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1953-10-27 第16回国会 参議院 水産委員会 閉会後第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二十七日(火曜日)    午前十一時二十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森崎  隆君    理事            秋山俊一郎君    委員            松岡 平市君            森 八三一君            木下 源吾君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    外務省参与  久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○水産政策に関する調査の件  (日韓漁業問題に関する件)   —————————————
  2. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは只今から委員会開会いたします。  都合によりまして暫時休憩をいたします。    午前十一時二十九分休憩   —————————————    午後三時二分開会
  3. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは午前に引続きまして委員会開会いたします。  先ず第一に先だつて日韓会談日本代表として交渉されました、久保田君から、特に新聞等久保田発言と言われております御発言に関して一つお話を頂きたいと思います。
  4. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 実は日韓会談決裂の原因と韓国側言つておりまする私の委員会の席上の発言につきましては、韓国側にも委員会の席上で言つたのでありますけれども、前後の関係がわかりませんと人の発言の本当の意味というものはわかりませんからして、一部分だけを捉えて新聞なんかで言つてらつては困ると言つておいたのでございますけれども、大体新聞の記事といいますものは、その場所だけが大きく出るものでございますから、前後の関係を詳しく御存じのないかたには、私がどうしてああいうことを言つたのかということが不明瞭であるのじやないかという感じを受けておりますので、少しその前後の関係を申述ベさして頂きたいと存じます。実はこれは全部請求権分科会と言いますか、部会と言いますかにおきまする私の発言が元でございますので、それはこの十五日の請求権分科会と言いましようかの席上のことでございます。この前にいわゆる夏休みが済みまして、日韓会談が開かれましたのは今月の六日でございましたけれどもいわゆる夏休みの前は双方から新たに原則的なことは言わないで、実際的に事務的に事をやつて行こうということで申合せができまして、そのようにやつておりました。それでまあ例えば韓国側からいろんな請求権につきまする詳しい例えば未払給料のリストだとか、日本から返してもらいたいという国宝とか美術品なんかのリストがたくさん来まして、そういうものを調べておつたのでございます。我が方からは請求しましたけれども回答はなかつたのでございますが、水産関係でも双方漁業の実態を調べて、それからだんだんと実際的な魚族保存措置に入つて行こうということで、準備的なそういう事務的なことをやつてつたのでございます。従いまして双方大体長い間やつてつたのでございますが、十月六日から開かれましたいわゆる夏休み後の会議は、非常に劈頭から空気が変つておりまして、韓国側では漁船を捕えたり、艦長以下船員を抑留したり実力行使をやつてつたものですからそういう既成事実の圧迫の前にあらゆる問題を一気に解決しようと図つたように思われます。従いまして請求権分科会でも劈頭早々先方では今までのようないわゆるフアクト・フアインデイングと言いますか、事務的なことをやめて、単刀直入に問題の本質に入つて行こうということで、向うのほうからは請求権の問題につきましては、日本側要求というものは認められないので、日本側請求権というものはないのである。請求権の問題として考えられるのは韓国側から日本に対する請求権の問題だけである。その範囲できめればいいのだ、そういうふうに出ておりましたものですから、勢い我が方としても主義の問題に入らざるを得なかつたわけでありまして、私どもとしましては日本側の従来の請求権の、つまり私有財産尊重という原則に基いた対韓請求権は放棄しておらないのだという議論に入らざるを得なかつたわけでございます。そうしますと向うのほうでは早速日本請求権要求は多分に政治的であると、まあこういうわけなんです。その意味はよくわからないのですが、実は日本請求権の問題は政治的ではございませんでして、非常に細かい法律論であるわけでございますけれども向うはそう申しまして、政治的であると、ところが韓国請求権要求というものはもう裁判所にも出してもいいような細かい最小限的な要求で全部法律的であるのだ、若し日本のほうでそういうふうな政治的な要求を出すということが前から韓国のほうでわかつてつたと仮定すれば、韓国側のほうでは朝鮮総督の三十六年間の統治に対する賠償要求したであろう、そう出て来たわけでございます。そこで私どもとしましては韓国側がそういうふうな朝鮮総督政治に対する賠償というふうな、それほど政治的な要求をいたさなかつたことは賢明であつたと思う、若し韓国側のほうでそういう要求を出しておつたなれば、日本側のほうでは総督政治のよかつた面、例えば禿山が緑の山に変つた。鉄道が敷かれた。港湾が築かれた、又米田……米を作る米田が非常に殖えたというふうなことを反対し要求しまして、韓国側要求と相殺したであろうと答えたわけでございます。そういうところからいわゆる朝鮮総督府の政治のことが出て来たわけでございまして、それがまあいわゆる新聞久保田発言と申されましたものの始まりでございます。これでおわかりのように、私どもとしましては、この朝鮮総督のことなんかは、日韓会談におきましては未だ曾つてこの四月始まつて以来我が方から口に出したことはなかつたわけでございます。今回も向うのほうから言い出されなければ勿論言及するつもりはなかつたのでございましたけれども、図らずも向うからそう出て来たものでございますからして、必要な意見を述べたというわけでございます。そうしますと向うのほうではだんだんとそれから深入りしまして、朝鮮総督政治は決して朝鮮の民衆を利したものではない、日本警察政治で以て韓国民圧迫して、そうして搾取したのだし、それから自然資源なんかも枯渇せしめたのだ、そうであればこそカイロ宣言韓国奴隷状態ということを連合国言つておるじやないかというので、いわゆる韓国奴隷状態カイロ宣言が問題にされたわけでございます。