運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-28 第16回国会 参議院 厚生・中共地域からの帰還者援護に関する特別委員会連合委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十八日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。   厚生委員    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君            常岡 一郎君            藤原 道子君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            中山 壽彦君            西岡 ハル君            横山 フク君            林   了君            廣瀬 久忠君            湯山  勇君            山下 義信君            有馬 英二君   中共地域からの帰還者援護に関す る特別委員    理事            千田  正君    委員            紅露 みつ君   衆議院議員            青柳 一郎君   政府委員    引揚援護庁次長 田邊 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       川井 章知君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○未帰還者留守家族等援護法案(内閣  提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今から厚生委員会中共地区からの帰還者援護特別委員会連合委員会を開会いたします。  未帰還者留守家族等援護法案を議題といたします。  御質疑願いたいと存じます。
  3. 紅露みつ

    紅露みつ君 今国会に恩給法の改正がなされるのでありまして、これによつて遺家族かたがた、傷痍軍人それから老令軍人等がこの適用を受けますのですが、この枠に外れたかたがた、特に未帰還者かたがたに対して、本法案が出されたことは、もうこれは当然のことで、是非なさなければならないことでございますが、これについて大きい問題を二、三点伺いたたいと思います。初めに伺いたいことは、この未帰還者留守家族等援護法案適用範囲ですが、地理的に申しますと、これは前々からの関係もありまして、ソビエト、それから樺太、千島、北緯三十八度以北の朝鮮、関東州、満州又は中国本土地域内においてということになつておるのでございますが、つい最近にも南方から逃亡者が帰つて来るというような事実もありまして、これをどういうふうに処置しておられますか。それから今後もこういうことがあり得ると思うのですが、南方はこの地域の中に入うておらない。この地域というものをもつと拡大して、とにかく戦争の未引揚げというものを一括してこの対象に入れるというお考えがないのかどうか。あつて然るべきじやないかというふうに私は考えるのです。それが最初でございます。それから第一條でございますが、これは留守家族に対して手当を支給すると共に、未帰還者帰還した場合において必要なる療養の給付等を行う、こうなつておりまして、未帰還者本人に対する配慮というものはこれに一つも現われておらない。今までのこの前身であつた復員者給与法並びに特別未帰還者給与法におきましては、本人に対する俸給俸給と申しましようか、月千円というものが支給されておつたのですが、それが今度の場合は除かれておる。それから帰つた場合にも帰還手当というものが今現に出されつつあるのですが、それはこの條文に現われておらない。このことはどういうような観念からこういうふうになつて来たものであろうかと、ここに疑問があるわけです。而も未帰還中の期間についてはこれを恩給に計算する、恩給つまり対象になつておるということの関係がここに大きな矛盾はありはしないかと、こう思うのであります。それからこれに関連しておりますが、特別手当のことでございますが、公務員給与法、これを受けております者も、この際これを受けることができない場合には、留守家族手当の支給を受けない場合には、「その者及び従前の例によりその者と同順位にある者に対して、昭和二十八年八月以降、毎月、その俸給の額に相当する額の特別手当を支給する。」、こういうことになつておりますと、今まで公務員給与法適用を受けていた者も、この際特にここで区切つて、そうして留守家族だけのことを考えられるのか。こういうふうになつて参りますが、その観念がどういうわけでこういうふうに考えられて来たのか。そうしてこの基準をどうするかということを伺いたいのであります。それからもう一つここで伺つておきたいと思いますことは、二十條ですか、二十條の……。
  4. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 紅露委員に申上げますが、区切つておやり下さつたほうが答弁しやすいのですが……。
  5. 紅露みつ

    紅露みつ君 それではそれだけを伺わせて頂きます。
  6. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 御質問の第一点の先般フイリピンから帰還した者の中に逃亡兵があつた。あれはこの法律ではどう取扱うかという問題でございますが、逃亡兵は未復員者という身分を持つております。従つて二條の第一項に該当すると思います。南方地域の未帰還者の中には、一般邦人と元軍人軍属であつた復員者と二つあります。一般邦人の中には、更に元軍人軍属であつて終戦際等においてみずから好んで現地に残留することを希望したというものが相当数ございます。これは南方からのいろいろな情報によりまして、残留者自身が引揚促進をやつてくれるな、こういうふうな希望を寄越したということであります。こういうかたは(「聞こえないぞ」「もう少し高くしてくれ、聞えないぞ」と呼ぶ者あり)現地に残ることを希望しておる。又南方地域は、現在外務省の在外事務所も設置せられておるようなところでありまして、本人内地帰りたいと言うならば、いつでも帰るチヤンスがあるわけであります。ソ連中共地域に残留している者と全く本質を異にするものであります。従つて南方地域におきましては、元軍人軍属であつた復員者限つてこの法律対象にいたしておるわけであります。それから第二点……。
  7. 千田正

    千田正君 あなたは今南方の者は終戦後において帰還し得られるにもかかわらず、その本人希望によつて残留してれるからこれに当て嵌まらない。但し軍人軍属の場合、その帰つて来た場合にはこれで扱う、こういうことですか。それからもう一つ、戦死したか何だかわからない、不明の者はあなたがたのほうとしては戦死者として処理しておりますか。
  8. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) お答えいたします。南方地域における元軍人軍属であつた復員者が現在生きておるといたしますならば、自己意思によつて帰らないか、或いはどうしても止むを得ない事情によつて帰れないか、どちらかだと思います。大部分は生きておる限りにおいては御自分意思によつて帰らないかたではないかと思います。例えば逃亡兵のようなかたであつて、止むを得ない事情のために帰らなかつたというかたもあると思います。こういつたかたがたについきましては、お帰りなつたときによく事情を調べて、そうして御自分意思に、よつて帰らなかつたということがはつきりしておるかたにつきましては、その適当な時期に遡りまして現地復員の手続をとつております。それからこの前お帰りなつたような投降兵かたがたは、未復員であつた状態が誠に止むを得ないという場合には未復員の取扱をいたしてわります。それから只今あなたのお話しになりました南方において戦争中多分死んだのではないかと思われかたであつても、はつきりとした死亡の確証がない限り、厚生省といたしましては死亡公報を出すわけには参りませんので、只今のところそういうかたは未復員者としての取扱いをいたしております。
  9. 千田正

    千田正君 いやしくも未帰還者留守家族等援護法という名を掲げて表題にしておる限りにおいては、少くとも第二條一項二号に掲げておるような「未復員者以外の者であつて、」というあとにいわゆる地域を指定すということは、私はこれはこの法案の本旨に鑑みる場合賛成できない。少くとも戦争はどこから起きたかというと、これは日本の国の責任において起された戦争であつて、よしんば当人の希望によつて残留しておつたとしても、これは事実を調べればわかることではあるが、地域を限定してソビエト中共であるとか或いは満州或いは朝鮮だけに残つたものにだけこの法案適用するというようなことは、少くとも未帰還者留守家族援護法というような法案を掲げているとなれば、これは私は考えなければなちん問題じやないかと私は思う。
  10. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) お答えいたします。先ずこの未帰還者留守家族援護法というものが一般生活保護法とは別個に打立てられるという根本についてお考えを願いたいと思います。何が故に生活保護法以外にこういう法律を作るのか。例えば戦争ぬよつて帰れなくなつたという方の中には、いろいろあると思います。今日終戦後八年になつてなお且つ御自身意思によつて残つているという方に対して何が故にこういう特別の国の責任において身分援護ということをする必要があるか、こういうまあ根本問題があるかと思うのであります。そこで我々いろいろ探究したのでありまするもが、ソ連中共地域につきましては特殊の状態にある今日、こういうようなかたがたにつきまして調査究明をし、且つ生存しておる方に対して帰還の促進を図るということは国の当然の責任である、こういうような考えを持つておるわけであります。それを果し得ないという現実におきまして、その未帰還者及び未帰還者留守家族の置かれている特別の状態に我々は特別の関心を持たなければならんのじやないか。国及び国民がそういう留守家族方々の特別の状態に特別の関心と同情を寄せられてかよううな特殊援護を行うということも国家なり国民皆さん方が必ず了とせられることではなかろうか。従つて抑留乃至は抑留と同じ状態自己意思によつても帰れないということについての国家責任から立脚した援護という特殊の援護でございまするので、御自身意思によつて帰り得るにかかわらず帰らないという方につきまして、かような立法の援護をするということにつきましてはどうだろうかと、かような考えを持つておるわけであります。
  11. 千田正

    千田正君 田辺次長の説は我々何回もそういうことは論争してわかつておるのだが、ソ連とか或いは中共におけるところの現在抑留されておる人たちに対しても、ソ連当局なり或いは中共側の発表によるというと、いわゆる残つておるという者は希望して残つておるのだ、こういうことを一方的に発表しておる。我々の観点から言えば希望して残つておらないという観点の下にこういうものを我々は作成しようとする。これはわかつていますよ、お互いに。併しながらあなたが言うならば、それでは南方にどれだけの者が希望して残つているということをはつきりして下さい。一体ビルマであるとかルソンであるとか或いはその他の地にあなた方の調べた数から言えば何人の者が希一望して残つておるか。
  12. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 私が申上げましたのは南方地域におきましては在外事務所もございまするので、帰りたい方はいつでも帰れる便宜を計ろうのだから、必ず申出て頂きたいということを機会ある毎に在外事務所を通じて周知徹底方を図つているわけであります。この点はソ連中共地域抑留されている方々本質を異にするのではないか、かように考えておるわけであります。勿論その中には軍人軍属もおられます。軍人軍属につきましては国家が動員したという責任がありまするので、単なる一般邦人とはその取扱いを異にするのが当然だと思います。そこで南方地域の残留しておられるという元軍人であるかたがたにつきましては、依然として未復員者という身分をそのまま保持してございます。この法律対象としておるわけであります。併し元軍人軍属のかたであつても、現在生きておられて帰ることを希望されないかたがたにつきましては、いつまでも未復員者という身分を与えておるのは適当でございませんので、適当な措置をとらなきやならんと思いまして、それぞれ在外事務署を通じまして周知徹底を図つておるわけであります。いろいろ調査いたしておるわけであります。
  13. 千田正

    千田正君 この際、だから、然らば出邊次長からいわゆるこの法案に盛られた以外の地域にどれだけの人たちが残つておるかというものを発表してもらいたい。こういう一般的な未帰還者というものを謳つてある以上は、そういうことを明らかに法文の中に謳つておる以上は、そういうことを政府として国民に発表するのは当然の義務だと思う。
  14. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 承知いたしました。資料を只今持ち合せがございませんので、午後からでも持つて来て御説明申上げたいと思います。
  15. 紅露みつ

    紅露みつ君 先ほどの質問の答弁を。
  16. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 次の御質問でございましたが、未帰還政府職員に対する給与の規則がございまするが、これに対しては未帰還中は給与を停止することにしました。これは未復員者給与法による給与というものをやめますのと歩調を一にしまして、文官、武官の均衡を画一にしたのでございます。そこで、留守家族手当がそのかたがたに差上げられるわけでございますけれども、未帰還公務員として受けられておつた俸給及び扶養手当の額のほうがこの留守家族手当よりも多い場合は誠にお気の毒でございまするので、従来もらつてつたものとの差額はそのまま実績を保障しよう、差上げよう、こういう考えでおるわけであります。
  17. 紅露みつ

