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1951-11-16 第12回国会 参議院 人事委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十六年十一月十六日(金曜日)    午前十時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉田 法晴君    理事            杉山 昌作君            千葉  信君    委員            加藤 武徳君            木下 源吾君            森崎  隆君            小野  哲君            紅露 みつ君   政府委員    人事院事務総局    給與局長    瀧本 忠男君   事務局側    常任委員会専門    員       川島 孝彦君    常任委員会専門    員       熊埜御堂定君   公述人    全国電気通信従    業員組合中央執    行委員長    久保  等君    日本セメント株   式会社総務部長  田島 主一君    官庁労働組合協    議会議長    佐藤 忠夫君    慶応大学経済学    部長      藤林 敬三君    全国自治団体労    働組合協議会給    與対策部長   萬屋 良作君    成蹊大学政経学    部長      野田 信夫君    東京大学教授  鵜飼 信成君    国有鉄道労働組   合給與対策部長  澤田  廣君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○一般職職員給與に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは只今から人事委員会公聽会を開会いたします。  公述人のかたお忙がしいところ有難うございました。案件は一般職職員給與に関する法律の一部を改正する法律案に対してでありますが、時間の都合もございますので、二、三十分程度お願いをいたしたいと考えます。  先ず全国電気通信従業員組合中央執行委員長久保等君にお願いをいたします。
  3. 久保等

    公述人久保等君) 本給與法改正問題に対しまして、政府が今回国会に上程せられておりまする給與法内容につきまして、逐次申上げて参りたいと思いますが、最初にすでに八月の二十日附を以て人事院勧告が、特に公務員給與ベース引上げの問題として出されておるわけでありますが、これに対しまして、今回政府国会に上程いたしておりまする給與法改正を見ました場合に、政府はこの人事院勧告に対して果してどのような態度をとつておるかということにつきまして、私どもといたしましては重大な関心を持つておるわけでありますが、遺憾ながら政府の今回国会に上程せられました給與法内容の中には、末尾にこの給與法改正案を上程するに際して人事院勧告を尊重したということが言われておるわけでありますけれども、併しながら内容の点に至りましては、果して人事院勧告がどの程度尊重せられたのか、甚だ疑問に思わざるを得ないわけでありまして、先ず給與ベース金額の問題についてでありますが、政府は約千五百円程度引上げを行なつておるというふうに申しておりますが、この千五百円なるものの算出根拠が如何なる理由に基いて出て参つたのか、非常に疑問でありますし、少くとも一般公務員といたしましては、人事院勧告がすでに出されておりますし、人事院のあの一万一千二百六十三円ベースの問題については、これが内容的に仮に問題が若干あるにいたしましても、少くとも国家公務員法並び給與法に基いて出された人事院勧告は、これが権威を持つて政府によつて実施せられることを強く希望いたしておるわけでありますし、特に従業員考え方といたしましては、この人事院勧告自体につきましても、すでにこの勧告が出された内容におきましては、いわゆるCPSの算出根拠等にいたしましても、本年の五月現在を大体標準にいたしてはじき出したものでありますので、現在の物価はその後上昇いたしております傾向の点から考えますと、人事院のその基準とり方自体にしても問題はありますが、とにかくそういつたことは別問題といたしましても、人事院勧告は少くとも国家公務員が特に団体交渉権或いは罷業権をすでに失なつた今日におきまして、給與の問題は少くとも一般民間給與以上に十分に保障せられなければならないという観点に立ちますならば、政府人事院勧告については格別止むを得ない事情がありまする場合以外は、これがこのまま取入れられて然るべきではないかというように考えておるわけでありますが、こういつた点につきましても、政府におきまして千五百円の引上げ国会に上程しておりまする理由といたしましては、予算の許す範囲内においてという考え方から千五百円という金額が出されているわけでありまして、私どもこの点については非常に大きな疑問を持つているわけであります。而もこれを具体的に申上げますならば、昨年出されました人事院勧告に基きますと、昨年の五月独身者世帶主一人生活基準として取上げられている数字は三千三百四十円であつたわけでありますが、それがその後今年出された人事院勧告基礎になつておりまするところの五月の標準生計費というものは四千二百円になつているわけでありまして、この点を以ていたしましても、少くとも二六%程度生計費上昇を示しているわけであります。然るに政府の出されました数字から申しますと、僅かに一八%程度しかの上昇を認めておらないわけでありまして、こういつた点が結局千五百円というような数字になつて現れているわけでありまして、少くとも具体的な数字観点からいたしましても、政府の申しておりまする千五百円の引上げの問題については、私どもといたしましては納得をし得ないものでございます。更に又人事院勧告自体にいたしましても、本年の五月における生計費基礎にいたしておりますので、その後におけるところの物価上昇等については殆んど考慮せられておりません。僅かに若干の主食の値上りを見積つてはおりまするけれども、その後におけるところのガス或いは電気その他運賃等の値上げについては、殆んどこれに対して考慮を払われておらないという点から申しましても、人事院勧告自体についても、あの一万一千二百六十三円ベースという問題については相当問題があるわけでありますが、而もその人事院勧告すらが殆んど重要な点においてこれが取入れられておらない、即ち数字的に申上げますならば、約九千数百円、まあ五、六百円程度というふうにしか今度の千五百円の引上げによつて考えられないわけでありまして、金額の点については私どもそういつた点から全面的に政府考え方に対しましては反対をいたしているわけであります。  更に特に人事院勧告政府の今度出されておりまするところの給與体系の問題についてでありますが、私ども重大な関心を持ちます点は、仮に千五百円の経費について織込まれておりまする予算のこの給與ベースというものが、従業員全体に如何ように配分されるかという問題につきましては、非常に大きな問題があるわけでありますが、人事院勧告政府の案とを対照いたしました場合に、政府の案は人事院勧告以上に中間層に対しまして非常にこれが軽視をされているような形になつておりまして、成るほど最低号俸の一号俸、或いは二号俸あたりはむしろ政府案といたしましては、一号俸、二号俸あたりの点におきましてはさほど大きな、私どもといたしましても異議はないわけでありますけれども、特に三級から十五号俸あたり、八級から九級、三級から八級あたりの間が実は非常に中だるみになつておりまして、給與体系をグラフに線で以て現わしまするならば、特に三級から八級あたりが非常に中だるみになつておるわけであります。従いましてこういつた点につきましては、人事院勧告以上に政府の案の考え方は少くとも中間層に対する給與問題について非常に我々といたしましては、勧告以上にこれが軽視せられておるという点を非常に不満に存ずるわけであります。更に又そのほか勧告等の問題については、特に実施の問題につきましては、勧告ではこの八月から実施という形になつておりまするけれども政府案によりますれば、十月から実施をするというふうになつておるわけであります。こういつた点も私どもといたしましては、少くとも人事院勧告を飽くまでも尊重するという建前に立ちまするならば、政府といたしましても、十分にこの点を考え直す必要があるというふうに私ども考えるわけであります。更に、特に政府の提案せられておりまする法案を中心にして考えます点を申上げて参りたいと思いますが、特に第六條の第二項の第二号といたしまして、今回企業庁に対するところの職員級別俸給表が作られておるわけであります。この点については、かねがね特に企業官庁に対する職員給與は、少くともその作業内容によりまして、特別な俸給表が作られて然るべきであるという考え方で、私ども特に企業官庁の職にありまする者は強く要望いたして参つておるわけでありますが、今回出されましたこの特別俸給表内容について考えますると、企業官庁に対しての俸給表であるとは申しながら、内容については僅かに従来の一般俸給表を若干引延ばしたという程度に過ぎないのでありまして、企業官庁自体のその作業内容に準じて作られましたところの俸給表ということは遺憾ながら申し得ないのでありまして、こういつた点から、少くとも今回作られました企業官庁職員に対する特別俸給表の問題につきましては、この俸給表自体が従来の一般俸給表よりはただ頭打ちを少しでも緩和できるという点において見るべき点があるだけでありまして、それ以外には作業内容によるところの俸給表ということは遺憾ながら申し得ないわけでありますが、従つて少くともこの俸給表企業官庁職員の全員に少くとも適用せられなければならないものであるというふうに考えます。従いましてこの特別俸給表の中には、一号から六号まで実は具体的に指定せられておりますが、このそれぞれにつきまして、特にこうして指定せられたもの以外のものにつきましては、当然従来通り一般俸給表適用を見るわけでありますけれども、具体的に申上げまするならば「印刷庁工場に勤務する職員」というふうになつておりまするが、これ以外に具体的にやはり製造部業務部、更に又印刷に要しまする用紙の関係の「みつまた」の出張所がいろいろ全国に岡山、伊豆、或いは高知、池田、松山といつたような所にあるわけでありますが、こういつたところに対する職員についても当然これは企業官庁特別俸給表適用せられるわけでありますし、又私どもの所属いたしまする電気通信の場合におきましても、ああいう電信電話海底に敷設いたしまする海底線敷設船に乘りまして、いろいろ海上における困難と闘いながら作業をいたしまする乘組員、或いは又工作工場等におけるところの従業員、こういつた者がこの具体的に書き上げられました内容から漏れておるわけでありますが、ほかにこれに準じた勿論その他の業種もあるわけでありますけれども、こういつたものすら実はこの特別俸給表適用から除外せられておるというような点に至りましては、全く了解できない点でありますし、只今も申上げましたように、この企業官庁職員というものは、少くとも企業官庁といたしまして、而もその間人事交流等によりまして必ずしも一定の職場に永久に勤務するということは企業官庁の場合におきましては殆んどむしろ稀と申してもよいほどでありますし、仮に又管理的な仕事をやる場合におきましても、現業における作業を十分に知つておらなければなりませんし、又経験した者でなければ十分な管理段階における作業ができないという企業官庁としての特殊性から申しましても、こうした別表がただ單にここに書上げられましたところの職場に所属する者に対しまして適用するということは非常に矛盾するわけでありますし、而も又先ほど来何回も申上げまするように、企業官庁自体作業内容に応じての別表では飽くまでもなくて、僅かに俸給号俸頭打ちを若干でも緩和できるという程度にしかとどまつておらない。この特別俸給表をこうしたところに限定するという趣旨につきましては、非常に私ども了解できないわけでありますし、而も只今申上げましたような具体的に完全に現業現業というよりも企業官庁の第一線にありまして作業をする諸君に対しまして、これが除外されておるという点についても非常に大きな問題であるわけであります。更にそのほか十二條の第三項に参りましては、勤務地手当の問題につきまして特に官署指定と称して今回第四項として附加えられておるわけでありますが、この官署指定に対しまする予算の問題についてでありますが、特にこの政府の提案によりますると予算の許す範囲内でこの官署指定に対する問題についても一般手続規定と準じて取扱つて行くというようなことが言われておるわけでありますが、予算範囲内でということでは少くとも官署指定がなされましても、趣旨が徹底されないわけでありますし、この官署指定に伴うところの予算は当然に予算の中に正式に組入れらるべき性格のものであるというふうに考えるわけであります。  更に第二十三條のところに参りまして、休職者給與の問題についてでありますが、ここには第二項中には特に結核性疾患に対する休職につきまして、満二年間休職期間については俸給扶養手当及び勤務地手当のそれぞれ百分の八〇を支給するというふうになつておるわけでありますが、この点につきましては、特に結核性疾患というものが我々電通等の場合におきましても、又その他につきましてもそうでありますが、事業の性質から来る点で非常に結核性疾患にかかる者が多いわけであります。電通の場合に例をとつて申上げますと、昭和二十四年度末におきましては、千二百三名の結核性疾患にかかつておる者がいるわけでありますし、又二十五年末におきましては、一万五千百七十八名というような多数の結核性疾患者がいるわけであります。而もこの人たちの日常における作業というものは全くこうした結核性疾患になるような実は職場環境にあるというような点から考えましても、私ども電通の場合におきましては、特にこの結核の問題につきましては職業病であるというような考え方すら言えるほどでありまして、而もこういつたものに対する扱い方が僅かに二年間八〇%程度給與しか支給せられないということでは、この結核にかかつたならば即ち自分生活自体波綻であり、更に又少し極端な表現かも知れませんけれども、殆んど死の宣告を受けるにもひとしいような惨憺たる状態に陷るわけでありまして、こういつた一点から考えましても、少くとも大きく申上げますならば、この結核性疾患の問題については、国家保障的な立場から十分な休養と更にこれらの生活に対しまする生活費支給がなされなければなりませんけれども、差当つて少くとも五カ年程度有給休職という措置が必要ではないかというふうに考えておるわけであります。勿論少くともその五カ年のうち三カ年につきましては全額の支給、更にその後の二年間につきましては八〇%程度、百分の八十という程度給與支給がなされ、その以後におきましても勿論療養費、或いは又生活費というようなものにつきましても考えて行く必要があるというふうに考えておるわけであります。更に又三項に参りましても、この結核性疾患以外の身心の故障による場合には僅かに満一年についてだけ八〇%程度俸給扶養手当及び勤務地手当支給せられることになつておるわけでありますが、この点につきましては特に電通等における事業におきましては、あの騒音の中で作業をいたしまする通信士、或いは電話交換手、こういつたような職場におきましては神経系統における病気或いは又非常に目を傷めるというような病気が非常に多いわけであります。そういつた場合におきましても、前者の場合と何らの差別なく十分にこの休職期間について考えて行かなければならないというふうに考えておるわけでありまして、僅かに一年ということでは、私どもといたしましても全面的に不満に存じておるわけであります。  それから更に今回人事院勧告の中には、奬励手当が特に勧告せられておつたわけでありますが、政府案には奬励手当の問題は抹殺されておるわけであります。この奬励手当は、特に企業官庁等における作業能率、こういつた面から是非とも必要性のある点はあらゆる方面からいろいろ検討せられて結論が出ておるわけでありますが、それにもかかわりませず、今回奬励手当が抹殺せられたということにつきましては、非常に私どもといたしましても遺憾に存ずるわけでありますし、是非とも奬励手当法制化という問題につきまして御考慮お願いいたしたいというふうに考えておるわけであります。  更に又特別手当の問題でありますが、いわゆる年末手当という形において現在法制化はせられておりますけれども、今回の人事院勧告の中におけるところの特別手当即ち六月と十二月の年二回に亘つて支出するところの特別な出費に対しまする生活費の一部でございまするが、特別手当の問題につきましても、是非とも奬励手当と同じような意味におきまして、これが法制化を私ども強く要望いたす次第でございます。  なおそのほか特に附則の点につきましては先ほどもちよつと申上げましたけれども施行期日の問題につきましては、勿論私ども八月自体施行期日についてもいろいろ問題はあるわけでありますけれども人事院勧告を尊重するという観点から少くとも八月の一日からこの改正法律施行お願いいたしたい、かように考えるわけでありますし、更にそのほか附則の三、五、七と関連いたしまして、今度の新給與法によりましての切替えについては従来の経過期間、或いは頭打ち期間というものについてはこれを全然度外視いたしまして、これを切捨てまして、この法律施行せられ、切替えたときから新らしく新規まき直しの形になつて計算するというふうになつておりますが、こういつたことでは従来の経過期間なり或いは頭打ち期間というものを考慮に入れないところの非常に不均衡な結果になるわけでありまして、是非ともこの三項、五項、七項の関連についてでございますが、経過期間なり頭打ち期間は切替時に十分にこれを斟酌して行くという形に訂正をお願いいたしたい、かように考えるわけであります。なお先ほどちよつと申し落しましたけれども企業官庁特別別表のところで特に海底線敷設乘組、或いは工作工場ということを申上げましたが、この海底線の場合につきましては一応船員別表にあるわけでありますけれども従つてこの海底線敷設船乘組む乘組員につきましても、やはり船員と同じような取扱方意味から申上げまして、約陸上勤務者の一、五倍程度特別俸給表是非とも制定いたして行きたいというふうに考えておるわけであります。その他勿論本省自体の中にも、本省自体と申しましても機構の上からではありますが、本省自体の中にもいろいろその他、特別な建設工事に参画するところの従業員が現におるわけでありますので、これもこうした実情もあることを十分にお考え願いたいというふうに考えるわけであります。  大体以上を以ちまして、政府の提案しておりますところの法律案に対しましての意見を申上げたわけでありますが、最後になお一つ特に給與問題についての扱い方について政府の今後の善処を要望いたしたい点は、終戰直後におきまして、特に公務員給與問題につきましては、一応組合代表者も交えたところの官庁職員待遇改善委員会といういわゆる官待というものがあつたわけでありますがその後この官待自体も例の罷業権或いは団体交渉権等が失われた結果、給與問題については一切人事院自体給與問題についてタツチするということになりまして、以来極めてこの給與問題につきましては、非民主的な形において運営せられて参つておりますし、更に又人事院勧告自体が今日まで何回となく出されておりますが、全面的に人事院勧告が取入れられたという例も見ないほど、今日まで公務員給與というものが非常に冷遇されて参つておりますが、更にこの給與問題についての取扱方、審議の仕方、そういつたもの自体手続の問題につきましても、非常に不明朗な、そして非民主的な方法が今日までとられて参つておるわけでありまして、是非とも給與問題については仮に予算の面におきまして十分なる給與がなし得ない事態があるといたしましても、この給與問題を策定する方法につきましては、是非とも組合代表等をも交えて民主的の形で、而も納得の行ける形で、給與問題が政府によつて十分に考えられるという方法是非とも私ども強く、要望いたしたいのであります。以上時間の関係もございますので、非常に雑駁でございましたが申上げまして、なお後ほど御質問がございましたら、その節お答え申上げたいとかように考えます。
  4. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 御質問がございましたら……
  5. 千葉信