それに対しまして私は、カイロ宣言は、戦争中の興奮状態において連合国が書いたものであるから、現在は、今連合国が書いたとしたならば、あんな文句は使わなかつたであろうと一言答えたわけであります。そして、これがいわゆる私の発言と申されましたものの第二点でございます。第一点は総督政治の問題、第二点はカイロ宣言、第三点は、その前から問題でございました日本請求権主張というもので、日本請求権主張のように、つまり韓国にありました日本私有財産が没収されてないのだという解釈をとれば、これはアメリカの軍政府のやつた措置というものは国際法に合致しているのだけれども、仮に韓国のように、日本私有財産は没収されておるのだという解釈をとれば、米国国際法違反をやつたということになる。日本としてはそういう解釈はとりたくないのだ、そう申しましたのでございます。それが三点でございます。そうしますと、韓国側のほうでは、大体今度の第二次世界大戦後の処理におきまして、非常に国際法が変つて来たのだ、そうして被圧迫民族、例えば朝鮮民族独立と解放というふうな新らしい国際法原則が出て来ましたので、その大原則の前に、例えば私有財産尊重というふうな旧来的な国際法原則が無視されておるのだということから、そうだということであれば、例えば朝鮮独立にしても、講和条約を待たずにその前に独立をしておつた、それを日本国際法違反と言うかと、そう出て来たわけであります。そこで、それは第四点でございますが、それに対しまして私は、それは日本から見れば、韓国独立したのはサンフランシスコ条約効力の発生したときなんだから、その前に独立したということは、たとえ連合国が認めておつても、それは日本から見れば異例措置である、そう答えたわけであります。又終戦のときに日本人が一括すべて裸で以て強制的に朝鮮から送還されたことも、これ又新らしい国際法原則から割出した措置であつて、当り前の措置であつたので、これも日本側から言えば国際法違反であると言うかと向うからの質問であつたのであります。これは第五の点でございますが、それに対しまして、それは占領軍政策の問題でありまして、国際法違反であるともないとも言わないと、それが大体十五日の請求権委員会におけるいわゆる私の発言というもののいきさつの大要でございます。それがございましたので、向うのほうでは、そういうふうな日本側考えではとても話が続かないというようなことを言つておりましたけれども、果してその翌日にございましたほかの部会向うは休みまして、それから日曜を越えて月曜日のほかの部会向うは休みました。それで二十日の会合でございますけれども、これは本会議の例会が予定されておつたのですが、それに出て来まして、向う金代表が、この十五日の私と韓国側の応答を一々あらかじめ書いて来たものを読んだわけでございますが、一々繰返しまして、そうして向うはこう言うわけです。日本代表はこの前の請求権会議で、先ず……少し順序が逆になつておりましたけれども、五の問題が逆になつておりましたが、先ず第一点として、韓国講和条約発効の前に独立したことは国際法違反であると言つた。第二点に、日本人終戦朝鮮から裸で帰されたことが国際法違反であると言つた。それから請求権解釈について、日本米国韓国国際法違反をしておると言つた。それからカイロ宣言奴隷状態というものは興奮状態で書いたものであると言つた。それから三十六年間の朝鮮統治というものは……これは非常に向うは力を入れて言いましたけれども、少し向う発言を要約紹介いたしますと、非常に興奮的なものであつて、強制的な占領である、そうして日本貧慾と暴力を以て侵略したのであつて、そうして朝鮮自然資源を破壊したのである、言論の自由も何もなくて、朝鮮人奴隷状態なつたんだということを非常に強調したわけでございます。そこで私は、こういう議論は際限なく繰返しても、会議の問題の前進には寄与しないのであるからして、簡単に答えるということを申しまして、もう一遍委員会におきまする十五日の発言通りに、韓国独立ということは日本から見れば異例であつたのだ、併しそれは国際法違反であるとかないとかという問題ではない、ただ異例であるのだということを申しまして、それから日本人送還は、これは国際法違反であるともないとも言わなかつたのだ、これはまあ財産請求権に対する日本解釈は、当時にすれば、米国側軍政府国際法違反を犯したことにはならないのだ。それからカイロ宣言効力戦争中の興奮状態で書かれたものである。それから朝鮮三十六年間の統治は、あなたがたの言われるような悪い部面もあつたかも知れないけれども、いい部面もあつたのだ。第一この問題は日本側は触れたくなかつたのだけれども、あなたがたはマイナスばかりを述べるから、私のほうはプラスのことを述べたのだ、そういうことを言つたのでありますけれども向うの側の金代表は、日本側代表発言は破壊的であると、これは五回も六回も同じことを繰返して言われるのです。これはもうすべてこの前に回答した通りであるのだと言つて取り上げなかつたわけでございますが、向うほうじや、こういうふうな日本側代表の言うことは、すべて日本政府の基礎的な態度を示すものかと言いますから、一体それはどういうことだと言いますと、向うは又、朝鮮独立異例であるとか、カイロ宣言文句をああいうふうに書いておるとか、朝鮮総督政治韓国側利益を与えたというようなことはとても受取れないというようなことを繰返しまして、結局二十日の本会議はそれで済んだわけでございます。そしてそのとき最後に、日本側としては、委員会は毎週一回開くことになつておるのだから、この次は来週火曜日にしよう、明日は水産委員会があるのだ、この水産委員会では漁業委員会があるのだ、漁業委員会では、この前の漁業部会でも申したように、日本側は具体的の案を出すつもりであるのだ、水曜日の朝は予定通り漁業委員会をやろう、その次に日本請求権委員会をやろうと、それをやつて第四回の本会議を来週の火曜にやろうと言つたのですけれども向うが聞きませんでして、明日の漁業部会は一日延ばして、請求権も又一日延ばして順繰りにして、明日二十一日には第四回の本会議を開こうと頑張るものですから、そういたしまして、二十一日の本会議になつたわけでございます。第四回で最後であつたわけですが、開いて見ますと、向うはやつぱり同じことを繰返しますので、ここで一々御説明する必要はございませんが、要するに同じことでございます。もう私どもとしましては、この前答えた通りであると、向うのほうではこの通りになつていると言つて、私の言つたことを、例えば第一点の講和条約発効前の韓国独立異例であると言つたのを、韓国側議事録では、国際法違反だと言つたということになつているからということで、非常にいわゆる食い下つて来まして、それで最後金代表は、こういうことだからして、先ず第一点として私にこの五つステートメントを引込めてもらいたい。第二点にこの五つステートメントは無論間違つてつたということを認めろ、そうでなければ韓国側はこの日韓会談会議に出席することが不可能である、そう言うものですから、私は同僚と相談いたしましたけれども、まあ一時そうして従来の日本側日韓会談の妥結に対する熱意を述べましたあとで、特に水産関係のことで李承晩ライン強制実施ということは非常に不当なことで、日韓会談の順調な進行を害したということを強調しましたあとで、最後金代表のあれに答えると言いまして、第一点のステートメントを取消せ、ウイズドローしろ、引込めろと言つたことは、引込める考えは毛頭ありません、第二点の悪かつたことを認めろという点は、悪かつたとは考えませんと、これによつてあなたがたが会議に出て来られないということは、日本代表部の希望と相反することであつて甚だ遺憾であるけれども、止むを得ないということで、まあいわゆる会議が続行不能と言いますか、決裂になつたような次第でございます。これが大体まあ私の、新聞で言いました久保田発言というものの内容と、その前後の関係であるわけでございます。