    紅露みつ君 それから二千三百円の基準
  18. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) それから二千三百円の基準でございまするが、これは当初の政府原案におきましては月二千百円とありました。これは戦没者遺家族援護法によりまする遺族年金月額に相当するものでございます。今回軍人恩給の復活に伴いまして、戦死した軍人遺族に対して公務扶助料が支給されることになつたわけでございますが、これは死没当時の階級というものに対応しまして金額が違つております。二千百円という月額は大体一等兵公務扶助料月額に相当するものでございます。で、今回軍人恩給公務扶助料に対して衆議院におきまして修正がなされまして、兵はすべて兵長並み公務扶助料をあげるということになりまして、その結果兵長月額公務扶助料額は二千三百円でございますので、それに歩調を合わす意味において遺族年金のほうの月額を二千三百円に増額いたしております。又それに均衡をとるために留守家族手当のほうも二千三百円に増額をせられた、こういうことになつております。
  19. 紅露みつ

    紅露みつ君 それから本人の分ですね、本人ということをこれからは全く抹殺しておりますが、どういう考え方でこうなつておりますか。
  20. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 実は従来未復員者につきましては、未復員者給与法という規定がございまして、終戦当一時は月給が百円、その後上りまして三百円、その後文上つて千円に増額なつたわけであります。ところが今日未帰還者留守家族援護するという場合におきまして、実質的な援護ということを考えた場合に、軍人一般邦人とを余り区別して考えるということはどうであろうか。そこでこの際未帰還者一般留守家族援護するという体制をとつたわけであります。月給という制度は、未復員者給与法というのは大蔵省で所管しておつた法律でございますが、いろいろの点から考えまして今日俸給という体制をとることは適当ではないと考えられたわけであります。終戦後すでに八年になんなんとする今日でございまするので、いつまでも俸給という形式によつてそれを家族に渡すということによつて間接援護するということは適当ではなかろうということを考えたわけであります。而も一般文官の場合におきましては、内地扶養親族を持つておる者の月給というものはだんだんベース・アツプしておりまするが、内地扶養親族を持つていない方の月給というものは非常に安い金額に据え置かれておるわけであります。そういう現実に不均衡を来たしております。又未復員者の場合におきまして月給千円というものは、これは何だ、千円というのは月給らしくないじやないか、月給なら月給らしく上げたらいいじやないかという御議論も当然出て来るわけであります。幾らに上げるかというむずかしい問題ボ出て参りますので、この際月給というものの本質から考えまして、終戦後八年にもなるので、未帰還者月給を古給するという形式をやめまして、留守家族本人援護するという建前の下に立法する、こういう意味合いになつたわけであります。そこで先ほど未帰還者自身に関する何らの配慮がなされておらないじやないかという御発言、御尤もだと思いまするが、実はこの点につきましては我々もいろいろ考えたのでありまするが、その場合におきましては、内地扶養親族を持つておる未偏選者であるから考えなくてよろしい、内地扶養親族のない未帰還者であるから考えなくてはならないという考え方でなしに、未帰還者は全部内地に帰つたときに一様に考えて上げるべきが適当であると、こう考えるわけであります。そこでこの法律案の中には入らなかつたわけでございますが、帰還手当というものを創設いたしましたのもそういつた気持から我々のほうで考えたわけでありまして、大蔵省と折衝いたしまして、今日行政措置として、中共からの帰還者及びその他の戦犯等のかたがお帰りなつたときにこの一万円の帰還手当を差上げるということにいたしたわけでございます。実質的にはそういつた紅露さんが先はどお触れになりましたように、未帰還者自身に対する態度も我々は活かしておる次第であります。
  21. 紅露みつ

    紅露みつ君 そうすると、恩給との矛盾が出やしませんか。
  22. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 実は恩給関係につきましては、未帰還者恩給という点につきましては、我々恩給局にいろいろ願いまたしまして、いろいろの点で特別の配慮をして頂いております。恩給で申しまするというと、内地に御本人がおられて、本人自身恩給を請求しなければ管通恩給というものは支給しないのが原則でございます。シベリヤに抑留されておる元軍人のかたが恩給年限にすでに到達しておられる。併しながら、御本人内地にお帰りにならなければ恩給は差上げられないということになつておりますが、これは未帰還という特別の事態でございますので、特例を開いて頂きまして、御本人内地に帰られない場合におきましても、家族のかたが代理で請求した場合においては、その留守家族に対しまして恩給を支給できるようにいたして頂いたわけであります。従つて、その場合におきましては、恩給法上は退職したということになるわけでございます。それから未帰還状態にありながらなお恩給年限に到達しないかたにつきましては、恩給法上は恩給年限に到達するまで在職期間内に通算して頂くということにいたしたわけでございます。こういうふうに実は恩給法上の在職年限であるか在職年限でないかということを人によつて違えるということは、理窟から申しますれば、これは身分法でございますからおかしいのであります。恩給年限に到達したから退職であり、恩給年限に到達しないから退職でないという考え方は、身分法として適当でないのでありますが、そういう点は未帰還という特別の状態考えて頂きまして、特に恩給局に我々のほうからお願いをして、そういう取扱いにして頂いたわけであります。而も未帰還という状態にあつて恩給年限まで到達しておるかたが、今後万一公務傷病のために怪我をされた、或いは亡くなられたというような事態が起つた場合におきましては、恩給法上はすでに退職しておるわけでありますから、公務扶助料対象にならないわけでありますが、それも未帰還という特別な状態であるから、恩給のほうで特別に考えて頂きまして、公務扶助料対象にして頂く、在職期間内における公務扶助料として扱つて頂くということを以て特例を開いて頂いたわけであります。むしろ恩給のほうは我々のほうから頼みまして、特例々々と、一般にない特例を未帰還者のために開いておる次第であります。人によつて退職したり退職しなかつたりするということも、専ら留守家族そのものを手厚く処遇したい、こういう観点から特例を開いて頂いたと、こういうわけであります。
  23. 紅露みつ

    紅露みつ君 それだけ恩給の問題については大変親心を示していて下さるのですから、だからそれならばこそ、やはり俸給というので悪ければほかの名目でもいいでしようし、何か帰還されたときの、恩給にまあ該当するかただけはまだ恩給がもらえますけれども、ただ長い間帰れなくて帰つて来た本人が、そのときに、まあ明文化していないけれども、帰還手当の一万円はということでございますが、それだけもらいましても、今まで俸給の一千円というものを留守家族がもらつてしまつたものも勿論あるはずでございますが、もらわないかたはそれが溜つていて、帰つたときにそれをもらえると、そうして何か職業にありつくということができましようけれども、こういうふうな状態で行くと、いろいろ矛盾があるのですよ。俸給は出さない、俸給という名のつくものを出すのは八年も経つておかしいのだという考え方で、なお恩給の問題は考えていてくれるのだというところに、私は大きな矛盾があると思いますが、それだけ恩給考えて下さるのであつたら、やはり俸給らしい今までのものを、一般内地のベース・アツブに釣り合つたものでなくてもかまわないと思うのですが、帰つて来たときに何らかのそれが足掛りになるような措置がなされていないということは、冷淡ではないかと、こう思うのです。そこのところを。
  24. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 紅露先生の御質問は、俸給を打切つたことが妥当でないというお考え方から出ておられるようであります。併し、先ほど申上げました通り俸給制度を維持しながら間接留守家族援護するという行き方は、今日においてはいろいろ、の点で却つて不都合を生じておると存ずるのであります。特に一般邦人持別帰還者に擬制いたしまして、これに俸給を出すというようなことは、誠に理窟から申しますればおかしなことでありまして、占領下におきましては、一般生活保護のほかに特別な援護法というものを作ることができなかつた事態における特殊の産物ではないか。あの当時においては非常に意味があつたと思いますが、今日一般邦人俸給を出すというような形態は、どう考えても納得ができない点ではないかと思います。又特別未帰還者だから俸給を出す、特別未帰還者でないから手当を出さないということは、同じくソ連中共抑留されておるかたがた差別待遇をするということも実情に副わないのではないか。それでは軍人軍属に限定して俸給を出したらどうかという問題が出て来ますけれども、それでは紅露先生のおつしやつた問題は解決されないのであります。俸給家族に前渡しをしておるかたがたについては、その人が帰つて来たときに差上げる分がないということになるのでありますが、むしろ家族を持つておるかたが帰つた場合には厚い援護が必要なのでありまして、単身者の場合にはそこにたくさん蓄つておる月給をもらえるのです。家族を持つておるかたは、その月給分はなくなる代りに前渡しされておる。それ自体がおかしいのであつて、むしろ帰つて来た人に対し無差別平等に帰還手当というものを出すほうが実情に即するのではないかと、かように考えておるわけであります。
  25. 紅露みつ

    紅露みつ君 それでは、これまでの留守家族本人俸給というものはどんな割合で以て受取つておりますか。本人が帰るまでそれは保留して、つまり積み立てておいてもらうということも、留守家族があつても私はあると思うのですが、それはどんな割合になつておりますか。
  26. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは法律にはつきり書いてございます。扶養親族を持つておるかたに対しましては、扶養手当俸給とを前渡しするということになつております。全部です。それから扶養親族がない場合であつても、直系血族、父母という場合におきましては、月給分だけを前渡しする、こういうやり方をとつております。それ以外のかたにつきましては、俸給の前渡しをやりませんで今日まで溜めてあるわけであります。帰つたときに、過去の分を一括して支払うということにいたしております。
  27. 紅露みつ

    紅露みつ君 あとまだ質問のあるかたもありましようから、もう一点伺いたいと思います。それは二十條でございますが、二十條の二項です。「増加恩給、傷病年金若しくは傷病賜金又は戦傷病者戦没者遺族援護法昭和二十七年法律第百二十七号。「以下遺族援護法」という。)の規定による障害年金を受ける権利を有するとき(傷病賜金については、その支給を受けた場合を含む。)は、政令で定めるところにより、その者からその者に係る収容中の実費の一部に相当する額を一部負担金として徴収するものとする。」と、こうなつておるのですが、これは私ども前から言うております特例患者のことではないかと思うのですが、一体この場合どんなふうに運営されますか。
  28. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 第二十條の第ニ項は、今回衆議院においで修正されました條文でございます。この修正は先ほどお話がありました特例患者のことを規定したのではないかという御質問でございますが、特例患者以外の人につきましてもこの條文によりまして……、この條文ではございません、第二十七條の第二項の但書の修正條文によりまして、今後は療養と傷病恩給、乃至は障害年金を併給するという考え方に立つたわけであります。従来は二十七條の第二項によりまして一時、恩給乃至或いは障害年金を受けたときとは両方支給しないということに相成つておりますが、これを改めまして、両方併給するということにいたしたわけでございますので、特例患者が一般の場合町拡張になつた形になるわけであります。それに対応いたしましてこの二十條の第土項によつて増加恩給等の一部を国として徴収する、こういうような規定がされたと思います。これは衆議院における改正でございまして、私から代つて御説明いたします。
  29. 紅露みつ

    紅露みつ君 「実費の一部に相当する額を一部負担金として徴収する」となつておりますけれども、これは修正した趣旨ですね、どんなふうに実際問題としては処理しますか。
  30. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは政令でその徴収する金額をきめて行くわけであります。
  31. 榊原亨

    ○榊原亨君 その場合の一部負担金の徴収は誰からどういうふうにとりますですか。
  32. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) お答えいたします。これは療養しておられる患者自身から国が徴収するわけでありますが、徴収する機関はここに書いてありまする通り指定医療機関が本人から徴収するわけであります。
  33. 榊原亨

