○
中原委員 私はここに議題とな
つておりまする
昭和二十三年度
追加予算第二号並びに特第二号に対して、
労働者農民党を代表し、
予算返上の
意見を述べる次第であります。
政府はこの
提案理由として、
政府職員の
給與水準引上げ、
災害復旧費等、本
予算成立後の
情勢変化に対應するため云々と説明されておるのであります。しかるに実際は
追加予算総額七百三億余のうち、三百八十一億余を便乘せしめて表看板といたしまして、そうして表題である二つの
費目はその半ばにも足らない三百二十二億余にすぎないのであります。すなわち看板に偽りありというわけであります。そればかりか、
予算編成の
構想はきわめて
ずさんそのものであ
つて、
財政経済の
見通し計画と何らの
関連もなく、ただ漠然と計画しておる。これま
つたく、日かせぎの無定見と言うほかないのであります。このような
構想のためにか、まず目立つものに
予備費四十五億円がある。これは当初
予算における
予備費二十億に対しまして二・二五倍に当り、かつきわめて大つかみのものでありまして、しかも
最終日にな
つてようやくその
内訳説明をして、場当りのつじつまを合わしたにすぎない
状態である。
財政法二十四條にいう予見しがたい
予算の不足に充つるものとしては、その
額あまりにも過大であ
つたことを指摘しなければならないのであります。なお全般を見渡しまして、
歳入歳出ともに積算の
基礎が不明瞭であ
つて、ここに要望されておる
予算民主化の
精神に反すること、はなはだしいものと言わなければならないのであります。かかるずさんきわまる
予算案のためにか、もはやすでに続いて
追加予算が予定されなければならないという実情にあるのでありまして、これまことに
統一性なき場当り的、
完全性に欠けた
予算編成の方式であると言わなければならぬのであります。また見のがすことのできぬものに、
歳入の大
部分を
大衆課税に求めておるということであります。これこそ
予算の
不健全性をみずから暴露するものであります。かかる
予算の実施を見ることがあるならば、たちまち
労働者農民、
中小業者等全
勤労大衆の
生活は、そうしてまたその
業務は、混乱と破綻に追いやられて行くでありましよう。
國家財政負担の加重と
業務の行き詰まりと、低
賃金とは、
失業による
飢餓状態を現出いたしまして、
中産階級を含む全
勤労人民大衆の
生活恐慌が、ここに出現しなければならない機運に遭遇するであろうことを思うものであります。かかる
状態の中において、
政府の声明したごとき
行政整理が予想され、あるいは
企業整備もからみ合いまして、大量の
失業者はみじめにも、寒風の吹きすさむ街頭に投げ出されることが予想されるのであります。それにもかかわらず、
失業対策としては何
一つをも持たぬ無定見さは、そうしてまた無
責任さは一体何としたのでありましよう。ここに
吉田民自党内閣の正体があり、
反動性の本質が露呈されておるわけでありまして、同時にひたすら
金融資本中心の
経済再建を促進せんとするものにほかならないものであると言わなければならぬのであります。
しからば
歳出面においてもまた、この
金融資本の
独裁制覇をなし
逐げんとする企図による
大衆犠牲の方策を一層強化せんとするものを、私
どもは発見せなければなりません。まず
價格調整費百十億を見れば、わが
國生産の成績は、今や昨年末のそれに対しまして六三%の増を示し、これはまた事変前のそれに比しましても六五%と相なるわけであります。ことに天井を知らぬ物價高と
賃金安の強行と、それにもかかわらず上昇する
生産増加との
関連から考えまするならば、
生産コストはおのずから安くな
つており、
採算歩どまりは好調を呈しておるはずなのであります。それであ
つて特殊企業に対しては、
大衆犠牲による
國家財政の
負担によ
つて、
かくのごとき
特別援助の制度がなおかつ繰返されているということは、あまりにも
資本家に偏重した
協力体制と言わなければならぬのであります。
また
船舶運営会補助金は二十五億とな
つておるが、これまた前段の
價格調整費とひとしく、常に何らの
しんしやくもなき
船舶資本家への奉仕というべきのみでありまして、
かくのごとき
補助金を交付する前に、
経営の
合理的調整を先にし、たとえば
船主傭船料金の撤廃の
措置等、
独立採算確立のために、あらゆる方途が講ぜられなければならないのであります。ただ当面やむなきものとして、私
どもはここに
給與に関係あるものを見落すことができない。從いまして、その中の一部だけは
緊急措置として、これを認めることを肯定するものでありまするが、その他の大
部分に関する
部分は、これを再檢討し、そうしてあくまで
かくのごとき
補助金は停止すべきものであるということを主張する次第であります。
次に
災害復旧費六十億がありまするが、これは
必要額の一五%にしか当らぬ額でありまして、被害なおなまなましい幾多の惨害にこたえるものといたしましては、あまりにも配慮乏しいものと言わなければならないのであります。ことに
農林関係といたしましては、
最低必要額七十四億に対しまして、わずかに十八億を充当せんとしておるにすぎない
状態であります。
さらに
農村関係費の主要なるものに、第二次
農地改革徹底に要する
経費が考えられまするが、これを十分
計上しなければならないのにもかかわらず、その考慮きわめて薄く、
農村民主化の基本問題でありまする
農地改革の問題をむしろ中絶せしめて、
