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1950-06-14 第7回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年六月十四日(水曜日)    午後一時三十六分開会   ―――――――――――――   委員の異動 五月二日委員塚本重藏君、今泉政喜 君、谷口弥三郎君、岡元義人君、中平 常太郎君、姫井伊介君、草葉隆圓君、 小杉イ子君、穗積眞六郎君、紅露みつ 君及び中山壽彦君議員の任期を終了し た。   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件社会保障制度に関する調査の件   ―――――――――――――
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) 只今より厚生委員会を開会いたします。  かねて継続調査事件として承認を得ておりまする社会保障制度に関しまする調査事項につきまして本日は付議いたしたいと存じます。社会保障制度に関しましては、すでに御承知のごとく内閣の社会保障制度審議会におきまして今回試案が作成されました模様でございますので、それらの試案につきまして、小島局長から審議会におきまする審議状況、該試案内容等につきましてこの際その説明を当委員会といたしまして聴取いたしたいと存ずるのでございますが、御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下義信

    委員長山下義信君) それではそういうことにいたしたいと存じます。  尚すでに各委員皆様におかせられましてはすでに御承知のことでございますが、審議会事務局長小島徳雄君が就任せられまして、社会保障制度要綱の作成につきましては非常に御盡力なつておられまするので、我々といたしましてもその御盡力には非常に敬意を表しておる次第でございます。  それではこれから小島局長からその説明を聽取いたしたいと存じます。
  4. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) それでは大体の審議会審議の概況につきまして御説明申上げたいと思います。  只今委員長からお話がございました通り一応試案というものが発表されました。これはまだほんの試案でございまして、これからいろいろ各方面意見を聞き、更に必要な場所におきまして公聽会を開きまして十分なる検討を経た後におきまして最後案を決定する、こういう段階になると思うのであります。  一応試案の問題につきまして大体のことを御説明申上げたいと存じます。この試案は各委員会から幹事委員が選ばれまして、その幹事委員が主体になりまして、この幹事委員会には国会の方からも御出席を頂いております。これは幹事委員会におきまして主として検討を加えたものでございます。内容につきましては皆様のお手許に要綱が配付してございますから、ただ概況につきましてお話申上げたいと考えるのであります。最初に、社会保障という問題につきまして、社会保障定義範囲ということが問題でございます。どこの国におきましても、最近非常な勢で社会保障制度が進んでおります。各国それぞれ社会保障範囲も違いますし、定義も違います。学者の間におきましても社会保障観念というものは一定した定義はございません。従いまして審議会におきまして社会保障勧告をする場合におきまして、どの程度まで社会保障範囲に含まれるかという問題につきまして、相当研究問題があつたのであります。そこで最後の試案なつておる考え方は、憲法三十五條に考えられておりますところの社会保障という言葉よりももつと広い公衆衛生社会福祉、即ち憲法二十五條の広い意味社会保障公衆衛生及び社会福祉と併せた観念を大体社会福祉の概念に規定しておる、その範囲につきまして勧告するのが適当である、こういう考え方なつたのでありまして、それに関連しまして非常に問題になつた線は国の責任という問題と地方公共団体責任という問題であります。これは殊にシヤウプの勧告団が来まして、国の行政事務府県市町村事務との関連をはつきりするという考え方税体系の方からも基礎付けるという考え方をなされまして、従いまして社会保障のごとく大きな将来の体系を作る場合におきまして、そういう関連をできるだけはつきりして置く必要がある、こういう点からも社会保障観念の決め方につきまして相当議論がございまして、いろいろ意見が出たのでありますが、ここではそれらの社会福祉公衆衛生というものを含めた、即ち国の責任ばかりでなく、府県市町村公共団体責任までも含めた意味社会保障である。従いまして社会保障におきましては、どこまでが広義の責任であるかという問題につきましては内容によつて非常に違つて来ると考えます。で、国家扶助国家責任つまり国事務であるというとにおいては大体現行制度においてもそうであるし、この考え方からそうなつている、従つてこの国家扶助はいわゆる中央政府責任である。こういう考え方で為ります。  社会保険の問題につきましても、この問題は考え方がいろいろありまするが、大部分が社会保險は国の責任である。こういう考え方が大多数と申しあすが、この考え方につきましては方々の意見がありまして相当反対があります。例えて申しますと、市町村国民健康保險組合がありますが、これは現在の解釈におきましては市町村固有事務である。こういう考え方からできている。ところがこの社会保障はそれを一応国の事務市町村というものが経営者なつているとするこういう考え方で考えられております。恰かも今までの政府管掌であつたところの健康保険と今度例えば健康保險組合というものが認められておるわけでありますが、健康保險組合事務は従来国の事務であつたものを健康保険組合が代行して経営、三体となつて認められている。こういう思想で考えられております。従いまして社会保障を考える場合にどこまでが国の責任であり、どこまでが府県市町村責任であるかという問題につきましては相当議論のあつたところでございます。ただ国といたしましては全般的に総合調整するという責任と、社会保障総合的計画を樹立しまして、全般的に総合調整するということにつきましては変りございません。ただ全部を国がやるわけではなく、一部は政府自身がやり、一部は地方公共団体事務とすると、こういう考え方なつております。従いまして、例えば公衆衛生とか社会福祉の面になりますと、そういう政府責任というよりは、府県責任というものが相当多くなつておる面がございます。例えば医療機関を使うがごとき問題につきましては、特別のものを除きましては府県責任である。こういう考え方なつております。従いまして社会保障の体系を作る場合におきましては、そういうような国家事務なら国家事務府県事務なら府県事務、どこまでが社会保障範囲内であるかという問題につきましては相当研究をいたして立案されておるのであります。  それから社会保障は第一條に書かれました通り疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢失業、多子その他困窮原因に対し、保険的方又は直接国の負担において経済的保障の途を議ずる、こういう方法であります。従いましてこれらの多数の事項につきまして現在やらなければならない問題は極めて多いのでありますけれども、日本経済状態と睨み合せまして何を先にやらなければならないかという問題につきまして非常に愼重に研究されました重点は、一つは今医療の問題に重点を置かなければならん、こういうことが一つ結論であります。イギリスのビバリツチ氏が政府社会保障勧告をいたしましたときにおきましては、国民困窮原因というものを徹底的に調査をいたしまして、何から国民困窮なつたか、その原因調査いたしました。この問題につきましては現在我が国におきましては完全な資料はございません。