    ○榊原亨君 そうすると指定医療機関がその一部の負担金を徴収するという義務を負わなければならんのでございますか。
  34. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 指定医療機関というものは大部分国立病院と療養所でございますが、一部それ以外のものもあると思います。で、これは健康保険の例に倣いまして、健康保険の指定医が一部負担金を徴収する場合もありますので、それに倣いまして、かようなことをやつて頂くようにするということを考えておるわけであります。
  35. 榊原亨

    ○榊原亨君 健康保険におきまして一部負担金を徴収いたしますのは初診料と私は考えておるのでありますが、こういうものをも診療に忙しい医師の事務として負担させるということについては多大の疑問があるのでありますが、これについて何か具体的にそういう人を煩わさずにとるという措置が講ぜられないものでございましようか。
  36. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) この患者数は約四千名でございまして、その中でこの増加恩給又は障害年金をもらつている人の数はそのうちの又一部でございます。それに大部分は国立病院乃至は国立療養所でございますので、出すとしてもそう大した手数はかからないのではないかと、こう考えておるわけであります。
  37. 榊原亨

    ○榊原亨君 その考えについては相当私どもは異議を持たなければならんと思う。その数が少いとか多いとかいうことはこの問題には関係はないのであります。又指定医療機関が国立であるとか、公立であろうとか、私立であろうとかには関係はないのでありまして、診療担当者に対しまして診療のこと以外に負担を負わせるということについて、これは相当強い要求を関係団体からもいたしておりますし、又そのほかの審議会からもお話が相当あるわけなんです。今ここにこの数がどうだとか、或いは指定医療機関が公立であるとか、公立でもやはり国民の税金によつて賄われておるものであり幸して、そこに事務量が殖えればそれだけの負担は当然負わなければならんわけであります。これはどうか一つ御考慮下さいまして、何とかそういう診療に直接当る人の負担を増すごとなしに事務的処置をされるように特にお願いを申上げた小と思います。
  38. 千田正

    千田正君 第十三條の「この法律の施行後三年を経過した日以後においては、過表七年以内に生存していたと認めるに足りる資料がない未帰還者留守家族には、留守家族手当を支給しない。」、この「三年」と限定した趣旨ですね、我々から見ると、未だ以て的確なる、この未帰還者留守家族等に限定されておるにもかかわらず、ソビエト中共地区とか、その他の地区におけるところの生存者の数、或いは行方不明のものの数は的確に我々にはわからない、にもかかわらず三年ということをここに限定したという理由はどこにあるのですか。
  39. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 今回の法律によりまして未帰還者の範囲は従来の未帰還者の範囲に比べまして相当観念的に拡張になるわけであります。第二條の第二号を御覧になりますると、昭和二十年八月九日以後ソ連中共地域内において生存していたと認められる資料がある、こういうことでございます。更に極端に申しますれば、敗戦当時において生存しておつたという資料がありまするならば、その後において死亡したと認められないものはすべてこの未帰還者の範囲に入るわけであります。従つてこの対象となるのはソ連中共地域において外務省が発表しておりまするあの数は勿論のこと、それ以外にも及ぶことになるわけであります。そうなりますと、この未帰還者の中には今日状況は不明でありまするが、終戦直後の混乱等によつて死亡したのではないかと一般的に推定されるかたが、相当多数包含されることにたるわけであります。この際我々はすべてのかたを対象といたしまして援護して行く、こういうのが適当ではないか。その代りに一定の期間を限りまして、その間一方において引揚げの促進に当りますと同時に調査究明に努力いたしまして、できるだけ早く生死の事実を留守家族にお知らせすると同時に、行つているかたに対しては帰還促進を図つて、このむずかしい引揚げを一日も早く解決の方向に持つで行きたいというのが我々の念願であります。殊に厚生省といたしましては、終戦後八年間この問題を一貫して処理しておりますが、昨年から調査究明を続けるならば、少くとも生存者につきましては何とか資料を獲得することができるのではないかという考えを持つておるのであります。そのためには現在やつておりますような外務省と厚生省でやつている調査のやり方についても再検討を加えまして、もつと能率的に総合的に調査の成果の上るように考えなければなりません。併し又経費その他の面におきましては不十分な点は補足いたしまして、徹底的に調査を行うことが必要ではないかと思つております。大体三年間くらいあるならば生存者に対する資料を得ることは可能ではないか、こういう一応考えておるのであります。殊に今回中共地域からお帰りになりましたかたの一人々々に当つてみますと、やはり相当の資料をお持ち帰りになつているかたがあるわけでございまして、中には病院における死亡者の人名簿を持つて帰りなつたかたもあるわけであります。今後個々のかたにつきましていろいろ調査を進めているうちには死亡したかた或いは生布しているかた、我々が今日まで把握できなかつたものもつかめるのではないか。今後そういうかたを通じて現地からの通信ということもありますから、それらも更に積極的に開かれて行くのではなかろうか。今日までいろいろな事情内地と通信ができ得なかつたかたも通信によつて所在が確められるというように考えられるのでありまして、こういう考えを以ちまして一応三年という規定をいたしたのであります。
  40. 千田正

    千田正君 あなたの言うことはわかつているのだが、しばしば我々は調査の確実性を期するために厚生省並びに外務省に対して国内全体における未帰還者の数というものも、これは戦死したもの、戦死しないもの、行方不明のもの、生存しているもの、そういうもののはつきりした数字が出ない限りは予算措置の伴う法律考えるから、この法案を施行するに伴いまして、一体何名のものを対象としてあなたがたはこの法案を通過させようという意図なんですか。そういう資料を少くとも委員諸君にこれは配付すべきではないですか。こういうこれだけの資料に基いて、こういう法案を作つて、こういう予算の下にこの法案を実行したいのだ。単なる法案だけではなく、そういう資料を我々は要求します。
  41. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 一応御説明申上げます。この法案対象となる未帰還者の数でございます。昭和二十八年四月一日現在で、国連に昨年発表いたしました生存者の数が八万一千二百八十八名となつております。これは終戦後一度でも生きておつたという資料のあつた人は、生存者という範疇に入れております。これは今日そのままその地域において生存しておるという数字ではございませんが、先ほどの法律の第二條において挙げましたような人でございます。  それから死亡資料のある者、確実なる死亡資料ではございませんが、死亡したという資料のあるもので、まだ死亡手続の済んでない者は、まだ一万ございます。  それから軍人であつて昭和二十年八月九日以前当時において、生死、所在がはつきりしなかつたというかたがた、生死不明であつたというかがたがた、開戦の当時においてすでに生死が必ずしもはつきりしなかつたというかたがた約一万人おられるわけです。で、約十万のかたがたがその総数になるわけでございます。  それに加えまして南方地域におきまする未復員者が四千八百。それから戦犯のかたが一千一百ございます。合計いたしますと十万八千人に相成るわけでございます。そのうちで昭和二十七年度のうちに中共から引揚げた数が四千百名、三月に帰つて来ましたので四千百。それから死亡処理が約一千五百でございます。その合計が五千六百に相成るわけでございます。この数を先ほどの十万八千から引きますると、約十万二千の未帰還者の数が出て来るわけでございます。その十万二千の中で、本法の留守家族援護対象になるものと対象にならないものと、従来の実績によつて分けまして、所要予算を計上したわけでございます。
  42. 千田正

    千田正君 今田邊次長の一応ここでの数字の説明はわかりますけれども、これはやはり法案を実施するに際して、予算を伴う問題でありまするから、参考資料はがり版で結構ですから、各委員に御配付を願います。
  43. 榊原亨

    ○榊原亨君 この不具廃疾の認定に対する傷害年金でございますが、これが若し不服でありましたならば、又不服を処理するということは現行と同じでございますか。この認定に不服の場合には、どういたしますか。
  44. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) ちよつと聞き漏らしたのでございますが、何の認定ですか。
  45. 榊原亨

    ○榊原亨君 不具廃疾の認定です。この一番最後の表が出ておりますね。第一級から。
  46. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) この留守家族援護法の中に指定されておりまする傷害資金と申しまするのは、極めてレアーな場合でございます。これは戦没者遺族援護法恩給法の場合と違いまして、不服の申立てを主務大臣にするという途は開かれておりません。従つて裁判所に行くよりほかないと思いますが、併しながらそういう該当の場合におりましては、我々といたしまして十分御相談に応ずるようにいたしたいと思います。
  47. 千田正

    千田正君 この第十六條の未帰還者のうち、いわゆる死亡されたものと、今度例えば帰つて来られて、死亡がわかつたもの、或いは前に死亡したと大体考えておつたものは、今まで遺骨埋葬料その他の経費は出しておらないようですが、出しておりましたか。
  48. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 十六條は、現在でも未復員者給与法に、これと全く同じ條文があるのでございます。これはこの法律施行ののちにおいて死亡の事実がわかつたという人になつておりますので、一般邦人につきましては特別未復帰還者給与法が制定せられましたのちにおいて、死亡の事実が判明いたしました特別未帰者に対して、こういう埋葬料を支給するというわけでございます。この法律が施行せられましたならば、この法律の施行後死亡の事実の判明した者に対しては、それがソ連における場合と同じであつた場合においては、遺骨埋葬費を支給する。こういうことになるわけでございます。
  49. 千田正

    千田正君 今度で第五次引揚げの船が帰るのですが、第一次、第二次で帰られて生存が確実したもの、或いは死亡が判明したものに対しては、すでにあなたがたは、大体この法案が通過するものとして準備せられておりますか。
  50. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) それは、第一次から第四次までお帰りなつたかたにつきましては、現在の特別未帰還者給与法、未復員者給与法によつて処置いたすわけでございます。
  51. 千田正

