運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-17 第15回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十七日(水曜日)    午前十時十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            左藤 義詮君            高橋進太郎君            森 八三一君            内村 清次君            山下 義信君            駒井 藤平君            岩木 哲夫君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            石原幹市郎君            石坂 豊一君            石川 榮一君            泉山 三六君           池田宇右衞門君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            平林 太一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            堀越 儀郎君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            高田なほ子君            羽生 三七君            波多野 鼎君            松永 義雄君            山田 節男君            吉川末次郎君            鈴木 強平君            西田 隆男君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君    文 部 大 臣 岡野 清豪君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    通商産業大臣 小笠原三九郎君    建 設 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君    国 務 大 臣 本多 市郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    調達庁長官   根道 広吉君    行政管理政務次    官       中川 幸平君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁保安局長 山田  誠君    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    厚生省薬務局長 慶松 一郎君    引揚援護庁長官 木村忠二郎君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算補  正(機第一号)(内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今より予算委員会を開会いたします。  本日は政府提出に係る二十七年度補正予算三案に対する総理大臣に対する質疑を開始いたします。
  3. 内村清次

    内村清次君 本日から、参議院のほうではいよいよ本審査にかかることに相成りますが、二十七年度の補正予算に対しましては、衆議院のほうで昨日附帯決議を以てこれが通過したということを聞いておるのであります。そこで二十七年度の一般会計予算補正に対しまする原案については、過般大蔵大臣からその提案の理由を本委員会説明をしてあります。で、このことはそれでよいといたしまして、昨日附帯決議を以て通過いたしましたこの予算補正に対しましては、当然所管の大臣から、大蔵大臣から、その附帯決議内容及びこれに対する政府措置、これを本委員会に先ず冒頭に提案をせられまして、そうして説明をせられまして、本審査に入るべきが、私は議事進行上正当であろうと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)そういうふうに委員長において取扱いをして頂きたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  4. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今内村君の動議に異議ありませんか。    〔「異議なし」「当然だ」「附帯決議の文書を配付して下さい」と呼ぶ者あり〕
  5. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 附帯決議内容を読上げますが、あとから印刷を持つて参りますから……     附帯決議  政府は現下諸情勢に鑑み、公務員の  給与改善地方財政堅実化中小  企業金融改善等に対して速かに適  切なる措置を講ずると共に、昭和二  十八年度以降において予想される巨  額なる新財政需要と国家の財政力を  厳密に検討して将来の財政方針を確  立すること。   右決議する。  こういう文句でございます。  で、政府只今附帯決議につきましては、今後予算運用等により、できるだけ御趣旨に副うよう適切な措置を講じて行く考えであるという御返事をいたしました。只今の御質問に対しまして、詳細はあとから政府委員から、或いは後刻になるかと思うのでありますが、御説明をいたさせます。
  6. 内村清次

    内村清次君 関連して、只今決議案内容は承りました。その措置に対しましても、その運用によつてこれを政府決議案趣旨則つてつて行く、こういうような御答弁でございますが、これは内容におきましても相当重要な点があります。勿論この点は議事進行上におきましては、私は省略いたします。やはりこれは委員といたしまして、あと質問があると存じますから省略いたしますが、ただ問題は、この内容重要性に鑑みまして、運用によつてこれを善処するということばかりでなくして、その具体的な問題につきましては、至急に大蔵大臣から一つ説明をして頂きたい。この点を私は強く要望いたしておきます。
  7. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は只今附帯決議に対しましてこの大蔵大臣の御説明を聞きましたが、これは今後予算審議の上におきまして前提となるべき要素がたくさん含まれていると思うのです。例えば今回の予算審議に当つてはいろいろ重要な諸問題はありますけれども、やはり公務員給与ースの問題であるとか、或いは中小企業金融対策の問題でありますとか、その他たくさんな問題は、今附帯決議に対する政府の具体的な答弁内容というものの一応前提をよく承知しておらないと、今後の質問に対しましては非常に無駄が多いし、又その質問の論点におきましても角度が違うと思います。でありますから、ただ政府は速かに対策を講ずるというだけでなくして、具体的な附帯決議に対する政府意思予算審議前提といたしまして、もう少し具体的に披瀝されてから、そうして予算審議に入りたいと、かように思いますが、如何ですか。
  8. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 只今岩木委員お話でございますが、これは衆議院予算そのものが修正になつたわけじやないので、附帯決議に過ぎませんから、本日は昨日の理事会決定通り、直ちに質疑に入られんことをお願いいたします。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は吉田総理に対しまして、総括的な質問に入る前に、昨日生じました緊急の事態について二点お伺いしたいと思うのであります。  第一点は、只今内村君並びに岩木君から問題にされましたところの附帯決議取扱方に対して政府がどういうような態度をとるかということであります。只今大蔵大臣の御答弁によりますというと、予算運用によつてこれを実現するように言われたのであります。併しながら、この附帯決議に盛られておりまするところは、公務員の年末手当の増額の問題であろうと思います。或いはそれに関連する公務員給与ースの問題にもなるかとも思いますし、更に中小企業金融改善の問題、地方財政堅実化問題等でございまして、これらは極めて重要な問題であり、且つ相当巨額の金を要する問題であります。従いまして、単に予算運用ということだけではなかなか解決できない問題ではないか。昨晩の夕刊を見ますというと、政府公務員への年末手当を増額する、それに百億円を当てるというふうな記事も見えております。この真偽のほどは私は存じませんけれども、かようになつて参りますというと、なかなか単なる運用では困難であります。先ずその運用ということを政府が言われる前に、一体この三つの問題に対して、政府はこの附帯決議に基いて、而も与党の議員から出されましたこの附帯決議について、政府は如何なる責任を負い、且つそれをどの程度に実現しようとするのか。これは大蔵大臣から先ず総括的に御答弁を願いたいと思います。
  10. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問の金高のことは、新聞に出たことには根拠がないと私は思つております。  それから三点につきまして責任を以てやるか、やらないかということの御質問でございますが、いやしくもどうも政府がやると言いましたらば、責任を持つのは当然でございます。まじめにこれらの三点につきまして、適当な措置をとるというつもりでおります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 まじめに適当な措置をとると言われておりますが、とにかく昨日この附帯決議が付されまして、衆議院を通過して、今日こちらに回付された問題でございます。従いまして大蔵大臣といたしましては、少くとも今日のこの予算委員会に臨むに当りましては、この附帯決議についての大体政府考え方なり、或いは又それの枠なりを示さるべきが当然ではないか、それだけの準備をして来なければならん責任があると思うのであります。この点につきまして、政府はもう一度はつきりとその点についてのお考えを願いたい、お考えを示して頂きたい。
  12. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問は御尤もでございますが、只今政府当局で検討中でございまして、今私はこれをこうするという返事はいたしかねるのでございます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 甚だ怠慢である。又大蔵大臣としてこの附帯決議に対する取扱方の誠意が足りないというふうに私は存ずるのでありますが、それならば一体、大体その附帯決議の実現について政府がとる措置はいつ頃これを御発表になるか。本日の午後これを御発表になるか、或いは明日御発表になるか。私どもは少くとも本日この委員会劈頭に、あなたから進んで何か御発言があると思つておりましたが、ところが、それがない。甚だ遺憾でありますが、いつこれを御発表になりますか。
  14. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私はまじめに考えておりますので、むしろいつということの御返事はいたしませんで、早く提出いたします。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではこれはこの参議院における予算委員会が続けられておりますうちに発表されるのか、或いはこの十五特別国会が済みました後に発表されるのか、これは重大な問題でありますのでお伺いしますが、この国会会期中にこれを具体的に発表されるかどうか。
  16. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 会期中に発表いたします。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは早く発表されることを私から希望いたしまして、この問題は打切つて、次にもう一つの、昨日生じました緊急事態炭労争議に対する緊急調整の問題についてお伺いいたします。この緊急調整発動によりまして、炭鉱労働組合ストライキは停止されました。これは争議をやつております炭鉱労働組合にとりましては、全く手足を縛されたものであります。而もその前におきまして、検察庁並びに警察を動員いたしまして、若し保安要員の引揚が起りましたならば、強圧手段を以て臨むという態度政府は示しております。かように炭鉱労働組合側に対しましては政府強圧をし、手足を縛することをやつております。然るに一方炭鉱経営者側に対しましては、政府は如何なる措置とつたか、私は争議が始まりましてから今日の間まで聞いてはおりません。代表を招致いたしまして何事か話されたことはあるようです。併しながら片方側に対しましては弾圧をし、手足を縛するがごときことをして、そうしてその相手方の炭鉱経営者に対しては政府は何らの圧力を加えていない、片手落ちであり、甚だしい不公平であることは明らかであります。而も炭鉱労働組合は昨夜遅く、中山氏の示されました第二次の斡旋案をこれを受諾しておるのであります。炭鉱経営者側はそれさえ受諾することをしぶつておるという状態であります。かように片方はすつかり力を政府の力によつて失わせしめられ、他方はそれによつてますます強くなつておるような事態であります。かような事態においてこの炭鉱争議政府解決しようというのは甚だしく不公平でありますが、政府炭鉱経営者側に対して如何なる措置をとるつもりであるか。これに対して、例えばその斡旋案に基いて如何なる譲歩を炭鉱経営者側にさせるのか、この点につきまして政府の御答弁を願いたいのであります。
  18. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。緊急調整につきましては、法規に従いまして中労委に諮問いたし、中労委の答申を待つて発動準備をいたしたのでありまして、別に特別に組合側に対して圧迫を加えるというようなことは全然やつておりません。  なお経営者側に対してどういう態度とつたかというお話でありますが、昨日の組合側スト中止は、中労委会長から新らしい斡旋案を示されました後ではありますが、その斡旋案組合が呑んで中止をしたのでなくて、組合側としては、緊急調整発動されることに対しましてスト中止の指令を出したのであります。それから後に、十七日の零時を過ぎました後に組合側のほうにおきまして斡旋案を呑んだということは聞いておりますが、その後の情勢につきましては、私まだ情報を得ておりません。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 大変奇怪なことを承わりました。あの状態は誰が見ましても、労働組合側手足を縛られたということは明らかであります。ストライキは停止された。たとえその手続があなたの指摘されるように、法律に基き、又中労委の議決に基きましてそうされたとしても、現実の問題としては、労働組合がそのストライキ権を停止されたことは、これは明らかであります。一方におきまして、経営者側は全くフリーである。私は手続のことを聞いておるのではない。この争議解決に当りましてとりました政府措置は、炭鉱労働者側に対してはそういう方法を用いていながら、経営者に対しては何ら解決圧力を加えていないということは何事か、こういうことをお伺いしておるのですが、緒方氏はこれに対しましては、一言もお答えになつておらん。私は経営者側に対して官房長官政府を代表して、如何なる措置をとるかをお伺いしたいのであります。
  20. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 緊急調整発動した以後におきまして、組合中労委会長の新斡旋案を呑んだのでありますが、その後経営者側が今に至るまで呑んでいないという間接情報は聞いておりますけれども、それに対しては今後情報を得まして、それに従つて政府のほうで斡旋すべきことがあれば斡旋いたしたい、さように考えております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 官房長官は、経営者側は未だにそれを呑んでいない、こういう情報であります。まだ呑んだという情報も得ておらない。併しながら情報を得てから斡旋すべきことは斡旋する。片方に対しては明らかに強圧を加え、ストライキ中止させて、経営者側に対しましては極めて緩漫にして、何ら措置を講じていないと言わなければなりません。緊急調整発動の当否は今私はここでは論じませんけれども緊急調整発動するような事態になりました際における政府争議解決方法といたしましては、我々といたしましては甚だ腑に落ちない。又政府の今日の態度は非常に不公平なものである、こう考えざるを得ないのであります。私は緒方官房長官がこの際、経営者側に対しましてどういう態度をとるかをもう少し明らかにここで御発表願いたいと思います。
  22. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 緊急調整発動によりまして、問題は根本的に解決されないのでありまして、やはり依然として中労委斡旋によつて、且つ両者の歩み寄りによつてその事態解決したいということは、以前も今日も政府は変らないのであります。併しながら事柄事柄でありますから、若し政府間接にでも斡旋することがこの解決に有効であるということがわかりますれば、政府斡旋いたしたいと考えております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは遷延を許すべき問題でない。政府は本日中に経営者側に対しまして、何らかの措置をとる御用意があるか、これをお伺いしたい。
  24. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 事情をよく確かめまして判断をいたします。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 緊急調整の問題につきましては、いずれ後の機会になお詳しく検討いたすことにいたしまして、次に私は総理大臣に対しまして、若干の御質問を申上げます。  アメリカ太平洋地域におきまして、地域的な軍事同盟と見られる北大西洋同盟にも匹敵すべき太平洋防衛同盟を結成しようとしておるように私どもは見ておるのであります。過日アリソン氏がアジアの各国を廻りましたが、私どもはこの太平洋防衛同盟を結成するための打診ではないかと推測しておるのであります。そうしてアリソン氏が東京に寄られまして、首相その他のかたがたと懇談されましたのも、何かこの問題について触れられたのではないかと思います。去る十一日韓国の台湾に出ております大使が台北でこういうことを言つておるのであります。李承晩大統領アイゼンハワー元帥に、韓国日本太平洋防衛同盟参加に同意する旨伝えたと言明しておるのであります。これは十二日の朝日新聞夕刊に出ております。これから判断いたしますというと、アイゼンハワー氏はすでに李承晩大統領に対しまして、太平洋防衛同盟の組織のことを何か相談しておるようでありますし、又日本参加の同意を求めたようにも解せられるのであります。これにつきまして、太平洋防衛同盟参加のことでございますが、アリソン氏を通じてなり、或いはそのほかのかたがた、或いはそのほかのチヤンネルから、日本がこれに加わるようにというような、何か話があつたのかどうか。又この太平洋防衛同盟に対しまする首相考え方はどうであるか。これを先ずお伺いしたいのであります。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。アリソン氏には私も会いましたが、その話の内容発表するというのは如何なものかと思いますが、併し発表という意味合でなくて、アリソン氏が私の所に見えましたときの話は、自分はその後における、その後というのは先年見えたその後における東洋の現状を見て来いというので視察に来たんだというので、アジア諸国の話をされて、雑談と言つていい程度の話をせられたのであります。その間に太平洋同盟という話は持出しておりません。又朝鮮政府がどういうことを言つたか、私も存じませんし、アメリカ政府が何と考えておるかということも存じません。というのは、今までこの問題について何らの政府交渉を受けておりません。  それからこれに対してどういう考えかというお話でありますが、私は太平洋同盟が現在どういう形で、或いはどういう内容について話がされておるかは存じません。その目的は結局太平洋における平和の維持ということでございましようが、その目的は結構でありますが、その手段、或いは日本が加入するについての条件如何政府として考えなければならんことでありますから、その内容が確かまつたあとでなければ、政府としては意見を申述べることは差控えたいと思います。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府はこの問題につきましてはまだ何も関知しておらん、こういうふうなお話でございますが、私はどうもそれをこのまま受取るわけには行かない。とにかく相当この問題はアメリカにおいても論議されておりますし、又韓国大使等がかようなことを発表しておる。又本日の朝刊にも同じようなことが外電として見えておる。こういうことから見ますれば、相当こういう問題は進められておる。こういうふうに考える。これに対しまして、政府はただ聞いておらないというようなことではなくて、この太平洋同盟が同時に北大西洋同盟と同じような意味の軍事的なものになるであろうということは予想されるのであります。政府は今日自衛力は持つておるが、再軍備はしないという立場をとつておるのであります。そういたしました場合に、若し太平洋同盟北大西洋同盟と同じような軍事的なものである場合におきまして、政府はつきりとこれにお入りにならないという態度を表明されるかどうか、それをお伺いしたいのであります。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞が何と書いてありましても、政府は何らの交渉を今日までは持つておらないということをはつきりここで申上げます。然らば大西洋同盟と同じような性質を持つて現われて来た場合に政府はどうするか、これは政府としては軍備を持たないことに決定いたしておりますから、若し軍備条件とするようなことがあつたらこれは入りません。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いいたしたいのは、朝鮮戦争推移に関してであります。本国会劈頭総理大臣並びに外務大臣の演説におきましては、朝鮮戦争については何も触れておられないのであります。我々といたしましては、一衣帯水の彼方にある朝鮮半島において今日進行しつつあります事態というものは、日本にとりまして重大な影響を持つものであると考えておるのであります。我々は朝鮮における休戦の成立、更には関係諸国によりまして、この朝鮮の問題が政治的に解決されることを望むものでありますが、政府も勿論今日朝鮮戦争状態が終結することを欲するものであろうと思うのであります。これにつきまして、政府はそれがどういう形で解決されることを望んでいるのかということをお伺いしたいのであります。それは三十八度線を大体境にいたしまして休戦が行われて、そうしてそのままの状態、即ち朝鮮戦争の起りまする前のような状態解決されることを欲せられるのか、或いは又李承晩政府なり、或いはアメリカの中において一部の人々が主張しておりますような、国連軍が北朝鮮まで席巻いたしまして、そうしてその下に李承晩政府朝鮮を統一する。こういう形で解決されることを欲するものであるか。これは隣国のことでありまして、この解決につきましては日本に重大な影響を及ぼす問題でございますので、それについての政府考え方というものをお伺いしたいのであります。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。朝鮮状態と言いますか、戦争推移というものが無論お話のように日本影響するところは少からざるものがあり、又どういうふうに休戦が成り立つか、或いは休戦後の朝鮮状態がどういうふうになるかということは、無論日本として重大な関心を払うべきことであります。併しながら同時にアイゼンハワー元帥がみずから朝鮮に見えて、実地を視察して、戦況をみずから見られるというようなほど米国においても重大問題として考えられており、又その解決の仕方については、これは更に朝鮮のみならず世界の人々の重大問題なのでありましようから、米国政府としても慎重に考えておることであろうと思います。この問題は未だ元帥が対朝鮮対策について何らの意思表示もしておらないときに、我々がこれに対していろいろ意見を差し挟むということは、日本としては差し控えたいと思います。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はアイゼンハワー元帥が如何なる対策を以て朝鮮問題を解決するかということに対して、日本政府がそれにどういう立場をとるかということをお伺いしておるのではないのでありまして、朝鮮問題の解決につきましては、例えば国連軍として軍隊を送つておりますイギリスにおきましても、その他の国々におきましても、重大な関心を払つて、そうして朝鮮問題の解決にはいろいろな意思表示政府等がやつておるのであります。そういたしまするならば、近くにあつて一番重大な影響を受けるところの日本が、この問題につきまして何らか政府考えておりますところを、こういうふうに解決してもらいたいということを、私は政府としてこの際示すべきではないか、これはやはり私は独立国として当然のことではないかと思うのでありますが、この朝鮮問題の推移に関しまして、政府は今日何事考えておられない、こういうことでしようか。或いはそれとも何かお考えになつておる、そうしてそれについて、こういう方針があるということを大綱なりでもお示しになれないものか、伺いたいと思います。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申すように、朝鮮の問題は重大問題でありますから、政府は何ら考えておらないとか、関心を持たないというのではないのであります。考えておれば、関心もあり、又政府意見のあるところは時々関係国にも言つておりますが、併しこの国会において発表する、こういうふうに政府考えておる、故にこうしてもらいたいというような注文をしたということは、問題が問題であるだけ、問題が重大問題であり、又国際的に甚だ微妙な状態に現在あるのでありますから、この際政府としてはこれに対して意見発表することは差し控えたいと思います。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 事、重大問題であり、国民も非常にこの問題の推移に関心を持つておりますだけ、政府が何らかの意思発表せられるということを、恐らく国民は希望しておるものと私は思います。併し政府がまあ今首相の言われたようなことで、御発表にならんということは、却つて私は日本の将来に一体政府は何らかのはつきりした方針を持つていないのじやないか、いわゆるその都度外交だけで以て進もうとしているのじやないかというような疑いを持たしめるものがありはしないかと、こう思うのであります。これはその程度にいたします。  次にお伺いしたいのは、首相は従来警察予備隊が設置されましてから以来、種々の機会におきまして、特に何回か開かれました国会において、警察予備隊或いは今日の保安隊、又海上警備隊等が軍備ではない、こういうふうにして否認をし続けて来られたのであります。この議論は果しない議論のようになつておるのでございますが、私は角度を変えまして、首相が保安隊、海上警備隊が軍備でない、こういうふうに言われておるならば、政府が今日軍備考え、或いは戦力と考えるものはどういうものであるかということを明らかにしなければならない責任があると思うものであります。そこで総理大臣に私は軍備とはどういうものか、戦力は又どういうものかということをお伺いしたいのであります。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題はしばしば繰返された問題であり、殊に保安庁長官からしてしばしば説明をしておられますが、私は保安庁長官の説明を以て政府の見解といたすのであります。
