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1955-07-19 第22回国会 衆議院 外務委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十九日(火曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君       伊東 隆治君    高岡 大輔君       夏堀源三郎君    並木 芳雄君       山本 利壽君    江崎 真澄君       渡邊 良夫君    赤路 友藏君       高津 正道君    森島 守人君       中村 時雄君    松岡 駒吉君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君         農林政務次官  吉川 久衛君  委員外出席者         外務省参事官  石井  喬君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 七月十六日  委員淡谷悠藏辞任につき、その補欠として阿  部五郎君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員松本七郎君及び稻村隆一君辞任につき、そ  の補欠として中村時雄君及び赤路友藏君が議長  の指名委員に選任された。 同 日  理事菊池義郎辞任につき、その補欠として同  君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 会議を開きます。  議事に入るに先だってお諮りいたしたいことがあります。理事補欠選任についてお諮りいたします。理事菊池義郎君は去る十三日に委員辞任され再び当委員に選任されましたが、理事一名欠員となりましたので、この際その補欠選挙を行いたいと存じますが、これには同君を再び理事指名することにいたしたいと思います。いかがでしょうか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。     —————————————
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 次に日本海外移住振興株式会社法案を議題といたします。質疑を許します。穗積七郎君。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 外務次官にちょっとお尋ねいたしますが、きょうあなたの方からここに資料として配付されました、外務省大蔵省間の話し合いによる第九条第二項に基く政令要綱案でございますが、これはもう話し合いは決定したわけですか。案になっていますが、どういうことでしょうか。
  6. 園田直

    園田政府委員 資料を作る際には案でございましたが、今日においては大蔵外務両省の間に完全に意見は一致しました。政令の中に盛らるべき要綱に相なっております。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵省の方はこの要綱で書いたものの通りでよろしゅうございましょうか。
  8. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま外務政務次官からお答え通りでございます。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 次にきょう配付されました参考資料の第二の部ですが、今後の会社事業計画あるいはその他運用につきまして、関係省、特に農林省外務省との間において、この問題について緊密な連絡をとる必要があるというので、そういう御趣旨だろうと思うが、お話し合いをされた了解事項案というのがありますが、これを拝見いたしますと、外務事務次官名で出ております案の内容と、それから農林省から出ておる案の内容食い違いがございますが、これはまだお話し合いの途中だということですが、その今までの経過実情をちょっとお話下さい。
  10. 園田直

    園田政府委員 本会社法案を提案するに当りまして、移民農業漁業それからその他企業移民等に範囲が拡大されて参りますので、関係各省、特に農林省通産省労働省の三省と業務については関係が逐次ふえて参ることは当然でございます。従いまして資金面については大蔵大臣等関係がございますが、まず第一の募集選考訓練、次のこの会社運営をいたします各種の業務については、外務大臣自分責任——外務大臣が持つ所管事項ではございますが、その事業計画策立及び変更等を認可する際には、当然農林大臣労働大臣通産大臣協議をしてこれを認可するのが至当であろうと考える。それが業務を円満に遂行する点であると考えまして、まず第一の募集選考訓練につきましては、これは移住局の設置の際に、通産省労働省農林省とは、意見が申し合せの限りは完全に一致しております。次いでこの会社運営につきましては、農林省通産省労働省は、全部外務省との関係に同じ発言権内において協議すべきだと考えまして、通産労働省とは、すでにただいま出しております通り外務大臣は、日本海外移住振興株式会社法事業計画及びその変更について認可しようとするときは、あらかじめ農林大臣あるいは通産大臣あるいは労働大臣協議するものとする。第二項、外務省日本海外移住振興会社法運用に関し、農林省あるいは通産労働各省に密接に連絡するものとする。この二項の申し合せで通産労働省とはずっと以前から意見が一致しておりますが、農林省とは意見が一致しておりません。まだその意見の一致してない点は、別紙第二項に掲げている通り農林省の方では事業計画策立変更ばかりではなくて、資金計画それから事務方法、こういうものについても協議をしよう、こういうふうに今主張せられておりまして、ただいま折衝中であります。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 これに関連してちょっとお尋ねいたしますが今お話通り、現在までは特に農業移民が多うございました。しかもその場合に、外国に行けば技術移民かもしれませんが、日本においては必ずしも技術農民といわれる程度のものでない者をおもに出しておったということから、農林省関係が特に深かったことは了承されますが、この通産労働を加えられて同様な了解事項の取りきめなさいましたことは、将来技術移民あるいは企業移民のことをお考えになってのことだと思うのです。そうなると、どうでしょうか、技術の高度のものになると文部省関係なんかどういうふうにお考えですか。
  12. 園田直

    園田政府委員 ただいまのところ文部省から要求もございませんし、ただいま現在のところ直接関係あるのは雇用移民労働省企業移民関係通産省、これは資金面もあります。それで労働通産農林だけは折衝して参りましたが、文部省折衝したことは今日のところ全然ございません。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 もとよりこれから高度の技術科学を伴った移民の必要が生じて参りますと、企業移民である程度軌道に乗った等の場合には、当然文部省等関係すべきだと思うが、その必要が生じたときには、同様の了解事項を当然円満に求められるものと了解してよろしゅうございますか。
  14. 園田直

    園田政府委員 御指摘の通りでございまして、移住審議会におきましてそういう問題は研究したいと考えております。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 次に農林省の問題についてお尋ねいたします。今次官が答えられたように、われわれの手元に了解事項案が来ておりますが、これはすでに通産労働各省とはこの外務省案で大体一致したという御答弁でございました。ところが農林省との間においては、これがまだ一致を見ていないということでございますが、外務省案農林省側からごらんになりまして、業務方法、それから事業計画、のみならず資金計画等も加えて、これに対して両省間の特に協議を必要とするという御要求のようですが、つまり外務省案では不足な理由を、今までの実情等から説明をお願いしたいと思います。
  16. 和栗博

    和栗説明員 お答え申し上げます。外務省との折衝には、私の方の官房の山本参事官が直接当っておられますので、今山本参事官を至急に呼んでおりますので、山本参事官が参りましてからあらためてお聞き取りを願いたいと存じますけれども、私が一応考えましてこの外務省案で困ると思います点を申し上げたいと思います。  農林省案の方には、事業計画のほかに業務方法資金計画というものが載っております。業務方法は、いわゆるこの会社は融資を中心にする会社でございます。そういたしますと、貸付相手方を定めます際に、あるいは金利をどの程度にするか、あるいは据置期間をどの程度にするか、あるいは償還年限をどの程度にするか、そういったものが業務方法書の中に全部出て参るわけでございます。貸付相手方によっては、あるいはその業種によって取扱いが異なるということもあろうかと思うのでございます。そういうような観点から考えて参りますと、事業計画だけではわからないわけでございます。そういった貸付に関する一切の条件を現わしますものが業務方法書でございますから、それはぜひ御協議をお願いしたい。いわゆるそういう面におきましては、農業なり漁業の方面のことに関しまして、非常に重大な関心を持っております農林省といたしましては、協議を受けまして、私の方の意見も十分に外務省に開陳をいたしまして、うまく事業運営をはかって参りたいということで、業務方法書は絶対に必要であるというふうに考えます。  第二に資金計画までになっておりますが、普通会社内容を見ます場合には、事業資金計画収支予算というものは一本でございます。これ全体を見まして会社がどういうふうに運営されるかということがわかるわけでございまして、これは私の方の山本参事官がおりませんのでちょっとわかりませんが、農林省案の方には、事業計画資金計画だけが書いてございます。収支予算はないわけでございますので、一応資金計画だけの必要性を御説明を申し上げますと、この事業計画資金計画は、大体密接不離関係になっておりまして、会社事業計画を立てます場合に、こういうふうな事業をやる、それが資金とどういうふうに結びついてくるか、御承知の通り資金計画内容といたしましては、その事業に伴う所要資金と、それからその資金をどういうふうにして調達してくるかという二種類の内容を含んでいるわけであります。会社なりあるいはいろいろな金融機関の状況を調べてみますと、事業計画には必ずしも資金的な面が出ないものもございます。それから中には、資金計画という名前のもとに資金中心にして考えるような機関では、資金計画の中に事業を織り込みまして資金計画一本でやるというような場合もあるのでございます。そういったふうに会社のやり方によりまして、事業計画だけでこまかい資金との結びつきが必ずしもわかるとは言えないのでございます。どうしても事業計画資金計画の両方がないと、特に金融中心にするような会社の場合にはわからないというふうに考えるのでございます。なお一応農林省案はそうなっておりまして、収支予算の方はまた資金計画の締めくくりがそこに出て参りまして、これがまた翌年度の事業計画その他にも非常に関連を持って参るものでございますけれども、これは私の方の山本参事官交渉された結果では一応農林省案というものは資金計画ということまでで切られておりますので、以上とりあえず私から御説明申し上げました。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 実は両事務当局におきます交渉経過並びに今後の問題については、われわれ議員としてはあまり立ち入って、あるいはどちらかの肩を持ったり、あるいは審判官みたいな顔をしてみたり、あるいは混乱せしめるというようなことは差し控えるべきだと思いますが、ただ従来移民行政の問題については、特に外務省は上の方、農林省移民に直接タツチした面を担当しておった、その間における統一融和がやや欠けていた点は悲劇だったと思うのです。そういう意味でこれはぜひ一つ話し合いをしていただきたいと思います。今の課長の御説明に対してわれわれが伺うのは、立ち入るという意味ではなくて、こういう問題の処理に対してわれわれはどういう態度をとるべきかということについて、われわれ自身の態度をきめるために伺っているわけですから、今の説明説明といたしまして、後に山本参事官がお見えになりましてから補足説明もあろうと思いますので、それを伺った上で外務次官に続けてお尋ねいたしますから、その点の質問をちょっと留保しておきます。  次にお尋ねしたいのは、私は割合に委員会に多く出席する委員の方ですが、この法案審議についてはちょっと他の所要のために一、二回欠席したこともございましたから、もし前に質問があって、すでに答弁されている点がありましたら、あと速記録を拝見いたしますからその旨お答えいただけばけっこうです。そこでアメリカとの借款条件についてはこの前伺いましたが、念のために伺っておきたいのは、千五百万ドルの借款のほかにこれと同等またはそれ以上有利な条件において、さらにより多くの資金貸付を求める意図であるかどうか、また向うにそれに応ずるような気配があるかどうか、その点についてこの際はっきり伺っておきたいと思います。
  18. 園田直

    園田政府委員 今のところは千五百万ドルの借款のほかに、別な借款をやる考えは持っておりません。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 御意思はわかりましたが、お見通しはどうでございますか。
  20. 園田直

    園田政府委員 見通しとしてもございません。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、アメリカからの貸付金は全くの商業採算によります商業資金貸付と理解してよろしゅうございますか。
  22. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると会社運営あるいは移民受け入れ等について、アメリカ了解を求めるべき義務またはそういう口実——これは商業借款でありますから、借款協定の中にそういうことを成文をもってうたうべき性質のものでもなかろうし、交渉過程において日本政府責任者が、向う責任者あるいは銀行の幹部に、口頭をもってそういう了解を与えている事実、またこれからそういうことをやるような、そういうミステークをやることはございませんでしょうが、念のために伺っておきたいと思います。
  24. 園田直

    園田政府委員 前内閣の時分の交渉経緯におきましても、さようなことは聞いておりません。われわれの交渉経緯にも、さようなことはございません。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 その点は今までは何も知らないということですが、この法案ができて借款が結ばれると仮定する場合におきましては、一応向う政府並びに当事者の銀行責任者に、その点はあらためて念を押しておくべきだと思う。後になって、あなたは知らないでおっても、あるいは外務大臣が知らぬでおっても、吉田内閣時代外務省のだれかか、出先機関がこういう口実を与えておったとかいうような場合も考えられないこともございませんから、非常に神経質のようですが、協定を結ばれる前に、その点をはっきり一ぺん念を押しておいていただきたいと思いますが、そういう御意思がございますか。
  26. 園田直

    園田政府委員 この借款につきましては、政府とは全然関係ございませんし、政府に通報また相談等したことはございません。銀行との契約等の場合には特に注意して、そのような点は契約を結びたいと思います。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 私が政府と申したのは、この話のできたのは、何も銀行吉田さんの話ではなくて、政府の話で、政府のあっせんによってできたという過程をたどっていると私どもは推測しているわけであります。従って政府当局としては、そのことは念には念を入れるということで、いつでもけっこうですから、やはり念を押しておけということを言ったのです。それをもう一ぺんお答えをしていただきたい。
  28. 園田直

    園田政府委員 政府とは何らの関係はないということを申し上げたのでありますが、念を入れることはけっこうでありますから調査をいたします。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたします。会社移民との契約会社運営に当って重要な点だと思いますが、これは個別契約になりますか、集団契約をお認めになるのか、どちらですか。
  30. 矢口麓藏

    矢口政府委員 現在集団の場合と個別的な場合と二つ考えております。ことに開拓移民の場合におきましては、協同組合みたいなものを作ることが、ブラジル等におきましては先方の義務になっておりますし、われわれもそれを要望しておりますので、そういうものを対象にして考えております。それからコロノ移民が独立する場合におきましては、その個人を対象にしようと考えております。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 集団契約は当然すべきだとわれわれも考えるのですが、その場合におきましては、かの地に参りましてからの開拓組合その他協同組合等を結成するメンバーだけ、すなわち移出する移民、そのかの地における組合対象にしておやりになるのか、送出する場合に、たとえば地元で農協等海外協会と協力をして責任を持って送出をするというような場合に、それとの間においても何らかの契約を結ばれるつもりであるのか、どちらでございましょうか。
  32. 矢口麓藏

    矢口政府委員 お答え申し上げます。現在考えておりますのは、向うに参りましてからのことを考えております。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと個別契約の場合と集団契約の場合と契約内容は当然同一だろうと思いますが、ただ共同責任を負うという場合において違ってくるだけで、契約内容そのものについての案について何かお考えになっておられますか。
  34. 矢口麓藏

    矢口政府委員 現在のところはまだ具体的に考えておりません。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねしますが、その移民契約の問題です。移民契約内容はこれから案をお作りになると思うが、この会社運営に当っては非常に重要な内容を持つと思うのです。従って予想でよろしゅうございますが、一体どういう点を内容とする契約をお考えになっておられるか。これは移民移民会社の間における送出並びに向う受け入れ後の責任問題にもなりますから、単に渡航費貸付、その期間、金額、金利等々の問題だけでなくて、さらにどういうものをお考えになっておられるか。予想でもけっこうです、こうしたいという願望でもけっこうです、あとになって一々こまかいことは申しませんから、大綱だけでも、もし構想がありましたらこの会社の一歩前進のためにお答えいただきたいと思います。
  36. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げますが、ただいまの御質問につきましては、これは会社ができまして現地でいろいろその事情に即応いたしまして契約を結んで参らなければならないのであります。お話に出ました渡航費につきましては、その契約は当然こちらで結びます。これは個々の契約になると思いますが、その場合に担保をとるということは実は考えておりません。これはかつて海興自分の費用で金を貸して向うに出したことがございます。その際国内で保証人を立てさせたことがございます。それが非常に強硬に債権を執行して、そのために自殺者が出たというようなこともございますので、そういうことは考えておりません。  それから現地に参りましてからの契約内容でございますが、これもやはり場合によっていろいろ違うと思います。ただいま矢口局長からお話申し上げましたように、協同組合向うにございまして、それに貸します場合と、それからコロノが独立する場合の資金というような場合と、おのおの内容はいろいろ違って参ると思いますが、この会社はどこまでも営利それ自体目的とはいたしませんが、少くとも採算のベースの上に立ちまして資金だけは温存しておく必要がございますので、そういう場合にはやはり担保を取るなり、適当な保証人を立てるなりすることが必要であろう、そういうようなことも契約の中にはぜひ織り込んでいかなければならない。ただその契約現地でいたしますから当然現地法に基く契約になりますので、現地法に基いてそういう点ははっきり契約を作っていかなければならない。現地法は国によっておのおの違って参りますので一がいには申しかねると思いますが、確実に回収のできるような方法で、しかし過酷にわたらないようにというようなことを考えながら契約を結ばなければならぬ、かように考えております。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 それから今の貸付資金契約だけでなくて、移出後の会社が負うべき義務はどうなりますか。今のは移民が負うべき義務ですね。渡航資金あと運営資金等々の貸付に伴う移民または移民の団体の共同に負うべき責任義務の点についてはお話がありましたが、会社が移出した後におきましてはどういう責任を負うわけですか。資金貸付だけの権利義務を規定するわけですか。
  38. 石井喬