    千田正君 やつているんですか。
  52. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) やる建前になつていると思います。勿論その場合に遺骨を持つて帰りなつた場合にも、そのかたが特別未帰還者給与法制定前に死亡したということがわかつておつで、家族の間で戸籍を抹消しているという場合におきましては、法律対象にならないのです。そのお帰りなつたことによつて、初めて死亡の事実が確定したという場合には、勿論この法律対象には、その場合におきましても特別未帰還でなければ法律対象にはならないわけであります。法律に、ちやんと特別未帰還者給与法の第一條に該当するかたでなければ、法律による埋葬料は差し上げられない。こういうことになるわけであります。
  53. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 第十三條の規定を設けます以上は、調査究明ということが裏付けたならば意味なさないと思うのです。調査究明ということは、現在でも非常にむずかしいのに、更にこれが三年の間に誤りなく十三條の規定を活かすほどの調査究明ができるという自信がありまするならば、その具体的な調査究明の方法があるはずだと思いますが。
  54. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) この問題につきましては、皆様がたよくお考えを頂きたいと思うのでございます。奥は、今日ソ連中共抑留されて生きているというかたに対して、国が何がしかの留守家族援護をしなければならんということはよくわかるのであります。それから死んでいるか生きているかわからん、多分死んだと認められる人に対していつまで援護を行うか、これは理念的に理窟から申しますと、非常にむずかしい問題だろうと思います。戦没者遺族援護法上におきましては、御承知の通り、公務で死亡したもの、而も軍人軍属という名目のかたで、公務に限つてと厳重に制限しているこれに関連しまして、死んでいるか生きているかわからない、生きているという確実な資料のあるかたに対しては、私はこれは問題ないと思いますが、多分死亡したかもわからないという可能性の極めて濃厚な人に対しましては、こういう援護をするという理念につきましては、いろいろ、議論があると思います。その点については、我々実情に鑑みまして、理窟を言わずに、この際留守家族という面から一定期間援護するということは適当であるというように考えて、この法律を、解釈を拡張したわけでございます。そういたしますというと、只今のように、非常に困難なる問題が出て参りますけれども、併しいつまでも留守家族として処分をするということは、適当でないという考え方は、これも御了承下さると思うのであります。そこで困難はあるといたしましても、政府といたしましては、あらゆる方法を講じて、未帰還者の状況を明らかにして、これを妥当な措置をするということに、どうしても必要に迫まれておるわけでございます。今度お帰りになりました中共帰還者の中で、従来通信のなかつたかたがおられます。大体はこういうかたがたが多いのであります。なぜ通信を寄越さなかつたかということなんでありますが、これは詳細に目下調べておりますが、大体において殆んど大部分のかたがた内地において一親等の親族を持たないおかたが多いのでございます。例えば妻、子供、父母、こういうかたがたのないかたが非常に多いのであります。ずつと以前から一家を挙げて満洲なり、ソ連中共地区に行つてつたというかたがた乃至は現地召集をされたかたがた、或いは内地にそういつた身寄りのないかたがたが、内地への通信がなかなかできなかつた。中には内地への通信の方法を知らなかつたかたも一、二あるということを我々聞いております。そういうかたがた中共からの帰還ということに参加したわけであります。引揚げということに参加したわけであります。それを通じまして、内地へ何らかの方法によつて生きているかたは通信を寄越すことがだんだん可能になつて来るのじやないか、殊に先ほど申上げましたように、かたがた家族を通じて、その他いろいろの方法によつて生存している未帰還者を調査することは恐らく可能ではないかと思うのであります。今後あらゆる面から調査を促進して参りたいというふうに考えるわけであります。
  55. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 促進をして行くというならば、それだけの予算も、十三條を活かすためには、そのほうからずつと案も出て来るわけですから、その意味から言いましても、誤りをなからしめるために調査費はうんと殖やすというのならばわかりますが、昨年の六八%ぐらいに減つているように考えます。こういう場合に、実際において遺族援護法の問題、事務のほうをやられる各府県の世話課でも人手が足りないというような現状でございますので、この点ただ法案に盛るだけで、実際にこれが調査究明の方法までおろそかになる傾向がある、もうすでになりつつあるのじやないか、この予算の面からいいましても、殊に又最近帰つて参ります人たちは、特にこれを拒否するような傾向がありますので、そういう点を考えます場合に、機構を一元化する、引揚援護庁と外務省と二つを、これを一般のほうは外務省でやると、こういつたような状態の場合はうまく行かないのじやないか、それに対して何か積極的な具体的な方法をお考えになつておるかどうかということをお尋ねするのです。
  56. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 機構の一元化ということにつきましては、従来地方又は他の方面からも要望されておつたことでございます。厚生省の引揚援護庁も、恐らく将来におきまして機構が改組になるという点もございますので、できますれば、という以上に何とかして、一元化いたしまして、統一した計画の下に調査を進めるような態勢を作りたい、折角努力したいと思つております。
  57. 千田正

    千田正君 今の常岡委員のに関連して聞きますが、どうも田邊次長のお話は、当時の実情を我々が考えた場合、あの頃外務省が、出先関係などは飛行機で帰つてしまう、帰つて来て、而も給料までもらつておる、而も残された一般邦人は軍隊と同じようにソ連において、或いは関東地区でさまよつて、非常に悲惨な目に会つておるのであります。これは当時のことを思い出しても我々は慄然といたしますが、この法案というものは少くとも人道上にそのペースを得て作られるところの法案である以上は、やはり三年というような区切つた行き方じやなくして、三年間ならば三年間において政府が必ずその死亡であるとか行方不明というものの調査が一応完了するという方策を立てて、そうしてこの法案によるような方法を考えなきやならん。そこで今常岡委員の言う通り、厚生省として、或いは外務省として、こういう問題の調査究明に要するだけの予算を大蔵省に請求すべきものだと思うが、今までのような、何回言つても、僅かばかりの調査費用では到底できないと思うのであつて、その点から言いましても、先ほどから資料の配付を願つているのだが、我々は当然国民の代表としての義務から言つても、こういう問題は徹底的に究明しなければならないと同時に、この法案を施行する重大な裏付けとしての調査機関を設置しなければならん。だからその心がけであなたがたとしても、この予算を組む場合において遠慮することはないと思うのだ、これははつきりして下さいよ。
  58. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 只今のようなお気持、全く同感でございまして、この援護法の中に、特に二十九條で、調査究明ということを国民の義務としてきめなければならんということは、全くそのような気持からあるわけでございます。昨年来遺族援護法等の準備に忙殺されておる面がございましたが、私どもといたしましては、できるだけ復員局系統の中でもこの中央における調査のそういう態勢は崩さずに、少くとも中央だけはこの調査の面に全力を尽すようにしてあつたのでございます。恩給法の仕事も早くやらなければならんことでございますが、お話の点も勿論大事な点でございますので、予算の獲得と相待つて手落のないようにいたしたいと考えております。
  59. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 予算の獲得と待つてと言われますならば、この十三條の規定は、それまではこれをうつかり出せないのじやないか、非常に見殺しにするような気の毒な人が出て来るという虞れがあるのじやないかというふうに、どうお考えになりますか、その点。
  60. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) その点は、率から申しますればこの数字でいいと思うのであります。何となれば、前提に三年間の調査究明が一応十分やられているという建前になつておりますから。ただ我々は必ずしも冷たい気持を持つておるものではございませんので、三年間の調査究明の結果とも睨み合せて善処しなければならんとは思つております。決して生存者に対しまして手当の打切りのないようにしなければならんということにおきましては、衆議院における希望條件を付けられたものと全く同じ気持を持つておりますが、ただこの法律体制といたしまして、無期限にやるということは、これ又問題でございますので、一旦無期限な規定を設ける以上、恒久的な見地から、これを廃止することができないと思つておりますので、その点も考えまして、一応三年という條件を付けたわけでございます。
  61. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 それならば、第十六條に規定しております以外の未帰還者死亡いたしました事実が判明いたしましたら、これに対して国家責任で弔意の措置を講じたらどうかという考えを持ちますが、それはどういうふうにお考えになりますか。
  62. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 十六條の遺骨埋葬優先、十七條の遺骨引取の規定は、一般公務員が在職中に死亡しました場合におきましては葬祭料というものを出しますが、これは身分に伴う純然たるものでございます。軍人は元公務員でございますし、未帰還者でありましても公務員に準ずるものでございますので、その身分に立脚して、死亡した場合に公務員手当を出す、経費を出すということになつておるわけでございます。特別未帰還者は、これはソ連の未復員者と同様の事情にあるという特殊の点から立法されたものでございまして、理窟なしでいつているわけでございます。これは我々としましても、一般邦人のお帰りなつた場合、遺骨となつて帰りなつた場合、こういうふうにするというその気持は勿論持つております。ただ法律に国の義務として決定するという点においては、なかなか政府部内に議論がございまして、この法律の中に書くという点についてなかなか異論があつて、実現しにくい、理論上の基礎ということを追究し参り手と、なかなか困難な問題がございますので、我々は希望は持つておりますが、今回の法律の中に書き込めなかつたわせでございます。
  63. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 併し今帰る人に対しては、一般法人であつてもそれに対して帰還手当を出したりしておりましよう。それが又遺骨となつて帰ります場合に、第十三條を活かしますならば、当然これは一般を含めての問題ではないか。
  64. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 例えば中共で帰れないという事態ですね。本人意思に反して帰れないという事態と、中共におつて商売をしている間に肺炎で亡くなつたという場合とでは国の責任は違うのではないかということが考えられるわけであります。公務員という身分を持つておる場合においては、死亡の原因を問わず埋葬料というものを出すわけであります。従つで、公務員身分を有しないかたがたに対して埋葬料を支給するということは国として責任というか根拠がないということが否定する論拠でございます。勿論弔意を表するということは我々としても望ましいと思うのでありますが、十六條、十七條のような身分に立脚した法規という点では、なかなか規定することがむずかしかつたのでございます。
  65. 千田正

    千田正君 田邊次長、或いは厚生省自体が、恩給法なり或いはこういう法案を作る際に、いわゆる軍人軍属というものを、仮りにこれを作る場合において、二等兵なら二等兵の曾つての等級を標準として考えると、或いは兵長なら兵長なりを考えるということは恩給法にいろいろ謳われておりますが、現在日本の内地にあるところの保安隊、警備隊、これはまあ現政府としては、兵力ではない、戦備ではないということを唱えておるから、或いは参考にはならないかも知れない。併し、それが切り換えられて将来軍備として銘を打つて来た場合において、それを標準として支給されるところの服務規程、或いは戦死その他の場合に応ずるような処置規定が行われるだろうと我我は想像いたしますが、そういう場合においてはやはりこういう法律は将来は改変されるものと思考されるかどうかという点を一応あなたのお考えを聞きたいと思うのです。
  66. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) この法律は御承知の通り帰還者留守家族援護法でございまして、軍隊ということを前提とした軍事援護とは又違つておると思います。我々のほうで所管しております戦没者遺族の問題にいたしましても、これは雇傭人たる軍属対象とするものでありまして、今回の恩給法の改正に伴つて軍人に関する限りはすべて恩給法に提示したわけでございます。我々のほうの金額の目安は、何も一等兵だから一等兵に合せる、二等兵に合せるということに立脚しておるわけではありませんで、これは援護法としてはまあ二千百円が妥当だと、これはむしろ安過創るのではないかと、と申しますのは、安過ぎると言うと語弊がございますが、一般援護金額としてもこれは決して十分なものとは思つておりません。実はこの金額につきましては、私どもといたしましても恩給の復活に伴いまして相当な努力をいたしたのであります。努力をいたした結果、二千百円程度にまで上げて頂いたわけであります。今回衆議院におきまして兵の公務扶助料が二千三百円に統一されたという点に着眼いたしまして、留守家族援護のほうも二千百円に増額して頂いたわけであります。併し理窟から申しますると何円でなければならんという基準が非常にむずかしいのでございます。厚生省としては、その退職当時乃至は死亡当時の俸給を基礎とするというように、厚生省の理論としては非常におかしいのでありますが、できますればこの援護法による援護金乃至手当が支給されまするならば、生活保護適用を受けておる世帯が生活保護から脱却されるという程度のものは差上げたいというのが我我のほうの念願でございますが、勿論全部が全部生活保護から脱却できる程度と申しますると相当多額となりますが、まあ大体生活保護から脱却できる程度ということを念願としておりますが、今日まだ精密な調査はいたしておりませんが、そこまではまだ行つていないのではないかというような感じがいたしております。
  67. 千田正

