そのことが現われていないことは大へん遺憾に思うのであります。それではどういうふうに改めたらいいかというお尋があるかと思うのでありますが、私どもは、資本蓄積のために、預貯金その他が免税になるならば、株式配当も当然免税にすべきであるというのが、筋の通った希望であると思うのであります。しかしながらこれに対しましては、いろいろの御議論もあると思いますので、私どもといたしましては、若干と申しますか、大いに譲歩、御遠慮を申し上げまして、全然全免にしていただきたいとは申し上げないのでありますが、まず第一の希望といたしましては、源泉の分離課税制をとっていただきたい、こう思うのであります。その分離課税税率でございますが、大体一割程度の分離課税制をとっていただきたい、これが私どもの第一の希望であります。しかしながら、実はこの案に対しましてもまた各方面からいろいろの御議論も出るのではないかと思いますので、株主に対しての優遇が若干なりともしていただくことが通らないと、証券界にも非常に影響がございますので、もしこの分離課税制が通らない場合の次善案を実は持っておるのであります。その次善案と申しまするのは、現行の総合課税制はそのままにいたしておきまして、現行におきましては、配当の控除率というものが二割五分になっておりますが、それを三割五分に引き上げていただきたい、こう思っております。  それから、先に要望の骨子だけ申しますと、これはあるいは法律の改正の問題ではないかもしれませんけれども、大蔵省の省令できまることかとも思うのでありますが、この国会においてどうぞ要望をしていただきたいと思いますのは、現在の株式発行会社が提出する配当金の支払い調書、これの提出限度が一回三千円ということになっております。これを一回五千円程度に引き上げていただきたい。年二回の決算の会社は、一回五千円でございますから、年一万円になり、年一回の決算の会社は、一万円でございます。一回で五千円、年一万円、この程度に引き上げていただきたい、こう思うのであります。  それでは繰り返してその理由を申し上げますが、先ほど申し上げました通り、配当に対しましては、預貯金その他と比べまして非常に不利でございます。これは今回の政府原案のみでございません。過去にさかのぼりまして、配当課税は非常に不利になっておるのでございます。すなわち御承知通り、一度シャウプの案によりまして、すべての所得は総合されることになりました。その後預貯金に対しましては、過去数年間に、あるいは無記名制とか、あるいは源泉選択制、さらに分離制度、次々とこういう優遇措置がとられたのでありますが、それにもかかわらず、株式の配当につきましては、そういう優遇措置がとられておりません。従って現在におきましても、預貯金と株式の配当とはアンバランスになっておるのであります。それにもし政府原案の通り通りますとすると、ここに株式配当と預貯金、公社債等の利息、いわゆる利回り等において非常にアンバランスが起るのであります。どうぞこれは御訂正を願いたいと存じます。配当というもの、株式というものは、預貯金と性質が違うのではないかという御議論もありますが、なるほど株式は確定利付証券ではございません。いわゆる利潤証券でございまして、あるいは無配当になるかわりに、また配当の率も変るというものであります。その意味においては、確かに預貯金とは性質を異にしているのであります。しかしながら資本という意味におきましては、何らの差はないのであります。その資本が、日本経済の中にありまして生産に役立っておるという意味においては、何らの差がないのであります。その意味におきまして、ぜひ現在でもそうでありますが、今度の案でも、なお一そうそれがはなはだしくなると思うところの株式と利付債券、あるいは預貯金とのアンバランスを、この際訂正していただきたいのであります。  それから私どもの第二案として申し上げました配当控除率二割五分を三割五分に引き上げていただきたいということ、これは私どもといたしましては当然の主張だと思うのであります。過去における税のとり過ぎ、二重課税、これを訂正していただきたいという要望にすぎないのであります。御承知通り、現在の税制におきましては法人擬制説をとっておりまして、そのために法人は法人税をとられております。株主が株式配当に対して税を払いますことは、二重課税になります。シャウプ案によりましては、法人税は三割五分でございました。それに対して株主は、二割五分の控除率が認められたのであります。その後法人税は、御承知通り四割二分まで上りましたが、配当の控除率というものに対しましては、何らの御処置がなかったのであります。株主はすでにそのときに非常に不利になっておるのであります。このたび法人税は四割に下ると承わっておりますが、これは過去における間違いと申しますか、株主が不当に不利の立場にあった点を御修正願ったわけで、これも四割そのままとは申しません。三割五分程度まて引き下げていただきたい。これが私どもの要望でございます。もしこの案が御採用願えますならば、先ほど申しました一割の分離課税という制度よりも、小口株主にとりましては有利でございます。それから大口株主にとりましては、大口株主を優遇し過ぎるという非難がなくなるのでございます。ぜひこの配当控除率の三割五分までの引き上げということは、御修正を願いたいと思うのであります。  それから、あるいは法律とは関係ないかもしれませんが、先ほど申しました通り、配当の支払い会社が支払い調書を作るときに、一回三千円以上、三千円以下は作らないでもいいことになっておりますが、これを五千円以下は作らないでもいい、五千円以上、こういうふうに国会でもってぜひ御修正をお願いしたいのであります。これは事業会社自身もこのために株式課の手が非常に省けると思います。またこれによりまして、小口株主は事実上非常に益するところが多いと思うのであります。ぜひこの御処置は、国会において御発議を願いたいと思います。私どもがこういうことを要望いたしまする根本の趣旨は、株式投資面というものは、戦後地の経済の各方面の回復率に比較いたしまして、非常におくれておるということから、実はぜひお願いしたいと思っておるのであります。試みに戦前と今日との経済のいろいろの統計を比較いたしてみますと、昭和九年−十一年の数字と現在の数字を物価騰貴率で換算いたしまして比較いたしてみますと、御承知通り国民所得は、昭和九年−十一年を上回っております。それから全国の預金は七割近くまで立ち直っております。それから国民の消費水準、それから交通、建築等の回復率も、ほぼ戦前の水準に取り戻しております。しかるに株式界だけはすこぶる立ち直りがおそいのでありまして、全国の株式会社の払い込み総額は、戦前と比較いたしますと一四・五%という回復率であります。それから全国の上場株式の特価の総額は、一〇・五%、戦前の一割にしか回復しておらない。
  49. 松原喜之次

    松原委員長 小池君に申し上げますが、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
  50. 小池厚之助

    ○小池公述人 承知いたしました。こういうわけでありまして、株式界の回復率が非常におそくなっておりますので、今回のような御措置がとられますると、一そうそれが拍車をかけられる。ぜひ御修正を願いたい。またこれは少し理屈になりますが、過去におきましても、とかくどうも日本の経済政策、産業政策が預貯金偏重になるかと思うのであります。これは健全なる経済界を確立するには、私は問題があると思います。こういう意味におきまして、ぜひともこの株式の配当課税につきましては、今回の政府原案に対しましては御修正を願いたい、こう思っております。  なお新聞紙上で拝見いたしますところによりますると、自由党では、この面に対して非常に御修正の御意思があるようでありますが、これは私は新聞だけでもってよくわからないのでありますが、いずれにしましても、私の希望するところは、今度の国会でどういうふうにおきまりになるか知りませんけれども、現在に至るまでにおいて、すでに株式は非常に不利であるという点がございますので、ぜひとも株式の面につきまして、資本蓄積上からやはり御考慮を願いたい、これがわれわれの要望でございます。
  51. 松原喜之次

    松原委員長 次に、東京銀行協会会長迫静二君にお願いいたします。迫静二君。
  52. 迫静二

    ○迫公述人 ただいま御指名にあずかりました迫静二でございます。公述人として御指名がありましたので、主として預金利子課税全免の問題について私の所見、それから銀行協会を通じて得ました業界の意見を取り入れまして申し上げたいと存じます。  終戦後今日までの十年間に、わが国経済の回復は目ざましく、最近の統計によりますと、生産指数は戦前の約六割増、それから生産水準も六割増であります。消費水準も全体を平均いたしまして、約一割増となっております。しかしながら他方民間資金の蓄積は、戦前に比較いたしますと、なおはるかに低いのでありまして、銀行の預金は、計数としてはおよそ三兆円でありますが、これを物価指数で換算いたしますと、戦前の六割程度にすぎないのでございます。また戦前は、大体国民所得に匹敵するだけの銀行預金があったのでありますが、現在はなお国民所得の半分くらいの預金しかない実情であります。これがために、銀行は産業に必要な資金をまかなうために相当巨額の借入金を日本銀行に仰いでおることは皆様御承知通りでございます。もっとも一昨年の秋からとられてきましたデフレ政策によりまして、このような傾向は若干改善されまして、昨昭和二十九年度中の預金増加額は、全国銀行におきまして三千九百八十三億円に対し、買し出しの増加は二千華百六億円で、その間日本銀行の借入金の返済は千六百九億円に産しました。金融面がこのような改善を見たということは、単に金融界だけの問題ではなく、産業界を含めたわが国経済全体の正常化を意味するものでありまして、銀行のオーバー・ローンが多少でも改善されたということは、申すまでもなく、他方において産業界も借入金の増加率が逓減する一方、自己資本の増加率が向上いたしまして、オーバー・ボローイングがそれだけ改善の方向に向ったわけでございまして、多くの会社の内容がそれだけ健全になってきたといえるのであります。しかしそうは申しましても、日本銀行からの借入金は、今日でもなお千八百億円もありまして、預金は先ほど申し上げました通り、戦前の六割程度にすぎません。従ってこれを少くとも戦前の水準にまで戻し、銀行のオーバー・ローンと企業のオーバー・ボローイングを解消して、わが国の産業が、今後の激しい国際競争に打ち勝って、真の経済自立を達成するに役立つだけの基盤をつちかうためには、何を差しおいても資本の蓄積をはからなければならないと考えるのであります。  資本の蓄積には、いろいろの方面からいろいろな方法があろうと存じますが、企業の面におきましては、自己資本の充実を容易にし、また内部留保を厚くして、景気の変動に対する抵抗力を強め、国際競争を養うための各種の措置がとられて参ったのであります。またこれに相応じまして資金の蓄積に対しましても適切な措置がとられまして、シャウプ勧告によるきわめて厳格な直接税主義を漸次転換し、預貯金その他に対する税率軽減されますとともに、国民貯蓄組合法の制定、あるいは無記名預金の復活等の施策が実施されまして、国際経済の変転に応じ、より一そう根際競争力の強化の必要を痛感いたします現在、資金蓄積の必要性を、われわれ金融界の者といたしましては、一そう痛切に感じておるわけでありまして、日夜貯蓄増強の努力を重ねますとともに、銀行界におきましても、民間貯蓄の増強と消費抑制の実効を上げるため、かねてから預貯金に対する優遇策を当局に要望しておった次第であります。今回幸いにも利子課税全免の案が本会議に上程せられることとなり、われわれといたしましては、経済の正常化と資本蓄積の急務にかんがみまして、一日も早く本案の可決成立を見ますよう切望いたします次第であります。  本案につきましては、直接投資か、あるいは間接投資かの問題、あるいは租税の公平についての問題、その他各種の問題があるやに聞いております。まず第一に直接投資か間接投資かの問題でありますが、わが国の実情といたしましては、少額の貯蓄を預金として金融機関に集中し、これを間接に投資に振り向けることは、戦前からわが国資本蓄積の最も主要な形態でありまして、わが国経済金融の正常化を期するいわゆる地固めのときにおいて、預金利子課税全角の措置がとられますことはまことに適切な施策であろうと存じます。また公社債利子課税の全免や、配当に対する源泉税率の引き下げは、公社債や株式に対する国民の直接投資を促進する上において大きな効果を期待できるものでありまして、株式ないし社債市場の強化、あるいは再開にも寄与しまして、資本の蓄積、経済金融の正常化のために、これまた適切な措置と存ずる次第であります。  第二に、現在すでに国民貯蓄組合法により、十万円以下の預貯金に対しては利子課税はございませんので、この案は特に有産者のみを有遇するものではないかとの議論もあろうかと存じますが、この点は、今日の十万円が戦前の三百円ないし五百円にしか当らないこと、また戦前には三千円、今日で申せばほほ百万円見当までが預金利子が免税されておったことを御考慮いただきたいと存じます。また最近貯蓄性の預金がきわめて増大したのでありますが、金額の分布を見ますと、たとえば二十八年九月末から二十九年九月までの一年間の当座預金を除きます預金の増加額は、二千八百七十六億円のうち、十万円未満のものは五百六十四億円、二割弱に対しまして、十万円から五十万円のものは千二百四十四億円、四割三分に達しております。また五十万円以上のものは千六十九億円三割七分でありまして、いかに貯蓄の増大が十万円以上の層に期待されるか明らかであろうと存じます。またこれを外国の例に見ましても、イギリスにおきましては、一般銀行預金は別でありますが、郵便貯金等の貯蓄性の零細預金としましては、利子所得に対する免税を受けておりますのは、残高三千。ボンド、三百万円まででありますし、また西ドイツにおきましては、預貯金利子に対する源泉課税が免除されておりまして、また総合課税の面では、三年以上の長期預金に対しては、本人に対し八百マルク、約七万円、家族に対してはその半分四百マルク、約三万五千円までは所得控除を認められておるようであります。かように見て参りますと、いかにわが国銀行預金の階層がいわゆる大衆化しておるかが察せられますとともに、十万円の限度がいかに低いものであるかも御了解願えると思うのであります。  一面またこのように申し上げますと、しからば現在十万円までの限度を三十万なり五十万円まで引き上げたらよいではないかという御議論もあろうかと存じますが、百万円を越す個人預金というのは、口数、金額においてきわめて少いのであります。口数の構成比は〇・一%であります。金額にしましても、八・八%にすぎないのでありまして、資本蓄積、貯蓄奨励の大局的観点からいたしまして、特別措置として当面これらを含め全免せられてしかるべきものと存じます。  次に、この法案によりまして期待せられる増加預金量の見込み、これに伴う問題について申し述べます。この措置によりまして増加します資金量は、大蔵当局においても御算定になっておられるようでありますが、率直に申しますと、一体この免税によってどれだけふえるかというようなことは算定がむずかしい問題であろうと存じます。しかしインフレ時ならばともかく、御承知のように国民一般にデフレに対する心がまえもでき、また通貨価値の安定に対する信頼、従ってまた貯蓄の意欲もとみに高揚して参りました今日では、預金利回り向上と預金利子税の徴収の廃止によって、いわゆる預金の秘密性の確保観という点におきまして、預金者心理に投ずるところはきわめて多いと思われるのでありまして、これによります預貯金の増加額としては、金融機関全体として大体四、五百億、銀行だけならば三百億前後を期待してもいいのではないか、こう考えております。もとより預貯金利子の全免のごときことは、わが国経済自立のための臨時の、時を限った特別の措置でありますので、われわれ金融機関のものといたしましては、その資金の運用につきましては、今後とも一層わが国経済自立のため緊要な方面に適切にこれを投下していくとともに、ますます経営の合理化をはかり、金融機関の使命遂行に邁進いたしたく存ずる次第であります。  なお法案としては、利子課税全角のほかに、配当所得に対する源泉徴収税率の引き下げ、法人税並びに所得税の軽減、輸出所得に対する特別控除の拡張、住宅建設促進のための優遇措置等、すべて時宜に適した諸政策が盛り込まれておりますが、いずれもわが国経済再建に資するところ多大であると存じ、賛意を表する次第であります。  以上はなはだ簡単でありますが、預貯金利子課税の問題を中心に所見を申し述べた次第でございます。御清聴ありがとうございました。
  53. 松原喜之次