一部生活保護法に基きまする生活保護法該当者がどうして生活困窮に陷つたかということの全国一齊調査がありましたが、それが現在の一番大きな資料になると思いますが、その調査を参酌いたしまして、例えば現在の生活保護法終戰直後におきましては生活扶助が多かつた、これが医療扶助の方に非常に多額の金が要つた、こういう状況から見ましても国民の大部分が医療の方に非常に困るという統計的数字、現在の日本の賃金の状況におきましては疾病の場合におきましては非常に負担が多くて困るという論理的の結論、並びに社会保険における経理の危機という点から考えましても医療という問題が非常に大きな問題であるということは論理的にも又統計的にも載る程度考えられる、こういう考え方から医療というものにつきましては社会保障相当日本においては重点を置かなければなりません。これは各国が現在やつております社会保障を見ますと、年金制度重点を置く、失業重点を置く、養老重点を置く、各国にそれぞれのやり方があります。世界各国それぞれ違いますが、日本におきましては現段階におきましては医療の問題に相当重点を置かなければならん。こういう結論になるのであります。医療の中でも結核というものは保險体系におきましても大体において約三〇%を占めておるというような統計が出ております。殊に日本では結核という問題が非常な重要な問題である。殊にその問題につきまして結核予防という問題に重点を置かなければならんのであります。こういう意味社会保障といたしましては結核の場合の保障という問題につきまして相当重要性を置いておるこのことは後に御説明申上げますが、財源計算におきましてもその方面に非常に金がかかる予定になつておるという点からも推測されるのであります。そういう点に重点を置く。それからもう一つは現在被用者につきまして問題になつておる養老年金の問題でありますが、この問題につきましては現在非常に金額が低く、殆んど価値がないような養老年金をこの際一つ根本的に考えるということで被用者について養老年金制度を研究しようということで一つ結論が出されております。それは現在の被用者保険につきましては男子については五十五歳ということ、女子が五十歳ということでございますが、その年齢厚生年金なつておるのでありますが、それを六十歳までに今度は上げまして、その代り相当金額というものを養老者保障しよう、こういう考え方であります。その金額はそこにも書いてありますが、本人につきましては二万四千円、月額二千円、妻あれば妻が一万二千円、則ち三万六千円、月額三千円、三千円と申しますと現在の俸給ベースは約九千円になつておりますから、約三分の一は退職養老年金というものが貰えるということであります。これは官吏におきまする恩給制度が大体三分の一というようなものと睨み合せて考えられた、こういうふうな相当多額養老年金をやる場合におきまする財源計算はどうなるかという問題につきまして、幹事会におきましては、一応これは実施可能という結論に達しまして、この試案というものができました。現在被用者につきましては、かような養老年金というものが殆んど価値ないものが、今度の案におきましては相当金額を出そうということになつておるのでありますが、被用者保險につきましては、この外には最近御承知通り寡婦年金、いわゆる遺族年金で、寡婦と遺児の年金というものが出ております。この問題は現在の被用者保険につきましては、養老年金というものを殆んど或る程度ストツプ、実質においてはストツプさせるような方途を講ずる代りに、寡婦なつた場合、即ち被用者が死んだ場合に、遺族につきましての年金というものを相当出しておる、それを今度相当上げるわけでありますが、その場合に現行におきましては約年年被用者が在職すれば、いわゆる寡婦年金、遺兒年金がつくのであります。そこで殊にこの面については單に被用者事業主負担ばかりでなく、厚生年金に該当する養老年金につきましては、国庫の負担を二割と考えたわけであります。従いまして税の公平なる分配から申しますると、被用者に対しまして養老年金寡婦年金、遺兒年金というものが、国民から徴收された税の二割というものが、そちらの方に廻りますと、一般国民との比較権衡論といたしまして被用事以外の者について不均衡の嫌いがあるのじやないか、こういう点が考えられます。従いまして一般国民につきましても、そういうような養老年金寡婦年金遺児年金というものについて考えたらどうか、こういう結論に達したわけであります。そうなりますと、実際問題としまして非常に養老年金というものは金がかかるのでございます。最も諸外国で惱んでおるのは養老年金で、殊に壽命の、年齢が非常に医学の発達と共に長くなつて参りました。従いましてその該当者が非常に殖えるというようなことで、養老年金というものは余程愼重な財源計算を伴わなければ危険である。今直ぐ国民年金相当やるかどうかということにつきましては相当研究を要する問題であります。そこで一つ被用者保険と同じように、一般国民に対しましても老齢とか、或いは死んだ場合の遺兒とか、或いは癈疾なつた場合の癈疾年金というようなことを被用者と同じようにするためには、一般目的税で、保険料目的税の形式によつて徴收しましてやるという考え方が浮んだのであります。併しこの問題につきましては、然らばその目的税というものを誰からどういうふうに徴收するかという問題で、相当困難な問題であります。若し完全に国民年金制度といたしまして、そう範囲を限定しないでやるならば、その費用の徴收というものは一応目的税で徴收するということは可能でありまするけれども、非常に範囲が限定された場合におきまする場合には、保険料を徴收するという仕方につきまして、相当議論があつたところでございます。従いまして、一応一般国民につきましては無醵出年金、即ち一般の税でこれを実施する、その代り被用者につきましての均衡もございます。被用者の方は金額が、只今申しますれば養老年金については二万四千円、妻一万二千円、相当金額多額でありますが、こちらの方は全然保險料を納めないものでございまするから、その金額も非常に低くする、同時に該当者の数を限定する必要がある、本当に緊急止むを得ないものにする必要がある、こういう考え方に進んだのであります。従いまして、老齢者につきましては年齢を七十五歳ということにいたしました。七十五歳、而も直系卑属がない者に限る、則ち十八歳以上の直系卑属がない者とする。則ち普通の日本家族制度の下におきましては、大抵の場合におきまして、直系卑属がありますれば、大体そのお爺さん、お婆さんとなつた場合に、それを養うのが日本の慣習である。従いまして、そういう意味におきまして直系卑属のない七十五歳以上の老齢者、従いましてこれは非常に範囲が限定されます。これは財源の関係もございまして、そう制限せざるを得なくなつたわけであります、そうしてその程度から始める。それから寡婦年金遺児年金、これは本委員会におきましても何回も非常に問題になつたわけでありますが、この問題につきましては子供、即ち十六歳未満の幼兒を抱えた寡婦に限定をする、それから十八歳未満の癈疾の子供を持つておる寡婦に限定する。即ち非常に範囲を限定しまして、幼児を抱えた寡婦というものは非常に困難だということでそういうふうな限定をする。それから遺兒につきましても同じようなことを考えたのですが、これは遺兒の場合は当然出すべきですが、いずれの場合におきしては或る程度所得の制限をする。これは国民年金の場合におきましては、即ち相当多額所得のある者につきましてはその年金額を減らすと、こういうことを考えたのであります。例を挙げて申しますれば、まあ元の三井、三菱というようなところの寡婦ができた場合に、それを一般国民の税金から取つたものから年金を出すというのは不穩当じやないかということが起わけであります。従いまして相当多額所得のある者につきましては制限をする、こういうようなことを考えたわけであります。かように国民年金の場合は緊急止むを得ない、本当に必要な者につきましてこれを実施するということで考えたわけであります。それにしましてもこの金額相当になるわけでございます。我々の見積りが、これはほんの概算でございますからはつきりいたしませんけれども、それにいいたしましても百四十七億ぐらいに該当するのじやないかというふうに考えます。そういうふうにいたしまして限定いたしましてやるわけでございます。