    石井説明員 大体におきましてそういうことになると思いますが、ただこの会社の性格と申しますか、目的が純粋に営利を追求するものではないという観点からいたしまして、まあ少し抽象的な話になると思いますが、やはり移民の自立なり成功なりを達成するようなために金を使っていかなければならない、そういった面からのいろいろな制約が出てくると思いますが、契約自体内容には会社責任というようなものは出てこないのじゃないかと考えております。運営の問題になるのではないかと思います。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと具体的にお尋ねいたしますが、私は今までの移民事務についてあまり経験や知識もございませんので、愚問になるかもしれません、あるいはすでに質問に出た点につきましてはその旨をお答えいただきたいと思います。たとえば今度の案で見ますと、海外協会が宣伝、募集等々についてはタツチすることになりますね。そのときに移民協会との間においては何らかの権利義務を負うべき契約を結ぶことになりますか、両者の権利義務はどうなりますか。
  40. 石井喬

    石井説明員 お答え申し上げます。契約を結ぶということになると、従来のことを申し上げますと、契約渡航費貸付ということになって参ります。それから連合会といたしましては移民に対しまして渡航費貸付、それから現地にいろいろ受け入れのための機関がございますが、それに対しましては優良なる移民を送り出す、そのかわり渡航費を回収してくれというような契約を相手の現地にある機関とは結びますが、移民それ自体とは渡航費関係契約が結ばれるだけであります。ただしかしながら表向きの契約はそういうことになりますが、募集選考訓練というようなことを連合会が引き受けておりますので、現地事情の紹介でございますとか、いろいろな準備とかいうものに対しまして、精神的には確かに義務連合会は負うという格好になるのであります。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと協会募集をいたしました募集要綱と、かの地へ行って入植してみた場合の現実の条件とに非常な食い違いがあった場合、つまり法的に言うと、悪意の場合と善意の場合とあろうと思いますけれども、そういう問題が起きたときには、それによる損失を移民が負った場合、そしてそのために事業も成功しなかったし、それから会社から借りた渡航費あるいは運営資金等も返済ができなくて、非常にいろいろな損害をこうむった場合の損害賠償権というものはどこにありますか。だれが一体そういうことに責任を持つかということ、この場合にはだれも責任を持たぬわけですか。そうすると移民としてはだまされた形で、金は焼け石に水をぶっかけたようにむだに使ってしまった、それで若干棒引きをしてくれればいいが、あとに今申し上げた通り責任が残る。しかも共同経営の場合には他の移民まであるいは組合まで責任を持たなければならぬことになる。そういう基本的な契約条件について違いがあった場合においては、普通の売買契約ですと、契約に瑕疵があるとか錯誤があるとかいろいろのことで契約の無効を主張することができる、損害賠償請求権契約書の中にあろうと思うが、この移民の場合にはないわけですか。
  42. 石井喬

    石井説明員 お説のような場合がもしありといたしますれば、これは非常な大問題でございます。しかし現在のところでは移民連合会との間にそういったような契約は結んでおりません。従いまして法律的にその場合の責任云々ということはないと思いますが、これはまさしく政府責任でもあろうかと考えております。もちろん連合会というものが大きくなりまして、現地実情にも十分精通し、連合会自体が積極的に自主的に動けるようなことになれば連合会責任でございます。そういうことがありますれば、それを監督する外務省責任でもあると考えております。ただいまのところでは連合会は発足してまだ一年有余しかたっておりません。現地機関もまだ充実いたしておりません。従いましてただいまお説がございましたように、現地のいろいろな条件は、実情におきましては外務省が仲立ちになって、向うのものをこちらに取り次いでやるというような格好をとっておりますので、もしそういう事態がありといたしますれば、現在のところはまさしく外務省責任であるというふうに考えております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、外務省に対して損害賠償請求権がありますか。
  44. 石井喬

    石井説明員 やはり向うに参りました上は向うの人間でございますから、国際法上のいろいろな問題になるかと思います。そこのところはもう少し研究してからお答えいたします。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 今の問題は国際法上の問題ではないと私は思う。国際私法の問題にはなると思いますけれども、国際法に関係がありましても、やはりプライベートな移民契約の場合は、それに生ずる権利義務関係は何ら国際法に拘束されずに、むしろそういう国内法の違うものの間における私法上の権利義務を、保護する建前になっているのが国際私法の精神ですから、国際私法にディスターブされて、損害賠償請求権が抹消するというようなことは、私には全然考えられないのであります。特に出ますときに日本国民の国籍を持ってかの地へ行っても、あるいは帰化する者もあるかもしらぬし、あるいは日本国籍を継続する者もあるかもしれませんが、いずれにいたしましても移民会社との間に何と申しますか、どこに一体責任があるのかわからなくなって、移民会社は金の貸付返還請求権だけを持っている。そしてその借りるについては、こういう計画でこういうところへ行けば成功するからおいでなさいというから行ってみた。そうすると契約条件に非常な詐欺または錯誤または瑕疵があるわけです。そういうようなことが起きて、会社の方はその契約内容条件の瑕疵または錯誤等については責任を持たないで、貸した金の返還請求権だけはあくまで残って主張するというようなことでは、移民政策が今までよりさらに前進しないのであって、会社政府協会と三つができて、まるで走馬燈のようにきりきり舞いされて、こっちへ行って文句を言うとあっちへ行け、あっちへ行くとおれは知らぬ、そっちへ行けと言う、それでは借金のカタだけ背負わされているということになる。さっき質問した各省間の統一問題についても、それからこの前私が次官にお尋ねしたこの法案審議に当っては、実務をとる協会の改組というものをはっきりしなさい、それをはっきりしなければ、われわれはこの会社法案内容については、十分なる知識と自信を持って判断するわけにいくまいということが、今の具体的な御答弁の中に出てきている。それでは私たちは困るのです。賛成、反対の態度を初めからはっきりきめておいて文句を言っておるのではない。われわれが議員として移民の利益、移民の将来を考えて、そして国のために移民が成功することを考えて、この法案審議する際におきましては、そういう権利義務の点が一番大事な点だと思います。だからもう少しその点は、どなたでもけっこうですから、納得のいくような説明をしていただきたいと思うのです。
  46. 石井喬

    石井説明員 ただいま私の説明が大へん下手でありまして失礼いたしました。向うに参ります場合には、従来のところは連邦政府の植民地に入りますのと、個人の雇用主等に雇われて入るのと、二種類ございます。連邦政府に雇われて入ります場合、連邦政府が一つの条件を提示いたします。われわれはそれを国内に周知させまして、それによって移民募集をいたします。それから個人の雇用主等がコロノ移民等を募集いたします場合には、その雇い主が一つの条件を提示いたします。従いましてそれを私ども国内に伝えまして募集する格好になります。そのために向うに参りまして、もしその条件にいろいろ違ったところがありといたしますれば、それは雇い主と移民との契約関係において契約の違反があったということになりますので、これは現地の法律によりまして、おのおの損害賠償なり何なりができると思います。それに対しまして日本政府といたしましては、在外邦人の保護は日本政府外務省責任でございますから、これはその意味におきまして日本人の保護は十分やっていかなければならぬというふうに考えております。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 そうするとさっきあなたのおっしゃった外務省責任を持つという意味は、その場合において、向う政府または雇用主に対して、契約不履行の交渉をしてやるという意味ですか。そういう意味になりますか。
  48. 石井喬

    石井説明員 そういう意味になると思います。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと今のコロノ移民の場合、それから政府が計画して入植をこちらへ通達してきた場合ですが、その場合には、取り次いだ外務省または協会が、その向うの企業主あるいは政府の代理店みたいな格好になるわけですね。代行機関になるわけでしょう。だからその場合に生じた瑕疵または錯誤に伴う移民側の請求権は、向う側へ請求すべきことをこちらからは取り次ぐ、こういう筋道で論理的に考えていいわけですね。代理機関責任を全然持ちませんね。
  50. 石井喬

    石井説明員 その場合に、代理店の性格は一般的に申しましてないと私は思います。ただこの前、コチア産業組合日本から青年の移民募集いたしました。この場合には、コチア産業組合自分組合の代理といたしまして、国内の協同組合連合会でございますか、農協の連合会がございます、それを自分の代理にしたいということを言っておりました。農協ではそのために特別の委員会を作りまして、それがコチア産業組合の代理としてこの移民募集をやるのだということをやった例があります。そういう場合には、これは明らかに向うのコチアならコチアの代行機関になると思います。それ以外には代行機関という観念にはならないと思います。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 それではちょっとお尋ねいたしますが、おもに会社事業計画資金計画は、かの地の入植国政府の申し入れ、またはコロノ移民の場合には企業主の計画を基礎として事業計画または資金計画を立てるわけですか。
  52. 石井喬

    石井説明員 私どもは、この会社の独自の立場から、いろいろ融資その他のことをすると思います。向う政府の、たとえば連邦政府の植民地の申し入れとか、あるいは雇用主の申し入れというようなことによって立てるわけではございませんが、もしそういう申し入れがありますれば参考にいたしますことはもちろんであります。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと最後が聞えませんでした。
  54. 石井喬

    石井説明員 もしこの会社から金を貸してやってもらいたい、そういうような申し入れがございますれば、これはやはり参考と申しますか、一応意見を開きまして、計画を立てる場合の参考にすることはあり得ると思います。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと移民計画並びに資金計画については、法律的には会社責任になるわけですね。
  56. 石井喬

    石井説明員 ええ。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 そうするとちょっとお尋ねいたしますが、向うからの申し入れまたは外務省出先機関の調整を参考資料として会社が独自に立てる。その立てる計画は、たとえばこれだけの地域に耕地何町歩だ、それでそこにどれだけの移民をする、それには幾らの渡航費と幾らの事業資金が必要だというような計画を立てるわけでしょう。実際問題としては、移民はその会社が立てた案を協会を通じて各地で宣伝をされて、それで成功するものと信じて、つまり会社の立てた事業計画移民計画に乗っかっていくわけなのですね。計画そのものについては、実際問題として移民自身が移民計画を立て、幾らの資金を貸してもらいたいというような調査や計画をする能力はありませんから、会社の立てた案に従って大体移民は乗っかっていくわけになると思う。そしてその計画が非常に中途半端な計画であって、そのためにその事業が、他の計画であるなら他の資金計画をつけてやれば成功すべきものが、中途半端な資金計画であったために挫折した、それが非常に大きな理由であった。本人の怠慢または病気等がおもなる理由ではなく、またはかの地における天然気候の変化等がおもなる理由でなく、会社が立てた資金計画移民計画のずさんさが原因であったということが、客観的にはっきり発見された場合には、一体会社責任はどうなりましょうか。
  58. 石井喬

    石井説明員 それはこの会社外務省が監督いたしておりますからには、そういう計画は立てさせないつもりでございますし、もし立てましてそういう事実がございますれば、それは厳重に措置しなければいかぬのじゃないかと思います。  それからその計画に乗っていくというお話がございましたが、そういう場合も前々から申し上げておりますように、例外的にはあり得ると思いますが、主としては現地に参りました移民協同組合を作ってそれが金を借りますとか、あるいはコロノでもって数年現地で働きました者が独立する場合に、金を借りるとかいうことが多いと思いますので、初めから会社の立てた案に乗って移民が行くということはあまりないのではないかと考えます。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと今の場合、あなたの御答弁は、外務省の権威と良心に訴えて、そういうことはあり得べからざることだとおっしゃるのは、役人のプライドからいってけっこうでございますが、今までの実情から行きますと、そう大きなことを言うなと実はわれわれは言いたい実情を散見しておるわけです。それがすべてではないでしょうが……。実はこの前上塚または大久保参考人からお話がありましたように、行く人は非常にアドヴェンチュアなんです。だから当然それに伴いますリスクはお互いは相当考えておかなければならない。問題は起きたリスクはだれがどう処理するか、そして結末は失散に終らせるか、艱難辛苦の後に成功の結実を生ましめるかというところに問題があるのであって、そういう点で私は聞いているのです。そうしますと、今まで会社なり協会なり事務所なりがやっておりましたこういうやり方は、悪口をいえば棄民だ、捨て子だという形容詞が出てくることになったと思うのです。ですからそういう点についてはお互いにあまりしゃっちょこばらないで、実情に即して話をしていただきたい。そういう場合がこれから多多あろうと思います。そういう場合には一体どういうふうにされるつもりか。これは技術の問題を通り越しておると思いますので、次官から一つ……。  それからこの会社をわざわざ作って、一番今までの移民の欠陥であった資金不足を補って、そして困難はあるかもしれぬが、困難の後に——今まで失敗したものもあったが、失敗はなくして成功に持ち込もうというのですから、あとのめんどうを見る親心が制度の上に、運営の上に必要だと思うのです。それをもう少し聞きたいのです。それがないと、農林省の人が言うように、事業計画だけではいかぬ、資金計画までいかなければ移民の世話なんかできたものじゃない、あとでこっちが恨まれてひどい目にあろうという言葉が出てくるのは、そういう実情から出てきていると私は思うのです。ですから今度の移民会社法案がわが国の移民政策に、構想の上でも運営の上でも一歩前進になるためには、その辺の条件が充足されなければならぬと私は思うので、そこであなたのお考えをこの際少し伺っておきたいと思うのです。
  60. 園田直