  5. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 何か御質疑はございませんか。
  6. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そういうことのために韓国代表部の者は全部引揚げてしまいましたか。
  7. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) まだこちらにおるようでございます。その後は会議は行われませんけれども、まだ韓国に帰つておらない。日本におります。
  8. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 大体全部の者がおりますか。
  9. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 全部の者がおると思つております。
  10. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 それは何かほかに意味があつてのことでしようか、或いは又問題をほぐして行こうというような意向が多少でもあると受取れるような点はございませんか。
  11. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 新聞会議決裂したのじやないと韓国側言つたということが出ておりましたが、韓国側のほうでは日本側代表のほうで発言を取消さないから会議に出て行かないので、まだ決裂したのじやないという解釈をとつておるのか知らんとも考えられるわけでございます。そうしますと向うほうじ日本の出方を待つておるということも想像できるわけでございますけれども、その点は的確にそうだというような見極めは実はついておらないわけでございます。
  12. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私らよくわかりませんが、この日韓会談というものは日本としては先ず第一に漁業問題という差迫つて日本の利害に大きな関係のある問題でありますが、韓国側としてこの日韓会談をやる必要のある問題もあるのでありますか。
  13. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 実はこの夏休みに入ります前に、余り長く日韓会談をやつておるのも何だから、まとまりそうな問題だけをまとめまして、そうして先ず両国が外交関係を開きまして、それで例えば請求権の問題とか、漁業問題というようにまとまるとしましても相当長く交渉を要するというようなものは外交関係を開いたあとの懸案として不断の努力をして行つたほうがよいのじやないかということを言いましたけれども向うのほうでは五つの問題が不可分であつて、これを全部一括して解決して行かなければ駄目だということでありましたが、向うとしましてはやはり全部解決したいと思つておるらしいのでございます。今度開きまして感じましたことは、向うとしましては、主たる点は請求権の問題で、向うの言うように、日本側主張を引込めさせて、韓国主張だけを認めさそう、これが最大の眼目であつたと思われます。私どもの見ますところでは、漁業問題につきましては、向うはもう李承晩ラインというのはいわゆる魚族保護ラインである。あれは日本が認めればよいのであるということで、日本具体案を出していましたけれども、そんなに興味を惹かれておるような恰好は見られなかつたように思われるわけでございます。  そのほかに今度は新らしく向うが言い出したことで、従来とちよつと変つておると思われましたのは、国籍処遇の問題につきまして、犯罪人引渡条約、基本条約ですが、基本条約関係しまして犯罪人引渡条約を作ろうじやないかということを初めの、本会議開会の日に言つておりました。これは新らしい、特に強調したところで、我が方としましてはむしろちよつと異様に感じたことでございますが、それから国籍処遇に関しましては去年あたり、つまり講和条約発効前までは内地におりましていろいろな犯罪を犯しました在日韓人を帰しますときには、向う受取つてつたわけでございますけれども講和条約発効後は受取つておりません。そのわけは成るほど在日韓人というのは日本の法的な扱いでは全部外国人になつており、一方韓国国内法扱いでは全部韓人になつておる、その点で日本韓国の間の国内法の取扱は合致しておるのだから差支えないのだけれども、併し日本韓国関係、国家間の関係について見るというと、これらの在日韓人国籍はきまつておらないのだということを言い出しまして、きまつておらないから受取ることはできない、そう言つてつたわけであります。それで今度は受取らないというばかりでなくて、一歩進めまして、現在大村韓人収容所に百二十五名もう長くいる人がございます。韓国受取らないものですから、こういうような人を長く大村に収容しておくということは人道上の問題であるから、あれを早速釈放してもらいたいということを韓国側は言い出しております。その理由もよくわかりませんけれども、つまり大村に収容された朝鮮人をすぐ釈放しろということと、それから基本条約関係では犯罪人引渡条約を結ぼうといつたようなことが今度の夏休み後の日韓会談の新らしい発言でございまして、そういう点から考えますというと、第一の関心の点は請求権の問題、それから第二番目は犯罪人引渡条約というので、内容はわかりませんけれども、その点であつたと思います。向うの口調から察しまして……。それから大村人々の釈放ということは、これはよくわかりませんけれども、そういうことがございますので、向うとしましても、日韓会談をまとめたいという利益は、勿論まとめる利益はあると思うわけでございますけれども、併し日本漁業問題を解決したいというその必要性熱意と言いますか……とは相当かけ離れたものがあるのじやないかと、そういうふうに受取られるわけでございます。