    千田正君 今の田邊次長さんが非常に苦心してここまで持つて来た気持はわかりますよ。よく我々の言うておることもおわかりだと思うのだが、我々の今聞いておるのは、現在の保安隊なら保安隊を一番最初に応募してもらう給料、そうしてこれが公務障害によつて受けるその他の保障というようなものを勘案しつつ、こういうものは将来保安隊なり警備隊が軍隊として変つて来た場合には、当然そういう問題と関連してこういう法律も将来は改正する意図を持つておるかどうかということを私は聞いておるのです。早い話が、これは今から八年前です。八年前の当時の安い給料で軍人として召集された。いわゆる三銭だか一銭五厘の薬害で召集されて、命を的にして戦つて最後の結論がああいうことになつたのです。今、更に再軍備或いは軍隊が復活する至ろ乞いういろいろな声が聞えておる今日において、将来日本が再軍備した場合に、現在の規定がいろいろ変つて来るだろうが、そういう場合においても、旧軍人というもののこうした不幸な場合、或いは旧軍人に準ずる人たちがかような立場に置かれる場合生じて来るであろうという問題も我我は考えられる。そういうことを勘案して、そういう場合にはそう法律も一応それに準じて改正しなければならないという意図を持つておるかどうかということを私は伺つておるのです。
  68. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) お話の点は、むしろ軍人恩給金額の問題のほうが大部分だろうと思います。援護法のほうは、むしろ軍人恩給公務扶助料金額のほうと睨み合せながら改正しておるという経緯もございますのでさような事態になつて若し軍人恩給金額をどうするという問題になりますれば、当然それに関連して援護法における手当或いは年金等の金額増額というか、改訂というものは当然考慮しなければならんことになると思います。いずれも軍人恩給金額ということを睨んで改正をしなければならんと考えております。
  69. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 第十一條の留守家族手当の支給が終りますときですが、その第一項に、未帰還者帰還したときには終ります。これはまあ当然でしようが、その場合に非常に不幸な人がありまして、病気が半年も長引く、そういう人が帰られました場合には、その病気の理集いろいろありましようけれども、長い特殊の環境に置かれたために病気になつて、それが簡単に癒らないと、半年もかかるといつたような場合におきまして、生活を支える能力もなしというような場合に、これに対してすぐ打切るということは余りに酷ではないだろうかと、何かこれは残されるものはないのでしようか、この点を一つお尋ねいたします。
  70. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 御尤もだと思います。ただ未帰還者留守家族に対する手当の支給という根本が未帰還という状態から出発しておりまするので、帰つたあとにまで留守家族手当を支給するということは相当困難ではないかと思つております。なお実質的に考えましても、内地扶養親族を持つておるかたがたの中でも、お帰りなつた際に相当のお金を持つて帰りになるかたもあるわけであります。中には百数十万円のお金をお持帰りなつた例もあります。又直ちに就職される例もあるようでありまして、一律に内地扶養親族を持つておるかたであるからといつて、その手当の支給を六カ月なら六カ月継続支給するということは、他の援護の面と比べましてどうであろうかと思つております。勿論中にはお話の通り非常にお気の毒なかたもございまするが、併しお帰りなつた以上は、やはり生活保護という一般の原則に立ち戻りまして、迅速に而も実情に即した生活保護的な援護がなされるということが実情に副うのではなかろうかと、そういうふうに考えております。
  71. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 その第二項の、厚生大臣によりまして未帰還者自己意思によつて帰還しないと認められたときということがございますが、厚生大臣は如何なる方法を以て自己意思によつて帰還しないものと認められるのですか、その方法はあるのですか。
  72. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは非常に慎重を要すると思います。ただ第二條におきまして、自分自分の自発的意思によつて帰らないかたに対して、観念としては未帰還者として又その留守家族に対して手当を出すということは理窟上成立たないわけであります。従つて第十一條におきましてもこれと対応しまして、認めた場合におきましてはこれを打切るという規定が必要となつて参るわけであります。但し実際の運営に当りましては、非常に慎重を要すると思います。あらゆる角度から検討いたしまして、本人がどうしても帰らない、帰れるにかかわらず帰らなかつたというはつきりした資料に基いて、措置をいたすべきものであると考えます。
  73. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 例えばその場合に、通信などの場合でも非常に強制されて、それが意思を誤り伝えられる場合が多い。或いは最近帰りました人たちのことを聞きましても、非常に日本の実情が伝えられておらないし、誤り伝えられておるために嫌悪して帰りたくないといつたような場合も出て来るのじやないかというような状態もありますが、そういう場合に大臣として認めたという何か基準ですね、これを伺いたい。
  74. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは一定の基礎によつて画一的に取扱おうという筋合いのものではなかろうと思うのであります。勿論本人の出した通信というのは一つの資料だと思いますけれども、その通信だけによつて判断することもこれも危険がお話の通りあろうと思います。私どもとしましては、従前から本人についてある資料であるとか、或いは外務省で、都道府県で持つている資料であるとか、或いはその後において集まつて来るいろいろの資料を総合して、十分勘案いたして、慎重にこれは決定したい、かように考えております。
  75. 千田正

    千田正君 日本の国籍を取得はしておらないのだが、外国人で内縁の関係にあつた妻或いはその間に生れておるところの子供というようなもの、系類が全然なくて、そういうものが留守家旅であつた場合は、どういう方法をとられるか。
  76. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 未帰還者自身が日本の国籍を持つている場合につきましては、その留守家族に対しては内地に住んでいる者であります限り、外国人であろうとも留守家族としてこの法律は取扱つております。
  77. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 私からお尋ねしますが、さつき十三條ですね、三年に区切つて七年以内生存という條項を見ると、もう三年は知らん、こういうわけですね。この三年に区切つたのはどういう根拠ですか、三年ということにした理窟ですね。どういうことなんです。ただ漠然と三年としたのですか。
  78. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これはまあ三年を目途として調査究明の計画を立てまして、そうしていろいろの業務を進めて行く、勿論その調査究明の計画が三年の期間の予定計画の結果どうなるかということが問題でございまするが、私どもの考えでは三年間調査究明をやつたならば、恐らくは生存者については生存の資料を発表することができる、こういう目通しをもつておるわけであります。何年が適当かという問題は、まあ実績から積み重ねまして、これは適当だということはなかなかむずかしかろうと思います。七年のほうはこれは一般の失綜宣告の場合による……。
  79. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) ところが実際敗戦後今日まで長い年月が経つたわけでありますのに、余り確かな資料というものはできていないわけですね。例えば中共からの引揚げの模様を見ておつても、向うの数字と外務省の数字は非常に違う。或いはその他いろいろなところを見ても過去八年においても非常に資料が少ない。或いは三年でできるかというさつき疑問があつたのですが、如何ですか。
  80. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは外務省の数字と向う側で発表した数字と違うということは、こういうわけなんです。現地側では現在生きているという者を発表しているのであります。これは正しいか正しくないかは、向うの発表が真実であるかどうかという問題になるわけでありますが、併し知つているのは向うの当局以外にないわけであります。こちらといたしましては、国内における調査によつて調べるほかないのであります。従つて我々として言えますることは、終後生存の資料があつた八は何人あるか、その名前の裏付けはできると思うのであります。昭和二十年の生存資料があつた、二十三年の生存資料があつた、二十七年の生存資料があつた人の想定が何万だということは言えるのであります。併しそうだからといつてそのかたがたが、全部今日そのまま生きているかどうかということはわからないわけであります。そこにどうしても推定が入つて来るのであります。外務省の資料に書いてあるところによつても、その点ははつきり出ているのでありまして、現在その地域においてそのまま生きているかどうかということはわからない。そこで問題は、今度中共からお帰りなつたかたであつて、我々のほうは行方不明乃至は死亡考えられた人が帰つて来たという人が、実は大事なわけであります。我々のほうでは死んだと思つてつた人が帰つて来た、行方不明だと思つていた人が帰つて来た、かような杜撰な調査ではどうかということが問題になつておるのであります。確かにその通りでありますが、未帰還者留守家族援護法との関係において問題とされますのは、そういつた妻、子、父母というかたが、この場合におきましては殆んど大部分内地に通信を寄越している、そういうかたにつきましては、今日まで通信がなくて、ぽこつと帰つて来られたかたが極めて少いという観測がされるわけであります。これは今そういつたものに対して調査もいたしておりますが、極めて少数ではないかということを考えております。従つてその面からいたしましても、大体三年後ぐらいを見当として、生存者についての調査究明を促進して行くならば、おおむね掴めるのではなかろうか、こういうふうな考えを持つておるのであります。
  81. 千田正

    千田正君 委員長質問に関連して、日本の法律においては失綜の宣告は大体どのくらいですか。
  82. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 一般の場合は七年でございます。ただ戦地に臨みたる者とか、そういう特殊のケースにつきましては、三年間不明であるとき、期限は戦地の場合は短かくなつております。
  83. 千田正

    千田正君 三年ときめたのは、何かやはりそういつた法律的な根拠も参照されて、あなたのほうではきめられたのですか。
  84. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 七年だけを一般の失綜宣告の例をとりまして、三年のほうは、それとは別段関係なくきめたのであります。
  85. 千田正

    千田正君 七年と三年の聞の五年くらいを一つ適当だういとふうに考える点もありますね。
  86. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) ただ私はこの際申上げておきたいことは、一日も早く未帰還者の状況について調査して、こういうことをすつきりさしたい、いつまでもだらだらと引張つておれば、予算もなかなかくれないという面もございます。この際はつきりした態度で以て予算も確保して、機構も整備してやるということがいいのじやないか、まあ三年で十分であるか、五年で十分であるか、完全というためには恐らく三年五年では、或いは完全無欠というためには、五年としても或いはどうかという議論が出てくるかと思います。私ども目下のところ一応三年というものを目途としてやつて見よう、こういう考えであります。
  87. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それでは午前中の連合委員会はこの程度にいたしまして、午後一時から再開いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それから修正案の提案者であります衆議院議員の青柳一郎君が、一時からこちらにこの修正案についての答弁に当る。こういうことになつておりますから、御了承願いたいと思います。    午前十一時五十九分休憩    —————・—————    午後一時四十一分開会
  89. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 午前中に引続きまして厚生委員会中共地区からの帰還者援護特別委員会連合委員会を再開いたします。  未帰還者留守家族等援護法案を議題といたしますが、衆議院で修正されました点がございまして、修正案の提案者の衆議院議員青柳一郎君が出席しておられますので御質疑を願いたいと存じます。質疑に入ります前に、昨日修正点につきまして政府が代つて説明いたしましたが、青柳一郎君から直接修正案について御説明を願いたいと思います。
  90. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 青柳でございます。衆議院におきまして政府提案にかかる未帰還者留守家族等援護法案を修正いたしました点につきまして簡単に御説明を申上げます。    〔委員長退席、厚生委員会理事常岡一郎君着席〕  お手許に修正案要綱をお配りしてあるはずでございますが、それによりまして申上げたいと存じます。  先ず第一でございますが、第一條に未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、国の責任において援護する旨を明記すること。」こうございます。この点につきましてはすでに御存じのように戦傷病者戦没者遺族援護法におきましてその第一條に一国家補償の精神に基き」とあるのでございます。この政府原案にかかる観念的なものが必要であるという主張が強く述べられたのでございます。併しながらいろいろと考えてみますると、国家の公務と申しまするか、国家の強制力によつて引つ張り出されておられたかたがたと御自分の御希望によつて外地におられたかたがたと、その間にはおのおの区別があるべきはずであるという観点から、国家の強制力によりまして引つ張り出されてなお外地におられるかたがたにつきましては、勿論国家補償の精神に基くのは当然であるけれども、本人の御希望によりまして行かれましたかたがたにつきましては、そこまで言うのはどうだろうかというので、ここにその折衷的な案といたしまして国の責任において援護するということを表わすことにいたしておるのでございます。  第二の点につきましては、実は第五のほうからちよつと見て頂きますると順序上都合がよろしいと存じます。五には「昭和二十八年四月から七月までの間において、未復員給与法又は特別未帰還者給与法による扶養手当を受けた者には、扶養手当増額し、これを追給する措置に準じた措置をとること。」こうございます。すでに御存じのように、政府の原案におきましては今回の未帰還者留守家族に与えられまする手当は八月の一日から第一順位者に月二千百円、それらの家族に四百円というふうに改められておるのでございます。そういたしますると、本年の四月からこの七月までの間は従前の通り、これは御存じの通り本人に対する俸給制限でございま六が、妻六百円、第一子六百円であるのでありまして、その点は他に御審議に相成つておりまする戦傷病者戦没者遺族援護法におきましては四月から増額せられております。これと均衡上どうだろうか、できれば四月一日に遡つて今回の増額せられんとする額を支給すべきであるという議論が勝を制しまして、従前からこの手当を貰つておりまするものにつきましては、四月一日から七月までの間は従前通り手当を貰えまするが、その後において本法が施行になりましてから遡りまして、即ち二千百円の金額に合うように追給を行うというふうに改めた点でございます。而うして第ニの点でございますが、今度は「留守家族手当月額昭和二十九年一月一日より二千三百円に増額すること。」こういたしたのでございます。  この点につきましてもすでに御存じのように恩給法におきまして仮定俸給において二等兵、一等兵、上等兵を兵長と同様にいたすことにいたしました。ここに二等兵、一等兵、上等兵の仮定俸給が上りまして、現在の月二千百円という金額政府当局より承わりますると、ニ等兵と一等兵の間である。こういうお話でございます。やはりこれも兵長並みに上げる必要があるというので月二千三百円にすべしという議論が強く闘わされました。而してでき得べくんばこれを八月一日より行おうとしたのでございますが、予算の面からいたし方なく来年の一月一日より二千三百円に増額するといたしたのでございます。  次に第三、「第二十九條において、国は、未帰還者の状況について調査究明するとともに、その帰還の促進に努めることを明記すること。」政府の原案におきましては未帰還者の状況について調査究明する云々だけでございますが、それになお現在多数外地に残つておられるかたがたのその留守家族のことを思いまして、帰還の促進に努めることを明記することといたしたのでございます。  第四は、「増加恩給、障害年金、傷病年金又は傷病賜金を受けるべき者或は受けた者につ、いても、厚生大臣が必要と認める場合は、この法律による療養の給付を行うことができるものとすること。この場合においては、政令で定めるところにより実費の一部を徴収すること。」政府の原案によりますと、恩給或いは年金を受けたものは療養の給付を打切られることに相成つております。然るに現在も恩給或いは年金を受けながら国立病院におきまして国家の療養の給付を受けておられるかたがたが相当おられるのでございます。これらのかたがたに対す恩給、年金が上るとは申せ、この際療養の給付を打切つてしまうことはそれらのかたがたに対しましてお気の毒であると存ぜられますので、年金、恩給をもらいましても、やはり療養の給付を国家が行う。両方併せて支給を受けられるということにいたしました。ただ併し恩給、年金の金額も上りましたこの際でございますので、この受けました恩給、年金の中から一部を療養のために支払いをさせる。こうするものでございます。  大体以上御説明申上げました五点が衆議院におきまする修正案でございます。
  91. 山下義信

