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1950-07-22 第8回国会 衆議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十二日(土曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 生田 和平君 理事 川本 末治君    理事 塚田十一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    河原伊三郎君       小玉 治行君    清水 逸平君       中島 守利君    野村專太郎君      橋本登美三郎君    吉田吉太郎君       龍野喜一郎君    鈴木 幹雄君       床次 徳二君    山手 滿男君       大矢 省三君    久保田鶴松君       立花 敏男君    米原  昶君       松本六太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         地方自治庁次長 鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁財         政課長)    奧野 誠亮君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         議     員 勝間田清一君         議     員 林  百郎君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方税法案内閣提出第一号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議開きます。  前会に引続き地方税法案を議題といたします。それでは本日は固定資産税に対する質疑を続行いたしまして、なお午前中に委員外の発言までやつていただく予定にしておりますから、どうぞよろしくお願いいたします。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 最初に伺つておきたいのは、昨日立花君からも聞かれたと思いますが、固定資産に関する調べの問題であります。この前の調査表と今度のこの調査表では少し数字が違つているようであります。ことに償却資産の面では、この前の調査によりますと一兆三千億という数字が出ておつたのでありますが、これが九千七百億だかに減つたようですが、これは一体どういう資産評価関係で減つておるのですか。
  4. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は昨日立花委員の質問の際に御説明を申し上げましたように、資産評価法の実際の進行状況がだんだん進んで参りましたので、それとにらみ合せて前回数字について調整をいたしたわけでありまして、資産評価法基礎によりまするものを、ここにとりまして書いたわけであります。
  5. 門司亮

    門司委員 資産評価法による基準だというお話でありますが、資産評価法は八月三十一日が期限であつて、これは任意に算定というか、評価をするようなことに相なつておりますが、今日まで政府にどういうこれの統計が集まつているか、その統計をまず示してもらいたい。
  6. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 その統計はただいまここには持つておりませんが、これは御指摘のように八月三十一日までに集まるわけでございますが、大蔵省の関係当局といろいろ連絡をして、すでに今日再評価を実施いたしておるものが相当あるわけでございます。こういうようなものの傾向から推定をいたしまして考え数字でございます。
  7. 門司亮

    門司委員 水かけ論になると思いますが、資産評価法云々ということを言われますと、さつき申したように法律は明らかに八月三十一日になつておりますし、さらにその後の集計は十月末、あるいは十一月でなければこれはまとまらないであろうということは、大蔵当局はつきり言つているはずであります。しかもこの前の国会大蔵大臣はつきりそういうことをおつしやつているのにもかかわらず、まだ資産評価集計が完全でない。完全でないというよりも届出がまだ終つておらない。事前にこれが推定されるということ自体が私はおかしいと思う。当局は單につじつまを合せるために、むりにこれを逆算して数字を合せたのではないかと思う。逆算すると実にこれはよくできております。大体目的の税額をとるようにできておりますが、数字だけを合せるというようなことでは、われわれ納得ができないのであります。ことにこの前の四月に提示されたものから見まして、非常に大きな開きを持つているというようなことについては、われわれはなかなか承服しがたいのでありますが、政府ほんとうに自信があつて、これをお出しになつておるのかどうか。
  8. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 御承知のごとく今回提案をいたしておる法案におきましては、二十五年度分の仮決定償却資産につきましては、仮決定の方法を採用いたしておりまして、その基準といたしまして、一つには減価償却基礎になる帳簿価格でありますとか、あるいは再評価をいたしたものにつきましては、再評価価格でありますとか、再評価を行わないものにつきましてはそれぞれの見積り価格、こういうものを抑えておりまして、こういうものが再評価限度額の百分の七十をオーバーしているような場合におきましては、いきなり帳簿価格なり、再評価価格なり、そのものを押えるような建前に変更いたしたわけでございます。そういうふうに変更いたしました関係から、資産評価法の規定による再評価実情とにらみ合せて、数字を策定いたしたわけでございまして、前回一般時価というようなかつこうによつて調整をいたしておつたような次第であります。
  9. 門司亮

    門司委員 問題はそこにあるのでありまして、法律にははつきり時価という文字を使つております。従つて資産評価が終りましても、やはりいろいろの問題がこの法律との間に必ず出て来ると私は考えております。一応資産評価届出が、全部八月末日に済むといたしましても、来年の一月一日に時価によつて算定いたしまする場合に、ただちにそれが認められるかどうかということについては、相当私は疑問を持つている。それにもかかわらず、いまだにこの届出も終らないうちに推定をするという政府の慧眼と言えば慧眼かもしれませんけれども、それまで政府は先を見越すだけの千里眼的な眼力はないと考えております。従つてこういうつじつまの合わない数字によつて税率をきめて行くということを確信の上で、政府はこういう統計表をお出しになつておるのかどうかということであります。
  10. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 数字の見方につきましては、どういう資料基礎にしてとるかということによりまして数字はいろいろ動いて来ると存じますが、政府といたしましては、先日来御説明申し上げましたような数字基礎にして推定をいたしておる次第でございます。
  11. 門司亮

    門司委員 これは結局水かけ論になると思いますが、国会のたびたび開かれるたびにこういうかわつた数字が出て来るということは、いかに政府確信がないかということを示すものと解釈せざるを得ないのであります。  その次にもう一つ聞いておきたいと思いますることは、今度の国会に、土地台帳法等の一部を改正する法律案が出て参つておるのであります。この内容を見てみますると、七條から十三條までが大体削除されておりまして、その他は「政府が」と書いてあるのが「登記所」になるというようなものであつて、大体経過的な字句が多いのでありますが、今までの土地台帳法あるいは家屋台帳法によりますると、土地評価委員あるいはその他の評価委員によつて、これが決定されたものというようなことになつて参つてつたと思うのでありますが、今度の土地台帳法によりますると、そういうことが一切削除されておりまして、大体土地賃貸価格というものに、非常に大きな変化が出て来るのではないかというふうに考えられるのであります。この法律に書いてありまする時価と、この土地台帳法改正に伴う今までの賃貸価格というようなものは、どういう関係を持つて来るのかお尋ねいたします。
  12. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この土地台帳法家屋台帳法の一部を改正する法律案を、今度の国会政府として提案をいたしておりまするが、この点の大きな改正の点は賃貸価格という制度を廃止するということでございます。この地方税法案におきましては、本年四月一日現在の賃貸価格というものを基礎にいたしまして、九百倍の倍率をかけるようにいたしておるのでございまして、賃貸価格が今後は存続しない。しかも土地台帳法等の一部を改正する法律案国会を通過して施行せられますと、賃貸価格制度は一応なくなることになるわけでございます。だからこの税法案におきましては、本年四月一日現在の賃貸価格というものを、一つの事実として押えておる次第であります。
  13. 門司亮

    門司委員 それで問題になるのでありますが、あの土地台帳法はこの地方税法施行の日から実施する、こういうことに大体なつております。そういたしますると、日本賃貸価格というものが一応消滅するような形を自然にとつて来ると思います。そうなつて参りますると、その時価というものはことしの四月の賃貸価格基礎にして、大体九百倍という数字が出て参つておりますが、この土地台帳法の一部修正によつて賃貸価格が一応消滅して参りますると、一体九百倍というのが時価になるかどうかということであります。今までは賃貸価格というものがありまして、これが土地の大体の価格標準になつてつた考えられますが、今度はそれがなくなつて参りますと、地方税法で定めて参りました九百倍というものが、大体土地時価算定基礎数字としていいか悪いかということであります。
  14. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 原則的には毎年一月一日の時価基礎にして調査をいたすわけでございまするが、本年に限りましては、土地家屋につきましては賃貸価格基礎にいたしまするので、年度当初の四月一日というのを押えて賃貸価格を見るようにいたしたわけであります。もちろん賃貸価格自身におきましては昭和十五年、昭和十七年当時の設定のものでありまするから、実情とは相当異なつたものであろうと存じます。そういう賃貸価格実情がはなはだしく違つておる点は、つまり現在の賃貸価格のままですと非常に数字が低いのでありまして、正確ではございませんので、これを九百倍といたしまして、その差異をより明瞭に浮かび出させました上で、来年度以降の時価をより正確ならしめる、こういう趣旨でございまして、この点はシヤウプ博士勧告の精神を、政府案といたしましてはそのまま取入れておる次第であります。
  15. 門司亮

    門司委員 税法自身につきましては、今の御答弁で大体いいかと思いまするが、実際の問題といたしましては、高い安いは別にいたしまして、一応賃貸価格というものがあつて、これが土地あるいは家屋算定基礎数字というようなことが一応考えられておつた。その数字をとつてのけてしまいますると、勢いこの税法できめられた価格というものが、基礎価格にならなければならない。そういう場合が必然的に来年起つて来る。そのときに、このきめられておりまする九百倍という倍率は、実際の今日の時価とは非常に大きな開きが出て来る。これは御存じたと思う。一体今の賃貸価格の九百倍しておる土地がどこにあるかということであります。おそらく日本でこれがあるということを決定づけて、統計表はつきり表しておりますものは、平均いたしまして東京は九百倍を少し越えておる程度が、われわれの手元に持つております資料であります。大阪においても最高はわずかに六百六十六倍というような数字出して来ておる。そのほかの町村に参りますと、大体二百五十倍から三百倍くらいしかしていない。これは賃貸価格が安いとか高いとかいうことは別にいたしまして、今日土地を売買いたそうとするならば、大体そのくらいの標準時価しか出ない。にもかかわらず、これを九百倍ということに法律できめて、こういう時価ということになつて参りますると、著しい土地の値上りをここに必然的に来すようになつて参りまするが、これに対しては政府はいかがお考えになつておるかどうか。
  16. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは税法上先ほど申し上げましたような趣旨から九百倍という倍率を用いておるわけでございまして、それがただちに時価に反映して行くというふうには考えられませんで、来年度以降におきましては、そういうものを一応の参考にはいたしますけれども、真に客観的な時価算定して定めて行く、こういう建前にいたしておるわけであります。
  17. 門司亮

    門司委員 そうするとこう解釈してよろしゆうございますか、ことしは大体九百倍にしておくが、来年は時価でやるということに……。
  18. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 その点は、来年は最初の納税につきましては、九百倍の倍率によりますもので一応税をとりますけれども、最終の納期までに、すなわち九月三十日までに時価土地家屋につきましても客観的にきめまして、それに基いて最後の清算をするように提案いたしております。
  19. 門司亮

    門司委員 その点ですが、一方土地台帳法改正とこれとが並行して行われるところに、そういう大きな一つ問違いが出て来るのじやないか。従つてもし政府ほんとうにこの税法で正しい税額を把握しようとするならば、まず先に土地台帳法七條から十三條までを一応けずつて、そして賃貸価格をなくして、時価算定はつきりした上に立つて、この税法をきめておきませんと、先ほど鈴木さんも言われましたように、いろいろ税を取り過ぎたら返す、あるいは税率考え直さなければならぬというようなめんどうな問題が必ず出て来ると思う。従つてこの土地台帳法を変更すると同時にこの税法施行するということについても、政府考え方と私どもとはまつたく違つておりますが、政府はこれをやはり同時に行うべきものだというようにお考えになつておりますか。
  20. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 それは一つの御意見だと存じまするが、政府といたしましては土地家屋台帳法改正いたしまするのは、従来地租なり家屋税なりの課税標準といたしまして、賃貸価格基礎にいたしておつたのでございまするが、この地方税法施行ということに相なりますれば、時価基礎にいたすことでありまするから、従つて賃貸価格制度は不必要になるのでございまして、そういうことから両者相関連をしておると存ずる次第であります。従つてこれは同時に施行することが適当であろうと、かように考えておる次第であります。
  21. 門司亮

    門司委員 これは最後には水かけ論のようなことになると考えるのでありますが、そういう点でこの法律に書かれておりまするいわゆる価格の適正な時価というものについての算定は、非常にむずかしい問題であると同時に、もう一応念のために聞いておきます。はつきりのみ込めなかつたのでありますが、今度きめられた九百倍が、一体政府ははたして適正な時価だというようにお考えになつておるかどうかということであります。これは一方に賃貸価格が廃止されて参りまして、少くとも税金はこれが適正な価格であるとしてかけられて参るのであります。政府がもし、賃貸価格の九百倍が必ずしも適正な時価でないということをお認めになり、先ほど私が申し上げておりますように二百五十倍あるいは三百倍くらいしか実際の時価というものがしていないのだということをお認めになるといたしますならば、九百倍というのはいわゆる時価より非常に高い不当なる課税標準になつておるということに、われわれは解釈しなければならぬと思いますが、その点はどういうお考えをお持ちになつておるのですか。
  22. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 シヤウプ勧告におきましては、御承知のごとくこの倍率を一千倍にいたしておるわけでありますが、政府といたしましてはただいま御指摘がございましたようないろいろの点も愼重に考慮いたし、かつ関係方面とも連絡をいたしました上で、千倍を九百倍に改めまして、大体この程度で、個々の具体の場合につきましては御指摘のごとく、いろいろの事態があるかも存じませんが、全体といたしましてはまずこの辺で行くことが、現下の段階ではやむを得ないところであろうと、かように考えております。
  23. 門司亮

    門司委員 政府は何かというとすぐシヤウプ勧告だとお言いになりますが、シヤウプ勧告の一番しまいに、これは非常に短かい期間であつたから十分研究してもらいたいということが、確かに私は書いてあつたような気がするのです。だから必ずしもシヤウプさんの勧告案を、そのまま取入れなければならぬというほどのものではなかつたのではないかというように、われわれは考えておりますので、これもあまりシヤウプさんだけをここに引合いに出されるというようなことは、私ども非常な迷惑をするのであります。  その次に聞いておきたいと思いますことは、例の土地台帳といいますか、ここに書いてありまする具体的の、これを算定いたしまする一つ基礎として定められております地積図であるとか、あるいは住宅関係地図であるとかいうようなものを、実際上備えつけなければならない、こういうふうに書いてあるのでありまするが、現在の市町村で、政府一体どのくらいの規模のものをこれに御要求をされるつもりであるか。
  24. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 地積図とか、家屋見取図というようなものを、当初から完全なものを整備いたすということを御心配せられておるかと存じますが、やはりなかなか困難であろうと存じます。そこでこれは逐次漸を追うて完全なものにして行かなければならないと存じます。しかし土地なり、家屋なりの時価の測定というもの、また課税客体の捕捉というものを正確に適確にいたしまするためには、やはりこのような制度を併用して行くことが適当であろうと考えておる次第であります。
  25. 門司亮

    門司委員 もちろん私は、これは適当だと考えておりますし、またなければならないと考えております。しかし実情というものは、現在日本市町村で、私どもが必ずなければならないと考えておりまする地積図というようなもの、いわゆる六万分の一の地図というようなものを、一体どのくらい市町村は現在整備されておるか。また同時に、これを各日本町村に全部整備させようとすると、どのくらいの費用と、どのくらいの時間がかかるかということについての政府のお見通しがございますか。
  26. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは精密なるものを一時に整備するということになりますと、非常に多くの経費と、また労力とを必要とすると存じますが、先ほども申し上げましたように、漸を追うて行くべきものであろうと存じます。これに対します費用は、やはり徴税費というようなことで、今後も逐次整備するように、平衡交付金等算定等につきましても考えて行きたい。かように考えておる次第であります。
  27. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、この法律で定めております地積図、その他のいわゆる固定資産算定基礎になるべき台帳というものの製作は、相当遅れるものだというように解釈してもさしつかえございませんか。
  28. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 直接の今の各種の課税対象でございますが、こういうものは土地なり、家屋に関しまして、すでに従来の地租なり、家屋税課税上の必要といたしまして、いろいろの資料があるわけでございまするから、政府といたしましては相当の努力を要するとは存じますけれども徴税当局といたしましては、これを整備することは困難ではない、かように考える次第であります。
  29. 門司亮

    門司委員 それからもう一つ土地の基本的のことで聞いておきたいと思いますが、これはこの法律にあります、いわゆる三百四十一條の七項にありまする、今度の土地台帳法改正に伴いまして、従来政府に登録されましたものが登記所別にこれが登録される。しかもその場合に、登録されたものに記載された時価が大体これの標準になるようにここには書いてあるのでございます。いわゆる「土地台帳の副本にこれに記載された土地価格を登録した帳簿をいう。」というように書かれておるのでございます。いわゆる土地課税台帳あるいは家屋課税台帳というものが、こういうものできめられると私は考えられております。この土地価格というのは、一体だれが定めて掲げられるかということであります。従来は賃貸価格でありましたから、一応それで算定ができたのでありますが、この新しい土地台帳法によつて価格を記載しなければならないと書いてあるのでありますが、この価格はいつ、だれが記載するかということを伺いたい。
  30. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これにつきましては、固定資産評価員評価をいたしましたものにつきまして、それを基礎にいたしまして、市町村長価格決定し、その決定された価格を記載することになつております。
  31. 門司亮

    門司委員 先ほど申し上げましたように、市町村のこれからできて参ります評価員が査定して、これを書くということになつて参りますると、おそらく相当な日にちと相当な努力が必要になつて来る、こういうふうに大体考えられるのであります。従つてこれがただちに来年度——ことしは賃貸価格倍率が高いとか安いとかいうことは別にいたしまして、一応賃貸価格というものがあつて算定基礎があつたのでありますが、これがなくなつて、そしてこの法律による価格を記載したものが、これの基準になつて来るということになりますと、この問題は至急にこれを記載する、あるいは価格決定しなければならないというように考えるのでありますが、政府見込みは、これが来年の徴税に間に合うようにできる見通しをお持ちになつておるかどうか。
  32. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 新しい制度移りかわりでございますから、なかなか困難な点もあろうかと存じますが、各市町村といたしましては、自己の徴税の問題でございまして、これをとるかとらないかによつて市町村の行政がサービスが行えるか行えないかということでありますから、やはりあくまでも努力いたしまして、公正に、公平に課税をいたしますための基礎資料というものは整えてもらえるものと、かように政府考えておる次第であります。
  33. 門司亮

    門司委員 徴税費用が非常にたくさんいるということは、きのうでありましたか、おとといでありましたか、実は東京都においても徴税のために千人の人間を雇えば、一億の徴税費がいるということを言つておりましたが、徴税費以外に、先ほど申し上げました地積図製作費とか、あるいは評価員といたしましても、この法律には一人しか書いてありませんので、おそらく補助員がこれをなさなければならないと考えておりますが、それらの人員の増加というものは、地方自治体の中に一体どのくらいお見込みになつておるかどうか。
  34. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今一応の計画といたしましては、これは先般大臣からもお話申し上げたと存じますが、大体府県市町村を通じまして三万人ぐらい、徴税費として、大体六十億ぐらいの額を見込んでおります。今のいろいろの地積図費用等も、もちろん含めて考えております。
  35. 門司亮

    門司委員 これは何と言つていいか、私どもには形容のしようがないのでありますが、御存じのように市町村だけでも一万二百幾つかあるはずであります。それに県が四十六ばかりあります。それに一体三万人の人間をふやして、一つ町村で三人平均ずつ人間をふやして、これだけの仕事ができるか。もしこういう固定資産税というものが、この法律に定められておりますように、地積図あるいは住宅見取図とかいうような、やかましいことがたくさん書いてありますが、さらにこれの価格をごく近い、少くとも来年の予算編成までには、これを全部仕上げなければならないということになつて参りますと、一つ町村平均三人ぐらいの吏員をふやして、これが徴税史をかねてというようなことで、一体でき上るかどうか、ここに非常に費用を要すると私は思うのであります。従つて町村におきましては、おそらく増税になつておりまする分よりも、こういうものをこしらえることのために、多額の費用を使わなければならないじやないか。従つて必ずしもそのままの姿で、これが税收増加にはならぬと思う。政府一体この三万人の人間で、ほんとうにそういうことがやれるとお考えになつておるかどうか、また実情一体そうであるかどうか。
  36. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 従来府県税等徴收につきましては、市町村がこれの下働きというような形で、相当程度助力をいたしておつたわけでありますが、今回のこの法案建前といたしましては、一応府県府県独自の徴税機構を整備いたしまして、それから市町村の方は市町村としてまたこれを独自に置く。こういう建前にしておりますので、市町村の従来の徴税吏員というものは、府県税の徴收のために食われておつた部分の手がすいて来るわけであります。そういうようなことをあれこれ考え合せますると、ところによつては多少の違いがあると存じますが、一般論といたしましては、こういう程度のことで何とかやつて行けるのではないかというふうに考えております。
  37. 門司亮

    門司委員 どうも政府がそれでおやりになるということになればやれるかもしれませんが、それでは今の自治庁の役人の方々にやつてもらうことにしましようか。現在地方の都道府県並びに市町村におきましては、先ほどお言いになりましたように、県税と市税、あるいは町村税が一緒であつたということを言つておられますが、これは附加税でありましたために、あるいはそういう手数が一つになつてつたとも考えられます。これは何も従来は別々のものを扱つてつたわけではありません。従つて下部組織といたしましては、これをこの法律のままに施行するといたしますと、現在の市町村徴税吏というものが倍にふえなければならない原則になつて来るのであります。いわゆる県税をその通りにとろうといたしますると……。従つて私はもしそういうことが議論になりますると、ひとつ聞いておきたいと思いますが、各都道府県一体どのくらいこの税法改正のために人員を雇い入れておるか。これはおそらく今でもおわかりになると思いますので、一応おわかりになつておれば、この際御報告願つておきたいと思います。
  38. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今逐次府県にも異動がございまするので、適確なる数字は私ども今ここに持ち合しておりませんが、大体府県といたしましては、二千ないし三千ぐらいあればできるのではないかと考えております。
  39. 門司亮

    門司委員 そうすると、一つ府県で二千人、三千人雇つておりますと、一道一都二府四十二県でありますか、これだけで勘定して三万人になるかどうか。そのほかに町村が一万いくらあつて政府の予定いたしておりますように、三万人の人間をふやしてこれで足りるということは、数字つじつまが合わな過ぎると思います。
  40. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今二、三千人と申しましたのはへ都道府県を通じての話であります。先般ここで確か占部参考人から、先ほど門司さんの御指摘になりましたような数字をお述べになつたと存じますが、私どもといたしましては、先刻来申し上げておりますように、大体三方というような大づかみの数ではございますけれども、そういうようなことでやつて行けるのではないかというふうに、期待をいたしておる次第でございます。
  41. 門司亮

    門司委員 ではその点は一応いいとしておきまして、さらに資料に基いての質問をもう一点いたしたいと思います。この資料に基きますると、償却資産課税標準に対しまする把握率が相当少く見積つてあるようでありますが、この前出されました資料によりましては、大体課税額の把握率は五二%というように書かれておつたのでありますが、今度はそれが多少緩和されて参つておりまして、ややそれだけのパーセンテージというものがふえておるように、数字の上では見ることができるのでありますが、どうして政府はこの課税額をこういうふうに低く見なければならないかということの説明を、一応しておいていただきたいと思います。
  42. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 把握率と仰せになりましたが、私どもといたしましては、この基本になりまする課税の客体を押えまして、それから免税点でございまするとか、そういうようなものを差引きまして、そして出て参りました課税標準に対しまして税率をかけ、土地家屋につきましては、今年度は大体これを九〇%だけ徴收できる。一〇%は来年にまわつて行くと、こういうような考え方にいたしております。償却資産につきましては、昨日来いろいろ申し上げましたように、今年度に関しましては、建前がかわつて参りましたので、そういう意味の数字基礎にいたしまして算定をいたしまして、しかも大体資産評価の額の限度額の七〇%を基礎に押えておりまするから、そこで三〇%だけはその基本の額から落ちて来るわけでございます。それに対しまして償却資産の方は、大体現下の経済情勢から考えまして、今年度は八〇%ぐらいの徴收歩合で、二〇%は来年度に持越すであろう、こういうところで計算をいたしておる次第であります。
  43. 門司亮