これは然らば生活保護法とどう違うか、無論現在の生活保護法の精神から行ますと、最後のどん底に陥つた者を救済する程度であるから、いわゆるボーダー・ラインのやつを予防的に救うということができない。そこでこの狙いというものはそういうものを年金制度によつて権利としてそれらのものを保障してやるというのが一つの大きな狙いであります。そういうところ狙いがあるわけでございます。それから医療に問題につきまして、順位が非常に狂つて申訳ないのでありますが、医療の問題につきまして詳しいことをちよつと御説明したいと思います。  第二編が社会保險なつて、第一部が医療、出産、葬祭になりまして、第一節が被用者ということになつております。これが全般的な体型がそうございまするが、今までの考え方というものは社会保険におきましては労働者労働保険ということが、日本における保険制度の中心であつた。これが今度は国保を全部を対象とするという、全然一つの新らしい社会保障制度に立脚した制度なつたわけでございますから、考え方を変えるべきである。即ち被用者保険とか、一般国民保險ということを前面に出すのじやなくて、国民が、いろいろ貧乏になる原因であるところの疾病とか、或いは負傷をしたり、或いは分娩したり、或いは癈疾なつたり、或いは死亡したり、或いは老齢なつたり、或いは失業したり、非常に多子家庭であるとか、そういうような貧乏になる原因のあつたときに、国家なり国民全体がどんな保障をするかということが一番社会保障の中心である、従つてその事故という、いわゆる昔からこの保險の言葉で言いますと保險事故というものを前面に出して、そういうものに対してどういう保障がなされるべきかということを書くべきである。こういう考え方であります。従いましてこれは当然将来の行政機構を考えます場合にも、そういう思想は現われるべきだという考え方の下に立案されております。即ち被用者というものが前面に出るのではなくて、いわゆる医療保障老齢遺族保障、廢疾の保障失業保障、そういう関係が前面に出て来る。こういう考え方からこの観念は補正されておるのであります。そこで被用者の問題につきましては、現在各種保險制度が、国民につきましては国民健康保險、それから一般につきましては健康保險制度がありますが、官吏につきましては特別に共済組合という制度もございます。そういうふうに現在の制度は大体におきまして人によつて区別されている。どういう人を対象として内容が規定されているかということによつて保險の形態ができておりますのを、そういう考え方を止めまして一応被用者全般対象として考える。そして現在の各種保險制度を総合統一する。この要望がワンデルの勧告にもございますし、同時に事業主及び労働者の各方面からすでに要望されている。現在のごとき非常に複雑多岐なる各種保險制度が、いろいろな点において不便と困難とを與えておるのでありますが、これを根本的に改正しようということで、被用者につきましては特別の例外を除きまして、官吏であるとか公吏であるとか、或いは規模の種類が、例えば五人以下のものが制限せられておりますが、そういう規模の種類の人も全部入れるということ、こういうことで大体被用者につきましては原則として全被用者、こういうことでございます。そういうことで考えられまして、従いまして現在の共済組合というものも当然ここに入つて来るわけでございます。そこで内容につきましては、先程ちよと私が最初に触れました通りに、結核相当重点が置かれる。この国費負担というものが医療につきましては相当財政の面にも出て来ますが、相当負担されております。その四頁を開けて頂きますと書いてあります通り法定給付額とありまして、被保險者と被扶養者ということになつております。そこで被保險者につきましては、現在本人につきましては、最初のいわゆる初診療につきましては一部負担がございまするけれども、あとはないのであります。これは日本における経済状況から申しますと、非常に進んだ、被用者につきましては保護なつております。今度の案におきましては家族というものが五割負担なつております、その家族の分を相当三割くらいの一部負担にしまして、相当額国とか保險でカバーしてやる。こういうふうにいたしまして、現在一番薄いところにあるものを段々上に上げて行こうという思想に出ておるのであります。従いまして現在の家族の五割の一部負担が三割、これは非常に大きな財源でございますが、三割負担ということになつております。結核につきましては更にそれを減額するというような考え方であります。  それから傷病手当金、これは結核につきましては非常に重要な問題で、結核というものが医師の医療の面によつて解決されない社会的疾病であつて、経済問題が非常に重要である、即ち病気した場合にどういうような生活保障が與えられるかということは結核治療対策上最も重要な問題である、こういうことで現在傷病手当金というものが被用者については考えられております。その期間が現在では一年半となつております。健康保險においては一年半となつております。これを三年間、まあ大体三年間やれば結核というものも相当保護されるわけでありますが、三年間傷病手当金結核医療給付の場合におきまする傷病手当金を支給する、いうことで生活保障する。これは医療対策として非常に重要なことであるわけであります。もう一つ予防給付というものをこれは全般的におきましては予防の方がより重要であるというにとは申すまでもないことであります。今まではそれが健康保險とか保険制度においては加味されていなかつた、即ちお医者さんの診断を受けて病人であれば保險経済において負担していたものが、たまたま健康人であつた場合におきましては自己の負担になるというような非常な矛盾がございますが、これは進んで予防をやろうという国家の行政に矛盾するということで、保險におきましても予防給付ということを考える、これは保險自身において一つの大きな改革というばかりでなく、同時に現在の開業医制度というに患者をなくするという方面開業医にも協力して頂く、そういう費用につきましても保險おいて負担するという考え方に進んだわけでございますから、日本のごとき非常に開業医の占める地位が高い場合におきましてのこの予防給付というものが與える開業医制度本質的変更につきましては、見逃がすべからざる大きな変革であるというふうに考えるのであります。  次は一般国民につきまする健康保險、現在御承知通り市町村には国民健康保險がございます。これは非常に現在に起きましては不信の状態にあることもご承知通りでございます。これをどういうふうにして解決するかという問題は、相当大きな研究題目でございまして、そこでこの考え方一般国民のこういう医療保障というものは国の事務である、それを市町村をして経営させるのだ、こういう考え方できております。従つて一応全部市町村に強制設立させるという結論になるわけでございます。これは画期的な考え方で、その費用の三割だけを一部負担させる、本人の一部負担にする、こういう考え方であります。その三割の一部負担被用者家族が三割負担、こういうものと調子を合せたわけであります。被用者個人につきましては先程申上げましたように、現在に起きましても殆んど無料というような実情でございます。これは被用者自身保険料の支拂もありますれば、事業主がそういうものに対して保險料負担しているというような特別な方法でありますが、それと同じように一般国民につきましては家族と同じ程度に上げたい、こういう考え方で立案されております。併しこれを今の日本の実情から直ぐ全国に一時に実施することは困難であろうということで、一応財源を立てる場合におきましても、仮に二十六年から実施するにいたしましても、6割程度市町村に実施ができる、こういう仮想の下に考えられるわけであります。従いまして段々延期を一部については認める、こういう思想でございます。年金につきましては先程御説明申げました。  次に失業の問題に入りますが、失業につきましては現在失業保險制度というものが整備されて間もない日本の現状といたしましては、相当多額の国費を、本年度も四十六億以上の予算を計上するというふうに、相当多額の予算を計上いたしましてやつておる。従いましてこの失業保險の給付期間を大体6ヶ月とするのは、大体世界各国の例から見てこれ以上というのはむずかしいのが実情ではないか。