  14. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一つ、これは直接我々水産関係には関係がないかと思いますけれども、無関係ではないと思うのですが、朝鮮人処遇と言いますか、国内ではいろいろな犯罪の裏には朝鮮人が非常に多いと、殊に思想関係においてもいろいろな分子が多いのだが、今日本におる朝鮮人としては、いわゆる北鮮系南鮮系と、こう二つに分けて見ておるようでございますが、この北鮮系と称する朝鮮人は、仮に送還をするという場合には、これは北鮮送還しなければならんものであるか、南鮮送還してもいいものであるか、この北鮮系と称する者は、必ずしも三十八度以北の者ばかりではないと私どもは思うのですが、そういう者は日本政府としてはどう見ておるか。今後これを送還するといつた場合に、話合いがついた場合には、南鮮国籍を持つておる者だけを送還してやつて北鮮の三十八度以北国籍でありますか、或いはまあ生れたといつたような者、中には日本に生れた者もありましようが、そういつた者送還の場合にはどういうふうに考えられるわけでありましようか。
  15. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 講和条約発効前まで向うは数回受取つておりましたようですが、強制送還された者を……、そのときには別にそういう南北鮮の問題で日韓間に困難があつたようには聞いておりませんけれども、その後まあ送還しましても向う受取つておりませんので、その間よくわかりませんけれども、まあ逆に南北の対立と言いますか、存立という傾向が一層甚だしくはつきりして来ましたので、これは相当大問題であろうと思うわけでございます。従いまして、この条約を書きますときに、日本から見ますと、日本におります朝鮮人外国人であるということは、それはもう勿論間違いないのでありますけれども、全部韓国人であるというふうな書き方は、これはまあ甚だ問題が多いことだろうと思いまして、日本におりまする人々の中には半島むしろ北の人が多いわけでありますので、今度は話合い条約を起草するまでに行きませんでしたから、未解決で残りましたけれども、将来の大問題としまして、国籍処遇条約内容の非常に重大な点で、未解決のまま残されておるわけでございます。
  16. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そのいわゆる半島人、総称して半島人と言いますが、そのうちには日本国籍を持つた者もあるのではないかと思うのです。大体日本国籍を持つておれば日本人言つたらいいようなものですが、実際分けて見ると、半島人であつて一時日本国籍を持たされた時代があつたので、そのまま日本国籍を持つた人であつて、今日ではいわゆる半島人と言いますか、朝鮮人或いは韓国人として一般に見られておるのでありますが、そういう日本国籍を持つた者は、これはもう外国人と言えないのでありましようか。
  17. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 実は日本養子縁組なんかして日本国籍をとつた人でありますとか、帰化の手続をとつて日本国民になつた人は、これはまあ日本人でござりましよう。そういう人は韓国人とも言えないのではないかと思います。
  18. 森崎隆

    委員長森崎隆君) その点について、あれは戦争中に全部改名させたことがあるのですね。ですから、三十六年前に日本の領土になつた日本人になつたということで、国籍を移したり、そういうような手続は全然してないわけなんですね、名前を皆変えてしまつておるわけなんですね、それを戦後もずつとそのまま続けて本人承諾しておる場合には、日本人と見られることもあるわけですね。おれはもう独立したのだから元に帰るという意思表示をして、昔の李とか漢とかいう名前を名乗れば、これは又半島人になると、その点は外務省ではつきりしておるのではありませんか。その点ではないかと思います。
  19. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 私もその点ははつきり最後的な回答を申上げられないと思うのですけれども、私の考えでは、名前を変えましても、それで以てどうなるのですか、国籍法が昔は朝鮮に適用されておらなかつたのですね。日本国籍を取得にならなかつたのではないかと思いますですが、これはもう少し検討しませんと最後的な回答はできませんのですがね。
  20. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私どもがそういうお尋ねをしますのは、こういう事態になつて来まして、国民の食糧問題についても非常に日本が困難しておる際に、六十万、七十万という朝鮮人をいつまでも養つておく必要もないじやないかと、早期に帰せというような声も相当あるわけですけれども、そうなつた場合にはどのくらいの者が帰せるかということも疑問になつて来るわけでございます。その点は後日又条約のときに出て来ると思いますけれども、それまでに日本政府としては調べ上げておかなければならないはずだと思うのです。その点でまあお尋ねしたわけです。
  21. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 私は一応の考えで甚だ恐縮でありますけれども日本人になりきつておると申しますか、国籍法上今日本国籍になつておるという人はむしろ少くて、大多数は日本から見ますと外国人になつたという取扱に入ると考えております。
  22. 松岡平市

    ○松岡平市君 先ほど秋山委員が質問されて、お答えになつたけれどもちよつと私よくわからんところがあるのですが、日韓会談が一応決裂なら決裂、進行しなくなつたと、ところがその進行しなければ韓国が何か困るというような……先ほど今度の会議向うが妥結を願つてつた点はこういう点があつたようだとおつしやつたけれども、そういうものは、現在の状況では、妥結されればされて、向うは妥結を希望するかも知れんけれども、何も別に妥結しないからといつて韓国は一向困らないのではないか。何か会談をしてちやんとした話がきまれば韓国側が希望すると、韓国側が喜ぶ、利益になるというような事態が何かあるかどうか、これを一つはつきり教えて頂きたいと思う。