    門司委員 今鈴木さんのお話のように、前の資料は五二%を大体把握しておる。今度は七〇%を把握しておるということでありまするが、これは統計表にそういうふうに数字が出ておりますが、一体どういうわけでそういうふうにこれがかわらなければならないかということであります。前に五%の把握しかできない、捕捉しかできないというお考えであつたものが、今度一体七〇%、これの捕捉ができるというふうにお考えになつておることは、一体どこに基準を置かれたか。この点をもう一度お伺いしておきたいのであります。
  44. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは少し議論になつて恐縮でございますが、一応の課税対象がきまつておりまして、そのきまつておりまするものをどの程度実際課税できるかということでありますると、把握率あるいは捕捉率という観念にあるいはなるのではないかと存じまするが、政府として今提出しておりまするこの資料は、先ほど来申し上げましたように、償却資産に関しましては、本年度は仮決定の方法と同時に、評価の方針を前回提案いたしました案と変更いたしましたので、そういうようなことで、基本になります額が九千七百億になりまして、これを大体限度額考えますると、これの三〇%落しましたもの、すなわち七千二百億弱のものが課税標準である。こういうふうに考えた次第でございます。
  45. 門司亮

    門司委員 これは討論になるようでありまするが、私はその考え方は非常に違つておるのじやないかと思う。われわれにはつきり言わせまするならば、少くとも課税標準になるべきのもに対しては、これの捕捉はやはり一〇〇%すべきではないか。そしてそれによつて税率を一応考える。さらにその次にここに書いてありまする徴税率につきましては、おのおのの見方は多少私は違うと思います。徴税が百パーセントできるとはわれわれも考えておらない。しかし少くとも税を課税いたしまする基本になる基本額が定まつて参りまするならば、これに対しまするところの捕捉というものは、百パーセント捕捉をして税額をきめませんと、ここにさらにこれに三〇%落しておるということになつて参りますると、捕捉された七〇%というものは、三〇%だけ高い税率がかけられておるということが言えるのであります。いわゆるここに税金の山がけがあるということをはつきり言わなければならない。もし市町村が、この法律で定められておりまするから、自分の市町村内にありまするこの課税標準になつておりまするもの、いわゆる課税額として当然捕捉できるものを、七〇%しか捕捉しないということになつて参りますると、一体どうなるかということである。おそらく私は市町村はそういう不公平な取扱いはできない。市町村内にありまするものに、やはり全部に一応課税するという建前は私は正しいと思う。もしこれにただちに全部に課税して参りまするならば、それは税金がやはりここに三〇%落してありまするならば、税金でやはり三〇%よけいにとり過ぎるという形が必然に出て来る。少くとも国民の今日最も心配しておりまする税金でありまする限りにおきましては、これの徴税の公平と課税の公平を期しようとするならば、やはり課税標準に対し、課税額に対しましては、これを百パーセント捕捉して、そうしてもしこれの勘案の余地があるとすれば、私ども徴税率の面で考えることは一応了承できるのでありますが、この課税額に対する今の答弁の三〇%を落したという答弁には、私は承服しがたいのであります。これはどうしてもそれだけ課税率が高くなつておると私は考えるが、政府はこれが正しい課税額とお考えになつておるかどうか。
  46. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 門司さんのお考え課税の対象を百パーセント捕捉するようにすべきであるという点につきましては、私どもつたく同感でございまするが、ただここで出しておりまする数字は、なぜ三〇%落しておるかと申しますると、これは今回提案をいたしておりまするこの法律案におきまして、限度額を目途にいたしまして、限度額の百分の七十を下ることができないと規定をいたしておりまするので、そこで三〇%落すだけの理由があると考えまして、落してある次第でございます。
  47. 門司亮

    門司委員 私はそれは政府のと言いますか、役所の行政の事務上のものの考え方でありまして、実際上はここに三〇%落されているだけの税率というものは支拂う者が高い税金を支拂わなければならぬということに相なつて参るのであります。これは事実上そうなつて来る。一体国民にこれだけ高い税金をかけることがいいか悪いか。私どもは、少くとも税金を国民が納得して納めるようにいたしまするには、やはりできるだけ公平にして、できるだけ担税能力に即応したものに仕上げなければならない。しかるに統計表と言いまするか、調査表を見て参りますと、いわゆる所要額に合せてこれを逆算して来て、この数字出してあるようにしかわれわれには考えられない。こういうような税の査定方法というものについては、もつと政府考えてもらいたい。ここに税金のいわゆる山かけの大きな原因があつて、これを除去しない限りにおいては、納税の円滿な遂行はできないと思う。これは平田さんもおいでになりますが、国税においてもおそらくこういうことが考えられているのではないかと思う。従つて税金が百何十パーセントとれたというような不都合なことが出て来るのではないかと思う。こういう点は特にわれわれの承服しがたい点であります。これは三百五十條に表われて参つておりまして、所要額の五百二十億を上まわる、あるいは下まわるというような言葉になつて表われたと私は思うのであります。一体法律建前として、税金を徴收いたしますることのために、目的税額に達するか達しないかわからない。もしこれを上まわる場合には税率を下げる。もし下まわる場合においては税率をもう少し上げるんだというような不確実な、不確信課税方法をなさいますと、課税する方はそれでいいじやないかというようなお話になるかもしれませんが、課税される方はかなわぬのであります。税金が少ければよけいとるぞ、多ければ来年度は少し税率を減らしてやるというようなものの考え方で、このせち辛い世の中に税金をかけられて、国民が納得できるかどうかということです。この点は政府一体どういうお考えでこういうことをなされておるのか。
  48. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 再評価関係は大蔵省で所管してやつておりますので、御参考までに少し申し上げたいと思いますが、今門司さんのお話の気持は私非常に賛成でございます。ただ再評価限度額というのが一体どんなものであるかということと、ことし暫定的になぜ七かけくらいのところで仮評価をした方がいいかというようなことにつきまして、少し御参考までに意見を申し上げてみたいと思います。  限度額というのは、御承知の通り取得年次別に取得価格をもとにしまして一定の物価指数、倍率でかけて出しております。従いましてこれはある意味から行きますと、相当荒つぽい標準になるわけであります。もちろん各資産ごとに、でき得る限り妥当性をはかるべく、それぞれ違つた指数を用いておりまするし、いろいろ調整は加えておりまするが、完全なものがなかなかできにくい。しかしながら再評価関係におきましては、御承知の通り強制ではございませんで、最高限でその限度以内で各企業がそれぞれ自分で責任をもつて妥当なところでやることになつておりますから、私どももある程度むしろ簡易なそういう方法で限度額をきめた方がいいという趣旨でつくつておるのであります。従いまして限度額出しました固定資産償却資産の現在価格というものが、はたして時価に一致するかどうかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題で、私は簡單にそうは言えぬと思う。今のお話は、限度額がまさにあるべき時価に一致するという前提に立ちますと、お話まことにごもつともな点が多いと思うのでありますが、その辺がなかなか違う場合があるのではないか。そういうことがございますから、従いまして、ことしの仮評価におきましては、やはり七かけ程度を一応基準にするのが妥当ではあるまいかという考え方で、暫定評価としては七かけを適用することになつておるわけであります。もちろん七かけを一応最低限にいたしているわけでありますけれども、実際問題としてはその前後できまる場合が多いのではないかと考えております。しかしことし市町村評価に着手いたしましてやるといたしますならば、御承知の通り償却資産時価評価というのは一番むずかしい問題で、これは今後もなかなか困難な問題が多いと思うのでありますが、本年度としましてはこのような行き方が一番実際的でいいのではないか、このように考えるのであります。私専門的に考えましても、減価償却資産の適正評価ということは、今後におきましてもむずかしい問題で、簡單に時価が幾らであるべきかということは、なかなかむずかしい問題でございます。むずかしい問題でございますが、税の建前上はやはりこういうものを取入れまして課税した方が妥当であるということは、理論的にはそういうことになりますので、こういう固定資産税になつておるわけでありますが、今年の評価といたしましてはこのような評価をする。そういたしますとやはり見積りといたしましても、一応今自治庁で立てておりますような見積りをやるというのが、今年としましては妥当ではないか。ただ来年以後さらに市町村は手をかけまして、ほんとうにあるべき適正な評価をして行くということになりますが、その際はそれに応じましてさらに必要な調整を加えるということになつておりますし、償却資産の実際の評価の手続その他から申しますと、今回の提案みたいな行き方がいろいろ研究しました結果、一番穏当な行き方だろう、従いまして見積りもこういう案によりますと今の見積りが妥当ではないか、このように考えておるわけであります。
  49. 小野哲

    ○小野政府委員 ただいま門司さんから第三百五十條の問題といたしまして、固定資産昭和二十五年度分の取扱い方についての御意見を拝聽いたしたのであります。御説のようにこの條文によりますれば、二十五年度における取扱いとしては、予定税收額五百二十億円を目安として取扱いをいたすことになつておるのでありますが、ただいま主税局長からも説明を申し上げましたように、償却資産評価の取扱いにつきましては、相当この條項に基きまして彈力性のある運用ができると考えておりますので、ただいま主税局長からの答弁とも考え合せまして、御了解を願いたいと思うのでございます。
  50. 門司亮

    門司委員 今主税局長からもお話がございましたし、それから次官のお話もございましたが、これも水かけ論になると思いますが、しかし私どもから言わせますと、こういうきわめて不安定な資料出して、さらにきわめて不安定な法律を定めなければならないというようなことをやめて、むしろもう一年待てば的確な時価とは言い得なくても、一応資産評価もでき上るでございましようし、そうして日本償却資産というものが、ほぼ明確につかめる時期はそう遠い期間ではないように思う。一体何を好んで税の混乱を導くような、こういうことをされるのかということでございます。私どもは、もしこういう決定がなされるとするならば、それは一応先ほど申し上げましたように、課税額というものについてはこれを一〇〇%把握して、それから徴税額を八〇%なら八〇%見たものによつて税額を定めて行くということが私どもは一番正しいのではないかと思う。そういたしますと、むろん政府考えておりますような、百分の一六、あるいは七というようなかたい数字は出て来ないと思いますが、そういうことによつて国民の負担を理論上どこからも文句のないようにして、最低限度にとどめて、そうしてなおかつ税が目的に達しなかつたような事態がありますならば、そのときこそ初めて税率の変更をすべきであつて、当初から三割だけは落しておいて、その上に高い税率をかけて行つて、それがもし取れ過ぎたら困るというようなこと、こういうあいまいな、多ければ減す、少ければ多くするのだというような不見識な法律をこしらえることは一体どうであるか。従つて私の聞いておきたいと思いますことは、この政府の出されております参考資料、私は数字は必ずしも正しいとは思いません。わずか三箇月か四箇月ばかり前の数字は一兆三千億と書いてあつて、今度の数字は九千七百億しか書いてありません。あまり開きが多過ぎますので、この数字は何も私は正しいとは思つておりませんが、それにいたしましても、先ほどから私が申し上げておりますような考え方で、最小限度の税率と言いますか、九十三億の所要額をとるといたしましても、かりに前の数字で一兆三千億がとれたとするなら、この税率というものは百分の一でもとり過ぎるのではないか、むしろ百分の〇・九くらいでやれば所要額は目的を達するのではないか、なおこれは八〇%の徴税数を見てもそういうことが考えられる。徴税の技術から申し上げましても、できるだけ税率を下げて、そうして徴收額を広く見積ることの方が適切であり妥当であります。税率を高くしておいて、納められないものをたくさんこしらえて、そうして徴税額を低く見るというようなことは非常に苛酷な取扱いを納める者だけが受けるというような、ちようど現在非常にやかましく言われますようなことに相なると考えておりまするので、税法建前といたしましては、課税額に対しましてはこれを一〇〇%捕捉して、そうして税率をできるだけ下げて納税の公平を期するということでなければならない。こういうふうに考えておりますが、この私ども考え方に対して政府はどうお考えになつておるか。
  51. 小野哲

    ○小野政府委員 ただいまお話がございましたように、税制全体として考えますと、できるだけ低い税率でとるということがひとつ考え方であると私も考えます。しかしながら、先ほどからるる御説明申し上げましたように、今回の固定資産税の取扱い方につきましては、その算定基礎もかわつて参つておりまするし、またこの固定資産税の運用に当たりまして、いろいろと御審議に相なりましたような結果に基きまして検討の結果、かような措置をとることといたしたのでございまして、私どもといたしましては、二十五年度分の固定資産税の取扱い方として、これが適当なものであると考えておる次第でございます。
  52. 門司亮

    門司委員 あまり長くなると時間がございませんので、その問題はそれくらいにしておきましよう。  その次に聞いておきたいと思いますることは、昨日もたしか立花君から聞いたと思いまするが、三百四十四條、三百四十五條であります。使用者に課する固定資産税というのがありますが、こうなつて参りますると、所有権というものの所在がはつきりしなくなつて参るのであります。これは市町村税でありますことのために、市町村の所有しておりまするものについては、大体税金がかからないようになつておる、ところが市町村の持つておりまするものに税金がかからぬからといつて、そこに住んでいる者に税金をかけて行くということは、これは所有権との関係一体どうなつておりますか。
  53. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 使用者課税の問題でございますが、所有権は長期にわたる地上権、永小作権というようなものを持つておりまする場合と違いまして、單なる賃借権というものを基礎にいたしまして、そういうものに対して課税をするというのは、御指摘のごとくこれはあくまでも例外的措置でなければならぬと私ども考えております。ただ全体の問題として、今日まで使用者課税制度も運用されて参つておりまするし——将来の問題として私ども研究いたしたいと存じておりまするが、今日の段階といたしましては、やはりおおむね従来と同様な形でこれを存続して参りたい、かように考えております。
  54. 門司亮

    門司委員 私の聞いておりますのは所有権との関係であります。もしこういうものが必要だとするならば、当然これは賃貸借の価格の中に織入れて行つた方が妥当ではないか、そうしてとるといたしますならば、おのおのの所有権者からこれを徴收する方法を講じた方が、まだ妥当ではないかというように考えておるのでありますが、この点はどうお考えになつておりますか。
  55. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは御指摘のごとく当該市町村の收入となるべきもでのございまするから、使用者に対して使用者課税として考えておりまする程度の金額を、さらに使用量にプラスいたしまして、それをもつて税に代替するということも考えられると存じます。そういうような建前をとりまするならば、減免なり非課税というようなことを並行して考えるべきであろうと思います。
  56. 門司亮

    門司委員 さらにその次に聞いておきたいと思いますることは、償却資産の問題であります。私は小さな店舗の機械設備というようなものが相当問題になつて来ると思う。免税点はなるほど書いてございますが、この免税点というものが非常にむずかしい問題になつて参りまして、たとえば一万円ということが限定されて、そうしてこれが総合して三万円ということになるといたしましても、これの算定というものは私は非常にむずかしい問題になつて来ると思うのであります。ことに機械、器具との関係でありますが、通称私ども考えて機械と目されるもの、いわゆる固定した一つのものでありましても、非常に価の安いものもありますし、それから移動するものとして通常器具だと考えられているものでも、相当な価格を持つているものがあります。この見わけはどういうふうにされるつもりであるか。
  57. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 償却資産の対象として考えておりまするのは、法人税なり所得税なり減価償却基礎になつておるようなものを考えておるわけでありまして、こまかいものにつきまして一々これを押えて行くということは適当でないと考えております。
  58. 門司亮

    門司委員 そういう抽象的なことでなく、もう少しはつきりきめておいてもらいたいと思うのであります。免税点を三万円といたしておりまするが、この三万円の免税点というものはどの範囲のものが、この三万円の中に含まれるか。この前の委員会でのお話によりますと、大体償却資産と申しますのは、一つのものの価が一万円くらいで三年以上の貸與年数を持つものを一応償却資産として見たいというお考えのように、私ども承知いたしておりますが、もしそうだといたしますならば、それのプラスされたものが——たとえば一万円のものが三つあれば三万円としてお考えになつておりますか。
  59. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今お話のありました、前回国会において政府側から御答弁を申し上げましたその考え方は、もちろん今日もかわつておりません。そういうような運用方針で参りたいと存じまするが、そういうものは一応免税点とは別個に考えて参りたいと考えております。
  60. 門司亮

    門司委員 もう時間がございませんので、一応その程度にしておきまして、税の総体の問題について、ひとつつておきたいと思うのであります。結論としてお聞きをいたしたいと思いますことは、この固定資産税徴收について、先ほどからいろいろ質問を申し上げましたように、非常にむずかしい状態が必ず起つて参るということは、土地台帳法改正されて、賃貸価格が一応なくなつた場合に、この時価がこの法律によつて当然登録されなければならない。従つてこの時価の登録というものが評価員の登録であるのか、あるいは個人の登録でいいのか、この点をひとつもう一応聞いておきたいと思います。
  61. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは先ほども申し上げましたように、市町村評価員評価をいたしまして、それを市町村長に申しまして、市町村長市町村として最終的にきめるわけであります。しかしこれにつきまして異議その他がございますれば、固定資産評価審査委員会にかけまして、そこでこれをきめますし、それでもなお不服がありますれば、訴訟という手続があるわけでありまして、そういうふうにして最終的にきまりましたものが、価格ということで登録されることになるわけであります。
  62. 門司亮

    門司委員 これはちよつとあげ足をとるようですが、従来の土地台帳法の中には、そういう資産をきめる委員会というものが、たしか十一條でありましたか十三條かに書いてあつたように私は記憶いたしておりますが、実は七條から十三條までが廃止されて参つておりまして、地方における評価委員というものはなくなるように今度の新しい改正法では書かれておる、こう解釈しておりますが、今のお話では評価員がこれを定めるということですが、土地評価委員というものは今度の法律でなくなると考えております。その点間違いではないでしようか。
  63. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 お話のように、土地台帳法等におきますそういう制度は今度なくなるわけでありますが、地方税法案自身におきまして、固定資産評価員、及びこれの補助員というのを置くことにいたしております。これが今の仕事を担当いたします。それから固定資産評価審査委員会というのは、三人の委員をもつて構成する審査機関でございまして、これは各市町村に置くようにいたしております。この二つの機関が今の評価に直接的に関係のある機関になるわけでございます。
  64. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 米原君。
  65. 米原昶

    ○米原委員 門司委員からこまかい点の質問があり、また時間の制限がありますから、基本的な点だけについて簡單にお尋ねいたします。  固定資産税の性格の問題でありますが、シヤウプ勧告案によると、これは財産税的な意味を持つているというようなことが強調されていると思うのです。日本の税制は所得税と間接税が非常に重い。これに対して財産税的なものをかける必要があるという点と、それから再評価によつて法人税が非常に軽減されるので、この過大再評価を防ぐ意味と、この二点が大体書いてあると思いますが、そういう財産税的な意味のものであると解してよろしいのでありましようか。
  66. 小野哲

    ○小野政府委員 お説のように、固定資産税は財産税の性格を持つているものでございます。
  67. 米原昶

    ○米原委員 そういう解釈だとしますと、実際に私もシヤウプ勧告案の基本的な精神はそういうものだと思いますが、個々の点は別としまして、この法案で実際にかけられようとするところの固定資産税の意味が違つて来ているのではないか。それは昨日から問題になつている都営住宅の利用者から家賃をとると同時に、その人間から家屋税をとるというような形をとつていることは財産税とは言えない。收益税的な意味を持つて来ると思う。それからたとえば事業資産にだけかける。そうしてたとえば写真なんかには全然かけないというような点から言つても、これは財産税的な性格を失つているのではないか。また今も問題になりました地租、家屋税ですが、これが一率に賃貸価格の九百倍という形で基準がきめてあるのです。賃貸価格というものが基礎になつている。つまり家主や地主の收益に対してかけるというような意味を、これでは形の上では持つて来ている。そこにはずいぶん矛盾がありまして、今も指摘されましたが、たとえば山林なんかは時価賃貸価格の千五百倍から千六百倍くらいになつている。これに対して農地や宅地は、農地なんか二百倍から八百倍程度、宅地は四百倍から五百倍くらい、こういう点で非常に差異があつて、そこにこの税をかけて行くと、不均衡な点が現われて来るわけであります。賃貸価格というものが基準になつて一率に九百倍かける、こういうような形で、とにかく形の上では明らかにこれは收益税的な意味を持つて来ている。こういう点で非常に矛盾があると思うのですが、こういう点についていかが考えておられるか、見解を聞きたいのであります。
  68. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。私はただいま固定資産税は財産税の性格を持つていると、こういうふうに申し上げたのでございますが、これをさらに学問的に検討いたしますと、ただいま御指摘なつたように直接の財産課税たるものと、あるいは收益的な性格を持つているものとにわかち得るのではないかと思うのであります。これらの点につきましては、なお詳細にわたつて鈴木政府委員からお答えをいたしたいと思います。
  69. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 都営住宅その他に対する課税の問題でございますが、この点は先ほどもちよつと申し上げましたように、使用者課税につきましては、私どももこれを当然、将来永久にやつて行くべきものであろうというところまでは考えておりませんで、やはり御指摘のような点もあろうと存じます。それで将来の問題としては、私どもといたしましてもさらに研究を進めて参りたいと存じますが、目下のところは従来ずつとやつて参りましたことでございますので、いましばらくこれを原則として行きたい、かように考えている次第でございます。
  70. 米原昶

    ○米原委員 最後に結論的に聞きますが、結局私も單なる理論的な意味だけの問題でなくて、これは実際的な意味なのですが、実際には本来財産税的な意味を少くとも持つているだろうと思います。ところがこれが大企業とか大所得者に対しては、むしろ收益税的な意味を持つている。そうしてわずかな土地やわずかな家を持つている小所得者に対しては、むしろ財産税的なものになる。こういう点で非常に苛酷なものになつている。ここに今申しました一率に土地賃貸価格の、時価の九百倍にする点の不均衡、こういう点がはつきり現われている。このかけ方といたしますと、山林主に対してはむしろ有利、小さな農地や宅地を持つている人、小さな家を持つている人に対しては財産税的な意味を持つている。この点を是正しないと非常に不公平な税金になる。資本主義的な意味から言つても、むしろ財産税的な性格をつらぬいて行くのが本来の形だと思うのであります。富裕税でとられているとおつしやるでしようが、富裕税は少くともそういう意味を持つているから免税点が五百万円となつている。ところがこれでは総合して三万円を免税点、この点から非常に苛酷なものになる。これではうまくないのであります。そういう意味を下の方では持つている。上の方では單なる收益税的な意味を持つている。それが再評価委員会において、すいぶん先ほどから委員から矛盾がつかれましたが、でたらめな再評価が行われる危險性もある。そういう点でこれは非常に不均衡な、不公平な税金になつて来ると思うのであります。この点について今後どういうふうにされるか。一応見解を聞いて私の質問を終ります。
  71. 小野哲

    ○小野政府委員 ただいま御指摘のように財産税的なものであつて、財産税としての性格を持つているということを申し上げたのでありますが、これを巨細に検討いたしますと、收益的な要素も多分にある。しかし一面財産課税の性格にすべきは別途、ただいまあなたが御指摘になりましたように富裕税の制度も行われているのでありますが、これらの今後の問題といたしましてはなお十分に研究をいたしまして、すつきりとしたものになるように、一層の努力をいたして参りたいと考えております。
  72. 大泉寛三

    ○大泉委員 今の答弁に関連して……。ただいま米原委員の質問に対して財産税的な性格を持つているということを答えられましたが、財産ということはもちろんそれだけの価値がまず第一條件になければならない。これはその固定資産が他の借入金によつて購買されるとか、あるいはまた担保にこれを借りるとかという場合、資産としてはいわゆる債務を負うている場合は、これは資産の価値はないわけであります。そこで必ずしも私は財産税という意味でなくして、その支配権とかあるいは所有権の立場において課せられるものと思うのであります。財産税的な性格が全面的に入つているとは私は思いませんが、この点はどうなのですか。
  73. 小野哲

