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1953-12-24 第19回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月二十四日(木曜日)    午後三時三十二分開議     —————————————  議事日程第二号   昭和二十八年十二月二十四日    午後一時開議  第一 奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員会審査省略要求事件)     —————————————
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 朗読を省略いたします。
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  議員林了君は、去る二十日逝去せられました。誠に痛惜哀悼至りに堪えません。同君に対しましては、議長はすでに弔詞を贈呈いたしました。  堂森芳夫君から発言を求められました。この際、発言を許します。堂森芳夫君。    〔堂森芳夫登壇拍手
  4. 堂森芳夫

    堂森芳夫君 只今議長より御報告になりました通り議員林了君は、去る二十日、突如狭心症のため逝去せられました。誠に痛惜至りに堪えません。ここに、甚だ僭越ではございますが、同僚諸君のお許しを得まして同君の生前を追憶し、哀悼の辞を捧げたいと存じます。  故林了君は、明治四十一年福井福井市に生れ、日本大学歯科医学科を卒業せられ、焼いて同大学附属病院において研究に従事せられると共に、歯科医師として一時開業せられましたが、後、城西病院歯科部長として歯科医療に従われ、更に、日本大学歯科教授として、又、日本大学歯科医学校長として、歯科医学界のために、或いは歯科医学教育のために尽療せられること多年に亘りました。なお、そのかたわら、社団法人日本歯科医師会常務理事税制対策委員長社会保険診療報酬支払基金理事等をも兼ねられ、幾多の功績を残されたのであります。  更に同君は、本年参議院議員選挙に当り、全国区において当選の栄をかち得られ、爾来、誠実勤勉に国政の審議に当られ、或いは厚生委員として、又、懲罰委員風水害緊急対策特別委員中共地域からの帰還者援護に関する特別委員等として立法に参画、憲政のために尽された功も少からぬものがあつたのであります。  現下、内外多事多端の折、国会における責務も又いよいよ重大さを加えるときに当りまして、同君のごとき達識俊敏の士を失いましたことは、邦家のため誠に痛惜に堪えないところであります。  ここに謹んで同君の御逝去を悼むと日共に、御冥福を祈り、哀悼の辞を捧げる次第でございます。(拍手)      ─────・─────
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、議員派遣の件についてお諮りいたします。  去る十日決定いたしましたソ連地区引揚者実情調査のための議員派遣中、派遣議員林了君の逝去に伴い、常岡一郎君を派遣されたい旨、厚生委員長から要求書が提出されました。委員長要求通り派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて岡一郎君を派遣することに決しました。      ─────・─────
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員会審査省略要求事件)を議題といたします。本件につきましては、内閣から委員会審査省略要求書が提出されております。内閣要求通り委員会審査を省略し、直ちに本件審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 河井彌八

    議員河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて先ず提出者趣旨説明を求めます。岡崎外務大臣。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  9. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今議題となりました奄美群島に関する日米間の協定締結につき承認を求めるの件につきまして御説明いたします。  南西諸島島々は、歴史的にも経済的にも、我が日本本土とは切つても切れない密接な関係があり、現地住民出身者日本復帰を望む声は極めて熾烈なものがありますので、政府といたしましても、平和条約発効以来、種々米国側折衝を行なつて参りました。そして過渡的には、これら諸島住民生活をできるだけ内地住民生活と同様にするため、行政経済文化等の面において各種の施策を行い、これを漸次拡大して参りましたが、これと並行して根本的解決についても交渉を行なつて来たのであります。即ち、米国側としても、軍事的見地よりすれば、南西諸島の全部につき一時に日本復帰の実現は困難であるとしても、段階的にその一部なりとも先に復帰せしむることの可能性はあり得べしと考え、そのような趣旨折衝をいたしましたところ、幸いにして米国政府もこれに応え、本年八月八日、ダレス国務長官の声明となつたのでありすす。  爾来、奄美群島復帰に関する協定交渉を行なつて参つたのでありますが、その間に種々複雑な問題もあつて日米双方の当事者の熱心なる努力にもかかわらず、意外に遅延し、今般漸く双方意見一致を見るに至りました。よつて政府としては、この案によりまして、至急協定締結し、同群島復帰を実現いたしたく、ここに国会の御承認を求めることとした次第であります。  次に、協定案の概要について御説明いたしますれば、  第一条は、米国平和条約第三条によつて有しているすべての権利及び利益を、奄美群島に関し、日本国のために放棄し、日本国がその権能及び責任を引受けることを規定しているのであります。ここに米国の放棄する権利及び利益共同群島に対する行政立法及び司法の三権のみならず、同群島米国信託統治に付することを提案する権利をも含むものであります。なお、日本復帰する奄美群島地理的範囲につきましては、第一条第二垣及び協定附属書によりまして、旧鹿児島県所属の島嘆全部を包含すること、なつております。  第二条は、第一項において、米国が現に奄美群島において利用している軍用設備及び用地は、日米行政協定手続従つて同国軍隊が引続き使用することを認めております。なお、現在米国政府が利用しているものは、沖永良部島にあるレーダー施設を含め、一カ所しかありません。  第三条は、復帰に伴う財務関係盲項規定しております。即ち、第一に、日本国政府は、復帰のときに奄美群島流通しているB円を一対三の割合で日本円と交換し、回収したB円無償米国側返還することを規定しております。B円流通高は二億円前後と推定しております。第二に、予算及び財政に関する措置は、復帰前までは米国側が維持し、その後は日本政府責任を有することを規定しております。第三は、日本国政府が、奄美群島における郵便局債務を引継ぎ、これと南西諸島の他の郵便局との間の債権債務は後日決済することとしております。政府調査によりますと、これは我が方に約五千数百万円の受取分があるようであります。第四は、奄美群島に存在する琉球政府所有財産は、すべて無償日本国政府に移転されることを規定しており、又、第五は、米国管理下に置かれて来た元の日本国有又は都道府県有財産無償返還されることを規定しております。第六は、合衆国民政府及び琉球政府等が、奄美群島にある大島食糧会社その他の団体等に対して有する当座勘定債権約七千五百万B円並びに琉球復興金融金庫団体及び個人に対して有する長期債権約一億六百万B円、合計約一億八千万B円は、これは邦貨で約五億四千万円でありますが、この債権をすべて無償日本国政府に移転することを規定しております。  第四条は、いわゆる戦争請求権の放棄及び占領期間中の行為の有効性承認に関する規定でありまして、平和条約第十九条の規定と同趣旨のものでありますが、今般は、平和条約発効後、米軍軍政期間中に関するものについても併せて規定しております。  第五条は、民事裁判管轄に関し、先に制定された奄美群島復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律の定めるところに従い、現地裁判所の判決を承認し、現に係属中のものはそのままこれを引継ぐことを規定しております。  第六条は、刑事裁判管轄に関し、日本政府が、琉球政府裁判所ですでに判決せられ、又は現に係属中の事件につき、日本法律及び手続従つてこれを処理すべき旨を規定しております。  第七条は、日本国当事国となつている条約その他の協定、特に平和条約日米安全保障条約日米行政協定吉田アチソン交換公文並びに日米友好通商航海条約奄美群島に適用されることを規定しております。  第八条は、この協定実施に関する事項は両国政府当局間で合意さるべきことを規定し、第九条は、この協定が明十二月二十五日から効力を生ずることを規定しております。  次に協定に附属する交換公文について御説明いたします。  先ず、アリソン米国大使は、私あての書簡で、日本政府は、奄美群島及びその領水は、極東防衛及び安全と特異の関係を有することを認め、南西諸島のその他の島嶼の防衛を保全する等のため、米国が必要と認める要請を考慮に入れるものと了解する旨を通報し、これに対し、私よりアリソン大使あての返簡で、日本政府も同様に了解する旨を通報するものであります。尤もこれにつき、将来具体的な要求がありました場合には、勿論、行政協定手続従つて考慮されるものであります。  以上は本協定内容でありますが、政府といたしましては、その他の南西諸島小笠原諸島その他の島々につきましても、国会の屡次の決議及び住民要望等を体して、今後とも善処して行きたき考えであります。幸いにして本協定国会の御承認を得ますれば、本日中にも直ちにこれに署名し、奄美群島復帰を明二十五日の午前零時を期して実現することといたしたい所存であります。  つきましては、右の事情を御了承せられ、本件について速やかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。(拍手