    松原委員長 次に、東京法人会連合会税制委員長中村重喜君にお願いいたします。
  54. 中村重喜

    ○中村公述人 私は法人会の代表でありますが、税制に対しましては、中小法人の立場をとるものであります。また本日は法人税に限定いたしまして所見を述べさしていただきます。  第一は税制の正常化であります。わが国の経済産業のいろいろな秩序が正常化されることはけっこうでありますが、そのしわ寄せが税制に及んで、しかもそれが中小納税者の犠牲によって行われることは、われわれとして納得できないところであります。それで第一に、この現行の担税特別措置法を再検討して、その必要な部分はおのおの本法に繰り込み、その祖税特別措置法というものをやめていただきたいというのが第一の点であります。この法律は、戦時経済当時の臨時祖税特別措置法に基くものであります。臨時租税特別措置法時代には、とにかく事変終了前という終期を持っておったのでありますが、現在の祖税特別措置法は終期を持っておりません。これは本法と変らないところの本建築であります。もっとも窮一条には、当分のうちという文句がありますが、この当分のうちという文句によって安易な立法に流れる傾向があり、いたずらに税法を複雑ならしめるものでありまして、存在の理由はないと思います。  それから第二は、租税特別減税措置を全部再検討して、その必要なるものには終期をつけることが必要であると思う次第であります。ここで申しますところの特別減税措置というのは、特殊の企業に関係のあるもの、渇水準備金等の五種類、それからいわゆる経済政策的といわれているところの重要物産免税等の六種類、それからいわゆる会計原則的といわれているところの貸し倒れ準備金等の三種類、合計十四種類であります。この規定は法人税法によるものもあり、また租税特別措置法によるものもありますが、いずれにいたしましても、このうちの十三種類はすべて昭和二十六年後に毎年できたものであります。それでこの特別減税措置によるところの減税額は、所得額で申しまして千六十六億円、税金で申しまして四百四十八億円の巨額に上っております。現在のように税率の高いときには、減税を受ける者と受けない者との間に著しい負担の不権衡が生まれます。またあるものは隠れたる補助金の作用をなしておるものもあり、また一つ減税措置を作れば、直ちに他との権衡上さらに措置をやらなければならぬ、こういう伝播性を持っております。また一度作った措置はなかなかやめることができない、つまり恒久的な傾向を持っておるのであります。そうして税法はますます複雑混迷に陥って、その及ぼすところの悪作用は漸次広範に及んでいきます。それでわれわれ中小法人の立場より申しますれば、この特別減税額の四百四十八億の財源があれば、優に法人税率を三三%もしくは三四%までに下げることができます。もしこの法人税率を一律に三五%に下げるとしても、中小法人は約百億以上の減税に浴することができるのでありますが、現在の特別減税措置によるところの四百四十八億の減税額中、中小法人の受けておるものは約二十億にすぎません。それでこの計算より申しますれば、毎年八十億ないしそれ以上の金額は中小法人の犠牲によるものである、かように考える次第であります。  なおこの十四種の減税措置は、それぞれ当初の設定当特にはいろいろ理由もあったのでありましょうが、果してその全部が所期の目的を上げておるかどうかということは、再検討する必要があると思います。こういう意味におきまして、この十四種の特別減税措置はすべて一応検討して、必要なものには期限をつけるということをお願いしたいと思います。  第二の点は、減税内容を一般に明白にしていただきたいということであります。国民の祖税負担を明らかにするためには、納付された税金だけでなく、減免された税金の内容を明らかにすることが必要であります。国税庁においては、税金の行方ということについていろいろパンフレットなんかも出しておられるのでありますが、われわれとしては、この減税の行方というものについて、納税者として十分知る権利がある、かように考えます。  それから御承知通り所得税法においても法人税法においても、大納税者は公示をする規定があります。これと同様の趣意において、私は大きな減免税を受けておるものは公示する規定を設ける必要がある、かように考えます。もっとも現在の法律ができたときには、先ほども申しましたように、この特別減税措置というものは買し倒れ準備金が一つ入っておっただけでありまして、そのときは、こういう公示規定の必要がなかったわけでありますが、その後十何種類もできたのでありますから、やはり大きな納税者は公示をする必要あがる。また納付せられた税金の統計というものは、相当こまかいものができておるのでありますが、減免された税金の統計というものは、ほとんど明らかにされておりません。これを明瞭にする必要がある。これによって現在の祖税制度の正常化をはかる一端とすることができる、かように考えます。  次の点は、法人の低額所得には軽く課税していただきたいという点であります。それで今次の政府減税案には、法人の税率を一律に四二%を四〇%に下げるという原案があるのでありますが、これについては、われわれとしては十分承服することができないのであります。というのは、ただいま申した特別減税措置による四百四十八億というものの減税の結果、大法人と中小法人との間には非常に大きな負担の不権衡が現われて参ります。さきに申しました特別減税措置のうちで、この特定企業に関する五種類というものは、全く大法人のみの利用するところであります。それから経済政策的なものの六種目、これもほとんど全く、小法人にも多少の何がありますが、パーセントにはなりません。いわゆるこの会計原則的のものの三種類につきましても、その利用の割合は大法人が九五%であり、中小法人は五%であります。よって世間に伝えられておるところの実効税率として大法人が三〇%、前後、中小法人が四〇%前後であるということは、これより産まれて参ります。もっともこの減税措置のあるものについては、中小法人としても今後利用の程度が多少進み得るということも考えられるのでありますが、しかしいずれにしても、ただいま申しました大法人が九五%を利用し、中小法人が五%を利用しておるというこの態勢には関係がないと思うのであります。さようなわけでありますが、今次の政府案によるところの減税額は、私の計算によれば約八十七億でありますが、このうち五十七億円が約三千そこそこの大法人の減税となり、二十万にわたるところの中小法人の減税額は三十億にすぎないのであります。中小法人は、言うまでもなく政府のデフレ政策の最大の被害者であるのであります。われわれとしては、中小企業対策として意味あるところの法人税の軽減措置を要望する次第であります。それで、われわれが主張しておるところの法人税軽減の方式は、いわゆる法人の定額所得に対して特別の軽減税率を設けていただきたいというのでありまして、法人の年所得百五十万円以下の部分に対しては、三五%の軽減税率の適用せられたいということを要求する次第であります。大法人と中小法人との二つに分けまして、別個の税率を適用するという方法は、これはできないことはありませんが、分界線において多少の負担の不権衡が生ずるという欠点があります。また法人所得に累進税率を適用するという方式は、現行の法人税制にはあまりよくマッチしないのであります。それでわれわれの軽減方式によりますれば、これも税額は大体八十億円でありまして、政府の一律引き下げ案と金額は変りません。ただ中小法人は数が多いので、全体としては大部分の減税額を享有することができるのであります。またこの方式によりますれば、大法人にもこの方式の最高の減税額十万五千円というのが適用せられるのでありまして、側々の場合について見れば、やはり大法人が大きな減税額を受けているということも言い得るのであります。この法人税に二段の税率をつくるということは、いろいろ当局者におきましては難点があるようでありますが、すでに昨年には法人事業税にこの制度を導入しているのであります。法人事業税は、課税標準は法人税と同一であるということが法律にきめられましたので、これは法人税の延長と見てもさしつかえない。従って二段税率は法人税制としてはすでに採用せられておるといってもいいのであります。またこれはアメリカにおいても採用しておる制度であります。  それから今度は、政府案で四〇%に一律引き下げが提案されておるのでありますが、この四〇%引き下げに、われわれの方式による中小法人のために低額所得軽減するという方式をプラスすることは、むろんけっこうであります。しかしこの場合におきましても、両方式を採用する結果、財源等の関係から、この低額所得の分界線を百五十万円以下に下げたり、または軽減税率を三五%以上に引き上げるということについては、これは絶対に反対をいたします。と申しますのは、先ほどを申しました通り、大法人事業の実質税率はすでに三〇%に下っておるのでありますから、どうしても三五%というのは最低の線と私は考えます。また最近は、法人事業税が五十万円を分界にいたしておりますので、法人についても、五十万円を分界とした軽減方式採用の意見が伝えられておるのでありますが、この五十万円分界線は十分と思えません。千万円以下の中小法人の平均税金額は約八十万円でありますので、この五十万円の線では、中小法人の軽減という点からは不十分であると考えます。  またこのわれわれの方式に関しましては、法人、個人の負担の権衡ということが、当局者によって最も強く反対意見としてあげられておるのでありますが、これは私どもの見るところとしては、今までこの法人、個人の権衡については、実証的な根拠があげられておりません。当局者の示しますところの法人、個人の負掛額表なるものがありますが、かような仮説的の計算によって果して負担の実態が表現し得るかどうかも疑問があります。またその表も、二年分なら二年分のものを並べてみますならば、一貫した結論は示しておりません。またこの表は、年次的にも連続性を持った表としてわれわれに示されておりません。  今まで法人、ことに中小法人の負担を増強する場合、あるいは法人税割を設けた場合、あるいは法人税率を引き上げた場合、あるいは同族会社の積立金課税の場合等には、常に法人、個人の負担均衡ということが持ち出されますが、これに対する実証的の根拠は十分でないと私は思うのであります。法人税率を下げれば、中小企業者のいわゆる法人成りが増加することが当局者によって憂えられておるのでありますが、しかしこれは企業形態発展の上での大勢であります。この中小法人と個人企業者との負担関係は、企業形態を自由に選択さして、当然の調節にまかして差しつかえないと思います。  なおつけ足してお願いいたしたいのは、同族会社の積立金の課税を廃止していただきたいということであります。言うまでもありませんが、中小法人の九〇%以上は同族会社であります。積立金課税という制度は、すでにその設定せられました翌年に、この同族会社以外の法人については廃止せられております。昨年は課税方法が変りまして、累積課税が廃止せられ、当年度だけの留保金額に対して一制の課税をすることとなり、すなわちシャウプ税制以前の加算税が復活した姿になっておりますが、この加算税というものは、従来行政措置によって事業を営んでおる法人には適用せられておらなかったのであります。また諸外国においても、事業を営んでおる法人には、加算税の制度は適用せられておらないと聞いております。この同族会社積立金課税は、中小法人に対する不合理な税金と存じますので、これが撤廃を強くお願いいたす次第であります。
  55. 松原喜之次