    ○小野政府委員 お説のように、私が申しましたのは財産税的な性格を持つているけれども、これを巨細に見ますと、收益的な要素も多分にあるというふうな御答弁を申し上げたような次第でございます。従つて固定試算の利用性あるいは処分性というふうなものが、やはり考慮に置かれなければならない場合が起つて来る。かように考えております。
  74. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それでは固定資産税に対する質疑は一応終了といたしまして、この際お諮りいたします。議員井出一太郎君、議員勝間田清一君、議員林百郎君より、それぞれ委員外の発言を求められております。これを許すに御異議ありませんか。
  75. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議なしと認めて、三君の発言を許すことにいたします。発言は一人三十分以内にお願いいたしたいと存じます。まず勝間田清一君よりお願いします。
  76. 勝間田清一

    勝間田清一君 予算委員会からの申入れによつて委員外質問を許されたことを感謝いたします。  まず第一に大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、昨日有力な意見が実は出ておるのでありますが、これに対して大臣はどういうお考えを持つていらつしやるか、その点をお尋ね申したいと思います。
  77. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいまの勝間田さんの御質問でありますが昨日以来重大なる意見が出ているという抽象的の御質問でございますが、内容はどういうことでございましようか。
  78. 勝間田清一

    勝間田清一君 いわゆる修正の意向といたしまして、附加価値税を昭和二十七年一月一日まで延期する。それから固定資産税についての税率を一・七を一・六にするというような修正を行つたらどうかという有力なる意見に対しては、いかようにお考えになつていらつしやいますか。
  79. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 その点につきましては、各党の代表者が関係方面に行かれて、そういうようなことを承わられた。私もその席へ列席しておりました。同時にその以前に関係方面からお呼び出しを受けまして、自治庁長官としての意見はどうかというようなことも聞かれておるのです。それに対して私はもし各党がそういうような御意見であつて関係方面でそれがいれ得るということならば、異存はない。こういう意思を表明しております。
  80. 勝間田清一

    勝間田清一君 各党がそういう意見であるということは、どの範囲をさしていらつしやるか。
  81. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これは衆議院において、とにかく国会の運営上、衆議院の修正として通過するだろうというような意味の範囲における各党と存じます。
  82. 勝間田清一

    勝間田清一君 そうすると通過するような見込みのある案には賛成するが、見込みのないような場合には賛成できない、こういう意味になりますか。
  83. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私の立場といたしましては、いつも申し上げております通り、政府出しますところの案と申しまするのは、これはいつも最良の案と考え出しておる次第でございます。しかし国会には自主権がございまして、御審議を願つておることは、すなわち国会において政府の案にいかなる御意見がまとまるであろうか、その御意見に従つてわれわれはどうにもなると考えておる次第でございます。すなわち案は一応政府案として出しましたけれども、立法権は国会にあるのでございますから、国会でもしそういうような御修正をなさるならば、政府国会の立法権に何らの干渉もいたしませんことはもちろんでございますし、御意思のままに執行機関たる政府の責務の万全を盡してやつて行きたい、こういう趣旨から先ほど御答弁を申し上げた次第でございます。
  84. 勝間田清一

    勝間田清一君 地方税法案は前の国会から非常な重大問題になつており、今日のこの国会政府の意向によれば、地方税の改正が中心であるように、それほど重大な問題として考えられておる。それから今日まで政府は非常な確信をもつて進められて参つたのであります。しかしながらこの審議の過程において非常な時間を要したために、地方財政は非常な困難を来しておるのでありまして、その意味におきましては、従来の政府のとつて来たこの地方税に対する態度というものは、非常に重大なものであつた考えるのであります。それが今日に至りまして、一野党の考え方からこれが重大な点で変更を加えなければならぬという事態に立ち至つたことに対しては、私は政府の責任というものはきわめて重大であると考えるのであります。そうして今日まで国民をいろいろ指導して来た、輿論を指導して来た政府の責任というものは、きわめて大事なものだと考えるのでありまして、この際にあたつて私は国務大臣はこういう情勢に立ち至つたことに対して、従来の案なり、努力なりについて十分でなかつた、その点においてまことに欠くる点があつたということが、はつきりわかつたのではないだろうかと考えるのでありまして、これに対して大臣はいかなる責任をお感じになつていらつしやるか、この点をお尋ね申したいと思うのであります。
  85. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 政府といたしましては、この案は現段階において最良の案という考えで提出いたしておるのでございまして、たびたびこの席上並びに参議院の委員会におきましても、われわれ並びに政務次官、事務官の方から御答弁申し上げておりますように、一応はこれで通していただきまして、そうしていろいろ御議論もございますし、また御不満の点もある、こういつたことがございますれば、次の国会並びに次の次のの国会でも、いつでも十分なる検討を加えた上で、これを修正して行こうという意思を表明しておる次第でございますから、今日の段階において、客観情勢から判断して、政府ができる限りの力を盡してできた案であるということを私は確言いたします。
  86. 勝間田清一

    勝間田清一君 しかし大臣は非常に努力をして来た案であるから、これは最高の云々と自画自讃をされますけれども、審議を今日まで遅延せしめて、地方財政を今日の困難に陷れて、結局確信があるという政府の案に、重大な今度のような事態が引起つて来たということに対して、これを結果から見れば、これは確かに客観的に言えば、政府の従来の努力がきわめて足りなかつたということがはつきりして来たのではないだろうか、私はさように考えるのでありまして、自分が努力をしたしないという主観的な観察でなくて、国に與えた政治的責任というものから見て行つた場合において、私は政府の責任というものは、おおうべくもないと考えておるのでありまして、この点について再度お考えを伺いたいと思います。
  87. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は先ほども申し上げましたように、政府の責任としてはあらん限りの努力を盡してやつた考えるのでございますから、一応政府の責任は十分果したと考えておるのであります。先ほどから申し上げましたように、この案はもし国会が自主権を発動されて、そうして大多数をもつて修正をするということになれば、国会法並びに憲法の條章に従いまして、それに服従しまして、そうして立法なすつてけつこうだ、こういう立場にありますから、その点は政府の責任とは別の問題のように感じております。
  88. 勝間田清一

    勝間田清一君 そうすると政府はこれに対しては、政府の修正案として出す意思はなくて、委員会なり、野党なりの修正案としてこれを出していただくことを希望するわけでありますか。
  89. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私は希望するせんということよりも、今までの情勢におきますれば、国会において修正をした方がよいだろうというような御意向のようでございますから、政府の修正案として出す意思はございません。皆様方の御意見が御一致した点においてお出しになつて、もし通過すれば、その修正に従つて私は執行機関として十分この法案の円満なる実施が行えて行くように努力したいと存じております。
  90. 勝間田清一

    勝間田清一君 いかように答弁されても、二百七十名の大多数を占めておる與党の背景をもつていたしましても、今日まで長い間国民に御迷惑をかけたこの地方税法案というものが、今日こういつた事態に立ち至つたことに対しては、日本の憲政の上から見ても、それから現在の政党政治の上から見ても、きわめて脆弱である、きわめて無能であるというような点が私はひしひしと感ぜられるのでありまして、その意味において、もつと真に見識を持つてつていただきたいと私は考えるのであります。  次に大臣にお尋ねをいたしたいと思うのは、この地方税法案というものができて、千九百億の税收をそこに得て行こうと言われるのでありますが、一体この基本になつておりますところの国民所得というものを、どういうようにおつかみになつて、この千九百億というものをここに出されたのであるか。その点についてまず第一にお尋ね申しておきたい。
  91. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 その点につきましては、いろいろ詳しい資料をもつて御説明申し上げなければならないと存じますから、事務官をもつて御説明申し上げます。
  92. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これはそれぞれ委員の方に提出いたしてございます資料でおわかりいただけると存じまするが、それぞれ案本なり、大蔵省なり、その他政府部内の関係のある各種の権威のある数字をできるだけとつております。
  93. 勝間田清一

    勝間田清一君 この法案を提出した当時における国民所得と、最近における国民所得の推計との間には、相当開きが現にできつつあるのではないでしようか。その点についての御意見を承りたいと存じます。
  94. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。経済事情の推移によりまして、御指摘のようなことが考え得ると存ずるのでございまするが、昭和二十五年度におきまする地方財政計画は、御承知のごとく総合的に勘案いたしまして立てられておるのでありますので、地方財政の現況から考えますと、この程度の税負担は、国民負担としてやむを得ないものであろう、これによつて地方の財政の自主性が確立されることによりまして、わが国の民主化は促進されるものである、かように考えておる次第でございます。
  95. 勝間田清一

    勝間田清一君 そういたしますと、政府の方の答弁では、国民所得は減るということを認めてはおるが、この程度のことは、地方自治制度の確立のためにやむを得ないということを言われましたが、そういうことになりますると、結局当初考えていたよりも、この千九百億の收入というものは国民に対しては、重税となる。少くとも負担が当初よりも重くなるという考えになつておる、こう考えてよろしゆうございますか。
  96. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。勝間田さんも御承知のことと存じまするが、税制の改革は、国税と地方税とを通じまして、国民負担の問題を考えなければならないと存じます。従いまして、現情勢下におきましては、この程度の負担は、地方財政の確立の点から申しまして、お願いをしなければならないと考えておる次第であります。
  97. 勝間田清一

    勝間田清一君 必要なる額から行けば、この程度の税收は確保したい、こういう希望からおつしやつておられる。その点を私は聞いておるのではなくて、担税能力という面、すなわち国民所得の面から見て考えて行く場合においては、当初よりも今度の方が重くなる、こういうふうに考えてよろしゆうございましようか。
  98. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。私は地方税の関係から一応申し上げたと御解釈になつておると存ずるのでございまするが、私が、経済情勢の推移から考えてと申しましたのは、もちろん現在の国民生活におきまして種々負担のありますことは、否定しておらないのでございます。しかしながら、ただいま考えておりますような昭和二十五年度の予定税收額をあげる限度におきましては、なお国民諸君におかれまして御負担を願い得るものであると、各種の資料から判断いたしまして考えた次第でございます。
  99. 勝間田清一

    勝間田清一君 非常に抽象的な御答弁でありますが、趣旨は大体わかるような感じがいたしますが、そういう面から見たならば、当然住民税などのようなものについて、去年の所得の一八%というようなものでとつて行くという考え方が、住民税の重要な一つ基礎になつておりますが、そういう考え方からいつて、現在の日本の所得の構成というものを今後見て行くことになりますと、そこに住民税における非常なむりが生じて来るのではないだろうか、こういう点を考えて行かないと、国民に対する負担というものについて私は非常に過酷なものがそこに生じて来るように考えるのでありますが、この点に対する政府のお考えはいかがでありましようか。
  100. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。市町村民税が所得額によつているということは、特に前年の所得に基きまして算定をされているということは、御指摘の通りでございます。その結果、経済事情の推移あるいは国民生活の実態の変化に伴いまして、倒産をいたすようなものも起つて参りましようし、あるいはまた失業の苦況に立たれる方々も出て来ることは、想像にかたくないのでございます。地方税は、御承知のごとく地方団体が相当大幅な財政自主権のもとに運用され得ることになつておりまして、これらの地方住民の生活実態の様相は、地方議会の上に十分に反映され得ることと考えておりますので、これらのただいま申し上げました例から考えまして、さような事態が起りました場合におきましては、この税法におきましても、あるいは減免の措置をとることにいたしまして、生活の実態に合うようなぐあいに税法の運用ができるような道を開いておる次第でございます。
  101. 勝間田清一

    勝間田清一君 そういうような経済の状態のもとに今後進んで行くことが予定されておるのでありますから、そういう意味から考えて行きますと、やはり千九百億という收入というものを得て行く、すなわち交付金なり、その他の予算の修正なしに千九百億の確保をやつて行くということを前提においての修正というものは、現在の日本の国情から見まして、これは意味が非常に薄いものである、こういうふうに考えて行きますから、この地方税の修正ということがまず問題になるならば、私はやはりこの予算の修正を行うべきが当然だと考えるのでありますが、大臣はいかがにお考えになりますか。
  102. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は新聞紙上で伺つたわけでありますから、実相は存じませんけれども、今度の二修正で、ことに第二の点におきまして約三十億の減收になる、こういうことを伺つておるのであります。と申しますと、三十億はそれだけ減税に向うのではないかと想像いたしておる次第であります。この点で御了承願います。
  103. 勝間田清一

    勝間田清一君 今国務大臣は重大な発言を行われたのであります。ここで、いわゆる一・七が一・六に下つて来ることによつて、三十億程度の減税が行われるということではないかということを言われました。これはただちに予算に関する修正の問題に関連して来ると私は考えるのであります。今の国務大臣の答弁は私は重大な答弁と考えておりますので、ここで修正を行うものと、大臣はお考えになつておると考えてもよろしうございますか。その点をあらためてお尋ね申したい。
  104. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。修正を行う意味じやなくて、自然の結果としてそういうふうに減税の結果が出て来る、こう私は考えておる次第であります。
  105. 勝間田清一

    勝間田清一君 そうなりますと、たといわずか三十億でありますが、大臣の発言であると私は重要だと思う。千九百八億という地方税の問題について、それが行われる基礎といたしまして、平衡交付金のいわゆる千五十億円というものが決定を見て、衆議院の通過を見ておるわけでありまして、これは予算編成そのものに関連をいたした問題であります。そこでいわゆる一・七が一・六になつて、三十億減税になるということになつて行きまするならば、これは当然に予算修正を行うべきであります。それをごまかして行くという態度でありますならば、今の大臣の発言は非常に重大な問題でありますので、お取消しを願わなければならぬ。しかし一・六になつて三十億減税になるという御発言でありますので、私はここで予算修正を政府は行う意思であるというふうに解釈してよろしうございますか。
  106. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これは千九百億から減るんじやないのでございますから、その点は御了承願います。
  107. 勝間田清一

    勝間田清一君 そうすると、一・七が一・六になつて三十億減税になるが、千九百億は減税にならないということは、一体どういうわけでありますか。
  108. 小野哲

    ○小野政府委員 私からもお答えをいたしたいと存じますが、二十五年度における地方財政の千九百億の予算を考えておりますことは、財政計画上から申しまして、何らかわりがないのでございます。ただいま三十億というお話が出ておりますが、一応そういうふうな考え方ができるのでございまするけれども、ただいま御指摘になりましたように、固定資産税の二十五年度分につきましては、相当彈力性のある措置がこの法律案によつて講じ得ることになつておりますので、従つてその税收見込額とかね合せて一月中に税率の変更をもなし得る道があるのでございますので、これらの新聞紙上で伝えられておりまする修正の御意見は、おそらく支障はない、こういう考え方で伝えられておるのではないかと私は思うのでございます。従いまして結果に基いてこれらの点については議論をいたすべき問題であろうと、かように考えております。
  109. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の次官の答弁は非常なごまかしな答弁だと私は思います。その三十億が出て来るということであれば、その三十億があるいは固定資産税評価の点において、あるいは今まで考えたよりも評価を余分に見るとか、あるいはどうするとかいう基礎が出て来ないと、今まで御説明になつたあらゆる資料が無になる。先ほど来固定資産税評価についていろいろの議論かあられましたが、それが無になつて来る。そこで一・七が一・六に減つた場合においては、どこでどういう財源が出て来るのか、それをはつきりと示していただかないといけないと思う。その点ひとつ御答弁を願いたい。
  110. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の二十五年度の固定資産税の仮税率を一・七から一・六に落した場合におきましては、政府がただいま各委員のお手元に差上げております数字基礎にして算定をいたしますれば、御指摘のごとくこれは約三十億減つて参ります。しかしながら、もしも総体として五百二十億とれませんければ、来年の一月において、その点を勘案いたしまして税率を変更し、来年の十二月にこれを調整して清算納付し、あるいは還付する、こういうことになるわけでございますが、ただ先刻来御論議になつておられます政党方面の見方によりますれば、私どもつておるところでは、三十億減税にならないで五百二十億とれるものである。こういうようなお考えのように拝承いたしておりますので、そういう見地に立ちますならば、千九百億という数字並びにそのもとになつております五百二十億という固定資産税税額には変化がないものであろう、かように私どもは了解をいたしておるのでございます。
  111. 勝間田清一

    勝間田清一君 非常に不可解な議論でありますが、そうすると結論から申しますと、一・七が一・六になつても減税にらないというように考えてもよろしゆうございますか。
  112. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私どもが差上げております資料数字を、そのまま基礎にして申しますならば、三十億減ると存じますけれども、政党方面で御審査になつておりまして、先ほど来いろいろ御意見もございましたように、償却資産等の数字は少いというような御意見でございまして、そういうような御意見を基礎にして今の一・六で算定をいたしますならば、五百二十億とれることも可能でなかろうか、かように考えるわけであります。
  113. 勝間田清一

    勝間田清一君 そうすると、結局資料の議論ということになるかもしれませんが、国民の税を拂う側から行きますれば、某政党と言われますけれども、某政党の考えておるようにすれば、一・七を一・六にしたのはごまかしであつて、やはり五百二十億とれるのだ、だから少しも減税にならないのであつて、新聞で見て国民は、やれこれは安くなつたのだと思つたことは実は間違いであつた、これははつきりして来るということになろうかと思うし、また政府の今の御答弁から考えて行きますと、私の方の資料から行けば三十億減税になるということになると、それに対しては歳入欠陥で行くつもりなのですか、あるいは他の面で補つて行くつもりなのですか、その点をはつきりさせてもらいたい。
  114. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は固定資産、ことに償却資産の見方の問題だと思うのでございまして、先刻来の御主張の数字基礎にいたしますならば、もしも一・七ということでとりますと、三十億だけよけいとるということになるわけでございますが、それを一・六にいたしますれば、ちようど政府が予定をいたしております五百二十億ということになるわけでありまして、要するに実質的にはやはり〇・一だけ下げた減税になることになろうと存じます。
  115. 勝間田清一

    勝間田清一君 大体わかりましたが、そこでもう一つお尋ねしたいと思いますのは、政府はあの当時、いわゆる税法が通らない当時においては、現行法をやはり持続するという政策をとつておけば、こういつた歳入欠陥は生じなかつたわけでありますけれども政府の責任においてこの重大な歳入欠陥が起きておる。そのために今度政府のお考えによりますれば、第一、第二・四半期において約六百五十億円でしたか、六百五十億の平衡交付金の繰上げ支給というものをやつていらつしやる。それと同時に、短期の融資をやつて、この際に地方税の救済を一応やつて来た。こういうことになろうかと思う。そういうことになつて参りますと、私が一番心配をいたしますのは、今後地方税の納期の状態から見ますと、下半期にそれが全部しわ寄せされることに相なると私は思う。下半期にしわ寄せされて行くということと、もう一つ、先ほど来お話を申し上げました、また政府もお認めになりました今後の日本の国民経済の所得の推移というものから考えて参りますと、下半期においては税の非常な困難が生ずると私は考える。国民はここで、早く申せば徴税によつて国税からも、地方税からも非常な吸い上げを受けることになろうかと思う。特に最近の一、二箇月間、さらに最近の一、二週間と見ても明らかであります通り、国税等の收入から見ますと、七月の一日から七月七日までの一週間の收入は、国税の徴收額でも約二百億くらいになつておる。従つてその他のものをずつと見ますと、非常な政府の引上げ超過ということになつております。最近の三千百億前後の通貨量というものも、非常に重大な危機に立つておるという状況に私はあると思う。そういう国民経済の今の動き、国民所得の減少、政府の引上げ超過、これに向つてさらに下半期において、地方税がしわ寄せされて行くことになりますと、私は日本の中小工業者及び農民に及ぼす影響はきわめて大であると考える。これに対して政府は何らかの処置なしには、私はできないはすだと思うのでありますが、この点についてのお考えをひとつつておきたいと思います。
  116. 小野哲

    ○小野政府委員 お説のように、地方税法案施行がずれて参りましたために、後半期における徴税上のいろいろな問題が起るであろうということは想像にかたくない。従いまして、政府といたしましては地方団体において、これに対処するいろいろの方法を考えまして、これを実施するように助言、慫慂いたして参つておるのであります。同時に国税との関係におきましては、納期の問題等もございまするので、納税者のお立場をも考えまして、これらの関係調整して参りたいと思つておるような次第でございます。さような諸種の手段を講じまして、納税者の各位にも御協力を願い、また徴税の面におきましてもくふうを凝らし、両々相まつて、円滑な実施をして参りたいと念願している次第であります。
  117. 勝間田清一

    勝間田清一君 国税との間の調整あるいはその他との調整と言われますが、もう少し具体的に、国民がもう少し安心するように、下半期からの調整については、こういうような手段を講じて、こういうようにひとつ国民の負担を軽減さしてやりたい。その具体策をひとつはつきりここでお示しを願いたいと思います。
  118. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今年度の下半期にかぶさつて参ります徴税上の問題でございまするが、これはもとがとにかく地方団体の税でございまするから、地方団体自身が大いに積極的に創意とくふうを凝らして、この調整が円滑に参りますように努力してもらわなければならぬ、こういつたような現在までの段階におきまして考えられておりますことは、あるいは納税準備預金でございまするとか、あるいは自主的な納税者の協同組織のようなものでありまするとか、あるいは納税証券と申しまするか、そういうような仕組みをそれぞれ各地方団体におきまして考えておる所があるのでございまして、こういうようなことを今からやつております所では、割合にスムースに行くと存じますが、その他の地方団体につきましても、今後の全体の徴税上の計画を立てまして、できるだけでこぼこのないように、円滑に徴收ができるように、私どもといたしましては指導して参りたいし、地方団体といたしましても、先般来の各地方団体長、地方議会議長等の決議を見ましても、納税につきましては万全を期するという覚悟を期しておるようでございまして、政府といたしましては、協力一致して参りましたならば、地方税であるだけに、それだけ国税の場合よりも上り円滑に行くのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  119. 勝間田清一

    勝間田清一君 お聞きしてみると、何らの政策もないようでございますが、逆に私は、積極的にこの政策をとらないと、特に徴税力の弱い市町村であるだけに、さらに私は重大な問題が多いと思う。納税の貯金をさせたり、いろいろさせたりするということだけでなくして、政府がひとつ積極的な政策をとるべきだと思う。それについて何らお示しにならないことは、私は非常に残念に思います。ひとつお尋ねいたしますが、たとえば今短期の融資が出ておる。一体これを引き伸ばすか、あるいはこれに対する利子の補給とか、こういうようなことをする意思がありませんか。そういう点についてはつきりお尋ねしたいと思います。
  120. 小野哲

    ○小野政府委員 お答えを申し上げます。御承知のように、地方団体に対しまして政府から短期融資の措置をとつておりまするが、その引上期間等につきましては、地方団体の財政の状況と考え合せまして、むりのないようにいたして参りたい。この点につきましては、大蔵省とも十分に協議をいたしておる次第でございます。またこれに関連いたしました利子の負担の問題でございまするが、これに対しましては、政府としては地方団体の財政の状況と照し合せまして、財源的な措置をも考えて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  121. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 勝間田君、三十分過ぎました。早くお願いいたします。
  122. 勝間田清一