保守反動勢力の温存に努めるの傾向さえ見出すことは、
日本民主化を促進すべき、いわゆる
ポツダム宣言の忠実なる履行に、逆行するものと言わなければならないのであります。それのみではない。
勤労農民の日々に追い込まれて行く
農業経営の
困窮に目をおおい、わけてもその
主要生産物たる
米價は三千五百九十五円
買上げ價格で押え、
農民の
勤労報酬は二千八百円
ベースという低
賃金計算でしかない
状態に陷
つておるのであります。その上
消費價格は五千三百円を上まわり、
消費者の肩にその差金のマージンを負いかぶせている。
かくのごとくいたしまして、大
資本企業には
補給金などの、あるいは
補助金などの
國家協力を與えながら、
農民や
消費者大衆に対しては、
かくのごとき
措置をも
つて臨んでおるということを、私
どもは遺憾ながら指摘しなければならないのであります。
なおここに國債費二十四億中の二十二億は、軍事公債利拂いに振り当てられるものでありますが、
國家財政の窮乏を口にする
政府は、このごとき主として
金融資本を対象とする利拂い計算については、きわめて忠実なる
態度を示し、これを実行せんと努めておるのであるが、私は特に
予算の実情から考えて、このような
費目は、これをただちに打切るべきものであるということを強く主張するものであります。
これに比べて
給與改善費二百六十二億余は、その初め
政府が物價高の現実を無視して、五千三百三十円
ベースを勤労者に押しつけんとしたその支拂い
総額であるが、その数字の適当ならざることおおい切れず、今回六千三百七円
ベースにこつそり
修正をいたしたのでありますが、しかしそのわくは増額されず、
從つて実質手取りは大差なく、依然として必要生計費を割る飢餓線下の
状態と言わなければならないのであります。このごとき
状態のもとでは、公務員の職務能率を上げることは期待されないばかりか、優秀者はどしどし逃げ出して行くでありましようし、いよいよ不正と腐敗の助長を余儀なくするのほかなき
状態に陷ることを、私
どもはまた指摘しなければならないのであります。かねて全官公労組の要求しております七千三百円手取り
ベースは、あくまで科学的根拠に立つものであ
つて、
政府はあらゆる努力を傾けて、これにこたえなければならぬ
責任があると考えるのであります。いわんやさきに國家公務員法改正を強行し、今また公共企業体労働関係法を、
勤労大衆初め一般識者等の強力なる反対を押し切
つて成立せしめました今日、この問題に
関連のある、すなわちさきのマ書簡にいわゆる、これらの立法に先行して勤労者の
生活確保の道を講ずべき旨の勧告を、ここにあらためて想起すべきであります。
歳入面について、まず租税
自然増收四百十億を見積
つておりまするが、そのうち源泉課税百八十五億はまことに不当であり、文字通りの苛斂誅求であると考えるものであります。
給與水準の
引上げに伴うて、勤労
所得税の免税点
引上げその他の税軽減の
措置を講じ、
給與引上げを実質的に有効ならしめ、眞に労働力の再生産に役立たしめなければ、
給與改善とはならないのであります。
從つて直接には公務員
給與改善による四十七億はね返り課税
見積りのごとき、ま
つたく言語道断といわなければならないのであります。
その他諸税收に、砂糖消費税、織物消費税その他数税目が数えられますが、これらまた
大衆負担の加重を約束せしめるものでありまして、私
どもは何ゆえに
政府は、戰後の大やみ利得あるいは不当大利得の捕捉対策を放任するのであるか、
政府の発表する
國民所得二兆四千億のうち、
予算における税対象なるものは九千億を持
つて來ておるようでありまするが、その九千億を除く残分一兆五千億は、一体だれのふところに隠されていると考えておいでになるのであるか。この際一大英断をも
つて、巨大所得に集中課税の徴收方策を立てなければならないことを、ここに強く主張しておく次第であります。
なお地方貸付金回收三十五億が
計上されておりまするが、
地方財政窮迫せる現状にかんがみまして、配付税からの天引はやめなければならない。この還付天引は、地方公務員全般の
給與改善をはばむものであると同時に、地方自治体を
財政危機に陷れ、眞に自治体の確立を可能ならしめることに大いなる阻害となる次第であります。
以上きわめて大ざつぱに
予算の檢討を加えた次第でありまするが、
かくのごとき
予算編成の
構想は、そしてこれが実施の結果は、労働者、
農民、中小商工業者、その他一般
勤労人民大衆の
生活不安を激甚ならしめるばかりでありまして、全人民
大衆の
経済破綻から、ひいては
政府の一大謬見であるインフレーシヨン処理の
措置は断じて講ぜられないでありましよう。敗戰日本の
経済再建は
かくのごとき
状態をも
つていたしましては、夢にも期待できないことと言わなければならぬ。いわんや
國民生活の安定など、言うべくして、
かくのごとき
状態をも
つてしては、とうてい行われ得ないのであります。
かくのごとき過程に突入して行くわが日本國の
経済は、遂にこのようにして破滅の方向に押しやられて行くのほかはないと言わなければならない。
以上の
理由からいたしまして、私は
労働者農民党を代表し、本
補正追加予算に
賛成できないことを遺憾とする。從いまして本
予算はあくまで
政府が、以上申し述べましたような
理由をしんしやくして、しかるべくこれを再編成すべきものであると考えるのでありまして、ここに
予算返上の
討論を試みた次第であります。