  23. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 一番はつきりいたしておりまするのは、まあ請求権の問題が韓国主張通りにきまれば非常に向うとしてはいいわけでございまするので、その点が一等向うの希望する点だろうと存じます。それから第二の点ではつきりいたしておりまするのは、いわゆる船舶問題でございますが、これは日本から幾ばくの船を韓国側にやろうということでございます。もつと詳しく申しますと、アメリカが日本占領しております当時にスキャッピンが出まして、終戦のときに朝鮮の水域にあつた日本の船と、それから朝鮮の総督府に籍を持つてつた日本の船を韓国に返せというスキャッピンがございまして、この船の問題が起つたわけでございますが、ところがそのスキャッピンの実施に当りまして、講和の発効前でございますけれども韓国側はこんな船があつたはずだと言つて、持つていたリスト日本側が持つていたリストと甚だ食い違つておりますので双方話合いがきまらなかつたわけで、そのうち日本は去年の会議でこのスキャッピンの基礎を離れて日本としてはそれじや韓国の海運を助けるという意味で幾ばくの船を上げましようと言つて非公式に内示したトン数のものがございます。それは向うとしてはそのときにはトン数が少いからと言つて受けませんでしたけれども、仮に日韓会談がまとまりますと韓国としては新らしく日本から船がもらえるということになりますので、これはまあ向う利益と思います。それからあと犯罪人の引渡しなんかは内容は、向うの意図はわかりませんものですから、どれくらいのものかわかりませんけれども、まあ向うとしては利益になるだろうと想像せられるのであります。主な点としては請求権と船というのが具体的な向う利益だろうと思つております。
  24. 松岡平市

    ○松岡平市君 その財産請求権というのは、これは日本が請求するやつでございましよう。だから結局向うの希望通りにきまれば利益を得るけれども、きまらないにしても放つて置けば、何年放つといたつて別に向うは黙つて今のままほおかぶりしておれば一向私は向うは困らないんだ。それから犯罪人引渡しについて、私はまあわかりませんけれども、現在日本人朝鮮におつて犯罪を犯した者の引渡しを受けるというような事案というものは殆んどないんじやないか、むしろ朝鮮人日本におつて犯罪を犯した者を向うが引取るという事態が実際の具体的例としては多かろうと思うんですが、向うとしてはそういうものを現在の朝鮮の国情においてどんどん引取りたいという希望もなかろうし、私はそういうものについてどういうふうにあなたは考えていらつしやるか知らんけれども、それが妥結して向うが何かの利益を得るというような具体的なことは想像もできない。要するに今お話を聞いたのでは船舶を何がしか日本から引渡しを受けるという問題以外には差当つてのところ日韓会談というものを向うが続けて行くとか更に開くとか、そうしてそのために利益を得るとかということはなさそうに考えられますが、そうでございましようか。
  25. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 大体私もそうだろうと思つております。
  26. 松岡平市

    ○松岡平市君 そういたしますと、結局日韓会談なるものは、日本はいろいろな点において非常な希望を持つているけれども韓国なるものは大体これはまあ大した希望は持たない。船舶引渡しのこと以外には、別にこれという利益を受けるような希望もなさそうだし、従つてまあ日本が十分向う要求を入れてやるという態度を示さない限りは、実際的において向うはこれに乗つて来ないというのが、大体の私は現在の状況じやないかと、こう思うのですが、ところがこの間外務政務次官小瀧君の話だと思うのですが、まあこの会談がよしんば決裂しても、ほかに方法がないわけではないと思う、なかなか困難であるけれども、あらゆる手を尽して打開することが外交です、別に外交交渉によつて解決する途もないわけではないと、こういうような説明を一応されたわけでありますが、一体具体的に韓国韓国日本との関係が、今そういうようなふうに何も向うが大して日本と会談をして、そうして得るものがないというような現状下において、別な外交交渉、どんな形か知りません、私は説明聞かなかつたわけですが、まあ日本としては平和的な手段による外交交渉以外には、何にも現在のところ解決の手段を持たないと思うのですが、あなたがた外交の衝におられる人として、こういうふうな方法を以てすれば、なお話を進めて行くような手段が立つのであると考えていらつしやるかどうか、それはどういう方法であるか、一つ聞かして頂きたい。
  27. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 先ほどちよつと私の言葉が足りませんでしたのですが、韓国としましては、今日韓会談が即時まとまらなくてもそう困る問題はないと申上げましたのですが、強い希望としましては、やはりこの請求権でございまして、向うの宣伝は、これは誤まつておりますけれども、アメリカあたりで盛んに宣伝しておりますのは、日本韓国に対して財産を請求していると、日本の言う通りにすれば朝鮮のすべての財産の八五%を要求するわけになるのだと、日本のほうへ持つて行くことになるので、こういうことになりますれば、日本は再び朝鮮を取ることになるというような宣伝をいたしております。八五%というのは、会議の席で私も質して見ましたけれども向うは的確な返答ができなかつたのですけれども、これは勿論まあ宣伝でありますけれども向うとしては、日本請求権要求を何とかして捨てさせないと、相当額なものを持つて行かれるという不安があるわけでございまして、何とかして日本請求権を捨てさして、自分のものだけ残しておこうと、これはまあ相当強い希望でございまして、日本漁業問題解決必要性と相対するくらいなウエイトを持つている、向う考えでは持つているのじやないかと思われるくらいでございます。差当りの日本漁業問題のように、今困るという問題じやございませんですね。
  28. 松岡平市

    ○松岡平市君 それはあとのほうのお答えがないのだが、併しその場合でも請求権は成るほどあるけれども、現実には日本請求権というものは国際法上あるというだけのことで、これを実際に履行するという方法は、今のところ平和的には向うが応じない限りはできないわけでございませんか。
  29. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) その通りでございます。向うのまあ舌裏から察しますと、日本がそういう請求権があると主張しておつて、そのうちに韓国へ人が入つて来て、又昔のようないわゆる総督政治のような韓国の何と言いますか、ドミネイシヨンに出て来るのだというようなことを考えているのだろう、だから請求権を、戦争でとれもしないのを主張しているのだ、こう言わんばかりなんでございますね。向うの一種の何と言いますか、対日猜疑心と申しますか、そういうものが請求権の裏にあると、私は考えるのでございます。
  30. 松岡平市

    ○松岡平市君 成るほどそういう猜疑心もあるし、ここでもう請求権はないのだということがきまれば、或いは日本が放棄したということがきまれば、それは向うは安堵するでしようけれども、それは又その心配が残つているというだけのことで、日本が現在李ラインというものを布かれたために、漁業が現実にできないのだということとはおよそ事違つて、私は向う利益で以て現実に何も日本人が行つてつて来ることができないわけなんですから、差当つて向うは三年や五年このままで延ばしたところで何らの損害はこうむらない。日本は現実にもう毎日々々今も損害をこうむつている。こういうことであつて、私は何かの折に日本が非常に譲歩してやつて、会談を妥結させるならば、向うは応ずるかも知らんけれども向うとしては何も今急いで会談をしなければならんことはないのじやないか、こう思うのです。従つて会談が今決裂のままであれば、日本が一生懸命何かの方法に訴えない限りは話の緒はないのじやないか、平和的な、少くとも平和的な方法ではないのではないか、こう思うのです。何かしらありそうなことを小瀧政務次官はおつしやつたんだからそれはどういうことであるか、どういう方法でやれるんだろうかということをお尋ねしたい。