    勝間田清一君 それではごく簡單に……。私委員であれば、後ほど修正について議論になるときが一番いいと思うのでありますが、それができませんから、少し政府の意向を聞かしていただきたいと思うのであります。先ほど野党なり與党、また政府も加わつて、非常な有力な意見を聞いたわけでありますが、その中で附加価値税というものを、もう一年間延期する。それからさつき言つた固定資産税はどうも減税になるかならないかわからない、これはなつても三十億だというような程度の状態になつておる。その二点を考えて行つた場合において、住民税、固定資産税及び事業税というような形になるわけでありましようが、この関係に私は大きな変化があるべきはずだと思う。例のいわゆる住民税において、たとえば法人割を下げて、そうして人頭割あるいは所得割というようなものに、主として住民税をかけて行つているという一面がなぜ行われたかということを質問すると、他面においてそれは附加価値税がかかつておるからであるという説明をされている。あるいは先ほどお話がありました通りに、資産割というものをふやして行つた場合に、なぜこれを減らしたかと言うと、これは固定資産税がかかつているからだ、こういう説明をされておる。ところが今度変更になる附加価値税のもう一年間の延期というような要素を加えて考えて行きますと、私は今度の地方税の体系、なかんずく住民税に対して大きな変化がなくしては、これは行い得ないはずだと思う。すなわち税体系から見ましたならば、私は当然住民税に手をつけることなしには、附加価値税にも手をつけられないし、同時に固定資産税についても手をつけられないと思う。そういう考え方から見て、今度附加価値税を延期して固定資産税を若干さらにこれを云々するという立場があるならば、私は政府は当然住民税に対して修正を加えて行かなければ、この税体系というものは今までの原案よりもむしろ反動的になる。むしろ勤労大衆に余分にかかつて来る形になる。こういうふうに機構上アンバランスが出て来ると思うのであります。この点についてひとつ深甚な考慮をしてもらいたいと思いますが、一体大臣は、この大きな変化に対して、この税の構成上、なかんずく住民税のとり方に対して大きな変更をする必要があるのではないかと思いますが、この点についてのお考えはつきり聞かせていただきたいと思います。
  123. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいま問題になつております修正案のことでございますが、これは国会独自のお立場で御修正をあそばすのでございますから、もしそれが国会の御意思として通過いたしますならば、当然われわれは考えなければならぬことと存じます。しかし修正案がまだ上程されておりませんし、通過もいたしておりませんから、ただいま御答弁申し上げる限りではございません。
  124. 勝間田清一

    勝間田清一君 だから最初から私が申し上げました通り、大臣もきのういらつしやつたわけであります。もしそういう案が出て来るということでありまするならば、そこまで考えて行かないと、今の体系はくずれてしまうのみならず、非常な反動的なものになつてしまうのであるから、住民税に手をかけない附加価値税だけを延期するといつたような政策というものは無意味である、むしろ反動的である。こういうように考えるのでありまして、この点はひとつ大臣の御答弁がなければ、後に各党で御修正になるときに、私は真剣に考えていただきたいと思う。  以上希望を申し上げまして、私の質問を終ります。
  125. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 林百郎君。
  126. 林百郎

    ○林百郎君 私も二、三点お聞きしたいと思うのでありますが、先ほど勝間田君の質問に対して、岡野大臣は、政府原案は一番正しいのだ、それから最良の案だと確信しておるという御答弁があつたのであります。そこでこの地方税法国会における審議の経過を顧みてみますと、これは各党から修正の意見が出ておつたのであります。これはもちろん国会の外におきましても、各業界から附加価値税、あるいは固定資産税評価あるいは税率について、大きな希望なり意見があつて、それが国会に反映されたことは明らかであります。あなたの所属する自由党からすら中島試案なるものが出されたことは、大臣も御存じの通りだと思うのであります。そこでもし政府にして、最も民主主義的な観点から、この地方税を取扱うということになりますれば、この地方税の修正についてはできるだけの努力をすべきものであるというように私考えるのであります。そこでこの原案より、ある程度このたびの案については修正が加えられたのでありますが、しかしこれに対して三党協同の形でさらにこの修正が許されたということに対して、政府はもう一層の努力をなぜされなかつたのか、その余地がなかつたのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思うのであります。
  127. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。政府努力いたしましたのは、たびたび申し上げました通りに、できる限りの努力をいたして、この最良の案、いわゆる現段階における客観情勢上から一番いい案に落着いた、こう私は考えておる次第であります。
  128. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、その後修正案がさらに出るということが可能になつたということは、客観情勢の変化があつたということにわれわれは解釈していいかどうか。
  129. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。客観的の情勢があつたかどうかは私の関する限りでございませんで、国会の御意思がそういう方向に向つてつて、そういうことになつたと私は了解いたします。
  130. 林百郎

    ○林百郎君 国会努力がもしこうした形で許されるというならば、政府もここまでのことはなし得たと思う。それが政府でここまでの修正案を提出するという形でなくして、国会から修正を出すという形になつた、この問の経緯を政府はどう考えておるのか。もし各党の共同の修正案というものが出し得るならば、政府はなぜそこまでなし得なかつたのか。またもう一つ、もし政府はただいまわれわれの審議にかけられている案が最良の案だというように考えられるならば、この自由党、民主党から出される修正案についてはどういう欠点があるのか、政府の案が最善ならば、その案はどういう欠点があつていけないのかという点を、政府みずからの責任において答弁を聞かしてもらいたいと思います。
  131. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。どこまで行きましても、これは見解の相違だと思います。政府といたしましては、今でもやはり政府考え得る限りにおいて、一番いい案だと考えております。しかしながら先ほどもたびたび、また今までたびたび申し上げました通り、立法権というものは国会にあるのでございますから、たといその案がよかろうが悪かろうが、国会のきめたものに対しては、政府は服従して執行権の責任を果す、こういうような立場をとつておる次第であります。
  132. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、政府の案が最善の案だとすれば、これ以外の案は最善でない、政府の案より悪いとはつきり言つてもらいたいと思う。そう解釈していいのかどうか。
  133. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。民主主義政治と申しますのは、国民の意思が一致してできたものが一番いい案でございますから、政府はいつも国会の意思を尊重しまして立案をいたす次第でございますけれども、しかし立案者といたしましては、今まで一番いい案と考えておつた次第でございます。しかし今度修正されたものがいいか悪いかでなくて、よくても悪くても、国民の意思を反映して、国会が一致し、もしくは絶対多数でこれが通過したということになれば、国民の意思が反映してできた法律でありますから、その善悪ということは問わないで、民主主義的に、国民の意思に沿うて、政府は執行機関として国会の御意思通りに責任を果したい、こう考えておる次第であります。
  134. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、政府の案が最善だと思うが、国会から出されたものは、いい悪いの批判の余地なくして、政府はやらなければならないのだ、執行の責任があるのだ、というようにお聞きしておきたいと思うのです。  そこで私としては、そうした執行の責任を負うとすれば、政府原案に比べて、もうこれは現実の問題としてここ二、三十分を出ずして、修正案はここに上程され、おそらく仄聞するところによれば、多数をもつて通過すると思いますが、これに対する政府の意見というものはないのかあるのか。あなたが政府原案が絶対に最良だと言うならば、その修正案については政府の見解があつてしかるべきだと思う。最善だと信ずるならば、その最善なる標準に比べて、この各党の修正案なるものに対する政府の見解あるいは意見なりを、ここで述べられるならば述べてもらいたいということを私言つておきたいと思います。
  135. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 通過するかしないかは未定の事実でございます。通過した上で、すべて政府はそれに対する見解を考うべきものだと考えます。
  136. 林百郎

    ○林百郎君 結局これはいくら議論しても限りありませんから、次の問題に移りたいと思いますが、そこで先ほど岡野国務大臣の話によりますと、もしこの修正案が通るとすると、政府の提供してある数字からいうと、三十億減税になるというのでありますが、この三十億の減税は千九百億のわくの中でまかなわなければならぬ。要するに千九百億のわくはかわらないのだというような見解でありますが、そうすると、この三十億はどこへ転嫁されて行くか。どこかへ転嫁をされなければ、これをまかなうわけに行かないと思う。そこで先ほどの大臣の答弁の中で、相当彈力性があるのだ、このたびの提出し地方税法は彈力性があるということをお言いになつた。そうすると、ここでわれわれが一生懸命になつて汗を出して、やれ税率がどうだ、固定資産倍率がどうだというようなことを言つてつても、それは問題にならないで、どうにもなるのだということにもとれるのでありますが、その点についての政府の見解をお聞きしたいと思います。
  137. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 どこまで議論しましても、議論は議論でございます。先ほども申し上げましたように、あれがかりに一・六に下つたならば三十億の減税になるだろうということは、新聞紙上に出ておつた。だからそう想像されるということだけでございまして……。(「そんなことはない。」)速記録を調べてください。
  138. 林百郎

    ○林百郎君 それは重大な失言だと思う。先ほどのたしか鈴木次長のお話ですと、政府から出しておる資料によりますと、三十億減税になるということをはつきり言つている。新聞にそう書いてあるなどということを一言も言つてない。そういうしらじらしい逃げ口上をしてもらつては困る。あなたの方の出し資料によればい三十億減税になるのか、あるいはそれは新聞に伝えているところで政府としては考えていたいのか、その点をはつきりしてもらいたいと思います。
  139. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。新聞紙上においてそういうふうになつておるということを私は伺つたから、そうなるだろうという想像、これも仮定の議論でございまして、また通過しておりません。その意味におきまして私は減税になるかどうか、はつきりなるとは申しません。
  140. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、この固定資産税税率が一・七から一・六になつても、岡野国務大臣としては減税になるかどうかわからぬというのですね。
  141. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 その通り先ほど御答弁申し上げております。
  142. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると税率が下つても税金は下らないかもしれないという妙なことになるのですが、それでいいですか。
  143. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。通過した上で考えます。
  144. 林百郎

    ○林百郎君 通過しようとしまいと、税金をかける率が下つておるにもかかわらず、税金が下るか下らないかわからぬ。そんなおおよそ子供に言わしてみてもわかり切つたようなことをわからない大臣なら、私はやめてもらいたいと思う。税率は下る、しかし下げた税金はどこかに転嫁される、あるいは固定資産税の中にはこういうポケツトがあつて、そこからとるということになつているのならなつているとはつきりお答え願いたい。
  145. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 はつきりお答え申し上げます。とにかく通過しない法案に対して、その結果がいかになるかということを、政府は言明できません。
  146. 林百郎

    ○林百郎君 法案が通過するしないにかかわらず、今自由党、民主党から一・七の税率を一・六に下げるという修正案がここに出されようとしているわけだ。それについて政府の見解をただしているわけだ。もし自由党、民主党も賛成される修正案のごとく、税率が一・七から一・六に下るとすれば、税金は下るのか、あるいはそのままになるのか、政府の見解はどうかということを聞いておるのです。
  147. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。この点につきましては、林さんも御列席の前で鈴木政府委員から御答弁を申し上げておりますので、十分御了承を願えると思います。
  148. 林百郎

    ○林百郎君 そこで私の聞きたいのは、先ほど岡野国務大臣は、私が聞き出したら急にそつぽを向き出したのですが、三十億は千九百億のわくの中から出せるのだ、それは相当彈力性があるのだと言つているのですよ。だからその彈力性というのはどこにあるのか。もしそんな彈力性のある地方税法つたら、税率だとか倍率など真剣にやる必要はないことになるのです。
  149. 小野哲

    ○小野政府委員 林さんから彈力性という言葉を問題にされておるようでありますが、これはこの法律案の第三百五十條をごらんになれば、はつきりといたす次第でありまして、五百二十億を上まわつたり下まわつたりする場合におきましては、地方財政委員会がその税率を変更するものとする、こういうことになつておるのを彈力性があるという言葉で表現いたしておる次第でございます。
  150. 林百郎

    ○林百郎君 二つの問題がその点にあると思う。そうすると、この際かりに税率を下げても、何でも五百二十億はとるのだ、あるいは千九百億のわくはかわらないのだ、税率のいかんにかかわらず、あなたの説明した三百五十條によつて千九百億はとるのだ、固定資産税は五百二十億とるのだ。これが確定しているのかどうかということが一つ。それから今あなたの示した條文で、固定資産が一・六になつて三十億減らすとすれば、その條文でどこに彈力性を持つて行くのか、この二点を聞きたい。
  151. 小野哲

    ○小野政府委員 三百五十條でございます。三百五十條によりますと、五百二十億というものを目安として、上まわつた下まわつたということになつておりますのは、土地家屋以外の償却資産につきましては、評価の問題があるのであります。そこに議論の中心がなければならぬと思いますので、従つて税率の点についても変更を加える余地が残されておる。これで御了解が行くと思います。
  152. 林百郎

    ○林百郎君 いくら言つても限りないのでずが、評価の点でどうにもなるので、税率などは、一パーセントや二パーセント上ろうが下ろうが、五百二十億でとるものはとるのだということに解釈して、これ以上そうしたのらくら問答はやめたいと思います。  そこで次の問題ですが、この修正案によると、附加価値税が二年延期されるということになつております。そうしますと政府の岡野大臣の説明によりますと、これは事業税によつてまかなうのだ。附加価値税一年延期の政府原案に対しての大臣の説明は、事業税によつてその間を補つて行くのだという話だつた。ところがこの事業税については、岡野大臣提案説明の中で、事業税というのは大企業に不当に軽減され、個人的の事業の負担は非常に多いもので、事業税というものは、これはすみやかに廃止できるものなら廃止しなければならないという御意見であつたと思う。これが二年間延期されるということになりますと、この岡野国務大臣のいわゆる大企業に不当に軽減されておるというような不当な事業税が、さらに二年間継続実行されるということになると解釈していいかどうか。
  153. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 提案理由で申し上げました通りでございます。
  154. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、附加価値税二年延期というのは、岡野国務大臣から言わせれば、非常に不当な地方税というのは、さらに一年政府原案より延期されて実行されることになつて、不当なよろしくない修正案だというように私は解釈しようと思いますが、それでいいのですか。
  155. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。その点において、先ほども申し上げました通りに、結果がよかろうが悪かろうが、民主主義政治として国民の代表の国会がこうしろとおつしやれば、政府はその通り追従して行きます。これをもつて御了承願いたい。
  156. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、政府修正案は政府から見ても悪いのだというように解釈して、次に移つて行きます。  もう一つの問題ですが、これはわが党の各議員からも質問があつたと思いますけれども、実は七月十九日の大蔵委員会で、社会党の中崎委員の質問に対して池田大蔵大臣が、自由党の参議院選挙以来一千億減税ということについてはこういうことだ、国税においては七百億、地方税において三百億、こういうようなことを総務会できめたのであります。私はアメリカから帰りまして、七百億の減税は多分できるだろうと思つたということを答弁されておるのであります。当該主管大臣の岡野国務大臣としては、この池田大蔵大臣の見解についてどう考えられるか、お聞きしたいと思います。
  157. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。その点においては決定しておりません。
  158. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると自由党の立場から言えば、参議院の選挙の際自由党で掲げた一千億減税、七百億国税、三百億地方税減税というのは、まだ党が決定しておらないことを、選挙民をつるための詐欺的手段として用いたのだというように解釈していいですか。
  159. 小野哲

    ○小野政府委員 ただいま速記録によつて御質問になりましたので、正確に御答弁をいたしたいと思います。大蔵大臣は国税について七百億の減税をいたしたいという考えである。こういうことは私も聞いておりまするが、地方税において三百億減税するのだということは、いまだ政府としては決定しておらないのでございます。
  160. 林百郎

    ○林百郎君 これは七月十九日の大蔵委員会での速記を調べていただけばわかりますが、自由党の選挙以来一千億というのは、国税において七百億、地方税において三百億ということをきめたのでありますと、はつきり言つておるのです。そうすると同じ閣僚の中でこの点の意見が非常に食い違つて、しかもこれが一般の大衆に及ぼす影響は、非常に大きいと思う。たから少くとも天下の公党が選挙の公約として発表する以上は、相当責任あり、しかも閣内で決定した意見を吐いていると考えてお聞きしているわけです。ところが大蔵大臣は大蔵委員会で、地方税三百億減税と言い、それから岡野国務大臣は地方行政の委員会でそれは知らないと言つている。これは重大な食い違いだと思う。その点について岡野国務大臣は、実はまだきまつておらないんだ、選挙の際の一千億減税というのは確定的な閣内の意見として決定したものではなかつた。また自由党としても確定した意見ではなかつたということをはつきり言われるなら言われてそれでけつこうだと思いますが、この問題についてお聞きしたいと思います。
  161. 小野哲

    ○小野政府委員 私からお答えいたします。この問題につきましては、昨日も御質問がございまして、同様の趣旨の答弁をいたしておりますので、御了承願いたいと思います。
  162. 林百郎

    ○林百郎君 この点結論を申しますが、昨日のわが党の委員の質問に対しまして、池田大蔵大臣から、そういうことは大蔵委員会では言つていないはずだ、速記録を調べろという御回答であつた。そこで本日大蔵委員会の速記録を調べたところが、自由党の選挙以来の一千億というのは、国税七百億、地方税三百億、こういうことを総務会できめたのでありますと、はつきり言つているのです。だから重大な食い違いがあるということをここであらためて言つているわけなんです。そこでもし三百億も減らす余地があるならどこから減らすのか、また本年から実現したらいいではないかということを、私は一歩深く入つて聞きたいと思いましたけれども、大分苦しいようでありますから、この点はこの程度でやめておきたいと思います。  最後にもう一つお聞きしたいのであります。私が先ほど大臣にお聞きした地方税の彈力性があるという点でありますが、この点は実は本年度の国家予算につきましても、私たち野党の各委員が、たとえば債務償還の点など一般会計、見返り資金から入れて千二百億の債務償還がある。これは債務償還が多過ぎるので、不審に思つていろいろ突きました。ところがあにはからんや今ごろになりまして、実は警察費千二百億の債務償還は、ドツジ・ラインを堅持するために、自由党の政策としては断じてゆるがすことのできない基本的な政策だという説明を、われわれは予算委員会で聞いたわけです。ところがそれがいつの間にか警察費というような形で使われているわけです。実はこの岡野国務大臣の地方税にも相当彈力性があるということは、朝鮮事変あるいはその他彈圧の費用とかいうようなものが、この彈力性という言葉の中に含まれておるのではないかということを——笑つておりますが、現実の問題として、債務償還から五百億も警察費の方に出るというので聞いているわけです。こういう点について政府はどう考えておるか。わが党の各委員の質問に対して、このたびの朝鮮事変の協力費あるいはその他の費用については、地方税からの負担は一切ないんだということを、はつきり言われているようであります。しかし現実の問題として、たとえば国家警察費の一部が末端の自治体から協力費という形で出ておる。また首都建設法案、これは大体三千億くらいかかると言われておりますが、首都建設についての地方自治体の負担、あるいは防空法案、これはもう大橋法務総裁がはつきり言つておるのでありますが、防空法案を出すということになりますと、各地方の防空施設に対する末端市町村の負担が非常に増加して来ると思います。それから港湾法が通過しまして、日本の重要港湾の一切の施設の費用が、末端の市町村に転嫁されてくるわけです。こういう点から言いますと、今日吉田内閣の政策である国連に協力するという形で、朝鮮事変に政府が協力し深入りして行くに連れて、港湾あるいは防空、あるいは首都建設、国家警察というような形で末端市町村の負担が非常に増加して来る。場合によつては千九百億の本年度当初見込額だけでは、とうていまかなえないというようなことがあると思う。これに対して政府はどういうように考えているか。要するに、朝鮮事変の協力費という形で、将来末端の市町村費用がこれ以上転嫁されるかどうか。またされる場合にはどういう形でこの負担をまかなうかという点をお聞きしたい。
  163. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。林議員から先々のことまで御心配くださいまして、地方財政のことについて非常に親切な御考慮を拂つていただくことは感謝にたえません。彈力性があると申しておりますことは、あれは償却資産がどうなるかということで、彈力性があるということに私は考えております。同時に、この法案提案いたしますときには——朝鮮事変は実は二十五日に起つたのでありますけれども、そういうようなことは何ら考えには入れておりません。その意味におきまして、先はいかがなるか、私は地方財政には影響をさせない、またさしては地方財政の確立を期することはできない、こう存じておる次第であります。
  164. 林百郎

    ○林百郎君 そうすると、朝鮮事変への協力態勢によつて、末端の市町村には何ら財政的な負担はかけないという見通しであるということを、はつきり大臣から言えますか。
  165. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 はつきりお説の通りでございます。
  166. 林百郎

    ○林百郎君 従つて、岡野国務大臣としては、将来朝鮮事変に協力するという形が、どういう形で深入りして行こうと、末端の市町村へは財政的な負担はかけない。従つて地方税も千九百億のわくを越してとるようなことは、絶対に考えておらないというように解釈してよいのですか。
  167. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 その通りでございます。
  168. 河原伊三郎

    ○河原委員 本法案に対する質疑はこれで打切られんことを望みます。
  169. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 河原伊上三郎君の質疑終局の動議に御異議ございませんか。
  170. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 異議なしと認めます。これにて地方税法案に対する質疑は終局いたしました。  それではしばらく休憩いたしまして、午後一時半から再開いたしまして、討論採決いたします。  それまで休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  171. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより休憩前に引続き、地方税法案を議題として会議開きます。  この際門司亮君より発言を求められておりますので、これを許します。
  172. 門司亮

