○菊川
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案の
野党諸派の
修正案に賛成をいたします。私が賛成をいたしますところの理由は、
政府案とそれに対する
修正案を比べてみます場合において、重要なる相違点が二点あるのでありますが、その二点を中心に見ます場合において、いずれも
野党側の
修正案がきわめて合理的であるという点にあるのであります。
その第一の点は、
修正案で申しますれば、附則三十三條におけるところの支給の方法であります。これに対しては先ほど
質問の際にも申し上げましたように、
政府は一月一日から六千三百七円
ベースをも
つて支給するというのでありますが、
修正案は十二月一日から六千三百七円
ベースをも
つて支給する、こういうのであります。この二つを比べてみます場合において、最も重要な点は、これによ
つて十二月の一日から、明確に六千三百七円
ベースという
給與水準が確立をする点であります。このことは單に官公廳の從業員の
諸君の
給與が、十二月一日から
水準を明確にするというばかりでなしに、民間の今日起
つておりますところの各般の爭議に対し、あるいは民間の今後の
労働問題に対しても、明確な
基準を示すことになると思うのであります。この点はもちろんわれわれは官公廳の
給與水準が上る結果、これが民間
給與水準を高めることになるとは断じて考えておりません。この六千三百七円
ベースの算定の
基礎というものは、あくまでも一方においては理論並びに実態の生計費を
基礎といたしておりますけれども、一方におきましては、
國民の所得の
水準を
基礎として決定をされていることは明瞭であります。從いまして
國民勤労所得の
水準において、その最低限を與えたものが、今日の官公吏の
給與水準でありますから、このことは言いかえまするならば、
國民の
水準において官公吏の最低
生活を確保する。そうしてできるだけ家計の赤字を解消する。こういふ方針に出ておるのであります。でありますから、このことが逆に民間
給與を刺戟するということにはならないのであります。であるにかかわらず
政府は、この六千三百七円
ベースを十二月から一月に延ばすことによりまして、当面起
つておりますところの重要産業の爭議、こういうものについて、やはり
從來の三千七百円
ベースをも
つて臨もうとするところの方針が見えるのであります。かようなことをも
つていたしますならば、当面の重要産業の爭議は解決しない。のみならずかりに一時的な便法をも
つて解決いたしましても、根本的には解決いたしておりませんから、來春以後においてより大きな波紋を起すことは明瞭であります。かような民間における紛爭と、この
給與ベースの両方をかけ合せてや
つているという点をみます場合においては、この結果というものは、ひいては大きな産業上に影響をもつということを恐れるのであります。さような点から考えましても今日六千三百七円
ベースを、この十二月一日から実行するということは、きわめて妥当であると考えるのであります。さらに今日われわれが差迫
つております内外の情勢を考えます場合において、少くともこの
給與水準が、十二月一日からすでに現実に実行されているということを
法案の上において示しますことは、これがややもすれば官公廳の、年末を控えていろいろの不安の中にあります際において、一つの安定感を與えるところの材料になるということを考えるのであります。いわんやこの
給與の結果からみますならば、先ほど
政府案を支持されるところの御意見の中にもあつたようでありますが、たとえば十二月年末調整を対象として考えた場合において、なるほど当面二百八十円ほどの手取りが殖えるかのごとくでありますけれども、しかしこれらのことは、個々の額にいたしますれば、きわめて僅少であります。かような
程度のことは、実はこれを他の方法をも
つてやりくりし得るところのものであります。それよりも重要なことは、この三月までの全体を通じまして、それに上まわるところの三百八円というところの増收がある。こういうところを考えましても、こういうことのみをも
つて、そうしてこの十二月一日から、あるいは一月一日から、みんな支給するものであるかというようなことを論断することは、材料にはならぬとわれわれは考えるのであります。私どもはそういう点におきましてわずかの相違でありますけれども、今日精神的に大きな効果を持
つておるということを考えますがゆえに、この十二月一日から実施する。それに伴
つてその月割の方式が多少かわ
つて來るということにつきましては、やむを得ないのでありまして、われわれはこれを妥当と考える次第であります。
次に
政府案と
修正案の違いは、
政府案におけるところの三十二條、すなわち四十八時間以上を超えて現在
勤務をしておるものを、そのまま慣例として認めるという
規定でありますが、これは
修正案においては削除をいたしております。このことにつきましては先ほど私が
質問の際にも申し述べましたごとく、十九條において現に四十八時間制を嚴格に守るという方針をとりながら、しかも一方においてかような拔け道を置くということは、法の建前からいたしまして、きわめて不徹底であります。のみならずこのことは、今日日本が新しいところの
労働基準法をも
つて立ち上り、將來の國際的市場に対処しようとする場合におきまして、
労働の部面においてもまた國際的信頼を得るところの態勢をとらなければならないのであります。われわれはか
