○曾祢益君 私は
日本社会党第二控室を代表いたしまして只今提案になりました案件につきまして若干の
質問をいたしたいと存じます。
先ず、我々は
奄美大島の
復帰を極めて喜ぶものでございますと共に、やはり、この問題が解決すると同時に、
沖繩に残された八十万の同胞
諸君或いは
小笠原島等のまだ帰らざる同胞
諸君のことを深く考えざるを得ないと存ずるのであります。この観点からこのたびの
協定と
交換公文を見ますときに、我我は一方において喜ぶと共に、幾多の疑点を持たざるを得ないのでございまして、本来ならば十分に
委員会におきまして
質疑をいたすのが順序でございまするが、このたびは特別の場合でございまするので、本会議におきまして是非
国民に代
つて御
質問申上げたい極く重要点だけをピツク・アツプしてみたいと存ずるのであります。
第一に、
交換公文によりますると、
奄美群島及びその領水は、
極東の
防衛及び安全と特異の
関係を有することを
日本政府が認める、こういうことを言
つておるのでございます。これは一体どういう意味であるか、又このことが一体
如何なる
法律的或いは軍事的の意味を、
奄美大島の地位、そのステータスに及ぼすものであるかどうか、これは我我としても十分に考えなければならないのではないかと思うのであります。つまり完全なる無条件的
復帰ではないのではないかという疑いを残すような何らかの……
防衛の観点から見ましたところの特異の
関係とは一体どういうものであ
つて、その結果はどういうことに
法律的或いは軍事的になるのであるか、この点は特に
奄美大島自身についての問題でありまするので、先ずこの意を明らかにして頂きたいと存ずるのであります。
同じ
交換公文は更に続きまして、私の今申上げましたものと少し
関係をいたしておるのでありまするが、この次に申上げる点は、
奄美大島に対する一つの制約と申しますか、条件というよりも、むしろ残された
南西諸島、即ち
沖縄などに関する特殊の問題だろうと思いますが、
交換公文はこういうことを言
つております。今申上げましたよりに、この特異の
関係を認め、「
南西諸島のその他の島の
防衛を保全し、強化し、及び容易にするため
アメリカ合衆国が必要と認める
要求を考慮に入れるものと了解される。」この了解に対しては
日本政府からはその
通りであるということを言われておるのであります。これは文理的に見ますると、
奄美大島についての
要求ではないようでありまして、
奄美大島返還に関連いたしまして残れる
沖縄に対するところの一つの
要求であろうと思うのであります。
岡崎外務大臣の只今の御説明では極めて軽くこの点に触れられておりまして、いずれそれが具体化したならば、
日米行政協定等によ
つて処理するのだ、こういうことでございまするか、これはかなり容易ならない問題ではないか。
奄美大島を返すに関連いたしまして、
沖縄について何らかの不特定のかなり重要であるらしい
要求が出されておる。その
内容についてはわからない。
政府はこれを容れておる。かようなことでは、我々としてはちよつと納得できないのではないかと思うのであります。従いまして、これは一体どういう種類のどういう
内容の
要求であるのか。これを当然お突きとめにた
つてから
協定をされたと思うのであります。細目を伺わなければなりませんが、この点を是非明らかにして頂きかいのであります。
なお、これに関連いたしまして、同僚
内村議員も指摘されましたように、元来、
交換公文の、むしろ第一項は幸いにいたしまして
最後の瞬間に削除されました。削除されたことは、外務当局の御
努力を私は多とするものでありますと同時に、
日米両国の
関係上当然に削除すべきものであつたと私は確信いたします。併しながら、この削除されたことはいいが、ここに出ている思想については、これはやはり政治的に残
つておる問題であろうと思うのであります。即ち、
奄美大島の
返還に関連いたしまして
沖縄、
小笠原等のその他の島については、
極東の永続的な平和
状態が確立されるまで、現に行使している
程度の
管理及び
権限を維持する必要がある。
日本政府はこれを
承認する。こういうことであります。で、これは