  35. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この問題については、当面の責任者であります私からお答えいたすことにいたします。  先ず保安隊でありますが、御承知の通り保安隊につきましては、保安庁法においてその性格をはつきり規定されておるのであります。即ち保安隊は我が国の治安、秩序を維持し、身体と生命、つまり人命を保護するために特別に必要な場合において行動する部隊である、こう規定されておるのであります。即ちどこまでも内地の治安確保ということが目的であるのであります。これに反して軍備というのは、申すまでもなく戦いを目的とするものであります。そこで戦力はいわゆる戦いを目的としたいわゆる総合的の兵力であります。これに反して保安隊は今申上げます通り、何ら戦いを目的としていない。ただただ内地の治安確保の目的を以て設置されたものである。この点においてはつきり戦力と区別されるということを私は考えておるのであります。申すまでもなく戦力は戦いを目的とすると同時に、その戦いを遂行し得る総合的能力であります。この程度に達しない限り、如何なるものといえども私は軍備ということは言えないと考えておるのであります。要するに一つ目的、戦いを目的とする、そうしてその目的を遂行し得る有効的確な総合兵力、これであります。従いまして、保安隊は何らかような目的も有せず、又これに相当する力も持つていない、全然兵力とは言えないということを私は確信する次第であります。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は戦力並びに軍備の問題についての積極的な御見解を伺つておるわけでありますが、只今の木村保安庁長官の発言ですと、勿論戦う目的、これが戦力であり、軍備であるということと、更にもう一つは、その戦いを遂行するための総合的な力の問題である、こういうふうに言われておるのであります。そこで私はお伺いしたいのでありますが、この戦う目的というものであります。例えば保安庁法の第四条に掲げておりますところのものに、我が国の平和と秩序を保つために云々ということが保安隊の目的になつております。勿論この平和と秩序を維持するためにはいろいろな方法考えられておりますが、少くとも保安隊は武器を持つております。そうしてこの場合には単に内部おけるいろいろな騒擾とか、そういうものだけではなくて、治安を維持する、平和を維持するという場合には、外敵が攻めて来た場合に、外敵からそういう問題が起りました場合に、これは或いは止むを得ずかも知れませんけれども、保安隊も戦わなければならないものだろうと思います。そういたしますと、そのために不断に訓練を続けておるということになれば、この戦う目的で果して戦力とそうでないものとの区別ができるか、どうもその区別がはつきりしておらないように思う。その限界をもう一度はつきりさして頂きたいと思うのであります。
  37. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく外国からの不法の侵入、つまり暴力行為に対しては戦います。私は木村個人でも戦う。いわんや日本の警察であろうが、保安隊であろうが、これは私は出動すべきだろうと考えております。  そこで問題は、要するに初めから外国の侵入を防ぐための目的で作られておるのかどうかということであります。保安隊は御承知の通り内地の治安確保、大きな騒擾事件或いは反乱事件、そういうような不幸な場合が起つたときにこれを出動するために作られておるのでありまして、根本において外敵の侵入に備えるために作つたものではない、その点においてはつきりされておるのであります。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、日米安全保障条約における自衛力の、自衛という問題との関連、或いは行政協定二十四条との関連が重大な問題になつて来ると思うのであります。行政協定二十四条には、日本区域において敵対行為或いは敵対行為が起るような脅威があつた場合には、両国政府は共同の措置をとるために直ちに協議をするという規定があります。この行政協定二十四条にある敵対行為が起つた場合、或いは起る脅威の存する場合に共同措置をとる、この共同措置は明らかに軍事的な共同措置である。この敵対行為は軍事的なものであると、こう私どもは見ておるのでありますから、当然これは軍事的な共同措置である。そうなつて参りますと、これは明らかに戦争に対して、少なくとも宣戦があろうがなかろうが、戦争に対しましての共同措置をとることになる。そうなつて参りますと、その際に保安隊の問題が当然に起つて来ると思うのですが、それでもなお且つ戦力でない、こういうふうなことがはつきり言えるかどうかという点になつて参るのであります。この点御見解をもう一度はつきりお答え願いたい。
  39. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。共同措置の問題でありまするが、共同措置についてはいろいろの問題が起るでありましよう。必ずしもこれは保安隊を動かせるということだけに限らんのであります。いろいろの物資の供給もありましようし、或いは人員の供給もあるのであります。初めから保安隊をこの目的に使うということでこれは約束ができておるものではないのであります。勿論そういうような不法の侵入のときにおきましては、いろいろな点から日本は協力しなければならんことになつております。これはもとよりそうであります。併し保安隊はその共同措置をとることを目的として作られておるのではないのであります。今申します通り初めから内地の秩序と治安を維持するために設けられたものであつて、全然その点において区別はあるわけであります。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にそれではお伺いしたいのは、総合的な力の問題で、これもなかなかむずかしい問題であろうと思うのですが、先ず量と質の関係、今の保安隊は、これはその量の方面から見ても質の方面から見ても戦力ではない、こういうふうにまあ断定されたといたしまして、仮にそれを私どもは承認いたしたといたしましても、この自衛力の漸増という見地からいたしまして、漸次これが増されて来る、そうしてこれが相当な力を持つに至りまして、やはり他国の常識的に考えられます軍備と同等のような力を持つまで発展をいたしますれば、これはそのときには量的な発展が質的に変化する、即ちおたまじやくしがそのときには蛙になる、足がはえる、ここが重大な分れ目なんですが、その限界は如何なる点に置かれているか、この点についてお伺いしたいと思います。
  41. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。この問題につきましては、御承知の通り国会におきましても種々論議されたのであります。もとよりこの戦力というのは、いわゆる近代戦を遂行し得る一つの総合的力でありまして、御承知の通り憲法第九条第二項におきましても「陸海空軍その他の戦力」と書いてあります。いわゆる近代戦を遂行するに足る大きな陸海空軍です、即ち総合戦力であります。これはその時と場所とによつておのずから異ると考えるのであります。いわゆる明治時代において戦力であつたものも、今においては戦力じやないというようなことが言えるわけであります。又世界が平和になりまして、そうして各国が本当にこの戦争ということをもうやらんというようになりますると、今のような僅かな国の持つている兵力でも、これはその時によつて戦力となり得ることもあるかもわかりません。時と場所によつておのずから異るものと我々は考えているのであります。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ時と場所によつて異なると、こういうふうに言われているのでありまするが、日本の場合をとりまして、やはりこれは自衛力の漸増という問題と関連をして来るのでありますが、現在自衛力は、今政府の言う自衛力なるものは漸次漸増された、この自衛力の漸増なるものは、安全保障条約の前文に基くものであろうと思われるのであります。で、警察予備隊が今日その性格をやや変じまして、更に七万五千から十一万に殖えている。これも漸増でありましようし、又海上警備隊が設けられまして、アメリカからフリゲート艦、上陸用支援艇を借りまして、そうしてその訓練が始められた。これも又軍艦か船かの問題は別といたしまして、やはり政府の言う自衛力の漸増に入り、又浜松における航空学校の開設、或いは今度百二十機の飛行機を借りて訓練を始めるという問題も、これ又自衛力の漸増と政府は言うのでありましよう。併しこの自衛力の漸増なるものは、これは行き当りばつたりのものではない。政府も風の間に間に今度アメリカから十隻船を借りようと思つて申込んだら、十八隻貸してくれたから、それじや今度それだけ殖やそうということでまさかおやりになつているものとは思わないのであります。やはり漸増にはそれだけの計画が立つておると私は思う。行き当りばつたりでないといたしますならば、一体その計画はどういうものであるか。即ち「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊」というのが保安庁法の第四条に書かれておる。これらの目的を遂行するためには、この国において一体どのくらいの分量を持つ陸上部隊或いは海上部隊、或いは航空部隊があればよろしいのか。例えば過日自由党の大橋武夫君と或る討論会に参りましたが、大橋君も陸上部隊としては三十万、海上には三十万、それから航空機は二千機を備える必要がある。こういうふうに言つておられます。これは前警察予備隊の長官であるかたであります。そういたしますと、大体このくらいが或いは政府の目安としておるところかとも推定されるのであります。政府のこの自衛力の漸増は如何なる計画に基くものであるか、又今日の日本状態からして、その自衛力なるものが、まあ政府の言ういわゆる最小限度どのくらいのものと考えておられるか、これを伺います。
  43. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今岡田委員から自衛力の問題のお話がありましたが、私は自衛力というものは、国家のいわゆる総合的力と私はこう考えております。みずからの国をみずからが守る。ただ軍備だけではありません。兵力だけではありません。いわゆる人間的の大きな力も私は必要であろう。いわゆる国民の精神、これも本当にみずからの国をみずからの手で守るのだということにならんといかんと思います。あらゆる点において私は自衛力というものは漸次増大して行かなければならん。いわゆる経済力もそうでありましよう。ただ軍備のみの問題でないと考えております。  そこで問題の保安隊の力、これをどこまで増して行くことが相当であるかという御質問のように受取られるのであります。これは私は内地の情勢、国際情勢、これは時々刻々に変つて行くべきものであろうと考えております。はつきりした限界をここに置くことはできんと私は考えております。そこで只今状態においてどうだと、こういうことになるのでありまするが、御承知の通り保安庁法におきましては、只今十一万と規定されておるのであります。それでこの十一万を殖やすについてはもとより国会の御承認を得なくちやならん。そこで諸君の御判断によつて日本自衛力をどこまで増して行くかということは、御判断を得なくちやならんと私は考えております。それで現在の状態は、十一万というところに限定をされております。これを殖やすについては国会の御承認を得なければならんのであります。それでこの十一万で足りるかどうかということの問題でありますが、私はこの十一万、只今のところは十一万でおいて、これを質的に向上させて行くべきものであろうと考えております。併しながら国内情勢、国際情勢によつてこれは変化して行くものでありまするから、これを直ちにこのままで固定させるということも私はできかねるのじやないか。それはお互いの判断によつてこれを増すとも又減少するとも、これは相当将来において考えるべきことであろうと、私はこう考えております。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはまあ行政府にある木村さんの御答弁とも思えない。とにかくどこの国におきましても、軍備であろうが自衛力であろうが、やはり国際情勢、その他との睨み合せからいたしまして一定の計画は持つておる。アメリカにおいてもそうであります。又北大西洋同盟諸国においても、実現はいろいろな問題で障碍があつたようでありますが、どこの国でも一定の計画が行われておる。勿論保安庁法には現在十一万、これは事実である。併しながら政府は、たとえ法律にどういうふうに書いてありましようとも、将来の計画というものを持つてないはずはない。そういたしますというと、今申上げたような数字が、自由党の有力なるかたから述べられておるといたしますれば、自由党として、或いは自由党の組織します政府として一つの御計画があると思う。これは私はやはりここで以てはつきりと御明示になつておいたほうがいいのじやないか。こんなことは隠しておくべきことではない、自衛力の漸増ということをすでに政府が主張しておる以上、漸増にはやり方もあろうし、大体どこまで行けばいいかという問題も当然あるだろう。政府が例えば吉田書簡によつてアメリカから船を借りる場合におきましても何か計画があるだろうから、どれくらいにしようという計画をお持ちになつておるからおわかりになろう。これは国会に承認されないうちにそういう計画をすでにお持ちになつて要求されておる。そうすると計画はお持ちになつておるということはもう明らかだ。それを私は国会において木村保安庁長官が、当然今持つておる計画、大綱を御発表になるのが当然のことだと思う。国民もこの自衛力の漸増という問題に対しては重大な関心を持つておりますものですから、なお念のために私はもう一遍政府にこの自衛力の漸増について、陸上部隊はどの程度にするものであるか、海上部隊はどの程度にするものであるか、航空部隊は、今の航空学校からどういうふうに持つて行くつもりであろうかということをお伺いしたいのであります。
  45. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今誠に御親切な御質問と私は考える。そこでこの計画を述べろということでありますが、私は只今のところで一番必要なことは、隊員の精神力の問題、それから質的の向上の問題を私は先にすべきだと、私はこう考えております。着々私はその方向に進んで考えを実行に移しつつあります。然らばこれを、この隊員の増加の問題、或いはこれに使うところの武器の問題をどうするかということになるのでありまするが、これはなかなか容易な問題じやありません。御承知の通り日本では武器が作れないのであります。これは只今保安隊員の使つている武器はアメリカの借物である。私は誠に残念だと思つております。こんなことでいいのか、アメリカがかりでやつているのだ。少くともこれに持たせる何は日本で作らなくちやいけません。日本で作つた武器を日本の隊員に持たせなければ精神が入りません。(「軍艦を作つたらどうだ」と呼ぶ者あり)軍艦も必要であれば作らなきやならん。(笑声、「それは大問題だ」と呼ぶ者あり)併し私は今はそういう時期じやない。止むを得ずやつているのだ。これは御承知の通り経済力から見ても、あらゆる方面からこれは考慮すべき問題があるのであります。併し私は今も申上げた通りに、これは只今の限度において十分に質的の向上、精神力の向上、これの方面に力を注ぎたい。ここで隊員の増加、その他の点につきましては、私は十分に国内情勢、今後の国際情勢を判断して一定の計画を立てたいと思つておる次第であります。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に首相にお伺いしたい。自衛力の漸増の問題につきまして、この日本自衛力の漸増という問題と、アメリカの、世界における軍備の促進といいますか、そういうものと密接な関係がある。例えば武器の点につきましても、或いは艦艇の点、飛行機の点につきましても、アメリカから借りておるというふうな事態であります。従つてこの日本側の自衛力の漸増という問題は、これは警察予備隊の当時からの問題でありますが、アメリカ側の計画と密接な関係を持つておるものであります。という問題であります。それから第二は、現在アメリカからこの自衛力の漸増について、例えば陸上部隊或いは海上部隊、或いは航空部隊等についてもつと増せ、今日の十二万、或いはその他の何からいつてもつと数量を増せということを今日政府のほうに求めて来ておつた、その折衝が行われておるかどうか、これは二十八年度に何らかの結末が出るかどうかということを首相にお伺いしたい。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 条約にあると言いますか、とにかく漸増という文字は、これは安全保障条約の当時、アメリカとしては、米国政府としては日本に長く軍隊を駐屯せしめたくない。又日本としても成るべく自己の軍隊といいますか、自力によつて国を守りたい。従つてアメリカ側としては日本の駐屯部隊は漸減したい。従つて日本としては自衛力漸増という言葉になつたので、アメリカの全体の軍備としてどういう関係があるかということは、これはアメリカ政府の話でありますが、併しながら漸増という文字の由来するところは今のようで、日本における駐屯部隊はこれだけの力を持たせる、これを何年後にどう殖やす、従つて日本が何年の間にどれだけの自衛力と言いますか、軍隊を作れとか、作つてもらいたいとかいう、そういう約束はないのであります。又米国駐屯軍としては、今申しましたように、成るべく減らしたいという希望を持つておりますから、駐屯兵を成るべく減らしたいという考えを持つておるのでありますから、成るべく自分の国の兵隊は減らしたい。日本自衛力は、保安隊その他の勢力は増してもらいたいという希望はときどき聞きます。併しながら未だ具体的の要求として、或いは又交渉問題として、幾らの兵隊を持つてもらいたいとか、幾らにすることを必要と考えるというような話まで進んでおらないのが事実であります。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の点で、私の質問の最後の点でもう一つお答え願いたいのは、二十八年度に、その点で何らかの措置をおとりになつて行くのかどうかということが一つでございます。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 申し残しましたのでお答えいたします。現在のところは何らの計画も持つておりません。又増加しようとか減らそうとかいう計画は持つておりません。先ほど木村大臣からお答えした通り、現在の勢力と言いますか、力を持つて参るというふうに二十八年度にも参りたいと思つております。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 今政府はすでに二十八年度の予算の編成中であると思うのであります。この二十八年度の予算はいつ国会に提出されるのであるか、それには次の国会の召集とも関連がありますが、政府は次の国会をいつ召集されるつもりであるかということをお伺いしたい。  それからもう一つは二十五年度、二十六年度の補正予算を出します際には、その次の年度の予算の骨格を示し、いわゆる十五カ月予算の一部としてこの補正予算国会で審議されたのであります。今日の補正予算も恐らく来年度の予算に財源の点につきましても、その他やります仕事の点についても連なつておるのである。大体二十八年度の予算の骨格並びにその規模、大体の今のところ各省の要求額がどのくらいになつておるか、そうして政府は大体二十八年度予算はどのくらいの枠に納めたいと思つておるのかということについて、もうすでにこの補正予算の審議の過程においてお見通しができておると思うのですが、首相はその点をどういうふうにお考えになつておるか、お伺いしたい。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。次の国会をいつ召集するかというお尋ねと了解しますが、その期日についてはまだ政府は具体的にきめておりません。予算案の問題については大蔵大臣からお答えをいたします。