    園田政府委員 お答えをいたします。今の御質問中、この会社業務としては、渡航する方全部が該当するところの渡航費貸付の問題と、向うに行かれたあと資金の問題の二つに分けてお答えをいたします。  渡航費の問題につきましては、先般御報告申し上げました大蔵省外務省の申し合せ事項の第四の2に「移民が、死亡、天災その他やむを得ない事由により、当該渡航費の償還が困難となった場合には、外務大臣大蔵大臣と協議して定める基準に基き、二に掲げる貸付期間をさらに延長することができる」「なお損失の生ずる場合の措置については、次の通常国会に提出を予定されている債権管理法によって処理する」こういう申し合せをやっておりますが、これは損害賠償の方ではなくて、渡航されたあとの方々が天災地変はもちろんのこと、やむを得ない事由というのは、今穗積委員から御指摘になったような、いろいろの条件の相違であるとかあるいはその他本人の勤惰の結果でなくて、やむを得ざる条件によって出た場合には、この渡航費貸付を延期する、それでもできない場合には債権管理法によっ処理する。  なお向うに参られましてからあと資金貸付等につきましては、これは二つの問題がございまして、要するに先般来から御報告を申し上げております第一は、政府責任を持って法的にこれを追及するところの移民協定——移民協定ができない場合におきましても、在外公館を通じて、向う政府並びに諸機関と密接に連携し、あるいは契約等の場合には立ち会いをさせて、そうして条件が違ったりその他の場合においては、政府責任を持って向う責任の追及なり、あるいは条件の相違あるいは土地の不適当なための移民の方々の損害というものを、相手国によってあるいは雇用関係によって、損害弁償するように持っていきたい、このように考えております。
  61. 植原悦二郎

    植原委員長 大蔵大臣の時間もかなり制限されておるのですから、なるべく大蔵大臣に対する質問を集中してやっていただきたいと思います。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 私のはもうじき終りますから……。続いてお尋ねしますが、会社はかの地に支店を置きますか。
  63. 園田直

    園田政府委員 この法案が御認可いただきまして、発足当時はまず本店の機構を作りますが、計画としては約半年くらいしてから、必要なところから支店を作りたいと考えております。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 それではその支店は調査、それからあと移民に対する援護等の活動はもちろんなさると思うのだが、今のコロノ移民の場合でも、経営主からの申し入れ条件、宣伝でなくて、会社自身として情報をお集めになるのか、あるいは向う政府受け入れの場合でも同じですか、そういう場合にはどうなりますか。支店ができているところはそういう支店を通じてこっちに来るのか、あるいは直接日本本国に来るのか、宣伝、申し入れ等はどういうことになりますか。
  65. 矢口麓藏

    矢口政府委員 いろいろな経費の都合がありますので、できるだけ当初の間は、支店の形式もとりますけれども、現地機構を利用したいと思っております。たとえばブラジル等で申しますと、資金貸し出しの調査または貸し出し回収というようないろいろな大きな仕事がございますが、これは支店それ自体がやりますと、非常な人件費その他の点に経費を要するのでございますから、一例を具体的に考えておりますのは、南米銀行というのが向うにございます、これは日本人が経営しておる銀行でありますが、これと連携いたしまして、その機構調査並びに回収の機構を利用したい、こういう工合に考えております。ほかの国におきましても大なり小なりそういったふうな外国の機構をある程度まで利用したい、こう考えております。しこうして将来充実いたしましたら、そういう仕事も支店それ自体がやる時期がくることを期待しておるものであります。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵大臣が見えましたから、ちょっと念を押しておきたいと思いますが、アメリカから今度この会社借款が一千五百万ドル——これはこれ以上借りるおつもりはございませんでしょうね。これ以上また借りるおつもりでございましょうか。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところこれ以上借りる考えは持っておりません。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 将来はいかがでございましょうか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 将来も今のところ考えておりません。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 今のお話外務次官お答えとは少しニュアンスが違います。今のところはない、将来はあるかもしれぬという含みなんでしょう、将来も考えないというお答えだったのですが、この間はどうでしょう。もしこれがどんどんアメリカ資本を導入して、日本移民計画をアメリカ資本によってやっていくつもりなら、これはわれわれとしても考えなければならぬ点が多いわけです。  それと同時にお尋ねいたしたいのは、これだけでは——この前あなたがお見えになったときに私はちょっと席をはずしましたが、当然今まで今の政府、鳩山内閣が言っておられる移民計画だけから見ても、これだけの資金ではとうてい足りません。そこで民間資本は五千万という予定のようですから、これを拡大いたして募集しましても、それほど多額に集まる見込みはないと思う。従って政府出資または補助金が問題になりましょう。そうなると移民計画に伴う移民の予算をこれからふやす見込みがあるのかどうか。つまり将来のアメリカ資本の導入をもっと継続かつ増額していくつもりであるのかないのか、それと見合って移民計画を約束通りにおやりになろうとすれば、日本の財政予算のワクを広げていかなければならぬ、移民の予算を広げていかなければならないが、それとのにらみ合せについてのあなたの基本方針といいますか、こまかい数字はよろしゅうございますが、この際伺っておきたいと思います。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この借入金の点につきましては、今のところ借りられる見込みもなかなかありませんので、借りる考えを持っておりません。これは将来についても今のところそういう考えであります。ただそれについて移民が重要だから財政的な裏づけを考えなければならぬ、この点については私も異論はないのであります。ただ財政全体が御承知のようになかなか苦しいのです。しかし移民の重大性を考えた場合に、できるだけこれを予算的にもふやすような努力をしよう、こういうふうに私今考えております。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 これは念を押すようですが、大事な点ですからあなたにもお尋ねしておきます。この移民会社向う銀行から金を借りた、出資した銀行契約の文書の上にははっきり書きませんが——日本金融資本が出資した産業会社運営に対して、非常な注文をつけたり発言をする場合が多いわけですね。それだからあなたのことを世間では法王と呼んだわけです。そういう意味アメリカの場合におきましても、特に南米移民等が主になった場合には、アメリカの出資者が、日本のこの会社に対して、契約書の上ではっきりしたそういう発言権は確保されてはおらぬけれども、事実上の問題として、そういう発言をする危険があるとわれわれは心配するわけなのです。そういうことは今まで全然話も気配もなかったかどうか、将来その点については、厳にそういう干渉がましい発言は、阻止をする自信がおありになるか、その点を伺っておきたいと思います。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この借款は全然コマーシャル、商業的なものであるのであります。従いましてポリシイ的な、お金を貸すからかれこれということは絶対にございません。またそういうことは受け付けるべき性質のものでもないと考えております。
  74. 植原悦二郎

    植原委員長 大臣に御質問のある方はこの際御質問を願いたいと思います。
  75. 中村時雄

    中村(時)委員 大蔵大臣に一点だけお尋ねしたいのですが、この会社の設立するに当りましての資金政府が一億円、これははっきりしておりますが、民間の五千万円に対してはどういう御構想を持っていらっしゃるか、あなたは協議される責任者の一人でありますから……。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは民間におきましても、従来からいろいろな関係から、移民について非常に関心を持っておる方が少くないのであります。そういうふうな関係から政府移民事業を助ける意味におきまして出資を願おう、かように考えております。
  77. 中村時雄

    中村(時)委員 今のお言葉の中で従来からということを主観的に非常にウエートを持ってお答えになりましたが、従来からといいますと、どういうことになるのですか。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、移民についてずっと前からいろいろと関心を持っておる人が、財界人でもずいぶん多いのであります。ですからこういうふうな方もこういうときに大いに御協力を願おうと思っております。
  79. 中村時雄

    中村(時)委員 もっとはっきりさせて下さい。たとえば昔であれば海外興業株式会社とかそういうはっきりしたものがあった。だからそういうように具体的にどういうところを目安にして考えていらっしゃるか、これは非常に重要な問題です。この点に関して財界の人だというようなばく然たるものではなくして、たとえば前には三菱重工業から五百万円もらったりあるいは大阪商船から五百万円もらったりした事実がある。だからそういうところからどうだということをはっきりおっしゃったらいいじゃないですか。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的に今どこからどうこうとは、私もそこまではいっておりません。しかしこの移民関係の深い方々はずいぶん財界にあるから、これは私がお助けするような意味合いで外務省で実際お願いをする、こういう形になると思います。
  81. 中村時雄

    中村(時)委員 それじゃもっと突っ込んで一、二点お尋ねしたいのですが、たとえば国内に重点を置かれるのか、あるいは対外的なブラジルの方に重点を置かれるのか、そういう点についてどういう御見解を持っていらっしゃるか、御説明を願いたい。
  82. 園田直

    園田政府委員 資金の重点は、発足当時はこれはいろいろな関係上国内に重点を置きます。業務の進展するにつれて現地に重点を移していきたいと考えております。
  83. 中村時雄

    中村(時)委員 なるべく大蔵大臣に発言をさせてもらいたいと思います。もう一つお尋ねしたいのです。私がなぜこれを聞いておるかといいますと、昔海外興業株式会社というものがあった際に、移民の下請となり、その資金外務省が十分なタッチができないために、またその会社の機構なりあるいは業績の内容なりに対するタッチができないために、これが自由自在になってしまった。しまいにはある特定の財界の人たちの船会社の船賃をもうけるための一つの機構になったものだが、そのために泣いておる移民が何百と実際にある。そういう意味において資金の問題は重大な問題になってくる。そこで国内においてはどういう方方、たとえば船会社であるとか、あるいは具体的に船会社のどこであるとかいうふうなことが、ここまで来ればおわかりであろうと思う。だからそれに対する交渉なり、あるいはまたどういう方をお考えになっておるかを御発表願いたいと思うのです。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは具体的には外務省で十分実施策を考えてもらわなければなりません。同時にまた今御指摘のような弊害のないように、十分これは考えなくてはならぬと思いますが、私自身としては何としても金を集めるとすればやはり移民関係のある、今お話のあった船会社あるいは貿易をやっておる方、あるいは保険をやっておる方、こういうようなやはり移民関係を持ち、かつ熱意をふだんから持っている先がよくはないか。しかしそれだからといって、こういうことによって従来生じておったような弊害がありますれば、それは十分弊害が起らないようなことを考えて、注意を払っていかなくちゃなるまい、かように考えております。これから先は外務省の方でどういう先をおとりになるか、これは今のところ何も具体化しておらぬと私は考えております。
  85. 中村時雄

    中村(時)委員 あなたが日銀の総裁で法王といわれておった当時は、あなたのいろいろな考え方で物事ができたかもしれませんが、今度は会社になって利潤を追求するということになったら、もうけなくちゃやらないということで、常に支配権を握るという結果が今までの在来のあり方です。そこで私が重大な問題をお尋ねしているわけです。事実この間の、今まであった会社でなくて協会なんかの問題でもそれが起っている。ぶらじる丸を作るということは確かに関係があります。そこで三菱重工あるいは大阪商船から五百万円ずつ負担させている。実際にはそういう一つのあり方が出てくるのです。だから、そういう事柄に対して、これはみなが関心を持っている事柄なんだから、あなた方が構想を練られていらっしゃるには、原案を常に一つの腹案として持っていらっしゃると思う。だから、その腹案というものはどういうところに話し合いをつけようとされているのか、具体的に会社名なりそういうものがあればお知らせ願いたいというのです。これは政務次官でもわかればけっこうです。
  86. 園田直

    園田政府委員 ただいま中村委員から言われました通り、一番資金の集まりやすいのは、当然郵船だとかあるいは商船あるいは保険業者あるいはその他の移民関係事業が一番多いでございましょう。ところがここから全部資金を集めますと、御指摘のような点があるばかりでなく、将来会社資金面において会社事業計画その他がそういう会社の利益のために扱われます場合がございますから、その点は十分考えまして、国家資金との比率あるいは会社発足当時の人事問題、こういう問題ともにらみ合せて具体的にやりたいと思いますので、ただいまのところそれ以上に具体的の考えというものはありません。
  87. 中村時雄

    中村(時)委員 その重要な点をかかえて、まだそういう腹案が十分でないというのは、私には納得がいきかねるのですが、それではもう一点お尋ねいたします。現在は国内的な問題に重点を置くとおっしゃいますが、それでは国外的な問題になった場合には、どういうところを対象にお考えになっていらっしゃいますか。
  88. 矢口麓藏

    矢口政府委員 私からお答え申し上げます。御承知の通りブラジル、メキシコその他の国々におきましては、前に参りました移民が相当成功しているのが多々ありまして、これらの人たちは現在は御承知の通りブラジルにおきましては、主として土地方面に投資しておりますけれども、今度の会社がフルに動き出し、将来希望があるということになれば、こういう資本をこの会社に入れるようになるのではないかと思います。現にせんだってもメキシコのわが出先官憲からも、メキシコにおきましては相当可能性があるというような情報等を聞いておりますし、一に今度の会社がどの程度まで健全なる発達をいたすかいなかということにかかっておると思います。
  89. 中村時雄

    中村(時)委員 私はその考え方には二つあると思う。一つは、現実に移民として行って、苦しい生活の中から、ほんとうに何とかして助かりたいという熱意を持って成功した一部の人たちの考え方、もう一つは、たとえば現在ブラジルならブラジルの一つの例をとりましても、ブラジルでは松原だとかあるいは辻氏、パラグァイでは宮坂、ボリビアでは、西川、これが代表的なものです。ここが移民協定向う政府と行なっている。そこでこの人たちの経営内容というものは、松原さんにしても赤字をうんとかかえているという状態です。しかも契約向うがやっている。それに口出しをするとするならば、その赤字の解消のためにこういう会社を利用せぬとは限らない。そうなってくると、また一段と問題が深く出てくるわけですか、そういうふうな点の御調査なり、あるいは十分な方法を考慮されて、この資金の融資を仰ぐなりするということを十分研究していただきたい、これは真剣な希望なんです。
  90. 園田直

    園田政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、先般来私も答弁しておきましたが、この会社が発足いたしまして、現在あるいろいろな機関の赤字充填に使わぬように十分注意したいと考えております。なお現地の融資におきましても、国内の資本金を集める場合におきましても、こういう国家的な会社でございますから、なるべく一カ所から固めた資金ではなくて、広範囲の面から資金を仰いで、前に指摘をされました移民の重大性を認識した貴重な資金を仰ぐように努力したいと考えております。
  91. 中村時雄

    中村(時)委員 最後に大蔵大臣に一点、今のお話でも賢明なあなたですから概念的にぴんとすぐおわかりでしょう。そこで問題は、農業移民がやはり中核をなしておる。その際、外務事務次官農林事務次官話し合いの中に、農林事務次官から業務方法それから毎営業年度の事業計画とか資金計画に対して、外務大臣日本海外移住振興株式会社に左の事項に関し認可しようとするときは農林大臣にあらかじめ協議するものとする、こういう話し合いをしているわけです。これに対してあなたの見解はどうでありますか。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この会社資金計画につきましては大蔵大臣に協議を当然いたすわけであります。
  93. 中村時雄

    中村(時)委員 質問をよく聞いておって下さい。耳が遠いですか。私の質問はそうじゃない。大蔵大臣にということを言うているのじゃない。あなたの御答弁はよくわかるが、私の言っているのは、農林事務次官と外務事務次官との話し合いはまだできていませんけれども、事務次官同士あるいは事務当局同士ではやっているのです。それに対するあなたの見解を聞いているのです。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 外務事務次官農林事務次官話し合いで、農林大臣はあらかじめ協議するということの中に資金計画もあるようでありますが、これはむしろ農林大臣協議をするという意味じゃなくて、こういうことは事業計画を出しますので、それに関連をして資金計画も出す、こういうふうに御了解願えればいいと思います。
  95. 中村時雄