    千葉信君 午前中の方が終つてから一括して午前中の分を質問することにしたいと思います。
  6. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは次に日本セメント株式会社総務部長田島主一君にお願いいたします。
  7. 田島主一

    公述人田島主一君) 公務員給與問題でございますが、これは大別してみますというと、二つあると考えております。一つ給與の額の問題でございまして、給與水準でございます。もう一つ給與の構成、即ち給與体系の問題でございます。ところがその中で最も重要で且つ影響するところの甚大なのはいわゆる給與水準でありまするので、以下主としてこの点について私の若干の私見を申述べてみたいと考えております。  そこで結論から申しまするが、私は国家財政負担増加を来たさないように、その範囲内において且つ行政能率向上を図ることを條件として、公務員給與引上げることに賛成をいたすものであります。その理由の第一は、公務員一般民間労働者と異りまして、争議権或いは団体交渉権に非常なる制限を受けております。従つて自分自身の力で以て労働条件維持改善をなし得ないという特殊性に鑑みまして、公務員給與一般民間給與より著るしく低いことは公正を欠くと考えます。そこで政府は当然進んで公務員に適正な給與水準を保障するように、その義務があると考えております。  第二といたしましては、公務員公共に奉仕すべき重要な責任と義務を負つておるものでありますが故に、特に綱紀を嚴にして国民の信頼に値いする信用、これを保持しなければならないのでありまするが、その裏付として適正な給與水準を保障されるということは当然であると考えます。  第三といたしまして、行政能率向上には、優秀な人材の登用が必要であるということは今更喋々するまでもありませんのでありまするが、そのためにも一般民間給與に比べて著るしく遜色のない程度のものを保障いたさねばならん、こう考えております。かかる趣旨におきまして、公務員給與に対して私は引上げを必要であると考えておるものであります。併しながら、公務員給與水準引上げは、国家財政とそれから一般物価、或いは賃金等に重大な影響を来たしまするが故に、その実施に当つては愼重を期さねばならんと考えております。即ち今回の政府案によりまする所要経費増加は、本年度分総体として一般会計特別会計百五十二億円ということでありまするが、これに公共企業体関係地方公務員、或いは特別職等給與増額を見積りまするというと、恐らく六百億になるかと考えます。この経費増加は、これをこのまま放置、実施いたしまするというと、健全財政を阻害する虞れがないか、或いは一般物価の騰貴、生計費膨脹等を来す虞れはないか、そうして講和後の我が国の自立経済の確立に対して惡影響を及ぼす虞れはないのであるか、こういう点を憂慮いたしております。従つて私は公務員給與引上に要する財源は、行政機構の改革による余剰人員の整理、諸経費節約等によつて賄い、極力財政面負担増加を来さないような方法を考えねばならんのではないかと思うのであります。と同時に、公務員能率向上ということが給與引上の重要なる前提條件とならねばならんと確信をいたしております。  政府は今次の公務員給與改正法の提案理由として、生計費は民間基準賃金その他諸般の事情を彼此勘案いたしました上、財政の許す限度において努めて人事院勧告を尊重する建前の下に給與改善を図ることを基本方針としておると述べておりますが、成るほど生計費給與水準決定に当つて考慮さるべき重要な要素であることは否定いたすものではありませんけれども生計費上昇したからといつて直ちにただそれだけで以て給與を引上ぐべき理由にはならないと私は考えておる。但し給與というものは本質的には労働の対価でありまして、労働の質と量とに応じて支払わるべきものであります。そこで給與の引上は能率向上に応じてなされることを原則とすべきであるとかように考えております。又民間給與との振合の面においても、最近の民間給與上昇が單に生計費上昇をしたからという理由のみで上つたのではなくして、労働生産性の向上給與引上を可能にしたからである、この事実を見逃がしてはならないと私は考えております。労働省の統計によりますというと、鉱工業の労働生産性の指数は昨年六月を一〇〇といたしますと、本年の六月は製造工業の分野においては一四六、鉱山の分野におきましては一二二・二という数字を示しております。このことは民間の企業がかねてから資本の蓄積による設備の改善、或いは冗員の淘汰など企業合理化を懸命に努力実現いたした結果にほかならないのでありまして、能率向上の努力なしに、單に民間給與との振合い上ということだけでは公務員給與引上げるべき理由にはならないと考えるのであります。政府はすべからく行政機構の根本的改革を断行して、極力冗員を淘汰し、少数精鋭主義を以て臨み、行政能率向上を図り、その曉においてこそ公務員給與民間給與並みに引上げたならば、納税者である国民大衆も必ずや当然のこととして納得をいたすでありましよう。然るに過般の政令諮問委員会の答申案によりまする行政整理案を見まするというと、国家公務員については初め十八万七千人の行政整理が断行されるということであつたのでありまするが、その後人事委員会に上程の定員法改正の法案によりますというと、八万七千人に激減しております。更に今回の主食統制が継続されるということになりまして、約一万名が減少して最終的には七万七千人になつております。而も予算定員に対するところの欠員を見るというと、実際の整理人員は約五万人となつて、現在員は約九十万ということでありまするが、その僅か五%強に過ぎない有様であります。元来我が国の行政機構は非常に煩瑣でございまして、無駄が多いように思います。又能率の惡いこともおおかた知られておるところであると思います。而も行政機関には非常にセクシヨナリズムの型がございまして、その型の中に立てこもつて互いに競合し、徒らに善良なる国民を悩しております。例えば一例を挙げて見ますというと、労働行政の一つを見ましても、作業上の安全行政の面においては、一般工場の場合には労働省が管轄をいたし、鑛山関係におきましては通産省ということに、別々に任されております。又従業員の教育の行政の所管は、TWI方式は労働省、MTTの方式は通産省、TTT関係は文部省、CCS関係電通省と、こういうふうに同じ教育面においても所管は違つております。そうしてお互いに繩張りの争をやつておるような状態であります。  又最近公務員の汚職事件が連日のように新聞紙を賑わしておりまするが、これらの弊害を一掃いたして、真に優秀な少数の公務員によつて能率的な行政がなされるように思い切つた改革が断行されることなくして、公務員給與引上げるということは本末顛倒も甚だしいではないかとかように感じます。要するに私は公務員給與引上げには原則として賛成をいたすものでありまするが、そのためには徹底的な行政整理を断行して財政面負担増加を来さぬこと。それからもう一つは少数精鋭主義による行政能率向上を図ること。この前提條件を認めることにおいて賛成をいたしたい。給與水準引上げに賛成をいたしたい、こういうことでございます。  最後に第二の問題として給與体系の問題に少々觸れて見たいと考えまするが、公務員給與が民間の賃金に及ぼす影響は非常に大なるものがありまするので、政府は極力給與の本質に即して労働の質と量とに即して支払われるような体系の確立をやつてもらいたい。今回の政府案を見ますと、俸給表においては僅かに改善の跡が見られると考えておりまするが、なお職階制の理念に徹した給與準則の整備を急ぐべきであると考えます。又扶養手当のごとき給與は経済情勢が一応の安定段階に入りました今日においては、減少の方向をとるべきであると考えております。又勤務地手当につきましても同様減少の方向に進むと共に、現行の寒冷地手当及び石炭手当などは勤務地手当と重複して不合理でありますから、これは然るべく一本に統合されたらどうであるかということを考えております。  甚だ雑談でございましたが、一応我我の考えております今度の政府案に対するこの公務員給與の大体の考え方を申上げまして、私の責を塞ぎたいと思います。
  8. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。それでは次に官庁労働組合協議会長佐藤忠夫君にお願いをいたします。
  9. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 私は非現業国家公務員の立場から種々の問題につきまして意見を述べたいと思います。  従来も公務員給與が非常に低いものであつたということにつきましては、今更説明するまでもないところでありますが、一体そういう低い現象が現在それではどういう形になつて現われているかという事例を二、三申上げます。先ず文部本省におきましては、長期の欠勤者が六十八人おります。それから主として結核の要注意者が百三十人、文部省は千五百人の職員中それだけいるわけであります。次に経済安定本部の例によりますと、約四百人中長期欠勤者が三十一名もおります。次は法務府におきましては、二万一千人中長期欠勤者が七百五十三名おります。そのうち結核が六百八名に及んでおります。次は労働省におきましては、一千百七十六人中長欠が九十人、要注意者が二百名おります。人事院におきましては、長期欠勤者が三十二名、これは一千三百人の中で長欠が三十二名で、要注意が百三十名おります。特別調達庁におきましては、六千五百人中長期欠勤者が二百二十名で、要注意者が三百名、例えばあの各職場におけるこの病人の数から考えましても、これは事務当局側の発表した数字によりましてもこういう数字が出ております。主としてこれは結核の患者が九割を占めるのでありまして、如何に劣惡なる條件に私ども生活をしているかということを端的に示しているものであります。この数字はそういう意味におきまして非常に内輪の数字でございまして、実は最近伝えられております行政整理等の関係から、職員は無理をしてでも職場に出て来ている、首切りの対象にならないためにですね、そういう無理をしているという現象が非常に多いのでありまして、これは一年以上の長欠者につきまして申上げた次第であります。その他私ども組合員の声をいろいろの形で聞いておりますけれども、全然煙草を買う金どころか、友達に交通費を借金をしたとか、寒くなつても質に入れたオーバーがどうしても取り出せないとか、或いは女子職員におきましては、子供を抱えて、これは未亡人でありますけれども、遂に身を売ろうかと考えたけれども、それもできない。心中しようと思つても子供が可愛いからそれもできない、何とかしてくれというような、そういう事例が各職場に強く組合員の声として挙つて来ておるわけであります。そういうような公務員生活実態をここに政府側が発表いたしました数字によつて具体的に申上げますと、昭和二十六年現在の東京都における世帶人員別支出金額、これはCPSでありますが、この三人の家族の場合をとつてみますと、人事院勧告の比較ですら三人家族の場合は二千六百六十三円というこういう赤字を毎月生んで来ておることが明らかにされるわけであります。かなり景気のいい民間会社との給與水準と比較しましても、これ又遥かに低い数字が出て参るわけであります。又一般国民の生活水準よりも二八%程度、月約四千円くらいになるかと思いますけれどもそれだけ低い。まあ大体そういうような毎月の赤字がCPSとの比較におきましても四千円というようなそういう数字が出て参るわけであります。これを又別の面から申上げますと、側えば就職はどうかという面におきましては、例えば民間の紡績におきましては新制高等学校を卒業いたしますと一万三百円、公務員におきましては三千八百五十円、旧制の大学卒業者におきましては、民間の紡績のほうが一万一千六十一円に対しまして公務員のほうは五千五百円、これらは勿論民間の会社におきましても非常によいという会社ではございますけれども、こういうとにかく数字が出て来るということははつきりしております。そういうような劣惡な條件からいたしまして、長欠は勿論ながら、いわゆる役人の倫理観の稀薄化といいますか、こういう状態がありまして、極く一部の役人ではありますけれども、非常なでたらめな汚職行為等を行なつておるということも、やはりこういうことが根本的に解決されない限りは是正できない、そのために大多数の勤勉なる公務員が非常な国民から怨嗟の的になつておるということは非常に遺憾に存ずるものであります。  次は民間給與の現況と、公務員給與の比較につきまして、別の面から申上げますと、生産状況は昨年の六月に比較いたしまして、五割以上も上昇しているにもかかわらず、民間の賃金の上昇は約二割であります。時間外の労働時間も三割の上昇を見ております。このことは公務員に比較いたしますと、給與の高い民間事業所におきましても、民間の労働者の生活状態が改善さるべくして改善されていないということを示していると思います。次はこれを経営の面から眺めますと、営業收入の増加に対しまして、人件費のほうが相対的には減少しておる。こういうことも否定できないだろうと思います。それから経営者側の利益の支出の面でございますけれども、これ又いろいろな積立金として社内留保が四割から五割ある。それから株主への配当が相当に増加している。そういう形で資本の蓄積がなされているということであります。まあそういうようにいたしまして、とにかく国家公務員の場合は非常に低い。現行の給與からさまざまな遺憾な実例も現われておりますし、行政上の能率というようなことも著るしく阻害されているというようなことは只今申上げた通りでありますけれども、さてここで政府案を検討いたします前には、やはりどうしても人事院勧告につきまして一言しなければならないわけであります。大体人事院勧告がなされましたのは、前国会の直後でありまして、私ども人事院当局に対しまして、前国会の会期中に是非とも勧告して頂きたいということを何遍もお願いしたわけでありますけれども、遺憾ながら直後に勧告がなされた。このことは公平無私と言われる人事院が非常に政治的な意味を含んだ勧告であつたというふうにしか私ども理解できないのであります。そうして漸く今国会に持ち込まれたという状況にあるわけであります。次は先ほどちよつと触れましたが、民間の勤労者との比較でありますけれども人事院の淺井さんが、どうして公務員は民間の賃金より低いのかということにつきましては、どうもいろいろな調査をした結果今度勧告をする。勧告しても又国会に法案となつて現われて、これが又実施に移されるというには非常な時間がかかる。これは公務員としての宿命である。公務員民間労働者よりも、賃金において低いだけではなく、そのペースの実施の時期におきましても、一年以上遅れるということは、宿命であるということを言つておられます。これだと私どもは実にみじめな生活を負わなければならない、そういう宿命を負つておるということに相成るのでありまして、少くも今まではこういうことになつていたわけであります。これはやはり私考えますときに、制度上の一つの大きな欠陷として、是非とも国会においてこういう点を改めて頂きたいということを特にお願いするものであります。  次は人事院勧告の最も大事な点でございますけれども、そのカロリー計算におきましては、一千九百三十七カロリーを国民一人当りのカロリーとしております。これは経済安定本部のかくあるであろうという食糧需給計画という非常に変動性に富んだ実際とはかけ離れやすいそういう数字を根拠にしております。又一面におきましては外米の輸入のために日本の国民がたくさんの米を食べているというふうな数字を出すといけないというような考慮から千九百三十七カロリーというそういう数字が出て来ているのではないかという節が極めて濃厚に感じられるのでありまして、そういう点につきましても、特にあの人事院勧告基礎になりました千九百三十七カロリーというものにつきまして国会において御検討頂きたい。そこで厚生省の国民栄養調査におきましては、昭和二十六年の三月におきまして、すでに全国平均二千五百三十カロリー一日当り取つております。こういう実績があるにもかかわらず何故千九百三十七カロリーとしたかということは、これは非常に大きな問題でありまして、私はこういう数字は單なる数字ではなくて人道上の問題にまでなるというふうに特に強く主張したいものであります。そこで勧告における私ども公務員の一日の食費は八十二円であります。又住居費につきましては月に二百五十円、光熱費は三百五十円、被服費は三百九十円、雑費が一千円、こういう内容があるわけであります。一日八十二円で果して食べられるかどうかということは説明を要するまでもございません。それから勧告の資料は一体どこから取つたか。その一つは九十九人以下五十人という中小零細事業場からそのデータを取つております。前の勧告につきましては百人以上の事業場からデータを取つたわけでありますけれども、今回におきましては、それを五十人に下げております。これはそういう中小零細事業場から取ると、これは劣惡なる数字が出るにきまつております。なおそういう所におきましても、現金で支給を受けるものと、物で支給を賃金の代償として受けるものとそういう面がかなり私はあると思うのでありまして、若し賃金のほうだけを資料に使つたとするならば、意識的にどうして公務員給與を低くするかというためにそういう数字を意識的に作つたのではないかというふうに考えざるを得ないところであります。零細事業場におきましては、もう一つ労働基準法に違反して非常な超過労働、過重労働をやつて得たそういう数字というふうに御理解頂きたいと思うのでありまして、これにつきましても、やはり勧告内容が非常に意識的に低い所から取るというような、少くともそういう結果を招いているということを指摘するものであります。  次は今回の出されております政府給與法案であります。これは先ず第一番目といたしまして、一番国家公務員でたくさんおります、五級、六級職のほうは一七%前後しか上つておりません。それに反しまして次官の十五級職におきましては三五・一%上つております。金額にいたしまして一万三千円でございます。然らば一級一号はどうかと言いますと、ここでは二〇%、六百円上つております。大体一級一号というような職員は殆んど実在しない職員のほうでちよつぴりだけ上げているということにつきましても、おかしいというよりは非常に意識的にこういうことにしておられるのではないかというふうなことも感ずるわけでございます。  次は昇給、昇格の規定につきましては、あの予算範囲内においてという條文の制限によりまして死文化しております。頭打ちとか、先ほど電通のほうからも言われましたけれども、そういう制限をされておりますので、どうしても給與は上げようとしても上げられないというような実情があるわけでありまして、この頭打ち是非とも解除してもらいたい。級別定数の枠につきましても、うんと拡げて頂きたいということを申上げたいのであります。  それから人事院勧告は八月から実施ということになつておりますが、政府案によりますると、十月でございます。この点につきましても、是非国会におきまして八月に遡つて頂くようにお願いしたいのであります。  いろいろ政府案について細かい批判は私どもが作りましたあのパンフレットを差上げておりますので、特に二十三ページ、二十四ページのほうをあとで御検討を頂くことにいたしまして、細かい数字を申上げることを避けますけれども、要するに人事院のような矛盾を含んだ人事院勧告よりも更に下廻つた給與法案であるという点につきましては、私ども是非ともこれを私が先ほど申上げましたような観点に立たれまして、是正して頂きたいというふうにお願いするものであります。政府案につきましては、最後に提案理由にありまする「人事院勧告を尊重し」云云につきましては、尊重した点は非常は矛盾の点だけを尊重しておるということを申上げたいと思います。そこで私どもはどうしてももう少し給與の最低の生活を保障する、そういう生活をしたい……、させたいというふうに考えるのであります。  公務員能率が上つていないとかいろいろなセクト主義があるということを私ども十分存じております。能率につきましても、それはやはり基本的には我々の生活の保障されたそのあとの問題である。そのあとに初めて能率とかそういう問題が起きて来る。勿論内閣委員会にかかつております定員法との関連につきましても、やはり私どもとしては、なまのこのままで無残に首を切られて、あとの生活保障もされないというようなことにつきましては、やはり不満を感ずるものであります。そういう点につきましても是非とも内閣委員会との合同委員会をお持ち頂きまして、御検討を頂きたいということをお願いするわけであります。  私どもお願いしますのは、今年の五月の数字で全く人事院の方式によりまして計算して、而もその数字政府側の発表の数字を使いましても、すでに満十八歳で以て本年の五月の現在で八千七百円、満十八歳で八千七百円を必要とするという数字が出ているわけであります。今日の物価等につきましては十月を現在といたしますと、約一万円の数字が出るわけであります。これは成年男子の満十八歳であります。そういう最低生活が保障されたその上に能率的な給與を積み上げて頂きたい、勿論私どもは次官とか局長とかのほうを削れということは言つておりません。これはやつぱりいろいろの関係がありますから、そのほうも上げて頂きたい、当面は次官、局長は政府の法案のようなこの数字にして頂きまして、下のほうを私どもが要求しております八千七百円に是非ともして頂きたいということを最後に申上げまして、私の公述を終りたいと思います。
  10. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。都合もありますのでこのまま続けたいと思います。  次に慶応大学経済学部長藤林敬三君にお願いをいたします。
  11. 藤林敬三