    門司委員 私はこの地方税法案の討論を行いまする以前に、質問がすべて終了いたしておりまするので、従つてやがて提出されようとする修正案に対しての意見でなくして、私どもの意見をこの際開陳しておきたいと思うのであります。  第一に申し上げたいと思いますことは、附加価値税に対してであります。附加価値税はすでにいろいろ私ども論議をいたしまして、さらに当局の説明を聞いて参つたのでありますが、この税は、前国会におきましては、流通税と收益税との中間であるということの当局の説明を承つたのであります。しかしながらこれが、流通税であるということを本議会において明確にいたされました。これにつきましては、従来の取引高税が非常に悪税であつて従つてこれを廃止するのだという政府当局の意見とは、まつたく食い違つた意見であると考えざるを得ないのであります。従いましてこれが流通税でありますならば、当然物価の値上げとなつて現われなければならないことになつて参りますので、これは單なる税の負担の公平あるいはいろいろな理由がつけられてはおりまするが、結論といたしましては、物価の値上げとして大衆課税であるという結論に相なつて参るのであります。私どもはそれと同時に、この税法はいまだ世界に見ざる税法でございまして、まだ研究の余地が非常にたくさん残つておるかと考えておりますので、これの全廃をいたしたいと考えております。さらに全廃をいたした後における暫定的の処置といたしましては、現行の事業税及び特別所得税に対しまして、政府はこの案においては御承知のように従来の法人あるいは個人に対しまして、おのおの百分の十八——この数字は都市計画税を含んだ数字でございますが、都市計画を含んで、政府は従来の百分の十八でありまするものを、普通法人におきましてはこれを百分の十二に改め、個人におきましても同じように改められて参つておるのであります。また特別法人に対しましては、政府は従来の百分の十二を百分の八に改めておるのでございますが、私どもはこれによりましても、今回示されました資料の、いわゆる従来の取引高税をそのまま使用するといたしますと、七百三十億の税收入があるということが、一応参考資料の上に、はつきりいたして参つておりまするので、もしこの資料が正しいといたしますならば、いわゆる税所要額でありまする四百十億を差引いて参りますならば、当然ここに従来の事業税の四割五分の値下げが、数字的に行われなければならないと思うのであります。従つてどもはこれに対しまして、普通法人に対しては百分の十とし、さらに個人に対しましても、第一種事業といたしましては、百分の十とし、特別法人に対しましては百分の七とし、さらに個人にありましては、第二種事業に対しては百分の七といたしたいと考えておるのであります。同時に農業協同組合あるいは生活協同組合等に対しましても、従来はかけておつたのでございますが、これをかけないことにする。ことに中小企業等の協同組合、あるいは新聞等の従来問題を起しておりましたものに対しましては、免税にいたさなければならないと考えているのであります。その次に特別所得税の中の第一種業務であります。やはりこれは現行法によりますと百分の九・六になつているのでございますが、これも政府は百分の六・四と訂正いたしているのであります。さらに第二種業務に対しましては、同じく現行法の百分の十二を、政府原案によりますと百分の八に減額されて参つておるのであります。これも先ほど申し上げました四百十億の所要額を満たすということになつて参りますならば、当然第一種業務に対しましては百分の五・三、第二種業務に対しましては百分の七で、その数字は十分つかみ得るものであるということを申し上げておきたいと思うのであります。  次に市町村民税であります。市町村民税に対しましては、従来政府提案されましたものがそのままここに出ているので、私が重複して申し上げる必要はないと考えておりますが、従来の市町村民税、いわゆる住民税というものは、都道府県税あるいは市町村税を含めて、一千四百五十円と規定いたしておりましたものが、今回の税法によりましてそれを廃止いたしまして、大都市における均等割を八百円とし、中都市においては六百円とし、その他町村におきましては四百円とし、さらにそれを均等に賦課するということにいたしまして、前年度納めた所得税の一割八分が、これに加算されて参つておるのであります。しかしながらこの考え方というものは、従来この種の税法をかけられておりました個人にありましては資産割、法人にありましては資参割並びに資本金割というようなものが控除されて参つておりまするので、政府の申されておりまするような、ただ予算面だけの、従来の二百七十億が五百七十五億までにふえることによつて、二倍半になるというような数字考えられないのであります。従つてども政府の申されておりますように、二倍半にするということになつて参りまするならば、やはり以前と同じように、この税法徴收建前を、個人におきましては資産割を加算し、さらに法人におきましては單なる低率なる均等割でなくて、当然資産割並びに資本金割をこれに附加いたしまして、従来納められておりましたいわゆる個人と法人とに対して、この中の五〇%をこれから徴收することによつて政府の言う個人の納付いたしまするものが、初めて倍率になるというような考え方で参るのであります。従つてどもはこの税法の中には、ぜひ個人に対しましては資産割を挿入し、さらに法人におきましては、資産割並びに資本金割の制度をこの中に設けなければならないと考えておるのであります。従いまして、人口五十万以上の都市に対しましては、現在の政府原案の八百円を四百円とし、中小都市に対しましては政府原案の六百円を三百円とする。さらに町村に対しましては、原案の四百円を二百円とすることが、私どもは正しいのではないかと考えておるのであります。それと同時に一世帯内の稼働人員に対しましては、従来は世帯主だけでありましたが、今度の税法によりますと、当然稼働人員ことごとくにかけられて参りますので、小さい子供等が親の生計を助けますることのために、やむを得ません事情から勤労いたしておるものに対しましても、やはり均等割がかかり、さらにこれに所得割がかかつて参るというようなことは、あまりにも生活の現状を無視した方法ではないかと考えておりますので、これらに対しましてはぜひ低減の施策を講ずべきだと考えておるのであります。ことに農業を唯一の收入財源といたしておりまする農村に対しましては、これをことさらに世帯主だけにかけなければならないと考えておるのであります。  さらに非課税の範囲におきましては、法案によりますと六十歳以上、あるいは学童に対しましては、多少の減免の規定はあるようでございまするが、われわれといたしましては六十歳以上のもので、勤労によつてその生計を営んでおりますもの等に対しましては、当然均等割等は排除しなければならないと考えておるのであります。  そのほか農業協同組合、あるいは消費生活協同組合、中小企業協同組合、あるいは漁業協同組合、水産加工協同組合、同じくこれの連合会、さらに失業者等に対しましては、当然非課税の対象の中に入れるということが、正しいのではないかと考えておるのであります。  なおこれらに対しましては、先ほどから申し上げておりますように、理論上当然前年度の所得税に対しましても、個人に対しましては百分の九を課税することが正しい税法建前であり、また実情に即したものであると考えておるのであります。  次に固定資産でございまするが、固定資産につきましては農地以外の土地、及び家屋につきまするところの倍率は、当然五百倍とすることが私は正しいと思うのであります。  さらに農地にあつては、自作農創設特別措置法の第十六條に規定いたしまする価格の十二・五倍を、当然調整係数といたしまして、それの倍率をかけるということにしたいと考えておるのであります。しかしこの倍率昭和二十五年の二月一日以降において、農地の公定価格が引上げられました場合におきましては、それに応じてこの倍率を引下げて行きたいと考えておるのであります。これは委員会の審議におきましても、しばしば申し上げましたように、現在の日本土地家屋の一切の価格というものが、東京においてわずかに九百十九倍であり、大阪においては最高六百六十六倍という数字が出て参りますると、その他の都市においては大体四百倍ないし五百倍であり、ことに政府の二十二年の財産税設定のときに、物納といたしまして納めましたものから買上げましたその価格は、大体百二十倍から二百二十五倍に当時相なつておるのであります。これを今日の物価指数から勘定して参りましても、政府のとりました処置を勘案いたしまして、当然五百倍には改正しなければならないと考えるのであります。ことにこれは御承知のように法令によりますると、適正なる当時の時価ということが、法律の文面にはつきりいたしておりますので、この倍率も、大体時価に即応した倍率をとることが正しいのではないかと考えておるのであります。  さらに政令の定めまするいわゆる特殊の積雪寒冷地蔕及び政令には定めておりませんが、農村に対しましては、特に平均降雨量を常に越えておりまする地域に対しましては、当然農地以外の土地家屋に対しましては、やはりこれに即応する調整係数をかけて行かなければならないと思うのであります。この係数は大体土地、建物に対しましては賃貸価格の四百倍とし、農地につきましては調整係数の十倍とすることが正しいと思うのであります。  さらに償却資産につきましては、私どもといたしましては、税率を〇・八八とすることが正しいのではないかと考えておるのであります。これは前回国会において提出されて参りました政府資料に基きますならば、償却資産の総額は一兆三千億を越えておるのでございますが、これに所要額の九十三億の税收入をとろうといたしまするならば、私ども徴税率を八〇%と見て参りましても、当然その税率は〇・八八で、十分政府の所要額は、徴税ができ得るものと申し上げなければならないのであります。  さらにこの税に対しまする非課税の範囲でございますが、非課税の範囲に対しましては、政府原案によりまするならば非常に縮小されて参つておりまするが、私どもは先ほど住民税の点でも申し上げましたと同じように、やはり農業協同組合、消費生活協同組合、中小企業等の協同組合、あるいは漁業協同組合、水産加工協同組合、土地改良及びその他の連合会に対しましては、当然非課税の対象にすべきだと考えておるのであります。  御承知のようにこれらの協同組合というものは、おのおのその事業の育成と、民生の安定と、これらの業務に従事いたしておりまする諸君の生活の安定を期することのために、政府が特別法人として、特別法をもつて保護しておりまする団体に対して、他の償却資産を持つております企業を営んでおりまするものと同じように、税率をかけて参るということは、はなはだ不穏当だと考えておりまするので、政府がこの保護育成をするという建前から、当然これを非課税の範囲に入れなければならないと考えております。  さらに農業用の償却資産、あるいは遊休、未稼働資産、あるいは隧道であるとか、あるいは小型漁船であるとか、学術、試験、研究のために行いまするところのすべての施設であるとか、海運業、地方鉄道、及び軌道業、発電事業、ガス事業の固定資産評価に関しましては、地方財政委員会の定めるところによつて、一定率を減額することが正しいのではないかと、私ども考えておるのであります。  さらに法案によりまするならば、免税点を二万五千円にいたしておるのでございまするが、これは当然五万円に引上げることが、順当ではないかと考えておるのであります。  さらにこの問題で最も大きな問題が起りますのは、この地租、家屋税の値上りによりまして、当然起つて参りまする地代、家賃への転嫁の問題であります。しかるに本法案に対しましては、この地代、家賃に対しまするところの転嫁の防止の方法が講じられていないのであります。これはシヤウプ勧告案を見て参りましても、地租、家屋税は上つても、今日の現行の状態から見るならば、地代家賃を値上げするの必要はないということが、シヤウプ勧告案の中にはつきり書いてあると考えられておるのであります。従いまして私どもはこれらの処置に対しましては、当然そういう転嫁することのできないような、防止するための処置を講じなければならないと考えております。  なお法案につきましては、問題になつておりまするいわゆる三百五十條、上まわる下まわるというような言葉が使われておりまするが、こういう不定確な條項は、どともはぜひ削除しなければならぬと考えておるのであります。  さらに遊興飲食税に対しまする問題でありまするが、遊興飲食税に対しましては、料理店、貸席、カフエー、バーその他当該府県の條例で定めておりまするこれに類する遊興飲食税の標準に対しましては、現行法によりますと、百分の四十と規定しておりまするが、われわれはこれを百分の二十に減額したいと思うのであります。これは一面私どもの立場から申し上げまするならば、奇異の感じを持つのでございますが、私どもは同時に同じ項目にありまする宿泊及び前号の飲食以外の飲食の料金に対しましても、現行法の百分の二十を、同じ率で百分の十に減額いたしたいのであります。これはしばしば申し上げておりますように、業者の陳述その他を聞いて参りましても、大体千五百九十億の商いがあると言つておりながら、その税收入というものは昨年においてはわずか九十八億、本年度において百二十億が見込まれて参つておるのであります。もし業者の言うことが正しいといたしまするならば、これに最低百分の二十、最高芸者の花代、これは百分の百でございますが、あるいは中庸をとつてこれを百分の四十と仮定いたして参りましても、何ゆえにこの業者の申しております收益と税金との間に、大きな開きがあるかということであります。もし業者の申しております一千六百億の数字が正しいといたしまするならば、これに一割の税率をかけて参りましても、当然百六十億の收入がなければならないはずであります。しかるにこういう高率な税率をかけて参りましても、なおかつ本年度において百二十億の税收が見込めないということは、非常にこの税制がむりであつて、当然課することが困難である税金の税率をかけておりますために、ことさらに脱税を助長しておるような形を示して参つておりまするので、とり得る税金、納め得る税金にこの制度を改めることによつて、料理飲食税の收入が当然はかられるものだと考えておるのであります。  なお外食券食堂その他におきましても、同じように税金がかかつて参つておりまするので、家庭で生活をいたしまする者に対しましては税金はかかつて参りませんが、外食券を利用しておりまする諸君の外食に対して税金がかかるという不当をなくしますると同時に、一面今日ほんとうに働いておりまする肉体労働者が、帰りに一日の労働によつて非常に疲れておりまする体を一ぱいのしようちゆうで休めることに対しても、なおかつこれに百分の二十あるいは百分の四十の税金がかけられて参つておるのであります。従いまして、それらのほんとうにあすの労働力のかてとして補いまするわずか一ぱいのしようちゆう程度に対しましては、やはり免税にすることが正しいのではないかということを考え合せまするときに、一ぱいのコーヒーにも、一ぱいのしようちゆうにも現行法のように高率の税率をかけることをやめまして、そうして百円未満のこれらの飲食に対しましては、課税しないようにいたしたいと考えておるのであります。  なお宿泊に対しまして、今日例外なしに税金がかけられて参つておりまするが、これに対しましても、引率者のありまする学童及びこれに類する学生生徒の団体の宿泊に対しましては、課税しないのが穏当ではないか。いわゆる今日の引率者のありまする学童その他の宿泊というものは、営業のためでもなければ、あるいはぜいたくごとでもないのであります。これはみずからの知識見聞を広くするために行われております。これらの行為に対しましては、当然税金を課してはならないと考えておりまするので、これに課税しないということにいたしたいと考えております。  なお電気ガス税でありまするが、電気ガス税に対しましては、政府案は料金を課税標準といたしておりまするが、これは使用量を課税標準として課税することにいたしたいと思うのであります。今日日本の化学産業が非常に遅れておりますることは御存じの通りであります。従いましてわれわれはこれら化学産業に対しましては、当然ある種の助長、ある種の援助を與えるということが正しいと思いまするが、これを税の面で申し上げまするならば、電気がその産業の三分の一あるいは四分の一というような非常に大きなウエイトを占めておりまする場合におきましては、これを一応その産業の原料であり、あるいは材料であると考えても決して過言ではないと思いまするので、それらの業態に対しましては、やはり非課税の対象にすべきではないかと考えておるのであります。いわゆる鉄鉱石であるとかあるいはマンガン鉱であるとか、アルミナであるとか、苛性ソーダ、ソーダ灰、そのほか各種の化学肥料であるとか、ことにセメントのごときは、今回の電気ガス税がかかつて参りまするならば、一躍一四%の原価の値上りをしなければならないと見ておりまするので、これらに対しましては、従来非課税でありましたので、この際やはりこれを非課税に取扱うことが正しいと思うのであります。さらに電解、電炉工業いわゆる金属ソーダ、青化ソーダ、あるいは塩素酸ソーダ、過塩酸アンモン、過酸ソーダであるとか、過硫酸アンモンであるとか、これらのものに対しましても、当然これを非課税の対象とする。ことに電解鉄におきましては、従来電解鉄は鑄鉄におきましても、ことごとくこれが非課税の範囲に数えられておりましたものが、今度はそれが除外されておるのであります。しかも今度の法案によりますると、同じ電解鉄にしましても、可鍛鑄鉄に対しましてはこれを非課税の対象にいたしておりまするが、電気炉鑄物に対しましては、これを非課税の対象にしていないのであります。従つてこれらの問題はやはり非課税にすべきであると考えておるのであります。そのほかヨードであるとか、あるいはメタノールであるとか、原油であるとか、アルマイト被膜加工であるとかいうようなものに対しましても、これを非課税の対象とする。さらに電気自動車施設規則による電気自動車の充電であるとか、あるいはガス税を課するガスはガス事業法の適用を受けるガス事業者の製するものだけに、これを集約いたしたいと考えておるのであります。  さらにこの項で申し上げておきたいと思いますることは、私どもは農業用の電力に対しましては、ぜひこれを非課税の対象としなければならないのであります。これにつきましてはしばしば論議いたしておりますので申し上げるまでもないのでありますが、今日の農村の灌漑用水に使います電力は、まつたく農民が採算を度外視いたしまして、ただ食糧確保のためにのみこれが使用されております。この灌漑用水に対しましては、当然私どもはその電気料すらこれを免除すべきであると考えておりますのに、これになお税金を課するというようなことは、不当もはなはだしいと考えておりますので、農業用の電力に対しましてはこれを非課税の対象にいたしたいと考えておるのであります。  さらに入場税でありますが、入場税に対しましては、国及び公共団体の営みますところの動物園であるとか、図書館あるいは博物館であるとか、さらに展覧会等に対しましては、これは当然非課税といたしたいと考えておるのであります。この点は従来におきましてもいろいろ問題があつた点でございますが、今回の入場税が県税一本になつて参りました以上は、地方の公共団体、いわゆる市町村が行いまするこれらのものに対しまして入場税がかかつて来るということが想像されて参りますので、当然これは非課税の対策の中に、はつきり入れておくべきだと考えておるのであります。さらに入場税の税率でありますが、これに対しましては、とかくの技術的な異論があるといたしましても、現行百分の百は少し高過ぎるのではないかと考えておりますので、これは百分の五十として、文化施設の向上をはかることこそ、現存の社会に即応した正しい行き方であると考えておるのであります。  その他の税種でありますが、その他の税種に対しましては、先ほど申し上げましたような意見で、私どもは勘定して参りますならば、そこには当然減税をしなければならぬ面が出て参るのであります。県税に対しましては後ほど申し上げるといたしまして、私どもは今回の税制改正の中で、廃税になつておりますものの中に、多少の異論はございましようが、電話であるとか、金庫であるとか、あるいは余裕住宅であるとか、使用人税であるとかいうようなもの、さらに不動産取得税というようなものに対しましては一定の限度を設けて、当然これらは税の徴收をすべきではないかと思うのであります。もとより個々の問題につきましては異論はあろうと思うのでありますが、やはり税金である形におきましては、担税能力を持つものからこれを徴收するという建前が正しいのではないかと考えておるのであります。その反面に今日の庶民生活になくてはならないいわゆる自分の足の代りに使つております自転車、自分の肩の代りに使つております荷車、あるいは接客人税等のごときは、当然これを廃止すべきであると考えておるのであります。  さらに酒消費税につきましては、昨年までは税金の百分の五というものが、地方税として地方で徴收いたしておりましたが、今回の処置によりますならば政府は酒の値下げをしないで、酒の値段はそのままの姿において、地方税を百分の五だけ減額いたしまして、その税金総額五十一億というものが、政府予算の中に繰入れられて参つておるのであります。私どもは当然酒消費税のごときは従来のように国民全体が均霑いたしまして納め得るものとして、これを地方に返すべきだと考えておるのであります。そのほかこういう措置をとつて参ります過程におきまするところの税の不足額につきましては、地方財政平衡交付金の増額を当然求めなければならないのであります。政府が昨年制定されました地方配付税法によつて本年度もし政府に收納いたしますところの法人税、さらに所得税の総額の三三・一四をかりに地方配付税として配付するということになつて参りまするならば、当然九百五十億を配付しなければならないのであります。しかるに今回の平衡交付金の一千五十億の中には、わずかにこれは大百六十七億しか含まれていないということは、政府の説明書の中にも明記されておるのであります。従つて従来の税から考えて参りまするならば、酒消費税において五十一億、地方配付税において二百八十億の税金が、従来地方に配付され、地方に收用されておりましたものが、そのままの姿で政府に集約されておりますので、私どもは、先ほど申し上げました処置によつて減税いたしまする約三百億の財源というものは、当然政府が責任を持つてここから支出すべきであろうと考えておるのであります。さらに暫定的の処置といたしましては、四—七月の空白時代におきまする修正による地方税の減收部分は、先ほど申し上げましたように平衡交付金の増額において行いますると同時に、税法の処置といたしましては、地方財政委員会の中にはやはり労農、中小企業の代表者をこれに参画せしめまして、この機構が全民衆の意思の上に地方財政の基礎の確立をすることが正しいと考えておりまするので、ぜひ地方財政委員会の中には、労農あるいは中小企業の代表者を参加せしめる機構を置いていただきたいと考えておるのであります。  それから税務の責任者の問題でありますが、税務職員に徴税に関しまして不当な行為がありました場合においては、何らこれを処罰するの規定が設けられていないのであります。税務吏員は、従来ならば財産の差押えをする、あるいは捜査をいたします場合には、当然司法警察官を伴わなければ、その行為は行えなかつたのでございまするが、今回の税法改正によりまして、これが徴税にはみずから單独で錠前をはずし、あるいは封印を切つて捜査することができるように相なつておりまするので、この危險を防ぎますることのためには、万一それらが拒否の問題について、あるいは不当の行為のありました場合においては、当然これを処罰する法律がこれに織り込まれて参らなければならないかと考えておるのであります。いたずらに——いたずらという言葉を使いますと、あるいは誤解が起るかしれませんけれども、納税者の方におきますならば、たとえば自転車税の場合におきましても、自動車の申告を怠つたということによつて三万円の過料を仰せつけられ、さらに不正の申告であつたということによつて、これに対しましては罰則が設けられ、あるいは係官の質問に対して答えなかつたということについても、罰則が設けられておるのであります。刑事訴訟法によりましても、当然人権を尊重することにおいて、御承知のように黙秘権が承認されておるにもかかわらず、税法におきましてはその黙祕権をまつたく無視いたしまして、係官の質問に対して答えなければこれを処罰するというような圧制がここに設けられておるのでございますので、これらに対しましても私どもは当然修正を加えなければならないと考えておるのであります。  さらに、税金に対しまする決定でございまするが、これにつきましては、やはりおのおのの業者の代表者というようなものが、これに関與いたします機会をつくつて、これを民主化する制度を当然設けなければならないと考えておるのであります。  さらに苛酷な取締りでありまするところの、国税犯則取締令に関しまする適用は、この際ぜひ除外していただきたいと考えておるのであります。  以上きわめて簡單ではございましたが、この税法全体に対する私どもの立場と意見を申し上げておきたいと思うのであります。
  173. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 この際藤田義光君から本案に対する修正案が提出されておりますから、まずその趣旨弁明を許します。床次徳二君。     —————————————     —————————————
  174. 床次徳二

    ○床次委員 私は国民民主党を代表いたしまして修正案を提案いたしましたので、その修正の要旨を御説明申し上げたいと思います。藤田、山手、鈴木の各委員を代表いたしまして、簡單に御説明申し上げたいと思います。  修正案はお手元にまわつております十六箇條になつておるのでありまするが、その要旨は二点にまとめることができると思うのであります。第一点は附加価値税が原案におきましては明年一月一日より実施せられることに相なつておりまするが、さらにその実施を一箇年間延期し、昭和二十七年一月一日より実施せんとするものであります。第二点は固定資産税税率は百分の一・七とありますのを、百分の一・六に減ぜんとするものであります。以下簡單にその理由を申し上げますと、第一に附加価値税はその趣旨におきましては、まことにもつともだと考えられる点もあるのでありますが、すでに前の国会におきましても、十分に審議せられましたところによりまして明らかでありまするが、その内容におきましてはさらに検討を要するものがあるばかりではなく、納税者におきましてもその周知徹底を得なければ、その円満なる実施をなすことは相当困難が見込まれておるのであります。さらにその課税標準が附加価値という新しいものを採用しておりますので、現下のごとき企業再建途上にありますところのわが国の産業経済界にとりましては、まことに重大なる影響が與えられると考えられるのであります。特に收益率の低いところの公益事業、あるいは赤字に悩むところの中小企業に対しましては、その打撃が大きいために、あるいは企業の縮小、企業の閉鎖等も予想せられ、ひいては失業の増大をも予想せられるのであります。政府は前国会におきまして地方税法案が不成立になりまして、施行期が遅延のために、今さら遡及いたしまして附加価値税を徴收するということは、附加価値税の性質が変化を目的といたしまする関係上、その徴收は不可能である、従つて従来の事業税を改善いたしまして、これを率せんといたしておるのでありまするが、わが国の経済の実情を見て参りますと、明年一月一日より実施いたしますことにつきましては、依然として従来と同じように不適当な状態にあると私ども考えるものであります。ゆえにさらに一箇年間を延長いたしまして、経済界の安定を待つと同時に、その間におきまして、産業界におきましても、この新税に即応し得るがごとくに整備合理化を実施いたしまして、なお納税義務者の側におきましても遺憾なく準備をいたしまして、さらにその内容につきまして検討を加えましたならば、あるいはその円滑な実施ができるのじやないか、もつて完全なる実施をはからんとするものであります。これがために本年度新たに実施せんとするところの事業税を、さらに一箇年間延長せんとするものであります。  第二は固定資産税の賦課率の軽減の問題であります。原案におきましては百分の一・七五とありましたのを、〇・〇五を減じて従来通りの徴收額を確保することを予想しておるのでありまして、その課税標準を検討してみまするのに、なお政府案よりも〇・一を減ずるといたしましても課税標準の捕捉その他によりまして、依然として五百二十億円の予定收入を確保し得る見通しを得ましたので、可及的に納税者の負担を軽減し、新税実施によるところの摩擦を緩和せんがために、この修正案を提案いたした次第であります。  元来わが国民民主党といたしましては、地方税法案に対しましては、相当根本的な改正を要望しておつた幾多の点があるのであります。さしあたり今の二点につきまして修正案を提案したのでありますが、関連しておりますのでその他の改正に対するわが党の意見を申し述べたいと思うのであります。  そもそも地方自治体に固有財産を確保し、その責任の帰属を明確にいたしますことは当面の急務でありますが、現下の経済情勢、並びに国民の担税能力に鑑みまして、直ちに負担能力を激増し、しかも税法の実施が遅延いたしましたために、納期が下半期に集中いたしますので、非常な困難を生ずるのであります。これに対して当然修正を必要と考えられたのであります。政府の原案作成並びにシヤウプ勧告基礎になりました資料には、なお相当ずさんなものがあるように見受けられるのであります。法案課税倍率並びに税率によりましたならば、非常に大きな自然増徴となつて、著しく徴税の困難とさらに納税者に対して苦痛を増す状況が見られるのであります。しかも先ほど申し上げましたように、附加価値税は、産業上の実情から見まして、明年よりの実施は不適当であるということが考えられるのであります。従つてこの際、下半期におきまして地方税の約四百億増徴という急激な負担増加調整するために、平衡交付金を二百億円以上増額して、もつて負担の合理化と均衡化を得たいということを根本に考えておつたのであります。なお具体的に修正の希望点を申しまするならば、附加価値税の実施を延期し、事業税及び特別所得税を一箇年間さらに徴收することにいたすのでありますが、この場合におきまして、協同組合あるいは新聞事業を非課税に加えるということに改正いたしたいのであります。また市町村民税におきましては、課税標準中所得割を、今日百分の十八になつておりまするが、これを百分の十二に低下し、なお法人に対しましてもあわせて所得割を課し得るように改める農業協同組合は非課税にする。六十歳以上あるいは十八歳未満の家族に対しまして、所得十万円未満のときにはこれを非課税にする。以上が市町村民税に対する修正の意見であります。  固定資産税につきましては、課税標準のうち土地家屋倍率九百倍、これを七百倍にする。農地の倍率二十二・五倍を十五倍にする。寒冷單作地の土地家屋倍率を四百八十倍、農地を十倍にする。なお事業体によりましては、非常に不公平な課税になりますので、減免税を加える。これは海運、地方鉄道、発電、ガス、各事業の軽減をはかりますとともに償却動産につきまして、いわゆる遊休未稼働動産あるいは工具、備品あるいは貯水池、坑道、水道、農業用償却資産、学術試験研究施設、協同組合の資産、小型漁船等の非課税を加えておつたのであります。なお課税率につきましてはこれを一・五にする。以上のような考えを持つてつたのでありますが、現下の情勢におきまして十分この目的を達することができなかつたことはまことに遺憾であります。しかしながら、この地方税なるものが前国会において不成立になりましたために、地方団体におきましては非常な不便をこうむつたのであります。なおこれがために納税者におきましては、下半期において厖大なる地方税を負担するという結果になりまして、これはまことに迷惑であつたのてあります。今さら法案不成立の責任をここで云々することはいたさないのでありますが、再び地方財政に空白を生じ、国民に不当の負担をかけるということにつきましては愼重な考慮を必要とするのでありまして、ここにまことに不安ではありますが、ただいまの修正は次会に譲りまして、ここに修正案を提案いたしまして、もつと幾分なりとも地方財政の確立に寄與し、国民経済の安定に進みたいと考えておるのであります。どうかこの修正案に対して皆様の御賛同を得たいと存ずるのであります。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ちよつとお諮りいたします。ただいま提出の修正案に対して質疑の申出がありますので、その発言時間を一人十分以内として許すことに御異議ありませんか。
  176. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議なければ一人十分以内に決定いたしました。質疑は通告順に許します。塚田十一郎君。
  177. 塚田十一郎