  52. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 二十八年度の予算は一月中には提出をしなくちやならないのでございますが、只今その方向に向つて検討をしております。それから方針につきましてもまだ申上げる程度まできまつておりません。それもせいぜい早くきめまして、何かの機会に申上げることができると思います。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 骨格予算くらいのことがおわかりになつておらんで、どうやつて査定をされるのですか。まあこれはもう時間がありませんので、いずれ他日に大蔵大臣になお質すことにいたしまして、首相にお伺いをいたしますが、吉田首相は数年来外資導入というようなことを非常に強調されて来ております。併しながらこの外資導入なるものは、必ずしも首相の言われる方向には進んでおらない。こういうふうに考えているのでありますが、首相の言われる意味の外資導入は、私は思いますに、単に民間の、アメリカなりその他の国々の民間の資本が日本の個々の会社に入るというようなことを考えておられるのではないか。大体首相はこの外資という問題については、アメリカ政府機関の手を通じてなされる、いわゆる政治借款のようなことを考えておられるのではないか、又安全保障条約の相互安全保障に基く日本に対するアメリカの種々な援助ということを考えておられるのではないかと思うのであります。過日首相は、首相の特使として白洲次郎氏をアメリカに派遣された、それらはそういうふうな外資導入の問題に触れておるのか。又首相考えている今日外資導入なるものはどういう形のものか。それから日本自衛力の漸増、アメリカとの相互安全保障による援助という問題の関連について首相の御意見を承わりたいと思います。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申上げる外資導入ということは、決して政治借款を意味しているものではないのであります。日本の経済力を強固にするためには、日本の最も今日欠けているのは資本の蓄積であり、やはり資本、金利の高いということであります。故に外資導入は、単に、アメリカの銀行方面の援助も勿論でありまするが、民間の投資もこれを歓迎すべきであり、又民間の投資をしようとして大分今年中もいろいろな資本家或いは事業家が見えております。現に見えておる人もあります。成るべく日米の間の経済協力といいますか、経済の密接なる関係を持つためには、米国の投資を歓迎せざるを得ないのであります。この話は現に進捗いたしております。やがて何らかの形において、すでに只今投資の契約ができたものもあり、又今現に協議中のものもありますから、暫らくこれについては御覧を願いたいと思います。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 相互安全保障、それによる援助を求められているかどうか。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはいわゆる資本的な援助というよりは、むしろ軍事的にどういうふうに協議をするか、どう進めて行くか、どう協力して行くか、これは必要に応じて会議の上できまる話で、現在すでにこれだけの援助をしてもらいたいという話はいたしておりません。又米国からこれだけの力を、先ほど申した通り兵力を増せという話も来ておりません。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと今日の自衛力の漸増と、アメリカの相互安全保障に基く日本へのいろいろな援助というものとは全然関係ない、こういうふうに断言をされたと解してよろしいですか。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のお話は、アメリカ軍備日本の安全保障とは関係がないかというお話ですか。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 安全保障による援助ですね、それは日本自衛力漸増とは何ら関係がないか。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本のほうの自衛力漸増ですか。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本のほうの自衛力漸増に対して、アメリカが相互安全保障によつて援助するという点について。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは関係ありません。
  63. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ちよつと注意しますが、もう時間がありませんから……。
  64. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にやはり二十八年度の予算の問題でございまするが、二十八年度の予算におきましても、アメリカ軍が今日駐留いたします以上、条約に基きまして防衛分担金を払わなければならないことになるが、この防衛分担金、安全保障諸費というものは来年度においてどのくらいのものを見積られているか。これはすでにアメカリ側と折衝をしておられると思うのでありますが、その見通しはどういうふうになつているかということをお伺いしたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは只今いろいろ研究いたしておりまして、防衛分担金のほうは、現在の状況と来年の状況とは今のところ別段変化がないように思われますから、防衛分担金のほうは大体そのままに行くだろうと思われまするが、安全保障諸費等についてはどういうふうになるか、実際の使途その他又来年の計画もありましようから、只今いろいろ研究中であります。
  66. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは時間がないので、残念ながらこれで質疑を打切ります。
  67. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 私は数点につきましは総理に所見を質したいと思います。  私の質問の第一点は、本年の補正予算におきましても非常に問題でありますところの地方財政についてであります。細かい点は省きまして、大筋について総理に御質疑をいたしますが、御承知の通り地方の財政の根幹は勿論税収入が第一でありまするが、政府からのいわゆる補助金的な平衡交付金並びに地方の起債が、地方の財政の最も重要な点であるわけでございまするが、本年も今回の補正予算におきまして、現内閣は平衡交付金におきまして二百億、地方の起債で百二十億、合計三百二十億を追加されているわけでございますが、総理もお聞き及びの通りに、今日全国の知事会、全国市長会、全国町村会等からも政府にも強い要望が来ていると思いまするが、今回の政府の計上した額と地方の要求とに非常な開きがあるわけでございます。これは二十六年度におきましても全く同様の問題が起きたわけでございまして、その際も全国の知事連が相当長期に東京に駐在して、政府並びに国会に不足額の要求があつたわけでございまするが、今回も政府の三百二十億に対しまして、地方側との開きが約千億あるわけでございます。それで今日もなお今回の補正につきまして地方団体が強い要望を目下いたしているわけでございます。かように不足額が約千億の開きがある。これには我々国会におきましても十分に検討を加えているわけでございまするが、どうも現在の平衡交付金の総額を決定するところの大蔵省との考え方に非常に根本的な開きがあるために、今日まで毎年予算の際に地方の財政が足りないないということでいつも問題を起しているのでございまするが、今申しました通りに今回もやはり地方の要望に対して政府の三百二十億だけを以ていたしましては、約千億の不足額があるということでございまするが、我々もこの全体の不足につきまして、全部が適当な数字であるとは思いませんが、この中にはやはりどうしても増してやらないと、地方の団体が財政上破綻に至るというふうなものが多数あるわけでございます。中でも只今衆議院でも随分問題になりましたが、べース・アツプの関係上給与費の問題でございまするが、これは性質上給与であるために、非常にこの不足については問題があるわけでございます。この給与の問題は今回も国会におきましていろいろ政府側に質しましたが、総理も御承知の通りに、現在問題になつておりますのは、今回国家公務員給与ースを引上げます。それに対しまして、これに準じて地方の公務員給与を引上げるわけでございまするが、前年度の予算におきましても、国家公務員に比較いたしまして地方の公務員のべースが高い、二十六年度の一例を申しますと、都道府県の一般職員は国家公務員より四百六十二円高い、市町村の職員は五百七十六円高い、又教員におきましては三百七十五円高いということでその際も政府間においても当時の地方財政委員会、自治庁、大蔵省との意見が最後まで食い違つておつたわけでございます。本年度の今回の補正におきましても、やはり都道府県の職員は三百四十八円高い、又市の職員も八百九十九円、約九百円高い、又町村の職員も百九十八円、約二百円高いというふうに言われておるのでございまするが、これは両者の言い分を聞きましても、非常に根本的な開きがあるために、どうしても解決ができないのであります。今回大蔵大臣向井さんがなられましたが、この点は大蔵省においてもよほど考えて頂きたいと思う点であります。総理も御承知の通り、これは高いと申しまするが、やはり一方は国家公務員であり、片方の例えば町村役場の職員なんという者は、これは政府の調べでは約二百円高いと申しますけれども、御承知のごとくに一般官庁には大学を卒業して大体直ぐ入りまするが、地方の村役場であるというふうなところに勤めます者は、大概民間の会社におりましたり、又官吏をやつておつたりして、中年くらいから郷里の村役場に勤めるような人がかなりあるわけであります。でありまするから、同じ勤務年限は短いといたしましても、年もとつておりますし、又その間ほかで働いておりまするから、どうしても、高いような者もあるわけでございます。又国の役人に比較いたしまして、やはり地方の団体の役人となれば、国家公務員ほどにプライドもありませんし、単に賃金だけで比較いたすのはどうかと思うわけでございます。又五大市その他大きな市等の職員を有能な者を引張つて来るためにも、多少国家公務員より高い、五大市の場合は高い面もあるわけでございまするが、これを全国の府県市町村からいたしますれば、国家公務員に比較してかなり低い者もあるわけでございます。例えば私の郷里の鹿児島県のごときは、総理も御承知の通り、非常に貧乏県であるために、鹿児島県の給与等は、殊に地方の町村の職員の給与なんというものは誠に低いものでございまして、今回政府が出したように全部が高いわけではなく、中には低いものもありまして、鹿児島のような県では非常に待遇が悪いわけでございます。併し今回の政府考えを聞きますと、今申上げました通りに、全般的に高いということで、この給与予算が非常に不足いたしておるわけでございます。今日一般の経済の状況からいたしましても、どうしてもこのべース・アツプだけは地方公務員も国家公務員並みにやることが、やはり政治的に見ましても妥当ではないかと思うわけでございます。さようなわけで、この給与の問題を中心といたしまして、又その他に大蔵省、自治庁等におきましては、地方の税収入を非常に過大に見積りますために、今申したように結果において政府と自治体との間に千億程度の開きがあるというふうなことになつて来るわけでございます。それで私どもも何とかして、今回も独立をいたしましたし、過去におきましては司令部があつたためになかなか交渉もうまく参りませんでしたが、今日は独立いたしておりまするから、どうか総理におかれましても自治体並びに大蔵省、自治庁との間に根本的な開きがございますので、何とか御配慮を願いまして、現在の三百二十億に多少のプラスをいたしたいと地方も非常に要望しておるわけでございます。又今申しました平衡交付金のほかに、やはり地方の財政上重要な問題は地方の起債でございまするが、これもどうも地方の要望に比較いたしまして非常に足りないわけでございます。御承知の通りに、二十六年におきましては補正を合せて五百五十億の地方の起債が許されましたが、今回は、今回の補正予算を合せて七百七十億で、旧年に比べれば多少の増額はございまするが、これでも地方の側といたしましては平衡交付金と起債を合せましても、今申しました通りに非常に困つておるわけでございまするから、この点につきましていま少しく政府において御考慮を願いたいと思いまするが、細かい点は別といたしまして、総理におきましては地方の財政についてどういうふうな御所見をお持ちでございまするか。施政方針の演説におきましても、又大蔵大臣の演説におきましても、ごく簡単に触れておりますので、この際総理の地方の財政に対する御所見を伺いたいと思います。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。地方平衡交付金の問題は始終争議争議と言うのもおかしいと思うのでありますが、地方との間に始終紛糾をしておる、毎年これを繰返しておるのでございます。地方としては成るべく余計取りたい、大蔵省若しくは政府としては地方の要求は過大に過ぎる、或いは又その使い方においていろいろな濫費があるとかいうようなところから、要求全体を直ちに呑むということはいたしかねると言つて、双方の間に争議争議と言いますか、議論が始終討かわされておる、毎年これを繰返しております。これは畢竟するのに、地方の財政と言いますか、中央の財政と地方の財政、或いは税の、地方に分配された税と中央が取る税との間のその分配と言いますか、その間の確たる原則若しくは主義の下に一貫した財政方針の下に、税の間の分配ができておらないというようなことから来るのであると思います。このままにいたしておつては地方からは年々陳情が来、中央においてこれに対して論議が絶えないということになつて、不安とまで行かないまでも不平不満は絶えないことと思います。両方における不平不満が積つて、一方においては濫費しておる、又監督権がない。地方においては中央は地方の事情を察しない、そうしてこの財源についても不十分であるからして平衡交付金をもつともらいたいということになるので、これはどうしても地方の財政と中央の財政との間の区分を十分にし、又完全とまで行かなくとも相当の改正を要することと思います。これは地方自治の確立と地方の財政の根底のある財政を確立するということから出発すべきものと考えておりまして、現に地方財政制度については審議会等を設けて研究をいたしております。これは大体の考え方でありますが、詳細のことは大蔵大臣からお答えいたします。
  69. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 担当大臣の御所見は又総理の質問あとで伺いますが、総理に対する質疑を続けたいと思います。  只今詳細に総理からお考えを承わりまして、私が考えました以上に総理はなかなかお詳しいので驚いたくらいでありますが、(笑声)非常に御勉強になつたと思うのですが、只今も伺いました地方の起債について更に伺いたいのでありますが、この地方の起債にはいろいろの面がございまするが、私がお尋ねしたい点は今日まで自治体警察と自治体消防が全国にございまするが、例えば自治体警察を考えましても、この現在のいろいろな事件が起きる際にどうも自治体消防の施設なり装備が悪いわけでございます。それでだんだん自治体警察が廃止されまして、只今国会にもこの法案が出ておりまするが、最近も過去一カ年間ぐらいに約六十ぐらいの自治体警察が廃止になりまして国警に編入されまするが、これは一に財政上の問題が原因しておるのでありまして、市町村では持ちきれないためにだんだん自治警察を廃止する結果になるわけでございまするが、これは根本問題といたしましては、やはり今日警察制度に、保安隊は別にいたしましても、国家警察と自治体警察がございまするが、今申しました通り国家地方警察は国の予算でいたしまするから、自治警に比べまして非常にすべての点につきましていいわけでございますが、名の通りに自治体の持つ警察でありまするから、政府からの援助を仰ぎまして、そうして近代の警察に作り上げる必要があるわけでございまするが、これを現在までの地方の起債のうち自治体警察に投入されました額は非常に少いのでございます。二十五年度におきましては自治体警察のほうからの要望額が実際に二十六億というのに対しまして、許されましたのはその僅か三億であります。又二十六年度も二十億の要請に対して僅か五千万円、又本年度は二十二億要求されてございまするが、現在のところはその十分の一にも当らない約二千万円程度であろうと思うわけでありまするが、かようにこれ一つ考えましても非常に地方の今の起債の総額が少いために自治体警察の要望は殆んど入れられないわけであります。なおそのほかに現在自治体警察を拡充強化するような費用といたしまして、東京警視庁だけを考えましても、当面必要な金が約十五億あるのであります。又大阪警視庁は三億、その他を合せますと合計六十七億の要求額が出ておりまして、これらは我が国の現下の治安状況に即応するために自治体警察といたしましても何とか施設装備を強化いたしまして、治安の全責任を負いたい。そういうふうな強い自治体の要望からいたしまして、今日我々にもこの六十七億を何とかしてもらいたいというふうな強い要望が、全国の公安委員会その他においてあるわけでございまして、今申しました通りに今日まで許された自治体警察に対する起債の額は誠に微々たるものであり、併しながら一方におきましては、我が国の現下の治安状況に鑑みまして、当面の施設を強化したりいたします極く迫つたところの費用といたしましても六十七億あるわけでございまして今日の補正予算の百二十億では到底これらには充当できないのでございます。なお総理も御承知ではあると思いまするが、起債は今回の補正で百二十億と申しておりまするが、前年度非常に地方の財政が赤字を出しましたために、そのうち、百二十億のうち五十億円はすでに前年度の赤字補填のために食い込んでおるわけでありまして、今日増額されたのはその差額でありますから、誠に地方の起債の総額は少いわけでございまして、今申しました自治体警察だけを考えましても、極めて僅かのものしか許されておらんような状況でございます。又同様な意味合におきまして全国の自治体の消防の起債につきましてもこれ又殆んど許されておらんと言つても過言ではないわけであります。一例を挙げれば二十五年度要求は三十五億でございましたが、承認されたのはこの年は四億であり、二十六年度は五十一億の要求に対しまして承認額は約三億であり、二十七年度は七十五億の要求に対しまして、現在のところ僅かに三億円程度が承認される見込みでありまして、今申上げましたような数字を一例にとりましても、自治体警察並びに自治体消防に対するところの政府の援助というものは、極く形式的なものでありまして、総理が御心配の通りに我が国の治安状況、それには単に自治体警察のみならず、今日は極端な破壊分子が御承知の通りに火炎びんを投げたり、硫酸びんを投げるというふうな現状でございまして、先般も私ども国会から派遣されまして関西に参りまして、あそこの警視庁で火炎びん、硫酸びんの実地試験をしてもらいまして我々見たのでございますが、火炎びんにおきましても、硫酸びんにおきましても、非常に私は危険なものであるということを実見したわけでありまするが、かような非常な危険に身を挺するところの自治体警察なり、又は今日は火炎びんその他で火災も伴いまするから、警察と同様に補助機関としてやはり消防も今後将来の治安に対しては重責を負うべきものであると私は確信しておりまするが、それらのものに対するところの、今日までの政府の施策というものは極めて援助額が低いわけであります。先般自治体消防並びに国家消防庁等の意見を聞きましたが、自治体消防におきましても、先ほど自治体警察の当面の装備強化の費用が六十七億であり、又同様に自治体消防の拡充強化のための費用がほんの今のところ百五十五億程度ありますれば、相当自治体消防も強化されるわけでございますが、これを五カ年計画とすれば、毎年三十億になり、十カ年計画とすれば毎年十五億になるわけでございますが、今申しました通りに、本年の自治体消防の起債というものは僅かに三億円程度でございますから、この調子で参りますと将来五十年ぐらいかかるわけでございまして、殊に我が国の火災状況に鑑みまして非常に憂慮されるわけでございますが、かような自治体消防並びに自治警察の装備拡充費なり施設費なりが少いので、我々も現下の治安状況から言つても、もう少し政府におかれても、これに対しまして費用を割いて頂きたいと思うわけでございまするが、その点につきまして総理の御意見を伺いたいと思います。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。地方自治警察及び消防について財政の面からのお話がありましたが、私といたして、というよりは政府として、警察、消防の能率の上において大いに大なる疑問を持つておるのであります。過去における地方制度といいますか、地方警察制度、或いは日本の全体の警察制度が余り行き過ぎた、或いは完全過ぎたといいますか、そのために恰も非民主的であり、国家警察主義というふうなきらいがあり、又そういう痕跡もあつたでありましよう。その行き過ぎた結果が、地方においては自治警察にいたさなければいけないといつて現在の状態になつたのでありますが、地方の警察の現状においてどうかと申すと、或る騒動が起つた、或いはストライキが起つた、或いは暴民が起つたというような場合に、或る町村としては、自分の町村から外に追出せば他の町村において如何なる弊害があつても構わないというような傾向もあるように見受けられます。即ち地方自治、地方警察全体としての動きが甚だ能率的でない、或いは国家警察との間の関係、或いは自治警察相互の間の関係において、甚だ面白くない事態が、これは能率の方面から生じております。併しこれが一に財政の原因のみによるか、必ずしもそうではないだろうと思います。警察組織全体が或いは不完全なところがあり、又改良すべきところがある、過去の過ちを矯めんと欲して行き過ぎたというところもありましようから、警察組織については、国警及び自治警両方の組織については更に検討をいたしたいと考えて、現に研究に着手いたそうとしております。これは今日着手いたすわけではありませんが、その弊害をつどに認めて、どういうふうに改良するかということについては、深甚な考慮を払つております。又そういう場合についても日本の家屋の構造から申して年々火災のために生ずる損害というものは大なるものがあり、従つてこれに対する消防組織の完成については十分考えておりますが、さてこれをどういうふうに改良して行くか、或いは完成して行くことが適切であるかということについても、十分考慮もいたしたいと考えております。従つてお気付きの点があつたら政府に資料を、資料と言いますか、御申出を願いたいと思います。微細の点は所管大臣からお答えいたします。
  71. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) お話のありました通り今日警察、消防の起債の要望を満すことができないために非常に苦心をいたしておるのでございますが、御承知の通り起債は地方財政法の規定するところに従いまして起債の認可を認めているのでございますが、この消防、警察についての拡充という方面の財源としての起債は優先順位に入つておらないような点もありまして、災害復旧等の優先するものに追われている関係から要望を満すことができないのでございます。尤も根本的には起債の枠そのものの窮屈の点から生じて来るのでございます。併し消防にいたしましても警察にいたしましても、誠に重要なものであり、緊急を要するかと思いますので、私のほうとしましてはでき得る限り工夫をいたしまして、多少ずつでも要望に副うように努力いたしておるのでございますが、お話の点も御尤もでございますので、今後は更に起債の枠の拡大、又消防、警察方面への起債にもこれを充てて行くという方面に更に一段の努力をいたしたいと考えております。