    公述人(藤林敬三君) 委員長に先にお伺いをいたしますが、時間はどのくらいですか。私はほんの簡單で結構だと思います。
  12. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 大体皆さん二、三十分程度お願いをいたしたいと思います。
  13. 藤林敬三

    公述人(藤林敬三君) 大変遅れて参りまして、時間を都合して頂きまして有難うございました。私は実は昨日来司令部の工ーミス氏に呼ばれておりまして非常に忙しいので、本日午後一時からエーミス氏を訪問しなければならない都合もございますので、すでに十二時になつておりますが、無理にお願いをいたした次第であります。惡しからず御了承を願います。  私はこの一般公務員のかたがたの給與問題に関しましては、今いろいろ人事院勧告等についての御批判がございましたが、私は一社会人としてかねがねこの点につきまして、やはり多少の関心を持たざるを得なかつたのでございます。その持つておりました関心から受けております印象を先ず率直に申上げて見たいと思います。私はまあ法律上の條文等につきましては詳しいことを存じませんが、何でも私の記憶では、人事院物価或いは生活費が五%以上上つた場合には公務員給與について勧告をすることになつておるように記憶いたしておりますが、こういうようにきめられているならば、なぜ率直に従来人事院勧告をなさらなかつたかということについて、我々国民の一人としてはこういうきめがあるにもかかわらず、そのきめがなぜその通りに率直に実行されなかつたかということについて多分に不満を持つております。ところで事実又人事院給與勧告をなさる場合に、今御批判もございましたが、私も絶えず気にしておりますのは、何か政治的な考慮人事院が図つておられるかのごとくに我々には考えられるのであります。そういう規定があるならば正々堂々となぜ勧告をなさらないかと実は私は思つております。この点に関しましても私は人事院給與勧告につきましては、その態度について極めて不満であるということを申述べたいと思います。  それから更に今回の人事院勧告の一万一千二百六十三円でございますこの金額の算出等につきまして、今多少の批判がございましたが、私は金額といたしましてはこれはまあやや妥当ではなかろうかというふうに考えております。別段その金額の算出方法、出された金額等につきましては別段の意見を持つておりません。これでもよろしいのじやないかと実は思つておるのでございます。ただ甚だ遺憾なのは、従来もそうでございまするが、人事院勧告政府によつて予算措置がその通りには行われない、結局人事院勧告はあるのだが、事実きまつて給與改訂のなされるのは、それよりも幾らか少額なものがなされるに過ぎないということでございます。このようなことであるならば、率直に申上げて人事院勧告制度なんというものはやめてもいいんじやないかと実は思う。で人事院をして勧告をなさしめるのであれば、私はこれはやはり人事院勧告が素直に実現できるような工合に政府並びに国会で御配慮を願わなければ、こういう制度を作つた趣旨がまるつきり殺されてしまうということになるんじやないかというのが、私は一般公務員のかたがたの給與問題について持つておる最大の不満だと思うのであります。と申しますのは、いうまでもなく労働問題の角度から言えば、こういう利害関係の問題については極めて公正にどこかで誰かが判定をしなければならない、この公務員給與に関しましては、これは国家予算の問題でございますので、もとより国会の審議権はこれは最高のものとして誰も云々することはできない、できないが、然らばそれならば国会で以て給與の決定をなさればいいということに実はなるのでありますが併しおよそ労働問題、又公務員のかたがたの置かれている今日の状況では団体交渉ができない、労働協約の締結はできない、ただ職員組合というものを形成することができるだけだというような、まあ労働組合としてはこれはもう極めて何だか片輪にせしめやれておるような状態のものでありまして、いわば団体交渉権も、いわんや争議権も労働協約締結権も奪い取つてしまつたあとのかたがたの給與の問題を取上げているのなら、これは極めて公正にどつかで判断をして、そうして判断をされたものはその通り少くとも実現できるという道を開かれるにあらざれば、これは曾つて二十二年の秋、例のマツカーサー書簡の出ました以前の状態に比べると、極めて不公正であると私たちは考えざるを得ないのであります。そこで国会がこれをおやり下さるのであれば問題は殆んどないのでありまするが、やはり国会の皆さんは各方面に知識をお持ちになり、有能のかたがたが多数お集まりであり、我々がそういうかたがたを選出したわけではありますが、併しやはりこういう問題はその第三者的に判断をなさしめるというので、結局は人事院をして勧告せしめるということになつておるのだと私は了解しておるのでありますが、なさしめて置いたあげくにおいて、結局勧告をしたが、勧告は棚に上げてしまうということでは、これは甚だ遺憾千万だと言わざるを得ないのであります。なぜ今まで数回こういう経験を繰返したにかかわらず、政府並びに国会はこういう点についてどれだけの反省をせられたかということについては、私は多分に疑念を持たざるを得ないのでございます。私としては、国民の一人としては、この際是非この点について御考慮お願いするのでなければ、ただ金額の問題はもとより問題でございましよう。ただ私はやはり金額の問題じやなくて、民主主義の発展から言えば何かこういう筋をちやんと通さないで、折角法律を作つて人事院をして勧告せしめておきながら、その勧告は簡單に棚に上げてしまうんだ、又そういうことができるんだというようなことは、これは国の民主主義の発展から言つて甚だ遺憾千万のことである、私はもとよりそう申しましても、人事院勧告に拘束力を持たせるということは申しません。勿論国会の審議権は動かすわけに行かない、併しそうかといつて国会がこういう問題を第三者的に扱わることは必ずしも適当でないというならば、この国会と第三者的な判断との間に何かやはり政治的なというと少し誤弊がありますが、何か民主主義の発展から言えば、ややこの調停のつかないような、矛盾した事態を切拔ける工夫をなすつて頂くわけには行かないだろうかというように私は考えるのでございます。  ところで今日も実は昨年の昭和二十五年法律第五十五号、改正法律第二百九十九号でございますか、これの第二十四條を読んでみますと、国会は、公務員給與の額及び割合を検討する。そしてその検討するこの目的のために人事院が総理府統計局、労働省その他の政府機関から提供を受けた正確適切な統計資料を利用して、事実の調査を行い、給與に関する勧告を作成するとこういうように書いてございます。併しまあ率直に読めば、何かこの條文は極めてあいまいなことを書いていらつしやるのじやないかと、若しも国会の審議権を語われる……、国会がこういう問題を十分検討するというなら、人事院をして調査を行わしめるとでも書いてあつて人事院から監督権というものをとつてしまうなら私は非常に筋が通つていると思う、その意味においては。それがいいか悪いかは勿論議論の余地があると思いますが、そうとでもされたほうが、現在の人事院の状況から言えばもつとすつきり国民をして納得せしめるような状態になるのではないか、勧告はなさしめているが、こういう條文はここにもあるが、人事院は一体何だというような感じを持たせて、そうしてその都度全官公の職員は絶えず人事院に行かれて、早く勧告をしてくれ、早く勧告をしてくれというようなことを言つておられる、こういうことが行われて、而も誰もこれに反省を加えないなどということは、我が国の民主化の発展から言えば私は遺憾千万だと思う。こんなことはすぐにやめるべきであると実は思うのでございます。  更にもう一つ私の受けております印象を極めて率直に申しますと、今回はそういうことになつておりませんが、曾つて昨年の初めでございましたが、一人事院勧告しましたものに対して、政府人事院勧告だけれども給與を上げる必要はないし、今財政経済等の事情から言うとむしろ上げることは不適当であるという考えに立たれて、人事院勧告に対していろいろな材料を別に調査研究されて、何か批判めいた態度に出られたことがございます。私はこれ又非常に遺憾千万だと実は思つて、未だにこの印象を私の頭から拭い去ることはできないのでございますが、人事院をして勧告なさしめるという制度を維持しながら、なされた勧告に対して政府みずから極めて批判がましいことをおつしやるということは、これは甚だよろしくないというように私としては考える。それくらいならば法律改正でもなさつて人事院から勧告権を私はお取りになつたほうが甚だ筋が通つておると思うのでございます。  それともう一つは、その場合の理由一つに今インフレだと、又インフレになる虞れもある、だからインフレの懸念から公務員の給料を上げることは民間にも勿論はね返りをするだろう、そうすると給與は上る、物価は上る、言わば例に曾つて言われたように惡循環をしてインフレ促進をもたらす。これは日本の産業経済の観点から言うと極めて好ましくないから、私といえどももとより公務員給與が上り、それが民間にもはね返り、一般に国民の賃金給與水準というものが上ることがインフレに何の関係もないとは私は思つておりません。思つておりませんが、併し人事院の規則で物価生計費が五%上れば人事院給與改善の勧告をするのだという規定それ自身はすでにインフレの存在を前提にしたものであつてこそ初めてこういう規定が生れて来るのであります。今更そういう規定を設けて置きながら給與の改善をそのまま入れたらインフレになるからというような反対論が出て来ること自体がすでにおかしいと思う。このような何パーセント上れば給與はスライド・アップするという一種のスライド制でありますが、このスライド制はもとよりいずれの国の歴史を御覧になつてもわかりますが、スライド制の問題になるのはインフレ傾向の場合においてのみ問題になりまするので、だからもとよりこういう規定のあることは私から言えば、これはインフレを前提にしての規定である。その勧告が行われ、今更インフレになるからどうこうというような議論をなさること自体が私はおかしいと言わざるを得ない。そういう議論が横行するならやはりこういう規定をおとりになることを私としては望むので、そうしてもつとやはり人事院勧告でなくつて、今こういうような状況で、例えば先ほど見ましたら、この拜見しました二十四條のごときは人事院給與に関する勧告を作成するなどと書いてありますけれども、併し私はこれはどうもこういう條文が出たのを今日初めて見たのですけれども、これだと、人事院勧告なんてそんなものは、どうでもいいのだということだろうと私は思う。それならばそれでもつとちやんと筋を通して、人事院勧告をやめてしまつて、その代りに国会としても、政府としても第三者的に判断なさるものをおきめになつて、そうしてその判断が政府にも容れられ、国会にも容れられるというようなものでないと、公務員諸君の組合的な存在を今のような片端の状態に置いておること、極めてちぐはぐな状態、これこそは極めて不公正な取扱である。そういう点からいろいろ問題が起きて来ても誰がその問題を納得せしめるかという問題が私はここに残る、而も今日までの何回かの人事院勧告の我々の経験を積んで来たことをこのままで行けばいつも同じことを繰返して何か割り切れないものを我々はたから見ておるものにおきましても感ぜざるを得ないということになつて、こんな馬鹿なことをいつまでも我々がなぜやつているのだということを、もつともつと我々はこれを何とかして改善するというように実は考えられないものだろうかというように私は感じておる次第でございます。  非常に乱暴なことを申上げましたが私の印象を率直に申上げた次第であります。
  14. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。なお藤林先生の御都合もおありのようでございますが、若干の質問がございましたら一つ……。
  15. 千葉信