従つて失業保險においては、給付内容を更に増額するということにつきましては今のところ困難であるという大体結論を出しております。ただ被用者範囲が、先程申上げましたように非常に限定されておる。こういうものを全般といたしまして、被用者全般に拡張する、これは、官吏であろうと公吏であろうと全部同じように考えたい。こういう考え方でやつております。それからもう一つ特に考慮しなければならんことでございますが、失業期間中におきまする医療の給付が被用者でなくなつ被用者保險から貰えない、同時に国民健康保險では不十分だというよな子ことで、そういう点につきまして特別な考慮を拂わなければならんということが考えられます。  その次は業務災害でございます。業務災害は、今労働者災害補償保險法という法律ができておるわけでありますが、船員につきましては船員保險法で考えられております。それらの問題につきまして根本的にこれが社会保障に入るか入らんかという問題が一つの大きな問題でありますが、即ち今の労災と考え方というものは業務上災害の起つた場合におきましては、それは資本家がそれを弁償する。損害を賠償するという損害賠償の理論に立つている。従つてそれは社会保障じやないじやないかという議論があり、又そういう理論の上に現在までの法律が体系付けられております。従いましてこれが社会保障に入れるべきや否やということは相当議論の存するところであります。これはイギリスにおいても労災問題がそういうことにおきまして問題になつたわけてありまして、結論としましては入りましたわけでありますが、即ち労災の現在の損害賠償の考え方を更に一歩進めて、業務上の災害でも單に事業主ばかりの責任ではなくて、事業全体の連帯責任を負うべきである。国もこれに対して責任がある。場合によつて労働者責任のある場合もある。こういうふうな考え方で、今の單なる損害賠償理論から進めた考え方で考えなければならん。殊に国民自身から考える場合には、その災害の原因が業務上であろうが業務外であろうが、そういう事故に対してどういう保障がなされるかということは、国民から見れば、その費用負担を国が負担するか、事業主負担するかの別はありましても、国民自身から言えば同一と考えられる。従つてこれは当然社会保障範囲に入れて考えるのが至当である、その運用を関連せしめてやるのが正当であるという思想に立つて、この中に入つておるのであります。この問題につきましては相当いろいろ今後反響があると考えられます。  それから次は保險が済みまして国家扶助でございます。この国家扶助は去る国会におきまして生活保護法の改正がなされたばかりでございます。従いまして特に問題は少ないのでありますが、ここで問題になりますことは、扶助の原則のところで、一旦生活扶助を受けている者が例えば母子寮なら母子寮、その他授産情なら授産情におきまして、生業をして一つの収入を得た、そういうふうにして得たところの收入というものは現在の生活保護法の建前から行きますと、全額を差引くということが大体精神であります。そういうことは勤労者の勤労意欲を阻害する。これは社会保障の基本原則、本旨に悖るから、これを或る程度差引くけれども全部差引かないようにするように考慮するのが生活保護法の大きな将来の改善の方法じやないか、こういう精神に立つております。  それから資産調査の場合におきまして、日本のような経済事情の場合におきましては、相当生活保護法を実施する場合において厳重なる資産調査ということも勿論必要であると思いまするが、その場合におきまして、資産のうち、例えば現に所得の源泉となつていないもの、自分の家があつてもそれが自分が今入つてつて、それから全然収入を得ていない、その家な売ればいいじやないかという形になつて来るのでありますが、場合によつてはそういう場合もあり得るが、売ることが困難な場合もあり得るでありましようし、そういう場合に現に所得の源泉となつている場合について特別の考慮を拂う余地も考えるべきではないかということが今度の改革の案でございます。  それから扶助の種類及び方法でございますが、現在生活保護法には生業扶助という考え方が入つております。これは大体現在の生活保護法というものが日本におきまする終戰後できた根本的社会立法でございまして、いろいろん考え方が全部そこに網羅されておりますが、社会保障で体系を作る場合におきましては、いわゆる国家扶助という考え方社会福祉考え方とは区別すべきじやないか、そういう意味において生業扶助の考え方或いは引揚者にやつておりますところの生業扶助の考え方とか、そういうものと睨み合せまして、もつと福祉的な方法に入る、社会福祉の方に入るべきである。即ち生活保護法に陷らないように考えるべきものじやないか、こういうふうで生活保護法から抜いて社会福祉の方に持つて行くのが体系としてよろしいし、又運営もそうあるべきじやないか。こういうことで、そういうふうにやりました。  それから次は公衆衛生でございますが、この公衆衛生という意味は、これは広い意味でございます。憲法の二十五條にある公衆衛生で、今の医務局のやつておる仕事も当然包含されておる意味でございます。ここで一番問題になるのは、結核対策でございます。それから開業医というものがこの関係で考えられております。社会保障というものが相当拡充強化された場合におきまする医療制度との関係は、極めて深い関係であります。曾て日本保險制度が布かれた場合におきまして、ほんの一部の者がこれに加入したのみで保險の利用というものが非常に少なかつたというような時代と違いまして、この社会保障相当拡充されますと、社会保障に、全開業医と申しましても過言でない程開業医の協力が要ると思いますが、そういう意味におきまして、開業医の協力という問題が極めて重要な問題である。従いましてこれらの点は先程もちよつと触れましたが、ひとり公営機関ばかりでなく、開業医にも協力を求める。而も保險のところで触れましたように、單に患者の治療ばかりでなく、医療予防方面につきましても、開業医の協力し得る態勢ができ得るように、府県においても考える、こういう思想が入つておるのでありまして、一つの大きな改革の方向を示しておるのであります。それから現任医療機関公衆衛生予防機関、例えば病院とか保健所の関係でございますが、この問題につきましては、もう少し相互連絡……、設置の場合におきましても、運営の場合においても、それができるだけできるように狙つておるのであります。それから医療機関の設置というものは、国と府県との関係になりますが、大体府県が主体である、こういう考え方であります。今たまたま日本におきましては、軍の病院とか、或いは医療団体の関係の結核療養所というようなものがありました関係上、相当多数の国立の療養所があるのですが、本来の建前といたしましては、地方公共団体府県が、それらの医療機関については中心的役割をされる、こういう精神が適当である。こういうことになつておるのであります。それからもう一つは、ここの中には入つておりませんが、非常に問題になるのは、公営機関特に保健所におけるお医者さんの待遇問題につきまして、いろいろ問題がありまして、保健所の建物ができてもお医者さんが十分得られない現在の状況は、相当考慮しなければならん。従いまして、それらの問題は、開業医、或いは国立病院、或いは保健所のお医者さん全般としてできるだけ調整することができるように態勢を整えるべきだということが、相当議論なつておつたのであります。  次は結核でございますが結核は先程申しましたように、保健の方におきましても相当重要点に考えますが、その外に国家の政策として相当確立した政策を重点的に実施すると、今日いろいろ結核対策につきまして非常に言われておりまするが、この問題につきまして、統一的な結核対策というものが、必ずしも完備していない。もう少し予防方面、その他系統的な対策を確立して行き、それを重点的に実施するということが必要であるという考えがある。その結核の問題につきましては、委員会としましては、各方面結核の大家の御意見をも拜聽いたしまして、相当愼重に考慮いたしたつもりでございます。