  31. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) それはまあ、この例えば日本はいわゆる向うの李ラインというものは国際法上不当である。今まで攻撃しておりまして……、併し今度は具体案を出すと言つておりますので、向うとしては余り希望をかけないかも知れないけれども具体案内容自体によつてはだんだんと話合いに乗つて来ようかということもありはしないかと思います。  それから又例えば日本のほうからいわゆる請求権問題に対する向うの非常に気に入るような案を出すとかいうことも期待しておるのではないかと思いますので、政務次官の申されましたのは、そういうことに対する具体案というふうなものを考えておられたじやないかとも考えられますけれども、おつしやる通りにその日韓会談で差当り解決しなければならん問題の焦眉の急、火のついているのは日本側でございまして、向う側としては比較的時間的に余裕のある考え方ができる問題である。その点は全然同感でございます。
  32. 松岡平市

    ○松岡平市君 その具体案というものを出すというようなことは、結局まあ李ラインというようなものは認めないけれども国際法上の一般に通じておる三浬ですか、その沿岸線から幾らかは延ばしてやるとか、或いは何かこう日本が譲るというより以外にはその具体案なるものは、我々交渉に持込む具体案というものは私はないだろうと思うのですが、何かそういう原則は譲らずにやる方法が、例えば実際的には時期を限つて、そこにはそういう時期以外には漁業をせんとか、一部分はもう日本人は入らん、或る部分には入らんというようなことを向う主張を或る程度入れるということ以外には具体案はなさそうな気がするのですが、それよりほかに何か具体案という方法はございますか。
  33. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 向う主張としましては、李ラインは不当であるのだから、これはもう断固として排撃するという立場に立ちまして、あの既成事実は認めないんだ、そうしますと日本考え通りで行けば三浬沖まで日本が行つていいわけだけれども、そこは韓国漁業日本に実勢力は劣つているのだろうからして、その状況を考慮して韓国漁業も立つて行くように保存処置を講じてまあ何と言いますか、両方の漁業が成立つようにしよう、その具体案を探そうじやないかという、一応不当なる李ラインというものをとつてしまつた前提において、日本のほうで譲ると言いますか、相談をして適当な措置を講ずるという考え方じやないかと思います。
  34. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一つ私伺いたいのはあの李承晩ラインというものを引いたあれは何によつてああいう線を引いたかということの説明でもございましたのでしようか、韓国側から……。
  35. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) それはございました。それをたびたび言つておりますが、あれは韓国魚族保護と、それから平和、国防と言いますか、ときどき変るのでちよつとはつきりしないのでございますが、両方の漁業が入り乱れるときには紛争が起きるから、紛争防止をするという意味で紛争防止ということも言つております。ときによりましてはスパイなんか入つて来るのを防ぐ。そういうスパイということにも使うことがございまして、紛争防止、平和ラインという、内容がときどき変りますが、魚族の保護と平和ライン、その両方の理由を掲げております。
  36. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 秋山委員の申されますのはそういうのじやなくて、どういう意味で、李承晩ラインというものの引き方、なぜああいう竹島を入れて、入れることにしたのは別な意味がありましようが、ああいう海区を先ず引いて入れた……。
  37. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) それは、その説明はございませんでしたが、ただ私、想像でございますが、いわゆるトルーマン宣言を真似しましたようで、南米あたりの線は二百浬ぐらいまでのところを領海と拡張して制限がございます。それなんか恐らく朝鮮側の先例としては考えておられると思います。それと、それからマッカーサー・ラインがございましたですね。それからクラーク・ラインというのが、クラーク・ラインあと、マッカーサー・ラインも一応の基準になつているかと思います。
  38. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 大体言われておるのは大陸棚というものがトルーマン宣言によつてやられておる。それを真似て来たものと思いますが、あの線は必ずしもいわゆる二百キロ線か、二百キロ線に沿うておるものとは思わない。あれを引いた根拠は何かあるはずと思うのですが、その点何にも言及しておりませんか。
  39. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 言及しておりませんです。  それから大陸棚のいわゆる二百キロというものも向う言つておりません。で御承知の通り李宣言では大陸棚の部分のところは深度の如何を問わずと断わつてあります。字句が拡張しているわけでございます。
  40. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  41. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて下さい。一つお聞きしたいのですが、十五日の日にあなたの例の発言が、或る意味で引出されて来たという、話の経過全体を見まして、計画的に、と言うと語弊があるかも知れませんが、あらかじめこういうことを意図してあなたのこういう質問を出すようにだんだんと向けて来たというようなところはございませんか。そういう点は感じられますか。偶然にああいう話になつてあそこへ行つてしまつたというように御解釈していられるのか、或いは考えて見ればどうも大体準備しておつたところがあつたというようなところはございませんでしようか。