    ○山下義信君 衆議院のほうで大変御心配に与りまして非常に結構な御修正に相成つたのでありますが、只今この大綱についての御説明を承わつたのでありますが、なお二、三先に御説明を一つ願いたいと思う。それは附則の第十九項を新たに御挿入になつた、あれを一つわかるように御説明を願いたい。
  92. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 御説明を申上げます。先生がたに書きとめて頂くのは妙なことでございますが、ちよつとお聞きとりを願いたいと思います。例えば妻、子一人の留守家族考えて見ますると、現行の法律におきましては、外地におりまする本人に対する月給が一千円、妻に対して月手当六百円、第一子に対して六百円、合せますると、二千二百円に相成ります。それを今回の修正の、只今御説明いたしました第五項によりますると、この妻並びに子一人の家庭は先ず二千百円と四百円が与えられます。そういたしますと、合せて二千五百円に相成つておる、そうすると二千五百円と先ほど申上げました二千二百円の差額即ち三百円、この三百円を遡つて一月に三百円というものを支給せんとするのが第一点。それからその次に妻だけの留守家族考えて見ます。そういたしますと、現行法におきましては月給が千円と妻に対する手当六百円、千六百円が毎月与えられるわけでございます。こういう家庭には今回の修正案の只今御説明いたしました修正要綱の五項によりますると二千百円が与えられておる。従いましてこの差の五百円を毎月毎月遡つて出す。そうするのが第二点であります。それからその次は妻も第一子もおらない、第二子以下の家庭の場合につきましては月給が千円と手当が一人四百円、千四百円に相成ります。これらの家庭のもの応対しまして二千百円を与れんとするものでございますから、その差額の七百円というものを趣つて与える。そういう趣旨でございます。少しく御説明が複雑になりましたが、御了承願います。
  93. 山下義信

    ○山下義信君 今の御説明一応わかつたのでありますが、なお頭に入りかねるのですが、この差額は四月から七月までの差額でありますが、この差額はいつ支給をするというのでありますか、私が見ますと、この差額は結局これは八月一日からやはり実施せられて、この差額の計算支給と言いますか、これは八月一日からやはり支給されるのじやないかと思うのですが、それで四月から七月までの、今御説明のありましたような計算をして、それで今のような差引の額が出たのは、八月一日からお払いになるのじやないかと思うのですが、どういうふうにお払いになるのでしようか。
  94. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 只今お尋ねのように、これは四月以降七月までの分でございまして、とりまとめまして八月一日以降できるだけ近い機会に支払うこととするものであります。
  95. 山下義信

    ○山下義信君 次は修正の第二十六項なんですが、その前に二十三項の厚生省令で定める場合を除くというが、あれを削るのはどういう意味ですか。
  96. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 只今要綱において御説明いたしました第四項でございますが、政府の原案は恩給年金をもらう者については療養の給付を打切ることに相成つております。それを但書におきまして打切らないというふうにいたしたものでございます。
  97. 山下義信

    ○山下義信君 これがあつてどうして悪いのですか。これをわざわざ削つたのはどういうわけですか。
  98. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 「厚生省令で定める場合を除くほか」と原案にありましたのは、いわゆる特例患者と言われるものでありまして、少額の増加恩給を受けながら未復員者給与法で療養を受けておるかたが現在四百名ぐらいおるわけであります。これは復員患者のうちで一時未復員者給与法による療養がまだ施行されません時代に恩給の申請をいたしまして、増加恩給をもらつたものがあつたのでありますが、それはこの未復員者給与法においては療養を受けられないことになつたのでありまして、誠にお気の毒でございまして、早く増加恩給を受けた結果、折角の療養を受けられないということでありましたので、大蔵当局と私のほうと相談をいたしまして、かようなかたにつきましても法律の解釈といたしまして療養を受けることができるようにいたしたわけでございます。その結果未復員患者として療養を受けられているかたの中に大部分のかたは傷病恩給をもらわないのでありますが、一部少数のかたがたが増加恩給を受けて療養せられておる者があつたわけであります。今度恩給増額になりますと、こういう特例患者のかたがたも相当多額の増加恩給を受けながら、なお且つ療養するということになりますというと、他の未復員患者との均衡を失することになりますので、特例患者と称するかたがたはこの法律の療養から除外しよう、こういうのが政府の原案であつたわけでございます。今回それを改められまして、すべての人に増加恩給と療養とを給付することにいたしました結果、この規定が不必要になつたと考えられるわけであります。
  99. 山下義信

    ○山下義信君 わかりました。そうすると関連して原案の二十五項即ち修正の二十六に厚生大臣が必要なときには認定することになつていますね。この認定基準というようなものはどういうことを基準にしているのですか。但書が修正されておりますね。修正で但書が加えてあるのです。
  100. 川井章知

    衆議院専門員(川井章知君) 私からちよつと説明させて頂きます。この修正は療養の給付を受けながら恩給が、又年金がとれるというようにいたしたのでございますが、初めから併給ということを謳つてしまうことは、今まで恩給をやるような場合にはもう療養の必要がなかつたというその趣旨を根本的に崩してしまうというような大蔵省考えもございまして、これは厚生大臣が特に療養の必要があると認める場合に限つてやるというようなことをはつきりする趣旨においてこういうように但書を改めたわけでございます。
  101. 山下義信

    ○山下義信君 その必要があると認める場合若しくはその條件等は何かありますか。
  102. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 療養が現実に必要であると判断される場合におきましては、療養を特別に認定いたしまして継続実施する、こういうことになります。
  103. 山下義信

    ○山下義信君 くどくお尋ねするのもどうかと思うのですが、療養の必要があると認める場合というのはどういう場合ですか。
  104. 青柳一郎

    ○衆一議院議員(青柳一郎君) 只今特定患者の四百円につきまして田邊次長からお話がありましたが、実は先生がた御存じのように、外傷患者におきましては症状の固定がはつきりいたします。然るに内部疾患者、胸を病んでおるかたがた、これにつきましてはなかなか症状の固定というのがはつきりいたさないのだそうでございます。これらのものに対しましても能うべくんば裁定をして恩給なり年金の支給をさせたいのであります。そうしておいて、併し支給いをしますると療養の給付が打切られてしまう、これ又気の毒だというような点から、主として内部疾患を対象としてこの修正を行なつた次第でございます。
  105. 山下義信

    ○山下義信君 大変只今の御答弁で明瞭になつたように思うのであります。長い聞の問題でありました胸部疾患者のその療養を更に見てやろうという御趣旨でありますならば、非常に結構であります。長い間の懸案が解決せられたものと思いまして大変結構に思うのであります。それで私が一つ伺いたいと思いますのは、今回第一條、この法律の目的とありますが、この條文を御修正に相成つた今その要綱について遺家族援護法との関連について御説明があつたのでありますが、いま少し詳細に承わりたいと思う。それは本法の性格が、この法の建前が御修正によつて私ども若干変るのじやないかという気持がするのであります。若しこの法律の性格が変らんというのであれば御修正が意味をなさん、これは非常に重大な御修正をなさつたと私どもは考えろのであります。これはいま少し一つ修正をなさいましたかたのお気持を詳しく承わりたいと思うのであります。それで言葉の上を辿つて質問しますと、「未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、」ということは、どういうところを押えて「特別の状態」と考えられるのか、その「特別の状態」ということは何を指すのであるか、従つてその状態に対する国家責任がここに具体的に打出してある。先ほどの御説明では遺家族援護法国家補償の云々という字句があつて、それを持つて来たのだと、併しまるまるそれを持つて来るわけには行かんから、半分ほどその気持が取入れてあるのだということでありますが、お気持としてはわかるのでありますが、厳密に申上げてそれでは少し不明瞭なような気がするのです。それでこの御修正の御趣旨が私は非常に重大であると思いますので、いま一度詳細に修正者のお心持を承わりたいと思うのでります。
  106. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) この法案の審議の際にもいろいろ論議が出た点でございまするが、戦争犠牲者の中にもいろいろな種類がおありでございます。何と申しましても人的損害と物的損失というようなものが考えられます。その際にその戦争犠牲はやはり人的の損害から先ず取上げて、それを国家責任において、国家的な見地に立つて補うというほうが先であろう。而して人的の被害のうちでも国家の強制力を以て引つぱり出されて被害を受けておる人のほうを先にすべきである。而して国家の強制力を以て引つぱり出されたかたがたの人的の損害については、これは飽くまでも国家補償の線で行くべきであるというふうな議論が闘わされたのでございます。好むと好まざるとにかかわらず、外地におきまして抑留的な不自由な生活を営んでおるかたがたに対して、国家は相当な覚悟を以てそれらのかたがたの残された家族に対してもできるだけのことをすべきであるという気持がそれに盛られておるのであると、私はそう思つております。
  107. 山下義信