    ○塚田委員 趣旨弁明をなさつておるつもりで伺つてつたら、いつの間にかあとの方にいろいろな御意見がついておつたのでありますが、大体修正の要点は二点であるということでありましたから、二点に間違いないだろうと思います。そこでまずその修正の第一の点でありますか、附加価値税の実施をさらに一年延期ということについて、提案者側の御意見を伺つておきたいのであります。私どもは、先ほど門司委員からもいろいろ御意見がありましたけれども、附加価値税と事業税というものを比較しますときに、これは事業税で置くよりも、附加価値税に改める方がはるかに合理的だという意見を強く持つておるのであります。従つて提案者側の御意見のもう一年延期ということは、実施に十分間に合わないということ、もう一つは、経済界がまだ安定しない、かたがたもう一年も待つと安定をするだろうから、その時期になればこの税が適当な税になるというお考えであるように先ほど説明を伺つたのですが、これは重大な点でありますから、提案者側においては附加価値税は適当な税でないとお考えになつているのか、適当だが時期において適当でないとお考えになつているのか、この点を確かめておきたいと思います。
  178. 藤田義光

    ○藤田委員 お答えいたします。  現下の経済情勢におきましては、附加価値税を即時徴收することは不適当である、いましばらく経済界の推移を見て再検討の上、これを採用するかいなかをきめたいという意味におきまして、とりあえずさらに一年間延期したいという趣旨でございます。
  179. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次にお伺いいたしたいのは附加価値税の收入と事業税の收入との間の関係であります。私どもは、この地方税改革全体としては、政府が意図されております千百九百億程度の税收は、今日の財政経済の状態から絶対確保しなければいけない、こういう根本的な信念を持つておるのでありますが、政府が今回修正されて出されました案によりますと、事業税は従来の税率を若干変更してあるのであります。この変更は附加価値税による四百二十億の收入に合せて税率を考慮せられたというように私ども承知しておる。従つていま一年延期されて、つまり二十六年度における事業税收入と附加価値税收入との関係提案者側はどういうようにお考えになつているか、この点をお伺いいたします。
  180. 藤田義光

    ○藤田委員 ことしは昨年度の事業税を継続徴收いたしますと約七百三十億の收入見込があるわけでございまするが、これは附加価値税を採用した場合に予想されまする四百十九億それがしと歩調を合せるために減税実施されたことは、お説の通りでございまして、明年度におきましても、地方税の総收入をいくらに見積るかによつて税総額はかわりまするが、大体ことしの趣旨を採用継続いたしたいと存じております。
  181. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に固定資産税についてお尋ねをいたしたいと思います。御提案になりました税率の一・七を一・六人に変更せられましたことによつて提案者側においては税收にどういう影響が来るとお考えになつておりますか。
  182. 藤田義光

    ○藤田委員 この点に関しましては、実は固定資産税課税の基本額に対する認定の問題でございまして、政府の原案によりますれば、基本額が少し少額に過ぎております。これを修正することによりまして、五百二十億という收入見込額は全然変動はございません。そのことを申し上げておきます。
  183. 塚田十一郎

    ○塚田委員 民主党側において、来年度は固定資産税を五百二十億確かにとつていただけるそうでありますから、私どもは安心をしておるのであります。ただそれに関連していま一点お尋ねしておきたいのは三百五十條の第二項との関係であります。御承知のように三百五十條第二項には二十五年度の固定資産税が五百二十億とれなかつた場合、もしくはとれ過ぎた場合に、税率を来年の一月中において変更するということが書いてあるのであります。この点は門司委員が実に不見識だと御指摘になつている点でありますが、われわれからすれば、実に親切な考え方だと考えておるのですが、この條項は依然として生きている。ただいま藤田委員の御説明では一・六でも五百二十億は確保できるという御意見でありましたが、確保できない場合には当然二十六年一月中において、この三百五十條第二項の趣旨によつて是正されるというように、われわれは了解してさしつかえないのか、この点をお尋ねいたします。
  184. 藤田義光

    ○藤田委員 私は先ほど基本額を増加することによつて、税收は政府原案の通り確保できると申し上げましたのは、われわれが従来固定資産税というものに反対しておつた重要な一つの問題でございまして、五百二十億という收入見込額になつておるが、実際はそれより相当増收になるという見込みでございましたので、一・六になりましても、この点に関しては全然変更ない、むしろとれ過ぎる危險がありますので、今回の政府原案にあります仮算定額と本算定額というものを活用いたしまして、税率の変更をやる自治体が、相当多数に及ぶだろうと想像いたしております。三百五十條の問題に関しましては、ただいま塚田委員の御説の通りでございます。
  185. 門司亮

    門司委員 私はごく簡單にひとつお聞きしておきたいと思いますが、これは大臣にひとつ御答弁願いたいと思います。ただいま上程されました修正案によりますると、附加価値税をもう一年延期することに相なつております。私どもとしてはこれをやめようと考えておりますが、しかし大臣の説明には附加価値税は非常によい税金である。その理由は従来の事業税は收益税であつたが、しかし小企業に対して非常に重圧をされておつた。そして大企業は大体これら税の対象から除かれておつた従つて今度の附加価値税であるならば、それが十分つかめるから、大企業に非常に電圧されて、そして中小企業が助かるのだ、まことによい税金だという御説明を拜聽いたしたのでありますが、その大臣確信をもつてよい税金だとして御説明になりましたものが、もう一年間延期される。そして悪い税金だとお考えになつており、また言われております事業税が存続されるということにつきましては、当局としてはどういう心境におられますか、お聞きしておきたいと思います。
  186. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。政府は今でも附加価値税は非常によい税金だという信念にはかわりはございません。ただいま御提案がございまして、もしこの修正案が国会の立場において御修正になつて、そして可決せられることになりますれば、よい税であるけれども国会の御趣旨を尊重いたしまして、一年待つてよろしいと考えております。
  187. 門司亮

    門司委員 一応行政府としての大臣のお考えはそう言う以外にはないと思います。ただひるがえつて現在の日本の行政府は、従来の官僚政府ではございません。政党の政治であります。従つて大臣はこの原案を出されて、原案を説明された自由党所属の大臣だと心得ておる。総理大臣は自由党の総裁である。しかるに悪い税金であるとお考えになつておりまするものに対して、自由党はこれに賛成なさるつもりであるかどうか、もう一応自由党から出た大臣としての党の立場を明確にしていただきたい。
  188. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 自由党といえども憲法に違反することはできません。従つて憲法に定むるところによつて国会が一致して立案された法案については、政府はこれに従うよりほかに方法はございません。
  189. 門司亮

    門司委員 私はさつきから申しますように行政府としては、さつきの第一段の答弁でけつこうだと思いますが、私の今聞きましたものは、現在の行政府といえども、やはり政党政治でありますから、政党から成立つておることに間違いない。従つて政党の持つておる施策が行政の上に反映するということが、政党政治の本来でなければならない。しかるにその基本をなしておりまする政党の意見とは、まつたく食い違つたことが議決されるというようなことは、おおよそ新しい憲法治下において、民主政治の治下において行われないということは事実であろうと思う。政党政治の政府考えておりますことと、與党がこれに反対した決議をするというようなことがあるならば、当然政府はみずから責任を負つてやめるべきであると考えておりますが、この点は一体どういうようにお考えになつておりますか。
  190. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 もし政党というものを基礎に置いて、憲法に対してそういうことを仰せになるならば、御自分の政党が主張されておる法案が通らなかつたならば、あなたは議員を辞職なさるか、これをひとつお聞きしたい。
  191. 門司亮

    門司委員 かつてわが党内閣のときにおきましては、越年資金の〇・八の支出ができるかできないかというときに、当時の片山内閣が提案いたしましたものを、社会党みずから国民的立場に立つて反対して、内閣をつぶした経験を持つておるのであります。われわれは国民を代表いたしておりまする政党が、国民的立場に立つて、行政府考えておりますことと、政党の考えておりますことと食い違つて参りました場合においては、当然行政府はしりぞくべきであると考えておりますが、行政府考えと違つた與党の採決に対して、一体政府はどういう責任を負われるか、お伺いしたい。
  192. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 附加価値税が否決されてしまつたというのなら考えなければなりませんと思いますけれども、すでにこれが準備期間を置くために、われわれの原案といたしましても一年延期したいということを申入れて、この法案出しておる次第であります。それを皆様方がもう一年延したらいいということでありまして、これは時期の問題であつて、本質の問題ではないと存じます。
  193. 門司亮

    門司委員 時期の問題だというお話でございますが、もとより時期の問題であります。しかしながら政治責任というものは、單に——しかも一年と申しておりまするが、これから来年の一月一日まで何箇月あるかということであります。その間僅かに四箇月か五箇月である。それだけの延期が認められている。しかもそれは與党全体の意見として、附加価値税に対してほんとうに検討するという意味で延ばされたのではございません。実際は大臣もお話のように、参議院で御答弁になつておりますのを聞きますと、明らかに附加価値税は物価に転嫁するのであるが、これが一月一日にさかのぼるならば、そういう措置がとれないから、言いかえるならば、いわゆる資本家が非常に損をするから一月にしたいのだというように、私は御答弁拜聽いたしておるのでございますが、もしそれが事実といたしまするならば、ただいまの答弁ははなはだ当を行ない答弁だと考えておるのであります。従つてこの点についてどうかもう一度御答弁を願いたい。
  194. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいまのことは御意見の相違と拜聽いたしておきます。
  195. 門司亮

    門司委員 こんにやく問答はやめます。  次には住民税との関係でありますが、大臣は先ほどのわが党の勝間田君の質問に対しましては、あくまでも仮定の問題であつて、修正案が提案されたらそのときに答えるということでありましたから、あらためて私はここで聞き直すのであります。それは政府の税体系において、住民税を法人に非常に軽くしたということは、附加価値税がかけられ、さらに固定資産税等の非常に重い税金が法人にかけられるから、従つて住民税については法人に対して軽減をはかつたのだということが言われておるのであります。附加価値税がさらに一年延期になり、さらに固定資産税税率が、たとえ千分の一でございましようとも下げられました以上は、政府考えておりまする税体系に一つの大きな変革があつたと、われわれも考えて参るのであります。こういう結論から申しまするならば、当然住民税に対しても何らかの措置を加えなければならないという理論に相なつて参りますが、この点に対する大臣のお考えはいかがでございましようか。
  196. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 かえる考えは持つておりませんことを御了承願います。
  197. 門司亮

    門司委員 かえる考えはお持ちにならぬということでございまするが、私は重ねて聞いておきたいと思いますが、もしこれをかえなければ、税体系が政府考えておりますることと違つた形において現出するものであるというふうに解釈してさしつかえございませんか。
  198. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。それが半年延びるか、一年延びるかの差でございまして、税体系には変化ございません。
  199. 門司亮

    門司委員 税金は半年先にとられるのではございません。税金は今年からとられるのであります。政府はこれを半年先に延ばす、あるいは一年先に延ばすということによつて、税体系に関係はないというようなお話でございますが、とられる方は現実の問題といたしまして一年延ばされておる間でも、とられるのであります。現実とあなた方の單に机の上だけでお考えになつておることとの間には、非常な相違を持つと思いますが、現実にこれは体系をかえられなければ、ことしと来年においては、住民税において一般大衆は政府考えております以上の非常な重圧を課せられ、多額の税金をとられるということに相なつて来るのでありますが、この点に対するお考え一体どうなつておりますか。
  200. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほど申し上げた通りでございます。
  201. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 立花敏男君。
  202. 立花敏男

    立花委員 私は委員長のこの修正案の取扱い方に反対であります。先ほどから各党の代表が質疑を簡單にということで済ましておりますが、実はとの修正案の扱い方は、そう簡單に参るものではないと考えます。委員長は各党の代表質問を十分に限定されておりますが、これは大きな間違いでございます。私どもは今この席へ参りまして、この案をいただいたところなんです。従来とも新聞紙上等を通じまして、修正案が関係方面との間に折衝があるということは、うわさには聞いておりますが、手にとりましたのは現在が初めてなのであります。しかも国民といたしまして、正式に国会に提出されましたのが、きようであるということは知つておると思うのであります。しかもこの修正案が、わずか十分間の質疑によつて行われる。しかもいただいた案によりますと、何ら資料的なものが付随していない。こういうことでは修正案に対する十分な審議はできません。これは政治そのものがやみ取引である。修正案そのものの提出が、ただその過程における関係方面との交渉に重点がおかれておりまして、せつかくの国会における審議が何ら十分に行われていないということを、明白に暴露しておると思いますので、修正案のかかる取扱い方には絶対反対であります。しかし多数をもちまして、そういう取扱いをするという決定を今されましたので、意見だけはひとつ述べておきたいと思います。個々の問題につきましては、各党から意見がございましたし、午前中の各委員外質問にも出ましたが、その点は簡單に省略いたしたいと思います。しかし問題はこの修正案をめぐる税法自体の不明朗性なのです。国民の税法に対する不信の念は、これはおおうことがきないと思うのであります。何となれば、税率が下りましても税金が下らないということ、これは一体何たることであるか、私はどうも不明朗だと思います。税率は下りましても税金が下らない、修正と申しましても、それは單なるわく内操作であります。決してこれは本質的な修正じやないわけです。ところがいただきました資料には、税率を下げるということは書いてありますが、その税率を下げて、同じ收入が得られるという資料は、どこにもないわけであります。これは私提案者からもいただきたいと思いますし、この資料の伴わない修正案をお受けになりまして、通過された後に執行の責任を持たれる政府自身にもこの措置をお尋ねしたいと思うのです。
  203. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 だれに対する質問ですか。提案者に対する質問ですか。
  204. 立花敏男

    立花委員 両方です。
  205. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 指名してください。
  206. 立花敏男

    立花委員 提案者には、これになせ税率が下つて税額が同じであるという資料をおつけにならなかつたかという質問。それからそれに対しまして、この資料のついていない修正案が通過いたしました場合に、執行の責任を負われる政府といたしまして、どういうふうな措置をおとりになるか。午前中の質問によりますと、政府が出されました資料は、大蔵省あるいは安本等の権威ある資料によつて出しなつたということを言つておられます。しかもその資料に従いまして三十億の減額になるということも言つておられる。そうなれば、この貸料も何もついていないこの修正案によりまして、ただ率たけを下げられまして、はたして政府自身がその執行の責任を持てるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  207. 藤田義光

    ○藤田委員 お答えいたします。提案者に対して、重大なる修正案に資料をつけていないが、どういう理由かというような御質問でございまして、実は資料をつけるのが理想ではございますが、何分にも時間的な余裕がありません。しかも立花委員がよく御存じの通り、この点に関しましては昨年の秋の臨時国会以来実質的な審議を継続いたしておりまして、その内容は十分御存じになつておると思いまして、むしろ資料を出すことによつて、常任委員諸君を軽蔑するようなことになりはせぬかと考えまして、(笑声)資料をつけなかつた次第でございます。
  208. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 政府として御答弁申し上げます。これは固定資産税につきましては、すでに原案においても申し上げました通りに、上まわるかもしれないし、下まわるかもしれないというような予定がついております。でございますから、この修正案が通りますならば、また提案の理由としまして、わくを動かさないで率だけを動かすということでございますから、やはり提案の理由に申し上げました通りに、また税法に書いてあります通りに、調整し得る限度を持つておりますから、それによつて国会の御意思を尊重して調整して行こうと存じております。
  209. 立花敏男

    立花委員 だからこそ国民がこの税法に対して不信の念を抱かざるを得ないと申すのです。たとえば藤田委員の先ほどの御答弁の中にも、とり過ぎる危險があるということを言つておられます。また大臣は、上まわるか下まわるかわからないというようなことを言つておられる。そういう形で固定資産税がとられましては、これはたいへんなことになる。しかも固定資産税を負担しまする大部分の者は、今食うか食わないで生活しておる者でありまして、大部分が地代、家賃、小作料に転嫁されるものでございますから、これは当然に現在の苦しい生活をしておりまする大衆が負担する税金でございます。それをとり過ぎる危險かある、あるいは上まわるか下まわるかわからない、そういうふうなものをおきめになりますことは、これは絶対に国民としては今度の地方税には信頼することはできません。これに対して政府はどういう建前から、あるいは提案者はどういう建前から今後のこの税法に対する国民の不信を償おうとされるか、お聞きいたしたいと思う。     〔発言する者あり〕
  210. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 靜粛に願います。
  211. 藤田義光

    ○藤田委員 お答えいたします。ただいま立花委員の御質問でございますが、この税法に対する信任、不信任は、国会議員たる立花委員の随意でございまして、ただいまの御質問は見解の相違と思いまして、御答弁いたしません。
  212. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。三百五十條第二項に書いてございまして、たびたび御論議の的になつた問題でございます。三百五十條の第二項をごらんくださつて、御判断を願いたいと思います。
  213. 立花敏男

    立花委員 私は原案のことを問題にしておるのではありませんが、修正案のことを問題にしておるわけです。政府がお出しになりました三百五十條の資料はいただいております。しかしそれがさらに修正案の率が下つても同じであるということが問題なんです。この点は国民は重大なる不信を抱かざるを得ない。藤田さんは、私個人の所信は自由だとおつしやつたが、もちろん自由です。私が言つておる趣旨は、国民全体に対する地方税法案の不信の問題を言つておるのです。だからそういう重大な問題を含む修正案に対しては、もつと愼重に、しかも十分な資料をつけて、十分な審議の期間をつけてやつていただきたいということを、最初に申し上げたのです。しかもこの問題は、国家予算とも実は関連して参ります。実は国家予算の中の平衡交付金千五十億、これに対して国民は重大なる疑惑を抱かざるを得ない。千五十億の平衡交付金は、御存じのように大体この原案の、前の国会に提出されました地方税法案の税收を基礎といたしまして、それの七〇%という額で算出された千五十億なんです。しかもそれが率が下りましても平衡交付金の額だけは同様であるということになつて参りますと、これに対しまして国民はやはり重大なる疑問を抱かざるを得ない。従つて国家予算の中の重大なる要素である平衡交付金に対しまして、国民が不信を抱くばかりでなく、国家予算全体に対しましても、国民の不信の念をぬぐうことはできないと思う。これに対しまして、やはり提案者といたされましても、あるいは政府といたされましても、十分なる御覚悟をお持ちにならないといけないと思うのでございますが、この点を明らかにしていただきたい。
  214. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの立花委員の平衡交付金の問題に関する御意見、まことに貴重なるものとして、謹んで拜聽いたしておきます。
  215. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本六太郎君。
  216. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 修正案の提案者にお尋ねをいたします。まず附加価値税をさらに一年延期するということについては、先ほども議論がありましたけれども、それに対しまする措置が当然考えられなければならぬと思うのであります。たとえば大臣のこの法律案提案の説明にも述べておられまするように、今までやつておりました事業税というものは、非常に大きな欠陷を持つている、この欠陷を附加価値税の創設によつて是正をするということが明らかになつておる。この大きな欠陷というのは、先ほども指摘せられておりまするように、要するに法人その他のものに対しては非常に税が軽くなつておるが、個人もしくは小さな企業に対するところの課税が非常に重くなつている。このことを政府も強く指摘しておるのであります。従いましてわれわれは、一年延期せられるにあたりましても、当然この不合理性、もしくは今まで行われておりましたところの事業税に対しまする欠陷を、何らかの手段によつて是正すべきであると考えておつたのでありますが、これがもう一年さらに延びるということになりますれば、いやが上にもこの不合理もしくはこれらの矛盾というものは大きくなつて、国民の上においかぶさつて来るのであります。これに対しまして、さらに一年延期するという場合の事業税の措置を、いかに改善しようとせられるかという点が一つも示されておらないので、この点についてのお考えを伺いたい。
  217. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの松本委員のお説ごもつともでございます。その点に関しましては、われわれとしましても、地方財政委員会規則その他の政令、あるいは地方自治団体の條例の運用におきまして、十分御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  218. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 ただいまの藤田委員の御答弁は、ちようど先日から小野政務次官がやつておられる御答弁と大体同じようであります。さような抽象的なことでは、私は解決できないと思う。少くともかような重大な修正をやります以上は、この裏づけとなるところの事業税に対しても、明らかなる一つの措置が講じられなければ、とうてい国民は安心できない。事業税そのものが非常に不合理であり、しかも不均衡なる課税が行われておるという前提に立つて、附加価値税というものをここに創設せられたのであるから、これを二年も延期されるというに至つては、事業税の持ちまする不合理性あるいは非常なる不当性というものを、これと同様に並行してここに改善し、もしくはこれに対するところの適当の措置を考えられなければならぬと思いますが、そのことを忘れておられるのか、あるいはまたただいまの御答弁では全然要領を得ない抽象的なお話で、これでは困る。ですからもつと具体的にどういう考えを持つておるか、たとえばこの修正案には書かなかつたけれども、具体的にはどうするかというような点がおありになると思うのでありますから、この点をもう一度伺いたいと思います。
  219. 藤田義光