  42. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 今度開かれましたのは十月の六日でございますが、そのときにこういう戦略と言いますか、戦術と言いますかを想定しておつたと私は考えられないのであります。十五日の先日の委員会でたまたまそういうふうに話が進んで行つたものですから、この次のいわゆる第三回の本会議の二十日、それから第四回本会議の二十一日、この両回はもう私の十五日の分科会発言を捉えて、やろうと思つたことは明らかでございます。従いまして十五日の会のあつたあと、そういう戦略というものを編み出して、これで以て日本側に全責任をおつかぶせて処置してしまおうという作戦に出て来たということはほぼ明らかだと思います。
  43. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 十五日の議論は、お互いに予想せずして結局こういうような不当なやりとりになつて来たわけでございますね。
  44. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) そうでございます。実はこの十五日の前にこの日は大藏省の阪田局長が出ておられましたが、会が始まる前に十時前から相談いたしまして、今日は余り議論をしないで、差当り漁業問題が主なんだからして、それで以て具体案が出て相当軌道に乗るまでは請求権の問題など余り原則論なんかやらないで、簡単に散会しようじやないかと言つて出たわけでありまして、図らずもこういうことにだんだん話が深入りしたということが事実でございます。
  45. 松岡平市

    ○松岡平市君 或る人は、朝鮮はあなたの発言を取消せ、取消しさえすれば交渉すると言うから、取消せばいいじやないか、何も面子に捉われる必要はないじやないか。こういうようなことを言う人もあるようでありますが、私たちはこれはそういうわけには行かんと思うのですが、若し向うが言うから向うの言う通りに会談を継続するために、或いは会談を新らしくやれるようにするためにあなたの発言なるものを取消す、向う要求通りにしたということは、一体外交上どういうことを意味するか。これは重大なことを意味すると思うのですが、これは一つ簡単で結構ですから、それが絶対取消し得べき性質のものでないということを御説明願つておきたいと思うのです。
  46. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) 私はやつぱり取消すベきものじやないと思つておるのでございますが、あれ以来考えました結果といたしまして、例えば朝鮮総督政治の問題で、これは朝鮮側の言い方は、日本が暴力と武力で以て侵略したんであつて、天然資源、ナチュラル資源を枯渇したというようなことは、これは事実に反しておりますので、これはどうしても認められないと思うのでございます。総督府政治の悪い点もあつたことは認めるとしましても、いい点もあつたということはこれは日本としましてはどうしても取消せないことだと存じます。それからあとの問題は、大体国際法原則論になりますけれども、例えば私が、日本人が裸で帰されたのは、それは国際法違反であると言わんと言つたのを、向うのほうでは違反言つたと一方的にきめておりまして、私の発言を認めないで、向う議事録にあると称する国際法違反だと言つたというのですから、それを認めますと私が言わなかつたことを言つたことになりますので非常に困る。その点からもそのほかの問題に対してもそうでございますけれども取消すということは非常に困ると存じます。
  47. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 今の久保田さんの御説明でちよつと考えたのですが、この五つの項目の御発言を引込めるということと、それからこれが間違いであつたということを認めことと二つ要望しておるのですね。その二つを要望しておるということは、言い換えましたならば引込めるというは別のもののだ。間違いであつたという詫びを入れて過ちを認めるということは、これ又別の問題ですから、五つ久保田さんの発言を引込めるということはできないことはないのです、できるとすれば当日のお互の議論は全部ないものと考えて、韓国側発言日本側発言も全部白紙に還元するという形でお互に引込めればこれは引込めることができる。従いましてこれが間違いであつたとかいうことを認めることは絶対にしない。そういうことですね。そういう意味の可能性はもう全然ないのですか。
  48. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) そういたしましても、今度はすぐ又請求権の問題とか出てくるのでございまして、日本請求権はこちらから言いますと正当だと言うし、向うではそうぢやないということがすぐ出て来るのでございまして、そのほかにカイロ宣言とか、独立の時期とか日本人送還、これは直接関係ございませんけれども請求権の問題から来るいろいろな議論、それから三十余年間の政治、これに対して向う賠償でも請求しようというわけなんですからちよつとこれは困りましてね。
  49. 森八三一

    ○森八三一君 今までのお話を聞いておりますと、結局日韓の会談というものはあなたの発言が取消されなければ再開の見込みはないというように私は受取つたのでございますが、そうするとその内容はどういうものであるのか十分検討しなければなりませんが、仮に当面する漁業の問題を解決して参りますために具体的な案というものができたといたしましても、それを提示するチヤンスというものは与えられないというようになつてしまうのではないか。だからこつちのほうでも了解ができ、向うも納得ができるであろうという仮にそういうような具体案というものが考えられたといたしましても、それを先方に伝えるというような公式な機会というものがめぐつて来ないというように一応考えられるが、そういうようなことについて何か話をとり進めて行くというような緒というものが取消さずして何らかの方法でまとめられるという対案が考えられないものかどうか。
  50. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) これはやはり私はこういうような恰好で会議を続行不可能になりましたので或る期間は止むを得ませんから、いわゆる冷却期間と申しますか、というものを置いておかないといかんと思うのですが、そうすると又自然に気持が収まつて来まして再開の機運というものが出て来ないものでもない。去年の春の会談も日本の何で決裂したのでありますけれども、又再開の機運があつたというわけでありますので、今すぐには駄目であると思いますけれども、再開が絶対できないということじやないというように思うのでありますけれども……。
  51. 森八三一