    中村(時)委員 それは十分了解できます。その前に外務事務次官農林事務次官名によってその了解事項という問題もありますし、その資金面における大蔵大臣の協議事項、これは十分納得できる。しかし事業をやるとするならば、少くとも今言った事業計画内容、これは農業移民中心ですから、そこで農林大臣大蔵大臣と同様に協議をするということで私はお尋ねをしているのです。その意味においてそれを要求していることも事実だろうと思う。だからそれに対する見解はいかがですかと、こう聞いているのです。政務次官は必要だと言っているのです。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵省としましてはこの会社資金計画はむろん協議を受けます。従いまして、その協議を受ける以上は事業計画も明らかにしてもらわなければならぬ、かようになるわけであります。ですから、私の考えではいろいろとこういうふうに次官の間で了解事項がありますが、これは大蔵大臣、農林大臣外務大臣資金並びに計画について三者で十分協議をしていく、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  97. 中村時雄

    中村(時)委員 話はよくわかりましたから一応これで打ち切ります。
  98. 赤路友藏

    赤路委員 一点だけ大蔵大臣にお尋ねしますが、この移民事業採算ベースに乗ると思っておりますか、乗らぬと思っておりますか。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは非常にむずかしいことで、採算というような観念自体移民に用いることがいいか悪いか。しかしまた移民される方が成功されることはやはり考えなければならぬ、また成功ということがいろいろあって、その個人が何か単なる財産的な価値を増すという意味か、あるいはまた国交の親善ということまで考えるか、これは多々あるから、これは非常に広範囲にわたる論議になると思いますが、少くとも当初においては採算に乗らないのじゃないかと思います。
  100. 赤路友藏

    赤路委員 今おっしゃる通りだと思うのです。少くとも事業計画の発足の当初においては採算に乗らない、こうおっしゃっておられる。この会社は、先ほど来から相当審議しているのですが、審議過程において明確になっていることは、採算ベースへ乗るべきもの、こういうことになっておるわけです。そうすると、この移民事業とはおよそ第一年度においてあるいは第二年度において、これは相当な矛盾が生じてくる。従って、この移民事業に少くとも九〇%以上、これは農業移民漁業移民に付随する関連工業をも含んで九〇%以上に重点が置かれていると理解しておるわけです。従って採算ベースへ乗らない、こういうふうに私は考える。もし赤字が出てきた場合、大蔵大臣はそれを補てんするの意思があるかないか、これをお聞きしたい。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この採算ベースということがまた非常に問題になる、一体採算ということを言う場合に、純粋のコマーシャル・ベース、商売人の採算かそうでないかというのも違うので、この会社において採算に困難な点があるという意味において、これは政村出資もいたしますし、それからいろいろとこの会社政府が保護を与えるというのも、私はやはりほんとうの純粋の意味において商売人ではなかなかやれない、こういうような意味において私は申しておるのでありまして、従いまして、それだからといってこの会社が直ちに赤字が出ると断言することも、私は必要じゃないのじゃないか、こういうふうに考えて、特に外国の金も借りて、これは当然将来償還も政府保証はしておりますが、一応借りた金でやるというような建前で株式会社組織にもなっておる。いろいろな関連でいつも赤であるという断定はしなくてもいいじゃないか、ただ赤が出た場合に、損失の生じた場合の処置については、渡航費については次の国会に提出を予定されている債権管理法によって処理する、かようになっておるので、今のところはこういうところを考えておるというふうにお聞きを願いたいのであります。
  102. 赤路友藏

    赤路委員 今大蔵大臣は、採算ベースというものとコマーシャル・ベースを分離してお答えになったようでありますが、それではお尋ねいたしますが、この一千五百万ドルの借款をする場合、コマーシャル・ベースに乗るということを前提にして借款されるのか、その点はどういうのですか。
  103. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この借款は、大体この会社運営におきまして、先方に行った場合の営農資金にといいますか、これは長期にわたるものでありましても、私の考えではやはり返せるようにならないと、移民に行った方が大へん御苦労なさるわけなのですから、移民に行った方が相当な御成功をなされればみな返していただける、こういうふうな考え方でおってよかろう、かように考えております。
  104. 赤路友藏

    赤路委員 それは希望なのですよ、一つの希望なんです。ただそうなることはけっこうなのですが、当初に私がお尋ねしたときに大臣もおっしゃったように、移民事業というものは、少くとも当面この会社が発足の当時においては、赤字を予想しなければならない。大臣もそれには異議がない。コマーシャル・ベースで運営するということになると、当然運営面に大きな規制がくるわけなのです。そうすると農業移民が本来のものから逸脱した形にならざるを得ない、これを心配するわけです。そこで当然これについては赤字が出てくるということを覚悟しなければならない。その場合に、大臣はその赤字を当然補てんしていくという一つの決意を示されなければならない、こういうふうに私は考える。それだけです。
  105. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほども申し上げましたように、いろいろ国家の保護もあるこの会社でありますから、当然赤字が出るとは私は初めから考えなくてもいいということを申し上げておるのでありますが、かりにそういうふうな赤字が出るとすれば、これはやはり渡航費からくるのじゃないかというふうに思う。向うに行って事業をなさっておる、それにいろいろ金が要る。これは向うへ行ってから当然事業が成り立つような考え方においてやらなければならぬのですから、従って渡航費が一番消費的なものになる。それについてはここにある程度政府としても考えておるようであります。そういうところでこの赤字問題については御了承願いたいと思います。
  106. 赤路友藏

    赤路委員 大臣の答弁は、突っ込んでいけば何ぼでもやらなければならぬのですが、私は言いませんが、渡航費によってということになると、当然渡航費によって赤字が生じてくるから、農業移民その他については考えなければならぬということになる、裏を返せば。そうなってくると会社本来の目的から、いささか逸脱するのじゃないかと思うのであります。これは問題になる。しかし時間もありませんから私はこれ以上つきません。会社が正しく運営されて赤字が出た場合は、当然責任を持ってそれの補てんを考える、こういうふうに理解してよろしいか、それだけお聞きします。
  107. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣としては、先ほどからしばしば申し上げましたように、今ここで赤字が出るだろう、その場合は補てんしてやろう、そういうわけにもいくべきものじゃないのでありまして、私としてはあくまでこの会社の設立について、あるいは運営について、外務大臣も御答弁になったと思うのですが、赤字が出ないように一つ運営をしていただく。
  108. 赤路友藏

    赤路委員 外務次官にちょっとお尋ねいたしますが、これはたびたび論議の焦点になっておるところでございますが、今朝来穗積委員質問の中からも出てくるのでありますが、今の大蔵大臣の答弁からも、採算ベースに乗るべきものであるということと移民事業というものとの矛盾性が、何ら根本的に解決されていないということ、従ってここに非常に大きな不安がある。今申しましたようにコマーシャル・ベースでいくならば、当然なおより以上運営面において、大きな規制をしなければならないような事態になるのじゃないか、こういうような問題は一応いろいろ論議のあれもありましょうが、これは除きまして、この会社は国策会社的な性格を持って、政府が相当な資金を投入して発足するものなのです。従って海外移民事業の万全を期するという意図のもとに、この会社案なるものがここに提出されたのだ、こういうふうに思うわけです。それだけに外務当局としてあるいは政府当局としては、慎重なるこれに対する対策を今日まで立ててこられたと思う。私たちもくどくいろいろと質問をし、審議をいたしますゆえんのものは、ほんとうに不安定な面をなくして、少なくともこの会社が成立する限りにおいては、その目的を達成せしめたい、こういうような気持からお話を申し上げているわけなのです。この点は賢明な次官は十分御了察願えておると思います。  そこできょう配付していただいた資料によると、先ほど来穂積君からの質問もありましたように、外務省農林省間の意見調整というものがいまだ完全にできていない、私は、会社が発足してしかも運営していくという将来を考えた場合、こういうような意見調整が完全になされなければならぬのじゃないか、そういう意見調整が完全になされないままに、これの成立を見るというようなことがあったのでは、あとに何かが残るように思う。そこでお願いしたいことは、まず外務省農林省との現在折衝中であるこの事項について、完全なる意見調整をやっていただきたい、これがまず根本の問題じゃないかと私は思う。この前も次官がおっしゃったように、これは何もお互いに張り合って何かやるじゃないので、熱心の余りみんながお互いにこの会社をよりいいものとして発足せしめようということで、非常に御苦労なさっておることはわかるのですから、いま一歩完全な調整をはかった上で、法案の成立を見るということが、最も望ましい姿だと思いますが、次官の御意見をお聞したいと思います。
  109. 園田直

    園田政府委員 本法案の提出に当りまして、本会社が円満に遂行されるよう数回にわたる熱意ある御質問は感謝をいたしております。ただいま御指摘の点につきまして御注意の通りでございますし、農林省外務省の間の意見におきましても、もうすでに対立の段階は過ぎまして、両方から歩み寄りの段階でございますから、御注意の通り農林省及び労働通産省ともよく相談をいたしまして、円満なる遂行ができるように調整をしたいと考えております。
  110. 赤路友藏

    赤路委員 先ほどからいろいろお聞きしていますと、通産省労働省大蔵省話し合いができた、了解事項は成立しておるわけです。ただ農林省との間だけが一つ残っておる。残っておるままでこれをさようならきょう成立さすということではまずいじゃないか、あとにかすが残るのじゃないか、きょう中にでも農林省との間にこれらの折衝をして、一応了解点を立ててから法律の成立という線に持っていく、こういうふうに取り計らいができるかどうか、このことをお尋ねいたします。
  111. 園田直

    園田政府委員 御注意の通りに早急にやりたいと考えております。
  112. 植原悦二郎

    植原委員長 いろいろこの問題の取扱いについて各派の御意見の調整もあろうと思いますから、午後二時より再開することにいたしまして、これにて暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後三時三十九分開議
  113. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。大橋忠一君。
  114. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 中南米に移民を送るに当りまして、われわれが心に置かなくちゃならぬことは、ラテン・アメリカ諸国といえども、日本人にはあまり感心しておらないが、ただ現地人や欧州移民ではできないところの熱帯のジャングル地帯の開発をしよう、こういうようなところから今なお日本移民に対する要請があるというこの事実であります。しこうしてこれはわが日本国民としてはまことにありがたいことであるのであります。熱帯のジャングルの開発ということは難中の難事ではありますが、暑気に耐え、勤勉でしかも科学的、組織的の頭を持った日本人ならはこれはできる仕事であると思うのでありまして、ただ単に中南米のみならず東南アジアにおきましても、アフリカにおいても、結局この熱帯の組織的の開発というものは日本人の力に待たざるを得ない。白人というものではどうしても金がかかり、暑気に耐えないがためにそれができない、こういうふうに私は思っておるのであります。熱帯にある無尽蔵の天然資源を開発して、世界の生活物資を豊かにすることは、日本民族に課せられる天与の使命であるとも私は思っておるのであります。この広い未開発の熱帯ジャングル、広漠たる海洋の水産資源というものを思うとき、私は平和日本の将来は洋々たるものであるとさえ思うのであります。われわれはすみやかにこの使命を自覚して、熱帯開発に必要ないろいろな準備、研究をする必要がある。ドイツにおきまして、かつて非常な完備したところの熱帯病の研究所があったのであります。私は日本としてもこの大きなわが民族の使命にかんがみまして、ぜひ熱帯病の研究、熱帯産業の研究、熱帯生活を科学的に研究するために、完備せる研究機関を作る必要がある、私はそこまでやる必要があると思っておりますが、外務大臣の御意見はいかがでありますか。
  115. 重光葵

    ○重光国務大臣 移民の基礎的の施策として、ただいま申された御意見には、私は全面的に御賛成の意を表します。時間の関係上その詳しい理由は御意見に譲りまして、結論だけを先に申しました。
  116. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 過去の熱帯方面におけるわが移民の業績を見ますと、日本移民の成功したのはその土地に特産物がある場合にのみ限られておる。たとえて申しますれば、フィリピンのダバオのマニラ麻、このマニラ麻が成功したがために二万以上の移民が戦前には行っておったのであります。サンパウロのコーヒー、このコーヒーを中心に多数の日本人のコロノが行き、今日の盛況をいたしたことは御承知の通りであります。困難なるアマゾン方面において一応成功したのは、これは中流地方のインド・ジュート、パラ州のアカラ植民地において成功したのはコショウというような特産物あって初めて移民というものが成功したのであります。そこで私は、熱帯方面から日本移民の要請があった場合、日本移民がそれによって主計を立て、進んでお金をもうけるだけのアトラクティヴな特殊産業というものが、何かそこにないとなかなか成功しない。無計画に移民をやりますと、結局緑の砂漠に吸い込まれて悲惨なる状態になってしまう。そこで私はどうしても移民を送る前に、その土地にそういう日本移民が家計が立っていくことのできる特殊産業ということをよく研究してからやらないといかぬと私は思っておるのであります。そこでこの会社が移住地を選択するにおきましても、ぜひこの点に一つ留意していただきたい。そうして現在すでに入植をしておる土地の移民に融資をする場合におきましても、果してこれに融資して将来成り立つ可能性があるかないかということを、よく見きわめた上に融資していただきたいと私は思います。このアマゾンの赤道直下の熱帯に人をまずたくさん送るということは間違いである。まずどういう産業が成り立つか、そしてその産業が大きくなってそれに必要なる人手か必要である、その需要に応じてその産業を発達せしめるに必要な移民を送る、産業がまず先になる、移民あとから送るという順序が、私は万全な策だと思っておるのでありまして、こういうような見地で今度の会社運営をせぬことにはいけない。むやみに人ばかりたくさん送る、送ったらすっかりそれが土人化したりあるいは四散をするというようなことになっては、会社の前途は暗いのであります。こういう点について外務当局はどうお考えになっているか、お尋ねいたします。
  117. 重光葵

    ○重光国務大臣 私からお答えいたします。今の御意見は最も貴重なものとして会社の指導方針の一つにいたしたいと考えております。
  118. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 戦後今日までブラジルに参りましたいろいろな移民は、実は失敗の歴史が非常に多いのであります。この失敗の歴史というのは、結局個人的に自分の功名手柄を立てるためにコンセッションをとる、そして日本移民を送って参るということはわれわれとしては感謝するのでございますが、ブラジルの提供する連邦植民地のごときは、おおむねさきに申しましたように、欧州移民などでは手のつけられないような場所が多いのであります。従ってこういうところに対する移民を成功させるためには、よほど衛生、産業その他道路、学校等各方面の完備せるいろいろな施設を必要とするのであります。ところがこういう交渉をただ個人にのみまかせておきますと、自分の功名をあせるために、ただ移民を送るということにあまりに気をとられまして、向うの方からよい条件を取りつけることができない。移民条約も向うと結ぶことはけっこうでありますが、それができない場合におきましては、よろしくこの会社を通して向う政府と今後十分折衝して、そして十分なる条件を取りつけた上に移民を送っていただきたい。向う政府は今までも初めにはいろいろいいことを申しまするが、結局それを履行しない、それがために移民が失敗したような例が多いのでありまして、今回この会社ができたことは、政府にかわって向う政府と十分折衝して、少しでもよい条件をとってもらいたい。その条件が悪い場合にもしいて移民を送るということには私は反対であります。あまり安売りをしてもらいたくない。数ばかりむやみに出しても、それが悲惨な目にあうということになれば、これは棄民でありまして、私は今日の日本としてとるべき政策ではないと思う。十分私は会社を通して有利にして安全なる条件を取りつけ、その上にその移民が成り立つかどうかということに確信を持った上で移民を送る、数ばかりむやみにふやすという政策よりも、もっと安全確実な方法をとっていただきたいと思いますがいかがでございますか。
  119. 重光葵