  72. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 只今総理の御答弁のうちに、警察制度については慎重に今考えているというお話でございましたが、前議会におきまして政府は警察法の改正案を出されまして、御承知の通りそれは原案は衆議院で修正されましたけれども総理大臣が東京の警視総監並びに国警長官を、公安委員会の同意を得て総理大臣が任命するというふうに、前会で法律の改正がございましたが、私どもは治安の対策といたしましては、さようなただ首のすげ替えを政府の最高責任者である総理がなさるというふうなことよりも、今申しましたように、費用の点におきましてもう少し見て頂いて行くならば、自治体警察も又強化されまするし、消防も非常に助かるわけでございまするが、今日のような財政措置をいたしておりますると、先ほど申しました通りに、過去一カ年でも多数の、約六十数ヵ町村が予算のないために自警を廃している。かようなわけでありまして、政府はむしろ予算面の裏付をしないでおいて、そのために自警はだんだん自滅して行く、自壊作用を来たして行くというふうな、政府の施策が足りないために自警は今日ではどんどん減少しているわけでございまするが、私は前議会で、東京の警視総監なり国警長官の任命権を総理がお持ちになるということは、いろいろ疑問もありまするが、これはすでに改正されましたから別といたしまして、もつと根本的な問題におきまして、或いは吉田総理言つておられるところの国内治安のための保安隊も今日ではございますし、そういうふうなものを、相当な事件に対しては自警なり国警なりと共に、もつと密接な関係を持つて使つて行くならば、今日の警察制度の警察人員なり、装備の欠陥を保安隊によつて補えると思いまするが、そういう点もどういうふうに今度はなるのか、又海上の警備隊等も今日だんだん拡充されておりまするが、これらもやはり水上警察、その他と今少しく平素においても関連をさせないと、今政府言つておられるように保安隊なり海上警備隊は軍隊ではない、国内治安の一環であるというふうな御説もあるわけでありまするから、もう少しそれらの国警、自警、保安隊、海上警備隊の組織の上にも、又両者の団体訓練と申しますか、相互関係と申しますか、そういうふうな点について、もう少し密接な関係を持たすような結果になるならば、国警なり自警なりの欠陥をそれによつて補えると思うわけであります。又現在は火焔びんとか、その程度のものでございますが、だんだんそういう点におきましても進歩して来ると思いますので、今の自警なり国警でもそうでありますが、もう少し保安隊なり海上警備隊なりとの関係を密にする必要があると思うわけでございます。総理も御承知の通り、前回の衆議院の選挙中でありましたが、新聞で見たわけでありますが、河川の修築工事に保安隊が出動して、非常に地方民の賞讃を受けたというようなことも聞きまするが、国内治安に任ずるならば、今少しく、訓練もあるとは思いまするが、もう少し制度上においてはつきりした相互関係を持たしておいたら、非常に将来役立つのではないかと思います。片方は部隊であるからなかなかむずかしいと思いますけれども、そういう点において、政府において何らかの御研究があるわけと思いますので、その点につきまして総理の大綱だけでよろしうございますが、総理はどういうふうにお考えでありますか、伺います。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は誠に御尤もであります。従来、警察予備隊、保安隊といいますか、考え方について多少誤解と言つては言い過ぎかも知れませんが、保安隊としては、成るべくそういう地方の問題等については干渉をしないといいますか、関係しない。しないが、警察からして、或いは総理大臣若しくは地方長官から形式的な要請を待つというような気持があつたように思います。これは政府としてはその気持は尤もであるけれども、併しながら地方において、例えばお話のような火事があつた或いは風水害があつたという場合には、傍観をしているということは無論ないのであるが、進んで応急の設備をする……応急の援助を与えるということは当然なところであるから、命令がなくとも進んで出動をするなり、何なりする気持くらいでおるようにということをすでに指令してあります。それから又、今申しましたようなわけで、警察の連絡等については、多少過去において不十分なところがあつたでありましようが、連絡等については、治安の維持その他風水害等の場合における出動というようなことは、もつと簡易にいたして、そうして地方のためになり、又治安のためになるように努めさせるように考えますが、その具体的方法についてはなお研究しておりますと思います。
  74. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 次に再軍備問題につきまして総理の御所見を伺いたいと思いますが、これは総理が常に再軍備はいたさないということを平素言つておられ、前議会の予算総会におきましても、同僚岡本愛祐君の質疑応答の中で戦力問題が大分揉めましたが、私はそういうふうな理論的な点は別といたしまして、その政府のとつておられる再軍備をしないと常に言つておられるその点についての所見を質すわけでございますが、総理も内外の状況を非常に心配されて、肚の中では将来必要であるというふうにお考えでもありましようが、今日まで再軍備はしないというふうに言つておられまするが、私は総理のさような再軍備をしないというお考えの裏を推測いたしますと、恐らく総理におかれましては、再軍備をしないということを言うならば、国民が現下の内外の情勢を判断して、国民世論として日本には軍備が必要である、そういうふうに強い世論となつて現われてきたのちに、政府はそれに従つて世論を尊重して再軍備をする。又それについては現在憲法の問題もあり、前大戦の戦争犠牲者たる遺家族の問題であるとか、又傷痍軍人の問題、又近頃極めて注目されております軍人恩給の復活の問題等がまだ未解決でおるために、総理といたされましては、非常にその点を苦慮されて、再軍備せずと言われておると思うのでありますが、さようなお考えも一応はわかりますけれども、全国民の中には、総理が再軍備をしないということを言つておられるために、非常に半信半疑な考えを持つ者が多いわけでございます。最近の新聞の世論調査を見ましても、国民の大多数は今日はやはり内外の情勢上、特に独立後の日本としては最小限度の自衛的な軍隊は必要であるというふうに、大多数の輿論がなつて来ておるわけでございまするが、私は総理のお気持はよくわかりますけれども、世の中には馬鹿正直というふうなものもおりますから、又遠い地方においては、総理が再軍備をせんと言われるために、非常に現在の保安隊なり海上警備隊に対する考えかたがちぐはぐであるわけでございます。それで私どもは先般も群馬県に出張いたしまして、木村長官も御存じの相馬ヶ原のあそこの重火器の訓練場、あそこに参りまして、保安隊の活動状況を見たわけでございます。向うの隊長の話によつて、あなたがたも乗つてみないかということで、私もタンクに便乗して、訓練にみずから体験をいたしたわけでございますが、(「西郷隆盛タンクに乗つたか」と呼ぶ者あり)予想以上にああいうふうなものは苦しいわけであります。話を聞きましても、あのタンクの中に、兵隊が……保安隊員が乗つて蓋を閉めて訓練しますと、非常に胃腸にこたえて、食欲減退の結果、胸をやられるとか、そういうふうなことになるわけであります。その際社会党の原虎一君と私が一緒に行つたわけでありますが、そういうふうな状況を見まして、特に保安隊員が真剣で、さような訓練をいたしておるというような現状を私も見まして、今日、国会においても、その基本問題がかれこれ、この現在でも論じられておる。又総理も肚の中とは別に心配されて、今日では再軍備はしないと言つておるというような状況と思い合わせて、非常に私は、現在非常に猛訓練を受けておる若い青年保安隊員に気の毒に思つたわけであります。御承知の通り、十月の十五日でありましたか、警察予備隊が変りまして保安隊となり、最初に入つた、警察のものとして入つたものは、十月十五日で単に希望者だけが残つて、それ以外除隊したわけでありますが、今日、その以後に入つて来ておるものは、やはり軍人と同様な考えを心に置いて入つて来ておる。又、であるから非常な猛訓練を受けておると思うわけでございまするが、総理の再軍備せんというふうな表明があるために、地方の素朴なもの達は軍備は持たないのであるというふうな、率直に総理の言明を聞くものは、やはりそう思うわけでありまして、今日保安隊の増強の際の募集等が非常に成績が思わしくないのも、半信半疑で皆おるために、非常にそういうふうな結果になつて来ると思うわけであります。併し現在日本の行政から取離されておる奄美大島の青年等は、そういうふうな人員が足りない場合は、我々は大挙そういうふうなものを志願したいという、祖国愛に燃えておる青年も多数あるわけでございます。さような今申しましたようなことを見ましても、やはり私はこの際は吉田総理におかれましては、やはり将来軍備は必要であるけれども、現在の日本の憲法、又前大戦の戦争犠牲者等の施策が今日は完了しておらないし、又経済上もまだ十分な裕りがないために、将来は必要であるが、現在取敢えずは保安隊なり、海上警備隊で最小限度の対策をいたしておるんだというふうな言明をなさいますれば、大多数のものは了解いたすであろうと、私は推察いたすわけであります。でありまするから、単に再軍備せんというふうに言われますと、非常に誤解を地方に与えますので、私は何らかの機会にやはりこの点をはつきりされておいたほうが誤解が生ぜず、又我が国の青年といえども、今回の内外の情勢に鑑みまして、非常に祖国愛に燃えて来ておると私は思いますので、さような点について、結果においては同じでありますが、総理の声明の内容、又形式において、この際従来の行きかたを変えられまして、積極的にやはりその点は表明なさつたほうがよいのではないかと思うわけでございますが、この点につきまして、総理の御所見を質したいと思います。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。御意見は御尤もでありますが、私が再軍備せずということは、これは私の信念であります。現在において治安、地方の治安、国の治安は、保安隊その他の力で以て守る。そうし外国から侵入せられる。いわゆる集合的侵入に対しては安全保障条約によつて守ろうという考えに立つておるのであります。これが現在において適当な方法であると考えるのであります。将来はどうであるかというお話でございますが、将来は私は常に申しておるのであります。国の独立安全は日本国民の力でみずから守るべきものであり、これが守れないような国は独立に値いしないのである。故に日本の独立安全は国民の力で飽くまでも守るべきである。併しながら現在においては、現在の安全保障条約及び保安隊の力によつて十分治安なり独立というものは守り得る。又守つて行くべきものである。百年ののちにはどうだ、十年ののちにはどうだということはとにかくといたして、若し国民が軍隊を持つべしというような輿論、国民の意思がそこに動けば、無論政府は当然考えますが、現在のごとき状態においては、再軍備せずと私が言明いたすほうが、却つて国民において迷いがないと思います。現在において、私の言い方を取替える必要がありというお考えは御尤もで、一応伺つておきますが、私としては現在の態度を今日において変更すべきではないと考えているのであります。私の意見として申上げます。
  76. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 もう一点。
  77. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 時間がないので、簡単に願います。
  78. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 それでは簡単に、今の問題に関連して、今日大島の復帰問題が非常に熱烈な運動となつておりますので従来ともいろいろと御苦心なすつていることと思いますが、これらの、早く大島の住民の希望を入れられて頂きたいという点と、今の問題に関連して、遺家族なり、傷痍軍人、又軍人恩給の復活の問題等も非常に実を結びそうにはなつておりますけれども、先般、いわゆる社会保障制度審議会の答申案として、軍人恩給には反対であるというふうな答申があつたそうでありますが、私はやはり過去におけるそういうふうな戦争犠牲者でありますから、そういう点につきましては軍人恩給については、特に最近実を結びそうな段階に来ておりますが、そういう以上の点につきまして、政府におかれましても是非早急に実現せしめて頂きたいと思いますが、その点につきまして総理の所見を質したいと思います。
  79. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 西南諸島、殊に奄美大島の問題については、政府はサンフランシスコにおきましても、その他におきましても、絶えずその復帰、少なくともその住民と日本本土との間の内国民待遇を許与する、差当り国内と同様にするという扱いをして、そうして交通その他においても不便なからしめたいと考え交渉いたしております。  復帰問題については、条約にも書いてありますが、主権は取らない、主権は日本から奪わないということになつて、そうしてあとの問題は、行政権の行使を中止されておる。その趣意は、やがて日本に復帰するときあるべしという前提の下に、こういう規約ができておるのであります。その時期について成るべく早いようにと、少くとも奄美大島などは日本との間に内国民待遇を与えても差支えないじやないかという交渉はいたしております。米国政府も相当理解を持つて日本政府提案については考慮いたしてくれておると思います。多少断つたところがあるものでありますからして実現できませんが、この断りもやがて時をかけて参れば了解するであろうと思います。  軍人恩給については、政府も十分に考えておりますから、そのうち実現を希望し得るであろうと思います。
  80. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これにて暫時休憩いたします。なお午後は正一時から続開いたしますから、さよう御了承を願います。    午後零時二十二分休憩    —————・—————    午後一時三十六分開会
  81. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより午前に引続き会議を開きます。
  82. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 衆議院附帯決議に関連いたしまして、今朝ほど大蔵大臣から本委員会の審議期間中にあの決議を尊重した具体案を提出するというお話がありましたが、私はこの決議案を尊重した具体案というものは、恐らく補正第二というような形で出されるのじやないかと思いますが、如何でございましようか。
  83. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私は第二補正予算を出すつもりはございませんが、今の御質問に対しては考えていないということを申上げます。
  84. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 第二の補正予算を出すお考えはない、そういたしますと、予算の実施上の手続によつて解決する、そうして衆議院の決議を尊重する実を現わすということになりますが、それならば私どもはできるだけ早い機会にその政府考えておられる処理及び数字、例えば何月幾日に遡つてこれを実施する、それにはこれだけの経費が要る、それはここから捻出するのだというような具体的な数字をできるだけ早く提出して頂きたいと思いますが、いつ頃御提出になるおつもりでございましようか。
  85. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 先ほど会期中には申上げるという御返事をいたしたのでありますが、只今のところはその程度御返事を変えないつもりでございます。
  86. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 会期中と申しますと二十二日でありますね。我々のほうの審議も大分衆議院の審議が遅れたために遅れて参りまして、余り時間がございません。そこで遅くとも二十日には出して頂かないと、これを見ただけでああそうですかというわけには私は行かんと思いますから、やはりあなたがたのお考えになる具体案を我々が審議する期間がなければならん。ですから遅くとも二十日までには提出して頂きたいと希望いたしますが、如何でございますか。
  87. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) さよう取計らいます。
  88. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一つ衆議院の決議にはなかつたのでありますが、今度老齢軍人などに対して年末の何か餅代と申しますか、そういうものをお配りになる計画でありますが、私は今年初めて独立後の正月を迎える国民に対しまして、その国民の中でも特にお気の毒な人がたくさんある。生活保護の援助を受けなければその日の生活もできない二百六十六万という多数の人もございます。この人たちが非常に憂うつな正月を迎えようとしておるのでありますが、こういう人たちに対して、まあいわばお餅代といつたようなものでも出されるおつもりはないですか。私は政府の上において、政治には涙がなければならんと思います。特に独立後最初の正月を迎えるこのときでありますから、要生活保護者に対して政府が何か温かい気持をお見せになる気持はないか、それをお伺いいたしたいと思います。
  89. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 御質問に対しましては私から御返事を申上げるのは少し早いかと思いますが、御質問の御趣旨は承わつておきます。
  90. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 総理大臣どうですか、今度独立いたしまして初めての正月ですから、要生活保護者、非常に気の毒な生活をしているかたに、せめて正月だけでも楽しくさして上げたいというお気持で、まあ一千円なり二千円なりというものをお配りになるお考えはございませんでしようか。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣旨は非常にいいことでありますが、財政全体との関係もありますので、主管大臣が研究した上でお答えいたします。
  92. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それでは総理が、今主管大臣が研究したあとお答えになるということでありますから、大蔵大臣に後刻御研究の上で御返答をお願いしておきます。  私は次に今日の日本の政治の中心の問題は、八千四百万の同胞にどうしたならば憲法が保障しておる、約束しておる最低生活を保障することができるか、ここにあらゆる政治の問題が集中すると私は考えております。ところが最近の情勢を見ておりますと、失業者の数はどんどん殖えて行つております。雇用量は上つておりません。政府発表しました数字によりましても、昭和二十二年度、まだ日本の経済がやつと回復の緒についたその頃の雇用量と殆んど同じであります。五年間過ぎましてもこれよりは殖えておらない、大学の卒業生の問題も世間で騒がれておりますような状態で仕事がない。こういうようなことを放置いたしておきますことは政治としては非常にまずいと思う。私は第四次吉田内閣ができまして、講和後の、独立後の最初の二十八年を迎えようとしておるときでありますから、その国民に仕事を与えるという点について、どのような抱負経綸をお持ちであるかということを先ずお伺いいたしたいと思います。総理大臣から一つ
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 誠に御質問の御趣意は結構でありますが、これは世界情勢もあることであり、又世界の経済情勢もあることでありますから、そう簡単にここでこういたしますと申したところが説明にはならんだろうと思います。いろいろな施策を総合して、遂にはそれが産業の発達になり、雇用量の増大になると言つてお答えする以外に、こうしたらというようなことは、どの主管大臣も申しかねると思います。
  94. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 吉田内閣はこの一番大きい問題についての抱負経綸を出さなければならんですよ。どの主管大臣も返事ができないというならば、これは非常に無能だと言わなければならない。やはり一つの方針があつて、いろいろな具体的な施策を講ぜられるだろうと思う。結果がどうなるかということでなしに、どのような方針で以て国政全体を動かしておるかということなんであります。  それでは次の問題に移りまして、私は日本の国民に仕事を与える、そして我々の最低生活を維持して行く上において外国貿易の重要性というものは、これは政府の皆さんがたでも十分お考えのところであつて、特に施政方針演説においては経済外交の展開、こういうようなことに重点を置いて論じておられましたが、この外国貿易の情勢を見ておりましても、非常に前途不安な点が大分あるようであります。例えば貿易上の、輸出入に例をとつて考えますと、非常な支払い超過になつておる。非常な赤字になつておる。やつとのことで連合軍の特需とか或いは駐留軍の落す金とか、そんなことでやつとつじつまを合しておるような非常な危険な国際収支の状態を示しておりますが、この外国貿易の展開について政府側はどういうお考えを、抱負を持つて施策をして行こうとしておられますか、それをお伺いいたします。
  95. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 波多野さんにお答え申上げます。只今の貿易状況はお示しの通りでございます。併しながら私どもはこれではならんと思いまするので、この振興に向つて極力努力をいたしつつある次第でございます。先ずお話に出ました通商航海条約の早期締結を初めといたしまして、或いはガツトの加入とか通商協定とか日英支払協定とか、各種のいわゆる経済外交を進めまするほか、貿易規模拡大のためにポンド、オープン・アカウント地域からの輸入の促進、又海外市場の積極的開拓を図りまするとか、或いは又貿易商社の資本力を培養して対外競争力の強化を図るとか、或いは国内産業の合理化による輸出競争力の培養をいたしまするとか、特に輸出入市場の開拓につきましては、東南アジア諸国との経済提携を促進することによりまして貿易規模の拡大を図つて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  96. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の御答弁は、まあこれはあり来りの答弁で、どうも余り納得いたしかねる点があります。私は日本の貿易の進展につきまして、重大な危機に今日本は立つておる。特に最近イギリス連邦首相会議が開かれたことは御承知の通りであります。或る結論を出しております。これは後で聞こうと思つておりましたが、今現に日英支払協定の問題が出ましたから、これから先に聞いて行きますが、日英支払協定につきましても、イギリス側は非常に冷淡じやないですか。日本側が支払協定の更新を熱心に望んでおるのに、イギリス側は非常に冷淡な態度を以てこれに当つておるのじやないかと思うのです。而も日本がイギリスのポンド危機に際して、金ドル収支が十七億ドルを割るか割らんかという危機に際して、こちら側から三千万ドルですか、イングランド銀行に対して預金してやつてポンドの危機を救うというようなことまでも日本はやつておるのに、イギリス側は日英支払協定の締結に対してさえ熱意を示して来ない。こういうところに私は経済外交上日本側として十分反省すべき点があるのじやないかと思いますが、日英支払協定の見通しは如何ですか。
  97. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 日英支払協定につきましては過去のものよりも私どもいい条件でということで、いろいろ折衝を進めて頂いておつたのでありますが、今までの条件でございますれば、近くまとまる見込みでございます。併しできるだけ今のような状況でございまするから、成るべく輸入制限の緩和、その他の問題につきましていろいろ話をしておるのでございますが、決して今波多野さんが仰せのように、向うが冷淡ではございません。今までのようなことでありますれば、引続き日英の協定は結ばれることと確信いたしております。
  98. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは、支払協定は結ばれるでしよう。結ばなければ向うも損ですから結ぶに違いないと思いますが、この支払協定を結ぶに当つて、先ず我々が交渉するに当つて、最近のイギリス連邦首相会議の結論というものは相当警戒すべきものがあるのじやないかと思うのです。こちらが甘く考えておるとえらいしよい投げをくらう危険があると私は考えております。そこでこの英邦首相会議の結論については私どもよく承知いたしておりませんが、政府側は多数の外交官を出しておりますからいろいろ情報が入つておる。そこで一、二お聞きしておきたいのは、ヨーロツパ支払同盟を大西洋支払同盟というようなことにして、南アフリカまでこれに入れてしまおうというような案もあるようだし、或いは金の買上価格の引上げの問題もあるようであります。又東南アジアの開発などにつきましても、向うが開発機械などをどんどん入れるというようにきめたようにも伺いますが、そういうふうに見て参りますと、今小笠原さんが言われた東南アジアのほうに貿易を伸張しますなんといつて見たところで、英連邦首相会議の結論がどんなふうに動いて来るかによつて、これはもう空なる望みになつてしまつて、画に描いた餅になつてしまう。そこで私は外務大臣から一つイギリス連邦首相会議の結論のうち、我が国として見なければならない点はどういう点であるかということの御報告を願いたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはいろいろ協議を行われたようでありますが、外部に出ておりますのは、コミユニケ及びコミユニケに関連したいろいろの批評なり想像なりの記事でありまして、会議の実際の内部の状況が果してそれで尽きておるかどうか、これは必ずしも保証できないかも知れません。併し御質問の点で我々が注意すべき点と思われます点は、やはり一番問題になりましたポンドのコンバーテイビリテイーという問題、及び貿易規模の拡大と言いますか、例えばインドならば、イギリスに対して多くの預金を持つておる。その預金に対して機械その他の必要品をインドに送れという要求に対して、それでは要するにポンドの借金の決済になるのであつて、そうではなくして、英連邦と言いますか、コムモンウエルス全体として貿易規模を拡大するという意味の新たなる立場で、前のものよりも今の現状で作つたものをポンドに替え、或いはドルに替える方針をよくとらなければならんじやないかという点。それからドル圏のほうの国に対しては、このイギリスのコムモンウエルスの製品に対しての輸入制限の緩和、こういうようなものが、経済上の問題ばかり討議したかどうかこれは別としまして、経済的に見て日本の注意すべき点じやないかと考えております。