    ○森八三一君 先刻松岡委員の御質問にお答えなつたように日韓の間に今問題になつている事項を協議して参りましたところで、韓国側には直ちに非常な有利な条件になるというようなものではなくて放つて置いても大して痛痒を感じない。財産の請求権にしてもこつちに持つて来れるものではなくて、向うは現に使つているのですから何ら痛痒を感じない、困るのは漁業ですね、ということが肯定されたように思いますが、そうすると放つて置いても向うは痛痒を感じないから、ここで冷却期間を置いて見たところでそういう緒が開けて来るというようにはちよつと考えられないのですが、そこで冷却期間を置けば又新らしい事態というようなものが想像されて来るのか、何か国際的にそういうような雰囲気というものが違つて来るという見通しがあるのかどうか、又そういう雰囲気を作つて行くために何か手を打つておられるのかどうか、ということをお伺いしたい。
  52. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) これは向う側がこういう態度に出ますもう少し深いところを考えますと、日本韓国側と非常に考え方に根本的に差がございまして、韓国ほうじやまだ依然として日本は敗戦国であつて韓国は、戦勝国であるような錯覚に陥つているところがあります。先ほどもちよつと申上げましたように、いわゆる被圧迫民族独立という新らしい国際法ができたから、それにすべてが従属されるというようなちよつと今国際法では言われておらないような独特の解釈を持ちまして、従つて韓国は国際社会で或る意味における寵児である、ちやほやされている国家であるというふうな二つの根抵があるのぢやないかと思います。そういうような考えは両方とも余り根拠がございませんので、実は去年もそういうことがあつたのですけれども決裂の原因には……。今年はそういうことがもう大部なくなつていると私は想像しておつたわけでございますけれども、図らずも去年と同じような考えを持つていることに失望したのでありますが、こういう考え方は併しだんだんと時がたてば正常に向うの方で考えるようになりまして、本当の意味の対等間の国際会議というような恰好で日韓会談が開かれる日が必ず来ると思つているわけでございまして、少少気の長い話でございますけれども、そういうふうな、同じ対等の立場で以て話をするというところまで向うのほうが折れて来てくれなければこの問題全部の問題を解決するということはできがたいでありましようし、たとえ形の上でできましても、満足な実行ができないのじやないかと思つておるわけであります。
  53. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、今当面している漁業の問題を解決するということのためには相当の冷却期間というようなものを考えなければならんというように受取れるのですが、そういうことになると、日本側のこうむる損害というものは、非常に大きいので、そういつまでも、今お話になつたような情勢が展開してくるのを待つておるというわけには参りかねるのじやないかというように考えられるのですが、外交当局としてそういう理解に立たれるとすれば、積極的にその冷却期間というものを短縮せしめて行くような手というものを打たれなければならんように思うのですが、そういうような点でとり進めて行かれるような見込みがあるのか、具体的にお考えになることがあれば、一つお話を得たいと思うのですが……。
  54. 久保田貫一郎

    説明員久保田貫一郎君) これはまあ冷却期間を待つという消極的ばかりでなくて、積極的に働きかけなければならんというのは勿論でありますので、例えて申しますと、韓国側漁業という問題に対するいわゆる李承晩宣言というものは、甚だけしからんものである、国際法原則から言つても不当なものであるということに、これは少し今までの日本側の宣伝がまだ徹底できないのじやないかと思いますので、利害関係の直接ない国はそんなに不当なものであるということを考えてないのじやないかと思われますので、これはまあアメリカは勿論でありますけれども、国際輿論に訴えまして、その不当を大いに鳴らすというふうな工作は勿論しなくちやならんであろうと思います。もつと具体的に申しますと、この問題は例えば、国連に提訴するとか、国際司法裁判所へ持つて行くとかというようなこと、これはまあ時間のかかることでありまするけれども、そういうふうな方法をきめて、そういう決心を日本政府が示すということは、国際輿論の前に韓国の不当というものを明らかに描き出すわけでございますので、そういうふうな大きなところからして、向う考え方を変えて行くというようなことも、これは勿論やらなくてはならん一つの大きな手ではないかと考えられます。
  55. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ほかに御質疑ございませんですか。一応この問題は、今日はこの程度にいたしまして、又いろいろな点が、質疑がございましたら又御足労願うことにいたします。有難うございました。  ちよつと速記をとめて下さい。    午後四時十四分速記中止   —————————————    午後四時三十七分速記開始
  56. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて下さい。  それでは昨日衆議院水産委員会と合同の懇談をいたしましたあの趣旨に基きまして、当日の決定とは多少異なりまするが、日韓漁業問題に関する件を議題といたします。一応案を読み上げます。    (日韓漁業問題に関する件)   当水産委員会は、十月二十七日委員会を開き、いわゆる李・ライン水域における最近の緊迫した状況に鑑み、これが対策について左記事項を決定した。    左記   一、拿捕抑留中の乗組員及び漁船の即時釈放返還に関し必要なる措置を講ずること。   二、今後における漁場の安全を確保し、事故を未然に防止すること。   三、留守家族及び遺族の生活援護に必要な措置を講ずること。  以上各項は事態の緊急と重大性に鑑み政府は、即時万全の措置を講ずるよう申入れる、  以上が案文であります。  何か御意見がございましたら御発言を願います……。御意見がなければお諮りいたしますが、この案文でよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 森崎隆

    委員長森崎隆君) では異議ないと認めます。それでこのきまりました我我の決定事項を差出す宛名ですが、総理大臣、大藏大臣、農林大臣、運輸大臣、外務大臣。
  58. 松岡平市

    ○松岡平市君 そのほか委員長に一任していいじやないですか。
  59. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは一応五人の大臣にはすぐにこれを発送することにいたしまして、その他必要なところはお任せを願います。そのように決定をいたします。  それじや本日はこれを以て散会いたします。    午後四時四十一分散会