    ○重光国務大臣 私からお答えをいたします。移民が成功するためには、良好な受入れ体制を作ることが一番大切であることは申すまでもございません。そこで移民協定を作って、各国との間にいろいろ移民条件を取りつける場合においても、最もそういう点に注意をしなければならぬわけであります。政府政府との交渉によりましては、お話通りにときどき不便なこともございます。今回移民会社ができます上は、この会社を通じていろいろな政府として手の届かぬところに、かゆいところに手の届くようにして、いろいろのことを相手国とも折衝せしめて参るということは、非常に効果的であろうと考えますので、御意見のあるところも十分にこれを体してやりたいと考えております。
  120. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 現在入植しておる移民に対して、この会社を通して金融面、技術面、組織面において、いろいろな保護指導を行わなくちゃならぬと思うのでありますが、このいろいろな指導を行うにつきましては、私はその前にぜひ受け入れ国の完全なる了解と同意を取りつけた上にやっていただきたい。さらにこれをやる上におきまして、今度の会社の持っておるわずかな資金では、全面的にはとても及びません。そこでやはりその入植地のうち、将来援助をすれば成功をするというような、少ししりを押せば上ることができるというようなところを選び、重点的に、私はこういうような援助を与えてもらいたいと思うのですが政府の所見はいかがでございますか、
  121. 重光葵

    ○重光国務大臣 その通り考えております。そうやっていきたいと思います。
  122. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 従来の移民募集の宣伝というものが、どうも現地実情と必ずしも一致しない。非常に極楽のような説明をしたので行ってみると地獄のようなものであったという、そういう不平が相当あるように見受けられます。私は今度の会社ができたのをきっかけにいたしまして、やはり日本国の移民の志望者に、ほんとうの向う実情を誇張なく伝えてやっていただきたい。従来の移民募集の宣伝は、主として海外協会連合会を通してやったと思いますが、将来この募集及び宣伝というものは、どういう方法でやる御方針でありますか、御答弁を承わりたい。
  123. 園田直

    園田政府委員 仰せの通りでございまして、将来とも募集選考その他は関係各省、すなわち農林労働通産協議をして、海外連合協会にその方針を示してやるつもりでありますが、その方針を示す際には、十分御注意の点を留意をいたしまして、向う条件等はしさいに実情を述べて、向うに渡られてからの決意と自覚を求めながら募集をしたいと考えております。
  124. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 今度の会社事業目的のうちに、プランテーション用の土地購入資金を貸与するとあります。これは大きな土地を購入して日本から行く移民に分譲して企業移民を送るという趣旨だろうと思うのでありますが、かつて私が移民課長をやっておる時代に、海外協会連合会というものがありまして、日本政府から三百万円かの資金をとりましてバストス、テイテに非常にまとまった土地を購入して、いわゆる企業移民を送ったのでありますが、これは私は当時としてもあまり賛成をしなかったのであります。一たんコロノとしてブラジルのいわゆるファゼンタに働いて向うの国に奉仕した上に、そうしてそのコロノを卒業した連中の独立を援助するために分譲するならいいが、何らブラジルの事情も知らず、ブラジルに働いたことのない者をいきなり向うに持っていく、しかも集団的に日本村を作るというようなことになるのは、ブラジルとしては非常にきらうところでありまして、その後日本移民に対する門戸が次第々々に狭まった原因の一つは、そこにあるのじゃないかと私は思うのであります。従ってもしそういうことをおやりになるならば、そういうような受け入れ国の誤解を引き起さないような地方、受け入れ国も喜んでそれに協力するような土地じゃないといけないと私は思っておるのでありますが、現在政府はどこにそういうような土地を買って企業移民を入れるような余地があると考えておられるか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  125. 園田直

    園田政府委員 御指摘の通りで、集団土地を購入することが、日本人が組織的に勢力を浸透することであるとして、移民を妨害することは重大なことでございます。従いまして、この会社業務内容たる土地購入資金は、今御指摘の通り、雇用農民が独立する際にこれを援助することを原則としておりまして、たとえば相手国がこれを了解するとか、あるいは相手国の要求等によって、集団した土地を買って独立農民に委譲することが都合のよい場合に、集団して土地を買い入れる、これはきわめて一部にあることを予想しておるわけでございます。
  126. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 さらにこの会社事業の中にはプラントとともに移民を送るということであります。私の知る限り、南米の現地人は生活力が非常に弱い。従って日本人が行けば必ず何をやっても成功する、向う事情に少し熟してくればわけなく成功する、こう思うのであります。しかしながら、それに図に乗って何でもかんでもプラント輸出で向うで仕事を始め、そうして現に向うにある同種のものと競争する、そうして向うの国民の間に反感をかもすということになっては、これは排日の最大の原因になると私は思うのであります。サンパウロに紡績工場がない場合に、日本の紡績工場を持って行って移民を送る、あるいは養蚕移民声を送る、あるいはアルゼンチンに水産業がないから水産移民を送るというようなことなら、それは向うで歓迎をするからよろしい。しかしながら、そこでもうかるというのでむやみにいろいろなことまでやって、向うの現存するものをつぶしてしまうというようなことになっては、これは今度は全面的に締め出しを食うおそれがあると思うのであります。そこで私はお尋ねするのでありますが、このプラント輸出事業を興すという場合に、どこで大体どういうような事業を、向うの誤解なくして興し得るかという問題であります。これはどういうような調査の結果になっておりますか、その点をお伺いしたいと思います。
  127. 園田直

    園田政府委員 御指摘の通りでございまして、相手国と競争を起したり、あるいは同業者の反感を買ったりするようなことは十分慎しまなければならぬが、相手国から、たとえばパラグァイから砂糖や紙の技術工業を受け入れたいというような要望があってやる場合、あるいはそういう刺激を与えないために合弁会社現地在外邦人との共同事業などをやれば、そういう御指摘のような点を避けつつ移民が推進できると考えております。
  128. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 これは非常にむずかしい点でありまして、下手にやると全面的失敗になる、うまく行き過ぎると排日が起る、そこに私は本会社運営の最も困難な点があると思うのであります。私は本会社が外国で働く前に、十分その国の政府の承認を得、かつ支持と協力を得て、こそこそ隠れてやらずに、初めからよくこの会社の性質を了解させて、そして向うの注文も聞いて、その上に仕事を始められる、こういうようなことにしていただきたいのであります。アメリカの勢力のないアルゼンチンのようなところは別といたしまして、大体中南米においてはアメリカの勢力が強いのです。そういう意味から申しますと、アメリカから借款をしてやるということは必ずしも悪いことじゃない。従って十分向う政府当局の承認と同意を得た上に公然と私はやっていただきたい、こういう希望を持っておりますが、どういうふうにお考えでありますか。
  129. 園田直

    園田政府委員 政府におきましても御指摘の通りやりたいと考えております。
  130. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この事業考えようによっては非常にむずかしい、かつデリケートな問題であります。軽率にやると必ず失敗をして、せっかくの一千五百万ドルの資金がむだになってしまう。またあまり金もうけ主義に堕すると今申しましたように排日が起る。そこで当初は資金も少いのでありますから、なるべく間口を狭めて、そういう排日なんかの起らないような、最も有望確実なる地方と事業を重点的に選び、経験を積むに従って漸次これを拡大するという堅実なる方法に出てもらいたいと私は思いますが、この点はいかがでありましょう。
  131. 園田直

    園田政府委員 御指摘の通りでございますから、内閣総理大臣は審議会に諮問いたしまして十分慎重に検討をし、所管外務省におきましては、いろいろな情報等を集めて御指摘の通りにやりたいと考えております。
  132. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この会社がうまくいくかいかぬかということは、結局幹部の人選いかんにかかっている。従って現地人の感情もよくわかり、また事業そのものの運営にも相当経験のある人でないと、私はとうていこれを成功させることはできないと思います。社員にいたしましても、古手の役人や古手の会社員、あまり成績のよくない第二流の人間なんかをむやみに情実や運動でかき集めて作ったのではろくな活動はできない、結局そういうものに食われてしまう。ことに初代の社長というものは、会社の進むべき方向、基礎を作る人であります。従って初代の社長の人選はよほど注意をしてやらないと、この会社はうまくいかぬと思いますが、政府においてはその社長の人選等について、もう腹案があるでありましょうか、適当な候補者があるのでございましょうか。これは非常にむずかしい問題でありまして、われわれも大いにいい人があったら推薦しょうと思っておりますが、まだ見つかりません。外務大臣においては、名は言われなくてもいいが、この難事業の最初の基礎を固める大事な人選について、相当御考慮になっておるのでありますか。自信を持っていい社長を持ってこられることができるでありましようか。またこの幹部社員の人選等についても、私はよほどしっかりしておられぬと、今申しましたような第二流、三流のくずものが集まって会社を食いものにしてしまうと思う。従って一定の基準を立てられる必要があると思うのでありますか、こういう点に考慮をめぐらされたことがあるでありましょうか、お尋ねいたします。
  133. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は目下非常に苦心をしている点でございます。相当たくさんの人数がこの問題について推薦され、また政府としても各方面から考慮しているのでございます。しかしさような人々のうちから、もしくはそのほかの人のうちからでも、最も適任者を選ばなければなりません。特に社長の重要でございますことは、今お話を伺うまでもないことでございます。そこでこれには単にいわば古手の官吏とかなんとかいうことでなくして、この事業を経営し得るりっぱな人物を広く探してみたい、こう思って心当りは二、三ないこともございませんが、これもよほど一つ選考をした上でやりたいと考えております。なおこれはと思うりっぱな方でもありますならば、一つお示しを願いたいと思います。
  134. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 一万田蔵相は今のところこれ以上借款をするつもりはないと言っておられました。しかしながらこの重大な中南米に対する移民事業を推進する上におきまして、千五百万ドルぐらいのものでは、はなはだ軽少なものであります。しかしこれはある意味においてほんの試験的のものであります。これでうまへいけば、さらにアメリカの方でも進んで投資をするようになるだろうと思う。従って今度の試験的の一千五百万ドルをうまく運営をして、これをりっぱにコマーシャル・ベースにおいても成り立つぐらいのところまで、持っていかなければならぬと思う。そうしてもっと大きなものにし、さらにこの仕事はただ単に中南米のみならず東南アジアにもアフリカにも、世界中に広げるべきものであると思うのであります。従ってこの会社事業を始めるには、よほど綿密な調査により、計画に基いて万全を期してやっていただきたいと思う。そこで私はすみやかに社長や幹部の数人ぐらいを選ばれた上、この本法律案が通った上においては、権威ある調査団を、小人数でいいが、現地に派遣してそうして現実的な事業計画というものを立てられる必要があると思うのであります。これについてどういうお考えを持っておられますか。
  135. 重光葵

    ○重光国務大臣 実はそういう計画をすでに計画として進めつつあるような状況でございます。千五百ドルの金はお話通りに多い金ではございますまい。しかしながら初めの事業に着手する金として、必ずしも少な過ぎるというわけでもないかと私は思います。これを最も有効に適切に利用するということに、将来のこの事業の発展がすべてかかっておるように考えますので、今非常に適切に御指摘になったような指導方針をもって、これはぜひとも所期の成果をおさめたい、こう考えておる次第であります。
  136. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤直吉君。
  137. 北澤直吉

    ○北澤委員 この海外移住振興株式会社につきましては、この外務委員会において私はたびたびいろいろな問題について質問したのでありますが、きょうはその締めくくりとしまして残った問題について質問したいと思います。  この移民問題が日本の人口問題解決の一助であることは申すまでもないのでありまして、それにつきましては前会の外務委員会においても外務大臣から政府のお考えを伺ったのでありますが、イタリアなどの例を申しますと、イタリアでは大体年々人口が四十万ふえる。そのうち十五万は海外移民に出ておるというふうなわけでありまして、政府が相当積極的に移民政策をやっておりますために、四十万の増加人口の中で十五万が海外に出るということで、イタリアの人口問題につきましては、相当大きな寄与を政府がやっておるわけであります。ところがそれに一比べましてわが日本の場合は、年々百一万以上の人口増加があるにもかかわず、従来の移民の実績を申しますと、一せいぜい月に三千名か四千名という程度で、移民政策が重要であるにかかわらず、その実績があまりに少いというわけでありまして、どうぞ政府におかれましても今後は、もちろんイタリアのようなぐあいには参らぬと思いますけれども、せめてもっともっと多数の移民を海外に送って、そうしてより以上に日本の人口問題の緩和に寄与するようにした方がよろしいと思うのでありますが、この点について重ねて外務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  138. 重光葵

    ○重光国務大臣 日本の人口問題を、移民問題によりまして直接に解決するということは、私は日本の場合としてなかなか困難だと思います。思いますけれども、人口問題を間接に解決する措置としては、この移民政策は最も有効適切なものだと私はこう考えております。従いまして、これは日本の国の構成から見て基礎的の事業でなければならぬと思います。これに対して実は、これは自己反省になるわけでありますが、今日まであまり重大な関心が払われていなかったようにも見える、また関心が払われておっても、これに十分に着手されておらなかったという事実は、これは私は非常に遺憾なことである、こう考えます。従いまして、今回この移民政策に手をつけることに実際はなるわけでございますが、これは出発はきわめて規模の小さいものと言わなければなりません。しかしながらこれには十分一つ、この問題を取り上げまして、この政策の出発に当ってあやまちのないことを期しまして、将来の道を大きく開くようにしむけたい、こう考えておる次第であります。
  139. 北澤直吉

    ○北澤委員 昨年吉田前首相が渡米の際に、米国の民間三銀行から五年間に千五百万ドルの借款を受けるという大体の話をして参ったわけであります。この日本移民に対する資金の融通を目的としまして、アメリカ銀行が千五百万ドルの借款を与えることに同意しましたことは、米国政府において日本の人口問題緩和のために、積極的に日本の中南米移民政策を援助する、こういうふうな考えがあってそういうものができたのでありますか、それともそういう政府の政策はないけれども、ただ民間銀行日本側の間にそういう話があったのでありますか、米国政府がこれに対してどういう考えを持っておるか、これは一つ基本的な問題でありますので、伺いたいと思います。
  140. 重光葵

    ○重光国務大臣 御承知の通りに戦争後日本がなぜ戦争に入ったか、また日本をめぐって、どうして戦争が起ったかという問題については、もう世界をあげて非常な研究題目になったことは御存じの通りであります。その最も重要なる基礎的の原因として日本の人口問題を取り上げておる。特に米国政府においては政府といわず、民間といわず、日本の人口問題がいわば世界平和の禍根となりはしないかというような心配すら持って非常に研究をいたしました。それで日本を論ずるものは日本の人口問題の解決ということを常にともに論じておったわけで、アメリカの中においては政府といわず、民間といわず、この問題については非常に関心を持って、この問題に少しでも逃げ道を与えなければ、アメリカとしてもこれは将来非常に厄介なことになるというような考え方が非常にあったことは事実でございます。さようなわけでございまして、特に政府からこの問題に対するこれはという話し合い交渉というものは、今関係当局に聞いてみましても、それはあったわけではないのでございます。しかしそういうような空気が政府といわず、民間といわず、底に非常にありましたことが、この借款供与の基礎になっておる、私はこう承知をいたしております。それが元になって寄り寄り話し合いが——むろん米国の内部では政府もこの話し合いにあずかっておるに違いはないと想像はできるのでございます。さようなわけで借款ができることになったのでございます。
  141. 北澤直吉