    松原委員長 次に、著述業高橋亀吉君にお願いいたします。高橋亀吉君。
  56. 高橋亀吉

    ○高橋公述人 今度のいろいろの税制改革の中で一番問題の多いのは、特別措置に関するものだと思うのであります。その中心点は、資本蓄積措置として利子所得に対する税額を減免する、株式配当源泉を一五%を一〇%にする、しかし総合はそのまま、こういう点が中心になっておるのでありますが、これについては二つの毎度から問題に一なると思うのであります。  第一は、利子所得を免税して蓄積がふえるかどうかという点であります。第二は、蓄積がふえると仮定して、現在政府原案にあるような方法で弊害はないかどうか、ないしはその弊害と得るものとどっちが大きいか、こういう二つの点があると思うのであります。  まず利子所得を免税した場合、その税負担軽減が誘因になって国民節約して貯蓄する、そういうことが一体あるかどうかという点であります。これは昭和七、八年、日本が低金利政策をとりましたときに、金利を低下すれば貯蓄が減るという金融側の反対もありまして、金利を低下すれば貯蓄が減るか減らないかということが、大きな問題になったことがあるのであります。つまり預金利子が減れば蓄積が減るか、ふえれば蓄積がふえるかということが問題になったのであります。それと形は違いますけれども、今度の免税によってふえるかふえないかということと性格は同じであります。手取りがふえれば蓄積がふえるかふえないか。ところで当時においては、金利が下りましても蓄積は非常にふえたのであります。一体世界において、蓄積の一番大きな国はどういう金利かというと、金利が山番安い国が蓄積が一群多いのです。蓄積が多いから金利が下った、こういうことも言えますけれども、逆に金利が一番安いところが蓄積が多い。ということは、そういう預金利子所得の大小が蓄積を左右する力はきわめて少いものだ、ないとは言わないけれども、きわめて少いものだ、こういうことを語っておるのであります。それにしても過去において、たとえば今まで逐次預金利子所得税率を減らし、ないしは分離所得にした。それで相当預金がふえております。従って、今度でもやれば預金がふえるだろう、こういう予想が立てられているのでありますが、一体こうした預貯金の増加というものはどういう性格のものかという点が問題なのであります。それは、今までは蓄積が新たにふえたのではなしに、所得、つまりやみ所得を追及せられるためにたんす預金その他の形で隠れておったものが出たにすぎないのです。新規に蓄積がふえたわけではないのです。今度やりましても、そういう効果はあり得ると思うのです。ことに今度のように、預金だけを免税にするとすれば、ほかの蓄積に向うべきものが預金に横流れをする、これはあるのです。おそらく今度の改正において、その被害者になるものは株式に向う金及び預貯金だろう。預貯金は相当減ってくるだろうと思うのです。そういうふうなものが横流れをするということはある。あるいはたんす預金にしてやみ所得を隠蔽しておったもの、それが出てきたということはある。しかしこれは国民経済上蓄積がふえたとは言えない。そういうものじゃない。昔、金本位制度であればそういう退蔵した資金が出るということにも意味があったのです。それは、当時においては通貨の発行高は金の所有局に縛られておりますから、それが退蔵されておる。こういうことは一国の大事なものが寝ておるということになる。しかし今日の管理通貨の時代においては、金とは何ら関係がないのであります。従ってそういうものを出すということは、国民経済から言えば大した意味はないのです。そのためにそういうものが外へ出た。表面に出た。それが預金がふえたという本体だと思うのです。それをいかにもこのために国民節約をして預金をした、こういうふうに見ることは重大な錯覚だと思うのです。これは単に預金ばかりじゃないのです。当時における預金のふえたものは、いわゆる秘密が保たれる。今までのやみ所得の追及を免れる。これによってふえただけなんで、それは同じ待遇を受けた投資信託がふえたというのも同じことです。  そこで問題は、資本蓄積のためにこの際税法上いろいろの措置をとるということは大へんいいことなんでありますが、もしそれをやるというつもりであるならば、ほんとうの意味において税法上その措置をとろうというのでありますならば、むしろ生産がふえるという形をとらなくてはだめなんです。なぜ金利が安い国において貯蓄がふえるかといえば、節約をするからだというよりは、生産がふえる、収入がふえる、それで貯蓄余力が出るからなのであります。節約で貯蓄がふえるというのは、サラリーマンや昔の武士階級、そういうふうに収入が固定しておる階層の思想なんであります。そういう形でもむろんある点まで貯蓄はふえますけれども、そういう形の貯蓄がふえるというのはたかが知れておるのです。そういうことが主体である国の貯蓄はふえていない。そうでなしに、生産をぐんぐんふやす、所得をふやしていく、それに主点のある国の貯蓄はぐんぐんふえていく。これは事実が証明しておる点なのでございます。  もう一つは、ここで税法上貯蓄をふやそうとすれば、法人税を下げる。今日法人税が高いためにどのくらい乱費されておるかわからない。大部分は税金に持っていかれるというので、非常な乱費をしておる。これをとめるということが貯蓄をふやす一番大きなポイントであると思います。真に貯蓄増進のために税制上ある措置が要るならば、その方面に主力を注ぐべきだというふうに思うのであります。そういうわけで、私はこの利子免税によって貯蓄がふえるであろうというふうには——むろん若干はふえますが、それはもうたかが知れておるもので、問題にするほどのことはない。出たもののおそらく八、九〇%は横流れだ。ほかに貯蓄されておるものがそこに集まってきたにすぎない。とともに、もう一つは、かりに蓄積する効果を持っておるとして、今度の政府原案のやり方でいいかというと、これは資本秩序を破壊する大きな弊害のある問題だ。一体国民の資本がいかなる形で蓄積されるかといえば、大体預金あるいは株式等に持っていく、あるいは直接事業投資をする、こういう形で貯蓄されるわけでありますが、そのうちの一番大きい代表的なものは、利子所得、確定利付の形で投資するのと、株式のごとく配当によって投資するのとあるのでありますが、この間にはおのずから均衡があるのであります。現在においても一定の均衡ができております。それをこういうふうに一方は免税にしてしまう、一方は今までのような総合課税を置く、こういう形になりますと、従来の所得に対する手取りの均衡というのは根本的に破れてくるのであります。そしてそういうことをやればどういう問題が起ったかといえば、これは支那事変当時税率を非常に上げました。今日の税率はそれ以上高いのでありますが、そのためにやはり株式が暴落し、株式では資本を得ることができないという問題が起りまして、大体利子所得に対する今までの比例税を総合課税に原則として入れて、ただ過渡的の措置として源泉四割という形で妥協した、調和した、こういう歴史があるのであります。  今度のやり方は、それをまたもとへ返そうとする。今度はみんな免税なんです。そのときはまだ比例税があった。今度は免税一方であれば、どんなに金額が多くても、たとえば一億のものを持っておれば、おそらく一千万円近くの利子所得が入る。これは免税なんです。あるいは二億持っておれば二千万円入る。これは全部税金なしなんです。そうして株式だけは税金がかかる。勤労所得もかかる。こういう不公平を来たします。   〔委員長退席、横路委員長代理着席〕 なるほどこれまでにおきましては、そういう大きな預金はないということは事実なんだ。今までは、そんな大きな金のある人はもう少し有効に使っていたのです。しかし今までないからといって、今後ないというわけにいかない。こういう税制が行われれば、金持ちは全部預金の形態をとり、利子所得の形態をとるように走っていきます。ふえていきます。今まではやらなかったけれども、今度はその方が有利だ、税金は何にもかからないということになったならば、みんなそこに入っていくことになるのであります。戦前におきましても服部金太郎氏という大金持ちが、そのときは公債が無税でありましたが、一文も税金をとられないということで問題になったこともあるのでありますが、そういう方向に行くと思うのであります。そういうわけで、この際こういうことをやれば、当然株式に投資すべきものがそこへ流れていく、こういう形をとるわけなのであります。ところがここで問題があると思うのです。なるほどお前の言うようであるならば、今まですでに分離課税にし、あるいは二割を一割にした、そのときには問題がなかったのだが、今度この一割をなくする、そこで急に問題が起るのはおかしいじゃないか、こういう疑問がお出になると思うのでありますが、実はこれまでは、インフレ時代で預金をするのが一番不利だった。銀行に預金をするよりは、保全経済会や何かであったように、月二割も三割も回るんです。だから銀行に預金しないのです。またそれができない人は、株を買うとか、物にするとかいう時代であった。こういう段階において、銀行の預金に対して預金利子は非常に統制されておる、不利である。それに今までのような特権を与えた分離課税にし、あるいは二割を一側にした、そうして銀行に預金を集めようとした、これはわかるのであります。必要があったと思うのです。従ってそういう時代でありますから、早く株式を買って、それも利回りで持たないで、値上りを目的で買っておる。だから今までにおいては影響がない。影響が今までなかったから今後もないと見ると大へんな間違いなんで、現在は通貨は安定しているし、むしろデフレ時代です。あらゆるものは利回り中心になってきておるのであります。そうなれば、今度は利回りから見て、有利なところへどんどん集中してくることが当然のことになるのであります。今申しましたようなわけで、これまでの利子所得に対する特権は、これはインフレ時代の特権なのです。それがインフレが終息してデフレ時代になれば、この特権を廃止すべきなのです。廃止してもとの総合課税に戻すべきだ。それがこれを免税しようというのですから、これは時代逆行もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。  しからばこういう問題が国家的に見ていいかというと、確定利子で衣食する、食っていく、そういうことを尊重しておる国は栄えない、フランスをごらんなさい。やはり進出的にある程度まで冒険を冒して事業をやる、そういう冒険的な投資をしない国は衰えていく、そういうことをやる国が栄えておる。だから国民全体からいってどちらを保護する必要があるかというと、冒険を冒す株式投資をこそ保護すべきなのです。むしろ預金利子が安逸しておる。私は隠居資本と言っているのですが、隠居資本を保護するようでは——その方を偏重するようでは国は進まない、こういうふうに思っておるのであります。それで実際においては、戦前のような定期預金を中心とした日本の銀行制度は、できるだけ直接投資、特に株式投資等の産業投資に向うような措置をとるべきなのであります。現に政府は、株式民主化運動をやったのでありますが、そういう広い、高い見地からいいましても、今度のような政策というものは非常に間違っておる。それから産業資本の構成からいいましても、借金が多々ある、資本構成を多くせねばいかない。そのために政府は、現に先般の国会で増資配当所得の一制までは経費と見る、今度のこの改正でも、増資登録税を軽減する、こういうふうにして資本構成をできるだけ是正していく、つまり株式構成を多くしょうということに努力している。またその必要があるわけです。今のように借金が多くなったら、ちょっと不景気になれば事業はみな倒れてしまう。そういうわけで、政府がそういうことをやれは、この案というものは逆行なんです、逆なんです。同じ法案の中に全く逆のことをつぎ込んでおる、こう言われても、おそらく弁解の余地はないのではないかというふうに思っております。  そこで一体どうしたらいいか、こういう問題であります。私はこの際としては、利子免税どころか、もとへ戻すのが本格であると思う。つまり今までの臨時措置法の利子免税の全部をやめてしまって、総合所得へ戻す、そういう方向へ持っていくのが、インフレ時代を過ぎて今日の段階になったことからいえば当然だと思う。現にまた今までの措置法は三十年六月限りで切れております。なぜそういう期限を切ったかといえば、これはインフレ時代の措置なのである。インフレ時代には、私どもは確かにこの必要があったと思う。それをやられても、銀行は非常に不利な位置に置かれておる。それが保全経済会なんかがばっこしたゆえんだと思う。従って今までにおいては、ずいぶん銀行がいじめられ過ぎていたと思うのですが、しかしながらこのデフレ段階に来て全免する、こういうことでは、一体何のために六月三十日の時限立法をしたか、その意味が全くくずされてしまうのではないか。そういうわけで、私一個の結論からいえば、本来からいえばこれはむしろもとへ戻すべきである、現状維持じゃなしに、もう」歩下へ持っていくべきだ、そう言うのがほんとうだと思うのです。しかしこれは、私評論家として自由な立場で言っておるのでありますが、もしこの立法を皆さんがその必要があるというのであれば、これは当然株式所得も同様な取扱いをすべきだと思う。これを区別する理由というものは全くないのであります。たださっきも言いましたように、今までのインフレ時代には、預金というものが非常に不利であって株式に行った。今までは表面上は非常に差別待遇であるけれども、一方からいうと、銀行の預金利子を抑えておった。そういうことが非常に不公平であった。ですから、それとの均衡では、そういう措置をとってもよかったと思うのですが、しかし今日のデフレ段階になってはそうではないのですから、今まではそれで行ったから今度も大したことはないだろうというつもりでおやりになると非常に違うので、これはもう大へんな影響が出てくる。そういう影響なしにしようとすれば、同じ取扱いにすべきだ、こういうふうに思うのであります。そうなってくると、今度は勤労所得その他の所得との均衡を一体どうするのだ。こういう問題が起るのですが、そこへ行くとなかなか厄介な問題が出るわけなのであります。そういう意味においては、実はよく存じないのですけれども、利子の免税を三十万円以下に限ろう、それも一つの案であると思う。しかしまた現在のことをやろうとすれば、経済団体や証券業界の方から出ておりますような、配当控除率を二五%から三五%。源泉徴収率を五%にして、配当支払い証書の支払い限度額をふやしていく。こういう案一が出ておるのでありますが、実は私この案を見まして、産業資本家、ずいぶん腰が弱いなと思った。こんなことで妥協したらやはり大したことはない。今までの感覚で考えていらっしゃるのではないか。今までの感覚はそうなんですが、今度このくらいのことで妥協したら、その影響はやはりまだ相当大きいだろうと思う。そういうわけで、これが最低線じゃなしに、最低線をこの案ははるかに割っておる。  以上で私の公述を終りますが、皆さんよく事態を見て御審議を願いたい。
  57. 横路節雄