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本件に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。内村清次君。    〔内村清次登壇拍手
  11. 内村清次

    内村清次君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定案及び交換公文案につきまして、政府に対して質疑をいたしたいのでございます。  奄美群島民の絶大な歓喜のうちに、全国民待望奄美群島復帰がいよいよ明二十五日を期して実現せられますことは、誠に喜びに堪えない次第でありまして、私は先ず以てアメリカ側の理解と好意に対して感謝いたしますると共に、その間における政府努力を多とするものでございますが、併しながら我が国といたしましては、更に進んで、平和条約において本群島と同様に取扱われておりまする沖縄小笠原等につきましても、一日も速やかなる返還を図るために、万全の努力を傾倒せなければならんことは申すまでもないことでございまして、今回の本群島復帰は、我が国主権の潜在せしめられておりまする地域我が国への復帰の先例ともなるべき重大なる意義を持つているのであります。従いまして、今回の日米交渉内容と、同群島復帰に伴います我が国受入措置は、国内的にも国際的にもその意義は極めて重大なものがあるのでございます。  私は、先に本院の院議によりまして、本群島復帰に伴う行政措置等につきまして、その実情調査するために、同僚議員四名と共に現地に派遣せられたのでございまするが、同群島現状をつまびらかに承知しますると共に、同群島島民復帰待望の熱意に打たれて参りました次第でございますが、私はこの際におきまして、先ず第一点に伺いたいことは、本奄美群島アメリカ軍管理下琉球政府の支配に属しておつたのでありまするが、その以前におきましては、長い期間亘つて本土に対すると同様、沖縄諸島と極めて密接な経済関係住民往来関係等があつたのであります。今回の復帰によりまして、本土と結ばれて、諸般の施設が行われますことは、同群島の発展と同群島民の幸福に寄与することは多大であるのでございますが、同時に沖繩諸島とも楽観な関係を保持することが必要でございます。即ち一般外国並み関係であつてはならないのでございます。現に沖繩には、琉球政府公務員へ約五万と言われる労務者、その他の一般民が多数在住いたしておるのでございまして、今後これらの沖縄住民取扱如何になるのか、本群島住民沖縄との往来関係如何になるのか、貿易通商等関係如何になるのか、これらの点について、アメリカ側との交渉内容を先ず明らかにせられたいのでございます。  第二点は、協定条文の第三条、財政関係につきまして、通貨の問題でございまするが、現在同群島流通しておるところのB円総額どれくらいあるか。又一億八千万B円を超える部分については、アメリカ側がその措置を考慮すると伝えられておるのであるが、この点はどうなつたのであるか。又現地金融機関に対するB円表示預貯金日本円表示預貯金に切替えられることになるのであるか。その総額はどのくらいの額に上つておるのか。現地金融機関支払能力には不安はないのであるかどうか等について明らかにせられたいのであります。又、これはB円の回収に関連のある問題と存じますが、アメリカ側は軍及び奄美食糧会社の有する約七千万B円債権我が国譲渡するということが伝えられておつたのでありまするが、この点はどうなつたのであるか。明らかにして頂きたいのでございます。又、本群島に関するガリオア資金の処置はこれ又どのような状態交渉が進められておるのか。お示し願いたいのであります。  第三点につきましては、本群島は戦前におきましても疲弊極めて甚だしく、特別の振興計画を樹立して、特別の政府助成が行われて来たのでありまするが、今や八年の空白期間を経て、その状況は誠に同情に堪えないものがあるのであります。その詳細は、先に本議場におきまして報告いたしましたから省略いたしますが、速やかに特別の振興対策が行われなければならないことを私は痛感いたしておるのでございます。で、奄美群島復帰に伴う法律案審議の際も、地方行政委員会におきましては、全会一致議決を以ちまして、本群島に対する施策は、民心の安定と産業の復興に重点を置くと共に、速やかに総合的な振興計画を樹立し、その強力な実施を期すること、そのため必要な特別法を制定すると共に十分な財政的措置を講ずべきことを強く希望いたしておつたのでございまするが、この際に吉田総理から、政府の御方針について明確にして頂きたいと存じます。  第四点につきましては、本群島に設置せられますところの現地機関については、これはどうしても振興事業を総合的且つ強力に実施をするために、政府出先機関濫立、今おな濫立の傾向があるのでございまするが、この濫立を極力抑制して、鹿児島県の現地機関において一元的に振興事業を行うと共に、中央においても振興計画の樹立及び実施に対しましては、やはり一元化下る必要があると思いまするが、この点につきましての政府の明確な御答弁をお願いしたいのであります。  最後質問いたしますることは、交換公文のこれは前文にも関係あるものでございまするが、去る十二月の十六日にアンダーソン米海軍長官は、太平拝防衛問題につきまして、米国沖縄に強力な空軍基地を建設したが、沖縄小笠原諸島は戦略的に海空両軍の使用に充てられているが、これには安土保障上の理由から無期限管理をすべさであると強調せられております。勿論、個人的な意見であるということをも強調せられておりますが、更に翌十日には、米国国務省は、同長官個人的意見ではなくして、米国政府の政策であると言明せられております。又この交換公文に対しまして、岡崎外務大臣宛交換公文中にも、「平和及び安全の永続する状態極東において確立されるまでの間、現に行使している程度管理及び権限を維持することを必要とする。」と述べられているのでございます。我々は、平和条約の第三条における北緯二十九度以南の南西諸島、(琉球諸島及び大東諸島を含む)南方諸島小笠原群島、西之島及び火山列島を含む)等は、日本国主権潜在領土であり、一日も早く日本国復帰を要望する全国民の意思を、衆参両議院の院議を以ちまして議決をいたしましたことは、未だ新たなところでございます。で、これら諸島住民は、今回の奄美群島復帰喜びによりまして、より一層復帰の熱望を表明することは、想像にかたくないことであろうと私たちは考えるのでございます。これに対し、日本政府は、如何なる態度を以ちまして米国及び国民に対処しようとするのであるか。この際、特に総理大臣から明確に御答弁をお願いいたしたいのでございます。以上を以ちまして私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  12. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 奄美群島が、占領期間島民諸君が嘗められた苦悩に対しましては、政府といたしましても深い同情を以て見守つて参りました。今回これが復帰させられましたことにつきましても、心から喜んでいる次第でございまして、先ず以て安藤国務大臣を近く同島に派遣いたしまして、同島復帰を喜ぶと同時に、実情を現実に視察をいたし、更にその後調査を尽しまして、特別の助成の必要であるものにつきましては、できるだけの措置を講ずるつもりでございます。  なお、具体的のことにつきましては、所管の大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  13. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 奄美大島沖縄との間の住民関係とか或いは交通、経済状態、こういうものにつきましては、奄美大島が完全に日本側復帰されました以上は、自然沖縄とは取扱が違つて来るのは、これはもう当然のことと考えまするけれども、ただ、この住民の就業に関するものとか、或いは貿易等に関しまして、いろいろ従来やつておることは、この際、急激に現状変化を与えることは勿論面白くないのでありまして、交渉におきまして、この点は先方とも十分話合いをいたして、特に議事録にその点はとどめまして、現状とはとにかく余り急激な変化は与えないということにいたしております。  それから、この債権譲渡についての御質問でありますが、先ほど私が御説明しました通り沖縄琉球政府或いはそれの復興金融金庫等におきまして、約一億八千万B円債権奄美大島団体なり或いは個人に対して貸付けて、融資をいたしております。これをそのままそつくり日本側無償譲渡するということになつておりまして、これは日本側の円にいたしますと、先ほど申した通り五億四千万円ほどになるかと考えております。  それからこれに関連いたしまして、B円流通はどのくらいあるかという御質問でありますが、これは正確な統計がありませんので、はつきりいたしておりませんが、或いは一億八千万以内であろうという考え方もありまするし、事によると二億五千万近くあるかも知れんということでありますが、これは実際に明日から引換えをやつてみないとはつきりいたしません。併し大体先ほど申した通り二億前後であろうかと、こう考えております。  なお、平和条約の第三条に規定しておりまする奄美大島以外の群島、例えば沖縄であるとか小笠原島等について御質問でありますが、これはお手許にありまする協定最後交換公文の中に、はつきりいたしております通り、初めアメリカ側は、極東の平和が確立されるまでは、沖縄やその他の諸島についても、現在程度管理及び権限を維持することが必要であるという趣旨の提案をいたしておつたのでありますが、これは交渉最終段階において、実は本朝、この点を一切削除することになつておりまして、お手許にありまする交換公文中にも、急ぎましたので、これをペンで削除しておいております。さようなことで、この点は実質的には、いろいろの必要上、直ちに沖縄等がこれに引継きすぐ返還ということには困難があることは、これを認めざるを得ませんが。政府といたしましては、でき得る限り国会決議なり或いは住民の希望なりを体しまして、今後とも善処するつもりでおるのであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答え申上げます。  