  100. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 外務省のほうにはもう少し立ち入つた情報が入つていなければならんと私は思うのです。今おつしやつたことは我々でもわかることなんで、情報機関を持たない我々でもわかる程度のことなんですから、もう少しあるのじやないですか。情報が入つていなければならんと思いますが、私は今現われたところだけでも、我々が知る限りでも、例えば南アメリカあたりがヨーロツパ支払同盟なんかに入りますと、南アメリカに対する我々の側の貿易関係というものは相当阻害される。東南アジア方面に対しましても、今あなたのおつしやつただけのことでも、日本が例えばプラント輸出をやろうといろいろ計画をしておりますと、この計画がおじやんになる。そういう点などもう少し詳しい情報があり、そうしてそれに対する政府態度と言うか、対策と言うか、これをお考えになつておるのじやないかと思いますが、如何でしよう。
  101. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この情報というものは、正式の普通のいわゆるコミユニケという情報以外に、まあ機密的な情報もあるわけであります。そういう種類のものはすべて大体において観測なり想像なり、或いは特別に関係のある人から漏らされたような事項でありまして、これを他国の、英連邦等の会議の内容としてこういう公開の席で申上げるのは差控えるべきであると考えるのでありますが、多少のいろいろの何と言いますか、情報等は入手はいたしております。併し大体においては私は大筋はコミユニケ等を本にした情報で尽きておると思うのであります。我々はむしろまあ脇道から入つたものよりも、大筋の情報を分析し、又それを実際の状況に当嵌めて見まして、それで対策考えることが一番正しいやり方であると思つて、その方向に力を注いでおります。
  102. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 支払協定の問題も、今の連邦首相会議の結論によつて、相当これは影響を受けるのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはやはりお話のように、連邦会議の結論が、これに直接関係あるなしは別としまして、出たあとできまることになると思いますから、従つて影響を受けるということはこれは事実だろうと思います。そういう点についても、我々は、ただ支払協定だけの問題でありますが、いろいろ先方の意向も聞き、こちらの考えも話して絶えず連絡をとつております。
  104. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一つ今のイギリス連邦首相会議の話題になつた金の買上価格の引上げの問題ですが、これは連邦会議が終つて後、イギリス側とフランス側とが話合つて大体意見が一致したということで、我々新聞で見ております。アメリカ側は一応三十五ドル、これが三十五ドルのレートを動かさないというような意向を持つておるとも伝えられておる。ヨーロツパ側はこれを五十六ドルですか、五十二ドルかにしようというのです。この両者の話合いは、来年になつて初めてきまると思いますが、こういうことが大きく世界に問題となつて政治問題として討議されておる場合に、日本ではどういうふうに考えておるか。金の買上価格引上げ、通貨価値の引下げ問題なんです、大蔵大臣どうですか。
  105. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 日本は金が上ることはいろいろの点から考えれば、利害関係は違いましようが、金が上るということは日本としては不利益はないと思うのでございますが、併しアメリカは到底、これは賛成しないと思うのですね。相当大きな数量をもつて、むしろ持てあましている位だろうと思います。その上に金の値を上げて喜ぶのは金の沢山でる国で、自分の国には大して益にならない。そういうことですから、三十五ドルを上げるということに賛成するという可能性は極く少いように私は思つております。
  106. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、それはどうなるか結論は分りませんが、来年二月にアメリカ側とイギリス側は相談すると言つておるようですからそのとききまるでしようが、我が国としてこの問題についてどういう態度をとるかということなんです。私聞きたいのは、これほど大きく世界的の問題となつて来ておる、この問題について、今一ドル三百六十五円のレートで取引をしておる我が国としては、どういう態度をとるか、どういう方針でこういう問題に対処するかということをお伺いしたい。
  107. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) この点につきましては、日本は直接に発言は私は弱いものと思つておるのですが、これが日本影響はどうなりますかと言いますと、すでに日本は金を通貨としておらない意味から言つても、直接にこの物価あたりに影響が来るものではないと思います。それで但しこのイギリスのポンドが上るとか下るとか、或いはそのほかの国の、殊に英国との関係におけるいわゆるポンド圏における物価なんぞに響きがありますので、そういう国との貿易には大きな影響があると思いますが、今から態度をきめるということはちよつとできないことでしようし、又得策ではないというふうに考えます。
  108. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも少々おかしいのですが、こういう点はどうお考えになりますか。それならばポンドとドルとの自由交換の問題が一方に問題として提供されておる。それから一方ではイギリス、フランス側が金の買上価格の引上げ、即ちポンド、フランの引下げなんです。これを問題としておる。どういう価値のポンドとドルとのコンバーテイビリテイが問題となるかということについて、一応見通しを立てておいて対策を講じないと、ポンド領域に対しては影響がないなんと言われますが、これはポンドが切下げられたら大影響ですから、貿易対策を根本から建直しをしなければ……、四〇%の切下げですから、今問題になつておるのは……。こういう点について政府側は非常に慎重に考えて、この場合はこう、この場合はこうと、何かなくちやならん。それを何かぼんやりしたようなことを言われると、我々は実に不安で仕様がない。もう少し明確な御答弁をお願いいたします。
  109. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) イギリスにしてもフランスにしても、今金で似て取引をしていないで、いわゆるコンバーテイビリテイーのない、交換のできない形の通貨でございますので、それが簡単にその金の値段が動いただけで以てそれだけの為替が動くものとは私は考えていないのであります。従つてもとと違いまして今のような各国間の為替の相場の状態におきましては、今おつしやる通りの金の値段の動かし方がその値段の違いだけ相場には動かない。但しイギリスが金を産出している国を自分の領内に持つておる。それが値が上るためにその国の仕事が楽になる。従つて為替レートがよくなるというふうなことはあるかと思いまするが、直接の大きな影響ということは、私は私の知識の程度では想像しておらないのであります。
  110. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうしますと何ですか、今の金の価格の引上げの問題はイギリス連邦内の産金業者を擁護するというだけの目的でなされるとお考えですか。
  111. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) イギリスが金の値段を上げるということの真意については私は存じませんが、それのもたらします影響は金の売値に一番影響があるだろう、こういうふうに考えるのであります。
  112. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そのことは要するにポンドの切下げということなんです。若しポンドの切下げが、金の価格の引上げだけ、例えば四〇%だけ切下げなくても、全部が全部影響するとは思いませんが、一〇%にしろ二〇%にしろ、ポンドの引下げということに影響して参ります。その場合の日本のポンド領域に対する輸出貿易というものは非常な打撃をこうむるということは、これは当然目に見えておる。単に金の買入れ価格の引上げということを、産金業者の問題だけとお考えになつておれば、それは非常な誤解だと思う。もつと広い意味、もつと大きな意味を持つておる。イギリスは国際収支の改善、金の手持の増加を図る、要するに輸出貿易を盛んにしようというところに根本の狙いがあるのであつて、産金業者の保護育成といつたような問題は小さな問題だと思う。そういう点は大蔵大臣はどうお考えですか。
  113. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 金が高くなりましてイギリスの為替がよくなるというのですか、ポンドが高くなるとおつしやるのですね。
  114. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ポンドは安くなりますよ。
  115. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) いいえ、ポンドが安くなれば、そうするとイギリスの物は安くなるとおつしやるのですが、これもやはり程度問題で、ポンドが安くなれば物の値段が上つて来るので、やはりそれだけを大きく買かぶるというわけには私は行かないと思うのです。取りあえずはそれは困難が起るでしようけれども、自分の経験から言いますと、そういう為替の動きというものは、割合に窮極の影響が少くて、ただ一時には商売がしにくいというふうなことが起るのですが、結局はポンドで、物が安くなるとすれば、それで以て物を買う力が弱くなる。従つて日本から物を買うほうには幾らか弱くなるとしても、こつちが買うとすれば都合がいいというふうなことに私はなると思います。
  116. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも資本主義経済における金の役割ということについてのまあ私と大蔵大臣と大分意見が、根本的な認識が違うようですから、時間の制限もありますので、次の問題に移ります。これはあと総理大臣質問の時間以外のときにもう少し論議してみたいと思います。  次にイギリス連邦会議でヨーロツパ支払同盟の地域をうんと拡大して行くというような考え方もあるようであり、そして東南アジアに対しては先ほども指摘いたしましたように、プラント輸出などを強行しようと考えているようであります。そこで我が国といたしましては、アジア地域との貿易において非常な障害を受ける、これは致命的だと思う。これに対して政府側としては、例えば今手持ちの金ドル十一億ドルもありますが、この十一億ドルの金ドルを貿易商社に分割して貸付けるといつたようなそんなつまらん政策でなくて、もつと大きくこれをアジア貿易の拡大のためにお使いになる気持ちはないのですか。
  117. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 十一億ドルと言いましても、そのうちの全部が使える金ではありませんで、一部しか使いません。そうしてそれを大きく使えと言われても、相手のいわゆる東南アジアというふうな国は、まあそう言つちや悪いのですが、そうしつかりしたものでない国情でございます。そういう国のうちの一部にはそれは比較的しつかりした国があるでしようけれども、東南アジア言つて簡単に言いますと、そういう金を入れてあとがどうなるかということも懸念される向きが相当あります。或いは入れる方法、仕事の性質というふうなことを考えますと、これは東南アジア向けにそういう金を入れる方法を研究するということを先ず第一にやることではないか、そういうふうに考えております。
  118. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ヨーロツパ支払同盟と相呼応したような形でアジア支払同盟といつたような構想を以て、例えば国際通貨基金、国際経済開発銀行あたりと話合つて日本アジアにおける貿易の拡大の途を開くイニシアテイブをとり、そのために十一億ドル……、勿論私十一億ドル全部使おうとは考えておりませんが、そのうちの一部で結構なんです。日本もこれを出す。それから国際通貨基金からも出すというようなことで、こちらがイニシアテイブをとつてアジア貿易のために一つの通路を開くというようなお考え総理大臣ございませんですか。もう少しく大きい構想を一つ出して欲しいと思うのですが……。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ずあなたの大きな構想を伺いたい。(笑声)
  120. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私の構想は今申上げたところなんで、私は政府責任者じやないから、政府側が、第四次吉田内閣を作られてそうして独立の新らしい年を迎えようとしており、四方八方行詰りのような恰好で国民が希望を失つております。そこで国民にも希望を与えてそして合理的な方法によつて希望を与えるような方策を一つ聞きたいのです。どうですかな。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ございませんか、ございませんかとお聞きになるが、先ずあなたの御構想を伺えば、自然又誘発されるところもあると思います。但し今我々が何といいますか、この間のロンドンの会議にしても、或いは開発銀行総裁などの話を聞いてみても、如何にして貿易量を増大するかということに研究といいますか熟慮を払い、又注意を払つておるときでありますから、一時現象がどうだからといつて、それでそう前途を悲観せられる必要もないと思うのであります。それから又日本としましても現にサービス賠償の条約上の義務を持つておりますから、東南アジアに対して相当の、企業なり何なりを奨励することによつてサービス賠償の支払いも考えなければならない。東南アジア等については特に政府としてはその方面の事業計画等については、これは余り公然とは発表もできませんが考えております。又それぞれ技術者等も出す苦労を今いたしております。
  122. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 次にお伺いしたいのは、最近朝鮮休戦にからまつてインドが国際連合に提出しました休戦案、これをめぐつていろいろ問題が起きたように思います。特にあのインド案についてはインド代表の言明しておるところによると、中共側、北京政府と一応連絡をとつてあの案を出したのだということをインド代表が言明いたしておりますが、それが結局中共側の反撃にあつた、反対にあつた。ソ連も勿論先頭になつて反対したのでありますが、そういうようなことからいろいろ中共の最近の動き方、インドと中共との関係の中における動き方というものについて相当微妙なものがあるのじやないかと思いますけれども政府側ではこういう問題について何らかの情報を持つておいでになれば、差支えない限り知らせて頂きたいと思います。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 政府も国連にはオブザーバ一を出しております。又東京にもインドの代表部もおりますので、いろいろ情報は来ております。併し意見の相違は、これはいずれにしても止むを得ないことであります。そのために特に関係がよくなつたとか悪くなつたとかいうことではなく、両方とも腹臓なく言うから、それで意見の相違が表面に出て来る、こういうような種類のものだろうと考えております。
  124. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや私が言つておるのはそういうことじやなかつた実は……。中共側とインド側が疎隔とか何とかというのじやなくて、中共側とソ連側との間に変調が来ておるじやないかということなんです。そういう点についての情報はございませんか。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それもいろいろあるのでありまして、例えば満州が実際上はソ連の管理下にあるような恰好になつておるとか、或いは食糧品がソ連のほうにのみ輸出されるとか、或いは旅順、大連、或いは鉄道等の管理が又延長されたとか、或いは朝鮮事変について中共側の犠牲が非常に多過ぎるというようなことからいろいろの説もあり、情報も入つておりまするけれども、これも的確に私がこうであるというだけの証拠を持つて申上げるわけに行きませんからして、この際はただそういうことがあるというだけでお聞き流しを願います。
  126. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 中共との貿易の問題で、これは一つの世界情勢の動きによつて中共貿易が相当大規模に開かれるような可能性が来ておるのではないかという感じがいたしますが、どうですか。政府責任ある答弁はできませんか。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは政府として原則論はいつも申しておる通りであります。少くとも朝鮮事変の行われておる限りは、中共側に対し、戦力の増強になるような措置は講ずべきでない。従つてそれに関する限りは、輸出制限をすべきだ。但しその場合輸出の制限等は各国が足並を揃えてやるべきで、どこの国が自由にして、どこの国は非常に厳重に制限するというようなことのないことを希望する。併し事実上、例えばアメリカとかカナダとかは殆んど全面的に禁止をしているのでありまして、その間におきまして日本の従来の中国との貿易の重要性ということは各国も認めておりますし、日本として朝鮮の問題が非常に重大な影響のあることは、これ又承知しておりますので、戦力の増強になる程度のことはいたしたくないが、併しその間に何と申しますか、無害な品物もたくさんあるのでありますから、それらのことについての貿易は従来も現在も認めておるのであります。その方面において大きくなるかならないかは、これはやつてみなければ勿論わかりませんけれども多少ずついろいろの話合いはあるようであります。
  128. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 国際連合に対する義務の上から言つても、バトル法の線だけは守らなければならんと思います。日本はバトル法に規定されておるものよりもつともつと広範囲に品物の輸出禁止をやつておるようでありますが、多少ずつ緩和はされておるようであります。政府としてはバトル法の線まで輸出の禁止を限定するということをお考えになつておるでしようか、その交渉はしておられるでしようね。
  129. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今政府考えておりますのは、今申しました通りバトル法であるとか、或いは方々の国が、又その国々によつて制限の方法は多少違つておりましてもやつております。そこでどの点までというのでなく、足並みを揃えるという点に重きを置いて話をいたしております。
  130. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 足並みを揃えるというのは、何か基準があつて足並みを揃えるのでなければならんと思うが、やはり基準になるのは、バトル法だろうと思います。ヨーロツパあたりの国々は相当いろいろな品物を入れておるように我々聞いております。日本は特にアメリカ、カナダと同じだけの広範な制限をしておるということを聞いておりますけれども、その点はどうなのですか。足並みはいつ頃揃いますか。
  131. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私もそういう噂を聞いておりましたので、その点を各国に当つて確かめたのであります。だんだん確かめて見ますと、これは密輸というようなことになると別でありますが、各国の正式のやり方は、そんなに初め噂され、私も思つておつたような足並みの揃わないということはないのであります。ただ或る国においては、或る物は輸出できる建前になつてつても、生産品がなかつたりして輸出しないというようなことで、そのことだけは非常に厳重な輸出制限が行われておるような実際上の結果になつております。又或る国においては、特別の物をかなり余計出しておるというようなこともありますけれども、全般的の輸出制限という点においてそんなにえらい違いがあるとは考えられないのです。私も各国にいちいち当つて見ないと、本当に正確なことはわからないようであります。今やつておる最中であります。我々のほうからいえばバトル法とかいろいろの標準がありましようとも、併し各国の実際の状況を見て、そこの最大公約数をとるような恰好にするのが一番捷径であると考えております。
  132. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 一応これで打切つておきます。
  133. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は総理大臣に主としてお尋ねいたしたいのでありますが、他の関係大臣には又日を改めてお尋ねいたしたいと思いますから、主として総理大臣から御返答をお伺いいたしたいと思うのであります。  それは吉田内閣ができた当時の声明におきましても、先の国会におきましても、政府は所信を明らかにしておることは再軍備は行わない、併しながら国力が回復したならば、ということを附加えておるのであります。その間は自衛力の漸増ということで行くべきことを繰返して衆議院参議院のあらゆる会議において所信を繰返しておられるのであります。そこで私がお尋ねいたしたいのは、その国力が回復するということは、経済上の観点もありましようし、或いは精神力、愛国心と申しましようか、こうしたこともあることはもとよりでありますが、その国力の回復という目度というものは、例えば国民の生活水準がどの程度、或いは担税力と申しますか、納税力、或いは産業、貿易の規模はどの程度、或いは愛国心というものはどのような程度で昂揚したならば、いわゆる国力が回復したら再軍備をするという段階の線まで行くのか、その線の見通しを承わりたい。特に予算において支出は現在におきましては、いろいろ総合いたしますと、おおむね一千八百二、三十億でありますが、現在のこうした防衛関係に支出いたしておる予算限度に対比いたしまして、どの程度まで支出し得る力がついたら、いわゆる再軍備という状態になり得るのかどうか。国力の回復の目度その目安というものを承わつておきたいと思います。
  134. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。国力が回復しなければ再軍備はしない。然らばその国力回復の程度はどうかというお尋ねでありますが、これは私は国力……、今日の状態においては再軍備すべき時期でないという一つの証拠といいますか、論拠として国力未だ回復せず、例えば軍艦一隻こしらえても、日本の財政の基礎は動かされるのであります。或いは飛行機一つつても相当の上下をいたす、かくのごとき脆弱な国力においては再軍備すべきでない。その再軍備の代りに安全保障条約とかいうような他の方法を以て国力、国の独立安全を守るべきであるとこう申すのであります。仮に国力が回復しても、軍備を持たずして済めば、なお結構な話であると思うのであります。私の言うことを逆にして、国力が回復すれば軍備をやるのかというお尋ねを受けても、私はこれに対してそうだとは申せないのであります。若し国力が回復して、なお且つ軍備を持たずに済むことであれば、なお結構であります。これは国際情勢にもよることであります。