    千葉信君 田島さんにちよつとお尋ねいたしますが、あなたがさつきおつしやつたように、公務員給與にしても、労働賃金にしても、やはり労働の価値なり、能率なりに応じて支給する方向へ早く行かなければならない。そういう御意見でございましたが、私どもも御意見としては、賃金はやはりおつしやるような立場において考えられることが至当だと思うのですが、ただ併し御承知のように現在の公務員給與も、それから又民間の給與も同様な形になつておりまするが、何と言つても非常に低い水準生活給の要素が非常に濃厚にまだ残つておるわけです。人事院勧告から見ましても、例えば四千二百円の満十八歳の公務員の賃金というのは、そのうちの食料費の占める割合というのはこれはもう二千五百円というような形になつておりまして、その他の燃料費であるとか或いは又住居費であるとか、こういう部分に千九百九十円というような計算をされて勧告されております。従つてそういう状態の給與というのはやはりこれは非常に低い生活給の段階であるという考え方の上に立つて勧告されておりまするし、又政府のほうでもそれから更に引下げるというようなやり方で法律案を出して来ております。そういう状態になつておりまするが、こういう状態に対して一体あなたのお考えでは先ほどのお話のように、現在のこういう低い水準の中でもなお且つ労働の価値に対する給與であるとか能率に対する考えとか、そういう点から能率給に持つて行くことが正しいという、現在の水準の上でも正しいというお考えをお持ちでございますか。
  16. 田島主一

    公述人田島主一君) 私の申しましたのは大体賃金につきましては二つの面があると思います。一つは労働の対価としての面と、もう一つは今おつしやいましたような生活の保障の面があるのでありますが、これが理想の場合におきましてはいわゆる労働の価値として、対価として支払されるものが即そのまま少くとも生活の保障になる、こういう態勢にあるべきなのです。ところがこのいわゆる国民経済のいろいろな状態から必ずしもそれができない、例えば、終戰後の我が国の状態におきまして、あのインフレの状態下においてはこれは食うことだけだつたのでございます。併し大体賃金の第一義的の意味というものは雇主から言いますというと、これはいわゆる労働を手取り早く言うと買うわけなんであります。従いましてそれに対する賃金報酬というものがその労働価値によつて與えるべきであるということが、これが大体の第一義的の建前じやないか、こう考えますというと、終戰後からあれから五、六年経ちまして、一応我が国の経済の状態というものが大体安定の方向に来つつある、これは何と言いましても感じから申しましても、あの頃から比べますと非常に我々はゆとりが出て来ておるのであります。それで漸次今日になりましたら、その方向に向つてつて、いわゆる賃金本来の姿に戻すような方向に行きたいと私は思つております。と申しましても決して今の生活の面を蔑ろにするわけではないと思います。これは考えなくちやいかんと思うのです。ただ今度の人事院勧告を見ますというと、十八歳の青年のこれは独立の生計費を取らなければいかんというので一応出ておりますが、そのあとは民間の水準に準じてやつておりますが、大体十八歳と言いますと、我々のほうの実情を見ますと独立は独立でございましようが、観念的にそう言えますけれども、大体はこれは皆親がかりなのです。それは特例として本人自身が独立して家計を持つている者もあるかも知れませんが、これは本当に蓼々たるものではないかと思います。
  17. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 藤林先生の都合がございますので、今の関連しているかと思いますが、成るべく藤林先生に対する御質問がございましたら先に一つお願いいたします。
  18. 千葉信

    千葉信君 簡單でございますから続けますけれども、大体政府でもあなたのおつしやるように、現在は非常に経済が安定の方向に向いつつあるということは言つておるのですが、実際上安定の方向に向つていることは私どもも認めますけれども、その安定の方向へ向いつつある段階の中で今一般民間においても、それから国家財政の上でも非常に急速な資本の蓄積の方向へ進んでいるわけです。今そういう資本の蓄積を急ぐあまりに、どうしても折角経済が安定しつつあるにかかわらず、資本蓄積のために労働賃金であるとか、従つて労働賃金による労働者の生活不安という状態がやはり付き廻つている状態なのですから、そういう段階の中にあつてども公平に考えられることは、今公務員にしても民間の賃金にしても、與えられている賃金というものは大体そういう無理強いの資本蓄積を一方において強行するために折角安定の方向に向いつつある状態の中でも依然として生活給の形が非常に強くやられておる、こういう状態の中ではやはりあなたの御意見もわかるのですが、そういう状態の中ではやはり我々としては生活給としての形体で当分の間考えなければならんという、御意見のような家族手当であるとか地域給であるとか、或いは石炭手当、寒冷地手当というような生活給の中で当然とらなければならないあらゆる措置を今これをぶつたつてしまうという行き方はちよつと時期尚早じやないか。
  19. 田島主一

    公述人田島主一君) 私は先ほど言葉が足りなかつたかもわかりませんけれども、今早急にすぐ生活給から能率給に行くというのじやなくて、むしろこの世の中の態勢が、経済事情が回復に向う、それに比例して賃金本来の姿に持つてつてもらいたいと、まだ今非常に印象を受けますのは、終戰後のいわゆる生活給偏重の状態が今以て非常に多くあるというような色彩が濃厚じやないか、こういう点を惧れるわけです。
  20. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ほかに御質問ございませんか、外のかたになければこれで打切ります。
  21. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 委員長藤林先生は御都合でお帰りのようですから、その他のかたは午後までしまいまでおられると思いますから質問はあとでまとめてやつたほうが好都合ではないかと思いますから……。
  22. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それではほかのかたは午後まで、しまいまでおつて頂けますか、
  23. 田島主一

    公述人田島主一君) 実は昼から少し用事がございますのでありますが、
  24. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 それではお帰りを急いでおられるかたについてだけしたら如何ですか。
  25. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 藤林先生、田島さんに対する御質問ございまんか……それではないようでございますから、午前中の公聽会はこれで終りまして、午後引続いて野田さん以下の公述をお願いしたいと思います。それではこれで、休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    —————・—————    午後一時四十四分開会
  26. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 午前に引続き人事委員会公聽会を再開いたします。全国自治団体労働組合協議会給與対策部長萬屋良作君にお願いいたします。
  27. 萬屋良作