琉球におきまするガリオア援助の方式は、我が国におきます場合と違いまして、アメリカ軍政府援助物資をば民間に売渡すに当りまして、普通の商業ベースで行なつておるのでありまして、これによつてこういう代金をば軍政府援助をいたしまして、琉球政府に対して補助金として与えて右資金行政費の下足を補つたほか、学校道路等復旧経済安定等に使用せられているのであります。奄美群島分といたしまして約二億八千万B円日本円に換算いたしますと八億四千万円になるのでありますが、本補助金支出の結果、建物とか施設といつたものが残つておりますが、これが日本政府無償譲渡を受けることになつておるのであります。従いまして、本件については、日本側債務を引継ぐ、こういつたものは全然ないのでございます。  更に、郵便貯金につきましては、これもまた引継ぎについて目下別途に検討中であります。殊に見合債権も引継いでおりますので、これも債務関係の問題は生じないと考えております。  なお、B円流通している額につきましては、はつきりいたしませんが、この二十五日から五日間の間に、大体一B円三円で換えることに相成つておりますので、この数字ははつきりすることと思いますが、大体二億B円見当ではないかと、かように考えているのであります。なお、これについてアメリカ側のほうの債務として出したものじやないか、軍政府で出したものじやないか云々という話もございますが、これにつきましては、実は先ほど外務大臣から答弁がありました通り、約一億八千万B円に対する琉球側政府機関琉球復興基金等債権無償で譲受けてもおりますし、また只今申上げたように、二億八千万B円に達する補助金を出している、それらの学校復旧経済安定等のものも、何ら返済義務を負つておりませんし、更に奄美群島アメリカが占領した当時、丁度向うが引換えて消却したのが日本銀行券で約八千万円ある等の、こういつた事実から見ましてこれを請求しないほうが穏当である、こういう結論に達したような次第でございます。(拍手
  15. 内村清次

    内村清次君 答弁を忘れていられるので、議席から申上げます。
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内村君、御登壇を願います。    〔内村清次登壇拍手
  17. 内村清次

    内村清次君 先ほどの岡崎外務大臣答弁の中に、お忘れになつている問題があつたわけでございますが、それは、現在、沖縄、いわゆる琉球政府に、奄美群島公務員が相当数就職いたしておりますが、同時に約五万の多数の労務者関係が在住しておりますが、この復帰と同時に、すでにアメリカ軍のほうでは、軍の通達を以ちまして、奄美大島のほうに帰すというような通達をやつている。この問題は非常に現地のほうにおきましても重要視されておりまして、早く帰つてもらうことは、それはいわゆる親子の愛情からいたしましても、希望しておりますが、併しながら現地は全く職も殆んどなく、食糧も困つているという現状でございますからして、できるならば、そのまま公務員は就職を希望したいという問題があつたわけでございます。この点は委員会におきましてもいろいろと問題にしまして、この日米の会談の中に、この問題は重要に取扱われてあるのだという報告を受けておつたわけであります。この問題についての岡崎外務大臣答弁が明確でないようでございます。その点を一つはつきりして頂きたいのでございます。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 奄美大島出身者沖縄における立場につきましては、いろいろ風説は行われておるようでありますが、政府といたしましては、アメリカ政府交渉いたしまして、こういう問題はすべて中央で決定して現地限りには決定しないことにいたしております。そうして中央におきましては、先ほど申上げました通り、すでに議事録にも急激な変化を与えないということを明確にいたしておりまして、このようなことは現地限りでは行わないことになつておりますので、いずれは、いろいろ奄美が完全に復帰いたしましたら、戸籍関係その他において、沖縄と全然同様ということにはなりますまいけれども、就職その他の問題につきまして急激な変化があるような取扱はいたさないことにいたしております。(拍手
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 曾祢益君。    〔曾祢益君登壇拍手
  20. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして只今提案になりました案件につきまして若干の質問をいたしたいと存じます。  先ず、我々は奄美大島復帰を極めて喜ぶものでございますと共に、やはり、この問題が解決すると同時に、沖繩に残された八十万の同胞諸君或いは小笠原島等のまだ帰らざる同胞諸君のことを深く考えざるを得ないと存ずるのであります。この観点からこのたびの協定交換公文を見ますときに、我我は一方において喜ぶと共に、幾多の疑点を持たざるを得ないのでございまして、本来ならば十分に委員会におきまして質疑をいたすのが順序でございまするが、このたびは特別の場合でございまするので、本会議におきまして是非国民に代つて質問申上げたい極く重要点だけをピツク・アツプしてみたいと存ずるのであります。  第一に、交換公文によりますると、奄美群島及びその領水は、極東防衛及び安全と特異の関係を有することを日本政府が認める、こういうことを言つておるのでございます。これは一体どういう意味であるか、又このことが一体如何なる法律的或いは軍事的の意味を、奄美大島の地位、そのステータスに及ぼすものであるかどうか、これは我我としても十分に考えなければならないのではないかと思うのであります。つまり完全なる無条件的復帰ではないのではないかという疑いを残すような何らかの……防衛の観点から見ましたところの特異の関係とは一体どういうものであつて、その結果はどういうことに法律的或いは軍事的になるのであるか、この点は特に奄美大島自身についての問題でありまするので、先ずこの意を明らかにして頂きたいと存ずるのであります。  同じ交換公文は更に続きまして、私の今申上げましたものと少し関係をいたしておるのでありまするが、この次に申上げる点は、奄美大島に対する一つの制約と申しますか、条件というよりも、むしろ残された南西諸島、即ち沖縄などに関する特殊の問題だろうと思いますが、交換公文はこういうことを言つております。今申上げましたよりに、この特異の関係を認め、「南西諸島のその他の島の防衛を保全し、強化し、及び容易にするためアメリカ合衆国が必要と認める要求を考慮に入れるものと了解される。」この了解に対しては日本政府からはその通りであるということを言われておるのであります。これは文理的に見ますると、奄美大島についての要求ではないようでありまして、奄美大島返還に関連いたしまして残れる沖縄に対するところの一つの要求であろうと思うのであります。岡崎外務大臣の只今の御説明では極めて軽くこの点に触れられておりまして、いずれそれが具体化したならば、日米行政協定等によつて処理するのだ、こういうことでございまするか、これはかなり容易ならない問題ではないか。奄美大島を返すに関連いたしまして、沖縄について何らかの不特定のかなり重要であるらしい要求が出されておる。その内容についてはわからない。政府はこれを容れておる。かようなことでは、我々としてはちよつと納得できないのではないかと思うのであります。従いまして、これは一体どういう種類のどういう内容要求であるのか。これを当然お突きとめにたつてから協定をされたと思うのであります。細目を伺わなければなりませんが、この点を是非明らかにして頂きかいのであります。  なお、これに関連いたしまして、同僚内村議員も指摘されましたように、元来、交換公文の、むしろ第一項は幸いにいたしまして最後の瞬間に削除されました。削除されたことは、外務当局の御努力を私は多とするものでありますと同時に、日米両国の関係上当然に削除すべきものであつたと私は確信いたします。併しながら、この削除されたことはいいが、ここに出ている思想については、これはやはり政治的に残つておる問題であろうと思うのであります。即ち、奄美大島返還に関連いたしまして沖縄小笠原等のその他の島については、極東の永続的な平和状態が確立されるまで、現に行使している程度管理及び権限を維持する必要がある。日本政府はこれを承認する。こういうことであります。で、これはアメリカの戦略方針から見れば、又日本がこれに依存しておるような状態から見て、一応無理ないという見方もあるのでございましようが、併しこれは決して容易ならない問題でございまして、果してかような状態であるとするならば、平和条約第三条においては、成るほど岡崎外務大臣が指摘されたように、元来がこれは一種のアメリカを施政権者とするところの信託統治とするのが本来の方針であつた。併しそれはこのたび放棄しておる。結構でありまするが、併し放棄しているのは、放棄をすると同時に、現実にはそういうようなことは現在の国際連合においてはできない。従つて実体は、現在アメリカが行使している行政、司法及び立法権限である一部的或いは全部の権限、現実には殆んどそれを全部行使しておる。そのことが極東の永続的平和、もとより我々はこれを望むものである。併し果して極東の永続的平和というような状態が確立されるというのは、極めて望ましいけれども、極めてこれは理想的な状態、若しその状態まで、アメリカが現に行使しておるこの三権の行使を一切緩めないということになるならば、それは岡崎外務大臣が先ほど言われたことにかかわらず、これは当院のしばくの院議に決して副うゆえんではない。我々はこれを心配するのであります。成るほど協定の案文からこれを除かれたことは、繰返して申上げますが、極めて結構なことであります。誠にそうでなければならないと思う。私は確信を以てアメリカに対しても、立派なアメリカの友人の立場から申上げられると思うのであります。かかる要請を持つことは、いわゆる戦略的見地から見るならば仮にそれが妥当であるとしても、それが真に正しい日米両国関係の真の親善関係から言うならば、その考えを放擲して行くことが必要ではないか。政府は果してこの点を如何に見て又如何にこれに対処する御方針であるかどうか。この点を明確にして頂きたいものであります。この一項が削除されました経緯につきまして御苦心のほど、差支えない限り明らかにされることが、私は、吉田政府のためにも、否、国民のためにいいことであると存じます。