從いまして、結核につきましては、ここに書いてありますように、予防方面相当重点を置くと、こういうことが差当つて最も日本の現在の経済状況から申しますと必要である。こういうふうな考え方であります。  それから次は社会福祉の問題でございますが、社会福祉の問題につきましては、社会保障が、非常に国の責任地方公共団体責任において相当社会保障が実施された場合におきまして、いわゆる民間社会事業がどうなるかという問題が、一つの大きな民間社会事業家にとつては心配のようであります。これはいずれの国家の歴史を見ましても、社会保障相当充実される場合におきましての、民間社会事業というものが相当問題になりております。従いまして、そういう心配があるということを懸念いたしまして、決して民間社会事業に対してはこれを抑えるのではなくて、ますますこれを助長しまして、公共性を高めつつ助長する、こういう精神であることを……協力して国民のそれらの社会政策に貢献させよう、こういう考え方で進められるておるのであります。  それからもう一つ、そこに社会保障の方で、重点は御承知通り日本の社会事業というものが、非常に科学的專門的だという点におきまして相当欠ける点が、いわゆる結核学という問題におきまして、その問題につきましては、機構におきましても、その人の資質におきましても、訓練におきましても、非常に不十分である。こういう点に重点を置いて、この問題は書かれております。從いまして、丁度保健所と区域が同じくらいの民生安定所を設ける。そしてそれがケースワークのセンターになる。こういう考え方で進んでおるのであります。ちよつと申落しましたが、国家扶助の場合におきまして、これを市町村がよいか、府県がよいかということが非常に根本問題になつております。一応この試案市町村ということになつております。そこに併し将来民生安定所が整備拡充され、そういうような機構が整備された場合におきまして、今の国家扶助事務市町村から府県に持つて来るのも一つの案ではないかということが研究されております。それから福祉の措置といたしまして、別に申上げることはございません。  それから第三部の児童手当の問題でございます。この問題につきましては、非常に簡單に書いて、方針だけ書いてございます。曾て社会保険制度調査会が、政府の諮問に応じて報告されたところによりましては、兒童手当を非常に沢山出すというような考え方で当時の金で三千億を要するという案が出ておりました。これは三千億ございますが、いや三千億の中の大部分を兒童手当に考えております。これは日本の財政の状況をも相当勘案しなければならん現在この兒童、多子家庭生活保障という問題は最近世界各国一つの傾向として現われました社会保障一つの方向でございまして、最近におきましては、殊に欧米を中心としましてな非常に児童手当を考えるということが強いのであります。これは一つにはその国における社会保障制度がその国の人口政策と非常にマッチしておるという考え方からも、それができるのじやないかというふうに考えられます。即ち子供を殖やすということが同時に助成政策があつて同時にその家庭の生活保障するという一つ社会保障の見地と二つの思想がマッチして社会保障制度として最近欧州各方面においては、兒童手当ての考え方が進んおります。このワンデルの勧告が出ましたときにおきましては、現在の家族手当というものが、賃金の形態で出ております。家族手当は主として各事業主が賃金形態において、まあ或る意味におきまして社会保障のようなことをしておるというような考え方なつております。それを保険制度にしたらどうかというようなワンデル勧告に示唆されておりますが、この問題につきましては、非常に財政の問題と、それから賃金の形態をどうするかという問題、それから最低賃金が将来どうなるかという問題、それから日本の人口政策という関係をどうしたらいいかという問題など極めて、非常に困難な問題との関連において考えなければならんという問題であります。従すて、これはただ方針をここに考えて将来こうするという考え方だけであります。こういくことになつております。  それから次は住宅の問題でございますが、住宅という問題を社会福祉の中に考え、今の不良住宅地区という問題はなくして、国及び地方公共団体が公営住宅を設置したり、例えば引揚者のような住宅もそうでありますが、そういうような公営住宅を作りまして、低額所得者に対して安く貸付けるという考え効用やはり保障り考え坊であります。従いましてこういう考え方を当然社会保障の中に入れるべきである、こういう考え方であります。これは世界の社会保障制度におきましても、こういう問題を社会保障の中に入れておる国が相当あるのであります。大体そういう考え方が進められております。  それから第六編が財政の問題でございます。これはまあ非常に国庫負担が非常に多くなるということで出ておりまして、事務費は今、例えば市町村がやれば市町村がやる、府県がやれば府県というふうになつております。例えば生活保護法は国の事務でありますけれども市町村が出しとおるということになつております。この考え方は一応事務費は国より出すという考え方で行つております。これは体系としてはその方が適当であるというふうに考える考え方でありあます。ただこれの実施つきましては、その財源との関係につきましては、平衡交付金等のことも勘案して考慮すべきではないか、こういうふうな考え方なつております。  次は給付費の問題でありますが、給付費は国の負担がここに書いてあります。国の負担と都道府県市町村、被保險者この四種類に分れますが、国の負担が全体的において非常に多くなつております。社会保障というものは国が大体責任を負うという強い思想が入つております関係上、当然国の負担が多くなるということは、当然の傾向だと思います。ただ国の財政と睨み合わせまして、どの程度が適当か研究問題でありますが、理想の考え方としては、段々そうあるべきだと思いまし。それから予防給付、それから療養給付については、十分の二でございます、相当多額でございます。結核予防給付については十分の五、二分の一となつております。年金に関しては十分の二、これは現在は被用者つきましては厚生年金では十分の一の国庫負担に、船員につきましては十分の二であろますので統一しまして十分の二。それから失業給付の三分の一は現行通り、それから尚その外に都道府県市町村というものが、それぞれ医療問題につきまして負担をするという考え方でございます。従いまして、この案によりますと、国が十分の二を持ち、更に結核について二分の一を持つというような考え方からいたしまして、医療費につきまして国民健康保險の一方を考えますと、五割近くが国及び地方公共団体負担になるのじやあないか。三割がいわゆる被用者の負黒部、被用者負担、後の二割見当がいわゆる目的税になるのじやないか、こういうような大体の計算のやり方になるのじやないかと思います。それから被保險考の負担につきましては、特に申上げることもありませんが、先程申上げましたように、この年金制度につきましては、フラツト制にしました。これは非常な大きな改革でございます。相当研究を要すべき問題であろうというように考がえます。今の例えは恩給につきましても、大体の制度が報酬比例制になつております。即ち多額所得を、俸給を得ている者はいその三分の一とか、四分の一になりますと、多額の恩給を貰うわけですが、この年金制度におきましては生活保障という考え方からいたしまして、大体高額所得者も低額所得者も同じような金額なつております。從いまして保険料負担する場合に、賃金の、そのままで歩合をやりますと、比例して見ますと、非常に高額所得者には苛酷になります。それで五割程度は平等割定額負担思想が入つております。それから次は費用の徴収の問題のところでございますが、これはまあシヤウプの勧告で、大分行くようになつたところでございますが、今度のこういう制度の根本的改正のときに保険料は今の保険料として徴收するのではなくて、目的税として、国につきましては、国の目的税として、府県については府県目的税市町村については市町村目的税として、それぞれ徴税機関によつて徴税する。ただ府県の場合におきましては、国の徴税機関に委託して行う。