    ○北澤委員 戦争前におきましては日本の南米移民については、米国政府方面におきましても、必ずしも賛成ではないという気持があったのでありますが、最近の状況におきましては、今回の借款について直接に政府関係したかどうか知りませんが、米国の朝野におきまして、日本の中南米移民というものを、側面的に援助しようという好意的態度になって参りましたことは、これは中南米移民の将来にとって、非常に大きな光明であると思うのであります。従いまして、そういうふうな米国内の空気でありますならば、もし将来この会社が千五百万ドル以上に外貨資金を必要とするというふうな場合におきましては、もし会社の経営が相当良好であり、また米国のそういうふうな日本移民に対する好意的の態度考えまして、もし日本が必要とするならば、この借款を増額するということも可能であろうと思うのであります。先ほどの政府の答弁では、今のところそれは考えておらぬということでありますが、私どもはやはり先ほど大橋委員から質問されましたように、日本が中南米あるいはその他の地域に対する日本移民を積極的にやるというならば、これは結局金の問題であります。一昨日でしたか、上塚司氏を参考人として呼んで聞いたのでありますが、結局移民が成功するかしないかは金の問題であるという点、私どもも同感であります。そういう点から申しますと、やはりこの会社が将来発展して、日本移民政策を、この会社を通じて積極的に進めようというならば、やはり資金の面において相当余裕がなければならないと思うのであります。そこで問題は、そういうようにこの会社が将来発展するにつきましても、問題は将来この会社の経営がうまくいくかどうかということであります。もしそうでなければ、アメリカの民間銀行でありましても、もとより商業べースでありますので、金を貸してくれないのであります。そこで問題はこの間も私はこの委員会で聞いたのでありますが、この会社業務の中に渡航費を貸し付けるということがある。政府の答弁によりますと、渡航費の元利の徴収は困難である。従って渡航費から当然損失というものが予想せられる。従ってもし政府がこの渡航費の未回収による損失を補償しなければ、この会社はその面で倒れてしまうというわけでありまして、渡航費の未回収による損失については政府がこれを補償するということがなければ、この会社に対する民間の資金も集まらなければ、社債も消化できない。アメリカの三銀行借款もできないということでありますので、渡航費の未回収による損失については、補償する必要はないかということを質問いたしましたところ、政府の方でもそれを考えておるという御答弁でありました。今日政府の方から配付されました日本海外移住振興株式会社法第九条第二項に基く政令要綱案というものによりますと、これは大蔵省外務省意見が一致した結果できたわけでありますが、今度はこれによって先ほど申しましたような損失を、政府がカバーしてやる道を開いておるわけであります。私どもは大体これでよろしいと思うのでありますが、今日は外務省大蔵省政府委員が見えておりますから、ただいまからこういう点について疑問のないようにしていきたいと思います。  最初政府におきましては、この会社政府から渡航費を借り受けてこれを移民に貸し付ける、その利ざやを取って、それによってある場合には損害を補てんしようというふうな考えもあったようでありますが、この政府の配付した要綱案によりますと、政府から会社に貸し付ける渡航費の利率は年三分六厘五毛、こうなっておりますが、しからば会社から移民に貸し出す場合の利率はどうなるか、もし利ざやを会社に与えるというならば、相当高い利息で移民に貸すわけでありますが、一体その点はどうなるのでありますか。
  142. 石井喬

    石井説明員 私からその点お答え申し上げます。政府から会社に貸します利率は三分六厘五毛ということになっておりますが、会社から移民に貸します率につきましては、これは大蔵省とのお話し合いにおきまして、会社ができ上りました上で、さらにわれわれと協議してきめるということになっております。従いまして確定した率はまだきまっておりませんが、そこに多少の利ざやと申しますか、差を見まして、これは渡航費貸付金回収の事務費に充てる。決してそれによって渡航費損害をカバーするものではなくて、渡航費貸付回収の事務費に充てるということにいたしてございます。しかし将来この仕事をやってみまして、なおかつそれでも赤字が出るというような場合が参りますれば、そのときは一つ大蔵省と相談しようということになっております。
  143. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと、この会社は利ざやによって損失を補てんしないということになりますと、結局そういう先ほども申しましたような損失のあった場合におきましては、この要綱案の第四条に掲げてありますところの方法によってやると思うのであります。これによりますと「渡航費貸付を受けた移民が、死亡、天災その他やむを得ない事由により、当該渡航費の償還が困難となった場合には、外務大臣大蔵大臣と協議して定める基準に基き、第二に掲げる貸付期間を更に延長することができる」、従ってこの渡航費の回収を延ばしてやる、こういう一時的な便法をとっておるわけであります。しかしながら延長してもなおかつ渡航費の回収ができないという場合におきましては、この要綱案の備考によりますと「次の通常国会に提出を予定されている債権管理法によって処理するものとする。」こういうふうになっておるわけであります。従って第一段階といたしましては期限を延長する、期限を延長してもさらに、回収ができないという場合には、債権管理法というふうなものによって損失を補てんするということになっておるのであります。これはぜひ大蔵省責任者からお答えを願いたいのでありますが、この渡航費の未回収のために損失が出た場合におきましては、まずもって期限を延長し、さらにそれによってもなおかつ未回収の場合におきましては、債権管理法によってこの債権の放棄とかそういうことをお考えになっておるわけでありますか、その点を一つこの際はっきり伺っておきたいと思います。
  144. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えを申し上げます。この外務、大蔵両省了解に基きまして、まず渡航費につきましては、従来よりも相当条件を有利にいたしておることは、ただいま御指摘の通りでございます。貸付の返済につきまして第四の2に書いてあります通りに、このやむを得ない事由に基きまする返済困難な場合におきましては、まずもって外務大臣大蔵大臣が御協議いたしまして、その基準に従いまして貸付期間を延長する。これは従来よりも原則が相当すでに延長になっておりますが、これをさらに延長するということをはっきりうたっておるわけでございます。なお当委員会におきましてたびたび御議論の出ました渡航費が、結局回収不能という場合の措置につきましては、ただいま北澤委員御指摘の通り、この了解の備考にございます通り、債権管理法をただいま立案いたしておるのでございますが、この各種の債権につきまして、それぞれ縦横のバランスを考えまして、一応共通の事由に基くようなものは共通の処理をいたしたいとの考え方をもちまして、この債権管理法におきまして統一的な規定を設けたいと考えておる次第であります。
  145. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの大蔵省政府委員の御説明によりまして、大体了解したわけでありますが、先ほど来いろいろお話がありましたように、この移民事業というものはなかなか困難であるばかりでなく、この移民資金を融通しまするこの海外移住会社も、とにかく外国において仕事をするのでありまして、なかなか困難と思うのであります。従いましてこの渡航費貸付というような仕事をしないでも、この会社が健全な経営をやっていって、そうして外国の借款を受けたりあるいは日本の国内の民間から社債を募集したりということは、なかなかむずかしいと思うのでありますが、しからばこの渡航費の未回収による損失から会社の経営がまずくなるというふうなことは、絶対に避けなければならないと私は思うのであります。この移民政策というものはどうしても国策でありますので、そういう面からこの会社の経営が不良になるということは、絶対に避けたいと思いますので、この会社渡航費貸付の未回収による損失につきましては、一つ政府が必ずこれを適当の方法によって補償するという原則を確立されて、この会社の今後の運営に支障のないようにいたしたい、これを要望いたしまして私の質問を終ります。
  146. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 先ほど来しきりに渡航費の償還が不能であるために、会社が赤字を出すがごときことのある場合はこれを補てんする、そのことについてしばしば質問がありました。これは一応もっともなことではあるが、一体会社の全収支の関係において赤字が出たからというのではなくて、渡航費の回収不可能な分は必ず政府が補てんするという御方針でありますか、その点明確に御答弁願います。
  147. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 大蔵省の方から一応考え方を申し上げたいと思いますが、午前中に大蔵大臣が当委員会に出席いたしましてお答えを申し上げました通りに、この会社につきましては、全体といたしましてはべらぼうなもうけを期待するわけではございませんが、しかしながら移住をされる方々の御繁栄という観点からいたしましても、この会社が全体として赤字を出すようなことのないことを、私どもととしては御期待を申し上げておる次第でございます。この点はたびたび大蔵大臣からもお答えをいたしました通りでございます。しかしながら何と申しましても、この渡航費が従来も非常に回収が困難でございましたことは、松岡委員も御承知の通りでありまして、外務御当局からも数字的な御説明があったわけであります。そこでこの渡航費貸付につきましては、将来は従来よりも相当有利な条件でまず貸付をいたしまして、今後の事績を見て参るわけでありますが、どうしても回収ができない、そのためにこの関係会社に赤字が生ずるような場合につきましては、ただいまるる申し上げましたような外務、大蔵両省間の了解事項によって処理をいたすわけでございますが、なおそれによって処理できない分は、債権管理法——これはどうしても国会の御議決を願わなければなりませんので、あらためて債権管理法という法律を出します際に、渡航費の問題も一括いたしまして国会の方でおきめ願いたい、こういう考えを持っておるわけであります。従いましてただいまの御質問に対しましては、私どもは移住振興会社は、全体としては決して赤字を出すようなことのないように運営をしていただくことを御期待をしておりますが、渡航費については、各委員からもたびたび御質問のありますような疑問がございますから、これは今後の推移に対処できます方途は講じておきたい。しかしながらそれは、この法律をもって個々に対策を規定していただくのではなくて、債権管理法という国の債権全般についての統一的な規定をする際に、これを含めて規定をしていきたい、こういう考えを持っておるのでございます。
  148. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 非常に親切な長々とした御答弁ですが、私は簡潔に質問しているので簡潔にお答え願いたい。まだ私の要求にはぴったり来ないのです。大蔵大臣の答弁はよく聞いて了承しております。もとより私も移住振興株式会社採算に乗るものであることを希望しておることについては、大蔵大臣と同様の意見を持っております。いたずらに補助をする、補助をするというので、安易な気持で移民をすることは、必ずしも移民事業の成功するゆえんではないと私は考えております。従いまして決して移民する人に不親切なことを言うのではないが、そういう点も勘案して、かつまた国策ではあるが、国が国策的に作るところの株式会社が、渡航費の点で赤字が出たからといって、その点では国から援助を受ける、あとの利益はどんな工合に処分しようと、外務大臣が監督しているのだからそれでよろしい、そんな筋のものではないと思うのであります。であるから私は尋ねている。渡航費について、それを早くいえば独立の項目といたしまして、渡航費でどれだけ赤字が出たのでこれを補てんするというのならば、大蔵大臣が希望しわれわれが希望するように、会社採算のとれぬようなことのあり得べきはずは私は絶対ないと信ずるのであります。渡航費が回収不能になるであろうからというので幾分の懸念を持つのであって、移住振興株式会社それ自体の海外における事業がむやみに赤字を出すようなことをされては困るのであります。そういうことがあっては困るのであります。だから全体としての収支計算の結果出た赤字を補てんするのであるか——渡航費が回収できないというので、これを条件にそれを補てんするというのならば、この案によれば政府以外の民間出資に、六分の配当ができるところまで行かなければ、政府の出資は無配であるということが規定してある。しかも渡航費の赤字はどんどん政府の補助によって埋めていく。会社が利益が上ったときには何ら配当についての制限が考慮されていないというようなことは、少くともこれは採算本位に考えた株式組織としては少しうかつな点があると考えるから質問しているのである。だからもう一回聞きたいことは、渡航費のみの関係において赤字が出るならば、これを大蔵省は穴埋めするのであるかどうか、この点を明確にしてもらいたい。
  149. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私の言葉が足りませんで、その点につきまして、御指摘のような疑問を残しましたことをおわび申し上げます。私どもの考えは、渡航費だけで赤字が出るという考え方を持っているのではございませんで、会社の全体の採算を見て参らなければならぬことはもちろんでございます。なおまた政府は、いわゆる無配制度になっておりまして民間に優先配当をいたすわけでございますが、この配当につきましても、移住会社の性格にかんがみまして、むやみに高率な配当を認むべきでないということも御指摘の通りでございます。これらの点はもちろん今後の会社の業績を見ました上で、それぞれ処理をいたして参るのでございますが、先ほどお答え申し上げたのは、渡航費の赤字を補てんするという考え方ではもちろんございませんので、個々に移住された方に対して渡航費を貸し付けた、それがいろいろな事情で回収できない、まず期間の延期をして、それでもなお回収できない、その場合に、どうしてもこれを回収しなければならぬということにしてしまうのか、それともほんとうに困って、どうしても回収の見込みのないものは、これはちょうど国税につきましても、滞納処分をいたしまして、どうしても取れないものは最後に免除するという規定がございますから、そういう規定を設けるかという技術的な問題につきましては、これは債権管理でこれを救済する規定を設けたい、こういう趣旨で申し上げているわけでございまして、決して渡航費で赤字が出た分を国がどんどん補てんするという意味ではありません。
  150. 植原悦二郎

  151. 穗積七郎

    穗積委員 午前中に引き続いてお尋ねしたいのだが、きょうここで資料として提出された農林省との間のこの会社運営に関する打ち合せ了解事項についての話し合いは、その後完了いたしましたかどうか。完了したならばどういうふうに完了したか。
  152. 園田直

    園田政府委員 農林省外務省との申し合せに関する事項は、その後休憩に入りましてから、直ちに当該官庁同士の話し合いを進めておりますが、ただいまのところ両方から案が示された程度でまだ一致するに至りません。
  153. 穗積七郎

    穗積委員 きょう私どもの他の委員からも質問があって、それに対してあなたはお答えになっておりますが、これは実はこまかいことのようで、いわば行政官庁間の事務的な打ち合せ了解事項のように見えますが、本会社運営に当っては相当重要な意味も含んでおるわけです。その妥結を見た上で本案に対する審議を完了したいということにあなたも賛成されましたが、大体いつまでにそういう方針に従ってあなたの方からその妥結についての報告をいただける見込みか、その点をもう一ぺん明らかにしておいていただきたい。
  154. 園田直

    園田政府委員 今農林省の方から政務次官が来られまして、農林省の案を出されて今話し合いをしているところでございまして、もうすぐ短かい時間のうちに両方の話し合いができるものと考えております。暫時御猶予を願いたいと思います。
  155. 穗積七郎

