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説明員(
大澤實君) 第一号の「
制規によらない
給與を支給したもの」というのに関しまして御
説明を申上げます。
検査報告の二十九頁に書いてある点でございます。
各省各庁で
昭和二十三年の十二月十九日の
閣議決定に基きまして、
北海道及び東北、北陸、
山陰等の
寒冷積雪地に在勤する
政府職員に対しまして、
北海道に関しましては
特別俸という
名義で、そうして又
寒冷積雪地に在勤する者に関しましては
勤務地手当という
名義で、
実質上は
石炭手当又は
寒冷地手当というものを支給しているものがありまして、
検査院で調べ上げたところでは、その
金額が約九億四千万円ということに
なつております。この
特別俸とか或いは
勤務地手当という
名義で支給しました
石炭手当、又は
寒冷地手当は
法律にも
根拠がなく、
予算にも計上がないものであ
つて、こうしたものを支給するのには
立法の
手続を取ると共に
予算的措置を講じた上で実施すべきであろう。こう考えましたので、ここに正規によらない
給與を支給したのは妥当でないものとして
検査報告に掲げた次第であります。
尚
記述が
簡單に過ぎて或いはおわかりにならないのかとも思いますので、若干敷衍して申上げますと、先ず
北海道に関しまして申しますると、これは二十二年には特に
法律を出されまして、
北海道在勤者に対しまして
石炭手当を支給されたわけであります。越えて二十三
年度になりまして、それぞれ
関係方面その他に御折衝に
なつた
ようでありますが、それが容れられなかつたという
ような
関係もありまして、
石炭手当としての
立法措置、又は
予算措置というものが講じ得なかつた。そこで
特別俸を支給する、こういう
名義で
閣議決定によりまして特別な
給與を支給されたわけであります。その内容を見ますると、二十三年の四月に遡りまして
俸給を二
号俸から甚しいのは九
号俸まで一度に
引上げまして、そうして
最高金額は五千百何十円でしたかに抑えましたが、そうしてそれだけの
金額を十二月に一括して
北海道在勤者に
給與する、そうしてその
引上げの
給與が終りますと、又元に戻
つて元の
俸給に戻る、こういう
方法を取られたわけであります。そうしてこれを
特別俸という
名義で処置されたわけでありますが、
特別俸といいますのは従来の
観念からついたしましても、或いは特に職務上加俸を要つする者に
給與する、その
他動務の困難な者に
給與するという
ように
俸給に
一定の率を加えたものを定期に
給與しておるというのが従来の
観念における
特別俸であろうと思います。それを一挙に十二月におきまして四月まで遡
つて計算上の
特別俸、而も今までの
俸給昇級の例によらずに一度に二号から九号までの段階を飛び越えたものを計算されまして、一度に
支払う、その
支払が終ると又元へ戻る、而もその上増した分に関しましては、
恩給法、或いは
共済組合法、その他のいわゆる掛金などの引去りというものに対しては考慮していないということになりまして、結局名前は
特別俸ではありますが、
実質においては一時
手当を與えたものと何ら相違がない。こうした
特別俸は従来の
給與法規の予想しないところでもあり、又
予算にも何ら積算がないものでありますから、この支給は妥当ではないのではなかろうか、こういう
結論に達したわけであります。
次に
寒冷積雪地に
給與しました
寒冷地手当でもありますが、これは二十二
年度までは古い大正九年の
勅令四百五号によりまして、こうした特殊な場所に勤務しておる者に対しては、
一定の
手当を支給することができるという規定に基きまして出しておられたのでありますが、これも二十三年の十月にこの
勅令は廃止に
なつております。従いましてこの
寒冷地手当というものを支給する何ら
法令の
根拠がなく
なつたわけであります。そこでこれを
寒冷地手当としては支給できないので
勤務地手当という
名義で支給されておるわけでありますが、この
勤務地手当といいますのは、
政府職員の新
給與実施に関する
法律というのが二十三年の五月に
施行されておりますのですが、そこに謳
つてあります
ように、
勤務地手当は
生活費の高い特定の
地域に在勤する
職員に対して支給するのである。そうして
勤務地手当の
月額は、
俸給の
月額と扶養
手当の
月額との合計額に
一定の割合を乗じて得た額とする。こういう規定を置きまして結局この
勤務地手当というものも毎月コンスタントに
俸給及び家族
手当に
一定の歩合を掛けたもの、これを支給するのだ。こういうのが
勤務地手当の性質であろうと思います。そうしてこれを決定するのには一応
法律上は
地域給審議会というものの議を経て決定することに
なつておりますが、これができない間は結局
給與当局者、当時においては
大蔵省が決定されたということになるわけであります。それで結局
勤務地手当の本質は毎月コンスタントに
俸給及び家族
手当に
一定の比率を掛けたものという
ように解釈できまして、尚これに関しまする
勤務地手当の支給準則というものによりましても、
只今ありますのと同じでありますが、特地は三割、甲地は二割、乙地一割を支給するのであるというのが、
大蔵省給與局で決定されまして二十三年の十月に給発第七百二十七号というので各
方面に通知されておるのであります。でありますから、この新
給與実施法による
勤務地手当というものは、この範囲のものが毎月コンスタントに支給される。この支給準則に基いて交付されるものが
勤務地手当である。ところがこの
寒冷地手当の変形として出されました
勤務地手当は、確か九月から十二月の間におきましてそれぞれ
地域によ
つて違いますが、一割とか五分とかいうものを附加して、その
期間だけに支給されている。而もこれも先程申しました
特別俸と同じ
ように計算しまして、一括いたしまして十二月に支給されているという点から見まして、いわゆる新
給與実施法による
勤務地手当というものとは相当懸離れた、やはり一種の
手当ではなかろうか、
手当だとしますればその
法令の
根拠としまして従来ありました大正九年の
勅令第四百五号が廃止に
なつておる今日におきましては、この支給の法的
根拠がないのではなかろうか。又
予算にもそうしたものは組んでいない。以上申しましたところを総合いたしまして、結局この十二月十九日の
閣議決定に基いて
給與されました
特別俸及び
勤務地手当というものは
法律の
根拠のない、又
予算に積算ないものを支給されたのであ
つて妥当でない。こういう
結論に達したのであります。もとより当時の情勢としましてこうした
給與を支給しなければならなかつたであろうと思われる当時の社会情勢といいますか、そうした
関係は
会計検査院といたしましても十分に諒察できるのでありますが、
手続としては十分でなか
つたのではなかろうかと、こういうことが
検査報告に掲載された次第であります。