私は遺憾ながら、併し削除されましても、同僚内村君が指摘されたような、最近のアメリカ責任当局の言動等から見てアメリカの意思には変化はないのではないか。然らばこれに対して政府如何にこの点を是正して行くか。政府の決意及び方針を総理並びに外務大臣から明確にお示しを願いたい。  本件に関連いたしまして岡崎外務大臣は、先ほどの説明の中にも、決して我が国の本来の領土に対する国民の要望は、この奄美大島だけでなく、南西諸島の残れる部分だけでもなく、小笠原もそうであるしという、いろいろなまだ返らざる島があるということを申されました。まさしくその通りであつて、私たちは決してアメリカに対してだけ要求するのではございません。歯舞、色丹、南樺太、千島等に対しましても、政府はこの際これに関連いたしまして、明確に国民の正しい輿望に応える平和外交によるところの返還の方針を御説明願いたいのであります。  最後に、同僚内村君からも触れられました点にも関連いたしまするが、いわゆる現地側の特に要望しておりまする復興計画、振興計画、差当り二百億程度要求を持つておられまするが、これに対する具体的の、大蔵大臣の、或いは政府関係大臣の御所見を伺いたい。大蔵大臣に対しましては、更に、先ほどいろいろ御説明がありましたが、元来B円そのものの債務を我々が引受けるべきではないのではないか。成るほど債権債務の相殺等もございまするが、何故にB円債務を全額的に引受ける、こういう態度をとられたかについて国際法の先例等から十分なる納得行く御説明を願いたい。  更に、厚生大臣に対しましては、一万人以上に上ると言われる生活困窮者或いは沖縄出身の戦没遺家族等に対する緊急なる生活保護の措置等についての御説明を伺いたいと存ずるのであります。  若干の時間が残つておりまするようでありまするから、御答弁如何によりましては再質問をお許し願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  21. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 琉球諸島の他の部分及び小笠原群島につきましては、八月八日にダレス国務長官が東京において声明されました中にも、今日の緊張した状態が続く限り、現在程度管理を維持する必要があるということを述べておりました。それは今日の世界の現状から見ましてアメリカとしてはその必要を感じておるその立場を認めざるを得ないと思いまするが、併し日本政府といたしましては、一日も早くこれらの地域返還が可能となる時期の到来することを希望するのでありまして、引続きアメリカ合衆国政府に対しまして、我が国民の熱烈な要望を伝えると共に、早期返還交渉を継続したい考えでおります。  更に、歯舞、色丹等の島演につきましては、これは如何なる意味におきましても、完全に我が国主権の下に断る次第でありまして、これは明らかに英米等においても認めておるのでありまするが、現実には終戦以来ソ連の占領下に置かれておることは御承知の通り従つてこれが解決はソ連との交渉によるほかなく、このことは非常に困難でありまするが、政府といたしましては、今後とも機会あるごとに最善を尽したいと考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 交換公文の中の特異の関係というような点についての御質問でありますが、これと、あとの施設等の必要の場合に要求があるかも知れんということは、これは二つ関連があるのでありまして、これはいずれも沖縄のことではなくして、奄美大島に関達しておるのであります。特異の関係と申しますと、丁度沖繩本土との間に奄美大島がありますので、例えば、現在はあすこでは、先に申した通りに二つの施設しかありませんけれども、将来通信網であるとか或いはレーダーの関係等で、この沖繩本土との間の中間地帯である奄美大島に、沖縄防衛等に関係して要すべき施設も必要となるかも知れないわけであります。そういう場合には、これについは日本本土におきましても、安全保証条約に基いて必要な施設や区域は行政協定手続によつて提供することにいたしておりますので、同様の趣旨に基いて、必要なものがあれば将来提供することも考える、こういう趣旨でありまして、現に具体的にどういうものが必要であるということはまだないのであります。それから、この削除されました交換公文の前半でありますが、これは思想的にはお話の通りで、米国政府としてはこういう考え、つまり奄美群島は別として、その他の平知条約の三条に規定する諸島、つまり沖縄とか小笠原とかにつきましては、現在程度管理を行うことが必要であるという考え方を持つておりまして、又これを当初は提案して来たようなわけであります。従いまして、やはりそういう考え方はあると思いまするし、又米国政府はこういう趣旨のことを声明等で言うかも知れないのでありまするが、併し何と言いましても、交換公文の中にありましたものを、これを交換公文の中から落した、こういう現実の事実は相当程度意味があることと我々は考えておるのであります。従いまして、すぐにということは勿論困難でありまするが、今後ともこの島民要望等は十分に考慮いたしましてでき得る限りの善処をいたしたいと、こういう考えで先ほども御説明をいたしたのであります。  なお、B円無償返還ということにつきましては、これは従来こういう事態が余り例としてありませんので、国際慣例の前例として挙げることはちよつと困難でありますが、例えば、これに似たような、或る領土が割譲された場合には、その譲り受け国が割譲地域流通しておる通貨を回収して自分の国の通貨をそこに発行する。こういう際に、回収済の通貨を焼いてしまうか、或いはその譲り渡した国に対して無償返還するということは、これは条約協定に例のあることでありまして、例えばイタリアとギリシャの間の協定におきましても、イタリアの通貨をギリシャ政府が回収して、これをイタリアに返すということが規定されておりまするし、又第一次大戦のあとのオーストリアとハンガリアに関する条約におきましても、それぞれ回収通貨を破棄することを定めております。又、政府としましては、戦時中にも、日本の通貨は、例えば連銀券であるとか、儲備券であるとか、南発券であるとかというものが各地域で流れておりましたが、これは現在各国の関係政府によりまして回収されて、各国の通貨に取り代つておるわけでありまするが、これについてもやはり同様の考えで、この従来日本が発行しましたものに対しては、日本政府は補償することは必要がないという考えで来ております。こういうようなことでありますので、特に又協定のない場合でも、普通国際慣習としてそういうような無償返還ということをやつておりますので、奄美群島につきましても、こういう点を類推して無償回収ということにいたしておるのであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  23. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 奄美群島復帰に伴う予算措置としましては、先に御承認を得まして奄美群島復帰善後処理費というものが大蔵省所管に十億だけ計上してございますが、これは今後各省各庁を通じまして必要な方面にこの金を出したいと考えております。大体この十億の内訳は、国の事務として政府が引継ぐべき裁判所とか或いは各所の行政機関等で必要とする経費が大体一億円、それから市町村に対する交付金、教育の、教員の費用が主でありますが、この分が約二億円、そのほか道路、河川、港湾、潅漑、排水等の公共事業、教育施設の整備拡充、或いは生活保護、失業者対策、こういつた事柄に約七億円を予定しておるのでありますが、この奄美群島復興に関する諸経費につきましては、今後実情に基き調査をした上、御審議をお願い申上げたいと存じております。  なお、B円問題につきましては、只今外務大臣から御答弁があつた通りでありまして、御承知のごとく、日本でも、南方諸国との賠償交渉についても、占領中に出した軍票などについては責任を負わないという態度をとつておりますので、従つて、今回は先ほど御答弁申上げた通り、いろいろな点を考慮いたしまして、無償返還することを妥当と認めたような次第でございます。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見君登壇拍手
  24. 山風勝見

    国務大臣(山風勝見君) 只今奄美大島復帰に伴いまして、生活保護の問題或いは遺家族の援護に対する措置についての御質問でございましたが、生活保護については、従来琉球政府において生活保護法を適用いたして参つたのであります。併し今回復帰に伴いまして、その措置の混乱を避けまするために、第一に、その適用の問題につきましては、従来の援護、生活保護法において適用いたしておりまする者については、その改めての保護の決定をいたしませんで、従来の保護いたしておりまする者をその復帰の日において保護決定をいたしたという措置をとりたい。なお又、この実施の機関でありまするが、これについてはいろいろ研究いたしましたが、実情に即するために、なお又、その適用の適正を期し又能率化を期しまするために、今回は特に鹿児島県知事にその措置の統一を期したいと考えております。なお問題は基準の問題でありまするが、従来は琉球政府生活保護につきましては、この生活保護法、いわゆる琉球政府生活保護法の基準よりも相当低い基準で適用がございましたので、これは取りあえずその基準まで引上げて参り、特に今回の事情から見ましても、又現地実情から申しましても、一時扶助の規定をできるだけ十分に活用いたして、只今一万というお話がございましたが、大体、明日、十二月の二十五日から来年の三月末日までに延べ約四万五百人について、只今大蔵大臣のお話の十億の中に適当の予算措置をいたしておる次第であります。なお、遺家族の援護につきましては、これは従来、琉球奄美大島には遺家族援護法が適用がありましたのであります。なお又、大体予想いたしておりまするのは、この遺族の数は大体九万八千ぐらいじやなかろうかと見込んでおりまするが、そのうち奄美大島は約一万足らず、九千四百くらいであろうかと見込んでおります。ただ従来復帰前の特殊の事情からして、連絡が不如意でございまして、いろいろな手続がまだ十分でございませんために、裁定が非常に遅れておりまするが、今回復帰に伴いまして、これに対しては十分に、関係機関殊に鹿児島県等を督励いたしまして、なお又、本庁に申達がありましたものは、できるだけ早く裁定いたしますように努力いたしたいと考えております。(拍手)    〔曾祢益君発言の許可を求む〕