    穗積委員 それではきょう本法案の質疑中に出れば報告をいただくし、もしそれができなければ次の機会に御説明をいただいてから、本法案に対する採決をしていただきたいと思いますからさよう御了承下さい。  それから農林省の政務次官にお尋ねいたします。午前中にもちょっとお尋ねをしたのですが、私ども議員または委員会といたしましては、行政官庁間の意見統一について介入する意思は毛頭持っておりません。しかしこの移民会社法案審議に当って、こういう問題が両省の間で討議されて、しかも通産省労働省との間にはすでに外務省として了解をとっておられるようですが、農林省はこれに対して了承することができないというので、いまだに折衝を続けておられるようです。その出ておる案を見ると、外務省労働通産両省との間に了解を求められた点とは違った内容を持っておりますが、これは悪くいえば役所のセクショナリズム、善意に解釈すれば今まで移民行政に対しまして外務省が非常に上の方だけで考えておって、足を地につけた責任のある行政事務をやっていなかったという不満がここに現われてきているとわれわれは思うのです。そこで今度こういう法案を作って会社の比重を相当重くして、同時に監督官庁は大体原則的に外務省一本にしぼっていくということで、整備統一のやさきですが、そこで農林省としての今までの経験から見て、この点を強くあくまで主張される理由は、今申しました外務省の今までの移民行政に対する手抜かりというか不親切というか、そういうものに対して安心ができないからここへまかしておくわけにいかぬという趣旨だろうと思うのです。事業計画のみならず資金計画貸付条件等についても、はっきりわれわれの方へ相談してもらわぬことには困るという意味だろうと思うのですが、そういう意味に解釈してよろしゅうございますか。農林省がこういうことを強く要望される意味を、役所のセクショナリズムとして批評されていいのか、そうではなくて正当な理由は一体どこにあるのか、この際今までの経験なり部内における御意見を開陳しておいていただきたいと思います。
  156. 吉川久衛

    ○吉川政府委員 御賢察まことに恐縮に存じます。先日も農林水産委員会との連合審査のときにも、この問題について相当御熱心に御質疑がございまして、私もその節お答えを申し上げたような次第でございますが、農林省といたしましてはセクト主義の上に立っているがごとく思われることははなはだ残念でございます。過去の満州移民はいろいろの点において問題があったと思いますけれども、中南米の移民については、私も昨年二ヵ月余り調査をいたして参りましたが、過去の中南米に対する移民というものは、移民というよりも棄民であった感が私には深く感ぜられたのであります。送り出した者に対しての営農指導とか、受け入れ体制とかいろいろの点においてずいぶん問題がございますし、また今後の中南米の移民等についても、過去の移民の場合と違って、技術的ないろいろの問題が出てくるような感じを受けて参りました私としては、農林水産委員会の方々と不思議にも同じような結論に達しまして、外務省の方々に私どもがいろいろの農業関係する専門の問題を御要求申し上げることは、非常に御無理であろうということさえ考えておりますので、せめて十分に御協力できるような体制にしていただくことの方が、わが国の移民政策を推進する上に効果があるのではなかろうか、かように考えまして事務次官にあるいは山本参事官に外務当局と折衝をしていただいていたのでございます。その結果両省事務次官了解事項というものが両方から提示されたのでございますが、若干まだそこに話し合いの妥結を見ない点がございますが、私の方の大臣は両政務次官でこのくらいのことがきめられないようではいけないではないかというおしかりがございましたので、園田政務次官とこれから話し合いをいたしまして何とか結論を得たいと考えております。
  157. 穗積七郎

    穗積委員 外務次官にお尋ねいたしますが、外務省が今度移民行政に対して、一元的にこれを統轄するということができたことは私はいいことだと思うのです。一つのところでやるということは統一して責任を持つことで、分割されておりますと、すべてが責任を持っておるようですべてが責任を持たぬという格好になって、しりを持ち込んだときに、あっちでもこっちでも責任を持つような持たぬような結果になって、結局移民として捨て子をされるということになりますから、そういう意味ではいいと思います。ところがそれにもかかわらずそういうことであるならば、今までとは違って、一つはっきり今までのやり方に反省をし、誠心誠意手抜かりのないようにやる方針を立てられて、それを各省の間に納得してもらうということでなくてはならぬはずなのです。その心配がなくなればこういう問題はなくなると思う。ところが今問題になっておるのは、農林省だけが文句を言って、あと通産労働省は文句を言っておらぬということですが、外務省が真に今までのやり方を反省されて、責任をもって統一してやられるということであるならば、農林省もこの問題は了解すると思う。逆にいえば、いかに農林省了解されたとしても、外務省のやり方が悪ければ、通産労働両省了解されましても、これは誤った了解であって、今まで移民の問題についてタッチした経験がないから、外務省の善意を理解するが、今までの手抜かりは知らないからついうっかりと承知をしたが、あとになって今の農林省の方々と同じような恨みをお持ちになる結果にもなるので、そこを一方には了解を得たが、一方には了解を得ないというような形で、いわばやみ取引みたいなことをやられるということは、私はあんまりいいことじゃないと思うのです。一方に対して共同責任を持ってやっていくという原則を認められるならば、他の省に対しても、むしろ同様に取り扱わるべきことは、これは表向きの筋道だと思うのです。それらの問題についてあなたは一体どういうふうにお考えになっておられるのか。文句がないところは黙って通る、文句のあるところだけは何とか妥協して通ろうという御所見でございますか。そういうおつもりなら、幾らわれわれがここで心を入れかえてやりますというような話を聞いたところが、そういう精神や態度では、私はこれからの移民行政に対しても、真に誠心誠意をもって当るというその誠実さを信ずるわけにはいかない。文句のないところは黙って通る、いわば陳情のないところには補助金はやらぬが、陳情のあるところには補助金をやるというような政治のやり方と同じようなやり方をやっていくことでは、その熱意のほどはおよそ知れていますから、そういうことでは外務省の今までの言を信ずるわけにはいかなくなる。そこで今農林政務次官が私の言葉を御賢察といって外務省に批判を向けられた。その私の批判が農林省の批判でもあると思う。そういう批判を受け取って一体どういうふうにお考えになっておるか、その点他の省との関係もありますから、一つもう一ぺん外務省の最後の腹をこの際伺っておきたいと思うのです。
  158. 園田直

    園田政府委員 移民外交を推進するに当りまして、各省の所管事項についての主張は、本法律案作成の過程において相当熱心に論議をされましたが、ただいま御指摘の通りのような理由、すなわち責任の所在を不明確ならしめることはいけないということで、外務省の専管事項となり、ただし関係農林省労働省通産省とは運営面において外務省は十分協議をしていけ、これが政府の統一をした意見の最後の裁定でございまして、その裁定の時期におきましても、自分の所管事務を熱心に遂行せんとする各省におきましては、いろいろ意見がありましたが、いやしくも各省というものは自己の職務の遂行は対立すべきものではなくて、一つの責任ある内閣のもとに政治を推進せんとする有機的な連携ある官庁でございますから、内閣として統一裁定した以上は、各省はこれに基いて法律案並びに移民外交を推進せよという裁定が下ったわけであります。従いましてわれわれは以上の観点から融資や資金計画等につきましては主務官庁と財政官庁の所管であり、事業官庁は事業計画について協議すべきは当然であると考えております。なおその事業計画は決して農林漁業の方が多いからあるいは農林だけ特別な協議であって、他の労働通産はその協議が薄いということではわれわれはいけないと考えております。比率は当面はもちろん農林漁業が重点でございましょうが、将来はこの比重も変ってくると考えなければなりません。従いまして事業計画その他について外務大臣大蔵大臣と協議すべき前提において事業その他の面について協議すべき事項は、当然労働雇用等に関係ある労働省あるいは貿易、産業等に関係のある通産省及び移民の多数である農業を含む農林省同等に協議すべきであると私は考えております。
  159. 穗積七郎

    穗積委員 よくわかりました。そこで当然な結論ですが、念のために申し上げておきます。すなわち農林省だけが強い要求があるから、農林省とだけは通産労働と話し合った了解事項とは違った了解事項を与えるというようなことはないわけですか。そうでなくて、もし農林省要求が正当なものとしてこれを了解されるならば、通産労働に対しても同様な了解事項をお取りつけになるのが当然だと思うのですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  160. 園田直

    園田政府委員 ただいま申し上げました通りに、各省の意見が食い違っておりましても対立的問題はありません。農林省の方々の御意見移民を推進せんとするための御決意から出る御意見であるのでありますから、自分の省と外務省との協議事項だけ強力にして、他の省は強力であってはいけない、同等であってはいやだというような御意見ではないと私は考えます。移民外交を推進するために必要な協議をやれということでございましょうから、それは理論的にいって当然関係ある三省とも同等の比重をもって協議すべきであるとあくまで考えております。
  161. 穗積七郎

    穗積委員 その問題はそれで了解いたしましたから、明日になるか明後日になるかわかりませんが、その報告を承わった上で、われわれの態度を決したいと思っております。  次にお尋ねいたしたいのは、簡単にいたしますが、この法案審議いたしまして——まあ最終的な締めくくりの質問ですが、安易に流れますと、これはただアメリカから金を千五百万ドル貸してくれるのをきっかけにして、日本でも民間からも多少の金を吸い上げ、政府からも出して、すなわち移民融資をやや増額したという結果だけに陥って、その他のことについては何ら前進しないで、もとのもくあみに終る危険があると私は思うのです。それがないということをこの法案の中で証明する客観的な条文はございません。そうなりますと、問題は移民に対する啓蒙、宣伝、募集選考訓練等々をやり、さらに向うへ送り出してからの受け入れ体制、さらにそれがまずくいった場合のあと責任の持ち方、こういう問題について最後に一つはっきりしたお話を聞かなければならない。私が最初に問題にしたのは、海外協会の強化策というものを同時に出すべきではないかということを強く主張したのですが、最後にここでしぼって具体的にお尋ねいたしますが、これができますれば、会社移民に融資する金額はやや増加されます。しかしそれ以上の業務については、まだ事業計画も定款もできておらぬわけですから、はっきりしない。そうなるとあと残る問題は、宣伝、募集選考等の直接移民に接触する業務は、海外協会がやるということだけはわかっております。その海外協会は実は弱体であり、無責任であるという状態です。そこである府県で非常に熱心なすぐれた指導者がおるところは懇切丁寧にやる、そうでないところは金もなければ人もないということで、悪意ではないが、善意にして思うようにいかないという結果になっておりますから、そこで海外協会に対しましては当然会社の資本力を強化するとともに、資金的にも人的にも海外協会の補強策を考えなければならぬ。それは一体どういうふうにやるおつもりであるか。その方向をわれわれは信じていいかどうか、それに対して一つ御答弁をいただきたいと思います。
  162. 園田直

    園田政府委員 御指摘の訓練選考募集、こういう面につきましては、先般外務省設置法の一部改正法律案を御審議願いました際に申し上げました通り、各省においていろいろ相談の結果、政府としては次のような統一的見解をとっております。募集訓練選考、こういう移民をやるまでの段階はおのおの関係各省、すなわち農業移民に対しては農林省、雇用労働者あるいはその他の労働関係に対しては労働省、その他の関係に対しては通産省外務省と同等の権限を持って協議をして海外協会連合会に委託をする、移民船に乗って向うに渡ったあと責任やその他は外務省が負う、こういうことではっきり限界をつけてやっております。従って国内の移民選考募集訓練等につきましては、各関係省協力のもとに海外協会連合会に委託されるはずであります。なお海外協会連合会の検討並びに強化につきましては御指摘の通りでございまして、これは早急の機会に法制化をして、これの強化並びにその他の検討をしたいと考えております。この法制化のおくれております原因は、この会社法案審議が終了をして、この会社法案の性格がきまり、いわゆる渡航費を委託するものだとか、あるいは渡航費は分離をして海外協会連合会にまかせる気持なのか。そういう関係会社法案見通しがつかないうちは法制化ができなかったためにおくれているわけでございます。海外協会連合会のいろいろな問題につきましては、しばしば御指摘を受けておりますので、その点十分留意をして検討をしたいと考えております。
  163. 穗積七郎

    穗積委員 それでは海外協会連合会強化策はこれからの問題ですから、こまかい点について一々また答弁を求めませんが、それに対して強化する場合にまず第一に資金強化が必要だと思います。それはこの移民会社がやるのか、あるいは政府の補助金その他の方法でおやりになるお考えであるか。その本筋のところをちょっと伺っておきたい。
  164. 園田直

    園田政府委員 政府が委託費として補助金を出すことに相なっておりますので、補助金の支出についてはいろいろ御注意をいただいておりますから、十分留意をいたします。
  165. 穗積七郎

    穗積委員 会社はそういう点はしませんね。会社事業計画にはそういうものは出ておりませんね。
  166. 園田直

    園田政府委員 会社はありません。
  167. 穗積七郎

    穗積委員 最後にもう一点お尋ねしたいのは、現地の調査活動が非常に不十分だということです。企業主または向う側の役人の情報をそのまま信じて移民を連れていく、行ってみたら違っておったというようなこともあります。いろいろの条件について、これは今まで審議されたことですから一々こまかく申し上げません。そこで政府としては、外務省がここで責任を持たれるならば、もう少し責任のある調査団をやって、そういうような今までの誤まりなきを期すべきだと思いますが、そういうことについてのお考えを最後に伺って私の質問は打ち切りにいたします。
  168. 園田直

    園田政府委員 御指摘の点につきましては、先ほど大臣からも答弁をいたしましたように、具体的に研究をいたしておりまして、その調査団は近く出発する予定でございます。なお学者その他の海外旅行等に際しましては、これに委託をして調査をする。なお会社としましてはなるべく早く支店等を重要な場所に設置をしてみずから調査をしたいと考えております。
  169. 穗積七郎

    穗積委員 最後に委員長にお尋ねいたしますが、私の欠席中に委員長から御報告があったかもしれませんが、承わるところによりますと、農林水産委員会から本法案に対して修正意見を希望として委員長あてに農林水産委員長から来ておるということであるが、それは事実でございますかどうか。それでもし参っておるとするならば、それをどのようなお取扱いにされるおつもりであるか、委員長の御所見を伺っておきたいと思います。
  170. 植原悦二郎

    植原委員長 実は開会前にさようなお話農林水産委員会の方からありました。それで全部理事の方がおそろいではありませんでしたけれども、いかにすべきやを理事の方の御意見を承わりましたが、それは委員長においてしかるべく取り扱ったがよかろうということでありました。それでこの際農林水産委員会よりの要請を皆様方に御報告申して、そうしてさらに御相談を仰ごう、委員長はその手続をとろうとしておるのであります。  それでは委員各位に申し上げます。先ほど農林水産委員長より本案に対し修正意見の申し入れがありました。その内容は次の通りであります。第二十三条に後段として次のように加える。「この場合において、第十条及び第十二条の認可については、あわせて農林大臣にも協議しなければならない。」以上のような修正意見の申し入れがありました。これを委員会に御報告申して、もしこのことで特殊な御意見があるならば、この際承わりたいと思います。
  171. 穗積七郎

    穗積委員 それでは念のためにお尋ねいたしますが、農林水産委員会は、正式な委員会で採決をしてそういう決議文を委員長名で当委員会委員長に申し入れがあったのでございますか。
  172. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長は、農林水産委員の採決の結果だろうと推測いたします。なぜならばと申せば、農林水産委員長綱島正興君より外務委員長植原悦二郎君あてにしてかような申し入れがありますから、おそらくこれは個々の意見にあらずして委員で一応決議して、そうしてその決議の事項を委員長がかく取扱われたことと当委員長は推測いたします。
  173. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、農林水産委員会としてもそれが最終案であって、当委員会とそういう修正案に対して話し合いをすることを希望するという申し入れではなくて、委員会の正式な決定としてこちらに申し入れがあって、農林水産委員会としての最終決定であると理解してよろしゅうございますか。
  174. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長は最終決定だろうと思うのであります。組織の上の申し入れでありますから。
  175. 穗積七郎