    ○横路委員長代理 次に税理士桂田斐君にお願いします。
  58. 桂田斐

    ○桂田公述人 税理士の桂田斐であります。現今の日本の重税は、法律そのものが大資本に都合よくできている上に、その行政においては、大所得者が脱税を楽にやれるように仕組まれているので、そのしわ寄せで勤労階級が過酷な重税を背負わされております。しかもその取られた税金の少からざる部分が、憲法に違反して、法律にそむいて使われ、大金持ちや有力者のふところを肥やすようなことが多くて、納税者大衆のためにするものが感ぜられないために、国民一般が納税を快く思わないので、自然納税を免れようとします。納税道徳を責める前に、まず政治の誤まりを責めるべきでありましょう。  今回の税制改革では、直接税を若干減じて、それだけを間接税で増税されるから、減税の公約を無視されたわけです。特に今回もまた資本家不労所得に対する減税が目につくのに、低額所得層に対する減税はきわめてわずかですが、他面間接税の増加は広く国民大衆の肩に、特に低額所得者ほど負担割合が多いので、結局資本蓄積の名において、資本家中心の減税、大衆重課への拍車をかけるものであります。私をして言わしむれば、間接税を増されたので、その埋め合せに直接税を幾らか減らしたと批評したいのであります。今回のごとく、負担能力を無視した不公平な税制改正、いな改悪は、いまだかつて見ざるところであります。なお間接税の増加は、それだけ大衆負担の増加となるだけではなくて、その増加する消費物の原材料たる米や原糖の輸入代金だけ外貨の流出、すなわち日本経済全体のマイナスでありましょう。なお政策として消費の節約が要請されている折柄、税収をはかるために消費の増加を求めることは矛盾もはなはだしいと思います。  さて所得を対象とする税負担の変化を検討しますと、所得税法の改正によって、たとえば扶養家族四人ある場合、事業所得二十万円の人は千七百五十円減税になり、その所得一万円当りの減税は八十七円にしかならないのに、所得百万円の場合は、減税額三万七千円となり、所得一万円当りの減税は三百七十円になります。また給料一ヵ月三万円の人は、月百四十一円しか減税されないのに、月給十万円の人は月三千六百四十五円減税されます。同じように家族四人かかえていても、月給十万円の人には、一万円当り三百六十四円減税してやる必要があるのに月給二万しか取らない、しかもそれで一家五人生きていかねばならない人には、一万円当り七十円しか減税せずに済ませる理由がどうも私にはわかりません。日本のように収入の少い階層に所得税の高い国は、何をおいてもその層への減税が第一であるべきに、それが逆であることが反対の第一の理由であります。  次に、大資本系統に属する輸出産業貿易商社がもうける輸出所得に対する免税範囲の拡大こそは、単なる資本家擁護以外の何ものでもないと思います。単に外貨獲得策としてならば、輸出産業労務者の所得税を引き下げて、実質賃金の増加をはかることや、その原材料供給業者負担を減らして原価を低くすることの方が直接的に有効だと考えます。  次に、預貯金利子に対する減税がありますが、預貯金の利子に対しては、一昨年までは、普通は二〇%、減炭選択、すなわち税務署に出さぬ分については五〇%を所得税として天引されていたのですが、一昨一率に一〇%に引き下げ、さらに昨年は、一年以上の定期預金の利子には五%しか課税しないことに改められましたが、さらにまた本年からは、預貯金利子には一切税金がかからないことになりました。戦前ですら、預金利子には所御税と資本利子税とで七%課税されたものですが、一般大衆が重税で異常に苦しんでるときに、金持ちだけがその不労所得に税金がかからぬとは何としても納得できません。  次に、今回ではなく、シャウプ勧告以来行われていた配当所御の二五%を所得税から控除する規定でありますが、これあるがために、たとえば扶養控除四人で、年間配当金が八十四万円ある人は、一文も税金がかからなくなっています。こんなふうに、資産家の不労所得には、かくも不公平に税金が軽くしてあります。しかるに勤労者、給料取り、農民、商工業者はどうでしょうか。たとえば個人の商工業者で八十万円位の所御のある人は、その三分の一ぐらいを所得税、住民税、として取られます。資本運用というよりも、勤労の成果、すなわち主人初め家族総がかりで、朝から夜まで働いて得た所得には、こんなに重税がかかります。特に所得税では、勤労の対価、すなわち給料に当る部分に勤労控除がない、また家族の給料に当る部分も主人分に合算されるので、それらの基礎控除がなく 合算の結果、増加累進の税率適用を受けるので、他の所得者に比較して驚くほど税金が高くなっています。  次に、法人税、組税特別措置法のことでごさいますが、これは先ほど中村さんから詳しく御説明がございましたので、私も大体同点見でございますから説明を省略いたしますが、ただこれは、昭和三十六年までは法人税の税率は三五%であったのでございますが、租税特別措置法によるところの減税があるために、その埋め合せで七%引き上げた。だから増税にはならないということであったのでございますが、実際は先ほど御説明の通りに、中小法人に対する負担が重くなっただけのことであるということを特に御考慮願いたいと思います。  また事業税におきましても、法人の場合は、重役報酬は、全部課税対象にならないのに、個人事業の場合は、主人はもとより、家族の給料に当る部分にまでも課税されて、ふつり合いに過大な負担をしています。また小商工業者は、所得の全部が勤労の対価であって、決して資本の力による利益とは言えませんから、事業税を取ることは間違いです。もちろんある程度の資本は必要であります。個人事業としては、所得税の負担が重いので、事業税を納める余地がないから、また商工業者だけが地方税を最も多く負担しなければならない理由がない等のために、事業税全廃の主張が強いのに、今回は基礎控除を二万円しか上げない、年税額千六百円しか下げられないという不徹底では納得できぬと思います。  以上は書かれた税法のことであって、上には軽く下には過酷であることを申し上げましたが、それが執行される段になりますと、不公平は一層はなはだしくなります。それは資本蓄積という美名で大口脱税が黙過されていること、そのしわ寄せで、中小企業を中心とする勤労階級に対する苛斂誅求であります。政府は中小企業には資本は要らぬものとでも思っているようです。中小企業が次第に衰亡しつつあるのは、重税も大きな原因の一つであります。たとえば銀行預金を調べて資料にしますと、大口脱税を発見するのに手っとり早いのですが、政府は金融資本擁護のために、銀行に対する税務調査を制限しています。だから大口脱税者にとっては、この預金の秘密性こそは絶好の隠れみのであります。また大会社や有力筋の調査には裏口からの牽制が強くて、それを無視して調べようとすれば、かえってその税務官吏の方が追い払われるような始末で、骨折ってしかられるのはからかさ屋の小僧と収税官吏だと税務官吏はこぼしています。だから税務官庁では、成績を上げるためには、いやおうなしに政治力の弱い、捕えやすい中小企業等の勤労階層へ調査の重点を置かざるを得ません。税務官吏自体が、良心的には働けないようなふうになっています。これらの様相は、負担力に応じて取るという直接税の実態を折本的に崩壊せしめるものであって、そう導いた政治力徴税道徳低下を憎むのであります。  戦前の事業所得は、法律に書いてある通りに、計算した金額の二分の一か三分の一くらい、大都市では一分の一か五分の一くらいに決定されんものです。すなわち含みの方が多かったものです。それが習慣になっていました。今でも政治家や学者の間には、含みを大きく考えられていられるようで、税法に書いてある商工業者税負担が非常に重くて、まともに納税してはやっていけないから、税法を改正する必要があるという主張に対して、含みがあることを口実にほおかぶりしています。ところが近年税務署の調査が徹底してきたために、この含みは大体二、三〇%くらいと見られています。ここまで含みがなくなりますと、税法を現実に合うように根本的に書き改めねば、この矛盾は、含みをはさんでの官民間の争いは解決すべくもありません。  しかるに歴代の政府は、かわり財源のないことを口実にして、実際は資本家には思う存分減税してある。金持ちや有力者には目に余るほど脱税をやらせておいて、中小企業にはごくわずかな名目的減税しかやらずにおいて、例年のごとく含みをねらって、調べるともろと出るという口実を使って、自然増収の名において現実には増税すると思われます。最近似たような例では、固定資産税の税率をわずかばかり下げて、いかにも減税をしたかのごときふりをしておいて、実際には土地の値段をうんとつり上げて、結局大増税をやりました。税務調査はいついかなる階層へ、いかなる方向へ、いかなる程度の力を加えるか、すべては官憲がほしいままにするところに、公権力が強過ぎるところに、こういうことが平気で行われるのです。税法の改正には無関心であっても、目の前に現われる調査官吏にはひどく神経を使う人が多いのはそのためでありましょう。憲法にはすべて国民は法の下に平等であると規定されてあります。今言ったように意識して不公平な行政を行う税法は、果して法律としての権威があるでしょうか。単なる権力の濫用による収奪だという非難に対して、どう答え得るでしょうか。私は今回の税制改正案に反対でありますが、私の主張を申し上げますと、近代国家、資本主義社会では、自動的に貧富の懸隔がはなはだしくなるので、それによって生ずる矛盾を避けるためには、富める者の負担において社会保障的支出を行う、納税義務の目的をここに置けば理想と思います。日本では、税金とは貧乏人からとって金持ちにみつぐみたいになっていますが、それを根本的に変更する必要があります。  しかしさしあたって当面する不合理のはなはだしい点を是正するために、言い古されていますが、大資本、大所得者の調査を徹底せしめて、中小企業等低所得層への行き過ぎがないよう反省を求めるとともに、租税特別措置法等の輸出所得、利子所得、配当所得等各種免税を廃止して、大企業にも音通に納税せしめる。その歳入をもってすれば、全国中小企業税制改革協議会の主張である所得二十四万円まで免税、中小法人税率三五%、事業基礎控除十五万円、その他の要求を満たすことができます。これらは過般の総選挙で公約せられた各政党の主張のうち、最も中庸を得たものでありますから、必ずそのように改正せられるよう期待してお願いする次第でございます。  御清聴非常にありがとうございました。
  59. 横路節雄

    ○横路委員長代理 次に、日本官公庁労働組合協議会税制部会副委員長笹川運平君。
  60. 笹川運平

    ○笹川公述人 官公庁労働組合の笹川でございます。私は本日の公述におきまして、主として賃金を得て生活する者の立場からいって、今回の減税案についてどのように考え、またどのように修正されることをお願いしたいか、このことについて申し上げたいと思うわけでございます。  憲法三十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」こういうことが明記してあるわけでございます。労働者も同じくこのワク外ではないと思うのであります。しかしながら現在のわれわれの生活を考えてみますときに、民間の団体におきましても、あるいは官公庁の労働組合の立場におきましても、実質賃金はだんだんと下っておるわけでございまして、われわれはこの立場におきまして、ぜひ最低生活を維持する、このような立場においてこの減税案を考えていきたいと思うわけでございます。そのような立場におきまして、われわれは現在の税制に対してどのような不満を持っているか、このことにつきまして、若干時間をかりて申し上げたいと思うのであります。  まず第一点として、現在のわれわれ勤労者の税金が非常に重いということであります。これは国内における戦前との比較においても、あるいは外国との比較においても、そのことは端的に言われるわけでございます。たとえば戦前と比較いたしますと、戦前には納税者は大体において九十五万、その納める税金は一億一千万円でありました。今日、昭和二十八年の国税庁の事業報告を調べてみますと、その約十二倍の人たちが税金を納め、その額は三千六百億円に達しているわけです。私は、その納税者が多くなったという現実一つながめてみましても、やはりそこに十分考えていただく面もあると思います。また外国との例を比較しましても、たとえばアメリカは、実質所得が、われわれの調査で日本の約九・五倍に達していると思います。また同じく敗戦国であるドイツの実質所得は、われわれの約二倍に達しているというふうにわれわれは分析しているわけでございますが、十万八千円というような収入を考えてみますと、税金を納めているのは日本だけでございます。その一事をもって見ても、われわれが重税にあえいでおるということを端的に物語っていると思うのでございまして、この税金が重いという面は、いろいろの面からわれわれの生活を圧迫しているということが、率直にいって言えると思います。  次に指摘したい第二の点は、税金が非常に不均衡である。先ほどから数人の方が申されたわけでございますが、大法人の立場とわれわれ勤労者の立場を比較してみますと、なるほど法人税につきましては四二%という税率がございますが、十万円の収入があっても四二%であり、百億円の収入があっても四二%、しかも大きな法人についてはいろいろの特別な控除があるわけです。われわれが調査した範囲内では、大きな銀行とか会社の例によりますと、二〇%から二五%まで控除してある。こういうふうな実態があるわけでございまして、これにつきましては、われわれ給与所得者の実態によりますと、御承知通りいろいろの控除をしたあとで、新しい税法でも、三万円以下の収入があれば一五%、三万円から八万円の人は二〇%、それらの人と何十億という人たちと全く同じということが果して税の均衡上から妥当なものかどうか、こういう点から、われわれはこの税制についての不満を持っているわけであります。  次に、先ほども申されたわけでございますが、間接税が非常に増徴されている。これは終戦前といろいろ比較して見ましてもわかるわけでございますが、間接税には、御承知通り逆行性がありまして、どんなに収入の少い人が「しんせい」を吸っても、収入の多い人が「しんせい」を吸っても、やはり納める税金は同じわけです。そういう意味におきまして、私たちは間接税というものはできるだけ少くすべきである。こういう立場をとっているわけでございますが、だんだんとこれが増加されていく傾向があるわけです。  地方税のことについては特に申し談せんが、そこでこのような最低生活を維持するという立場、税金が重い、あるいは不均衡である、こういう立場に立ちまして、今回の改正案についてわれわれがどのように考えているかということについて申し上げたいと思うわけです。  まず第一点として、所得税を中心にして申し上げるわけでございますが、この改正につきまして、選挙の公約の際に、各党が、現在の税制については減税しなくちゃならぬ、こういうことを自由党の方も、民主党の方も、社会党の方も全部取り上げられた。こういう方向に対しては、われわれはななはだ敬意を持っているわけです。しかし今回提案されましたところの所御税の内容につきましては、ます第一点として、非常に修正が不徹底である、こういうことを申し上げたいわけです。先ほどの立場からおわかりいただけると思うわけでございますけれども、まず第一に、先ほどの公述人も申されたのでございますが、低額所得者を擁護するということがよく新聞に出ているわけです。われわれ低額所得者がはんとうに擁護されているかどうか、そういうことを計算してみました。計算にはいろいろの方法があると思いますが、私が計算いたしましたのは、現在の勤労控除と社会保険控除とそれから扶養控除、そういうことについてと、もう一つは、社会保険控除につきましては、大体給与総額の五%、こういうふうに考えて計算したところが、現行で十二万円の年額収入の人は、扶養控除のない場合には三千五百五十円です。ところが改正法になりますと一千五十円、その差は一千五百円でして、月当りにしますと百二十五円です。ところがこれを同じく四十八万円の収入の人について比較してみますと、扶養家族のない場合について調べてみますと、九万七千三百円が現行でして、新しい改正案では八万五千六百五十円、その差は二万一千六百五十円、月当りにしまして九百七十円でございます。九百七十一円というのは、先ほどの十三万円の収入の人の約八倍です。これが果して低額所得者を擁護しているという実態であるかどうか。こういうことについても十分にお考えいただきたいと思うわけです。たとえば流百万円以上の人は全然税制も改正されない、税率も改正、されないのだから影響がない、こういうふうにお考えでしょうけれども、その点につきましても、御承知通り基礎控除が六万七千五百円から七万五千円にふえ、勤労控除が四万五千円から五万二千五百円にふえ、生命保険控除も一万一千円から一万三千五百円にふえた。その差額の一万七千五百円は、五百万円以上の収入の場合には、もう税率を抜きにしても、無条件で二万一千三百七十五円という、先ほど青いました十二万円までの収入の人のこれもやはり八倍の税額が無条件で控除されているわけです。これがほんとうに今新聞に伝えられているような低額所得減税の実態であるかどうか、こういう点につきまして、われわれとしては低額所御者をさらに擁護していただきたいと思うわけで.ございます。  次に第二点としては、実施の期日が七月一白からになっておる。これにつきましては、われわれはぜひもっとさかのぼっていただきたい。この七月一日からのために、夏季手当の問題そういうことについても、このワク外になっているわけでございます。さらに五百億円減税立場からいいまして、移項規定が、先ほどいいましたように八万円というのがさらに少くなり、勤労控除もさらに少くなっておる。こういうことについても、はっきりと今年度からすぐそのまま実施してもらいたい、こういうふうに考えるわけです。  もう一つ申し上げたいと思いますことは、徴収方法です。われわれ勤労者の場合については、この徴収方法は特別徴収によってやっています。特別徴収の場合には、役所に勤めている場合には無条件で天引きに控除されます。申告所得の場合には、その申告の実態によってやられるわけです。従いまして、私たちの調査によりましても、申告所得については、昭和二十五年には八百二十八億であったのですが、二十八年には七百十三億円と滅っておりますけれども、源泉所得については、昭和二十五年には一千二百十一億円が、二十八年には一千八百八億円と、このように非常な増加を示している。こういう現実は、これは国税庁の調査によったもので、大体間違いないと思いますが、こういう実態は、そのような徴収方法で、取りやすいところからどんどん的確に取っていく、あとについては、努力はされないのではないと思いますけれども、実質的には非常に下ってきている、こういう点について考えるわけでございます。  いま一つは、今度は話を変えまして、そこでそのような立場に立って法人税、あるいは預貯金、公社債、そういうものの税制改正についてはどのような立場をとるか、こういうことをごく簡単に申し上げたいと思うわけです。  まず第一に、法人税については、われわれとしては、やはり法人も累進制にすべきである、このように考えるわけです。なぜ法人税だけが四二%で、少い人も多い人も同じ税率であっていいか、こういうことについては、われわれとして納得いたしかねるわけでありまして、この点については、特に考えていただきたいと思いますし、その際、先ほどもお話がありましたが、中小法人については、現在その金融措置からいっても、営業の実態からいっても、苦しんでおられる実態でございますので、ぜひ税額は引き下げるようにしていただきたい、このように考えるわけです。それから青色申告については、先ほどのお話の中で、四百四十五億円の特別控除があるということでございましたが、われわれの調査では、五百五十億円という数字が出ておるのであります。そのような特別控除がされておることに対して、われわれはやはり納得いたしかねるのでございまして、この点につきましても、やはり先ほど青いました税の均衡という立場から、十分考えていただきたいのであります。  次に預貯金並びに公社債の減免ということでございますが、われわれとしては、そういう資本蓄積ということもいろいろと考えられるでしょうけれども、それよりも、まず第一に現在生活にあえいでおる人たちの生活を完全に確保する、最低生活を確保するという立場に立って、そのような税金を引くという立場よりも、逆にわれわれの方の勤労控除であるとか、あるいは基礎控除額を抜本的に引き上げていただきたい、現在の段階においてはそのように考えるわけです。このような立場に立ちまして、われわれとしては、この税制について改正していただきたい点が多々あるわけでありまして、それにつきまして簡単に申し上げたいと思うわけです。  そこでわれわれは、この所得税につきましては、端的に結論を言いまして、勤労所得の場合、三万五千円まで免税にしてもらいたい、こういう主張を持っておるわけです。なぜ三万五千円までの免税にしたかということにつきまして、その算出の根拠は、われわれとしては、戦前と比較したわけです。戦前の昭和九年ないし十一年には、千二百円まで免税になっており、さらに家族一人につきましては百円、このほか二一%の勤労控除がありました。これは今日の金に比較しますと、、三百三十倍の物価の変動と考えまして、約五十万円でございますので、それとの関連を考えたわけです。特にわれわれとしてそういう主張をいたしたいと思いますのは、勤労所得につきましては、現在税法の第九条の中に四万五千円の一五%と書いてありますが、あの幾つかの必要経費の控除の中で、ああやって最高の限度というものが四万五千円というように区切ってあるのはほかに何があるか、こういうふうに考えてみますと、あるのは山林所得と退職所得だけでありまして、あとのものにつきましては、どんなに必要経費がたくさんあっても、一つもこれを控除するということはない。このような立場に立つならば、われわれとしては、これをやはり抜本的に広げまして、勤労控除というものは、少くとも最高限度十万円まで引き上げてもらいたい、かような考えを持っておるものであります。  次に扶養控除であります。現在は所得控除になっておりますけれども、われわれとしては税額控除にしてもらいたい。現行の四万円、二万五千円というふうな所得控除というものは、五十万円の収入のあった人の税の控除と、それから十二万円の人の場合の控除額では非常に差があるわけでありまして、その点につきましては、こういう控除にしますと、非常になしくずしになるわけでありまして、われわれとしては、やはり先ほどの五十万円という立場に立ちまして、一人一万円の税額控除にしてもらいたい、このように考えるわけです。基礎控除につきましても、そのような立場から、現行の七万円を十二万円まで引き上げてもらいたい。そこでもう一つこの際基本的な立場を申し上げたいと思いますのは、税率でございます。この税率を引き下げることにつきましては、われわれとしても何ら異論はないわけでございますけれども、われわれの基本的立場に立つならば、これは税率をどんなに低くしても、やはり税金を納めるわけでありまして、やはりその点は、基礎控除について最低生活を確保するという立場に立って考えていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで以上のような立場に立って、ぜひ皆さんの方で十分御審議をいただき、私たち要請申し上げました点につきまして、ぜひ改正していただきたいと思うわけでございます。  以上簡単でありますが、官公庁労働組合の立場を代表いたしまして、税制についての意見を申し上げたわけであります。
  61. 横路節雄