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 曾祢益君。
  26. 曾禰益

    ○曾祢益君 再質問をいたしたいと思います。
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御登壇願います。    〔曾祢益君登壇拍手
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 岡崎外務大臣にもう一回伺いたいのでありまするが、私が先ほど御質問申上げました点で、このいわゆる奄美群島の有する特異関係というものが、果して奄美群島を特別に、何らか法律的に或いは軍事的に、何らか鷹殊の地帯にするという意味はないのか。勿論あなたの御説明のように、本協定によりましても、奄美日本に返つて参りますれば、安全保障条約行政協定等が全部これが適用されるのであります。にもかかわらず、特にここに特異関係を置くか。それは返らざる南西諸島との関係があるからでありますか。特に特異関係を認められたこの点が何らかの奄美に対する特別の制約にならないかということについての、はつきりした、そうでないという断定が得られるかどうかを、改めてお答え願いたいのであります。  第二点は、これは私が頭が悪いのと、この案文が余りにも簡単過ぎまして、誤解であつたかと思いますが、あとのほうは、南西諸島は対する特殊の要求かと思いましたが、そうでなくて、南西諸島にいろいろな安全上の措置をする必要から、奄美に対する特殊の要求だということになつて参るというわけであります。そうなると、何故に特にこういう点を書いたのか、なぜそういうことを書く必要があつたのか、何故に安全保障条約行政協定にカバーさるべき本来の日本領土と違う関係をここに打出さなければならないか、この点の御説明をされておらない。この点について何らか、我々は勿論そういうことはないと思いますが、何か裏にあるような感じを与えるような協定をお作りになることは甚だ面白くない。でありますから、この点を明確に、何故にこういうものを入れざるを得なかつたのか。殊に第一項を削除された、第一項のごとき容易ならざる問題もあつたわけでありますから、これがどうしても残つたことの経緯を率直に御説明願つておきたいと存ずるのであります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  29. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 特異の関係と言いますのは、先ほど御説明のように、奄美大島が丁度鎖の真中のようになつておるということでありまして別にこれは法律的の約束でも何でもないのであります。ただ、その事情を御説明いたしますれば、復帰に際しまして米国側の軍当局としては、奄美大島にまだ必要と考えて予定しておつたけれども、今すぐに必要でないから別に施設を持たなかつたが、復帰されるというなら、これこれの施設も持ちたいものだという意向も初めにあつたのであります。併しながら、今要らないものを持つ必要はないというので、それは落してしまつた、そういう次第であるので、先方としては、復帰の際に将来これが必要となるかも知れない、殊に中間的な地域にあるから、通信施設等において必要な場合があるかも知れないということで、かかる文句を入れることを要望いたしました。私のほうといたしましては、先方の意向を十分確かめたところ、何ら特殊の意味ではなくて、ただ復帰に際して一応念を押しておきたい、こういう意味と了解いたしましたから、それでこの文句を入れることを承知したのでありまして、まあ要するに、両国、沖縄本土との中間に、こういう地理的な関係から、将来そういうようなものが必要な場合もあるかも知れない、勿論これは普通の行政協定でカバーされるのでありますけれども、返還に際しまして、先方で希望いたしましたから、特に別段の意味はないということを念を押しまして、この文句を入れたのであります。(拍手
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。  本件に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。團伊能君。    〔團伊能君登壇拍手
  31. 團伊能

    ○團伊能君 私は、本日上程されました奄美群島に関する日米両国の協定承認する件につきまして、自由党を代表いたし満腔の賛意を捧げるものであります。  独立以来、まだ我が国の基本的な問題である領土関係におきまして、周折領土に非常に多く不明瞭な地点を残しております。只今曾祢議員が指摘され、緒方副総理から御答弁もありましたが、北海道の北に亘る歯舞、色丹の問題のごとき、極めて国際的な地域については何ら解決点のない問題となつておりますことは皆様御承知の通りであります。この点に関しまして、外務省当局その他に対してしばしば質問をいたしましたが、我が国といたし、すでに独立いたしました以上、これらの問題について相当確固たる自信のある態度を以てこれらの関係国と当るべき問題と私は考えますが、実は歯舞、色丹問題についても、外務省におかれて、果してどこまでがヤルタ会談によるキューリル・アイランドの範囲であるかという観念さえもはつきりいたしておりません。私ども考えるのは、明治八年の交換条約におきまして、榎本武揚がモスクワで結んだ交換条約に、初めて世界の条約の中にキューリル・アイランドという文字が出て来て、その間に十八の島の名さえも明瞭に指摘してありますが、これを以てキユーリル・アイランドと我々は考えるのでありますが、その点におきましても非常にあいまいであり、僅かに歯舞、色丹だけが日本の領土であるということを日本承認することは未だ私はできないと思います。こういう点におきましても、日本政府の確固たるこれらに対する信念を私ども非常に要求するものであります。又最近におきまして問題になりました日本海の中のリアンクール・ロツクスと呼ばれておりました例の隠岐島に属しております竹島問題でも、これは如何なる点より見ましても日本の領土であるにかかわらず、日本行政権の及ばないという特殊な事態の中に置かれておりますことは、国民と共に非常にこれに対しまして深い関心を持ち、又憂欝を感じている問題であります、近く李承晩大統領の訪日の噂もありますが、外務当局、日本政府におかれましては、こういう問題は国民のために一日も早く解決されんことを希望してやまないのであります。併し今日幸いにして、二十一年の一月二十九日でありましたか、総司令部の覚書によりまして、日本領土でありながら日本主権から離れ、いわゆる特殊なる形である潜在主権という形を持ち、立法、司法、行政権を日本から離されてしまいました西南諸島の中に、奄美大島がこのたびの当局のいろいろな御奔走によりまして、日米間に、協定が、相当に長くかかりましたけれども、遂にここに結ばれまして日本復帰いたしますことは、奄美大島二十万の島民、又それ以来日本本土におきまして熱烈な復帰運動を展開しておられた方々、又我々といたしまして、誠に慶賀に堪えざるところであります。  顧みますると、多分二十六年の二月の初めでありましたか、奄美大島出身の昇曙夢先生が老躯を提げて我が参議院の外務委員会に来られ、実に切々たる訴えをなされたことが私の記憶の中にありますが、ちよつとそれと思い合せますと、今日この復帰がとにかく実現いたしましたことは、非常な大きな喜びと又将来西南諸島に関する復帰に対する希望を抱かしめるものであります。この協定につきまして、その内容に一々触れますならば、いろいろ外務省が苦心されたところもわかり、又私どももそこに多少の問題がございまするけれども、全体といたしまして、B円問題にせよ、いろいろ複雑な国際問題を含んでおりますもので、これらの解決は一応私は納得し得るものと考えるのであります。なお先ほど内村議員からも御指摘になりましたが、この奄美大島島民は、この八年間決して理想的な幸福な生活をしたわけではなく、又祖国を思いながら相当貧窮の中に暮しておりましたので、生活扶助その他の問題ばかりでなく、これらの資源開発と共に、経済復興、或いはこれらの人々の中に残つておる彼らのできる形における経済復興生活の安定とに、政府は親切なる御努力を傾けられんことを希望いたし、又、殊にこれらの中に就学できない児童も非常にたくさんありまして、恐らく三分の一近くは小学校にも行つていないという状態であります。又最近まで、これは日本は外国でありましたために、日本に来て勉強することは外国に留学するという形になつておりましたために、上級の学校におきまして修業する機会がありませんでしたが、文部当局においても特別な措置を以てこれらの勉学の道を開いて頂きたいと存じまして、私、この意味におきまして、このたびの奄美大島復帰は、我々といたし、又同時に、諸君と共に、又全国民と共に、非常な喜びといたし、又感謝いたす次第であります。  これを以て私の賛成演説を終ります。(拍手)     —————————————
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 梶原茂嘉君。    〔梶原茂嘉君登壇拍手
  33. 梶原茂嘉