    公述人(萬屋良作君) 私は地方公務員を代表いたしまして、今回の改正給與法案の内容について若干申述べたいと思います。  その前に根本的な問題といたしまして、憲法の第九十二條におきまして地方の自治権というものがはつきり認められております。而して又地方公務員法におきましては、この二十四條の第三項に、地方公務員給與というものは生計費、或いは国、又は他の地方公共団体の職員、或いは民間事業職員給與、或いはその他の事情を考慮してそうして定めらるべきものである、更にその六項におきまして、それらの給與については條例で以てこれを定めるものであるというふうに規定されております。又地方公務員法の十四條にも同様に地方公務員給與については社会一般の情勢に適応するように適宜の措置を講じなければならない。更に地方自治法におきましては、その二百四條の第二項におきまして、やはり地公法と同様に地方公務員給與というものは條例でこれを定めるものであるというふうにはつきり明確に謳つてあるのであります。併しながら吉田反動内閣に繋がるところの現地方理事者たちは、国で実施されるところの給與法を以ちまして地方自治法の施行規程第五十五條にありますところの地方公共団体の職員給與については官吏の例に倣うというこの一項目によりまして、常にこの国において適用されるところの給與法を我々はすぐ適用を受けておるわけであります。根本的に言いまして給與法を我々は適用されるということについては絶対に反対するのでありますが、只今申しました理由からいたしまして今回の改正給與法につきましても、必ずやこれが強硬に適用されて来るのではないかとかように考えるわけであります。一面平衡交付金等の減額によるというような、他面又国における措置によりましてかようなことが強制されて来るのではないかというふうに考えますので、一応ここで改正給與法内容についても我々は検討し、修正を要望しなければならないとかように考えまして只今から内容について若干申述べたいと思います。  内容について、給與改正法案の逐條につきまして申上げます前に、全般的に今回の俸給表即ちあのような金額が、どういう方法で算定されたかということにつきましていろいろ矛盾があると思いますので、この点について申述べて見たいと思います。先ず今回の給與ベースの改定につきまして、政府は千五百円のアツプをするということを言つております。そして千五百円アツプすることによつて一万六十二円になるというふうなことを発表いたしておりまするが、果してこれが一万六十二円になるかどうかという問題であります。私は九千八百円程度にしかならないと算定いたしております。而も人事院は一万一千二百六十三円ベース勧告いたしておるにもかかわらず、今回の給與法に盛られた俸給表というものは大体人事院勧告の一二%を差引いてこれを計算しておるのであります。而も上下差の問題でありますが、従来は八・三倍の上下差でありましたものが人事院勧告によりまして一〇・三倍更に大きくこれを開かしております。従いまして今回の政府の発表したところの俸給表につきましてもやはり一〇・三倍の倍率が出て来るわけであります。この一〇・三倍の倍率を糊塗するために十二号俸を置いた。即ち旧号で申しますならば、三級の六号以下をどういうふうな根拠に基いてカーブを上げたのか知りませんが、十二号俸以下についてはとにもかくにも逆な面でカーブが上げられておる。従いましてその倍率というものが九・七倍というふうな恰好になつて来ております。これは飽くまでも上下差の倍率の問題を欺瞞的に糊塗しようとするものであると私はかように考えるわけであります。その内容につきまして検討するに当り、人事院勧告を批判することによつて今回の政府の発表した給與法只今申しましたように人事院勧告の一二%差引いてこしらえたものであるというような点から見まして、人事院勧告を批判することによつておのずから政府の発表したものの批判にもなるのではないかとかように考えております。先ず最初に基準といたしましたところの成年男子の一人の最低生活費でありまするが、これが政府におきましては大体四千円程度に抑えられております。人事院におきましても東京都におけるところの成年男子一人の標準生計費を四千四百九十円といたしております。勤務地のつかない所におきましても四千二百円というふうに出しております。然るに政府は僅かに四千と抑えておる。而もその生活費の中の飮食費につきましては、一日当り二千三百三十六カロリー而も八十二円二十銭、八十二円二十銭というような生活費で以て、たとえ十八歳の成年独身男子であろうとも果して生活ができるか否かということにつきましては、計数的に彈くまでもなく判然としておるのであります。我々は如何ほどの生計費を要するかということにつきまして算定をしたわけでありまするが一応我々が調査したところによりますと、一日当り最少限度百二十六円三十五銭というものがなければ成年男子一人の生活ができない、かように考えておるわけであります。又生計費の各費目の割合についてでありますが、これは大体一定しておりまして、エンゲルの法則としては認められます。併しながら、労働省、物価庁、或いは安本の指数によりますところの、二十六年の五月の一人当りの生計費は大体において只今申しましたエンゲルの法則に合うと思つておりますが、大体この人事院におきましては、これがどういう換算指数をとられたかわかりませんが、エンゲルの法則に合つていないということが言えるのではないかとかように考えております。このようにして算出されました人事院勧告が四千二百円、成年男子四千二百円というふうになつておるにもかかわらず政府はこれを更に下げまして四千円というふうに持つて来ておる。  次に民間給與との均衡を図る、或いは図つたというようなことが言われております。又公務員給與というものは民間の給與水準をとらなければいけないというようなことも言われております。併しながら果して民間給與が、ここに給與との均衡がとられておるかということでありますが、表面は一応民間給與を調査したごとくに見えますが、八千五十八円ベース勧告におきましても、仮に五十人から九十九人と、四十九人以下というような基礎にまでも、この調査対象が下げられておる。而もその倍率が圧倒的に多い。数字で申しますならば九十九人以下の、大体建設業において六〇%、製造業において三七%、卸小売業において、五五%、金融保険業において五九%、運輸通信業におきましても四三%、サービス業に至りましては更に多く七二%、かような中小企業に莫大な比率をかけまして民間給與との比率がとられる。こういうことは規模が小さければ小さいほど給與が低く、その体系も又不完全である。これらの民間給與と均衡をあわしておる。而して平均本俸を八千八百八十四円、それに諸手当を含めて一万二千六百二十三円、これを更に政府は一二%マイナスをして民間給與との平均をとつておる。どこに民間給與との均衡が保たれておるかということについて我々は大きな疑問を抱くものであります。我々が現在一万二千円を要求いたしておりますが、我々がいろいろ調査した結果に基きまして算定いたしますならば、必ずや人事院勧告を上廻り、我々の要求する一万二千円という数字が出て来るものであると私は信じております。  次に上下の倍率でございますが、先ほども少しばかり触れましたが、現在の七千九百八十一円ベースにおけるところの最高号俸最低号俸におけるところの倍率は八・三倍で、八千五十八円の人事院の前回の勧告の際にはこれが七・三であつた。これを政府が現行の七千九百八十一円ベース実施する際に八・三倍に上げておる。更に人事院は今回の改正で一〇・三%に持つて来ておる。それを燒直して一二%切下げて燒直したものが即ち又一〇・三%と出て来るのは当然であります。それを十二号俸以下いわゆる三級六号以下若干上げまして九・七、こういう恰好に持つて来ております。その比率金額を申しますならば、最低号俸におきましては僅かに六百円にしかなつておらない。然るに一般職の最高におきまして八千六百円、十五級の最高号俸に至りましては一万三千円というような大きな上昇の仕方を示しておる。かかることは下位の号俸を下げまして、上位の号俸引上げるということでありまして、これは下級者の生活を窮乏に放置しながら、高級者のみを優遇する、いわゆる職階制の不合理の面のみを強行するものである、私はかように断ぜざるを得ないのであります。  次に扶養手当の件でございますが、地域給も現在保障されていない、生活給も保障されていない。而も現在のような低額のベースにおきましては少くともベース引上げの際には当然民間の実情をも調査いたしまして、扶養手当引上げということも考慮されるのではないかと思うのでありまするが、実際にはそういう措置が全然講じられていない、現行そのままをとつておるという状態であります。勤務地手当につきましても同様で、従来最高三割でありましたものを、五分引きいたしまして、二割五分というふうに最高を抑え、更に五月十七日に人事院が字指定を以ちまして勧告をいたしましたあの地域給の勧告を、政府は字指定をとりやめております。更に百四十七件のうち、二件は格上げでございますが、残りの百四十五件というような格下げ或いは昇敍修正を行なつております。この格下げ、昇敍修正につきましては官署の指定で行くんだというようなことが言われておりまするが、官署の指定というものは、国家公務員には官署の指定がございますが、地方公務員にとつては官署の指定というものはなされない。そうするならば、既得権の剥奪も行われる、更に現在の地域給そのものが不合理であるにもかかわらず、またその上に百四十五件の実質的には地方公務員にとつては格下げであり、又修正であり、昇敍修正であると考えるわけであります。一例を挙げますならば、郊外の片田舎にある学校に住む先生がたが、宿舎の関係或いは住宅の関係で近郊の都市に殆んどが住んでおる。ところが従来は学校があるためにその地域が指定されておつたにもかかわらず、今回これが落されておる。而も学校であるためにこれが指定されないために地域給はもらえない。ところが実際に生活している所は地域給は当然つく所におるにもかかわらず地域給がつかない、というような矛盾した現象も起つております。  次に年末手当でございますが、政府は、人事院は一カ月分を出すべきである。勿論一カ月分についてもいろいろ異論があります。更にその支給方法につきましてもいろいろ異論がありまするが、一カ月分という人事院勧告を無視して、更に〇・五カ月分というふうにこれを切下げておる。今回に限つて物価上昇だとか或いは九月、八月の差額というものを〇・三カ月分を出す、計〇・八カ月分を出すというようなことが言われておりまするが、これはCPSの実態、過去におけるところの実態等をつぶさに検討いたしてみまするならば、果して〇・五で足りるか足りないかということは判然として来るものであると思います。  次に千五百円を引上げまして一万六十二円となると言つておられまするが、先ほども最初に申しましたように、九千八百円程度しかならない。それではその開きがあるところの二百幾らというものはどこから出て来たかと申しますと、一応考えられますものは、今回の所得税の軽減ということであろうかと思います。併しながら所得税の軽減によつて果して我々の実質賃金がどれだけ上るかということでありまするが、米価の改訂或いはそれに連なるところの鉄道運賃、郵便料金、これらの値上によりまして実質賃金は逆に下つておる。東洋経済新報社の発表によりますと、一般物価の値上りによりまして我々の生活に響くところのものは最低一六%の上昇を示すというふうに言われております。併しながら所得税の軽減によつてそれでは我々の給與の手取りは果してどれくらいになるかということを算定いたしてみますと、東京都における場合、即ち勤務地手当が二五%つく場合におきまして、一級の三号俸を現在受けておる者で、手取りの上昇額は僅かに二五%。ところが一級の三号などというものは実際にはそう余計いるものではない。我々地方公務員で最もウエイトを占めておるのは五級、六級、七級というところでありまするが、六級の六号俸を現在受けておる者で而も扶養家族が三人、平均年齢が三二・九歳というようなかたをとりまして現行の給與水準政府の改訂案とを比較した場合に、僅かに一三%しかの上昇しか示さない。ということは、只今申しました諸物価の値上げを考慮に入れますならば、逆に三%実質賃金の値下げであると、私はかように考えるわけであります。  次に昇給期間についてでございまするが、昇給期間給與法の中には今回謳つておりませんが一応期間が短縮されたやに窺えますが、併しながら昇給の額でありまするがこの額が現行より更に倍率が大きくなつておる。これは上下差をますます甚だしくするものである。九・七倍の上下差を更にこの昇給額によりまして更に更に激しくして行くものではないかと、私はかように考えております。  大体彈かれました給與の額或いは俸給表につきましての問題点は以上述べまして、次に法の各條の問題でございまするが、各條の問題のうち我々が一番奇異に思うものは休職者給與でございますが、即ち第二十三條の改正でありますが、その中の第二項に、職員結核性疾患にかかつた場合は云々ということで、満二年に達するまでは俸給扶養手当勤務地手当のそれぞれの百分の八十を支給するというようなことが言われておりまするが、何が故に百分の八十というような限定をつけたのか。結核性疾患にかかつたのは、只今のように公務員が非常に少い、而も事務量が厖大であるが故に、過労のためにかような疾患にかかつて来たのである、それをそれがために休職したものを百分の八十に限定するという理由が私には見当らないということといま一つは、結核の療養期間を二年に限定したということについても私は奇異に感ずるものであります。なぜならば、結核の療養というものは医師の調査によりましても、最低三カ年間を要すると言われております。然るにもかかわらず政府は満二カ年ということに限定いたしております。社会保障制度審議会におけるところの勧告におきましても結核の療養については三年ということが勧告されておるようであります。従いまして満二カ年ということに限定したということは、結核療養患者を完全に治癒をしない間に巷に放り出すということを意味しておるわけであります。その結果はどうなるかということは言を待つまでもないことであると思うのであります。  次に実施の時期でございまするが、政府は十月一日からこれを実施すると言つております。併しながら実際には諸物価の値上、即ちその前兆でありますところの米価の値上は八月の一日から実施されておる。にもかかわらず我我の給與は十月から実施する。何が故に十月から実施するのであるか。米価の値上をするのであるならば、その米価の値上と同一の時期において給與の改訂が行わるべきである。而も実際には十月から実施すると言いながら、御承知のようにすでに十月も過ぎ、十一月も半ば過ぎております。一カ月半も時期が過ぎておるにもかかわらず、これに対する何らの措置も講ぜられていない。補給金を出すとか或いは何とかというようないろいろな方法があると思いまするが、それらについての措置が全然講ぜられていない。  更に経過期間の問題でございまするが、従来の期間はこれを打切るというような一応恰好になつておりますが、それでは今まで我々が勤務したのは遊んでおつたかというようなことになるわけでありまするが、かような矛盾したことも今回の給與法の中にはきめられておる。  各章の各條文につきましては他の單産から縷々御説明がありましたので、一応これくらいにいたしまして、我々が地方公務員の立場といたしまして更に更に大きな問題でありますところの給與にからみましての今回の政府の発表いたしました地方公務員給與べースの云々ということでございまするが、これにつきましては、大蔵省は都道府県庁の職員については四百六十二円、教職員については三百七十五円、市町村職員については五百七十六円が国家公務員に比して高いのであるということを発表いたしております。併しながらこの数字が彈き出された根拠でございまするが、大蔵省におきましては、部課長については三%、係長については二四%、一般職員は七三%というような構成の比率を想定いたしまして、その想定に基きまして七万人のカード調査を行い、それを更に七十万人に引伸した。かかる調査をいたしまして只今申上げましたような数字の開きがあるというようなことを言つておるのでありまするが、然らば只今想定いたしておりましたような、部課長が三%、係長が二四%、一般職員が七三%というような職員の構成がなされておるか否かという問題でございまするが、一例を群馬県にとりますならば、部課長におきましてはやはり三%でありまするが、係長に至りましては僅かに八%しかいない、それを二四%というような構成で以て彈かれたところにこのような矛盾した数字が出て来ておる。更にこれはただ算術平均で以て出されたものでありまして、勤続年数だとか、或いは年齢の構成、扶養家族構成というようなものの考慮がなされていない。例えば鳥取県と島根県の例をとつて見ますならば、山陰の裏側にありまして最も寒く、又農業県でありまして何ら工業というようなもののない貧県が二つ列んでおるのでありまするが、この二県が隣合せておりながら公務員給與が千円も高い、島根県と鳥取県のみを比較いたしましても千円高いというような数字が出ておるのでありまするが、これなども全く馬鹿げたものでありまして、かような数字が何処から出て来たかということについては我々は全くの疑問を持つものであります。かかる政府数字を出しまして、我々の今回の給與の改訂に僅か百億円というような補正予算の中に平衡交付金を計上いたしまして、地方公務員給與只今申しました数字を差引きまして県庁職員については増加單価が即ち八百四十八円、教職員については千二百五十一円、市町村職員については七百六十五円、これ以上上げてはならないというような措置を講じつつあるわけであります。併しながらこれは一応平衡交付金の算定のために行なつたものであつて、これによつて地方公務員給與ベース・アツプの際に云々しようというような強制はしないとは言つておりまするが、併しながら僅か百億円の平衡交付金のみを出して千五百円のアツプができるかどうか、実質的には百億円という平衡交付金の少額の枠によつて強制をしておるというふうに断ぜざるを得ないのであります。我々地方公務員給與政府案によりますところの千五百円アップをするにいたしても、最少限度平衡交付金が三百億、起債二百億、計五百億円というものがなければ実施ができないというふうに我々は考えておるわけであります。  更に我々は人事院勧告の一万一千二百六十三円を上廻りますところの一万二千円というものを要求いたしておりますが、これを実施するためには少くとも七百億円の金がなければできない。従いまして補正予算において挙げられておりますところの平衡交付金百億を差引きまして、更に総額六百億円なければ給與の改訂ができないというような現状にあるにもかかわらず、平衡交付金を只今申しましたように百億円に抑えまして、地方公務員給與を故意に下げようとしておる。で地方公務員給與国家公務員よりも高くあつて然るべきだという見解を一応我々は持つております。なぜならば地方公務員というものは第一線におりまして、いわゆるサービス・センターといたしまして市民或いは村民、町民というようなかたのサービスに当つておるわけであります。業務の内容につきましても、行旅病人の扱いだとか、或いは何だとかいうようにいろいろ国家公務員では取扱わないような、いやらしいような仕事までやつておるわけであります。これらの仕事をやりますのには、どうしても高い給與を出さなければやれない。と同時に地方公務員というものを質的に向上させるためには、どうしても優秀な職員を連れて来なければならない。従いまして現在のような給與水準では、地方公務員はますます質が下つて行く、質が下がるということは即ち地方行政というものがだんだん衰微して行くということになつて来るわけで、地方行政が衰微するということは地方の一般住民というものがそれによつていろいろな不利益なことをこうむつて来るということになるのでありまして、我々は地方公務員給與は少くとも国家公務員よりも高くあるべきだというふうに思つております。にもかかわらずかような措置が講じられつつあるということにつきまして我々は絶対に反対せざるを得ないものであります。  以上非常に杜撰でございまするが地方公務員の立場から一応申上げました。
  28. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。質問はあとから一緒にお願いすることにして、引続きまして成蹊大学の政経部長野田信夫さんにお願いいたします。
  29. 野田信夫