こういうことになりますが、これは一つの本質的な変更になります。保険料というものが税金になるという考え方は非常に大きな本質の変更でありまして、それから後は特に申上げることはございません。  それから第八編で運営機構、社会保障に関する事務は、今厚生省、労働省、大蔵省その他関係者に跨つております。これらの問題は一元的に運営する必要がある。こういうことで中央機構は(仮称)社会保障省という名称でここに総合統一するのが適当である。府県の機構も知事の下に、そういうような社会保障局を置きまして、保険部、民生部、衛生部というものを統括し、その出張所といたしまして保険所とか民生安定所を総合調整する。即ちすべてできるだけ社会保障に関するものは統一的にやる。こういう構想でできております。  その他補則につきまして、いろいろ問題がごつざいますが、これは経過規定の場合が、非常にむずかしい場合がございますが、御質問がありますれば、お答え申上げますが、一応説明省略をいたします。  そこで財源計算の問題でございます。この問題は、財源が非常に重要なのであります。社会保障といたしましては、一つにはこういう必要なことも分るが、同時に国民所得及び国家財政におきまして、どの程度国民社会保障の方に費用が廻わせるのかということを、国民所得の立場並びに国家財政の立場から研究しなければならん。その方面につきましてもできる限り研究はいたしておりまするが、甚だ陣容不十分でございまして、又予算の関係も不十分でございまして十分行つておりません。従いましてそのことはここでは省略さして頂きまして、これはまだほんの試案でございまして全然委員会でも全部決定しておるわけでございせまん。ただ現在我々が知り得る資料によりまして一応計算した。従いまして現在統計が不備でございますし、我々の資料も不備でございますから将來当然補正して正しいものに作り直さなければならん。そういうことに考えておりますから一応ほんの参考資料としてお聽き取り頂きたいと考えます。それはどの程度国の費用がかかるかという問題でございますが、被用者につきましては現在約、総理府統計局の調べによりまして、千二百二十七万が大体被用者と考えられておる。被用者家族というものがこれは実績でございますが大体一・七倍でございまして二千八十六万、こうなつております。一般国民は四千六百八十七万として一応計算しておる。その医療費計算につきましては、これは医療費が被用者負担をどの程度にするかによつて受診率が非常に違つて来ます。例えば被用者保険におきますと被保険者の費用が高くなる場合は受診率が低くなります。被保険者の負担が低くんると受診率が高くなります、従つてこれは非常に変つて来ると思やますけれども、一応そういう計数も考えまして計算したわけでございます。それから資料は参つておりましようか……これはほんの試案でございますから、その点予め御了承願いたいと思います。この被用者の表に費用総額は国庫負担と、保険料と、一部負担と、こういうふうに書いてございます。そこに被用者費用総額は一年に千百二十七億、一般国民が五百一億、合せまして千六百二十八億になります。これは長期給付を除きました短期給付、即ち年金を除いたものでございます。千六百二十八億、そこのうちで問題は国庫負担の関係でございますが、国庫負担の関係におきまして被用者につきましては補償給付だけは百九十二億、被用者全般で言いますと二百八十八億であります。一般国民については百二十二億で合計四百十億ということになつております。即ち疾病保障と、それから失業保障と合せますと、国庫負担が四百十億という計算になつております。そこの中で結核の内訳が書いてありまして、相当結核の占める割合が被用者につきましては例えて申しますと、療費だけで百億になります。それから一般国民では結核が六十三億、こういう計算になつております。  それからその次に各個人がどれくらい負担をするかという表が出ております。これは被用者一般国民について年額で計算が出ております。  その次の表が年金の表でございます。その二枚目の裏を開けて頂きますと、一般国民の無醵出年金というものが概算してあります。これは本当の概算で殆んど全然資料がございませんから、相当の誤りがあるかとも思います。一応計算した額がそこに出ております、何故かと申しますと、こういう統計がないのでございまして、例えば直系卑属がどの程度であるかという問題が非常に日本の統計については不備というか、ないのでありまして、従いましてこれは本当の概算でございます。一応百四十七億となつております。  その次が社会保障制度における社会保険の各年度別制度別国庫負担金額表というものが出ております。これは年金につきましては、段々国庫負担が殖える。国庫負担ばかりでなく、保険料が非常に殖えて参りますが、現在の日本の経済情勢から申しますと、今保険料を沢山出し、又不必要な、不必要と申してはいかんけれども、国庫負担多額に出すということは、年金制度そのものができないということになります。そこでこのやり方は将来段々国庫負担とか保険料は増加し、ますけれども、現在は必要なやつだけを国庫から支出して行く。こういう計算になつております。従いまして、年金につきましてはずつと七十六年の先になりますと、四百八十億の国庫負担になる。こういうことになります。この年金の問題の計算は、これはもう世界各国に大問題になつて、財源計算につきましてはアクチユアリの專門家が非常な研究応研究を重ねてやつておるわけでございます。  この次の表は被用者一人当りの月額がでております。今のような年金のやり方をとりますと、今の保険料負担はそう高くつかないのであります。従いまして社会保障を実施すると非常に事業主負担被用者負担が多くなつて、そんなことはできんじやないかというふうに一般に言われております。そこでこの案では現行より上らないという計算になつております。即ちそこに出ております通り大体被用者につきましては、平均賃金が入手円と仮定いたしまして、保険料額が月額三百五十円、それから年金関係では男子が百六十円、女子が七十二円、失業関係が百三十七円、こういうふうになつております。これは現行の、右に出ております負担よりは幾分安いという計算になつております。従いまして保険料におきましては被用者の方にも事業主にもこの案というものは現行より殖えない。ただ問題は国庫負担とか地方公共団体負担が非常に殖えるという点であります。従いましてその各年度の表のところに昭和二十六年度におきましては五百十一億というなにが一応出ております。それからもう一つ別ので、「社会保障に関する予算額調」というのがありますが、これは非常に收入の部に間違いがありますからあとで御訂正願いたいのです。というのは、收入の分につきましては、例えば恩給につきましては恩給納金というものがこれに入つておりません。それから共済組合においては掛金がはつきりしませんから入つていない。当然これは補正しなければならない。その点は御了承願いたいと思います。その二枚目に書いてありまするが、国家扶助公衆衛生、及び社会福祉国庫負担の関係が二十五年度では国家扶助費が百五十四億、公衆衛生費が八十五億、社会福祉費がこ十四億ということになつておりまして、国家扶助の方で減るのは年金制度が或る程度殖えるから片方で減るのじやないかという疑問がありますが、これはどの程度減るかどうか、疑問がありまして、はつきりいたしません。一応或る程度減るということでございます。そういうことで、四十三億片方には増加を必要とするというあれが出ております。尚先程の五百十一億と合せますと五百五十億になります。併しながらその外に現行の予算に認めないというものがありますからして、純増は五百億以下であろうというふうに我々は推測しております。五百億以下の国庫負担がこの案では考えられている、こういうあれになつております。尚大体のことはこの程度で、今の統計の予算調べは、これはほんの概算でありまして、我々の方の陣容が整いませんし、ほんの研究の試案として、そういう意味がこれを正確なものというふうに思込まないで、当然補正される一応の目安ということで御了承願います。
  5. 山下義信

    委員長山下義信君) 御質疑がございましたらばどうぞ。