    ○山下義信君 お気持はわかるのでありますが、私が留守家族に対する援護は国の補償的責任で以てやるのだということになりますと、従来の考え方と少し何と申しますか、変つて来る、それでその精神が第一條で修正して謳われてある。それに相応するような内容というものを仮りに修正をなさつたところがあろとすれば、どういうところがこの御修正にふさわしいような修正がなされたものと解することができましようか、私はこの一條の法律の目的を、只今申されたような国家補償的な見地で、国の責任において与えた不測の損害に対して補償して行くのだという遺家族援護に盛りましたような精神が強調されてあるということになりますと、私はこの援護法のやり方も、それに相応しなければ、看板だけは国家補償でやるのだ、その精神でやるのだ、中味は元の通りだというのでは看板と中味が合わんと思うのですね、それはどう考えられますでしようか。
  108. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 只今、山下先生の御発言の最初のほうにもございましたように、これらの未帰還者はすべてを引つくるめて国家補償の観念でやるべきではない、それでない部分も相当あるということを勘案いたしまして、国家責任においてという程度の字句を挿入した次第でございます。それらの考え方の違いを見まして、ただ法案を修正したというような点はないのであります。ただそういうような考え方の下に援護いたしたいという気持を謳つたというふうに御了承をお願いしたいと思うわけであります。    〔委員長代理常岡一郎君退席、委員長着席〕
  109. 山下義信

    ○山下義信君 御説明は一応承わるのでありますが、今のように仰せになることになりますと、この未帰還者対象の中には特別の状態に置かれてあつて、国が責任を持つて援護しなくちやならん対象者もおり、又そうでない対象者もおるのだ、従つて皆が皆そういう国が責任を持つて補償しようという趣旨で扱うわけに行かないのであるから、まあそこまでする必要のない人に中味は準じてやつておるのだということになりますと、これは御修正なさつた甲斐がない。それでこの対象者の中には国がそこまで責任を持たなくてもいい人がおつても皆それを同一の国が責任を持つてやらなければならんというようなところまで皆引上げて、細かい議論をすればいろいろあろうけれども、この際国が責任を持つて補償するという対象者に皆一つにしてしまつて、こうしたのだというのならばわかるのでありますけれども、国が責任を持つて援護をやらなくちやならん、そういう特別の状態に置かれてある者のためにこの法律を作る、こう言いながら、中味は国が責任を持つて必要のない人たちに対する援護のし方だけにとどまつておるというのでは、御修正を願つた甲斐が実はないように思うのでありますが、その点はどうお考え下さつたのでございましようか。
  110. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) いろいろ御意見もございますと思いますが、それらの未復員者いわゆる特別未帰還者等を引つくるめまして、全部について国が責任を持つということは、最大公約数であるというふうに考えたのでございます。そのうち未復員者につきましては、これは尤も特別未帰還者に比べまして、もつと責任の程度が重いものであるというふうなことは考えておるのでございます。ただそうなりました、二段階になる場合に、二段階としても取扱いが違うのではなかろうか、こういうお話になると思うのであります。その点につきましてはこの修正におきましても、全部政府原案と同じように同様の援護をするということに相成つておる次第でございます。
  111. 山下義信

    ○山下義信君 これは端的に申しますと、この援護の具体的なやり方というものは、これは多分に生活保護法的な色彩を持つておるのですね、それで従来はそうであつた、現行法は。又今度の政府の提案はこつの法案を一本にして、未帰還者留守家族援護法を一本にはしたけれども、そのやり方については多分に生活保護法的な色彩を持つておるのです。例えばこの本人が相当扶養しなければなりませんような家族状態でなければ支給していない、現実におきましてはその留守家族があるなしは別としまして、相当多数の対象者があり、従つて留守世帯というもの、留守家族というものは非常に多数であるけれども、案はこの本法の適用者は意外に少いのです。その少い理由は何であるかと言いますと、家族がないとかいうことでなくして、家族は立派にあろのですけれども、それがいわゆる普通の生計を営んでおるがために、本法の適用を受けていない、それでその條件というものがこう皆ずつとついておるのです。でありまするから、そういう点は端的に申しますというと、本人がいなければ留守家族の生活が困るという世帯に対してでなければこの留守家族手当というものは支給していないのです。私の存じておりますることが間違つておるならば御指摘を願いたい。今度の法律はやはりそういうやり方をするのです。これは増額をして、御修正下さつて、それが兵長の線までとバランスをとつて頂いて二千三百円にして頂いたというのは、金額が上つたのは結構でありますが、それがもらえるのは同じことなんだ、今回の政府の提案によりまして、本当に留守家族というものにそれが生活の状態がどうあろうと、本人とのいろいろの続柄というものが本法に規定してあるような続柄であつて、それが本当に留守家族であるならば、それに与えておるかというとそうではない、与えていない、生活を相当営んでおれば与えない、そのやり方というのは飽くまでも生活援護であつて、いわゆる我々がここ一両年論議し来つた国家補償的なやり方ではない、それでそういうやり方になつていないが、ここで第一條におきまして大変御心配下つてこの留守家族援護というこのやり方というものは生活保護法の変型ではなくて、国家補償的な恩給法に近いものにこれを正確に近付けるために御苦労下つたことは私は賛成するのです。特定のものが、未復員者がその線に準じて参りまして、未帰還者があらゆる角度から勘案してみて、これと同じ状態であると考えてもいいと、こう考えなさつたら、一括してこの第一條のしよつぱなに特別の状態にある、その状態をいろいろ考えてみると、これは未帰還者であろうと特別未帰還者であろうと考えておるならば、国が相当みてやる責任があると、そうお考えになる、恐らくこれは終戦責任も在外の同胞をこうした状態に置いたことも国の責任であると、こういう考え方をここでお謳い下つたことは、これは相当進歩的な考え方と、これは当然なことだと思うが、賛成したのです。それならば、中のやり方も多少の御考慮を願わないというと、この法律の性格は、こうして看板を打出しておきながら、やり方というものが依然として生活保護法的なやり方になつておりますと、私は看板と中味との食い違いが生じやしないかということを疑うのでありますが、その辺はどういうふうに御考慮下つたでしようか。
  112. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 山下先生の御意見よくわかるのでありますが、この法律におきましてもやはり遺族援護法におきまするように精神的といいますか、国の立場というものを挿入する必要があるという強い主張がございまして、その主張のために、政府原案におきまして、この国の責任というものを打ち出した次第であります。この国の責任ということは、国家補償の精神に基いてということとは少しく感覚が違うのであります。遺族の場合につきましては、恩給との密接な関係がございますので、卒直に国家補償の精神に基いてということを打ち出し得た次第でありますが、この未帰還者留守家族等援護法におきましては、そこまでは行き得ないというところに悩みがございまして、広い意味の国の責任においてということを打ち出したのにとどめたのであります。
  113. 山下義信

    ○山下義信君 私は、只今の御説明は一応承わつておきますが、やはり内容と、このたび打ち出して頂きました法律の精神性格というものとが必ずしも一致していないと思うのであります。それでこれはただ法律の上に出ておりまするいろいろな給付の点を、房仰せになりましたような御趣旨で私どもは承服するといたしましても、その他のすべての援護というものをやる、或いは帰還に際しての援護というものをやるんです。私はこれに影響を来すと思うのです。それで、この條項の中には、帰還に際しての、或いは療養の給付その他の処置が皆謳つてある。この法律によらない法外の援護というものを、いろいろ政府が行政でやるのです。そういうような、未帰還復員者、未帰還者帰還した際にとりまする援護措置も、且つ又第一條にお謳いになりましたようなこういう御趣旨でなされるものであると了解してよろしうございましようか。
  114. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 私どもといたしましては、只今お述べになりましたような趣旨と解しております。
  115. 山下義信

    ○山下義信君 私は、この際念のために厚生省の当局、政府当局に所信を質しておきたいと思う。もう一度繰返して申します。今度未帰還者留守家族援護法を、衆議院の修正によつて、これは国家補償的精神に基いて、「国の責任において」、こういうふうな補償的考えからこれらの援護をするのだ、こういうふうに法律の性格がなつて来たのです。従つて、未帰還者帰還に際する政府当局の援護も、やはり同様に国家補償的の精神を以てするのであると考えてよろしかどうか。従来は、誠にお気の毒であるから政府としてはどうしてもしなくちやならんという義務が何も法律上あるわけじやない。又そこまで国の責任があるわけではない。併しながら、何としても多年海外で御苦労になつかたがたが帰られるのであるから、できるだけ御親切に、国としてできるだけのことを一つ温かくして上げたいという考えでやつておるだというのが、今日まで引揚援護に対する一貫した政府の方針であつたと私は解釈するのであります。併しながら、それがこの留守家族援護法によりまして、すべて未帰還者に対しては国が補償する責任があるのであるという見地に立ちますと、これから引揚者のかたがた帰還した際にとりまする政府援護対策の根本的考え方も又同様に考えなければならんと思うのでありますが、政府はどういうように解釈されるかということを承わつておきたいと思います。
  116. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 「未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、」という字句の解釈からいたしまして、未帰還者が帰つて来た場合に、未復員者に対する援護一般邦人の未帰還者という場合と違うのはおかしいではないかという感じがするのでございます。併しながら、同じく未帰還者と申しましても、国家権力によつて動員をされ、未復員者という公的身分を持つている者と然らざる者との間に差違があるものと思つております。従来、未復員者給与法におきましては、未復員者が未復員期間中に公務に準ずるような事由によつて疾病にかかつたときには国家公務員災害補償法の精神に立脚いたしまして、療養補償をいたしておつたのであります。その精神はこの度の法律においても受け継がれておるわけであります。これは、広い意味におきまする第一條の未帰還者の特別の状態考えても差支えないのではないかと思います。一般邦人の場合におきましては、現在ソ連における未復員者、即ち捕虞と全く同じ状態にある人につきましては、特別未帰還者といたしまして特別未帰還者給与法によつて復員者に準ずる処遇がなされております。従いまして、これもそのままこの本法において受け継いだのであります。一般邦人、特別未帰還者以外の一般邦人が帰つて来られました際におきまして、その人たち現地におけるいろいろな事情から病気等でお帰りなつた際に、国が如何なる責任を持たなければならんか。未帰還という状態それ自身は、国交が回復しない結果として、誠にお気の毒な状態におかれている、そこに国の責任というものがあつて、その結果、その家族に対して手当を出す、これは、生活保護法と別建に、かような立法をいたしましても、国民なり、或いは国家が了承する援護ではないかと考えたわけでございます。これは、国家公務員が公務のために死亡したという場合に、恩給法等によつてそれを補償するという、別に定まつた原則はないのでございますが、この未帰還という状態それ自体が今までに例がないのでございますのでこの際そういつた問題に対しまして、かような特別の国の責任において行ないます援護という手が延びてもよろしいのではないか、こう考えまして、かような法律を提案いたしたわけでございます。只今質問のありました一般邦人帰還した場合におきまして、国が補償する責任があるか。病気に対しては補償する責任があるかという問題につきまして、この提案をいたしましたときにおきましては、そこまでは我々は割切つて考えておらなかつた次第であります。
  117. 山下義信

