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宮幡委員 私は自由党を代表いたしまして、
長期信用銀行法案に対し賛成の意を表明するものであります。
平和條約の発効によ
つて日本は法的な独立をかち得たわけであります。強く申せば独立を確保したということになるでありましよう。真の独立は、あくまでも経済自立の達成がなければ、その目的に到達しないことも当然であります。かかる観点におきまして、現下
日本の経済を一瞥いたしてみますと、御承知のように資本の蓄積がまことに貧弱でありましていわゆる浅い経済という
言葉で片づけられておりまして、国の経済自立の達成のために、中核的な政策は何であるかといえば、まあ金融の円滑化に大きなウエートがかか
つておるということも、きわめて明瞭であります。かかる際におきましてはまさに長期資金の確保をはかりますことが、産業の合理化、輸出の振興あるいは日米経済協力の達成、東南アジア地域の開発等と、きわめて緊密な
関係にあることがわかるわけであります。幸いにいたしまして
政府も従来
日本開発銀行とか、あるいは
日本輸出入銀行という
政府磯関によりまして
政府資金を活用して、長期資金の調達に助成的な
役割を果して参つたのでありますが、世界の
実情から見ましても、
政府機関というものはあくまでも民間機関の行う長期金融に対する、補足的
立場にあるべきでありまして
政府機関が長期資金の全部をまかなうということは、これは長期資金調達の面からい
つて、常道でないと考えられておる折からでありまして、
従つて民間金融機関の整備強化は急務であるということが痛感されておりまするから、今回本
法案の提案を見ましたことはまことに当を得たものでありまして、まずこの点におきまして、原案に対し賛成の意を表するにやぶさかではありません。
さらに銀行
制度の上から考えてみましても、長期銀行と預金銀行との業務分化を明らかにいたしまして、欧米あるいはわが国の事例、並びにか
つての金融機関の運営の
経験等に徴してみましても、おのおのその特徴がある。その特徴に基きます機能を、十分発揮せられるような段階に進むことは、これまた当を得たことでありまして、賛成の第二点と考えられるわけであります。
しかしながらここに
反省を要しますことは、これらの長期信用銀行によりまして、
日本の長期金融の調達に一生面が開かれたことは事実でありますが、これをも
つて満足すべきではありません。世界各国と大きな声で申さなくても、簡単にフランス等の
実情を見ましても、長期民間金融機関としては、預金銀行のほかに長中期貸付銀行と呼ばれるものが存在いたします。あるいは起業眼行と称するものが存在いたしまして、おおむね今回民間機関としての長期信用眼行を発足せしめんといたします本
法案の
趣旨、並びにそれよりも飛躍拡大せられました業務分野をも
つて活動せられておることも、われわれが
反省しなければならないところであります。またイギリスにおきましても工業金融会社と呼ばれるもの、あるいは商工金融会社と言われるもの――この商工金融会社というようなものは、必ずしも純粋民間機関ではありません。イングランド銀行の出資も若干仰いで、イングランド銀行の任命する
理事長が存在する等におきまして、あるいは純粋なる民間機関ではないかもしれませんが、官民合弁とでも申すべき組織におきまして、民間と
政府の協力によりまして長期つ資金の調達に非常な
努力を拂
つておるということも、また大いに
反省しなければならないことであります。また西ドイツにおきまして考えてみましても、民間長期金融機関として、興業信用銀行と称するもの、あるいは不動産抵当銀行と呼ばるべきもの、これは直訳でありますので、呼び名は悪いかもしれせんが、不動産抵当銀行、船舶抵当銀行というようなものがありましてそれぞれ特殊の産業分野に対しますところの長期資金の調達にまで、配慮をいたしておるというような
制度は、十分今後とも大蔵
当局におきましても御研究の上、まさに発足せんといたします長期信用銀行の
趣旨を拡大普遍化いたしましてわが国の経済自立達成のために、大いに強力なる長期金融
制度というものを
確立せられんことを、私は切望するものであります。
さらに本法施行に
あたりましては、何分にも銀行
制度としては戦後におきます画期的なものでありますので、よい
制度であるということだけによ
つて、その摩擦やあるいは不円滑な面を見透るわけには参りません。運用に
あたりましては、慎重かつ綿密なる行政的な配慮を要することも必然なのであります。現在におきましてあるいは興業銀行といわず勧業銀行といわず、先ほど出た北海道拓殖銀行といわず、いわゆる二枚看板の銀行でありまして長期銀行と純粹預金銀行とをあわせ兼ねておる。これをまん中でさくわけであります。二分すると、こう簡単には申されないかもしれませんが、とにかくわけるということにつきましては、そこに摩擦のあることは当然であります。しかも預金銀行が債券発行に関する
法律の廃止によ
つて、債券発行によりますところの資金の調達の面は閉塞せられるわけでありまして、單に預金によります資金調達を実行しなければなりません。あるいは過渡的には日銀の特融等の期待もかけておるでありましようが、これは預金銀行としての正常な道でないことは明らかであります。従いましてもし現在長期並びに預金銀行の両面を担当いたしております銀行があるとするならば、それがまた預金銀行として存続の規模を持つといたしますならば、これらに対し資金の獲得ができますように、行政的な配慮が必要であることは当然であります。その一部はすでにしばしば
質疑の中に繰返されました店舗の拡充、これは何箇所、何地点に設けるというものではありませんが、その銀行の希望によりまして状況と照し合せまして、適当数を認めるという寛容さがなぐてはいけません。され
どもむやみに店舗の増設によりまして、金融界におきます熾烈な自由競争によりましていろいろゆがんだ面の出ることはもとより好ましくないことと思いますから、こののりを越えない限度におきまして、十分な配慮をしていただきたいことを、くれぐれもお願い申し上げておきます。簡車な
言葉で申しますならば移りかわりに対して、いやしくも特定の銀行あるいは数箇の銀行等に対しまして、特殊の圧迫が加わらぬということを私は念願しておるものであります。
さらには長期信用銀行の設立を
意図せられる方々に対しましても、この画期的法制に密着する設立準備、あるいは従来の預金銀行の業務を捨てて、長期信用銀行に移行するような移りかわりの段階においては、相当複雑多岐にわたる準備段階があると思います。しかし本
法案公布後におきまして、一年以内に政令をも
つてその施行の期日をきめる。この配慮はまことに当を得たものとして、私
どもは賛成をいたしておるわけでありますが、さてその一年以内のいつにするかということが実にむずかしい問題であります。これが長きに失しますれば、このよき
制度の
実施を遅らすわけになります。しかしこれを急ぎまして促進するような形をとりますと、圧迫が非常に大きくなるわけでありまして、この
関係はわれわれよりも
当局がよく
御存じであります。
実情に照しまして、そうして十分なる準備を整えました上、すみやかにスタートをせしめる。準備の整うまでは十分なる指導と協力とを與えまして、この
制度の円満なるスタートが切れますように御配慮をいただきたいことを、私はくれぐれもお願いいたします。
以上をもちまして
長期信用銀行法案に対しまする原案に賛成の討論を終ると同時に、ただいま各派共同提案として提案されました修正案に対しましても、同様自由党を代表いたしまして賛成の意を表明する次第であります。