    ○横路委員長代理 次に興国人絹パルプ株式会社社長金井滋直君。
  62. 金井滋直

    ○金井公述人 私は産業を代表して申し上げるような立場に相なっておるものであります。現下のデフレ下において、今の産業界というのは非常に苦労に苦労を重ねております。これに対して私どもは、簡単に申し上げますと、企業努力、われわれ自身の努力においてこの困難を克服することに、全力をあげております。御承知のように、賃金も引き下げるような提案を大企業としてはおりません。それだのにかかわらず、われわれはそれ以外の面において大いに努力をして、この目的を達することに全力を尽しておるのであります。そういうふうな考え方で、われわれの作りあげました決算の書類を見ますと、その残った利益のほとんど半分に近いものが税金に持っていかれてしまうということを考える場合に、非常に私どもは一極のさびしさを感ずるものであります。しかし私どもがそのときにがまんすることは、戦争に負けた日本である、政府財政も楽じゃないということを考えまして、私どもはそれをがまんしておるのでありますが、しかし今度の政府原案を拝見いたしますと、その中の法人税が、わずかでありますけれども、二分ばかり下がるようになっておるようであります。欲を申すと、このくらいではとうてい足りないのでありますけれども、せめてシャウプ氏の勧告以前の三五%ぐらいに持っていってもらうといいと思うのでありますけれども、それも財政面からできないということであるならば、もう少しこれを引き下げてもらう方が適当ではないかと思います。ただひとつこの問題につきましては、私どもが聞きそこないであるかもしれませんが、せっかく本税を二%下げるのであるけれども、地方財政が困難なために、その二%を地方財政の方へ吸収しようという意見があるやに聞いておるのでありまするが、これは私はとんでもないことだというふうに、ほんとうに反対するものであります。  地方財政の問題は、ここで申し上げるまでもなく、合理化の余地は私どもはまだあるように承知しております。これは、具体的な問題はここで論ずることを避けますけれども、あるように考えられる。われわれとしましては、その三%の余りを地方の方に振り向けるということは納得のいかない点であります。これは十分委員会において御注意をいただきたいというふうに考えます。  それから預貯金の利子課税の免税でありますが、この問題は、私ども産業界から申しますと、今悩んでおるのは、御承知のようにオーバー・ボローイング、借金が多過ぎるということであります。一昨年あたりは、銀行のオーバー・ローンということが非常にやかましかった。しかしこれは預金がふえ、貸付が減り、また銀行自体の合理化によりまして、どんどん日本銀行の借入金はおなしになったというような関係から、銀行のオーバー・ローンの問題は、問題の焦点からはずれてくるほどに成功したということを、私はここで申していいと思うのでありますが、取り残されたものは企業体のオーバー・ボローイングの問題だと思っております。これは、われわれ自体につきましても大きな問題でありまして、これを何とかして解決するのがわれわれの任務だといべふうに考えておりますが、このオーバー・ボローイングを解消するのには、やっぱり日本全体の資金が豊富でなければならないということはもちろんであります。その意味において、預貯金の免税ということは、私どもとしては歓迎するものであります。ただ問題は、この場合に株式配当に関する課税の問題であります。これは先ほどの公述人からもお話がありましたように、源泉を五分くらい減らすのでは、われわれは満足ができないので、これはゼロにする、あるいはまた総合の場台には、今の二五%を三五%にすることか適当であるというふうに考えます。産業のオーバー・ボローイングの解消につきましては、どうしても預貯金がふえませんければなりませんし、また株式市場がある程度活発でありませんと、この産業界のオーバー・ボローイングの解消はできないのであります。このような意味におきまして、預貯金の免税と並行して、それにバランスのとれるような配当課税ということを考えていただきたいというふうに思うものであります。  第三に、輸出振興に関する処置でありますが、これらにつきましては、今までの輸出によって生じた利益の五〇%から八〇%に直したということ自体は大いに歓迎するものでありますが、根本の考え方をこの際はっきり御認識を願いたいと思うのであります。一体日本の経済というものはどういうふうな基礎から成り立っておるかということを、私どもは常々考えるものであります。日本国民の生活、ことに食糧から考えてみますると、最近になって農家の畜産の奨励がやかましくなっておる。しかし日本人のカロリーというものは、世界的に見て必ずしも低くはなかった。何に依存してカロリーを補っておったかというと、これは海からできる産物であります。外国では、御承知のようにクリスマスに羊の肉や七面鳥を食べるのでありますが、これはみな陸産物であります。日本はそれを補うためには、魚のお頭つきを食べるということは、昔からの日本経済のあり方であります。そういうふうに考えますと、その点は、国民が徹底的にわかってくれておると思う。すなわち海の中にある産物を取り入れている。われわれは狭い地面の中でお互いにひしめき合って生きておるということはわかっておると思うのでありますが、一たび工業生産物に対する感覚になりますと、ちょっとずれてくるのであります。何だか輸出せぬでもいいような感覚が一部にある。国内市場だけをたよって仕事をしようと思う感覚も相当強いのであります。つまり大きく言うならば、国際知識の不足ということが、日本経済の立て直しに非常に大きな支障になっておるんじゃないかということも考えられます。その意味におきまして、私どもは、どうしても輸出振興に対しましては、わずかに五〇を八〇に直したというだけの問題でなしに、もう少し大きな見地から、総合的に振興策を考えていただくことが賢明じゃないかというふうに思うものであります。海外の例を見ましても、西ドイツの例でも、英国の例でも、どういうふうに国家が輸出振興を保護しておるかということは、ほとんど結論は出ませんが、非常なこまかい点に注意して、外国からダンピングと一再われない程度、あるいは政府で強力な保護を与えておると言われない程度の非常な複雑な組織を持って輸出振興をやっております。日本は、ただ単に税制面からのみ考えておるということは、私は輸出振興に対する意欲がまだ低過ぎるんじゃないかということを心配するものであります。詳細は皆様御承知のように、最近の輸出の状態、貿易事情を見ましても、楽観を許しません。この際に、わずかにそれだけの税制措置の改革によって真に雄大なる日本経済の輸出振興策がとれるやいなやということに対しては、多大の疑問を持つものであります。どうかこの点を十分御考慮願いまして、もう少し勇敢に輸出振興策を打ち立てられんことを、特に私はこの機会にお願い申しておきたいと思います。  これをもって私の公述を終ります。
  63. 横路節雄

    ○横路委員長代理 これにて御出席公述人各位の御意見の御開陳が一通り終りましたので、委員各位で御質疑のある方は、これをお許しいたします。
  64. 大平正芳

    ○大平委員 迫さんに簡単にお尋ねいたしたいと思いますが、預貯金利子の免税というのは、今度の税制改正の一つの焦点だと思います。これによってどれだけの資本が新しく蓄積せられるか、あるいは高橋先生のおっしゃるように、横ばいか横流れか知りませんが、相当多量の資本が銀行に集まって参るということは間違いないだろう。こう思うのでございますが、最近の日本銀行の調べで、計数はよく覚えておりませんけれども、一応銀行から事業会社が借り入れまする借り入れも限度に来ている。旨いかえれば、優良会社は資金が比較的楽になってきておるが、優良でないところには銀行は貸したがらぬという傾向が見えるのではないかと思うのでございます。その証拠に、昭和二十九年度もずいぶん日本銀行にお金をお返しになっておる。二千億を割っておるというような現状でございますが、新しい資本が相当多量に導入されるということになった場合に、その行方は、現在の銀行経営の実態から申しますと、さらに事業会社に相当多量の金が産業資金として投入されるのか、それとも日本銀行に返るのか、それとも銀行自体が直接株式、有価証券投資に向くのか。このあたり、銀行の奥御殿にあられて、どういうふうなお考えであるか、伺っておきたいと思います。
  65. 迫静二

    ○迫公述人 お答えいたします。さっき申し上げましたように、こういう措置がとられて、一体預貯金がどれだけこの関係でふえるかということは、非常にわかりにくいことでありまして、私どもとしては、腰だめで三百億くらいふえるだろうと思っております。  今の御質問の要旨は、ではこれがどこへ向くかということであったようであります。企業内容の悪いところに貸し出しをしていないようだとおっしゃいますが、私ども銀行の立場から申しますと、もとより集まった預金というものは、これは国民大衆の預金でありまして、この預金を確実に、回収の危険のないところへ投資していかなければならないということは、これは銀行の性格上第一に考える。これはすなわち国民の貴重な預金を守るという意味で、そうなっております。そういうことでありますが、では一体どこへ行くかというお尋ねでありますが、これはそのときどきのいろいろな需要によるわけであります。しかし先般来叫ばれておる銀行の金融の正常化——現在のように日本銀行からまだ全般的に千八百億くらいの借り入れがありますが、そのうちの負担をこれによってできるだけ減らしていく。この日銀の借り入れが減ってくれば、これによって、よく問題にされている金利の低下ということも現われる。この努力は相当なされるものであろうと私は思います。それからまたこういう資金不足の時期ですから、いろいろの需要はありますが、こういう貴重な資金であるので、その投資については、銀行は公共機関であるという点を十分考えて、その認識のもとに投資していかなくちゃならぬ。こういう考えでございますが、それでは一体日銀にどれだけ行き、一般にどれだけ投ぜられるかということは、これはまた今後のいろいろな情勢いかんにあって、にわかに申し上げにくいことだと存じます。
  66. 大平正芳

    ○大平委員 どうもはっきりいたしませんが、一体この措置によって、デフレがさらに深化するかどうかという問題でございますけれども、最近政界におきましても、また財界におきましても、大きく分けて二つの考え方があるだろうと思います。一つは、今しばらくは地固めだ、金融の正常化、経済の正常化という点に努力を集中していかなければいかぬのだ、軽率なことは警戒しなければならぬのだというような、ごく慎重な考え方がある。一萬田さんのお話を伺っても、大体そういう印象を受けるのでございます。しかし一方におきましては、今の段階はデフレなんだという観念に立ちまして、ことに昭和二十九年度は一兆円で縛ったけれども、財政の散布超過も多かったし、それから予算でいえば、繰り越しも多かったし、輸出は相当ふえたので、不況回復はできた。しかしことしはそういう工合にいかぬのだ。従って相当思い切った経済の拡大均衡を招致するようう措置を講じなければならぬのだというような考え方と、二つに分れているような感じがするのです。漫然とこの措置を講じて、それがデフレの深化になるというようなことになると、よほど警戒しなければいかぬことになるわけですが、いや、それはもう経済の正常化であってけっこうなことなんだ.経済の運行自体にはそう深刻な、警戒すべき要素はないのだというように見るべきかどうか、その点あなたの御意見と、あわせて高橋先生の御意見をこの際お伺いしたいと思います。
  67. 高橋亀吉

    ○高橋公述人 今の御質問の限りにおいては、そして今の日銀の政策の限りにおいては、デフレ傾向を強めることになると思うのです。そこで問題は、今の不況というものは、一体政府のデフレ政策の結果こうなったのか、あるいはそうでなしに、もうほっておいても——二十七、八年のあれは、私は戦後景気だと思いますが、それの反動だ、こう見るかによって非常に違うのです。その点の日銀、政府の見方はきわめてあいまいなんです。何でもデフレの結果、デフレの結果、こう言っている。ところが、政府が二十八年の暮れから春にかけていろいろ声明しておりますけれども、そのときにおいては、今度のデフレでは物価はそう下らない、消費もそう減らないと、こう言っている。事実また国際収支は、二十九年度は九千二百万ドルの赤字に食いとめ得ればいいと考えておった。それが意外に三億四千万ドルの黒字になった。その半分は海外の景気がよかったためですが、半分あるいはそれ以上は、輸入が意外に減ったということです。予想以上に滅っているわけです。それは景気の反動だと見ざるを得ない。つまり二十七、八年のあれは、戦中、戦後十ヵ年分の復興需要で、生産設備それから消費財というものが出た。外国においては、戦後景気が二十一年、二年に起きて、そして三年には反動が来ている。そういうように、いつの場合にも戦後景気というのは約二年くらいしか続かない。ほうっておいても反動が来る。現段階が景気の反動期だということになると、景気反動期の金融政策というのは、いつもできるだけ金融を緩和してやって、金利を下げるというのが定石なのです。それをデフレ政策で抑えつけてきているのだと考えているから、これをはずしたらまたもとに返る、こう考えるわけです。性格をどう見るかによって、今後の景気の見方から対策から非常な変化があるわけです。その意味においては、今の御質問の、かりに預金がふえた場合にこれをどう処置するかという問題は、銀行側の態度ではなしに、むしろ日銀の態度だと思います。これは銀行側がデフレをやるからけしからぬという意味に見るべきでなしに、日銀の政策がけしからぬ、こう見るべきなのです。それであれば、日銀が今の二銭六厘の第二次高率適用をできるだけ回収しようとしておる、あの制度を少し変えればいいわけです。そうすれば銀行は無理にどんどん返しやしないわけです。むしろこの問題に関連しては、大体日銀がどのくらいに見ておりますか。正確のことは日銀の責任のある言葉ではないからわからないが、今われわれが知ってる限りでは、日銀は、通貨は約九千億円を適正だと見ているはずなのです。それを今五千億円を割っているのです。そうだとすると、日銀の貸し出しの回収を急ぐような制度を続けるべきじゃないのであって、むしろそれを改正すべきなのだ。そうして今の第二次高率適用をやめてしまって、公定金利一本にしてしまう。そうすれば、急いでの回収というものはなくなる、それだけで相当金利も下ります。そこに問題があるので、銀行がどう貸すかというところに問題があるのじゃない。こう見るべきじゃないかと思います。
  68. 迫静二