  135. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 その辺は、国民が本当に掘り下げて聞かんとする真相を大臣は御披瀝になつておらないので、外まわりを大まかに言われた程度であつて、国民は将来どの程度まで国力を回復するというのが、日本の自衛態勢確立の目途であり、これに向つて防衛生産にいたしましても、或いは社会福祉にいたしましても、国民生活全般につきましても、かなり考え方も、又努力の仕方もあると思うのです。こうした状態を待機して、ただ愛国心の振起を待つということは、木によつて魚を求めるとは申しませんが、それに等しいような漠然とした態度であつて、こうした態度が国民が吉田内閣に対してどうも割切れない。いわゆるやみ軍備をしているとか、いろいろな考えがあちこち起るゆえんは、ここにあるのでありまして、この点は大体政府におきましてこの程度が国力の回復と目されるのであつて、そうした状態において今大臣が言われる通り軍備の必要がなければ、それは結構でありますが、併し現在の段階においては中立はあり得ないと言うており、やがて国連に加入し、或いは将来太平洋防衛体制のいろいろ協定にも入らんとする行先に向つて、かような総理大臣考え方は全く辻褄が合わないと私は思つておるのでありますが、この辺は重ねてお伺いいたしたいと思います。  それに附加えて私がお尋ねいたしたいのは、それは現在政府が行なつておる自衛力漸増というのは、どの程度までの限界目標を立てて、自衛力漸増という考え方なり施策を進めておるのか、これをお尋ねいたしたい。
  136. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほども一応説明はいたしましたが、自衛力漸増という言葉は、即ち安全保障条約において規定された、現われて来た文字であつて、その現われた根拠は、先ほど申した通り米国駐屯軍としては、なるべく早く引揚げたい、即ち漸減をしたい、日本の国力充実といいますか、これが許すならば漸増してもらいたい。然らばどういうふうな規模で以て、いつ何万ぐらいというようなことは全然話に乗つておらないのであります。少くとも現在においては、現在の十一万の保安隊を以て満足するという考えでおります。
  137. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうも私の聞き方が悪いのか。ピンと来ませんわけでありますが、それは総理大臣は現在の十一万という保安隊、十一万の保安隊の人間の規模において、自衛力漸増と申しますか、やつて行きたいということでありますが、若しアメリカから今後武器とか艦艇とか飛行機とか、その他の武器の貸与を受ける、貸与と申しますか、貸借を受けるという問題は、どの程度までを限界としているのか。現在フリゲート艦その他五十八隻、或いは飛行機五十機と言い、或いは百二十機とも言つているのでありますが、その他の武器はもとよりでありますが、一体この武器の貸借の必要限界というものは、現在よりどの程度までどのようなものを借ろうとしておるのか、その目標を承わりたい。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今のところは船につきましても、或いは保安隊につきましても、現在の程度にとどまつておりまして、これ以上のものを考えておりません。又飛行機につきましても、只今のところは練習用及び連絡用のものを借りることを希望しておるのでありますが、これもまだ話がついておらないのであります。で、これは私の所管ではなく保安庁長官のお考えによることでありますが、実は前々から話がありましたから多少知つておりますが、日本の九千マイルの沿岸を警備するためには、実は只今借りようとしておる船だけでも或いは十分ではないのではないか。前に日本政府として計画いたしましたものはもう少し多いのであります。従つてこういう点については更に考えなければなりますまいが、それは借りるものであるか、或いは国内で造るものであるか、まだこれも別問題であります。但し今はそれを直ちに考えておるわけではないようであります。アメリカ側との話に関する限りは、只今のところ今以上のものを何らか話合つておるという事実はございません。
  139. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 ちよつと今の外務大臣の御答弁に対してお尋ねいたしたいのでありますけれども、それより先にちよつと話が戻つて恐縮でございますが、アメリカが新らしい大統領のアジア政策に基いて日本の防衛強化を図る、或いは日米共同で防衛強化を図るといつたような場合が客観情勢として迫つて来ておることは国民、又内閣もさようなお感じであろうと思います。そこで今も岡崎外務大臣が触れられましたが、日本政府アメリカから借ろうとする武器の計画はもつと大きかつたということであります。そこでアメリカが、新らしい大統領の下にアジア政策を遂行する一環として日本に軍事援助を大幅にやろう。従つてこれに伴つて日本で武器も製造さし、武器の貸借もしてやろう。こういつた場合には、これはやはり自衛力の漸増という形でかような方法をとろうというのか。この場合には先に総理大臣が国力が回復しなければ、再軍備はしないと言つておるが、国力が回復しなくても、アメリカから軍事援助を受け、武器の貸借を受ける。こういつた場合には再軍備を行うのかどうか、これでも再軍備とは言わないのか、自衛力漸増という枠でやろうと言われるのか、この辺を承わつておきたい。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと私の点を申上げますが、私はアメリカからもつと余計借りようと申したのではないのでありまして、その当時の海上保安庁で研究しておつて、沿岸警備のために必要なものはというので研究した結果はもつと多かつた、こう申すのであります。それをすぐアメリカから借りようというような、そういうことではありません。なお只今の御質問に関連して申上げますが、新大統領が就任されたならば、日米の共同防衛といいますか、そういうものがおのずから強化されるであろうというようなことを政府考えておるというお話でありますが、実はもう御説明するまでもなく大統領はまだ就任しておりませんし、又その考え等はいろいろ言われてはおりますけれども、具体的に何らわかつておりません。従いまして政府としては別にそういう点について日米防衛計画というようなものが強くなるというようなふうにも特に考えておらないような次第であります。
  141. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は、先のことは、政府にいたしましても我々にいたしましてもわからん話でありますが、一体明年度の予算編成に関連してアメリカの新らしい年度の予算と結び付けて、日本に対して例えば四億ドルとか或いは何がしかの軍事援助というものが起り得るといつたような情報観察は海外電報におきましてもかなり頻繁に現われているのであります。そこで私が先のことを申すと、大臣は先のことはわからないと言われますが、これは二十八年度の日本予算を編成する上におきましても、アメリカが実際武器をどの程度貸与するのかどうか。軍事援助というものがどの程度あるかということは、現在白洲特派大使が打診しておるかどうかわからないが、いずれにいたしましても明年度予算編成の骨格をなすものはここにある。だからアメリカ日本に対して防衛態勢強化の必要から、軍事援助をどの程度やるかやらないかという目途に基いて、それが新らしい予算の編成の中心をなす。但しこれは即ち再軍備という状態に結び付け得られるものか、自衛力漸増と常に政府言つておる、これは自衛力の漸増の一般的なものに含むという考えであるのかどうか、この点をお尋ねしておくのであります。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私からお答えするのは差し出がましいかも知れませんが、アメリカの関係について申上げますと、アメリカでどういうふうに考えておりますか、又予算もまだできておらないようでありまするからわかりませんが、必ずしも私はアメリカがこうやれと言えば、そうやるというわけでもないのでありまして、日本としては総理大臣考え只今のところは日本政府の方針となつているのでありまして、その総理大臣考えは先ほどから総理自身申上げている通りであります。
  143. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 十一月の十一日でありましたか、ヒツキー参謀長と木村保安庁長官と会見された。内容はわかりませんが、仄聞するところによれば、日本の保安隊を明年度において十八万にかねての希望を強要するという状態であると一部報ぜられているのでありますが、そこで私がお尋ねしたいのは、本年度の予算におきまして防衛関係費と称するもののうちから使用したのは四、五百億であつて、一千億以上にまたがるものがまだ使い残りがある。この使い残りについては、これから一月、二月、三月と、この三月で年度内に使い切るということはあり得ない。又使えば、べらぼうなインフレが起つて来るし、その目標というものが全く不明のままに現在予備的にこれが残されている。そこで政府はこの余つている一千億からの前年度の防衛関係費の余りの金をヒツキー参謀長が要求しているか、アメリカが要求しているかわかりませんが、日本自衛力漸増、こういう問題にこれをぶち込んで、明年度は明年度で又別の予算を編成する、こういうようなことになるのではないかと思うのでありますが、如何でありますか、そういうことになりますか。
  144. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ヒツキー参謀長と私の会見のお話が出ましたので、私から申上げます。まさにヒツキー参謀長と私は会見いたしました。併しながらさように十八万に増員しろという要請は断じて受けておりません。如何にしてこの保安隊の質的向上を図るかということについて主として論議したのであります。而して只今のところ保安隊の増強、これは私は常に言つておるのでありますが、もう少し精神的内容において、或いは質的向上において我々は努力しなければならんと考えます。只今差し当りの問題として増員は考えておりません。併しながらです、国内情勢或いは国際情勢が大いに変化いたしますれば、そのときは又別であります。それは又皆さんの一つ御助力をお願いしたいと考えます。
  145. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そこで私は岡崎外務大臣と木村保安庁長官の御答弁に関しまして二つの点をお聞きしたい。一つは今の木村保安庁長官も言われたし、先に岡崎外務大臣も触れられましたが、日本の九千マイルの水域を防衛するために、日本の防衛費計画というものは、もつと多かつたと言われたが、その多かつた希望点の内容を具体的にこの際明らかにしてもらいたい。そうしてこれは只今の木村保安庁長官も触れられましたが、質的向上、これは装備の向上であることはもとより、愛国心である防衛精神といいますか、これの向上を図ることはもとよりでありますが、この軍隊やら何らわからないような姿のままで、果して木村保安庁長官のごとくたくましい愛国心、防衛精神が起つて来るかどうかは甚だ我々国民としては危惧を持つておる。折角貴重な金を注ぎ込んでおりながら、これらのものを操縦する人が六万円の退職金をもらうとか、これを目途に入隊するとか、いろいろの現在の実情から見て甚だ遺憾なことであります。この質的向上には精神力もありますが、装備、武器の改善もあることももとよりであります。一体これはどの程度まで改善、もつと向上するのでありますか、合せて外務大臣の御方針と関連して内容を明らかにしてもらいたい。
  146. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。この保安隊の士気の高揚の点でありますが、それは私は常に保安隊員に対して申しておるのであります。諸君は日本の平和と秩序維持のために働くべき第一線の人だ。而して日本において今何が一番必要であるか、とにもかくにも日本の秩序を保つて行くことが一番大事だと我々は考えておる。この秩序の任に当るべき諸君は、いわゆる日本のためにしつかりやつてくれということを私は常に申しておるのであります。士気は相当満足の程度に私は行つておると考えております。どうか岩木委員におかれましても一つ保安隊を御覧を願いたいと考えております。而してこの内容の点でありまするが、私は必ずしもその武器ばかりを言うのじやありません。北海道のあの辺陬の地において甚だみじめな生活をしておるのであります。これらに対して北海道の辺陬の地に彼らが快的に生活し得るだけの努力をしてやりたい。いわゆる端的に申しますれば宿舎その他の点であります。甚だ今ぶさまで誠にかあいそうな状態であります。而もこの使用しております武器は御承知の通りアメリカからの借用物であります。先刻も申しましたできる限り日本において早くこれを作つて彼らに魂のある一つやり方を早急にしてやりたい、こういうことを念願しておるのであります。
  147. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうもまだ心に触れた御答弁を得ませんが、このアメリカから貸借を受ける、例えば今度の上陸用舟艇であるとか或いはフリゲート艦というものは、承りますれば耐用年数が五年か七年か、連力が十六ノツトか十八ノツト、丁度日本の明治三十七、八年か四十年頃の軍艦の程度のものであつて、おもちやの兵隊だとは申しませんけれども随分古典的な軍艦だと伺つておるのでありますが、これらに対してはそれらの損害はやはり日本政府が、国民が負担せなくちやならんということになるようでありますが、実際同じ借るならば日本の木村保安庁長官のあのたくましい防衛精神にぴつたり合つて、而も近代科学も兼備した優秀な軍艦や武器を借るように、日本政府からの希望に基いて向うの武器が借りられないのか、向うからの押付けの武器をありがたく拝借しているのか、日本政府の希望に基いて借るのか借らないのか、この点を承わつておきたい。
  148. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御適切な御質問であります。これはアメリカにおきましてもいろいろ事情はありましよう。又我々といたしましても実はこれは海岸の警備と人命の救助に当らせるつもりであります。それに適した船を作つて用いたいのでありますが、如何せん財政その他の事情が許しません。差当りアメリカにおいて只今繋船をしておりまするF・P十八隻、L・S五十隻を幸いに無償で貸してやろうということでありまするからこれを借りた次第であります。それで今岩木委員も申されました、この船は我々から見れば先ずぼろ船といつてよかろうと考えております。今から十年前に建造された船であります。そうしてこれはアメリカにおいて哨戒艇或いは上陸援護艇として使つておつたのでございますが、それが戦後殆んど廃船同様になつております。基準排水量は千四百二十トンであります。速力は公称十八ノツトと申しまするが十八ノツトは出ません。乗員は約百六十名であります。かような船でもとにかく日本に借用いたしまして沿岸の警備に当りますれば相当役立つものと考えております。申上げるまでもなく現在漁船が非常に拿捕されたりして危険な状態にあります。或いは密出入船の問題もあります。その他御承知の通りまだ敷設機雷の掃海をしなければならんものがたくさんあります。これは恐るべき数でありますが、日本海軍において敷設したものとアメリカの海軍において投下したものとまぜますと相当、何万個であります。そのうちの或る部分は掃海いたしておりますが、或る部分相当数まだ一万何千個というものは掃海に至つておりません。これらは早急に一つ日本の海岸の自由な航行にいささかでも早くこれを使いたい、こういう次第であります。
  149. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 韓国アメリカから借りておる軍艦より遥かに劣る性能であるそうであります。而も損害は日本の国民が負担せにやならん。ぼろ船で借りてそうして損耗、損傷率の高いものを借りるようなことなくして、或いは借りるのに元手は要らないが損害に対する補償負担がぼろ船だから国民に余計かかる。だからこいつは一つ木村保安庁長官のアメリカに向つての政治力においてもう少し御見解を新たにして頂きたいと思います。  まあこの問題は別にいたしまして、只今木村保安庁長官が只今はふやさないが、併しもつと事態が変化いたしますれば、それは又別ものであるというお言葉を使われたのであります。そこで現在の事態というものからもつと事態が急変すれば、或いは十八万にふやすかも知れんということでありますが、もつと事態が進めばというその限度、現象と申しますか、限度の現象と申しますのはどういつたことを意味するのでありますか、総理大臣にお尋ねいたしたい。
  150. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私が使つた言葉ではなく、木村法務大臣が使われた言葉でありますから(「法務大臣はいない」と呼ぶ者あり)でありますからして(「保安庁長官だ」と呼ぶ者あり)保安庁長官から御答弁するのが適当かと思いますが、私の想像では海外の事情が更に切迫したとか、或いは国内における情勢が違つたとかいうことを意味せられるものだと想像いたします。詳細は木村大臣からお聞き頂きたいと思います。
  151. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはなかなかむずかしいお答えであります。はつきり数学的にはここまでということは示されないのであります。これは諸般の情勢を勘案いたしまして(笑声)そうして我々は十分にそれを考慮に入れて判断をしなければならんと思います。併し私が差当りと申しましたのは、いわゆる国内、国際情勢から見まして先ずこの程度では今の保安隊で十分であろう、こう考えておる次第であります。この情勢が急変すれば格別でありますが、急変しない限りにおきましては今の程度で質的向上を図ればよかろうと考えております。
  152. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 アメリカの北海道に駐屯する部隊が近く引揚げられるとする、そうして日本の保安隊の部隊の主力が或いはおおむね北海道の防衛についておる。こうしたような事態でこの国内よりは国外の情勢に向つて日本の保安隊の配備計画というものが現在行われておる。そこでアメリカの新しい大統領の防衛計画、朝鮮戦線における変化等が現在の状態で変らなくても、将来の見方が重大であり、将来の状態が重大化する虞れありということで、政府は明二十八年度予算においてこの保安隊を十一万を十八万にふやすというような計画の予想が迫つておるものかどうか、この辺を承わつておきたい。
  153. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今差当り二十八年度に十八万に早急に増員しようという程度には至つていないと考えております。併し私はこれは神様ではありませんから断言できないのであります。情勢の変化によつてどうなるか、そのときには皆様にお諮りいたしましてよろしく御判断願いたいとこう考えております。
  154. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この問題はまあこの程度にいたしまして、総理大臣は先に保安隊を閲視したときにも、新国軍のという態度で大いに士気を鼓舞されたのでありますが、国民、国家の象徴である天皇は、将来新国軍が生じた場合或いは自衛力増強の場合においても、同様の象徴となり得ますかどうか、そういう立場にあられると考えられますかどうかお尋ねいたします。
  155. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと意味をしつかりつかみませんでしたが、御質問の趣意は。
  156. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 天皇が、将来新国軍が編成される場合にはその新国軍の象徴となられますかどうか。
  157. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いや私はそうは考えません。陛下は国民の象徴であらせられて、そうして特に新軍ができた場合と言いますか、軍隊の象徴になられるということはないと思います。
  158. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 新らしい軍隊でもやはり国民が構成しておるのであつて、国民の象徴である場合には軍隊の象徴にも共通することがあり得ると、こう思いますが、そういうことにはなりませんか。そうすると軍隊の象徴から天皇は取除くということになりますか。
  159. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと少し言葉のあやが微妙でありますが、陛下の地位は国民の象徴であり、従つて国民の一部の象徴と言われるかどうか知りませんが、憲法に規定してある地位は動かすべからざるものである。併しながらそれが故に過去における軍隊の大元帥とか何とかいう地位につかれることはないということを申上げたいと思います。
  160. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 先に政府は、これはまあ我々も言つておることでありますが、非常におかしなお尋ねをいたしますが、政府は国連加入を非常に熱望しておる。まあ国連によつて日本の共同防衛に当るという趣旨はわかるのでありますが、国連に加入ということは、日本が現在自衛力も十分でない、いわんや軍備も持つておらないと、こう政府は言われておる段階にいろいろまあ労務であるとか、或いはその他の便益であるとか、或いは基地であるとかいつたようなことを提供するために、何故に国連加入にそう急いで日本側からこれを要求いたしておるのか。その理由とするところを承わつておきたいと思います。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 国連は世界の平和維持を図るのを唯一の目的としておる機関であります。我々も新らしい憲法によつて平和ということを最大の目的といたしておるのでありますから、当然国連に加入すべき資格があり、又加入を申込むべき権利もある。又向うは加入を受入れるべき立場にある、こう考えておるのであります。又実際上も現在の情勢におきましては日本の国を守るという点から行きますれば、集団安全保障という考えが一番有効であり且つ適切である、こう思います。そのためには国連に加入するということが又国を守る途でもあります。我々は国連に入つて世界の平和維持に大いに寄与しよう、こう考えておるわけであります。同時に自分の国の安全も守りたい、従つて速かに国連に加入するのが適当であると考えておるのであります。
  162. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 その基本的な世界平和に寄与する態度については我々も異存がないのでありまするが、国連加入によつて現在は世界平和に貢献するといえども、義務を果すことがその大部分を占めて、日本を国連が防衛するという絶対義務というものはないのではないか。例えば国連が必要において、自己の意思において、日本本土から引揚げ、日本の防衛というものに積極的義務を持たない、消極的な大乗的な義務は持つても積極的義務は持たない。併し日本は国連に義務だけを果す、現在の段階においては、というようなことが実際国民といたしまして、果して割切れる話かどうか。特に国連協定などにからんでのいろいろな事態から考えますとこの感じは国民の間に非常に強いのではないか。であるから国連加入を要請するなら国連が日本の防衛についても絶対義務を持つということを明確化すべきではないか。その点は如何でありますか。