    穗積委員 取扱いについてちょっと……。今までの経過については委員長から推測の御答弁でありました。私もその文書を手に取って拝見いたしませんが、委員長の報告によると、そうあるべきだと私も推測いたします。しかし私の希望としては、当委員会としては、委員長から、念のためにそれらの経過とそれからそれが最終決定であるのかどうかを一つ確かめていただいて、それが本条文の修正でなければいけないというのか、あるいは附帯決議として取り扱っても差しつかえないという意味であるのが、どういう趣旨で一体そういうことを申し入れされておるのか、向う委員会の真意を確かめた上で当委員会にお諮りいただいて、それに対する当委員会態度をお諮りいただくようにお取り計らっていただきたいと思います。
  176. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 これは結局農林省外務省との事務当局の間の了解事項のまだまとまらないところから来ていると思う。そこでこれさえまとまれば私は農林水産委員会において必ずしも修正を固執しないだろうと思う。他の委員会からそういう注文が出てきて、われわれがそれを受け入れるというようなことでははなはだおもしろくないのであります。だから私は外務、農林両当局の妥協を促進いたしまして、早くこれを結論に達せしめた上で、農林水産委員会交渉してそれを引っ込めてもらうという処置をとったらいいと思うのでありますが、この点いかがでしょうか。
  177. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の委員長農林水産委員会からの意見というのは、修正意見というものと理解していいかどうかという点が、国会法上の解釈としてちょっと問題があるような感じがするのであります。この点はあなたの御意見として伺ってよろしいのか。あるいは農林水産委員会の書面上の意見というものは、修正意見として解釈すべきかどうか。この点はっきり委員長の御意見を伺っておきたいと思います。
  178. 植原悦二郎

    植原委員長 修正意見として申し入れて書類の上にあるのであります。それだからしてその点は、穗積七郎君にお答えした通りであります。穗積七郎君は、それでもなおそれが農林水産委員会一致の最終の決議かどうか、念のために確かめてよかろうという御意見でありますから、その御意見も承わっておるわけであります。
  179. 穗積七郎

    穗積委員 私は私の理解においては、農林水産委員会で外務委員会に上程されております法案に対して、修正意見を合法的に出すということはあり得ない。すなわち外務委員会の採決は農林委員会意見に拘束されるべき性質のものではないと私は思う。あくまで外務委員会の自主的な判断に従って採決すべきだと私は思っております。ただせっかくそういう申し入れがあったというなら、それは農林水産委員会との連合審査をした結果の希望意見にすぎない。それを参考にして外務委員会審議をし採決をしてもらいたい、こういう趣旨だとあくまで私は理解いたします。その基本線については私はそういうふうに思いますから、その点は誤解のないように一つ聞きおいていただきたい。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 その点は委員長はさような御発言と了解しております。
  181. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから私もその点を言いたかったのです。この案件が農林水産委員会と外務委員会との併合審査として付託されている案件であるならば、農林水産委員会の修正意見というものを外務委員会とも合議の上においてこれを決定することができる。しかしながら、この案件が外務委員会に付託されている限りにおいて、この外務委員会においてこれを採決すべきものであると解釈すべきものだ。これは国会法上の運営からいって当然そう解釈すべきものだ、私はそう解釈する。ところが先ほどあなたの御意見を聞いていると、何かこの修正意見が外務委員会において当然修正意見として考慮されなければならないかのような解釈を与えるような御意見でありましたので、これでは国会法上の運営において問題がある、そういう意味でその前提としてあなたの御意見をもう一度伺いたかったわけです。ですからこの点を明確にしていただきたいというのが第一点であります。  それから第二の点は、もしあなたの言われたことを私が解釈したようにして、外務委員会にほかの委員会からそういう修正意見が出て、これによって外務委員会審議が拘束されるということになるならば、これは外務委員会委員長初めわれわれ全体があまりにも無能であるということを暴露している。ですからほかの委員会においてわれわれの気のつかない修正意見というものを出されて、それをわれわれがいろいろと議論しなければならないということは、まず第一に委員長自身の無能を暴露することになるのであります。これは十分あなた自身御戒心の上で、あなたの御意見においても十分慎重な御発言があった方がよろしいと私は思いましたので、委員長に御親切な意味で一言私は申し上げたわけです。
  182. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君の御意見、御親切は万般ありがたく拝聴いたしました。委員長としての意見は、一の委員会に対して他の委員会が参考意見を述ぶるくらいならば了承もしましょうけれども、国会の運営上からこの意見ははなはだおもしろからざるものと委員長は解釈しておるのであります。それゆえにかような慣例を委員会同士の間で作ってはならないと委員長は断固とした決意を持っておりますけれども、なるべく委員の方々の御意見も尊重して伺って、その上で慎重に取り扱いたいということで、せっかく穗積委員の御意見もありましたから、これもあえてする必要がないというくらいに委員長思うておりますけれども、一応先方の委員会がかような公式な書類を出したものでありますから、これにおいて儀礼的のあいさつをいたそうと考えておることでありますから、さよう御承知を願いたいのであります。
  183. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの問題でございますが、私どもの考えでは、政府の各省間で話がまとまらない政府の各庁間の権限の争いを、この国会の審議に持ち込まれては非常にわれわれ困ると思うのであります。政府の答弁によりますと、せっかく内閣が中に立って外務省と各省との間の調停をせんとしておる。にもかかわらずそれを国会に持ってきて、国会で政府の各省間の争いを蒸し返すことは、国会の権威から見てどうもおもしろくないと私は思うのであります。  それからもう一つ申し上げたいことは、この海外移住振興会社法案におきまして、外務大臣農林大臣協議すべきことをこの法案の中に規定しようというわけでありますが、この点について私一つ意見を申し上げたいのであります。この会社は先ほども私は外務大臣に御質問しましたように、外国において仕事をするわけでありまして、非常に微妙な関係があるわけであります。しかもこの会社外務大臣のほかに内地の官庁がこれをいろいろ指揮指導するというふうなことが表に出ますことは、日本か中南米を植民地と考えておるような誤解を中南米に与えまして、せっかく好転しつつある中南米移民事業というものに対して、おもしろからざる影響を与えるのではないか、こうした対外的な関係、対外的な考慮からこの会社法案はこのままにして、そうして今申しました外務省と各省とのそういうふうないろいろの協議その他は内密の申し合せといいますか、そういうふうにした方がよろしいと実は思うのであります。私はただいま農林水産委員会から出ております修正意見でありますか、参考意見と思うのでありますが、それにつきましては、できるならばこれは先ほど政府当局から御答弁ありましたように、外務省農林省の間に今せっかく話が進んでおりますから、それを一刻も早く話をつけてもらう、そういうふうなことで内密の間にその話は済まして、この法案の修正を行わない方が、私は対外関係上よろしいという意見を持っておるわけでありますので、ぜひとも農林省外務省に至急にその話をまとめてもらいたい、こういうふうに希望するわけです。
  184. 植原悦二郎

    植原委員長 それはあなたの御希望ですね。
  185. 北澤直吉

    ○北澤委員 希望です。
  186. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長意見をこの際簡単に述べることをお許し下さるならば、理事の諸君が御苦心なすっておまとめになった附帯決議ですべての意味が包容されておると信じております。それ以上あえてつけ加えたり修正する必要もなく、あと運用いかんだと委員長考えております。  これにて本案に関する質疑は終了いたしました。本案については明日討論、採決を行う予定でありますので、さよう御了承を願いたいのであります。     —————————————
  187. 植原悦二郎

    植原委員長 なお、この際理事諸君の全員一致の御意見によりまして、この場合特に国際情勢等に関する件について高津正道君より質疑の通告がありましたので、これを許してくれろということであります。これは特別の取扱いとして、理事諸君一致の御意見をいれまして、高津正道君にこの場合に緊急質問を許します。高津正道君。
  188. 高津正道

    ○高津委員 外相は現内閣の副総理でもありますので、この二つのお資格であなたにお尋ねをしたいと思います。  私思うのですが、外務大臣日本政府または国民の行動の外国に及ぼす影響については閣僚中最も敏感であり、最も詳しく承知していられるはずでありましょう。ただし、特殊の事柄については他の大臣が外相以上にそうであり得ることもある、私はこのように考えております。そこでこのような見地からお尋ねをするものでありますが、小さいようで大きな問題を私はここに発見したのであります。  先週の土曜日、すなわち七月十六日の朝日新聞に、東大の人文地理学の教授飯塚浩二氏が「たまげた検定地図帳、北緯五〇度に境界線」という見出しで指摘されたので、気がついて地図帳をとりあえず私は四種類ほど集めてみたのであります。古今書院の小学生の地図帳、日本書院の社会科初等地図、帝国書院の社会科地図帳、二葉株式会社の小学社会科地図帳、この四種類のいずれも樺太の北緯五十度線のところに国境線をはっきり入れて北樺太と南樺太を分割してあるのであります。二葉株式会社の地図帳は、ソ連のサハリンの島すなわち樺太の五十度線のところに、単に明確な国境線のみならず、五十度線以北はシベリヤと大体同様の色にして、五十度線以南は日本とほぼ同じ赤い色に塗ってあるのであります。帝国書院の地図帳は、五十度線に国境線のしるしをはっきりつけていることは他の三社と同様でありますが、この地図帳には、あたかも学童よ、南樺太の失地を忘れるな、他日回復を期せよとでも言わんばかりに、何となく領土拡張の思想、帝国主義の思想を教え込むように目に映るような配列と説明語句までつけてあるのであります。義務教育諸学校において学童にこのような教科書を持たせておることは、私はソ連官民が知るならば悪感情を抱くに相違ないと思います。このような地図帳が、昨年までにはなくて本年現われて、今月の初めまで続いたあの展示会で展示され、三十一年度から使用されようとしているのであります。外務大臣は地図帳をこのように作ることは、ソ連に悪感情を持たせるとお考えになりますか、それともソ連は何とも思わないだろうと思われますか、私はこれはソ連を非常に刺激する大へんな誤まりをしでかしたもの、このように考えておりますが、外務大臣はどのようにお考えであるか、御所見を伺いたいと思います。
  189. 重光葵

    ○重光国務大臣 ちょっと見せて下さい。——私はこの問題は的確にお答えするのには、やはり十分検討をいたしまして調べた上で申し上げるということにしなければならぬと思います。容易に私の意見をこの問題についてはっきりと申し上げるわけにはいかぬように考えます。しかしながら私の当座の思いつきといたしましては、樺太の南部は今未処理の問題になっておる。ロシヤ領であると日本が認めたものではない。現に日本がロンドンの交渉において、日本領土として返還を要求しておる地区であるのでございます。千島もやはり同様の色のようでございます。これは色は違うのは私は当然じゃないか、こう思うのです。(「日本と同じ色になっている」と呼ぶ者あり)日本と同じ色じゃ困る。日本と同じ色じゃない。(「少し薄いだけだ」と呼ぶ者あり)日本は赤になっております。これは桃色になっております。だからこれは……。     〔発言する者多し〕
  190. 植原悦二郎

    植原委員長 静粛に願います。
  191. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは私の当座の考え方ですから、一つ十分に検討してお答えすると申し上げておるのですが、当座の考えとしては、そうきまっておらないものですから、日本の地図としてはロシヤ領としてこれを今から譲ってしまっておくわけにはむろんいかなかったろうと思います。これは日本国民の感情として当然のことだと思います。しかしここでは日本の色とは違って薄くしてあります。これは当座の思いつきとしては、ちょうどいいかげんのところじゃないかと思います。これが私の感想でございます。
  192. 高津正道

    ○高津委員 私はその御答弁に驚いておるのでありますが、日本国との平和条約第二条(C)項には「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」となっておりまして、明らかに日本は放棄してある。そしてヤルタ協定などでは、ソ連に返す、日本は全部撤退する、こういうことを書いてあるのであります。そうしてまたその上去年までの地図には、こういう色は現われておらぬし、国境線は出ていなかった。この内閣になって今度初めて現われたのであるから、それでこれは新しい大きな問題であると思う。そうしてソ連がこれに抗議してきた場合には、あなたはどういう論理で対抗されるお考えであるか。
  193. 重光葵

    ○重光国務大臣 この地図がいつできたものであるかというようなことは、私は十分調べなければお答えできません。これは鳩山内閣が指図したものとも実はどうも考えられないのでございます。しかしながらこの地図では日本領土として書いておるのではないのですね。日本はむろん南樺太、千島等をサンフランシスコ条約によって放棄してあるわけでありますから、これが日本の領土として地図を塗ってあるならば、これは私は正確でない、行き過ぎたことだ、こう考えます。しかしこれで見るとアメリカ、カナダと同じ色に塗ってある。そこでこれはいろいろ考え方があろうと思います。実質上……(「アメリカの色になっていくという意味なんだよ」と呼ぶ者あり)そうかもしれぬが、ソ連の領土でないことは明らかです。まだソ連の領土として地図を塗りかえるわけにはいかぬと思います。少くとも日本側としてはいかぬわけです、日本側としては日本の領土であると主張しておるのでありますから。少し日本の色の薄いやつを塗るということくらいは感情かとも思います。しかし私はそれでいいというわけではありませんけれども、まあそのくらいであります。
  194. 高津正道

    ○高津委員 教科書の検定は民間が検定をやるということはきまっておって、そうして文部大臣にはその権限はないのであります。それで審査の段階において外務省と相談をしてこれをやったんだし——これは文部省では大きな問題になるのでありますが、外務大臣の立場から、これがちょうど適当の色だ、日本が赤で、これは少し薄い桃色だから、そのくらいのところが、ちょうど日本要求しておるのだからいいんだ、これが正しいのだということを言われたので、外務省と相談をして口頭命令でそういう指示を与えた。これは非常に越権行為です。実は文部省の……。
  195. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういうことはございません。外務省で指示を与えたこともございません。私はお答えといたしましては、どうしてこの地図が発行されたかというようなことも十分調査をした上でお答えする、これが私のお答えでございます。しかしながら当座の何としてそういうふうな気持ちもするがといって申し上げることは、私は行き過ぎかもしれません。文部省にも聞いてみましょう。
  196. 高津正道

    ○高津委員 これは出所が明らかでないことはない。三十一年度の教科書を、先月から今月にかけて一週間にわたって全国の千ヵ所余りで展示して、これはその見本なんですから、これで今度採択があっちこっちできまれば、これを何百万部と刷っていくわけですが、まだ刷りにかかっていないわけです。それだから、あやまちが少い間にこれを直すならばよかろうと私は考えて御注意を申し上げたのだが、大臣は、ちょうどこの色がいいというような、私からいえば暴言、保守政党の喜ぶようなことを言ったと思います。
  197. 植原悦二郎

    植原委員長 私はそばにおってそう聞いておりません。自分は初めて見たのでわからないから、調べてあなたに再び答弁しようということですから、そう御了承願います。
  198. 高津正道

    ○高津委員 それで、きょうの答弁はこのままの速記が残らなければ困ります。ただいま大臣の答弁のままで……。そしてその上で、今はそう考えると言われるのだが、私はなるべくその考えを変えてもらいたいと思うのです。ソ連から抗議があった場合にどうする考えか、それを聞きたい。
  199. 重光葵

    ○重光国務大臣 ですから私のお答えとしては調査をした上で……。これは文部省の教科書のようでありますから文部省考え方も聞まきしょうが、私の今の当座の考えとしては先ほど申し上げた通りであります。御意見のあるところは十分伺いました。それについてはまた考慮してみましょう。
  200. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十四分散会