  6. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 ちよつとお伺いしますが、新聞によりましてこの社会保障制度について報じております中に費用全額国庫負担を千億というのもありますし、二千億と言つているのもございますけれども、これは計算すれば分りましようけれども、事務局としまして二十六年度大体どのくらいの……。
  7. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) 先程申上げましたように五百億程度ではないかと思つております。千億とかいうように出ているは、これは全然我々の方の発表ではございませんで、恐らくどこかからの推測を書いたのでございまして、信憑し得ないものでございます。
  8. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 ちよつとこの奉り御説明を願いたいのですが、この社会保障要綱案と現行社会保険との保険料此較表(被用者一人当月額)これの右左の関係、この一番下の方の試案現行との金額の比較と……。
  9. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) 比較表の方でございますか。それの……。
  10. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 比較をちよつと説明願えませんか。試案の方でございますね。被用者保険給付八千円、四、四%と三百五十円、それから現行の方は三つに分けておりますね。政府、組合……。
  11. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) これでございますか。これの比較表でございますね。
  12. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これは現行の方は平均して七千七百円、それから試案の方で八千円にしておるのですね。この政府の六千五百円というのは、これは標準報酬を取つての六千五百円でございますか。ここで大分保険金の違いが出て来るわけですね。考え方が……。
  13. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) これは御承知通り、現在のこの比較表にも書いてありますが、現在の制度というものは皆まちまちであります。例えば全額の收入を基準にしているものをありますれば、基本賃金のみを基本にしているものもございますし、標準報酬を取つているものがございます。従いましてそれを今度は全部廃止したわけですが、この表は現在の制度のやつを取つであるわけです。例えば標準報酬を取つているものは標準報酬を取つているやつを、現行制度そのままのやつを取つているわけです。それから負担の方は今度は全部そういうようなやつを統合しまして全賃金ということになりました。
  14. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 その右の方はこれは標準報酬で行つていることになるわけですね。そうすると標準報酬でなく、実質賃金よりはそれじや低いわけですから……。
  15. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) だからですね。今の例えば保険料が何パーセントかと言つているのは比較にならないのです。例えば保険料の基礎が全賃金であるか、標準報酬であるか、或いは又その收入の一部であるかということによつて非常にパーセンテージが違つて来ます。だから比較にするのは保険料が四百八十円とかこれが一番比較になるわけですね。だからこれが三百五十円でございますね、こちらが三百五十八円、これが比較の対象になります。パーセンテージが基礎の賃金によつて、何を基本賃金にするかによつてパーセンテージが変つて来ますから、問題は保険料額を比較して頂くと大体分ると思います。
  16. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 ところが平均賃金を出して来ると、それの五、五%と行つておる、これで現行よりも試案の方が安くなるというのですけれどもそういう計算が出るか知らん。ここに書いである数字ならそうなりますけれども、実際問題としてそうなりますか。
  17. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) 実際問題乏してそうなります。というのは、国庫負担が非常に多いということなんです。例えて見れば、今までの全然国庫が負担しないものにつき冒して国庫が負担するということになりますど、保険料が下つて来ます。だから被用者個人から見ますればそれ程上がらない、こういうことになります。
  18. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 保険料の国庫負担は全然ないのじやないでしようか。
  19. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) 保険料の国庫負担じやなくて、給付費なら給付費というものを今までは全部被用者と資本家とその二割なら二割というものにしたのでありますが、保険料は二割なら二割減つたものを皆で負担しなければならん、で、保険料が下つて来ますね。そういう意味で下つて来る。
  20. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと私も一つ、二つ伺つて置きますが、失業保険の拡張強化ということは今日の情勢から申してもこれはもう重要な問題として基本原則に取入れられておりますあに、試案の方には、一応これは取上げていられない。先程御説明の中にもその理由は国の予算の関係、或いはま勢世界の各国失業保険の給付期間等もこういうふうになつておるというような御説明があつたわけですが、これはやはり現実に原則に一遍に持出して来ましたりですが、余りその方では取上げていなかつたのですか。
  21. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) この失業の問題はですね。今一番問題になうているのは日雇労務ですが、日雇労務については資格期間、待期、支給額、支給期間を別の基準として、現行の基準を補正改善するように考慮すると、こういうことを書いております。今の全般的には例えば六ヶ月の支給期間というものを延長をするというようなことも一部には言われておるようなんですけれども、大体その失業というのが大体全く失業で、いわゆる産業経済全体の問題であつて社会保障で考慮すべきことではないのであつてへ工業とか社会全体の対策とか、産業全体の対策で考慮すべきで、従つてこの失業保障に考えるのはまあ末節的な失業である。ただ日本の今の失業状態が今の産業構成におきましてそういうふうな君の以外の失業者という問題が特別に多くなつて来でおることは御承知通りでございます。これは併し社会保障ではなかなかそごまで、現在の保険制度によつては困難である。従つて一応失業保険の受領期間を満了して尚困難なものにつきましては他の制度、例えば国家扶助制度に切換えるというようなことしか現在の段階においては困難じやないか、こういう大体の気持であります。
  22. 山下義信

    委員長山下義信君) それから国家扶助とそれから社会保険との関連性は何か問題ございませんでしたか。