つて昭和八年、九年のころにおきまして、日本の紡績産業が海外に発展をいたした際に、その製品があるいはランカシアの市場を襲つた。そういう結果諸外國から、いわゆる日本商品排斥のソーシャル・ダンピングの運動が起つたことは、今日なお記憶に新たなのであります。そのときの理由は、実際の理由がどこにありましようとも、社会的に世論となりました大きな根拠というものは、日本が長
労働時間、低
賃金をも
つて、いわゆるソーシャル・ダンピングをや
つておるということが、日本商品排斥の根拠であ
つたのであります。われわれは今後世界に対して輸出國とし、貿易國として立とうといたします以上は、どうしてもこの
基準だけは絶対に守らなければならぬところの
基準なのであります。しかるにこれが今日
政府案においてあるということは、はなはだも
つて今日の時代逆行的なものであるとして、われわれは遺憾とする次第であります。でありますからこの点につきましては、いかなる困難がありましようとも、この原則だけは確立しなければならない。そのためにはこの三十二條というものは、絶対に容認のできない條項であるとわれわれは考えるのであります。いわんやこのことによりまして、いずれ將來
政府が企てるであろうところの
行政整理におきましても、必ずやここに拔け道を見出すことは必然であります。今日
労働基準法を明確に実施し、そうして眞に科学的な、そうして民主的な、能率的な管理をいたそうといたしますならば、どうしても四十八時間の限度において行われなければならない。これをこのまま、置いておきまして、しかもそれに手を加えないで
行政整理をやろうというようなことは、断じてわれわれは容認することができないのであります。こういう点からいたしまして、この條項に対しましては、
修正案はこれを削除いたしておるのであります。この点につきまして先ほど民自党の
政府案賛成の意見を聞きますと、
超過勤務手当がこのために非常にかさむ、それが約三十億に達するであろうという
お話を伺
つておるのであります。ところがこのことは
給與予算と関連して、非常に困難を來しはしないかという
お話でありますが、これは御
承知のごとく、
給與予算はここにありますところの俸給と、そうして扶養
手当と、地域
手当と、それに特殊
勤務手当、これを含んだものが
給與予算の全額であることは言うまでもないのであります。その額を押えて追加
予算内におきましての事務処理でありますからして、そのわくとそうしてそれ以外の
超過勤務手当というものは、別個の財源であることは私が言うまでもないのであります。でありますからこの
超過勤務手当は、当然これは事業場に附随し、それぞれの必要に應じて取組まれておるところの
予算であります。これがいかに増加するかということは、もちろんわれわれは考えておるのでありますけれども、その額が三十億であるか、あるいはそれ以下であるか、いずれにいたしましても、これには当然相当の必要ということによ
つてふえるところの作業量が、つきまと
つておるわけでありますから、われわれは必ずしもこの
予算総額のみをも
つて論断することはできないと思うのであります。いわんやこの三十二條削除は、当面原則として絶対にこれは認め得ないところの條項であるから削除するのであります。これを実施するにあたりましては、必ずしも一月一日から全部的に実施を要するものではないのであります。またこのことは実際において全部的に徹底をいたしますためには、おそらくこの点は一年かかることは当然であります。でありますからして、かような原則、これが確立いたしますならば、明年度
予算編成におきましては、こういうものは当然含まるべきものと考えるのであります。そういう点におきましてこれは認めてはならないところの原則でありますから、これも認めることはできないのであります。そういう点から申しまして、われわれはこの
修正案は他の部分におきましては両方ほとんど同じでありますが、この二点におきましては絶対に
修正案が合理的であるということを、われわれは主張するのであります。
その他の部分におきましては多少字句その他の点において違
つております。しかしながらこれは、一々われわれがつくつたところの
修正案を途中から
政府が盗んで、そうしておつくりに
なつたものでありますから、これは似通
つておるのは当然であります。ただ違
つておるのはせつかくわれわれがよりよきものを努力いたしまして、たとえば
勤務時間におきましても、最低の現行
勤務時間を中心として、そうして合理的に一歩々々改善しようといたしましたに対し、これをやはり四十時間をも
つて制限をする、あるいは
超過勤務制度にいたしましても、われわれはより簡明にして、そうして合理的なものを考えておりましたけれども、これもやはり
労働基準法のその線に引下げる。
労働基準法はそれ以上であ
つてはならないというのではないのでありまして、少くとも公務員制度が布かれて、
労働基準法によ
つてやり得る分がありましたならば、
政府は最大の熱意をも
つて、それ以上に努力すべきものはすべきでありますが、こういう点は引下げる、つまり
予算をなるべく使いたくないという理由のもとに、そうして今日の改正案をより
政府の意図に近づけたいという、それだけの問題のめたに、惡くした部分が多少あります。しかしながらこれらのことは、やむを得ず今日に至りましてはわれわれの
修正案として取入れてあります。そういうわけでありますから惡く
なつた点は、これは
政府の努力によ
つてそうな
つたのであります。しかしその部分も取入れてわれわれの
修正案といたしておるのであります。この点が改正の点として遺憾ながら
政府と異なるのであります。こういう点においてわれわれは
修正案を支持するのであります。