    ○藤田委員 立場上なかなか答弁が十分納得が行かぬようでございまして、恐縮いたしておりますが、まつたくお説の通りでございます。実はこの事業税に関しましては、在来の税率あるいは課税対象をそのまま捕捉いたしますると、相当厖大な税收になりますので、約四五%の減税を実質的にやつたような原案になつていることは御存じの通りであります。これをさらに一年間延長することになりましたので、先ほども提案理由の説明で補足いたしましたが、非課税の範囲の拡張その他に関しましても、たとえば協同組合あるいは新聞事業等に関しまして、その他種々なる見地から徹底した修正の案もあつたわけでございますが、客観情勢の関係その他からしまして、この限度の修正にとどまつたことを非常に残念に思つております。これは将来の問題といたしまして、必ず松木委員の期待に沿うべく善処いたしたいと存じます。
  220. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 この問題はこれ以上追究いたしましてもしかたがないと思うのであります。これは今藤田委員の御答弁にもありました通り、重大なるミスがあつた。それは不十分な修正案であつたということに了解いたしまして、この問題はこれで打切ります。  その次に、この修正案を提案せられました民主党の委員の方にお尋ねをいたすのでありますが、元来この委員会の今日までの過程におきまして、われわれ野党はお互いに愼重なる態度を持つて、この法律案に対する態度をいかにするか、いかなる修正案をもつて臨むかということについては、数次にわたつて協議を遂げ、国民大衆の期待に沿い、しかも今日の日本のあらゆる客観的事情を考えて、最も適正、妥当なる修正案をもつて臨もうということで、しばしば話合いをいたして参つたことは、御承知の通りであります。そこで一つの成案を大体において得ておるのである。このことは先ほど床次氏が、ここにお出しなつた修正案の提案理由の一部として、すでに民主党自身がこの議場でお述べになつておる。その通りである。しかるにその当時野党各派が協議をいたし、基本方針をきめました修正案と、かように著しく違うところの修正案をあえてお出しになりましたその理由はな辺にあるのか。また昨日までもわれわれと歩調を一にして同じ趣旨、同じ目的の修正案に努力を拂つて来られた民主党が、一夜にしてかくのごとき修正案を出された理由は、一体な辺にあるのか、われわれは了解に苦しむ。この点についてお話を願いたいと思います。
  221. 藤田義光

    ○藤田委員 お答えいたします。実はわれわれが提案の理由に御説明いたしました通り、二点の修正で満足していないということは御存じの通りであります。ただいま御指摘の通り松本さんあたりと共同歩調をいたしております。ところがこの修正案を中心に意見の間隔を来しておることはお説の通りであります。ただわれわれがこれに賛成いたしますゆえんのものは、御存じの通り前国会の末期以来非常に問題になりました国会の審議権が回復する端緒をつかんだということが、一つの重大なる点でございます。第二の点は、われわれが四月二十八日の党大会においても確認、公約いたしました新税法の最大のがんであります。附加価値税反対の線が一応緩和されたことでございます。第三の点は、全国一万数千に上る自治体の財政の現状に対する限界でございますが、御存じの通り上半期の財政空白によりまして、六百十八億の平衡交付金は概算交付されております。そのほかに二百九十億という短期融資が放出されております。もしこの修正によつて審議権が回復され、全国民あげて問題にしておりました附加価値税も、実質的な延期が達成されたのにもかかわらず反対するようなことになりますと、現在の自治体は財政的に壊滅することは必至でございます。これは直接間接、自治体を構成する全国民の財政に壊滅を来す一つの大きな動因になるということは、賢明なる松本さんの御推察の通りであります。われわれはこの点に関しましては、平衡交付金の増額あるいは地方税の減税あるいは起債の管轄の問題、起債の償還期限、利子の問題、税制体系の再検討その他を今後の問題にいたしまして、最小限度ではありますが、二つの大きな点の修正によりまして、今回あえてこの提案をいたしたような次第でございます。
  222. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 大矢省三君。
  223. 大矢省三

    ○大矢委員 ごく簡單に、私は二点だけお尋ねしたいと思います。その一つは、私は委員会の権威と申しますか、私は今までこういう法案を審議したことはない。それは政府が今説明いたしましたように、前回の委員会の意見を尊重して、一年間延期したという附加価値税、それをさらにもう一年間延期する。私は今日まで、立法技術として、この法律は一年後に消滅するという條件をつけた法律は、しばしば審議したことはありますが、二年後に効力が発するという、こういうこつけいな法律を審議したことはないのであります。特に民主議会は御承知の通り、臨時国会を通じて一年の大半開かれておるのに、何がゆえに二年後のことを決定されなければならないか。幸いにしてここには法制局の方が来ておられますが、そういう実が最近あるかどうかということを、私は委員会なり議会の権威のために、また民主政治が確立された今日において、こういう下見識な、一体二年後に効力を発するというような法律を審議することがどうかということについて伺いたい。  いま一つは、提案者の説明にありましたように、大体今度の五百二十億、すなわち三百五十條の中に、その範囲内においてこれができるのだ、従つてこのわくはいじらなくていいのだということで、政府も非常に安心されておる。しかしこれはあくまでも見込みであります。そういう見込みがあればこそ来年の一月において上まわつたときはこう、下まわつたときはこうと解釈して、委員会にもかけずに、地方財政委員会がかつて税率改正して、国会に報告すると書いてある。そういうふうに報告するのでありますから、今日かりに十六にしようが十五にしようが、これは結局来年の一月には上げたり下げたり、上まわつたり下まわつたりすることがやれるのですから、五百二十億円は食い込まない、安心しろと言われますけれども、逆に申して、もしこれが食い込んだ場合、これが欠陥を生じたときに、補正予算を政府が出す意思がなければこれに賛成できないと思うが、補正予算を出す意思があるかどうか、この二点だけを聞きたい。
  224. 塚田十一郎

    ○塚田委員 議事進行について……。ただいま大矢委員の質問は了解と違いますので、前平の効力の発生時期についてだけ答弁を願つて、あとの点は答弁は必要はないと思います。
  225. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 前半だけ願います。
  226. 小野哲

    ○小野政府委員 お答え申し上げます。大矢さんの御質問によりますと、法律の効力の発生が二箇年後にあるような事例が他にあるか、こういう御質問のように存じますが、この点につきましては、国家公務員法におきましても例はありますし、教育委員会法におきましても例がございます。詳細は御説明を避けますが、そういう実例があることを申し上げておきます。
  227. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これにて修正案に対する質疑は終局いたしました。  これより、本案及び修正案を一括して討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。床次徳二君。
  228. 床次徳二

    ○床次委員 私は国民民主党より提案いたしました修正案並びに修正せられましたところの原案に対しまして、賛成の意を表するものであります。  先ほど私が修正案を御説明申し上げましたときに、わが国民民主党の立場を詳細御説明申し上げましたが、これによりましてわが党が、将来の自治政治のためにいかに努力をしておるかということは御了解を得たことと思うのであります。大分長いこと説明申し上げましたために、お聞き苦しかつたと思いまするが、真意はそこにあるのであります。私どもはあくまで、われわれの持つておりまする理想に向つて努力を続けて参りたい。ただいままでいろいろ質疑応答がありましたが、将来の国政を議するのはやはり国会において議するのであります。今日国会の審議権というものが確立せられました以上、われわれは悪いことはこれを改めて、どんどんと理想に向つて行くということは、当然われわれの責務である、かように考えておるのであります。従つてこの際、特にわれわれといたしまして明らかにしておきたいことは、将来地方自治体の負担をすみやかに軽減をはからなければならないということであります。今回の地方税制の改正の結果、地方には相当の財源が付與せられまして、財源が確立せられました反面におきまして、負担が重くなつて来たということは、争うことができない事実であります。国税と通算いたしまして、あるいは減税になるということを言つておりまするが、徴税能力を見て参りましても、また国民の負担能力の立場から見ましても、これは著しい限度に来ているということを言わなければなりません。しかも新税刷によりまして、負担義務者に著しい変更を来しておる。しかも事務上の大きな混乱も予想せられておるのでありまして、それに加うるに、新税の実施が遅れましたために、下半期に集中されて納税しなければならないということでありまするので、でき得ればかかる新税というものは、本来でありまするならば、なるべく低額のものより、漸次慣れるに従つて予定の收入をあげて行くというような方針をもつて、とるべきものであつたと思うのです。しかしながらそれができなかつた。本国会におきましては、予算措置を実施することができないのはまことに残念でありますが、来るべき国会におきましては、私どもは補正予算の実施をいただきまして、地方負担の恒久的軽減をはかりたいと考えておるのであります。本年度において実現をし、さらに明年度におきましては大々的にこれを実施したい。政府におきまして七百億の減税をするということを言われておられまするが、往々にして政府のやりますことは、自分の最もやりやすい国税のみの軽減でございまして、地方税は放任しておくというのが、過去の事例であつたのであります。かかることでは、自治体の健全なる発展ということはできないのであります。今後の減税というものは、地方税を中心にしてこれを実施すべきものである。しかも農山漁村において、また中小企業者を対象として、その減税を実現しなければならぬということを、私は固く信じておるのであります。  第二に、固定資産税の内容におきましては、先ほども御説明申し上げましたが、まことに研究を要する問題がたくさん残されておる。ことに来る二十九日にはシヤウプ博士も到着せられる由でありますので、十分検討を加え、よりよい案を、なるべくすみやかな時期に実現いたしたいと思うのであります。先ほども申し上げましたが、固定資産税の非課税の範囲に対しましては、工具、器具、備品、遊休末稼動資産、協同組合資産、公道、隧道、農業用資産、小型漁船、学術研究施設等につきましては、十分これを考慮せられなければならない。また国家の重要産業でありますところの海運業、鉄道、地方鉄道、地方軌道、発電、ガス等の事業に対しましては、特別な軽減を考うべきものと存じます。なお土地家屋倍率等につきましても、この九百倍というものに対しましては、これはやはりできるだけ軽減すること、われわれは七百倍ぐらいまで軽減すべきものであると考えておるのであります。なお寒冷單作地帯におきましても、その実情から申しまして、特例を設けなければならないということにつきましては、皆さんも御異存がないと思うのでありまして、これらの点はさらに十分国民の希望や意見をシヤウプ博士にも開陳し、お互いに研究いたしまして、よりよい税を実現いたしたいものと考えておるのであります。なお市町村民税におきましては、先ほどもいろいろ御議論がございましたが、今後の税体系の調整をはかる意味において、やはり個人の所得割を軽減し、法人に対して所得割を課するという問題を十分研究すべきものであると思います。また個人の非課税範囲の拡大、さらに協同組合に対する非課税ということを初め、幾多の問題が残されておるのであります。特に地方税中におきましては、いわゆる大衆課税、とらなければとらない方がよろしいという課税が少くないのであります。すなわち入場税にしてしかり、遊興飲食税の一部においてしかり、あるいは自転車税、荷車税、あるいは狩猟者税、接客人税等いずれも財源がありましたならば、これを廃止あるいは減税しなければならないということは明らかなる事実であります。われわれは財源をすみやかに捻出いたしまして、一日も早くその実現をはかりたいものと考えておるのであります。決してただいまの修正を加えただけでもつて満足するものではない。これに対しましては、各位の十分なる御協力を仰ぎたいと私は考えておるのであります。実は前回国会におきまして、本地方税の審議にあたりましては、いわゆる国会の審議権の問題、国会自主性確保という問題も論議せられておつたのでありまするが、幸いにして今回の審議におきましては、わが国民民主党の努力のもとに、これが円満に解決を見まして、今日まで審議を進行し得てここに至つたということは、まことに私どもは内心喜ばしいと思つておるのであります。不十分でありまするが、国民の要望をある程度まで参酌いたしまして、ここに修正案ができ上るということに対しましては、私ども心から御同慶にたえない次第でございます。今後の一層の改善を国民に約束し、本案の成立に対しまして、賛意を表するものであります。
  229. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 大矢省三君。
  230. 大矢省三

    ○大矢委員 私は社会党を代表いたしまして、原案並びに修正案に反対の意思を表するものであります。先ほど来、同僚門司君から詳しくわが党の本案に対する修正意見を述べましたから、私はごく簡單に申し上げまするが、まずこの法律は第七回国会において、多数を擁する自由党政府によつて出されたものでありまするが、参議院においてこれが反撃を食つて否決になつ法案であるのであります。これに対して説明にもありまするように、若干の修正を加えて提出したというのでありまするが、その若干の修正とは、一年延期したと言いまするが、これは実質上は一月にさかのぼつて徴收することができないから、これは單に輿望をいれたというのではなくして、否決になつた結果こういうことに相なつたのであつて、これは決していれてないのであります。しかしながら今日それが一年間さらに延期した民主党の修正案に出たということは、これはあの多数を占めるところの自由党並びに政府が、まつ向からこれに対して屈服し、しかもこういうふうにさらに修正されるということは、私は天下にかなえの軽重を問われる非常に大きな原因となつたと思うのであります。それから私がこの法律を一貫して見ることは、名前は自治の健全なる発展を希うために、いわゆる財政的な肉づけをするのだということを説明しておりますが、この法律を見ますると、所々に現われている点は、依然とした中央集権的な、いわゆる地方自治をまだ十分に理解していない点が多々あるのであります。これは今度の法律案には直接は関係ありませんが、大いに税制上考えなければならぬことは平衡交付金の問題である。この平衡交付金というものは、依然として中央の政府が地方の自治体に対する一つの配分権を持つ、非常な集権的な要素を多分に持つていることであります。特にこの地方財政委員会並びに地方行政委員会というものをつくり、さらにいろいろな点で依然として内務省が地方自治庁にかわつて、地方自治体に向つて大きな権限を持つているこの内容であります。このことについて私どもは多くの改正意見を持つているのでありまするが、税制の改革でありまするから、主としてその点に触れます。  まず第一に、附加価値税に対しては、一般からすでに論議されて、すでに十分ここで盡されたことでありまするが、私はこの附加価値税に対して一番に反対する一つの理由は、労働賃金に対してかかつていることであります。従つて一般の通常いわゆる生産事業と普通の販売事業との間に非常な不公平がある。第一條のごとき、第一次産業においてはこれは原価に直ちに転嫁することができまするが、第二次、第三次の中小企業に対しては、これはなかなか商品に転嫁することは困難であります。従つてこれは中小企業がこれを負担するということになりますると、事業上に非常なる支障を来すことは、しばしばここで論議をされたことでありまするが、その労働賃金に対してこれを対象として附加価値税がかかるのでありまするから、これは勢い大きな社会問題になつて現われることは申すまでもないのであります。すなわち人員を淘汰するか、賃金を下げるか。あるいはくぎづけにするか、そういう結果になりまして、労働者にとつてこの課税というものは非常なる苦痛であると同時に、自由党がかつて公約いたしましたすなわち取引高税を廃止したというが、これは取引高税になお輪をかけたような流通税である。それは大臣もすでに答弁されておりまする通り、多分に流通税の性質をもち、これが転嫁されるであろう、こう言つておりまするように、これは必然物価の騰貴を伴うのであります。従つて低物価政策あるいは取引高税を廃止するという自由党の政策に、およそ反対の附加価値税ではないかと思うのであります。  次に簡單に申しますが、固定資産税の問題であります。固定資産税の問題は、率の問題がいろいろありましようけれども、これこそ私は転嫁されると思う。おそらく大都市においては特にそうでありますが、土一升金一升という賃貸価格の非常に高いところの大都市におきまして、この土地家屋に対する値上りが、労働者、借地人、借家人に転嫁されず、地主、家主さんが負担するとだれが言うでしよう。必ずや私は転嫁されると思う。これは政府は予算補正をやらぬということで、賃金は依然としてすえおいておる。賃金はくぎづけにしておきながら、こうした固定資産税であるべきいわゆる土地、建物に対して値上げをするということになれば、勢い新たな値上りになるのでありまして、これまた住民の生活が非常に苦しくなるということであります。ことにこの附加価値税の資産評価、計算ということは、はなはだ困難でありますが、それを容易にやれるごとく説明し、やろうとするところに、私はこの法律の実際施行にあたつて、立法をする者は簡單でありまするが、これを徴税し、あるいは徴税されるものは非常なる困難を感ずるのではないかと私は思うのであります。  その次に最も重要な住民税であります。住民税は、私が一番苦痛にしておるところは、二十四年度の、すなわち所得税の税額に対する一八%をかける。これは二十四年度の所得税の改正のときの税率、それに一八%をかけられる。この住民税の均等割税は、しばしばここで問題になりましたように、いわゆる均等割税は一万円の会社も一億円の会社も、同じ均等割税として、大都市においては八百円の三倍、二千四百円、小さないなかに大きな紡績工場その他を持つておりましても、四百円の三倍でありますから、千二百円。それさえ納めれば均等割税はいいというのでありますから、こういう不公平な、いわゆる公平をモツトーとして立案したという説明には、およそ縁遠いものがあるのであります。こういう税率並びに所得税の税割というものに対して、私どもは非常な不公平があると同時に、こうした今度の税制は、説明にもありまするように、国税の方では減税したけれども、地方税はなるほど増税になつておる。その増税が、担税能力のあるものに増税するならば、私どもあえて言いませんけれども、一般大衆担税能力の少い者に多くかかつておるということであります。これは政府がいかなるりつぱな名目を持ち、いかなる理由がついても、担税能力のない者に、さらに多くの税金をかけるということは悪税であり、苛斂誅求であります。従つて私はこういう税制には断固として反対し、応ずることができないのであります。すなわち地方自治というものは單に経済力の裏づけだけではよくならないのであります。その自治体を構成しておる住民の生活が安定してこそ、初めて自治が完成するのであつて、税金だけとつて、金さえあれば何でもできるといつても、その税金の対象は大衆であり、勤労者である。しかも担税力のない人たちにかけるということは、住民税の建前、さらに税率その他に対して非常な反対を持つておるのであります。私は今申しましたように、こまかい点については述べましたからくどく申しませんが、今度の地方税法に一貫して流れる考え方は、ほんとうの自治の発展を願うのではなくして、あくまでも勤労大衆というか零細な国民大衆にしわ寄せといいますか、それに基礎を置いて、それを対象としての税制の確立でありますから、私どもは残念ながらこの建前、前提については反対せざるを得ない。もつとも将来地方自治のために、たとえばその配分の率であるとか、税源の確立であるというふうに、われわれの相当首肯する点もありますけれども、こういう建前、さらに依然として中央集権的なものの考え方に対して、そこに一貫して流れる精神に対して、私は反対の意思を表示するものであります。以上をもつて私は社会党の反対の趣旨を申し述べた次第であります。
  231. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 河原伊三郎君。
  232. 河原伊三郎

    ○河原委員 私は自由党を代表して、藤田義光君から提出せられました国民民主党の修正案並びに修正部分を除いた政府原案に対して、賛成の討論を行わんとするものであります。  戰時中から戰後のインフレ時代にわたりまして、財政需要の急増を来しましたのにまかせて、あれにも税金、これにも税金と手当り次第、思いつき次第に新税を起し、あるいは税率を高めて参つたのが、現在のわが国の税制の姿であります。この乱脈をきわめた税制を全般的に、根本的に練り直し、建て直そうとするのが吉田内閣の税制改革でございます。その目標は、国民負担の軽減と負担の権衡、合理化、税種目の簡素化、中央財政の縮小、地方財政の拡充に重点を置いてありまして、この雄大な構想の一環をなすものが、この地方税法案であります。すなわち従来のごとく思いつき的な、継ぎはぎ的な構想でなく、税全体のにらみ合せの上に立案せられ、そうして国民負担の軽減、負担の権衡、合理化をはかるという目途をもつて立案せられたということが、まず賛成の第一点でございます。  なお民主政治の確立は中央集権の打破、地方分権の達成、地方自治の確立が必須要件でありまして、それにはどうしても地方財政の確立強化ということが必要でありまして、この建前から参つておりますことが賛成の第二点であります。  賛成の第三点は、負担の権衡をはかる上におきまして、勇敢に、大胆に一大改革を断行し、担税能力の微弱な大多数国民に最大の配慮を加えた点であります。その一例といたしまして、従来の事業税にありましては、大企業の税負担はわずかに一〇%に過ぎなかつたものを、今回それにかわつて立案せられましたところの附加価値税におきましては、大企業の負担六〇%、その他の負担四〇%という一大激減を来しておるのであります。今回これを延期することによつて、従来通りの事業税を一応復活いたし、全般的にその税率を一二%に下げることにいたしましたが、特に農業者、林業者、畜産業者、水産業者に向いましては、主として自家労力によるものは非課税とするという特別措置を講じたのであります。そもそも農業は戰時中まつ先にその主要な生産物を統制され、大部分のものがすでに統制を解除せられました今日において、いまなお嚴重なる統制のままに放置せられておりまして、今日の農民は非常な困窮の状態なのであります。今日までこの農民に対する同情的な慰安を與える声はよく聞いたのでありますが、しかも今回のごとく有効適切なる実彈的な措置を講じた内閣は、いまだかつてないのであります。しかるに今回このような措置をいたしまして、最も困窮しておる向に対して、特別なる配慮を加えるということ、これが賛成の第三点であります。  賛成の第四点は、本法案は社会政策的妙味を十分に織り込んでいることでありまして、未亡人とか不具者などの不遇な人々に対しては、従来かつて見ざる特別なる、きわめて行届いた措置を講じているのであります。ことに注目いたすべき点は、従来の税法におきましては、公共性の濃厚な事業を最も優先的に優遇いたしまして、その税の減免をはかつたのでありまするが、今回の税制におきましては、むろんその方の配慮もいたしておりまするけれども、さらにそれよりも一層進んで、担税能力の微弱な者に、最優先的な廃減税のあたたかい配慮を加えるというのは、現段階においては最も適切なることと考えます。これが賛成の第四点であります。  賛成の第五点は、本法案は全国各地方団体の課税面において、大局的にはなはだしいでこぼこのできないような措置は講じておりますけれども、他面地方自治団体の自主性を極力尊重いたしまして、特殊な事情に対しましては臨機応変、最も適切なる措置を講じ得るよう、彈力性を持たした点でありまして、これまた従来の地方税法と大いにその選を異にする点であり、非常な進歩と申さなければならぬと思うのであります。さらに近来割当寄付と称しまして、寄付金名義をもつて各地方自治団体が実質上の課税を行つておるのであります。しかもその額は実に三百億を越えることになつております。今回の地方税の増税によりまして、増税見込額が三百八十億余、しかも本法案におきましては、かくのごとき地方自治団体の議会の議決をもつて割当寄付、強制寄付を求めるがごときことを禁じておるのでありまして、この三百億の実質上の税金がなくなることと、三百八十億の増税とを差引いたしますれば、実質上の増税はわずかに数十億にすぎないということになるわけであります。  以上がこの原案に対する賛成の主要なる点でありますが、これは畢竟するに、大局的、荒筋的に考えまして良案となすものでありまして、真に理想的なもの、完全無欠なものとは即断しがたいのであります。すなわち前国会におきましても中島試案のもとに、われわれ自由党におきましては、微に入り細をうがつた点におきましては、種々なる検討を加えて、もつてこれをよりよきものにせんと試みたのであります。この気持は現在におきましても少しもかわらないものでございまして、新聞業、海運業、私鉄、遊興飲食税の問題、固定資産税の問題、市町村民税の問題、あるいは電気ガス税における非課税の範囲など、広汎な面におきましてこの輪郭、本筋においては賛成であるが、さらに細に入り微をうがつては、この税の改善を企図するものであります。ただ今日は地方自治団体が税の空白状態に置かれておりまして、その財政は破綻前夜にあります。ちようど本税案の成立を持ちますことは、早魃の稻田にまさに枯死せんとする稻が雨を待つがごときものでありまして、まさに一日一刻を争う現状でございます。一面厖大なる本税法案を理想的、完全無欠なものたらしめようといたしますためには、本議会だけでなく、関係方面との折衝もあり、ただいまとうていこの火急の間には合いませんので、一応これを通過せしめ成立せしめて、後日ゆるゆると検討してなるべく近い機会において、さらに完全無欠なるものにしようと考えておる次第であります。  つきましては今回民主党の修正案が出ましたが、これはわが党の修正案の一部をなすもの、もしくはその線上にあるものでありまして、わが党の意見を何ら妨げるものではありません。かような理由によつて賛成する次第でございます。  なおこの附加価値税でありますが、さいぜん申しましたごとく、附加価値税は従来の事業税に比しまして、従来の事業税が大企業一〇%、その他の企業九〇%という負担のものを、附加価値税において大企業六〇%、その他四〇%に減額するものである。こういつたふうな零細国民の負担軽減には、最も役立つものでありますけれども、何分にも税負担の激変を来しますのと、なお業種、業態によつて非常な差異ができて参りますので、これらの点に関しましては十分なる検討を要する点があると思うのであります。かような点におきまして、幸いに民主党からさらに一年間延期という意見が出ましたので、これは非常に好都合と思う次第でございます。かような点におきまして、民主党の修正案並びにこれを除く政府原案に賛成の意を表するものでありますが、同時に政府に対しまして、幸いに本案が国会において成立いたしました上は、これが運営にあたつて、この案の持ちますところの妙味を、十分地方自治団体に徹底し、その運営において万遺憾なきを期せられんとを希望する次第でございます。  ここに希望を付して修正案並びにこれを除く原案に賛成の意を表する次第であります。(拍手)
  233. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 米原昶君。
  234. 米原昶