    ○迫公述人 ただいま高橋公述人からお話のことは、大体私も同様に感じますが、今度のデフレ政策をとった目的というのは、大体国際収支改善にあったものだと私は思います。国際収支が非常に悪くなって、この改善をやらなければ、いずれは日本は破綻ということでおとりになった政策であると思う。それで、デフレといっても、こういう意味の国際収支改善策、それからわれわれの立場から行くと、通貨価値の維持ということは絶対必要だと思います。その両面を考えて今後は対処していかなくちゃならぬ。これは預金が集まって、これでデフレが深刻化するかどうかという問題とは別問題だと私は考えております。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 預金利子の免税について審議をやっておるわけでありますが、その審議のやさきに、一萬田大蔵大臣と日銀の間に、この法案を通すかわりに金利を下げろ、こういう話、俗にいう取引があると新聞に盛んに伝えられておるが、この実効と金利引き下げ、その全体における功罪をどういうふうに見ておられましょうか、これは高橋さんにお伺いいたしたいと思います。
  70. 高橋亀吉

    ○高橋公述人 金利引き下げの効果というのは、形式を見ますと、政府の政治的な考慮一方は銀行の利益が相当あるのだから引き下げの余地がある、だから下げろ、こういう形で形式では下っておる。しかし実際は、資金の需給関係が非常によくなったのが根本なのです。だから下るべき経済バックがあったから下ったのだ、こう見るべきだと思います。そして実際は、こういう段階においては、まず日銀が金利を下げてリードするのが当然なんです。顧みると、二十八年に三億二千万ドルの赤字になった。金融は非常に逼迫した。当然これはイギリスやほかの国々でもやっていますように、それを防ぐためには、日銀の引き上げがあるべきなんです。公定金利の引き上げがあのときなくちゃいけないのです。それを公定金利を引き上げずに、第二次高率適用という非常に変態な引き上げ方をやった。そこに第一の禍根があったわけなんです。そして去年は三億四千万ドルの黒字なんです。非常に締まっておる。締まったからというので、公定金利を上げるところを、第二次高率適用の範囲を非常に広め、二銭六厘というような高い金利にしたのです。ところが去年は三億四千万ドルの黒字になって、実際において、過失一年余りのうちに日銀の貸し出し回収は二千二百億以上できた。実質的には非常な金融緩和なんです。にもかかわらず金利は少しも動かない、上げた金利が少しも下らないというふうな、こんな金利政策はないのです。国際収支が三億二千万ドルの赤字になってたいへんだというので上げたわけなんです。第二次高率適用二銭六厘というような、金利として非常に高いものに上げた。それがなくなって、また二千二百億も三百億も金融がゆるみながら、日本の金利は今まで少しも動いてない。こんな金利というのはどこにもありはしない。もしあのとぎに公定金利を上げておったら、この際当然日銀が公定金利を下げているべきなんです。それができないものですから、市銀の貸し出し金利引き下げというところへ突破口を作った、客観的に見てこう解すべきものであると思います。主観的にどう考えているか、それはわかりません。しかし大体われわれの評論は客観的にすべきなんです。客観的にはそう解すべきだと思います。そうすると、これは日銀金利引き下げの代用品があそこへ来たのだ、こう見るべきだと思います。  従ってこれが突破口になって、今後すぐ起る問題は、第一に今日の二銭六厘という第二次高率適用は、二銭四厘という、貸し出し日歩を基準にしてできているわけです。これが二銭三厘になった。これを第二次高率適用二銭六厘のなりにしておいたら、弱い銀行をさらに圧迫することになる。高率適用が残っているものは、今までは逆ざや二厘のものが三厘になる。これはたいへんな圧迫を、しかも弱い銀行に加える。こういうことは金融政策上とうていとれないことです。では二銭六厘を五厘に下げるかというと、それではもう間に合わないのです。というのは、第二次高率適用が今約五、六百億あるというふうに伺っておりますが、これがもう少し減ってしまうと、金利に断層が起るのです。実際的に、日本銀行の金利が二銭六厘から第一次高率適用一銭九厘、公定利子一銭六厘から一銭八厘に、そこまで一挙に下るという形になるのです。そんな断層が起る政策は、金融政策として許すことはできないのです。そこで、これはやはり公定金利一本にして、第二次高率通掛をうんと例外的なものにしてしまうという政策をとるよりほかない。そうすると、私は大体公定金利二銭だとにらんでいるのです。そうすれば、コールは少くとも一銭八厘になる。コールが一銭八厘になれば、今の金利というものは御承知のように二銭四厘、二銭三厘といいましても最高金利なのです。いいのも悪いのもみな同じだということは、普通の金融ではあり得ない。それから今の二銭四厘ないし二銭三厘の優良の手形は、二銭二厘、二銭になるのが当然です。それを今までなぜはばんでおったかというと、第二次筒率適用が二銭六厘、そして二銭三厘三毛というコールで出る、そこでじゃましておった。コールが下れば優良手形もずっと下る。そういう突破口を、今度の利子切り下げというものは作った。それで切り下げるというよりは、実際には金利の低下だと見るべき性格のものである。金利が自然に下った。そういう性格のものの突破口が切れない。日銀の金利引き下げでやるべきものが、その組織がなかったために、どこかで突破口が必要になった。それがそういうふうにやられた。そういうわけで、全体としての金利低下の傾向が、自律的自動的に金利低下の堤が切られたと見るべきで、相当の効果があるものと思う。あれだけで終ったのでは大したことはないけれども、相当の効果があるものと思います。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 七人いらっしゃる公述人の中で、この預金利子の政府提案にそのまま賛成なさっておられるのはお一人だけのようでありますが、そのほかでも、このままではいけない、配当所得を下げなければいかぬ、ないしは無課税にしなければ納得できない、こう言っておられる方もありますが、そのような議論を、されていらっしゃるところの小池さん、あるいは金井さんにお伺いしたいのでありますが、かりにその配当所得を下げることが、または無課税にすることができないとすれば、この法案に御賛成でありましょうか。
  72. 小池厚之助

    ○小池公述人 できないとすると、仮定を考えるわけですか。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 この法案それだけで賛成であるか、反対であるかということです。
  74. 小池厚之助

    ○小池公述人 私は、預金利子に対して免税するということは、資本蓄積のための処置であるという考えにおいては賛成であります。ただその手段が誤まっておる、やはりバランスをとらなければならない、そういう趣旨であります。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 バランスをとることができない、そういうことをしないということになったら、賛成であるか、反対であるか。
  76. 小池厚之助

    ○小池公述人 私はバランスをとらなければ、先ほど高橋先生の言われた通り意味が非常に減少すると思います。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 もっと端的にお答え願いたいのですが、私はバランスがとれないとすれば、この法案に賛成であるか、反対であるかということをお伺いしております。
  78. 小池厚之助

    ○小池公述人 私は、バランスがとれなくて、利子課税だけの免税ならば、証券界に非常な悪影響がありまして、株式は暴落すると思います。過去において、そういう事例が歴史にあるわけであります。昭和十六年ですね。そういうような意味におきまして、私は株式は下ると思います。と申しますのは、先ほど高橋先生の言われた議論の通りでありまして、ですから、もしこのままのあれならば反対でございます。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 金井さんはどうですか。同様に御返事をお願いいたします。
  80. 金井滋直

    ○金井公述人 これは産業界から見ますと、先ほどから申し上げておりますように、車の両輪のようなものでありまして、一方だけを優遇されて、一方だけをそのままにしておくということは、産業界としては受け取りがたいことであります。そうかといって、資金関係から申しますと、株式市場で資金を募ろうと、あるいはまた銀行から借りようと、私ども仕事をする資金はどこからか借りなければならぬのですからして、この車の両輪はこの際当らないのであります。私どもは、株式はそのままにしておいて、それで預貯金だけを免税にするということも、産業界としては歓迎であります。これははっきり申し上げます。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 前の三人の方にお伺いしたいと思いますが、今次総選挙に当って、各政党ほとんどが、漏れなく中小企業の減税ということを唱えたのであります。今回法案として出ております税制改正案には、そういうような内容のものがない。その点について、あとの三人の方が触れておられるのでありますが、あなた方は、今日の税制が大企業によく中小企業に悪いという、こういう一般論に対して、どういうふうにお考えになっておられるのでありましょうか。金井さんに一つお伺いいたしたいと思います。
  82. 金井滋直

    ○金井公述人 今の御質問は、大企業に都合よくて中小企業に都合悪いという問題でございますか。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 大企業がよくて、中小企業が悪いという今日の状態並びに各党が一斉に公約として掲げ才した中小企業の減税、こういう問題であります。
  84. 金井滋直

    ○金井公述人 私は産業のよしあしは知っているが、その企業の大小という問題とは別個のものである。産業界でいろいろな方の企業を見ておりますけれども、案外中小企業にしっかりしたものがあると同時に、中でなくて小のところに、驚くべき経営の才能を発揮しているものがある。そうかと思うと、大きい中でとんでもない経営ぶりを示しているものがある。私どもは、大きさで産業界のあり方を判断することは反対であります。実績を考えていただきたい。今の法人税の問題も、中小企業も、その税に耐えるだけの御勉強をなさるのが必要だ。それをなすったあとでなお足りないというような場合には政治問題になると思いますが、なおまだ勉強する余地があると思います。私は地方に旅行して、大企業の社長よりもりっぱな住宅に住んでいる中小企業の方が多いということを見まして、いつも考える。これはわれわれのように、一代にして一生の間を働き抜いたものと、父祖の蓄積を持っている者とは食い違いはありましょうが、私はいつもそれを考える。生活の合理化ということを考えていきますと、中小企業におきましても合理化の余地があるし、その分け方は明瞭に大中小というふうに分けなくても、もう少し実績による分け方があると思います。実績の分け方は、やはり経理面から判断するとよくわかってくると思います。経理が健全であれば、そこに担税力もあるはずであります。私は大蔵委員会の方方は、これから大中小とお分けにならぬことを特にお願いいたします。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 私は必ずしも資金の点だけで議論をしておるのではなくて、実質上の議論をしてきておるのでありますが、議論になりますから、きょうは御質問をいたす建前になっておるし、あとの御質問もあるようでありますから、これでやめることにいたしますが、あと一つ桂田さんに、この機会を利用して簡単に、御関係なさっていらっしゃるようですからお伺いしておきたいと思うのですが、簡単でけっこうでございます。医療法人になる場合に、相続税を納めなければならぬということで、全国的に紛争が起っておるよりでありますが、なぜそういう紛争が起ったか、御説明願いたいと思います。
  86. 桂田斐

    ○桂田公述人 御説明申し上げます。この問題は詳しく話しますと非常に時間がかかりますけれども、一口にいえば、財団の医療法人を作りますときの厚生委員会での説明では、相続税はかからないような説明があったわけです。それで盛んに財団ができまして、昭和二十七年の相続税法の改正のときに、あいまいな文句の改正があって、大蔵省では、それで相続税がかかるようになったといわれる。私の方では、それは法の解釈の間違いでかからないという。かかるかからないで、だいぶ議論かあったわけなんですが、そのことは今訴訟になっておりますので、そのうちに進行すると思いますけれども、ただ問題になりますことは、その取扱いのわけなんです。本気でこれは課税になるということが正しいという考えがあるならば、言うことをきかなければ決定すればいい。決定せずにおいて、これを解散して社団に切りかえるか、あるいは個人開業医に戻れば、そのとらなければならぬはずの相続税はとらないということを言うわけです。すでに法人を設立したときにとられるところの原因は発生しておるわけです。解散したから免除になるという法律はないのです。そういうふうなことを官庁が得手勝手にやることが間違いじゃないか。これは派生的な問題でございますけれども、法律を行う場合には、官庁が得手勝手にこれを課税していいということはない。法律に書いてあることをそう勝手に変えられるものじゃないということを考えまして、その点が非常に問題でございます。解散した場合には税金をとらないといわれる。つまりさかのぼって、発生した相続税をとらないといわれる。それからまた解散した場合には、清算所得に対して法人税がかかるはずのものですが、これもとらないといわれる。それからまた解散したときには、帳簿価格でなくて、時価によって法人税はきめられるのですけれども、これも帳簿価格でよろしいというような特別な通達が出ております。そういったようなわけでふだん取り扱われておる、これが正しい施政だという税金のきめ方から、逸脱した取扱いを通達を出しておられる。こういうふうなことで、つまり私が先ほど申し上げましたように、どういうふうな方向へどういうふうな力を向けるかということが、官憲のほしいままにされておるのです。そのほしいままにやるということが勢いが余ると、そういうふうなことが起ってくるということになる。その反面には、当然とらなければならぬところがとられずにおる。そういう政治は間違っているのじゃないかということを申し上げるわけでございます。この医療法人が課税になるかならないかの問題は、これは訴訟中でございますけれども、これはぜひ国会におかれても十分に御審議願いまして、行き過ぎのないように一つお骨折りを願いたいと思う次第でございます。簡単にしか申し上げませんが……。
  87. 井上良二