    ○梶原茂君 私は只今議題となつておりまする奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につき、緑風会議員総会の総意に基きまして、これが承認に賛成の意を表さんとするものであります。  奄美群島昭和二十一年以来八カ年の長きに亘りましてアメリカ合衆国の施政の下に置かれ、統治の主権はもとより我が国に属するのではありますが、いわゆる眠れる主権に過ぎなかつたのであります。これが本協定の成立により本然の姿に立返り得るわけであります。奄美大島在住の人々は勿論のこと、全国民の長年に亘る熱望でありまして、今日その実現を見ますることは誠に慶賀に堪えないところであります。又当然の事理とは言いながら、独立いたしました日本として誠に意義深きものを感ずる次第であります。ここにアメリカの好意に対して敬意を表しますると共に、日本政府努力を多とするものであります。私は本協定案承認に賛意を表するに当りまして、三点に亘つて見解を申述べたいと思うのであります。  第一点は、本協定案内容に関連することであります。本案の内容につきましては、勿論慎重に審議を尽すべきことは当然のことでありますが、本協定案に対する国会承認を事前に求めるという正常なる措置がとられ、而も本協定発効が明二十五日でありまするということは、これを要しまするに、本協定の眼目が奄美群島復帰であり、而もこの目的達成が一日も速やかであることが国民全部の要請でありまする趣旨に鑑みまして、ここに賛成の結論を先ず出すことが妥当であると思うのであります。併しながら、内容におきましては、先ほど来質疑応答のありましたように、例えばB円に関する問題のごとき、一応政府の御答弁はありましたけれども、事は将来に関することであり、その根拠なり又その処理についてよろしきを得なかつたといたしますれば、あとに禍いを残す事柄であります。我々といたしましてはもつとこの問題の実態を鮮明ならしめることが必要と実は考えておるのであります。又交換公文内容について先ほど曾祢議員外務大臣との質疑応答があつたのでありますが、私自身も多大の疑問を持つものであります。すでに奄美群島日本復帰をして、安保条約は勿論のこと、行政協定も当然に及ぶのであります。さすれば、格段の取極をこれに関連して、この協定の附属交換公文として取り交わす実際上の必要又具体的の意図は奈辺にあるのかという点は、相当鮮明ならしむることが必要と思うのでありますが、これらは前段申述べました趣旨によつてこれを後日の機会に譲りたいと考えておるものであります。  第二の点は、奄美大島の振興に関する問題であります。奄美群島は言うまでもなく文字通りの僻遠の諸島であります。戦前におきましても立地条件に恵まれず、殊に大島の産業振興計画が樹立実施せられまして、当時官民ともに苦労努力をいたしたことは御承知の通りであります。而も過去八年の長きに亘りまして行政上の大きなブランクがあるのでありますが、このブランクをもたらしましたところはけだし想像に難くないのであります。従つて本島引継ぎに関連いたしまする諸般の施策の敏速的確を期しますることはもとよりでありまするけれども、奄美群島復帰が単に名目に終らずに、実を挙げしむるためにも、又本土復興の歩調を整えて行きまする意味からいたしましても、大島の復興につきましては特別の措置がとられることが私は肝要と考えるものであります。  第三点は、平和条約三条に示されておりまする奄美群島以外の島々復帰の問題であります。我々は本案に賛成することに大なる喜びを感ずるものでありまするが、同時に、今日なお我々と離れて未だ返つて来ない沖繩なり小笠原諸島復帰の問題に、新たな思いをいたすを禁じ得ないのであります。私は本協定成立を契機として、政府のこれら諸島復帰に一段の努力を期待いたしたいと思うのであります。特に小笠原群島住民復帰の問題のごときは、小笠原群島それ自体の復帰と性質を異にして、現実の問題の処理としてこれが実現に一層の努力を期待いたすものであります。これらの島々復帰の問題に関連いたしましても、私は、自衛力漸増はもとより必要であろうと思いますけれども、一面、国際情勢の緊迫の緩和に対して日本としては日本なりに真剣なる努力が推進せられなければならぬと考えるものであります。  なお、本協定に関連いたしまして、先ほど外務大臣よりお話のありました交換公文の第一の点、即ち極東におきます現在の事態が継続いたしておりまする限りにおいては、これらの琉球等の管理が長きに亘つて継続するということが巷間何らかの取極の形においてきめられるやの話が伝わつておるのであります。若しかくのごとくことがあれば、この奄美群島復帰に関しまする協定自体の趣旨も又その効果もおおむね没却されることを私は憂慮いたしたのであります。かくのごときことは風説であろうと思つたのでありますけれども、大臣の御説明のごとく事実であつたのであります。このことは交換公文より削除されましたことは私自身も非常な喜びを感ずるのであります。これらの島々におきます日本主権は現に存するのであつて、一日も早くこれらの島々日本復帰するということが国民全体の要望でありましてこれを阻止するやのことが取極められるとすれば由々しいことであつたと思うのであります。この点がともかく取極の形の上から姿を没しましたことを私は非常に喜ぶものであります。  以上を以て私の賛成の討論といたします。(拍手
  34. 河井彌八

    議長河井彌八君) 佐多忠隆君。    [佐多忠隆君登壇拍手
  35. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私は日本社会党を代表いたしまして、奄美群島に関する日米協定に対し承認の意思を表明いたします。  諸君のよく御承知の通り、古くから鹿児島県の一部であつた奄美大島が、ここにめでたく祖国日本復帰したことを、日本国民として心から祝福をいたし、慶賀の至りに存じます。殊にこの復帰の日を本当に一日千秋の思いで待ち焦れている現地奄美大島住民諸君の心情を思いますと、お喜びの言葉さえ胸に迫る思いがいたすのであります。まぎれもなく日本鹿児島県の一部であつた奄美大島アメリカの統治の下に置かれ、講和条約発効後も依然としてアメリカの軍政下に置かれていたことは、不合理も甚だしく、遺憾の極みでありました。軍政治下にその経済生活も殆んど顧みられず、全く放置されていた奄美大島住民諸君は、アメリカのこの不合理、不誠意に憤激をいたして、決然として起ち上つて、その苦悩を訴え、祖国日本への復帰運動を展開いたしたのであります。これらの諸君は、生活の窮乏と闘い、アメリカの統治者の弾圧をはねのけて、今日の復帰を闘い取つたのであります。今日の復帰は実に住民諸君のこの果敢な闘争のたまものであります。(拍手)我々は、日本への復帰の栄冠をかち得られた南海の孤島の住民諸君に対して心からなる尊敬と祝福を贈るものであります。それにつけても、遺憾に思い、憤激をすら禁じ得たいのは、この問題に対する政府の無性無策の態度であります。政府は祖国への復帰を毅然とした態度で要求することをいたしませんでした。返還交渉に入つてからも、アメリカの不当な要求に翻弄をされて、荏苒日を送り、今日に延ばされてしまつて、あまつさえ不当な条件で奄美大島を受入れなければならなかつたことに対しては、断固として政府を糾弾いたすものであります。奄美大島アメリカの占領中にその経済は全く放置され、住民への課税負担は、重荷に悩んでおる日本本土の我々に比べてすら、なお数倍するものであつた。住民生活は文字通りに塗炭の苦しみに陥つております。政府自身の調査報告によりましても、市町村の財政は非常に窮乏をいたし、通信費にすら事欠く有様であります。殊に教育につきましては、学校校舎は全く負弱であつて、本校舎は総坪数の僅かに六%、仮小屋程度のものが七六%、全く掘立小屋というのが一七%もあります。学校の教材、実験用の機械器具、体育施設、衛生設備などの整備状況は皆無である。大部分の者が欠食児童である状態であります。この地域の重要産業であるところの黒砂糖は戦前の約三〇%、大島紬が二〇形、鰹節が三五%程度で、全くお話にならない復興状況であります。殊に返還声明がなされてこのかたは予算措置は殆んど行われず、金融は全くストップし、生産は縮小をし、失業者は激増し、住民は全くどん底の生活に喘いでおります。これがアメリカ占領治下における、殊に軍事上の必要から占拠されておる地域経済実情であり、住民生活実相であります。この状況は速急に救済されなければなりません。これら困窮者の生活の保護について、食糧の適正なる配給について、官公吏の身分、給与の確保等について、具体的施策政府が直ちに実施すべきことを我々は切望します。殊にこの応急救援措置と並びまして、長期の復興計画を直ちに策定をし、実現しなければなりません。戦後の八年間全くの空白な状態に置かれた大島では、この遅れを早急に取戻すことは政府のむしろ義務とも言うべきでありましよう。黒糖、大島紬、鰹節等の土着産業、或いは学校建築の問題、道路、航路、港湾の問題、それらの問題について、現地住民諸君復興意識に応えながら、政府復興計画の策定実施を強力に支援をいたすことが何よりも緊急であります。  従来アメリカが使用しておりました軍事施設は、沖永良部島の電波探知機の施設で、十名乃至二十名の技術兵がいたと思いますが、その他二カ所、これは完全に撤去されるまでに至つておらないのでありまして、誠に遺憾に存ずる次第でございます。殊に又今度の協定に附属しておりますアリソン・岡崎交換公文は、先ほどから外務大臣のいろいろの御説明もありましたけれども、いよいよわからなくなつてしまつた。今度アメリカが軍事施設や基地区域を優先的に当然のことのように設定をして、日本主権を侵す虞れさえ感ぜられるのであります。アメリカ側のこのような日本主権を全く無視した不法な態度に対しては毅然とした態度ではね返さねばならないと思うのであります。  奄美群島返還に引続いて、琉球小笠原諸島返還に対して直ちに要求をし、これを実現をさせる決意をこの機会に更に新たにすべきでありましよう。然るにこの奄美大島復帰を転機といたしまして、琉球小笠原諸島復帰については、日米両当局がむしろ逆な方向に進みつつあることが背後に隠されておるとしか思われません。この事態に対しては絶対反対せざるを得ないのであります。先ほども話に出ましたように、アンダーソン・アメリカ海軍長官は、去る十六日に、安全保障上の理由から、アメリカ沖縄小笠原諸島を無期限に管理すべきだと言明をし、国務省筋も又これを認めました。アメリカは現在沖繩に強力な空軍基地を建設し、沖縄小笠原諸島を戦略的に海空軍の使用に充て、あまつさえ原爆基地化しようとしているとさえ伝えられております。これは、これらの諸島が中国や東アジアの広大な地域への戦略的な前進基地となる半面に、共産主義陣営からの反撃目標となつて日本を戦争の柑橘に化する危険を強めるものであります。のみならず、これら諸島住民は、その軍事基地化のために経済は破壊され、日常生活をさえ脅かされております。我々は、アメリカが講和条約第三条による権利を放棄をして、これらの諸島をも我が国の完全なる主権の下に返し、軍事基地を撤去し、軍隊を撤退をして非武装地として、戦略的な両陣営の脅威とならぬ状態に置いて、我が国の安全と平和の確保に協力をすべきことを要請してやまないものであります。(「然り」と呼ぶ者あり)歯舞、色丹、千島、南樺太の四島返還についても同様に切望をいたすものであります。  以上かずかずの強い要求を申述べまして我が党の本件に対する承認の意思表示といたす次第であります。(拍手