    公述人(野田信夫君) それでは御指名によりまして、私成蹊大学の野田でございます。  今日こちらの委員会で公述人になつて、今度の一般職給與改正に関する公述意見を述べろというお話であります。ほんの一昨日ですか御依頼になりまして今日参つたようなわけで、それから又平生からこの問題は私專門家というわけでもありませんし、特に研究しておるものでもありません。そういうわけでありますが、ただ平生経営学を担当しておる角度から、一体この給與体系はどういうふうに思われるか、そういうようなことでもいいからというようなお話もございまして、それならば極く抽象的な概略論しかできんけれども、若し御参考になれば上つて何か考えたことをお話してみようということで上つたのであります。従いましてこの法律内容を到底この一日二日で検討しておる余裕もございませんでしたし、又検討してみたところで、專門家でございませんのでそう確たる意見があるわけでもないと思います。ただ大体から申して今度の給與改訂というのは人事院勧告から見ましても、大体民間の給與並みにしようというのが根本の御意思のように伺うので、それでその点をまあ私なみに手許の材料で一応検討してみましたのですが、どうも我々の資料で短かい時間の中でざつと当つて見たところから申すと、まだ人事院勧告一万一千何円かのあのベースでも、いわゆる民間並みという意味にはまだ足りないという気がいたします。従いまして政府の今度の案である一万一千円ベースだとすれば、なお開きが大きくなるという勘定になるのであります。それを何からそう申すかと申しますと、手許にあります現在の民間の各会社の給與統計を年齢を下の軸にとりまして、それから給與の額を縦の軸にとつて、それでスキヤツター・ダイアグラムを一応書いて見るという方法をとつてみたのであります。各社別の資料もございますが、各社別にやると非常に数が多くなりますので、丁度産業別にそれをまとめた数字がありますので、産業別の数字にしてそのダイアグラムを作つて見たのです。そうしてそれを本当は最小自乘法を用いまして傾向線を出さなければ本当の直線の位置がきまらないわけです。併しそれらは計算している暇もございませんので、大体ダイヤグラムを作つて目分量で線を引いて見て、そうして公務員の平均年齢のところが幾らの位置に来るだろうかということを大体当つて見たところが、大体一万四千円ぐらいになる。但し公務員の今の平均年齢が幾つ、何才であるかということははつきりつかんでおりませんが、頂きましたこの公務員月報に載つています、少し古いと思いますが、今年のいつでしたかな、平均年齢だと三〇・二才ですかになつておるように見受けましたので、まあそれとしまして考えて見ると、今のように約一万四千円ぐらいになつておる、いわゆる民間並みということに言えるのであります。書いて來る暇もありません、こういう分布になつております。これが年、こちらが給與の額、産業別に平均年齢が何才で何円である、何才で何円だと、線がたくさんこの通り出ております。大体非常にこういうふうに巾があります。同じ年齢でも産業によつてこんな巾があるわけです。それが方々に散らばつております。これをこちらのところでは一本の直線に直してしまうわけです。大体において楕円形で、楕円形がこういう恰好になつておる、こういう分布状態を持つております。これはまあ当然のことであります。年齢が低いほど給與も低いのですし、年齢が高いほど高くなつて来る、これは当り前だ。それで大体の傾向はどうなつておるかということを、これは直線に直す。これは本当は計算して出さなければなりませんが、暇が到底ありませんので、これは目分量で引いた線です。大体この辺を通るだろうというので線を引いた。それでこの線は、今の三十才なにがしというものが公務員平均年齢だとしますと、丁度ここに当る、これを立てて見ますとぶつかる点がある。これが丁度一万四千円ぐらいになる。大体こういうぐらいのところがいわゆる民間並みじやないか。これはつまり高くもなく低くもない、民間の給與をいわば平均して見た線、而も公務員の平均年齢に相当する位置は何処かということを求めるのは、こういうふうにしてやるほかはないのです。ですからこの線より以上になつておる産業、これは平均よりかみんないい給與を払つておる産業であるし、これより下のこれは平均以下を払つておる産業、この線の上にあればどこにも行かん、いわゆる民間並みだというのはいわゆるこの線の上になければそう言えないと思うのです。で極く時間もありませんし、ラフに計算してみたらそういう結果になつたということを御報告申して、その意味からいつて、まだ公務員給與というものは足りないのであるということが言える。これはいわゆる民間並みにしようという御意思ならばですね、それじや足りないということは申上げられると思う。  然らば、人事院の計算も民間との繋がりは相当考えていらつしやるのです。考えていらつしやるのにそれではどうしてそういう違いが出て来たかというと、これはちよつとなかなか複雑な問題だと思います。思いますが、この人事院の計算方法で民間との関係を見ていらつしやる方向はこの上下の開きを考慮していらつしやる。民間の職務の現在受けている給與を多分サンプリング・メソツドでしようが、何人かについて全国的に調べてそれと同じ職階にあると思われる政府職員号俸とを大体マツチさせようというようなことでやつていらつしやるのですからそれでもいいわけなんです。それでもいいわけですが、そのときの民間の給與としてお調べになる、或いはこの資料で拜見するところでは、どうも私の誤解かも知れませんが、本俸だけ、本給といいますか、本俸について見ていらつしやる。それと官吏の本俸とを比較しているのではなかろうかと思うのです、資料の様子によりますと……。そうしますと、そこで一つは食い違いが出て来ている。民間にはそれ以外にたくさん尾鰭が付いている。これは官吏でも付きますけれども、付き工合が民間の付き工合と、民間の給與体系が非常に複雑ですから、そこで一つは食い違いが出て来ているのではないかと思うのです。まあ先ほどの私のグラフもこれは本当はもつと正確にいえば、これに人間の数のウエイトを入れてこの線を引かなければならんのですが、それを入れる暇も手もないのでこういううつなことをやつて来たわけです、それもお断わりしておきます。そういうようなわけでどうもなお民間並みと言うにはまだ至らないということは言える。それから人事院のこの給與体系というものは、今回のベースの問題とは一応離れますけれども人事院なり官公吏の給與体系というものはその裏には職階制と人事考課という制度を以て初めて意味のあるものなんです。これはもう人事管理上から申してはつきりそう言える。ところが号俸形態といいますか、号俸の体系はまあ何がしかこういうことで或る基本的の水準を選んでそれを各級号俸に転換してそうして一つの体系を作り上げていらつしやるんですから、それはそれで結構なんです。但しそれじやこれをどういう人に支払うのかということになると、これは職階と結付かなければ、これはただ形式の問題で、どういう人たちが一体この何号俸を受けるかということは職階制を本当に確立しなければ無意味になる。そうして無意味になるばかりでなくて、いわゆる能率が上らん。官公吏の能率が上らんという一つの重要な理由も、本当の職階制がまだでき上つておらん。そこへ持つて来て人事考課が極めて不完全ですから、こういう固定給で而も一定水準能率を維持しようと思つたら、職階制と人事考課制を本当に確立しなければならんはずなんです。それがいずれも極めて不完全な状態にあるのです。こういう号俸の体系を展開しただけでは、官吏の能率というものは到底正当に批判することも評価するとともできない状態にある。これが官吏の能率という面から見ていつまで経つても余り増進といいますか、改善できないという一つの大きな理由ではなかろうかと思うのであります。それは今回の給與ベースの問題とは一応別の問題ではありますが、給與が誰に如何に支払われるかということは、やはり給與問題としては一番大きな問題です。むしろこういう形式の問題よりも本当はそちらのほうが大切なんで、それでありますからそういうことを一言附加えまして私の極くラフな意見を終ろうと思います。
  30. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難とうございました。引続きまして東京大学教授の鵜飼氏にお伺いいたします。
  31. 鵜飼信成

    公述人(鵜飼信成君) 私は新給與法に関しまして極く大ざつぱな議論でありますが、四つほどの点を申上げてみたいと思います。  第一は、この法律人事院勧告を尊重しているかどうかという問題であります。これは法律の提出理由の中に昭和二十六年八月二十日附の人事院国会及び内閣に対する勧告を原則的に尊重して云々という言葉を用いているのでありますが、原則的に尊重するということは、一体どういう意味であろうかということに少しく疑問を持つのであります。それは勧告の申しておりまするところと法案とを対照して見ますと、形は一応似ているのでありますが、勧告の眼目でありますベースを上げるという点では、これは人事院の出しました一万一千二百六十三円という新らしい給與水準でありますと、従来の給與水準から二千六百九十四円程度の増額になるのでありますが、併しこの法案では一千五百円程度増加しか認められていない。若しもこういう基本的な線で人事院勧告が容れられていないとするならば、果してこれが人事院勧告を原則的に尊重したということになるのであるかどうか、私は原則的に尊重という言葉を使うことは正直でないと思うのであります。むしろ遺憾ながら人事院勧告に原則的に従うということができなかつた財政その他の諸般の情勢から見て従うことができなかつたということを明白に認めて置くほうがいいのではないかと思うのであります。元来この人事院勧告というものがどういう意味を持つているか、或いは一般勧告というものはどういう意味を持つているか。で勧告をすることを法律上認められた機関はほかにもございます。例えば地方行政調査委員会議というようなものがすでに二回も勧告をいたしておりますが、こういう勧告は現実には必ずしもそのままに実現されるとは思つていない。つまり勧告が、勧告である性質からいつて、それがそのまま実現されるという法律的な拘束力を持つているわけではないわけであります。でこれが勧告というものの本質であるということはこれは確かにその通りであります。そこで人事院勧告というものがこういう意味勧告である限りは、それはやはり当然にその勧告通りが実現せられるということにはならないのです。政府国会がこの勧告を受けましてそれに基いてどういうふうな制度の改正をするかということに当然になつて来るわけであります。けれどもこの勧告について政府国会がそれをそのままには実現はできないにしても、どの程度に尊重すべきであるかという点については、この勧告をすべき機関を設けた趣旨によつて私は事情がいろいろ違うのではないか。若しも勧告というものが單にそれを聞くだけであつて、要するに勧告機関を設けたということは、單なる飾りである、或いは政府の行為に対する言訳のために置いておるんであるということではないと私は思うんであります。この点で私は地方行政調査委員会議の勧告人事院勧告とは多少違うところがあるのではないか。その違う一番大きな点は人事院の性格というところから来ていると思うものでありまして、人事院が常設的な機関であつて、その常設的な機関が公務員の問題について平常から組織的に絶えず調査をしている。その調査に基いて国家公務員法の二十八條の規定した場合に勧告をすると、こういうことになつているんでありまして、これは他の場合の勧告とは法律の建前から言つて趣旨が違うのではないかというふうに私は考えるのであります。若しもこの点を考慮に入れるならば、その勧告は今度の法案が取入れている程度の取入れ方では、決して勧告を尊重したということにはならないのではないか。原則的に尊重したというふうな言葉は全く当らないと私は思うものであります。  そこで第二の問題として人事院の性格というものはどういうものであるかということをもう少し考えて見る必要があるわけでありますが、人事院の性格の中で、これができましたときに一番激しく論議の的になりましたのは、国家公務員法第三條の定めております人事院の権限の最終性ということであります。でこの最終性という点は、かなりむつかしい問題だと思うんであります。で法律では第三條の五項で法律問題についての裁判所の、裁判所への出訴の権利を否定しないということを申しまして、一応のこの点に関する解決が與えられているかのように見えるのでありますが、併しこの規定は半面から申しますと、事実問題については、人事院の決定が最終性を持つということを再確認したような形になつているわけでありまして、従つて事実問題については、人事院自身が再審査をし得るだけで、もはやそれ以上争うことはできないというふうになつているわけであります。で、これが非常に強力な権限であるということは疑いを容れないわけでありまして、何故人事院にこのような強力な権限を與えなければならないか、又與えることが一体適当であるかどうかというようなことは、立法論としても、又解釈論としてもいろいろ論議が起るところだろうと思うのであります。併し若しもこの強力な権限を與えることに何か理由があるとするならば、これは先ほど申しましたように、人事院だけが職員に関する一切の問題を掌理する唯一の常設的な、專門的な機関であるというところにあるのであろうと思います。その人事院の権限が余りに強大であるということに対して多くの疑惑が投げかけられるのは、人事院がその権限を用いて公務員に対する取締りをするとか、人事院規則を作つて公務員の活動の自由を制限するとか、そういう方面で人事院が余りに強力な権限を持つことが問題とされたのでありますが、こういう場合には、これは確かに国民の代表者としての国会が、人事院のそういう権限の行使に対して大いに干渉をして欲しいと思うのであります。ところが人事院のこの強力な権限は、同時に他面においては公務員を保護するためにも用いられ得るのでありまして、その公務員を保護するために人事院のこの権限を用いられる場合には、これはその権限の行使に対して国民の代表者としての国会が大いにそれを尊重するよう、に考慮する必要があるのではないか。殊に若しも人事院の権限、人事院の見解と政府の見解とが対立するというふうな場合には、これは国会が国民の代表者としてどちらの見解が果して正当であるかということを十分に根本的に検討すべきであつて、決して国会政府の見解を無條件に呑込んでしまうというふうに振舞つてはならないのではないかと私は思うのであります。  ただこの場合、人事院の見解の中に若しも欠けておる点があるとするならば、それは国の財政全体を全面的に見渡すということが或いは欠けているかとも思うのでありますが、そこでその問題はおのずから第三の問題として予算上の考慮というものは、この給與法とどういう関係があるかということになつて来ると思います。そうなりますと、問題は国の予算全体の分析ということになつて来るわけでありますが、現在のこの給與法の審議と予算との関係を顧みてみますと、これは補正予算がすでに衆議院で可決され、現在参議院で審議されておるのであろうと思いますが、この補正予算の審議に当つて記録を見て見ますと、給與法案というものが、まだその内容が明示されていなかつた俸給表も示されていなかつた、軍に給與改正がされるだろうということだけを前提にしまして、補正予算を審議した模様であります。これは私は正しくないと思うのでありまして、予算の審議というものは、その予算の中に組込まれているもろもろの政策というもののそれぞれの理由を明らかにして、その理由、相互間のバランスをとつて初めて全体としての予算の均衡が保たれる、一つ々々の支出の大きさというものが果して妥当であるかどうかということは、その支出自身の理由というものを明らかにすることと、他の支出の理由との比較をすることとの二つがどうしても必要でありまして、そのどちらを欠いても、適正な予算というものはでき上らないのではないか。その意味ではこの給與法改正法案というものは当然に予算の審議と伴つて行なわなければならないのではないかと思うのであります。従来の例を見ますと、大体において給與法改正案が出されたときには、それの裏付けとなる予算というものは同時に審議されるという例であつたように私は記憶しておるのでありますが、その点でどうも今度の給與法改正というものが審議の手続として妥当であつたかどうかということに少しく疑問があるのであります。併し抽象的に考えますれば、予算を更に補正するということもできないことではないとも思われますし、現に多少問題は違いますが、專売裁定の問題も新聞で拜見いたしますと、こういう点の解決の参考になるような方向に解決されたように見受けるのでありまして、是非私は根本問題としてこ、の給與法基礎になつておる人事院勧告が合理的であるかどうかということを、十分に国会が論議して、国会人事院の見解と政府の組みました、政府の提出しました法律案との、両者の根拠を比較検討し上で、これを解決し、それに必要な予算措置も講ずる、こういうことが妥当ではないかと思うのであります。予算の問題は大変むつかしい問題でありますが、私は国会予算の増額修正権を持つという点については、これを肯定しなければならないという考え方でありまして、国会自身として十分にその点を合理的な根拠があれば、実行されるように措置をするということはできないことではないと思うのであります。  最後に第四の問題として、私は給與法適用を受ける公務員の立場というものを、やはり国会議員のかたがたは、この際十分にお考えを頂きたいと思うのであります。公務員は申すまでもなく、国家公務員法第九十八條で団体協約の締結権も争議権も失つてしまつているのでありますが、そういうものを公務員から失わせることが、若しも合理的であるというのならば、それは、その理由はこの団体協約権や、或いは争議権に代つて公務員の利益を保護すべき何らかの制度があるというところだけに認められるのであります。それはつまり公務員給與というものを公務員の形式上の使用者である政府が一方的にきめるということをしないで、これを法律によつてきめる、その法律政府が一方的に作つた案によつてそのままきまるというのではなくして、一方では公務員の利益の代表者としての人事院の要求と、他方では政府、特に大蔵当局の財政的な見解との両者を対立させまして、その結果としてこれを公務員の真実の最後の使用者である国民を代表している国会の議員のかたがたが、これに対して正しい判断を下される、こういうことが、前提になつていると私は思うのであります。その意味では、現在の政府なりに対して與党の議員のかたがたも十分に国民の代表者としての重責を自覚されまして、政府案を無批判的に、そのまま呑込まれないように御審議が願いたいと私は思うのであります。若しもそういうことをしないで、全く大蔵省当局の言う通り給與をきめるということになりますと、これは公務員の真の使用者である国民を代表する国会が、その重要な権限を行使しない、公務員給與基準を決定するというような大きな権限を放棄してしまうということになるのではないかと思うのであります。  大体、以上のような理由から私はこの給與法改正案というものについて、もう一度人事院勧告を十分尊重した論議が繰返されることを希望する次第であります。
  32. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは最後に国鉄労働組合の給與対策部長澤田廣さんにお願いいたします。
  33. 澤田廣