    ○井上委員 三点ばかり伺いたいと思います。非常に時間がおそくなりまして、公述人の皆さん方に申しわけないのですが、大へん参考になる御意見を伺いましてありがとうございました。東京銀行協会長迫さんにお伺いいたしたいのですが、預金利子の免税後の預金の増加量が大体四、五百億と見込まれる、こういうお話でございます。この四、五百億の預金の増加量は、高橋さんのお話によると、これは横流れの増加量である、大体こういう御意見のようでございます。あなたはそうお考えになりますかということが一点であります。私どももさような見解を持っておりますが、問題は、資本の蓄積が多くなる原因は、やはり国民所得を一体どう高めるかということにありますから、国民所得を高めて資本の蓄積をはかるということになろうと思いますが、その場合に銀行としてやらなければならぬのは、やはりわが国の産業の近代化、合理化、生産性を高揚するために必要な資本投下ということに全力を油がなければならぬのじゃないか。ところが地方銀行及び特殊銀行等をわれわれが見ますと、そういう生産性高揚に必要な近代化、合理化の投資よりも、不健全な消費面の投資が非常に多い。たとえばパチンコ屋でありますとか、あるいは映画館でありますとか、あるいはホテルでありますとか、あるいはビルディングでありますとか、こういう面の資本投下が非常に多い。銀行自身もそういう面に率先投資しておる。この資本の流し方を一体あなたはどうお考えになるか。こういうことをしておって、預金の増加が見込まれる反作用がどういうわけで起ると考えますか。この点を一点伺いたい。簡単でよろしいですから……。
  88. 迫静二

    ○迫公述人 第一点の、この預金の増加が一体高橋先生の言われるように横流れであるかどうかという問題でありますが、これは以前のたんす預金が出てくるとか、あるいはそういう問題はあると思います。一部は横流れもあると思います。しかし私どもの経験からいたしますと、やはり免税ということによって貯蓄心を刺激する、これによって消費を抑制するというこの作用は相当大きいと思います。どうも日本全般からいうと、まだいろいろとほじられることはこわいというので、非常におびえるわけでございます。そういうことで秘密性ということは、これはそう脱税ばかりでなくて、いろいろとお役人に調べられるとこわいということが非常に強い。かりにそういうことが響くと、外にどんどん預金している方が、もう銀行はいけない。そうすると、これが何に流れるかということですが、無用な投資が起ったりすることがある。こういうものは私はやはり銀行に集めて、ことに日本では大多数の人が投資については知識が薄い、それでやっぱり銀行に集めて、それを銀行が投資をする、こういう間接投資というものが日本では長く行われてきた。こういう産業に力をいたした面がありまして、私どもは日本国民性からいっても、こういう行き方がいいであろうと考えております。  それから今お話の資金が生産性向上のために回らなくちゃならぬとの御説、これは全く私どもも同感であります。ただいまお話のような、たとえばパチンコ屋であるとか、そんなものに流れておるのがかりにあるといたしましたら、これはとんでもないことでありまして、私どももこういう貴重な資金でありますから、私どもの金融機関の使命というものを自覚して、ただいまおっしゃるような生産性向上、あるいは日本の輸出に資するようなものあるいはまたいろいろの国の大切な施設、そういう面に流れるように私どもは努力しなくちゃならぬと日ごろ考えておりまして、銀行会社におきましても、自主規制委員会というものを作りまして、私どもはそういう面についてかたくお互いに戒心して進まなくちゃならぬということを痛感して実行しておるわけであります。今のような面があるとするならば、これは監督官庁からも、また銀行の指導に当っておる日本銀行あたりからも、相当私は注意を受けることであろうと思いますし、またそういうものがかりに一つくらいあったとしても、大勢はそんなものではないということを御認識いただきたいと思います。ただ銀行の実際面から申しますと、ここにかりに預金がある。預金を出して使われたら、これはパチンコに使っちゃいかぬとは言えないわけであります。かりにこれが定期預金であります場合に、パチンコ屋さんがこの定期預金を担保に貸してくれと言ったら、これは向うの預金で、途中で解約できないから、そういう場合に銀行はどうもできない場合があるだろうと思います。そういうものが私は誤まり伝えられておるものではないかと想像いたしますが、ただいま申しました自主規制委員会を先般も開いて、そういう非難を受けないように、またわれわれの公的な使命に徹しなくちゃならぬということを強調して、私どもはそう信じて進んでいるわけであります。どうぞ御了承をお願いします。
  89. 井上良二

    ○井上委員 次に法人会連合会の中村さん、あるいは高橋さん、または様田さん、お三人のうちどなたでもけっこうですが、中小法人の税金をできるだけ合理的に軽減していくという御趣旨には全く賛成でございますが、この中小法人の負担します税のうちで、御存じの通り事業税と、もう一つ物品税というものがあります。事業税は地方税になっていますから、検討は別にしなければなりませんが、この物品税につきまして、特に大衆負担となり、あるいは中小企業の大きな負担になっておる分につきましては、これは全部整理をしなければならぬとして今検討を加えでおるのであります。われわれといたしましては、戦時の流れをくみます物品税は一応全面的に廃止する。これは約二百三十億ほどの税収になっておるのでありますが、それを廃止しますと、二百三十億の大きな税収を失いますが、このうちには相当ぜいたく物資として扱われるものがございます。そこでぜいたく物資として課税対象にこれを取り上げたらどうか、こういう考え方で今検討を進めておるのです。そこで一番問題になりますのは、ぜいたく物資とする定義、実はこれに非常に困っている。どれをどの範囲でぜいたくと見なすか。みなお互いの生活レベルが違いますし、またお互いの嗜好が違いますから、生活程度の低い者から見れば非常にぜいたくなものと思っても、生活程度の高い者から見れば、文化的な当然の生活必需品としてこれが使われる。たとえばテレビならテレビでもそうです。こういうものは、普通働いている人にはとても買えません。ところが相当の収入の人ならば、これは文化的な施設として当然持っていい、こういう考え方が起ってきまして、非常にぜいたくの定義というものに困っておるわけです。ですから、物品税としてぜいたく的なものをそのまま残したがいいか、物品税は戦時的な一つの流れをくんでおりますから、一応この際全部廃止して、たとえば英国がやっておりますような、特にぜいたくなものには高く取るというような、新しい立場で税制を考えたがいいか、この点に対する御意見を伺いたい。
  90. 中村重喜

    ○中村公述人 物品税の問題でありますが、物品税も、当初できたときより考えますれば、いろいろの改正を経て変貌をいたしておると思います。それでこれを全然廃止するかどうかということは、これはやはり税制全般の建前から考うべきもので、現在としては、流通課税としてほとんど物品税だけが残っているのでありますが、ともかく近来はこの内容をいろいろ変じております。  それでぜいたく品の認定でございますか、これはやはりいろいろの場合において、取るべき標準が違うと思います。日本でぜいたく品を課税しましたのは、おそらく第一次大戦のときに、輸入品に十割の税金をかけましたとき、ぜいたく品にあの課税をしたときが始まりだと思うのでありますが、そのときの考えをもってむろん今度の物品税を見るわけにはいきません。やはりぜいたく品を見る場合においても、税制の他の部分、たとえば所得税の課税がどういう程度に行われているかどうかという点、これはあるいは非課税限度でありますとか、税率でありますとか、これの高低によってもおのずから違うと思います。要するに問題は、やはり結局は国民生活ということに集中いたして参りますから、この物品税を御検討になるに当りましても、やはり国民生活という目標から、現在の租税制度の一部分として御検討になるのが適当だと思います。
  91. 井上良二

    ○井上委員 もう一点、官公庁の笹川さんに、あなたの御意見は、私どもも原則的にはまことに賛成でございます。ただ官公庁の税制部会の副委員長として伺うのですが、官公庁の立場からどう考えるかということであります。一つは、あなた方低額所得者減税限度を、三万六千円以下のものは免税しろ、こういう御主張でございますが、官公庁で三万六千円の月収をもらっておる人は一体何人くらいおられるのでございますか、承わるところによると、私はたしか官公庁の給与ベースは一万五千八百円くらいじゃないかと想定しておりますが、そうしますと、非常に小額所得者が多くて高額所得者は非常に少なくなりはせぬか。官公庁の立場で、どういうわけで三万六千円の線を引いたか。それはさいぜんもお話がございました戦前の例を取っての話、しかし今は、日本の国家財政現実から官公庁として考えなければなりません。われわれは減税のことも重要でありますが、やはり一つは給与ベースをどう改訂するか、そして夏季手当なり年末手当をどうこれに合わすか。さらにまた一方恩給及び年金、扶助料の問題がございます。恩給、扶助料というものは毎年非常に大きな比率でふえていく。それへもってきて、一方健康保険の赤字というものが最近非常に大きく政治的に問題になっているのです。これもまた一部国庫負担です。そういうふうに、われわれの主張する最低生活に必要な所得ということを貫きますためには、どうしてもこれらの問題を解決する方向へ持つていかなければならない。そうしますと、この給与ベース改訂に要する財源というものを考えたときに、一体どこにその財源を求めるか。さらに今お話になりました三万六千円以下の者を免税する、こうなりますと、ものすごく大きな税収減を来たすと思いますが、その税収減が御指摘のような大法人、あるいはまい所得の多い者に対する累進課税によって一体どれだけ補足できるか。それからまた一方間接税の増徴は絶対反対、大衆負担であるからこれは反対、そうすると間接税の増徴はできない。これは漸次大衆負担の方からはすしていかなければならぬ。また軽減していかなければならぬ。そういうことを考えますというと、民間産業の代表者ならともかく、少くとも官公庁を代表する人の意見として、それらのバランスの上における意見を述べてもらいませんと、われわれとしましては、ただ一方的に主張したらそれでいいというのではなくて、つじつまを合せなければならない。だから高率累進課税で一体どれだけ所得があり、あるいは大法人に対するいろいろな面で特別措置をはずし、あるいはまた公債その他に対して適正な課税を行い、その他今問題になっております利子課税や配当所得等に対して適正な処置を講じて、一体どのくらいの税収をこれで抑えるかという問題がここに一つあると思うのです。  それからいま一点は歳出の面でございます。歳出の面におきましては、御存じの通り、官公庁としても当然労働組合であります関係から、防衛費に対する削減は要求されましょう。これはもちろん全廃を主張するかもわかりません。しかしその部分を全廃してもこれだけまかなえません。反対に社会保障関係経費は年々ふえて参るのであります。そうしてまた一方国の経済をもり立て、国民所得を高めましてお互いの生活を安定向上さすには、どうしても産業投資、生産の近代化、合理化、世界生産水準への接近という問題は、国の大きな廃業政策として推進していかなければならぬ。だから産業面における世界水準への接近という点から、この面に対する大きな投融資を削減し、国家の補助、助成というものを打ち切るわけにはいかない。そういうことを考えていきますと、一体現実にそんなに大きな減税ということが——理想としてはけっこうですが、今直ちにそれを主張する場合、官公庁としてはもう少し国民の納得し得る形にしないと、どうも採算上つじつまの合わぬことになりはせぬか。これに対してどうお考えになりますか。  私どもの率直な考えから言いますならば、もちろん日本の生産力を高め、国民生活水準を高めて世界文化に近寄っていくということに、われわれは全力をあげなければなりませんが、それに相伴って社会保障の制度を拡充していく。それが拡充していきますならば、私は別に税金をそれほど多く下げなくとも、社会保障の面で相当お互いの生活が保障されていくという線が出てくるならばいいではないか、私はこういう一つのおぼろげな考え方を持っております。現在とは違います。そういう方向へ持っていくならばという一つの想定でございますから、誤解のないように願いたいのですが、それらを合せた御見解はどうでありますか。官公庁の立場から率直に一つ御説明を願いします。
  92. 笹川運平

    ○笹川公述人 お答えいたします。この減税案というものを考える場合に、先ほど申し上げましたように、われわれの最低生活を確立する、こういう立場から考えました。そうしてそれを考えます場合に、今お話の中にもあったのでありますけれども給与ベースを引き上げる、これも一つの方法だと思います。それから社会保障制度というものを整備拡充していく、これも一つの方法だと思うのです。あるいは物価を引き下げていく、それも一つの方法だと思うのです。それから今お話になつておる減税、こういうのも一つの方法でございまして、われわれとしてはそういうものを総合的に、やはりわれわれの考えている最低生活、こういう方向整備していただきたい、このように考えるわけです。  そこで税収の場合に三万五千円までは免税、そうすると、現在の日本の国では多過ぎるのではないか、こういうふうな御指摘もあるかと思うのですけれども、われわれ計算しましたところによれは、大体三万五千円までの免税ですと、約九百万人が免税になるわけです。被課税者が百七十万ほどになる。その金は約一千五百億円です。そこで一千五百億円を直ちに減す、こういうことについては問題があるわけですが、その点については、先ほど申し上げました法人税というものをやはり累進課税にしてもらいたい。もう一つは、法人税の特別優遇措置というものを廃止してもらいたい。そこで大法人の法人税の特別優遇措置廃止によって約五百五十億、それから高度累進といったような措置によっても約二百五十億、さらにその他の累進課税考えられまして約九百億、それで差引六百億になるわけです。政府が公約いたしたところの五百億の減税、これは従来の例から見ても、政府の見込み額により自然増収は必ず上回っておるので、一応五百億の減税を唱えておるけれども、そういう自然増収によって埋め合せがつくものとわれわれは考えております。ただ三万五千円というものを戦前と比較して考えたというだけではなくて、現在の国家財政の体系の中では、そのように考えていきたいと思っております。  そこでもう一つ御質問がありました歳出については、先ほどお話がありましたように、防衛分担金、特にわれわれとしては、政府の提案されておりますところの今年度予算の組み方であります。防衛分担金と防衛庁費、特に予算外契約といわれておる百五十億円ですか、こういう問題については、やはりいろいろと問題もあると思うのですが、そういう面についてある程度われわれの意図する方向考えていただく、そういうことによってもできると考えておるのであります。ただわれわれが日本の生産性を引き上げる、こういう立場に立ちましていろいろと融資をする、こういうことについては、もちろんいろいろと研究すべき点もあると思うのですが、私たち労働組合という立場から言いますと、最低生活も維持できない、こういうようなことはやはり問題があるわけでして、まずだれもが日本人として最低生活がある程度確立される、こういう立場が第一前提だと考えます。その上に立ってそのあとの面もいろいろ考えてもらいたい。こういう面に立ってやはり近代化、合理化ということについても考えているわけです。社会保障の点につきましても、共済制度、あるいは恩給制度、年金制度、こういうことにつきましては、われわれといたしましてもいろいろと要望があるわけでございますが、特に最近減税が叫ばれる折柄、賃金も引き上げろ、こういう立場と、先ほど申しましたような立場とからそういうふうな主張をしたわけであります。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 桂田さんにお伺いをいたしたいと思うのでありますが、あなたの御公述は、私どもが日ごろここでいろいろと論議し尽し考えておりましたことを、きわめて明快に、あざやかに表現願った意味で、まことにわが意を得た思いがするのであります。そこで一つ、あなたが徴税行政の実務に携わっておられる立場において、次の事柄をお伺いしたいと思うのであります。  それは大企業、大法人に対する徴税が非常に緩慢である。ある部面においては、税務調査が抑制されておるというようなことをお述べでございました。先般新聞の報道するところによりますと、さる財閥鉱山が三十億の脱税が発覚して、それが査察の手によっていろいろと摘発されておることが伝えられておりましたし、それから昨年さる大紡績のストライキに当りまして、従業員から提示された資料によりますと、その会社が数億の脱税をしておることも指摘されたりしております。私どもが常識的に大へんおかしく考えておりますことは、たとえば国土全土にまたがって何百という支店支社を有する大企業、大法人は、各地においてそれぞれ独立の形で事業が営まれております。この企業体が一本の形で決算を行う。そのとき収支の各項目にまたがって、きわめて正確に、すなわち法律に違反することなくこれらの事柄が行われておるかどうか。これを調査することは、私はむしろ神わざにひとしいのではないかと思うわけです。従いましていざ問題になる場合、財閥鉱山が三十億の脱税の嫌疑を受けたような事柄か随所に、行われておるのではないか、これは私のあらぬ疑いかもしれませんけれども、常識的にそんな疑いを持つのであります。一方中小企業法人においては、昔残されておった含みというものが逐次なくなってしまって、今やその百パーセントの利益がなくされようとしておる。それは調査しようと思えば、小さい企業でありますから、裏から表から横からすぐ見ることができるが、大企業大法人は、調査しようと思ったところで、現実に広い範囲にまたがる。しかもそれが膨大であり内容が複雑である。なかなか税務官吏の力をもつてしてはその実相を把握することが困難ではないかと思われる。そこで実際上制度はどうあろうとも、徴税の執行の上において大きな不公平がそこに生じてくるのではないか、こういうふうに私どもは考えるのであります。そこで一つあなたにお伺いをいたしたいことは、ただいまちょっとあなたの御公述の中に、大企業大法人、特に銀行などの利益調査については、税務調査が抑制されておるというようなことがございましたが、一体大企業、大法人の所得の把握というものはどのように行われておるのであるか。さらにまた大企業から提出されました申告、これに対して更正をされるような場合はあるのかないのか。あるとするならば、一体それは現実には年間を通じてどのくらいのパーセントにわたるものであるか、こうい、うようなことを、資料がありましたらこの機会に概念的、常識的でけっこうでありますから、お述べいただきたいと思います。
  94. 桂田斐