    ○米原委員 私は日本共産党を代表しまして、本原案並びに国民民主党提出の修正案に反対の意思を表示するものであります。政府は地方税の不成立が現在の地方財政に不幸をもたらしたと見まして、その責任を事実上は野党に転嫁するごとき言葉を、今までしばしば述べて来ておるのでありますが、まことにこれは言語道断であります。またこの新地方税法案の審議にあたりまして、この地方財政の困窮状態を理由として、この地方税法を今通すことがぜひ必要だということを申しておりますが、そもそも前国会に起きまして地方税が成立しなかつたところの責任は、外国から派遣されて参りましたシヤウプ使節団の勧告を、日本実情を十分に考慮することなく日本に実施したる態度、そして国会の自主権も自主性も審議権も放施したところの吉田内閣の責任であるということを明らかにしなければならぬと思うのであります。さらに前国会におきまして、新税法が通るやら通らぬやらわからぬ先に、これが必ず通るということをあてにして、旧地方税法の継続に対して反対したところの政府並びに與党の責任が、最も重大であるということを、私は強調しなくちやならぬと思うのであります。地方財政の破綻は單に地方税不成立によつて、新たに始まつたものではありません。一日に四、五人の市町村長が、財政の破綻を理由として辞職し、さらに全国知事会、市町村会を初め、地方自治庁自身もシヤウプ博士にその苦しい実情を訴えたことによつても証明しているではありませんか。この不成立によつて政府がこれに対する措置をとるのは当然のことでありまして、実際に行いましたところのその措置が、まつたく机上のプランである。そのために現在地方財政が困窮しているという事情を、われわれはしつかりと把握しなければならぬと思うのであります。本日の読売新聞紙上においても、地方自治体が給料も抑えない、災害の手当もできない、住民からは借金しているというような実情が、実にるる詳しく報道されております。これらの実情はまつた政府並びに與党の責任であるということを、あらためて私は強調するものであります。しこうして新たに出ましたこの地方税が実施されることによつて、地方財政に福音を與えるというがごときことは、まつたくこれは幻想にすぎないと思うのであります。実際はかえつてこの地方税法を実施することによつて、非常な苦境に陷つて行くであろうと、いうことをわれわれは思うのであります。それは何よりも現在朝鮮事変に関連しまして、国際連合に対する協力ということに名をかりて、吉田内閣が行いつつありますところの産業経済を軍事的な動員態勢に置こうとしておる、このことが結局においては国費を膨脹させ、その穴埋めとしての地方財政の困窮状態を、さらに今後激しくするものと見なければならないのであります。国税で七百億減税するから、地方税四百億を増税しても国民の負担は軽くなる、そうして大衆も納税しやすく、地方自治体もとりやすいという考え方は、まつたくの私はトリックであると思うのであります。そのことは以下個々の税法の点につきまして、るる述べたいと思うのでありますが、実際におきましては決して四百億の増税で済まない、この委員会におきまして私もしばしばその点を尋ねたのでありますが、決して標準税率だけで行くような実情にはなつておらない。私はもう標準税率をはるかに突破し、制限税率あるいは制限税率を突破することが起るかもしれない。そういうところまで行くことになるのではないかということを危ぶむ者であります。現在でも人民大衆の生活はまつたく破綻しております。労働者は実質賃金がますます低下し、首切りが行われ、失業者はますます増大している、農村におきましても土地放棄、配給辞退あるいは農家の娘の身売りというようなことまで伝えられているのであります。中小企業はますます破綻に瀕して、金詰まりは一向解決されておらない。しかもこういう事態は現在において国税の滞納が、千三百億のうち八百億の申告所得税の滞納があるというこの事実を見ても、明らかであります。このときにさらに地方税の増徴が行われる。しかもその徴收がこの下半期に集中して来るということは、大衆は食費さえもまかなえたいような破滅状態に陥れられるのではないかと思うのであります。そういう大衆の状態でありますが、最近の朝鮮事件と関連しまして、一方においてもちろん軍事産業は非常な大きな利潤をあげております。たとえばPD工場であるところの日本特殊鋼の利潤率を見ますと、二十九割の利潤率をあげている、十七倍の再評価をやつております。巨大銀行の收益は十割もあがつている。こういう状態で地方税が課税されて行くということを、われわれは見なければならない。この地方税は破綻する大衆をますます破滅に導き、一方では軍事産業ををますます肥らせるところの税制であるということを、われわれは指摘せざるを得ないのであります。  次にこの税制の個々の点について若干触れてみたいと思います。政府は附加価値税を一年間延期して、事業税で穴埋めした。こういうことを五大公約の一つとして誇大に宣伝しておられますが、本委員会におきまして自治庁の鈴木次長が申されておりますように、これは單なる経過措置にすぎない。岡野国務大臣も言われておりますように、事業税は大企業に不当に軽減されていると述べておられる通りであります。その事業税が国民民主党の修正案によりましては、さらに一年間適用されて行くわけでありますが、そういうことによつてはこの問題は絶対に解決されない。そうい意味で、われわれは附加価値税の不合理な点について述べることは、もうほかの委員からも指摘がありましたから繰返しませんが、国民民主党の修正案によつては、決して合理的な解決はつかないということを強調したいのであります。特に、この事業税が昨年度の所得を基準としてかけられるというところに、私はさらに大きな問題があると思う。先日発表されました政府の経済白書によりましても、たとえば消費財の自由価格は、この一年間に四〇%も下つております。主として消費財を製造し販売するところの中小企業は、この一年間に所得の激減を来しております。大体四〇%、五〇%というところに近いものはざらにあると思うのであります。そのときに、昨年度の所得を基準としてこの事業税がかけられることは、ますます中小企業の破綻をはげしくするものである、こういうことを考えてわれわれはこの点に反対するのであります。しかも大企業に対しては不当に今まで軽減されて参りました事業税を、附加価値税にかえることが負担の公平を期するかのように政府当局は今まで説明されて来ているのでありますが、この点は絶対に私たちは誤つていると思う。これは事実上は、先ほど社会党の大矢委員からも指摘がありましたように賃金課税であり、政府言つているように独占価格の引上げ、賃下げ、労働強化、首切りによつて結局は大衆に転嫁されるものである。こういう意味において私たちは附加価値税に反対するものであります。  さらに固定資産税についてでありますが、これは先ほども質問しましたときに明らかになつたものでありますか、これが財産税的なものであるか、收益税的なものであるか一向わけがわからない、この混合物である。そうしてその償却資産評価方法のでたらめという点につきましては、先ほどの国民民主党から出ました修正案によつて、この税率を引下げても総額がかわらないというところにも、すでに明らかにこの評価方法がいかにかつてにできるものであるかということを示していると思うのであります。しかも一方では、地租、家屋税の引上げ、そういうことによつて家賃を最低一・七倍に引上げ、小作料は七倍に上ります。これは農民の土地を取上げ、一般市民の負担を増大するところの惡質な大衆課税であります。しかも地主にとつても家主にとつても、決してこれでいい性質のものでもない。一体だれにとつていい税金か、意味をなさない税金であります。しかも戰前におきまして大地主、不在地主、特権階級、独占資本等大きな金持に有利にきめられて来たところの賃貸価格基準にして、一律にこれを九百倍しているのでありますから、この不合理は実にはなはだしいものである。その結果公共住宅の居住者には家賃をとると同時に、またそこから家屋税をとるというような実に奇妙奇態な荷酷きわまる税金となつて来るのであります。こういう形であると同時に、評価委員会のさじかげんによつて、ますます償却資産の点においても独占資本には軽く、中小企業及び農民には重く、勤労者大衆をますます根こそぎに收奪するという結果になると思うのであります。しかも独占資本に対するこの固定資産税は、附加価値税の場合と同様、すでに六月一日から行われておりますところの私鉄運賃の一二%の引上げに現われているように、結局はこれまた大衆に転嫁される傾向を持つているのであります。このように附加価値税も固定資産税も、結局そのほとんどが大衆に転嫁するものである。その上、市町村民税をかけるのは、まつたく大衆を奴隷化するものであると言わなければなりません。ことにこの住民税におきましては、所得税を納められないような大衆からまで税金をとる。そのために、所得税の場合と比べて本年度は二、三百万人、来年度になりますと五百万人の税負担者がふえるという状態であります。免税点も基礎控除もない、一律に均等割をかけて来るのであります。極端な表現かもしれませんけれども、十円所得があつても八百円の均等割がかかるということも起り得るところの驚くべき悪税であります。これは食えなくてもかけるところの税金であり、ルイ王朝あるいは徳川幕府時代における人頭税と、まつたく同じものであるということを、われわれは指摘するのであります。  さらにその他の税金の点でありますが、特に指摘しなければならないのは入場税であると思います。この入場税におきまして実際上は予納制を行うという形において、いろいろな民主団体が主催するような臨時興行的なものがほとんど不可能になる。これはそういう形において、実際においては憲法でも保障されているところの国民の集会の自由を、実質的に禁止せんとするものであると言わざるを得ないのであります。しかもそういう場合に小屋主に対してまで連座制で税金をとる。一方ではこの税制全体は個人主義的な立場からかけられている。たとえばこの住民税におきましても、個人本位にかけて来るといいながら、この一点におきましては逆に連座制ということになる。全然興行そのものには関係のない、ただ小屋を貸したという小屋主までに、税金をかけるという驚くべき悪法であります。しかも入場税の税率について一言申さなければならないのは、一般の映画とか演劇とかいうような文化的なものに対する税率が十割であります。芸者をあげて待合で遊ぶ遊興飲食税がやはり十割でありまして、こういう税率を定めておるということは、これではたして文化国家ということかできるか。こういう法案、こういう税率に賛成するところの政府並びにこれに賛成する政党の文化的な低劣さを指摘されても、私は文句ないと思う。その他の点についてはよします。  このように地方税は徹底した大衆收奪の税金であり、人民大衆を国際的独占資本のために、豊富低廉な軍事労働力に突き落し、軍事産業を助長するところの傾向を持つておるものである。こういう意味において、ポツダム宣言及、極東委員会の対日基本政策に違反するところの性格を持つた税金であると、私は理解するのであります。しかもこのような地方税をとるためには、地方自治体は文字通りすべてこの税金をとるための收奪機関と化さざるを得ない実情でありまして、地方公務員はまつたく不当税吏と化すると思うのであります。新たに三万人の税務官吏の増員、莫大な徴税費増加がこれが示しております。しかも国税の徴收状況や、二十四年度の地方税の徴收状況にはつきり現われておりますように、この形で行つても納税はきわめて困難なことは明らかに予想されるのであります。それだからこそこの新税法案におきましても、国税徴收法の原則、あの驚くべき罰則をそのままここに持つて来まして、たとえば錠前をかつてにこじあけて入るとか、ある場合には婦人を裸にしで調べることができるということまでも書いてある国税徴收法の原則、権限は、そのまま地方税務官吏に與えられる。こういう形で警察隊の増強とともに徹底的に人民の收奪を行おうとしておる、このことにすでにこの地方税制の性格がはつきり現われておると思うのであります。こういう形でありまして、私たちは絶対にこの地方税法案には反対するものであります。前国会におきましても、公聽会において労働者、農民、中小企業の代表はもちろん、地方自治団体から大企業の代表に至るまで、この地方税法案に反対の意見を述べておるのであります。今回の公述人の陳述を聞きましても、すべてが反対ないしは相当徹底的な大規模の修正案であります。地方公務員を代表して出て来ましたところの労働組合の代表は、こんな税金をとるのは実にいやだということを申しておつたのであります。これは真に生活の向上を願い、平和と独立を愛する日本人なら、たれしもこの地方税に賛成することができないことは、私は明らかであることを証明しておると思うのであります。このような前国会の公述人の述べたところ、また今国会の状態を検討してみるときに、実際においては日本国民のあらゆる層が、この地方税法案には反対しておる。單に外国人のくだされた勧告案に対して、真にこれを日本人の立場から十分に検討しない、うのみにしておるという性格は、まだ拔け切つておらないのであります。そういう意味で、これはまつたくの舶来の地方税である。このことを私は強調せざるを得ないのであります。こういう形でありますがゆえに、われわれは勤労大衆、日本国民の名において、この地方税法案に反対するものであります。また修正案が今度出されたことにつきまして、国会の審議権がこれによつて確立される方向に向つておるということを、国民民主党の委員から申されておるのであります。私は絶対にそうではないと思う。この修正案の内容を見るならば、これが実質的な修正でも何でもない。真にこの修正案の中に現在の日本国民の要望が盛られておるかどうか。そういうものは自由に出せない。こういう状態において、真にこれが国会の自主権が重んじられておるものとは思えないのであります。そういう意味において私はこの修正案にも反対するものであります。
  235. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本六太郎君。
  236. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 私は農民協同党を代表いたしまして、本法律案並びに民主党からお出しになりました修正案、この両案を通じまして、反対の意見を表明するものであります。そもそもこの法律案の審議の過程におきまして明らかになつておりまするごとく、この法案は幾多の矛盾と幾多の不合理性を包含しておることは争えない事実であります。それはしばしば当局が御答弁の場合にも、そのことは現われておるのでありますが、とにかくこの程度でやつて見るということであります。しかもまた附加価値税におきましては、これを前国会において即刻実施するということであつたのに、今回は一年延期する。さらにこれをもう一年延期するというがごとき修正案に対しても、自由党の諸君は賛成であるとおつしやる。この一点から見ましても、いかにこの法案なるものが未熟なものであり、不合理性を包蔵しておるかということは明らかであります。私はそのようなまだまだ多くの検討を要し、多くの研究を要するところの法律案を、何を苦しんで本日ここに成立させなければならぬか。二年と申します歳月は相当長いのであります。二年も施行しないような、相当に長い期間を置いて調査研究を遂げなければならないような法律案を、しいて本国会において成立させなければならぬという理由の発見に苦しむのであります。しかもまた次にはその他の諸点についても、あるいは固定資産税あるいは市町村民税といい、いずれもいまだ議論を盡されておりません。しかも今日修正案をお出しになりました民主党の代表の方の御意見を承りますと、近くシヤウプ博士も来朝されるから、その場合十分なる研究を遂げ、あるいは国民的要請を訴えて、もつとよいものにしたい、これでは不十分であるということをはつきり表明しておられる。私は地方財政が今日非常な窮乏を告げておる、あるいは地方行政が非常な困難な立場にあるということは、これは認めます。これは前回会において法案が不成立に終りました結果として、相当の困難をなめておられることは事実でありますけれども、さればといつて、まだ十分なる検討を加えない多くの矛盾や、不合理性を持つておる法律案を、ただちに今急いで成立させなければならぬということの理由にはならないと思うのであります。これはいわゆるシヤウプ博士の御来朝によつて、これらの方面の研究あるいは要請、かような十分の手を盡しまして、その上で成立さしてもおそくはない。また国会の会期を五日や十日延長いたしましても、そのことはあえて国民が怪しむところではないと思うのであります。八月一日から是が非でも実施しなければならないとおつしやるけれども、前例もあります。昭和二十四年度の国家の予算におきましても、これは四月一日から施行する予算であり、三月中に成立させなければならぬものでありまするが、やはり客観情勢のいかんによりましては、これは四月の中旬になり、あるいはそれ以上に遅れたこともあるのであります。重大なる国の法律を制定し、もしくは予算を編成するという場合にあたつては、多少の時間的ずれはこれを忍んでも、完全なものに仕上げて行くということが、国会の任務であるし、政府の責任でもあると私は信ずるのであります。しかも今申し上げたような観点に立つて、これらの法案の内容を見て参りまするならば、先日来この委員会において各派の諸君から、いろいろの角度から質問せられ、あるいは検討を加えられて参りましたその過程におきまして、まだまだわれわれの承服し得ない、了解に苦しむ多くの点が残つております。しかもまたこの附加価値税につきましては、ただいま申し上げたように、すでにこれは非常な悪法であるという定評は、前国会以来一般の大きな輿論となつております。岡野国務大臣は、これは非常ないい案だ。しかも最良の案であるということを申されますけれども、それほどいい案であり、最良のものであるならば、何がゆえに政府みずから進んで一年延期し、またさらにもう一年延期するというようなことに同意をされるのか、はなはだこの点も不可解であります。私は明らかにとの附加価値税法案というものは、日本実情に即さないものである、またこれを強行することによつて多くの弊害を生ずるということは、これを二年も延期するというこの一事によつても、明らかに立証されると思うのであります。従つてわが党といたしましては、附加価値税法案はこれを廃案にすべきものであるという主張に立つのであります。しこうして先ほど申しましたように、事業税の不合理性があるならば、この事業税の中における欠陥あるいは不合理な点をば改善いたしまして、最も合法的であり、最も国民の負担に即応するような法律を制定すべきであると信ずるのであります。  さらに農村の問題について申しまするならば、先ほど自由党を代表せられて河原委員から、今回の法律改正によつて農村が非常に助かる。農民の税負担が軽減されるというような趣旨のお話がありましたけれども、私はこれは、はなはだしい錯覚であり、はなはだしい認識不足であると考えざるを得ない。今回この法案が成立いたしますならば、農村の課税、農民の負担というものは、一体何倍になるかということを御承知ないのでありましようか。国税の面においてある程度の軽減がされるとは言いますけれども、これも農民にとつてみまするならば、さほどの軽減にはなつておらない。いわんや新しい地方税法案がもしも通過をするということになりまするならば、一体農村の負担は数倍に上るということを御承知ないのであります。私はかような法律案をもつて、これが農民を救うものであるとか、農村の振興を意味するものであるというに至つては、これはお話にならないものであると思うのであります。  さらにまた固定資産税について見ますならば、一体この固定資産税なるものは、かつての地租もしくはこれらの附加税、あるいは家屋賃貸価格、かようなものに対しての税のかわりになるものでありますが、これは地租におきましてもかつては相当にいろいろな点で考慮が拂われて、たとえば新たに開拓したとか開田をした土地、非常に大きな改良を加えた土地、かような農地に対しましては、一定年限の免税の規定が置かれておりました。しかるに今回の法律によりますれば、かような開拓地あるいは開田、巨大な資本をかけて土地改良をやりました土地に対しても、何らこれを見ておらない。一律にただちに課税をするというようなことになつておる。またさらにこの倍率におきましても、しばしば本委員会で議論になりましたように、これはとつてみて余れば返す、足らなければもつととるというようなお話でありますけれども、われわれの資料によつて算定いたしますれば、これは相当に過重な税金をとる仕組みになつております。しかもまた寒冷地あるいは特殊地蔕に対しましても、何らの考慮が拂われておらない。たとえば家屋にいたしましても、寒冷地の家屋その他というものは、耐久年齡が非常に少い。修理保存その他の上にも多くの費用がかかるという点がある。農地の生産力におきましても、著しい相違を持つておる。かような地域的な條件に対して、何らの考慮が拂われておらないということであります。このような千編一律の日本の国情を無視した法律というものは、決して完全なものとは申されないのであります。われわれはかような点につきましても十分なる研究を遂げ、十分なる調査を遂げまして、最も妥当性を持ち、最も人民が協力し得るところの税制にしなければ、いかに地方自治を強化するとか、地方の自主性を高めるとかおつしやつても、かえつて結果は反対のことに立至るのではないかと思う。すなわちこの課税をめぐつてむりな税金を課することによつて、地方自治はさらに非常な混乱を起す。そのことはひいて地方自治の確立を阻害し、自治の円満なる発展を阻害するものであると信じまするがゆえに、このような固定資産税考え方、このような現実を無視したところの税法の制定に対しては、断じて賛成することはできません。ただいま米原君からも御指摘になりましたように、先日来数人の参考人が来られて、いろいろと陳述をせられたが、いずれもかような点を指摘せられまして、この法案の不完全であること、不合理であること、もしくは非常な重税になつて地方自治はさらに混乱を来すであろうという点については、大体意見が一致しております。さらにまたこの国会の中における運輸委員会あるいは法務委員会、これらの委員会からも、この法律案に対しまする強い修正の意見が、端的に申しますれば反対の意見が公式の立場において表明せられておる。これらの諸点を総合して考えて参りましても、いかにこの法案にむりがあるか、いかにこの法案というものは日本の現状を無視したものであるかということは、私はかような諸点について見ましても、これを立証することができると思うのであります。さらにまた市町村税について申しましても、従来は農業協同組合あるいは漁業協同組合は免税にいたしておりました。われわれはこのようなものは今日の農村の実情、漁村の実情、あるいは消費生活協同組合あるいは中小企業等協同組合、かようなものに対してのいわゆる町村民税の免税は当然であり、同時に事業税もまたこれを免税すべきであり、あるいは固定資産税につきましても、相当の考慮が拂われてしかるべきであると思うのであります。しかるにこれらの農村の現状を全然無視しておられる。農村の現状は、自由党の諸君はあまり御承知ではないかもしれませんが、しかし農村の今日の現状というものは、まさに破綻の一歩手前と申したいが、破綻のまつただ中に沈淪いたしております。ことに農業協同組合に至りましては、全国の單位協同組合の中で、約八百の組合が今まつたくつぶれてしまつたのであります。今後なお多くの組合がさらに破綻をし、あるいは解散をしなければならないというような現状にあることを御承知ないと見えまして、これらの協同組合に対しても、やはり営利法人と同様の課税をしようと試みられておられます。わずかにこの税法の中で、ある一部のものに、一部の收益金あるいは配当金、さようなものに対しての非課税の措置はとつておられますけれども、これは原則として全部これらの組合、ただいま申し上げました農業協同組合ないしこれらの連合会、あるいは漁業協同組合、消費生活協同組合、かような組合に対しましては、当然これは非課税の対象とせらるべきであると、われわれは信ずるのであります。このことがさらにこの法律案では考えておられないという点については、重大なわれわれの反対の理由が存するのであります。  いろいろそのほかにも理由はございますけれども、時間の関係もございますから、私はきわめて簡潔にいたしておきますが、これを要するにこの税法なるものは、少くとも日本の置かれております今日の経済事情、あるいは農村の現実の事情、漁村における現実の事情、かようなものの十分なる認識を欠いておるということであります。かような地方の実情を認識せざる、いわゆる理想論の上に立つたところの法律案を、もしも、しいて実施するといたしますならば、必ずや地方に混乱が起きることは当然であります。そのことはこの法律を制定いたしますところの唯一の目的でありまする地方自治の自律強化、そのことの目的が達成せられるどころではなくて、かえつて地方によりましては、その自治体なるものは混乱を起し、あるいはこれが強化せられるのではなくして、逆に弱体化されて行くというおそれを、多分に持たざるを得ないのであります。ゆえにわれわれは、この法律案はとうていこれを承認することはできません。政府は愼重なる態度をもつて、この法律案をいましばらく審議検討を続けられ、その上で十分なる成案を得られ、しかして今国会の会期を延長してでも、これを適当なものにして通過せしめるような努力を拂われたいと思うのであります。  以上私は本案に対しまする反対の理由を申し上げた次第であります。(拍手)
  237. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず床次徳二君外三名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  238. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 起立多数。よつて本修正案は可決いたしました。  次にただいまの修正部分を除いた地方税法案の原案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  239. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 起立多数。よつて修正部分を除いては原案の通り決しました。  これにて地方税法案は修正議決いたしました。  なお委員会の報告書の作成については、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議がないようですから、委員長に一任のことに決しました。  これにて本日は散会いたします。     午後四時五十三分散会      ————◇—————