    公述人(澤田廣君) 御紹介にあずかりました澤田でありますが、私は今まで述べられた立場と同様でありまして、公務員と非常に密接な関係にあります関係上、主として国鉄を主体といたしまして、国鉄の立場から見た給與案というものの見解を申述べて御参考にいたしたいと存じます。  で、一つだけその前に申上げたいのでありますが、本日御出席になられておる各人事委員のかたがたにおかれましては、十分御同情ある措置を行われるものと思うのでありますが、却つておられないかたにこそ、実は私たちの意見を率直に申上げて反省を願いたいと、このように考えているわけでありまして、その点委員長からよしなにお伝えを願いたいと存ずる次第であります。  今までにも人事院勧告を尊重すべしという意見につきましては、今までの各公述人から述べられておる通りでありますが、その根本となるべきものについての考え方が若干忘れておるのではないか。一つには我々が団体交渉権を失われて、それに代るべきものとして、人事院というものが創設され、そうしてその人事院勧告従つて労働紛争を解決すべきである、国民の公僕とする立場においては、労働紛争は好ましくないから、国民から選ばれた、或いは第三者的な機関において勧告をしたものを尊重することが日本の経済の発展なりによりよき結果をもたらすものであるという立場において、これはマ書簡によつて人事院が創設され、そうしてその勧告が今日まで再三に及んで出たのでありますが、その結果は、我々として考えますのは、これらの本当の真の意味も失われて、単に力によつてのみ解決される。力の強いものによつてその真実も失われて行く。こういうことは今後の労働問題に対する場合、我々の労働の紛争を却つて助長する態度ではなかろうかと存ずるわけであります。更に団体交渉なく一方的に決定される。これらの事案についての結果を考えますときには、公務員においても勤労の意欲は失われて、そうして却つて職務的なものにおいても、能率の面においても相当な損失が当然考えられるのではないかと思うわけであります。  以上の立場から人事院の案を、少くとも尊重しろと私も申上げるのでありますが、人事院のほうでとりました民間給與の比較といたしまして、国鉄の立場からも一言申述べてみたいと思うのであります。国鉄におきましては、やはりその企業の性質しかも存じませんが、やはり民間企業の中で、どれを対象にして行くかということについては非常に問題があろうかと存じます。鉱山業を対象にするべきか、製造工業を対象にするべきか、或いは建設事業を対象にするべきかということは、労働省で行なつております毎月勤労統計の中においても問題があるのでありますが、やはり一番類似する業種としては、やはり製造工業部門に頼ることが至当ではないかと考えておるわけであります。これらの毎月勤労統計の中から出た結論といたしましては、先ほどもちよつと述べられましたが、いわゆる二次式の最小自乘法によりますと、大体三五・一五%の当然値上りがされるのではないか、式も申上げてもよろしいが、一応省略いたしまして、二十六年度を達観いたしまして、我々の賃金が昨年度に比べますと、一三五・一五という数字が当然出て来るべきではなかろうかと考えておるわけであります。  これらの算出その他については省略をいたしますが、更にもう一つの見方といたしまして、戰前の給與の比較であります。いわゆる昭和十年当時の工業部門における賃金及び、これは公務員のは私出しておりませんが、国鉄を一応公務員と同じクラスにあるものと考えまして、当時は同じでありましたので、同じと一応想定をいたしまして、昭和十年の工業部門における平均賃金は五十円六十銭であります。国鉄におきましては五十六円六十銭であります。一応これを同一のものといたしましても、工業部門においては今日一五〇%の名目賃金の上昇となつております。国鉄につきましては一二五%の上昇にしかなつておらないのでありまして、更に昭和十年におけるその差をそのままの形において考えました際においては、当然三六・八%程度の現在のべースに対する上昇があつて然るべきものと考えられるわけでありまして、これらの考え方については、公務員についても同様の措置が考えられる存じます。  以上の諸点から、その他実質賃金の面等からも考えて見たのでありますが、余りこれらの問題については長く公述することを避けまして、今までのかたの触れておらない点について私の見解を申述べます。給與法案の中で一番問題になります号俸表についてでありますが、今度の号俸表を比較いたしますと、千九百二十円ベースにおきましては最低最高の割合が二割の差でありました。二千九百二十円ベースに対して八千五十八円のべースの割合は二割であります。で人事院勧告通り行いました際が四割であります。然るに今度の政府の提案しております号俸表の割合を以ていたしますならば、六割になんなんとする差が出て来ておるわけでありまして、この号俸表が一応直線をとるものといたしましても、この六割は現在の社会情勢の中において、若干余りにも上位の者というか、上級職を優遇するのみであつて、下級職に対するところの待遇改善というものはおろそかにされているものと考えざるを得ないのであります。更に人事院勧告号俸表とそれから今度政府の提案された号俸表の中で最も重要な点は、人事院勧告は一応等比級数的曲線をとつておりますが、一応暫定的にこれを承認いたしましたとしても、それに対する政府案は殆んど中だるみの最も激しい状態を示しまして、四千五百円から一万二千六百円、殆んどの中堅層の給與というものが平均倍率以下に下げられておるという状態でありまして、これは二千九百二十円ベース当時の給與体系からいたしますと、不当なる実質賃金の切下げであるとさえ私は申上げられるのではないかと思います。いわゆる民間給與との比較に便乘いたしまして上級職のみに有利な條件を與えるところの号俸表であると私は申上げざるを得ないのでありまして、号俸表については千五百円の枠とか人事院勧告とかいう問題よりも分配の問題でありますので、これらの点については正鵠なる判断によつて御審議を願いたいと思うわけであります。特に私たちに号俸表につきましては、これは公務員号俸表はやはり国鉄にもその例を及ぼしますもので、これらの考え方が若し国会において承認されるというようなことになりました際は、これが一応国民輿論の決定であると言われることにもなりますし、我々は重大なる関心を持つておるわけであります。  更に今回の号俸表の中でもう一つ考えなければならないことは、永年職に関する取扱いであります。永年職に関する取扱いは一応頭打ちを若干延ばして解除をしているようでありますが、これが真の職階制度になる場合における永年職というものに対する取扱であるかどうか、昇級についても最高の枠を超えて昇級させ得る措置は講じてあるといたしましても、当然永年職に対する取扱いを何らかの形において徹底すべきではないか。これらの考え方が若しないものといたしますと、これはいわゆる学閥人事を助長して、先ほど申上げました上級職の有利なる條件のみを作るものであろうと考えられるわけであります。  更に人事院勧告のところに、これは人事院月報の中にあります各級別の人員の表を見ますと、七十七万六千八百十九名の中で五万人に近い頭打の状態になつております。その五万人のうち頭打の中で最も大きいものが三級職、四級職、五級職という形態でありまして、何と十五級、十四級、十三級等については頭打のものがない。そうして三級職、四級職、五級職にその頭打の大部分を押付けておる給與号俸表こそやはり大いに検討せられなければならないのじやないか。このためにどうかわかりませんが、二十六年の一月と二十六年の四月と三カ月間だけの職の異動を見ますと、三級職の頭打が僅かに四級職に昇格をいたしまして解除しておるようでありますが、これはその当局の人たちがどうしてもこのような措置を講ぜざるを得なかつたのではないかとさえ私たちは考える次第であります。  更に次に二十七年度の賃金について申上げるのでありますが、我々の賃金が三月に要求をいたしまして、決定するのは年末である。これが毎年の例でありまして、果して我々の給與というものは一年遅れに決定せられておつてよろしいのであろうかどうか。こういう現状を人事委員会といたしましても十分御観察を願いまして、少くとも我々の公務員なり或いは我々の労働者がその職に安んじて業務に就けるような体制になるためには、やはりもつと早急に決定せられるべきであり、希望をいたしますならば、二十七年度賃金については、この給與法が通るときにおいては、少くとも二十七年度通常国会においてこのままの姿で補正予算、通常予算が組まれるがごときことのないように善処されることを期待してやまない次第であります。この点を申上げますと、安本等に発表せられております計画を私たちが見ました際においては、少くとも来年度の日銀券の発行及び給與所得の増、これらについては一五%以上の上昇率を安本としても計画しておるようであります。こういう現状を見ますときにおいては、当然これらの上昇率が五%以上であることは火を見るより明らかでありまして、人事院も来年度のことはわからんと言つておられるようでありますが、安本の計画及び大蔵大臣等の方針の中においても、すでにこの事実が明瞭に現われているとも私は言えると思いますので、どうか二十七年度賃金においては現状のままで過ごし得ないものであり、相当な上昇が考えられることを十分御観察の上善処されるよう切望してやまない次第であります。  更に給與法案のうちで、前者のかたも触れられておりましたけれども、地域給のいわゆる行政指定の適用につきましてはただこのままでよろしいかどうか。その適用につきましては十分な措置が行われなかつたならば、相当なる今後に紛争を残すのではないか。私もこの措置が或る意味においては適当だろうと思いますが、その措置を誤まりましたならば、まさにこれは重大な地域的な要求となり、そうしていろいろな紛争が生ずるものであろうことを私は予言せざるを得ないのでありまして、この行政指定の適用につきましては、これはよほどの愼重な態度を必要とするものと考えておりますので、その程度に私はこの行政指定についてはとどめたいと存じております。  更に先ほども触れました結核病患者に関する取扱でありますが、これも勿論社会保障制度との関連なくしては考えられないのでありますが、私も医者ではありませんので、一応その内容について詳しく統計的に考察したことはございませんが、少くとも日本の現在の労働環境におきましては一種の職業病であるといえることだろうと思います。日本人に眼が惡い、或いは結核患者が多い、こういうことの一つの大なる原因は、家庭的な一つの住いの構造にもよるものとは思いますけれども、やはり労働環境から来るところのこれは日本特有の職業病として考えられるものと思いますので、どうかこれらの点については少くとも三年が適当ではなかろうか。その給與の保障につきましても社会保障制度等の進捗状態を見まして、当面はこれらの給與の中で保障をする措置が講ぜられ、社会保障制度の確立したあとにおいては、そのようないわゆる企業者が負担をするという考え方でなくても私はよろしいのではないかと思いますが。当面の段階としては、それぞれの企業者が保障をする措置が当然行われて然るべきものであろうと存じております。  非常に粗雑な意見を申上げましたのでありますが、あとは御質問がございました際にお答え申上げることにいたしまして、私の公述を終りたいと存じます。
  34. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。じや各委員において御質問……。
  35. 千葉信

    千葉信君 それでは真先に久保君にちよつとお尋ねいたします。先ほどのあなたの公述の中で、前の電通省の結核罹患者の問題がございましたが、私どものほうとしても非常に今度の政府のほうから出して来た第二十三條の休職者給與の問題が非常に重要な問題だという立場で関心を払つております。先ほどのあなたのお話では、二十四年度には一万二百三人ですか、それから二十五年度末には一万五千人もの結核患者がある。この数字は二十五年度等におきましては大体総従業員の一一%以上の数字になつております。このうち例えば現行の閣議決定の結核対策要綱等に基いて休暇を取らせられている、休暇を取つている職員の数はこのうち一体幾らぐらいでございますか。
  36. 久保等

    公述人久保等君) この電通省の現在の従業員数は約十五万人居るわけですが、そのうちで二十四年度末における一万二百三名というこの数の中で特に要療養者として療養に專心当つている人の数が二十四年度の分につきましては一千六百五十名、それから要注意者、これが八千五百五十二名というような数になつております。更に二十五年度末の調査によりますと、トータルは一万五千百七十八名ですが、そのうち要注意者が一万一千六百十八名、それから要療養者が三千五百六十名になつております。なお補足して申上げたいと思いますが、この療養者の中には、勿論病院等に入つて專心療養している者もありますけれども、約六割の、過半数はむしろ自分の住居で療養に励んでいるというような状態であるわけです。従つて療養設備というような問題につきましても非常に不完全な現在の療養設備の状態もありますし、そういう点から申しましても、この現在療養しておりますそれぞれの当人にとつては、特に生活自体の問題もありますし、更に又療養自体の問題についても非常に困難を来たしているような実情であるわけです。従つてそういう点からこの休職者結核性疾患によるところの休職者に対する措置という問題は、十分に御考慮を願わなければならない問題ではないかというように考えているわけです。
  37. 千葉信

    千葉信君 それからその次に今度新らしく設けられようとしている企業官庁特別俸給表適用職員の問題ですが、先ほどのお話では、あなたがたのほうでも例えば海底線敷設要員であるとか、或いは又工作工場職員等の例が挙げられましたが、大体もう少しあなたがたのお考えから言つて級別俸給表適用を受けるべき企業職員という職種がかなりあると思いますが、そこですぐお述べになるような種類をお持ちになつていますか。
  38. 久保等