アメリカの戦略方針から見れば、又
日本がこれに依存しておるような
状態から見て、一応無理ないという見方もあるのでございましようが、併しこれは決して容易ならない問題でございまして、果してかような
状態であるとするならば、
平和条約第三条においては、成るほど
岡崎外務大臣が指摘されたように、元来がこれは一種の
アメリカを施政権者とするところの
信託統治とするのが本来の方針であつた。併しそれはこのたび放棄しておる。結構でありまするが、併し放棄しているのは、放棄をすると同時に、現実にはそういうようなことは現在の国際連合においてはできない。
従つて実体は、現在
アメリカが行使している
行政、司法及び
立法の
権限である一部的或いは全部の
権限、現実には殆んどそれを全部行使しておる。そのことが
極東の永続的平和、もとより我々はこれを望むものである。併し果して
極東の永続的平和というような
状態が確立されるというのは、極めて望ましいけれども、極めてこれは理想的な
状態、若しその
状態まで、
アメリカが現に行使しておるこの三権の行使を一切緩めないということになるならば、それは
岡崎外務大臣が先ほど言われたことにかかわらず、これは当院のしばくの
院議に決して副うゆえんではない。我々はこれを心配するのであります。成るほど
協定の案文からこれを除かれたことは、繰返して申上げますが、極めて結構なことであります。誠にそうでなければならないと思う。私は確信を以て
アメリカに対しても、立派な
アメリカの友人の立場から申上げられると思うのであります。かかる要請を持つことは、いわゆる戦略的見地から見るならば仮にそれが妥当であるとしても、それが真に正しい
日米両国
関係の真の親善
関係から言うならば、その考えを放擲して行くことが必要ではないか。
政府は果してこの点を
如何に見て又
如何にこれに対処する御方針であるかどうか。この点を明確にして頂きたいものであります。この一項が削除されました経緯につきまして御苦心のほど、差支えない限り明らかにされることが、私は、
吉田政府のためにも、否、
国民のためにいいことであると存じます。私は遺憾ながら、併し削除されましても、同僚
内村君が指摘されたような、最近の
アメリカの
責任当局の言動等から見て
アメリカの意思には
変化はないのではないか。然らばこれに対して
政府は
如何にこの点を是正して行くか。
政府の決意及び方針を総理並びに
外務大臣から明確にお示しを願いたい。
本件に関連いたしまして
岡崎外務大臣は、先ほどの説明の中にも、決して
我が国の本来の領土に対する
国民の要望は、この
奄美大島だけでなく、
南西諸島の残れる部分だけでもなく、
小笠原もそうであるしという、いろいろなまだ返らざる島があるということを申されました。まさしくその
通りであ
つて、私たちは決して
アメリカに対してだけ
要求するのではございません。歯舞、色丹、南樺太、千島等に対しましても、
政府はこの際これに関連いたしまして、明確に
国民の正しい輿望に応える平和外交によるところの
返還の方針を御説明願いたいのであります。
最後に、同僚
内村君からも触れられました点にも関連いたしまするが、いわゆる
現地側の特に要望しておりまする
復興計画、
振興計画、差当り二百億
程度の
要求を持
つておられまするが、これに対する具体的の、大蔵
大臣の、或いは
政府の
関係大臣の御所見を伺いたい。大蔵
大臣に対しましては、更に、先ほどいろいろ御説明がありましたが、元来
B円そのものの
債務を我々が引受けるべきではないのではないか。成るほど
債権債務の相殺等もございまするが、何故に
B円の
債務を全額的に引受ける、こういう態度をとられたかについて国際法の先例等から十分なる納得行く御説明を願いたい。
更に、厚生
大臣に対しましては、一万人以上に上ると言われる
生活困窮者或いは
沖縄出身の戦没遺家族等に対する緊急なる
生活保護の
措置等についての御説明を伺いたいと存ずるのであります。
若干の時間が残
つておりまするようでありまするから、御
答弁如何によりましては再
質問をお許し願いたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