    ○山下義信君 結局今回の衆議院の修正によりまして、一般邦人に対しましての留守家族援護も一本になるわけでありますが、帰還に際して政府のとられる援護の方針も、やはり今回衆議院の修正せられましたこの精神に副うて今後そういう考え方で行くと、こういうふうに御答弁になつたと了承してよろしうございますか。
  118. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 未帰還者が帰つた場合の援護にはいろいろございますが、例えば、帰還手当のようなもの、それと療養というようなものとは少しく考え方を異にするものがあるのではないかと考える次第でございます。長い間自己意思に基かずして帰還できなかつたというその事態に対する国の責任は、それから出発するものは考えなければならんと思いますが、例えば、病気になつた場合におきまして、先方に残留しておられる間に風邪をひいた、その理由はわからない、わからないが、とにかく風邪をひいた、それがもとで胸を悪くした、或いは向うでいろいろの職業に従事しておりまするが、その職業に従事しておられる期間中公務によつて負傷した、或いはそうでなくて単に不注意によつて怪我をしたという場合があろうと思います。又その場合に病気又は死亡に対して国が責任を負わなければならないかという問題に対しては、未帰還という状態と不可分のものであるかどうか、その点は理論上もう少し検討を要するものであるのじやないか。極端に申しますと、未帰還という状態それ自身国家として責任を感ぜざるを得ないのでありまするが、病気になつたというそのこと、或いは老衰で死亡したということ、そのことについて国が全面的に国家補償をしなければならんかという点についてはなお考慮を要する点があるのではないかと思います。
  119. 山下義信

    ○山下義信君 私は追究して他日政府援護対策についての言質を取ろうとしておるのじやないので、誤解してもらつぢや困るが、不明瞭な点を明白にしておきたいと思う。病気の状態も老衰の状態も、言葉尻をつかまえるわけじやないのですけれども、これはやはり未帰還という特別の状態に置かれた、その状態のうちの一つなんです。この未帰還という状態を特別に考えということの中に入るのであつて、その病気とか老衰とかというものはその考えの外であるとは言い得られないのでありまして、このことは当局が考究せられるということでありますから、私は暫らく当局の御検討を待つことにいたしますが、今療養の給付と帰還手当の二つに分けての御説明であつたわけでありますが、帰還手当のほうの御説明がなかつたのでありますが、この点も明確にしておいて頂きたい。今帰還手当を出していると思うが、元来私どもが説明を従来受けておつたのは、まあいわばお気の毒なかただというので一つの目舞金であつたと思う。併しながらこれがやはり国家的な補償という性格を持つものである。という考え方に立つならば、あの一万円、五千円という帰還手当の支給、あの金の性格もこれを単なる見舞金といつたような一片の同情的な性格の金とはこれを考えることはできないのであつて、やはりこれも国の責任において補償的な考えでこれを出しておるのであるということになるのであるかどうであるか、ということも明確にしておかなければならんであろうと思うので、その点を一つ御見解を明らかにしておいて頂きたいと思います。
  120. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 帰還手当の問題につきましては、まさしく山下先生の御指摘の通り長い間抑留せられ又は自己意思に基かずして帰還できなかつた過去の状態に対しまして、国が国家補償と申しましては少し大袈婆になりまするが、何と申しまするか、お舞見金或いは償い金という気持を表わしますためにかような制度を実は設けた次第でございます。帰還手当本質にきましては、いろいろこれを創設する際に政府部内でも御意見でございましたし、やはり長い間海外にあつて自己意思に基かずして帰還さたなかつたというそう状態政府として着眼し、又その状態に御同情申上げて差上げる御見舞である、そこには御指摘の通り確かに国としてこの償いであるといつた気持も含まれておると存ずるのであります。
  121. 山下義信

    ○山下義信君 この点も私は軽卒の決定をいたしましては相成らんかとも思いますので、当局も慎重に御検討を願うことにいたしますが、修正者のお考えも私はこの際承わつておきたいと思う。それで帰還手当は御承知のように未復員者一般邦人もすべて一律に平等に出しておるが、この金が今のような国家補償であるか、単なる御見舞金であるか、といつた金の性格が不明確であるということになりますと、これはもらうほうも極めて金の性格があいまいなるが故に、或いはそれを以て足たりとしないで、少額であるといつて不足をとなえ、或いは又交渉すればそれが増額せられるのではないかという考え方が起るのは当然なのであります。併しながら金額の大小にかかわらず、例えばこの留守家族に渡すところの二千三百円或いは扶養家族に渡す四百円というがごとき金額が決定すれば、今日の四百円というがごときは極めて些少でございますが、併しながら金額の大小によらずして、これはこういう決定によつてこの性格でこう支給するのであるというならば、そこに裁量の余地はない、併しながらお見舞金だというようなことになれば、もつとゆすれば出るのではなかろうか、ゆすれば又殖えるかもわからないというようなことで、極めて性格をあいまいにしておきますることが却つて私は誤解を生み、折角のこういうような尊い金が、若し国家補償という考え方で出すならば非常に尊い金です。この尊いものに多い少いは私は言えんと思う。国の財政の睨み合せてこれだけのことをする。これが国の誠心誠意出し得る最大限度のいわば補償金であるというなれば、何ぞ多歩を論ぜんやであります。併しお見舞金ということになれは、それは又伸縮自在ということになれば問題が起るのは当然でございます。こういうふうに法律の性格をはつきりやつて来て留守家族援護の性格というものをはつきり打出されることになれば、すべてその法律の内容も或いは政府援護対策も行政措置も、一貫した割切つたものが流れなけば、私はあいまいであつてはならんと考えますから、質問を提起いたしたのでありますが、そういう帰還手当等に対しましての本法修正者の御意見は如何でございましようか、御参考に承つておきたいと思います。
  122. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 帰還手当の一万円、五千円の問題につきましては衆議院におきましては別段それほど掘下げては考えはいたしませんでした。今までのいろいろな沿革的な理由をそのままに認めておつたのに過ぎないのでございます。
  123. 山下義信

    ○山下義信君 私は御意見を伺うことができなかつたのは遺憾でございますが、強いてこの席で修正者並びに政府当局の決定的な御意見を求めようとはしません。併しながらこれは当然問題であるということだけは私は申上げておきたいと思う。それでこの中にはこの支給の期日につきましていろいろ重重段々、又支給の遡及につましても又お伺いしなくちやならん点があるのですが、省略いたします。若し第一條の修正のような御精神で行くならば、本法の適用についていつから適用したらよろしいか、又増額せられた手当をどこまで遡及したらいいかというような問題は、私は当然問題になると思いますが、その点は又他日の質疑に譲ることにいたしまして最後に今一つ伺いたいと思いますことは、この第二十九條については、これは午前にも御質疑があつたと承つておりますので重復は避けたいと思いますが、この帰還の促進に努めなければならんということが、それで今朝の御質疑にもあつたように存じますので、若し重復しておつたらお許し願いたいのですが、これは本当にやるのですか、帰還の促進というのは。ただこれは一つ希望的なことで第二十九條にこういう御修正になつたのですか、本当にこの調査究明と、そして未帰還者帰還の促進というものを本当にやろうとするのですか、帰還の促進というものを本当にやろうとするのでしようか、どうでしようかということを私は伺いたい。ただこういうことを注文的にしておくということならば附帯決議や希望條件でもいい、併しながら法律の上に書くということになるというと、この帰還の促進ということをこれは当然やらなければならない。併しそれで帰還の促進をやるように法律に規定しておくということになりますと、この未帰還者留守家族援護法の業務の中には、帰還促進ということが当然出て来るのです。それがどういうふうに裏付が措置されてあるかということを修正者に伺つておきたいと思います。
  124. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 帰還の促進の問題につきましても、第一條についてと同じように、留守家族方面から調査究明のみでは心淋しいものがあるので政府におきましてはこの際、相当な覚悟を持つてなお帰還の促進に努めたいという強い要望がございました。従いまして政府当局のほうにも十分諮りまして、今後とも帰還の促進に十全なる努力を払うということでありましたので、はつきりと留守家族の心情を思いましてこれに附加した次第であります。
  125. 山下義信

    ○山下義信君 そうすると政府のほうはこういう修正を受けるということは、この法律の施主当然帰還促進という行政が伴つて来ると考えますが、その帰還促進という行政がなければ、この法律意思に副うことができないではないか、その行政的な扱い方というものは、政府はどういうように準備するのであるかということを伺いたい。
  126. 青柳一郎

    衆議院議員(青柳一郎君) 山下先生の御質問御尤もでございまして、政府のほうでは意見といたしましては、これは当然なことであるから入れる必要もなかろうというような意見も一応あつたのでございます。併しながら留守家族かたがたから非常な要望がありまして、只今も御説明いたしましたが、この調査究明のみにとどめて引揚げの促進がないということは、我々の心情から言つてどうしても納得できない。政府は十分現在も努めておるけれども、将来努めるというふうな精神的な規定を置くことについての熱望がございました。政府のほうにおきましても一応の了解をいたしましたものでありますので、これに差し加えたのが実情でざいます。
  127. 山下義信

    ○山下義信君 それでは厚生省の業務の中にこれが新たに入るというわけじやないのですね。それでなければ……実際はやらない、帰還促進という厚生省業務というものがこの法律によつて新たに課せられたものと私は見るのですが、そうやらなければならんように思のでありますが、併しながら厚生省業務の中に帰還促進という業務が新たに入るのじやないということになればただ気持を持つておるだけのことことでありまして、一向に帰還は促進されるわけじやない。事実として帰還が促進されることは、こういう業務が行政事務の上に行われて行かなければ、これは実現できないのでありまして、その点或いは午前の御質疑の中にあつたかと思うのでありますが、私はこれも後の問題になると思います。私はこの際政府に対してこの点だけ伺つて私の質疑を終りますが、第十六條の遺骨埋葬経費、十七條の遺骨引取経費というものが、今回政府原案といたしまして、一つは三千円、一つは二千七百円というもの一が支給されることになつたのであります。この規定はやはり八月一日から御施行になるのだろうと思うのでありますが、そこで私が伺いたいと思いますことは、折角こういうふうな改善と言いますか、細かいお心遣いをなさつて、こういうふうに今回改められたということになりますれば、私はこの適用の範囲をできるだけ広く八月一日からということでなしに、もつとこの法の公布に近い最近の対象にまでこれは御適用になぬましても一向差支えないのじやないかと思う。例えば留守家族手当並びにその扶養家族手当只今ややこしいような御計算をなさつて四月まで遡つて御支給になる。これに対して遺骨埋葬経費、遺骨引取経費だけは、五月に帰つた遺骨にも六月に迎えた遺骨の引取にも、これは遡及なさらんというと、八月一日からということになりますと、これは如何でございましようか、何か運用の点か何かでお考えでもあるのでございましようか。例えば今次の中共からの引揚げに対しては、全然これが適用せられんということになる。それは八月一日からびしやつときめれば簡単だから、原案を書くのにも極めて簡単であります。又施行にも簡単でありますが、折角一方留守家族手当扶養手当を四月に遡つて適用しようというので、遺骨の埋葬やその他も、これは一つできるだけ今次中共の集団帰還の諸氏に対しましても、私は適用するようになされたほうが御親切ではないかと思うのでありますが、この点政府に承わつておきたいと思います。
  128. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 実は新らしい援護法第十六條、十七條の規定が、現在の未復員者給与法と特別未帰還者給与法にあるわけでありまして、これは七月まで未復員者給与法と特別未帰還者給与法が生きておりますので、今度の集団帰還の際に、未復員者及び特別未帰還者のかたで該当すれば、現在の未復員者給与法によつて支給可能でありますので、このようにいたしたわけであります。それから金目の違います点は、鉄道運賃の増額に伴いましてさようにいたしたわけであります。
  129. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に御質疑はございませんでしようか。大体御質疑も尽きたように思いますので、本連合委員会における本案の審査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないと認めます。よつて本連合委員会はこの程度で打切ります。連合委員会はこれにて散会いたします。    午後二時四十九分教会