    公述人久保等君) 先ほど一括して申上げました際に十分に実は申上げることを失念した点もあるわけなんですが、例えば特に機構の上では本省所属になつておりますので、ちよつと第三者が考えますと、本省段階にあるものだから当然そういつたものは管理部門的なものではないかというふうに考えられるかも知れませんけれども、現実には直接現場に参りまして工事、特に突貫工事と称せられるような特別な要請に基くような工事等について、まさに現場の仕事をやつておる部門もあるわけです。これは例えば工作工場の場合にいたしましても、機構の上から申上げますと、やはりこれは通信局段階に所属しでおりますので、通信局といえば、やはり管理段階というふうに一般には理解されておるわけですけれども、この工作工場等におきましても、完全にいろいろ電信電話の機械を、むしろものによりましては殆んど改造するというような、非常に大掛りな仕事をやつておりますし、それから勿論小さな修繕というような仕事をやつているわけですが、完全なこういつた工作工場というようなものも地方通信局の段階に所属しておるわけです。そういう点で本省段階に只今申上げましたような特に建設関係の仕事こういつた仕事に直接携る職員もおるわけです。そういつた点先ほど多少はつきり申上げなかつたので、この際はつきりと申上げておきたいと思いますが、そういつた形で、ただ單に通信局、或いは又本省だから、これは文句なしに管理段階のものだというふうに理解されますと、電気通信省の機構の場合におきましては、非常にいろいろむずかしい事情もありまして、そういつた特殊な職場がありますので、是非こういつた面につきましてはどういう狹義な意味で解釈いたしましても、当然に企業官庁としての嚴格な意味で理解されると思いますので、こういつた点は特に何らかの形でこの特別立法というものが適用されるような措置をお願い申上げたいと思つておるわけです。
  39. 千葉信

    千葉信君 それから同時にもう一つの問題は、これは特別俸給表適用によつて、今度あなたがたのほうの場合で救済される現に頭打ちをしている職員の数が大体五万人、そういう人たちが一応は今度救済されることにはなつておりますけれども、併しもうすでに従来の頭打ちを起してからの経過年限等を考えると、実際上今度特別俸給表適用されても、とたんに又次の頭打ちが起るということが当然来ると思いますが、そういう点についてあなたがたのほうで何か具体的な数字をお持ちになつておりませんか。
  40. 久保等

    公述人久保等君) 実はそういつたまあ各何月現在で頭打ちになり、又何月現在で幾ら頭打ちになるかという細かい数字を手許に今持つておりませんが、今年の七月三十一日現在における只今申上げました頭打ちの数が、四万四千五百七十九名というような多数の数に及んでいるわけであります。従いましてこの四万四千というものが、それぞれ何月何日に頭打ちなつたのかというようなトータルを各それぞれの昇級期日における区分をした形では、ちよつと手許に今資料を持つておりませんが、七月三十一日現在の数が只今申上げました数に当るわけであります。
  41. 千葉信

    千葉信君 それから次には、それでは佐藤さんにちよつとお尋ねいたしますが、さつきあなたの公述の中で、あなたの調査になられた資料によつて、本年五月を基準として満十八歳で八千七百円という数字をお述べになつたようですが、それの根拠をもう少し具体的に解説願いたいと思うのですが。
  42. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 只今おつしやつたように、算出の基準の時点は二十六年五月、それから算出資料については、食糧については国民栄養調査により、食糧費以外の費目、それ以外の費目につきましては総理府統計局の消費者価格調査と、それから勤労者世帶支出金額によつて算出しております。この資料の二十八頁でございますけれども、そこで算出の方法でございますが、国民栄養調査に基く、成年男子二千五百カロリー、これはまあカロリーの基準、基本になつておりまして、蛋白質のほうは八十五グラム、それで東京のマーケツト・バスケツトを組んだわけであります。このマーケツト・バスケツトにつきましては、別表にございますけれども、いろいろのこういう詳しいものから実際の価格を、マーケツトの価格を組んだのであります。まあそういうようにして食糧費を算定いたしまして、これを十八歳の成年男子に換算しております。私はまあ專門家でないので、換算のあれは何かそういう国際的な一つの公式に従つているとそういうことでございます。被服費とか光熱、住居費、それから雑費は五月のCPS、東京都一般勤労者世帶生計費からマルチプル計算、最小自乘法ですね、これによつてそれぞれ算出した一世帶ですね、そういうことになつているわけなのです。それから税金のほうは実際に引かれる税金を算定したわけです。
  43. 千葉信

    千葉信君 お尋ねいたしますが、さつきのあなたのお話では、今度政府のほうで、現在の平均賃金に千五百円をプラスして一万四百円になるということを言つておるけれども、我々の計算から行くと、九千八百円にしかならない、こういうお話でしたが、その九千八百円にしかならないということの根拠をもう少し具体的にお話願いたいと思います。
  44. 萬屋良作

    公述人(萬屋良作君) ではお答えいたします。一応人事院勧告いたしました際に発表いたしております一般職員の級別号俸別人員によりまして、これに政府が発表いたしておりますところの級別号俸別の金額を掛けて参りまして、そうしてそれによりまして本俸の平均を彈いて見たわけであります。一応の目安を得るために彈いて見たわけですが、これが正しいかどうかということについてはいろいろ異論があると思いますが、そういう方法で一応本俸を彈いて見たわけであります。そうすると、七千五百四十四円という数字が出て来たわけであります。それから人事院勧告では扶養家族の手当については八百八十円ということが言われておりまするが、併し一般職員の一人当りの扶養家族数は一・六七人というふうに人事院の発表ではなつております。従いまして一・六七人を約二人と見まして、これが六百円ずつで千二百円、それから地域給につきましては、やはり人事院の調査によります一・二八というのを掛けまして一千百十九円、この三つの合計九千八百六十三円という一応目安を立てるための数字を弾いたわけであります。
  45. 千葉信

    千葉信君 これは政府のほうで言つているのは、このほか更に特勤二百二十円を計算しているが、併しこれはまあ政府のほうで出して来ている数字の根拠が非常に怪しいものだということは、私はわかつておりますが、この問題は一応これでいいことにして、それからもう一つ、先ほど鳥取、島根のような貧弱な県であつても一千円高いというそういう数字が何処かから出ているというお話でしたが、それは鳥取市内の場合他の県に比べてということですか、それとも公務員に比べてということですか、鳥取と島根であればどつちが高いという……
  46. 萬屋良作

    公述人(萬屋良作君) 島根のほうが国家公務員に比べて大蔵省の給與課の発表によりますと、八百五十六円高いということになつております。ところが隣りである鳥取県のほうは、マイナス百六十四円安いということであつたのであります。隣り同士で以てこのように一千円くらい開きがあるわけであります。ところが実質的には勤続年数とか何とかというものをいろいろ調査して見ますと、殆ど同一の條件にあるのにもかかわらず、このような数字が出ている。細かい点につきましては、私は昨日別のほうの会議がありまして出ておつたので、ここに持つて来ておりませんのでちよつと申しかねます。
  47. 千葉信

    千葉信君 それから続いて八月の臨時国会のときに給與ベースの問題に関連して大蔵大臣がこういうことを言つているのです。国家公務員の場合に、一千五百円上げると、地方公務員の場合にはそれに準じて上げても二千四百円乃至二千五百円上る、従来もそうだ。その理由地方公務員の場合には、初任給も非常に甘く計算されているし、それから又昇給率自体国家公務員に比べると、非常に融通性のある昇給のやり方をしている、こういうところにあるのだということを大蔵大臣は最初にこの問題に触れて国会で答弁しているのです。こういう大蔵大臣の言つていることは、一つの事実を捉えて言つているのじやなしに、非常に政治的な含みを以てああいう答弁をしながら、地方公務員給與の問題を或る程度自分たちの思うように織込んで行こうとした気持はもうはつきりしているのですが、さつきその問題に関連して、あなたからいろいろ地方公務員が高い理由として話が出ましたけれども、私どもの見解としては、地方公務員の高いという理由はこれはやつぱり大体において地方自治体なんかは公務員の退職者だとか、それからよその職種に就いていた人が年をとられてから地方公共団体に入つて、例えば役場の吏員だとか、市庁の吏員になられる。こういうふうな関係で非常に年齢構成が高いという結論が出ておるのですがね。地方公務員の場合には四十一歳くらいです。ですからまあ高いということがあつても、大蔵大臣の言うような理由でないことは明らかです。  それからもう一つは、あなたがさつきお述べになられたように大体大蔵省に行つてあなたがたが聞かれた地方公務員の実態調査そのものも、例えば部課長が三%とか、係長が二四%その他の職員が七三%だという推定の下で計算されているというような恰好で、而も実情は係長級は八%しか実際的になかつた。こういう恰好で調査そのものがでたらめだということ、インチキだということ、そという地方公務員給與の実態というものが全然まだわかつていないという証拠は、地方公務員法のこの前の制定のときにも、地方自治庁に地方公務員給與の実態調査をする必要があるから資料を出せということがあつた。そのときに自治庁のほうから持つて来た資料を見たら、二十四年の一月の実態調査だと言つてその中身を見たところが、中身は知事、官房職員職員だけの給與の実態を調査して、そうしてこういうふうに地方公務員の場合には国家公務員よりも二十四年の一月ですでに四百円高うございますなんていうことを言つておる。そういう資料しか持つていないところで高いということを言つて見たり、大蔵省自体が相当推定やでたらめな構成で以て調査した結果高いということを言つているのであつて、これはやつぱり私どもとしては、地方公務員の実際の給與の状態がどういう状態であるかということについては、これは我々のほうとしても十分その調査をする必要がありますが、あなたのほうでもどうせこれは地方自治庁なんかに任かしておつても、地方自治庁自体が随分調べているのだけれども、なかなか全部をつかめないということをはつきり言つているのです。これは国会でもそういう答弁をしておるのです。相当実給額の報告を寄こせと言つてつても、一年経つても二年経つても地方から完全に集つて来ないと言つておるのですが、そういう点であなたのほうで若し組合としてお調べになつておられたら、そんな政府の資料は殆んど当てになりませんから、あなたのほうでお調べになつておられたら、至急法案審議の参考に私どものほうにお手渡しして頂ければ非常に都合いいのですが、そういう資料をあなたのほうでお持ちですか。
  48. 萬屋良作

    公述人(萬屋良作君) 只今市町村の職員については、全国の全市町村については調査が行届いておりませんけれども、一応まとめつつあります。これは全職員について調査して、そうして出したものを近々のうちにまとめたいと思つております。それから都道府県の分につきましては、現在調査表を配付いたしまして、やはり同一な方法で以て全職員に当りまして調査をいたしておりますので、年内にはこれを作り上げたいと思つておりますが、差当つて手許には今ございません。
  49. 千葉信

    千葉信君 澤田君にちよつとお尋ねしたいと思いますが、さつきお話になつた二千九百二十円のときは二割、八千五十八円のときは四割というようなあれをもう一度御説明してもらいたいと思います。
  50. 澤田廣

    公述人(澤田廣君) 公務員と実は国鉄の分を比較しました際に、二千九百二十円で八千五十八円のときの号俸の割合を全部出したのであります。そのときには二千九百二十円と八千五十八円の割合では、細かく申上げてもよろしいのでありますが、大体最低が二割五分、二割五分といいますか、これは二十五割といいますか、二十五割八分六厘、こういうような数字が出ております。それで最高は二十八割が最高であります。これはそのときの号俸で行きますと、六千三百七円の場合は九千三百六円という号俸の人でありますが、それが八千五十八円になりますと一万二千九百円になります。その一万二千九百円のものが二千九百二十円ベースのときの割合にいたしますと、いわゆる二・八〇四、こういう数字になつて出て来ておるわけです。それを特定の数字を、これは特定の異例数字でありますから、一つだけでありますから、その中で大体平均しておりますのは二・七一七、これが当時一万二千五百円のものがそういう数字になつておるわけです。今申上げた二五・八六は当時の給料で三千七百五十円であります。八千五十八円べースのときにその割合がいわゆる最高と最低の割合が二割しか上つてない。いわゆる平均的な倍率上昇をしておる。それから人事院の今度の勧告で見ますと、大体これは等比級数の曲線で書いてありますから、大体順序に上つておるのです。ただ上りの工合が等比級数的に上級のほうに余計に行つておるその割合を見ますと、大体八千五十八円のときのベースの人で三割、四千二百円のものをとりますと三・三六になるわけです。それが先ほどの数字の一万二千九百円をとりますと三・七七一なのであります。四割の差が出ておるその他の数字も全部同じでありますが、四割になつておる。今度の政府のやつております割合を見ますと、これが非常に公表がおかしいのでありますが、政府案で現行をやりますと、現在のベースが三千七百五十円、四千百円でもいいのでありますが、四千百円をとりますと一・一八一しか倍率が上つていない。然るに一万二千九百円を先ほど例にとりましたからとりますが、一万二千九百円は一二・四でありますが、まあ現行になりますと相当給料が上りますが、最高は一三五・一とこういう数字になつております。そうしますと一割一分五厘として二割ここでも差が出て参りますので、人事院勧告よりは二割だけ余計に差が出て来ておる、こういう結果が出て来ております。一番下の切換えの割合は一割五分八厘が一番最低の場合人事院勧告ではなつておるようでありますが、一一五・八が一番最低であります。而もその一一五・八八も先ほど申上げましたように、現在の給料で行きますと、三千七百五十円から一万五百円、現在の号俸で行きますと、一万五百円までがいわゆる一割二分以下なんです。一割二分以下の倍率が適用されておつて、上級職に行くに従つていわゆる三割五分、こういうようないわゆる倍率の適用がある。でその差を先ほど申上げたわけであります。
  51. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは一言お礼を申上げます。  お忙しい中に早急のこの公聽会に御出席を頂いて、大変有益な公述をそれぞれ頂きましたことを有難くお礼を申上げます。  今まで給與問題につきまして、給與法に関連して参議院で公聽会を開いたことはなかつたようでございますが、このたび人事院勧告と、それから出て参りました政府案とを考えますときに、私どもは根本的に考えなければならん点もございますし、公聽会を開いて十分の御意見を承わり、審議の完璧を期したいと考えた次第でございます。それぞれ大変有益な公述を願いまして、我々の今後の審議に大いに寄與して頂いた点があつたと信じております。折角の公述を私どもの審議の上に反映いたしますように努力いたしたいと考えるのであります。有難うございました。お礼を申上げます。  ちよつと速記をとめて下さい。
  52. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて。それでは公聴会はこれを以て散会いたします。    午後三時三十四分散会