    ○桂田公述人 お答え申し上げます。具体的に資料を持っておるわけではございません。調査の困難であるということは、これは御指摘の通りのわけです。従って中小企業を調査いたします場合の何十倍も何百倍も手数がかかるわけで、現実にやっておることは、大体表面から調査いたして、間違ったところがあれば、計算し直して更正するということは、一応やっておると思います。これはやらざるを得ない。けれどもあのいろいろございます大会社の大重役さん方となりますと、とにもかくにも非常に裏があるわけです。これを小法人がやりますと、すぐ更正されまして、百万円売り上げ計上があると、百五十万円も百七、八十万円も追徴されることが起りますけれども、そういうことに対しては、とうてい今の税務官庁ではよう調査し切れぬのじゃないかということになるわけです。税務官庁の腕は一体どうかと申しますと、戦前よりも今の税務署の役人の方が腕はよくなっております。それからまた学力も上になっておりますし、戦前から見ると多少とも思想性は高いのであります。しかし大事なことが一つ抜けておるわけです。それは、要するに追い回されて仕事をしておるのではないかというところに問題かある。積極的な熱意というものよりも、まず監督されておるので、気に入るように実積を上げていきたいという方に重点がいっておるというところに非常に問題があるわけです。さように私ふだん見ておるものでございます。ただ腕としては相当になっておりますので、中小企業なんかを調べる場合には、実に上手になってわりますから、今おっしゃる通りに、百パーセントに近いところをやってきたわけですが、大法人となりますと、なかなかそうはいかない。それじゃ一体大口脱税を調べるにはどうやればよいかといえば、まず現在の断面で考えたならば、大口取引は、大体銀行との取引がどこかにあるわけですから、まずその取引の銀行の調査をやれば、大かいの大口脱税はぞろぞろと次から次に出てくることになっておるのですが、それがどうも政治力がものをいうので、そういう気配のところにいくと、その調査は待ったということになるというふうなことも聞いております。これはうわさだけですから、正確なことは申し上げられないのですが、ざっとそういうふうなことです。従って、これはここで申し上げるのははなはだ失礼でございますが——われわれはきょうはしきりに減税のことばかり主張しておりますが、税金は納めなくてもいいものかというと、私はやはり税金がほんとうに国民大衆のために支出されるように、国の力で金をまとめて効果的に使用されるならば、税金は高いほど国民のためになるといわなければならない。現在のような税金の支出では、国民大衆自体が、税金をたくさん取られるということに対して悪い感じを持っておるわけです。そういう場合ですから、大口脱税があっても、それを調査しようという場合に、やはり税務署が困難を覚える。わきから何か横やりがあると、すぐ腰が弱くならざるを得ないということになっておるわけでございます。政治というものに対して国民全体が信頼を持てば、これだけ金があるから、それに対してこれだけは納税しなければならぬということになれば、多少不公平はあっても、そういう場合には元気をふるい起して納税するだろうと私はふだんから考えておる次第でございます。これはやはり政治との結びつきの問題だと考えます。はなはだ抽象的でもあり、具体的なものに触れませんので恐縮でございますが、この程度で終ります。
  95. 田万廣文

    ○田万委員 春日君の質問とよく似たことになると思いますが、大体社会通念として、大企業法人の所得については脱法行為といいますか、そういう方法において脱税をいたしておるといべことがいわれておるわけであります。われわれもそういう事実があろうと思う。その点についてお尋ねするのですが、大体皆さんのお考えでは、うまく脱税して、合法的なものでありましても、——もちろん非合法では取り締らなければなりませんが、これをキャッチすればどれはどの税収入が得られるものであろうか、その点について高橋先生に一つお伺いをいたしたいと思います。
  96. 高橋亀吉

    ○高橋公述人 一体どのくらいあろうかという問題については、私は予測したことはないのですけれども、これは非常に一般的です。大法人もあるだろうと思います。しかしながらそれはもう全体がやっておるわけで、脱税をおれはしてないと言い切る人が果して何人あるか。それは税が高過ぎるということなんです。税が高過ぎれば当然脱税になるのです。昔ダイヤモンドに対して日本は非常な高い関税をかけたら、みな密輸入になってしまって、税法上全く収入がないのに、市場にはダイヤモンドがたくさん出ておった。そこで税を下げて、ようやく正規のダイヤモンドの輸入があった。過去の歴史においても、ある点以上に税をかければ、みんな脱税するわけです。それは戦時中でしたけれども、私どもが委員をやっていたころの委員手当が二百円です。そうしますと、私どものようにはかに給料をもらっていなくて来ると、実は二百円では足が出るわけです。それを所得として申告せねばいけない。だから、僕は大蔵省へねじ込んだことがある。一体おれは国家に奉仕しているのだ。官吏や何かは給料をもらっているのだから、それだけプラスになる。車だって官庁の車に乗るのだ。おれたちは車で来れば自分で払う。一体これは何だと言うてねじ込んだら、車代だということになった。車代であれば申告しなくていいというのです。そうしたら今度は、民間の方はみんな車代ということに大体がなった。それで最近も、実は大蔵省の税吏に協力せねばならぬ団体に僕も委員としていたことがある。その席で僕は言った。この諸君のうちで脱税しない者かいるかとみんなに聞いたのです。そうしたら、初め全部黙っていたのですか、一人が、おれは合法的だと言うのです。合法的というのはどういうことかというと、弁護士だったのですが、おれはある会社の顧問をしているけれども、給料を一銭ももらわない。そのかわりに部屋を一つもらっている。そのころの部屋一つは大へんなものです。今度はそれが出ると、おれは自動車を自由に使わせろと言っている。そういうことまで考えたら、それは官吏だって、旅費の形で相当取っているのです。そして実際においては、官庁の評価だって非常に安い。そういうふうにしてみると、脱税をしていない者がいるかと言いたいのです。そこをわれわれは考えなければならぬ。僕ら戦前だと、脱税だと言われると、社会的生命がなくなるくらいに思っていた。ところが今は、そんなことをやっている人が一体あるのかなんというのですから、そこに問題があると思う.従って、税率をもう少し安くして、みんなが納め得られる程度になったら、おそらく今の半分の税率でも、これくらいの全体の所得が出るのです。私はそれくらい大きいと思う。全般的だと思います。
  97. 金井滋直

    ○金井公述人 ただいま、大企業脱税論か非常に活発におっしゃられておる。今公述された方には、実は経営は御経験がない方じゃないか。経営の御経験のない力が、この問題をお取り上げになりましても、これは憶測にすぎないと思う。私は自分の会社を経営している場合に、ガラス張りの中で仕事をしているという心境でものを考えている。今の高橋君の言う、税が高くなれば脱税になるということは、税制から見た一つの原則であるかもしれないが、われわれ経営者から申すならば、今のように大きな組合攻勢を前にして、われわれがもし不正があるならば、その企業はたちまち争議の対象になると思う。そういうような場合に処して、大企業のあり方というものは、実は明朗なるガラス張りの中で仕事をするという信念でなければ、やっていけないと思う。もしこれが、そういう有力な労働組合のない昔であるならば、あるいはそういうことも考えられたかもしれませんが、今の時代は、そういうことは全く不可能であります。また経営の組織から申しましても、全く不可能であります。  なお、この機会に一つはっきり申し上げておきたいことは、今の産業のあり方というものは、デフレの影響か、輸出の不振か知りませんが、とうてい隠す利益など持っている会社は、百に一つあるかなしであります。これをいかに育成するかということが問題であって、脱税論をここで戦わすのは、いかに何でも、日本の産業のあり方の認識が足らぬことと、もう一つは、産業の育て方をはんとうに御承知ない方だと私は信ずるのであります。仲間の公述人意見に対して半畳を入れるような格好で恐縮でありますが、私は私の信念に基いて、これだけのことを公述さしていただきます。
  98. 田万廣文

    ○田万委員 ただいま金井さんからいろいろ御意見がありましたが、だいぶ高橋先生と裏表で食い違っているのですが、実際今のお説のようであれば、まことにけっこうだと思います。しかし金井さんのように清廉潔白で、公開主義で経理をしておられるならけっこうですが、一般にはそうでないという印象は非常に強い。そういうところもないとはいえないですが、あなたは、他の大企業法人においても、あなたのところと同じように全然裏表がないということをはっきり断言できないのではなかろうか。これだけ一つお尋ねしておきます。
  99. 金井滋直

    ○金井公述人 今の考え方は、大企業の大をとるとよくわかると思う。そういう脱税する観念があるという前提に立ちますと、高橋君の衆法を用いるならば、大中小全部がやっているんだ。大企業だけが脱税するという印象には、私どもは服するわけには参りません。ということは、それは何の事実に基いてそういうことをおっしゃるのかはっきりしていただかぬと、大切な国会の政治運営の上に非常な支障が生ずることを懸念いたします。私はこの機会に、それはもう少し根拠のある材料に基いて御発言を願いたいと思います。
  100. 春日一幸

    ○春日委員 妙なことを申されるので、はなはだ心外に存ずるわけだが、われわれが伺ったのは、大企業は非常に膨大な機構を持っている。しかも全国各地にまたがって、たとえば国税局の所管も幾つかにまたがるであろうし、さらに調査するにしても、膨大であり、内容が多岐複雑にわたっている。そういうものを調査するのに、はたして現在の徴税機構をもって足れりとするかどうか、こういう質問をしている。それから中小企業に対しては、これを調査しようと思えば、非常にそのものが小さいので、裏から、表から、横から、見ようと思えば、時間的に容易にこれを把握することができる。従って大企業にも中小企業にも、いずれにもそういう自家調節をする面がなくもあるまいが、それは現行徴税の制度によると、査察の制度によって中小企業はそういう事項を、あるいはカンニングの諸君を摘発することができるけれども、大企業を摘発することが非常に困難のように思われるが、これはどうであるかということを聞いたのであって、これはわれわれが徴税行政を執行していく上において必要欠くべからざる要素として伺おうとしたことである。別にあなたからそういう抗弁を受ける理由のないことなんだ。われわれは普遍的な問題とし、一般的な問題として、徴税行政をいかに公平に運営しようかという立場で聞いているんだから、感情的な議論を吐かれては非常に困ると思う。
  101. 金井滋直

    ○金井公述人 今のは決して感情的に申し上げたわけではないのであります。大企業の経理の運営をよく御承知いただくと非常にいいと思うのですが、大体このごろの大企業の経理は、御承知のように電気計算機とか電子計算機とか、あるいはIBMとか、全く機械力をもって計算しなければ間に合わぬところまできている。この機械に入れる伝票を一つごまかしても、全部わかっちまう。それをごまかすことは、社長でもだれでもとうていできません。そういうような経理組織、経理機械をもって処理する場合に、ごまかす余地はないと思うのです。ですから、その点を一つ御了承願いたいと思います。
  102. 春日一幸

    ○春日委員 それはあなたの主観を述べられているのであって、われわれが質問をしたのは、たとえば財閥鉱山が九州において大脱税を行なって、そのときは三十億の脱税が行われているという新聞報道も行われておった。それから昨年の暮れ、某大紡績がストライキをやったときに、労働組合から提示された資料によると、その会社は十数億の脱税をしているということが示されておった。従ってわれわれはこういうような事実の上に立脚して大企業の内部を見るときに、これはわれわれの憶測であるかもしれないけれども、しかしその中にはなお複雑怪奇なものが含まれているという心配がないわけではない。従って徴税行政を運営する上において、この実体を摘発して明らかにするためには、現在の徴税機構でその能力があるかないか、こういう問題をわれわれは論議しておるのであって、大企業があなたのおっしゃるように——あなたは非常に清廉潔白であって、省みてみじんたりともやましいところはないかもしれないけれども、あなた自体をもって全国の大企業体を律するわけには参らない。だからわれわれは、そういう聞きもしないことをあなたによって述べられることは遺憾千万である。そういうようなことを述べる機会は与えられていないのである。大体委員長は、そういうことは注意さるべきである。ただわれわれが質問をしたことに対して答えてもらえばいいのである。問題をいたずらに紛争に巻き込んでくるということは、はなはだもってけしからぬ。今後厳重に注意されたい。
  103. 横路節雄

    ○横路委員長代理 この際一言公述人各位にお礼を申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず公聴会に御出席をいただき、長時間にわたり貴重かつ忌憚のない御意見をお述べいただきましたことは、当委員会法律案審査のために非常に参考になりましたことを、本委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  これにて公聴会を散会いたします。    午後五時二十二分散会