  23. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) まあ社会保障は段々保険制度によつてカバーして行くのが進歩的な行き方である。併しどんな方法を採りましても最後国家扶助という制度は残るということはどこの国でも、イギリスのそれにしたどころかそういうふうになつでいます。それでできる限り保険制度は大いに拡張するということは大体の意見が一致しています。そういう場合におきましては、ただ日本の現在の実態においてはやはり保険というものがそう完全に行われない関係上、国家扶助相当なウエートを以て上つて来るということは考えられる。ただ年金の問題を考える場合におきましては今度フラツトになりまして月額二千円というものを、それに基礎を置くか、例えば養老の場合に二千円出す根拠如何、こういう問題が当然起つて来ます。この考え方は給付にいろいろの種類がございますが、まあ大きく分けますと二種類に分る。例えば老齢の場合の老齢退職給付、廃疾になつた場合の給付金、それから寡婦の場合も大体そういうようになつで来ましようが、子供を持つた寡婦にしても大体そういうことになりますが、それは大体生活扶助のこととよく均衡をとつて考える。ただ失業保険の場合とか、傷病手当金の場合のごときものは労働再生産、従つて現在の賃金とバランスと取るべきである。従いまして、賃金が高いものにつきましては、その六割、傷病手当金も六割、それから失業手当金もその賃金に比例して六割を支給する。たた最高と最低は一応社会保障たから制限をしなければならない。即ち失業脚態とか、傷病手当金のごとく、また労働が可能であつて、労働力の再生産の意味におきましてなすべき社会保障の額というものが、現在の賃金とバランスを取つて考えなければならない一ところが、もう老齢で退職してやる場合とか、廃疾になつて職業ができない場合の全額の基本原則というものは、生活扶助関係と最低賃金の関係、最低賃金より最低生活扶助関係方面との関連性において考慮することが適当である、こういうような基礎になつております。
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) それから社会福祉範囲はどの程度ということは、何心基準というとおかしうございますが、どの程度取入れるというようなことは、何か問題がございますか。つまり生活に一番密接なような社会福祉を一応取入れよう、試案に出ているあの範囲に限ろう、そういうことでございましたでしようか。たた問題が残されているのでしようか。
  25. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) この問題は余り実際問題としては、委員会のメンバーの方は主として保険の灘係の方が多い関係もございまして、そういう議論は少かつたのでございますが、筍くも、医療を考える場合において、医療制度だとか公衆衛生を除いて社会保険を考えられない、そういう意味において当然社会保障に入るべきだ、その外の問題の社会福祉とか、いわゆる社会福祉の面におきましても、住宅とか、そういう問題はどの程度入るかという問題につきましては、殆んど意見がございませんでした。昨日の総会におきまして、大蔵省の方から代表が来まして、教育の関係も入れた方がいいのではないかというような議論がありました。例えば、生活保護法で出しておりますところの教育扶助の関係一或いは文部省でやつている育英資金の関係といつたような考え方を、社会保障の中に取入れたらどうかどいう考え方もあつた。そういう問題につきましては、殆んど委員会の間では問題になりませんでした。
  26. 谷口弥三郎

    委員外議員(谷口弥三郎君) この昭和こ十五年度の社会保険のところでございますが、国民健康保險、とれの吸入の部において、国庫補助というのは十二億四千六百幾らになつておりますが、事務費だけでも支出の方で十五億九千六百万ということになるど、事務費の全機国家負担はできておらんような勘定にはなりはしませんか。
  27. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) これは先程もちよつと申しましたが、これはちよつと悪いですから、一応御訂正願つて置きたいと思います。現在の予算でございますね。先程ちよりと申上げましたように、事務費の問題につきましては、これは予算に計上して、おりません。というのは、一応事務費は国の負担という考え方なつておりますが、事務費の基礎資料が十分でなかつたのと、もう一つは、国の負担額分と、府県負担部分と、市町村負担部分関係でございますから、これは平衡交付金の関係で考慮することも可能じやないかというような考え方から、出していないのでございます。若し本当に事務費を出しますと、もつと相当額上ると思います。
  28. 谷口弥三郎

    委員外議員(谷口弥三郎君) そうすると、事務費は無論全額負担でございますね。
  29. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) そうです。
  30. 河崎ナツ

    委員外議員(河崎ナツ君) ちよつとお伺いいたしたいのですが、今の御説明によりますと、育英教育の方面ですね、それの方が問題だけれども、委員会としては、委員の方々がそう重きを置いていなくてそのまま消えたというお話でございますね。今民間では、そういう問題は割合に社会保障の方にそういうものも取入れたらどうかという意見もございます。それはどうなんでしようか。よその国の方ではそういうふうな教育のことを取入れてないから、それで皆さん召そう今ここにありましたようなことを重きにしてそれを考えなかつたというのでしようか。その辺の工合はどうでございましようか。
  31. 小島徳雄

    説明員小島徳雄君) 教育の費用社会保障の中に入れるかどうかという問題は、昨日の総会におきまして、大蔵省の方からお話がありまして、そればどういう方から出たか分りませんが、例えて申しますと、アメリカにおきましては、教育局というのが社会保障局の中にあります。ところが教育は殆んど政府においては州に委しておりますから、費用というものは出しておりません。だだ機構は一応社会保障局にあつて、その説明には、国民に教育の機会を與えることは、社会保障考え方から考うべきである、従つて教育局は社会保障の中に入つているのだというような説明がしであります。考えようによつては、そこまでも拡げ得ると考えられますけれども、現在のところにおきまして、そういうところまで拡げることもどうかという考え方が多いのでございまして、ただ今のように教育扶養の問題とか、そういう問題になりますと、相当関連が出て来るから、そういう面から一応社会保障の中に入つて来る、教育全般を社会保障の中に入れるということは、相当問題でございます。殊に社会保障というものがアメリカにおいて最初できますときには、ソシアル・セキユリテイーではなく、エコノミカル・セキユリテイー、経済保障ということであつたが、やはりソシアル・セキユリテイーということで国民に訴える力がいいというので、エコノミカル・セキユリテイーがソシアル・セキユリテイーに変つた従つて経済保障ということが強いのであります。その場合に経済保障以外の精神面を主体としたというようなものを社会保障に入れるかどうかという問題は、入れられないこともないでしようけれども、やはり社会保障と申しますれば、経済保障中心で、それに関連する問題を考えるというのが、大体の世界各国考え方じやないかと思います。ただ今のように兒童手当を考える場合に、多子家庭を考える場合には、養育に金が要るということは、一方教育費もかかるということを含んでいるから、兒童手当を考える場合には、そういう考え方も入つて来る、だから将来日本の財政が許すような場合におきましては、兒童手当を考えるような場合におきましては、そういう考え方も当然入つて来るのじやないか、こういうように考えます。
  32. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時八分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            藤森 眞治君    委員            井上なつゑ君            石原幹市郎君   委員外議員            谷口弥三郎君            河崎 ナツ君   説明員    総理府事務官    (社会保障制度    審議会事務局    長)      小島 徳雄君