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 松澤兼人君。    〔松澤兼人君登壇拍手
  37. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となつております奄美群島復帰に伴う協定締結につき承認を求めるの件につき、賛成の意を表明するものであります。  昭和二十一年一月以来、我が国行政権から離れ、米国軍の軍政下に置かれておりました奄美群島が、ここに約八年振りに日本主権下に復帰いたしますことは、誠に喜ばしいことと言しなければなりません。歴史上我が国の一部として、政治的、文化的、経済的に共存をして参りました奄美群島にとりましては、母国日本への復帰こそ、唯一の生きる途として、その復帰のために今日まであらゆる手段を尽した嘆願運動を行い、或るときは血書を以て母国民に訴え、或るときは断食を以て悲願の達成を期し、悲壮なる叫びを続けて参つたのであります。この全島を挙げての熱誠が、日本国民の共感並びに米国の反省を促し、ここに島民の悲願が実現され、母国復帰協定調印を見ますことは、奄美群島住民と共に我々の大いに喜びとするところであります。島民諸君の歓喜を遙かに想像し、その努力に対し満腔の敬意を表すると共に、我々も又その喜びを共にいたしたいと存ずるのであります。  復帰に至るまでの島民努力が生やさしいものでなかつたことは、私も、参議院の院議を以ちまして現地調査し、つぶさにこれを知つたのでありますが、その公けの報告は、内村地方行政委員長の報告によつて明らかなところでありまして、全群島を挙げて、署名運動、血書歎願運動、断食運動等、血の叫びが続けられ、その涙ぐましい努力が今日の喜びをもたらしたことは諸君の御承知の通りであります。戦後、日本行政権から離れましてから、大島紬、黒砂糖、鰹節等の本島の基本産業の復興が停滞いたしまして、経済は後退の一途を辿り、なかんずく、一九五三年、米国軍政府復興予算補助金が打切られてからは、その経済は急激に悪化し、輸入超過は著しくなり、民間資本の吸収によつて辛うじてその日を過ごし、ために、一方、産業活動の機能は全く停止して、産業の沈滞、金融の逼迫、住民所得の低下或いは租税負担の重圧等により、失業者は続出し、財政的にも経済的にも破滅状態を続けて参つたのであります。更に、輸入物資の大部分を主要食糧で占めている本島におきましては、島民は甘藷、蘇鉄でその露命を繋いで、辛うじで今日に至つたのであります。このような生活困窮者の多くを抱きながら、生活保護法の適用はなく、重要な社会問題を惹起している奄美群島にとつては、ただ、祖国復帰のみが彼らを救済する残されたただ一つの途であることは申すまでもないところであります。  このために我々は、一日も早くこれを解決しなければならないと叫び続けて参つたのでありまして、昨年以来、衆参両院の本会議において、奄美群島の祖国復帰に関する幾多の決議案が採択されたのであります。然るにこの実現が今日まで遅れて参りましたことは、誠に遺憾でありまして、政府の外交上の努力、熱意の点に、深い疑惑を持つて来たのであります。戦前において同一民族として生活して来た二十余力の同胞が、どん底の生活に喘ぎ苦しみ、配給米すら食うことができず、蘇鉄と甘藷で腹を満たしている状態は、一日も早く救わねばならないということを知りながら、八月八日のダレス声明以来五カ月もの間、これを外務省の一部事務官に任せて、総理大臣外務大臣等が先頭に立つて米国との交渉を行うことをせずに、放置的な態度をとつたということは、政府の重大なる、怠慢として、我々はこれを追及しなければならないと思うのであります。(拍手)かかる問題が一日も早く解決されることこそ、日本独立達成への前進でありまして、政府は、再軍備などに本腰を入れるようなことをせずに、全身全霊を挙げて努力しなければならないのであります。ともあれ、今日、奄美群島復帰は誠に喜ばしいことでありますが、今後我々に課せられた任務は重大でありまして、奄美群島が戦前からその経済的に著しく後進性があり、又、分離後、八年間の空白によつて、一切の経済、文化は荒廃し尽しておる現状を一日も早く救済し、本群島中央とが一体となつて計画的総合的に振興発展せしめて行くことこそ、彼らが今日まで叫んで参りました日本復帰の熱情に応える唯一の途であると信ずるのであります。而して奄美群島復帰の問題は、更に沖縄小笠原、南樺太、千島等の未だ返らざる諸島日本復帰の端緒をなすものでありまして、政府は、これまでの怠慢を償う意味においても、これらの諸島復帰に全力を傾注すべき責任があると考えるのであります。  沖縄小笠原百万の住民は、奄美群島と同様に熱烈なる祖国日本への復帰を希望しておることは一政府もよく御承知のはずであります。史的に、同一民族として、同一主権の下に政治経済上の生活を行なつて参りましたこれらの諸島住民が、祖国への復帰を熱望することは当然でありまして日本政府またこれらの住民復帰のために最善の努力を払うことは、これ又当然の義務と言わなければなりません。しばしば米国要路の人々の再開で言われておるがごとく、若し沖縄小笠原諸島米国の無期限管理に置くという条件の下に奄美群島復帰するということであるならば、断固として我々は政府責任を追及しなければならないのであります。政府は、沖縄小笠原百万の住民の意思をどのように尊重し実現しようとするのか。政府の善処を要望して止まないのであります。  敗戦の犠牲となつて八年間の惨め、な行政下にある沖縄小笠原諸島、千島列島等、未だ復帰せざるこれらの諸島に対し、政府はMSAに払う努力の何分の一かでも努力をしなければならないと思うのであります。(拍手)更に奄美群島復帰は、これら失われた領土の復帰に対する一つの重要なるテスト・ケースでありまして、今後の政府措置よろしければ、他の領土の復帰も期待できると言わなければなりません。  現地においては、当面の奄美群島振興対策費として二百億円を計上しておるのでありますが、群島荒廃の実情からすれば、当然急速にこれが予算化を図り、短時日の間に、内地並みの行政経済、教育、文化の水準に引上げなければならないのでありまして、これが喫緊の要事であると考えるのであります。現状は人間生活のぎりぎりの点まで追い詰められて、将来に希望もなく、文字通り草根本皮によつて生命を繁いでおる島民に、先ず生活経済的基礎を与え、将来に希望を持つて、子弟の教育にも專念できる条件を作り出すことが、何より政治の要諦であると信ずるのであります。  我々は、本協定自体、協定成立に至る経緯、交換文書等において幾多疑義のある点を認めるのでありますが、全国民待望復帰実現を見る今日、我々としましては以上の点について政府に張く要望して本協定承認を求める件に賛成の意を表明するものであります。(拍手
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) 寺本広作君。    〔寺本広作君登壇拍手
  39. 寺本廣作

    ○寺本広作君 只今議題になつております奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして私は改進党を代表いたしまして、賛成の意を表するものであります。  先ほどからの政府の御説明によりまして、奄美大島の祖国復帰に当つて我が国が回収する琉球円の処理の問題であるとか、又それに見合うものとして琉球政府奄美大島に対して持つている債権の放棄の問題であるとかいうようなことは、或る程度私たちはこれを了解したのでございます。併しながらこうした問題や、その他この協定の中に含まれております幾多の問題につきましては、まだそれが果して私どもの国が現在当面しております財政事情や国際慣行などに照らしまして、妥当なものであるかどうかということについて十分の得心は行きかねておるのでございます。併しながら奄美大島二十万の郡民諸君が、祖国復帰最後のデッド・ラインとして長い間待ちこがれておりました十二月二十五日は、もはや目睫の間に迫つております。余すところ幾時間もない現在この瞬間におきまして、私どもがかような問題の詳細な検討を他日に譲らざるを得ないような立場に今立たされておるのでございます。私はただ奄美大島が明日二十五日を期して祖国に復帰して来るという、ただこの一事のために、本件に対しまして惜みない賛意を表明するものでございます。ひとしく米軍占領下にあつたとは申しながら、内地の目覚ましい復興状況に比べまして、私どもが国会調査団として現地におきまして観察しましたところによりますれば、奄美大島現状は、丁度昭和二十一、二年当時における内地の戦災地にも比すべく、その復興ぶりは誠に遅々たるものがあつたのでございます。生活保護法による扶助料が月額二百十円、配給米も取れぬ者が夥だしい数に上つておるこの奄美大島の郡民諸君は、何らの罪なくして八年の長きに亘り、絶海の島々に閉じ込められてかような生活一を堪え忍んで来たのであります。而も八月ダレス声明が兆せられまして以来、琉球政府から配賦されます予算は、月割予算になつておりまして、その月割予算も逐次縮減せられて、行政切替時に際しての摩擦が、もはやその極点に達しておると私どもは観察して参つたのであります。かような情勢の下に、祖国復帰の日取りは十一月一日から十二月一日へ、更に十二月一日からダレス声明の文言通りクリスマス当日まで延ばされて今日に至つたのでございます。二十万島民諸君最後の望みをかけて来ましたこの日、このデツド・ラインを越すならば、必ずや島民諸君は絶望の深渕に投げ落されるであろうということを私どもは慣れるのであります。私どもが一切の論議を離れて、明二十五日を期して奄美大島が祖国に復帰するという、ただこの一事のために本件に賛成しようというのは、かかる理由から出ずるものにほかならんのでございます。  なおこの際、奄美大島復帰後におきまする同島関係予算について、一言政府に申上げておきたいと思います。窮乏の極致に立つて、多年辛酸を嘗め尽して参りました郡民諸君は、私どもの見たところでは、徒らに内地に依存してその援助のみにすがろうとする甘い気持は、今日これを持つていないように思うのでございます。郡民諸君は、彼らが復帰しようとしている祖国の財政も又非常に困難であるということを了解しております。同島郡民大会で表明されましたけなげな決意、できるだけ自力で立上り、そうして郡民の努力ではどうにもならん八年間の空白だけを祖国の政府によつて埋めてもらおうという決意は、聞く者の胸を打つものがあつたのでございます。本年すでに成立いたしております十億の予算の執行に当りましても、又明年度以降組まれます復興予算につきましても、政府におかれましては、こうした事情を十分お酌み取り頂きまして現地から提出されまする要請に対して十分耳を傾けて頂きたい考えでございます。  なお、この協定締結をめぐりまして、残りました残余の南西諸島が半永久的に占領を継続せられるのではないかという懸念は、ここ数目来国内に弥没したものでありましたが、先ほど来外務大臣の御説明によつて、それが誤誤であつたということが明確になつたことは、私の非常な喜びとするところでございます。外務大臣から御説明がありました通り、この交換公文の第一項が削除されたということにつきましては、意味があるということでございます。私どもはこの一項が削除されたここが意味があるということに特に重点に置きまして、今度の奄美大島の祖国復帰が腐矢となつて南西諸島に限らず北方の諸島を含め本来我が国の国土であつた地域が、祖国に復帰する日の一日も早からんことをこの機会に特に強く念願するものでございます。  最後に、私はこの機会に、ダレス声明以前から、長い間幾多の困難を冒して祖国復帰運動に従事して来られた群島の先覚者に対し、深甚なる敬意を表して、本案に対する私の賛成討論を終ることとしたいと思います。(拍手