  163. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今国連軍協定と国連加入とは別問題でありまして、申すまでもなく国連軍只今朝鮮で行なつております行動は特殊の一時的の行動であります。従いまして、これと別に申上げますが、国連につきましてもこれは商取引みたいなものじやありませんから、これだけの日本に権利があるからこれだけの義務もからんで来るというように、権利と義務がきちんとマツチするというようなことにはならないと思います。併しながら国連に加入するということは取りも直さず日本の安全を集団保障の機構によつて守る、その一つの大きな枠ができると申しますか、ということになるのでありまするから、これについて私は異存のありようもないし、又国会においても決議までなされたようなわけであります。  なお国連におきましても義務は無論果すのでありますが、実は日本のように何と申しましか、国は小さいのでありますが人口も多いし、国民も非常に文化的に進んでいるし、こういう国におきましては、やはりその国なみに大きく世界の平和維持のために義務を進んで引受ける、或いは犠牲を進んで払うというぐらいの覚悟を必要とするものと考えております。
  164. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 ちよつと議論もありますがあと廻しにいたしまして、行政協定によつて日米防衛協定が考えられるのでありますが、アメリカ軍が日本に駐留軍としている場合の行動、作戦というものは、日米軍事委員会というのがあるのかないのか知りませんが、日本政府立場としてはこれらに対してどれほどの発言権があるのか。又そうしたものに参与、参画をしておるのか、しておらないのか。従つてアメリカ軍が自由に活動し又自由に日本を撤退するといつたような場合においては、あとでそういつたようなことがわかるということで通告を受けるということであつて日本自身の自主的な日米行政協定に基く防衛態勢というものとしてはどれほどの発言権を持ち得ておるのか。アメリカ軍が日本を撤退する場合には仕方ないこととしてやむを得ざることとしておるのか、この点を伺いたい。
  165. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これにつきましてはアメリカ側としては日本の防衛に必要なる武力といいますか、戦力といいますかを維持するという方針で我々もそれを了承しております。ただそれが例えば地上の兵隊が多ければ空中の兵隊が少いとか、或いは空軍が多ければ地上部隊が少くていいとかいろいろ軍事上の関係はありますが、従いまして、例えば地上兵がどれだけ減つた、それだけは日本の防衛力は減つたのだ、こういう結論には私はなかなかならないと思います。なおこれにつきましては衆議院でも議論がありましたけれどもアメリカ側が日本を守る義務を持つておる、こう政府は勿論了解しておりまするし、それに対してはアメリカ側でも、その政府の了解は正しいのであるというような、これは新聞報道ではありましたけれども、あつたような次第であります。我々は日本を守るに必要な限度はどの程度であるかということにつきましては、小さな移動は別といたしまして、大きな移動については当然相談を受けるはずでありまするけれども、まだその移動は今までのところは行われておりません。
  166. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 只今岡崎外務大臣衆議院におけるそうした質問に対する政府の見解に対して、アメリカ新聞報道であるがそれを是認しているということでありますが、それは一応新聞報道の前半だけを拾い上げたので、後半においては、但しアメリカ軍は自由に日本を撤退する権利を有するということを報じているのであります。アメリカ日本を守る義務はあるが、その業務は絶対義務ではない。アメリカ軍の必要作戦の場合においては日本を撤退し得る権利があるということを同じAPが報じているのでありますが、これに対して日本政府はどういう考えを持ちますか、お尋ねいたします。
  167. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはまあ新聞報道でありますから、私が言い出したのがいけないのかも知れませんが、新聞報道について特に議論するよりも、当時日米安全保障条約並びに行政協定の議論のときにしばしば申上げたのですが、それを又ここで繰返すと長くなりますが、大よそ簡略に申上げますと、この形が実は残念ながら相互協定になつておらない。つまり日本が危い場合にはアメリカがこれを援助して保護するが、アメリカが危いときには日本が行つてアメリカを援助して、アメリカの安全を保障するというような相互協定になつておらないのが、条約の形として何か一方的であるような形になつてしまつたということは、当時御説明いたした通りであります。従つて相互的ならばお互いに義務を負い権利を持つということになりますが、こういう変態的なものでありまするから、それで誤解を起すような文字が使われてあるのでありまするけれども、その真意は、アメリカ側も日本の防衛には必ずその義務を負つているということは間違いないと申上げます。
  168. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そういう間違いないという政府責任は、頼りがあるのかないのか私はわりませんけれども、間違いないと言われるならば、国民としてはそれを信頼するより仕方がないのでありますが、現在アメリカ軍の日本国内における行動その他に鑑みまして、この政府の信頼は外れないように私は努力願いたいと思います。これはもう重大な問題であらうと思うのであります。  それから総理大臣にお尋ねいたしたいことは、日本は現在の李承晩韓国政府に対していろいろな問題で未解決のものもたくさんあります。ところが我々が特に指摘いたしたいのは、李承晩大統領は反日政策を標榜して大統領に当選したと報じておられる人でありまして、常に日本に対する非常なる反感を持つている人であります。で、日本の保安隊が朝鮮に派遣されるようなことはありませんが、ないと思いますけれども、万が一派遣されるような場合があつたら、韓国軍は日本の保安隊に銃先を向けるであろう、こういつたことを京城電報は報じているくらいに、非常に日本に対するこうした態度、又李承晩ラインと称する防衛水域と申しますか、これは日本の領土の対馬の沖すれすれの所まで勝手に防衛水域の線を引いて、日本のいわゆる国内秩序或いは日本人の身命財産の、あらゆる利益を妨害しておるのであります。こういつたような状態に対して、韓国が今共産軍から攻められて、そこに国連協定に基いて朝鮮戦線で働いておる国連軍日本はいろいろな便益や努力を払つておる、こういうことになるのであります。この矛盾は、只今一体日本政府はどう考えるのか。日本を敵視している韓国を守るために、もとよりこれは共産軍の侵略を防止するという大きな、アジアの平和を守るというゆえんでありますが、併し韓国が、若し朝鮮の統一ができた場合には、対馬を返せというようなこともあり得るかもわからない。或いは韓国のものである、こういつたようなことが先にも言われたように、国民から見まして、非常に国民はこうした問題に疑義を持つているのであります。この防衛水域の問題につきましても、いわゆる日本国内の秩序を乱されている次第でありますが、現在の日本自衛力においてこれはどう処置されるのか。アメリカから軍艦や飛行機を借りるだけが芸じやない。こういつた国内秩序を守る、こういうところにその趣旨があると思うのでありますが、この韓国のこうした立場に対して、我々はもとより親善を望むこと切なるものがありますけれども、こういう点がどうも向うの歩調と合わない。ピントが合わない。これは非常に私は国連協力に対しまする日本人の感覚におきましても、非常にここに微妙なものがあろうと思うのでありますが、総理大臣はこうした問題に、如何ような解釈を持つておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  169. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 李承晩大統領が、常に日本に対して悪感情を持つておられるということは私は承知いたしません。逆に私が李承晩大統領に東京で会つたときの感じは、決してそういう考えを持つておられる人とは感じなかつたのであります。事実は存じません。  それから保安隊を韓国に派遣する、これは断じていたしません。  それから対馬を返せと申しても、これは応ずるわけに行きません。又そういう要求をしようとも考えられません。  それから李承晩ラインについては、日本政府はこれを認めておりません。現在の状態については外務大臣からお聞きを願います。
  170. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 李承晩ラインの解決方策は。
  171. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 李承晩ラインと申しますものが、これはまあ設定されておりますが、これと防衛水域というものは別でありまして、防衛水城というのは、国連軍司令官が設定したものであります。防衛水域につきましては、たびたび我々のほうからも国連軍のほうに話をいたしております。国連軍側も、これは早くやめにしたい。続いておる間にしても関係国の利益を損しないように、できるだけ努力をするということを言われております。これは申すまでもなく軍事上の必要上設けられたものでありまして、その間、併し必ずしもこれは禁止水域では今のところないのであります。防衛水域でありますから、その中に一定の船は入れる。又漁船等についても、仮に入つても、これに対しては拿捕したり砲撃したりすることはしない。それが防衛水域の目的に邪魔になる場合には退去を要求する。こういうことになつているのでありますが、この措置もできるだけ早く解消したいという向うの気持もよくわかつておりますので、今、更に引続き話をしておる最中であります。  李承晩ラインにつきましては、これは今総理のお話通りでありまするが、このいわゆる李承晩ラインと称するものの中に日本の漁船が入つた場合に、往々にしてこれが検査を受けたり、或いは場合によつては引張つて行かれるというような事実もあることは認めておりまするけれども、これにつきましてはその都度十分なる話合いをいたし、こちらの要求を強く先方にいたしまして、その損害の回復を図つて行く、只今かような状況になつております。
  172. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 岩木君に申上げますが、もう時間も経過しておりますから……。
  173. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それじやもう一つ、ちよつと今の問題もあるのですが、時間がないようですから……、もう一点お尋ねいたしたいことは、政府は対日援助資金を債務といつ認定したのか、まだ認定しておらないのかどうか。対日援助資金は、政府はその後見返資金としていろいろな方面に貸付け、又これを利用しておるのでありますが、私は一番最初にお尋ねしたいのは、これを認定しておるのか、認定しておらないのか、現在認定しつつあるというのか、この点を承わりたいのが一点。そうして対日援助資金が現在いろいろな方面に貸付けられておる、その貸付けられておる大部分は、大企業産業に向つて貸付けられておるのであります。又この内容につきましては、又別に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、かなり問題点があると思うのです。これの償還計画につきましても極めて問題点がある。ところがアメリカからこれを債務として返済せよということを申入れられておるということでありますが、それは事実であるかどうか。それからもう一点は、更に対日援助資金をアメリカは債権と主張して、返済を日本政府に求めておるが、これは賠償との関連性においてどちらが優先するか。国民感情から見て、この問題は極めて重大な問題でありますと共に、更に続いてお尋ねいたしたいのは、仄聞するところによると、アメリカは二十八年度の日本予算に対して、これらの対日援助資金の、いわゆる見返資金の返済分をアメリカ側の防衛分担金に繰入れよということが申入れられてあるということを聞きますが、如何でありますか、承わりたい。
  174. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 援助資金につきましては、我々は取りあえず債務と心得ておるという程度のことでございます。
  175. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 いつ心得ましたか。
  176. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) いつと申上げられませんが、心得ております。それで今も心得ておる。ただそれを債権としての確認をしろとか、債務としての確認をしろとか言われたこともありませんし、それをどうするという話も受けておりませんが、ただ私は債務と心得ておるという点だけ御返事いたします。
  177. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 ちよつと、大変恐縮ですが……、債務と心得ておるというのはいつ心得たのか。それならそれで国内手続、財政法においても国会の承認を経なければならないことでありましようし、その辺を明らかにして頂きたい。それから返済せいとも何とも言つて来ておらんということですが、債権であれば、債権者がそれをどのように償還するのかという計画を言うであろう、その債務の償還計画として。いわゆる私が今申上げます通り、二十八年度の予算において、日米防衛分担金のアメリカの分担金にこの債務を繰入れて行け、こういうことを申込んでおられるということを聞いておるが、それは事実であるかどうか、これも併せて伺います。
  178. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この対日援助資金の問題は、こんは歴史があると言つては少し大き過ぎますが、過去において相当のいきさつがあつたのであります。簡単に申せば、一体日本政府はガリオア、対日援助資金をどう考えておるか。これは私が考えておることであります、日本はこれを債務と心得ておる。何となればアメリカの、何といいますか、慈善によつて日本国民が過去において生活したということであれば、もらつたということになれば、我々国民の面目にかかわることである。(「同感」と呼ぶ者あり)無論これは返す。如何に返すかは又別の話でありますが、返すのであります。そこで債務と申せば、契約を取交わしたようでありますが、私は債務と心得て、これは返すべきである、こう考えておるという話はしたのであります。さて、これが債務というのであれば、いわゆる法律上の債務となると、両国の間の交渉が、全額払うか、そのうち幾ら払うか、ちよつと数字は忘れましたが、イタリア、ドイツと同じような問題があつて、これに対してアメリカが幾ら払えというような話があるようであります。日本に対してはそれ以上の、他の国以上の要請をするはずはないと思いますけれども、併しながら私は日本国民として、いたずらに他国の恩恵、慈善によつて過去何年かすごしたということは、これは国民感情がこれこそ許さないと思うのであります。そこで今現在債務なりや否やということは、契約は取交わしておりません。今後交渉において全部これを認めるか、或いはそのうち一部を認めるか、これは交渉によることであります。この交渉によつた結果、債務となれば国会の承認を経ることになることは当然であります。
  179. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 もう一つ。そこで総理大臣がこれを債務と心得ておるという気持の点は、国民感情としてもわかる点がありまするが、債務と心得ておると言つたところで、随分これも五カ年以上、六カ年に跨がつての問題でありまして、その間にもとより片山、芦田内閣もありましたが、全部を通じて八割は吉田内閣が占めておつた。こうした事態に対して一番最初受けておつたのが吉田第一次内閣であります。このイロア、ガリオア資金というものを債務と当初心得ておつたものであれば、見返資金の活用につきましては、相当問題があるのじやないか。見返資金に随分、いかがわしいとは私は申しませんけれども、極めて調査を要する見返資金の活用があるのであります。日本国民全体がこれを債務として今後税金か何かでこれを支払つて行かなければならん。併しその金は大きな企業産業とか特定のほうに貸付けて、償還期限は二十年とか三十年とか、或いは貸倒れもあるだろう、いろいろこの問題は別の問題でありましようが、とにかくそういうような状態でこれは別途の方面に活用されておるのだが、これ又私が先ほどお尋ねいたしまして御答弁がありませんが、防衛分担金に、これらの返済を年次計画を立てて、当初二十八年度から繰入れるべき要請があると承わつておるが、又財政法の手続の上におきましても問題がありまするし、又賠償との関係においてはどういう取扱をするのか。今申上げました二十八年度の防衛分担金に繰入れよと言つておる問題は事実であるかどうか。これはもう二十八年度の予算が近く国会に提出されるのですから、今ここでそういつたことはわかるとかわからんとか言われるが、はつきり政府はわかつておると思いますから、やはり明らかにしてもらわなければならん。総理大臣から一つ……。
  180. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 全部ではありませんが、最初の質問に私の承知しておるところをお答え申上げます。  今私はこれは債務である、返済すべき債務であると言つたのは、芦田内閣、社会党内閣以後のことでありまして、いつという時は覚えておりませんが、はつきりした時は覚えておりませんが、これはマツカーサー元帥が帰られる少し前と思います。従つて芦田内閣その他には関係がないことであります。  それからその他の問題については、ほかの関係大臣からお答えいたします。
  181. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 二十八年度の防衛金の予算に、そういう見返資金の返済を意味して繰込むというふうなことは、話も受けておりませんし、考えてもおりません。それから見返資金の用途につきましては、それぞれ適当と思います方面に投資しております。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちよつと関連して、見返資金について簡単に……。只今対日援助資金と見返資金の関係について岩木君から質問があつたのでありますが、私はこの問題につきまして、多分二年前だと思いますが、池田蔵相に対して質問し、大体対日援助物資ですね、対日援助資金を土台とするところの援助物資は、これはもらつたのかどうか、若しもらつたとすれば、これは日本のものなんで、日本はそれに対して自由に使う権利があるが、あれは借りたのか、借りておるのか、借りたとすれば、これに対して、借りた限りは、それから起るところのいろいろな返済の義務がある、負うけれども、借りたことに対して、それからいろいろ起つて来る見返資金、その見返資金については日本政府に自由な権利があるのであります。然るにこの点が非常に不明瞭でありました。当時の返答としては非常に不明瞭なために、もらつたのか、或いは借りておるのかわからない。私はもらつたならば、当然自分でこれを自由に使えるのです。又借りたとしても、それから起つた見返資金については、当然アメリカのあのような厳重な規定によつて、全くこれは一方的にいろいろな条件を押付けられまして、融資規定なんかを見ても非常に苛酷なものです。日本の財政計画があの見返資金によつて一時全く支配されたということは明らかなことだと思うのです。このような金融支配の鍵を梃子として、いわば対日援助資金というものは見返資金の設定によりまして、日本の経済というものが左右された。そのような網が二重、三重にかけられることは、絶対に日本の占領中であつても、そういうことは許さるべきではない。そういう見解を持つておるのでありますが、殊に今の吉田総理答弁によりますと、これはもらつたのじやない。アメリカのそういうような慈善によつて、あのような恩恵を受けたということは国民の感情が許さないから返すのだ。こういうような点を強調されているのですが、見返資金によるところの、このような苛酷な支配というものから考えて、又対日援助物資そのものの内容がどうか、どんなもので寄こされたか、資金じやない。言うまでもなく食糧という恰好で寄こされた。而もその中には食うに堪えないような「とうもろこし」、石混りのあのような麦、こういうことで日本の国民は一方においては感謝の気持があつた面があつたかも知れない。一方においては食えないではないか、ひどいではないか、こういうような観念を我々は持つておるのであります。この点で、ただ今のように実際に即さないような返答だけで我々は了承することができないと思うのでありますが、この点吉田総理はつきりした見解を承わりたい。関連した程度はつきりした見解を……。
  183. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 援助物資がことごとく食えなかつたのではないのであります。(「無論です」と呼ぶ者あり)一部が食えなかつたことがあるかも知れないけれども、全部がそうとは断言するのはおかしい話であると思います。それから当時において、アメリカ政府日本に対してこれを援助するか、すべて日本に贈与するか、或いは貸付けるとか、取立てるかという方針はまだきまつておらなかつたと思います。故に今のような、これを返すか返さないかというような話ができたのであります。併しながら、いずれにしても、こういうことによつて日本の国民は過去何年間において生活は続けることができたのであります。従つて与えることについても、こうしてもらいたいとか、ああしてもらいたいというような注文が出るのは当然のことであります。これが不当なりというのは私はおかしなことだと思います。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 見返資金に関連したあれはどうしたのです。(「進行々々」と呼ぶ者あり)
  185. 千田正

    ○千田正君 私は在外公館借入金の問題につきまして吉田総理大臣の所見を承わりたいと思います。  御承知の通り在外公館の借入金は、丁度吉田総理大臣外務大臣の頃、日本が敗戦によつて在外にありましたところの公館に対して、当時の居留民から一応終戦後の処理の意味でそれを借受けて、それを日本に帰つたならば返すという意味で借入れたいわゆる在外公館借入金であります。この問題につきましては、昭和二十六年の三月三十日、これは吉田総理大臣も非常に関心を持たれて、これは返すべきである、国の債務として返すべきであるというので法律第五十四号によつて支払いの準備の法律を出されて、更に本年の三月三十一日、法律第四十四号を以てこの借入金の支払いを開始したのであります。ところが残念なことでありますのは、この支払の金額を最高五万円で打切つたことであります。国の債務である以上はどうか全部返してもらいたい、こういうのがこの引揚者の人たちの声でありました。最近の状況によりますというと、当時の財政と比較して、日本の財政もややゆとりが生じて来た。或いは第二封鎖預金が解除された。或いは二十八年度本予算においては軍人その他に対する恩給が復活するであろうというような声さえも出ておる今日におきまして、国が当時の苦しい立場で国民から借りた金を五万円で頭を打つたということは甚だ我々としても受取れないのでありますが、最近の国の財政状況によつて、これは当然借りた額にして返すべきが至当じやないかと思いますので、この点法律改正その他によつて今日この貸した国民に対して支払うような方法を君える御意思がありますかどうか、総理大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  186. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この問題は当時からいろいろ議論がありまして、政府が借りたものであることはこれはもう違いないのであります。若し仮に借りてないとした場合に、その持つている人たちはどうなつたかというと、恐らく多くの場合に、その人たちは日本に帰国したのであります。帰国した場合には一定の限度以上には財産は持つて帰れない。従つて海外に置いて来るのも仕方がない。尤もその間においてかなり時日がありますから、金があればもつと楽な暮しができたということもありましよう。そこでいろいろ考えまして、今おつしやつたように日本の財政事情等も考慮しまして、制限を付けたわけであります。又これにはノミナルな額は非常に多くても、実際上の貨幣価値、日本の国内の円と当時の儲備券、連銀券なりの貨幣価値の問題もございまして、こういうようにきめたのであります。これについては不公平であるという議論もあることは承知いたしております。併しながら、只今はとにかく今やつておる法律による手続を早く進めて、全部残りなく済ませることに先ず努力をいたすわけであります。その上で又考慮すべき点があれば別問題であります。只今のところはまだ法律の規定に従つて、早くこれを全部片附ける、これを第一の急務といたしておるような次第であります。