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 長谷部ひろ君。    〔長谷部ひろ君登壇拍手
  41. 長谷部ひろ

    ○長谷部ひろ君 私は無所属クラブを代表いたしまして、只今提案になりました奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定案に賛成をいたします。  先ず第一に、太平洋戦争の犠牲を一身に引受けまして、政治上、行政上、祖国と全く離れ、渡航制限のために肉親の限りない愛情さえも断ち切られ、親の臨終にも会い得ないほどの有様でございました。又黒砂糖、大島紬、かつを節製造等の最も重要な産業は、原料入手の困難や肥料代金支払の不備、或いは製品輸出の悪条件、特に為替関係の不円滑等によりまして、戦前の二〇%乃至三五%になつたほどでございます。特に大島紬の衰微の蔭には、現地の町村長が、「私たちは大島紬を織つて、それが金に返つて来るのを待つほどの余裕はありません。今は全く島民経済は、大島紬を織る娘たちが、沖縄の賤業婦に売られている始末であります」と強く叫んでいるほどの状態でございます。この精神的にも経済的にも、八年という長い間苦難の限りを尽されながらも、而も敢然としてただ一筋に祖国復帰の悲願に魂を傾け尽されました現地の皆様方、又同島御出身の皆様方に対しまして、悲願御達成のお喜びを申上げますと共に、貴様方の御苦労に対しまして、限りない敬意を表するものでございます。なおアメリカ合衆国並びに政府の御苦労をも感謝申上げます。特に南方連絡事務所などの御功績を率直に認めまして御礼を申上げます。併しながら奄美復帰は、いまだ未復帰地域のテスト・ケースともなることでございますので、若干の希望を申し添えたいと存じます。  その一は、同群島復興計画についてでございます。大島紬は、織機台数一万九千八百台が五千八十台になり、従業員の数三万人が二千八百人に激減しておるのでございます。販路の安定、原糸の円滑入手、資金の供給、又テイーチキの増殖が必要なのでございます。次に黒糖は、戦前に比較いたしますと二七%になつております。そして外国糖との競争方策、肥料の低廉入荷、技術指導が最も必要だと思つております。水産業は、漁港の整備或いは水産物の保蔵及び冷蔵施設、又金融の問題の解決を必要といたします。特にアメリカによる用材伐採率は一九八〇%となつておりますので、暴風地域のこの島にとりまして治山治水上、この復興が本島の最も重大なことであると存じますので、綿密な復旧計画を要望いたします。  その二は、民生安定計画と教育の復興でございますが、食糧の配給につきましては配給機構、配給価格、需給関係がよほどの努力をしない限り混乱する虞れがあると存じます。又学校教育につきましても、全く荒れ果てたままで、未就学児童も相当にございます。例えば人口一万以上の町でも、学校らしいものは一校程度で、その他は馬小屋同様の堀立小屋で、その数が三百三十棟と申されておりますが、その中で勉強をしている有様でございます。これにつきましては、一日も早く子供たちが喜んで勉強できますように対策を講じて頂きたいと存じます。  その三は、ダレス氏の返還声明、それは八月八日でございましたが、その後、或いは十一月一日説となり、又正式政府声明は十二月一日説となり、ダレス氏声明以来実に五カ月も過ぎております。このような不誠実な有様から、奄美大島は全く取返しのつかないほどの打撃を受けたのでございます。何とぞあとに残されておりますこれと同様な幾多の問題、例えば沖縄小笠原諸島復帰は、住民の方たち、そして私どもも強く要望しておるものでございますし、なお復帰である限りは、二度と軍事基地化してはならないのでございまして、飽くまでも自主的に、大きな愛情と誠心を以て対策を講じて頂きたく、政府に強く要望を申上げまして奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定案に賛成をいたすものでございます。(拍手
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本件の採決をいたします。本件を問題に供します。本件承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  43. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致をもつて承認することに決しました。(拍手)      ─────・─────
  44. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、奄美群島日本復帰祝賀決議案(大屋晋三君外二十一名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、大屋晋三君外二十一名より、委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。大屋晋三君。    〔大屋晋三君登壇拍手
  47. 大屋晋三

    ○大屋晋三君 只今上程になりました決議案を朗読いたします。    奄美群島日本復帰祝賀決議案   奄美群島は、沖縄小笠原群島等とともに、米軍の管理下におかれて来たが、現地及び全国民の宿願が達せられて、いよいよわが国に復帰する日を迎えることとなつた。群島住民のよろこびは勿論全国民挙げて慶祝に堪えないところである。   参議院は、同群島復帰を心から祝賀し、米国の好意ある措置に深く敬意を表するとともに、八年間にわたり苦難の途を歩み来つた奄美群島の同胞を深い同情をもつて迎え、同群島の民生の安定と経済復興のため一層の努力を期するものである。   右決議する。    〔拍手起る〕  私はここに右決議案を提出いたしました発議者を代表して、その趣旨を御説明申上げます。  一日千秋の思いで待望していた奄美群島の祖国復帰は、いよいよ明二十五日を期して実現いたすこととなりました。終戦以来八年、長い占領下の異なつた環境にもめげず、ひたすら復帰の実現に直進して来られた二十三万の島民はもとより、日本国民はひとしく心から喜びを覚えるものであります。  顧みますれば、敗戦の結果とはいえ、久しきに亘り我々と一体となつてその運命を共にして来た奄美以南の諸島に住む同胞が一時行政的に我が本土より隔絶されており、祖国再建の事業に参画することはもとより、親戚知友といえども自由に相語り、相協力することができない実情にあつたことは、国民感情からいたしましても誠に痛恨堪え難いものがあつたのであります。而も昭和二十七年四月我が国の独立に伴い、現地同胞の本土復帰への要望は翕然として盛り上り、その叫びは痛切さを加えて参つたのであります。一方本土においても、旧領土返還要請の声は期せずして全国津々浦々に拡がり、活発なる復帰促進の運動が展開せられ、関係各国の好意ある措置が期待されて参つたのであります。かくて本年七月、米国政府奄美群島返還の意図を表明し、いよいよ明二十五日より本土復帰の念願は実現する運びと相成りました。日本国民の喜びはもとより、多年本土復帰を熱願して来られた奄美群島島民喜びもさこそと推察するに難くないのであります。ここに我々は敗戦後八年間の長きに亘り、苦難に堪え、祖国復帰に一路造進し来つた現地同胞の諸君に対し、深甚なる敬意を表すると共に、相共に慶祝に堪えないところであります。  奄美群島はその自然的条件に加え、本土から隔絶せられておるがために、経済的にも極めて困難な状態にあり、その現状については誠に同情に堪えないところでありまして、我々は現地同胞諸君の熱烈なる後輿意欲に応えて、民生の安定と経済復興のために一層の努力を期したいと思い、ここに奄美群島復帰に対し祝賀の意を表するために祝賀決議案を提出した次第であります。  なお、奄美群島復帰に当り、我が日本国民に寄せられたる米国政府並びに同国民の正義、友愛の精神に対し、深甚なる感謝の意を表すると共に、我々はこの際、奄美群島復帰を契機として、残余の旧領土に居住する同胞とも、一体となり得る日の一日も近からんことを期待して止まないことを一言附加えておきたいのであります。(拍手
  48. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  49. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて決議案は全会一致を以て可決せられました  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会      ─────・───── ○本日の会議に付した事件  一、故議員林了君に対する哀悼の辞  一、議員派遣の件  一、日程第一 奄美群島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  一、奄美群島日本復帰祝賀決議