  187. 千田正

    ○千田正君 今の岡崎外務大臣の言葉の、いわゆる帰れるような場合においても、あの金しか持つて帰られないのだから、それだつたならば、居留民が当然出して当時の急場を救たつていいじやないかというような考え方が大体間違つていると思います。あのときの状況は外地におつた人でなければわからないが、当時の在外公館はすべて金庫は封鎖され、銀行も封鎖され、日本に帰れないという状況において、各居留民はみずから自分の財産を売つて、そうして当時の公使或いは領事に出して、漸くとにかく一応の引揚が完了したのでありますから、持つて来れなかつたはずだからというのは、私はこれは余りに言葉が過ぎたことではないか、かように思うのであります。殊に最近に至つては、この法律の前提であるところの公平なる負担というような問題も起きておりますけれども、そういうような意味から言うならば、軍人に対するところの恩給というようなものを復活するだけの余裕があるならば、先ず以て国の債務を支払うべきが当然じやないかと考えております。而も今日においては最高裁判所に対して、憲法違反であるとまでこの問題が流布されている今日において、政府はもう少し温情のある、而も幅のある意味においてこの問題を解決してもらいたい、かように思うのでありますが、特にこの問題に対しては個人の財産を一方的に処置したという問題に対するところの憲法違反として最高裁判所に只今公訴中であると承わりまするが、この点につきましては岡崎外務大臣はどういうふうに考えておられますか、一応お伺いしたいと思います。
  188. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私も今述べられましたような当時の事情はよく心得ております。そこでできるだけのことをしなければならんということは我我も考えておるのであります。で、持つて来られないから同じじやないか、こういう意味ではなくして、私の申すのは、持つて来られなかつた、従つて若しこれを……まあこれは言葉が過ぎるかも知れませんが、これを在外公館に渡して、そうしてそれと等しい等価を日本でもらうと言えば、日本の国で以て管理しておりまする為替の、いわば合法的な逃げ道みたいなものになるのであります。つまり為替管理を厳重にやつておる際に、あちらで儲備券を積立てて、こちらで以てそれに等しい円をもらうということは為替管理法をもぐつたような恰好になるので、そのときに難色があつた、こういうことを申上げております。なお裁判所の問題につきましては、これは裁判所で決定するものでありまして、これに対して我々が前からこれに何か意見を申すことは差控えたいと考えております。
  189. 千田正

    ○千田正君 重ねてお伺いしますが、それだとするというと、今のところは五万円頭打ちの支払い、本年の三月三十一日に実施された法律によつて一応はこれで処分する、そうしてなお十分に国家の財政が余裕がある場合においては、或いは法律を改正して当然の権利に対して支払うという御意思があるかどうか、この点だけ一点お伺いしたいと思います。
  190. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは今でも財政が許せばもう少しはしたいと思つておるくらいであります。その点は国家全体の財政の問題でありまするが、我々関係者としては成るべくできるだけのことをいたしたい、これは当然であります。但しどうするかということまでこの際申上げられないような次第であります。
  191. 千田正

    ○千田正君 次に在外資産の補償問題につきましてお伺いしたいのであります。御承知の通り在外資産を賠償に充てるということは適法でないように我々は考えておつたのでありまするが、一応第一次大戦後の跡始末もややその在外資産を賠償に充てた傾向があつたのでありますが、今次大戦によつてこうむつたところのいわゆる戦敗国の被害は、大体法人にして総額約六兆億円というものが海外の資産、且つ個人の資産は約二千億と称せられるところの在外の資産の処分の問題につきまして、その平和条約後におけるこの問題をどういうふうにお取扱いなさるおつもりでありますか、その点を御明示願いたいと思います。
  192. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは法律的には平和条約の規定に基いて処理せざるを得ないのでありまするが、国によりましては、又その国によつて別途の扱いをし得るところが出て来ると思います。平和条約には入つておりませんでしたが、インドのごとき例もありまするし、又ブラジルなどのように考えてくれておるというようなところもあります。又或る国ではその国の憲法の規定に基くと、そういう財産をとるわけには行かないというような国もあるようであります。平和条約においては原則をきめておりまするが、その中で国交がだんだんよくなつて参りますに従いまして、平和条約の枠が最悪の場合としまして、その中において多少ずつの緩和が行われ得ると私ども考えております。その節でできるだけ各国に対して働きかけております。
  193. 千田正

    ○千田正君 終戦当時いわゆる特定の残して来たところの不動産以外のもの、例えば日本の円で換算され得るもの、或いは儲備券等に換算された有価証券、小切手、約束手形、為替手形、支払指図書、或いは郵便貯金、郵便年金、保険契約、そういうものは只今恐らく外務省の管轄の監理局その他において保管されておると思いますが、これの処分はどういうふうになされるおつもりでありますか、その点を伺つておきたいと思います。
  194. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これにつきましては、いろいろの種類のものがありまして、それぞれ又国によつて実際上のやり方も違つて来なければならないと思います。例えば中共地区にありまするものと、例えばそれが国民政府のほうに、台湾のほうに持つて来られたものとでは、これは一例でありますが、違う場合もあり得ると思います。非常に複雑にいろいろの関係のものがありまするので、ここで只今資料を持ち合せておりませんから、後ほど資料について申上げたいと思います。
  195. 千田正

    ○千田正君 これは大蔵大臣及び外務大臣にお伺いしたいと思います。それは最近になりまして、東京湾の湾口に敷設されましたところのいわゆる防潜網、潜航艇を防ぐ防潜網によつて起された問題によつて漁民が非常に漁ができなくなつた。特に最近その兆候が著しくなつて、いわゆる防潜網或いは聴音機の敷設のために自分らが生活できない、こういう訴えが頻々として参るのでありますが、防潜網は恐らく外務大臣とラスク氏との会談の中で行われた一つの処置でもあつたろうと思いますし、或いは吉田首相とダレス氏との書簡の一部にあつたかも知れませんが、或いは一つの作戦行動としての防潜網と見た場合においてどうするかということと、それからもう一つアメリカ防衛の立場で一応の敷設としてやつたというような場合において見る方法もあるでありましようが、いずれにしても、現在神奈川県、千葉県、東京都下の漁師がその後漁ができない。日本の国は国連に或いはアメリカ側に協力する意味において、こういうことをやつておるということは或る程度わかるけれども、それにしては自分らの生活がやつて行けないじやないか、何とかしてこれは公平なる負担の下に国においてこの問題の補償をしてくれるか、或いは今日年末の押迫つた現在としては、この生活に喘ぐ漁民に対して何らかの方法をとるべきである、これが千葉或いは神奈川或いは東京都下の漁民の声でありまするが、これに対して大蔵大臣並びに外務大臣はどういうふうに考えておられますか、御明答を願いたいと思います。
  196. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは安全保障条約に基いて日本に駐留する軍の必要上やつておる措置であります。合同委員会一つの題目になつておるのであります。そこでこれにつきましては、一つの問題は、これほどのことをしなければ本当に駐留軍として困るのか、或いは多少のここに緩和ができるか、或いは撤廃しても差支えないものであるかということを合同委員会のほうで取上げて話合をいたしております。その間におきまして、例えばその間にも、初めは通路がなかつたのを一つ通路をあけたりいたしまして、必ずしもこれが絶対的のものとも思いませんけれども、併しその間におきまして、外からの、外海から入つて来る魚がこれにおびえて来なくなるとい今事実があると聞いておりますので、これは水産庁のほうで今盛んに調べております。調べておりますというのは、損害は確かにあるけれども、その限度如何ということを調べております。それに基いて補償の問題が当然出て来るのでありますが、今専門家で調べておりますので暫らく時日がかかるかも知れませんが、補償はいたすつもりでおります。
  197. 千田正

    ○千田正君 今外務大臣からお話の御趣旨、よくわかりましたが、これに対して漁民が御承知のようにもう切羽詰つている。でありますから、補償の額はいずれきまるでありましようが、その前にとにかく生活に困つているこの漁民に対して一応の年末の見舞金或いはその他によつてその苦しい漁民を救う考えがないか、この点大蔵大臣は何かその点に対して便法を講ずる御意思があるかどうかお伺いしたいと思います。
  198. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問に対しましては、考えるということはあると存じますが、便法を講じられますかどうかは、今御即答いたしかねます。
  199. 千田正

    ○千田正君 最後に厚生大臣外務大臣にお伺いいたします。先般来中共側の報道によりまして、長い間留守家族が心配をしておつたところのいわゆる海外に抑留された我々の同胞を約三万人帰してよこすというようなことが伝えられておるのでありまするが、いずれにしても当初外務省において発表されました三十数万という抑留者の数からは隔たること甚だ遠いのでありまして、留守家族の多くは失望しておるのでありますが、とにかく三万人という人が帰つて来るということに一抹の希望を繋いでおるのでありますが、その三万人を帰すというこの声に応じて、日本の外務当局並びに長い間引揚援護その他について心配しておられた厚生省としましては、どういう対策を以てこれに臨んでおられますか、又臨もうとされつつありますか、その点の御所信を伺いたいと思います。
  200. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ず初めにお断わりして置かなければなりませんことは、これは日本の留守家族が失望するといけないから申上げるのでありますが、中共側の発表は三万人の人間がいるということでありまして、三万人を帰すとははつきり言つておらないのであります。そのうちで希望者を帰すと言つているのであります。三万人帰つて来るかどうかは、これはわからないのであります。なお数の相違につきましては、三十何万というのは、全体において中共地区及びシべリア地区に終戦当時にいたと思われる人でありまして、我々の発表におきましても、中共地区にいる生存者は五万九千人、まあ細かい数字は別として、五万九千人ほどあると言つておるのであります。今回の三万人というのは、それでも数が半分ほどでありまするが、違いまするけれども、まあとにかくそういうふうになります。そこでこれにつきましては、外務省の関する限りは、これは多少の無理があつても何とか帰す方向に努力をしようということでありまして、船の用意をして、いつでも出かけられるように準備をしておる。それから中共地区に対する旅券の発給はいたしておりませんけれども、この問題に関する限りは、それがために旅券を発給しなければ引揚げができない、発給すればできるというような場合であるならば原則を曲げて発給をいたそうと思う。この問題は実は中共のラジオで報道されたのが元でありまして、その後更に通信等で出ておりまするけれども、果してはつきりしておるかどうか、間接のものでありまするので、只今インド政府に依頼しまして、その真偽を確めてもらうとか、或いは日本の赤十字から国際赤十字なり、中共地区にある赤十字に連絡をして真偽を確めたり、その他の実際上の方法考えてもらう。或いは引揚関係者団体からの電報を先方に打つとかいろいろの方法で実際的に実際の引揚の方法に移すように努力をいたしております。
  201. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 只今お尋ねの厚生省関係のお答えを申上げたいと思うのであります。対外的な折衝は只今外務大臣お話通りでありまして、勿論対内的には御相談をいたしておるのでありまするが、厚生省といたしましては、さような措置がとられる場合における引揚げに対する万般の措置を講じたいと思つておるのであります。それに対しましては、今舞鶴に御承知の通り引揚援護局を持つておりまして、大体これは一時に三千人の収容ができまして、一カ月約一万人、なおそれに伴いまして援護の物資等も適当に今貯えております。なお引揚げに必要な船舶でありまするが、これは高砂丸、御承知の通り大体二千五百人乃至三千人が一回乗船できると思いますが、これを絶えず待機さしております。なお帰つて参つた後のこういうような人々の定着地までの援護に対しましては、昭和二十七年度において五千四百万円でありましたか、予算をとつております。若しも足りませんときには適当な財政措置を講じて万全の措置をとりたいと考えております。
  202. 千田正

    ○千田正君 小笠原通産大臣並びにこれは大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この戦争によつて日本の科学技術の面が非常に遅れておる、あらゆる貿易振興或いは産業振興におきましても、日本の技術はこの空白時代があつたために遅れておるのでありまして、これが国際マーケツトに響く点が非常に大きいのであります。つきましては、これら技術の奨励或いは助成という面につきまして、将来の日本の貿易或いは国際マーケツトの獲得のために一段の努力をしなければならないと思うのでありますが、これに対する助成金とか、或いは補助、そういう点につきましては、十分なされるお考えがあるのかどうかお伺いしたいと思います。
  203. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申します。仰せのごとくに、この長い空白期間のために技術が遅れておることも事実でございまして、それがために最近各種の人々アメリカのほうへ送りまして、いろいろその技術を取入れましたり、又日本のほうにおきましても、あらゆる指導をいたしておるのでありますが、今後ともこういうようなことについては相当な財政措置を講じて、技術の向上による国内産業の進展、輸出貿易の拡大等を図りたいと存じております。
  204. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問は、助成金を出すか出さないかというふうな点でございますが、助成金となりますと、ほかの類似の仕事に関連もありますし、それは簡単に取りきめるわけに行かないので、慎重に通産省その他技術の経験のあるほうの官庁とも連絡をとりまして、これでいいというところならば助成金を出してもいいと君えております。
  205. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最初ちよつと関連質問で……。千田君の只今の御質問で防潜網の補償のことについて質問をしたときに、岡崎外務大臣は調査して補償のことを考えてやるということでありましたが、この防潜網の補償は、御承知のように日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約第三条に基く漁業の制限に関する法律ですね、あれについては補償できないことになつている。従つて損害を査定した場合、その補償問題が起きたときに、特別の何か立法措置が必要であると思うのですが、その点岡崎外務大臣只今、損害があることは事実である、それの補償について調べておられると言いましたけれども、その補償額が仮にきまつても、それを補償する根拠がないわけです。この点はどういうふうにされますか、伺つておきたいと思います。
  206. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その点も考慮はされているようであります。但しそれは法律の解釈で行けるものであるかどうか、或いは別の法律を要するものであるか、それは主として水産庁とよく連絡しなければ、私からすぐにここでお答えできませんけれども、少くとも防潜網ができたためにはつきりと損害がありと、こういうふうに調査が決定いたしますれば、これは措置をしなければならん問題であります。これは私は確信しております。
  207. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それまでの暫定的措置というものはとられないのですか。それがきまるまで、法律によらなければならない場合に、それまで放つて置くわけにはいかないと思うのです。それまでの何か措置ですね、これは必要と思うのですが、お考え一つ伺いたい。
  208. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはなかなかむずかしいのでありまして、つまり補償をするといつても、これは国民の税金で補償をするわけであります。従つてはつきり調査の結果が出て来なければ、多分こうであろうといつて補償するわけにもなかなか行かないと思います。事実これこれの魚はこれだけ減つているとか、実際漁師が魚がとれないで困つている事実があるのですから、素人の私から見れば、これはどうしても魚が来なくなつたと考えざるを得ないのですが、併しちやんと法律的に見れば、やはり調査の結果が必要なんじやないか、こう考えております。併しこれは水産庁の意見もありましようから、私だけでいろいろなことを言つて間違うといけませんから、あとからゆつくり水産庁と相談して更にお答えいたします。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重要でございます。聞くところによると、一応見舞金というものを、その程度を出しておると言われておるが、補償の根拠法がないのですから、早くそれは措置しなければならん問題だと思います。  次にこれは総理大臣に、時間があまりないようですから、長くは今日は質問できませんが、最初に来年度の予算の編成の構想ですか、考え方、これについて細かいことは大蔵大臣に伺いますから、それをお示し願いたいと思います。と申しますのは、二十七年度の補正予算を組むに当つては、二十八年度の予算との関係を考慮しなければ編成できないわけなんです。そこで二十八年度には相当いろいろな新らしい項目の歳出が出て来ると思います。今問題になつているものだけでも、例えば軍人恩給の問題或いは賠償の問題、或いは外債の支払いとか、その他相当新らしい歳出が出て来ると思うのです。従つてそういう新らしい歳出の関連において二十七年度の補正予算も組まれたと思うのですが、大体二十八年度の予算の編成の構想がわからなければ、二十七年度予算補正の組み方というものは実ははつきりしないわけでありまして、この補正予算を我々審議するに当りまして、先ず最初に二十八年度予算の構想がわからなければ、それとの関連において我々は審議しなければならないのですが、それがこれまで示されておらない。これはこれまでの慣例ですと、一応は示されましたが、総理から大体二十八年度の予算はこういうふうな構想で組むつもりで、二十七年度予算補正は、こういう点で二十八年度を考慮して編成したのであるというような点について一応大まかな構想で結構ですから、お示しを願いたいと思います。
  210. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 取りあえず私から簡単に申上げます。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 細かいことは……。私は総理が四時から所用があつて行かれるということを聞きまして、特に総理にお尋ねしておるのです。実は私の質問は総理が行かれるというので保留しようと思つたが、総理はお忙しいところだと思つてわざわざ時間を、たつた七分か八分しかない時間を、自分の持時間を総理に質問しておるのですから、その点一応総理から大体の構想でよろしいですから、先ず口火として総理からお伺いして、いろいろ関係の大臣に細かい点を伺つて行こうと思つております。その点を一つお願いいたします。
  212. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはいろいろ来年度には賠償問題も出て参るでありましようし、軍人恩給等の問題も出て来るでありましようし、それらの総計はどのくらいになるか、今大蔵大臣の所で集計しておると思います。その詳細は大蔵大臣からお答えをいたします。
  213. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) お答えいたします。生産増強ということがこれからの日本には一番大事なことです。これをやりませんでは国が立つて行かないと思いますので、財政上及びます限り国の生産増強に資し得る事柄に先ず重点を置く、その生産増強も産業のうちの一番の重点産業に力を入れるよう、それと或いは並行し、或いは多少遅れるかも知れませんが、公共事業とか、或いは治山治水というような方面に、只今までと同じになりますか、或いは減りますか、殖えますか、その点についてはこの財政の力の許す程度で判定するのでございます。そういうことを行なつて行く、私の大ずかみの考えはそういうことで、賠償とか、或いは今おつしやつた外債の支払とか、そういうふうなことは無論やむを得ないことでございますが、でき得る限り少くして行きたい、そういう考えでございます。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のお伺いしておるのは、そういう断片的なことではなくして、この予算、財政というものは勿論大蔵大臣も御存じでありますが、総合的な一つの国の政策を集約したものなのでありますから、その構想というものは、恐らく二十八年度の今お話のような賠償とか、恩給その他が出て来れば、予算規模は相当私は大きくなると思う。それで防衛費との関係、一審重要なのは防衛費と民生費の関係をどうするか、こういうようなことは非常に重要な点なんです。例えば二十七年度補正予算との関係、恐らく私は相当あるだろうと思うのです。又なければならんはずです。例えば公務員給与を人事院の勧告通りに実施しなかつたのはどういうわけか、或いは国鉄裁定を裁定通り実施できなかつたについては、二十八年度の予算との関係があるのではないか、それからそういう二十八年度予算に相当これは大きな歳出が出て来るので、二十七年度の補正についてはセーブしておかなければならないということがあるので、恐らく今度そうなつたんではないかということが一応出て来ると思うのですけれども、私はそうなつておると思う。それならば二十八年度の予算の財政規模或いは民生費と防衛費との関係、こういうことについて一応骨格がなければならんはずだと思う。それがありませんと、二十七年度補正予算を審議をしても私は正確なる正しい審議にならない、そういうことを聞いておるのです。大体の大綱のことなんであつて、断片的なことを聞いておるのではないのであります。それは大蔵大臣はまだ構想が固まつていなければおかしいのであります。今日は時間がございませんから、又の機会にゆつくり伺いますけれども、そういう意味での構想はおありなのかどうか。
  215. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 構想は固まつていないと御返事するのが本当なんですが、併し只今おつしやる通り、来年度は非常に規模が大きくなるということは心配しております。それをどの程度に、圧縮できるものなら圧縮する、できないものなら止むを得ません。それで来年度は大蔵大臣としては非常に骨の折れる予算だということは覚悟しておりますが、それにもかかわらず、只今申したように引込思案でなく、生産事業のほうに力を入れて、そうして足下を固めて行きたい。それをやらなければいつまで経つても中途半端な国になつてしまつて将来が案ぜられるというふうに考えております。
  216. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後四時二分散会    —————・—————